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処方薬が自主回収に 処方理由を掘り下げた代替薬の提案【うまくいく!処方提案プラクティス】第16回

 製薬会社からの「自主回収のお知らせ」は、ある日突然アナウンスされます。「代替薬はどうしますか?」と医師に丸投げするのではなく、服用理由や副作用リスクを考慮しながら代替薬を提案しましょう。患者情報80歳、男性(在宅)基礎疾患:慢性心不全、心房細動、高血圧症、糖尿病、症候性てんかん、甲状腺機能低下症既 往 歴:1年前に外傷性くも膜下出血で入院服薬管理:一包化処方内容1.エドキサバン錠30mg 1錠 分1 朝食後2.アゾセミド錠60mg 2錠 分1 朝食後3.スピロノラクトン錠25mg 1錠 分1 朝食後4.トルバプタン錠7.5mg 1錠 分1 朝食後5.レボチロキシンナトリウム錠50μg 1錠 分1 朝食後6.カルベジロール錠2.5mg 2錠 分2 朝夕食後7.メトホルミン錠250mg 2錠 分2 朝夕食後8.リナグリプチン錠5mg 1錠 分1 朝食後9.テルミサルタン錠20mg1錠 分1 朝食後10.ラメルテオン錠8mg 1錠 分1 夕食後11.ミアンセリン錠10mg 1錠 分1 夕食後本症例のポイントこの患者さんの訪問薬剤管理指導を始めてから3ヵ月目に、MSDよりミアンセリン錠10mgの自主回収(クラスII)のアナウンスが入りました。理由は、安定性モニタリングにおいて溶出性が承認規格に適合せず、効果発現が遅延する可能性があるとのことで、使用期限内の全製品の回収と出荷停止が行われました。そこで、医師にミアンセリンから代替薬への変更を提案することにしました。服用契機は、入院中にせん妄が生じたため処方されたと記録されていました。また、以前からこの患者さんには不眠傾向があり、睡眠薬の代替としていることも考えられました。高齢者では、ベンゾジアゼピン系睡眠薬により、せん妄や意識障害のリスクが懸念されるため、5HT2a受容体遮断作用により睡眠の質を改善するとともに、H1受容体遮断作用により睡眠の量も改善するミアンセリンが代替薬として少量投与されることがあります。なお、ラメルテオンもせん妄リスクのある患者で有効とするデータもあり、ベンゾジアゼピン系睡眠薬のリスクを回避しつつ、せん妄と不眠症の両方の改善を目指していると思われました1)。これらの背景を考慮したうえで、代替薬としてトラゾドンを考えました。トラゾドンは、弱いセロトニン再取り込み阻害作用と、強い5HT2受容体遮断作用を併せ持つ薬剤です。睡眠に関しては、全体の睡眠時間を増加させ、持続する悪夢による覚醒やレム睡眠量を減らす効果を期待して処方されることもあり、せん妄と不眠症を有するこの患者さんには最適と考えました。処方提案と経過医師に「ミアンセリン自主回収に伴う代替薬」という表題の処方提案書を作成し、トラゾドンへの変更を提案しました。標準用量では過鎮静やふらつき、起立性低血圧など薬剤有害事象の懸念があると考え、少量の25mgを提案し、認知機能や運動機能低下の有害事象をモニタリング項目として観察することを記載しました。その結果、医師の承認を得ることができました。処方変更後、過鎮静やふらつきなどはなく、せん妄の再燃や入眠困難、中途覚醒などの症状もなく経過しています。1)Hatta K, et al. JAMA Psychiatry. 2014;71:397-403.2)山本雄一郎著. 日経ドラッグインフォメーション編. 薬局で使える 実践薬学. 日経BP社;2017.3)Sateia MJ, et al. Journal of Clinical Sleep Medicine. 2017:13;307-349.doi: 10.5664/jcsm.6470.

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80歳以上の潜在性甲状腺機能低下症、レボチロキシンの効果は?/JAMA

 80歳以上の潜在性甲状腺機能低下症患者の治療において、レボチロキシンはプラセボに比べ、関連症状や疲労を改善しないことが、オランダ・ライデン大学医療センターのSimon P. Mooijaart氏らが行った2つの臨床試験の統合解析で示された。研究の詳細は、JAMA誌オンライン版2019年10月30日号に掲載された。潜在性甲状腺機能低下症(サイロトロピン[甲状腺刺激ホルモン:TSH]上昇、遊離サイロキシン[FT4]正常範囲)は、便秘、精神機能低下、疲労、うつ症状などがみられ、心血管疾患リスクの上昇との関連が指摘されている。また、加齢に伴い併存疾患やフレイルが増加するため、80歳以上の患者は、疾患管理による有益性と有害性が、若年患者とは異なる可能性がある。一方、現時点で高齢患者のエビデンスはなく、プライマリケア医による治療においてばらつきの原因となっている可能性があるという。2つの無作為化プラセボ対照比較試験の統合解析 研究グループは、80歳以上の潜在性甲状腺機能低下症患者において、レボチロキシン治療が甲状腺関連QOLに及ぼす効果を評価する目的で、2つの二重盲検無作為化プラセボ対照比較試験の統合解析を行った。 Institute for Evidence-Based Medicine in Old Age(IEMO)試験は、80歳以上の患者を対象に、2014年5月~2017年5月の期間にオランダとスイスの施設で患者登録が行われた。また、Thyroid Hormone Replacement for Untreated Older Adults With Subclinical Hypothyroidism Trial(TRUST)試験は、65歳以上の患者を対象に、2013年4月~2015年5月の期間にオランダ、スイス、アイルランド、英国の施設で患者登録が行われた。 解析には、TRUST試験の80歳以上のサブグループと、IEMO試験のデータが用いられた(対象はサイロトロピン値4.6~19.9mIU/Lの患者)。 主要アウトカムは2つで、1年後の甲状腺関連QOL患者報告アウトカム(ThyPRO)質問票の「甲状腺機能低下症状」および「疲労」のスコア(0~100点、スコアが高いほどQOLが不良、臨床的に意義のある最小変化量は9点)とした。サイロトロピンは有意に低下、BMIは有意に増加 251例(平均年齢84.6[SD 3.6]歳、118例[47%]が女性)が登録され、レボチロキシン群に112例、プラセボ群には139例が割り付けられた。212例(84%)が試験を完遂した。ベースラインの虚血性心疾患が、レボチロキシン群(20.5%)に比べプラセボ群(27.3%)で多かった。 平均サイロトロピン値は、レボチロキシン群ではベースラインの6.50(SD 1.80)mIU/Lから12ヵ月後には3.69(1.81)mIU/Lへと低下し、プラセボ群の6.20(1.48)mIU/Lから5.49(2.21)mIU/Lへの低下と比較して、低下の幅が有意に大きかった(推定平均群間差:-1.9mIU/L、95%信頼区間[CI]:-2.49~-1.45、p<0.001)。 甲状腺機能低下症状スコアは、レボチロキシン群ではベースラインの21.7点から12ヵ月後には19.3点に低下したのに対し、プラセボ群では19.8点から17.4点に低下し、低下の幅に関して両群間に有意な差は認められなかった(補正後の群間差:1.3点、95%CI:-2.7~5.2、p=0.53)。 疲労スコアは、レボチロキシン群ではベースラインの25.5点から12ヵ月後には28.2点へと増加し、プラセボ群では25.1点から28.7点へと増加しており、有意差はみられなかった(補正後の群間差:-0.1点、95%CI:-4.5~4.3、p=0.96)。 EuroQol-5D indexによるQOL評価(補正後の群間差:-0.012、95%CI:-0.063~0.039、p=0.64)および握力による身体機能評価(-0.27kg、-1.79~1.25、p=0.73)にも、両群間に差はなかった。一方、BMI(0.38、0.08~0.68、p=0.01)およびウエスト周囲長(1.52cm、0.09~2.95、p=0.04)は、プラセボ群に比べレボチロキシン群で有意に増加した。 致死的/非致死的心血管イベント(補正前ハザード比[HR]:0.61、95%CI:0.24~1.50)および全死因死亡(1.39、0.37~5.19)には、両群間に差は認められなかった。73例(レボチロキシン群33例[29.5%]、プラセボ群40例[28.8%])で、1件以上の重篤な有害事象が認められた。 著者は「これらの知見は、80歳以上の潜在性甲状腺機能低下症患者の治療におけるレボチロキシンのルーチンの使用を支持しない」としている。

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甲状腺機能低下症患者に対する補充療法(解説:吉岡成人氏)-1120

甲状腺機能低下症は頻度が高い疾患 甲状腺機能低下症は、日常の診療の中できわめて高頻度に遭遇する内分泌疾患である。日本においては臨床症状を伴う顕性甲状腺機能低下症の頻度は0.50~0.69%、TSHのみが上昇する潜在性甲状腺機能低下症の頻度は3.3~6.1%であり、女性に多い疾患である(志村浩巳. 日本臨床. 2012;70:1851-1856.)。TSHは加齢に伴い上昇することが知られており、潜在性甲状腺機能低下症の頻度は加齢とともに増加する。甲状腺機能低下症の原因としては、慢性甲状腺炎による原発性甲状腺機能低下症が大部分を占める。しかし、最近ではアミオダロン、炭酸リチウムなどの薬剤に加えて、免疫チェックポイント阻害薬によって発症することも、まれならず経験される。 甲状腺機能低下症には、合成T4製剤(レボチロキシンNa、商品名:チラーヂンS)が経口投与される。T4製剤は小腸から吸収され、吸収率は70~80%、空腹時(朝食前や就寝時)に服薬すると吸収が良いことが知られている。T4製剤の維持量は、TSHを正常に保つように調節することが推奨されている。臨床症状を伴う顕性甲状腺機能低下症患者にT4製剤を投与することにはなんら異論はないが、潜在性甲状腺機能低下症の場合、妊婦を除いて、治療についてはエビデンスが少なく、慎重に対応すべきであると考えられている。顕性甲状腺機能低下症の患者に補充療法を行った際のTSHの値と予後の関連 英国における1,500万人の患者を対象としたプライマリケアの大規模データベース(The Health Improvement Network)を用いて、1995年1月~2017年12月までに甲状腺機能低下症と診断されTSHを複数回測定された16万439人(平均年齢58.4歳、男性23%、女性77%)を平均6年間にわたって追跡し、T4製剤の補充を行い、TSH値を基準範囲(正常範囲)内に調節した際の、TSH値とさまざまなヘルスアウトカムの関連を検討した後ろ向き解析の論文がBMJ誌に掲載された(Thayakaran R, et al. BMJ. 2019;366:l4892.)。 アウトカムとして、全死亡、心房細動、虚血性心疾患、心不全、脳卒中・一過性脳虚血発作、骨折を取り上げており、それぞれのアウトカムはTSH値が基準範囲内(2~2.5mIU/L)であった場合には、有意な差はなかった。しかし、TSH値が10mIU/Lを超える場合に、虚血性心疾患のハザード比(HR)が1.18(95%信頼区間:1.02~1.38)、心不全ではHRが1.42(95%信頼区間:1.21~1.67)となり、有意なリスク増加が確認された。一方、TSH値が0.1mIU/L未満の場合には心不全に対するリスクが減少し、HRは0.79(95%信頼区間:0.64~0.99)、TSH値が0.1~0.4mIU/LではHRが0.76(95%信頼区間:0.62~0.92)であった。また死亡率に関しては、TSH値が0.1mIU/L未満でHRが1.18、TSH値が4~10mIU/LではHRが1.29と、基準範囲を下回った場合も超えた場合もリスクの増加が確認された。すべての骨折とTSH値との関連はなかったが、脆弱性骨折に関してはTSH値が10mIU/Lを超えた際のHRは1.15(95%信頼区間:1.01~1.31)であったと報告されている。臨床現場での対応を追認 顕性甲状腺機能低下症患者に補充療法を行い、TSH値が基準値の範囲内(2~2.5mIU/L)であれば死亡や心不全などのリスクに影響はないものの、全死亡、虚血性心疾患、脆弱性骨折のリスクは、TSH値が10mIU/Lを超えると1.1~1.4倍増加し、死亡に関してはTSH値が0.1mIU/L未満でもリスクが増加するという。 中高年の臨床症状を伴う顕性甲状腺機能低下症患者にT4製剤を投与する際には、TSH値を基準範囲内になるように補充すべきであろうということが再認識された臨床試験といえる。

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適切な治療法を届けたい、「バセドウ病治療ガイドライン2019」

 バセドウ病は1,000~2,000人に1人に発症する疾患であり、日常診療において遭遇率の高い疾患の1つである。なかでも、若い女性では約300人に1人が罹患しているとされ、妊娠中の検査で判明することも少なくない。 2019年5月、日本甲状腺学会によるバセドウ病治療ガイドラインが8年ぶりに改訂。本書は専門医だけではなく非専門医やそのほか医療者のバイブルになることを目的として作成されていることから、吉村 弘氏(伊藤病院/バセドウ病治療ガイドライン作成委員会委員長)に一般内科医にも知ってもらいたい改訂ポイントや「バセドウ病治療ガイドライン2019」の特徴について聞いた。バセドウ病治療ガイドライン2019はFCQを新設 今回の「バセドウ病治療ガイドライン2019」の改訂では、FCQ(Foreground Clinical Question)を新設し、クリニカルクエスチョンをFCQ6項目とBCQ(Background Clinical Question)39項目の2つに分けて記載している。これについて吉村氏は、「FCQの項を設けたガイドラインは日本では数少ない。FCQは今現在の課題や結果が出ていない事項に対して、世界中のエビデンスを基にして作成するので、ガイドライン本来の役割を果たす項である。ForegroundをMindsに従って翻訳すると“前景的”となるが、読者が意味を取りやすいよう“発展的”重要検討課題とした」と説明。なお、FCQは、推奨度を「強く推奨する」「弱く推奨する」「推奨なし」の3段階で、推奨決定のためのエビデンス総体の質(確信性)のグレードは、「強」「中」「弱」「とても弱い」の4段階で示されている。 一方、教科書的な内容を記載しているBCQは、推奨ではなく、エビデンスに基づく回答や解説などで構成されている。同氏は非専門医に向けて、「ガイドラインすべてを把握するのは労力が必要。まずは、BCQの回答と解説を熟知してほしい」とコメントした。 また、「バセドウ病治療ガイドライン2019」のBCQには妊娠中の管理はもちろんのこと、「バセドウ病患者の生活指導」「特殊な病態と合併症の治療」「手術」に関する項目が盛り込まれているほか、「ヨウ素を多く含む食品」など、BCQに該当しない内容がコラムとして記載されているので、非専門医がバセドウ病合併患者を対応する際にも有用である。「バセドウ病治療ガイドライン2019」の妊娠中の治療方針における変更点 妊娠兆候がある人は、産婦人科による甲状腺疾患の有無を確認する血液検査が必須である。そのため、同氏の所属病院には産婦人科からの紹介も多く、同氏の調べによると「不妊治療を行っている人の2~3割に甲状腺の精査が必要」という。 さらに、バセドウ病の治療は妊娠の有無にかかわらず、すべての患者に薬物治療が必要になることから、日本甲状腺学会は妊娠前~妊娠中の薬物治療への対応に注意を払っている。たとえば、今回の「バセドウ病治療ガイドライン2019」では妊娠中のバセドウ病の治療方針と管理方法(BCQ37)について、「器官形成期である妊娠4週から妊娠15週、とくに妊娠5週から妊娠9週はMMI(チアマゾール)の使用は避ける。妊娠16週以降はMMIを第一選択薬とする」と変更されている。これについて同氏は、「エビデンスを検索するかぎり、MMIの影響については妊娠10週までしか報告されていない。しかし、一般的な薬物の影響を考慮して、「バセドウ病治療ガイドライン2019」では妊娠5~15週でのMMIの使用回避を記載した」と改訂時の留意点をコメント。加えて、「バセドウ病の場合は、永続的に疾患と付き合っていかなければならず、挙児希望のある患者、とくに131I内用療法後の男性への指導については現時点ではエビデンスが乏しいため、FCQ6に対応法を盛り込んだ」と述べた。 最後に同氏は「FCQ2、4、6は、とくに重要な項目なので注目してほしい」と強調した。<バセドウ病治療ガイドライン2019の主な変更点>FCQ1:妊娠初期における薬物治療は、第一選択薬として何が推奨されるか?(変更前)推奨なし・MMIは妊娠4~7週は使用しないほうが無難(変更後)抗甲状腺薬が必要な場合はPTU(プロピルチオウラシル)を使用、MMIは妊娠5週0日から9週6日まで避けるべきFCQ2:無顆粒球症にG-CSFは推奨されるか?(変更前)推奨なし(変更後)無症候性で顆粒球数100/μL以上では低用量のG-CSFを外来で試験投与可能、顆粒球数100/μL未満は入院のうえ高用量のG-CSF投与が推奨FCQ3:抗甲状腺薬服薬中および治療後にヨウ素制限を行うか?(変更前)食事性ヨード摂取の制限を勧める必要はない(変更後)行わないFCQ4:18歳以下のバセドウ病患者に131I内用療法は推奨されるか?(変更前)慎重投与[他の治療法が選択できないとき](変更後)6~18歳以下でほかの治療法が困難である場合のみ容認、5歳以下は禁忌FCQ5:授乳中のバセドウ病患者にMMI、PTU、無機ヨウ素は推奨されるか?(変更前)PTU300mg/日以下、MMI10mg/日以下であれば授乳を制限する必要はない(変更後)PTU、MMIは変更なし、治療量の無機ヨウ素薬は可能な限り避けるFCQ6:131I内用療法後、挙児計画はいつから許可するか?(男性の場合)(変更前)推奨なし、6ヵ月以上期間を置く(変更後)4ヵ月過ぎてからの挙児計画推奨[強い]、6ヵ月過ぎてからの挙児計画推奨[弱い]

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イベニティ:骨吸収抑制作用と骨形成促進作用を併せ持つ骨粗鬆症治療薬

世界初の製造販売承認を取得イベニティは、骨形成促進作用を持つヒト化抗スクレロスチンモノクローナル抗体製剤であり、2019年1月、骨折の危険性の高い骨粗鬆症の治療薬として、世界に先駆けて日本で製造販売の承認を取得した。骨粗鬆症治療における課題骨粗鬆症による脆弱性骨折は、世界的に増加しており、高齢化の進展にともない今後も増え続けると予測されるが、骨粗鬆症の診断や治療は十分に普及していない。とくに骨折を起こした患者の多くが、診断や治療を受けていないと推測されている。適切な治療を受けなければ、これらの患者は将来、痛みをともない日常生活に支障を来す骨折のリスクが残る。イベニティのdual effectと簡便性スクレロスチンは骨細胞から分泌され、骨芽細胞による骨形成を抑制するとともに、破骨細胞による骨吸収を刺激する。イベニティは、スクレロスチンに結合してこれを阻害することで、骨形成促進と骨吸収抑制の両方の作用を発揮する(dual effect)。これにより、海綿骨と皮質骨の骨量が急速に増加して骨密度(BMD)が増加し、骨の構造と強度が向上して骨折リスクが低下すると考えられている。また、本薬の用法用量は、1ヵ月に1回210mg(シリンジ2本)、12ヵ月間皮下注と従来の骨形成促進薬と比較して簡便な点も特徴である。テリパラチドと比較して新規椎体骨折を有意に抑制イベニティの重要な第 III 相臨床試験として、FRAME試験、STRUCTURE試験、ARCH試験などが挙げられる。FRAME試験は、閉経後骨粗鬆症女性患者7,180例を対象にイベニティを12ヵ月間投与した後デノスマブを12ヵ月投与する群と、プラセボを12ヵ月投与した後デノスマブを12ヵ月投与する群を比較した。その結果、新規椎体骨折の発生率は、12ヵ月時(イベニティ群0.5% vs. プラセボ群の1.8%、p<0.001)および24ヵ月時(0.6% vs. 2.5%、p<0.001)のいずれにおいても、イベニティ群が有意に低かった。STRUCTURE試験は、ビスホスホネート薬による治療経験のある閉経後骨粗鬆症女性患者436例を対象に、イベニティを月1回投与する群と、テリパラチド1日1回12ヵ月間投与する群を比較した。その結果、大腿骨近位部の骨密度は、6ヵ月時(イベニティ群2.3% vs. テリパラチド群 -0.8%、p<0.001)および12ヵ月時(2.9% vs. -0.5%、p<0.001)のいずれにおいても、イベニティ群が有意に高かった。なお、骨折の危険性の高い閉経後骨粗鬆症患者を対象に、イベニティもしくはアレンドロネートを12ヵ月間投与した後、両群ともにアレンドロネートによる継続治療を行ったARCH試験では、12ヵ月時点の「重篤な心血管系有害事象」の発現率が、アレンドロネート単独群で1.9%、イベニティ群で2.5%と不均衡が認められている。そのため、イベニティの使用にあたっては、ベネフィットとリスクを十分に理解した上で、適応患者の選択が重要と考えられている。今後の骨粗鬆症診療への期待骨形成促進作用と骨吸収抑制作用のdual effectを特徴とする本薬の登場により、骨粗鬆症の治療は大きく変化することが予想されている。とくに骨折の既往のある骨粗鬆症の患者において、次の骨折を起こすリスクを軽減する可能性があり、期待を集めている。今後は、骨粗鬆症の最適な治療戦略を確立するために、イベニティ+デノスマブ維持療法など、さまざまなアプローチの検討が進められると考えられる。

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乾癬患者は甲状腺疾患のリスクが高い

 これまで、乾癬と甲状腺疾患との関連はよくわかっていなかった。乾癬患者では、甲状腺機能亢進症、甲状腺機能低下症、甲状腺炎、バセドウ病および橋本病などの甲状腺疾患リスクの増加が認められると、台湾・輔仁大学のShu-Hui Wang氏らによるコホート研究で明らかになった。著者は、「乾癬患者が甲状腺疾患の症状を呈した場合は、内分泌科への紹介を考慮したほうがいいだろう」とまとめている。なお、研究の限界として乾癬患者の重症度のデータが不足していた点を挙げている。Journal of the American Academy of Dermatology誌オンライン版2018年12月5日号掲載の報告。 研究グループは、乾癬患者における甲状腺疾患のリスクを検討する目的で、台湾の全民健康保険データベースを用い、乾癬および乾癬性関節炎に関連する甲状腺疾患発症のハザード比(HR)および95%信頼区間(CI)を算出した。 主な結果は以下のとおり。・乾癬性関節炎患者1万3,266例(乾癬性関節炎群)、乾癬のみの患者14万9,576例(乾癬群)、非乾癬患者16万2,842例(対照群)が解析に組み込まれた。・対照群と比較した、乾癬性関節炎群および乾癬群の甲状腺機能亢進症発症に関する補正後ハザード比は、1.32(95%CI:1.07~1.65)、1.22(95%CI:1.11~1.33)。バセドウ病では、1.38(1.07~1.79)、1.26(1.13~1.41)と、それぞれで発症リスクは高かった。・同様に両群では、甲状腺機能低下症(補正後HR:1.74[95%CI:1.34~2.27]、同:1.38[95%CI:1.23~1.56])、橋本病(2.09[1.34~3.24]、1.47[1.18~1.82])のリスクも高かった。

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潜在性甲状腺機能低下症への対応はいかにあるべきか(解説:吉岡成人氏)-943

高齢者における潜在性甲状腺機能低下症 血中サイロキシン(T4)あるいは遊離サイロキシン(FT4)値が基準範囲にありながらも、血中TSHのみが基準値上限を超えて高値を示している場合が潜在性甲状腺機能低下症である。 潜在性甲状腺機能低下症では、倦怠感などの自覚症状のほかにも、脂質代謝への悪影響、動脈硬化の進展、心機能の低下、妊婦においては流・早産の増加、児の精神発育遅延などがあるため、TSHが10μU/mLを超える場合には甲状腺ホルモンを補充することが多い。65歳以上の高齢潜在性甲状腺機能低下症患者を対象とした無作為化二重盲検プラセボ対照試験では、平均年齢74.4歳の潜在性甲状腺機能低下症患者に甲状腺ホルモンを投与しても、甲状腺機能低下症の症状や甲状腺関連QOLに関した質問票の疲労感のスコアには差を認めないという結論が示されている(Stott DJ, et al. N Engl J Med 2017;376:2534-2544.)。最新のメタアナリシスでは JAMA誌2018年10月2日号に掲載されたメタアナリシスでは、妊娠をしていない成人の潜在性甲状腺機能低下症患者を対象としたランダム化臨床試験を抽出し、21試験の対象患者2,192例を解析している。 解析対象となった患者は各試験の平均で、年齢は32~74歳、女性の割合は46~100%、ベースラインのTSH値は4.4~12.8μU/mLであった。甲状腺ホルモンの補充によりTSH値は基準値の範囲内となったが、QOLについては治療群とプラセボ群で変化はなく、疲労感や倦怠感、抑うつ症状、認知機能、収縮期血圧、BMIのいずれも治療群とプラセボ群で差異はなかった。著者らは妊婦を除く、成人の潜在性甲状腺機能低下症患者への甲状腺ホルモンの補充はルーチンに行うべきではないとしている。潜在性甲状腺機能低下症患者への対応 今のところ、潜在性甲状腺機能低下症を治療することに対しての十分なエビデンスは確立しておらず、一般的には、TSHが10μU/mLの場合に甲状腺ホルモンを補充することが多いものの、TSHが10μU/mL未満の「軽症」患者にどのように対応するかについては意見の一致をみていない。日本甲状腺学会の「Subclinical hypothyroidism潜在性甲状腺機能低下症:診断と治療の手引き」にも、甲状腺ホルモンを補充することの有用性と危険性を勘案し、個々の患者の状況を総合的に判断して補充の適応を考慮すべきとしている。 臨床検査が基準値をはずれているからといって一喜一憂せず、十分な経過観察を行い、治療の必要性についても慎重に考えて良いといえる。

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抗肥満薬であるlorcaserinは日本でも使用できるのだろうか(解説:吉岡成人氏)-942

抗肥満薬は臨床の現場に出てこない 肥満治療の基本は、食事療法と運動療法であり、非薬物療法を3ヵ月をめどに行ったうえでも、改善が認められない場合に薬物治療が考慮される。しかし、日本で使用が可能な薬剤はマジンドールしかない。米国では、膵リパーゼ阻害薬で腸管からの脂肪吸収を抑制する作用を持ったorlistatも発売されているが、日本での発売の予定はない。脳内で摂食亢進や快楽・報酬系に作動するカンナビノイド受容体の拮抗薬であるrimonabantは、自殺企図を含む重篤な精神疾患を引き起こすことから2008年に開発が中止となっている。また、ノルアドレナリンとセロトニンの再吸収取り込み阻害薬であるsibutramineは、血圧の上昇や心筋梗塞、脳卒中のリスク増加のため2010年に欧米の市場から撤退している。このように、抗肥満薬は開発・中断を繰り返しており、臨床の現場で応用されることがきわめて難しい薬剤となっている。lorcaserin 今回、抗肥満薬として期待されていたlorcaserinが、肥満2型糖尿病患者に対して有用である可能性を示す論文がLancet誌に報告された(Bohula EA, et al. Lancet. 2018 Oct 3. [Epub ahead of print])。lorcaserinはセロトニン5-HT(5-hydroxy-triptamine)2c受容体のアゴニストである。セロトニンは脳内に存在するモノアミンで、5-HT受容体を介して摂食抑制、睡眠、鎮静、疼痛閾値の調整、母性行動などに関与している。5-HT2c受容体は視床下部に発現し、食欲抑制に関与しており、そのノックアウトマウスでは過食や肥満をもたらすことが知られている。5-HT2c受容体への選択性が強いlorcaserinは、2010年に前臨床試験段階で乳腺腫瘍と星細胞腫の発生を増加させるリスクが懸念され、米国食品医薬品局(FDA)で認可されなかった。しかし、その後の第III相試験で腫瘍発生の増加がなかったため、2012年にFDAが認可した薬剤である。lorcaserinの心血管安全性 lorcaserinの心血管系に対する安全性を評価した二重盲検試験であるCAMELLIA(Cardiovascular and metabolic effects of lorcaserin in overweight and obese patients)-TIMI 61試験の結果が、2018年8月26日にNEJM誌電子版に掲載されている(Bohula EA, et al. N Engl J Med. 2018;379:1107-1117.)。 心血管死亡、心筋梗塞、脳卒中を合わせた複合イベントを主要評価項目とし、有効性については主要評価項目に不安定狭心症、心不全、冠動脈血行再建術を追加した複合イベントについて評価している。中央値3.3年間の追跡で、主要評価項目についてはlorcaserin群6.1%、プラセボ群6.2%(ハザード比:0.99、99%信頼区間:0.85~1.14)であり、安全性が確認された。有効性については、lorcaserin群11.8%、プラセボ群12.1%(ハザード比:0.97、99%信頼区間:0.87~1.9714)でプラセボに勝る心血管イベントの減少は示されなかった。lorcaserinは糖尿病治療にも有用 CAMELLIA-TIMI 61試験の副次評価項目である、2型糖尿病患者における血糖コントロール、糖尿病発症前から2型糖尿病への移行の遅延、糖尿病発症阻止の可能性を検討した詳細な結果が、今回Lancet誌に掲載された論文である。 アテローム動脈硬化性心疾患、または複数の心血管リスクを保有するBMI 27以上の肥満者を対象として、lorcaserinを投与した群では、1年時において糖尿病患者で平均107.6kgの体重がプラセボ群に比較して2.6kg(95%信頼区間:2.3~2.9)減少し、HbA1c 5.7~6.5%未満、空腹時血糖値100~125mg/dL未満の「前糖尿病」状態の対象者が糖尿病に移行するリスクも19%減少(8.5% vs.10.3%、ハザード比:0.81、95%信頼区間:0.66~0.99)し、糖尿病の発症予防に対するNNTは3年で56であると報告している。糖尿病患者においては、細小血管障害(網膜症、持続アルブミン尿、末梢神経障害)の発症も抑止された(10.1% vs.12.4%、ハザード比:0.79、95%信頼区間:0.69~0.92)という。代謝の改善と心血管イベント lorcaserinは従来の抗肥満薬と同様に、体重の減少と糖尿病の発症予防、糖尿病の病態の改善に有用であり、かつ、心血管安全性も確認されたといえる。しかし、減量に成功し、血糖コントロールが改善しても、3.3年の期間では心血管イベントの発症に好影響をもたらさなかった。 はたして日本でも市場に登場する薬剤となるのかどうか、今後の展開が注目される。

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潜在性甲状腺機能低下症へのホルモン療法、最新メタ解析結果/JAMA

 潜在性甲状腺機能低下症患者への甲状腺ホルモン療法の便益は不明とされる。スイス・ベルン大学病院のMartin Feller氏らは、成人患者において甲状腺ホルモン療法の有効性を検討し、一般的なQOLや甲状腺関連症状の改善効果はみられないことを示した。研究の成果は、JAMA誌2018年10月2日号に掲載された。潜在性甲状腺機能低下症は、甲状腺刺激ホルモン(TSH)高値と遊離サイロキシン(FT4)正常範囲内で定義され、とくに甲状腺機能低下症に起因する可能性がある症状(疲労感、便秘、原因不明の体重増加など)を伴う場合は、甲状腺ホルモン(レボチロキシン)による治療が行われることが多い。最近、2つの大規模臨床試験の結果が報告されたことから、これらを含めたメタ解析のアップデートが求められていた。プラセボ/無治療と比較した無作為化試験が対象 研究グループは、潜在性甲状腺機能低下症の成人患者において、甲状腺ホルモン療法とQOLおよび甲状腺関連症状との関連を評価するメタ解析を行った(スイス国立科学財団[SNSF]の助成による)。 2018年7月4日までに医学関連データベースに登録された文献を検索した。潜在性甲状腺機能低下症の妊娠していない成人患者において、甲状腺ホルモン療法をプラセボまたは無治療と比較した無作為化臨床試験の論文を対象とした。 主要アウトカムは、フォローアップ期間3ヵ月以上における一般的なQOLおよび甲状腺関連症状であった。各評価項目の臨床スコアの差を標準化平均差(SMD)に変換。SMDが正数の場合に、甲状腺ホルモン療法が便益をもたらしたことを示し、0.2を小さな効果、0.5を中等度の効果、0.8を大きな効果の基準とした。 日本の1件を含む21件の試験の論文(2,192例)が解析の対象となった。甲状腺ホルモン療法は、レボチロキシンが17件、サイロキシンが4件で使用され、対照群は、プラセボが18件、無治療が3件だった。倦怠感/疲労感、うつ症状、認知機能、血圧、BMIにも差はない 各試験の参加者数には20~737例の幅があり、平均年齢は32~74歳、女性の割合は46~100%、ベースラインの甲状腺刺激ホルモンの平均値は4.4~12.8mIU/Lの範囲であった。平均治療期間は3~18ヵ月だった。 甲状腺ホルモン療法群では、フォローアップ終了時の甲状腺刺激ホルモンの平均値は0.5~3.7mIU/Lであり、治療により正常化したのに対し、プラセボ/無治療群では、4.6~14.7mIU/Lと、高値の状態が続いていた。 これに対し、一般的QOLの評価(4試験、796例)では、甲状腺ホルモン療法群はプラセボ/無治療群に比べ便益を認めなかった(SMD:-0.11、95%信頼区間[CI]:-0.25~0.03、I2=66.7%)。また、甲状腺関連症状(4試験、858例)についても、甲状腺ホルモン療法群に統計学的に有意な便益はみられなかった(0.01、-0.12~0.14、0.0%)。 倦怠感/疲労感(1試験、638例、SMD:−0.01、95%CI:−0.16~0.15)、うつ症状(4試験、278例、-0.10、-0.34~0.13、I2=0.0%)、認知機能(4試験、859例、0.09、-0.05~0.22、14.7%)、収縮期血圧(8試験、1,372例、-0.7、-2.6~1.2、0.0%)、BMI(15試験、1,633例、0.2、-0.4~0.8、45.5%)のいずれにおいても、両群間に有意な差はなかった。 全般的に、試験のバイアスのリスクは低く、GRADE toolで評価した評価項目のエビデンスの質は中等度~高度と判定された。 著者は、「これらの知見は、潜在性甲状腺機能低下症の成人患者への甲状腺ホルモン療法のルーチンの使用を支持しない」としている。

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第9回 レボチロキシンは朝食後投与では吸収が低い?【論文で探る服薬指導のエビデンス】

 レボチロキシンは甲状腺機能低下症、甲状腺腫や甲状腺がん術後療法などで、長期間ないし一生涯服用する患者さんも少なくありません。経験上、用法や相互作用についての質問を受けることが多い薬でもあります。相互作用については、カルシウム製剤、スクラルファート、水酸化アルミニウム、鉄剤、コレスチラミン、酸化マグネシウムなどの制酸剤やコーヒー1)などレボチロキシンの吸収を低下させるものから、ビタミンC2)などの吸収を亢進させるものまで多くの変動要因が知られており、注意を払っている薬剤師も多いかと思います。用法については、添付文書には1日1回の服用とだけ記載があり、インタビューフォームを見ても食事・併用薬の影響について該当資料なしとの記載になっていて、判断に迷うシーンもあります。本邦の添付文書に用法記載がなければ海外(米国やカナダ)の添付文書を見るのも一案なので、総合医薬品データベースのLexicomp Onlineで調べてみると、「朝空腹時少なくとも朝食の30~60分前もしくは夜最後の食事の3~4時間後服用」の記載があり、日本と異なっています。そこで今回は、レボチロキシンの用法について検討した論文を紹介しましょう。Timing of levothyroxine administration affects serum thyrotropin concentration.Bach-Huynh TG, et al. J Clin Endocrinol Metab. 2009;94:3905-3912.1つ目は、レボチロキシンの用法や食事の有無が血清甲状腺刺激ホルモン(TSH)濃度に及ぼす影響を調査した研究です。レボチロキシンを75μg以上服用している18~75歳の患者が組み入れられ、甲状腺機能低下症42例、甲状腺がん23例の計65例(女性50例、男性15例)が試験を完遂しています。患者は、(1)夜間絶食かつ朝食の1時間以上前の起床時、(2)その日の最後の食事より2時間以上後の就寝前、(3)朝食後20分以内、という3つの用法をくまなく組み合わせた6パターンのうち1つに割り当てられ、1~8週目、9~16週目、17~24週目の8週間ずつクロスオーバーしました。プライマリアウトカムは8週間レジメンにおける絶食時の血清TSH濃度とその他2つの用法時の血清TSH濃度の差です。結果、絶食時服用のTSHの血中濃度はもっとも低く1.06±1.23mIU/Lであり、就寝前服用では2.19±2.66mIU/L、朝食後服用では2.93±3.29mIU/Lと有意に高くなっていました。TSHの血中濃度が低いほど甲状腺ホルモンが多いということなので、空腹時服用のほうがレボチロキシンの吸収がよいことがわかります。論文でも、食後服用では血清TSH濃度がより高く、変動しやすいため、ターゲットレンジに入れたい場合は絶食時が勧められることが示唆されています。夜間かつ空腹でレボチロキシンは効果最大それでは、同じ空腹時であれば朝と夜ではどちらがよいのでしょうか。それを比較した研究もあります。Effects of evening vs morning levothyroxine intake: a randomized double-blind crossover trial.Bolk N, et al. Arch Intern Med. 2010;170:1996-2003.この文献のBackgroundには、レボチロキシンは約70~80%が小腸で吸収されるので、食物や他の薬剤による腸内吸収阻害を防ぐために、朝食前に服用するのがよいというコンセンサスが得られている、と書かれています。ただ、筆者の少ない経験則では朝食後処方を見掛ける機会が多く、起床時処方は少数であると感じています。朝食後は飲み忘れにくいですし、処方オーダー上の用法選択で選びやすいためかもしれません。本試験の目的は、就寝前服用では朝服用よりも甲状腺ホルモン値が改善するかどうかという検証です。18歳以上で、レボチロキシン治療を少なくとも6ヵ月以上受けている原発性甲状腺機能低下のある105例の被験者を対象に、ダブルブラインドのクロスオーバー試験を行っています。患者はレボチロキシンまたはプラセボを入れたカプセルを朝と就寝前に1カプセルずつ12週間服用し、朝夜のカプセルを入れ替えてさらに12週間服用しました。プライマリアウトカムとして、それぞれ12週間服用時における甲状腺ホルモンの数値の変化、セカンダリアウトカムとしてクレアチニン、脂質、BMI、脈拍、QOL(生活の質)が設定されています。90例が試験を完遂し、解析に組み入れられました。平均TSH濃度は、最初に朝にレボチロキシンを服用した群では12週時点の2.66(標準偏差:2.53)mIU/Lから24週時点の1.74(同:2.43)mIU/Lに減少している一方で、最初に就寝前にレボチロキシンを服用した群では12週時点の2.36(同:2.55)mIU/Lから24週時点の3.86(同:4.02)mIU/Lに増加しています。また、平均FT4(遊離サイロキシン)値は、最初に朝にレボチロキシンを服用した群では12週時点の1.48(同:0.24)ng/dLから24週時点の1.59(同:0.33)ng/dLに増加していて、最初に就寝前にレボチロキシンを服用した群では、12週時点の1.54(同:0.28)ng/dLから24週時点の1.51(同:0.20)ng/dLに減少しています。つまり、就寝前のレボチロキシン服用でFT4の増加という直接的な治療効果とTSHの低下に寄与していると考えられます。総T3(トリヨードサイロニン)値の変化は、FT4の変化と同じ傾向でした。なお、セカンダリエンドポイントとして解析されたクレアチニン、脂質、BMI、脈拍、QOLに関しては有意な差がありませんでした。甲状腺機能の検査値基準と意味を理解していないとややわかりづらい部分もありますが、以上の研究を踏まえレボチロキシンについてのポイントを抽出すると、下記のことがいえそうです。・レボチロキシンは食事により吸収が低下するため、空腹時服用が有利・活性の低いT4から活性の高いT3への変換は夜間に亢進する・夜間は腸の運動が緩やかで腸壁にレボチロキシンがさらされる時間が延長し、吸収がよくなる・夜間に胃酸分泌が亢進し、酸性環境により吸収が促されるこれらのことから、就寝前も選択肢としてよいものと思われます。就寝前にすれば朝食を遅らせる必要がないため、都合がいい患者さんもいるでしょう。セカンダリアウトカムに差がなく、半減期も長いことから臨床上食後が明確にいけないといえるほどのエビデンスではありませんが、効果や生活リズムなどに不満がある場合は、医師に確認のうえ、用法の選択肢を提示してみるのもよいかもしれません。1)Almandoz JP, et al. Med Clin North Am. 2012;96:203-221.2)Jubiz W, et al. J Clin Endocrinol Metab. 2014;99:E1031-E1034.3)チラーヂンS錠 添付文書(2015年1月改訂 第12版)4)チラーヂンS錠 インタビューフォーム(2015年10月改訂 第10版)5)Bach-Huynh TG, et al. J Clin Endocrinol Metab. 2009;94:3905-3912.6)Bolk N, et al. Arch Intern Med. 2010;170:1996-2003.

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リジン尿性蛋白不耐症〔LPI:lysinuric protein intolerance〕

1 疾患概要■ 定義二塩基性アミノ酸(リジン、アルギニン、オルニチン)の輸送蛋白の1つである y+LAT-1(y+L amino acid transporter-1)の機能異常によって、これらのアミノ酸の小腸での吸収障害、腎での再吸収障害を生じるために、アミノ酸バランスの破綻から、高アンモニア血症をはじめとした多彩な症状を来す疾患である。本疾患は常染色体劣性遺伝を呈し、責任遺伝子SLC7A7の病因変異が認められる。現在は指定難病となっている。■ 疫学わが国での患者数は30~40人と推定されている。■ 病因y+LAT-1 は主に腎、小腸などの上皮細胞基底膜側に存在する(図)。12の膜貫通領域をもった蛋白構造をとり、分子量は約40kDaである。調節ユニットである 4F2hc(the heavy chain of the cell-surface antigen 4F2)とジスルフィド結合を介してヘテロダイマーを形成することで、機能発現する。本蛋白の異常により二塩基性アミノ酸の吸収障害、腎尿細管上皮での再吸収障害を来す結果、これらの体内プールの減少、アミノ酸バランスの破綻を招き、諸症状を来す。所見の1つである高アンモニア血症は、尿素回路基質であるアルギニンとオルニチンの欠乏に基づくと推定されるが、詳細は不明である。また、SLC7A7 mRNAは全身の諸臓器(白血球、肺、肝、脾など)でも発現が確認されており、本疾患の多彩な症状は各々の膜輸送障害に基づく。上述の病態に加え、細胞内から細胞外への輸送障害に起因する細胞内アルギニンの増加、一酸化窒素(NO)産生の過剰なども関与していることが推定されている。画像を拡大する■ 症状離乳期以降、低身長(四肢・体幹均衡型)、低体重が認められるようになる。肝腫大も受診の契機となる。蛋白過剰摂取後には約半数で高アンモニア血症による神経症状を呈する。加えて飢餓、感染、ストレスなども高アンモニア血症の誘因となる。多くの症例においては1歳前後から、牛乳、肉、魚、卵などの高蛋白食品を摂取すると嘔気・嘔吐、腹痛、めまい、下痢などを呈するため、自然にこれらの食品を嫌うようになる。この「蛋白嫌い」は、本疾患の特徴の1つでもある。そのほか患者の2割に骨折の既往を、半数近くに骨粗鬆症を認める。さらにまばらな毛髪、皮膚や関節の過伸展がみられることもある。一方、本疾患では、約1/3の症例に何らかの血液免疫学的異常所見を有する。水痘の重症化、EBウイルスDNA持続高値、麻疹脳炎合併などのウイルス感染の重症化や感染防御能の低下が報告されている。さらに血球貪食症候群、自己免疫疾患(全身性エリテマトーデス、抗リン脂質抗体症候群、自己免疫性肝炎、関節リウマチ)合併の報告がある。成人期以降には肺合併症として、間質性肺炎、肺胞蛋白症などが増える傾向にある。無症状でも画像上の肺の線維化がたびたび認められる。また、腎尿細管病変や糸球体腎炎も比較的多い。循環器症状は少ないが、運動負荷後の心筋虚血性変化や脳梗塞を来した症例もあり、注意が必要である。■ 分類本疾患の臨床症状と重症度は多彩である。一般には出生時には症状を認めず、蛋白摂取量が増える離乳期以後に症状を認める例が多い。1)発症前型同胞が診断されたことを契機に、診断に至る例がある。この場合も軽度の低身長などを認めることが多い。2)急性発症型小児期の発症形態としては、高アンモニア血症に伴う意識障害や痙攣、嘔吐、精神運動発達遅滞などが多い。しかし、一部では間質性肺炎、易感染、血球貪食症候群、自己免疫疾患、血球減少などが初発症状となる例もある。3)慢性進行型軽症例は成人まで気付かれず、てんかんなどの神経疾患の精査から診断されることがある。■ 予後早期診断例が増え、精神運動発達遅延を呈する割合は減少傾向にある。しかし、肺合併症や腎病変は、アミノ酸補充にもかかわらず進行を抑えられないため、生命予後に大きく影響する。水痘や一般的な細菌感染は、腎臓・肺病変の重症化を招きうる。2 診断 (検査・鑑別診断も含む)高アンモニア血症を来す尿素サイクル異常症の各疾患の鑑別のため血中・尿中アミノ酸分析を提出する。加えてLDHやフェリチンが上昇していれば本疾患の可能性が高まる。確定診断には遺伝子解析を検討する。■ 一般血液検査所見1)血清LDH上昇:600~1,000IU/L程度が多い。2)血清フェリチン上昇:程度は症例によって異なる。3)高アンモニア血症:血中アンモニア高値の既往はほとんどの例でみられる。最高値は180~240μmol/L(300~400μg/dL)の範囲であることが多いが、時に600μmol/L (1,000μg/dL)程度まで上昇する例もある。また、食後に採血することで蛋白摂取後の一過性高アンモニア血症が判明し、診断に至ることがある。4)末梢白血球減少・血小板減少・貧血上記検査所見のほか、AST/ALTの軽度上昇(AST>ALT)、TG/TC上昇、貧血、甲状腺結合蛋白(TBG)増加、IgGサブクラスの異常、白血球貪食能や殺菌能の低下、NK細胞活性低下、補体低下、CD4/CD8比の低下などがみられることがある。■ 血中・尿中アミノ酸分析1)血中二塩基性アミノ酸値(リジン、アルギニン、オルニチン)正常下限の1/3程度から正常域まで分布する。また、二次的変化として、血中グルタミン、アラニン、グリシン、セリン、プロリンなどの上昇を認めることがある。2)尿の二塩基性アミノ酸濃度は通常増加(リジンは多量、アルギニン、オルニチンは中等度、シスチンは軽度)なかでもリジンの増加はほぼ全例にみられる。まれに(血中リジン量が極端に低い場合など)、これらのアミノ酸の腎クリアランスの計算が必要となる場合がある。(参考所見)尿中有機酸分析における尿中オロト酸測定:高アンモニア血症に付随して尿中オロト酸の増加を認める。■ 診断の根拠となる特殊検査1)遺伝子解析SLC7A7(y+LAT-1をコードする遺伝子)に病因変異を認める。遺伝子変異は今まで50種以上の報告がある。ただし本疾患の5%程度では遺伝子変異が同定されていない。■ 鑑別診断初発症状や病型の違いによって、鑑別疾患も多岐にわたる。1)尿素サイクル異常症の各疾患2)ライソゾーム病3)周期性嘔吐症、食物アレルギー、慢性腹痛、吸収不良症候群などの消化器疾患 4)てんかん、精神運動発達遅滞5)免疫不全症、血球貪食症候群、間質性肺炎初発症状や病型の違いによって、鑑別疾患も多岐にわたる。<診断に関して留意する点>低栄養状態では血中アミノ酸値が全体に低値となり、尿中排泄も低下していることがある。また、新生児や未熟児では尿のアミノ酸排泄が多く、新生児尿中アミノ酸の評価においては注意が必要である。逆にアミノ酸製剤投与下、ファンコーニ症候群などでは尿アミノ酸排泄過多を呈するので慎重に評価する。3 急性発作で発症した場合の診療高アンモニア血症の急性期で種々の臨床症状を認める場合は、速やかに窒素負荷となる蛋白を一旦除去するとともに、中心静脈栄養などにより十分なカロリーを補充することで蛋白異化の抑制を図る。さらに薬物療法として、L-アルギニン(商品名:アルギU)、フェニル酪酸ナトリウム(同:ブフェニール)、安息香酸ナトリウムなどが投与される。ほとんどの場合は、前述の薬物療法によって血中アンモニア値の低下が得られるが、無効な場合は持続的血液透析(CHD)の導入を図る。■ 慢性期の管理1)食事療法十分なカロリー摂取と蛋白制限が主体となる。小児では摂取蛋白0.8~1.5g/kg/日、成人では0.5~0.8g/kg/日が推奨される。一方、カロリーおよびCa、Fe、ZnやビタミンDなどは不足しやすく、特殊ミルクである蛋白除去粉乳(S-23)の併用も考慮する。2)薬物療法(1)L-シトルリン(日本では医薬品として認可されていない)中性アミノ酸であるため吸収障害はなく、肝でアルギニン、オルニチンに変換されるため、本疾患に有効である。投与により血中アンモニア値の低下や嘔気減少、食事摂取量の増加、活動性の増加、肝腫大の軽減などが認められている。(2)L-アルギニン(同:アルギU)有効だが、吸収障害のため効果が限られ、また浸透圧性下痢を来しうるため注意して使用する。なおL-アルギニンは、急性期の高アンモニア血症の治療としては有効であるが、本症における細胞内でのアルギニンの増加、NO産生過剰の観点からは、議論の余地があると思われる。(3)L-カルニチン2次性の低カルニチン血症を来している場合に併用する。(4)フェニル酪酸ナトリウム(同:ブフェニール)、安息香酸ナトリウム血中アンモニア値が不安定な例ではこれらの定期内服を検討する。その他対症療法として、免疫能改善のためのγグロブリン投与、肺・腎合併症に対するステロイド投与、骨粗鬆症へのビタミンD製剤やビスホスホネート薬の投与、成長ホルモン分泌不全性低身長への成長ホルモンの投与、重炭酸ナトリウム、抗痙攣薬、レボチロキシン(同:チラーヂンS)の投与などが試みられている。4 今後の展望小児期の発達予後に関する最重要課題は、高アンモニア血症をいかに防ぐかである。近年では、早期診断例が徐々に増えることによって正常発達例も増えてきた。その一方で、早期から食事・薬物療法を継続したとしても、成人期の肺・腎合併症は予防しきれていない。その病因として、尿素サイクルに起因する病態のみならず、各組織におけるアミノ酸の輸送障害やNO代謝の変化が想定されており、これらの病態解明と治療の開発が望まれる。5 主たる診療科小児科、神経内科。症状により精神科、腎臓内科、泌尿器科、呼吸器内科への受診も適宜行われている。※ 医療機関によって診療科目の区分は異なることがあります。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)診療、研究に関する情報難病情報センター リジン尿性蛋白不耐症(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)1)Sperandeo MP, et al. Hum Mutat. 2008;29:14-21.2)Torrents D, et al. Nat Genet. 1999;21:293-296.3)高橋勉. 厚労省研究班「リジン尿性蛋白不耐症における最終診断への診断プロトコールと治療指針の作成に関する研究」厚生労働科学研究費補助金難治性疾患克服研究事業 平成22年度総括分担研究報告書;2011.p.1-27.4)Charles Scriver, et al(editor). The Metabolic and Molecular Bases of Inherited Disease, 8th ed. New York City:McGraw-Hill;2001:pp.4933-4956.5)Sebastio G, et al. Am J Med Genet C Semin Med Genet. 2011;157:54-62.公開履歴初回2018年8月14日

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骨粗鬆症のBP治療後、新規抗体製剤vs.テリパラチド/Lancet

 経口ビスホスホネート系薬で治療を受ける、閉経後の骨粗鬆症女性の治療薬移行について、開発中のヒト抗スクレロスチンモノクローナル抗体製剤romosozumab(AMG 785、承認申請中)が既存薬のテリパラチド(フォルテオ)との比較において、股関節部の骨密度(BMD)を上昇させたことが報告された。デンマーク・オーフス大学病院のBente L. Langdahl氏らによる第III相の非盲検無作為化実薬対照試験の結果で、Lancet誌オンライン版2017年7月26日号で発表された。ビスホスホネート系薬の既治療は、テリパラチドの骨形成作用を減弱することが確認されている。著者は、「今回示されたデータを、骨折リスクの高い患者の臨床的意思決定のために周知すべきである」と述べている。ビスホスホネート系薬既治療患者を対象に無作為化試験 試験は、北米、中南米、欧州の46施設で行われた。閉経後の骨粗鬆症女性(55歳以上90歳以下)で、スクリーニング以前に3年以上ビスホスホネート系薬を服用、およびスクリーニングの前年にアレンドロネート(アレンドロン酸ナトリウム錠)を服用しており、BMD Tスコアが、total hip、大腿骨頸部、腰椎で-2.5以下、さらに骨折歴がある患者を登録した。 研究グループは適格患者を、romosozumab皮下投与群(月1回210mg)またはテリパラチド皮下投与群(1日1回20μg)に無作為に割り付けて追跡した。 主要エンドポイントは、ベースラインから12ヵ月時点(6~12ヵ月の平均)のDEXA法で測定したBMDの%変化とし、線形ミックス効果モデルを用いて反復測定を行い、6~12ヵ月時点の平均治療効果を表した。 無作為化を受けた患者は全員、ベースラインで測定を受けた。有効性の解析には、その後少なくとも1回測定を受けた患者を包含した。12ヵ月間のtotal hip BMDの平均%変化、2.6% vs.-0.6% 2013年1月31日~2014年4月29日に、436例がromosozumab群(218例)またはテリパラチド群(218例)に無作為に割り付けられた。有効性解析には、romosozumab群206例、テリパラチド群209例が包含された。 ベースラインからの12ヵ月間で、total hip BMDの平均%変化は、romosozumab群2.6%(95%信頼区間[CI]:2.2~3.0)に対し、テリパラチド群は-0.6%(-1.0~-0.2)で、群間差は3.2%(95%CI:2.7~3.8、p<0.0001)であった。 有害事象の頻度は、概して両群間で一致していた。報告の頻度が高かった有害事象は、鼻咽頭炎(romosozumab群28/218例[13%]、テリパラチド群22/214例[10%])、高カルシウム血症(romosozumab群2/218例[<1%]、テリパラチド群22/214例[10%])、関節痛(romosozumab群22/218例[10%]、テリパラチド群13/214例[6%])であった。重篤有害事象は、romosozumab群で17例(8%)、テリパラチド群は23例[11%]報告されたが、いずれも治療に関連した事象とは判定されなかった。なお、有害事象により試験薬投与が中断されたのは、romosozumab群は6例(3%)、テリパラチド群は12例(6%)であった。

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2017年度認定内科医試験、直前対策ダイジェスト(前編)

【第1回 膠原病/アレルギー】 全13問膠原病/アレルギー領域は、アップデートが頻繁な分野でキャッチアップしていくのが大変だが、それだけに基本的なところで確実に得点することが重要となってくる。例題(解答は本ページの最後に掲載しています)これらの疾患とCoombsとGell分類の組み合わせで正しいものはどれか?1つ選べ(a)血清病 ― I型(b)クリオグロブリン血症 ― II型(c)特発性血小板減少性紫斑病 ― III型(d)アレルギー性接触皮膚炎 ― IV型(e)過敏性肺臓炎 ― I+IV型例題の解説とその他の予想問題はこちらへ【第2回 感染症】 全9問感染症領域については、時事問題や感染対策、予防に関する問題がよく出題される傾向がある。代表的な感染症に加え、新興・再興感染症の感染対策についてもしっかり押さえておきたい。例題(解答は本ページの最後に掲載しています)感染症について正しいものは次のうちどれか?1つ選べ(a)中東呼吸器症候群(MERS)は2類感染症であり、致死率は50%を超えるとされている(b)重症熱性血小板減少症候群(SFTS)は4類感染症に指定されており、マダニを媒介としヒト-ヒト感染の報告はない(c)デング熱は4類感染症に指定されており、前回と異なる血清型のデングウイルスに感染した場合、交差免疫により不顕性感染となることが多いと報告されている(d)ジカ熱は4類感染症に指定されており、デングウイルス同様ネッタイシマカやヒトスジシマカを媒介とし、ギラン・バレー症候群のリスクとなる(e)カルバぺネム耐性腸内細菌科細菌は5類全数把握疾患に指定されており、保菌者も届出が必要とされる例題の解説とその他の予想問題はこちらへ【第3回 呼吸器】 全10問呼吸器の分野については、レントゲンやCTなどの画像から診断を回答させる問題が増えている。アトラス等で疾患別の画像所見をしっかりと確認しておきたい。例題(解答は本ページの最後に掲載しています)次の記載で正しいものはどれか?1つ選べ(a)成人の急性上気道炎の原因として最も多いものはRSウイルスである(b)Centor criteriaは次の通りである1)38℃以上の発熱、2)基礎疾患なし、3)圧痛を伴う前頸部リンパ節腫脹、4)白苔を伴う扁桃腫脹で行う溶連菌感染スコアリング(c)Ludwig’s anginaは菌血症による感染性血栓性頸静脈炎のことである(d)レミエール症候群は、Fusobacterium necrophorumなど嫌気性菌によるものが多い(e)初診外来で白苔を認める急性化膿性扁桃腺炎患者にアモキシシリンで治療した例題の解説とその他の予想問題はこちらへ【第4回 腎臓】 全7問腎臓領域については、ネフローゼ症候群に関する出題が多く、細部まで問われる傾向がある。とくにネフローゼ症候群に関してはしっかりと押さえておきたいところである。例題(解答は本ページの最後に掲載しています)急性腎不全(ARF)と急性腎障害(AKI)について正しいものはどれか?1つ選べ(a)「急性腎障害のためのKDIGO診療ガイドライン」ではAKIの定義として、24時間以内に血清Cr値が0.3mg/dL以上上昇、尿量<0.5mL/kg/時の状態が12時間以上持続する、という項目がある(b)FENa(Na排泄率)2.0%は腎前性腎不全を考える(c)急性尿細管壊死では、多尿が1~2週間持続し、尿中Naは20mEq/L以下であることが多い(d)急性尿細管壊死は消化管出血を合併することが多く、貧血になりやすい(e)尿中好酸球は、薬剤性急性尿細管間質性腎炎で検出され、その診断に有用なバイオマーカーである例題の解説とその他の予想問題はこちらへ【第5回 内分泌】 全10問内分泌領域については、診断のための検査についての出題が多い。とくに甲状腺と副腎について問われることが多く、知識の整理が必要である。例題(解答は本ページの最後に掲載しています)グレーブス病(バセドウ病)について正しいものはどれか?1つ選べ(a)バセドウ病に認めるMerseburg3徴は、甲状腺腫・眼球突出・限局性粘液水腫である(b)アミオダロン、インターフェロン製剤は、誘発因子として報告されている(c)甲状腺眼症を合併している患者の治療の第1選択は131I内用療法である(d)抗甲状腺薬にはチアマゾール(MMI)とプロピルチオウラシル(PTU)があり、妊娠・授乳中の患者はMMIの使用が推奨されている(e)131I内用療法の効果は早く、開始後1週間以内に治療効果を認める例題の解説とその他の予想問題はこちらへ【第6回 代謝】 全10問代謝領域については、治療薬について細部まで聞かれる傾向がある。メタボリックシンドロームとアディポカインは毎年出題されるので、しっかり押さえておきたい。例題(解答は本ページの最後に掲載しています)1型糖尿病について正しいものはどれか?1つ選べ(a)家族歴は2型糖尿病より1型糖尿病に多く認める(b)1型糖尿病の死因で最多は感染症によるものである(c)緩徐進行1型糖尿病は、できるかぎり経口糖尿病薬で治療を行い、インスリン導入を遅らせるべきである(d)劇症1型糖尿病は、膵島関連自己抗体陽性の小児に発症することが多い(e)劇症1型糖尿病は、血中膵外分泌酵素(アミラーゼ、リパーゼなど)の上昇を認めることが多い例題の解説とその他の予想問題はこちらへ【例題の解答】第1回:(d)、第2回:(d)、第3回:(d)、第4回:(d)、第5回:(b)、第6回:(e)

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高齢者の潜在性甲状腺機能低下症にホルモン療法は有効か?/NEJM

 潜在性甲状腺機能低下症の治療において、これまでレボチロキシンの使用は議論の的であったが、無作為化二重盲検プラセボ対照並行群間比較試験(TRUST試験)の結果、高齢患者に対するレボチロキシンの有効性は認められなかった。英国・グラスゴー王立診療所のDavid J Stott氏らが報告した。潜在性甲状腺機能低下症に対するレボチロキシン補充療法については、小規模な無作為化比較試験しかなく、治療のリスクや有効性に関するエビデンスは限られていた。NEJM誌オンライン版2017年4月3日号掲載の報告。潜在性甲状腺機能低下症の高齢患者約700例で、プラセボ vs.レボチロキシン 研究グループは、65歳以上で潜在性甲状腺機能低下(TSH:甲状腺刺激ホルモン[サイロトロピン]値4.60~19.99mIU/L、遊離サイロキシン値は正常範囲内)が持続している患者737例を、レボチロキシン群368例(50μg/日[または体重50kg未満か冠動脈疾患既往歴がある場合は25μg/日から開始]、TSH値によって投与量を調整)、またはプラセボ群(369例)に、二重盲検法により無作為に割り付けた。 主要評価項目は、甲状腺機能低下症の症状スコアならびに甲状腺関連QOLに関する質問票の疲労度スコアの変化であった(両スコアとも範囲0~100、スコアが高いほど症状または疲労感が強い、臨床的に意義のある有意な差は最低9点)。潜在性甲状腺機能低下症群とプラセボ群で、症状、疲労度の改善に有意差なし 潜在性甲状腺機能低下症の被験者は、平均年齢74.4歳、53.7%(396例)が女性であった。 平均(±SD)TSH値は、ベースライン6.40±2.01mIU/Lから、1年後にはプラセボ群で5.48mIU/Lに、レボチロキシン群(平均投与量50μg)で3.63mIU/Lに低下した(p<0.001)。1年後における甲状腺機能低下症症状スコアのベースラインからの変化は、プラセボ群0.2±15.3、レボチロキシン群0.2±14.4(群間差:0.0、95%信頼区間[CI]:-2.0~2.1)、同様に疲労度スコアの変化はそれぞれ3.2±17.7および3.8±18.4(群間差:0.4、95%CI:-2.1~2.9)であり、いずれも両群間で有意差は認められなかった。 副次評価項目についても、レボチロキシンの有効性は示されなかった。とくに注目すべき有害事象としてあらかじめ規定された重篤な有害事象(心房細動、心不全、骨折、新規骨粗鬆症)について、有意な増加は認められなかった。 なお、心血管イベントの発生や死亡率に関するレボチロキシンの影響については、検出力不足であった。

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白斑と甲状腺がんは有意に関連:韓国の住民ベース研究

 白斑は、自己免疫性甲状腺疾患および甲状腺がんと有意に関連していることが、韓国・カトリック大学校のJung Min Bae氏らによる、国民健康保険支払データベースを用いた調査研究の結果、報告された。これまでにも繰り返し白斑と甲状腺疾患の関連については報告があるが、今回研究グループは、全国的な住民ベース研究にて両者の関連について調査を行った。Journal of the American Academy of Dermatology誌オンライン版2017年2月23日号掲載の報告。 調査はデータベースにおいて2009~13年に、主病名診断が白斑で4人以上の医師の受診記録がある患者を白斑患者と定義し、年齢および性別で適合した非白斑患者を対照患者(白斑患者1例に対し対照2例)として、バセドウ病と橋本病の併発(対象患者は至適薬物による治療中)、甲状腺がんについて評価した。 主な結果は以下のとおり。・本研究には、白斑患者7万3,336例、対照患者14万6,672例が登録された。・白斑患者は対照患者と比較して、バセドウ病(オッズ比[OR]:2.610、95%信頼区間[CI]:2.319~2.938)、橋本病(OR:1.609、95%CI:1.437~1.802)、甲状腺がん(OR:1.127、95%CI:1.022~1.242)のいずれの評価項目についてもリスク増加が認められた。・関連性は、男性、若年患者で、一貫してより強かった。・今回の研究では個々の患者の臨床的情報を入手しておらず、また均一性集団という点で、結果の一般化可能性は限定的なものである。

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妊娠中の潜在性甲状腺疾患治療は児のIQを改善するか/NEJM

 妊娠8~20週の妊婦の潜在性甲状腺機能低下症または低サイロキシン血症に、甲状腺ホルモン補充療法を行っても、児の5歳までの認知アウトカムは改善しないことが、米国・テキサス大学サウスウェスタン医療センターのBrian M Casey氏らの検討で示された。妊娠中の潜在性甲状腺疾患は、児のIQが正常値より低いなどの有害なアウトカムに関連する可能性が指摘されている。レボチロキシンは、3歳児の認知機能を改善しないとのエビデンス(CATS試験)があるにもかかわらず、欧米のいくつかのガイドラインではいまだに推奨されているという。NEJM誌2017年3月2日号掲載の報告。約1,200例の妊婦を疾患別の2つの試験で評価 研究グループは、児のIQに及ぼす妊娠中の潜在性甲状腺機能低下症と低サイロキシン血症のスクリーニング、およびサイロキシン補充療法の有効性を評価するために、2つの多施設共同プラセボ対照無作為化試験を実施した(Eunice Kennedy Shriver National Institute of Child Health and Human Developmentなどの助成による)。 妊娠8~20週の単胎妊娠女性において、潜在性甲状腺機能低下症および低サイロキシン血症のスクリーニングを行った。潜在性甲状腺機能低下症は、甲状腺刺激ホルモンが≧4.00mU/L、遊離サイロキシン(T4)が正常値(0.86~1.90ng/dL[11~24pmol/L])と定義し、低サイロキシン血症は、甲状腺刺激ホルモンが正常値(0.08~3.99mU/L)、遊離T4が低値(<0.86ng/dL)と定義した。 試験は2つの疾患別に行い、被験者はレボチロキシンを投与する群またはプラセボ群にランダムに割り付けられた。甲状腺機能は毎月評価し、甲状腺刺激ホルモン(サイロトロピン)または遊離T4の正常値を達成するためにレボチロキシンの用量を調整し、プラセボは偽調整を行った。児には、発達および行動の評価が年1回、5年間行われた。 主要評価項目は、5歳時のIQスコア(検査データがない場合は3歳時)または3歳未満での死亡とした。IQの評価には、幼児版ウェクスラー知能検査(Wechsler Preschool and Primary Scale of Intelligence III[WPPSI-III])を用いた。 2006年10月~2009年10月に、潜在性甲状腺機能低下症677例(レボチロキシン群:339例、プラセボ群:338例)と、低サイロキシン血症526例(265例、261例)が登録された。割り付け時の平均妊娠週数は、それぞれ16.7週、17.8週であった。児のIQ、母子のアウトカムに差はない ベースラインの平均年齢は、潜在性甲状腺機能低下症のレボチロキシン群が27.7±5.7歳、プラセボ群は27.3±5.7歳、低サイロキシン血症はそれぞれ27.8±5.7歳、28.0±5.8歳であった。また、平均妊娠期間は、潜在性甲状腺機能低下症のレボチロキシン群が39.1±2.5週、プラセボ群は38.9±3.1週(p=0.57)、低サイロキシン血症はそれぞれ39.0±2.4週、38.8±3.1週(p=0.46)であった。 児の4%(47例、潜在性甲状腺機能低下症:28例、低サイロキシン血症:19例)で、IQのデータが得られなかった。妊婦および新生児の有害なアウトカムの頻度は低く、2つの試験とも2つの群に差はみられなかった。 潜在性甲状腺機能低下症の試験では、児のIQスコア中央値はレボチロキシン群が97(95%信頼区間[CI]:94~99)、プラセボ群は94(92~96)であり(差:0、95%CI:-3~2、p=0.71)、有意な差は認めなかった。また、低サイロキシン血症の試験では、レボチロキシン群が94(91~95)、プラセボ群は91(89~93)であり(-1、-4~1、p=0.30)、やはり有意差はなかった。 12、24ヵ月時のBayley乳幼児発達検査第3版(Bayley-III)の認知、運動、言語の各項目などを含む副次評価項目は、いずれも2つの試験の2つの群に差はみられなかった。 著者は、「本研究の結果は、英国とイタリアで2万1,846例の妊婦を対象に実施されたCATS試験と一致する」としている。

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妊娠中の甲状腺ホルモン治療、流産・死産への影響は?/BMJ

 潜在性甲状腺機能低下症の妊婦では、甲状腺ホルモン薬の投与により妊娠喪失のリスクが低減するが、早産などのリスクは増加することが、米国・アーカンソー大学のSpyridoula Maraka氏らの検討で示された。研究の成果は、BMJ誌2017年1月25日号に掲載された。潜在性甲状腺機能低下症は妊婦に有害な転帰をもたらすことが、観察研究で示唆されている。甲状腺ホルモン薬のベネフィットを支持するエビデンスは十分でないにもかかわらず、米国の現行ガイドラインではレボチロキシンが推奨されているという。甲状腺ホルモン薬は5年間で約16%に投与 研究グループは、潜在性甲状腺機能低下症の妊婦における甲状腺ホルモン薬(レボチロキシン、リオチロニン、甲状腺抽出物製剤)の有効性と安全性を評価するレトロスペクティブなコホート試験を実施した(Mayo Clinic Robert D. and Patricia E. Kern Center for the Science of Health Care Deliveryの助成による)。 米国の全国的なデータベース(Optum-Labs Data Warehouse)を検索し、2010年1月1日~2014年12月31日に登録された潜在性甲状腺機能低下症(甲状腺刺激ホルモン[TSH]:2.5~10mIU/L)の妊婦のデータを抽出した。 主要評価項目は妊娠喪失(流産、死産)とし、副次評価項目には早産、早期破水、胎盤早期剥離、妊娠糖尿病、妊娠高血圧、妊娠高血圧腎症、胎児の発育不全などが含まれた。 解析の対象となった5,405例の妊婦のうち、843例(15.6%)が甲状腺ホルモン薬の投与を受け、4,562(84.4%)例は受けていなかった。832例(98.7%)がレボチロキシン、7例(0.8%)が甲状腺抽出物製剤、4例(0.5%)はレボチロキシン+リオチロニンを投与されていた。ベネフィットは治療前TSH 4.1~10.0mIU/Lに限定 甲状腺ホルモン薬の投与を受けた妊婦の割合は経時的に増加し(2010年:12%~2014年:19%)、地域差(北東部/西部>中西部/南部、p<0.01)がみられた。TSH検査から投与開始までの期間中央値は11日(IQR:4~15)、出産までの期間中央値は30.3週(IQR:25.4~32.7)だった。 ベースラインの平均年齢は、治療群が31.7(SD 4.7)歳、非治療群は31.3(SD 5.2)歳と差はなかったが、18~24歳が非治療群で多かった(5.8% vs.9.5%)。平均TSHは治療群が4.8(SD 1.7)mIU/Lと、非治療群の3.3(SD 0.9)mIU/Lに比べ高値であった(p<0.01)。また、治療群は妊娠喪失の既往(2.7% vs.1.1%、p<0.01)、甲状腺疾患の既往(6.2% vs.3.4%、p<0.01)のある妊婦が多かった。 解析の結果、妊娠喪失の発生率は治療群が10.6%と、非治療群の13.5%に比べ有意に低かった(補正オッズ比:0.62、95%信頼区間[CI]:0.48~0.82、p<0.01)。 一方、治療群では、早産(7.1% vs.5.2%、補正オッズ比:1.60、95%CI:1.14~2.24、p=0.01)、妊娠糖尿病(12.0% vs.8.8%、1.37、1.05~1.79、p=0.02)、妊娠高血圧腎症(5.5% vs.3.9%、1.61、1.10~2.37、p=0.01)の頻度が非治療群に比し高かった。その他の妊娠関連の有害な転帰の頻度は両群でほぼ同等であった。 さらに、妊娠喪失は、ベースラインのTSHが4.1~10.0mIU/Lの妊婦では、治療群が非治療群よりも有意に抑制された(補正オッズ比:0.45、95%CI:0.30~0.65)のに対し、2.5~4.0mIU/Lの妊婦では治療の有無で差はなく(0.91、0.65~1.23)、これらのサブグループの間に有意な差が認められた(p<0.01)。 逆に、妊娠高血圧は、TSH 4.1~10.0mIU/Lの妊婦では治療群と非治療群に有意な差はなかった(補正オッズ比:0.86、0.51~1.45)が、2.5~4.0mIU/Lの妊婦では治療群のほうが有意に多くみられ(1.76、1.13~2.74)、サブグループ間に有意差を認めた(p=0.04)。 著者は、「甲状腺ホルモン薬による妊娠喪失の抑制効果は、治療前のTSHが4.1~10.0mIU/Lの妊婦に限られ、早産、妊娠糖尿病、妊娠高血圧腎症はむしろ増加した」とまとめ、「甲状腺ホルモン薬の安全性を評価するために、さらなる検討を要する」と指摘している。

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閉経後の骨粗鬆症性骨折、開発中のabaloparatideが有用/JAMA

 骨粗鬆症を有する閉経後女性に対し、abaloparatideはプラセボと比較して新規椎体および非椎体の骨折を低下することが、米国・Colorado Center for Bone ResearchのPaul D. Miller氏らによる第III相二重盲検無作為化試験ACTIVE(Abaloparatide Comparator Trial In Vertebral Endpoints)の結果、示された。abaloparatideは、開発中の副甲状腺ホルモン1型受容体選択的活性薬。18ヵ月間の試験期間中、新規椎体骨折を有意に抑制、非椎体骨折は有意差は示されなかったが減少が認められた。結果を踏まえて著者は、「さらなる検討を行い、リスク差の臨床的意義、abaloparatide治療のリスク・ベネフィット、その他の骨粗鬆薬との有効性の比較などを行う必要がある」とまとめている。JAMA誌2016年8月16日号掲載の報告。対プラセボ、テリパラチドで18ヵ月間の無作為化試験 骨粗鬆症性骨折の予防には付加的治療が必要とされる。研究グループは、abaloparatideの有効性と安全性を確認するため、骨粗鬆症性骨折のリスクがある閉経後女性の新規脊椎骨折予防について、同薬80μg対プラセボの試験を行った。ACTIVE試験は、10ヵ国28地点で2011年3月~2014年10月に行われた。 閉経後女性で、骨密度(BMD)Tスコアが腰椎または大腿骨頚部で-2.5以下-5.0超、放射線学的エビデンスで≧2の軽度または≧1の中等度の腰部または胸部の椎体骨折、または過去5年以内に低度の外傷性非椎体骨折歴を有するものを適格とした。 試験には、閉経後女性(65歳超)で、骨折基準を満たすTスコア-2.0以下-5.0未満、または骨折基準を満たさないTスコア-3.0以下-5.0未満が登録された。 被験者は、abaloparatide 80μg群、テリパラチド20μg群、プラセボ群の3群に無作為に割り付けられ、abaloparatide群とプラセボ群は盲検下で、テリパラチドには非盲検下でそれぞれ1日1回皮下注投与が18ヵ月間行われた。 主要エンドポイントは、abaloparatide vs.プラセボの新規椎体骨折患者の割合であった。サンプルサイズは、両群間で4%の差(57%リスク低下)を検出するようセットされた。副次エンドポイントは、abaloparatide vs.プラセボの総大腿骨、大腿骨頚部、腰椎それぞれのBMDの変化、新規椎体骨折発生までの期間などであった。また、事前規定の安全性エンドポイントとして、abaloparatide vs.テリパラチドの高カルシウム血症を評価した。対プラセボで新規椎体骨折について有意に減少 2,463例(平均年齢69歳[範囲:49~86])が無作為化を受け、abaloparatide群(824例)、プラセボ群(821例)、テリパラチド群(818例)に割り付けられた。試験を完了したのは1,901例(606例、637例、658例)であった。 骨折(新規椎体骨折、非椎体骨折)の発生は、abaloparatide群は4例(0.6%)、18例(2.7%)、プラセボ群30例(4.2%)、33例(4.7%)、テリパラチド群6例(0.8%)、24例(3.3%)であった。 主要アウトカムについてabaloparatide vs.プラセボの新規椎体骨折のリスク差は-3.64(95%信頼区間[CI]:-5.42~-2.10)、リスク比(RR)は0.14(95%CI:0.05~0.39、p<0.001)であった。なお、テリパラチド vs.プラセボでも同様の結果がみられている(リスク差:-3.38[95%CI:-5.18~-1.80]、RR:0.20[95%CI:0.08~0.47、p<0.001])。 また、副次エンドポイントとしてKaplan-Meier法で評価した非椎体骨折の発生について、abaloparatide群のほうがプラセボ群と比べて減少が認められた。リスク差は-2.01(95%CI:-4.02~-0.00)、ハザード比(HR)は0.57(95%CI:0.32~1.00、p=0.49)であった。 BMD変化は、いずれの部位でもプラセボ群よりabaloparatide群で有意に上昇した(すべてp<0.001)。 高カルシウム血症の発生は、abaloparatide群3.4%、テリパラチド群6.4%でリスク差は-2.96(95%CI:-5.12~-0.87、p=0.006)であった。

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テリパラチド連日投与の市販後調査中間解析結果

 近畿大学医学部 奈良病院 整形外科・リウマチ科の宗圓 聰氏らは、骨折リスクが高い日本人骨粗鬆症患者における、テリパラチド連日投与の有効性および安全性を検討する観察研究Japan fracture observational study(JFOS)について、試験デザイン、患者背景および中間解析結果を報告した。その中で、日常診察下におけるテリパラチドの有効性プロファイルは臨床試験ならびに欧州・米国で行われた観察研究の結果と類似していることを提示した。Current Medical Research & Opinion誌オンライン版2015年7月20日号の掲載報告。 研究グループは、骨折の危険が高い骨粗鬆症患者(男性/女性)に1日1回テリパラチドを投与し、3、6および12ヵ月後に評価した。 本中間解析は、臨床骨折、骨密度(BMD)、I型プロコラーゲン-N-プロペプチド(P1NP)、腰背部痛、健康関連QOL(HRQOL)および有害事象についての予備的報告である。 主な結果は以下のとおり。・1,810例(女性90.1%)が登録された。・本研究の対象は、他の観察研究でテリパラチドが投与された骨粗鬆症患者と比較し、年齢は高いが骨粗鬆症のリスク因子は少なかった。・臨床骨折の発生率は、6ヵ月後2.9%、12ヵ月後3.7%であった。・12ヵ月後の平均BMDは、ベースラインと比較して腰椎で8.9%、大腿骨近位部で0.8%増加した。・6ヵ月後の血清P1NP濃度中央値は、ベースラインと比較して187.7%高値であった。・12ヵ月後の疼痛スコア(視覚アナログスケールによる評価)はベースラインより低下し、HRQOLスコアは上昇した。・新しい有害事象は観察されなかった。

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