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喫煙歴+呼吸器症状は呼吸機能悪化のリスク/NEJM

 呼吸機能保持が認められる現在・元喫煙者で、慢性閉塞性肺疾患(COPD)診断基準を満たさなくとも呼吸器症状がある人は、ない人に比べ、呼吸機能が悪化する割合が高く、活動制限や気道疾患の所見がみられるという。米国・カリフォルニア大学サンフランシスコ校のPrescott G. Woodruff氏らが行った、2,736例を対象とした観察試験の結果、示された。COPDの診断は、気管支拡張薬投与後のスパイロメトリーによる検査で1秒量(FEV1)/努力肺活量(FVC)が0.70未満の場合とされている。しかし、この定義を満たさなくとも多くの喫煙者で呼吸器症状が認められており、研究グループはその臨床的意味について検討を行った。NEJM誌2016年5月12日号掲載の報告より。CATスコア10以上を呼吸器症状ありと定義 研究グループは、現在喫煙者および喫煙歴のある人(元喫煙者)と、喫煙歴のない人(非喫煙者;対照群)、合わせて2,736例を対象に観察試験を行った。COPD評価テスト(CAT、スコア0~40で評価)を実施して、スパイロメトリーによる検査で呼吸機能が保持されている人について、呼吸器症状がある人(CATスコアが10以上:有症状群)はない人(CATスコアが10未満;無症状群)と比べ、呼吸増悪のリスクが高いかどうかを検証した。 呼吸機能保持の定義は、気管支拡張薬投与後のFEV1/FVCが0.70以上で、FVCが正常下限値を上回る場合とした。また、有症状群と無症状群の、6分間歩行距離、肺機能、胸部の高分解能CT画像所見の違いの有無を調べた。呼吸機能保持の現在・元喫煙者の半数が呼吸器症状あり 追跡期間の中央値は、829日だった。その結果、呼吸機能が保持されている現在・元喫煙者の50%で、呼吸器症状が認められた。 平均年間呼吸機能悪化率は、有症状の現在・元喫煙者0.27(SD:0.67)、無症状の現在・過去喫煙者は0.08(同:0.31)であり、対照群の非喫煙者の0.03(同:0.21)と比べ、いずれも有意に高率だった(両比較においてp<0.001)。 また、有症状の現在・元喫煙者は、喘息既往の有無を問わず、無症状の現在・過去喫煙者に比べ、活動制限が大きく、FEV1、FVCや最大吸気量の値がわずかだが低く、高分解能CTで肺気腫は認めなかったが、気道壁肥厚がより大きかった。 有症状の現在・元喫煙者の42%が気管支拡張薬を、また23%が吸入ステロイド薬を使用していた。著者は「有症状の現在・元喫煙者はCOPD基準を満たしていなくとも、呼吸機能の悪化、活動制限、気道疾患の所見が認められた。また、エビデンスがないままに多様な呼吸器疾患薬物治療をすでに受けていた」とまとめている。

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抗がん剤で劇症1型糖尿病を発症させない

 日本糖尿病学会(理事長:門脇 孝)は、5月18日、本年1月29日に公表した「免疫チェックポイント阻害薬に関連した1型糖尿病ことに劇症1型糖尿病の発症について」に追記として「免疫チェックポイント阻害薬使用患者における1型糖尿病の発症に関するRecommendation」を加えた。 Recommendationでは、劇症1型糖尿病を「発症後直ちに治療を開始しなければ致死的」と警告を発するとともに、疾患の存在を想定した早期発見と適切な対処を呼びかけている。また、血糖値の検査・確認、専門医へのコンサルテーション、糖尿病治療の早期開始、患者への事前説明、ステロイド薬使用の注意などを5項目にわたり推奨している。 免疫チェックポイント阻害薬であるヒト型抗ヒトPD-1モノクローナル抗体ニボルマブ(オプジーボ)を使用した推定4,888人中12人(0.25%)に、1型糖尿病(劇症、急性発症ともに)が発症したことが報告された(使用期間:2014年7月4日~2016年3月31日)。 そこで同学会では、免疫チェックポイント阻害薬投与患者における1型糖尿病発症に対応するため、Recommendationを発表したものである。Recommendation1) 投与開始前および投与開始後、来院日ごとに、高血糖症状の有無を確認し、血糖値を測定する。2) 測定値は当日主治医が確認し、高血糖症状を認めるか、検査に異常値(空腹時126mg/dL以上、あるいは随時200mg/dL以上)を認めた場合は、可及的速やかに糖尿病を専門とする医師(不在の場合は担当内科医)にコンサルトし、糖尿病の確定診断、病型診断を行う。3) 1型糖尿病と診断されるか、あるいはそれが強く疑われれば、当日から糖尿病の治療を開始する。4) 患者には、劇症1型糖尿病を含む1型糖尿病発症の可能性や、注意すべき症状についてあらかじめ十分に説明し、高血糖症状(口渇、多飲、多尿)を自覚したら予定来院日でなくても受診または直ちに治療担当医に連絡するよう指導しておく。5) 該当薬の「適正使用ガイド」に、過度の免疫反応による副作用が疑われる場合に投与を検討する薬剤として記載されている副腎皮質ホルモン剤は、免疫チェックポイント阻害薬による1型糖尿病の改善に効果があるというエビデンスはなく、血糖値を著しく上昇させる危険があるため1型糖尿病重症化予防に対しては現時点では推奨されない。また、他の副作用抑制のためにステロイド剤を投与する場合は、血糖値をさらに著しく上昇させる危険性があるため、最大限の注意を払う。「【追記】免疫チェックポイント阻害薬に関連した1型糖尿病ことに劇症1型糖尿病の発症について 」(日本糖尿病学会)の詳細についてはこちら。(ケアネット)関連ニュースがん治療で気付いてほしい1型糖尿病

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1日1回のICS/LABA、心血管リスクのあるCOPDでの安全性は/Lancet

 心血管リスクを有する中等度の慢性閉塞性肺疾患(COPD)患者において、吸入ステロイド薬/長時間作用性β2刺激薬配合剤のフルチカゾンフランカルボン酸エステル(FF)/ビランテロール(VI)(商品名:レルベア)1日1回吸入は、プラセボと比較し統計学的な有意差はなかったものの死亡や心血管系イベントの発現リスクを低下させ、忍容性は良好であった。英国・南マンチェスター大学病院のJorgen Vestbo氏らが、43ヵ国1,368施設で実施した無作為化二重盲検プラセボ対照試験(Study to Understand Mortality and Morbidity:SUMMIT)の結果、報告した。COPD患者は心血管疾患(CVD)を併発することが多いが、こうした患者に対する治療方針の決定に関して、これまで十分なエビデンスがなかった。Lancet誌2016年4月30日号掲載の報告。心血管リスクを有する中等度COPD患者約1万6,500例で検証 SUMMIT試験の対象は、40~80歳、気管支拡張薬投与後の予測FEV150~70%、1秒率70%未満(FEV1/FVC<0.7)、喫煙歴(10pack/year以上)、修正MRC(mMRC)息切れスケールスコア2以上の、CVDの既往歴またはリスクを有するCOPD患者であった。FF 100㎍+VI 25㎍(FF/VI)群、FF 100㎍(FF)群、VI 25㎍(VI)群、プラセボ群の4群に1対1対1対1の割合で無作為に割り付け、すべての治療群でエリプタ吸入器を用い1日1回吸入した。 主要評価項目は、全死因死亡、副次的評価項目は治療期間中のFEV1低下率および心血管複合エンドポイント(心血管死、心筋梗塞、脳卒中、不安定狭心症、一過性脳虚血発作)であった。 2011年1月24日~2014年3月12日に1万6,590例が無作為化され、このうち試験薬を1回以上使用した1万6,568例が安全性解析対象集団に、またGCP違反の施設を除いた1万6,485例(FF/VI群4,121例、FF群4,135例、VI群4,118例、プラセボ群4,111例)が有効性解析対象集団となった。追跡期間は最長4年、投与期間は中央値1.8年であった。全死因死亡リスクはFF/VI群で12%低下するも、統計学的有意差はなし 試験期間中の全死亡リスクは、プラセボ群と比較しいずれの治療群も差はなかった。FF/VI群のHRは0.88(95%信頼区間[CI]:0.74~1.04)で相対リスク減少率は12%(p=0.137)、FF群のHRは0.91(同:0.77~1.08、p=0.284)、VI群のHRは0.96(同:0.81~1.14、p=0.655)であった。 FEV1低下率は、プラセボ群と比較しFF/VI群およびFF群で減少した(プラセボ群との差;FI/VI群:8mL/年[95%CI:1~15]、FF群:8mL/年[95%CI:1~14]、VI群:-2mL/年[95%CI:-8~5])。 心血管複合エンドポイントの発現リスクは、プラセボ群とほぼ同等であった(FF/VI群:HR 0.93[95%CI:0.75~1.14]、FF群:HR 0.90[95%CI:0.72~1.11]、VI群:0.99[95%CI:0.80~1.22])。 中等度~重度増悪の発現率は、すべての治療群でプラセボ群より減少した。 有害事象については、肺炎や心血管系有害事象の増加は認められなかった(肺炎の発現率:FF/VI群6%、FF群5%、VI群4%、プラセボ群5%/心血管系有害事象の発現率:FF/VI群18%、FF群17%、VI群17%、プラセボ群17%)。

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2度目の改訂版を発表-SGLT2阻害薬の適正使用に関する Recommendation

 日本糖尿病学会「SGLT2阻害薬の適正使用に関する委員会」は、5月12日に「SGLT2阻害薬の適正使用に関するRecommendation」の改訂版を公表した。SGLT2阻害薬は、新しい作用機序を有する2型糖尿病薬で、現在は6成分7製剤が臨床使用されている。 Recommendationでは、75歳以上の高齢者への投与を慎重投与とするほか、65歳以上でも老年症候群の患者には同様としている、また、利尿薬との併用については、「推奨されない」から「脱水に注意する」に変更された。そのほか、全身倦怠・悪心嘔吐・体重減少などを伴う場合には、血糖値が正常に近くともケトアシドーシスの可能性を考慮し、血中ケトン体の確認を推奨している。 今回の改訂は、1年9ヵ月ぶりの改訂となるが、その間に報告された副作用情報や高齢者(65歳以上)に投与する場合の全例特定使用成績調査による、高齢者糖尿病における副作用や有害事象の発生率や注意点について、一定のデータが得られたことから、改訂されたものである。 本委員会では、「これらの情報をさらに広く共有することにより、副作用や有害事象が可能な限り防止され、適正使用が推進されるよう、Recommendationをアップデートする」と表明している。Recommendation1)インスリンやSU薬などインスリン分泌促進薬と併用する場合には、低血糖に十分留意して、それらの用量を減じる(方法については下記参照)。患者にも低血糖に関する教育を十分行うこと。2)75歳以上の高齢者あるいは65~74歳で老年症候群(サルコペニア、認知機能低下、ADL低下など)のある場合には慎重に投与する。3)脱水防止について患者への説明も含めて十分に対策を講じること。利尿薬の併用の場合にはとくに脱水に注意する。4)発熱・下痢・嘔吐などがあるときないしは食思不振で食事が十分摂れないような場合(シックデイ)には必ず休薬する。5)全身倦怠・悪心嘔吐・体重減少などを伴う場合には、血糖値が正常に近くてもケトアシドーシスの可能性があるので、血中ケトン体を確認すること。6)本剤投与後、薬疹を疑わせる紅斑などの皮膚症状が認められた場合には速やかに投与を中止し、皮膚科にコンサルテーションすること。また、必ず副作用報告を行うこと。7)尿路感染・性器感染については、適宜問診・検査を行って、発見に努めること。問診では質問紙の活用も推奨される。発見時には、泌尿器科、婦人科にコンサルテーションすること。副作用の事例と対策(抜粋)重症低血糖 重症低血糖の発生では、インスリン併用例が多く、SU薬などのインスリン分泌促進薬との併用が次いでいる。DPP-4阻害薬の重症低血糖の場合にSU薬との併用が多かったことに比し、本剤ではインスリンとの併用例が多いという特徴がある。SGLT2阻害薬による糖毒性改善などによりインスリンの効きが急に良くなり低血糖が起こっている可能性がある。このように、インスリン、SU薬または速効型インスリン分泌促進薬を投与中の患者へのSGLT2阻害薬の追加は、重症低血糖を起こす恐れがあり、あらかじめインスリン、SU薬または速効型インスリン分泌促進薬の減量を検討することが必要である。また、これらの低血糖は、比較的若年者にも生じていることに注意すべきである。 インスリン製剤と併用する場合には、低血糖に万全の注意を払い、インスリンをあらかじめ相当量減量して行うべきである。また、SU薬にSGLT2阻害薬を併用する場合には、DPP-4阻害薬の場合に準じて、以下のとおりSU薬の減量を検討することが必要である。 ・グリメピリド2mg/日を超えて使用している患者は2mg/日以下に減じる ・グリベンクラミド1.25mg/日を超えて使用している患者は1.25mg/日以下に減じる ・グリクラジド40mg/日を超えて使用している患者は40mg/日以下に減じるケトアシドーシス インスリンの中止、極端な糖質制限、清涼飲料水多飲などが原因となっている。血糖値が正常に近くてもケトアシドーシスの可能性がある。とくに、全身倦怠・悪心嘔吐・体重減少などを伴う場合には血中ケトン体を確認する。SGLT2阻害薬の投与に際し、インスリン分泌能が低下している症例への投与では、ケトアシドーシスの発現に厳重な注意が必要である。同時に、栄養不良状態、飢餓状態の患者や極端な糖質制限を行っている患者に対するSGLT2阻害薬投与開始やSGLT2阻害薬投与時の口渇に伴う清涼飲料水多飲は、ケトアシドーシスを発症させうることにいっそうの注意が必要である。脱水・脳梗塞など 循環動態の変化に基づく副作用として、引き続き重症の脱水と脳梗塞の発生が報告されている。脳梗塞発症者の年齢は50~80代である。脳梗塞はSGLT2阻害薬投与後数週間以内に起こることが大部分で、調査された例ではヘマトクリットの著明な上昇を認める場合があり、SGLT2阻害薬による脱水との関連が疑われる。また、SGLT2阻害薬投与後に心筋梗塞・狭心症も報告されている。SGLT2阻害薬投与により通常体液量が減少するので、適度な水分補給を行うよう指導すること、脱水が脳梗塞など血栓・塞栓症の発現に至りうることに改めて注意を喚起する。75歳以上の高齢者あるいは65~74歳で老年症候群(サルコペニア、認知機能低下、ADL低下など)のある場合や利尿薬併用患者などの体液量減少を起こしやすい患者に対するSGLT2阻害薬投与は、注意して慎重に行う、とくに投与の初期には体液量減少に対する十分な観察と適切な水分補給を必ず行い、投与中はその注意を継続する。脱水と関連して、高血糖高浸透圧性非ケトン性症候群も報告されている。また、脱水や脳梗塞は高齢者以外でも認められているので、非高齢者であっても十分な注意が必要である。脱水に対する注意は、SGLT2阻害薬投与開始時のみならず、発熱・下痢・嘔吐などがあるときないしは食思不振で食事が十分摂れないような場合(シックデイ)には万全の注意が必要であり、SGLT2阻害薬は必ず休薬する。この点を患者にもあらかじめよく教育する。また、脱水がビグアナイド薬による乳酸アシドーシスの重大な危険因子であることに鑑み、ビグアナイド薬使用患者にSGLT2阻害薬を併用する場合には、脱水と乳酸アシドーシスに対する十分な注意を払う必要がある(「メトホルミンの適正使用に関するRecommendation」)。皮膚症状 皮膚症状は掻痒症、薬疹、発疹、皮疹、紅斑などが副作用として多数例報告されているが、非重篤のものが大半を占める。すべての種類のSGLT2阻害薬で皮膚症状の報告がある。皮膚症状が全身に及んでいるなど症状の重症度やステロイド治療がなされたことなどから重篤と判定されたものも報告されている。皮膚症状はSGLT2阻害薬投与後1日目からおよそ2週間以内に発症している。SGLT2阻害薬投与に際しては、投与日を含め投与後早期より十分な注意が必要である。あるSGLT2阻害薬で皮疹を生じた症例で、別のSGLT2阻害薬に変更しても皮疹が生じる可能性があるため、SGLT2阻害薬以外の薬剤への変更を考慮する。いずれにせよ皮疹を認めた場合には、速やかに皮膚科医にコンサルトすることが重要である。とくに粘膜(眼結膜、口唇、外陰部)に皮疹(発赤、びらん)を認めた場合には、スティーブンス・ジョンソン症候群などの重症薬疹の可能性があり、可及的速やかに皮膚科医にコンサルトするべきである。尿路・性器感染症 治験時よりSGLT2阻害薬使用との関連が認められている。これまで、多数例の尿路感染症、性器感染症が報告されている。尿路感染症は腎盂腎炎、膀胱炎など、性器感染症は外陰部膣カンジダ症などである。全体として、女性に多いが男性でも報告されている。投与開始から2、3日および1週間以内に起こる例もあれば2ヵ月程度経って起こる例もある。腎盂腎炎など重篤な尿路感染症も引き続き報告されている。尿路感染・性器感染については、質問紙の活用を含め適宜問診・検査を行って、発見に努めること、発見時には、泌尿器科、婦人科にコンサルテーションすることが重要である。 本委員会では、SGLT2阻害薬の使用にあたっては、「特定使用成績調査の結果、75歳以上では安全性への一定の留意が必要と思われる結果であった。本薬剤は適応やエビデンスを十分に考慮したうえで、添付文書に示されている安全性情報に十分な注意を払い、また本Recommendationを十分に踏まえて、適正使用されるべきである」と注意を喚起している。「SGLT2阻害薬の適正使用に関する委員会」からのお知らせはこちら。

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ダニ舌下免疫療法、アレルギー性喘息に有用/JAMA

 吸入ステロイド(ICS)でコントロール不良のハウスダストダニ(house dust mite: HDM)アレルギー性喘息に対し、HDMアレルゲン舌下免疫療法(SLIT)が有効かつ安全であることが確認された。HDM舌下錠は、ICS減量期の中等度~重度の喘息増悪を9~10%減少させる。ドイツ・ロストック大学のJ. Christian Virchow氏らが、HDM舌下錠の国際多施設共同無作為化二重盲検プラセボ対照第III相試験の結果を報告した。HDM舌下錠はHDMアレルギー性鼻炎に対する治療薬として発売されているが、HDMアレルギー性喘息患者において喘息増悪リスクを減少させるかどうかはわかっていなかった。今回の結果を踏まえて著者は、「HDM舌下錠はHDMアレルギー性喘息の新たな治療オプションとなりうる」とまとめている。JAMA誌オンライン版2016年4月26日号掲載の報告。 ダニアレルギー性喘息患者約800例で無作為化二重盲検プラセボ対照試験を実施 研究グループは、2011年8月~2013年4月に、欧州13ヵ国109施設において無作為化二重盲検プラセボ対照試験を実施した。対象は、HDMアレルギー性鼻炎の1年以上の病歴があり、FEV1予測値70%以上、過去3ヵ月以内に喘息増悪による入院歴がない、ICS(配合剤を含む)でコントロール不良のHDMアレルギー性喘息患者834例。プラセボ群、6SQ-HDM錠投与(6SQ)群、12SQ-HDM錠投与(12SQ)群に1対1対1の割合で無作為に割り付け、ICSならびに短時間作用型β2刺激薬サルブタモールと併用投与した(SQ[standardized quality]とは、HDM舌下錠製品の力価を表すために欧州内で用いられている単位)。 試験は、7~12ヵ月間の介入期と6ヵ月間のICS減量期から成り、ICS減量期では最初の3ヵ月でICSを50%減少、その後3ヵ月間でICSからの離脱を図った。 有効性の評価はICS減量期に行い、主要評価項目は同期間中における初回中等度~重度喘息増悪発生までの期間とした。HDM舌下錠投与により喘息増悪リスクが有意に減少 無作為化された834例は、平均年齢33歳(範囲17~83歳)、女性48%であった。 プラセボ群(277例)と比較し6SQ群(275例)および12SQ群(282例)で、中等度~重度の喘息増悪のリスクが有意に減少することが認められた。6SQ群のハザード比(HR)は0.72(95%信頼区間[CI]:0.52~0.99、p=0.045)、12SQ群のHRは0.69(同:0.50~0.96、p=0.03)であった。 介入期に脱落した症例を除いた解析の結果、喘息増悪の絶対リスク差(プラセボ群-HDM群)は、6SQ群0.09(95%CI:0.01~0.15)、12SQ群0.10(95%CI:0.02~0.16)で、6SQ群と12SQ群とで有意差はなかった。 副次的評価項目について、喘息症状の悪化を伴う喘息増悪までの期間は、プラセボ群と比較してHDM群で改善し(6SQ群;HR:0.72、95%CI:0.49~1.02、p=0.11/12SQ群:HR:0.64、95%CI:0.42~0.96、p=0.03)、アレルゲン特異的IgG4は有意に増加した。6SQ群と12SQ群とで、喘息コントロール質問票(asthma control questionnaire:ACQ)または喘息QOL質問票スコアの変化に差はなかった。 主な有害事象は、軽度~中等度の口腔そう痒感(6SQ群13%、12SQ群20%、プラセボ群3%)、口腔浮腫、咽頭刺激感で、重篤な全身性アレルギー反応の報告はなかった。

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喘息に対するdupilumab、第IIb相試験でも有効性確認/Lancet

 dupilumabは、コントロール不良の持続型喘息患者において、吸入ステロイド(ICS)+長時間作用性β2刺激薬(LABA)への併用投与により、血中好酸球数にかかわらず肺機能を改善し、重度の喘息増悪の発現を減少することが認められた。安全性プロファイルは良好で、QOLの改善も示唆された。米国・ピッツバーグ大学のSally Wenzel氏らが、dupilumabの4用量を検討した第IIb相試験の結果、報告した。dupilumabは、インターロイキン(IL)-4受容体αサブユニットに対する完全ヒトモノクローナル抗体で、2型ヘルパーT細胞による免疫反応の鍵となるIL-4およびIL-13のシグナル伝達を阻害する。第I相ならびに第IIa相試験において、喘息患者におけるdupilumabの有効性と安全性が示されたが、対象が好酸球数高値の患者に限られ、検討された用法も週1回投与のみであった。Lancet誌オンライン版2016年4月26日号掲載の報告。中~重度の持続型喘息患者を対象に無作為化比較試験を実施 研究グループは、16ヵ国174施設において、中等症~重症の持続型喘息患者に対するdupilumabの有効性および安全性を評価する無作為化二重盲検プラセボ対照用量検討試験(第IIb相試験)を実施した。 対象は、Global Initiative for Asthma(GINA)2009ガイドラインに基づき喘息と診断され12ヵ月以上経過し、中~高用量のICS+LABA併用療法でコントロール不良の成人患者(18歳以上)であった。dupilumab 300mgを2週ごと投与群、200mgを2週ごと投与群、300mgを4週ごと投与群、200mgを4週ごと投与群またはプラセボ投与群に1対1対1対1対1の割合で無作為に割り付け、24週間皮下投与した。ICSおよびLABAは用量を変更することなく継続した。 主要エンドポイントは、ベースラインの血中好酸球数≧300/μLの患者(好酸球数高値集団)における、投与12週時のベースラインからの1秒量(FEV1)の変化量とした。2週ごと200mgおよび300mg投与群でFEV1の増加あり 2013年6月~14年6月までに776例が割り付けられ、うち769例が1回以上試験薬の投与を受けた(dupilumab群611例、プラセボ群158例)。 好酸球数高値集団において、主要評価項目である12週時のFEV1の変化量は、プラセボ群[変化量(最小二乗平均値)0.18L、SE 0.05]との比較において、2週ごと300mg投与群[同:0.39L(SE 0.05)、プラセボ群との差:0.21(95%信頼区間[CI]:0.06~0.36、p=0.0063)]、ならびに2週ごと200mg投与群[同:0.43L(SE 0.05)、プラセボ群との差:0.26(95%CI:0.11~0.40、p=0.0008)]で、有意に大きかった。 全体集団および好酸球数正常集団(血中好酸球数<300/μL)においても同様の結果が認められた(全体:2週ごと300mg投与群のp<0.0001、2週ごと200mg投与群のp<0.0001/好酸球数正常集団:2週ごと300mg投与群のp=0.0086、2週ごと200mg投与群のp=0.0034)。また、同変化は24週まで持続して認められた。 喘息増悪の年間発現率は、dupilumabの2週ごと投与群で最も減少した(減少率:全体集団:70~70.5%、好酸球数高値集団:71.2~80.7%、好酸球数正常集団59.9~67.6%)。プラセボ群と比較しdupilumab群で発現率が高かった有害事象は、上気道感染(35% vs.33~41%)、注射部位反応(13% vs.13~26%)であった。 現在、さらなる有効性と安全性を評価する第III相試験が進行中である。

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赤芽球癆〔PRCA : pure red cell aplasia〕

1 疾患概要■ 概念・定義正球性正色素性貧血と網赤血球の著減および骨髄赤芽球の著減を特徴とする造血器疾患である。再生不良性貧血が多系統の血球減少(ヘモグロビン濃度低下、好中球減少、血小板減少)を呈するのに対して、赤芽球癆では選択的に赤血球系のみが減少し、貧血を呈する。病因は多様であるが、赤血球系前駆細胞の分化・増殖障害によって発症する。病型・病因によって治療が異なるので、赤芽球癆の診断のみならず、病因診断がきわめて重要である。■ 疫学急性型赤芽球癆の発生頻度はわかっていない。慢性型赤芽球癆はまれな疾患で、発症頻度は再生不良性貧血の約10分の1である。厚生労働省特発性造血障害に関する調査研究班の患者登録集計から、年間発生率は人口100万人に対し0.3人と推定されている。日本血液学会2011年次血液疾患症例登録によれば、全国における1年間の新規発生例は100例に満たない。特発性造血障害調査研究班が2004年度と2006年度に行った全国調査により集積された特発性72例、胸腺腫関連41例、大顆粒リンパ球性白血病関連14例の計127例における解析によれば、年齢中央値は62歳(18~89歳)、男女比は51:76で女性にやや多かった。■ 病因造血障害の発生部位は、赤血球へと分化が運命づけられた赤血球系前駆細胞のレベルであると考えられている。赤血球系前駆細胞に障害が発生するメカニズムとして、ウイルスや薬剤、遺伝子変異、造血前駆細胞に対する自己傷害性リンパ球や抗体などによるものがある。さらに、内因性エリスロポエチンに対する自己抗体による赤血球系造血不全も報告されている。腎性貧血に対するヒトエリスロポエチン製剤投与の後に抗エリスロポエチン抗体が産生されて、赤芽球癆が発生することがある。赤芽球癆の発生メカニズムは多様であるが、赤芽球の減少に基づく網赤血球の減少と貧血が共通にみられる。■ 症状自覚症状は貧血による全身倦怠感、動悸、めまいなどである。通常白血球数や血小板数は正常であるが、続発性の場合には基礎疾患によって異常を呈することがある。続発性では、その基礎疾患に応じた症状と身体所見が認められる。■ 分類赤芽球癆は大きく先天性と後天性に分類される。先天性赤芽球癆としてDiamond-Blackfan貧血が有名である。後天性赤芽球癆には基礎疾患を特定できない特発性と、胸腺腫、リンパ系腫瘍、骨髄性疾患、感染症、自己免疫疾患、薬剤投与などに伴う続発性がある。発症様式により急性と慢性に分類される。前述の特発性造血障害に関する調査研究班の調査によれば、わが国の後天性慢性赤芽球癆の原因として最も多いのは特発性であり、次いで胸腺腫関連、大顆粒リンパ球性白血病を始めとするリンパ系腫瘍である。■ 予後急性赤芽球癆は急性感染症の治癒に伴い、あるいは薬剤性の場合には被疑薬の中止により貧血は自然に軽快する。ただし、外因性エリスロポエチンの投与に伴う抗エリスロポエチン抗体による赤芽球癆は自然治癒しないことが多い。特発性慢性赤芽球癆は、免疫抑制薬により貧血の改善が得られるが、治療の中止は貧血の再燃と強く関連することが知られている。また、胸腺腫関連および大顆粒リンパ球性白血病関連赤芽球癆においても、免疫抑制薬が有効であるが、治療の中止が可能であるとするエビデンスはない。免疫抑制薬によって寛解が得られた慢性赤芽球癆においては、免疫抑制薬による維持療法が必要な場合が多い。予測される10年生存率は、特発性赤芽球癆で95%、大顆粒リンパ球性白血病関連赤芽球癆で86%であり、胸腺腫関連赤芽球癆の予測生存期間中央値は約12年である。2 診断 (検査・鑑別診断も含む)厚生労働省特発性造血障害に関する調査研究班により、赤芽球癆の診断基準が作成されている(図)。画像を拡大する診断基準の構成は、末梢血液学的検査および骨髄の形態学的検査所見に基づく赤芽球癆の診断基準と、病因・病型診断のための検査手順から成る。赤芽球癆は網赤血球数の著減が特徴的であり、通常1%未満である。2%を超える場合には、ほかの疾患を考慮すべきである。次いで、貧血の発症に先行する感染症の有無と薬剤服用歴の情報を収集する。後天性慢性赤芽球癆の多くは中高年に発症するが、妊娠可能年齢の女性が赤芽球癆と診断された場合、妊娠の有無を確認する。3 治療 (治験中・研究中のものも含む)初期治療の方針は、被疑薬の中止と、約1ヵ月間の経過観察である。薬剤や急性感染症による赤芽球癆は、通常3週間以内に改善する。ヒトパルボウイルスB19感染による赤芽球癆は、通常self-limitedであるが、HIV感染症のある患者では持続感染となりうるので、慢性型赤芽球癆であってもヒトパルボウイルスB19感染の有無はチェックするべきである。貧血が高度で日常生活に支障がある場合には赤血球輸血を行う。この経過観察期間中に病因診断のための検査を行い、基礎疾患があれば治療を行う。基礎疾患の治療を行っても貧血が軽快しない場合には、免疫抑制療法を考慮する。特発性赤芽球癆、胸腺腫関連赤芽球癆、大顆粒リンパ球性白血病関連赤芽球癆に対してシクロスポリン(商品名:サンディミュンほか)、副腎皮質ステロイド、シクロホスファミド(同:エンドキサン)などの薬剤が選択される。いずれの薬剤が最も優れているかについて検証した前向き試験は、海外を含めてこれまで行われていない。特発性造血障害調査研究班による調査研究によれば、特発性赤芽球癆に対する初回寛解導入療法の奏効率は、シクロスポリン74%、副腎皮質ステロイド60%、シクロスポリンと副腎皮質ステロイドの併用100%であり、胸腺腫関連赤芽球癆に対するシクロスポリンの奏効率は95%であった。大顆粒リンパ球性白血病関連赤芽球癆に対する初回寛解導入療法奏効率は、シクロホスファミド75%、シクロスポリン25%、副腎皮質ステロイド0%であった。したがって、後方視的疫学研究の結果ではあるが、特発性赤芽球癆および胸腺腫関連赤芽球癆に対する第1選択薬は、現時点においてはとくに禁忌がない限り、シクロスポリンであると考えられる。4 今後の展望後天性慢性赤芽球癆の主な死因は、感染症と臓器不全である。免疫抑制療法中の感染症の予防と治療、そして赤血球輸血依存性症例における輸血後鉄過剰症に対する鉄キレート療法は、予後を改善することが期待される。なお、平成27年7月1日から後天性慢性赤芽球癆は指定難病に認定され、所定の診断基準および重症度を満たすものについては医療費助成の対象となった。5 主たる診療科(紹介すべき診療科)血液内科※ 医療機関によって診療科目の区分は異なることがあります。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)診療、研究に関する情報厚生労働科学研究費補助金(難治性疾患克服研究事業)特発性造血障害に関する調査研究班(医療従事者向けのまとまった情報)難病情報センター(後天性赤芽球癆)(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)患者会情報特定非営利活動法人血液情報広場つばさ(患者とその家族向けの情報)1)澤田賢一、廣川 誠ほか. 赤芽球癆.In:小澤敬也編.特発性造血障害疾患の診療の参照ガイド 平成22年度改訂版.2011;38-52.2)廣川 誠、澤田賢一. 日本内科学会雑誌.2012;101:1937-1944.3)廣川 誠. 内科.2013;112:285-289.4)廣川 誠. 臨床血液(教育講演特集号).2013;54:1585-1595.4)廣川 誠. 臨床血液.2015;56:1922-1931.公開履歴初回2014年02月13日更新2016年05月10日

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封入体筋炎〔sIBM : Sporadic Inclusion Body Myositis〕

1 疾患概要■ 概念・定義封入体筋炎は中高年に発症する、特発性の筋疾患である。左右非対称の筋力低下と筋萎縮が大腿四頭筋や手指・手首屈筋にみられる。骨格筋には、縁取り空胞と呼ばれる特徴的な組織変化を生じ、炎症細胞浸潤を伴う。免疫学的治療に反応せず、かえって増悪することもある。嚥下障害や転倒・骨折に注意が必要である。■ 疫学厚生労働省難治性疾患克服研究事業「封入体筋炎(IBM)の臨床病理学的調査および診断基準の精度向上に関する研究」班(研究代表者:青木正志、平成22-23年度)および「希少難治性筋疾患に関する調査研究」班(研究代表者:青木正志、平成24-27年度)による調査では、日本には1,000~1,500人の封入体筋炎患者がいると考えられる。研究協力施設の146例の検討により男女比は1.4:1で男性にやや多く、初発年齢は64.4±8.6歳、初発症状は74%が大腿四頭筋の脱力による階段登りなどの障害であった。嚥下障害は23%にみられ、生命予後を左右する要因の1つである。顕著な左右差は、27%の症例でみられた。認知機能低下が明らかな症例はなかった。深部腱反射は正常または軽度低下する。約15%の封入体筋炎患者には全身性エリテマトーデス、シェーグレン症候群、強皮症、サルコイドーシスなどの自己免疫性の異常が存在するが、多発筋炎や皮膚筋炎と異なり、肺病変、悪性腫瘍の発生頻度上昇などは指摘されていない。血清のクレアチンキナーゼ(CK)値は正常か軽度の上昇にとどまり、通常は正常上限の10倍程度までとされる。研究班の調査ではCK値の平均は511.2±368.1 IU/Lで2,000 IU/Lを超える症例はまれであった。約20%の封入体筋炎患者は、抗核抗体が陽性とされるが、いわゆる筋炎特異的抗体は陰性である。■ 病因封入体筋炎の病態機序は不明である。筋病理学的に観察される縁取り空胞が蛋白分解経路の異常など変性の関与を、また細胞浸潤が炎症の関与を想起させるものの、変性と炎症のどちらが一次的でどちらが副次的なのかも明らかになってはいない。変性の機序の証拠としては、免疫染色でAβ蛋白、Aβ前駆蛋白(β-APP)、リン酸化タウ、プリオン蛋白、アポリポプロテイン E、α1-アンチキモトリプシン、ユビキチンやニューロフィラメントが縁取り空胞内に沈着していることが挙げられる。β-APPを筋特異的に過剰発現させたモデルマウスでは筋変性や封入体の形成がみられることも、この仮説を支持している。しかしながら、多発筋炎や皮膚筋炎の患者生検筋でもβ-APPが沈着していることから疾患特異性は高くない。筋線維の恒常性の維持は、蛋白合成と分解の微妙なバランスの上に成り立っていると想像される。封入体筋炎の病態として、Aβ仮説のようにある特定の蛋白が発現増強し、分解能力を超える可能性も考えられるが、一方で蛋白分解系が破綻し、異常蛋白が蓄積するという機序も考えられる。蛋白分解経路に重要なユビキチンE3リガーゼの1つであるRING Finger Protein 5(RNF5)の過剰発現マウスでは、筋萎縮と筋線維内の封入体形成が観察されている。骨格筋特異的にオートファジーを欠損させたマウスでは、ユビキチンE3リガーゼの発現上昇や筋変性・萎縮がみられることも報告されている。封入体筋炎の骨格筋に、家族性筋萎縮性側索硬化症(ALS)の原因遺伝子産物であるTDP-43およびFUS/TLSが蓄積することも観察されている。TDP-43陽性線維は、封入体筋炎患者の生検筋線維の25~32.5%と高頻度に検出され、その頻度は封入体筋炎の病理学的指標とされてきた縁取り空胞やAβ陽性線維よりも高頻度である。家族性ALS関連蛋白の蓄積は、縁取り空胞を伴う筋疾患に共通する病理学的変化であり、封入体筋炎に対する疾患特異性は低いと考えられてきている。ユビキチン結合蛋白であるp62は、TDP-43以上の頻度で封入体筋炎の筋線維に染色性が認められる。近年、骨パジェット病と前頭側頭型認知症を伴う封入体性ミオパチーの家族例において、蛋白分解系の重要な分子であるVCPの遺伝子異常が見出されたが、このVCPも蛋白分解経路の重要な因子である。蛋白分解経路の異常は、封入体筋炎の病態の重要な機序と考えられる。封入体筋炎の病態として、炎症の関与も以前より検討されてきた。炎症細胞に包囲されている筋線維の割合は、縁取り空胞やアミロイド沈着を呈する筋線維よりも頻度が高いことから、炎症の寄与も少なくないと考えられる。ムンプスウイルスの持続感染は否定されたが、HIVやHTLV-1感染者やポリオ後遺症の患者で封入体筋炎に類似した病理所見がみられる。マイクロアレイやマイクロダイセクションを用いた検討では、CD138陽性の形質細胞のクローナルな増殖が、封入体筋炎患者の筋に観察され、形質細胞の関与も示されている。炎症細胞のクローナルな増殖は、細胞障害性T細胞が介する自己免疫性疾患である可能性を示唆している。ただ、封入体筋炎は、臨床場面で免疫抑制薬の反応に乏しいことから、炎症が病態の根本であるとは考えにくい。また、多発筋炎でも観察される現象であることから、疾患特異的な現象とも言いがたい。封入体筋炎は、親子や兄妹で発症したという報告も散見され、HLAなど遺伝的背景が推定されているが、元来は孤発性の疾患である。■ 症状封入体筋炎は慢性進行性で、主に50歳以上に発症する筋疾患であり、初発症状から5年以上診断がつかない例も多い。多発筋炎・皮膚筋炎が女性に多いのと対照的に、封入体筋炎は男性にやや多い。非対称性の筋脱力と筋萎縮が大腿四頭筋や手指・手首屈筋にみられる。肩の外転筋よりも手指・手首屈筋が弱く、膝伸展や足首背屈が股関節屈曲よりも弱いことが多い。■ 分類診断基準を参照されたい。■ 予後多くの症例では四肢・体幹筋の筋力低下や嚥下障害の進行により、5~10年で車いす生活となる。2 診断 (検査・鑑別診断も含む)1975年にBohanとPeterは炎症性筋疾患の診断基準を提唱したが、当時は封入体筋炎という概念が十分に確立されていなかった。1995年にGriggsにより封入体筋炎の診断基準が提唱され、2007年のNeedhamらの診断基準とともに国際的に広く用いられている。前述の難治性疾患克服研究事業の研究班では、全国の後ろ向き調査を基に、国内外の文献を検討し、診断基準を見直した(表)。本診断基準は、日本神経学会および日本小児神経学会から承認も受けている。表 封入体筋炎(Inclusion Body Myositis:IBM)診断基準(2013)(厚労省難治性疾患克服研究事業:希少難治性筋疾患に関する調査研究班)診断に有用な特徴A.臨床的特徴a.他の部位に比して大腿四頭筋または手指屈筋(とくに深指屈筋)が侵される進行性の筋力低下および筋萎縮b.筋力低下は数ヵ月以上の経過で緩徐に進行する※多くは発症後5年前後で日常生活に支障を来す。数週間で歩行不能などの急性の経過はとらない。c.発症年齢は40歳以上d.安静時の血清CK値は2,000 IU/Lを超えない(以下は参考所見)嚥下障害がみられる針筋電図では随意収縮時の早期動員(急速動員)、線維自発電位/陽性鋭波/(複合反復放電)の存在などの筋原性変化(注:高振幅長持続時間多相性の神経原性を思わせる運動単位電位が高頻度にみられることに注意)B.筋生検所見筋内鞘への単核球浸潤を伴っており、かつ以下の所見を認めるa.縁取り空胞を伴う筋線維b.非壊死線維への単核球の侵入や単核球による包囲(以下は参考所見)筋線維の壊死・再生免疫染色が可能なら非壊死線維への単核細胞浸潤は主にCD8陽性T細胞形態学的に正常な筋線維におけるMHC classⅠ発現筋線維内のユビキチン陽性封入体とアミロイド沈着過剰リン酸化tau、p62/SQSTM1、TDP43陽性封入体の存在COX染色陰性の筋線維:年齢に比して高頻度(電子顕微鏡にて)核や細胞質における15~18nmのフィラメント状封入体の存在合併しうる病態HIV、HTLV-I、C型肝炎ウイルス感染症除外すべき疾患縁取り空胞を伴う筋疾患※(眼咽頭型筋ジストロフィー・縁取り空胞を伴う遠位型ミオパチー・多発筋炎を含む)他の炎症性筋疾患(多発筋炎・皮膚筋炎)筋萎縮性側索硬化症などの運動ニューロン病※Myofibrillar myopathy(FHL1、Desmin、Filamin-C、Myotilin、BAG3、ZASP、Plectin変異例)やBecker型筋ジストロフィーも縁取り空胞が出現しうるので鑑別として念頭に入れる。特に家族性の場合は検討を要する。診断カテゴリー:診断には筋生検の施行が必須であるDefinite Aのa-dおよびBのa、bの全てを満たすものProbable Aのa-dおよびBのa、bのうち、いずれか5項目を満たすものPossible Aのa-dのみ満たすもの(筋生検でBのa、bのいずれもみられないもの)注封入体筋炎の診断基準は国際的に議論がなされており、歴史的にいくつもの診断基準が提案されている。本診断基準は専門医のみならず、内科医一般に広くIBMの存在を知ってもらうことを目指し、より簡便で偽陰性の少ない項目を診断基準項目として重視した。免疫染色の各項目に関しては感度・特異度が評価未確定であり参考所見とした。ヘテロな疾患群であることを念頭に置き、臨床治験の際は最新の知見を考慮して組み入れを行う必要がある。臨床的特徴として、「a.他の部位に比して大腿四頭筋または手指屈筋(とくに深指屈筋)が侵される進行性の筋力低下および筋萎縮」、「b.筋力低下は数ヵ月以上の経過で緩徐に進行する」とし、多くは発症後5年前後で日常生活に支障を来すことを勘案した。「数週間で歩行不能」などの急性の経過はとらず、診断には病歴の聴取が重要である。また、遺伝性異常を伴う筋疾患を除外するために「c.発症年齢は40歳以上である」とした。そして、慢性の経過を反映し「d.安静時の血清CK値は2,000 IU/Lを超えない」とした。さらに診断には筋生検が必須であるとし、「筋内鞘への単核球浸潤を伴っており」、かつ「a.縁取り空胞を伴う筋線維」、「b.非壊死線維への単核球の侵入や単核球による包囲」がみられるものとした。これらの臨床的特徴・病理所見の6項目すべてがみられる場合を確実例、臨床的特徴がみられるが、病理所見のいずれかを欠く場合を疑い例、病理所見が伴わないものを可能性あり、とした。欧米で取り入れられている免疫染色や電顕所見に関しては、縁取り空胞の持つ意義と同様と考え、診断基準には含めなかった。封入体筋炎の診断の際には、臨床経過が重要な要素であり、中高齢の慢性進行性の筋疾患では常に念頭に置くべきである。封入体筋炎症例の一部は病期が早いことにより、また不適切な筋標本採取部位などによって、特徴的な封入体を確認することができず、診断確定に至らない場合があると考えられる。最近、cN1Aに対する自己抗体との関連性が報告されているが、今後、病態解明の進展に伴い疾患マーカーが確立されることが望ましい。3 治療 (治験中・研究中のものも含む)封入体筋炎の治療は確立されていない。ほとんどの例でステロイドの効果はみられない。CK値が減少したとしても、筋力が長期にわたって維持される例は少ない。免疫グロブリン大量静注療法(IVIg)は、封入体筋炎に対し、とくに嚥下に関して限定的な効果を示す例がある。しかし、対照試験では、一般的な症状の改善はわずかで、統計学的な有意差は得られず、治療前後の筋生検所見の改善のみが報告されている。根本的な治療がない現状では、運動療法・作業療法などのリハビリテーション、歩行時の膝折れ防止や杖などの装具の活用も有効である。さらに合併症として、致死的になる可能性のある嚥下の問題に関しては、食事内容の適宜変更や胃瘻造設などが検討される。バルーンカテーテルによる輪状咽頭部拡張法(バルーン拡張法)も封入体筋炎患者での嚥下障害改善に有効な可能性がある。4 今後の展望マイオスタチンの筋萎縮シグナル阻害を目的とした、アクチビンIIB受容体拮抗剤のBYM338を用いた臨床試験もわが国で行われている。5 主たる診療科神経内科※ 医療機関によって診療科目の区分は異なることがあります。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)診療、研究に関する情報難病情報センター 封入体筋炎(医療従事者向けのまとまった情報)希少難治性筋疾患に関する調査研究班班員名簿(27年度)(医療従事者向けのまとまった情報)厚生労働省のホームページ 指定難病 封入体筋炎の概要・診断基準(医療従事者向けのまとまった情報)1)青木正志編、内野誠監修. 筋疾患診療ハンドブック. 中外医学社; 2013: p.75-82.公開履歴初回2014年02月06日更新2016年05月03日

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急性前骨髄球性白血病〔APL : acute promyelocytic leukemia〕

1 疾患概要■ 概念・定義急性前骨髄球性白血病(acute promyelocytic leukemia:APL)は急性骨髄性白血病の1つで、FAB分類ではM3に分類される。大部分の症例でt(15;17)(q22;q12)を認め、15番染色体q22上のpromyelocytic leukemia(PML)遺伝子と17番染色体q12上のretinoic acid receptor α(RARA)遺伝子の融合遺伝子を形成するため、WHO分類ではt(15;17)(q22;q12); PML-RARAを伴う急性前骨髄球性白血病という一疾患単位が設定されている。線溶亢進型の播種性血管内凝固症候群(DIC)を高率に合併し、脳出血など致命的な臓器出血を来しやすく、出血による早期死亡が寛解率を低下させていたが、ビタミンAの一種である全トランス型レチノイン酸(all-trans retinoic acid: ATRA、一般名:トレチノイン、商品名:ベサノイド)を寛解導入療法に用いることで、APL細胞を分化させるとともにDICが軽減され、きわめて高い寛解率が得られるようになった。また、APL細胞はP糖蛋白の発現が低く、アントラサイクリン系薬をはじめ抗腫瘍薬に対する感受性も高い。したがって十分な寛解後療法を行えば再発の危険性も低く、急性白血病の中では化学療法により完治を得る可能性が最も高い疾患と認識されている。■ 疫学わが国において白血病は、年に10万人当たり男性で約6人、女性で約4人に発症し、その約60%が急性骨髄性白血病、さらにその10~15%がAPLといわれている。世界的にみると、イタリアやスペインなど南ヨーロッパで発症率が高い。ほかの急性骨髄性白血病よりも発症年齢が若い傾向がある。■ 病因15番染色体q22上のPML遺伝子と17番染色体q12上のRARA遺伝子は、骨髄系細胞の増殖抑制、分化の調整を行うが、相互転座の結果PML-RARA融合遺伝子が形成されると、骨髄系細胞の分化が抑制され、前骨髄球レベルで分化を停止した細胞が腫瘍性に増殖することで発症すると考えられる。■ 症状1)出血最も重要な症状は出血で、主としてDICに起因する。皮膚の紫斑・点状出血のほか、歯肉出血、鼻出血などを来す。抜歯など、観血的な処置後の止血困難もしばしば診断のきっかけになる。脳出血など、致命的な出血も少なくない。2)貧血骨髄での赤血球産生低下と出血のため貧血となり、動悸、息切れ、疲れやすさなどを自覚する。3)感染、発熱正常な白血球、とくに好中球数が低下し、発熱性好中球減少症を起こしやすい。病原微生物として、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌や表皮ブドウ球菌、腸球菌、緑膿菌などの細菌、カンジダやアスペルギルスなど真菌が多い。感染部位として菌血症、肺炎が多いが、起因菌や感染部位が同定できないことも少なくない。■ 予後寛解導入療法に広くATRAが用いられるようになった1990年代以後、寛解率は90%を超えている。非寛解例の多くが出血による早期死亡であり、初期にDICをコントロールできるかどうかが生存に大きく影響する。いったん寛解に入り、十分な寛解後療法を行えば再発しにくく、70%以上の患者は無再発での長期生存が可能である。とくに白血球数が少なく(≦10,000/mm3)、血小板数が比較的保たれた(>40,000/mm3)症例では再発のリスクが低い1)。一方、地固め療法後にRQ-PCR法にてPML-RARAが消失しない、あるいはいったん消失したPML-RARAが再出現する場合は、血液学的再発のリスクが高い2)。ただし、再発した場合も多くは亜ヒ酸(一般名:三酸化ヒ素、商品名: トリセノックス)が奏効し、さらに自家造血幹細胞移植も有効であるため、急性白血病の中で最も予後良好といえる。2 診断 (検査・鑑別診断も含む)■ 血液検査所見白血球数は減少していることが多い。APL細胞はアズール顆粒が充満しており、アウエル小体が束状に存在するFaggot細胞として存在するものもある。貧血もほぼ必発で大部分が正球性である。産生低下およびDICにより、血小板数は著しく低下する。DICのため、プロトロンビン時間(PT)延長、フィブリン分解産物(FDP)およびD-ダイマー高値、フィブリノーゲン低値を示す。DICは線溶亢進型で、トロンビン-アンチトロンビン複合体(TAT)、プラスミン-α2プラスミンインヒビター複合体(PIC)ともに高値となる。アンチトロンビンは正常のことが多い。■ 骨髄所見骨髄は末梢血と同様の形態をもつAPL細胞が大部分を占め、正常な造血は著しく抑制される。APL細胞は、ペルオキシダーゼに強く染まり、細胞表面マーカーはCD13、CD33が陽性、CD34、HLA-DR陰性である。染色体および遺伝子検査では90%以上にt(15;17)(q22;q12)が、約98%にPML-RARA融合遺伝子が証明される。t(15;17)(q22;q12)以外の非定型染色体転座にt(5;17)(q35;q12); NPM1-RARA、t(11;17)(q23;q12); ZBTB16(PLZF)-RARA、t(11;17)(q13;q12); NUMA1-RARAなどがある。画像を拡大する3 治療 (治験中・研究中のものも含む)ATRAを中心とした初回寛解導入療法、寛解導入後の地固め療法や維持療法、再発例に対する治療、造血幹細胞移植などがある。■ 初回寛解導入療法診断が確定したら、ATRAを寛解到達まで内服する。ATRA単独の寛解導入療法はATRAと従来の化学療法剤との併用療法に比べ寛解率に差はないが、再発のリスクが高いとする報告もあり3)、とくに診断時白血球数の多い症例、ATRA投与中に白血球数増加を来した症例、APL分化症候群を合併した症例では積極的にイダルビシン(商品名: イダマイシン)などのアントラサイクリンやシタラビン(同:キロサイド)を併用する。初回寛解導入療法中の重篤な合併症として、DICに伴う出血とAPL分化症候群がある。DICに伴う致命的な出血を予防するため、最低でも血小板数は50,000/mm3、フィブリノーゲンは150mg/dLを保つように血小板および新鮮凍結血漿の輸血を行うとともに、トロンボモジュリン(同:リコモジュリン)などDICに対する薬物療法を行う。APL分化症候群は、ATRAや亜ヒ酸の刺激を受けたAPL細胞から過剰産生される、さまざまな炎症性サイトカインやAPL細胞の接着分子発現増強などにより発症する。80%以上の患者に発熱や低酸素血症による呼吸困難が認められるほか、体重増加、浮腫、胸水、心嚢水、低血圧、腎不全などを来す。両側の間質性肺炎様のX線あるいはCT所見は診断に有用である。好発時期は寛解導入療法開始後1~2週間であり、ATRAや亜ヒ酸投与期間中に白血球数の増加を伴って発症することが多い。治療にはステロイドが有効で、重篤な場合はATRAや亜ヒ酸を中止するとともに、未投与であればアントラサイクリンやシタラビンを投与する。■ 地固め療法寛解導入後には、地固め療法としてイダルビシン、ダウノルビシン(同:ダウノマイシン)などアントラサイクリンや同様の作用機序を有するミトキサントロン(同:ノバントロン)の3~5日間点滴を、約1ヵ月おきに2~4回繰り返す。シタラビンについては意見が分かれるが、診断時の白血球数が10,000/mm3未満の症例では、十分なアントラサイクリンが投与されればその意義は低く、むしろ再発を高める可能性もある一方で、10,000/mm3以上の症例では高用量での投与が有用と報告されている4)。■ 維持療法ATRAを中心とした維持療法は再発予防に有用である。通常、地固め療法終了後にATRA 14日間の内服を約3ヵ月間隔で2年間繰り返す。6-メルカプトプリン(同:ロイケリン)やメトトレキサート(同:メソトレキセート)の併用はさらに再発抑制効果を高める可能性がある5)。■ 再発例に対する治療亜ヒ酸が第1選択薬であり80%以上の再寛解が期待できる。ゲムツズマブ オゾガマイシン(同:マイロターグ)や合成レチノイド、タミバロテン(同:アムノレイク)も有用である。なお、血液学的寛解中であってもRQ-PCR法でPML-RARA陽性となった場合は再発と判断し、上記の再寛解導入療法を開始する。■ 造血幹細胞移植本症はATRAを中心とした化学療法が有効であり、通常第1寛解期には造血幹細胞移植は行わない。第2寛解期では造血幹細胞移植が推奨される。第2寛解期での自家造血幹細胞移植は、同種造血幹細胞移植に比べ再発率は高いものの治療関連死が少なく、全生存率は同種造血幹細胞移植を上回っている6)。そのため、地固め療法後にRQ-PCR法でPML-RARA陰性例には自家移植、陽性例には同種移植を考慮する。4 今後の展望今後もATRAを中心とした化学療法が治療の主体であると考えられる。診断時の白血球数や地固め療法後のPML-RARA融合遺伝子の有無など、リスクファクターによる層別化治療を寛解導入療法のみならず寛解後療法においても広く用いることにより、再発リスクと有害事象の軽減が図れると期待される。さらに寛解導入療法でのATRAと亜ヒ酸の併用や、地固め療法での亜ヒ酸の積極的使用により、治療成績はさらに向上する可能性がある。5 主たる診療科血液内科あるいは血液腫瘍内科※ 医療機関によって診療科目の区分は異なることがあります。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)診療、研究に関する情報JALSGホームページ(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)がんプロ.comホームページ(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)公益財団法人先端医療振興財団 臨床研究情報センター「がん情報サイト」(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)患者会情報つばさの広場(血液疾患患者とその家族の会)海好き(白血病患者とその家族の会)1)Sanz MA, et al. Blood. 2000; 96: 1247-1253.2)Gallagher RE, et al. Blood. 2003; 101: 2521-2528.3)Fenaux P, et al. Blood. 1999; 94: 1192-1200.4)Adès L, et al. Blood. 2008; 111: 1078-1084.5)Adès L, et al. Blood. 2010; 115: 1690-1696.6)de Botton S, et al. J Clin Oncol. 2005; 23: 120-126.公開履歴初回2014年03月20日更新2016年04月26日

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ニーマン・ピック病C型〔NPC : Niemann-Pick disease type C〕

1 疾患概要■ 概念・定義1, 2)ニーマン・ピック病は、多様な臨床症状と発病時期を示すがスフィンゴミエリンの蓄積する疾患として、1961年CrockerによりA型からD型に分類された。A型とB型はライソゾーム内の酸性スフィンゴミエリナーゼ遺伝子の欠陥による常染色体性劣性遺伝性疾患で、ニーマン・ピック病C型は細胞内脂質輸送に関与する分子の欠陥で起こる常染色体性劣性遺伝性疾患である。D型は、カナダのNova Scotia地方に集積するG992W変異を特徴とする若年型のC型である。■ 疫学C型の頻度は人種差がないといわれ、出生10~12万人に1人といわれている。発病時期は新生児期から成人期までと幅が広い。2015年12月の時点で日本では34例の患者の生存が確認されている。同時点での人口8,170万人のドイツでは101人、人口6,500万人の英国では86例で、人口比からすると日本では現在確認されている数の約5倍の患者が存在する可能性がある。■ 病因遺伝的原因は、細胞内脂質輸送小胞の膜タンパク質であるNPC1タンパク質をコードするNPC1遺伝子、またはライソゾーム内の可溶性たんぱく質でライソゾーム内のコレステロールと結合し、NPC1タンパク質に引き渡す機能を持つNPC2タンパク質をコードするNPC2遺伝子の欠陥による。その結果、細胞内の脂質輸送の障害を生じ、ライソゾーム/後期エンドソームにスフィンゴミエリン、コレステロールや糖脂質などの蓄積を起こし、内臓症状や神経症状を引き起こす。95%の患者はNPC1遺伝子変異による。NPC2遺伝子変異によるものは5%以下であり、わが国ではNPC2変異による患者はみつかっていない。■ 症状1)周産期型出生後まもなくから数週で、肝脾腫を伴う遷延性新生児胆汁うっ滞型の黄疸がみられる。通常は生後2~4ヵ月で改善するが、10%くらいでは、肝不全に移行し、6ヵ月までに死亡する例がある。2)乳児早期型生後間もなくか1ヵ月までに肝脾腫が気付かれ、6~8ヵ月頃に発達の遅れと筋緊張低下がみられる。1~2歳で発達の遅れが明らかになり、運動機能の退行、痙性麻痺が出現する。歩行を獲得できる例は少ない。眼球運動の異常は認められないことが多い。5歳以降まで生存することはまれである。3)乳児後期型通常は3~5歳ごろ、失調による転びやすさ、歩行障害で気付かれ、笑うと力が抜けるカタプレキシーが認められることが多い。神経症状が出る前に肝脾腫を指摘されていることがある。また、検査に協力できる場合には、垂直性核上性注視麻痺を認めることもある。知的な退行、けいれんを合併する。けいれんはコントロールしづらいこともある。その後、嚥下障害、構音障害、知的障害が進行し、痙性麻痺が進行して寝たきりになる。早期に嚥下障害が起こりやすく、胃瘻、気管切開を行うことが多い。7~15歳で死亡することが多い。わが国ではこの乳児後期型が比較的多い。また、この型では早期にまばたきが消失し、眼球の乾燥を防ぐケアが必要となる。4)若年型軽度の脾腫を乳幼児期に指摘されていることがあるが、神経症状が出現する6~15歳には脾腫を認めないこともある。書字困難や集中力の低下などによる学習面の困難さに気付かれ、発達障害や学習障害と診断されることもある。垂直性核上性注視麻痺はほとんどの例で認められ、初発症状のこともある。カタプレキシーを認めることもある。不器用さ、学習の困難さに続き、失調による歩行の不安定さがみられる。歩行が可能な時期に嚥下障害によるむせやすさ、構語障害を認めることが多く、発語が少なくなる。ジストニア、けいれんがみられることが多く、進行すると痙性麻痺を合併する。30歳かそれ以上まで生存することが多い。わが国でも比較的多く認められる。5)成人型成人になって神経症状がなく、脾腫のみで診断される例もまれながら存在するが、通常は脾腫はみられないことが多い。妄想、幻視、幻聴などの精神症状、攻撃性やひきこもりなどの行動異常を示すことが多い。精神症状や行動異常がみられ、数年後に小脳失調(76%)、垂直性核上性注視麻痺(75%)、構語障害(63%)、認知障害(61%)、運動障害(58%)、脾腫(54%)、精神症状(45%)、嚥下障害(37%)などがみられる。運動障害はジストニア、コレア(舞踏病)、パーキンソン症候群などを認める。■ 予後乳児早期型は5歳前後、乳児後期型は7~15歳、若年型は30~40歳、成人型は中年までの寿命といわれているが、気管切開、喉頭気管分離術などによる誤嚥性肺炎の防止と良好なケアで寿命は延長している。また、2012年に承認になったミグルスタット(商品名: ブレーザベス)によって予後が大きく変化する可能性がある。2 診断 (検査・鑑別診断も含む)ニーマン・ピック病C型の診断の補助のためにSuspicion Indexが開発されている。これらはC型とフィリピン染色で確定した71例、フィリピン染色が陰性であった64例、少なくとも症状が1つある対照群81例について、内臓症状、神経症状、精神症状について検討し、特異性の高い症状に高いスコアを与えたスクリーニングのための指標である。この指標は便利であるが、4歳以下で神経症状の出現の少ない例では誤診する可能性のあることに注意して使用していただきたい。現在、4歳以下で使えるSuspicion Indexが開発されつつある。このSuspicion Indexは、(http://www.npc-si.jp/public/)にアクセスして使用でき、評価が可能である。一般血液生化学で特異な異常所見はない。骨髄に泡沫細胞の出現をみることが多い。皮膚の培養線維芽細胞のフィリピン染色によって、細胞内の遊離型コレステロールの蓄積を明らかにすることで診断する。LDLコレステロールが多く含まれる血清(培地)を用いることが重要である。成人型では蓄積が少なく、明らかな蓄積があるようにみえない場合もあり注意が必要である。骨髄の泡沫細胞にも遊離型コレステロールの蓄積があり、フィリピン染色で遊離型コレステロールの蓄積が確認できれば診断できる。線維芽細胞のフィリピン染色は、秋田大学医学部附属病院小児科(担当:高橋 勉、tomy@med.akita-u.ac.jp)、大阪大学大学院医学系研究科生育小児科学(担当:酒井 規夫、norio@ped.med.osaka-u.ac.jp)、鳥取大学医学部附属病院脱神経小児科(担当:成田 綾、aya.luce@nifty.com)で対応が可能である。確定診断のためにはNPC1遺伝子、NPC2遺伝子の変異を同定する。95%以上の患者はNPC1遺伝子に変異があり、NPC2遺伝子に変異のある患者のわが国での報告はまだない。NPC1/NPC2遺伝子解析は鳥取大学生命機能研究支援エンター(担当:難波 栄二、ngmc@med.tottori-u.ac.jp)で対応が可能である。近年、遊離型コレステロールが非酵素反応で形成される酸化型ステロール(7-ケトコレステロール、コレスタン-3β、5α、6βトリオール)が、C型の血清で特異的に上昇していることが知られ、迅速な診断ができるようになっている1、2)。わが国では、一般財団法人脳神経疾患研究所先端医療センター(担当者:藤崎 美和、衞藤 義勝、sentanken@mt.strins.or.jp、電話044-322-0654 電子音後、内線2758)で測定可能であり、連絡して承諾が得られるようであれば、凍結血清1~2mLを送る。さらに尿に異常な胆汁酸が出現することが東北大学医学部附属病院薬剤部から報告され9)、この異常も診断的価値が高い特異的な検査の可能性があり、現在精度の検証が進められている。診断的価値が高いと考えられる場合、また精度の検証のためにも、東北大学医学部附属病院へ連絡(担当者:前川 正充、m-maekawa@hosp.tohoku.ac.jp)して、凍結尿5mLを送っていただきたい。3 治療 (治験中・研究中のものも含む)■ ミグルスタット の治療効果C型の肝臓や脾臓には、遊離型コレステロール、スフィンゴミエリン、糖脂質(グルコシルセラミド、ラクトシルセラミド)、遊離スフィンゴシン、スフィンガニンが蓄積している。一方、脳では、コレステロールやスフィンゴミエリンの蓄積はほとんどなく、スフィンゴ糖脂質、とくにガングリオシッドGM2とGM3の蓄積が顕著である。このような背景から、グルコシルセラミド合成酵素の阻害剤であるn-butyl-deoxynojirimycin(ミグルスタット)を用いてグルコシルセラミド合成を可逆的に阻害し、中枢神経系のグルコシルセラミドを基質とする糖脂質の合成を減少させることで、治療効果があることが動物で確認された。さらに若年型と成人型のC型患者で、嚥下障害と眼球運動が改善することが報告され、2009年EUで、2012年わが国でC型の神経症状の治療薬として承認された。ミグルスタットは、乳児後期型、若年型、成人型の嚥下機能の改善・安定化に効果があり、誤嚥を少なくし、乳児後期型から成人型C型の延命効果に大きく影響することが報告されている。また、若年型のカタプレキシーや乳児後期型の発達の改善がみられ、歩行機能、上肢機能、言語機能、核上性注視麻痺の安定化がみられることが報告されている。乳児早期型では、神経症状の出現前の早い時期に治療を開始すると効果がある可能性が指摘されているが、乳児後期型、若年型、成人型の神経症状の安定化に比較して効果が乏しい。また、脾腫や肝腫大などの内臓症状には、効果がないと報告されている。ミグルスタットの副作用として、下痢、鼓腸、腹痛などの消化器症状が、とくに治療開始後の数週間に多いと報告されている。この副作用はミグルスタットによる二糖分解酵素の阻害によって、炭水化物の分解・吸収が障害され、浸透圧性下痢、結腸発酵の結果起こると考えられている。ほとんどの場合ミグルスタット継続中に軽快することが多く、ロペラミド塩酸塩(商品名:ロペミンほか)によく反応する。また、食事中の二糖(ショ糖、乳糖、麦芽糖)の摂取を減らすことでミグルスタットの副作用を減らすことができる。さらには、ミグルスタットを少量から開始して、増量していくことで副作用を軽減できる。■ ニーマン・ピック病C型患者のその他の治療について2)C型のモデルマウスでは、細菌内毒素受容体Toll様受容体4の恒常的活性化によって、IL-6やIL-8が過剰に産生され、脳内の炎症反応が起こり、IL-6を遺伝的に抑制することで、マウスの寿命が延長することが示唆されている5)。また、モデルマウスに非ステロイド性抗炎症薬を投与すると神経症状の発症が遅延し、寿命が延長することが報告されており6)、C型患者で細菌感染を予防し、感染時の早期の抗菌薬投与と抗炎症薬の投与によって炎症を抑えることが勧められる。また、教科書には記載されていないが、C型患者では早期に瞬目反射が減弱・消失し、まばたきが減少し、この結果眼球が乾燥する。この瞬目反射の異常に対するミグルスタットの効果は不明である。C型患者のケアにあたっては、瞬目反射の減弱に注意し、減弱がある場合には、眼球の乾燥を防ぐために点眼薬を使用することが大切である。4 今後の展望シクロデキストリンは、細胞内コレステロール輸送を改善し、遊離型コレステロールの蓄積を軽減させると、静脈投与での効果が報告されている3)。シクロデキストリンは、髄液の移行が乏しく、人道的使用で髄注を行っている家族もあるが、今後アメリカを中心に臨床試験が行われる可能性がある。また、組み換えヒト熱ショックタンパク質70がニーマン・ピック病C型治療薬として開発されている。そのほか、FDAで承認された薬剤のなかでヒストン脱アセチル化阻害剤(トリコスタチンやLBH589)が、細胞レベルでコレステロールの蓄積を軽減させること4, 7)や筋小胞体からCaの遊離を抑制し、筋弛緩剤として用いられているダントロレンが変異したNPCタンパク質を安定化する8)ことなどが報告され、ミグルスタット以外の治療薬の臨床試験が始まる可能性が高い。5 主たる診療科小児科(小児神経科)、神経内科、精神科※ 医療機関によって診療科目の区分は異なることがあります。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)診療、研究に関する情報厚生労働省難治性疾患克服事業 ライソゾーム病(ファブリー病を含む)に関する調査研究班 ライソゾーム病に関して(各論)ニーマン・ピック病C型(医療従事者向けのまとまった情報)鳥取大学医学部N教授Website(ニーマン・ピック病C型の研究情報を多数記載。医療従事者向けのまとまった情報)NP-C Suspicion Index ツール(NPCを疑う症状のスコア化ができる。提供: アクテリオン ファーマシューティカルズ ジャパン株式会社)The NPC-info.com Information for healthcare professionals に入り、Symptoms of niemann pick type C diseaseにて動画公開(ニーマン・ピック病C型に特徴的な症状のビデオ視聴が可能。提供: アクテリオン株式会社)患者会情報ニーマン・ピック病C型患者家族の会(患者とその患者家族の情報)1)大野耕策(編). ニーマン・ピック病C型の診断と治療.医薬ジャーナル社;2015.2)Vanier MT. Orphanet J Rare Dis.2010;5:16.3)Matsuo M, et al. Mol Genet Metab.2013;108:76-81.4)Pipalia NH, et al. Proc Natl Acad Sci USA.2011;108:5620-5625.5)Suzuki M, et al. J Neurosci.2007;27:1879-1891.6)Smith D, et al. Neurobiol Dis.2009;36:242-251.7)Maceyka M, et al. FEBS J.2013;280:6367-6372.8)Yu T, et al. Hum Mol Genet.2012;21:3205-3214.9)Maekawa M, et al. Steroids.2013;78:967-972.公開履歴初回2013年10月10日更新2016年04月19日

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強直性脊椎炎〔AS: ankylosing spondylitis〕

1 疾患概要■ 概念・定義強直性脊椎炎(ankylosing spondylitis:AS)は、脊椎関節炎(spondyloarthritis:SpA)といわれる疾患群の代表的疾患である。SpAは、(1)血清のリウマトイド因子陰性、(2)仙腸関節炎・脊椎炎および末梢関節炎があり、(3)患者はHLA-B27遺伝子を高率に保有する、という特徴を持つ。ASのほかに、反応性関節炎(reactive arthritis:ReA)、乾癬性関節炎(psoriatic arthritis: PsA)、炎症性腸疾患(inflammatory bowel disease:IBD)に伴う関節炎、分類不能(診断未確定)脊椎関節炎(undifferentiated SpA:uSpA)などがある(図1)。SpAの関節外症状にはぶどう膜炎など眼症状、膿漏性角化症や乾癬などの皮膚症状、IBDの腸疾患などが認められる。これらの症状はヒトHLA-B27遺伝子を有するラットにも認められ、「関節‐皮膚‐眼‐腸管」に及ぶ全身性疾患であることが理解できる。画像を拡大する最近、国際脊椎関節炎評価学会(Assessment of SpondyloArthritis international Society:ASAS)の分類基準では、本疾患は体軸性脊椎関節炎(axial spondyloarthritis:ax SpA)に分類される。■ 疫学ドイツでは成人の1%に発病し、関節リウマチと同程度の率とされているが、一般的に白人では0.5%、わが国のASの有病率は約0.02~0.03%と推定される。一般人口でみたHLA-B27の保有率は地域・民族によって異なり、北欧14%、欧米8%、中国・韓国5%、日本0.3%である。このため日本人のASの頻度は少ない。男女比は3~4:1で男性に多く、90%以上が40歳以前に発症する。■ 病因仙腸関節や付着部ではTNF-αなどの炎症性サイトカインが産生される。Th17細胞が関与する。自己免疫は明らかでなく、自然免疫の関与が想定されている。HLA-B27を構成する重鎖の構造異常があり、重合して2量体を形成することによって、NK細胞、B細胞、Th17細胞などの活性を引き起し、IL-23の産生が病因として推定されている。■ 症状1)炎症性腰背部痛(inflammatory back pain:IBP)仙腸関節炎・脊椎炎の症状は、「炎症性腰背部痛」として表現される。これは50歳以下に発症し、3ヵ月以上認められる背部痛であり、(1)30分を超える朝のこわばり、(2)背部痛は運動によって改善され、安静では改善されない、(3)睡眠時間の後半(明け方)に背部痛のため起こされる、(4)右や左に移動する殿部痛の4項目の特徴を持ち、2項目が該当すれば、IBPが存在すると分類される(Berlin criteria:感度70.3%、特異度81.2%)。椎間板ヘルニアなどの機械的な背部痛(mechanical back pain)は安静で良くなり、片側性であることが鑑別になる。線維筋痛症の疼痛と比べ、IBPは非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)が有効という特徴がある。2)仙腸関節炎・脊椎炎仙腸関節・脊椎は体軸性関節(axial joint)と呼ばれる。仙腸関節炎・脊椎炎の典型的な臨床症状はIBPである。脊柱を中心とした身体のこわばりがあり、腰殿部痛(仙腸関節痛、坐骨関節痛)、項部痛、胸部痛が主症状である。初期には、腰背部痛の激痛発作~寛解を繰り返すことが多い。病状の進行に伴い、脊柱の可動域制限が生じ、進行例では、脊柱の強直に至る。可動域制限により脊柱は後弯傾向になり、特徴的な前傾・前屈姿勢になる。3)付着部炎(enthesitis)関節周囲の靱帯付着部(足底、大腿骨大転子、脊椎棘突起、腸骨稜、鎖骨、肋骨など)に炎症が起こり、疼痛が生じる。滑膜炎(synovitis)とは鑑別する必要がある。4)末梢関節炎全経過中に末梢関節炎は、80%以上の症例に認められる。股、肩、膝、足の順に、片側性に出現する。初発症状が末梢関節炎であることも30%の症例に認められる。5)ぶどう膜炎前部ぶどう膜炎は、約30%に認められ、再発性で、片側性である。診断時にぶどう膜炎の既往を聞くことが必要である。■ 分類これまではSpAの個々の疾患を並列に分けて論じてきたが、実際には共通した病態や症状(axial spondylitis)に着眼して生物学的製剤の治療が行えるために、ASASによって、疾患が表1のように分類される。画像を拡大する■ 予後最近の文献では、罹病後10年の生存率は100%であった。女性では罹病後38年間以内における死亡症例はない。50年後の生存率は男性61%、女性77%であり、女性のほうが生命予後は良好であった。死因は(1)循環器疾患(40.0%)、(2)悪性新生物(26.8%)、(3)感染症(23.2%)などであった。2 診断 (検査・鑑別診断も含む)これまでの診断では、改訂ニューヨーク診断基準(表2)が用いられてきた。しかし、単純X線所見で仙腸関節の所見が出現する時期は50%以上の症例が発症後5年以上かかる。このためMRIでの脂肪抑制T2強調像またはSTIR法で早期より診断が可能になり、ASASによる分類基準が提唱された。画像を拡大するASASの分類基準では、体軸性(axial)SpAおよび末梢関節(peripheral)のSpAの分類基準(図2、3)がある。体軸性SpA の分類には、(1)炎症性腰背部痛、(2)HLA-B27の存在、(3)仙腸関節の画像所見が、SpAの分類(診断)に重要であることが理解できる。画像を拡大する画像を拡大するしかし、ASAS基準は分類基準である。個々の症例の診断は、1)医師の経験に基づく判断、2)除外・鑑別診断に基づく判断、3)症例検討会など他の医師との確認、4)経時的な臨床所見からの検証、など多方面の視点からの確認作業を重ねて診断が行われる。診断された症例の中から疾患特異性を求めるために、ASASの分類基準の規定に照らし合わせ、満足した症例が疫学調査や臨床治験に組み込まれる(表3)。このため紙面のチェックリストを用いて、簡単にASAS基準に満足すれば ASであると診断することは誤りである。また、すぐにbiologics治療をはじめることも誤りである。線維筋痛症や機械的腰痛などが分類基準であるASAS基準を使用することによって誤診されることが、国内外から指摘されている。乾癬性関節炎に関するCASPAR分類も同様である。ASAS基準はあくまでも診断の参考として使用する。チェックリストを用いた診断では、除外・鑑別診断ができず、また、他医との臨床検討がおろそかになる。また、リウマチ性疾患は多くの場合、2~3回の診察にて診断名が明らかになるが、数ヵ月間の経時的な評価・確認に基づく診断が必要である。画像を拡大する■ 検査1)臨床検査診断に特異的な臨床検査はないが、赤沈促進、CRP上昇、血清IgA値の中程度の上昇、HLAタイピング(HLA-B27陽性)は重要な根拠である。2)画像診断仙腸関節および脊椎のX線所見とMRI所見が重要である。X線画像では、仙腸関節は初期に変化がみられ、通常両側性で対称性である。骨吸収(blurring)、切手の縁の刻みのような骨侵食像と骨硬化像、進行すると関節裂隙の狭小化、偽拡大や線維化、骨化、強直が認められる。仙腸関節の撮影は正面1枚では偽陽性と判定されやすいので、左右斜位での撮影を必ず行う(図4)。画像を拡大する脊椎の椎体は骨化が進むと前方椎骨間の骨性架橋の癒合(syndesmophytes)がみられ、竹様脊椎(bamboo spine)を呈する。MRI検査は骨髄浮腫や骨炎などの炎症部位が検出可能で鋭敏であり、X線所見が認められない“non-radiographic”の時期から病変を検出できる。ほかにSTIR画像、T1強調画像が用いられる。CTは、主に仙腸関節の不整や硬化など形態変化を検出する。慢性進行例では、MRIにて検出できないためCTの所見が重要である。■ 鑑別が必要な疾患1)強直性脊椎骨増殖症(diffuse idiopathic skeletal hyperostosis:DISH または ankylosing spinal hyperostosis:ASH)50歳以上の高齢者に認められる。血液所見で炎症反応は認めず、仙腸関節に不整は認められるが関節裂隙は保たれ、強直化も認めない。ASの靱帯骨棘(syndesmophyte)は縦方向に流れるように形成されるのに対して、DISHの骨棘(osteophyte)は横方向に伸び、かつ非対称性である。多くの靭帯の骨化が認められる。糖尿病を合併することがある。疼痛や可動域制限はあるがASほどではない。2)硬化性腸骨炎分娩後の女性に多くみられ、疼痛は仙腸関節周囲に限定し、血液所見での炎症反応は認めず、仙腸関節の関節面の変化より、腸骨側に三角形の均等な骨硬化像が認められる。3)膿疱性関節骨炎(掌蹠膿胞症性骨関節炎)掌蹠膿疱症(palmoplantar pustulosis)の患者に合併する関節炎で、SAPHO症候群に含まれる仙腸関節炎を10~40%合併する。脊椎の病変が多い。胸肋鎖骨肥厚症が90%出現する。関節炎発現時、皮膚病変がないこともあり、必ず既往歴を聞くことが大切である。4)線維筋痛症多数の疼痛点がASの付着部痛の部位と似ていることから、過剰診断または混同される。女性に多く、多彩でさまざまな症状を強く訴える。ASの症例は、一般的に我慢強い。血液検査や画像診断で異常は認められない。NSAIDsが無効であり、ぶどう膜炎の既往もない。HLA-B27陽性であることは少ない。5)変形性脊椎症、変形性仙腸関節症身体のこわばりや疼痛、可動域の制限などASと共通な臨床症状を呈するが、その程度は軽い。血液検査で炎症所見は認められない。X線所見上、一見AS類似の所見を呈するが、関節面の骨びらん・骨硬化はみられるものの、高齢になっても脊椎関節や仙腸関節の裂隙は保たれ、強直はみられない。脊椎正面像では、横方向に伸びる骨棘が特徴的である。仙腸関節下端にも骨棘が伸びる。3 治療 (治験中・研究中のものも含む)ASの治療の基本は、ASAS/EULARのAS治療に関する勧告(表4、図5)になる。主な治療は薬物療法と運動・理学療法である。画像を拡大する1)運動・理学療法定期的な運動・体操により姿勢や背骨の動きを保ち、痛みを和らげて運動機能を促進する。入浴やシャワーの後にストレッチを行うことにより関節の可動域が保たれる。温水プールでの運動や水泳が理想的である。背骨を伸ばす運動や深呼吸をする運動が勧められる。個人に適した強さの体操や運動を、無理せず継続して行うことが重要である。2)薬物療法基本はNSAIDsである。脊椎関節炎に対してはメトトレキサート(MTX)〔保険適用外〕を含む従来のDMARDsが有効であるというエビデンスはない。末梢関節炎に対してはサラゾスルファピリジン(商品名:アザルフィジンEN)〔保険適用外〕が有効である。ステロイドは主に関節局所への注射が使用される。骨粗鬆症予防にビスホスホネート製剤が併用される。NSAIDsの効果が不十分な脊椎の症状に対しては、TNF-α阻害薬の適応がある(表5、6)。画像を拡大する画像を拡大するわが国では、インフリキシマブ(同:レミケード)とアダリムマブ(同:ヒュミラ)が保険適用となっている。TNF-α阻害薬使用時にMTXを併用する必要はなく、かつ、併用効果のエビデンスはない。TNF-α阻害薬による骨形成抑制作用に関しては現時点では明らかにはなっていない。しかし、TNF-α阻害薬が炎症を抑え、疼痛を軽減することは、身体の活動・運動を促し、可動域減少を予防する。また、就学、就労、家事および育児の継続に有効な治療法と考えられる。3)手術進行した股関節の障害に対しては人工関節置換術が行われる。4 今後の展望ASおよびSpAに関する分類の再構築によって、治療の適応が拡大し、早期よりTNF-α阻害薬の使用ができるようになった。TNF-α阻害薬における骨形成阻害作用は確認されていないが、疼痛の緩和やADLの改善や体操によって、可動域制限の進行が抑制される可能性が期待される。アバタセプトやリツキシマブのASに対する治療効果は否定的である。IL-17阻害薬であるセクキヌマブ(商品名:コセンティクス)が2015年11月欧州で、また、2016年1月米国で承認となった。そのほかの治療薬の出現が待たれる。5 主たる診療科リウマチ科、整形外科、膠原病内科、放射線科、消化器内科、皮膚科、眼科※ 医療機関によって診療科目の区分は異なることがあります。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)診療、研究に関する情報日本リウマチ財団 リウマチ情報センター 対象とする病気:強直性脊椎炎(一般利用者向けのまとまった情報)日本脊椎関節炎学会(医療従事者向けのまとまった情報)日本整形外科学会 症状・病気をしらべる:強直性脊椎炎(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)長引く腰痛、実は…強直性脊椎炎の情報発信サイト(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)公的助成情報東京都福祉保健局:難病患者支援(患者、患者家族向けの情報)患者会情報日本AS友の会 Japan Ankylosing Spondylitis Club(JASC)(ASの患者、患者家族向けの情報)1)井上 久ほか. 強直性脊椎炎の診断と治療の実際. 2012; アボットジャパン株式会社、エーザイ株式会社.2)井上 久ほか.我が国の強直性脊椎炎(AS)患者の実態~第3回患者アンケート調査より~.日本脊椎関節炎学会誌;2011;3:29-34.3)Kobayashi S, et al. Mod Rheumatol.2012;22:589-597.公開履歴初回2013年08月29日更新2016年04月12日

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トシリズマブは巨細胞性動脈炎に有効である(解説:金子 開知 氏)-514

 巨細胞性動脈炎(giant cell arteritis:GCA)は、大動脈とその分枝の中~大型動脈に起こる肉芽腫性血管炎である。多くは50歳以上の高齢者に起こる疾患であり、とくに浅側頭動脈が好発部位で、最も重要な障害は失明である。臨床症状としては発熱、頭痛、視力・視野異常、下顎跛行、側頭動脈の圧痛や拍動を認める。また、約30%にリウマチ性多発筋痛症を合併する。検査所見では、赤沈亢進、CRP上昇を認める。治療は、中等量あるいは高用量のステロイドが第1選択である。しかし、ステロイド減量中の再燃や治療抵抗例が少なからず存在し、免疫抑制薬やTNF阻害薬の併用が試みられてきたが、有効性が十分とは言い難かった。近年、GCAに対してIL-6阻害薬であるトシリズマブ(tocilizumab:TCZ)の有効性が注目されている。 今回、Villiger氏らが、GCA患者に対するTCZの有効性と安全性に関するプラセボ対照無作為化二重盲検試験を行った。対象は、新規または再発の基準を満たした50歳以上のGCA患者30例とした。対象患者を経口プレドニゾロン(1mg/kg/日より開始し規定に従い徐々に0mgまで減量)併用下で、TCZ併用群(20例)、プラセボ群(10例)に無作為に2対1の割合で2群に割り付け、TCZ 8mg/kgまたはプラセボを4週に1回、52週まで13回静脈内投与した。主要評価項目は12週目(その際プレドニゾロン0.1mg/kg/日)の、臨床症状や所見がなく、赤沈正常、CRP陰性化した完全寛解の割合とした。 結果は、12週での完全寛解率は、TCZ併用群85%(17例)であり、プラセボ群40% (4例)と比較して有意に高値であった。52週までの無再発率も、TCZ併用群85%(17例)で、プラセボ群20%(2例)と比べて有意に高率であった。52週間のプレドニゾロン積算投与量は、TCZ併用群では43mg/kgと、プラセボ群(110mg/kg)と比較して有意に低用量であった。重篤な有害事象は、TCZ併用群7例(35%)であり胃腸障害が多く、プラセボ群5例(50%)で心血管疾患が多くみられた。 本研究により、GCAに対する寛解導入および維持療法にTCZ併用の有効性が示された。しかし、TCZの治療効果判定には症状や炎症反応だけではなく、画像検査などによる動脈病変の評価も重要であり、今後は画像評価も必要と思われる。また、TCZ併用の長期的な安全性や寛解維持に達した後のTCZの減量や、TCZの投与期間も今後検討していく必要があると思われる。

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膝・股関節炎の治療薬、8製剤23種を比較/Lancet

 膝関節炎および股関節炎の管理では、用量にかかわらずパラセタモール(日本ではアセトアミノフェン)に治療上の役割はなく、現時点では疼痛緩和と機能改善の両面でジクロフェナク150mg/日が最も有効とのネットワークメタ解析の結果を、スイス・ベルン大学のBruno R da Costa氏らがLancet誌2016年3月17日号で報告した。関節炎による疼痛に非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)を処方する際、医師は多くの種類の製剤とさまざまな用量に直面することとなり、臨床的な意思決定上の課題となっている。また、NSAIDによる初回治療は薬剤の変更や投与中止で特徴づけられるが、これが不適切な疼痛管理の原因となっている可能性があるという。これまでの系統的レビューは、個々のNSAIDの疼痛緩和という限られた効果をプラセボと比較した試験を対象としているが、ネットワークメタ解析では直接的および間接的なエビデンスを統合することで、個々の製剤のさまざまな用量での効果の評価が可能とされる。約5万8,000例で、8製剤、23種の介入の効果を比較 研究グループは、膝・股関節炎による疼痛の治療において、NSAID、パラセタモール、プラセボを比較した試験を対象にネットワークメタ解析を行った(スイス国立科学財団などの助成による)。 Cochrane Central Register of Controlled Trials(CENTRAL)を検索して、1980年1月1日~2015年2月24日までに公表された臨床試験(各群に100例以上を登録)の論文を選出し、関連論文の文献リストにも当たった。 効果量(effect size:ES)の解析には、ベイズ統計のランダム効果モデルを用い、複数の薬剤の比較を行った。事前に規定された主要評価項目は疼痛であり、副次評価項目は身体機能とした。 74件の無作為化試験に参加した5万8,556例が解析の対象となった。7つのNSAID(ロフェコキシブ、ルミラコキシブ、エトリコキシブ、ジクロフェナク、セレコキシブ、ナプロキセン、イブプロフェン)とパラセタモール、プラセボの合計23種の1日用量について評価を行った。中等度~最大用量の間欠的短期投与が好ましい 用量にかかわらず、すべての製剤でプラセボに比し疼痛症状の推定値が改善された。 以下の6つの処方で、臨床的に意義のある最小疼痛緩和効果(ES:-0.37)の達成を支持する統計学的に十分なエビデンスが得られた(プラセボとの差が、事前に規定された閾値である-0.37か、それを下回る可能性が95%以上ある)。ジクロフェナク150mg/日、エトリコキシブ30mg/日、同60mg/日、同90mg/日、ロフェコキシブ25mg/日、同50mg/日。 承認を得ている最大1日用量では、ジクロフェナク150mg/日(ES:-0.57、95%信用区間[credibility interval:CrI]:-0.69~-0.46)およびエトリコキシブ60mg/日(ES:-0.58、95%CrI:-0.73~-0.43)が最良の介入となる可能性が最も高く、いずれも臨床的に意義のある最小変化量に達する可能性は100%であった。 どの製剤も用量が多くなるに従って治療効果が高くなったが、検定でリニアな用量反応に有意差を認めたのは、セレコキシブ(p=0.030)、ジクロフェナク(p=0.031)、ナプロキセン(p=0.026)だけであった。また、治療期間によって治療効果が変化するとのエビデンスは確認されなかった。 モデル適合度は疼痛、身体機能とも良好(good)で、試験間の異質性(heterogeneity)や非一貫性(inconsistency)はすべての解析において低い(low)と判定された。また、すべての試験が、患者の盲検化に関するバイアスのリスクは低いとされた。さらに、効果の推定値は、2つの統計モデルを追加した感度分析を行っても変化しなかった。 著者は、「すべてのNSAIDには消化管や心血管への有害作用があるため、製剤のタイプや用量は、本研究で示した個々の製剤の短期~中期の鎮痛効果に基づいて選択すべきである。また、必要とされる用量の中等度~最大の用量を短期間投与し、これを間欠的に繰り返す投与法が、固定用量の長期投与よりも好ましいと考えられる」と指摘している。

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診療の現場における安全な処方に必要なものは何か…(解説:吉岡 成人 氏)-512

薬剤をより安全に処方すること 外科医が行う手術、内科医が行う外科的なインターベンションと並んで、抗菌薬や抗がん化学療法薬などに代表される薬物治療は、内科医にとって重要な治療のツールである。臨床の現場では、作用と副作用というアンビバレンスを勘案して、慎重に処方を行うことが望まれる。一方、忙しさに紛れ、薬物の相互作用にうっかり気付かずに、副作用のリスクを高めてしまう処方が行われることもまれではない。 本論文は、スコットランドにおけるプライマリケアの診療現場で、一定の割合で副作用を引き起こす可能性のある高リスク薬の処方を、どのような臨床介入によって適正化しうるかについて検討した成績を示した論文である。教育と情報そして金銭的なインセンティブ 高リスク薬として、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)、抗血小板薬を取り上げ、慢性腎臓病患者(CKD≧ステージ3)や、利尿薬とACE阻害薬ないしはARBを併用している患者にNSAIDsを処方した場合、胃粘膜保護薬を併用せずにNSAIDsと抗凝固薬の併用を行った場合を高リスク処方と判定し、介入によって処方行動が変容するか否かを検討している。 教育、金銭的インセンティブ、患者情報の提供という3つの介入が実施されている。まずは、薬剤師がクリニックを訪問し1時間にわたって知識の共有と確認を行い、続いて、参加登録時に350ポンド(600USドル)、高リスク薬を処方した患者の病歴を確認した際には患者1人当たり15ポンド(25USドル)のインセンティブを支払い、さらに、プライマリケア医が診療している患者の中から、病歴の確認が必要な患者を抽出し、「フラグ」を付けてアラートを行い、医師が対象薬となっている高リスク薬剤の投与を中止するか、副作用を予防する薬剤を追加処方した際に「フラグ」が消えるというシステムを構築し、医師が容易に診療内容をネット上でID、パスワードを用いて確認することができるようにするという、3つの介入を実施している。高リスク処方の減少と副作用による入院が減少 Stepped wedge designという、試験開始の時期をずらしながら順番に介入を行うという方法で介入試験を行った、33ヵ所の診療現場における3万3,000例以上の患者の結果が解析されている。 高リスク処方の割合は、3.7%(2万9,537例中1,102例)から2.2%(3万187例中674例)に有意に低下し(オッズ比0.623、95%信頼区間:0.57~0.86、p<0.001)、消化性潰瘍や消化管出血による入院も1万人年当たり55.7件から37.0件に有意に減少。心不全による入院も1万人年当たり707.7件から513.5件に有意に減少したが、急性腎不全による入院に変化はなかった(1万人年当たり101.9件から86.0件、オッズ比0.84、95%信頼区間:0.68~1.09、p=0.19)。高リスク処方の減少に何が有効だったのか それでは、知識の提供、金銭的インセンティブ、高リスク処方に注意を喚起するシステムのうち、何が最も有用であったのか…。それについては、この論文からは読み取ることができない。どのような知識を持っていても、忙しい診療の現場では、ついうっかり…という処方ミスが起こる可能性はきわめて大きい。しかし、処方を実施した後にレビューするシステムがあったとしても、習慣としてそれにアクセスするには動機(きっかけ)が必要であろう。そのために、世俗的ではあるが、少額ではあっても金銭的インセンティブが有用なのかもしれない。 処方の適正化はきわめて重要なことであり、予想しうる副作用を阻止するためのフェイルセイフ機構を構築することは喫緊の課題ともいえる。しかし、その方策をどのようにすべきか…。ひとつの回答が示されたが、この回答をどのように臨床の現場で応用していくのかは簡単ではなさそうである。関連コメント高リスク処方回避の具体的方策が必要(解説:木村 健二郎 氏)診療所における高リスク処方を減らすための方策が立証された(解説:折笠 秀樹 氏)ステップウェッジ法による危険な処方を減らす多角的介入の効果測定(解説:名郷 直樹 氏)「処方箋を書く」医師の行為は「将棋」か「チェス」か?(解説:後藤 信哉 氏)

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乳児期に抗菌薬投与すると幼児期に太るのか/JAMA

 生後6ヵ月以内の抗菌薬使用は、7歳までの体重増と統計的に有意な関連はみられないことが、米国・フィラデルフィア小児病院のJeffrey S. Gerber氏らが行った後ろ向き縦断研究の結果、示された。マウスを用いた動物実験では、誕生後早期の抗菌薬使用は、腸内細菌叢を乱し炭水化物・脂質の代謝を変化させ肥満と関連することが示されている。一方、ヒトの乳児期抗菌薬使用と幼少期体重増との関連を検討した研究では、相反する報告が寄せられている。JAMA誌2016年3月22・29日号掲載の報告。6ヵ月以内の抗菌薬使用と、6ヵ月齢~7歳までの体重変化の関連を主要評価 研究グループは、ペンシルベニア州、ニュージャージー州、デラウェア州にわたる30の小児プライマリケア診療所のネットワークから、人種や社会経済的背景が多様な20万例超の小児を集めて、後ろ向きに、単生児縦断研究および適合双生児による縦断研究を行った。 被験者は、2001年11月1日~11年12月31日に、在胎期間35週以上で、出生時体重2,000g以上または在胎期間基準体重の5パーセンタイル以上で誕生し、生後14日以内に予防接種・健康診査を受け1歳までにさらに少なくとも2回受診している小児であった。複合的慢性症状がある児、長期に抗菌薬を投与もしくは複数の全身性コルチコステロイド処方を受ける児は除外した。 検討には、単生児3万8,522例と、抗菌薬使用が不一致の双生児92例(46組)を包含。フォローアップの最終データ日は12年12月31日であった。 主要アウトカムは、生後6ヵ月間で全身性抗菌薬を使用した児の、月齢6ヵ月から7歳までの予防接種・健診時に測定した体重とした。乳児期抗菌薬使用と幼少期体重変化に有意な関連なし 単生児群は女児が50%、平均出生時体重は3.4kgであり、生後6ヵ月間の抗菌薬使用例は5,287例(14%)であった。使用時の平均年齢は4.3ヵ月であった。使用例の24%が広域スペクトラム抗菌薬、5%がマクロライド系抗菌薬の投与で、大半(79%)が1コースのみの投与であった。また、あらゆる抗菌薬の使用は、月齢24ヵ月では67%に増加しており、52%が広域スペクトラム、19%がマクロライド系であった。 解析の結果、生後6ヵ月の抗菌薬使用は体重変化率と、統計的に有意な関連はなかった(0.7%、95%信頼区間[CI]:-0.1~1.5、p=0.07)。2~5歳の体重変化率に相当する推定体重増は0.05kg(95%CI:-0.004~0.11)であった。サブ解析で、抗菌薬の投与コース数の違い(1、2、≧3コース)や種類別(狭域スペクトラム、広域スペクトラム、マクロライド系)にみた場合も、使用と体重変化に有意な関連はみられなかった。 双生児は女児38%、平均出生時体重2.8kgで、抗菌薬使用時の平均年齢は4.5ヵ月であった。 解析の結果、生後6ヵ月の抗菌薬使用と、体重変化の差と関連はみられなかった(使用双生児群と非使用双生児群の年当たりの差:-0.09kg、95%CI:-0.26~0.08、p=0.30)。 著者は、「低年齢の健康児では、抗菌薬使用を制限する多くの理由があるが、その1つに体重増は該当しないようだ」と述べている。

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原発性胆汁性胆管炎〔PBC : Primary Biliary Cholangitis〕

1 疾患概要■ 概念・定義原発性胆汁性胆管炎(PBC)は、病因・病態に自己免疫学的機序が想定される慢性進行性の胆汁うっ滞性肝疾患である。中高年女性に好発し、皮膚掻痒感で初発することが多い。しかし、多くの症例では無症候性の時期にたまたま発見され、長く無症候性のまま経過する。黄疸はいったん出現すると、消退することなく漸増することが多い。一部の症例では門脈圧亢進症状が高頻度に出現する(表1)。画像を拡大する従来、病名は「原発性胆汁性肝硬変」となっていたが、現在は早期に診断することができるようになり、またウルソデオキシコール酸(ursodeoxycholic acid;UDCA)の効果もみられることから、現在診断されている多くの患者は肝硬変には至っていない。実際は肝硬変ではないにもかかわらず「肝硬変」が病名に入っていることで、患者の精神的負担が大きい、との患者団体の要請に応じ、2016年より世界的に、英文字略語のPBCはそのまま残し、「Primary Biliary Cholangitis(PBC)」と改名された。日本語では、「原発性胆汁性胆管炎」と改名されることになった。■ 疫学男女比は約1:7、診断時平均年齢は50~60歳で、幼小児期での発症はみられない1)。発生数は1980年の調査開始以来増加傾向にあったが、1990年代以降は横ばいで推移している。新たに診断される症例のうち約70~80%は無症候性PBCである。無症候性PBCを含めた総患者数は全国で約5万~6万人と推計される1)。■ 病因本症は種々の免疫異常とともに、自己抗体の1つである抗ミトコンドリア抗体(Anti-mitochondrial antibody:AMA)が特異的(90%)かつ高率(90%)に陽性化し、また、慢性甲状腺炎、シェーグレン症候群などの自己免疫性疾患や膠原病を合併しやすい。さらに、組織学的には障害胆管周囲にT細胞優位の高度の単核球浸潤がみられることなどから、病態形成には自己免疫学機序が強く関与していると考えられる。多くの疾患同様、本疾患も多因子疾患であり、遺伝学的要因を基盤に環境要因が作用することよって発症し、病態形成がなされることが想定されている。家族集積性のあることや一卵性双生児における一致率がきわめて高いことなどから、発症には遺伝的素因の関与が示唆される。HLA-DR8 (DRB1*08)が人種を超えて疾患感受性遺伝子として働いている可能性が想定され、ゲノムワイド関連解析(GWAS)により、HLA-DR以外の新たな疾患関連遺伝子多型の情報が集積されつつある2)。環境因子としては、大腸菌などの細菌からの感染が想定されている。また、工業地帯や汚染廃棄物処理施設の近郊で発症が多いとの疫学研究などより、大気汚染や化学物質、化粧品などによる抗原の修飾がPBC発症のきっかけとなっている可能性が想定されている。■ 症状本疾患にみられる症状は、(1)胆汁うっ滞に基づく症状(2)肝障害・肝硬変および随伴する病態に伴う症状(3)合併した他の自己免疫疾患に伴う症状に分けて考えることができる。病初期は無症状であるが(無症候性PBC)、黄疸を呈する以前から胆汁うっ滞に基づく搔痒感が出現する。身体所見としては、症候性PBCでは黄疸のほか、掻痒のために生じた掻き傷、高脂血症に伴う眼瞼黄色腫が観察され、肝臓は腫大していることが多い。本疾患は他の自己免疫性疾患・膠原病を合併しやすく、なかでもシェーグレン症候群、慢性甲状腺炎、関節リウマチの頻度が高い。門脈圧亢進症状を早期から呈しやすく、高齢者や進行例では肝細胞がんの併発も考慮する必要がある。■ 分類1)臨床病期分類皮膚搔痒感、黄疸、食道静脈瘤、腹水、肝性脳症など肝障害に基づく症候を伴う症候性PBC(sPBC)とこれらの症候を欠く無症候性PBC(aPBC)に分類される。症候性PBCはさらに、皮膚掻痒感のみ認め血清総ビリルビン値が2.0mg/dL未満のs1PBCと、血清総ビリルビン値が2.0mg/dL以上の黄疸を認めるs2PBCに細分される1)。2)組織学的病期分類わが国の診療ガイドラインでは、サンプリングエラーを最小限にするように工夫された中沼らによる新しい分類の使用が推奨されている。1期(no progression)、2期(mild progression)、3期(moderate progression)、4期(advanced progression)の4期に分類される。3)特殊型特殊なタイプとして、以下の病態がある。(1)PBC-AIHオーバーラップ症候群(PBC-AIH overlap syndrome)PBCの特殊な病態として、肝炎の病態を併せ持ちALTが高値を呈する本病態がある。副腎皮質ステロイドの投与によりALTの改善が期待できるため、PBCの亜型ではあるが、PBCの典型例とは区別して診断する必要がある。(2)AMA陰性PBC、自己免疫性胆管炎(AIC)AMAは陰性であるが、PBCに特徴的な臨床像と肝組織像を呈し、PBC症例の約10%を占める。これらのうち抗核抗体陽性を呈する病態に対しautoimmune cholangiopathyあるいはautoimmune cholangitis(AIC)などの名称が提唱された。副腎皮質ステロイドの投与が奏効する症例もあり、UDCAの効果がみられない症例に対して試みられる。■ 予後PBCの進展形式は、緩徐進行型、門脈圧亢進症先行型、黄疸肝不全型の大きく3型に分類される(図)。多くは長期間の無症候期を経て徐々に進行するが(緩徐進行型)、黄疸を呈することなく食道静脈瘤が比較的早期に出現する症例(門脈圧亢進症型)と早期に黄疸を呈し、肝不全に至る症例(黄疸肝不全型)がみられる。肝不全型は比較的若年の症例にみられる傾向がある。黄疸期(s2PBC)になると進行性で予後不良である。5年生存率は、血清総ビリルビン値が5.0mg/dLで55%、8.0mg/dLを超えると35%となる。画像を拡大する2 診断 (検査・鑑別診断も含む)診断は、厚労省研究班の診断基準(表1)に則って行うが、(1)血液所見で慢性の胆汁うっ滞所見(ALP、γ-GTPの上昇)(2)AMA陽性所見(間接蛍光抗体法またはELISA法)(3)肝組織学像で特徴的所見(CNSDC、肉芽腫、胆管消失)の3項目が重要である1)。〔肝組織像が得られる場合〕(1)組織学的にCNSDCを認め、検査所見がPBCとして矛盾しないもの。(2)AMAが陽性で、組織学的にはCNSDCの所見を認めないが、PBCに矛盾しない(compatible)組織像を示すもの。〔肝組織像が得られない場合〕AMAが陽性で、しかも臨床像および経過からPBCと考えられるもの。■ 臨床検査成績慢性の胆道系酵素(ALP、γ-GTP)の上昇、血清IgMの高値、AMAの出現が特徴的である。■ 抗ミトコンドリア抗体(AMA)と抗核抗体AMAの対応抗原として、ピルビン酸脱水素酵素E2コンポーネント(PDC-E2)をはじめとするミトコンドリア内膜に存在するオキソ酸脱水素酵素複合体を構成する蛋白が明らかになっている。PDC-E2反応性CD4陽性T細胞がPBC患者の肝臓、所属リンパ節および末梢血で有意に増加していることが示され、本疾患の成立・維持に重要な役割を果たしていることが想定される。PBCではAMAのほか、抗セントロメア抗体、抗核膜孔抗体(抗gp210抗体)、抗multiple nuclear dot抗体(抗sp100抗体)など数種の抗核抗体も陽性化する。核膜孔の構成成分に対する抗gp210抗体は特異度ほぼ100%と疾患特異性が高く、PBC患者の約20~30%で陽性化する。本抗体は予後不良なPBC症例で陽性になる率が高く、PBCの臨床経過の予測因子として有用であることが示されている1)。■ 肝組織像自己免疫機序を反映する肝内胆管病変(CNSDC)がPBC肝の基本病理所見であり、肉芽腫の形成も特徴的である。肝内小型胆管が選択的に進行性に破壊される。その結果、慢性に持続する肝内胆汁うっ滞が出現し、肝細胞障害、線維化、線維性隔壁が2次的に形成され肝硬変に進行する。■ 鑑別診断・除外診断画像診断(超音波、CT)で閉塞性黄疸を完全に否定したうえで、慢性の胆汁うっ滞性肝疾患および自己抗体を含む免疫異常を伴った疾患という観点から鑑別診断が挙げられる(表2)。画像を拡大する3 治療 (治験中・研究中のものも含む)根治的治療法は確立されていないが、ウルソデオキシコール酸はPBC進展抑制効果を有し、現在第1選択薬である。予後の改善も期待でき、実際UDCAが投与される以前の時期と比較するとPBCの予後はかなり改善している。進行したPBCではUDCAで進展を止めることは難しく、肝硬変・肝不全に進行すれば肝移植が唯一の治療手段となる。血清総ビリルビン値が5.0mg/dL以上になると肝移植を考慮し、肝移植専門医へ紹介することが望まれる。■ 薬物療法1)ウルソデオキシコール酸(UDCA)(商品名:ウルソなど)胆道系酵素の低下作用のみでなく、組織の改善、肝移植・死亡までの期間の延長効果が確認されている1)。通常1日600mgが投与されるが、効果が不十分の場合は900mgに増量される。2)ベザフィブラート(同:ベザトールSR、ベザリップなど)UDCAの効果が乏しい症例でベザフィブラート(400mg/日)が有効な症例もみられる1)。UDCAとは作用機序が異なることから併用投与が望ましいとされる。3)副腎皮質ステロイド通常のPBCに対する投与は病態の改善には至らず、とくに閉経後の中年女性においては骨粗鬆症を増強する副作用が表面に出てくるので、むしろ禁忌とされている。PBC-AIHオーバーラップ症候群で肝炎所見が明瞭である場合は、本剤の投与が推奨される1)。■ 肝移植胆汁うっ滞性肝硬変へと進展した場合は、もはや内科的治療で病気の進展を抑えることができなくなるため、肝移植が唯一の救命法となる1)。肝移植適応時期の決定は、Mayo(updated)モデルや日本肝移植適応研究会のモデルが用いられている。移植後は免疫抑制薬を投与し、術後合併症、拒絶反応、再発、感染に留意し経過を追う。4 今後の展望本疾患を含め、自己免疫疾患の病因および発症原因の早期解明は期待しがたい。したがって、根本治療の開発にはまだ長い期間がかかるものと思われる。しかし、UDCAについては確実に長期効果もみられており、また、ベザフィブラートについては長期効果のレベルの高いデータは得られていないものの、作用機序に関する基礎データを含め、臨床データも集積しつつあり、UDCAとの併用効果が確立するものと思われる。一方、細胞レベルでの解析や、疾患感受性および進行に関与する遺伝子の解析データも出つつあり、病因の解明とともに、個別化医療が可能となる日もそう遠いものではないと思われる。5 主たる診療科内科、肝臓内科、消化器内科、肝臓移植外科※ 医療機関によって診療科目の区分は異なることがあります。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)診療、研究に関する情報難病情報センター(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)診療ガイドライン厚生労働科掌研究費補助金難治性疾患克服研究事業「難治性の肝・胆道疾患に関する調査研究」班:原発性胆汁性胆管炎(PBC)の診療ガイドライン2012(医療従事者向けのまとまった情報)厚生労働省難病情報センターホームページ 原発性胆汁性胆管炎(PBC)ガイドブック(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)公的助成情報難病情報センター 各相談窓口紹介(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)患者会東京肝臓友の会(患者向けの情報)大阪肝臓友の会(患者向けの情報)1)厚生労働省難治性疾患克服研究事業「難治性の肝・胆道疾患に関する調査研究」班.原発性胆汁性胆管炎(PBC)の診療ガイドライン(2012年). 肝臓. 2012; 53: 633-686.2)厚生労働省「難治性の肝・胆道疾患に関する調査研究」班. 原発性胆汁性胆管炎(PBC)の診療ガイド. 文光堂. 2010.3)厚生労働省難治性疾患克服研究事業「難治性の肝・胆道疾患に関する調査研究」班. 患者さん・ご家族のための原発性胆汁性胆管炎(PBC)ガイドブック. 研究班2013事務局. 2013.4)The Intractable Hepatobiliary Disease Study Group supported by the Ministry of Health, Labour and Welfare of Japan Guidelines for the management of primary biliary cirrhosis. Hepatol Res. 2014; 44: 71-90.公開履歴初回2014年01月09日更新2016年03月29日

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プライマリケアでのNSAID・抗血小板薬の高リスク処方を減らすには/NEJM

 プライマリケア診療所に対し、専門家によるリスクの高い処方に関する教育や、処方の見直しが必要な患者について医師に通知する情報システム、さらにそうした処方の見直しに対する金銭的インセンティブを与えるという複合的介入で、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)や抗血小板薬に関する高リスク処方が4割ほど減り、関連する入院の発生も減少したという。スコットランド・ダンディー大学のTobias Dreischulte氏らが、34ヵ所のプライマリケア診療所を対象に行ったクラスター無作為化試験の結果、明らかにした。NEJM誌2016年3月17日号掲載の報告より。NSAIDsと抗血小板薬に関する9つの高リスク処方発生率を比較 研究グループは、スコットランドのテイサイド州で、34ヵ所のプライマリケア診療所(医師が所有する)を対象に、ステップウェッジ・デザインの無作為化試験を行った。試験対象の診療所に対しては、48週間にわたり、(1)薬剤師など専門家による教育(開始時に1時間受講)、その後8週ごとにレターなどが送付、(2)電子カルテから処方の見直しが必要な患者データを特定するなどの情報システムによる支援、(3)高リスク処方について見直しを行った際に支払う金銭的インセンティブ(初回固定額として600ドル、見直した患者ごとに25ドル;フルタイム医師当たり平均収入の約0.6%に相当する平均約910ドルの支払いを見込んだ)をそれぞれ提供した。 主要評価項目は、NSAIDsと抗血小板薬に関する次の9つの高リスク処方の複合だった。(1)消化管潰瘍患者に胃粘膜保護薬処方なしでNSAIDまたはアスピリン処方、(2)75歳以上患者に胃粘膜保護薬処方なしでNSAID処方、(3)65歳以上患者に胃粘膜保護薬処方なしでNSAID処方、(4)65歳以上・アスピリン服用患者に胃粘膜保護薬処方なしでクロピドグレル処方、(5)経口抗凝固薬服用患者に胃粘膜保護薬処方なしでNSAID処方、(6)経口抗凝固薬服用患者に胃粘膜保護薬処方なしでアスピリンまたはクロピドグレル処方、(7)RAS阻害薬と利尿薬服用患者にNSAID処方、(8)慢性腎臓病患者にNSAID処方、(9)心不全歴あり患者にNSAID処方。 副次評価項目は、処方関連の入院などだった。解析は、intention-to-treatを原則とし、混合効果モデルを用いてクラスターデータを評価した。消化管潰瘍・出血による入院も3割強減少 試験を完了した33診療所を包含し、介入前の対象患者3万3,334例と、介入後の対象患者3万3,060人について分析を行った。 その結果、事前に規定した高リスク処方(あらゆるリスクを有した患者)の発生率は、介入直前の3.7%(2万9,537例中1,102例)から、介入終了時の2.2%(3万187例中674例)へと4割程度減少した(補正後オッズ比:0.63、95%信頼区間[CI]:0.57~0.68、p<0.001)。 また、消化管潰瘍や消化管出血による入院も、介入前の55.7件/1万患者年から介入期間中の37.0件/1万患者年へと、有意に減少した(率比:0.66、95%CI:0.51~0.86、p=0.002)。心不全による入院も、707.7件/1万患者年から513.5件/1万患者年へと、有意に減少した(率比:0.73、95%CI:0.56~0.95、p=0.02)。 一方、急性腎障害による入院は、101.9件/1万患者年から86.0件/1万患者年へと、有意な減少は認められなかった(率比:0.84、95%CI:0.68~1.09、p=0.19)。

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自己免疫性膵炎〔AIP : autoimmune pancreatitis〕

1 疾患概要■ 概念・定義自己免疫性膵炎(autoimmune pancreatitis:AIP)は、わが国から世界に発信された新しい疾患概念である。わが国におけるAIPは、病理組織学的に膵臓に多数のIgG4陽性形質細胞とリンパ球の浸潤と線維化および閉塞性静脈炎を特徴とする(lymphoplasmacytic sclerosing pancreatitis:LPSP)。高齢の男性に好発し、初発症状は黄疸が多く、急性膵炎を呈する例は少ない。また、硬化性胆管炎、硬化性唾液腺炎などの種々の硬化性の膵外病変をしばしば合併するが、その組織像は膵臓と同様にIgG4が関与する炎症性硬化性変化であることより、AIPはIgG4が関連する全身性疾患(IgG4関連疾患)の膵病変であると考えられている。一方、欧米ではIgG4関連の膵炎以外にも、臨床症状や膵画像所見は類似するものの、血液免疫学的異常所見に乏しく、病理組織学的に好中球病変による膵管上皮破壊像(granulocytic epithelial lesion:GEL)を特徴とするidiopathic duct-centric chronic pancreatitis(IDCP)がAIPとして報告されている。この疾患では、IgG4の関与はほとんどなく、発症年齢が若く、性差もなく、しばしば急性膵炎や炎症性腸疾患を合併する。近年、IgG4関連の膵炎(LPSP)をAIP1型、好中球病変の膵炎(IDCP)をAIP2型と分類するようになった。本稿では、主に1型について概説する。■ 疫学わが国で2016年に行われた全国調査では、AIPの年間推計受療者数は1万3,436人、有病率10.1人/10万人、新規発症者3.1人/10万人であり、2011年の調査での年間推計受療者数5,745人より大きく増加している。わが国では、症例のほとんどが1型であり、2型はまれである。■ 病因AIPの病因は不明であるが、IgG4関連疾患である1型では、免疫遺伝学的背景に自然免疫系、Th2にシフトした獲得免疫系、制御性T細胞などの異常が病態形成に関与する可能性が報告されている。■ 症状AIPは、高齢の男性に好発する。閉塞性黄疸で発症することが多く、黄疸は動揺性の例がある。強度の腹痛や背部痛などの膵炎症状を呈する例は少ない。無症状で、糖尿病の発症や増悪にて発見されることもある。約半数で糖尿病の合併を認め、そのほとんどは2型糖尿病である。2 診断 (検査・鑑別診断も含む)自己免疫性膵炎臨床診断基準2018(表)を用いて診断する。表 自己免疫性膵炎臨床診断基準2018【診断基準】A.診断項目I.膵腫大:a.びまん性腫大(diffuse)b.限局性腫大(segmental/focal)II.主膵管の不整狭細像:a.ERPb.MRCPIII.血清学的所見高IgG4血症(≧135mg/dL)IV.病理所見a.以下の(1)~(4)の所見のうち、3つ以上を認める。b.以下の(1)~(4)の所見のうち、2つを認める。c.(5)を認める。(1)高度のリンパ球、形質細胞の浸潤と、線維化(2)強拡1視野当たり10個を超えるIgG4陽性形質細胞浸潤(3)花筵状線維化(storiform fibrosis)(4)閉塞性静脈炎(obliterative phlebitis)(5)EUS-FNAで腫瘍細胞を認めない.V.膵外病変:硬化性胆管炎、硬化性涙腺炎・唾液腺炎、後腹膜線維症、腎病変a.臨床的病変b.病理学的病変VI.ステロイド治療の効果B.診断I.確診(1)びまん型 Ia+<III/IVb/V(a/b)>(2)限局型 Ib+IIa+<III/IVb/V(a/b)>の2つ以上またはIb+IIa+<III/IVb/V(a/b)>+VIまたはIb+IIb+<III/V(a/b)>+IVb+VI(3)病理組織学的確診 IVaII.準確診限局型:Ib+IIa+<III/IVb/V(a/b)>またはIb+IIb+<III/V(a/b)>+IVcまたはIb+<III/IVb/V(a/b)>+VIIII.疑診(わが国では極めてまれな2型の可能性もある)びまん型:Ia+II(a/b)+VI限局型:Ib+II(a/b)+VI〔+;かつ、/;または〕(日本膵臓学会・厚生労働省IgG4関連疾患の診断基準並びに治療指針を目指す研究班. 膵臓. 2020;33:906-909.より引用、一部改変)本症の診断においては、膵がんや胆管がんなどの腫瘍性の病変を否定することがきわめて重要である。診断に際しては、可能な限りのEUS-FNAを含めた内視鏡的な病理組織学的アプローチ(膵液細胞診、膵管・胆管ブラッシング細胞診、胆汁細胞診など)を施行すべきである。診断基準では、膵腫大、主膵管の不整狭細像、高IgG4血症、病理所見、膵外病変とステロイド治療の効果の組み合わせにより診断する。びまん性の膵腫大を呈する典型例では、高IgG4血症、病理所見か膵外病変のどれか1つを満たせばAIPと診断できる。一方、限局性膵腫大例では、膵がんとの鑑別がしばしば困難であり、従来の診断基準では内視鏡的膵管造影(ERP)による主膵管の膵管狭細像が必要であった。しかし、昨今診断的ERPがあまり行われなくなってきたことなどを考慮して、MR胆管膵管撮影(MRCP)所見、EUS-FNAによるがんの否定所見とステロイド治療の効果を組み込むことにより、ERPなしで限局性膵腫大例の診断ができるようになった。■ 膵腫大“ソーセージ様”を呈する膵のびまん性(diffuse)腫大は、本症に特異性の高い所見である。しかし、限局性(segmental/focal)腫大では膵がんとの鑑別が問題となる。腹部超音波検査では、低エコーの膵腫大部に高エコースポットが散在することが多い(図1)。腹部ダイナミックCTでは、遅延性増強パターンと被膜様構造(capsule-like rim)が特徴的である(図2)。画像を拡大する画像を拡大する■ 主膵管の不整狭細像ERPによる主膵管の不整狭細像(図3、4)は本症に特異的である。狭細像とは閉塞像や狭窄像と異なり、ある程度広い範囲に及んで、膵管径が通常より細くかつ不整を伴っている像を意味する。典型例では狭細像が全膵管長の3分の1以上を占めるが、限局性の病変でも、狭細部より上流側の主膵管には著しい拡張を認めないことが多い。短い膵管狭細像の場合には膵がんとの鑑別がとくに困難である。主膵管の狭細部からの分枝の派生や非連続性の複数の主膵管狭細像(skip lesions)は、膵がんとの鑑別に有用である。MRCPは、主膵管の狭細部からの分枝膵管の派生の評価は困難であることが多いが、主膵管がある程度の広い範囲にわたり検出できなかったり狭細像を呈する、これらの病変がスキップして認められる、また、狭細部上流の主膵管の拡張が軽度である所見は、診断の根拠になる。画像を拡大する画像を拡大する■ 血清学的所見AIPでは、血中IgG4値の上昇(135mg/dL以上)を高率に認め、その診断的価値は高い。しかし、IgG4高値は他疾患(アトピー性皮膚炎、天疱瘡、喘息など)や一部の膵臓がんや胆管がんでも認められるので、この所見のみからAIPと診断することはできない。今回の診断基準には含まれていないが、高γグロブリン血症、高IgG血症(1,800mg/dL以上)、自己抗体(抗核抗体、リウマチ因子)を認めることが多い。■ 膵臓の病理所見本疾患はLPSPと呼ばれる特徴的な病理像を示す。高度のリンパ球、形質細胞の浸潤と、線維化を認める(図5)。形質細胞は、IgG4免疫染色で陽性を示す(図6)。線維化は、紡錘形細胞の増生からなり、花筵状(storiform fibrosis)と表現される特徴的な錯綜配列を示し、膵辺縁および周囲脂肪組織に出現しやすい。小葉間、膵周囲脂肪組織に存在する静脈では、リンパ球、形質細胞の浸潤と線維化よりなる病変が静脈内に進展して、閉塞性静脈炎(obliterative phlebitis)が生じる。EUS-FNAで確定診断可能な検体量を採取できることは少ないが、腫瘍細胞を認めないことよりがんを否定できる。画像を拡大する画像を拡大する■ 膵外病変(other organ involvement:OOI)AIPでは、種々のほかのIgG4関連疾患をしばしば合併する。その中で、膵外胆管の硬化性胆管炎、硬化性涙腺炎・唾液腺炎(ミクリッツ病)、後腹膜線維症、腎病変が診断基準に取り上げられている。硬化性胆管炎は、AIPに合併する頻度が最も高い膵外病変である。下部胆管に狭窄を認めることが多く(図4)、膵がんまたは下部胆管がんとの鑑別が必要となる。肝内・肝門部胆管狭窄は、原発性硬化性胆管炎(primary sclerosing cholangitis:PSC)や胆管がんとの鑑別を要する。AIPの診断に有用なOOIとしては、膵外胆管の硬化性胆管炎のみが取り上げられている。AIPに合併する涙腺炎・唾液腺炎は、シェーグレン症候群とは異なって、涙腺分泌機能低下に起因する乾燥性角結膜炎症状や口腔乾燥症状は軽度のことが多い。顎下腺が多く、涙腺・唾液腺の腫脹の多くは左右対称性である。後腹膜線維症は、後腹膜を中心とする線維性結合織のびまん性増殖と炎症により、腹部CT/MRI所見において腹部大動脈周囲の軟部影や腫瘤を呈する。尿管閉塞を来し、水腎症を来す例もある。腎病変としては、造影CTで腎実質の多発性造影不良域、単発性腎腫瘤、腎盂壁の肥厚病変などを認める。■ ステロイド治療の効果ステロイド治療の効果判定は、画像で評価可能な病変が対象であり、臨床症状や血液所見は対象としない。ステロイド開始2週間後に効果不十分の場合には再精査が必要である。できる限り病理組織を採取する努力をすべきであり、ステロイドによる安易な診断的治療は厳に慎むべきである。3 治療 (治験中・研究中のものも含む)経口ステロイド治療が、AIPの標準治療法である。経口プレドニゾロン0.6mg/kg/日の初期投与量を2~4週間投与し、その後画像検査や血液検査所見を参考に約1~2週間の間隔で5mgずつ漸減し、3~6ヵ月ぐらいで維持量まで減らす。通常、治療開始2週間ほどで改善傾向が認められるので、治療への反応が悪い例では膵臓がんを疑い、再検査を行う必要がある。AIPは20~40%に再燃を起こすので、再燃予防にプレドニゾロン5mg/日程度の維持療法を1~3年行うことが多い(図7)。近年、欧米では、再燃例に対して免疫調整薬やリツキシマブの投与が行われ、良好な成績が報告されている。図7 AIPの標準的ステロイド療法画像を拡大する4 今後の展望AIPの診断においては、膵臓がんとの鑑別が重要であるが、鑑別困難な例がいまだ存在する。病因の解明と確実性のより高い血清学的マーカーの開発が望まれる。EUS-FNAは、悪性腫瘍の否定には有用であるが、採取検体の量が少なく病理組織学的にAIPと診断できない例があり、今後採取方法のさらなる改良が求められる。AIPでは、ステロイド治療後に再燃する例が多く、再燃予防を含めた標準治療法の確立が必要である。5 主たる診療科消化器内科、内分泌内科※ 医療機関によって診療科目の区分は異なることがあります。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)診療、研究に関する情報自己免疫性膵炎診療ガイドライン 2020(日本膵臓学会ホームページ)(医療従事者向けのまとまった情報)自己免疫性膵炎臨床診断基準[2018年](日本膵臓学会ホームページ)(医療従事者向けのまとまった情報)1)日本膵臓学会・厚生労働科学研究費補助金(難治性疾患等政策研究事業)「IgG4関連疾患の診断基準並びに治療指針の確立を目指す研究」班.自己免疫性膵炎診断基準 2018. 膵臓. 2018;33:902-913.2)日本膵臓学会・厚生労働省IgG4関連疾患の診断基準並びに治療指針を目指す研究班.自己免疫性膵炎診療ガイドライン2020. 膵臓. 2020;35:465-550.公開履歴初回2014年03月06日更新2016年03月22日更新2024年07月25日

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重度喘息へのICS/LABAは安全かつ適正か?/NEJM

 持続性喘息の患者に対し、吸入ステロイド薬(ICS)フルチカゾンと長時間作用性β2刺激薬(LABA)サルメテロールの併用投与は、フルチカゾン単独投与に比べ、死亡や気管内挿管などの重度喘息イベントのリスクを増大しないことが示された。米国グラクソ・スミスクライン社のDavid A. Stempel氏らが、1万1,679例を対象に無作為化試験を行った結果、明らかにされた。増悪リスクは、併用投与群が単独投与群に比べ約2割低かったという。喘息治療における安全かつ適正なLABAの使用については、広く議論されている。先行する2つの大規模臨床試験では、重篤な喘息関連イベントリスクがLABAと関連している可能性が報告されていた。NEJM誌オンライン版2016年3月6日号掲載の報告より。26週間投与し、安全性、有効性を比較 研究グループは、12歳以上の持続性喘息患者1万1,679例を対象に、多施設共同無作為化二重盲検試験を行った。被験者を無作為に2群に分け、一方の群にはフルチカゾン+サルメテロールを(サルメテロール・フルチカゾン群)、もう一方にはフルチカゾンのみを(フルチカゾン単独群)、それぞれ26週間にわたり投与し、サルメテロール・フルチカゾンのフルチカゾン単独に対する非劣性を検証した。 被験者は、試験開始前1年以内に喘息の増悪が認められたが、直前1ヵ月間には認められなかった者を適格とした。また、これまでに生死に関わるほど重篤な喘息発作や、不安定喘息が認められた人は、被験者から除外された。 主要安全性評価項目は、死亡、気管内挿管、入院を要した初回重篤喘息イベント。主要有効性評価項目は、初回喘息増悪とした。1回以上の喘息増悪、フルチカゾン単独群10%に対しサルメテロール併用群8% 重度喘息イベントが認められたのは、被験者全体で67例(74件)だった。そのうち、サルメテロール・フルチカゾン群は34例(36件)、フルチカゾン単独群は33例(38件)と両群で同等であり、サルメテロール・フルチカゾンの安全性に関する非劣性が示された(ハザード比:1.03、95%信頼区間[CI]:0.64~1.66、p=0.003)。 喘息関連死はなく、喘息による気管内挿管を行ったのは、フルチカゾン単独群の2例のみだった。重度喘息増悪の発症リスクは、サルメテロール・フルチカゾン群がフルチカゾン単独群より21%低かった(ハザード比:0.79、同:0.70~0.89)。1回以上の喘息増悪が認められたのは、フルチカゾン単独群597/5,845例(10%)だったのに対し、サルメテロール・フルチカゾン群は480/5,834例(8%)だった(p<0.001)。

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結局、喘息に対するICS/LABAは安全なのか?(解説:倉原 優 氏)-496

 現在、喘息に保険適用のあるLABA(長時間作用性β2刺激薬)の吸入薬は、サルメテロール(商品名:セレベント)1剤のみである。ほかのLABAはCOPDに対して用いられる。いずれのLABAについても、喘息に対して単独で使用することは勧められない。これは、LABAの使用によって喘息の死亡リスクが上昇したとするメタアナリシスと、FDAのアラートに基づく1)2)。そのため、「喘息にLABAはダメなんだ」と、世界中の呼吸器内科医にインプリンティングされてしまった。 しかし、喘息界でICS/LABA(吸入ステロイド・長時間作用性β2刺激薬合剤)の合剤が台頭し、吸入薬にLABAが含まれていても安全に使用できることがわかった。毒性の上乗せはほとんど観察されなかったのである。むしろ、ICS単剤と比べて、臨床アウトカムは非常によかった。 「LABA単独はNG、ICS/LABAの合剤はOK」。こうした考えが、現在の喘息治療の主流であろう。ICS/LABAが本当に安全かどうかしっかり確かめましょう、というのがこの試験の目的である。 この研究は、フルチカゾン+サルメテロールの併用治療、あるいはフルチカゾン単独治療のいずれかに割り付けたランダム化比較試験である。プライマリ安全性エンドポイントは、初回の重篤な喘息関連イベントとされた。1万例以上の患者が登録され、併用群の重篤な喘息関連イベントのハザード比は当該非劣性基準を満たした。つまり、ICS/LABAの併用は、ICS単剤と比較して懸念しなくてよいということである。また、重度の喘息発作のリスクは単独群よりも併用群で低かった。 非劣性マージンが本当に妥当なラインかどうか溜飲が下がらない気持ちもあったが、少なくともICS/LABAを使用することで明らかな悪影響はないだろう、と結論付けられた。現在の喘息治療で、治療ステップ2以上、とりわけ3以上のケースではICS/LABAは不可欠である。高用量ICSを長期に投与していると、どうしても合併症の懸念が生じる。日本では、ICS/LABAはあまり懸念されずに処方されている現状があるが、慎重な見方をしていた欧米の呼吸器内科医にとっては、ICS/LABAの処方を増やすきっかけになることだろう。

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