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ASCO2020レポート 肺がん

レポーター紹介2020年のASCO、とくに肺がん領域は、比較的おとなしいエビデンスの報告が主体であった昨年に比べ、新たな知見が数多く報告された。その中でも、JCOG1205/1206試験の釼持先生、NEJ026試験の前門戸先生、NivoCUP試験の谷崎先生など、日本人演者のOral presentationが数多く報告されたことは特筆に値する。肺がん全体では、ADAURA試験などの初めての報告、さらには、CheckMate 9LA、CTONG1104試験、CASPIAN試験、CheckMate227試験、KEYNOTE-189試験など重要な試験のフォローアップの報告に注目が集まった。今回はその中から、とくに注目すべき演題について概観したい。JCOG1205/1206試験JCOG肺がん外科グループ、肺がん内科グループのインターグループ試験として実施された、完全切除後の、肺の高悪性度神経内分泌腫瘍(HGNEC)を対象として、標準治療としてのシスプラチン+エトポシド、試験治療としてのシスプラチン+イリノテカンを比較する第III相試験の結果を、研究事務局の釼持先生が報告された。本試験では、完全切除後の肺HGNEC、病理病期StageI~IIIA、221例が1:1にランダム化され、無再発生存割合を主要評価項目として実施された。HGNECは小細胞肺がん、大細胞神経内分泌がんなどを含み、完全切除例は非常にまれである。当初全生存期間が主要評価項目とされていたが、想定よりも予後が良好であったことから無再発生存期間に変更されている。本試験は、残念ながら中間解析で主要評価項目である無再発生存期間での有効性を示すことができる可能性が低いことが判明し、無効中止とされ、現在は全生存期間のフォローアップを行っている。今回報告された無再発生存に関するデータでは、両群のハザード比が1.076、95%信頼区間0.666~1.738、3年の無再発生存割合が標準治療群で65.4%、試験治療群で69.0%という結果であり、無再発生存期間中央値は両群とも到達していない。全生存期間についても、結果が報告されているものの、両群で明らかな違いは認められなかった。有害事象に関しては、すでに知られているシスプラチン+エトポシド、シスプラチン+イリノテカンの毒性プロファイルが再現されていた。肺がんの中でも希少フラクションに該当する完全切除後のHGNECに対して、第III相試験が実施されたことは世界で初めての快挙であり、これまで観察研究や単群試験の結果に基づいて実施されてきたHGNECの術後療法に、明確なエビデンスが確立された重要な試験である。全生存期間についてのフォローアップは継続中であり、そちらの結果も注目されている。CASPIAN試験進展型小細胞肺がんを対象に、プラチナ+エトポシドを標準治療とし、デュルバルマブの追加、デュルバルマブ+tremelimumabの追加をそれぞれ評価する第III相試験がCASPIAN試験である。主要評価項目は全生存期間、副次評価項目に無増悪生存期間、奏効割合などが設定されている。すでにデュルバルマブの追加が、有意に生存を延長するという結果が報告されており、IMpower133試験の結果で承認されたアテゾリズマブに続き、近い将来デュルバルマブが進展型小細胞肺がんの初回治療において使用可能となる見込みである。今回の発表では、本試験のうち、デュルバルマブ+tremelimumabを使用する群に関する結果が示されている。主要評価項目の全生存期間において、ハザード比0.82、95%信頼区間0.66~1.00であり、これは事前に設定された有意水準をわずかに下回っており、デュルバルマブ+tremelimumabについては主要評価項目を達成できなかった。また、アップデートされたデュルバルマブを単独で追加する群も含めた3本の生存曲線の解析結果も示されており、免疫チェックポイント阻害剤の追加により全生存期間の利益が得られることは明確であったが、デュルバルマブに加えてtremelimumabまで追加することの意義は生存曲線から見ても明らかではなかった。今後、進展型小細胞肺がんの1次治療においても、複数の免疫チェックポイント阻害剤、具体的にはアテゾリズマブ、デュルバルマブの使い分けについての議論を行う必要がある。KEYNOTE-604試験進展型小細胞肺がんを対象として、標準治療としてのプラチナ+エトポシド療法に対して、ペムブロリズマブを追加することの意義を検証するために実施された第III相試験である。主要評価項目としては、無増悪生存期間、全生存期間がCo-primaryとして設定されており、無増悪生存期間にはα0.0048、全生存期間にはα0.0128がそれぞれ割り振られている。無増悪生存期間については、ハザード比0.75、95%信頼区間0.61~0.91であり、p値は0.0023と当初予定された有意水準を達成している。一方、全生存期間については、ハザード比が0.80、95%信頼区間0.64~0.98であり、p値は0.0164と一見すると有意であるように見えるものの、事前に設定された有意水準には到達しておらず、全生存期間については有効性を統計学的には示すことができなかった。この結果をどのように判断し、各国の規制当局がペムブロリズマブを承認するか否かは今後の情報を待ちたい。一方、無増悪生存、全生存の生存曲線を確認すると、いずれもIMpower133、CASPIANで示されたものと類似した形態を示しており、小細胞肺がんと非小細胞肺がんにおける免疫チェックポイント阻害剤の挙動の違いが明瞭に示される結果であり、興味深い。CTONG1104試験EGFR遺伝子変異陽性、完全切除後のN1-2非小細胞肺がん患者を対象に、ゲフィチニブを試験治療(24ヵ月)、シスプラチン+ビノレルビンを標準治療(4サイクル)として実施する第III相試験が、CTONG1104試験である。ADJUVANT試験とも呼ばれ、222例が登録されている。無病生存期間を主要評価項目とした本試験の結果は、すでに報告されている。今回アップデートされた無病生存期間の報告では、5年の無病生存割合が、ゲフィチニブ群で22.6%、シスプラチン+ビノレルビン群で23.2%であった。生存曲線を見ると、当初ゲフィチニブ群の無病生存が明らかに良い傾向であったが、最終的に生存曲線は重なり、ハザード比は0.56、95%信頼区間0.40~0.79という結果であった。今回報告された全生存期間については、生存曲線は当初ゲフィチニブ群がやや上回る傾向があったものの全体ではほぼ一致しており、ハザード比は0.92、95%信頼区間0.62~1.36という結果であった。5年生存割合は、ゲフィチニブ群で53.2%、シスプラチン+ビノレルビン群で51.2%であり、全生存期間においてゲフィチニブを術後療法として使用することの明確な意義は示されなかった。その背景として、シスプラチン+ビノレルビン群で再発した患者のうち、51.5%がゲフィチニブなどEGFR-TKIの治療を受けていることが指摘されている。ADAURA試験の結果が初めて報告される中、本試験の意義は大きい。とくに、無病生存期間でハザード比では明らかにゲフィチニブの有効性が示されながらも、5年無病生存割合ではシスプラチン+ビノレルビン群に追いつかれており、さらに、全生存期間でも両群に差がなかったことは注目すべき点である。これは、ゲフィチニブは無病生存期間を延長することにつながっているが、術後患者における根治率の向上には貢献していないあるいは、貢献していたとしても本試験の規模では検出できない程度のインパクトであることが示している。IV期非小細胞肺がんにおいてゲフィチニブに無増悪生存期間、全生存期間ともに勝利したオシメルチニブにより、異なる結果が得られるのか、ADAURA試験の結果とフォローアップデータに注目が集まる。ADAURA試験EGFR遺伝子変異陽性、完全切除後のStageIB、II、IIIA非小細胞肺がんを対象として、オシメルチニブを試験治療(36ヵ月)、プラセボと比較した第III相試験がADAURA試験である。プラチナ併用療法による標準的な術後療法を受けていない患者の登録も許容されており、両群とも約半数が術後療法を受けている。682例の患者が1:1で両群に割り付けられた、EGFR-TKIを用いた試験としては大規模な試験である。主要評価項目はII期、IIIA期の患者における無病生存割合、副次評価項目として全患者集団での無病生存期間、全生存期間などが設定されている。久しぶりにASCOのPlenaryで発表された本試験の無病生存期間は、ハザード比0.17、95%信頼区間0.12~0.23という驚異的な結果であり、36ヵ月時点でのオシメルチニブ群の無病生存割合が80%、プラセボ群の無病生存割合が28%という明らかな違いが示されている。IB期も含む全集団においても、オシメルチニブの無病生存割合は79%と変化しなかったが、プラセボ群では41%とIB期が入った分良好な結果が示されている。サブセット解析においても一様にハザード比の点推定値はオシメルチニブの有効性を示しており、IB期212例の結果もハザード比0.50、95%信頼区間0.25~0.96と、1をまたいでいないことは注目に値する。この点はステージ別の無病生存曲線でも詳細に示されており、最も大きな恩恵を得るのはIIIA期など、より進行した集団であった。幸いなことに、オシメルチニブ群において治療関連死が報告されていないことも重要である。全生存期間については、示された生存曲線は24ヵ月前後の部分でオシメルチニブ群がやや良好な傾向を示しており、ハザード比は0.40、95%信頼区間0.18~0.90と報告されているが、現時点でのイベントは全体で5%程度までしか到達しておらず、今後大きく変動しうる。本結果については、発表当初からASCOのVirtual meetingのコメント欄、さらにはSNSで多数の議論を呼んでおり、オシメルチニブを標準治療としてEGFR遺伝子変異陽性、完全切除後の集団における術後アジュバントに使用するべきという意見と、全生存期間の結果を待つべきとする意見がともに提示されている。前述のCTONG1104試験が222例の試験で、無病生存の生存曲線が最終的には重なり、全生存期間でも明らかな違いを示すことができなかったのに対し、ADAURA試験は700例弱の十分な検出力を持った試験である。この試験規模の違いにより、CTONG1104試験では示されなかった全生存期間でのベネフィットが、ADAURAで示されるのか、肺がんの専門家が固唾をのんで見守っている。NEJ026試験EGFR遺伝子変異陽性、根治放射線治療不能のIIIB期、IV期非小細胞肺がんを対象として、エルロチニブを標準治療に、エルロチニブ+ベバシズマブを評価した第III相試験がNEJ026試験である。同じレジメンを第II相試験で評価したJO25567試験は、無増悪生存期間で良好な結果を示したものの、当初予定されていなかった全生存期間の評価では、一部再同意の取得ができなかった患者のフォローアップができなかったなどの理由から、全生存に関しては満足できる評価が行われておらず、当初から全生存期間の評価を予定していたNEJ026試験の結果に注目が集まっていた。今回報告された全生存期間において、ハザード比は1.007、95%信頼区間0.681~1.490であり、生存曲線もほぼ重なっており、ベバシズマブを追加する明確な意義は示されなかった。サブグループ解析では、とくに無増悪生存期間の報告の際から注目されていた、EGFR遺伝子変異のタイプ別、具体的にはL858RとExon19delにおける効果の違いがOSで示されるのかが注目されたが、結果的にはいずれの変異でも全生存期間に明らかな違いは認められなかった。昨年初めて報告されたRELAY試験において、もう一つの血管新生阻害剤であるラムシルマブとエルロチニブの併用療法について、さらに大きなサンプルサイズでの検証が進められており、こちらの結果が今後の血管新生阻害剤とEGFR-TKI併用の評価を分ける重要な試験となる。さらに、血管新生阻害剤とオシメルチニブの併用療法についても、Phase III含めいくつもの試験が開始されており、TKIの違いにより異なる結果が得られうるのか、注目されている。CheckMate 9LA試験IV期あるいは再発のEGFR陰性、ALK陰性の非小細胞肺がんを対象として、初回治療におけるプラチナ併用療法とニボルマブ+イピリムマブの有効性を、標準治療としてのプラチナ併用療法と比較する第III相試験がCheckMate 9LA試験である。主要評価項目は全生存期間とされており、副次評価項目に無増悪生存期間などが設定されており、719例が登録され、全生存期間について最短でも12.7ヵ月のフォローアップがされた時点での結果が報告されている。ニボルマブ+イピリムマブのみでも化学療法に勝る結果がCheckMate227試験で報告されている中、プラチナ併用療法を2サイクル追加することにより、治療開始直後の生存曲線の落ち込み、すなわち、早期にPDとなり免疫チェックポイント阻害剤の恩恵を受けられない可能性がある患者集団を意識したレジメンとなっている。全生存期間における目標ハザード比0.75を、α0.05(両側)、検出力81%で検定し、全生存期間が統計学的に有意と示された場合はヒエラルキカルに無増悪生存期間、奏効割合の検定に進むという、ほかのニボルマブ+イピリムマブ関連の試験に比べるとシンプルな試験設定が採用されている。アップデートされた全生存期間では、生存曲線もきれいに分かれ、打ち切りを多数認めるものの、いわゆるTail plateauのような雰囲気が示されている。ハザード比は0.66、95%信頼区間0.55~0.80であり、12ヵ月時点での生存割合が試験治療群で63%、標準治療群で47%と全生存期間での試験治療の意義が確認された。この結果は、組織型、PD-L1の発現割合別のそれぞれのサブセットでもほぼ再現されており、とくにPD-L1陰性の集団においても、全生存期間での明確なベネフィットが示されている。ニボルマブ+イピリムマブということで、有害事象にも注目が集まり、やはり免疫関連有害事象の頻度は多いものの、ほかの免疫チェックポイント阻害剤と比較して根本的に異なる結果ではなかった。ただ、今回の報告では比較的有害事象に関する内容はシンプルであり、今後の追加報告に期待したい。また、別途報告されたCheckMate227試験の3年フォローアップ結果とも併せて、とくにPD-L1のサブセットによらない有効性という点でニボルマブ+イピリムマブの特性が示されている。今後本試験レジメン、ニボルマブ+イピリムマブが初回治療の選択肢として加わった場合の使い分けについて、今後さらに議論が続くものと思われる。KEYNOTE-189ポスター発表ではあるものの、KEYNOTE-189試験の“Final analysis”が報告されている。PD-L1発現レベルによらず、進行期、非扁平上皮非小細胞肺がんを対象として、プラチナ+ペメトレキセドに対して、ペムブロリズマブの上乗せを検証した第III相試験である。すでに試験内容については各所で報告されている。今回のアップデートでは、全生存期間についてフォローアップ期間が延長された結果が示されている。とくに注目されたのは、いわゆるTail plateauと呼ばれる、ペムブロリズマブにより長期の効果が得られる患者集団が存在することによる効果が、プラチナ+ペメトレキセドの上乗せによりさらに強化されるのか、それともペムブロリズマブ単剤と大きく異ならないのかという点であった。今回の発表において、PD-L1 50%以上の集団においては、生存曲線の後半が平坦になる雰囲気が出現しているものの、そのほかのサブセットではその気配はまだ認められていない。さらに、PD-L1 50%以上のサブセットにおいて、フォローアップ後半戦の生存割合、すなわちtailの高さに着目すると、ペムブロリズマブ単剤のKEYNOTE-024試験(全体集団)とはほぼ同等であり、KEYNOTE-042試験(PD-L1 50%以上のサブセット)よりは良い結果が得られている。試験に参加した患者集団が異なるため、試験間の比較は意味を持たないとはわかりつつも、KEYNOTE-189試験の長期フォローの結果は、とくにPD-L1高発現の患者において、免疫チェックポイント阻害剤にプラチナ併用療法を加える意義があるか否かについての議論で、注目され続けるものと考えられる。NivoCUP試験肺がんの話題から少し離れるものの、NivoCUP試験については本稿でも触れておきたい。本試験は、原発不明がんの患者を対象としたPhase II、医師主導治験であり、研究事務局の近畿大学の谷崎 潤子先生が報告されている。原発不明がんの精査のために、十分な組織診断、画像診断に加え、各診療科の診察を受けることが規定され、その結果をもって原発不明がんと診断された55例の患者が登録されている。無治療でも登録可能ではあるが、統計学的設定は既治療例を対象に組まれており、主要評価項目である奏効割合の期待値が20%、閾値が5%、α0.025(片側)、検出力80%で、38例の登録を目指し、実際は45例が登録された。この既治療45例での奏効割合は22.2%、95%信頼区間は11.2~37.1、CR 4.4%、PR 17.8%、SD 31.1%という結果であり、主要評価項目を達成している。同集団における無増悪生存期間は4.0ヵ月、全生存期間は15.9ヵ月であった。原発不明がんという治療選択肢が限定され、治療開発の対象となりにくい集団において、免疫チェックポイント阻害剤の有効性を示した試験の価値は高く、本試験の結果に基づき国内でニボルマブが原発不明がんにおいて保険診療で使用可能となることが期待される。企業の治療開発の対象となりにくい希少フラクションを対象として、患者に近い研究者が医師主導治験を実施し、Unmet needsを解消しようとする非常に良い事例である。さいごに残念ながら完全にVirtual開催となったASCOであるが、報告された知見には肺がんの日常診療を刷新させうる内容が含まれていた。Virtual meetingのシステムもおおむね安定しており、情報を得るという意味ではこの開催方法も一定の評価を受けるものと思われるが、発表者、また多数のエキスパートが一堂に会する中で、目の前で報告される新たなエビデンスについて議論する場として、Virtualな会議室はまだまだ不十分な点が多いと感じたことも確かであった。昨今の状況が一刻も早く解決され、会場に集えない方がVirtualで、また、会場に集える場合は現地で、同じように最新のエビデンスを体感できる時代が来ることを祈念している。

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EGFR陽性肺がんに対するゲフィチニブのアジュバント(CTONG1104試験)/ASCO2020

 病理病期II~IIIAで、完全切除を受けたEGFR変異陽性の非小細胞肺がん(NSCLC)患者に対する術後療法としての、標準的なプラチナ併用化学療法とゲフィチニブの比較試験の全生存期間(OS)に関する報告が、米国臨床腫瘍学会年次総会(ASCO20 Virtual Scientific Program)で中国・Guangdong Lung Cancer InstituteのYi-Long Wu氏より発表された。 本試験は中国国内で実施された多施設共同オープンラベルの第III相無作為化比較試験であり、無病生存期間(主要評価項目)の有意な改善に関する報告は2017年のASCOで既になされている。今回の発表はOSの最終解析報告である。・対象:病理病期II~IIIA(N1-N2)で完全切除を受けたEGFR変異陽性のNSCLC症例・試験群:ゲフィチニブ250mg/日 2年間(Gef群)・対照群:ビノレルビン25mg/m2(day1、day8)+シスプラチン75/m2(day1)3週ごと4サイクル(VP群)・評価項目:[主要評価項目]無病生存期間(DFS)[副次評価項目] OS、5年OS率、3年および5年DFS率、安全性、QOLなど 主な結果は以下のとおり。・2011年9月〜2014年4月にGef群111例、VP群111例の計222例が登録された(ITT集団)。そのうちGef群106例、VP群87例が薬剤投与を受けた(per protocol[PP]集団)。・データカットオフ時(2020年4月)の追跡期間中央値は80.0ヵ月であった。・ITT集団、PP集団共に両群間に患者背景の偏りはなかった。・ITT集団におけるOS中央値は、Gef群75.5ヵ月、VP群62.8ヵ月で、ハザード比(HR)は0.92(95%CI:0.62~1.36)、p=0.674であった。5年時OS率はGef群53.2%、VP群51.2%であった。PP集団におけるOS中央値、5年時OS率も、ほぼ同様の数値であった。・年齢、性別、リンパ節転移状況などのサブグループ解析においても、両群間に有意な差はなかった。・ITT集団における3年時DFSはGef群39.6%、VP群32.5%、5年時DFSはGef群22.6%、VP群23.2%であった。また、PP集団における3年時DFSおよび5年時DFS率もほぼ同様であった。・ゲフィチニブの服用期間別にOSをみた事後解析では、18ヵ月以上のゲフィチニブの内服がある集団では、そのOS中央値は未到達、18ヵ月未満のゲフィチニブの内服集団では、OS中央値は35.7ヵ月でHR0.38(95%CI:0.22~0.66)、p

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ASCO2020レポート 消化器がん(胆膵がん)

レポーター紹介2020年のASCOは、2020年5月29日からWebで開催された。これは、COVID-19の影響で、Virtual meetingとなったためである。Virtual meetingとは、Oral presentation、Poster discussion、Poster presentationもすべてASCOのWeb site上にスライドがUploadされ、発表者が発表内容を録音しているものを聞くだけで、相互のDiscussionがあるわけではない。Oral presentationとPoster discussionにはDiscussantが付いていて、それぞれの演題にコメントをしているが、質疑応答があるわけでもなく、ちょっと物寂しい感じが否めなかった。私も気合を入れて、現地時間の朝8時(日本時間の5月30日の夜中12時)からの開催に胸を弾ませスタンバっていたが、その前からスライドは閲覧可能であり、先んじて見ることができた。むしろ夜中12時からはアクセスが集中し過ぎて、ASCOのサイトに入れない状況であり、なんだか肩透かしを食らった感じであった。今年のASCOのテーマは「Unite & Conquer: Accelerating progress together」で、「皆で団結して、がんを征服しよう:共に進歩を加速させよう」ということで、がん研究を一緒に分かち合い、国際的な共同研究を行い、がんの克服を目指して、協力していこうという、会長の意思がよくわかる学会である。そして、本学会の会長はHoward A. Burris III先生であり、膵がんを担当している先生なら知らない人はいないはず。そうです、1997年にゲムシタビンと5FUの比較試験の報告をした先生であり、とうとう会長にまで登り詰めたんだと、非常に感慨深いものがあった。さて、今年の胆膵領域では、Oral presentationで膵がんが2演題、Poster discussionで膵がんが2演題、胆道がんが1演題、胆膵がんその他が1演題、取り上げられていた。Poster発表では、膵がんが28演題、胆道がんは14演題、神経内分泌腫瘍は8演題などであった。やはり膵がんは全世界的にも患者は増加傾向であり、治療成績も十分ではないため、喫緊の課題である。このことを反映してか演題数も多かった。とくに、Trial in progressの発表は膵がんが14演題と圧倒的に多く、次いで胆道がんが5演題、神経内分泌腫瘍が1演題であった。やはり、今後の開発は膵がんが圧倒的に注目されていることを表す結果だと思われた。膵がんmFOLFIRINOX療法とゲムシタビン+ナブパクリタキセル併用療法による周術期化学療法の比較試験(SWOG S1505) 1)膵がんの周術期の治療は、日本ではPrep02/JSAP05試験により、ゲムシタビン(Gem)+S-1併用療法による術前補助化学療法と、S-1による術後補助化学療法が標準治療となったが、世界的には術前化学療法は標準治療としては確立していない。しかし、術前補助化学療法は、早期から遠隔転移を抑制することができ、化学療法を効率よく行うことができ、切除を行ってもすぐに再発するような予後不良な患者を除外することができ、真に切除が必要な患者を選択できるため、臨床試験としてさまざまな取り組みが世界中で試みられている。本試験は、術前術後の補助化学療法として、modified FOLFIRINOX(mFFX)とGem+ナブパクリタキセル(Gem+nab-PTX)を比較したランダム化第II相試験(SWOG S1505)であった。主な適格規準は、膵がんに対する治療歴がない切除可能膵がん患者である。mFFX(フルオロウラシル 2,400mg/m2、オキサリプラチン 85mg/m2、イリノテカン 180mg/m2、2週ごと)とGem+nab-PTX(Gem 1,000mg/m2、ナブパクリタキセル 125mg/m2、3投1休)に1対1の割合で割り付けられた。術前化学療法を12週行った後に画像評価し、切除可能と判断された場合は切除を行い、さらに術後に術前と同じレジメンの化学療法を12週間行った。主要評価項目は2年生存割合として、閾値を40%とし、検出力88%、片側αを0.05として、期待値58%を超えた治療を有望な治療と判断することとした。2015年10月から登録を開始し、2018年4月に147例の集積が完了し、最終的に102例の適格症例が登録された。mFFX群に55例、Gem+nab-PTX群に47例が割り付けられた。2年生存割合はmFFX群が43.1%、Gem+nab-PTX群が46.9%であり、両群とも閾値の40%を統計学的有意に超えることができなかった。全生存期間(中央値)は22.4ヵ月および23.6ヵ月であった。外科切除を行った患者のうち、R0切除割合は両群ともに85%であり、N0で切除できた症例はそれぞれ40%および45%であった。病理学的奏効割合はmFFX群が25%に対して、Gem+nab-PTX群が42%と若干良好であり、その分、術後の無病生存期間もmFFX群10.9ヵ月に対して、Gem+nab-PTX群14.2ヵ月と良好であった。有害事象は両群ともに同様であり、忍容可能と考えられた。コメント本試験の結果、両群ともに期待値に到達せず、“no winner(勝者はなし)”という結果になった。病理学的奏効割合はGem+nab-PTX群が40%と、mFFXの25%よりも良好であった。術後補助療法では有意な結果を示せなかったGem+nab-PTXであるが、術前補助療法としての有用性はまだ期待できる可能性が示された。本試験では、術前化学療法の有効性を示すことはできなかったが、現在、mFFXの術後治療6ヵ月と術前4ヵ月+術後2ヵ月を比較したAlliance 021806試験が進行中であり、その結果が待たれるところである。切除境界可能膵がんに対するImmediate surgeryとゲムシタビン+カペシタビン、mFFX、化学放射線療法の術前治療のランダム化第II相試験 2)切除境界可能膵がん(BR膵がん)に対するImmediate surgery(術前治療を行わない群)とゲムシタビン+カペシタビン(Gem+Cape)、mFFX、化学放射線療法の4群を比較し、どの術前治療が有効かを明らかにするランダム化第II相試験であった。主要評価項目は、R1+R0切除割合と症例集積割合で、副次評価項目は、R0切除割合、有害事象と全生存期間であった。主要評価項目のR1+R0切除割合は、Immediate surgery群で62%、術前治療群(Gem+Cape、mFFX、化学放射線療法をあわせた群)で55%であり、有意差は認めなかった(p=0.668)。また、R0切除割合もImmediate surgery群で15%、術前治療群で23%であり、有意差は認めなかった(p=0.721)。症例集積割合は、1年当たり20.74例であり、症例集積にはかなりの時間を要することが示された。12ヵ月生存割合は、Immediate surgery群で42%、術前治療群で77%であり、有意に良好であった(ハザード比:0.28、95%信頼区間[CI]:0.14~0.57、p<0.001)。また、術前治療別の12ヵ月生存割合は、Gem+Capeが79%、mFFXが84%、化学放射線療法が64%であり、mFFXが最も良好であった。Immediate surgery群と術前治療群で、切除率に差は認めなかったが、12ヵ月生存割合は術前治療で有意に良好であり、なかでもmFFXが最も良好な治療成績であった。BR膵がんに対しては、術前治療を行うことを考慮すべきであり、レジメンとしてはmFFXが良好な可能性が示された。コメント著者らは術前治療推しの結語にしているが、実際には主要評価項目は達成しておらず、副次評価項目である生存期間が良好であったのが、術前治療であったため、BR膵がんに対しては術前治療を行うことを考慮すべきと結論付けている。少しずるい感じは否めないが、BR膵がんに対するUpfront surgeryと術前化学放射線療法を比較したランダム化比較試験の結果も術前治療群で有意に良好な結果が報告されているため、その結果に引っ張られる形での結語になっている。世の中の流れ的にも、BR膵がんは術前治療ありきだし、レジメンとしても最強なレジメンであるmFFXを考慮することは十分考えられうることであり、この結語に対する皆の受け入れは良いと思われる。ESPAC-4:術後補助化学療法Gem+Cape vs.Gemの第III相試験の5年後の経過観察 3)術後補助化学療法の第III相試験(ESPAC-4)において、Gem+Cape群は、Gem群と比べて有意に良好な生存期間が示され、標準的な術後補助化学療法として確立している。今回は、ESPAC-4試験の5年の長期経過観察後の結果の発表であった。Gem群366例、Gem+Cape群364例が解析対象であり、生存期間(中央値)はGem群26.0ヵ月、Gem+Cape群27.7ヵ月であり、有意差が得られたままであった(ハザード比:0.84、95%CI:0.70~0.99、p=0.049)。多変量解析においても、切除断端陽性、術後CA19-9高値、術前CRP高値、低分化型、リンパ節転移陽性、最大腫瘍径と共に、有意な予後因子として、術後補助化学療法が選択された。術後補助化学療法のGem+CapeはGemと比べて有意に生存期間の延長に寄与することが、長期経過観察の結果からも示された。コメント大規模な術後補助化学療法の5年の長期経過観察後の発表であるが、とくに驚くことのない試験結果であり、この演題がPoster discussionであることのほうがむしろ驚きである。今年はあまり採択すべき演題がなかったのかなと思ってしまった。膵がん切除後補助化学療法Gem+nab-PTX vs.Gem aloneの第III相試験(APACT)の生存期間のUpdateと地域ごとの治療成績 4)ちょうど1年前のASCOで発表された、膵がん切除後の補助化学療法としてのGem+nab-PTXとGem aloneを比較した第III相試験(APACT)の結果は、主要評価項目である中央判定による無病生存期間の延長は認めなかったため、標準的な術後補助化学療法としては位置付けられていない。しかし、副次評価項目である全生存期間の延長を認めており、担当医判断の無病生存期間においても有意な差が認められていたため、中央判定が良くなかったのではないかとまで言われている試験であった。この試験は、全世界179施設、21ヵ国で行われたGlobal試験であり、今回、このAPACT試験の生存期間のUpdateと地域ごとの治療成績の違いについて発表された。膵がん(T1-3、N0-1、M0)に対してR0またはR1切除を行い、術後に再発を認めず、CA19-9が100 U/mL未満に低下した患者をGem+nab-PTX群432例とGem alone群434例にランダムに割り付けた。Updateされた全生存期間(中央値)は、Gem+nab-PTX群41.8ヵ月とGem alone群37.7ヵ月であり、ハザード比0.82(95%CI:0.687~0.973、p=0.232)と、主解析時点と同様の結果が得られた。欧州、北米、アジア、オーストラリアの4地域における患者背景、生存期間、有害事象の違いも報告された。患者背景では、オーストラリアの患者でPerformance statusが0の患者とR0切除割合がGem+nab-PTX群で低率であったこと以外は両群で有意差は認めなかった。また、地域ごとの違いでは、アジアの患者で、R0切除、N0の患者が最も多く認められ、投与状況では累積投与量がアジアの患者でやや多かった。生存期間は、どの地域でもGem+nab-PTX群で良好な傾向が認められており、地域によらず一定の効果が認められた。Gem+nab-PTXの生存期間(中央値)は、欧州41.8ヵ月、北米38.5ヵ月、アジア46.8ヵ月、オーストラリア31.5ヵ月と患者背景を反映してか、アジアで良好であった。有害事象に関しては、これまでの報告と同様にGem+nab-PTX群でGrade3以上の治療関連有害事象発現割合が高く、その内訳は好中球減少、貧血、白血球減少、末梢神経障害、疲労など、既知のものだった。また、地域ごとの違いはほぼ認められなかった。このように、4年の追跡調査結果は主解析と同様の結果であり、地域別の解析でも、全体での解析結果と同様の結果だった。コメント膵がん切除後の補助化学療法として、Gem+nab-PTXとGemを比較した第III相試験(APACT)の生存期間のUpdateの結果と地域による治療成績の違いを検討した結果が報告された。くしくも、このAPACT試験の生存期間のハザード比は0.82であり、ESPAC-4試験でPositiveな結果となったGem+Capeのハザード比0.84と同等からやや良好な結果が示されており、生存期間(中央値)もGem+nab-PTXは41.8ヵ月、Gem+Capeは27.7ヵ月であり、患者背景が違うため、単純に比較はできないが、APACT試験の結果が良好であった。あえてこのように並べて発表したのかはわからないが、Gem+nab-PTXの術後補助化学療法の有効性を示唆する結果であった。また、地域による治療成績の違いの検討は、肝細胞がんでは地域による違いが問題になることもあるが、膵がん切除後の補助化学療法においては、地域による患者背景や治療成績に違いはほぼないことがわかり、今後、Global試験を行ううえで、非常に重要な結果が示されたと考えている。胆道がん進行胆道がんの初回治療例に対するGem+Cisplatin+Durvalumab+Tremelimumab vs.Gem+Cisplatin+Durvalumabの第II相試験 5)切除不能または再発胆道がんの初回治療例に対して、Gem+Cisplatin(GC)+Durvalumab(D)+Tremelimumab(T)のバイオマーカーコホート30例とGC+Dコホート45例、GC+D+Tコホート46例の第II相試験の結果が韓国から報告された。奏効割合は、バイオマーカーコホート50.0%、GC+Dコホート73.4%、GC+D+Tコホート73.3%と非常に良好であり、奏効までの期間(中央値)も2.3ヵ月と良好であった。無増悪生存期間(中央値)と生存期間(中央値)はそれぞれ、バイオマーカーコホート13.0ヵ月と15.0ヵ月、GC+Dコホート11.0ヵ月と18.1ヵ月、GC+D+Tコホート11.9ヵ月と20.7ヵ月と、まだ打ち切り例が多いが、非常に良好な結果が報告された。バイオマーカーコホートで、1サイクル後のPD-L1の発現によって無増悪生存期間に違いが出る可能性が示唆された。全Gradeの有害事象は、悪心59.5%、好中球減少54.5%、掻痒55.4%に認めたが、忍容性は良好であったと解釈された。現在、GC+D vs.GCの第III相試験(TOPAZ-1: NCT03875235)が進行中であることが報告された。コメント胆道がんにおける免疫チェックポイント阻害剤は期待されており、GC+免疫チェックポイント阻害剤の併用療法の第III相試験がいくつか進行中である。今回、GCにDまたはD+Tを併用することで非常に良好な治療成績が報告されているが、現在、進行中の第III相試験は、GC+D vs.GC+プラセボの第III相試験(TOPAZ-1)であり、Tの併用はない。今後、GC+T+Dのレジメンの開発がどうなるのかは、まったくわからない状況であった。胆道がんに対するその他の治療開発は、1次治療としてGC+ペムブロリズマブvs.Gem+プラセボの第III相試験(KEYNOTE-966)、GC+Bintrafusp alfa(M7824)vs.GC+プラセボの第II/III相試験(Trap0055)が進行中であり、2次治療以降では、ゲムシタビン、シスプラチンおよびS-1の前治療歴がある胆道がん患者を対象としたニボルマブの治験、職業関連胆道がん患者を対象としたニボルマブ単剤による医師主導治験などが進行中であり、やはり注目度は高い。胆膵がんその他ctDNAと組織でのクリニカルシーケンスの比較:SCRUM-Japan GI-Screen vs. GOZILA 6)SCRUM-Japanで行われてきた組織でのクリニカルシーケンス(GI-Screen)と血液でのctDNA(GOZILA)を比較した検討結果が、JCOG肝胆膵グループの若手のホープである国立がん研究センター中央病院の大場先生から報告された。SCRUM-Japanでは、消化器がんを中心にがん遺伝子のクリニカルシーケンスの研究として行ってきた。今回、組織でのクリニカルシーケンスであるGI-Screen研究に参加された2,952例と、リキッドバイオプシーであるctDNAによるがん遺伝子検査のGOZILA研究に参加された632例の患者背景、検査結果が判明するまでの時間、同定されたActionable遺伝子異常、臨床試験への参加割合と参加までの期間、臨床試験での奏効割合と無増悪生存期間を比較検討した。患者背景では、GOZILA研究に膵がんの患者が多く登録されており、膵がんは組織が採取しにくく、リキッドバイオプシーが好まれる傾向にあることが示された。検査結果が判明するまでの時間(中央値)は、GI-Screenでは37日、GOZILAでは12日と、GOZILAで有意に短かった(p1)Davendra Sohal, Mai T. Duong, Syed A. Ahmad, et al. SWOG S1505: Results of perioperative chemotherapy (peri-op CTx) with mfolfirinox versus gemcitabine/nab-paclitaxel (Gem/nabP) for resectable pancreatic ductal adenocarcinoma (PDA). J Clin Oncol 38: 2020 (suppl; abstr 4504)2)Paula Ghaneh, Daniel H. Palmer, Silvia Cicconi, et al. ESPAC-5F: Four-arm, prospective, multicenter, international randomized phase II trial of immediate surgery compared with neoadjuvant gemcitabine plus capecitabine (GEMCAP) or FOLFIRINOX or chemoradiotherapy (CRT) in patients with borderline resectable pancreatic cancer. J Clin Oncol 38: 2020 (suppl; abstr 4505)3)John P. Neoptolemos, Daniel H. Palmer, Paula Ghaneh, et al. ESPAC-4: A multicenter, international, open-label randomized controlled phase III trial of adjuvant combination chemotherapy of gemcitabine (GEM) and capecitabine (CAP) versus monotherapy gemcitabine in patients with resected pancreatic ductal adenocarcinoma: Five year follow-up. J Clin Oncol 38: 2020 (suppl; abstr 4516)4)Michele Reni, Hanno Riess, Eileen Mary O'Reilly, et al. Phase III APACT trial of adjuvant nab-paclitaxel plus gemcitabine (nab-P + Gem) versus gemcitabine (Gem) alone for patients with resected pancreatic cancer (PC): Outcomes by geographic region. J Clin Oncol 38: 2020 (suppl; abstr 4515)5)Do-Youn Oh, Kyung-Hun Lee, Dae-Won Lee, et al. Phase II study assessing tolerability, efficacy, and biomarkers for durvalumab (D) ± tremelimumab (T) and gemcitabine/cisplatin (GemCis) in chemo-naive advanced biliary tract cancer (aBTC). J Clin Oncol 38: 2020 (suppl; abstr 4520)6)Akihiro Ohba, Yoshiaki Nakamura, Hiroya Taniguchi, Masafumi Ikeda, et al. Utility of circulating tumor DNA (ctDNA) versus tumor tissue clinical sequencing for enrolling patients (pts) with advanced non-colorectal (non-CRC) gastrointestinal (GI) cancer to matched clinical trials: SCRUM-Japan GI-SCREEN and GOZILA combined analysis. J Clin Oncol 38: 2020 (suppl; abstr 3516)

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高悪性度神経内分泌肺がん術後補助療法、イリノテカン+シスプラチン vs.エトポシド+シスプラチン(JCOG1205/1206)/ASCO2020

 静岡県立静岡がんセンター呼吸器内科の釼持 広知氏は、高悪性度神経内分泌肺がん(HGNEC)の完全切除例に対するイリノテカン+シスプラチン(IP)療法とエトポシド+シスプラチン(EP)療法の無作為化非盲検第III試験(JCOG1205/1206)の結果を米国臨床腫瘍学会年次総会(ASCO20 Virtual Scientific Program)で発表。IP療法は従来標準治療とされてきたEP療法に対して無再発生存期間(RFS)で優越性を示せなかった。 世界保健機関(WHO)は、小細胞肺がん(SCLC)または大細胞神経内分泌肺がん(LCNEC)をHGNECと分類している。SCLCのStage1では手術と術後の補助化学療法が標準治療とされ、無作為化比較試験で評価された術後補助化学療法レジメンはないものの、EP療法が標準治療と考えられている。一方で進展型SCLCに対する日本国内での第III相試験ではEP療法に対するIP療法の優越性が示されている。・対象:完全切除された病理StageI〜IIIAのHGNEC221例・試験群:エトポシド+シスプラチン 3週ごと最大4サイクル(EP群、111例)・対照群:イリノテカン+シスプラチン 4週ごと最大4サイクル(IP群、110例)・評価項目:[主要評価項目]RFS[副次評価項目]全生存期間(OS)、治療完遂率、有害事象(AE)発現率、重篤AE発現率、二次がん発生率 主な結果は以下のとおり。・RFS中央値は両群とも評価不能。3年RFS率はIP群が69.0%、EP群が65.4%であった(ハザード比[HR]:1.076、95%CI:0.666~1.738、片側検定p=0.6185)。・組織学別の3年RFS率は、SCLCではIP群66.5%、EP群65.2%で(HR:1.029、95%CI:0.544~1.944)、LCNECではIP群72.0%、EP群66.5%であった(HR:1.072、95%CI:0.517~2.222)。・病期別の3年RFS率は、StageIではIP群83.0%、EP群68.9%で(HR:0.641、95%CI:0.288~1.426)、StageII~IIIAではIP群53.1%、EP群61.6%であった(HR:1.487、95%CI:0.806~2.740)。・3年OS率はIP群が79.0%、EP群が84.1%であった(HR:1.539、95%CI:0.760~3.117、両側検定p=0.2275)。・4サイクル治療完遂率はIP群が72.7%、EP群が87.4%であった(p=0.0071)。・Grade2以上のAE発現率はIP群が81.7%、EP群が84.4%。重篤なAE発現率はIP群が1.8%、EP群が2.8%であった。 今回の結果を受けて剱持氏は「HGNEC完全切除例ではいまだEP療法が標準治療である」との見解を示した。

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小細胞肺がんに対するデュルバルマブ+tremelimumab+化学療法の成績(CASPIAN)/ASCO2020

 スペイン・Hospital Universitario 12 de OctubreのLuis G. Paz-Ares氏は、進展型小細胞肺がん(ES-SCLC)の1次治療で免疫チェックポイント阻害薬の抗PD-L1抗体デュルバルマブ、抗CTLA-4抗体tremelimumabと化学療法の併用と、デュルバルマブ+化学療法、化学療法の3群を比較した第III相試験「CASPIAN」の結果を米国臨床腫瘍学会年次総会(ASCO20 Virtual Scientific Program)で報告した。同学会では、2つ目の実験群であるデュルバルマブ+tremelimumab+化学療法群の初回解析では全生存期間(OS)の有意な改善は認められなかったが、デュルバルマブ+化学療法では、11ヵ月追加した中央値25.1ヵ月の追跡結果においても、有意なOSの延長を示した。・対象:未治療のES-SCLC患者(WHO PS 0/1)、無症候性あるいは治療済みで安定している脳転移症例は許容・試験群: デュルバルマブ+エトポシド+シスプラチン/カルボプラチン(D+EP群) デュルバルマブ+tremelimumab+エトポシド+シスプラチン/カルボプラチン(D+T+EP群)・対照群:エトポシド+シスプラチン/カルボプラチン(EP群)・評価項目:[主要評価項目]OS[副次評価項目]無増悪生存期間(PFS)、奏効率(ORR)、患者報告アウトカム(PRO)、安全性、忍容性 PFSの検定は、上記2つの試験群のOSの有意差が確認された場合に解析される。 主な結果は以下のとおり。D+T+EP vs.EP・OS中央値はD+T+EP群10.4ヵ月、EP群10.5ヵ月、2年OS率はEP群14.4%、D+T+EP群23.4%であったが、事前のp値設定≦0.0418を達成せず、統計学的有意差は認められなかった。・PFS中央値はD+T+EP群4.9ヵ月、EP群が5.4ヵ月であった。・奏効期間(DoR)はD+T+EP群5.2ヵ月、EP群が5.1ヵ月であった。・ORRはD+T+EP群が58.4%、EP群が58.0%であった。D+EP vs.EP・OS中央値はD+EP群が12.9ヵ月(95%CI:11.3~14.7)、EP群が10.5ヵ月(95%CI:9.3~11.2)でD+EP群で有意な延長が認められた(HR:0.75、95%CI:0.62~0.91、p=0.0032)。2年後OS率は、EP群14.4%に対してD+EP群22.2%であった。・PFS中央値はD+EP群が5.1ヵ月(95%CI:4.7~6.2)、EP群が5.4ヵ月(95%CI:4.8~6.2)であった(HR:0.80、95%CI:0.66~0.96)。・DoRはD+EP群共に5.1ヵ月であった。・ORRはD+EP群が67.9%、EP群が58.0%であった。・有害事象(AE)発現率はD+T+EP群が99.2%、D+EP群が98.1%、EP群が97%で、Grade3~4のAE発現率はD+T+EP群が70.3%、D+EP群が62.3%、EP群が62.8%であった。・免疫関連AEは、D+T+EP群が36.1%、D+EP群が20.0%、EP群が2.6%であった。 今回の結果についてPaz-Ares氏は「D+EP群が進展型小細胞肺がんの1次治療で新たな標準治療となることをよ支持している」との見解を示した。

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第13回 抗がん剤の仕事場となる核内集落~COVID-19薬を撃ち込むべき集落も発見か

サラダドレッシングの油滴のように、周囲とは一線を画す核内のタンパク質凝集体―いわば分子の集落(condensate)が、抗がん剤シスプラチンの仕事場の役割を担い、その集落を崩壊させると同剤の効果もまた失われると分かりました1-3)。シスプラチンの仕事場を担う分子集落は、がん誘発遺伝子に主に関与するタンパク質MED1によって形成されます。シスプラチンはMED1が形成する核内集落に蓄積して、がん細胞を殺傷するためDNAへの白金原子付加に作用しますが、その作用はBRD4阻害薬JQ.1でMED1集落をばらすと失われました。MED1の核内集落は場合によっては逆に抗がん剤を効き難くもします。乳がん治療薬タモキシフェンはシスプラチンと同様にMED1集落に集まってエストロゲン受容体α(ERα)を締め出しますが、MED1過剰発現のせいでMED1集落が大きくなりすぎるとタモキシフェンが薄まってERαを締め出せなくなってしまいます。そのように抗がん剤にとって分子集落はときに諸刃の剣になるようですが、作用がどうなるかは別にして分子集落への蓄積は抗がん剤に共通する特徴のようです。米国・Whitehead Instituteで働く今回の研究のリーダーRichard Young氏等が調べた抗がん剤はどれも細胞内集落に集まりました4)。研究者は次の課題として薬が分子集落に集まる仕組みの解明に取り組んでいます。その法則が分かれば低分子化合物を目当ての場所に集中させることができます。Young氏の指揮の下で今回の成果を手にしたIsaac Klein氏をはじめとする研究チームは、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)にも2か月ほど前から取り組んでおり、まだ発表前ですが、その原因ウイルスSARS-CoV-2の複製装置であるタンパク質3つが、治療薬を吸収して濃縮しうる細胞内集落を形成することを発見しています4)。この発見により、ウイルス複製の場であるその集落に集まってRNA複製を阻害する低分子化合物探しを始めることが可能になりました。2018年にYoung氏は今回の研究の著者の1人でもあるドイツ・Max Planck Instituteの細胞生物学者Anthony(Tony) Hyman氏と一緒に、ボストンにDewpoint Therapeuticsを設立しました。Dewpoint社は病因の細胞内集落を崩壊させるあるいはそのような集落に蓄積する薬の開発に取り組んでいます。Dewpoint社の最高科学責任者(CSO)Mark Murcko氏は、これからは細胞内集落を無視した創薬はありえないとNatureに話しています。一方、細胞内集落の過信を危ぶむ研究者もいます。細胞内集落は体外でのみ観察される現象かもしれず、そこに投下する薬探しに熱中することはちょっと心もとない(bit of a house of cards)とカリフォルニア大学バークレー校の生化学者Robert Tjian氏は言っています。参考1)Klein IA,et al.Science.2020;368:1386-1392.2)How cancer drugs find their targets could lead to a new toolset for drug development / Eurekalert3)Viny AD,et al.Science.2020;368:1314-1315.4)How cells’ ‘lava lamp’ effect could make cancer drugs more powerful / Nature

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ペムブロリズマブ+化学療法による小細胞肺がん1次治療の結果は?(KEYNOTE-604)/ASCO2020

 米国・メモリアル・スローン・ケタリングがんセンターのCharles M. Rudin氏は、進展型小細胞肺がん(ES-SCLC)に対する1次治療における化学療法へのペムブロリズマブ併用効果を比較するプラセボ対照無作為化二重盲検第III相試験KEYNOTE-604の結果を米国臨床腫瘍学会年次総会(ASCO20 Virtual Scientific Program)で発表。化学療法単独に比べ、無増悪生存期間(PFS)は有意に改善するものの、全生存期間(OS)は有意差が示されなかったと報告した。・対象:期待余命3ヵ月以上で臓器機能が保持され、脳転移のない未治療のStage IVのES-SCLC患者、PS 0~1(453例)・試験群:ペムブロリズマブ200mg+化学療法(カルボプラチン/シスプラチン+エトポシド)、21日ごと4サイクル(ペムブロリズマブ群、228例)・対照群:プラセボ+化学療法(同上)(プラセボ群、225例)・評価項目:[主要評価項目]盲検下独立中央画像判定機関(BICR)評価によるPFS、OS[副次評価項目]奏効率(ORR)、奏効持続期間(DoR)、安全性 PFS優越性の閾値は、one-sided p=0.0048、OS優越性の閾値は、one-sided p=0.0128であった。 主な結果は以下のとおり。・ITT集団での中間解析のPFS中央値はペムブロリズマブ群4.5ヵ月、プラセボ群4.3ヵ月(ハザード比[HR]:0.75、95%信頼区間[CI]:0.61~0.91、p=0.0023)であった。・ITT集団での最終解析のPFS中央値はペムブロリズマブ群4.8ヵ月、プラセボ群4.3ヵ月(HR:0.73、95%CI:0.60~0.88)であった。・ITT集団での最終解析のOS中央値はペムブロリズマブ群10.8ヵ月、プラセボ群9.7ヵ月(HR:0.80、95%CI:0.64~0.98、p=0.0164)であった。・最終解析でのORRはペムブロリズマブ群70.6%、プラセボ群61.8%であった。・DoR中央値はペムブロリズマブ群が4.2ヵ月、プラセボ群が3.7ヵ月であった。・As treated集団での有害事象は、Grade 3/4はペムブロリズマブ群が76.7%であった。

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尿路上皮がんに対するアベルマブのメンテナンスがOS改善(JAVELIN Bladder 100)/ASCO2020

 局所進行または転移のある尿路上皮がん(mUC)に対する1次化学療法後のメンテナンス療法としてのアベルマブの投与が、ベストサポーティブケア(BSC)に比べ全生存期間(OS)を有意に延長することが報告された。これは、JAVELIN Bladder 100試験の第1回中間解析結果で、米国臨床腫瘍学会年次総会(ASCO20 Virtual Scientific Program)において、英国・Barts Cancer InstituteのThomas Powles氏より発表された。本試験は、日本も参加した国際共同のオープンラベル第III相比較試験である。・対象:ゲムシタビン+シスプラチン/カルボプラチンによる1次治療に奏効(CR/PR/SD)した切除不能局所進行または転移を有する尿路上皮がん・試験群:アベルマブ10mg/kgを2週間ごと+BSC(Ave群)・対照群:BSC(BSC群)・評価項目[主要評価項目]割り付け全症例(ITT)におけるOSと、PD-L1陽性集団におけるOS[副次評価項目]無増悪生存期間(PFS)、奏効率、安全性など 主な結果は以下のとおり。・Ave群に350例、BSC群に350例が登録された。・データカットオフ(2019年10月)時点の観察期間中央値はAve群19.6ヵ月、BSC群19.2ヵ月であった。・PD-L1(SP263抗体)陽性率はAve群54%、BSC群48%で、1次化学療法の奏効率は、両群ともにCR/PRが72%、SDが28%であった。・ITT集団のOS中央値はAve群が21.4ヵ月、BSC群が14.3ヵ月で、ハザード比(HR)は0.69(95%CI:0.56~0.86)、p<0.001であった。18ヵ月OS率は、Ave群が61%、BSC群が44%であった。・PD-L1陽性集団のOS中央値はAve群が未到達、BSC群が17.1ヵ月で、HR 0.56(95%CI:0.40~0.79)、p<0.001であった。18ヵ月OS率は、Ave群が70%、BSC群が48%であった。・ITT集団のPFS中央値は、Ave群3.7ヵ月、BSC群2.0ヵ月、HR 0.62(95%CI:0.52~0.75)、p<0.001であった。12ヵ月PFS率は、Ave群30%、BSC群13%だった。・PD-L1陽性集団のPFS中央値は、Ave群5.7ヵ月、BSC群2.1ヵ月、HR:0.56(95%CI:0.43~0.73)、p<0.001であった。12ヵ月PFS率は、Ave群36%、BSC群5%だった。・メンテナンス療法中の奏効率は、ITT集団でAve群9.7%(CR 6.0%)、BSC群1.4%(CR 0.9%)で、PD-L1陽性集団ではAve群13.8%、BSC群1.2%であった。・メンテナンス療法後の薬物治療は、Ave群で42.3%、BSC群で61.7%が施行され、他の免疫チェックッポイント阻害薬の投与を受けた症例はそれぞれ、6.3%と43.7%であった。・治療関連有害事象による治療中止は、Ave群の11.9%に認められ、治療関連死は2例あった。免疫関連有害事象はGrade3が7.0%でGrade4以上の報告はなかった。 演者のPowles氏は、「白金製剤による1次治療後のアベルマブのメンテナンス投与は、進行性尿路上皮がんに対する新しい標準治療となり得る」と結んだ。

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veliparib、gBRCA変異のないBRCA-like型TN乳がんでPFS改善(SWOG S1416)/ASCO2020

 転移を有するトリプルネガティブ(TN)乳がんで、生殖細胞系列BRCA遺伝子(gBRCA)変異はないが、相同組み換え修復不全(HRD)スコアや体細胞系列BRCA1/2変異などの分析でBRCA-like型に分類された患者に対し、PARP阻害薬veliparibをシスプラチンに追加することで無増悪生存期間(PFS)が延長したことが、第II相SWOG S1416試験で示された。米国・University of Kansas Medical CenterのPriyanka Sharma氏が、米国臨床腫瘍学会年次総会(ASCO20 Virtual Scientific Program)で発表した。 PARP阻害薬は、gBRCA1/2変異のある進行乳がんでPFSを改善することが報告されている。また、TN乳がんの40~60%はHRDを示し、HRDはPARP阻害薬の感受性に関連することが示唆されている。・対象:転移/局所再発のTN乳がんまたはgBRCA1/2変異HER2陰性の進行乳がん患者・試験群:シスプラチン(75mg/m2)+veliparib(300mg経口投与、1日2回、Day 1~14)、3週ごと(veliparib群)・対照群:シスプラチン(75mg/m2)+プラセボ(プラセボ群)・評価項目:[主要評価項目]3グループ(gBRCA陽性、BRCA-like、非BRCA-like)におけるPFS[副次評価項目]奏効率(ORR)、全生存期間(OS)、クリニカルベネフィット率(CBR)、安全性 3グループの分類については、veliparib群とプラセボ群に割り付けた後にgBRCA検査を実施し、変異がない場合は追加のバイオマーカー分析(myChoiceによるHRDスコアが42以上、体細胞系列BRCA1/2変異、BRCA1遺伝子プロモーター領域のメチル化、生殖細胞系列の相同組み換え修復遺伝子変異)を実施し、gBRCA変異あり、BRCA-like(追加のバイオマーカー分析で陽性であった患者)、非BRCA-likeに分類した。 主な結果は以下のとおり。・無作為に割り付けられた335例中、321例(95.8%)が有効性評価の適格基準を満たした(veliparib 群161例[50.2%]、プラセボ群160[49.8%])。・平均年齢は56歳、TNBCが95%、白人が76%、未治療患者が69%であった。・gBRCA変異ありが37例(11.5%)、BRCA-like が99例(30.8%)、非BRCA-like が110例(34.3%)、未分類が75例(23.4%)であった。・gBRCA変異ありにおいて、veliparib群のPFS中央値が6.2ヵ月、プラセボ群6.4ヵ月で有意差が認められなかった(HR:0.66、95%CI:0.30~1.44、p=0.29)・gBRCA-likeにおいて、veliparib群のPFS中央値が5.9ヵ月、プラセボ群4.2ヵ月に比べて有意に延長した(HR:0.53、95%CI:0.34~0.83、p=0.006)。・非BRCA-like、未分類では、PFSの有意な改善は見られなかった。・サブグループ解析では、BRCA-likeにおいて、veliparibを1次治療で投与された患者のPFS中央値が、veliparib群が6.1ヵ月でプラセボ群の4.2ヵ月より有意に延長し(HR:0.49、95%CI:0.29~0.83、p=0.008)、OS中央値もveliparib群が17.8ヵ月とプラセボ群の10.3ヵ月より有意に延長した(HR:0.53、95%CI:0.28~0.99、p=0.048)。さらにHRDスコアが42以上のPFS中央値も、プラセボ群4.2ヵ月に対してveliparib群6.1ヵ月と有意に延長していた(HR:0.53、95%CI:0.31~0.89、p=0.016)。・Grade3/4の有害事象は、好中球減少症(46% vs.19%)、貧血(23% vs.7%)、白血球減少症(27% vs.7%)、血小板減少症(19% vs.3%)において、veliparib群でプラセボ群より有意に発現率が高かった(すべてp<0.001)。 Sharma氏は、gBRCA変異ありのグループで有意差が見られなかった理由として、患者数が37例と少ないことによるパワー不足を挙げ、第III相BROCADE3試験ではveliparibの追加でPFSが改善していることを紹介した。最後に、BRCA-likeのTN乳がんにおける有効性を示した本試験は、PARP阻害薬の役割をgBRCA変異を越えて広げるための大きな前進である、と結んだ。

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転移性尿路上皮がんに対するアテゾリズマブの1次治療としての有効性:第III相多施設ランダム化比較試験(IMvigor130)(解説:宮嶋哲氏)-1235

 本邦において現在、転移性尿路上皮がんに対する1次治療はゲムシタビンとシスプラチン併用療法(GC療法)であるが、治療中に再発を来すことはまれではない。2次治療として免疫チェックポイント阻害薬(immune checkpoint inhibitor:ICI)が期待されているが、本邦ではペンブロリズマブが唯一承認されている。アテゾリズマブは、転移性尿路上皮がんに対する2次治療としてICIの中で初めて有用性が示され、2018年にFDAに承認されたICIである。 本研究は、2016年からの2年間に転移性尿路上皮がんを対象に1次治療としてアテゾリズマブの有効性について検討を行った第III相国際多施設ランダム化比較試験(IMvigor130)である。1,213例を対象に、アテゾリズマブ+プラチナ製剤併用、アテゾリズマブ単剤、プラセボ+プラチナ製剤併用の3群にランダム化している。 ITT populationにおけるPFSの中央値は、アテゾリズマブ+プラチナ製剤併用8.2ヵ月、プラセボ+プラチナ製剤併用6.3ヵ月であった(HR:0.82)。OSの中央値は、アテゾリズマブ+プラチナ製剤併用16.0ヵ月、プラセボ+プラチナ製剤併用13.4ヵ月であったが(HR:0.83)、アテゾリズマブ単剤とプラセボ+プラチナ製剤併用の比較では15.7ヵ月vs.13.1ヵ月であった(HR:1.02)。投薬中止となる有害事象は、アテゾリズマブ+プラチナ製剤併用で34%、アテゾリズマブ単剤で6%、プラセボ+プラチナ製剤併用で34%の患者で認められた。転移性尿路上皮がん患者への1次治療で、プラチナ製剤にアテゾリズマブを併用することでPFSの延長が示され、新規治療オプションとしての可能性が示された。サブグループ解析では、がん組織におけるPD-L1の発現レベルによる各群の生存率への影響を検討しているが、PD-L1の発現レベルによってアテゾリズマブ単剤群の描く生存曲線が明らかに異なる点は大変興味深い。

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転移を有する尿路上皮がん1次治療、アテゾリズマブ併用でPFS延長(IMvigor130)/Lancet

 転移を有する尿路上皮がんの1次治療において、抗PD-L1ヒト化モノクローナル抗体製剤アテゾリズマブとプラチナ製剤ベースの化学療法の併用療法は、プラチナ製剤ベースの化学療法単独に比べ無増悪生存(PFS)期間を延長し、安全性プロファイルは化学療法単独とほぼ同様であることが、米国・マウント・シナイ・アイカーン医科大学のMatthew D. Galsky氏らの検討「IMvigor130試験」で示された。研究の成果は、Lancet誌2020年5月16日号に掲載された。プラチナ製剤ベースの化学療法は免疫調節作用を誘導するため、PD-L1およびPD-1の遮断を増強するなど、PD-L1/PD-1阻害薬との有益な併用効果がいくつか示されている。2018年7月、本試験の独立データ監視委員会(IDMC)による計画外の早期解析の結果に基づき、米国食品医薬品局(FDA)と欧州医薬品庁(EMA)は、転移を有する尿路上皮がん(PD-L1発現腫瘍)の1次治療におけるアテゾリズマブの処方を承認しており、今回は、PFSの最終解析と全生存(OS)の中間解析の結果が報告された。IMvigor130試験には35ヵ国221施設が参加 IMvigor130試験は、日本を含む35ヵ国221施設が参加した無作為化第III相試験であり、2016年7月~2018年7月の期間に患者登録が行われた(F. Hoffmann-La RocheとGenentechの助成による)。 対象は、年齢18歳以上、未治療の局所進行・転移を有する尿路上皮がんで、全身状態(ECOG PS)が≦2の患者であった。 IMvigor130試験で被験者は、アテゾリズマブ+プラチナ製剤ベースの化学療法(シスプラチンまたはカルボプラチン+ゲムシタビン)(A群)、アテゾリズマブ単独(B群)、プラセボ+プラチナ製剤ベースの化学療法(C群)を受ける群に無作為に割り付けられた。 治療は、21日を1サイクルとし、担当医評価で増悪となるか、許容できない毒性が発現するまで継続された。アテゾリズマブは、各サイクルの第1日に1,200mgが静脈内投与された。 有効性の主要エンドポイントは、intention-to-treat集団における担当医評価によるPFS期間とOS期間の2つ(A群とC群の比較)、およびOS期間(B群とC群の比較)とした。IMvigor130試験のPFS期間中央値:A群8.2ヵ月vs.C群6.3ヵ月 IMvigor130試験には1,213例が登録され、A群に451例(37%、年齢中央値69歳[IQR:62~75]、女性25%)、B群に362例(30%、67歳[62~74]、23%)、C群には400例(33%、67歳[61~73]、26%)が割り付けられた。原発巣は、膀胱がそれぞれ69%、73%、73%を占めた。追跡期間中央値は11.8ヵ月(IQR:6.1~17.2)だった。 シスプラチン不適格例(Galsky基準)は、A群が263例(58%)、B群が192例(53%)、C群は222例(56%)であった。担当医の選択で、カルボプラチンの投与を受けたのは、A群が314例(70%)、C群は264例(66%)であった。 PFSの最終解析とOSの中間解析が行われた2019年5月31日の時点で、PFS期間中央値はA群が8.2ヵ月と、C群の6.3ヵ月に比べ有意に延長した(層別化ハザード比[HR]:0.82、95%信頼区間[CI]:0.70~0.96、片側検定のp=0.007)。このPFS期間に関する治療効果は、すべてのサブグループで一貫してA群で良好であった。 また、OS期間中央値は、A群が16.0ヵ月、C群は13.4ヵ月であった(層別化HR:0.83、95%CI:0.69~1.00、片側検定のp=0.027)。 B群とC群の比較では、OS期間中央値はB群が15.7ヵ月、C群は13.1ヵ月であった(層別化HR:1.02、95%CI:0.83~1.24)。PD-L1の発現状況別のOS期間のサブグループ解析では、IC2/3(PD-L1発現細胞の割合≧5%)およびIC0(同<1%)/IC1(同≧1~<5%)のいずれにおいても、B群とC群の間に有意な差はなかった。 客観的奏効率は、A群が47%(完全奏効13%、部分奏効35%)、B群が23%(6%、17%)、C群は44%(7%、37%)であった。奏効例の奏効までの期間中央値は、それぞれ8.5ヵ月、評価不能、7.6ヵ月だった。 治療関連のGrade3/4の有害事象は、A群が81%、B群が15%、C群は81%で発現した。治療関連の重篤な有害事象は、それぞれ32%、12%、26%でみられた。Grade3/4のとくに注目すべき有害事象の頻度は、8%、8%、4%であった。 治療中止の原因となった有害事象は、A群が34%、B群が6%、C群は34%で認められた。このうち、アテゾリズマブまたはプラセボの中止をもたらした有害事象の頻度は、それぞれ11%、6%、7%であった。 著者は、「これらの結果は、転移を有する尿路上皮がんの1次治療の潜在的な選択肢として、アテゾリズマブ+化学療法を支持するものである」としている。

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ニボルマブ+イピリムマブ+化学療法限定追加レジメン、肺がん1次治療でOS改善(CheckMate9LA)/ASCO2020

 PD-L1とCTLA-4阻害薬は補完的に働く。また、PD-L1阻害薬と化学療法の併用は複数の臨床研究で生存ベネフィットが示されている。非小細胞肺がん(NSCLC)1次治療において、PD-L1阻害薬ニボルマブとCTLA-4阻害薬イピリムマブに2週間の限定化学療法を追加治療を評価する第III相非盲検無作為化試験CheckMate9LAの中間解析の結果を、米国臨床腫瘍学会年次総会(ASCO20 Virtual Scientific Program)でMartin Reck氏が発表した。・対象:Stage IVまたは再発NSCLC患者、PS0~1・試験群:ニボルマブ360mg 3週ごと+イピリムマブ1mg 6週ごと+組織型別化学療法(シスプラチン/カルボプラチン+ペメトレキセド+ペメトレキセド維持療法またはカルボプラチン+パクリタキセル)3週ごと2サイクル(NIVO+IPI+Chemo群)・対照群:組織型別化学療法 3週ごと4サイクル(Chemo群)・評価項目:[主要評価項目]全生存期間(OS)[副次評価項目]盲検下独立中央画像判定機関(BICR)評価のPFS、BICR評価の全奏効率(ORR)、PD-L1発現別抗腫瘍効果 主な結果は以下のとおり。・対象患者は、NIVO+IPI+Chemo群(361例)とChemo群(358例)に無作為に割り付けられた。・OS中央値はNIVO+IPI+Chemo群14.1ヵ月、Chemo群10.7ヵ月と、NIVO+IPI+Chemo群で有意に改善した(HR:0.69、96.71%CI:0.55~0.87、p=0.0006)。・最低追跡期間12.7ヵ月のアップデートOSの中央値は、NIVO+IPI+Chemo群15.6ヵ月、Chemo群10.9ヵ月であった(HR:0.66、95%CI:0.55~0.80)。・組織別OS中央値のHR比をみると、非扁平上皮がんでは0.69(95%CI:0.55~0.87)、扁平上皮がんでは0.62(95%CI:0.45~0.86)であった。・PD-L1別OS中央値のHR比をみると、PD-L1<1%では0.62(95%CI:0.45~0.85)、PD-L1≧1%では0.64(0.50~0.82)と、PD-L1の発現を問わずNIVO+IPI+Chemo群で良好であった。なお、PD-L1 1~49%では0.61(0.44~0.84)、PD-L1≧50%では0.66(0.44~0.99)であった。・BICR評価のPFS中央値は、NIVO+IPI+Chemo群6.7ヵ月、Chemo群5.0ヵ月であった(HR:0.68、95%CI:0.57~0.82)。・ORRはNIVO+IPI+Chemo群で38%、Chemo群では25%であった。・Grade3/4治療関連有害事象(TRAE)の発現率は、NIVO+IPI+Chemo群47%、Chemo群38%であった。 NIVO+IPI+Chemo群は主要評価項目OSを達成し、より長期の追跡でもOSのさらなる改善がみられた。また、組織型、PD-L1発現を問わず有効性は一貫していた。発表者らは、NIVO+IPI+限定Chemo治療は、進行NSCLCにおける新たな1次治療の選択肢として考慮すべき、との見解を示している。

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ICI有害事象、正しく理解し・正しく恐れ・正しく対処しよう【そこからですか!?のがん免疫講座】第5回

はじめに今までは、主に免疫チェックポイント阻害薬(ICI)の効果に焦点を当てて解説してきましたが、今回は少し趣を変えて有害事象、とくにICI特有の免疫関連有害事象に焦点を当て、それがどのようなメカニズムで起きるのかを話題にしたいと思います。抗がん剤の有害事象のいろいろ抗がん剤の有害事象といえば、やはり悪心・嘔吐、脱毛、血球減少などをイメージするかと思います。これらはいずれも、細胞傷害性抗がん剤といって、シスプラチンなどの従来の抗がん剤でよく出現した有害事象です。がん細胞だけでなく、さまざまな正常細胞を傷害してしまい、傷害を受けやすい細胞がダメージを受けて有害事象につながります。とくに血球減少はそれに伴う感染症で命にも関わるので、皆さん非常に気を使っているかと思います。その後、ゲフィチニブなどの分子標的薬が登場して、標的に応じた特有の有害事象が出現するようになりました。たとえば、ゲフィチニブは上皮成長因子受容体(EGFR)を阻害しますので、上皮が傷害される結果起きる有害事象の報告が多くなります。皮膚であれば皮疹、腸管上皮であれば下痢、といったような感じです。血管新生阻害薬であれば血管内皮細胞増殖因子(VEGF)という分子を阻害するため、特有の高血圧など血管に関わる有害事象が起きやすくなります。では、あらためてICIについて考えてみましょう。ICIは免疫、とくにT細胞を活性化させる薬剤ですので当然といえば当然ですが、免疫に関連した特有の有害事象を起こします。前回までに免疫が自己を攻撃すると「自己免疫性疾患」になる、という話をしましたが、まさに「自己免疫性疾患」のような有害事象が出現し、それらをまとめて免疫関連有害事象と呼んでいます。ICIにより活性化したT細胞はさまざまな臓器を攻撃し、臓器によって非常に多彩な有害事象が報告されています1)。たとえば、甲状腺を攻撃すれば甲状腺機能異常、肺を攻撃すれば肺臓炎、消化管を攻撃すれば腸炎、膵臓のインスリン産生細胞を攻撃すれば糖尿病、といった具合です1)。従来の抗がん剤治療ではあまり見ない有害事象が多く、まれながら命に関わるものも報告されています。適切に対処するためには、まれでも「起きうる」と認識することが重要です。有害事象が発生するメカニズム「ICIが免疫を活性化するから有害事象が発生する」だけでは、本稿は終了になってしまいますので、もう少し詳しく説明したいと思います。自己抗原に反応して攻撃するT細胞は発生の過程で選択を受けるので、われわれの身体の中にはあまり残っていないはずです。しかし、一部は除去されずに残っているものがあるとされ、そういったT細胞が自己を攻撃すると「自己免疫性疾患」になってしまいます。こうしたT細胞が自己を攻撃しないようにするシステムがわれわれの身体には元々備わっており、そのシステムが正常に働いていれば問題は起きません。そして、そのシステムの1つが、免疫チェックポイント分子なのです。PD-1やCTLA-4も決してがん細胞を攻撃するT細胞“だけ”を抑制している分子ではなく、むしろ、本来こうした「自己を攻撃しないために備わっている分子」なのです。したがって、ICIの使用によってがん細胞を攻撃するT細胞だけでなく、自己を攻撃するT細胞も活性化されることで、自己免疫性疾患のような有害事象が出てしまうのです(図1)。画像を拡大する免疫関連有害事象を「正しく」恐れる前回、「抗原には階層性がある」という話をしました。「強い免疫応答を起こせる抗原はがんのネオ抗原で、自己抗原は強い免疫応答を起こさない」はずでしたね(図2)。画像を拡大する実は、弱い抗原によって活性化されたT細胞であれば、ステロイドなどのT細胞を抑制する薬剤によって比較的抑えられやすく、逆に強い抗原によって活性化されたT細胞は、ステロイドでは抑えにくい、という実験結果があります(図3)2)。画像を拡大する実はこのことはICIにとって非常に都合がよいことです。「(強い免疫応答を起こさない抗原である)自己抗原を認識するT細胞の活性化はステロイドによって抑制されやすい」、すなわち、「(自己を攻撃するT細胞の活性化によって起きる)免疫関連有害事象はステロイドなどの適切な治療によって抑えることができる」からです(図3)。逆に、「(強い免疫応答を起こす)ネオ抗原を認識するT細胞の活性化にステロイドはあまり影響を与えない」、つまりは「ステロイドは効果にあまり影響しない」といえます(図3)。大規模な臨床で証明された確定的なものではなく、あくまで可能性での話になりますが、以上のことから、ステロイドはICIの効果にあまり影響を与えることなく、免疫関連有害事象を抑えられるかもしれません(図3)2)。実際、有害事象にはステロイド使用などの適切な対処で対応できる場合が多く、有害事象でステロイドを使用したうえでICI投与を中止しても、薬剤の効果が続いたケースも報告されています。効果と関係があるってホント?個々の患者でICIによる免疫の活性化度合いは異なります。ここでまた抗原の階層性の話になりますが、強い免疫応答を起こすネオ抗原を認識するT細胞だけを運よくICIが活性化できれば、効果だけが出て、免疫関連有害事象は起きません(図4:A)。一方、弱い免疫応答を起こす自己抗原を認識するT細胞まで活性化させる反応がICIで起きた場合を想定してください。もちろん、自己を攻撃する免疫関連有害事象は起きますが、それほど強い免疫の活性化であれば、強い反応を起こすネオ抗原を認識するT細胞も活性化しているはずなので、効果も出るはずです(図4:B)。こういった患者さんが一定割合で存在するため、効果と有害事象はある程度の相関性があるはずです3)。画像を拡大するもちろん、ICIで免疫応答がまったく起きない人には有害事象も効果も出ません(図4:C)。では、有害事象だけが出て効果がない人では何が起きているのか?と疑問も湧くかと思いますが、1つの理由を抗原の観点で論じるならば、どんなに免疫を活性化させても、元のがん細胞にネオ抗原のような標的になるがん抗原が少ない場合にはやはり無効なのだろう、と思われます(図4:D)。それだけがん抗原は重要な要素なのです。免疫関連有害事象を正しく理解し・正しく恐れ・正しく対処すれば、ICIは効果がある患者さんにとっては大きなメリットのある薬剤です。当初の連載予定回数をオーバーしてしまいましたが、次回は追加で細胞療法の話をしたいと思います。1)Michot JM, et al. Eur J Cancer. 2016;54:139-148.2)Tokunaga A, et al. J Exp Med. 2019;216:2701-2713.3)Haratani K, et al. JAMA Oncol. 2018;4:374-378.

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FDA、アテゾリズマブ単剤を非小細胞肺がん1次療法に承認/ロシュ

 ロシュ社は、2020年5月19日、米国食品医薬品局(FDA)が、アテゾリズマブを転移を有する成人のPD-L1高発現(TC≧50%またはIC≧10%)非小細胞肺がん(NSCLC)の1次治療として承認したことを発表した。  この承認は、第IIIのIMpower110試験の中間解析の結果に基づくもの。 IMpower110は、PD-L1選択、化学療法未治療のStage IV 非扁平上皮または非扁平上皮NSCLCにおいて、アテゾリズマブ単剤療法と化学療法(シスプラチン/カルボプラチンとペメトレキセド/ゲムシタビンの併用)を比較する第III相無作為化非盲検試験。アテゾリズマブ単剤療法により、PD-L1高発現患者の全生存期間(OS)が化学療法と比較して、7.1ヵ月改善した(OS中央値:20.2ヵ月対13.1ヵ月、HR:0.59、95%CI:0.40〜0.89、p=0.0106)。

175.

二ボルマブとイピリムマブの併用が悪性胸膜中皮腫の生存期間を延長(CheckMate-743)/BMS

 ブリストル・マイヤーズ スクイブ社は、2020年4月21日、未治療の悪性胸膜中皮腫(MPM)を対象とした第III相 CheckMate-743試験において、ニボルマブ(一般名:オプジーボ)とイピリムマブ(一般名:ヤーボイ)の併用療法が、主要評価項目である全生存期間(OS)を延長したことを発表した。 独立データモニタリング委員会であらかじめ計画されていた中間解析で、二ボルマブとイピリムマブの併用療法が、化学療法(ペメトレキセドとシスプラチンまたはカルボプラチンの併用療法)と比較して、統計学的に有意に、臨床的に意義のあるOSの改善を示した。  本試験で認められた二ボルマブとイピリムマブの併用療法の安全性プロファイルは、同併用療法でこれまでに認められているものと一貫していた。

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上部尿路がんに対する術後抗がん化学療法の有効性:POUT trial第III相試験(解説:宮嶋哲氏)-1216

 上部尿路がんは予後不良であるものの、術後補助化学療法の有効性は確認されていない。本研究では腎盂尿管がんで腎尿管全摘除術を施行された患者(261例)を対象に、経過観察群とシスプラチン主体の抗がん化学療法投与群(ゲムシタビン+シスプラチンまたはカルボプラチン)の2群にランダム化してその有効性を前向きに比較検討したものである。 2012年から2017年までに登録された261症例のうち、132例が化学療法群、129例が経過観察群に割り付けられ、観察期間中央値は30.3ヵ月であった。術後化学療法はDFS(HR:0.45、p=0.0001)ならびにMFS(HR:0.48、p=0.0007)を有意に改善した。3年無事象生存率(event-free survival)は化学療法群で71%、経過観察群で46%であった。一方、Grade3以上の有害事象は、化学療法群で44%、経過観察群で4%に認めたが、治療関連死は認めなかった。 以上から、腎盂尿管がんに対する腎尿管全摘除術施行後のシスプラチン主体補助化学療法の有効性がようやく示されたといえる。ただし、対象となったコホートにはリンパ節陽性例が20%以上含まれていたことから、リンパ節陰性例だけ抽出した症例に関する結果に疑問が残る。さらには、リンパ節郭清の意義についても検討課題である。 腎盂尿管がんの術後は単腎となり腎機能は術前に比べ半減するため、投与可能なシスプラチンの量も減少する。したがって、術前抗がん化学療法の有効性に関する検討も必要である。さらには、免疫チェックポイント阻害薬の登場により、シスプラチン主体抗がん化学療法の立ち位置も今後は変化していくものと予測される。

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デュルバルマブの小細胞肺がん、FDA承認/アストラゼネカ

 アストラゼネカは、3月30日、抗PD-L1抗体デュルバルマブ(一般名:イミフィンジ)が、成人の進展型小細胞肺がんに対する1次治療として標準治療である化学療法(エトポシド+カルボプラチンまたはシスプラチン)との併用療法で、米国において承認されたことを発表した。 今回の米国食品医薬品局による承認は、第III相CASPIAN試験の結果に基づくもの。 CASPIAN試験では2つの主要評価項目を設定し、デュルバルマブと化学療法の併用療法群と化学療法群を比較した。その結果、デュルバルマブと化学療法の併用療法群では、死亡リスクが27%低下し(ハザード比:0.73、95%CI:0.59〜0.91、p=0.0047)、OS中央値は化学療法群の10.3ヵ月に対して13.0ヵ月であった。加えて、デュルバルマブと化学療法の併用療法群において、より高い客観的奏効率が得られたことも示された(化学療法群の58%に対して68%)。なお、デュルバルマブと化学療法の併用療法における安全性および忍容性は、これらの薬剤における既知の安全性プロファイルと一致していた。 また、デュルバルマブと化学療法との併用療法に抗CTLA-4抗体トレメリムマブを追加したもう1つの投与群の解析も完了しているが、こちらの主要評価項目は達成されなかった。詳細なデータは、今後の学会で発表される予定。

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非扁平上皮NSCLC、ペムブロリズマブ+化学療法の1次治療第III相試験アップデート(KEYNOTE-189)/JCO

 転移を有する非扁平上皮非小細胞肺がん(NSCLC)1次治療における、ペムブロリズマブ+化学療法の第III相KEYNOTE-189試験の結果が更新された。Journal of Clinical Oncology誌2020年3月9日号オンライン版掲載の報告。 同試験の対象は、再発・転移のある無治療のStageIV非扁平上皮NSCLC患者616例。登録患者は、ペムブロリズマブ(3週ごと最大35サイクル)+化学療法(カルボプラチンまたはシスプラチン+ペメトレキセドの3週ごと4サイクル後、ペメトレキセド3週ごと)群410例とプラセボ+化学療法(ペムブロリズマブ併用群と同一用法・用量)群206例に無作為に割り付けられた。 主な結果は以下のとおり。・追跡期間中央値は23.1ヵ月であった(2018年9月21日時点)。・全生存期間(OS)中央値は、ペムブロリズマブ+化学療法群22.0ヵ月、化学療法群10.7ヵ月で、ハザード比(HR)は0.56(95%CI:0.45〜0.70)であった。・PD-L1発現別のOS HRは、TPS≧50%では0.59、TPS1~49%では0.62、TPS<1%では0.52であった。・無増悪生存期間(PFS)は、ペムブロリズマブ+化学療法群9.0ヵ月、化学療法群4.9ヵ月で、HRは0.48(95%CI:0.40~0.58)であった。・PD-L1発現別のPFS HRは、TPS≧50%では0.36、TPS1~49%では0.51、TPS<1%では0.64であった。・Grade3〜5の有害事象の発現率は、ペムブロリズマブ+化学療法群では71.9%、化学療法群では66.8%であった。 筆者らは、転移を有する非扁平上皮NSCLC1次治療におけるペムブロリズマブと化学療法併用の生存ベネフィットはPD-L1発現レベル、肝臓/脳転移の有無にかかわらず確認されたとしている。

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上部尿路上皮がん、術後化学療法で無病生存率改善/Lancet

 局所進行上部尿路上皮がん(UTUC)患者の治療において、腎尿管全摘除術後のゲムシタビン+プラチナ製剤併用による術後補助化学療法は、これを行わない場合に比べ無病生存(DFS)率を改善することが、英国・ランカシャー州教育病院国民保健サービス(NHS)ファンデーショントラストのAlison Birtle氏らの検討「POUT試験」で示された。研究の成果は、Lancet誌オンライン版2020年3月5日号に掲載された。UTUCはまれな疾患で、膀胱上皮がんに比べて各病期の予後が不良とされる。UTUC患者の治療では、根治的腎尿管全摘除術後の術後化学療法の有益性に関して、国際的な合意は得られていないという。術後化学療法の有用性を評価する無作為化試験 本研究は、英国の71施設が参加した非盲検無作為化第III相試験であり、2012年6月~2017年11月の期間に患者登録が行われた(Cancer Research UKの助成による)。 対象は、年齢16歳以上、糸球体濾過量(GFR)≧30mL/分で、UTUCの根治的腎尿管全摘除術(画像上または肉眼的に異常と判定されたすべてのリンパ節の郭清を含む)を受け、術後のStageが筋層非浸潤性(pT2~pT4、N any)またはリンパ節転移陽性(pT any、N1~3)で、非転移性(M0)の病変を有し、組織学的に移行上皮がんが主の患者であった。 被験者は、サーベイランスを受ける群、または術後90日以内に、21日を1サイクルとする化学療法を4サイクル受ける群に、1対1の割合で無作為に割り付けられた。化学療法は、シスプラチン(CDDP、70mg/m2)またはカルボプラチン(CBDCA、AUC 4.5または5)が第1日に、ゲムシタビン(GEM、1,000mg/m2)が第1日と第8日に静脈内投与された。 主要評価項目は、intention-to-treat(ITT)集団におけるDFS(割り付け時から初回の再発、転移、死亡までの期間)の割合とした。 本試験は、261例を登録した時点で、事前に規定された中間解析において有効性に関する早期終了の基準を満たしたため、患者登録が中止された。再発/死亡リスクが55%低減 71の参加施設中57施設から261例が登録された。化学療法群に132例、サーベイランス群には129例が割り付けられ、割り付け後にデータの使用への同意を撤回した化学療法群の1例を除く260例(ITT集団)が解析に含まれた。 ベースラインの全体の年齢中央値は68.5歳(IQR 62.0~74.1)、女性が32%含まれた。94%がpT2~pT3、91%がN0で、64%がGFR≧50mL/分であった。腫瘍部位は腎盂が35%、尿管が34%、両方が30%で、術式は開放手術が15%、腹腔鏡手術が82%、ロボット手術が2%であり、顕微鏡的切除断端陽性率は12%だった。フォローアップ期間中央値は30.3ヵ月(IQR:18.0~47.5)。 実際に化学療法を受けたのは126例で、割り付け後にGFRが低下したため76例中16例(21%)がCDDPからCBDCAに、割り付けから治療開始前にGFRが上昇したため50例中1例(2%)がCBDCAからCDDPに切り替えた。 DFS関連イベントの発生率は、化学療法群が27%(35/131例)と、サーベイランス群の47%(60/129例)と比較して有意に低く、相対リスクが55%改善された(ハザード比[HR]:0.45、95%信頼区間[CI]:0.30~0.68、log-rank検定のp=0.0001)。 3年DFS率は、化学療法群が71%(95%CI:61~78)、サーベイランス群は46%(36~56)であり、両群間の推定絶対差は25%(11~38)であった。DFS期間中央値は、化学療法群は未到達、サーベイランス群は29.8ヵ月だった。また、転移または死亡のリスクは、化学療法群で52%低下した(HR:0.48、95%CI:0.31~0.74、log-rank検定のp=0.0007)。 Grade3以上の急性治療関連有害事象は、化学療法群が44%(55/126例、GEM+CDDP 44%[31/71例]、GEM+CBDCA 44%[24/55例])、サーベイランス群は4%(5/129例)で認められた(p<0.0001)。化学療法群では、Grade3以上の好中球数の減少(36%)、血小板数の減少(10%)、悪心(6%)、発熱性好中球減少(6%)、嘔吐(6%)がサーベイランス群よりも多く、重篤な有害事象は32%にみられた。治療関連死の報告はなかった。 QOL(EORTC QLQ-C30、EQ-5D-5L)は、化学療法期間中とその直後(3ヵ月時、p=0.0028)は化学療法群で不良であったが、6ヵ月後にはこの差は解消した。 著者は、「プラチナ製剤ベースの化学療法は、UTUC患者の腎尿管全摘除術後の標準的な補助化学療法と考えられる」としている。

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NSCLCの術後補助化学療法、適正レジメンは?(TORG 0503)/Lung Cancer

 日本発の、非小細胞肺がん(NSCLC)術後補助化学療法の適正レジメンが示された。完全切除されたStage IB、IIおよびIIIAのNSCLCでは、術後補助化学療法が標準治療であるが、これまで最適な化学療法レジメンは決定されていない。日本医科大学呼吸器内科の久保田馨氏らは、これらの患者において望ましいプラチナベースの第3世代レジメンを選択する「TORG0503試験」を実施した。その結果、ドセタキセル+シスプラチン併用療法とパクリタキセル+カルボプラチン併用療法が、術後補助化学療法として安全に施行できることが示された。結果を踏まえて著者は、「次の臨床試験では、対照としてドセタキセル+シスプラチン併用療法を選択する」と述べている。Lung Cancer誌オンライン版2019年3月号の掲載報告。 研究グループは、完全切除されたStage IB、IIA、IIB、IIIAのNSCLC患者を、ドセタキセル(60mg/m2)+シスプラチン(80mg/m2)併用療法を3サイクル行う群(A群)と、パクリタキセル(200mg/m2)+カルボプラチン(AUC 6)併用療法を3サイクル行う群(B群)に無作為に割り付けた。 主要評価項目は2年無再発生存割合、主な副次評価項目は全生存期間(OS)、有害事象(忍容性、毒性)などとした。 主な結果は以下のとおり。・111例(A群58例、B群53例)が無作為に割り付けられた。両群の患者背景は類似していた。・3サイクルの化学療法を完遂した患者の割合は、A群で93%(54/58例)、B群で92%(49/53例)であった。・両群で治療に関連した死亡は認められなかった。・2年無再発生存割合は、A群で74.5%(95%信頼区間[CI]:68.6~80.4)、B群で72.0%(95%CI:65.7~78.3)であった。・また、5年無再発生存割合はA群で61.6%、B群で46.0%であった。・2および5年OSは、A群で89.7%および73.9%、B群で86.9%および67.5%であった。

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