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腱症に対する注射療法のエビデンス

腱症に対するコルチコステロイド注射は、短期的には有効だが、中長期的には非コルチコステロイド注射のベネフィットが優る可能性があることが、オーストラリア・クイーンズランド大学のBrooke K Coombes氏らが行った系統的なレビューで示された。現在、エビデンスに基づく腱症の治療ガイドラインはほとんどないという。腱症は、angiofibroblastic hyperplasia(細胞過形成、血管新生、蛋白合成増進、基質破壊などがみられる)を特徴とし、炎症性疾患ではないためコルチコステロイド注射には疑問の声もあり、ラウロマクロゴール(一般名:ポリドカノール)、多血小板血漿、ボツリヌス毒素、プロテイナーゼなどの注射療法の施行機会が増えているという。Lancet誌2010年11月20日号(オンライン版2010年10月22日号)掲載の報告。腱周囲注射とプラセボ、非手術的介入の無作為化試験を解析研究グループは、腱症に対する注射療法の臨床効果および有害事象リスクの評価を目的に系統的なレビューを行った。8つのデータベースを、言語、発表の形態や時期を制限せずに検索し、腱症に対する腱周囲注射とプラセボあるいは非手術的介入の効果を比較した無作為化対照比較試験を抽出した。メタ解析にはランダム効果モデルを用い、相対リスクおよび標準化平均値差(standardised mean difference:SMD)を推算した。臨床効果に関する主要評価項目は、プロトコルで規定した疼痛スコアとし、短期(4週、範囲:0~12週)、中期(26週、同:13~26週)、長期(52週、同:52週以上)に分けて解析した。コルチコステロイド注射は短期的には有効同定された3,824試験のうち、適格基準を満たした41試験に登録された2,672例のデータが解析の対象となった。多くの質の高い無作為化試験では、コルチコステロイド注射の短期的な疼痛改善効果が他の介入法に比べ優れるとの一致した知見が示されたが、この効果は中期、長期には逆転した。たとえば、外側上顆痛の治療に関するプール解析では、コルチコステロイド注射は短期的には非介入群に比べ疼痛の抑制において大きな効果(SMD>0.8と定義)が認められた(SMD:1.44、95%信頼区間:1.17~1.71、p<0.0001)が、中期(同:-0.40、-0.67~-0.14、p<0.003)、長期(同:-0.31、-0.61~-0.01、p=0.05)には非介入群の方が効果は有意に大きかった。回旋腱板障害に対するコルチコステロイド注射の短期的な効果は、明確ではなかった。有害事象の報告のある試験においてコルチコステロイド注射を受けた991例のうち、重篤な有害事象(腱断裂)がみられたのは1例(0.1%)のみであった。外側上顆痛の治療のプラセボ対照比較試験では、ヒアルロン酸ナトリウム注入が短期(SMD:3.91、95%信頼区間:3.54~4.28、p<0.0001)、中期(同:2.89、2.58~3.20、p<0.0001)、長期(同:3.91、3.55~4.28、p<0.0001)に有効で、ボツリヌス毒素注入は短期(同:1.23、同:0.67~1.78、p<0.0001)に有効、prolotherapyは中期(同:2.62、1.36~3.88、p<0.0001)に有効であった。アキレス腱症の治療では、ラウロマクロゴール、アプロチニン、多血小板血漿はプラセボに比べ有効ではなかったのに対し、prolotherapyは伸張性運動よりも有効ではなかった。著者は、「外側上顆痛の治療では、短期的にはコルチコステロイド注射は有効だが、中長期的には非コルチコステロイド注射のベネフィットが優る可能性がある」と結論し、「しかし、腱症は部位によって効果にばらつきがみられるため、注射療法の効果を一般化すべきではない」と指摘する。(菅野守:医学ライター)

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グルコサミンとコンドロイチンは単独・併用でも関節痛への効果はない

グルコサミン、コンドロイチンのサプリメントを単独または併用服用しても、股関節痛や膝関節痛を和らげることはなく、関節腔狭小化への影響もないことが、スイスのベルン大学社会・予防医療研究所のSimon Wandel氏らが行ったネットワーク・メタ解析の結果、明らかにされた。Wandel氏は、「保健衛生を担う当局および健康保健事業者は、これらの製剤コストをカバーすべきではない。そしてまだ投与を受けていない患者への新たな処方を阻止しなければならない」と提言している。BMJ誌2010年10月2日号(オンライン版2010年9月16日号)掲載より。プラセボとの比較で、グルコサミン、コンドロイチン単独・併用の関節痛への効果を判定Wandel氏らは、関節痛とX線診断で股関節炎や膝関節炎の病勢進行が認められた症例に対し、グルコサミン、コンドロイチンを単独または併用の効果を判定することを目的に、ネットワーク・メタ解析を行った。Cochrane、Medline、Embaseなどの電子データベースを検索、および専門家へのヒアリング、関連ウェブサイトから適格試験を選定し、試験内直接比較を、異なるタイムポイントの統合を可能とするベイズモデルを使って、他の試験の間接エビデンスと結びつけた。主要アウトカムは疼痛強度とし、副次アウトカムは関節腔狭小化とした。製剤とプラセボとの臨床的に意義ある差異を示す最小値は、10cmビジュアル・アナログ・スケールで-0.9cmと事前特定された。疼痛強度、関節腔狭小化とも臨床的意義ある差異は認められず解析には、10試験・3,803例が含まれた。結果、10cmビジュアル・アナログ・スケールで、プラセボと比較して、疼痛強度の差異は、グルコサミン群は-0.4cm(95%信頼区間:-0.7~-0.1 cm)、コンドロイチン群は-0.3cm(同:-0.7~0.0 cm)、併用群は-0.5cm(同:-0.9~0.0 cm)だった。95%信頼区間値が、臨床的意義ある差異を示す最小値(-0.9)を越えたものはなかった。企業から資金提供を受けて行われた試験結果に比べて、独立して行われた試験では、より小さい効果量が示されていた(相互作用のP=0.02)。また副次アウトカムの関節腔狭小化の差異も、95%信頼区間値が0値に重なり合うほどわずかだった。(武藤まき:医療ライター)

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スタチンの思わぬ効果・有害事象

スタチンの想定されていない効果および有害事象について検討する、英国人男女200万人超を対象とする前向きコホート研究が、英国ノッティンガム大学プライマリ・ケア部門のJulia Hippisley-Cox氏らにより行われた。思わぬ効果として、食道がんリスク低下の有益性が認められた一方、様々な有害事象リスク上昇との関連が確認されたという。BMJ誌2010年6月5日号(オンライン版2010年5月20日号)掲載より。スタチン各種、用量、投与期間ごとに効果・有害事象を定量化Hippisley-Cox氏らは、スタチンの思わぬ効果・有害事象について、種類・用量・投与期間別に定量化することを目的とし、イングランドおよびウェールズの開業医(GP)368人の診療データをQResearch databaseから収集し検討した。200万4,692例分の患者データ(30~84歳)のうち、スタチン服用新規患者は、22万5,922例(10.7%)だった。処方の内訳は、15万9,790(70.7%)がシンバスタチン(商品名:リポバスなど)、5万328例(22.3%)がアトルバスタチン(商品名:リピトール)、8,103例(3.6%)がプラバスタチン(商品名:メバロチンなど)、4,497例(1.9%)がロスバスタチン(商品名:クレストール)、3,204例(1.4%)がフルバスタチン(商品名:ローコールなど)だった。検討された主要評価項目は、心血管疾患の初回発生、中等度~重度ミオパシー、中等度~重度肝機能障害、急性腎不全、静脈血栓塞栓症、パーキンソン病、認知症、関節リウマチ、白内障、骨粗鬆症性骨折、胃がん、食道がん、大腸がん、肺がん、メラノーマ、腎臓がん、乳がん、前立腺がん。食道がんリスク低下、肝機能障害・急性腎不全・ミオパシー・白内障リスク増大スタチンとの関連が有意ではなかったのは、パーキンソン病、関節リウマチ、静脈血栓塞栓症、認知症、骨粗鬆症性骨折、胃がん、大腸がん、肺がん、メラノーマ、腎臓がん、乳がん、前立腺がんの各リスク。食道がんリスクについては低下が認められた。一方で、中等度~重度肝機能障害、急性腎不全、中等度~重度ミオパシー、白内障のリスクは増大することが認められた。有害事象は、スタチンの種類を問わず同等にみられた。ただし肝機能障害についてはフルバスタチンでリスクが高かった。用量反応効果は、急性腎不全、肝機能障害で明瞭だった。服用期間中の全リスク増加は、最初の1年目が最も高かった。白内障リスクは男女とも、服用中止後1年以内で標準に戻った。食道がんのリスクは、女性は1年以内に男性は1~3年以内で標準に戻った。急性腎不全リスクは、男女とも1~3年以内に、肝機能障害リスクは、女性は1~3年以内に男性は3年以降に標準に戻った。心疾患リスク20%閾値に基づく5年予防NNT(治療必要数、対患者1万例)は、女性の場合、心血管疾患が37例(95%信頼区間:27~64)、食道がんは1,266例(850~3,460)だった。男性はそれぞれ、33例(24~57)、1,082例(711~2,807)だった。一方、5年NNH(有害必要数、対患者1万例)は、女性の場合、急性腎不全が434例(284~783)、中等度~重度ミオパシーは259例(186~375)、中等度~重度肝機能障害136例(109~175)、白内障33例(28~38)だった。男性のNNHは、ミオパシーのNNHが91例(74~112)だった以外は、全体として女性と同等だった。Hippisley-Cox氏は、「食道がん以外の有益性は証拠立てることができなかったが、有害事象については母集団に潜在する事象が確認でき定量化できた。さらに、有害事象の最もリスクの高い患者をモニターできるよう個別リスクのさらなる検討を進める必要がある」と結論している。

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個人向け睡眠計測サービス「SleepSign-home」(スリープサイン ホーム)提供開始

キッセイコムテック株式会社は2日、個人向け睡眠計測サービス「SleepSign-home」(スリープサイン ホーム)の提供を開始したと発表した。2週間、行動計を腰につけて過ごすだけで、睡眠状態がわかるというもの。このサービスは、スリープクリニック調布の遠藤拓郎氏との共同企画で、遠藤氏の睡眠医療における豊富な経験・見識と同社の睡眠解析ソフト開発ノウハウを融合することで実現したもの。サービス利用希望者は、同社のWebサイトより申し込み後、送付される行動計を身につけて生活し、2週間後に機器を返送すると、データを解析して遠藤氏監修の睡眠レポートを受け取ることができる。価格は5,250円(税込)。詳細はプレスリリースへhttp://www.kicnet.co.jp/news/press/press2009/20091202.html

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成人喘息、遺伝子型の違いでLABA+ICSの効果に差はない:LARGE試験

成人の中等度喘息の治療では、β2アドレナリン受容体遺伝子型の違いによって長時間作用型β2刺激薬(LABA)と吸入コルチコステロイド(ICS)の併用療法の効果に差はないことが、Harvard大学医学部Brigham and Women’s病院のMichael E Wechsler氏ら国立心肺血液研究所(NHLBI)喘息臨床研究ネットワークの検討で明らかとなった。β2アドレナリン受容体の16番目のアミノ酸の遺伝子型がアルギニンのホモ接合体(B16 Arg/Arg)の喘息患者は、グリシンのホモ接合体(B16 Gly/Gly)の患者に比べLABA+ICS併用療法の効果が劣ることが報告されていた。Lancet誌2009年11月21日号掲載の報告。遺伝子型の異なる患者をマッチさせたペアにおいてLABA+ICS併用とICS単独をクロスオーバー研究グループは、遺伝子型の違いによるLABA+ICS併用療法の効果の差について検討するために、LABA+ICS併用とICS単独の効果を比較する多施設共同二重盲検プラセボ対照無作為化試験を実施した。対象は中等度喘息の成人患者で、β2アドレナリン受容体の遺伝子型がB16 Arg/Argの患者(42例)とB16 Gly/Glyの患者(45例)を、1秒量(FEV1.0)および人種でマッチさせたペアとして登録した。ペアの個々の患者は、二重盲検下に吸入LABA(サルメテロール50μg×2回/日)あるいはプラセボを投与する群に無作為に割り付けられ、18週の治療が行われた。その後、8週のrun-out期間を置き、治療法をクロスオーバーしてさらに18週の治療が実施された。全症例に、治療開始時からオープンラベルにてICS(hydrofluoroalkane beclometasone 240μg×2回/日)が投与された。主要評価項目は起床時の最大呼気流量(PEF)。B16遺伝子型の違いにかかわらず、LABA+ICS併用療法をArg/Arg例における治療18週後の起床時平均PEFは、ICS単独群の401L/分に対し、LABA+ICS群は423L/分と21.4L/分高かった(p<0.0001)。Gly/Gly例の起床時平均PEFは、ICS単独群の405L/分に対しLABA+ICS群は426L/分とその差は21.5L/分であった(p<0.0001)。Arg/Arg例に対するGly/Gly例のPEF改善度(両群のPEFの差)は-0.1L/分であり、有意な差を認めなかった(p=0.99)。事前に規定された副次評価項目であるメサコリンPC20(FEV1.0の20%改善)は、Gly/Gly例ではLABA+ICS群がICS単独群の2.4倍であった(p<0.0001)。Arg/Arg例では、メサコリンに対する反応性は両群に差を認めなかった(p=0.87)。メサコリン反応性はGly/Gly例がArg/Arg例の2.5倍であった(p=0.0038)。Arg/Arg例の7例(ICS単独群:5例、LABA+ICS併用群:2例)、Gly/Gly例の6例(3例、3例)で喘息の増悪が見られた。重篤な有害事象は5例で認められた(pre-matchおよびオープンラベルのICSのrun-in期間中に1例ずつ、LABA+ICSの二重盲検治療中に2例、プラセボ+ICSの二重盲検治療中に1例)。喘息関連の有害事象は見られず、試験薬剤や処置に関連した有害事象も認めなかった。著者は、「B16 Arg/ArgおよびB16 Gly/Glyのいずれの遺伝子型の成人喘息患者においても、ICS単独よりもLABA+ICS併用のほうが気道機能の改善効果が有意に優れた」と結論し、「B16遺伝子型の違いにかかわらず、喘息患者ではLABA+ICS併用療法による治療を継続すべき」と指摘している。(菅野守:医学ライター)

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遺伝子組換えヒトエリスロポエチン製剤「エポジン注」がん化学療法に伴う貧血に対する効能追加で承認申請

中外製薬株式会社は19日、遺伝子組換えヒトエリスロポエチン製剤「エポジン注」(一般名:エポエチン ベータ〔遺伝子組換え〕)の、がん化学療法に伴う貧血に対する効能追加の承認申請を厚生労働省に行ったと発表した。今回の申請の主体となる国内第Ⅲ相臨床試験は、がん化学療法施行により貧血を呈したがん患者を対象とした二重盲検比較試験として実施され、エポジン注36,000IUまたはプラセボを週1回、12週間投与し、有効性、安全性について検討したもの。エポジン注を投与した患者では、プラセボを投与した患者さんと比較して、主要評価項目である理論輸血率の有意な低下が認められたという。また、エポジン注を投与した患者において認められた副作用は、血圧上昇・高血圧、便秘、下痢等が主なものであったとのこと。詳細はプレスリリースへhttp://www.chugai-pharm.co.jp/generalPortal/pages/detailTypeHeader.jsp;jsessionid=ZDUIDT4HYX2NWCSSUIHCFEQ?documentId=doc_16432&lang=ja

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関節機能改善剤SUPARTZ 米国で変形性肩関節症の適応症追加を承認申請

 生化学工業株式会社は28日、米国で販売している関節機能改善剤「SUPARTZ」について、2009年9月25日(米国現地時間)に変形性肩関節症の適応症追加の承認申請書をFDA(米国食品医薬品局)に提出したと発表した。 SUPARTZは、高純度に精製されたヒアルロン酸を有効成分とする関節内注射剤であり、米国では、2001年に変形性膝(ひざ)関節症の適応症で医療機器としてFDAからの承認を得ている。日本では、「アルツディスポ関節注25mg」の製品名で製造販売されており、変形性膝関節症に加え、肩関節周囲炎、関節リウマチにおける膝関節痛の適応症を取得している。詳細はプレスリリースへ(PDF)http://www.seikagaku.co.jp/pdf/300.pdf

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プライマリ・ケアにおけるうつ病治療に、オンライン認知行動療法は有効か?

プライマリ・ケアにおけるうつ病治療では、セラピストがインターネット経由のオンラインでリアルタイムに実施する認知行動療法(cognitive-behavioural therapy; CBT)が有効であることが、イギリス国立ヘルス・リサーチ研究所(NIHR)プライマリ・ケア研究部のDavid Kessler氏らによる無作為化試験で明らかとなった。CBTは有効性に関する強力なエビデンスがあるにもかかわらずさほど普及していない。コンピュータ化されたプログラムによってCBTへの近接性(アクセスのしやすさ、accessibility)の改善が進められてきたが、これらの介入が個々の患者の必要性に対応するものか否かは明確でないという。Lancet誌2009年8月22日号掲載の報告。通常ケア+オンラインCBT群と通常ケア単独群を比較研究グループは、プライマリ・ケアにおいてセラピストがうつ病患者に対してオンラインで行うCBTの有効性について検討する無作為化対照比較試験を実施した。2005年10月~2008年2月までにブリストル市、ロンドン市、ウォリックシャー州の55の一般医(GP)施設から、ベックうつ評価尺度(Beck depression inventory; BDI)スコア≧14でうつ病の確定診断がなされた297例(18~75歳)が登録された。これらの患者が、GPによる通常のケアにセラピストによるオンラインCBTを併用する群(149例)あるいはオンラインCBTの待機中(8ヵ月間)にGPによる通常ケアのみを受ける群(148例)に無作為に割り付けられた。患者、登録に関係した研究者、セラピストには割り付けに関する情報は知らされなかった。主要評価項目は、4ヵ月後におけるうつ病の回復(BDIスコア<10)とした。回復率が有意に改善、効果は8ヵ月後も持続4ヵ月のフォローアップを完遂したのは、オンラインCBT併用群が113例、通常ケア単独群は97例であった。4ヵ月後におけるうつ病からの回復率は、通常ケア単独群の24%(23/97例)に対し、オンラインCBT併用群は38%(43/113例)と有意に優れていた(オッズ比:2.39、p=0.011)。8ヵ月後の回復率も、通常ケア単独群の26%(26/101例)に対し、オンラインCBT併用群は42%(46/109例)と有意差が認められた(オッズ比:2.07、p=0.023)。著者は、「プライマリ・ケアにおいてセラピストがオンラインでリアルタイムに実施するCBTは、うつ病治療として有効と考えられ、その効果は8ヵ月間にわたって持続した。インターネットを利用した方法は、CBTへのアクセスのしやすさを拡大する可能性がある」と結論している。また、「リアルタイムのオンラインCBTが実行可能でこれに魅力を感じる患者の増加が見込まれており、心理学的治療へのアクセスがしにくい地域や英語を母国語としない患者に対して有用となる可能性がある。対面方式のCBTの柔軟性や応答性も備えているため重症例にも適切な治療法と考えられ、さらなる効果の増強も期待できる」と指摘している。(菅野守:医学ライター)

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経口浸透圧利尿・メニエール病改善剤「メニレット」の国内ライセンス契約を締結

エーザイ株式会社(以下「エーザイ」)は14日、同社ジェネリック医薬品事業子会社のエルメッド エーザイ株式会社(以下「エルメッド」)が、株式会社三和化学研究所(以下「三和化学」)と、経口浸透圧利尿・メニエール病改善剤「メニレット70%ゼリー20g」および「メニレット70%ゼリー30g」(一般名:イソソルビド、以下併せて「同製品」)に関して、日本国内における販売に係るライセンス契約を締結したと発表した。本契約により、エルメッドは三和化学より日本国内における同製品の独占的販売権を獲得し、またエーザイは、同製品の販売に関してエルメッドと販売提携を行う。同製品は、三和化学が開発した日局イソソルビドのゼリー剤で、イソソルビドに起因する苦味をマスキングした、1回飲み切りが可能な分包製剤。日本では「脳腫瘍時の脳圧降下、頭部外傷に起因する脳圧亢進時の脳圧降下、腎・尿管結石時の利尿、緑内障の眼圧降下、メニエール病」を効能・効果として、2005年7月より三和化学が販売している。同製品は、尿細管における浸透圧性効果により利尿効果を示し、また、血漿中の浸透圧を上昇させることにより脳圧や眼圧、内リンパ圧を降下させるという。詳細はプレスリリースへhttp://www.eisai.co.jp/news/news200928.html

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禁煙は妊娠15週までに

妊娠中の喫煙と、自然未熟児出産および在胎期間に比べて小さい不当軽量児出産との関連は、すでに立証されており、妊娠した女性には禁煙が勧められる。しかしこれまで、妊娠初期に禁煙すれば、胎児への有害な影響が回避できるかどうかは検証されていなかった。オークランド大学(ニュージーランド)産科婦人科のLesley M E McCowan氏らは、妊娠15週までに禁煙した妊婦と非喫煙妊婦を対象とした前向きコホート試験を行った結果、有害転帰は両者で変わらなかったと報告した。BMJ誌2009年6月27日号(オンライン版2009年3月26日号)より。禁煙群、非喫煙群、喫煙群とで転帰を比較Screening for Pregnancy Endpoints(SCOPE)と命名された試験には、オークランド(ニュージーランド)とアデレード(オーストラリア)に住む2,504例の妊婦が参加した。内訳は、15週までに禁煙した妊婦群(禁煙群:10%、261例)と、非喫煙の妊婦群(非喫煙群:80%、1,992例)、15週時点でも喫煙中の妊婦群(喫煙群:10%、251例)。自然未熟児出産および不当軽量児出産(10ヵ月標準より小さい)の転帰に関して、禁煙群と非喫煙群とのオッズ比、および禁煙群と喫煙群とのオッズ比をそれぞれ比較した。禁煙群 vs. 非喫煙群、自然未熟児1.03、不当軽量児1.06自然未熟児については、禁煙群10例(4%)、非喫煙群88例(4%)、現在喫煙群25例(10%)で、禁煙群は、非喫煙群とで発生率に差異は見られなかった(オッズ比:1.03、95%信頼区間:0.49~2.18、P=0.66)。一方、現在喫煙群との比較では、現在喫煙群のほうがはるかに高い(3.21、1.42~7.23、P=0.006)。不当軽量児については、禁煙群27例(10%)、非喫煙群195例(10%)、現在喫煙群42例(17%)で、こちらも禁煙群は、非喫煙群とでは差異は見られなかったが(1.06、0.67~1.68、P=0.8)、現在喫煙群とでは約2倍近い差が見られた(1.76、1.03~3.02、P=0.03)。(朝田哲明:医療ライター)

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「エポジン注」が化学療法に伴う貧血を対象とする第III相臨床試験で主要評価項目を達成

中外製薬株式会社は30日、がん化学療法施行に伴う貧血を予定適応症として開発中の遺伝子組換えヒトエリスロポエチン製剤「エポジン注」(一般名:エポエチン ベータ〔遺伝子組換え〕)の第III相臨床試験において、主要評価項目である理論輸血率が有意に低下する結果が得られたことを発表した。この試験は、がん化学療法施行により貧血を呈したがん患者を対象とした二重盲検比較試験で実施し、エポエチン ベータ36000IU またはプラセボを週1回、12週間投与し、有効性、安全性を評価したもの。エポエチン ベータを投与した患者では、主要評価項目の理論輸血率がプラセボを投与した患者と比較して有意に低下した。また、エポエチン ベータを投与した患者において認められた副作用は、血圧上昇・高血圧、便秘、下痢等が主なものだったという。なお、今回の試験に基づく効能・効果の追加承認申請は2009年中に実施の予定とのこと。詳細はプレスリリースへhttp://www.chugai-pharm.co.jp/generalPortal/pages/detailTypeTable.jsp;jsessionid=2LGDVIDHSCD1MCSSUIHCFEQ?documentId=doc_14288&lang=ja

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2型糖尿病の10年リスク予測スコアの決定版!? QDScore

広く認められ日常診療でも使用可能な2型糖尿病のリスク予測スコアのアルゴリズムは、いまだ開発されていない。イギリス、ノッティンガムの一般開業医Julia Hippisley-Coxらは、これまで開発されたアルゴリズムの反省点を踏まえ、人種および社会経済的に多様な集団を対象に、10年間の2型糖尿病診断結果を基にした新たな糖尿病10年リスク予測スコアのアルゴリズム(QDScore)を開発した。BMJ誌2009年4月4日号(オンライン版2009年3月17日号)で発表している。人種および社会経済的に多様な集団を対象に開発開発には、イングランドとウェールズの一般開業医が協力。スコア開発群として355人がデータを提供、一方で、スコア検証群として176人がデータを提供する前向きオープンコホート研究の方法を用いて行われた。最も関心が寄せられた転帰は、カルテに記された2型糖尿病のインシデント情報だった。また、Cox比例ハザードモデルを使い、リスク因子影響の評価と、リスク因子の男女差が調べられた。評価されたQDScoreの予測変数は、人種、年齢、性、BMI、喫煙状態、糖尿病の家族歴、T-スコア、高血圧と心血管疾患の治療歴、コルチコステロイドの現在使用である。開発群コホートに集まったデータは、25~79歳の254万753人(1,643万6,135人・年)。そのうち、7万8,081人が2型糖尿病のインシデントケースと診断された。一方、検証群コホートには、123万2,832人(764万3,037人・年)のデータが集まり、インシデントケースは、3万7,535人だった。WEBにあるので、いつでも誰もが気軽に評価の結果、2型糖尿病のリスクの人種間格差は、4倍から5倍に上ることが明らかになった。白人を基準とすると、バングラディッシュ人・女性は4.07倍(95%信頼区間:3.24~5.11)、同男性は4.53倍(3.67~5.59)、またパキスタン人・女性は2.15倍(1.84~2.52)、同男性は2.54倍(2.20~2.93)に上る。パキスタン人とバングラデシュ人の男性のリスクは、インド人の男性より有意に高率だった。アフリカ系黒人男性と中国人女性のリスクも、対応する白人の基準群と比較して高かった。また検証群のデータを使っての検定の結果、QDScoreの予測変数が、より優れていることが確認された。Hippisley-Cox氏は、「QDScoreは、前向きコホート研究を基礎とし、そして社会的格差や民族性を考慮した初の、2型糖尿病のための10年リスク予測アルゴリズムである。臨床検査を必要とせず、日常診療で使用でき、さらに、WEB(http://www.qdscore.org)上にもあるので、いつでも誰もが利用することができるものだ」とまとめている。

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減量は尿失禁改善に有効

過体重・肥満女性への尿失禁治療として、減量指導が有効なことが確認された。米国カリフォルニア大学のLeslee L. Subak氏らによる、半年間にわたる対照群との比較による無作為化臨床試験の結果。NEJM誌2009年1月29日号掲載より。強化減量プログラム群と対照群に割り付け6ヵ月間介入これまで観察研究や小規模試験などで、肥満は尿失禁のハイリスク因子である一方、減量による減少効果も認められており、Subak氏らは、尿失禁治療目的の減量効果のエビデンス確立を目的とする無作為化臨床試験を行った。対象は、週に10回は尿失禁がある肥満女性338例。平均年齢(±SD)は53±11歳。強化減量プログラム(食事療法、運動療法、行動変容)群(介入群:226例)と、一般的な教育プログラム群(対照群:112例)に無作為に割り付け6ヵ月間介入を行った。基線での介入群、対照群それぞれのBMI、失禁回数/週は、ほぼ同じだった(BMIは36±6と36±5、失禁回数/週は24±18と24±16)。減量により失禁回数/週が、介入群47%減少介入による両群の体重の平均減量率は、介入群8.0%(7.8kg)、対照群は1.6%(1.5kg)。6ヵ月後の失禁回数/週は、介入群は47%減少、対照群は28%減少していた(P=0.01)。対照群と比較すると介入群では、腹圧性尿失禁の頻度の減少が大きかった(P=0.02)。切迫性尿失禁についてはそれほどでもない(P=0.14)。また介入群では、全失禁(P

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汚染ヘパリン問題を裏付ける全米疫学調査報告

全米で昨年大きな問題となったいわゆる汚染ヘパリン問題に関して、米国疾病対策予防センター(CDC)の感染情報サービスプログラムに所属するDavid B. Blossom氏らが行った疫学調査報告が、NEJM誌2008年12月18日号(オンライン版2008年12月3日号)で公表された。この問題は、ミズーリ州の1小児病院で集団発生した透析受療患児の重度の有害反応(顔面浮腫、頻脈、低血圧症、蕁麻疹、悪心)の発生が、2008年1月7日にCDCに報告されたことに端を発する。すぐに調査を開始したCDCは、類似報告が全米で起きていること、いずれもバクスターヘルスケア社のヘパリンを用いた患者であったことから、同17日に同製品の自主回収開始、2月には全面回収措置が取られ、3月に入ると米食品医薬品局(FDA)から、有害反応は同社製ヘパリンが過硫酸化コンドロイチン硫酸(OSCS)によって汚染されていることが原因であると発表された。2ヵ月半で152件の有害反応が起きていた 本報告は、2007年11月1日以降、ミズーリ州で集団発生したアレルギー反応と一致する徴候および症状を呈した患者の臨床情報を集約したもので、施設レベルでの危険因子を同定するため、有害反応が報告された21施設と、報告がなかった23施設から情報が集められた。併せて、有害反応報告施設から未開封のヘパリンバイアルを入手し、汚染物質検査も実施された。2007年11月19日~2008年1月31日に、ヘパリンと関連する有害反応が確認されたのは13州にわたる患者113人、152件(血液透析患者100人130件、心臓病受療患者6人8件、フォトフェレシス受療患者7人14件)。血液透析患者の有害反応までの時間は平均5.1分、低血圧症(50.0%)の頻度が最も高く、悪心(48.7%)、呼吸困難(37.5%)と続いた。顔面腫脹は23.7%、最初の施設で報告された蕁麻疹は全体では3.3%と稀だった。問題ヘパリンと重度の有害反応との関連は100%有害反応との関連因子について、ヘパリン液ほか透析機器やダイアライザーなどを含め、製造会社別に調べた結果、最も強い関連因子は「バクスターヘルスケア社製ヘパリン使用」だった(有害反応報告施設で100%使用 vs. 未報告施設では4.3%使用、P

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小児喘息の新たなリスク因子を同定か:ISAACプログラム第III相試験

1歳になる前にアセトアミノフェン(別名パラセタモール)を使用すると、6~7歳時の喘息、鼻結膜炎、湿疹のリスクが増大することが、20万人以上の小児の横断的研究で明らかとなった。喘息発症のリスク因子の検討は数多く行われてきたがいまだ明確なエビデンスはなく、胎生期にアセトアミノフェンに曝露すると小児期および成人期の喘息発症リスクが高まる可能性が指摘されていた。ニュージーランド医学研究所のRichard Beasley氏が、Lancet誌2008年9月20日号で報告した。31ヵ国73施設が参加した国際的な大規模試験研究グループは、International Study of Asthma and Allergies in Childhood (ISAAC)プログラムの第III相試験に登録された6~7歳の小児を対象に、アセトアミノフェンと喘息の関連について検討を行った。31カ国73施設に登録された20万5,487人の小児が解析の対象となった。両親あるいは保護者に、喘息、鼻結膜炎、湿疹の症状、および0歳時の発熱に対するアセトアミノフェンの使用、最近1年間におけるアセトアミノフェンの使用頻度などのリスク因子に関する質問票に記入してもらった。主要評価項目は、0歳時の発熱に対するアセトアミノフェンの使用に関連した喘息症状のオッズ比とし、ロジスティック回帰分析を用いて算出した。0歳時、現行の使用で喘息リスクが有意に増大、さらなる検証が必要多変量解析では、0歳時の発熱に対するアセトアミノフェンの使用は6~7歳時の喘息症状の発現リスクを有意に増大させた(オッズ比1.46、95%信頼区間1.36~1.56)。現行のアセトアミノフェン使用によっても、用量依存性に喘息症状の発現リスクが上昇した(非使用に対する中用量使用小児のオッズ比1.61、95%信頼区間1.46~1.77、高用量使用小児のオッズ比3.23、95%信頼区間2.91~3.60)。アセトアミノフェンの使用は重症喘息のリスクとも相関を示し、人口寄与リスク(一般集団の疾患リスクのうち当該リスク因子が原因である割合)は0歳時の使用が22%、現行の使用が38%であった。また、0歳時および6~7歳時のアセトアミノフェン使用はいずれも、鼻結膜炎および湿疹症状の発現リスクをも有意に上昇させた。著者は、「0歳時および現行のアセトアミノフェン使用は6~7歳時の喘息、鼻結膜炎、湿疹のリスクと相関した。本試験のデザインでは因果関係を確立することはできないが、アセトアミノフェンへの曝露は小児喘息のリスク因子の可能性がある」と結論したうえで、「両親や医療従事者に、アセトアミノフェンのリスク対ベネフィットや、他の治療アプローチとの比較における効果、安全性について勧告するには、エビデンスとして十分ではない。早急に無作為化対照比較試験などで検証する必要がある」としている。(菅野守:医学ライター)

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診察前に患者に十分な情報提供を行っても…

診察の前にあらかじめ患者に情報提供を行っても、患者満足やコンプライアンス向上などには結びつかないことが、カーディフ大学(イギリス)医学部のPaul Kinnersley氏らによるシステマティックレビューの結果として報告された。BMJ誌2008年7月16日号掲載より。33の無作為化試験をメタ解析患者は医師や看護師からの詳細な情報提供を望むが、通常提供される情報量は少ない。情報提供は治療の鍵(患者満足、コンプライアンス向上、認知、理解)となり、症状改善、入院期間等にも関わる一方、情報提供を行わないこと、あるいは患者にとって不要な情報を提供することはリスク増大につながる。そこでKinnersley氏らは、情報を集められる事前相談の介入ヘルスケアシステムが、患者・臨床家に及ぼす影響と、それらが患者や家族にとって助けとなっているのかを調査した。メタ解析によるシステマティックレビューで、コクランライブラリー等7つの電子文献ソースから、8,244例が関与していた33の無作為化試験を選定し行われた。主要評価項目は、患者からの質問(患者の不安、認識、満足の程度を評価)、および診察時間。患者ベネフィットはわずか33の無作為化試験のうち、メタ解析に有効な試験はわずかだった。メタ解析の結果、わずかではあったが統計学的に有意な増加が、患者からの質問(平均値差:0.27)と患者満足(0.09)にみられた。また非統計学的だが有意な変化が、診察前の患者の不安(加重平均差:-1.56)、診察後の患者の不安(平均差:-0.08)、患者の認識(-0.34)、診察時間(0.10)にみられた。文書等による事前介入は、患者からの質問、診察時間、患者満足感に患者指導でもたらされるのと同様の効果があった。臨床家がさらなるトレーニングを積んでの介入よりも、患者を絞り込んで介入することのほうが、患者満足や診察時間に効果があった。Kinnersley氏は「事前介入による患者ベネフィットはわずかである。これらは診察時の患者と臨床家の態度を変えることの難しさを証明する。質問が増えないのはアウトカムが顕著に変わることがないからだろう」と結論している。

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QRISK2は心血管系イベントのハイリスクの予測に優れている

心血管系イベントの予測ツールとして、英国人データを基に開発されたQRISK(10年間心血管系イベント率予測スコア)(2007年8月10日配信号参照)。その進化バージョンQRISK2(心血管疾患リスクアルゴリズム)の開発・検証報告が、英国ノッチンガム大学のJulia Hippisley-Cox氏らにより発表された。QRISK2は、英国立医療技術評価機構(NICE)が推奨するFraminghamスコア補正バージョンよりもパフォーマンスが優れたもの、イングランドとウェールズ特異の人種コホートを鑑み心血管リスクの正確な推定値を提供できることを目的とし開発された。BMJ誌2008年6月28日号(オンライン版2008年6月23日号)掲載より。英国のQRESEARCHで登録された230万人を基にツール開発は、QRESEARCHでデータベース登録された35~74歳の230万人(1,600万人 年超)、心血管イベント14万件を基とする。全母集団(開発コホートと検証コホート合わせて)のうち、222万人が白人または人種不明の集団で、22,013人が南アジア人、11,595人がアフリカ系黒人、10,402人がカリブ系黒人、19,792人が中国系またはその他アジア系で構成されていた。主要評価項目は、心血管疾患(虚血性心疾患、脳卒中、一過性脳虚血発作)の初回診断(インシデント報告)記録。リスク因子は、自己申告を含む民族性、年齢、性、喫煙状態、収縮期血圧、血清総コレステロール、BMI、60歳未満家族(一親等)の虚血性心疾患歴、貧困スコア、および高血圧、2型糖尿病、腎疾患、心房細動、関節リウマチの治療歴。Framinghamスコアよりも優れている検証の結果、QRISK2はFraminghamスコアよりも優れていることを示した。R2乗検定によるモデル適合度は、QRISK2(女性43% 、男性38%)vs. Framingham(39%、35%)。ハイリスク群(10年リスクが20%以上)にFraminghamで分類されたのは112,156人だったが、QRISK2で検証するとそのうちの46,094人(41.1%)にとどまる。そしてこのうち実際の10年リスクは16.6%で、20%閾値以下だった。一方QRISK2でハイリスクに分類されたのは78,024人。Framinghamで分類できたのはそのうち11,962(15.3%)人、実際の10年リスクは23.3%で20%閾値を上回っていた。検証コホートにおいて、年間インシデント20%以上と予測されたのは、QRISK2では女性で30.6/1,000人年、男性で32.5/1,000人年。一方、Framinghamでは、26.4/1,000人年、25.7/1,000人年で、実際の20%以上のイベント発生はQRISK2で予測された集団のほうが高かった。これらからCox氏は「QRISK2は特に“20%”を閾値とするハイリスク群の選定に優れ、心血管疾患の第一次予防のためのより効果的なツールである」と結論した。また、検証グループの属性を変えてさらなる妥当性の検証を行う必要性も述べている。

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中国製原料使用のヘパリンが毒ヘパリンであるEBM

年明けの日本では毒ギョーザが話題となっていたが、米国では透析患者から相次いでいた静脈注射用ヘパリン投与後のアナフィラキシー様反応の報告が大きな関心事となっていた。死亡例も相次いだ本件に関して米国疾病管理センターは共通の症例報告からBaxter Healthcare社のヘパリン製剤を特定。1月17日にリコール開始、2月28日に回収を終了する。しかし3月6日、ドイツから他社製品での事例が報告。これを受け米食品医薬品局(FDA)はヘパリンの全製造業者に汚染物質混入の検査を命じた。そして混入が明らかになったのが、過硫酸化コンドロイチン硫酸(OSCS)。本論は、これまで立証されていなかったOSCSと臨床有害事象との生物学的関連を目的に、Momenta Pharmaceuticals社のTakashi Kei Kishimoto氏らが、FDAの協力を得て行った試験結果。NEJMオンライン版2008年4月23日に速報され、本誌では2008年6月5日号にて掲載された。ブタ体内で有害事象の再現実験試験はFDAから、有害事象との関連が疑われたヘパリン製剤ロットと比較対照用のロットの提供を受けて実施された。OSCSの有無、および汚染物質と観察された臨床有害事象(低血圧、顔面浮腫、頻脈、蕁麻疹、吐き気など)とを結び付ける可能性がある生物活性について盲検下でスクリーニング。in vitroで接触系活性化と補体カスケードを分析。さらにブタの生体内でOSCSが問題の臨床症状を再現するかどうかin vivoの試験も行われた。ブタもヒトもOSCSに同様の反応示す未分画へパリンの汚染ロットで見つかったOSCSは、標準試料の合成OSCSと同様に直接、ヒト血漿中のキニンカリクレイン経路を活性化したが、これは強力な血管作用を持つブラジキニン産生につながる可能性を示唆するものでもあった。加えてOSCSは、補体系タンパク由来の強力なアナフィラトキシンであるC3a、C5aの産生も誘導した。意外なことに、この2つの経路の活性化は連鎖しており、第XII因子の液相活性化に依存していた。また、さまざまな種の血漿サンプルのスクリーニングによって、ブタとヒトのOSCSの作用に対する感受性は同様なことがわかった。ブタの静脈に投与したOSCS汚染ヘパリンと合成OSCSは、いずれもカリクレイン活性化に関連する低血圧を引き起こした。これらからKishimoto氏は「本試験結果は、疑惑のヘパリン・ロットに混入しているOSCSが、観察された有害事象と生物学的な関連のあることを示す科学的根拠を提供するものだ」と結論。また、カリクレインのアミド溶解性の活性を評価する分析試験を行い、ヘパリンのOSCSや、その他の接触系を活性化する高度の過硫酸化多糖類の混入物質をスクリーニングすることで、ヘパリン供給経路を保護するための分析試験を補足できるとも報告した。(武藤まき:医療ライター)

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無作為割り付け、二重盲検化いずれかを欠く試験では「客観的」評価項目が肝要

無作為割り付けが適切になされていない、あるいは二重盲検ではない介入試験では、主観的評価項目に対する介入の効果が強調されていることが明らかになった。University of Bristol(英国)のLesley Wood氏らによる報告がBMJ誌HPで早期公開(2008年3月3日付、本誌3月15日号に収載)された。メタ解析の対象となった試験で検討検討の対象となったのは、予後に対する介入の影響を検討した1,346試験を対象としたメタ解析146件。「適切な無作為割り付けの有無」、「二重盲検化の有無」で試験を分け、介入に対する評価が異なるかを検討した。「適切な無作為割り付け」とは参加者や登録者が事前に割り付け群が分からぬよう行なわれる割り付け、「二重盲検化」とは完全な患者、治療者だけでなく、イベント判定者も治療内容を知り得ない状況とされた。 非無作為、非盲検化で増強するのは「主観的」評価項目への作用「無作為割り付けの適切さ」は804件の試験で検討された。その結果、無作為割り付けが「適切」だった272試験(34%)に比べ「不適切」な試験では介入の効果が相対的に17%、有意に大きかった(評価項目オッズ比:0.83、95%信頼区間:0.74~0.93)。しかし、評価項目を「主観的」、「客観的」に分けると、不適切な無作為割り付け」により介入の効果が有意に増大していたのは「主観的」評価項目だけだった(オッズ比:0.69、95%信頼区間:0.59~0.82。客観的評価項目オッズ比:0.91、95%信頼区間:0.80~1.03)。「二重盲検の有無」を評価できたのは746試験だった。二重盲検化されていた432試験(58%)に比べ、非二重盲検試験では介入の効果が相対的に7%増強されていたが、有意ではなかった。しかし「主観的」評価項目に限れば、非二重盲検試験では介入により有意にリスクは減少していた(オッズ比:0.75、95%信頼区間:0.61~0.93)。最後に、「適切な無作為割り付けの有無」「二重盲検化の有無」を変数として同じ回帰分析に入れてみた。その結果、総死亡、「客観的」評価項目に対してはいずれも有意な因子ではなかったが、「主観的」評価項目のリスクは「適切ではない無作為割り付け試験」(オッズ比:0.75、95%信頼区間:0.63~0.88)、「非二重盲検化試験」(同0.77、0.65~0.91)のいずれにおいても介入により有意に低下していた。 「客観的」評価項目の採用が重要二重盲検試験でも有害事象により患者の割り付け群が分かる場合は珍しくない。Wood氏らはそれを踏まえ、臨床試験では客観的な評価項目を必ず設ける必要があるとしている。最近増えている複合評価項目では、どれほど客観的な項目が含まれているか確認する必要があるということだろう。オープン試験でイベント判定だけを盲検化するPROBE法を用いた大規模臨床試験ではなおさらである。Wood氏らまた、メタ解析を行う場合、このようなバイアスにも留意して解析対象の試験を選択するよう呼びかけている。たとえば高血圧領域なら、1日3回服用のACE阻害薬の1日服用量を1回で服用させたCAPPP試験、また、長時間Ca拮抗薬の有用性を確認したとされるSyst-EUR研究(プラセボ群は追加薬のACE阻害薬、利尿薬もプラセボ)あたりは、特に薬剤間の比較を行うメタ解析からは除外を検討する余地はあるのではないだろうか。(宇津貴史:医学レポーター)

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植込型除細動器使用は女性で低い

JAMA誌10月3日号に寄せられた本論は、植込型除細動器(ICD)使用の性差に着目した、複数年にわたる患者追跡調査を踏まえた研究報告で、米国デューク医科大学クリニカルリサーチ研究所のLesley H. Curtis氏らによる。一次あるいは二次予防目的使用群ごと複数年にわたって検証Curtis氏らは、心突然死の一次予防もしくは二次予防を目的にICD使用が適用された患者群を追い検証した。連邦機関の一つであるCMMS(Centers for Medicare & Medicaid Services:旧保健医療財政局)から得られた1991年~2005年の間の調査定義可能な5%相当の全国サンプルを解析。メディケアに該当する65歳以上患者で、急性心筋梗塞、心機能不全あるいは心筋症と診断された(心停止、心室頻拍は除く)男性65,917例、女性70,504例を一次予防コホート群として、心停止または心室頻拍と診断された男性52,252例、女性47,411例を二次予防コホート群として解析が行われた。主要評価項目は、1999年から2005年までの1年ごとのICD治療の受療状況と全死亡率。ICD治療群と未治療群との死亡率の有意差が少ないのは性差のせい?2005年時の一次予防コホート群で、コホートエントリー1年以内でICD治療を受けていたのは男性が32.3/1,000例、女性は8.6/1,000例。多変量解析によって、男性のほうが女性よりもICD治療を受けている傾向が強かった(ハザード比3.15、95%信頼区間2.86-3.47)。またコホートエントリー180日時点で存命のICD未治療群とICD治療群との、1年以内の死亡率に有意差はなかった(ハザード比1.01、95%信頼区間0.82-1.23)。一方、2005年時の二次予防コホート群は、男性102.2/1,000例、女性38.4/1,000例がICD治療を受けていた。人口統計学的変数および共存症の有無で調整後、男性のほうが女性よりもICD治療を受けている傾向が強いことが明らかとなった(ハザード比2.44、95%信頼区間2.30-2.59)。またコホートエントリー30日時点で存命だったICD未治療群とICD治療群との、1年以内の死亡率は、治療群のほうが有意に低かった(ハザード比0.65、95%信頼区間0.60-0.71)。Curtis氏らは、メディケア集団においては、一次予防もしくは二次予防目的いずれでも、女性のほうがICD治療を男性よりも受けていないという性差が見いだされたと報告。これまでの報告ではギャップは少ないとされていたが、性差があると認識することが死亡率改善のためにも必要だと述べている。(武藤まき:医療ライター)

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