サイト内検索|page:82

検索結果 合計:2887件 表示位置:1621 - 1640

1621.

第18回 花粉症患者に使える!こんなエビデンス、あんなエビデンス【論文で探る服薬指導のエビデンス】

 インフルエンザがやっと落ち着いてきたと思ったら、花粉症が増える季節になりました。症状がひどい方は本当につらい季節で、身の回りでも花粉症の話題でもちきりとなっています。今回は、服薬指導で使える花粉症に関するお役立ち情報をピックアップして紹介します。アレルゲンを防ぐには?アレルギー性疾患では、アレルゲンを避けることが基本です1)。花粉が飛ぶピークタイムである昼前後と日没後、晴れて気温が高い日、空気が乾燥して風が強い日、雨上がりの翌日や気温の高い日が2~3日続いた後は外出を避けたり、マスクやメガネ、なるべくツルツルした素材の帽子などで防御したりしましょう。それ以外にも、鼻粘膜を通したアレルゲンの吸入を物理的にブロックするために、花粉ブロッククリームを直接鼻粘膜に塗布するという方法もあります。この方法は、ランダム化クロスオーバー試験で検証されており、アレルギー性鼻炎、ダニおよび他のアレルゲンに感受性のある成人および小児の被験者115例を、花粉ブロッククリーム群とプラセボ軟膏群に割り付けて比較検討しています。1日3回30日間の塗布で、治療群の鼻症状スコアが改善しています。ただし、必ずしも花粉ブロッククリームでないといけないわけではなく、プラセボ群でも症状改善効果が観測されています2)。ほかにも小規模な研究で鼻粘膜への軟膏塗布で有効性を示唆する研究3)がありますので、やってみる価値はあるかもしれません。症状を緩和する食材や栄養素は?n-3系脂肪酸大阪の母子健康調査で行われた、サバやイワシなどの青魚に多く含まれるn-3系脂肪酸の摂取量とアレルギー性鼻炎の有病率に関する研究で、魚の摂取量とアレルギー性鼻炎の間に逆の用量反応関係があることが指摘されています4)。ただし、急性の症状に対して明確な効果を期待できるほどの結果ではなさそうです。ビタミンEビタミンEがIgE抗体の産生を減少させる可能性があるとして、アレルギー性鼻炎患者63例を、ビタミンE 400IU/日群またはプラセボ群にランダムに割り付け、4週間継続(最初の2週間はロラタジン/プソイドエフェドリン(0.2/0.5/mg/kg)と併用)した研究があります。しかし、いずれの群も1週間で症状が改善し、症状スコアにも血清IgEにも有意差はありませんでした5)。カゼイ菌アレルギーは腸から起こるとよく言われており、近年乳酸菌やビフィズス菌が注目されています。これに関しては、カゼイ菌を含む発酵乳またはプラセボを2~5歳の未就学児童に12ヵ月間摂取してもらい、アレルギー性喘息または鼻炎の症状が改善するか検討した二重盲検ランダム化比較試験があります。187例が治療群と対照群に割り付けられ、アウトカムとして喘息/鼻炎の発症までの時間、発症数、発熱または下痢の発生数、血清免疫グロブリンの変化を評価しています。通年性の鼻炎エピソードの発生は治療群でやや少なく、その平均差は―0.81(―1.52~―0.10)日/年でした。鼻炎にわずかな効果が期待できるかもしれませんが、喘息には有効ではないとの結果です6)。薬物治療の効果は?薬物治療では、抗ヒスタミン薬、抗ロイコトリエン薬、アレルゲン免疫療法が主な選択肢ですが、抗ヒスタミン薬にフォーカスして見ていきましょう。比較的分子量が小さく、脂溶性で中枢性の副作用を生じやすい第1世代よりも、眠気など中枢性の副作用が少ない第2世代の抗ヒスタミン薬がよく用いられています。種々の臨床試験から、第2世代抗ヒスタミン薬は種類によって効果に大きな差はないと思われます。たとえば、ビラスチンとセチリジンやフェキソフェナジンを比較した第II相試験7)では、効果はほぼ同等でビラスチンは1時間以内に作用が発現し、26時間を超える作用持続を示しています。なお、ルパタジンとオロパタジンの比較試験では、ルパタジンの症状の改善スコアはオロパタジンとほぼ同等ないしやや劣る可能性があります8)。また、眼のかゆみなど症状がない季節性のアレルギー性鼻炎であれば、抗ヒスタミン薬よりもステロイド点鼻薬の有効性が高いことや、ステロイド点鼻薬に抗ヒスタミン薬を上乗せしても有意な上乗せ効果は期待しづらいことから、点鼻薬を推奨すべきとするレビューもあります9)。副作用は?抗ヒスタミン薬の副作用で問題になるのがインペアード・パフォーマンスです。インペアード・パフォーマンスは集中力や生産性が低下した状態ですが、ほとんどの場合が無自覚なので運転を控えるようにすることなどの指導が大切です。フェキソフェナジン、ロラタジン、またそれを光学分割したデスロラタジンなどはそのような副作用が少ないとされています10)。口渇、乏尿、便秘など抗コリン性の副作用は、中枢移行性が低いものでも意識しておくとよいでしょう。頻度は少ないですが、第1世代、第2世代ともに痙攣の副作用がWHOで注意喚起されています11)。万が一、痙攣などが起こった場合には被疑薬である可能性に思考を巡らせるだけでも適切な対応が取りやすくなると思います。予防的治療の効果は?季節性アレルギー性鼻炎に対する抗ヒスタミン薬の予防的治療効果について検討した二重盲検ランダム化比較試験があります12)。レボセチリジン5mgまたはプラセボによるクロスオーバー試験で、症状発症直後の早期服用でも花粉飛散前からの予防服用と同等の効果が得られています。予防的に花粉飛散前からの服用を推奨する説明がされがちですが、症状が出てから服用しても遅くはないと伝えると安心していただけるでしょう。服用量が減らせるため、医療費抑制的観点でも大切なことだと思います。鼻アレルギー診療ガイドラインでも、抗ヒスタミン薬とロイコトリエン拮抗薬は花粉飛散予測日または症状が少しでも現れた時点で内服とする主旨の記載があります1)。以上、花粉症で服薬指導に役立ちそうな情報を紹介しました。花粉症対策については環境省の花粉症環境保健マニュアルによくまとまっています。また、同じく環境省による花粉情報サイトで各都道府県の花粉飛散情報が確認できますので、興味のある方は参照してみてください13)。1)鼻アレルギー診療ガイドライン2016年版2)Li Y, et al. Am J Rhinol Allergy. 2013;27:299-303.3)Schwetz S, et al. Arch Otolaryngol Head Neck Surg. 2004;130:979-984.4)Miyake Y, et al. J Am Coll Nutr. 2007;26:279-287.5)Montano BB, et al. Ann Allergy Asthma Immunol. 2006;96:45-50.6)Giovannini M, et al. Pediatr Res. 2007;62:215-220.7)Horak F, et al. Inflamm Res. 2010;59:391-398.8)Dakhale G. J Pharmacol Pharmacother. 2016 Oct-Dec 7:171–176.9)Stempel DA, et al. Am J Manag Care. 1998;4:89-96.10)Yanai K, et al. Pharmacol Ther. 2007 Jan 113:1-15.11)WHO Drug Information Vol.16, No.4, 200212)Yonekura S, et al. Int Arch Allergy Immunol. 2013;162:71-78.13)「環境省 花粉情報サイト」

1622.

EGFR変異陽性NSCLC1次治療の新たな選択肢ダコミチニブ

 ファイザー株式会社は、ダコミチニブの承認にあたり、本年(2019年)2月、都内で記者会見を開催した。その中で近畿大学医学部内科学腫瘍内科部門 中川 和彦氏と国立がん研究センター中央病院 先端医療科長/呼吸器内科 山本 昇氏がEGFR変異陽性非小細胞肺がん(NSCLC)治療とダコミチニブについて紹介した。 2000年時点のNSCLCの標準治療はプラチナ併用化学療法で、当時の全生存期間(OS)は約1年だった。昨年、オシメルチニブが1次治療薬に承認となったEGFR変異陽性NSCLCは、無増悪生存期間(PFS)でさえ19.1ヵ月1)となった。EGFR-TKI、化学療法と治療選択肢が増えるなか、「EGFR陽性NSCLCの今の問題は、治療シーケンスである」と、中川氏は述べる。ダコミチニブの効果と安全性 そのような中、2019年1月8日にダコミチニブ(商品名:ビジンプロ)が承認になった。ダコミチニブはEGFR(HER1、ErbB1)だけでなく、HER2、HER4も不可逆的に阻害する第2世代EGFR-TKI。今回の承認は、EGFR変異陽性NSCLCの1次治療における国際共同無作為化非盲検第III相ARCHER1050を中心とした複数の臨床結果に基づくもの。この試験でダコミチニブはゲフィチニブに比べPFS、OSの改善を示した。主要評価項目であるPFSは、全集団においてダコミチニブ群14.7ヵ月、ゲフィチニブ群9.2ヵ月(HR:0.59、95%CI:0.47~0.74、p<0.0001)。日本人集団では、ダコミチニブ群(n=40)18.2ヵ月、ゲフィチニブ群(n=41)9.3ヵ月(HR:0.544、95%CI:0.307~0.961、p=0.0163)と、いずれもダコミチニブ群で有意に改善した。全生存率はダコミチニブ群34.1ヵ月、ゲフィチニブ群26.8ヵ月と、ダコミチニブ群で良好であった(HR:0.780、95%CI:0.582~0.993)であった(日本人集団は未達)。 一方、安全性について。ダコミチニブ群は皮膚系統(爪囲炎、ざ瘡様皮膚炎など)の有害事象が多いことが特徴である。有害事象の発現時期は早く、代表的な副作用である下痢、口内炎、ざ瘡様皮膚炎の初回発現の時期は全集団で7~14日、日本人集団で5~10日であった。また、ダコミチニブ群では減量例が多くみられ、減量経験のある患者の割合は全集団で66.1%、日本人集団では85.0%であった。相対用量強度は全集団で平均73.3%、日本人集団では55.7%という数値であったが、「この用量強度でも十分な効果(PFS)を示すことから、十分な副作用管理と用量調整が重要」と山本氏は述べた。2018年ガイドラインの選択肢としていかに活用するか ダコミチニブは、「肺癌診療ガイドライン2018」にもEGFR変異陽性の1次治療に選択肢の1つとしてあげられている(CQ.51 b:ダコミチニブを行うよう提案する:2B)。 EGFR変異陽性NSCLCの生命予後は大きく向上しており、「複数の治療選択肢を効率よく適用することが、患者の予後改善、QOL維持に重要。ダコミチニブは新たな選択肢として期待できる薬剤」と山本氏は言う。 ダコミチニブの日本人集団におけるPFSはオシメルチニブに匹敵する。ダコミチニブを有効に活用するポイントとして山本氏は次のように述べる。まず治療前に治療の適用を見極めること。それにはARCHER1050試験の選択・除外規準が参考になる。そして、治療開始後には減量を含めた早期の副作用対策である。一方、中川氏は減量について、「用量強度が多少低くても長く続けられることが重要」だと述べる。国際臨床試験において、日本の医師は早期に減量・休薬する傾向にある(ARCHER1050試験でも減量開始時期は全体の12週に対し日本人では8.79週)。しかし、結果としてこれが日本人集団の有効性の高さにつながっている可能性があるという。 EGFR変異陽性NSCLCの1次治療にダコミチニブが参入した。さらなる予後改善のため、この後、より良い治療シークエンスの開発が期待される。1)Ohe Y, et al. Osimertinib versus standard-of-care EGFR-TKI as first-line treatment for EGFRm advanced NSCLC: FLAURA Japanese subset. Jpn J Clin Oncol. 2019;49:29-36.■関連記事dacomitinib、EGFR変異肺がん1次治療でOS延長(ARCHER1050)/ASCO2018FLAURA試験日本人サブセット、PFS19.1ヵ月/JJCOダコミチニブ、EGFR変異陽性NSCLCに国内承認/ファイザー

1623.

第27回 特養での配薬与薬ミスを防ぐ9つの鉄則【週刊・川添ラヂオ】

動画解説多くの高齢者が入所する特別養護老人ホームでは薬の配り間違いや、飲み間違いが少なくありません。今回から3週にわたり特別養護老人ホームにおける介護事故予防ガイドラインをもとに、配薬与薬ミスの予防についてお話しします。まずは特養での投薬時、薬を与える患者さんの顔を一人ひとりちゃんと見ていますか?看護師さんと処方せんだけを確認してダンボールで届けるだけなんて言語道断です!

1624.

重度の精神疾患患者における脂質異常症と抗精神病薬に関するメタ解析

 重度の精神疾患患者は、抗精神病薬の悪影響に関連している可能性のある代謝系の問題への罹患率やそれに伴う死亡率の上昇を来す。第2世代抗精神病薬(SGA)は、第1世代抗精神病薬(FGA)と比較し、脂質代謝異常とより関連が強いと考えられているが、このことに対するエビデンスは、システマティックレビューされていなかった。英国・East London NHS Foundation TrustのKurt Buhagiar氏らは、重度の精神疾患患者における脂質異常症リスクについて、SGAとFGAの評価を行った。Clinical Drug Investigation誌オンライン版2019年1月24日号の報告。 主要な電子データベースより2018年11月までの研究を検索した。対象研究は、重度の精神疾患患者に対するSGAとFGAを直接比較し、脂質代謝異常を主要アウトカムまたは第2次アウトカムとして評価した横断研究、コホート研究、症例対照研究、介入研究のいずれかとした。エビデンスは、PRISMA(システマティックレビューおよびメタ解析のための優先的報告項目)ガイドラインに従ってレビュー、評価を行った。 主な結果は以下のとおり。・18件の研究が抽出された。・SGAとFGAにおける脂質異常症の報告は矛盾しており、研究間のばらつきが大きく、完全な定性的合成のみが実行可能であった。・クロザピン、オランザピン、リスペリドンについては、限られたメタ解析を実施するに十分なデータがあった。各薬剤ともに、FGAと比較し、脂質異常症の事例性(caseness)との関連が少し高かったが、異質性の高さが認められた(すべてI2>50%、p<0.05)。 ●クロザピン(オッズ比:1.26、95%信頼区間[CI]:1.16~1.38) ●オランザピン(オッズ比:1.29、95%CI:0.89~1.87) ●リスペリドン(オッズ比:1.05、95%CI:0.80~1.37)・クロザピンは、トリグリセリド増加とも関連が認められたが(標準平均差:0.51、95%CI:0.21~0.81、I2>=5.74%)、コレステロールとの関連は認められなかった。・オランザピンとリスペリドンは、ハロペリドールと比較し、コレステロールまたはトリグリセリドの統計学的に有意な増加との関連が認められなかった。 著者らは「研究デザインや方法論には、かなりの違いが認められた。抗精神病薬による脂質代謝異常への影響におけるSGAとFGAの相対リスクを決定するには、薬剤ごとにさまざまな悪影響を引き起こす可能性があるため、臨床的に明らかにすることは難しい可能性がある。したがって、SGAかFGAかの焦点を当てるよりも、特定の抗精神病薬の脂質代謝リスクを考慮することが重要である」としている。■関連記事非定型抗精神病薬による体重増加・脂質異常のメカニズム解明か抗精神病薬、日本人の脂質異常症リスク比較:PMDA統合失調症治療に用いられる抗精神病薬12種における代謝系副作用の分析

1625.

第7回 異常かな?と思ったら…【薬剤師のためのバイタルサイン講座】

薬剤師である皆さんが患者さんのご自宅を訪問する時、患者さんは慢性的な病態であることが多く、容態の急変はないと思いがちです。しかし、慢性疾患であっても、急に容態が変化・悪化することはあります。そのような時、主治医や訪問看護師にすぐに連絡した方がよいかどうか迷うことがあるかもしれません。今回は、急を要するか否かの判断の仕方と、その判断に必要なバイタルサインの測定法について紹介します。異常かな?と思ったら家族に「いつもと比べていかがですか?」と尋ねてみてください。私たちは、家族が「いつもとちょっと違うんです」と言う時には、特に注意して患者さんを診るようにしています。患者さんの容態が変化して、主治医や看護師に連絡した方がよいかどうか迷った時、「忙しいのにこんなことで電話して」と思われてしまうのでは...、と躊躇してしまうことがあるかもしれません。しかし、迷った時は連絡しましょう!現場では、患者さんを実際よりも軽症と判断してしまうことよりも、実際よりも重症と判断することの方が安全であり、患者さんにとって有益です。まずは患者さんのことを考えてください。そして、患者さんにとって一番よいと思うことを実行してください。迷った時には連絡と相談です。この気持ちがあれば、主治医や看護師は、どんな些細な連絡であっても、きっと「連絡ありがとうございました」と言ってくれるはずです。日本高血圧学会高血圧治療ガイドライン作成委員会編.高血圧治療ガイドライン2014.東京,ライフサイエンス出版,2014.太田富雄,他.急性期意識障害の新しいgradingとその表現方法.第3回脳卒中の外科研究会講演集.東京,にゅーろん社,1975,61-69.Teasdale G, et al. Assessment of coma and impaired consciousness: a practical scale. Lancet.1974; 2: 81-84.脳卒中合同ガイドライン委員会.脳卒中治療ガイドライン2009.東京,協和企画,2009.

1626.

喫煙で子宮頸がんリスクが2倍~日本人女性

 喫煙による子宮頸がんのリスク上昇を示唆するエビデンスは多いが、日本人女性における関連の強さを調べた研究はない。今回、東北大学の菅原 由美氏らは「科学的根拠に基づく発がん性・がん予防効果の評価とがん予防ガイドライン提言に関する研究」において、日本人女性における喫煙と子宮頸がんリスクとの関連を系統的レビューにより評価した。その結果から、喫煙が日本人女性における子宮頸がんリスクを高めるエビデンスは確実であると結論している。Japanese Journal of Clinical Oncology誌2019年1月号に掲載。 本研究では、PubMedによるMEDLINE検索もしくは医中誌Webの検索、およびマニュアル検索によりデータを取得した。関連性については、国際がん研究機関(IARC)によって以前に評価された生物学的妥当性と共に、エビデンスの信頼性および関連の強さに基づいて評価した。さらに、メタ分析により喫煙による影響を推定した。 主な結果は以下のとおり。・2つのコホート研究と3つのケースコントロール研究を特定した。・5つの研究すべてが、喫煙と子宮頸がんリスクとの間に強い正の関連を示した。・要約推定によると、非喫煙者に対する喫煙経験者の相対リスクは2.03(95%信頼区間:1.49~2.57)であった。・4つの研究では、喫煙と子宮頸がんリスクとの用量反応関係も示された。

1627.

パーキンソン病〔PD:Parkinson's disease〕

1 疾患概要■ 概念・定義パーキンソン病(Parkinson's disease:PD)は、運動緩慢(無動)、振戦、筋強剛などのパーキンソニズムを呈し、緩徐に進行する神経変性疾患である。■ 疫学アルツハイマー病の次に頻度の高い神経変性疾患であり、平成26年に行われた厚生労働省の調査では、男性6万2千人、女性10万1千人の合計16万3千人と報告されている。65歳以上の患者数が13万8千人と全体の約85%を占め(有病率は1.5%以上)、加齢に伴い発症率が上昇する(ただし、若年性PDも存在しており、決して高齢者だけの疾患ではない)。症状は進行性で、歩行障害などの運動機能低下に伴い医療・介護を要し、社会的・経済的損失は著しい。超高齢社会から人生100年時代を迎えるにあたり、PD患者数は増え続けることが予想されており、本疾患の克服は一億総活躍社会を目指すわが国にとって喫緊の課題と言える。■ 病因これまでの研究により遺伝的因子と環境因子の関与、あるいはその相互作用で発症することが示唆されている。全体の約90%が孤発性であるが、10%程度に家族性PDを認める。1997年に初めてα-synucleinが家族性PDの原因遺伝子として同定され、その後当科から報告されたparkin、CHCHD2遺伝子を含め、これまでPARK23まで遺伝子座が、遺伝子については17原因遺伝子が同定されている。詳細はガイドラインなどを参照にしていただきたい。家族性PDの原因遺伝子が、同時に孤発性PDの感受性遺伝子となることが報告され、孤発性PDの発症に遺伝子が関与していることが明らかとなった。これら遺伝子の研究から、ミトコンドリア機能障害、神経炎症、タンパク分解障害、リソソーム障害、α-synucleinの沈着などがPDの発症に関与することがわかっている。環境因子では、性差、タバコ、カフェインの消費量などが重要な環境因子として検討されている。他にも農薬、職業、血清尿酸値、抗炎症薬の使用、頭部外傷の既往、運動など多くの因子がリスクとして報告されている。■ 病理PDの病理学的特徴は、中脳黒質の神経細胞脱落とレビー小体(Lewy body)の出現である。PDでは黒質緻密層のメラニン色素を持った黒質ドパミン神経細胞が脱落するため、肉眼でも黒質の黒い色調が失われる(図1-A、B)。レビー小体は、HE染色でエオジン好性に染まる封入体で、神経細胞内にみられる(図1-C、D)。レビー小体は脳幹の中脳黒質(ドパミン神経細胞)だけではなく、橋上部背側の青斑核(ノルアドレナリン神経細胞)、迷走神経背側運動核、脳幹に分布する縫線核(セロトニン神経細胞)、前脳基底部無名質にあるマイネルト基底核(コリン作動性神経)、大脳皮質だけではなく、嗅球、交感神経心臓枝の節後線維、消化管のアウエルバッハ神経叢、マイスナー神経叢にも認められる。脳幹の中脳黒質の障害はPDの運動障害を説明し、その他の脳幹の核、大脳皮質、嗅覚路、末梢の自律神経障害は非運動症状(うつ症状、不眠、認知症、嗅覚障害、起立性低血圧、便秘など)の責任病変である。PDのhallmarkであるレビー小体が全身の神経系から同定されることはPDが、多系統変性疾患でありかつ全身疾患であることを示しており、アルツハイマー病とはこの点で大きく異なる。家族性PDの原因遺伝子としてα-synuclein遺伝子(SNCA遺伝子)が同定された後に、レビー小体の主要構成成分が、α-synuclein蛋白であることがわかり、この遺伝子とその遺伝子産物がPDの病態に深く関わっていることが明らかとなった。図1 パーキンソン病における中脳黒質の神経脱落とレビー小体画像を拡大する■ 症状1)運動症状運動緩慢(無動)、振戦、筋強剛などのパーキンソニズムは、左右差が認められることが多く、優位側は初期から進行期まで不変であることが多い。初期から仮面様顔貌、小字症、箸の使いづらさなどの巧緻運動障害、腕振りの減少、小声などを認める。進行すると、姿勢保持障害・加速歩行・後方突進・すくみ足(最初の一歩が出ない、歩行時に足が地面に張り付いて離れなくなる)などを観察し、歩行時の易転倒性の原因となる。多くの症例で、進行期にはL-ドパの効果持続時間が短くなるウェアリングオフ現象を認める。そのためL-ドパを増量したり、頻回に内服する必要があるが、その一方でL-ドパ誘発性の不随意運動であるジスキネジア(体をくねらせるような動き。オフ時に認める振戦とは異なる)を認めるようになる。嚥下障害が進行すると、誤嚥性肺炎を来すことがある。2)非運動症状ほとんどの患者で非運動症状が認められ、前述の病理学的な神経変性、レビー小体の広がりが多彩な非運動症状の出現に関与している。非運動症状は、運動症状とは独立してQOLの低下を来す。非運動症状は、以下のように多彩であるが、睡眠障害、精神症状、自立神経症状、感覚障害の4つが柱となっている。(1)睡眠障害不眠、レム睡眠行動異常症(REM sleep behavior disorders:RBD)、日中過眠、突発性睡眠、下肢静止不能症候群(むずむず足症候群:restless legs syndrome)など(2)精神・認知・行動障害気分障害(うつ、不安、アパシー=無感情・意欲の低下、アンヘドニア=快感の消失・喜びが得られるような事柄への興味の喪失)、幻覚・妄想、認知機能障害、行動障害(衝動制御障害=病的賭博、性欲亢進、買い物依存、過食)など(3)自律神経症状消化管運動障害(便秘など)、排尿障害、起立性低血圧、発汗障害、性機能障害(勃起障害など)、流涎など(4)感覚障害嗅覚障害、痛み、視覚異常など(5)その他の非運動症状体重減少、疲労など嗅覚障害、RBD、便秘、気分障害は、PDの前駆症状(prodromal symptom)として重要な非運動症状であり、とくに嗅覚障害とRBDは後述するInternational Parkinson and Movement Disorder Society(MDS)の診断基準にもsupportive criteria(支持的基準)として記載されている。■ 分類病期についてはHoehn-Yahrの重症度分類が用いられる(表1)。表1 Hoehn-Yahr分類画像を拡大する■ 予後現在、PDの平均寿命は、全体の平均とほとんど変わらないレベルまで良くなっている一方で、健康寿命については十分満足のいくものとは言い難い。転倒による骨折をしないことがPDの経過に重要であり、誤嚥性肺炎などの感染症は生命予後にとって重要である。2 診断■ 診断基準2015年MDSよりPDの新たな診断基準が提唱され、さらにわが国の『パーキンソン病診療ガイドライン2018』により和訳・抜粋されたものを示す。これによるとまずパーキンソニズムとして運動緩慢(無動)がみられることが必須であり、加えて静止時振戦か筋強剛のどちらか1つ以上がみられるものと定義された。姿勢保持障害は、診断基準からは削除された。パーキンソン病の診断基準(MDS)■臨床的に確実なパーキンソン病(clinically established Parkinson's Disease)パーキンソニズムが存在し、さらに、1)絶対的な除外基準に抵触しない。2)少なくとも2つの支持的基準に合致する。

1628.

低侵襲血腫除去は保存的治療を上回るか:ランダム化試験 "MISTIE III"

 現在、欧州脳卒中協会(ESO)ガイドラインは、非外傷性の頭蓋内出血に対するルーチンな外科的介入を推奨していない。支持するエビデンスが存在しないためだという。しかし2016年に報告されたMISTIE(Minimally Invasive Surgery Plus rt-PA for Intracerebral Hemorrhage Evacuation)II試験を含むランダム化試験のメタ解析からは、保存的治療を上回る機能自立度改善作用が示唆されている。そのような状況下、2019年2月6~8日に米国・ハワイで開催された国際脳卒中会議(ISC)では、頭蓋内出血例に対する、低侵襲手術を用いた血腫除去術と保存的療法の機能自立度改善作用を直接比較したランダム化試験“MISTIE III”が報告された。両治療間に改善作用の有意差は認めなかったが、血腫縮小に奏効した例では保存的治療に勝る改善作用が示唆される結果となった。7日のMain Eventセッションにて、Daniel F. Hanley氏(ジョンズ・ホプキンス大学、米国)とIssam A. Awad氏(シカゴ大学、米国)が報告した。 MISTIE III試験の対象は、発症後12~72時間で「修正Rankinスケール(mRS)≦1」、かつ「>30mLの血腫」を認めた頭蓋内出血499例である。アジアを含む全世界74施設で登録された。平均年齢は62歳、61%が男性だった。 これら499例は、「MISTIE治療」群(250例)と「標準治療」群(249例)にランダム化された。「MISTIE治療」群では、最低限の開頭下で、CTガイドにより経カテーテル的に血腫を除去し、その後、tPA洗浄を行った。血腫除去の目標は「≦15mL」である。 追跡はオープンラベルで行われたが、有用性評価者は治療群を盲検化されていた。1年間の死亡リスクはMISTIE治療群で有意に低い その結果、1次評価項目である「1年後mRS:0~3」の割合に、両群間で有意差は認められなかった。2次評価項目である「拡張グラスゴー転帰尺度」にも、有意差はなかった。ただし1年間の死亡リスクは、「MISTIE治療」群で有意に低くなっていた(ハザード比:0.67、95%信頼区間[CI]:0.45~0.98)。 安全性については、「30日間死亡」「72時間以内症候性脳出血」「脳感染症」のいずれも、両群間に有意差はなかった。ただし、72時間以内の無症候性脳出血は、「MISTIE治療」群で有意に多かった(32% vs.8%、P<0.0001)。一方、全重篤有害事象の発現数は、「MISTIE治療」群で126であり、「標準治療」群の142に比べ有意(p=0.012)に低値となっていた。血腫除去良好群ではより良い成績を示す さて、本試験参加医師中、試験前にMISTIE治療を経験していたのは12%にすぎなかった。そのため、血腫除去の成績には相当のバラツキが生じ、目標である「血腫≦15mL」が達成できていたのは59%(146例)のみだった。 そこで血腫を「≦15mL」まで縮小できた例のみで比較してみたところ、「1年後mRS:0~3」の割合は「MISTIE治療」群で「標準治療」群に比べ10.5%、有意(p=0.03)に高値となっていた(オッズ比[OR]:2.02、95%CI:1.05~3.89)。 また、血腫除去率が70%以上になると「1年後mRS:0〜3」達成率が大幅に改善する傾向が認められたため、「MISTIE治療」群の「血腫除去率≧70%」例のみで検討すると、「1年後mRS:0~3」のORは2.05(95%CI:1.09~3.85)で、「標準治療」群に比べ有意に高くなっていた。 Hanley氏報告の主要結果は報告当日Lancet誌にオンライン公開され、Awad氏が担当した血腫除去成績と転帰の関係はNeurosurgery誌に掲載予定である。 本試験はNational Institute of Neurological Disorders and Stroke and Genentechから資金提供を受け行われた。(医学レポーター/J-CLEAR会員 宇津 貴史(Takashi Utsu))「ISC 2019 速報」ページへのリンクはこちら【J-CLEAR(臨床研究適正評価教育機構)とは】J-CLEAR(臨床研究適正評価教育機構)は、臨床研究を適正に評価するために、必要な啓発・教育活動を行い、わが国の臨床研究の健全な発展に寄与することを目指しています。

1629.

第13回 アナタはどうしてる? 術前心電図(後編)【Dr.ヒロのドキドキ心電図マスター】

第13回:アナタはどうしてる? 術前心電図(後編)前回は非心臓手術として、整形外科の膝手術予定の患者さんを例示し、術前スクリーニング心電図のよし悪しを述べました。今回も同じ症例を用いて、Dr.ヒロなりの術前心電図に対する見解を示します。症例提示67歳、男性。変形性膝関節症に対して待機的手術が予定されている。整形外科から心電図異常に対するコンサルテーションがあった。既往歴:糖尿病、高血圧(ともに内服治療中)、喫煙:30本×約30年(10年前に禁煙)。コンサル時所見:血圧120/73mmHg、脈拍81/分・整。HbA1c:6.7%、ADLは自立。膝痛による多少の行動制限はあるが、階段昇降は可能で自転車にて通勤。仕事(事務職)も普通にこなせている。息切れや胸痛の自覚もなし。以下に術前の心電図を示す(図1)。(図1)術前心電図画像を拡大する【問題】依頼医に対し、心電図所見、耐術性・リスクをどのように返答するか。解答はこちら心電図所見:経過観察(術前心精査不要)。耐術性あり(年齢相応)、心合併症リスクも低い。解説はこちらまず、心電図所見。果たしてどのように所見に“重みづけ”をしたら良いのでしょう。どの所見ならヤバくて、どれなら安心なのか。外科医が(循環器)内科医に尋ねたいのは、主に耐術性とリスク(心臓や血管における合併症)の2点ではないでしょうか。耐術性は、合併疾患の状況はもちろん、“動ける度”(運動耐容能)で判定するのがポイント。決して心エコーの“EF”ではありませんよ(フレイル・寝たきりで手術がためらわれる方でも、左心機能が正常な方が多い)。今回のケースのように、高齢ではなく、心疾患の既往や思わせぶりな症状・徴候もなく 、そして何より心臓も血管もいじらない手術で「心血管系合併症が起きるのでは…」とリスクを考えるのは“杞憂”でしょう。誰も彼も術前“ルーチン”心電図を行うのは、ほとんど無意味で臨床判断に影響を与えないことは前回述べました。「どんな患者に術前心電図は必要なのでしょう?」「どんな所見なら問題視すべきでしょう?」このような問いかけに、アナタならどうしますか? Dr.ヒロならこうします。“心電図検査の妥当性はこれでチェック”ボクが術前コンサルトで心電図の相談を受けた時、参考にしているフローチャート(図2)を示します。(図2)術前心電図の要否をみるフローチャート画像を拡大するこれはもともと、術前心電図の要否を判断するものです。海外ではそもそも「検査すべきか・そうでないか」が重視されているんですね。ただ、日本では、“スクリーニング”的に術前心電図がなされるので、ボクはこれを利用して、コンサルトされた心電図に“意義がある”ものか“そうでない”ものかをまず考えます。ここでも、心電図を“解釈する”ための周辺情報として、心電図“以外”の情報とつけ合わせることが大切です。術前外来で言えば、患者さんの問診と診察ですね。一人の患者さんにかけられる時間は限られているので、術前外来で、ボクは以下の4つをチェックしています。“妥当性”からの判断◆心疾患の既往◆症状(symptom)・徴候(sign)◆手術自体のリスク(規模・侵襲性)◆Revised Cardiac Risk Index(RCRI)まず既往歴。これは心疾患を中心に聞きとります。続く2つ目は症状と症候です。症状は、ボクが考える心疾患の“5大症状”、1)動悸、2)息切れ、3)胸痛、4)めまい・ふらつき、5)失神を確認します。もちろん異論もあるでしょうし、100%の特異性はありません。1)や2)は年齢や運動不足、そのほかの理由で「ある」という人が多いですが、それが心臓病っぽいかそうでないかの判断には経験や総合力も必要です。あとは、聴診と下腿浮腫の症候を確認するだけにしています。聴診は心雑音と肺ラ音ね。この段階で心臓病の既往、症状や徴候のいずれかが「あり」なら、術前心電図をするのは妥当で、所見にも一定の“意義”が見込めます。でも、もし全て「なし」なら非特異的な所見である確率がグッと高くなるでしょう。次に手術リスクを考慮します。これは手術予定の部位(臓器)や所要時間、麻酔法、出血量などで決まるでしょう。リスト化してくれている文献*1もあります。これによると、心合併症の発生が1%未満と見込まれる低リスク手術(いわゆる“日帰り手術”や白内障、皮膚表層や内視鏡による手術など)の場合、心電図は「不要」なんです。一方、心合併症が5%以上の高リスク手術(大動脈、主要・末梢血管などの血管手術)なら、心電図は「必要」とされます。もともと、ベースに心臓病を合併しているケースも多いですし、その病態把握に加えて、術後に何か起きた時、術前検査が比較対象としても使えますからね。残るは、心合併症が1~5%の中リスク手術。全身麻酔で行われる非心臓手術の多くがここに該当します。今回の膝手術もまぁここかな。ここで、「RCRI:Revised Cardiac Risk Index」という指標*2を登場させましょう。非心臓手術における心合併症リスク評価の“草分け”として海外で汎用されているもの(図3)で、中リスク手術における術前心電図の妥当性が「あり」か「なし」を判定する重要なスコアなんです!(図3)Revised Cardiac Risk Index(RCRI)画像を拡大するRevised Cardiac Risk Index(RCRI)1)高リスク手術(腹腔内、胸腔内、血管手術[鼠径部上])*2)虚血性心疾患(陳旧性心筋梗塞、狭心痛、硝酸薬治療、異常Q波など)3)うっ血性心不全(肺水腫、両側ラ音・III音、発作性夜間呼吸困難など)4)脳血管疾患(TIAまたは脳卒中の既往)5)糖尿病(インスリン使用)6)腎機能障害(血清クレアチニン値>2mg/dL)*:RCRIでは血管手術以外に、胸腔・腹腔内の手術も含まれる点に注意1)のみ手術側、残り5つが患者側因子の計6項目からなり、ボクもこのページをブックマークしています(笑)。たとえば、全て「No」を選択すると、主要心血管イベントの発生率が「3.9%」と算出されます(注:2019年1月から数値改訂:旧版では「0.4%」と表示)。中リスク手術ならRCRIが1項目でも該当するかどうかがが大事ですが、今回の男性は全て「No」。つまり、チャートで「No ECG(術前心電図をする“意義はない”)」に該当しますから、たとえいくつか心電図所見があっても基本は重要視せず、これ以上の検査を追加する必要もないと判断してOKではないでしょうか。“active cardiac conditionの心電図か?”術前心電図としての妥当性の観点から、今回の症例は精査が不要そうです。では、仮にチャートで「ECG」(“意義あり”)となった時、2つ目のクエスチョン「問題視すべき所見は?」はどうでしょうか。患者さんは“非心臓”手術を受けるのが真の目的ですから、その前にボクらが“手出し”(精査や加療)するのは、よほどの緊急事態ととらえるのがクレバーです。そこでボクが重要視しているのは、“active cardiac condition”です。実はこれ、アメリカ(ACC/AHA)の旧版ガイドライン(2007)*3で明記されたものの、最新版(2014)*4では削除された概念なんです(わが国のガイドライン*5には残ってます)。active cardiac condition=緊急処置を要するような心病態、のような意味でしょうか。これを利用します。“緊急性”からの判断~active cardiac condition~(A)急性冠症候群(ACS)(B)非代償性心不全(いわゆる“デコった”状況)(C)“重大な”不整脈(房室ブロック、心室不整脈、コントロールされてない上室不整脈ほか)(D)弁膜症(重症AS[大動脈弁狭窄症]ほか)もちろん、ここでも心電図以外の検査所見も見て下さい。心電図の観点では、(A)や(C)の病態が疑われたら“激ヤバ”で、早急な対処、場合によっては手術を延期・中止する必要があります。既述のチャートで“全て「No」だった心電図”でも無視できず、むしろ、至急「循環器コール」です(まれですが術前にそう判明する患者さんがいます)。ただ、「左室肥大(疑い)」や「不完全右脚ブロック」などの波形異常の多くはactive cardiac conditionに該当せず、術前にあれこれ検索すべき所見ではありません。つまり、患者さんに対し、「手術を受けるのに、この心電図なら大丈夫」と“太鼓判”を押し、追加検査を「やらない」ほうがデキる医師だと示せるチャンスです!もちろん、コンサルティ(外科医)の意向もくんだ上で最終判断してくださいね。れっきとしたエビデンスがない分野ですが、このように自分なりの一定の見解を持っておくことは悪くないでしょう(気に入ってくれたら、今回の“Dr.ヒロ流ジャッジ”をどうぞ!)。今回のように必要ないとわかっていても、万が一で責任追及されては困ると“慣習”に従う形で、技師さんへ詫びながら心エコーを依頼する、そんな世の中が早く変わればいいなぁ。いつにも増して“熱く”なり過ぎましたかね(笑)。Take-home Message1)心電図所見に対して精査を追加すべきかどうかは、術前検査としての「妥当性」を考慮する2)Active Cardiac Conditionでなければ、非心臓手術より優先すべき検査・処置は不要なことが多い*1:Kristensen SD, et al.Eur Heart J.2014;35:2383-431.*2:Lee TH, Circulation.1999;100:1043-9.*3:Fleisher LA, et al.Circulation.2007;116:e418-99.*4:Fleisher LA, et al.Circulation.2014;130:e278-333.*5:日本循環器学会ほか:非心臓手術における合併心疾患の評価と管理に関するガイドライン2014年改訂版【古都のこと~天橋立~】「日本三景ってどこ?」松島、宮島、そして京都にある「天橋立」です。前回の京丹後の旅の帰りに寄りました。「オイオイ、っていうか写真、逆では?」とお思いでしょ? 実は、2016年のイグノーベル賞で有名になった“股のぞき効果”(股のぞきで眺めると、風景の距離感が不明瞭になり、ものが実際より小さく見える効果)を体験しながら撮影したんです。絶景に背を向け、股下から天橋立をのぞき込むと、そこは“天上世界”。海と空とが逆転し、天に舞い上がる龍のように見えるそうです(飛龍観)。ボクの想像力が豊かで、しかも、もっと雲が少なかったら…見えなくもないかな? ボクは天橋立ビューランドからでしたが、傘松公園バージョンもあるそうで。また今度行ってみようかなぁ。

1630.

ハイリスク症例に絞って検討していたらどうだったのだろうか?(解説:野間重孝氏、下地顕一郎氏)-1005

 急性心筋梗塞においては、急性期緊急PCIが導入される前の院内死亡率は20%を超えていたが、PCIが導入されて以降、ほぼ確実に心表面の責任冠動脈を再灌流させることが可能となり、この疾患による急性期の死亡率は6%程度にまで劇的に改善した。しかし、昨年のCenko Eらによる報告でも、primary PCIを受けた群での急性期の死亡率は4%前半であり(JAMA Intern Med. 2018)、それ以上の目覚ましい改善は見られていない。微小循環障害の改善ができないことによって引き起こされると考えられる、急性期、慢性期の合併症の予防は、現在も解決できておらず、この問題が急性心筋梗塞のさらなる死亡率の改善を阻んでいるのではないかと考えられている。 微小循環障害には、distal embolization、再灌流障害、心筋浮腫などの機序が想定されている。このうちMcCartney PJらによる本論文では、手技中に冠動脈に由来するdistal embolizationを機序とした微小循環閉塞に着目し、PCIに低用量のアルテプラーゼを追加することで、これを予防することができるのか?という疑問を検証した。主要アウトカムは、試験開始後2~7日にコントラスト強調心臓MRIで評価した微小血管閉塞量(左室心筋体積に対する割合)が設定されたが、結果、手技中の20mg冠動脈内投与群とプラセボ群の間にも(3.5% vs.2.3%、p=0.32)、10mg冠動脈内投与群とプラセボ群の間にも(2.6% vs.2.3%、p=0.74)有意差は見られなかった。MACEはプラセボ群で10.1%、10mg投与群で12.9%、20mg投与群で8.2%であった。 これらの結果から、術中のアルテプラーゼ冠動脈投与の有用性は見られなかったというのが結論である。筆者らの問題意識については理解しつつも、評者らには微小循環障害を起こす可能性の高いハイリスク症例を選択的に検討するという方針がなかったことに不満が感じられた。 現状で急性心筋梗塞に対するPCI中の末梢塞栓を機序とした微小循環障害を予防する主な手段として概論すると、(1)本論文で論じられたアルテプラーゼなどによるfibrinolytic therapy、(2)血小板表面受容体のglycoprotein IIb/IIIaに対する特異的抗体であるabciximab、(3)血栓吸引デバイス、(4)末梢保護デバイスなどがある。現実には、これらの組み合わせの治療が現場では行われているため、本論文で検討されたfibrinolytic therapyに限定して論じることには無理があるので、やや長くなるが、以下これらを包括して概論してみたい。 末梢保護デバイスに関して評者らがここで強調したいのは、2005年のEMERALD試験から昨年のVAMPIRE 3試験に至るまでの流れである。これらの試験も同様に、手技中の冠動脈から由来するdistal embolizationを抑制することを念頭に、末梢保護デバイスの有用性を検討した試験である。以前、Stone GWらはSTEMIに対してルーチンで血栓吸引や末梢保護デバイスを使用して、有用性が得られなかったことを示した(EMERALD試験:JAMA. 2005)。この試験を根拠に、現行のガイドラインでは末梢保護デバイスのルーチンでの使用が推奨になっていない。 しかし一方では、Grube Eらは大伏在静脈グラフト(SVG)に対するPCIを対象とした試験で、末梢保護デバイスの有用性を示している(Am J Cardiol. 2002)。臨床的には、このようなno-reflow現象のハイリスク症例を選択して末梢保護デバイスを使用する有用性は、この間も認識されていた。とくに本邦では、各種imaging deviceの使用率が高いために、no-reflow現象のハイリスク症例を選択して末梢保護デバイスを使用する意義や有用性が認識されていたと思われる。 このような中で、横浜市立大学の日比 潔氏らによるVAMPIRE 3試験で、attenuated plaqueが5mm以上の長さにわたって存在する症例では、末梢保護デバイスが有用であることが報告された(JACC:Cardiovascular Intervention 2018)。この試験では、末梢保護デバイスを使用した群で、no-reflow現象の発生が有意に低く(26.5% vs.41.7%、p=0.026)、再灌流後のcorrected TIMI frame countが有意に低く(23 vs.30.5、p=0.0003)、再灌流後の心臓死、除細動/蘇生/ECMOの使用を要する心停止、心原性ショックの発生を有意に減じた(0% vs.5.2%、p=0.028)。 デバイスの使用の可否を画一的に判断するのではなく、ハイリスク症例を慎重に選択したうえで使用して合併症や有害事象を抑制するという判断は、われわれインターベンション医として臨床的に日常行っているところであり、これを裏付ける、非常に臨床の現状に即したデザインと結果である、というのが評者らの感想である。 この流れを振り返ると、McCartney PJらによる報告には、こうしたimaging deviceに関する記載はないことからも、アルテプラーゼによるfibrinolytic therapyにも、今後ハイリスク症例を選択して投与することで有用性が見いだされる可能性は十分にあるのではないかと考えられる。 glycoprotein IIb/IIIaに対する特異的抗体であるabciximabは、本邦では未承認だが、LAD近位部から中間部のSTEMIに対して、abciximab冠動脈内投与と血栓吸引デバイスの有用性を検討した研究が、2012年に前出のStone GWらから報告されている。この報告では、abciximab冠動脈内投与群と非投与群で有意差を観察したものの(15.1% vs.17.1%、p=0.03)、血栓吸引デバイスには有意差がなかった(17.0% vs.17.3%、p=0.51)。 これらの結果を踏まえると、インターベンション医が急性心筋梗塞の患者を目の前にして、PCI手技に際する微小循環閉塞を予防し、急性期、慢性期の予後を改善するためにできることは、まず必ずimaging deviceを用いてハイリスク症例を認識することである。本邦では残念ながらabciximabは使用できないが、その代わりimaging deviceをルーチンで使用可能である。ハイリスク症例であれば、末梢保護デバイスをはじめとした可能な手段を講じることが肝要で、決して不十分なアセスメントのもとに治療を開始してはいけない、と評者らは考えている。 ちなみに、前述のVAMPIRE 3試験に対して同誌にletter to the editorの項で出された反論は、そもそも末梢保護デバイスは世界的にみて“common”ではない、IVUSをみる前に行う血栓吸引やバルーン拡張でプラーク形態が変わるので評価はできない、などのやや感情的な内容であった。欧米では術前CTや術中imaging deviceに関して本邦ほど寛容ではない印象があり、PCIに関する臨床研究やそれらを根拠としたガイドラインも、その傾向は否めない。「ガイドライン」に準じて、すべての症例に画一的に末梢保護デバイスは意味がない、と切り捨てていたとすれば、これは誤りであったことをVAMPIRE 3試験が示している。 ACSに限らず待機的症例を含めたすべてのPCIにおいて、画一的に治療法やデバイスを選択するのではなく、症例ごとに可能なアセスメントを行い、症例ごとに最適な方法やデバイスを選択することが肝要である。当院でも可能な限り、そのような方針のもとで治療に当たっているのが現状である。

1631.

高齢者HER2陽性乳がんに、安全かつ有効な化学療法を…JCOG1607(HERB TEA)【Oncologyインタビュー】第1回

抗HER2療法によってHER2陽性乳がんの生命予後は大きく改善した。しかし、高齢者のHER2陽性乳がんに対するエビデンスは少ない。そのような中、高齢の進行HER2陽性乳がんに対する毒性の軽い、新たな1次治療としてのTDM-1を評価するHERB TEA (JCOG1607)Studyが開始された。HERB TEA Studyの研究事務局である国立がん研究センター中央病院 乳腺・腫瘍内科 下村 昭彦氏に聞いた。試験を行った背景はどのようなものですか。日本の女性の平均寿命は87歳、乳がん患者の年齢も高くなっています。しかし、高齢者乳がんを対象とした臨床試験はとても少数です。HER2陽性乳がんは高齢者では若年と比較して少なく、高齢者を対象とした治療法の開発が行われていませんでした。HERB TEA Studyは、このHER2陽性進行乳がんを対象にしています。現在のHER2陽性乳がんの標準治療はHPD(トラスツズマブ+ペルツズマブ+ドセタキセル)療法で、高齢者でもこれがスタンダードです。HPDには、CLEOPATRAstudy1)という pivotal試験がありますが、この試験には65歳以上の高齢者が15%しか含まれておらず安全性が十分に評価されたとはいえません。しかし、サブ解析をみると、高齢者ではドセタキセルの投与回数や投与量が少ないことが示されています。さらに、アジア人では毒性が強く出ることが示されています。つまり、HPD療法は、アジア人の高齢者という対象に限ると、毒性面で適用しにくいケースがあるということが示唆されます。一方、2次治療以降でキードラッグになっているT-DM1には、毒性が軽いという特徴があります。高齢者はさまざまな合併症を有しており、がんだけで亡くなるわけではありません。また、有害事象の強い治療が入ることでQOLが低下することもあります。実臨床では、T-DM1を高齢者に投与した際でも、有害事象を理由に継続できない方は非常に少ないです。T-DM1が1次治療で使えるようになると、患者さんにとっては、より有害事象が軽い治療を選択しやすくなります。しかし、T-DM1とHPD療法を比較した試験はありません。このような背景から、高齢HER2陽性乳がんにおけるT-DM1とHPD療法の直接比較試験JCOG1607(HERB TEA)を開始しました。試験デザインについて教えてください。JCOG1607試験はHPD療法に対するT-DM1の非劣性を評価するランダム化比較第III相試験です。サンプルサイズは330例、対象は65~79歳の進行HER2陽性乳がん患者です。現在、年齢の上限を撤廃するプロトコール改訂を予定しています。登録患者は、試験群のT-DM1とコントロール群のHPD療法にランダムに割り付けされ、毒性中止か増悪まで治療します。なお、オリジナルのHPDのドセタキセルは75mg/m2ですが、この試験では安全を保つため、1コース目は60mg/m2でスタートし、毒性面で問題なければ2コース目から75mg/m2に増量します。実施可能な患者にはしっかりした治療が入り、毒性が強く出る患者には少ない用量の治療が入るデザインです。この試験が成功した場合、どのようことが実臨床にもたらされますか。HER2陽性乳がんの薬剤は数多く開発されています。しかし、その中で毒性が軽い薬剤は多くありません。一方、T-DM1はNCCNガイドラインではHPD療法に耐えられない、あるいは禁忌の患者さんに対するオプションとして推奨されています。HPD療法との直接比較で非劣性が証明されれば、高齢者における毒性の軽い標準治療の1つとして長く確立されることになるでしょう。読者の方にメッセージを高齢のHER2陽性乳がん患者は非常に少なく、JCOG施設であっても年間2~3例程度です。しかし、全国的にみればかなりの数の患者さんがおられると思います。JCOG参加施設は全国にありますので、HPDかT-DM1か迷う患者さんがおられる場合、ぜひJCOGの参加施設に紹介いただければと思います。臨床試験の元で治療を行っていただくことが、将来の患者さんへの貴重なエビデンスとなります。HERB TEA (JCOG1607)Study高齢者HER2陽性進行乳がんに対するT-DM1の臨床的有用性(全生存期間における非劣性)を標準療法であるHPD療法と比較する。多施設ランダム化比較第III相試験対象:69歳以上のHER2陽性進行乳がん患者(抗HER2療法未治療)試験薬:T-DM1 3.6mg/kg 3週ごと増悪まで対象薬:HPD療法(トラスツズマブ6mg/kg[初回8mg/kg]、ペルツズマブ 420mg[初回840mg]、ドセタキセル60mg/m2[増量規準満たす場合2コース目から75mg/m2]主要評価項目:全生存期間副次評価項目:無増悪生存期間、乳がん特異的死亡割合、奏効割合、安全性、高齢者機能評価など※HERB TEA (JCOG1607)Study:Shimomura A,Tamura K, Mizutani T, et al. A phase III study comparing trastuzumab emtansine with trastuzumab, pertuzumab, and docetaxel in elderly patients with advanced stage HER2-positive breast cancer (JCOG1607 HERB TEA study). Ann Oncol. 2018;29(8). doi: 10.1093/annonc/mdy272.349.1)Swain SM, eet al.N Engl J Med. 2015;372:724-734.

1632.

子宮頸がん、hrHPV検査が高検出率/BMJ

 子宮頸がんの1次検査として、高リスク型ヒトパピローマウイルス(hrHPV)検査では液状化検体細胞診(LBC法)と比較し、子宮頸部上皮内病変(CIN)のグレード3以上(CIN3)の検出率が約40%、子宮頸がんの検出率は約30%上昇し、3年後のCIN3以上の発生率は非常に低値で、検診間隔の延長を支持する結果が示された。英国・ロンドン大学クイーン・メアリー校のMatejka Rebolj氏らが、イングランドのプライマリケアでのhrHPV検査による定期の子宮頸がん検診について検討した、観察研究の結果を報告した。15年以上にわたる無作為化比較試験で、現行の標準検査であるLBC法と比較し、CIN2以上の検出に関してhrHPV検査の優越性が示されたことから、他国では検診ガイドラインを改訂し、hrHPVトリアージ検査を併用したLBC法での1次検査から、LBC法のトリアージ検査を併用したhrHPV検査による1次検査に切り替えたところもある。イングランドでは、2019年末までの全国導入を目指しているという。BMJ誌2019年2月6日号掲載の報告。子宮頸がん検診を受けた女性約57万人で、LBC法とhrHPV検査のアウトカムを評価 研究グループは、2013年5月~2014年12月にプライマリケアで子宮頸がん検診を受けた女性57万8,547例を2017年5月まで追跡調査した。18万3,970例(32%)はhrHPV検査による検診を受けていた。 hrHPV検査とLBC法によるトリアージ検査を併用した子宮頸がんの定期検診を行い、hrHPV陽性でLBC陰性の女性に対しては、2回(12ヵ月、24ヵ月時)の早期再受診を推奨した。 主要評価項目は、コルポスコピー(子宮膣部拡大鏡診)受診紹介の頻度、早期再受診の順守、連続した2回の検査においてLBC法と比較した場合のhrHPV検査によるCIN2以上の検出であった。hrHPV検査で、子宮頸がんの検出率が約30%上昇 ベースライン時のhrHPV検査および早期再受診では、約80%以上がコルポスコピーを必要としたが(補正後オッズ比[aOR]:1.77、95%CI:1.73~1.82)、LBC法と比較し、CIN(CIN2以上でaOR:1.49[95%CI:1.43~1.55]、CIN3以上でaOR:1.44[95%CI:1.36~1.51])および子宮頸がん(aOR:1.27、95%CI:0.99~1.63)の検出頻度が高かった。 早期再受診の順守とコルポスコピー紹介受診は、それぞれ80%および95%であった。その後の子宮頸がん発生スクリーニング検査では、hrHPV検査を受けた女性(3万3,506例)のほうが、LBC法を受けた女性(7万7,017例)よりも、CIN3以上の検出がきわめて少なかった(aOR:0.14、95%CI:0.09~0.23)。

1633.

脳梗塞急性期:早期積極降圧による転帰改善は認められないが検討の余地あり ENCHANTED試験

 現在、米国脳卒中協会ガイドライン、日本高血圧学会ガイドラインはいずれも、tPA静注が考慮される脳梗塞例の急性期血圧が「185/110mmHg」を超える場合、「180/105mmHg未満」への降圧を推奨している。しかしこの推奨はランダム化試験に基づくものではなく、至適降圧目標値は明らかでない。2019年2月6~8日に米国・ハワイで開催された国際脳卒中会議(ISC)では、この点を検討するランダム化試験が報告された。収縮期血圧(SBP)降圧目標を「1時間以内に130~140mmHg」とする早期積極降圧と、ガイドライン推奨の「180mmHg未満」を比較したENCHANTED試験である。その結果、早期積極降圧による「90日後の機能的自立度有意改善」は認められなかった。ただし、本試験の結果をもって「早期積極降圧」の有用性が完全に否定されたわけではないようだ。7日のLate Breaking Clinical Trialsセッションにて、Craig Anderson氏(ニューサウスウェールズ大学、オーストラリア)とTom Robinson氏(レスター大学、英国)が報告した。早期積極降圧群とガイドライン順守降圧群を比較するも、想定した血圧差は得られず ENCHANTED試験の対象は、tPAの適応があり、脳梗塞発症から4.5時間未満で、SBP「150~185mmHg」だった2,196例である。74%がアジアからの登録だった(中国のみで65%)。平均年齢は67歳、NIHSS中央値はおよそ8。アテローム血栓性が45%弱、小血管病変が約30%を占めた。 これら2,196例は、「1時間以内にSBP:130〜140mmHgまで低下させ、72時間後まで維持」する「早期積極」降圧群(1,072例)と、ガイドラインに従い「SBP<180mmHg」へ低下する「ガイドライン順守」降圧群(1,108例)にランダム化され、オープンラベルで追跡された。 血圧は、ランダム化時に165mmHgだったSBPが、「早期積極」群で1時間後には146mmHgまでしか下がらなかったものの、24時間後に139mmHgまで低下した。一方「ガイドライン順守」群でも、1時間後には153mmHg、24時間後には144mmHgと、研究者が想定していた以上の降圧が認められた。ランダム化後24時間のSBP平均値は、「早期積極」群:144mmHg、「ガイドライン順守」群:150mmHg(p<0.0001)とその差は6mmHgしかなかった。1次評価項目では両群間に有意差を認めず その結果、1次評価項目である「90日後の修正ランキンスケール(mRS)」は、ITT解析、プロトコール順守解析のいずれにおいても、両群間に有意差を認めなかった。年齢、性別、人種、ランダム化時のSBP(166mmHgの上下)やNIHSS、脳梗塞病型などで分けたサブグループ解析でも、この結果は一貫していた。 ただし、頭蓋内出血のリスクは、「早期積極」群(14.8%)で「ガイドライン順守」群(18.7%)に比べ、有意に低くなっていた(オッズ比[OR]:0.75、95%信頼区間[CI]:0.60~0.94)。医師が「重篤な有害事象」と認識した頭蓋内出血も同様である(OR:0.59、95%CI:0.42~0.82)。なお、脳出血のORは0.79(95%CI:0.62~1.00)だった。 出血以外の有害事象は、群間に有意差を認めなかった。また、90日間死亡率は「早期積極」群:9%、「ガイドライン順守」群:8%だった。新たなランダム化試験を計画中 Robinson氏は、本試験の結果から、現行ガイドラインの大幅な変更を必要とするエビデンスは得られなかったと結論する一方、本試験の問題点として、1)両群の血圧差が小さかった、2)血管内治療の施行率が低かった、などを挙げ、至適降圧目標についてはさらなる検討が必要だと述べた。現在、大血管閉塞/血管内治療例のみを対象としたENCHANTED2試験を計画中だという。 本試験は、主としてオーストラリア政府機関と英国慈善団体から資金が提供され、そのほか、ブラジル政府機関、韓国政府機関、ならびにTakedaからも資金提供を受けた。 本研究は報告と同時に、Lancet誌にオンライン公開された。(医学レポーター/J-CLEAR会員 宇津 貴史(Takashi Utsu))「ISC 2019 速報」ページへのリンクはこちら【J-CLEAR(臨床研究適正評価教育機構)とは】J-CLEAR(臨床研究適正評価教育機構)は、臨床研究を適正に評価するために、必要な啓発・教育活動を行い、わが国の臨床研究の健全な発展に寄与することを目指しています。

1634.

第6回 体温、意識レベルの評価方法【薬剤師のためのバイタルサイン講座】

薬剤師である皆さんが患者さんのご自宅を訪問する時、患者さんは慢性的な病態であることが多く、容態の急変はないと思いがちです。しかし、慢性疾患であっても、急に容態が変化・悪化することはあります。そのような時、主治医や訪問看護師にすぐに連絡した方がよいかどうか迷うことがあるかもしれません。今回は、急を要するか否かの判断の仕方と、その判断に必要なバイタルサインの測定法について紹介します。4─体温の測定方法通常は、腋窩体温計を用いて腋に挟んで測定しますが、汗で濡れている時には体温が低く計測されることがありますから、タオルなどで拭くなど注意が必要です。耳(鼓膜)で測定する体温計や、最近では皮膚に接触させることなく額で体温を測定できる機器もあります。正しい使い方をすればいずれを使用してもよいです。口腔内の温度は腋窩と比べ0.2〜0.5℃高いことや、朝方起床前後には体温は低く、身体の活動度の高い午後から夕方に上昇することなども知っておくとよいでしょう。また一般的に、体温が1℃上昇すると脈拍も10回/分ほど増加します。計測された体温は表4のように分類されます。表4 体温の評価5─意識レベルの評価方法独居の老人宅に訪問した時、患者さんが倒れていたという状況を考えてみましょう。びっくりしてしまいますが、近寄る前に、まず周囲の安全を確認してください。まさかガス漏れでは?吐物など感染の危険はありませんか。そんなことは滅多にないでしょうが、自分を危険な状態にさらしてはいけません。周囲が安全であれば声をかけてみましょう。返事がなければ、周りの人(近所の人)を呼んで119番通報してください。自分ひとりで何とかしようと思ってはいけません。呼吸と脈がなければ心肺蘇生法を開始しますが、この話はまた次回以降にしましょう。患者さんの家族から「今日は呼んでもなかなか返事をしてくれないのですが...」と相談された時には、意識レベルを評価してみましょう。意識レベルがいつもより低下しているようなら、医師・看護師への連絡が望ましいです。その際に、どの程度意識レベルが低下しているのかを伝えられるとよいと思います。意識障害の分類には(表5)、(表6)などの尺度がありますが、(表5)のJapan coma scaleが多く用いられています。以下に評価方法を示します。表5 意識障害の評価 (JCS:Japan coma scale)2,4)表6 意識障害の評価 (GCS:Glasgow coma scale)3)意識レベルを評価する(表5)I.刺激しないでも覚醒している状態眼を開けている時には、見当識障害(周囲の状況、時間、場所など自分自身が置かれている状況などが正しく認識できない状態)の有無や指示に従うことができるかどうかを調べます。「ここがどこかわかりますか?今日は何月何日ですか?」などに答えられなければ見当識障害がありますからI−2となります。「お名前を言ってみてください。生年月日はいつですか?」などに答えられなければ、I−3です。II.刺激で覚醒するが、刺激をやめると眠り込む状態眼を閉じていたら、呼びかけたり、ゆさぶったり、痛み刺激を与えたりします。これらで眼を開ければ、それぞれII−10、II−20、II−30です。患者さんの苦痛(痛み)を伴う手技などは、家族の目がありますから、よりよい関係を維持するためにも医師や看護師に依頼した方がよいと思います。III.刺激しても覚醒しない状態痛み刺激を与えても眼を開けない時には、その時の身体の動作で3段階に分類します。痛み刺激はこぶしで胸骨を押して与えますが、痛みを伴いますので、呼びかけや軽く肩をたたいても開眼しないような意識の障害があれば、その時点で主治医や看護師に連絡しましょう。日本高血圧学会高血圧治療ガイドライン作成委員会編.高血圧治療ガイドライン2014.東京,ライフサイエンス出版,2014.太田富雄,他.急性期意識障害の新しいgradingとその表現方法.第3回脳卒中の外科研究会講演集.東京,にゅーろん社,1975,61-69.Teasdale G, et al. Assessment of coma and impaired consciousness: a practical scale. Lancet.1974; 2: 81-84.脳卒中合同ガイドライン委員会.脳卒中治療ガイドライン2009.東京,協和企画,2009.

1635.

ASCO-GI2019レポート

レポーター紹介2019年1月17日~19日まで、米国・サンフランシスコにて米国臨床腫瘍学会消化器がん会議(ASCO-GI)が開かれた。今年は連日雨で、とくに1日目は風が強く、一部の国内線はキャンセルになるほど天候が良くなかった。そんな中、連日朝7時から始まるRapid-Fire Abstract Sessionには多くの聴衆が詰め掛けていた。本稿では、Oral Presentation、Rapid-Fire Abstract Session、Poster Presentationから注目すべき演題をいくつか紹介し、<マイコメント>として私見も述べさせていただく。KEYNOTE-181試験(abstract #2)進行性食道がんの2次治療として免疫チェックポイント阻害薬ペムブロリズマブが有効であるかを検証したKEYNOTE-181試験の結果が報告された。事前にプレスリリースされていたため、試験結果がpositiveであることはわかっていたが、詳細の発表について注目が集まった。1次治療後の進行性食道がん(扁平上皮がんまたは腺がん)628例が1:1にペムブロリズマブ群(200mg、3週ごと)と化学療法群(PTX、DTX、またはIRI)に分けられた。プライマリ・エンドポイントは3つ、PD-L1 CPS(combined positive score)≧10での全生存期間、扁平上皮がんでの全生存期間、全症例での全生存期間であった。扁平上皮がんの割合が、ペムブロリズマブ群63%、化学療法群65%、PD-L1 CPS≧10の症例は、それぞれ34%と37%であった。PD-L1 CPS≧10において、全生存期間中央値は9.3 vs.6.7ヵ月(HR:0.69、p=0.0074)で、ペムブロリズマブ群で有意に良好であった。一方、扁平上皮がんにおいては、8.2 vs.7.1ヵ月(HR:0.78、p=0.0095)とペムブロリズマブ群で中央値は良好であったが、事前に設定した統計解析上では統計学的に有意差がない結果となった。しかしながら、奏効率は良好で、PD-L1 CPS≧10で21.5% vs.6.1%、扁平上皮がんでも16.7% vs.7.4%とペムブロリズマブ群で高い奏効率であった。毒性評価においては、ペムブロリズマブ群においてこれまで同様の毒性がみられた程度であった。マイコメント統計学的にはPD-L1 CPS≧10症例だけにおいてペムブロリズマブの優越性が示されたが、扁平上皮がんにおいても臨床的有用性を認めるような結果であった。今後、本邦においてどのような対象に薬事承認がされるのかが注目される。PD-L1 CPS≧10であれば腺がんでもペムブロリズマブが有用であることになるが、CPS≧10におけるサブ解析では、腺がん症例におけるHRが1.0付近であり、有用であるかどうかには慎重な判断が必要であろう。CPS≧10かつ扁平上皮がん症例が確実な“responder”のようにみえる。ACTS-CC 02試験(abstract #484)本邦から大腸がん術後補助化学療法のレジメンを検証した第III相試験の結果が報告された。N2を有するHigh-risk StageIII結腸がんの症例を対象に、UFT/LV療法(5週ごと、5コース)とSOX(オキサリプラチン100mg/m2、3週ごと、8コース)療法が比較検証され、プライマリ・エンドポイントは無病生存期間であった。966例が1:1にランダム化され、UFT/LV群でStageIIIB/IIIC(TNM分類7th)が51%/48%、SOX群で49%/50%であった。フォローアップ期間中央値58.4ヵ月、396イベントが確認され、3年無病生存率は、それぞれ60.6% vs.62.7%でHR:0.90、p=0.278とSOXレジメンの優越性は証明されなかった。サブグループ解析では、Nファクター、Stageにおいて進行症例ほどSOX群が良好の傾向を認めたが、統計学的に有意な差は示されなかった。マイコメント本邦で汎用されているSOXレジメンが結腸がん術後補助化学療法レジメンとして加わるかを検証した重要な試験であった。残念ながらnegativeな結果となったが、StageIII結腸がんに対するオキサリプラチンの上乗せ効果が否定された結果ではないと判断する。オキサリプラチンの量が100mg/m2ではなく、130mg/m2であったらどうだったか? 『大腸癌治療ガイドライン』が2019年版に改訂されたが、補助療法のpreferredレジメンはCapeOXまたはFOLFOXである。TAS-102±Bev比較試験(abstract #637)デンマークからTAS-102にベバシズマブ(Bev)を上乗せする効果を検証した比較試験の結果が報告された。TAS-102+BevレジメンはC-TASK FORCE試験(Kuboki Y, et al. Lancet Oncol. 2017;1172-1181.)で有用性が示されているが、Bevの上乗せ効果に関してはこれまで比較試験がなく、エビデンスがない状態であった。80例の症例が、TAS-102群41例、TAS-102+Bev群39例にランダム化され、プライマリ・エンドポイントとして無増悪生存期間が評価された。両群とも約60%の症例が3次治療まで受けており、80~85%の症例で前治療までにBevが使用され、約60%がRAS変異型であった。無増悪生存期間中央値は、TAS-102群で2.6ヵ月、TAS-102+Bev群で5.6ヵ月、HR:0.51、p=0.01で統計学的有意にTAS-102+Bev併用群で良好であった。全生存期間中央値はそれぞれ6.7ヵ月、10.3ヵ月、奏効率は0%、3%であった。毒性評価では、TAS-102群に比べてTAS-102+Bev群で好中球減少、下痢、発熱性好中球減少症が多い傾向だった。この試験のほかに、TAS-102+Bevレジメンを評価した本邦の第II相試験の結果が2つ報告されていた。TAS-CC3試験(abstract #617)では奏効率6.3%、無増悪生存期間中央値4.5ヵ月、全生存期間中央値9.2ヵ月、BiTS試験(abstract #647)では奏効率0%、無増悪生存期間中央値4.3ヵ月、全生存期間中央値8.7ヵ月であった。マイコメントTAS-102+Bevレジメンは本邦のC-TASK FORCE試験で有効性が示されたものの、試験の症例数の少なさから施設によってはレジメン登録が難しいところもあったことであろう。Bev併用効果を検証した前向き試験が望まれていた中での大変貴重な試験結果である。少数例の第II相試験ではあるが、positiveな結果はTAS-102+Bevの日常臨床での使用を大きくサポートするものであり、本邦からの2つの第II相試験結果も既報と同様のものであることから、TAS-102+Bevはほぼ確立したレジメンとして考えてよいであろう。Prep-02/JSAP-05試験(abstract #189)切除可能膵がんにおける周術期治療に関する重要な試験結果が本邦より報告された。現在の標準治療である術後補助化学療法S-1に対して、術前ゲムシタビン+S-1(GS)併用療法(3週ごと)2コースの追加により予後延長効果が得られるかを検証した試験である。S-1治療群の2年生存率を35%、GS併用療法群の2年生存率を50%として、α-エラー0.05、パワー0.8で、両群で360症例が必要のところ、364症例が登録された。本試験は第II/III相試験であり、第II相試験パートでは切除率が検証され、S-1治療群(術前化学療法なし)82%のところGS併用療法群93%と良好な結果が示され、その後第III相パートに進んだ。S-1治療群180症例のうち129症例で治癒切除が施行され、GS併用療法群では182症例のうち140症例で治癒切除が施行された。プライマリ・エンドポイントの全生存期間中央値は、S-1治療群で26.65ヵ月、GS併用療法群で36.72ヵ月、HR:0.72(95%CI:0.55~0.94、p=0.015)で、術前GS併用療法の有用性が示された。手術に関するファクター(出血量、手術時間、合併症など)において両群に有意な差は認めなかった。病理学的評価では、pN1症例がS-1治療群で81.5%であったのに対し、GS併用療法群で59.6%と有意に低かった。また、再発形式では、肝転移再発が47.5% vs.30.0%とGS併用療法群で有意に低かった。マイコメント本邦の切除可能膵がんの標準治療を変えうる、とても重要な試験結果である。術前にGS療法2コースを行うことで、これほど大きな生存期間延長効果が得られたことは正直驚きであった。今後、日常臨床で本試験結果をどのように反映させるか、各施設での議論が必要になるが、試験結果の詳細・論文発表にも注目すべきである。まとめ今年は全体的に上部(1日目)や肝胆膵領域(2日目)に注目演題が集まっており、下部(3日目)の演題に話題性は乏しかったものの、日本からの臨床試験の発表もあり、蓋を開けてみれば連日面白い学会であった。食道がんの標準治療として今後免疫チェックポイント阻害薬が入ってくることや、本邦の膵がん診療の標準治療が変わりうる演題があり、これらの演題に関する今後の論文発表に注目すべきである。

1636.

無症候性の頸動脈高度狭窄例に対するCASで、CEAと転帰の差を認めず:CREST/ACTⅠメタ解析

 米国では、頸動脈インターベンションの最大の適応は無症候性の高度狭窄だという。しかし、米国脳卒中学会など関連14学会による2011年版ガイドラインでは、外科高リスク例を除き、無症候性頸動脈高度狭窄例に対しては、頸動脈ステント留置術(CAS)よりも頸動脈内膜剥離術(CEA)が推奨されている。 しかし同ガイドライン策定後、CREST試験とACTI試験という2つの大規模ランダム化試験において、末梢塞栓保護下CASは、死亡・脳卒中・心筋梗塞抑制に関し、CEAに対する非劣性が示された。 2019年2月6~8日に、米国・ハワイにて開催された国際脳卒中会議(ISC)では、これら2試験の個別患者データをメタ解析した結果が報告され、CAS施行後の転帰はさまざまな評価項目においてCEAと有意差がないと確認された。7日のLate Breaking Clinical Trialsセッションにて、Jon Matsumura氏(ウィスコンシン大学、米国)が報告した。評価項目を事前設定のうえ、個別患者データを用いてメタ解析 本メタ解析は両試験の研究者が合意のもと、あらかじめ評価項目を定めたうえで(後述)、個々の患者データを用いて行われた。ACTⅠ試験では80歳以上が除外されていたため、CREST試験参加2,502例中試験開始時に80歳未満だった1,091例と、ACTⅠ試験に参加した1,453例が、今回のメタ解析の対象となった。 試験開始時における、CAS群(1,637例)とCEA群(907例)の患者背景は、CAS群で喫煙者が有意に多い(25.6% vs.21.8%、p=0.033)以外、有意差はなかった。平均年齢は68歳で、65歳以上が約70%を占めている。1次評価項目でCASとCEAに有意差は認められず これらをメタ解析した結果、本解析の1次評価項目とされた「周術期の死亡・脳卒中・心筋梗塞、ランダム化後4年間の同側性脳卒中」(CREST試験と同様)の発生率は、CAS群:5.3%、CEA群:5.1%となり、有意差を認めなかった(p=0.91)。ただしその内訳は、脳卒中(CAS群:2.7% vs.CEA群:1.5%)と死亡(同、0.1% vs.0.2%)、4年間同側性脳卒中(同、2.3% vs.2.2%)には群間差を認めなかったものの(いずれもNS)、心筋梗塞に限ればCAS群が0.6%と、CEA群の1.7%に比べ有意に低値となっていた(p=0.01)。 次に、2次評価項目とされたランダム化後4年間の「脳卒中非発生生存率」だが、同様に、CAS群:93.2%、CEA群:95.1%で有意差はなかった(p=0.10)。「全生存率」で比較しても同様だった(CAS群:91% vs.CEA群:90.2%、p=0.923)。 本メタ解析は、デバイス製造・販売会社からのサポートは受けていない。(医学レポーター/J-CLEAR会員 宇津 貴史(Takashi Utsu))「ISC 2019 速報」ページへのリンクはこちら【J-CLEAR(臨床研究適正評価教育機構)とは】J-CLEAR(臨床研究適正評価教育機構)は、臨床研究を適正に評価するために、必要な啓発・教育活動を行い、わが国の臨床研究の健全な発展に寄与することを目指しています。

1637.

MRと自由に話せない時代がやってきた!【早耳うさこの薬局がざわつくニュース】第18回

薬局において、最新情報の収集は業務のキモです。情報提供元の1つである製薬会社で変化がありそうです。MR認定センターは1月29日、昨年12月に実施した第25回MR認定試験の結果を発表した。受験者数は2,539人で、そのうち1,927人が合格。合格率は75.9%だった。前回と比べると受験者数は▲677人、合格者数は▲319人で、それぞれ過去最少となった。(2019年1月30日付 RISFAX)製薬会社の医薬情報担当者であるMRの認定試験は毎年12月に実施されます。最近ではMS(医薬品卸会社の営業担当者)が受験することもありますが、主に新人MRが受験することから、受験者数には製薬会社がMRとして採用した人数が反映されていると考えられます。その受験者数が過去最少であったということは、MRとして採用される人数が減ったということなのでしょう。ここ数年、MRの新卒採用数は減少傾向にありますが、なぜそのようなことが起こっているのでしょうか。考えられる1つ目の理由は、製薬会社の厳しい経営状態です。ご存じのとおり、日本では医療用医薬品は薬価制度をとっています。その薬価は基本的に2年に1度引き下げられるため、長期収載品を多く抱える製薬会社はだんだん収益確保が難しくなります。毎年改定が始まれば、さらに厳しい環境になることも予想できます。また、後発医薬品の普及やスペシャリティ領域の新薬が増えたことなどもあり、製薬会社はMRを多く抱えることを避けるようになりました。2つ目の理由として、ここ数年、医療用医薬品のプロモーション活動に関する行動基準が厳格化されていることも考えられます。業界の自主ルールに加えて、2018年9月25日には、厚生労働省から「医療用医薬品の販売情報提供活動に関するガイドライン」が発出されました。このガイドラインでは、適正に情報提供を行ううえでの要件や、経営陣の責務がまとめられています。接待禁止などのこれまでの自主規制でもジワジワとMR数や業務に影響がありましたが、このガイドラインによってさらにプロモーションに制限がかかり、MR数減少の傾向は続くのではないかと思います。MRとの会話は録音・録画される!?MR数が減少すると薬局への訪問が減るため、タイムリーに情報を入手することが難しくなることは容易に想像できますが、このガイドラインによって入手できる情報の質まで変わるかもしれません。このガイドラインでは、社内の審査で適切と認められた資材以外は用いてはならないと定められており、MRオリジナルの資材やパワーポイントなどは使用できなくなります。気の利いたMRはわかりやすい資材を独自に作っていましたが、今後は作成不可です。また、プロモーション現場のモニタリングも義務化されるため、MRの情報提供時に不適切なプロモーションを行っていないか録音・録画させることも考えられます。自分が監視されていることから医療者とコミュニケーションを図ることに消極的になり、決められた資材だけを置いて帰るMRが増えるのではないかとも危惧されます。MRに質問したとしても、おそらく正確性と適切性を重んじて、回答のスピードは遅くなるでしょう。MRが直接回答するのではなく、本社の情報提供部門などから改めて回答をするという場面も増えるのではないでしょうか。MR数の減少や適切な情報提供のための規制強化がやむを得ないこともわかりますが、私はわりとコミュニケーションをとりたいタイプなので、なんだかやりにくいなぁと思わざるを得ません。

1639.

第5回 呼吸数、脈拍、血圧の測定方法 【薬剤師のためのバイタルサイン講座】

薬剤師である皆さんが患者さんのご自宅を訪問する時、患者さんは慢性的な病態であることが多く、容態の急変はないと思いがちです。しかし、慢性疾患であっても、急に容態が変化・悪化することはあります。そのような時、主治医や訪問看護師にすぐに連絡した方がよいかどうか迷うことがあるかもしれません。今回は、急を要するか否かの判断の仕方と、その判断に必要なバイタルサインの測定法について紹介します。1─呼吸数の測定方法呼吸の観察をする時には、患者さんに観察していることを知られないようにします。気付かれてしまうと、呼吸数や呼吸の様式が変わってしまうことがあるからです。方法としては、例えば脈拍を数えた後、脈をとり続けながら、胸や腹部の動きをみて呼吸数を数えます。30秒間の回数を2倍して1分あたりの回数にするとよいでしょう。通常、成人では1分間の呼吸回数はおよそ12~20回であり、12回未満の時は徐呼吸、24回以上の時は頻呼吸と言います(表1)。つまり、1回の呼吸に5~6秒以上かかっていたり、1回目の呼吸の始まりから3秒以内に次の呼吸が始まったりした時には異常といえます。具合の悪い患者さんでは、意識がなくなり、あごを上下させるような呼吸をすることがあります(下顎呼吸とか死戦期呼吸といいます)が、生命の危険性が差し迫った時にみられ、通常の呼吸ではありませんから注意が必要です。表1 呼吸数の評価2─脈拍の測定方法脈拍は、患者さんの動脈(手首内側の親指側の動脈)に、第2・3・4指をあてて測定します(写真1)。脈拍数は1分あたりの脈の数ですが、15秒間測定して4倍しても、20秒間測定して3倍してもよいです。正常の脈は規則的で、1分間に60~100回程度です。60回/分未満を徐脈、100回/分以上を頻脈といいます(表2)。熟練した医師は、脈拍数だけでなく、脈の強さや振幅の大きさ、脈の立ち上がりの速さまでも感じ取りますが、その域に達するにはそれなりの修行が必要です(笑)。写真1 橈骨動脈の触知の仕方 / 表2 脈拍数の評価3─血圧の測定方法水銀血圧計(写真2)を使いこなすには、少々練習が必要です。マンシェット(腕に巻く布製の部分)を巻き、ゴム球とバルブ(ネジの部分)を片手で扱いながら、水銀柱の圧を見つつ、聴診器を使って肘窩の動脈の音(コロトコフ音といいます)を聴いて...、などなど。しかし、今はボタンひとつで血圧と脈拍を測定してくれる自動血圧計がありますから、それを使用するとよいと思います。簡便な自動血圧計でも注意は必要です。マンシェットを巻く前に、血液透析用の血管の手術(シャント手術)を受けていないかを確認しましょう。その場合は他方の腕で血圧を測定します。また、まくりあげた衣服の袖が上腕を締め付けていないかを確認しましょう。腕は少し持ちあげて、肘窩の上腕動脈が心臓の高さ(およそ左右の乳頭を結んだ線の高さ)になるようにします。マンシェットは、上腕に、その下端が肘窩から1~3cmくらいになるように巻きます。きつすぎず、ゆるすぎず、指が1、2本入るくらいとします。緊張したり運動したりすると血圧が上がってしまいますから、少なくとも5分間は静かに座り、リラックスした状態で測定します。緊張して血圧が高く出てしまったと考えられる場合は、時間をおいて再度測定します。安定した値の2回の平均を血圧値としますが、医療従事者が測定した値だけでなく、本人が日頃測定する家庭血圧も有用です。手首で血圧を測定することもできますが、高血圧治療ガイドライン1)では上腕での測定が推奨されています。現在のガイドラインで示されている血圧値の分類を(表3)に示します。表3 成人における血圧値の分類日本高血圧学会高血圧治療ガイドライン作成委員会編.高血圧治療ガイドライン2014.東京,ライフサイエンス出版,2014.太田富雄,他.急性期意識障害の新しいgradingとその表現方法.第3回脳卒中の外科研究会講演集.東京,にゅーろん社,1975,61-69.Teasdale G, et al. Assessment of coma and impaired consciousness: a practical scale. Lancet.1974; 2: 81-84.脳卒中合同ガイドライン委員会.脳卒中治療ガイドライン2009.東京,協和企画,2009.

1640.

結節性硬化症〔TS : tuberous sclerosis, Bourneville-Pringle病〕

1 疾患概要■ 概念・定義主に間葉系起源の異常細胞が皮膚、中枢神経など全身諸臓器に各種の過誤腫性病変を起こす遺伝性疾患である。従来、顔面の血管線維腫、痙攣発作、知能障害が3主徴とされているが、しばしば他に多くの病変を伴い、また患者間で症状に軽重の差が大きい。疾患責任遺伝子としてTSC1とTSC2が同定されている。■ 疫学わが国の患者は約15,000人と推測されている。最近軽症例の報告が比較的多い。■ 病因・発症機序常染色体性優性の遺伝性疾患で、浸透率は不完全、突然変異率が高く、孤発例が60%を占める。軽微な症例は見逃されている可能性もある。本症の80%にTSC1(9q34)遺伝子とTSC2(16p13.3)遺伝子のいずれかの変異が検出される。TSC1遺伝子変異は生成蛋白のtruncationを起こすような割合が高く、また家族発症例に多い。TSC2遺伝子変異は孤発例に、また小さな変異が多い。一般に臨床症状と遺伝子異常との関連性は明らかではない。両遺伝子産物はおのおのhamartin、tuberinと呼ばれ、前者は腫瘍抑制遺伝子産物の一種で、低分子量G蛋白Rhoを活性化し、アクチン結合蛋白であるERMファミリー蛋白と細胞膜裏打ち接着部で結合する。後者はRap1あるいはRab5のGAP(GTPase-activating protein)の触媒部位と相同性を有し、細胞増殖抑制、神経の分化など多様で重要な機能を有する。Hamartinとtuberinは複合体を形成してRheb(Ras homolog enriched in brain)のGAPとして作用Rheb-GTPを不活性化し、PI3 kinase/S6KI signaling pathwayを介してmTOR(mammalian target of rapamycin)を抑制、細胞増殖や細胞形態を制御している。Hamartinとtuberinはいずれかの変異により、m-TOR抑制機能が失われることで、本症の過誤腫性病変を惹起すると推定されている。近年、このm-TOR阻害薬(エベロリムスなど)が本症病変の治療に使われている。■ 臨床症状皮膚、中枢神経、その他の諸臓器にわたって各種病変がさまざまの頻度で経年齢的に出現する(表1)。画像を拡大する1)皮膚症状学童期前後に出現する顔面の血管線維腫が主徴で80%以上の患者にみられ頻度も高い。葉状白斑の頻度も比較的高く、乳幼児期から出現する木の葉状の不完全脱色素斑で乳幼児期に診断価値の高い症候の1つである。他に結合織母斑の粒起革様皮(Shagreen patch)、爪囲の血管線維腫であるKoenen腫瘍、白毛、懸垂状線維腫などがある。2)中枢神経症状幼小児早期より痙攣発作を起こし、精神発達遅滞、知能障害を来すことが多く、かつての3主徴の2徴候である。2012年の“Consensus Conference”で(1)脳の構造に関与する腫瘍や皮質結節病変、(2)てんかん(痙攣発作)、(3)TAND(TSC-associated neuropsychiatric disorders)の3症状に分類、整理された。(1)高頻度に大脳皮質や側脳室に硬化巣やグリア結節を生じ、石灰化像をみる。数%の患者に上衣下巨細胞性星細胞腫(subependymal giant cell astrocytoma:SEGA)が発生する。SEGAは小児期から思春期にかけて急速に増大することが多く、脳圧亢進症状などを来す。眼底の過誤腫や色素異常をみることもあり、通常は無症状であるが、時に視力障害を生ずる。(2)TSC患者に高頻度にみられ、生後5、6ヵ月頃に気付かれ、しばしば初発症状である。多彩な発作で、治療抵抗性のことも多い。点頭てんかんが過半数を占め、その多くが精神発達遅滞、知能障害を来す。(3)TSCに合併する攻撃的行動、自閉症・自閉的傾向、学習障害、他の神経精神症状などを総括した症状を示す。3)その他の症状学童期から中年期に後腹膜の血管筋脂肪腫で気付かれることもある。無症候性のことも多いが、時に増大して出血、壊死を来す。時に腎嚢腫、腎がんが出現する。周産期、新生児期に約半数の患者に心臓横紋筋腫を生ずるが、多くは無症候性で自然消退すると言われる。まれに、腫瘍により収縮障害、不整脈を来して突然死の原因となる。成人に肺リンパ管平滑筋腫症(lymphangiomyomatosis:LAM)や多巣性小結節性肺胞過形成(MMPH)を生ずることもある。前者は気胸を繰り返し、呼吸困難が徐々に進行、肺全体が蜂の巣状画像所見を呈し、予後不良といわれる。経過に個人差が大きい。後者(MMPH)は結核や肺がん、転移性腫瘍との鑑別が必要であるが、通常治療を要せず経過をみるだけでよい。■ 予後と経過各種病変がさまざまな頻度で経年的に出現する(表1)。それら病変がさまざまに予後に影響するが、中でも痙攣発作の有無・程度が患者の日常生活、社会生活に大きく影響する。従来、生命的予後が比較的短いといわれたが、軽症例の増加や各種治療法・ケアの進展によって生命的、また生活上の予後が改善方向に向かいつつあるという。死因は年代により異なり、10歳までは心臓横紋筋腫・同肉腫などの心血管系異常、10歳以上では腎病変が多い。SEGAなどの脳腫瘍は10代に特徴的な死因であり、40歳以上の女性では肺のLAMが増加する。2 診断 (検査・鑑別診断も含む)遺伝子診断が確実であり、可能であるが、未知の遺伝子が存在する可能性、検査感度の問題、遺伝子変異と症状との関連性が低く、変異のホットスポットもない点などから一般的には通常使われない。遺伝子検査を受けるときは、そのメリット、デメリットをよく理解したうえで慎重に判断する必要がある。実際の診断では、ほとんどが臨床所見と画像検査などの臨床検査による。多彩な病変が年齢の経過とともに出現するので、症状・病変を確認して診断している。2018年に日本皮膚科学会が、「結節性硬化症の新規診断基準」を発表した(表2)。画像を拡大する■ 診断のポイント従来からいわれる顔面の血管線維腫、知能障害、痙攣発作の3主徴をはじめとする諸症状をみれば、比較的容易に診断できる。乳児期に数個以上の葉状白斑や痙攣発作を認めた場合は本症を疑って精査する。■ 検査成長・加齢とともに各種臓器病変が漸次出現するので、定期的診察と検査を、あるいは適宜の検査を計画する。顔面の結節病変、血管線維腫は、通常病理組織検査などはしないが、多発性丘疹状毛包上皮腫やBirt-Hogg-Dube syndromeなどの鑑別に、また、隆起革様皮でも病理組織学的検査で他疾患、病変と鑑別することがある。痙攣発作を起こしている患者あるいは結節性硬化症の疑われる乳幼児では、脳波検査が必要である。大脳皮質や側脳室の硬化巣やグリア結節はMRI検査をする。CTでもよいが精度が落ちるという。眼底の過誤腫や色素異常は眼底検査で確認できる。乳幼児では心エコーなどで心臓腫瘍(横紋筋腫)検査を、思春期以降はCTなどで腎血管筋脂肪腫を検出する必要がある。3 治療 (治験中・研究中のものも含む)■ 基本治療方針多臓器に亘って各種病変が生ずるので複数の専門診療科の連携が重要である。成長・加齢とともに各種臓器病変が漸次出現するので定期的診察と検査を、あるいは適宜の検査を計画する。本症の治療は対症療法が基本であるが、各種治療の改良、あるいは新規治療法の開発が進んでいる。近年本症の皮膚病変や脳腫瘍、LAMに対し、m‐TOR阻害薬(エベロリムス、シロリムス)の有効性が報告され、治療薬として使われている。■ 治療(表3)画像を拡大する1)皮膚病変顔面の血管線維腫にはレーザー焼灼、削皮術、冷凍凝固術、電気凝固術、大きい腫瘤は切除して形成・再建する。最近、m-TOR阻害薬(シロリムス)の外用ゲル製剤を顔面の血管線維腫に外用できるようになっている。シャグリンパッチ、爪囲線維腫などは大きい、機能面で問題があるなどの場合は切除する。白斑は通常治療の対象にはならない。2)中枢神経病変脳の構造に関与する腫瘍、結節の中では上衣下巨細胞性星細胞腫(subependymal giant cell astrocytoma:SEGA)が主要な治療対象病変である。一定の大きさがあって症状のない場合、あるいは増大傾向をみる場合は、外科的に切除、あるいはm-TOR阻害薬(エベロリムス)により治療する。急速進行例は外科的切除、頭蓋内圧軽減のためにシャント術も行う。本症の重要な症状である痙攣発作の治療が重要である。点頭てんかんにはビガバトリン(同:サブリル)、副腎皮質(ACTH)などが用いられる。ケトン食治療も試みられる。痙攣発作のフォーカス部位が同定できる難治例に、外科的治療が試みられることもある。点頭てんかん以外のてんかん発作には、発作型に応じた抗てんかん薬を選択し、治療する。なお、m-TOR阻害薬(エベロリムス)は、痙攣発作に対して一定の効果があるとされる。わが国での臨床使用は今後の課題である。精神発達遅滞や時に起こる自閉症に対しては、発達訓練や療育などの支援プログラムに基づいて適切にケア、指導する。定期的な受診、症状の評価などをきちんとすることも重要である。また、行動の突然の変化などに際しては、結節性硬化症の他病変の出現、増悪などがないかをチェックする。3)その他の症状(1)後腹膜の血管筋脂肪腫(angiomyolipoma: AML)腫瘍径が4cm以上、かつ増大傾向がある場合は出血や破裂の可能性もあり、腫瘍の塞栓療法、腫瘍切除、腎部分切除などを考慮する。希少疾病用医薬品としてm-TOR阻害薬(エベロリムス)が本病変に認可されている。無症候性の病変や増大傾向がなければ検査しつつ経過を観察する。(2)周産期、新生児期の心臓横紋筋腫収縮障害、伝導障害など心障害が重篤であれば腫瘍を摘出手術する。それ以外では心エコーや心電図で検査をしつつ経過を観察する。(3)呼吸器症状LAMで肺機能異常、あるいは機能低下が継続する場合は、m-TOR阻害薬(エベロリムス)が推奨されている。肺機能の安定化、悪化抑制が目標で、治癒が期待できるわけではない。一部の患者には、抗エストロゲン(LH-RHアゴニスト)による偽閉経療法、プロゲステロン療法、卵巣摘出術など有効ともいわれる。慢性閉塞性障害への治療、気管支拡張を促す治療、気胸の治療など状態に応じて対応する。時に肺移植が検討されることもある。MMPHは、結核や肺がん、転移性腫瘍との鑑別が必要であるが、通常治療を要せず経過をみるだけでよい。4 今後の展望当面の期待は治療法の進歩と改良である。本症病変にm-TOR阻害薬(エベロリムス)が有効であることが示され、皮膚病変、SEGAとAMLなどに使用できる。本症治療の選択肢の1つとしてある程度確立されている。しかしながら効果は限定的で、治癒せしめるにはいまだ遠い感がある。病態研究の進歩とともに、新たな分子標的薬剤が模索され、より効果の高い創薬、薬剤の出現を期待したい。もとより従来の診断治療法の改善・改良の努力もされており、今後も発展するはずである。患者のケアや社会生活上の支援体制の強化が、今後さらに望まれるところである。5 主たる診療科小児科(神経)、皮膚科、形成外科、腎泌尿器科、呼吸器科 など※ 医療機関によって診療科目の区分は異なることがあります。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)診療、研究に関する情報日本結節性硬化症学会(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)結節性硬化症のひろば(主に患者と患者家族向けの診療情報)患者会情報TSつばさ会(患者とその家族および支援者の会)1)金田眞理ほか. 結節性硬化症の診断基準および治療ガイドライン-改訂版.日皮会誌. 2018;128:1-16.2)大塚藤男ほか. 治療指針、結節性硬化症. 厚生科学研究特定疾患対策研究事業(神経皮膚症候群の新しい治療法の開発と治療指針作成に関する研究).平成13年度研究報告書.2002:79.3)Krueger DA, et al. Pediatric Neurol. 2013;48:255-265.4)Northrup H, et al. Pediatric Neurol. 2013;49:243-254.公開履歴初回2013年2月28日更新2019年2月5日(謝辞)本稿の制作につき、日本皮膚科学会からのご支援、ご協力に深甚なる謝意を表します(編集部)。

検索結果 合計:2887件 表示位置:1621 - 1640