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日本における緊急事態宣言下のマタニティハラスメントとうつ病との関連

 妊娠への差別として知られるマタニティハラスメントは、先進国において広まったままである。しかし、マタニティハラスメントによるメンタルヘルスへの影響を調査した研究は、十分とはいえない。北里大学の可知 悠子氏らは、日本における妊娠中のマタニティハラスメントとうつ病との関連を調査した。Journal of Occupational Health誌2021年1月号の報告。 日本において一部地域の緊急事態宣言が続く2020年5月22日~31日に妊婦(妊娠確認時に就業していた女性)359人を対象に横断的インターネット調査を実施した。マタニティハラスメントは、国のガイドラインで禁止されている16事項のいずれかを受けた場合と定義した。うつ病の定義は、エジンバラ産後うつ病自己評価票日本語版(EPDS)スコア9以上とした。分析には、ロジスティック回帰分析を用いた。 主な結果は以下のとおり。・就業していた妊婦の24.8%は、上司や同僚からマタニティハラスメントを受けていた。・人口統計、妊娠状態、作業状態、COVID-19への恐怖で調整した後、マタニティハラスメントを経験した妊婦では、経験しなかった妊婦と比較し、うつ病を発症する可能性が高かった(オッズ比:2.48、95%信頼区間:1.34~4.60)。・この関連は、COVID-19に伴うテレワークの有無に影響されなかった。 著者らは「就業していた妊婦の約4分の1は、マタニティハラスメントを経験しており、経験しなかった女性よりもうつ病の有病率が高かった。テレワークを通じて、オフィスから物理的に離れたとしても、マタニティハラスメントによるうつ病への影響は減少しなかった。妊婦のメンタルヘルスと雇用を守るために、雇用主は法律を順守し、マタニティハラスメントを防止する措置を講ずる必要がある」としている。

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一般住民におけるTIA患者の脳卒中長期リスクは依然として非常に高い(解説:内山真一郎氏)-1351

 本研究は、フラミンガム研究のコホートを用いて1万4,000例以上を1948年から2017年にわたって追跡したデータを解析した研究である。2000年から2017年におけるTIA患者における発症後90日以内の脳卒中リスクは、1948年から1985年と比べて有意に低下していたが、10年間の脳卒中リスクはTIAを起こしたことのない住民と比べて4倍以上高かった。本研究におけるTIA経験者の脳卒中発症率は高く、平均8.9年間の追跡期間中に30%のTIA患者が脳卒中を発症していた。 この発症率は、われわれが行った国際前向きコホート研究(TIAregistry.org)における5年間の脳卒中発症率9%よりはるかに高い(Amarenco P, et al. N Engl J Med. 2018;378:2182-2190.)。われわれの研究は脳卒中専門施設においてTIA発症直後から専門医がガイドラインを遵守して行った研究であったのに対し、本研究は一般住民のコホート研究なので、多くのTIA患者は専門施設にアクセスすることができず、専門医による2次予防管理を受けることができなかったことが、この差をもたらしたと考えられる。TIAはともすれば無視または軽視されたり、後回しにされたりしやすいが、本研究結果はTIAを正しく認識し、発症後早期から専門医の診療を受け、厳格な2次予防対策を講じることができるような啓発活動と医療体制の構築が必要なことを示している。

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統合失調症の薬理学的マネジメント~日本の専門医のコンセンサス

 従来の統合失調症ガイドラインは、臨床的に重要な問題を解決するための方法を必ずしも提供しているわけではない。慶應義塾大学の櫻井 準氏らは、精神科専門医を対象に、統合失調症の治療オプションに関する調査を行った。Pharmacopsychiatry誌オンライン版2021年1月12日号の報告。 日本臨床精神神経薬理学会の認定精神科医141人を対象に、統合失調症治療における19の臨床状況について、9段階で治療オプションの評価を行った(同意しない「1」~同意する「9」)。 主な結果は以下のとおり。・抗精神病薬の第1選択薬は、主要な症状により以下のように異なっていた。【陽性症状】●リスペリドン:7.9±1.4●オランザピン:7.5±1.6●アリピプラゾール:6.9±1.9【陰性症状】●アリピプラゾール:7.6±1.6【抑うつ、不安症状】●アリピプラゾール:7.3±1.9●オランザピン:7.2±1.9●クエチアピン:6.9±1.9【興奮、攻撃性】●オランザピン:7.9±1.5●リスペリドン:7.5±1.5・顕著な症状のない患者の再発予防に対する第1選択薬として、アリピプラゾール(7.6±1.0)が選択された。・社会的統合のために選択された薬剤は、アリピプラゾール(8.0±1.6)、ブレクスピプラゾール(6.9±2.3)であった。・錐体外路症状の懸念がある患者に対する第1選択薬は、クエチアピン(7.5±2.0)、アリピプラゾール(6.9±2.1)であった。 著者らは「これらの臨床的推奨は、特定の状況における特定の抗精神病薬使用に関する専門医のコンセンサスを表しており、エビデンスとの間の現在のギャップを補完するものであろう」としている。

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TNF阻害薬効果不十分のRA、トシリズマブvs.リツキシマブ/Lancet

 TNF阻害薬で効果不十分の関節リウマチ患者において、RNAシークエンシングに基づく滑膜組織の層別化は病理組織学的分類と比較して臨床効果とより強く関連しており、滑膜組織のB細胞が低発現または存在しない場合は、リツキシマブよりトシリズマブが有効であることを、英国・ロンドン大学クイーン・メアリー校のFrances Humby氏らが、多施設共同無作為化非盲検第IV相比較試験「rituximab vs tocilizumab in anti-TNF inadequate responder patients with rheumatoid arthritis:R4RA試験」の16週間の解析結果、報告した。生物学的製剤は関節リウマチの臨床経過を大きく変えたが、40%の患者は十分な効果を得られないことが示唆されており、その機序はいまだ明らかになっていない。関節リウマチ患者の50%以上は、リツキシマブの標的であるCD20 B細胞が滑膜組織に存在しない、または少ないために、IL-6受容体阻害薬のトシリズマブのほうが有効である可能性が考えられていた。Lancet誌2021年1月23日号掲載の報告。滑膜組織のB細胞発現で分類し、リツキシマブとトシリズマブの有効性を比較 研究グループは欧州5ヵ国(英国、ベルギー、イタリア、ポルトガル、スペイン)の19施設において、「ACR/EULAR関節リウマチの分類基準2010年」を満たし、英国のNICEガイドラインに従いリツキシマブによる治療の対象となる18歳以上の関節リウマチ患者を登録。ベースラインの滑膜生検におけるB細胞発現(組織学的にB細胞が多い「B細胞rich」または少ない「B細胞poor」に分類)を層別因子として、リツキシマブ群(1,000mgを2週間隔で2回点滴投与)またはトシリズマブ群(8mg/kgを4週間隔で点滴投与)に、1対1の割合で無作為に割り付けた。また、層別化の精度を高めるため、ベースライン滑膜生検組織についてRNAシークエンシングを行い、B細胞の分子シグネチャーで再分類した。 主要評価項目は、臨床的疾患活動性指標(CDAI)のベースラインからの50%改善(CDAI 50%)とした。RNAシークエンシングでB細胞poorの場合、トシリズマブが有意に奏効 2013年2月28日~2019年1月17日に164例が組織学的に分類され、リツキシマブ群(83例、51%)またはトシリズマブ群(81例、49%)に割り付けられた。 組織学的なB細胞poorの患者集団では、CDAI 50%を達成した患者の割合はリツキシマブ群(45%、17/38例)とトシリズマブ群(56%、23/41例)で有意差は認められなかった(群間差:11%、95%信頼区間[CI]:-11~33、p=0.31)。しかし、RNAシークエンシングによるB細胞poorの患者集団では、CDAI 50%を達成した患者の割合はリツキシマブ群(36%、12/33例)と比較してトシリズマブ群(63%、20/32例)で有意に高かった(群間差:26%、95%CI:2~50、p=0.035)。 有害事象の発現率はリツキシマブ群70%(76/108例)、トシリズマブ群80%(94/117例)(群間差:10%、95%CI:-1~21)、重篤な有害事象の発現率はそれぞれ7%(8/108例)、10%(12/117例)であり(3%、-5~10)、いずれも両群で有意差はなかった。

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変形性関節症の痛みに、SNRIが有効な可能性/BMJ

 セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(SNRI)の疼痛や能力障害(disability)に対する効果は小さく、背部痛への臨床的な意義はないものの、変形性関節症への臨床的に意義のある効果は排除できず、ある程度有効な可能性があることが、オーストラリア・シドニー大学のGiovanni E. Ferreira氏らの検討で示された。研究の成果は、BMJ誌2021年1月20日号で報告された。抗うつ薬は、背部痛(神経根症状の有無を問わず)や股関節・膝の変形性関節症の治療に広く用いられており、多くの診療ガイドラインがこれを推奨している。一方、背部痛や股関節・膝の変形性関節症への抗うつ薬の使用を支持するエビデンスは十分でないという。疼痛への抗うつ薬の有用性をメタ解析で評価 研究グループは、背部および変形性関節症の疼痛に対する抗うつ薬の安全性と有効性を、プラセボとの比較で評価する目的で、系統的レビューとメタ解析を行った(特定の研究助成は受けていない)。 医学データベースを検索して、腰痛や頸部痛、坐骨神経痛、股関節または膝の変形性関節症を有する患者を対象に、抗うつ薬とプラセボ(活性または不活性)の有効性と安全性を比較した無作為化対照比較試験を選出した。2人の研究者が別個に、データの抽出を行った。 疼痛と能力障害を主要アウトカムとし、疼痛・能力障害スコアを0(疼痛または能力障害がない)~100(疼痛または能力障害が最も高度)点の尺度に変換した。副次アウトカムは、安全性(各試験の定義によるすべての有害事象、重篤な有害事象、有害事象による投与中止)であった。TCAとSNRIは、坐骨神経痛にも有効な可能性 日本の研究を含む33件の試験(5,318例)が解析の対象となった。 SNRIは、3~13週時の背部痛(平均差:-5.30、95%信頼区間[CI]:-7.31~-3.30)を軽減し(エビデンスの確実性:中)、3~13週時の変形性関節症による疼痛(-9.72、-12.75~-6.69)を軽減した(エビデンスの確実性:低)。また、SNRIは、2週までに坐骨神経痛(-18.60、-31.87~-5.33)を軽減したが、3~13週時(-17.50、-42.90~7.89)では軽減効果は認められなかった(いずれも、エビデンスの確実性:きわめて低)。 背部痛については、セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)、三環系抗うつ薬(TCA)、ノルアドレナリン・ドパミン再取り込み阻害薬(NDRI)、セロトニン遮断再取り込み阻害薬(SARI)、四環系抗うつ薬には、軽減効果は認められなかった(エビデンスの確実性:きわめて低~低)。 TCAは、2週までに坐骨神経痛(平均差:-7.55、95%CI:-18.25~3.15、エビデンスの確実性:きわめて低)を軽減しなかったが、3~13週(-15.95、-31.52~-0.39、エビデンスの確実性:きわめて低)および3~12ヵ月(-27.0、-36.11~-17.89、エビデンスの確実性:低)では軽減効果がみられた。 また、SNRIは、3~13週時の背部痛による能力障害をa改善し(平均差:-3.55、95%CI:-5.22~-1.88、エビデンスの確実性:中)、2週まで(-5.10、-7.31~-2.89、エビデンスの確実性:中)および3~13週時(-6.07、-8.13~-4.02、エビデンスの確実性:低)の変形性関節症による能力障害を改善した。 著者は、「TCAとSNRIは、坐骨神経痛にも有効な可能性はあるが、エビデンスの確実性はきわめて低~低であった」としている。

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「がん診療と新型コロナウイルス感染症」、患者向けQ&Aを改訂/日本臨床腫瘍学会

 2021年1月25日、がん関連3学会(日本癌学会、日本癌治療学会、日本臨床腫瘍学会)は合同で「がん診療と新型コロナウイルス感染症 がん患者さん向けQ&A」の改訂3版を公開した。これは3学会合同連携委員会の新型コロナウイルス(COVID-19)対策ワーキンググループがまとめたもので、「がん患者は新型コロナウイルスに感染しやすいのか」「検査はどこまですべきなのか」「現在の治療を延期したほうがよいのか」といった、多くのがん患者が抱える疑問に答える内容となっている。今回は各種文献やガイドラインのアップデートを反映した改訂となる。 ASCO(米国臨床腫瘍学会)やESMO(欧州臨床腫瘍学会)が提唱する基本治療方針へのリンクや、「血液がん」「肺がん」「乳がん」といったがん種別に分けたうえで細かく治療方針を解説する項目もあり、がん治療中の患者にとって必要な情報が網羅的にまとまっている。

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オンライン血圧管理で、良好な収縮期血圧コントロール/BMJ

 コントロール不良の高血圧患者において、デジタル技術を用いた介入による「家庭オンライン血圧管理・評価(Home and Online Management and Evaluation of Blood Pressure:HOME BP)」は通常治療と比較して、1年後の収縮期血圧のコントロールが良好で、費用の増分も低いことが、英国・オックスフォード大学のRichard J. McManus氏らが実施した「HOME BP試験」で明らかとなった。研究の成果は、BMJ誌2021年1月19日号に掲載された。これまでの自己モニタリングと自己管理の試験では、血圧低下に関する有効性が示されているが、効果を得るには比較的高価な技術や時間がかかる一連の訓練を必要とすることが多い。また、デジタル介入の短期試験では、血圧コントロールの改善の可能性が示唆されているが、広く実施するための十分なエビデンスは得られていないという。プライマリケアでの無作為化対照比較試験 研究グループは、血圧の自己モニタリングと生活様式の自己管理を統合した高血圧管理のためのデジタル介入の、プライマリケアにおける有用性を評価する目的で、非盲検無作為化対照比較試験を行った(英国国立健康研究所[NIHR]の助成による)。 この試験には英国の76の総合診療施設が参加した。対象は、治療を行っても血圧コントロールが不良(>140/90mmHg)で、インターネットが使用可能な環境にある患者622例であった。 被験者は、HOME BPによる血圧自己モニタリングとデジタル介入を受ける群(介入群、305例)または通常治療(ルーチンの高血圧治療、受診の予約、総合診療医の裁量による薬剤の変更)を受ける群(317例)に無作為に割り付けられた。 デジタル介入では、患者と医療従事者に血圧測定の結果がフィードバックされ、生活様式への助言や動機付けを高めるための支援を受ける選択が可能であった。高血圧、糖尿病、80歳以上の人々の目標血圧は英国の国のガイドラインに準拠した。 主要アウトカムは、ベースラインの血圧、目標血圧、年齢、診療内容で補正した1年後の収縮期血圧(2回目と3回目の測定値の平均値)の差とされた。欠測値は多重代入法で補完された。用量・薬剤の変更が多く、1mmHg低下の増分費用は11ポンド ベースラインの平均年齢は、介入群が65.2(SD 10.3)歳、通常治療群は66.7(10.2)歳で、女性はそれぞれ47.5%および45.0%であった。1年後に552例(88.6%)のデータが得られ、残りの70例(11.4%)のデータは補完された。 平均血圧は、介入群がベースラインの151.7/86.4mmHgから1年後には138.4/80.2mmHgへ、通常治療群は151.6/85.3mmHgから141.8/79.8mmHgへと低下した。収縮期血圧の両群間の平均差は-3.4mmHg(95%信頼区間[CI]:-6.1~-0.8)、拡張期血圧の平均差は-0.5mmHg(-1.9~0.9)であった。また、完全ケース分析では同様の結果が得られた(収縮期血圧の平均差:-3.5mmHg[95%CI:-6.2~-0.9]、拡張期血圧の平均差:-0.5mmHg[-1.8~0.9])。 頻度の高い有害事象として、関節のこわばり(介入群56.8%、通常治療群55.6%)、疼痛(47.5%、46.8%)、睡眠困難(45.7%、51.2%)、疲労(46.3%、43.3%)、咳嗽(34.6%、37.5%)などが認められたが、両群間に有意差があるものはなかった。また、高血圧に特異的な症状(下肢/くるぶしの腫脹、ほてり感、胃のむかつき、めまい、インポテンス)の頻度にも両群間に差はなかった。 介入群は通常治療群に比べ、試験期間中に降圧薬の投与を受ける患者の割合が高かった。また、用量の変更(相対的リスク:2.0、95%CI:1.5~2.7)および薬剤の変更(1.5、1.1~1.9)の割合が高かった。 試験期間中のQOL(EuroQoL5D-5L)には両群間に差はみられなかった。また、介入群の1例の増分費用は38ポンド(95%CI:27~47)であり、収縮期血圧の1mmHg低下当たりの増分費用は11ポンド(95%CI:6~29)(15ドル、12ユーロ)だった。 著者は、「HOME BPをプライマリケアで実施するには、臨床ワークフローへの統合と、デジタル技術を使用しない人々への配慮が求められる」としている。

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第21回 高齢者糖尿病の感染症対策、どのタイミングで何をする?【高齢者糖尿病診療のコツ】

第21回 高齢者糖尿病の感染症対策、どのタイミングで何をする?Q1 COVID-19流行による受診機会減少、運動不足解消への具体的な対応策は?COVID-19流行に不安を感じ、受診を控える患者さんは少なくありません。適切な通院間隔は個々の症例によって異なるため、一概には言えませんが、通院間隔が短いほうが血糖コントロールが良好となる傾向があります。糖尿病診療において血糖測定(およびHbA1c測定)は重要な要素であるため、自己血糖測定を行っていない場合にオンラインや電話診療のみで加療をするのは困難です。したがって、血糖コントロールが良好な状態が維持できていれば通院間隔を延長する(最大3ヵ月)、もともと不良であったり、悪化傾向がみられる場合には通院間隔を短縮するといった柔軟な対応が必要です。患者さんの背景にもよりますが、HbA1c 6%台であれば3ヵ月ごと(インスリン使用者は除く)、7%台であれば2ヵ月ごと、8%台であれば1ヵ月ごとなどの目安を患者さんに提示し、受診の必要性を理解していただくことも効果的です。COVID-19流行に伴い外出機会や活動量が低下した高齢糖尿病患者さんも多く経験します。高齢者は活動量が低下すると容易に筋力が低下しますので、活動量の維持は重要です。1人あるいは同居者とのウォーキングで感染リスクが高まることはまずないと考えますので、可能な方には、人込みを避けたウォーキングを推奨しています。また、室内でできる運動としてラジオ体操や当センター研究所 社会参加と地域保健チームで開発された「本日の8ミッション」などを提示しています。「本日の8ミッション」は、つま先あげや、ももあげ、スクワットなどからなり、チェックシートがホームページよりダウンロードできます。また、座位行動時間に注目した指導も有効です。ADA(米国糖尿病学会)によるStandards of medical care in diabetes 2020では座位行動時間の短縮が推奨されています。30分以上座り続けないことで血糖値が改善するといわれており1)、自宅にいても30分に1回は立ち上がるよう患者さんに指導しています。Q2 誤嚥性肺炎の効果的な予防法について教えてください高齢者肺炎の多くを占めると考えられているのが誤嚥性肺炎です。糖尿病患者は脳梗塞による嚥下障害や高血糖による免疫能低下を介し、誤嚥性肺炎のリスクが高いと考えられます。誤嚥性肺炎は、睡眠中などに口腔内の細菌が唾液とともに下気道に流入する不顕性誤嚥により生じると考えられており、口腔内を清潔に保つことが重要です。コロナ禍の現在でも歯磨き習慣の確認や口腔内のセルフチェックを促すことは重要です。嚥下機能が低下している場合には、嚥下機能の回復を目指したリハビリ(通院が困難な場合は在宅でも可能)や嚥下状態に合わせた適切な食形態への変更が必要です。鎮静薬や睡眠薬、抗コリン薬などの口腔内乾燥をきたす薬剤は嚥下障害をきたしやすいため、適切な使用がなされているか評価する必要があります。また、肺炎一般の予防として肺炎球菌やインフルエンザワクチンの接種も有効です。肺炎球菌ワクチン、インフルエンザワクチンとも肺炎による入院減少が示されており、両者の併用により、さらに入院頻度が減少することが示されています2)。なお、経鼻胃管や胃瘻造設による誤嚥性肺炎の予防効果は示されていません。Q3 尿路感染症の効果的な予防法・無症候性細菌尿への対応は?糖尿病は尿路感染症のリスクであることが知られており、そのリスクは血糖コントロール不良(HbA1c 8.5%以上)により高くなります3)。また、糖尿病患者では男女とも無症候性細菌尿の頻度が高いことも知られていますが4)、一部の例外(妊婦、好中球減少、泌尿器処置前)を除き、無症候性細菌尿に対するスクリーニングや治療は推奨されません5)。ただし、SGLT-2阻害薬の使用は尿路感染症のリスクとなる可能性があるため、現時点で明確なエビデンスがあるわけではありませんが、使用開始前に評価し、無症候性細菌尿が認められれば、使用を慎重に検討する必要があると考えます。閉経後女性140名を対象とした無作為比較試験では、1.5L以上の飲水により単純性膀胱炎の発症を50%低下することが示されています6)。膀胱炎を繰り返す場合には神経因性膀胱を念頭とした残尿測定やエコーによる尿路閉塞の有無を確認する必要があります。再発性尿路感染症予防におけるクランベリージュースの有効性を検討した研究では、50歳以上の女性においてその有効性が示されていますが7)、否定的な意見もあり8)注意を要します。Q4 歯周病に対する評価や歯科との連携について高齢糖尿病患者では歯周病の罹患率が高く、血糖コントロールが不良であると歯周病が悪化しやすいことが知られています。歯周病が重症化すると血糖コントロールが悪化します。逆に治療により歯周病による炎症が改善すると血糖コントロールも改善することが報告されています9)。歯周病による歯牙の喪失は嚥下障害のリスクとなるほか、オーラルフレイルを介し、身体的フレイルおよびサルコペニアのリスクとなる可能性があるため、歯周病の評価・治療は重要です。高齢糖尿病患者で歯牙の喪失または歯周病があると健康関連のQOL低下は1.25倍おこりやすく、過去12ヵ月間歯科治療を受けていないと1.34倍QOL低下をきたしやすいという米国の70,363人の調査結果も出ています10)。歯科との連携に際し、日本糖尿病協会が発行している「糖尿病連携手帳」を利用することが多いです。「糖尿病連携手帳」にはHbA1cなどの検査結果を記載するページとともに眼科・歯科の検査結果を記載するページもあり、受診時に患者さんに持参していただくことで情報の共有が可能です。もともとの状態や血糖コントロール状況にもよりますが、一般に3~6ヵ月間隔での評価が推奨されています。1)American Diabetes Association. Diabetes Care. 2020 Jan;43:S48-S65.2)Kuo CS, et al.Medicine (Baltimore). 2016 Jun;95:e4064.3)McGovern AP, et al.Lancet Diabetes Endocrinol. 2016 Apr;4:303-4.4)Renko M, et al.Diabetes Care. 2011 Jan;34:230-55)JAID/JSC 感染症治療ガイドライン2015-尿路感染症・男性性器感染症-,日本化学療法学会雑誌 Vol. 64, p1-3,2016年1月.6)Hooton TM, et al.JAMA Intern Med. 2018 Nov 1;178:1509-1515.7)Takahashi S, et al.J Infect Chemother 2013 Feb;19:112-7.8)Nicolle LE. JAMA. 2016 Nov 8;316:1873-1874.9)Munenaga Y, et al.Diabetes Res Clin Pract. 2013 Apr;100:53-60.10)Huang DL, et al.J Am Geriatr Soc. 2013 Oct;61:1782-8.

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リサーチ・クエスチョンのブラッシュアップー関連研究レビュー 診療ガイドラインの活用 その1【「実践的」臨床研究入門】第4回

診療ガイドラインとは各専門分野の診療ガイドラインは、日本医療機能評価機構が運営するMinds*1ガイドラインライブラリで検索することができます。診療ガイドラインはMindsでは以下のように定義されています。「診療上の重要度の高い医療行為について、エビデンスのシステマティック・レビューとその総体評価、益と害のバランスなどを考量して、患者と医療者の意思決定を支援するために最適と考えられる推奨を提示する文書」1)。Mindsガイドラインライブラリでは無料で閲覧できない診療ガイドラインもありますが、ご自身のRQに関連する先行研究をレビューする際に、まずはじめにチェックしてみる価値のある質の高い2次情報源です。*1:Medical Information Distribution Service診療ガイドラインを活用した関連研究レビューの実際近年の診療ガイドラインは、1)クリニカル・クエスチョン(CQ)および、2)CQに対する回答の提示とその推奨グレード、という2段階構造で記述されています。下記は本連載で、これまでに作成してきた架空の臨床シナリオに基づいたCQです。CQ:食事療法(低たんぱく食)を遵守すると慢性腎臓病患者の腎予後は改善するのだろうか↓P:慢性腎臓病患者E:食事療法(低たんぱく食)の遵守C:食事療法(低たんぱく食)の非遵守O:腎予後例えば、このCQに関連した診療ガイドラインを、まずはPである「慢性腎臓病」をキーワードにMindsガイドラインライブラリで探してみましょう。すると、「エビデンスに基づくCKD診療ガイドライン2018」2)が検索結果の筆頭に挙げられてきます。この診療ガイドラインの目次を見てみると、「第3章 栄養」のセクションで列記されているCQの中に、われわれのCQにかなり合致した下記の記載が見つかります。C QCKD の進行を抑制するためにたんぱく質摂取量を制限することは推奨されるか?推奨CKD の進行を抑制するためにたんぱく質摂取量を制限することを推奨する。ただし、画一的な指導は不適切であり、個々の患者の病態やリスク、アドヒアランスなどを総合的に判断し、腎臓専門医と管理栄養士を含む医療チームの管理の下で行うことが望ましい (推奨グレード B 1)。推奨グレードは1)そのCQに対する回答の依拠するエビデンスの質と2)推奨の強さによって構成されます。推奨グレードの決定も含め、診療ガイドラインの作成にGRADE*システム3, 4)という手法を用いることが、現在では世界標準となっています。GRADEシステムでは、1)エビデンスの質および2)推奨の強さが、下記のとおり、それぞれ4段階と2段階に格付けされています4)。*2:Grading of Recommendations Assessment, Development and Evaluation1)エビデンスの質A(高)真の効果が効果推定値に近いことに大きな確信がある。B(中)効果推定値に対し中等度の確信がある。C(低)効果推定値に対する確信性には限界がある。D(非常に低い)効果推定値に対し、ほとんど確信がもてない。2)推奨の強さ1:強い推奨:推奨する。2:弱い/条件付き推奨:提案する。この診療ガイドラインで挙げられた前述のCQに対する回答の内容は推奨グレードB1ですので、根拠となるエビデンスの質は中等度であるが強く推奨する、という意味合いになります。次回は、このCQに関する本文の解説を読み込んで、われわれが行う臨床研究で新たなエビデンスを積み上げる余地(ニッチ)があるかどうかを検討してみたいと思います。引用文献1)福井次矢、山口直人 監修.Minds診療ガイドライン作成の手引き2014.医学書院.2014.2)日本腎臓学会編集.エビデンスに基づくCKD診療ガイドライン2018, 東京医学社. 3)Guyatt G et al. J Clin Epidemiol. 2011;64:383-94.4)診療ガイドラインのためのGRADEシステム 第3版.中外医学社1)福原俊一. 臨床研究の道標 第2版. 健康医療評価研究機構;2017.2)木原雅子ほか訳. 医学的研究のデザイン 第4版. メディカル・サイエンス・インターナショナル;2014.3)矢野 栄二ほか訳. ロスマンの疫学 第2版. 篠原出版新社;2013.4)中村 好一. 基礎から学ぶ楽しい疫学 第4版. 医学書院;2020.5)片岡 裕貴. 日常診療で臨床疑問に出会ったときに何をすべきかがわかる本 第1版.中外医学社;2019.

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治療フローが様変わり、「肝硬変診療ガイドライン2020」の変更点とは

 肝硬変の非代償期と聞けば誰しもが諦めていたものだが、時代遅れと言われぬよう、この感覚をアップデートさせねばならないようだー。2020年11月、『肝硬変診療ガイドライン2020(改定第3版)』が発刊された。第2版が発刊された2015年から5年もの間に肝硬変治療に関する知見が数多く報告され、治療法は目まぐるしく変化している。そのため、海外の最新治療ガイドライン(GL)と齟齬がないように、かつ日本の実地診療に即したフローとなるよう留意し、日本肝臓学会と日本消化器病学会が対等の立場で初めて合同作成した。今回、その作成委員長を務めた吉治 仁志氏(奈良県立医科大学消化器・代謝内科 教授)に非専門医もおさえておくべき変更点やGLの活用方法についてインタビューした。肝硬変症状、プライマリケアでも早期発見を 今回の改訂において、“実地医家(プライマリケア医)にも使いやすい”を基本に作成を進めたと話した吉治氏。同氏によると、肝硬変は肝臓専門医による診療だけではなく、実地医家による日々の診療からの気付きが重要だという。「これまで非代償期の患者は予後不良で治療も困難であった。しかし、肝硬変は非代償期からも可逆性である事が明らかとなると共に、この5~10年の間に新薬が次々と登場し肝硬変治療に対する概念が変わったことで、非代償期を含めた肝硬変を非専門医にも診察してもらう意味がある」と説明した。 今回のフローチャートの見やすさや検査項目の算出のしやすさは、そんな状況変化を反映させ刷新しており、肝硬変診断のフローチャートの身体所見に『黄疸』『掻痒感』が追加されたのもその一例である。同氏は「黄疸は進行例で発見されることが多く実地医家では診療が困難であったため、これまで所見として含まれていなかったが、現況を顧みて追加した」と補足した。一方、掻痒感については「多くの非専門医は肝臓疾患がもたらす痒みの認識が薄いように感じる。そのため、抗ヒスタミン薬などで経過観察され、その間に肝疾患が進行してしまう場合も散見される。冬場は乾燥によるかゆみを訴える患者も多いが、肝疾患によるかゆみは抗ヒスタミン薬が無効である例が多く、ほかの所見もあれば血液検査を行い肝臓疾患の有無について判別を行ってほしい」と訴えた。栄養療法を簡単に個別化できるフローチャートへ 肝硬変治療で重要となる栄養療法もフローチャートが明確になり非専門医でも利用しやすくなっているが、これには近年の肝硬変患者の成因変化が影響している。2008年の肝硬変成因別調査

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2型糖尿病へのSGLT2阻害薬とGLP-1受容体作動薬のベネフィット/BMJ

 成人2型糖尿病患者におけるSGLT2阻害薬およびグルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)受容体作動薬が共有するベネフィットとして、重症低血糖を起こすことなく、全死因死亡、心血管死、心筋梗塞、腎不全、重症高血糖の発生低下および体重の減少があることを、ニュージーランド・オタゴ大学のSuetonia C. Palmer氏らが764試験、被験者総数42万例超を対象にしたネットワークメタ解析によって明らかにした。ただし、絶対ベネフィットは、心血管リスクや腎疾患リスクなど患者個々のリスクプロファイルによって、大幅に違いがみられることも示されたという。著者は、「今回のレビューは、BMJ Rapid Recommendationsに直接的に反映される方法が用いられ、すべての結果は既存の糖尿病治療への両クラスの薬剤の追加に言及するものであった」と述べている。BMJ誌2021年1月13日号掲載の報告。MedlineやEmbaseなど、20年8月までレビュー 研究グループは、Medline、Embase、Cochrane CENTRALを基に、2020年8月11日までに発表された試験結果についてシステマティック・レビューを行った。適格条件は、成人2型糖尿病患者を対象にSGLT2阻害薬またはGLP-1受容体作動薬と、プラセボや標準的治療、その他血糖降下治療を比較し、24週以上追跡した無作為化試験。2人の独立したレビュアーによって、適格性のスクリーニングおよびデータ抽出、バイアスリスクの評価が行われた。 データを基に頻度論に基づく変量効果モデルを用いてネットワークメタ解析を行い、エビデンスの確実性については、GRADEシステムで評価した。 アウトカムは、患者1,000人当たりの5年間の推定絶対治療効果で、被験者のリスクプロファイルに応じて次の5段階に分け検証した。非常に低リスク(心血管リスクなし)、低リスク(3つ以上の心血管リスクあり)、中リスク(心血管疾患)、高リスク(CKD)、非常に高リスク(心血管疾患・CKD)。検討はBMJ Rapid Recommendationsプロセスに準じ、ガイドラインパネルがレビューの監視を規定した。SGLT2阻害薬、死亡や心不全による入院リスクをGLP-1受容体作動薬より低下 764試験、被験者総数42万1,346例を対象に分析が行われた。 SGLT2阻害薬、GLP-1受容体作動薬ともに、全死因死亡、心血管死、非致死的心筋梗塞、腎不全のリスクをいずれも低下した(高い確実性のエビデンス)。 両薬剤間の顕著な違いは、SGLT2阻害薬はGLP-1受容体作動薬より死亡や心不全による入院のリスクを低下したこと、GLP-1受容体作動薬は非致死的脳卒中リスクを低下したがSGLT2阻害薬では同効果は認められなかったことだった。 また、SGLT2阻害薬は性器感染症の原因となり(高い確実性)、GLP-1受容体作動薬は重度消化器イベントの原因となる可能性が示された(低い確実性)。両薬剤ともに、体重減少効果も示されたが、エビデンスの確実性は低かった。 なお、手足切断、失明、眼疾患、神経障害性疼痛、健康関連の生活の質(QOL)については、両薬剤ともにその効果を示すエビデンスがほとんどもしくはまったくなかった。 両薬剤の絶対ベネフィットは、心血管リスクや腎疾患リスクのランクにより大きな違いが認められた。

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「時間軸を考えた急性心不全治療」でも病態の把握は必要である(解説:原田 和昌 氏)-1343

 わが国の代表的な登録研究である、東京都CCUネットワーク登録において急性心不全患者(平均77歳)の院内死亡率は約8%と依然として高く、いくつかの心不全登録研究における30日の再入院率も5~6%で近年まったく改善していない。ガイドラインでは、中用量の利尿薬、早期の硝酸薬開始、必要なら非侵襲的陽圧呼吸(NPPV)、増悪因子(ACS、AF、感染など)の探索と治療を推奨している。 ELISABETH試験は、Mebazaa氏がフランスの15施設にて行った、クラスター(施設などの一つのまとまり)レベルで介入時期をランダム化し、順番に観察期から介入期に移行(介入の導入時期をずらして順次適用)し、介入の優越性を検定する非盲検のデザインの試験である。救急入院した高齢者急性心不全患者の予後を、(投与時間も規定されている)推奨の治療セットが改善するかを調べたが、事前規定の治療セット群と、担当医に治療を任せた群とで、生存日数、30日の再入院率に差はなかった。 そもそも急性心不全の治療のエビデンスは多くない。3CPO試験ではNPPVにより、急性心原性肺水腫で入院した患者の症状がより迅速に解消されたが、標準的な酸素療法と比較して生存に影響はなかった。しかし、わが国のADHERE登録によると血管作動薬(強心薬あるいは血管拡張薬)による治療が遅れるほど院内死亡率が有意に高くなり、また、末永氏らの研究によると利尿薬治療を1時間以内に行うことで院内死亡率が低下したことから、「時間軸を考えた急性心不全治療」(発症から早期の治療が予後を改善する)という概念が作られた。 急性心不全の初期対応の目的は、できるだけ短時間に診断を行い、早期に治療介入することで、循環動態と呼吸状態の安定化を図ることにある。急性心不全の病態生理は3つに大別される。1)急性肺水腫:神経体液因子の亢進が中心で心拍出量の低下が少ない場合、血圧が上昇し、左室の後負荷上昇により心拍出量が低下する。治療はNPPVによる速やかな酸素化の改善と血管拡張薬(硝酸薬)による後負荷の低下である。2)体液貯留:LVEDPが上昇し左室が拡大することで、心拍出量を保とうとする。利尿薬(フロセミド)の静注が第1選択である。尿量が増加しないなら、利尿薬の増量か他の利尿薬を併用する。3)低心拍出・低灌流:非常に高いLVEDPでなければ心拍出量が維持できない状態、または体液量が不足した状態で、末梢循環不全の指標の乳酸値が上昇する。補液、強心薬、ないしは機械的循環補助が必要となる。 急性心不全の治療に関するわが国のガイドラインを概説する。まず、患者の救命と生命徴候の安定化(10分以内):CS3(<100mmHg)に相当する低心拍出・低灌流、ショックでは、速やかに強心薬や機械的循環補助の必要性を判断して、施行する。次に、血行動態の改善と酸素化の維持(次の60分以内):呼吸不全があり、必要なら酸素吸入、NPPV、気管内挿管を行う。高齢者ではNasal High Flowも選択肢の一つである。そして、呼吸困難などのうっ血症状・徴候の改善:大まかにCS1(>140mmHg)は急性肺水腫、CS2(100~140mmHg)は体液貯留に相当するため、CS1では血管拡張薬(硝酸薬)、CS2では利尿薬静注が有効であることが多い。 引き続いて速やかに心エコー検査を施行して病態診断を行う。臓器障害の進展予防:CS1に血管拡張薬、CS2に利尿薬の投与が必ずしも適切でないことがある。CS1でも約半数がEFの低下した体液貯留であることから、少量の利尿薬が有効なことが多いが、残りの半分のHFpEFに対する利尿薬の大量投与はWRF(worsening renal function)を来して予後を悪化することがある。また、血圧が低め(<140mmHg)のCS2に血管拡張薬を使用すると院内死亡が高くなる(白石氏ら、東京都CCUネットワーク登録研究)。初期対応で開始した治療については、心不全症状および体重変化などにより病態の変化を再評価し、必要に応じて速やかに修正、最適化する。 Mebazaa氏は、心エコー所見や病態に関係なく、入院1時間以内にフロセミド40mg(または日常使用量)静注と硝酸薬の静注(血圧100mmHgに至るまで用量調節)を開始するという治療セットを用いて、「時間軸を考えた急性心不全治療」が予後を改善するということを証明しようとしたが、うまくいかなかった。この時代、AIにより心エコー所見や病態に基づく個別化治療のアルゴリズムを作り、それを検証するほうがむしろ現実的かもしれない。

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COVID-19の対応には学会の叡智を結集/日本医学会連合

 日本の医学界を代表する学術的な全国組織の連合体である日本医学会連合(会長:門田 守人)は、1月4日に「日本医学会連合 COVID-19 expert opinion 第2版(2021年1月4日版)」を公開した。“expert opinion” は、COVID-19にevidence based medicineのガイドラインを作成できるような確固としたclinical evidenceが不足していることから「expert opinionとして取り纏め、今後新しいevidenceが蓄積するとともにreal timeに改訂していく」「読みやすい簡潔なものとし、詳細は各学会のhomepageの該当箇所などのリンクを案内する」とし、関連学会との協力の下、迅速な作成を目指し作られた。 このexpert opinionの活用に際しては、「各学会が対象とする患者層は同じCOVID-19患者でもそれぞれ異なるので、同じ治療法でも異なる推奨や考え方が提示されていることがある」と前置きした上で、「推奨のばらつきは、COVID-19患者群の中に存在する多様性を反映したもので、expert opinionの使用では、他のガイドラインと同様に各々の推奨を診療にあたる患者さんの状況に応じて柔軟に使用する必要がある」と注意を促している。 具体的に、たとえば一般外来では、「感染防御」、「診断・検査の進め方」、「服用中の薬剤」にわけて記述され、最新の知見が説明されているほか、必要に応じて各所属学会や海外学会へのリンクなども充実している。主な内容・一般外来・救急外来・入院(内科系)・入院(外科系)・入院患者の見舞いの対応・集中治療と呼吸管理・合併症・特殊な状況の対応:移植医療における対応・特殊な状況の対応:小児・特殊な状況の対応:産婦人科・内視鏡対応:・こころのケア(患者および医療従事者)・口腔科(歯科・口腔外科)診療と医科歯科連携・復職・復学(通常の職種、医療従事者)

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慢性不眠症に対する処方デジタル治療「Somryst」について

 処方デジタル治療(PDT)は、米国食品医薬品局(FDA)に承認された新たなソフトウエアベースの医療機器であり、疾患の治療に用いられる。Somrystは、慢性不眠症治療に対しFDAにより承認された最初のPDTであり、不眠症の認知行動療法(CBT-I)を、モバイルアプリケーションを通じて提供するものである。CBT-Iは、慢性不眠症のガイドラインで推奨される第1選択治療であるが、CBT-Iのセラピストには限りがあり、より多くの患者へCBT-Iを提供するニーズにSomrystは合致する。カナダ・ラバル大学のCharles M. Morin氏は、Somrystについてのレビューを報告した。Expert Review of Medical Devices誌オンライン版2020年11月23日号の報告。 本レビューでは、Somrystの作用機序や技術的特徴、FDA承認時のランダム化試験の安全性および有効性のデータを解説した。 主な結果は以下のとおり。・Somrystは、成人慢性不眠症患者の治療において優れた臨床効果が認められており、リスクを上回るベネフィットをもたらす。・FDA承認時のランダム化試験では、第1世代のCBT-IプラットフォームであるSleep Healthy Using the Internet(SHUTi)の2つの臨床試験に基づき、評価された。・Somrystや一般的なPDTは、効果的な治療へのアクセスを向上させるために、有望なデバイスである。・非接触型であるSomrystは、COVID-19パンデミックなどの安全上の理由により対面診療が利用できないまたは推奨されない場合においても、理想的な治療オプションといえる。

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機械学習による疾病予測モデルはあまり当たらない(解説:折笠秀樹氏)-1333

 フラミンガムスタディデータを使って、心臓病の10年予測モデルが出たのが1998年のことです。私も脳梗塞の再発予測モデルの開発に携わったことがありますが、2012年のことでした。今や予測モデルの研究は枚挙にいとまがないほどです。TRIPOD声明というガイドラインまで出ています。モデル開発にはCoxモデルを用いるのが一般的でしたが、最近では機械学習モデルを使うことも多くなりました。ニューラルネットワークやランダムフォレストなどという手法です。 Cox回帰による心臓病の予測(QRISK3)を正解として、19種類の予測モデルの結果と比較しました。それらには統計モデルと機械学習モデルを含みます。集団の性能を示す判別能(C統計量など)や較正能については、どの予測モデルも良い成績でした。しかし、個人の予測能は違いました。機械学習による予測モデルは、個人の心臓病リスクを低く見積もっていたのです。原因は打ち切りデータの扱いにあると思われます。打ち切りデータとは、脱落などで途中から行方不明になったデータのことです。生存時間解析では、「打ち切りとイベント発現は独立」という仮定を置いています。打ち切り例も追跡例も、その後のイベント発現パターンは同じという仮定です。機械学習ではどうでしょうか。打ち切りデータは結果不明のため削除したか、心臓病は起こらなかったとしたはずです。後者だと仮定すれば、当然リスクを低く見積もります。ロジスティック回帰も結果は二値ですから、同じことが問題になります。 QRISK3予測モデルでは22変数を用いていましたが、機械学習モデルはもっと多くの変数を用いていたようです。最大473変数を用いるモデルもあったようです。これなら集団の性能を高くすることはできるでしょうが、個々の事例では合わないケースが出てくることは目に見えています。今や機械学習が流行ですが、古典的な統計専門家の私としては、やはり従来の統計モデルのほうに軍配を上げたい気がします。

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リサーチ・クエスチョンのブラッシュアップー関連研究レビュー その2【「実践的」臨床研究入門】第3回

関連研究レビューのための情報―まずは2次情報の活用をRQに関連する先行研究論文レビューで使用する情報には1次情報と2次情報があります。1次情報は個々の論文です。医学・生命科学分野で最も使われている1次情報の情報源は皆さんご存じのMEDLINE(PubMed)です。2次情報とは1次情報をまとめたものです。特に質の高い2次情報源として、診療ガイドライン、UpToDate®、コクラン・ライブラリー、などが挙げられます。筆者は、いきなり!PubMedで1次情報を検索する前に、RQに関するテーマの全体像を効率的に掴むために、まずはこれらの2次情報を活用することを勧めています。関連研究検索のポイントと適切な英語検索ワードの選択PE(I)COのカタチに定式化されたRQに関連する先行研究論文の検索を行うときのポイントは、P(対象)とE(曝露)もしくはI(介入)に含まれるキーワードを検索語として用いる、ということです。なぜなら、C(比較対照)やO(アウトカム)は一義的に決まらない場合が多く、網羅的な検索には適さないからです。Cは個別の研究毎に複数のパターンがあります。例えば、新規薬物療法の効果を検証する介入研究で考えてみると、Cはプラセボや標準治療(既存薬物療法など)であったり、無治療の場合など色々ありえます。Oも個々の研究の目的によって多種多様です。死亡や明確な定義と評価に基づいた心血管イベント発症などのハードエンドポイント*1をOに設定している臨床研究は多くあります。何らかの身体所見(血圧やBMI、など)や検査所見(血糖値、血中コレステロール値、心エコー所見、など)のサロゲートエンドポイント*2をOに置いた臨床研究はもっとたくさんあります。また、近年の臨床研究では、患者立脚型アウトカム(Patient-reported outcome: PRO)*3と呼ばれる医療者を介さずに患者さん自らが報告しデータ化されたアウトカム指標もOとして盛んに用いられています。*1:客観的かつ普遍的に評価可能で、重要な患者予後を設定したアウトカム。真のアウトカム、とも言います。*2:真のアウトカムと生物学的に関連していると考えられるアウトカム。代替アウトカム、とも言います。*3:痛みの主観的な評価法として使用される視覚的アナログスケール(Visual analog scale:VAS)や健康関連QOL尺度である36-item Short-Form Health Survey(SF-36)などが、代表的なPROの例として挙げられます。さて、下記は第1回で作成した架空の臨床シナリオに基づいたCQとRQ(PECO)です。CQ:食事療法を遵守すると慢性腎臓病患者の腎予後は改善するのだろうか↓P:慢性腎臓病患者E:食事療法の遵守C:食事療法の非遵守O:腎予後それでは、こちらのRQを例に用いて、関連する先行研究のレビューを質の高い2次情報源を活用して行うことを考えてみましょう。前述したように、PとE(もしくはI)に含まれるキーワードを検索語として使用することがポイントですので、上記のRQの場合の検索語の候補は「慢性腎臓病」と「食事療法」になります。「慢性腎臓病」に対する「食事療法」には大きく分けて、たんぱく質制限、食塩制限、カリウム(やリン)制限の3つがあります。ここでは、指導医A先生と専攻医B先生(第1回のダイアローグ参照)の所属施設が力を入れている(?) 、たんぱく質制限(低たんぱく食)にしぼってみるとことにしましょう。すると、検索語は「慢性腎臓病」と「低たんぱく食」となります。また、RQの関連研究レビューにおいて有用な情報は、1次情報、2次情報ともに、ほとんどが英語で書かれたものです。したがって、これらの情報を検索するためには、適切な英語の検索ワードを選択して活用することも必要になります。この際に、お勧めしたいオンラインツールとしてライフサイエンス辞書があり、筆者もよく使っています。ライフサイエンス辞書は無料で使える医学・生命科学用語のオンライン電子辞書で、専門用語の英和・和英辞典であるとともに、シソーラス(類義語辞典)やコーパス(文例集)の機能も併せ持っています。ライフサイエンス辞書で調べると、「慢性腎臓病」は”chronic kidney disease(CKD)”、「低たんぱく食」は”low protein diet”と英訳されるようです。次回からは、「慢性腎臓病」/ ”chronic kidney disease(CKD)” と「低たんぱく食」/ ”low protein diet”という2つのキーワードを用いた、質の高い2次情報源レビューの実践について解説していきます。1)福原俊一. 臨床研究の道標 第2版. 健康医療評価研究機構;2017.2)木原雅子ほか訳. 医学的研究のデザイン 第4版. メディカル・サイエンス・インターナショナル;2014.3)矢野 栄二ほか訳. ロスマンの疫学 第2版. 篠原出版新社;2013.4)中村 好一. 基礎から学ぶ楽しい疫学 第4版. 医学書院;2020.5)片岡 裕貴. 日常診療で臨床疑問に出会ったときに何をすべきかがわかる本 第1版.中外医学社;2019.

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ガイドラインでは中止の副作用に、服薬継続を選んだ患者さん【堀美智子のハートに効くラヂオ】第3回

動画解説TS-1治療中の薬剤師の患者さん。副作用による中止提案に対し、「可逆性なら継続できる方法を考えたい」と堀先生に伝えました。このエピソードから、「インフォームド・チョイス」について考えてみましょう。

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高齢者扁平上皮NSCLCの新スタンダードとなるか(CAPITAL)/名古屋医療センター

 高齢者のStage IIIB/IV扁平上皮非小細胞肺がん(SQ NSCLC)1次治療の標準治療が世代交代か。nab-パクリタキセルとカルボプラチンの併用(nab-PTX+CBDCA)とドセタキセル(DTX)単剤を比較した無作為化第III相試験CAPITAL試験の結果を名古屋医療センターが発表した。 肺がんには高齢患者が多い。高齢患者の標準化学療法は長期にわたりドセタキセル単剤である。非扁平非小細胞肺がん(NSQ NSCLC)おいては、JCOG1210/WJOG7813L試験でカルボプラチン+ペメトレキセドのDTX単剤に対する非劣性が示され、2019年の肺癌診療ガイドラインでCBDCA併用レジメンの使用が推奨された。しかし、SQ NSCLCについては依然としてドセタキセル単剤が標準である。 そのような中、CA031試験で良好な成績を示したnab-PTX+CBDCAが高齢者SQ NSCLCの新たな治療薬として浮上した。そこで、高齢者SQ NSCLCの1次治療におけるnab-PTX+CBDCA療法の第III相CAPITAL試験が行われた。CAPITAL試験は、山本小班インターグループ試験として6つの臨床試験グループ(NEJSG、TCOG、NHO、CJLSG、WJOG、LOGiK)から92施設が参加して行われた。 対象は70歳以上の化学療法未施行の根治照射不能進行・再発SQ NSCLC(ECOG PS 0〜1)250例を目標症例とした。登録患者は、DTX(60mg/m2 day1 3週ごと)とCBDCA(AUC6 day1 3週ごと)+nab-PTX(100mg/m2 day1,8,15 3週ごと)に無作為に割り付けられた。主要評価項目は全生存期間、副次的評価項目は奏効割合、無増悪生存期間、安全性である。 事前から予定されていたイベント数92例時点での中間解析の結果、nab-PTX+CBDCAはドセタキセル単剤に比べOSを改善。有意水準0.0158を下回り、早期有効中止を達成した。 研究事務局である名古屋医療センターの小暮啓人氏は、この中間解析の結果から、nab-PTX+CBDCAは高齢者SQ NSCLCの標準療法になると述べている。この試験結果は2021年に投稿すると共に米国臨床腫瘍学会(ASCO)での発表を目標としているとのこと。

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肺癌診療ガイドライン2020薬物療法の改訂ポイント/日本肺癌学会

 肺癌診療ガイドラインが改訂され、2020年版が発刊された。第61回日本肺癌学会学術集会の教育講演では、薬物療法領域の変更点について岡山大学の堀田勝幸氏が発表した。肺癌診療ガイドライン2020の主な変更点EGFR変異陽性 一次治療におけるゲフィチニブ+カルボプラチン+ペメトレキセドの追加(CQ52 2A)、エルロチニブと血管新生阻害薬の併用がアップデート(CQ52 2A)されるなど改訂された。ALK融合遺伝子陽性 二次治療において、アレクチニブの使用のアップデート(CQ59 1C)、新たなALK-TKIブリガチニブが追加(CQ59 2C)されるなど改訂された。MET遺伝子変異陽性 MET遺伝子変異陽性が新設され、MET-TKI(テポチニブ、カプマチニブ)の推奨が追加された(CQ62 1C)。ROS1融合遺伝子陽性 エヌトレクチニブ使用の推奨が追加された(CQ60 1C)ドライバー遺伝子変異/転座陰性もしくは不明 一次治療におけるニボルマブ+イピリムマブ併用がPD-L1 TPS50%以上(CQ64 2C)、1~49%(CQ70 2C)に追加された。小細胞肺癌  進展型小細胞肺癌においてのプラチナ製剤併用療法へのPD-L1阻害薬の上乗せについて、プラチナ製剤併用療法+PD-L1阻害薬の使用が推奨された(CQ11 1A)。

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第35回 新型コロナワクチン接種、医療従事者は2月下旬から開始か

<先週の動き>1.新型コロナワクチン接種、医療従事者は2月下旬から開始か2.4月から感染予防策を徹底する医療機関の診療報酬を臨時引き上げ3.来年度の薬価引き下げ幅を0.8%緩和、4,300億円削減へ4.介護報酬改定2年連続引き上げ、5つの柱を軸に5.高齢者のポリファーマシー対策強化に向けた取りまとめ1.新型コロナワクチン接種、医療従事者は2月下旬から開始か新型コロナウイルスワクチンについて、来年2月下旬をめどに医療従事者への接種を始められるよう、厚生労働省から自治体に体制整備を指示したことが報道された。18日、ファイザーがビオンテック(ドイツ)と共同開発している新型コロナワクチンの製造販売承認申請を行ったことを受け、来年のワクチン接種スケジュールと優先接種対象者について議論が進んでいる。ファイザーのワクチンは、-70度以下での流通・保管体制が必要となる。政府はワクチン保管用に、-75℃のディープフリーザーを3,000台、-20℃のディープフリーザーを7,500台確保するなど体制を整える方針。新型コロナワクチン接種は、通常の定期接種と同様に、住民票所在地の市町村での接種を原則とし、各市町村は、接種対象者に対し、接種券(クーポン券)を発行する。対象者は接種券を医療機関に持参してワクチンを接種し、医療機関は接種券を市町村への費用請求に用いる。接種後、接種券と一体の接種済証が発行され、接種情報は市町村の予防接種台帳で管理・保存される。25日の厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会予防接種基本方針部会で、ワクチンの接種優先順についてなど、さらに具体的に議論される見込み。(参考)新型コロナワクチン 2月下旬の接種開始準備を指示 厚労省(NHK)新型コロナウイルスワクチンの接種体制・流通体制の構築について(厚労省)ファイザーとBioNTech、日本においてCOVID-19ワクチンの製造販売承認申請を発表(ファイザー)2.4月から感染予防策を徹底する医療機関の診療報酬を臨時引き上げ厚労省は、18日に開催された中央社会保険医療協議会で、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)を踏まえた診療に係る特例的な対応として、外来や入院を問わず、すべての診療に対して感染予防策の徹底を行った場合、2021年4~9月まで診療報酬を臨時で引き上げることを決めた。この改定により、初診・再診料は1回当たり5点、入院料は1日当たり10点の加算を算定できる。算定条件としては、すべての患者診療において、状況に応じて必要な個人防護具を着用した上で、感染防止に十分配慮して対応を実施する、COVID-19の感染予防策に関する職員研修を行うなどが求められる。(参考)新型コロナウイルス感染症への対応とその影響等を踏まえた診療報酬上の取扱いについて(厚労省)3.来年度の薬価引き下げ幅を0.8%緩和、4,300億円削減へ厚労省は、18日に開催された中央社会保険医療協議会において、来年度の薬価改定について討論した。2021年から毎年実施される薬価改定の品目ならびに改定幅について、乖離率が5%を超える品目(医療用医薬品のうち69%)を対象に、来年度の薬価改定(薬価の引き下げ)を行うこととした。ただし、COVID-19による影響があるのを考慮して、薬価の削減幅を0.8%緩和することを了承。この決定により、患者や保険者の負担は軽くなるが、新薬の開発コストが増加している中で、製薬企業にとっては経営上の打撃となる。日本医師会・中川 俊男会長は、従来から薬価財源は医療費本体に充当するのが基本で、「コロナ禍の現状において、国民の生命を守るために最前線で活動する医療機関支援の原資とするなど、診療報酬上で中間年に加算をし、医療費財源に充てるべき」との意見を16日の定例記者会見で発表している。(参考)全世代型社会保障検討会議の最終報告取りまとめなど最近の政府の動向について(日医)2021(令和3)年度薬価改定の骨子(案)(厚労省)4.介護報酬改定2年連続引き上げ、5つの柱を軸に18日に開催された社会保障審議会介護給付費分科会において、2021年度介護報酬改定に関する審議報告がまとめられた。改定率は、前日の田村 憲久厚生労働相と麻生 太郎財務相による折衝でプラス0.7%と決められ、2回連続のプラス改定となった。今回の改定の5つの柱として、「感染症や災害への対応力の強化」「地域包括ケアシステムの推進」「自立支援・重度化防止に向けた取組の推進」「介護人材の確保・介護現場の革新」「制度の安定性・持続可能性の確保」を挙げ、これらを促進するような改定となる見込み。また、厚労省が廃止期限を設けていた介護療養型医療施設や有床診療所から介護医療院への移行促進なども含まれる。(参考)令和3年度介護報酬改定に関する審議報告(案)(厚労省)5.高齢者のポリファーマシー対策強化に向けた取りまとめ厚労省は、17日に「高齢者医薬品適正使用検討会」を開催し、病院における高齢者のポリファーマシー対策の始め方と進め方をまとめた。ポリファーマシーは、単に服用薬剤数が多いことではなく、それに付随する薬物有害事象リスクの増加や、服薬過誤、服薬アドヒアランス低下などの問題につながる状態。これに取り組み始める病院が、初期に直面するであろう課題を解決するためのスタートアップツールとしてまとめられた。また、第二部はポリファーマシー対策をある程度進めている病院が、業務手順書を整備し、業務をより効率的に行う参考資料としてまとめられている。この取り組みに揃えておくべき資料としては、「高齢者の医薬品適正使用の指針(総論編)」「高齢者の医薬品適正使用の指針(各論編(療養環境別))について」「高齢者の安全な薬物療法ガイドライン 2015」が挙げられており、とくに高齢者の入院治療を行う病院に取り組み開始を求めている。(参考)病院における高齢者のポリファーマシー対策の始め方と進め方(案)(厚労省)第12回 高齢者医薬品適正使用検討会 資料(厚労省)

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