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妊娠中の抗うつ薬使用、リスクとベネフィットは?~メタ解析

 妊娠中の抗うつ薬使用は数十年にわたり増加傾向であり、安全性を評価するため、結果の統計学的検出力および精度を向上させるメタ解析が求められている。フランス・Centre Hospitalier Universitaire de Caen NormandieのPierre Desaunay氏らは、妊娠中の抗うつ薬使用のベネフィットとリスクを評価するメタ解析のメタレビューを行った。その結果、妊娠中の抗うつ薬使用は、ガイドラインに従い第1選択である心理療法後の治療として検討すべきであることが示唆された。Paediatric Drugs誌オンライン版2023年2月28日号の報告。 2021年10月25日までに公表された文献を、PubMed、Web of ScienceデータベースよりPRISMAガイドラインに従い検索した。対象研究は、妊娠中の抗うつ薬使用と、妊婦、胎芽、胎児、新生児、発育中の子供などの健康アウトカムの関連を評価したメタ解析とした。研究の選択およびデータの抽出は、2人の独立した研究者により重複して実施した。研究の方法論的質の評価にはAMSTAR-2ツールを用いた。各メタ解析の重複部分は、修正された対象エリアを算出することにより評価した。4段階のエビデンスレベルを用いて、データの統合を行った。主な結果は以下のとおり。・51件のメタ解析をレビューに含め、1件を除くすべてのリスク評価を行った。・各リスクの有意な増加は以下のとおりであった。 ●主な先天性奇形(メタ解析8件:SSRI、パロキセチン、fluoxetine) ●先天性心疾患(11件:パロキセチン、fluoxetine、セルトラリン) ●早産(8件) ●新生児の適応症状(8件) ●新生児遷延性肺高血圧症(3件)・分娩後出血の有意なリスク増加および、死産、運動発達障害、知的障害の有意なリスク増加については高いバイアスリスクで、限られたエビデンスが認められた(各々1件のみ)。・自然流産、胎児週数や出生時低体重による児の小ささ、呼吸困難、痙攣、摂食障害のリスク増加および、早期抗うつ薬曝露による自閉症のその後のリスク増加に関して、矛盾した不確実なエビデンスが確認された。・妊娠高血圧、妊娠高血圧腎症のリスク増加および、ADHDのその後のリスク増加に関するエビデンスはみられなかった。・重度または再発性のうつ病の予防について、1件の限られたエビデンスのみで、抗うつ薬使用のベネフィットが評価されていた。・新生児の症状(小~大)を除きエフェクトサイズは小さかった。・結果の方法論的な質は低く(AMSTAR-2スコア:54.8±12.9%[19~81%])、バイアスリスク(とくに適応バイアス)が高いメタ解析に基づいていた。・修正された対象エリアは3.27%であり、重複はわずかであった。・妊娠中の抗うつ薬治療は、第2選択として用いられるべきであることが示唆された(ガイドラインに従い心理療法後に検討)。・ガイドラインを順守し、パロキセチンやfluoxetineの使用をとどまらせることで、主要な先天性奇形リスクを防ぐことが可能である。・今後の研究では、不均一性やバイアス減少のため、母体の精神疾患と抗うつ薬の投与量を調整し、曝露のタイミングで分析を実行することが求められる。

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CTAで側副血行を確認の急性脳梗塞、6~24h後でも血管内治療は有効か/Lancet

 発症または最終健常確認から6~24時間(late window)の前方循環系主幹動脈閉塞による脳梗塞で、CT血管造影(CTA)により側副血行が確認された患者において、血管内治療は有効かつ安全であることが、オランダ・マーストリヒト大学医療センターのSusanne G. H. Olthuis氏らが実施した第III相試験「MR CLEAN-LATE試験」の結果、示された。前方循環系脳梗塞に対する血管内治療は、発症後6時間以内での有効性および安全性が確認されていた。著者は、「今回の結果は、主に側副血行路の有無に基づいてlate windowにおける血管内治療の対象患者を選択できることを支持するものである」と述べている。Lancet誌オンライン版2023年3月29日号掲載の報告。側副血行が確認された患者を対象に、90日後のmRSスコアを評価 MR CLEAN-LATE試験は、オランダの脳卒中治療センター18施設で実施された多施設共同無作為化非盲検評価者盲検試験で、年齢18歳以上、CTAで前方循環系の主幹動脈(頭蓋内内頸動脈、中大脳動脈のM1部およびM2部)閉塞および側副血行が確認され、発症または最終健常確認から6~24時間、NIHSS神経機能欠損スコア2以上の患者を対象とした。なお、DAWN試験およびDEFUSE-3試験の選択基準と同様の臨床および画像プロファイルを有する患者は、オランダ国内のガイドラインに従って血管内治療を行い、MR CLEAN-LATE試験の登録からは除外した。 研究グループは、適格患者を最良の内科的治療に加えて血管内治療を行う群(血管内治療群)と行わない群(対照群)に1対1の割合で無作為に割り付けた。無作為化はウェブベース行われ、ブロックサイズ範囲は8~20で、施設によって層別化された。 主要アウトカムは、無作為化90日後の修正Rankinスケール(mRS)スコア、安全性アウトカムは、無作為化90日後の全死因死亡と症候性頭蓋内出血とし、同意を延期または同意する前に死亡した患者を含む修正intention-to-treat集団を解析対象集団とした。解析は事前規定の交絡因子を調整して行われた。治療効果は多変量順序ロジスティック回帰分析で推定し、補正後共通オッズ比(acOR)と95%信頼区間(CI)により示した。90日後のmRSスコアは、血管内治療群で低下 2018年2月2日~2022年1月27日に535例が血管内治療群(268例)または対照群(267例)に無作為に割り付けられた。このうち、502例(94%)の患者が同意を延期または同意を得る前に死亡した(血管内治療群255例、対照群247例、女性261例[52%])。 90日後のmRSスコア中央値は血管内治療群3(四分位範囲:2~5)、対照群4(2~6)であり、血管内治療群が低かった。 多変量順序ロジスティック回帰分析の結果、血管内治療群でmRSのアウトカムが良好であることが認められた(acOR:1.67、95%CI:1.20~2.32)。全死因死亡は、両群で有意差はなかった(24%[62/255例]vs.30%[74/247例]、acOR:0.72、95%CI:0.44~1.18)。症候性頭蓋内出血は、血管内治療群のほうが対照群と比較して高頻度であった(7% vs.2%、4.59、1.49~14.10)。

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第39回 フードコートのアクリル板は必要か?

感染対策の引き算手洗いや「3密」回避などの政府の基本的対処方針に基づき、各業界は感染対策のガイドラインを作成していましたが、5月8日から「5類感染症」に移行することで、基本的対処方針とそれに基づくガイドラインは廃止される方針です。となると、引き算していく感染対策を検討することになります。東京都民1万人が回答したアンケート調査によると、「もうやめたほうがよい」と思う感染対策は、「学校におけるマスク着用」、「黙食」、「ハンドドライヤー使用禁止」、「窓口や飲食店でのアクリル板やビニールの仕切り設置」が上位にランクインしています(図)。画像を拡大する図. 東京iCDCリスコミチームによる都民アンケート調査結果(2023年2月実施)、第119回新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボード(令和5年3月23日)資料1)子供のワクチン接種率が低い学校では、有効とされる感染対策のマスクを一律に緩和することについてはさまざまな意見があります。個人的には、インフルエンザと同じように流行に応じて対応すればよいと思っています。フードコートのアクリル板アクリル板などのパーティションについては、結局ヒトの感染リスクを検討した明確なエビデンスがありません。物理的に飛沫を遮断する効果は当然あるので、アドバイザリーボードでも「今後も活用はあり得る」という玉虫色の結論となっています2)。私も子供連れでよくフードコートに行くのですが、現在もアクリル板の仕切りがあります。フードコートは、たとえ定期的に清掃をしているとしても、空いた席に次の人が座っていくシステムですから、前の使用者か次の使用者がきれいに清掃することが重要です。とはいえ、アクリル板まで拭きあげる人はほとんどおらず、飛び散ったうどんの汁や鉄板の油などでアクリル板が汚れていることのほうが多く、家族4人で座ったとき、汚いアクリル板で分断されている現状を非常に残念に思っています。フードコートは、よほどの混雑でなければ、相席ということは起こりません。なので、個人的には飲食店の形態に応じて引き算していけばよいのではと考えています。まれに起こる相席を想定してまで、アクリル板を設置するのはナンセンスだと思います。現時点で、政府は「事業者の判断に委ねる」という方針のようです。参考文献・参考サイト1)東京iCDCリスコミチームによる都民アンケート調査結果(2023年2月実施)、第119回新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボード(令和5年3月23日)資料2)これからの身近な感染対策を考えるにあたって(第四報)~室内での感染対策におけるパーティションの効果と限界~、第119回新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボード(令和5年3月23日)資料

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潰瘍性大腸炎の寛解導入および維持療法におけるetrasimodの有用性(解説:上村直実氏)

 潰瘍性大腸炎(UC)の治療に関して、基準薬である5-アミノサリチル酸(5-ASA)製剤に変化はないが、有害事象が危惧されているステロイドは総使用量と使用期間が可能な限り控えられるようになり、新たな生物学的製剤や低分子化合物の分子標的治療が主流になりつつある。抗TNF-α抗体薬、インターロイキン阻害薬、インテグリン阻害薬、ヤヌスキナーゼ阻害薬などの開発により難治性のUCが次第に少なくなってきているものの、いまだに十分な効果が得られない患者や副作用により治療が中断される重症患者も少なくなく、新たな治療薬の追加が求められている。 今回、ozanimodに続く2番目の低分子スフィンゴシン1-リン酸(S1P)受容体調節薬であるetrasimodの活動性UCに対する有効性と安全性を示す研究結果が、2023年3月のLancet誌に掲載された。本試験の維持療法部分のデザインは、通常の導入試験において寛解できた症例を対象とするResponder re-randomisation designではなく、寛解導入試験開始時の割り付けのままで維持療法終了時まで一貫して評価するTreat through designを採用している点が特徴的であり、今後、論議される点と思われる。 本試験の主要評価項目である活動性UCの臨床的寛解導入率および寛解維持率がプラセボに比べて統計学的に有意に高いことが示されているが、実薬の寛解導入および維持率は25%ないしは33%程度であり、対象の70%くらいの症例にとっては著明な効果が得られたとはいえない結果である。すなわち、臨床現場において従来の治療に抵抗性の重症UC患者に対してetrasimodを使用しても、十分な寛解効果を得ることができない患者が多く存在することを意味している。次々と開発されている分子標的治療薬の臨床治験の結果は、ほぼ同様の寛解率が報告されており、有効性の高い新規薬剤のさらなる開発が希求されている。 一方、安全性に関して本薬剤は免疫能低下の有害事象が少なく、重篤な感染症のリスク上昇を伴う他の新規治療薬とは異なる利点を有している。さらに、UC患者に使用される薬剤は長期使用が必要であるため、今後、長期使用の有用性と安全性に関する成績が必須であり、そのためには日本でも全国的な患者データベースの構築が待たれる。 最後に、これだけ高価な分子標的治療薬が次々と出現するたびに、学会発の診療ガイドラインに新たな選択肢として追記されるが、プラセボ対照試験ではなく市販後の新規薬剤同士の試験により、実際の臨床現場で困っている患者個人個人にとって適切な生物学的製剤や低分子化合物の選択を可能とするエビデンスが必要と思われる。

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HFpEF診療はどうすれば…?(後編)【心不全診療Up to Date】第7回

第7回 HFpEF診療はどうすれば…?(後編)Key Points簡便なHFpEF診断スコアで、まずはHFpEFの可能性を評価しよう!HFpEF治療、今できることを整理整頓、明日から実践!HFpEF治療の未来は、明るい?はじめに近年、HFpEF(heart failure with preserved ejection fraction)は病態生理の理解、診断アプローチ、効果的な新しい治療法の進歩があるにもかかわらず、日常診療においてまだ十分に認識されていない。そのような現状であることから、前回はまず最新の定義、病態生理についてレビューした。そして、今回は、その後編として、HFpEFの診断、そして治療に関して、最新情報を含めながら皆さまと共有したい。 HFpEFの診断スコアってご存じですか?呼吸苦や倦怠感などの心不全徴候を認め、EF≥50%でうっ血を示唆する客観的証拠を認めた場合、HFpEFと診断される1)。そのため、エコーでの拡張障害の評価はHFpEFを診断する上では必要がなく、またNa利尿ペプチド(NP)値が正常であっても、HFpEFを除外することはできないと前回説明した。では、具体的にどのようにして診断を進めていくとよいか、図1を基に考えていこう。(図1)HFpEFが疑われる患者を評価するためのアプローチ方法画像を拡大するまず、原因不明の労作時息切れを主訴に来院された患者に対して、病歴、身体所見、心エコー検査、臨床検査などからHFpEFである可能性を検討するわけであるが、その際に大変参考になるのが、診断のためのスコアリングシステムである。たとえば、米国で開発されたH2FPEFスコアでは、スコア5点以上であれば、HFpEFが強く疑われ(>80% probability)、1点以下であれば、ほぼ除外できる2)。ただし、NP値上昇や心不全徴候を認めるにも関わらず、H2FPEFスコアが低い場合は、アミロイドーシスやサルコイドーシスのような浸潤性心筋症など非典型的なHFpEFの原因疾患を疑う姿勢が重要である点も強調しておきたい(図2)。(図2)HFpEFを発症し得る治療可能な疾患画像を拡大するこれらのスコア算出の結果、HFpEFの可能性が中程度の患者に対しては、運動負荷検査が推奨される。運動負荷検査には、心エコー検査と右心カテーテル検査があるが、診断のゴールドスタンダードは、右心カテーテル検査による安静時および運動時の血行動態評価であり、安静時PAWP≥15mmHgもしくは労作時PAWP≥25mmHg(spine)、もしくは労作時PAWP/心拍出量slope>2mmHg/L/min(upright)を満たせば、HFpEFと診断できる3)。ただ、侵襲的な運動負荷検査は、どの施設でも気軽にできるものではなく、受動的下肢挙上や容量負荷といった代替的な検査法の有用性に関する報告もある4-6)。とくに心エコー検査にて下肢挙上後の左房リザーバーストレインの低下は、運動耐容能の低下とも関連していたという報告もあり、非侵襲的であることから一度は施行すべき検査手法と考えられる7)。なお、脈拍応答不全の診断については、Heart rate reserve([最大心拍数-安静時心拍数]/[220-年齢-安静時心拍数])を算出し、0.8未満(β遮断薬内服時は0.62未満)であれば、脈拍応答不全あり、と一般的に定義される8)。なお、私自身も現在、HFpEF早期診断のためのウェアラブルデバイス開発に取り組んでいるが、今後はより非侵襲的に診断できるようになることが切望される。そして、HFpEFであると診断した後、まず考えるべきことは『原因は何だろうか?』ということである。なぜなら、その鑑別疾患の中には治療法が存在するものもあるからである(図2)。アミロイドーシスを疑うような手根管症候群や脊柱管狭窄症を示唆する身体所見はないか、頚静脈もしっかり観察してKussmaul徴候はないか、心エコーにて中隔変動(septal bounce)や肝静脈血流速度の呼気時の拡張期逆流波はないか、スペックルトラッキングエコーによる左室長軸方向ストレイン(GLS, global longitudinal strain)のbullseye mapに特徴的なパターンがないか…など、ぜひご確認いただきたい9)。HFpEF治療の今、そして今後は?かかりつけ医の先生方にもご承知いただきたいHFpEF治療の流れを図でまとめたので、これを基にHFpEF治療の今を説明する(図3)。(図3)HFpEF治療 2023画像を拡大するHFpEFの診断が確定し、図2に記載してあるような疾患を除外した上で、まず考慮すべき処方は、SGLT2阻害薬である。なぜなら、EMPEROR-Preserved試験およびDELIVER試験において、SGLT2阻害薬であるエンパグリフロジンおよびダパグリフロジンが、EF>40%の心不全患者において、主要エンドポイントである心不全入院または心血管死が20%減少することが示されたからである(ただし、eGFR<20mL/min/1.73m2、1型糖尿病、糖尿病性ケトアシドーシスの既往がある場合は避ける。そのほかSGLT2阻害薬使用時の注意事項は、「第3回 SGLT2阻害薬」を参照)10, 11)。そして、それと同時に身体所見、臨床検査、画像検査などマルチモダリティを活用して体液貯留の有無を評価し、体液貯留があれば、ループ利尿薬や利水剤(五苓散、牛車腎気丸、木防已湯など)を使用し12)、TOPCAT試験の結果から心不全入院抑制効果が期待され、薬価が安いMR拮抗薬の投与をできれば考慮いただきたい13)。とくにカリウム製剤が投与されている患者では、それをMR拮抗薬へ変更すべきであろう。そして、忘れてはならないのが、併存疾患に対するマネージメントである。高血圧があれば、130/80mmHg未満を達成するように降圧薬(ARB、ARNiなど)を投与し、鉄欠乏性貧血(transferrin saturation<20%など)があれば、骨格筋など末梢の機能障害へのメリットを期待して鉄剤(カルボキシマルトース第二鉄[商品名:フェインジェクト])の静注投与を検討する。そのほか、肥満、心房細動、糖尿病、冠動脈疾患、慢性腎臓病、COPD、睡眠時無呼吸症候群などに対してもガイドライン推奨の治療をしっかり行うことが重要である。(表1)画像を拡大するそれでも心不全症状が残存し、EFが55~60%未満とやや低下しており、収縮期血圧が110~120mmHg以上ある患者に対しては、ARNiの追加投与を検討する(詳細は第4回 「ARNi」を参照)。なお、HFrEFにおいて必要不可欠なβ遮断薬については、虚血性心疾患や心房細動がなければ、HFpEFに対しては原則投与しないほうが良い。なぜなら、HFpEFでは運動時に脈拍を早くできない脈拍応答不全の合併が多く、投与されていたβ遮断薬を中止することで、peak VO2が短期で大幅に改善したという報告もあるからである14)。なお、脈拍応答不全に対して右房ペーシングにより運動時の心拍数を上げることで運動耐容能が改善するかを検証した試験の結果が最近公表されたが、結果はネガティブで、現時点では脈拍応答不全に対して、心拍数を落とす薬剤を中止する以外に明らかな治療法はなく、今後さらに議論されるべき課題である15)。これらの治療以外にも、mRNA医薬、炎症をターゲットとした薬剤、代謝調整薬(ATP産生調整など)といった、さまざまなHFpEF治療薬の開発が現在進められている16)。また、近年HFpEFは、肥満や座りがちな生活と密接に結びついた運動不耐性の原因としても着目されており、心不全患者教育、心臓リハビリテーションもエビデンスのあるきわめて重要な治療介入であることも忘れてはならない17, 18)。最近は大変ありがたいことに心不全手帳(第3版)が心不全学会サイトでも公開されており、ぜひ活用いただきたい(http://www.asas.or.jp/jhfs/topics/shinhuzentecho.html)。非薬物治療に関しても、今まで欧米を中心に多くの研究が実施されてきた。例えば、症候性心不全患者に対する肺動脈圧モニタリングデバイスガイド下の治療効果を検証したCHAMPION試験のサブ解析において、肺動脈モニタリングデバイス(商品名:CardioMEMS HF System)を使用することで、HFpEF患者において標準治療よりも心不全入院が50%減少し、心不全管理における有用性が報告されている(本邦では未承認)19)。また、HFpEF(EF≥40%)に対する心房シャントデバイス(商品名:Corvia)治療の効果を検証したREDUCE LAP-HF II試験の結果もすでに公表されている20)。心血管死、脳卒中、心不全イベント、QOLを含めた主要評価項目において、心房シャントデバイスの有効性を示すことができなかったが、本試験では全患者に対して運動負荷右心カテーテル検査を実施しており、ポストホック解析において、運動時肺血管抵抗(PVR, pulmonary vascular resistance)が上昇しなかった群(PVR≤1.74 Wood units)では臨床的便益が得られる可能性が見いだされ21)、この群にターゲットを絞ったレスポンダー試験が現在進行中である。また、血液分布異常を改善させるための右大内臓神経アブレーション(GSN ablation)の有効性を検証するREBALANCE-HF試験も現在進行中であるが、非盲検ロールイン段階における予備的解析では、運動時の左室充満圧とQOL改善効果が認められたことが報告されており22)、今後本解析(sham-controlled, blinded trial)の結果が期待される。そのほかにも多くのHFpEF患者を対象とした臨床試験、橋渡し研究が進行中であり(表2)、これらの結果も大変期待される。(表2)HFpEFについて進行中の臨床試験 画像を拡大する以上HFpEF治療についてまとめてきたが、現時点ではHFpEFの予後を改善する治療法はまだ確立しておらず、さらに一歩進んだ治療法の確立が喫緊の課題である。つまり、HFpEFのさらなる病態生理の解明、非侵襲的に診断するための技術開発、個別化治療に結びつくフェノタイピング戦略を活用した新たな次世代の革新的研究が必要であり、その実現に向けて、前回紹介した米国HeartShare研究など、現在世界各国の研究者が本気で取り組んでいるところである。ただ、それまでにわれわれにできることも、図3の通り、しっかりある。ぜひ、目の前の患者さんに今できることを実践していただき、またかかりつけ医の先生方からも循環器専門施設の先生方へフィードバックいただきながら、医療従事者皆が一眼となってより良いHFpEF治療をわが国でも更新し続けていければと強く思う。1)Borlaug BA, et al. Nat Rev Cardiol 2020;17:559-573.2)Reddy YNV, et al. Circulation. 2018;138:861-870.3)Eisman AS, et al. Circ Heart Fail. 2018;11:e004750.4)D'Alto M, et al. Chest. 2021;159:791-797.5)Obokata M, et al. JACC Cardiovasc Imaging. 2013;6:749-758.6)van de Bovenkamp AA, et al. Circ Heart Fail. 2022;15:e008935.7)Patel RB, et al. J Am Coll Cardiol. 2021;78:245-257.8)Azarbal B, et al. J Am Coll Cardiol 2004;44:423-430.9)Marwick TH, et al. JAMA Cardiol. 2019;4:287-294.10)Anker SD, et al. N Engl J Med. 2021;385:1451-1461.11)Solomon SD, et al. N Engl J Med. 2022;387:1089-1098.12)Yaku H, et al. J Cardiol. 2022;80:306-312.13)Pitt B, et al. N Engl J Med. 2014;370:1383-1392.14)Palau P, et al. J Am Coll Cardiol. 2021;78:2042-2056. 15)Reddy YNV, et al. JAMA;2023:329:801-809.16)Pugliese NR, et al. Cardiovasc Res. 2022;118:3536-3555.17)Kamiya K, et al. Circ Heart Fail. 2020;13:e006798.18)Bozkurt B, et al. J Am Coll Cardiol. 2021;77:1454-1469.19)Adamson PB, et al. Circ Heart Fail. 2014;7:935-944.20)Shah SJ, et al. Lancet. 2022;399:1130-1140. 21)Borlaug BA, et al. Circulation. 2022;145:1592-1604.22)Fudim M, et al. Eur J Heart Fail. 2022;24:1410-1414.

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低炭水化物ダイエットはメタボになりやすい?

 炭水化物の摂取量について、推奨量を下回るとメタボリックシンドローム(MetS)の発症が低下するかどうか、現時点では関係性を示す一貫した証拠はない。今回、米国・オハイオ州立大学のDakota Dustin氏らが炭水化物の摂取量とMetSの有病率について研究した結果、炭水化物の推奨量を満たしている人よりも下回っている人のほうがMetSの発症率が高いことが明らかになった。Journal of the Academy of Nutrition and Dietetics誌オンライン版2023年3月23日号掲載の報告。 本研究は、1999~2018年の国民健康栄養調査(National Health and Nutrition Examination Survey:NHANES)の回答者から、食物と栄養摂取量とMetSのマーカーに関するデータを取得。そのデータを炭水化物・総脂肪・脂肪酸(飽和脂肪酸[SFA]、一価不飽和脂肪酸[MUFA]、および多価不飽和脂肪酸[PUFA])の摂取量で層別化し、MetSとの関連性を評価した横断研究である。 食品および栄養素(サプリメントからの摂取含む)の通常の摂取量は、米国・国立がん研究所(NCI)での摂取方法から推定された。炭水化物からのエネルギーが45%未満を「炭水化物の摂取推奨量を下回る」、炭水化物からのエネルギーが45~65%を「炭水化物の摂取推奨量を満たす」と定義した。MetSの診断基準は米国の診療ガイドライン1)に基づき、参加者をMetSと判定するには、8.5時間以上断食した朝に次の状態(腹囲の拡大、TG値の上昇、HDL-C値の低下、血圧上昇、血漿グルコース濃度の上昇)のうち3つが該当した場合とした。解析には多変量ロジスティック回帰モデルを用い、食事パターンとMetSの関連性をオッズ比で評価した。 主な結果は以下のとおり。・本研究には20歳以上の妊娠・授乳していない1万9,078例の回答者が含まれ、炭水化物摂取量が推奨量を下回った群と満たした群の平均年齢はそれぞれ48歳だった。・炭水化物の摂取量が推奨量を下回ったのは女性が半数以上(53%)で、推奨量を満たしている人よりも、エネルギーの割合としてより多くのアルコールを摂取していた。・炭水化物の摂取量が推奨量を下回った人は、推奨量を満たした人に比べてMetSの有病率が1.067倍高かった(95%信頼区間[CI]:1.063~1.071、p

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肥満や男性だけでない、いびきをかく人の1/4は睡眠時無呼吸症候群/レスメド

 睡眠中に大きないびきと共に呼吸が止まったり、弱くなったりするという症状を呈する睡眠時無呼吸症候群(SAS)。いびきをかく人の25%(男性:3人に1人、女性:5人に1人)は睡眠時無呼吸を発生していたという報告もあり1)、SASの80%は未診断ともいわれる2)。しかし、SASは糖尿病・心血管疾患の発症や循環器系の疾患による死亡のリスクを上昇させるため、治療が必要である。一般的な治療法としてはCPAP(持続陽圧呼吸)治療、マウスピース治療、手術、生活習慣の改善がある。 そこで、レスメドは2023年3月16日に「CPAP治療の最前線と患者アドヒアランスの向上について」と題してメディアセミナーを実施した。前半で富田 康弘氏(虎の門病院 睡眠呼吸器科)が「CPAP治療の最前線と患者アドヒアランスの向上について」をテーマに講演し、後半では、レスメドの久保 慶郎氏が同日上市したPAP(気道陽圧)装置「Air Sense 11」について紹介した。健康の3本柱としての睡眠 富田氏は、「健康のために気を付けていることとして、食事や運動を挙げる人はいるが、睡眠を挙げる人は非常に少ない」と述べる。実際に、国民生活時間調査2020では日本人の平日の睡眠時間は7時間12分であったことが報告されており、年々短くなっている3)。また、経済協力開発機構(OECD)が実施した平均睡眠時間の調査では、OECD加盟国の中で日本が最も睡眠時間が短いことが明らかになっている。なお、National Sleep Foundation(米国睡眠財団)は18~64歳までの成人であれば7~9時間、65歳以上であれば7~8時間の睡眠を推奨している4)。 そこで、富田氏は7時間以上の睡眠を確保するために、睡眠を中心として生活を組み立てていくことを提案した。「たとえば、朝7時に起きるのがちょうどいいという人は24時に就寝するということを決めて、それを基に生活を組み立ててほしい」という。朝型、夜型は生まれ持ったものであるため、それに合わせた形で睡眠時間を確保することが重要ということも強調した。SASは肥満の人や男性だけの病気ではない しっかり睡眠をとっているにもかかわらず、日中に強い眠気があるという人もいる。そのような場合は、SASが隠れている可能性があるという。とくに「夜に大きないびきをかく」「日中に強い眠気がある」「ときどき呼吸が止まる」「起床時に頭痛やだるさがある」といった症状があったら要注意とのことである。 SASは上気道の閉塞によって生じるため、肥満が原因となる。しかし、日本人を含むアジア人は顎が小さいため、日本人は肥満がなくてもSASを発症することもあるという。SASの原因はさまざまであるが、SAS治療のゴールドスタンダードであるCPAP治療は上気道の閉塞を抑制することにより、原因によらず治療効果が期待できる。 NDB(レセプト情報・特定健診等情報データベース)に基づくと、日本ではCPAP治療を受けている患者は60万人を超えるとされるが、未治療の患者は400万人以上いると推定されている。また、CPAP治療を受けている女性は9.1万人とされる5)。女性と男性のSASの有病率の比率は1:2~3といわれるため、女性では未診断・未治療の患者が多いと考えられる。これについて富田氏は「肥満の人や男性に多い病気であると捉えられているためではないか」と述べ、正しいメッセージを伝えていくことの重要性を強調した。CPAPは毎日4時間以上継続することが重要 SASは、糖尿病や循環器疾患のリスクとなる疾患である。「睡眠時無呼吸症候群(SAS)の診療ガイドライン2020」では、閉塞性睡眠時無呼吸患者の高血圧や心血管イベントの抑制にはCPAPを4時間以上使用する日を70%以上とすること、日中の眠気の抑制にはCPAPを毎日4時間以上使用することが推奨されている6)。 このアドヒアランス目標を達成し、治療を継続するために、富田氏は「患者が受け身ではなく積極的に治療に取り組むことが必要である」と言う。そのような背景から「近年のCPAP治療では、遠隔モニタリング機能やスマートフォンアプリなどが利用可能であるため、患者エンゲージメントの向上に活用してほしい」と述べた。アドヒアランス・エンゲージメントの向上を目指しAirSense 11を上市 続いて、レスメドの久保氏が2023年3月16日に上市したPAP装置AirSense 11について紹介した。従来のAirSense 10では、治療へのエンゲージメントを高めることが期待されるアプリmyAirが併用可能となっている。myAirでは、使用時間やマスクの密閉性など、使用状況が100点満点でスコアリングされ、スマートフォン上に表示される。また、患者の使用状況に応じたコーチング機能も提供されている。しかし、CPAP治療を開始した患者のなかには「導入で説明された内容を覚えられない」「適切にデバイスやマスクを使用できているか不安」などの悩みを抱える患者もいる。 そこで、今回上市されるAirSense 11では、myAirと併用することで治療の「見える化」をサポートするPersonal Therapy Assistant、患者の主観的情報を医療者へ「見える化」するCare Check-Inという2つの機能が追加された。Personal Therapy Assistantでは、マスク装着などの手順についての解説動画を視聴することができ、実際にマスクが正確に装着されているか評価することもできる。Care Check-Inは患者の主観的感覚をデータとして医療者へ提供する。「眠気を感じていますか?」「治療は上手くいっていると感じていますか?」「何か課題は感じていますか?」という質問を患者に提示し、その回答を医療者に共有することができる。 久保氏は「AirSense 11は、とくにCPAP治療を開始する初期の患者にスムーズでポジティブな経験をしてもらうことを支援するデバイスである。対面や遠隔など、患者と医療者のタッチポイントが変化していく環境において、AirSense 11を通じて患者のアドヒアランス向上やエンゲージメント向上のサポートをしていきたい」とまとめた。■参考文献1)Peppard PE, et al. Am J Epidemiol. 2013;177:1006-1014.2)Benjafield AV, et al. Lancet Respir Med. 2019;7:687-698.3)NHK放送文化研究所.国民生活時間調査20204)Hirshkowitz M, et al. Sleep Health. 2015;1:233-243.5)厚生労働省. 第6回NDBオープンデータ6)睡眠時無呼吸症候群(SAS)の診療ガイドライン作成委員会 編集. 睡眠時無呼吸症候群(SAS)の診療ガイドライン2020. 南江堂;2020.p.76.

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軽度熱傷【いざというとき役立つ!救急処置おさらい帳】第1回

はじめまして!聖マリアンナ医科大学病院 救急医学の沼田と申します。主に救急科で勤務しながら、総合診療医、小児救急、集中治療を勉強してきました。最近は緩和ケアを勉強しています。オフ・ザ・ジョブトレーニングでは、外科系救急初期診療を学ぶ「T&Aマイナーエマージェンシーコース」のコアメンバーとして活動しています。このコラムでは、かかりつけ医が診る機会の多い軽症救急疾患の治療を、救急医の視点でわかりやすく解説していきます。初回は熱傷の中でもI、II度の軽度熱傷の治療についてです。熱傷にはさまざまな原因がありますよね。天ぷらを揚げていた、子供が電気ケトルを倒した、カセットコンロが爆発した…など。熱傷の加療の方向性はほぼ同一ですが、医師によって使用する薬剤や被覆材にはばらつきがあると感じています。大まかな治療に関してはAmerican family physicianの「Outpatient burns: prevention and care」と日本熱傷学会の「熱傷診療ガイドライン(改訂第3版)」を基に、私の経験も交えながらポイントを解説します1,2)。22歳男性。夜間にカップラーメンを食べようとして、カップに熱湯を入れて移動した際に転倒し、熱湯が両腕にかかり受診。既往歴なし、内服歴なし、アレルギー歴なし、バイタル特記事項なし。右前腕に5cm程度の発赤、左前腕に3cm程度の発赤と水疱が2ヵ所ある。水疱の1つは1cm程度、もう1つは3cm程度で破れている。これは、私が近くに皮膚科がない地方の内科外来で働いていたときに経験した症例です。熱傷の治療は、ステップを踏んで診察をしていくことが重要ですので、今回はこの症例を基にどういう判断や対応を行ったかお話しします。1. すぐに入院が必要かどうかの判断(1)受傷部位私の専門が救急であり、火災などによる熱傷に遭遇することもありますが、その場合に最も警戒するのは気道熱傷です。火災が関連している熱傷では、顔面熱傷がないかどうかを確認し、気道熱傷がある場合は人工呼吸管理を行うため入院が必要です。今回の症例は、両腕に熱湯がかかったことによる熱傷ですので気道熱傷はありません。(2)熱傷面積熱傷の面積によっては病院や熱傷センターなどへの搬送が必要になりますので、熱傷の範囲を把握します。よく使われるのが「9の法則」です。頭部、右上肢、左上肢をそれぞれ9%、体幹部の前面、後面をそれぞれ18%、右下肢、左下肢をそれぞれ18%、陰部を1%として熱傷面積を推定します。画像を拡大するまた、熱傷面積が小さく、散在しているときは「手掌法」を用います。これは、手のひらの大きさを体表面積の1%と換算して熱傷面積を推定します。患者の入院の必要性を判断するにあたっては、「Artzの基準」がよく用いられます。II度熱傷の面積が15~30%、III度熱傷の面積が2~10%で一般病院での入院加療が必要とされています。逆に言えば、この面積以下であれば外来通院でよいでしょう。今回の症例の熱傷範囲は1~2%程度ですので、外来通院としました。2. 後日専門医への相談が必要かどうかの判断(1)受傷部位受傷部位で専門的な加療が必要かどうか変わってきます。顔面、手指、肛門、陰部の熱傷や、大関節(肩、膝、股関節)を超える熱傷は、美容や機能予後に影響を与えるので、可能であればなるべく早く専門医に診察してもらいましょう。(2)深達度熱傷には、I度、II度、III度があります。I度は発赤のみ、II度(浅達)は水疱を形成して水疱底の真皮が赤色、II度(深達)は水疱を形成して水疱底の真皮が白色、III度は白色皮革様もしくは褐色皮革様で感覚が消失します。III度熱傷は、適切に治療したとしても拘縮して植皮が必要になる可能性が高いため、専門医に紹介するべきです。II度の浅達か深達かの判別は専門医でなくては困難ですが、治療もとくに変わらないので必ずしも判別する必要性はないと考えます。この患者は、右前腕は発赤のみでI度、左前腕は水疱を形成していてII度熱傷となります。3. 治療(1)冷水での洗浄ここからは、症例のような軽症熱傷を通院加療する流れを記載します。どこで受傷したとしてもまず推奨されるのが冷水での洗浄です。実は強いエビデンスはないと言われていますが、熱傷を負った人の治療で「水で洗う vs.水で洗わない」の検証は倫理的に問題があり行えないため、実際の効果を検証することは困難です。どこでも、すぐに、安価にできるので、受傷後なるべく早く10分程度洗ってもらいましょう。ただし、20分以上の冷水での洗浄や氷水の使用は組織障害や低体温を起こすことがあるため控えます。●右腕(I度)右腕のI度熱傷の治療は、基本的には適切な鎮痛薬の内服のみで完了します。しかし、熱傷は時間とともに進行することがあり、今日はI度であったとしても翌日には水疱を形成してII度に進行していることはしばしば経験するので、進行する可能性があることをしっかりと説明しましょう。進行した場合はII度として治療を行います。●左腕(II度)II 度熱傷の場合は、まずは水疱が保たれているかどうかを確認しましょう。水疱内は清潔ですので、破れていなければ基本的には保存的に加療します。American Family physicianでは水疱のサイズが6mmを超える場合は破膜するよう指導されていますが、私は2~3cmでも保存的に加療しています。重要なのは、患者自身が水疱を保護できるかどうかで、難しいようであれば破膜します。保存的に加療する場合は、ガーゼをかぶせて保護し、もし破れてしまった場合は受診するよう指導します。この症例では、3cmの大きいほうの水疱が破れていました。水疱が破けている場合や、水疱を破膜した場合の治療はどうでしょうか? 私はまずリドカイン塩酸塩ゼリー(商品名:キシロカインゼリー)を塗布してから創部を洗浄しています。その後、破れた水疱の膜を残しておくと感染のリスクがあるため除去します。なお、アルコールやポビドンヨード液などによる消毒は組織障害が生じるため、参考文献2つはいずれも推奨していません。私も創部がよほど汚染されていない限り使用はしません。(2)創部の被覆被覆材にはさまざまなものがあります。メディカルオンラインで「創傷・熱傷被覆材(ドレッシング材)」と検索すると、サイズや用途はさまざまですが130個ほど出てきます。これらの有意性に関する報告は限られていますが、元々熱傷にはスルファジアジン銀が使用されており、それに対する非劣性や有意性を示した論文はあるため、どれを選択しても大きくは変わらないと考えます。その中で、私は基本的には白色ワセリン+ガーゼを使用しています。理由はどこの施設でも置いていて、安価で簡便だからです。患者には、ワセリンをたっぷりと塗って、最低1日1回交換するよう指導して帰宅とします。私がインストラクターとして参加しているT&Aマイナーエマージェンシーコースでは、ガーゼ1枚の範囲を覆う場合、約20gの白色ワセリンの使用を推奨しています。画像のとおり「ぷにゅっとする」くらい厚塗りします。画像を拡大する熱傷の範囲に合わせて調節しますが、熱傷の初期は浸出液が多く、頻回にガーゼ交換が必要ですので、私は患者に白色ワセリンを最低100g渡しています。以前、とある外来で、軟膏がすぐになくなったのでガーゼのみを張って、乾燥して創部に引っ付いてしまった患者がいて、剥ぐのに苦労したことがありました。必ず「軟膏なしでガーゼのみを張るのは控えましょう」と伝えてください。ちなみに、白色ワセリンはドラッグストアでも販売しているので、必ずしも病院を受診して受け取る必要はありません。(4)ステロイド軟膏ステロイド軟膏は、有用性を示すエビデンスに乏しく、安易に使用するべきではないという意見がある一方で、局所の炎症兆候に対して推奨する意見もあるのが現状です。American Family physicianでは使用を推奨せず、本邦の熱傷診療ガイドラインでは「専門医が抗炎症効果を期待して使用する際は、ステロイドの副作用に十分注意しながら、受傷早期(2日間程度)に使用することが望ましい」とされているので、非専門医である私は原則使用しません。(5)外来フォロー推奨された通院間隔はなく、あくまで私のプラクティスを紹介させていただきます。I度熱傷であれば通院の必要はなく、鎮痛薬の処方で終診です。しかし、II度へ移行した場合は再診するよう指導しています。II度熱傷は状況により通院間隔が異なります。その見極めは自力で被覆交換ができるかどうかです。自力で被覆交換が可能であれば、患者の症状に合わせて3~7日程度のサイクルで通院してもらいます。自力での被覆交換が難しい場合は1~3日ごとに通院してもらいます。被覆終了のタイミングは、「ガーゼに浸出液が付かなくなったとき」と伝えています。フォロー中に患者からよく訴えられる症状は、疼痛と掻痒感です。疼痛は初期から生じますので、私は初めからNSAIDsかアセトアミノフェンで対応しています。ただし、数日経って急激に痛みが増悪する、創部に熱感が生じる場合は感染した可能性があるため受診するよう指導します。かゆみが出た場合は抗ヒスタミン薬の有効性が示されているため処方します。今回は、軽度熱傷の症例を例に挙げながら、どういう判断や対応を行ったかお話ししました。軽度熱傷はかかりつけ医が診る機会がありますが、美容や機能予後に影響を与えることも多々あるので、重症度や受傷部位によっては専門医へ相談しましょう。これから定期的に非専門医向けの軽症救急処置のコラムを連載いたします。可能な限り根拠に基づきながら、自身の経験を織り交ぜていこうと思いますのでどうぞよろしくお願いします!1)Lanham JS, et al. Am Fam Physician. 2020;101:463-470.2)日本熱傷学会編. 熱傷診療ガイドライン(改訂第3版).2021.

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ベンゾジアゼピンや気分安定薬の併用率低下に長時間作用型注射剤は寄与するか

 統合失調症は、再発と寛解を繰り返す慢性疾患である。治療には主に抗精神病薬が用いられ、その剤形には経口剤または長時間作用型注射剤(LAI)がある。さまざまな理由で気分安定薬やベンゾジアゼピンが補助療法として頻用されるが、国際的なガイドラインで推奨されることはめったにない。ルーマニア・トランシルバニア大学のAna Aliana Miron氏らは、慢性期統合失調症患者を対象に、抗精神病薬の剤形が気分安定薬やベンゾジアゼピンの併用に及ぼす影響を明らかにするため、観察的横断研究を実施した。その結果、安定期統合失調症患者に対する気分安定薬およびベンゾジアゼピンの長期併用率は、抗精神病薬の剤形とは関係なく高いままであることが示唆された。ただし、第2世代抗精神病薬のLAI(SGA-LAI)治療患者では、経口抗精神病薬治療患者と比較し、単剤療法で安定している可能性が高かった。Brain Sciences誌2023年1月20日号の報告。 主な結果は以下のとおり。・対象は、慢性期統合失調症患者315例。・LAI抗精神病薬治療で安定していた患者は77例(24.44%)、経口抗精神病薬治療で安定していた患者は238例(75.56%)であった。・気分安定薬を併用していた患者は84例(26.66%)、ベンゾジアゼピンを併用していた患者は119例(37.77%)であった。・気分安定薬またはベンゾジアゼピンの併用率について、LAIと経口剤の間に有意な差は認められなかった。・抗精神病薬の単剤療法で安定していた患者は、全体で136例(43.17%)であった。・SGA-LAIで治療されていた患者は、経口抗精神病薬で治療されていた患者と比較し、単剤療法で安定している可能性が高かった。

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ICIの継続判断にも有用、日本初のOnco-cardiologyガイドライン発刊

 本邦初となる『Onco-cardiologyガイドライン』が第87回日本循環器学会学術集会の開催に合わせて3月10日に発刊された。これまで欧州ではESC(European Society of Cardiology、欧州心臓病学会)などがガイドラインを作成・改訂しており、国内でもガイドライン発刊が切望されていたことから、日本臨床腫瘍学会と日本腫瘍循環器学会が協働しMindsに準拠したものを作成した。今回、学術集会の会長企画シンポジウム6「OncoCardiology:診断と治療Up-to-Date」において、Onco-cardiologyガイドラインのポイントについて発表された。Onco-cardiologyガイドラインは重要臨床課題10項目を選定 Onco-cardiologyガイドラインの目的は、(1)がん診療において心機能を正確に評価し、心血管疾患を適切に管理すること、(2)がん治療を中断することなく可能な限り継続することで、本ガイドラインの利用によってがん患者の全生存率とQOL改善が期待される。 Onco-cardiologyガイドラインは重要臨床課題を以下のように10項目を選定し、がん患者が薬物治療を行う過程からその後のがん治療関連心血管毒性(静脈血栓塞栓症、肺高血圧症、心不全)発現時の対応方法に関するquestionが盛り込まれている(p.9 総説1-9参照)。<重要臨床課題>1)がん薬物療法中の心機能のモニター2)心血管イベントを発症した患者に対する薬物療法の選択3)トラスツズマブのマネジメント4)血管新生阻害薬のマネジメント5)プロテアソーム阻害薬のマネジメント6)免疫チェックポイント阻害薬のマネジメント7)がん薬物療法における静脈血栓塞栓症のマネジメント8)がん薬物療法における肺高血圧症のマネジメント9)心毒性を有するがん薬物療法のマネジメント10)がん薬物療法における心血管イベントの予防 上記の2)を担当した矢野 真吾氏(東京慈恵会医科大学腫瘍・血液内科 診療部長/教授)は、「がん薬物療法中の心血管イベントを理由にがん薬物療法を中止することは再発率の増加や全生存期間の短縮につながることから、『Background question(BQ)2:がん薬物療法中に心血管イベントを発症した患者に対して、がん薬物療法を継続することは推奨されるか?』を設定した」とコメント。また、「欧米のガイドラインと比較して、Onco-cardiologyガイドラインはエビデンスのあるquestionはシステマティックレビューを行いCQとしたが、エビデンスのないquestionはBQまたはfuture research question(FRQ)にした点に注目してほしい」と述べ、「がん薬物療法が有効でかつ治療継続が可能と判断できる場合は、モニタリングと対症療法を行いながらがん治療の継続を検討する。治療継続が困難な場合は代替療法について検討することをこのBQのステートメントにした」と説明した。Onco-cardiologyガイドラインにICIと心筋炎の関係性 Onco-cardiologyガイドラインで、免疫チェックポイント阻害薬(ICI)と心筋炎の関係性について解説した庄司 正昭氏(国立がん研究センター中央病院総合内科・循環器内科)は、「ICIによる心筋炎は直接的なものと間接的なものがあるが、いずれもスクリーニングにはトロポニンや心電図などが重要」と話し、「トロポニンはICI心筋炎患者の94%で上昇を認めたが、トロポニンが上昇しても臨床的な心筋障害を認めないケースも報告されている。また、心電図異常はICI心筋炎患者の89%で認められた1)」と述べた(FRQ6-1:ICI投与中の心筋障害診断のスクリーニングは有用か?)。 さらに、心筋障害発生時のステロイドの使用(BQ6-2:ICIによる心筋障害発生時、その治療としてステロイド療法は有用か?)について、「使用すべき種類・投与経路・用量は定まっていないが有用な可能性があるため、ステロイドを選択しない手はない」とコメントし、座長ならびに演者を務めた阿部 純一氏(MDアンダーソンがんセンター 教授)からの“ICIで発症リスクの高い虚血性心疾患との鑑別”に関する問い対して、同氏は「虚血性心疾患では胸痛などの症状が見られることから、それらの患者の訴えにしっかり耳を傾けることがスクリーニング検査とともに重要」と回答した。Onco-cardiologyガイドラインにがん患者の高血圧治療 高血圧の視点からOnco-cardiologyについて解説した赤澤 宏氏(東京大学医学部付属病院 循環器内科)によると、がん患者における高血圧の管理や治療に関するエビデンスがほとんどない状況だという。実際に、高血圧治療ガイドライン2019(JSH2019)では『第7章:他疾患を合併する高血圧』にも項目立てられておらず、『第13章:二次性高血圧-薬剤誘発性高血圧 4)その他』の1つとして、がん分子標的薬、主として血管新生阻害薬(抗VEGF抗体医薬あるいは複数のキナーゼに対する阻害薬など)により高血圧が誘発される。発症率については薬剤、腫瘍の種類などにより異なるが、これらの薬剤使用時には血圧変化に注意する。通常の降圧薬を用いた治療を行うと、ESCのポジションペーパー同様の記載がなされている。このような現状を踏まえ、「JSH2025年改訂版には腫瘍循環器としてのCQを提案していきたい」と意気込んだ。なお、Onco-cardiologyガイドラインでは、『BQ4:血管新生阻害薬投与中の患者に対し、血圧管理が必要か?』が設定されており、血管新生阻害薬投与中の患者においても、非がん患者と同等の血圧コントロールをすることが望ましく、「がん患者における高血圧治療のエビデンスは乏しく、降圧治療の適応や強度は、がんの治療内容や予後、パフォーマンスステイタス、年齢や併存疾患、臓器障害、脳心血管リスクなどのさまざまな背景を考慮して、個別に対応する必要がある」と強く訴えた。

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第140回 医学部不正入試、1億6千万円の支払いで和解へ/順天堂大学

<先週の動き>1.医学部不正入試、1億6千万円の支払いで和解へ/順天堂大学2.がん誤診で膵臓全摘出後に患者死亡、患者遺族が提訴/大分3.病院のサイバーセキュリティ対策、ガイドライン最新版6.0に/厚労省4.パブリックコメント殺到、経口中絶薬の審議見送りに/厚労省5.レセプト請求は2024年9月までに原則オンライン化へ/厚労省6.少子化対策で、出産費用も保険適用を検討/政府1.医学部不正入試、1億6千万円の支払いで和解へ/順天堂大学順天堂大学医学部において、女性と浪人生に対する不当な選抜基準を設けていたことに関して、平成29年度・平成30年度の入学試験で不利益な扱いを受けた受験生への入学検定料などの返還を求めていた消費者機構日本と順天堂大学の間で、和解が3月20日に成立した。和解では、大学側が消費者機構日本に1億6,000万円あまりを支払う内容。この和解案に基づき、消費者機構日本から医学部受験で不合格となった女子学生や浪人生、1,184人に対して入学検定料など相当額の損害賠償金が5月中旬に分配がされる。今回は、消費者裁判手続特例法に基づいた裁判で、回収金額は過去最高額となった。(参考)順天堂大学 入学検定料等に係る返還訴訟の和解について(消費者機構日本)順天堂大医学部、不正入試で和解 1184人分の受験料返還(東京新聞)医学部不正入試の順天堂大、1億6675万円支払いで和解…1183人と消費者機構に(読売新聞)2.がん誤診で膵臓全摘出後に患者死亡、患者遺族が提訴/大分昨年、大分県立病院で、膵臓がんの疑いと診断され、膵臓全摘出術を受けた患者が死亡した男性の遺族が県に対して、病院側の対応が問題だとして3,300万円の損害賠償を求めていた裁判が、大分地方裁判所で始まった。3月24日に第1回口頭弁論が開かれ、病院側は争う姿勢をみせている。訴状によれば、昨年5月に画像検査から膵尾部がんを疑われた59歳の男性が、大分県立病院で翌月に膵臓全摘出術を受けたが、術後の病理組織検査でがんではなかったと判明。患者はその後、術後合併症を併発し、回復しないまま退院したが、同年11月に自宅で死亡した。原告側は緊急性のない手術につき術前検査をもとに治療方針を決めず、患者に治療方法を選ぶ機会を十分に与えなかったとして、注意義務違反だと主張している。(参考)すい臓全摘出したが「がんではなかった」 大分県立病院を遺族が提訴(朝日新聞)がん誤診で膵臓全摘、死亡 遺族が賠償提訴、病院側争う姿勢 大分(毎日新聞)がん疑いで膵臓を全摘出、病変なし判明で退院した男性が自宅で死亡…遺族が賠償提訴(読売新聞)県立病院で「がん」ではないすい臓を摘出 死亡した男性の親族 3300万円の損害賠償 大分(大分放送)3.病院のサイバーセキュリティ対策、ガイドライン最新版6.0に/厚労省相次ぐ病院に対するサイバー犯罪に対応するため、厚生労働省は3月23日に「健康・医療・介護情報利活用検討会」の「医療等情報利活用ワーキンググループ」を開催した。この中で、昨年春にバージョンアップされた「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン」をさらに6.0にアップデートするため、今後パブリックコメントを募集し、その意見も踏まえ5月中旬に最終版を正式に公表するとした。また、2023年6月以降の都道府県による立ち入り検査では、サイバーセキュリティ対策実施の有無をチェックほか、「医療機関やシステムベンダーに対して、「サイバーセキュリティ対策に関するチェックリスト」を事前に提示するなど最初に行うべき事項は明確化することを承認した。(参考)病院への相次ぐサイバー攻撃でVPNへの関心高まる バックアップへの対策も進む、厚労省調査で判明(CB news)医療情報ガイドライン6.0版、5月中旬に公表 厚労省がWGに改定スケジュール提示(同)医療機関等のサイバーセキュリティ対策、「まず何から手を付ければよいか」を確認できるチェックリストを提示-医療等情報利活用ワーキング(Gem Med)第16回健康・医療・介護情報利活用検討会医療等情報利活用ワーキンググループ(厚労省)「病院における医療情報システムのサイバーセキュリティ対策に係る調査」の結果について(同)4.パブリックコメント殺到、経口中絶薬の審議見送り/厚労省国内初の経口中絶薬について、厚生労働省が専門部会の開催前に実施したパブリックコメントに、通常の100倍に相当する約1万2,000件の意見が集まったため、3月24日に予定されていた審議は延期された。同省は、多くの意見を分析する時間が必要となったため延期とした。対象となったのはイギリスの製薬会社ラインファーマが薬事申請している「メフィーゴパック」。海外では経口中絶薬は70ヵ国以上で承認されているが、国内では未承認。妊娠9週までが対象。今後、意見を踏まえた議論を経て、承認に向けた最終的な議論がなされる見込み。(参考)経口中絶薬の審議見送り 意見1万件超、分析に時間 厚労省(時事通信)「飲む中絶薬」審議を見送り 厚労省「パブコメの分析、間に合わず」(朝日新聞)「飲む中絶薬」にパブコメ殺到の背景 通常の100倍超…審議は延期(同)飲む中絶薬の承認審議延期 意見公募の対応で、厚労省(日経新聞)ミフェプレックス(MIFEPREX)(わが国で未承認の経口妊娠中絶薬)に関する注意喚起について(厚労省)5.レセプト請求は2024年9月までに原則オンライン化へ/厚労省厚生労働省は社会保障審議会医療保険部会を3月23日に開催し、オンライン請求の割合を100%に近付けていくためのロードマップ案を提示した。同省としては、規制改革実施計画に盛り込まれた社会保険診療報酬支払基金での審査・支払業務の円滑化のため、オンライン請求を行っていない医療機関の実態調査の結果をもとに、オンライン請求100%を目指して取り組む。具体的には、現在オンライン請求を行なっている医療機関が70%と増加する一方で、光ディスクと紙レセプトが減少している。令和5年4月から原則としてオンライン資格確認が導入されるのに合わせて、オンライン請求が可能な回線が全国の医療機関に整備されるタイミングでもあり、オンライン資格確認の特例加算の要件緩和により、今年4月から12月末までにオンライン請求を開始する場合には、加算を算定することが可能となっていることを広報していくことを明らかにした。現行、光ディスクなどを使って請求している医療機関や薬局に対して、経過措置期間を設けて、2024年9月末までに原則としてオンライン請求をするように求めていく。(参考)光ディスクでのレセプト請求、原則オンライン化へ 24年9月末までに、厚労省(CB news)オンライン請求の割合を100%に近づけていくためのロードマップ[案](厚労省)第164回社会保障審議会医療保険部会(同)6.少子化対策で、出産費用も保険適用を検討/政府新型コロナウイルス感染拡大の影響で、2022年の出生数(速報値)が79万9,728人と過去最少を記録するなど今後の社会保障の持続可能性が危ぶまれている中、岸田内閣は、少子化対策で新たにまとめる子ども政策に、分娩費用について健康保険の適用方針も検討していることが明らかとなった。3月10日に菅義偉前首相が、少子化対策の一環で出産費用を保険適用として、自己負担分は国の予算で負担するなどで、実質無償化を民放番組で訴えたのがきっかけ。政府はこの4月1日以降の出産について出産育児一時金を50万円に引き上げるなど拡充を行なっているが、今後、具体化に向け議論を開始するとみられる。(参考)出産費に健康保険 将来適用方針で調整(FNN)出産費用、将来の保険適用検討 個人負担を軽減(日経新聞)出産費用を巡る「岸田路線」と「菅路線」(毎日新聞)

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生活習慣の改善(11)運動療法1【一目でわかる診療ビフォーアフター】Q59

生活習慣の改善(11)運動療法1Q59運動療法の指導の際に本邦では「運動療法指針」を掲げている。「動脈硬化性疾患予防ガイドライン」2022年版において、患者の生活スタイルに合わせるべく「運動の頻度・時間」に追加された目標は?(従来:毎日合計30分以上を目標に実施する。とある)

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HER2・リキッド検査追加「大腸がん診療における遺伝子関連検査等のガイダンス」改訂/日本臨床腫瘍学会

 2023年3月、「大腸がん診療における遺伝子関連検査等のガイダンス:第5版」が刊行され、第20回日本臨床腫瘍学会学術集会(JSMO2023)上で改訂のポイントが発表された。 最初に坂東 英明氏(国立がん研究センター東病院 消化管内科)が全体的な説明を行った。大腸がんにおける遺伝子検査はHER2検査の保険適用など目まぐるしく変化 大腸がんにおける遺伝子検査は2010年にKRAS変異検査が登場したことを契機に、2018年にはRASKET-B(RAS/BRAF変異検査)、2020年には血液を用いたRAS変異検査が保険適用となり、2022年にはHER2検査(免疫染色、FISH)、MMR検査(免疫染色)、そして2023年にはBRAF V600E検査(免疫染色)が保険適用となるなど、目まぐるしく新たな検査が登場している。 大腸がんの診療指針としては、大腸癌研究会より発刊されている「大腸癌治療ガイドライン」が2022年に改訂され広く用いられているが、こちらは日本と海外との診療の質や考え方に違いを吟味した上で日本独自の臨床データを重視して治療指針を策定することを目的としている。一方、本ガイダンスは「現在保険適用されている検査をどのように実施し治療に反映するのが適切か」「新規検査技術の現状と今後の展望について情報を提供する」ことを目的に作成されており、ガイドライン作成の手順や形式にとらわれ過ぎることなく、今後の展望や提言なども織り込んでいるという。 「体外診断用医薬品(IVD)とコンパニオン診断薬(CDx)を中心として、多くの検査を分類して整理した概念図はとくに自信作である。新たな診断薬が薬事承認・保険適用される過程をご理解いただくことで、ガイダンスで推奨することの重要性もおわかりいただけると考えている」(坂東氏)。 続いて、今回の大きな改訂ポイントとして「HER2検査」「包括的ゲノムプロファイリング検査・リキッドバイオプシー」が解説された。新たに保険承認されたHER2陽性大腸がんに対する抗HER2療法 「大腸がんにおけるHER2検査」については、澤田 憲太郎氏(釧路労災病院 腫瘍内科)が発表した。 今回追加されたのは、新たに保険承認されたHER2陽性大腸がんに対する抗HER2療法とその検査に関する内容。この承認は、HER2陽性の切除不能な進行・再発大腸がんに対し、抗HER2抗体ペルツズマブとトラスツズマブの併用療法の有効性・安全性を評価した医師主導治験・TRIUMPH試験の結果に基づくもので、併用療法は奏効率26.6%、病勢制御率 66.7%という結果を示し、血液を用いたリキッドバイオプシー検査でも高い有効性が示された。 ガイダンスにおける関連事項の記載は以下のとおり。・切除不能進行再発大腸がん患者に対し、抗HER2療法の適応判定を目的として抗HER2療法前にHER2検査を実施する→強く推奨する・切除不能進行再発大腸がんにおけるHER2検査において、IHCを先行実施し、2+と判定された症例に対してはISH検査を施行する。→強く推奨する HER2検査実施のタイミングは、「抗HER2療法の施行前の適切なタイミング」とされ、「大腸癌治療ガイドライン2022年版」においては一次治療前のRAS/BRAF遺伝子検査およびMSI検査が推奨されていることから、「複数回の薄切が主要検体の損失につながることを考慮すると、HER2検査もこれらの検査と合わせて一次治療開始前に行うことも妥当と考える」と記載された。現在2種類あるHER2の検査方法については、まずはコストの低いIHC法を試み、IHC 2+と判定された場合にFISHで検証する手順が推奨されている。新たに保険承認されたリキッドバイオプシーによるゲノム検査 2つめの改訂ポイントとして「包括的ゲノムプロファイリング検査・リキッドバイオプシー」について山口 享子氏(九州大学病院 血液・腫瘍・心血管内科)が、今回新たに保険承認されたリキッドバイオプシーによるゲノム検査を中心に、ポイントを解説した。 ガイダンスにおける関連事項の記載は以下のとおり。・切除不能進行再発大腸がん患者に対し、治療薬適応判定の補助として組織検体を用いた包括的ゲノムプロファイリング検査を実施する。→強く推奨する・切除不能進行再発大腸がん患者に対し、治療薬適応判定の補助として、血漿検体を用いた包括的ゲノムプロファイリング検査を実施する。→強く推奨する・治癒切除が行われた大腸がん患者に対し、再発リスクに応じた治療選択を目的として、微小残存腫瘍(MRD)検出用のパネル検査を実施する。→強く推奨する 「解析対象遺伝子、各遺伝子異常に対する薬事承認の有無、生殖細胞系列変異の解析可能性など、パネル検査ごとで異なる点が留意する必要がある。リキッド検査の優位点は侵襲が少ないこと、現時点でのゲノムプロファイルが得られること、結果判明までの時間が短いことが挙げられる。一方、欠点としては腫瘍量が十分でない場合は検出できない可能性がある、CHIP(クローン性造血)による偽陽性の頻度が高まる、がん種や病態による偽陰性の可能性があることだ」(山口氏)。 また、MRD(微小残存病変)検出用のパネル検査については、その有用性をみる臨床試験が現在多数進行中であること紹介したうえで、「現時点では保険承認されたMRD検出用パネル検査はないものの、臨床応用の可能性を発信するため、ガイダンスでは強い推奨とした」と述べた。「大腸がん診療における遺伝子関連検査等のガイダンス 第5版」編集:日本臨床腫瘍学会定価:2,420円発行日:2023年3月20日B5判・116頁・図数:11枚金原出版

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ドキュメンタリー「WHOLE」(後編)【自分の足を切り落とすことが健全!?(健康の定義)】

今回のキーワード身体完全性違和(身体完全同一性障害)性別違和(性同一性障害)満たされた状態治療ガイドライン社会的包摂(ソーシャルインクルージョン)診断ガイドラインの表記変更前編では、身体完全性違和(身体完全同一性障害)の特徴や原因などを掘り下げました。それを踏まえて、どうしたら良いでしょうか? 健康な足を切り落としてあげるのが良いのでしょうか? さらには、健康であるとはどういうことなのでしょうか? 今回は、引き続き、ドキュメンタリー「WHOLE」を取り上げ、健康の定義を再確認し、健康の概念を捉え直します。そして、身体完全性違和の治療ガイドラインを、世界に先駆けて(!)、この記事で発表します。治療としての四肢切断を私たちは受け入れられる?身体完全性違和は、その原因を踏まえると、その特徴は先天的、限定的、そして固定的であることがわかります。これは、ちょうど性別違和(性同一性障害)と似ています。性別違和は、もはや多くの国で受け入れられており、日本でも性別適合手術は可能です。なぜなら、それがその人にとっての幸せであると理解できるからです。WHOでも健康の定義は「身体的、精神的、そして社会的に満たされた状態(a state of well-being)」とされています。それでは、身体完全性違和はどうでしょうか? 私たちは四肢切断することをすんなり受け入れられるでしょうか? 性別違和と同じという理屈で考えれば、確かに本人が望むのであれば止めることはできないことになります。しかし、「健康な足をわざわざなくして身体障害者になるなんて考えられない」と感情的になってしまい、なかなか受け止められないのではないでしょうか? 身体完全性違和を知ってしまったことによって、私たちの健康の概念が揺さぶられます。健康とは?身体完全性違和と診断された人が、心理学者から「もしその足の違和感が消える薬があったら、飲みますか?」と質問されたところ、「若い時だったらそうしたかもしれないけど、今は飲まないと思う」「身体完全性違和は、私が誰でどんな人間かという核心になっているから」と答えています。そして、彼らは、四肢切断をやり遂げてはじめて「まっとうになった(I’ve become whole)」と言っています。まさにこのドキュメンタリーのタイトルの「WHOLE」(健全)です。実際に、彼らの中で四肢切断をして後悔をした人は1人もいないと報告されています2)。つまり、身体完全性違和は、性別違和と同じアイデンティティの問題が根っこにあるわけです。性別違和の人が性別の違和感が消える薬を飲まないと言っているのと同じです。もっと言えば、身体完全性違和の人は、違和感のある足をなくしたいだけです。それが結果的に身体障害になってしまっているのです。最初から身体障害になりたいとは思っていないです。もっと言えば、彼らにとって足がないことが「健康」であるため、足があることは「不健康」であり、違和感がある足を持っている状態は逆に「身体障害」であると言えます。極端な話、もしも身体完全性違和の人が世の中の多数派ならば、足を切断しない人が「身体障害」になってしまうという理屈も成り立ちます。 そして、「健康である」とは、多数決で決まっており、相対的な概念であることに気付かされ、「障害」の概念の根底が覆されます。どうすればいいの?健康の概念を捉え直すと、身体完全性違和の治療はやはり四肢切断をすることであるように思えてきます。しかし、現時点で身体完全性違和の治療は、世界的にも確立されていません。ただ、この診断名がICD-11に新設された流れから、今後は治療ガイドラインが求められます。そこで、この記事では、治療ガイドラインを世界に先駆けて(!)、作ってみましょう。まず、身体完全性違和の評価についてです。原因の視点に立てば神経疾患、鑑別の視点に立てば精神疾患、治療の視点に立てば外科疾患です。よって、神経内科医、精神科医、外科医の連携(リエゾン)が必要になります。検査としては、脳画像検査や皮膚コンダクタンス反応(SCR)が必要です。次に、実際の治療の計画についてです。これは、性別違和に準じます。ちなみに、性別違和の治療の流れは、実生活体験、薬物(ホルモン療法)、外科手術の3つのステップを踏みます。(1)実生活体験1つ目のステップは、実生活体験です。ドキュメンタリーに登場した人のように、片足を膝で折り曲げて固定し、松葉杖を使う生活を少なくとも半年送るのです。(2)薬物による疑似体験2つ目のステップは、薬物による疑似体験です。これは、脊髄硬膜外麻酔によって、下肢の運動麻痺と感覚麻痺を人工的につくり、擬似的な四肢切断の状態にします。この状態で違和感がなくなるかを厳正に判定するのです。(3)外科手術3つ目のステップは、外科手術です。このように、最初から手術をするのではなく、ステップを踏む必要があります。なぜなら、当然ながら、手術をするまでは元の状態に戻れますが、手術をした後は元に戻れないからです。「WHOLE」な社会とは?治療ガイドラインの確立によって、ICD-11の診断ガイドラインは表記の変更が必要になってきます。たとえば、「その身体障害によって、重大な社会機能の障害を認める、または健康の危機にさらす」という項目は、適切な外科手術がなされ、社会的なサポートを得ることが可能になれば不要です。また、「特定の身体障害を求める」という抽象的な表記は、健常者の視点です。身体完全性違和の人たちの視点にも立つならば、「機能的に問題のない体の一部分の切除を求める」と中立的で具体的な表記にすることが適切です。そして、その代わりに、性別違和の「生物学的性と性自認(ジェンダー)の不一致」という項目と同じように、「生物学的な身体と身体認識の不一致」という項目を新しく設けることが適切です。身体完全性違和という状態は、個人として「WHOLE」(健全)になるだけでなく、社会としても「WHOLE」(健全)になることを私たちに問いかけています。これは、社会的包摂(ソーシャルインクルージョン)の考え方につながります。それは、この多様化した現代で、何が健全か、つまり何が望ましいか、そして何が幸せかはますます人によって違うという現実をよく理解して受け入れていくことではないでしょうか?1)精神医学(3)「ICD-11のチェックポイント」P285「身体苦痛または体験症群」:山田和男、医学書院、20192)私はすでに死んでいる ゆがんだを生み出す脳P100、P104、P142:アニル・アナンサスワーミー、紀伊國屋書店、2018「足を切り落としたい…」自ら障害者になることを望む人々の実態:美馬達哉、現代ビジネス、2018

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免疫チェックポイント阻害薬などを横断的に概説、『がん免疫療法ガイドライン』改訂/日本臨床腫瘍学会

 がんに対する免疫を介在した治療方法(がん免疫療法)は、新しい薬剤の開発および臨床試験の蓄積により近年急速に発展している。CTLA-4やPD-1/PD-L1といった免疫チェックポイントを標的とした免疫チェックポイント阻害薬(ICI)ががん種横断的に承認されているほか、エフェクターT細胞療法や、複数のICIを組み合わせて使う併用療法、ICIと従来の抗がん剤、分子標的薬、血管新生阻害薬、放射線治療等とを組み合わせた治療法も続々と登場している。 これら免疫チェックポイント阻害薬などのがん免疫療法の基本と指針をまとめた『がん免疫療法ガイドライン』(日本臨床腫瘍学会編)が2023年3月に刊行された。2016年12月の初版、2019年3月の第2版に続く第3版となる。2023年3月16~18日に行われた第20回日本臨床腫瘍学会学術集会(JSMO2023)上では、二宮 貴一朗氏(岡山大学病院 ゲノム医療総合推進センター)が「第3版改訂のポイント/がん種横断的評価とステートメント」と題した講演で改訂ポイントを解説した。 「ガイドライン委員会で2021年4月から改訂の議論をはじめ、30名を超える専門医のご協力により2年かけて刊行に至った。本版の特徴としては、新たな治療レジメンを踏まえ、有害事象及びその対処法の改訂を行ったこと、がん種別システマティックレビューを行い、がん種・臓器横断的な臨床疑問を設定し、ステートメントを提示したことだ。第2版にあったがん種別のエビデンスに対する推奨の提示は止め、『エビデンスの強さ』のみを提示することにした。これはがん種ごとに推奨される治療法やレジメンが多岐にわたり、かつ頻繁に改訂されており、臓器別ガイドラインと異なる推奨になることは臨床上望ましくないと判断したためだ」(二宮氏)。 個別項目における主な改訂点は以下のとおり。I がん免疫療法の分類と作用機序・免疫チェックポイント阻害薬→新規薬剤である抗LAG-3抗体薬の解説をガイドラインに追加。・エフェクターT細胞療法→造血器腫瘍分野で新たに承認されたCAR-T細胞療法に関する解説を改訂。・複合免疫療法→項目を追加。免疫療法と従来の抗がん薬との組み合わせによる効果などを記載。II 免疫チェックポイント阻害薬の副作用管理 医師以外の医療者も読者対象に想定し、新たなエビデンスに基づいた解説に更新。最近注目されており、より重症化する傾向のあるサイトカイン放出症候群の項目をガイドラインに追加。III がん免疫療法のがん種別エビデンス 「がんワクチン」など否定的な見解が多い療法についてもシステマティックレビューによるエビデンスの確実性に基づいて解説。各療法の歴史などもあわせて解説。IV がん免疫療法における背景疑問(Background Question:BQ) BQごとに、がん種によって異なる治療ラインやレジメンをガイドラインで解説。具体的なBQは下記のとおり。BQ1:進行期悪性腫瘍に対して、免疫チェックポイント阻害薬単剤療法は有効か?BQ2:進行期悪性腫瘍に対して、免疫チェックポイント阻害薬併用療法は有効か?BQ3:進行期悪性腫瘍に対して、免疫チェックポイント阻害薬と他剤を併用した複合免疫療法は有効か?BQ4:悪性腫瘍の根治術後の治療において、免疫チェックポイント阻害薬は有効か?BQ5:免疫チェックポイント阻害薬の効果予測バイオマーカーとして、PD-L1検査は有用か? 二宮氏は「他のガイドラインとは異なり、がん種横断的なアプローチを深く知ることのできる1冊となっている。治療や薬剤の増加に伴って多様化してきた有害事象にも紙幅を多く割いた。この分野は現在進行中の臨床試験も数多く、読者と共に情報をアップデートしていきたい」とした。『がん免疫療法ガイドライン』第3版(金原出版)編集:日本臨床腫瘍学会定価:3,300円発行日:2023年3月20日B5判・264頁・図数:29枚・カラー図数:5枚

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息切れの原因、TKIとの関連は?【見落とさない!がんの心毒性】第19回

※本症例は、患者さんのプライバシーに配慮し一部改変を加えております。あくまで臨床医学教育の普及を目的とした情報提供であり、すべての症例が類似の症状経過を示すわけではありません。《今回の症例》年齢・性別60代・女性主訴労作時息切れ現病歴5年前に発熱を契機に慢性骨髄性白血病(chronic myeloid leukemia: CML)と診断された。BCR::ABLチロシンキナーゼ阻害薬(tyrosine kinase inhibitor: TKI)としてイマチニブの投与が行われたが、血球減少のため不耐と判断され、3年前にニロチニブに変更された。その後BCR::ABLコピー数が上昇傾向にあったため、2年前よりダサチニブに変更された。1ヵ月前より労作時息切れを自覚し、精査が行われた。現症血圧 124/72mmHg、脈拍数 96bpm 整、SpO2 98%(酸素投与なし)、結膜貧血なし、頚静脈怒張あり、心音I音正常範囲、II音亢進、III/IV音なし、収縮期心雑音(胸骨左縁第3肋間で最強)、呼吸音清、下腿浮腫軽度採血白血球数 3520/μL、ヘモグロビン量 10.2g/dL、血小板数 13.8万/μL、尿素窒素 12mg/dL、クレアチニン 0.60mg/dL、総ビリルビン 0.4mg/dL、AST 31U/L、ALT 30U/L、LDH 222U/L、ALP 250IU/L、CRP 0.08mg/dL、BNP 30.5pg/mL、Major BCR::ABL IS 0.0053%胸部X線心胸郭比 52%、両側肺門部陰影拡大、肺うっ血/浸潤影なし、胸水なし、心電図:洞調律、II誘導P波先鋭増高、II・III・aVF誘導で軽度ST低下、QTc=409ms(図1)画像を拡大する息切れ出現後の心電図(上段)では、1年前(下段)と比較しII誘導でP波の先鋭増高を認め、右房負荷が疑われる。心エコー心室壁運動異常なし、左室拡張末期径/収縮末期径 45/27mm、心室中隔/後壁厚 8/8mm、左室駆出率 71%、心嚢液貯留なし、軽度僧帽弁閉鎖不全症、中等度三尖弁閉鎖不全症、三尖弁逆流最大血流速 (圧較差)3.2m/s(40mmHg)、下大静脈径 22mm、呼吸性変動低下【問題】本患者の診療に関する下記の選択肢について、間違っているものはどれでしょうか? 2つ選んでください。a.第2世代BCR::ABL TKIの投薬前後には定期的な心電図検査が必要である。b.ダサチニブの投薬前後には心エコー評価が必要である。c.診断のため右心カテーテル検査を行う。d.心エコー所見を基に肺血管拡張薬を開始する。e.CMLの病勢コントロールが良好であることからダサチニブを同量で継続する。CMLの治療成績はBCR::ABL TKIの登場により大きく向上し、多くの症例で分子遺伝学的奏効が得られるようになりました。第2世代以降のBCR::ABL TKIでは第1世代のイマチニブと比較し高い治療効果が期待できますが、長期毒性はイマチニブより重篤なものが多く、副作用管理が重要になります。第2世代のダサチニブはとくに胸水貯留や肺高血圧症の発症頻度が高く、多数のキナーゼをoff-targetとして阻害することが有害事象の頻度が高い原因と推測されています1,5,6)。ダサチニブは、Tリンパ球、単球 / マクロファージによる血管周囲の炎症や、活性酸素によるアポトーシス、内皮障害などにより肺血管抵抗上昇を来すと考えられています4)。心エコーにより肺高血圧症が疑われる頻度はイマチニブでは0.5~2.7%であるのに対しダサチニブでは5~13.2%と大きな差があり7,8)、イマチニブには肺血管抵抗低下効果も観察されています9)。両薬剤による肺高血圧症の発症頻度の違いの理由として、ダサチニブではイマチニブと異なり、非受容体チロシンキナーゼファミリーの一つであるSrcの阻害作用が強いことが可能性として挙げられますが、ダサチニブはSrc阻害とは無関係に内皮細胞機能障害を引き起こすことも報告されており4)、同じBCR::ABL TKIであるダサチニブとイマチニブが肺血管に対して異なる反応を示すことに対する明確な機序は解明されていません。(図2)肺血管におけるダサチニブとイマチニブの対照的効果 10)画像を拡大するダサチニブによる肺高血圧症のリスク因子として、年齢、心肺合併症、TKI投薬期間、3次治療以降のダサチニブの使用などが挙げられます8,11)。とくにこれらに該当する患者に対しては遅滞なく心エコーを行い、肺高血圧症の早期発見に努める必要があります。(謝辞)本文の作成に際し、九州大学病院 血液・腫瘍・心血管内科 森 康雄先生に監修いただきました。1)Lyon AR, et al. Eur Heart J. 2022;43:4229-4361.2)Humbert M, et al. Eur Heart J. 2022;43:3618-3731.3)日本循環器学会. 肺高血圧症治療ガイドライン(2017年改訂版)4)Guignabert C, et al. J Clin Invest 2016;126:3207-3218.5)Jacobs JA, et al. Pulm Circ. 2022;12:e12075.6)Weatherald J, et al. Eur Respir J. 2020;56:2000279.7)Cortes JE, et al. J Clin Oncol. 2016;34:2333-2340.8)Minami M, et al. Br J Haematol. 2017;177:578-587.9)Hoeper MM, et al. Circulation. 2013;127:1128-1138.10)Ryan JJ. JACC Basic Transl Sci. 2016;1:684-686. 11)Jin W, et al. Front Cardiovasc Med. 2022;9:960531.講師紹介

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二次性僧帽弁逆流へのTEER、5年間の評価/NEJM

 ガイドラインに基づく最大用量の薬物療法後も心不全と中等度~重度の二次性僧帽弁逆流症が認められる患者において、僧帽弁の経カテーテル的edge-to-edge修復術(TEER)は薬物療法単独と比較し、フォローアップ5年間での心不全による入院リスクを半減し、全死因死亡リスクも約30%低減した。米国・マウントサイナイ・アイカーン医科大学のGregg W. Stone氏らが、614例を対象に行った無作為化比較試験の結果を報告した。NEJM誌オンライン版2023年3月5日号掲載の報告。米国とカナダ78ヵ所でTEER vs.薬物療法単独の無作為化比較試験 研究グループは、2012年12月27日~2017年6月23日に米国とカナダにある78ヵ所の医療機関を通じて、ガイドラインに基づく最大用量の薬物療法を実施後、心不全と中等度~重度の二次性僧帽弁逆流症が認められる患者614例を登録した。 被験者を無作為に2群に分け、一方にはTEERを(デバイス群302例)、もう一方には薬物療法のみ(対照群312例)を行い追跡調査した。 主要有効性エンドポイントは、フォローアップ2年間の、心不全によるすべての入院だった。また、すべての心不全入院の年間発生率、全死因死亡年間発生率、死亡または心不全入院のリスク、および安全性、その他のアウトカムについて5年間評価した。心不全入院年間発生率のハザード比0.53 5年間の評価に基づく心不全入院年間発生率は、デバイス群33.1%、対照群57.2%だった(ハザード比[HR]:0.53、95%信頼区間[CI]:0.41~0.68)。5年間の全死因死亡率は、デバイス群57.3%、対照群67.2%だった(0.72、0.58~0.89)。 死亡または心不全入院の発生率は、デバイス群73.6%、対照群91.5%だった(HR:0.53、95%CI:0.44~0.64)。 デバイス特有の安全性イベント発生率は、5年間で1.4%(4/293例)報告され、全イベントが術後30日以内の発生だった。

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教育実習で発生したデータ改ざん事件【Dr.中川の「論文・見聞・いい気分」】第58回

第58回 教育実習で発生したデータ改ざん事件「教育実習中止、いますぐに君は教室を出ていきなさい!」自分が高校生時代に、化学の授業中に大声で響きわたった言葉です。今でも鮮烈に記憶に残る瞬間です。教職志望の学生が、在学中に教育の現場において学習指導法の実地練習のために教育活動を実際に経験することが教育実習です。教育職員免許状の授与を受けるためには、この教育実習が必須です。この教育実習生を「教生」と呼びます。国立大学の教員養成系では、国立大学附属学校で実習を行うことが通常です。自分は金沢大学教育学部附属高等学校の出身なので、教生による授業を多く受けてきました。教生による授業を教室の最後列で聴いていた、本来の高校教員が授業停止を宣言し、その教生は教室から退場させられました。実際には、叩き出されたという表現が適切でした。教生は茫然とした表情でした。彼は何をしでかしたのでしょうか。この化学の講義では、教生が化学実験を教室内で実際に行い、そのデータをもとに考えるという内容でした。中和滴定であったように記憶します。中和滴定とは、濃度が不明な酸(もしくは塩基)でも、中和反応を利用することで、その濃度を求めることができる方法です。濃度がわかっている水酸化ナトリウムとの中和点を測定することで、濃度がわからない硫酸の正しい濃度を求めるというのが中和滴定の具体例です。教生は生徒の前で行った実験で得られた生データを黒板に記していました。この生データをもとに計算をしてみるのですが、想定した通りの結果にはなりませんでした。「このデータを変えてみましょう」こう言って黒板に書かれた生データの数字を、想定される答えが算出されるであろう数値に書き換えたのです。その直後に彼の退場が宣告されました。退場した後に、化学教師は私たち生徒に、以下のように語りました。「実験で得られた生データを自分勝手に改ざんすることは絶対に許されない。データを書き換える者に化学を教える資格はない。附属高校の生徒は教生の犠牲になってはいけない、俺は君たちを守る」、正確な文言までは記憶しておりませんが、このような趣旨の内容であったことは間違いありません。この教生が、教育実習の単位を認定されたのか、不合格となったのか知る由もありません。しかし、この授業で実験に臨む研究者としてのあるべき姿を、私たち生徒が学んだことは事実です。もちろん、この教生に悪気はなかったと思います。張り切って実験の準備をして教育実習に臨み、生徒に中和滴定を教えようと一生懸命であったでしょう。しかし、実験で得られた生データを消して書き換えることは絶対に許されないのです。自分が学んだ高校の、化学の中原 吉晴先生の思い出です。厳しい先生でしたが多くを教えていただきました。中原先生は一流の研究者を創り出すことを自分の仕事と考え、生徒に接していたように思います。すでに鬼籍に入られた中原先生のご冥福をお祈りいたします。文部科学省のガイドラインで不正行為等の定義では、捏造(Fabrication)・改ざん(Falsification)・盗用(Plagiarism)の3つを特定不正行為として位置付けています。捏造は、存在しないデータや研究結果などの作成です。改ざんは、データや研究結果などの加工です。盗用は、他の研究者のアイデアや論文などの流用です。こういった不正行為を行うことは、自身のキャリアや学位を失うだけでは済みません。周囲の関係者に多大な負担をかけることはもちろん、大学や学術に対する社会の信頼を損ないます。自分が所属する滋賀医科大学においても、研究不正防止のために、教育で指導が繰り返し行われています。定期的に研究不正防止の講義受講が義務付けられています。自分にとっては、高校生の時に体験した教生退場から学んだことが大きなインパクトを持っています。研究不正防止という矮小化した問題を超えて、この事案から実験というものの意義を学ばせていただきました。近ごろ、高校生の頃の体験がフラッシュバックしてくることがよくあります。これが正常なのか加齢現象なのか不明です。過去の経験を思い出すというよりも、最近の経験のような新鮮さを伴って脳内に再現されるのです。不思議な現象です。

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高齢者へのDOAC、本当に減量・中止すべき患者とは/日本循環器学会

 高齢者の心房細動治療において、つい抗凝固薬を減量してしまいがちだが、それは本当に正しいのだろうか。今回、小田倉 弘典氏(土橋内科医院)が『心房細動抗凝固薬(アブレーションを望まない高齢のPAFなど)』と題し、第87回日本循環器学会学術集会のセッション「クリニックで選択されるべき循環器治療薬~Beyond guideline~」にて、高齢者心房細動の薬物療法における注意点を発表した。 小田倉氏はまず、以下の高齢者の症例を提示し、実際に直接経口抗凝固薬(DOAC)を処方するかどうか、またその際に減量するか否かについて問題提起した。高齢者へのDOAC減量と出血リスクの管理<症例>●年齢・性別:82歳・男性、体重:64kg、クレアチニンクリアランス(CCr):52 mL/min(血清クレアチニン[Cr]:1.0mg/dL)●主訴:ある日、脈をとったら不整で、心電図で心房細動と診断された。●服用歴:降圧薬、認知症治療薬、前立腺肥大症治療薬など6種類●患者背景:要介護2。トイレ歩行は可能だが受診時は車いす。転倒歴あり。長男夫婦と3人暮らしだが、日中は1人のことが多い。●CHADS2スコア:3点、HAS-BLEDスコア:1点 上記の高齢者の症例について、「DOAC各薬剤の添付文書にある減量基準、たとえば、アピキサバンは(1)80歳以上、(2)60kg以下、(3)Cr 1.5mg/dL以上のうち2つ以上が、エドキサバンは(1)60kg以下、(2)CCr 15~50、(3)P糖蛋白阻害薬服用のうち1つ以上が該当する場合にそれに当たるが、いずれにも該当していないので、この患者の場合、該当項目を見る限りでは処方可能であり、減量する必要もない」とコメント。 しかし、実際には高齢というだけでDOACの減量基準を満たさずとも減量する例が散見される。クリニックの患者が主体となった日本の高齢者心房細動に対する抗凝固薬療法に関する2つの試験からもその状況が見て取れる。・ANAFIEレジストリ1):3万2,275例(平均年齢81.5歳[85歳以上が26.1%]、経口抗凝固薬の服用:92.4%、ワルファリンTTR :75.5%、発作性心房細動:42%、認知症:7.8%[通院・在宅患者])ではunder-doseが16.8%、未承認低用量が3.7%。 ・GENERAL研究2):5,717例(平均年齢73.9歳、経口抗凝固薬の服用:100%、フレイル[要介護]:12.1%、認知症治療薬の併用:5.9%)ではunder-doseが27.3%。 では、実臨床で高齢者(75歳以上)に対しDOACをunder-doseする理由とは何か。35.8%でunder-doseを認め、脳卒中/全身性塞栓症が有意に多かったXAPASS study3)の結果によると「処方医は通常用量による出血リスクを最も懸念し、続いて高齢、腎機能低下を意識していた。一方、低体重や併用薬剤を選んだ者は少なかった」とコメント。 ところが、75歳以上の日本人で非弁膜症性心房細動患者を対象としたJ-ELD AF試験4)によれば、アピキサバン5mg/日(低用量)群と同薬10mg/日(通常用量)群に割り付け、脳卒中または全身性塞栓症、入院を要する出血について評価したところ、いずれの発生率も有意差が得られなかった。ただし、サブ解析で出血イベントの発生とアピキサバンの血中濃度の関係性を調べたところ、低用量群では血中濃度が高い(トラフ中央値:86ng/dL)群で出血性イベントが有意に多かった。その原因は明らかではないが、「減量基準以外のunknown factorsの存在が示唆される」と同氏は指摘した。DOAC減量基準を満たした患者の出血リスクに注力を これらの報告を踏まえ、同氏は「DOACの減量基準に該当しなければ用量を守り、減量基準を満たす患者は減量したうえで、いかに出血の関連リスクを減らせるかを考えることが重要」と述べ、「その関連リスクはDOAC減量基準やHAS-BLEDスコアに記載がないものにも注意を払う必要があり、改善可能なソフトプロブレム(上記unknown factorsにおおむね相当)と改善困難なハードプロブレムに分類できる。前者にはポリファーマシー(抗凝固薬と併用注意の薬剤を確認)、フレイル(転倒頻度や低体重を考慮)、認知症(服薬アドヒアランスを確認)、高血圧(外来での血圧130/80mmHg目標)が該当し、後者には腎機能低下や出血の既往があるだろう。後者では低用量投与を前提とし、2020年改訂版不整脈薬物治療ガイドライン5)に従い、腎機能チェックの採血をCCr<60mL/minの患者では少なくともXヵ月(X=CCr/10)に1回実施すれば、リスク回避につながる」と対策を講じた。DOACの中止を考えるタイミング また、とくに高齢者ではDOAC中止を考える場面は多いが、具体的には以下が挙げられた。・出血したとき →出血の制御ができないような大腸憩室炎、蜂窩織炎などの既往歴がある場合 →生活面に支障を来すような重い後遺症が残る可能性のある場合・出血以外の副作用が出たとき・腎機能が低下してきたとき・アドヒアランス不良のとき・フレイル(要介護度)が進行した(寝たきりになった)とき 最後に同氏は「併存疾患の有無や身体機能レベルが個々で大きく異なるにもかかわらず、そもそも高齢者を1つのカテゴリーとして捉えることは不可能であり、多様な視点からのカテゴライズが必要となる。言うならば、“科学”と“生活”の両面からのアプローチが必要なのであり、それにはゴールはないため、考え続けることが重要である」と締めくくった。

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新薬追加のWeb版「GIST診療ガイドライン」、診療経験少ない非専門医にも

 日本癌治療学会は稀少腫瘍研究会の協力のもと、「GIST診療ガイドライン2022年4月改訂 第4版」を発刊し、2023年3月4日、本学会ホームページにWeb版を公開した。GIST(Gastrointestinal stromal tumor、消化管間質腫瘍)は、全消化管に発生する間葉系腫瘍で、疫学的には10万人に1~2人と消化器系の稀少がんであるため、患者の診療経験が少ない臨床医も多い。そのため、本ガイドライン(GL)に目を通し、いざという時のために備えていただきたい。そこで、今回、本GL改訂ワーキンググループ委員長の廣田 誠一氏(兵庫医科大学病院 主任教授/診療部長)に、本書の目的やおさえておく内容について話を聞いた。 なお、昨年発売された書籍では紹介できなかったHSP90阻害薬ピミテスピブ(商品名:ジェセリ錠40mg)について、Web版ではCQ(Clinical Question)の追加や関連箇所のアップデートがなされているので本編の後半に紹介する。診断・治療の迷いを払ってくれるアルゴリズム・参考図表 本GLはGIST診療にかかわる非専門医、医療者、患者・家族のために作成された。そのため、診療方針をわかりやすく示し、適切な医療の実践を通して患者の予後を改善することを目的に、MindsのGL作成マニュアル2014と2017に準拠し作成された。たとえば、今回改訂されたアルゴリズムを見ると、参考にすべきCQ/BQ(Background Question)が色付きタブで示されているので、推奨の強さやエビデンスの強さをすぐに確認することができる。また、診断や治療を8つのアルゴリズムで示しているので、診療の全体像をつかみやすいのも特徴である。<アルゴリズム> -本ガイドラインの概要より1)消化管粘膜下腫瘍の診断・治療の概略2)紡錘形細胞型GISTの鑑別病理診断3)類上皮細胞型GISTの鑑別病理診断4)切除可能な限局性消化管粘膜下腫瘍の治療方針5)限局性GISTの外科治療6)限局性GISTの術後治療7)GISTの薬物治療(一次治療)8)イマチニブ耐性GISTの治療 廣田氏は、今回大きく改訂された項目として、アルゴリズム2、3、5を挙げた。病理の『アルゴリズム2:紡錘形細胞型GISTの鑑別病理診断』『アルゴリズム3:類上皮細胞型GISTの鑑別病理診断』はもともと1つのアルゴリズムであったが、KIT陰性GISTについて現場での勘違いが多いことを踏まえて2つに分け、後者には診断時に重要となるDOG1抗体の判定を追加した。同氏は「GISTには腫瘍の原因となる遺伝子異常が解明されているものが多く、どんな遺伝子型なのか(p.15参考図表1)を見極めて診断・治療できるような工夫が本書にはなされている」と説明した。さらに、「“本当の多発なのか播腫性転移なのか”も重要になるため、多発GISTの鑑別を示す参考図表2(p.15)もぜひチェックいただきたい」とコメントした。GLは診療領域ごとに区分も、実臨床では連携強化を求む GISTを診断するためには、画像診断によるスクリーニングと病理診断による確定が非常に重要で、GIST治療では内科医・外科医を中心に病理医や放射線科医も連携を取って集約的な治療が必要になるが、多くの病院ではこれらの連携がネックにもなっている。「内科医が粘膜下腫瘍を疑い、放射線科医・病理医がそれをしっかり診断する。その後、外科的切除が必要かどうか、内科医と外科医の連携が患者の将来を左右するため、切除前にまずはしっかり立ち止まることが重要」と強調した。大型GISTなどの場合でとくに確認すべきは『アルゴリズム5:限局性GISTの外科治療』だと同氏は話す。これは黒川 幸典氏(大阪大学大学院医学系研究科外科系臨床医学専攻 准教授)の発表論文1)によるエビデンスなどが、外科CQ5に対する推奨文である「イマチニブによる術前補助療法を行うことを弱く推奨する(推奨の弱さ:弱い、エビデンスの強さ:弱)」に対し大きな影響を与えた、とも述べた。GIST治療薬ピミテスピブ、Web版に追補 2023年2月に改訂、3月に公開されたWeb版は書籍版から改良が加えられ、英語版も公開の準備がされている。Web版では、「内科CQ13:レゴラフェニブ不耐・不応の転移・再発GISTに対して、ピミテスピブは有用か―レゴラフェニブ不耐・不応の転移・再発GISTに対して、ピミテスピブの使用を強く推奨する(推奨の強さ:強い、エビデンスの強さ:中」が追加されたほか、『アルゴリズム8:イマチニブ耐性GISTの治療』や内科治療領域の総論内の転移・再発GISTの項目にピミテスピブの四次治療としての位置付けを追加。「内科CQ8:レゴラフェニブ耐性・不応の転移・再発GISTに対して、イマチニブまたはスニチニブの再投与は有用か」の解説に、イマチニブやスニチニブの再投与は推奨されるも再投与の前にピミテスピブの投与が推奨される旨、などが変更されている。 最後に同氏は「GISTはエビデンスの少ない疾患であることから、システマティックレビューのみならず、専門家間でコンセンサスが得られている事象が加味されていること、本書が成人GIST症例に重きを置いているため、病態が異なる若年・小児例では内容を十分に確認する必要があることに注意して欲しい」とコメントした。

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