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標準薬ながら血糖降下薬を超えるメトホルミンの可能性【令和時代の糖尿病診療】第5回

第5回 標準薬ながら血糖降下薬を超えるメトホルミンの可能性今回のテーマであるビグアナイド(BG)薬は、「ウィキペディア(Wikipedia)」に民間薬から糖尿病治療薬となるまでの歴史が記されているように、なんと60年以上も前から使われている薬剤である。一時、乳酸アシドーシスへの懸念から使用量が減ったものの、今や2型糖尿病治療において全世界が認めるスタンダード薬であることは周知の事実である。そこで、メトホルミンの治療における重要性と作用のポイント、その多面性から血糖降下薬を超える“Beyond Glucose”の可能性もご紹介しようかと思う。なお、ビグアナイドにはフェンフォルミン、メトホルミン、ブホルミンとあるが、ここから先は主に使用されているメトホルミンについて述べる。作用機序から考えるその多面性まず、メトホルミンについて端的にまとめると、糖尿病治療ガイド2020-20211)の中ではインスリン分泌非促進系に分類され、主な作用は肝臓での糖新生抑制である。低血糖のリスクは低く、体重への影響はなしと記載されている。そして主要なエビデンスとしては、肥満の2型糖尿病患者に対する大血管症抑制効果が示されている。主な副作用は胃腸障害、乳酸アシドーシス、ビタミンB12低下などが知られる。作用機序は、肝臓の糖新生抑制だけを見ても、古典的な糖新生遺伝子抑制に加え、アデニル酸シクラーゼ抑制、グリセロリン酸シャトル抑制、中枢神経性肝糖産生制御、腸内細菌叢の変化、アミノ酸異化遺伝子抑制などの多面的な血糖降下機序がわかっている2)。ほかにも、メトホルミンはAMPキナーゼの活性化を介した多面的作用を併せ持ち、用量依存的な効果が期待される(下図)。図1:用量を増やすとAMPキナーゼの活性化が促進され、作用が増強する1990年代になって、世界的にビグアナイド薬が見直され、メトホルミンの大規模臨床試験が欧米で実施された。その結果、これまで汎用されてきたSU薬と比較しても体重増加が認められず、インスリン抵抗性を改善するなどのメリットが明らかになった。これにより、わが国においても(遅ればせながら)2010年にメトホルミンの最高用量が750mgから2,250mgまで拡大されたという経緯がある。メトホルミンの作用ポイントと今後の可能性それでは、メトホルミンにおける(1)多面的な血糖降下作用(2)脂質代謝への影響(3)心血管イベントの抑制作用の3点について、用量依存的効果も踏まえてみてみよう。(1)多面的な血糖降下作用メトホルミンもほかの血糖降下薬と同様に、投与開始時のHbA1cが高いほど大きい改善効果が期待でき、肥満・非肥満によって血糖降下作用に違いはみられない。用量による作用としては、750mg/日で効果不十分な場合、1,500mg/日に増量することでHbA1cと空腹時血糖値の有意な低下が認められ、それでも不十分な場合に2,250mg/日まで増量することでHbA1cのさらなる低下が認められている(下図)。また、体重への影響はなしと先述したが、1,500mg/日以上使用することにより、約0.9kgの減量効果があるとされている。図2:1,500mg/日での効果不十分例の2,250mg/日への増量効果画像を拡大するさらには高用量(1,500mg以上)の場合、小腸上部で吸収しきれなかったメトホルミンが回腸下部へ移行・停滞し、便への糖排泄量が増加するといわれており、小腸下部での作用も注目されている。これは、メトホルミンの胆汁酸トランスポーター(ASBT)阻害作用により再吸収されなかった胆汁酸が、下部消化管のL細胞の受容体に結合し、GLP-1分泌を促進させるというものである(下図)3)。図3:メトホルミンによるGLP-1分泌促進機構(仮説)画像を拡大するまた、in vitroではあるが、膵β細胞に作用することでGLP-1・GIP受容体の遺伝子発現亢進をもたらす可能性が示唆されている4)。よって、体重増加を来しにくく、インクレチン作用への相加効果が期待できるメトホルミンとインクレチン製剤(DPP-4阻害薬、GLP-1受容体作動薬)の併用は相性が良いといわれている。(2)脂質代謝への影響あまり知られていない(気に留められていない?)脂質代謝への影響だが、メトホルミンは肝臓、骨格筋、脂肪組織においてインスリン抵抗性を改善し、遊離脂肪酸を低下させる。また、肝臓においてAMPキナーゼの活性化を介して脂肪酸酸化を亢進し、脂肪酸合成を低下させることによりVLDLを低下させるという報告がある5)。下に示すとおり、国内の臨床試験でSU薬にメトホルミンを追加投与した結果、総コレステロール(TC)、LDLコレステロール(LDL-C)、トリグリセリド(TG)が低下したが、有意差は1,500mg/日投与群のみで750mg/日ではみられない。糖尿病専門医以外の多くの先生方は500~1,000mg/日までの使用が多いであろうことから、この恩恵を受けられていない可能性も考えられる。図4:TC、LDL-C、TGは、1,500mg/日投与群で有意な低下がみられる画像を拡大する(3)心血管イベントの抑制作用メトホルミンの心血管イベントを減らすエビデンスは、肥満2型糖尿病患者に対する一次予防を検討した大規模臨床試験UKPDS 346)と、動脈硬化リスクを有する2型糖尿病患者に対する二次予防を検討したREARCHレジストリー研究7)で示されている。これは、体重増加を来さずにインスリン抵抗性を改善し、さらに血管内皮機能やリポ蛋白代謝、酸化ストレスの改善を介して、糖尿病起因の催血栓作用を抑制するためと考えられている8)。ここまで主たる3点について述べたが、ほかにもAMPKの活性化によるがんリスク低減や、がん細胞を除去するT細胞の活性化、そして糖尿病予備軍から糖尿病への移行を減らしたり、サルコペニアに対して保護的に働く可能性などを示す報告もある。さらに、最近ではメトホルミンが「便の中にブドウ糖を排泄させる」作用を持つことも報告9)されており、腸がメトホルミンの血糖降下作用の多くを担っている可能性も出てきている。しかし、どんな薬物治療にも限界がある。使用に当たっては、日本糖尿病学会からの「メトホルミンの適正使用に関するRecommendation」に従った処方をお願いしたい。今や医学生でも知っている乳酸アシドーシスのリスクだが、過去の事例を見ると、禁忌や慎重投与が守られなかった例がほとんどだ。なお、投与量や投与期間に一定の傾向は認められず、低用量の症例や投与開始直後、あるいは数年後に発現した症例も報告されている。乳酸アシドーシスの症例に多く認められた特徴としては、1.腎機能障害患者(透析患者を含む)、2.脱水、シックデイ、過度のアルコール摂取など、患者への注意・指導が必要な状態、3.心血管・肺機能障害、手術前後、肝機能障害などの患者、4.高齢者とあるが、まずは経口摂取が困難で脱水が懸念される場合や寝たきりなど、全身状態が悪い患者には投与しないことを大前提とし、以上1~4の事項に留意する。とくに腎機能障害患者については、2019年6月の添付文書改訂でeGFRごとの最高用量の目安が示され、禁忌はeGFRが30未満の場合となっているため注意していただきたい。図5:腎機能(eGFR)によるメトホルミン最高投与量の目安画像を拡大するBasal drug of Glucose control&Beyond Glucose、それがBG薬まとめとして、最近の世界動向をみてみよう。米国糖尿病学会(ADA)は昨年12月、「糖尿病の標準治療2022(Standards of Medical Care in Diabetes-2022)」を発表した。同文書は米国における糖尿病の診療ガイドラインと位置付けられており、新しいエビデンスを踏まえて毎年改訂されている。この2022年版では、ついにメトホルミンが2型糖尿病に対する(唯一の)第一選択薬の座から降り、アテローム動脈硬化性疾患(ASCVD)の合併といった患者要因に応じて第一選択薬を判断することになった。これまでは2型糖尿病治療薬の中で、禁忌でなく忍容性がある限りメトホルミンが第一選択薬として強く推奨されてきたが、今回の改訂で「第一選択となる治療は、基本的にはメトホルミンと包括的な生活習慣改善が含まれるが、患者の合併症や患者中心の医療に関わる要因、治療上の必要性によって判断する」という推奨に変更された。メトホルミンが第一選択薬にならないのは、ASCVDの既往または高リスク状態、心不全、慢性腎臓病(CKD)を合併している場合だ。具体的な薬物選択のアルゴリズムは、「HbA1cの現在値や目標値、メトホルミン投与の有無にかかわらず、ASCVDに対する有効性が確認されたGLP-1受容体作動薬またはSGLT2阻害薬を選択する」とされ、考え方の骨子は2021年版から変わっていない。もちろん、日本糖尿病学会の推奨は現時点で以前と変わらないことも付け加えておく。メトホルミンが、これからもまだまだ使用され続ける息の長い良薬であろうことは間違いない。ぜひ、Recommendationに忠実に従った上で、用量依存性のメリットも感じていただきたい。1)日本糖尿病学会編・著. 糖尿病治療ガイド2020-2021. 文光堂;2020.2)松岡 敦子,廣田 勇士,小川 渉. PHARMA MEDICA. 2017;35:Page:37-41.3)草鹿 育代,長坂 昌一郎. Diabetes Frontier. 2012;23:47-52.4)Cho YM, et al. Diabetologia. 2011;54:219-222.5)河盛隆造編. 見直されたビグアナイド〈メトホルミン〉改訂版. フジメディカル出版;2009.6)UKPDS Group. Lancet. 1998;352:854-865.7)Roussel R, et al. Arch Intern Med. 2010;170:1892-1899.8)Kipichnikov D, et al. Ann Intern Med. 2002;137:25-33.9)Yasuko Morita, et.al. Diabetes Care. 2020;43:1796-1802.

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ペイシェントハラスメントが5年で20%も増!?どんな対策してる?

 身勝手な患者による極悪非道な事件が昨年12月から2件も立て続けに発生したことを受け、CareNet.comでは各施設での患者からの迷惑行為(ペイシェントハラスメント1))対応策についてアンケート調査を実施した。本サイトでは2017年にも同様のアンケートを実施しており、両者の結果を照らし合わせると、なんとこの5年間でペイシェントハラスメントを受けた医師が20%も増加していることがわかった。また、2017年時点でペイシェントハラスメント対応マニュアルやガイドラインを設けている施設は30%超だったが、現在はどうなのだろうか。ペイシェントハラスメントを7割が経験、患者本人やその家族から Q1『ペイシェントハラスメントを受けたことがありますか?』との問いには、勤務医、開業医ともに7割もの人が「はい」と回答。年代別に見ると、40代の中堅医師が最も多く(81%)、次いで30代が72%も経験していた。一方、50代以降になると63~68%とペイシェントハラスメント経験はやや低下傾向だった。 続いて、Q2『誰にハラスメントされましたか?』については、患者本人からが3割、本人以外(家族、知人・友人、会社同僚など)からも3割が受けていた。患者本人からのハラスメントを受けたのは20代(59%)が突出して多かった。 さらにアンケートによると、2件の事件によって4割超の医師が影響を受け、その多くがペイシェントハラスメントの対策やマニュアルの再確認を行ったと回答している。 主なペイシェントハラスメント対応策は以下のとおり。<<ペイシェントハラスメント対応策>>・診察室には患者の目の前に警察の電話番号を掲示してしておく(60代、皮膚科)・ボイスレコーダー(60代、小児科)・紹介状に”大変神経質な方です”と書く(40代、皮膚科)・患者さんとは違う逃げ道[避難通路]を作る(60代、精神科/心療内科)・法人関連にて、各医療機関の診察券を共通化し、非常識な患者さんを当法人は何処でも受診拒否出来るようにしている(50代、内科)・タクティカルペン[護身具としての機能を持つペン]を常備(60代、その他)ペイシェントハラスメントから医療者を守るマニュアル ペイシェントハラスメントをする患者を、モンスターペイシェント(MP)と呼ぶこともある。これについて、医療従事者のためのモンスターペイシェント対策ハンドブック(執筆:滝川 稚也医師、編者:JA徳島厚生連 阿南共栄病院 教育委員会)2)では『病院の一般的なルールに沿って診療行為ができない患者』と定義付けている。なお、本書ではMPを3グループに分類している。1)職業的なMP 交渉を有利に進めるための手段のひとつとして、暴力を一つのリソースとして確信犯的に日常的に使うヒト ※暴力的行為による利益獲得が目的2)メンタルヘルス的な問題を抱えた患者 疾患のため社会的な適応能力が低下し、表現方法のひとつとして、暴力的な行動をとってしまうヒト ※障害・疾患や薬物・飲酒に起因3)ごく普通の患者 ごく普通の患者が、些細な意思疎通の手違いのため、本来はそういうヒトではないのに暴力という手段を使ってしまうヒト さらにこの書籍によると、このような患者対応を「個人の力量に任せるのではなく、組織全体で解決することが重要」ということにも触れていた。ところが、実際のアンケート結果を見ると、Q5『ハラスメントを受けた際、どのように対応しましたか?』(勤務医のみ、Q1で「はい」と回答した350人)では、53%は「上長らに相談」しているが、35%は「独断で対応した」と回答していた。年齢別にみると、50代が最も多く、責任者や部長という立場が影響しているのかもしれない。また、上記回答者の半数以上が外来診察室でペイシェントハラスメントを受けているという結果からも、上級医であったとしても、問題を抱え込まずに周囲のスタッフと連携して対応する必要があるかもしれない。 一方で、開業医の“モンスターペイシェント”対策状況を見ると、患者からのハラスメントを受けている医師が7割もいたにもかかわらず、ペイシェントハラスメント対策のためのマニュアルを用意していたのは、なんと1割強に留まった。また、開業医の4割はペイシェントハラスメントに遭遇した際にすぐに相談できる相手がいないことも明らかになった。 なお、今回の事件を受け、日本在宅医療連合学会では、今年7月に開催される大会において大会長の谷水 正人氏(四国がんセンター院長)の提案により、シンポジウム「在宅医療・ケア関係者の安全確保、訪問員を守る対策」が開催される予定だ。 現時点では、医療者をペイシェントハラスメントから守るマニュアルは各施設で制作するしか手立てがなく、開業医にとってはややお手上げ状態だが、今後、各学会で医療者を守るための方策が進められるかもしれない。患者に寄り添いひたむきな姿勢が評判だった2名の医師への哀悼の意を表するとともに、同様の事件を繰り返さないためにも本アンケートが少しでも現場の医師・医療者のお役に立てることを願って止まない。アンケート結果の詳細は以下のページに掲載中『患者の迷惑行為、勤務医/開業医の対応法は?』<アンケート概要>●タイトル:“モンスターペイシェント”からの迷惑行為、どんな対策してますか?●内容:医療者が巻き込まれる事件が相次いでいることを受け、病院・クリニックが取り組んでいる患者の迷惑行為対策、診療に対する心境の変化などを調査●実施期間:2022年2月1日(火)~2日(水)●調査方法:インターネット●対象:会員医師 1,000人(開業医:500人、勤務医:500人)

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添付文書改訂:アクテムラが新型コロナ中等症II以上に適応追加/ジャディアンスに慢性心不全追加/エフィエントに脳血管障害の再発抑制追加/アジルバに小児適応追加/レルミナに子宮内膜症の疼痛改善追加【下平博士のDIノート】第92回

アクテムラ点滴静注用:新型コロナ中等症II以上に適応追加<対象薬剤>トシリズマブ(遺伝子組換え)(商品名:アクテムラ点滴静注用80mg/200mg/400mg、製造販売元:中外製薬)<承認年月>2022年1月<改訂項目>[追加]効能・効果SARS-CoV-2による肺炎酸素投与、人工呼吸器管理または体外式膜型人工肺(ECMO)導入を要する患者を対象に入院下で投与を行うこと。[追加]用法・用量通常、成人には、副腎皮質ステロイド薬との併用において、トシリズマブ(遺伝子組換え)として1回8mg/kgを点滴静注します。症状が改善しない場合には、初回投与終了から8時間以上の間隔をあけて、同量を1回追加投与できます。<Shimo's eyes>本剤は、国産初の抗体医薬品として、2005年にキャッスルマン病、2008年に関節リウマチの適応を取得して、現在は世界110ヵ国以上で承認されているヒト化抗ヒトIL-6レセプターモノクローナル抗体です。今回、新型コロナによる肺炎の効能が追加されました。これまで中等症II以上の患者に適応を持つ、レムデシビル(商品名:ベクルリー点滴静注用)、バリシチニブ(同:オルミエント錠)、デキサメタゾン(同:デカドロン)の3製剤に本剤が加わり、新たな治療選択肢となります。新型コロナ患者の一部では、IL-6を含む複数のサイトカインの発現亢進を特徴とする炎症状態により呼吸不全を起こすことが知られており、同剤投与による炎症抑制が期待されています。参考中外製薬 薬剤師向けサイト アクテムラ点滴静注用80mg・200mg・400mgジャディアンス:慢性心不全(HFrEF)の適応追加<対象薬剤>エンパグリフロジン(商品名:ジャディアンス錠10mg、製造販売元:日本ベーリンガーインゲルハイム)<承認年月>2021年11月<改訂項目>[追加]効能・効果慢性心不全ただし、慢性心不全の標準的な治療を受けている患者に限る。[追加]用法・用量通常、成人にはエンパグリフロジンとして10mgを1日1回朝食前または朝食後に経口投与します。<Shimo's eyes>SGLT2阻害薬としては、すでにダパグリフロジン(商品名:フォシーガ)が慢性心不全の適応を2020年11月に追加しており、本剤は2剤目の薬剤となります。2022年1月現在、添付文書には「左室駆出率の保たれた慢性心不全(HFpEF)における本剤の有効性および安全性は確立していないため、左室駆出率の低下した慢性心不全患者(HFrEF)に投与すること」と記載されていますが、HFpEF患者を対象とした第III相試験においても、2021年8月に良好な結果1)が報告されています。なお、本剤25mg錠には慢性心不全の適応はありません。参考エンパグリフロジンの慢性心不全への承認取得/日本ベーリンガーインゲルハイム・日本イーライリリー1)エンパグリフロジン、糖尿病の有無を問わずHFpEFに有効/NEJMエフィエント:脳血管障害後の再発抑制が追加<対象薬剤>プラスグレル塩酸塩(商品名:エフィエント錠2.5mg/3.75mg、製造販売元:アストラゼネカ)<承認年月>2021年12月<改訂項目>[追加]効能・効果虚血性脳血管障害(大血管アテローム硬化または小血管の閉塞に伴う)後の再発抑制(脳梗塞発症リスクが高い場合に限る)[追加]用法・用量通常、成人には、プラスグレルとして3.75mgを1日1回経口投与する。<Shimo's eyes>『脳卒中治療ガイドライン2021』では、非心原性脳梗塞の再発抑制に対しては抗血小板薬(クロピドグレル、アスピリンまたはシロスタゾール)の投与が勧められていますが、本剤の適応は、「大血管アテローム硬化または小血管の閉塞を伴う虚血性脳血管障害後の再発抑制」に限定されました。なお、適応追加の対象は2.5mg錠および3.75mg錠のみです。今回の改訂で、空腹時は食後投与と比較してCmaxが増加するため、空腹時の投与は避けることが望ましい旨の記載が追記されました。用法に「食後投与」は明記されていないので注意しましょう。既存薬のクロピドグレルは、主にCYP2C19によって代謝されるため、遺伝子多型による影響を受けやすいことが懸念されていますが、本剤は、ヒトカルボキシルエステラーゼ、CYP3AおよびCYP2B6などで代謝されて活性体となるプロドラッグであり、遺伝子多型の影響を受けにくいとされています。参考第一三共 医療関係者向けサイト エフィエント錠アジルバ:小児適応追加、新剤型として顆粒剤が登場<対象薬剤>アジルサルタン(商品名:アジルバ顆粒1%、同錠10mg/20mg/40mg、製造販売元:武田薬品工業)<承認年月>2021年9月<改訂項目>[追加]用法・用量<小児>通常、6歳以上の小児には、アジルサルタンとして体重50kg未満の場合は2.5mg、体重50kg以上の場合は5mgを1日1回経口投与から開始します。なお、年齢、体重、症状により適宜増減が可能ですが、1日最大投与量は体重50kg未満の場合は20mg、体重50kg以上の場合は40mgです。<Shimo's eyes>アンジオテンシンII受容体拮抗薬(ARB)であるアジルサルタンに、小児に対する用法および用量が追加されました。また、新剤型として顆粒剤も発売されました。顆粒剤は、成人にも小児にも適応がありますが、小児の開始用量である2.5~5mgを投与する際に便利です。参考武田薬品工業 医療関係者向けサイト アジルバレルミナ:子宮内膜症に基づく疼痛改善の適応が追加<対象薬剤>レルゴリクス(商品名:レルミナ錠40mg、製造販売元:あすか製薬)<承認年月>2021年12月<改訂項目>[追加]効能・効果子宮内膜症に基づく疼痛の改善<Shimo's eyes>本剤は、経口GnRHアンタゴニストであり、2019年1月に子宮筋腫に基づく諸症状(過多月経、下腹痛、腰痛、貧血)の改善で承認を取得しています。子宮筋腫に続き、子宮内膜症患者を対象とした第III相試験の結果が報告されたことから、今回新たな適応が承認されました。本剤は下垂体のGnRH受容体を阻害することにより、黄体形成ホルモン(LH)、卵胞刺激ホルモン(FSH)の分泌を阻害します。その結果、エストロゲンおよびプロゲステロンが抑制され、子宮内膜症の主な症状である骨盤痛を改善します。参考あすか製薬 医療関係者向け情報サイト レルミナ錠40mg

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排泄リハビリテーション 理論と臨床 改訂第2版

排泄に関連するすべての領域を網羅した成書 待望の改訂第2版!排泄リハビリテーションとは、排泄障害をもつ人が排泄の自立やQOLの向上を目指すとともに、その人の社会的統合の達成を目的とするものである。これを進めるうえで必要となる解剖や生理、障害を引き起こす疾患などの知識はもとより、治療・ケア、社会環境や医療経済について、多くの最新情報をもとに解説をアップデートした。 改訂第2版にあたって1)新しいガイドラインに基づいた知見を詳述2)排泄にかかわる解剖と生理を分かりやすい図を用いて解説3)排泄障害をもつ人に対し、どのような検査・アセスメントを行い、どのように治療・ケアを行っていけばよいかを詳述4)排泄障害に用いる製品の最新の情報を網羅5)「脳腸相関」「ディスバイオーシス」「仙骨神経刺激療法」「がん終末期の排泄ケア」「多職種連携・病診連携」などを新項目として追加6)改訂しても価格は据え置きの定価9,680円!!画像をクリックすると、内容の一部をご覧いただけます。※ご使用のブラウザによりPDFが読み込めない場合がございます。PDFはAdobe Readerでの閲覧をお願いいたします。画像をクリックすると、内容の一部をご覧いただけます。※ご使用のブラウザによりPDFが読み込めない場合がございます。PDFはAdobe Readerでの閲覧をお願いいたします。    排泄リハビリテーション 理論と臨床 改訂第2版定価9,680円(税込)判型B5判/並製頁数576頁発行2022年2月編集後藤 百万(独立行政法人地域医療機能推進機構中京病院)本間 之夫(日本赤十字社医療センター)前田 耕太郎(藤田医科大学病院 国際医療センター)味村 俊樹(自治医科大学)

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世界初、ニボルマブが原発不明がんの適応追加

 2022年1月19日、小野薬品工業とブリストル マイヤーズ スクイブは原発不明がんの治療薬として、適応追加承認を取得した免疫チェックポイント阻害薬ニボルマブ(商品名:オプジーボ)に関するプレスセミナーを開催した。 今回のセミナーでは、原発不明がんへの適応拡大の意義や臨床試験結果などについて、中川 和彦氏(近畿大学 内科学 腫瘍内科部門)が説明した。原発不明がん~診断・治療における課題~ 原発不明がんは十分な検索にもかかわらず、原発巣が不明で、組織学的に転移巣と判明している悪性腫瘍のことを指す。全がん種のうち1~5%が原発不明がんとされている。しかし、原発不明がんに承認されている薬剤はこれまで存在せず、治療を行うためには何らかの病名を付ける必要があることから、正確な患者数は不明だ。 原発不明がんの治療における課題は治療方法が確立されていないことである。 15~20%存在する“予後良好群”(原発巣の推定が可能な患者群)では、ガイドラインで推奨される治療を実施するが、残りの80~85%の患者は“予後不良群”とされ、特定の治療方針が定められておらず、確立された標準治療が存在していなかった。NivoCUP試験の結果 今回は、原発不明がん患者の“予後不良群”を対象に、近畿大学病院の主導の下、ニボルマブを評価した医師主導治験「NivoCUP試験」の結果に基づき、適応拡大承認を取得した。 同試験では、56例の原発不明がん患者(化学療法既治療:45例、化学療法未治療:11例)に、ニボルマブを最大52サイクル(約2年)投与した。主要評価項目は化学療法既治療例における奏効率(独立した中央判定によるCRまたはPRの割合)であり、副次評価項目は全体集団での奏効率などだった。 主要評価項目である化学療法既治療例における奏効率は22.2%(95%CI:11.2~37.1)、さらに、奏効期間の中央値は12.4ヵ月だった。 化学療法未治療例を含めた全体集団における奏効率は21.4%(95%信頼区間:11.6~34.4)だった。 安全面については、全Gradeの副作用は62.5%、Grade3または4の副作用は19.6%で発現した。重篤な副作用は発現率16.1%、肺臓炎や腹水などであった。死亡に至った副作用は認められなかった。安全性プロファイルに関して、他の疾患におけるニボルマブのプロファイルと大きな差はなかった。ニボルマブ承認の意義 ニボルマブの適応追加承認により、原発不明がんに対して、世界に先駆けて日本で初めて抗悪性腫瘍剤が承認されることとなった。原発不明がんが保険適用の対象疾患として認められる、つまり、今後原発不明がんは研究の対象となり、生物学的な特性の解明や薬剤開発が進んでいくことが期待される。このことに大きな意義があると中川氏は語る。 「研究の対象にならないことほど患者さんにとって恐怖はない。自分の疾患がどの研究者からも研究されないということは、可能性がないということを意味する。しかし、今回ニボルマブが承認されたということが、日本の研究者に原発不明がんが伝わる“好機”になる」と、中川氏はニボルマブ承認の意義について述べ、講演を終えた。

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オミクロン株、ブースター接種後の感染例を分析/Lancet

 世界的な流行を見せている新型コロナウイルスの変異株・オミクロン株は、mRNAワクチンの3回目接種(ブースター接種)後の感染例も報告されている。感染例の患者背景や臨床像の詳細が、Lancet誌オンライン版2022年1月18日号のCORRESPONDENCEで報告されている。 2021年11月下旬~12月上旬に、SARS-CoV-2ワクチン(少なくとも2回のmRNAワクチンを含む)を3回接種したドイツ人のグループが、南アフリカのケープタウンでオミクロン株によるブレークスルー感染を経験した。このグループは、5人の白人女性と2人の白人男性で構成され、平均年齢は27.7歳(範囲:25~39)、平均肥満度は22.2kg/m2(範囲:17.9~29.4)、関連病歴はなかった。 このうち4人はケープタウンの異なる病院で臨床研修を受けており、その他は休暇中だった。また、これらの人々は2つの無関係なグループに所属し、ケープタウンでCOVID-19に関するルールに則った通常の社会生活を送っていた。2021年11月上旬にケープタウンに到着した際、各人のPCR検査は陰性で、同種(n=5)または異種(n=2)ワクチンによる、ブースターまたは3回目接種の完了記録を提出していた。 6人がBNT162b2(ファイザー製)の2回(完全)接種を受け、うち5人が2021年10月または11月初旬にファイザー製の3回目(ブースター)接種を受けていた。残り1人は2021年10月初旬にモデルナ製の全量接種を受けていたが、これは当時の欧州医薬品庁の半量接種の推奨に則ったものではなかった。 7人目はChAdOx1-S(アストラゼネカ製)の初回接種後、1次免疫完了のためにBNT162b2を接種し、同ワクチンのブースター接種を受けた。モデルナ製のブースター接種例を除き、全接種が勧告に従ったものだった。一部の1次およびブースター接種時期が早かったのは医療関係者であったためで、SARS-CoV-2感染歴を報告した人はいなかった。 西ケープ州でSARS-CoV-2感染が著しく増加していた時期に、7人は2021年11月30日~12月2日に呼吸器症状を発症し、認定の診断機関がSARS-CoV-2感染症の陽性判定を行った。 症状が出てから2~4日後に綿棒と血清を採取した。すべての患者は国内で隔離され、21日間の観察期間中、毎日症状日記を用いて病気の経過を記録した。 病状は、米国国立衛生研究所のCOVID-19治療ガイドラインに従って、軽症(n=4)または中等症(n=3:息切れあり)に分類された。観察期間終了時(21日目)には2名が無症状となった。血中酸素飽和度(SpO2)は例外なく正常範囲(94%以上)を維持し、入院を必要とした患者はいなかった。 7人全員がオミクロン株の感染であった。綿棒溶出液のウイルス量は、4.07~8.22(平均値:6.38)log10コピー/mlであった。抗スパイク抗体のレベルは1万5,000~4万AU/ml以上の範囲であり、血清における平均値は約2万2,000AU/mlであった。 2回目のワクチン接種から21~37週間後にブースターワクチンが接種され、その22~59日後にブレークスルー感染が発生した。これは、2回目のワクチン接種から4週間後に報告されているレベルと同様であり、ブースターワクチンの接種後に期待されるレベルでもあった。 今回の調査結果は比較的若く、その他疾患のない人(n=7)の少数症例に限られているが、オミクロン株が生体内でmRNAワクチンによって誘導される免疫を回避できる、という証拠をさらに追加するものとなった。 ブースター接種は、オミクロン株による症候性感染を十分に防ぐことはできなかったが、病気の経過が軽度~中等度であったことから、重症化を防ぐことができると考えられる。しかし、長期的な後遺症の可能性は除外できない。 これらの結果は、オミクロン株の症候性感染をより確実に予防するためには、最新のワクチンが必要であること、医薬品以外の対策も継続すべきであることを示している。

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家族性高コレステロール血症、世界的に診断遅れ/Lancet

 ホモ接合性家族性高コレステロール血症(HoFH)患者について、38ヵ国を対象に調べたところ、世界的に診断年齢が高く、とくに非高所得国では、十分な治療がなされず初回の主要心血管有害イベントが20代で発生している現状が示された。オランダ・アムステルダム大学のTycho R. Tromp氏ら、HoFH患者の治療を行う医師らによるHoFH International Clinical Collaborators(HoFH国際臨床共同研究グループ)が明らかにし、Lancet誌オンライン版2022年1月28日号で発表した。38ヵ国、88ヵ所の医療機関で751例の患者を検証 研究グループは、38ヵ国、88ヵ所の医療機関を通じて、臨床または遺伝的にHoFHの診断を受けた751例の患者についてレジストリを作成し、後ろ向きコホート試験を行った。 HoFH患者の臨床・遺伝的特徴と、治療の現状、アウトカムへの影響を検証した。初回主要CV有害イベント発生、高所得国で中央値37.0歳、非高所得国では同24.5歳 被験者751例のうち565例(75%)で、両アレル病原性変異体が報告された。診断年齢中央値は12.0歳(IQR:5.5~27.0)だった。被験者751例のうち、女性は389例(52%)。人種が報告された527例のうち、白人は338例(64%)、アジア人は121例(23%)、黒人または混合人種は68例(13%)だった。 HoFH診断時点の65例(9%)で、すでにアテローム性心血管疾患(ASCVD)または大動脈弁狭窄の主な症状が認められた。 全体で、治療前のLDLコレステロール中央値は14.7mmol/L(IQR:11.6~18.4)だった。詳細な治療内容が得られた患者534例のうち、491例(92%)がスタチンを、342例(64%)がエゼチミブを、243例(39%)がリポ蛋白アフェレーシスをそれぞれ服用していた。 治療中のLDLコレステロール中央値は、非高所得国が9.3mmol/L(IQR:6.7~12.7)に対し、高所得国では3.93mmol/L(2.6~5.8)と低かった。3種以上の脂質低下療法(LLT)の実施率は、非高所得国より高所得国で高く(24% vs.66%)、その結果、ガイドライン推奨LDLコレステロール目標値の達成率も高所得国で高かった(3% vs.21%)。 初回主要心血管有害イベントの発生年齢は、非高所得国では中央値24.5歳(IQR:17.0~34.5)と、高所得国の中央値37.0歳(同:29.0~49.0)より10歳以上若い年齢で発生していた(補正後ハザード比:1.64、95%信頼区間:1.13~2.38)。 これらの結果を踏まえて著者は、「複数のLLTの実施率が高いほどLDLコレステロール値は低く、より良いアウトカムと関連する。治療レジメン、LDLコレステロール値のコントロール、および心血管イベントのない生存については、世界的に重大な格差が存在しており、こうした不平等を減らし、HoFHのすべての患者のアウトカムを改善するためには、世界的な健康政策の批判的な再評価が必要だ」としている。

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抗CGRP抗体中止後の頭痛や健康関連QOLに対する影響

 抗CGRP(受容体)モノクローナル抗体による片頭痛治療は、患者の健康関連QOLに良い影響を及ぼす。ドイツの治療ガイドラインでは、抗CGRP抗体による治療に奏効後、6~12ヵ月間で治療を中止することが推奨されている。ドイツ・シャリテー-ベルリン医科大学のMaria Terhart氏らは、抗CGRP抗体治療中止後3ヵ月間における頭痛特有の一般的な健康関連QOLを評価した。The Journal of Headache and Pain誌2021年12月31日号の報告。 8~12ヵ月間の抗CGRP抗体治療後、予定された治療中止をこれから行う片頭痛患者を対象としたプロスペクティブ縦断的コホート研究を実施した。健康関連QOLの評価は、最後の抗CGRP抗体治療実施時(V1)、8週間後(V2)、16週間後(V3)に行った。頭痛特有の健康関連QOLの評価には、頭痛インパクトテスト(Headache Impact Test-6:HIT-6)を用いた。一般的な健康関連QOLの評価には、EuroQol-5-Dimension-5-Level(ED-5D-5L)およびPCS-12、MCS-12で構成されたSF-12を用いて評価した。3つの評価時点でのアンケート合計スコアの比較には、ノンパラメトリック手法を用いた。 主な結果は以下のとおり。・対象患者は61例(抗CGRP受容体抗体[エレヌマブ]:29例、抗CGRP抗体[ガルカネズマブまたはフレマネズマブ]:32例)。・HIT-6合計スコアは、V1で59.69±6.90であったが、V3で3.69±6.21増加しており(p<0.001)、患者の生活に対する頭痛の影響が大きいことが示唆された。・平均ED-5D-5L合計スコアは、V1の0.85±0.17からV3の-0.07±0.18へ減少していた(p=0.013)。・SF-12の精神的(MCS-12)および物理的(PCS-12)コンポーネントスコアは、治療中止中に有意な悪化が認められた。V1からV3への変化は、MCS-12スコアで-2.73±9.04減少(p=0.003)、PCS-12スコアで-4.04±7.90減少(p=0.013)であった。・すべての質問票のスコアに変化が認められたが、MCS-12ではV2ですでに有意な差が認められた。 著者らは「抗CGRP抗体治療中止により、片頭痛患者の頭痛への影響と健康関連QOLの有意な低下が認められた。これらの悪化は、各質問票における最低限の臨床的な影響を上回っており、臨床的な影響が表れていると見なすことができる。抗CGRP抗体の治療中止を行った際には、健康関連QOLをモニタリングすることで、予防治療の再開を決断しやすくなる可能性がある」としている。

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日本におけるベンゾジアゼピン受容体アゴニストの使用状況の変化

 近年、ベンゾジアゼピン受容体アゴニスト(BZRA)の使用については、ガイドラインで慎重に検討すべきであることが示唆されているものの、日本におけるBZRAの使用状況の調査は十分に行われていなかった。九州大学の奥井 佑氏らは、大学病院の電子カルテデータを用いて、BZRAの使用傾向を調査した。Healthcare(Basel, Switzerland)誌2021年12月13日号の報告。 2009年4月~2021年3月のデータを用いて分析した。アウトカムは、次の3つとし、ベンゾジアゼピン系(BZD)および非ベンゾジアゼピン系(Z薬)について同様の分析を行った。[1]睡眠薬または抗不安薬の使用患者におけるBZRAの使用患者の割合[2]使用されたBZRAタイプの平均数[3]BZRAの1日量 主な結果は以下のとおり。・睡眠薬または抗不安薬の使用患者におけるBZRAの使用患者の割合は、75歳未満および75歳以上の患者において、とくに2015年以降より減少し始めていることが明らかとなった。・減少幅は、75歳以上の患者でより顕著であった。・75歳以上の患者では、研究期間中にBZDの使用が減少し、2016年よりZ薬の使用も減少し始めていた。 著者らは「ガイドラインで示されたことは、BZRA使用の減少に影響を及ぼした可能性があることが示唆された」としている。

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糖尿病薬変更の意外すぎる理由【処方まる見えゼミナール(大橋ゼミ)】

処方まる見えゼミナール(大橋ゼミ)糖尿病薬変更の意外すぎる理由講師:大橋 博樹氏 / 多摩ファミリークリニック院長動画解説ある糖尿病患者さんに、ガイドライン通りの治療を行っていた大橋先生。しかし、全然血糖コントロールができません。一体何が問題だったのでしょうか。そして、次の選択は? 患者さんの生活スタイルや背景に合わせた薬剤選択、目標血糖値を紹介します。

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日本人の統合失調症、うつ病入院患者に対する睡眠薬の使用状況

 京都大学の降籏 隆二氏らは、統合失調症およびうつ病の入院患者に対する睡眠薬の使用率と睡眠薬と抗精神病薬使用との関連について調査を行った。Sleep Medicine誌オンライン版2021年11月22日号の報告。 全国の精神科病院200施設以上が参加する「精神科医療の普及と教育に対するガイドラインの効果に関する研究」(EGUIDEプロジェクト)の一環として、全国横断的研究を実施した。統合失調症入院患者2,146例とうつ病入院患者1,031例のデータを分析した。すべての向精神薬の投与量を記録し、退院時のデータを分析した。睡眠薬と抗精神病薬使用との関連を評価するため、多変量ロジスティック回帰分析を用いた。 主な結果は以下のとおり。・睡眠薬を単剤または2剤以上で使用していた患者の割合は、それぞれ以下のとおりであった。 ●統合失調症入院患者:睡眠薬単剤療法55.7%、併用療法17.6% ●うつ病入院患者:睡眠薬単剤療法63.6%、併用療法22.6%・多変量ロジスティック回帰分析では、統合失調症入院患者における睡眠薬使用と正の関連が認められた因子は、2種類以上の抗精神病薬の使用および抗コリン作用薬、抗不安薬、気分安定薬、抗てんかん薬の使用であった。・うつ病入院患者では、2種類以上の抗うつ薬、抗精神病薬の使用および抗不安薬、気分安定薬、抗てんかん薬の使用と睡眠薬使用との間に正の関連が認められた。 著者らは「睡眠薬の使用は、精神疾患を有する入院患者において、頻繁に認められることが明らかであった。統合失調症およびうつ病の入院患者のいずれにおいても、抗精神病薬の併用療法は、睡眠薬使用に影響を及ぼすことが示唆された」としている。

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日本人双極性障害外来患者に対する処方パターン~I型とII型の違い

 双極I型障害(BD-I)および双極II型障害(BD-II)患者に対する向精神薬の使用に関して、入手可能なエビデンスは限られている。獨協医科大学の篠崎 將貴氏らは、BD-IおよびBD-IIの外来患者に対する薬物療法、とくに抗うつ薬の使用に関して、その特徴を調査した。Asian Journal of Psychiatry誌オンライン版2021年11月23日号の報告。 2017年に実施された日本の精神科クリニックにおける双極性障害の多施設治療調査(MUSUBI研究)に参加したBD-IまたはBD-IIの外来患者2,774例を対象に、現在の精神状態、治療薬およびその他の要因に関するデータを収集した。 主な結果は以下のとおり。・気分安定薬、抗精神病薬、抗うつ薬の使用率に関して、有意な差が認められた。・BD-I患者では、気分安定薬(BD-I:86.0%、BD-II:80.8%、p<0.001)と抗精神病薬(BD-I:61.5%、BD-II:47.8%、p<0.001)の使用率が高く、BD-II患者では抗うつ薬(BD-I:32.1%、BD-II:46.4%、p<0.001)の使用率が高かった。・BD-I、BD-II患者ともに最も多く使用されていた抗精神病薬はアリピプラゾール、気分安定薬はリチウムであった。・最も多く使用されていた抗うつ薬は、BD-I患者ではエスシタロプラム、BD-II患者ではデュロキセチンであった。・BD患者に最も使用されていた抗うつ薬のクラスは、選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)であった。・併用療法に関しては、抗うつ薬を含む併用療法がBD-II患者で用いられることが多かった。 著者らは「BD-IとBD-II患者では向精神薬の使用状況に違いが認められた。日本では、BD外来患者に対し気分安定薬や抗精神病薬が使用されており、一般的なガイドラインに準じていた。抗うつ薬の使用効果や躁病エピソードのリスクに関するエビデンスは十分ではなく、さらなるエビデンスの収集が必要とされる」としている。

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第86回 第6波で救急搬送困難が過去最多、コロナ病床活用の新Q&A

<先週の動き>1.第6波で救急搬送困難が過去最多、コロナ病床活用の新Q&A2.医療従事者の濃厚接触者、無症状等を条件に毎日検査で就業可能に3.公立病院改革、コロナの影響で持続可能な経営強化プランに変化4.新Web研修システム、都道府県医師会で1年間無料/日医5.製薬企業、学会での広告費についても開示へ/製薬協6.広島県の医師が特殊詐欺で1.3億円の被害/広島県警1.第6波で救急搬送困難が過去最多、コロナ病床活用の新Q&A総務省消防庁は18日、救急車の受け入れを3回以上断られ、救急車が現場に30分以上とどまった「搬送困難事案」が、1週間で4,151件と、昨年8月の第5波ピーク時の3,361件を超え過去最高となったことを発表した。オミクロン株の急拡大が続く東京において、複数の病院に搬送を断られた心筋梗塞患者の死亡が病院で確認されたケースも報道された。これらを受け、厚労省は20日、事務連絡「即応病床等への救急患者の受入れに係る病床確保料の取扱いについて」を発出し、Q&A形式で補助金が支給されるコロナ病床(即応病床または休止病床)において、COVID-19患者以外の一般救急も一時的に受け入れが可能とした。なお、病床確保料の算定に当たっては、G-MISなどを活用し、1日単位での患者の有無から算定を行うことになる。(参考)各消防本部からの救急搬送困難事案に係る状況調査の結果 R4.1/10~16分(消防庁)即応病床等への救急患者の受入れに係る病床確保料の取扱いについて(厚労省)コロナ病床で一般救急受け入れ可、厚労省が通知 搬送困難が過去最多(朝日新聞)2.医療従事者の濃厚接触者、無症状等を条件に毎日検査で就業可能に厚労省は18日、オミクロン株の濃厚接触者の待機期間について改正し、濃厚接触者とされた以下の要件を満たす医療従事者については、毎日業務前にPCR検査または抗原定量検査(やむを得ない場合は抗原定性検査キットでも可)により陰性を確認すれば、管理者の了承の下、就業可能とした。《要件》ほかの医療従事者による代替が困難な医療従事者であること新型コロナウイルスワクチンを2回接種済みで、2回目の接種後14日間経過した後に濃厚接触があり、濃厚接触者と認定された者であることさらに、19日に更新された「新型コロナウイルス感染症対策の基本的対処方針」によると、エッセンシャルワーカーについては自治体の判断により、10日を待たずとも検査が陰性であった場合には待機を解除できる。PCR検査の場合は最終曝露日から6日目、抗原定量検査(あるいは抗原定性検査キット)は6日目と7日目に陰性であれば就労可能であるとしている。(参考)医療従事者である濃厚接触者に対する外出自粛要請への対応について(事務連絡)オミクロン株感染者の「濃厚接触者」である医療従事者、無症状・毎日陰性などで医療業務への従事可―厚労省(Gem Med)濃厚接触者となったエッセンシャルワーカーの待機期間、必要に応じ見直し検討…後藤厚労相(読売新聞)3.公立病院改革、コロナの影響で持続可能な経営強化プランに変化総務省は、これまで公立病院の経営悪化に対して、「公立病院改革ガイドライン」を策定し、病院の再編やネットワーク化、経営形態の見直しなどに取り組んできたが、今回、パンデミック下における公立病院の役割の重要性をあらためて認識し、持続可能な地域医療提供体制を確保するため、検討会を立ち上げた。新たに「公立病院経営強化ガイドライン」を定め、2023年度までに公立病院を運営する自治体などにプラン策定を求める。地域医療構想の実現や地域包括ケアシステムの構築に向けて果たすべき役割を踏まえ、(1)機能分化・連携強化の推進、(2)医師・看護師等の確保など働き方改革の推進、(3)経営形態の見直し、(4)新興感染症に備えた平時からの対応などを主なポイントとしている。(参考)「持続可能な地域医療提供体制を確保するための公立病院経営強化ガイドライン」の方向性について(総務省)公立病院改革プラン「第3弾」策定へ コロナ禍を経て役割再認識 機能分化と連携強化を図る 総務省が「経営強化」へガイドライン(読売新聞)4.新Web研修システム、都道府県医師会で1年間無料/日医日本医師会は19日、コロナの影響で研修会の開催が困難になっていることから、新たに開発したWeb研修システムを都道府県医師会や郡市区医師会に提供することを発表した。このシステムでは座学と同等レベルの受講が可能であり、講義中のキーワード表示やテスト・アンケートの実施、チャットによる質問などが可能となっている。これにより産業医の認定講習などもオンラインで受講が可能となる見込み。システム利用料に関しては、まずは同システムを実際に体験してもらいたいという考えから、2023年3月31日まで開催分のWeb配信使用料は無料。今後、全国での使用実績等を勘案の上使用料を検討し、来年度以降は有料とする意向を示した。(参考)「日本医師会Web研修システム」の都道府県医師会への提供について(医師会)研修システム、地方医師会に提供 日医(時事通信)5.製薬企業、学会での広告費についても開示へ/製薬協日本製薬工業協会(製薬協)は、20日に「透明性ガイドライン」を一部改定することを了承した。これまで開示されてこなかった製薬企業が協賛して行う学会での広告、展示ブース出展などの費用も含めて開示される。なお、日本医学会はCOI管理ガイドラインをすでに改定しており、一部学会では製薬企業の医療機関や研究者への資金提供について開示を行っているが、2023年度支払い分から今回のガイドラインを適用し、24年度から学会側に公開を義務付ける。(参考)製薬協「透明性ガイドライン」を改定 B項目の学会等共催費で「広告、展示ブース出展費用等」開示へ(ミクスオンライン)日本医学会 COI管理ガイドライン(日本医学会)6.広島県の医師が特殊詐欺で1.3億円の被害/広島県警広島県警は18日、広島県福山市の50代医師が、特殊詐欺のため1.3億円の被害にあったことを明らかにした。「未納料金が発生している」というSMSをきっかけに架空の料金を請求する手口で、未納料金の支払いやトラブルの解決金の名目で100回以上指定された口座に入金していたが、その後、相手と連絡が取れなくなったため警察署に相談したところ、被害が発覚した。警察は「電話で金を要求されたら詐欺を疑い、周囲に相談してほしい」と呼び掛けている。(参考)1.3億円、医師が特殊詐欺被害 示談金や資産移動かたり 広島最大(毎日新聞)福山市の医師、1億3800万円の特殊詐欺被害 広島県内で過去最多額(中国新聞)男性医師が1億3,800万円の被害 “NTT関連会社”騙る特殊詐欺 福山(テレビ新広島)

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criteria検討に名を借りた医療経済検討なのではないのか?(解説:野間重孝氏)

 疫学について細論することは本稿の目的とするところではないので、日本循環器学会のガイドライン中の疫学の欄をご参照いただきたい(『肺血栓塞栓症および深部静脈血栓症の診断,治療,予防に関するガイドライン(2017年改訂版)』)。骨子は、欧米においては静脈血栓・肺塞栓症が虚血性心疾患、脳血管疾患に次ぐ3大致死的血管疾患であるのに対して、わが国における肺塞栓症の発生が100万人当たり30人に達しない程度の頻度であるという事実である。近年人口の高齢化により血栓性疾患の頻度が増したとはいえ、それでも発生率は単位人口当たり欧米の8分の1以下という頻度にとどまっている。 とくにこの差は産科領域で大きい。欧米における妊婦の死亡原因の第1位が肺塞栓症であるのに対し、わが国における発生頻度は軽度のものまで含めても1,000件に1件(0.1%)にとどまるからである。産科領域で造影CT、核医学検査が行われた場合の胎児の被曝の問題は軽視できるものではない。このような被曝や侵襲を伴う検査に訴えることなく、血液検査など、できるだけ非侵襲的かつ簡便な検査で診断をつけることが、大きな課題となることが理解されるだろう。 ただ、もうひとつの重要な背景として(たびたび指摘していることだが)、国民皆保険制度の存在がある。わが国で診療を行っている限り、怪しいと疑った患者に対して(その診断精度に対する議論はあるにせよ)造影CTや肺換気・血流シンチを施行することにためらいはないだろう。しかし多くの諸外国において、こうした高価な検査は簡単には施行できないのが現実なのである。 著者らは、議論はあるとしながらも主なPEの診断法を3つにまとめて紹介している。これは参考になるのでここでもまとめ直してみよう。1)従来の(最もオーソドックスな)アルゴリズム: 検査前確率が高いと考えられる患者で、閾値を越えるD-dimer値の患者に造影CTないし肺換気・血流シンチを行う。2)検査前確率が低い患者に対して: PERC(PE rule-out criteria)8項目([1]年齢≧50歳、[2]心拍数≧100/min、[3]動脈血酸素飽和度<95%、[4]片側の下肢の腫脹、[5]血痰、[6]直近の外傷or手術、[7]PEや深部静脈血栓症の既往、[8]エストロゲン製剤使用)に該当しない、もしくはD-dimer値のcutoff値に年齢×10ng/mLを使用する。3)YEARS rule: YEARS criteria([1]PEが最も可能性がある診断、[2]深部静脈血栓症の臨床症状、[3]血痰)を満たさない患者に対してD-dimer cutoff値1,000ng/mLを併用する。 一見してわかるように、criteriaといいつつ、医師の主観がかなり影響することがわかる。どの方法によるにせよ、医師がどの程度積極的にPEを疑うか否かがキーポイントになっていることには変わりがないからである。なお、YEARS ruleはランダム化試験で検証されているわけではないことには注意が必要だろう。 このような現状に鑑み、本研究は救急部(ED)においてPERC ruleで除外されていないPE疑いの患者に対し、YEARS ruleと年齢調整D-dimer値を併用することによりPEが安全に除外できるかどうかを検討したものである。対照は上記の従来型の診断アルゴリズムである。ただ、ここまでお読みの読者の多くが「ちょっと待てよ」と思っていらっしゃるのではないだろうか。なぜなら、医師の主観が大きく介入するという点においては変わるところがないからである。本研究のプロトコールには確かに議論の余地がある。primary outcomeが3ヵ月後の静脈血栓症の有無であるのは適当か、secondary outcomeに「あらゆる原因による死亡」「3ヵ月後におけるあらゆる原因による入院」が含まれていることは適当かなどがまず挙げられるだろう。またsecondary outcomeには「ED滞在時間」が含まれているが、重症病変を診断することに時間の経済が含まれるのだろうか。こうした疑問はあるものの、結局、医師の主観を排除した診断アルゴリズムを模索することになっていないという点がすべてであると考える。 翻ってわが国のEDの現場を考えてみてほしい。胸痛と息苦しさを訴えて来院した患者に対して、心電図、胸部レントゲン写真、採血、動脈血酸素飽和度などの一通りの検査(場合により心エコー図検査も含む)がルーチンに行われないというケースは考えられない。そしてEDの通常採血項目にFDPやD-dimerが含まれていないというケースはないと言ってよい。そして、どれか1つにでも疑わしい所見があった場合、適切な画像診断を緊急で行うことを躊躇する救急医はいないと思う。このようなやり方について「あまりにもマニュアル化され過ぎている」とか「余計な検査をするケースが多い」という批判があることは承知しているが、これはすべて医師の主観をできるだけ排除して、客観的な診断を行うことを目的としているのである。 本研究の結果の部分に、胸部画像診断を行った例がintervention群で22.9%、control群で37.2%であり、14.3%の減少幅が得られたとあるが、結局本研究の目的はここにあったのではないかというのは、うがち過ぎではないだろう。結局、上述した国民皆保険問題に帰り着く。医療経済の追求が、多くの国・地域において大きな課題なのである。かつCT検査と私たちは簡単に言うが、世界のCTの10台に1台はわが国にあるといわれる。つまりここには医療資源の問題も絡んでくるのである。上記したように、このプロトコールでは医師の主観を排除しているとは言えないと批判したが、その根本には医療経済の問題をcriteriaの議論にすり替えていることがあると言ったら言い過ぎだろうか。 論文評のまとめとしてはいささか逸脱したものと言われるかもしれないが、いろいろと批判はあるもののわが国の医療体制は世界的に見て誇るべきものであり、この長い経済停滞の時期を乗り越えて医療経済をいかに守っていくかが、私たちに課せられた課題であることを痛感したものである。近年わが国では年金制度の議論ばかりがやかましいが、健康保険制度を維持することこそ、私たちが子供たちの世代に残せる大きく貴重な財産であることを、恐縮ながらこの場をお借りして再度訴えたいと思う。

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イチゴ腫根絶に向けたアジスロマイシン集団投与3回の効果/NEJM

 イチゴ腫(yaws、framboesia)の治療において、アジスロマイシンの集団投与を6ヵ月間隔で3回行う方法は、標準治療である集団投与を1回行ってからイチゴ腫様病変がみられる集団に標的治療を2回行う方法に比べ、地域有病率が大幅に低下し、小児の潜在性イチゴ腫の有病率も低くなることが、パプアニューギニア保健省のLucy N. John氏らの検討で示された。研究の成果は、NEJM誌2022年1月6日号に掲載された。イチゴ腫は梅毒トレポネーマ(Treponema pallidum)の亜種であるpertenueに起因する感染症で、主に熱帯地方の貧しい農村に住む子供の皮膚や長骨が侵される。撲滅キャンペーンを行わなければ、2015~50年の間に160万の障害調整生存年数が失われるとされる。ナマタナイ地区38行政区のクラスター無作為化第III相試験 本研究は、イチゴ腫の治療において、標的治療に切り換える前にアジスロマイシンの集団投与を3回行う方法の有用性を示唆する仮説の検証を目的に、パプアニューギニアのニューアイルランド州ナマタナイ地区で行われた地域住民ベースの非盲検クラスター無作為化第III相試験であり、2018年4月~2019年10月の期間に実施された(“la Caixa”財団などの助成を受けた)。 地区内の38の行政区(クラスター)に居住する生後1ヵ月以上の全住民が対象となった。38行政区は、アジスロマイシンの集団投与を3回行う群(試験群)または同集団投与を1回行った後に標的治療を2回行う群(対照群)に無作為に割り付けられた。 集団投与は、ベースラインで1回目が行われ、6ヵ月後に2回目、12ヵ月後に3回目が実施された。アジスロマイシンは、WHOのガイドラインで推奨されている年齢別の用量が投与された。標的治療は、参加者全員にイチゴ腫の有無を確認するスクリーニングを行い、イチゴ腫様病変を有する参加者とその同居者、学校での接触者に対して実施された。 複合主要エンドポイントは2つで、試験集団全体における活動性イチゴ腫の有病率(ポリメラーゼ連鎖反応[PCR]法で確定)と、1~15歳の無症状の小児サブグループにおける潜在性イチゴ腫の有病率(血清検査で確定)であった。有病率の評価は18ヵ月の時点で行われ、群間差が算出された。試験群の3例でマクロライド耐性 38行政区の住人5万6,676例が対象となった。試験群と対照群に19区ずつが割り付けられ、参加者はそれぞれ2万6,238例および3万438例だった。全体で、4万2,362例(74.7%)が1回目(ベースライン)の投与を受け、6ヵ月後に3万6,810例(64.9%)、12ヵ月後には4万8,488例(85.6%)が投与を受けた。 アジスロマイシンは、試験群で5万9,852回、対照群では2万4,848回(1回目の集団投与は2万2,033回、2回目と3回目の標的治療は2回の合計でイチゴ腫様病変を有する参加者に207回、その接触者に2,608回)投与された。 試験期間中に、PCR検査で297例がイチゴ腫と確定され、1,026個の潰瘍が同定された。活動性イチゴ腫の有病率は、試験群ではベースラインの0.43%(87/2万331例)から18ヵ月時には0.04%(10/2万5,987例)へと低下し、対照群では0.46%(102/2万2,033例)から0.16%(47/2万9,954例)に減少した。クラスターの割り付けを補正した相対リスクは4.08(95%信頼区間[CI]:1.90~8.76、p<0.001)であり、試験群で有病率の減少効果が優れた。 活動性イチゴ腫の有病率は15歳未満の小児で高く、再燃例はとくに対照群の6~10歳の小児で多い傾向がみられた。 18ヵ月の時点で、試験群の小児945例と対照群の小児994例で血清検査による潜在性イチゴ腫の有病率の評価が行われた。潜在性イチゴ腫の有病率は、試験群が3.28%(95%CI:2.14~4.42)と、対照群の6.54%(5.00~8.08)に比べ低かった(クラスター割り付けと年齢を補正した相対リスク:2.03、95%CI:1.12~3.70、p=0.02)。 18ヵ月時に、試験群の3例で、マクロライド耐性と関連するA2058G変異のあるイチゴ腫が認められた。 著者は、「これらのデータは、イチゴ腫根絶の一環として、複数回の薬剤の集団投与を検討する必要があることを示唆する。また、3回の集団投与後に抗菌薬耐性がみられ、イチゴ腫の根絶には至らなかったことから、臨床および分子レベルで抗菌薬耐性の出現と拡大を慎重に監視する必要がある」としている。

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6時間以上経過した脳主幹動脈閉塞患者に対する血管内治療の有効性について、さらに強いエビデンスとなる結果(解説:高梨成彦氏)

 本研究は発症から6~24時間経過した主幹動脈閉塞患者に対する経皮的脳血栓回収術についての6試験のデータを対象としたメタアナリシスである。505症例のデータが解析され、主要評価項目である90日後のmRSの改善について血管内治療の有効性が確認され、調整済みオッズ比は2.54と高いものであった。また副次評価項目である90日後の死亡率および症候性頭蓋内出血の発生率には差はなかった。 本試験の意義はサブグループにおいても均一な結果が示されたことで、年齢(<70/70~80/>80)、性別、脳卒中の重症度(NIHSS ≦17/≧18)、閉塞部位(ICA/M1)、ASPECTS(≦7/≧8)、発症形態(眼前発症/wake-up stroke)、いずれの群でも血管内治療の有効性が示された。すでに脳卒中ガイドラインにもあるように、発症から6時間以上経過した患者についての血管内治療は実施されているものの、高齢者や重症患者であっても治療をためらう必要はないということが明確に示された意義は大きい。ただし、軽症群にNIHSS 5点以下の患者は含まれておらず、ASPECTSが低値の群に0~5点は含まれていないことは留意する必要がある。 虚血コア体積を評価して治療適応を決定するに当たってDAWN、DEFUSE 3はRAPIDの使用が必須となっており、他の4試験は単純CTまたはMRI検査のASPECTSスコアによる判定が条件となっている。興味深いことに評価方法が違う2群間でも血管内治療の効果に差がなかった。この結果からただちに単純CTまたはMRI検査のみによる判定が有効であるとは言えないものの、RAPIDシステムが普及していない本邦ではclinical-ASPECTS mismatchによる判定が広く行われており、スコアの閾値設定など参考になる結果といえるだろう。 発症から6~12時間と12~24時間の患者群で比較したところ、後者のほうが血管内治療の効果が高かった。この結果は自然再開通が起きる可能性が時間経過とともに低くなることや、6時間未満に治療を受けた群ではtPA投与を受けた患者が多いことが影響している可能性がある。

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コンセンサスベースとエビデンスベース診療ガイドラインの比較(解説:折笠秀樹氏)

 診療ガイドラインの質に関する調査結果である。エビデンスベースの土俵で比較したら、エビデンスベースの診療ガイドライン(GL)のほうがコンセンサスベースGLよりも良かった、という当然の結果であった。 循環器関係のACC/AHAガイドラインが12本(1,434推奨)、がん関係のASCOガイドラインが69本(1,094推奨)、合計2,528推奨を研究対象とした。各推奨について、著者の2人がペアとなり、次のことを調べた。コンセンサスベースGLかエビデンスベースGLかの別、用いたグレーディングシステム、推奨度(強・弱)、エビデンスの質(高・中・低)である。推奨度の付け方としては、GRADEシステムというのが有名である。日本の診療ガイドラインは、近年では、ほぼそれに準拠して作られているのではないかと思う。 エビデンスが低質である推奨は、どれくらいあっただろうか。循環器のほうは、コンセンサスGLで100%(200/200)が低質、エビデンスベースGLで25%(304/1,234)が低質であった。がんのほうは、コンセンサスベースGLで82%(292/358)、エビデンスベースGLで15%(112/736)が低質であった。いずれもコンセンサスベースGLのほうで、低質なエビデンスの割合が顕著に多かった。 次に、GRADEシステムに準拠した方法で推奨度が付与されていないと、それは「不適切」と評価された。そして、エビデンスの質が低いのに、強く推奨されるとなっていたら、それは「不一致」と評価された。エビデンスの質が低ければ、推奨度は弱くなるはずだからであろう。コンセンサスベースGLのほうが2.1倍(循環器)、2.9倍(がん)、「不一致」の傾向が強かった。「不適切かつ不一致」については、コンセンサスベースGLのほうが2.6倍(循環器)、5.1倍(がん)と高かった。 コンセンサスに基づく診療ガイドラインは、不適切かつ不合理だと言わんかのような結果であった。しかし、その評価基準はエビデンスベースのGRADEシステムであり、当然の結果だと思う。コンセンサス派はそれに対抗しているので、不満足な結果になったのも当たり前だと思う。コンセンサスベースGLの中にはいい加減なものが多いかもしれないが、イデオロギーの違いを浮き彫りにしただけのように思えてならない。

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