サイト内検索|page:27

検索結果 合計:3097件 表示位置:521 - 540

521.

NCCNガイドライン推奨の分子標的薬、臨床的有用性は?/BMJ

 精密医療に基づく腫瘍学(precision oncology)は、とくに進行性の治療抵抗性症例に対するがん治療を変革しつつあるが、多くの遺伝子変異の臨床的重要性は依然として不明とされる。米国・ハーバード大学医学大学院のAriadna Tibau氏らは、National Comprehensive Cancer Network(NCCN)が推奨する分子標的とゲノム標的がん治療薬を、欧州臨床腫瘍学会(ESMO)の2つの枠組みを用いて評価し、固形がんに対するゲノムに基づく治療薬のうち、患者に高い臨床的有益性をもたらす可能性があるのは約8分の1で、約3分の1は有望ではあるが実質的な有益性は証明されていないことを示した。研究の詳細は、BMJ誌2024年8月20日号で報告された。標的の有効性と治療薬の臨床的有益性を横断研究で評価 研究グループは、NCCNが実臨床で推奨しているゲノム標的がん治療薬とその分子標的について、臨床的有益性と有効性を評価する目的で横断研究を行った(Kaiser Permanent Institute for Health Policy and Arnold Venturesなどの助成を受けた)。 NCCNガイドラインが進行がんに対して推奨しているゲノム標的がん治療薬を対象とした。分子標的の有効性は、ESMO-Scale for Clinical Actionability of Molecular Targets(ESCAT、レベルI~Xの10段階、レベルが低いほど有効性のエビデンスが高度)を用いて評価し、ゲノム標的がん治療薬の臨床的有益性(効果、有害事象、生活の質のデータに基づく)の評価には、ESMO-Magnitude of Clinical Benefit Scale(ESMO-MCBS)を使用した。 実質的な臨床的有益性(ESMO-MCBSのグレード4または5)を示し、ESCATカテゴリーのレベルIに該当する分子標的を有する薬剤を有益性の高いゲノムに基づくがん治療と判定した。また、ESMO-MCBSのグレードが3で、ESCATカテゴリーのレベルIに該当する分子標的を有する薬剤は、有望ではあるが有益性は証明されていないがん治療と判定した。FDA承認は60%、第I/II相78%、単群試験76% 50のドライバー変異を標的とする74のゲノム標的薬に関する411件の推奨について調査した。411件の推奨のうち、米国食品医薬品局(FDA)の承認を得ていたのは246件(60%)で、165件(40%)は適応外使用であった。 薬剤クラスは、低分子の阻害薬が286件(70%)、免疫療法薬が66件(16%)、抗体製剤が37件(9%)、抗体薬物複合体が14件(3%)だった。がん種は、肺がんが83件(20%)、乳がんが49件(12%)、大腸がんが17件(4%)、前立腺がんが5件(1%)であった。 ほとんどの推奨(346/411件[84%])は、さまざまな相の臨床試験に基づいていたが、16%(65/411件)は症例報告または前臨床研究のみに依存していた。多くの臨床試験は、第I相または第II相(271/346件[78%])であり、単群試験(262/346件[76%])が多かった。また、主要評価項目は、多くが全奏効率(271/346件[78%])であり、生存率は3%(12/346件)だった。NCCNガイドラインは実臨床で重要な役割 ESCATのレベルIは60%(246/411件)であり、レベルIIまたはIIIは35%(142/411件)、レベルIV~Xは6%(23/411件)であった。また、ESMO-MCBSのスコア化が可能であった267試験では、実質的な臨床的有益性(グレード4/5)を示したのはわずか12%(32/267試験)で、グレード3は45%(121/267試験)だった。 これら2つの枠組みを組み合わせると、約8分の1(12%[32/267試験])の試験が高い有益性を、約3分の1(33%[88/267試験])は有望ではあるが証明されていない有益性を示した。また、NCCNガイドラインが、好ましいとして支持する118個の介入のうち、62個(53%)が高い有益性または有望ではあるが証明されていない有益性を有する治療に分類され、これらの治療はFDAの承認を得る可能性が高かった(61% vs.16%、p<0.001)。 著者は、「このようにNCCNの推奨と期待される臨床的有益性との一致を確認することは、エビデンスベースのゲノムに基づく治療決定を促進するためにきわめて重要である」とし、「ESMO-MCBSやESCATのような有益性の評価の枠組みは、どのゲノム標的治療が最も質の高いエビデンスに裏付けられているかを見極めるのに役立つ」と述べ、「NCCNガイドラインは実臨床において重要な役割を果たしており、今後ともNCCNの推奨の改善に注力する必要がある」としている。

522.

第111回 増えるマイコプラズマ肺炎、今年のマクロライド耐性率は?

増えるマイコプラズマ肺炎マイコプラズマ肺炎は、基幹定点医療機関において週ごとに報告される5類感染症です。新型コロナやインフルエンザと比べると報告義務のある医療機関はかなり少なくなります。さて、感染症発生動向調査週報2024年第31・32週(第31・32合併号)において、2016年と同じくらいの流行に陥っていることが示されました(図1)1)。定点当たりの報告数としては新型コロナほどではないのですが、マイコプラズマ気管支炎や咽頭炎などは報告数に入っておらず、肺炎が対象となっているので、水面下にはそれなりの感染者数がいると認識したほうがよいでしょう。画像を拡大する図1. マイコプラズマ肺炎の定点医療機関当たりの報告数(参考文献1より引用)マクロライド耐性率15年ほど前に、マクロライド耐性マイコプラズマが流行したことを覚えているでしょうか2)。といっても、これを読んでいるのがアラフォー・アラフィフばかりとは限らないので、その事実を知らない読者のほうが多いかもしれません。私の研修医時代はあまりそういう話はなかったのですが、5年10年経つと「マクロライド耐性」がやたら騒がれるようになって、いつの間にか8割以上がマクロライド耐性になっていました。当時、時折開かれる感染症セミナーでも、専門家の方々が「耐性化がハンパない」と連呼していましたが、結局思ったほど流行せず、しかもその後は徐々に耐性率は下がっていきました3)。この背景として、遺伝子型の違いが挙げられます。Mycoplasma pneumoniaeの細胞接着タンパク(P1)の遺伝子型は1型と2型があり、この2つは10~20年ごとに交互に流行するという傾向があります(図2)4)。1990年代は2型が優勢で、マクロライド耐性率は低かったようです。2001~16年あたりまでは1型菌が優位になっていたのですが、マクロライドの曝露を受けたことによって、この1型菌たちが耐性化したのではないかと考えられています。最近、中国で分離されたM. pneumoniaeのp1遺伝子型の頻度が報告されています5)。この報告では、1型菌が明らかに優勢で、全体の約4分の3を占めていたとされています。1型菌は当然ながらマクロライド耐性遺伝子を有していたのですが、驚いたのは2型菌もすべてマクロライド耐性遺伝子を持っていたことです(1型:54株すべてがA2063G変異、2型:3株がA2063G変異陽性・1株がA2064G変異陽性、2c型:13株すべてA2063G変異陽性)。画像を拡大する図2. M. pneumoniae分離株の遺伝子型とマクロライド耐性率の年別推移(参考文献4より引用)日本では2017年以降、2型菌が優勢となっていて、M. pneumoniaeのマクロライド耐性率が低減したとされています。上述した中国の報告を考慮すると、2型菌とて安心できるわけではないのかもしれません。また、地域によって耐性率に差があります。米国疾病予防管理センター(CDC)のウェブサイトによると、マクロライド耐性率はカナダで12%、中国で80%(上記の研究は100%でしたが)、ヨーロッパは5%(イタリアは20%)、日本は50%以上(上述したように時期によって変動があります)、アメリカは10%と記載されています6)。とはいえ、日本呼吸器学会の『成人肺炎診療ガイドライン2024』7)の中には、「マイコプラズマ肺炎は軽症例が多く、マクロライド耐性株が数十パーセント存在するがマクロライド系薬の有効性は示されている」と書かれており、“初手アジスロマイシン”はとくに否定されるものではないと考えられます。各医療機関、コロナ禍で検査技術が進展し、蛍光標識プローブ(Qプローブ)などでマクロライド耐性遺伝子があるかどうか判定できるようになりました。成人の場合、最初からテトラサイクリンやキノロンを用いる戦法だけでなく、アジスロマイシンなどのマクロライド系抗菌薬の治療失敗を早めに判断してスイッチすることも検討されます。ただし小児においては、使用する必要があると判断される場合、トスフロキサシンあるいはテトラサイクリン系薬の投与を考慮しますが、8歳未満には、テトラサイクリン系薬は原則禁忌です。参考文献・参考サイト1)感染症発生動向調査週報2024年第31・32週(第31・32合併号)2)Kawai Y, et al. Nationwide Surveillance of Macrolide-Resistant Mycoplasma pneumoniae Infection in Pediatric Patients. Antimicrob Agents Chemother. 2013 Aug;57(8):4046-4049.3)Kenri T, et al. Periodic Genotype Shifts in Clinically Prevalent Mycoplasma pneumoniae Strains in Japan. Front Cell Infect Microbiol. 2020 Aug 6;10:385.4)見理剛. 肺炎マイコプラズマの遺伝子型別法と薬剤耐性の動向. IASR. 2024 Jan;45:6-8.5)Chen Y, et al. Increased macrolide resistance rate of Mycoplasma pneumoniae correlated with epidemic in Beijing, China in 2023. Front Microbiol. 2024 Aug 6;15:1449511.6)CDC. Mycoplasma pneumoniae Infection Surveillance and Trends7)日本呼吸器学会. 成人肺炎診療ガイドライン2024. メディカルレビュー社.

523.

座位行動による健康への悪影響は運動で相殺可能

 毎日8時間以上、座ったまま過ごしている糖尿病の人でも、ガイドラインが推奨する身体活動量を満たしていれば、健康への悪影響を大きく抑制できることが報告された。米コロンビア大学メイルマン公衆衛生大学院のSandra Albrecht氏、Wen Dai氏による研究であり、詳細は「Diabetes Care」に7月19日掲載された。Albrecht氏は、「この研究結果は、オフィスワーカーやタクシードライバーなどの職業柄、長時間座り続ける必要のある人々に対して、習慣的な身体活動を推奨することの重要性を示している」と述べている。 この研究では、成人糖尿病患者の座位行動時間と全死因による死亡リスク、および心臓病による死亡リスクとの関連に対して、身体活動量がどの程度の影響を及ぼし得るかが検討された。2007~2018年の米国国民健康栄養調査(NHANES)の参加者のうち糖尿病を有する成人6,335人を2019年まで追跡。ベースライン時の自己申告に基づく座位行動時間および中~高強度身体活動(MVPA)の時間と死亡リスクとの関連を、Coxハザードモデルで解析した。社会人口統計学的因子、生活習慣、および疾患管理状況の影響は、統計学的に調整した。 解析対象者の主な特徴は、平均年齢が59.6歳、女性48.3%で、非ヒスパニック系白人が61%であり、糖尿病の罹病期間は約半数は5年以下である一方、34%は10年以上だった。身体活動量については、週当たりのMVPAが10分未満の人が38%を占めていた。 中央値5.9年の追跡で、全死因による死亡が1,278件記録されていて、そのうち354件が心臓病による死亡だった。身体活動量が極端に少ない群(MVPAが週10分未満)や不足している群(同10~150分未満)では、座位行動時間が長いほど全死因による死亡および心臓病による死亡リスクが高いという関連が認められた。しかし、身体活動量の多い群(同150分以上)では有意な関連がなく、身体活動量の多寡による有意な交互作用が確認された(全死因による死亡については交互作用P=0.003、心臓病による死亡についてはP=0.008)。 また、1日の座位行動時間が4時間未満の群に比べて8時間以上の群では、MVPAが150分未満の場合に、全死因による死亡と心臓病による死亡の双方のリスクが高かった。しかしMVPAが150分以上の場合は、いずれの死亡についても有意なリスク上昇は認められなかった。このほかに、MVPAが多いことは、特に心臓病による死亡リスクをより大きく抑制する傾向が認められた。 論文の筆頭著者であるDai氏は、「糖尿病が蔓延している現状と、成人糖尿病患者では座位行動時間が長く身体活動量が少ない傾向のあることを考え合わせると、このハイリスク集団に対する死亡リスク抑制のための介入が急務である」と、身体活動をいっそう強く奨励する必要性を強調している。なお、米疾病対策センター(CDC)は、中強度の身体活動にはウォーキングや水中エアロビクス、ダブルスのテニス、庭の手入れなどが含まれ、ランニングや水泳、自転車での高速走行、シングルスのテニス、バスケットボールなどは高強度運動に該当するとしている。

524.

臨床意思決定支援システム導入で、プライマリケアでの降圧治療が改善/BMJ

 中国のプライマリケアでは、通常治療と比較して臨床意思決定支援システム(clinical decision support system:CDSS)の導入により、ガイドラインに沿った適切な降圧治療の実践が改善され、結果として血圧の緩やかな低下をもたらしたことから、CDSSは安全かつ効率的に高血圧に対するよりよい治療を提供するための有望なアプローチであることが、中国・National Clinical Research Centre for Cardiovascular DiseasesのJiali Song氏らLIGHT Collaborative Groupが実施した「LIGHT試験」で示された。研究の成果は、BMJ誌2024年7月23日号で報告された。中国の94プライマリケア施設でのクラスター無作為化試験 LIGHT試験は、中国の4つの都市部地域の94施設で実施した実践的な非盲検クラスター無作為化試験であり、2019年8月~2021年に患者を登録した(Chinese Academy of Medical Sciences innovation fund for medical scienceなどの助成を受けた)。 94のプライマリケア施設のうち、46施設をCDSSを受ける群に、48施設を通常治療を受ける群(対照)に無作為に割り付けた。CDSS群では、電子健康記録(EHR)に基づき、降圧薬の開始、漸増、切り換えについて特定のガイドラインに準拠したレジメンを患者に推奨し、通常治療群では同じEHRを用いるが、CDSSを使用せずに通常治療を行った。 対象は、ACE阻害薬またはARB、β遮断薬、カルシウム拮抗薬、利尿薬のうち0~2種類のクラスの降圧薬を使用し、収縮期血圧<180mmHg、拡張期血圧<110mmHgの高血圧患者であった。 主要アウトカムは、高血圧関連の受診のうちガイドラインに準拠した適切な治療が行われた割合とした。適切な治療が行われた受診の割合が15.2%高い 1万2,137例を登録した。CDSS群が5,755例(総受診回数2万3,113回)、通常治療群は6,382例(2万7,868回)であった。全体の平均年齢は61(SD 13)歳、42.5%が女性だった。平均収縮期血圧は134.1(SD 14.8)mmHgで、92.3%が少なくとも1種類のクラスの降圧薬を使用していた。 追跡期間中央値11.6ヵ月の時点で、適切な治療が行われた受診の割合は、通常治療群が62.2%(1万7,328/2万7,868回)であったのに対し、CDSS群は77.8%(1万7,975/2万3,113回)と有意に優れた(絶対群間差:15.2%ポイント[95%信頼区間[CI]:10.7~19.8、p<0.001]、オッズ比:2.17[95%CI:1.75~2.69、p<0.001])。<140/90mmHg達成割合も良好な傾向 最終受診時の収縮期血圧は、通常治療群がベースラインから0.3mmHg上昇したのに比べ、CDSS群は1.5mmHg低下し、その差は-1.6mmHg(95%CI:-2.7~-0.5)とCDSS群で有意に良好であった(p=0.006)。また、血圧コントロール率(最終受診時の<140/90mmHgの達成割合)は、CDSS群が69.0%(3,415/4,952回)、通常治療群は64.6%(3,778/5,845回)であり、群間差は4.4%ポイント(95%CI:-0.7~9.5、p=0.07)だった。 患者報告による降圧薬治療関連の有害事象はまれであり、発現頻度は両群間で同程度であった。 著者は、「CDSSは、高血圧に対する質の高い治療へのアクセスと公平性を改善するための、低コストで効率的、かつ拡張性に優れ、持続可能な手段として機能する可能性がある」と述べ、「高血圧の管理にCDSSを用いる戦略は、とくに中国のような心血管疾患の負担が大きく、医療資源に制約のある地域にとって、質の高い高血圧治療を効率的かつ安全に提供する有望なアプローチになると考えられる」としている。

525.

事例006 「B001-3 生活習慣病管理料」の疑義解釈【斬らレセプト シーズン4】

解説前回は「B001-3 生活習慣病管理料」(以下「管理料」)の算定の流れをお伝えしました。今回は、算定にあたり気を付けなければならない疑義解釈などをお届けします。今後の算定の際にご参照ください。1)「主病」とはの定義が「管理料」に設定されていませんが、B000 特定疾患療養管理料の留意事項(9)を準用すると解釈されました。特定疾患療養管理料算定対象の傷病名(胃炎など)を含む複数の傷病名を主病とした場合は、いずれかの主病1つに該当する管理料などを算定します。その選定根拠と指導内容などの診療録への記載は必須です。2)「管理料(I)」、「管理料(II)」を算定した同月別日に他の疾患の診療を行った場合、他の疾患にかかる指導料や検査料などは算定できます(疑義解釈 1-問136、137)。ただし、同月に重複算定が認められていない指導料などは算定できません。3)診療ガイドラインを参照して治療にあたることが必要ですが、製薬会社など発行の診療ガイドラインを盛り込んだ「患者さん向け資材」の活用ができます(調剤報酬)。4)「管理料(II)注6情報通信機器」を用いて行った場合、電子的な署名が必須とされました(疑義解釈 その1-問140)。遠隔診療を望まれる患者がいる場合、2回目以降の計画書には自書を省略してもよいとされています。初回管理料算定にかかる自書の署名まで対面で行い、その後から情報通信機器を使用した管理に移行することも可能です。5)200床未満の医療機関において「管理料(I)」などを算定できる高血圧症を主病とする場合には、「高血圧治療補助アプリ適正使用指針」を参照して「特定保険医療材料227 高血圧症治療補助アプリ」を使用した管理ができます(疑義解釈 その1 材料 問1)。

526.

脂肪性肝疾患の日本語病名が決定/日本消化器病学会・日本肝臓学会

 日本消化器病学会と日本肝臓学会は8月22日、NAFLD/ NASHに変わる新たな分類法での日本語病名を公表した。<日本語病名>・Steatotic Liver Disease(SLD):脂肪性肝疾患・Metabolic Dysfunction Associated Steatotic Liver Disease(MASLD):代謝機能障害関連脂肪性肝疾患・Metabolic Dysfunction Associated Steatohepatitis(MASH):代謝機能障害関連脂肪肝炎・Alcohol Associated (Related) Liver Disease(ALD):アルコール関連肝疾患・MetALD:代謝機能障害アルコール関連肝疾患・Cryptogenic Steatotic Liver Disease:成因不明脂肪性肝疾患・Specific Aetiology Steatotic Liver Disease:特定成因脂肪性肝疾患 2023年6月24日に欧州肝臓学会が米国肝臓病学会、ラテンアメリカ肝疾患研究協会と合同で、病名によるスティグマ(偏見・差別)を解消する目的でNAFLD(非アルコール性脂肪性肝疾患)や NASH(非アルコール性脂肪肝炎)の病名と分類法を変更することを発表1)。これを受け、日本消化器病学会と日本肝臓学会が賛同し今回の変更に至った。病名変更自体は同年9月29日に両学会のホームページで発表していたが、適切な日本語病名の決定のために、日本消化器病学会のNAFLD/NASH診療ガイドライン作成委員会と日本肝臓学会の企画広報委員会が合同で議論を続けていた。 ただし、MASLD、MetALD、ALDの診断に際して利用する心血管イベントのリスク因子基準およびアルコール摂取量に関しては、本邦におけるメタボリックシンドロームないしアルコール性肝障害の基準とは異なる部分があるという。その整合性についてNAFLD/NASH診療ガイドライン作成委員会などが検討を継続していくため、現段階で分類のための診断基準は明らかにされていない。

527.

フェンタニルは呼吸困難に使えるか?【非専門医のための緩和ケアTips】第82回

第82回 フェンタニルは呼吸困難に使えるか?呼吸困難に対するオピオイドといえば、最もメジャーなものはモルヒネでしょう。最近は、呼吸困難時にヒドロモルフォンやオキシコドンも使われることが増えてきました。では、貼付剤もあって利便性の高いフェンタニルはどうでしょうか?今回の質問訪問診療で診ている肺がん患者さん。嚥下機能が低下し、内服が難しい状況です。がん疼痛と労作時呼吸困難に対してオピオイドが必要と判断し、モルヒネの坐剤とフェンタニル貼付剤を処方しました。痛みが強い時はモルヒネを使うのですが、フェンタニル貼付剤を開始したところ呼吸困難がラクになったと言います。フェンタニルは呼吸困難にはあまり有効でないと考えていましたが、実際には効くのでしょうか?「呼吸困難に対するオピオイドの使い方」は、緩和ケアでしばしば話題になるテーマです。とくにフェンタニルは腎機能が悪い場合も使いやすく、貼付剤もあることから在宅緩和ケアで重宝する薬剤ですが、呼吸困難に対する効果はどうなのでしょうか?エビデンスについて詳細に述べることはしませんが、私の理解としては、ざっくり以下の通りです。がん患者の呼吸困難に対しフェンタニルが症状緩和に有効であったという報告はあるものの、モルヒネやプラセボを上回る有効性を示した研究はない。慢性心不全や呼吸器疾患のような非がん疾患による呼吸困難に対するフェンタニルの有効性を示した質の高い研究はない。これらを踏まえ、『進行性疾患患者の呼吸困難の緩和に関する診療ガイドライン』(2023年版)でも、がん患者の呼吸困難に対するフェンタニルの全身投与は推奨されていません。以上がエビデンスベースの話ですが、臨床的な実感はどうでしょうか?私が急性期病院や集中治療に携わっていたとき、鎮痛のためフェンタニルを静注している患者さんを受け持つことが多くありました。その中には「呼吸困難にもフェンタニルが有効なのかな」と感じる例もありました。ただ、強い呼吸困難はフェンタニルだけでは対応が難しく、モルヒネによる鎮静が必要になることが大半でした。こうした経験を振り返ると、「フェンタニル自体の薬理作用よりも、薬剤を投与した安心感によって呼吸困難が和らいだ可能性もある」と感じます。呼吸困難は不安感などの心理的要素も症状を悪化させることが知られており、薬理効果以外の症状緩和に対する効果も考慮する必要があるでしょう。私自身は、呼吸困難に対して積極的にフェンタニルを使用することはありませんが、さまざまな経緯からフェンタニルを投与され、患者さんが効果を実感している際には「まあ、よしとするか」と判断しています。このあたりは専門家でもスタンスが異なることが多いでしょう。ぜひ皆さんの意見も教えてください。今回のTips今回のTips現状のエビデンスでは「呼吸困難にフェンタニルは積極的に使わない」。しかし、状況に応じた使い分けを検討する場合も。

528.

高K血症によるRA系阻害薬の中止率が低い糖尿病治療薬は?

 高血圧治療中の2型糖尿病患者が高カリウム血症になった場合、レニン-アンジオテンシン系阻害薬(RA系阻害薬)を降圧薬として服用していたら、その使用を控えざるを得ない。最近の報告によれば、GLP-1受容体作動薬(GLP-1RA)は尿中カリウム(K)排泄を増加させ、高K血症のリスクを軽減させる可能性があることが示唆されている。今回、中国・北京大学のTao Huang氏らは2型糖尿病患者の治療において、GLP-1RAは高K血症の発生率が低く、DPP-4阻害薬と比較してRA系阻害薬が継続できることを示唆した。JAMA Internal Medicine誌オンライン版2024年8月12日号掲載の報告。 本研究はGLP-1RAとDPP-4阻害薬の新規処方患者における高K血症の発生率ならびにRA系阻害薬の継続率を比較するため、2008年1月1日~2021年12月31日の期間にGLP-1RAまたはDPP-4阻害薬による治療を開始したスウェーデン・ストックホルム地域の2型糖尿病の成人を対象に行ったコホート研究。解析期間は2023年10月1日~2024年4月29日。主要評価項目は、高K血症全体(K濃度>5.0mEq/L)および中等度~重度の高K血症(K濃度>5.5mEq/L)を発症する時間と、ベースラインでRA系阻害薬を使用している患者でのRA系阻害薬の中止までの時間であった。特定された交絡因子が70を超えたため、治療の逆確率重み付け法を用いた限界構造モデルによりプロトコルごとのハザード比(HR)を推定した。 主な結果は以下のとおり。・ 対象者は3万3,280例で、その内訳はGLP-1RAが1万3,633例、DPP-4阻害薬が 1万9,647例、平均年齢±SDは63.7±12.6歳、男性は1万9,853例(59.7%)だった。・治療期間の中央値と四分位範囲(IQR)は3.9ヵ月(IQR:1.0~10.9)だった。・GLP-1RAはDPP-4阻害薬と比較して高K血症全体(HR:0.61、95%信頼区間[CI]:0.50~0.76)、中等度~重度の高K血症(HR:0.52、95%CI:0.28~0.84)の発生率の低さと関連していた。・RA系阻害薬を使用していた2万1,751例のうち、1,381例がRA系阻害薬を中止した。・GLP-1RAはDPP-4阻害薬と比較して、RA系阻害薬の中止率の低さと関連していた(HR:0.89、95%CI:0.82~0.97)。・本結果は、ITT解析および年齢、性別、心血管合併症、ベースライン時点の腎機能の層に渡って一貫していた。 研究者らは「糖尿病治療としてGLP-1RAを使用すれば、高血圧のガイドラインで推奨されている降圧薬をより広く使用できるかもしれない」としている。

529.

腎盂腎炎のときによく使う抗菌薬セフトリアキソンを極める!【とことん極める!腎盂腎炎】第6回

腎盂腎炎のときによく使う抗菌薬セフトリアキソンを極める!Teaching point(1)セフトリアキソンは1日1回投与が可能で、スペクトラムの広さ、臓器移行性のよさ、腎機能での調整が不要なことから、腎盂腎炎に限らず多くの感染症に対して使用される(2)セフトリアキソンとセフォタキシムは、スペクトラムがほぼ同じであるが、投与回数の違い、腎機能での調整の有無の違いがある(3)セフトリアキソンは利便性から頻用されているが、効かない菌を理解し状況に合わせて注意深く選択する必要があることや、比較的広域な抗菌薬で耐性化対策のために安易に使用しないことに注意する(4)セフトリアキソンは、1日1回投与の特徴を活かして、外来静注抗菌薬療法(OPAT)に使用される1.セフトリアキソンの歴史セフトリアキソンは、1978年にスイスのF. Hoffmann-La Roche社のR. Reinerらによって既存のセファロスポリン系薬よりさらに強い抗菌活性を有する新しいセファロスポリンの研究開発のなかで合成された薬剤である。特徴としては、強い抗菌活性と広い抗菌スペクトラムならびに優れたβ-ラクタマーゼに対する安定性を有し、かつ既存の薬剤にはない独特な薬動力学的特性をも兼ね備えている。血中濃度半減期が既存のセファロスポリンに比べて非常に長く、組織移行性にも優れるため、1日1回投与で各種感染症を治療し得る薬剤として、広く使用されている。わが国においては、1986年3月1日に製造販売承認後、1986年6月19日に薬価基準収載された。海外では筋注での投与も行うが、わが国においては2024年8月時点では、添付文書上は認められていない。2.特徴セフトリアキソンは、セファゾリン、セファレキシンに代表される第1世代セファロスポリン、セフォチアムに代表される第2世代セファロスポリンのスペクトラムから、グラム陰性桿菌のスペクトラムを広げた第3世代セファロスポリンである。多くのセファロスポリンと同様に、腸球菌(Enterococcus属)は常に耐性であることは、同菌が引き起こし得る尿路感染や腹腔内感染の治療を考える際には重要である。その他、グラム陽性球菌としては、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)に耐性がある。グラム陰性桿菌は、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)、Stenotrophomonas maltphilia、偏性嫌気性菌であるBacteroides fragilisはカバーせず、アシネトバクター・バウマニ(Acinetobacter baumannii)も感受性があることが少ない。ESBL(extended-spectrum β-lactamase:基質特異性拡張型β-ラクタマーゼ)産生菌やAmpC過剰産生菌といった耐性菌に対しては感受性がない。グラム陽性桿菌は、リステリア(Listeria monocytogenes)をカバーしない。血漿タンパク結合率が85~95%と非常に高く、半減期は健康成人で8時間程度と長いため、1日1回投与での治療が可能な抗菌薬となる。タンパク結合していない遊離成分が活性をもつ。そのため、重症患者ではセフトリアキソンの実際のタンパク結合は予想されるより小さいとされているが1)、その臨床的意義は現時点では不明である。排泄に関しては、尿中排泄が緩徐であり、1gを投与12時間までの尿中には40%、48時間までには55%の、未変化体での排泄が認められ、残りは胆汁中に、血清と比較して200~500%の濃度で分泌される。水溶性ではあるが、胸水、滑液、骨を含む、組織や体液へ広く分布し、髄膜に炎症あれば脳脊髄移行性が高まり、高用量投与で髄膜炎治療が可能となるため、幅広い感染症に使用される。3.腎盂腎炎でセフトリアキソンを選択する場面は?腎盂腎炎の初期抗菌薬治療は、解剖学的・機能的に正常な尿路での感染症である「単純性」か、それ以外の「複雑性」かを分類し、さらに居住地域や医療機関でのアンチバイオグラム、抗菌薬使用歴、過去の培養検査での分離菌とその感受性結果を踏まえて抗菌薬選択を行う。いずれにしても腎盂腎炎の起因菌は、主に腸内細菌目細菌(Enterobacterales)となり、大腸菌(Escherichia coli)、Klebsiella属、Proteus mirabilisが主な起因菌となる2)。セフトリアキソンは一般的にこれらをすべてカバーするため、多くのマニュアルにおいて第1選択とされている。しかし、忘れられがちであるが、セフトリアキソンは比較的広域な抗菌薬であり、これらの想定した菌の、その地域でのアンチバイオグラム上のセファゾリンやセフォチアムの耐性率が低ければ、1日1回投与でなければいけない事情がない限り、後述の耐性化のリスクや注意点からも、セファゾリンやセフォチアムといった狭域の抗菌薬を選択すべきである。アンチバイオグラムを作成していない医療機関での診療の場合は、厚生労働省院内感染対策サーベイランス事業(Japan Nosocomial Infections Surveillance:JANIS)の都道府県別公開情報3)や、国立研究開発法人国立国際医療研究センター内のAMR臨床リファレンスセンターが管理する感染対策連携共通プラットフォーム(Japan Surveillance for Infection Prevention and Healthcare Epidemiology:J-SIPHE)の公開情報4)を参考にする。国内全体を見た場合にはセファゾリンに対する大腸菌の耐性率は高く、多くの施設において使用しづらいのは確かである。一方で、セフトリアキソンは、前述の通り耐性菌である、ESBL産生菌、AmpC過剰産生菌、緑膿菌はカバーをしないため、これらを必ずカバーをする必要がある場面では使用を避けなければいけない。4.セフトリアキソンとセフォタキシムとの違いは?同じ第3世代セファロスポリンである、セフトリアキソンとセフォタキシムは、スペクトラムがほぼ同じであり、使い分けが難しい薬剤ではあるが、2剤の共通点・相違点について説明する。セフトリアキソンとセフォタキシムとのスペクトラムについては、尿路感染症の主な原因となる腸内細菌目細菌に対してのスペクトラムの違いはほとんどなく、対象菌を想定しての使い分けはしない。2剤の主な違いは、薬物速度、排泄が大きく異なる点である。セフォタキシムは投与回数が複数回になること、主に腎排泄であり腎機能での用法・用量の調整が必要であり、利便性からはセフトリアキソンのほうが優位性がある。しかし、セフトリアキソンが胆汁排泄を介して便中に排出され、腸内細菌叢を選択するためか5)、セフォタキシムと比較し、腸内細菌の耐性化をより誘導する可能性を示す報告が少なからずある6,7)。そのため、投与回数や腎機能などで制限がない限り、セフトリアキソンよりセフォタキシムの使用を優先するエキスパートも存在する。5.投与量論争? 1gか2gかサンフォード感染症治療ガイドでは、化膿性髄膜炎を除く疾患では通常用量1〜2g静注24時間ごと、化膿性髄膜炎に対しては2g静注12時間ごと、Johns Hopkins ABX guidelineでは、化膿性髄膜炎を除く通常用量1〜2g静注もしくは筋注24時間ごと(1日最大4mg)での投与と記載されている。米国での集中治療室における中枢神経感染症のない患者でのセフトリアキソン1g/日と2g/日を後方視的に比較評価した研究において、セフトリアキソン1g/日投与患者で、2g/日投与患者より高い治療失敗率が観察された8)。腎盂腎炎ではないが、非重症市中肺炎患者を対象としたシステマティックレビュー・メタアナリシスでは、1g/日と2g/日の直接比較ではないが、同等の効果が期待できる可能性が示唆された9)。日本における全国成人肺炎研究グループ(APSG-J)という多施設レジストリからのデータを用いたpropensity score-matching研究において、市中肺炎に対するセフトリアキソン1g/日投与は2g/日と比較し、非劣性であった10)。以上から、現時点で存在するエビデンスからは、重症患者であれば、2g/日投与が優先され、軽症の肺炎やセフトリアキソンの移行性のよい臓器の感染症である腎盂腎炎であれば、1g/日も許容されると思われるが、1g/日投与の場合は、慎重な経過観察が必要と考える。6.セフトリアキソン使用での注意点【アレルギーの考え方】セファロスポリン系では、R1側鎖の類似性が即時型・遅延型アレルギーともに重要である11)。ペニシリン系とセファロスポリン系は構造的に類似しているが、分解経路が異なり、ペニシリン系は不完全な中間体であるpenicilloylが抗原となるため、ペニシリン系アレルギーがセファロスポリンアレルギーにつながるわけではない。セフトリアキソンは、セフォタキシム、セフェピムとR1で同一の側鎖構造(メトキシイミノ基)を有するため、いずれかの薬剤にアレルギーがある場合は、交差アレルギーが起こり得るので、使用を避ける。ただし、異なるR1側鎖を有する複数のセファロスポリン系にアレルギーがある場合は、β-ラクタム環が抗原である可能性があり、β-ラクタム系薬以外の抗菌薬を選択すべきである。【胆泥、偽性胆道結石症】小児で問題になることが多いが、セフトリアキソンは胆泥を引き起こす可能性があり、高用量での長期使用(3週間)により胆石症が報告されている。胆汁排泄はセフトリアキソンの排泄の40%までを占め、胆汁中の薬物濃度は血清の200倍に達することがある12,13)。過飽和状態では、セフトリアキソンはカルシウムと錯体を形成し、胆汁中に沈殿する。この過程は、経腸栄養がなく胆汁の停留がある集中治療室患者では、増強される可能性がある。以上から、重症患者、高用量や長期使用の際には、胆泥、胆石症のリスクになると考えられるため、注意が必要である。【末期腎不全・透析患者とセフトリアキソン脳症】脳症はセフトリアキソンの副作用のなかではまれであるが、報告が散見される。セフトリアキソンによる脳症の病態生理的メカニズムは完全には解明されていないが、血中・髄液中のセフトリアキソン濃度が高い場合に、β-ラクタム系抗菌薬による中枢神経系における脳内γ-アミノ酪酸(GABA)の競合的拮抗作用および興奮性アミノ酸濃度の上昇により、脳症が引き起こされると推定されている。セフトリアキソン関連脳症の多くは腎障害を伴い、患者の半数は血液透析または腹膜透析を受けていることが報告され、これらの患者のほとんどは、1日2g以上のセフトリアキソンを投与されていた14)。セフトリアキソンの半減期は、血液透析患者では正常腎機能患者と比較し、8~16時間と倍増することが判明しており15)、透析性の高いほとんどのセファロスポリンとは異なり、セフトリアキソンは血液透析中に透析されない14)。以上から、末期腎不全患者の血中および髄液中のセフトリアキソン濃度が高い状態が持続する可能性がある。サンフォード感染症治療ガイドやJohns Hopkins ABX guidelineなど、広く使われる抗菌薬ガイドラインでは、末期腎不全におけるセフトリアキソンの減量については言及されておらず、一般的には腎機能低下患者では投与量の調節は必要ないが、末期腎不全患者ではセフトリアキソンの減量を推奨するエキスパートも存在する。また1g/日の投与量でもセフトリアキソン脳症となった報告もあるため16)、長期投与例で、脳症を疑う症例があれば、その可能性に注意を払う必要がある。7.外来静注抗菌薬療法(OPAT)についてOPATはoutpatient parenteral antimicrobial therapyの略称で、外来静注抗菌薬療法と訳され、外来で行う静注抗菌薬治療の総称である。外来で点滴抗菌薬を使用する行為というだけではなく、対象患者の選定、治療開始に向けての患者教育、治療モニタリング、治療後のフォローアップまでを含めた内容となっている。OPATという名称がまだ一般的ではない国内でも、セフトリアキソンは1日1回投与での治療が可能という特性から、外来通院や在宅診療でのセフトリアキソンによる静注抗菌薬治療は行われている。外来・在宅でのセフトリアキソン治療は、本薬剤による治療が最も適切ではあるものの、全身状態がよく自宅で経過観察が可能で、かつアクセスがよく連日治療も可能な場合に行われる。OPATはセフトリアキソンに限らず、インフュージョンポンプという持続注射が可能なデバイスを使用することで、ほかの幅広い薬剤での外来・在宅治療が可能となる。詳細に関しては、馳 亮太氏(成田赤十字病院/亀田総合病院感染症内科)の報告を参考にされたい17)。1)Wong G, et al. Antimicrob Agents Chemother. 2013;57:6165-6170.2)原田壮平. 日本臨床微生物学会雑誌. 2021;31(4):1-10.3)厚生労働省院内感染対策サーベイランス事業:道府県別公開情報.4)感染対策連携共通プラットフォーム:公開情報.5)Muller A, et al. J Antimicrob Chemother. 2004;54:173-177.6)Tan BK, et al. Intensive Care Med. 2018;44:672-673.7)Grohs P, et al. J Antimicrob Chemother. 2014;69:786-789.8)Ackerman A, et al. Antimicrob Agents Chemother. 2020;64:e00066-20.9)Telles JP, et al. Expert Rev Anti Infect Ther. 2019;17:501-510.10)Hasegawa S, et al. BMC Infect Dis. 2019;19:1079.11)Castells M, et al. N Engl J Med. 2019;381:2338-2351.12)Arvidsson A, et al. J Antimicrob Chemother. 1982;10:207-215.13)Shiffman ML, et al. Gastroenterology. 1990;99:1772-1778.14)Patel IH, et al. Antimicrob Agents Chemother. 1984;25:438-442.15)Cohen D, et al. Antimicrob Agents Chemother. 1983;24:529-532.16)Nishioka H, et al. Int J Infect Dis. 2022;116:223-225.17)馳 亮太ほか. 感染症学雑誌. 2014;88:269-274.

530.

がん患者の予後がコンサルトに与える影響~アンケート結果/日本腫瘍循環器学会

 診療科横断的な治療アプローチの好例として、腫瘍循環器学が挙げられる。がん治療には、治療を遂行する腫瘍医、がん治療による心不全などの副作用に対応する他科の医師、この両者の連携が欠かせない。しかし、両者の“がん患者を救う”という目的は同じであっても、患者の予後を考えた際にどこまで対応するのが適切であるか、については意見が分かれるところである。実際に、がん患者の予後に対する両者の意識を明らかにした報告はなく、がん患者に対し“インターベンション治療などの積極的治療をどこまで行うべきなのか”、“どのタイミングで相談し合うか”などについて、現場ではお互いに頭を悩ませている可能性がある。 そこで、志賀 太郎氏(がん研有明病院 腫瘍循環器・循環器内科/総合診療部長)が「JOCS創設7年目の今、腫瘍医、循環器医、それぞれの意識は~インターネットを用いた『余命期間と侵襲的循環器治療』に対するアンケート調査結果~」と題し、8月4、5日に開催された第7回日本腫瘍循環器学会学術集会にて、腫瘍医と循環器医の連携意識の差や今後の課題について報告した。 本講演内で触れているアンケートは志賀氏を筆頭に大倉 裕二氏(新潟県立がんセンター新潟病院腫瘍循環器科)、草場 仁志氏(浜の町病院腫瘍内科 部長)、向井 幹夫氏(大阪がん循環器病予防センター総合健診/循環器病検診部 部長)が設問を作成し、CareNet.com会員医師1,000人(循環器医:500人、腫瘍医*:500人)を対象として、2023年11月2~15日にインターネット調査したもの。*呼吸器、消化器、乳腺外科、血液内科、腫瘍科に属する医師「腫瘍循環器的治療の介入時、患者予後(余命)を意識する場面」に関するアンケート<腫瘍医向け>Q1:進行がん患者に対し、侵襲的な循環器治療を希望するか?Q2:がんによる予後がどれくらいだとがん患者の循環器的介入を依頼するか?Q3:カテーテル治療などの侵襲的治療を循環器医に依頼する上で重視していることは何か?<循環器医向け>Q1:進行がん患者に対する侵襲的な循環器治療の相談を受けた際、戸惑ったことはあるか?Q2:がんによる予後がどのくらいだとがん患者に対する侵襲を伴う循環器的介入に積極的か?Q3:カテーテル治療などの侵襲的治療を行う上で重視していることは何か?<共通質問>Q4:コンサルテーションをする上で注意していることは何か? アンケート回答の結果は以下のとおり。・アンケート回答者の年齢別割合は、循環器医(30代:34%、40代:29%、50代:24%、60代:13%)、腫瘍医(30代:30%、40代:29%、50代:26%、60代:14%)で、共に30代が最も多かった。・腫瘍医の診療科別割合は、消化器科:49%、呼吸器科:21%、乳腺外科:20%、血液内科:8%、腫瘍科:2%であり、呼吸器科は40代、乳腺外科は50代の回答者が多い傾向であった。・進行がん患者への侵襲的循環器治療について、腫瘍医の33%が希望すると回答し、こうした侵襲的治療の依頼に循環器医の83%が戸惑った経験があると回答した。・がんによる予後(余命)期間と侵襲的循環器治療の介入について、腫瘍医は「半年から1年未満の期間があれば治療介入を依頼する」と回答した医師が、循環器医は「1~3年未満の期間があれば治療介入する」と回答した医師が最も多かった。・侵襲的循環器治療を行う上で重視することは、腫瘍医、循環器医いずれにおいても「患者/家族の希望」「がんによる予後(余命)」という回答が多く、一方で「ガイドライン」を重視するという回答は最も少なかった。・腫瘍循環器領域を問わず、コンサルテーションをするうえで最も注意している点については「医師同志のコミュニケーション方法(対面、電話、カルテ内)」と回答した医師がいずれにおいても最も多かった。また、腫瘍医は「専門家の意向を尊重する」という回答が上位であった。 この結果を踏まえ、同氏は「余命期間と侵襲的循環器治療に対する腫瘍医と循環器医の意識に違いがあり、腫瘍医は半年以上の予後が期待される場合に侵襲的な循環器治療介入を考慮(依頼)する傾向にあることが明らかになった。こうした違いを理解しつつ連携を深めていくことが肝要」とし、「この差を埋めていく必要性があるのかは不明であるが、このような差があることを伝えていくことにも力を入れていきたい」としている。

531.

潰瘍性大腸炎の寛解導入および維持療法におけるリサンキズマブの有用性 (解説:上村直実氏)

 潰瘍性大腸炎(UC)の治療は、生物学的生物学的製剤や低分子化合物の出現により大きく変化している。わが国では、既存治療である5-ASA製剤、ステロイド、アザチオプリン、6-MP等に対して効果不十分または不耐容となったUC患者には、インフリキシマブやアダリムマブなどの抗TNF阻害薬、インターロイキン(IL)阻害薬のウステキヌマブやミリキズマブ、インテグリン拮抗薬であるベドリズマブ、ヤヌスキナーゼ(JAK)阻害薬のトファシチニブやフィルゴチニブなどの使用が推奨されている(『潰瘍性大腸炎・クローン病 診断基準・治療指針 令和5年度改訂版(令和6年3月31日)』厚生労働科学研究費補助金 難治性疾患等政策研究事業「難治性炎症性腸管障害に関する調査研究」(久松班)令和5年度 総括・分担研究報告書)。しかしながら、中等度以上の活動性を有するUC症例の中には新たな薬剤でも十分な効果が得られない患者や副作用により治療が中断される患者が少なくなく、新たな作用機序を有する治療薬が次々と開発されている。 今回、日本人を含む中等度から重度のUC患者を対象としたUCの寛解導入および寛解維持に対する新たなIL阻害薬であるリサンキズマブの有効性と安全性を検証した国際共同試験の結果が2024年7月22日号のJAMA誌に掲載された。なお、わが国の保険診療現場ではIL阻害薬としてIL-12とIL-23に共通するp40サブユニットを標的とするウステキヌマブ(商品名:ステラーラ)とIL-23に特有のp19サブユニットを標的とするミリキズマブ(同:オンボー)が使用されている。 リサンキズマブ(同:スキリージ)はIL-23p19サブユニットを選択的に標的としてIL-23受容体を介したシグナル伝達を阻害するモノクローナル抗体であり、わが国でクローン病、尋常性乾癬、乾癬性関節炎の治療薬として、すでに薬事承認および保険適用を有している。今回は、中等度以上のUCに対する寛解導入および寛解維持目的とした治療薬として2024年6月に薬事承認を取得している。なお、リサンキズマブはウステキヌマブと同じIL-12ファミリーに属する炎症性サイトカインを標的とするが、IL-23のp19サブユニットに対してのみ特異的に結合して大腸粘膜の炎症を抑えることから感染症や悪性腫瘍の発生リスクを軽減する可能性が期待されている。 今回も昨年承認されたミリキズマブと同様、国際共同治験の成績がトップジャーナルに掲載される前に薬事承認されていることは驚きであるが、今後は国際共同治験の結果がジャーナルに掲載される前に保険適用の承認を取得する薬剤が増加するものと思われる。 一方、難治性のUCに対する薬物療法に関する臨床現場からの要望としては、既存の薬物治療に抵抗性を示す患者を対象として、プラセボを対照とした臨床試験の結果から次々に市販されている生物学的製剤それぞれの役割と具体的な使用方法に関するガイドラインの改訂が必要と思われる。

532.

日本におけるベンゾジアゼピンと向精神薬の併用状況

 さまざまな精神疾患のガイドラインでは、少数のケースにおいてベンゾジアゼピン系抗不安薬(BZD)単剤療法による短期介入が推奨されている。対照的に、BZD多剤併用療法は、いかなる場合でも推奨されていない。しかし実臨床では、BZD多剤併用療法が用いられることが少なくない。秋田大学の竹島 正浩氏らは、BZD多剤併用療法と向精神薬併用との関連を明らかにするため、本研究を実施した。Frontiers in Psychiatry誌2024年7月4日号の報告。 JMDCの請求データを用いて、レトロスペクティブ横断的研究を実施した。2019年6月、BZD治療を行った健康保険加入者の医療情報を抽出した。BZD多剤併用療法の定義は、2種類以上のBZD使用とした。年齢、性別、保健者および睡眠薬、抗うつ薬、抗精神病薬の併用数(0、1、2以上)を共変量とし、BZD多剤併用療法と関連する因子を特定するため、二項ロジスティック回帰分析を用いた。 主な結果は以下のとおり。・対象は、BZD治療を行った成人患者10万4,796例(平均年齢:47.0±11.7歳、女性の割合:52.8%)。・BZD多剤併用療法患者の割合は、12.6%であった。・ロジスティック回帰分析では、BZD多剤併用療法と有意な関連が認められた患者は次のとおりであった。【睡眠薬単剤療法患者】調整オッズ比(aOR):1.04、95%信頼区間(CI):1.001〜1.09、p=0.04【抗うつ薬単剤療法患者】aOR:1.57、95%CI:1.51〜1.63、p<0.001【抗うつ薬多剤併用療法患者】aOR:1.98、95%CI:1.88〜2.09、p<0.001【抗精神病薬単剤療法患者】aOR:1.12、95%CI:1.07〜1.19、p<0.001【抗精神病薬多剤併用療法患者】aOR:1.41、95%CI:1.30〜1.54、p<0.001・睡眠薬多剤併用療法患者では、BZD多剤併用療法の割合が低かった(aOR:0.86、95%CI:0.81〜0.91、p<0.001)。 著者らは「抗うつ薬や抗精神病薬の併用数が増加すると、BZD多剤併用療法との関連性が上昇することが示唆された。抗うつや抗精神病薬との併用療法は、一般的に推奨されていないため、このような患者では薬物療法に対し抵抗性を示すと考えられる。そのため、推奨される非薬物療法を実施することで、BZD多剤併用療法を軽減できる可能性がある」としている。

533.

AHA開発のPREVENT計算式は、ASCVDの1次予防に影響するか/JAMA

 米国心臓病学会(ACC)と米国心臓協会(AHA)の現行の診療ガイドラインは、pooled cohort equation(PCE)を用いて算出されたアテローム動脈硬化性心血管疾患(ASCVD)の10年リスクに基づき、ASCVDの1次予防では降圧薬と高強度スタチンを推奨しているが、PCEは潜在的なリスクの過大評価や重要な腎臓および代謝因子を考慮していないなどの問題点が指摘されている。米国・ハーバード大学医学大学院のJames A. Diao氏らは、2023年にAHAの科学諮問委員会が開発したPredicting Risk of cardiovascular disease EVENTs(PREVENT)計算式(推算糸球体濾過量[eGFR]を導入、対象年齢を若年成人に拡大、人種の記載が不要)を現行ガイドラインに適用した場合の、スタチンや降圧薬による治療の適用、その結果としての臨床アウトカムに及ぼす影響について検討した。研究の詳細は、JAMA誌オンライン版2024年7月29日号に掲載された。米国の30~79歳の7,765例を解析 研究グループは、現行のACC/AHAの診療ガイドラインの治療基準を変更せずに、ASCVDリスクの計算式をPCEの代わりにPREVENTを適用した場合に、リスク分類、治療の適格性、臨床アウトカムに変化が生じる可能性のある米国の成人の数を推定する目的で、横断研究を行った(米国国立心肺血液研究所[NHLBI]の助成を受けた)。 2011~20年にNational Health and Nutrition Examination Surveys(NHANES)に参加した30~79歳の7,765例(年齢中央値53歳、女性51.3%)のデータを解析した。 主要アウトカムは、予測される10年ASCVDリスク、ACC/AHAリスク分類、スタチンまたは降圧薬による治療の適格性、予測される心筋梗塞または脳卒中の発症とし、PCEを用いた場合とPREVENTを用いた場合の差を評価した。10年ASCVDリスクは、PREVENTで低下する PCEとPREVENTの双方から有効なリスク推定値が得られた参加者は、心筋梗塞、脳卒中、心不全の既往歴のない40~79歳の集団であった。この集団では、PREVENTを用いて算出した10年ASCVDリスク推定値は、年齢、性別、人種/民族のすべてのサブグループにおいてPCEで算出した値よりも低く、この予測リスクの差は低リスク群で小さく、高リスク群で大きかった。 PREVENT計算式を用いると、この集団の約半数がACC/AHAリスク分類の低リスク群(53.0%、95%信頼区間[CI]:51.2~54.8)に分類され、高リスク群(0.41%、0.25~0.62)に分類されるのは、きわめて少数と推定された。スタチン、降圧薬とも減少、心筋梗塞、脳卒中が10万件以上増加 スタチン治療を受けているか、あるいは推奨されるのは、PCEを用いた場合は818万例であるのに対し、PREVENTを用いると675万例に減少した(群間差:-143万例、95%CI:-159万~-126万)。また、降圧薬治療を受けているか、あるいは推奨されるのは、PCEでは7,530万例であるのに比べ、PREVENTでは7,270万例に低下した(-262万例、-321万~-202万)。 PREVENTにより、スタチンまたは降圧薬治療のいずれかの推奨の適格性を失うのは、1,580万例(95%CI:1,420万~1,760万)と推定される一方、10年間で心筋梗塞と脳卒中を10万7,000件増加させると推定された。この適格性の変動の影響は、女性に比べ男性で約2倍に達し(0.077% vs.0.039%)、また、黒人は白人より高率であるものの大きな差を認めなかった(0.062% vs0.065%)。 著者は、「PREVENTは、より正確で精度の高い心血管リスク予測という重要な目標に進展をもたらすが、推定される変化の大きさを考慮すると、意思決定分析または費用対効果の枠組みを用いて、現在の治療閾値を慎重に見直す必要がある」としている。

534.

COPD・喘息の早期診断の意義(解説:田中希宇人氏/山口佳寿博氏)

 COPD(chronic obstructive pulmonary disease:慢性閉塞性肺疾患)は2021年の統計で1万6,384例の死亡者数と報告されており、「健康日本21(第三次)」でもCOPDの死亡率減少が目標として掲げられている。気管支喘息も、年々死亡者数は減少しているとはいえ、同じく2021年の統計で1,038例の死亡者数とされており、ガイドラインでも「喘息死を回避する」ことが目標とされている。いずれも疾患による死亡を減少させるために、病院に通院していない、適切に診断されていないような症例をあぶり出していくことが重要と考えられている。しかしながら、疾患啓発や適正な診断は容易ではない。現在、COPD前段階ということで、「Pre COPD」や「PRISm」といった概念が提唱されている。閉塞性換気障害は認めないが画像上での肺気腫や呼吸器症状を認めるような「Pre COPD」や、同じく1秒率が閉塞性換気障害の定義を満たさないが、%1秒量が80%未満となるような「PRISm」であるが、それらの早期発見や診断、そして治療介入などが死亡率の減少に寄与しているかどうかについては明らかになっていない。 今回NEJM誌から取り上げるカナダ・オタワ大学からの「UCAP Investigators」が行った報告では、症例発見法を用いたCOPD・気管支喘息の診断と治療により、呼吸器疾患に対する医療の利用が低減することが示された。約3万8,000例の中から、595例の未診断のCOPD・喘息が発見され、介入群と通常治療群に分けられ、呼吸器疾患による医療利用の発生率が評価されている。ガイドラインによる治療を順守するような呼吸器専門医の介入により、被検者の医療利用は有意に低下することが報告された。早期診断・治療を受けることにより、SGRQスコアとCATスコアや1秒量が改善することが示され、症例の健康維持に寄与することが期待されている。また、早期診断することにより、自らの病状の理解や自己管理の重要性を認識することも重要と考えられる。 一見、病気はすべて早期発見・早期治療が良いように思われるが、いくつかの問題点も考えられる。1つは軽症や無症状の症例が診断されることにより、生命予後に寄与しない治療が施される可能性がある。診断された患者は不安や精神的・心理的なストレスを抱えることも懸念される。2つ目に、限りある医療資源を消費してしまうことが推測される。呼吸器専門医や呼吸器疾患に携わる医療者は本邦でも潤沢にいるわけではなく、呼吸器専門医が不在の医療機関も少なくない。より重症や難治例のために専門医の意義があるわけで、軽症例や無症状の症例に対してどこまで介入できるか、忙しい日本の臨床の現場では現実的ではない部分が大きい。3つ目には薬物療法の早期開始により、副作用リスクがメリットを上回る可能性も不安視される。とくに吸入ステロイドによる局所の感染症や糖尿病や骨粗鬆症のリスクは、長期使用となると見逃すことはできないのだろう。 いずれにしても症例発見法は簡便であり多くの医療機関で導入可能と筆者は訴えているが、COPD・喘息の早期診断・早期介入が医療利用の低減のみならず、長期予後や死亡率の減少などにつながるかどうか、より長期的な検討が必要なのだろう。

535.

めまい(BPPV)【いざというとき役立つ!救急処置おさらい帳】第17回

今回は施設内でめまいを訴える患者さんを診察した経験を紹介します。めまいを診る機会は多くありますが、どのようなアプローチが必要なのか復習しましょう。内容が多いので2回に分け、前半では良性発作性頭位めまい症(BPPV)を紹介します。<症例>82歳、女性主訴めまい施設入所中の患者。朝ベッドから起き上がるとめまいを訴え、立てなくなった。昼ごろまで様子をみたが改善しないため臨時往診を依頼。アレルギーなし服用薬高血圧の薬、認知症の薬既往歴高血圧、高脂血症、認知症ベッド上で横になっている。血圧:142/82、脈拍:82、体温:36.2℃さて、皆さんならどのようにアプローチしますか? まず重要なのは、患者さんの訴えが医学的な「めまい」であるかどうかを判断することです。なぜなら、一般的には「立ちくらみ」もめまいと表現されることがあるからです。初めにそのめまいが「中枢性/末梢性めまい」か「前失神」かを区別して、調べるべき内容を検討します。この患者さんは認知症がありましたが、自身の症状については正確に訴えており、起き上がらなくてもめまいを感じているようです。この情報から、前失神ではないと判断できます。(1)STANDINGアルゴリズムSTANDINGアルゴリズムを使ってめまいの種類を鑑別していきます。STANDINGアルゴリズムは救急医でも簡易にできる中枢性めまいを否定するアルゴリズムで、陰性的中率は99%(95%信頼区間:97~100)です。図1を見てください1)。図1 STANDINGアルゴリズム画像を拡大するまず初めにするのはNystagmus(眼振の出方)です。何を鑑別しようとしているかといいますと、BPPVとそれ以外のめまいです。BPPVはまったく発症様式が異なり、特定の向きの頭位変換で潜時(5~6秒)を経てめまいが出現し、1分程度持続して止まる、というのが特徴です。私の経験では、一定の体位をとったまま動きたがらず、動かなければめまいがない、というのが特徴と考えます。今回の患者さんは、頭を動かすとめまいが生じ、動かなければ症状がないとのことで、BPPVが強く疑われました。(2)BPPVの鑑別BPPVは三半規管(図2)に耳石が落下して生じるといわれています。三半規管は前半規管、後半規管、外側半規管に分かれ、前半規管は垂直に立っているため耳石は落下しにくいです。図2 三半規管画像を拡大するまれに「頭を振ったらめまいが強くなる」ということでBPPVと診断している医師がいますがそれは違います。めまいがある人が頭を振ると気持ち悪くなるのは普通のことです。BPPVのめまいの特徴は、「特定の頭位変換で数秒した(潜時)後にめまいが出現し、1分以内に消失する」です。めまいが生じた後に吐き気が残存しますが、それは別です。BPPVは外側半規管型と後半規管型に分かれます。頻度としては後半規管型のBPPVの頻度が多いといわれています。私は簡便性から、外側半規管型を否定してから後半規管型のBPPVの診断に移っています(理由は後述)。<外側半規管型BPPV>外側半規管型BPPVは、耳石が外側半規管に落下することにより症状が生じます。頭を左右に動かすと症状が誘発されます。患側の耳側に頭を向けると、患側方向に強い眼振が出現し、反対側を向けると健側に弱い眼振が出現します。端的に言うと、左右に頭を振るとどちらでも床向きの眼振が誘発され、眼振が強いほうが患側です(図3)。この試験をSupine roll test といいます。図3 Supine roll test(右外側半規管型BPPVの眼振の向きと強度) 注:頭だけ振る画像を拡大する私が先に外側半規管型を否定するのは、BPPVの患者はたいてい横になっているので、そのまま仰向けになってもらえればSupine roll testがすぐに実行できるからです。外側半規管型と診断されればBBQ Roll Maneuver (Lampert method)を実施します(図4)2)。図4 BBQ Roll Maneuver画像を拡大するBBQ roll maneuverは臥位になり、1.患側に頭を傾ける、2.健側に頭を傾ける、3.腹ばいになる、4.患側に側臥位になる、5.仰向けになる、を行います。多くの文献でそれぞれの頭位を30~90秒としていますが、私は耳石がしっかりと確実に流れるようにするため、2分ごとにしています。しかし、この患者さんにSupine roll testを実施しましたが、誘発されませんでした。よって外側半規管型BPPVは否定的と判断しました。<後半規管型BPPV>外側半規管型BPPVでなければ、後半規管型BPPVの可能性が高くなります。後半規管型BPPVはDix Hallpike法で診断します(図5)3)。右(または左)45度頸部捻転位から右(または左)45度懸垂頭位に頭位変換し、めまいが誘発されるかをみます。誘発された側が患側です。図5 Dix Hallpike法画像を拡大する患側でめまいが誘発され、床向きの回旋成分がある眼振が出現します。うまく誘発されたらEpley法を実施します(図6)。図6 Epley法画像を拡大する手順としては、1.座位をとり、患側に頭を向ける、2.そのまま後ろへ倒れ、頭を下垂した状態にする、3.健側に頭を傾ける、4.健側向きに側臥位になる(この際頭は床に向いてもらう)、5.座る、となります。Epley法を実施する際に私が工夫していることが2つあります。1つ目は、手順1と2がDix Hallpike法とまったく同じですので、私はDix Hallpike法で明らかに誘発された場合、そのままEpley法に移行して2から開始しています。2つ目は、4の側臥位になった際、頭位を真横にするとかなりの頻度で嘔吐する/しそうになるため、必ず床を向くように意識しています。誤嚥もしにくくなります。この患者さんは、Dix Hallpike法で右側の陽性となりました。そのままEpley法を実施したところ、普通に歩けるようになりました。そして、認知症のため先ほどまで歩けなかったことを忘れ、ご飯を食べに行ってしまいました。しかし、施設職員からは感動され「BPPVをしっかり勉強します」というお言葉をいただきました。以上がBPPVになります。次回はBPPV以外のめまいで、STANDINGアルゴリズムを用いて中枢性と末梢性を鑑別する方法を紹介します。<クプラ結石型>あまり聞きなれない名称かもしれませんが、日本のめまいガイドラインにも記載されており、三半規管の膨大部にあるクプラと呼ばれるゼラチン状の部位で、頭の傾きを感知しています。そこに耳石が付着して頭位変換によりクプラが変位し、めまいが誘発されるといわれています4)。特徴としては持続時間が1分以上と長く、先述したEpley法やBBQ maneuverで治癒しにくいことが挙げられます。英語ではcupulolithiasisと表現されますが、PubMedで検索しても英語の論文ではほとんど触れられておらず、エビデンスは限られているようです。しかし、実際に診療していると、BPPVの病歴だけれど妙に持続時間が長く、治療でも改善しないことがあります。その際はクプラ結石型を疑いましょう。クプラ結石型に対してはエビデンスのある治療はないですが、Gufoni法が効くのではという報告があります5)。<HINTS method>中枢性めまいと末梢性めまいの鑑別にHINTS methodという方法があるのですが、時折BPPVに使用している医師を目撃します6)。前提としてHINTs methodはBPPVには使用できません。HINTsのNである、「方向交代性眼振ありで中枢性の疑い」ですが、BPPVは方向交代性の眼振が特徴です。その点を踏まえてもSTANDINGアルゴリズムの最初にBPPVかどうかを見分けるのは非常に重要と考えます。 1)Vanni S, et al. Acta Otorhinolaryngol Ital. 2014;34:419-426.2)Hwu V, et al. Cureus. 2022;14:e24288. 3)You P, et al. Laryngoscope Investig Otolaryngol. 2018;4:116-123.4)日本めまい平衡医学会診断基準化委員会編. Equilibrium Research. 2009;68:218-225. 5)武田 憲. めまいのリハビリテーション 耳石置換法と平衡訓練. 日本耳鼻咽喉科学会会報. 2017;120:9-14.6)Gerlier C, et al. Acad Emerg Med. 2021;28:1368-1378.

537.

肥大型心筋症の管理ガイドラインを策定、米ACC、AHA

 米国心臓病学会(ACC)と米国心臓協会(AHA)が発表した、肥大型心筋症(HCM)患者の管理に関する推奨事項が示された新しい臨床ガイドラインが、「Journal of the American College of Cardiology」に5月8日掲載された。 米メイヨー・クリニックのSteve R. Ommen氏らは、HCMの管理について臨床医を導くための推奨事項を作成するために、包括的な文献レビューを実施した。 その結果、最良の臨床ケアを提供するためには、協働意思決定が必要であることが示された。ケアを最適化するためには、適切な専門知識を有する集学的HCMセンターへの紹介が重要であるが、循環器一次医療チームが評価、治療、長期的ケアを開始することも可能である。ケアの基本には、家族歴の慎重な確認、遺伝的伝達の可能性に関するカウンセリング、遺伝子検査の選択肢が含まれる。管理の重要な要素の一つは、患者の心臓突然死のリスクを評価することである。心臓突然死のリスク因子は、HCMの小児患者と成人患者で重みや構成要素が異なる。症候性閉塞性HCM患者に対しては、現在、心筋ミオシン阻害薬が治療薬として使用可能である。これらの薬剤は、第一選択の薬物療法で十分な症状緩和が得られない患者にとって有益である。運動負荷試験は、運動忍容性を判断する際に有用である。HCMを有していても運動による健康全般への有益な効果が得られることを支持する研究結果が増えている。 Ommen氏は、「最新のデータを取り入れたこの新しいガイドラインは、HCM治療のための最新の推奨事項を臨床医に提供するものである。HCM患者が適切なケアと管理によって、正規の日常生活に戻れるというエビデンスが、より多く見られるようになった」と述べている。 なお複数人の著者が、製薬業界や医療機器業界との利益相反(COI)に関する情報を明らかにしている。

538.

熱中症診療ガイドラインの分類に最重症群「IV度」を追加

 7月25日、日本救急医学会の熱中症および低体温症に関する委員会が『熱中症診療ガイドライン2024』を公表した。本ガイドラインの改訂は10年ぶり。熱中症診療ガイドライン2024では熱中症の診療と予防の全般をカバーし、定義・重症度・診断、予防・リスク、冷却法、冷却法以外の治療(補液、DIC治療薬)、小児関連の5分野より24個のClinical Question(CQ)が設定されている。熱中症診療ガイドラインの重症度分類、最重症群がIII度からIV度へ これまで熱中症診療ガイドライン2015年版でIII度としてきた重症群の分類の中にさらに注意を要する最重症群が含まれていたが、改訂版である熱中症診療ガイドライン2024年版ではこの最重症群を「IV度」と同定し、Active Coolingを含めた集学的治療を早急に開始するよう提唱している。これにより、IV度は膀胱温や直腸温などの深部体温を用いて「深部体温40.0℃以上かつGCS≦8」*と定義し、Bouchama基準の重症が2024年版の分類でIV度に該当することになる。熱中症診療ガイドライン2024でのIII度の分類は「IV度に該当しないIII度(2015)」となった。 さらに、IV度の可能性がある患者を現場や搬送中、あるいは来院直後に把握する基準としてqIV度(quick IV度)「表面体温40.0℃以上(もしくは皮膚に明らかな熱感あり)かつGCS≦8(もしくはJCS≧100)**【深部体温の測定不要】」を設け、併せて提唱している。もし、表面体温にてqIV度と考えた場合は、深部体温測定を行い、速やかに重症度を判断する。深部体温が40.0℃以上でIV度と判断された場合には、早急にActive Coolingを含めた集学的治療を実施する。*Glasgow Coma Scale  **Japan Coma Scale熱中症診療ガイドライン2024では用語統一にも注意 熱中症診療ガイドライン2024ではActive Coolingについて、何らかの方法で熱中症患者の身体を冷却することと定義し、熱中症診療ガイドライン2015にて「体温管理」「体内冷却」「体外冷却」「血管内冷却」「従来の冷却法(氷嚢、蒸散冷却、水式ブランケット)」「ゲルパッド法」「ラップ法」などと記載していた方法をActive Coolingとして包括的な記載に統一されている。ただし、2015版で記載されていた「冷所での安静」はPassive Cooling(冷蔵庫に保管していた輸液製剤を投与することや、クーラーや日陰の涼しい部屋で休憩すること)とし、これに該当するものはActive Coolingに含まない(CQ3-01、CQ3-02、BQ4-01、CQ4-02、FRQ4-03、CQ5-02)。また、Active Coolingと“集中治療、呼吸管理、循環管理、DIC治療”はActive Coolingを含めた集学的治療と表現される。なお、冷蔵庫に保管していた輸液製剤を投与することは、薬剤メーカーが推奨する投与方法ではなく、重症熱中症患者への有効性を示すエビデンスはないと示している(p.5)。熱中症診療ガイドライン2024の分類における診断基準と治療方法 熱中症診療ガイドライン2024での熱中症の診断基準は「暑熱環境に居る、あるいは居た後」の症状として、以下のように分類され、推奨される治療方法が記載されている(p.7、実際はアルゴリズムとして明記)。I度 めまい、失神(立ちくらみ)、生あくび、大量の発汗、筋肉痛、筋肉の硬直(こむら返り)があるも意識障害を認めないもの。通常は現場で対応可能と判断する。Passive Coolingを行い、不十分であればActive Cooling、経口的に水分と電解質の補給を行う。II度 頭痛、嘔吐、倦怠感、虚脱感、集中力や判断力の低下(JCS1)を認める。医療機関での診察を必要とし、Passive Cooling、不十分ならActive Cooling、十分な水分と電解質の補給(経口摂取が困難なときは点滴)を行う。III度 (1)中枢神経症状(意識障害JCS2、小脳症状、痙攣発作)、(2)肝・腎機能障害(入院経過観察、入院加療が必要な程度の肝または腎障害)、(3)血液凝固異常(急性DIC診断基準[日本救急医学会]にてDICと診断)の3つのうちいずれかを含む場合、入院治療の上、Active Coolingを含めた集学的治療を考慮する。IV度 深部体温40.0℃以上かつGCS≦8の場合、Active Coolingを含めた集学的治療を行う。 重症例(III~IV度)の治療法としては、Active Coolingを含めた集学的治療を行うことを推奨しているが、Active Cooling の中の個別の冷却方法を推奨はしない。一方、軽症例(I~II度)は、クーラーや日陰の涼しい部屋で休憩するPassive Coolingと水分・電解質の補給で症状が軽快しうるが、改善に乏しい場合は、深部体温を測定したうえで、Active Coolingを行うべきである、と記されている。 検討課題として、経口補水液、DIC治療薬、暑熱順化については十分な研究成果が得られていない点も記されている(p.5)。熱中症の疫学的特徴 厚生労働省の人口動態統計(確定数)によると、熱中症の死亡者数は毎年1,000例を超え、全国の熱中症搬送者数は9万1,467例に上る。年齢区分別では、高齢者(満65歳以上)が最も多く、次いで成人(満18歳以上満65歳未満)、少年(満7歳以上満18歳未満)、乳幼児(生後28日以上満7歳未満)の順となっており、発生場所は住居が最も多く、次いで道路、公衆(屋外)、仕事場(道路工事現場、工場、作業所など)の順となっている。他方で、全国の救命救急センターの入院症例を対象とした日本救急医学会の熱中症の調査Heatstroke STUDY(HsS)2020-21では、65歳以上が60%強、男性が70%弱、屋外発生が50%(日常生活が60%、労働が30%、スポーツが10%)、マスク着用は少数(不明例が多数)であった。  最後に同委員会担当理事の横堀 將司氏(日本医科大学大学院医学研究科救急医学分野 教授)ならびに委員長の神田 潤氏(帝京大学医学部附属病院高度救命救急センター)らは、「HsSによると、IV度におけるActive Cooling実施率は90%以上であるにもかかわらず、院内死亡率が20%以上と重篤な状況にある。さらにIV度の可能性が高いqIV度のなかでも、深部体温の不明・未測定例が25%に上り、その不明・未測定例でのActive Coolingの実施状況は60%程度で、院内死亡率は37.0%であった。この状況を踏まえ、最重症であるIV度の熱中症が重篤である点、重症化が懸念されるqIV度での深部体温測定とActive Coolingの徹底が重要」としている。

539.

院外心停止者の血管アクセス、骨髄路vs.静脈路/BMJ

 非外傷性院外心停止成人患者において、骨髄路確保は静脈路確保と比較して、生存退院、病院到着前自己心拍再開、持続的自己心拍再開、良好な神経学的アウトカムのいずれについても差はなかった。台湾・国立台湾大学病院のYing-Chih Ko氏らが、クラスター無作為化比較試験「Venous Injection Compared To intraOsseous injection during Resuscitation of patients with out-of-hospital cardiac arrest trial:VICTOR試験」の結果を報告した。蘇生に関するガイドラインでは、院外心停止時の薬物投与には静脈路を優先し、静脈路が確保できない場合は骨髄路を使用することが推奨されているが、これまでの後ろ向き研究には限界があった。著者は、今回の前向き試験の結果に基づき、「骨髄路確保は、静脈路確保の代替ではなく第1選択として考慮しうるもので、患者や救急医療システムのさまざまな特徴に基づいた血管アクセスの最適な意思決定プロセスを検討する必要がある」とまとめている。BMJ誌2024年7月23日号掲載の報告。4つの高度救命救急チームを隔週で骨髄路群または静脈路群に無作為化 VICTOR試験は、2020年7月6日~2023年6月30日に、台北市消防局に所属する4つの高度救命救急チームが参加し、台北市内のすべての救急責任病院で実施された(2021年5月20日~2021年7月31日はCOVID-19流行のため一時中断)。 研究グループは、非外傷性院外心停止成人患者(20~80歳)を対象とし、4つの高度救命救急チームをそれぞれ2週ごとに骨髄路群または静脈路群に割り付け(クラスター比率は1対2)、骨髄路群の患者には機械的骨髄内穿刺、静脈路群の患者には上肢の静脈内穿刺が行われた。両群とも血管アクセスが確保された後、アドレナリン(エピネフリン)1mg、続いて生理食塩水10mLを急速注入した。 主要アウトカムは生存退院、副次アウトカムは病院到着前自己心拍再開、持続的自己心拍再開(2時間以上)、退院時の良好な神経学的アウトカム(脳機能カテゴリースコア≦2の生存)などであった。骨髄路群と静脈路群で、生存退院、病院到着前自己心拍再開などに有意差なし 適格基準を満たした1,771例が登録され、主要アウトカムのデータが得られた1,732例(骨髄路群741例、静脈路群991例)が解析対象となった。患者は、年齢中央値65.0歳、男性1,234例(71.2%)であった。 生存退院は、骨髄路群では79例(10.7%)であったのに対し、静脈路群では102例(10.3%)であった(オッズ比[OR]:1.04、95%信頼区間[CI]:0.76~1.42、p=0.81)。 副次アウトカムについても、病院到着前自己心拍再開(OR:1.23、95%CI:0.89~1.69、p=0.21)、持続的自己心拍再開(0.92、0.75~1.13、p=0.44)、良好な神経学的アウトカム(1.17、0.82~1.66、p=0.39)のいずれも、両群間に有意差は認められなかった。

540.

遺伝性乳癌卵巣癌(HBOC)診療ガイドライン 2024年版 第3版

エビデンスをアップデート! 最新HBOC診療指針!多診療科・多職種・当事者がガイドライン作成に加わることで多くの意見を収集し、一人ひとりが納得のいく選択を行えるよう推奨決定に至るまでの議論をわかりやすく記載。総論・遺伝領域では多遺伝子パネル検査(MGPT)のさらなる普及を踏まえBRCA遺伝子に限定せず解説。乳がん・卵巣がん領域では領域をまたがるクエスチョン(RRSO、ART等)を統合し推奨を明瞭化。前立腺がん・膵がん・皮膚がんにおいても最新エビデンスを反映した。画像をクリックすると、内容の一部をご覧いただけます。※ご使用のブラウザによりPDFが読み込めない場合がございます。PDFはAdobe Readerでの閲覧をお願いいたします。目次を見るPDFで拡大する目次を見るPDFで拡大する遺伝性乳癌卵巣癌(HBOC)診療ガイドライン 2024年版 第3版定価4,180円(税込)判型B5判頁数344頁発行2024年7月編集日本遺伝性乳癌卵巣癌総合診療制度機構ご購入(電子版)はこちらご購入(電子版)はこちら紙の書籍の購入はこちら医書.jpでの電子版の購入方法はこちら紙の書籍の購入はこちら

検索結果 合計:3097件 表示位置:521 - 540