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第299回 いよいよ明後日投票日、今回の各党の医療・社会保障政策は?~野党各党編

INDEX国民民主党日本共産党れいわ新選組減税日本・ゆうこく連合参政党日本保守党社民党チームみらいさて2026年2月8日投開票の衆院選に関連し、前回は与党の自民党、日本維新の会、最大野党の中道改革連合が掲げる医療・社会保障政策を取り上げた。今回は残る野党各党を取り上げる。国民民主党まずは昨今、議席増を続け野党内でも台風の目になりつつある同党は、5つの大きな政策を掲げ、そのもとで中項目(<>内)、さらに小項目(数字項目)を置き、小項目の下にさらにナンバリングした政策各論を提示している。その中身は以下に要約・列挙した。詳細は以下のとおり1.手取りを増やす<1.令和の所得倍増計画>1「消費」の拡大(1)介護職員、看護師、保育士等の給料倍増(介護職員、看護師、保育士等の給料、10年で倍増。処遇改善加算等を対象者に直接給付)(4)社会保険料軽減策の導入(社会保険料還付制度の導入、130万円の壁突破助成金の創設、社会保険料に上乗せされる「子ども・子育て支援金」の廃止)2「中小企業・非正規賃上げ応援10策」1)社会保険料負担軽減(中小・中堅企業の新規正規雇用の増加に伴う社会保険料の事業主負担の半分相当を助成)3.「人づくり」こそ国づくり<5.出産・子育て支援策の拡充と所得制限撤廃>8妊娠・出産に係る公費支援(不妊治療への公的支援やノンメディカルな卵子凍結の助成拡充、小児、若年性がん治療薬の妊孕性温存療法[精子・卵子保存]を保険適用、安全な無痛分娩を受けられる体制整備)9日本型ネウボラの創設(保健師・医師などによる妊娠時から高校卒業までの「伴走型支援」を制度化)<6.子どもの安全と福祉の確保>2子どもの死亡検証(チャイルドデスレビュー)の導入3ヤングケアラー対策(ヤングケアラー支援法の施行状況の検証、実態調査の定期的実施、実態調査に基づく効果的な支援の方法の調査研究)11介護と仕事の両立支援(ビジネスケアラー対策)12ダブルケアラー対策(ダブルケアラー支援法の制定)<10.現役世代と次世代の負担適正化と医療・介護の質向上を両立させる社会保障制度の確立>1年齢ではなく能力に応じた負担(後期高齢者の医療費自己負担の原則2割化、現役並所得者3割。現役並所得の判断基準での金融所得、金融資産等の保有状況を反映)2高齢者医療制度への公費投入増3科学的根拠に基づいた保険給付範囲の見直し(OTC類似薬の医療保険対象見直し、保険外併用療養費制度の弾力化)4ヘルスリテラシー教育の推進5セルフメディケーションの推進(医療用成分のスイッチOTC化推進、検査薬OTC化、リフィル処方箋普及)6中間年薬価改定の廃止(経済成長率を踏まえた新たな薬価改定ルールの策定、中央社会保険医療協議会への医薬品関連業種の代表者の追加)7予防医療・リハビリテーション(認知症・フレイルの予防、リハビリテーションの充実による健康寿命の延伸)8医療提供体制の充実、医療の質と効率の改善(1)医療従事者の負担軽減と働き方改革(医師・看護師・薬剤師等が実施可能な行為や役割の見直し、女性医療従事者の就業継続・再就職支援)(2)地域医療体制の見直しと機能強化(医師の地域偏在や診療科偏在の是正に資する診療報酬評価、かかりつけ医[日本版GP]・かかりつけ薬局[日本版CPCF]制度の導入、人頭払制度、薬剤師の職能活用、地域フォーミュラリー[医薬品の使用指針]の推進)(3)医療DXの推進(オンライン診療、標準型電子カルテ、電子処方箋の普及の推進、「全国医療情報プラットフォーム」の整備を通じた医療情報の共有化)9終末期医療の見直し10介護サービス・認知症対策の充実(訪問介護の基本報酬を引き上げ、全介護職員の賃金を引き上げ、介護福祉士の上位資格「地域包括ケア士(仮称)」の制度化)11介護研修費用の一部補助12介護福祉士国家試験に外国人人材向けの母国語併記13ケアマネジャー研修の負担の軽減(ケアマネジャー研修内容・体制の全国一律化)<12.ジェンダー後進国脱却、多様性社会実現>1生理、更年期障害政策(「生理の貧困」に対応した生理用品の無償配布)4.自分の国は「自分で守る」<1.防災・減災対策強化>4熱中症対策(公共施設、商業施設等の冷房設備を備えた「クーリングシェルター」の指定促進と周知、熱中症警戒アラートのわかりやすい発信と高齢者などへの周知)<3.「総合的な経済安全保障」の強化>1国内調達の拡充(1)国民の命と生活を守る医薬品や医療機器の安定供給確保(革新的新薬へのアクセス確保とドラッグラグ・ドラッグロス改善のため、欧米と比較して相対的に低い新薬収載時の価格算定方式を見直し、特許期間中の薬価維持制度、市場拡大再算定制度の市販後にイノベーションを再評価できる仕組みへ、共連れルール廃止、供給不安に陥っている医薬品について増産支援、不採算に陥ることのない薬価下支え制度、急激な物価高騰に対応できる制度の構築、医薬品メーカーの生産・在庫・出荷状況等を一元管理するデータベース構築)(2)イノベーション創出環境の整備(医薬品や医療機器での「社会課題(公的医療介護費、生産性損失)の解決につながるイノベーション」や「世界に先駆けて生み出されたイノベーション」、「医療の質の向上や医療の効率化に資するイノベーション」を積極的に評価、創薬エコシステム・イノベーション拠点を構築、医薬品や医療機器のイノベーションを促進に向けた各種法規制の国際的調和の推進、質の高い効率的な医療の提供と医薬品や医療機器の研究開発の効率化に向けた「仮名加工医療情報」の二次利用にかかる法整備、臨床試験等に活用しうるデータの標準化と信頼性確保等の推進、フェムテック関連医療機器や医薬部外品の届出、認証の円滑化) 以前から指摘していることだが、同党の医療・社会保障政策は与野党すべてを見回しても、もっとも充実していると言っていい。そして今回の内容は昨年の参院選時のものとまったく同じである。まあ、作り込んでいるがゆえに今さら変更の必要はないということなのだろう。日本共産党現存する日本最古の政党(1922年結党)である同党だが、今回公表された医療・社会保障政策は、かなり数が多い。以下に列挙する(歯科は除く)。詳細は以下のとおり患者負担増や保険料の負担増を起こさないための国費投入・国庫負担の引き上げを行い、診療報酬のさらなる増額・改善を進め、医療従事者の賃上げを実現「地域医療構想」による病床削減、強引な病院統廃合の阻止医師養成数の削減計画を中止し、「臨時増員措置」を継続するなど医師の計画的増員を推進病院の勤務医などの時間外労働上限を引き下げ看護師の計画的な増員を推進OTC類似薬の「特別料金」徴収の阻止70歳以上の窓口負担を一律1割に引き下げ、軽減・無料化を推進1兆円の公費投入増で国保料を協会けんぽの保険料並みへ保険料の「均等割」「平等割」を廃止。「所得割」の保険料率の引き下げ、低所得世帯に重い「資産割」改善生活困窮者の国保料を免除し国庫で補填「国保の都道府県化」による国保料引き上げに反対保険料滞納者への支援なしの10割負担(特別療養費の支給)の中止保険料滞納者の生活相談による収納活動へ転換保険料・窓口負担の軽減障害者、高齢者などの医療費無料化(現物給付)を行う自治体への国保の国庫負担を減額制度の中止国保法第44条の規定にもとづく、生活困窮者の窓口負担(一部負担金)の減免を積極的に推進国保組合が行う独自給付への国庫補助削減を止めて拡充へ18歳までの医療費無料化現役世代の窓口負担の2割への引き下げ高額療養費制度の改善・拡充後期高齢者医療制度の保険料・窓口負担の引き上げを中止。制度を廃止高齢者医療への国庫負担を増額し、現役世代の支援金負担、高齢者の保険料負担を軽減マイナ保険証の強制をやめて健康保険証を存続資格確認書はマイナ保険証の有無に関係なく国民全員に交付不具合続出のマイナカードによるオンライン資格確認の中止・見直し「子ども・子育て納付金」の廃止高額療養費制度の患者負担増案の“復活”を許さず、制度の改善高額療養費制度の負担限度額の上限を引き下げ、「1%」の定率部分を廃止高額療養費限度額の設定を“月ごと”から“治療ごと”に変更世帯の所得区分ごとに年間を通じた高額療養費負担上限額を設定3疾患(血友病、HIV、人工透析の腎臓病)限定の「高額長期疾病にかかわる高額療養費の支給特例」を拡大し、療養が長期にわたる場合に対応した「長期療養費給付制度(仮称)」を創設新型コロナ感染症の抗ウイルス薬などに公費補助の仕組みを設定し、患者の自己負担を、インフルエンザのタミフル並みに新型コロナワクチン接種の経済負担軽減の仕組みを創設新型コロナワクチン接種後の有害事象の原因を徹底究明と接種と症状との因果関係の認定に至らなかった事例も含めた幅広い補償・救済コロナ感染者や疑いのある人に対する十分な検査と治療の体制整備(救急・入院の拡充など「コロナ以外」の医療の逼迫が起こらないようにする体制の強化、高齢者・障害者施設、医療機関などにおける検査等の防護措置の実施を国が支援)国の負担で肺・心臓の長期的障害や筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群(ME/CFS)など、「コロナ後遺症」の治療・研究、患者への生活支援を推進コロナ危機の教訓を踏まえ感染症病床の2倍化、保健所の箇所・職員数の大幅増、集中治療室(ICU)設置を支援する制度の創設ワクチンや治療薬の研究・開発に対する財政支援、水際・検疫体制の抜本的な強化新興・再興感染症の発生・拡大に備える検査・医療体制を拡充し、体制・人員・資器材等を確保教育・保健の連携による性に関わる正しい知識の普及と予防法の周知、検査体制の強化、一般医療機関への情報提供による性感染症の予防・早期発見・治療の実現安全性・有効性が確認されたワクチンの公費接種事業を推進。ワクチン接種後に有害事象が起こった事例の原因の徹底究明と調査、被害者の治療・補償・救済を、国の責任で推進。医療費適正化計画の撤廃混合診療、保険外治療の拡大の阻止差額ベッド料などの自費負担を廃止株式会社による医療経営解禁を阻止協会けんぽへの国庫補助を法定上限の「20%」に引き上げ、労働者・中小企業の負担軽減にむけた、国の支援を強化国民の健診データ・情報の営利企業に引き渡しに反対薬価構造を根本的に見直し新薬などの高薬価是正で得られた財源を医療の充実や医療従事者の処遇改善などへ必須医薬品の安定供給を確保するため、後発品(長期収載品)の薬価を採算のとれる水準にするよう見直し。同時にメーカーに責任を課し、委託生産の規制強化や、原薬の国産化を推進無料低額診療への支援を強化し、薬剤費への制度適用を目指す医薬品・医療機器に偏った報酬評価のあり方を見直し、医療従事者の労働を適正に評価する診療報酬に改革「包括払い(定額制)」の導入・拡大に反対初・再診料、入院基本料の引き上げ標準算定日数を超えたリハビリを「保険外併用療養」とする制限を廃止人工透析「夜間・休日加算」を患者負担の軽減とともに適切な水準へ引き上げ出産一時金のさらなる増額と出産費用の無償化助産師の養成数を増やし、助産院へ公的支援助産院を地域の周産期医療ネットワークに位置付け、助産師と産科医の連携を国の責任で推進通常分娩の保険適用・窓口無料化の実現時は助産師による出産、妊産婦へのケアや各種指導なども産科医療機関との連携など安全確保を前提に保険適用医療事故の検証を行う調査機関に関する制度の改善産科医療補償制度の抜本的見直しを進めつつ、無過失補償制度を創設患者の権利を明記し、医療行政全般に患者の声を反映する仕組みをつくる「医療基本法」の制定現行の「診療明細書の発行」を見直し国の責任で、がんの専門医の配置や専門医療機関の設置を推進未承認抗がん剤の治験の迅速化とすみやかな保険適用、研究予算の抜本増、専門医の育成、がん検診への国の支援の復活など、総合的がん対策を推進保険診療には「ゼロ税率」を適用し、医薬品などにかかった消費税を還付社会保険診療報酬に係る事業税の非課税措置、医療機関の概算控除の特例の継続・存続救急・救命体制への国の補助を2倍化。新しい国の補助制度をつくり、ICU病床(HCUを含む)の2倍化救急隊員の抜本増、ドクターヘリの充実、地域医療の再生とあわせた救急・搬送体制の整備・拡充国の責任で小児救急体制を整備し、新生児特定集中治療室(NICU)の増設はり・きゅうの保険適用の改善・拡充在宅医療・介護における駐車問題の解決 いやはや、今回の同党の政策の多いこと多いこと。ただし、率直に言えば既存政策への「反対」「撤廃」「中止」などの文言が多く、実現の可能性について、私個人は相当疑問符が付く。もっとも、どの政党も提案していない新型コロナワクチンの定期接種に関する接種費用補助は目を引く。この辺は他党に見習ってもらいたいものである。れいわ新選組ご存じ山本 太郎氏を代表とする同党だが、山本氏が「多発性骨髄腫の一歩手前」と公表し議員辞職。そして最近は共同代表の大石 あきこ氏が代わりにメディアに登場している。同党のマニフェストでは5つの大項目を掲げ、その下に具体的な政策を標榜している。以下、要約・列挙する。詳細は以下のとおり03.社会保険料は国のお金で引き下げる後期高齢者医療制度は廃止し、全額国費負担介護保険の国負担割合を50%以上に引き上げ04.生きててよかったと思える国~今すぐできる少子高齢化対策~介護・保育の月給10万円アップ民間事業者が少ない地域で介護士を公務員化し「公務員ヘルパー」を復活介護保険の利用者負担を一律1割。低所得者の利用料免除・減免を制度化要支援1、2のホームヘルプ、デイサービス利用の保険給付復活介護保険サービスを趣味など生活の充実にも利用可能に 上記以外にも「国立病院、公立病院の統廃合、病床の削減(地域医療構想)の中止」「マイナンバーカード廃止」「健康保険証の復活」などがあるが、基本的に同党も2025年の参院選と政策に変更はない。減税日本・ゆうこく連合衆院解散直前の立憲民主党と公明党の新党結成に反発した立憲民主党の原口 一博氏(元総務相)と、日本保守党を離党し、衆院内会派で「減税保守こども」を結成していた河村 たかし氏(元名古屋市長)、竹上 裕子氏、平岩 征樹氏、参政党を離党した鈴木 敦氏が参加して、原口・河村両氏が共同代表で結成した。当初5人の国会議員がいることで、政党要件を満たしたが、最終的には鈴木氏が出馬を見送ったため、現状は4人。今回は4つの大きなスローガンを公約として発表している。その中の1つ「三、日本救世【命・安全・教育】国民の命を利権から守り抜き、次世代へ豊かな国土を引き継ぎます」の項で以下のような公約を掲げている。詳細は以下のとおり命を守る決断:新型コロナワクチン(遺伝子製剤)の接種を直ちに中止し、被害の実態解明と全ての被害者の救済を最優先医療・福祉の最適化:ICTを活用した「かかりつけ医制度」の導入により、過剰医療や医療過誤を是正。難病・障害者基本法の改正により合理的配慮を徹底 2番目はまだしも、1番目ははっきり言っていただけない。ご存じのように共同代表の原口氏は、mRNAワクチンについて、かなり出所不明な情報を発信するワクチン懐疑派。このためmRNAワクチンの製造・販売元の1社であるMeiji Seikaファルマから、名誉棄損による損害賠償請求訴訟を起こされている。参政党さて、前回の参議院選も含め昨今の選挙では、国民民主党とともに議席を伸ばしている同党。以前も取り上げたように、失礼ながらややトンデモ政策が多いのだが、今回はどうだろう?今回は3つの柱と9の政策(<>内)を掲げ、9つの政策の下に詳細な説明も加わっているほか、分野別の詳細政策も掲げている。詳細は以下のとおり1の柱 日本人を豊かにする~経済・産業・移民~<政策1“集めて配る”より、まず減税>消費税減税と社会保険料軽減で国民負担率上限35%実現2の柱 日本人を守り抜く〜食と健康・一次産業〜<政策6 安心医療で健康国家>診療・介護・障害福祉報酬を抜本的に引き上げ、基礎年金の受給額の底上げ医療・介護・福祉従事者の賃金アップと過重労働の改善健康維持・重症化予防に取り組む人へのインセンティブ付与新型コロナ対応を検証し、実効的な感染症対策を再構築以下は「健康・医療」の分野別政策守る医療、正す医療。現場を救い、制度を持続させる仕組みを再構築診療・介護・障害福祉報酬(各サービスの公定価格)を抜本的に引き上げ、医療・介護・福祉従事者の賃金をアップし、過重労働を改善不必要な重複検査や過剰な治療・投薬等については、医学的妥当性を重視し、適正化かかりつけ医機能を重視し、継続的な健康管理や相談に取り組む医療機関を評価する報酬体系を検討OTC医薬品で対応可能な軽症疾患はセルフケアを基本とし、安易な処方を抑制(重症化や合併症のリスクが高い疾病での必要な治療・投薬を妨げるものではない)フリーアクセスで、いつでも何回でもどの医療機関でも受診ができる仕組みを見直す医療DXを活用し、業務効率化や研究開発に繋げる予防医療の推進により、医療費適正化と地域経済活性化を両立科学的根拠が確立した予防医療・重症化予防を段階的に保険対象へ生活習慣病、フレイル、認知症等について、予防・再発防止に取り組んだ医療機関を評価する制度を導入健康診断、重症化予防、生活習慣改善等により、医療費適正化に貢献した方を評価する仕組みを導入。評価に応じて、国内旅行クーポンや地域消費につながるインセンティブ制度を検討。新型コロナ対応とmRNAワクチン施策の検証~次なる感染症に備えるための、責任ある再構築政府で新型コロナ対応およびmRNAワクチン施策全体について、独立性・透明性を確保した検証実施を求め、検証結果を国民に分かりやすく公表mRNAワクチンは短期的な効果だけでなく、中長期的影響を見据えた安全性評価と治験・調査を徹底新型コロナウイルスを含む新興感染症でウイルスの発生経緯・拡大要因・対応について、政府が専門的かつ独立性の高い検証を実施WHOなど国際機関の情報や勧告などは、日本の実情に即して妥当性を科学的に評価し、主体的に判断できる体制を整備。国際機関の判断が日本の状況に適さないと合理的に判断される場合は、国内専門機関の評価を優先できる制度設計高リスク病原体を扱う国内研究施設について、立地、管理、運用に関する安全基準を厳格化し、事故・流出リスクを最小化科学的根拠の明確な提示と、国民一人ひとりの自己決定権を最優先とするワクチン政策ワクチン接種は、年齢・基礎疾患・重症化リスクを踏まえた任意接種を原則効果と副反応などのリスクについて、国民に分かりやすく情報提供接種後の健康影響について、中長期的な追跡調査と結果の公表を実施医師による副反応報告と健康被害救済制度への協力体制を強化がん・難病の“治療と生活”を国の責任でしっかり守る総合支援がん・難病に関し、国の責任で「治療と生活」を守る。診断の遅れ、手続きの壁、医療格差、地域格差をゼロへがん・難病の患者が抱える就労・学業・介護・移動・家族負担を含む「生活困難」に対し、医療にとどまらず、福祉・労働・教育・地域政策を束ねて一体で実装治療法の確立と新薬開発支援を拡充し、実用化までの期間短縮。そのための研究投資とデータ基盤整備を推進有効性が確認されたがん検診の費用補助等により、受診率を全国的に引き上げ老老介護やヤングケアラーを地域全体で支える仕組みを構築介護を社会の基盤へ:地域包括ケア強化と年金改革で老後不安を解消「65歳以上を高齢者」の定義の見直し介護報酬を引き上げ老老介護や介護離職を防ぎ、制度と地域で支える仕組み作り加算の申請手続きなど、行政が現場に要求する過剰な負荷を減らし、DX化も推進介護・医療・住まい等を包括的に捉えて、地域で密に連携する仕組み作りフレイル・認知症予防への積極的取組、地域の居場所・見守りを国が支援本人が望んでいない終末期における過度な延命治療を見直す本人の意思を尊重し、医師の法的リスクを回避するための尊厳死法制を整備人生会議(ACP)、事前指示書、生命維持治療に関する医師の指示書(POLST)の普及と制度的位置づけの明確化緩和ケア、在宅看取り、ホスピス等、尊厳を保持した医療の拡充終末期の延命措置医療費の負担の在り方の見直し さてざっと見まわすと、以前に本連載で批判的に捉えた予防医療のインセンティブ(Go Toトラベル)やすべてのワクチンを任意接種にするなど、まるで米国・保健福祉長官ケネディ氏のような政策が目につく。一方、がん・難病でのデータ基盤整備や介護での加算申請手続きの軽減などは玄人的な政策がある点も目を引く。誰かが入れ知恵したのだろうか?日本保守党移民反対を前面に打ち出す同党の医療・社会保障政策は結党以来、まったく変更はなく以下の2点である。詳細は以下のとおり移民政策の是正―国益を念頭に置いた政策へ健康保険法・年金法改正(外国人の健康保険・年金を別立てに)教育と福祉出産育児一時金の引き上げ(国籍条項をつける) そもそもシングルイシューの政党と言ってもよく、有体に言えば、少なくとも現時点では社会保障政策自体にそれほど強い関心はないのだろう。社民党旧日本社会党を源流とし、社会民主党、社民党と名称を変えてきた同党だが、最盛期の日本社会党時代に衆院で166議席も有していた議席は今やゼロ。参院で2議席のみである。今回は「社民党8つの提言」の中で「最低保障年金制度の樹立で老後の安心を!介護と医療の負担を軽減!」を掲げ、以下のような政策を提唱している。詳細は以下のとおり介護報酬を引き上げ、介護従事者の待遇を改善して人手不足を解消。混合介護と自由診療を規制高額医療費や一般用医薬品(OTC)医薬品の自己負担増に反対マイナ保険証の取得強制に反対し、紙の健康保険証を継続国公立病院の統廃合を認めない 今回唱えている政策は、ほとんどが前回の参院選時に掲げていたもの。唯一異なる点があるとするならば、「混合介護」と表現している介護の保険外サービス利用と自由診療の規制の点である。チームみらいAI研究者だった安野 貴博氏が創設した新党で、昨年の参院選では安野氏自身が比例で1議席を獲得して政党要件を満たした。2024年東京都知事選挙に立候補した時に本連載でも本人に取材し、安野氏の政策はアジャイルな設計で、有権者からの意見を受け付け柔軟に変化することがわかった。そのため、ここに記述したものも投票日までに変更されている可能性がある。政策は大きく3つの大項目で構成され、その下にテーマ(<>内)、さらに個別政策という構成。以下、要約・抜粋する。詳細は以下のとおり(2)「今」の生活をしっかり支援<経済財政・社会保障>現役世代の社会保険料負担を軽減し、フェアな税・社会保障制度を目指す「税収」(1)現役世代の過度な負担を回避し、国民全体で支えられる方法を検討(2)入国税や非居住外国人に対する固定資産税の引上げ、外国人旅行者の消費税免税制度の見直しなど日本の生活者に影響の小さい歳入源の拡充も検討「支出」影響が大きい方への配慮を行いながら、医療費の自己負担割合の一律3割を目指す。 加えて、「医療」パートに示す制度改革に取り組む<医療>1.医療の有効性・重要度に応じたきめ細やかな自己負担へ高額医療費制度の上限の拙速な引き上げを見直し中長期的に診療行為のエビデンス、費用対効果や重症度に基づく自己負担割合の複数段階化を検討電子レセプトに連携し窓口で即時に自己負担額が算出できるAI、システムの開発を支援。医療DXを推進する支援の枠組みも整備2.治療成果に報いる医療アウトカム評価制度の導入「どれだけ診療が行われたか」だけでなく、「どれだけ良くなったか」にも報いる医療制度への転換を目指し、成果連動型の診療報酬制度を導入(治療の効果が高い医療機関に対しての報酬加算、患者に対しての還元を設計し、医療機関・患者の双方に動機づけを行う)診療データを匿名化し、全国医療データベース(NDB)で一元管理。AIを活用した公平で迅速な評価を行う仕組みを整備(電子カルテの標準化、相互運用性の確保を推進。診療記録や検査結果をデータ化して治療成果を判定、成果加算が自動的に反映される仕組みを設計。アウトカム評価指標の提出、確認が行われることで医療機関の負担が増えないよう、民間企業と連携した電子カルテの解析システムの開発を促進)3.オンライン診療/処方受け取り方法を充実し、通院のない受診を実現オンライン診療普及のための診療報酬、インセンティブの設計(オンライン診療を普及促進の診療報酬の加算を検討)安全性を担保するためのガイドライン整備(本人確認、重症化時のバックアップ体制など、オンライン診療を安全に行い、標準的なサービスを担保するための規定を整備)薬の受け取りまでオンラインで完結するための枠組みの整備(自動運転やドローンでの配送物流コストの診療報酬での手当を検討)4.画像診断AIで見逃しリスクと医師不足の解消を同時にシステム導入費の補助による画像解析システムの導入診断AIへの加算を制定し継続利用を促進。AI画像解析の成果について評価を実施人とAIが協働する医療のルール整備<福祉>5.福祉・介護従事者の処遇改善・テクノロジーによる業務負担軽減を推進障害福祉・介護従事者の給与水準を全産業平均に近づける賃上げ方策の検討テクノロジー活用推進、福祉・介護従事者の待遇改善を目的とした基本報酬改定の検討生産性向上推進体制加算の拡充とテクノロジー活用を標準とした新たな報酬類型を創設施設類型を中心に進められている生産性向上推進体制加算の適用を在宅系サービスへ拡大福祉・介護職員等処遇改善加算による賃上げ効果を向上のため、テクノロジー活用と経営改善による利益を福祉・介護職員へ還元する制度の改定 さて比較的AIに懐疑的な人は、これらを見て「テクノロジーで解決できるほど医療は簡単ではない」と言うかもしれない。ただ、ここで提言されている政策をよく読めば、実はテクノロジー一辺倒ではないことがわかるのではないだろうか?たとえば、医療者が嫌うであろう診療報酬のアウトカム評価も何を行ったかの実績評価との併用で語っている。また、ここでは私が要約したが、実はチームみらいのホームページに行くと、それぞれの政策を掲げるテーマの背景まで深く分析している。私見を言えば、既存政党は長らく政治に関わりながら、こうした背景分析をきちんとしているだろうか?ここまで超長文、かつかなり駆け足で各党の政策を紹介した。このように駆け足になったのはひとえに戦後最短の選挙期間というのが最大の理由であるため、ご容赦願いたい。さて8日の投開票結果はいかに?

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ラテンアメリカにおける最も一般的な非虚血性心筋症、シャーガス心筋症に対して、サクビトリル・バルサルタンはエナラプリルと比較して有効性は示されなかった(解説:原田和昌氏)

 シャーガス病はトリパノソーマ・クルジという原虫によって引き起こされるラテンアメリカにおける非虚血性心筋症(慢性シャーガス心筋症:CCC)の最も一般的な原因である。CCCは急性心筋炎と慢性線維化性心筋炎を呈する。これまでエナラプリルがCCC患者の心機能に良い効果を有する、CCCの動物モデルでエナラプリルが心筋線維化と心機能を改善したという報告があるが、ガイドラインが推奨する心不全治療のCCC患者に対する有効性と安全性は明らかでない。米国Duke臨床研究所のLopes氏らは非盲検多施設共同無作為化試験(PARACHUTE-HF)により、CCCで左室駆出率が40%未満に低下した心不全(HFrEF)患者において、アンジオテンシン受容体ネプリライシン阻害薬(ARNI)サクビトリル・バルサルタン投与群とエナラプリル投与群とを比較した。 アルゼンチン、ブラジル、コロンビア、メキシコの83施設で、CCCと診断されたHFrEF患者を対象に、ARNIの有効性と安全性についてwin ratioアプローチで階層的複合アウトカムを評価した。臨床的アウトカムに関する有意差は認められなかったが、ARNI投与患者は12週時点でNT-proBNPの低下が認められた。NT-proBNP値の低下は心負荷の軽減を意味しており、忍容性において懸念された低血圧は問題とならなかった。シャーガス病はわが国ではまだまれな疾患であるが、心不全患者でラテンアメリカ出身や在住歴がある場合には念頭に置く必要がある疾患と考えられる。

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認知症患者の4人に1人に脳に悪影響を及ぼす薬が処方

 認知症のあるメディケア加入高齢者の4人に1人が、抗精神病薬、バルビツール酸系薬、ベンゾジアゼピン系薬などの脳機能に影響を及ぼす薬剤によって危険にさらされていることが、新たな研究で明らかにされた。これらの高リスクの中枢神経系(CNS)活性薬は、転倒やせん妄、入院のリスクを上昇させ、特に、認知機能障害のある高齢患者においてはその影響が顕著であることから、ガイドラインでは使用を控えることが推奨されている。米カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)デイヴィッド・ゲフィン医科大学院のJohn Mafi氏らによるこの研究結果は、「Journal of the American Medical Association(JAMA)」に1月12日掲載された。 Mafi氏は、「正常な認知機能を持つ患者と比較して、有害事象のリスクがより高い認知機能障害のある高齢者で、これらの薬剤の処方頻度が高いことが分かった」とニュースリリースで述べている。 本研究では、米連邦政府の健康・退職研究(Health and Retirement Study;HRS)のデータとメディケア請求データをリンクさせ、2013年1月1日から2021年12月31日の間に、メディケアパートA・B・Dに連続2年以上加入している65歳以上の患者4,842人を対象に、処方パターンを調べた。対象患者は、正常、認知症ではない認知機能障害(CIND)、認知症の3群に分類された。また、CNS活性薬は、1)抗コリン作用の強い抗うつ薬、2)抗精神病薬、3)バルビツール酸系薬、4)ベンゾジアゼピン系薬、5)非ベンゾジアゼピン系睡眠薬を対象とし、これらの薬剤を1種類以上、28日以上処方されていた患者の割合を調べた。さらに、各処方の臨床的適応の有無についても判定した。 その結果、潜在的に不適切なCNS活性薬を処方された対象者の割合は、認知機能が正常な人で17.0%、CINDのある人で21.7%、認知症のある人で25.1%と推定され、認知機能の状態が悪いほどこのタイプの薬剤を処方されやすいことが示唆された。潜在的に不適切なCNS活性薬を処方された対象者の割合は、2013年の19.9%から2021年には16.2%へと3.7パーセントポイント有意に低下していた。臨床的に適切な処方は、2013年の6.0%から2021年には5.5%へとわずかに減少したが、統計学的な有意差はなかった。一方、臨床的に不適切な処方は15.7%から11.4%へと有意に減少していた。 Mafi氏は、「この減少は心強いものの、2021年時点で、これらの処方を受けていた患者の3分の2以上に、臨床的に正当化できる記録がなかった。これは、不適切で有害となり得る処方が依然として多いことを示している」と述べている。 対象とした薬剤の種類別に分析すると、2013年から2021年にかけて、以下のような傾向が認められた。・ベンゾジアゼピン系薬は11.4%から9.1%に有意に減少。・非ベンゾジアゼピン系睡眠薬は7.4%から2.9%に有意に減少。・抗精神病薬は2.6%から3.6%へと増加したが、統計学的な有意差なし。・抗コリン作用の強い抗うつ薬は2.6%のままで変化なし。・バルビツール酸系薬は0.4%から0.3%にわずかに減少したが、統計学的な有意差なし。 論文の筆頭著者であるUCLA内科レジデントであるAnnie Yang氏は、「高齢患者やその介護者は、これらの薬剤が本当に適切かどうかを医師と密に相談することが重要だ。不適切と判断された場合には代替治療を検討し、リスクを抑えながら薬剤の減量や中止が可能かどうかをケアチームとともに考えるべきだ」とニュースリリースの中で述べている。

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高血圧管理・治療ガイドライン2025(1):血圧測定器【一目でわかる診療ビフォーアフター】Q159

高血圧管理・治療ガイドライン2025(1):血圧測定器Q159日本製の血圧計は精度が良いため、自動巻き付け式血圧計(図)も診断や治療の決定に十分参考になりうる。以上の考えは正しいか?図 自動巻き付け式血圧計

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小児の上腕骨内側上顆転位骨折、手術的固定術はベネフィット示さず/Lancet

 上腕骨内側上顆転位骨折は、小児の骨折で最も議論の余地のある損傷の1つだが、裏付けとなるエビデンスが乏しいにもかかわらず、手術的固定術を行う傾向が強い状況であるという。英国・リバプール大学のDaniel C. Perry氏らは「SCIENCE試験」において、転位した骨片の位置を回復させる手術的固定術は非手術的治療と比較して、臨床的有益性をもたらさず費用対効果も優れないうえに、これらの小児を回避可能な外科的リスクにさらす可能性があることを示した。研究の成果は、Lancet誌オンライン版2026年1月20日号で報告された。3ヵ国の無作為化優越性試験 SCIENCE試験は、3ヵ国(英国、オーストラリア、ニュージーランド)の59施設で実施した実践的な多施設共同無作為化優越性試験(英国国立衛生研究所[NIHR]などの助成を受けた)。2019年6月~2023年9月に参加者を登録した。 年齢7~15歳の転位を伴う内側上顆骨折の患者を対象とした。被験者を、手術的固定術を受ける群または非手術的治療を受ける群に、1対1の割合で無作為に割り付けた。 手術的固定術は、全身麻酔下に切開、解剖学的整復、骨片の固定を行った。非手術的治療は、ギプス、副木、スリングを用いて肘を約90度の屈曲位に固定した。 主要アウトカムは、12ヵ月の時点での上肢機能の回復とし、ITT集団において小児用PROMIS(Patient Report Outcomes Measurement System)上肢スコア(13.7~57.3点、高点数ほど上肢機能が良好)で評価した。手術的固定術は術中・術後合併症と追加手術が多い 334例(平均年齢11.7[SD 2.3]歳、女児170例[51%])を登録し、手術群に168例、非手術群に166例を割り付けた。194例(58%)はスポーツによる骨折で、体操(55例[16%])とフットボール/サッカー(37例[11%])による損傷が多かった。主要アウトカムのデータは285例(85%)から得られた。 12ヵ月時のPROMIS上肢スコアは、手術群が54.3(SD 5.7)点、非手術群は53.1(SD 7.8)点であり、両群間に有意な差を認めなかった(平均治療群間差:1.57点、95%信頼区間[CI]:-0.01~3.14、p=0.052)。また、この治療効果の推定値は臨床的に意義のある差(4点)を下回っていた。 追加手術(計画手術、合併症関連手術)は、手術群で24例、非手術群で3例に行われた。手術的固定術を受けた150例のうち、13例(9%)に14件の術中合併症が、7例(5%)に術後合併症が発生し、それぞれ手術を要した。さらに、17例(11%)ではスクリューやワイヤの除去手術がルーチンに行われた。 非手術的治療を受けた184例では、4例(2%)に5件の合併症が発生し、このうち3件(2%)で追加手術を要した。費用は手術群で2,435ポンド高額 英国の国民保健サービス(NHS)および福祉サービス(Personal Social Services)の評価法で算出した患者1例当たりの平均費用は、手術群で2,435ポンド(95%CI:1,812~3,057)高く、患者1人当たりの質調整生存年(QALY)の群間差は平均-0.008(95%CI:-0.039~0.024)であった。 また、1QALY当たり2万ポンドまたは3万ポンドの支払い意思額閾値において、手術的固定術で費用対効果が優れる確率は0%だった。 著者は、「非手術的治療では、後日手術が必要となるリスクがごくわずかに残るが、これは手術的固定術における2次的手術の実施率と比較して低い」「これらの知見は、小児の上腕骨内側上顆転位骨折では非手術的治療を標準的な管理戦略へと転換し、手術的固定術は例外的な状況に限定すべきであることを示唆する」「このエビデンスは、今後のガイドラインに反映すべきであり、治療選択肢に関する臨床医と患児、家族との話し合いに有益と考えられる」としている。

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第298回 戦後最短の衆院選、今回の各党の医療・社会保障政策は?~自民・維新・中道編

INDEX自民党日本維新の会中道改革連合年明け早々から衆議院解散の報道が流れ始めたが、実際に高市 早苗首相が2026年1月23日の通常国会冒頭で解散を行ったことで、すでに衆議院議員総選挙に突入している。そこでいつものごとく、各党の医療・社会保障政策を取り上げ、独断と偏見に基づく寸評を加えたいと思う。今回は与党の自民党と日本維新の会、さらに公明党と立憲民主党が合流した最大野党の中道改革連合を取り上げる。自民党まずは与党で比較第1党の自民党。主な政策として5つの柱とそれに続く中項目(<>内)、さらにその下に各政策を掲げている。その中から医療・社会保障政策(年金を除く)を要約して列挙すると、以下のようになる。詳細は以下のとおり1. 強い経済で、笑顔あふれる暮らしを<危機管理投資・成長投資>予防・健康づくり分野を成長産業として育成し、健康経営の拡大や女性の健康、生活習慣病、認知症などの研究開発を促進仕事と介護の両立支援のため、公的保険外の介護サービスの振興や、企業における支援を促進<経済安全保障>医薬品を「特定重要物資」と位置付け、サプライチェーンの強靱化や国内生産能力の強化<デジタル>マイナンバーカードを健康保険証として利用し、運転免許証などとの一体化を推進社会保険や税、介護、死亡・相続などの行政手続きを「スマホで60秒」で完結させるデジタル化・ワンストップサービス化一人ひとりの暮らしに応じたサービス提供のため、医療、こども・子育てなどの分野でのデータ連携を支援2.地方が日本経済のエンジンに<地域未来戦略>離島・半島における医療・介護の振興策を講じる3.わが国を守る責任。国際秩序を担う日本外交<科学技術>ゲノムデータ・創薬基盤の充実、医薬品・医療機器の開発、国際協力を進め、ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(誰もが適切な医療を負担可能な費用で受けられる状態)の達成創薬力を抜本的に強化するため、産学官の研究力を向上させ、とくに感染症に備えた国産ワクチン・治療薬・診断薬の生産体制を強化バイオ医薬品(抗体医薬品、再生医療等製品など)の生産体制整備や創薬ベンチャーへの支援を推進健康医療を含む最先端分野での研究開発から社会実装までを支援4.すべての世代の安心と次世代への責任<こども・子育て>妊娠前から出産、子育て期まで切れ目のない支援を行い、病児保育の充実旧優生保護法による被害者の救済と、疾病や障害者への偏見・差別根絶<社会保障(最重点項目)>医療・介護・福祉分野の賃上げ:物価上昇に対応し、幅広い職種での確実な賃上げのため、報酬の引き上げ等を実施持続可能な医療体制:2040年を見据えた「地域医療構想」により、医療機関の連携・再編・集約化の推進歯科・リハビリ・薬局:生涯を通じた歯科健診(国民皆歯科健診)、リハビリの充実、かかりつけ薬剤師・薬局の普及を推進医療・介護DX:全国医療情報プラットフォームの構築や電子カルテの普及により、安全で効率的なサービスを実現予防・健康寿命:「攻めの予防医療」により健康寿命を延ばし、がん、循環器病、難病、移植医療、依存症対策などを推進介護提供体制:訪問介護を含む受け皿整備と人材確保を進め、介護離職を防ぐとともに、認知症対策やフレイル(虚弱)対策を推進正常分娩費用の負担を実質ゼロにすることで、妊婦の経済的負担軽減薬の安定供給:革新的な創薬環境の整備と、後発医薬品(ジェネリック)の安定供給を確保社会保険料負担の軽減:中・低所得者の負担軽減のため、「給付付き税額控除」の検討を含む社会保障と税の一体改革を議論<教育>特別支援教育の充実に向け、発達障害のあるこども達に対する早期からの支援や医療的ケア看護職員の配置促進<文化・スポーツ>生涯にわたるスポーツの継続を支援し、生涯健康を土台に人材の能力を最大限発揮させることで、人材一人ひとりの生産性向上と社会保障費抑制を図り、経済成長を支える<女性活躍>「女性の健康総合センター」を司令塔に診療拠点の整備や研究、人材育成等の取組みを全国展開、女性の生涯にわたる健康支援を強化<防災・減災、国土強靭化>マイナンバーカードを活用した救急業務の円滑化の全国展開<災害復興>地震・津波被災地域での心のケアやこどもの支援等の中長期的な取組み<生活の安全>熱中症対策実行計画に基づく熱中症対策の強化。花粉症の総合的な対策の推進<外国人政策>税・社会保険料の未納や制度悪用を根絶。出入国在留管理庁と関係機関との税・国民健康保険料等のマイナンバー等による情報連携を行い、上陸審査・在留審査等に反映。医療費未払情報報告システムの登録基準額を20万円以上から1万円以上に引き下げるとともに対象を中長期在留者へ拡大することを検討。<多様性・共生社会>医療保険者とかかりつけ医が協働する「社会的処方」の推進 石破 茂政権時代の参議院議員通常選挙(以下、参院選)時や高市首相が自民党総裁選時に掲げた政策と比較して、私が注目した変化は「2040年を見据えた『地域医療構想』により、医療機関の連携・再編」という点である。この点、以前の表現ではあくまで「病床数の適正化」だったが、今回は「医療機関の再編」と一歩踏み込んでいる。もちろん病床数の適正化の先に究極的には医療機関の再編があるのは事実。そして今回の診療報酬の個別改定項目(短冊)を見ても、急性期医療の絞り込みに向けた“出血大サービス”となっていることと併せれば、与党として自民党が本気を出してきたと言えるかもしれない。また、これまでになかった政策と言えば、<経済安全保障>の項目の医薬品を「特定重要物資」への位置付け、<デジタル>の項目にある「スマホで60秒」サービス、<多様性・共生社会>にある「社会的処方」、である。このうち「社会的処方」については、すでに2020年の政府方針「骨太方針2020」にも謳われたことだが、かかりつけ医の位置付けが現状ではまだまだ曖昧な中で、どのような仕組みを想定しているかは不明である。日本維新の会昨年の参院選時には予想もされていなかった日本維新の会(以下、維新)の与党入り。OTC類似薬の給付の大幅見直しなど、与党入りしてからは良くも悪くも存在感を発揮している同党だが、今回の衆議院選にあたり発表した「維新八策2026」では、社会保障政策の大項目の元、中項目(<>内)、さらにその下に各政策を掲げている。以下、要約の上で列挙する。詳細は以下のとおり社会保障政策<社会保険料を下げる改革>国民医療費を年間4兆円以上削減し、現役世代1人あたりの社会保険料を年間6万円引き下げ高齢者の医療費窓口負担を9割引から7割引(現役世代と同じ)へ引き上げ金融所得を含めた総合的な所得把握に基づく負担区分を設定女性や高齢者の就業促進、第3号被保険者制度見直し等により社会保障制度を就業促進型へ転換生産年齢人口の定義を見直し中央社会保険医療協議会に医薬品・医療機器メーカーを追加し、創薬支援を強化。企業届出価格承認制度の導入等により薬価算定制度を見直し費用対効果に基づく医療行為や薬剤の保険適用見直しを進め、限られた医療財源を重症患者や革新的医療に重点配分後発医薬品の使用原則化、タスクシフト、地域フォーミュラリ導入等により医療費削減不要となる約11万床を削減し、1兆円以上の医療費削減(感染症対応病床は確保)2030年までに電子カルテ普及率100%を達成エビデンスが乏しい無価値医療(低価値医療)の保険適用を見直し医療介護産業を需要者側の視点で改革し、市場原理導入や合理化で生産性向上を実現AIやビッグデータを活用した全国統一レセプトチェックで医療費適正化と医療の質向上を同時実現オンライン診療の診療報酬点数の対面診療と同等化定期的な検診受診者や健康リスクの低い被保険者の保険料を値引きする保険料割引制度を導入診療報酬点数の決定で医療サービスの需給バランスを通じた調整メカニズムを導入< 医療・介護提供体制>開業医(かかりつけ医))が診察・健康管理・入院判断に積極的に関与する体制構築医療DXを推進し、在宅医療・在宅介護の質・量を高め、地域包括ケアシステムを構築介護現場の待遇・職場環境を改善し、ロボット・テクノロジー導入で負担軽減介護サービスの地方分権と規制改革を行い、待機高齢者問題等の介護施設不足を解決老人ホームと保育所を一体化させた複合施設の設置基準を自治体が決定できる権限移譲日本版DBS制度(こども性暴力防止法に基づく制度)の介護人材への適用検討など、介護現場のハラスメント対策を立法化尊厳死(平穏死)について幅広い議論・検討を推進悪質な渡航移植対策として無許可あっせん業の罰則強化と国際的枠組み構築<予防・健康づくり>一次予防・健康増進を図り、早期予防・早期介入により健康寿命を延ばし、介護費用抑制と両立自立支援型介護を推進し、がん検診・特定検診の受診率向上により健康寿命を延伸受動喫煙防止の徹底認知症患者支援・理解啓発を推進し、iPS細胞による再生医療等の研究を支援慢性疾患について先進的な取り組みの全国展開や標準化による発症・再発・重症化予防対策の推進アレルギー疾患の医療相談、治療体制を全国で整備検体の自己採取と血液マーカー検査など新しい検診制度を導入HPVワクチンの接種機会を逸した世代への確実な救済措置<医療産業>IoT、AI、ビッグデータ、5G通信により医療・健康分野の産業化・高度化を推進混合診療を解禁・推進医療法人などの経営・資金調達規制を大幅に緩和医療品販売の過度な対面販売規制を見直し<感染症対策>十分な経済的補償を前提に医療機関などへ実効力ある要請・命令ができる法整備新型インフルエンザ等対策特別措置法を改正し、地方が地域事情に応じて機動的に感染症対応できる体制を確立首都圏と関西圏に「日本版CDC(国立健康危機管理研究機構)」を各1ヵ所所整備有事に都道府県の枠を超えた情報・医療資源の共有化など相互補助できる体制を構築感染症法改正等により国民が検査・医療を受ける権利を明確化有事の指揮命令系統等に関し、危機対応ガバナンス確立のための法改正・憲法議論を積極的に行う国産ワクチン・治療薬の研究開発・生産体制を抜本に強化 大部分は昨年の参院選時に発表された「維新八策2025」を維持したものである。ただ、今回は以前よりも新たな政策が追加された。追加項目は、「混合診療の解禁・推進」「医療法人の資金調達に関する規制緩和」「医薬品の対面販売規制」「診療報酬点数の決定への医療サービスの需給バランスによる調整メカニズム導入」「HPVワクチンの接種機会を逸した世代への確実な救済措置」である。これらはHPVワクチンの件を除くと、政府の経済への介入を抑え、自由競争によって経済の効率化や発展を実現すべきという「新自由主義」に一番近いとされる維新らしい政策とも言える。また、社会保険料の負担軽減や医療費抑制につながる政策で維新側が明確な数字を示すのに対し、自民党側が概念的な政策提示である点でも新自由主義的な維新の性格をよく表していると言えるだろう。中道改革連合今回、おそらく有権者を最も驚かせたのが、野党第1党の立憲民主党と昨秋まで与党だった公明党による新党「中道改革連合(以下、中道)」が発足したことだろう。正直、私個人もまったく予想外だった。中道の今回の候補者の中には医師が8人おり、自民党の9人に次ぐ人数。多くは旧立憲民主党の議員だが、旧2党で見ると、どちらかというと以前与党にいた旧公明党のほうが医療政策に明るいと思われがちだ。今回、医療以外の安全保障や原発問題などで公明党寄りに政策修正したと言われる中道だが、医療・社会保障関連政策はどのようになったのか?今回、中道は大項目となる第1~5の柱を立て、その中で中項目(<>)、さらに小項目(・)となる具体的な政策を記述している。以下に要約・列挙した。詳細は以下のとおり第1の柱:一人ひとりの幸福を実現する、持続的な経済成長への政策転換<家計の安心へ>社会保険料負担で手取りが減る「130万円のガケ」を解消<賃上げと中小企業・産業の活性化>社会保険料の事業主負担軽減や奨学金代理返還の支援医療・介護・保育・物流・建設・交通等の処遇改善に向け、公定価格と労務費の適正化を推進し、社会基盤を支えるエッセンシャルワーカーの所得の抜本的引き上げを実現第2の柱:現役世代も安心できる新たな社会保障モデルの構築<ベーシック・サービス従事者の処遇改善>医療・介護・保育・障がい福祉従事者などの給与の全産業平均への引き上げ<健康、安心の医療・年金>予防・検診強化で健康寿命を延ばし、重複検査是正・医療DXで医療費を抑制、社会保険料上昇を抑制がんの原因となる感染症など、リスクに応じた検診を実現し、企業検診率向上を目指す高額療養費の自己負担限度額の引き上げを見直し経営困難な医療機関を支援(次期診療報酬改定でのプラス改定など)。医師確保のための基金拡充かかりつけ医の制度導入を目指し、かかりつけ医を中心とした新たな地域医療構想の実現移動困難な高齢者のためにオンライン診療・モニタリング等で地域医療体制を整備職場・地域で心のケアを必要とする人を早期発見し、治療体制を強化薬価の中間年改定を廃止保証人のいない単身者が必要な医療を受けられるよう、実効性のある「ガイドライン」の普及とフォローアップを図る<高齢者、介護支援、障がい福祉>介護の相談体制・家族支援を強化し、事業所のDX化で安心できるケア体制を整備「介護離職ゼロ」に向けた取り組み(介護休業の通算期間の延長、介護休業中の賃金補償の拡充)を強化訪問介護の基本報酬を引き上げ介護事業所の情報通信技術(ICT)化を進め、業務効率化・情報共有で介護従事者などの負担軽減とサービスの質・生産性向上を目指す介護記録の電子化・介護センサー導入で介護施設・在宅介護の人手不足をサポート第3の柱 選択肢と可能性を広げる包摂社会の実現<こども・子育て>妊婦健診や出産費用の無償化と産後ケアの充実ヤングケアラーを早期に発見し、教育や医療、就労など横断的に支援 この中で「130万円のガケ」は、従来から国民民主党が唱える「103万円の壁」と違って初めて聞いた人もいるかもしれない。これは給与所得者に扶養されている配偶者に健康保険料や年金保険料の負担が生じ始める年収である。念のため説明すると103万円は所得税負担がかかり始める年収である。要は「103万円の壁」の引き上げを軸に若年層に支持を広げた国民民主党にあやかった政策なのかもしれない。そして意外に思うかもしれないが、実は中道が掲げたこれらの政策は、与党の中でも穏健なほうになる(あくまで維新との比較だが)自民党の社会保障政策と類似点は少なくない。とくにICT、DX関連はかなり類似が多い。パッと見て与党と明らかに違う政策として目につくのは、かかりつけ医の制度導入と薬価の中間年改定廃止である。ちなみに薬価の中間年改定廃止は従来から国民民主党が唱えている政策でもある。また、中道がここで述べているかかりつけ医の制度導入とは、現在の「かかりつけ医機能報告制度」とかかりつけ医機能を評価する診療報酬ということではなく、いわばヨーロッパなどで行われている家庭医制度のようなものだろう。いずれにせよ、全体的には穏健、悪く言えば、非常に概念的な政策で、私見を言えば、「なかなか埋没感がある」と思ってしまう。さて次回はそのほかの野党を一斉に取り上げる。

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DM合併冠動脈疾患、Abluminus DES+シロリムスステントの有用性は?/Lancet

 経皮的冠動脈インターベンション(PCI)を受ける糖尿病合併患者において、血管壁側(abluminal)およびバルーン表面をコーティングしたシロリムス溶出ステント(Abluminus DES+SES)は、XIENCE耐久性ポリマーエベロリムス溶出ステント(XIENCE EES)と比較し、12ヵ月時の虚血による再度の標的病変血行再建術および標的病変不全の発生率が高く、非劣性は認められなかった。ブラジル・Heart Institute of University of Sao PauloのAlexandre Abizaid氏らが、16ヵ国74施設で実施した無作為化非盲検比較試験「ABILITY Diabetes Global試験」の結果を報告した。著者は、「糖尿病合併患者における治療成績の最適化が依然として課題であることが浮き彫りとなり、この患者集団における虚血リスクを低減するためステント設計および補助的薬物療法のさらなる革新が必要である」とまとめている。Lancet誌2026年1月17日号掲載の報告。Abluminus DES+SESのXIENCE EESに対する非劣性を評価 研究グループは、慢性冠症候群または非ST上昇型急性冠症候群で少なくとも1つの新規冠動脈病変に対しPCIを施行する1型または2型糖尿病の成人(18歳以上)患者を、Abluminus DES+SES群またはXIENCE EES群に1対1の割合で無作為に割り付けた。 Abluminus DES+SES群では、薬剤移行を促進するためにバルーン拡張時間を45秒以上とすることが推奨された。また、全例に、臨床ガイドラインおよび現地の標準治療に基づいて2剤併用抗血小板療法を行った。 主要エンドポイントは、per-protocol集団における12ヵ月時点の虚血による再度の標的病変血行再建術(ID-TLR)および標的病変不全(TLF)(心血管死、標的血管心筋梗塞、またはID-TLRの複合エンドポイントと定義)の2つで、非劣性マージンはそれぞれ2.8%および3.0%とした。いずれも累積発生率はKaplan-Meier法で推定し、Cox比例ハザードモデルを用いてハザード比(HR)とその95%信頼区間(CI)を算出した。複合主要エンドポイントのID-TLRとTLFの発生、非劣性基準を満たさず 2020年6月12日~2022年9月9日に、3,032例がAbluminus DES+SES群(1,514例)またはXIENCE EES群(1,518例)に無作為に割り付けられた。3,032例中2,931例(96.7%)が死亡までまたは24ヵ月間の追跡調査を完了した。年齢中央値は68.0歳(四分位範囲:60~74)で、879例(29.0%)が女性、2,153例(71.0%)が男性であった。 per-protocol集団における12ヵ月時のID-TLRは、Abluminus DES+SES群で1,421例中67例(Kaplan-Meier推定値:4.8%、95%CI:3.9~6.2)、XIENCE EES群で1,446例中30例(2.1%、1.6~3.2)に認められ、絶対リスク群間差は2.7%(95%CI:1.3~4.1)で非劣性基準を満たさなかった(非劣性のp=0.44)。 また、TLFはAbluminus DES+SES群で137例(Kaplan-Meier推定値:9.7%、95%CI:8.4~11.5)およびXIENCE EES群で89例(6.2%、5.3~7.8)に認められ、絶対リスク群間差は3.5%(95%CI:1.5~5.5)であり(非劣性のp=0.68)、いずれの主要エンドポイントも絶対リスク群間差の95%CIの下限が0を上回った。 TLFを個別にみると、標的血管心筋梗塞は、Abluminus DES+SES群のほうが発生率は高かったが(Kaplan-Meier推定値:5.2%[95%CI:4.1~6.5]vs.3.1%[2.4~4.3])、心血管死(2.9%[2.1~3.9]vs.2.1%[1.5~3.0])および全死因死亡(3.7%[2.8~4.8]vs.3.3%[2.5~4.4])に有意差は認められなかった。 結果は、24ヵ月時点でもITT集団において一貫性が認められたが、12ヵ月から24ヵ月までのランドマーク解析では、両群間に有意差は認められなかった。

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不安定な外果骨折、ギプス固定は手術に非劣性/BMJ

 初回X線検査で足関節窩が整合しており安定とみられたものの、外旋ストレステストでは不安定と判定されたWeber分類タイプBの足関節外果単独骨折の治療において、ギプス固定は手術に対して非劣性であることが認められ、概してギプス固定は手術と比較し治療関連有害事象が少ないことが示された。フィンランド・オウル大学病院のTero Kortekangas氏らが、同大学病院の外傷専門センターで実施した実用的無作為化非劣性試験「SUPER-FIN試験」の結果を報告した。足関節骨折の約3分の2は外果骨折(Weber B)である。最近の臨床試験やガイドラインでは、特定の患者に対し保存治療を支持するケースが増えているが、不安定なWeber B外果骨折に対しては主たる治療として手術が行われる状況が続いていた。BMJ誌2026年1月14日号掲載の報告。6週間ギプス固定と、手術+6週間ギプス固定で、2年時のOMASを比較 研究グループは、2012年12月~2019年3月に来院した、足関節外果(腓骨)単独骨折(Weber B)を認め静止X線で足関節窩が整合していることが確認された、16歳以上の全患者840例を対象に試験を行った。外旋ストレステストを実施し、ストレス陽性(内側クリアスペースが5mm以上の場合を不安定と定義)が確認され適格基準を満たした126例を、6週間のギプス固定群または開放整復とプレート固定による手術と6週間のギプス固定を行う手術群に、1対1の割合で無作為に割り付け2年間追跡した(最終追跡調査は2021年7月7日)。 主要アウトカムは、2年時のOlerud-Molander Ankle Score(OMAS、0~100点、高スコアほどアウトカムが良好で症状が少ないことを示す)で、非劣性マージンは-8点と規定した。副次アウトカムは、足関節機能、疼痛、健康関連QOL、足関節可動域およびX線所見で、治療関連有害事象も評価した。ギプス固定の非劣性が認められた 無作為化された患者126例のうち2年間の追跡調査を完遂した121例(96%)を主要解析対象集団とした。 2年時のOMAS(平均±SD)は、ギプス固定群89±17点、手術群87±16点で、平均群間差は1.3点(95%信頼区間:-4.8~7.3)であった。副次アウトカムはいずれも、統計学的に有意な群間差は認められなかった。 各群で1例に骨癒合不全のX線所見が認められた。また、手術群では、浅部創傷感染が1例、創傷治癒遅延が1例に認められ、9例が金属器具除去処置を受け、うち2例に術後感染(深部1例、浅部1例)が発生した。

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重度の慢性便秘に対する手術は「最終手段」

 米国消化器病学会(AGA)が発表した新しいガイドラインにおいて、重度の慢性便秘患者に対する外科的手術は最終手段とすべきことが明示された。治療に反応しない難治性便秘の患者に対しては、結腸の一部または全てを切除する結腸切除術を検討することがある。しかし、ガイドラインの著者らは、結腸切除術は重大な健康リスクを伴い、必ずしも症状の改善につながるわけではないとしている。米マサチューセッツ総合病院(ボストン)消化器運動研究室ディレクターのKyle Staller氏らがまとめたこのガイドラインは、「Clinical Gastroenterology and Hepatology」に1月7日掲載された。 Staller氏は、「慢性便秘に何年も苦しんできた人にとって、手術は永続的な解決策に聞こえることがある。特に、多くの薬が効かなかった場合にはなおさらだ」と話す。同氏はさらに、「検査で、結腸の動きが極端に遅く、他の治療で何も効果が得られない場合に手術が検討されることがある。しかし、手術はほとんどの患者には適しておらず、事実上リスクを伴い、手術後も腹部膨満感、腹痛、排便コントロール困難などの症状が続く人もいる」と述べている。 米国では約8~12%の人が慢性便秘に苦しんでいると推定されている。Staller氏は、「多くの人は、生涯のどこかの時点で便秘を経験するが、食事の見直し、食物繊維や水分の摂取、市販の下剤の使用といった簡単な対策で改善する。難治性便秘はそれとは別物であり、時間をかけて処方薬やバイオフィードバック、骨盤底筋療法を試しても改善しない状態を指す」と説明している。一方、結腸切除術は、腸閉塞、持続性の腹痛、腹部膨満感、便秘の再発、下剤への継続的依存など、高い合併症率と関連しているという。 新ガイドラインでは、手術を検討する前に踏むべき複数のステップが示されている。例えば、まずは慢性便秘の原因から薬剤の副作用、神経疾患、精神的問題を除外すべきことが述べられている。オピオイド系鎮痛薬や抗精神病薬、鉄剤は便秘を引き起こすことが知られている。また、膀胱疾患、アレルギー、気分障害の治療に使われる抗コリン薬も、腸の不随意運動に関与する神経伝達物質の働きを阻害するため、便秘と関連している。さらに、パーキンソン病や多発性硬化症といった神経疾患、摂食障害や抑うつ・不安などの精神的な問題も便秘リスクに影響する。 精神的な問題が便秘に関与することもあるため、術前の心理評価も意思決定プロセスの重要な一部として推奨されている。また、米食品医薬品局(FDA)の承認薬や市販薬に加え、便秘への有効性が示されている適応外使用薬も全て試すべきだとされている。さらに、大腸通過時間検査や排便造影検査など、結腸機能に加えて腸管全体の活動を評価する検査の実施を推奨している。その上で、最終手段として、一時的人工肛門(ストーマ)の使用を推奨している。これは可逆的で、恒久的な結腸切除が有益かどうかを判断する材料になる。 以上のように、ガイドラインは、手術には慎重な個別判断が必要であることを強調している。Staller氏は、「最良の結果は、十分な準備と共有された意思決定から生まれる。手術が本当に必要な場合でも、現実的な期待を持ち、消化器内科医、外科医、精神医療専門家が連携することで最善の結果が得られる」と述べている。 Staller氏は、慢性便秘のリスクを下げるためにできることとして、1)便秘を悪化させる薬剤について、定期的に医師と見直すこと、2)食事を極端に制限するのではなく規則正しく摂取すること、3)腸の運動を促すために身体的に活発に過ごすこと、4)便意のあるときは我慢せずに排泄すること、5)症状が続く場合は自己判断で治療を強化せず、医療機関を受診すること、を挙げている。また、正常な排便習慣には個人差があり、毎日排便する必要はないことも付け加えている。さらに同氏は、「何より重要なのは、便秘はしばしば長期的な管理を要する慢性疾患であると理解することだ。それがフラストレーションを防ぎ、症状が重症化・難治化するリスクを減らすことにつながる」と述べている。

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喘息への活用に期待、『アレルゲン免疫療法の手引き2025』

 アレルギー性鼻炎は、スギやヒノキを原因とする季節性アレルギー性鼻炎と、ダニなどが原因の通年性アレルギー性鼻炎に大別される。本邦では2014年頃からアレルゲン免疫療法(以下、AIT)の手軽な手法である舌下免疫療法(以下、SLIT)が臨床導入されたが、近年のエビデンス蓄積により、ダニアレルゲンによって症状が出現しているアトピー型喘息へのダニSLITの有効性が示されているという。2025年6月には日本アレルギー学会より『アレルゲン免疫療法の手引き2025』が発刊され、最新の知見に基づき、治療の意義や位置付けが刷新されたことから、今回、本書の作成委員長を務めた永田 真氏(埼玉医科大学呼吸器内科 教授/埼玉医科大学病院アレルギーセンター センター長)にAITの基礎と推奨される患者像などについて話を聞いた。アレルゲン免疫療法の意義  以前に日本では“減感作療法”とも呼ばれたAITは、「アレルギー疾患の病因アレルゲンを投与していくことにより、アレルゲンに曝露された場合に引き起こされる関連症状を緩和する治療」と定義付けられ、アレルギー疾患の根本的な体質改善を期待できる唯一の治療法である。本邦オリジナルの手法である皮下免疫療法(SCIT)は諸外国と比べ格段に普及が遅れていた。しかし2014年に舌下免疫療法(SLIT)が承認され、スギ花粉症を中心にその普及が始まった。 『アレルゲン免疫療法の手引き』の2022年版*からの主な改訂ポイントについて、永田氏は「『喘息予防・管理ガイドライン 2024』および『鼻アレルギー診療ガイドライン 2024年版』との整合性を図り、最新の臨床知見を反映した。とくにこれまでの理念を覆す免疫病態や、またAITの新規の効果が近年明らかになってきたため、新たに判明した作用をブラッシュアップしている。たとえば、ダニSLITが喘息患者の呼吸機能を改善させ長期的に維持させ得ることや、重症患者(喘息併存)への生物学的製剤(抗IgE抗体オマリズマブや抗IL-4受容体α鎖抗体デュピルマブなど)との併用効果に関するエビデンスなどを盛り込んだ。さらに、現段階での適応拡大はないが、アトピー性皮膚炎に対しても部分的に効果があることも報告されている。さらに、スギアレルゲンによる治療がヒノキアレルギーに対しても一定の効果を示す可能性が指摘されている」など、治療標的の広がりについても言及した。また、医療経済的な観点として、AITによる医療費抑制効果が確認されていることにも触れた。*2013年に「スギ」「ダニ」別の指針として発刊されていた前身の出版物を統合・刷新したもの AITの機序についてはいわゆる脱感作現象の寄与は極めて限られ、したがって“減感作療法”という呼称は科学的に誤っている。実際には生体にとって有益な免疫応答を能動的に誘導することの寄与が大きいと判明している。同氏は喘息患者において、「AITが気道上皮細胞のインターフェロン産生能力を高め、ウイルス感染に対する抵抗性を増強する作用が報告されている。これは、感染を契機とした増悪を抑制する効果を意味する」と、その免疫学的メリットを強調した。小児期からの介入と喘息発症予防 AITの適応は、IgE依存性アレルギーであることが正確に診断されたダニアレルギーまたはスギ花粉症患者で、とくに重要なことは全身的・包括的な効果を期待して行われる点である。施行にあたっては、「アレルゲン免疫療法に精通した医師」が条件であり、とくにSCITは効果が高いものの、アナフィラキシーあるいは喘息増悪(発作)などに対する迅速な対応が可能な施設においてのみ実施される。 AITの普及状況について、「成人のスギ花粉症治療でのSLITの応用が活発な一方、通年性鼻炎や喘息に影響をもたらすダニアレルギーへの介入は欧米に比べ依然として不十分」と同氏は指摘した。とくに小児においては、小児喘息の多くが難治化のリスクを抱える中、AITの追加が予後改善に寄与することが確認され、『小児気管支喘息治療・管理ガイドライン2023』にも5歳以上に対するダニ免疫療法の重要性が示されている。「小児期からの介入は、将来的な喘息の新規発症を予防し、すでに発症済みの小児喘息の改善も期待することができる」と同氏はコメントした。 アレルギー性鼻炎の鑑別疾患としては、非アレルギー性・非感染性の鼻粘膜過敏症(血管運動性鼻炎や好酸球増多性鼻炎、また鼻かぜ[急性鼻炎]など)が挙げられる。このほかの注意点として、同氏は「海外では喘息でダニSLITが適応となる一方で、日本の場合には“適応がない”点は留意したいが、日本人の約8割の喘息患者はアレルギー性鼻炎も併発している」と喘息患者は治療対象となる場合が多い点を指摘した。<処方医が診療時に注意するべきポイント>・リスク管理:アナフィラキシーリスク評価と迅速な対応ができること・禁忌/慎重投与:「自己免疫疾患の合併や既往、または濃厚な家族歴を有する」「%FEV1(1秒量)が70%未満、または不安定な喘息患者」「全身性ステロイド薬の連用や抗がん剤の使用」に関する状況確認・SLITに関する歯科連携: 腔内の傷や炎症、抜歯などの予定は吸収率や局所反応に影響するため、休薬を含めた指導を実施・環境整備:ダニアレルギーの場合、ダニの繁殖を防ぐため、床のフローリング化やこまめな清掃など、また喘息ではとくに完全禁煙を指導治療中断後の再開は?ほかのアレルゲンへの適応は? AITの治療期間について、世界保健機関(WHO)は3~5年を推奨しているが、さらなる長期継続も許容される。患者が中断してしまった場合やいったん中止後に再発した場合の再開基準について、永田氏は次のような見解(私見)を述べた。「スギSLITの場合、投与開始から3年が経過していれば、免疫寛容の誘導が進んでいる時期。一時的に中断しても2年は効果が持続すると判明しているが、中止後の再発に伴う再開に際しては『改めて最低3年』を目標に仕切り直すことを推奨する。」 なお、ほかのアレルゲンへのAITの展開については、ハチ毒でのSCIT、食物アレルゲンでの経口免疫療法、一部の薬剤(NSAIDs、抗酸菌薬など)に対する脱感作療法が存在する。ピーナッツなどの食物アレルギーに対する経口・経皮免疫療法は研究が進んでいるが、現時点で本邦での承認予定はない。そのため、最新の手引きではこれらについての詳細な解説は見送られている。

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小児の熱傷【すぐに使える小児診療のヒント】第10回

小児の熱傷子供の成長は喜ばしいものですが、その一方で成長に伴ってこれまで想像もしていなかった事故が起こり得ます。熱傷は家庭内での日常的な事故として発生することが多く、「一瞬の不注意」が重症化につながることも少なくありません。小児は成人と比較して皮膚が薄く、体表面積当たりの熱吸収量が大きいため、同じ条件でもより深く、より広範囲の熱傷となることがあり、注意が必要です。症例11ヵ月、女児。カップラーメンの熱湯が顔面にかかり、熱傷を負ったため受診した。父が自宅のテーブルの上に作りかけで置いていたカップラーメンを、一瞬目を離した隙に児が触ってこぼしてしまったとのこと。顔面にII度熱傷、肩、腕にもI度熱傷あり。熱傷の評価熱傷の評価に関しては成人と大きくは変わりません。熱傷とは、「高熱(加熱液体・気体・固体、火炎など)、低温(液体・気体・固体など)、化学物質、電流などが皮膚に接触し生じる外傷」であり、温度と接触時間で深達度が規定され、その深達度とその範囲によってどの程度全身に影響を与えるのかが決まります。温度 × 接触時間 = 深達度深達度 × 熱傷面積 = 重症度(1)深達度I度熱傷:表皮のみ。発赤・疼痛あり、水疱なしII度熱傷:真皮に及ぶ。水疱形成、強い疼痛浅達性:自然上皮化が期待できる深達性:瘢痕形成のリスクありIII度熱傷:全層壊死。白色~黒色、疼痛に乏しい※急性期には深達度が過小評価される可能性があり、繰り返し評価が必要画像を拡大する画像を拡大する(2)熱傷面積熱傷面積の算出には、成人では「9の法則」を用いることが多いですが、全身に占める頭部や躯幹の割合が大きい乳幼児においては不正確です。簡易的には、下記に示すように「5の法則」や「手掌法」を用いて算出します。<5の法則>画像を拡大する<手掌法>患者手掌が体表面積の1%熱傷面積を算出する際に小範囲の面積を加算算出するのに用いる(3)重症度判定とアルゴリズム下記アルゴリズムは、小児の熱傷において全身管理と局所治療の優先順位を整理することを目的としています。II度15%未満、III度2%未満は軽症に分類され、局所治療を基本とします。それ以上の場合は中等症/重症に分類され、気道・顔面・手足などの部位の熱傷、電撃傷などでは全身管理を優先し、経過に応じて手術も含めた治療選択を行います。画像を拡大する<熱傷診療ガイドラインを参考に作成>熱傷の初期治療軽症および中等症の熱傷の場合、火傷の直後に冷却すると創傷治癒が向上します。可能であれば20分間冷却することが推奨されます。感染管理としては、水洗浄、受傷状況と汚染の程度によって破傷風トキソイド接種(参考:小児の創傷処置)を考慮します。受傷初期の熱傷に対して、創部感染予防目的に抗菌薬の予防的全身投与を画一的に行うことは勧められていません。明らかな汚染創であったり、易感染宿主状態の患者であったりする場合に考慮します。急性期の熱傷では、I~III度熱傷が混在していることも多く、正確な深達度評価は難しいとされています。まずは洗浄して、油脂性基材軟膏(ワセリン、プロペト、アズノールなど)で湿潤療法を行うことが基本です。虐待の可能性を考える乳幼児の熱傷では、常に虐待の可能性を念頭に置いて診療にあたる必要があります。身体的虐待の約9%に熱傷が含まれるとの報告もあり、決してまれな所見ではありません。虐待による熱傷を見逃さないためには、受傷時の状況を詳細に問診すること、全身をくまなく診察すること、そして受傷部位だけでなく熱傷痕そのものの特徴に注目することが重要です。事故による乳幼児の熱傷では、手掌や前腕などの上半身に受傷していることが多い傾向があります。一方で、虐待による熱傷には、以下のような特徴がみられます。臀部、大腿内側、腋窩、腹部など、通常は露出していない部位に生じている円形で境界が明瞭なタバコ熱傷など、熱源を推定しやすい形状を呈する熱傷の深達度が均一で、健常皮膚との境界がはっきりしている熱源が飛び散ることによる不規則な熱傷(splash burn)を伴わないこうした「事故らしさ」「虐待らしさ」をあらかじめ知っておくことが、違和感に気づき、見逃さない診療につながります。事故予防の観点から熱傷は、実は家庭内での事故のうち多くの割合を占めています。とくに、0~1歳児に多く、発生場所としては居室と台所で約8割を占めるといわれています。その原因で最も多いのが、味噌汁や麺類、シチューなどの調理食品で、次いでストーブ、電気ケトルなどが挙げられます。まさに今回の症例のように「カップラーメンの待ち時間で子供がやけどしてしまった」といったエピソードは、日常診療の中でもよく経験します。問診例テーブルの上に置いていたカップラーメンをひっくり返して被ってしまいました。そうだったのですね。テーブルのどのあたりに置いていましたか?端の方に置いてしまっていました。最近つかまり立ちをするようになったのですが、まだ届かないだろうと気を抜いていました。事故予防は、保護者が気をつけることだけで成り立つものではありません。電気ケトルの転倒による熱傷事故が多く報告されたことを受けて、転倒してもお湯がこぼれにくい設計の商品が開発されるなど、社会全体でもさまざまな工夫が進められています。ぜひ日本小児科学会のホームページに掲載されているInjury Alertも参考にしていただければと思います。保護者との関わり熱傷の正確な評価や適切な処置はもちろん重要ですが、同時に、保護者に対して事故予防について話をすることも欠かせないポイントです。二度と同じ事故を繰り返さないためには、「喉元過ぎて熱さを忘れない」うちに、受診のタイミングで具体的に伝えることが、最も効果的であると感じています。問診例(続き)お父さんの近くやテーブルの中央など、手の届かない場所に置く工夫が必要かもしれませんね。お子さんは日々成長するので、『まだ大丈夫』と思っていても思いもよらなかったような事故が起こることがあります。そうしたことを前提に対策していくことが大切ですね。一緒に考えていきましょう。こども家庭庁のホームページに掲載されている「こどもの事故防止ハンドブック」は、PDFを無料でダウンロードできるため、外来で保護者に紹介する資料としても有用です。また、今回の症例のように顔面に熱傷を負った場合には、外見の変化に対する心のケアも重要になります。たとえ最終的に治癒が見込まれるものであっても、顔面の皮膚がただれ、痛々しい状態になっているわが子の姿を目の前にすると、保護者は少なからずショックを受け、自身や配偶者を責めてしまうことも少なくありません。「お子さんの状態を良くしたい」という気持ちは、保護者も医療者も同じです。その思いを共有し、寄り添う姿勢を言葉にしながら、身体面だけでなく精神面にも配慮して関わることが大切だと考えています。参考資料 1) 日本皮膚科学会:熱傷診療ガイドライン第3版 2) 日本小児科学会:虐待による熱傷の所見 3) 日本小児科学会:I Injury Alert(傷害速報) 4) こども家庭庁:こどもの事故防止ハンドブック

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新たなリスクスコアで膵臓がんの再発リスクを予測

 新たに開発された複合リスクスコアが、再発しやすい膵臓がんサバイバーの予測に役立つことが、新たな研究で示唆された。このスコアは、膵臓の腫瘍を外科的に切除され、かつリンパ節転移のない患者に対するフォローアップ医療をより適切に管理するのに役立つ可能性がある。米シダーズ・サイナイ医療センターのCristina Ferrone氏らによるこの研究結果は、「JAMA Surgery」に12月17日掲載された。 Ferrone氏は、「これまでは見逃されがちだった再発リスクの高い患者を特定できる方法が、今や手に入った。これにより、この患者集団に対するケアのあり方を実質的な形で変えることができる」と述べている。 このスコアは、比較的まれで、一般に進行が緩やかな膵神経内分泌腫瘍(pancreatic neuroendocrine tumors)の患者を対象としている。局所性膵神経内分泌腫瘍では、リンパ節転移が膵切除後の再発を強く予測する因子とされているが、実際には、多くの患者がリンパ節転移のない状態で再発する。そこで研究グループは、リンパ節転移のない膵神経内分泌腫瘍患者770人(平均年齢58.7歳、男性52.6%)を対象に、再発と生存のリスクを予測するツールを開発し、その性能を検証した。 対象患者の10.6%(82人)において、手術から中央値32.4カ月後に、主に肝臓にがんの再発が認められた。多変量解析により、再発と独立して関連する因子として、1)男性(オッズ比2.21)、2)腫瘍サイズが3cm以上(同2.64)、3)世界保健機関(WHO)分類でグレード2以上(同3.70)、4)血管またはリンパ管浸潤(同3.84)、の4つが同定された。Ferrone氏らは、これらの因子を基に、13点満点で再発リスクを評価できるリスクスコアを構築し、内部コホートおよび外部コホートで検証した。その結果、判別能(AUC)はそれぞれ83%、95%と高値を示した。このリスクスコアに基づき、対象を低リスク・中リスク・高リスク群に層別化したところ、リスクが高いほど再発率も上昇し、各群間で有意な差が認められた。 以上のことからFerrone氏は、「現行のガイドラインでは、『一律対応』のアプローチが取られているが、本研究から、全ての患者に同じ強度のサーベイランスが必要なわけではないことが明らかになった。この結果は、現行診療における重要なギャップを埋めるものであり、今後、適切に管理された個別化医療かつ費用対効果の高いケアを実現するためのガイドライン改訂に影響を与えることが期待される」と述べている。

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災害時、“トイレが使えない”現実を前に――医療者として何を備えるべきか【実例に基づく、明日はわが身の災害医療】第13回

災害時、“トイレが使えない”現実を前に――医療者として何を備えるべきか大規模災害が発生した際、医療機関が直面する最も深刻なインフラ障害の一つが「トイレ」です。能登半島地震の支援で現地へ向かった際、私自身その現実を痛感しました。支援に入った本部で突き付けられたのは、「下水が完全に止まっている」という事実でした。小便は雪解け水をバケツで汲み、便器に流し込んで重力で無理やり流すしかありませんでした。大便については、幸いポータブルトイレがあったため対応できましたが、もしなかったら、支援に入った医療者も被災者も、排泄すらままならない状況だったと思います。排泄物の処理方法、照明のない暗い個室、強い臭気や衛生面の不安……。診療の前に、人としての基本が揺らぐ環境がそこにありました。図1. トイレに雪解け水を利用図2. 災害時ポータブルトイレトイレが使えないと、なぜ医療が成り立たなくなるのか災害時、排泄環境は「最初に悪化し」「最後まで復旧が遅れる」インフラといわれています。しかし、その影響は単なる不便さにとどまりません。高齢者や基礎疾患のある方は、排泄を我慢するだけで、脱水、急性腎障害、電解質異常、便秘、せん妄を起こしやすいことが指摘されています1)。我慢そのものが健康被害につながるのです。また、適切な排泄管理ができない環境ではノロウイルスなどの胃腸炎が集団発生しやすく、避難所や臨時診療所の医療機能を大きく低下させるリスクがあります2,3)。国際的な災害医療基準でも「医療従事者自身のトイレ環境の確保」は必須項目として位置付けられています4,5)。医療者が安全にトイレを使用できなければ、長時間にわたる診療継続は困難になります。つまりトイレとは、医薬品や医療機器と同様に医療を支える基礎インフラなのです。来たるべきトイレ問題に何を備えておくべきか能登での経験から、小規模医療機関であっても「トイレが止まれば診療が止まる」という現実が浮き彫りになりました。ここでは『避難所におけるトイレの確保・管理ガイドライン』6)を基に、無理なく準備できる最低限の備えをまとめます。(1)携帯トイレ(凝固剤タイプ)の備蓄1日5〜7回を目安に、職員と患者さん分の数日分を備蓄しておくことが望ましいです。既存の洋式トイレにビニール袋をかぶせ、用を足したら凝固剤を入れ、封をして破棄することで、下水道が止まっていてもトイレを使用することができます。(2)ポータブルトイレの準備能登でも、ポータブルトイレが“あるか・ないか”で現場の負担が大きく変わりました。急性期は50人当たりに1台のトイレが推奨されており、有床診療所や小規模な病院であれば、職員も合わせて1、2台あれば足りるでしょう。発災時に災害用のトイレが迅速に調達できるよう、関係団体と協定を結んでおくのもよいと思います。マンホール直上にトイレを設置する方法もあります7,8)。マンホールトイレは、下水道管路にあるマンホールの上に簡易な便座やパネルを設け、災害時に迅速にトイレ機能を確保するものです。図3. 東日本大震災や熊本地震で使用されたマンホールトイレ(参考文献8より)(3)雑用水(洗浄・手洗い用水)のストック雪解け水でしのいだ経験からも、飲用とは別に生活用水の備蓄は必須だと実感しました。飲料水の確保は考えていても、排泄用の水を試算にいれてないことが多いため、事前に計算して備蓄しておくことをお勧めします。また感染症予防のために手洗い水の確保も重要です。(4)トイレ空間の簡易照明停電下でトイレが真っ暗になると、転倒リスクが高まり、医療者の利用にも支障を来します。また防犯上も明かりは必須です。充電式、乾電池式のヘッドライトなどが役立ちます。トイレを確保することは、医療と被災者の安全を守ること災害時には、医療者も被災者も排泄の安全を確保することが不可欠です。医療者は診療継続のため、被災者は健康保持のため、清潔で使いやすいトイレの存在が重要になります。診療を守るための第一歩として、今一度、災害時のトイレの備えを見直していただければと思います。 1) 阪東 美智子. 避難所・応急仮設住宅の現状と課題 ― 高齢者・障がい者への配慮や健康影響の視点から. 保健医療科学. 2021;70:407-417. 2) Kasaoka S, et al. Poor Environmental Conditions Created the Acute Health Deteriorations in Evacuation Shelters after the 2016 Kumamoto Earthquake. Tohoku J Exp Med. 2023;26:309-315. 3) 前田 信治, ほか. 東日本大震災時における避難所のトイレの実態調査. 空気調和・衛生工学会論文集. 2018;43:59-64. 4) Sphere Association. The Sphere Handbook: Humanitarian Charter and Minimum Standards in Humanitarian Response. WASH Section. 2018. 5) World Health Organization (WHO). Technical Notes on Drinking-water, Sanitation and Hygiene in Emergencies. WHO Press. 2013. 6) 避難所におけるトイレの確保・管理ガイドライン. 内閣府. 2022. 7) マンホールトイレ整備・運用のためのガイドライン2025年版. 国土交通省. 2025. 8) 国土交通省. 災害時に使えるトイレ

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女性の重度冠動脈疾患における治療選択、PCIかCABGか

 動脈の詰まりに対する最適な治療法は、男女で異なる可能性があるようだ。冠動脈疾患(CAD)患者に対しては、細い金網状のチューブを狭窄した動脈内に入れて広げるステント留置術(経皮的冠動脈インターベンション〔PCI〕)が行われることが多い。しかし、重度の慢性CADの女性患者に対しては、冠動脈バイパス術(CABG)を施行する方が、長期的に見て良好なアウトカムにつながり得ることが、新たな研究で示唆された。米ニューヨーク・プレスビテリアン病院および米コロンビア大学アービング医療センターのKevin An氏らによるこの研究結果は、「European Heart Journal」に11月25日掲載された。 研究グループによると、大規模な臨床試験では、女性の参加者は全体の20〜25%に過ぎず、女性の心疾患の治療に関して「盲点」が生じているという。論文の上席著者である米ワイル・コーネル医科大学のMario Gaudino氏は、「冠動脈の血行再建が必要な場合、男性患者であれば、強固なエビデンスに基づいた治療を受けることができる。しかし、女性患者の場合はそうはいかない。なぜなら女性患者に関するデータが不足しており、男性から得られたデータを流用しているからだ。しかし、女性が『小さな男性』でないことは明らかだ」と話す。 今回の研究では、傾向スコアマッチングにより背景因子を調整した上で、重度の慢性CADを有する女性患者のうち、PCIを受けた群とCABGを受けた群のそれぞれ2,033人ずつ(平均年齢66.5歳)を対象に、長期アウトカムを比較した。対象アウトカムは、全死因死亡、心筋梗塞(MI)、脳卒中、または冠動脈血行再建術の再施行の複合である「主要心脳血管イベント(MACCE)」、MACCEの各構成要素、および心血管疾患(MI、心不全、または脳卒中)による再入院とされた。 中央値5.1年に及ぶ追跡期間中にMACCEを経験した割合は、PCI群で35.8%、CABG群で21.5%であり、リスクはPCI群で有意に高かった(ハザード比1.81、95%信頼区間1.63〜2.01)。また、PCI群ではCABG群と比べて、追跡期間全体を通して全死因死亡リスクが34%、心血管疾患による再入院リスクが40%高かった。 An氏は、「現在、女性がCABGを受ける割合は、男性の約半分にとどまっている。長期的に見ると、女性においてはPCIよりもCABGの方が、より保護的であるように思われる」とニュースリリースの中で述べている。 ただしAn氏らは、治療ガイドラインを変更するには、さらなる研究が必要だとしている。現在、研究グループは重度のCADを有する女性を対象に、PCIとCABGの両治療法を直接比較する新たな臨床試験を進めている。 An氏は、「現時点では、治療方針は個別に判断すべきだ。本研究では、CABGがPCIよりも長期的な保護効果をもたらす可能性が示唆されたが、解剖学的条件、手術リスク、患者本人の希望といった要因が依然として重要だ」と話している。

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サンアントニオ乳がんシンポジウム(SABCS2025)レポート

レポーター紹介60年に1回の丙午の年を迎えた。2025年は乳がん診療において激動の1年であった。米国臨床腫瘍学会(ASCO)、欧州臨床腫瘍学会(ESMO)で薬物療法の標準治療を変えるエビデンスが、サブタイプ、周術期/転移再発のセッティングを問わず多数発表された。乳がんを専門に診療・研究をしている立場でも、広範なエビデンスのキャッチアップはかなり大変な年であった。ASCO、ESMOでここまで多くのエビデンスが発表されてしまうと、San Antonio Breast Cancer Symposium(SABCS)では薬物療法の話題は枯れてしまって、局所療法の話題が中心となるのではないかと思っていた。ところが。蓋を開けてびっくり、今回のSABCSでは新しい標準治療のエビデンスが多数発表された。以下に、厳選した5演題の結果を解説する。なお、SABCS2024からBest of SABCSのサイトで各演題の解説が見られるようになっている。登録が必要であるが無料なので、詳細を知りたい方はアクセスしてみてはいかがだろうか。なお、今回から日本のエキスパートによる日本語の解説も聞けるようである(私は未聴講)。INDEX1.lidERA試験(HR+/HER2-早期乳がん)2.EMBER-3試験(HR+/HER2-転移乳がん)3.ASCENT-07試験(HR+/HER2-転移乳がん)4.HER2CLIMB-05試験(HER2+転移乳がん)5.LORETTA試験(DCIS)1.lidERA試験(HR+/HER2-早期乳がん)lidERA試験はホルモン受容体陽性(HR+)/HER2陰性(HER2-)乳がん周術期において、経口選択的エストロゲン受容体分解薬(SERD)の有効性を示した初めての試験である。転移乳がんにおいてはelacestrantやイムルネストラントがESR1変異を有するHR+HER2-乳がんにおける有効性を示した。lidERA試験では高リスクStageIを含むStageIIIまでのHR+HER2-早期乳がんを対象として、術後内分泌療法としてgiredestrantと標準的内分泌療法(ET)を比較する試験である。N0は腫瘍径が1cmを超えるかつG3/Ki-67≧20%、ゲノムプロファイリング検査で高リスク、あるいはT4を対象とした。周術期化学療法は許容された。閉経前患者は卵巣機能抑制を併用(タモキシフェン以外)した。12週以内のET±CDK4/6阻害薬は許容された。主要評価項目は無浸潤疾患生存期間(iDFS)であった。giredestrant群には2,084例、標準治療群には2,086例が割り付けられ、約40%が閉経前であった。StageIIが約50%、StageIIIが約40%、リンパ節転移はN1が約45%、N2以上が30%強と、比較的リスクが高いと考えられる患者が含まれた。それを反映して、約80%の患者で化学療法歴があった。内服期間は5年以上とされた。32ヵ月の観察期間中央値において、iDFSイベントはgiredestrant群で6.7%、標準治療群で9.4%で発生し、ハザード比(HR):0.70(95%信頼区間[CI]:0.57~0.87、p=0.00141)とgiredestrant群で有意に少なかった。休薬はgiredestrant群で多かったが、中止は両群ともに少数であった。有害事象は関節痛、ホットフラッシュなどが主であり両群間の差はほぼみられなかったが、関節痛、高血圧のGrade3以上はgiredestrant群でやや多い傾向がみられた。本試験をもって、高リスクHR+HER2-早期乳がんの術後治療に経口SERDの選択肢が現れた。一方で、本試験では現在高リスク患者に対する標準治療であるアベマシクリブ、ribociclibなどのCDK4/6阻害薬は併用されていない。また、日本においてはS-1も選択肢になりうる。2.75年時点でのiDFS絶対差2.8%は、monarchE試験における2年時点での3.5%とほぼ同等である(Johnston SRD, et al.J Clin Oncol. 2020;38:3987-3998.)。現時点ではET+CDK4/6阻害薬に対するオプションであるが、今後周術期治療における経口SERD+CDK4/6阻害薬のエビデンスの創出が求められる。2.EMBER-3試験(HR+/HER2-転移乳がん)イムルネストラントは第III相試験での有効性が初めて検証された経口SERDであり、EMBER-3試験の最初の結果が2024年のSABCSで発表された。今回はそのアップデートの結果が発表された。EMBER-3試験ではCDK4/6阻害薬併用を含む術後ET/終了後12ヵ月以内の再発、もしくは転移乳がん(MBC)に対する内分泌療法で病勢進行したHR+HER2-MBCを対象として、イムルネストラント(A)、標準ET(フルベストラントもしくはエキセメスタン)(B)、イムルネストラント+アベマシクリブ(C)、にランダム化された。主要評価項目は、ESR1変異を有する患者におけるA vs.B、全患者におけるA vs.B、全患者におけるC vs.Aを主治医判断における無増悪生存期間(PFS)で評価した。今回のSABCSではそのアップデートされた結果が発表された。まずひとつ目の主要評価項目であるESR1変異を有する患者におけるイムルネストラント単剤と標準ETを比較したPFS中央値は、5.5ヵ月vs.3.8ヵ月(HR:0.62、95%CI:0.47~0.82、p=0.0007)と、イムルネストラント群における統計学的有意な改善が維持されていた。全生存期間(OS)の中間解析は50%のイベント発生割合で中央値が34.5ヵ月vs.23.1ヵ月(HR:0.60、95%CI:0.43~0.86、p=0.0043)とイムルネストラント群で良好な傾向を認めた。中間解析のため、この時点で定められた有意水準は満たしておらず、統計学的な有意差はまだ認められていない。探索的な評価項目である化学療法導入までの期間は15.6ヵ月vs.10.2ヵ月(HR:0.66、95%CI:0.48~0.92)と、イムルネストラント群で長い傾向を認めた。 全患者におけるイムルネストラント+アベマシクリブとイムルネストラント単剤の比較では、PFS中央値10.9ヵ月vs.5.5ヵ月(HR:0.59、95%CI:0.47~0.74、p<0.0001)とアベマシクリブ併用群で有意に良好な結果であった。その有効性はCDK4/6阻害薬治療歴のある患者群でも同様であり、またESR1変異の有無、PI3キナーゼ経路の変異の有無によらずアベマシクリブ併用群で良好であった。OS中央値は33%のイベント発生割合でアベマシクリブ併用群は未到達、イムルネストラント群は34.4ヵ月(HR:0.82、95%CI:0.59~1.16、p=0.2622)と若干併用群で良さそうな傾向は認めたものの、有意差は認められなかった。EMBER-3試験の結果を踏まえて、本邦でもイムルネストラントはET中に進行したESR1変異を有する患者に対する標準治療となった。HR+HER2-MBCに対する内分泌療法は経口SERDを含め多くのエビデンスが存在し、またongoingの試験が多数実施されている。オプションが増えることは患者にとって良いことではあるが、それぞれの薬剤に異なるコンパニオン診断が設定されていること、薬剤が上乗せされることによる医学的、また経済的な毒性が増すことなど、実臨床では悩むことが多くなる。エビデンスを整理しそれぞれの患者にとっての最適な、有効かつ無駄のない治療戦略を立てていくことが、臨床医に求められている。3.ASCENT-07試験(HR+/HER2-転移乳がん)サシツズマブ・ゴビテカン(SG)はHR+HER2-ならびにトリプルネガティブ(TN)MBCの3次治療以降でPFSならびにOSを有意に改善した、TROP-2をターゲットとした抗体薬物複合体(ADC)である(Bardia A, et al. N Engl J Med. 2021;384:1529-1541.)。ASCENT-07試験はHR+HER2-MBCの化学療法の1次治療において、SGを主治医選択化学療法(TPC)と比較した第III相試験である。ASCENT-07試験では転移/切除不能病変に対する化学療法歴のないHR+HER2-MBCのうち、2ライン以上のET歴がある、もしくは1次治療としてのET±CDK4/6阻害薬治療中6ヵ月以内に増悪、あるいはET+CDK4/6阻害薬の術後治療開始後24ヵ月以内に再発した患者を対象として、SGとTPC(カペシタビン、パクリタキセル、nab-パクリタキセル)を比較した。主要評価項目は盲検化されたPFSとされた。690例の患者が登録され、SG群に456例、TPC群に234例が割り付けられた。年齢の中央値は57~58歳、白人が約半数と、アジア人が40%含まれた。PS 0は60%であった。2ラインのETを受けた患者が約60%、1ラインのETを受けた患者が27%であった。約90%がCDK4/6阻害薬の投与を受けた。周術期にCDK4/6阻害薬を受けた患者は5%未満であり、アンスラサイクリン、ならびにタキサンを受けた患者が約半数であった。主要評価項目のPFS中央値は8.3ヵ月vs.8.3ヵ月(HR:0.85、95%CI:0.69~1.05、p=0.130)と両群間の差を認めなかった。副次評価項目の主治医評価のPFSは8.4ヵ月vs.6.4ヵ月(HR:0.78、95%CI:0.64~0.93、p=0.008)とSG群で有意に良好であったが、これはバイアスの可能性がある。副次評価項目のOSは27%のイベント発生割合で中央値は両群ともに未到達(HR:0.72、95%CI:0.54~0.97、p=0.029)とSG群で良好な傾向がみられた。TPC群の61%が後治療としてADCによる治療を受けていた。SGの安全性についてはこれまでの報告と変わらず、最も高頻度に起きる有害事象は好中球減少症であった。本試験はHR+HER2-MBCの化学療法の1次治療としてのSGの有効性を検証した試験であったが、主要評価項目のPFSにおける優越性は示せなかった。2次治療以降ではPFS、OSともに化学療法に対する優越性が示されているにもかかわらず、本試験で示されなかった理由は現時点では不明である。もう少しイベントが発生した段階でのOSについては慎重に評価する必要があるだろう。4.HER2CLIMB-05試験(HER2+転移乳がん)HER2CLIMB-05試験はHER2+MBCの1次治療におけるtucatinib(まもなく本邦でも承認が期待されている)の上乗せ効果を検証した第III相プラセボ対照二重盲検化試験である。tucatinibはHER2を対象とした新たなチロシンキナーゼ阻害薬(TKI)で、HER2+MBCの3次治療(Murthy RK, et al. N Engl J Med. 2020;382:597-609.)や2次治療(Hurvitz SA, et al. Ann Oncol. 2025 Nov 17. [Epub ahead of print] )における有効性が示されている。本試験ではHER2+MBCに化学療法の1次治療としてトラスツズマブ+ペルツズマブ(HP)およびタキサンの併用療法(THP)を受け、4~8サイクルまでのTHP中に病勢進行しなかった患者を対象として、HPにtucatinib 300mg BIDもしくはプラセボを維持療法として投与した。主要評価項目は主治医判断によるPFS、副次評価項目はOSや盲検化PFS、中枢神経(CNS)-PFSなどとされた。326例がtucatinib群、328例がプラセボ群に割り付けられ、HR+患者では内分泌療法の併用が許容された。PSは0が60%強、HRは陽性が50%程度、脳転移の既往が約12%に認められた。De novo StageIVが約70%であり、再発例は30%にとどまった。主要評価項目の主治医判断によるPFSは中央値が24.9ヵ月vs.16.3ヵ月(HR:0.641、95%CI:0.514~0.799、p<0.0001)とtucatinib群で有意に良好であった。サブグループ解析はいずれもtucatinib群で良好な傾向がみられた。HRステータスごとの解析ではHR-でより差が強まる傾向を認めた。OSはいずれも未到達(HR:0.539、95%CI:0.303~0.957、p=0.0320)とtucatinib群で良好な傾向がみられた。CNS-PFS(脳転移の増悪もしくは死亡をイベントと定義)については全体集団では差がみられなかったものの、登録時に脳転移を有していた患者ではtucatinib群で良好な傾向がみられた。これは過去の試験結果とも共通している。有害事象も既報と大きな違いはないが、tucatinib群で下痢が73%、肝機能障害が30%弱と毒性が強い傾向にあった。とくに、Grade3以上のALT上昇は13.5%に認められており、tucatinib投与の際には注意が必要である。プラセボ対照とはいえ両群間の毒性が明確に異なるため、いわゆるfunctional unblindingが起きて主要評価項目に影響を及ぼした可能性は否定できない。本試験をもって、HER2+MBCに対するTHPによる導入療法の後のHP+tucatinib療法が標準治療の候補となった。一方で、HER2+MBCの1次治療としてはDB-09試験(Tolaney SM, et al. N Engl J Med. 2025 Oct 29. [Epub ahead of print])の結果からT-DXd+ペルツズマブも今後有力な候補になってくる。HER2+MBCの1次治療はPFSの延長に伴い、治療期間が以前と比べて大幅に延長している。これらの薬剤の使い分けに当たっては、有効性は当然のことながら有害事象の程度、頻度、重篤度も十分に加味して選択する必要がある。5.LORETTA試験(DCIS)最後に日本からのオーラルの演題を紹介する。LORETTA試験は低リスク非浸潤性乳管がん(DCIS)を対象として、非切除かつタモキシフェン(TAM)による治療の有効性を検証した単群検証的試験である。日本臨床試験グループ(JCOG)で実施され、研究事務局は新潟県立がんセンターの神林 智津子先生、発表したのは前JCOG乳がんグループ代表である名古屋市立大学岩田 広治先生である。JCOG1505 LORETTA試験では、浸潤がんを伴わない低リスクDCISと診断された40歳以上の女性を対象として、手術を行わずにTAM 20mg/日を5年間投与する試験である。DCISはコメド壊死を伴わず、核グレードが1~2、ER+かつHER2-であることが低リスクと定義された。3~6ヵ月ごとに評価を実施し、浸潤がんが疑われる、もしくは腫瘍径の増大があれば針生検を実施し、浸潤がんもしくはグレード3 DCISの診断となれば手術が行われた。評価項目は5年累積同側乳房内浸潤がん(IPIC)発生割合であった。IPICは2.5%を期待値、7%を閾値と設定された。これはすなわち、全登録患者におけるIPICが14%以下であれば仮説が検証されることになる予定であった。344例が登録され、337例が適格とされた。登録患者のうち、核グレード1が70%、ER+は100%、PgR+は97%であった。MRIによる腫瘍径は78%で2cm未満であった。中間解析における主要評価項目の評価で18例のIPIC発生があり、本試験は早期中止となった。IPICは腫瘍径が2cm以上の患者で多い傾向が認められた。副次評価項目の5年OSは98.8%、5年対側乳房無病生存率は97.5%と予後は非常に良好であった。6年同側乳房内浸潤がん無発生生存率は89.7%、6年無手術生存率は76.4%であった。2024年に同様の試験であるCOMET試験(Hwang ES, et al. JAMA. 2025;333:972-980.)で、低グレードDCISに対する非切除療法の安全性が示されている。COMET試験ではガイドライン遵守群の同側浸潤がん5.9%に対してアクティブモニタリング群では4.2%であり、アクティブモニタリングの非劣性が示された。LORETTA試験では主要評価項目は達成できなかったものの、同側浸潤がんの発生は当初の予想より著しく多いわけではなく、また予後は非常に良好であることが示された。非切除を希望する一部の患者にとっては、非切除療法がオプションになりうることを示したとも言えるだろう。

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アルツハイマー病に伴うアジテーション、最適なブレクスピプラゾールの投与量は?

 アルツハイマー病に伴うアジテーションは、患者の転帰と介護者の負担に重大な影響を及ぼす。ブレクスピプラゾールは有望な治療選択肢と考えられている。しかし、至適用量は依然として不明であった。サウジアラビア・King Faisal UniversityのMahmoud Kandeel氏らは、アルツハイマー病に伴うアジテーションの治療におけるブレクスピプラゾールの異なる用量の有効性と安全性を比較するため、システマティックレビューおよびネットワークメタ解析を実施した。Journal of Alzheimer's Disease誌オンライン版2025年12月8日号の報告。 PRISMAガイドラインに従い、2025年1月までに公表された研究をPubMed、Embase、Web of Science、Scopusより検索した。ブレクスピプラゾールの異なる用量(0.5~3mg/日)とプラセボを比較した4件のランダム化比較試験(1,451例)を解析に含めた。主要アウトカムは、Cohen-Mansfield Agitation Inventory(CMAI)、Clinical Global Impression-Severity Scale(CGI-S)、Neuropsychiatric Inventory-Nursing Home Version(NPI-NH)スコアの変化と安全性評価とした。 主な結果は以下のとおり。・ブレクスピプラゾール2mgは、プラセボと比較し、CMAIスコア(平均差[MD]:-5.88、95%信頼区間[CI]:-8.13~-3.63)、CGI-Sスコア(MD:-0.48、95%CI:-0.95~-0.01)の有意な改善が認められた。・複数回投与においてNPI-NHスコアの有意な改善が認められ、高用量(2~3mg)投与で最も効果が高かった(MD:-4.60、95%CI:-7.54~-1.66)。・高用量(2~3mg)では、治療下で発現した有害事象が増加した(リスク比:1.20~1.33)。しかし、重篤な有害事象についてはプラセボと比較して有意な差は認められなかった。 著者らは「アルツハイマー病に伴うアジテーションに対するブレクスピプラゾール2mgによる治療は、良好な安全性プロファイルを維持しながら、最適な治療効果をもたらすことが明らかとなった。これらの知見は、個々の反応と忍容性に基づき、低用量から治療を開始しながら2mgまで慎重に漸増することを支持している」とし「今後の研究では、長期的なアウトカムと実臨床における有効性に焦点を当てるべきである」としている。

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食事の飽和脂肪酸を減らすことは心疾患の高リスク者に有益

 心疾患のリスクが高い人は、飽和脂肪酸の摂取量を減らすことで健康にプラスの効果を得られる可能性のあることが、新たなシステマティックレビューで示された。心疾患リスクの高い人が食事中の飽和脂肪酸の量を減らした場合、心筋梗塞や脳卒中の発症数が減少することが明らかになったという。一方、心疾患のリスクが低い人では、5年間の追跡期間で同様の効果は明確には確認されなかった。詳細は、「Annals of Internal Medicine」に12月16日掲載された。 このシステマティックレビューでは、合計6万6,337人が参加した17件の臨床試験のデータを分析し、飽和脂肪酸の摂取量を減らすことが心臓の健康やコレステロール値、全死因死亡にどのような影響を与えるのかを調べた。なお、飽和脂肪酸はバターやステーキ、ピザ、アイスクリーム、多くの加工食品や加工肉などに含まれている。米連邦政府の食事ガイドラインでは、飽和脂肪酸は1日の総摂取カロリーの10%未満に抑えることが推奨されている。一方、米国心臓協会(AHA)ではより厳しい基準となる6%未満に抑えることを推奨している。 その結果、ベースラインの心血管リスクが低い人では、飽和脂肪酸の摂取量を減らしても全死因死亡、心血管疾患による死亡、非致死的な心筋梗塞、致死的または非致死的な脳卒中の絶対リスクの減少は、臨床的に重要な閾値(5年で1,000人当たり、致死的なアウトカムが5件、非致死的なアウトカムが10件)を下回っており、ベネフィットはほとんどないことが示された。一方、リスクが高い人では、閾値を上回る絶対リスクの減少が見込まれ、飽和脂肪酸の摂取量を減らすことで臨床的に意味のあるベネフィットの得られることが示唆された。 また、飽和脂肪酸を脂の多い魚やキャノーラ油に含まれるような多価不飽和脂肪酸に置き換えた人では、「悪玉」とされるLDLコレステロール値が低下し、心疾患のリスクも低下することが示された。 専門家らは、多くの人にとって高コレステロールを防ぐための最善の食事に関するアドバイスは、飽和脂肪を控えることだとしている。本研究には関与していない専門家の1人で、米タフツ大学心血管栄養研究所所長のAlice Lichtenstein氏は、「病気のない人を相手に、まだ発症していない疾患を評価することはできない。しかし、重要なのは予防することだ」と述べている。 飽和脂肪酸の摂取制限を推し進める動きは1960年代に始まり、何十年にもわたって食の選択に影響を与えてきた。ただし、研究者らは、飽和脂肪酸が含まれている全ての食品が同じように健康に影響を及ぼすわけではないと指摘している。例えば、ホットドッグなどの加工肉にはナトリウムも多く含まれており、血圧を上昇させる。一方、牛乳やヨーグルトなど一部の乳製品は、血糖コントロールや体重管理の改善に関連することが示されている。 Lichtenstein氏は、1つの研究結果だけを根拠に栄養に関わる政策を変更すべきではないと注意を促している。同氏は、「より広範なエビデンスがない中で、1件のシステマティックレビューのみが政策に大きな影響を与えるようなことがあってはならない」と話している。

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小児診療ガイドラインのダイジェスト解説&プログレス2025

ガイドライン50点、6,449ページ分の要点がわかる「小児科」66巻12号(2025年12月臨時増刊号)小児診療にかかわる重要なガイドラインについて、作成委員の先生方が、一般小児科医が知っておくべき部分をダイジェスト形式で解説。さらに使用上の注意やガイドライン発表後に得られた知見も併せて紹介します。この1冊で、各領域における最新版のガイドライン情報をアップデート!画像をクリックすると、内容の一部をご覧いただけます。※ご使用のブラウザによりPDFが読み込めない場合がございます。PDFはAdobe Readerでの閲覧をお願いいたします。目次を見るPDFで拡大する目次を見るPDFで拡大する小児診療ガイドラインのダイジェスト解説&プログレス2025定価9,350円(税込)判型B5判頁数316頁発行2025年12月編集「小児科」編集委員会ご購入(電子版)はこちらご購入(電子版)はこちら紙の書籍の購入はこちら医書.jpでの電子版の購入方法はこちら紙の書籍の購入はこちら

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日本人市中肺炎、β-ラクタムへのマクロライド上乗せの意義は?

 市中肺炎(CAP)の治療では、β-ラクタム系抗菌薬が中心となるが、とくに重症例ではマクロライド系抗菌薬が併用されることがある。ただし、マクロライド系抗菌薬の併用が死亡率の低下に寄与するか、依然として議論が分かれている。本邦の『成人肺炎診療ガイドライン2024』では、重症例に対してはマクロライド系抗菌薬の併用が弱く推奨されている一方で、非重症例に対しては併用しないことが弱く推奨されている1)。そこで、中島 啓氏(亀田総合病院 呼吸器内科 主任部長)らの研究グループは、市中肺炎の多施設共同コホート研究の2次解析を実施し、マクロライド系抗菌薬の併用の有無別に院内死亡などを検討した。その結果、β-ラクタム系抗菌薬とマクロライド系抗菌薬の併用療法は、β-ラクタム系抗菌薬単剤療法と比較して、院内死亡率および肺炎治癒率に差は認められなかった。本研究結果は、BMC Infectious Diseases誌オンライン版2025年12月29日号で報告された。 研究グループは、Adult Pneumonia Study Group Japan(APSG-J)により実施された多施設共同コホート研究のデータの2次解析を実施した。対象は、2011年9月~2014年9月に国内4施設(江別市立病院、亀田総合病院、近森病院、十善会病院)でCAPと診断された15歳以上の患者3,470例とし、2,784例を解析対象とした。対象を初期治療としてβ-ラクタム系抗菌薬とマクロライド系抗菌薬を併用する群(併用群)、β-ラクタム系抗菌薬単剤を用いる群(単剤群)の2群に分類して評価した。主要評価項目は観察期間終了時の転帰(院内死亡、肺炎治癒)とし、副次評価項目は抗菌薬投与期間、入院期間とした。解析には、欠測を考慮して多重代入法を用い、傾向スコアマッチングにより患者背景を調整した。 主な結果は以下のとおり。・解析対象は2,784例(併用群306例、単剤群2,478例)であった。・傾向スコアマッチング後(各群298例)、院内死亡率は併用群5.06%、単剤群4.98%であり、両群間に有意差は認められなかった(群間差:0.00%、95%信頼区間[CI]:-3.73~3.71)。・肺炎治癒率は併用群91.79%、単剤群91.69%であり、両群間に有意差は認められなかった(群間差:0.00%、95%CI:-4.48~4.82)。・重症CAP(CURB-65スコア3点以上)のサブグループ解析においても、院内死亡率は併用群12.00%、単剤群13.33%であり、両群間に差はみられなかった(群間差:0.00%、95%CI:-20.00~16.13)。・抗菌薬投与期間(8.97日vs.9.93日[群間差:-0.99、95%CI:-8.20~0.10])および入院期間(17.72日vs.20.30日[群間差:-2.59、95%CI:-6.99~1.45])についても、両群で同様であった。・本コホートにおける非定型病原体の検出率は、Mycoplasma pneumoniae 1.9%、Chlamydia pneumoniae 0.2%、Legionella pneumophila 0.1%と低率であった。 本研究結果について、著者らは観察研究のため未調整の交絡が存在する可能性があること、イベントの発生率が低く検出力不足の可能性があること、施設数が少なく症例数が1施設に偏っていたこと、観察期間が短いことなどを限界として挙げつつ「CAP患者全体および重症例において、併用群と単剤群で院内死亡率および肺炎治癒率が同様であった。そのため、臨床医は有害事象や耐性菌の発現などの潜在的なリスクとベネフィットを慎重に検討すべきである」と結論を述べた。

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ECMO装着心原性ショックにlevosimendanの早期投与に関する有効性は明らかではなかった(解説:加藤貴雄氏)

 levosimendanは、心筋収縮タンパク質をカルシウムに感受させることで心収縮力を高めるカルシウム増感剤として強心薬作用を持ち、血管平滑筋におけるATP依存性カリウムチャネルの開口を通して末梢と冠動脈の両方の血管を拡張する薬剤であり、1週間作用が持続するため、1回24時間の静脈注射で使用される。ESCのガイドラインに記載されているが(McDonagh TA, et al. Eur Heart J. 2021;42:3599-3726.)、本邦・米国では未承認で記載もされていない。心原性ショックにおける有効性を支持するエビデンスは限られており、これまでの研究結果は一貫していない。 このLEVOECMO研究(Combes A, et al. JAMA. 2026;335:60-69.)は、重度で回復可能性のある心原性ショック患者において、早期のlevosimendan投与が静脈-動脈体外式膜型人工肺(VA-ECMO)の離脱時間を短縮し、生存率を改善するかどうかを評価することを目的とした。本研究は、フランスの11の集中治療室で実施された多施設共同、二重盲検、プラセボ対照ランダム化臨床試験であり、levosimendanの早期投与がVA-ECMOの離脱成功率や患者の生存率に与える影響を明らかにすることを目指した。 結果として、VA-ECMOによる補助を受けている重度心原性ショック患者を対象とした試験の結果、早期のlevosimendan投与では、プラセボと比較して30日以内のECMO離脱成功までの期間は有意に短縮しなかった。levosimendan投与では、ECMO装着期間、ICU滞在期間、および60日死亡率といった副次評価項目も有意に改善しなかった。levosimendan群では心室性不整脈の発生頻度が高かった(17.8%対8.7%)。 本研究では、サンプルサイズ計算に50%の離脱失敗率を仮定していたが、実際には32%であった。40%弱が心筋切除術後、68%という高い離脱率、28%という低い60日死亡率、高いカテコラミン併用率(ドブタミンは80%、ノルエピネフリンは70%)が結果に影響した可能性はあるが、現時点での使用を推奨する結果ではなかった。心機能、血行動態の安定性、組織灌流の改善効果を期待する場合、重症例に早期から使用するか、他に手がなくなって使用するか、選択の分かれ目になる。心原性ショックの病因の違いなど、さらなるエビデンスの集積を待ちたいところである。また、HFpEFの肺高血圧に対する経口薬の試験(LEVEL試験)も進行中である(Yaku H, et al. J Card Fail. 2025 Jul 7. [Epub ahead of print])。

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