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急性期統合失調症の薬物療法では、抗精神病薬の有効性には各薬剤間で臨床的に意義のある小~中の違いが存在し、忍容性はドパミンパーシャルアゴニストが全般的に良好で、新たな薬剤クラスのムスカリン受容体作動薬xanomeline-trospium(ドパミン受容体を主な標的としない初めての抗精神病薬[2024年にFDA承認])はドパミン拮抗薬にみられる有害作用を伴わないものの、コリン作動性および抗コリン作動性の有害事象を引き起こすことが、ドイツ・ミュンヘン工科大学のJohannes Schneider-Thoma氏らの調査で示された。研究の成果はLancet誌2026年2月28日号に掲載された。24種の抗精神病薬のネットワークメタ解析 研究グループは、急性期統合失調症に対する抗精神病薬の有効性と忍容性に関して、統計学的有意性だけでなく臨床的に重要な治療効果を重視した最新知見の提示を目的に、系統的レビューとネットワークメタ解析を実施した(ドイツ研究振興協会などの助成を受けた)。 対象とした抗精神病薬は、ドパミン受容体遮断薬を主とする23種と、ムスカリン受容体作動薬xanomeline-trospiumの24種の薬剤であった。医学関連データベースを用いて、2024年7月26日までに発表された、これらの薬剤に関する試験の論文を抽出した。適切な無作為化が行われた試験のみを解析に含めた。 主要アウトカムは、評価尺度で測定された統合失調症の全体的症状(有効性)とし、変量効果モデルを用いた頻度論的ネットワークメタ解析で分析した。副次アウトカムは、さらに32項目の有効性および忍容性のアウトカムで構成された。有効性はクロザピンが最も高い 438件の無作為化臨床試験を解析の対象とした。このうち388件(参加者7万8,193例[女性2万8,448例・36.4%、男性4万9,745例・63.6%]、年齢中央値37.28歳[四分位範囲:33.58~40.50]、二重盲検試験315件[81%])が、少なくとも1つのアウトカムについて使用可能なデータを提供した。5,117件の中国の試験が特定されたが、その多くで、著者が問い合わせに応答しなかったか、方法論上の懸念が報告されていたため、採用されたのは24件のみだった。 主要アウトカムに関して、256件の二重盲検試験(参加者5万8,948例)が使用可能なデータを提供した。 24種の抗精神病薬のすべてが、プラセボに比べ症状を軽減し、各薬剤の標準化平均差(SMD)は、クロザピンの-0.90(95%信頼区間[CI]:-1.03~-0.77)からlumateperoneの-0.23(95%CI:-0.39~-0.06)の範囲であった。 とくに、クロザピン、amisulpride(SMD:-0.68、95%CI:-0.81~-0.55)、オランザピン(-0.57、-0.62~-0.52)、リスペリドン(-0.53、-0.57~-0.48)は、他の3種以上の抗精神病薬より有効性が高かった。xanomeline-trospium(-0.57、-0.76~-0.37)の有効性は上位6番目だった。 また、23種の抗精神病薬のすべてが、プラセボに比べ陽性症状を軽減し(SMD:-0.90[95%CI:-1.06~-0.73]~-0.16[-0.67~0.34])、陰性症状も軽減した(-0.65[-0.95~-0.34]~-0.16[-0.27~-0.05])。体重増加が83%で 有害事象は、各薬剤で多岐にわたっていた。ドパミンパーシャルアゴニスト(アリピプラゾール、ブレクスピプラゾール、cariprazine)は、有効性では上位に含まれなかったが、全体としてドパミン拮抗薬よりも良好な忍容性を示した。 22種の抗精神病薬のうち12種(55%)で、コリン作動性有害事象のオッズがプラセボより高く、「非常に小さい」以上のオッズ比(OR)は、xanomeline-trospiumの4.11(95%CI:2.27~7.43)からスルピリドの1.27(0.40~4.02)の範囲であった。 また、24種の抗精神病薬のうち18種(75%)で、抗コリン作動性有害事象のオッズがプラセボより高く、ORはゾテピンの3.55(95%CI:1.31~9.66)からリスペリドンの1.28(1.03~1.59)の範囲であった。 プラセボと比較した体重増加は、23種の抗精神病薬のうち19種(83%)にみられ、平均差はゾテピンの3.21kg(95%CI:2.21~4.22)からペロスピロンの0.51kg(-1.36~2.39)の範囲だった。 著者は、「本研究で明らかとなった各種抗精神病薬の有効性の臨床的に意義のある違いについては、臨床ガイドラインにおいて、より強調し具体的に記述すべきであり、個別の薬剤選択の際には忍容性の重要な差異を考慮する必要がある」「今後の研究では、xanomeline-trospiumの有効性を確認するために、他の抗精神病薬との直接比較を行うべきである。また、統合失調症の初期段階におけるクロザピン使用に関する先進的な試験を実施し、アウトカムの改善や疾患の慢性化の予防効果を確立する必要がある」としている。