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高血圧管理・治療ガイドライン2025(8):新型タバコ【一目でわかる診療ビフォーアフター】Q166

高血圧管理・治療ガイドライン2025(8):新型タバコQ166高血圧症でかかりつけの40代男性。1箱/日の喫煙をしており、禁煙指導を試みたが「加熱式タバコだから大丈夫」と無関心な状態。本当に大丈夫だろうか?

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最適な輸液ルート選択の考え方 その弐【ケースで学ぶ輸液オーダー】第3回

最適な輸液ルート選択の考え方 その弐中心静脈カテーテル(CVC)を選択する際、ルーメン数は「大は小を兼ねる」と考えがちですが、実はそうではありません。ルーメンが1つのみのほうが最適な場合もあります。今回は、あえてシングルルーメンを選ぶべき状況について確認しましょう。症例70代女性、胃がんによる幽門狭窄。1ヵ月前からの食欲不振と繰り返す嘔吐により全身倦怠感を来して受診、るいそうが顕著です。幸い遠隔転移はなく根治手術を目指せますが、高度の低栄養状態です。経口からの十分な栄養摂取は困難なことから、2週間の静脈栄養ののちに手術を行う方針となりました。研修医A君は指導医から栄養管理を任されました。さて、どのような静脈路が望ましいでしょうか?図1 幽門狭窄を来した胃がん画像を拡大する考えかたの整理高度な栄養障害を認める場合、ESPENのガイドラインでは術前7~14日間の栄養療法を推奨しています1)。第1選択は経腸栄養ですが、本例のような通過障害がある場合は静脈栄養の出番です。高カロリー輸液を行うには中心静脈路が必要ですが、静脈栄養以外の他の薬剤投与の予定がないのであれば、ルーメン数は1つで十分です。さらに、CDCガイドラインでは、カテーテル関連血流感染(CRBSI)防止の観点から、「必要最小限のルーメン数」の使用を強く推奨しています2)。ここでお勧めしたいのが末梢挿入型中心静脈カテーテル(PICC)です。PICCのシングルルーメンは外径わずか1mm程度(3Fr)。これを上肢から挿入することで、血胸や気胸といった穿刺に伴う重篤な合併症のリスクを避けつつ、安全に中心静脈路を確保できます。PICCのピットフォールPICCは安全なデバイスですが、弱点もあります。それは従来のCVCに比して深部静脈血栓症(DVT)のリスクが高いという点です3)。このリスクを回避する鍵は「血管選び」にあります。カテーテル外径は、血管内径の45%を超えると血流の停滞により血栓リスクが高まるという報告があり4)、「血管径の33%(1/3)以内」に収めるべしとされています5)。つまり、穿刺前のエコー観察で上腕にカテーテルの3倍以上の太さがある血管を見付けることができれば、その時点で「頂き」と言えるでしょう。また、解剖学的な走行も重要です。尺側皮静脈(Basilic vein)は直線的に鎖骨下静脈へ連続しますが、橈側皮静脈は急峻な角度で合流しています。このため、穿刺の第1選択は尺側皮静脈をお勧めします。もう1つのPICCの弱点として、カテーテルが細くて長いため急速輸液には使えないことも知っておきましょう。図2 PICCの至適挿入部位画像を拡大する本症例の対応A君は、栄養投与のみを目的としてシングルルーメンのPICC(外径1mm)を選択しました。右上腕をエコーで観察したところ、カテーテル径の3倍を優に超える直径5mmの尺側皮静脈を確認できました。エコー下穿刺でスムーズに挿入し、合併症なく術前栄養療法を行い、手術の準備を整えることができました。中心静脈輸液の目的が1つであれば、穿刺が安全なシングルルーメンのPICCを選びましょう。シングルルーメンカテーテルから輸液する場合の注意点シングルルーメンカテーテルから注射薬を投与する場合には、投与ルートがメインの輸液ルートとその側管に限られてしまうため、投与方法に工夫が必要になります。配合変化が混合直後に発生する場合は、各注射薬を物理的に接触させないためにメインの輸液をいったん止める必要がありますが、メインの輸液を中断するリスクについても検討して投与ルートの設計を行うことが大切です。シングルルーメンカテーテルから中心静脈栄養施行中の患者さんに、セフトリアキソンの投与が開始されたケースで投与ルートの設計をしてみましょう。国外において、新生児にセフトリアキソンとカルシウム含有注射薬を同一経路から同時に投与した場合に肺、腎臓などに生じたセフトリアキソンを成分とする結晶により、死亡に至った症例が報告されています6)。高カロリー輸液はカルシウムを含有しており、セフトリアキソンとの同一経路からの同時投与は推奨されません。そのため、通常は(1)高カロリー輸液の投与をいったん中断する、(2)ルート内を生理食塩液でフラッシュする、(3)側管からセフトリアキソンを投与する、(4)ルート内を生理食塩液でフラッシュする、(5)カロリー輸液の投与を再開する、という対策をとることで高カロリー輸液とセフトリアキソンの物理的接触を回避できると考えるでしょう。では、セフトリアキソン投与中の30~60分間にわたって高カロリー輸液を中断することは問題ないのでしょうか? 高カロリー輸液(糖濃度12%)中止後の血糖変動をみた報告7)では、低血糖症状は呈さないものの、いずれの症例においても24~80mg/dL低下していたことが確認され、中止20分で44mg/dLまで低下している例もありました。高カロリー輸液の急な中断は、30分程度といえども低血糖を引き起こすリスクがあることから、何かしらの対策が必要と考えられます。具体的には、(1)セフトリアキソンのみ末梢静脈から投与することは可能か、(2)低血糖への対策(高カロリー輸液を中断する1時間前から投与速度を半減する8))をとることは可能か、(3)同じ第3セフェム系薬剤で同等のスペクトラムをもつセフォタキシムへの変更は可能か、からどの対策をとるか医師・看護師・薬剤師などのチームで議論することが望ましいでしょう。注射薬を効果的かつ安全に投与するためには、多職種チームでルート管理に対応していく必要があります。1)Weimann A, et al. Clin Nutr. 2021;40:4745-4761.2)O'Grady NP, et al. Clin Infect Dis. 2011;52:e162-193.3)Chopra V, et al. Lancet. 2013;382:311-325.4)Sharp R, et al. Int J Nurs Stud. 2015;52:677-685.5)Nifong TP, et al. Chest. 2011;140:48-53.6)医薬品安全性情報 Vol.7 No.10(2009/05/14)7)日本消化器外科学会編. 日消外会誌.1982;15:491-500.8)井上善文著. 静脈経腸栄養ナビゲータ エビデンスに基づいた栄養管理. 照林社;2021.

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喘鳴をみたら喘息?【喘息・COPDのここが知りたい!】第1回

皆さま、こんにちは。神奈川県川崎市にあります日本鋼管病院という地域の総合病院で呼吸器内科医として働いています田中 希宇人(たなか きゅうと)と申します。ネット上では「キュート先生」の名前で医療情報発信を行っています。川崎南部地域は肺がん・COPD・喘息など、呼吸器疾患の患者さんが多く、呼吸器の症状で困っている方を10年以上診療してきています。喘息・COPDのガイドラインはしっかり策定されておりますが、すべての患者さんがガイドラインに当てはまるわけではありません。本連載では、それらのガイドラインの隙間を埋めるような実臨床で役立つ内容、悩む状況などについて一緒に考えていきたいと思います。ぜひご意見やご感想もお寄せいただけますと幸いです。喘鳴をみたら喘息?はじめに:その喘鳴をどう診ますか?日常診療において、患者さんが「ゼーゼーする」「ヒューヒューいう」と訴えて来院された際、真っ先に頭に浮かぶのは「喘息」ではないでしょうか。実際に喘息は非常に頻度の高い疾患であり、その症状の1つに「喘鳴(ぜんめい)」があります。喘鳴とは、気道が狭くなることで「ゼーゼー」や「ヒューヒュー」といった異常な呼吸音が連続的に発生する状態を指します。この音は、狭くなった気道を空気が無理に通過する際に生じる振動によるものです。喘鳴は、聴診器を使わなくても聞こえることもあります。息を吸う時に聞かれる「吸気性喘鳴」と吐く時に聞かれる「呼気性喘鳴」があります。音が聞こえるタイミングや、気道のどの部分が狭くなっているかで病気を推測できる場合があります。しかし「All that wheezes is not asthma(喘鳴がすべて喘息とは限らない)」1,2)という言葉があります。ガイドラインには「喘息の治療法」については詳しく書いてありますが、「この喘鳴が本当に喘息なのか」という診断や鑑別プロセスについては、多くを語ってくれません。ましてや、目の前の患者さんが「喘息なのか」については教えてくれません。本連載では、ガイドラインの行間に隠れた、実臨床での「診療のコツ」をお伝えしていきたいと考えています。第1回は多くの先生方が最も迷いやすく、かつ見逃してはならない「喘鳴の鑑別」について深掘りしていきます。喘鳴の「音」を解剖する:stridorとwheeze聴診器を当てて何か「音がする」だけで満足してはいけません。その異常な音が「いつ」「どこで」聞こえるかが、診断の最大のヒントになります。外来診療では長い時間がとれないため、患者の頸部で聴診します。深呼吸で、呼気は勢いよく最後の最後まで吐ききってもらいます。典型的な喘息の喘鳴は、呼気終末に聴取されます。喘鳴が聞かれる場合に、まず重要なのは音が吸気時(息を吸うとき)に強いのか、呼気時(吐くとき)に強いのかという点です。呼気性喘鳴(wheeze)主に末梢気道が狭窄しているサインです。喘息やCOPDの典型的な音です。吸気性喘鳴(stridor)主に上気道・中枢気道の閉塞を示唆します。喉頭浮腫、声帯機能不全、異物、気管腫瘍などが疑われます。もし吸気時に強い「ヒュー」という音が聞こえたなら、それは喘息の増悪ではなく「上気道の緊急事態」かもしれません。この見極め一つで対応が劇的に変わります。次に、聞かれる音がmonophonic(単音性)なのか、polyphonic(多音性)かということがわかると、さらに病気が絞られます。monophonic聴診してどこの部位で聞いても同じ高さの「ピー」という音が聞こえる状態。これは、特定の太い気道が1点で狭まっている、腫瘍や異物などの病態の可能性を考えます。polyphonic胸のあちこちで異なる高さの音が混ざって聞こえる状態。これは喘息のように、肺全体であちこちの気道が狭くなっている病態を示します。喘息と間違えやすい3つの病態咳・息切れ・喘鳴などの症状があると「喘息」が疑われ、呼吸器外来を受診することが多いです。そこで気を付けなければいけない、喘息と間違えやすい代表的な3つの疾患を紹介しましょう。(1)心不全最も頻度が高く、かつ命にかかわるのが心不全です。左心不全による肺水腫で気管支粘膜が浮腫を起こすと、喘息そっくりの喘鳴が聴取されます。見分けるポイントがいくつかあります。喘息の喘鳴は「夜間・早朝」に強く認められますが、心不全は「横になる時(臥位)」に症状が悪化します。また、心不全徴候であるIII音の聴取、下腿浮腫や頸静脈怒張の有無、X線で心拡大やバタフライシャドウ、採血でBNP高値などをあわせて確認します。喘息の既往がある高齢者が「最近ゼーゼーがひどい」と受診した場合、じつは心不全がベースにあるケースは珍しくありません。喘息とうっ血性心不全が合併していることがあり、私も気管支拡張薬、ステロイド、利尿薬、降圧薬を同時に投与したことがあります。(2)声帯機能不全(VCD)喘息と考えて吸入ステロイドや気管支拡張薬など各種吸入薬を使ってもまったく症状が改善しない「難治性喘息」の中に紛れ込んでいるのが、声帯機能不全(Vocal Cord Dysfunction:VCD)です。本来、息を吸うときに開くはずの声帯が上手に開かない病態です。VCDによる喘鳴が最も強く聞こえるのは「胸」ではなく「首」です。また、喘息増悪(発作)時にはSpO2が低下することが多いですが、VCDでは正常に保たれていることが多いのも特徴です。「吸入薬が効かない」と訴える方や、心理的ストレスを抱える方では、VCDの可能性を考え耳鼻科医に診察してもらうことも重要です。(3)中枢気道病変(腫瘍・異物)ときどき呼吸器外来で診るのが、肺がんや気管支結核、あるいは高齢者の誤嚥による異物などが原因の喘鳴です。肺がん・気管支がんなどの悪性腫瘍、異物などによる物理的閉塞による喘鳴は「片側だけ」「ある特定の部位だけ」で聞こえます。喘鳴は全肺野で聞かれるはず、という思い込みを捨て、左右の胸の音を丁寧に聞き比べるとわかることがあります。また、喘息増悪で聞かれる喘鳴は、比較的急な経過で聴取されますが、悪性腫瘍が原因の場合には徐々に症状が強くなることが特徴です。喫煙歴のある高齢者の喘鳴で安易に「喘息やCOPDが原因」と決めつけるのは危険です。X線やCTでの精査を躊躇してはいけません。喘鳴を正しく見極めるためのコツ喘鳴が聴取される患者さんで喘息か他疾患の病態かで迷ったとき、実際の医療現場で行っているいくつかのコツを紹介しましょう。(1)SABA(短時間作用性β2刺激薬)に対する反応をみるまず比較的簡単にできるのが、喘息増悪に準じてメプチンなどのSABAをネブライザーで吸入させ、その場で喘鳴が消失あるいは軽減するかを確認することです。これは、非常に有用な診断的治療になります。喘息であれば反応が良いはずですが、心不全や腫瘍による気道の物理的狭窄では反応が乏しいことがわかります。(2)「いつもの喘鳴」との違いを聞いてみる喘息増悪を繰り返す患者さんが一番自分の状態をわかっています。しかし、喘息患者さんでも別の病気を合併することがあります。「今回の症状は、今までの喘息発作と同じ感じですか?」という一言が、別の病気を見つけるカギになることがあります。患者さんが感じる「今回はなんか違う、息が吸い込みにくい感じがする」といった症状には注意が必要です。(3)喘鳴の起こり方を探る喘息の増悪は何かをきっかけに発作的に起こりますが、COPDや心不全の増悪は、動いたときの息切れが先行し、徐々に症状が悪化することが多いです。そのようなきっかけ、安静時の喘鳴なのか労作時の喘鳴なのか、など喘鳴の起こり方を探ってみましょう。おわりに:診断の「質」が治療の「質」を決める喘息治療の進歩により、多くの患者さんが発作を経験せずに平穏に過ごせるようになりました。喘息死も私が研修医だった20年前に比べるとだいぶ減りました。しかし、その一方で咳・息切れ・喘鳴のような症状がある場合に、「とりあえず喘息として吸入薬を出す」ことが、本来見つけるべき他の疾患を見逃すリスクを生んでいる側面もあります。「喘鳴=喘息」という思考をいったんやめて、聴診器から聞こえる音の正体を疑ってみる姿勢が第一歩です。正しい診断が下されれば、正しい治療につながります。そこで既存のガイドラインがさらに活きてくるものと考えています。 1) Jackson C. BMQ. 1865;16:86 2) Kaminsky DA. Chest. 2015;147:284-286.

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フェニルケトン尿症の新治療薬セピアプテリンへの期待/PTCセラピューティクス

 PTCセラピューティクスは、フェニルケトン尿症(PKU)の治療薬セピアプテリン(商品名:セピエンス)の発売に伴い、都内でメディアセミナーを開催した。わが国のPKUの発生頻度は約6万人の出生に1人の割合で、年間20人前後が診断され、累計で800人以上の患者が報告されている。PKUは未治療や管理が不十分な状態が続くと知的障害、痙攣発作、発達遅延など重度かつ不可逆的な障害が生じる。治療の基本は食事療法で、フェニルアラニン(Phe)が多く含まれる特定の食材(肉・魚・卵など)の摂取が厳しく制限される。 セミナーでは、PKUの病態や治療薬セピアプテリンの臨床試験の概要と今後の治療の位置付けなどについて講演が行われた。新生児マススクリーニング検査で早期診療が可能に 「フェニルケトン尿症に対するセピエンスへの期待」をテーマに濱崎 考史氏(大阪公立大学大学院医学系研究科発達小児医学 教授)が、PKUの病態やセピアプテリンの臨床試験結果、今後の治療の展望などを説明した。 PKUは、いわゆる教科書疾患であり、実臨床で診療する機会は少ない疾患である。PKUは、Pheを代謝するPhe水酸化酵素の先天的な活性低下により、Pheがチロシンに代謝されずに蓄積する。血中Phe濃度の上昇は、発達遅滞や神経症状を来すことがある。そのため無治療の場合、脳の発達障害、小頭症、重度の発達遅滞、行動障害などを来し、治療不十分の場合は、頭痛、うつ状態、神経症、認知能力低下などがある。 PKUは、新生児のマススクリーニング検査の契機となった疾患であり、現在では日齢4または5に血液を採取し、ろ紙検査により診断が行われている。これにより今では早期に診断、治療介入することができるようになっている。 PKUでは血中Phe値を上昇させないために、Pheの摂取を制限する必要があり、治療としては食事からのタンパク質の摂取制限とPheを除去した治療用特殊ミルクによる食事療法が中心となる。食事療法は低タンパク食が中心となり、特別の食材を用意する必要がある。そのため、多額の費用が必要であり(保険適用外)、味も悪く、患者は外食などが難しく社会的孤立を招きやすいという。実際、患者は年齢とともに血中Phe濃度の管理が難しくなることも報告されている1)。 薬物療法について現在わが国で承認されている薬剤では、サプロプテリンとペグバリアーゼの2種類がある。サプロプテリンは顆粒の粉末で服用するが、対象が異型高フェニルアラニン血症など限定されており、全体の20~30%の患者にしか適用がなく普及していない。ペグバリアーゼは皮下注製剤で、成人のみが対象であり、副作用としてアナフィラキシーショックがあるために、アドレナリン自己注射薬(商品名:エピペン)を帯同する必要があるという。 PKU治療の課題として、食事療法ではタンパク制限食へのコスト高やアドヒアランスの問題、薬物療法では使用できる対象年齢や効果不十分の患者への対応などが指摘されている。また、患者からも食事制限への疾病負担や食事への精神的苦痛、QOLの低下などを訴える声も多い。そこで、すべてのPKU患者が血中Phe濃度の管理を負担なく継続できる治療法が求められている。患者の食事の幅を広げるセピアプテリン 今回発売されたセピアプテリンは、Pheの代謝に関わるPAHの補酵素であるBH4の前駆体であり、プテリンのサルベージ経路を介し細胞内BH4に急速に変換され、速やかに細胞内に移行して、細胞内BH4濃度を高める働きがある。 海外で行われた第III相試験のAPHENITY試験では、157例の患者について、導入期にセピアプテリンを14日間投与後に無作為にセピアプテリン群とプラセボ群に割り付け、プラセボ対照を42日間行った。主要評価項目はベースラインから5~6週までの血中Phe値の平均変化量とした。その結果、セピアプテリン投与14日後に血中Phe濃度が30%以上低下した患者割合は66%だった。また、投与5~6週後、血中Phe濃度(5および6週目の平均値、単位:µmol/L)のベースラインからの平均変化量についてプラセボ群(49例)では-16.2だったのに対し、セピアプテリン群(49例)が-410.1とプラセボ群に対する優越性が検証された。安全性については、死亡や重篤な有害事象は報告されず、下痢、胃腸炎などの消化器症状や頭痛などが報告された。 国際共同第III相試験のAPHENITY延長試験では、APHENITY試験後の被験者と非被験者について非盲検継続投与を行い1ヵ月後の平均Pheについて360μmol/Lを基準に分けて、食事によるPhe耐性の評価を行った。主要評価項目はセピアプテリンの長期安全性とベースラインから26週目までの食事中のPhe/タンパク質摂取量の変化である。その結果、血中Phe濃度が360μmol/L未満に維持された患者集団では、食事性Phe摂取量(平均値)が増加した。また、安全性でも主な有害事象は、上気道感染、上咽頭炎、頭痛、下痢、嘔吐、発熱であり、死亡に至るものや重篤なものはなかった。 海外第III相実薬対照試験のAMPLIPHY試験では、セピアプテリンとサプロプテリンの非盲検クロスオーバー試験で効果比較を行った。その結果、平均血中Phe濃度(μmol/L)について、セピアプテリン群(58例)のベースラインが725.8だったものが3、4週目の平均で312.7に低下していた。その一方でサプロプテリン群(56例)はベースラインが790.4だったものが3、4週目の平均で504.8に低下していた。また、血中PheのLS平均変化量について、ベースラインから3、4週目の数値でセピアプテリン群(58例)が-437.0、サプロプテリン群(56例)が-256.6とセピアプテリンはサプロプテリンと比較して血中Phe値を有意に低下させていた。安全性の面でも重篤な有害事象はなく、両薬剤ともに上気道炎、上咽頭炎、下痢などが報告された。 最後に濱崎氏は、わが国の患者の置かれている現状として、次の7項目を挙げた。・食事療法はPKUの治療において大きな役割を担っているが、成人期において継続することが困難・指定難病の対象に加えられたのは、2015年と最近・Phe除去ミルクの医療費負担は軽減されたが、低タンパク食は自己負担・PKUに特化した治療用食品の開発は進んでいない・BH4が反応する可能性はあっても患者が幼少期には負荷試験を実施していないことがある・成人男性PKU患者の通院、食事療法へのアドヒアランスは低いと考えられる・2019年の診療ガイドラインの改訂で、成人の血中Phe濃度の目標値について管理目標値が360μmol/L(6mg/dL)に下がっていることが成人患者には伝わっていない これらの現状を踏まえ、今後のセピアプテリンの臨床的位置付けとして「セピアプテリンは、患者の年齢に制限なく、すべての年代のPKU患者に投与可能な1日1回投与の経口顆粒剤であり、食事療法で非常に困っている患者が、新しい治療薬を服用することで食事療法の幅が広がるものと期待している」と語り、講演を終えた。

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シリアスゲームで診療ガイドライン順守率が改善/JAMA

 診療ガイドラインは医療の質向上に寄与するが、米国では順守率が依然として低く、時間的制約のある疾患の典型とされる外傷のトリアージ、とくに高齢者の治療では順守率が50%を下回るという。米国・ピッツバーグ大学のDeepika Mohan氏らは、医師の誤診の低減を目指して開発されたシリアスゲーム(serious game、娯楽以外の目的[知識習得、技術向上、行動変容など]を志向するビデオゲーム)が、救急医による高齢者の外傷トリアージのガイドライン順守状況を改善するかを無作為化試験で検討した。研究の成果は、JAMA誌オンライン版2026年4月20日号に掲載された。米国の非外傷専門施設の救急医800人が参加 本試験は研究者主導型にて行われ(米国国立老化研究所[NIA]などの助成を受けた)、米国の非外傷専門施設の救急部門で、メディケアの出来高払い制度(fee-for-service)に加入している65歳以上の外傷患者のトリアージを担当する救急医800人(男性563人[71%]、臨床経験年数中央値10年[四分位範囲[IQR]:6~17]、Advanced Trauma Life Support[ATLS]修了者750人[94%])を対象とした。 介入群(400人)の医師は、タブレットPCを用いたゲーム形式の訓練(初回に2時間の研修、その後四半期ごとに20分の研修を3回、合計4回)を受け、対照群の医師(400人)は通常の教育を受けた。 ゲームは、行動変容理論に基づいて構築され、トリアージが十分でない場合の結果を明示する症例ベースの物語形式の記事や、迅速かつ正確なパターン認識を習得するためのフィードバック機能を備えた時間制限型パズルなどが組み込まれた。また、あらゆる重症外傷のパターンを網羅する一方で、とくに年齢およびフレイルの程度が患者アウトカムに及ぼす影響に重点が置かれた。 主要アウトカムは、無作為化から1年間のアンダートリアージ(緊急度の過小評価:重症患者のうち高次の外傷専門施設へ搬送されなかった患者の割合)であった。また、副次アウトカムは、オーバートリアージ(緊急度の過大評価:軽症でありながら高次施設へ搬送された患者の割合)、および30日以内の死亡と再入院の複合とした。重症例のうち47%を搬送、過小評価が有意に低減し過大評価は増加せず 1,147病院の医師が、65歳以上のメディケア受給患者4万1,073例(平均年齢79[SD 8.4]歳、白人3万6,927例[93%]、Charlson併存疾患指数≧1点が3万918例[74%])を治療した。このうち1,738例(4.2%)が重症で、外傷性脳損傷(1,343例[77%])、肋骨骨折(552例[32%])、四肢骨折(313例[18%])の頻度が高かった。 介入群の99%(397/399人)が少なくとも1回のゲームを用いた研修を受け、67%(268/399人)が4回の研修のすべてを修了した。 1,738例の重症外傷患者のうち、809例(47%)が高次施設に搬送され、初回入院日から30日以内に273例(16%)が死亡し、30日以内に865例(50%)が再入院した。入院日数中央値は4日(IQR:2~8)だった。 重症外傷患者のうちアンダートリアージの割合は、対照群(救急医399人、年齢中央値41歳)が57%(527/919例)であったのに対し、介入群(398人、42歳)は49%(402/819例)と有意に低率であった(モデル補正後絶対群間差:-7%、95%信頼区間[CI]:-13~-0.8、p=0.02)。 一方、オーバートリアージ(介入群71%[1,038/1,455例]vs.対照群74%[1,132/1,524例]、モデル補正後絶対群間差:-3%[95%CI:-6~1]、p=0.14)、および30日以内の死亡と再入院の複合アウトカム(63%[516/819例]vs.64%[584/919例]、-0.4%[95%CI:-5~4]、p=0.87)には、両群間に差を認めなかった。ゲーム回数、経過期間が効果と関連 著者は、「これらの知見は、シリアスゲームが、救急医のガイドラインに準拠した外傷トリアージを改善し、ガイドライン順守率を向上させる新たなアプローチとなることを示唆する」としている。 また、「1回または2回だけゲームを行った医師に比べ、4回の研修すべてでゲームを行った医師はアンダートリアージの割合が低かった(交互作用のp=0.047)」「ゲームを行っていない、あるいは30日以上前に行った医師に比べ、ゲームを行ってから30日以内に診察した医師はアンダートリアージの割合が低かった(同p<0.001)」と指摘している。

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第294回 増える診療所、減り続ける有床診療所 地域医療に懸念/厚労省

<先週の動き> 1.増える診療所、減り続ける有床診療所 地域医療に懸念/厚労省 2.18歳人口減少で、医療職の養成校の定員割れ深刻化、2040年へ確保を/厚労省 3.小規模クリニック苦境、医療・福祉倒産が3年連続最多/東京商工リサーチ 4.病院サイバー対策を強化、クラウド移行支援へ/政府 5.抗がん剤取り違えで乳児死亡 県立こども病院医師を減給処分/静岡県 6.奥能登の新病院構想、集約化か産科維持かで議論/石川県 1.増える診療所、減り続ける有床診療所 地域医療に懸念/厚労省厚生労働省の医療施設動態調査によると、2026年2月末時点の全国の病院数は7,972施設となり、前年同月比で75施設減少した。病院数は1990年の1万96施設をピークに減少が続いており、2025年には8,000施設を割り込んでいる。その一方で、一般診療所は10万5,548施設で、前年同月比407施設増となったが、その内訳をみると無床診療所が増える一方で、有床診療所の減少が続いている。有床診療所は2月末時点で5,080施設、病床数は6万6,672床となり、いずれも減少傾向にある。直近1年間では月平均約19施設、約348床のペースで減少しており、現在のペースが続けば2026年7月には5,000施設、6万5,000床を割り込み、2027年には6万床を下回る可能性も指摘されている。有床診療所は、在宅医療や高齢者医療、急性期病院からの受け入れなど、地域包括ケアを支える重要な役割を担っている。2次医療圏によっては総病床数の4分の1を有床診療所が占める地域もあり、その減少は地域医療体制の脆弱化につながることが懸念されている。厚労省はこれまで診療報酬改定で、有床診療所を「専門特化型」と「地域包括ケア型」に分類し、在宅患者や介護施設利用者の受け入れ評価、慢性透析患者対応、地域連携分娩管理加算などの支援策を拡充してきた。2026年度同改定でも入院基本料引き上げなどのテコ入れが行われている。しかし、減少傾向には歯止めがかかっていない。背景には経営難に加え、後継者不足や医師・看護師確保の困難さがあるとみられる。地域包括ケアシステムや高齢者医療を支える役割が期待される中、有床診療所の維持をどう図るかが今後の大きな課題となっている。 参考 1) 医療施設動態調査(2026年2月末概数)(厚労省) 2) 病院数が前年同月比75施設減、厚労省調べ 一般診療所は407施設増(CB news) 3) 有床診療所は2026年2月末に5,080施設・6万6,672床に減少、2026年7月に5,000施設・6万5,000床を切る公算-医療施設動態調査(Gem Med) 2.18歳人口減少で、医療職の養成校の定員割れ深刻化、2040年へ確保を/厚労省少子高齢化が進む中、看護師やリハビリ専門職など医療関係職種の養成・確保が新たな政策課題として浮上している。厚生労働省は5月7日、「医療関係職種の安定的な養成・確保に関する検討会」の初会合を開き、医師・歯科医師・薬剤師を除く12職種について、横断的な対策の検討を始めた。対象は、看護師、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、救急救命士、診療放射線技師、臨床検査技師、臨床工学技士、視能訓練士、義肢装具士、歯科衛生士、歯科技工士である。背景にあるのは、18歳人口の減少と養成校の定員割れである。2024年度の定員充足率は、診療放射線技師が103.2%と唯一100%を上回った一方で、看護師は89.6%、理学療法士は87.8%、救急救命士は82.6%にとどまった。言語聴覚士は72.9%、臨床検査技師は76.1%、作業療法士は66.5%で、歯科技工士は53.5%、臨床工学技士は57.0%と6割を下回った。看護師国家試験の受験者数も2021年の6万6,124人をピークに減少し、2025年は6万3,131人となった。厚労省の推計では、2021年から2040年にかけて18歳人口は23道県で4割以上減少する見通しで、秋田県、青森県、岩手県、福島県では5割前後の減少が見込まれる。森光 敬子医政局長は、「養成校の努力だけで充足率の改善を図ることは、なかなか見込めない」と述べ、地域ごとの対応が必要との認識を示した。その一方で、現場では高年齢の看護職員の存在感が増している。55歳以上の看護職員は2008年の17.1万人から2024年には41.3万人へと2.4倍に増え、このうち65歳以上は10.8万人だった。厚労省は、ミドルやシニア層が希望に応じて働き続けられる支援が重要になるとしている。検討会では、養成校の集約化や共同化、遠隔授業、サテライト施設の活用、奨学金、社会人の参入促進、リカレント教育、育児・介護と両立できる働き方などが論点となる。さらに、限られた人員で医療水準を維持するため、各職種の質の確保や役割分担、地域別の需給推計の必要性も指摘された。2040年に向け、医療・介護ニーズは複雑化する一方で、支え手は減少する。養成校の定員割れは単なる学校経営の問題ではなく、地域医療の持続可能性に直結する。厚労省は年内をめどに意見を取りまとめ、2027年度予算や制度改正につなげたい考え。 参考 1) 第1回 医療関係職種の安定的な養成・確保に関する検討会(厚労省) 2) 少子高齢化進む2040年に向けて、看護職・リハ職など12医療専門職種の養成・確保策の検討開始-医療職種養成・確保検討会(Gem Med) 3) 18歳人口が4割超減少 23道県で 21-40年に(CB news) 4) 看護師国試、21年をピークに受験者数が減少 OT・PT・STの受験者数は定員割れで推移(同) 5) 医療職種の養成校、定員割れ改善「見込めない」厚労省医政局長が認識(同) 6) 医療職種、入学定員割れが顕著 安定的な養成・確保が課題に(同) 7) 55歳以上の看護職員、16年で2.4倍増 24年は41.3万人 厚労省集計(同) 3.小規模クリニック苦境、医療・福祉倒産が3年連続最多/東京商工リサーチ医療・福祉分野の経営悪化が深刻化している。東京商工リサーチによると、2025年度の医療・福祉事業の倒産は478件で、前年度比10%増となり、1988年度以降で過去最多を3年連続で更新した。とくに老人福祉・介護事業が182件と最多で、障害者福祉や児童福祉でも倒産が増加した。また、従業員5人未満の小規模事業者が大半を占めていた。病院やクリニック、歯科医院に限った「医療機関」の倒産も71件とこの20年間で最多となった。内訳はクリニック32件、歯科医院31件、病院8件で、とくに歯科医院の増加が目立つ。原因の約9割は「販売不振」と「既往債務のしわ寄せ」で、患者減少に加え、人件費や光熱費、医療材料費の高騰が経営を圧迫している。倒産の97%超は破産で、経営再建の難しさも浮き彫りとなった。歯科分野では、歯科診療所と歯科技工所の倒産が計39件に達し、過去20年で最多となった。全国の歯科診療所は約6万6,000施設と、コンビニの店舗数を上回る水準にある。予防歯科や審美歯科など需要は多様化しているものの、競争激化に加え、高額医療機器への投資、後継者不足、材料費高騰が重荷となっている。とりわけ歯科技工所では、銀など貴金属価格の上昇に加え、中東情勢悪化によるナフサ不足の影響で、樹脂系材料も値上がりしている。診療報酬改定でベースアップ支援料が新設されたが、コスト増を吸収できるかどうかは不透明だ。コロナ禍ではゼロゼロ融資などで倒産が抑えられていたが、支援終了後に経営悪化が顕在化した形。人口減少と高齢化が進む中、医療提供体制の維持には、単なる補助金ではなく、業務効率化や地域再編、M&Aも含めた抜本的な対策が求められている。 参考 1) 2025年度の「医療機関」倒産 20年で最多の71件 クリニック・歯科医院の淘汰が加速、「破産」が97%超(東京商工リサーチ) 2) 医療・福祉の倒産、3年連続で過去最多 東京商工リサーチ調べ(日経新聞) 3) 「歯科関連」倒産が過去20年で最多 「あると助かるがコンビニより多い」 コロナ禍後に医療現場で起きている「支援終了」(AERA DIGITAL) 4.病院へのサイバー対策を強化、クラウド移行支援へ/政府政府は、大規模病院に対するサイバーセキュリティ対策を強化するため、クラウド型システムへの移行を支援する方針を固めた。今夏にまとめる官民投資のロードマップでは、「2030年までに地域の拠点病院のサイバー対策100%実施」という数値目標を盛り込む見通し。背景には、医療機関を狙ったサイバー攻撃の増加がある。2022年には大阪急性期・総合医療センターが攻撃を受け、救急患者受け入れを制限。2026年2月には日本医科大武蔵小杉病院で個人情報漏洩が発生したほか、市立奈良病院でも今年4月にシステム障害が起き、救急受け入れ停止や外来制限に追い込まれた。市立奈良病院では、ネットワーク監視装置が異常通信を検知し、電子カルテを含む一部システムを停止。手術延期や紙カルテ運用への切り替えを余儀なくされた。現時点で個人情報漏洩や悪意ある侵入は確認されていないものの、奈良市は外部有識者による調査委員会を設置し、再発防止策を検討する。政府は、経済安全保障推進法の改正に合わせ、医療分野を「基幹インフラ」に追加する方向で調整している。対象は病床数400以上、診療科16以上などを満たす全国88病院で、多要素認証やサイバー攻撃を想定したBCP(事業継続計画)策定などを点検する。現在、多くの病院では院内サーバーで管理する「オンプレミス型」が主流だが、更新や監視の負担が大きく、データ連携にも障壁がある。このため政府は、クラウド型への移行を促進し、システム開発企業や医療機関への財政支援を検討している。また、厚労省は2026年5月にも「医療情報システムの安全管理ガイドライン第6.1版」を公表する予定で、AI利用に伴う情報漏洩リスクや職員教育の重要性も新たな論点となっている。診療継続と患者情報保護の両立に向け、医療機関のセキュリティ体制強化が急務となっている。 参考 1) 病院のサイバー対策支援 クラウド移行、政府が予算措置 今夏に数値目標(日経新聞) 2) 巧妙化するサイバー攻撃 医療機関のセキュリティ見直し急務(RESCHOニュース) 3) サイバー攻撃疑いの市立奈良病院、救急受け入れと外来診療を停止(日経メディカル) 4) 市立奈良病院システム障害 奈良市が謝罪、原因特定調査「継続中」(奈良新聞) 5.抗がん剤取り違えで乳児死亡 県立こども病院医師を減給処分/静岡県2021年に静岡県立こども病院にて生後3ヵ月の乳児に抗がん剤を誤投与した医療事故で、病院を運営する県立病院機構は5月8日、担当していた49歳の男性医師を減給の懲戒処分とした。乳児は重い障害を負い、約10ヵ月後に死亡している。事故当時、乳児は急性白血病で入院中だった。医師は本来、静脈内に投与すべき抗がん剤を、脊髄を囲む「髄腔」内に誤って投与した。病院の事故調査報告書によると、医師は看護師から薬剤を受け取る際、確認を十分に行わず、髄腔内投与用と静脈投与用の薬剤を取り違えたという。乳児は誤投与後、自発呼吸ができなくなる重大な障害を負い、治療が続けられたものの、10ヵ月後に死亡した。事故を受け、医師は昨年、業務上過失傷害の罪で略式起訴され、罰金50万円の略式命令を受けていた。病院と遺族側との間では民事上の示談も成立している。県立病院機構は5月8日付で、医師に対し「1日分賃金の半額」の減給処分を実施した。また、監督責任を問い、当時の院長と内科系診療部長についても文書厳重注意とした。男性医師は「大変申し訳ないことをしてしまった」と述べている。坂本 喜三郎理事長は「あってはならない重大事案」とした上で、「安全・安心な医療を提供できるよう、再発防止に職員一丸となって取り組む」とコメントしている。今回の事故では、薬剤確認の不徹底というヒューマンエラーが背景にあったとされる。小児がん治療のような高度医療では、複数人による確認体制や投与経路確認の徹底が不可欠であり、医療安全対策のあり方が改めて問われている。 参考 1) 医療ミスで生後3ヵ月の乳児死亡 薬剤を誤投与した男性医師を減給処分 1日分の賃金を半分に 患者は急性白血病で入院(テレビ静岡) 2) 乳児に薬を誤投与、重大な障害を負い10ヵ月後に死亡 静岡県立こども病院の男性医師を減給処分(中日新聞) 3) 静岡県立こども病院で乳児死亡“薬取り違え”で医師を懲戒処分(NHK) 6.奥能登の新病院構想、集約化か産科維持かで議論/石川県石川県が進める奥能登地域の病院再編を巡り、産科医療体制のあり方が大きな論点となっている。県は、人口減少や医療従事者不足が深刻化する奥能登地域の4つの公立病院について、救急や入院機能を集約した新病院を能登空港周辺に整備する方針で、7日に検討会を開いた。会議では、奥能登の妊婦は新病院で妊婦健診を受ける一方で、分娩は七尾市や金沢市の病院で行う案が県側から示された。県は、「分娩には24時間対応できる複数の産科医や小児科医、麻酔科医、新生児対応体制など膨大な人的・物的資源が必要であり、現状では医療従事者の確保が困難」と説明した。これに対し、輪島市や穴水町などの自治体側からは強い反発が相次いだ。輪島市の坂口 茂市長は「安全だけでなく、住民の安心感も重要だ」と述べ、奥能登で出産できない状況が若者流出にもつながると懸念を示した。出席者からは「若者は住むなと言っているに等しい」との声も上がった。奥能登では、能登半島地震以前は市立輪島病院が地域唯一の分娩機能を担っていたが、過去の医療事故を受けて複数医師体制を構築してきた経緯がある。現在は地震後の影響もあり、金沢からの医師派遣が週2回程度に減少し、妊婦健診など外来対応のみとなっている。その一方で、県側は宿泊費支援や搬送体制整備などで安全性を担保したい考えで、山野 之義知事は「安全第一が共通認識」とした上で、地域の要望も踏まえて工夫を検討したいと述べた。石川県は今後、産科や小児医療の分科会を設置し、専門家も交えて議論を継続する。今年度中に新病院の基本構想をまとめる方針だが、開院までにはさらに6~7年程度かかる見通しで、地域医療と人口維持をどう両立させるかが問われている。 参考 1) 石川 奥能登地域の病院再編 産科の医療体制について議論(NHK) 2) 「能登に住むなってことか」奥能登新病院に「分娩機能なし」提案 首長から反発 山野知事「どんな工夫ができるのか」議論する(石川テレビ) 3) 奥能登の新病院で分娩実施せず 石川県が体制案 市町首長から反論(朝日新聞) 4) 奥能登の新病院構想 自治体要望の分べん機能導入 医療従事者不足で石川県は慎重姿勢(テレビ金沢)

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入院患者の静脈血栓塞栓症予防【医療訴訟の争点】第21回

症例入院患者については、原疾患や手術そのほかの治療との関係で、診療科を問わず、肺血栓塞栓症の発症リスクがあるため、予防についても意識を払った対応がされている。本稿では、精神科入院患者に対する身体拘束下における肺血栓塞栓症(PTE)の予防義務の有無が争われた大阪高裁令和7年3月26日判決を紹介する。<登場人物>患者(P3)精神疾患を有する入院患者(肥満[BMI≧30]に該当)原告患者の母(唯一の相続人)被告大学医学部附属病院(国立大学法人)事案の概要は以下の通りである。平成29年(2017年)2月15日P3、精神症状の増悪により、被告病院に入院。入院後、精神科において薬物療法などが開始され、経過観察が行われた。2月中旬~5月下旬入院継続中、P3にはカタトニア様症状(強い緊張状態、反応低下など)が認められ、症状の増悪と改善を繰り返していた。向精神薬の投与が行われる一方、活動性の低下や脱水傾向などもみられていた。5月29日P3は精神症状の悪化により興奮・不穏状態が強まり、自傷他害のおそれがあると判断された。このため、保護室に隔離の上、四肢拘束を含む身体拘束が開始された。同日以降、看護師はバイタルサイン、呼吸状態、末梢循環(浮腫、皮膚色)、下肢の状態などの観察を、行動制限時フローシートなどに基づき継続的に実施した。もっとも、この時点で、Dダイマー検査や下肢静脈エコー検査といった客観的検査は実施されなかった。5月30日身体拘束の継続の要否についてカンファレンスが実施され、拘束継続の必要性が確認された。一方、拘束期間が長期化するかについては、この時点で明確な見通しは立っていなかった。5月31日午前P3は依然として拘束下にあり、自発的な運動は乏しい状態であった。医師は、血栓予防の観点から、同日午前11時頃、弾性ストッキングの装着を指示し、これが実施された。もっとも、体位変換の積極的実施、IPC(間欠的空気圧迫法)、抗凝固薬投与といったほかの予防措置は行われていなかった。また、同日午前までの時点においても、下肢の腫脹、発赤、疼痛など、深部静脈血栓症(DVT)を疑わせる症候は認められていなかった。午後2時頃看護師が訪室したところ、P3は反応が乏しく、呼吸・脈拍の異常が疑われる状態で発見された。午後2時20分頃スタットコールがなされ、医療スタッフが集結し、心肺蘇生措置(胸骨圧迫など)が開始された。なお、最初の異常指摘から蘇生開始までの時間は長くても約6分程度であったと認定されている。午後2時38分頃蘇生継続中の状態で院内搬送がなされたが、回復には至らなかった。同日P3死亡。 実際の裁判結果本件の第一審(神戸地裁)は、P3の死因を呼吸停止(呼吸不全)と認定し、呼吸管理義務違反を肯定して一部認容した。これに対し、被告病院が控訴し、原告も附帯控訴*を提起した。控訴審では、死因が急性肺血栓塞栓症(PTE)であるとの新たな主張がなされたほか、身体拘束後のVTE予防義務違反、検査義務違反などの主張も追加され、以下のような注意義務違反の有無が争われた。*控訴された側が、自身もより有利な内容へと一審判決を変更することを求めて控訴すること血液検査義務違反抗精神病薬の副作用防止義務違反呼吸管理義務違反救急対応義務違反PTE予防義務違反(控訴審で追加)VTE早期発見のための検査義務違反(控訴審で追加)控訴審(大阪高裁)は、P3の死因は急性PTEであると認定した上で、原告(患者家族)の主張する被告の注意義務違反をいずれも否定し、原告の請求を全面的に棄却した。控訴審で追加されたPTE予防義務違反とVTE早期発見のための検査義務違反を取り上げる。裁判所の判断1)P3の死因について詳細はこちら控訴審は、死因究明におけるAi(Autopsy imaging、死亡時画像診断)を用いた画像診断を行う第三者的医療機関として設立された一般財団法人Ai情報センターが作成したAi診断の報告書において、P3が心肺停止になってから1時間強後である5月31日午後3時35分頃に撮影された単純CT画像に、両側肺門部の肺動脈内に凝血塊を示唆する軽度高吸収が認められ、これらが肺動脈左右分岐部を横断するようにして連続していることから、P3の死因はPTEと考える旨の意見が述べられていることなどを踏まえ、P3の死因を「急性PTE」と認定した。2)PTE予防義務違反について詳細はこちら原告は、身体拘束開始後にVTEリスク評価を行い、体位変換、早期離床、弾性ストッキング、IPC、ヘパリンなどの予防策を講ずべき義務を主張した。しかし裁判所は、以下の点を指摘し、「控訴人病院スタッフである医師が、P3に対し、5月29日午後4時45分に体幹部及び両上肢を拘束したが、下肢拘束はせず、その時点ではVTEのリスクが高いとは判断せずに、積極的な運動(マッサージ、他動的な足関節運動など)、弾性ストッキング、IPC法または低用量未分割ヘパリンなどの予防法を取らず、それから48時間が経過する前である5月31日午前11時6分頃に、下肢を自発的に動かせないことから、DVTのリスクが高いと判断して弾性ストッキングの装着を指示したが、ほかの予防法を取らなかったことが、大学医学部の附属病院という控訴人病院の性格などの諸般の事情を考慮しても、当時の控訴人病院スタッフの医師に要求される医療水準に反すると認めることはできない」として、急性PTEの発症を回避するための予防策を取るべき注意義務違反があったとは認められないとした。5月29日以降、カタトニアにより下肢が不動化した状態にあったP3のDVTのリスクは客観的には相当に高かったといえ、P3が急性PTEにより死亡したのも、そのようなリスクが現実化したものと考えるのが自然であること日本血栓止血学会のガイドラインおよび研究班ガイドラインに挙げられたVTEの危険因子で、P3が該当するのは肥満だけであり、この場合の推奨予防法は「早期離床及び積極的な運動」であること72時間以上の身体拘束がVTEのリスクを高めるとの記載がある文献もあり、被告病院も含め、48時間以上の安静の必要をリスク評価の前提とする医療機関が多い中、P3につき5月29日の拘束開始時点やその翌日のカンファレンスにおいて、48時間以上の拘束が必要であると判断されていないこと平成29年当時、ほかの医療機関においても、ベッド上で拘束する場合は、高リスクとして薬物予防あるいはIPC法を考慮することにはなっていなかったこと弾性ストッキング、IPC法及び薬物療法(低用量未分割ヘパリン)には、それぞれ副作用などのリスクがある上、弾性ストッキングやIPC法には、PTEの発症リスクが高いことが保険適用の条件となっていること被告病院では、P3の身体拘束後、生体モニターシステムを用いた測定をするとともに、行動制限時フローシートなどに従い、看護師が末梢循環状態や皮膚状態を継続的に観察しており、症候性DVTの臨床症状である浮腫や皮膚色の変化の有無なども確認されていたが、症候性DVTを疑わせる所見は認められていないこと3)VTE早期発見のための検査義務違反について詳細はこちら原告は、身体拘束時などにDダイマー測定や下肢エコーを行うべきと主張したが、裁判所は、以下の点を指摘し、「医師がP3に対し、身体拘束時から5月31日の弾性ストッキングの装着開始指示時点までの間において、Dダイマー検査などを実施しなかったことが、控訴人病院の性格などの諸般の事情を考慮しても、当時の控訴人病院スタッフの医師に要求される医療水準に反すると認めることはできず、控訴人病院スタッフに、被控訴人主張の注意義務違反があったとは認められない」とした。Dダイマー検査などの実施は、学会予防指針では“身体拘束の解除の際に、場合によりDダイマーなどのスクリーニングを行う”と記載するに止まること大病院では入院時や身体拘束時にDダイマーを測定するとなっているが、病院の規模などからすると、これらの病院において実施されている予防措置が直ちに被告病院における注意義務の内容となると解することはできないことVTEの予防法などを定めるに当たって、Dダイマー検査などについて記載していないか、IPC法を行う症例の場合やDVTの可能性が高い患者またはDVTの臨床症状が疑われる患者に限って実施するという医療機関もあることDダイマー検査については、血栓症の発症リスクの高い症例についてのみ手術前のスクリーニング検査の保険適用がなされ、DVTリスクが高くない限り、患者に対するスクリーニングとしてDダイマー検査などを行うことに否定的な見解もあること被告病院では、下肢の不動化が認められた後は、弾性ストッキングを装着して予防法を取っており、その装着時を含め、DVTを疑わせる所見が存したとは認められないこと注意ポイント解説本件は、控訴審で提出されたAi画像診断の報告書に基づきP3の死因がPTEと認定された上で、その予防義務違反の有無が争われ、本判決は、患者側の主張する予防義務違反をいずれも否定した。PTEは突発的に発症し、救命困難な場合も多いため、その予防を実施しているかが重要となる。本件当時のガイドラインやほかの医療機関での予防の実施状況を踏まえた判断をしているが、本判決でも「平成30年時点の報告を前提にすると、ベッド上で拘束する場合は、高リスクとして薬物予防かIPC法を考慮することになっているが、平成29年5月当時、控訴人病院が、規模も異なるq1病院(注:他自治体が開設・運営する大規模な精神病院)の上記基準に従い、運用すべきであったとはいえない」としているように、ガイドラインの内容はアップデートされるものである。同様に、本判決が、被告病院では実施していない予防措置を実施している他院が存在していることについて「病院の規模などからすると、これらの病院において実施されている予防措置が直ちに控訴人における注意義務の内容となると解することはできない」としていることに表れているとおり、予防のために実施する対応内容については、医療機関の規模などによっても異なる。したがって、本判決と同様の対応をしていれば、予防措置が履行されているとして義務違反が否定されることになるとは限らない点に留意する必要がある。医療者の視点本件は、精神科における身体拘束中のPTE予防と検査のあり方が問われた事例です。裁判所は、当時のガイドラインや病院の規模を考慮し、Dダイマー検査や下肢静脈エコー検査、IPC法などの画一的な実施義務を否定しました。これは、予防策に伴う副作用リスクや患者ごとの状況を総合的に評価する、実際の臨床現場の感覚と合致しています。実臨床において、自傷他害の恐れがある興奮・不穏状態の患者の安全を確保するためには、身体拘束を実施せざるを得ない場面が多々あります。しかし、そのような患者に対して、PTE予防のための弾性ストッキングやIPC法を装着することは容易ではありません。不快感からさらなる不穏を招くリスクがあるためです。また、採血や長時間を要するエコー検査を安全に実施することも物理的に困難なケースが少なくありません。このようなジレンマの中で身を守るためには、入院時や拘束開始時にVTEのリスク評価をしっかり行うことが大事です。その上で、患者の状態に応じて早期離床や下肢の運動など、可能な予防策を選択してください。もし不穏などの理由で積極的な予防策や検査が困難な場合は、下肢の腫脹や色調変化などの継続的な観察を行い、その結果や「なぜ検査・処置ができないのか」という理由をカルテに詳細に記録しておくことを心がけると良いでしょう。Take home messagePTEは突発的に発症し、救命困難な場合があるため、裁判においては、然るべき予防措置を取っていたかが問題となる VTE予防はリスク評価に基づいて個別判断がなされるが、ガイドラインや同種医療機関での実施状況が、予防措置義務の履行がなされていたかの判断基準となるキーワード肺血栓塞栓症(PTE)/静脈血栓塞栓症(VTE)/身体拘束/予防義務/医療水準

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女性の単純性尿路感染症、nitrofurantoinが有効/Lancet

 女性の単純性尿路感染症(UTI)に対する治療は、nitrofurantoinが最も有効であり、次いでpivmecillinam、ホスホマイシン2回投与の順で、ホスホマイシン単回投与が最も有効性が低いことが、スペイン・Institute for Primary Health Care Research Jordi Gol i GurinaのCarl Llor氏らが同国のプライマリケア34施設で実施したプラグマティックな第IV相無作為化非盲検臨床試験「SCOUT試験」の結果で示された。ほとんどのガイドラインでは、単純性UTIに対しnitrofurantoin、ホスホマイシン、場合によってはpivmecillinamの投与が推奨されているが、これらの直接比較が求められていた。著者は、「単純性UTIに対する第1選択薬としてのホスホマイシンの役割は再評価されるべきである」とまとめている。Lancet誌2026年4月25日号掲載の報告。UTIに対する4つの治療法の有効性と安全性を比較 研究グループは、UTI特有の症状(排尿痛、尿意切迫感、頻尿、恥骨上部痛)を少なくとも1つ有し、かつ他の原因(性感染症や外陰膣炎を示唆する症状)がなく、尿試験紙法で亜硝酸塩または白血球エステラーゼのいずれかが陽性の18歳以上の女性を、ホスホマイシン3gの単回投与群、ホスホマイシン3gの2回投与群、nitrofurantoin(100mgを1日3回5日間)群、またはpivmecillinam(400mgを1日3回3日間)群のいずれかに、1対1対1対1の割合で無作為に割り付け追跡評価した。 主要アウトカムは、7日時点の臨床的治癒(すべての感染症状の消失と定義)を示した患者の割合であった。有効性はnitrofurantoinが最も高く、ホスホマイシン単回投与が最も低い 2022年4月4日~2024年11月14日に804例がスクリーニングを受け、このうち768例が無作為化された(ホスホマイシン単回投与群191例、ホスホマイシン2回投与群194例、nitrofurantoin群190例、pivmecillinam群193例)。被験者の年齢中央値は48歳(四分位範囲:34~63)で、人種および民族に関するデータは収集されなかった。 主要アウトカムのデータ欠測例を除く720例が主要解析の対象集団となった。 臨床的治癒率が最も低かったのはホスホマイシン単回投与群(109/185例[59%])、最も高かったのはnitrofurantoin群(128/172例[74%])で、群間差は15.5%(95%信頼区間[CI]:5.9~25.1、p=0.0168)であった。 次いで、pivmecillinam群(127/182例[70%]、ホスホマイシン単回投与群との差:10.9%、95%CI:1.1~20.6、p=0.2352)、ホスホマイシン2回投与群(122/181例[67%]、8.5%、-1.4~18.3、p=0.6935)の順であった。 有害事象は、ホスホマイシン単回投与群で191例中38例(19.9%、95%CI:14.9~26.1)、ホスホマイシン2回投与群で194例中51例(26.3%、20.6~32.9)、nitrofurantoin群で190例中51例(26.8%、21.0~33.6)、pivmecillinam群で193例中41例(21.2%、16.1~27.5)に発現した。ほとんどの有害事象は軽度で、主な事象は消化器系の症状であった。重篤な有害事象は4例に認められ、そのうちpivmecillinam群の腎盂腎炎1例が治験薬と関連ありと判定された。

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医療者向けChatGPT登場!米国在住の医師が特別レポート

 多くのAIツールを医療者が使うようになり、医療者の情報検索に特化したOpenEvidenceなどの専門AIツールも急速に普及するなか、4月末に汎用型AIツール・ChatGPTが医療者向けのChatGPT for Cliniciansをリリース。現時点では使用は米国在住の医師に限られるものの、医療AIの「本命」となるのかが注目される。CareNet.comで「タイパ時代のAI英語革命」「医療者のためのAI活用術」などを連載する原田 洸氏(米国・マウントサイナイ医科大学病院)が使用感を特別レポート。ChatGPT for Cliniciansとは何か ChatGPTをはじめとした生成AIを、日常生活や臨床業務の中で活用している医療者は、すでに少なくないのではないでしょうか。そうした中、米国で新たにリリースされたのが、医療者向けに設計された “ChatGPT for Clinicians” です1)。 一言で言えば、医学分野に特化したChatGPTであり、医師をはじめとする医療従事者が臨床疑問を調べることを想定してつくられたツールです。日々の診療で生じる疑問に対し、タイムリーに、かつ信頼できる情報に基づいて回答することを目的としています。現時点では利用対象は米国の医療従事者に限定されていますが(資格認証あり)、私は現在米国の病院で勤務しているため、実際に使用する機会がありました。ここでは、その概要と使用感について共有したいと思います。通常のChatGPTと何が違うのか 通常のChatGPTは、事前学習された膨大な情報や、Web検索で得られた情報をもとに回答を生成します。これは非常に便利な一方で、臨床現場でそのまま使うには注意が必要です。なぜなら、回答の根拠となる情報に誤りが含まれていたり、Web検索で信頼性の低い情報が拾われたりした場合、その内容が回答に反映される可能性があるからです。たとえば、「StageIVの大腸がんの治療は?」と入力した際に、十分なエビデンスのない自費診療を行うクリニックの情報が検索結果として参照されてしまえば、標準治療やガイドラインから大きく外れた回答が生成されるリスクがあります。 この課題に対応しようとしているのが、ChatGPT for Cliniciansです。米国の主要学会のガイドライン、CDC、FDA、査読済み論文など、信頼性の高い医療情報をもとに回答を生成することで、臨床的な正確性を高める設計になっています。実際に使ってみた印象は 使い方は非常にシンプルです。通常のChatGPTと同じ画面上で、「○○の治療は?」「□□の薬は△△の状況では中止すべきか?」といった日常診療で生じる疑問を入力すると、数十秒から1分程度で回答が生成されます。英語で入力すれば英語で、日本語で入力すれば日本語で回答されるため、言語面での使いやすさも通常のChatGPTと大きく変わりません。 実際に使用した印象としては、回答の質は高く、少なくとも私が試した範囲では、明らかなハルシネーション(AIが事実と異なる情報をもっともらしく出力する現象)はほとんど見られませんでした。また、回答には関連する論文やガイドラインへのリンクが示されるため、最終的な確認を自分で行いやすい点も大きな利点です。普段からChatGPTを使い慣れている医療者であれば、ほとんど抵抗なく導入できるツールだと感じました。対抗馬はOpenEvidence もっとも、医療分野に特化した生成AIツール自体がまったく新しいわけではありません。近年、米国では OpenEvidence という医療特化型の生成AIが急速に普及しており、すでにこちらを利用している医療者にとっては、ChatGPT for Cliniciansは大きな目新しさを感じないかもしれません2、3)。OpenEvidenceは、NEJMやJAMAなどの主要医学誌とも提携しており、これらのジャーナルに掲載された論文の図表にプラットフォーム上でアクセスできる点が強みです。また、私が勤務する医療機関では、OpenEvidenceがすでに電子カルテ上で利用可能になっており、臨床現場での活用の幅はますます広がっています4)。なお、OpenEvidenceは日本からも利用可能であるため、日本の医療者にとっては、現時点ではChatGPT for Cliniciansよりも身近な選択肢と言えるでしょう。今後注目したいポイント 現時点では、ChatGPT for Cliniciansが既存の医療特化型AIサービスをすぐに置き換える存在になるとは言い切れないでしょう。しかし、ChatGPTがもともと持っている画像生成、音声会話、動画生成、文書作成などの多様な機能と組み合わされることで、将来的な可能性は大きく広がると考えられます。 今後は、OpenEvidenceとの競争、電子カルテへの統合、日本を含む米国外への展開などが注目されます。生成AIが医療現場に入り込む流れは、もはや一時的なブームではなく、避けては通れない変化になりつつあります。医療者としては、その利点と限界を理解しながら、どのように安全かつ有効に使いこなすかが問われる時代に入っているのだと思います。

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心血管疾患の再発予防には、LDLコレステロール値もthe lower, the better(解説:桑島巖氏)

 LDLコレステロールが心筋梗塞や脳梗塞などの重大なリスク因子であることは議論の余地はないが、その治療目標値においては、各国のガイドラインに差異がみられる。1次予防に関しては、リスクの有無により<120~140mg/dLとされ、各国ガイドラインに差がみられるが、2次予防に関しては、より厳格な管理が有効であるとするエビデンスが相次いで発表されている。日本では標準的2次予防目標値として100mg/dL未満、急性冠症候群、糖尿病、非心原性脳梗塞合併例などの非常に高リスクな場合には、70mg/dL未満が目標値として掲げられている。 今回、韓国から発表されたEz-PAVE研究は、LDLコレステロール値が70mg/dL以上の冠動脈疾患既往歴、脳血管疾患、末梢動脈硬化性疾患の既往歴を有する3,048例を、LDLコレステロール値低下目標値を55mg/dL未満に下げる強化群と70mg/dL未満とする従来群に1:1にランダム化して3年間追跡したランダム化比較研究である。その結果、主要エンドポイント(心血管死、非致死的心筋梗塞、非致死的脳卒中、血行再建術または不安定狭心症による入院)は、強化群での6.6%が、従来群の9.7%に比べて有意(p=0.002)に抑制率が高かったという結果であった。治療薬としては、スタチンの増量と、エゼチミブの併用、PCSK9併用などが推奨されているが、懸念される筋肉症状などの有害事象の発現率には差がなかったという。 2次予防におけるLDL-C目標値に関して、わが国の動脈硬化学会のガイドライン2022年版では70mg/dL未満としているが、欧州ガイドラインでは超ハイリスク例では55mg/dL未満としている。高カロリー食を好む欧米人では、脳卒中よりも心筋梗塞発症率が高く、米飯食を主食とするアジア人は脳卒中のほうが多いとされてきたが、わが国の食事内容も欧米化している現状を考慮すると、この韓国での本試験の結果は日本人にも適用できる結果であろう。 高血圧と同じく、心血管疾患の再発予防におけるコレステロール管理においては、The lower, the betterを証明したという点で意義のある臨床試験であろう。

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10年間で精神疾患に対する向精神薬使用はどう変化しているのか

 統合失調症スペクトラム症および双極症の治療には、多剤併用療法、高用量の向精神薬、高い抗コリン作用負荷、認知機能低下と関連する抗コリン薬およびベンゾジアゼピン系薬剤の使用が含まれることがある。フランス・Centre Hospitalier de VersaillesのNathan Vidal氏らは、認知機能改善のための今後の治療ガイドラインおよび介入の策定に役立てるため、2013~22年の統合失調症スペクトラム症または双極症の成人外来患者における、薬物治療の動向を評価した。Journal of Pharmaceutical Policy and Practice誌2026年3月31日号の報告。 フランスの全国医療保険請求データベースを用いて、レトロスペクティブ縦断分析を実施した。2013~22年に使用された向精神薬(抗精神病薬、抗うつ薬、抗不安薬、睡眠薬、抗てんかん薬)を特定した。診断別および年齢層別に、使用された向精神薬の数、向精神薬の1日総投与量(DDD)、累積抗コリン作用負荷、ベンゾジアゼピン系薬剤および抗コリン系薬剤の使用頻度について、混合効果線形回帰モデルを用いて推定した。主な結果は以下のとおり。・2013~22年に、ほとんどのグループにおいて、向精神薬の数(β:-0.006~-0.031)、投与量(β:-0.003~-0.029)、ベンゾジアゼピン系薬剤の使用頻度(β:-0.26~-0.88)に、わずかではあるものの有意な減少が認められた。・抗コリン薬の使用は、統合失調症スペクトラム症では減少していたが、双極症では減少が認められず、抗コリン作用負荷は全体的に横ばいであった。・2022年に向精神薬による抗コリン作用負荷が少なくとも1回は高かった患者は、双極症の42.1%、統合失調症スペクトラム症の49.4%にみられた。・処方中止の傾向は、2020年以降ほぼ変化がなかった。 著者らは「2013~22年に、向精神薬の種類と総投与量、ベンゾジアゼピン系薬剤の処方量がわずかに減少したことは、統合失調症スペクトラム症および双極症の成人患者における副作用への配慮が向上したことを示唆している。しかし、抗コリン薬の使用と抗コリン作用負荷は軽減できていないことが明らかとなった。COVID-19パンデミック後も、向精神薬の減薬(deprescribing)を支援するための、さらなる取り組みが求められる」としている。

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「消化性潰瘍診療ガイドライン」改訂、ポストピロリ時代に対応/日本消化器病学会

 2026年4月、「消化性潰瘍診療ガイドライン」が改訂された。2021年から5年ぶりの改訂で、第4版となる。2026年4月16~18日に開催された第112回日本消化器病学会総会では、「日常臨床の現場に残された消化性潰瘍の解決すべき課題 ポストピロリ時代におけるガイドラインの改訂」と題したパネルディスカッションが行われ、各セクションを担当したガイドライン作成委員会委員から、改訂のポイントが紹介された。 冒頭では、ガイドライン作成委員会委員長を務めた鎌田 智有氏(川崎医科大学)が基調講演を行った。ガイドライン改訂総論/鎌田 智有氏(川崎医科大学) 今回のガイドラインの改訂の骨子は、以下となっている。1)近年H.pylori感染率の低下や除菌治療のさらなる普及を背景に、H.pylori関連の消化性潰瘍の頻度は減少傾向にある。一方で、薬物性潰瘍や非H.pylori、非NSAIDs潰瘍、特発性潰瘍が増加傾向にある。こうした現状に即したガイドラインにした。2)ボノプラザン(P-CAB)が上市されて10年が過ぎ、さまざまなデータが蓄積してきた。再度P-CABを含めたシステマティックレビューを行い、予防を含めたこの薬剤の位置付けを広く検証した。 対象疾患は胃と十二指腸にできる潰瘍であり、成人18歳以上に対する診療を基礎とした。GRADEシステムに準拠し、エビデンスの確実性(A〜D)と推奨強度(強い推奨/弱い推奨)を明確に提示した。Clinical Question(CQ)25項目に加え、Background Question(BQ)51項目、Future Research Question(FRQ)7項目を設定し、現時点のエビデンスと今後の課題を整理した。専門医のみならず非専門医、看護師、保健師など多職種の方、学生教育、市民の方などにもわかりやすいステートメントを書くように心掛けたので、ぜひご一読いただきたい。H.pylori除菌治療/伊藤 公訓氏(広島大学)CQ3-1 プロトンポンプ阻害薬に比してボノプラザンで除菌率は向上するか?(二次除菌を含む)・一次除菌治療時にはボノプラザンを使用することを推奨する。(推奨の強さ:強[合意率100%]、エビデンスレベル:A)・二次除菌治療時にはアモキシシリン-メトロニダゾール療法に併用する酸分泌抑制薬はプロトンポンプ阻害薬、ボノプラザンのいずれかを提案する。(推奨の強さ:弱[強い推奨合意率66.7%、弱い推奨合意率33.3%]、エビデンスレベル:B) 除菌治療パートの大きな改訂点としては、一次除菌におけるP-CABの推奨がある。メタアナリシスにより、PPIに比して除菌率が有意に高いことが示されており、副作用発現率に有意差は認められなかった。一方、二次除菌ではPPIとP-CABの有効性に有意差はなく、いずれの使用も許容される「提案」としている。CQ3-2  一次除菌前にはクラリスロマイシン耐性の有無を検査すべきか?・一次除菌前には可能ならクラリスロマイシン感受性検査を行い、最も高い除菌率が期待される除菌レジメンを選択することを推奨する。(推奨の強さ:強[合意率100%]、エビデンスレベル:A) 本改訂で最も重要な変更点の1つが、感受性検査によるクラリスロマイシン耐性確認と、その結果を考慮した個別化除菌の推奨である。H.pylori除菌治療不成功の最大の原因はクラリスロマイシン耐性であり、日本における耐性率は35.5%に上る。根拠としたメタアナリシスでは個別化治療のほうが除菌率が高く、これは臨床の経験からも妥当な結果と考えられるだろう。感受性の場合はP-CAB+アモキシシリン+クラリスロマイシン、耐性の場合はPPI/P-CAB+アモキシシリン+メトロニダゾールの3剤併用療法が推奨となる。 一方で、日本ヘリコバクター学会が会員医師を対象に行ったアンケート調査では、「除菌治療前に感受性試験を行っている」と回答した医師は15%に過ぎなかった。検査には手間と費用がかかり、全例に実施するのは困難であることは想定できる。さらに、感受性試験は保険適用とされているにもかかわらず、社会保険診療報酬支払基金から査定される場合があり、その点も実施が躊躇される要因となっていた。しかし、今年2月に厚労省から「ピロリ菌の感受性検査によるクラリスロマイシン耐性の存在が明らかで」ある場合には、一次除菌としてP-CAB+アモキシシリン+メトロニダゾールの使用を認めるとの通達が出ており、保険診療による感受性検査の妥当性が裏付けられたという点は強調したい。検査ができなかった場合のレジメンについてもCQに記載した。FRQ3-3 泥沼除菌とは何ですか?泥沼除菌の際に気をつけることはありますか?・泥沼除菌とは、除菌治療が成功しているにもかかわらず、尿素呼気試験で偽陽性となり不必要な除菌治療を追加する医療行為を指す。自己免疫性胃炎症例で見られることが多く、注意が必要である。 除菌後の尿素呼気試験偽陽性により、不必要な除菌治療が繰り返される「泥沼除菌」について新たにFRQとして提示した。背景として自己免疫性胃炎の関与が指摘されており、診断精度の向上が求められる。 薬物性潰瘍の治療と予防/千葉 俊美氏(岩手医科大学) 薬物性潰瘍の章は、1)NSAIDs潰瘍、2)選択的NSAIDs(COX-2選択的阻害薬)潰瘍、3)低用量アスピリン(LDA)潰瘍、4)抗凝固薬などその他の薬物潰瘍、5)PPI/P-CAB有害事象の5つの項目を設け、20のBQ、9つのCQ、1つのFRQを設定した。全体としてP-CABのエビデンスが蓄積したため、各項目で推奨に入れている。BQ5-12 非ステロイド性抗炎症薬誘発性潰瘍の治療はどのように行うか?・非ステロイド性抗炎症薬は中止し、抗潰瘍薬を投与する。・非ステロイド性抗炎症薬中止が不可能な場合、第一選択薬としてボノプラザンまたはプロトンポンプ阻害薬を投与する。 NSAIDs継続下でのPPIとP-CABの潰瘍治癒効果の比較についてメタアナリシスの結果、潰瘍治癒効果においてP-CABのPPI(ランソプラゾール)に対する非劣性が示されたため、第1選択薬はP-CABまたはPPIとした。CQ5-2 潰瘍既往歴、出血性潰瘍既往歴がある患者が非ステロイド性抗炎症薬を服用する場合、再発予防はどうするか?・(潰瘍既往歴ありの予防)ボノプラザンまたはプロトンポンプ阻害薬の投与を推奨する。(推奨の強さ:強[合意率100%]、エビデンスレベル:B)・(出血性潰瘍既往歴ありの予防)COX-2選択的阻害薬にボノプラザンまたはプロトンポンプ阻害薬の併用を提案する。(推奨の強さ:弱[強い推奨合意率33.3%、弱い推奨合意率66.7%]、エビデンスレベル:B) NSAIDs誘発性潰瘍において、潰瘍既往歴を有する患者は再発リスクが高く、予防的介入が必要である。PPIの潰瘍再発予防効果については、複数のRCTおよびメタアナリシスにより、プラセボと比較して有意に再発率を低下させることが示されている。また、P-CABはPPIと比較して強力な酸分泌抑制作用を有しており、NSAIDs潰瘍の再発予防においてPPIに対する非劣性が示されている。したがって、P-CABもPPIと同様に再発予防薬として使用可能と判断された。 これらのBQ・CQでP-CABの推奨を明確にしたほか、CQ5-5、5-6では低用量アスピリン服用者における予防として潰瘍既往歴なしの場合はPPI、既往歴ありの場合はP-CABまたはPPIを第一選択とした。 さらに、FRQ5-1では「プロトンポンプ阻害薬/ボノプラザンの長期投与により胃腫瘍などの粘膜病変は生じるか?」という項目を設定した。この分野におけるエビデンスは観察研究が大半であり、まだ確定した推奨はできないため、「さまざまな胃粘膜病変が生じる可能性があることから、長期投与は慎重に行うべきである」としている。臨床医に関心の高い設問であり、新たな試験を経て、次の改訂ではCQへの格上げを期待したい。その他のポイント このほか、「非H.pylori・非NSAIDs潰瘍」「球後部十二指腸潰瘍出血」「NHPH(Non-Helicobacter pylori Helicobacters)」などについて解説が行われた。総括/丹羽 康正氏・愛知県がんセンター総長 従来の消化性潰瘍はH.pylori/NSAIDsが主因だったが、現在ではH.pylori感染率低下、高齢化、抗血栓薬使用の増加などを背景に特発性の潰瘍が増加し、感染症モデルから多因子疾患モデルへと移行しつつある。本ガイドラインはその流れを汲むものであり、今後は「除菌療法の最適化」「薬物性潰瘍の予防戦略」「出血/穿孔などの合併症管理」「非H.pylori潰瘍の体系化」といった点が求められる。

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1次予防の脂質低下療法強化の指標、apoBが費用対効果優れる/JAMA

 スタチンの適応があり、かつアテローム動脈硬化性心血管疾患(ASCVD)のない成人の1次予防において、脂質低下療法の強化のマーカーとして、アポリポ蛋白B(apoB)値はLDLコレステロール(LDL-C)値や非HDLコレステロール(non-HDL-C)値と比較して、質調整生存年(QALY)が増加し、増分費用効果比(ICER)が基準値を満たし、費用効果に優れることが、米国・ Northwestern University Feinberg School of MedicineのSamuel Luebbe氏らによる検討で示された。リスクの予測や脂質低下療法の強度決定の指針として、apoB値の優位性は十分に確立されているが、検査費用などの問題のため、主要な脂質マーカーとして採用することには懸念もあるという。研究の成果は、JAMA誌オンライン版2026年4月8日号に掲載された。NHANESデータに基づくコホートの経済的評価 研究グループは、1次予防における高強度スタチンおよびエゼチミブによる脂質低下療法の強化に関する3つのマーカー(LDL-C、non-HDL-C、apoB)の相対的な費用対効果を検討する目的で、コンピュータシミュレーションモデル(心血管疾患[CVD]Policy Model)を用いて経済的評価を行った。 2005~16年の米国の国民健康栄養調査(NHANES)の参加者4,149例(平均[SD]年齢66.5[11.0]歳、女性1,691例[40.8%]、平均[SD]LDL-C値119.2[42.2]mg/dL、同apoB値110.8[39.0]mg/dL、同ASCVDの10年リスクスコア20.9[14.2]%)から、確率標本抽出法により、スタチンが適応で、かつASCVDのない成人のシミュレーションコホート(25万例)を構築した。 参加者に対し、脂質スクリーニング後にシミュレーションを開始し、2018年版AHA/ACCガイドラインに基づきスタチン治療を行った。モデルへの入力データは、全国的な調査、統合された縦断的コホート研究、公表された文献から取得した。 治療を行っても、目標値(LDL-C値<100mg/dL、non-HDL-C値<118mg/dL、apoB値<78.7mg/dL)が達成されない場合に、脂質低下療法を強化することとした。 生涯QALYと費用(2025年の米ドル換算)を算出。主要アウトカムはICER(1QALY獲得に要する費用)とした。AHA/ACCの推奨に基づき、ICERが1QALY獲得当たり12万ドル未満の場合に、その方針は費用効果があると判定した。apoB群のICERは3万300ドル 脂質低下療法の強化のマーカーとしてLDL-Cを目標値とした場合(通常治療)に比べnon-HDL-Cを目標値とすると、25万例当たり617件(95%不確実性区間[UI]:-245~1,422)のASCVDイベントを予防すると推定され、965QALY(95%UI:-3,551~5,341)の増加とともに、210万ドル(95%UI:-9,420万~9,200万)の費用削減が推定された。 また、非HDL-C値と比較してapoBを目標値とすると、25万例当たり1,018件(95%UI:-1,974~-6)のASCVDイベントを予防し、1,324QALY(95%UI:-2,602~5,669)の増加とともに、4,020万ドル(95%UI:-4,360万~1億3,400万)の費用増が推定された。ICERは1QALY獲得当たり3万300ドルであり、apoB値の費用効果を認めた。apoBが最適目標値の確率は65% 1QALY獲得の支払意思額閾値を12万ドルとすると、確率論的解析(モデル解析を1,000回反復)でapoB値が目標値として最適となる確率は65%であり、non-HDL値が最適となる確率は25%であった。LDL-C値の確率は10%と低かった。 目標値をLDL-Cとした場合に比べ、non-HDLとapoBの目標値は生涯の慢性期および急性期ASCVDに要する費用をわずかに抑制したが、スタチン治療とASCVD以外の費用が増加した。apoB検査の費用はごく安価であり、apoBを目標値とした患者における費用の増加は、主に余命の延長および予防治療の長期化によるものであった。 著者は、「これらの知見は、1次予防における脂質低下療法の指針となり、集団ヘルス(population health)の改善に寄与する費用効果の高いマーカーとして、apoB値の使用を支持するものである」としている。

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小児のアトピー性皮膚炎、確実な予防方法はないが治療の選択肢は豊富

 小児のアトピー性皮膚炎の発症を予防するために親ができることは極めて少ないことが、新たなガイドラインで示された。特別な食事療法、入浴を控えること、母乳育児、プロバイオティクスのサプリメントといった広く知られている対策が小児のアトピー性皮膚炎の予防に有効であることを示すエビデンスは見つからなかったという。一方、既にアトピー性皮膚炎を発症している小児には、皮膚のかゆみを和らげるための効果的な治療法が多くあるとしている。米国皮膚科学会(AAD)が作成したこのガイドラインは、「Journal of the American Academy of Dermatology」に4月7日掲載された。 AADによると、これは同学会が発表した初めての小児のアトピー性皮膚炎に関するガイドラインであるという。AAD会長のMurad Alam氏は、「アトピー性皮膚炎に罹患している小児は極めて多いが、症状の現れ方や経過は必ずしも成人と同じではない。アトピー性皮膚炎は小児や家族の生活の質(QOL)を低下させる可能性があるため、最善の治療が確実に行われるようにするためには、小児に特化したガイドラインが必要である」とニュースリリースで述べている。 ガイドラインを作成した研究グループが既存の医学的エビデンスを検討した結果、小児のアトピー性皮膚炎の発症を予防できる真に有効な方法はないとの結論に至った。ただし、保湿剤のみは生後6カ月~3歳の小児のアトピー性皮膚炎の発症を減少させるという目的で「条件付き推奨」の治療法として位置付けられた。条件付き推奨は、その治療法のベネフィットとリスクが拮抗している場合に示される。一方、食事療法や入浴を控えること、ビタミンDやプロバイオティクスのサプリメント、離乳食の早期導入、母乳育児、硬水の軟化、ダニなどのアレルゲンへの曝露を減らすといった他の予防法に関しては、十分なエビデンスがないと結論付けられた。 一方で、小児のアトピー性皮膚炎の治療に関しては、多くの治療法が「強い推奨」として位置付けられた。有効性が明らかにされている治療法には以下が含まれる。・皮膚の乾燥やかゆみの軽減を目的とした保湿剤・再燃時の第一選択薬となるステロイド外用薬・再燃の管理を目的としたカルシニューリン阻害外用薬(pimecrolimus〔国内未承認〕またはタクロリムス軟膏)・かゆみ軽減と再燃頻度の抑制を目的としたホスホジエステラーゼ4(PDE4)阻害薬(crisaborole軟膏、roflumilastクリーム〔いずれも国内未承認〕)・軽症~中等症の患者の乾燥やかゆみの重症度の軽減を目的とした外用ヤヌスキナーゼ(JAK)阻害薬(ルキソリチニブクリーム〔日本ではアトピー性皮膚炎に対する適応は未承認〕、タピナロフクリーム)・軽症〜重症患者における炎症軽減、皮膚バリア機能の改善、乾燥やかゆみを伴う皮膚症状の軽減を目的とした局所用アリル炭化水素受容体(AhR)アゴニスト(タピナロフクリーム)・中等症~重症の患者の症状の重症度低下、再燃の減少、かゆみの軽減を目的としたモノクローナル抗体(デュピルマブ、トラロキヌマブ、レブリキズマブ、ネモリズマブ〔外用薬と併用〕)・中等症~重症の患者の症状の重症度低下、かゆみの軽減を目的としたJAK阻害薬(ウパダシチニブ、アブロシチニブ、バリシチニブ) ガイドラインではまた、入浴、ウェットラップ療法、光線療法についても小児のアトピー性皮膚炎の治療法として条件付きで推奨している。一方で、ステロイドの経口薬や注射薬の使用については急激で重度の再燃が見られた患者に限定すべきであり、長期的には使用しないことを強く推奨するとされている。さらに、外用抗菌薬の使用や薬剤と光線療法を組み合わせたPUVA療法についても実施しないことが条件付きで推奨された。 AADのアトピー性皮膚炎ガイドライン作業部会の共同委員長であるDawn Davis氏は、「このガイドラインは、患者やケア提供者、そして医学会を教育し、彼らを支援することで、アトピー性皮膚炎の小児ができる限り最善の治療を受けられるようにするために作成された。早期からの積極的な介入によって、患者やその家族は症状やQOLの改善が期待できる」と述べている。

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“IVUS-using PCI”?―違和感だらけのIVUS-CHIP試験(解説:中野明彦氏)

【背景】 IVUS-guided PCI vs. angio-guided PCIについてはこれまで数多くの試験が行われ、メタ解析を含めIVUS-guided PCI 優位という結果が大勢だった。1,000例を超える大規模RCTには、IVUS-XPL(2015、韓国、long lesion)、ULTIMATE(2018、中国、all-comers)、IVUS-ACS(2024、中国主体、ACS)などがあり、いずれもMACEあるいはTLF/TVFがほぼダブルスコアの結果だった。さらに、IVUSにOCTを含めた血管内イメージングガイド戦略として複雑病変を対象に比較したRENOVATE-COMPLEX-PCI(2023、韓国)も同様の結果だった。こうした流れの中で、複雑・高リスクPCIを対象とした今回のIVUS-CHIP試験が、主要評価項目である標的血管不全においてハザード比1.25(95%CI:0.97~1.60)と、むしろIVUS-guide群が不利にも見える結果を示したことは驚きであった。 一方で、日常臨床におけるIVUSを主体とした血管内イメージング使用率は国・地域によって大きく異なる。registryやsurveyを概観すると、日本は85%前後、韓国は30%弱、欧州・米国では5~15%(中国は調査不能)という結果だった。医療保険制度の違いが反映されている可能性も高いが、IVUSに対する習熟度、さらにはPCIの文化そのものが異なってくる可能性すらある。IVUS-CHIPの結果を読み取る際にこの背景は無視できない。【論者が感じた違和感】 最大の違和感はまさしくその結果である。筆者らは「PCI技術、デバイス、前処置、後拡張などの進歩により、Angio-guideでも十分良好な成績が出た」と考察し、さらには「経験豊富な高症例数術者が参加していたことから、IVUS群で得られた知見がangio群の手技戦略にも反映される“学習効果”や“再較正”が起きた可能性がある」としている。でも、果たしてそうなのだろうか? 手技内容を見るとlesion preparation rateはIVUS群91.8%、angio群90.2%とほとんど差がなかった。さらに注目すべきはcalcium modification device(CMD)の使用率である。IVUS群ではRA 6.5%・OA 2.5%・IVL 10.6%、angio群ではRA 7.3%・OA 2.7%・IVL 7.5%であり、群間差がきわめて小さい。歴史的にはangiographyベースでCMDが用いられてきたtrialは少なくない。しかし現代の石灰化PCIでは、少なくとも本来は、血管内イメージングによって石灰化の分布・深さ・角度・長さ・結節性などを把握し、そのうえで、どのmodificationが必要かを判断すべきである。とくにIVLは石灰化形態評価と親和性が高く、RAやOAも石灰化の局在や偏在性が不明なままでは適応判断も安全性評価も粗くなる。そう考えると、高度石灰化病変が40%を超える集団でありながらIVUS群でCMD使用が明確に増えていない点は、IVUSで得られた情報が前処置戦略へ十分に反映されなかった可能性を示唆している。 さらに、低い最適化基準達成率(患者単位で53.3%、病変単位で48.0%)、angio群での低いIVUSへのcrossover(0.9%)等々、この試験は本当に“IVUS-guided PCI”を検証していたのか、という疑問が出てくる。【IVUSが本来果たすべき役割】 DES留置を前提としたPCIでIVUSが果たす役割は明確である。(1)lesion preparationの選択、(2)stent planning(径・長さ・landing zone)の精度向上、(3)高拡張の適正化、(4)より良い最終形への追加修正、などである。これまでの臨床試験でも最適化基準を満たした群で良好な予後が示されてきた。 本試験では、上述のとおりIVUSがlesion preparationには寄与しておらず、IVUS群での最適化達成も不十分だった。ステント血栓症低下(0.2%vs.1.0%)がIVUSの有用性を反映しているとはいえ、全般的にはIVUSで得られた情報が全体のstrategy changeに結び付いていない可能性がある。 さらに本試験での最大ステント径(3.50±0.54mm vs.3.38±0.52mm)、後拡張バルーン径(3.90±0.70mm vs.3.72±0.67mm)は他試験に比して大きく、よりlarge vesselを多く含む集団であった可能性が高い。大血管ではangio-guideでもサイズ判断が比較的成立しやすい。また多少拡張不十分でも絶対的な内腔が確保されやすく、flow limitationや再狭窄・再血行再建に直結しにくい。IVUSはサイズ判断が難しく過小評価されやすい中等度径以下の血管、びまん性病変、複雑なedge設定を要する病変でこそ、その真価が発揮される。【本試験の本質と懸念される波紋】 本試験と同じACC 2026で発表されたunprotected LMTに対する同じ枠組みでの試験(OPTIMAL)も同様にneutralだった。これも欧州28施設からの報告である。これらの結果を受けて複雑病変CCSでClass1A、ACSでIIaとなっているESCガイドラインでのIVUSの位置付けが議論の対象となる可能性がある。 IVUS文化が根付き習熟度が高い日本では、IVUSは以前から複雑PCIの標準的補助手段として強く位置付けられてきた。そうした環境では、本試験が日常臨床に与える影響は少ないと予想する。 IVUS-CHIPは、「複雑PCIにおけるIVUSは無効である」ことを示したのではなく、「IVUSを“使う”だけで治療戦略が十分に差別化されず最適化が達成されなければ予後改善にはつながりにくい」ことを本質的に示した試験と解釈すべきではないだろうか。 “IVUS-guided PCI”という言葉の中身が改めて問われている。

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5月5日 熱中症対策の日【今日は何の日?】

【5月5日 熱中症対策の日】〔由来〕「立夏」(5月5日頃)の頃から熱中症患者の報道が出始めることから、早期の注意と熱中症予防にはこまめな水分補給が大切であることの啓発を目的に「熱中症ゼロへ」プロジェクト(日本気象協会)と日本コカ・コーラが共同で2014年に制定。関連コンテンツ第26回 夏の猛暑、実はあなたの老化を「喫煙レベル」で加速させていた!今すぐできる対策とは?【NYから木曜日】小児の熱中症【すぐに使える小児診療のヒント】第36回 重症熱中症には“Active Cooling”を!【救急診療の基礎知識】根性より水分!?令和の夏を生き抜く医学的戦略?【Dr.中川の「論文・見聞・いい気分」】熱中症診療ガイドラインの分類に最重症群「IV度」を追加

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境界性パーソナリティ障害の治療で最も使われている薬剤は?

 境界性パーソナリティ障害(BPD)は有病率が高いにもかかわらず、承認されている治療薬は依然として存在しない。米国・Boehringer Ingelheim PharmaceuticalsのCarissa White氏らは、BPD治療の課題を特定するため、実臨床におけるBPD患者の治療経過を評価した。BMC Psychiatry誌オンライン版2026年3月20日号の報告。 診断後14日以内(ベースライン)に薬物療法を受けており、12ヵ月以上の治療データを有する、12歳以上、BPDの診断を1回以上受けている患者を対象に、レトロスペクティブ観察コホート研究を行った。患者データは、Holmusk NeuroBluデータベース(ver.21R2)の匿名化されたMindLinc電子健康記録より抽出し、治療経過を分析した。 主な結果は以下のとおり。・ベースラインで薬物療法を受けていた患者のうち、1,461例(16.1%)が12ヵ月間のフォローアップ調査データを有していた。・ベースラインで最も頻繁に使用されていた薬剤は抗うつ薬(80.4%)であり、単独または他の薬剤クラスとの併用で使用されていた。・次いで、第2世代抗精神病薬(SGA)、抗不安薬、気分安定薬が使用されていた。・ベースライン後12ヵ月間で、最も頻繁に報告された治療経路は、抗うつ薬から別の抗うつ薬への変更であった。・最も多く使用されていた抗うつ薬はセルトラリン(5.5%)であり、次いでfluoxetine(5%)、citalopram(5%)であった。・最も多く使用されていた気分安定薬は、ラモトリギン(24.9%)、ガバペンチン(15.4%)、バルプロ酸(7.1%)であった。・最も多く使用されていたSGAは、クエチアピン(22.1%)、アリピプラゾール(19.0%)であった。・2種類以上の向精神薬の併用は、ベースラインで83.1%の患者に認められ、フォローアップ期間および年齢とともに増加が認められた。・本研究の限界として、精神療法に関するデータの欠如、治療アドヒアランスに関する情報がない処方記録の使用が挙げられる。 著者らは、実臨床におけるBPD治療で多剤併用率が83.1%と高かったことに対し、「本結果はBPD治療ガイドラインと完全には合致していない可能性があり、BPD患者は相当な治療負担を抱えている可能性が示唆された」とし、「観察された治療パターンの多様性は、BPDの複雑な症状を反映しており、薬物療法戦略を改善し、患者にとって有意義なアウトカムにつなげるためには、BPDの神経生物学に関する理解を深める必要がある」とまとめている。

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低リスクの非浸潤性乳管がん、積極的監視でも早期転帰は手術と同等か

 低リスクの非浸潤性乳管がん(DCIS)と診断された女性では、積極的監視療法と直ちに手術を行った場合とで、浸潤性乳がんの発生率に大きな差は認められない可能性が、新たな臨床試験で示された。積極的監視療法は、治療を行わないことを意味するのではなく、患者の状態を継続的に評価し、必要に応じて適切な治療介入を行える体制で経過を観察する方法である。オランダがん研究所のJelle Wesseling氏らによるこの研究は、第15回欧州乳がん学会(EBCC 15、3月25~27日、スペイン・バルセロナ)で発表された。 DCISは、乳管内にがん細胞が認められるが、周囲には広がっていない(非浸潤)状態のがんである。米国立がん研究所(NCI)によると、DCISで見られる乳管内のがん細胞は、将来的に浸潤性乳がんに進行する可能性があるとされる。DCISに対しては通常、手術が行われ、場合によっては放射線療法やホルモン療法なども行われる。しかし、DCISが浸潤性乳がんに進行するのは、5人に1人程度にとどまるという。Wesseling氏は、「数十年もの間、DCISは『乳がんの初期段階』と位置付けられてきたため、ほぼ必ずと言っていいほど、乳がんと同じように治療されてきた。しかし、もしDCISのほとんどが危険な浸潤性乳がんに進行しないのなら、一部の女性は過剰治療を受けているのではないかという大きな疑問が浮かんでくる」と指摘する。 今回の臨床試験には、オランダの約60カ所の病院で治療を受けた低リスクDCISの女性1,423人が登録された。試験が2017年に開始された当初、最初の73人の患者は、手術を受ける群と積極的監視療法を受ける群のいずれかにランダムに割り付けられた。その後は、患者自身がいずれかの治療法を選択できるように試験内容が変更され、約4分の3(1,025人)が積極的監視療法、330人が即時手術を選択した。なお、本試験は、浸潤性乳がんの発生が60例に達した時点で中止して中間解析を行う設計となっており、今回の報告はその中間解析の結果である。 平均約2年の追跡期間における解析の結果、浸潤性乳がんに進行した患者の割合は、手術群で9%(33/363人)、積極的監視療法群で6%(63/1,060人)だった。また、見つかった腫瘍のサイズは、手術群で平均6mmだったのに対し、積極的監視療法群では平均9mmとやや大きかったが、悪性度に差はなかった。 Wesseling氏は、「低リスクのDCISと診断された女性にとって、今回の中間解析の結果は心強いものだ。現時点では、即時手術と比べて積極的監視療法が早期の転帰を悪化させることを示す証拠はない」とニュースリリースで述べている。同氏はさらに、「この結果は、患者と医師が即時手術を選択した場合、DCISに対する過剰治療となる可能性があることを示唆している。ただ、乳がん診療ガイドラインに何らかの変更を加える前に、より長期の追跡とさらなる研究が必要だ」としている。また同氏は、「医師として、私は『害を与えてはならない』という原則に従っている。目標は、女性をリスクにさらすことなく不必要な治療を避けることだ」と強調している。 EBCC 15の会長で、ナバラ大学クリニック(スペイン)の乳腺外科学部門長であるIsabel Rubio氏も、Wesseling氏の見解に同意を示し、「追跡期間がより長期であれば、こうした結果は選択された一部の患者に対する治療強度を下げるアプローチを支持するものとなる可能性がある。つまり、慎重なモニタリングを伴う積極的監視療法によって、過剰治療を回避しつつ手術と同程度の転帰をもたらす可能性があることを示している」と述べている。 なお、学会発表された研究結果は、査読を受けて医学誌に掲載されるまでは一般に予備的なものと見なされる。

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中リスクの急性肺血栓塞栓症に対する超音波補助カテーテル血栓溶解療法が有効で重篤な出血合併症を増加させなかった(HI-PEITHO試験)(解説:佐田政隆氏)

 急性肺血栓塞栓症(pulmonary thromboembolism:PTE)の死亡率は、診断されず未治療の場合は約30%と高いが、適切な治療を実施すれば2~8%まで低下することが知られている。致死的PTE患者の75%は発症から1時間以内に、残りの25%は発症48時間以内に死亡するとされており、遅れることなくPTEを診断して適切な治療を施すことがきわめて重要である。 心停止やショックといった高リスク例では、早急に機械的補助循環を導入し、抗凝固療法に加えて再灌流療法(血栓溶解療法、外科的血栓摘除術、カテーテル治療)の実施を検討することが国内外で推奨されている。 一方、中リスクのPTE患者に対する血栓溶解療法の有効性は確立していなかった。2014年に発表になったPEITHO試験では、血行動態が安定している中リスクのPTE患者約1,000例に対し、抗凝固療法(ヘパリン)に加えて血栓溶解薬としてのtPAを全身投与する治療が、抗凝固療法単独よりも死亡・血行動態悪化の発生率を低下させたものの、重大な出血リスクを高めた(Meyer G, et al. N Engl J Med. 2014;370:1402-1411.)。 日本循環器学会と日本肺高血圧・肺循環学会による2025年改訂版「肺血栓塞栓症・深部静脈血栓症および肺高血圧症に関するガイドライン」においては、重症度別に急性PTEに対する治療戦略をフローチャートで提示している。中リスクのうち、右心機能障害と心臓バイオマーカーの上昇のいずれも認める場合、抗凝固療法を開始するとともに慎重なモニタリングを行い、血行動態が悪化した場合には再灌流療法の実施を考慮することが推奨されている。 Boston Scientific社が開発したEKOSシステムでは、高周波・低出力の超音波エネルギーカテーテルを用いることで、血栓溶解薬の投与量、投与期間を減じても従来と同等の血栓溶解効果が期待できることが示され、欧米では販売されている。本HI-PEITHO試験は市販後非盲検無作為化試験である。中リスクの急性PTEに対するEKOSシステムを使用した血栓溶解と抗凝固の併用療法は、抗凝固療法のみと比較して、7日以内のPTE関連死、症候性のPTE再発、心肺機能の代償不全/虚脱の複合イベントの発生率を低下させたが、重篤な出血リスクは増加させなかった。 今まで、PTEに対するカテーテルを用いた血栓溶解療法については十分なエビデンスは示されておらず、わが国では、海外で使用されているカテーテルが承認されていない。そのため、もっぱらガイディングカテーテルを用いた用手的吸引術が用いられてきており、関連学会から未承認の血栓吸引あるいは血栓除去カテーテルについて早期承認申請が行われている。抗凝固療法としてDOACが主流となった現在、日本でもPTEに対する血栓除去カテーテル治療が本研究のようなRCTの結果に基づき承認されていき、患者の予後改善につながることを期待したい。

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脳ドックのガイドライン2026

日本脳ドック学会がまとめる最新ガイドライン脳ドックの水準と有効性の向上を目指し、日本脳ドック学会がまとめるガイドラインの最新版。各項目の内容を刷新し、最新の知見をもとにまとめました。脳卒中や認知症の予防など、日常診療にも大いに役立ちます。画像をクリックすると、内容の一部をご覧いただけます。※ご使用のブラウザによりPDFが読み込めない場合がございます。PDFはAdobe Readerでの閲覧をお願いいたします。目次を見るPDFで拡大する目次を見るPDFで拡大する脳ドックのガイドライン2026定価5,720円(税込)判型A4判頁数150頁発行2026年2月編集脳ドックのガイドライン2026 改訂委員会/一般社団法人 日本脳ドック学会-脳卒中・認知症予防のための医学会-ご購入(電子版)はこちらご購入(電子版)はこちら紙の書籍の購入はこちら医書.jpでの電子版の購入方法はこちら紙の書籍の購入はこちら

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