サイト内検索|page:140

検索結果 合計:2878件 表示位置:2781 - 2800

2781.

先天異常の疾患別、サブタイプ別の20年生存率が明らかに

イングランド北部で実施された地域住民研究の結果、一つ以上の先天異常を有する患者の20年生存率は85.5%で、各疾患のサブタイプ間には差がみられることがわかった。先天異常は周産期および幼児期の死亡の主要原因とされる。治療法の進歩によって予後の改善がもたらされた疾患やサブタイプもあるが、多くの先天異常の生存率(特に1歳以降)はよく知られていないという。イギリスNewcastle大学保健・社会研究所のPeter W G Tennant氏らが、Lancet誌2010年2月20日号(オンライン版2010年1月20日号)で報告した。NorCASの18年間のデータを解析研究グループは、先天異常およびそのサブタイプの20歳までの生存率について検討する地域住民研究を実施した。イングランド北部地方における先天異常の地域住民ベースのレジスターであるNorCAS(Northern Congenital Abnormality Survey)のデータを用いて、1985~2003年に一つ以上の先天異常がみられた子どもの情報を収集した。EUROCAT(European Surveillance of Congenital Anomalies)のガイドラインに基づいて、疾患群、サブタイプ、症候群に分類した。生児として出生した子どもの生存率の確認には地方病院と国の死亡記録を用いた。20歳までの生存率はKaplan-Meier法で推算し、生存に関与する因子の解析にはCox比例ハザード回帰モデルを用いた。20年生存率85.5%、サブタイプ間にはばらつきが13,758例の先天異常が同定され、生児として出生した10,964例のうち生存状況が確認できたのは10,850例(99.0%)であった。20年生存率は、一つ以上の先天異常を有する全症例では85.5%であった。また、心血管系異常(総動脈幹、大血管転位、単心室など)は89.5%、染色体異常は79.1%、泌尿器系異常(嚢胞性腎疾患)は93.2%、消化器系異常(食道閉鎖、十二指腸閉鎖・狭窄、横隔膜ヘルニア)は83.2%、口唇・口蓋裂は97.6%、神経系異常(神経管欠損、水頭症)は66.2%、呼吸器系異常は64.3%であった。同一の先天異常疾患のサブタイプ別の生存率にはばらつきがみられた。出生前診断での胎児異常による妊娠中絶率は、1985年の12.4%から2003年には18.3%と有意に増加した(p<0.0001)。この妊娠中絶率の増大(補正ハザード比:0.95、p=0.023)および出生年(同:0.94、p<0.0001)が、生存の独立予測因子であった。「先天異常の疾患別、サブタイプ別の予測生存率は、先天異常が見つかった場合に、その家族や医療者にとって有用と考えられ、個々の患者の将来のケアの立案に役立つであろう」と著者は結論している。(菅野守:医学ライター)

2782.

利尿薬ベースの降圧療法、セカンドライン選択は?:住民ベースの症例対照研究

米国ワシントン大学心血管ヘルス研究ユニットのInbal Boger-Megiddo氏らは、利尿薬を第一選択薬とし降圧療法を受けている高血圧患者の、併用療法移行時の選択薬は、β遮断薬、Ca拮抗薬、RA系阻害薬いずれが至適かを明らかにするため、心筋梗塞および脳卒中の発生率を主要評価項目に、住民ベースの症例対照研究を行った。結果、Ca拮抗薬追加群の心筋梗塞発生リスクが、他の2群よりも高いことが明らかになったという。BMJ誌2010年2月6日号(オンライン版2010年1月25日号)より。症例群353例、対照群952例で検討研究グループは本研究を実施した背景について、「ALLHAT試験で、低用量利尿薬が第一選択薬としてCa拮抗薬やRA系阻害薬よりも優れていることが示唆され、そのエビデンスを踏まえたガイドラインが米英で作成されている。一方で、降圧療法を受ける高血圧患者の半数は併用療法を要する。だが利尿薬ベースの患者の心血管疾患予防を見据えたセカンドラインの選択薬はどれが至適か明らかになっておらず、米国NHLBI(National Heart, Lung, and Blood Institute)は、試験実施の勧告を出しているが、いまだ実施されていない」と述べている。試験は、ワシントン州シアトル市に拠点を置くヘルスケアシステム「Group Health Cooperative」の加入者データから、症例群353例、対照群952例の被験者を選定し行われた。症例群は、30~79歳の降圧療法を受けていた高血圧患者で、1989~2005年に致死性または非致死性の初回の心筋梗塞か脳卒中を発症したと診断記録があった人だった。対照群は、降圧療法を受けていた高血圧患者が無作為にGroup Health Cooperative加入者から選ばれた。なお、心不全、冠動脈疾患、糖尿病、慢性腎不全患者は除外された。+Ca拮抗薬は心筋梗塞リスクを増大する結果、心筋梗塞リスクについて、利尿薬+Ca拮抗薬群が、+RA系阻害薬群、+β遮断薬群よりも高いことが認められた。+β遮断薬群を基準とした、+Ca拮抗薬群の心筋梗塞リスクの補正後(年齢、性、服薬期間、喫煙、飲酒)オッズ比は、1.98(95%信頼区間:1.37~2.87)だった。脳卒中リスクについては、増大は認められず、オッズ比は1.02(同:0.63~1.64)だった。一方、+RA系阻害薬群の心筋梗塞および脳卒中リスクは、ともに有意ではなかったものの低く、心筋梗塞リスクの同オッズ比は0.76(同:0.52~1.11)、脳卒中は0.71(同:0.46~1.10)だった。研究グループは結果を踏まえ、「低リスクの高血圧患者を対象とした本試験で、セカンドラインにCa拮抗薬を選択することは、他の薬剤を選択するよりも心筋梗塞リスクが高いことが明らかになった。この結果はNIHCE(National Institute for Health and Clinical Excellence)ガイドラインを支持するもので、米国NHLBIが勧告する大規模試験を行うべきであろう」とまとめている。

2783.

術前心臓検査、中~高リスクの待機的非心臓手術施行患者の予後を改善

中~高リスクの待機的非心臓手術を受ける患者は、術前の非侵襲的心臓負荷検査によって1年生存率が改善され、入院期間が短縮することが、カナダ臨床評価学研究所(ICES)のDuminda N Wijeysundera氏が実施したコホート研究で示された。術前の非侵襲的心臓負荷検査は術後の心臓合併症を予防する可能性があるという。また、虚血性心疾患を検出したり、術前のインターベンション、術中の積極的な血行動態管理、術後のサーベイランス、手術の回避が有効な患者を同定するだけでなく、周術期のβ遮断薬使用の指針ともなる。それゆえ、ACC/AHAガイドラインは術前心臓検査を推奨しているが、対象は心臓合併症のリスク因子を有する患者に限られ、リスク因子のない患者を含めた術後の予後への影響は明確ではないという。BMJ誌2010年1月30日号(オンライン版2010年1月28日号)掲載の報告。10年間の後ろ向きコホート研究研究グループは、中~高リスクの待機的非心臓手術施行前の非侵襲的心臓負荷検査が生存率および入院期間に及ぼす影響を評価するために、レトロスペクティブなコホート研究を行った。対象は、1994年4月1日~2004年3月31日までにカナダ・オンタリオ州の救急施設に収容され、中~高リスクの待機的非心臓手術を施行された40歳以上の患者で、術前6ヵ月以内に非侵襲的心臓負荷検査を受けた者とした。全体の1年生存率、入院期間は改善されたが、低リスク患者ではむしろ有害な可能性も全コホート27万1,082人のうち、非侵襲的心臓負荷検査を受けたのは2万3,991人(8.9%)であった。傾向スコア法で術前心臓負荷検査を受けた患者と受けない患者の差を補正し、背景因子をマッチさせたコホート(4万6,120人)を設定した。術前心臓負荷検査により、1年生存率が有意に8%上昇し(ハザード比:0.92、p=0.03)、入院日数は有意に0.24日短縮した(p<0.001)。サブグループ解析として、改訂版心リスク指標(Revised Cardiac Risk Index;RCRI)に基づく検討を行ったところ、術前心臓負荷検査は低リスク(RCRIスコア:0)患者ではむしろ有害であった(ハザード比:1.35)が、中リスク(RCRIスコア:1~2)患者(ハザード比:0.92)および高リスク(RCRIスコア:3~6)患者(ハザード比:0.80)では有意なベネフィットが得られた。著者は、「術前の非侵襲的心臓負荷検査により、中~高リスクの待機的非心臓手術施行例患者の1年生存率が改善され、入院期間が短縮された」と結論し、「このベネフィットがもたらされるのは、主に3つ以上のリスク因子を有する周術期心臓合併症の高リスク患者である。一方、リスク因子が1~2つの中リスク患者ではベネフィットが少なくなり、リスク因子のない低リスク患者ではむしろ有害な可能性が示唆される。これらの知見は、術前心臓検査を推奨するACC/AHAガイドラインを支持するものである」としている。(菅野守:医学ライター)

2784.

日本語版「NCCNガイドライン」がWeb公開

世界的な癌診療ガイドラインである「NCCNガイドライン」の日本語版が、先端医療振興財団臨床研究情報センターのWebサイトにて公開されました。まずは結腸癌、直腸癌の2種を掲載。今後、各種のガイドラインを増やしていくという。●サイトはこちらhttp://www.tri-kobe.org/nccn/index.html

2785.

双極性障害の再発予防、リチウム+バルプロ酸の併用が有効:BALANCE試験

長期的な治療を要すると考えられる双極性I型障害患者の再発予防には、リチウム(商品名:リーマスなど)とバルプロ酸(同:デパケンなど)の併用がバルプロ酸単剤よりも有効なことが、イギリス・オックスフォード大学精神科のJohn R Geddes氏らが行った無作為化試験(BALANCE試験)で示された。双極性障害は寛解が得られても多くが再発、慢性化し、世界的に15~44歳の障害の原因として最も重要な疾患の一つとされる。炭酸リチウムとバルプロ酸セミナトリウムはいずれも単剤で双極性障害の再発予防薬として推奨されているが、十分な効果が得られない患者も多い。再発例には、エビデンスがほとんどないにもかかわらず両薬剤の併用療法が推奨されているのが現状だという。Lancet誌2010年1月30日号(オンライン版2009年12月23日号)掲載の報告。単剤と併用を比較するオープンラベル無作為化試験BALANCE試験の研究グループは、リチウムとバルプロ酸の併用療法がそれぞれの単剤療法よりも双極性I型障害の再発予防に有効か否かを検討する、オープンラベル無作為化試験を実施した。イギリス、フランス、アメリカ、イタリアの41施設から16歳以上の双極性I型障害患者330例が登録され、リチウム単剤群(血漿濃度0.4~1.0mmol/L、110例)、バルプロ酸単剤群(同750~1,250mg、110例)、両薬剤併用群(110例)に無作為に割り付けられた。患者と医師には治療割り付け情報が伝えられたが、予後イベントの評価を行う試験管理チームには知らされなかった。最長で24ヵ月間のフォローアップが行われた。主要評価項目は「緊急の気分障害エピソードに対する新たな介入の開始」とし、intention-to-treat解析を行った。併用がリチウム単剤より優れるかは確証できない緊急の気分障害エピソードで介入を受けた患者は、併用群が54%(59/110例)、リチウム単剤群が59%(65/110例)、バルプロ酸単剤群は69%(76/110例)であった。併用群は、バルプロ酸単剤群よりもエピソードに対する介入が有意に低減した(ハザード比:0.59、p=0.0023)が、リチウム単剤群との比較では有意な差は認めなかった(ハザード比:0.82、p=0.27)。リチウム単剤群はバルプロ酸単剤群よりも介入の低減効果が高かった(ハザード比:0.71、p=0.0472)。16例に重篤な有害事象がみられた。そのうち7例がバルプロ酸単剤群で、3例が死亡した。5例がリチウム単剤群で2例が死亡、4例は併用群で死亡は1例であった。著者は、「臨床的に長期の治療を要すると考えられる双極性I型障害患者の再発予防には、リチウムとバルプロ酸の併用あるいはリチウム単剤がバルプロ酸単剤よりも有効なことが示唆される。このベネフィットは、試験開始時の重症度とは関連せずに認められ、2年間持続した。併用がリチウム単剤より優れるかは確証できない」と結論している。さらに、「アメリカやイギリスの双極性障害治療ガイドラインでは、長期的治療の1次治療としてバルプロ酸単剤を推奨しているが、リチウムとの併用あるいはリチウム単剤を考慮すべきである。また、リチウム単剤療法中に再発を繰り返す患者にはバルプロ酸単剤への切り替えが推奨されているが、この場合は併用療法がより有効であろう」と考察している。(菅野守:医学ライター)

2786.

肺気腫と気道閉塞は、心機能と負の相関

肺気腫および気道閉塞がより重症であるほど、左室充満の障害が大きく、1回拍出量、心拍出量が減少するという負の相関が、一般住民ベースの研究によって確認された。その関連は、喫煙者ほど大きいことも判明したという。報告は米国コロンビア大学医学部のR. Graham Barr氏らによる。Barr氏らは、きわめて重症の慢性閉塞性肺疾患(COPD)では、肺血管抵抗が高まり肺性心を生じ、2次的に左室充満、1回拍出量、心拍出量が減少するが、重度の肺疾患を有していなくとも、肺気腫や気道閉塞と心機能とには負の相関があるのではないかと仮定し検討を行った。NEJM誌2010年1月21日号掲載より。45~84歳の2,816例を対象に評価Barr氏らは、45~84歳の2,816例を対象に評価を行った。左室構造と左室機能の評価はMRIを用いて行い、肺気腫の重症度(肺気腫率:%)は心臓CTによって定義(-910ハウンスフィールド単位未満のボクセルのパーセンテージの肺野条件)され、スパイロメトリー検査は、米国胸部疾患学会(ATS)ガイドラインに基づき行われた。そのうえで、一般化加法モデルを用いて、閾値効果の検討を行った。現喫煙者のほうが負の相関関係は強い被験者のうち、現喫煙者は13%、元喫煙者は38%、非喫煙者は49%だった。肺気腫の重症度の10ポイント上昇と、左心室拡張末期容積の減少(-4.1ml、95%信頼区間:-3.3~-4.9、P<0.001)、1回拍出量の減少(-2.7mL、同:-2.2~-3.3、P<0.001)、心拍出量の減少(-0.19L/分、同:-0.14~-0.23、P<0.001)とには直線的な関連がみられた。この関連は、現喫煙者が、元・非喫煙者に比べて強かった。気道閉塞の重症度は、左室構造と左室機能にも関連しており、喫煙状況による影響も同様にみられた。なお、肺気腫の重症度および気道閉塞の重症度と、左室駆出率との関連は認められなかった。(医療ライター:朝田哲明)

2787.

5-HT3受容体拮抗型制吐剤「アロキシ」製造販売承認取得

大鵬薬品工業株式会社は20日、5-HT3(セロトニン)受容体拮抗型制吐剤 「アロキシ静注0.75mg」(一般名:パロノセトロン塩酸塩)の製造販売承認を取得したと発表した。アロキシは2004年1月の大鵬薬品とスイスのヘルシン社(HELSINN HEALTHCARE SA)とのライセンス契約に基づき、同社が国内開発した薬剤。海外においては、2003年7月に米国、2005年3月に欧州で承認され、2009年 12月現在、世界62ヵ国で承認されている。アロキシは、がん化学療法(シスプラチン等)実施前の1回投与で、急性悪心、嘔吐のみならず、現行の治療薬では効果の不十分であった遅発性悪心、嘔吐にも有効性が確認されている。同剤は、血中消失半減期が約40時間と非常に長く、5-HT3受容体に対して高い結合親和性と選択性を有している。また、 NCCNの「制吐療法ガイドライン」で、高度催吐性化学療法に伴う悪心、嘔吐の予防に用いる薬剤として推奨されているという。詳細はプレスリリースへhttp://www.taiho.co.jp/corporation/news/2010/20100120.html

2788.

喘息配合剤トップシェアを目指す~国内2剤目のシムビコート発売会見~

2010年1月14日、国内2番目の配合喘息治療薬、シムビコートに関して、アステラス製薬株式会社/アストラゼネカ株式会社両社の営業責任者による発売会見が開催された。シムビコートは、吸入ステロイド薬のブデソニドと即効性・長時間作用性吸入β2刺激薬のホルモテロールからなる配合剤である。国内ではグラクソ・スミスクラインのアドエアについで2番目の発売となる。シムビコートは平均粒子径が2.4~2.5μmであり、他剤と比較して小さい。そのため末梢気道まで到達しやすく、肺全体に薬剤が広がるので、強力かつ速やかな効果の出現が期待できる。昨年改訂された『喘息予防・管理ガイドライン2009』では、治療ステップ2から、配合剤の使用が認められている。会見の中で、アストラゼネカ プライマリーケア事業本部長の金子潔氏は、喘息患者530万人のうち、およそ6割の患者がガイドラインの治療ステップ2から4にあたるとし、「対象患者さんに少しでも早く使っていただければ」と語った。また、アステラス製薬 営業本部長の山田活郎氏は、この薬剤が日本の喘息治療に大きく貢献できると確信し、「早い段階での国内シェアナンバーワンを実現したい」とコメントした。シムビコートは2009年10月に承認、2010年1月13日に発売された。アストラゼネカが製造・開発を、アステラス製薬が流通・販売を担当し、両社合わせて2,700名のMRがプロモーション活動にあたる。(ケアネット 吉田 直子)

2789.

新規抗血小板薬cangrelorのPCI前投与、クロピドグレルとの比較で優越性認められず

経皮的冠動脈インターベンション(PCI)施行例への抗血小板薬として、新規開発中の非チエノピリジン系のADP受容体P2Y12阻害薬cangrelorの前投与(静注)は、チエノピリジン系のクロピドグレル(商品名:プラビックス)との比較で優越性は認められないことが報告された。現行ガイドラインでは、PCI時のリスク低減のためにクロピドグレル投与が推奨されているが、その効果は非常に不安定である。そのためcangrelorに、迅速性、予測可能性、可逆性という点での優越性が期待され大規模国際的な第III相無作為化試験が行われた。試験は薬剤投与がPCI前「CHAMPION PCI」とPCI後「CHAMPION PLATFORM」の2試験が行われたが、いずれも同様の結果が報告されている。本論は、CHAMPION PCIからの報告で、NEJM誌2009年12月10日号(オンライン版2009年11月17日号)で掲載された。全死因死亡・心筋梗塞・虚血による血行再建術の複合を主要エンド有効性ポイントにCHAMPION PCIは、急性冠動脈症候群でPCIを受ける患者を、cangrelor群(30μg/kgをボーラス静注後、4μg/kg/分を注入)とクロピドグレル群(600mgを経口投与)に無作為に、二重盲検ダブルダミーの実薬対照に割り付け行われた。cangrelor静注は、PCIの30分前より2時間以上もしくはPCI終了時(いずれか長時間の方)まで行われた(担当医の判断で4時間継続静注も可)。有効性の主要エンドポイントは、48時間時点での全死因死亡・心筋梗塞・虚血による血行再建術の複合とした。試験は70%の中間解析時点で、cangrelorの優越性が低いことが判断され、もう一方のCHAMPION PLATFORMでの70%中間解析でも同様の結果が得られた時点(2009年5月)で、試験登録は打ち切られた。そのためCHAMPION PCIには14ヵ国268施設から8,877例(当初予測の98.6%)が参加、PCI施行例はそのうち8,716例だった。48時間時点のオッズ比1.05主要エンドポイントの発生は、cangrelor群は7.5%、クロピドグレル群7.1%で、cangrelor群がクロピドグレルに優れることはなかった(オッズ比:1.05、95%信頼区間:0.88~1.24、P=0.59)。30日時点でも同様だった。また大出血(ACUITY基準に準拠)の発生率は、cangrelor群(3.6%)がクロピドグレル群(2.9%)に比べ、統計的に有意に近い差で高かった(オッズ比:1.26、95%信頼区間:0.99~1.60、P=0.06)。ただしその症例は、TIMI基準による大出血、GUSTO基準の重大あるいは致死的出血ではなかった。第2エンドポイント(予備解析)の全死因死亡・Q波心筋梗塞・虚血による血行再建術の複合は、cangrelor群で低下の傾向が見られたが、有意ではなかった(0.6%対0.9%、オッズ比:0.67、95%信頼区間:0.39~1.14、P=0.14)。(医療ライター:武藤まき)

2790.

“ベンザルコニウム塩化物”+“低濃度アルコール”の手指用消毒液、抗インフルエンザウイルス効果を確認

ライオン株式会社は9日、同社と財団法人北里環境科学センターが、手指用消毒液のインフルエンザウイルスに対する効果を確認する中で、「ベンザルコニウム塩化物に低濃度アルコールを組み合わせた手指用消毒液」に、インフルエンザウイルスに対して殺菌効果があることを確認したと発表した。厚生労働省の「事業者・職場における新型インフルエンザ対策ガイドライン」によると、インフルエンザウイルスを殺菌するには、60~80vol%のアルコール濃度が有効であると言われている。今回の結果により、低濃度のアルコールでも殺菌成分を組み合わせることで、インフルエンザウイルスに対して、殺菌効果を発現することを確認したとのこと。詳細はプレスリリースへhttp://www.lion.co.jp/ja/company/press/2009/2009103.htm

2791.

多彩な冠疾患のリスクマーカー、その強みと弱み

冠疾患との関連が指摘されるリスクマーカーは心理社会的、行動的、生物学的など多様である一方、それぞれが現にガイドラインに含まれている。そうした中で、これまでのシステマティックレビューは、1つのリスクマーカー、1つの研究デザインに焦点を合わせた「縦」の比較検討がされてきたが、異なるタイプのリスクマーカー、異なる固有の限界や不足を有する異なる研究デザインを組み込んでの「水平」比較が必要ではないかとの指摘が高まった。ロンドン大学衛生熱帯医学校のHannah Kuper氏らは、この「水平」比較に取り組み、BMJ誌2009年11月28日号(オンライン版2009年11月5日号)で結果を発表した。うつ、運動、CRP、2型糖尿病の4つのリスクマーカーを水平比較冠疾患の多様なリスクマーカーのエビデンスを系統的に比較するための新しい方法論を開発し、さらに求められたエビデンスとガイドラインにおける勧告とを比較するため、Kuper氏らは、Medlineとガイドラインを基に水平システマティックレビューを行った。2人のレビュアーにより、4つのリスクマーカー(うつ、運動、C反応性蛋白:CRP、2型糖尿病)のエビデンスを求めた3つの異なる試験デザイン(観察研究、遺伝子研究、無作為化試験)の適格性を判定。4つのリスクマーカーについて、観察研究の大規模メタ解析、遺伝学的研究、メタ解析と個々の無作為化試験の分析が行われた。現行ガイドラインは、うつとの関連に重きを置きすぎている観察研究のメタ解析による冠疾患の補正相対リスクは、うつが1.9(95%信頼区間:1.5~2.4)、運動の最高と最低との4分位の比較で0.7(0.5~1.0)、CRPの最高と最低との3分位の比較で1.6(1.5~1.7)、そして糖尿病では女性は3.0(2.4~3.7)、男性は2.0(1.8~2.3)だった。事前特定された試験の限界は、うつと運動で最も多く見られたという。遺伝的変化を用いて交絡因子を排除するメンデル無作為化試験のメタ解析では、CRPを特定することはできた(ただしそれがもたらす影響の裏づけはできなかった)が、運動、糖尿病、うつの影響については確認できなかった。無作為化試験の検討からは、冠疾患の発病率とうつ、運動、CRPとの関連を示すエビデンスは求められず、糖尿病患者の試験において、血糖コントロールが冠疾患リスクに対する予防効果があることがわずかに認められた。冠疾患患者にうつ病治療を行っていた4つの無作為化試験は、いずれも冠動脈イベントリスクの低下は示されていなかった。これらを踏まえ、2007年に公表された2つのガイドラインと今回の水平エビデンス・レビューとを比較した結果、ガイドラインではうつに重きを置きすぎているという点で明らかな食い違いが見られたという。研究グループは、今回の水平システマティックレビューによって、うつ、運動、CRP、糖尿病を冠疾患の原因とするエビデンスの弱みと強みを特定することができたと述べ、この新しい手法が、今後のガイドラインおよび研究開発に寄与するであろうと報告をまとめている。

2792.

低用量アスピリン、糖尿病患者の心血管イベント1次予防効果はメタ解析でもやはり不明

糖尿病患者の主要な心血管イベントの1次予防に、ほとんどのガイドラインで、低用量アスピリンの投与が推奨されている。しかし一方では、その効果については論争の的ともなっている。イタリアのConsorzio Mario Negri SudのGiorgia De Berardis氏らのグループは、最新の無作為化試験を含むメタ解析を行った結果、明白な利点は証明されなかったことを報告した。BMJ誌2009年11月28日号(オンライン版2009年11月6日号)掲載より。アスピリンとプラセボを比較した無作為化試験をメタ解析Berardis氏らは、心血管疾患のない糖尿病患者に対する低用量アスピリンの有効性と有害性を評価することを目的として、無作為化試験のメタ解析を行った。Medline(1966年~2008年11月)、コクランライブラリー2008にて文献検索を行い、データを収集・解析した。試験適格としたのは、糖尿病患者で心血管疾患の既往のない患者についてアスピリンとプラセボとの比較を無作為化試験で行っていたもので、文献検索された157試験のうち適格となったのは6試験だった(患者10,117例)。主要な心血管イベント(心血管系による死亡、非致死性の心筋梗塞、非致死性の脳卒中、全死因死亡)に関するデータを抽出し、ランダム影響モデルを用いて分析。結果は相対リスクで表し、95%信頼区間とともに報告された。明らかなベネフィットは見いだせず結果、アスピリン投与がプラセボと比べて、主要心血管イベントリスク(5研究:9,584例)の相対リスクは0.90(95%信頼区間:0.81~1.00)、心血管系による死亡(4研究:8,557例)は0.94(0.72~1.23)、全死因死亡(4研究:8,557例)は1.05(0.93~0.82)で、統計学的に有意に心血管イベントを減少することは見いだされなかった。心筋梗塞(I2=62.2%; P=0.02)と脳卒中(I2=52.5%; P=0.08)に関する解析では有意な不均一性が見つかった。アスピリンは男性で有意に心筋梗塞のリスクを低下させたが(0.57、0.34~0.94)、女性では認められなかった(1.08、0.71~1.65)。脳卒中では投与量(100mg/日以下と超)、投与期間(5年以下と超)の違いによる影響が見られた。有害関連エビデンスは一貫していなかった。Berardis氏は、糖尿病患者のアスピリンの主要な心血管イベントの1次予防に対するメリットは明らかにできなかったと述べ、男女差による効果の影響の可能性を指摘し、さらに毒性についてはさらなる調査が必要と述べている。

2793.

喘息治療の新展開 ―2剤目の配合剤が登場―

2009年12月4日、日本記者クラブにて開催された喘息プレスセミナー(主催:アステラス製薬株式会社/アストラゼネカ株式会社)で、昭和大学医学部内科学講座呼吸器・アレルギー内科部門教授の足立満氏が「日本の喘息治療の現状と新展開」について講演を行った。近年、わが国の喘息の死亡率は、吸入ステロイド薬の普及に伴い、大きく低下し続けている。その減少率は主要疾患の中でもひと際目立つといえる。しかし、人口10万人あたりの喘息死亡率は1.9人(2008年)と、フィンランドの0.3人(2003年)、米国の1.3人(2004年)に比べ、先進国中では、依然高いのが現状である。その理由としては、喘息治療が進んでいる北欧に比べ、わが国の吸入ステロイド薬の使用率が低いことがあげられている1)。吸入ステロイド薬使用率の低さの原因としては、吸入手技の指導やステロイド薬に対する不安があるものの、足立氏は別の視点で見る必要があると話した。今年3月に行ったインターネットの調査によると、喘息治療に用いる吸入薬に期待する特性としては、医師は「効き目の速さ」と、発作・増悪の抑制といった「効果の持続」を同程度に重要視している一方で、患者さんのおよそ8割は「効き目の速さ」を期待している。つまり、「症状消失に対する患者ニーズが高い」現状に対して、吸入ステロイド薬は、速やかな症状消失効果はないため、治療の実感が得られないというギャップがあると考えられる。2009年10月に承認されたシムビコートは、吸入ステロイド薬のブデソニドと即効性・長時間作用性吸入β2刺激薬のホルモテロールからなる配合剤である。本剤1剤で気管支喘息の病態である気道炎症・気道狭窄両方に対して優れた効果を示す。また、本剤に含まれるホルモテロールは、吸入3分後にも呼吸機能を大きく改善し、強い気管支拡張効果を持続的に発揮することから、患者さんは治療効果を実感しやすく、アドヒアランスの向上が期待される。喘息予防・管理ガイドライン2009では、治療ステップ2から、配合剤の使用が認めてられている。今後、配合剤の普及が期待される。最後に、足立氏は、喘息の治療における配合剤の有用性は明らかであり、長期にわたる優れた喘息コントロールと速やかな効果発現を示すシムビコートは、今後日本の喘息治療に変化をもたらす薬剤ではないかと講演を締めくくった。(ケアネット 呉 晨/吉田 直子) 出典:1) 足立満ほか:アレルギー 51: 411-420, 2002.2) 足立満ほか:アレルギー 57: 107-120, 2008.3) K.F. Rabe et al.: Eur Respir J 16: 802-807, 2000.4) 大田健ほか:アレルギー・免疫 16: 1430-1440, 2009.

2794.

二次救命処置の薬剤静脈内投与、アウトカムは非投与と同等

二次救命処置(ACLS)における薬剤の静脈内投与に関して、投与を行わなかった場合と退院時生存率などが同等であることがわかったという。ノルウェー・オスロ大学病院実験医学研究所のTheresa M. Olasveengen氏らが、無作為化対照試験を行い明らかにしたもので、JAMA誌2009年11月25日号で発表した。現行のACLSガイドラインには、薬剤の静脈内投与が盛り込まれているものの、投与によるアウトカム改善に関するエビデンスは不明だった。入院時生存率は投与群が高率Olasveengen氏らは、2003年5月1日~2008年4月28日にかけて、ノルウェーの首都オスロの救急医療サービスを利用した、院外で非外傷性の心停止のあった18歳以上、合わせて851人について追跡した。被験者は無作為に、薬剤の静脈内投与を行うACLS群(418人)と、静脈内投与を行わないACLS群(433人:対照群)に分けられた。入院時の心拍再開生存率は、対照群が21%だったのに対し、静脈内投与群は32%と有意に高率だった(p

2795.

イギリスで2000年に実行された救命救急医療改革の成果は?

2000年、イギリス保健省は救命救急医療改革の提唱を支持し、ベッド数を35%増やすための資金を投入した。その結果、治療プロセスや患者転帰(死亡リスク)が大幅に改善したといわれている。ロンドン大学公衆衛生・熱帯医学校のAndrew Hutchings氏らの研究グループは、2000年後半にイギリス全土を対象に始まった救命救急医療改革を評価するため、時系列で費用対効果の分析を行った。BMJ誌2009年11月14日号(オンライン版2009年11月11日号)より。改革前後のインプット、プロセス、アウトカムをコスト換算し財政効果を算出研究では、医療制度改革前後(1998~2000年と2000~2006年最終四半期)の、インプット、プロセス、アウトカムの評価が行われた。対象施設は英国内96の救命救急診療ユニットで、分析対象は同ユニットへの入院患者34万9,817例。各ユニットは、2000年時の改革の鍵となった「ケアバンドル」(臨床ガイドライン群)の導入状況と受け入れ体制増量の状況によって分類され評価された。主要評価項目は、インプット(ベッド数、コスト)、プロセス(他ユニットへの転送、退院時の状況、入院期間、再入院率)、アウトカム(ユニット内死亡率、院内死亡率)で、いずれもケースミックス補正が行われた。またケースミックス補正後の年間コストとQALYs(生活の質を調整した生存年)との差で正味財政効果が算出された[このとき個々人の生涯QALYは20,000ポンド(33,170ドル、22,100ユーロ)と見積もられ正味財政効果から差し引かれた]。最終的に、2000年の改革以前と以後との差の正味財政効果が報告された。救命救急医療改革はひとまず成功と評価2000年の改革以後6年間は改革前3年間と比べて、ユニット内死亡率リスクは11.3%減少し、院内死亡率リスクも13.4%低下していた。このことによってユニット間の転送、予定外の夜間退院もかなり低下していた。平均の年次正味財政効果の増大は、2000年以降は402ポンド(667ドル、445ユーロ)から1,096ポンド(1,810ドル、1,210ユーロ)と有意で、費用対効果が優れていることが見て取れた。ただし、これらの改善にどのようなことが寄与しているかは確認できなかった。研究グループは、英国NHSの救命救急医療は2000年以降、実質的にかなりの改善がもたらされたとしたうえで、どの因子が主要な要因であったかは不明だが、様々な要素をあわせて介入したことが、NHS資源の高度な費用対効果をもたらす活用に結びついたと結論づけている。

2796.

HIV感染症:進歩と進化

11月5日に開催された、アボット ジャパン株式会社 メディアセミナー「HIV/AIDS診療最前線―女性における感染の現状と対策」のレポートをお届けする。国立国際医療センター戸山病院 エイズ治療・研究開発センター センター長の岡慎一氏は、HIV/AIDS診療のこれまでの変遷と今後の展望について、最新の知見や自身の施設におけるデータも交え、講演した。近年、HIV/AIDSの治療法は目覚しい進歩を遂げ、HIV感染症は薬剤によりコントロールし得る時代となった。岡氏は、その一方で、ウイルス側の変化やHIV抗体検査の現状から、これまでの「AIDSの常識」が変容しているとし、4つの点を指摘した。1点目は、「治療法の進歩により、AIDSによる死亡者はほとんどいなくなった」というものである。1996年以前、すなわちHAART(Highly Active AntiRetroviral Therapy:多剤併用療法)の導入以前のHIV感染症診断後の平均余命は7年であったが、現在では約40年となっている(デンマーク・コホートより)。国立国際医療センターにおいて、日和見感染症で死亡する頻度は1000人に1人程度であり、2000年からほぼ変化していない。しかし、HIV感染症診断時に80%がHAARTを受けておらず、末梢血中のCD4陽性細胞は200/μl以下がほとんどを占める患者群においては、8割近くが診断後1年以内に死亡している。すなわち、HIV感染症と診断された時点でAIDSを発症している場合(いわゆる「いきなりエイズ」)では、死亡は十分にありえる。また、最近は悪性リンパ腫やカリニ肺炎などによるエイズ関連死より、非エイズ関連死が増加しており、死亡原因が変わりつつあるとのことである。岡氏は、2点目として、「治療は3剤併用である」ということを挙げた。現在の治療ガイドラインでは、全ての患者はバックボーンドラッグとして2剤のNRTIs(核酸系逆転写酵素阻害薬、2NRTIs)を必ず投与され、キードラッグとしてNNRTI(非核酸系逆転写酵素阻害薬)とPI(プロテアーゼ阻害剤)のどちらかが投与されるが、仮に初回に2NRTIsとNNRTIを投与したとすると、次の治療では2NRTIsとPIの投与となり、2NRTIsがクロスすることが弱点となる。NRTIはミトコンドリア障害を起こすため、治療の長期化が避けられない患者のリスクとなっている。岡氏は、今後、ウイルスの進入阻害やインテグラーゼ阻害など新規機序の薬剤が導入されることが期待されており、2NRTIsを入れない治療も視野に入れられるのではないかと語った。3点目は、「感染からAIDS発病まで約10年の潜伏期がある」という「常識」である。国立国際医療センターにおいて、HIV急性感染が確認された82例を対象に、CD4が350以下、もしくは治療を必要とするレベルになるまでの期間を解析したところ、半分の症例は半年でCD4が350以下となり、3年後には8割の症例が350以下となった。 350ではまだAIDSとはいえないため、ここから確定的なことは導けないが、発症までの期間が短縮している感覚がある、と岡氏は語った。また、1985年以前の非加熱製剤投与によるHIV感染血友病患者との比較においては、3年後350を維持している血友病患者が50%弱であったのに対し、最近のHIV感染患者では13%と、有意に減少している。施設による偏りなどのバイアスは否定できないが、なぜ発症が加速しているのか。岡氏は、HLA型とウイルス変異の関連があるとした。HIVの封じ込めには、細胞傷害性T細胞(CTL)が重要と考えられている。HIV感染細胞膜において、HLAとHIVの一部が複合体となり、CTLに抗原提示する。その際、HLAに遺伝子多型の1つであるB*51アリルがあると、ワイルドタイプのHIVを完全に排除できる。HIV陽性の血友病患者で10年以上進行しない、Slow Progressorと呼ばれる長期未発症症例では、B*51を持つことが確認されており、日本人では唯一のウイルス抵抗型であった。しかし、近年、ウイルス変異によって以上の機序から逃避するHIVが広まっており、むしろB*51を持っている方が早く進行するとのことである。こういったことからも、「発病前に見つかれば」の猶予が10年から3年になり、「いきなりエイズ」の増加につながっている。4点目に挙げられたのは、「抗体検査は無料匿名で保健所でできる」ことである。現在、HIVの検査件数は右肩上がりであるが、死亡者数はほとんど変化していない。現状は、保健所での検査件数は上限に近づいているが、医療機関では検査が進んでいない。国立国際医療センターの例では、ウイルス検査目的で見つかったのは3割、他の疾患精査中に発見されたのがほぼ5割と、医療機関における検査の余地が示唆された。また、性感染症(STD)既往時のHIV検査率は35%と低く、医療側にも意識が少ない、と岡氏は指摘した。STD診断時のHIV検査は保険適応となっているが、それが医療者に浸透していないことも、検査率が低い理由の一つと考えられる。検査をしなければHIV感染は判明しない。また、AIDSを発症してからでは治療の効果も期待できないことから、発症までが加速している現在、ますます早期診断が重要となっているとして、岡氏は講演を終えた。 《関連リンク》国立国際医療センター戸山病院 エイズ治療・研究開発センター: http://www.acc.go.jp/accmenu.htm (ケアネット 板坂 倫子)

2797.

抗悪性腫瘍剤「エルプラット」 胃がんの適応拡大を目指した臨床試験を実施

株式会社ヤクルトは9日、白金錯体系抗悪性腫瘍剤オキサリプラチン-販売名『エルプラット注射用50㎎、同100㎎』、『エルプラット点滴静注液50㎎、同100㎎』(以下、エルプラット)の進行・再発胃がんでの適応拡大を目指した、第III相臨床試験を実施することを決定したと発表した。胃がんは、日本を含むアジア諸国で最も患者数の多いがんの一つであり、日本では2010年の年間新規罹患患者数は108,669人と推計されている。同社では、第II相臨床試験で良好な成績が得られたことから、「エルプラット」の胃がんにおける適応拡大を目指し、第III相臨床試験の実施を決定した。欧米ではオキサリプラチンを含む治療法が進行・再発胃がんの標準療法の一つとして治療ガイドラインの中で位置付けられているとのこと。詳細はプレスリリースへhttp://www.yakult.co.jp/cgi-bin/newsrel/prog/news.cgi?coview+00436

2798.

糖尿病食後過血糖改善剤「セイブル錠」に、ビグアナイド系薬剤との併用療法効能追加

株式会社三和化学研究所は9日、糖尿病食後過血糖改善剤「セイブル錠(一般名:ミグリトール)」に、11月6日付で、ビグアナイド系薬剤との併用療法の効能追加が承認されたと発表した。セイブル錠は、α-グルコシダーゼ阻害薬に分類される糖尿病食後過血糖改善剤で、食後1時間までに生じる早期の急峻な血糖上昇(グルコーススパイク)を強力に抑制し、1日の血糖変動をなだらかにさせる薬剤。さらに食後のインスリン分泌を節約するため、膵β細胞の負担を和らげることが期待されているという。一方、ビグアナイド系薬剤は主に肝臓における糖新生を抑制することで空腹時高血糖を強力に抑える特性を有し、世界各国のガイドラインでファーストチョイスに推奨されている薬剤である。これらの異なる作用機序を持つ二剤の併用療法の有効性と安全性を確認することを目的とした臨床試験の結果より、ビグアナイド系薬剤にセイブル錠を追加する併用療法によりグルコーススパイクが改善されることが明らかになったという。また、低血糖リスクを増加させることなく、体重減少を伴って血糖コントロールの指標であるHbA1cが長期にわたって改善することが示されたとのこと。詳細はプレスリリースへhttp://www.skk-net.com/new/data/news091109.pdf

2799.

「アバスチン」、非小細胞肺がんに対する効能・効果、用法・用量の追加承認取得

中外製薬株式会社は9日、抗VEGFヒト化モノクローナル抗体ベバシズマブ(遺伝子組換え)-販売名『アバスチン点滴静注用100mg/4mL、同400mg/16mL』について、6日に厚生労働省より「扁平上皮癌を除く切除不能な進行・再発の非小細胞肺癌」に対する効能・効果および用法・用量の追加に関する承認を取得したと発表した。「アバスチン」は、米国では2006年10月、欧州では2007年8月に扁平上皮がんを除く進行性非小細胞肺がんに対する一次治療として承認され、海外の治療ガイドラインにも化学療法との併用での使用が推奨されている。日本での今回の承認により、結腸・直腸がんに引き続き扁平上皮がんを除く進行・再発の非小細胞肺がんにおいても日・米・欧三極での使用が可能となった。同社による厚生労働省への承認申請は2008年11月に行われ、申請資料として海外で実施された第II相および第III相臨床試験、国内で実施された第II相臨床試験の成績等が提出された。海外で実施された二つの比較試験では、プラチナ製剤をベースとした標準的な化学療法に「アバスチン」を併用することで、扁平上皮がんを除く未治療の進行・再発の非小細胞肺がんの患者の全生存期間および/または無増悪生存期間を、標準的な化学療法と比較して統計学的に有意に延長することが示された。国内第II相臨床試験においても、標準的な化学療法(カルボプラチンとパクリタキセルの併用療法)に「アバスチン」を併用することで、無増悪生存期間が統計学的に有意に延長するなど、海外臨床試験と同様な結果が報告され、日本人における「アバスチン」の有用性が示されたという。詳細はプレスリリースへhttp://www.chugai-pharm.co.jp/generalPortal/pages/detailTypeHeader.jsp;jsessionid=FRBNZFANZLRWICSSUIHSFEQ?documentId=doc_16373&lang=ja

2800.

抗うつ薬処方が増大している真の理由:英国

英国における抗うつ薬処方は、ここ20年で実質的にかなりの伸びを示したという。処方率の増加は1970年代中頃から確認されているが、特に2000~2005年の間に処方率は36%増、コストは20%増を示した。その半分は、45%増という伸びを示した選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)が占めた。2005年以降も、特許切れを迎えた製剤がありコストは減少したが、SSRIについてはさらに増加しているという。英国・サウサンプトン大学Aldermoor医療センターのMichael Moore氏らは、こうした長期的増加傾向の要因について、登録患者300万人分が集約されている開業医リサーチデータベース「GPRD」を使って明らかにすることを試みた。BMJ誌2009年10月24日号(オンライン版2009年10月15日号)より。開業医研究データベースから長期変化を読み取る本調査は、GPRDから開業医の処方パターンの長期変化を読み取ることを目的とした。具体的には、新規うつ病患者は増えているのか、抗うつ薬新規処方の割合は増えているのか、新規症例に対し処方期間は長くなっているのか、全体的に抗うつ薬の長期投与(再処方)例が増えているのかが調べられた。対象としたのは、GPRDの1993~2005年のデータのうち、同年期間中のデータが集約可能であった170診療所170万人分のデータ中の新規うつ病全症例とした。患者発生率は減少傾向、一方で長期治療が必要な患者が増えていることが明らかに対象期間中、初発のうつ病エピソード患者は18万9,851例だった。そのうち15万825例(79.4%)が、診断を初めて受けた年に抗うつ薬を処方されていた。この割合は調査期間中ほぼ一定していた。新規症例は、若い女性で増加していた。しかしそれ以外では、わずかだが減少しており、総発生率は、わずかだが減少していた。男性は、1993年は7.83件/1,000患者・年だったが、2005年は5.97件/1,000患者・年に、女性は15.83件/1,000患者・年から10.06件/1,000患者・年へと減少している。一方で、1患者当たりの平均処方回数が、1993年の2.8回が、2005年には5.6回とほぼ2倍になっていた。抗うつ薬処方の大半は、維持療法として、あるいはうつのさまざまなエピソードを呈する患者に断続的に投与されていた。これらからMoore氏は、「抗うつ薬処方率の増大は、主に維持療法を受けている患者が、わずかずつだが増えているためと説明できる。これまでの臨床ガイドラインは、抗うつ薬の開始についておよびターゲッティングに集中していたが、抗うつ薬処方のコスト増大に言及するには、今後の研究およびガイドラインでは、長期投与例の妥当性、処方の定期的なレビューについて注目する必要がある」と結論した。

検索結果 合計:2878件 表示位置:2781 - 2800