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新規糖尿病患者への集団教育プログラム実施の費用対効果:英国DESMONDプログラム

糖尿病新規診断患者に対する糖尿病教育・自己管理指導(DESMOND)プログラムの、長期的な臨床効果と費用対効果に関する調査結果が、英国シェフィールド大学Health and Related Research校のM Gillett氏らによって報告された。服薬治療だけの通常ケアと比較して、DESMONDプログラム導入の費用対効果は高く、体重減少、禁煙実現といった利点があることが明らかになったという。BMJ誌2010年8月28日号(オンライン版2010年8月20日号)掲載より。費用対効果の検証は初めてDESMONDプログラムは、認定講習を受けたヘルスケア専門家が6時間にわたる集団教育を1日もしくは半日ずつ2回で提供するもので、カリキュラムは生活習慣(食習慣、運動)と心血管リスク因子に焦点を合わせた内容となっている。臨床への効果を検討するため2004年に始められた「DESMOND試験」の短期的(1年)結果を踏まえ(http://www.carenet.com/news/det.php?nws_c=2994)、2008年からは英国糖尿病ガイドラインで、PCT(primary care trust)での実施が明記されるようになっており、現在、イングランドとスコットランドの80以上のPCTで導入されている。これまで費用対効果に関する検討は行われていなかったことから、Gillett氏らは、費用効果分析を実施した。DESMOND試験(13診療所・824例が12ヵ月間追跡された)データを用い、治療の有用性、合併症発生率、死亡率に関する長期アウトカムを、シェフィールド2型糖尿病モデルを使って解析すると同時に、コストおよび健康関連QOL(QALYs)について検討した。さらに、プログラムを取り巻く最近の実態コストを反映した「リアルワールド」コストを用いた分析も行った。主要評価項目は、増大コストとQALYs獲得とした。増大コストに比しQALYs獲得に優れるDESMOND試験データに基づく解析から、プログラムを受けた患者1人当たりの生涯コストの増大は、平均209ポンド(326ドル)と推計された。QALYs増大は0.0392で、QALYs増大にかかるコスト増は平均5,387ポンドと推計された。リアルワールドコストを用いた解析では、プログラムを受けた患者1人当たりの生涯コストの増大は、平均82ポンドと推計され、QALYs増大にかかるコスト増は平均2,092ポンドと推計された。確率的感度解析から、QALYs増大コストの許容額20,000ポンドに対し、試験データベースでは66%、リアルワールドベースでは70%の費用対効果がある可能性が示された。また一方向感受性解析から、プログラムによる介入効果は1年を過ぎると減じると仮定しても、費用対効果に優れることが示唆された。

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線維筋痛症に太極拳が有効

 線維筋痛症には太極拳が有用な治療である可能性が、米国ボストンにあるタフツ大学リウマチ科のChenchen Wang氏らの研究グループによる無作為化試験の結果、報告された。線維筋痛症治療ガイドラインでは、薬物療法、認知行動療法と並んで、健康教育と運動療法を含む集学的治療が提唱されている。なかでも運動は線維筋痛症に有効とされ、治療の中心的な構成要素として提唱されてきたが、患者の多くは診断後、何年にもわたって重篤な疼痛に悩まされ、症状のコントロールに薬物療法を必要としている。Wang氏らは、これまでの研究で太極拳が線維筋痛症に効果があるとの示唆を受け、試験を行った。NEJM誌2010年8月19日号より。太極拳と従来療法の2群に無作為化 Wang氏らは、線維筋痛症(米国リウマチ学会の1990年診断基準で定義)患者66例を対象に、伝統的な楊式太極拳を治療に取り入れた群(1セッション60分を週2回12週間継続、太極拳群、33例)と、健康教育とストレッチからなる従来療法群(対照群、33例)とを比較する、単純盲検無作為化試験を行った。 主要評価項目は、12週の介入が終わった時点の、繊維筋痛症質問票(Fibromyalgia Impact Questionnaire:FIQ)スコア(スコア:0~100ポイント、スコアが高いほど症状が重いことを示す)の変化とした。副次評価項目は、SF健康調査票(SF-36)の身体的および精神的項目のサマリースコアとした。また、効果の持続性を確かめるため、24週時点にも全員に対する評価が行われた。FIQスコア、SF-36スコアとも太極拳に軍配 結果、太極拳群33例には、FIQスコアおよびQOLにおいて臨床上重要な改善がみられた。FIQスコア平均値(±SD)のベースラインと12週の値は、太極拳群は62.9±15.5と35.1±18.8だったのに対し、対照群は68.0±11と58.6±17.6で、太極拳群のベースラインからの変化の差の方が対照群の同変化の差よりも18.4ポイント大きかった(P

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遺伝性血管性浮腫の新規C1インヒビター製剤の有効性

 遺伝性血管性浮腫(Hereditary angioedema:HAE)は、C1インヒビターの欠損により発症する常染色体優性遺伝性疾患で、「疾患を知っていれば診断は比較的容易で、診断がつけば有効な治療ができる」とされる(補体研究会HAEガイドラインより http://square.umin.ac.jp/compl/HAE/HAEGuideline.html)。一般的に四肢、腹部、外陰部、顔または中咽頭の、反復性の急性発作(一般に局所粘膜腫脹による血管性浮腫)が特徴で、腹部発作はしばしば激しい腹痛、嘔気や嘔吐を伴い、入院や不必要な手術となることがある。また咽頭部発作は、死亡リスクがかなり高い。一方で急性発作時は、C1インヒビター製剤(商品名:ベリナートP)による補充療法が効果的であることが、無作為化試験およびコンセンサスレベルでも支持されている。本論は、最近開発されたナノ濾過濃縮C1インヒビター製剤「Cinryze」(ViroPharma社)の治験報告で、急性発作の期間短縮に有効であったこと、また予防的投与で急性発作の頻度が減少したことが、米国シンシナティ大学Bruce L. Zuraw氏らにより、NEJM誌2010年8月5日号で報告された。有効性と予防的投与を評価する二つの二重盲検プラセボ対照無作為化試験を実施 Zuraw氏らは、HAE治療における新規C1インヒビター製剤「Cinryze」の有効性を評価するため、二つの無作為化試験を行った。いずれも二重盲検プラセボ対照無作為化試験だった。 第一の試験は、急性発作に対する治療の有効性を評価するもので、計68例を無作為に製剤投与群(35例)、プラセボ群(33例)に割り付け、試験薬(各1,000単位)1回または2回を静注投与した(試験薬初回投与後60分までに被験者から無回答あるいは良好の報告がない場合2回目を投与。また4時間までに明らかな寛解が認められない場合、製剤投与によるレスキュー治療が行われた)。主要エンドポイントは、明らかな寛解の開始時間とした。 第二の試験は、週2回12週にわたる予防的投与(1,000単位)の効果を検討する試験で、遺伝性血管性浮腫患者22例を対象とした交差試験だった。2期間の比較で実施され、被験者は第1期間は無作為に製剤もしくはプラセボの予防的投与を、第2期間は第1期間と交差した試験薬投与を受けた。主要エンドポイントは、各々の被験者が予防的投与を受けていた期間中の急性発作の回数とした。2時間以内に寛解、予防的投与で急性発作半減 第一試験の結果、明らかな寛解が認められたまでの時間は、製剤群2時間に対し、プラセボ群は4時間以上だった(P=0.02)。 第二試験の結果は、急性発作の回数は、12週につき製剤群6.26回に対し、プラセボ群は12.73回だった(P

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糖尿病とCAD有する患者への厳格血圧コントロール、心血管アウトカム改善認められず

高血圧治療ガイドラインでは、糖尿病患者の降圧目標は収縮期血圧130mmHg未満とする治療を行うことを提唱しているが、推奨値に関するデータは限られており、特に増大する冠動脈疾患(CAD)を有する糖尿病患者に関するデータは十分ではない。米国フロリダ大学のRhonda M. Cooper-DeHoff氏らは、糖尿病とCADを有する患者コホートにおいて、収縮期血圧コントロール達成と有害心血管アウトカムとの関連を評価することを目的に、「INVEST」試験参加者の観察サブグループ解析を行った。JAMA誌2010年7月7日号掲載より。厳格、通常、非コントロール群の有害心血管アウトカムを評価観察サブグループ解析が行われたのは、「INVEST」試験(International Verapamil SR-Trandolapril Study)参加者2万2,576人のうちの6,400人で、糖尿病とCADを有する50歳以上の人だった。参加者は、14ヵ国862施設から1997年9月~2000年12月の間に集められ、2003年3月まで追跡された。米国からの参加者の追跡評価は、全米死亡統計によって2008年8月まで行われた。INVEST参加者は、収縮期血圧130mmHg未満、拡張期血圧85mmHg未満を目標に、降圧薬治療の第一選択薬はCa拮抗薬あるいはβ遮断薬を用い、併用薬として、ACE阻害薬か利尿薬または両剤を服用した。Cooper-DeHoff氏らは、被験者を、血圧コントロールが130mmHg未満を保持している場合は厳格コントロール群に、130~140mmHg未満の場合は通常コントロール群に、140mmHg以上だった場合は非コントロール群に分類し、全死因死亡、非致死的心筋梗塞または非致死的脳卒中の初発を含む、有害心血管アウトカムを主要評価項目に検討した。主要アウトカム、通常群12.6%、厳格群12.7%、補正後ハザード比1.111万6,893患者・年の追跡調査の間、主要アウトカムイベントを呈した患者は、厳格コントロール群286人(12.7%)、通常コントロール群249人(12.6%)、非コントロール群431例(19.8%)だった。通常コントロール群 vs. 非コントロール群の心血管イベント発生率は、12.6%対19.8%だった(補正後ハザード比:1.46、95%信頼区間:1.25~1.71、P<0.001)。一方、通常コントロール群 vs. 厳格コントロール群は、12.6%対12.7%(同:1.11、0.93~1.32、P=0.24)で、ほとんど違いは存在しなかった。全死因死亡率については、厳格コントロール群は11.0%、通常コントロール群は10.2%(同:1.20、0.99~1.45、P=0.06)。延長追跡評価を含むと、同22.8%、21.8%(同:1.15、1.01~1.32、P=0.04)だった。上記結果から、「糖尿病とCADを有する患者における収縮期血圧の厳格なコントロールは、通常のコントロールと比べて心血管アウトカムの改善には関連が認められなかった」と結論した。(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)

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制酸薬服用は術後肺炎リスクを増大しない

術後高齢患者への制酸薬服用と肺炎リスク増大には、関連が認められないことが報告された。カナダ・トロント大学のDonald A Redelmeier氏らが行った住民ベースの後ろ向きコホート解析による。BMJ誌2010年7月1日号(オンライン版2010年6月21日号)に掲載された。これまでICU患者を対象とした二つの大規模試験で、制酸薬服用患者の肺炎発症率は2~3倍増大すると報告される一方、市中肺炎発症に関する調査では相反する結果が得られていた。制酸薬は世界中で最もポピュラーに処方されており、また処方なしで買い求められることもあり、刊行されているガイドラインでは、リスクについての大規模な調査が必要であると提言していた。手術入院歴の65歳超約59.3万人を分析、21%が制酸薬を服用研究グループは、制酸薬服用と術後肺炎リスク増大との関連を調べるため、1992年4月1日~2008年3月31日の間、カナダの急性期病院に待機的手術のため入院した65歳超の患者59万3,265例を対象とした。主要評価項目は、術後肺炎の記録だった。被験者のうち、制酸薬を服用していた人(ケース群)は約21%で、主としてオメプラゾール(商品名:オメプラールなど)やラニチジン(同:ザンタックなど)を服用していた。服薬群の非服薬群に対する補正後発症リスクは1.02倍術後肺炎を呈した人は全体で6,389例いた。発症頻度は、ケース群(13/1,000例)の方がコントロール群(制酸薬非服用群、10/1,000例)と比べて高かった。ケース群の頻度増大は30%増だった(オッズ比:1.30、95%信頼区間:1.23~1.38、P

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教授 白井厚治先生「「CAVI」千葉県・佐倉から世界へ 抗動脈硬化の治療戦略」

東邦大学医療センター佐倉病院内科学講座の教授で、前院長。医局のモットーは総合力と専門性を両方備えた医師育成。一人でも多くを救うこと。加えて先端医療の開発をモットーにしている。最近では、血管機能検査CAVIの開発に参画し、国内から海外にも発信。肥満症治療については脂肪細胞、脂質代謝の基礎研究から心理学まで動員して新しい治療システムを構築中。動脈硬化の分野で新しい治療体制の扉を開く動脈硬化は、地味な分野ですが、ご存知のとおり、脳梗塞、心不全、さらには腎不全をもたらし大きく個人のQOLを低下させ、また社会的損失も大きい疾患です。これに対し、病変動脈、静脈の直接的治療を循環器グループが担う一方、「動脈」が水道管でなく、生きた機能を持った臓器とし見、それに細胞生物学と代謝学を応用して治療・予防法を打ち立てるというのが夢でした。実は、癌は最近の治療学の進歩は著しいのを目の当たりあたりにしますが、30年前には不治の印象が強く、生命現象そのものの解明が必要で、とても自分の能力では歯が立たないと思い避けたのも事実です。動脈硬化なら多少とも代謝学的側面から治療できるのではないかと思ったりもしました。これまで、副院長6年、院長3年と病院の経営面にも携わりましたが、医療現場は人間が担うものであり、かつ科学性を保って運営されるべきもので、根本原則は、病気を見ることと変わらないと思いました。みんなして誠意を尽くし、精一杯がんばれば、経営のほうが、なんだかんだといっても人の作った制度の運用ですから、患者さんがいる限り、道は開けると思います。しかし、対疾病への取り組みは、神が創った摂理と破綻への挑戦ですから、数段難しいと思います。でも、全身全霊、日々、改革、改良に向けやり続けるのが、医師の誠意だと思います。それには、効率よくみんなが取り組めるセンター方式が必要と、糖尿病・内分泌・代謝センターを9年前に立ち上げました。場所、人の問題で、思い立って3年ほどかかりましたが、皆さんの協力でできました。そのころから、病棟と外来が一体となった継続看護治療システムも導入され、看護師も病棟での看護結果が外来でどのように効果が出ているのか確認しあい、フィードバックをかけるシステムが導入、大きかったのは、患者さん全員に、「ヘルスケアファイル」という手書きのファイルをお渡しし、代謝要因の変化と日常生活管理がどのように結びつくかをグラフで表すシステムを導入したことです。患者と医師のみでなく、家族にも分り、医療スタッフも採血者、受付、看護師、栄養士も一目瞭然に個々の病態が把握でき、互いにコミュニケーションが取れやすくなったのがよかったです。若い研修医にとっても数年の治療経過を見れば、病態がわかり最大の教科書にもなっています。診療体制を分りやすく、すっきり整えることは、生活習慣病と呼ばれる一連の疾患にとても有用と思います。若い医師も情熱を持った人たちが幸運にも集まり、地に足をつけ、真に役立つ研究を進めてくれたのも、推進力になってくれました。動脈硬化発生機序の解明とCAVIの開発研究学会のマニュアル、ガイドラインは大切ですが、大学病院の使命はその先を見つめることにあります。その眼は、字づらで覚えたことではなく、自然との対話、すなわち研究の基盤なくして開かれないと思います。ささやかながら病理、細胞培養実験から、動脈硬化とコレステロールの関係は直接ではなく、コレステロール自身が酸化され、オキシステロールになると強力な組織障害性をもち、慢性炎症が引きおこすとしました。これに基づき、強力な抗酸化作用を持つ脂質低下剤プロブコール投与による糖尿病性腎症の抑制効果を見いだしました。結局、末期腎硬化症は動脈硬化と同じような機序で起こると考えたからです。また、動脈硬化の臨床研究には、簡便で経時的に測定できる指標が必要ですが、これまで必ずしも十分なものがなかったわけです。これに対して、血管弾性を直接反映するCAVIという検査法の開発に携わったところ、これまで見えなかった部分がどんどん見えるようになりました。これは、内科の循環器、代謝チーム、それに生理機能検査部が一体となり、精力的に仕事をしてきた結果です。循環動態を把握するうえで、血管抵抗を反映することがわかり、これは血圧計に匹敵する意味を持つわけで、まだまだその妥当性をさまざまな角度から検証する必要がありましたが、循環器、代謝領域の疾患や、薬物治療成績が英文論文となり、世界に向けて発信し始めたところです。今後、日常診療の中から、動脈硬化治療が見出される可能性もあり、楽しみです。肥満・メタボリックシンドロームへの低糖質食、フォーミュラー食の応用を中心に、チーム医療体制を確立動脈硬化診療は診断に加え、予防と治療が究極目標ですが、動脈硬化の主な原因として肥満の意味は大きく、糖尿病、高血圧、脂質異常を伴い、所謂メタボリックシンドロームを引き起こします。すでに当院では15年前から肥満への取り組みをチームで始めており、治療として低糖質食、その極みとして安全で効果のあるフォーミュラー食を実施しています。今、欧米では低糖質がよいとの論文が出始めましたが、当院では、入院時にも低糖質食を用いています。またフォーミュラー食は必須アミノ酸を含むたんぱく質とビタミン、ミネラルをパウダーにしたものを水で溶かして、飲んでもらうものです。それによる減量効果特に、内臓脂肪の減少度が高く、それに伴い代謝改善度も一般通常食より効果があり、そのメカニズムは、動物実験でも検証中です。脂肪細胞自身のインスリン感受性関連分子の発現が上がっていることが確認されました。研究面では脂肪細胞から分泌されるサイトカイン、分子、酵素、さらに脂肪細胞分化に加えて、「人」の行動様式にも興味を持ち、毎月、オベシテイカンファランスを開き、内科医、栄養士、看護師は無論のこと、精神科医、臨床心理士も加わり、症例への総合的アプローチを試みています。肥満が解消できない理由に、ハイラムダー型と呼ばれるパーソナリテイを持つ人が肥満患者さんに多いことも見出されました。また、入院中に、何らかの振り返りができ、周囲との関係も客観化できるようになると、長期予後がよいことも見出しており、メンタルサポートは必須と思われます。このような成功例に遭遇すると、チーム全体が活気づくのも不思議です。これから、これらチームのバックアップで肥満外科治療も始まります。患者さんデータを集約したヘルスケアファイルで真の地域連携の夢を糖尿病を中心とした生活習慣病は、結局、本人の自己努力に大きく依存します。人は決して命令で動くものでなく、自分で納得、わかって初めて真の治療が始まります。その際、さまざまな情報を錯綜させないために、1冊のノートをつくり、なるべくグラフ化、マンガで示す方式で、病態理解をはかっています。これをヘルスケアファイルと呼んでいます。きちんとしたデータの推移をみて、各種職域の人が適切なアドバイスができます。また、もっと重要なことは、患者本人が自分の経過を一覧すると、そこから、自分の特性が分かるというものです。医療者自身にも勉強になり、多職種の方々がのぞきこむことによって、患者さん個々の蓄積データに基づき、最適なアドバイスができるというメリットがあります。これは、病院内の代謝科、循環器、神経内科などにとどまらず、眼科とも共通に使えますが、さらに、これで院外の施設とも、真に患者さん中心の医療ができます。できれば、全国国民全員が持つべきで、これで、医療費削減、効率化、医学教育もでき、これを如何に全国的に広めてゆくか楽しみ考えているところです。若い医師へのメッセージ:自分の医学を打ちたてる現在、各種疾患は、学会がガイドラインなどを決め、医療の標準化が進み、それはそれで、一定のレベルにまであげることでは意味があるでしょう。現場に立てば、ほとんどがそれを基礎に幾つかのバリアンスがあり、物足りないはずです。確かに一杯本もあり、インターネットでも知識はふんだんに得られます。でも、結局医師は、自分の医学を自分で打ち立てるのが原則でしょう。決して独断に走れというのではなく、ささやかでも、自分のデータをまとめ、自分として言えるファイルを作ることです。それは、先輩の先生から呟きとしておそわりました、教えてくれるのを待っていたって本当のところは教えられないし、頭を下げても教えてもらえることは少なく、自分で、縦軸、横軸を引き、そこにプロットさせ因果関係を探れといわれましたが、その通りです。ささやかでも、自分の経験症例をまとめておき、そこから何が発信できるか日夜思考錯誤してください。それが、許される余裕と良き指導者がいるところで、研修はすべきでしょうし、後期研修もそんな環境で自己研鑽することが大切でしょう。専門分野の選考は、社会的にニーズが高いところに向かうべきで、無論雰囲気も大切ですが、はやり、楽というよりは、皆が困っているところに入り込こむ勇気が大切でしょう。そこで、頑張れば、面白く楽しく医師生活をやって行けるでしょう。今後も、佐倉病院でなければ、できないことに向けて頑張ってまいります。お待ちしています。質問と回答を公開中!

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ST上昇型急性心筋梗塞の再潅流、ガイドライン勧告時間外の実施で30日死亡リスクは2倍超

ST上昇型急性心筋梗塞(STEMI)に対し、フィブリン溶解など再潅流治療をガイドライン勧告時間外に実施した場合、30日死亡リスクは、2倍超に増大することがわかった。カナダQuebec Healthcare Assessment AgencyのLaurie Lambert氏らの調べで明らかになったもので、JAMA誌2010年6月2日号で発表した。STEMI患者に対する、迅速な再潅流治療実施の重要性については知られているが、実際の医療現場における、実施までの経過時間とアウトカムとの関係を評価したものはほとんどないという。勧告時間外の再潅流治療実施で30日死亡リスクは2.14倍Lambert氏らは、2006~2007年にかけて、ケベック州における急性心筋梗塞治療の95%以上を担う、80ヵ所の病院で試験を行った。その結果、試験期間中にSTEMI患者で再潅流治療を行ったのは1,832人で、うちフィブリン溶解が392人(21.4%)、主要経皮的冠動脈血管形成術(PPCI)が1,440人(78.6%)だった。フィブリン溶解を行った患者のうち、ガイドライン勧告の30分以内に実施できなかったのは54%だった。またPPCI実施患者のうち、同勧告の90分以内に実施できなかったのは68%だった。両治療群を合わせると、ガイドライン勧告時間内に治療を実施しなかった群の補正後30日死亡リスクは6.6%と、時間内に治療を行った群の3.3%に比べ、有意に高率だった(オッズ比:2.14、95%信頼区間:1.21~3.93)。なお、1年後死亡リスクについては、両群で有意差はみられなかった(オッズ比:1.61、同:1.00~2.66)。1年後死亡や再入院、時間外実施でリスクは1.57倍に1年後の死亡と、うっ血性心不全や急性心筋梗塞による再入院の統合アウトカムの発生率も、再潅流治療を勧告時間内に実施しなかった群は15.0%、実施した群は9.2%と、実施しなかった群で有意にリスクが高かった(オッズ比:1.57、同:1.08~2.30)。ケベック州において、STEMI患者で再潅流治療を時間内に実施する人の割合が10%増すごとに、地域の30日死亡率は20%程度減少する計算になった(オッズ比:0.80、同:0.65~0.98)。(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)

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心血管イベント抑制のための費用対効果に優れた戦略は?

心血管疾患予防のため、イギリス政府は40~74歳の全成人を対象としたスクリーニング戦略の実施を推奨している。その戦略と、ルーチンデータを用いて心血管リスクを層別化する(Framinghamリスクスコア、Cambridge diabetesリスクスコア、Finnish diabetesリスクスコアを用いる)戦略とでは、潜在するハイリスク患者を特定・治療することに、どれほどの違いがあるのかが検証された。ケンブリッジ・Addenbrooke's病院メタボリックサイエンス研究部MRC疫学部門のParinya Chamnan氏らによるモデルスタディによる。BMJ誌2010年5月8日号(オンライン版2010年4月23日号)掲載より。政府推奨の全成人対象の戦略と、リスクスコアに基づく戦略の予防効果を比較Chamnan氏らは、イギリス、ノーフォークの40~79歳の住民を対象とする前向き試験EPIC-Norfolk(European Prospective Investigation of Cancer-Norfolk)のデータから、モデルスタディを構築した。被験者は、1993~2007年のデータがあり基線で心血管疾患、糖尿病に罹患していなかった40~74歳の男女16,970例。主要転帰は、新規の心血管疾患1例を予防するのに要したスクリーニングの実施件数、また、予防するための治療介入に要した件数、あるいは予防できた可能性があった新規の心血管疾患に対する件数についても検討された。治療効果による相対リスクの低下は、臨床試験のメタ解析の結果およびNational Institute for Health and Clinical Excellenceのガイドラインから推定した。効果は同一、リスクスコア戦略の方がコストを抑えられる追跡期間中の心血管イベント発生は、18万3,586患者・年超のうち、1,362例だった。新規の心血管イベント抑制に関して、政府が推奨する戦略と簡易リスクスコアを段階的に用いたうえで実施する戦略とに違いはなかった。予防できた件数は、政府戦略で26,789例、リスクスコアを用いた戦略で25,134例だった。リスクスコアを用いた場合、スクリーニングの実施必要者数は、母集団の60%で事足りた。50~74歳でみた場合も、両戦略に相違はなかった。Finnish diabetesリスクスコア調査票、身体測定値による層別化は、効果的ではなかった。Chamnan氏は、「全成人を対象とするスクリーニング戦略も、リスクスコアを用いて行う戦略も、予防効果に相違はなかった。またリスクスコアを用いた方がコスト抑制も期待できる」と結論している。

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LDLコレステロールは総コレステロールを測定してFriedewaldの式による計算法で求める

 日本動脈硬化学会は26日、「LDLコレステロール直接測定法に関する記者会見」において日常臨床でLDLコレステロール値を管理指標とすべきとした上で、LDLコレステロール値は総コレステロールを測定し、Friedewaldの式による計算法で求めるべきで、LDLコレステロール直接測定法は改良の必要があるとの声明を発表した。LDLコレステロールをFriedewaldの式による計算法で算出してみた Friedewaldの式によるLDLコレステロールの計算法は、総コレステロール(TC)値、HDLコレステロール(HDL-C)値、トリグリセリド(TG)値の3つの測定値から、LDLコレステロール(LDL-C)値を算出する。LDL-C=TC - HDL-C - TG/5 ここに2007年8月に健康診断で測定した私のデータがある(2008年度以降は、健康診断で総コレステロール値が測定されなくなった)。TC値205mg/dL、HDL-C値41mg/dL、LDL-C値(直接測定法)139mg/dL、TG値 147mg/dLとあまり誉められた健康状態ではない。Friedewaldの式による計算法よってLDLコレステロール値を算出してみると、135mg/dLと直接測定法の値とおおよそ一致している。総コレステロール値からLDLコレステロール値へ脂質管理指標が改訂 さて、総コレステロール値に取って代わったLDLコレステロール値であるが、2007年4月に日本動脈硬化学会が発表した『動脈硬化性疾患予防ガイドライン2007年度版』では、脂質管理指標から総コレステロール値が外され、LDLコレステロール値による管理が色濃くなった。これ自体は、従来の誤解が是正される方向に導いた。そもそも総コレステロール値はLDL-C、HDL-C、VLDL-Cの総和であり、動脈硬化を惹起させるリポ蛋白(LDLなど)と、逆に抑制するリポ蛋白(HDLなど)が含まれている。そのため、総コレステロール値よりLDLコレステロール値を動脈硬化の危険因子とする方が科学的に妥当である。2007年の改訂ではこの点が色濃く映った。 同ガイドラインではLDLコレステロール値の算出方法について、本文中および診断基準の表の脚注に、「直接測定法あるいはFriedewaldの式による計算法で算出する」との旨が併記されており、「食後やTG値400mg/dL以上の時には直接法を用いてLDLコレステロール値を測定する」としている。Friedewaldの式によるLDLコレステロール計算法はTG値400mg/dL以上の症例では適用できないことが背景 LDLコレステロール直接測定法はわが国で1997年に開発され、98年には診療保険適用となり、現在7つのキットが使用可能である。しかし、これら7つは方法論の違いによりキット間でLDLコレステロール値にバラツキがあり、特に脂質異常症例、TGが高い場合においては「外れ値」を示すことが多い。場合によってLDLコレステロール直接測定法はキット間で30mg/dL以上の差が認められるということが明らかになった。一方、脂質異常症例ではLDLコレステロール標準測定法であるBQ法とのバリデーションが許容範囲を超えていることも報告された。Friedewaldの式によるLDLコレステロール計算法ではTG値400mg/dL以上の症例では適用できないことから直接測定法が勧められていたが、直接測定法も完全な解決策ではないことが見出された。LDLコレステロール値は直接測定法が79.3%で計算法は20.7% それでは臨床現場ではLDLコレステロール値をどのようにして求めているのか?弊社が2008年12月に行ったアンケート調査によると、高LDLコレステロール血症患者を1ヵ月に20名以上診察している医師の79.3%が直接法を用いており、Friedewaldの式による計算法を用いている医師は20.7%にとどまった(ケアネット調べ)。この結果を見る限り、臨床現場ではLDLコレステロール直接測定法が主流になっている。LDLコレステロール値は総コレステロール値を測定してFriedewaldの式による計算法で求める学会は次のことを推奨している。 ・日常臨床の場では、TC値、HDL-C値、TG値を測定し、Friedewaldの式による計算法よってLDLコレステロール値を求める。・食後に来院した患者については、空腹での再診を求める。・TG異常高値例では、リスク管理の指標としてnon-HDL-C値を参考とする(non-HDL-C=TC-HDL-C)。non-HDL-Cにおける管理目標値は「LDL-C値+30mg/dL」とする。 なお、学会は、LDLコレステロール直接測定法について、今後、標準化、精度管理・情報公開が必要であると述べている。合わせて、現在、LDLコレステロール直接測定法が推奨されている「特定健診」については、総コレステロール値を測定項目に加えることを強く要望していることを述べた。学会は「特定健診」における直接測定法の導入に関して標準化および情報公開を付帯条件に容認したが、なされないまま特定健診がスタートした。 我々は現在、患者指導支援ツールを開発している。このシステムは患者さんの診療情報をもとに、患者さんに最適な指導ツールを作成できるサービスではある。残念ながら、現在の開発版ではLDLコレステロール値についてFriedewaldの式による計算法が適用されていない。今回の発表を受け、Friedewaldの式による計算法を適用したものに変更を検討し、TC値、HDL-C値、TG値からFriedewaldの式によってLDLコレステロール値が自動計算できるようになる見通し。

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心房細動患者の心拍数コントロールは緩やかでも有効

持続性心房細動患者の心拍数コントロールは緩やかでも、厳格に行った場合と効果は同程度であることが確認された。コントロール達成も容易だった。オランダ・フローニンゲン大学循環器科のIsabelle C. Van Gelder氏らRACE II試験グループが、600名超を対象に行った多施設共同前向き無作為化試験で明らかにしたもので、NEJM誌2010年4月15日号(オンライン版2010年3月15日号)で発表している。心拍数コントロールは、心房細動治療の選択肢で、ガイドラインでは厳格に行うことを推奨しているが、臨床エビデンスはなかった。心拍数コントロール目標、110拍/分未満群と80拍/分未満群に無作為化し転帰追跡Gelder氏らは、持続性心房細動患者の心血管系疾患の罹患・死亡予防について、心拍数コントロールを緩やかに行った場合でも、厳格に行った場合と比べて劣らないと仮定し試験に臨んだ。RACE II(Rate Control Efficacy in Permanent Atrial Fibrillation: a Comparison between Lenient versus Strict Rate Control II)は、2005年1月~2007年6月にオランダ国内33施設から被験者登録を行い、被験者(80歳以下の持続性心房細動患者614例)を、心拍数コントロールを緩やかに行う群(安静時心拍数110拍/分未満)と、厳格に行う群(同80拍/分未満、中等度運動時は同110拍/分未満)に無作為化し追跡した。主要転帰は、心血管系が原因の死亡と、心不全・脳卒中・全身性塞栓症・出血・致命的な不整脈イベントによる入院の複合。追跡期間は2年以上3年以内とされた。コントロール達成割合、97.7%対67.0%3年時点の主要転帰の推定累積発生率は、緩やかコントロール群12.9%、厳格コントロール群14.9%、絶対差は2.0ポイント(90%信頼区間:-7.6~3.5、事前特定の非劣性限界に対するP

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PCI後の抗血小板併用療法の長期投与のリスクと有効性

現行の経皮的冠動脈インターベンション(PCI)ガイドラインでは、患者の出血リスクが高くない場合は薬剤溶出ステント挿入後、クロピドグレル(商品名:プラビックス)75mg/日投与を用いた抗血小板併用療法を12ヵ月以上行うべきことを推奨している。しかしその勧告に関するエビデンス(リスクおよび有効性)は明らかでない。韓国・ウルサン大学校循環器科のSeung-Jung Park氏ら研究グループは韓国で行った2つの多施設共同無作為化試験からの結果、併用療法がアスピリン単独療法と比べてイベント抑制効果があるとは言えない結果が得られたと報告した。本論点に関する無作為化試験報告はこれが初めてという。NEJM誌2010年4月15日号(オンライン版2010年3月15日号)より。出血リスクの低い2,701例を、併用療法か単独療法に無作為化研究グループは、REAL-LATE試験とZEST-LATE試験の2つの無作為化試験を行い、その結果データを統合し分析した。両試験には、2007年7月~2008年9月に韓国の22の循環器センターで、重大有害な心臓・脳血管イベントおよび大出血のリスクがない合計2,701例(REAL-LATE試験:1,625例、ZEST-LATE試験:1,076例)が登録された。被験者は、クロピドグレル75mg/日+低用量アスピリン(100~200mg/日)の併用療法群(1,357例)と、低用量アスピリン単独療法群(1,344例)に無作為化され、12ヵ月以上投与を受け追跡された。主要エンドポイントは、心筋梗塞・心臓関連死の複合とされた。イベント単独・複合リスクとも、両群間に有意差認められず追跡期間中央値は、19.2ヵ月。2年時点の主要評価項目の累積リスクは、アスピリン単独療法群1.2%に対し、併用療法群は1.8%だった(ハザード比:1.65、95%信頼区間:0.80~3.36、P=0.17)。心筋梗塞、脳卒中、ステント血栓症、再度の血管再生術、大出血、全死因死亡の各リスクについて、両群間で有意差はなかった。またイベント複合リスクについても有意差は認められなかった。アスピリン単独療法群に比べて併用療法群の、心筋梗塞・脳卒中・全死因死亡の複合リスクは、ハザード比1.73(95%信頼区間:0.99~3.00、P=0.051)、心筋梗塞・脳卒中・心臓関連死の複合リスクは、同1.84(0.99~3.45、P=0.06)。研究グループは、「薬剤溶出ステント挿入患者の心筋梗塞・心臓関連死低減に、12ヵ月以上の抗血小板併用療法の効果が、アスピリン単独療法より有意であることは認められなかった」と結論し、「より大規模な長期無作為化試験での検証が必要」とまとめている。(医療ライター:武藤まき)

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結腸・直腸がんをプライマリ・ケアで早期発見する方法とは?

 プライマリ・ケアにおける結腸・直腸がんの診断では、症状の組み合わせと便潜血検査(特に免疫化学に基づく検査法)によるアプローチが最も有望であることが、オランダVU大学医療センターのPetra Jellema氏らによるメタ解析で示された。結腸・直腸がんはヨーロッパで2番目に多いがんであり、5年生存率は早期がんの90%以上に対し進行がんでは10%以下であるため早期診断が重要とされる。腹部症状のある患者は通常プライマリ・ケア医を受診するので、早期診断におけるプライマリ・ケア医の役割は大きい。しかし、腹部症状自体は頻度が高い一方、1名のプライマリ・ケア医が結腸・直腸がんに遭遇する機会は年にわずか1例にすぎないことから、診断精度の高い簡便な検査法の開発が切望されている。BMJ誌2010年4月10日号(オンライン版2010年4月1日号)掲載の報告。結腸・直腸がんを同定する診断法の感度、特異度のメタ解析 研究グループは、プライマリ・ケア医にとって、非急性の下腹部症状で受診した患者の中から結腸・直腸がんのリスクが高い症例を同定するのに有用な診断法のエビデンスについて系統的なレビューを行い、メタ解析を実施した。 PubMedおよびEmbaseを検索し、引用文献の調査も行った。以下の条件を満たす試験を抽出した。1)診断研究、2)非急性の下腹部症状で受診した成人患者が対象、3)徴候、症状、血液検査、糞便検査を含む試験。 2名の研究者がquality assessment of diagnostic accuracy studies(QUADAS)を用いて別個に論文の質を判定し、データを抽出した。診断法について2×2分割表を作成し、感度と特異度の推定値をプールした。考慮すべき臨床的あるいは統計学的な不均質性が存在する場合はプールに含めなかった。プライマリ・ケアにおけるエビデンスの確立が急務 47試験が解析の対象となった。感度は、50歳以上(0.81~0.96、中央値0.91)、2週間以内に専門医に紹介するガイドライン(TWR guideline)に記載された症状の組み合わせ(0.80~0.94、同0.92)、免疫化学的便検査(0.70~1.0、同0.95)で高値を示した。これらのうち特異度が良好だったのは便検査(0.71~0.93、同0.84)のみであった。 特異度は、家族歴(0.75~0.98、中央値0.91)、体重減少(0.72~0.96、同0.89)、鉄欠乏性貧血(0.83~0.95、同0.92)で良好であったが、いずれも感度が不良であった。 これら6つの要素に関する検査の有用性は、プライマリ・ケアでは十分に検討されていない。 著者は、「結腸・直腸がんの診断能は、症状の組み合わせと免疫化学的便検査の結果で判断するアプローチが優れることが示されたが、プライマリ・ケアにおけるエビデンスはない」と結論したうえで、「プライマリ・ケアでの結腸・直腸がんの診断におけるこれらの検査の役割について評価する質の高い試験の実施が急務である」と指摘する。

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rosiglitazoneの安全性に好意的な研究者と製薬会社との関係

2型糖尿病治療薬rosiglitazone(国内未承認)の安全性について好意的な見解を表明している研究者は、そうでない研究者に比べ製薬会社と金銭的な利益相反を有する傾向が強いことが、アメリカMayo Clinic内科学のAmy T Wang氏らの調査で明らかとなった。最近の透明性の向上を求める声にうながされて、利益相反の開示に関する指針のさらなる厳格化と、いっそうの普及が進められている。過去10年間に実施された様々な試験において、利益相反と製薬会社を支持する結論の関連が示されているという。BMJ誌2010年4月10日号(オンライン版2010年3月18日号)掲載の報告。2つの基準論文に触れた文献を3つに分類し、利益相反の有無との関連を解析研究グループは、糖尿病患者におけるrosiglitazone投与と心筋梗塞の発症リスクの増大について、著者の金銭的な利益相反とその見解の関連性を検討した。2009年4月10日に、Web of ScienceおよびScopusを用い、2つの基準論文を引用あるいはこれに言及している文献を抽出した。2つの基準論文とは、NissenとWolskiが糖尿病患者におけるrosiglitazoneと心筋梗塞イベントの関連について初めて行ったメタ解析(N Engl J Med 2007; 356: 2457-71)およびこのメタ解析の結果に応えるかたちで発表されたRECORD試験の中間報告(N Engl J Med 2007; 357: 28-38)である。対象文献は「rosiglitazone」「心筋梗塞リスク」に触れていることとし、ガイドライン、メタ解析、レビュー、臨床試験、論文に関するレター、解説、エディトリアルが含まれた。個々の文献について、著者の金銭的な利益相反に関する情報を集めた。2名の評価者が別個に、利益相反の有無を知らされない状況下で個々の論文を「好意的(rosiglitazoneは心筋梗塞リスクを増大させない)」「中立的」「非好意的」のいずれかに分類した。予想外に低い情報開示率、好意的見解と金銭的利益相反に強固な関連性が202の文献が抽出され、そのうち利益相反の記述があったのは108(53%)文献に過ぎず、著者に利益相反を認めたのは90(45%)文献であった。rosiglitazoneと心筋梗塞リスクの関連に「好意的」であった著者は、「非好意的」な著者に比べ、全般に血糖降下薬の製造会社との間に金銭的な利益相反を有する傾向が強く(関連強度率比:3.38、95%信頼区間:2.26~5.06)、特にrosiglitazoneの製造会社とはその傾向が強固であった(同:4.29、同:2.63~7.02)。同様に、「rosiglitazone使用の推奨」と金銭的な利益相反にも強い関連を認めた(同:3.36、同:1.94~5.83)。このような関連性は、著者よりもむしろ文献を解析対象とした場合に強かった(関連強度率比:4.69、95%信頼区間:2.84~7.72)。さらに、意見論文(同:6.29、同:2.15~18.38)や主にrosiglitazoneに関する論議に焦点を当てた文献(同:6.50、同:2.56~16.53)に限定した場合、およびアメリカ食品医薬品局(FDA)によるrosiglitazoneの安全性に関する警告の発表の前(同:3.43、同:0.99~11.82)、発表後(同:4.95、同:2.87~8.53)でも、一貫してこのような関連が強くみられた。著者は、「金銭的な利益相反の情報開示率は予想外に低く、著者がrosiglitazone論議について表明した方向性と、彼らの製薬会社との金銭的な利益相反には明確かつ強力な関連性が認められた」と結論し、「これらの知見は、糖尿病患者に対するrosiglitazoneの心臓リスクに関する見解と、著者の金銭的利益相反の因果関係を必ずしも示すものではないが、科学的な業績を信頼に足るものするためには、情報開示手続きをさらに変更する必要性があることを浮き彫りにしている」と指摘する。(菅野守:医学ライター)

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コ・トリモキサゾール予防投与、ARTを開始したHIV感染者の死亡率を低減

3剤併用抗レトロウイルス療法(ART)を開始したHIV感染者に対し、コ・トリモキサゾール[トリメトプリム・スルファメトキサゾール(ST)合剤、商品名:バクタ、バクトラミンなど]を予防的に投与すると、死亡率が有意に低下することが、イギリス医学研究評議会(MRC)臨床試験ユニットのA S Walker氏らの検討で明らかとなった。コ・トリモキサゾールは、医療資源が不足する環境で市中肺炎の予防および治療に使用される安価な抗生物質である。本薬剤を予防投与すると、未治療のアフリカ人HIV感染者の死亡率が低減することが示されているが、このベネフィットは併用ARTと同時に投与しても維持されるかについては不明であったという。Lancet誌2010年4月10日号(オンライン版2010年3月29日号)掲載の報告。コ・トリモキサゾール投与と非投与を比較する観察研究研究グループは、アフリカ人の重症HIV感染者に対するART開始後のコ・トリモキサゾールの予防投与の有用性を評価する観察研究を実施した。対象は、2003年1月~2004年10月までにDART(Development of Anti-Retroviral Therapy in Africa)試験に登録されたCD4細胞数<200個/μLで、3剤併用ARTを開始した未治療の症候性HIV感染者(18歳以上)であった。コ・トリモキサゾール(トリメトプリム160mg+スルファメトキサゾール800mg)の予防投与(1日1回)はルーチンには行わず、無作為割り付けも実施せずに、担当医が個々に処方した。時間依存性の交絡を補正するために周辺構造モデルを用い、コ・トリモキサゾールの投与が臨床予後、CD4細胞数、BMIに及ぼす影響について検討した。死亡率が12週までは大幅に低下、効果は72週まで持続3,179例(コ・トリモキサゾール投与群1,959例、非投与群:1,220例)が登録された。全体の観察期間の総計は14,214年であり、そのうちコ・トリモキサゾール投与群は8,128人年(57%)であった。コ・トリモキサゾール使用の時間依存性の予測因子は、直近のCD4細胞数、ヘモグロビン値、BMI、ART開始後の当初の症状(WHO stage 3/4)であった。死亡率は、コ・トリモキサゾール投与群が非投与群に比べ有意に低下した(オッズ比:0.65、95%信頼区間:0.50~0.85、p=0.001)。コ・トリモキサゾール投与によって死亡リスクは12週までは大幅に低下し(同:0.41、同:0.27~0.65)、12~72週まではこれが維持された(同:0.56、同:0.37~0.86)が、72週以降は有意な差はなくなった(同:0.96、同:0.63~1.45、不均一性:p=0.02)。このような死亡率低下の変動は、コ・トリモキサゾールの投与期間や直近のCD4細胞数とは関連しなかった。コ・トリモキサゾールの予防投与によりマラリア感染の頻度が有意に低下し(オッズ比:0.74、95%信頼区間:0.63~0.88、p=0.0005)、その効果は投与期間と相関した。しかし、WHO stage 4の症状(同:0.86同:0.69~1.07、p=0.17)、CD4細胞数(非投与群との差:-3個/μL、p=0.50)、BMI(非投与群との差:-0.04kg/m2、p=0.68)には有意な効果を及ぼさなかった。著者は、「これらの結果はWHOガイドラインを補強するものである。3剤併用ARTを開始したアフリカ人HIV感染者には、少なくとも72週のコ・トリモキサゾールの予防投与を併用するという治療戦略の強い動機づけとなるだろう」と結論している。(菅野守:医学ライター)

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職場介入と運動療法の統合的治療、慢性腰痛患者の職場復帰に有効

上司を交えた職場への介入と段階的な運動療法から成る統合的治療プログラムは、慢性腰痛患者の機能障害を軽減し職場復帰に有効なことが、オランダVU大学医療センターのLudeke C Lambeek氏らの検討で示された。慢性腰痛は、臨床的な問題であるとともに心理社会的かつ仕事関連の問題でもある。慢性腰痛の臨床ガイドラインは労働不能(work disability)に焦点を当てているが、通常の腰痛治療はその予防を目的としたものではない。職場の要素をも考慮した介入が、亜急性の腰痛が原因と診断された患者の職場復帰に有効なことが示されているが、慢性腰痛に対する効果を検討した試験はなかったという。BMJ誌2010年4月3日号(オンライン版2010年3月16日号)掲載の報告。通常治療と統合的治療を比較する地域住民ベースの無作為化対照比較試験研究グループは、慢性腰痛患者に対する直接的介入と職場への介入を併用した統合的治療プログラムの効果を評価する地域住民ベースの無作為化対照比較試験を行った。12のプライマリ・ケア施設および5つの2次医療施設から、腰痛のため12週以上患者リストに載っている18~65歳の患者134例が登録され、通常治療群(68例)あるいは統合的治療群(66例)に無作為に割り付けられた。統合的治療とは、上司を交えた参加型人間工学(participatory ergonomics)に基づく職場介入および認知行動学に基づく段階的運動プログラムから成るもの。主要評価項目は、十分に継続可能な職場復帰までの、腰痛による休業期間であり、副次評価項目は疼痛および身体機能の程度とした。職場復帰までの期間が、1年間のフォローアップ期間中に120日も短縮継続可能な職場復帰までの期間(中央値)は、統合治療群が88日と、通常治療群の208日に比べ有意に短縮された(p<0.003)。Kaplan-Meier法による解析では、職場復帰までの期間は統合的治療が有意に優れた(ハザード比:1.9、p=0.004)。12ヵ月後のRoland機能障害質問票による評価では、統合的治療群で身体機能が有意に改善された(p=0.01)。視覚アナログスケールによる疼痛の評価では、両群間に差を認めなかった。著者は、「患者と職場環境に直接介入する統合的治療プログラムは、腰痛による機能障害を私生活および労働生活の双方において実質的に低減した。労働活動への早期復帰は、疼痛には有効でも有害でもなかった」と結論し、「本試験の知見は、疼痛と労働不能とは、別個の治療目標であることを示している」と指摘する。(菅野守:医学ライター)

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准教授 小早川信一郎先生の答え

アトピー性白内障手術時の注意点まだまだ駆け出しの眼科医なので、初歩的な質問で失礼します。アドピー性白内障手術の場合、網膜剥離を併発している可能性も念頭に入れて手術を行うことを指導されました。このような場合、小早川先生が特に意識していることや注意していること等がありましたら教えて頂きたく存じます。(1)術前に眼底が全く観察できない程度に白内障が進行していた場合、術前の超音波検査はもちろんですが、術中に網膜剥離の有無を直接観察することになると思います。私は術中に発見したことはありませんが、術後すぐに(1週間以内)剥離を起こされたことが出張中にありました。(2)手術においては、極力大きめのCCC(5.5-6ミリ程度)を狙います。レンズ選択は以前、PMMAでしたが、今はアクリルを入れています。1P、3Pは問いません。(3)若い方が当然多いので縫合します。私はすべての症例で基本的に上方強角膜切開、輪部後方からトンネルを1.5ミリ程度作成していますので、縫合は容易です。結膜は縫合したりしなかったりですが、終了時にうまく元に戻らなければ縫合します。(4)術前ムンテラはRDの話もします。(5)硝子体脱出は極力避けてください。脱出したらたぶん剥がれます。(6)予想外に炎症が強い時があります。そういう時はステロイドを点滴します(リンデロン4ミリ相当を2-3日間)。基本、入院して頂いています。眼内炎を疑うほどの炎症は経験ありません。加齢黄斑変性の研究動向加齢黄斑変性の治療方法についての最近の動向など、御存知でしたら教えて下さい。滲出型の場合は、第一選択ルセンティス、第二選択マクジェンを月一で3回投与し、経過を見て追加、維持療法が基本ではないでしょうか。蛍光眼底造影(必要ならICG造影)は必須と思います。OCTは治療効果判定に有用ですが、なくても視力やアムスラーチャートなどで大体把握できます。ドライタイプにアバスチンを試しましたが、効果はありませんでした。ドライタイプの方には、希望があればルセンティスをやっていますが、効果がない場合がほとんどなので、その時点でムンテラして止めています。レーザーは最近やっていません。レーザーはアーケード内ですと、暗点が出たり自覚的な見え方の質の低下を経験しています。硝子体手術は出血がなければしません。高齢者に手術を勧めるべきか在宅をやっている開業医です。白内障と思われる高齢者の方を見かけますが、90歳や100歳になる高齢者の方の場合、ご家族の心配もあり、白内障の手術を勧めるべきかどうか、よく悩みます。その辺の考え方を教えていただければと思います。3年ほど前までは、85歳以上の方の時は手術については積極的に勧めませんでした。もちろん過熟白内障の時はします。緑内障になるからです。最近は85歳以上の元気な方が増えてきて、本人の希望があり、家族も希望していればします。ただし、ムンテラとして、破嚢や核落下のリスクが上がること、感染リスクも高いこと、は必ず言います。それほど黄ばみの強くない核白内障であれば、たぶん勧めませんし、家族がやってくれと言っても最初は乗り気でない姿勢をみせます。90歳代は経験ありますが、100歳の方は手術の経験がありません。チン小体脆弱、前部硝子体膜剥離がある、は予測して手術に入ります。中には60-70代と変わらない方もいますが、弱い方がやはり多いと思います。また、きちんと手術が終了しても、0.7程度にとどまる方が多く、1.0はあまりいない印象です。レンズを選ぶ眼内レンズの種類が増えるにつれ治療後にピントが合わずに再手術をすることになる例が出ております。大森病院さんでは、レンズを選ぶ際の注意点、できれば個人の感覚に頼るのものではなく、科としてのガイドラインの様なものがあれば教えて頂きたいと思います。(1)-3.0D以上の近視がある方を除いて、基本的には-0.5から0Dを狙っています。乱視が強い場合、最近はトーリックです。以前は乱視の分を考慮して、少しプラス気味に球面を狙ったりして、等価球面ができるだけ-0.5から0程度になるようにしています。(2)中等度から高度近視の方の場合、コンタクトをしていて老眼鏡を使用という方は(1)と同じく狙います。(3)中等度から高度近視の方で術前眼鏡使用の場合、患者さんとお話をして、-2.5から3程度に等価球面がいくように選択します。必ずピントが合う距離が今よりも遠くなることをお話します。(4)(2)や(3)のような近視の方はメガネの必要性をお話しています。(5)一般の患者さんに多焦点の話はしていますが、自費で36万円ということを話すとその時点であきらめる方が多いです。ただ、考えてくると言った方の場合、一度手術の予約のみ取って、日を変えて多焦点IOLのお話を再度しています。乱視適応は原則1D以内です。80歳以上の方には積極的に勧めていません。(6)トーリックは、乱視が強いのでそれも少し治るようなIOLを入れますとだけ言い、過剰な期待は抱かせないようにしています。適応は積極的にしており、1D以上角膜乱視があればトーリックです。術後感染症差し支えなければ、眼科手術の術後感染症を防ぐために行っている貴院ならではの取組、工夫をご教授下さい。(1)術前に結膜嚢培養(2)(1)で腸球菌、MRSAが出たら告知して術前に抗菌薬点眼処方(3)全例、極力、術3日前からの抗菌薬点眼(クラビッド)(4)皮膚消毒したあと1分間放置(5)穴あきドレープをかけて洗眼したあともう一度露出した皮膚を消毒。(6)30秒間放置して、テガタームなどを皮膚に貼り付け、開瞼器をかける術後は極力(主治医が診察できない場合もあるので)、当日より眼帯を外して抗菌薬点眼を開始する。こんな感じです。糖尿病専門医との連携について眼科をやっている者です。糖尿病専門医との連携で気をつけているポイントがあれば教えて下さい。どこも同じ状況だとは思いますが、糖尿病白内障や糖尿病網膜症の患者さんが増えてきたため血糖コントロールなど、糖尿病専門医と連携をとる機会が増えてきました。宜しくお願いします。白内障は急ぎませんが、網膜症の場合、特に硝子体手術が必要な程度まで進行している場合は連携が必要と思います。急ぎでオペの時は、コントロールしながら、というスタイルとなります。どのぐらい急ぎなのか、をはっきり伝え、手術までの時間にレーザーは1週間に2回程度、同じ眼でもかけています。血糖コントロールを高めに、とか低めにとかそのような指示はしません。こちらの状況をはっきり伝えるのみです。コントロールは程ほどで手術に入るか、コントロール後手術なのかは一度話し合いを持たれた方がよいとおもいます。白内障手術前に行うリスク説明時に、何か工夫をされていることあればお教え下さい。実は最近、テレビや雑誌の影響なのか、「白内障手術は気軽で簡単!」「術後は、メガネなしで若い頃の視力が手に入る(レーシックと勘違いしているのでしょうか?)」とのイメージを持つ患者さんが増えてきたと感じます。このような場合、手術前にいくらリスクを説明しても、この先入観が邪魔しリスク内容を安易に捉えられてしまっているように感じます。実際、昔と比べて、術後に「こんなはずでは!」とのクレームが多くなったと感じます。小早川先生が術前のリスク説明時に何か工夫されていることがあれば是非教えて下さい。過度な期待は抱かせない、ということに留意はしています。ただし、眼内炎や核落下について必要以上にムンテラすることは避けています。手術ですからやってみるまでは分からない、という話もします。術者の技量、土地柄も影響していると思います。また特別な症例、水晶体揺れている、90歳以上、mature、ぶどう膜炎、などは自分でムンテラしています。通常の症例は主治医にお願いしています(白内障は入院ですので主治医が付きますので)。CCCのコツを伝授下さい先生も書いておられるように、手術時は局所麻酔で行うことが多く、こちらの動きが患者さんに伝わってしまいます。特に、CCCが上手く行かなかった時には大変焦ってしまい、「絶対患者さんが不安に思っているな。」と感じることがあります。上級医から、学会時に小早川先生からCCCでトラぶった時の対処方法を教えて頂いたと聞きました。もし宜しければそれを伝授願えないでしょうか。宜しくお願いします。(1)道具にこだわる セッシの積極的使用、いろいろなセッシを試してみる、針にこだわらない、(2)顕微鏡にこだわる ツァイスの一番新しいモデル、ルメラは見えます。視野の中心で見ることも忘れない(3)ビスコにこだわる ヒーロンVをすすめています。(4)染色 僕自身はめったにしませんが、見えなければ積極的に染めてもらっています。第一に前嚢が見えているかの確認です。次にヒーロンVを使用して確実に前房深度を保ちます。道具を厳選し、確実に前嚢を把持することに努めます。後は豚眼の練習通り、進めていきます。もし流れたらですが、下方で流れたら観音開きになるように逆回しでつなげるか、針を細かく動かしてカンオープナーにするか、を考えます。手前で流れたら、余分な前嚢を切除した後、前房虚脱に注意してオペを進めます。切開創の構築についてもセッシ使用の場合など考慮すべきでしょう。基本的には流さないように万全の準備をしてオペに臨み、流れたら、成書のごとく対処していくという指導をしています。糖尿病患者を診て頂く場合の注意点内科医です。糖尿病患者を眼科の先生に受診させる場合、どのような点に注意すべきでしょうか。また、東邦大学で内科・眼科の連携の際には、網膜症の分類をどのように使い分けていらっしゃいますか。白内障に関する質問でなくて恐縮ですが、よろしくお願いいたします。(1)血糖値、A1Cあたりがあれば十分と思います。通院歴がまじめ、ふまじめといった情報はさらにありがたいと思います。(2)網膜症は福田分類を使っています。AとBで大別し、レーザー治療は済でもう枯れてきた網膜症である、といった情報は内科に提供しています。逆に手術を急ぐべき、といったときはその旨明記します。コントロールについては原則お任せしています。海外留学について先生の記事、興味深く読ませて頂きました。現在初期研修中ですが、私も是非先生の様に研究発表もできる眼科医を目指したいと思っております。先生のプロフィールにも海外留学されたとありますが、やはり、基礎を習得するためには海外留学が必要なのでしょうか?症例の質問ではなくて恐縮ですが、実際に眼科の第一線で活躍されていて論文や発表も数多く出されている先生に伺う機会がないので教えて頂ければと願っています。また、大森病院のホームページには「積極的に海外留学も行えるようにしています。」とありましたが、具体的にどの様な支援をされていて、どの程度の方々が支援を受けているのでしょうか?色々と質問して申し訳ありませんがよろしくお願いします。海外留学で一番学んだことは問題解決能力でした。自分で解決する、その選択肢を多く持ったことです。基礎を習得するのは国内でも十分と思います。私は、知り合いの先生がいる微生物の教室で、実験をさせて頂いておりました。その後、眼内炎がやりたくなって、留学いたしました。日本でも実験はできますが、教室の垣根や動物センターの規約など、面倒くさいことが多いです。その点、システムがすでに出来上がったラボではそういった根回しにあまり力を入れなくて済みますので楽と思います。自分のやりたい研究ができる環境がアメリカだったとそのように考えてます。研究には臨床のような研修プログラムがなく、やりたい人間ができるようになればよい、というスタンスが多いと思います。もし、本気で考えていらっしゃるなら大学院という選択がよいと思います。眼内レンズの解析、微量検体の測定など、実験系を組むと費用がかかるものは企業のものも積極的に使用しています。SRL等、結構やってくれますし、仲良くなると研究員の方とお話しできることもあります。眼内レンズの解析は、旧メニコンにお願いすることも多いです。最近では電顕写真を外にお願いしたりもしています。わたくしたちの医局では、例えば大阪大学のように常に誰かがどこかに留学している状況ではないですから、留学希望者が順番待ちしているといったことはありません。研究が好きな人間や大学院生を中心に海外学会に連れて行って、雰囲気を味合わせ、少しやる気がある人に対しては、僕がもといたラボに連れて行って、ボスと話をさせたりします。で、行きたいとの希望が出れば、医局長に話をして人事面で考慮をしていくという状況です。僕は微生物でしたので、感染症のテーマでよいという人間を連れて出ています。東邦大学には給費留学制度(留学中助教の給料が保証)がありますので、教授とも話をしながら進めます。僕がもといたラボに行った人間はうちの医局からはまだいませんが、来年あたりに一人出せるかもしれない状況に来ています。海外留学は医局の責任者と十分に話し合い、穏便に行ける環境を作り、経済的な問題を解決してからが一番と思います。教室によっては定期的に人を出すシステムが作られているところもあるでしょうが、我々はまだまだです。なかなか、帝大クラスのようなシステムには到達できません。准教授 小早川信一郎先生「白内障手術の光と影」

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集団認知行動療法が腰痛の治療に有用

集団認知行動療法が、プライマリ・ケアにおける腰痛治療として有用なことが、イギリスWarwick大学医学部のSarah E Lamb氏らによる無作為化試験で示された。国際的なガイドラインでは、非特異的な腰痛が持続する場合は積極的に身体を動かすことが推奨されている。プライマリ・ケアでは、通常の治療よりも看護師による積極的な運動の指導の方が効果は高いが長期には持続せず、理学療法(体系的運動療法、鍼灸、マニピュレーション、姿勢指導)の長期効果もわずかなことが示されている。認知行動療法の長期効果については相反する結果が混在しているが、集団で行う場合は同じ問題を持つ患者同士の相互作用による改善効果やコストの軽減が期待できるという。Lancet誌2010年3月13日号(オンライン版2010年2月26日号)掲載の報告。集団認知行動療法の有無で無作為割り付け研究グループは、プライマリ・ケアにおいて腰痛患者へのアドバイスに加え集団認知行動療法を行うアプローチの効果を評価するために、多施設共同無作為化試験を実施し、費用効果分析も行った。イングランドの56の一般診療(GP)施設から亜急性あるいは慢性の成人腰痛患者701例が登録され、積極的な疾患管理の指導を受けた。これらの患者が、最大6セッションの集団認知行動療法を受ける群(468例)あるいはそれ以上の介入は受けない対照群(233例)に無作為に割り付けられた。主要評価項目は、12ヵ月の時点におけるRoland Morris機能障害質問票および改訂Von Korff障害スコアのベースラインからの変化とした。評価は盲検下に行い、フォローアップデータが得られた全患者についてintention-to-treat解析を行った。有意な改善効果、医療コストの増加も少ない集団認知行動療法群の399例(85%)および対照群の199例(85%)で有効性の解析が可能であった。最も多い治療中止の理由は質問票への回答拒否であった。治療開始後12ヵ月の時点におけるRoland Morris機能障害質問票スコアのベースラインからの変化は、集団認知行動療法群が2.4と、対照群の1.1に比べ有意に優れていた(群間差:1.3、p=0.0008)。改訂Von Korff障害スコアのベースラインからの変化は、集団認知行動療法群が13.8%と、対照群の5.4%に比べ有意に優れていた(群間差:8.4%、p<0.0001)。改訂Von Korff障害スコアの疼痛スコアも、それぞれ13.4%、6.4%と、集団認知行動療法群が有意に優れた(群間差:7.0%、p<0.0001)。集団認知行動療法による質調整生存年(QALY)の増分は0.099であった。1QALY当たりのコストの増加は1,786ポンドであり、1QALY当たり3,000ポンドを閾値とした場合の費用効果の確率は90%以上に達した。両群とも、重篤な有害事象は認めなかった。著者は、「亜急性あるいは慢性の腰痛に対し、集団認知行動療法は有効であり、その効果は1年間持続し、医療コストも安価であった」と結論し、「本試験には都市部、地方部、富裕層居住区、貧困層居住区の患者が含まれる。また、年齢の上限を設けなかったため平均年齢が他の試験より高く、人種の割合もイギリスの現状を反映するものだ。したがって、得られた結果は広く適用可能と考えられる」としている。(菅野守:医学ライター)

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待機的冠動脈造影には、よりすぐれたリスク選別の方法が必要

心臓カテーテル検査適応患者の選別に関して、ガイドラインではリスクアセスメントと非侵襲検査を推奨している。米国デューク大学臨床研究所のManesh R. Patel氏らの研究グループは、実施されている非侵襲検査の種類と、冠動脈疾患が疑われる患者に施行するカテーテル検査の診断精度について、米国の最新サンプルデータを用いて検討を行った。NEJM誌2010年3月11日号掲載より。待機的心カテ検査の精度は3分の1強にとどまる試験は、2004年1月から2008年4月にかけてAmerican College of Cardiology National Cardiovascular Data Registryに参加する663病院で、待機的カテーテル検査を受けた冠動脈疾患の既往のない患者を同定し対象とした。患者の人口統計学的特性、リスクファクター、症状、非侵襲検査の結果について、閉塞性冠動脈疾患との関連性を調査。その際、閉塞性冠動脈疾患は左主幹冠動脈の直径50%以上の狭窄または主要心外膜血管の直径70%以上の狭窄と定義された。この研究では、合計39万8,978例の患者が対象となり、年齢中央値は61歳、男性が52.7%、26.0%に糖尿病が、69.6%に高血圧症がみられた。非侵襲検査は患者の83.9%に実施された。カテーテル検査から37.6%(14万9,739例)に閉塞性冠動脈疾患が認められ、冠動脈疾患なし(狭窄が全血管の20%未満と定義)は39.2%だった。リスク層別化の優れた方策の必要性を強調解析の結果、閉塞性冠動脈疾患の独立予測因子として、「男性」(オッズ比:2.70、95%信頼区間:2.64~2.76)、「高齢」(5歳加齢当たりオッズ比:1.29、95%信頼区間:1.28~1.30)、「インスリン依存性糖尿病を有する」(オッズ比:2.14、95信頼区間:2.07~2.21)、脂質異常症(同:1.62、1.57~1.67)だった。非侵襲検査の結果が陽性の患者は、検査を一つも受けなかった患者と比べ閉塞性冠動脈疾患を有する割合が高かったが、わずかだった(41.0%対35.0%、P

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ショック時の昇圧薬、第一選択はドパミンかノルエピネフリンか?

ショック時における昇圧薬の第一選択薬は、ドパミン、ノルエピネフリンいずれが優れているのか。コンセンサス・ガイドラインでは両剤ともが第一選択薬と推奨されているが、ドパミン使用の方が死亡率が高いとの試験報告がある。しかしノルエピネフリンが優れているとの試験報告はないことから、ベルギー・Erasme大学病院病院集中治療部門のDaniel De Backer氏らの研究グループは、ノルエピネフリンの方が死亡率が低いのかどうかを評価する多施設共同無作為化試験「SOAP II」を行った。NEJM誌2010年3月4日号掲載より。28日後の死亡率を主要転帰に比較試験は2003年12月~2007年10月に、ベルギー、オーストリア、スペインの3ヵ国・8施設で、ショック症状を起こした患者(心原性ショック、敗血症性ショック、乏血性ショック)を対象、血圧を回復・維持するため第一選択の昇圧薬としてドパミン(20μg/体重kg/分)またはノルエピネフリン(0.19μg/体重kg/分)のいずれかを投与するよう割り付けられ行われた。患者は、割り付けられたドパミンまたはノルエピネフリンで血圧が維持できなかった場合は、ノルエピネフリン、エピネフリンまたはバソプレシンを非盲検で追加投与された。試験には1,679例の患者が登録され、そのうち858例がドパミン群に、821例がノルエピネフリン群に割り付けられた。ベースライン時の特性は両グループで同様だった。主要転帰は、無作為化後28日の死亡率。副次エンドポイントには、代用臓器を必要としなかった日数、有害事象の発生などを含んだ。死亡率に差はないが、有害事象はドパミンで有意に増加28日時点の死亡率は、ドパミン群52.5%、ノルエピネフリン群48.5%で、両群間に有意差はみられなかった(ドパミン群のオッズ比:1.17、95%信頼区間:0.97~1.42、P=0.10)。しかし、不整脈性イベントについて、ドパミン群(207件24.1%)の方がノルエピネフリン群(102件、12.4%)より多かった(P

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HIV感染者への結核診断アルゴリズム

ヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染者に対しては、結核スクリーニングが、早期診断と抗レトロウイルス療法とイソニアジド予防投与を安全に開始するために推奨されている。しかし、慢性的な咳についてのスクリーニングは一般的に行われているものの、その最適方法について、エビデンスに基づく国際的に認められたガイドラインは今のところない。米疾病管理予防センター(CDC)のKevin P. Cain氏らの研究グループは、その開発に取り組んだ。NEJM誌2010年2月25日号より。慢性的な咳による結核の検出感度は低い研究グループは、カンボジア、タイ、ベトナムの、計8つの外来診療所からHIV感染者を継続的に登録した。各々の患者から喀痰3検体と、尿、便、血液、リンパ節吸引液(リンパ節腫脹がある場合)を各1検体採取し、マイコバクテリア培養検査を行った。そのうえで、結核のスクリーニングと診断アルゴリズムを導き出すため、培養検査で陽性だった検体が1つ以上あり結核と診断されたHIV感染者と、結核と診断されなかった患者の特性を比較した。試験の結果、HIV感染者1,748例[CD4+Tリンパ球数の中央値242/mm(3)、四分位範囲:82~396)のうち、267例(15%)が結核と診断された。慢性的な咳(過去4週間で2~3週間以上続いた)を指標とした場合の結核の検出感度は、22~33%だった。継続しない咳、発熱、長く続く寝汗も問診すべき一方、過去4週間で、「継続期間を問わない咳」と「発熱」、さらに「3週間以上続く寝汗」の3つの症状がみられた場合の結核の検出力は、感度は93%、特異度は36%だった。これら症状のいずれかを伴う1,199例の患者において検討した結果、結核陽性の診断除外には、「喀痰スミア:2検体陰性」「胸部X線:正常」「CD4+細胞数:350/mm(3)以上」が有用だった。「喀痰スミア:1検体以上陽性」で結核陽性と診断された患者は113例(9%)に過ぎず、大半の患者はマイコバクテリア培養検査を要した。これらから研究グループは、HIV感染者における結核スクリーニングは、慢性的な咳の症状の有無だけでなく、複合的な症状についても問診しなければならないと述べている。そして、3つの症状(咳、発熱、寝汗)が陰性の患者は、抗レトロウイルス療法とイソニアジドの予防投与は問題なく開始できるとしつつも、大半のHIV患者の結核診断にはマイコバクテリア培養検査が必要だろうと結論づけた。(医療ライター:朝田哲明)

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