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B型慢性活動性肝炎治療薬 ペグインターフェロン-α-2a製剤(商品名:ペガシス)

 ペグインターフェロン-α-2a製剤(商品名:ペガシス)が、2011年9月、「B型慢性活動性肝炎におけるウイルス血症の改善」の効能・効果追加を承認された。ペガシスの適応追加に関する審査は、優先審査に指定され、申請から約8ヵ月という異例のスピードであった。B型慢性肝炎の経過は多様 B型肝炎は、肝臓がんの原因の17%を占め、わが国には約150万人のB型肝炎キャリアがいると報告されている。B型肝炎キャリアの多くは、無症候性キャリアであるが、無症候性キャリアからも肝臓がんが突然発症するなどB型肝炎の経過には多様性があり、治療が難しい疾患である。治療の中心はIFNとエンテカビル 現在のB型慢性肝炎は、おもにインターフェロン(IFN)、核酸アナログ製剤、肝庇護薬で治療されており、2011年B型慢性肝炎の治療ガイドラインでは、35歳未満はIFN、35歳以上は核酸アナログ製剤のエンテカビルが、多くの患者カテゴリーで治療の中心とされている1)。 しかし、従来のIFNは、適応がHBe抗原陽性例のみであったため対象が限定され、さらに、一般的に3回/週の投与を必要としたため、利便性も高いとはいえなかった。核酸アナログ製剤は、B型肝炎ウイルスの増殖を強力に抑制し、かつ、経口投与のために利便性が高いものの、長期にわたり投与する必要があり、耐性ウイルスの出現や投与中止による肝炎の急性増悪も懸念されている。ペガシスはHBe抗原陽性例に加え陰性例にも有効 そのような中、ペガシスがB型慢性活動性肝炎に対して適応追加された。ペガシスは、従来のIFN-α-2aに40KDaのポリエチレングリコール(PEG)を結合させ血中からのIFN消失時間を延長し効果を持続させた薬剤である。すでにC型慢性肝炎での高い治療実績がある。 ペガシスは、HBe抗原陽性例を対象に、有効性・安全性をみた国内第Ⅱ/Ⅲ相試験において、用量、投与期間に応じて高い効果が認められた。その試験において、ペガシス90μg48週群は17.1%、180μg48週(3回/週)群は19.5%の有効率を示し、ペガシス週1回48週投与のIFNα週3回24週投与に対する非劣性が検証された。また、ペガシス90μg48週投与により、投与終了24週時で24.4%にHBeセロコンバージョンが認められた。 ペガシスは、HBe抗原陰性例を対象とした国内第Ⅱ/Ⅲ相試験において、90μg週1回48週投与により、投与終了後24週時に、HBV DNA <4.3Log copies/mL達成率が37.5%、ALT≦40IU/L達成率が68.8%となり、HBe抗原陰性例に対しても優れた効果が認められた。 B型慢性活動性肝炎におけるウイルス血症の改善に対する国内臨床試験において、副作用(臨床検査値異常を含む)は225例全例に認めらている。主な副作用は、発熱71.6%、頭痛65.3%、倦怠感63.1%等であった。興味深いのはHBsセロコンバージョンの達成 HBs抗原陽性かつHBe抗原陰性例における肝癌の発生率は、HBs抗原陰性かつHBe抗原陰性例の9.6倍であると報告され2)、最近ではHBsセロコンバージョンを治療目標のひとつとするようになってきている。 このHBsセロコンバージョンに対して、ペガシスは興味深いデータがある。ペガシスは、B型慢性活動性肝炎に対する国内臨床試験で、90μgおよび180μg48週投与の両群で、投与終了24週後に、それぞれHBsセロコンバージョン(いずれも1/41例)が見られている。IFNによる免疫の賦活化は投与終了後も継続するため3)、投与終了からの期間が長くなると、HBsセロコンバージョン率がさらに上昇すると予想される。HBsセロコンバージョンは、核酸アナログ製剤では達成が難しいため、ペガシス特有の作用として注目される。ペガシスへの期待 ペガシスのB型慢性活動性肝炎への適応追加により、投与回数の少ないIFN(従来のIFN:1週3回、ペガシス:1週1回)が使用可能となった。また、48週の投与が可能となり、従来のIFNよりも高い治療効果(HBeセロコンバージョン率、HBsセロコンバージョン率等)が期待できるようになった。さらに、HBe抗原陰性例にもIFNが使用可能となった。 今後、ペガシスにより、B型肝炎の新たな治療戦略が登場することが期待される。特に妊娠を希望する若い世代には朗報と言えるのではないだろうか。

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専門病棟での集学的管理プロトコールが急性期脳卒中の予後を改善

急性期脳卒中専門病棟における看護師による発熱、高血糖、嚥下障害の集学的な管理プロトコールの実践により、退院後の良好な患者アウトカムがもたらされることが、オーストラリア・カソリック大学看護学研究所のSandy Middleton氏らが行ったQASC試験で示された。組織化された脳卒中専門病棟は脳血管イベントによる死亡や身体機能障害を低減するが、長期的な患者の回復に重要なことが知られているにもかかわらず十分な管理が行われていない因子として、発熱、高血糖、嚥下障害が挙げられるという。同氏らは、これら3つの因子のエビデンスに基づく集学的な管理プロトコールを専門病棟で遂行するための標準化された教育プログラムを開発した。Lancet誌2011年11月12日号(オンライン版2011年10月12日号)掲載の報告。ASUにおけるFeSS管理プロトコールの有用性を評価するクラスター無作為化試験QASC(Quality in Acute Stroke Care)試験の研究グループは、急性期脳卒中の専門病棟(acute stroke unit: ASU)に入院中の患者において、エビデンスに基づく発熱(fever)、高血糖(hyperglycaemia=sugar)、嚥下障害(swallowing dysfunction)(FeSS)の管理が、退院後のアウトカムに及ぼす影響を評価する単盲検クラスター無作為化対照比較試験を実施した。対象は、オーストラリア・ニューサウスウェールズ州のCTとhigh dependency unit(HDU)を備えたASUに入院した発症後48時間以内の虚血性脳卒中または脳出血患者で、英語を話す18歳以上の者とした。FeSS群には、集学的チームによるFeSS管理のための治療プロトコール(ASU入院後72時間内に行う看護師による管理が中心)が施行され、対照群は既存のガイドラインの簡易版に基づく治療を受けた。介入前(無作為割り付け前)と、介入後の患者コホートを登録し、90日後の死亡または要介助[修正Rankinスケール(mRS)≧2]、機能評価[Barthelインデックス(BI)]、QOL(SF-36の「身体機能」と「心の健康」)を比較した。研究助手、統計解析担当、患者には割り付け情報はマスクされた。脳卒中専門病棟の拡充につながる知見19のASUがクラスターとして登録され、FeSS群に10施設、対照群には9施設が割り付けられた。介入前(2005年7月30日~2007年10月30日)のデータは687例から、介入後(2009年2月4日~2010年8月25日)のデータは1,009例(FeSS群:558例、対照群:451例)から得られた。介入前データの解析結果はすでに報告されており、90日後の死亡、死亡または要介助、機能評価などはFeSS群と対照群で同等であった。介入後は、脳卒中の重症度にかかわらず、90日後における死亡またはmRS≧2の割合はFeSS群が42%(236/558例)と、対照群の58%(259/449例)に比べ有意に低かった(p=0.002)。SF-36の「身体機能」の平均スコアはFeSS群[45.6(SD 10.2)]が対照群[42.5(SD 10.5)]よりも有意に良好だった(p=0.002)が、死亡率[4%(21/558例)vs. 5%(24/451例)、p=0.36]やSF-36の「心の健康」[49.5(SD 10.9)vs. 49.4(SD 10.6)、p=0.69]に差はなく、機能評価[BI≧60:92%(487/532例)vs. 90%(380/423例)、p=0.44]も両群で同等であった。著者は、「エビデンスに基づく看護師による発熱、高血糖、嚥下障害の集学的な管理プロトコールは、脳卒中専門病棟退院後の患者において良好なアウトカムをもたらす」と結論し、「これらの知見は脳卒中専門病棟の拡充の可能性を示すものだ」と指摘している。(菅野守:医学ライター)

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クリオピリン関連周期性症候群(CAPS)治療薬 カナキヌマブ

2011年9月、カナキヌマブ(商品名:イラリス)がクリオピリン関連周期性症候群(CAPS)の適応を国内で初めて取得した。この承認にあたり2011年11月8日(火)に「ノバルティスファーマ・メディアフォーラム」が開催された。演者の横田俊平氏(横浜市立大学大学院 医学研究科 発生成育小児医療学 教授)、および「CAPS患者・家族の会」代表を務める利根川聡氏の講演内容をレポートする。待望の新薬の承認本講演の冒頭において、横田氏は、「これまで、国内でCAPSに適応のある薬剤がなかった。そのため、患者さんは日々進行する辛い症状に耐え、そのご家族もまた、その姿を目の当たりにし、苦しみ続けてきた。そのような方々にとって、カナキヌマブは、まさに長い間待ち望まれてきた新薬である」と述べ、カナキヌマブが画期的な新薬であることを強調した。CAPSとは炎症性サイトカインのひとつであるヒトインターロイキン(IL)-1βが過剰に産生することで、炎症反応が起こる慢性自己炎症疾患群である。生後すぐあるいは幼児期より発症し、生涯を通じて発疹、発熱、関節痛などが繰り返され、重篤な場合には、聴覚や視覚障害、骨や関節の変形、腎障害などを引き起こす可能性がある。国内では標準的治療ガイドラインがなく、また極めて稀な疾患であることから確定診断に至らない患者さんも多い1)~3)。現在、国内の患者数は30名程度とされるが、未診断の患者を含めると全国に100名くらいの患者がいると見込まれている。投与間隔8週間で効果を発揮カナキヌマブはヒトインターロイキン(IL)-1βに対する遺伝子組換えヒト免疫グロブリンG1(IgG1)モノクローナル抗体で8週毎に皮下投与する。国内における臨床試験では、投与24週以内に完全寛解した患者さんの割合は94.7%で、投与48週以内に完全寛解した割合は100%であった。横田氏によれば、CAPS治療はこれまで、対症療法しかなかったが、カナキヌマブの登場により、CAPSの炎症症状を速やかに寛解させることができるようになったという。それは患者のQOLや予後の改善だけでなく、家族にとっても大変喜ばしいことであるとも述べた。治療上の注意点国内臨床試験における主な副作用は19例中12例(63.2%)に認められた。主な副作用は鼻咽頭炎3例(15.8%)、口内炎2例(10.5%)であった。横田氏はCAPS治療を行う上で感染症には注意が必要であると述べている。カナキヌマブの特性上、投与により発熱や炎症が治まるため、たとえば肺炎であるにも関わらず、肺炎と診断されないケースがあるという。また、世界的にみても、発売して間もない薬剤であるため、長期的な評価に乏しく、今後も慎重な経過観察が必要とも述べた。CAPS患者・家族の会の存在カナキヌマブは申請から8ヵ月間という短期間での承認に至ったが、その背景にはCAPS患者・家族の会の存在も大きい。CAPS患者・家族の会の代表を務める利根川聡氏のご息女は、1歳になる前にCAPSを発症し、全身の発疹、発熱、関節痛などにより、車いす生活を余儀なくされた。当時、CAPS治療は対症療法しかなかったため、ただひたすら苦しみに耐えるわが子の姿を見守る日々が続いた。しかし、カナキヌマブでの治療を受け、それらの症状は次第に寛解し、今では外で運動することができるまでになったという。利根川氏にとって何より嬉しかったことは毎日、苦しい表情をしていた我が子に笑顔が戻り、周囲の子供達と同じような生活が送れるようになったことだという。しかし、高額な薬剤費が家族の経済的な負担になっているという課題も残されている。現在、CAPS患者・家族の会では、国による患者支援を受けるため、難病指定・特定疾患の認定を要望する活動を続けている。まとめカナキヌマブは世界的にみても、発売されて間もない薬剤であるため、今後も慎重な経過観察が必要であるといえる。しかしながら、カナキヌマブの登場により、今後CAPS治療は大きく変わっていくであろう。これまでCAPS患者はCAPSと診断されず、施設を転々とするケースも多かったという。この薬剤の登場を契機に、より多くの医療関係者がCAPSという希少疾患に対する見識を深め、早期診断、早期治療を行っていくことも次の課題といえよう。

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厚さ2mm以上の悪性黒色腫の切除マージンは2cmで十分か?

厚さ2mm以上の悪性黒色腫の切除術では、切除マージンは2cmで十分であることが、スウェーデン・カロリンスカ研究所のPeter Gillgren氏らの検討で示された。悪性黒色腫は、近年、主に白人において罹患率および死亡率が増加傾向にあり、診断年齢は低下する傾向にある。標準的治療は切除術だが、腫瘍の厚さが2mm以上の臨床Stage IIA~Cの悪性黒色腫を切除する際の病巣辺縁からの最適な切除マージンについては、議論が多く確立された知見はないという。Lancet誌2011年11月5日号(オンライン版2011年10月24日号)掲載の報告。切除マージン2cmと4cmのOSを比較する無作為化試験研究グループは、腫瘍の厚さが2mm以上の臨床Stage IIA~Cの悪性黒色腫の切除マージンを2cmとした場合と4cmの場合の生存の差について検討する多施設共同無作為化試験を実施した。対象は、腫瘍の厚さが2mm以上の臨床Stage IIA~Cの原発性悪性黒色腫患者で、切除マージンが2cmの群あるいは4cmの群に1対1の割合で無作為に割り付けられた。主要評価項目は全生存率(OS)とした。5年OSは両群とも65%1992年1月22日~2004年5月19日までに、スウェーデン、デンマーク、エストニア、ノルウェーの53病院が参加し、9つの専門施設に936例が登録された。切除マージン2cm群に465例が、4cm群には471例が割り付けられた。各群1例ずつが追跡不能となったが、解析には含めた。追跡期間中央値6.7年における死亡数は、2cm群が181例、4cm群は177例であり、有意な差は認めなかった(ハザード比:1.05、95%信頼区間:0.85~1.29、p=0.64)。5年OSは、2cm群が65%(95%信頼区間:60~69)、4cm群も65%(95%信頼区間:60~70)と、両群で同等であった(p=0.69)。著者は、「厚さ2mm以上の悪性黒色腫の切除術では、切除マージンは2cmで十分かつ安全であることが示唆される」と結論し、「国際的なガイドラインの多くは厚さ2mm以上の腫瘍の切除マージンは2~3cmを推奨しているが、3cmの場合は2cmよりも創閉鎖が明らかに困難で、2cmであれば多くの場合は植皮なしで閉鎖が可能である。今後は、全無作為化試験のメタ解析を行うべき」と指摘している。(菅野守:医学ライター)

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婦人科がんのNCCNガイドライン日本語版を公開

先端医療振興財団 臨床研究情報センターは11月4日、NCCN(National Comprehensive Cancer Network)婦人科がんガイドライン 日本語版を公開。 本ガイドラインは、 日本婦人科腫瘍学会に監訳・監修、および日本の治療との相違点等に関するコメントも掲載している。日本語版は大腸がん、泌尿器がん、肺がんに引き続き第四弾。婦人科がんガイドラインの内容は ・子宮頸がん (Cervical Cancer)・子宮体がん(Uterine Neoplasms)・卵巣がん(Ovarian Cancer)・子宮頸がんのスクリーニング(Cervical Cancer Screening)・乳がんおよび卵巣がんにおける遺伝的 / 家族性リスク評価 (Genetic/Familial High-Risk Assessment: Breast and Ovarian) は近日公開予定詳しくはこちらhttp://www.tri-kobe.org/nccn/guideline/gynecological/index.html

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Dr.林の笑劇的救急問答

第1回「高カリウム血症ぶったぎり ! 」第2回「ヒートアップ ! ザ・熱中症」 ※下巻は、ACLSのガイドライン変更に伴い、販売終了しました。収録されていた「アナフィラキシーショック」と最新の「ACLS」についてはシーズン7の上・下巻に収録しています。第1回「高カリウム血症ぶったぎり ! 」高カリウム血症は救急ではよくみられる非常に危険な電解質異常。高K血症を正確に診断し必要に応じて迅速に治療することが重要ですが、それは何故なのか? また、その見極めのポイントは一体どこに? 用いるべき薬剤の順番は…? 70歳男性 透析患者。全身倦怠感、徐脈、低血圧にて救急車で来院。モニタにてP波消失あり、T波増高。血圧70/40 脈42 30歳男性 発熱を主訴として来院。血圧110/70 脈90 体温38.6度第2回「ヒートアップ ! ザ・熱中症」夏、各地で熱中症が多発し、毎年死亡者が出ます。ところで、熱中症にはいくつか種類がありますが、主な3つの分類をちゃんと答えられますか? 各々の治療方針と禁忌、そして気をつけなければいけない合併症をきちんと把握しているでしょうか?また、coolingの上手な方法は…?熱中症は、どのタイプかを迅速に判断し的確な処置を施して、合併症を起こさないかどうか経過観察をする必要があります。実は死亡率が意外と高い熱中症。今回は、そんな熱中症に負けずに暑い夏を乗り切るためのヒントが盛り沢山です ! 38歳男性 市民マラソン中に失神を起こし救急車で来院。患者はめまい、吐き気を訴え全身汗だらけ。血圧110/86 脈130 2歳男児 父親に連れられて来院。父親の買い物中、車中に放置されていた。

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民間減量プログラム参加者の減量効果は、プライマリ・ケア医による減量治療の2倍

過体重、肥満者の減量達成について、プライマリ・ケア医による標準的な減量治療と、プライマリ・ケア医が地域ベースの民間健康プログラム提供者へと対象者を紹介した場合とを比較した結果、後者のほうが2倍量の減量を達成したことが報告された。過体重、肥満者の増大により、プライマリ・ケアと地域ベースでの減量のための効果的なアプローチが必要とされているなか、英国・MRC Human Nutrition ResearchのSusan A Jebb氏ら研究グループが、オーストラリア、ドイツ、英国の3ヵ国で772例の過体重または肥満者を対象に、前述の比較について検討する平行群非盲検無作為化試験を行った。Lancet誌2011年10月22日号(オンライン版2011年9月8日号)掲載報告より。12ヵ月間の減量治療群と民間減量プログラム参加群との効果を比較試験は2007年9月~2008年11月の間に、オーストラリア70ヵ所、ドイツ39ヵ所、英国6ヵ所の診療所から772例の過体重または肥満の成人患者を集めて行われた。被験者は18歳以上、BMI値27~35で、腹囲女性>88cm/男性>102cm、非インスリン治療中の2型糖尿病など肥満関連のリスク因子を1つ以上有していた。被験者はコンピュータ無作為化システムによって、各国臨床ガイドラインに即した標準治療を受ける群(395例)と、自由参加の民間プログラム「Weight Watchers」を受ける群(377例)とに割り付けられ、いずれも12ヵ月間にわたる介入を受け、その後12ヵ月間追跡された。Weight Watchersは、週1ミーティングで、体重測定、食事や運動のアドバイス、動機づけ、グループ支援を提供するプログラム(http://www.weightwatchers.com/index.aspx)。主要アウトカムは、12ヵ月間の体重変化とし、解析は、intention to treatおよび12ヵ月間の評価を完遂した人について行われた。民間減量プログラムのほうが臨床的に有用の可能性12ヵ月間の評価を完遂したのは、民間プログラム群は230例(61%)、標準治療群は214例(54%)だった。全例解析の結果、民間プログラム群の被験者の減量は、標準治療群の2倍以上を達成していた。すなわち、12ヵ月時点での体重変化の中央値は、LOCF法(途中脱落者のデータについて最終測定値を用いて解析を行う方法)では、民間プログラム群-5.06kg(SE 0.31)に対し、標準治療群は-2.25kg(同0.21)で、補正後格差は-2.77kg(95%信頼区間:-3.50~-2.03)だった。BOCF法(基線データを用いて解析を行う方法)では、民間プログラム群-4.06kg(SE 0.31)に対し、標準治療群は-1.77kg(同0.19)で、補正後格差は-2.29kg(95%信頼区間:-2.99~-1.58)だった。12ヵ月間の評価完遂者を対象とした解析では、民間プログラム群-6.65kg(SE 0.43)に対し、標準治療群は-3.26kg(同0.33)で、補正後格差は-3.16kg(95%信頼区間:-4.23~-2.11)だった。試験参加に関連した有害事象を報告した被験者はいなかった。著者は、「民間減量プログラムへ紹介するほうが、臨床的に有用で、体重管理の早期介入を果たし、より大きな減量効果を達成する可能性がある」と結論している。

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米国・カナダの臨床ガイドライン、作成委員の半数超が作成時に利害対立があったと報告

米国とカナダの脂質異常症(高脂血症)や糖尿病の臨床ガイドラインの作成委員のうち半数超が、いわゆる臨床家と産業界との利害対立が作成時にあったと報告したことが明らかにされた。その一方で、検証したガイドラインのおよそ3分の1は、利害対立に関する情報の開示をしていなかった。さらに、ガイドライン作成に関する出資元が政府の場合には、そうでない場合に比べ、利害対立があったことを報告した委員の割合が少ないことも示された。これは、米国・マウントサイナイ・メディカルスクール予防医学部門のJennifer Neuman氏らが、14の臨床ガイドラインとその作成に携わった委員に対して行った調査の結果で、BMJ誌2011年10月15日号(オンライン版2011年10月11日号)に掲載発表された。利害対立が事実あったと認めた委員は150人・52%、うち12人が未報告同研究グループは、2000~2010年、米国またはカナダで作成された、14の脂質異常症(高脂血症)や糖尿病の臨床ガイドラインについて調査を行った。このうち5つのガイドラインでは、利害対立に関する情報開示の宣言を行っていなかった。これらのガイドライン作成に携わった委員288人のうち、ガイドライン公表時に利害対立があったことを報告したのは138人(48%)、利害対立はなかった(73人)、または報告する機会がなかったとしたのは合わせて150人(52%)だった。しかし、公式には利害対立はなかったと報告していた73人のうち、実際には利害対立があったとした委員が8人(11%)いた。全体では、利害対立があったと認めた委員は150人(52%)に上り、そのうち12人がその旨を報告していなかった。作成委員会座長の半数が利害対立があったと報告調査対象の14のガイドラインのうち、座長が確認できたのは12ガイドラインだった。そのうち、利害対立があったことを認めたのは6人で、全員その旨を報告していた。また、ガイドライン作成委員会の出資元が政府の場合には、利害対立があったとした委員の割合が92人中15人(16%)と、そうでない場合の196人中135人(69%)に比べ、有意に大幅に低率だった(p<0.001)。(當麻 あづさ:医療ジャーナリスト)

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バレット食道患者の食道腺がんリスク、サーベイランスの推定リスクよりはかなり低い

バレット食道は、食道腺がんの強力なリスク因子であるが、年間絶対リスクは推定されているよりもずっと低いことが明らかにされた。デンマークのAarhus大学病院胃腸外科部門のFrederik Hvid-Jensen氏らが、デンマーク国内の病理およびがん登録データによるコホート研究から報告したもので、現行のサーベイランス・ガイドラインで根拠とする推定リスクは0.5%だが、本調査の結果、絶対年間リスクは0.12%であったという。バレット食道患者における食道腺がん、高度異形成については、正確な住民ベースの研究が求められていた。Hvid-Jensen氏は、「現行の異形成を伴わないバレット食道患者に行われているサーベイランスの正当性に、疑問を投じるデータが得られた」と結論している。NEJM誌2011年10月13日号掲載報告より。デンマーク住民ベースのコホート研究研究グループは、1992~2009年の間の、デンマークの全バレット食道患者を対象として全国住民ベースコホート調査を行った。患者のデータは、デンマーク病理登録データ、および同がん登録データを利用した。腺がんと高度異形成の発症率(1,000人・年当たりの症例数)を調べ、相対リスク指標として、調査期間中のデンマークの全国的ながん発生率を用いて標準化発生比を算出して評価を行った。バレット食道患者の食道腺がん、一般住民の11.3倍だが年間リスクは0.12%バレット食道患者1万1,028人(うち男性66.8%)について、中央値5.2年間のデータが解析された。内視鏡検査が行われた患者で、1年以内に腺がんが新たに診断されたのは131例だった。その後に新たに検出されたのは66例で、腺がん発症率は、1,000人・年当たり1.2例(95%信頼区間:0.9~1.5)だった。一般集団と比較したバレット食道患者の腺がんの相対リスクは、11.3倍(95%信頼区間:8.8~14.4)であった。食道腺がんの年間リスクは、0.12%(同:0.09~0.15)であった。内視鏡検査で軽度異形成が検出された人の腺がん発症率は、1,000人・年につき5.1例だった。対照的に、異形成を伴わなかった患者の発症率は、1,000人・年につき1.0例だった。高度異形成の推定発生リスク値は、腺がんの同値よりわずかに高かった(例:発症率1,000人・年当たり1.9例、95%信頼区間:1.6~2.3)。(武藤まき:医療ライター)

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急性躁病の薬物療法、抗精神病薬が気分安定薬よりも高い効果

成人の急性躁病の薬物療法では、全般的に、抗精神病薬は気分安定薬に比べ有意に良好な効果をもたらすことが、イタリアVerona大学のAndrea Cipriani氏らの検討で示された。躁病は気分が過度に高揚した病態で、通常はうつ病エピソードを伴い、双極性障害の診断の根拠となる。急性躁病の薬物療法では、主に抗精神病薬や気分安定薬が用いられてきたが、これまでの有効性に関するメタ解析では相反する結果が得られているという。Lancet誌2011年10月8日号(オンライン版2011年8月17日号)掲載の報告。約30年間に発表された68試験のメタ解析研究グループは、すべての抗躁病薬の効果を評価するために、複数の治療法を直接的、間接的に比較した試験のメタ解析を行った。1980年1月1日~2010年11月25日までに発表され、躁病の成人患者を対象に治療用量の13薬剤を比較した68件の無作為化対照比較試験(1万6,073例)について系統的なレビューを行った。対象となった薬剤は、アリピプラゾール(商品名:エビリファイ)、asenapine、カルバマゼピン(同:テグレトールなど)、バルプロエート(同:デパケンなど)、ガバペンチン(同:ガバペン)、ハロペリドール(同:セレネースなど)、ラモトリギン(同:ラミクタール)、リチウム(同:リーマス)、オランザピン(同:ジプレキサ)、クエチアピン(同:セロクエル)、リスペリドン(同:リスパダール)、トピラマート(同:トピナ)、ziprasidone。主要評価項目は、治療3週間における躁病評価スケールの変化の平均値および治療中止患者数とした。診療ガイドラインの策定時に考慮すべき知見プラセボに比べハロペリドール、リスペリドン、オランザピン、リチウム、クエチアピン、アリピプラゾール、カルバマゼピン、asenapine、バルプロエート、ziprasidoneは高い有効性を示したのに対し、ガバペンチン、ラモトリギン、トピラマート、ガバペンチンの効果はプラセボに比し高くはなかった。ハロペリドールの効果が最も高く、リチウム、クエチアピン、アリピプラゾール、カルバマゼピン、asenapine、バルプロエート、ziprasidone、ラモトリギン、トピラマートとの間には有意差が認められた。リスペリドンとオランザピンの有効性プロフィールはきわめて類似しており、いずれもバルプロエート、ziprasidone、ラモトリギン、トピラマート、ガバペンチンに比べ高い有効性を示した。オランザピン、リスペリドン、クエチアピンの治療中止例数は、リチウム、ラモトリギン、プラセボ、トピラマート、ガバペンチンよりも有意に少なかった。著者は、「全般的に、抗精神病薬は気分安定薬に比べ有意に良好な効果を示した。リスペリドン、オランザピン、ハロペリドールは、躁病エピソードの治療において最も有効な選択肢である」と結論し、「これらの結果は、診療ガイドラインの策定の際に考慮すべきと考えられる」と指摘している。(菅野守:医学ライター)

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推奨量より少ない運動でも、平均寿命が延長

余暇時間における身体活動(leisure-time physical activity; LTPA)は、たとえそれが推奨運動量より少なくても、健康状態を改善し平均寿命の延長をもたらすことが、台湾・国立健康研究所のChi Pang Wen氏と国立体育大学のJackson Pui Man Wai氏らの調査で示された。LTPAが健康状態を改善することはよく知られており、アメリカ(2008年)やWHO(2010年)の身体活動ガイドラインでは平均150分/週以上のLTPAが推奨されている。アメリカの成人の3分の1がこの推奨運動量を実行しているのに対し、東アジア人(中国、日本、台湾)の達成率は5分の1以下にすぎないが、推奨量より少ない運動が平均寿命に及ぼす影響は明らかではないという。Lancet誌2011年10月1日号(オンライン版2011年8月16日号)掲載の報告。41万人以上の成人を8年以上追跡した前向きコホート試験研究グループは、台湾の地域住民において身体活動量が健康に及ぼす影響を評価するプロスペクティブなコホート試験を実施した。1996~2008年までに、台湾の標準的な検診プログラムに参加した20歳以上の41万6、175人(女性:21万6,910人、男性:19万9,265人)について、平均8.05(SD 4.21)年の追跡調査を行った。参加者は、自己記入式質問票に記述した1週間の運動量に基づき、5つのカテゴリー(AinsworthらのMET[metabolic equivalent]の定義で運動強度を判定して1週間の運動量を算出。身体活動なし[非運動群]、少ない[low群]、普通[medium群]、多い[high群]、たいへん多い[very high群])のうちの1つに分類された。非運動群との比較における4つの群の死亡リスクのハザード比を算出し、平均寿命を推算した。推奨される150分/週よりも運動量が少ない場合の生存ベネフィットの評価を行った。low群で全死因死亡、平均余命が改善92分/週(95%信頼区間:71~112)あるいは15分/日(SD 1.8)の運動群(low群)では、非運動群に比べて全死因死亡率が14%低下し、平均寿命が3年延長した。最低でも15分/日以上の運動量の集団では、運動量がさらに15分/日増加するごとに全死因死亡率が4%(95%信頼区間:2.5~7.0)ずつ低下し、がんによる死亡率が1%(同:0.3~4.5)ずつ減少した。これらのベネフィットは全年齢の男女および心血管疾患リスクを有する集団でも認められた。非運動群は、low群に比べ死亡リスクが17%(ハザード比:1.17、95%信頼区間:1.10~1.24)増加していた。著者は、「15分/日、90分/週という推奨される運動量よりも少ないlow群および心血管疾患リスクのある群で生存ベネフィットが確認された」と結論し、「少ない運動量であっても、非伝染性疾患との世界的な戦いにおいて重要な役割を担っており、医療コストや医療格差の低減に寄与する可能性がある」と指摘している。(菅野守:医学ライター)

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「眠気の強さ」=「効果の強さ」!?

平成23年9月28日、東京・大手町にて、NPO法人「皮膚の健康研究機構」理事・東京女子医科大学皮膚科学教授川島眞氏、東京大学大学院医学系研究科医学部皮膚科学教授佐藤伸一氏により、大規模比較検討試験「ACROSS Trial」の結果が発表された。「ACROSS Trial」の背景と目的じんましんやアトピー性皮膚炎の治療薬である抗ヒスタミン薬は、副作用として眠気をきたすことがある。80年代から眠気が少ない非鎮静性抗ヒスタミン薬(ほとんどが第2世代)が登場してきたが、眠気が強い第1世代抗ヒスタミン薬のシェアは、2008年に56%、2009年に52%、2010年に49%と依然高いままである1)。その理由として、約半数の臨床医と患者は「眠気の強さ」=「効果の強さ」と考えていることがわかっている 2)。この考えは正しいかどうかを検証するため、NPO法人「皮膚の健康研究機構」は2010年1月~10月にかけて、比較検討試験「ACROSS Trial(Antihistamine CROSSover Trial)」を実施した。ACROSS Trialはアトピー性皮膚炎および慢性じんましん患者502例を対象として行った多施設無作為化オープンラベルクロスオーバー比較試験である。非鎮静性抗ヒスタミン薬としてベポタスチンベシル酸塩を1回10mg、1日2回経口投与、鎮静性抗ヒスタミン薬としてd-クロルフェニラミンを1回2mg、1日3回経口投与、もしくはケトチフェンを1回1mg、1日2回経口投与した 3)。「眠気の強さ」≠「効果の強さ」本試験の結果をみると、鎮静性抗ヒスタミン薬において、投与前後に眠気の程度が悪化したのに対し、非鎮静性抗ヒスタミン薬では眠気の程度に変化がなく、薬剤間で統計学的に有意差が認められた。一方、かゆみの抑制効果について、非鎮静性抗ヒスタミン薬は、鎮静性抗ヒスタミン薬と同程度の抑制効果を示し、両薬剤間に有意差は認められなかった。また、眠気以外の有害事象は、鎮静性抗ヒスタミン薬が8例9件(口渇2件、倦怠感5件、下痢1件、ふらつき感1件)がみられ、非鎮静性抗ヒスタミン薬であるベポタスチンベシル酸塩には1件も認められなかった。まとめ非鎮静性抗ヒスタミン薬であるベポタスチンベシル酸塩は、眠気の程度に影響を与えない一方、鎮静性抗ヒスタミン薬と同等の有効性を有することから、佐藤氏らは「眠気の強さと効果の強さは相関しない」と結論付けた。さらに、安全性の観点から、蕁麻疹診療ガイドライン(日本皮膚科学会ガイドライン)に基づき、鎮静性の低い第2世代抗ヒスタミン薬を第一選択薬として扱うべきと強調した 4)。 出典:1) 株式会社医療情報総合研究所(JMIRI)の調査より2) 川島眞 監修. 抗ヒスタミン薬の真・事実. じほうヴィゴラス, 2011.  3) 川島眞 ほか. J Clin Therap Med. 2011; 27: 563-573.4) 秀道広 ほか. 日本皮膚科学会雑誌. 2011; 121: 1339-1388.(ケアネット 呉 晨)

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戸田克広先生「「正しい線維筋痛症の知識」の普及を目指して! - まず知ろう診療のポイント-」

1985年新潟大学医学部卒業。現在、廿日市記念病院リハビリテーション科勤務。2001年1月~2004年2月までアメリカ国立衛生研究所に勤務した際、線維筋痛症に出会い、日本の現状を知る。帰国後、線維筋痛症を中心とした中枢性過敏症候群などの治療にあたっている。日本線維筋痛症学会評議員。著書に『線維筋痛症がわかる本』(主婦の友社)。線維筋痛症の現状先進国の線維筋痛症(fibromyalgia : FM)の有病率はわずか2%だが、グレーゾーンを含めると約20%になる。そのため、患者数が多いと予想される。また、先進国や少なくない非先進国ではFMは常識だが、日本ではまだよく知られていない。この疾患特有の愁訴を訴える患者さんを、プライマリ・ケア医や勤務医が診察する機会が多いと予測される。今回、FMの標準的な診療について、正しく理解していただくために診療のサマリーと診療スライドを公開させていただく。よりよい治療成績を求めることが臨床医の努めと考えているので、是非実践していただきたい。線維筋痛症の疫学・病態画像を拡大する腰痛症や肩こりから慢性局所痛症(chronic regional pain: CRP)や慢性広範痛症(chronic widespread pain: CWP)を経由してFMは発症するが、それまで通常10~20年かかる(図1)。FMの有病率は先進国では約2%、FMを含むCWPの有病率は約10%、CRPの有病率はCWPのそれの1-2倍である*1。FMの原因は不明だが、中枢神経の過敏状態(中枢性過敏)が原因であるという説が定説である*1。中枢性過敏によって起こった中枢性過敏症候群(central sensitivity syndrome)にはうつ病、不安障害、慢性疲労症候群、むずむず脚症候群などが含まれるが、FMはその代表的疾患である(図2)。画像を拡大する女性がFM患者の約8割を占める。未就学児にも発生するが、絶対数としては30歳代~60歳代が多数を占める。線維筋痛症の症状全身痛、しびれ、疲労感、感覚異常(過敏や鈍麻)、睡眠障害、記憶力や認知機能の障害などいわゆる不定愁訴を呈する。中枢性過敏症候群に含まれる疾患の合併が多い。痛みや感覚異常の分布は神経分布とは一致せず、痛みやしびれの範囲は移動する。天候が悪化する前や月経前後に症状がしばしば悪化する。症状の程度はCRP<CWP<FMとなる(図1)。線維筋痛症の検査・診断(2012年1月30日に内容を更新)画像を拡大する圧痛以外の他覚所見は通常存在せず、理学検査、血液検査、画像検査も通常正常である。従来はアメリカリウマチ学会(ACR)による1990年の分類基準(図3)が実質的に唯一の診断基準となっていたが、2010年(図4)*2と2011年*3に予備的診断基準が報告された。ACRが認めた2010年の基準は臨床基準であり、医師が問診する必要がある。ACRが現時点では認めていない2011年の基準は研究基準であり、医師の問診なしで患者の回答のみでも許容されるが、患者の自己診断に用いてはならない。2011年の基準は2010年の基準とほぼ同じであるが、「身体症状」が過去6カ月の頭痛、下腹部の痛みや痙攣、抑うつの3つになった。共に「痛みを説明できる他の疾患が存在しない」という条件がある*2、*3。1990年の分類基準は廃止ではなく、使用可能である*2、*3。CRPやCWPにFMと同じ治療を行う限り、FMの臨床基準には存在意義がほとんどない。どの診断基準がどのくらいの頻度で、どのように使用されるのかは現時点では不明である。画像を拡大する1990年の分類基準によると、身体5カ所、つまり、左半身、右半身、腰を含まない上半身、腰を含む下半身、体幹部(頚椎、前胸部、胸椎、腰部)に3カ月以上痛みがあり、18カ所の圧痛点を約4kgで圧迫して11カ所以上で患者が「痛い」といえば他にいかなる疾患が存在しても自動的にFMと診断される*1(図3)。つまり、圧痛以外の理学検査、血液検査、画像検査の結果は、診断基準にも除外基準にもならない。通常、身体5カ所に3カ月以上痛みがあれば広義のCWPと、CWPの基準を満たさないが腰痛症のみや肩こりのみより痛みの範囲が広い場合にはCRPと診断される。FMとは異なり他の疾患で症状が説明できる場合には、通常CRPやCWPとは診断されない。~~ ここまで2012年1月30日に内容を更新~~従来の基準を使う限り、FMには鑑別疾患は存在しないが、合併する疾患を見つけることは重要である。従来、身体表現性障害(疼痛性障害、身体化障害)、心因性疼痛、仮面うつ病と診断されたかなりの患者はCRP、CWP、FMに該当する。線維筋痛症の治療(2012年7月24日に内容を更新)画像を拡大する世界ではCWPに対して通常FMと同じ治療が行われており、CRPやCWPにFMと同じ治療を行うとFM以上の治療成績を得ることができる*1。FMの治療は肩こり、慢性腰痛症、慢性掻痒症、FM以外の慢性痛にもしばしば有効である。他の疾患を合併している場合、一方のみの治療をまず行うのか、両方の治療を同時に行うのかの判断は重要である。FMの治療の基本は薬物治療と非薬物治療の組み合わせである。非薬物治療には認知行動療法、有酸素運動、減量、禁煙(受動喫煙の回避を含む)、人工甘味料アスパルテームの摂取中止*4が含まれる(図5)。鍼の有効性の根拠は弱く高額であるため、週1回合計5回行っても一時的な効果のみであれば、中止するか一時的な効果しかないことを了解して継続すべきである。薬物治療の基本は一つずつ薬の効果を確認することである。一つの薬を少量から上限量まで漸増する必要がある。効果と副作用の両面から最適量を決定し、それでも不十分な鎮痛効果しか得られなければ次の薬を追加する。上限量を1-2週間投与しても無効であれば漸減中止すべきで、上限量を使用せず無効と判断してはならない。メタ解析や系統的総説により有効性が示された薬はアミトリプチリン〔トリプタノール〕、ミルナシプラン〔トレドミン〕、プレガバリン〔リリカ〕、デュロキセチン〔サインバルタ〕である*1、4。二重盲検法により有効性が示された薬はガバペンチン〔ガバペン〕、デキストロメトルファン〔メジコン〕、トラマドールとアセトアミノフェンの合剤〔トラムセット配合錠〕などである*1、4。ノルトリプチリン〔ノリトレン〕は体内で多くがアミトリプチリンに代謝され、有効性のエビデンスは低いが実際に使用すると有効例が多い。ワクシニアウイルス接種家兎炎症皮膚抽出液〔ノイロトロピン〕、ラフチジン〔プロテカジン〕は対照群のない研究での有効性しか示されていないが、有効例が多く副作用が少ない。抗不安薬はFMに有効という証拠がないばかりか常用量依存を引き起こしやすいため、鎮痛目的や睡眠目的で使用すべきではない*1、4。また、ステロイドが有効な疾患を合併しない限りステロイドはFMには有害無益である*1。非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)は通常無効であるが、個々の患者では有効なことがある。個々の薬物の有効性のレベルは文献*1、4を参照していただきたい。論文上の効果や副作用、私自身が経験した効果や副作用、費用の点を総合的に考慮した私の個人的な優先順位は〔ノイロトロピン〕、アミトリプチリン、デキストロメトルファン、ノリトレン、メコバラミンと葉酸の併用、イコサペント酸エチル、ラフチジン、ミルナシプラン、ガバペンチン、デュロキセチン、プレガバリンである。これには科学的根拠はないが、薬物治療が単純になる。不都合があれば各医師が優先順位を変更すればよい。日本のガイドラインにも科学的根拠がないことはガイドラインに記載されている*5。筋付着部炎型にステロイドやサラゾスフファピリジン〔アザルフィジン〕が推奨されているが、それらはFMに有効なのではなくFMとは別の疾患に有効なのである。肺炎型FMに抗生物質を推奨することと同じである。線維筋痛症の治療成績画像を拡大する2007年4月の時点で3カ月以上私が治療を行った34人のFM患者のうち薬物を中止できた人は5人(15%)、痛みが7割以上改善した人が4人(12%)、痛みが1割以上7割未満改善した人が17人(50%)、不変・悪化の人が8人(24%)であった*1。CRPやCWPにFMとまったく同じ治療を行えば、有意差はないがFMよりはよい治療成績であった*1(図6)。※〔 〕内の名称は商品名です文献*1 戸田克広: 線維筋痛症がわかる本. 主婦の友社, 東京, 2010.*2 Wolfe F, Clauw DJ, Fitzcharles MA et al: The American College of Rheumatology preliminary diagnostic criteria for fibromyalgia and measurement of symptom severity. Arthritis Care Res (Hoboken) 62: 600-610, 2010. http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/20461783*3 Wolfe F, Clauw DJ, Fitzcharles MA et al: Fibromyalgia Criteria and Severity Scales for Clinical and Epidemiological Studies: A Modification of the ACR Preliminary Diagnostic Criteria for Fibromyalgia. J Rheumatol 38: 1113-1122, 2011. http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/21285161*4 戸田克広: エビデンスに基づく薬物治療(海外の事例を含む). 日本線維筋痛症学会編, 線維筋痛症診療ガイドライン2011. 日本医事新報, 東京, 2011; 93-105.*5 西岡久寿樹: 治療総論. 日本線維筋痛症学会編, 線維筋痛症診療ガイドライン2011. 日本医事新報, 東京, 2011; 82-92.質問と回答を公開中!

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戸田克広 先生の答え

麻薬の使用法治療としていわゆる麻薬はどのような状況、症状の時に使うべきなのでしょうか。また、投与中止はどのようにおこなうべきでしょうか。非癌性慢性痛に麻薬を使用することは依存を引き起こすのではないかと危惧する意見があります。しかし、痛みがある患者さんに適切に使用する限りは、依存は起こらないと考えられています。後者の仮説には明確なデータはないため麻薬の使用は慎重におこなうべきです。しかし、適切な治療を1年以上おこなっても鎮痛効果が不十分な場合や、初診時に激烈な痛みがあり、自殺の恐れがある場合には麻薬を使用してもよいと思います。喫煙者などの物質依存者や約束を守らない人格と判断される場合には麻薬を使用しないことが望ましいと思います。モルヒネには「天井効果がないため上限量はない」という考えもありますが、「200mg / 日を超える場合にはさらに十分な評価が必要」という意見もあります。ペインクリニック専門医ではない場合には200mg / 日を超えるモルヒネは査定される可能性が高いという非公式の制度があるため注意が必要です。ブプレノルフィン、ペンタゾシンは使用すべきではありません。トラマドール塩酸塩〔トラムセット〕またはコデイン、モルヒネ、フェンタニル〔デュロテップパッチ〕の順で使用することが一般的です。モルヒネは薬価が高いため、1回量が20mgになれば薬価の安い散剤にした方が良いと思います。麻薬が有効な場合、その他に有効な薬を見つけて麻薬を減量または中止する努力が必要です。減量とは1回量の減量であって、投与間隔を延長してはいけません。モルヒネであれば1回量を2-4週間ごとに10mgずつ減量し、痛みが悪化すれば再び増量することが望ましいと思います。※〔 〕内の名称は商品名です 中枢性過敏についてこの概念と定義はどなたが提唱したものなのでしょう。概念をもう少し詳しくお聞かせください。御多忙中とは存じますが、どうぞ宜しくお願いいたします。Woolfが中枢性過敏(central sensitization: CS)を提唱しました。CSにはさまざまな定義があります。Woolfは「侵害受容刺激により中枢の侵害受容経路のシナプス効果と興奮性が長期間ではあるが可逆的に増加すること」と定義していますが、国際疼痛学会は「正常あるいは閾値下の求心性入力に対する中枢神経系内の侵害受容ニューロンの反応性の増加」と定義しています。私は次のように考えています。侵害受容性疼痛や末梢性神経障害性疼痛という痛み刺激のみならず、精神的ストレスなどの刺激が繰り返し脳に送られ続けると、中枢神経に機能障害が起こってしまいます。機能障害ではなく器質的障害なのかもしれませんが、現時点の医学レベルではよくわかっていません。中枢神経に機能障害が起こるとさまざまな刺激に対して過敏になり、痛みを感じない程度の刺激が中枢神経に入っても痛みを感じさせてしまいます。また、中枢神経に起こった機能障害の部位そのものが痛みなどの症状の原因になる、つまり機能障害の部位から痛みなどの情報が流れてしまうと推測しています。一方、Yunusが中枢性過敏症候群(central sensitivity syndrome: CSS)を提唱しました。CSSの主な原因はCSと推測されています。CSは主に痛みに関する理論ですが、CSSには痛みを主訴とするFM以外にも、慢性疲労症候群、異常感覚を主訴とするむずむず脚症候群、化学物質過敏症、うつ病、外傷後ストレス障害なども含まれます。CSSの代表疾患の一つがFMなのです。CSは日本でも知られていますが、CSSはFM以上に日本では知られていません。CSSに含まれる疾患は定まっていません。不安障害、皮膚掻痒症、機能性胃腸障害、更年期障害、慢性広範痛症、慢性局所痛症などもCSSに含まれると私は考えています。(日本医事新報No4553, 84-88, 2011)FMの症状について口の中が痛くて、硬いものがかめない症状や、下肢痛があり車や電車に乗ると悪化するような症状はFMに該当するでしょうか?口の症状はFMの症状です。FMでは身体のどこにでもアロジニア(通常痛みを引き起こさない程度の刺激により痛みが起こること)が起こります。口腔内にそれが起これば、硬いものをかめない症状が生じます。口の症状のみがある場合には舌痛症と診断すべきかもしれませんが、舌痛症はFMの部分症状と考えることも可能です。自動車や電車に乗ると下肢痛が悪化すると訴えるFM患者を私は知りませんが、FMの症状と考えても矛盾はありません。FMでは、歩行時より下肢を動かさない状態の時に痛みが強い場合が多いからです。自動車や電車に乗ると下肢痛が悪化する場合には、むずむず脚症候群の可能性もあります。むずむず脚症候群では歩行時よりも安静時に下肢のむずむず感が強くなるため、自動車や電車に乗るとそれが強くなる場合があります。むずむず感などの違和感を痛みと表現する患者さんもいます。FMとむずむず脚症候群はしばしば合併するため注意が必要です。者の性差について患者で女性が8割を占める理由について病態の解明は進んでおりますでしょうか。現在わかっている範囲でお教えください。FMの原因は脳の機能障害という説が定説ですが、厳密にはわかっていません。そのため、女性が8割を占める理由も当然わかっていません。FMの原因解明が進めば、その理由もわかるのではないかと期待しています。FMを含むFMよりも広い概念の慢性広範痛症においては双子を用いた研究により半分が遺伝要因、半分が環境要因と報告されています。性ホルモンはFMに影響を及ぼす要因の一つと考えられています。ただし、性ホルモンは遺伝子により大きな影響を受けるため、性ホルモンの差と遺伝子の差を厳密に区別することは困難です。なお、FM患者の中で女性と男性でどちらの症状が強いかに関しては、男女差はないという報告、女性の症状が強いという報告、男性の症状が強いという報告があり、何ともいえません。治療選択について非薬物療法を患者さんが選択し、希望する場合、一番効果的なものはどれでしょうか。先生の私見でも結構ですのでご教示願えますか。非薬物療法の中では禁煙、有酸素運動、認知行動療法、温熱療法、減量、患者教育が有用です。激しい受動喫煙を含めた喫煙者では、禁煙が一番有効と考えていますが、非喫煙者では有酸素運動が一番有効と考えています。患者本人の喫煙継続は論外ですが、間接受動喫煙防止のため配偶者には禁煙、その他の家族には屋外喫煙が必要です。有酸素運動は、技術や人手が不要、安価で、誰でもできるという長所があるため、非喫煙者では最も有効と考えています。散歩や水中歩行のみならずヨガ、太極拳も有効です。歩行すると痛みが悪化する人では、深呼吸で代用も可能です。安静が有効な場合もありますが、これは痛みが起こらない程度の安静を保つことを意味するのであって、過度な安静は逆に有害です。痛みに対する認知行動療法は、論文上有効なのですが、実際に何をすれば良いのかよくわからないこと、適切な治療を行う施設が少ないこと、費用が高いことが欠点です。欧米を中心にしたインターネットによる調査では約8%の人しか認知行動療法を受けておらず、患者さんが自己評価した有効性もあまりよくありませんでした。温熱療法には、温泉療法、温水中の訓練、遠赤外線サウナ、近赤外線の照射などが含まれます。FMは心因性疼痛ではなく、恐らく脳の機能障害が原因であろうことの説明や痛いときには無理をしないことの説明などが患者教育です。星状神経節ブロックを含む交感神経ブロックが有効という根拠はありません。対照群のない研究では鍼は有効なのですが、適切な対照群のある研究では鍼の有効性が証明されていません。交感神経ブロックも鍼も、5回行って一時的な鎮痛効果しかなければ、それ以上継続しても一時的な効果しかないと私は考えています。トリガーポイントブロックの長期成績は不明です。非薬物治療は組み合わせて行うことが望ましく、さらに言えば、非薬物治療は薬物治療と併用することが望ましいと報告されています。線維筋痛症の患者とうつ病同症の患者では精神疾患(特にうつ病)を併発されている方も多いと聞きます。その場合のケアと薬剤の処方のポイントについてご教示ください。抑うつ症状あるいはうつ病に痛みが合併した場合、痛みはうつ病の一症状であるという理論は捨てる必要があります。痛みと、抑うつや不安症状は対等の症状と見なすことが重要です。FMとうつ病(または不安障害)が合併した場合、当初はより重症な症状のみを治療することをお勧めします。一方の症状がある程度軽減した後に、他方の症状を治療した方が治療は容易です。抗うつ作用がまったくない薬で痛みが軽減しても、抑うつ症状が軽減することはありふれたことです。しかし、両症状とも強い場合には、両方を同時に治療せざるを得ないこともあります。その場合には抑うつ症状に対する治療と、痛みに対する治療は分けた方がよいと思います。SSRIと短期間の抗不安薬を抑うつ症状に対する治療と考え、その他の薬は痛みに対する治療と考えた方がよいと思います。三環系抗うつ薬とSNRIは抑うつにも痛みにも有効ですが、痛みのみに有効と見なし、抑うつがついでに軽減すれば「儲け物」という程度に考えた方がよいと思います。なお、三環系抗うつ薬では鎮痛効果を発揮する投与量より抗うつ効果を発揮する投与量の方が多いのですが、SNRIでは両効果を発揮する投与量は同程度です。SSRIも痛みに対する薬も通常漸増する必要があります。それらを同日投与や同日増量すると副作用が生じた場合に、原因薬物の特定が困難になる場合があります。そのため、投与開始や増量は少なくとも中2日は空けたほうがよいと思います。抗不安薬は、SSRIが抗うつ効果や抗不安効果を発揮するまでの一時しのぎとして抗不安薬を使用すべきです。抗不安薬を半年以上投薬する場合には、転倒や骨折の増加、運動機能の低下、理解力の低下、認知機能の低下、抑うつ症状の悪化、新たな骨粗鬆症の発症、女性での死亡率の増加を説明する必要があります。抗不安薬を半年以上使用すると常用量依存が起こりやすく、その場合中止が困難になります。薬物療法とガイドライン解説の中で薬物療法について「ガイドラインでは科学的根拠がない」と記されていますが、近々に発表される、または欧米のものが翻訳される見込みはございますか。教えていただける範囲でお願いします。「線維筋痛症のガイドライン」は、アメリカ、ドイツ、ヨーロッパ、カナダ、スペインから発表されています。日本語に翻訳されて発表される見込みは現在不明です。日本のガイドラインの改訂版は今後発表される予定ですが、いつになるのか未定です。アメリカ、ドイツ、ヨーロッパのガイドラインは各治療方法の有効性のエビデンスを記載しています。カナダのガイドラインはエッセイ様式です。スペインと日本のガイドラインはサブグループに分けています。スペインのガイドラインは修正デルフィ法(参加者の匿名のアンケートとそれに対する評価を繰り返し一つの結論を出す方法)によりGieseckeらの分類方法を採用しています。日本のガイドラインの最大の特徴はFMをサブグループに分けて、サブグループごとに治療方法を変える点です。世界では、FMのサブグループ分けは多くの研究者により行われています。痛み、抑うつ状態などのさまざまな指標により得られたデータによりサブグループ分けが行われていますが、報告により異なるサブグループに分けられています。ただし、日本のガイドラインに含まれる「筋付着部炎型」は私が知る限り、報告された分類方法のどのサブグループにも存在しません。また、前回と今回の日本のガイドラインでは同じサブグループの推奨薬物が異なっていますが、その変更の根拠が記載されていません。「分類の根拠、およびサブグループごとに推奨する薬物が異なる根拠は論文化されていない」由が、今回のガイドラインに記載されています。日本のガイドラインでは各執筆者は自分自身の執筆した部分のみに責任を持つことも特徴の一つです。睡眠薬との関連痛みがひどくて眠れない患者さんに睡眠薬を処方することもあるかと思います。その場合、注意する点などご教示ください。FMに限らず、痛みのために不眠の患者さんの睡眠改善目的にまず処方する薬は、睡眠薬ではなく鎮痛薬です。もちろん非ステロイド性抗炎症薬ではなく神経障害性疼痛に対する鎮痛薬です。鎮痛薬が主で、睡眠薬は従の関係です。当初は睡眠薬を処方せず、鎮痛薬を私は処方しています。三環系抗うつ薬、ガバペンチン〔ガバペン〕、プレガバリン〔リリカ〕は鎮痛効果が強い上に、眠気の副作用が強いのでその副作用を睡眠改善に使用することも可能です。しかし、眠気の副作用がほとんどないワクシニアウイルス接種家兎炎症皮膚抽出液〔ノイロトロピン〕やデキストロメトルファン臭化水素酸塩水和物〔メジコン〕により痛みが改善すれば、結果的に睡眠が改善することもあります。FMの不眠に有効な睡眠薬はゾピクロン〔アモバン〕、ゾルピデム酒石酸塩〔マイスリー〕ですが、副作用報告の少ないゾピクロンを私は優先使用しています。FMの睡眠障害に対して抗不安薬を使用することは避けるべきです。常用量依存を作りやすいからです。特に、作用時間が短く抗不安作用が強いため常用量依存を作りやすいエチゾラム〔デパス〕を睡眠薬として使用することは避けるべきです。※〔 〕内の名称は商品名です。日本での患者数わが国における患者の推定数はどのくらい見積もられておりますでしょうか、また、欧米の患者数、人種差、性差なども合わせてお教え下さい。日本における地域住民の有病率は約1.7%と報告されていますが、その報告には調査人数や具体的な調査方法が記載されていません。今後、科学的根拠の高い日本人の有病率が世界に知られることを期待しています。日本の病院敷地内での女性就労者の2.0%、男性就労者の0.5%がFMと報告されています。アジア、欧米を中心とした報告によるとFMの有病率は約2%、そのグレーゾーンの有病率は約20%と推測されます。圧痛点の数は経時的に変動することや論文上の有病率は一時点の有病率であることを考えると、真の有病率は約2%、日本では250万人程度のFM患者がいると推測しています。中国での有病率は0.05%という報告がありますが、調査方法や診断能力に原因があるのかもしれません。同一の研究チームが異人種を調べた研究は3つあり、ブラジル(非白人2.65%と白人2.26%)とイラン(Caucasians0.6%とトルコ人0.7%)では人種差がなく、マレーシア(マレー系1.19%、インド系2.58%、中国系0.33%)では人種差がありました。そのため有病率に人種差があるのかどうかは不明です。FM患者の約8割は女性であり、性比には大きな人種差はないようです。医師以外の関与線維筋痛症について、ナースやコメディカルが介入できる余地はありますでしょうか。例えば理学療法士がストレッチを指導する、ナースが話を聞くなどで患者の日常生活から改善していくなどです。その際の保険点数など参考になるものがございましたらご教示お願いします。薬物治療以外では、コメディカルが介入できる余地がたくさんあります。ただし、FMという病名では保険点数はつきません。理学療法士や作業療法士は、有酸素運動、筋力増強訓練、ストレッチ、水中訓練などを指導できます。しかし、FMなどの痛みを引き起こす疾患では保険点数は取れません。関節の変性疾患、関節の炎症性疾患、運動器不安定症などが合併していれば運動器リハビリテーション料を請求することができます。ナースが患者の話を聞いたり、患者の痛みや生活の質を評価するアンケートの記載方法の説明を行うことができます。ただし、ナースが患者の話を聞いても保険点数を請求できません。うつ病に対する認知行動療法に対して、厳しい条件はあるものの2010年から保険点数が取れるようになりました。しかし、FMなどの痛みに対する認知行動療法では保険点数を請求できません。総括FMが知られていない日本医学は世界の標準医学から大きく乖離しています。FM以上に中枢性過敏症候群は、日本では知られていません。FMのみならず中枢性過敏症候群を認めて世界の標準医学に追いつく必要があります。FMの治療はFMのみならずそのグレーゾーン、つまり人口の約20%に有効です。グレーゾーンにもFMの治療を行うのですから、臨床の観点ではFMの診断は厳密に行う必要はありません。心因性疼痛、仮面うつ病、身体表現性障害(疼痛性障害、身体化障害)と診断するより、FMやそのグレーゾーンと診断する方が、有効な治療方法が多いためほぼ間違いなく治療成績が向上します。異なる医学理論が衝突した場合には、「脚気論争」と同様に治療成績がよい医学理論を採用すべきです。自分が長年信じていた医学理論を捨てることは困難ですが、臨床医は自分が信じる医学理論を守ることより、よりよい治療成績を求めるべきです。戸田克広先生「「正しい線維筋痛症の知識」の普及を目指して! - まず知ろう診療のポイント-」

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うつ病スクリーニングツールの精度研究に潜む患者バイアスの危険性

うつ病スクリーニングの潜在的ベネフィットを判定するために行われる診断精度研究には、被験者として、すでにうつ病と診断された患者やうつ病治療中の患者がほとんど除外されずに含まれており、それら被験者バイアスが診断精度研究に与える影響が、システマティックレビューやメタ解析では評価されていないことが明らかにされた。カナダ・マックギル大学Jewish総合病院のBrett D Thombs氏らによる研究報告で、BMJ誌2011年9月3日号(オンライン版2011年8月18日号)にて発表された。うつ病と診断または治療中の患者は適切に除外されているのかを調査研究グループは、うつ病スクリーニングツールの診断精度に関するシステマティックレビューとメタ解析に含まれるオリジナル研究について、すでにうつ病と診断を受け治療中の患者を適切に除外している割合と、システマティックレビューとメタ解析が、そうした患者からのバイアスの可能性を評価しているかどうかを調べた。Medline、PsycINFO、CINAHL、Embase、ISI、SCOPUS、Cochraneをデータベースとし、2005年1月1日~2009年10月29日の間を検索対象とした。試験適格基準は、うつ病スクリーニングツールの診断精度について報告したものとし、言語は問わなかった。除外されているのは4%のみ、ツールがガイドラインで過大評価されている?17のシステマティックレビューとメタアナリシスから抽出した特色のある197本のうち、うつ病と診断されたか、またはうつ病治療中の患者を明確に除外したものは、わずか8本(4%)だけだった。システマティックレビューやメタ解析で、そのような患者が含まれているかを評価しているものはなかった。患者サンプルからバイアスのリスクを評価する項目を備えた質評価ツールを使用していたのは10本のレビューだけであった。これらから研究グループは、「うつ病スクリーニングツールの精度研究では、すでに診断を受けたか、または治療中の患者は除外されておらず、システマティックレビューとメタアナリシスは潜在的バイアスについては評価していない」と結論、「そのため、診断・予防ガイドラインで診断ツールの精度が誇張されている可能性があり、また、うつ病の診断・治療割合が過大に評価されている可能性がある」と指摘している。

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院外心停止での心調律解析前のCPR実施時間、長短でアウトカムに差は生じず

院外心停止で心調律解析前に行う救急医療サービス(EMS)隊員管理下での心肺蘇生法(CPR)は、短時間(30~60秒間)でも、長時間(180秒間)でも、その後のアウトカムに有意差は認められないことが報告された。カナダ・オタワ大学のIan G. Stiell氏らROC(Resuscitation Outcomes Consortium)研究グループによる。米国心臓協会国際連絡協議会(AHA-ILCOR)が蘇生ガイドライン2005で、それまでの即時除細動を行う戦略を改め、EMS隊員がまず心調律解析前に2分間、CPRを行うことを推奨する内容に改訂した。しかし、その後の試験で、試行を支持する知見と否定する知見が報告され、蘇生ガイドライン2010では、「エビデンスは相矛盾している」という内容に再修正されているという。NEJM誌2011年9月1日号掲載報告より。CPR実施時間を30~60秒と180秒に無作為割り付けStiell氏らは、CPR施行時間は短い戦略がよいのか、比較的長めに行う戦略がよいのかについてクラスタ無作為化比較試験を行った。米国とカナダ合わせて10大学とその関連EMSシステムの施設が共同参加し、院外心停止を来した成人患者を、最初の心電図解析の前にEMS管理下で、30~60秒間CPRを受ける群と、同180秒間CPRを受ける群に割り付けた。主要アウトカムは、良好な機能状態(改変ランキン・スケール・スコアが≦3、同スコアは0~6の範囲で値が高いほど障害が重い)での生存退院とした。両群のアウトカムに有意差なし対象とした9,933例の患者のうち、5,290例は心調律の早期解析群に、4,643例は遅めの解析群に割り付けられた。結果、主要アウトカムの基準を満たしたのは、遅めの解析群計273例(5.9%)、早期解析群計310例(5.9%)で、クラスタ補正後の差は-0.2ポイントだった(95%信頼区間:-1.1~0.7、P=0.59)。交絡因子補正後、両群とも生存に関するベネフィットが示されなかった(クラスタ補正後の差:-0.3ポイント、95%信頼区間:-1.3~0.7、P=0.61)。サブグループ解析(事前特定解析、事後解析)においても同様であった。(朝田哲明:医療ライター)

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院外心停止での標準的CPR時のITD使用、良好な機能状態の生存退院に結びつかず

院外心停止での、標準的な心肺蘇生(CPR)施行時のインピーダンス閾値弁装置(ITD)の使用は、良好な機能状態生存の改善には結びつかないことが報告された。米国・ウィスコンシン医科大学のTom P. Aufderheide氏らROC(Resuscitation Outcomes Consortium)研究グループによる。ITDは、CPR施行時に胸腔内圧を低下させ、心臓への静脈環流量と心拍出量を増加させるよう設計されている。これまでの研究で、CPR施行時のITD使用が、心停止後の生存率を改善する可能性が示唆されていた。米国心臓協会ガイドライン2005では、血行動態および心拍再開改善のためITDの活用をIIaクラスの推奨として勧告している。しかし長期生存率の上昇については実証されていなかった。NEJM誌2011年9月1日号掲載報告より。8,718例を、標準的CPR時ITD活用群とプラセボ群に無作為化しアウトカムを比較Aufderheide氏らは、米国とカナダ合わせて10大学とその関連EMSシステムの施設共同参加の下、院外心停止での標準的CPR時に、ITDを活用する群と偽ITD(プラセボ)使用群とを比較する大規模無作為化試験(解析対象8,718例)を行った。患者、研究者、試験コーディネーター、すべての医療提供者に、治療割り付け情報は知らされなかった。主要アウトカムは、良好な機能状態(改変ランキン・スケール・スコアが≦3、同スコアは0~6の範囲で値が高いほど障害が重い)での生存退院とした。病院到着時の心拍再開、入院生存、退院生存も有意差なし解析対象となった8,718例のうち、4,345例がプラセボ群に、4,373例がITD活用群に無作為に割り付けられた。結果、主要アウトカムの基準を満たしたのは、プラセボ群260例(6.0%)、ITD群254例(5.8%)で、リスク差(逐次モニタリングで補正後)は-0.1ポイント(95%信頼区間:-1.1~0.8、P=0.71)だった。副次アウトカムの、救急治療部門への到着時における心拍再開率(P=0.51)、入院生存率(P=0.84)、退院生存率(P=0.99)なども有意差は認められなかった。(朝田哲明:医療ライター)

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甲状腺がん患者における放射性ヨウ素使用、病院特性が大きな理由

米国・ミシガン大学のMegan R. Haymart氏らは、臨床現場における甲状腺がん患者の全摘後の放射性ヨウ素使用の傾向について調査を行った。甲状腺全摘後の放射性ヨウ素使用については確定しておらず、使用の期間や重症度と使用との関連性などが明らかになっていない。術後使用の議論は熱いが無作為化試験は行われておらず、そのためガイドラインでは医師の裁量とされており、臨床現場は使用の支持派と反対派に二分されている。Haymart氏らは、最近の臨床での使用パターンを調べ、病院間で使用程度の格差があるか、あるとしたらどのような因子が関連しているのかを調査した。JAMA誌2011年8月17日号掲載より。18年間で使用は有意に増大調査は、1990~2008年に米国国立がんセンターデータベースにデータを提供していた981施設で治療を受けた分化型甲状腺がん患者18万9,219例を対象とし、放射性ヨウ素の使用について時間傾向分析を行った。また、2004~2008年に治療を受けた患者コホートにて、放射性ヨウ素使用と患者特性や病院特性などの関連を評価する多平面解析を行った。結果、1990年と2008年とでは、腫瘍サイズにかかわらず、放射性ヨウ素使用は有意に増大していた。患者の割合でみると、40.4%(1,373/3,397例)から56.0%(11,539/20,620例)への有意な増大が認められた(P<0.001)。患者特性と腫瘍特性が21.1%、病院タイプと治療件数が17.1%多平面解析の結果からは、放射性ヨウ素使用についてステージ間(米国がん病期分類合同委員会に基づく)での格差が認められた。ただし認められたのはステージIとIVの格差で、オッズ比0.34(95%信頼区間:0.31~0.37)だったが、ステージIIまたはIIIと、IVとの間には関連が認められず、IIとIVのオッズ比は0.97(同:0.88~1.07)、IIIとIVのオッズ比は1.06(0.95~1.17)だった。放射性ヨウ素使用の因子としては、患者特性、腫瘍特性に加えて、病院特性があることが認められた。使用有無の格差は大きく、その因子として、患者特性と腫瘍特性が21.1%を占めたが、病院タイプと治療件数も17.1%を占めていた。また患者特性、腫瘍特性、病院特性で補正後は、不明瞭だが病院特性に類する因子が29.1%を占めていた。Haymart氏は、「分化型甲状腺がん患者の治療における放射性ヨウ素使用は有意に増えていた。使用格差の背景には病院特性が大きな理由としてあることが明らかとなった」と結論している。(武藤まき:医療ライター)

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ICU重症成人患者への静脈栄養法は8日目以降開始のほうがアウトカム良好

重症疾患でICUに入室となった成人患者への静脈栄養法の開始は、早期開始(48時間以内)するよりも後期開始(8日目以降)のほうが、回復が早く合併症が少ないことが明らかにされた。ベルギー・ルヴェン大学病院集中ケア内科学のMichael P. Casaer氏ら研究グループが行った4,640例を対象とする多施設共同無作為化試験の結果による。重症疾患は、摂食障害を来し重度の栄養障害、筋消耗、虚弱をもたらし回復を遅らせるため栄養療法が開始されるが、アウトカム改善については明らかになっていなかった。Casaer氏らは、投与ルート、タイミング、目標カロリー、栄養療法のタイプに着目し、特に議論となっている経腸栄養法単独では目標カロリーが達成できないICU重症成人患者への静脈栄養法開始のタイミングについて試験を行った。NEJM誌2011年8月11日号(オンライン版2011年6月29日号)掲載報告より。静脈栄養法開始について早期開始群と後期開始群とに無作為化し検討試験は、2007年8月1日~2010年11月8日の間にベルギー国内7つのICUから登録された、経腸栄養法では栄養不十分(栄養リスクスコア7段階で3以上)のICU成人患者4,640例を対象とし、静脈栄養法の早期開始(ヨーロッパのガイドラインに基づく)と後期開始(米国・カナダのガイドラインに基づく)とについて比較された。早期開始群(2,312例)は、ICU入室後48時間以内に静脈栄養が開始され、後期開始群(2,328例)は7日目においても栄養不十分な場合で8日目に開始された。経腸栄養の早期開始のプロトコルは両群同一に適用され、正常血糖達成にはインスリンが注入された。後期開始群の生存退室率・生存退院率が相対的に6.3%上回る結果、後期開始群の患者は、ICUからの早期生存退室率(ハザード比:1.06、95%信頼区間:1.00~1.13、P=0.04)と病院からの生存退院率(同1.06、1.00~1.13、P=0.04)が相対的に6.3%上回り、退院時の機能状態の低下を示す所見は認められなかった。ICU内死亡率、病院内死亡率、90日生存率は、両群で同程度だった。また後期開始群の患者は早期開始群患者と比較して、ICU感染症(22.8%対26.2%、P=0.008)、胆汁うっ滞発生率(P

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非糖尿病性腎症患者、ガイドライン推奨値の減塩維持が蛋白尿減少と降圧の鍵

ACE阻害薬最大量で治療中の非糖尿病性腎症患者には、ガイドライン推奨レベルの減塩食を持続して摂らせることが、蛋白尿減少と降圧に、より効果的であることが52例を対象とする無作為化試験の結果、示された。試験は、オランダ・フローニンゲン大学医療センター腎臓病学部門のMaartje C J Slagman氏らが、同患者への追加療法として、減塩食の効果とARB追加の効果とを比較したもので、両者の直接的な比較は初めて。Slagman氏は、「この結果は、より有効な腎保護治療を行うために、医療者と患者が一致協力して、ガイドラインレベルの減塩維持に取り組むべきことを裏付けるものである」と結論している。BMJ誌2011年8月6日号(オンライン版2011年7月26日号)掲載報告より。ACE最大量投与中にARB and/or減塩食を追加した場合の蛋白尿と血圧への影響を比較Slagman氏らは、ACE阻害薬最大量服用中の非糖尿病性腎症患者の蛋白尿や血圧への影響について、減塩食を追加した場合と最大量のARBを追加した場合、あるいは両方を追加した場合とを比較する多施設共同クロスオーバー無作為化試験を行った。被験者は、オランダの外来診療所を受診する52例で、ARBのバルサルタン(商品名:ディオバン)320mg/日+減塩食(目標Na+ 50mmol/日)、プラセボ+減塩食、ARB+通常食(同200mmol/日)、プラセボ+通常食の4治療を6週間で受けるように割り付けられた。ARBとプラセボの投与は順不同で二重盲検にて行われ、食事の介入はオープンラベルで行われた。試験期間中、被験者は全員、ACE阻害薬のリシノプリル(商品名:ロンゲス、ゼストリルほか)40mg/日を服用していた。主要評価項目は蛋白尿、副次評価項目が血圧であった。直接対決では減塩食の効果が有意平均尿中ナトリウム排泄量は、減塩食摂取中は106(SE 5)mmol/日、通常食摂取中は184(6)mmol/日だった(P

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