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「今後の透析医療を考える」プレスセミナーレポート

2012年5月31日、「今後の透析医療を考える」と題したプレスセミナー(バイエル薬品株式会社主催)が開催された。第1部として、秋澤忠男氏(昭和大学医学部 腎臓内科教授)が、「慢性腎臓病に伴う骨・ミネラル代謝異常の診療ガイドラインによって変わる透析医療」を、第2部として、宮本高宏氏(全国腎臓病協議会 会長)が、「透析患者の治療における実態とガイドライン改訂への期待」を講演した。その内容をレポートする。「慢性腎臓病に伴う骨・ミネラル代謝異常の診療ガイドラインによって変わる透析医療」 わが国の透析患者に対する治療は、世界でトップレベルにあり、日本の透析患者の死亡リスクは、米国の1/4、欧州の1/2.5である。しかし、一般人と比較すると透析患者の余命は半分で、とくに心不全などの脳・心血管系疾患による死亡リスクが高くなっている。この原因として、血中リン(P)濃度による血管の石灰化が考えられる。 日本透析医学会は、この度、慢性腎臓病に伴う『骨・ミネラル代謝異常の診療ガイドライン(CKD-MBD)』を発表した。CKD-MBDは、2006年に発表されたガイドラインの改訂版で、主な変更点は、以下の通りである。○対象を透析患者だけでなく、保存期や移植期のCKDや小児CKDに拡大する○血管石灰化や透析アミロイドーシスなどの病態を加える○新規治療薬の評価・使用法を加える○エビデンスレベル評価とガイドライン推奨度を明示する また、CKD-MBDでは、P、カルシウム(Ca)、副甲状腺ホルモン(PTH)の管理目標値も示されるとともに(P:3.5-6.0 mg/dL、Ca:8.4-10.0 mg/dL、PTH:60-240 pg/mL)、P、Caの管理を優先することが推奨されている。そして、管理方法としては、炭酸Ca、Ca非含有P吸着薬、活性型ビタミンD、副甲状腺作動薬を組み合わせて管理目標を達成する『9分割図』といわれる方法が提唱されている。 演者の秋澤氏は、「CKD-MBDを活用したPの適切な管理が、透析患者の予後向上につながることを期待したい」として、講演を終えた。「透析患者の治療における実態とガイドライン改訂への期待」 透析患者を対象とした治療に関する調査結果が発表された。調査は、2012年4月に、インターネットで実施され、人工透析を受けている患者200名から回答を得た。主な調査結果は以下の通りである。○透析患者の不安項目としては、合併症への不安(73%)が最も多く、とくに、循環器疾患への不安を覚えている人が多かった。○透析の治療に関するガイドラインは、約40%の人が認知していた。○ガイドラインに沿った治療を希望する人は、60%であった(わからない:34%)。○自分の服用している薬に対する意識調査では、薬について十分理解している人が91%おり、自分で調べたり勉強している人の割合も73%であった。 演者の宮本氏は、自らも30年来の透析患者であることを明かしたうえで、透析患者の医療費負担に触れた。「透析にかかる医療費は年間約1兆5千万円で、国の医療財政を圧迫しているが、患者の自己負担額はほぼゼロに近い。この事実を鑑み、患者は、自分達が提供してもらっている医療に感謝し、自ら食事療法などの自己管理をしっかりと行うことが必要である」と強調した。

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血管疾患の低リスク例に対するスタチンによるLDLコレステロール低下の効果:17万超患者データのメタ解析

27の無作為化試験の個々データをメタ解析した結果、スタチンによる治療は、血管疾患の低リスク例でも、ベネフィットが大きいことが、Cholesterol Treatment Trialists’ (CTT) Collaboratorsにより発表された。5年主要血管イベント発症リスクが10%未満の患者において、LDLコレステロール1 mmol / Lの低下は、5年間で1,000人あたり約11人の主要血管イベントの絶対的減少を招き、この利益は、スタチン療法の危険性を超えているとされた。現在のガイドラインは、概して、血管イベントリスクの低い患者は、LDL低下療法に適しているとはされていないが、研究グループは「今回の報告は、これらのガイドラインに再考の必要性があることを示唆している」と主張した。対象は、スタチン治療をコントロールと比較した22試験(134,537例)およびスタチン間で比較した5試験(39,612例)を対象とし、それを、基線における5年主要冠動脈イベント発症リスクで5つのカテゴリに分けた(~5%, 5~10%、10~20%, 20~30%, 30%~)。主要血管イベントは、主要冠動脈イベント、脳卒中、冠動脈血行再建術の施行とした。主な結果は以下のとおり。 ・スタチンによるLDL低下は、年齢、性別、ベースラインLDLコレステロール値に関係なく、主要血管イベントを低下させた[1.0mmol/LあたりRR 0.79 (95%信頼区間 0.77-0.81)]。また、血管死、全死亡も低下した。・イベントリスクの低い2つのカテゴリにおける主要血管イベントの減少は、イベントリスクのより高いカテゴリにおけるイベント減少と同程度に大きかった。1mmol/LあたりRRは、低リスクカテゴリから高リスクに向け順に、0.62(95%信頼区間:0.47-0.81)、0.69 (0.60-0.79)、0.79 (0.74-0.85)、 0.81 (0.77-0.86)、0.79 (0.74-0.84)。傾向性p=0.04。・イベントリスクの低い2つのカテゴリにおいて、主要冠動脈イベント[同 0.57(0.36-0.89)、0.61(0.50-0.74)]および冠動脈再建術[(同0.52(0.35-0.75)、0.63(0.51-0.79)]が有意に減少していた。・脳卒中は、5年主要血管イベント発症リスクが10%未満の対象者でも、リスクの高いカテゴリのリスクリダクションに類似していた[同0.76(0.61-0.95)](傾向性p=0.3) 。・スタチンによるLDLコレステロール低下において、がんの発症[同1.00(0.96-1.04)]がん死亡[(同0.99(0.93-1.06)]、血管以外の死亡に増加は認められなかった。(ケアネット 鈴木 渉)

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日本睡眠学会第37回定期学術集会のご案内 会長の井上氏より

2012年6月28~30日にパシフィコ横浜にて日本睡眠学会第37回定期学術集会が開催されます。会長の井上雄一氏より寄稿文をいただきました。是非ご覧ください。来る平成24年6月28日から30日の3日間、パシフィコ横浜(神奈川県横浜市)にて、日本睡眠学会第37回定期学術集会を会長として主催いたします。本学術集会は毎年1回、睡眠ならびに生体リズムのメカニズムと病態、社会的意義を解明し、実生活に活かすことを目的に開催され、全国の基礎医学、社会医学、臨床医学、薬学、検査医学、臨床ならびに実験心理学、看護学等の研究者や臨床家が参加し、過去最多となる45のシンポジウムが予定されています。本年度は「睡眠研究 新世代への架け橋」をテーマに掲げ、快適な睡眠がストレス社会の現代で人間性を回復させるために重要であり、睡眠健康の増進が高血圧や糖尿病という生活習慣病の予防・治療や、うつ病に代表される精神疾患、ひいては自殺の抑制にも有益であることを訴求、提案していく予定です。今回は、睡眠学の学際的な進歩を広く若手研究者に普及・拡大させるのみならず、睡眠を専門としない医療関係者の皆様にも広く門戸を開くため、開催期間中は常時、学会員以外の医療関係者が聴講できるシンポジウムを開催いたします。本学会は、事前の参加申込み不要、当日会場にて参加登録頂けます。多くの医師、医療関係者の皆様のご参加をお待ちしております。 日本睡眠学会第37回定期学術集会会長 井上 雄一東京医科大学睡眠学講座 教授 医療法人社団絹和会 理事長公益財団法人神経研究所附属睡眠学センター センター長 日本睡眠学会第37回定期学術集会テーマ:「睡眠研究 新世代への架け橋」会 期:2012年6月28日(木)/29日(金)/30日(土)会 場:パシフィコ横浜 http://www.pacifico.co.jp/(神奈川県横浜市西区みなとみらい1-1-1) 主なシンポジウム: ■6月28日(木)シンポジウムS2「睡眠呼吸障害と上気道~睡眠中の上気道と呼吸調節における進歩」シンポジウムS4「頭痛と睡眠障害」シンポジウムS7「不眠症治療薬開発の現状と未来」シンポジウムSS2「睡眠と生活習慣病がからむ血管内皮機能障害」 ■6月29日(金)シンポジウムS15「循環器領域における睡眠呼吸障害のガイドラインを検証する」シンポジウムS21「OSAS治療の長期化について考える」シンポジウムS22「産業保健と睡眠・睡眠障害」シンポジウムS26「高齢社会における睡眠障害の意義と対応」 ■6月30日(土)シンポジウムS30「我が国における不眠症に対する認知行動療法の現状(CBT-I up to date in Japan)」シンポジウムS34「睡眠関連運動障害」  *シンポジウムの最新情報はウェブサイトにて随時更新しています。 日本睡眠学会第37回定期学術集会ウェブサイト:http://www.c-linkage.co.jp/jssr37/本学会はFacebook、Twitterも開設しています。Facebook: http://www.facebook.com/jssr37Twitter: http://twitter.com/37jssr

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乳がんにおける術後タキサン単独化学療法の忍容性は?:無作為化比較試験N-SAS BC 02

乳がんの術後化学療法においては、アンスラサイクリン系の薬剤が中心をなしてきたが、心毒性などの有害事象があることから、アンスラサイクリンを含まないレジメンの検討がなされている。わが国でも、無作為化比較試験によりタキサン単独療法が検討され(N-SAS BC 02)、現在、「乳癌診療ガイドライン」において術後化学療法の選択肢の1つとして勧められている。一方、タキサン投与により末梢神経障害が多くみられることから、忍容性の検討が求められる。立命館大学の下妻晃二郎氏らは、化学療法による末梢神経障害(CIPN)の重症度と健康関連QOLを用いて、タキサンを含む術後化学療法における相対的忍容性を評価。その結果、「患者評価によるCIPNは、タキサン単独療法がAC(アンスラサイクリン+シクロホスファミド〔商品名:エンドキサン〕)→タキサンに比べ有意に重篤であった。しかしながら、健康関連QOLの結果はタキサン単独療法の忍容性を支持している」と下妻氏らは報告した。この論文はSupport Care Cancer誌2012年5月15日付オンライン版に掲載された。本試験では、多施設第III相試験(N-SAS BC 02)で最初に登録された腋窩リンパ節転移陽性乳がん患者300例が以下の4群に無作為に割り付けられ、CIPNと健康関連QOLが評価された。 1)AC→パクリタキセル(商品名:タキソールなど) 2)AC→ドセタキセル(商品名:タキソテールなど) 3)パクリタキセル単独 4)ドセタキセル単独 CIPNの評価は患者評価(Patient Neurotoxicity Questionnaire:PNQ)と医師評価(NCI-CTC)が、また、健康関連QOLの評価は患者評価(Functional Assessment of Cancer Therapy -General:FACT-G)が用いられている。主な結果は以下のとおり。 ・PNQスコアは、タキサン単独療法群がAC→タキサン群に比べて有意に高かった(p=0.003)。パクリタキセルを含むレジメンとドセタキセルを含むレジメンの間に有意差はみられなかった(p=0.669)。・PNQスコアは、術後化学療法1年以内でほとんどが回復した。・FACT-Gスコアは、治療期間中、いずれのレジメン間においても有意差はみられなかった。(ケアネット 金沢 浩子)

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【速報】「動脈硬化性疾患予防ガイドライン2012年版」はここが変わる!

 4月26日(木)、日内会館(東京・本郷)にて「動脈硬化性疾患予防ガイドライン2012年版」の発行に関するプレスセミナーが行われ、本ガイドラインの主な改訂点が発表された。主な改訂点は以下の通り。●絶対リスクの評価による層別化 これまでのガイドラインでは、健常者に対する相対的リスクで評価がなされてきたが、個々を絶対リスクで評価できないことは課題とされてきた。しかしながら、NIPPON DATA80をもとにリスク評価チャートが発表され、個々のリスクを絶対評価で表現することが可能となった。これにより、個人が有する危険因子を総合的に評価でき、性差や加齢の影響も解消できると期待されている。●動脈硬化性疾患の包括的管理 多くの患者は生活習慣病を併せもっており、常に包括的な判断が求められてきた。今回初めて、それぞれのガイドラインのエッセンスを織り込み、動脈硬化性疾患予防のための各種疾患(脂質異常症、高血圧、糖尿病、その他)の包括的なリスク管理チャートが加わった。●診断基準境界域の設定 これまで脂質異常症における治療エビデンスはリスクの高い患者を対象とした試験が多かった。このため、あくまで絶対リスクが高い場合に限り、治療を勧めるものであり、診断基準がそのまま治療対象となるわけではないことを認識する必要がある。このことから、診断基準では「スクリーニングのための」という記載が加えられている。 その一方で、糖尿病や脳梗塞のような危険度の高い一次予防については、早期の治療介入が予後を改善させるという多くのエビデンスがある。このため、リスクの高さに応じて判断できる境界域が設定され、治療介入が可能な領域についても提案されている。●高リスク病態 近年、CKDに伴う脂質異常とCVDリスクの関係などの報告から、新たに慢性腎臓病(CKD)が高リスク病態として扱われることとなった。 また、強力なスタチンの登場により、家族性高コレステロール血症(FH)は認識されずに治療されていることも多く、かつ、そのリスクは高いことから「原発性高脂血症」とは別項目として取り扱われている。これまで検討されてきたLDL-C100mg/dL未満よりもさらに厳しい目標値(very high riskグループ)設定の是非については、日本人でのエビデンスがないことから継続的な検討課題とされた。●non HDL-Cの導入 non HDL-CとCVDの関係を示すエビデンスの報告から、non HDL-Cがリスク区分別脂質管理目標値に加えられた。高TG血症、低HDL-C血症ではLDL-C値に加えて、non HDL-C値を加えることにより、リスク予測力が高まるとされている。 また、TCとHDL-Cから簡便に計算でき、食後採血でも使用できる点やFriedewald式が適用できない高TG血症にも使用できる点などは利点といえる。 本ガイドラインは2012年5月末の発行を予定しており、その詳細内容については2012年の7月に福岡で行われる「第44回日本動脈硬化学会総会」にて紹介される予定となっている。

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「ACC/AHA末梢動脈疾患診療ガイドライン2011」改訂のポイント

米国心臓病学会財団(ACC)と米国心臓協会(AHA)は、2005年に策定した末梢動脈疾患(PAD)の診療ガイドラインを見直し、2011改訂版を公表した。5年間で集積されたエビデンスを基に下記についての見直しが図られ、患者管理と予防の新たな臨床判断の指標とすることを促している。足関節上腕血圧比(ABI)、足趾腕血圧比(TBI)検査にかかる勧告見直し禁煙指導に関する勧告見直し抗血小板療法に関する勧告見直し重症肢虚血に対する勧告見直し腹部大動脈瘤に対する勧告見直しガイドライン2011の特徴は、下肢PAD予防と早期発見の重要性がさらに強調されたことである。まず、PADの過少診断を防ぐため、足関節上腕血圧比(ABI)実施対象患者の見直しが行われた。具体的には、2005年版では、対象者のひとつに「70歳以上」があったが、2011年版では、「65歳以上」に改訂された(クラスI、エビデンスレベルB)。その上で、ABI値について、正常値は1.0~1.4、異常値は0.9以下とし、0.91~0.99は境界値と明確に定義した(クラスI、エビデンスレベルB)。また、治療においては、禁煙指導と抗血小板薬に対する変更があった。禁煙指導については、下肢PAD患者に対する心血管イベントの抑制効果のエビデンスは乏しかったものの、医師の介入による禁煙率の上昇という点を評価し、プライマリ・ケア医による積極的な禁煙プログラムの推奨強化を図っている(表1)。薬物療法については、アスピリンおよびクロピドグレルのクラスIとしての位置づけに変更はなかったが、文言の明確化が図られた。新たな推奨項目として、クラスIIaとIIbが加えられた(表2)。重症肢虚血や腹部大動脈瘤に対する、手術とバルーン血管形成術のアウトカムについては、その一方の優位性を示す長期試験結果がないため、患者の個別の状態に応じ、最も適切な動脈瘤修復の方法を選択すべきであるとされた。なお今回の改定では、腎・腸間膜動脈疾患については、新たなエビデンスが乏しいため、同分野における見直しは行われなかった。表1 禁煙指導に関する勧告【2011年勧告の主な変更ポイント】●クラスⅠ1.喫煙者または喫煙歴のある患者は、毎回の診察時にタバコ使用に関する現状について問診を受けるべきである。(エビデンスレベルA)<新たな勧告>2.(喫煙者の)患者には、禁煙のために、薬物療法や(または)禁煙プログラムへの紹介を含む禁煙のための計画策定やカウンセリングを行うべきである。(エビデンスレベルA)<新たな勧告>3.下肢PADの患者で、タバコや他の種類のタバコを使用する人は、診察を受けるすべての医師から禁煙を勧められ、行動療法や薬物療法の提供を受けるべきである。(エビデンスレベルC)<以前の勧告の変更。文言を明確化し、エビデンスレベルをBからCに変更>4.患者に禁忌や他のやむにやまれぬ臨床適応がない限り、バレニクリン、ブプロピオン、ニコチン置換療法のうち、1つ以上の薬物療法を提供するべきである。(エビデンスレベルA)<新たな勧告>表2 抗血小板薬と抗血栓薬に関する勧告【2011年勧告の主な変更ポイント】●クラスⅠ1.抗血小板療法は、間欠性跛行または重症肢虚血、下肢血行再建術歴(血管内または外科的)や下肢虚血による切断術歴のある人を含む、症候性アテローム性下肢PADの患者に対し、心筋梗塞や脳卒中、血管死リスクを減少する。(エビデンスレベルA)<以前の勧告の変更。文言を明確化>2.アスピリン(一般的には75~325mg/日)は、間欠性跛行または重症肢虚血、下肢血行再建術歴(血管内ステント留置術または外科的)や下肢虚血による切断術歴のある人を含む、症候性アテローム性下肢PADの患者に対し、心筋梗塞や脳卒中、血管死リスクを減少する、安全で効果的な抗血小板療法として推奨される。(エビデンスレベルB)<以前の勧告の変更。文言を明確化し、エビデンスレベルをAからBに変更>3.クロピドグレル(75mg/日)は、間欠性跛行または重症肢虚血、下肢血行再建術歴(血管内ステント留置術または外科的)や下肢虚血による切断術歴のある人を含む、症候性アテローム性下肢PADの患者に対し、心筋梗塞や虚血性脳卒中、血管死リスクを減少するための、アスピリンの代替となる安全で効果的な抗血小板療法として推奨される。(エビデンスレベルB)<以前の勧告の変更。文言を明確化>●クラスIIa1.抗血小板療法は、ABIが0.90以下の無症候性の人に対し、心筋梗塞や脳卒中、血管死リスクを減少させる可能性がある。(エビデンスレベルC)<新たな勧告>●クラスIIb1.ABIが0.91~0.99の、ボーダーラインの無症候性の人に対する抗血小板療法が、心筋梗塞や脳卒中、血管死リスクを減少する効果があるかどうかについては、まだ立証されていない。(エビデンスレベルA)<新たな勧告>2.アスピリンとクロピドグレルの併用は、間欠性跛行または重症肢虚血、下肢血行再建術歴(血管内ステント留置術または外科的)や下肢虚血による切断術歴のある人で、出血リスクの増大がなく、既知の心血管リスクの高い人を含む、症候性アテローム性下肢PAD患者に対して、心筋梗塞や脳卒中、血管死リスクの減少を目的に考慮しても良い。(エビデンスレベルB)<新たな勧告>●クラスIII(利益なし)1.アテローム性下肢PADの患者に対し、有害心血管虚血イベントのリスク減少を目的に、ワルファリンを抗血小板療法へ追加投与することは、利益がなく、大出血リスクの増大のために、潜在的に有害となる。(エビデンスレベルB)<以前の勧告の変更。エビデンスレベルをCからBに変更>参照Rooke TW, et al. 2011 ACCF/AHA Focused Update of the Guideline for theManagement of Patients With Peripheral Artery Disease (updating the 2005 guideline):a report of the American College of Cardiology Foundation/American Heart AssociationTask Force on Practice Guidelines. J Am Coll Cardiol. 2011; 58: 2020-2045.

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DPP-4阻害薬、メトホルミン単独で目標血糖値非達成例の二次治療として有効

 ジペプチジルペプチダーゼ4(DPP-4)阻害薬は、メトホルミン単独療法で目標血糖値が達成されなかった2型糖尿病患者の二次治療としてHbA1cの低下効果を発揮することが、ギリシャ・アリストテレス大学のThomas Karagiannis氏らの検討で示された。経口血糖降下薬であるDPP-4阻害薬は、2型糖尿病患者のHbA1cを著明に低下させ、体重増加や低血糖のリスクも少ない。種々の血糖降下薬に関する間接的なメタ解析では、二次治療薬としてのDPP-4阻害薬は他の薬剤と同等のHbA1c低下効果を有することが示唆されているが、既存の2型糖尿病の治療ガイドラインはDPP-4阻害薬の使用に関するエビデンスが十分ではないという。BMJ誌2012年3月31日号(オンライン版2012年3月12日号)掲載の報告。DPP-4阻害薬の有効性と安全性をメタ解析で評価研究グループは、2型糖尿病の成人患者におけるDPP-4阻害薬の有効性と安全性の評価を目的に、無作為化試験の系統的なレビューとメタ解析を行った。論文の収集には、データベース(Medline、Embase、Cochrane Library)、会議記録、試験登録、製薬会社のウェブサイトを使用した。解析の対象は、単独療法としてのDPP-4阻害薬とメトホルミンあるいはメトホルミンとの併用におけるDPP-4阻害薬と他の血糖降下薬(スルホニル尿素薬、ピオグリタゾン、グルカゴン様ペプチド1[GLP-1]作動薬、基礎インスリン)を比較した無作為化対照比較試験であり、HbA1cのベースラインからの変動について評価した試験とした。主要評価項目はHbA1cの変動、副次的評価項目はHbA1c<7%達成率、体重の変化、有害事象による治療中止率、重篤な有害事象の発生率などとした。HbA1c低下効果はメトホルミンに劣るが、悪心、下痢、嘔吐が少ない1万3,881例が参加した19試験に関する27編の論文が解析の対象となった。DPP-4阻害薬群は7,136例、他の血糖降下薬群は6,745例だった。抄録のみの1試験を除き、主要評価項目に関するバイアスのリスク評価を行ったところ、3論文では低かったが、9論文は不明、14論文は高いという結果だった。メトホルミン単独療法との比較では、DPP-4阻害薬はHbA1c低下効果(加重平均差[WMD]:0.20、95%信頼区間[CI]:0.08~0.32)および体重減少効果(WMD:1.5、95%CI:0.9~2.11)が低かった。二次治療におけるDPP-4阻害薬のHbA1c低下効果はGLP-1作動薬に比べて劣り(WMD:0.49、95%CI:0.31~0.67)、ピオグリタゾンとは同等で(WMD:0.09、95%CI:-0.07~0.24)、HbA1c<7%の達成率はスルホニル尿素薬を上回らなかった(リスク比:1.06、95%CI:0.98~1.14)。体重の変動については、DPP-4阻害薬はスルホニル尿素薬(WMD:-1.92、95%CI:-2.34~-1.49)やピオグリタゾン(WMD:-2.96、95%CI:-4.13~-1.78)よりも良好だったが、GLP-1作動薬ほどではなかった(WMD:1.56、95%CI:0.94~2.18)。二次治療としてのDPP-4阻害薬とメトホルミン単独あるいはメトホルミンとの併用におけるDPP-4阻害薬、ピオグリタゾン、GLP-1作動薬に関する試験では、いずれの治療群も低血糖の発生数は最小限であった。メトホルミン+DPP-4阻害薬とメトホルミン+スルホニル尿素薬併用療法の比較試験のほとんどでは、低血糖のリスクはスルホニル尿素薬を含む群でより高かった。重篤な有害事象の発生率はピオグリタゾンよりもDPP-4阻害薬で低かった。悪心、下痢、嘔吐の発生率はDPP-4阻害薬よりもメトホルミンやGLP-1作動薬で高かった。鼻咽頭炎、上気道感染症、尿路感染症のリスクはDPP-4阻害薬と他の薬剤で差はなかった。著者は、「DPP-4阻害薬は、メトホルミン単独療法で目標血糖値が達成されなかった2型糖尿病患者の二次治療としてHbA1cの低下効果を有するが、コストや長期的な安全性についても考慮する必要がある」と結論している。(菅野守:医学ライター)

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抗てんかん薬「ビガバトリン」サノフィとアルフレッサが共同開発契約を締結

サノフィ・アベンティスは5日、同社の抗てんかん薬「ビガバトリン」(γ-アミノ酪酸(GABA)分解酵素阻害剤)の日本における開発に関して、アルフレッサファーマと共同開発したと発表した。ビガバトリンは、1989年に英国で最初に承認されている抗てんかん薬です。欧米ではSabrilの製品名で販売されており、英国の治療ガイドラインでは乳幼児においてみられる点頭てんかんの第一選択薬に位置づけられている。日本では、厚生労働省の「医療上の必要性の高い未承認薬・適応外薬検討会議」において、この点頭てんかんに対するビガバトリンの必要性が検討され、同社がが正式に開発要請を受けたという。詳細はプレスリリースへ(PDF)http://www.sanofi-aventis.co.jp/l/jp/ja/download.jsp?file=068EF964-EA25-4B42-A438-7B881FB6EB69.pdf

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第1回 医療水準:未熟児網膜症事件

■今回のテーマのポイント1.過失とは、「診療当時のいわゆる臨床医学の実践における医療水準」に満たない診療を行ったことである2.新規治療法が全国に普及していく過程においては、医療機関の性格、所在地域の医療環境の特性等の諸般の事情を考慮して医療水準を判断する3.このことは、すでに普及している治療法についても同様に判断される事件の概要原告出生時においては、未熟児網膜症について、各種研究報告がなされており、その存在は認識されてきているものの、いまだ(旧)厚生省において、診断と治療に対する研究班が組織されている最中であり、報告書等もまだ出ておらず、また、未熟児網膜症の診断と治療につき、研修を受けられる施設もほとんどありませんでした。このような時期において、原告に対する未熟児網膜症の発見が遅れたため、両眼ともに視力が0.06となった事案について、被告の眼底検査義務、診断治療義務、転医義務違反が争われました。事件の経過原告は、昭和49年12月11日に妊娠31週、体重1508gで出生しました。原告は、被告病院において、保育器にて酸素投与等を受け、翌年1月23日に保育器より出て、2月21日に退院しました。その間、原告に対し、眼底検査は12月27日に1回行われ、「格別の変化がなく、次回検診の必要なし」とされていました。その後、3月28日に眼底検査を行った際も、「異常なし」と診断されたものの、4月9日の眼底検査上、異常が認められ、同月16日に他院を紹介受診したところ、両眼とも未熟児網膜症瘢痕期3度であると診断されました。最終的に原告の視力は両眼とも0.06となりました。原告出生時においては、未熟児網膜症について、各種研究報告がなされており、被告病院でも、その存在は認識され眼科医と協力し、未熟児網膜症を発見した場合には転医する体制をとっていました。しかし、いまだ未熟児網膜症に対する光凝固療法は有効な治療法として確立されているとは言えず、(旧)厚生省においても診断と治療に対する研究班が組織されている最中であり、報告書が公表されたのは昭和50年8月以降でした。また、未熟児網膜症の診断と治療につき、医師が研修を受けられる施設はほとんどなく、実際に被告病院眼科医も研修を受けていませんでした。事件の判決当該疾病の専門的研究者の間でその有効性と安全性が是認された新規の治療法が普及するには一定の時間を要し、医療機関の性格、その所在する地域の医療環境の特性、医師の専門分野等によってその普及に要する時間に差異があり、その知見の普及に要する時間と実施のための技術・設備等の普及に要する時間との間にも差異があるのが通例であり、また、当事者もこのような事情を前提にして診療契約の締結に至るのである。したがって、ある新規の治療法の存在を前提にして検査・診断・治療等に当たることが診療契約に基づき医療機関に要求される医療水準であるかどうかを決するについては、当該医療機関の性格、所在地域の医療環境の特性等の諸般の事情を考慮すべきであり、右の事情を捨象して、すべての医療機関について診療契約に基づき要求される医療水準を一律に解するのは相当でない。そして、新規の治療法に関する知見が当該医療機関と類似の特性を備えた医療機関に相当程度普及しており、当該医療機関において右知見を有することを期待することが相当と認められる場合には、特段の事情が存しない限り、右知見は右医療機関にとっての医療水準であるというべきである(最判平成7年6月9日第民集49巻6号1499頁)ポイント解説民事医療訴訟において、損害賠償責任が認められるためには、不法行為(民法709条※)の要件である(1)過失(故意は稀有)、(2)損害、(3)(過失等と損害の間に)因果関係が認められなければなりません。そして、医療訴訟における過失とは、「診療当時のいわゆる臨床医学の実践における医療水準」に満たない診療を行ったことと考えられています(最判昭和57年3月30日民集135号563頁)。一方で、わが国の医療提供体制は、大きく1次医療機関から3次医療機関まで定められており、それぞれの医療機関が有する診断機器等物理的設備に大きな差があることから、必然的に診断・治療能力に差が生じます。もちろん、診察の上、高次の医療機関による診療を行うべきと判断された場合には、転医を行うこととなりますが、致命的な希少疾患であっても、症状・所見に乏しい場合も多々あること、基礎となる診断機器等物理的設備に制限もあることから限界があるといえましょう。そこで、法的に求められる「診療当時のいわゆる臨床医学の実践における医療水準」が、医療機関の性格、所在地域等を問わず一律の水準が求められるのかが問題となります。本判決では、「新規治療法においては、ある一つの時点を境に、全国すべての医療機関に対して、一律に医療水準とするというのではなく、現実的に各医療機関に順次伝達していくという事情を踏まえ、医療機関の性格、所在地域の医療環境の特性等の諸般の事情を考慮すべき」と判示しました。しかし、本判決はガイドラインが作成されている等、すでに一定程度普及していると考えられる診断・治療については、医療機関の性質を問わず、一律の水準が求められ、ただ転医義務の問題が生ずるにすぎないと考えるのか、そうではなく現実に基づき、各医療機関の性質によって求められる水準が異なると考えるのかについては、言及していませんでした。ただ、その後の判決において、本判決を引用して、「人の生命及び健康を管理すべき業務(医業)に従事する者は、その業務の性質に照らし、危険防止のために実験上必要とされる最善の注意義務を要求されるのであるが(最判昭和36年2月16日民集15巻2号244頁)、具体的な個々の案件において、債務不履行又は不法行為をもって問われる医師の注意義務の基準となるべきものは、一般的には診療当時のいわゆる臨床医学の実践における医療水準である(最判昭和57年3月30日民集135号563頁)。そして、この臨床医学の実践における医療水準は、全国一律に絶対的な基準として考えるべきものではなく、診療に当たった当該医師の専門分野、所属する診療機関の性格、その所在する地域の医療環境の特性等の諸般の事情を考慮して決せられるべきものであるが(最判平成7年6月9日民集49巻6号1499頁)、医療水準は、医師の注意義務の基準(規範)となるものであるから、平均的医師が現に行っている医療慣行とは必ずしも一致するものではなく、医師が医療慣行に従った医療行為を行ったからといって、医療水準に従った注意義務を尽くしたと直ちにいうことはできない」(最判平成8年1月23日民集50巻1号1頁)と判示しており、これが現時点における医療水準についての判例となっていることから、現実に基づき「各医療機関の性質によって求められる水準が異なると考えられている」といえます。※参照条文(不法行為による損害賠償)第709条  故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。裁判例のリンク次のサイトでさらに詳しい裁判の内容がご覧いただけます(出現順)。最判平成7年6月9日民集49巻6号1499頁最判昭和57年3月30日民集135号563頁最判昭和36年2月16日民集15巻2号244頁最判平成8年1月23日民集50巻1号1頁

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ACC 2012 速報 「マルチスライスCCTAによるACS除外」の有用性示唆:ACRIN PA 4005

急性冠症候群(ACS)診断が疑われる低~中等度リスク患者を対象に、マルチスライス冠動脈CT造影(coronary CT angiography : CCTA)を用いてACSを除外した場合、除外例における30日間「死亡・心筋梗塞」発生率は1%未満と極めて低いことが、無作為化試験 "ACRIN PA 4005" の結果、明らかになった。米国ペンシルバニア大学のHarold Litt氏が、Late Breaking Clinical Trialsセッションにて報告した。同氏は「CCTAを用いたACS除外は安全で効率的だ」と結論している。本試験の対象は、ACSを疑う症状がありながら、心電図上虚血性変化を認めない救急外来(ER)受診1,370例である。全米5施設から登録された。ACSを除外し得た例は含まれておらず、全例、TIMIリスクスコアは2以下だった。平均年齢は50歳弱、男女ほぼ半数ずつだった。これら1,370例が、即時CCTA施行群(908例)と、通常の診療を行う対照群(462例)に無作為化された。CCTA群では64列以上のモダリティを用い、狭窄が50%未満であれば加療せず帰宅、対照群では各施設の判断にゆだねた。Litt氏によれば米国の「通常診療」では、ER受診時に心電図検査と血中マーカーを検査し、それでACSが除外できない場合、入院または日を改めての「負荷試験」というのが一般的だという。30日間追跡した結果、CCTA所見に基づくACS除外の安全性が確認された。すなわち、CCTAにより「狭窄率<50%」とされ、加療せず帰宅した患者は83%に上ったが、それらの「30日以内の心臓死・心筋梗塞」(第一評価項目)発生リスクは、0%(95%信頼区間[CI]:0.00~0.57%)。95%CI上限が、当初仮説で設定した「1%」を下回った。「30日以内の重篤イベント発生率<1%」は、米国ガイドラインが「低リスク」とする基準だという。加えて、全CCTA群と対照群の「死亡・心筋梗塞」、「冠血行再建術施行」発生率にも有意差はなかった。CCTAを用いた鑑別はまた、医療経済的にも好ましいと考えられた。ERからの退院率は、CCTA群で50%と、対照群の23%に比べ有意に高い。院内滞在時間も、CCTA群で有意に短かった。一方、心臓カテーテル検査、ER再受診、再入院、心臓専門医受診──はいずれも、両群の頻度に差はなかった。現在、Litt氏らは、CCTAによるACS除外の安全性・経済性が長期間維持されるか、1年間の追跡を継続中だという。

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深在性真菌症治療薬 カスポファンギン酢酸塩(商品名:カンサイダス)

深在性真菌症治療薬のカスポファンギン酢酸塩(商品名:カンサイダス点滴静注用50mg、同点滴静注用70mg)が2012年1月18日に製造承認を取得した。適応は「(1)真菌感染が疑われる発熱性好中球減少症(FN)、(2)カンジダ症(食道カンジダ症、侵襲性カンジダ症)、アスペルギルス症(侵襲性アスペルギルス症、慢性壊死性肺アスペルギルス症、肺アスペルギローマ)」となっている。深在性真菌症の現状深在性真菌症は、主に、白血病をはじめとした血液疾患やがんに対する化学療法、造血幹細胞移植における好中球減少時など、免疫力が低下している患者において、深部組織や臓器にカンジダ属やアスペルギルス属などが日和見感染することで感染を引き起こす疾患である。一般に重症化しやすく、治療が難しい感染症である。我が国における深在性真菌症の患者数は年々、増加傾向にあり、その中でもアスペルギルス症の増加が著しいとの報告がある1)。カスポファンギンの承認これまで、アゾール系、ポリエン系、フロロピリミジン系、キャンディン系などの深在性真菌症治療薬が使用されてきた。この度、承認されたカスポファンギンは、国内で2剤目となるキャンディン系抗真菌薬で、2000年12月に世界初のキャンディン系として承認されて以来、これまでに世界84ヵ国(2011年9月現在)と、多くの臨床現場で使用されてきた。カスポファンギンは既に、IDSA(米国感染症学会)のガイドラインをはじめ、さまざまな海外のガイドラインで推奨されている。このため、深在性真菌症治療に携わる医療関係者からの認知度は高く、国内での承認が待ち望まれてきた薬剤である。特に、カスポファンギンがキャンディン系で初めて「真菌感染が疑われる発熱性好中球減少症」の適応を取得した意義は大きい。発熱性好中球減少症におけるエンピリック治療発熱性好中球減少症とは好中球が1,000/μL未満で且つ、500/μL未満になる可能性がある状況下で、腋窩で37.5℃以上(口腔内温≧38℃)の発熱が生じ、薬剤熱、腫瘍熱、膠原病、アレルギーなど原因がはっきりわかっているものを除外できる疾患をいう。発熱性好中球減少症は血液培養で10%程度の陽性率と低く、臨床的に感染巣が明らかなものは10~20%程度に留まり、70~80%で原因不明の発熱がおこる2)。このようなことから発熱性好中球減少症では、起因菌が特定できないまま、細菌や真菌感染を疑い、エンピリック治療が行われることが多い。しかしながら、これまで、キャンディン系には、発熱性好中球減少症の適応はなかった。この度、カスポファンギンが適応を取得したことにより、深在性真菌症治療に新たな選択肢が加わることは、患者や医療関係者にとって福音となるであろう。まとめ医療技術の発展による、骨髄・臓器移植、がんに対する化学療法などといった高度医療の普及や高齢化社会の進行により、患者の免疫低下リスクが高まる要因は増えていくと考えられる。そして、免疫低下患者の増加に伴い、深在性真菌症も増加することが予想される。このような背景の中、カスポファンギンが新たな選択肢となり、深在性真菌症治療の幅が広がることは、医療関係者にとって新たな治療戦略となる。そして、それは患者やその家族の明日への希望につながるといえよう。

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急性単純性膀胱炎に対するセフポドキシムvs. シプロフロキサシン

急性単純性膀胱炎への抗菌薬投与について、セフェム系のセフポドキシム(商品名:バナンほか)はフルオロキノロン系のシプロフロキサシン(同:シプロキサンほか)に対し、非劣性を示さなかったことが報告された。米国・マイアミ大学のThomas M. Hooton氏らが、女性患者300人を対象に行った無作為化二重盲検試験の結果、明らかにしたもので、JAMA誌2012年2月8日号で発表した。フルオロキノロン系の抗菌薬は単純性膀胱炎に対し最も有効として一般的に使用されている一方で、その耐性大腸菌発生率の上昇が世界的に報告されており、最近公表された米国感染症学会のガイドラインでは、使用の制限が勧告されている。同疾患に対するセフポドキシムの使用については、これまで十分な検討データがなかった。3日間投与し、30日後の治癒率を比較研究グループは、2005~2009年にかけて、18~55歳の急性単純性膀胱炎と診断された女性300人を、無作為に二群に分け検討した。一方にはシプロフロキサシン(250mg、1日2回)を、もう一方にはセフポドキシム(100mg、1日2回)をそれぞれ3日間投与した。治療終了後、5~9日目と、28~30日目に、アウトカムを評価した。主要アウトカムは、30日後の診察時における臨床的治癒とした。副次アウトカムは、治療終了後5~9日目の診察時における、臨床的・微生物学的治癒と、両診察時における膣の大腸菌コロニー形成とされた。30日後臨床的治癒率、5~9日後微生物学的治癒率ともに非劣性示さずその結果、追跡不能を治癒とみなした場合では、30日後の臨床的治癒率は、シプロフロキサシン群が93%(150人中139人)に対し、セフポドキシム群は82%(150人中123人)で、治癒率格差は11%(95%信頼区間:3~18)と、事前に定義した非劣性マージン10%未満の基準を満たさなかった。また、追跡不能を治療に反応しなかったとみなした場合では、30日後臨床的治癒率は、それぞれ83%(150人中124人)と71%(150人中106人)で、治癒率格差は12%(同:3~21)で、非劣性マージン基準を満たさなかった。治療終了後5~9日目の微生物学的治癒率も、各群96%と81%、同率格差は15%で基準を満たさなかった。治療終了後の初回診察時に、膣大腸菌のコロニー形成が認められたのは、シプロフロキサシン群で16%に対し、セフポドキシム群では40%に上った。結果を受けてHooton氏は、「他の広域β-ラクタムへの重大な生態学的影響の懸念は残るが、セフポドキシムを急性単純性膀胱炎に対し、シプロフロキサシンに代わって第一選択薬として使用することは支持できない」と結論している。(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)

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P2Y12阻害薬cangrelor、待機的CABG患者の橋渡し使用の有効性と安全性

チエノピリジン系抗血小板薬を服用する待機的冠動脈バイパス術(CABG)患者について、術前に同薬服用を中止後、代わりにP2Y12阻害薬cangrelorを投与することで、何も服用しない場合に比べて治療期間中の血小板反応性は低く維持できることが報告された。また同薬投与群のCABG関連の有意な出血リスク増大が認められなかったことも報告された。米国・フロリダ大学のDominick J. Angiolillo氏らによる試験の結果、明らかにされたもので、JAMA誌2012年1月18日号で発表された。診療ガイドラインでは、出血リスク増大のため、CABG実施前5~7日のチエノピリジン系抗血小板薬の服用中止が勧告されている。CABG実施前、治療群にはcangrelorを48時間以上投与研究グループはP2Y12阻害薬cangrelorの橋渡し使用について検討するため、2009年1月~2011年4月にかけて、急性冠症候群または冠動脈ステント留置術を受け、CABG待機中の患者210人を対象とする、多施設共同前向き無作為化プラセボ対照二重盲検試験を行った。被験者は、チエノピリジン系抗血小板薬を服用していた。研究グループは被験者を無作為に二群に分け、チエノピリジン系抗血小板薬を中止後、一方の群には可逆的P2Y12阻害薬cangrelorを0.75μg/kg/分静注投与し、もう一方の群にはプラセボを、それぞれ48時間以上、CABG実施の直前まで投与した。主要有効性エンドポイントは、血小板反応性(P2Y12反応単位PRUで測定)で連日評価した。また主要安全性エンドポイントはCABG関連の出血とした。PRU240未満、治療群でプラセボ群の約5倍結果、全治療期間中の血小板反応性について、PRUが240未満と低かったのは、プラセボ群19.0%(84人中16人)に対し、cangrelor群では98.8%(84人中83人)と有意に高率だった(相対リスク:5.2、95%信頼区間:3.3~8.1、p<0.001)。CABG関連の過度な出血の発生率は、プラセボ群10.4%に対し、cangrelor群11.8%であり、両群で有意差は認められなかった(p=0.763)。軽度の出血エピソードはcangrelorで数的には多かったが、CABG関連の重大出血に有意差は認められなかった。(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)

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急性心筋梗塞発症後の血清カリウム値と院内死亡率とにUカーブの関連

急性心筋梗塞発症後の血清カリウム値と院内死亡率の間には、3.5~4.0mEq/L未満群を最小値としたUカーブの関連が認められることが明らかにされた。米国Emory大学のAbhinav Goyal氏らが、4万人弱の急性心筋梗塞の患者について行った、後ろ向きコホート試験の結果、明らかにしたもので、JAMA誌2012年1月11日号で発表した。現行の臨床ガイドラインでは、急性心筋梗塞患者の血清カリウム値は、4.0~5.0mEq/Lに保つよう勧告されている。入院中のカリウム値により7群に分類、院内死亡率や心室細胞・心停止発生率を比較研究グループは、2000年1月1日~2008年12月31日にかけて、米国内67ヵ所の病院で治療を受けた3万8,689人の急性心筋梗塞の患者について、後ろ向き調査を行った。被験者は、入院中の平均血清カリウム値によって、3.0mEq/L未満、3.0~3.5mEq/L未満、3.5~4.0mEq/L未満、4.0~4.5mEq/L未満、4.5~5.0mEq/L未満、5.0~5.5mEq/L未満、5.5mEq/L以上、の7群に分類され、階層ロジスティック回帰分析にて、血清カリウム値とアウトカムの関係が調べられた。主評価項目は、院内全死亡率と、心室細動と心停止の複合アウトカムだった。院内死亡率は3.5~4.0mEq/Lを基準に、4.5~5.0mEq/Lは約2倍、3.0~3.5mEq/Lは約1.5倍結果、血清カリウム値と院内死亡率の間には、3.5~4.0mEq/L未満群を最も低率にしたUカーブの関係が認められた。具体的には、血清カリウム値が3.5~4.0mEq/L未満群の院内死亡率は4.8%(95%信頼区間:4.4~5.2)だったのに対し、4.0~4.5mEq/L未満群では5.0%(同:4.7~5.3)、多変量補正後オッズ比は1.19(同:1.04~1.36)であった。さらに、4.5~5.0mEq/L未満群では10.0%(同:9.1~10.9)、同オッズ比は1.99(同:1.68~2.36)であった。5.0mEq/L以上の2群では、同死亡率やオッズ比はさらに高かった。一方で、血清カリウム値が3.0~3.5mEq/L未満や3.0mEq/L未満の群でも、院内死亡率は3.5~4.0 mEq/L未満群より高率で、同オッズ比はそれぞれ1.45、8.11だった。心室細動と心停止の統合発生率についても、3.5~4.0mEq/L未満群を基準に、3.0mEq/L未満や5.0mEq/L以上の2群で、発生リスクが有意に増大した。(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)

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プライマリ・ケア保健師の導入が非伝染性疾患の管理に有効

訓練を受けた地域保健師が、確立されたガイドラインに基づいて行うイランのプライマリ・ケア・システム(「Behvarzシステム」と呼ばれる)は、非伝染性疾患の予防や管理に有効なことが、イラン・テヘラン医科大学のFarshad Farzadfar氏らの調査で示された。イランなどの中所得国では、非伝染性疾患やそのリスク因子が疾病負担の主な要因となっている。非伝染性疾患やそのリスク因子の地域住民レベルにおけるマネジメントが、プライマリ・ケア・システムによって可能か否かに関するエビデンスはほとんどないという。Lancet誌2012年1月7日号(オンライン版2011年12月9日号)掲載の報告。Behvarzシステムの効果と地域保健師の数との関連を検討する観察試験研究グループは、イラン農村部の糖尿病および高血圧の管理におけるプライマリ・ケア・システム(Behvarzシステム)の効果を評価し、地域保健師の数との関連について検討する観察試験を行った。2005年非伝染性疾患サーベイランス調査(NCDSS)から、空腹時血糖(FPG)、収縮期血圧(SBP)、BMI、薬物の使用、社会人口学的変数のデータを得た。Behvarzの保健師数のデータは、2006年Population and Housing Censusおよび2005年Outpatient Care Centre Mapping Surveyから収集した。FPG、SBP、FPGとSBPの関連、Behvarzの保健師数を2つの統計学的手法を用いて解析した。保健師プログラムの数や範囲を拡張すべきNCDSSから25歳以上の6万5,619人(農村部地域:1万1,686人)のデータが得られた。このうちSBPのデータが6万4,694人(同:1万1,521人)から、FPGのデータは5万202人(同:9,337人)から得られた。糖尿病患者の39.2%、高血圧患者の35.7%が治療を受け、男性よりも女性で、農村部よりも都市部で受療率が高かった。治療により、平均FPGは農村部で1.34mmol/L低下し、都市部では0.21mmol/L低下した。治療を受けた都市部の高血圧患者は、治療を受けなかった患者に比べSBPが3.8mmHg低下した。成人1,000人当たりのBehvarz保健師が1人増えるごとに、地区平均でFPGが0.09mmol/L低下し(p=0.02)、SBPは0.53mmHg低下した(p=0.28)。著者は、「訓練を受けた地域保健師が、確立されたガイドラインに基づいて行うプライマリ・ケア・システムは、非伝染性疾患の予防や管理に有効である」と結論し、「イランのプライマリ・ケア・システムは、人員の少ない地域の診療能を改善するために、保健師によるプログラムの数や対象とする範囲を拡張すべき」と指摘している。(菅野守:医学ライター)

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出生前母体ステロイド投与、在胎23~25週の早産児の死亡・神経発達障害リスクを低減

 在胎23~25週の早産児について、出生前副腎皮質ステロイド投与により、生後18~22ヵ月の死亡または神経発達障害の発生リスクを低下することが明らかにされた。1995年に発表された最新ガイドラインでは、在胎24~34週での早期分娩に関して母体への出産前ステロイド投与が推奨されているが、24週以前の早産についてはデータが不足していた。一方でそれら早産児の多くが集中治療を受けていた。米国・アラバマ大学のWaldemar A. Carlo氏らが、早産児約1万児について追跡し明らかにしたもので、JAMA誌2011年12月7日号で発表した。6年間、全米23ヵ所から被験児を登録し検討 研究グループは、出生前ステロイド投与の効果について、在胎22~23週出生児について検討することを目的とした。1993年1月1日~2009年12月31日にかけて、全米23ヵ所の大学付属周産期医療センターで、在胎22~25週で生まれ、出生時体重が401~1000gだった1万541児について、前向きコホート試験を行った。 出生前の母体副腎皮質ステロイド投与と、生後18~22ヵ月の死亡率や神経発達障害との関連について調べた。 神経発達障害に関する評価は、1993~2008年に生まれ、生後18~22ヵ月時点まで生存した5,691児のうち4,924児(86.5%)について行われた。なお評価者には、被験者の母体副腎皮質ステロイド投与の有無に関する情報は知らされなかった。在胎22週では、死亡・神経発達障害発生の有意な低下は認められず その結果、生後18~22ヵ月時点における、死亡または神経発達障害の発生率は、在胎23週児でステロイド群が83.4%、非ステロイド群が90.5%と、ステロイド群で低かった(補正後オッズ比:0.58)。在胎24週児でもステロイド群68.4%、非ステロイド群80.3%(補正後オッズ比:0.62)、在胎25週児でも同52.7%、67.9%(補正後オッズ比:0.61)と、いずれもステロイド群で低かった。 しかし、在胎22週児では、両群で有意差は認められなかった。 在胎23~25週児では、母体への副腎皮質ステロイド投与によって、生後18~22ヵ月までの死亡や、院内死亡、死亡・脳室内出血・脳室周囲白質軟化症、死亡または壊死性全腸炎、のいずれの発生リスクも有意に低下した。 一方で在胎22週児では、母体への副腎皮質ステロイド投与により、死亡または壊死性全腸炎リスクについてのみステロイド群での有意な低下が認められた(ステロイド群73.5%対非ステロイド群84.5%、補正後オッズ比:0.54、95%信頼区間:0.30~0.97)。

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選択的ニューロキニン1受容体拮抗型制吐剤 ホスアプレピタントメグルミン(商品名:プロイメンド)

がん化学療法に伴う悪心・嘔吐に対する制吐剤として、選択的ニューロキニン1(NK1)受容体拮抗薬であるホスアプレピタントメグルミン(商品名:プロイメンド点滴静注用150mg、以下プロイメンド)が、2011年12月9日に発売された。本剤は、2009年12月に発売された経口制吐剤アプレピタント(商品名:イメンドカプセル)のプロドラッグ体の注射剤である。がん化学療法における制吐療法の現状と課題抗がん剤の有害事象の1つである悪心・嘔吐は、患者さんのQOLを著しく低下させ、治療継続を妨げる大きな要因となる。その発現時期により、抗がん剤投与後24時間までに発症する「急性」の悪心・嘔吐と、24時間以降に発症する「遅発性」の悪心・嘔吐に分けられ、急性には主にセロトニンが、遅発性には主に中枢でのサブスタンスPが関与するとされている。急性の悪心・嘔吐については、1990年代に発売された5HT3受容体拮抗薬により大きく改善されたが、遅発性の悪心・嘔吐には抑制効果が不十分であった。その後、サブスタンスPとNK1受容体の結合を阻害するアプレピタントが、急性および遅発性の悪心・嘔吐に対して高い有効性が認められ、2009年12月に発売された。さらに、2010年4月、半減期が長く遅発性の悪心・嘔吐にも効果を示す5HT3受容体拮抗薬のパロノセトロンが発売され、同年5月には日本癌治療学会から制吐薬適正使用ガイドラインが発行されたことにより、制吐療法への関心が高まった。しかし、患者さんが症状を訴えられずにいたり、近年普及してきている外来化学療法では、患者さんが自宅に戻るため悪心・嘔吐症状が把握しにくいなど、症状を見逃す可能性も少なくない。今後、患者さんの症状を拾い上げるためのさらなる工夫が必要と思われる。一方、アプレピタントは経口剤であることから、咽頭・喉頭・食道がんなどの患者さんでは服用が難しく、また、患者さんの認識不足や飲み忘れにより、処方しても服用されないことが懸念されることや、抗がん剤には点滴静注で投与される薬剤も多いことなどから、医療現場では注射剤の発売が期待されていた。注射剤により確実に投与可能今回、発売されたプロイメンドは、アプレピタントのプロドラッグ体であり、静脈内投与後、速やかにアプレピタントに代謝される注射剤である。そのため、経口剤の服用が困難な患者さんにも投与可能であり、飲み忘れを懸念することなく確実に投与できる。本剤1回点滴静注投与によって、急性・遅発性ともに、アプレピタント3日間投与と同等の効果が得られることが海外第Ⅲ相二重盲検比較試験において示されている。国内では、グラニセトロン(iv)+デキサメタゾンリン酸エステル(iv)の2剤併用群(標準治療群)と、この2剤にプロイメンドを追加した3剤併用群(プロイメンド群)を比較した第Ⅲ相二重盲検比較試験において、全期間における有効率がプロイメンド群64.2%と、標準治療群47.3%に比べて有意に(p<0.05)高い有効率が得られた。なお、本試験では26.4%に副作用(臨床検査値異常を含む)が認められている。主な副作用は、便秘(9.2%)、ALT(GPT)上昇(6.9%)、しゃっくり(5.7%)、注入部位疼痛・滴下投与部位痛(5.2%)などであった(承認時)。また、重大な副作用として、皮膚粘膜眼症候群(Stevens-Johnson症候群)、穿孔性十二指腸潰瘍、アナフィラキシー反応が報告されている(アプレピタントでの報告を含む)。ガイドラインにおける推奨2010年5月発行の制吐薬適正使用ガイドラインでは、高度催吐リスクの抗がん剤・レジメン、中等度催吐リスクの抗がん剤・レジメンのうちカルボプラチン、イホスファミド、イリノテカン、メトトレキサートなどを使用する際には、アプレピタント+5HT3受容体拮抗薬+デキサメタゾンの3剤併用が推奨されている。すでに米国など世界30ヵ国以上でプロイメンドが発売されており、ASCOガイドライン(2011年改訂版)やNCCNガイドライン(2011年3月改訂版)には、プロイメンド+5HT3受容体拮抗薬+デキサメタゾンの3剤併用が追記されている。わが国の制吐薬適正使用ガイドラインにおいても、次回改訂時に追記されることが予想される。がん化学療法におけるQOL改善と治療継続に期待プロイメンドの登場により、アプレピタントが服用困難ながん患者さんへの投与が可能となった。また、患者さんの服薬コンプライアンスによらず、確実に投与できることも大きなメリットと言えよう。医療者側においても、点滴ラインから一連の投与を行うレジメンに組み込みやすいと思われる。がん化学療法においては、薬剤・レジメンの催吐リスク、性別、年齢、前治療などを考慮した適切な制吐剤により悪心・嘔吐を予防することが、がん治療の継続につながる。プロイメンドが、より多くのがん患者さんにおけるQOLの改善、がん化学療法の継続に貢献することが期待される。

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がん化学療法における制吐療法に新たな選択肢

がん化学療法に伴う悪心・嘔吐に対する制吐剤として、選択的ニューロキニン1(NK1)受容体拮抗薬であるホスアプレピタントメグルミン(商品名:プロイメンド点滴静注用150mg、以下プロイメンド)が、本日(12月9日)発売された。本剤は、2009年12月に発売された経口制吐剤アプレピタント(商品名:イメンドカプセル)のプロドラッグ体の注射剤である。がん化学療法における制吐療法の現状と課題抗がん剤の有害事象の1つである悪心・嘔吐は、患者さんのQOLを著しく低下させ、治療継続を妨げる大きな要因となる。その発現時期により、抗がん剤投与後24時間までに発症する「急性」の悪心・嘔吐と、24時間以降に発症する「遅発性」の悪心・嘔吐に分けられ、急性には主にセロトニンが、遅発性には主に中枢でのサブスタンスPが関与するとされている。急性の悪心・嘔吐については、1990年代に発売された5HT3受容体拮抗薬により大きく改善されたが、遅発性の悪心・嘔吐には抑制効果が不十分であった。その後、サブスタンスPとNK1受容体の結合を阻害するアプレピタントが、急性および遅発性の悪心・嘔吐に対して高い有効性が認められ、2009年12月に発売された。さらに、2010年4月、半減期が長く遅発性の悪心・嘔吐にも効果を示す5HT3受容体拮抗薬のパロノセトロンが発売され、同年5月には日本癌治療学会から制吐薬適正使用ガイドラインが発行されたことにより、制吐療法への関心が高まった。しかし、患者さんが症状を訴えられずにいたり、近年普及してきている外来化学療法では、患者さんが自宅に戻るため悪心・嘔吐症状が把握しにくいなど、症状を見逃す可能性も少なくない。今後、患者さんの症状を拾い上げるためのさらなる工夫が必要と思われる。一方、アプレピタントは経口剤であることから、咽頭・喉頭・食道がんなどの患者さんでは服用が難しく、また、患者さんの認識不足や飲み忘れにより、処方しても服用されないことが懸念されることや、抗がん剤には点滴静注で投与される薬剤も多いことなどから、医療現場では注射剤の発売が期待されていた。続きはこちら

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研究論文の質を高め、インパクトあるものにするには?

STROBE(疫学で観察研究の報告を強化する)やCONSORT(試験報告の標準を強化)のようなレポートガイドラインに基づく付加的レビューを行えば、原稿の質を高めることができることが報告された。ただし、その質的向上はわずかで、明確に立証することはできなかったという。スペイン・Elsevier-Barcelona社Medicina ClinicaのE Cobo氏らが盲検無作為化試験を行い報告した。BMJ誌2011年11月26日号(オンライン版2011年11月22日号)掲載報告より。従来レビュー単独群と、付加的レビューを加味した群に無作為化し、原稿改善を評価試験は、2008年5月~2009年4月にMedicina Clinica学術誌に提出され、刊行にふさわしいとみなされたオリジナルリサーチ研究343例を対象とした。そのうち従来法レビューを受けている126例を、対照群(従来法のピアレビュー単独)と介入群(従来法レビューに加えて、レポートガイドラインから見つからない項目を探す付加的レビューを行う)に無作為化し、著者に戻したのち、レビューに基づき改稿された原稿の質を、5ポイント制のリカート尺度で評価するという方法で検討が行われた。主要アウトカムは、原稿の質とし、副次的アウトカムは、論文中の特異的な項目(ガイドラインでのチェックポイント)についての平均的な質とされた。主要解析は、基線因子の補正後、無作為化群全体で比較をした(共分散分析)。感度解析はレビュー群間で比較され、レビュアー示唆に対する厳守はリカート尺度で評価した。付加的レビュー実施群のほうが原稿の質は改善、しかし著者が耳を傾けるのは……一連の論文126例のうち34例は刊行にふさわしくないものだったため、残りの92例が、従来法レビュー単独群(41例)と付加的レビュー実施群(51例)に割り付けられた。また従来法レビュー群に割り付けられた論文のうち4例は、プロトコルから逸脱しており、それらは、レポートガイドラインに基づく付加的レビューを受けた。解析から、付加的レビューを受けた原稿のほうが改善していることがうかがえた(無作為化群間比較:0.25、95%信頼区間:0.05~0.54、レビュー群間比較:0.33、同:0.03~0.63)。基線から改善した原稿は、従来法レビュー単独群よりも付加的レビュー実施群のほうが多かった[22(43%)vs. 8(20%)、格差:23.6%(同:3.2~44.0%)、NNT:4.2(同:2.3~31.2)、相対リスク:2.21(同:1.10~4.44)]。一方で、付加的レビュー群の著者は、付加的レビューからのサジェスチョンよりも、従来法レビューからのサジェスチョンのほうを優先していた(リカート平均上昇値:0.43、同:0.19~0.67)。上記を踏まえて著者は、「レポートガイドラインに基づく付加的レビューは、原稿の質を改善する。しかし、観察された影響はわずかで、明確に立証することはできなかった」と報告。また、「各論文執筆者は、付加的レビューからのサジェスチョンより従来法レビューからのサジェスチョンに従っていた。このことは、調査方法論の高水準を厳守することが難しいことを示すものである。質の高い影響力のある論文とするには、著者は、研究をまさに始める段階で、レポートガイドラインが求める要件を知っておかなくてはならない」と結論している。

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脳卒中再発リスク、収縮期血圧120mmHg未満でも増大

非心原性虚血性脳卒中患者の脳卒中再発リスクは、収縮期血圧値が130~140mmHg未満で最も低く、低過ぎても(120mmHg未満)、高過ぎても(140mmHg以上)、再発リスクは増大することが明らかにされた。米国・カリフォルニア大学サン・ディエゴ校のBruce Ovbiagele氏らが、2万人超について行った事後観察研究の結果、明らかにしたもので、JAMA誌2011年11月16日号で発表した。脳卒中再発予防のガイドラインでは、収縮期血圧が低いほどリスクはより低下するとして、120mmHgも正常値としている。35ヵ国、695ヵ所で最大2.5年追跡研究グループは、2003年9月~2006年7月にかけて35ヵ国695ヵ所の医療センターを通じ、非心原性虚血性脳卒中を発症して間もない50歳以上、2万330人を対象に、事後観察研究を開始し、2008年2月8日まで、最大2.5年追跡した。被験者は、平均収縮期血圧値によって正常超低値群(120mmHg未満)、正常低値群(120~130mmHg未満)、正常高値群(130~140mmHg未満)、高値群(140~150mmHg未満)、超高値群(150mmHg以上)の5群に分けられた。主要アウトカムは、種類を問わないあらゆる脳卒中の再発とした。副次アウトカムは、脳卒中・心筋梗塞・血管疾患による死亡の複合とされた。130~140mmHg群に比べ、120mmHg未満群の脳卒中再発リスクは約1.3倍結果、脳卒中再発率は、血圧値の低い群からそれぞれ、8.0%、7.2%、6.8%、8.7%、14.1%だった。130~140mmHg群を基準にした場合、脳卒中再発に関する補正後ハザード比は、120mmHg未満群が1.29(95%信頼区間:1.07~1.56)、140~150mmHg未満群が1.23(同:1.07~1.41)、150mmHg以上群が2.08(同:1.83~2.37)だった。また副次アウトカムについては、130~140mmHg群を基準にした場合、120mmHg未満群が1.31(95%信頼区間:1.13~1.52)、120~130mmHg未満群が1.16(同:1.03~1.31)、140~150mmHg未満群が1.24(同:1.11~1.39)、150mmHg以上群が1.94(同:1.74~2.16)だった。(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)

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