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2301.

前糖尿病状態は心血管疾患リスクと関連/BMJ

 前糖尿病状態(耐糖能異常、空腹時血糖異常、HbA1c高値)は心血管疾患のリスク増加と関連しており、空腹時血糖値5.6mmol/L(=100.8mg/dL)以上またはHbA1c 39mmol/mol(NGSP 5.7%)以上で健康リスクが高まる可能性があることを、中国・第一人民病院のYuli Huang氏らが、前向きコホート研究のシステマティックレビューとメタ解析の結果、報告した。前糖尿病状態の患者は世界的に増えているが、前糖尿病状態を定義する空腹時血糖異常やHbA1cのカットオフ値はガイドラインで異なっている。また、全死因死亡および心血管イベントとの関連性に関する報告も一貫していなかった。BMJ誌2016年11月23日号掲載の報告。前向きコホート研究53件、計約160万人のメタ解析を実施 研究グループは、電子データベース(PubMed、Embase、Google Schoar)を用い、複合心血管イベント(冠動脈疾患、脳卒中、その他の心血管疾患)、冠動脈疾患、脳卒中および全死因死亡と、前糖尿病状態との関連について、補正後相対リスクおよび95%信頼区間(CI)が報告されている、一般集団での前向きコホート研究を特定し、メタ解析を行った。 適格研究の選択と評価は、研究者2人が独立して実施。前向きコホート研究53件、合計161万1,339例が解析に組み込まれた。 前糖尿病状態は、空腹時血糖異常(空腹時血糖値が米国糖尿病学会基準[IFG-ADA]で5.6~6.9mmol/L、WHO基準[IFG-WHO]で6.1~6.9mmol/L)、耐糖能異常(経口ブドウ糖負荷試験2時間値が7.8~11.0mmol/L)、またはHbA1c高値(ADA基準で39~47mmol/mol[5.7~6.4%]、英国立臨床評価研究所[NICE]ガイドラインで42~47mmol/mol[6.0~6.4%])と定義した。 主要評価項目は、全死因死亡および心血管イベントの相対リスク(95%CI)を算出して評価した。耐糖能異常、空腹時血糖異常で心血管イベントおよび全死因死亡のリスクが増加 追跡期間中央値は9.5年であった。正常血糖と比較すると、前糖尿病状態は複合心血管イベント(相対リスクはIFG-ADA基準の場合1.13、IFG-WHO基準の場合1.26、耐糖能異常1.30)、冠動脈疾患(同様にそれぞれ1.10、1.18、1.20)、脳卒中(1.06、1.17、1.20)、全死因死亡(1.13、1.13、1.32)のリスク増加と関連していた。 HbA1c高値(ADAの39~47mmol/mol、またはNICEの42~47mmol/mol)は、どちらの基準も複合心血管イベント(相対リスクはそれぞれ1.21、1.25)および冠動脈疾患(同様に1.15、1.28)のリスク増加と関連していたが、脳卒中や全死因死亡のリスクとの関連は認められなかった。 なお、著者は研究の限界として、研究のほとんどが糖尿病の発症について調整しておらず、約半数は空腹時血糖値のみを測定したものであったことなどを挙げている。

2302.

治療効果の男女差、慎重な精査が必要/BMJ

 性別と治療効果との統計学的に有意な相互作用というのは、思っていた予想よりもわずかに多く認められるだけで、また臨床的なエビデンスはほとんどないことを、米国・Meta-Research Innovation Center at Stanford(METRICS)のJoshua D Wallach氏らが、コクランメタ解析のシステマティックレビューを行い報告した。著者は、「執筆者、読者、ならびに学術誌のレビュワーと編集者は、サブグループ解析の信頼性を慎重に精査しなければならない。これまでに報告されている統計学的に有意な治療効果の男女差は、概して生物学的信頼性や臨床的重要性が乏しい」とまとめている。BMJ誌2016年11月24日号掲載の報告。コクランメタ解析41報で示されたサブグループ解析を評価 臨床試験では、サブグループ解析がしばしば実施され、そのサブグループ間での治療効果の違いが主張されることがある。とくに、男性と女性では生理学的、薬物動態学的および薬力学的に差がみられる可能性があるため、治療効果の男女差への関心は高い。しかし、サブグループ解析は、個別化治療を最適化する可能性がある一方で、不適切な方法を提供する可能性もあることが指摘されてもいる。 研究グループは、Cochrane Database of Systematic Reviews(CDSR)とPubMedを用い、無作為化比較試験(RCT)のみを組み込んだメタ解析で、かつフォレストプロットにて少なくとも1つの性別のサブグループ解析を行っているレビュー論文41報を特定し、性別と治療効果に関する統計学的に有意(p<0.05)な相互作用の頻度・妥当性・関連性を評価した。 41報には、計311のRCT(対象が男女両方162試験、男性のみ46試験、女性のみ103試験)が含まれた。性別で治療効果に統計学的に有意差が認められる頻度は少ない 全体で、治療効果のサブグループ解析結果は109件あり、このうち8件(7%)で治療効果に性別で統計学的な有意差が認められていた。個別にみると、男女両方を対象としたRCT162試験のうち、15試験(9%)で統計学的に有意な性別と治療効果の相互作用が示された。また、4件は、最初に発表されたRCTでは統計学的に有意な性別と治療効果の相互作用が示されていたが、他のRCTを含めたメタ解析ではその有意性が認められず、最初に発表されたRCTのデータを除いた時に統計学的有意差を示したメタ解析はなかった。 全体で性別と治療効果との統計学的に有意な相互作用が確認された8件のうち、3件のみが女性と比較し男性において治療の違いの影響について、CDSRのレビュワーによって検討されていた。 これらの結果のうち、最近のガイドラインに反映されているものはなく、1件について “UpToDate”(オンライン臨床意思決定支援システム)で、性別の違いに基づいた管理が提案されていた(狭窄率が50~69%の症候性頸動脈狭窄症患者は、男性に対しては手術を行う)。

2303.

軽症喘息への低用量吸入ステロイドは?/Lancet

 症状発現頻度が週に0~2日の軽症喘息患者に対する低用量吸入コルチコステロイド(ICS)の投与は、症状増悪リスクを減らし、肺機能低下の予防効果もあることが示された。オーストラリア・シドニー大学のHelen K. Reddel氏らが、7,000例超の患者を対象に行ったプラセボ対照無作為化比較試験「START」の、事後解析の結果で、Lancet誌オンライン版2016年11月29日号で発表した。ICSは、喘息増悪と死亡率の低下に非常に有効であるが、症状発現頻度の低い喘息患者は、投与の対象に含まれていない。一方で、週に2日超の患者への投与は推奨されているが、そこを基準とするエビデンスは乏しかった。初回重度喘息関連イベント発生までの期間を比較 START(Steroid Treatment As Regular Therapy)試験は、32ヵ国の医療機関を通じて、2年以内に軽症の喘息診断を受け、コルチコステロイドの定期服用歴のない、4~66歳の患者7,138例を対象に行われた。被験者は無作為に2群に割り付けられ、一方には吸入ブデソニド400μg(11歳未満は200μg)/日を、もう一方の群にはプラセボが投与された。被験者は3ヵ月ごとにクリニックを受診、試験は3年間にわたって行われた。 主要評価項目は、初回重度喘息関連イベント(SARE:入院・救急外来診察・死亡)発生までの期間と、気管支拡張薬投与後の肺機能のベースラインからの変化だった。 ベースラインでの症状発現頻度により被験者をグループ化し、同評価項目との関連について分析した。重度増悪リスクもおよそ半減 ベースラインの被験者は、平均年齢24(SD15)歳、症状発現頻度は、週に0~1日が31%、1超~2日が27%、2日超が43%だった。 SARE発生までの期間は、ベースラインの症状発現頻度別の全グループで、ICS群がプラセボ群より長かった。ICS群 vs.プラセボ群のハザード比は、0~1日/週グループが0.54(95%信頼区間[CI]:0.34~0.86)、1超~2日/週グループが0.60(0.39~0.93)、2日超/週グループが0.57(0.41~0.79)だった(相互作用に関するp=0.94)。 ベースラインから3年時点の、気管支拡張剤投与後の肺機能低下もいずれもプラセボ群よりも少なかった(相互作用に関するp=0.32)。 さらに、経口・全身性コルチコステロイド投与を必要とする重度増悪の発生頻度も、すべての頻度グループで減少した(各グループの率比、0.48、0.56、0.66、相互作用に関するp=0.11)。 ICS群はプラセボ群に比べ、ベースラインの症状発現頻度にかかわらず肺機能が高く(相互作用のp=0.43)、無症状日数も有意に多かった(全3グループのp<0.0001、相互作用のp=0.53)。 これらの結果は、被験者をあらゆるガイドラインに則っていわゆる軽症持続型 vs.間欠型で層別化しても、類似していた。 著者は、「結果は、ICS投与について、週に2日超の患者という設定は支持しないものだった。軽症喘息患者に対する治療推奨は、リスク低下と症状の両方を考慮すべきであることを示唆する結果だった」とまとめている。

2304.

科学的検証の重要性(解説:岡 慎一氏)-622

 妊婦、とくに母子感染予防に関するランダム化比較試験(RCT)は、なかなかやりにくいというのが定説であった。事実、HIV母子感染予防に関しても、AZT単剤の時代およびAZT+3TC+LPV/rが広く使われてきた時代においても、RCTのエビデンスに基づく結果からは少なく、主としてアフリカでの使用経験からの推奨であった。 WHOは、2015年改訂の治療ガイドラインで、妊婦も含めTDF/FTC/EFVの合剤を使用するよう推奨した。WHOガイドラインの途上国に対するインパクトは絶大なものがあり、おそらく感染妊婦の多いアフリカやアジアの国々では、今後この組み合わせによる母子感染予防が行われると考えられる。これに対し、今回の研究では、AZT単剤、AZTをベースとする併用療法(もっともよく使用されてきたもの)、TDFをベースとする併用療法(今後増える可能性がある)の3群でRCTを行った結果の報告である。 今回のRCTによる科学的な研究の結果は、TDFベースの予防は、感染予防には効果が高いが、乳児死亡率は高く、トータルでの有効性・安全性はAZT単剤群と同等であった。この研究が、今後どのように位置付けられるのか非常に興味深い。

2305.

腹部大動脈瘤、手術の閾値の差が死亡率の差に関連するのか/NEJM

 イングランドでは、未破裂腹部大動脈瘤の手術施行率が米国の約半分で、大動脈瘤径が米国より5mm以上大きくなってから手術が行われ、瘤破裂率は2倍以上、瘤関連死亡率は3倍以上であることが、英国・ロンドン大学セントジョージ校のAlan Karthikesalingam氏らの検討で明らかとなった。研究の成果は、NEJM誌2016年11月24日号に掲載された。欧州血管外科学会議(ESVS)のガイドラインは、動脈瘤径が男性で55mm、女性では50mmを超えたら介入を考慮すべきとしているが、介入の至適な閾値が不確実であるため、実臨床ではかなりのばらつきがみられ、55mm未満での手術施行率は国によって6.4~29.0%の幅があるという。手術閾値の差が、死亡率の乖離をもたらすかを検証 研究グループは、イングランドと米国で、未破裂腹部動脈瘤への手術の施行状況や手術時の大動脈瘤径を比較し、両国の手術の閾値の差が大動脈瘤関連死亡率の乖離と関連するかを検討した(英国Circulation Foundationなどの助成による)。 イングランドの病院エピソード統計(Hospital Episode Statistics)のデータベースおよび米国の全国入院患者情報(Nationwide Inpatient Sample)から、2005~12年の未破裂腹部大動脈瘤への手術の頻度、手術を受けた患者の院内死亡率、動脈瘤破裂率のデータを抽出した。 また、英国の全国血管登録(National Vascular Registry)(2014年のデータ)および米国の全国外科手術質改善プログラム(National Surgical Quality Improvement Program)(2013年のデータ)から、手術時の動脈瘤径のデータを抽出した。 米国の疾病管理予防センター(CDC)および英国の国家統計局(Office of National Statistics)から得たデータを用いて、2005~12年の動脈瘤関連死亡率を決定した。データは、直接標準化法または条件付きロジスティック回帰を用いて、両国間の年齢および性別の差を補正した。 2005~12年に、イングランドで2万9,300例が、米国では27万8,921例が、未破裂腹部大動脈瘤の手術を受けた。米国の手術閾値を適用すればイングランドのアウトカムが改善する? 10万人当たりの年間動脈瘤手術施行率は、イングランドでは2005年の27.11件から2012年には31.85件に、米国では57.85件から64.17件に増加した。補正後の動脈瘤手術施行率は、イングランドが米国よりも低かった(オッズ比[OR]:0.49、95%信頼区間[CI]0.48~0.49、p<0.001)。 全体のステントグラフト内挿術の施行率は、イングランドのほうが低かった(45.5 vs.67.0%、p<0.001)。イングランドのステントグラフト内挿術の施行率は経時的に上昇したが、2012年時の施行率は米国に比べ低かった(67.2 vs.75.4%、p<0.001)。 手術施行例の全体の補正後院内死亡率は、両国間に差はなかった(OR:1.04、95%CI:0.96~1.12、p=0.40)。動脈瘤関連死亡率は、イングランドが米国よりも高かった(OR:3.60、95%CI:3.55~3.64、p<0.001)。 3年生存率はイングランドが78.5%、米国は79.5%で、このうちステントグラフト内挿術はそれぞれ76.6%、79.8%、外科的人工血管置換術は78.1%、79.1%だった。補正後の3年生存率は、両群間に差はなかった(死亡のハザード比[HR]:0.97、95%CI:0.92~1.02、p=0.17)。 10万人当たりの動脈瘤破裂による入院率は、イングランドでは2005年の21.34件から2012年には16.30件に、米国では10.10件から7.29件に減少した。補正後の動脈瘤破裂による入院率は、イングランドが米国よりも高かった(OR:2.23、95%CI:2.19~2.27、p<0.001)。 年齢と性別で重み付けした手術時の加重平均動脈瘤径は、イングランドのほうが大きかった(63.7 vs.58.3mm、p<0.001)。年齢、性別、手術法(ステントグラフト内挿術、外科的人工血管置換術)で補正しても、この有意な乖離は保持されており、手術時の瘤径はイングランドのほうが5.3±0.3mm大きかった(p<0.001)。 著者は、「手術施行率と動脈瘤関連死亡率は、両国とも別個のデータセットに基づいており、これらの因果関係は示せないが、時期は同じであるためその可能性が示唆され、米国の手術閾値をイングランドに適用すればイングランドのアウトカムが改善するかという疑問が浮上する」としている。

2306.

アルツハイマーやうつ病の予防、コーヒーに期待してよいのか

 観察研究によると、コーヒーは2型糖尿病、うつ病、アルツハイマー病と逆相関するが、虚血性心疾患とは逆相関しないとされている。米国2015年食事ガイドラインにおいて、コーヒーは保護効果がある可能性が記載されている。短期的試験では、コーヒーは、多くの血糖特性に対し中和的な影響を及ぼすが、脂質やアディポネクチンを上昇させるといわれている。中国・香港大学のMan Ki Kwok氏らは、大規模かつ広範な遺伝子型の症例対照研究および横断研究に適応された2つのサンプルのメンデル無作為群間比較を用いて、遺伝的に予測されるコーヒー消費による2型糖尿病、うつ病、アルツハイマー病、虚血性心疾患とその危険因子を比較した。Scientific reports誌2016年11月15日号の報告。 主な結果は以下のとおり。・遺伝的に予測されたコーヒーの消費は、2型糖尿病(OR:1.02、95%CI:0.76~1.36)、うつ病(OR:0.89、95%CI:0.66~1.21)、アルツハイマー病(OR:1.17、95%CI:0.96~1.43)、虚血性心疾患(OR:0.96、95%CI:0.80~1.14)、脂質、血糖特性、肥満、アディポネクチンと関連していなかった。・コーヒーは小児期の認知とは関係がなかった。 著者らは「観察研究と一致し、コーヒーは、虚血性心疾患とも、予想通り小児期の認知とも関連がなかった。しかし観察研究とは対照的に、コーヒーは2型糖尿病、うつ病、アルツハイマー病に対し、有益な効果を示さない可能性が示された」とし、「この結果は食事ガイドラインで示唆されたコーヒーの役割を明確化し、これらの複雑な慢性疾患の予防介入は、他の手段を用いるべきではないか」とまとめている。関連医療ニュース 無糖コーヒーがうつ病リスク低下に寄与 毎日5杯の緑茶で認知症予防:東北大 1日1杯のワインがうつ病を予防

2307.

近年の乳がん死亡率低下におけるマンモグラフィ検診の寄与は、これまで考えられてきたよりも限定的であるかもしれない(解説:下井 辰徳 氏)-618

 米国では、乳がん死亡率は経年的に減少していることが知られている。ただし、この理由が乳がん検診の普及によるものと、治療の発達のいずれが大きいのかはわかっていない。乳がん検診の利益について検討するため、Welch氏らは、1975年から2012年までのSEERデータベースの乳がん診断数について検討した。期間は、米国におけるマンモグラフィ検診の出現前の期間、検診プログラムが普及していった期間、および普及後の期間が含まれている。 年代別の診断時腫瘍径については、Figure 2Aで1975年には、2cm未満の小さい乳がんが37%、2cm以上は64%程度となっていた。その後、1980年代のマンモグラフィ検診率が50%を超える時期には、とくに2cm未満の小さい乳がんの診断割合が上昇し、2000年代にはプラトーになってきたものの、2010年には2cm未満の小さい乳がんが67%、2cm以上の大きな乳がんは33%程度と、1975年と逆比率なっていた。さらに、Figure 2Bで女性10万人当たりの腫瘍径ごとの年次罹患数をみてみると、2cm未満の小さな乳がんは総じて増加傾向にあるにもかかわらず、2cm以上の大きな乳がんの年次罹患数は横ばいから若干減少ということになる。筆者らは、Table 1で1975~79年と2008~12年の女性10万人当たりの腫瘍径ごとの年次罹患数を比較している。これによると、2cm以上の大きな腫瘍は10万人当たり145例から115例と(30例分)減少しているものの、2cm未満の小さな腫瘍は10万人当たり82例から244例と(162例分)増加していることを示している。 早期乳がんのうちに発見して大きな乳がんになる症例が減る場合には、小さな乳がん診断数の増加と大きな乳がんの診断数低下がミラーイメージのようにならねばならぬが、そうはなっていない。2012年に同じ著者らは、早期乳がんの診断数の増加が著しく、進行乳がんの診断数の低下がほとんどない点から、乳がん罹患率の増加を現実的な範囲と想定しても説明がつかない早期乳がんの増加があるため、過剰診断が含まれているという報告をしている1)。今回は、検診後の乳がん発症割合は一定であるという仮定のもとで、腫瘍径の大きな乳がんの減少数に対して、腫瘍径の小さな乳がんの増加が著しいことから、マンモグラフィ検診には過剰診断が多く含まれているという考えを示している。 Table 2では、2cmを超える大きな腫瘍について、治療とマンモグラフィ検診の死亡率に与える影響を示している。治療の進歩については、治療による死亡数の減少は10万人当たり17例とされている。また、マンモグラフィ検診による死亡数の減少は10万人当たりベースラインでは12例、近年では8例と算出されている。Figure 3では、各腫瘍径の死亡リスクについて、1975~79年と2008~12年で比較している。これによると、相対リスクは大きな腫瘍に比べて小さな腫瘍でのリスク低減がより大きいとしている。 以上より、筆者らは乳がんのマンモグラフィ検診では、小さな乳がんの過剰診断に寄与しており、大きな乳がんの診断や死亡率低減には、治療の進歩の方が大きく影響しているのではないかと結論している。 今回の解析については、私としてはいくつかの問題点が挙げられる。たとえば、2012年の同著者らの論文でも同様であるが、リンパ節転移、遠隔転移については言及がなく、十分な乳がんのリスク評価がなされているとはいえない。また、死亡率の低減についての解析は、2cmを超える乳がんのみでなされており、それ以下の小さな乳がんについてはされていない。さらに、近年のマンモグラフィ精度の上昇や機器の進歩については、過剰診断を増やす可能性と正診率が上がる可能性のいずれもがあるが、評価には加えられていない。腫瘤径による乳がん死亡率の調整については、年齢や乳がんの病理学的予後因子が考慮されていない。 これまで、マンモグラフィ検診導入前後の乳がん死亡率の比較については、数多く報告がなされているが、研究期間中の治療成績の向上については考慮に入れておらず、10万人当たり数100例程度の死亡数減少が見込まれてきた2)3)4)。上記のように、いくつかのlimitationは存在するが、これらを踏まえたうえでも、私としては、大きな意義のある報告と思う。具体的には、治療成績の向上を考慮に入れて、かつ診断された腫瘍径の分類と予後の解析により、過剰診断の可能性と、マンモグラフィ検診の利益が以前考えられていたよりも少ない可能性が示唆された点は重要であると考える。 今後はマンモグラフィ検診の意義の社会的な再検討が進むとともに、検診に伴う過剰診断についても、対応を検討すべきと考えられる。ただし、Elmore氏は本稿のEditorialで、マンモグラフィ検診における過剰診断の原因は多岐にわたるため、過剰診断を減らすためには、多面的なシステムの発展が必要であると述べている5)。具体的には、過剰診断がなくならない理由として、検診のターゲット層、行政、医療従事者、患者それぞれの領域に原因があることを述べている。そのうえで、検診ターゲットについては、乳がん低リスクの全市民に行う現状を是正して高リスクに限ること、行政側は過剰診断や無治療でも予後にかかわらない腫瘤が存在するという真理を認識すること、さらに、医療提供者や患者にかかわる点では、より高い正確性と精度を有する新規の診断ツールの開発が必要であると述べている。 本邦でも、最近、新たな乳がんスクリーニングのガイドラインが報告されている6)。乳がん検診(日本では視触診とマンモグラフィ併用)受診率が、欧米と比較して日本では低い現状がある。とはいえ、視触診については「がん検診のあり方に関する検討会」の報告や上記ガイドラインでも、乳がんの死亡率減少効果としては根拠に乏しいことが述べられている。さらに、40代の若年者においては、本邦のJ-START試験7)の結果から、マンモグラフィ検診に超音波検診を組み合わせることがとくに小さな乳がん発見に役立つとされ、今後は超音波併用も検討されていくと思われる。 私としては、今後はマンモグラフィ検診による不利益だけではなく、日本における乳がん検診として、その利益と不利益の相対バランスを検討する必要があると考える。具体的には、「がん検診のあり方に関する検討会」など科学的解析に基づき、厚生労働省などが主導して検診体制を整備・再検討する必要があると考える。参考文献1)Bleyer A, et al. N Engl J Med. 2012;367:1998-2005.2)Kalager M, et al. N Engl J Med. 2010;363:1203-1210.3)Weedon-Fekjar H, et al. BMJ. 2014;348:g3701.4)Otto SJ, et al. Cancer Epidemiol Biomarkers Prev. 2012;21:66-73.5)Elmore JG. N Engl J Med. 2016;375:1483-1486.6)Hamashima C, et al. Jpn J Clin Oncol. 2016;46:482-492.7)Ohuchi N, et al. Lancet. 2016;387:341-348.

2308.

冠動脈石灰化、低リスク女性の心血管疾患リスク予測精度を向上/JAMA

 アテローム動脈硬化性心血管疾患(ASCVD)のリスクが低い女性の約3分の1に冠動脈石灰化(CAC)が認められ、CACはASCVDのリスクを高め、従来のリスク因子に加えると予後予測の精度をわずかに改善することが、オランダ・エラスムス大学医療センターのMaryam Kavousi氏らの検討で示された。研究の成果は、JAMA誌2016年11月22日(オンライン版2016年11月15日)号に掲載された。米国心臓病学会(ACC)/米国心臓協会(AHA)の予防ガイドラインに基づく、心血管疾患(CVD)の低リスク女性の予防戦略の導出におけるCAC検査の役割は、明らかにされていないという。欧米の5つの大規模コホート研究のメタ解析 研究グループは、ASCVDのリスクが低い女性のCVDリスクの予測および層別化におけるCAC検査の効用性を評価するために、5つの大規模な地域住民ベースのコホート研究のデータを用いてメタ解析を行った。 ダラス心臓研究(DHS、米国)、フラミンガム心臓研究(FHS、米国)、ハインツ・ニクスドルフ・リコール研究(HNR、ドイツ)、アテローム動脈硬化症多民族研究(MESA、米国)、ロッテルダム研究(RS、オランダ)の参加者のうち、ASCVDの10年リスクが7.5%未満の女性を選出した。 これら5つの研究は、一般人口からの多くの低リスク女性のCACデータが、詳細な長期フォローアップデータとともに入手可能と考えられるコホートとして選ばれた。固定効果モデルを用いたメタ解析で、これらの試験の結果を統合した。 主要評価項目はASCVDの発生とし、非致死的心筋梗塞、冠動脈心疾患(CHD)、脳卒中が含まれた。CACとASCVDの関連の評価には、Cox比例ハザードモデルを用いた。CACが、ASCVDリスクの従来のリスク因子よりも優れた予測因子であるかを評価するために、C統計量および連続的純再分類改善度(continuous net reclassification improvement:cNRI)を算出した。CAC発生率は36.1%、CAC>0のASCVDリスクのHRは2.04 ASCVDの低リスク女性6,739例が解析の対象となった。5研究のベースラインの平均年齢の幅は44~63歳であり、糖尿病の有病率は2.3~6.6%、早期CHDの家族歴ありは14.0~42.4%の範囲であった。 5研究のCACあり(CAC>0)の範囲は25.2~66.5%で、全体では36.1%(2,435例)であった。全体として、CACありの群は、より高齢で、心血管リスクのプロファイルがより不良であり、糖尿病有病率や早期CHD家族歴も高かった。フォローアップ期間中央値の幅は7.0~11.6年だった。 165件のASCVDイベントが発生し(非致死的心筋梗塞:64件、CHD死:29件、脳卒中:72件)、5研究のASCVD発生率の幅は1,000人年当たり1.5~6.0件であった。 CACあり(CAC>0)は、CACなし(CAC=0)と比較してASCVDのリスクが有意に高かった(1,000人年当たりの発生率:1.41 vs.4.33件、発生率差:2.92、95%信頼区間[CI]:2.02~3.83、多変量補正ハザード比[HR]:2.04、95%CI:1.44~2.90)。 従来のリスク因子にCACを加えると、C統計量が0.73(95%CI:0.69~0.77)から0.77(95%CI:0.74~0.81)へ改善し、ASCVD予測のcNRIが0.20(95%CI:0.09~0.31)となった。 著者は、「この予測精度の向上の臨床的な効用性と費用対効果を評価するには、さらなる検討を要する」としている。

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CAD-Man試験:冠動脈CT(CTCA)は虚血性心疾患診療適正化のゲートキーパーになれるか?(解説:中野 明彦 氏)-614

【はじめに】 CTCAは冠動脈狭窄の評価に加え、positive remodelingに隠されたプラークの検出(内腔のみを判定する冠動脈造影[CAG]では冠動脈硬化症の重症度が過小評価になってしまう)、胸痛を呈する非冠動脈疾患(肺梗塞・大動脈解離・心膜炎・肺炎胸膜炎・食道裂肛ヘルニアなど)の鑑別を非侵襲的に行える利点を有する。有意狭窄判定の感度・特異度は報告によりばらつきがあるが、陰性適中率については100%近い精度を示し虚血性心疾患のルールアウトに有用というのが共通認識となっている。これらの利点により、CTCAはすでに日本の津々浦々の循環器専門病院やクリニックで導入されているが、臨床現場でどう使っていくかについてのスタンスは施設ごとにまちまちであり、これからの課題と考えられる。 その指標となる本邦での直近の指針「冠動脈病変の非侵襲的診断法に関するガイドライン(JCS 2009)1)」を整理してみると、以下のようになる。(UAP;不安定狭心症、NSTEMI;非 ST上昇型急性心筋梗塞、STEMI;ST上昇型急性心筋梗塞) *:安定狭心症のリスク層別化は検査前有病予測を意味し、胸痛の性状や臨床所見から推測する急性冠症候群の短期リスク評価とは異なる。胸痛の特徴(1.胸骨後部に手のひらで押されたような圧迫感,重苦しさ、2.労作に伴って出現、3.安静により治まる)を満たす項目数により典型的狭心症・非典型的狭心症・非狭心症性胸痛に分類し、年齢・性別を加味して層別化するが、非典型的狭心症の大半と非狭心症性胸痛で男性(>40歳)/高齢女性(>60歳)が中リスク群に分類される2)。検査前有病予測ではDuke clinical score2)がよく知られている。 【CAD-Man試験について】 ドイツから報告された CAD-Man(Coronary Artery Disease Management)試験は、特定のクリニカルシナリオ(30歳以上の非典型的狭心症および非狭心症性胸痛;2つ以上の負荷試験陽性例を除く)を対象としたCTCAとCAGとの無作為比較試験である。中リスクが多い対象群であり、上記「IIa 安定狭心症」に重なる。 詳細は、別項(本ページ上部:オリジナルニュース)に譲るが、要約すると、CTCAを選択しても放射線被曝量・3年間の心血管イベントの発生頻度は変わらず、QOL(入院期間・満足度)が高かった。CTCA群で最終診断ツールであるCAGが実施された割合は14%であり、当然のことながらその正診率(75%)は高く、CAG群の5倍だった。さらに、一連の検査・治療による大合併症(1次エンドポイント)は不変、小合併症は有意に抑制された。 わずか329例、single centerでの研究がBMJ誌に掲載されたことに驚かされたが、これまでCTCAとCAGとの直接比較が少なかったことや、特定のシナリオを設定しその有用性を示した点が評価されたのだろう。 本研究への疑問点・課題をいくつか提示しておきたい。 まずは、有病率の低さ(CTCA群11%、CAG群15%)である。トロポニンI/T値や心電図変化を対象外とせず、したがって急性冠症候群(UAP/NSTEMI)を許容する一方、全症例の平均年齢は60歳、半数が女性で糖尿病合併率は20%未満、虚血性心疾患の既往症例は除外された。さらに非典型的狭心症も半数以下だったことから、実際にはCTCA・CAGの適応とならない低リスク群が多数含まれていたと推察される。Duke clinical scoreから34.3%と予測した筆者らにとっても誤算だったであろうが、対象症例の有病率の低さは、検査に伴う合併症や長期予後の点に関してCTCA群に有利に働いた可能性があるし、被曝の観点からも問題である。 次に、血行再建術適応基準が示されていない点が挙げられる。CTCA群のみMRIでの当該領域心筋バイアビリティー≧50%が次のステップ(CAG)に進む条件となっているが、血行再建術の適応はCAG所見のみで決定されている。負荷試験の洗礼を受けない対象症例達は生理的・機能的評価なしに解剖学的要件のみで“虚血”と判断されたことになり、一部overindicationになっている可能性がある。 さらに、研究施設の日常臨床の延長線上で行われた本研究では、CTCAはすべて入院下で施行された。この点は、外来で施行されることが多い本邦の現状とは異なる。同様の試験を日本で行えば、入院期間やコスト面で、CTCA群での有効性にさらなる上積みが期待される。【冠動脈診療の適正化とCTCA】 高齢化社会の到来や天井知らずに膨らみ続ける医療経済的観点から、諸外国では医療の標準化・適正化(appropriateness)が叫ばれて久しい。虚血性心疾患診療の分野でも、治療のみならず診断の段階から appropriateness criteriaが提示されている3)。翻って、日本はどうだろうか。循環器疾患診療実態調査報告書(2015年度実施・公表) 4)から2010年と2014年のデータを比較すると、CTCAが34.6万件から42.4万件へと増加しているのに対し、CAGはいずれも49.8万件であった。待機的PCI数やCABG数があまり変化していないことを考え合わせれば、CTCAを有効かつ適正には活用できていないことになる。 CAD-Man試験は、CTCAが“不要な”CAGを減少させる可能性を示し、また反面教師として、 症例選択の重要性も示唆した。一方、血行再建症例の適応基準が課題として残っている。 多少横道にそれるが、新時代を切り開く技術としてFFRCTが注目されている。FFRCT法は CTCAのボリュームデータを使い、数値流体力学に基づいて血行動態をシミュレーションし FFRを推定する方法で、解剖学的判定と生理的・機能的評価を非侵襲的に行うことができる理想的なモダリティーである。実臨床に普及するには多くのハードルがあるが、昨年Duke大学から報告された「FFRCT版CAD-Man試験」ともいうべきPLATFORM試験5)6)では、臨床転帰を変えることなくCAGの正診率向上やコスト低減・QOL改善効果が示された。  日本でもappropriatenessの議論が始まっていると聞くが、CAD-Man試験が示したように現在のCTCAにはまだまだ課題が多い。適切な症例選択とFFRCT、これが融合すればCTCAが真のゲートキーパーとなる、と確信する。参考文献1)循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2007―2008年度合同研究班報告)―冠動脈病変の非侵襲的診断法に関するガイドライン(PDF)2)Pryor DB, et al. Ann Intern Med. 1993;118:81-90.3)Hendel RC, et al. J Am Coll Cardiol. 2006;48:1475-1497.4)循環器疾患診療実態調査報告書 (2015年度実施・公表)(PDF)5)Douglas PS, et al. Eur Heart J. 2015;36:3359-3367.6)Douglas PS, et al. J Am Coll Cardiol. 2016;68:435-445.

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うつ病治療歴があると早期乳がんの予後が悪い?

 デンマークの全国登録ベースのコホート研究より、うつ病治療歴のある初発早期乳がん女性では、ガイドラインで推奨されるアジュバント治療を受けないリスクがあり、それが全生存率および乳がん特異的生存率の低下につながっている可能性があることをデンマークがん協会研究センターのNis P. Suppli氏らが報告した。Journal of Clinical Oncology誌オンライン版2016年11月14日号に掲載。 本研究は、1998~2011年にデンマークで早期乳がんと診断された女性4万5,325例を調査した。そのうち、744例(2%)は病院でのうつ病治療歴(入院もしくは外来)があり、6,068例(13%)は病院での治療歴はないが抗うつ薬による治療歴があった。著者らは、うつ病治療歴と、ガイドラインによるがん治療を受けないリスクとの関連を多変量ロジスティック回帰分析で評価し、全生存率・乳がん特異的生存率・自殺リスクについて乳がん発症前のうつ病治療の有無別に多変量Cox回帰分析で比較した。 主な結果は以下のとおり。・腫瘍のStageからは、うつ病治療歴のある女性における乳がん診断の遅れは示されなかった。・乳がん発症前に病院での治療歴がないが抗うつ薬による治療歴のある女性は、ガイドラインによるがん治療を受けないリスクが有意に増加し(オッズ比:1.14、95%CI:1.03~1.27)、全生存率(ハザード比:1.21、95%CI:1.14~1.28)と乳がん特異的生存率(ハザード比:1.11、95%CI:1.03~1.20)が有意に悪化した。病院でのうつ病治療歴のある女性においても、これらのリスクが有意ではないが増加した。・サブグループ解析では、必要とされるアジュバント療法を受けなかった女性で、とくにうつ病と生存率低下の関連が強かった。

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日本初のDOAC中和剤発売、迅速・完全・持続的な効果

 経口抗凝固薬ダビガトランに対する特異的中和剤であるイダルシズマブ(商品名:プリズバインド、日本ベーリンガーインゲルハイム)が、7ヵ月という短い審査期間で今年9月に承認され、11月18日に発売された。11月15日の発売記者説明会では、国立病院機構九州医療センター脳血管センター脳血管・神経内科の矢坂正弘氏が、抗凝固薬による出血リスク、イダルシズマブの効果や意義について紹介し、「迅速・完全・持続的に効果を示すイダルシズマブは臨床現場で有用な薬剤になるだろう」と述べた。DOACでも大出血は起こりうる 心原性脳塞栓症予防のための抗凝固療法において、直接作用型経口抗凝固薬(DOAC)はワルファリンと比較し、「管理が容易」「脳梗塞予防効果は同等かそれ以上」「大出血は同等かそれ以下」「頭蓋内出血が大幅に低下」というメリットがあり、ガイドラインでも推奨されるようになった。しかしDOACでも大出血は起こりうる、と矢坂氏は強調する。大出血時の一般的な対応は、まず休薬し、外科的処置を含めた止血操作、点滴でのバイタルの安定、出血性脳卒中なら十分な降圧を行うことである。この処置に加えて、活性炭や第IX因子複合体(保険適応外)の投与などの工夫がなされてきたが、より急速な中和剤が望まれていた。このような現状の中、ダビガトランに特異的な中和剤イダルシズマブが承認された。 商品名のプリズバインド(PRIZBIND)は、PRazaxaとIdaruciZumabがBIND(結合)して効果を発揮することに由来しているという。効能・効果は次のとおり。 以下の状況におけるダビガトランの抗凝固作用の中和  ・生命を脅かす出血又は止血困難な出血の発現時  ・重大な出血が予想される緊急を要する手術又は処置の施行時中和剤に求められる特性を達成 矢坂氏は、中和剤に求められる特性として、「迅速に」「完全に」「持続的に」効くという3つを挙げ、「イダルシズマブはこれを達成した中和剤と言える」と紹介した。 国内第I相試験によると、イダルシズマブ静注後1分以内に、希釈トロンビン時間(dTT)が正常値上限を下回り(すなわち、抗凝固作用を完全に中和)、それが24時間持続することが示され、第III相試験(RE-VERSE AD試験)においても同様に、迅速・完全・持続的な中和効果が認められている。 RE-VERSE AD試験における患者において、出血の種類は消化管出血・頭蓋内出血が大部分を占め、緊急手術・処置の理由は骨折が最も多かった。 また、同試験の中間集計では、243例中13例(5.3%)に脳梗塞や深部静脈血栓症などの血栓性イベントが発現したが、1例を除き血栓性イベント発現時点で抗凝固療法を再開していなかった。矢坂氏は、これは抗凝固療法を適切な時点で再開するようにというメッセージを示していると述べた。ダビガトランの場合は24時間後に再開が可能であり、他の抗凝固薬であれば24時間以内でも投与できる。中和剤は自動車のエアバッグのようなもの 矢坂氏は、中和剤の必要性について、「DOACはワルファリンに比べて頭蓋内出血は大幅に低下するがゼロになるわけではなく、また避けられない転倒や事故による出血も起こりうるので、リバースする中和剤は必要である」と指摘した。 中和剤はよく自動車のエアバッグに例えられるという。エアバッグがなくても運転できるし、ほとんどの人は事故に遭わないが、なかには衝突し、エアバッグがあったので助かったということも起こりうる。このエアバッグに相当する中和剤があるということは「抗凝固薬選択のオプションの1つになるだろう」と矢坂氏は述べ、講演を終えた。

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NOBLE試験ではLM病変に対するPCI治療はCABG治療に対して劣性であった(解説:許 俊鋭 氏)-611

【概要】背景 冠動脈バイパス術(CABG)は、左主冠動脈疾患(LM)に対する標準的な治療法と考えられてきたが、近年、LM病変に対する経皮的冠動脈インターベンション(PCI)治療が増加している。本研究は、PCIとCABGのLM疾患治療における有効性を比較することを目的とした。方法 北欧の36心臓センターが参加し、LM症例を対象としてCABG群とPCI群を1:1に割り付けた前向き無作為、非盲検、非劣性試験を実施した。試験参加適格症例は、安定狭心症、不安定狭心症または非ST上昇心筋梗塞症例とした。除外基準は、24時間以内のST上昇型心筋梗塞、CABGやPCIのリスクが高すぎる症例、または1年の生命予後が期待できない症例とした。 主要評価項目は主要な有害心臓および脳血管イベント(MACCE)の複合(全死因死亡、心筋梗塞、冠動脈に対する再血行再建術、および脳卒中)とした。CABG群に対するPCI群の非劣性は、5年間の経過観察で1.35のハザード比(HR)を超えないことを必要条件とした。結果 2008年12月9日~2015年1月21日の間に、1,201例のLM症例を無作為にPCI群598例とCABG群603例に割り付け、各グループ592例を分析対象とした。 5年間カプランマイヤーカーブのMACCE推定値は、PCI群29%(121イベント)、CABG群19%(81イベント)で、HR:1.48でPCIが劣性の結果であった。CABG群の治療成績は、PCI群に対して有意に良好であった(p=0.0066)。5年間のMACCEの発症推定値をPCI群 vs.CABG群で比較すると、全死因死亡率は12% vs.9%(p=0.77)、心筋梗塞は7% vs.2%(p=0.0040)、再血行再建術は16% vs.10%(p=0.032)、脳卒中は5% vs.2%(p=0.073)で有意水準まで到達していない項目もあるがいずれもCABG群のほうが成績良好であった。コメント これまでのPCIに適したLM病変に対してPCIを推奨するとしたガイドラインは主に、SYNTAX試験結果に基づき作成されてきた。また、ガイドラインは無作為化試験であるLE MANS試験、PRECOMBAT試験、Boudriot試験などの結果も参照しているが、患者サンプル数が少ないため、PCIをunprotected LM病変の最良の治療法と決定するためにはエビデンスとしては弱いと考えられていた。 今回のNOBLE試験は、unprotected LM治療でCABG群と比較してPCI群は非劣性の臨床結果をもたらすと仮定して実施されたが、結果は逆にPCI群はCABG群に対して劣性であった。本研究の結果は、LM治療においてCABGの治療成績がPCIよりも優れている可能性を示唆している。

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エボロクマブのプラーク退縮、AHAで発表:アムジェン

 アムジェン社は2016年11月15日、冠動脈疾患(CAD)患者に対して最適用量のスタチン療法にエボロクマブ(商品名:レパーサ)を上乗せした結果、統計学的に有意なアテローム性動脈硬化の退縮が確認されたことを発表した。この第III相プラセボ対照無作為化二重盲検比較試験(GLAGOV試験)の結果は、2016年米国心臓学会議(AHA)学術集会での発表と同時に、Journal of the American Medical Association(JAMA)誌にも掲載された。 GLAGOV試験では、サブチリシン/ケキシン9型(PCSK9)阻害剤エボロクマブの、最適用量のスタチン療法を受けている患者に対する冠動脈のアテローム性プラーク進展への影響をベースラインおよび78週目の血管内超音波(IVUS)測定により検証した。 この試験は主要評価項目を達成し、エボロクマブの治療が、動脈血管内に占めるプラークの割合であるアテローム体積率(PAV:Percent Atheroma Volume)をベースライン時から統計学的に有意に減少することを明らかにした。 最適用量スタチン+エボロクマブ(エボロクマブ群)ではPAVがベースラインに対し0.95%の減少が認められたが、最適用量スタチン+プラセボ群では0.05%の増加が認められた(エボロクマブ群:p<0.0001、プラセボ群:p=0.78)。投与群間で統計的に有意な差が認められた(p<0.0001)。さらに、エボロクマブ群ではプラセボ(プラセボ群)と比較し、より多くの患者でPAVの退縮が認められた(エボロクマブ群:64.3%、プラセボ群:47.3%、p<0.0001)。 プラーク量測定のもう1つの基準である標準化した総アテローム体積(TAV:Total Atheroma Volume)の減少ついては、エボロクマブ群で平均5.8mm3、プラセボ群では0.9mm3で(エボロクマブ群:p<0.0001、プラセボ群:p=0.45)、2群間で統計的に有意な差が認められた(p<0.0001)。 ベースラインでは、いずれの群でも患者の平均LDL-C値は92.5mg/dLであり、両群で98%の患者が高用量から中用量のスタチン療法を受けていた。78週間の治療期間中、エボロクマブ群のLDL-C値の時間加重平均は36.6mg/dLで、プラセボ群の93.0mg/dLと比較し59.8%の低下が認められた。78週目において、エボロクマブ群の平均LDL-C値は29mg/dLで、プラセボ群が90mg/dLを示したのに対し、ベースラインから68.0%低下を認めた。  この試験では、安全性に関する新たな所見は認められなかった。治療中の有害事象の発現率は両群で同等であった(エボロクマブ群:67.9%、プラセボ群:79.8%)。本試験で検討された臨床的に重要な有害事象は筋肉痛(エボロクマブ群:7.0%、プラセボ群:5.8%)、新たに診断された糖尿病(エボロクマブ群:3.6%、プラセボ群:3.7%)、神経認知機能関連の事象(エボロクマブ群:1.4%、プラセボ群:1.2%)、注射部位反応(エボロクマブ群:0.4%、プラセボ群:0.0%)であった。 GLAGOV試験では結合抗体はほとんど認められず(エボロクマブ群:0.2%[1例])、中和抗体は検出されなかった。 また、心血管イベントへの影響を評価する目的では設計されていないものの、明確に主要心血管イベントと判定された事象の発現率はエボロクマブ群で12.2%、プラセボ群で15.3%であった。判定された事象の多くは、冠動脈血行再生術(エボロクマブ群:10.3%、プラセボ群:13.6%)、心筋梗塞(エボロクマブ群:2.1%、プラセボ群:2.9%)、その他の判定された心血管イベントの発現率はいずれの治療群でも0.8%以下であった。GLAGOV試験について GLAGOV(GLobal Assessment of Plaque ReGression with a PCSK9 AntibOdy as Measured by IntraVascular Ultrasound)試験は、臨床的に冠動脈造影が必要とされている最適用量のスタチン治療中の患者968例を対象に、冠動脈疾患における動脈硬化(プラーク)に対するエボロクマブの効果を評価するため設計された。患者は、最低4週間継続して定用量のスタチン療法を受けており、LDL-C80mg/dL以上か、60~80mg/dL の場合は、1件の重要な心血管リスク要因(冠動脈以外のアテローム性血管疾患、直前2年間における心筋梗塞または不安定狭心症による入院、もしくは2型糖尿病と定義)または3件の軽微な心血管リスク要因(現在喫煙している者、高血圧、HDLコレステロール低値、若年性冠動脈疾患の家族歴、2mg/dL以上の高感度C反応性タンパク質、50歳以上の男性、55歳以上の女性)があることが要件であった。被験者は、エボロクマブ420mg月1回またはプラセボに1:1で割り付けられた。最適用量のスタチン療法の定義は、20mg/日以上相当のアトルバスタチンを投与し、ガイドラインに沿ってLDL-Cを低下させられる投与用量とした。主要評価項目は、IVUS測定による、プラセボと比較した78週目におけるPAVのベースラインからの変化率。副次的評価項目は、PAVの減少(ベースラインからのすべての減少)、78週目におけるTAVのベースラインからの変化、およびTAVの減少(ベースラインからのすべての減少)であった。(ケアネット 細田 雅之)原著論文はこちらNicholls SJ, et al.JAMA. 2016 Nov 15. [Epub ahead of print]参考アムジェン社(米国):ニュースリリースGLAGOV試験(ClinicalTrials.gov)

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左冠動脈主幹部病変、PCIよりCABGが予後良好/Lancet

 左冠動脈主幹部病変の治療では、冠動脈バイパス術(CABG)が経皮的冠動脈インターベンション(PCI)よりも良好な予後をもたらす可能性があることが、フィンランド・オウル大学病院のTimo Makikallio氏らが行ったNOBLE試験で示された。研究の成果は、Lancet誌オンライン版2016年10月31日号に掲載された。欧州では、従来、非保護左主幹部病変の標準的な血行再建術はCABGであるが、最近はPCIの使用が急増している。欧州心臓病学会(ESC)の現行ガイドラインでは、左主幹部病変や非複雑病変、非びまん性病変にはPCIが推奨されているが、その論拠とされる試験は症例数が少なく、最良の治療を決めるには検出力が十分でないという。約1,200例が参加したPCIの非劣性試験 NOBLEは、非保護左主幹部病変を有する患者において、薬剤溶出ステントを用いたPCIのCABGに対する非劣性を検証する非盲検無作為化試験(デンマーク・オーフス大学病院などの助成による)。 対象は、冠動脈造影で視覚的な狭窄度≧50%または冠動脈の入口部、midshaft、分岐部の冠血流予備量比≦0.80の病変を有する安定狭心症、不安定狭心症、非ST上昇型心筋梗塞の患者であった。 主要評価項目は、主要な心脳血管有害事象(MACCE)の複合エンドポイント(全死因死亡、手技に伴わない心筋梗塞、再血行再建術、脳卒中)であった。非劣性マージンは1.35とした。 2008年12月9日~2015年1月21日までに、欧州9ヵ国36施設に1,201例が登録され、PCI群に598例、CABG群には603例が割り付けられた。両群とも592例ずつがITT解析の対象となった。全死因死亡に差はないが、5年MACCE発生率が高い ベースラインの平均年齢は、PCI群が66.2歳(SD 9.9)、CABG群は66.2歳(9.4)で、女性がそれぞれ20%、24%(p=0.0902)を占め、糖尿病を有する患者が両群とも15%含まれた。logistic EUROSCOREは両群とも2(IQR:2~4)、SYNTAXスコアはそれぞれ22.4(SD 7.8)、22.3(7.4)であった。 Kaplan-Meier法による5年MACCE発生率は、PCI群が29%(121イベント)、CABG群は19%(81イベント)で、HRは1.48(95%CI:1.11~1.96)であり、CABG群のPCI群に対する優越性が確認された(p=0.0066)。 全死因死亡の5年発生率には有意な差はなかった(PCI群:12% vs.CABG群:9%、HR:1.07、0.67~1.72、p=0.77)が、手技に伴わない心筋梗塞(7 vs.2%、2.88、1.40~5.90、p=0.0040)および血行再建術(16 vs.10%、1.50、1.04~2.17、p=0.032)はPCI群で有意に多く、脳卒中(5 vs.2%、2.25、0.93~5.48、p=0.073)はPCI群で多い傾向がみられた。 1年MACCE発生率は、2つの群で同じであり(7 vs.7%、リスク差:0.0、95%CI:-2.9~2.9、p=1.00)、両群間の差は1年以降に生じていた。1年時の全死因死亡(p=0.11)、手技に伴わない心筋梗塞(p=0.49)、血行再建術(p=0.27)、脳卒中(p=0.16)にも差は認めなかった。 著者は、「これらの知見は、SYNTAX試験の左主幹部病変例とPRECOMBAT試験のメタ解析の結果(5年MACCE発生率、PCI群:28.3% vs. CABG群:23.0%、p=0.045)を追認するものである」としている。

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145)血圧測定では、話さず、動かず、静粛に!【高血圧患者指導画集】

患者さん用説明のポイント(医療スタッフ向け)■診察室での会話 医師それでは、血圧を測定しますね。 患者はい。ちょっと急いできたから、血圧が上がっているかもしれません。 医師(カフを巻きながら)そうですか。 患者先生、昨日、食べ過ぎたので…血圧が上がっているかも…。 医師……(血圧を徐々に上げる)。 患者それに、最近、運動していないし…(話し続ける)。 医師Aさん、喋ると血圧は高めに出ますよ(身振り・手振りを加えながら)。 患者えっ、そうなんですか。黙ってます(驚いた顔)。●ポイント静かな環境で、会話をせずに血圧を測定することの必要性を説明します参考資料1)『高血圧治療ガイドライン2014』(Minds ガイドラインセンター)

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「肺癌診療ガイドライン」の意義、上手な使い方とは

 新たな治療薬が続々と発売されている肺がん。この10年で「肺癌診療ガイドライン」(日本肺癌学会編)は記載形式や推奨方針が大きく変化してきている。2016年10月28日開催の第13回肺がん医療向上委員会において、その変遷や意義について、日本肺癌学会ガイドライン検討委員会 薬物療法および集学的治療小委員会 委員長である瀬戸 貴司氏(国立病院機構九州がんセンター 呼吸器腫瘍科)が講演した。肺がんの診療ガイドラインはどうあるべきか 日本では、海外と異なり、呼吸器内科医も呼吸器外科医も肺がんを診療している。そのため、診療ガイドラインは、誰がみても患者がどの位置にいるのか理解でき、がん専門医でなくても標準治療にたどり着けるものであるべきである。この方針に基づき、薬物療法については、薬物療法および集学的治療小委員会を中心に2005年からガイドラインの改定が進められ、現在、日本肺癌学会のホームページ上にウェブ版が掲載されている。なお、書籍版は2年ごとに出版され、2016年版は今年の日本肺癌学会学術集会(12月19~21日、福岡)で発売される予定である。 ガイドラインでの治療選択は樹形図で示されている。IV期非小細胞肺がんを例に挙げると、まず腫瘍側の因子である組織型(非扁平上皮がんもしくは扁平上皮がん)で分け、次に遺伝子異常で分ける。さらに、患者側の因子であるperformance status(ECOG PS)で分け、PSが1以下の場合は年齢(75歳以上もしくは75歳未満)で分ける。ウェブ版では、治療法をクリックすれば推奨グレードとエビデンスにリンクするようになっている。診察室で患者さんと一緒にガイドラインを見て、その場で推奨グレードやエビデンスを噛み砕いて説明すれば、患者さんも納得しやすいという。2014年に推奨方針を大きく変更 薬物療法の目的は、「治癒」「生存期間延長」「症状コントロール」「QOLの維持」とさまざまあるが、おしなべて薬物療法に求められるのは「健やかな長生き」と瀬戸氏はいう。ところが、以前は生存期間延長が最大のエビデンスであり、「副作用が強くても、高価な治療でも、生存期間延長効果が高い」薬剤が推奨され、また生存期間延長効果が劣っていなければ、「副作用が軽く、QOLが高く、コストが安い」薬剤が推奨されていた。しかしながら、このように生存期間延長効果を物差しにすることができたのは、殺細胞性抗がん剤しかなかった時代の話である、と瀬戸氏は強調した。現在は分子標的治療薬が使用可能となっており、2014年以降は、「がんの制御期間や縮小効果が高くQOLが良い」治療であれば、その機序について科学的に確かさが高ければ、生存期間延長効果が証明されていなくても強く推奨する方針に変更され、分子標的治療薬を先に投与することが推奨されるようになった。ガイドラインの限界と課題 ガイドラインの限界と課題として、瀬戸氏は「すべての患者に対して当てはまるものはない」「記載できない項目も多い」「エビデンスが弱いものも含まれる」「新規薬剤の検討に時間がかかるため最新情報から少し遅れてしまう」ことを挙げる。また、免疫チェックポイント阻害薬の全生存期間延長効果の大きさに触れ、昨今問題となっている薬物療法の医療費について、医療従事者や生物統計学者だけでは判断できない問題だと述べた。瀬戸氏は、ガイドラインの役割として、コストが同じであればどちらの治療が推奨できるのかを提示しなければならないと考察した。ガイドラインの意義とは 最後に瀬戸氏はガイドラインの意義について、医療者にとっては、樹形図を索引に使え、エビデンスに基づく治療方針を患者に提供できること、さらに、治療の説明内容を把握でき、新しい薬剤応用へのキャッチアップにつながることを挙げた。一方、患者さんにとっては、エビデンスに基づく治療を納得して受けられ、主治医とのコミュニケーションツールに使えることを挙げ、講演を締めくくった。

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高齢者への抗精神病薬投与、中止までの期間を解析

 ニュージーランドや全世界で適応可能なコンセンサスガイドラインでは、統合失調症や長期間の治療が必要とされる重度の精神症状を有する精神疾患でない限り、抗精神病薬の曝露期間は12週間を超えないことが推奨されている。しかし、第2世代抗精神病薬(SGA)の初回中止までの期間(time-to-first discontinuation:TTFD)について、高齢者における実臨床の情報は限られている。ニュージーランド・オタゴ大学のHenry C Ndukwe氏らは、65歳以上のSGA新規処方患者におけるTTFD、アドヒアランス、持続性を比較した。Journal of clinical psychopharmacology誌2016年12月号の報告。 SGA新規処方患者3万297例を対象に、2006年1月1日~2012年12月31日までの抗精神病薬中止状況を追跡した。経口製剤のデータは、ニュージーランド健康省の健康医療データベースを使用し、抽出した。TTFDは91日以上のギャップを分配、アドヒアランスは投薬所持率0.8以上、持続性は91日未満のギャップ期間と定義した。カプランマイヤー曲線、Cox回帰分析を推定し、結果を調整するために使用した。 主な結果は以下のとおり。・SGA新規処方患者の全体的なTTFDは192.3日(95%CI:177.6~206.9)、平均年齢80.9歳(SD:8.1歳)女性率60.3%であった。・TTFDは、リスペリドン68.3日(95%CI:43.7~92.9)で、クロザピン101.3日(95%CI:85.0~117.7、p=0.03)と比較し最も短かった。・調整後の全原因によるTTFDは、クロザピンと比較し、リスペリドン(ハザード比:0.54)、オランザピン(ハザード比:0.29)、クエチアピン(ハザード比:0.22)、ziprasidone(ハザード比:0.08)において有意に低かった。・ノンアドヒアランス群では、アドヒアランス群と比較し、TTFDリスクが3倍以上であった。関連医療ニュース FDAの承認が抗精神病薬の適応外処方に与える影響 警告後、認知症への抗精神病薬処方は減少したのか 抗精神病薬の過量投与は減少しているのか

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失神入院患者は肺塞栓症有病率が高い?/NEJM

 失神の初回エピソードで入院した患者は、約6例に1例の割合で肺塞栓症を有することが、イタリア・パドヴァ大学のPaolo Prandoni氏らが行ったPESIT試験で示された。研究の成果は、NEJM誌2016年10月20日号に掲載された。失神は、急激に発症し短時間(<1分)で自然に解消する一過性の意識消失と定義され、一時的な脳の低灌流に起因すると考えられている。多くの教科書では、肺塞栓症は失神の鑑別診断に含まれるが、厳格な試験デザインで有病率を検証した研究はなく、欧州心臓病学会(ESC)や米国心臓協会(AHA)などの現行のガイドラインでは、これらの患者で肺塞栓症の診断を確定するための精査にはほとんど注意が払われていないという。失神入院患者560例を対象とする横断的研究 PESITは、系統的な精査により、初回失神で入院した患者における肺塞栓症の有病率を評価する横断的研究(パドヴァ大学の助成による)。 対象は、年齢18歳以上、他の説明可能な要因(神経調節性、起立性低血圧、心疾患)の有無にかかわらず、失神の初回エピソードで入院した患者とし、てんかん発作、脳卒中、頭部外傷などの明らかな原因を有する者は除外した。 Wellsスコアによる臨床的な検査前確率が低く、かつDダイマー検査が陰性の場合は、肺塞栓症を診断から除外することとした。残りの全患者に、CT肺血管造影または肺換気血流スキャンを施行した。 2012年3月~2014年10月に、イタリアの11施設で登録された560例が解析の対象となった。全体の有病率は17.3%、説明可能な要因がない場合は25.4% ベースラインの全体の平均年齢は76±14歳で、77.7%が70歳以上、52.5%が80歳以上と高齢者が多かった。男性は39.8%だった。 肺塞栓症の検査前確率が低く、Dダイマー検査が陰性であった330例(58.9%)で肺塞栓症が除外された。残りの230例のうち97例(42.2%)で肺塞栓症が同定された。全部で肺塞栓症除外例は463例だった。 コホート全体の肺塞栓症の有病率は17.3%(95%信頼区間[CI]:14.2~20.5)であり、約6例に1例の割合であった。 CTで肺塞栓症が検出された72例の病変部位は、30例(41.7%)が主肺動脈、18例(25.0%)は葉動脈であった。肺換気血流スキャンで検出された24例のうち、4例(16.7%)は両肺の総面積の50%以上に血流欠損がみられ、8例(33.3%)では総面積の26~50%に血流欠損が認められた。死亡した1例では、両肺の主肺動脈に肺塞栓が確認された。 失神の他の説明可能な要因を有する患者の肺塞栓症の有病率が12.7%(45/355例)であったのに対し、これを有さない患者は25.4%(52/205例)と高率であった。 著者は、「予想どおり、呼吸困難、頻脈、低血圧、深部静脈血栓の臨床徴候や症状を有する患者で肺塞栓症の有病率が高い傾向があり、担がん患者にも高頻度にみられたが、これらの特徴を持たない患者の有病率も無視できないものであった」としている。

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失神患者の6人に1人はPEか?NEJMのデータを深読みする(解説:香坂 俊 氏)-605

 NEJM誌に発表された、イタリアの失神患者に関する横断研究(PESIT研究)の結果が議論を呼んでいる。この研究は示唆に富むものであるが、適切に解釈するために(わが国での診療の現状を踏まえると)いくつか注意すべきことがあるように思われる。よりこの研究内容を深く理解するため、とくに下記3点は、抑えておいてもよいのではないか?1. プロトコール通りに失神精査を行っているか?今回の研究では、まず2014年欧州ガイドラインの内容に準じて詳細に問診と身体所見を撮ることとなっている。リストにするとこんな感じだ(英文部はすべて論文のMethodsから抜粋)。●神経調節性失神などコモンな病態をきちんと除外しているか?A medical history was obtained that included the presence of prodromal symptoms of autonomic activation (sweating, pallor, or nausea), the presence of known cardiac disease, recent bleeding, causes of volume depletion or venous pooling, and recent exposure to new or stronger hypotensive drugs or drugs that could potentially cause bradycardia or tachycardia. ●静脈血栓症に関する危険因子を余さず聴取しているか?In addition, study physicians asked patients about symptoms (pain and swelling) in their legs and recorded the presence of risk factors for venous thromboembolism, including recent surgery, trauma, or infectious disease within the previous 3 months; ongoing hormonal treatment; prolonged immobilization of 1 week or longer; active cancer; and history of venous thromboembolism.●心臓性失神のワークアップを適切に行っているか?Patients were evaluated for the presence of arrhythmias, tachycardia (i.e., heart rate >100 beats per minute), valvular heart disease, hypotension (i.e., systolic blood pressure 20 breaths per minute), and swelling or redness of the legs. All patients underwent chest radiography, electrocardiography, arterial blood gas testing, and routine blood testing that included a D-dimer assay. Further diagnostic workup included carotid sinus massage, tilt testing, echocardiography, and 24-hour electrocardiography recording, if applicable.ざっと見ていただいてわかるように、かなり失神について網羅的な問診や身体所見、そして検査が行われている。しかし、その内容は日本式の検査結果を前面に出したものではなく、欧米式の詳細な問診と身体所見の取得を前提としたものである。このことをはたして忙しい日本の病院の救急外来や通常外来で行い得るだろうか?そして、しばしば560例の失神患者のうち97例にPEが見つかった、と紹介されるこの研究であるが、上記を踏まえるとこれは事実ではない。実際は論文中の Figure 1(下記)にある通り、実に2,584例の失神患者が登録されており、これらの患者が上記のプロセスを経て、560例が明確な診断がなく入院し、そのうち97例にPEが見つかったのである。こうした背景を踏まえた解釈を行わないと、造影CTばかりをオーダーしその挙句に「まったくPEが見つからないではないか!」という誤解を生みかねない。あらためて全体を俯瞰してみると、すべての失神患者を母集団とするPEの率というのは97/560(17.3%)ではなく、97/2584となり、実は3.7%にすぎないのである。2. PE/DVTのModified Wells Criteriaを把握しているか?PESIT研究のプロトコールでは、上記のようなプロセスを経て「明確な診断なく入院となった失神患者」を対象としている。そして、さらに細かいことではあるが、その後もModified Wells Criteria(とD-dimer値)に基づいて、PEの可能性が高いか低いかを判断している。そして、この段階で低いと判断された330例(58.9%)については、PEのワークアップは行っていないのである。つまり、●まず1で述べたような標準的な失神のワークアップを行い、入院させる必要があるかどうかを判定●さらにそこからModified Wellsを用いてPEに焦点を当てた術前診断確率を計算する●そして、ある程度PEの可能性がある患者のみに検査(造影CTやV/Qスキャン)を行うということで、ようやく6例に1例(17.3%)という数値にたどりつける。「入院した失神患者」という枠内でもきちんと頭を使うことは必要で、ここでも無分別に造影CTをオーダーしてしまうと「PEが見つからない!」という誤謬に陥ることとなる。3. この研究には実はコントロールがないが、そのことをどう解釈するか?この点が最も識者の意見を分けるところではないだろうか?上記のプロトコールに沿ってPEを見つけたとして、それが失神の原因であると言い切ることができるか。うがった言い方をすれば、この研究は「失神で入院し、従来からの評価法でPEのリスクが高い患者に検査を行ったところ、やはりPEがたくさん見つかった」というようにも解釈できる。もしかすると失神ではなく、「動悸」の患者で同じ研究を行っても同じことになるかもしれない。あるいはまったく関係のない「検査入院」の患者さんではどうだろうか?また、今回のPEの診断で条件となったのが「The criterion for the presence of pulmonary embolism was an intraluminal filling defect on computed tomography」という存外単純な所見にすぎない。こうしたところも1つ批判の材料となりそうである。以上3点、この横断研究を解釈する際の注意点を挙げた。ただ、今回のこのPESIT研究が横断研究の1つの到達点であることは間違いない。現行のガイドラインに沿ってEvidence-Basedに診断のプロセスを進め、それでも判断がつかないところに確定的な検査を行い、これまで「ふわっ」としていたところにきちんとした数値を出すという姿勢は見習いたいと思っている。なにしろ、下手な教科書を読むよりもこの論文を読んだほうが現代的な失神の診断の進め方には詳しくなれそうではあるし、ヨーロッパでの現実的な失神の原因の割合というものも把握することができる。横断研究ならではの本質的な限界はあるにせよ、失神のことで日ごろ悩まれている方には議論のたたき台として一読する価値があるのではないか。

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