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重症/最重症COPD、3剤配合吸入薬の臨床効果/Lancet

 重症/最重症の慢性閉塞性肺疾患(COPD)の治療において、吸入コルチコステロイド(ICS)+長時間作用型β2受容体刺激薬(LABA)+長時間作用型ムスカリン受容体拮抗薬(LAMA)の配合薬の吸入療法は、ICS+LABAよりも良好な臨床ベネフィットをもたらすことが、英国・マンチェスター大学のDave Singh氏らが実施したTRILOGY試験で明らかとなった。研究の成果は、Lancet誌2016年9月3日号(オンライン版2016年9月1日号)に掲載された。GOLDガイドラインは、COPDの増悪歴のある患者には、LAMAまたはICS+LABAを推奨しているが、これらを行っても多くの患者が増悪を来すため、実臨床ではICS+LABA+LAMAの3剤併用療法へと治療が強化されることが多い。このレジメンを簡便化した、プロピオン酸ベクロメタゾン(BDP)+フマル酸フォルモテロール(FF)+グリコピロニウム臭化物(GB)の配合薬の開発が進められている。3剤配合薬の有用性を無作為化試験で評価 TRILOGYは、重症/最重症COPD患者において、BDP/FF/GBとBDP/FFの安全性と有効性を比較する二重盲検実薬対照無作為化試験(Chiesi Farmaceutici SpA社の助成による)。 対象は、年齢40歳以上、気管支拡張薬投与後の1秒量(FEV1)<50%、%FEV1<0.7で、過去1年以内に中等症~重症のCOPD増悪を1回以上発症し、COPDアセスメントテスト(CAT)スコア≧10点、ベースライン呼吸困難指数(BDI)スコア≦10点であり、スクリーニングの前に、ICS+LABA、ICS+LAMA、LABA+LAMA、LAMAによる2ヵ月以上の治療歴がある症候性COPD患者であった。 被験者は、全例が2週間の導入期間にBDP/FFの投与を受けたのち、BDP/FF/GBにステップアップする群またはBDP/FFを維持する群(加圧定量噴霧式吸入器[pMDI]を用いて1日2回吸入)に無作為に割り付けられ、52週の治療が行われた。 主要評価項目は、26週時の投与前(朝)FEV1および投与後2時間のFEV1のベースラインからの変化、呼吸困難変化指数(TDI)スコアの3つとした。副次評価項目は、52週時の中等症~重症のCOPD増悪の割合などであった。 2014年3月21日~2016年1月14日までに、14ヵ国159施設(1次医療機関:18、2次医療機関:99、3次医療機関:28、専門研究機関:14)に、1,368例が登録された。BDP/FF/GB群に687例、BDP/FF群には681例が割り付けられた。呼吸困難の改善効果には差がない 平均年齢は、BDP/FF/GB群が63.3歳、BDP/FF群は63.8歳で、男性がそれぞれ74%、77%を占めた。現在喫煙者は両群とも47%、COPD初回診断後の経過期間は両群とも7.7年であった。 26週時の投与前FEV1は、BDP/FF/GB群がBDP/FF群よりも0.081L改善し(95%信頼区間[CI]:0.052~0.109、p<0.001)、投与後2時間FEV1はBDP/FF/GB群が0.0117L改善した(95%CI:0.086~0.147、p<0.001)。これらのBDP/FF/GB群の優位性は、52週時も維持されていた(いずれも、p<0.001)。 26週時の平均TDIスコアは、BDP/FF/GB群が1.71、BDP/FF群は1.50であり、両群に有意な差は認めなかった(群間差:0.21、95%CI:-0.08~0.51、p=0.160)。 QOL評価では、26週時のSt George’s Respiratory Questionnaire(SGRQ)スコアの臨床的に重要な改善(ベースラインからの4単位以上の低下)の達成率は、BDP/FF/GB群が47%と、BDP/FF群の36%に比べ有意に良好であった(オッズ比[OR]:1.52、95%CI:1.21~1.91、p<0.001)。このBDP/FF/GB群の優位性は、52週時も維持されていた(43 vs.36%、OR:1.33、95%CI:1.06~1.66、p=0.014)。 中等症~重症増悪の補正年間発生頻度は、BDP/FF/GB群が0.41と、BDP/FF群の0.53に比べ有意に23%少なかった(率比:0.77、95%CI:0.65~0.92、p=0.005)。 治療関連有害事象の発現率は、BDP/FF/GB群が54%、BDP/FF群は56%であった。BDP/FF/GB群で、1例に重篤な治療関連有害事象(心房細動)が認められた。 著者は、「BDP/FF/GBは、良好な気管支拡張作用を発揮し、呼吸困難の改善効果は有意ではなかったものの、健康関連QOLおよび中等症~重症の増悪の予防効果は有意に優れた」とまとめ、「本試験は、単一の吸入器を用いた、ICS+LABAからICS+LABA+LAMAの3剤併用療法へのステップアップ治療の、臨床ベネフィットのエビデンスをもたらした初めての研究である」としている。

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中枢性睡眠時無呼吸、経静脈的神経刺激デバイスが有用/Lancet

 経静脈的神経刺激デバイスは、中枢性睡眠時無呼吸の重症度を軽減し、忍容性も良好であることが、米国・Advocate Heart InstituteのMaria Rosa Costanzo氏らの検討で示された。研究の成果は、Lancet誌2016年9月3日号(オンライン版2016年9月1日号)に掲載された。中枢性睡眠時無呼吸は、呼吸調節中枢からの神経細胞アウトプットの一時的な遮断によって発症し、呼吸刺激の喪失や気流停止を来す。心血管や脳血管疾患など広範な疾患にみられ、酸化ストレスを増強して基礎疾患の進展を促し、不良な転帰をもたらす可能性が示唆されている。remedeシステムと呼ばれる神経刺激療法は、横隔膜を収縮させる神経を経静脈的に刺激して正常呼吸に近づける埋め込み型デバイスである。デバイスの安全性と有効性を無作為化対照比較試験で評価 研究グループは、種々の原因による中枢性睡眠時無呼吸における埋め込み型経静脈的神経刺激デバイスの安全性と有効性を評価する無作為化対照比較試験を行った(Respicardia Inc社の助成による)。 対象は、年齢18歳以上、医学的に安定した状態にあり、ガイドラインが推奨する適切な治療を受け、デバイスの埋め込み術が忍容可能であり、試験要件に応じる意思と能力がある患者で、終夜睡眠ポリソムノグラフ検査で測定した無呼吸低呼吸指数(AHI)が≧20イベント/時の者とした。 被験者は、治療群または対照群に無作為に割り付けられ、すべての患者にデバイスが埋め込まれた。神経刺激装置は、左または右胸部に埋め込まれ、刺激用リードは左心膜横隔静脈または右腕頭静脈に留置された。 治療群は、埋め込み後1ヵ月の受診時にデバイスを作動させ、その6ヵ月後に有効性の主要エンドポイントの評価が行われた。対照群は、この評価が終了するまで、6ヵ月間デバイスを作動させず、評価終了後に作動させた。 有効性の主要エンドポイントは、治療群における6ヵ月時のAHIのベースラインから≧50%の低下とした。安全性の主要エンドポイントは、12ヵ月時の手技・デバイス・治療関連の重篤な有害事象であった。 2013年4月17日~2015年5月28日までに、ドイツの6施設、ポーランドの1施設、米国の24施設に151例が登録された。治療群に73例、対照群には78例が割り付けられ、有効性の主要エンドポイントの評価はそれぞれ68例、73例(ITT集団)で行われた。覚醒反応指数やREM睡眠、QOL、眠気も改善 全体の平均年齢は65(SD 13)歳、男性が89%、白人が95%で、BMIは31.1(SD 6.0)、心拍数は74.1(SD 13.3)拍/分、血圧は124.5(SD 17.9)/74.9(SD 11.0)mmHg、呼吸数は17.4(SD 2.7)回/分であり、AHIは46.2(SD 18.2)イベント/時であった。64例(42%)に、心デバイスが埋め込まれていた。 デバイスの埋め込みは147例(97%)で成功し、解剖学的問題により4例(両群2例ずつ)では埋め込みができなかった。埋め込み術の平均所要時間は2.7(SD 0.8)時間だった。 6ヵ月時に、AHIのベースラインから≧50%の低下を達成した患者の割合は、治療群が51%(35/68例)と、対照群の11%(8/73例)に比べ有意に良好であった(群間差:41%、95%信頼区間[CI]:25~54、p<0.0001)。 PP集団における有効性の副次エンドポイント(中枢性無呼吸指数[CAI]、AHI、覚醒反応指数、睡眠に占めるREM睡眠の割合、患者全般評価[PGA]の健康関連QOLの著明/中等度改善の患者割合、≧4%酸素飽和度低下指数[ODI4]、エプワース眠気尺度[ESS]スコア)のベースラインからの平均変化はすべて、治療群が対照群よりも有意に優れた。 12ヵ月時に、全体の91%(138/151例)では重篤な手技・デバイス・治療関連有害事象を認めなかった。重篤な関連有害事象の発現率は、治療群が8%(6/73例)、対照群は9%(7/78例)であった。 7例が死亡したが、いずれも手技・デバイス・治療とは関連がなかった。このうち4例(両群2例ずつ)は、デバイスが治療群でのみ作動し、対照群では作動していない初回受診から6ヵ月の間に死亡し、3例は全患者が神経刺激療法を受けている6~12ヵ月の間に死亡した。 治療群の27例(37%)が、重篤ではない治療関連有害事象を報告し、このうち26例(36%)はシステムプログラムの簡単な再調整で解決したが、1例(1%)は解決しなかった。 著者は、「このデバイスは、夜間に自動的に作動するため、患者のアドヒアランスの影響を受けず、中枢性睡眠時無呼吸の新たな治療アプローチとなる可能性がある」としている。

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亜急性硬化性全脳炎〔SSPE : subacute sclerosing panencephalitis〕

1 疾患概要■ 概念・定義亜急性硬化性全脳炎(subacute sclerosing panencephalitis: SSPE)は、1934年Dawsonにより急速進行する脳炎として初めて報告された。この疾患は、麻疹に感染してから数年の潜伏期間を経て発症する。発病後は数ヵ月から数年の経過(亜急性)で神経症状が進行し、病巣の性状はグリオーシス(硬化)であり、全脳を侵すことにより、亜急性硬化性全脳炎と呼ばれる。このように潜伏期間が長く、緩徐に進行するウイルス感染を遅発性ウイルス感染と呼び、ほかにはJCウイルスによる進行性多巣性白質脳症(progressive multifocal leukoencephalopathy: PML)が知られている。根本的治療法は確立されておらず、現在でも予後不良の疾患である。■ 疫学わが国での発症者は、麻疹ワクチンが普及する以前は年間10~15人程度であったが、麻疹ワクチン普及後は減少し、現在は年間5~10人程度となっている。男女比は2 : 1でやや男性に多く、潜伏期間、症状の発症とも女性と比較すると長く、遅くなっている。SSPEの発症年齢は平均12歳で、20代をピークに10~30歳代で96%を占める。麻疹ワクチンによるSSPEの発症は認められておらず、SSPE発症には直接的な麻疹ウイルス(MV)感染が必要であるため、発症予防には麻疹への感染予防が重要であるが、わが国では他の先進国に比べて麻疹ワクチンの接種率が低く、接種率向上が必要である。■ 病因SSPEの発症のメカニズムは現在まで十分には判明していないが、発症に関与する要因として、ウイルス側のものと宿主側のものが考えられている。1)ウイルス側の要因MVの変異株(SSPEウイルスと呼ぶ)が、中枢神経に持続感染することで起こる。SSPEウイルスは野生のMVと比較すると、M遺伝子やF遺伝子の変異が生じている。M遺伝子は、ウイルス粒子形成とカプシドからの粒子の遊離に重要なMタンパク質をコードし、Mタンパク質機能不全のため、SSPEウイルスは、感染性ウイルス粒子を産生できない。そのため隣接する細胞同士を融合させながら、感染を拡大していく。F遺伝子は、エンベロープ融合に関与するFタンパク質をコードし、一般にはSSPEウイルスはFタンパク質の膜融合が亢進しており、神経親和性が高くなっている。2)宿主側の要因幼少期にMV初感染を受けると免疫系や中枢神経系が十分に発達していないため、MVの脳内での持続感染が起こりやすく、SSPE発症リスクが上がる。ほかにSSPE発症に関わる遺伝的要因として、これまでにIL-4遺伝子多型とMxA遺伝子多型が報告されている。IL-4は、ヘルパーT細胞のTh1/Th2バランスをTh2(抗体産生)側に傾けるサイトカインで、SSPE患者ではIL-4産生が多いタイプの遺伝子多型を持つことが多いために、IL-4産生が亢進してTh2側に傾き、細胞傷害性T細胞の活性が抑えられて、MVの持続感染が起こりやすくなっていると考えられている。また、SSPE患者はインターフェロンによって誘導され、細胞内でのウイルス増殖を抑える機能を持つ、MxAの産生が多くなる遺伝子多型を持つことも知られている。MxA産生が多いと、中枢神経系のMV増殖が抑制され、MVに感染した神経細胞が免疫系から認識されにくくなり、中枢神経系での持続感染が起こりやすくなると考えられている。■ 症状と特徴初発症状として、学校の成績低下、記憶力低下、行動の異常、性格の変化があり、その後、歩行障害、ミオクローヌス、痙攣、自律神経症状、筋固縮を来し、最終的には無言・無動となり、死に至ることが多い。これらの症状の分類には、Jabbourが提唱した臨床病期分類が一般的に用いられる。■ Jabbourの分類第1期精神神経症状性格変化(無関心、反抗的)、学力低下、行動異常など第2期痙攣および運動徴候痙攣のタイプは全身強直発作、失神発作、複雑部分発作など運動徴候として運動機能低下、不随意運動(SSPEに特徴的な四肢の屈曲や進展を反復するミオクローヌス)第3期昏睡に至る意識障害の進行、筋緊張の亢進、球症状の出現による経口摂取困難、自律神経症状など第4期無言無動、ミオクローヌス消失全経過は通常数年だが、数ヵ月以内に死に至る急性型(約10%)、数年以上の経過を示す慢性型(約10%)がある。■ 予後SSPE症例は、無治療の場合は約80%が亜急性の経過をたどり、約1~3年の経過で第1期から第4期の順に進行し死亡する。約10%は発症後急速に進行し、3ヵ月以内に死亡する。また、残り約10%の進行は緩徐で、約4年以上生存する。無治療で寛解する症例や、寛解と増悪を繰り返す症例も報告されている。2 診断 (検査・鑑別診断も含む)診断は、臨床症状を軸に血液、髄液、脳波、画像検査を統合して行う。■ 特徴的な検査所見1)麻疹抗体価血清および髄液の麻疹抗体価が上昇する。髄液麻疹抗体価の上昇はSSPEに特異的であり、検出されれば診断的意義が高い。SSPE患者の抗体価は異常高値が特徴とされたが、最近では、軽度上昇にとどまる症例も多く、注意が必要である。また、抗体価の推移と臨床経過は必ずしも一致しない。2)髄液検査多くの場合は細胞数・糖・蛋白とも正常だが、細胞数・蛋白が軽度上昇することもある。また、髄液IgGおよびIgG indexの上昇も認める。3)脳波検査Jabbour2期から3期にかけて、左右同期性または非同期性で3~20秒間隔で出現する周期性同期性高振幅徐波をほとんどの症例で認めるが、Jabbour4期になると消失する(図)。画像を拡大する4)画像検査MRIは、疾患の推移を評価するのに有用である。画像変化は臨床病期とは一致せず、主に罹患期間に依存する。病初期のMRI所見では、正常または後頭葉の皮質・皮質下に非対称なT2強調画像での高信号の病変を認める。病期の進行とともに脳萎縮が進行し、側脳室周囲に対称性の白質病変が出現・拡大する。5)病理病理所見の特徴は、灰白質と白質の両方が障害される全脳炎であることと、線維性グリオーシスにより硬化性変化を示すことである。組織学的には、軟膜と血管周囲の炎症細胞浸潤、グリア細胞の増生、ニューロンの脱落および神経原線維変化の形成、脱髄などの所見がみられる。炎症所見は、発症からの経過が長いほど乏しくなる。麻疹ウイルス感染に関連した所見として、核内および細胞質の封入体を認める。■ 鑑別診断SSPEは急速に進行する認知症、ミオクローヌス、痙攣などを来す疾患の一部であり、ADEM(acute disseminated encephalomyelitis)、亜急性および慢性脳炎、脳腫瘍、多発性硬化症、代謝性白質脳症、進行性ミオクローヌスてんかんなどが鑑別に挙がる。3 治療 (治験中・研究中のものも含む)■ イノシンプラノベクスイノシンプラノベクス(商品名: イソプリノシン)は、抗ウイルス作用と免疫賦活作用を併せ持つ薬剤で、保険適用薬として認可されている。通常50~100mg/kg/日を3~4回に分割し、経口的に投与する。これにより生存期間の延長が得られるとされている。副作用として、血中および尿中の尿酸値の上昇(18.8%)があり、注意を要する。■ インターフェロン(IFN)インターフェロンは、ウイルス増殖阻害作用を持つ薬剤であり、IFNα、IFNγともに保険適用薬として認可されている。イノシンプラノベクスとの併用により有効であったとの報告例を多数認める。通常100~300万単位を週1~3回、脳室内に直接投与する。副作用として一過性の発熱をほぼ全例で認める。頻度は低いが、アレルギー反応を来す症例も認める。イノシンプラノベクス経口投与とIFN髄腔内または脳室内投与を併用するのが一般的で、有効性は言われているものの進行を阻止した例はまれであり、治療効果として不十分と考えられている。■ リバビリン近年、研究的治療(保険適用外)として、リバビリンの髄腔内または脳室内投与療法が試みられている。リバビリンは、広い抗ウイルススペクトラムを有する薬剤であり、麻疹(SSPE)ウイルスに対しても優れた抗ウイルス効果を示す。直接脳室内に投与することで、髄液中のリバビリン濃度はウイルス増殖を完全に抑制する濃度に維持され、重篤な副作用を認めず、少数例ではあるが臨床的有効性が報告されている。しかし、病初期(Jabbour2期)に投与した症例においては、臨床症状に明らかな改善を認めたとする報告が多く、病期の進行した症例(Jabbour3期)では改善効果に乏しかったとする報告が多い。以上のことから、リバビリン療法は、リバビリンがウイルスの増殖を抑制して病期の進行を抑制する治療法であり、進行した神経障害を改善させるものではないと考えられている。■ 対症療法上記の治療のほかには対症療法として、ミオクローヌスのコントロールや呼吸管理、血圧コントロールなどの対症療法を行っていく必要がある。4 今後の展望SSPEの重症度の評価として、新たにトリプトファン代謝の主要経路であるキヌレニン経路の代謝産物の髄液中濃度について検討されている。SSPE群では対象例と比較し、髄液中のキノリン酸濃度が有意に高値であり、病期の進行とともに増加が認められている。代謝産物であるキノリン酸の増加はキヌレニン経路の活性化が示唆され、その活性化はSSPEにおける変異型麻疹ウイルスの持続感染に関与している可能性がある。さらにキノリン酸は NMDA型グルタミン酸受容体アゴニストとして興奮性神経毒性を持つため、SSPEにおける神経症状との関係が示唆されている。また、前述したが、研究的治療としてリバビリン髄腔内または脳室内投与が有望である可能性が考えられている。具体的な投与方法として、リバビリン1mg/kg/回、1日2回、5日間投与から開始し、1回量、投与回数を調整し、髄液リバビリン濃度を目標濃度(50~200μg/mL)にする。投与量が決定したら、5日間投与・9日間休薬を12クール(6ヵ月)継続するものとなっている。効果としては、国内で詳細に調査された9例において、治療前後の臨床スコアの平均は前が52.9、後が51.0であり、治療前後で有意差は認めなかった。しかし、イノシンプラノベクスとIFNの併用療法を施行された48症例では治療前後の臨床スコアは前が54.3、後が61.1と悪化を認めており、リバビリン脳室内投与群のほうが優る結果となっている。しかしSSPEは、症例により異なる経過をたどり、その経過も長いため、多数例の調査を行ったうえでの慎重な判断が必要である。5 主たる診療科神経内科および小児科※ 医療機関によって診療科目の区分は異なることがあります。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)診療、研究に関する情報難病情報センター 亜急性硬化性全脳炎(一般利用者向けと医療従事者むけのまとまった情報)プリオン病及び遅発性ウイルス感染症に関する調査研究班プリオン病のサーベイランスと感染予防に関する調査研究班(医療従事者向けの情報)患者会情報SSPE青空の会(SSPE患者とその家族の会)1)厚生労働省難治性疾患克服研究事業 プリオン病及び遅発性ウイルス感染症に関する調査研究班. 亜急性硬化性全脳炎(SSPE)診療ガイドライン(案)2)平成27年度(2015年度)プリオン病及び遅発性ウイルス感染症に関する調査研究班 総括研究報告書3)Gutierrez J, et al. Dev Med Child Neurol.2010;52:901-907.公開履歴初回2014年05月19日更新2016年09月20日

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授乳中の抗精神病薬使用、適切な安全性評価が必要

 授乳中の抗精神病薬使用に関する授乳論文の品質を確認するため、オランダ・フローニンゲン大学のHazel Hummels氏らは、米国FDAやInternational Lactation Consultant Association(ILCA)ドラフトガイドラインに従って検討を行った。European journal of clinical pharmacology誌オンライン版2016年8月24日号の報告。 授乳中の抗精神病薬使用を含む論文の品質を確認するため、FDAドラフト、ILCAガイドランを用いた。PubMed、Lactmedより文献検索を行った。さらなる研究は、相互参照により検索を行った。 主な結果は以下のとおり。・51件の研究が抽出された。オランザピン1件、クエチアピン1件のみが、ミルク血漿比(M:P比)、絶対幼児投与量(AID)、相対幼児投与量(RID)を正しく計算していた。・その他の研究については、3つのエンドポイントのうち1つ以上が適切に決定されていなかった。・クロルプロマジン、chlorprothixene、クロザピン、ハロペリドール、スルピリド、trifluoperazine、ziprasidone、ゾニサミド、zuclopenthixolについては、正しいエンドポイントが計算されていなかった。・本レビューでは、母乳の採取方法に関する情報の欠如があった。・また、3つのエンドポイントの計算に必要な濃度は、単回投与中に5回以上の測定ではなく、主に単一測定に基づいていた。・多くの研究において、RIDは事実上、正しく計算されていなかった(母体中で正規化されていないまたは平均母体中70kgを標準的に使用)。 著者らは「2つの研究を除き、ほとんどの研究は、授乳中の抗精神病薬使用の安全性に関して、FDAドラフト、ILCAガイドライン基準を満たしていなかった。授乳しながら抗精神病薬を投与した際の安全性を評価するさらなる研究が必要である」としている。関連医療ニュース 抗精神病薬服用中の授乳、安全性は 統合失調症女性の妊娠・出産、気をつけるべきポイントは 授乳中の気分安定薬は中止すべきか

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可愛い孫は、肺炎を持ってくる

孫の世話に疲れる高齢者 大都市の待機児童の問題にみられるように、保育園や幼稚園に入所できず、祖父母に子供を預ける共働き世帯も多い。また、地方では、2世帯同居が珍しくなく、日中、孫の育児を祖父母がみるという家庭も多い。そんななか、預かった孫の世話に追われ、体力的にも精神的にも疲れてしまう「孫疲れ」という現象が、最近顕在化しているという。晩婚化のため祖父母が高齢化し、体力的に衰えてきているところに、孫の育児をすることで、身体が追いついていかないことが原因ともいわれている。家庭内で感染する感染症 そして、孫に疲れた高齢者に家庭内、とくに孫から祖父母へうつる感染症が問題となっている。子供は、よく感染症を外からもらってくる。風邪、インフルエンザをはじめとして、アデノウイルス、ノロウイルス、帯状疱疹など種々の細菌、ウイルスが子供への感染をきっかけに家庭内に持ち込まれ、両親、兄弟、祖父母へと感染を拡大させる。 日頃孫の面倒をみていない祖父母でも、お盆や年末、大型連休などの帰省シーズンに帰ってきた孫との接触で感染することも十分考えられ、連休明けに高齢者の風邪や肺炎患者が外来で増えているなと感じている医療者も多いのではないだろうか1)。ワクチンで予防できる肺炎 なかでも高齢者が、注意しなくてはいけないのが「肺炎」である。肺炎は、厚生労働省の「人口動態統計(2013年)」によれば、がん、心疾患についで死亡原因の第3位であり、近年も徐々に上昇しつつある。また、肺炎による死亡者の96.8%を65歳以上の高齢者が占めることから肺炎にかからない対策が望まれる。 日常生活でできる肺炎予防としては、口腔・上下気道のクリーニング、嚥下障害・誤嚥の予防、栄養の保持、加湿器使用などでの環境整備、ワクチン接種が推奨されている。とくにワクチン接種については、高齢者の市中肺炎の原因菌の約4分の1が肺炎球菌と報告2)されていることから、2014年よりわが国の施策として、高齢者を対象に肺炎球菌ワクチンが定期接種となり、実施されている。 定期接種では、65歳以上の高齢者に23価肺炎球菌莢膜ポリサッカライドワクチン(商品名:ニューモバックスNP)の接種が行われ、平成30年度まで経過措置として65歳から5歳刻みで区切った年齢の該当者に接種が行われる。定期接種の注意点と効果を上げるコツ 定期接種の際に気を付けたいことは、経過措置の期間中に接種年齢に該当する高齢者が接種を受けなかった場合、以後は補助が受けられず自己負担となってしまうことである(自治体によっては、独自の補助などもある)。また、過去にこのワクチンの任意接種を受けた人も、定期接種の対象からは外れてしまうので注意が必要となる。 そして、ワクチンの効果は約5年とされ、以後は継続して任意で接種を受けることが望ましいとされている。 このほか高齢者においては肺炎球菌ワクチンだけでなく、同時にインフルエンザワクチンも接種することで、発症リスクを減らすことが期待できるとされる3,4)。低年齢の子供へのインフルエンザワクチンの接種により、高齢者のインフルエンザ感染が減少したという報告5)と同様に肺炎球菌ワクチンでも同じような報告6)があり、今後のワクチン接種の展開が期待されている。 普段からの孫との同居や預かり、連休の帰省時の接触など、年間を通じて何かと幼い子供と接する機会の多い高齢者が、健康寿命を長く保つためにも、高齢者と子供が同時にワクチンを接種するなどの医療政策の推進が、現在求められている。 この秋から冬の流行シーズンを控え、今から万全の対策が望まれる。(ケアネット 稲川 進)参考文献 1)Walter ND, et al. N Engl J Med. 2009;361:2584-2585. 2)日本呼吸器学会. 成人市中肺炎診療ガイドライン. 2007;15. 3)Maruyama T, et al. BMJ. 2010;340:c1004. 4)Kawakami K, et al. Vaccine. 2010;28:7063-7069. 5)Reichert TA, et al. N Engl J Med. 2001;344:889-896. 6)Pilishvili T, et al. J Infect Dis. 2010;201:32-41.参考サイト ケアネット・ドットコム 特集 肺炎 厚生労働省 肺炎球菌感染症(高齢者):定期接種のお知らせ 肺炎予防.JP

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専門家のプライドか、普遍的なお金か?(解説:後藤 信哉 氏)-592

 BMJ誌は面白い論文を掲載する。英国の医療システムは、国民皆保険の日本と類似している。車産業、ファッション産業と異なり、医薬品産業は公共的費用の配分である。 税金の配分において、役人が「私は、この工事を請け負う特定の業者から教育講演を依頼されて謝金を受け取ったり、その業者が業界内の教育に用いるパンフレットの作成を依頼されて謝金を受け取っても税金の使途をその特定業者に振り向けることはありません」と言っても、多くの人は癒着と受け止めるであろう。 医師はきわめて専門的な職種であり、個々の医師のプライドはきわめて高いので、「特定の業者から教育講演を依頼されて謝金を受け取ったり、その業者が業界内の教育に用いるパンフレットの作成を依頼されて謝金を受け取ってもその特定業者の薬を処方することはありません」との信頼感が日本の社会には残っている(いた?)。しかし、プライドの高い医師といっても普遍的価値である「お金」の前では弱い。「お金」の普遍性から考えれば、医師のみに高いプライドに基づいた独立性を期待すること自体に無理があるともいえる。 役人の汚職は犯罪であり、社会から嫌悪される。公的性格の高い医療コストを特定業者に振り向けるリスクのある「お金」については、真剣に考える時期が来た。医師と企業の関係は、専門家としての医師のアドバイスによる薬剤の開発など産学連携としての価値もある。普遍性のある「お金」故に、相手企業のために働いたら、その対価を受け取ることは正当な場合も多い。しかし、本論文は、講演料、教育コストとされても「汚職」に近い結果をもたらす場合を示した。 医師が企業から受け取る謝金を公開する透明性ガイドラインは制定された。企業から個別の医師への講演料、大学の教室への奨学寄付金なども公開されている。しかし、製薬企業などが営業活動に費やす費用公開の議論は進んでいない。NEJM誌の編集者であったマーシャ エンジェル博士は、製薬企業の開発コストは総支出の20%程度で、営業、マーケット、管理費用をかけすぎていると「ビックファーマ」に記載している。医療費は巨額である。製薬企業といえど、自動車、ファッション業界同様マーケット活動をする自由があっても、公共性の高い医療費を使う製薬、医療デバイス産業には、一般の企業以上の支出の透明化が必須であると筆者は考える。

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非虚血性収縮不全の心不全例に対する予防的ICDは予後を改善しない(解説:今井 靖 氏)-591

 植込み型電気除細動器(ICD)は、虚血性・非虚血性心不全のいずれにおいても、心室細動・血行動態の破綻を伴う心室頻拍の既往例の再発予防(2次予防)として、また既往がなくともそのリスクが高い症例の予防(1次予防)として適応され、国内外いずれのガイドラインでも推奨・考慮される治療法として掲げられている。 虚血性心疾患による収縮不全に伴う心不全に対するICDの有用性は、複数の臨床試験により明らかになっているが、非虚血性心疾患については予防的ICDの意義はサブ解析で示されるのみである。 今回、NEJM誌に報告されたDANISH試験と呼ばれる研究は、冠動脈疾患によらない収縮不全を伴う症候性心不全(EF35%以下)1,116例を対象に、予防的ICDの有益性を無作為化比較試験により検証するものであった。ICD群に556例、非植込み(通常治療群、対照群)に560例が割り付けられた。両群とも58%が心臓再同期療法CRTを受けた。主要評価項目はすべての原因による死亡(総死亡)、副次評価項目は心臓突然死および心臓血管死とされた。 追跡期間の中央値は67.6ヵ月で、主要評価項目である全死因死亡率はICD群120例21.6%、通常治療群131例23.4%で、ICDによる有意な低下はみられなかった(ハザード比:0.87、95%CI:0.68~1.12、p=0.28)。心臓突然死は、ICD群24例4.3%、通常治療群46例8.2%(ハザード比:0.50、95%CI:0.31~0.82、p=0.005)とICD群で有意に低率であった。デバイス感染症は決して低くなく、ICD27例4.9%、通常治療群で20例3.6%、 p=0.29。まとめると、虚血性心疾患によらない収縮不全による心不全症例では、ICDによる生存率改善効果が示されず、またCRT植込みの有無によらないという結果であった。 米国におけるAHAガイドラインによれば、虚血、非虚血にかかわりなく収縮不全による有症候性心不全に対してはICDはクラスIA適応とされている。一方、欧州では非虚血についてはクラスIBと推奨を1ランク下げている。これらのガイドラインのよりどころとする臨床試験は10年以上前のものであり、虚血の評価も既往などに基づく分類であること、またCRT植込み症例は除かれている点で、論文根拠としては脆弱な面があり、今回の報告は意外な結果であったが、今後のICD適応判断に有益な情報を提供するものとなった。

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非STEMIの死亡率は10年間で改善、その要因とは/JAMA

 イングランドおよびウェールズにおいて、非ST上昇型心筋梗塞(NSTEMI)で入院した患者の全死亡率は2003年から2013年に改善していることが確認された。この改善は、冠動脈侵襲的治療の実施と有意に関連しており、ベースラインの臨床リスク減少や薬物療法の増加とはまったく関連していなかったという。英国・リーズ大学のMarlous Hall氏らが、Myocardial Ischaemia National Audit Project(MINAP)のデータを用いたコホート研究の結果、報告した。急性冠症候群後の死亡率は世界的に低下しているが、この低下がガイドラインで推奨されたNSTEMIの治療とどの程度関連しているかは不明であった。JAMA誌オンライン版2016年8月30日号掲載の報告。NSTEMI患者約40万人のデータを解析 研究グループは、MINAPデータのうち、2003年1月1日~2013年6月30日にイングランドおよびウェールズの247病院に入院した18歳以上のNSTEMI患者38万9,057例(年齢中央値72.7歳[四分位範囲:61.7~81.2]、男性63.1%)について解析した。データには、ベースラインのGRACEリスクスコア、患者背景、併存疾患、退院時の薬物療法(アスピリン、β-ブロッカーなど)、冠動脈侵襲的治療の使用などが含まれ、死亡データは国家統計局を介して得た。 主要評価項目は、退院後180日の補正後全死因死亡率の年次推移(パラメトリック生存分析を用いて推定)であった。10年間でNSTEMI患者の死亡率は低下、冠動脈侵襲的治療と関連 NSTEMI患者38万9,057例中、追跡期間中に11万3,586例(29.2%)が死亡した。 2003~2004年に比べ2012~2013年では、GRACEリスクスコアの中/高リスク(≧88)の患者の割合が減少し(87.2% vs.82.0%)、最低リスク(

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冠動脈疾患疑い、非侵襲的検査が不要な血管造影を減らす/JAMA

 冠動脈疾患が疑われる患者において、英国立医療技術評価機構(NICE)ガイドラインに基づく治療方針より心血管磁気共鳴(CMR)検査を用いた治療のほうが、12ヵ月以内の不必要な血管造影を減らせることが明らかとなった。CMR検査と心筋血流シンチグラフィ(MPS)検査とで統計的有意差はなく、主要有害心血管イベント(MACE)の発生率も差はなかった。英国・リーズ大学のJohn P. Greenwood氏らが、Clinical Evaluation of Magnetic Resonance Imaging in Coronary Heart Disease 2(CE-MARC2)試験の結果、報告した。冠動脈疾患が疑われる患者に対しては、非侵襲的画像診断の利用や推奨が拡大しているにもかかわらず、診断初期には侵襲的血管造影が一般的に用いられている。現在のガイドラインで推奨されている異なる画像診断の有効性を比較する大規模試験はこれまでなかった。JAMA誌オンライン版2016年8月29日号掲載の報告。冠動脈疾患疑い患者約1,200例を、異なる検査に基づく治療を行う3群に無作為化 CE-MARC 2試験は、英国6病院で実施された多施設共同無作為化並行3群比較臨床試験。2012年11月23日~2015年3月13日に、検査前確率10~90%の症状を有する30歳以上の冠動脈疾患疑い患者1,202例を、NICEガイドラインに基づいた検査と治療を行う群(NICEガイドライン群、240例)、CMRに基づく治療を行う群(CMR群、481例)、またはMPSに基づく治療を行う群(MPS群、481例)に無作為に割り付け、2016年3月12日まで追跡調査を行った。 主要評価項目は、12ヵ月以内の事前に定義された不要血管造影(正常血流予備量比>0.8、または定量的冠動脈造影[QCA]:直径2.5mm以上の全冠動脈血管、1面図で70%以上または2直交図で50%以上の狭窄なし)であった。NICEガイドラインに基づくより、心血管MRのほうが不要血管造影の減少に有用 1,202例の患者背景は、平均年齢56.3(SD 9.0)歳、女性564例(46.9%)、冠動脈疾患検査前確率平均49.5(SD 23.8)%であった。このうち12ヵ月後に侵襲的冠動脈血管造影を受けた患者は、NICEガイドライン群102例(42.5%、95%CI:36.2~49.0)、CMR群85例(17.7%、14.4~21.4)、MPS群78例(16.2%、13.0~19.8)で、事前に定義された不要血管造影はそれぞれ69例(28.8%)、36例(7.5%)、34例(7.1%)で確認された。 不要血管造影の調整オッズ比は、CMR群vs.NICEガイドライン群で0.21(95%CI:0.12~0.34、p<0.001)、CMR群vs.MPS群で1.27(0.79~2.03、p=0.32)であった。 副次的評価項目である血管造影陽性率は、NICEガイドライン群12.1%(95%CI:8.2~16.9、29/240例)、CMR群9.8%(7.3~12.8、47/481例)、MPS群8.7%(6.4~11.6、42/481例)であった。また、12ヵ月後までに報告されたMACE発生率はそれぞれ1.7%、2.5%、2.5%。補正後ハザード比は、CMR群vs.NICEガイドライン群が1.37(95%CI:0.52~3.57)、CMR群vs.MPS群は0.95(0.46~1.95)であった。

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ステント留置後のプラスグレル投与、血小板機能検査は必要か/Lancet

 急性冠症候群(ACS)で冠動脈ステント留置術後の75歳以上ハイリスク患者に対してP2Y受容体拮抗薬プラスグレル(商品名:エフィエント)を投与する際、5mg/日投与後に血小板機能検査によるモニタリングを実施し用量調整を行っても、同検査をせずに5mg/日を投与し続ける場合と比べ、1年後までの心血管イベント発生率は変わらないことが明らかにされた。フランス・モンペリエ大学のGuillaume Cayla氏らが、877例を対象に行ったエンドポイント盲検化による非盲検無作為化比較試験「ANTARCTIC」試験の結果、明らかにしLancet誌オンライン版2016年8月28日号で発表した。心血管死、心筋梗塞、脳卒中などの複合エンドポイント発生率を比較 研究グループは、2012年3月27日~2015年5月19日にかけて、フランス35ヵ所の医療機関を通じて、ACSの治療で冠動脈ステント留置術を受けた75歳以上の患者877例を対象に、無作為化比較試験を行った。 被験者を無作為に2群に分け、一方にはプラスグレル5mg/日を投与し、14日後に血小板機能検査を行い、その結果に応じて用量を調整し、さらに14日後に再度検査を行った(モニタリング群)。もう一方の群には、プラスグレル5mg/日を投与し、血小板機能検査や用量の調整は行わなかった(対照群)。 主要エンドポイントは、12ヵ月後の心血管死、心筋梗塞、脳卒中、ステント血栓症、緊急血行再建術、BARC(Bleeding Academic Research Consortium)定義の出血性合併症(分類タイプ2、3、5)の複合だった。出血性合併症リスクも両群で同等 877例は、モニタリング群442例、対照群435例に無作為に割り付けられた。 Intention-to-treatによる解析の結果、主要複合エンドポイントの発生は、モニタリング群120例(28%)、対照群123例(28%)と、両群で同等だった(ハザード比[HR]:1.003、95%信頼区間[CI]:0.78~1.29、p=0.98)。キー複合エンドポイント(心血管死、心筋梗塞、ステント血栓症、緊急血行再建術)の発生(モニタリング群10% vs.対照群9%、HR:1.06、95%CI:0.69~1.62、p=0.80)、およびその他の虚血性エンドポイントについても有意差はみられなかった。結果は、項目別にみたエンドポイントすべてにおいて一貫していた。 主要エンドポイントの発生は、主として出血イベントが占めていた。その出血イベントの発生も両群間で有意差はなかった。主要安全性エンドポイント(BARC分類タイプ2、3、5)の発生は、両群ともに約20%(モニタリング群21%、対照群20%)だった(HR:1.04、95%CI:0.78~1.40、p=0.77)。 結果を踏まえて著者は、「投与調整のための血小板機能モニタリングは、ACSでステント留置を受けた高齢患者の臨床的アウトカムの改善には結び付かなかった。血小板機能検査は、多くの施設で行われており、各国ガイドラインでハイリスク患者への使用が推奨されている。しかし、今回の結果はそれらの適用を支持しないものであった」とまとめている。

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再発/転移上咽頭がん、GEM+CDDPが有用/Lancet

 再発または転移上咽頭がんに対し、ゲムシタビン+シスプラチンはフルオロウラシル+シスプラチンと比較して、無増悪生存期間を有意に延長することが報告された。中国・中山大学がんセンターのLi Zhang氏らが第III相多施設共同無作為化非盲検試験の結果を、Lancet誌オンライン版2016年8月23日号で発表した。試験は中国国内22施設で、ECOG PSが0または1、臓器機能正常、RECISTガイドラインver1.1で測定可能病変を有する患者を対象に行われたもの。再発または転移上咽頭がんの転帰は不良であり、1次治療の化学療法は確立されていない。今回の結果を踏まえて著者は、「本検討の患者集団においてゲムシタビン+シスプラチンは、1次治療の治療オプションであることが確認された」とまとめている。フルオロウラシル+シスプラチンと比較 試験は、被験者を1対1の割合で無作為に2群に割り付けて行われた。1群にはゲムシタビン(1g/m2静注、1日目と8日目に)+シスプラチン(80mg/m2静注、1日目に)を(ゲムシタビン群)、もう一方の群にはフルオロウラシル(4g/m2持続点滴静注、96時間超で)+シスプラチン(80mg/m2静注、1日目に)を(フルオロウラシル群)、いずれも3週に1回、最大6サイクル投与した。無作為化は中央施設で双方向電話システムにより、6サイズブロックの無作為化法を用いて行われた。 主要エンドポイントは、無増悪生存期間(PFS)で、intention-to-treat集団にて独立画像委員会によって評価された。安全性の解析は、試験薬を最低1サイクル受けた患者を包含して行われた。PFSが有意に延長、安全性も確認 2012年2月20日~2015年10月30日の間に、計362例の患者が無作為に各群(181例ずつ)に割り付けられた。両群の特性は均衡しており、ゲムシタビン群は男性78%、EOCG PS 0が67%、年齢中央値47歳、非喫煙者78%、WHO分類type IIIが83%、遠隔転移72%などであった。また、6回サイクル投与は、ゲムシタビン群105例、フルオロウラシル群91例が完了している。 PFS評価は、追跡期間中央値19.4ヵ月(IQR:12.1~35.6)で行われた。結果、PFS中央値は、ゲムシタビン群7.0ヵ月(4.4~10.9)、フルオロウラシル群5.6ヵ月(3.0~7.0)で、ゲムシタビン群の有意な延長が確認された(ハザード比[HR]:0.55、95%信頼区間[CI]:0.44~0.68、p<0.0001)。 安全性解析には、計353例(98%)が含まれた(ゲムシタビン群180例、フルオロウラシル群173例)。有意差が認められた治療関連のGrage3/4の有害事象は、白血球減少(52例[29%] vs.15例[9%]、p<0.0001)、好中球減少(41例[23%] vs.23例[13%]、p=0.0251)、血小板減少(24例[13%] vs.3例[2%]、p=0.0007)、粘膜障害(0例 vs.25例[14%]、p<0.0001)であった。 重篤な治療関連の有害事象の報告は、ゲムシタビン群7例(4%)、フルオロウラシル群10例(6%)。また、薬物関連の有害事象で治療を中断したのは、ゲムシタビン群6例(3%)、フルオロウラシル群14例(8%)であり、治療に関連した死亡の報告は両群ともになかった。

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医師や病院への金銭提供は薬剤の処方へ強く影響していた(解説:折笠 秀樹 氏)-587

 米国の医療保険制度は民間医療保険が主ではあるが、公的医療保険としてMedicare(65歳以上の高齢者および65歳未満の身体障害者向け)とMedicaid(低所得者向け)とがある。MedicareにはPart A~Dがあり、今回の研究対象であるPart Dは薬剤費に関する医療保険のことである。 米国内でMedicareの対象者は約5,400万人おり、約70%の3,700万人がPart Dを享受しているとされる。製薬企業は医師や病院への金銭提供があった場合、Medicare & Medicaidサービスセンター(CMS)へ報告する法的義務がある。日本でも数年前に日本製薬工業協会は透明性ガイドラインを策定し、製薬企業別に医師や病院への金銭提供データを公開している。しかしながら、米国のような法律ではないし、一元化していないのでデータ収集は労を要する。 金銭提供データはPart D受益者数当たりの年間金額、薬剤の処方は処方日数から市場シェア(%)を算出した。扱った医薬品は抗凝固薬と糖尿病薬であった。306の医療地域ごとに分析しており、金銭提供が多い地域では市場シェアも高い傾向がマップ上で示された。 市場シェアに強く影響していたのは専門医(非専門医に比べ)への金銭提供、講演料・コンサルタント料・謝金・委任経理金など(会議での弁当の提供などに比べ)であった。 講演料は講演への対価なので薬剤の処方へは影響しないという主張もあったが、今回の調査でそうではないことが明らかになった。講演料などの金銭提供については利益相反(COI)として報告する義務が現在でもあるが、弁当やグッズなどの提供は報告を求めていない。学会ランチョンで弁当が提供されることがあるが、そろそろ止めたほうがよいかもしれない。

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第4回 チアゾリジン薬による治療のキホン【糖尿病治療のキホンとギモン】

【第4回】チアゾリジン薬による治療のキホン―チアゾリジン薬はどのような患者に適しているのでしょうか。 チアゾリジン薬は、脂肪前駆細胞から脂肪細胞への分化を促進させ、アディポネクチン※を分泌する小型脂肪細胞の増加や大型脂肪細胞のアポトーシス(細胞死)を惹起したり、脂肪細胞への脂肪酸の取り込み増加により、骨格筋や肝に取り込まれる脂肪酸の量を減少させることなどにより、末梢組織でのインスリン感受性を高め、インスリン抵抗性を改善して、血糖を低下させます。そのため、インスリン抵抗性のある肥満患者が適しています(BMI≧24、あるいは空腹時血中インスリン値≧5μU/mL)1)。 チアゾリジン薬では、循環血液量の増加による浮腫や心不全に注意する必要があります。浮腫は女性で多いことが報告されているため、女性では最小用量の15mg(1日1回)から開始します1)。副作用は効果の裏返しともいえます。チアゾリジン薬の市販後調査でも、女性のほうが本剤の感受性が強いことが報告されています。2),3)。女性のほうが効果が出やすいので、15mgでも浮腫が出るようであれば、減量しながらみていきます。 また、海外で、女性でチアゾリジン薬による骨折リスクが報告されていますので4)、骨粗鬆症や、閉経後の女性では注意が必要です。 私のこれまでの臨床経験から、チアゾリジン薬では明らかに効果が出る患者さん(レスポンダー)がいると感じています。そのため、そういった患者さんでは、効果と安全性のバランスをみながら、適宜増減を考慮し、治療を進めていくとよいと思います。 ※脂肪細胞から分泌される生理活性物質(アディポサイトカイン)で、骨格筋や肝における脂肪酸の燃焼と糖の取り込みを促進し、インスリン感受性を増強させる5)。また、マウスにおける動脈硬化の抑制や、アディポネクチン欠損マウスにおける血管の炎症性内膜肥厚の亢進が示されていることから、動脈硬化抑制作用を持つと考えられている6,7)。―どの程度の心疾患既往者であれば使用してよいのでしょうか。 チアゾリジン薬は心不全および心不全既往例では禁忌で、心不全発症の恐れのある心筋梗塞、狭心症、心筋症、高血圧性心疾患などの心疾患患者さんには慎重投与です1)。つまり、心不全以外の既往症であれば投与できますが、心疾患既往例では、心不全のリスクが高いことを念頭に置き、投与中は、浮腫や急激な体重増加、息切れや動悸といった心不全の症状がないかどうか、十分注意します。患者さんにも、あらかじめ、これら異常がみられた場合には、すぐに受診するよう伝えます。 また、定期的に血中BNP値や心電図、胸部X線検査などでモニタリングするとよいでしょう。とくに、心室で合成され、血中を循環する心臓ホルモンであるBNP(脳性ナトリウム利尿ペプチド;Brain Natriuretic Peptide)は、心室への負荷の程度を反映する生化学的マーカーで、広く臨床現場で使用されています。「慢性心不全治療ガイドライン(2010年改訂版)」では、心不全の所見に加え、BNP>100pg/mLであれば、心不全を想定して検査を進めるとされています8)。心不全のリスクが高い患者さんでは、BNP値を測定し、上昇してくるようであれば、診察時には毎回検査するなど、注意が必要です。―膀胱がんの危険性について教えてください。 海外の研究で、ピオグリタゾンを投与した患者さんで膀胱がん発生リスクが増加する恐れがあり、投与期間が長くなるとリスクの増加傾向があることが示されています9)。そのため、膀胱がん治療中の患者さんには投与を避けることとされています1)。また、「膀胱がん既往例には、薬剤の有効性および危険性を十分に勘案したうえで、投与の可否を慎重に判断する」となっていますが1)、私は膀胱がん既往例に対しては、ピオグリタゾン以外の選択肢がない場合にしか用いていません。 ピオグリタゾンの膀胱がんのリスクについては、海外でリスクが増加する恐れがあるという報告があることを患者さんに伝え、投与期間が長くなってきたら、定期的な尿検査を行うなど、注意する必要があります。また、投与終了後も継続して、十分観察します。―浮腫・体重増加がみられる女性患者への対応を教えてください。 前述したように、女性は効果がある反面、浮腫が出現しやすいため、“むくみが出る可能性がある”こと、“塩分摂取量にはとくに注意する必要がある”ことを事前に伝えます。体重増加がみられれば、それが浮腫によるものなのか(急激な体重増加、手足のむくみ、息苦しさ、動機など)、あるいは生活習慣の乱れによる体重増加なのかを見極め、浮腫の場合には、心不全でないことを確認したうえで、浮腫に対する対応として、塩分制限や利尿剤投与などの対応を検討します。 チアゾリジン薬では、小型脂肪細胞が増加し、大型脂肪細胞のアポトーシスが惹起されることでインスリン抵抗性を改善する働きがあるとお話ししましたが、小型脂肪細胞が治療前より増加するため、過食などによる体重増加にも注意する必要があります。実際に、チアゾリジン薬を投与された2型糖尿病患者さんでは、内臓脂肪は減少するものの、皮下脂肪が増加することがわかっています10)。1)アクトス製品添付文書(2015年3月改訂)2)医薬品インタビューフォーム アクトス錠15・30,アクトスOD錠15・30(2015年11月改訂).p533)Kawamori R, et al. Diab.Res.Clin.Pract. 76(2007)229-235.4)Habib ZA, et al. J Clin Endocrinol Metab. 2010;95:592-600.5)Shindo T, et al. Nat Med. 2002;8:856-863.6)Kubota N, et al. 2002;277:25863-25866.7)Yamauchi T, et al. J Biol Chem. 2003;278:2461-2468.8)日本循環器学会ほか.慢性心不全治療ガイドライン(2010年改訂版).In:循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2009年度合同研究班報告).9)Lewis JD, et al. Diabetes Care. 2011;34:916-922.10)Miyazaki Y, et al. J Clin Endocrinol Metab. 2002;87:2784-2791.

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脳波に対する向精神薬の影響

 向精神薬は、脳波(EEG)の読み取りに影響を与えることが知られている。米国・スタテンアイランド大学病院のRohit Aiyer氏らは、向精神薬がEEG変化に及ぼす影響に関する利用可能なすべてのデータを調査し、レビューを行った。Postgraduate medicine誌2016年9月号の報告。 PubMedを用いて、すべての出版済み、および印刷中の文献のシステマティックレビューを行った。検索に当たり、PRISMA(システマティックレビューおよびメタアナリシスのための優先的報告項目)ガイドラインで推奨する方法を使用した。検索キーワードは、EEGおよび向精神薬、気分安定薬、クロザピン、bupropion、SSRI、ラモトリギン、カルバマゼピン、リチウム、バルプロ酸、ハロペリドール、アリピプラゾール、メチルフェニデート、トピラマート、ガバペンチン、oxcarbamazepineとした。選択基準適用後、201件が対象となり、レビューを行った。 主な結果は以下のとおり。・201件の文献の大規模レビューより、各種向精神薬のα波、β波、δ波、θ波への影響は互いに独立し、異なることが示唆された。・さらに、特定の薬剤(とくにハロペリドール、バルプロ酸)は、すべての波形で異なる結果が示された。 著者らは「本PRISMAシステマティックレビューでは、向精神薬がEEG活性に及ぼす影響についての利用可能なデータが存在することを示した。これらの知見について、患者の反応と向精神薬との臨床的相関を明らかにするさらなる研究が必要とされる」としている。関連医療ニュース 抗精神病薬は脳にどのような影響を与えるのか 統合失調症の陰性症状有病率、脳波や睡眠状態が関連か 精神障害を伴う難治性てんかん患者への術前ビデオ脳波は禁忌なのか

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医師への苦情の第1位は説明不足!? 患者が求めるコミュニケーションとは

 患者の意思決定支援はどうあるべきかを患者視点から検討する「第2回SDM(シェアード・ディシジョン・メイキング)フォーラム2016『患者視点から考えるヘルスコミュニケーション』」1)が8月25日都内で開催され、3人の患者団体の代表2)3)4)が講演した。 同フォーラムを主催した厚生労働行政推進調査事業費補助金「診療ガイドラインの担う新たな役割とその展望に関する研究」班の代表である中山 健夫氏(京都大学大学院 医学研究科社会健康医学系専攻健康情報学分野 教授)は、診療ガイドラインは、最善の患者アウトカムを目指した推奨を提示することで、「患者と医療者の意思決定を支援する文書」であるという定義を紹介し、とくに不確実性の高い治療選択においてSDMが重要であることを強調した。他の職種より医師への不満が断トツに多い理由とその改善策とは 全国の患者からの電話相談事業を実施している認定NPO法人 ささえあい医療人権センターCOML2)理事長の山口 育子氏によると、医師への不満は、例年相談内容の上位に入っており、全体の約25%を占めることが紹介された。これは看護師や薬剤師など他の医療職種に対する不満と比べて突出して多いという。 山口氏は「ヘルスコミュニケーション改善のカギは“チーム医療”である」と考えている。患者は希望や意向を医師には正直に言いにくい、ということがしばしば見受けられるため、多様な職種が関わる中での患者の意思決定支援が望ましいことを説明した。 また、相談内容を分析した結果、医師への不満の背景として、患者や家族が、薬の情報、リハビリテーション、日常生活の疑問、転院に関する問題など医療に関するあらゆる情報や支援などすべてを医師に期待する傾向があるため、このように不満が医師に集中する結果になっていると考えている。医療機関において、チーム医療体制は定着しつつあるが、患者に看護師や薬剤師の役割・専門性について質問しても答えに窮する現状があるという。医師以外の医療職種が何のために存在しているのか、患者に説明される機会はほとんどないため、ぜひそれぞれの医療職種の役割・専門性について患者に伝えてほしいと訴えた。医師への苦情第1位は説明不足!? 原因は“日本版”インフォームドコンセント 医師に対する不満や苦情の内容で最も多いのが、非常に基本的な情報に関して「説明を受けていない」というもの。そのような相談受けた際に、山口氏は、本当に説明がなかったのかどうか必ず丁寧に患者に確認するようにしている。すると、実際には手術や化学療法など大きな決断が必要となる場面では、「1時間ほど説明があった」などと判明することがよくあるそうだ。 この食い違いの原因として考えられるのは、インフォームドコンセントが日本では単に「説明すること」に重きが置かれている点である。治療に関する意思決定が必要な際に多くの場合、患者は専門的な説明を、長い時間にわたり口頭で聞き続けるが、その内容すべてを記憶しておくことは困難である。実際にそのとき話を聞いていたとしても、理解ができていないと、後から「聞いていない」という訴えになってしまうのだ。高齢の患者が増加し、患者自身が説明を理解することが困難なケースも珍しくない中で、どのように必要な情報を共有するかは大きな課題であり、支援ツールの活用などが求められる。医師から患者に「メモを取ってもよい」と伝えて 患者は医師に対する遠慮や自身のプライドなどから、理解していなくてもうなずくことがしばしばあるという。よって、「うなずいたから理解している」と思うのは危険であり、患者自身に言語化してもらい、理解を確認することが大切である。また、口頭による説明には限界があるため、理解の補助として、メモや治療に関する資料などの活用も期待される。とくに、患者はメモを取ることが「医療者に対して失礼では」「やっかいな患者と思われるのでは」などと心配し、控えることがあるため、ぜひ医療者から「メモを取ってもよい」ことを患者に伝えてほしいと山口氏は述べた。インフォームドコンセント、なぜこのタイミング? 潰瘍性大腸炎患者の参加者からは、手術の具体的な説明が手術前日であったことに対する不満が紹介された。手術の前日は非常に緊張していたため、説明内容をほぼ理解できなかったという。「医療提供者側にもさまざまな事情はあると思うが、もっと前に説明してくれれば落ち着いて聞くことができ、理解できたと思う」と同参加者は述べた。 これを受けて登壇者の認定NPO法人 健康と病の語り ディペックス・ジャパン3)理事・事務局長の佐藤 りか氏は、同団体が運営する患者体験談データベースではこのような患者自身の医療・健康にまつわる体験動画が閲覧できるため、ぜひ多くの医療者にも活用してほしいと述べた。(ケアネット 後町 陽子)参考資料1)第2回SDM(シェアード・ディシジョン・メイキング)フォーラム2016(PDF)2)認定NPO法人 ささえあい医療人権センターCOML(コムル)3)認定NPO法人 健康と病いの語り ディペックス・ジャパン4)日本患者会情報センター

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高額薬の緊急対応検討、薬価算定方式の見直し求める声も

 8月24日に開催された厚生労働省の中央社会保険医療協議会(中医協)総会および薬価専門部会で、高額薬剤への対応の検討課題が示された。今後、次期改定に向けた取り組みと、期中改定を含む緊急的な対応について検討し、新規作用機序医薬品の最適使用推進ガイドライン(最適使用推進GL)の医療保険上の取り扱いと、オプジーボ(一般名:ニボルマブ)についての特例的な対応に関しては、年内には一定の結論が得られる予定だ。 薬価改定は通常2年に1回行われ、薬価調査は改定前年の9月に実施されるため、同年10月から翌3月までに効能追加された医薬品に関してはその年の改定対象にはならず、その次の改定時の対象となる。しかしながら、オプジーボは2015年12月に肺がんに対する効能が追加され大幅に市場が拡大したため、次回改定を待たずに緊急的な対応を実施することが提案されている。  また、このような新規作用機序医薬品については今後、個別の医薬品ごとに薬事承認に併せて最適使用推進GLが策定されることとなる。このガイドラインには「対象医薬品の使用が最適だと考えられる患者の選択基準」と「対象医薬品を適切に使用できる医師・医療機関等の要件」が盛り込まれる予定だ。今年度は試行的にオプジーボとレパーサ(一般名:エボロクマブ)およびそれぞれの類薬が対象になるとみられている。今後、この最適使用推進GLと経済性を踏まえて保険適用の決定がなされる方向で検討が進められている。 日本医師会の委員からは、市場規模のきわめて大きい医薬品に関わる部分だけでなく、外国平均価格調整のあり方なども含めた、薬価算定方式そのものの抜本的な見直しが必要との意見が出された。また、最適使用推進GLの策定により、必要な患者に対する使用が制限されたり、緊急的対応の対象の市場規模の金額を定めることにより、医薬品の供給抑制に繋がるようなことがないよう、対策を講じるように求めた。さらには、期中改定ありきの議論ではなく、適正使用の推進や留意事項通知の追加など、さまざまな方法を含めて検討を進めていくよう提案された。 高額薬剤に対して否定的とも取られる意見が出された中で、専門委員からは「革新的な新薬など、日本発のイノベーションが抑制されることのないように」との指摘がなされた。(ケアネット 後町 陽子)資料中央社会保険医療協議会 総会(第335回) 議事次第中央社会保険医療協議会 薬価専門部会(第117回) 議事次第

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双極性障害と全般性不安障害は高頻度に合併

 不安障害は、単極性うつ病と同様に双極性障害(BD)と高率に合併していることが、最近のデータで示唆されているが、まだあまり注目されていない。全般性不安障害(GAD)は、他の精神疾患と高率で合併する最も一般的な不安障害の1つである。イタリア・カリアリ大学のAntonio Preti氏らは、GADとBDの合併頻度を評価するため、システマティックレビュー、メタ解析を行った。Evidence-based mental health誌2016年8月号の報告。 著者らは、BD患者におけるGADの有無に関する主要なデータが含まれるすべての研究を検索した。文献の選択と結果の報告は、PRISMAガイドラインに沿って行われた。メタ解析は、variance-stabilizing Freeman-Tukey double arcsine transformationを用いて、推定有病率を計算した。すべての研究におけるサマリ効果を推定するため、固定効果とランダム効果モデルを使用し、逆分散法を行った。不均一性を評価し、CochranのQ検定、I2を用いてそれぞれ測定した。 主な結果は以下のとおり。・メタ解析は、独立した研究データ28報より、ポイント有病率研究の合計患者2,975例、障害研究の患者4,919例を分析した。・BD患者におけるGADの全体的なランダム効果のポイント有病率は12.2%(95%CI:10.9~13.5%)、全体的なランダム効果の生涯推定値は15.1%(95%CI:9.7~21.5%)であった。・両推定値の有意な不均一性が報告された(各々、94.0%、94.7%)。・公表文献では、一般集団で報告された文献よりも、高不均一性で一貫して高い有病率が認められた。・GADの合併は、より重度なBDや自殺の増加と関連していると考えられるが、このような状態に対する最良の治療は不明である。関連医療ニュース 双極性障害と強迫症、併存率が高い患者の特徴 双極性障害患者の約半数が不安障害を併存 双極性障害で高率にみられる概日リズム睡眠障害:東医大

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心血管疾患既往のない糖尿病患者の適切な降圧目標は?/BMJ

 2型糖尿病患者において、現行の推奨値よりも低値の収縮期血圧値は、心血管イベントの有意なリスク低下と関連することが、スウェーデン・イエーテボリ大学のSamuel Adamsson Eryd氏らによる国民ベースのコホート試験の結果、示された。この所見は、心血管疾患既往のない2型糖尿病患者についてみられたもので、著者は「先行研究で示された血圧低値と死亡増大の関連は、降圧治療というよりも合併症によるものと思われる」と述べている。最近の高血圧ガイドラインにおいて、2型糖尿病患者の降圧目標は、130mmHg以下から140mmHg以下へと緩和された。背景には、低値目標を支持する決定的な無作為化試験がないこと、および観察研究で血圧値と合併症にJカーブの関連を認めることが示唆されたためであった。BMJ誌オンライン版2016年8月4日号掲載の報告より。心血管疾患既往のない18万7,106例について分析 研究グループは、2型糖尿病で心血管疾患既往のない患者における、現行の収縮期血圧推奨値(140mmHg以下)のリスクと、血圧低値のリスクを比較することを目的とし、2006~12年の全国的な臨床レジストリを用いた集団ベースコホート試験を行った。平均追跡期間は5.0年。試験には、スウェーデンのプライマリケア施設および病院外来クリニック861施設が関与し、スウェーデン糖尿病レジスタに登録された2型糖尿病歴1年以上、75歳以下で、心血管疾患またはその他重大疾患の既往がない18万7,106例が参加した。 臨床イベントを病院退院および死亡レジスタから入手。急性心筋梗塞・脳卒中・急性心筋梗塞/脳卒中の複合(心血管疾患)、冠動脈疾患、心不全に関する臨床イベント、および全死亡について評価した。共変量(臨床的特性および薬物処方データ)を踏まえて、ベースライン収縮期血圧値群ごとに(110~119、120~129、130~139、140~149、150~159、≧160mmHg)ハザード比(HR)を算出して行った。脳卒中、心筋梗塞、冠動脈疾患のJカーブの関連見られず 収縮期血圧最小値(110~119mmHg)群は、同参照値(130~139mmHg)群との比較において、非致死的急性心筋梗塞(補正後HR:0.76、95%信頼区間[CI]:0.64~0.91、p=0.003)、全急性心筋梗塞(同:0.85、0.72~0.99、p=0.04)、非致死的心血管疾患(0.82、0.72~0.93、p=0.002)、全心血管疾患(0.88、0.79~0.99、p=0.04)、非致死的冠動脈疾患(0.88、0.78~0.99、p=0.03)のリスクはいずれも有意に低かった。 心不全と全死亡を除き、収縮期血圧値と各エンドポイントとの間にJカーブの関連は認められなかった。 上記を踏まえて著者は、「心血管疾患既往の除外で、収縮期血圧値と脳卒中、心筋梗塞、冠動脈疾患のJカーブの関連はみられなくなった。血圧低値と死亡増大との関連は、降圧治療によるものではなく合併症に起因するものと思われる」とまとめている。【訂正のお知らせ】本文内に誤解を招く表現があったため、一部訂正いたしました(2016年8月30日)。

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糖尿病治療薬が心不全治療薬となりうるのか? 瓢箪から駒が出続けるのか?(解説:絹川 弘一郎 氏)-579

 チアゾリジン薬の衝撃は、FDAをしてその後の糖尿病治療薬すべての認可の際に、心血管イベントをエンドポイントとしたプラセボ対照臨床試験を義務付けた。このことにより、図らずも循環器内科医にとっては糖尿病薬に関する勉強をする機会となり、DPP-4阻害薬、GLP-1受容体作動薬、SGLT2阻害薬などの糖尿病薬と心血管イベントの関連について知識が増えてきた。 DPP-4阻害薬の1つサキサグリプチンは、SAVOR-TIMI 53試験で心不全の発症増加ありとされたものの、その後のEXAMINE試験とTECOS試験で、ほかのDPP-4阻害薬は心不全発症に差がなかったことで、SAVOR-TIMI 53試験の結果は偶然であったという結論になっているようである。一方で、インクレチン関連という意味で体内動態には共通項が多いGLP-1受容体作動薬リラグルチドは、LEADER試験において心血管イベントを有意に減らした。 最近、世を騒がせているEMPA-REG OUTCOME試験は、LEADER試験と同じような心血管疾患の背景を有する患者を対象としており、糖尿病薬が血糖降下作用以外で心血管イベントを抑制する可能性が示唆されてきている点で興味深いが、しかしながら、その機序はまったく明らかでなく、そもそもFDAの勧告に従って、非劣性ならよしとした試験であるから、瓢箪から駒といわれても仕方がない。ネガティブに出たSAVOR-TIMI 53試験を偶然であったというなら、ポジティブに出たこれらの結果もまた慎重に受け止める姿勢があってもよいと思われる。この点、ESCの心不全ガイドラインの2016年アップデートにおいて、エンパグリフロジンを心不全の予防という観点でクラスIIa、レベルBで推奨しているのは勇み足ではないか。 ところで、本題である。このFIGHT試験は、収縮不全(LVEF<40%)の症例の中で、とくに最近2週間以内に(ガイドライン遵守の薬物治療中にもかかわらず)再入院した症例またはフロセミドの用量が1日40mg以上という症例をピックアップして、比較的重症度の高い症例に対してリラグルチドの効果があるかどうかを検討したものである。試験デザインはプラセボ対照、無作為化二重盲検であり、エンドポイントは死亡や心不全入院までの時間と180日間のNT-proBNPレベルの時間平均の複合スコアである。全部で300例がエントリーされ、実薬群154例、プラセボ群146例でそれぞれITT解析された。 結論からいうと、統計学的にはイベント発症など両者に差はなかった。ただし、シスタチンCはリラグルチド群で増加しており、腎機能障害をもたらす可能性がある。また、有意ではないものの(p=0.05)、死亡や心不全再入院はむしろリラグルチド群で多い傾向にあり、カプランマイヤー曲線をみても、リラグルチドが死亡や心不全入院を増加させる傾向は(とくに糖尿病合併例で)明らかであり、患者数を増やして検討すれば有意に出てしまいそうである。先のLEADER試験やEMPA-REG OUTCOME試験は、心不全のある症例は10%程度しか含まれておらず、このFIGHT試験にエントリーされた重症な心不全とは背景が異なるものの、この試験結果によればリラグルチドは心不全増悪に傾いている感じである。 このように糖尿病薬と心血管イベントの関係は最近入り乱れてまったく混乱の極みにある。そもそも、メカニズムの理解が先行しないところで、効いた効かないということを統計的に解析するのみで解釈は後回しという体勢は、再考すべき時に来ているのではないか。

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Amazonレビューから日焼け止め製品の人気と購入傾向を調査

 日焼け止め製品は、皮膚がんリスクの低下、日焼け回避、光老化の緩和、また光線過敏症の治療に役立つ。米国・ノースウェスタン大学のShuai Xu氏らは、皮膚科医が適切な日焼け予防を指導するのに役立つ情報を提供するため、Amazon通販サイトの情報を解析し、消費者の購入傾向、人気の製品の特色などを調べた。結果、販売製品総数は6,500に上ること、平均評価が星4つ以上だった65製品を調べたところ米国皮膚科学会(AAD)ガイドラインに準拠しない製品が4割を占め、価格のばらつきは30倍、カスタマーレビューでは美容性(cosmetic elegance)を評価するコメントが最も多い、などが明らかになったという。結果を踏まえて著者は、「皮膚科医はレコメンデーションの際に、美容性、価格、AADガイドラインの重要性をバランスよく行うことが必要である」とまとめている。JAMA Dermatology誌2016年8月1日号の掲載報告。 研究グループは、消費者が高評価する日焼け止め製品の特徴、最もよくみられた肯定的または否定的なコメントの特色を調べる検討を行った。2015年12月時点でAmazon.com上の日焼け止め製品でトップ1パーセンタイルに該当するもの(カスタマーレビューで平均評価が星4つ以上、書き込み多数)を選び、各製品のデータを製品ページおよび製造者アピールから集めた。また、星5つの評価を付けていたレビューを解析し、合意に基づく質的コーディングシェーマによってコード化し、肯定的・否定的記述をカスタマーコメントに従って6つの大カテゴリ(入手のしやすさ、美容性、独立した評価、製品成分、製品機能、皮膚タイプの適合性)に分類した。 Kruskal-Wallis検定によって各製品の特徴(AAD基準、SPF、媒材など)がオンス当たり価格を予測しうるかどうかを調べた。また、大テーマおよびサブテーマによる分類ごとのコメント数(%)を調べ、実際のコメント例も集約した。 主な結果は以下のとおり。・Amazon.comのオンラインカタログ上で、日焼け止めに分類された製品は6,500あった。・評価した65製品のうち、オンス当たり価格の中央値は3.32ドル(範囲:0.68~23.47ドル)であった。価格のばらつきは3,000%超で、製品に関するばらつきで最も顕著な要因であった。・40%(26/65製品)が、AADガイドライン(広域スペクトル、SPF≧30、耐水性)に準拠していなかった。とくに耐水性が基準に満たないものが多くを占めた。・媒材、AAD、日焼け止めタイプは、オンス当たりの高価格を予測した。・肯定的特徴として最も列記されていたコメントは美容性についてで(61%、198/325コメント)、次いで製品機能(45%、146/325コメント)、皮膚タイプの適合性(24%、78/325コメント)であった。

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