サイト内検索|page:112

検索結果 合計:2882件 表示位置:2221 - 2240

2221.

クリプトコッカス・ガッティにガチで気を付けろッ!【新興再興感染症に気を付けろッ!】

ケアネットをご覧の皆さま、こんにちは。国立国際医療研究センター 国際感染症センターの忽那です。 本連載「新興再興感染症に気を付けろッ!」、通称「気を付けろッ」(まあ誰も呼んでないんですけどね)は「新興再興感染症の気を付け方」についてまったりと、そしてときにまったりと、つまり一貫してまったりと学んでいくコーナーです。今回はクリプトコッカス・ガッティのガチな気を付け方について考えたいと思います。海外渡航歴がなくても感染する時代へ!そもそもガッティという名前を聞いたことのない方もいらっしゃるかと思います。クリプトコッカスといえばCryptococcus neoformansですよね。現に日本でみられるクリプトコッカス症のほとんどがCryptococcus neoformansによるものです。Cryptococcus gattii(C. gattii)は、1999年にカナダのブリティッシュコロンビア州で最初の感染事例が報告されました1)。この地域では、その後も200例以上の患者が報告されており、現在も流行地域となっております。また、アメリカ合衆国でカナダに接するワシントン州とその隣のオレゴン州でもC. gattii感染症が報告されています。しかし、これらの地域以外にも、ヨーロッパ、アジア、アフリカ、南アフリカ、オーストラリアで報告されています2)。C. gattii感染症は世界中でみられているのですッ!それでは日本ではどうなのかといいますと……けっして他人ごとではありませんッ!!これまで日本では、オーストラリアで感染したと考えられる事例が報告されていました3)。しかし近年、なんと海外渡航歴のないC. gattii感染症の事例が報告されているのですッ4, 5)!! テラヤバス!!今のところ報告数は限られているため、基本的に国内での感染はまれとは考えられますが、海外渡航歴がなくてもC. gattiiに感染しうるということは覚えておいても良いかもしれません。では、いったいどのようにしてC. gattiiに感染するのかが気になるところでありますが、今のところ木々などの環境中に存在するC. gattiiをヒトが肺に吸い込むことで、感染すると考えられています(図)。ですので、ヒト-ヒト感染はありません。クリプトコッカス・ガッティを疑ったらC. gattiiの臨床的特徴についてですが、やはり同じクリプトコッカスであるC. neoformans感染症と似た臨床像をつくります。発熱、悪寒、頭痛などがみられ、感染臓器は肺、脳、あるいはその両方であることが多いです。感染して発症するまでの期間は、まだよくわかっていません。C. gattiiに特徴的といえるのが、肺や脳に腫瘤をつくりやすい点です。これまでの日本での報告例もすべて脳内にクリプトコッカス腫(Cryptococcoma)がみられています。C. gattiiは、C. neoformansと比較して病原性が強いといわれていますが、実際にC. neoformans感染症よりも予後が悪いのかというと、まだ検証が十分ではありません。診断は、C. neoformansによるクリプトコッカス症と同様に、髄液培養や髄液中のクリプトコッカス抗原によりますが、クリプトコッカス抗原での診断ではクリプトコッカスであることはわかっても菌種まではわかりませんので、C. gattii感染症と診断するためには、培養で同定する必要があります。「これはただのクリプトコッカスじゃない……ガチ(C. gattii)なヤツだ!」と思ったら、積極的に培養検査で菌種を同定しにいきましょう! ちなみにC. gattiiの同定は簡単ではなく、L-canavanine glycine bromothymol blue(CGB)培地という特殊な培地や分子生物学的同定法が必要になります。「流行地域への渡航歴がある」「クリプトコッカス腫がある」などC. gattii感染症が疑わしいと思った場合は、まずは細菌検査技師さんに相談してみましょう。なお、治療は基本的には通常のクリプトコッカス症に準じるのが一般的です。これについては米国感染症学会(IDSA)のガイドライン6)などをご参考ください。さて、次回は今年も国内例が出るのか注目が集まる「デング熱」について取り上げたいと思います。締め切りに遅れまくっている私の原稿が先か、2015年度の国内例の初報告が先か、勝負であります!1)MacDougall L, et al. Emerg Infect Dis. 2007;13:42-50.2)Springer DJ,et al. Emerg Infect Dis. 2010;16:14-20.3)Tsunemi T,et al. Intern Med. 2001;40:1241-1244.4)Okamoto K, et al. Emerg Infect Dis. 2010;16:1155-1157.5)堀内一宏, ほか. 臨床神経. 2012;52:166-171.6)Perfect JR, et al. Clin Infect Dis. 2010;50:291-322.

2222.

抗精神病薬の治療域、若年者と高齢者の差はどの程度か

 高齢統合失調症(LLS)患者は抗精神病薬による有害反応の影響を受けやすく、治療ガイドラインでは抗精神病薬の低用量を推奨している。しかし、LLS患者における最適な投与量、それに関連するD2/3R占有率については研究がほとんど進んでいなかった。カナダ・Centre for Addiction and Mental HealthのGraff-Guerrero A氏らは、LLS患者における抗精神病薬減量後のドパミンD2/3受容体(D2/3R)占有率の変化と臨床効果、血中プロラクチンおよび抗精神病薬濃度などを評価した。その結果、臨床的安定と関連するD2/3R占有率の最低値は50%で、D2/3R占有率が60%を超えると錐体外路症状(EPS)が起こりやすいことを明らかにした。JAMA Psychiatry誌オンライン版2015年7月1日号の掲載報告。 研究グループは、LLS患者において抗精神病薬を減量した際の線条体ドパミンD2/3受容体占有率への影響、臨床的特徴、血中薬物動態の評価を目的に、非盲検単群前向き試験を行った。対象は大学附属の3次医療センターの外来診療患者で、追跡期間は3~6ヵ月(2007年1月10日~2013年10月21日)とした。被験者は臨床的安定が保たれているLLSの外来患者35例(年齢50歳以上で、オランザピンあるいはリスペリドンの単剤療法を6~12ヵ月間同量投与)で、追跡は2013年10月21日に完了し、2014年10月22日~2015年2月2日に解析を行った。 ベースライン時から最大40%漸減し、減量前後(減量後は最低3ヵ月経過)にC11標識ラクロプライドを用いたPET画像診断、臨床効果の測定、血中薬物動態測定を実施した。主要評価項目は、抗精神病薬による線条体ドパミンD2/3Rの占有率、臨床効果(陽性・陰性症状評価尺度、簡易精神症状評価尺度、Targeted Inventory on Problems in Schizophrenia、Simpson-Angus Scale、Barnesの薬原性アカシジア評価尺度、Udvalg for Kliniske Undersogelser Side Effect Rating Scale)、血中薬物動態(プロラクチンおよび抗精神病薬の血中濃度)を評価した。 主な結果は以下のとおり。・減量後、全サンプルのドパミンD2/3R占有率は、平均6.2(SD 8.2)%減少した(70[12]%から64 [12]%へ、p<0.001)。・臨床的安定と関連するD2/3R占有率の最低値は50%であった。・D2/3R占有率が60%を超えるとEPSが起こりやすかった。・ベースライン時にEPSを認めた例の90.5%(21例中19例)、減量後にEPSを認めた例の76.9%(13例中10例)で、線条D2/3R占有率が60%を超えていた。・臨床的悪化を認める患者(5例)は臨床的安定を維持している患者( 29例)に比べ、ベースライン時のD2/3R占有率が低かった(58[15]% vs.72[10]%、p=0 .03)。・減量後、Targeted Inventory on Problems in Schizophreniaのスコアが上昇し(p=0.046)、陽性・陰性症状評価尺度(p=0.02)、簡易精神症状評価尺度(p=0.03)、Simpson-Angus Scale(p<0.001)、Barnesの薬原性アカシジア評価尺度(p=0.03)、Udvalg for Kliniske Undersogelser Side Effect Rating Scale(p<0.001)のスコア、プロラクチン(p<0.001)、抗精神病薬の血中濃度(オランザピン:p<0 .001、リスペリドン+metabolite 9-hydroxyrisperidone:p=0.02)のすべてにおいて低下を認めた。  結果を踏まえて、著者らは「LLS患者の抗精神病薬の治療域は50~60%であり、これまでに報告されていた若年者の65~80%よりも低いことが示された」と述べている。関連医療ニュース 抗精神病薬の単剤化は望ましいが、難しい 高齢統合失調症、遅発性ジスキネジアのリスク低 統合失調症のD2/3占有率治療域、高齢者は若年者よりも低値:慶應義塾大学  担当者へのご意見箱はこちら

2223.

CVD予防のためのスタチン開始基準、費用対効果を検証/JAMA

 2013年11月、米国心臓病学会(ACC)と米国心臓協会(AHA)は、脂質異常症におけるスタチン治療の新ガイドラインを発表した。米国・ハーバード公衆衛生大学院のAnkur Pandya氏らは、心血管疾患(CVD)の1次予防における本ガイドラインの費用対効果プロフィールの検証を行った。新ガイドラインでは、LDLコレステロールの目標値を設定せず、動脈硬化性心血管疾患(ASCVD)の10年リスク(≧7.5%)をスタチン治療導入の指標としているが、リスク判定に使用されるPooled Cohort Equationsは過大評価を引き起こす可能性があるため、実臨床で閾値の幅を広げた場合などに、不要な治療による甚大なコスト増大やスタチン誘発性糖尿病のリスク上昇の懸念があるという。JAMA誌2015年7月14日号掲載の報告。マイクロシミュレーション・モデルでQALYの増分コストを評価 研究グループは、米国人における10年ASCVDリスクの至適な閾値を確立するために、ACC/AHAガイドラインの費用対効果分析を行った(米国国立心肺血液研究所[NHLBI]の助成による)。ガイドラインの他の要素は、一切変更しないこととした。 仮想的な100万人の成人(40~75歳)の生涯健康アウトカムおよびCVD関連コストを予測するマイクロシミュレーション・モデルを開発した。モデルのパラメータのデータソースには、国民健康栄養調査(NHANES)、スタチンのベネフィットや治療に関する臨床試験およびメタ解析などが含まれた。 これらを用いて、ASCVDイベント(致死的/非致死的な心筋梗塞、狭心症、心停止、脳卒中)の予防効果および質調整生存年(QALY)の増分コストを算出した。費用対効果は許容範囲内、リスク閾値を広げても基準満たす ACC/AHAガイドラインの推奨閾値である10年ASCVDリスク≧7.5%では、成人の48%でスタチン治療が適切と判定され、10年ASCVDリスク≧10%と比較した1QALY当たりの増分費用対効果比(ICER)は3万7,000ドルであった。これは、一般に使用される費用対効果の閾値である5~10万ドル/QALYを下回っていた。 リスクの閾値をさらに緩めると、10年ASCVDリスク≧4.0%(成人の61%でスタチン治療が適切と判定)のICERは8万1,000ドル/QALY、≧3.0%(同67%)のICERは14万ドル/QALYであり、それぞれの費用対効果の閾値である10万ドル/QALYおよび15万ドル/QALYを満たしていた。 40~75歳の成人1億1,540万人において、10年ASCVDリスクの閾値を≧7.5%から≧3.0%へ転換すると、さらに16万1,560件のCVDイベントが回避されると推算された。また、これらの費用対効果の結果は、スタチンの毎日の服薬、価格、スタチン誘発性糖尿病のリスクに関連した効用値の損失(disutility)の変化に対し感受性を示した。 確率論的感度分析では、10年ASCVDリスクの至適な閾値が≦7.5%となる確率は、費用対効果の閾値が一般的に使用される10万ドル/QALYの場合は99%以上であり、5万ドル/QALYでは86%以上であった。また、費用対効果の閾値が10万ドル/QALYの場合に、10年ASCVDリスクの至適な閾値が≦5.0%となる確率は93%以上であった。 著者は、「ACC/AHAコレステロール治療ガイドラインで推奨されているスタチン治療導入の閾値である10年ASCVDリスク≧7.5%の費用対効果プロフィール(ICER:3万7,000ドル/QALY)は許容範囲内であったが、これを≧4.0%、≧3.0%に緩めても、費用対効果の閾値はそれぞれの基準値である10万ドル/QALYおよび15万ドル/QALYを満たし、毎日の服薬に関する患者の好みや価格の変動、糖尿病のリスクに感受性を示した」とまとめている。

2224.

ACC/AHA2013のスタチン適格基準は適切か/JAMA

 ACC/AHAガイドライン2013では、脂質管理のスタチン治療対象について新たな適格基準が定められた。同基準について米国・マサチューセッツ総合病院のAmit Pursnani氏らは、コミュニティベースの1次予防コホート(フラミンガム心臓研究被験者)を対象に、既存のATP IIIガイドラインと比較して適切なスタチン使用をもたらしているかを検証した。その結果、新ガイドライン適用で、心血管疾患(CVD)や不顕性冠動脈疾患(CAD)のイベントリスク増大を、とくに中等度リスク者について、より正確かつ効果的に特定するようになったことを報告した。JAMA誌2015年7月14日号掲載の報告より。フラミンガム心臓研究の被験者2,435例を対象にATP IIIと比較検証 検討は、フラミンガム心臓研究の第2および第3世代コホートから被験者を抽出して行われた。スタチン治療未治療で、2002~2005年に冠動脈石灰化(CAC)について多列検出器CT(MDCT)検査を受け、CVD発症について中央値9.4年間追跡を受けた2,435例を対象とした。 スタチン治療の適格性について、フラミンガムリスク因子とATP IIIのLDL値に基づき定義する一方、プールコホート解析においてはACC/AHAガイドライン2013に準拠した。 主要アウトカムは、CVD(心筋梗塞、冠状動脈性心疾患[CHD]による死亡、虚血性脳卒中)の発症とし、副次アウトカムは、CHD、CAC(Agatstonスコアで評価)であった。治療適格者14%から39%に、CVDイベントリスク者3.1倍から6.8倍に 2,435例(平均年齢51.3[SD 8.6]歳、女性56%)において、ATP IIIによるスタチン治療適格者は14%(348/2,435例)であったのに対し、ACC/AHAガイドライン2013規定では39%(941/2,435例)であった(p<0.001)。 これら被験者のCVDイベント発生は74例(非致死的心筋梗塞40例、非致死的虚血性脳卒中31例、致死的CHDイベント3例)であった。 スタチン治療適格者の非適格者と比較したCVDイベント発生に関するハザード比は、ATP IIIを適用した場合(3.1、95%信頼区間[CI]:1.9~5.0、p<0.001)も、ACC/AHAガイドライン2013を適用した場合(6.8、同:3.8~11.9、p<0.001)もそれぞれ有意に高値であったが、ACC/AHAガイドライン2013を適用した場合のほうが有意に高値であった(p<0.001)。 同様の結果は、CHDに関する中等度のフラミンガムリスクスコアを有する被験者を対象とした、CVDイベント発生のハザード比に関する検討においてみられた。 ACC/AHAガイドライン2013ガイドライン適用による新たなスタチン治療適格者(593例[24%])のCVDイベント発生率は5.7%、治療必要数(NTT)は39~58例であった。 なお、CACを有する被験者において、ATP IIIよりもACC/AHAガイドライン2013を適用した場合にスタチン治療適格者となる傾向がみられた。CACスコア0超(1,015例)では63% vs.23%であったのに対し、100超(376例)では80% vs.32%、300超(186例)では85% vs.34%であった(すべてのp<0.001)。ACC/AHAガイドライン2013によるスタチン治療適格者でCACスコア0の低リスク群(306/941例[33%])のCVD発生率は1.6%であった。

2225.

抗精神病薬の単剤化は望ましいが、難しい

 統合失調症治療において、抗精神病薬の多剤併用を支持するエビデンスはほとんどなく、また診療ガイドラインでこれを推奨していないにもかかわらず、広く普及したままである。米国・サウスフロリダ大学のRobert J Constantine氏らは、2種類の抗精神病薬による治療で安定している患者を対象に、1種類の抗精神病薬への切り替え効果を検討するため、無作為化比較試験を行った。Schizophrenia research誌2015年8月号の報告。 7つの地域精神保健センターからエントリーした、2種類の抗精神病薬での併用治療により安定している成人統合失調症外来患者104例を対象に、多剤併用療法を継続する群(多剤継続群)と抗精神病薬の単剤療法に切り替える群(単剤切り替え群)に無作為に割り付けた。60日ごとに症状と副作用の評価を行い、1年間追跡した(合計7回評価)。評価項目は、症状(PANSS、CGI)と副作用(EPS、代謝関連、その他)の時間経過における違いとし、各群への割り当てと時間を関数として、ITT分析を用いて評価した。 主な結果は以下のとおり。・単剤切り替え群は、多剤継続群と比較し、症状の増加がより大きかった。・これらの違いは、試験開始6ヵ月目に出現した。・試験期間1年間における全原因中止率は、単剤切り替え群(42%)のほうが、多剤継続群(13%)と比較して高かった(p<0.01)。・副作用に関しては、多剤継続群においてSimpson Angus合計スコアが単剤切り替え群と比べて大幅に減少した以外では、いずれの時点においても単剤切り替え群と比較して差は認められなかった。 結果を踏まえ、著者らは「2種類の抗精神病薬で安定している慢性期統合失調症患者に対する単剤療法への切り替えには、注意が必要である。多剤併用の中止にあたっては、多剤併用療法に移行する前に単剤療法で効果不十分な患者を対象とした、エビデンスに基づく治療(たとえばクロザピンや持効性注射剤など)の適切な試験が行われるべきである」とまとめている。関連医療ニュース 難治例へのクロザピン vs 多剤併用 急性期統合失調症、2剤目は併用か 切り換えか:順天堂大学 抗精神病薬の変更は何週目が適切か  担当者へのご意見箱はこちら

2226.

STAR AF II:持続性心房細動に対する左房内アブレーションは善か?悪か?(解説:矢崎 義直 氏)-388

 STAR AF IIは持続性心房細動に対し、肺静脈隔離のみ施行した群と、肺静脈隔離に加え左房の線状焼灼またはCFAEアブレーションを追加した群との治療効果を比較したtrialである。持続性心房細動のみを対象とし、無作為割り付けでアブレーション方法を比較した大規模臨床試験はまだ少なく注目を集めていたが、予想外の結果となった。 多くのガイドラインでは持続性心房細動は肺静脈隔離だけでは根治は困難であり、左房内の不整脈基質に対する追加アブレーションを推奨しているが、本試験において主要エンドポイントである平均18ヵ月間の洞調律維持効果は、追加焼灼群は肺静脈隔離のみの群に優らなかった。追加焼灼群では手技時間、透視時間ともに長くなり、本試験では1例ではあるが死亡例もあった。 この結果は、すべての持続性心房細動に追加焼灼が不要というメッセージではなく、個々の症例によって肺静脈隔離で十分か、それとも不整脈基質へのアブレーションも必要なのか、ターゲットを見極めてアブレーション方法を選択することが重要ということになる。本試験の対象は限定的であり、左房径5cm以上の症例や、3年以上持続した心房細動症例を除いているため、不整脈基質に対するアブレーションを本当に必要とする症例が除外された可能性はある。なお、肺静脈隔離の精度は洞調律維持に大きく寄与するため、そもそも2群間の再発例のうち、肺静脈の再伝導率に差がなかったかが重要なポイントである。このことは今回明記されておらず、今後、持続性心房細動治療に関するさらなるエビデンスの構築が必要である。

2227.

Vol. 3 No. 4 高尿酸血症と循環器疾患 高血圧とのかかわり

川添 晋 氏鹿児島大学大学院心臓血管・高血圧内科学はじめに高尿酸血症は、痛風関節炎や痛風腎など尿酸塩沈着症としての病態とは別に、心血管疾患のリスクになることが次々と報告され、メタボリックシンドロームの一翼としての尿酸の重要性が認識されるようになってきた。最近では、高尿酸血症が高血圧発症のリスクとなることや、尿酸低下療法によって心血管イベントが抑制される可能性を示唆する報告もなされている。本稿では、血圧上昇や高血圧性臓器合併症と尿酸との関連を疫学と機序の両面から概説するとともに、高血圧症を合併した高尿酸血症に対する薬物治療を行う際の注意すべき点について解説する。高尿酸血症と高血圧血圧上昇と血清尿酸値との疫学の歴史は意外に古い。1800年代後半には、痛風の家族歴を持つ高血圧患者が多いことや、低プリン食が高血圧と心血管病を予防することが報告されている。最近の報告では、高尿酸血症が高血圧発症のリスクとなることが国内外の疫学調査から明らかとなっている。米国における国民健康栄養調査にて、血清尿酸値が上昇するにつれて高血圧の有病率は上昇し、血清尿酸値6.0mg/dL以下では24.5%であるのに対して10.0mg/dLでは84.7%に高血圧が合併していた1)。わが国における調査でも、高血圧患者は男性で34.1%、女性で16.0%に高尿酸血症が合併していたと報告されている2)。高尿酸血症と高血圧発症に関する国内外11研究の成績をまとめたメタアナリシスでは、高尿酸血症患者における高血圧発症の相対リスクは1.41と有意に高く、1mg/dL の尿酸値の上昇により高血圧発症リスクは13%上昇するとの結果であった3)(本誌p.29図を参照)。尿酸値上昇自体が高血圧のリスクとなることが明確に示されたことになる。また小規模の研究ではあるが、アロプリノールによる尿酸降下療法にて24時間血圧が有意に下がるとの介入試験の結果も報告されている4)。尿酸が血圧を上昇させるメカニズムについてもさまざまな知見が得られている(本誌p.30図を参照)5)。尿酸によるNO(一酸化窒素)産生低下とレニン・アンジオテンシン系の産生亢進を伴った血管内皮機能低下に起因した腎血管収縮により血圧が上昇すると報告されている6, 7)。このタイプの高血圧は、食塩抵抗性で尿酸値を下げることにより降圧を認めることが特徴であるが6)、別のタイプもあることが推察されている。高尿酸血症は動脈硬化性変化による腎微小循環障害をきたし、塩分感受性で腎依存性、血清尿酸値非依存性の高血圧が形成される8)。微小循環の損傷に起因する病態においては、直接尿酸が血管平滑筋細胞に対して増殖反応を促し、レニン・アンジオテンシン系を賦活化し、CRPや単球走化性蛋白-1(MCP-1)といった炎症関連物質の産生を刺激することが報告されている9)。高血圧性臓器合併症と尿酸日本高血圧学会やヨーロッパ高血圧学会のガイドラインでは、高血圧性臓器合併症の有無でリスクの層別化を行うことを推奨している。Viazziらは、このような臓器合併症の重症度と血清尿酸値との関連性を横断研究にて検討している。これによると、ヨーロッパ高血圧学会のガイドラインに準拠した高血圧性臓器合併症が重症になるにしたがって、血清尿酸値が高値となっていくことが示されている。さらに古典的心血管危険因子で補正後も、心肥大や頸動脈不整の危険因子となることが示唆されている。またSystolic Hypertension in the Elderly Program(SHEP)10)やThe Losartan Intervention for Endpoint Reduction in Hypertension(LIFE)11) といった大規模臨床試験のサブ解析において、血清尿酸値と心血管イベントの発症との間に関連があることが示されている。われわれは669名の本態性高血圧症を対象に前向きに検討を行い、尿酸値が心血管疾患と脳卒中の発症の予測因子となるかどうかの検討を行った12)。平均7.1年のフォローアップ期間に脳卒中71例、心血管疾患58例が発生し、64例が死亡した。生存曲線では、尿酸値が最も高かった群(8.0mg/dL以上)では有意に脳卒中と心血管疾患の発症が多く(p=0.0120)、死亡率も高かった(p=0.0021)。古典的な心血管疾患のリスク因子で補正した後も、血清尿酸値は心血管疾患(相対リスク1.30, p=0.0073)、脳卒中および心血管疾患(相対リスク1.19, p=0.0083)、死亡(相対リスク1.23, p=0.0353)、脳卒中および心血管疾患による死亡(相対リスク1.19, p=0.0083)の有意な予測因子であった(本誌p.31図を参照)。また、血清尿酸値が心血管疾患リスクに与える影響は、女性においてより強かった。しかしながら、大規模疫学調査のなかには、Framingham Heart研究13)やNIPPON DATA 8014)のように、他の心血管危険因子で補正を行うと血清尿酸値の心血管死に対する影響が減弱するか喪失すると結論づけている報告もいくつか認められる。また血清尿酸値と心血管疾患の間のJカーブ現象の報告もあり15)、この分野に関しては今後のさらなる検討が必要と考えられる。高血圧治療の最終的な目標は臓器合併症、すなわち心血管イベント発症や腎機能悪化に伴う透析などの回避であることはいうまでもない。臓器合併症予防のためには、蓄積されつつある知見を踏まえて、血圧のみならず血清尿酸値も含めた管理を行う必要がある。高血圧症例における高尿酸血症の管理高血圧患者における血清尿酸値上昇が腎障害や心血管事故発症と関連することから、日本痛風・核酸代謝学会による『高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン(第2版)』16)に準じて、総合的なリスク回避をめざした6・7・8ルールに基づく尿酸管理が推奨されている(本誌p.32図を参照)。高尿酸血症を合併する高血圧では、血清尿酸値7mg/dL以上でエネルギー摂取制限、運動習慣、節酒等の生活指導を開始する。8mg/dL以上では、生活習慣の修正を行いながら尿酸降下薬の開始を考慮する。降圧療法中の血清尿酸値の目標は6mg/dL以下をめざす。この際、降圧剤が尿酸代謝に及ぼす影響も考慮することが望まれる(本誌p.32図を参照)。サイアザイド系利尿薬やループ利尿薬は高尿酸血症を増長し、痛風を誘発することがあるため注意が必要である。Ca拮抗薬とロサルタンは高血圧患者の痛風発症リスクを減少させることが知られている17)。大量のβ遮断薬およびαβ遮断薬の投与は血中尿酸値を上昇させる。ACE阻害薬、Ca拮抗薬、α遮断薬は血清尿酸値を低下させるという報告と、影響を与えないとする報告がある。ARBの1つであるロサルタンは、腎尿細管に存在するURAT1の作用を阻害することによって血中尿酸値を平均0.7mg/dL低下させる18, 19)。重症高血圧患者におけるβ遮断薬のアテノロールに対するロサルタンの標的臓器保護作用の有意性を示したLIFEでは、ロサルタンの降圧を超えた臓器保護作用のうち29%は尿酸値の改善によることが示唆されている11)。最近使用頻度が増えているARB/利尿薬合剤には、ヒドロクロロチアジド6.25mgまたは12.5mgが使用されているが、尿酸管理の観点からはより低用量の製剤を使用するか、尿酸排泄増加作用を有するARBであるロサルタンを含む合剤の使用が望ましい。高血圧合併高尿酸血症患者の病型は排泄低下型が多いことから、ベンズブロマロンなどURAT1阻害薬が有用であることが多い。キサンチンオキシダーゼ阻害薬のアロプリノールは、これまで唯一の尿酸生成抑制薬として40年間にわたり全世界で用いられてきた。しかしアロプリノールの活性代謝産物であるオキシプリノールは腎排泄性であり、血中半減期が長く体内に蓄積しやすいため、腎機能障害ではオキシプリノールの血中濃度が上昇し20)、汎血球減少症などの重篤な副作用の出現に関係するとされる。高血圧患者には腎機能低下を合併する症例が多いためアロプリノール使用に関してはこの点に注意が必要である。本邦において2011年から臨床使用可能となったフェブキソスタットは、肝腎排泄型であるため腎機能障害者においても用量調節が不要であるとされている。おわりに高尿酸血症が高血圧発症や心血管疾患のリスク因子であるというエビデンスが蓄積されてきている。高血圧診療の場では、糖尿病や脂質異常症などの既知のリスクに加えて、尿酸値も意識して総合的な管理を行うことが求められている。文献1)Choi HK et al. Prevalence of the metabolic syndrome in individuals with hyperuricemia. Am J Med 2007; 120: 442-447.2)宮田恵里ほか. 高血圧患者における高尿酸血症の実態と尿酸動態についての検討. 血圧 2008; 15: 890-891.3)Grayson PC et al. Hyperuricemia and incident hypertension: a systematic review and meta-analysis. Arthritis Care Res 2011; 63: 102-110.4)Feig DI et al. Effect of allopurinol on blood pressure of adolescents with newly diagnosed essential hypertension: a randomized trial. JAMA 2008; 300: 924-932.5)大野岩男. 高血圧のリスクファクターとしての尿酸. 高尿酸血症と痛風 2010; 18: 31-37.6)Mazzali M et al. Elevated uric acid increases blood pressure in the rat by a novel crystal-independent mechanism. Hypertension 2001; 38:1101-1106.7)Sanches-Lozada LG et al. Mild hyperuricemia induces vasoconstriction and maintains glomerular hypertension in normal and remnant kidney rats. Kidney Int 2005; 67: 237-247.8)Watanabe S et al. Uric acid, hominoid evolution,and the pathogenesis of salt-sensitivity. Hypertension 2002; 40: 355-360.9)Johnson RJ et al. A unifying pathway for essential hypertension. Am J Hypertens 2005; 18: 431-440.10)Franse LV et al. Serum uric acid, diuretic treatment and risk of cardiovascular events in the Systolic Hypertension in the Elderly Program (SHEP). J Hypertens 2000; 18: 1149-1154.11)Hoieggen A et al. The impact of serum uric acid on cardiovascular outcomes in the LIFE study. Kidney Int 2004; 65: 1041-1049.12)Kawai T et al. Serum uric acid is an independent risk factor for cardiovascular disease and mortality in hypertensive patients. Hypertens Res 2012: 35: 1087-1092.13)Culleton BF et al. Serum uric acid and risk for cardiovascular disease and death : the Framingham Heart Study. Ann Intern Med 1999;131: 7-13.14)Sakata K et al. Absence of an association between serum uric acid and mortality from cardiovascular disease: NIPPON DATA 80, 1980-1994 . National Integrated Projects for Prospective Observation of Non-communicable Diseases and its Trend in the Aged. Eur J Epidemiol 2001; 17: 461-468.15)Mazza A et al. Serum uric acid shows a J-shaped trend with coronary mortality in non-insulin-dependent diabetic elderly people. The CArdiovascular STudy in the ELderly(CASTEL). Acta Diabetol 2007; 44: 99-105.16)日本痛風・核酸代謝学会. ガイドライン改訂委員会. 高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン第2版. メディカルレビュー社, 東京, 2010.17)Choi HK et al. Antihypertensive drugs and risk of incident gout among patients with hypertension:population based case-control study. BMJ 2012;344: d8190.18)Iwanaga T et al. Concentration-dependent mode of interaction of angiotensin II receptor blockers with uric acid transporter. J Pharmacol Exp Ther 2007; 320: 211-217.19)Enomoto A et al. Molecular identification of a renal urate anion exchanger that regulates blood urate levels. Nature 2002; 417: 447-452.20)佐治正勝. アロプリノール服用患者における血中オキシプリノール濃度と腎機能. 日腎会誌 1996; 38: 640-650.

2228.

経口抗精神病薬とLAI併用の実態調査

 統合失調症患者における持効性注射剤(LAI)と経口薬の同時処方の頻度および期間について、米国・ペンシルベニア大学のJalpa A Doshi氏らが調査を行った。診療ガイドライン推奨のLAI治療は、一般的にはアドヒアランス不良の患者に対するモノセラピー選択肢と見なされている。LAI治療を受けている患者の、経口抗精神病薬の同時処方の割合や経過に関するデータは限定的であった。Journal of Clinical Psychopharmacology誌2015年8月号の掲載報告。 研究グループは、医療費請求データベースに基づく観察的研究により、LAI治療を受けているメディケイド受給患者340例について、経口薬の同時処方の頻度および期間を調べた。具体的には、統合失調症患者で、直近にアドヒアランス不良および入院の既往がある患者について調べた。調査には、第1世代の抗精神病薬デポ製剤(フルフェナジンデカン酸エステル、ハロペリドールデカン酸エステル)と、最新の使用可能な注射剤(LAIリスペリドン、パリペリドンパルミチン酸エステル)の両方を含んだ。 主な結果は以下のとおり。・LAI治療を開始した全患者のうち、75.9%が退院後6ヵ月の間に経口抗精神病薬の同時処方を受けていた。・同時処方を受けていた患者は、LAI薬と同一の経口薬を処方されている頻度が高かった。一方で、第1世代のLAI使用者の多くが、第2世代の経口薬を同時処方されていた。・同時処方率が最も低かったのは、パリペリドンパルミチン酸エステルの処方群であった(58.8%)。一方で最も高かったのは、LAIリスペリドンの処方群であった(88.9%)。・経口薬とLAI処方の重複は、概して期間が長期(30日超など)になると発生しており、またLAIにより重複が生じている日の割合が顕著(50%超)であった。 これらの結果を受けて著者らは、「さらなる研究でそのような処方がなされた理由を調べ、また日常診療におけるさまざまな抗精神病薬治療の至適な役割を、明らかにする必要があることが強調された」とまとめている。関連医療ニュース 初回エピソード統合失調症、LAIは経口薬より優る 統合失調症、デポ剤と抗精神病薬併用による効果はどの程度 アリピプラゾール持続性注射剤の評価は:東京女子医大  担当者へのご意見箱はこちら

2229.

胃がん切除予定例のピロリ除菌はいつすべき?

 マーストリヒト・アジア太平洋コンセンサスガイドラインでは、胃がんの既往のある患者へのHelicobacter pyloriの除菌を強く推奨している。がん研有明病院の本多 通孝氏らは、胃切除術を受ける患者への適切な除菌のタイミングを検討するため、オープンラベル単一施設無作為化比較試験を実施した。その結果、術前群と術後群で除菌成功率が同等であり、著者らは、「胃切除を予定している胃がん患者は、予定されている再建術式に関係なく、術前の除菌は必要ない」と結論している。Journal of the American College of Surgeons誌オンライン版2015年4月8日号に掲載。 著者らは、胃切除術を受ける予定の150例について、術前除菌群もしくは術後除菌群のいずれかに割り付けた。除菌治療のレジメンは、一般的な3剤併用療法(ランソプラゾール、アモキシシリン、クラリスロマイシン)で実施した。術前群では、除菌治療後に手術を実施、術後群ではDay8に実施した。 主要評価項目は、残胃で除菌成功を達成した患者の割合であった。除菌成功の定義は、術後6ヵ月時点でC13尿素呼気試験および便中抗原とも陰性の場合とした。 主な結果は以下のとおり。・8例を除き、術前群70例と術後群72例の計142例をITT解析に含めた。・胃切除術はそれぞれ、ビルロートI法が18例、ルーワイ法が70例、幽門保存胃切除術が57例であった。・除菌成功例の割合は、術前群と術後群でそれぞれ68.6%対69.4%(p=1.000)で、2群間でほぼ同等であった。・再建術式におけるサブグループ分析でも有意差は認められなかった。

2230.

ステント型血栓回収デバイス、急性虚血性脳卒中の1次治療に 米脳卒中治療ガイドライン

 2015年7月10日、日本メドトロニック発表。アメリカ心臓協会/アメリカ脳卒中協会(American Heart Association, AHA/American Stroke Association, ASA)から新しい脳卒中治療ガイドラインが発表された。本ガイドラインでは、適応患者に対し現行の標準治療であるIV-tPAに、Medtronic plc(本社:アイルランド ダブリン、会長兼最高経営責任者:オマーイシュラック)のステント型血栓回収デバイス(商品名:Solitaire)をはじめとするステント型血栓除去術の併用が治療の第1選択として推奨されている。 本ガイドラインは、NEJM誌にて発表された5つのグローバル臨床試験を専門委員会で分析した結果に基づくもの。この臨床試験では、脳から血栓を物理的に取り除く手技であるステント型血栓除去術を、IV-tPAなどの現行の薬剤治療へ追加することにより、薬剤治療のみを行った場合以上の治療効果をもたらすことが確認された。さらに、ステント型血栓除去術を追加することにより、脳卒中患者における身体障害の低減、神経学的結果および機能的自立回復率の向上が得られることが示唆された。 米国の急性虚血性脳卒中患者69万5,000人のうち、約24万人がステント型血栓回収デバイスによる治療に適応となるが、年間約1万3,000件の手技しか行われていないのが現状。日本メドトロニックプレスリリースはこちら。(PDF)

2231.

抗精神病薬の変更は何週目が適切か

 統合失調症において抗精神病薬が無効な場合、どの程度の期間を待ったうえで治療変更すべきかという臨床上の課題は未解決である。この点に関して、各ガイドラインの見解はさまざまであった。オランダ・アムステルダム大学のMyrto T. Samara氏らは、統合失調症において抗精神病薬の変更を考える場合の効果判定時期の目安を明らかにすべく、メタ解析を行った。その結果、治療開始2週時点で効果が認められない場合は、その後も効果が得られる可能性が低いことを報告した。American Journal of Psychiatry誌2015年7月1日号の掲載報告。 研究グループは、主に個人の患者データを用いて2週時点での非改善がその後の無反応を予測するかどうかを評価する診断検査のメタ解析を行った。EMBASE、MEDLINE、BIOSIS、PsycINFO、Cochrane Library、CINAHL、関連文献の引用文献リスト、全関連文献の補足資料を検索対象とした。主要アウトカムは、ベースラインからエンドポイント(4~12週)までの無反応に対する予測とした。無反応は、陽性・陰性症状評価尺度(PANSS)または簡易精神症状評価尺度(BPRS)における総スコアの50%以下の減少(最小の改善幅を示す)と定義した。また、2週時点の非改善はPANSSあるいはBPRSの20%以下の改善(最小限の改善より小さいことを示す)とした。副次的アウトカムは、横断的な症状の非寛解、そしてエンドポイント時点でのPANSSあるいはBPRSの20%以下の減少とした。可能性のある調整変数をメタ回帰分析により検証した。主な結果は以下のとおり。・34件の試験(9,460例)において、2週時点でのPANSSあるいはBPRSスコアの20%以下の減少は、特異度86%、陽性適中率(PPV)90%をもってエンドポイント時点での無反応を予測した。・実際の観察症例(特異度86%、PPV 85%)または非寛解症例(特異度77%、PPV 88%)のデータを用いても、同様の結果が得られた。・一方、エンドポイント時点での20%以下の減少という定義を用いた場合、予測適中率の結果は不良であった(特異度70%、PPV 55%)。・検査の特異度は、試験期間6週間以下、ベースライン時の高い重症度、短い罹患期間により、有意に低下した。関連医療ニュース 急性期統合失調症、2剤目は併用か 切り換えか:順天堂大学 抗うつ薬切替のベストタイミングは? 抗精神病薬の切り替えエビデンス、どう評価すべきか  担当者へのご意見箱はこちら

2232.

ヘパリンブリッジに意味はあるのか?(解説:後藤 信哉 氏)-381

 抗血栓療法は、リスクを飲み込んでメリットを期待する「両刃の剣」の治療である。 脳卒中リスクを有する心房細動症例ではとくに喧伝されているが、血栓イベントの多くが不可逆的なので、血栓リスク・出血リスクのどちらを重視するかは、個別の臨床医と患者さんの選択である。 多くの抗血栓薬は、2~3年間の観察期間内の血栓イベント、出血イベントにより、有効性、安全性を検証されて一般臨床における使用推奨がなされる。 日本人の死因の第1位は出血疾患としての悪性腫瘍なので、過去のランダム化比較試験に基づいて抗凝固療法が開始された症例であっても、将来発がんし、出血を伴う検査、手術などが発生するリスクが高い。日本でも多くの症例が抗凝固治療を受けており、消化器内視鏡治療を受けるために一時的にヘパリンブリッジを受けている症例も多い。各種診療ガイドラインではヘパリンブリッジについて触れているが、一様に「明確なエビデンスはないが…」と記載されている。 本試験は、日本の標準治療である未分画ヘパリンではなく低分子ヘパリンではあるが、明確なエビデンスである。Medical legal issueとしても、手術時に「ヘパリンブリッジ」をしなかったと苦情を受けることが多い。今後は「ヘパリンブリッジについてのevidenceはある」、「evidenceはヘパリンブリッジをしても、非ヘパリンブリッジと比較して血栓イベント・出血イベントについて劣らないことを示した」と明確に答える根拠ができてとてもよかった。

2233.

心房細動患者の手術、ブリッジング抗凝固療法は必要か/NEJM

 待機的手術などの侵襲性の処置のためにワルファリン治療を中断する必要のある、心房細動(AF)患者に対するブリッジング抗凝固療法の必要性は不明とされる。今回、カナダ・マクマスター大学のJames D Douketis氏らは、BRIDGE試験を行い、低分子量ヘパリンによる周術期のブリッジング抗凝固療法は、動脈血栓塞栓症の予防や大出血リスクの抑制には効果がないことを確認したことを報告した。ブリッジング抗凝固療法の必要性そのものに対する根本的な疑問があり、エビデンスもないため、現行の診療ガイドラインの勧告には説得力がなく、一貫性に欠ける状況だという。NEJM誌オンライン版2015年6月22日号掲載の報告。動脈血栓塞栓症予防の非劣性、大出血リスク抑制の優越性を検証 BRIDGE試験は、AF患者の周術期の動脈血栓塞栓症予防における非ブリッジング抗凝固療法の、低分子量ヘパリンによるブリッジング抗凝固療法に対する非劣性、および大出血リスク抑制における優越性を検証する二重盲検プラセボ対照無作為化試験である(米国国立心肺血液研究所[NHLBI]の助成による)。 対象は、年齢18歳以上、心電図またはペースメーカーに関連する診察時に慢性のAFまたは心房粗動が確認されて3ヵ月以上のワルファリン治療(INR:2.0~3.0)を受けており、待機的手術などの侵襲性の処置のためワルファリン治療の中断を要する患者であった。 被験者は、低分子量ヘパリン(ダルテパリン100IU/kg、1日2回、皮下投与)によるブリッジング抗凝固療法を受ける群またはプラセボ群(非ブリッジング群)に無作為に割り付けられた。ワルファリン治療は手術の5日前に中止された。試験薬の投与は手術の3日前に開始し、24時間前まで続けられた。 ワルファリンは手術日の夕方または翌日に再投与が開始された。試験薬は、出血リスクの低い手技の場合は術後12~24時間に、出血リスクの高い手技の場合は術後48~72時間に再投与が開始された。フォローアップは術後30日まで続けられた。 主要評価項目は、動脈血栓塞栓症(脳卒中、全身性塞栓症、一過性脳虚血発作)および大出血であった。大出血、小出血ともブリッジング群で高頻度 2009年7月~2014年12月までに北米の108施設に1,884例が登録され、非ブリッジング群に950例(平均年齢71.8±8.74歳、男性73.3%、平均CHADS2スコア2.3±1.03)、ブリッジング群には934例(71.6±8.88歳、73.4%、2.4±1.07)が割り付けられた。 術後30日時の動脈血栓塞栓症の発生率は、非ブリッジング群が0.4%(4/918例)、ブリッジング群は0.3%(3/895例)であり、非ブリッジング群のブリッジング群に対する非劣性が確証された(平均群間差:0.1%、95%信頼区間[CI]:-0.6~0.8、非劣性検定:p=0.01、優越性検定:p=0.73)。 また、大出血の発生率は、非ブリッジング群が1.3%(12/918例)、ブリッジング群は3.2%(29/895例)であり、非ブリッジング群の優越性が示された(相対リスク:0.41、95%CI:0.20~0.78、優越性検定のp=0.005)。 副次評価項目である死亡(0.5 vs.0.4%、優越性検定のp=0.88)、心筋梗塞(0.8 vs.1.6%、p=0.10)、深部静脈血栓症(0 vs.0.1%、p=0.25)、肺塞栓症(0 vs.0.1%、p=0.25)には優越性に関する差はみられなかったが、小出血の頻度はブリッジング群で有意に高かった(12.0 vs.20.9%、p<0.001)。 著者は、「全体的な臨床ベネフィットは、非ブリッジングのほうが良好であることが示された」と結論し、「ワルファリン中断中の周術期の動脈血栓塞栓症リスクは過大に評価され、ブリッジング抗凝固療法では抑制されない可能性がある。周術期の動脈血栓塞栓症の発症メカニズムには、手術の種類や術中の血圧変動が、より密接に関連している可能性がある」と指摘している。

2234.

高齢の心筋梗塞例でのICDの有用性/JAMA

 急性心筋梗塞(AMI)発症後に左室駆出率(EF)の低下がみられる高齢患者では、植込み型除細動器(ICD)の装着例は非装着例に比べ2年死亡率が良好であることが、米国・デューク大学医療センターのSean D Pokorney氏らの調査で示された。ACCF/AHAガイドラインでは、心筋梗塞(MI)患者における心停止による突然死の1次予防として、MI発症後40日以上、至適な薬物療法を行っても、EF<35%の場合にICDの装着を推奨している。一方、とくにMIの日常診療ではICDが十分に活用されていないことを示唆するエビデンスがあり、またMIやその結果としての虚血性心筋症は加齢に伴って増加するが、高齢患者におけるICDの有用性については議論があるという。JAMA誌2015年6月23・30日号掲載の報告。約1万例でICD装着と死亡の関連を後ろ向きに評価 研究グループは、EFの低下がみられる高齢MI患者におけるICD装着と背景因子、死亡との関連を後ろ向きに評価する観察研究を行った。 2007~2010年に、米国の441施設で治療を受けた、MI発症後にEFが<35%に低下した65歳以上のメディケア受給者1万318例のデータを後ろ向きに解析した。ICD装着歴のある患者は除外した。 ICD装着の適格例におけるMI発症後1年以内のICD装着の有無とその関連因子を評価し、ICD装着の有無別に2年死亡率を比較した。フォローアップ期間中央値は718日(四分位範囲:372~730日)だった。 全体の年齢中央値は78歳(四分位範囲:72~84)で、65%が非ST上昇型MI(NSTEMI)であり、75%が入院中に血行再建術を受けた。1年以内のICD装着率は8.1%(95%信頼区間[CI]:7.6~8.7)で、入院からICD装着までの期間中央値は137日、血行再建術施行例では115日だった。2年死亡リスクが36%低下、ICD装着率改善の研究を MI発症後1年以内のICD装着例(785例)はICD非装着例(9,533例)に比べ、年齢が若く(74 vs.78歳、p<0.001)、女性が少なく(30 vs.47%、ハザード比[HR]:0.62、95%CI:0.52~0.73、p<0.001)、末期腎臓病例が少なかった(9 vs.20%、0.57、0.43~0.75、p<0.001)。 一方、MI発症後1年以内のICD装着例は、冠動脈バイパス術(CABG)施行歴のある患者が多く(31 vs.20%、HR:1.49、95%CI:1.26~1.78、p<0.001)、心筋トロポニンのピーク値の中央値が高かった(正常上限の85倍 vs.51倍、1.02、1.01~1.03、p<0.001)。 また、院内心原性ショック発症率(13 vs.9%、HR:1.57、95%CI:1.25~1.97、p<0.001)や、退院後2週間以内の心臓関連の追加処置(30 vs.20%、1.64、1.37~1.95、p<0.001)の頻度が高かった。 1年以内のICD装着例は非ICD装着例に比し、2年死亡率が有意に低下した。すなわち、ICD装着例の死亡率は100人年当たり15.3件(128件/838人年)で、非ICD装着例は26.4件(3,033件/1万1,479人年)であり、補正後HRは0.64(95%CI:0.53~0.78)と、ICD装着例で有意に良好であった。 著者は、「MI発症後のEFが低くICDの装着が適切と考えられた高齢患者のうち、1年以内に実際にICDを装着したのは10例中1例にも満たなかったが、これらICD装着例ではリスク補正2年死亡率が有意に改善されていた」とまとめ、「適格例のICD装着率を向上させるエビデンスに基づくアプローチを確立するために、さらなる研究を進める必要がある」と指摘している。

2235.

問診と自己申告で全死亡が予測できる?(解説:桑島 巌 氏)-378

 英国のBiobankの約50万人の登録追跡研究から、身体所見や採血データを用いなくとも、問診や健康状態の自己申告によって全死因死亡を予測できるという発表である。 とくに重篤な疾患を合併していない症例では、男女とも最大の死亡リスクは喫煙であったという。また、全体として、男性の最も強力な死亡予測因子は自己申告による健康状態、女性ではがんの診断歴であったという。採血、身体検査、生体試料など655項目と全死亡との関連について、統計学的に解析しているが、そのうち自己申告による予測スコアは疾患歴、喫煙歴、飲酒歴、薬剤服用状況、自立機能、歩行障害、生活様式など、男性が13項目、女性は11項目である。 これだけ膨大なデータを用いた研究としては、喫煙とがんの既往歴が死亡を予測するという、当たり前のような結果を示したにすぎないが、健診業務や日常診療において、問診や自己申告が予後予測に非常に重要であることを示した点では意義のある研究である。 高齢者社会という多様性の時代の健診や診療においては、数値にこだわるよりも個々との問診や自己申告、すなわち、対話に基づいた診療が重要であることを示している。とくに診療ガイドラインによるコレステロール値、血糖値、血圧値などの数値に拘泥する傾向があるわが国の健診あるいは診療にとって、考えさせられる論文である。

2236.

専門外のアドバイス(前半)【Dr. 中島の 新・徒然草】(074)

七十四の段 専門外のアドバイス(前半)最近、親戚の男性が若くしてがんになってしまいました。当然のことながら奥さんもお母さんも周章狼狽。その結果、私にアドバイスを求めてきました。とはいえ消化器がんのことなんぞはまったくわからず、私もしどろもどろです。そうこうしているうちに手術が終わり、いよいよ化学療法。こちらも何とかしてあげたいのは山々です。「その病気だったら専門の先生に聞いて下さい」ということなら誰でも言えること。いくら専門外とはいえ、「私」にアドバイスを求めてきたのだから、「私」に話を聴いてもらいたいわけです。ということで、ある日、腹をくくって彼が入院している病院にお見舞いにいくことにしました。ロビーで彼と話をするうちに、医師ならではの助言が数多くできることに気づきました。というわけで、いくつかここに紹介しましょう。助言その1:標準治療こそ最強 中島 「病気になったら周囲の人が色々とアドバイスをしてくれると思うけど」 男性 「そうなんですよ」 中島 「たとえば『イワシの頭を食べたらがんに効く』とか、そのテのことだ」 男性 「もう既にあれこれ言われています」 中島 「親戚だからホントのことを言うけどね、そんなモンはクソだな!」 男性 「クソ……ですか?」 中島 「イワシの頭の錠剤とか、1本何万円の〇〇のエキスとか、全部その場で叩き返しなさい」 男性 「でも、せっかく親切で言ってくれているんだし」 中島 「現代医学を信じようよ。標準治療こそ最強だから」 男性 「標準治療といいますと?」 中島 「科学的な理論と膨大な試行錯誤で築き上げられた『定石』だ」 男性 「将棋や囲碁の定石のようなものですか」 中島 「そう。このステージならこう、この場合はこう、とベストのやり方が確立されているわけ」 男性 「なるほど」 中島 「もちろん定石として固まっていない部分もある。その場合は『治療法Aと治療法Bがあって、それぞれのメリット・デメリットはこうです』という説明があり、患者自身が選択しなくてはならない」 男性 「そうなんですね」 中島 「せっかく治るチャンスがあるんだから、民間療法に走ったりしないように」 男性 「確かに走りそうになっていました」 この男性は普通のサラリーマンですが、ロジカルな考え方のできる人のようでした。助言その2:健康な周囲の人を妬まないこと 中島 「若くして難しい病気にかかったら、『なんで俺が?』って思うでしょ」 男性 「正直なところ、そう思っています」 中島 「健康な人を妬ましく思うのは病人の自然な気持ちだから否定はしないけど」 男性 「ええ」 中島 「あんまり取り憑かれないほうがいいよ。自分が不幸になるだけだし」 男性 「わかりました」 私自身が病気になったときのことを思い出しながらのアドバイスです。助言その3:患者向けガイドラインを読むこと 男性 「何か読んでおいたほうがいい本とかありますか?」 中島 「患者向けガイドラインかな」 男性 「そんなものがあるんですか?」 中島 「各学会が出しているガイドラインは医師向けと患者向けがあるわけ。それの患者向けのものを読んでおくと凄く役に立つよ」 男性 「早速読んでみます」 中島 「ネットで公開されているし、なんせわかりやすいのは間違いない」 実はお見舞いの前に私がこっそり読んで来たのです。最近の患者向けガイドラインはよくできているので感心しました。助言その4:病気のことは周囲に打ち明けたほうが楽になる 中島 「病気のことは高度な個人情報だから周囲に隠しておく、というのも1つの考え方だ」 男性 「そうですね」 中島 「でもね、周囲の人たちにも言ったほうが楽になると僕は思う」 男性 「そうなんですか!」 中島 「自分だけで抱えていると苦しいのは間違いない。僕の場合は人と話をしたほうが気持ちが軽くなったな」 男性 「今日、こうやって話をしているだけでもかなり楽になってきました」 これは人によって立場や考え方は色々だと思います。あくまでも自分自身の経験に基づいての話です。助言その5:経済的補助に関する公的制度を活用すること 中島 「病気になったら治療費のことが気になると思うけど」 男性 「実際のところ気になって仕方ないんですよ。まだ子供も小さいし」 中島 「幸いなことに日本は色々な医療費助成制度があるし、病院にも窓口はあるから相談すべきだ」 男性 「そうですね」 中島 「各市町村にも助成制度があるから、ホームページなんかで調べるといいよ」 男性 「なるほど」 中島 「テレビドラマなんかで『手術してもらうために大金を準備しなくては!』とかやったりしているけど、『どこの外国の話ですか?』と、僕なんかそう思うね」 男性 「わかりました」 なんだかんだいっても諸外国に比べて日本の医療制度は良くできています。長くなりそうなので、話は後半に続きます。途中で1句医師ならば 専門外でも アドバイス

2237.

1分でわかる家庭医療のパール ~翻訳プロジェクトより 第21回

第21回:全般性不安障害とパニック障害のアプローチ監修:吉本 尚(よしもと ひさし)氏 筑波大学附属病院 総合診療科 プライマリケアの場において、原因がはっきりしないさまざまな不安により日常生活に支障を生じている患者を診療する経験があるのではないかと思います。またとくに若い患者たちの中でみることの多いパニック障害もcommonな疾患の1つと思われ、その数は年々増加しているともいわれています。厚労省の調査1)では、何らかの不安障害を有するのは生涯有病率が9.2%であるとされ、全般性不安障害1.8%、パニック障害0.8%という内訳となっています。医療機関を受診する患者ではさらにこの割合が高くなっていると考えられ、臨床では避けて通れない問題となっています。全般性不安障害とパニック障害の正しい評価・アプローチを知ることで患者の不要な受診を減らすことができ、QOLを上げることにつながっていくと考えられます。 タイトル:成人における全般性不安障害とパニック発作の診断、マネジメントDiagnosis and management of generalized anxiety disorder and panic disorder in adults.以下、American Family Physician 2015年5月1日号2)より1. 典型的な病歴と診断基準全般性不安障害(generalized anxiety disorder:GAD)典型的には日常や日々の状況について過度な不安を示し、しばしば睡眠障害や落ち着かなさ、筋緊張、消化器症状、慢性頭痛のような身体症状と関係している。女性であること、未婚、低学歴、不健康であること、生活の中のストレスの存在がリスクと考えられる。発症の年齢の中央値は30歳である。「GAD-7 スコア」は診断ツールと重症度評価としては有用であり、スコアが10点以上の場合では診断における感度・特異度は高い。GAD-7スコアが高いほど、より機能障害と関連してくる。パニック障害(panic disorder:PD)明らかな誘因なく出現する、一時的な予期せぬパニック発作が特徴的である。急激で(典型的には約10分以内でピークに達する)猛烈な恐怖が起こり、少なくともDSM-5の診断基準における4つの身体的・精神的症状を伴うものと定義され、発作を避けるために不適合な方法で行動を変えていくことも診断基準となっている。パニック発作に随伴する最もよくみられる身体症状としては動悸がある。予期せぬ発作が診断の要項であるが、多くのPD患者は既知の誘因への反応が表れることで、パニック発作を予期する。鑑別診断と合併症内科的鑑別:甲状腺機能亢進症、褐色細胞腫、副甲状腺機能亢進症などの内分泌疾患、不整脈や閉塞性肺疾患などの心肺疾患、側頭葉てんかんやTIA発作などの神経疾患その他の精神疾患:その他の不安障害、大うつ病性障害、双極性障害物質・薬剤:カフェイン、β2刺激薬、甲状腺ホルモン、鼻粘膜充血除去薬、薬物の離脱作用GADとPDは総じて気分障害、不安障害、または薬物使用などの少なくとも1つの他の精神的疾患を合併している。2. 治療患者教育・指導配慮のある深い傾聴が重要であり、患者教育自体がとくにPDにおいて不安症状を軽減する。また生活の中で症状増悪の誘因となりうるもの(カフェイン、アルコール、ニコチン、食事での誘因、ストレス)を除去し、睡眠の量・質を改善させ、身体的活動を促す。身体的活動は最大心拍数の60%~90%の運動を20分間、週に3回行うことやヨガが推奨される。薬物療法第1選択薬:GADとPDに対してSSRIは一般的に初期治療として考慮される。三環系抗うつ薬(TCA)もGADとPDの両者に対して有効である。PDの治療において、TCAはSSRIと同等の効果を発揮するが、TCAについては副作用(とくに心筋梗塞後や不整脈の既往の患者には致死性不整脈のリスクとなる)に注意を要する。デュロキセチン(商品名:サインバルタ)はGADに対してのみ効果が認められている。buspironeのようなazapirone系の薬剤はGADに対してはプラセボよりも効果があるが、PDには効果がない。bupropionはある患者には不安を惹起するかもしれないとするエビデンスがあり、うつ病の合併や季節性情動障害、禁煙の治療に用いるならば、注意深くモニターしなければならない。使用する薬剤の容量は漸増していかなければならない。通常、薬剤が作用するには時間がかかるため、最大用量に達するまでは少なくとも4週間は投与を続ける。症状改善がみられれば、12ヵ月間は使用すべきである。ベンゾジアゼピン系薬剤は不安の軽減には効果的だが、用量依存性に耐性や鎮静、混乱や死亡率と相関する。抗うつ薬と抗不安薬の併用は迅速に症状から回復してくれる可能性はあるが、長期的な予後は改善しない。高い依存性のリスクと副作用によってベンゾジアゼピンの使用が困難となっている。NICEガイドライン3)では危機的な症状がある間のみ短期間に限り使用を推奨している。中間型から長時間作用型のベンゾジアゼピン系薬剤はより乱用の可能性やリバウンドのリスクは少ない。第2選択薬:GADに対しての第2選択薬として、プレガバリン(商品名:リリカ)とクエチアピン(同:セロクエル)が挙げられるが、PDに対してはその効果が評価されていない。GADに対してプレガバリンはプラセボよりは効果が認められるが、ロラゼパム(同:ワイパックス)と同等の効果は示さない。クエチアピンはGADに対しては効果があるが、体重増加や糖尿病、脂質異常症を含む副作用に注意を要する。ヒドロキシジン(同:アタラックス)はGADの第2選択薬として考慮されるが、PDに対しては効果が低い。作用発現が早いため、速やかな症状改善が得られ、ベンゾジアゼピンが禁忌(薬物乱用の既往のある患者)のときに使用される。精神療法とリラクゼーション療法精神療法は認知行動療法(cognitive behavior therapy:CBT)や応用リラクゼーションのような多くの異なったアプローチがある。精神療法はGADとPDへの薬物療法と同等の効果があり、確立されたCBTの介入はプライマリケアの場では一貫した効果が立証されている。精神療法は効果を判定するには毎週少なくとも8週間は続けるべきである。一連の治療後に、リバウンド症状を認めるのは、精神療法のほうが薬物療法よりも頻度は低い。各人に合わせた治療が必要であり、薬物療法と精神療法を組み合わせることで2年間の再発率が減少する。3. 精神科医への紹介と予防GADとPD患者に対して治療に反応が乏しいとき、非典型的な病歴のもの、重大な精神科的疾患の併発が考慮される場合に、精神科医への紹介が適用となる。※本内容は、プライマリケアに関わる筆者の個人的な見解が含まれており、詳細に関しては原著を参照されることを推奨いたします。 1) 川上憲人ほか. こころの健康についての疫学調査に関する研究(平成16~18年度厚生労働科学研究費補助金(こころの健康科学研究事業). こころの健康についての疫学調査に関する研究,総合研究報告書). 2007. 2) Locke AB, et al. Am Fam Physician. 2015;91:617-624. 3) NICEガイドライン. イギリス国立医療技術評価機構(The National Institute for Health and Care Excellence:NICE).

2238.

救急隊到着前の心肺蘇生で予後改善/NEJM

 スウェーデンでは、人口約970万人のうち300万人以上が心肺蘇生(CPR)の訓練を受けているが、その効果を疑問視する声があるという。今回、同国カロリンスカ研究所のIngela Hasselqvist-Ax氏らが調査したところ、救急隊(EMS)到着前のCPRにより院外心停止患者の30日生存率が2倍以上に向上していることがわかった。心肺停止患者のアウトカムの改善には発症から治療開始までの期間の短縮が重要であり、欧米のガイドラインでは、院外で可能な最も重要な措置は、心停止の発生を早期に認識して緊急電話を入れ、CPRおよび除細動を行うこととされる。研究の成果は、NEJM誌2015年6月11日号掲載の報告より。20年以上、約3万例をEMS到着前CPRの有無別に比較 研究グループは、1990年1月1日~2011年12月31日にSwedish Cardiac Arrest Registryに登録された院外心停止患者のデータを解析した。目撃者のいない例や目撃者がEMSのみの例は除外した。1998年に、緊急連絡者がCPR訓練を受けていない場合は電話でCPRを支援する方法が導入され、2008年には、30日生存例で退院時の脳機能評価が開始された。  この間に登録された院外心停止患者6万1,781例のうち3万381例が解析の対象となった。EMS到着前に、その場に居合わせた者によりCPRが施行されたのは1万5,512例(51.1%)で、到着前には施行されなかった患者は1万4,869例(48.9%)であった。EMS到着前CPR施行群は非施行群よりも若く(年齢中央値:69 vs. 74歳、p<0.001)、自宅での発症率が低く(55.5 vs. 73.2%、p<0.001)、女性が少なかった(26.8 vs. 30.2%、p<0.001)。 到着前施行群は、心停止の原因が心臓と推定される患者が多くないにもかかわらず、心室細動の頻度が高かった。また、到着前施行群は、卒倒(collapse)からEMSを電話で呼ぶまでの期間や、卒倒からCPR開始までの期間は短かったが、EMSを呼んでから到着までの期間や、卒倒から除細動開始までの期間(心室細動がみられる場合)は長かった。調査期間を通じて、CPR訓練を受けた者の数やEMS到着前のCPR施行例の割合は経時的に増加していた。30日生存率が4.0%から10.5%に、早く開始するほど予後良好 30日生存率は、到着前施行群が10.5%であり、非施行群の4.0%に比べ有意に高かった(p<0.001)。すべてのサブグループで、到着前施行群の30日生存率が非施行群よりも有意に良好だった(各サブグループのオッズ比[OR]の範囲:1.97~3.02)。 全症例における卒倒からCPR開始までの期間別(0~3分、4~8分、9~14分、14分以上)の30日生存率は、それぞれ15.6%、8.7%、4.0%、0.9%であり、早期にCPRを開始するほど優れた(p<0.001)。この関連はすべてのサブグループで認められた(いずれも、p<0.001)。また、このような早期CPRと生存率の正の相関は、調査期間を通じて安定的に認められた。 事後解析として傾向スコア(年齢、性別、心停止の発生場所、心停止の原因、心電図上の初期調律、卒倒からEMSを呼ぶまでの期間、EMSを呼んでから到着までの期間、イベント発生年)を算出し、これらのスコアで補正しても、顕著な有意差をもって到着前施行群の30日生存率が優れていた(OR:2.15、95%信頼区間[CI]:1.88~2.45、p<0.001)。傾向スコアに、心室細動がみられた患者の発症から除細動開始までの期間を含めても、この有意差は保持されていた(OR:2.27、99%CI:1.84~2.81、p<0.001)。 一方、2009年1月1日~2011年12年31日にデータが収集されたサブグループのうち、到着前施行群の35%が、電話で支援を受けた者(その場に居合わせたがCPR訓練を受けていない者)によりCPRが施行された。これらの患者の30日生存率は10.9%であり、電話での支援を受けない者によって早期にCPRが開始された患者の15.4%に比べ有意に不良であった(p<0.001)。また、30日生存例の退院時の脳機能評価は474例で行われ、95%が良好と判定された。 著者は、「その場に居合わせた者が、EMSの到着前にCPRを開始した場合、緊急電話より迅速に行われていたことから、CPR訓練を受けた者は受けていない者に比べ、心停止発症の認識や行動の開始が良好であることが示唆される」と指摘している。

2239.

IMPROVE-IT試験:LDL-コレステロールは低ければ低いほど良い!(解説:平山 篤志 氏)-371

 2014年の米国心臓協会(AHA)学術集会で発表され話題となったIMPROVE-IT試験がようやく論文化された。 スタチン以外の薬剤、すなわちコレステロール吸収阻害薬であるエゼチミブで、LDLコレステロールを低下させることが心血管イベントを減少させるかという臨床的疑問に、YESと答えた研究である。つまり、本試験がこれまでの臨床試験でのLDLコレステロール値の低下と心血管イベント低下効果の直線上に乗ったことで、LDLコレステロールの“The Lower, the better”が証明されたのである。 2013年のAHA/ACCガイドラインで、脂質管理はLDLコレステロール値に関係なく、動脈硬化性心血管患者では、ストロングスタチンを投与するだけの“Fire and forget”であったが、この試験によりLDLコレステロールを低下させることの有用性が示され、今後のハイリスク患者についてのガイドラインが変更される可能性もある。しかし、LDLコレステロールがエゼチミブ併用群で54mg/dL、スタチン単独群で70mg/dLの差があったものの、イベントでは平均7年間の追跡でわずか6.4%の低減効果に留まった。また、非致死的心筋梗塞と虚血性脳卒中でのイベント低下が認められたものの、心血管死には差がなかった。 実臨床で死亡に差がないということが意義を持つのか? NNT50という数字が高いのか低いのか? この試験では、スタチンがもたらした効果ほどのインパクトはエゼチミブにはなかった。臨床的な有用性の限界かもしれない。ただ、サブ解析で65歳以上、すでに脂質低下薬を服用中の患者、LDLコレステロール値が95mg/dL以下の患者で併用群に効果が認められ、さらに糖尿病患者で有意に併用効果が認められたことから、スタチンで治療されていてもハイリスクな患者には、エゼチミブの追加投与によるLDLコレステロール低下が重要であることが示された。 今後、ハイリスク患者にはストロングスタチンの投与だけでなくLDLコレステロール値を考慮した治療が必要となるであろう。

2240.

TRIGGER試験:急性上部消化管出血に対する限定的輸血対自由な輸血;実用的・非盲検かつ集団をランダム化した実現可能性試験(解説:上村 直実 氏)-368

 臨床現場で上部消化管出血(UGIB)患者に対する診療においては、迅速に出血源を発見して止血することと同時に、輸血を行うか否かを判断することが重要となる。「非盲検集団無作為化試験」が、この輸血施行の判断基準に関するエビデンスを得るための研究デザインとして、適切であるか否かを検証するために施行されたTRIGGER試験の結果が公表された。 TRIGGER試験では、大量出血症例を除くUGIB全症例を登録し、病院単位でヘモグロビン(Hb)濃度が8g/dL未満で輸血を行う制限群と、10g/dL未満でも輸血できる非制限群の2群に割り付けて検討した結果、「集団無作為化デザインは、両群共に被験者の迅速なエントリーが可能で、高いプロトコル順守率および貧血の解消に結び付き、有意ではないが制限群で赤血球輸血の減少に寄与する可能性が示唆された」。すなわち「臨床診療ガイドラインでUGIB患者に対する輸血の基準を明確にするためには、『非盲検集団無作為化試験』が適切な研究デザインであり、その実施が必須である」と結論されている。 UGIB患者に対する輸血に関して明確な基準はなく、大規模研究によるエビデンスの構築が期待されるところである。しかし、緊急症例に対するエントリー率や診療現場での無作為割り付けの困難性、さらに症例バイアスが大きいなどの理由から、実現可能で精度の高い介入試験デザインが探索されてきた。TRIGGER試験の結果から、施設を無作為に分ける方法が信頼性の高いエビデンス構築に有用であると示されたことから、今後、同デザインを用いた大規模なRCTが実践されるであろう。しかし、わが国におけるUGIBに対する診療の中心は、内視鏡検査での出血源の確認に引き続く内視鏡的止血の成否により輸血の必要性を決定することが多く、日本で本デザインを使用した多施設共同試験を実施する際には、各施設間において異なる内視鏡診療精度が課題となろう。

検索結果 合計:2882件 表示位置:2221 - 2240