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IPF合併肺がんに対するニンテダニブ+化学療法(J-SONIC)/日本臨床腫瘍学会

 特発性肺線維症(IPF)は高率に肺がんを合併する。IPF合併肺がんの大きな問題はIPFの急性増悪であり、ときに急速な呼吸不全から致死的となる。しかし、IPF合併例は進行非小細胞肺がん(NSCLC)の臨床試験のほとんどで除外されている。ニンテダニブ+化学療法はIPF合併肺がんに対する治療オプションとなる 北九州市立医療センターの大坪孝平氏らは、IPF合併進行NSCLCに対し、ニンテダニブ+化学療法と化学療法単独を比較したJ-SONIC試験を、わが国の複数の臨床試験グループ間で行った。J-SONIC試験はIPF合併肺がんでは、世界初となる第III相無作為化比較試験である。・対象:化学療法未施行のIPF合併進行NSCLC(IPF GAP stage I~II:%FVC50%以上、%DLco36〜79%)・試験薬群:化学療法(カルボプラチン+nab-パクリタキセル)3週ごと4サイクル+ニンテダニブ・対照群:化学療法(同上)単独群 3週ごと4サイクル・評価項目:[主要評価盲目]IPF 無増悪生存期間(EPF)[副次評価項目]全奏効率(ORR)、無増悪生存期間(PFS)、全生存率(OS)、安全性など IPF合併肺がんに対してニンテダニブ+化学療法と化学療法単独を比較したJ-SONIC試験の主な結果は以下のとおり。・2017年5月~2019年2月に、全国72施設から243例が登録され、ニンテダニブ併用群(121例)と化学療法単独群(122例)に無作為に割り付けられた。・主要評価項目のIPF EPF中央値は、化学療法+ニンテダニブ群で14.6ヵ月、化学療法群で11.8ヵ月、ハザード比(HR)は0.89(90%信頼区間[CI]:0.67~1.17)であった(p=0.24)。・ORRはニンテダニブ+化学療法群69%、化学療法群56%であった(p=0.04)・PFS中央値は、化学療法+ニンテダニブ群6.2ヵ月、化学療法群5.5ヵ月、HRは0.68(95%CI:0.50~0.92)、とニンテダニブ併用による改善を認めた。・OSは非扁平上皮がんにおいて改善を示し、ニンテダニブ+化学療法群では16.1ヵ月、化学療法群では13.1ヵ月、HRは0.61(95%CI:0.40~0.93)であった。・ニンテダニブ併用により発熱性好中球減少症や下痢、蛋白尿が多く認められたが、QOLは両群で差はなかった。 J-SONIC試験では主要評価項目は達成されなかったものの、ニンテダニブと化学療法の併用はIPF合併進行NSCLC(とくに非扁平上皮癌がん)に対する治療オプションとなるものと考えられる、と大坪氏は述べた。

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TN乳がん1次治療におけるペムブロリズマブ+化学療法、アジア人解析結果(KEYNOTE-355)/日本臨床腫瘍学会

 未治療の手術不能または転移を有するPD-L1 CPS 10以上のトリプルネガティブ(TN)乳がん患者において、ペムブロリズマブ+化学療法はプラセボ+化学療法と比較して、全生存(OS)期間を有意に改善したことが、ESMO 2021で発表されている。同試験のアジア人サブグループの解析結果を、がん研有明病院の高野 利実氏が、第19回日本臨床腫瘍学会学術集会(JSMO2022)で発表した。なお本邦では、PFSを有意に改善した同試験の中間解析結果を基に、2021年8月に承認されている。[KEYNOTE-355試験]・対象:18歳以上の手術不能な局所再発または転移を有するTN乳がん(ECOG PS 0/1)・試験群(2:1の割合で下記2群に無作為に割り付け):ペムブロリズマブ群:ペムブロリズマブ(200mg、3週ごと)+化学療法(ナブパクリタキセル、パクリタキセル、ゲムシタビン/カルボプラチンの3種類のうちいずれか)プラセボ群:プラセボ+化学療法 ・層別化因子:化学療法の種類(タキサンかゲムシタビン/カルボプラチン)、PD-L1発現(CPS≧1かCPS<1)、術前/術後化学療法の有無・評価項目:[主要評価項目]PD-L1陽性患者(CPS≧10およびCPS≧1)およびITT集団におけるOSと無増悪生存期間(PFS)[副次評価項目]奏効率(ORR)、奏効期間(DOR)、病勢コントロール率(DCR)、安全性 アジア人サブセットにおける主な結果は以下のとおり。・データカットオフは2021年6月15日。ITT集団における追跡期間中央値は43.8ヵ月だった。・アジア人サブセットには160例(ペムブロリズマブ群113例、プラセボ群47例)が含まれた(日本人は87例)。・ベースライン特性を全体集団と比較すると、ECOG PS1の患者および化学療法としてタキサンの投与を受けた患者の割合が若干少なく、同クラスの化学療法歴のある患者がプラセボ群に若干多かった。[OS中央値]CPS≧10:ペムブロリズマブ群26.7ヵ月 vs.プラセボ群17.4ヵ月(ハザード比[HR]:0.54、95%信頼区間[CI]:0.28~1.04)全体集団では23.0ヵ月 vs.16.1ヵ月(HR:0.73、95% CI:0.55~0.95、p=0.0093)CPS≧1:22.0ヵ月 vs.16.9ヵ月(HR:0.62、95%CI:0.40~0.97)全体集団では17.6ヵ月 vs.16.0ヵ月(HR:0.86、95% CI:0.72~1.04、p=0.0563)ITT集団:24.1ヵ月 vs.17.2ヵ月(HR:0.57、95%CI:0.39~0.84)全体集団では17.2ヵ月 vs.15.5ヵ月(HR:0.89、95% CI:0.76~1.05)[PFS中央値]CPS≧10: 17.3ヵ月 vs. 5.6ヵ月(HR:0.48、95% CI:0.24~0.98)全体集団では9.7ヵ月 vs.5.6ヵ月(HR:0.66、95% CI:0.50~0.88)CPS≧1:7.7ヵ月 vs.5.6ヵ月(HR:0.58、95%CI:0.37~0.91)全体集団では7.6ヵ月 vs.5.6ヵ月(HR:0.75、95% CI:0.62~0.91]ITT集団:8.8ヵ月 vs.6.7ヵ月(HR:0.66、95%CI:0.44~0.99)全体集団では7.5ヵ月 vs.5.6ヵ月(HR:0.82、95% CI:0.70~0.98)・Grade3以上の治療関連有害事象は、ペムブロリズマブ群77.9% vs.プラセボ群78.7%と全体集団と比較して若干多く報告された(全体集団では68.1% vs. 66.9%)が、安全性について全体の傾向は同様で、管理可能であった。 高野氏は、ペムブロリズマブ群におけるベネフィットがアジア人でより大きい傾向がみられることについて、症例数の限られたサブグループ解析であり、慎重に解釈する必要があるとの見解を示しつつ、新たな臨床研究で検討すべき重要なポイントであると述べた。

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化学療法+ニボルマブ+ベバシズマブによるNSCLC1次治療の全生存期間(TASUKI-52)/日本臨床腫瘍学会

 非扁平上皮非小細胞肺がん(NSCLC)に対するニボルマブとプラチナダブレットおよびベバシズマブ併用の1次治療を評価する国際無作為化二重盲検第III相TASUKI-52試験の全生存期間(OS)の成績が、第19回日本臨床腫瘍学会学術集会(JSMO2022)で発表された。同併用群はOSについても改善を示した。・対象:未治療のStage IIIB/IVの非扁平上皮NSCLC患者(PD-L1発現問わず)・試験群:ニボルマブ(360mg)+カルボプラチン+パクリタキセル+ベバシズマブ(3週間ごと6サイクル)→ニボルマブ+ベバシズマブ(ニボルマブ群)・対照群:プラセボ+カルボプラチン+パクリタキセル+ベバシズマブ→プラセボ+ベバシズマブ(プラセボ群) ニボルマブ/プラセボ+ベバシズマブは、疾患進行または許容できない毒性発現まで継続・評価項目:[主要評価項目]独立放射線審査委員会(IRRC)評価の無増悪生存期間(PFS)[副次評価項目]全生存期間(OS)、全奏効率(ORR)、安全性 主な結果は以下のとおり。・最小追跡期間は19.4ヵ月であった。・OS中央値はニボルマブ群30.8ヵ月、プラセボ群24.7ヵ月、とニボルマブ群で有意に良好であった(HR:0.74、95%CI:0.58~0.94、p=0.0135)・18ヵ月OS率はニボルマブ群69.0%、プラセボ群61.9%、24ヵ月OS率はそれぞれ59.8%と50.3%で、その差は開いている。・OSのサブグループ解析では、ほとんどの項目でニボルマブ群が優位であった。・PD-L1発現レベルによるOSのHRはPD-L1<1%集団で0.84、1~49%集団で0.59、≧50%で0.83、と発現レベルをとわずニボルマブ群で良い傾向であった。・全Gradeの治療関連有害事象(TRAE)は、ニボルマブ群98.5%に対しプラセボ群99.6%、治療中止にいたったTRAEはそれぞれ16.5%と4.4%であった。 この結果は、非扁平上皮NSCLCの1次治療におけるニボルマブとプラチナ含有化学療法およびベバシズマブの併用をさらに支持するものだと発表者は述べている。

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早期TN乳がん、術前PEM+化学療法と術後PEMでEFS改善/NEJM

 早期トリプルネガティブ乳がん(TNBC)に対し、術前補助療法でペムブロリズマブ+化学療法→術後補助療法でペムブロリズマブによる治療は、術前補助療法での化学療法のみと比較して、無イベント生存期間(EFS)を有意に延長することが、英国・ロンドン大学クイーン・メアリー校のPeter Schmid氏らが21ヵ国181施設で実施した無作為化二重盲検プラセボ対照試験「KEYNOTE-522試験」で示された。すでに本試験の最初の解析において、術前補助化学療法にペムブロリズマブを追加することで、根治的手術実施時に病理学的完全奏効(pCR)(乳房内に浸潤がんがなく、リンパ節転移陰性と定義)を得られた患者の割合が有意に増加することが報告されていた。NEJM誌2022年2月10日号掲載の報告。術前化学療法へのPEM追加+術後PEMの有効性を、プラセボと比較 研究グループは、未治療の早期TNBC患者(AJCC/TNM分類でT1c N1-2またはT2-4 N0-2、ECOG PS 0/1)を、ペムブロリズマブ+化学療法群とプラセボ+化学療法群に2対1の割合で無作為に割り付けた。 ペムブロリズマブ+化学療法群では、術前補助療法としてペムブロリズマブ(200mg、3週ごと)+パクリタキセル(80mg/m2、週1回)+カルボプラチン(AUC 1.5、週1回またはAUC 5、3週ごと)を4サイクル投与後、ペムブロリズマブ+シクロホスファミド(600mg/m2)+ドキソルビシン(60mg/m2)またはエピルビシン(90mg/m2)を3週ごとに4サイクル投与し、術後補助療法としてペムブロリズマブを3週ごとに9サイクル投与した。プラセボ+化学療法群では、術前補助療法でプラセボ+化学療法(同上)、術後補助療法でプラセボを投与した。 主要評価項目は、pCRおよびEFS(無作為化から、根治的手術不能となる病勢進行、局所または遠隔再発、2次原発がんの発生、または全死因死亡までの期間と定義)とし、安全性についても評価した。3年EFS率は84.5% vs.76.8% 2017年3月~2018年9月に計1,174例が割り付けられた(ペムブロリズマブ+化学療法群784例、プラセボ+化学療法群390例)。 計画されていた今回の第4回中間解析(データカットオフ日:2021年3月23日)における追跡期間中央値は39.1ヵ月(範囲:30.0~48.0)で、EFSのイベントはペムブロリズマブ+化学療法群で123例(15.7%)、プラセボ+化学療法群で93例(23.8%)に認められた。 3年無イベント生存率は、ペムブロリズマブ+化学療法群84.5%(95%信頼区間[CI]:81.7~86.9)、プラセボ+化学療法群76.8%(72.2~80.7)であった(イベントまたは死亡のハザード比:0.63、95%CI:0.48~0.82、p<0.001)。 有害事象は主に術前補助療法期に発現し、ペムブロリズマブおよび化学療法ですでに確立されている安全性プロファイルと一致していた。

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サンアントニオ乳がんシンポジウム(SABCS2021)レポート

レポーター紹介2021年12月7日から10日まで4日間にわたり、SABCS 2021がハイブリッド形式で開催された。米国では現地サンアントニオに集まって学会が行われ、近い将来、日常が戻ってくる予兆を感じさせるものであった。もう2年リバーウォークを歩いておらず寂しい気持ちでいっぱいであるが、今年も乳がんについて網羅的に勉強する良い機会となった。今年のSABCSは直接日常臨床を変えるものは多くなかったが、近い将来どのように変化していくかを示唆するものが多かった。今回は、それらの中から4演題を紹介する。EMERALD試験近年、経口選択的エストロゲン受容体分解薬(selective estrogen receptor degrader:SERD)の開発が非常に活発に行われ、製薬企業は各社しのぎを削っている状況である。その中で、初の第III相試験の結果としてSABCSで報告されたのがelacestrantのEMERALD試験である。SERDは理論的にホルモン耐性の中で最も強力なESR1変異に有効な薬剤として知られるが、elacestrantは現在臨床で使えるSERDであるフルベストラントよりさらに効果が高いことが基礎実験で示されている。本試験は、内分泌療法とCDK4/6阻害薬の併用療法の治療歴があるホルモン受容体陽性HER2陰性転移乳がん(metastatic breast cancer:MBC)において、主治医選択治療に対するelacestrantの優越性を検証したランダム化試験である。主治医選択治療としてはフルベストラント、アナストロゾール、レトロゾール、エキセメスタンが許容されていた。主要評価項目は全患者における無増悪生存期間(progression free survival:PFS)と、ESR1変異のある患者(mESR1)におけるPFSであった。477例がランダム化され、239例がelacestrant群に、238例が標準治療群に割り付けられた。主要評価項目の全患者におけるPFSにおいて、elacestrant群で2.79ヵ月、標準治療群で1.91ヵ月(ハザード比[HR]:0.697、95%CI:0.552~0.880、p=0.0018)とelacestrant群で有意に良好であった。さらにmESR1では3.78ヵ月 vs.1.87ヵ月(HR:0.546、95%CI:0.387~0.768、p=0.0005)であり、mESR1でより効果が高かった。同効薬であるフルベストラントとの比較においても同様の傾向であり、elacestrantが有意に良好であった。全生存期間(overall survival:OS)は統計学的有意差を認めなかったものの、全患者でもmESR1でもelacestrantで良好な傾向を認めた。有害事象はelacestrantで多い傾向を認めたが、Grade3以上の有害事象は7.2%であり、頻度としてはさほど高くないと考えられた。とくに悪心の頻度が高かった。現在、経口SERDは多くの試験が行われており、近い将来、標準治療の1つとなっていくと考えられる。PADA-1試験ホルモン受容体陽性MBCにおいて、1次治療としてアロマターゼ阻害薬(aromatase inhibitor:AI)ベースの治療が有効であるか、SERDベースの治療が推奨されるかは1つの大きな議論となっている。とくにESR1変異によるAI耐性をSERDで回避可能かを検証する試験が実施されてきた。PADA-1試験はそのような試験の1つであり、循環腫瘍DNA(circulating tumor DNA:ctDNA)を用いた治療戦略を検証した試験である。PADA-1試験ではAI+パルボシクリブによる治療中にctDNAによるESR1変異が検出され、画像上の病勢進行(progressive disease:PD)が認められない患者を対象として、AI+パルボシクリブ継続とフルベストラント+パルボシクリブへの治療変更をランダム化し、主要評価項目として安全性と主治医判断によるPFSを検証した。1,017例のAI+パルボシクリブ投与中の患者が登録され、279例でctDNAによるESR1変異が検出された。172例でPDが認められずランダム化が実施され、84例がAI継続、88例がフルベストラントへのスイッチに割り付けられた。術後治療としてAI治療歴のある患者が35%前後、ctDNAによるESR1変異が見つかるまでの期間が12ヵ月以上ある患者が60%強であった。ランダム化後のPFSはAI群で5.7ヵ月に対しフルベストラント群で11.9ヵ月(HR:0.63、95%CI:0.45~0.88、p=0.007)と、約6ヵ月の差をもってフルベストラント群で有意に良好であった。サブグループ解析では、ほとんどのグループでフルベストラント群が良好であった。骨転移単独ではAI群で良好な傾向が見られたが、症例数が少なく結論は出せない。毒性は両群で大きな差はなく、頻度の高い有害事象は血球減少であり、パルボシクリブによるものと考えられた。AI群でPD後にフルベストラントへクロスオーバーした患者のクロスオーバー後のPFSは3.5ヵ月(95%CI:2.7~5.1)であり、AI治療中と合計してもPFSはフルベストラント群で良好であった。現在、日本では繰り返し測定できる承認されたctDNAアッセイはないが、今後ctDNAによるモニタリングを行いながら、画像上のPDの前に治療を変更する戦略が標準治療となってくる可能性がある。TROPION-PanTumor01試験皆さんご存じように、現在は多数の抗体医薬複合体(Antibody Drug Conjugate:ADC)が開発されている。2019年のSABCSで発表されたトラスツズマブ デルクステカン(trastuzumab deruxtecan:T-DXd)の有効性を見た時の驚きは記憶に新しい。また、2020年のESMOで発表され、すでに米国食品医薬品局(US Food and Drug Administration:FDA)に承認されているsacituzumab govitecan(SG)も、トリプルネガティブ乳がん(Triple-Negative Breast Cancer:TNBC)の治療を大きく変えた。datopotamab deruxtecan(Dato-DXd)は、SGと同様にTrophoblast Cell-Surface Antigen 2(TROP-2)を標的分子としたADCで、ペイロードとしてDXdが結合されている。TROPION-PanTumor01試験はDato-DXdの安全性を確認する第I相試験で、非小細胞肺がん、TNBC、HR+/HER2-乳がんなどで拡大パートの開発が実施されている。SABCSでは、そのうちTNBCパートの結果が発表された。44例の患者が登録され、現在13例(30%)が治療継続中である。前治療歴の中央値は3レジメンで、2ライン以上の治療歴のある患者が68%であった。30%にTopo I阻害薬ベースのADC(SG、T-DXdなど)の治療歴があった。奏効率は34%、Topo I阻害薬ベースのADC治療歴がない患者に限ると52%であり、高い有効性を示した。Grade3以上の有害事象は45%で認め、頻度の高い有害事象は悪心、口内炎、嘔吐、倦怠感、脱毛、血液毒性などであった。TNBC治療ではすでに免疫チェックポイント阻害薬(immune checkpoint inhibitor:ICI)やPARP阻害薬が標準治療となっているが、新たなADC製剤への期待も大きく、TNBCの治療戦略は今後大きく変わる可能性が高い。KEYNOTE-522試験転移TNBCではICIが標準治療となった。PD-L1陽性転移TNBCでは、アテゾリズマブとnab-PTXの併用、あるいはペムブロリズマブと化学療法の併用が1次治療の標準治療である。TNBCに対するICIの開発は術前でも活発に行われており、KEYNOTE-522試験はその1つである。本試験では術前化学療法としてのカルボプラチン+パクリタキセル→アンスラサイクリンにペムブロリズマブ/プラセボを上乗せすることの有効性を、病理学的完全奏効(pathological complete response:pCR)と無イベント生存(event free survival:EFS)を主要評価項目として検証した。術後は、ペムブロリズマブ/プラセボがpCR/non-pCRにかかわらず投与された。pCRの結果は以前に発表され、ペムブロリズマブの上乗せ効果が証明されていたが、EFSについてはESMOならびに今回のSABCSで詳細が発表されている。本試験では1,174例が登録され、784例がペムブロリズマブ群に、390例がプラセボ群に2:1で割り付けられた。3年EFSはペムブロリズマブ群で84.5%、プラセボ群で76.8%(HR:0.63、95%CI:0.48~0.82、p=0.00031)とペムブロリズマブ群で有意に良好であった。今回の発表では打ち切りの条件をさまざまに変更したsensitivity analysisが実施されたが、いずれも主解析と同様の結果であり、ペムブロリズマブの有効性が再確認された。リンパ節転移の陽陰性、病期(StageII or III)でのサブ解析も実施されたが、ベースラインのリスクにかかわらず上乗せ効果があることが示された。悩ましいのは、(今回の発表には含まれていないが)pCR、non-pCRのいずれにおいてもペムブロリズマブのEFSに対する上乗せ効果があることである。すでに国内から出されたエビデンスによって、TNBCの術前化学療法でnon-pCRの場合にはカペシタビンが術後治療の標準治療である(国内未承認)。また、生殖細胞系列のBRCA1/2遺伝子変異がある場合はPARP阻害薬であるオラパリブが術後治療の候補となる(国内未承認)。今回の結果をもって、術前化学療法とペムブロリズマブの併用を実施した場合は、術後にペムブロリズマブを使用することが標準治療となる。その場合に、他の治療(カペシタビン、オラパリブ)とどのように使い分けていくのか(あるいは併用のエビデンスを出していくのか)、今後の議論が重要となってくるであろう。

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早期乳がん、タキサンへのアントラサイクリン追加のベネフィットとリスク~メタ解析/SABCS2021

 早期乳がんに対するタキサンとアントラサイクリンをベースとした化学療法は、アントラサイクリンによる心毒性と白血病リスク増加の懸念から、アントラサイクリンを含まないレジメン、とくにドセタキセル+シクロホスファミド(DC)が広く使用されている。アントラサイクリン併用のベネフィットとリスクは複数の無作為化試験で検討されているが、結果が一致していない。今回、Early Breast Cancer Trialists Collaborative Group(EBCTCG)が、2012年以前に開始された16件の無作為化比較試験から約1万8,200例のデータのメタ解析を実施した。その結果、アントラサイクリン併用で、乳がん再発リスクが相対的に15%減少し、また同時投与レジメンで最大の減少がみられたことを、英国・オックスフォード大学のJeremy Braybrooke氏がサンアントニオ乳がんシンポジウム(SABCS 2021)で発表した。・比較試験の種類:(A)アントラサイクリン+DC同時投与6サイクル vs. DC 6サイクル(タキサン累積投与量が両群で同じ)3試験(B)アントラサイクリン/タキサン逐次投与 vs. DC 6サイクル(タキサン累積投与量が併用群で少ない)8試験(C)タキサン+アントラサイクリン vs. タキサン±カペシタビン3試験(D)タキサン+アントラサイクリン vs. タキサン+カルボプラチン2試験・主要評価項目:再発率、乳がんによる死亡率 主な結果は以下のとおり。・全試験でのメタ解析では、タキサンに対するタキサン+アントラサイクリンでの再発リスクの相対的減少は15%(RR:0.85、95%CI:0.78~0.93、2p=0.0003)、10年での絶対的減少は2.5%(95%CI:0.9~4.2)だった。乳がん死亡リスクの相対的減少は13%(RR:0.87、95%CI:0.78~0.98、2p=0.02)、10年での絶対的減少は1.6%(95%CI:0.1~3.1)だった。・再発リスクの相対的減少は、アントラサイクリン同時投与の有無による比較(A)で42%(RR:0.58、95%CI:0.43~0.79)と最大だった。一方、アントラサイクリン/ドセタキセル逐次投与とDCの比較(B、ドセタキセル累積投与量が併用群で少ない)では、アントラサイクリン併用による有意なベネフィットはなかった(RR:0.92、95%CI:0.78~1.09)。・再発率の相対的減少について、エストロゲン受容体の発現状況やリンパ節転移の個数による違いはなかった。・心血管疾患や白血病による死亡の有意な増加は示されなかった(長期フォローアップが必要)。

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TN乳がん1次治療でのペムブロリズマブ、適切なCPSカットオフ値は?(KEYNOTE-355)/SABCS2021

 手術不能な局所再発または転移を有するPD-L1陽性のトリプルネガティブ(TN)乳がんの1次治療において、ペムブロリズマブ+化学療法による治療ベネフィットが期待される患者の定義としてCPS 10以上が適切であることを示唆する、第III相KEYNOTE-355試験のサブグループ解析結果を、スペイン・International Breast Cancer CenterのJavier Cortes氏がサンアントニオ乳がんシンポジウム(SABCS2021)で発表した。 本試験では、化学療法+ペムブロリズマブが、未治療のPD-L1陽性(CPS 10以上)の手術不能な局所再発または転移を有するTN乳がん患者において、化学療法+プラセボと比べ、有意に全生存(OS)および無増悪生存(PFS)を改善したことがすでに報告されている。しかし、CPS 1以上の集団では有意なベネフィットは示されなかった。今回は、CPS 1未満、1~9、10~19、20以上のサブグループに分けてOSとPFSを解析した。・対象:18歳以上の手術不能な局所再発または転移を有するTN乳がん(ECOG PS 0/1)847例・試験群:ペムブロリズマブ(200mg、3週ごと)+化学療法(ナブパクリタキセル、パクリタキセル、ゲムシタビン/カルボプラチンの3種類のうちいずれか)566例・対照群:プラセボ+化学療法 281例・評価項目:[主要評価項目]PD-L1陽性患者(CPS 10以上、1以上)およびITT集団におけるPFSとOS[副次評価項目]奏効率、奏効期間、病勢コントロール率、安全性 主な結果は以下のとおり。・最終解析時点(データカットオフ:2021年6月15日)で、無作為化~データカットオフの期間の中央値は44ヵ月だった。・OSについては、報告済みのハザード比(95%信頼区間)は、CPS 10以上で0.73(0.55~0.95)、CPS 1以上で0.86(0.72~1.04)、ITT集団で0.89(0.76~1.05)だった。今回のサブグループ解析では、CPS 1未満で0.97(0.72~1.32)、1~9で1.09(0.85~1.40)、10~19で0.71(0.46~1.09)、20以上で0.72(0.51~1.01)で、CPS 1~9ではペムブロリズマブ群とプラセボ群で変わらず、10~19と20以上ではペムブロリズマブの追加による治療ベネフィットが同等だった。 ・PFSについては、報告済みのハザード比(95%信頼区間)は、CPS 10以上で0.66(0.50~0.88)、CPS 1以上で0.75(0.62~0.91)、ITT集団で0.82(0.70~0.98)だった。今回のサブグループ解析では、CPS 1未満で1.09(0.78~1.52)、1~9で0.85(0.65~1.11)、10~19で0.70(0.44~1.09)、20以上で0.62(0.44~0.88)だった。

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アテゾリズマブ+ベバシズマブ+化学療法のNSCLC1次治療、EGFR変異、肝臓/脳転移例への有効性(IMpower150)/JTO

 アテゾリズマブ+ベバシズマブ+カルボプラチン/パクリタキセル(ABCP)またはアテゾリズマブ+カルボプラチン/パクリタキセル(ACP)とベバシズマブ+カルボプラチン/パクリタキセル(BCP)を評価する第III相IMpower150試験の、EGFR変異および肝臓または脳転移サブグループに関する全生存(OS)の最終解析が報告された。 IMpower150試験の対象は、化学療法未治療の切除不能な進行・再発の非扁平上皮非小細胞肺がん(NSCLC)患者1,202例。安定した既治療の脳転移症例は許可されている。 試験群はABCP群とACP群で対照群はBCP群である。対象患者は各群に無作為に割り付けられた。 主な結果は以下のとおり。・データカットオフ時(2019年9月13日)の追跡期間中央値は39.3ヵ月であった。[ABCP群対BCP群]・EGFR変異症例全体のOSハザード比[HR]は0.60(95%CI:0.31~1.14)、EGFR-TKI既治療例のHRは0.74(95%CI:0.38~1.46)、とABCP群はBCP群に比べOSの改善を維持した。・ベースライン時に肝転移を有する症例のOS HRは0.68(95%CI:0.45~1.02)、とABCP群のOS改善が維持されていた。[ACP群対BCP群]・EGFR変異症例全体のOS HRは1.0(95%CI:0.57~1.74)、EGFR-TKI既治療例のHRは1.22(95%CI:0.68~2.22)、とACP群は生存ベネフィットを示せなかった。・ベースライン時に肝転移を有する症例のOS HRは1.01(95%CI:0.68~1.51)、とACP群の生存ベネフィットを示されなかった。[脳転移]・新たな脳転移の発症全体は100例(8.3%)にみられた。・正式な評価ではないが、ABCP群ではBCP群に比較して、新たに脳転移が発現するまでの時間(TTD)に改善が見られた(HR:0.68、95%CI:0.39~1.19)。 今回の探索的研究の最終解析は、EGFR変異症例および肝転移を有する症例において、ABCP群のBCP群に対するOSベネフィットを示した。一方、ABCP群の脳病変のTTD延長については、さらなる調査が必要だと筆者は述べている。

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ESMO2021レポート 肺がん

レポーター紹介2021年のESMOは、6月のASCO、8月のWCLCに続く9月開催ということもあり、肺がん領域では大きなインパクトのある発表はないと思われましたが、重要な試験のアップデート、EGFR-TKIや免疫チェックポイント阻害薬の耐性後の治療開発、希少ドライバー変異に対する新薬や、がん免疫療法の第III相試験など、新たな知見の報告が多くありました。今回はその中から、とくに実臨床や近い将来に影響すると思われる演題について概括します。WJOG9717L試験EGFR遺伝子変異陽性、未治療進行再発、非扁平上皮非小細胞肺がんを対象として、オシメルチニブを標準治療に、オシメルチニブ+ベバシズマブの優越性を評価した無作為化第II相試験である。活性型EGFR遺伝子変異タイプの割合や約2割の術後再発症例を含むなど、患者背景は同じ対象の過去の試験と同様であった。122例が登録され1:1に割り付けられた。主要評価項目は中央判定による無増悪生存期間(PFS)、副次評価項目は主治医判定のPFS、全生存期間、奏効割合が設定されている。第1世代のEGFR-TKIであるエルロチニブにベバシズマブ(BEV)を併用することでPFS延長効果が第III相試験で示されており、オシメルチニブにBEVを併用することでPFSのさらなる延長効果に大きな期待が集まっていた試験である。BEV併用効果を示すことができなかった本試験の結果は、BEV併用群のPFS中央値22.1ヵ月、オシメルチニブ単剤群20.2ヵ月であった。生存曲線を見ると、治療開始早期から離れていたが24ヵ月あたりでほぼ重なってしまい、ハザード比0.862(95%信頼区間0.531~1.397)という結果だった。医師判定による結果も同様で、BEV併用群24.3ヵ月、オシメルチニブ単剤群17.1ヵ月であり、ハザード比0.801(95%信頼区間0.504~1.272)で差がなかった。サブ解析では、喫煙歴のある集団、del19の集団で併用群のPFSが良い傾向が認められた。奏効率は、BEV併用群82%、オシメルチニブ単剤群86%で同等であるが、Waterfall plotでは併用群は全例で縮小が認められた。しかし、血管新生阻害薬併用時に見られる腫瘍縮小の深さは見られなかった。有害事象で1つ興味深い結果があった。併用群でオシメルチニブに関連する肺臓炎発症頻度が少ないことである。オシメルチニブ単剤群18.3%、併用群3.3%であり、肺臓炎発症リスクを低減させる可能性が示唆される。この傾向は血管新生阻害薬併用の他試験でも見られている。本試験以外に、オシメルチニブにBEVを併用した試験は、T790M遺伝子変異陽性既治療症例を対象に実施された比較試験が2つあり(BOOSTER、WJOG8715L)、いずれも併用によるPFS延長効果を示すことができていない。血管新生阻害薬併用は単純ではなく、EGFR変異タイプ、胸水貯留や間質性肺炎の懸念など、使いどころを考える必要がある。DESTINY-Lung01試験HER2を標的としたADC(Antibody Drug Conjugate活性を:抗体薬物複合体)トラスツズマブ デルクステカン(商品名:エンハーツ)の第II相試験である。本試験には、標的とするHER2の免疫染色による、HER2過剰発現、またはHER2遺伝子変異を対象とした2つのコホートがある。2020年のASCOでHER2遺伝子変異陽性非小細胞肺がん42例の中間解析結果が発表されたが、今回は91例の結果が発表された。主要評価項目は独立評価による奏効割合である。観察期間中央値は13.1ヵ月、年齢中央値60歳、36.3%に脳転移を有し、変異部位はキナーゼドメインが93.4%であった。ほぼ全例が標準治療を受けた既治療例で、HER2-TKI既治療例も一部いた。解析時、15例(16.5%)が治療継続していた。CR 1.1%を含む、54.9%の奏効割合、病勢制御率は92.3%。HER2変異部位、蛋白発現や遺伝子増幅レベル、TKI既治療の有無に関係なく奏効していた。PFS中央値は8.2ヵ月、生存期間中央値は17.8ヵ月で、標準治療後の成績として有望な結果である。有害事象において特筆すべきは間質性肺疾患(ILD)である。24例(26.4%)に薬剤関連のILDが発現し、多く(75%)はGrade1/2であるが、死亡2例(2.2%)を認めた。細胞傷害性抗がん剤がリンカーで結合している薬剤のため、30%を超える消化器毒性と骨髄抑制の発現があり、50%を超える嘔気と倦怠感が最も多い減量理由であった。RET阻害薬が最近承認され、KRAS阻害薬は承認申請中であり、希少ドライバー変異に対する分子標的治療薬が臨床に届き始めた。HER2を標的にする阻害薬はなく、この試験結果から間違いなく期待される薬剤であるが、リスクベネフィットを考慮する必要がある。本研究は発表と同時にNEJM誌に掲載されている。ZENITH20試験(コホート4)HER2エクソン20挿入変異陽性、未治療の非小細胞肺がんを対象にした、経口の汎HERチロシンキナーゼ阻害薬poziotinibの第II相試験である。EGFRとHER2のエクソン20の挿入変異は、非小細胞肺がんにおいてそれぞれ約2~4%に認められ、変異全体の約10%を占めている。またエクソン20挿入変異は既存のTKIに対して耐性を示すことが知られている。HER2エクソン20挿入変異陽性非小細胞肺がんに対し有効な治療はない。本試験には7つのコホートがあり、主に既治療・未治療、EGFR・HER2のそれぞれに対する有効性を検討している。今回のコホートでは、最初の48例にpoziotinib 16mgを1日1回経口投与、以後登録される被験者には8mgが1日2回投与された。年齢中央値は60歳で肺がん試験では比較的若い。未治療48例中21例が奏効し、奏効率43.8%(95%信頼区間:29.5~58.8)であり、主要評価項目を達成した。PFS中央値は5.6ヵ月、そのうち26%の症例はPFSが12ヵ月を超えて持続していた。有害事象は、下痢(83%)、口内炎(81%)、皮疹(69%)、爪囲炎(46%)が認められ、投与中断割合88%、減量割合77%で治療中止割合は13%、と既存の第2世代EGFR-TKIと同程度であり、毒性がやや強いと思われる。治療薬がないドライバー変異に対する新規治療として有効性を示しているが、初回治療成績として臨床的に意義のある有効性とは言い難い。IMpower010試験完全切除された術後IBからIIIA期(UICC第7版)の非小細胞肺がんで、術後化学療法を最大で4サイクル受けた患者を対象に、アテゾリズマブを16サイクル投与する試験治療を経過観察と比較した第III相試験である。PD-L1(SP263)発現陽性54.6%、EGFRまたはALK遺伝子陽性例14.9%が含まれていた。無病生存期間(DFS)を主要評価項目とした中間解析の結果がすでにASCO2021で発表されており、アテゾリズマブは経過観察に比べて、再発または死亡リスクを34%低下させた(ハザード比:0.66、95%信頼区間0.50~0.88)。ASCO、WCLCでの発表に続く今回は、再発の詳細と再発後の治療についての発表で、少しずつ試験の全貌が明らかになってきている。再発率は、PD-L1 TC 1%以上でII~IIIA期の集団で、アテゾリズマブ群29.4%、経過観察群44.7%であった。PD-L1発現を問わずII~IIIA期の全集団では33.3%と43.0%、ITT集団(IB~IIIA期)では30.8%と40.8%であった。再発形式は局所または遠隔のみ、その両方と中枢神経再発別で比較しているが、2群間で大きな差はない。再発形式は、PD-L1 TC 1%以上のII~IIIA期の集団で、局所領域のみの再発はアテゾリズマブ群47.9%、経過観察群41.2%、遠隔再発のみは38.4%と39.2%、局所と遠隔再発は12.3%と16.7%、中枢神経再発のみは11.0%と11.8%だった。PD-L1発現を問わずII~IIIA期の全集団やITT集団でも、再発形式、その割合はほとんど一緒であり、2群間に大きな差はなかった。無作為化から再発までの期間は、PD-L1 TC 1%以上のII~IIIA期集団でアテゾリズマブ群のほうが経過観察群より長く、中央値がそれぞれ、アテゾリズマブ群17.6ヵ月(0.7~42.3ヵ月)、経過観察群10.9ヵ月(1.3~37.3ヵ月)であった。また、同集団の再発形式別に見た再発までの期間は、いずれもアテゾリズマブ群のほうが長かった。しかし、無作為化されたII~IIIA期の集団やITT集団では、2群間の再発までの期間中央値は差が小さかった。再発後の治療においても外科治療、放射線治療、化学療法いずれも2群ともほとんど同じ割合であり、免疫療法を受けた割合は経過観察群(35.3%)で、アテゾリズマブ群(11.0%)より多かった。アテゾリズマブ群の再発に関しては経過観察群と比べて特徴のある因子はなく、局所から脳転移などの遠隔転移まで、満遍なく制御していることでDFS延長効果を示した結果であった。また、PD-L1発現50%以上の強発現集団では、DFSのハザード比は0.43と報告されている。現在、アテゾリズマブは術後化学療法に対して承認申請を行っている。本試験の観察期間中央値が32ヵ月であり、生存曲線もテイルプラトーが見られておらず、本当の意味での術後治療の有効性を見極めるためにはもうしばらく時間が要りそうである。IMpower010試験のデータは、Lancet誌に掲載されている。PACIFIC-R Real-World Study切除不能III期非小細胞肺がんを対象として、根治的同時化学放射線療法(CRT)後にデュルバルマブ維持療法を1年間投与する治療を、プラセボと比較して検証したPACIFIC試験のリアルワールドデータである。今年のASCO2021でデュルバルマブ投与による5年生存割合40%と長期生存改善効果が報告され、切除不能III期の予後を大きく改善しているが、試験データがこの1つしかない。良好な治療成績を示したPACIFIC試験だが、プラセボ群の治療成績も良い。そのため、試験に登録された対象全体が全身状態を含め条件の良い症例であると考えられ、患者背景もさまざまな実臨床で治験と同様の成績が証明できるのか疑問があった。この試験は、PACIFICレジメンの実臨床における有効性を後ろ向きに評価した観察研究である。11ヵ国、29施設から登録された1,399例が解析対象となった。患者背景は年齢中央値66歳、StageIIIA 43.2%、扁平上皮がん35.5%、CRT同時併用は76.6%、PD-L1≧1%は72.5%であった。放射線治療終了からデュルバルマブ投与までの期間中央値は56日、デュルバルマブ投与回数中央値22回、PFS中央値は21.7ヵ月で治験成績(16.9ヵ月)より良好であった。デュルバルマブ投与完遂率47.1%、有害事象による中止率16.7%、PDによる中止率26.9%も治験と同様であった。切除不能III期非小細胞肺がんに対するCRT後のデュルバルマブ維持療法の有用性は、リアルワールドでも裏付けられた結果といえる。CASPIAN試験進展型小細胞肺がんを対象に、プラチナ+エトポシドを標準治療とし、デュルバルマブの併用、デュルバルマブ+tremelimumabの併用をそれぞれ評価した第III相試験である。主要評価項目である全生存期間の延長効果がデュルバルマブの上乗せによって示され、肺がん診療ガイドラインで推奨されている。最近、Lancet Oncology誌に掲載された2年フォローアップ解析の生存データの報告も新しい。今回の発表では、追跡期間中央値39.4ヵ月の3年生存割合のアップデート結果が示された。進展型小細胞肺がんで3年生存まで解析するのは珍しい。報告された生存に関する解析では、両群のハザード比が0.71、95%信頼区間0.60~0.86、3年生存割合が試験治療群17.6%、標準治療群5.8%という結果で、生存曲線の開きを維持しつつ、3年生存率の差が3倍になりテイルプラトーも見られた。小細胞肺がんにおいても免疫チェックポイント阻害薬の上乗せによる長期生存効果が確認できたが、非小細胞肺がんと違い、有望なバイオマーカーがなく、開発に期待したい。CheckMate-743試験切除不能進行、未治療悪性胸膜中皮腫の1次治療に対して、ニボルマブとイピリムマブ併用療法の試験治療を、標準化学療法であるペメトレキセドとシスプラチンまたはカルボプラチンと比較した第III相試験である。観察期間中央値29.7ヵ月で実施された事前指定の中間解析においてハザード比0.74(96.6%信頼区間:0.60~0.91、p=0.0020)と、ニボルマブとイピリムマブ併用療法による生存延長効果が示されているが、今回、観察期間中央値43.1ヵ月の3年長期生存結果と探索的バイオマーカーの解析結果が発表された。生存期間中央値は、ニボルマブとイピリムマブ併用群18.1ヵ月、標準治療群14.1ヵ月でハザード比0.73(95%信頼区間0.61~0.87)であった。3年生存割合は、23%と15%で、少しずつ年次生存率の差は小さくなっている。生存曲線はしっかり離れているがテイルプラトーは見え始めたような印象である。腫瘍組織のRNAシークエンスを用いてCD8A、STAT-1、LAG-3、PD-L1の4遺伝子の発現スコア、TMB、LIPI(Lung immune prognostic index、好中球/リンパ球比とLDHから算出される)と生存の関連が解析された。ニボルマブとイピリムマブ治療を受けた集団において、4遺伝子の発現スコアが高い集団で生存が良かった(21.8ヵ月vs.16.8ヵ月)。一方、化学療法群ではスコアによって生存に差がなかった。TMBやLIPIスコアに関係なく、ニボルマブとイピリムマブ群の生存が良い傾向が示された。WJOG9616L試験PD-1(L1)抗体が有効であった進行再発非小細胞肺がんに対して、ニボルマブ投与の有効性を検討した第II相試験である。主要評価項目は奏効割合、副次評価項目は無増悪生存期間、全生存期間などとなっている。標準治療を受けた既治療進行肺がんでは、前治療で奏効が得られた抗がん剤の再投与による治療は、比較的広く受け入れられている。免疫チェックポイント阻害薬(ICI)の再投与の有効性は、症例報告で散見されている程度である。対象は、CR、PRもしくは6ヵ月以上のSDの臨床的有効性が得られ、その後に増悪し、最終投与から60日以上経過している61症例で、59例で有効性が解析された。奏効割合は8.5%、無増悪生存期間中央値2.6ヵ月、全生存期間中央値は11.0ヵ月だった。診断時のPD-L1発現や前治療ICIの効果(41例がCRまたはPR)と有効性は関連性がなかった。ICI無効後のリチャレンジの有効性はない結果となったが、irAEなどで中止後の再投与とは違うと思われる。おわりに今回取り上げた演題以外にも知っていただきたい発表がたくさんありますが、臨床に反映できる内容が良いと考えて演題を選び概括させていただきました。まずはこのレポートが、多くの先生方に読んでいただき、今の臨床に役立つ内容になっていれば幸いです。

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デュルバルマブの小細胞肺がん1次治療、3年の成績(CASPIAN)/ESMO2021

 進展型小細胞肺がん(ES-SCLC)の1次治療として、デュルバルマブと化学療法(エトポシド+シスプラチン/カルボプラチン、EP)併用はEP単独と比較して、追跡期間中央値3年超の時点でも持続的な全生存期間(OS)の延長が示された。 スペイン・Hospital Universitario 12 de OctubreのLuis Paz-Ares氏が、「CASPIAN試験」の3年フォローアップの結果を欧州臨床腫瘍学会(ESMO Congress 2021)で発表した。CASPIAN試験でデュルバルマブと化学療法併用が進展型小細胞肺がんのOS改善 CASPIAN試験は、進展型小細胞肺がんの1次治療としてデュルバルマブ±tremelimumab+EPとEP単独療法の安全性と有効性を比較した第III相の国際多施設共同無作為化非盲検無作為化試験。追跡期間中央値25.1ヵ月時点で、デュルバルマブ+EP併用群のEP単独群に対する有意なOS改善が示され(HR:0.73、p=0.0047)、2年フォローアップ時でも持続的な改善が確認されていた(HR:0.75、p=0.0032)。デュルバルマブ+tremelimumab+EP併用群は、数値上のOS改善は示されたが統計的な有意性の基準は達成しなかった。・対象:未治療進展型小細胞肺がん(WHO PS0/1、無症候性/治療安定性の脳転移許容、平均余命≧12週、RECIST v1.1測定可能病変)患者805例・試験群:デュルバルマブ(1,500mg)+エトポシド+シスプラチン/カルボプラチン(D+EP群)3週ごと4サイクル、その後病勢進行(PD)までデュルバルマブ4週ごとデュルバルマブ(1,500mg)+tremelimumab(75mg)+エトポシド+シスプラチン/カルボプラチン(D+T+EP群)3週ごと4サイクル、その後PDまでデュルバルマブ4週ごと・対照群:EP単独、3週ごと最大6サイクル、その後オプションで予防的全脳照射・評価項目[主要評価項目]OS[副次評価項目]無増悪生存期間(PFS)、奏効率(ORR)、安全性・忍容性、患者報告アウトカム(PRO) 進展型小細胞肺がんの1次治療としてデュルバルマブと化学療法併用とEP単独療法の安全性と有効性を比較したCASPIAN試験の主な結果は以下のとおり。・3年OSを評価したデータカットオフ時点(2021年3月21日、追跡期間中央値39.4ヵ月)で、D+EP群のEP群に対するOS改善は持続していることが示された(HR:0.71、95%信頼区間[CI]:0.60~0.86、nominal p=0.0003)。・OS中央値は、D+EP群12.9ヵ月(95%CI:11.3~14.7)、EP群10.5ヵ月(9.3~11.2)であり、36ヵ月時点で生存していた患者はそれぞれ17.6%、5.8%であった。・年齢、性別、PSなどのサブグループ解析では、D+EP群のすべての患者にベネフィットがあることが認められた。・D+T+EP群のOS中央値は10.4ヵ月(95%CI:9.5~12.0)であり、EP群に対する数値上のOS改善は持続していた(HR:0.81、95%CI:0.67~0.97、nominal p=0.0200)。36ヵ月時点で生存していた患者は15.3%であった。・データカット時点でデュルバルマブ投与が継続されていたのは、D+EP群10.2%(投与回数中央値7.0)、D+T+EP群7.1%(6.0)であった。・重篤有害事象(あらゆる原因による)の発現率は、D+EP群32.5%、D+T+EP群47.4%、EP群36.5%であった。死亡に結びついた治療関連有害事象はそれぞれ、2.3%、4.5%、0.8%であった。 Paz-Ares氏は、「これまでに行われたES-SCLC患者を対象としたEP+抗PD(L)-1療法の第III相試験の中で、今回のOS解析の追跡期間中央値は3年超と最長であった。既報のとおり、D+EP群のEP群に対するOS改善は持続しており、安全性プロファイルも忍容されるものであった。3年時点でEP群と比べてD+EP群の生存患者の割合は3倍超高く、多くの患者のEP治療が継続されており、ES-SCLCの1次治療の標準治療としてのD+EPの地位を、さらに確固とする結果であった」とまとめた。

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ニボルマブとイピリムマブが悪性胸膜中皮腫に引き続き良好な成績(CheckMate743)/ESMO2021

 転移を有する悪性胸膜中皮腫に対するニボルマブとイピリムマブの併用第III相試験CHeckMate743の3年追跡結果が、欧州臨床腫瘍学会(ESMO Congress2021)で発表され、良好な長期ベネフィットが示された。これが転移のある悪性胸膜中腫に対する免疫療法としては、初めての長期成績の報告となる。・対象:転移のある切除不能な未治療の悪性胸膜中皮腫・試験群:ニボルマブ(3mg/m2)2週ごと+イピリムマブ(1mg/m2)6週ごと・対照群:シスプラチン/カルボプラチン+ペメトレキセド3週ごと6サイクル・評価項目:[主要評価項目]全生存期間(OS )[副次評価項目]全奏効率(ORR)、病勢制御率(DCR)、盲検化独立評価委員会(BICR)による無増悪生存期間(PFS)など 主な結果は以下のとおり。・OS中央値はニボルマブ+イピリムマブ群18.1ヵ月に対し、化学療法群は14.1ヵ月(HR:0.73、95%CI:0.61~0.87)であり、ニボルマブ+イピリムマブ群の優越性は引き続き示された。・組織別にみると、上皮型中皮腫では18.2ヵ月に対し16.7ヵ月(HR:0.85)、非上皮型中皮種では18.1に対し8.8ヵ月(HR:0.48)、といずれもニボルマブ+イピリムマブで良好であった。・その他のサブグループにおいてもすべてニボルマブ+イピリムマブ群で良好であった。・PFS中央値はニボルマブ+イピリムマブ群6.8ヵ月に対し、化学療法群は7.2ヵ月であった(HR:0.92)。・ORRはニボルマブ+イピリムマブ群39.6%に対し、化学療法群は44.0%であった。・奏効期間はニボルマブ+イピリムマブ群11.6ヵ月に対し、化学療法群は6.7ヵ月であった。・全Gradeの治療関連有害事象(TRAE)はニボルマブ+イピリムマブ群では80%、化学療法群では92%に発現した。・TRAEのため治療中止となったニボルマブ+イピリムマブ群症例におけるOS中央値は25.4ヵ月で、ニボルマブ+イピリムマブ群全体に対しても劣っていなかった。 発表者は、3年追跡結果においても、ニボルマブとイピリムマブの併用は、切除不能悪性胸膜中皮腫の標準治療であることを確認できたとしている。

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カルボプラチン+パクリタキセルの術前療法がTN乳がんの予後を改善(BrighTNess)/ESMO2021

 トリプルネガティブ乳がん(TNBC)に対する術前療法としてのカルボプラチン+パクリタキセル療法が、長期予後追跡の結果、無イベント生存期間(EFS)を改善することが示唆された。これは大規模臨床試験のBrighTNess試験の結果であり、ドイツ・German Breast Group(GBG)のSibylle Loibl氏より、欧州臨床腫瘍学会(ESMO Congress 2021)で発表された。 本試験は、国際共同の第III相比較試験であり、すでに主要評価項目である病理学的奏効率(pCR率)については2018年に報告済みである。今回は長期予後のEFSと全生存期間(OS)に関する報告。・対象:gBRCAの判定結果を有するStage2/3のTNBC症例(634例)・試験群:(1)カルボプラチン+パクリタキセル+veliparib(PARP阻害薬)の併用(CPV群)(2)カルボプラチン+パクリタキセル+veliparibのプラセボ(CP群)・対照群:パクリタキセル+カルボプラチンのプラセボ+veliparibのプラセボ(P群)カルボプラチンはAUC 6mg/mL/分を3週ごとに、パクリタキセルは80mg/m2を1週ごとに投与し、共に16週間以内に投与完了。併用するveliparibは50mg/日(内服)。この3群の投与後はすべての群で、ドキソルビシン+シクロホスファミド(AC)を4サイクル追加投与し、その2~8週間後に手術を施行。・評価項目[主要評価項目]pCR率[副次評価項目]EFSとOS、安全性(2次発がんの検討含む) 主な結果は以下のとおり。・患者の年齢中央値は約50歳、gBRCA変異ありは約15%、N0症例は約58%であった。・観察期間中央値4.5年時点で、3群ともに50%EFS期間に到達しておらず、CPV群のP群に対するEFSハザード比(HR)は0.63(95%信頼区間[CI]:0.43~0.92)、p=0.02であった。CP群のHRは0.57(95%CI:0.36~0.91)、p=0.02であった。CPV群とCP群間ではHRは1.12(95%CI:0.72~1.72)、p=0.62であった。・pCRが得られた症例のEFSは、gBRCA変異状況に関係なく、pCRが得られなかった患者に比べて良好であった。HRは0.26(95%CI:0.18~0.38)、p<0.0001であった。・OSに関しては、死亡はCPV群が38/316例で12%、CP群16/160例の10%、P群では22/158例で14%であった。CPV群のP群に対するHRは0.82(95%CI:0.48~1.38)、p=0.45で、CP群はHR 0.63(95%CI:0.33~1.21)、p=0.17、CPV群とCP群間ではHR 1.25(95%CI:0.70~2.24)、p=0.46であった。・骨髄異形成症候群や急性骨髄性白血病を含む2次発がんの発生頻度は3群間で大きな差はなかった(0~4%)。 演者は、「TNBCの術前療法としてのveliparibの追加は有用ではなかったが、従来のパクリタキセル+AC療法にカルボプラチンを追加する意義は大きかった。さらにこれはgBRCAステータスには無関係であった」と締めくくった。

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TN乳がん1次治療におけるペムブロリズマブ上乗せ、CPS≧10でOS改善(KEYNOTE-355)/ESMO2021

 未治療の手術不能または転移を有するPD-L1 CPS 10以上のトリプルネガティブ(TN)乳がん患者において、ペムブロリズマブ+化学療法はプラセボ+化学療法と比較して、全生存(OS)期間を有意に改善した。米国・カリフォルニア大学サンフランシスコ校(UCSF)包括的がんセンターのHope S. Rugo氏が、第III相KEYNOTE-355試験におけるOSの最終解析結果を欧州臨床腫瘍学会(ESMO Congress 2021)で発表した。本邦では、PFSを有意に改善した同試験の中間解析結果を基に、2021年8月に承認されている。・対象:18歳以上の手術不能な局所再発または転移を有するTN乳がん(ECOG PS 0/1)847例・ペムブロリズマブ群:ペムブロリズマブ(200mg、3週ごと)+化学療法(ナブパクリタキセル、パクリタキセル、ゲムシタビン/カルボプラチンの3種類のうちいずれか)566例・プラセボ群:プラセボ+化学療法 281例・層別化因子:化学療法の種類(タキサンかゲムシタビン/カルボプラチン)、PD-L1発現(CPS≧1かCPS<1)、術前/術後化学療法の有無・評価項目:[主要評価項目]PD-L1陽性患者(CPS≧10およびCPS≧1)およびITT集団におけるPFSと全生存期間(OS)[副次評価項目]奏効率(ORR)、奏効期間(DOR)、病勢コントロール率(DCR)、安全性 主な結果は以下のとおり。・データカットオフは2021年6月15日。観察期間中央値はペムブロリズマブ群が44.0ヵ月、プラセボ群が44.4ヵ月だった。・ベースライン特性は両群でバランスがとれており、年齢中央値が53歳、CPS≧1が約75%、CPS≧10が約38%だった。試験で投与されたのはタキサンが約45%、ゲムシタビン/カルボプラチンが約55%。de novo転移が約30%、無再発期間<12ヵ月が約20%だった。・CPS≧10の患者におけるOS中央値は、ペムブロリズマブ群23.0ヵ月 vs.プラセボ群16.1ヵ月(ハザード比[HR]:0.73、95%信頼区間[CI]:0.55~0.95、p=0.0093)と有意な改善がみられた。OS率は18ヵ月時点でペムブロリズマブ群58.3% vs.プラセボ群44.7%、24ヵ月時点で48.2% vs.34.0%だった。・CPS≧10の患者におけるOSのサブグループ解析では、化学療法の種類や治療歴などによらずペムブロリズマブ群におけるベネフィットがみられたが、無再発期間<12ヵ月の患者ではみられなかった。ただし、サンプルサイズが小さいことには留意が必要となる。・CPS≧1の患者におけるOS中央値は、ペムブロリズマブ群17.6ヵ月 vs.プラセボ群16.0ヵ月(HR:0.86、95%CI:0.72~1.04、p=0.0563)と事前に設定された有意性水準(p<0.0172)を満たさなかった。OS率は18ヵ月時点でペムブロリズマブ群48.4% vs.プラセボ群41.4%、24ヵ月時点で37.7% vs.29.5%だった。・ITT集団におけるOS中央値は、ペムブロリズマブ群17.2ヵ月 vs.プラセボ群15.5ヵ月(HR:0.89、95%CI:0.76~1.05)。OS率は18ヵ月時点でペムブロリズマブ群47.8% vs.プラセボ群41.8%、24ヵ月時点で35.5% vs.30.4%だった。・Grade3以上の治療関連有害事象は、ペムブロリズマブ群68.1%(死亡2例) vs.プラセボ群66.9%(死亡例なし)で報告された。・Grade3以上の免疫関連有害事象は、ペムブロリズマブ群5.3% vs.プラセボ群0.0%で報告された。死亡例は報告されていない。多く報告されたのは甲状腺機能低下症・亢進症だった。

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デュルバルマブ+tremelimumab+化学療法が、NSCLC1次治療の生存を改善(POSEIDON)/WCLC2021

 Stage IVの非小細胞肺がん(NSCLC)の1次治療として、デュルバルマブ(商品名:イミフィンジ)と化学療法の併用、および、同併用への抗CTLA-4抗体tremelimumabの上乗せの評価結果が世界肺癌学会(WCLC2021)で発表された。 試験は無作為オープンラベル国際第III相POSEIDON試験である。その結果、デュルバルマブ、tremelimumabと化学療法の併用が、統計学的に有意に生存を延長したことが示された。・対象:未治療のStage IV NSCLC・試験群: -デュルバルマブ+化学療法*→デュルバルマブ+化学療法(+ペメトレキセド**)(Durv+CT群) -デュルバルマブ+tremelimumab+化学療法→デュルバルマブ+tremelimumab(+ペメトレキセド)(Durv+T+CT群)・対照群:化学療法(CT群)・評価項目[主要評価項目]Durv+CT群における盲検下独立評価委員会(BICR)判定の無増悪生存期間(PFS)、全生存期間(OS)[副次評価項目]Durv+T+CT群におけるBICR判定のPFS、Durv+T+CT群のOS、高TMB(20mut/MB以上)症例のOS*化学療法:ゲムシタビン+シスプラチン(扁平上皮)、ペメトレキセド+カルボプラチン(非扁平上皮)、nab-パクリタキセル(扁平上皮/非扁平上皮)**初回治療でペメトレキセドを用いた症例のみに適用 主な結果は以下のとおり。・対象患者1,013例は、Durv+CT群、Durv+T+CT群、CT群に、1:1:1で無作為に割り付られた。・各群で患者の偏りはなかった。[Durv+CT群]・PFS中央値は、Durv+CT群5.5ヵ月に対し、CT群4.8ヵ月と、Durv+CT群で有意に改善した(HR:0.74、95%CI:0.62~0.89、p=0.00093)。・OS中央値は、Durv+CT群13.3ヵ月に対し、CT群11.7ヵ月と、Durv+CT群の有意な改善は認められなかった(HR:0.86、95%CI:0.72~1.02、p=0.07581)。・全奏効率(ORR)は、Durv+CT群41.5 %に対し、CT群は24.4%であった(OR:2.26)。[Durv+T+CT群]・PFS中央値は、Durv+T+CT群6.2 ヵ月に対し、CT群4.8ヵ月と、Durv+T+CT群で有意に改善した(HR:0.72 、95%CI:0.60~0.86 、p=0.00031)。・OS中央値は、Durv+T+CT群14.0ヵ月に対し、CT群11.7ヵ月と、Durv+T+CT群で有意に改善した(HR:0.77、95%CI:0.65~0.92、p=0.00304)。・ORRは、Durv+T+CT群38.8 %に対し、CT群は24.4%であった(OR:2.00)。[安全性]・いずれの群においても、新たな安全性シグナルは認められなかった。・全Gradeの有害事象(AE)発現率は、Durv+CT群96.1%、Durv+T+CT群97.3%、CT群は96.1%であった。Grade3 /4の発現率は、それぞれ、54.8、53.3、51.7%である。・全Gradeの免疫関連AE(imAE)発現率は、Durv+CT群19.2%、Durv+T+CT群33.6%、CT群は5.1%であった。Grade3 /4の発現率は、それぞれ、6.9、10.0、1.5%である。 Durv+CT群においては、PFSは有意に改善したものの、OSは有な改善には至らなかった。一方、Durv+T+CT群においは、PFS、OSともにCT群から有意に改善した。また、どちらの併用群もimAE以外のAE発現率はCT群と同程度であった。 筆者は、化学療法へのデュルバルマブとtremelimumabの併用は、Stage IV NSCLCの1次治療における、新たな選択肢となる可能性がある、と述べている。

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悪性胸膜中皮腫のニボルマブ+イピリムマブ1次治療、3年生存も改善(CheckMate-743)/BMS

 ブリストル マイヤーズ スクイブは、2021年9月13日、切除不能な悪性胸膜中皮腫(MPM)患者の1次治療において、組織型にかかわらず、ニボルマブとイピリムマブの併用療法が、プラチナ製剤ベースの標準化学療法と比較して、持続的な生存ベネフィットを示したCheckMate-743試験の3年間のデータを発表した。 CheckMate-743試験は、未治療の切除不能な悪性胸膜中皮腫患者(605例)を対象に、ニボルマブとイピリムマブの併用療法を、化学療法(ペメトレキセドとシスプラチンまたはカルボプラチンの併用療法)と比較評価した多施設無作為化非盲検試験。 最短3年(35.5ヵ月)間の追跡調査における結果、3年生存率は、ニボルマブとイピリムマブの併用療法群で23%、化学療法群で15%であった(ハザード比:0.73、95% 信頼区間:0.61~ 0.87)。 ニボルマブとイピリムマブの併用療法の安全性プロファイルは、ファーストラインのMPMでこれまでに報告されたものと一貫しており、新たな安全性シグナルは認められなかった。 これらのデータは、2021年欧州臨床腫瘍学会(ESMO)にて、2021年9月17日に発表される予定(抄録番号#LBA65)。

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アテゾリズマブ+化学療法の非小細胞肺がん脳転移例への効果(ATEZO-BRAIN)/WCLC2021

 脳転移はがんの合併症として多くみられ、治療やQOLに悪影響をおよぼす。 世界肺癌学会(WCLC2021)では、脳転移を有する非小細胞肺がんに対するアテゾリズマブの効果と安全性を評価する第II相試験ATEZO-BRAINが発表された。その結果、アテゾリズマブ+化学療法の脳転移を有する非小細胞肺がんへの有用性が示唆されている。アテゾリズマブと化学療法併用は脳転移病変未治療の非小細胞肺がんに有用対象:脳転移病変未治療の非小細胞肺がん(PD-L1発現問わず、ステロイド[デキサメタゾン4mg以下/日]は許容)介入:アテゾリズマブ(1,200mg)+ペメトレキセド(500mg/m2)+カルボプラチン(ACU5 ) 3週ごと4~6サイクル→アテゾリズマブ+ペメトレキセドを疾患進行まで、または最大2年間投与主要評価項目:治験担当医評価の無増悪生存期間(PFS)、安全性副次評価項目:奏効率(ORR)、奏効期間、全生存期間(OS)、QOLなど 脳転移を有する非小細胞肺がんに対するアテゾリズマブの効果と安全性を評価する第II相試験ATEZO-BRAINの主な結果は以下のとおり。・40例が対象として登録された。・患者の年齢中央値は62.6歳、男性72.5%、腺がんが97.5%を占めた。・有効性評価対象は24例、安全性評価対象は11例であった。・PFS中央値は8.9ヵ月、18ヵ月PFS率は24.9%であった。・頭蓋内PFS中央値は6.9ヵ月、18ヵ月頭蓋内PFS率は10.4%であった。・OS中央値は13.6ヵ月、2年OS率は32%であった。・Grade3/4の有害事象は27.5%、頻度が高いものは、疲労感、貧血、息切れ、悪心であった。 アテゾリズマブと化学療法(ペメトレキセド+カルボプラチン)併用は、脳転移病変未治療の非小細胞肺がんに対して、良好な効果と安全性を示した。脳画像イメージと血液サンプルの関係を調べる試験が進行中である。

77.

ペムブロリズマブ、MSI-H大腸がんとTN乳がんに適応拡大/MSD

 MSDは2021年8月25日、抗PD-1抗体ペムブロリズマブ(商品名:キイトルーダ)について、治癒切除不能な進行・再発の高頻度マイクロサテライト不安定性(MSI-High)を有する結腸・直腸がん(大腸がん)およびPD-L1陽性のホルモン受容体陰性かつHER2陰性の手術不能または再発乳がんに関する国内製造販売承認事項一部変更の承認を取得したことを発表した。治癒切除不能な進行・再発MSI-H大腸がんに対する適応拡大について 今回の承認は、化学療法歴のない治癒切除不能な進行・再発のミスマッチ修復(MMR)欠損またはMSI-Highを有する結腸・直腸がん患者307例(日本人22例を含む)を対象とする国際共同第III相試験KEYNOTE-177試験のデータ等に基づく。 同試験において、ペムブロリズマブ群は化学療法群と比較して、主要評価項目の一つである無増悪生存期間(PFS)を有意に延長した(HR:0.60、95%CI:0.45~0.80)。安全性については、安全性解析対象例153例中、ペムブロリズマブ群で高頻度(10%以上)に認められた有害事象は、下痢(24.8%)、疲労(20.9%)、そう痒症(13.7%)、悪心(12.4%)、AST増加(11.1%)、発疹(11.1%)、関節痛(10.5%)および甲状腺機能低下症(10.5%)であった。PD-L1陽性のHR陰性/HER2陰性の手術不能または再発乳がんに対する適応拡大について 今回の承認は、転移・再発乳がんに対する化学療法歴のない転移・再発または局所進行性のトリプルネガティブ乳がん患者847例(日本人87例を含む)を対象とした国際共同第III相試験KEYNOTE-355試験のデータ等に基づく。 同試験において、ペムブロリズマブ+化学療法(ゲムシタビンおよびカルボプラチン、パクリタキセルまたはnab-パクリタキセル)併用群はプラセボ+化学療法併用群に対して、PD-L1陽性(CPS≧10)患者323例(日本人28例を含む)において、主要評価項目の一つである無増悪生存期間(PFS)を有意に延長した(HR:0.65、95%CI:0.49~0.86)。安全性については、PD-L1陽性(CPS≧10)患者における安全性解析対象例219例中、ペムブロリズマブ併用群の主な副作用(20%以上)は、貧血(48.9%)、悪心(41.1%)、好中球減少症(39.7%)、脱毛症(34.7%)、疲労(29.2%)、好中球数減少(23.7%)、下痢(21.9%)、ALT増加(21.5%)および嘔吐(20.1%)であった。 なお、PD-L1の発現状況を検査するための体外診断薬として、アジレント・テクノロジー株式会社のPD-L1 IHC 22C3 pharmDx「ダコ」が承認されている。

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ペムブロリズマブ併用、PD-L1陽性進行TN乳がんでOS改善/MSD

 MSDは2021年7月27日、転移を有するトリプルネガティブ乳がん(mTNBC)患者を対象として抗PD-1抗体ペムブロリズマブ(商品名:キイトルーダ)と化学療法との併用療法を評価する第III相KEYNOTE-355試験において、全生存期間(OS)の改善が認められたことを発表した。 同試験の最終解析の結果、PD-L1陽性(CPS≧10)のmTNBC患者に対する一次治療として、ペムブロリズマブと化学療法(ナブパクリタキセル、パクリタキセルまたはゲムシタビン/カルボプラチン)との併用療法は、化学療法単独と比較して統計学的に有意かつ臨床的に意味のあるOSの改善が認められた。なお、米国ではFDAが承認した検査で腫瘍にPD-L1の発現が認められる(CPS≧10)切除不能な局所再発または転移を有するトリプルネガティブ乳がんを適応症として、化学療法との併用療法が承認されている。今回のOSの結果は今後主要な学会で発表され、規制当局に提出される予定。 KEYNOTE-355試験は、化学療法歴のない切除不能な局所再発または転移を有する進行トリプルネガティブ乳がんの患者を対象として、ペムブロリズマブと3種の化学療法のうち1種との併用療法をプラセボと3種の化学療法のうち1種との併用療法と比較する2つのパートからなる、第III相無作為化プラセボ対照試験。主要評価項目はPD-L1陽性(CPS≧1およびCPS≧10)の患者およびすべての被験者(ITT集団)におけるPFSおよびOSであった。このほかの評価項目は客観的奏効率(ORR)、奏効期間(DOR)、病勢コントロール率(DCR)、患者報告アウトカム(PRO)および安全性。 KEYNOTE-355試験のパート2では、被験者847例を2:1の割合でペムブロリズマブ(200mgを3週間毎)と化学療法(ナブパクリタキセル、パクリタキセルまたはゲムシタビン/カルボプラチンから医師が選択)との併用療法、またはプラセボとナブパクリタキセル、パクリタキセルまたはゲムシタビン/カルボプラチンとの併用療法のいずれかに無作為に割り付けた。各群に登録された被験者のうち、CPS≧1のPD-L1陽性患者は約75%(ペムブロリズマブ+化学療法群566例中425例、プラセボ+化学療法群281例中211例)であり、CPS≧10のPD-L1陽性患者は約38%(ペムブロリズマブ+化学療法群566例中220例、プラセボ+化学療法群281例中103例)であった。

79.

頭頸部扁平上皮がん1次治療、ニボルマブ+イピリムマブの第III相試験の結果(CheckMate-651)/BMS

 ブリストル マイヤーズ スクイブは、2021年7月16日、プラチナ療法に適格な再発または転移のある頭頸部扁平上皮がん(SCCHN)患者の1次治療としてニボルマブ(製品名:オプジーボ)とイピリムマブ(製品名:ヤーボイ)の併用療法をEXTREMEレジメン(セツキシマブ+シスプラチン/カルボプラチン+フルオロウラシルと)と比較した第III相CheckMate-651試験の最新情報を発表した。 オプジーボとヤーボイの併用療法は、のPD-L1陽性(CPS20以上)患者における全生存期間で明確かつ肯定的な改善傾向を示したが、主要評価項目は達成できなかった。 同試験における同併用療法の安全性プロファイルは、これまでの固形腫瘍ので報告と一貫していた。 ニボルマブの単剤療法は、これまでにプラチナ製剤を含む治療後の再発または転移のあるSCCHN成人患者を対象としたCheckMate-141試験において生存ベネフィットを示している。これらの結果に基づき、米国食品医薬品局(FDA)および欧州医薬品庁(EMA)は、2016年にこの適応症でニボルマブを承認した。

80.

化学療法+ニボルマブ+ベバシズマブによる非扁平上皮NSCLC1次治療の成績(ONO-4538-52/TASUKI-52)/Ann Oncol

 非扁平上皮非小細胞肺がん(NSCLC)の1次治療において、ニボルマブとプラチナ含有化学療法およびベバシズマブの併用を評価する国際無作為化二重盲検第III相試験ONO-4538-52/TASUKI-52試験の結果がAnnals of Oncology誌に発表された。TASUKI-52試験のPFS中央値はニボルマブ群12.1ヵ月・対象:未治療のStage IIIB/IVの非扁平上皮NSCLC患者(PD-L1発現問わず)・試験群:ニボルマブ(360mg)+カルボプラチン+パクリタキセル+ベバシズマブ(3週間ごと6サイクル)→ニボルマブ+ベバシズマブ(ニボルマブ群)・対照群:プラセボ+カルボプラチン+パクリタキセル+ベバシズマブ→プラセボ+ベバシズマブ(プラセボ群) ニボルマブ/プラセボ+ベバシズマブは、疾患進行または許容できない毒性発現まで継続・評価項目:[主要評価項目]独立放射線審査委員会(IRRC)評価の無増悪生存期間(PFS)[副次評価項目]全生存期間(OS)、全奏効率(ORR)、安全性 TASUKI-52試験の主な結果は以下のとおり。・2017年6月~2019年7月に、日本、韓国、台湾から550例が登録され、ニボルマブ群とプラセボ群に無作為に割り付られた。・追跡期間中央値13.7ヵ月であった。・IRRC評価のPFS中央値はニボルマブ群12.1ヵ月に対し、プラセボ群8.1ヵ月と、ニボルマブ群で有意に長かった(ハザード比:0.56、96.4%信頼区間:0.43~0.71、p<0.0001)。・サブグループ解析では、PD-L1発現レベルを問わず、ニボルマブ群でPFS良好であった。・IRRC評価のORRは、ニボルマブ群で61.5%、プラセボ群で50.5%であった。・OS中央値は両群とも未到達であった。・治療関連有害事象の発現率は、全Grade、Grade3/4ともに両群で同等であった。

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