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イメグリミンが2型糖尿病治療の新薬として発売/大日本住友製薬・POXEL

 POXEL社および提携先の大日本住友製薬 株式会社は、2型糖尿病を適応症とする治療薬イメグリミン塩酸塩(商品名:ツイミーグ錠 500mg)を2021年9月16日に発売した。イメグリミンは2型糖尿病の治療パラダイムほぼすべての段階で候補となる可能性 イメグリミンは、2型糖尿病を治療するための、独自の2つの作用機序を有するファーストインクラスの薬剤。単剤および他の血糖降下療法レジメンへの追加療法として承認されている。 両社が共同で実施した “TIMES”(Trials of IMeglimin for Efficacy and Safety)プログラムを含む多数の前臨床試験および臨床試験の良好な結果に基づいて、今年6月に厚生労働省から承認されたことを受け 、今回のイメグリミンの発売となった。 TIMESプログラムは、1,100例以上の患者を対象にイメグリミンの有効性と安全性を検証した3つの第III相臨床試験から構成された。試験では主要評価項目および各目標値を達成し、イメグリミンの良好な安全性ならびに忍容性プロファイルを示した。 イメグリミンは、新規の化学物質クラスであるテトラヒドロトリアジン系に分類された初めての化合物で、ミトコンドリアへの作用を介して、グルコース濃度依存的なインスリン分泌を促す膵作用と、肝臓・骨格筋での糖代謝を改善する膵外作用(糖新生抑制および糖取込み能改善)により血糖降下作用を示すと考えられている。 イメグリミンの作用機序として、糖尿病によって引き起こされる細小血管・大血管障害の予防につながる血管内皮機能および拡張機能の改善作用を有する可能性があるほか、β細胞の生存と機能を保護する効果も期待されている。この特徴的な作用機序により、イメグリミンは、現在の糖尿病治療パラダイムのほぼすべての段階において、単剤または他の血糖降下剤との併用など、2型糖尿病治療の候補となる可能性が期待されている。イメグリミンの概要販売名:ツイミーグ錠 500mg一般名:イメグリミン塩酸塩規格・含量:1錠中イメグリミン塩酸塩 500mg効能・効果:2型糖尿病用法・用量:通常、成人にはイメグリミン塩酸塩として1回1,000mgを1日2回朝、夕に経口投与する製造販売承認:2021年6月23日 薬価収載:2021年8月12日 発売日:2021年9月16日薬価:34.40円製造販売元:大日本住友製薬株式会社

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新世代MRAのfinerenone、DKDの心血管リスク減/NEJM

 2型糖尿病を合併する幅広い重症度の慢性腎臓病(CKD)患者の治療において、非ステロイド型選択的ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬finerenoneはプラセボと比較して、心血管死や非致死的心筋梗塞などで構成される心血管アウトカムを改善し、有害事象の頻度は同程度であることが、米国・ミシガン大学医学大学院のBertram Pitt氏らが実施した「FIGARO-DKD試験」で示された。研究の成果は、NEJM誌オンライン版2021年8月28日号で報告された。標準的な治療への上乗せ効果を評価 本研究は、48ヵ国の施設が参加した二重盲検プラセボ対照無作為化イベント主導型第III相試験であり、2015年9月~2018年10月の期間に参加者のスクリーニングが行われた(Bayerの助成による)。 対象は、年齢18歳以上、2型糖尿病を伴うCKDで、添付文書に記載された最大用量のレニン-アンジオテンシン系(RAS)阻害薬(ACE阻害薬、ARB)による治療で受容できない副作用の発現がみられない患者であった。スクリーニング時に、持続性のアルブミン尿の中等度上昇(尿中アルブミン[mg]/クレアチニン[g]比:30~<300)がみられ、推算糸球体濾過量(eGFR)が25~90mL/分/1.73m2(ステージ2~4のCKD)の患者、または持続性のアルブミン尿の高度上昇(尿中アルブミン/クレアチニン比:300~5,000)がみられ、eGFRが≧60mL/分/1.73m2(ステージ1/2のCKD)の患者が解析に含まれた。 被験者は、finerenone(10mgまたは20mg、1日1回、経口)またはプラセボを投与する群に、1対1の割合で無作為に割り付けられた。 主要アウトカムは、心血管死、非致死的心筋梗塞、非致死的脳卒中、心不全による入院の複合とされ、生存時間解析を用いて評価が行われた。副次アウトカムは、腎不全、eGFRのベースラインから4週以降における40%以上の持続的な低下、腎臓が原因の死亡の複合であった。主要アウトカム:12.4% vs.14.2% 7,352例が登録され、finerenone群に3,686例、プラセボ群に3,666例が割り付けられた。全体の平均年齢(±SD)は64.1±9.8歳で、69.4%が男性であった。 ベースライン時に、全体の70.5%がスタチン、47.6%が利尿薬の投与を受けていた。また、97.9%が血糖降下薬の投与を受けており、このうち54.3%がインスリン製剤、8.4%がSGLT2阻害薬、7.5%がGLP-1受容体作動薬の投与を受けていた。試験期間中に、15.8%がSGLT2阻害薬、11.3%がGLP-1受容体作動薬の投与を新たに開始した。 追跡期間中央値3.4年の時点で、主要アウトカムのイベントは、finerenone群が12.4%(458/3,686例)、プラセボ群は14.2%(519/3,666例)で認められ、finerenone群で有意に良好であった(ハザード比[HR]:0.87、95%信頼区間[CI]:0.76~0.98、p=0.03)。 この主要アウトカムのfinerenone群での利益は、主に心不全による入院(3.2% vs.4.4%、HR:0.71、95%CI:0.56~0.90)がfinerenone群で低かったためであり、心血管死(5.3% vs.5.8%、0.90、0.74~1.09)、非致死的心筋梗塞(2.8 vs.2.8%、0.99、0.76~1.31)、非致死的脳卒中(2.9% vs.3.0%、0.97、0.74~1.26)に差はみられなかった。 副次アウトカムは、finerenone群が9.5%(350例)、プラセボ群は10.8%(395例)で認められた(HR:0.87、95%CI:0.76~1.01)。 担当医の報告による全般的な有害事象の頻度は両群で同程度であり、重篤な有害事象はfinerenone群が31.4%、プラセボ群は33.2%で発現した。高カリウム血症は、finerenone群で頻度が高かった(10.8%、5.3%)が、高カリウム血症による死亡例はなく、高カリウム血症による恒久的な投与中止例(1.2%、0.4%)や入院例(0.6%、0.1%)は、finerenone群で多いものの頻度は低かった。 著者は、「患者の60%以上がベースライン時にeGFR≧60mL/分/1.73m2のアルブミン尿を伴うCKD患者であったことから、尿中アルブミン/クレアチニン比によるスクリーニングで早期にCKDを診断し、この心血管リスクが高く認知度が低い患者集団の転帰を改善するための治療を開始する必要性が浮き彫りとなった」としている。

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ミトコンドリアを介する新規作用機序の2型糖尿病治療薬「ツイミーグ錠500mg」【下平博士のDIノート】第82回

ミトコンドリアを介する新規作用機序の2型糖尿病治療薬「ツイミーグ錠500mg」今回は、2型糖尿病治療薬「イメグリミン塩酸塩(商品名:ツイミーグ錠500mg、製造販売元:大日本住友製薬)」を紹介します。本剤は、ミトコンドリアに作用する新しい機序の糖尿病治療薬であり、インスリン分泌低下型、インスリン抵抗性亢進型のいずれであっても血糖降下作用が期待できます。<効能・効果>本剤は、2型糖尿病の適応で、2021年6月23日に承認され、同年9月16日に発売されました。本剤の適用は、あらかじめ糖尿病治療の基本である食事療法、運動療法を十分に行った上で効果が不十分な場合に限り考慮します。<用法・用量>通常、成人にはイメグリミン塩酸塩として1回1,000mgを1日2回朝、夕に経口投与します。なお、本剤とビグアナイド系薬剤は作用機序の一部が共通している可能性があります。臨床試験でも両剤を併用した場合は、ほかの糖尿病用薬との併用療法と比較して消化器症状が多く認められたことから、併用薬を選択する際は注意が必要です。<安全性>臨床試験において、本剤が投与された安全性評価対象1,103例中、副作用発現数は168例(15.2%)でした。主な副作用は、低血糖6.7%(74例)、悪心2.1%(23例)、下痢1.9%(21例)、便秘1.3%(14例)などでした。なお、低血糖は重大な副作用としても報告されています。<患者さんへの指導例>1.この薬は、血糖値に応じてインスリンの分泌を促す作用と、インスリンが働きにくい状態を改善する作用によって血糖値を改善します。2.薬の服用により、低血糖症状を起こすことがあります。脱力感、高度の空腹感、発汗、震えなどの症状が認められた場合には、飴やジュースなどで糖分を摂取してください。α-グルコシダーゼ阻害薬を併用している場合はブドウ糖を摂取してください。<Shimo's eyes>本剤は、既存の経口糖尿病治療薬とは異なる構造を有しており、ミトコンドリアへの作用を介してグルコース濃度依存的なインスリン分泌を促す膵作用と、肝臓・骨格筋での糖代謝を改善する膵外作用(肝臓での糖新生抑制、骨格筋などでの糖取り込み能改善)の2つによって血糖降下作用を示します。インスリン分泌低下型、インスリン抵抗性亢進型のいずれの病態であっても効果が期待できるという特徴があります。製品名は、2つを意味する“twin”と一般名の“imeglimin”に由来しています。2型糖尿病患者を対象とした長期投与試験において、単独療法または併用療法でHbA1c改善効果を示し、52週にわたってその効果が維持されました。主な副作用には、悪心、下痢、便秘などがあります。重大な副作用として低血糖(6.7%)が報告されていますが、本剤の作用によるインスリン分泌はグルコース濃度依存的で、低血糖時にはインスリンを分泌させないことが報告されており、単剤使用での重症低血糖のリスクは低いと考えられます。腎機能障害のある患者では、腎臓からの排泄が遅延し、本剤の血中濃度が上昇する恐れがあることから、eGFRが45mL/min/1.73m2未満(透析を含む)の患者への投与は推奨されていません。注意すべき点は、メトホルミンとの併用により消化器症状が増大する恐れがあることです。また、インスリン製剤やSU薬、速効型インスリン分泌促進薬と併用すると低血糖のリスクが上がるため、これらの薬剤を併用する際には減量の検討が必要です。参考1)PMDA 添付文書 ツイミーグ錠500mg

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「デベルザ」の名称の由来は?【薬剤の意外な名称由来】第69回

第69回 「デベルザ」の名称の由来は?販売名デベルザ®錠20mg一般名(和名[命名法])トホグリフロジン水和物(JAN)効能又は効果2型糖尿病用法及び用量通常、成人にはトホグリフロジンとして20mgを1日1回朝食前又は朝食後に経口投与する。警告内容とその理由設定されていない。禁忌内容とその理由禁忌(次の患者には投与しないこと)1.本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者2.重症ケトーシス、糖尿病性昏睡又は前昏睡の患者[輸液、インスリンによる速やかな高血糖の是正が必須となるので本剤の投与は適さない。]3.重症感染症、手術前後、重篤な外傷のある患者[インスリン注射による血糖管理が望まれるので本剤の投与は適さない。]※本内容は2021年9月15日時点で公開されているインタビューフォームを基に作成しています。※副作用などの最新の情報については、インタビューフォームまたは添付文書をご確認ください。1)2019年10月改訂(第12版)医薬品インタビューフォーム「デベルザ®錠20mg」2)興和株式会社:製品情報検索

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糖尿病薬物治療で最初に処方される薬は/国立国際医療研究センター

 糖尿病の治療薬は、さまざまな種類が登場し、患者の態様に合わせて治療現場で処方されている。実際、2型糖尿病患者に対して最初に投与される糖尿病薬はどのような治療薬が多いのだろうか。 国立国際医療研究センターの坊内 良太郎氏らのグループは、横浜市立大学、東京大学、虎の門病院の協力のもとこの実態について全国規模の実態調査を実施した。調査の結果、最初の治療薬としてDPP-4阻害薬を選択された患者が最も多く、ビグアナイド(BG)薬、SGLT2阻害薬がそれに続いた。また、薬剤治療開始後1年間の総医療費はBG薬で治療を開始した患者で最も安いこと、DPP-4阻害薬およびBG薬の選択には一定の地域差、施設差があることが明らかとなった。2型糖尿病患者への処方薬を全国約114万例で解析 本研究の背景として、わが国の2型糖尿病の薬物療法は、すべての薬剤の中から病態などに応じて治療薬を選択することを推奨している。そのため、BG薬を2型糖尿病に対する第1選択薬と位置付けている欧米とは処方実態に違いがあることが予想されていたが、日本全体の治療実態についての詳細は不明だった。そこで、匿名レセプト情報・匿名特定健診等情報データベース(NDB)を用い、わが国の2型糖尿病患者に対し最初に投与された糖尿病薬の処方実態を明らかにすることを目的に全国規模の研究を行った(本研究は厚生労働科学研究として実施)。 坊内 良太郎氏らのグループは、調査方法としてNDBの特別抽出データ(2014-17年度)から抽出した成人2型糖尿病患者のうち、インスリンを除いた糖尿病治療薬を単剤で開始された患者を対象に、研究期間全体および各年度別の各薬剤の処方数、処方割合、新規処方に関連する因子、さらに初回処方から1年間の総医療費を算出し、それに関連する因子についても検討。対象患者数は全体113万6,723例(総医療費の解析対象:64万5,493例)。糖尿病患者への処方選択で強く影響する因子は「年齢」 調査の結果、2型糖尿病患者に最初に処方された薬剤は全体でBG薬(15.9%)、DPP-4阻害薬(65.1%)、SGLT2阻害薬(7.6%)、スルホニル尿素(SU)薬(4.1%)、α−グルコシダーゼ阻害薬(4.9%)、チアゾリジン薬(1.6%)、グリニド薬(0.7%)、GLP-1受動体作動薬(0.2%)だった。 都道府県別では、BG薬が最大33.3%(沖縄県)、最小8.7%(香川県)、DPP-4阻害薬が最大71.9%(福井県)、最小47.2%(沖縄県)と大きな違いを認めた。 各薬剤の選択に最も強く影響した因子は「年齢」で、高齢者ほどBG薬、SGLT2阻害薬の処方割合は低く、DPP4阻害薬およびSU薬の処方割合が高いことが示された。 総医療費については、BG薬で治療を開始した2型糖尿病患者が最も安く、SU薬、チアゾリジン薬が続き、GLP-1受容体作動薬が最も高いことが明らかとなった。多変量解析で、BG薬はチアゾリジン薬を除くその他の薬剤より総医療費が有意に低いことが示された。 今回の調査から坊内 良太郎氏らのグループは、全国規模の調査により、(1)わが国の2型糖尿病患者に対して最初に投与される糖尿病薬は欧米と大きく異なりDPP-4阻害薬が最も多いこと、(2)BG薬で治療を開始した患者の総医療費が最も安いこと、(3)薬剤選択に一定の地域間差や施設間差があること、などが初めて明らかになったと総括する。 また、「今後、個々の患者に対するより適切な薬剤選択などの診療の質の全国的な均てん化を進めるためには、薬剤選択に際し代謝異常の程度、年齢、肥満その他の病態を考慮することについてのさらなる周知に加え、薬剤選択の一助となるフローやアルゴリズムなどの作成が有効と考えられる」と示唆し、「本研究により得られた成果を基に、どの薬剤の血糖改善効果が高いか、合併症予防効果が高いかを明らかにすることを目的とした研究が行われ、一人一人の糖尿病患者にとって最適な糖尿病の個別化医療の確立されることが望まれる」と展望を述べている。

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日本人高齢者における慢性疾患治療薬の使用と新規抗認知症薬使用との関連

 新たに抗認知症薬が使用された高齢者において、慢性疾患に対する治療薬の使用状況がその後の認知症発症に影響を及ぼすかについて、東京都健康長寿医療センターの半田 宣弘氏らが、調査を行った。BMJ Open誌2021年7月15日号の報告。 首都圏の患者を対象としたレトロスペクティブコホート研究を実施した。対象は、2012年4月~6月(バックグラウンド期間)に抗認知症薬を使用していなかった柏市在住の77歳以上の高齢者4万2,024人。主要アウトカムは、2015年3月までのフォローアップ期間中の新規抗認知症薬の使用とした。対象者は、年齢別に77~81歳(1群)、82~86歳(2群)、87~91歳(3群)、92歳以上(4群)に分類した。年齢、性別に加え、バックグラウンド期間に使用していた14セットの薬剤を共変量とし、Cox比例ハザードモデルを用いて分析した。 主な結果は以下のとおり。・134万5,457人月のフォローアップ期間中(平均:32.0±7.5ヵ月、中央値:35ヵ月)に新たに抗認知症薬を使用した患者は、2,365人(5.6%)であった。・12ヵ月間の新規抗認知症薬使用率は、1.9±0.1%(1群:0.9±0.1%、2群:2.1±0.1%、3群:3.2±0.2%、4群:3.6±0.3%、p<0.0001)であった。・高齢および女性に加え、以下の薬剤の使用は、新規抗認知症薬使用と有意な関連が認められた。 ●スタチン(HR:0.82、95%CI:0.73~0.92、p=0.001) ●降圧薬(HR:0.80、95%CI:0.71~0.85、p<0.0001) ●非ステロイド性気管支拡張薬(HR:0.72、95%CI:0.58~0.88、p=0.002) ●抗うつ薬(HR:1.79、95%CI:1.47~2.18、p<0.0001) ●脳卒中後の治療薬(HR:1.45、95%CI:1.16~1.82、p=0.002) ●インスリン(HR:1.34、95%CI:1.01~1.78、p=0.046) ●抗腫瘍薬(HR:1.12、95%CI:1.01~1.24、p=0.035) 著者らは「本レトロスペクティブコホート研究により、高齢者における慢性疾患に対する治療薬と新規抗認知症薬使用との関連が特定された。これらの結果は、実臨床における認知症の臨床診断や医療政策を立案するうえで役立つであろう」としている。

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2型DM、tirzepatide vs.インスリン デグルデク漸増投与/Lancet

 2型糖尿病患者で、メトホルミン単独またはSGLT-2阻害薬との併用投与では血糖コントロールが不十分な18歳以上に対し、デュアルGIP/GLP受容体作動薬tirzepatideの週1回投与は、インスリン デグルデク漸増投与に比べ、52週時点のHbA1c値低下や体重減について、優越性が示された。オーストラリア・Vienna Health AssociationのBernhard Ludvik氏らが、1,444例を対象に行った有効性と安全性を評価する第III相無作為化非盲検並行群比較試験「SURPASS-3試験」の結果を報告した。安全性プロファイルは同等だったという。Lancet誌2021年8月14日号掲載の報告。tirzepatideの3用量とインスリン デグルデク漸増投与を比較 試験は13ヵ国、122の医療機関を通じて行われた。適格被験者は、ベースラインHbA1c値7.0~10.5%、BMI値25以上、体重は安定しており、インスリン治療歴なし、スクリーニング時点までにメトホルミン単独投与またはSGLT-2阻害薬との併用投与を3ヵ月以上受けた18歳以上だった。 研究グループは被験者を無作為に4群に分け、tirzepatideの3用量(5mg、10mg、15mg)、または、インスリン デグルデク漸増投与を、週1回いずれも皮下注射投与した。国やHbA1c値、経口血糖降下薬の併用により階層化した。 初回tirzepatide投与量は2.5mgで、設定用量まで4週ごとに2.5mgずつ増量した。初回インスリン デグルデク投与量は10U/日で、自己報告による空腹時血糖値が5.0mmol/L(90mg/dL)未満になるまで毎週漸増し、目標達成に向けた治療(T2T)アルゴリズムに従い52週間治療した。 有効性の主要エンドポイントは、ベースラインから52週までのHbA1c値の平均変化値について、tirzepatide群(10mg、15mg)のインスリン群に対する非劣性だった。主な副次エンドポイントは、tirzepatide群(5mg)の同非劣性と、全tirzepatide群のインスリン群に対するHbA1c値平均変化値と体重平均変化値についての優越性、52週時点でHbA1c値が7%(53mmol/mol)未満の割合だった。tirzepatide群のインスリン群に対する推定治療差、HbA1c値-0.59~-1.04% 無作為化を受けた被験者は1,444例、修正ITT集団は1,437例だった。 ベースラインの平均HbA1c値は8.17%(SD 0.91)で、52週時点におけるHbA1c値平均低下値はtirzepatide 5mg群が1.93%(SE 0.05)、10mg群が2.20%(0.05)、15mg群が2.37%(0.05)、インスリン群が1.34%(0.05)であり、非劣性マージン0.3%を達成した。インスリン群に対するtirzepatide群の推定治療差は、-0.59~-1.04%だった(全tirzepatide群に対するp<0.0001)。52週時点でHbA1c値が7%(53mmol/mol)未満の割合も、tirzepatide群(82~93%)がインスリン群(61%)より高率だった(p<0.0001)。 ベースラインの平均体重は94.3kgで、52週時点で全tirzepatide群が減少(-7.5~-12.9kg)したのに対し、インスリン群では増加(2.3kg)し、インスリン群に対するtirzepatide群の推定治療差は-9.8~-15.2kgだった(全tirzepatide群に対するp<0.0001)。 tirzepatide群の最も多く見られた有害事象は、軽度~中等度の消化器イベントだったが、時間経過と共に減少した。tirzepatide群で、吐き気(12~24%)、下痢(15~17%)、食欲不振(6~12%)、嘔吐(6~10%)の発生率がインスリン群に比べ高率だった(インスリン群はそれぞれ、2%、4%、1%、1%)。低血糖(54mg/dL未満)の発生率は、tirzepatide群(5mg、10mg、15mg)がそれぞれ1%、1%、2%だったのに対し、インスリン群では7%だった。 有害事象による治療中断は、tirzepatide群がインスリン群より多かった。試験期間中の死亡は5例報告されたが、研究者によっていずれも試験治療に関連したものではないと判断された。

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低GI/GL食が糖尿病患者のHbA1c低下をもたらす/BMJ

 主に血糖降下薬やインスリン製剤で中等度にコントロールされている1型および2型糖尿病の成人患者において、低グリセミック指数(GI)/グリセミック負荷(GL)の食事パターンを導入すると、糖化ヘモグロビン(HbA1c)値のほか空腹時血糖値や血中脂質、体重といった心臓代謝リスク因子に関して、小さいが意義のある改善がもたらされることが、カナダ・トロント大学のLaura Chiavaroli氏らの検討で示された。研究の詳細は、BMJ誌2021年8月4日号で報告された。低GI/GL食の無作為化対照比較試験のメタ解析 研究グループは、欧州糖尿病学会(EASD)の食事療法に関する診療ガイドラインの改訂に資するデータを得る目的で、低GI/GL食の効果を検討した無作為化対照比較試験を対象に系統的レビューとメタ解析を行った(EASDなどの助成を受けた)。 2021年5月13日の時点で、医学データベース(Medline、Embase、Cochrane Library)に登録された文献を検索した。対象は、糖尿病における低GI/GL食の効果について検討した3週間以上の無作為化対照比較試験とされた。 主要アウトカムはHbA1c値とされた。2人の研究者が個別にデータを抽出し、バイアスのリスクを評価した。データは、変量効果モデルによって統合された。また、GRADEを用いて、エビデンスの確実性の評価が行われた。HbA1c値の低下はエビデンスの確実性も高い 1型および2型糖尿病患者1,617例が参加した29の試験のデータを含む27の論文が解析に含まれた。参加者は、主に2型糖尿病(90%)の成人患者(93%)で、ほとんどが中高年(年齢中央値56歳、範囲:11~67歳)であり、過体重または肥満(BMI中央値31、範囲:19~36)がみられ、血糖降下薬(69%)やインスリン製剤(14%)、またはこれらの併用(7%)で中等度にコントロールされていた(ベースラインのHbA1c中央値7.7%、範囲:6.2~13.8%)。 低GI/GLの食事パターンは高GI/GLの対照食に比べ、小さいが意義のあるHbA1c値の低下をもたらした(平均差:-0.31%、95%信頼区間[CI]:-0.42~-0.19、p<0.001、異質性のI2=75%、p<0.001)。 また、低GI/GL食は、副次アウトカムのうち空腹時血糖値(p<0.001)、LDLコレステロール(p<0.001)、non-HDLコレステロール(p=0.002)、アポB(p=0.03)、トリグリセライド(p=0.04)、体重(p<0.001)、BMI(p=0.003)、C反応性蛋白(p=0.03)の低下をもたらしたが、血中インスリン、HDLコレステロール、ウエスト周囲長、血圧には有意な差はみられなかった。 HbA1c値の低下に関してはエビデンスの確実性が高かったが、副次アウトカムの多くは確実性が中程度であった。 著者は、「低GI/GLの食事パターンは、1型および2型糖尿病患者が血糖コントロールや心臓代謝リスク因子の目標値を達成するための付加的な治療法としてとくに有用と考えられる。これらの知見は、15年以上前に発行されたEASDの診療ガイドラインの改訂に資するものとなるだろう」としている。

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若年発症2型DM、青年期の各合併症の発症率は?/NEJM

 若年発症の2型糖尿病患者では、細小血管合併症などの合併症のリスクが経時的に着実に増加し、多くの患者が若年成人に達するまでに何らかの合併症を発症していることが、米国・コロラド大学のPetter Bjornstad氏らTODAY試験グループが実施した「TODAY2追跡試験」で示された。研究の詳細は、NEJM誌2021年7月29日号に掲載された。米国では、若年者における2型糖尿病の有病率は増加を続けているが、青年から成人への移行期における関連合併症の発生状況はほとんど知られていないという。米国の無作為化試験の観察的追跡研究 研究グループは、2004~11年の期間に米国の15施設で、青少年期に2型糖尿病を発症した患者を対象に、3種類の治療(メトホルミン、メトホルミン+rosiglitazone、メトホルミン+強化生活習慣介入)が、血糖コントロールを喪失するまでの期間に及ぼす効果を評価する目的で、多施設共同無作為化臨床試験(TODAY試験、699例、年齢10~17歳)を行った。 この試験の終了後、2011~20年の期間に同試験の参加者を対象として、2つの観察研究(TODAY2追跡試験)が実施された。2011~14年(TODAY2第1期)には、参加者は血糖コントロールのためにメトホルミン単独またはメトホルミン+インスリンによる治療を受けた(572例)。また、2014~20年(TODAY2第2期)には、通常治療のみが行われ、治療や介入は行われなかった(518例)。2つの期間を通じた平均追跡期間は10.2年だった。本論文では、この追跡研究の結果が報告された。 糖尿病性腎臓病、高血圧、脂質異常症、神経障害の評価が年1回行われ、網膜症の評価が試験期間中に2回実施された。HbA1c値<6%が75%から19%に、≧10%は0%から34%に TODAY2第2期の終了時点(2020年1月)で、解析に含まれた500例の平均年齢(±SD)は26.4±2.8歳であり、糖尿病の診断からの平均経過期間は13.3±1.8年であった。 糖化ヘモグロビン(HbA1c)値の中央値は経時的に上昇し、非糖尿病の範囲(HbA1c値<6%)の参加者の割合は、ベースライン(TODAY試験開始時、2004年)の75%から15年後(TODAY2第2期終了時、2020年)には19%に低下した。また、HbA1c値≧10%の割合は、ベースラインの0%から15年後には34%に増加した。 高血圧の発生率は、ベースラインが19.2%で、15年後の累積発生率は67.5%へと増加した。同様に、脂質異常症の発生率は20.8%から51.6%へ、糖尿病性腎臓病は8.0%から54.8%へ、神経障害は1.0%から32.4%へと上昇した。また、網膜症の有病率は、2010~11年の13.7%(すべてきわめて軽度の非増殖性糖尿病性網膜症)から、7年後の2017~18年には51.0%(このうち8.8%が中等度~重度の網膜の変化、3.5%が黄斑浮腫)に増えた。 細小血管合併症は、ベースラインの9.0%から15年間で80.1%へと増加し、累積発生率が50%に達するまでの期間は9年だった。また、細小血管合併症発生のリスク因子は、少数人種/民族、高血糖、高血圧、脂質異常症などであった。患者の60.1%(407/677例)で1つ以上の合併症が発生し、28.4%(192/677例)で2つ以上の合併症が発生した。 著者は、「これらのデータは、若年発症2型糖尿病では、糖尿病に特異的な合併症の負担が大きく、本症の患者は合併症によって早期に深刻な影響を受けており、公衆衛生上も重大な意味を持つことを示している」と指摘している。本研究は、米国国立糖尿病・消化器病・腎臓病研究所(NIDDK)などの研究助成を受けて行われた。

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GLP-1受容体作動薬のNew Normalな選択【令和時代の糖尿病診療】第1回

第1回 GLP-1受容体作動薬のNew Normalな選択GLP-1受容体作動薬(以下、GLP-1 RA)、その登場は10年前にさかのぼる。ちなみに、今年はインスリン発見から100年という、糖尿病分野において記念すべき歴史的な年である(にもかかわらず、コロナの影響で大々的なイベントは開催できていない)。それに比べ、たかだか生誕10年ではあるものの、これまでに数多くのGLP-1 RA製剤が登場し、エビデンスもそろってきており、大きな注目を集めている。ここで知識の整理として、GLP-1の生理作用を見てみよう。図1:GLP-1の多彩な生理作用(間接的作用を含む)画像を拡大する非常に多彩ではあるが、GLP-1 RAは、主に膵臓において血糖依存的にインスリン分泌を促進・グルカゴン分泌を抑制、肝臓においてグルコース産生を抑制、胃においては胃内容物排出の遅延により、血糖コントロールを行うという作用機序である。次に、分類を見てみよう。図2:GLP-1受容体作動薬の分類分類としては、まずヒトGLP-1由来かExendin-4由来かに大別され、各々1日1~2回もしくは週1回の投与方法があり、それに対応する製剤が存在する。さらに、今まではGLP-1 RAといえば注射薬という位置付けだったが、2021年に経口薬も加わったのである。これには大きな衝撃を受けた。重要な3つのポイント:適応患者の選択、合併症の管理、体重減少効果GLP-1 RAを使用するに当たって、重要なポイントが3つあるので、順に説明する。(1)作用機序から考えた適応患者の選択と早期導入この薬剤の作用機序は、「インスリン分泌促進系」の中でも「血糖依存性」に分類1)されるため、膵機能が保たれているインスリン非依存状態であることが必須である。すなわち、この薬剤の醍醐味を感じていただけるのは、罹病歴が比較的短く、内因性インスリン分泌能が保たれている、SU薬を多量に服用していない患者ということになる。一方、血糖依存性といえども万能ではなく、高血糖毒性を伴いインスリンの絶対的適応となるようなケースには不向きであることをご理解いただきたい。こういった場合は、糖毒性解除後に使用するとうまくいくことが多い。ひとつ症例で考えてみよう。63歳男性。脳梗塞で脳神経内科入院となり、救急外来時の随時血糖値283mg/dL、HbA1c 10.6%とコントロール不良の糖尿病を認め、血糖コントロール依頼で当科受診となった。未治療の患者で、体重85.0kg、BMI 31.2で、2度肥満を認めた。入院後に強化インスリン療法を開始、その後リハビリ目的にて転院となっている。リハビリ病院では混合型インスリン2回打ちに変更になり、3ヵ月後、当科に今後の治療につき相談があった。この時は随時血糖値141mg/dL、HbA1c 6.9%まで改善しており、体重79.0kg、BMI 29.0の1度肥満まで改善していた。総インスリン量は、22単位から12単位まで減量となっており、軽度の右不全マヒがあるものの、インスリン自己注射は問題なくできた。そこで主治医は、患者への負担を少しでも軽くしようと考え、インスリン分泌能も保たれていたため、週1回のGLP-1 RAへの切り替えを選択した。その後、3ヵ月間単剤での管理で3.1kgの減量に成功し、HbA1cも5.9%まで改善、患者さんも減量の成功を大変喜び、継続を希望したとのことである。この例は、GLP-1 RAの早期導入が功を奏したと考えられる。実際のところ、JDDM(糖尿病データマネジメント研究会)のデータを見ると、GLP-1 RAの処方は年々増加しているものの、HbA1cの目標到達率はインスリンと大きく変わらず、あまりよくない(私も言える立場ではないが反省の意味も込めて)。もしかしたら導入が遅いため、十分な効力が発揮できていないのかもしれない。(2)合併症抑制を考慮した治療選択治療選択の際、合併症(大血管症、細小血管症)を考慮できているだろうか? 2008年から米国FDA(食品医薬品庁)で、新規の血糖降下薬は心血管合併症を増やさないことの証明が必須になっているが、最近はむしろ血糖コントロール改善とは異なる機序で、糖尿病合併症を抑制する薬剤が注目を集めてきている。実際、GLP-1 RAは2021年ADAのStandards of Medical Care in Diabetes2)にも記載されているように、動脈硬化性心血管疾患(ASCVD)やCKDの合併、または高リスクがある場合は、メトホルミン使用とは無関係に優先的に使用すべき薬剤の1つになっている。わが国において薬剤の使用優先順位までは決められていないが、エビデンスのある薬剤の1つとして位置付けられているため、より処方するベネフィットが大きいと考えられる。図3:2型糖尿病における血糖降下薬:総括的アプローチ(ADA2021)画像を拡大する(3)体重減少、食欲抑制に対する効果GLP-1 RAの生理作用は、糖代謝改善作用以外に、胃内容物排出の遅延作用と中枢における食欲抑制作用があり、それには消化管で産生されたGLP-1が主に迷走神経を介して中枢へ作用する系、および中枢で産生されたGLP-1が作用する系の2つが関与するといわれている3)。いずれにせよ体重減少効果は大きく、米国では抗肥満薬としても上市されている(糖尿病薬の用量とは異なる)。セマグルチドの最近のエビデンスとして、太り過ぎまたは肥満成人に対する集中的行動療法の補助として有意な体重減少をもたらし4)、また従来の薬剤の約2倍の減量効果があり5)、肥満外科手術に匹敵するといわれるほどである。近年、高齢化が進むにつれ高齢者糖尿病患者も増加し、サルコペニアの問題も大きく取り沙汰されている。体重減少効果が筋肉量の減少を誘発していないかの問題も言われる中、経口セマグルチドにおける2型糖尿病患者のエネルギー摂取量、食事の嗜好、食欲、体重の効果についての論文が発表されている6)。表1:Changes from baseline in body weight and body composition as measured by Bodpod※ and waist circumference at week 12(day 3)※Bodpod:体脂肪測定装置(イタリア・COSMED SRL社製)表によると、12週で体重2.7kg、ウエスト2.4cmが減少しており、脂肪量は-2.6kg、除脂肪量-0.1kgと、減量のほとんどを脂肪量の減少が占めた。さらに、摂取エネルギーが減少するのはもちろんのこと、高脂肪食や甘味が有意に減少していたという嗜好の変化が非常にユニークな結果であった。また、GLP-1 RAの効果について、さらに細かい話にはなるが、ショートアクティングとロングアクティングでは、作用時間だけでなく血糖降下作用も異なるといわれている。まずロングアクティングは、主にインスリン分泌促進およびグルカゴン分泌抑制を介して血糖改善効果を発揮し、ショートアクティングに比べて空腹時血糖値やHbA1cの改善効果が大きいとされる。一方、ショートアクティングは主に胃内容物排出遅延作用やグルカゴン分泌抑制を介して血糖改善効果を発揮するとされる。実際、ロングアクティングの血糖改善効果は残存膵β細胞機能に依存するのに対し、ショートアクティングでは血糖改善効果と残存β細胞機能に明確な関連性を認めない。New Normal Selection GLP-1 RAさて、今回のタイトル「GLP-1受容体作動薬のNew Normalな選択」に対して、「何だろう?」と思って読んでくれた方の疑問にお答えしよう。コロナで流行ワードとなった「New Normal」、すなわち新しい生活様式のように、あらゆる行動を時勢に合わせてアップデートして動く中で、薬物治療の新たな選択肢としてGLP-1 RAの登場、そしてこの治療の幅が非常に広がったことで、新しい糖尿病診療が始まったことを意味する。たとえば、今までWeeklyのGLP-1 RA製剤は用量調節ができなかったが、セマグルチドではDaily製剤のように用量調節ができるようになった。実際は初期投与量・維持量・コントロール困難例と分けられているものの、消化器系症状が出やすい人や体重をあまり落としたくない高齢者など、人によっては初期投与量が維持量になるなど、使用範囲が広がる。また、過体重でとにかく減量させたい人やインスリンを減量したい人に高用量を使用するといった方法もあるかと思う。さらには、注射製剤をかたくなに拒否する患者さんには経口薬を選ぶこともでき、こちらも同様に3つの規格が使用できる。注射指導にハードルを感じる非専門医にとっても、経口薬なら処方しやすいのではないかと考えられる。いずれにせよ、まさにNew Normalな世界が広がる。ぜひ、ワクワクしながらこの薬剤を使用してみてはいかがだろうか?1)日本糖尿病学会編著. 糖尿病治療ガイド2020-2021. 文光堂;2020.2)American Diabetes Association. Diabetes Care. 2021;44(Suppl 1):S111-S124.3)上野 浩晶ほか. 日本糖尿病学会誌. 2017;60:570-572.4)Wadden TA, et al. JAMA. 2021;325:1403-1413.5)Wilding JPH, et al. N Engl J Med. 2021;384:989.6)Gibbons C, et al. Diabetes Obs Metab. 2021;23:581-588.

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新薬GIP/GLP-1受容体ダブルアゴニストは糖尿病診療に新たなインパクトを与えるか?(解説:栗山哲氏)

本論文は何が新しいか? 本論文は、2型糖尿病治療薬として開発された新規薬剤GIP/GLP-1のダブルアゴニストtirzepatideを臨床評価したものである。 同剤は、グルコース依存性インスリン刺激性ポリペプチド(GIP)に類似した39個のアミノ酸残基に長鎖脂肪酸を結合させた週1回注射製剤である。本剤の特徴は、グルカゴン様ペプチド(GLP-1)とGIPの両受容体を刺激するダブルアゴニスト製剤として開発されたことである(GIP受容体の単独作動薬はない)。 GLP-1受容体作動薬のエビデンスは、多くの臨床研究でその有用性が肯定されている。すなわち、LEADER、SUSTAIN-6、REWINDなどでは心血管イベント(MACE)の改善効果が、さらにLEADER、SUSTAIN-6、AWARD-7などで2型糖尿病腎症の腎エンドポイントにも改善効果が報告されている。 本論文(SURPASS-1試験)は、tirzepatideのHbA1cや体重への効果をプラセボ群と比較した臨床研究である。その改善結果は、既存の糖尿病治療薬に比較しても驚くほど顕著であり、今後の糖尿病治療に一石を投じるものと考えられる。本論文の主たる結果 SURPASS-1試験においては、試験参加者の54%は未治療、糖尿病の平均罹病期間は4.7年、ベースラインの平均HbA1c 7.9%、平均体重85.9kg、BMI 31.9kg/m2であった。主要評価項目と重要な副次評価項目に、ベースラインから40週投与後のHbA1c低下および体重減少を指標とした。tirzepatideの最高用量群(15mg)において、プラセボに対してHbA1cは2.07%低下、体重は9.5kg(11.0%)減少した。この投与群の半数以上(51.7%)は、非糖尿病レベルであるHbA1c 5.7%未満に改善した。全体的な安全性は、既知のGLP-1受容体作動薬と同等で、消化器系の副作用が最も多い有害事象であった。 以上の結果から、tirzepatideが従来の糖尿病治療薬と比較しても顕著なHbA1cと体重の低下効果を有する可能性が示唆された。特徴は、本剤によるHbA1c低下や体重の減少は、従来の糖尿病治療薬に比べても著明な薬効であるも、しかるに胃腸障害の副作用が増加しないことであろう。また、重症低血糖がほとんどないことも特筆に値する。HbA1c 5.7%未満を達成でき、低血糖が少ない薬効を証明できた成績は、糖尿病内科医にとってもインパクトの高い論文と思われる。推定されるtirzepatideの作用機序 脂肪細胞にあるGIP受容体にGIPが結合すると脂肪蓄積に働くため、GIPは体重を増加させる作用がある。一方、視床下部にもGIP受容体があり、こちらにGIPが結合すると食事量を減らし体重減少効果が認められる。そのため、全体的には、GIP自体はそれほど体重を増やさないのではないかと考えられる。一方、GLP-1受容体刺激とGIP受容体刺激が相加されると、なぜGLP-1受容体作動効果が相乗的に高まるか、という疑問に関しては不明であり、今後の研究課題と思う。本論文の日本での意義付け 本研究を今後の糖尿病治療に外挿すると、BMIが30超の高度の肥満を伴う2型糖尿病患者が最も良い適応症になると思われる。今後、日本人にも多いと思われるBMI 25~27あたりでの層別解析が注目される。また、この効果が実際にMACE抑制に結び付くか否かはそれにも増してさらに興味深い。現在進行中のSURPASS-CVOT(NCT04255433)においては、デュラグルチドとの比較が計画され2024年末ごろには効果が確認される。 ただ、危惧される点もいくつかある。試験を完了できなかった対象患者が15%と多いこと、体重減少が大き過ぎること、などである。とくに、本邦のように高齢者2型糖尿病患者が多い条件下では、体重が下がり過ぎることがデメリットになる可能性がある。このことから、本邦での薬剤選択上は第1・第2選択薬のように早期ステージでの使用は少なかろうと思う。治療継続率が対照薬よりも良くなかったことからも、あくまでも現在のGLP-1受容体作動薬などの糖尿病注射剤と近似した位置付けになるのではないかと推察する。一方、インスリン/GLP-1受容体作動薬の配合剤がtirzepatideに置き換わっていく可能性もありえよう。本論文から何を学ぶ? 今後のインクレチン薬の展望は? GIP/GLP-1受容体ダブルアゴニストtirzepatideは優れた糖代謝改善作用を有することが示された。SURPASS-1に追従して、ほぼ同時にSURPASS-2の結果が報告され、ここではtirzepatide群をセマグルチド群と比較して検討し、SURPASS-1の結果と同様に前者で優れたHbA1c低下効果ならびに体重減少効果が確認されている(Frias JP, et al. N Engl J Med. 2021 Jun 25. [Epub ahead of print])。今後、SURPASS-3やSURPASS-5などで本剤の評価が次々と報告されていく予定があり、すべての試験で結果が一貫していると聞く。これらの集積は、現行の糖尿病ガイドラインを変える可能性もあろう。 また、インクレチン関連薬の配合剤の創薬の新たな話題として、GLP-1受容体作動薬にグルカゴンを付帯したデュアル製剤(cotadutide)が2型糖尿病腎症やNASHの治療薬として開発されている(Nahra R, et al. Diabetes Care. 2021 May 20. [Epub ahead of print])。グルカゴンは糖代謝の絶対悪ではなく、エネルギー産生作用を有しておりエネルギー消費を上げる方向に作用し、蠕動運動の低下や中枢神経を介して食欲を抑制する作用もあるようだ。これらの作用をGLP-1と組み合わせて効果を増強しようというのが、GLP-1/グルカゴン受容体作動薬である。実際に、GLP-1/グルカゴン受容体作動薬に関してグルコース吸収の遅延とインスリン感受性の改善がみられている。作用機序の面から、まだまだ検討の余地は残されるものの、興味深いダブル製薬の1つと思われる。

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「ベイスン」の名称の由来は?【薬剤の意外な名称由来】第61回

第61回 「ベイスン」の名称の由来は?販売名ベイスン®錠0.2ベイスン®錠0.3ベイスン®OD錠0.2ベイスン®OD錠0.3一般名(和名[命名法])ボグリボース(JAN)効能又は効果<ベイスン錠 0.2、0.3><ベイスンOD錠 0.2、0.3>○糖尿病の食後過血糖の改善(ただし、食事療法・運動療法を行っている患者で十分な効果が得られない場合、又は 食事療法・運動療法に加えて経口血糖降下剤若しくはインスリン製剤を使用している患者で十分な効果が得られない場合に限る) <ベイスン錠 0.2><ベイスンOD錠 0.2>○耐糖能異常における2型糖尿病の発症抑制(錠0.2、OD錠0.2のみ)(ただし、食事療法・運動療法を十分に行っても改善されない場合に限る)用法及び用量○糖尿病の食後過血糖の改善の場合通常、成人にはボグリボースとして1回0.2mgを1日3回毎食直前に経口投与する。なお、効果不十分な場合には、経過を十分に観察しながら1回量を0.3mgまで増量することができる。○耐糖能異常における2型糖尿病の発症抑制の場合(錠0.2、OD錠0.2のみ)通常、成人にはボグリボースとして1回0.2mgを1日3回毎食直前に経口投与する。警告内容とその理由該当しない禁忌内容とその理由1.重症ケトーシス、糖尿病性昏睡又は前昏睡の患者[輸液及びインスリンによる速やかな高血糖の是正が必須となるので本剤の投与は適さない。]2.重症感染症、手術前後、重篤な外傷のある患者[インスリン注射による血糖管理が望まれるので本剤の投与は適さない。]3.本剤の成分に対する過敏症の既往歴のある患者※本内容は2021年7月21日時点で公開されているインタビューフォームを基に作成しています。※副作用などの最新の情報については、インタビューフォームまたは添付文書をご確認ください。1)2021年5月改訂(第11版)医薬品インタビューフォーム「ベイスン®錠0.2・0.3/ベイスン®OD錠0.2・0.3」2)武田テバ:DI-net

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基礎インスリンで治療中の2型糖尿病患者の血糖コントロールに対するCGMの効果(解説:小川大輔氏)

 糖尿病の診療において、血糖コントロール状況を把握する検査として血糖値とヘモグロビンA1cが通常用いられる。血糖値は採血時点の、ヘモグロビンA1cは過去1~2ヵ月間の血糖の状況を表す検査であり、外来診療ではこの2つの検査を同時に測定することが多い。さらにインスリンあるいはGLP-1受容体作動薬などの注射製剤を使用している患者は、日常生活において血糖を把握するために自己血糖測定を行うことが一般的である。 通常の自己血糖測定によるモニタリング(BGM)は測定のたびに指先を穿刺する必要があり、また連続した血糖の変動を捉えることができないという欠点がある。一方、近年使用されている持続血糖モニタリング(CGM)は一度装着すると血糖の変動を連続して把握することができるというメリットがある。CGMは毎食後や睡眠中の血糖コントロール状況がわかるため、糖尿病専門外来では糖尿病治療薬の変更や選択に活用されている。 2018年7月から2019年10月までに米国のプライマリケア施設で基礎インスリンを使用している2型糖尿病患者に対し、CGMの有効性の評価を目的とする無作為化臨床試験の結果がJAMA誌に報告された1)。対象は1日1回あるいは2回の基礎インスリンを用いて治療中の2型糖尿病患者であり、CGMまたはBGMでのモニタリングを行う群に2対1の割合で無作為に割り付けられた。インスリン以外の糖尿病治療薬の有無は問わないが、食前のインスリンは使用していないことが条件である。主要評価項目は8ヵ月後の平均HbA1c値、副次評価項目は血糖値が目標範囲内(70~180mg/dL)の時間の割合、血糖値が250mg/dL以上の時間の割合、8ヵ月後の平均血糖値である。 30歳以上の2型糖尿病患者175例が登録され、CGM群に116例、BGM群に59例が割り付けられた。平均HbA1c値は、CGM群がベースラインの9.1%から8ヵ月後には8.0%へ、BGM群は9.0%から8.4%へと低下し、CGM群で有意な改善効果が認められた。またCGM群はBGM群に比べ、血糖値が目標範囲内(70~180mg/dL)の時間の割合(59% vs.43%)、血糖値>250mg/dLの時間の割合(11% vs.27%)、ベースライン値で補正された8ヵ月後の血糖値(179mg/dL vs.206mg/dL)が、いずれも有意に良好であった。有害事象としては重症低血糖がCGM群で1例(1%)、BGM群で1例(2%)報告された。 基礎インスリン療法を行っているが血糖コントロールが不良(HbA1c値7.8~11.5%)の2型糖尿病患者に対し、従来のBGMをCGMに替えると8ヵ月後のヘモグロビンA1cがより低下したという結果である。これまでに1型糖尿病を対象とした試験でCGMを用いることにより血糖コントロールが改善するということは複数報告されており、強化インスリン療法を行っている2型糖尿病を対象とした試験2)でも同様の結果が報告されている。今回初めて基礎インスリン療法を行っている2型糖尿病を対象とした試験でCGMの有効性が示された。ただ、1日1~3回血糖値を測定するBGM群に対し、血糖の情報量が圧倒的に多いCGM群でもっと差があるかと思ったが、予想外にその差は0.4%とわずかであった。またHbA1c値8.5%以上のとくに血糖コントロール不良の患者では両群で有意差がなかった。これは本試験が糖尿病専門医のいる医療機関ではなくプライマリケア施設で実施されており、専門医が直接インスリン投与量の管理を行っていないことが関係していると考えられる。せっかくCGMを用いても、得られた血糖日内変動のデータを解釈しインスリン投与量の調節に活かせなければ意味がない。ただCGMを装着すればよいというわけではない、というメッセージをこの研究は与えている。

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tirzepatide、強力な血糖コントロール改善と減量効果/Lancet

 tirzepatideは、グルカゴン様ペプチド(GLP)-1受容体とグルコース依存性インスリン分泌刺激ポリペプチド(GIP)受容体のデュアルアゴニストである。米国・Dallas Diabetes Research Center at Medical CityのJulio Rosenstock氏らは、「SURPASS-1試験」において、本薬はプラセボと比較して低血糖リスクを増加させずに血糖コントロールと体重の顕著な改善効果をもたらし、安全性プロファイルもGLP-1受容体作動薬と類似することを示した。研究の詳細は、Lancet誌オンライン版2021年6月25日号で報告された。3用量を評価する第III相無作為化プラセボ対照試験 本研究は、4ヵ国(インド、日本、メキシコ、米国)の52施設で行われた第III相二重盲検無作為化プラセボ対照試験であり、2019年6月~2020年10月の期間に参加者の登録が行われた(Eli Lilly and Companyの助成による)。 対象は、年齢18歳以上、食事療法と運動療法だけではコントロール不良な2型糖尿病で、注射薬による治療を受けておらず、スクリーニング時に糖化ヘモグロビン(HbA1c)値が≧7.0%(53mmol/mol)~≦9.5%(80mmol/mol)で、BMI≧23、過去3ヵ月間の体重が安定している患者であった。 被験者は、tirzepatide 5mg、同10mg、同15mgまたはプラセボを週1回皮下投与する群に、1対1対1対1の割合で無作為に割り付けられた。投与期間は40週だった。 主要エンドポイントは、ベースラインから40週までのHbA1c値の平均変化量とした。 478例(平均年齢54.1歳、女性48%、平均罹患期間4.7年、平均HbA1c値7.9%[63mmol/mol]、平均BMI 31.9)が登録され、tirzepatide 5mg群に121例、同10mg群に121例、同15mg群に121例、プラセボ群には115例が割り付けられた。66例(14%)が試験薬の投与を中止し、50例(10%)は試験を中止した。HbA1c値:1.87~2.07%低下、15%以上の体重減少:13~27% 40週の時点で、tirzepatideのすべての用量群はプラセボ群に比べ、HbA1c値、空腹時血糖値、体重のベースラインからの変化量と、HbA1c目標値<7.0%(<53mmol/mol)およびHbA1c目標値<5.7%(<39mmol/mol)の達成割合が優れた。 平均HbA1c値は、5mg群ではベースラインから1.87%(20mmol/mol)低下し、10mg群で1.89%(21mmol/mol)、15mg群で2.07%(23mmol/mol)低下したのに対し、プラセボ群は0.04%(0.4mmol/mol)増加しており、プラセボ群との治療間の平均差の推定値は、5mg群が-1.91%(-21mmol/mol)、10mg群が-1.93%(-21mmol/mol)、15mg群は-2.11%(-23mmol/mol)であった(いずれもp<0.0001)。 空腹時血糖値は、5mg群ではベースラインから43.6mg/dL低下し、10mg群で45.9mg/dL、15mg群で49.3mg/dL低下したが、プラセボ群は12.9mg/dL上昇しており、プラセボ群との治療間の平均差の推定値は、5mg群が-56.5mg/dL(-3mmol/L)、10mg群が-58.8mg/dL(-3mmol/L)、15mg群は-62.1mg/dL(-3mmol/L)であった(いずれもp<0.0001)。 HbA1c目標値<7.0%(<53mmol/mol)の達成割合は、3用量のtirzepatide群が87~92%、プラセボ群は19%であり(プラセボ群との比較で、すべての用量がp<0.0001)、HbA1c目標値≦6.5%(≦48mmol/mol)の達成割合は、それぞれ81~86%および10%であった(すべての用量でp<0.0001)。また、HbA1c目標値<5.7%(<39mmol/mol)の達成割合は、3用量のtirzepatide群が31~52%、プラセボ群は1%だった(すべての用量でp<0.0001)。 tirzepatide群では、体重がベースラインから用量依存性に7.0~9.5kg減少したのに対し、プラセボ群では0.7kg減少した(すべての用量でp<0.0001)。15%以上の体重減少は、tirzepatide群では13~27%で達成されたが、プラセボ群は0%だった。 tirzepatide群で頻度の高い有害事象として、軽度~中等度の一過性の消化器イベント(悪心[tirzepatide群12~18% vs.プラセボ群6%]、下痢[12~14% vs.8%]、嘔吐[2~6% vs.2%])が認められた。臨床的に重大な低血糖(<54mg/dL[<3mmol/L])および重症低血糖は、tirzepatide群では報告されなかった。プラセボ群で1例が心筋梗塞で死亡した。 著者は、「本薬は、ほぼ正常値範囲に達する強力な血糖降下作用と、これまでに報告がないほど確固とした減量効果を示した」とまとめ、「2型糖尿病の単剤療法の選択肢となる可能性がある」と指摘している。

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タンパク質の効果的な摂取方法とは?

 昨年、厚生労働省が定める「日本人の食事摂取基準」において、65歳以上のタンパク質目標摂取量が総エネルギー量の15~20%に改定された(以前は、18歳以上の全年代で13~20%)。 これを受け、6月28日に一般社団法人Jミルク主催のメディアミルクセミナーが開催され、藤田 聡氏(立命館大学 スポーツ健康科学部 教授)が「タンパク質の“質“と効果的な摂取法」をテーマに講演を行った。タンパク質、足りていますか? 加齢と共にアミノ酸から合成される筋肉量が減少する。十分な運動を行った場合でも加齢に伴う筋肉量の低下を防ぐことは難しい。筋肉量の低下は、内臓脂肪の増加やインスリン抵抗性に関与し糖尿病のリスクとなることが報告されている。また、筋肉量の低下は心疾患や死亡のリスクを高めるとの報告もある。 筋肉量を増加させるには、各食事でバランスよくタンパク質を摂取する必要があるが、30代以上の過半数で朝食のタンパク質摂取量が不足しているという研究データが示された。1食でもタンパク質の摂取量が不足すると、筋肉量が低下しやすくなるため、とくに朝食では積極的にタンパク質を摂取する必要がある。 しかし、高齢者では、食が細くなりタンパク質の十分な摂取が難しいこともあるため、より効率的に筋肉を合成できるタンパク質を摂取することが重要だと強調された。効率的な筋肉合成のカギを握る「ロイシン」 総合アミノ酸40gと必須アミノ酸18gでは、筋肉の合成を刺激する力が同程度であったことが示されている。さらに別の研究では、必須アミノ酸であるロイシンの含有率を上げることで、筋肉の合成速度が上昇したと報告された。これらの研究データを踏まえ、筋肉の合成には必須アミノ酸がとくに重要だが、ロイシン含有率の高い食品を積極的に摂取することで、筋肉をより効率よく合成できる可能性があると強調された。ロイシンの含有率が高い食品には、乳製品などがある。 そして、ロイシンの利用効率を高めるためには運動が重要であり、とくに筋肉に負荷をかけるレジスタンス運動が有効だとされている。レジスタンス運動2時間後には筋肉の合成速度が2倍になるため、運動2時間後を目安にロイシンを摂取することが望ましいと述べられた。筋肉量の低下は身近な課題 筋肉量の低下が懸念されているのは、高齢者だけではない。日本では若い女性の「やせ」(BMI 18.5未満)が問題となっていることや、昨今、コロナ禍でテレワークや外出自粛が進んだことで、すべての世代で筋肉量の低下が懸念されている。 個々に合わせた運動と、積極的なロイシン摂取を心掛け、筋肉量を増加させることが重要であると、藤田氏は講演を締めくくった。

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新規GIP/GLP-1受容体作動薬、セマグルチドに対し優越性を示す/NEJM

 2型糖尿病患者において、tirzepatideはセマグルチドに対しベースラインから40週までのHbA1c低下が有意に優れていることが認められた。米国・National Research InstituteのJuan P. Frias氏らが、第III相無作為化非盲検試験「SURPASS-2試験」の結果を報告した。tirzepatideは、新規2型糖尿病治療薬として開発中のデュアル・グルコース依存性インスリン刺激性ポリペプチド(GIP)/グルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)受容体作動薬で、第III相国際臨床開発プログラムであるSURPASSプログラムにおいて、有効性と安全性が検討されている。そのうちSURPASS-2試験では、選択的GLP-1受容体作動薬セマグルチドの承認されている最高用量との比較が行われた。NEJM誌オンライン版2021年6月25日号掲載の報告。メトホルミンで血糖コントロール不良、tirzepatide(3用量)vs.セマグルチド SURPASS-2試験の対象者は、メトホルミン1日1,500mg以上による単独療法で血糖コントロール不十分(HbA1c:7.0~10.5%)の、18歳以上、BMIが25以上の2型糖尿病患者1,879例。tirzepatideの5mg群、10mg群、15mg群、またはセマグルチド(1mg)群に、1対1対1対1の割合で無作為に割り付けた。ベースラインの平均HbA1cは8.28%、平均年齢は56.6歳、平均体重は93.7kgであった。 主要評価項目は、ベースラインから40週までのHbA1c変化量であった。主な副次評価項目は、ベースラインから40週までの体重変化、ならびにHbA1c 7.0%未満および5.7%未満を達成した患者の割合とした。tirzepatide全投与群でセマグルチドよりHbA1cおよび体重低下が有意に低下 HbA1cのベースラインから40週までの推定平均変化量は、tirzepatideの5mg群-2.01ポイント、10mg群-2.24ポイント、15mg群-2.30ポイントで、セマグルチド群は-1.86ポイントであった。5mg群、10mg群、15mg群とセマグルチド群との推定群間差は、それぞれ-0.15ポイント(95%信頼区間[CI]:-0.28~-0.03、p=0.02)、-0.39ポイント(-0.51~-0.26、p<0.001)、-0.45ポイント(-0.57~-0.32、p<0.001)であった。tirzepatideの全用量群で、セマグルチド群に対する優越性が示された。 体重のベースラインから40週までの推定平均変化量は、5mg群-7.6kg、10mg群-9.3kg、15mg群-11.2kgおよびセマグルチド群-5.7kgであり、tirzepatide群の用量依存的な体重減少が認められ、tirzepatideの全用量群で、セマグルチド群より有意に減少した(最小二乗平均推定群間差はそれぞれ-1.9kg、-3.6kg、-5.5kg、すべてのp<0.001)。 主な有害事象(いずれかの投与群で発現率5%以上)は胃腸障害で、悪心がtirzepatide群17~22%、セマグルチド群18%、下痢が13~16%、12%、嘔吐が6~10%、8%であった。重症度はいずれも軽度から中等度であった。低血糖症(血糖値<54mg/dL)の発現率は、tirzepatideの5mg群0.6%、10mg群0.2%、15mg群1.7%、セマグルチド群0.4%であった。重篤な有害事象は、tirzepatide群で5~7%、セマグルチド群で3%であった。

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週1回投与のヒト成長ホルモン製剤「ソグルーヤ皮下注5mg/10mg」【下平博士のDIノート】第77回

週1回投与のヒト成長ホルモン製剤「ソグルーヤ皮下注5mg/10mg」今回は、長時間作用型ヒト成長ホルモンアナログ製剤「ソマプシタン(遺伝子組換え)(商品名:ソグルーヤ皮下注5mg/10mg、製造販売元:ノボ ノルディスク ファーマ)」を紹介します。本剤は、重症の成人成長ホルモン分泌不全症患者に週1回投与することで、体脂肪量の減少と筋肉・骨組織の成長を促し、体組成のバランスを改善します。<効能・効果>本剤は、成人成長ホルモン分泌不全症(重症に限る)の適応で、2021年1月22日に承認されました。診断および重症の基準は、最新の「成人成長ホルモン分泌不全症の診断と治療の手引き」の病型分類を参照することとされています。<用法・用量>通常、ソマプシタン(遺伝子組換え)として1.5mgを開始用量とし、週1回、同一曜日に皮下注射します。開始用量は年齢、性別、合併症などに応じて適宜増減します。60歳超の患者では1.0mg、経口エストロゲン服用中の女性患者では2.0mgが目安となっています。その後の投与量は、患者の臨床症状および血清インスリン様成長因子-I(IGF-I)濃度などの検査所見に応じて、最高用量8.0mgを超えない範囲で調整します。なお、投与量の調整は投与開始後2~4週間に1回を目安に行い、増量する場合は1回当たり0.5~1.5mgを目安とします。副作用の発現や血清IGF-I濃度が基準範囲上限を超えた場合は、投与量の減量や一時的な投与中止など適切な処置を行います。<安全性>第III相試験の併合結果333例中85例(25.5%)で副作用が確認され、主な副作用として、頭痛11例(3.3%)、関節痛、疲労各9例(2.7%)、末梢性浮腫7例(2.1%)、浮動性めまい、感覚鈍麻、体重増加、血中クレアチンホスホキナーゼ増加各4例(1.2%)などが報告されています。重大な副作用として、甲状腺機能亢進症および糖尿病(いずれも頻度不明)が設定されています。<患者さんへの指導例>1.週1回投与する持続性の成長ホルモン製剤です。肝臓に働き掛け、体脂肪量を減少させ、筋肉や骨組織の成長を促し、体組成のバランスを改善します。2.大腿部、腹部などに皮下注射してください。注射箇所は毎回変更し、同一部位に短期間に繰り返し注射しないでください。3.浮腫、関節痛、視覚異常、頭痛、悪心または嘔吐、頻尿などの症状が見られたらご連絡ください。4.投与を忘れた場合は、あらかじめ定められた投与日から3日以内であれば、気付いた時点でただちに投与し、その後は元の曜日に投与してください。投与日から3日を超えていた場合は1回分スキップして、次の投与日に投与します。なお、曜日を変更する必要がある場合は、前回の投与から少なくとも4日間以上の間隔を空けてください。5.使用開始前後にかかわらず冷蔵庫で保管し、開封したものは6週間以内に使用してください。冷蔵庫がない環境での保管は、遮光・室温(30℃以下)で通算3日間(72時間)までとしてください。<Shimo's eyes>成人成長ホルモン分泌不全症(AGHD)とは、成人において成長ホルモン(GH)の分泌が損なわれることで、易疲労感やスタミナ低下、体脂肪の増加、筋肉・骨塩量の低下、血中脂質高値などさまざまな自覚症状や代謝異常を来す慢性疾患です。通常、GH補充療法が行われますが、GH分泌不全は生涯続くことが多いため、長期または生涯にわたる治療が必要です。従来のソマトロピン製剤(商品名:ノルディトロピン注、ジェノトロピン注、ヒューマトロープ注、グロウジェクト注、ソマトロピンBS注)は、主に1日1回の皮下投与製剤であることから、毎日の治療に負担を感じる患者も少なくないことが課題となっています。本剤は週1回投与の長時間作用型ヒト成長ホルモン誘導体であり、内分泌専門医の管理指導の下、自己注射が可能な製剤です。1.5mLカートリッジに入った溶解操作が不要なリキッドタイプで、複数回投与可能な使い捨てプレフィルドペン型注入器に装填されています。1回の投与量は、5mg剤が0.025~2mgまで0.025mg刻み、10mg剤が0.05~4mgまで0.05mg刻みで設定可能です。ソマプシタンの構造としては、101位のロイシン残基をシステイン残基に置換したアミノ酸骨格に、アルブミン側鎖が接合しており、内因性アルブミンとの可逆的な非共有結合により、本剤の消失が遅延することで作用持続時間が延長されます。注意すべきポイントとして、GHはインスリン感受性と耐糖能を低下させるため、血糖値とHbA1cなどのモニタリングが必要な点が挙げられます。また、甲状腺機能の低下や良性頭蓋内圧の亢進、血清コルチゾール値の低下、中枢性副腎皮質機能低下症が顕在化する可能性があるので注意が必要です。GHの体液貯留作用により、本剤による治療開始時に手足の浮腫、手根管症候群、関節痛、筋肉痛などが見られる場合がありますが、治療継続中に消失することも多いため、軽度であれば経過観察となることもあります。自己注射は、基本的にはインスリン注射と同様の手順で行います。使用済みの注射器・針の廃棄方法は、かかりつけ医や主治医、薬剤師に相談するよう伝えましょう。参考1)PMDA 添付文書 ソグルーヤ皮下注5mg/ソグルーヤ皮下注10mg

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リアルタイムCGM導入によるDM患者の入院率は?/JAMA

 インスリン療法を受けている糖尿病患者で、医師によりリアルタイム持続血糖モニタリング(CGM)が導入された患者は、CGMを開始しなかった患者と比較し、HbA1cの有意な低下と低血糖による救急外来受診/入院率の減少を認めたが、高血糖または理由を問わない救急外来受診/入院に有意差はなかった。米国・カイザーパーマネンテのAndrew J. Karter氏らが、探索的後ろ向きコホート研究の結果を報告した。CGMは1型糖尿病患者に推奨されているが、インスリン療法を受けている2型糖尿病患者におけるCGMの観察的エビデンスは不足していた。なお、今回の結果について著者は、「観察研究の結果のため、選択バイアスの影響を受けている可能性がある」との指摘もしている。JAMA誌2021年6月8日号掲載の報告。リアルタイムCGMを開始した患者と開始しなかった患者を後ろ向きに比較 研究グループは、Northern California integrated health care delivery system(2014~19年)に登録されている、CGM使用歴のない血糖自己測定を行っているインスリン療法中の糖尿病患者4万1,753例(1型5,673例、2型3万6,080例)を対象に、リアルタイムCGMの導入による臨床アウトカムを、差分の差分法を用いて解析した。 評価項目は、ヘモグロビンA1c(HbA1c)、低血糖(救急外来または病院利用)、高血糖(救急外来または病院利用)、HbA1c 7%未満、8%未満、9%以上、理由を問わない1回以上の救急外来受診、理由を問わない1回以上の入院、外来受診および電話受診回数の10項目とし、ベースラインの前後12ヵ月間で評価した。 リアルタイムCGMを開始した患者(CGM群)は3,806例(平均[±SD]年齢42.4±19.9歳、女性51%、1型91%、2型9%)、開始しなかった患者(対照群)は3万7,947例(63.4±13.4歳、女性49%、1型6%、2型94%)であった。リアルタイムCGMの導入で血糖コントロール、救急外来受診または入院を要した低血糖の発現が有意に改善 CGM群は、ベースライン前の平均HbA1cが対照群と比較して低値であったが、ベースライン前の低血糖および高血糖の発現率が高かった。 平均HbA1cは、CGM群で8.17%から7.76%まで低下し、対照群では8.28%から8.19%まで低下した(補正後の差分の差分推定値:-0.40%、95%信頼区間[CI]:-0.48~-0.32、p<0.001)。低血糖の発現率は、CGM群で5.1%から3.0%へ低下、対照群では1.9%から2.3%へ増加した(-2.7%、-4.4~-1.1、p=0.001)。 HbA1c 7%未満(補正後の差分の差分推定値:9.6%、95%CI:7.1~12.2、p<0.001)、HbA1c 8%未満(13.1%、10.2~16.1、p<0.001)、HbA1c 9%以上(-7.1%、-9.5~-4.6、p<0.001)の患者の割合、外来受診回数(-0.4、-0.6~-0.2、p<0.001)、電話受診回数(1.1、0.8~1.4、p<0.001)についても、補正後の純変化量に統計学的な有意差が確認された。 一方、高血糖、理由を問わない救急外来受診、理由を問わない入院の発生率については、いずれも統計学的に有意な変化は認められなかった。

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2型糖尿病に新クラスの治療薬イメグリミン承認/大日本住友製薬

 大日本住友製薬は、2型糖尿病治療薬イメグリミン(商品名:ツイミーグ錠 500mg)について、6月23日付けで、2型糖尿病を適応症として、日本における製造販売承認を取得したと発表。同剤の承認は日本が世界で初めてとなる。 日本において、同社はPoxel社と共同で1,100例を超える2型糖尿病患者を対象とした3本の第III相試験(TIMES1、TIMES2、TIMES3)を実施し、それらの良好な試験結果等を基に、2020年7月30日、日本における製造販売承認申請を行った。 同剤は、既存の経口血糖降下薬とは異なる構造と、2つの血糖降下作用をもつ新クラスの経口血糖降下薬である。ミトコンドリアへの作用を介して、グルコース濃度依存的なインスリン分泌を促す膵作用と、肝臓・骨格筋での糖代謝を改善する膵外作用(糖新生抑制・糖取込み能改善)により血糖降下作用を示すと考えられている。 これまでの第II、III相試験で得られた良好な有効性および安全性に関するデータに基づき、2型糖尿病治療における単剤および併用による血糖降下療法において、幅広く使用される治療薬となる可能性がある。ツイミーグ錠500mgの概要・販売名:ツイミーグ錠500mg・一般名:イメグリミン塩酸塩・規格・含量:1錠中イメグリミン塩酸塩 500mg・効能・効果:2型糖尿病・用法・用量:通常、成人にはイメグリミン塩酸塩として1回1,000mgを1日2回朝、夕に経口投与する

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運動するなら、朝と夕方どちらが効果的?

 太り過ぎの男性が運動療法を行う場合、朝よりも夕方に行ったほうが代謝機能の回復効果が高いことが、ノルウェー科学技術大学のTrine Moholdt氏らによる研究の結果、わかった。Diabetologia誌オンライン版2021年5月19日号に掲載された。 研究者らは、高脂肪食の摂取が血糖コントロール、全身の健康マーカー、血清メタボロミスクに及ぼす影響が、運動トレーニングを行う時間帯(朝と夜)によって変化するかどうかを検討した。 オーストラリア・メルボルンの大学で実施されたこの3群並行群間無作為化試験では、過体重・肥満の男性が11日間連続で高脂肪食(エネルギーの65%を脂肪から摂取)を摂取した。参加者は、ソーシャルメディアやコミュニティ広告を通じて募集した。参加資格は、男性、30~45歳、BMI27.0~35.0kg/m2、座りがちな生活とされた。心血管疾患(CVD)または2型糖尿病患者、処方薬服用者、シフト型勤務者は除外された。 参加者は高脂肪食を5日摂取した後、朝(6:30)運動する群、夕方(18:30)運動する群、運動なし群のいずれかに割り当てられ、その後5日間活動した。血清代謝物、循環脂質、心肺機能、血圧、および血糖値の変化をグループ間で比較した。 主な結果は以下のとおり。・25例(朝群:9、夕方群:8、運動なし群:8)が割り付けられ、24例が解析対象となった(各群8例ずつ)。・24時間後のグルコース値はいずれの群でも有意な変化は見られなかったが、夕方群は運動なし群と比較して夜間の血糖値が低かった(4.9±0.4 vs 5.3±0.3mmol/l、p=0.04)。・最大酸素摂取量は、運動なし群と比較して、朝群(推定効果1.3ml/kg/分、95%CI:0.5~2.0、p=0.003)と夕方群(推定効果1.4ml/kg/分、95%CI:0.6~2.2、p=0.001)の両方で改善した。・空腹時血糖値、インスリン、コレステロール、トリアシルグリセロール、LDL-コレステロール値は夕方群のみで低下した。意図しない効果や副作用はなかった。 著者らは、5日間の高脂肪食摂取により、脂質とアミノ酸の代謝に関連する血清代謝物に大きな変化が生じた。運動トレーニングが代謝物に与える変化は高脂肪食の影響よりも小さく、夕方に行った場合のみ高脂肪食による代謝物の変化の一部を回復させた、とまとめている。

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