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肥満女性のインスリン抵抗性改善に骨格筋が重要

 女性肥満患者がインスリン抵抗性を改善するには、骨格筋量の維持が必要であることを、関西医科大学の福島 八枝子氏らが報告した。Diabetes & metabolism journal誌2016年4月号に掲載。 近年、運動耐容能および脂肪指数に加えて、骨格筋が肥満者におけるインスリン抵抗性に重要な役割を持つことが示唆されている。著者らは、女性肥満患者の減量時において、インスリン抵抗性の改善に寄与する体組成因子を調査した。 著者らは、食事療法、運動療法、認知行動療法を含む介入プログラム後に、体重が5%以上減少した女性肥満患者92例(年齢:40.9±10.4歳、BMI:33.2±4.6)を調査した。骨格筋量の変化を調べるために、介入の前後の体組成を、DEXA(X線二重エネルギー法)で評価した。インスリン抵抗性の指標として、HOMA-IR(ホメオスタシスモデル評価によるインスリン抵抗性指数)を測定した。心肺運動負荷試験もすべての患者で実施した。 主な結果は以下のとおり。・体重(-10.3±4.5%)、運動耐容能(無酸素性代謝閾値:9.1±18.4%、最高酸素摂取量:11.0±14.2%)、HOMA-IR(-20.2±38.3%)が有意に改善した。・体組成については、総体脂肪量(-19.3±9.6%)、総除脂肪量(-2.7±4.3%)、体脂肪率(-10.1±7.5%)が有意に減少し、骨格筋率(8.9±7.2%)は有意に増加した。・従属変数としてのHOMA-IRの変化をみたステップワイズ法による線形重回帰分析では、骨格筋率の変化が独立した予測因子として同定された(β=-0.280、R2=0.068、p<0.01)。

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DPP-4阻害薬は2型糖尿病患者における重度腎不全のリスクを増加させる可能性がある(解説:住谷 哲 氏)-520

 DPP-4阻害薬は、わが国で最も多く処方されている血糖降下薬である。しかし、DPP-4阻害薬が2型糖尿病患者の心血管イベントを抑制する可能性は、TECOS試験1)などの3つのランダム化比較試験(RCT)の結果からほぼ否定された。同時に、これら3つのRCTにおいて、DPP-4阻害薬が他の血糖降下薬に比較して心血管イベントを増加させる可能性もほぼ否定された。つまり、少なくとも心血管イベント発症に対する安全性は担保されたことになる。しかし、DPP-4阻害薬が細小血管障害(網膜症、腎症、神経障害)に及ぼす影響については、これまでほとんど報告されていない。そこで著者らは、real worldにおいてDPP-4阻害薬が2型糖尿病患者の細小血管障害のリスクを減少させるか否かを検討した。その結果は、DPP-4阻害薬がメトホルミンと比較して重度腎不全のリスクを約3.5倍に増加させる可能性を示唆しており、DPP-4阻害薬が多用されているわが国の2型糖尿病診療に及ぼす影響は少なくない。 英国プライマリケアのデータベースであるQResearchデータベースを用いて、2007年4月1日から2015年1月31日の間に、2型糖尿病と診断された患者46万9,688例(25~84歳)をオープンコホートに組み込み、DPP-4阻害薬(80%はシタグリプチン)、チアゾリジン薬(90%はピオグリタゾン)、メトホルミン、SU薬、インスリン、その他の血糖降下薬(αGI薬、グリニド薬、SGLT2阻害薬)と5つの臨床アウトカム(失明、高血糖、低血糖、下肢切断、重度腎不全)との関連を検討した(ここで下肢切断は神経障害と考えられている点に注意が必要である)。血糖降下薬は、単剤、2剤併用、3剤併用のすべての組み合わせについてそれぞれ検討した。重度腎不全は、透析導入、腎移植、CKD ステージ5(eGFR<15 mL/min/1.73m2)のいずれかと定義した。それぞれのアウトカムに対するハザード比(HR)を、Cox比例ハザードモデルにより計算した。それぞれの薬剤への暴露(exposure)は、たとえば、ある患者がコホートに組み込まれた最初12ヵ月間はメトホルミンのみ、その後メトホルミンとチアゾリジン薬との併用24ヵ月、その後投薬なし6ヵ月の時点でイベントを発症した場合はメトホルミン単剤12ヵ月、メトホルミン+チアゾリジン薬24ヵ月、無投薬6ヵ月としてモデルに組み込まれた。 観察期間中に、27万4,324例(58.4%)が何らかの血糖降下薬を処方された。そのうちメトホルミンが25万6,024例(投薬群の93.3%)に処方された。一方、DPP-4阻害薬は3万2,533例(投薬群の11.9%)に処方された。その結果は表3に示されているように、メトホルミンのみが失明(HR:0.70、95%信頼区間:0.66~0.75、以下同様)、高血糖(0.65、0.62~0.67)、低血糖(0.58、0.55~0.61)、下肢切断(0.70、0.64~0.77)、重度腎不全(0.41、0.37~0.46)とすべてのアウトカムのリスクを減少させた。 これに基づいて、各薬剤群(単剤、2剤併用、3剤併用)および無投薬群のメトホルミン単剤投与群に対する、それぞれの5つのアウトカムの調整HRが表5にまとめられている。DPP-4阻害薬単剤投与群においては、失明(1.39、0.66~2.93)、高血糖(1.44、0.85~2.43)、低血糖(0.83、0.21~3.33)、下肢切断(1.03、0.33~3.20)、重度腎不全(3.52、2.04~6.07)であり、重度腎不全のリスクのみがメトホルミン単剤投与群に比較して3.52倍増加していた。この重度腎不全のリスク増加は、メトホルミン+DPP-4阻害薬の2剤併用群では消失(0.59、0.28~1.25)していたが、SU薬+DPP-4阻害薬の2剤併用群では残存(3.21、2.08~4.93)していた。さらに、メトホルミン+DPP-4阻害薬+SU薬の3剤併用群においては重度腎不全リスクの増加は認められなかった(0.68、0.39~1.20)。 本論文の結果は、DPP-4阻害薬単剤投与は2型糖尿病患者において重度腎不全のリスクを約3.5倍に増加させる可能性を示唆する。しかし、本論文はRCTではなくコホート研究であるため、因果関係を厳密に証明することは困難である。糖尿病罹病期間、血清クレアチニン値、HbA1c、合併症の有無をはじめとした26の潜在的交絡因子で調整した結果であるが、未知の交絡因子の残存は否定できない。著者らも本論文の限界として、recall bias、indication bias、channelling biasについて論じているが、DPP-4阻害薬を単剤投与された患者(おそらく何らかの理由でメトホルミンが投与できなかった患者)が、重度腎不全発症の高リスク群であった可能性が残るであろう。 単純には、これらの患者は最初から腎機能が悪かったのではないかと考えられるが、表2のbaseline characteristicsを見る限り、血清クレアチニン値はメトホルミン投与群(84.8 μmol/L、0.96 mg/dL)、DPP-4阻害薬投与群(84.9 μmol/L、0.96 mg/dL)であり、両群に差は認められていない。さらに、コホートに組み込まれた時点ですでに腎疾患(kidney diseaseと記載されているが詳細は不明)を有する患者から発症した重度腎不全は解析から除外されている。 DPP-4阻害薬が、尿中アルブミン排泄量を減少させるとの報告は散見されるが2)、病態生理学的および薬理学的にDPP-4阻害薬が重度腎不全を来すメカニズムは説明困難であると思われる。しかし、シタグリプチンの添付文書には重大な副作用に急性腎不全(頻度不明)が記載されている3)4)。したがって、本論文の結果は医薬品安全性監視(pharmacovigilance)の観点から解釈される必要がある。つまり、real worldで発生するDPP-4阻害薬の有害事象シグナルは微小であり、本論文のような膨大なデータの解析によって初めて明らかになったと考えられる。 英国においてはメトホルミンが第1選択薬とされていることから、DPP-4阻害薬の単剤投与はきわめて例外的であるが、わが国においては、メトホルミンではなくDPP-4阻害薬のみを投与されている患者はきわめて多く存在している。メトホルミンとの併用では重度腎不全の発症リスクが増加しないことから、DPP-4阻害薬は第1選択薬ではなく、メトホルミンへの追加薬剤としての位置付けが適切である。

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超低カロリー食+体重管理で2型糖尿病が寛解?

 新たな研究によると、2型糖尿病患者のうち超低カロリー食療法(very-low-calorie diet)のレスポンダーが、少なくとも6ヵ月間、糖尿病寛解の状態にあったという。通常、不可逆性の慢性疾患と見なされることが多い2型糖尿病だが、この研究結果が希望の光になるかもしれない。英国・ニューカッスル大学のSarah Steven氏らによるDiabetes Care誌オンライン版2016年3月21日号掲載の報告。 対象の2型糖尿病患者30例(罹病期間0.5~23年)は、8週間の超低カロリー食療法を実行した。すべての経口剤とインスリンはベースライン時に中止された。段階的に等カロリー食に戻した後、個人に合わせた体系的な体重維持プログラムが実施された。血糖コントロール、インスリン感受性、インスリン分泌、肝臓および膵臓の脂肪含量は、ベースライン時、等カロリー食に戻した後、6ヵ月時点に定量化した。等カロリー食に戻した後、空腹時血漿グルコースが7mmol/L未満に到達した患者をレスポンダーと定義した。 結果は以下のとおり。・体重は、98.0±2.6kgから83.8±2.4kgに低下し、6ヵ月間にわたり安定していた(84.7±2.5 kg)。・等カロリー食に戻した後に空腹時血漿グルコース7mmol/L未満に到達した患者(=レスポンダ―)は12例であり、6ヵ月後の時点での到達者は13例であった。・レスポンダーは非レスポンダーに比べて、糖尿病の罹病期間が短く、当初の空腹時血漿インスリン濃度が高かった。・HbA1cは、レスポンダーの場合7.1±0.3から5.8±0.2%(55±4から40±2mmol/mol、p<0.001)に、非レスポンダーの場合8.4±0.3から8.0±0.5%(68±3から64±5mmol/mol)に低下し、6ヵ月時点でも一定に保たれていた(それぞれ5.9±0.2%と7.8±0.3% [41±2mmol/molと62±3mmol/mol])。

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ピオグリタゾンと膀胱がんリスク~約15万人のコホート研究/BMJ

 ピオグリタゾンの使用は膀胱がんのリスクを高め、使用期間や累積用量の増加に伴いリスクが増大することが、カナダ・ジューイッシュ総合病院のMarco Tuccori氏らの、約15万人を対象とした大規模コホート研究の結果、明らかにされた。また、同じチアゾリジン系(TZD)薬のロシグリタゾンでは関連が認められず、膀胱がんのリスク増大はピオグリタゾンに特有で、クラス効果ではないことが示唆されると結論している。ピオグリタゾンと膀胱がんとの関連については、多くの研究で矛盾する結果が報告されており、より長期間追跡する観察研究が求められていた。BMJ誌オンライン版2016年3月30日号掲載の報告。ピオグリタゾンと膀胱がん発症リスクとの関連を14万5,806例で追跡 研究グループは、英国プライマリケアの1,300万例以上の医療記録が含まれるデータベースClinical Practice Research Datalinkを用い、2000年1月1日~13年7月31日に非インスリン糖尿病治療薬による治療を新たに開始した2型糖尿病患者14万5,806例のデータを解析した(追跡調査期間は2014年7月31日まで)。 解析では、治療開始時にすでにがんが発症していた可能性、ピオグリタゾンによるがん発症までの時間を考慮し、初回処方1年後時点からを使用開始とみなし使用期間を算出。Cox比例ハザードモデルを用い、ピオグリタゾン使用の有無ならびに累積使用期間と累積使用量別に、膀胱がん発症の補正ハザード比(HR)と95%信頼区間(CI)を推算した(年齢、登録年、性別、アルコール関連障害、喫煙状況、BMI、HbA1c、がんの既往歴、膀胱炎や膀胱結石の有無、チャールソン併存疾患指数:CCI、糖尿病治療期間、蛋白尿の有無で補正)。 また、先行研究で膀胱がんのリスク増大とは関連がないとされるTZD薬であるロシグリタゾンでも、同様の解析を実施した。ピオグリタゾンの使用期間が長いほど膀胱がんリスクが増大 追跡調査期間平均4.7(SD 3.4)年、計68万9,616人年において、622例が新たに膀胱がんと診断された(粗発症率[/10万人年]90.2)。 他の糖尿病治療薬と比較し、ピオグリタゾンは膀胱がんのリスク増大と関連していた(粗発症率88.9 vs 121.0、補正後HR:1.63、95%CI:1.22~2.19)。一方、ロシグリタゾンでは膀胱がんのリスク増大との関連は認められなかった(粗発症率88.9 vs 86.2、補正HR:1.10、95%CI:0.83~1.47)。使用期間反応関係および用量反応関係は、ロシグリタゾンでは認められなかったが、ピオグリタゾンでは観察された(補正後HR:>2年:1.78、>2万8,000mg:1.70)。

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糖尿病治療薬、効果の高い組み合わせは?/BMJ

 成人2型糖尿病患者に対し、メトホルミン単剤療法に比べ、メトホルミン+グリプチン、またはグリタゾンの2剤併用療法は、高血糖症リスクを2~4割低下すること、またグリタゾンもしくはグリプチンの単剤療法は、メトホルミン単剤療法に比べ、重度腎不全リスクが約2.6倍高いことなどが明らかにされた。英国・ノッティンガム大学のJulia Hippisley-Cox氏らが、約47万例の2型糖尿病患者を対象に行ったコホート試験の結果で、BMJ誌オンライン版2016年3月30日号で発表した。グリタゾンやグリプチンの臨床試験エビデンスの多くは、HbA1c値といった代替エンドポイントをベースとしたもので、合併症を減らすといった臨床的エンドポイントを評価するものではなかったという。研究グループは、2型糖尿病で長期間投薬治療を受ける大規模集団を対象に、臨床的アウトカムのリスクを定量化する検討を行った。英国1,200ヵ所以上のプライマリケア診療所で約47万例を追跡 2007年4月1日~15年1月31日の間に、英国プライマリケアのデータベース「QResearchデータベース」に参加する診療所1,243ヵ所を通じて、46万9,688例の2型糖尿病患者について前向きコホート試験を行った。被験者の年齢は25~84歳だった。 血糖降下薬(グリタゾン、グリプチン、メトホルミン、SU薬、インスリンその他)の単剤または組み合わせ投与と、切断術、失明、重度腎不全、高血糖症、低血糖症の初発診断記録との関連、および死亡、入院記録との関連を、潜在的交絡因子を補正後、Coxモデルを用いてハザード比(HR)を算出して調べた。単剤、2剤または3剤併用のメリット、リスクが明らかに 追跡期間中にグリタゾンの処方を受けたのは2万1,308例(4.5%)、グリプチンの処方を受けたのは3万2,533例(6.9%)だった。 グリタゾン使用は、非使用に比べ、失明リスクが約3割低かった(補正後ハザード比[HR]:0.71、95%信頼区間[CI]:0.57~0.89、発症率:14.4件/1万人年)。一方で低血糖症リスクは約2割増大した(同:1.22、1.10~1.37、65.1件/1万人年)。 グリプチン使用では、低血糖症リスク低下との関連が認められた(同:0.86、0.77~0.96、45.8件/1万人年)。 一方で、被験者のうちグリタゾンやグリプチン単剤療法を行った割合は低かったものの、メトホルミン単剤療法に比べ、重度腎不全リスクは約2.6倍の増大がみられた(補正後HR:2.55、95%CI:1.13~5.74)。 併用に関しては、メトホルミン+グリプチン、またはメトホルミン+グリタゾンの2剤併用療法は、メトホルミン単剤療法に比べ、いずれも高血糖症リスクは低下した(それぞれの補正後HRは0.78と0.60)。 メトホルミン+SU薬+グリタゾンの3剤併用療法は、メトホルミン単剤療法に比べ、失明リスクを3割強減少した(同:0.67、同:0.48~0.94)。 メトホルミン+SU薬+グリタゾンまたはグリプチンの各3剤併用療法は、メトホルミン単剤療法に比べ、低血糖症リスクを5~6倍に増大したものの(それぞれ補正後HR:5.07、6.32)、同リスクはメトホルミン+SU薬の2剤併用療法と同程度だった(同:6.03)。

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妊娠中のカフェイン摂りすぎが子供の体脂肪を増やす?

 妊娠中のカフェイン摂取と低体重児出産との関連性は以前から指摘されており、出生時の低体重は、後の体脂肪分布とインスリン抵抗性に悪影響を与えることが示唆されている。これを踏まえ、オランダ・エラスムス医療センターのEllis Voerman氏らは、母親の妊娠中のカフェイン摂取と、その子供の初期生育、就学年齢時の体脂肪分布との関連性を調査した。その結果、妊娠中のカフェイン多量摂取は、子供の成長パターンや後の体脂肪分布へ悪影響を及ぼす可能性が示唆されたという。Obesity (Silver Spring)誌オンライン版2016年3月26日号掲載の報告。 本研究は人口ベースの出生コホートで、7,857人の母親とその子供が対象となった。母親の妊娠中のカフェイン摂取量については、アンケート調査によって評価を行った。また、子供の出生時からの成長特性、6歳時点での体脂肪とインスリン値を測定した。 結果は以下のとおり。・妊娠中の1日当たりのカフェイン摂取量が2単位未満(1単位=コーヒー1杯に含まれるカフェイン量90mgに相当)の母親の子供に比べて、6単位以上の母親の子供では、出生時の体重が低く、出生時から6歳までの体重増加が大きく、6ヵ月から6歳までのBMIが高い傾向にあった。・(妊娠中の1日当たりのカフェイン摂取量が)4~5.9単位および6単位以上の母親の子供は共に、幼児期のBMIと総体脂肪量がより高い傾向にあった。・(妊娠中の1日当たりのカフェイン摂取量が)6単位以上の母親の子供は、アンドロイド/ガイノイド脂肪量比がより高かった。

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乾癬治療、メタボリックシンドロームの及ぼす影響は

 2016年3月10日、都内にて「気をつけたい 乾癬の併存疾患とその臨床」をテーマにセミナーが開催された(主催:日本イーライリリー株式会社)。演者は多田 弥生氏(帝京大学医学部 皮膚科 准教授)。 乾癬は、皮膚に生じる厚い銀白色の鱗屑を伴った紅斑が特徴の、慢性・再発性の炎症性角化症である。青年~中年期に好発し、皮膚症状だけでなく何らかの疾患を併発することが多い。とくに頻度の高い併存疾患として、メタボリックシンドローム、高尿酸血症、心血管障害、脂肪肝、関節炎、ぶどう膜炎がある。今回は、乾癬とメタボリックシンドロームの関係を中心に、セミナーの概要を紹介する。乾癬とメタボを結び付ける鍵は「アディポカイン」 乾癬はメタボリックシンドロームが加わることで、慢性的な全身の炎症が促進され、インスリンの抵抗性が増す。この結果、血管内皮細胞障害を経て動脈硬化が進行し、心筋梗塞のリスクが増加する。これら一連の現象は「乾癬マーチ1)」と呼ばれ、広く知られている。それに加えて、近年、脂肪細胞が分泌している「アディポカイン」が乾癬の炎症に関わると注目されている。 アディポカイン(アディポサイトカイン)は、脂肪細胞から分泌される生理活性タンパク質の総称である。肥満が亢進すると、TNF-αに代表される炎症性アディポカインの生産が過剰になり、アディポネクチンなどの抗炎症性アディポカインの生産が減少する。肥満によって、このアディポカインの分泌異常により体内のインスリン抵抗性が増加することで、メタボリックシンドロームをはじめ、さまざまな併存疾患が生じる。乾癬は炎症性アディポカインによって症状が悪化するため、メタボリックシンドロームは、それ自体が乾癬をより悪化させる方向に働く。減量すると、乾癬症状が軽快する 乾癬の病勢が強いほど高血圧、高トリグリセライド血症、高血糖、肥満などメタボリックシンドロームの各要素との併存率が高い2)。そのため、肥満は乾癬を悪化させ、乾癬の悪化がメタボリックシンドロームにつながるという悪循環に陥る。 しかし、減量して、脂肪細胞を健常時に近い状態に戻せば、乾癬の症状が改善することもあるという。実際に、多田氏は体重の大幅な減量を達成することで、乾癬が改善した例を数例経験している。また、減量による治療効果の出やすさも実感している。よって、乾癬の患者はメタボリックシンドロームの改善を行う必要がある。とりわけ肥満患者については、治療開始に当たって、まず体重の減量を指導することが大切である。 また、痩せ型患者であっても、隠れメタボの存在を考慮し、患者の状態に合った適切な指導を行う必要がある。併存疾患の早期治療には、他科との連携が必要 メタボリックシンドロームをはじめとした併存疾患を放置していると、乾癬患者は非常に重篤な状態に陥ることがある。そのため、多田氏は、皮膚科医が具体的な問診を行うことで早期に併存疾患を発見し、時には他科と相談しながら早期治療を行うことが重要である、と主張した。「皮膚科医が、適切な問診で乾癬患者の併存疾患を早期に発見し、適切な診療科に早期に紹介し、専門的な治療につなげていくことで患者のリスクを軽減できる」と強調した。 また、乾癬の重篤化が併存疾患のリスクを高めることを述べたうえで、重症例では生物学的製剤導入による炎症抑制が併存疾患の予後改善につながる可能性がある、と治療強化の重要性も訴え、セミナーを結んだ。参考文献1)Boehncke WH,et al. Exp Dermatol. 2011;20:303 -307.2)Langan SM,et al. J Invest Dermatol. 2012;132:556-562.

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2型糖尿病における基礎インスリンとGLP-1受容体作動薬の配合剤の有用性は…(解説:吉岡 成人 氏)-506

基礎インスリンとGLP-1受容体作動薬の併用 米国糖尿病学会(American Diabetes Association:ADA)の推奨する2型糖尿病の治療アルゴリズムでは、第1選択薬はメトホルミンであり、単剤→2剤併用(注射薬であるインスリン、GLP-1受容体作動薬との併用も可)→3剤併用とステップアップして、最終的な注射薬との併用療法として、メトホルミンをベースに基礎インスリンと食事の際の(超)速効型インスリン製剤の併用(強化インスリン療法)、または、基礎インスリンとGLP-1受容体作動薬の併用が勧められている。肥満が多い欧米の糖尿病患者においては、肥満を助長せず、食欲を亢進させないGLP-1受容体作動薬が広く使用されている。基礎インスリンとGLP-1受容体作動薬の配合剤の有用性を検討 現在、Novo Nordisk社では持効型溶解インスリンアナログ製剤であるインスリンデグルデク(商品名:トレシーバ)とGLP-1受容体作動薬であるリラグルチド(同:ビクトーザ)の固定用量配合剤(3ml中に300単位のインスリンデグルデク、10.8mgのリラグルチドを含むプレフィルドタイプのペン製剤;one dose stepにインスリンデグルデク1単位、リラグルチド0.036mgを含有)に関する臨床試験を行っており、本論文は、配合剤と持効型溶解インスリン製剤であるグラルギン(同:ランタス)を使用してタイトレーションを行った際の有用性を比較検討した試験である。 10ヵ国、75施設から患者をリクルートした多施設国際共同試験であり、ランダム化、オープンラベルの第III相試験である。グラルギン20~50Uと1,500mg以上のメトホルミンの併用でも血糖コントロールが不十分(HbA1c>7.0~10.0%)な2型糖尿病患者557例(平均年齢58.8歳、男性が51,3%、平均BMI:31.7kg/m2)を対象として、空腹時血糖値72~90mg/dLをターゲットに、週に2回、デグルデク/リラグルチドないしはグラルギンでタイトレーションを行う2群に分け、26週にわたって経過を観察した試験である。デグルデク/リラグルチド群(278例)では、16 dose steps(デグルデク16単位、リラグルチド0.6mg)から開始し、50 dose steps(デグルデク50単位、リラグルチド1.8mg)まで増量し、グラルギン群(279例)では最大投与量に上限値を設けずに増量するというプロトコルを採用している。デグルデク/リラグルチド群ではHbA1c、体重が有意に低下、低血糖の頻度も減少 その結果、デグルデク/リラグルチド群ではHbA1cが-1.81%(8.4→6.6%)、グラルギン群-1.13%(8.2→7.1%)となり、推定治療差(ETD)は-0.59%(95%信頼区間:-0.74~-0.45)と非劣性基準を満たし、統計的な優越性基準も満たした(p<0.001)。また、体重についてもデグルデク/リラグルチド群では1.4kg減少し(グラルギン群では1.8kg増加)、低血糖はデグルデク/リラグルチド群で2.23件/患者年(ランタス群では5.05件/患者年)と有意に少なかった。非重篤な胃腸障害はデグルデク/リラグルチド群で79件、グラルギン群で18件とデグルデク/リラグルチド群で多かったが、重篤な有害事象の頻度に差はなかった。日本におけるデグルデク/リラグルチド配合剤の有用性は… 日本ではリラグルチド(商品名:ビクトーザ)、エキセナチド(同:バイエッタ)、エキセナチド持続性注射剤(ビデュリオン)、リキシセナチド(リキスミア)、デュラグルチド(トルリシティ・アテオス)の5種類のGLP-1受容体作動薬が発売されている。インスリンや経口糖尿病治療薬との併用についての保険適用で、薬剤間に若干の差はあるものの、副作用としての嘔気などの消化管機能障害のため、適正な用量までの増量が難しい患者が少なくない。また、発売当初に期待されていた膵β細胞の保護機能に関する臨床データは得られておらず、体重減少や血糖管理が長期間にわたり持続する症例は期待されたほど多くはなく、薬剤の有用性を実感しにくいことも事実である。しかし、週1回製剤のデュラグルチドは注射の操作も簡単であり、認知機能が低下した高齢者などに対して、患者や家族ではなく訪問看護師や地域の一般医が週に1回の注射を行うことで安定した血糖管理が得られる症例もあり、今後幅広く医療の現場で使用される可能性も示唆されている。 いずれにしても、欧米人ほどは大量のインスリンを必要とせず、BMI30kg/m2を超える肥満2型糖尿病患者がさほど多くない日本において、インスリンとGLP-1受容体作動薬の配合剤がどの程度の価格で発売され、どのようなタイプの患者にとって福音となるのか、慎重な検討が必要であろう。

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IRIS試験:脳梗塞とピオグリタゾン-インスリン抵抗性改善薬が経た長い道のり-(解説:住谷 哲 氏)-500

 本論文のタイトルを見た時には、2型糖尿病患者における脳梗塞(以下では虚血性脳卒中および一過性脳虚血発作を脳梗塞とする)の再発予防にピオグリタゾンが有効なのかと思ったが、正しくは「インスリン抵抗性および脳梗塞の既往を有する非糖尿病患者に対して、ピオグリタゾンの投与は脳梗塞または心筋梗塞の発症リスクを有意に抑制した」との内容である。ピオグリタゾンの2型糖尿病患者における心血管イベントの2次予防効果を検討したPROactive試験1)の結果についてはいろいろと議論があるが、本試験の結果の解釈についても注意が必要と思われる。少なくとも2型糖尿病患者の脳梗塞再発を予防するために明日の外来からピオグリタゾンを積極的に投与すべきである、との結果ではない。 インスリン抵抗性が2型糖尿病患者の心血管イベント発症に深く関与していることは、以前から知られている。したがって、インスリン抵抗性改善薬が心血管イベント発症予防に有効だろうと考えるのは自然である。そこで「ピオグリタゾンによるインスリン抵抗性の改善は2型糖尿病患者における心血管イベントリスクを減少させる」との仮説を証明する目的でPROactive試験が行われたが、結果は解析手法の問題もあり、その仮説は証明されなかった。つまり、インスリン抵抗性を改善することで2型糖尿病患者の心血管イベントが抑制されるか否かは、これまで不明であった。 PROactive試験において、ピオグリタゾンの投与により脳梗塞の発症は抑制されなかったが(ハザード比:0.81、95%信頼区間:0.61~1.07)、その後に発表されたサブ解析では、脳梗塞既往患者においてピオグリタゾンの投与により、脳梗塞再発が47%(95%信頼区間:0.34~0.85、p=0.009)減少することが報告された2)。本試験Insulin Resistance Intervention after Stroke (IRIS)が、ClinicalTrial.govに登録されたのが2004年であることを考えると、本試験の対象患者が心筋梗塞ではなく、脳梗塞既往患者が選択されたのもそのあたりに理由があるのかもしれない。しかしその後、同じくチアゾリジン薬に属するロシグリタゾンが心筋梗塞を増加させる可能性が指摘され、さらに、ピオグリタゾンと膀胱がんとの関連も示唆される中で、インスリン抵抗性改善薬に対する熱狂は潮が引くように冷めていった。本試験は、そのような四面楚歌の状況下で地道に続けられていた臨床試験が、ようやく実を結んだといって良い。実臨床で使用され始めてから20年後に、ようやくインスリン抵抗性改善薬の心血管イベント抑制作用が証明されたのである。 本試験では、試験参加6ヵ月以内に脳梗塞を発症した、HOMA-IR>3.0で定義されるインスリン抵抗性を有する非糖尿病患者3,876例を、プラセボ群とピオグリタゾン群に分けて、中央値4.8年にわたり観察した。主要評価項目は、致死性・非致死性脳梗塞および致死性・非致死性心筋梗塞からなる複合エンドポイントとされた。その結果、ピオグリタゾン投与群で主要評価項目が24%減少した(ハザード比:0.76、95%信頼区間:0.62~0.93、p=0.007)。全死亡については両群に差を認めなかった。しかし、副次評価項目である脳梗塞の発症は、ピオグリタゾン群で減少傾向はあるようにみえるが有意差はついていない(ハザード比0.82、95%信頼区間:0.61~1.10、p=0.19)。脳梗塞の再発予防に対する、ピオグリタゾンの効果を検討する目的であれば、脳梗塞の発症のみを主要評価項目に設定すべきであると思われるが、なぜこのような複合エンドポイントになったのかは記載がない。 ピオグリタゾンを使用する際に、現在最も懸念されているのは心不全および骨折である。心不全の発症に関しては、NYHA III、IVの患者およびNYHA IIでEFの低下している患者は最初から除外されており、さらに、心不全の発症を予防するためのアルゴリズムに基づいて、適宜薬剤の減量が行われたため両群に有意な差はなかった。一方、骨折はピオグリタゾン投与群で明らかに増加しており、100例の患者に5年間ピオグリタゾンを投与すると、3例の患者で脳梗塞および心筋梗塞の発症が予防できるが、入院または手術を必要とする骨折が2例発生する計算となった。 インスリン抵抗性改善薬であるピオグリタゾンが、心血管イベント発症のリスクを低下させることを初めて明らかにした点において、本試験は重要である。しかし、本試験の結果を実臨床に適用するためには下記の点に留意する必要がある。(1)対象は2型糖尿病患者ではない。(2)インスリン測定系は現時点で国際的に統一されていないのでHOMA-IR>3.0は目安程度の意味しかない。(3)脳梗塞および心筋梗塞の複合エンドポイントのリスクが減少したことが示されたのであり、脳梗塞再発予防効果が示されたのではない。(4)心血管イベントの再発予防と引き換えに、入院または手術を必要とする骨折が同程度に増加する可能性がある。 今後、2型糖尿病患者において同様の試験が行われることを期待したいが、現実にはその可能性はきわめて小さいだろう。本論文に対する付属論評でも指摘されているように3)、今後はprecision-medicine approach、つまりピオグリタゾン投与によるリスク・ベネフィット比が最も高い一群(ピオグリタゾン投与により心血管イベントは減少するが心不全、骨折などは増加しない一群)をDNA解析などの結果により投与前に同定し、その一群に対してのみ投与を行うことになっていくだろう。

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コントロール不良の糖尿病へのデグルデク+リラグルチド vs.グラルギン増量/JAMA

 インスリン グラルギンとメトホルミンによる治療中でコントロール不良の2型糖尿病患者に対し、インスリン デグルデク/リラグルチド治療はインスリン グラルギン増量治療と比べて、26週時点の評価でHbA1c値の低下値について非劣性が確認され、2次解析によりその値が有意に大きかったことが確認された。米国・テキサス大学のIldiko Lingvay氏らが、2型糖尿病患者557例について行った第III相無作為化非盲検比較試験の結果、示された。JAMA誌2016年3月1日号掲載の報告。26週後のHbA1c値、体重などの変化を比較 研究グループは、2013年9月~14年11月に10ヵ国75ヵ所の医療機関を通じて、2型糖尿病でインスリン グラルギン(20~50U)とメトホルミン(1,500mg/日以上)治療中だが、HbA1c値が7~10%とコントロール不良の、BMI40以下の患者557例を対象にtreat-to-target法にて試験を行った。 被験者を無作為に2群に分け、一方にはインスリン デグルデク/リラグルチド(278例、最大投与量:デグルデク50U/リラグルチド1.8mg)の治療を行い、もう一方にはインスリン グラルギンを目標血糖値72~90mg/dLで週2回増量する治療(279例、最大投与量設定なし)を行った。 主要評価項目は、26週後のHbA1c値の変化で、非劣性マージンは0.3%とした。デグルデク/リラグルチド群の非劣性が示された場合、副次エンドポイントとして、優越性について評価し、また、HbA1c値の変化以外に体重の変化、低血糖エピソードなども評価した。体重変化、低血糖イベント発生率も、デグルデク/リラグルチド群の優越性確認 被験者の平均年齢は58.8歳、うち女性は49.7%だった。26週時点で追跡可能だった92.5%について分析を行った。 HbA1c値の変化幅は、グラルギン増量群が-1.13%に対し、デグルデク/リラグルチド群は-1.81%で、推定治療差(ETD)-0.59%(95%信頼区間[CI]:-0.74~-0.45)と、非劣性基準を満たし(p<0.001)、統計的な優越性基準も満たした(p<0.001)。 また、体重変化についても、グラルギン増量群1.8kg増に対し、デグルデク/リラグルチド群は-1.4kgと減少がみられた(ETD:-3.20kg、同:-3.77~-2.64、p<0.001)。 確認された低血糖イベントについても、グラルギン増量群が5.05件/患者投与年に対し、デグルデク/リラグルチド群は2.23件/患者投与年と有意に少なかった(推定率比:0.43、95%CI:0.30~0.61、p<0.001)。 全体的にみて、また重篤有害事象率についても、両群で差はみられなかった。ただし、非重篤だが消化器系有害事象の報告が、デグルデク/リラグルチド群で多かった(79件 vs.18件)。 これらの結果を踏まえて著者は、「さらなる長期間の有効性、安全性の評価が求められる」と結論している。

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妊娠とメトホルミン-本当に「禁忌」なのか?-(解説:住谷 哲 氏)-492

 肥満人口の増加とともに、耐糖能異常を合併した妊婦の数も増加している。耐糖能異常合併妊娠は、妊娠前糖尿病(pregestational diabetes)、overt diabetes in pregnancy、妊娠糖尿病(gestational diabetes:GDM)に分類されるが、その管理目標は母児の周産期合併症を予防することにある。妊娠中の血糖管理の基礎は食事療法であるが、血糖降下薬を必要とする場合は少なくない。ある薬剤が妊娠中に使用できるかどうかについては、わが国には明確な基準がなく、米国FDAのpregnancy category(薬剤胎児危険度分類基準)を参考にすることが多い。妊娠中に使用できる血糖降下薬はインスリンのみで、他の血糖降下薬は「禁忌」と一般的に考えられているが、本論文で使用されたメトホルミンはカテゴリーBに分類され、実は妊婦に対して使用可能である(ただし、わが国の添付文書には妊婦への投与は禁忌と記載されている)。 GDMに対するメトホルミン投与の有用性が広く知られるようになったのは、2008年に報告されたMiG(Metformin versus Insulin for the Treatment of Gestational Diabetes)試験が契機である1)。この試験では、751例のGDM患者を、メトホルミン2,500mg投与群とインスリン投与群に分け、本論文とほとんど同様のアウトカムを評価した。その結果、主要評価項目では両群に有意差を認めず、胎児に対する有害事象の発症率も両群で有意差を認めなかった。しかし、試験で割り振られた治療を再度選択したいと答えた患者がメトホルミン群で有意に多かった。さらに、この試験で誕生した新生児の満2歳時の体格および体組成を比較した結果が報告されているが、メトホルミン投与群の母親から誕生した子供は、インスリン投与群に比較して、より皮下脂肪が多く内臓脂肪が少ないことが示された(MiG TOFU)2)。その後も、GDMに対するメトホルミンの有用性を検討した試験が行われ、それらを統合したsystematic reviewにおいては、インスリンに対するメトホルミンの優越性が結論されている3)。 以上述べたように、GDMに対するメトホルミンの有用性はすでに確立している。そこで、本論文においてはさらに一歩進んで、耐糖能異常を合併しない肥満合併妊婦に対するメトホルミンの有用性が検討された。対象患者は、高リスクの妊婦を選択する目的でBMI>35とされた。また、メトホルミン投与量不足の可能性を最小にするため、投与量は3,000mg/日とされた。その結果は、主要評価項目である新生児出生体重Zスコア中央値は両群間に有意差を認めなかったが、妊娠高血圧腎症(妊娠中毒症)の発症率は、メトホルミン投与群でオッズ比0.24 (95%信頼区間:0.10~0.61、p=0.001)に減少した。さらに、新生児の有害アウトカムの発症率も両群に差はなかった。 本試験およびMiG試験の結果からいえることは、その有用性に加えて、妊婦に対するメトホルミンの安全性であろう。当然ながら両試験において、乳酸アシドーシスは1例も発生していない。もちろん、今後も引き続きメトホルミン投与群の妊婦から誕生した新生児に対する長期的な観察が必要であることは言うまでもない。しかし、耐糖能異常合併妊娠のみならず、肥満合併妊娠も増加しているわが国においても、妊娠におけるメトホルミンの位置付けを再考する必要があると考えられる。

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がん免疫療法薬・安全性は「多職種連携」がカギ

 2016年2月17日、都内にて「がん免疫療法で変わる肺がん治療」をテーマにプレスセミナーが開催された(主催:小野薬品工業株式会社/ブリストル・マイヤーズ株式会社)。脚光を浴びているがん免疫療法、安全性は? ニボルマブ(商品名:オプジーボ)は2014年9月に発売された、世界初の抗PD-1モノクローナル抗体で、がん免疫療法薬と呼ばれている。がん免疫療法は従来の化学療法や手術、放射線療法とはまったく異なる新たな治療法で、身体の免疫系に直接作用してがんと闘う機序を持つ。本邦において、ニボルマブは「根治切除不能な悪性黒色腫」「切除不能な進行・再発の非小細胞肺癌」の2つの疾患に適応がある。免疫系に作用するという新しいアプローチと、治験時における有害事象、とくに骨髄抑制の少なさからがん治療において大きな期待を寄せられている。 しかし、使用経験の蓄積からこれまでの薬剤では経験のない免疫関連有害事象が報告されている。注意すべき、免疫関連有害事象とは? がん免疫療法薬は全身の臓器にも働きかけるといわれており、過度の免疫反応により免疫関連有害事象が複数の臓器で報告されている。演者の中西 洋一氏(九州大学大学院 呼吸器内科学分野 教授)は、とくに注意すべき副作用として間質性肺炎、重症筋無力症、劇症1型糖尿病、甲状腺機能障害の4つを挙げた。 とくに劇症1型糖尿病は、インスリンを産生する膵島細胞の急速な破壊により急激に高血糖を来す。また、時には致死的であり、たとえ回復してもインスリン産生の枯渇により、血糖コントロール困難となり、社会生活に高度の支障を来す重大な疾患である。ニボルマブの臨床試験において、劇症1型糖尿病は報告されていなかったが、使用経験の蓄積により報告が上がってきた。2016年1月に日本腫瘍学会と日本糖尿病学会より、連名でステートメントが出たことは記憶に新しい1)。副作用に立ち向かうには? 九州大学病院の事例 上記の重症筋無力症、劇症1型糖尿病、甲状腺機能障害などの副作用は必ずしもオプジーボを使用している医師の専門であるとはいえない。このような副作用に、どのように対応していけばよいのだろうか? 対応策の一例として、中西氏は九州大学病院の「免疫チェックポイント阻害薬適正使用委員会」を挙げた。同委員会では、副作用対策において、呼吸器内科・腫瘍内科・皮膚科など免疫療法実施診療科を、他の専門科や看護師、薬剤師、ソーシャルワーカーなどがサポートする、診療科・職域横断的なチェック体制づくりに取り組んでいる。専門外の医師をはじめとし、看護師・薬剤師などコメディカルとの連携によって、副作用の早期発見や適切な管理、細やかな対応が可能になるという。 ニボルマブは安全性の面以外にも、コストとの兼ね合い、バイオマーカーの探索、他剤との併用などさまざまな点に課題があるものの、これまで治療の選択肢に難渋していた患者にとって希望の光となりうる薬剤である。しかし、2016年2月より包括医療費支払い制度(DPC)の対象外となったため、今後さらなる使用患者数の増加が予想され、これに伴い予期せぬ副作用が生じる可能性も否定できない。治療医師のみならず、多職種が連携することで患者にとって最適な医療を行うことが望まれる。【参考】1)免疫チェックポイント阻害薬に関連した劇症 1 型糖尿病の発症について(PDFがダウンロードされます)

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インスリン抵抗性の脳梗塞/TIA例、ピオグリタゾンが効果/NEJM

 非糖尿病だがインスリン抵抗性を認め、虚血性脳卒中または一過性脳虚血発作(TIA)を発症した患者に対し、ピオグリタゾンを投与することで、脳卒中または心筋梗塞リスクがおよそ4分の3に減少することが示された。糖尿病の発症リスクについても、ピオグリタゾン投与により半減したという。米国・イェール大学のW.N. Kernan氏らによる4,000例弱を対象に行った多施設共同無作為化二重盲検試験の結果で、NEJM誌オンライン版2016年2月17日号で発表された。HOMA-IRが3.0超の患者にピオグリタゾンを投与 虚血性脳卒中/TIAを発症した患者では、現行の予防的治療を行っても将来的な心血管イベントのリスクが高い。一方で、脳卒中や心筋梗塞のリスク因子としてインスリン抵抗性が確認されており、インスリン感受性を改善するピオグリタゾンは脳血管疾患を有する患者に対してベネフィットをもたらす可能性が示唆されている。 そこで研究グループは、糖尿病ではないが、インスリン抵抗性指標HOMA-IRが3.0超であり、最近、虚血性脳卒中またはTIAを発症した3,876例を対象に、ピオグリタゾンの有効性と安全性を調べる試験を行った。 被験者を無作為に2群に分け、一方にはピオグリタゾン(目標用量:1日45mg)を投与し(1,939例)、もう一方の群にはプラセボを投与した(1,937例)。 主要評価項目は、致死的・非致死的脳卒中または心筋梗塞だった。脳卒中・心筋梗塞リスクは0.76倍、糖尿病リスクは0.48倍に 被験者は2005~13年に、179の病院またはクリニックで集められた。両群とも平均年齢は63.5歳、グリコヘモグロビン値は5.8%、HOMA-IR中央値はピオグリタゾン群4.7、プラセボ群4.6、糖尿病(2010米国糖尿病学会ガイドラインに基づく)はそれぞれ6.0%、6.7%であった。 追跡期間の中央値は4.8年、試験中断は227例(5.9%)、追跡不能は99例(2.6%)だった。 解析の結果、脳卒中または心筋梗塞が発生した患者は、プラセボ群228/1,937例(11.8%)に対し、ピオグリタゾン群では175/1,939例(9.0%)と、有意に低率だった(ハザード比[HR]:0.76、95%信頼区間[CI]:0.62~0.93、p=0.007)。 糖尿病を発症したのは、プラセボ群が149例(7.7%)に対し、ピオグリタゾン群では73例(3.8%)と、発症率は半分以下に低下した(HR:0.48、95%CI:0.33~0.69、p<0.001)。 一方で、全死因死亡率は両群で同等だった(HR:0.93、95%CI:0.73~1.17、p=0.52)。 なおピオグリタゾン群は、4.5kg超の体重増(ピオグリタゾン群52.2% vs.プラセボ群33.7%、p<0.001)、浮腫(それぞれ35.6% vs.24.9%、p<0.001)、手術や入院を要する骨折(それぞれ5.1% vs.3.2%、p=0.003)に関して、いずれも有意にリスクが高かった。

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肥満イコール不健康ではない

 BMIで肥満であることが必ずしも不健康であるとは言えないようだ。今回、カリフォルニア大学ロサンゼルス校のA. Janet Tomiyama氏らが報告した研究によって、BMIは心血管代謝の健康と相関するものではないことが明らかになった。International Journal of Obesity誌オンライン版2016年2月4日号に掲載。 本研究では、2005~12年に米国国民健康栄養調査(NHANES)に参加した18歳以上の成人4万420例を対象に、血圧、トリグリセライド、コレステロール、グルコース、インスリン抵抗性、C反応性蛋白の値を用いて代謝的に健康な人と不健康な人の集団内頻度と割合を算出し、BMIにより層別化した。 結果は以下のとおり。・過体重者の約半数、肥満者の29%、さらに肥満度II~IIIの肥満者の16%が代謝的に健康であった。・正常体重者の30%超で、心血管代謝が不健康であった。・人種とBMIの有意な交互作用は見られなかったが、性別とBMIの有意な交互作用が認められた(F(4,64)=3.812、p=0.008)。

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DPP-4阻害薬の動脈硬化抑制、インスリン治療患者でも

 順天堂大学の三田 智也氏らは、2型糖尿病患者においてDPP-4阻害薬(アログリプチン)投与による動脈硬化進展抑制をすでに報告している(Diabetes Care. 2016;39:139-48)。今回、同氏らは、動脈硬化が進展していると考えられるインスリン治療中の2型糖尿病患者でのDPP-4阻害薬の影響を検証するため、シタグリプチン併用による頸動脈内膜中膜複合体肥厚度(IMT)への影響を評価した。その結果、シタグリプチンが通常治療に比べて頸動脈IMTの進展を抑制させることが認められた。Diabetes Care誌オンライン版2016年1月28日号に掲載。 本試験(SPIKE試験:Sitagliptin Preventive Study of Intima-Media Thickness Evaluation)は前向き、無作為化、オープン、エンドポイントブラインド、多施設、並行群間比較研究である。12施設で募集した、心血管疾患の既往がないインスリン治療下の2型糖尿病患者282例を、シタグリプチン併用群(142例)と通常治療群(140例)にランダムに割り付けた。主要アウトカムは、治療開始104週後における超音波検査による頸動脈の平均IMTと最大IMTの変化とした。 主な結果は以下のとおり。・シタグリプチン併用群では、通常治療群と比較して、低血糖エピソードや体重増加を伴うことなく、より強力な血糖降下作用が認められた(-0.5±1.0% vs.-0.2±0.9%、p=0.004)。・平均IMTと左の最大IMTの変化量は、シタグリプチン併用群が通常治療群と比較し、有意に大きかった(平均IMT:-0.029 [SE 0.013] vs.0.024 [0.013]mm、p=0.005、左の最大IMT:-0.065[0.027] vs.0.022[0.026]mm、p=0.021)。右の最大IMTについては有意ではなかった(-0.007[0.031] vs. 0.027[0.031]mm、p=0.45)。・シタグリプチン併用群では、平均IMTと左の最大IMTについて、104週にわたって、ベースラインに対して有意に減少した。

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統合失調症発症にビタミンDがどう関与しているのか

 統合失調症とビタミンDとの関連について、米国・マサチューセッツ医科大学のMathew Chiang氏らが臨床レビューを行った。Evidence-based mental health誌2016年2月号の報告。・ビタミンDがカルシウムのホメオスタシスおよび骨の健康において、重要な役割を担っていることは知られている。・ビタミンDは、日光によるUVB照射により皮膚から内因的に生成される。そして、ビタミンDは現在、脳の発達や正常な脳機能に重要な役割を有する強力な神経ステロイドホルモンであると考えられており、その抗炎症特性は、ヒトの健康のさまざまな側面に影響を与えることが知られている。・ビタミンDリガンド受容体(ビタミンDの生理学的作用の多くを仲介する受容体)は、中枢神経系を含む身体全体で見つかっている。・ビタミンD欠乏は、統合失調症など重篤な精神疾患を有する患者で一般的に認められる。・統合失調症のいくつかの環境リスク因子(誕生した季節、緯度、移住)は、ビタミンD欠乏症と関連付けられる。そして、最近の研究では、統合失調症の発症におけるビタミンDの潜在的な役割が示唆されている。たとえば、新生児のビタミンDの状態と、その後の肥満やインスリン抵抗性、糖尿病、脂質異常症および心血管疾患の発症リスクとの関連が、統合失調症患者でよく認められている。ビタミンD欠乏が、これら代謝の問題に関連していることは明らかになっている。・生物学的メカニズムは、炎症の調節や免疫プロセスにおけるビタミンD作用と関連しており、その結果、臨床症状の発現や統合失調症の治療反応に影響する。・ビタミンD補充の潜在的なベネフィットとして、統合失調症症状の改善および統合失調症患者の身体的健康についても、今後の研究で検討されるべきである。関連医療ニュース 統合失調症、ビタミンD補充で寛解は期待できるか 女はビタミンB6、男はビタミンB12でうつリスク低下か EPA、DHA、ビタミンDは脳にどのような影響を及ぼすか

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がん治療で気付いてほしい1型糖尿病

 1月29日、日本糖尿病学会(理事長:門脇 孝氏)は、日本臨床腫瘍学会(理事長:大江 裕一郎氏)とともにお知らせとして「免疫チェックポイント阻害薬に関連した1型糖尿病ことに劇症1型糖尿病の発症について」と題し、注意喚起を行った。 抗PD-1(programmed cell death-1)抗体をはじめとする免疫チェックポイント阻害薬は、抗がん剤として発売され、また現在も多くが開発されている。そのうち、ヒト型抗ヒトPD-1モノクローナル抗体であるニボルマブ(商品名:オプジーボ)は、従来の「根治切除不能な悪性黒色腫」に加え、2015年12月17日からは「切除不能な進行・再発の非小細胞肺がん」にも承認され、2016年2月からは包括医療費支払制度の対象外となることもあり、使用患者の増加が予想されている。 そうしたなか、薬事承認以降に因果関係不明例を含め1型糖尿病(劇症1型糖尿病も含む)が7例(うち死亡例はなし)、副作用として報告されている(2015年11月に添付文書は改訂され、「1型糖尿病」が副作用として記載された)。(劇症)1型糖尿病の病態 1型糖尿病は、膵β細胞の破壊により絶対的インスリン欠乏に陥る疾患があり、とりわけ劇症1型糖尿病は、きわめて急激な発症経過をたどり、糖尿病症状出現から早ければ数日以内にインスリン分泌が完全に枯渇し、重篤なケトアシドーシスに陥る病態である。適切に診断し、ただちにインスリン治療を開始しなければ死亡する可能性が非常に高い。しかし、診断時に劇症1型糖尿病の可能性が念頭にないと、偶発的な高血糖として経過観察とされたり、通常の2型糖尿病として誤った対応がなされ、不幸な転帰をたどることも危惧される。 そこで、免疫チェックポイント阻害薬使用中に、急激な血糖値の上昇、もしくは口渇・多飲・多尿・全身倦怠感などの糖尿病症状の出現をみた際には、劇症1型糖尿病の可能性も考慮し、糖尿病専門医との緊密な連携のもと早急な対処が必要となる。また、患者に対しても、劇症1型糖尿病の可能性や、注意すべき症状について、あらかじめ十分に説明しておくことが求められるとしている。参考資料:劇症1型糖尿病診断基準(2012) 下記1~3のすべての項目を満たすものを劇症1型糖尿病と診断する。1. 糖尿病症状発現後1週間前後以内でケトーシスあるいはケトアシドーシスに陥る(初診時尿ケトン体陽性、血中ケトン体上昇のいずれかを認める)。2. 初診時の(随時)血糖値が288mg/dL(16.0 mmol/L)以上であり、かつHbA1c値(NGSP)<8.7%※である。3. 発症時の尿中Cペプチド<10μg/日、または、空腹時血清Cペプチド<0.3ng/mLかつグルカゴン負荷後(または食後2時間)血清Cペプチド<0.5ng/mLである。 ※劇症1型糖尿病発症前に耐糖能異常が存在した場合は、必ずしもこの数字は該当しない。〔参考所見〕 A)原則としてGAD抗体などの膵島関連自己抗体は陰性である。 B)ケトーシスと診断されるまで原則として1週間以内であるが、1~2週間の症例も存在する。 C)約98%の症例で発症時に何らかの血中膵外分泌酵素(アミラーゼ、リパーゼ、エラスターゼ1など)が上昇している。 D)約70%の症例で前駆症状として上気道炎症状(発熱、咽頭痛など)、消化器症状(上腹部痛、悪心・嘔吐など)を認める。 E)妊娠に関連して発症することがある。 F)HLA DRB1*04:05-DQB1*04:01との関連が明らかにされている。詳しくは、「日本糖尿病学会 重要なお知らせ」まで

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必要以上にHbA1cを検査することは糖尿病の過剰治療につながる(解説:吉岡 成人 氏)-468

日本の現状と米国糖尿病学会の推奨 血糖コントロールが安定している2型糖尿病患者において、インスリン製剤を使用していない患者では、どの程度の間隔でHbA1cを測定するのが適切なのであろうか。 私たちの施設では、非薬物療法の場合は3ヵ月から半年に1回、経口糖尿病治療薬を使用している場合は、2~3ヵ月に1回、インスリン治療を行っている患者では、1~2ヵ月に1回の間隔で測定を行っている。糖尿病の専門施設で病診連携を積極的に行っている場合には、2型糖尿病の場合は1年に1~2回程度、しかし、連携先の一般のクリニックでは、おそらく毎月1回程度はHbA1cを測定していると思われる。 米国糖尿病学会(ADA:American diabetes association)ではHbA1cの適正な測定間隔について、・血糖コントロール目標を達成し、安定している場合には少なくとも年に2回以上・治療モードを変更した場合ないしは血糖コントロール目標を達成していない場合には 3ヵ月に1回・HbA1cの簡易測定装置を利用したPOCT(point-of-care testing)によって、より適切に治療モードの変更を行うことができる。と記載している(Standards of Medical Care in Diabetes-2015: Diabetes Care. 2015;38: S34-35.)。 医療費や医療に対するアクセスが日本とは異なる、米国における推奨(Recommendations)をどの程度尊重するかには慎重な姿勢が求められるが、今回、HbA1cの過剰な測定が糖尿病の「過剰治療につながる」という論文がBMJに公表された。安定した2型糖尿病患者でHbA1c測定を3回以上実施するのは過剰治療 インスリン製剤を使用せずに血糖コントロール目標が達成され、維持されている場合は、2型糖尿病では、年に1~2回のHbA1cの測定が「適切」と考えられているため、地域住民を対象とした後ろ向きの調査によって、HbA1cの過剰測定が治療変更へ影響しているかどうかを検討したものである。 全米8,600万人以上の民間保険加入者を対象とした、診療報酬請求データベースであるOptum Labs Data Warehouseおよびメディケア・アドバンテージの2001~14年のデータが解析の対象となっている。 18歳以上で、インスリンを使用せずに血糖コントロールが安定しており(24ヵ月以内の2回の検査でいずれもHbA1c<7.0%)、重症の低血糖や高血糖の既往がない2型糖尿病患者を抽出し解析が行われた。妊娠中の患者は除外されている。HbA1cの測定は2回目の実施を起点としてその後24ヵ月までの実施回数を数え、ガイドラインの推奨回数(6ヵ月ないしはそれ以上の間隔で2回/年まで)、高頻度(3~4回/年)、過剰(5回以上/年)に分類。治療レジメンの変更は、検査の3ヵ月後と3ヵ月前の薬剤の診療報酬請求を比較することで確認している。血糖降下薬の薬剤数の増加、インスリン製剤の追加を「治療の強化」と判定している定義し、脱強化は1つ以上の薬剤を中止した場合とした。 解析の対象となったのは、3万1,545例、平均年齢58±11歳、HbA1cは6.2±0.4%、全体の32.9%は経口糖尿病治療薬を投与されておらず、37.7%は単剤での治療、21.3%は2剤、8.2%が3剤以上の併用であった。 HbA1cの測定頻度が適切でRecommendationに沿っていたのは39.7%であり、過剰が5.8%、高頻度は54.5%であり、およそ60%がRecommendationを超えて実施されていた。 検査回数の多い患者は、年齢が高く、合併症罹患率が高く、糖尿病治療薬の数が多く、HbA1cが高値であり(いずれもp<0.001)、一般医よりも専門医ではHbA1cの測定頻度が高かった。 解析期間中に治療モードの変更がなかった患者は81.6%、血糖コントロールが推奨目標値を満たしたにもかかわらず治療が強化された患者が8.4%認められ、HbA1cの測定が過剰な群で13%、高頻度の測定群で9%、推奨範囲の測定患者では7%と、HbA1cの測定が多いことが過剰治療と関連することが確認された(p<0.001)。HbA1cが過剰に測定された群では、HbA1cの測定が推奨回数にとどまった群に比較して、治療が強化される可能性が有意に高かった(オッズ比:1.35、95%信頼区間:1.22~1.50)。 著者らは、推奨回数以上のHbA1cの測定が過剰な血糖降下薬治療をもたらす可能性があり、過剰な検査が保健医療における無駄を増やし、糖尿病管理における患者の負担を増大させると結論付けている。日本における実情を勘案してみると 医療費が日本と比べ桁違いに高い米国で、保険会社のサポートを受けて実施された後ろ向き観察研究であり、データも保険会社が保有しているものが使用されている。検査回数の適正化が無駄な医療費を減らし、患者の負担を軽減すると結論付けているが、このデータには、治療の中断や未治療の患者は入ってこない。確かに、医療機関を定期的に受診している50代後半のHbA1cが6.2%の患者では、HbA1cの測定は年に数回で構わないのであろうが、診察の機会が少ないことは患者の病識を希薄にし、治療の中断にもつながる。日本においては、未受診や治療を中断している患者が糖尿病患者全体の30%を超えるという現状があることを勘案すると、このデータをそのまま受け止めるのはためらいを感じざるを得ない。

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ビタミンDによるうつ症状軽減の可能性は

 大うつ病性障害(MDD)患者に対する8週間のビタミンD投与は、プラセボと比較してうつ症状を改善し、インスリン抵抗性や酸化ストレスに対しても好影響を及ぼすことが、イラン・カシュハン医科大学のZahra Sepehrmanesh氏らによる無作為化二重盲検試験の結果、報告された。ビタミンDについては、神経伝達物質、代謝プロファイル、炎症性バイオマーカーおよび酸化ストレスに有益な影響を及ぼし、うつ症状を軽減させる可能性が示唆されていた。The Journal of nutrition誌オンライン版2015年11月25日号掲載の報告。 研究グループは、MDD患者へのビタミンD投与が、うつ症状、代謝プロファイル、血清中高感度C反応性蛋白(hs-CRP)、酸化ストレスのバイオマーカーを減少させうるか否かを評価する、無作為化プラセボ対照二重盲検試験を実施した。被験者は、DSM診断基準でMDDと診断された18~65歳の患者40例。ビタミンD 1カプセル(50kIU)/週群(20例)またはプラセボ群(20例)に無作為に割り付け、8週間投与した。 ベースラインと介入後に、空腹時血液サンプルを採取し、関連項目を測定した。主要アウトカムは、ベックうつ病評価尺度(BDI)で評価したうつ症状とした。副次的アウトカムは、グルコースホメオスタシス変数、脂質プロファイル、hs-CRP、酸化ストレスのバイオマーカーなどであった。 主な結果は以下のとおり。・ベースラインにおいて、2群間の平均血清25-ヒドロキシビタミンD濃度は、有意な差が認められた(それぞれ9.2±6.0、13.6±7.9μg/L、p=0.02)。・介入8週後における血清25-ヒドロキシビタミンD濃度の変化は、ビタミンD群(+20.4μg/L)のほうが、プラセボ群(-0.9μg/L)と比べて有意に大きかった(p<0.001)。・ビタミンD群はプラセボ群に比べ、BDIのより大幅な減少傾向が認められた(それぞれ-8.0、-3.3、p=0.06)。・ビタミンD群とプラセボ群の間で、血清インスリン変化(-3.6 vs.+2.9μIU/mL、p=0.02)、ホメオスタシスモデルで推定したインスリン抵抗性(-1.0 vs.+0.6、p=0.01)、同推定のβ細胞機能(-13.9 vs.+10.3、p=0.03)、血漿中総抗酸化能(+63.1 vs.-23.4mmol/L、p=0.04)、グルタチオン(+170 vs.-213μmol/L、p=0.04)について有意差が認められた。(鷹野 敦夫)精神科関連Newsはこちらhttp://www.carenet.com/psychiatry/archive/news

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過度のHbA1c検査が糖尿病治療の過剰化をもたらす/BMJ

 血糖コントロールが安定した2型糖尿病患者の多くでは、糖化ヘモグロビン(HbA1c)の検査回数が多過ぎ、そのため血糖降下薬による治療が過剰となる可能性があることが、米国メイヨークリニックのRozalina G McCoy氏らの検討で示された。米国では、インスリン製剤を使用せずに血糖コントロールが達成、維持され、直近の糖尿病関連の急性合併症がみられない成人2型糖尿病患者(妊婦を除く)には、年に1~2回のHbA1c検査が推奨されている。一方、HbA1cの検査回数が多いと保健医療における冗長性(redundancy)や無駄が増えることが報告されているが、これらの試験は規模が小さいため、過剰なHbA1c検査が治療に及ぼす影響の評価は難しいという。BMJ誌オンライン版2015年12月8日号掲載の報告。HbA1c検査頻度別の治療変更への影響を後ろ向きに評価 研究グループは、2型糖尿病患者におけるHbA1c検査の実施状況およびその治療への影響を評価するために、地域住民ベースのレトロスペクティブな観察試験を行った(米国医療研究・品質調査機構[AHRQ]などの助成による)。 解析には、全米の8,600万人以上の民間保険加入者を対象とした診療報酬請求データベースであるOptum Labs Data Warehouseおよびメディケア・アドバンテージの2001~14年のデータを用いた。 対象は、年齢18歳以上、血糖コントロールが安定し(24ヵ月以内の2回の検査でいずれもHbA1c<7.0%)、インスリン製剤を使用しておらず、重症の低血糖や高血糖の既往がない2型糖尿病患者であり、妊婦は除外した。 HbA1c検査の頻度は、2回目を起点としてその後24ヵ月までの実施回数を数え、ガイドラインの推奨回数(0~2回/年)、高頻度(3~4回/年)、過剰(5回以上/年)に分類した。 治療レジメンの変更は、検査の3ヵ月後と3ヵ月前の薬剤の診療報酬請求を比較することで確認した。治療の強化は、血糖降下薬の薬剤数の増加およびインスリン製剤の追加と定義し、脱強化は1つ以上の薬剤を中止した場合とした。HbA1c検査は60%以上が推奨回数以上、過剰群は強化療法が1.35倍 解析の対象となった3万1,545例のベースラインの平均年齢は58±11歳、起点の検査時の平均HbA1cは6.2±0.4%であった。32.9%が血糖降下薬の投与を受けておらず、1剤が37.7%、2剤が21.3%、3剤以上は8.2%であった。 HbA1c検査の頻度は、過剰が5.8%(1,828例)、高頻度が54.5%(1万7,182例)、推奨回数は39.7%(1万2,535例)であった。再検査までの期間中央値は、それぞれ4週、12週、27週だった。 検査回数の多い患者は、年齢が高く、合併症罹患率が高く、糖尿病治療薬の数が多く、HbA1cが高値であった(いずれも、p<0.001)。 また、年間の医療提供者の数が、HbA1c検査頻度が推奨回数の患者に比べ過剰群(オッズ比[OR]:1.14、95%信頼区間[CI]:1.10~.1.18、p<0.001)および高頻度群(OR:1.05、95%CI:1.04~1.07、p<0.001)はともに有意に多かった。 起点のHbA1c検査後に、81.6%の患者は治療を変更しなかったが、血糖コントロールが推奨目標値を満たしたにもかかわらず、治療が強化された患者が8.4%認められた。その内訳は、過剰群が13%、高頻度群が9%、推奨回数群は7%だった(p<0.001)。 HbA1c検査頻度の過剰群は、推奨回数群に比べ強化療法が施行される可能性が有意に高かった(OR:1.35、95%CI:1.22~1.50)が、脱強化療法への移行には有意な差はなかった(同:1.08、0.97~1.20)。 過剰な検査の割合は、2001~08年には大きな変動はなかったが、09年以降は有意に減少した。11年の過剰検査率は、2001~02年に比べ46%低下した(OR:0.54、95%CI:0.46~0.64、p<0.001)。 著者は、「60%以上が推奨回数以上の検査を受けており、これが過剰な血糖降下薬治療をもたらす可能性がある」とまとめ、「過剰な検査は、保健医療における無駄を増やし、糖尿病管理における患者の負担を増大させる」としている。

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