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医療機器の有害事象に関する製造業者からの報告は、約3分の1が規制期限内に米国食品医薬品局(FDA)へ提出されておらず、遅延報告の多くは6ヵ月後以降の報告であり、また、遅延報告の半数以上が少数の製造業者に集中していたことが、米国・ワシントン大学のAlexander O. Everhart氏らによるFDAの医療機器有害事象報告(Manufacturer And User Facility Device Experience:MAUDE)データベースを用いた横断研究の結果、明らかとなった。米国FDAの主要な市販後調査データベースでの医療機器の有害事象報告は、信頼性に懸念があることが知られており、複数のメディア報道によると、医療機器製造業者からの有害事象報告が連邦規制で定められた30日の期限内にFDAへ提出されていない可能性が指摘されていた。著者は、「有害事象の報告の遅れは、患者の安全性に関する懸念の早期発見を妨げる可能性があるが、MAUDEは医療機器の安全問題を理解するには不完全なデータ源である」と述べている。BMJ誌2025年3月12日号掲載の報告。FDA MAUDEデータベースの有害事象報告について解析 研究グループは、FDAのMAUDEデータベースを用い、2019年9月1日~2022年12月31日の報告書について解析した。対象は、初回報告書、すなわち製造業者が初めて有害事象を知った記録に限定した。 主要アウトカムは報告時期(製造業者がイベント発現の報告受領日からFDAが報告を受理した日までの期間)。報告時期は、0~30日(規制で義務付けられている)、31~180日、181日以上、0日未満(無効な日付による報告ミス)、または製造業者報告受領日欠測(報告時期欠測)に分類し、報告時期が30日を超える場合を遅延とした。期限内の報告は約7割、遅延報告の半数以上は製造業者3社による 2019年9月1日~2022年12月31日に、製造業者から452万8,153件の初回報告書が提出された。このうち要約報告書(2019年9月1日以前は複数の報告書を1つにまとめた要約報告書をMAUDEに提出することができた)であったものなどを除外した443万2,548件(全初回報告書の98%)が解析対象となった。これらの報告は、製造業者3,028社、8万8,448個の医療機器に関連したもので、死亡に関する報告1万3,587件、負傷に関する報告155万2,268件、故障に関する報告286万6,693件が含まれた。 443万2,548件の報告のうち、30日以内(期限内)の報告は71.0%(314万6,957件)であり、31~180日(遅延)の報告が4.5%(19万7,606件)、180日以降(遅延)が9.1%(40万2,891件)、15.5%(68万5,094件)は無効または欠測であった。全遅延報告の66.9%は180日以降の報告であった。 報告の遅延は少数の製造業者に集中しており、3社で遅延報告の54.8%を占めた。同様に報告の遅延は少数の医療機器に集中しており、13の医療機器で遅延報告の50.4%を占めた。 遅延報告総数ランキングの上位10機器には、輸液ポンプ(Becton Dickinson)、フラッシュグルコースモニター(Abbott)、インスリンポンプ(Medtronic)、歯科用インプラント(Biohorizons Implant Systems)、持続グルコースモニター(Dexcom)などが含まれていた。