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第330回 アトピー当事者が語る、ステロイドの保険見直し問題

INDEXステロイド外用薬で思い出す、苦い過去外用剤といえども…共同声明の発表当事者でないとわからない感覚ステロイド外用薬で思い出す、苦い過去前回、OTC類似薬の一部保険外療養の負担に関して「OTC類似薬の保険給付の見直しの実施に向けた技術的検討会」の中間とりまとめに関する中央社会保険医療協議会総会への報告・説明、それに伴う議論を取り上げた。実はこの中間とりまとめについては、私個人もある点で驚きを隠せなかった。それはステロイド外用薬に関して「慢性・再発性疾患に使用される場合があるが、急性増悪時の短期使用が中心であり、別途負担の対象として整理する」という記述だ。これを読んだ時は一瞬、目が点になり、「嘘だろう」と思った。かくいう私は過去に本連載でも触れたが、アトピー性皮膚炎を持病として抱えている。これまでの人生を振り返ると、成人してからはほぼ問題なく過ごしてきたものの、およそ10数年周期で急性増悪を経験してきた。最悪だったのは今から30年以上前、上京して間もない大学1年生だった頃だ。当時は今のようなTARC*を測定しながらのプロアクティブ療法(急性増悪時にステロイド外用薬で一気に炎症の抑え込みにかかり、その後はステロイド外用薬の強さをレベルダウンさせながら、間欠使用に移行し、最終的に保湿剤での維持を続ける)は一般的ではなかった。むしろ記憶する限り、皮膚科クリニックを受診しても「これ塗っといてね」とステロイド外用薬のチューブを処方され、切り替えも塗布中止時期も何も説明されず、漫然と処方され続けたものだ。*アトピー性皮膚炎の重症度評価に用いられる検査当時は医療知識もなく、私自身いわゆる「脱ステロイド」に走った。その結果、全身真っ赤な象皮状態となり、一部からはリンパ液が流れ出し、朝起きるとTシャツの一部が真っ黄色になるほど。そんな生活を10ヵ月弱経験し、日本東洋医学会などでは必ずと言っていいほど名前が挙がる、ある自由診療の漢方治療診療所にたどり着いた。そこで煎じ薬である方剤を処方されたが、ほとんど効果は実感できなかった。2回目の受診の際、そのことを医師に告げると方剤は別のものに変わった。しかし、やはり結果は同じ。その後はこの2種類の方剤が何度も入れ替わる日々が4ヵ月ほど続いた。当時は大学1年生で経済的には親に依存していたが、それでも自由診療の漢方薬の代金は重荷で、ある時は窓口で薬代を払ったら、210円しか残っていなかった。今でも覚えているが、その日は金曜日の夕方。今のように土日にも銀行ATMが開いている時代ではない。携帯電話もない時代のため、同居していた姉にも連絡は取れない。自宅まで210円で帰れる駅を目指して、寒空の下を10kmほどとぼとぼ歩いた。しかも、体は象皮状態。日常動作でも皮膚が切れて出血する状態だったので正直歩くのもつらかった。歩きに歩いて、ようやく電車に乗り、自宅に着いた時は真っ暗。姉はまだ帰宅しておらず、自分の部屋でベッドに腰を掛け、泣き続けていた。その後、私は保険診療でエキス製剤を使って漢方治療をする診療所のことを知り、そこを訪ねた。診察をした医師は丁寧に腹脈をとって事細かに問診をし、自由診療の漢方診療所では単剤で交互に使用していた方剤を2剤併用する旨を告げた。それからわずか2週間ほどで、私の全身の皮膚は半ば忘れかけていた元の状態を取り戻した。外用剤といえども…さて、現在の私の急性増悪に話を戻そう。2026年4月末の診察時、医師には簡潔に過去のことを伝えた。すると、「今はステロイドに拒否感はあります?」と尋ねられた。それはない旨を告げると、「プロアクティブ療法をやっていくうえで、ステロイドは勿論だが、これを使うと上手くいきやすいんですよ。ちょっとお高いけど」と言われ、ジファミラスト(商品名:モイゼルト軟膏、PDE4阻害薬)とデルゴシチニブ(同:コレクチム軟膏、JAK阻害薬)を勧められた。私は一瞬ギョッとしてしまった。非ステロイド性の免疫抑制系外用薬を使わねばならないのかと。これは経口薬で治療を続けてきた2型糖尿病患者がインスリンを勧められた時に受けがちなショックと似た感覚かもしれない。とりあえずこれらは一旦辞退し、ステロイド外用薬のみの治療を開始した。2週間後に思い直してジファミラストを追加することになったが、この際、主治医に最初の提案に私が抱いた感覚を伝えたところ、「ああ、何かわかりますよ」と笑われた。現在は体幹と四肢はほぼ4日おきの外用ステロイド薬・ジファミラストの混合、間にはジファミラスト・ヘパリン類似物質の混合を塗布している。顔も当初は塗布間隔が体幹同様にまで延びたが、日差しが強いと日焼け止めを使っていても炎症が強くなり、今は暫定的に外用ステロイド薬・ジファミラストの混合とジファミラスト・ヘパリン類似物質の混合を1日おきに塗り分けている。一旦は急性増悪を抑え込めても、おそらく保湿剤のみに切り替えることができるまでには相当の時間を要するだろうと覚悟はしている。そんなこんなで今回の中間とりまとめで、私はOTC類似薬の一部保険外療養の負担の半ば当事者になってしまったのである。共同声明の発表さすがにアトピー性皮膚炎患者や皮膚科専門医もこの状態を黙認することはないだろうと思っていたが、実は前回は触れなかったが中医協総会でもアトピー性皮膚炎に関しては問題となった。9月3日に開催された社会保障審議会(医療保険部会)での患者団体へのヒアリングで、認定NPO法人・日本アレルギー友の会(理事長:武川 篤之氏)が患者団体としてこの件に関して強い反対を表明した。その論旨は以下のようなものだ。長くなるが引用する。「アトピー性皮膚炎は寛解と増悪を繰り返す慢性・再発性の疾患であり、急性増悪時だけを治療する病気ではありません。診療ガイドラインでは、抗炎症外用薬によって速やかに寛解を導入したうえで、毎日の保湿と再燃部位への間欠的な外用(プロアクティブ療法)によって再燃を防ぐ長期管理が標準とされています。ステロイド外用薬は、この長期管理を日常的に支える薬剤です。ステロイド外用薬は効果の強さによって5段階に分類され、症状の重症度、部位、年齢に応じて医師が選択し、量や範囲を細かく調整する必要があります。OTC医薬品は軽度の症状を対象としており、医療用のステロイド外用薬とは効能・効果が一致せず、医学的に代替性は成立しません。薬局で購入する場合には、強さを認識しないまま使用して副作用が生じたり、逆に症状に対して十分な効果を得ることができず炎症が持続したり重症化するおそれもあります。追加負担によって毎日の維持治療が細れば、結果として高額な生物学的製剤への移行や入院治療の増加につながりかねません」まったくの同感である。友の会は同日、日本皮膚科学会、日本臨床皮膚科医会と共同で『OTC類似薬の保険給付見直し案に関する共同声明』1)も発表した。詳細は声明を参照してほしいが、「3.医学的誤認に基づく制度設計」は、前出のようなガイドラインなどを踏まえないもので私も一番驚いた点である。しかも、プロアクティブ療法で、保湿剤によるスキンケアに移行する直前は、(中間とりまとめの中で一部負担対象とされた)比較的効果が弱めのOTC類似薬のステロイド外用薬が長期にわたって使用される。そして声明の「5.歴史的教訓と現在の誤情報」もまさにその通りである。負担が過度に増えることになれば、エビデンスの乏しい民間療法(自然由来ハーブ・オイル療法、温泉療法など)に患者が走る恐れが高まる。さらに「7.患者・家族の生活実態」にある「外用薬は『生きるための薬』であり、寛解維持のための計画的外用が不可欠である」もまさにその通りだ。これに関連して中医協総会では日本医師会副会長の茂松 茂人氏が次のように語っている。「がん患者さん、難病患者さん、指定難病でなくとも重症で就職などができないといった患者さんもおられます。とくに成人のアトピー性皮膚炎では、正規雇用になれない非正規雇用の患者さんが多いとも聞いておりますので、その辺はヒアリングをしっかり聞いていただいて、対応を考えていただければと思います」当事者でないとわからない感覚自分も経験者だからわかるのだが、アトピー性皮膚炎は自分では隠し切れない皮膚に病変が出てしまうため、患者は劣等感を抱きがちだ。とくに顔の症状が強く、治療によるコントロールが十分得られなければ、患者は外出すら避けるようになる。そうなればなかなか正規雇用で働こうとは思わないことは、私自身は容易に想像がつく。再度、自分語りで恐縮だが、茂松氏の発言を聞いて思い出したことがある。まさに30数年前の急性増悪時、本当は外出したくなかったのだが、やむを得ない事情で外出した際のことだ。総武線の各駅停車に乗車中、席がなく顔が真っ赤で盛大に粉を吹いていたこともあり、私は車両の隅に隠れるよう立っていた。その時、着席していた中年女性が私を見るなり、こちらに向かって歩いてきて「お席代わりましょうか?」と申し出てきた。私は丁重に断ったが、明らかに親切心からの申し出にもかかわらず、「自分はよっぽどひどい病人に見えるのだろうな」と落ち込んだ覚えがある。幸いにして今回のOTC類似薬のステロイド外用薬の扱いについては、厚生労働省保険局が患者団体のヒアリングが行われた前述の社会保障審議会(医療保険部会)に提出された『OTC類似薬の保険給付の見直しの実施について』2)の「実施に向けた論点について」において、「ステロイド外用薬は急性増悪時の短期使用が中心である一方で、アトピー性皮膚炎に対するステロイド外用薬のプロアクティブ療法は、診療ガイドラインに位置づけられた計画的な間欠使用であることを踏まえ、長期使用等の例外としてどのように整理するか」と記載され、中間とりまとめに修正が加えられる方向となった。私自身は以前から言っているように、OTC類似薬の保険給付のあり方そのものを見直すことに異論はなく、たとえ自分がその対象になっても医学的・合理的理由があればやむなしとして受け入れるつもりである。しかし、今回のこの1件は医学的な観点から大いに疑問を感じた次第だ。ちなみにこの件に関連して同業の知人からは「国会終了直後、しかも来年施行という短過ぎる時間制約もあったので事務局を責めるのは酷すぎる」と言われた。知人の指摘はわからなくもない。ただ、アトピー性皮膚炎の総患者数は厚生労働省「令和5年(2023年)患者調査」3)では約125万3,000人とされるほど巨大な層である。しかも、患者調査の数字の算出方法を知っている人ならば百も承知だろうが、この数字はある意味最低ラインなのである。なんとかセルフスキンケアだけで凌いでいる人も含めれば、相当な患者数になるはずだ。当初の中間とりまとめの内容に驚いたアトピー性皮膚炎患者は少なくないだろう。そしてそのことで疎外感を抱いた患者もわりといたはずだ。ちなみに私は今も30数年前にコートのポケットの中で210円を握りしめながら歩いた経路を歩くのは、その一部であってもなるべく避けようとしてしまう。患者とはそこまで敏感な存在なのである。125万3,000分の1の「蟷螂の斧」として申し上げておきたい。参考1)日本皮膚科学会:OTC類似薬の保険給付見直し案に関する共同声明2)厚生労働省:OTC類似薬の保険給付の見直しの実施について3)厚生労働省:令和5年(2023)患者調査の概況

2.

卵巣明細胞がん治療薬リソバリシブ使用時の高血糖に関する注意喚起/日本糖尿病学会

 卵巣明細胞がんの新たな治療薬としてPI3Kα阻害薬リソバリシブ(商品名:ハイツエキシン)が発売された。リソバリシブはその薬剤特性から高い有効性とともに、高血糖リスクが懸念される。日本糖尿病学会は、同薬の高血糖などで紹介を受ける糖尿病医への情報共有を目的に「PI3Kα阻害剤リソバリシブメシル酸塩水和物使用時の高血糖発現についての注意喚起」を発出した。 卵巣明細胞がんではPIK3CA遺伝子変異が高頻度に認められ、PIK3CAがコードするPI3Kαは有望な治療標的である。リソバリシブはがん化学療法後のPIK3CA変異陽性の卵巣明細胞がん(日本人52例を含む)を対象としたCYH33-G201試験において、奏効率34.5%を示している。これらの結果から、国内では2026年3月に「がん化学療法後に増悪したPIK3CA遺伝子変異を有する卵巣明細胞癌」を効能・効果として承認された。 主な注意喚起は以下のとおり。・CYH33-G201試験におけるリソバリシブの高血糖の発現率は89.2%。尿中ケトン体陽性3例、ケトアシドーシス1例およびケトーシス1例も報告されている。・高血糖発現例のうち96.4%に血糖降下薬が開始され、インスリン治療を要した例も43.4%確認された。・高血糖発現日の中央値は4.0日と短いため、投与開始直後の血糖自己測定または持続グルコースモニタリングの使用を検討する。・リソバリシブの半減期は12.8~25.2時間と長いため、高血糖遷延に注意し、血糖モニタリングを実施する必要があると考えられる。・CYH33-G201試験における血糖降下薬はメトホルミンが中心であったが、リソバリシブは消化器系の副作用の発現率が高いため、状況に応じてSGLT2阻害薬などの使用も考慮する。・空腹時血糖250mg/dL以上の高血糖を認めた場合は、原則として糖尿病を専門とする医師に連絡してインスリン治療を含めた治療を検討する。 同学会は、急激な血糖値上昇のリスクや糖尿病ケトアシドーシスでインスリン投与を要する可能性も想定し、診療に当たっていただきたいとしている。

3.

ビーガン食、わずか1カ月で「細胞の老化」に変化

 たとえ短期間でもビーガン食に切り替えることで、炎症が軽減し、細胞レベルで老化が遅くなる可能性が、新たな研究で示された。わずか1カ月間だけビーガン食を取り入れた人では、肉類を多く含む食事を取った人と比べて、炎症の軽減や生物学的老化の減速に関連するDNAメチル化に変化が認められたという。米カリフォルニア大学サンディエゴ校(UCSD)医学部神経科学分野のJerome Mertens氏らによるこの研究結果は、8月3日付で「MedComm」に掲載された。 Mertens氏は、「遺伝子がわれわれの運命を決めるわけではない。注目すべきは、単に一方の食事がもう一方より優れていたということではない。エピゲノムがわずか4週間で測定可能なほど反応したことだ。これは、われわれの体の仕組み(バイオロジー)は一般に考えられているよりもはるかに動的で、日々の選択に反応することを表している」と述べている。 今回の研究では、健康な成人48人を、標準食を1週間摂取した後に、1カ月間ビーガン食を摂取する群と肉類を多く含む食事を摂取する群のいずれかに24人ずつランダムに割り付けた。両群の食事の摂取カロリーは同程度だった。研究グループは、介入前後の血液サンプルを用いて、ヒトゲノム全体の81万2,934カ所を対象に、DNAメチル化について解析した。DNAメチル化は、遺伝子の働きを調節する仕組みの一つで、DNAの塩基(主にシトシン)にメチル基が付加されることをいう。 その結果、ビーガン食群ではがん関連の経路や細胞増殖に関係する経路(mTOR、Hippo)で、遺伝子プロモーター(遺伝子の転写開始を制御する領域)のメチル化が増加し、これらの遺伝子の働きがより強く抑制されることが示唆された。また、細胞型デコンボリューション法を用いて細胞構成比を推定したところ、ビーガン食群では好中球の割合が減少する一方、CD4陽性T細胞の割合は増加しており、炎症が抑制される方向への変化が示唆された。DNAメチル化データから推定された好中球と単球の割合は、過去の研究で血液検査により得られたそれぞれの実測値と高い相関を示した。この結果について論文の筆頭著者であるUCSD医学部神経科学分野のLukas Karbacher氏は、「この一致から、単にコンピューター画面上の変化を見ているのではなく、実際に生じている意味のある生物学的変化を捉えていることが分かった」と述べている。 ビーガン食群ではさらに、脂質代謝やインスリン経路に関連する遺伝子プロモーターのメチル化にも変化が見られ、脂質代謝関連遺伝子の働きが抑制される一方、インスリン経路関連遺伝子の働きが高まることを示唆する結果が得られた。生物学的年齢の指標であるエピジェネティッククロックのPhenoAgeとGrimAgeによる評価では生物学的老化の減速が示された。ただし、Skin & Blood clockでは、逆に老化の加速が示された。Mertens氏は、「これらの結果は、生物学的老化を測る全ての指標が同じ生物学的側面を捉えているわけではないという考えを裏付けるものだ。疾患リスクや全般的な健康状態と関連する時計はいずれも一貫して同じ方向を示しており、食事の変化が単なる時間の経過ではなく、健康に関連する経路に影響を及ぼしていた可能性を示唆している」と述べている。 ただし、今回の研究は比較的小規模で、DNAメチル化の変化もわずかだった。このことから研究グループは、ビーガン食に本当に疾患リスクを低下させる効果があるのかを明らかにするには、より大規模で長期間の研究が必要になるとしている。

4.

チルゼパチド、2型糖尿病治療の負担軽減に寄与か――実臨床研究で示唆

 2型糖尿病では、複数の糖尿病治療薬の併用や複雑なインスリン療法が必要となり、患者の治療負担が増すことがある。こうした中、2型糖尿病患者を対象としたリアルワールド研究で、チルゼパチドは従来のGLP-1受容体作動薬と比べ、血糖コントロールや体重を改善しながら、糖尿病治療の負担軽減につながる可能性が示された。研究は、浅ノ川総合病院内科/金沢大学大学院未来型健康増進医学分野の澤村俊孝氏らによるもので、詳細は6月30日付の「Endocrine Practice」に掲載された。 複数の薬を服用する「ポリファーマシー(多剤併用)」や複雑なインスリン療法は、2型糖尿病患者の治療負担を増大させるだけでなく、低血糖や転倒、入院などのリスクとも関連する。このため、十分な血糖コントロールを維持しつつ、治療を簡略化することが重要な課題となっている。チルゼパチドはGIPとGLP-1という2つの消化管ホルモンの受容体に作用する2型糖尿病治療薬で、優れた血糖降下作用や体重減少作用を示すことが報告されているが、これまでの研究はHbA1cや体重への効果に焦点を当てたものが中心で、治療薬やインスリンの減量といった「治療簡略化」を評価した報告は限られていた。こうした背景から著者らは、2型糖尿病患者を対象に、チルゼパチドとGLP-1受容体作動薬の治療簡略化効果をリアルワールドデータで比較検討した。 著者らは、日本の2施設で2023年4月~2025年3月にチルゼパチドまたはGLP-1受容体作動薬を開始した2型糖尿病患者318人(チルゼパチド群153人、GLP-1受容体作動薬群165人)を対象に、後ろ向きのリアルワールド研究を実施した。患者を最大12カ月追跡し、糖尿病治療薬が1剤以上減少した場合、インスリン注射回数が減少した場合、または1日当たりの総インスリン投与量が50%以上減少した場合のいずれかを満たし、その状態が維持されていることを「治療簡略化」と定義して評価した。解析では患者背景の違いを考慮し、傾向スコアを用いた統計学的手法で調整した。 解析の結果、チルゼパチド群では55%が治療簡略化を達成したのに対し、GLP-1受容体作動薬群では25%で、チルゼパチド群の方が有意に高かった(オッズ比〔OR〕 3.69、95%信頼区間〔CI〕 2.21~6.16、P<0.001)。絶対リスク差は30%だった。 治療簡略化は主に糖尿病治療薬数の減少によるもので、その割合はチルゼパチド群で47%、GLP-1受容体作動薬群では10%だった(OR 7.96、95%CI 4.06~15.6、P<0.001)。インスリン注射回数や総インスリン投与量もチルゼパチド群で減少する傾向がみられたが、全体では有意差はなかった。 また、HbA1cと体重はいずれの群でも改善したが、その改善幅はチルゼパチド群でより大きかった。12カ月後のHbA1cはチルゼパチド群で1.34%、GLP-1受容体作動薬群で0.78%低下し、体重はそれぞれ4.75kg、2.86kg減少した。 本研究ではチルゼパチド使用患者の56%がGLP-1受容体作動薬からチルゼパチドへ切り替えられた患者であったが、GLP-1受容体作動薬からの切り替え患者を除外したサブグループ解析では、薬剤数に加えインスリン注射回数や総インスリン投与量をアウトカムとした解析でも、有意な減少が認められた。 著者らは、「チルゼパチドは、実臨床において血糖コントロールや体重減少効果を維持しながら、2型糖尿病治療の簡略化に寄与する可能性が示された」と結論付けている。また、治療レジメンの簡略化は服薬アドヒアランスや患者負担の軽減につながる可能性があり、チルゼパチドは日常診療における治療負担を軽減する新たな選択肢となり得るとしている。 一方で著者らは、本研究が後ろ向き観察研究であることや、患者のQOLや治療満足度を評価していないことなどを限界として挙げ、前向き研究による検証が必要としている。

5.

父親の超加工食品摂取が新生児の体格に関連か

 健康な妊娠の準備というと、通常は母親に焦点が当てられる。しかし、新たな研究で、父親の超加工食品(UPF)の摂取量は新生児の身体計測値と関連する可能性が示された。サンパウロ大学(ブラジル)のDaniela Sartorelli氏らによるこの研究結果は、「Nutrition Research」7月号に掲載された。Sartorelli氏は、「赤ちゃんの誕生前後を通じて、母親の栄養状態や健康についてはこれまでも注目されてきたが、父親の食生活がもたらす影響についてはほとんど語られてこなかった。この研究結果は、それが子どもの健康にも極めて重要であることを示している」と述べている。 本研究では、過体重の妊婦を対象にしたランダム化比較試験の対照群から抽出した43組の父親、母親である妊婦、および新生児を対象に、父親のUPF摂取量と新生児の身体計測値および体脂肪量との関連が検討された。父親のUPF摂取量は、24時間食事思い出し法の2回分のデータを基に推定され、総摂取カロリーに占める割合(E%)として表した。 父親のUPF摂取割合は平均30±15%であった。解析の結果、父親のUPF摂取割合が高いほど、新生児の出生体重が増加し、出生時のポンデラル指数も高いという関連が見られた。また、腸骨稜上部や大腿部の皮下脂肪厚が厚いこととも関連していた。しかし、新生児の体脂肪量との関連は有意ではなかった。 一方、母親の食事の影響の現れ方は異なっており、妊娠16週までのUPF摂取割合が高いほど、出生体重、出生時の身長、頭囲、ポンデラル指数が低いという関連が認められた。 出生体重が多いことや生後早期の体脂肪量が多いことは、成人期における心血管・代謝性疾患のリスク因子と考えられている。研究グループは、UPFを多く含む食事が体内で炎症を引き起こし、精子の質に影響を及ぼすとともに、子どもに受け継がれる遺伝子の発現に変化をもたらす可能性があると考えている。また、父親の食習慣が胎児の発育に重要な役割を果たすインスリン様成長因子(IGF)-IIの働きを変化させる可能性についても言及している。 研究グループは、今回の結果は、健康づくりや家族計画に関する指導において、母親だけでなく父親も対象に含めることの重要性を裏付けるものだとしている。

6.

待機的心臓手術後のAKI発生、周術期ダパグリフロジン投与で抑制/JAMA

 待機的心臓手術を受ける患者において、SGLT2阻害薬ダパグリフロジン(10mg)の周術期における4回投与(手術日前日~術後2日目まで1日1回経口投与)はプラセボと比較して、術後7日間の急性腎障害(AKI)の発生を減少させたことが示された。オランダ・アムステルダム大学医療センターのMaartina J. P. Oosterom-Eijmael氏らMERCURI-2 Study Groupが、同国で行った多施設共同二重盲検プラセボ対照無作為化試験の結果を報告した。待機的心臓手術を受ける患者の2~50%でAKI発生が認められるが、これを予防する薬物療法は確立されていない。SGLT2阻害薬は先行研究において、腎保護効果がある可能性やAKI発生の減少が示されていた。JAMA誌オンライン2026年7月30日号掲載の報告。オランダの7施設で無作為化試験、ダパグリフロジン群vs.プラセボ群 研究グループは、待機的心臓手術を受ける患者において、手術前日から開始するダパグリフロジンの投与が、プラセボとの比較において術後7日間のAKI発生を減少させるとの仮説について検証した。 試験はオランダの7施設(大学医療センター2施設、非大学病院5施設)で実施され、対象は待機的心臓手術を受ける18歳以上の成人患者とした。除外基準は1型糖尿病、2型糖尿病でBMI値25未満かつ1日複数回のインスリン注射を施行、ベースラインeGFRが20mL/分/1.73m2未満、糖尿病性ケトアシドーシスの既往、登録時評価の収縮期血圧100mmHg未満、SGLT2阻害薬服用中、SGLT2阻害薬に対する既知/疑いのアレルギーであった。また、妊娠(可能性を含む)・授乳中、妊娠を希望する女性なども除外された。 被験者を、1日1回経口投与のダパグリフロジン(10mg)群またはプラセボ群に1対1の割合で無作為に割り付け、手術前日(院内で午後3時~午後8時)に投与を開始し、術後2日目まで合計4回投与した(2回目は手術当日の朝、3回目は術後1日目、4回目は術後2日目)。 主要評価項目は、術後7日間におけるAKI発生の群間差とした。AKIは、Kidney Disease:Improving Global Outcomes(KDIGO診断基準)に基づき、術後48時間以内に血清クレアチニン値0.3mg/dL(26.5μmol/L)以上上昇、術後7日以内に血清クレアチニン値が基礎値より1.5倍以上増加、または術後6~12時間の尿量が0.5mL/kg/時未満と定義した。術後7日間のAKI発生率、28%vs.52%で有意差 被験者登録は2023年6月8日~2025年1月27日に行われ、最終追跡調査日は2025年5月16日であった。 784例が登録・無作為化され(各群392例)、778例(99%)が追跡評価を完了した(6例は手術を受けなかった)。ベースラインの両群の患者特性は類似しており、年齢中央値68歳(四分位範囲[IQR]:61~74)、76%が男性、97%が白人であり、BMI中央値27(IQR:25~30)、eGFR中央値80mL/分/1.73m2(IQR:67~89)であった。 7日間のAKI発生は、ダパグリフロジン群111/392例(28%)、プラセボ群205/392例(52%)であった(相対リスク:0.54、95%信頼区間:0.45~0.65、p<0.001)。 最も多くみられた術後の有害事象は、心房細動および再手術であった。心房細動の発現率はダパグリフロジン群45%(176/392例)、プラセボ群45%(176/392例)であり、再手術率はそれぞれ11%(43/392例)、10%(39/392例)であった。

7.

心血管疾患既往の2型糖尿病、チルゼパチドでMACEリスク32%低減/BMJ

 チルゼパチドは、グルコース依存性インスリン分泌刺激ポリペプチド(GIP)受容体とグルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)受容体の両方を活性化するインクレチン関連薬であり、血糖値の低下と体重減少をもたらすが、心血管系への効果については議論が続いている。米国・ブリガム&ウィメンズ病院のNils Kruger氏らは、2型糖尿病とアテローム動脈硬化性心血管疾患(ASCVD)を有する患者では、標準治療にシタグリプチンを併用した場合と比較して、チルゼパチドの併用は主要心血管イベント(MACE)の発生を有意に抑制し、入院を要する感染症や感染症関連死のリスクも低いことを示した。研究の成果は、BMJ誌2026年8月5日号で報告された。無作為化試験を基準としたコホート研究 研究グループは、糖尿病の標準治療へのチルゼパチド追加が実臨床にもたらすMACE抑制効果を評価する目的で、無作為化試験の基準とされるデザインとデータ、解析法を用いた人口ベースのコホート研究を行った(米国国立衛生研究所[NIH]などの助成を受けた)。 解析には、米国の2つの全国的な保険請求データベースに、2022年5月~2025年5月に登録されたデータを用いた。対象は、年齢40歳以上、2型糖尿病とASCVDを有し、BMI値≧25で、心筋梗塞、虚血性脳卒中、冠動脈・頸動脈・末梢動脈疾患、または血行再建術の既往がある患者であった。 チルゼパチドの投与を開始した群(3万5,353例)と、プラセボの代替として心血管アウトカムが中立的な比較薬であるシタグリプチンの投与を開始した群(1万7,618例)について解析した。 主要評価項目は、MACE(心筋梗塞、脳卒中、全死因死亡の複合)およびその個別の構成要素とした。安全性の評価項目は、入院を要する感染症および感染症関連死などであった。心筋梗塞のリスク低下が全体を牽引 傾向スコアによるoverlap weightingで、均衡のとれた各群7,442例ずつを選出した。両群とも、平均年齢は69.8歳、女性が3,783例(50.8%)であった。また各群で、スタチンの投与を受けている患者が85.2%、SGLT-2阻害薬が21.1%、インスリンが18.1%であった。 1年の時点におけるMACEの重み付け1年リスクは、シタグリプチン群が4.4%(95%信頼区間[CI]:3.8~4.9)であったのに対し、チルゼパチド群は2.9%(95%CI:2.5~3.4)と低い値を示した。1年後のリスク差は-1.4%(95%CI:-2.1~-0.7)、治療必要数(NNT)は70であり、MACEのハザード比(HR)は0.68(95%CI:0.58~0.80)であった。2つの累積発生率曲線は3ヵ月以内に分岐し、観察期間を通じて乖離した状態で推移した。 MACEの個別の構成要素については、チルゼパチド群で心筋梗塞のリスクが低く(HR:0.67、95%CI:0.52~0.87、NNT=130)、虚血性脳卒中(HR:0.91、95%CI:0.64~1.28、NNT=2,500)では意義のある差を認めなかった。全死因死亡は、チルゼパチド群でリスクが低かった(HR:0.55、95%CI:0.42~0.72、NNT=122)。心保護効果を確認 入院を要する感染症(HR:0.64、95%CI:0.55~0.75、NNT=48)および感染症関連死(HR:0.40、95%CI:0.26~0.61、NNT=200)は、いずれもチルゼパチド群でリスクが低かった。 また、チルゼパチド群は、感染症全般(HR:0.83、95%CI:0.78~0.87、NNT=19)、尿路感染症(HR:0.83、95%CI:0.76~0.91、NNT=55)のリスクがわずかに低かったが、消化器系の有害事象(HR:1.00、95%CI:0.79~1.27、推定不能)には差がなかった。 著者は、これらの結果を踏まえ、「チルゼパチドは、実臨床において心保護効果と関連していることが示された」としている。また、「意義のある体重減少が生じる前に心血管イベントの発生率曲線が早期に分岐し始めたことは、体重減少以外のメディエーターが関与している可能性を示唆し、代謝上の有益性とは独立に作用する全身性および血管性の炎症の改善を反映している可能性がある」「感染症関連イベントの減少は、観察された有益性には、より広範な非アテローム動脈硬化性の生物学的メカニズムが寄与している可能性を示唆する」「これらの実臨床の試験に基づくエビデンスは、共有意思決定に有益な情報を提供すると考えられる」と指摘している。

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2型糖尿病に対するトリプルアゴニストretatrutideの効果(解説:小川大輔氏)

 2型糖尿病の治療薬としてGLP-1受容体作動薬が登場し、その後GIP受容体に対する作用を併せ持つGIP/GLP-1受容体作動薬が使用されるようになった。そしてGIP受容体、GLP-1受容体に加え、グルカゴン受容体を同時に刺激するGIP/GLP-1/グルカゴン受容体作動薬、いわゆる「トリプルアゴニスト」が開発されている。今回2型糖尿病に対するトリプルアゴニストretatrutideの第III相試験の結果が報告された1)。 食事療法と運動療法で血糖コントロール不良(HbA1c 7.0~9.5%)の2型糖尿病患者を対象に、retatrutide群(4mg、9mg、12mg)とプラセボ群に無作為に割り付け、40週間投与した。retatrutideはGLP-1受容体作動薬セマグルチドやGIP/GLP-1受容体作動薬チルゼパチドと同じく週1回投与の注射製剤である。主要エンドポイントであるベースラインから40週時のHbA1cの変化量は、プラセボ群と比較しretatrutide群で有意差を認めた(retatrutide 4mg群-0.88%、9mg群-1.04%、12mg群-1.12%)。 グルカゴンは膵臓のα細胞から分泌されるホルモンで、肝臓でのグリコーゲン分解促進、糖新生の促進、脂肪組織での脂肪分解の促進などの作用により血糖値を上げる働きをする。retatrutideのグルカゴン受容体刺激により血糖値上昇が懸念されるが、グルカゴン受容体への作用が低親和性に調整されていること、またGLP-1およびGIPによるインスリン分泌作用、食欲抑制作用および胃排泄遅延作用により実際には血糖値は上昇しない2)。またretatrutideのグルカゴン受容体への作用により、エネルギー消費量の増加、肝臓の脂肪代謝改善、中枢性の食欲抑制などにより血糖値はむしろ低下し、さらに体重減少効果もあると考えられている3)。 GLP-1とGIPの受容体に働くデュアルアゴニストのチルゼパチドは、血糖降下作用に加えて体重減少効果もあり、現在実臨床でよく使用されている。そしてGLP-1、GIPに加え、グルカゴン受容体にも働くトリプルアゴニストのretatrutideは、グルカゴン受容体の刺激が加わることで、食欲抑制やインスリン分泌だけでなく、エネルギー消費や脂肪燃焼の効果がさらに高まると考えられ、チルゼパチドよりも強力なのではないかと期待されている。現在、retatrutideをシングルアゴニストのセマグルチドと比較する試験や、腎障害のある糖尿病患者を対象とした試験が行われており、今後の報告に注目したい。

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温故知新―糖尿病治療の変遷―【温故知新30年】

講師紹介温故知新―糖尿病治療の変遷―「科学研究は、まさに温故知新の繰り返しであり、未来のあるべき姿に多くの示唆を与えてくれている。」最近、研修医に「血糖値が1分で測定できるようになったのは54年前、HbA1cが一般臨床に普及したのは45年前のことだ」と話すと、彼らは一様に驚き、「それまでは何を指標に糖尿病診療を行っていたのですか」と問い返してくる。血糖値の変動を連続的に“見える化”できることが当たり前となった世代にとって、かつて手探りで行われていた糖尿病診療は想像し難いのであろう。振り返れば、筆者の糖尿病研究と診療の歩みそのものが温故知新であった。過去の研究成果や技術開発が新たな発想を生み、その積み重ねが今日の診療を支えている。そこで本稿では、血糖値を「診る」技術の源流の一つとして、筆者らが約50年前に世界に先駆けて開発した人工膵島と、その後の持続血糖モニタリング(CGM)へと至る歩みを振り返ってみたい。筆者は1971年、インスリン発見50周年の年にトロント大学Banting & Best Instituteで研究を開始した。健常犬および膵全摘犬を用い、門脈内にブドウ糖、インスリン、グルカゴンなどを投与し、radio-isotope tracer dilution法により肝臓からのブドウ糖放出率や骨格筋でのブドウ糖取り込み率を定量的に解析した。その結果、食事や運動時にも血糖恒常性が保たれるのは、インスリンとグルカゴンが適切なタイミングで分泌され、肝臓と骨格筋の糖代謝を精緻に制御している結果であることを明らかにした。1974年に大阪大学第一内科へ帰局後、Charles Best博士の「私どもが発見し、もう50年も使用してきたインスリンの効果を最大限に発揮させるには、人工臓器を作るべきである」という理念の実現を目指し、人工膵島の開発研究を開始した。そして1977年には世界で初めて人工膵島の臨床応用を開始した。本システムは、高精度血糖測定器、生理的インスリン分泌を再現する制御アルゴリズム、適切なインスリン注入装置から構成されていた。特に制御アルゴリズムは、膵全摘犬を用いた研究成果を基盤として開発し、糖尿病患者においても生理的なインスリン分泌動態を再現し、血糖の日内変動を正常域へ回復させることを可能にした。このベッドサイド型人工膵島はその後、日機装株式会社により製品化され、現在も世界の臨床現場で広く活用されている。また、筆者らはstable isotope-labelled glucoseを用いたトレーサー技術と組み合わせることで、内因性インスリン分泌能や肝・骨格筋におけるインスリン作用の定量評価を行い、厳格な血糖管理がインスリン分泌能やインスリン感受性の改善をもたらすことなど、多くの重要な知見を発表することができた。一方、このシステムは採血用カテーテルを必要とするため、患者がベッド上から動けないという制約があった。そこで筆者らは携帯型人工膵島の開発に取り組み、その過程で皮下間質液中のブドウ糖を連続測定する針型グルコースセンサーを考案し、その詳細を1982年にLancet誌に報告した(図1)1)。このセンサーは現在の持続血糖モニタリング(CGM)の原型となった。しかし、間質液測定では血糖値との時間的遅延や絶対値の低さ、さらにそれらに個人差が存在することから、1型糖尿病患者各々で、それを把握したうえで、アルゴリズムを作成し、携帯型人工膵島にて、血糖応答正常化を維持し続けることができた2)。しかし、皮下投与インスリンの作用遅延なども加わるため、完全なclosed-loop制御の実現は容易ではなかった。その後、Medtronic社をはじめとする企業が技術改良を重ね、2000年頃からCGMが実用化されるようになった。センサー性能の向上に加え、膨大なデータを利用した補正アルゴリズムの進歩は目覚ましく、CGMは今や糖尿病診療に不可欠なツールとなっている。これらの技術を実用化した企業の永年にわたる努力に対して、筆者は深い敬意を抱き、感謝している。しかし、CGMには今も限界はある。間質液濃度測定による時間遅れを是正するため、食後の血糖上昇時には表示値が実際より急激に高くなる、夜間血糖値下降時には、より低く想定し示すこともある。最新機種でも平均絶対相対誤差(MARD)は約9%であり、医療者と患者はその特性を十分理解して活用する必要がある。これらの課題は、実は40年以上前の携帯型人工膵島開発時代から本質的には変わっていない。図1:筆者らが作成したneedle-type glucose sensor(1982年、Lancet)画像を拡大する従来、糖尿病患者の血糖変動評価は血糖値、HbA1c、自己血糖測定値(SMBG)に依存していた。しかしCGMの普及により、血糖応答を「点」ではなく「線」として把握できるようになった。この変化は糖尿病診療に革命をもたらした。近年ではFreeStyle LibreやDexcom G7などの高性能CGMが普及し、1型糖尿病患者においてすら正常に近い血糖プロファイルを維持することが現実的な治療目標となった。CGMを多数例で活用していると、「糖尿病コントロールにとって、食事摂取方法・身体活動量ほど重要なものはない!」ことを改めて認識させられた。そこで筆者は、インスリン非使用の2型糖尿病患者にもCGMを活用してきた。患者は食事内容や摂取方法、間食、運動量などが血糖に及ぼす影響を自ら確認できるため、生活習慣改善への理解と意欲が著しく高まる。また主治医も、患者ごとのインスリン分泌能やインスリン作用を推定しながら緻密な個別化治療を行うことができる。2024年にはインスリン非使用者にも保険適用が拡大され、CGMは血糖測定機器から患者教育と個別化医療を支える重要な診療ツールへと進化した。さらに、CGMデータを食事記録や生活行動と結び付けて振り返るアプリも登場している。血糖変動を可視化するだけでなく、その要因を理解し、行動変容につなげることが可能となりつつある。現在、筆者は健診で発見された2型糖尿病患者に対し、「発症前の状態に戻りましょう」と説明し、CGMとAIを活用した早期介入研究を企画している。高血糖の放置は膵β細胞の機能障害とアポトーシスを招き、インスリン分泌能を急速に低下させることなど分子レベル、臨床応用で証明してきた。したがって早期介入こそが重要であり、CGMはその強力な支援ツールとなる。一方、1型糖尿病の究極の治療は、生理的なインスリン分泌動態を再現し、門脈へ適切にインスリンを供給することであると考える。そのためには、より高度な人工膵島の開発に加え、膵β細胞再生や膵島移植などの再生医療の発展が不可欠であろう。温故知新の精神のもと、過去の研究成果を礎として、糖尿病の予防・寛解・根治を目指す医療の実現に今後も挑戦し続けていただきたい。1)Shichiri M, Kawamori R, et al. Wearable artificial endocrine pancreas with needle-type glucose sensor. Lancet 1982;2:1129.2)Shichiri M, Kawamori R, et al. The development of wearable-type artificial endocrine pancreas and its usefulness in glycaemic control of human diabetes mellitus. Biomed Biochim Acta 1984;43:561.

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フィネレノンは糸球体疾患由来のCKDに対しても腎保護的である可能性がある(解説:栗山哲氏)

本論文は何が新しい? フィネレノン(商品名:ケレンディア)は、非ステロイド型ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬(mineralocorticoid receptor antagonist:MRA)であり、ミネラルコルチコイド受容体(MR)の活性を抑制する。従来、本剤は糖尿病性慢性腎臓病(CKD)を適応とし、心・腎保護を目的に使用されてきた。 今回のFIND-CKD試験では、新たに非糖尿病性CKD患者を対象として、フィネレノンの腎保護効果が評価された。FIND-CKD試験の結果は、非糖尿病性CKD患者全体を対象とした主要解析を報告したNEJM論文(Heerspink HJL, et al. N Engl J Med. 2026 Jun 4. [Epub ahead of print])と、糸球体疾患を有するCKD患者を対象に事前規定された探索的サブグループ解析を報告したJAMA論文(本論文)の2報として公表されている。 NEJM論文では、主要アウトカムとしてフィネレノンによるeGFRスロープの有意な改善が示された。一方、本JAMA論文では、糸球体疾患を有するCKD患者においても、先行するNEJM論文の結果を支持する腎保護効果が示された。MRAによる腎保護療法の流れ 現在、糖尿病性CKDに対する腎保護を目的とした薬物療法として推奨されているのは、RAS阻害薬、SGLT2阻害薬、非ステロイド型ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬(nonsteroidal mineralocorticoid receptor antagonist:nsMRA)、およびGLP-1受容体作動薬である。このうち、RAS阻害薬とSGLT2阻害薬は第1選択薬として推奨されている一方、nsMRAはこれら2剤に追加して使用する薬剤として位置付けられており、推奨度はやや低い(Levin A, et al. Kidney Int. 2024;105:684-701.)。 nsMRAであるフィネレノンは、糖尿病性CKD患者を対象としたFIGARO-DKD試験、FIDELIO-DKD試験、および両試験の統合解析であるFIDELITYにおいて、心血管アウトカムおよび腎複合アウトカムの改善効果が示されている。これらのエビデンスを踏まえ、2024年KDIGOガイドラインでは、RAS阻害薬およびSGLT2阻害薬に追加する治療薬として、糖尿病性CKDの早期から心・腎保護を目的に使用することが推奨されている。 今回報告されたFIND-CKD試験は2報から構成されており、NEJM論文では非糖尿病性CKD患者全体を対象としてフィネレノンの腎保護効果が検証された。一方、JAMA論文(本論文)では、その対象集団のうち糸球体疾患を有するCKD患者に限定した事前規定の探索的サブグループ解析が報告された。FIND-CKD試験(JAMA論文)の結果の概要 FIND-CKD試験は、24の国・地域で実施された第III相無作為化二重盲検プラセボ対照試験であり、非糖尿病性CKD患者を対象とした。本試験の結果は2報として報告されており、NEJM論文では登録された全1,584例を対象とした主要解析が、一方、本JAMA論文では、そのうち糸球体疾患由来のCKDと診断された903例を対象とした事前規定の探索的サブグループ解析が報告された。 対象患者の平均年齢は51.1歳、女性は40.1%、アジア人は61.9%を占め、平均eGFRは48.8mL/min/1.73m2であった。また、尿蛋白/クレアチニン比(UPCR)も評価された。約80%の患者では腎生検により組織学的診断が確定しており、その内訳はIgA腎症46.1%、巣状分節性糸球体硬化症(FSGS)23.8%、膜性腎症10.0%、膜性増殖性糸球体腎炎(MPGN)1.8~3.9%で、一部は高血圧性腎硬化症であった。 全例で試験開始前に最大忍容量のRAS阻害薬が4週間以上投与されており、その上乗せ治療としてフィネレノンの有効性が検討された。その結果、ベースラインから32ヵ月までのeGFRスロープは、フィネレノン群で−3.50mL/min/1.73m2/年、プラセボ群で−4.23mL/min/1.73m2/年となり、群間差は0.73mL/min/1.73m2/年(95%信頼区間[CI]:0.22~1.24)であった。また、フィネレノン群ではベースラインから12ヵ月までのUPCRが42%(95%CI:35~48)低下した。さらに、腎不全への進行またはeGFRが40%以上低下する複合腎アウトカムの発生リスクは、プラセボ群と比較して26%低下した(100患者年当たり7.42件vs.9.60件、ハザード比:0.74、95%CI:0.57~0.97)。 以上より、フィネレノンは糸球体疾患を有する非糖尿病性CKD患者において、腎機能低下の抑制、蛋白尿の減少、および腎アウトカムの改善を示し、腎保護作用を有する可能性が示唆された。FIND-CKDから学ぶこと 本研究の最大のポイントは、非糖尿病性CKD患者を対象としたFIND-CKD試験において、糸球体疾患サブグループでもフィネレノンの腎保護効果を支持する結果が得られた点である。 まず留意すべき点は、既報のFIGARO-DKD試験およびFIDELIO-DKD試験と同様に、FIND-CKD試験もRAS阻害薬による標準治療にフィネレノンを上乗せした治療の有効性を検証した試験であり、フィネレノン単独の効果を評価したものではないことである。また、NEJM論文は、非糖尿病性CKD患者全体を対象としてフィネレノンの有効性を検証するために計画された確証的試験である。一方、本JAMA論文は、試験計画時から糸球体疾患患者を対象とした事前規定の探索的サブグループ解析として実施されたものである。したがって、その結果は仮説的・補足的な位置付けであり、統計学的な確証的結論を導くものではないことを明記しておく必要がある。 そのような制約があるにもかかわらず、本JAMA論文では、主要評価項目であるeGFRスロープの改善に加え、事前に設定された腎複合エンドポイントおよび心血管エンドポイントについても、一貫してフィネレノンに有利な傾向が認められた。したがって、IgA腎症をはじめとする糸球体疾患由来の非糖尿病性CKD患者においても、フィネレノンの腎保護作用を支持する結果が得られたと解釈することは妥当と思われる。ただし、その有効性が確立されたと結論付けるには、今後の独立した確証試験による検証が必要である。 MRA投与時の高カリウム血症について、糖尿病性CKDと非糖尿病性CKDで差異があるかどうかも興味深い点である。高カリウム血症の発現率は、糖尿病性CKDを対象としたFIGARO-DKD試験では10.8%(プラセボ群5.3%、群間差5.5%)、FIDELIO-DKD試験では18.3%(同9.0%、群間差9.3%)であった。一方、非糖尿病性CKDを対象としたFIND-CKD試験では17.0%(同13.3%、群間差3.7%)であり、プラセボ群との差は3試験中で最も小さかった。各試験の平均eGFRは、FIGARO-DKD試験で約68、FIDELIO-DKD試験で約44、FIND-CKD試験で約49mL/min/1.73m2であった。これらの試験間比較からは、(1)高カリウム血症の発現頻度は腎機能低下の程度と関連する可能性、(2)非糖尿病性CKDでは糖尿病性CKDと比べてフィネレノン投与に伴う高カリウム血症の増加幅が小さい可能性、の2点が示唆される。ただし、これらは異なる試験間の比較から得られた知見であり、患者背景や試験デザインの違いによる影響を受ける可能性があるため、これには慎重な解釈が必要である。一般に、糖尿病性CKDでは低レニン性低アルドステロン症(hyporeninemic hypoaldosteronism:HRHA)、インスリン作用不足、代謝性アシドーシスなどが高カリウム血症の誘因となりやすいことが知られている。今回のFIND-CKD試験の結果は、糸球体疾患を主体とする非糖尿病性CKDでは、nsMRA投与に伴う高カリウム血症の頻度が少ない可能性を示唆しており、副作用の観点からも注目される。 今後は、IgA腎症をはじめとする糸球体疾患由来の非糖尿病性CKD患者に対し、フィネレノンが真に腎保護作用を有するかどうかを検証する独立した確証試験の実施が期待される。

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基礎インスリンで治療中の2型糖尿病患者における、cagrilintide/セマグルチド配合薬の追加治療の有効性と安全性(解説:田村嘉章氏)

 cagrilintide(C)は長時間作用型アミリンアナログであり、満腹感の増加、食欲抑制効果により体重減少効果をもつ。また食後のグルカゴン分泌を抑制し血糖降下作用を示すと考えられている。CagriSemaは、CとGLP-1受容体作動薬セマグルチド(S)との配合薬であり、2型糖尿病患者への投与の効果をみたREDEFINE 2試験では、CagriSema投与群ではHbA1c、体重とも、S単独群より減少効果が大きいことが示されている1)。 本研究(REIMAGINE 3)は、1日1回の基礎インスリン投与を行っている2型糖尿病患者に対し、CagriSemaをアドオン投与することによる有効性と安全性を評価するプラセボ対照二重盲検試験である。日本を含む6カ国(アジア人46%)のBMI≧25、HbA1c 7.0~10.5%の2型糖尿病患者274例(平均年齢59歳、平均HbA1c 8.8%、平均BMI 31.6、85%でメトホルミンを併用)を、2:2:1:1の割合で、CagriSema(C、Sともに)2.4mg群、CagriSema(C、Sともに)1.0mg群、それぞれの実薬群用量に対応するプラセボ(P)群に割り付けた。CagriSema群では4週ごとに薬剤がそれぞれ4回、2回増量された。基礎インスリンは、HbA1c≦8%の患者では開始時に20%減量し、以降は空腹血糖80~130mg/dLとなるように調節された。主要エンドポイントは40週におけるHbA1cの変化、2次エンドポイントはHbA1cの目標達成率、体重減少率、インスリン投与量の変化などである。 全体として85%以上の患者に投与完了(80%以上で目標量に到達)した。40週のHbA1cは2.4mg群で-2.33%、1.0mg群で-2.10%、P群では-0.66%で、実薬群で有意に低下し、HbA1c<7%を2.4mg群で75%、1.0mg群では70%で達成した(P群では16%)。インスリンはP群で18U増加したのに対し、実薬群ではいずれも2U減少した。体重は2.4mg群で-12.0%、1.0mg群で-10.4%、P群で+1.1%で、実薬群で有意に減少した。有害事象は、消化器系の異常が2.4mg群で57%、1.0mg群で45%(P群23%)と多かったが、軽~中等度であった。重症低血糖はなく、非重症低血糖の頻度はP群と同等であった。なお、収縮期血圧や、HDL-C、non-HDL-Cなどの脂質プロファイルにも改善が認められた。 この結果は、基礎インスリン使用でコントロールが不十分であるが低血糖リスクや体重増加の懸念により治療強化が困難な2型糖尿病患者に対し、CagriSemaが追加治療の有効な選択肢となることを示した点で重要である。ただし、本試験ではC単独群やS単独群が設定されていないため、各単剤と比較したCagriSemaの効果については明らかではない。なお、CagriSemaもSと同様に心血管イベント抑制効果を有することが期待されるが、これを支持する直接的なエビデンスは現時点では得られていない。現在、心血管疾患を有する患者における心血管イベントへの影響を検証するための第III相試験(REDEFINE 3)が進行中であり、結果が待たれる。

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人工甘味料は代謝に影響する? レビューとメタ解析が新たな知見

 人工甘味料を含むノンカロリーまたは低カロリーの非栄養性甘味料(non-nutritive sweeteners;NNS)は、過去数十年にわたり、砂糖に比べて健康的な代替品であると言われてきた。しかし、新たな研究によるとNNSは、腸内細菌叢などを介した機序が関与することで代謝に影響を与える可能性があるという。米タフツ大学フリードマン栄養科学政策大学院のMeng Wang氏らが、これまでの研究報告をレビューしたほか、新たなメタ解析を実施した結果であり、詳細は「Current Atherosclerosis Reports」に6月25日掲載された。 論文の筆頭著者であるWang氏は、「われわれの研究の特徴は、水やプラセボなどカロリーを含まない対照と比較することで、NNSを用いることによる摂取カロリーの変化の影響ではなく、NNS自体の直接的な生理学的影響をより詳細に検討した点にある」と解説。そして、「それぞれの臨床試験の結果を統合すると、NNSが代謝に悪影響を及ぼす可能性が示唆される」と述べている。 Wang氏らの研究では、NNSの摂取が心血管代謝疾患のリスクに及ぼす影響を検討した、成人を対象とする21件のランダム化比較試験を統合解析するとともに、コホート研究の結果もレビューした。その結果、ランダム化比較試験の統合解析では、NNS群は対照群と比べて空腹時インスリン値と、長期的な血糖コントロールの指標であるHbA1cが高く、インスリン感受性の低下傾向も認められた。 研究者らは、このような関連の背景にある機序の一つとして、NNS摂取による腸内細菌叢への影響が考えられるとしている。これまでの研究から、いくつかのNNSが腸内細菌叢の組成や機能を変化させる可能性が指摘されているという。 また、コホート研究のレビューでは、NNSの摂取量が多い人は、2型糖尿病や心血管疾患のリスク上昇との関連も認められた。研究者らは、これらの結果からNNSが代謝に悪影響を及ぼす可能性が示唆されるものの、因果関係の確認にはさらなる研究が必要だと述べている。 その一方、論文の上席著者であるタフツ大学Food is Medicine研究所のDariush Mozaffarian氏は、「加糖飲料を何杯も飲むなど、食事で大量の添加糖を摂取している人の場合、それをNNSに置き換えるというのは良い選択肢であるかもしれない」としている。ただし同氏も、「それが安全で無害だと安易に考えることはできない。できるだけ控えるというのが、賢明な選択だろう」と付け加えている。 また研究者らは、米国の食品表示制度の欠陥が、この領域の研究の妨げとなっていると指摘している。現行の制度によると、メーカーはNNSの使用を明記することが義務付けられているが、その含有量を記載する必要はない。そのため、NNSの摂取量と疾患リスクの関連に関して、明確なエビデンスを構築することが困難だとしている。

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夏の理想的な水分補給は「4つのS」で/アボット

 糖尿病管理のための持続グルコース測定器「リブレ」や循環器疾患領域などの医療機器を全世界で開発・販売しているアボットは、夏の熱中症対策と高血糖リスクの関連について、都内でメディアセミナーを開催した。セミナーでは、「ペットボトル症候群」への警鐘と夏期の糖尿病患者への対応などが解説された。負の連鎖を起こす夏の「ペットボトル症候群」 「『理想的な水分補給』と血糖管理~夏の熱中症対策が“高血糖のリスク”になる?~」をテーマに、川名部 新氏(おばな内科クリニック 院長)が、夏期の脱水予防と血糖管理の重要性について講演した。 20歳以上の男女で「糖尿病が強く疑われる人」が年々増加している中で、糖尿病診療では近年、新しい血糖管理の指標として「血糖トレンド」が注目されている。血糖トレンドとは、24時間の中で血糖値がどのように変動しているかを示すものであり、血糖自己測定(SMBG)や持続グルコース測定(CGM)により、1日の血糖変動の可視化を行うことができる。より良い糖尿病のセルフケアには、血糖トレンドの変動幅を小さくすることが重要と考えられている。 わが国は、近年、夏の平均気温が上昇し、日中・日没後の暑さが厳しくなっている。こうした環境の中では、飲料水を摂る機会も多い。糖分の多い清涼飲料水を大量に飲み続けることで高血糖となり、強いのどの渇きが生じ、さらに甘い飲料水を飲んでしまい、高血糖が悪化するという悪循環に陥る「ペットボトル症候群」(清涼飲料水ケトーシス)が懸念されている。本症候群になりやすい人としては、糖尿病患者または糖尿病予備群、糖分入り飲料水を1日1L以上飲む習慣のある人、運動不足であまり汗をかかない人などがいる。 本症候群は3つの段階を経て起こる。初期段階では「強いのどの渇き」「多飲」「多尿」などが起こる。中期段階では「倦怠感」「集中力低下」「眠気」などが起こる。そして、症状が進行すると「脱水症状」「意識障害」などが起こり、救急搬送が必要となるケースもある。 実際、ペットボトル飲料について、スポーツドリンクでは角砂糖約8個分、経口補水液では約3個分、オレンジジュースでは約10個分に相当する糖分が含まれており、適量摂取が重要となる。また、カロリーゼロを謳う飲料でも「厳密にはゼロではなく、水と同じように飲むべきではない」と川名部氏は警鐘を鳴らす。  高血糖を抑え、脱水を予防する水分摂取として夏期の理想的な水分補給の「4つのS」を川名部氏は提言する。 Soon:のどが渇く前にこまめに飲む Sugar less:糖分を含む飲料は控える  Simple drink:飲み物は水かお茶を基本とする Salt:汗をかいたら塩分補給 ただ、過度の飲水による「水中毒への注意が必要」とも川名部氏は指摘するとともに、SGLT2阻害薬などのように尿量が多くなる糖尿病治療薬では、夏期には脱水のリスクもあるために用量の変更や他剤への切り替えの検討も必要であると語った。血糖値の現在地を血糖トレンドで患者に説明する 続いて持続グルコース測定器を用いた血糖管理について触れ、糖尿病診療と夏の血糖トレンドの関係について説明した。通常、健康な人の血糖変動はほぼフラットであり、1日を通じて変動幅が少ない。その一方で、糖尿病患者の血糖は、血糖トレンドの変動幅が大きく(食事後に急上昇する)、とくに清涼飲料水を摂取した後は変動幅がさらに大きくなる。 持続グルコース測定器を活用して血糖管理に成功した症例(50代・男性、BMI26.0)を提示した。一定の食品(たとえば菓子パン、甘いアイスココアなど)の摂取後には、血糖値が急上昇する。患者にこうした血糖変動を可視化した図で示すことで、血糖変動の大きい食事を減らす指導が可能となり、血糖変動幅を減少させることができたと紹介した。 別の症例(30代・男性、BMI34.7)は、糖分の多い清涼飲料水を過剰に摂取していた糖尿病患者で、救急搬送後にインスリン教育入院となった。そのインスリン治療に加え、血糖トレンドと血糖自己管理を理解させることで、現在、血糖値は安定し、退院後は川名部氏のクリニックでフォロー中という症例を紹介した。患者には、血糖値の現在地を血糖トレンドをカーナビになぞらえて指導することで、理解されやすいという。また、高血糖リスク予防のため、食事と運動指導として次の項目を指導していると紹介した。【食事編】・朝食を食べる・野菜は最初に、炭水化物は最後に食べる・間食はできるだけ控え、食べるなら食後に・甘いドリンクは控える・アルコールの飲み過ぎに注意する・よく噛んでゆっくり食べる(30回程度)【運動編】・座りっ放しに気を付け、立位の時間を増やす・家事で積極的に体を動かす・家の中でもこまめに運動をする(椅子を使ったスクワットなど)・エスカレーターやエレベーターより階段を使う・ウォーキングなどの運動は朝夕の涼しい時間帯に行う 最後に川名部氏は「夏の猛暑には熱中症に加え高血糖にも注意が必要」と述べ、「ペットボトル症候群に注意して、『4つのS』と『血糖トレンド』を意識して乗り切りましょう!」とまとめ、講演を終えた。

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PPI、P-CABなどに「低マグネシウム血症」の重大な副作用追加/厚労省

 2026年7月14日、厚生労働省より添付文書の改訂指示が発出され、PPIやP-CABなどの消化性潰瘍治療薬の「重大な副作用」および「重要な基本的注意」の項に、「低マグネシウム血症」に関する注意が追加された。  各製剤における低マグネシウム血症関連事象を評価した結果、PPI含有製剤と低マグネシウム血症との因果関係が否定できない症例*1が集積したことから、使用上の注意を改訂することが適切と判断された。ただし、PPI単剤で因果関係の否定できない症例が複数確認できるため、一部のパック剤および配合剤*2についての集積状況は未確認であるという。*1:医薬品医療機器総合機構(PMDA)副作用等報告データベースに登録され、MedDRA PT「低マグネシウム血症、血中マグネシウム減少、マグネシウム欠乏」で当局報告された症例のうち、CTCAE(ver.6.0)におけるGrade3以上の症例かつPPI中止後に複数点での血中マグネシウム値が測定されている症例を抽出したもの。*2:アスピリン・ランソプラゾール配合剤、アスピリン・ボノプラザンフマル酸塩配合剤、ボノプラザンフマル酸塩・アモキシシリン水和物・クラリスロマイシン、ボノプラザンフマル酸塩・アモキシシリン水和物・メトロニダゾール 改訂内容は以下のとおり。【重要な基本的注意】 プロトンポンプインヒビター等の長期投与により低マグネシウム血症があらわれることがあるので、本剤を長期投与する際は、定期的に血中マグネシウム濃度を測定すること。 【重大な副作用】 低マグネシウム血症:プロトンポンプインヒビターの長期投与により、QT延長、痙攣、しびれ等を伴う低マグネシウム血症があらわれることがある。また、低マグネシウム血症に起因した低カルシウム血症、低カリウム血症等の電解質異常を伴う場合がある。これらの電解質異常が疑われる症状があらわれた場合には、血中マグネシウム濃度の測定を行い、異常が認められた場合は、マグネシウムの補充等の適切な処置を行うこと。 <医療用医薬品> ・オメプラゾール(商品名:オメプラール錠ほか) ・オメプラゾールナトリウム(オメプラゾール注射用20mg「日医工」ほか) ・ラベプラゾールナトリウム(パリエット錠ほか) ・ランソプラゾール(経口/注射、タケプロンほか)・エソメプラゾールマグネシウム水和物(ネキシウムほか)・ボノプラザンフマル酸塩(タケキャブほか) ・アスピリン・ボノプラザンフマル酸塩(キャブピリン配合錠)・アスピリン・ランソプラゾール(タケルダ配合錠)・ボノプラザンフマル酸塩・アモキシシリン水和物・クラリスロマイシン(ボノサップパック) ・ボノプラザンフマル酸塩・アモキシシリン水和物・メトロニダゾール(ボノピオンパック)OTCの胃腸薬にも「相談すること」として追加 また、一般用医薬品で要指導医薬品として販売されているオメプラゾール、ランソプラゾール、ラベプラゾールナトリウム含有製剤についても「相談すること」の項に改訂がなされた。服用後に副作用として、「吐き気、嘔吐、食欲不振、体がだるい、顔や手足の筋肉がぴくつく、一時的にボーっとする、意識の低下、手足の筋肉が硬直しガクガクと震える、しびれ、めまい、動悸、気を失う等があらわれる」可能性が追記され、症状があらわれた場合は直ちに医師の診療を受けるよう注意が追加された。 その他の医薬品における重大な副作用等の追加  また、同日付で以下の薬剤等についても改訂が行われたほか、インスリン アスパルト(フィアスプ注)においては、「37℃を超える高温下でのゲル化によるインスリンポンプ内部の閉塞(重篤な高血糖や糖尿病性ケトアシドーシスの発現リスク)」に関する記載が「重要な基本的注意」に追加となった。<重大な副作用などが追加された製剤>・免疫チェックポイント9成分*3:血管炎・グセルクマブ(トレムフィア):肝機能障害・ドキソルビシン塩酸塩(リポソーム製剤、ドキシル):腎臓限局型血栓性微小血管症・イキサゾミブクエン酸エステル(ニンラーロ):血栓性微小血管症・カルボプラチン(カルボプラチン点滴静注液50mg「NK」):抗利尿ホルモン不適合分泌症候群(SIADH)・組換えRSウイルスワクチン(アブリスボ):ギラン・バレー症候群・抗ヒト胸腺細胞ウサギ免疫グロブリン(サイモグロブリン):血栓性微小血管症*3:アテゾリズマブ、アベルマブ、イピリムマブ、セミプリマブ、チスレリズマブ、デュルバルマブ、トレメリムマブ、ニボルマブ*4、レチファンリマブ)*4:血栓性微小血管症も追加

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コントロール不良の2型糖尿病、週1回皮下投与のretatrutideが有効/Lancet

 食事療法および運動療法のみではコントロール不十分な2型糖尿病成人患者において、retatrutide単独療法はプラセボと比較し、血糖コントロールおよび体重減少に関して有意な改善を示し、有害事象のプロファイルは既知のGLP-1受容体作動薬と一致していた。カナダ・LMC Diabetes and EndocrinologyのHarpreet S. Bajaj氏らが、米国、メキシコおよびインドの48施設で実施した40週間の第III相無作為化二重盲検プラセボ対照試験「TRANSCEND-T2D-1試験」の結果を報告した。retatrutideは、GIP、GLP-1およびグルカゴンの3つのホルモンの受容体作動薬で、2型糖尿病、肥満、および関連する合併症を対象に臨床開発が進められている。Lancet誌2026年6月13日号掲載の報告。retatrutideの3用量をプラセボと比較、週1回40週間皮下投与 TRANSCEND-T2D-1試験の対象は、食事療法および運動療法のみでは血糖コントロール不良の18歳以上の2型糖尿病患者で、HbA1c値が7.0~9.5%、BMI値23以上、スクリーニング前90日間およびスクリーニング期間中に血糖降下薬を使用しておらず、インスリン療法歴がなく、スクリーニング前少なくとも90日間体重が安定していること(自己申告で変動が5kg以下)とした。 研究グループは適格患者を、retatrutide 4mg群、9mg群、12mg群またはプラセボ群に、1対1対1対1の割合で無作為に割り付け、週1回40週間皮下投与した。retatrutide群は全例2mgより投与を開始し、計画に従い割り付けられた維持用量(4mg、9mg、または12mg)に達するまで4週ごとに増量した。 主要エンドポイントは、ベースラインから40週時のHbA1cの変化量で、retatrutide各用量群のプラセボ群に対する優越性を両側有意水準0.0167として検証した(全体でα=0.05を各比較に分割)。重要な副次エンドポイントは、ベースラインから40週時の体重の変化率などであった。 主要エンドポイントおよび重要な副次エンドポイントについては、両側有意水準0.05でファミリーワイズの第1種の過誤確率を厳密にコントロールするため、グラフィカルアプローチを用いて検定を行い、多重性を調整した。HbA1c変化量の推定治療群間差は、-0.88~-1.12% 2024年4月10日~2025年4月21日に、930例がスクリーニングを受け、537例が無作為化された(retatrutide 4mg群134例、9mg群133例、12mg群136例、プラセボ群134例)。 ベースラインの患者背景は、女性296例(55%)、男性241例(45%)、平均年齢48.8歳(SD 12.1)、HbA1c7.9%(1.1)、2型糖尿病の罹病期間2.5年(4.4)、BMI値35.8(7.0)であった。490例(91%)が40週間の治療を完了し、504例(94%)が本試験を完了した。 ベースラインから40週時のHbA1cの変化量の治療レジメン推定値は、retatrutide 4mg群-1.69%(SE 0.11)、9mg群-1.86%(0.10)、12mg群-1.94%(0.08)に対し、プラセボ群は-0.81%(0.12)であった。 プラセボ群に対する推定治療群間差は、retatrutide 4mg群-0.88%(95%信頼区間[CI]:-1.18~-0.59)、9mg群-1.04%(95%CI:-1.32~-0.76)、12mg群-1.12%(95%CI:-1.39~-0.85)であり、retatrutide全用量群でプラセボ群と比較し、有意差が認められた(いずれもp<0.0001)。 ベースラインから40週時の体重の平均変化率は、retatrutide 4mg群-11.5%(SE 0.7)、9mg群-13.9%(0.8)、12mg群-15.3%(0.8)に対し、プラセボ群は-2.6%(0.5)であり、retatrutide群のプラセボ群に対する推定治療群間差はそれぞれ-8.9%(95%CI:-10.5~-7.2)、-11.3%(95%CI:-13.1~-9.5)、-12.7%(95%CI:-14.4~-11.0)であった(いずれもp<0.0001)。 retatrutide群で最も発現割合が高い有害事象は、軽度~中等度の消化器系イベント(下痢、悪心、嘔吐)であり、主に用量漸増期間中に発現した。 有害事象による試験中止は、retatrutide 4mg群3例(2%)、9mg群6例(5%)、12mg群7例(5%)に認められたが、プラセボ群では認められなかった。重症低血糖は報告されなかった。 試験期間中に死亡が2例報告されたが(いずれもretatrutide 4mg群)、試験薬とは関連がなかった。

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高齢の糖尿病を有する人の薬物治療の限界はどこか/日本糖尿病学会

 第69回日本糖尿病学会年次学術集会(会長:下村 伊一郎氏[大阪大学大学院医学系研究科 内分泌・代謝内科学 教授])が、5月21~23日の日程で、大阪国際会議場、リーガロイヤルホテル大阪をメイン会場に開催された。 今回の学術集会は「IMAGINE いのち輝く 糖尿病の医療・医学を共に目指して」をテーマに、41のシンポジウム、143の口演、ポスターセッション、会長特別企画による講演、特別企画「糖尿病とともに生活する人々の声をきく」などが開催された。 高齢の糖尿病を有する人では、糖尿病本態だけでなく、心血管障害や認知障害、運動器障害などさまざまな疾患を併存しているケースが多く、治療薬の選択やアドヒアランスのフォローなど考慮することが多岐にわたる。実臨床ではどのように診療を進めるべきであろうか。そこで本稿では、シンポジウム34「超高齢時代のダイアベティス治療はいかにあるべきか」(日本糖尿病学会・日本糖尿病協会合同シンポジウム)より清野 祐介氏(藤田医科大学医学部内分泌・代謝・糖尿病内科学/関西電力医学研究所糖尿病研究センター)の「超高齢2型糖尿病の至適な薬物治療の限界」の講演概要をお届けする。治療薬の工夫が重要な高齢の糖尿病を有する人 高齢の糖尿病を有する人では、糖尿病は高血糖、低血糖、フレイル、サルコペニア、認知機能低下の危険因子となる。また、加齢による肝機能、腎機能の低下がみられることから治療薬の選択では、バランス調整が必要になる。『糖尿病治療ガイド2024』(編集:日本糖尿病学会)では、高齢の糖尿病を有する人の治療の留意点を示しており、「低血糖を避けながら、高血糖をおだやかに是正することが必要」としている。また、糖尿病合併症や他の疾患との併存が多く、服薬数が多くなるのも特徴である。 このような多剤併用はアドヒアランスの低下を来し、高血糖や重症低血糖など致死的なリスクが高くなる。そのために服薬回数の減少や服薬タイミングの統一、一包化、配合薬の選択などが行われているが、緊急時の対応への準備も必要となる。日本糖尿病学会と日本老年医学会が共同制作した『高齢者糖尿病診療ガイドライン2023』(編集:日本老年医学会)では、「高齢者糖尿病の血糖コントロール目標(HbA1c値)」が示されており、3つのカテゴリー別と重症低血糖が危惧される薬剤(インスリンやスルホニル尿素薬[SU薬]など)の使用の有無で、HbA1cの目標値と下限値が示されている。現段階で、超高齢の糖尿病を有する人にこのHbA1cの目標値があてはまるかどうかは不明である。よく理解しておきたい糖尿病治療薬の高齢の患者への影響 糖尿病の治療において、体重を減らすことは、インスリン感受性や糖代謝を改善するのに効果的とされているが、高齢の糖尿病を有する人では、筋肉量や骨量の低下があり、配慮する必要があるとされる。また、高齢の糖尿病を有する人に糖尿病治療薬を使用する際の懸念点としては、たとえばα-グルコシダーゼ阻害薬では服用回数が多い、SGLT2阻害薬では体重減少、チアゾリジン薬では心不全の増悪や女性では骨折リスクの増加、ビグアナイド薬では腎機能低下時に乳酸アシドーシスのリスクの出現、GLP-1受容体作動薬では体重減少、SU薬やグリニド薬では単独で低血糖のリスクが高くなるなどが挙げられる。そのほか、高齢の糖尿病を有する人に頻用されているDPP-4阻害薬では、演者の経験としては便秘など消化器症状の頻度も高く、重症例では腸閉塞を来す例もみられたという。とくに高齢の糖尿病を有する人は、在宅で診療をされている患者が多く、主治医が適切なタイミングでこうしたリスクを防ぐことができるか課題であると指摘する。高齢の糖尿病を有する人にはSU薬とDPP-4阻害薬の使用が多い 糖尿病治療薬の使用などについて、清野氏らが行った多施設共同研究の一端に触れた。この研究では、65歳以上の糖尿病、慢性腎疾患、そのいずれかまたは両方の疾患の患者を対象としたもので、参加施設は糖尿病、腎臓病の専門医を中心とした多職種連携が行われている施設。参加者は1,355例で、65~74歳は767例、75~84歳が523例、85歳以上が65例。これらの参加者のBMI、骨格筋量(SMI)、HbA1c、eGFRなどの数値を計測した。 その結果、85歳を区切りとしてみると、85歳以上では握力、筋力が65~84歳群との比較で顕著に低下していた。使用されている治療薬について85歳以上では体重減少に働くようなSGLT2阻害薬、GLP-1受容体作動薬の使用頻度が低くなっていた。また、乳酸アシドーシスのリスクからビグアナイド薬、心不全のリスクからチアゾリジン薬の使用頻度も低い一方で、SU薬とDPP-4阻害薬は高頻度で使用されていた。また、予想に反してグリニド薬、α-グルコシダーゼ阻害薬の使用が多く、その理由として「参加者の自己管理能力が高かったことが推定される」と述べた。 本研究では、糖尿病診療支援が整った医療施設で食事療法も薬物療法もしっかりでき、通院や歩行にも問題がない参加者を対象としていることから、このような結果につながったと推察している。しかし、実臨床の現場では、通院ができずに糖尿病非専門医による在宅医療を受けているケースが多く、治療薬剤の選択、血糖マネジメントの目標をどこにおくのかなど糖尿病学会の推奨があまり知られていないこと、あるいは超高齢の糖尿病を有する人の治療に関するガイドラインがないことが現状の問題点となっていると述べた。さらに90歳以上の2型糖尿病を有する人を対象とした大規模臨床試験は皆無であり、複雑な背景をもつ症例への的確なアプローチをいかに構築するかが課題であると指摘した。高齢の糖尿病を有する人の治療最適化には多職種・在宅医療連携が重要 高齢の糖尿病を有する人の症例を1つ挙げ、介護施設などでの診療の難しさを説明した。症例は施設入所している91歳女性(要介護3)で認知症があり、車いすを使用、BMIは15.7でやせ型。インフルエンザで突然の意識障害があり、救急搬送された。来院時の血糖値は35mg/dLで急性低血糖にてブドウ糖静脈投与で意識回復をした。普段は、DPP-4阻害薬と少量のSU薬を服用している。腎機能は保たれているがHbA1cは5.4%であり、高齢者にとっては過度な管理で、低血糖のリスクが予想される症例だったという。日常から糖尿病をきちんと診療できる環境ではないことが予想され、治療目標、とくに下限目標の情報が診療する人、介護する人にきちんと行き届いていないのではないかと警鐘を鳴らす。また、在宅医療など超高齢糖尿病を有する人の診療現場では糖尿病専門医が予想していないような治療上の悩みも多々見受けられる。そこで、日本糖尿病協会(JADEC)では、「JADEC在宅医療・介護支援Q&A集」を作成するとともに、在宅・介護の診療現場からの質問を募っている。清野氏は、今後、こうした診療現場の情報を集積し、在宅・介護の診療現場用のJADECカードシステムによる糖尿病支援ツールセットを作成していく必要があると提言を行った。 高齢の糖尿病を有する人の治療では、『高齢者糖尿病診療ガイドライン』があるものの、90歳以上の超高齢者を対象としたエビデンスは乏しい。実臨床では認知機能、ADL、介護力が治療を規定するが、高齢者では厳格な血糖管理より低血糖回避と何よりも患者の生活維持が重要だと考える。 おわりに清野氏は、「今後の高齢の糖尿病を有する人の診療では、患者の体重や握力測定など定期的な確認も大切であり、治療の最適化には多職種・在宅医療連携が重要になる」と語り、講演を終えた。

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基礎インスリン治療中の2型DM、CagriSemaがHbA1cと体重を改善/Lancet

 2型糖尿病の基礎インスリン療法は、血糖コントロールが不十分になることが多く、これが体重増加や低血糖リスクの増大と関連するとされる。CagriSemaは、cagrilintide(長時間作用型アミリン受容体作動薬)とセマグルチド(GLP-1受容体作動薬)の固定用量配合薬で、相互補完的な異なる機序を介して血糖コントロールに有益な効果をもたらす可能性が示唆され、両薬とも低血糖のリスクを増大させずに体重減少効果を示し、セマグルチドは心腎への有益な効果も確認されている。米国・テキサス大学サウスウェスタン医療センターのJulio Rosenstock氏らは「REIMAGINE 3試験」において、基礎インスリン療法で血糖コントロールが不十分な2型糖尿病患者において、プラセボと比較してcagrilintide/セマグルチド配合薬の追加が、臨床的に意義のある糖化ヘモグロビン(HbA1c)値の低下とともに、顕著な体重減少をもたらし、低血糖リスクは増加しないことを示した。研究の成果は、Lancet誌オンライン版2026年6月7日号で報告された。2種の用量を評価する無作為化第III相試験 REIMAGINE 3試験は、日本を含む6ヵ国46施設で実施した二重盲検無作為化プラセボ対照第III相試験(Novo Nordiskの助成を受けた)。2024年3~11月に、年齢18歳以上、スクリーニングの180日以上前に2型糖尿病と診断され、メトホルミンの有無を問わず、安定した1日1回の基礎インスリン療法を受けており、HbA1c値が7.0~10.5%、BMI値25以上の参加者を登録した。 被験者(274例、平均年齢59.0[SD 10.2]歳、女性115例[42%]、アジア人125例[46%])を、cagrilintide/セマグルチド(各2.4mg)配合薬(90例、各2.4mg配合薬群)、cagrilintide/セマグルチド(各1.0mg)配合薬(93例、各1.0mg配合薬群)、各用量の適合プラセボ(91例)の皮下投与を週1回受ける3つの群に無作為に割り付けた。 主要エンドポイントは、ベースラインから40週までのHbA1c値の変化量とした。2つの用量とも平均HbA1c値<7.0%を達成 ベースラインの全体の2型糖尿病の平均罹患期間は14.9(SD 7.6)年、平均体重は88.2(SD 17.9)kg、平均BMI値は31.6(SD 5.9)、平均HbA1c値は8.8(SD 1.0)%であった。234例(85%)がメトホルミンの投与を受けていた。 40週時のHbA1c値の平均変化量は、プラセボ群が-0.66%(SE 0.11)であったのに対し、cagrilintide/セマグルチドの各2.4mg配合薬群は-2.33%(SE 0.08)、各1.0mg配合薬群は-2.10%(SE 0.08)であり、プラセボ群との推定群間差は各2.4mg配合薬群が-1.68%ポイント(95%信頼区間[CI]:-1.95~-1.41、p<0.0001)、各1.0mg配合薬群は-1.44%ポイント(95%CI:-1.71~-1.17、p<0.0001)と、いずれも低下幅が有意に大きかった。40週時の平均HbA1c値は、各2.4mg配合薬群が6.45%、各1.0mg配合薬群が6.68%といずれも7.0%未満を達成した(プラセボ群は8.13%)。 また、プラセボ群に比べ2つの用量のcagrilintide/セマグルチド群はいずれも、40週時の平均HbA1c値<7.0%の達成率(各2.4mg配合薬群59.2%[95%CI:51.8~66.6]、p<0.0001、各1.0mg配合薬群53.7%[95%CI:46.0~61.4]、p<0.0001)、同平均HbA1c値<6.5%の達成率(54.2%[95%CI:47.4~61.0]、p<0.0001、42.2%[95%CI:35.1~49.3]、p<0.0001)、40週時の空腹時血糖値の変化量(-1.6mmol/L[95%CI:-2.2~-1.0]、p<0.0001、-1.2mmol/L[95%CI:-1.9~-0.5]、p=0.0013)、同基礎インスリンの1日用量の変化量(-20U[95%CI:-24~-16]、p<0.0001、-20U[95%CI:-24~-16]、p<0.0001)が有意に良好であった。体重が10~12%減少、重度低血糖の報告はない ベースラインから40週までの体重の変化量は、プラセボ群が+1.1%(SE 0.4)であったのに対し、各2.4mg配合薬群は-12.0%(SE 0.7)、各1.0mg配合薬群は-10.4%(SE 0.7)であり、プラセボ群との推定群間差は各2.4mg配合薬群が-13.1%(95%CI:-14.7~-11.5、p<0.0001)、各1.0mg配合薬群は-11.6%(95%CI:-13.2~-9.9、p<0.0001)と、いずれも大きな差を認めた。 安全性プロファイルは、GLP-1受容体作動薬の薬剤クラスおよびcagrilintideのこれまでの安全性データと一致していた。有害事象は、各2.4mg配合薬群の80%(72/90例)、各1.0mg配合薬群の71%(66/93例)、プラセボ群の71%(65/91例)で報告された。そのほとんどが軽度または中等度の胃腸障害であった。 また、重度の低血糖の報告はなかった。各1.0mg配合薬群で、治療とは関連のない死亡を1例(悪性腫瘍)認めた。 著者は、これらの知見は、「1日1回の基礎インスリン療法への追加療法としてcagrilintide/セマグルチド配合薬を使用すると、血糖コントロールを有意に改善できることを裏付けるもの」「基礎インスリンに加えてさらなる治療強化を行う場合に、体重増加や低血糖のリスク、治療の複雑化による制限を受けやすい患者集団において、とくに臨床的に意義深いものである」としている。

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美容目的でのチルゼパチド使用に伴う正常血糖ケトアシドーシス

 糖尿病や肥満のない若年女性が、美容目的でチルゼパチドを使用した後、正常血糖ケトアシドーシスを来したという症例報告がなされた。監物 諒相氏、沖田 朋憲氏(大阪けいさつ病院)らが、JCEM Case Reports誌2026年4月8日号で報告した。監物氏、沖田氏らは、チルゼパチド使用後の食欲低下や重度の消化器症状に伴う急性のカロリー不足が、ケトアシドーシス発症に関与した可能性を指摘し、美容目的の適応外使用に注意を促している。2回目投与後に悪心・嘔吐・下痢が発現 症例は20代の日本人女性。糖尿病、飲酒歴、糖質制限食の実施はなかった。身長156cm、体重58.9kg、BMI 24.2kg/m2であった。美容目的の体重減少を目的に、美容クリニックを通じてチルゼパチドを使用し、継続的な医学的管理を受けないまま、チルゼパチド2.5mgを週1回、計2回自己投与した。 初回投与後から食欲低下と摂食量低下を認め、2回目投与後に強い悪心、嘔吐、下痢が発現した。症状は4日間持続し、近医でブドウ糖含有輸液を受けた後、大阪けいさつ病院へ搬送された。来院時の体重は53.8kg、BMI 22.1kg/m2であり、約10日間で約5kg減少していた。身体所見では蒼白、疲労感に加え、発熱(38.4℃)を認めた。pH正常でもアニオンギャップ開大 入院時検査では、pH 7.41、HCO3- 17.7mmol/L、アニオンギャップ25.9mmol/L、β-ヒドロキシ酪酸5.5mmol/L、アセト酢酸1.4mmol/L、血糖196mg/dL、HbA1c 5.5%であった。pHは正常範囲内であったが、HCO3-低下、アニオンギャップ開大、ケトン体著明高値といった所見から、高アニオンギャップ性代謝性アシドーシスと判断され、嘔吐に伴う代謝性アルカローシスの合併も示唆された。 血糖値は196mg/dLと軽度高値を示したが、正常血糖ケトアシドーシスの血糖基準である250mg/dL以下であった。インフルエンザウイルスおよび新型コロナウイルス抗原検査は陰性で、画像検査や血液・尿・便の細菌学的検査でも明確な感染は同定されなかった。以上から、チルゼパチド使用と時間的に関連した正常血糖ケトアシドーシスと判断された。輸液とインスリンで速やかに改善 治療として、生理食塩水による補液の後、ブドウ糖含有輸液、電解質補正、持続静注インスリンが行われた。インスリン投与は24時間継続され、入院翌日には代謝性アシドーシスが改善し、血清ケトン体も速やかに基準範囲内まで低下した。一方、悪心・嘔吐はしばらく持続した。輸液は5日間継続され、入院4日目に通常食を再開、入院6日目に薬剤なしで退院した。 退院2週間後の外来では、消化器症状の再燃はなく、食欲も回復していた。75g経口ブドウ糖負荷試験では、空腹時血糖88mg/dL、120分値101mg/dLであり、耐糖能は正常であった。このため、搬送時の軽度高血糖は、身体ストレスや搬送前のブドウ糖含有輸液の影響と考えられた。急性のカロリー不足が誘因か 著者らは、本症例の病態について、チルゼパチドによる食欲低下と重度の消化器症状により急性の異化状態が生じたことが関与している可能性を指摘した。加えて、発熱や生理的ストレス、脱水、急激な体重減少、さらにGIP受容体作動を介した脂質代謝への影響が、ケトーシスを増幅した可能性もあると考察している。 本症例報告について、筆頭著者および共同著者である監物氏、沖田氏にコメントを求めたところ、以下の回答が得られた。【監物氏・沖田氏のコメント】 本症例は1例の症例報告であり、チルゼパチド使用との因果関係を直接証明するものではありません。一方で、チルゼパチド使用中に強い消化器症状や摂食低下が持続する場合には、正常血糖ケトアシドーシスを念頭にケトン体やアニオンギャップも確認する必要があることを示唆しています。 チルゼパチドは適正使用下では重要な治療薬ですが、美容・痩身目的での安易な使用は重篤な健康被害につながる可能性があります。本報告が、チルゼパチドの適正使用の推進と、重篤な有害事象の早期発見・早期対応に役立つことを期待しています。

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GLP-1受容体作動薬が乳がんの治療成績を改善する可能性

 血糖コントロールや肥満症の治療のために用いられているGLP-1受容体作動薬(GLP-1RA)が、一部の乳がん患者の予後改善につながる可能性を示唆するデータが報告された。肥満または糖尿病のある乳がん患者では、同薬の使用の有無によって全死亡や再発のリスクに有意差が見られるという。米VCUマッセイ総合がんセンターのBernard Fuemmeler氏らの研究によるもので、詳細は「JAMA Network Open」に5月11日掲載された。 これまでの研究から、肥満や2型糖尿病を有する乳がん患者は、生存率が低い傾向にあることが示されている。また、エビデンスは十分ではないものの、肥満と乳がんが併存する場合には、減量が乳がんの予後を改善させる可能性が示唆されている。他方で近年では、2型糖尿病や肥満症に対してGLP-1RAが処方される機会が増えている。ただし、GLP-1RAの使用と乳がん患者の予後との関連は明らかにされていない。以上を背景としてFuemmeler氏らは、米国内の医療機関68施設の電子医療記録が統合されたリアルワールドデータベース(TriNetX US Collaborative Network)を用いた検討を行った。 2006年4月1日~2023年4月1日に乳がんと診断された18歳以上の女性84万1,831人(平均年齢69.1±12.2歳)を対象に、傾向スコアマッチングにより、年齢、人種・民族、肥満有病率などの背景因子が調整されたコホートが3つ作成された。1つ目はBMI30以上の肥満患者を対象にGLP-1RA処方の有無で比較するコホート(各群1,610人)、2つ目は2型糖尿病のある患者を対象にGLP-1RA処方群とインスリンまたはメトホルミン処方群を比較するコホート(各群2,323人)、3つ目は2型糖尿病のある患者を対象にGLP-1RA処方群とSGLT2阻害薬(SGLT2i)処方群を比較するコホート(各群4,052人)。追跡期間を10年とし、主要評価項目は全死因死亡、副次評価項目は無再発生存期間(RFS)とした。 解析の結果、1つ目のコホートにおいてGLP-1RAの処方は、全死因死亡(ハザード比〔HR〕 0.35〔95%信頼区間0.21~0.58〕)、およびRFSのリスク低下(HR 0.44〔同0.30~0.64〕)と関連していた。また、2つ目のコホートにおいてGLP-1RAの処方は、全死因死亡(HR 0.09〔0.06~0.15〕)、およびRFSのリスク低下(HR 0.33〔0.21~0.50〕)と関連していた。3つ目のコホートでのSGLT2iとの比較では有意差が認められなかった(全死因死亡はHR 0.97〔0.82~1.14〕、RFSはHR 0.91〔0.71~1.18〕)。 この結果をFuemmeler氏は、「われわれの研究はGLP-1RAが一部の乳がん患者に対して、生存率の改善および再発リスク低下と関連する可能性を示している」と総括。ただし、「この影響が、GLP-1RAが有する減量効果や心肺機能改善効果、あるいはその他の生物学的な要因と関連したものかどうかを判断するには、さらなる研究が必要だ」と同氏は付け加えている。なお、研究者らは今後、ランダム化比較試験の実施を予定している。

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糖尿病患者の治療薬、残歯数と周術期死亡の関連/日本糖尿病学会

 日本糖尿病学会の第69回年次学術集会(会長:下村 伊一郎氏[大阪大学大学院医学系研究科 内分泌・代謝内科学 教授])が、5月21~23日の日程で、大阪国際会議場、リーガロイヤルホテル大阪をメイン会場に開催された。 今回の学術集会は「IMAGINE いのち輝く 糖尿病の医療・医学を共に目指して」をテーマに、41のシンポジウム、143の口演、ポスターセッション、会長特別企画による講演、特別企画「糖尿病とともに生活する人々の声をきく」などが開催された。 近年、口腔内の衛生状態が糖尿病や心不全をはじめとするさまざまな疾患と関連することが知られている。糖尿病患者では、治療薬と残歯数は手術後の死亡リスクに関係するのであろうか。この課題について尾崎 邦彰氏、高橋 裕氏ら(奈良県立医科大学糖尿病内分泌内科学講座)の研究グループは、同公衆衛生学教室との共同研究により、口演52「大規模臨床試験」において「糖尿病薬の周術期死亡リスクへの影響は残歯数によって異なる:レセプトビッグデータ解析」をテーマに発表を行った。 研究グループは、大規模レセプトデータを調査・解析し、その結果、一定の糖尿病治療薬と残歯数は手術後の死亡率と相関していることが判明した。糖尿病患者の口腔ケアは周術期の死亡リスクを減らす可能性 高橋氏らの研究グループは、糖尿病と残歯数はともに周術期リスクとなるが、同一コホートで検討した報告がないことから、周術期死亡に対して糖尿病治療薬と残歯数が与える影響を検討した。 研究は後方視的研究により1,700万人登録の商用DeSCデータベース(国民健康保険、後期高齢者医療広域連合および健康保険組合より提供されたレセプト情報・特定健診情報が含まれている)を使用した。対象者は18歳以上で全身麻酔下の手術が行われた人で、主要アウトカムは術後30日以内の死亡、副次的な解析として糖尿病治療薬と手術後死亡との関連、および残歯数について検討した。糖尿病の定義は、手術前6ヵ月以内に糖尿病治療薬が処方された人。 主な結果は以下のとおり。・手術を受けた対象者は124万1,425例、そのうち歯の本数の情報がある対象者は56万1,515例だった。このうち術後30日以内の死亡は3,414例だった。・対象者のプロフィールとして、糖尿病群では高齢、男性の割合が高く、死亡割合も高かった。・残歯数について、死亡者では糖尿病群と比べて約1.7本少なく、平均では残歯数20本の人が多かった。・残歯数23本以下では糖尿病患者が多く、残歯数26本以上では非糖尿病患者が多かった。・糖尿病を有することで死亡割合は約1.85倍に増加した。・糖尿病の有無によらず、残歯数が少ないほど死亡割合も増加していた。・手術後死亡の関連因子では、インスリン使用、加齢、残歯数の減少が死亡リスクの増加と関連していた。・層別化すると残歯数20本以上の群ではビグアナイド薬の使用が、20本未満の群ではチアゾリジン薬の使用が死亡リスクの低下と関連していた。 研究グループは、これらの結果から「糖尿病の罹患が周術期後の死亡の増加と関連し、残歯数も少なくなることとも関連することが判明した。また、残歯数が少ないことが周術期後の死亡の増加と関連することも判明した。糖尿病患者には、診断時から口腔(歯)への介入が推奨されている一方で、歯科受診は半分に満たないという報告もある。そして、糖尿病患者で残歯数20本未満の68歳の死亡リスクは、糖尿病ではない残歯数20本以上の80歳の死亡リスクと同等であることが示された。加齢、糖尿病の存在、残歯本数の減少はそれぞれが関連しながらも独立して死亡リスクと関連した。これらの結果から糖尿病患者には、歯の喪失に関連して、比較的若年であっても高齢者に相当するリスクを有するため、適切な歯科的介入の重要性が示される」と述べている。

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