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アトピー性皮膚炎が、うつ病、不安および自殺念慮と関連

 アトピー性皮膚炎(AD)は不安やうつ病と関連しているが、その重要性については知られていない。デンマーク・Herlev and Gentofte HospitalのAmalie Thorsti Moller Ronnstad氏らは、システマティックレビューおよびメタ解析から、AD患者の治療の際は、医師がうつ病、不安および自殺念慮について考慮しなければならないことを示した。著者は、「ADの改善にはこれらのリスク軽減が明白であることから、これを優先すべきである」とまとめている。Journal of the American Academy of Dermatology誌2018年9月号掲載の報告。 研究グループは、小児および成人におけるADと、うつ病、不安および自殺念慮との関連について、PubMed、EmbaseおよびPsycINFOのデータベースを用いて論文を検索し、システマティックレビューとメタ解析を行った。 主な結果は以下のとおり。・成人のADは、うつ病(統合オッズ比[OR]:2.19、95%信頼区間[CI]:1.87~2.57)、および不安(同:2.19、95%CI:1.75~2.73)と有意に関連していた。・小児においてもADはうつ病(同:1.27、95%CI:1.12~1.45)と関連していたが、不安に関しては解析に利用できるデータがほとんどなかった。・成人および青少年において、ADは自殺念慮と顕著な関連があることが認められた(同:4.32、95%CI:1.93~9.66)。・自殺既遂のリスクを調査した研究は少数であったが、多くは自殺既遂とADとの間に明らかな関連があることを示していた。・ただし、本研究にはうつ病と不安について異なる定義の研究が組み込まれており、また、ADの重症度を調べた研究はほとんどなかった。

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アトピー性皮膚炎治療薬デュピルマブ、ワクチン接種に影響なし

 IL-4/IL-13のシグナル伝達を阻害する、抗ヒトIL-4Rα抗体デュピルマブが、アトピー性皮膚炎(AD)患者のワクチン接種後の反応に、どう影響を及ぼすかは知られていない。米国・Oregon Medical Research CenterのAndrew Blauvelt氏らは、無作為化二重盲検プラセボ対照比較試験において、デュピルマブが、破傷風・ジフテリア・百日咳混合ワクチン(Tdap)および4価髄膜炎菌ワクチンの接種に影響を及ぼさないことを明らかにした。またデュピルマブは、血清総IgE値の有意な減少、プラセボと比較したADの重症度改善、良好な忍容性を示した。Journal of the American Academy of Dermatology誌オンライン版2018年8月6日号掲載の報告。 研究グループは、破傷風および髄膜炎菌ワクチンによるT細胞の細胞性免疫反応および液性免疫反応、TdapによるIgE抗体の陽転化、およびデュピルマブの有効性と安全性について評価することを目的に、無作為化二重盲検プラセボ対照比較試験を実施した。中等度~重度ADの成人患者178例を対象とし、デュピルマブ(300mg)群またはプラセボ群に割り付け、週1回16週間皮下投与した。また、12週時に、Tdapおよび4価髄膜炎菌ワクチンを1回接種した。 主要評価項目は、16週時に破傷風トキソイドに対して十分なIgG反応を達成している患者の割合であった。 主な結果は以下のとおり。・デュピルマブ群とプラセボ群で類似の陽性反応が示された(破傷風菌:83.3%および83.7%、髄膜炎菌:86.7%および87.0%)・デュピルマブの皮下投与は、血清総IgE値を有意に減少させた。・デュピルマブ群の大部分は、32週時にTdap IgEが血清反応陰性となった(デュピルマブ群62.2%、プラセボ群34.8%)。・デュピルマブは、ADの鍵となる有効なエンドポイントを改善した(p<0.001)。・注射部位反応と結膜炎がデュピルマブ群で多くみられ、プラセボ群ではADの増悪が高頻度であった。

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細胞接着分子CADM1は菌状息肉症の診断に有効

 菌状息肉症(MF)は、最も頻度の高い皮膚T細胞性リンパ腫(CTCL)であるが、早期MFの紅斑(Patch)と局面(Plaque)は、乾癬やアトピー性皮膚炎などの炎症性皮膚疾患(ISD)によく似ている。ヒトの非小細胞肺がんのがん抑制遺伝子として同定された細胞接着分子のCADM1は、成人T細胞白血病/リンパ腫(ATLL)の診断マーカーとして報告されており、今回、新潟大学大学院医歯学総合研究科の結城 明彦氏らは、「CADM1陽性細胞は浸潤が少ない早期症例で確認され、早期MFの診断マーカーとして有用かもしれない」とまとめている。Journal of the American Academy of Dermatology誌オンライン版2018年6月18日号掲載の報告。 研究グループは、早期MF腫瘍細胞におけるCADM1の発現と、それがMFの診断マーカーとして評価されるかを調査する目的で、多施設共同後ろ向き研究を行った。 免疫組織化学染色を用いて、MFのCADM1の発現を確認した。それに加え、マイクロダイセクションにより得られたMFとISDの各標本のCADM1 mRNAの発現を比較した。 主な結果は以下のとおり。・MFは58例中55例(94.8%)がCADM1陽性であった。・ISDは50例すべてがCADM1陽性を示さなかった(p<0.0001)。・MF症例の真皮内リンパ球においてCADM1 mRNAの発現を確認したが、ISD症例では見られなかった。

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第1回 炎症疾患疑いの検査/頓服薬の期間算定/腫瘍マーカーの検査/皮膚科特定疾患指導管理料【レセプト査定の回避術 】

事例1 炎症疾患疑いの検査慢性疾患で通院している患者に対し、炎症疾患を疑いCRPを実施した。●査定点レセプト請求では、炎症疾患疑いを病名に追記しなかったため査定された。解説を見る●解説病名漏れに対するCRP査定(16点)ですが、同時に免疫学的検査判断料(144点)も査定されるので、CRPを実施したときは、必ず、炎症疾患疑いを病名追記するようにしてください。事例2 頓服薬の期間算定頓服薬として、30日分を請求した。●査定点20日間が査定された。解説を見る●解説10日以上の頓服薬は査定の対象になります。電子カルテの普及に伴い、内服薬の用法を間違えて、頓服薬として30日分、60日分などで請求してしまうことがあります。これは、「医療機関側のミス」となるので、医師の入力ミス防止策の検討、医事課の点検を強化する必要があります。事例3 腫瘍マーカーの検査慢性疾患で通院している患者が、4月にα-フェトプロテイン(107点)を施行した。6月に肝がんが確定し癌胎児性抗原(CEA)(105点)とCA19-9(130点)を施行し、悪性腫瘍特異物質治療管理(360点)+初回月加算(150点)を算定した。●査定点初回月加算(150点)が査定された。解説を見る●解説初回月加算の条件に、「悪性腫瘍特異物質治療管理料を算定する当該初回月の前月において、区分番号「D009」腫瘍マーカーを算定している場合は、当該初回月加算は算定できない」と通知されています。この前月とは、「事例3 腫瘍マーカーの検査」でいうと5月にあたるので、6月の初回月加算(150点)は算定できます。事例4 皮膚科特定疾患指導管理料アトピー性皮膚炎で、先月処方した外用薬を使用するよう患者に指導し、皮膚科特定疾患指導管理料(II)を算定した。●査定点皮膚科特定疾患指導管理料(II)が査定された。解説を見る●解説アトピー性皮膚炎で、皮膚科特定疾患指導管理料(II)を算定するには、「外用療法を必要とする場合に限り算定できる」となっています。先月、処方した外用薬の使用範囲が少なくなり、今月も先月処方した外用薬を継続使用することになりましたが、レセプトに外用薬または院外処方箋が算定されていないため、外用療法をしていないと審査され、査定されました。レセプトに、簡単なコメント、たとえば「薬剤は先月分の薬剤を継続使用しています」と記載することが望まれます。

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小児のアトピー性皮膚炎、重症例で白内障のリスク増加

 小児のアトピー性皮膚炎(AD)患者における白内障の発症リスクに関するデータは不足している。韓国・ソウル大学のHyun Sun Jeon氏らは10年間にわたり集団ベースの後ろ向きコホート研究(縦断研究)を行った。その結果、白内障の絶対リスクはADの有無にかかわらず非常に低かったが、ADを有する小児は手術を要する白内障のリスクが高く、とくに重症の場合は白内障の発症と白内障手術の両方のリスクが高まる可能性が示唆された。JAMA Ophthalmology誌オンライン版2018年6月7日号掲載の報告。 研究グループは、韓国の小児集団において、ADと続発性白内障の発症および白内障手術との関連を調査する目的で、2002~13年のKorean National Health Insurance Service databaseからnationally representative dataを用いて解析した。対象は20歳未満のAD患者または重症AD患者で、年齢、性別、居住地域および世帯収入から傾向スコアを算出して、調整した。 主要評価項目は、白内障発症率と白内障手術の発生率で、カプランマイヤー法とログランク検定を用いAD群と対照群を比較した。また、対照群における白内障および白内障手術のリスク因子について、Cox比例ハザードモデルを用いて解析した。 主な結果は以下のとおり。・解析対象は、AD群3万4,375例(女児1万6,159例[47%]、平均年齢[±SD]3.47±4.96歳、重症AD群3,734例[10.9%])、対照群13万7,500例であった。・白内障の発症は、AD群と対照群で差はなかった(0.216% vs.0.227%、95%信頼区間[CI]:-0.041~0.063%、p=0.32)。重症AD群とその対照群も同様に差はなかった(0.520% vs.0.276%、95%CI:-0.073~0.561%、p=0.06)。・白内障手術の施行は、AD群で対照群より高頻度であった(0.075% vs.0.041%、95%CI:0.017~0.050%、p=0.02)。重症AD群とその対照群でも同様であった(0.221% vs.0.070%、95%CI:0.021~0.279%、p=0.03)。・重症AD群は、白内障の発症(補正後ハザード比:1.94、95%CI:1.06~3.58、p=0.03)および白内障手術の実施条件(補正後ハザード比:5.48、95%CI:1.90~15.79、p=0.002)の両方に関連していた。

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難治アトピー、10年ぶりの新薬に期待

 2018年5月8日、サノフィ株式会社は、アトピー性皮膚炎(AD)に関するメディアセミナーを都内で開催した。本セミナーでは、「アトピー性皮膚炎初の生物学的製剤『デュピクセント(一般名:デュピルマブ)』治験のご報告~深刻な“Disease Burden”(疾病負荷)からの解放をめざして~」をテーマに、AD患者の経験談、新薬が拓くAD改善の可能性、治療の展望などが語られた。重症AD患者の日常生活を取り戻す可能性 田中 暁生氏(広島大学大学院 医歯薬保健学研究科 皮膚科学 准教授)が、AD標準治療とその課題、デュピルマブの投与症例などについて説明した。 ADは、皮膚バリア破壊、免疫・アレルギー異常、かゆみの3病態が互いに連動しているが、保湿剤、ステロイド外用薬、免疫抑制薬、内服抗ヒスタミン薬を適切に使用することで、重症を含めたほとんどの患者は、寛解状態(湿疹のない状態)を得ることが可能であるという。しかし、これらの治療は、毎日広範囲に外用薬を塗布するなど負担が大きいため、間違った使い方や誤解により効果が得られない例が存在する点を田中氏は指摘した。 デュピルマブは、ADの代表的な3つの病態すべてに作用し、症状を改善する可能性がある。治験を担当した同氏は、「デュピルマブにより疾患がコントロールされ、患者さんが今まで制限されていた日常生活を取り戻す症例を経験した。新たな治療選択肢の登場が、AD治療の歴史を変える転換点になることを期待する」と語った。ガイドラインを順守し、デュピルマブの適切な使用を 次に、佐伯 秀久氏(日本医科大学大学院 皮膚粘膜病態学 教授)が、デュピルマブの治験成績を説明し、AD治療における今後の期待などを述べた。 ADの評価尺度として、臨床徴候をスコア化したEASIが国際的に用いられている。国際共同第III相試験は、中等~重症の成人AD患者を対象に行われ、ステロイド外用薬(ストロング)との併用で、治療期間52週における、デュピルマブの有効性と安全性が検討された。その結果、16週時点でEASIスコアは平均80.1%低下し、その後52週まで維持された。副作用は注射部位反応、頭痛、アレルギー性結膜炎などが発現したが、重篤な有害事象は対照群と比較して、発生件数に大きな差は認められなかった(デュビルマブ群14例、対照群16例)。 デュピルマブは、2018年4月、最適使用推進ガイドラインが厚生労働省より策定され、投与対象の条件について具体的に定められている。佐伯氏は、「ADはまず標準治療をしっかり行うことが重要。デュピルマブは、重症難治例や、副作用などにより既存の薬剤を使用できない例などの、アンメットニーズを満たす薬剤として期待できる」と語った。 最後に両医師が、ADの病態は、良好な状態が長期間続くほど、その後の経過も良い傾向にあると示した。「適切な治療により症状が大きく改善され、維持できたら、徐々に薬を減らしたり、間隔を広げたりできる可能性は十分に見込めるので、AD患者は積極的に目的意識を持つことが重要」だと締めた。疾病負荷は良質なコミュニケーションで改善の可能性 ADは、増悪・寛解を繰り返す慢性疾患である。患者数の増加が続いており、2014年の総患者数は推計45万6,000人、その2~3割が中等症以上といわれている。2017年にサノフィ株式会社が行った意識調査によると、ADによる生活の質への影響は85.7%、精神面への影響は79.3%の患者が感じており、患者の疾病負荷への理解や認識は、症状改善のための大事なファクターと考えられる。 現在、治療はガイドラインに基づいて行われているが、医師とのコミュニケーションが不足しているほど、症状の改善・寛解の割合は低いままだったという。医師はこの現状を把握し、身体症状以外の負荷についてヒアリングを行うなど、患者の気持ちに寄り添ったコミュニケーションを心掛けていくことが求められる。 ADの新薬は、ここ10年間登場していなかった。デュピルマブは、従来とはまったく異なる作用機序を持つため、既存治療で効果不十分な中等~重症患者に、待ち望まれた新薬と言える。なお、同薬は現在、コントロール不良の気管支喘息に対する適応の追加を申請中。■参考サノフィ株式会社 プレスリリース認定NPO法人 日本アレルギー友の会■関連記事アトピー性皮膚炎に初の抗体医薬品発売

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アトピー性皮膚炎の重症化にTLR2が影響か?

 アトピー性皮膚炎(AD)患者の皮膚には、疾患を重症化させる黄色ブドウ球菌が存在し、それは高度なコロニー形成によりヒト微生物叢のバランスを崩壊させる。ドイツ・ボン大学の岩本 和真氏らによる検討で、アトピー性皮膚炎患者ではTLR2を介した黄色ブドウ球菌由来シグナルの感知が、ランゲルハンス細胞(LC)で強く障害されていることが示唆された。著者は、「この現象は、アトピー性皮膚炎では免疫デビエイションと黄色ブドウ球菌の除去不足が影響している」とまとめている。Allergy誌オンライン版2018年4月19日号掲載の報告。 研究グループは、ADにおける自然免疫と獲得免疫のつなぎ役としての表皮樹状細胞の役割を明らかにするために、健康な人とAD患者の皮膚から新たに分離した器官モデルでLCと樹状細胞(IDEC)のTLR2の機能解析と表現型の比較を行った。 主な結果は以下のとおり。・in situ分析において、AD皮膚の新鮮分離LCおよびIDECは、健康な皮膚のLCと比較して、TLR2の発現が減少していた。・AD皮膚のLCは、IDECとは対照的に、in situで活性化の証拠が示されなかった。・健康な皮膚のLCは、TLR2リガンドへの曝露により成熟し、遊走活性が増加した。・AD皮膚のLCおよびIDECは、TLR2リガンドに反応せず、成熟しなかったが、高い自然遊走活性を示した。・健康な皮膚およびAD皮膚のケラチノサイトは共に、TLR2発現が同程度であった。・AD皮膚培養上清中のIL-6とIL-10の産生は、Pam3Cysによって低下した。・IL-18の値は、健康な皮膚と比較しAD培養上清中で有意に高く、TLR2ライゲーションの影響はなかった。

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シラカバ花粉関連食品がアトピー性皮膚炎の湿疹増悪に影響か

 ドイツ・ハノーバー医科大学のAnja Wassmann-Otto氏らによる、二重盲検食物負荷試験(DBPCFC)の後ろ向き研究によって、アトピー性皮膚炎(AD)でカバノキ科(シラカバ)の花粉感作に関連する患者では、シラカバ花粉関連食品の摂取が湿疹増悪の誘因と考えるべきであることが示された。これまでの研究で、同様の所見は示されていたが、議論の余地が残されていた。なお今回の結果について著者は、「遅発性湿疹反応を予測する十分なマーカーがまだ不足しているので、ADを有する患者のシラカバ花粉関連食品に対する診断において、DBPCFCに代わる手法はない」と述べている。Allergy誌オンライン版2018年4月13日号掲載の報告。 研究グループは、シラカバ花粉関連食品がどのくらい湿疹の悪化を誘発するかを調べる目的で後ろ向き研究を行った。また、総IgEならびに特異的IgE抗体価を評価した。 ADを発症し、シラカバ花粉関連食品にアレルギーの疑いがある、小児および成人182例を対象としてDBPCFCを行った。DBPCFCの前に総IgEならびに特異的IgE抗体価を測定した。 主な結果は以下のとおり。・65例が、DBPCFCでシラカバ花粉関連食品にアレルギー反応を認めた。・このうち32例は、ADの有意な悪化を認めた。・さらにこの32例は、AD重症度分類(SCORAD)において、ベースラインから中央値で15.4点(95%信頼区間[CI]:12.4~16.3)上昇し、これは全反応の37%を占めた。・65例の反応者は非反応者と比較して、シラカバ花粉とリンゴに対する特異的IgE抗体価が有意に高く、アレルギー性鼻炎・結膜炎の有病率が高かった(p<0.05)。・しかしながら、遅発性湿疹を起こした患者は、特異的IgE抗体による即時型反応を有する患者と区別することができなかった。

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アトピー性皮膚炎に初の抗体医薬品発売

 サノフィ株式会社は、2018年4月23日、「既存治療で効果不十分なアトピー性皮膚炎」を効能・効果とした、ヒト型抗ヒトIL-4/13受容体モノクローナル抗体製剤デュピルマブ(商品名:デュピクセント皮下注300mgシリンジ)を発売した。アトピー性皮膚炎治療薬として、初めての抗体医薬品である。 デュピルマブは、IL-4受容体αサブユニット(IL-4Rα)に特異的に結合し、Th2サイトカインであるIL-4およびIL-13の両シグナル伝達を阻害する、遺伝子組換えヒト型モノクローナル抗体である。臨床試験では、ステロイド外用薬の効果が不十分な中等~重症の成人アトピー性皮膚炎患者を対象に、ステロイド外用薬との併用療法または単独療法で、有効性と安全性が確認された。 アトピー性皮膚炎は、増悪・寛解を繰り返す、そう痒のある湿疹を主病変とする慢性炎症性疾患である。中等~重症例では、広範な発疹を特徴とし、持続する激しい難治性のかゆみ、皮膚の乾燥、亀裂、紅斑、痂皮、毛細血管出血を伴うことがある。かゆみは、患者にとって最も大きな負担であり、体力消耗、睡眠障害、不安や抑うつ症状の原因ともなり、生活の質に影響を及ぼす。デュピルマブは、既存の抗炎症外用薬で効果不十分なアトピー性皮膚炎患者への、新たな選択肢として期待されている。 デュピルマブは、安全装置付きプレフィルド・シリンジで、自己注射可能な1回使いきりの製剤。初回は600mg(2キット)、2回目以降は300mgを2週間隔で皮下注射する。薬価は8万1,640円。 原則として、抗炎症・保湿外用薬と併用で使用する。他のアレルギー性疾患を併発している場合、症状が急変する恐れがあるので、注意が必要となる。 現在、コントロール不良の気管支喘息に対する適応の追加申請中。■参考サノフィ株式会社 プレスリリース(PDFがダウンロードされます)

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第14回 オンライン診療、対象となるケースとならないケース【患者コミュニケーション塾】

オンライン診療、対象となるケースとならないケース情報通信機器の登場によって、離島やへき地などで遠隔診療を行えば医師不足を補えるのではないか、という考えのもと、1997年に遠隔診療と「医師は、自ら診察しないで治療を(中略)してはならない」という医師法第20条との関係が整理されました。その際、対象となるのは「離島、へき地、別表の患者」として、(別表)「在宅酸素療法を行っている患者、在宅難病患者、在宅糖尿病患者、在宅喘息患者、在宅高血圧患者、在宅アトピー性皮膚炎患者、褥瘡のある在宅療養患者、在宅脳血管障害療養患者、在宅がん患者」が示されたのです。ところが、2015年に「“遠隔診療の対象は1997年に示した患者に限定されず”、別表の患者は単なる“例示”であって、それ以外の患者でも認められる」としたことから、急速に対象が広がっていきました。さらに、2016年に「対面診療を行わず遠隔診療だけで診療を完結することは医師法違反になりうる」とされた通知が、翌2017年には「患者側の理由で診療が中断した場合は、ただちに医師法違反にならない」として、禁煙外来での柔軟な対応が認められ、テレビ電話や電子メール、SNSなどを組み合わせた診療が可能との通知が発出され、さらに一部で広がりをみせました。そこで、今後適切な普及を図るためにも、一定のルールが必要ということで、今年3月にオンライン診療のガイドライン(「オンライン診療の適切な実施に関する指針」)がまとめられました。その検討会に構成員として参加した立場から、このガイドラインについてご紹介したいと思います。このガイドラインでは、そもそも「遠隔医療」とは、情報通信機器を活用した健康増進や医療に関する行為と広く定義しています。そして、その遠隔医療の一部として、医師と患者が情報通信機器を通して診察をリアルタイムで行う行為を「オンライン診療」と定義しました。また、情報通信機器を用いて患者の状態を確認し、症状や訴えから疑わしい病気を判断して、受診すべき適切な科を選択するなど、最低限の医学的判断を行う行為を「オンライン受診勧奨」と位置付けて、これもガイドラインの対象にしています。一方、常識的にどう考えても受診するほどではない症状の人に「しばらく様子をみてはどうか」「受診の必要はない」といった指示を行うことや、医学的な判断を行わず「気になるようだったら内科を受診してみては?」といった一般的な受診の勧めをした場合は「遠隔医療相談」とし、ガイドラインの対象にはなりません。ただ、これらはいずれの境目にもグレーゾーンが存在するだけに、なかなか微妙なニュアンスによって判断が難しくなる部分もあるように思います。「医師と患者の直接的な関係がすでに存在していること」が基本ガイドラインでは、オンライン診療の基本理念として、①患者から日常生活の情報も得て、医療の質のさらなる向上に結び付けていくこと②情報通信機器へのアクセスしやすさを確保して、患者がより良い医療を得る機会を増やすこと③患者が治療に能動的に参画することで、治療の効果を最大化することとしています。これは何もオンライン診療に特別のことではなく、通常の医療でも基本となる事柄です。そして、医師と患者の直接的な関係がすでに存在している場合にオンライン診療が利用されることを基本として、最初から一度も直接会うことなくオンライン診療を行わないよう、「原則として初診は対面診療」を求めています。また、オンライン診療を行っている途中で、十分な情報が得られず適切な診断ができないと判断すれば、オンライン診療を中断して対面による診療に切り替えること、としています。また、オンライン診療では触診や聴診などができず、視覚的にも画像によっては直接見る場合と色合いなどが異なる場合があります。そのため、オンライン診療では対面診療に比べて、医師が直接取得できる情報が限定されます。そのようなオンライン診療上の不利益についても、事前に患者に説明しなければならない、としています。当然ながら、治験や臨床試験などを経ていないような、安全性が未確立な医療はオンライン診療で行うべきでないと明記されました。そして、オンライン診療における利点、生じる恐れのある不利益などについて患者がしっかり理解したうえで、患者が望んだ場合に実施されるべきであり、医師側の都合のみでオンライン診療を行ってはいけないとされています。次回はより具体的な場面を想定して、ガイドラインに示されているオンライン診療の適用について、例を挙げてご紹介します。

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成人アトピー、日米欧での有病率は約2~5%

 成人におけるアトピー性皮膚炎(AD)の有病率については認識に違いがあることから、フランス・ナント大学病院のSebastien Barbarot氏らは、米国、カナダ、フランス、ドイツ、イタリア、スペイン、英国および日本においてWEBベースの国際横断研究を行った。その結果、各国における成人のAD有病率は2.1~4.9%で、評価尺度または地域に関係なく重症ADの割合は低いことが示された。Allergy誌オンライン版2018年2月13日号掲載の報告。成人アトピーの有病率を米国・カナダ・EU・日本で推定 研究グループは、成人におけるAD有病率を全体および重症度別に推定する目的で、WEBベースの国際横断研究を行った。 オンライン回答者には、ADの確認と重症度評価のためのアンケートを送付した。各国の参加者数は人口統計学的に割り当てた。ADの確認は、modified UK Working Party/ISAAC基準で陽性および医師によるAD診断歴の自己報告に基づいた。ADの治療を受けていると報告したADを有する参加者の割合を算出し、有病率の推定に用いた。重症度の評価尺度は、患者によるアトピー性皮膚炎評価スコア(PO-SCORAD)、患者による湿疹評価スコア(PO-EM)、および患者による全般評価(PGA)を用いた。 成人アトピーの国際横断の有病率を推定した主な結果は以下のとおり。・成人アトピーの時点有病率(有病者全体/治療中の集団)は、米国(4.9%/3.9%)、カナダ(3.5%/2.6%)、EU(4.4%/3.5%)および日本(2.1%/1.5%)であった。・成人アトピーの有病率は、概して女性より男性で低く、加齢とともに低下した。・成人アトピーの有病率は、各国内で地域による変動性が観察された。・成人アトピーの重症度は評価尺度および地域によって変化したが、重症ADの割合は評価尺度または地域に関係なく軽症および中等症ADの割合より低かった。

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日本人掌蹠膿疱症患者でguselkumabが有効

 日本人掌蹠膿疱症(PPP)患者を対象とした無作為化二重盲検プラセボ対照比較試験において、抗IL-23モノクローナル抗体guselkumabは、PPPの治療選択肢として安全かつ有用であることが認められた。日本大学の照井 正氏らが報告した。PPPは、難治性の皮膚疾患で、現在、治療薬として承認されている生物学的製剤はない。最近、PPPにインターロイキン23(IL-23)およびTh17ヘルパーT細胞系のサイトカインが関与していることが明らかになってきた。JAMA Dermatology誌オンライン版2018年2月7日掲載の報告。 本試験は、2013年5月14日~2014年9月27日に日本の11施設で行われた。対象は、従来の治療で十分な効果が得られなかった中等度~重度のPPP患者49例(女性:35例[71%]、年齢中央値52歳[範囲:28~77])である。guselkumab 200mg皮下投与群またはプラセボ群に1対1の割合で無作為に割り付け、0週および4週に投与し、24週間観察した。 主要評価項目は、16週時における掌蹠膿疱症重症度指数(palmoplantar pustulosis severity index:PPSI)合計スコアのベースラインからの変化量である。ベースライン、4週時および16週時に血清バイオマーカーを測定するとともに、24週間を通して安全性を評価した。 主な結果は以下のとおり。・49例中41例が24週間の試験を完遂した。・主要評価項目である16週時におけるPPSI合計スコアのベースラインからの変化量(平均±SD)は、guselkumab群-3.3±2.43、プラセボ群-1.8±2.09であり、guselkumab群で有意な改善を認めた(最小二乗平均差:-1.5、95%信頼区間[CI]:-2.9~-0.2、p=0.03)。・guselkumab群では、16週時における掌蹠膿疱症の面積と重症度指数(PPPASI)合計スコアのベースラインからの変化量(最小二乗平均差:-5.65、95%CI:-9.80~-1.50、p=0.009)、およびPPPASI合計スコアが50%以上改善した患者の割合(群間差:39.2%、95%CI:14.0~64.3、p=0.009)も有意に改善した。・医師総合評価(PGA)スコアが0(消失)または1(ごく軽度)の患者の割合は、プラセボ群に比べguselkumab群で高かった。・guselkumab群でみられたこれら有効性評価項目の改善は、24週間を通して維持された。・guselkumab群では、4週時および16週時に血清IL-17AおよびIL-17F濃度のベースラインからの有意な減少が観察された。・治療下で発現した有害事象は、guselkumab群で25例中19例(76%)、プラセボ群で24例中18例(75%)と両群で類似していた。・両群を合わせて発現頻度が高かった有害事象は、鼻咽頭炎(14例、29%)、頭痛(3例、6%)、接触性皮膚炎(3例、6%)および注射部位紅斑(3例、6%)であった。・試験期間中に重大な安全性の懸念は認められなかった。

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アトピー性皮膚炎への抗IL-13抗体薬、ステロイドと併用では改善

 インターロイキン(IL)-13は、2型炎症反応において重要な役割を果たしており、アトピー性皮膚炎における新たな病原性メディエーターとされる。中等症~重症アトピー性皮膚炎に対し、ヒト化抗IL-13モノクローナル抗体であるlebrikizumab 125mgの4週ごと投与は、局所作用性コルチコステロイドとの併用において、重症度を有意に改善し忍容性は良好であることが認められた。米国・オレゴン健康科学大学のEric L. Simpson氏らが、無作為化プラセボ対照二重盲検第II相臨床試験(TREBLE試験)の結果を報告した。なお著者は、「単独療法としてのlebrikizumabの有効性は不明であり、今回は研究期間が短く長期投与の有効性および安全性は評価できない」と付け加えている。Journal of the American Academy of Dermatology誌オンライン版2018年1月15日号掲載の報告。 TREBLE試験の目的は、局所作用性コルチコステロイドとの併用投与におけるlebrikizumabの有効性および安全性を検討することであった。対象は、中等症~重症アトピー性皮膚炎成人患者209例で、2週間の局所作用性コルチコステロイド導入期の後、lebrikizumab 125mg単回投与群、250mg単回投与群、125mgを4週ごと投与(Q4W)群またはプラセボ(Q4W)群に1対1対1対1の割合で無作為に割り付け、12週間治療した。 主要評価項目は、12週時に湿疹面積重症度指数(Eczema Area and Severity Index:EASI)スコアが50%低下した患者の割合(EASI-50達成率)であった。 主な結果は以下のとおり。・12週時のEASI-50達成率は、プラセボ群62.3%に対し、lebrikizumab 125mg Q4W群は82.4%で有意に高かった(p=0.026)。・プラセボ群と、lebrikizumab単回投与群の2群とは差がなかった。・有害事象の発現頻度は、lebrikizumab(全投与)とプラセボ群で類似しており(66.7% vs.66.0%)、有害事象の多くは軽症もしくは中等症であった。

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プロバイオティクス・カプセル、アトピー性皮膚炎を改善

 新たな剤形で複数成分を含むプロバイオティクス・カプセル製剤は、小児・若年者におけるアトピー性皮膚炎(AD)の経過を改善する可能性が、スペイン・Hospital Universitario VinalopoのVicente Navarro-Lopez氏らによる無作為化二重盲検プラセボ対照比較試験の結果、示された。アトピー性皮膚炎疾患重症度評価(SCORAD)スコアが低下し、局所ステロイドの使用も減少したという。JAMA Dermatology誌オンライン版2017年11月8日号掲載の報告。 研究グループは2016年3月~6月に、新たな混合プロバイオティクス製剤の経口摂取について、有効性と安全性、ならびに局所ステロイドの使用に及ぼす影響を評価する目的で、12週間の無作為化二重盲検プラセボ対照比較試験を行った。 対象は、4~17歳の中等度AD患者50例(女児26例[50%]、平均[±SD]年齢:9.2±3.7歳)。試験前3ヵ月以内に全身性免疫抑制剤の使用歴のある患者、2週以内に抗菌薬使用歴のある患者、腸疾患合併の診断や細菌感染症の症状のある患者は除外された。 性別、年齢、発症年齢により層別化し、ブロックランダム化法によりプロバイオティクス群または対照群(プラセボ)に割り付け、凍結乾燥させたビフィズス菌(Bifidobacterium lactis)CECT 8145、ビフィズス菌(B.longum)CECT 7347、乳酸菌(Lactobacillus casei)CECT 9104を計109 CFU含むカプセル製剤(キャリアとしてマルトデキストリン使用)、またはプラセボ(マルトデキストリン)を毎日、12週間経口投与した。 主要評価項目は、SCORADスコアと局所ステロイドの使用日数とした。 主な結果は以下のとおり。・12週後、プロバイオティクス群は対照群と比較して、SCORADスコアの平均減少幅が19.2ポイント大きかった(群間差:-19.2、95%信頼区間[CI]:-15.0~-23.4)。・ベースラインから12週時点までのSCORADスコアの変化は、プロバイオティクス群-83%(95%信頼区間[CI]:-95~-70)、対照群-24%(95%CI:-36~-11)であった(p<0.001)。・対照群(220/2,032患者・日、10.8%)と比較して、プロバイオティクス群(161/2,084患者・日、7.7%)では局所ステロイドの使用が有意に減少したことが認められた(オッズ比:0.63、95%CI:0.51~0.78)。

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アトピー性皮膚炎児、睡眠障害の原因は?

 アトピー性皮膚炎(AD)を有する小児の60%は、睡眠が妨げられているとされる。米国・Ann & Robert H. Lurie小児病院のAnna B. Fishbein氏らは、症例対照研究において、中等症~重症アトピー性皮膚炎の小児は健常児に比べ、就寝・起床時間、睡眠時間、睡眠潜時は類似していたものの、中途覚醒が多く睡眠効率が低いことを明らかにした。Journal of the American Academy of Dermatology誌オンライン版2017年10月28日号掲載の報告。 研究グループは、中等症~重症アトピー性皮膚炎小児の睡眠の特徴ならびに睡眠障害の評価法を検討する目的で、6~17歳の中等症~重症アトピー性皮膚炎患児19例および年齢と性別をマッチさせた健常対照児19例を比較した。参加者は腕時計型のアクチグラフを装着し、睡眠および疾患特異的質問票に記入した。 主な結果は以下のとおり。・AD患児は、中途覚醒(WASO)時間が103±55分であったのに対して、対照児は50±27分であった。・AD患児は対照児より、睡眠時体動、日中の眠気、夜間の再入眠困難および教師の報告による日中の眠気の頻度が高かった。・重症度は、WASOとよく相関した。総SCORADスコア:r=0.61(p<0.01)、客観的SCORADスコア:r=0.58(p=0.01)、湿疹面積・重症度指数(EASI):r=0.68(p<0.01)。・小児皮膚疾患のQOL評価尺度はWASOと相関した(r=0.52、p=0.03)が、自己報告による痒みの重症度とは相関しなかった(r=0.28、p=0.30)。

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アトピー性脊髄炎〔AM:atopic myelitis〕

1 疾患概要■ 概念・定義中枢神経系が自己免疫機序により障害されることは、よく知られている。中でも最も頻度の高い多発性硬化症は、中枢神経髄鞘抗原を標的とした代表的な自己免疫疾患と考えられている。一方、外界に対して固く閉ざされている中枢神経系が、アレルギー機転により障害されるとは従来考えられていなかった。しかし、1997年にアトピー性皮膚炎と高IgE血症を持つ成人で、四肢の異常感覚(じんじん感)を主徴とする頸髄炎症例がアトピー性脊髄炎(atopic myelitis:AM)として報告され1)、アトピー性疾患と脊髄炎との関連性が初めて指摘された。2000年に第1回全国臨床疫学調査2)、2006年には第2回3)が行われ、国内に本疾患が広く存在することが明らかとなった。その後、海外からも症例が報告されている。2012年には磯部ら4)が感度・特異度の高い診断基準を公表し(表)、わが国では2015年7月1日より「難病の患者に対する医療等に関する法律」に基づき「指定難病」に選定されている。画像を拡大する■ 疫学平均発症年齢は34~36歳で、男女比1:0.65~0.76と男性にやや多い。先行するアトピー性疾患は、アトピー性皮膚炎、アレルギー性鼻炎、気管支喘息の順で多く、アトピー性疾患の増悪後に発症する傾向にあった。発症様式は急性、亜急性、慢性のものが約3割ずつみられ、症状の経過は、単相性のものも3~4割でみられるものの、多くは、動揺性、緩徐に進行し、長い経過をとる。■ 病因図1のようにAMの病理組織学的検討では、脊髄病巣は、その他のアトピー性疾患と同様に好酸球性炎症であり、アレルギー性の機序が主体であると考えられる。さまざまな程度の好酸球浸潤を伴う、小静脈、毛細血管周囲、脊髄実質の炎症性病巣を呈する(図1A)5)。髄鞘の脱落、軸索の破壊があり、一部にspheroidを認める(図1B)5)。好酸球浸潤が目立たない症例においても、eosinophil cationic protein(ECP)の沈着を認める(図1C)6)。浸潤細胞の免疫染色では、病変部では主にCD8陽性T細胞が浸潤していたが(図1D)6)、血管周囲ではCD4陽性T細胞やB細胞の浸潤もみられる。さらに、脊髄後角を中心にミクログリアならびにアストログリアの活性化が認められ(図1E、F)7)、アストログリアではエンドセリンB受容体(endothelin receptor type B:EDNRB)の発現亢進を確認している(図1G、H)7)。図1 アトピー性脊髄炎の病理組織所見画像を拡大する■ 臨床症状初発症状は、約7割が四肢遠位部の異常感覚(じんじん感)、約2割が筋力低下である。経過中に8割以上でアロディニアや神経障害性疼痛を認める。そのほか、8割で腱反射の亢進、2~3割で病的反射を生じ、排尿障害も約2割に生じる。何らかの筋力低下を来した症例は6割であったが、その約半数は軽度の筋力低下にとどまった。最重症時のKurtzkeのExpanded Disability Status Scale(EDSS)スコアは平均3.4点であった。■ 予後第2回の全国臨床疫学調査では、最重症時のEDSSスコアが高いといずれかの免疫治療が行われ、治療を行わなかった群と同等まで臨床症状は改善し、平均6.6年間の経過観察では、症例全体で平均EDSS 2.3点の障害が残存していた。全体的には大きな障害を残しにくいものの、異常感覚が長く持続し、患者のQOLを低下させることが特徴といえる。2 診断 (検査・鑑別診断も含む)■ 検査所見末梢血所見としては、高IgE血症が8~9割にあり、ヤケヒョウヒダニやコナヒョウヒダニに対する抗原特異的IgEを85%以上の症例で有し、約6割で末梢血好酸球数が増加していた。前述のAMの病理組織において発現が亢進していたEDNRBのリガンドであるエンドセリン1(endothelin 1:ET1)は、AM患者の血清で健常者と比較し有意に上昇していた7)。髄液一般検査では、軽度(50個/μL以下)の細胞増加を約1/4の症例で認め、髄液における好酸球の出現は10%未満とされる。蛋白は軽度(100mg/dL以下)の増加を約2~3割の症例で認める程度で、大きな異常所見はみられないことが多い。髄液特殊検査では、IL-9とCCL11(eotaxin-1)は有意に増加していた。末梢神経伝導検査において、九州大学病院症例では約4割で潜在的な末梢神経病変が合併し、第2回の全国調査では、検査実施症例の25%で下肢感覚神経を主体に異常を認めていた3)。また、体性感覚誘発電位を用いた検討では、上肢で33.3%、下肢では18.5%で末梢神経障害の合併を認めている8)。図2のように脊髄のMRI所見では、60%で病変を認め、その3/4が頸髄で、とくに後索寄りに多い(図2A)。また、Gd増強効果も半数以上でみられる。この病巣は、ほぼ同じ大きさで長く続くことが特徴である(図2B)。画像を拡大する■ 診断・鑑別診断脊髄炎であること、既知の基礎疾患がないこと、アレルギー素因があることを、それぞれを証明することが必要である。先に磯部ら6)による診断基準を表で示した。この基準を脊髄初発多発性硬化症との鑑別に適用した場合、感度93.3%、特異度93.3%、陽性的中率は82.4%、陰性的中率は97.7%であった。鑑別として、寄生虫性脊髄炎、多発性硬化症、膠原病、HTLV1関連脊髄症、サルコイドーシス、視神経脊髄炎、頸椎症性脊髄症、脊髄腫瘍、脊髄血管奇形を除外することが必要である。3 治療 (治験中・研究中のものも含む)第2回の全国臨床疫学調査の結果では、全体の約60%でステロイド治療が行われ、約80%で有効性を認めている。血漿交換療法が選択されたのは全体の約25%で、約80%で有効であった。AMの治療においてほとんどの症例はパルス療法を含む、ステロイド治療により効果がみられるが、ステロイド治療が無効の場合には、血漿交換が有効な治療の選択肢となりうる。再発、再燃の予防については、アトピー性疾患が先行して発症、再燃することが多いことから、基礎となるアトピー性疾患の沈静化の持続が重要と推測される。4 今後の展望当教室ではAMの病態解明を目的とし、アトピー性疾患モデルマウスにおける神経学的徴候の評価と中枢神経の病理学的な解析を行い、その成果は2016年に北米神経科学学会の学会誌“The Journal of Neuroscience”に掲載された7)。モデル動物により明らかとなった知見として、(1)アトピー性疾患モデルマウスでは足底触刺激に対しアロディニアを認める、(2)脊髄後角ではミクログリア、アストログリア、神経細胞が活性化している、(3)ミクログリアとアストログリアではEDNRBの発現が亢進し、EDNRB拮抗薬の前投与により脊髄グリア炎症を抑制すると、神経細胞の活性化が抑えられ、アロディニアが有意に減少したというもので、AMに伴う神経障害性疼痛に脊髄グリア炎症ならびにET1/EDNRB経路が大きく関わっていることを見出している。5 主たる診療科神経内科6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)診療、研究に関する情報難病情報センター アトピー性脊髄炎(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)患者会情報アトピー性脊髄炎患者会 StepS(AM患者と家族向けの情報)1)Kira J, et al. J Neurol Sci. 1997;148:199-203.2)Osoegawa M, et al. J Neurol Sci. 2003;209:5-11.3)Isobe N, et al. Neurology. 2009;73:790-797.4)Isobe N, et al. J Neurol Sci. 2012;316:30-35.5)Kikuchi H, et al. J Neurol Sci. 2001;183:73-78.6)Osoegawa M, et al. Acta Neuropathol. 2003;105:289-295.7)Yamasaki R, et al. J Neurosci. 2016;36:11929-11945.8)Kanamori Y, et al. Clin Exp Neuroimmunol. 2013;4:29-35.公開履歴初回2017年11月14日

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新規抗体薬、コントロール不良喘息の増悪抑制/NEJM

 長時間作用性β刺激薬(LABA)と中~高用量の吸入ステロイドによる治療歴のある喘息患者の治療において、tezepelumabはベースラインの血中好酸球数とは無関係に、臨床的に重要な喘息の増悪を抑制することが、米国・カリフォルニア大学ロサンゼルス校のJonathan Corren氏らが行ったPATHWAY試験で示された。研究の成果は、NEJM誌2017年9月7日号に掲載された。胸腺間質性リンパ球新生因子(TSLP)は、炎症性の刺激因子に反応して産生される上皮細胞由来のサイトカインで、2型免疫の調節において中心的な役割を担う。喘息患者は健常者に比べ、気道のTSLP発現が高度で、TSLP値は2型ヘルパーT細胞(Th2)サイトカインやケモカインの発現、および喘息の疾患重症度と相関を示す。tezepelumab(AMG 157/MEDI9929)は、TSLPに特異的に結合するヒトIgG2モノクローナル抗体で、proof-of-concept試験では軽症アトピー型喘息患者の早期型および晩期型喘息反応を防止し、吸入アレルゲン負荷後の2型炎症反応のバイオマーカーを抑制したという。3つの用量の効果をプラセボと比較 本研究は、コントロール不良の喘息患者におけるtezepelumabの有効性と安全性を評価する二重盲検プラセボ対照無作為化第II相試験(MedImmune社、Amgen社の助成による)。対象は、年齢18~75歳の非喫煙者(登録時に、6ヵ月以上喫煙しておらず、喫煙歴が<10pack-years)で、登録の6ヵ月以上前にLABAと中~高用量の吸入ステロイドによる治療を行ってもコントロールが不良の喘息で、登録前12ヵ月以内に糖質コルチコイドの全身投与を要する喘息の増悪を2回以上、または入院を要する重度増悪を1回以上経験した患者であった。 被験者は、3つの用量(低用量:70mg、4週ごと、中用量:210mg、4週ごと、高用量:280mg、2週ごと)のtezepelumabまたはプラセボ(2週ごと)を皮下投与する群に無作為に割り付けられ、52週の治療が行われた。盲検を維持するために、4週ごとの投与群には、中間の2週時ごとにプラセボが投与された。 主要評価項目は、52週時の喘息増悪の年間発生率(イベント件数/1患者年)とした。喘息の増悪は、糖質コルチコイドの全身投与(経口、静注)を要する喘息症状の悪化、または糖質コルチコイドの経口投与による安定期維持療法中の患者における3日以上続く用量倍増、糖質コルチコイドの全身投与を要する喘息による救急診療部への入院、喘息による入院と定義した。 12ヵ国108施設で584例が登録され、低用量群に145例、中用量群に145例、高用量群に146例、プラセボ群には148例が割り付けられた。ベースラインの平均年齢はtezepelumab群(436例)が51.1±12.4歳、プラセボ群は52.2±11.5歳で、男性はそれぞれ157例(36.0%)、48例(32.4%)であった。喘息増悪率が約60~70%低下 52週時の年間喘息増悪率は、プラセボ群の0.67件に比べ、tezepelumab低用量群が0.26件、中用量群が0.19件、高用量群は0.22件であり、それぞれプラセボ群よりも61%、71%、66%低下した(いずれも、p<0.001)。また、登録時の血中好酸球数を問わず、同様の結果が得られた。 52週時の気管支拡張薬吸入前の1秒量(FEV1)は、tezepelumabの3群ともプラセボ群よりも有意に高かった(最小二乗平均のベースラインから52週までの変化の差:低用量群0.12L[p=0.01]、中用量群0.11L[p=0.02]、高用量群0.15L[p=0.002])。 喘息管理質問票(ACQ-6:0~6点、点数が低いほど疾患コントロールが良好、1.5点以上でコントロール不良と判定)のスコアは、中用量群(最小二乗平均のベースラインから52週までの変化の差:−0.27点[p=0.046])および高用量群(同:−0.33点[p=0.01])がプラセボ群よりも良好であった。また、12歳以上の標準化された喘息QOL質問票(AQLQ[S]+12:1~7点、点数が高いほど喘息関連QOLが良好、臨床的に意義のある最小変化量は0.5点)のスコアは、高用量群(同:1.33点[p=0.008])がプラセボ群よりも優れた。 1つ以上の有害事象を発現した症例は、プラセボ群が62.2%、低用量群が66.2%、中用量群が64.8%、高用量群は61.6%であり、1つ以上の重篤な有害事象の発現率は、それぞれ12.2%、11.7%、9.0%、12.3%であった。有害事象による試験薬の中止は、プラセボ群の1例、中用量群の2例、高用量群の3例に認められた。 著者は、「これらの知見により、TSLPのような上流のサイトカインを標的とすることで、単一の下流経路を阻害するよりも広範に疾患活動性に影響を及ぼし、利点を得る可能性が明らかとなった」と指摘し、「臨床的な意義を示すには、最良の治療を行ってもコントロール不良な喘息患者の、民族的に多彩で大規模な集団を対象とする試験の実施が重要と考えられる」としている。

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アトピー性皮膚炎へのPDE4阻害薬軟膏、長期安全性を確認

 慢性炎症性皮膚疾患のアトピー性皮膚炎(AD)に対しては、しばしば長期にわたる局所治療が必要となるが、ホスホジエステラーゼ4(PDE4)阻害薬のcrisaborole軟膏は、長期投与においても治療関連有害事象の発現率が低いことが示された。米国・カリフォルニア大学のLawrence F. Eichenfield氏らが、2件の第III相試験を完遂後のAD患者を対象とした48週間の延長試験で明らかにした。なお、本試験では、長期有効性については解析されていない。Journal of the American Academy of Dermatology誌オンライン版2017年8月17日号掲載の報告。 研究グループは、crisaborole軟膏の長期安全性を評価する目的で、2歳以上の軽症~中等症AD患者を対象にcrisaborole軟膏を28日間投与する第III相ピボタル試験2件(AD-301試験[NCT02118766]、AD-302試験[NCT02118792])を完遂した患者を対象に、48週間の延長試験(AD-303試験)を行った。 医師による全般重症度評価(Investigator's Static Global Assessment:ISGA)を4週ごとに行い、軽度以上(ISGAスコアが2以上)であればcrisaborole軟膏による治療(1日2回塗布、1サイクル4週間)を開始し、ISGAスコアが1以下は休薬とした。 評価項目は、有害事象(治療下に発現した有害事象[TEAE])および重篤な有害事象である。 主な結果は以下のとおり。・ピボタル試験およびAD-303試験の期間中、TEAEは65%の患者で認められ、ほとんどは軽度(51.2%)または中等度(44.6%)で、93.1%は治療と関連なしと判定された。・AD-303試験において、12週毎のTEAEの発現率および重症度は一貫していた。・ピボタル試験およびAD-303試験における治療関連有害事象の発現率は10.2%で、主なものはAD(3.1%)、塗布部位疼痛(2.3%)および塗布部位感染(1.2%)であった。・TEAEのため延長試験を中止したのは、9例(1.7%)であった。

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アトピー性皮膚炎とHBV感染は逆相関する

 韓国・カトリック大学のHee Yeon Kim氏らは、韓国国民健康栄養調査のデータを解析し、B型肝炎抗原(HBs抗原)陽性とアトピー性皮膚炎との間に有意な逆相関があることを報告した。これまで、アトピー性皮膚炎とB型肝炎ウイルス(HBV)感染との関連は明らかになっていない。ある研究ではHBV保有者でアトピー性皮膚炎のリスク増加が報告され、他の研究ではHBV血清陽性はアレルギー疾患と逆の関連があることが示されている。Journal of the European Academy of Dermatology and Venereology誌オンライン版2017年6月24日号掲載の報告。 研究グループは、全国規模、人口ベースの横断調査である韓国国民健康栄養調査(Korea National Health and Nutrition Examination Survey)のデータを用い、アトピー性皮膚炎とHBs抗原陽性との間の関連を評価した。 解析対象は19歳超の1万4,776例で、多重ロジスティック回帰分析により、アトピー性皮膚炎ならびに喘息とHBs抗原陽性の関連についてオッズ比を求めた。 主な結果は以下のとおり。・HBs抗原陽性率(平均±SE)は、アトピー性皮膚炎ありで0.7±0.4%、なしで3.7±0.2%と、アトピー性皮膚炎ありで有意に低かった(p=0.001)。・一方、喘息ありでは2.8±0.8%、喘息なしでは3.7±0.2%であり、HBs抗原陽性率と喘息との間に有意な関連は認められなかった(p=0.2844)。・HBs抗原陽性者で、アトピー性皮膚炎のリスクが有意に低かった(オッズ比:0.223、95%信頼区間:0.069~0.72)。

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