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血中デュピルマブ値と治療反応、有害事象は関連するか?

 デュピルマブ治療を受けるアトピー性皮膚炎(AD)成人患者の治療反応および有害事象は、血中デュピルマブ値と関連しているのか。オランダ・ユトレヒト大学のLotte S. Spekhorst氏らは、前向きBioDayレジストリのデータを利用した臨床前向き観察コホート試験で、被験者の16週時点の血中デュピルマブ値は広範囲にわたったが、1年時点の評価で治療反応や有害事象との関連は認められなかったことを明らかにした。 AD成人患者へのデュピルマブ用量は隔週300mgとされている。今回の結果を踏まえて著者は、「デュピルマブの奏効は、インターロイキン-4(IL-4)受容体サブユニットαをターゲットとしていることに依存しており、患者間のばらつきが奏効の不均一性を生み出している可能性がある」と述べている。JAMA Dermatology誌オンライン版2022年11月2日号掲載の報告。 研究グループは、AD成人患者における16週時点の血中デュピルマブ値を評価し、血中デュピルマブ値と治療反応および有害事象との関連を調べる検討を行った。被験者は、前向きBioDayレジストリの登録患者で、デュピルマブ治療を開始済みで16週時点の血清サンプルを入手できた成人患者であった。全被験者は、ユトレヒト大学でBioDayプロトコルに従って治療を受け、デュピルマブ負荷用量600mgを皮下投与され、その後隔週で300mgを投与された。 主要評価項目は、ベースライン、16週時点、52週時点でEczema Area and Severity Index(EASI)を用いて評価したAD疾患重症度であった。 治療反応は、対ベースラインのEASIスコアの減少率(EASI 90は90%減少など)と、EASIカットオフスコアの絶対値が7以下(コントロールされたAD)で定義。有害事象は1年間記録された。16週時点で血中デュピルマブ値と治療反応を測定して解析。多変量ロジスティック回帰モデルを用いて、共変量の年齢と性別を考慮した16週時点の血中デュピルマブ値で、52週時点の奏効の予測値(EASI 90;EASI≦7)と有害事象を確認した。16週前に投与量を調整・中止した患者は除外し、2022年1月~6月にデータを解析した。 主な結果は以下のとおり。・合計295例のAD患者(平均年齢41.5[SD 15.9]歳、男性170例[57.6%])において、治療16週時点の血中デュピルマブ中央値は86.6μg/mL(四分位範囲[IQR]:64.6~110.0[範囲:10.1~382.0])であった。・16週時点で、レスポンダー(EASI<50、50、75または90)であった被験者において血中デュピルマブ値に有意差はみられなかった。・多変量ロジスティク回帰分析の結果、16週時点の血中デュピルマブ値は長期反応性(EASI 90のオッズ比[OR]:0.96[95%信頼区間[CI]:0.90~1.04]、p=0.34)(EASI≦7のOR:1.03[95%CI:0.93~1.14]、p=0.55])および有害事象(OR:1.01[95%CI:0.95~1.07、p=0.83])の予測因子とはならなかった。

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アナフィラキシーなどの治療を非専門医向けに/アレルギー総合ガイドライン改訂

 多くの診療科に関係するアレルギー疾患。2022年10月に刊行された『アレルギー総合ガイドライン2022』は、2019年版の全面改訂版だ。各診療ガイドラインのエッセンスを精選して幅広いアレルギー診療の基本をまとめ、前版より大幅なコンパクト化を実現した。編纂作業にあたった日本アレルギー学会・アレルギー疾患ガイドライン委員会委員長の足立 雄一氏(富山大学 小児科学講座 教授)に改訂のポイントを聞いた。重複を削る編集作業で、コンパクト化を徹底――『アレルギー総合ガイドライン』は、各分野のガイドラインや診療の手引きの短縮版を合本してつくられています。これまではそのまま合本していたため、どうしても重複箇所が多くなり、2019年版は700ページを超えました。読者から「読みにくい」「重くて持ち運べない」といった声が出ており、今回はガイドライン委員が全ページに目を通して重複を削る作業をした結果、300ページ近いコンパクト化を図ることができました。――2022年版の編集方針は「総合的に、かつ実用的に」です。章立てを変更し、すべてのアレルギーに共通する「アレルゲン検査」「アレルゲン免疫療法」「アナフィラキシー」の項目に最初の3章を割き、その後に個別疾患の解説が続く、というつくりにしました。――さらに前版の「重症薬疹の診断基準」の章を拡充して「薬物アレルギー」の章を新設しました。ここは前版まで皮膚科の医師だけが執筆していましたが、新たに内科と小児科の医師も執筆に加わり、臨床の場で実際に診ることの多い軽症・中等症の対応にもページを割いています。この1冊でアレルギー全般の診断、治療、管理について最低限知っておくべき知識を得られ、疫学的知識や病態への理解をさらに深めたい方はそれぞれ原本となるガイドラインにあたってもらう、という方針で作成しました。非専門医が主要な想定読者だが、専門医にも有用――読者として想定している層は2つです。メインは日常診療を行う非専門医です。国民の2人に1人がアレルギー性疾患を持つとされ、日常診療を行う医師は誰もがアレルギー診療を避けては通れない状況です。そうした非専門医に向け、アレルギー全般の現在の標準治療がわかる1冊としました。コンパクトにまとまっていることで利便性も増したと思います。さらに、今版からは各章の章末に「専門医への紹介のポイント」という文章を加えており、紹介に迷ったときの指針になると思います。――もう1つの読者層は、アレルギー専門医です。たとえば、私は小児アレルギーが専門ですが、他のアレルギー疾患もある程度まで診られたほうがよいと考えています。というのも、アレルギー疾患は身体の複数の部位に症状が出るケースが多く、たとえば成人喘息の患者さんであれば呼吸器内科にかかり、アトピー性皮膚炎やアレルギー性鼻炎を合併していれば、それぞれ皮膚科と耳鼻科を受診するというケースは少なくないと思います。それぞれが重症であればしかたないでしょうが、いずれかが軽症であれば重症の科の医師が主治医となって他の症状も診ることで患者さんの負担を減らすことができます。本書は、こうした「総合アレルギー専門医(Total Allergist)」の指針ともなる1冊です。――今回の改訂では、これまでの合本の形式から1冊の本へ編集し直す、という大きな方針転換をしました。図表や画像、レイアウト、紙の質まで細かく見直しています。これから集まる読者の感想を聞き、また3年後の改訂につなげたいと思っています。『アレルギー総合ガイドライン2022』定価:5,060円(税込)判型:B5判頁数:419頁発行:2022年10月作成:一般社団法人日本アレルギー学会発行:協和企画https://www.carenet.com/store/book/cg003919_index.html

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事例012 アトピー性皮膚炎疑いでのTARC検査で査定【斬らレセプト シーズン3】

解説事例では、アトピー性皮膚炎疑いの患者に、「D015 血漿蛋白免疫学的検査の(19)TARC(Thymus and Activation-Regulated Chemokine)検査」を施行したところ、D事由(告示・通知の算定要件に合致していないと認められるもの)にて査定となりました。査定の理由には、「TARC検査は、アトピー性皮膚炎およびCOVID-19の確定病名以外では原則認められない」と付記されていました。査定内容を確認するために、医師に問い合わせたところ「炎症が著しかったためにアトピー性皮膚炎を強く疑い、確定診断検査に合わせて行った」と説明を頂きました。査定時の付記を確認するためにTARC検査の留意事項を参照したところ、「アトピー性皮膚炎の重症度評価の補助を目的として、血清中のTARC量を測定する場合に、月1回を限度として算定できる」とありました。アトピー性皮膚炎の確定診断後の検査であることが分かります。医師には、2022年度診療報酬改定時に新しく示された留意事項を示して、レセプトには確定診断を付与いただくようにお願いしました。レセプトシステムには、アトピー性皮膚炎およびCOVID-19に「疑」が付与されている場合には、確定診断が必要と表示されるように改修し査定対策としています。

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アトピー性皮膚炎の湿疹とかゆみ、臨床で推奨される測定手法は?

 臨床において、アトピー性皮膚炎患者の湿疹コントロールおよびかゆみの強度測定に推奨される手法は何か。イスラエル・ラビン医療センターのYael A. Leshem氏らHarmonising Outcome Measures for Eczema in Clinical Practice(HOME-CP)イニシアチブが、システマティックレビューを介して入手した測定手法についてエビデンスレビューを行った。 結果、湿疹の長期コントロールの測定には、Recap of Atopic Eczema(RECAP)とAtopic Dermatitis Control Tool(ADCT)が、かゆみ強度の測定には、かゆみに関するPatient-Reported Outcomes Measurement Information System(PROMIS)質問票に基づく、かゆみの数値評価スケール(NRS-itch)でみた24時間ピーク値および1週間ピーク値と1週間平均値が推奨される、とのコンセンサスステートメントを発表した。 「臨床医と患者は、これらの十分に検証され、迅速に実行でき、使いやすい手法を診療所に持ち込み、ニーズに最適な手法を選択することを推奨する。今回の評価は、患者と臨床医の出会いに取って代わるものではなく、実臨床での研究およびヘルスケアの改善に資するものである」と述べている。JAMA Dermatology誌オンライン版2022年10月12日号掲載の報告。 臨床でのアウトカムを測定することは、患者のケア、質の改善および実臨床のエビデンスジェネレーションに役立つ可能性がある。HOME-CPイニシアチブは、臨床でアトピー性皮膚炎を測定するための、有効かつ実現可能な手段のリストを作成している。これまでの研究で、湿疹症状と長期的なコントロールが、臨床診療で測定すべき最も重要な領域であることが確認されている。 湿疹コントロールとかゆみ強度を測定するための利用可能な手法をシステマティックレビューにより特定し、HOME VIIIバーチャルオンラインミーティング(2020年10月6日と9日)においてコンセンサス(合意形成)プロセスを開催した。検討では、臨床で最適な手法を選択するために実行可能性(feasibility)の側面に力点が置かれた。反対者が30%未満の場合、その手法がコンセンサスを得られたとした。 主な結果は以下のとおり。・湿疹コントロールの手法は7つが特定された。そのうち、コンセンサスを得たのはRECAP(反対者3/63例[5%])とADCT(7/69例[10%])であった。・1つの質問による患者の総合評価は、支持を集めはしたが、現時点で利用可能な手法はコンセンスを得るには至らなかった。・かゆみの強度の測定手法は6つが特定された。そのうち、3つの手法が推奨のコンセンサスを得た。・3つの手法は、かゆみのPROMIS質問票に基づく、NRS-itchの24時間ピーク値(11/63例[17%])、1週間ピーク値(14/63例[22%])、1週間平均値(16/59例[27%])であった。

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067)アトピー性皮膚炎と尋常性乾癬。こんな人が多い、気がする?【Dr.デルぽんの診察室観察日記】

第67回 アトピー性皮膚炎と尋常性乾癬。こんな人が多い、気がする?ゆるい皮膚科勤務医デルぽんです☆普段の診療でもよくみかけるアトピー性皮膚炎の患者さん。それより数は少ないものの、ちらほらと受診される尋常性乾癬の患者さん。それぞれに、こんな雰囲気の人が多いかも? と思う、私の中での個人的な「患者像」を漫画にしてみました。毎月まじめに通ってきてくれるアトピー性皮膚炎の患者さんに多いのが、まじめできっちりしたタイプ。残りの薬の本数を細かく教えてくれたり、皮膚症状についての質問が細かかったりします。血液型占いでいうとA型っぽいイメージ。反対に、尋常性乾癬の患者さんに多いのは、ざっくりとしていておおらか? なタイプ。2~3ヵ月に1度、決まった薬をもらいに来て、腰など塗りにくい場所に皮疹が残っていても、本人はあまり気にしていなかったりします。血液型占いでいうとO型のイメージ。あくまで私が個人的に感じている傾向ですので、もちろん当てはまらない方もいます。ですが、なんとなく、こんな傾向があるように思っています。日々、皮膚科診療に携わる先生方、いかがでしょうか?「好発年齢やそれまでの経過、皮膚症状の特徴などが、こうした傾向に影響しているのかな~」などと、想像してみたりするのでした。それでは、また〜!

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新生児への毎日の保湿剤、アトピー性皮膚炎を予防しない

 生後1年間、保湿剤を毎日塗布しても、アトピー性皮膚炎への予防効果は認められなかったことが、英国・ノッティンガム大学のLucy E. Bradshaw氏らが行った無作為化試験「Barrier Enhancement for Eczema Prevention(BEEP)試験」の結果、示された。食物アレルギー、喘息、花粉症への予防効果も認められなかった。保湿剤塗布のアトピー性皮膚炎/湿疹への予防効果については議論が分かれている。Allergy誌オンライン版2022年10月19日号掲載の報告。 BEEP試験では、アトピー性皮膚炎およびアトピー性の症状に対する生後1年間の毎日の保湿剤塗布の効果を、5歳まで評価した。 アトピー性疾患の家族歴がある新生児1,394人を、1対1の割合で無作為に2群に割り付け、毎日の保湿剤塗布+標準的スキンケアをアドバイス(保湿剤塗布群:693人)または標準的スキンケアのみをアドバイス(対照群:701人)した。 保護者に対する質問票により、3歳、4歳、5歳時に長期フォローアップを行った。主要評価項目は、保護者の報告に基づくアトピー性皮膚炎および食物アレルギーの臨床診断とした。 主な結果は以下のとおり。・保湿剤塗布群の保護者のほうが、5年間にわたり保湿剤塗布の頻度が高かったと回答した。・生後12~60ヵ月(5歳)にアトピー性皮膚炎と臨床診断されたのは、保湿剤塗布群188/608例(31%)、対照群178/631例(28%)であった(補正後相対リスク:1.10、95%信頼区間[CI]:0.93~1.30)。・保湿剤塗布群でも、3歳時、4歳時時点ですでに前年度の食物反応について報告した保護者がいたが、5歳時までに医師により診断された食物アレルギーの累積発生率は、保湿剤塗布群15%(92/609例)、対照群14%(87/632例)で、同程度であった(補正後相対リスク:1.11、95%CI:0.84~1.45)。・喘息、花粉症の累積発生率も両群で類似していた。

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痒みを速やかに改善するアトピー性皮膚炎抗体薬「ミチーガ皮下注用60mgシリンジ」【下平博士のDIノート】第109回

痒みを速やかに改善するアトピー性皮膚炎抗体薬「ミチーガ皮下注用60mgシリンジ」今回は、ヒト化抗ヒトIL-31受容体Aモノクローナル抗体「ネモリズマブ(遺伝子組換え)注射剤(商品名:ミチーガ皮下注用60mgシリンジ、製造販売元:マルホ)」を紹介します。本剤は、アトピー性皮膚炎に伴うそう痒を標的とした抗体医薬品であり、掻破行動による皮膚症状の悪化やそう痒の増強を防ぐことで、患者QOLの向上が期待されています。<効能・効果>アトピー性皮膚炎に伴うそう痒(既存治療で効果不十分な場合に限る)の適応で、2022年3月28日に承認され、8月8日より販売されています。本剤は、ステロイド外用薬やタクロリムス外用薬などの抗炎症外用薬および抗ヒスタミン薬などの抗アレルギー薬による適切な治療を一定期間施行しても、そう痒を十分にコントロールできない患者に投与します。<用法・用量>通常、成人および13歳以上の小児にはネモリズマブ(遺伝子組換え)として1回60mgを4週間の間隔で皮下投与します。本剤はそう痒を治療する薬剤であり、そう痒が改善した場合であっても本剤投与中はアトピー性皮膚炎の必要な治療を継続します。<安全性>国内第III相試験において、本剤投与群210例中122例(58.1%)に副作用が認められました。主な副作用は、アトピー性皮膚炎34例(16.2%)、サイトカイン異常11例(5.2%)、好酸球数増加および上咽頭炎各8例(3.8%)、蜂巣炎および蕁麻疹各7例(3.3%)でした。重大な副作用として、ウイルス、細菌、真菌などによる重篤な感染症(3.4%)、アナフィラキシー(血圧低下、呼吸困難、蕁麻疹)などの重篤な過敏症(0.3%)が報告されています。<患者さんへの指導例>1.本剤は、体内のリンパ球が産生するIL-31の働きを抑えることで、アトピー性皮膚炎のそう痒を改善します。2.血圧低下、息苦しさ、意識の低下、ふらつき、めまい、吐き気、嘔吐、発熱、咳、のどの痛みなどの症状が現れた場合はご連絡ください。3.そう痒が治まっていても、普段と異なる新たな皮疹が生じたり、悪化したりした場合は受診してください。4.刺激の強い食べ物やアルコール、タバコは控え、身体を清潔にして規則正しい生活を心がけましょう。睡眠中に皮膚をかかないように工夫して、皮膚刺激の少ない衣類を選択し、アレルゲン対策などにも留意しましょう。<Shimo's eyes>本剤は、アトピー性皮膚炎の「痒み」を誘発するサイトカインであるIL-31をターゲットとした世界初のヒト化抗ヒトIL-31受容体Aモノクローナル抗体製剤です。そう痒に伴う掻破行動は、皮膚症状を悪化させ、さらに痒みが増強するという悪循環(Itch-scratch cycle)を繰り返すとともに、皮膚感染症や眼症状などの合併症を誘引する恐れがあります。また、そう痒はアトピー性皮膚炎患者において、寝られない、仕事や勉強に集中できない、など大きな悩みであり、そう痒が解消されることでQOLの改善が期待できます。アトピー性皮膚炎のそう痒に対する治療法としては、ステロイド外用薬やタクロリムス外用薬の併用のもとで、抗ヒスタミン薬の内服が推奨されています。シクロスポリン内服液も痒みを軽快させることが知られていますが、安全性の観点から対象患者や投与期間が限定されています。抗体医薬品としては、デュピルマブ皮下注(商品名:デュピクセント)が承認されていますが、皮疹の炎症が強い場合はデュピルマブ、そう痒を主訴とする場合はネモリズマブが選択されるなど、投与対象患者は異なると考えられます。本剤はアトピー性皮膚炎に伴うそう痒を治療する薬剤であり、本剤投与中はそう痒が改善した場合であっても、ステロイド外用薬、タクロリムス外用薬、デルゴシチニブ外用薬、保湿外用薬など、アトピー性皮膚炎の他の症状に対する治療は中止せずに継続します。経口ステロイド薬の急な中断にも注意が必要です。既存治療を実施したにも関わらず中等度以上のそう痒を有するアトピー性皮膚炎患者を対象とした国内第III相試験において、本剤投与開始16週後のそう痒変化率は、プラセボ群に比べて有意に改善しました。臨床試験において、投与翌日よりプラセボに対して有意な改善が認められ、多くの患者は治療開始から16週頃までには効果が発現しています。なお、2023年6月1日より、本剤は在宅自己注射指導管理料の対象薬剤となり、在宅自己注射が保険適用となりました。

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小児アトピー性皮膚炎と神経発達に関連はあるか?

 2歳以前にアトピー性皮膚炎(AD)を発症した子供は、6歳時の発達スクリーニング検査における神経発達障害と有意な関連があることが報告された。Allergology International誌オンライン版2022年9月1日号掲載の報告。 小児におけるADと認知機能障害との関連を報告した研究はほとんどない。韓国・翰林大学校のJu Hee Kim氏らは、小児におけるADと神経発達障害との関連を評価した。 2008~12年に韓国で生まれた239万5,966例の小児を分析した。すべてのデータは、韓国国民健康保険制度のデータベースより用いられた。ADは、生後24ヵ月までに5つ以上の診断を受けたものと定義した。アウトカムは、6歳時の韓国乳幼児発達スクリーニングテストの粗大運動能力、微細運動能力、認知、言語、社会性、セルフケア領域における神経発達障害の疑いであった。陽性対照アウトカムは、注意欠陥多動性障害(ADHD)とした。喘息とアレルギー性鼻炎を調整した順序ロジスティック回帰を用いて関連性を評価した。 主な結果は以下のとおり。・対象小児のうち、8万9,452例が対照群に、3万557例がAD群に割り付けられ、加重データでは、AD群は対照群に比べ、総スコア(加重調整オッズ比:1.10、95%信頼区間:1.05~1.16)、粗大運動能力(1.14、1.04~1.25)、微細運動能力(1.15、1.06~1.25)で神経発達障害の疑いリスクが高いことが明らかにされた。・ADにステロイドを使用した群や入院した群では、神経発達障害の疑いリスクの上昇が認められた。また、AD群ではADHDと同様に精神遅滞、心理的発達障害、行動・情緒障害との有意な関連性が認められた。 ただし、単一時点(6歳時)の結果だけでは全体的な発達の成果を判断することは困難であること、個々の子供の発達速度はまちまちであり、発達遅滞が疑われる子供であっても、最終的には正常な発達を示すことが多いことなどを、研究グループは述べている。 著者らは「この研究により、2歳以前にADを発症した子供は、6歳時の発達スクリーニング検査における神経発達障害と有意な関連があることが示された。さらに、ADのある子供は、ADHD、精神遅滞、心理的発達障害、行動・情緒障害などの神経発達障害のリスクが高いことがわかった。これらの関連性の基礎となるメカニズムは依然として不明であるため、さらなる研究が必要である」と結んでいる。

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世界初・日本発、アトピー性皮膚炎の「かゆみ」治療薬で患者QOLの早期改善に期待/マルホ

 2022年9月15日、マルホ主催によるプレスセミナーが開催され、同年8月に発売されたアトピー性皮膚炎(AD)のかゆみの治療薬、抗IL-31受容体A抗体ネモリズマブ(商品名:ミチーガ)について、京都大学医学研究科の椛島 健治氏が講演を行った。かゆみは、AD患者の生活の質(Quality of Life:QOL)を著しく低下させる。椛島氏は、「これまでADのかゆみを有効に抑えることが困難だった。かゆみを改善し、ADを早期に良くしていくことが本剤の狙いであり、画期的ではないか」と述べた。 ADは、増悪・寛解を繰り返す、かゆみのある湿疹を特徴とする慢性の皮膚疾患である。その病態は、皮膚バリア機能異常、アレルギー炎症、かゆみの3要素が互いに連動し、形成される(三位一体病態論)。国内には推計約600万人のAD患者がおり、年々増加傾向にある。このように身近な疾患であるADは、治療法も確立されているかのように見える。しかし、AD患者の悩みは深刻だ。かゆみで「眠れない」「集中できない」悩めるAD患者 AD患者は、蕁麻疹、乾癬、ざ瘡や脱毛症患者の中でQOLが最も障害されている。その要因の1つに、かゆみ症状が挙げられる。かゆみに伴う掻破行動は、皮膚症状の悪化を招くだけでなく、さらにかゆみを増強させる悪循環(イッチ・スクラッチサイクル)を引き起こす。ADのかゆみは強く、かゆみ閾値の低下、抗ヒスタミン薬が効きにくい、嗜癖的掻破行動、夜間の強いかゆみ、増悪因子が多数あるなどの特徴があり、治療に難渋する医師も多いという。実際、医師のアンケート調査において、13歳以上のAD患者の約30%はかゆみコントロールが不十分であるとされている。 AD患者にとって、治療目標の最たるものは「かゆみをなくしたい」である。AD患者は、とくに夜~就寝後の時間帯でかゆみを強く感じる。約半数がかゆみによって寝付けず、途中で目覚めるともいわれ、睡眠が大きく障害されていることがわかる。さらに、仕事への影響も深刻であり、約30%が「仕事ができない」という。それにもかかわらず、AD患者に薬物治療で不満な点を尋ねると、「かゆみが十分に改善されない」が最も多く、「皮膚症状が十分に改善されない」よりも多かった。かゆみの対策は、長く臨床上のアンメットニーズとなっていた。アトピー性皮膚炎のかゆみメディエーター IL-31の登場 IL-31は、かゆみを誘発するサイトカインであり、ADに伴うかゆみの発生に深く関与している。ADの病態において、活性化Th2細胞から産生されたIL-31は、神経細胞などに発現するIL-31受容体Aに結合し、神経伝達を介して脳にかゆみを伝える。同氏らは、十数年前よりIL-31に着目し、抗IL-31受容体A抗体ミチーガの創製元である中外製薬および、製造販売元であるマルホと共に開発を行ってきた。ミチーガは早期からかゆみを改善 ミチーガは、IL-31受容体Aを競合的に阻害することでかゆみの抑制作用を示す、世界初の抗体医薬品である。全国69施設が参加した国内第III相臨床試験において、既存治療を実施したにもかかわらず中等度以上のそう痒を有するAD患者を対象に、有効性と安全性が検討された。 主要評価項目である投与開始16週後のそう痒VAS※変化率は、プラセボ群(72例)で-21.39%、ミチーガ群(143例)で-42.84%であり、ミチーガ群で有意にかゆみが改善した。かゆみの改善は初回投与の1日後から観察され、「かゆみを抑える効果が非常に早い」(同氏)。そのほか、睡眠やQOLも有意に改善したことが示された。一方、主な副作用は、皮膚感染症(18.8%)、AD(18.5%)であった。同氏は、本剤使用時の留意点として「かゆみが治まってもしっかり塗り薬は続けてほしい」ことを患者に伝えるべき、とした。 従来の治療法は炎症抑制作用を主なターゲットとする一方、本剤は、患者の主訴であるかゆみに着目した薬剤である。かゆみに対する新たな治療選択肢が広がることにより、AD患者の早期のかゆみ改善およびQOL改善に寄与することを期待したい。 なお、本剤は最適使用推進ガイドライン対象品目となっている。※そう痒VAS(Visual Analogue Scale):0をかゆみなし、100を想像されうる最悪のかゆみとして患者が評価

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遺族にNGな声かけとは…「遺族ケアガイドライン」発刊

 2022年6月、日本サイコオンコロジー学会と日本がんサポーティブケア学会の合同編集により「遺族ケアガイドライン」が発刊された。本ガイドラインには“がん等の身体疾患によって重要他者を失った遺族が経験する精神心理的苦痛の診療とケアに関するガイドライン”とあるが、がんにかかわらず死別を経験した誰もが必要とするケアについて書かれているため、ぜひ医療者も自身の経験を照らし合わせながら、自分ごととして読んでほしい一冊である。 だが、本邦初となるこのガイドラインをどのように読み解けばいいのか、非専門医にとっては難しい。そこで、なぜこのガイドラインが必要なのか、とくに読んでおくべき項目や臨床での実践の仕方などを伺うため、日本サイコオンコロジー学会ガイドライン策定委員会の遺族ケア小委員会委員長を務めた松岡 弘道氏(国立がん研究センター中央病院精神腫瘍科/支持療法開発センター)を取材した。ガイドラインの概要 本書は4つに章立てられ、II章は医療者全般向けで、たとえば、「遺族とのコミュニケーション」(p29)には、役に立たない援助、遺族に対して慎みたい言葉の一例が掲載されている。III章は専門医向けになっており、臨床疑問(いわゆるClinical questionのような疑問)2点として、非薬物療法に関する「複雑性悲嘆の認知行動療法」と薬物療法に関する「一般的な薬物療法、特に向精神薬の使い方について」が盛り込まれている。第IV章は今後の検討課題や用語集などの資料が集約されている。遺族の心、喪失と回復を行ったり来たり 人の死というは“家族”という単位だけではなく、友人、恋人や同性愛者のパートナーのように社会的に公認されていない間柄でも生じ(公認されない悲嘆)、生きている限り誰もが必ず経験する。そして皮肉なことに、患者家族という言葉は患者が生存している時点の表現であり、亡くなった瞬間から“遺族”になる。そんな遺族の心のケアは緩和ケアの主たる要素として位置付けられるが、多くの場合は自分自身の力で死別後の悲しみから回復していく。ところが、死別の急性期にみられる強い悲嘆反応が長期的に持続し、社会生活や精神健康など重要な機能の障害をきたす『複雑性悲嘆(CG:complicated grief)』という状態になる方もいる。CGの特徴である“6ヵ月以上の期間を経ても強度に症状が継続していること、故人への強い思慕やとらわれなど複雑性悲嘆特有の症状が非常に苦痛で圧倒されるほど極度に激しいこと、それらにより日常生活に支障をきたしていること”の3点が重要視されるが、この場合は「薬物治療の必要性はない」と説明した。 一方でうつ病と診断される場合には、専門医による治療が必要になる。これを踏まえ松岡氏は「非専門医であっても通常の悲嘆反応なのかCGなのか、はたまた精神疾患なのかを見極めるためにも、CG・大うつ病性障害(MDD)・心的外傷後ストレス障害(PTSD)の併存と相違(p54図1)、悲嘆のプロセス(p15図1:死別へのコーピングの二重過程モデル)を踏まえ、通常の悲嘆反応がどのようなものなのかを理解しておいてほしい」と強調した。医師ができる援助と“役に立たない”援助 死別後の遺族の支援は「ビリーブメントケア(日本ではグリーフケア)」と呼ばれる。その担い手には医師も含まれ、遺族の辛さをなんとかするために言葉かけをする場面もあるだろう。そんな時に慎みたい言葉が『寿命だったのよ』『いつまでも悲しまないで』などのフレーズで、遺族が傷つく言葉の代表例である。言葉かけしたくも言葉が見つからないときは、正直にその旨を伝えることが良いとされる。一方、遺族から見て有用とされるのは、話し合いや感情を出す機会を持つことである。 そのような機会を提供する施設が国内でも設立されつつあるが、現時点で約50施設と、まだまだ多くの遺族が頼るには程遠い数である。この状況を踏まえ、同氏は「医師や医療者には患者の心理社会的背景を意識したうえで診療や支援にあたってほしいが、実際には多忙を極める医師がここまで介入することは難しい」と話し、「遺族の状況によってソーシャルワーカーなどに任せる」ことも必要であると話した。 なお、メンタルヘルスの専門家(精神科医、心療内科医、公認心理師など)に紹介すべき遺族もいる。それらをハイリスク群とし、特徴を以下のように示す。<強い死別反応に関連する遺族のリスク因子>(p62 表4より)(1)遺族の個人的背景・うつ病などの精神疾患の既往、虐待やネグレクト・アルコール、物質使用障害・死別後の睡眠障害・近親者(とくに配偶者や子供の死)・生前の患者に対する強い依存、不安定な愛着関係や葛藤・低い教育歴、経済的困窮・ソーシャルサポートの乏しさや社会的孤立(2)治療に関連した要因・治療に対する負担感や葛藤・副介護者の不在など、介護者のサポート不足・治療やケアに関する医療者への不満や怒り・治療や関わりに関する後悔・積極的治療介入(集中治療、心肺蘇生術、気管内挿管)の実施の有無(3)死に関連した要因・病院での死・ホスピス在院日数が短い・予測よりも早い死、突然の死・死への準備や受容が不十分・「望ましい死」であったかどうか・緩和ケアや終末期の患者のQOLに対する遺族の評価 上記を踏まえたうえで、遺族をサポートする必要がある。不定愁訴を訴える患者、実は誰かを亡くしているかも 一般内科には不定愁訴で来院される方も多いだろうが、「遺族になって不定愁訴を訴える」ケースがあるそうで、それを医療者が把握するためにも、原因不明の症状を訴える患者には、問診時に問いかけることも重要だと話した。<表5 遺族の心身症の代表例>(p64より一部抜粋)1.呼吸器系(気管支喘息、過換気症候群など)2.循環器系(本態性高血圧症など)3.消化器系(胃・十二指腸潰瘍、機能性ディスペプシア、過敏性腸症候群など)4.内分泌・代謝系(神経性過食症、単純性肥満症など)5.神経・筋肉系(緊張型頭痛、片頭痛など)6.その他(線維筋痛症、慢性蕁麻疹、アトピー性皮膚炎など) 最後に同氏は高齢化社会特有の問題である『別れのないさよなら』について言及し、「これは死別のような確実な喪失とは異なり、あいまいで終結をみることのない喪失に対して提唱されたもの。高齢化が進み認知症患者の割合が高くなると『別れのないさよなら』も増える。そのような家族へのケアも今後の課題として取り上げていきたい」と締めくくった。書籍紹介『遺族ケアガイドライン』

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デュピルマブ、6歳未満のアトピー性皮膚炎にも有効/Lancet

 6歳未満のアトピー性皮膚炎患児の治療において、インターロイキン(IL)-4とIL-13を標的とする完全ヒト型モノクローナル抗体デュピルマブはプラセボと比較して、皮膚症状や徴候を有意に改善し、安全性プロファイルも許容範囲であることが、米国・ノースウェスタン大学のAmy S. Paller氏らが実施した「LIBERTY AD PRESCHOOL試験」で示された。研究の成果は、Lancet誌2022年9月17日号に掲載された。北米と欧州の第III相無作為化プラセボ対照比較試験 LIBERTY AD PRESCHOOL試験は、中等症~重症のアトピー性皮膚炎の幼児におけるデュピルマブの有効性と安全性の評価を目的とする第II/III相試験であり、今回は第III相の二重盲検無作為化プラセボ対照比較試験の結果が報告された(SanofiとRegeneron Pharmaceuticalsの助成を受けた)。本研究は、北米と欧州の31施設で行われ、2020年6月30日~2021年2月12日の期間に参加者が登録された。 対象は、生後6ヵ月~<6歳の中等症~重症のアトピー性皮膚炎で、糖質コルチコイドによる局所治療の効果が不十分な患児であった。被験者は、low-potencyの糖質コルチコイド(酢酸ヒドロコルチゾン1%含有クリーム)による局所治療に加え、デュピルマブまたはプラセボを4週ごとに16週間、皮下投与する群に無作為に割り付けられた。 主要エンドポイントは、16週時のInvestigator’s Global Assessment(IGA)スコア0~1点(皮膚症状が消失またはほぼ消失)とされた。主要エンドポイント:28% vs.4% 162例(年齢中央値4.0歳、男児61%)が登録され、デュピルマブ群に83例、プラセボ群に79例が割り付けられた。それぞれ82例(99%)および75例(95%)が、試験薬の投与を完遂した。 16週時に、IGAスコア0~1点を達成した患児は、デュピルマブ群が23例(28%)と、プラセボ群の3例(4%)に比べ有意に優れた(群間差:24%、95%信頼区間[CI]:13~34、p<0.0001)。 主な副次エンドポイントであるEczema Area and Severity Index(EASI)のベースラインから16週までの75%以上の改善(EASI-75)を達成した患児は、それぞれ44例(53%)および8例(11%)であり、デュピルマブ群で有意に割合が高かった(群間差:42%、95%CI:29~55、p<0.0001)。 また、EASIのベースラインから16週までの変化率(デュピルマブ群-70.0% vs.プラセボ群-19.6%、群間差:-50.4%、95%CI:-62.4~-38.4、p<0.0001)および最悪の痒み/掻破の数値評価尺度(NRS)スコアのベースラインから16週までの変化率(-49.4% vs.-2.2%、-47.1%、-59.5~-34.8、p<0.0001)は、いずれもデュピルマブ群で有意に良好だった。 16週の投与期間中に、1つ以上の治療関連有害事象を発現した患児は、デュピルマブ群が83例中53例(64%)、プラセボ群は78例中58例(74%)であり、両群で同程度であった。とくに注目すべき有害事象として、デュピルマブ群で結膜炎が3例(4%)に認められた(プラセボ群は0例)。デュピルマブ関連の有害事象では、アトピー性皮膚炎のフレアによる治療中止が1例みられたが、重篤な有害事象は発現しなかった。 著者は、「これらの結果は、アトピー性皮膚炎の幼児におけるデュピルマブの有効性に関する重要な臨床データであり、世界中の臨床現場に有益な情報を提供し、変化をもたらす可能性がある」としている。

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アトピー性皮膚炎、JAK阻害薬はVTE発生と関連するか?

 アトピー性皮膚炎(AD)患者、とくにJAK阻害薬による治療を受ける患者は、静脈血栓塞栓症(VTE)のリスクが高くなるなのか。これまで明らかになっていなかったこの懸念について、台湾・台北栄民総医院のTai-Li Chen氏らがシステマティック・レビューとメタ解析を行い、現状で入手可能なエビデンスで、ADあるいはJAK阻害薬とVTEリスク増大の関連を示すものはないことを明らかにした。著者は、「今回の解析結果は、臨床医がAD患者にJAK阻害薬を処方する際の参考となるだろう」としている。JAMA Dermatology誌オンライン版2022年8月24日号掲載の報告。 研究グループは、ADとVTE発生の関連を調べ、JAK阻害薬治療を受けるAD患者におけるVTE発生リスクを評価した。 MEDLINE、Embase、Cochrane Library、Web of Scienceのデータベースを、それぞれ創刊から2022年2月5日まで、言語や地理的制限を設けずに検索。ADとVTEの関連を調べたコホート試験、JAK阻害薬治療を受けるAD患者におけるVTEイベントを報告していた無作為化比較試験(RCT)を適格とした。最初に検索した論文の約0.7%が適格基準を満たした。 データは、Preferred Reporting Items for Systematic Reviews and Meta-Analyses(PRISMA)ガイドラインに準拠して抽出・包含し、包含したコホート試験とRCTのバイアスリスクは、Newcastle-Ottawa ScaleおよびCochrane Risk of Bias Tool 2で評価。ランダム効果モデル解析で、VTE発生の統合ハザード比(HR)およびリスク差を算出し、評価した。 主要評価項目は、VTE発生とADのHR、およびJAK阻害薬治療を受けるAD患者とプラセボまたはデュピルマブ治療を受けるAD患者のVTE発生のリスク差であった。 主な結果は以下のとおり。・コホート試験2件とRCT 15件の被験者46万6,993例が包含された。・メタ解析では、ADとVTE発生の有意な関連は認められなかった(HR:0.95、95%信頼区間[CI]:0.62~1.45、VTE発生率:0.23イベント/100患者年)。・全体では、JAK阻害薬治療を受けるAD患者におけるVTE発症者は0.05%(5,722例中3例)であったのに対して、プラセボまたはデュピルマブ治療を受けるAD患者のVTE発症者は0.03%(3,065例中1例)であった(Mantel-Haenszel検定によるリスク差:0[95%CI:0~0])。・VTE発生率は、JAK阻害薬を受けるAD患者で0.15イベント/100患者年、プラセボを受けるAD患者では0.12イベント/100患者年であった。・これらの解析所見は、4種のJAK阻害薬(アブロシチニブ、バリシチニブ、ウパダシチニブ、SHR0302)においても同様だった。

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アトピー性皮膚炎患者へのデュピルマブ、治療継続率と関連因子が明らかに

 中等症~重症のアトピー性皮膚炎(AD)患者におけるデュピルマブによる治療継続率と関連因子が、オランダ・ユトレヒト大学のLotte S. Spekhorst氏らが行った多施設前向き日常臨床BioDayレジストリのデータを解析したコホート試験により示された。デュピルマブ治療継続率は、1年時90.3%、3年時も78.6%と良好であったこと、また、ベースラインで免疫抑制剤を使用していた患者や4週目で治療効果が示されない患者は、治療中断となる傾向があることなどが明らかにされた。著者は、「今回示されたデータは、アトピー性皮膚炎のデュピルマブ治療に関する、より多くの洞察と新しい視点を提供するもので、患者に最適なアウトカムをもたらすことに寄与するだろう」と述べている。JAMA Dermatology誌オンライン版2022年8月10日号掲載の報告。 研究グループは、これまで不足していたアトピー性皮膚炎患者におけるデュピルマブ治療の継続率と、関連因子を特定するコホート試験を、多施設前向き日常臨床BioDayレジストリのデータをベースに行った。BioDayレジストリには、オランダの大学病院4施設および非大学病院10施設で被験者が募集され、解析には、4週以上追跡を受けていた18歳以上の患者が包含された。BioDayレジストリで、デュピルマブ治療を受けた最初の患者が記録されたのは2017年10月であった。2020年12月時点でデータをロックし、データ解析は2017年10月~2020年12月に行われた。 治療継続率はカプランマイヤー生存曲線で、また関連特性を単変量および多変量Cox回帰法を用いて解析した。 主な結果は以下のとおり。・合計715例の成人AD患者(平均年齢41.8[SD 16.0]歳、男性418例[58.5%])が解析に含まれた。・デュピルマブの治療継続率は1年時90.3%、2年時85.9%、3年時78.6%であった。・無効性により治療の継続が短期となった特性として、ベースラインでの免疫抑制剤の使用(ハザード比[HR]:2.64、95%信頼区間[CI]:1.10~6.37)、4週時点で非レスポンダー(8.68、2.97~25.35)が特定された。・有害事象により治療の継続が短期であった特性としては、ベースラインでの免疫抑制剤の使用(HR:2.69、95%CI:1.32~5.48)、65歳以上(2.94、1.10~7.87)、そしてInvestigator Global Assessmentスコアできわめて重症なAD(3.51、1.20~10.28)が特定された。

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アトピー性皮膚炎、新規抗IL-13抗体tralokinumabの長期有用性確認

 中等症~重症のアトピー性皮膚炎(AD)に対するtralokinumab(トラロキヌマブ、本邦承認申請中)の長期治療について、最長2年治療の忍容性は良好であり、ADの徴候と症状のコントロール維持が確認された。tralokinumabは、アトピー性皮膚炎関連の皮膚の炎症やかゆみに関与するIL-13のみを選択的に阻害する生物学的製剤で、第III相試験では最長1年にわたり、中等症~重症アトピー性皮膚炎成人患者の病変範囲・重症度を持続的に改善することが確認されている。中等症~重症アトピー性皮膚炎患者においては長期にわたる治療が必要として現在、非盲検下で5年延長試験「ECZTEND試験」が進行中であり、米国・Oregon Medical Research CenterのAndrew Blauvelt氏らが、事後中間解析における最長2年のIL-13のみを選択的に阻害する生物学的製剤tralokinumabの安全性と有効性を評価した。Journal of the American Academy of Dermatology誌オンライン版2022年7月18日号掲載の報告。IL-13のみを選択的に阻害するtralokinumabがアトピー性皮膚炎を改善 ECZTEND試験は、tralokinumabの先行試験(PT試験)に参加した中等症~重症AD患者を対象に、tralokinumab(2週ごとに300mg皮下投与)+局所コルチコステロイドの安全性と有効性を評価する5年延長試験。 安全性の解析は、tralokinumab曝露期間にかかわらず、ECZTEND試験に登録されたPT試験を完了した成人を対象とした。有効性の解析は、ECZTEND試験で1年以上tralokinumab治療を受けた成人参加者とし、サブグループ解析では、2年(PT試験で1年、ECZTEND試験で1年)治療を受けた成人参加者を評価対象とした。 主要エンドポイントは、延長試験期間中における有害事象(AE)の発生件数。副次エンドポイントは、PT試験と比較したIGAスコア0/1の達成患者割合およびEASI-75達成患者割合であった。 IL-13のみを選択的に阻害するtralokinumabの安全性と有効性を評価した主な結果は以下のとおり。・安全性解析には1,174例(年齢中央値38.0歳、男性57.5%、罹病期間中央値27.0年)、2年有効性解析には345例(42.0歳、58.8%、30.0年)が含まれた。・安全性解析(1,174例)において、tralokinumab累積曝露は1,235.7患者年で、曝露補正後AE発生頻度は、100患者年曝露当たり237.8件であった。・頻度の高いAEの曝露補正後発生率は、PT試験と同程度か低率であった。・2年有効性解析(345例)において、ADの範囲・重症度の改善は持続しており、EASI-75達成患者割合は82.5%であった。・本解析は、選択バイアスの可能性、プラセボ群未設定、一部の被験者がPT試験とECZTEND試験で治療ギャップを経験した、などの点で限界がある。

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中等症~重症アトピーの外用薬併用、アブロシチニブvs.デュピルマブ/Lancet

 中等症~重症のアトピー性皮膚炎(AD)患者において、外用療法へのアブロシチニブ1日1回200mg併用はデュピルマブ併用と比較し、かゆみおよび皮膚症状の早期改善に優れており、忍容性は同様に良好であったことが、ドイツ・ハンブルク・エッペンドルフ大学医療センターのKristian Reich氏らが実施した第III相無作為化二重盲検実薬対照ダブルダミー並行群間比較試験「JADE DARE試験」の結果、示された。先行の第III相試験では、中等症~重症の成人AD患者において、プラセボに対するアブロシチニブの有効性が確認されていた。Lancet誌2022年7月23日号掲載の報告。ステロイド外用薬等との併用で早期治療効果を評価 JADE DARE試験は、オーストラリア、ブルガリア、カナダ、チリ、フィンランド、ドイツ、ハンガリー、イタリア、ラトビア、ポーランド、スロバキア、韓国、スペイン、台湾、米国の151施設で実施された(2021年7月13日試験終了)。全身療法を必要とする、または外用薬で効果不十分な18歳以上の中等症~重症のAD患者を対象とし、アブロシチニブ(1日1回200mg経口投与)群またはデュピルマブ(2週間ごと300mg皮下投与)群に1対1の割合で無作為に割り付け、26週間投与した。全例が、ステロイド外用薬(弱~中力価)、外用カルシニューリン阻害薬、または外用ホスホジエステラーゼ4阻害薬の併用を必須とした。 主要評価項目は、2週時のPeak Pruritus Numerical Rating Scale(PP-NRS)スコアがベースラインから4点以上改善(PP-NRS4)達成、4週時の湿疹面積・重症度指数(Eczema Area and Severity Index:EASI)スコアが90%以上改善(EASI-90)達成に基づく奏効率とした。 無作為に割り付けされ、治験薬を少なくとも1回投与された患者を有効性および安全性の解析対象集団とし、両側有意水準0.05で逐次多重検定によりファミリーワイズの第1種の過誤をコントロールした。2週時のかゆみと皮膚症状、アブロシチニブで有意に改善 2020年6月11日~12月16日の期間に940例がスクリーニングされ、727例が登録・割り付けされた(アブロシチニブ群362例、デュピルマブ群365例)。 2週時にPP-NRS4を達成した患者の割合は、アブロシチニブ群(172/357例、48%[95%信頼区間[CI]:43.0~53.4])がデュピルマブ群(93/364例、26%[21.1~30.0])より高く(群間差:22.6%[95%CI:15.8~29.5]、p<0.0001)、4週時にEASI-90を達成した患者の割合も同様(アブロシチニブ群101/354例・29%[23.8~33.2]vs.デュピルマブ群53/364例・15%[10.9~18.2]、群間差:14.1%[8.2~20.0]、p<0.0001)であり、アブロシチニブ群のほうが主要評価項目を達成した割合が高かった。 有害事象は、アブロシチニブ群で362例中268例(74%)、デュピルマブ群で365例中239例(65%)に認められた。治療に関連しない死亡がアブロシチニブ群で2例報告された。

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妊娠中のビタミンD補充、児のアトピー性皮膚炎を予防?

 母体へのビタミンD補充が、出生児の4歳時までのアトピー性湿疹リスクを減少させたことが、英国・サウサンプトン大学のSarah El-Heis氏らによる無作為化試験「UK Maternal Vitamin D Osteoporosis Study(MAVIDOS)」で示された。これまで、母体へのビタミンD補充と出生児のアトピー性湿疹リスクとを関連付けるエビデンスは一貫しておらず、大半が観察試験のデータに基づくものであった。著者は、「今回のデータは、乳児のアトピー性湿疹リスクに対する胎児期のビタミンD(コレカルシフェロール)補充の保護効果に関する無作為化試験初のエビデンスであり、保護効果が母乳中のコレカルシフェロール値上昇による可能性を示唆するものであった」と述べ、「所見は、アトピー性湿疹への発育上の影響と、アトピー性湿疹への周産期の影響は修正可能であることを支持するものである」とまとめている。British Journal of Dermatology誌オンライン版2022年6月28日号掲載の報告。 研究グループは、二重盲検無作為化プラセボ対照試験「MAVIDOS」の被験者データを用いて、妊娠中の母体へのコレカルシフェロール補充と、出産児のアトピー性湿疹リスクへの影響を月齢12、24、48ヵ月の時点で調べる検討を行った。 MAVIDOSでは、妊産婦は、コレカルシフェロールを投与する群(1,000 IU/日、介入群)または適合プラセボを投与する群(プラセボ群)に無作為に割り付けられ、おおよそ妊娠14週から出産まで服用した。主要アウトカムは、新生児の全身の骨ミネラル含有量であった。 主な結果は以下のとおり。・出生児のアトピー性湿疹(UK Working Party Criteria for the Definition of Atopic Dermatitisに基づく)の有病率の確認は、月齢12ヵ月で635例、同24ヵ月で610例、同48ヵ月で449例を対象に行われた。・母体および出生児の特性は、介入群のほうで授乳期間が長期であったことを除けば、両群で類似していた。・母乳育児期間を調整後、介入群の出生児のアトピー性湿疹のオッズ比(OR)は、月齢12ヵ月時点では有意に低かった(OR:0.55、95%信頼区間[CI]:0.32~0.97、p=0.04)。・介入の影響は徐々に減弱し、月齢24ヵ月時(OR:0.76、95%CI:0.47~1.23)、月齢48ヵ月時(0.75、0.37~1.52)は統計学的な有意差は認められなかった。・月齢12ヵ月時の湿疹に関連した介入と母乳育児期間の統計学的相互作用について、有意性はみられなかった(p=0.41)。・ただし、介入群の乳児湿疹リスクの低下は、母乳育児期間が1ヵ月以上の乳児では有意差が認められたが(OR:0.48、95%CI:0.24~0.94、p=0.03)、1ヵ月未満の乳児では有意差は認められなかった(0.80、0.29~2.17、p=0.66)。

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デュピクセント、日本人小児アトピー性皮膚炎患者に対し主要評価項目達成/サノフィ

 サノフィは2022年6月14日付のプレスリリースで、同社のデュピクセント(一般名:デュピルマブ)について、生後6ヵ月から18歳未満の日本人アトピー性皮膚炎患者を対象とした第III相試験の結果を発表した。本試験における主要評価項目EASI-75の達成割合は、プラセボ投与群と比較してデュピクセント投与群で有意に高く、小児アトピー性皮膚炎の症状軽減に対する同製剤の有効性が示された。安全性データは、これまでのデュピクセントの安全性プロファイルと一致していた。デュピクセントの小児患者のEASI-75達成割合は43%でプラセボ群は19% 中等症から重症のアトピー性皮膚炎患者は、ステロイド外用剤(TCS)やタクロリムス外用剤による適切な治療を一定期間実施しても十分な効果が得られず、高頻度かつ長期間の再燃が認められる場合がある。しかし、若年層では治療選択肢が限られており、アンメットニーズが存在している。 デュピクセントは既に、既存治療で効果不十分な、成人のアトピー性皮膚炎患者に対して薬事承認されている。今回発表された試験は、多施設共同、ランダム化、プラセボ対照二重盲検並行群間比較試験で、中等症から重症のアトピー性皮膚炎と診断され既存療法で効果不十分な、生後6ヵ月から18歳未満の日本人小児患者62名を対象としている。TCSを標準治療薬とし、デュピクセントを併用した群とプラセボ投与群との比較により、小児アトピー性皮膚炎に対するデュピクセントの有効性と安全性を評価した。 小児アトピー性皮膚炎に対するデュピクセントの有効性と安全性を評価した主な結果は以下の通り。・主要評価項目である、投与16週時点のベースラインからのEASI-75達成割合は、デュピクセント投与群で43%、プラセボ投与群で19%だった(p=0.0304)。・安全性データは、デュピクセントで確立している安全性プロファイルと一致するもので、新たな有害事象は報告されなかった。 本試験で確認されたデュピクセントの有効性と安全性の詳細は、今後学会で公表される見通し。現在、国内における小児アトピー性皮膚炎へのデュピクセントの使用は臨床開発中であり、今後、本試験の結果をもとに生後6ヵ月以上18歳未満の小児を対象とした、製造販売承認事項一部変更申請を国内で実施する予定としている。

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中等症~重症アトピー性皮膚炎へのウパダシチニブ、長期有効性を確認

 中等症~重症のアトピー性皮膚炎患者(青少年および成人)に対するJAK阻害薬ウパダシチニブの有効性と安全性について、2つのプラセボ対照試験結果の長期52週時のフォローアップデータ解析の結果を、米国・オレゴン健康科学大学のEric L. Simpson氏らが発表した。ベネフィット・リスクのプロファイルは良好であり、16週時点で認められた有効性は52週時点でも確認されたという。JAMA Dermatology誌オンライン版2022年3月9日号掲載の報告。 研究グループが、アトピー性皮膚炎患者に対するウパダシチニブの長期(52週)の有効性と安全性を評価するため解析した2つの試験は、いずれも現在進行中の第III相二重盲検プラセボ対照反復無作為化試験「Measure Up 1試験」と「Measure Up 2試験」。それぞれ、151施設および154施設で中等症~重症アトピー性皮膚炎の青少年および成人患者が参加している。今回の解析のためのデータカットオフ日は、それぞれ2020年12月21日と2021年1月15日であった。 主要評価項目は、安全性および有効性で、湿疹面積・重症度指数(EASI)75%改善および試験担当医によるアトピー性皮膚炎の総合評価(vIGA-AD)スコアが2段階以上改善を伴うスコア0(消失)または1(ほぼ消失)への達成などで評価した。 主な結果は以下のとおり。・解析に含まれた被験者は、2試験で計1,609例(平均年齢33.8[SD 15.6]歳、女性727例[45.2%]、男性882例[54.8%])であった。・16週時点の有効性は、52週時点まで持続していた。・52週時点のEASI 75%改善達成率は、15mg用量服用患者群で、Measure Up 1試験被験者82.0%(95%信頼区間[CI]:77.0~86.9)、Measure Up 2試験被験者79.1%(73.9~84.4)、30mg用量服用患者群でそれぞれ84.9%(80.3~89.5)、84.3%(79.6~89.0)であった。・52週時点の2段階以上の改善を伴うvIGA-ADスコア達成率は、スコア0への改善達成率が各試験被験者59.2%(95%CI:52.9~65.5)、52.6%(46.2~59.1)であり、スコア1への改善達成率がそれぞれ62.5%(56.3~68.7)、65.1%(58.9~71.2)であった。・有害事象による治療中止は全体的に低調だったが、30mg用量群でわずかに高率に認められた。両用量とも忍容性は良好で、新たな安全性シグナルはみられなかった。

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円錐角膜〔keratoconus〕

1 疾患概要■ 定義円錐角膜は、進行性の両眼角膜中央部もしくは下方の菲薄化と突出を来す疾患であり、近視化と不正乱視による視力低下を来す。■ 疫学円錐角膜の発症頻度は、450〜2,000人に1人とされてきた。しかし、診断技術の進歩により、軽症の円錐角膜の検出頻度が上がっている。屈折矯正外来を訪れる患者のうち円錐角膜または円錐角膜疑い患者は5%前後にみられる。また、難波らの調査からは、疑い例も含めると日本人の約100人に1人程度の有病率であるという結果が報告されていることから、軽症例も含めると従来考えられているよりも罹患人口が多い可能性が高い。性差については報告により異なるが、わが国では男性に多いという報告が多数ある。■ 病因明らかな病因はいまだに不明である。数多くの遺伝子変異が報告されているが、実際に遺伝的素因が明らかな例はあまり多くない。ダウン症候群やレーバー先天盲、エーラス・ダンロス症候群、マルファン症候群などでは円錐角膜の発症率が高いことが知られている。その他リスクファクターとしては、アトピーなどのアレルギー眼疾患、頻繁に目をこする、などが挙げられる。■ 症状軽度の症例では自覚症状はほとんどない場合もあるが、中等度以上になると近視性乱視と不正乱視が出現する。そのために眼鏡矯正視力が不良になりハードコンタクトレンズによる矯正が必要になる。ほとんどの場合両眼性に生じるが、程度に左右差があることも多い。■ 分類角膜の突出部位別の分類としては、以下のものがある。Nipple角膜中央の狭い範囲(5ミリ以下)に突出がみられるもの。Oval     突出部位が中央やや下方にみられるもの。最も頻度が高い。Globus突出部位が角膜の4分の3の範囲に及ぶもの。また、重症度分類としては、Amsler分類(表)が古くから用いられているが、測定機器の進歩によって、細隙灯顕微鏡で検出できない初期の変化が捉えられるようになってきたために、見直す必要がある。表 Amsler-Krumeich分類画像を拡大する■ 予後円錐角膜の多くは思春期から青年期にかけて発症し、その後加齢とともに進行するが、中年以降になると進行速度が緩やかになってやがて停止する。しかしながら、進行の有無やスピードには個人差が大きく、近年の報告によれば30歳以降でも進行する症例もみられることが明らかになっている。経過中に、デスメ膜破裂を来す場合がある。局所的な実質の浮腫と、それに伴う急速な視力低下と軽度の眼痛を認める(急性水腫:図1)。浮腫は自然に軽快するが、実質瘢痕を残すと視力が回復せずに角膜移植が必要となることもあるので、急性水腫を来さないような治療方針を建てることが重要となる。図1 急性水腫の前眼部所見急激に発症する角膜中央部の浮腫で、スリットランプでしばしば実質の裂隙とデスメ膜の断裂を認める。2 診断 (検査・鑑別診断も含む)円錐角膜の診断には、正確な視力検査、自覚的屈折検査と角膜形状解析検査を行う必要がある。細隙顕微鏡での異常所見としては、角膜中央〜Vogt’s striae(角膜実質の線状の皺壁:図2)、Fleisher ring(突出部の周辺に認められるリング状のヘモジデリン沈着)、上皮化の瘢痕などが挙げられ、主として中等症以上で初めて認められる。図2 Vogt’s striae突出部に生じる細かい実質の皺壁。初期の円錐角膜の診断には、角膜トポグラフィー(形状解析検査)が有用であり、角膜中央から下方の前方突出が特徴的である(図3)。図3 典型的な円錐角膜の角膜トポグラフィー像下方角膜曲率の急峻化を認める。近年では、多くの機器で円錐角膜のスクリーニングプログラムが搭載されている。より初期の診断には、角膜前面だけではなく後面も評価でき、角膜厚の分布も検出できる角膜トモグラフィー(断層撮影)の感度が高い。さらに、角膜形状でなく生体力学的特性を調べる検査の有用性も報告されている。鑑別疾患としては、円錐角膜よりも周辺部角膜の菲薄化と突出を来たすペルーシド角膜辺縁変性が挙げられる。円錐角膜よりも発症が遅く進行が停止するまでの期間も長い。その他、レーシックなどの角膜屈折矯正手術後の角膜拡張症(エクタジア)も円錐角膜と同様の所見を呈する。3 治療 (治験中・研究中のものも含む)円錐角膜の治療は、視力矯正と進行予防の2つの目的があり、前者はさらに保存的治療と外科的治療に分かれる。■ 視力矯正1)保存的治療軽度の場合は眼鏡やソフトコンタクトレンズも用いられるが、一般的には酸素透過性ハードコンタクトレンズによる矯正が中心となる。角膜突出の程度が強くなると、多段階のベースカーブを有する円錐角膜用のハードコンタクトレンズが必要となる場合もある。ハードコンタクトレンズに伴う異物感が強い場合は、ソフトコンタクトレンズの上にハードコンタクトレンズを乗せる“piggy-back”とよばれる装用法や、中心部がハードレンズで周辺部がソフトレンズのハイブリッドレンズ、あるいは強膜レンズが用いられることもある。2)外科的治療軽度の非進行例については、有水晶体眼内レンズによる近視・乱視の矯正も試みられている。近年、角膜実質の混濁をともなわない例については、角膜実質にPMMA製のリングを入れる「角膜内リング」も一部で行われるようになった(国内未承認)。これによって角膜形状の改善とハードコンタクトレンズ装用感の向上が得られる場合がある。保存的治療で充分な視力矯正が得られない場合、角膜移植が1つの選択となりうる。かつては角膜全層を移植する「全層角膜移植」が広く行われたが、術後合併症への対策が欠かせないという欠点があり、それを補うために角膜実質をデスメ膜の直上まで切除して移植する「深層層状角膜移植」が行われているが、手術手技が難しいという欠点を持つ。■ 進行抑制約20年前から、「角膜クロスリンキング」という円錐角膜の進行抑制を目的とした治療が、諸外国で広く行われるようになった(国内未承認)。角膜実質内にリボフラビン(ビタミンB12)を浸透させた後に、紫外線を照射することで角膜実質のコラーゲン線維の架橋を促して強度を向上させる。これまでの研究で、円錐角膜の進行抑制が大半の例で得られ、若干の形状改善効果もあることが報告されている。進行抑制が得られれば、角膜移植などの外科的治療を受けずに済む可能性が高く、患者の生活の質の向上に役立つ。4 今後の展望上に挙げた治療法のいくつかは保険未収載であったり、機器の承認が取れていないため、治療は多くの場合が自費診療として行われる。特に角膜クロスリンキングは、疾患の進行抑制を効率で得られるために患者のQOLを長期にわたって改善できることが海外で報告されており、わが国でも早急に実施体制が整うことが求められる。また、多くの円錐角膜患者にとってハードコンタクトレンズは生活に欠かせないが、市町村によってはその購入に対する補助がなされないなど、患者負担が大きいことが問題となっている。5 主たる診療科眼科。しかし多くの例では、眼鏡店やコンタクトレンズ販売店、あるいは屈折矯正手術施行施設を訪れることも多く、これらの施設で適切に円錐角膜の診断をつけることが重要である。※ 医療機関によって診療科目の区分は異なることがあります。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)診療、研究に関する情報円錐角膜研究会(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)National Keratoconus Foundation(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)1)Amsler M. Ophtalmologica. 1946;111:96–101.公開履歴初回2023年3月8日

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