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薬剤師がワクチンの「打ち手」になる日が来る!?【早耳うさこの薬局がざわつくニュース】第69回

新型コロナウイルスワクチンが承認されて怒涛の接種ラッシュが始まると思いきや、意外とペースがゆっくりなのね…と感じている人も少なくないでしょう。接種ペースを上げて、より多くの人がより早くワクチンを接種して集団免疫を獲得するための打開策として、なんと「薬剤師をワクチンの打ち手に」というワードが急浮上しました。日本薬剤師会の山本信夫会長は5月19日、「要請があれば協力できるように研修内容の検討を始める」と発言し、前向きな姿勢を示した。内科医らでつくる民間団体が5月17日、薬剤師を活用することを求める署名約2万4,000人分を河野行政・規制改革相に提出。(ともに2021年5月19日付 読売新聞オンライン)河野太郎・行政改革相は5月18日、ワクチン接種の打ち手について「当然に薬剤師も検討の対象になる」との認識を示した。(2021年5月19日付 朝日新聞Digital)5月24日には日本薬剤師会の山本信夫会長が官邸に招かれ、医療従事者であり、免許取得者が30万人を超える薬剤師にも打ち手として期待を寄せる。(2021年5月26日付 日本経済新聞Web)コロナワクチンの接種率が高い米国では、薬局薬剤師がワクチン接種をしているという報道に影響されたのかな?と思いますが、国によって法律は異なるため、薬剤師が行える業務の範囲も異なることがしばしばあります。実際、米国や英国では薬剤師による注射が認められていますが、日本では医師法によって認められていません。しかし、このように薬剤師への期待が高まって署名が集まったことは、素直に大変うれしく思います。実現するには現行法を改正したり、医師に理解を求めたりする必要があるため時間がかかると思いますが、早くも日本薬剤師会は研修内容の検討を始めるとあり、実際に長崎国際大学薬学部では薬剤師向けに筋肉注射の研修会が開かれました。在宅対応で注射の調製を積極的にしている薬局はまだまだ少ないため、多くの薬局薬剤師は注射の扱いにあまり慣れてはいないでしょうし、日常的に調製や払い出しを行っている病院薬剤師であっても実際に注射を人に打ったことはないでしょう。ワクチンの打ち手になるとしたら相当の研修が必要になるため、これからの動きに注目したいと思います。今回は見送りでも、薬剤師による注射は「オーバーエクステンション」このように「薬剤師がワクチンの打ち手に」という話題は盛り上がりましたが、5月31日の厚生労働省の検討会によって、現時点では見送りとされました。誤解を恐れずに言うと、今回ワクチン接種の担い手になることがなくても、薬剤師がワクチン接種を想定して練習をしているということを示すことが、今後の薬剤師や薬局の役割を変えていくことにつながるのではないかと思います。経営学の用語で「オーバーエクステンション」という言葉があります。私の師匠の1人である伊丹 敬之氏が提唱した言葉で、その企業が持つ資源や能力を超えた事業に挑むという戦略で、短期的に見ればリスクがあるけれども成功すれば長期的な大きな利益が期待できるというものです。ワクチン接種は薬剤師にとってまさに「オーバーエクステンション」なのではないかと思います。リスクは実現しなかったときに、研修や勉強に費やした時間が無駄になることくらいでしょう。ワクチンの調製や経過観察にとどまらず、接種自体を多くの薬局薬剤師が行えるようになったら、もしかしたら来年には薬局でワクチン接種ということになるかもしれません。約6万店も存在して多すぎると言われ続けた薬局が活躍する日も近い!?と期待しています。

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遺伝子ワクチン接種後の新たな変異株感染(Breakthrough Infection)は何を意味するか?(解説:山口佳寿博氏)-1401

 米国においては、2020年12月中旬よりFDAが承認した3種のワクチン(Pfizer:BNT162b2、Moderna:mRNA-1273、Johnson & Johnson:Ad26.COV2.S)の接種が急ピッチで進められており、2021年5月28日現在、18歳以上の米国成人の62%、12歳以上の国民の59%が少なくとも1回のワクチン接種を、18歳以上の51%、12歳以上の48%が完全なワクチン接種(BNT162b2:2回接種、mRNA-1273:2回接種、Ad26.COV2.S:1回接種)を終了している(The New York Times. 2021年5月28日)。ただし、血栓形成という特殊副反応のためにAd26.COV2.Sの接種が2021年4月13日から4月23日までの間中止されたので、本ワクチンの接種率は他の2つのワクチンに比べ低い。上記のデータは、ワクチンによる疑似感染が集団免疫の確立に必要な最低感染率40%を超過し(山口. 日本医事新報 2020;5026:26-31)、米国は現時点でワクチン疑似感染による集団免疫を確立しつつある国だと考えることができる。その結果、2021年1月中旬以降、米国のコロナ感染者数、入院者数、死亡者数は順調に低下し、感染者数は2週間平均で37%、入院者数は23%、死亡者数は12%と明確な低下を示している。 米国CDCの報告によると、2021年4月30日までにワクチン接種者において1万262人の新規コロナ感染者が観察された(CDC COVID-19 Vaccine Breakthrough Case Investigations Team. MMWR; Vol. 70, 2021 May 25)。ワクチン接種後の新規感染者の27%は無症候性、新規感染関連入院は6.9%、新規感染関連死亡は1.3%に認められた。遺伝子配列から決定された検出ウイルスの内訳は、B.1.1.7(英国株):56%、B.1.427/429(米国株):33%、P.1(ブラジル株):8%、B.1.351(南アフリカ株):3%であり、B.1.617(インド株)ならびにB.1.526(米国株)は検出されなかった。一方、本論評で採り上げたHacisuleyman氏らの論文では、2021年3月30日現在、ニューヨーク市における蔓延ウイルスの中心は、B.1.1.7(英国株:26.2%)とB.1.526(米国株:42.9%)であったが、この2種類のウイルスとは異なる新たな変異ウイルスが検出されたと報告された(一つは感染性増強変異と液性免疫回避変異の両者を、もう一つは感染性増強変異のみを有する変異株)(Hacisuleyman E, et al. N Engl J Med. 2021 Apr 21. [Epub ahead of print])。米国全土とニューヨーク市という地域の差があるものの1ヵ月の間に米国発症のB.1.526が消失し、その替わりとして米国発症のB.1.427/429の頻度が急増し、かつ、今まで検出されていなかった新たな変異ウイルスが一過性にせよ検出されたという知見は、ワクチン接種とともに変異ウイルスの選択がダイナミックに進行していることを示す所見として興味深い。 以上の事実が何を意味するかを考察するために現状のワクチンの本質について考えていきたい。世界各国で接種が始まっている現状のワクチンはすべて武漢原株のS蛋白全長をplatformとして作成されたものであり、種々の治験結果から、D614G株(従来株、第2世代変異株)と液性免疫回避作用が弱い英国株(D614Gから進化したN501Y変異を有する第3世代変異株の一つ)に対しては確実な予防効果を発揮することが判明している(山口. J-CLEAR論評-1380. 2021 April 27、Dagan N, et al. N Engl J Med. 2021;384:1412-1423.)。一方、液性免疫回避作用が強い第3世代のB.1.351(南アフリカ株:N501Y変異[+])、P.1(ブラジル株:N501Y変異[+])、B.1.617(インド株、N501Y変異[-])に対する現状ワクチンの予防効果は、D614G株、英国株への効果に比べ有意に低いことが報告されている(山口. 日本医事新報 2021;5053:32-38、Sadoff J, et al. N Engl J Med. 2021 Apr 21. [Epub ahead of print]、Abu-Raddad LJ, et al. N Engl J Med. 2021 May 5. [Epub ahead of print])。すなわち、5月現在、米国で確立されつつあるワクチン疑似感染による集団免疫は、D614G株(第2世代変異株)とB.1.1.7(英国株、液性免疫回避作用が弱い第3世代変異株)に対するものであり、液性免疫回避作用が強いB.1.351(南アフリカ株)、P.1(ブラジル株)、B.1.617(インド株)、B.1.526(米国株)、その他の新たな第3世代変異株に対する集団免疫は確立に至っていないことに留意する必要がある。米国で確立されつつある集団免疫は、現在の主流ウイルスである液性免疫回避作用が弱い英国株による感染を駆逐し、今後ある一定期間はコロナ感染者数を低下させるであろう(集団免疫の正の効果)。しかしながら、英国株に対する集団免疫の確立は、現在の集団免疫に対して抵抗性を有する種々の第3世代変異株(B.1.351、P.1、B.1.617、B.1.526など)のうちいずれか、あるいは、まったく新しい変異株がウイルスの生存をかけて自然選択される確率を上昇させる(集団免疫の負の効果)(Lauring AS, et al. JAMA. 2021;325:529-531.)。その結果として、近い将来、新たな変異株に起因する感染爆発が起こる可能性があることに注意しなければならない。 以上のワクチン疑似感染に関する考察を支持する事実として、第2世代のD614G株から第3世代の英国株、南アフリカ株、ブラジル株、インド株が発生した状況について考えてみたい。これらの第3世代変異株は、D614G株による重篤な自然感染が発生した地域で流布するようになった。すなわち、D614G株の自然感染によってD614G株に対する集団免疫、あるいは、それに近い状況が英国、南アフリカ、ブラジル、インドにおいて確立され、その結果として、ウイルスは生存のためにD614G株に対する集団免疫に打ち勝つ第3世代変異株を選択、世界の多くの地域で第3世代変異株による感染爆発が発生したものと考えられる(山口. J-CLEAR論評-1381. 2021 April 28)。ワクチン接種による疑似感染で人工的集団免疫が確立された場合にも質的に同様の集団免疫抵抗性のウイルスが近未来に選択されるものと考えなければならない。 米国を中心に論を進めたが、集団免疫確立に伴う負の効果はワクチン接種が急ピッチで進められている他の先進諸国でも発生するものと考えておかなければならない。5月現在、本邦における主流ウイルスもD614G株から英国株に置換されつつあり(厚生労働省新型コロナウイルス感染症対策推進本部.2021年5月11日)、ワクチン疑似感染による英国株に対する集団免疫が早晩確立されるであろう。その結果として、一過性の社会的平穏が訪れるはずであるが、その先には、米国を例として考察したワクチン疑似感染による人工的集団免疫に抵抗性の新たな変異ウイルスによる第5波の感染が発生する可能性がある。この場合、いかなる変異株が選択されるかを予測することは難しく、現在すでに発生している液性免疫回避作用が強い第3世代変異株(南アフリカ株、ブラジル株、インド株など)の中から選択されるかもしれないし、新たな変異株(第4世代)が発生する可能性を考えておかなければならない。その意味で、ワクチン接種が進められた場合、変異ウイルスに対する大規模、かつ、確実なモニターを継続する必要があることを絶対的に忘れてはならない。

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事例027 トラムセット配合錠の査定【斬らレセプト シーズン2】

解説両手拇指CM関節慢性疼痛にて初診の患者に、トラマドール塩酸塩・アセトアミノフェン配合剤錠(商品名:トラムセット配合錠)のジェネリック版を投与したところ、D事由(告示・通知の算定要件に合致していないと認められるもの)にて査定となりました。そこで、病名に「慢性疼痛」が入っていたため、適応があるのではないかと考え添付文書を読み返しました。投与量は添付文書通りでした。効能または効果には、「非オピオイド鎮痛剤で治療困難な疾患における鎮痛、非がん性慢性疼痛」とあり、当該患者の慢性疼痛には適応があります。さらによく読むと、「非オピオイド鎮痛剤で治療困難」と前段にあります。当該患者は、初診で来院されています。疼痛に対する第1選択は、非オピオイド鎮痛剤であり、治療困難と判断したのちに、トラムセット配合錠に変更するというストーリーが読み取れます。したがって、初診時からトラムセット配合錠を投与した理由が、このレセプトからは読み取れず、添付文書の要件に沿っていないとD事由が適応されたものと推測できます。診療録を確認したところ、「他院から非オピオイド鎮痛剤に対して効果が薄いとの情報提供を受けていたことを理由にトラムセット配合錠を処方した」ことが記載されていました。同院のレセプト担当は、「病名が合致しているのでコメントは必要ない」と判断したようです。審査支払機関では、このように判断を必要とするところまでコンピュータ審査に対応しているようです。今後の査定対策として、医師には投与条件によってはコメントを必要とする薬剤であることを伝え、レセプトチェックシステムには初診時などの投与要件外であった場合にコメントを要することを登録しました。

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肥満だと新型コロナ重症化しやすいと知らない人が4割/アイスタット

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)による緊急事態宣言下、多くの事務職はテレワークに代替され、不要不急の外出も制限されている。家にこもる日々が1年以上に渡るが、身体にどのような変化があったのであろうか。 「コロナ太りの実態の把握」をテーマに、株式会社アイスタットは5月18日にアンケートを行った。アンケートは、セルフ型アンケートツール“Freeasy”を運営するアイブリッジ株式会社の全国の会員30~59歳の有職者、東京・大阪在住の300人が対象。調査概要形式:WEBアンケート方式期日:2021年5月18日対象:セルフ型アンケートツール“Freeasy”の登録者300人(30~59歳/有職者/東京・大阪)を対象アンケート結果の概要・コロナ太りは全体の35.3%! 体重の増加量が大きい人ほど、コロナ禍が影響している傾向あり!・「週1~2日」「気がむいたとき」に運動をしている人は、コロナ太りした人の割合の方が多かった! ダイエットを気にしているのか、運動をし始めた様子がうかがえた!・コロナ太りした人はそうでない人と比べ食生活の変化では、「食品摂取の偏り、バランスが悪くなった」の割合が最も多かった!・テレワークを実施している人ほど、「コロナ太り」が多い傾向!・約4割の人が「肥満がある人が新型コロナウイルスに感染すると重症化しやすい」を知らなかった!コロナ禍以前から健康維持していた人は太らない 最初に「コロナ禍以前と比較して(最近1年間)の体重増減」を聞いたところ、「ほとんど変わらない」が48.7%で最も多く、次に「約1~2kg増えた」が13.3%、「約2~3kg増えた」が13.0%と続いた。また、「体重増加の有無」の割合をみると「あり」は41.3%、「なし」は58.7%で、約4割の回答者が最近1年間で太ってしまったとの回答結果だった。外出控えによる運動不足などによる結果がうかがえた。 「体重増減は、コロナ禍での外出自粛が影響している」か聞いたところ、「影響している」が46.7%、「影響していない」は53.3%だった。そして、「影響している」と回答した中で「コロナ禍が影響して体重が増えた」と答えた割合は、全体の35.3%だった。また、「影響していない」と回答した中で「体重増加なし」は47.3%で、コロナ禍が体重増加の要因となったことがうかがえた。 「何らかの運動を定期的に行っているか」を聞いたところ、「ほとんど行っていない」が46.3%、「週に1日未満(気がむいたとき)」が10.7%、「週に2日は行っている」が8.3%の順で多かった。コロナ太りの有無との関連をみると、定期的な運動を「週3日以上から毎日」行っていると回答した人は「コロナ太りでない」の回答者の割合が多かったことから、運動習慣ある人の体重はコロナ禍でも維持されていることがわかった。 「食生活に変化があったか」を聞き、コロナ太りの有無との関連をみた。食生活に変化があった内容を回答した人は「コロナ太り」の割合が多く、「特に変わらない」と回答した人は「コロナ太りではない」の割合が多かった。「コロナ太りした」と答えた35.8%の回答者が、「食品摂取の偏り、バランスが悪くなった」と回答し、「間食をとる機会が増えた」も28.3%と回答数が多かった。一方で「コロナ太りしていない」と回答した人の53.6%が「(食生活は)特に変わらない」と回答しており、日ごろの食生活の維持の重要性をうかがわせた。 「コロナ禍で気を付けていること」を聞き、コロナ太りの有無との関連をみた。「コロナ太りした」人の回答では、「特に何もしていない」(28.3%)、「ウォーキング・ジョギングをする」(24.5%)、「定期的に体重を測定し記録する」(22.6%)の順で多かった。一方、「コロナ太りしていない」人の回答では、「特になにもしていない」(42.8%)、「規則正しい生活を心がけている」(21.6%)、「ウォーキング・ジョギングをする」(19.1%)の順で多かった。コロナ太りしない人ほど、コロナ禍前と変わらない生活を過ごしていると推定され、日ごろの健康管理の大切さがうかがわれた。 「最近1ヵ月間のテレワーク実施状況を聞き、実施有無別に分類した。「実施している」が39.3%で、「実施していない」の60.7%を下回った。「ほぼ毎日テレワーク」は16.0%で、定着率の低さが判明した。コロナ太りの有無別にみると、テレワークを実施していると回答した人は「コロナ太り」の割合が多く、実施していないと回答した人は「コロナ太りではない」の割合が多かった。テレワーク実施者は、通勤回避、在宅の増加により、あきらかに運動不足が影響を及ぼしていると推定される結果となった。 最後に「肥満がある人が新型コロナウイルスに感染すると重症化しやすいことを知っていたか」を聞いたところ、「知らなかった」が39.7%、「なんとなく知っていた」が32.3%、「知っていた」の28.0%の順だった。まだまだ重症化リスクの要因が浸透しておらず、今後の啓発活動が重要であることが示された。

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空手の「形」競技【空手家心臓外科医のドイツ見聞録】第2回

先日クロアチアでヨーロッパの空手選手権が行われました。コロナ禍の中での開催だったので、かなり厳重な管理の元、無観客で行われたようです。「オリンピック前哨戦」と言われている大会なのですが、本戦の方がどうなるかわからない状況ですね…。大会ではドイツ勢も健闘をみせました。組手・形の両種目で5つのメダルを獲得しました。空手の基本は「組み手」と「形」さて、空手には大きく分けて、相手と殴り合う「組手」競技とひとりで演武をする「形」競技に分かれます。他の格闘技種目と大きく違うのが「形」競技です。オリンピック種目に選ばれる際も、「形ってなんなんだ?」と中々理解が得られなかったようです。しかし、空手界の偉い先生たちが必死に頑張って、なんとか形競技を種目に追加することになりました。なぜ、空手界の重鎮たちはそこまで形競技にこだわったのでしょうか?それは、「形」こそが「空手の魂」だからなのです。他の武道における「形」というのは、定型的な動きを身に付けるための基本であることが多いのですが、空手の形についての物語は、そのルーツにまで遡ります。空手は沖縄でどう誕生したか空手の発祥は琉球王国、今の沖縄にあります。当時、琉球は薩摩藩により禁武政策を敷かれ、武器の所持が禁止されていました。そこで、身の回りのもの(棒とか串とか)を使って身を守る護身の術として生まれたのが空手なのです。よく勘違いされるのですが、空手というのは素手という意味ではありません。唐(中国)から伝わった手(拳法のこと)が琉球で独自の進化を遂げ、唐手(からて)と名付けられました。それが後に「色即是空」の空の字を当てて、「空手」となったのです。ですから、実は空手には棒術もあるし、映画のようにヌンチャクを振り回したりもします。先述の通り、当時は禁武政策が敷かれている最中なので、おおっぴらに武術を教えることができませんでした。そのため、空手の先人たちは、一見踊りのような動きの中に空手のすべての技術を隠して伝えていったのです。つまり空手の形は、空手の教科書そのものなのです。空手の「魂」とはその後、空手はたくさんの流派に分かれ、多くの形が生まれることになります。現在、正式に認められている形は200以上あります。同じ名前の形でも、流派が違えば解釈が異なり、全然違う動きになることもあります。ただ、200以上あると言われるすべての形には共通していることがあります。それは「すべての形は『受け』から始まる」ということです。形の第一挙動目は、必ず防御の動きから始まるのです。「武」というのは「戈(ほこ)を止める」と書きます。空手は他人を攻撃するためのものではなく、己を護るためのものだという想いを、先人は形の中に込めたのです。ドイツ人の空手仲間にその話をしたら、送ってくれた画像があります。ドイツのどこかの道場に飾ってあるものだそうです。時代を超えて、ドイツの地にも空手の魂がちゃんと伝わっていると思うと、胸が熱くなります。

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デジタル手術イラストの描き方(下書き~線画編)【誰も教えてくれない手術記録 】第3回

第3回 デジタル手術イラストの描き方(下書き~線画編)こんにちは! 手術を描く外科医おぺなかです。さて、今回からは2回に分けて、手術イラストの下書きから完成までの過程を順に解説します。皆さん、お手元にデジタルイラストレーションを描く準備はできていますでしょうか? まだの方は前回のコラムを参考にしてください。最近、自分の周りでも徐々に手術イラストをデジタルで作成する人が増えてきている印象です!まずは、基本的なレイヤーの使い方を覚えましょう描き始める前に、デジタルイラストで重要な「レイヤー機能」を押さえておきましょう。下に完成したイラストを提示しましたが、実はこのイラストは、右図のように複数の層(レイヤー)が重なってできています。画像を拡大する(左)完成図/レイヤーのイメージ(右)線画、着色、テキストなど、イラストを構成する要素がそれぞれ透明なシートに描かれていて、それらを重ねると1枚のイラストが出来上がって見えるというイメージでしょうか。このレイヤー機能を駆使すると、臓器の奥行きや前後関係などの表現、部分ごとの加筆修正などが容易となります。これを理解し使いこなすことが、デジタルイラストでの必須スキルです! 少しややこしいかもしれませんが、描いていくうちにわかってくると思います。ではここからは、実際にイラストを描く手順について、(1)下書き、(2)線画、(3)着色、(4)仕上げの4段階に分けて説明していきます。(1)下書き:後で調整できるので、大まかに描いていくまずは下書きから始めましょう。下書きには「鉛筆」のブラシを使用しています。細かい部分は後のステップで整えるので、ここは思うままにざっくりと描き上げます。描きたい場面が複数ある場合は、それぞれのイラストの配置や大きさなども考えながら、大まかに決めていきます。見本:下書きの完成図(2)線画:イラストの良しあしが決まるので、完成図をイメージして丁寧に下書きを描き終えたら、線画の作成(清書)に移ります。下書きレイヤーの「不透明度」を下げる(「透明度」を上げる)と、下書きが薄くなるので、線画がぐっと描きやすくなります。次に、下書きのレイヤーの上に線画用の「新規レイヤー」を作成し、描いていきましょう。画像を拡大する(左)不透明度の調整/下書きの上に新規レイヤーを作成(右)※iPadお絵描きアプリ「Procreate」を使用私は線画に「製図ペン」というブラシを愛用していますが、いろいろな種類のブラシがあるので、自分の使いやすいものを探してみてください。下書きよりもさらに正確できれいなイラストを描くことを心掛けて、丁寧に線を引いていきます。細かい部分を描き込む際には、拡大機能を活用しましょう。だいたいのアプリが、二本指のピンチアウト/ピンチインで拡大・縮小できると思います。私は、この線画がイラスト作成の全過程の中で一番重要だと考えています。線画でイラストの良しあしの大半が決まると言ってもよいかもしれません。手術イラストでは、臓器や膜構造の位置関係をできるだけ正確に記載すべきと考えていて、それらはすべて線画で決まります。ここは気合いを入れて取り組み、納得のいくイラストに仕上げていきましょう。画像を拡大する(左)下書き/線画の完成図(右)下書きのレイヤーを非表示にすると、このように描き上げた線画を確認できます。ここで完璧に仕上げなくても、後からいくらでも修正できるので大丈夫です。次の作業をまた別のレイヤーで行うことで、線画のレイヤーを選択するといつでも線画のみの修正ができるわけです。レイヤー、とっても便利な機能ですよね!次回は、(3)着色と(4)仕上げについて詳しく説明していきます。お楽しみに!

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厳格降圧vs.標準降圧:SPRINT最終報告/NEJM

 糖尿病や脳卒中の既往がない心血管イベント高リスク患者では、収縮期血圧目標を120mmHg未満とする厳格降圧が同目標を140mmHg未満とする標準降圧より、無作為割り付けされた治療を受けている期間と試験終了後の両方で、主要有害心血管イベントおよび全死因死亡の発生を有意に低下させることを、米国・アラバマ大学バーミングハム校のCora E. Lewis氏らがSPRINT試験の最終報告として示した。ただし、低血圧等の有害事象の発現率は、厳格降圧群で高かった。NEJM誌2021年5月20日号掲載の報告。試験終了後約1年間の追跡データも収集し解析 研究グループは、2010年11月~2013年3月に、50歳以上で糖尿病または脳卒中の既往がなく、降圧治療の有無にかかわらず収縮期血圧が130~180mmHgの心血管イベント高リスク患者(臨床的または不顕性心血管疾患、慢性腎臓病、フラミンガムリスクスコアに基づく10年以内の冠動脈疾患発症リスク15%以上、または75歳以上のいずれか1つ以上に該当)9,361例を登録し、収縮期血圧目標120mmHg未満の厳格降圧群(4,678例)と、同目標140mmHg未満の標準降圧群(4,683例)に無作為に割り付けた。 主要評価項目は、心筋梗塞、その他の急性冠症候群、脳卒中、心不全、または心血管死の複合である。試験期間終了時(2015年8月20日)までに発生した主要評価項目イベントは、主要解析のデータロック後に解析するとともに、2016年7月29日までの試験後の観察追跡データを解析した。追跡データを合わせても、120mmHgの厳格降圧群で有意に予後良好 追跡期間中央値3.33年において、試験期間中の主要評価項目イベントの発生は標準降圧群2.40%/年、厳格降圧群1.77%/年(ハザード比[HR]:0.73、95%信頼区間[CI]:0.63~0.86)、全死亡はそれぞれ1.41%/年および1.06%/年(0.75、0.61~0.92)であり、いずれも標準降圧群に比べ厳格降圧群で有意に低かった。低血圧、電解質異常、急性腎障害/腎不全、失神などの重篤な有害事象は、厳格降圧群で有意に高頻度であった。 試験期間中と試験後の追跡データを合わせると(追跡期間中央値3.88年)、厳格降圧群は標準降圧群に比べ主要評価項目イベントおよび全死亡が有意に低いままであった(主要評価項目のHR:0.76、95%CI:0.65~0.88、p<0.001、死亡のHR:0.79、95%CI:0.66~0.94、p=0.009)。有害事象の発生についても同様の傾向がみられたが、心不全の発生は両群で差は認められなかった。

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看護師1人当たりの患者数最小化で、患者転帰が改善/Lancet

 看護師1人当たりの患者数を最小化する施策により、死亡率、再入院率、在院日数が改善され、その結果として支出せずに済んだ費用は、看護師の増員に要した費用の2倍以上に達したことが、米国・ペンシルベニア大学のMatthew D. McHugh氏らが実施した「RN4CAST-Australia試験」で示された。研究の成果は、Lancet誌オンライン版2021年5月11日号で報告された。クイーンズランド州55病院の前向きパネル調査 研究グループは、2016年にオーストラリア・クイーンズランド州で制定された最小看護師-患者比率に関する施策が看護師の人員配置や患者転帰に及ぼす影響の評価および、同施策が人員配置と患者アウトカムに関連があるかを検討する目的で、前向きパネル調査を行った(オーストラリア・クイーンズランド州保健局などの助成による)。 クイーンズランド州の最小看護師-患者比率施策(午前と午後の勤務では1対4を超えない、夜間勤務では1対7を超えない)の対象となった病院(介入病院:27施設)と、退院患者が類似するがこの施策の対象ではない病院(対照病院:28施設)を、施策の導入前(ベースライン)と導入から2年の時点で比較した。 死亡記録と関連付けられた「標準化クイーンズランド州入院患者データ」を用いて、内科および外科病棟の患者の背景因子およびアウトカム(30日死亡、7日再入院、在院日数)のデータを取得し、施策導入の前後で対象病院の内科系および外科系の看護師1万7,010人の調査データを入手した。 看護師の調査データを用いて看護師の人員配置を評価し、標準化された患者データと関連付けた後、介入群と対照群の病院における患者転帰の変化を推定し、看護師の人員配置の変化との関連を検討した。 ベースライン(2016年)で評価を受けた患者23万1,902例(介入病院群14万2,986例、対照病院群8万8,916例)と、施策導入後(2018年)に評価を受けた患者25万7,253例(16万167例、9万7,086例)が解析に含まれた。1対4.5以上の病院の割合が、83%から58%に低下 看護師1人当たりの平均患者数は、対照病院群ではベースラインの6.13(SD 0.75)例から施策導入後2年の時点の5.96(0.98)例へとわずかに改善し、介入病院群では4.84(1.05)例から4.37(0.54)例に改善した。 ベースラインの30日死亡率は、対照病院群に比べ介入病院群で高かった(補正後オッズ比[OR]:1.34、95%信頼区間[CI]:1.09~1.64、p=0.0052)。導入後の30日死亡率は、対照病院群ではベースラインと有意な差は認められなかった(補正後OR:1.07、95%CI:0.97~1.17、p=0.18)が、介入病院群ではベースラインに比べ有意に低下した(0.89、0.84~0.95、p=0.0003)。 ベースラインから導入後2年までに、7日再入院率は対照病院群で増加した(補正後OR:1.06、95%CI:1.01~1.12、p=0.015)のに対し、介入病院群では増加しなかった(1.00、0.95~1.04、p=0.92)。 在院日数は、両群とも導入後に減少した(対照病院群:補正後発生率比[IRR]:0.95、95%CI:0.93~0.98、p=0.0001、介入病院群:0.91、0.89~0.94、p<0.0001)が、短縮の程度は介入病院群が対照病院群よりも顕著であった(補正後OR:0.95、0.92~0.99、p=0.010)。 ベースラインから導入後2年までに、病院の人員配置に変化がみられた。人員配置に関する信頼性の高いデータを持つ36病院のうち、ベースライン時に看護師1人当たりの患者数が4.5例以上の病院は30施設(83%)であったが、導入後は21施設(58%)に減少した。 これらの変化の大部分は介入病院群によるものであり、対照病院群と比較して介入病院群では、看護師1人当たりの患者数を1例削減することで、30日死亡率(OR:0.93、95%CI:0.86~0.99、p=0.045)、7日再入院率(0.93、0.89~0.97、p<0.0001)、在院日数(IRR:0.97、95%CI:0.94~0.99、p=0.035)がいずれも有意に改善された。 また、再入院率の抑制と在院日数の短縮で支出せずに済んだ費用は、看護師の増員に要した費用の2倍以上であった。 著者は、「最小限の看護師-患者比率を確立する施策は実行可能なアプローチであり、看護師の人員配置と患者転帰を改善し、投資利益率が向上すると考えられる」としている。

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医薬品卸の談合事件の闇に学ぶ【早耳うさこの薬局がざわつくニュース】第68回

1つの職場や業界に長くいると、そこでの慣習に疑問を持つ機会が少なく、「えっ! それっていけないことだったの?」と後から知ってぞっとした経験がある方もいるのではないでしょうか。単純に知らなかったという場合だけでなく、いけないことだと知っていてやっていたり、一個人では是正できなかったりする場合もあります。医薬品業界で、まさにその代表事例ともいえる「医薬品入札における談合」がありました。独立行政法人「地域医療機能推進機構」(JCHO、東京)発注の医薬品をめぐる入札談合事件で起訴された卸大手3社の公判が始まり、組織ぐるみで続けていた受注調整の実態が明らかになってきた。現場から幹部までが重層的に協議を重ねて競争を回避。被告となった元幹部は「長年の商習慣だった」と語った。「機会があったらやめたい、なるべく触りたくないと思った」。個人として起訴されたスズケンの元幹部社員は4月下旬の初公判で、長年続いた談合に反省の弁を述べた。(2021年5月10日付 日本経済新聞Web)医薬品の納入を巡り、医薬品卸の大手3社が行っていた受注調整(いわゆる談合)に対する公判が行われました。3社とも談合の事実を認めており、違法行為と認識しつつも長年の商習慣だったのでやめられなかったと述べています。この記事にある3社とはアルフレッサ、スズケン、東邦薬品です。メディセオも関与していましたが、違反を自主申告したため刑事告発はされませんでした。卸大手4社が関わっていたこと、長年の慣習だったことなどから、業界全体で日常的に行われていたのでしょう。具体的には、各社の受注予定比率を設定し、落札する医薬品群を過去の納入実績を踏まえて割り振った後、さらに各社間で調整して、最終的に合意した入札金額を書面にしてJR東京駅付近の貸会議室などで実務担当者が交換するのが習わしだったとのことです。東京駅付近で書面交換というのがいけないことだと自覚している雰囲気が醸し出され、なんともリアルだなぁと思います。では、なぜこのような談合が発生したのでしょうか? ご存じのように、医療用医薬品には薬価が設定されており、それは日本全国共通です。卸からすれば、共通の売価の医薬品をいくらで医療機関に納入するか、というのが競争の肝です。競合事業者が相互に連絡をとって受注予定比率や納入価格を調整することで、安定的な売り上げや高い利益が確保でき、在庫の管理もしやすくなるというメリットがあります。もし入札に失敗すると売り上げを失うことになるので、違法だと認識しつつもやめるにやめられなかったのでしょう。しかし、これでは価格競争をする必要がなくなって納入価格が高止まりするため、厳正な競争を制限するとして独占禁止法(不当な取引制限)に抵触します。仕事相手が守らなければいけないルールを知ることは大切それって薬局や病院の薬剤師には関係ないよね?と思う方もいるかもしれません。今回のケースは卸同士の談合なので、医療機関が何かしたというわけではありません。しかし、もし医療機関側が「この医薬品は○○では△%引きになっている」などと暗に値引き要請をすると、下請け法に違反したり、卸各社が話し合ってカルテルに至って独占禁止法に違反したりする可能性があります。日常のふとした会話が法律違反の引き金になってしまう恐れがあるため注意が必要です。仕事相手が守らなければいけないルールを知ることは大切なことです。この独占禁止法で直接薬剤師が罰されることは少ないと思いますが、医薬品の流通の中で自分がどのような役割を担っているのか考えてみるよい機会かもしれません。

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「もっと高く売れるはず…」、その思い込みが売れ残りにつながる【ひつじ・ヤギ先生と学ぶ 医業承継キソの基礎 】第18回

第18回 「もっと高く売れるはず…」、その思い込みが売れ残りにつながる漫画・イラスト:かたぎりもとこ「譲渡額の設定方法」は、売り手の方から最も多く頂く質問です。実際、診療所の譲渡額の設定は、成約率を最も大きく左右する要素となります。診療所の譲渡額の設定方法を、簡単に式にすると下記になります。(院長の前年度の年間所得×1年分)+固定資産額たとえば、年収1,500万円の開業医の方が自院を売却する場合、基本的な譲渡額は1,500万円になります。ここに「最近購入した医療機器」の価値が300万円ある場合には、1,500万円+300万円=1,800万円が譲渡額となります。これに加えて、東京都世田谷区といった、医師の開業人気エリアにおいては、「プレミアム」という考え方があり、決まったロジックなしに数百万円が上乗せされるケースもあります。このように、譲渡額は設定にいくつかの要素があり、これらを総合的に判断して算出する必要があります。(譲渡額設定に関する詳細は下記をご参照ください)知っておきたい 医院承継・売却時の売値の相場とは?上記のようなロジックを無視して、売り手側の院長の言い値で譲渡額を設定するケースもありますが、そうした適正価格から外れた案件はなかなか成約に至らず、売り時を逃すことにつながります。譲渡額の妥当性は成約率に大きく影響するため、思い込みを排除し、ロジックに従った決め方をしたほうが、結局は売り手のためにもなるのです。

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まず手に取るべき「1冊目の臨床問題集」THE内科専門医問題集1&2

いつでも・どこでも専門医試験対策が可能に内科専門医をめざす研修医・専攻医のための臨床トレーニング問題集&WEBアプリ。トップ指導医たちがレビューを重ねて磨き上げた「スタンダード430問」(1&2巻合計)により内科臨床の基礎を一通り学ぶことができる。スマホ、タブレット、PCで「いつでも、どこでも」専門医試験対策が可能になるWEB版付。内科全領域のスタンダードをスキマ時間に効率的に学ぶことができる。まず手に取るべき「1冊目の臨床問題集」。呼吸器内科医・田中 希宇人氏による書評このコロナ禍で内科、特に全身を診ることができる内科専門医の必要性が上がっています。そしてコロナに対応すべく、実臨床に即した問題対応能力や知識の習得が必須となっています。内科専門医を取得することも大事ですが、専門医として相応しい幅広い知識を勉強することが極めて重要です。本書は、内科専門医として身につけておくべき専門医カリキュラムの中から、内科専門医試験に必要なトピック・疾患・治療などを厳選して430問の臨床実地問題にまとめられています。特筆すべきはチーフエディターである筒泉先生・山田先生と各専門分野で活躍されるパートエディターの先生方の重厚さでしょう。中身を読んで頂ければすぐに分かりますが、各問題の解説が詳しく、かつ分かりやすく記載されています。私も呼吸器専門医や内科専門医の資格を持っていますが、自分が専門医試験を受ける時にも持っていたかったと思わせる本書。試験を受ける先生は勉強すべき内容がほぼ網羅されておりますし、試験に関係ない先生方も知識のアップデートとしてぜひ熟読して頭に入れておきたい、内科医必読かつ最強の2冊組です。画像をクリックすると、内容の一部をご覧いただけます。※ご使用のブラウザによりPDFが読み込めない場合がございます。PDFはAdobe Readerでの閲覧をお願いいたします。THE内科専門医問題集1THE内科専門医問題集2画像をクリックすると、内容の一部をご覧いただけます。※ご使用のブラウザによりPDFが読み込めない場合がございます。PDFはAdobe Readerでの閲覧をお願いいたします。THE内科専門医問題集1THE内科専門医問題集2 THE内科専門医問題集1 [WEB版付]総合内科I II III・消化器・循環器・内分泌・代謝・腎臓定価7,480円(税込)判型B5判頁数422頁発行2021年4月編集筒泉 貴彦 / 山田 悠史THE内科専門医問題集2[WEB版付]呼吸器・血液・神経・アレルギー・膠原病・感染症・救急・集中治療定価7,480円(税込)判型B5判頁数462頁発行2021年4月編集筒泉 貴彦 / 山田 悠史

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第58回 世界との比較で見えてきた日本のコロナ対策の課題と対応

新型コロナウイルス感染症を巡っては、検査やワクチン接種が遅々として進まず、治療においても病床数が不足している日本。NPO法人医療ガバナンス研究所理事長の上 昌広氏が4月24日、「これまでのコロナ対策を問う」と題した講演会において問題点の指摘と提言を行った。以下、講演の概要を紹介する。季節性の“風邪コロナ”の動向にも注視を緊急事態宣言後の新規感染者数の増加に対し、「リバウンド」という言い方がされるが、世界で感染者数が増加しているということは、日本固有以外の理由がある。それは変異株の拡大と季節性の変動の影響だ。前者については改めて説明の必要はないが、後者については新型コロナ流行を予測する上で重要だ。コロナは元々、風邪のウイルスで、新型コロナが流行する以前から4種のウイルスが世界で流行を繰り返してきた。このような“風邪コロナ”は夏と冬の年2回流行することから、新型コロナも夏に流行する可能性がある。しかし日本の場合、現在の状況では今夏はおろか、今冬であっても国民の大半がワクチン接種を完遂するのは無理だろう。G7の中では、英国と米国において感染者数が激減している。英国については、昨夏の日本の第2波までは、感染者数の急増により「世界の負け組」と呼ばれたが、年末年始頃から減少に転じた。また、米国は死亡者数の急増から第2次世界大戦末の様相とまで言われた。両国はなぜ感染者数の減少に成功したのか、そしてその他の欧州諸国がなぜうまくいっていないのかを分析すべきだ。ワクチン接種数5割超で集団免疫を獲得日本に関しては、やり方次第で緊急事態宣言は必要なかったと考える。各国の人口10万人当たりのワクチン接種率(4月13日現在、1回目接種)のデータによると、英米両国の接種率は約6割。対する日本は1.3%。英米の感染者数の減少傾向を見ると、集団免疫を獲得していることがうかがえる。このことが示すのは、接種率が5割を超えれば感染者数を抑えられるということだ。ただし、速やかな接種でなければいけない。ちなみに、接種率1位はチリで約65%。しかし、同国の感染者数は急増した。ワクチンの主な購入先は中国のメーカーだ。中国製は不活化ワクチンで、有効性は5〜7割。これに対し、米国のファイザー製やモデルナ製はmRNAワクチンで、有効性は約9割だ。後者は世界初のワクチンで、接種後何が起きるかわからないからと、当初は中国製ワクチンが求められていたが、チリの状況が明らかになってから潮目が変わった。菅 義偉首相が4月、5,000万回分のワクチンの追加供給をファイザーと合意した頃、中国は1億回分を輸入した。習 近平・国家主席は自国のワクチンを危ないと思ったのか。一方、ファイザー製は短期的な有効性や安全性が明らかになりつつある。「特例承認」制度を早期に生かせなかった日本日本の接種率が低い理由に、接種開始の遅れがある。主要先進国では昨年12月に始まったが、日本は今年2月からだ。田村 憲久・厚生労働大臣は、安全性チェックのため治験が必要だと言ったが、ファイザー製ワクチンの治験にヨーロッパで参加した国はドイツのみで、多くが自国での治験にこだわらなかった。形だけのブリッジ試験を実行した日本とは危機意識が違うと言えよう。日本は緊急事態と言っても平時の対応だ。医薬品医療機器等法に基づく特例承認という制度があって、治験せずとも承認できるのに、政治判断をしなかった。問題を指摘された菅首相の答弁は、「法改正が必要」との苦しい説明だった。ワクチンを確保したら、あとは打つだけ。欧米では医学生や看護学生、軍人でも接種できる。日本も規制を緩和して打ち手を増やさなければいけない。日本は経済的に大きなダメージを受けている。2020年のGDPは、前年比で-5.1ポイント、アジア圏域では中ぐらいだが、東アジアの中では最下位だ。一方、ヨーロッパで感染対策を緩めたスウェーデンでは、ロックダウン措置をしなかった結果、死亡者数が増えた。2020年のGDPは前年比‐4.2ポイント。高齢者層の経済活動自粛などが要因として考えられる。国際標準とは真逆の日本の対応策日本のコロナ施策における最大の問題点は、PCR検査を抑制したことだ。G20における10万人当たりのPCR検査数(2020年12月9日前後の数字)を見ると、トップは米国で約6万5,000件。翻って、日本は14位で5,000件以下だ。世界のコロナ対策が大きく動いたのは、昨年8月。リードした米国では、新学期が始まるタイミングだった。学校では対面でないと教育効率が下がったり、教員の雇用に影響したりする。週2回の検査により陽性者が早期に発見できるという研究結果を根拠に、実行することにした。日本も東京五輪・パラリンピックの選手や関係者は週2回検査(その後、毎日に変更)するというが、子ども達に週2回検査しようとはしない。ダブルスタンダードになっている。OECD加盟国と中国の10万人当たりのCOVID-19関係論文数(2020年12月28日現在)を見ると、トップはスイスで、日本は34位。「イソジンでうがいをすれば感染を防げる」「PCR検査を増やせば医療が崩壊する」「マスク会食をしましょう」などという言説が行政トップから発せられるのが日本なのだ。実際は逆で、検査をして陰性の人はマスクを外して外食しましょう、これが国際標準であるということは明白だ。大学病院での受け入れ増に必要な感染症改正欧米と比べて患者数が少ない日本で医療が逼迫するのは、コロナ感染者の受け入れ病床数が少ないからだが、とくに問題なのは、大学病院が少数の感染者しか受け入れられない点だ。それはコロナが感染症法に規定されている法定感染症で、受け入れ病院として大学病院は認定されていないからだ。言うまでもなく、コロナは「総力戦」。科学的かつ合理的でなければならない。

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「減価償却費」が、それぞれの財務諸表へ与える影響を知ろう【今さら聞けない!医療者のための決算書の読み方】第5回

<登場人物>病院で同期だったコンサルタントの田中に定期的に相談を始めた宮路は、最近、実家の病院の経営会議に出始め、新たな疑問があるようだ。宮路:最近、実家の病院の経営会議に出始めたら、「ゲンカショウキャクヒ」が大きいとか小さいとかよく議論になるのだけど、どういう意味なんだろう…?田中財務諸表を理解していくうえで、最初にぶつかる難しいキーワードの1つかもね。安田「減価償却費」を理解するために、まずは「資産」について押さえていこう。公認会計士・安田の解説資産にもいろいろありますが、減価償却を行わなければならないのは「償却資産」といわれるものです。簡単に言うと、償却資産になるかは「それを利用して稼ぐものかどうか」というのが基準になります。金額が大きなものだと、建物、医療機器、それに電子カルテなどのシステムも含まれますね。小さなものだと、パソコン、オフィスの棚、机、椅子などもそうです。ただし、10万円未満のものに関しては、この後説明する「減価償却」を行わず、一括で費用にできる、というルールになっています。償却資産の種類によって「耐用年数」(参考:国税庁ホームページNo.2100 減価償却のあらまし)というものが決まっていて、「何年くらい使えるか」が定められているので、耐用年数に応じて毎年、一定額を費用に計上していくのです。たとえば、パソコンであれば耐用年数は「4年」と決められていて、購入した初年度にすべての額を費用計上せず、4年間毎年一定額を費用に計上にすることになります。観点を変えると、「償却資産」は時間の経過や使うことによって価値が下がっていくから、資産価値の評価という意味でそれを財務諸表上で表しているわけです。パソコンを例にとると、使っていくことで毎年徐々に劣化していきますよね。耐用年数とはそういう意味合いもあるんです。宮路なるほど。資産には、そういうふうに償却資産とそうでないものの区別があるんですね!安田資産の注意点としては「一体として判断しなければならないものがある」ということでしょうか。たとえば、院長室にある応接セットがよい例です。机、椅子それぞれ単体では10万円を超えないけれど、机、椅子を合わせて10万円を超える場合は「償却資産」と見なさなければなりません。田中では、ここから減価償却費の話をしていこう。コンサルタント・田中の解説900万円のエコー(超音波検査器械)を購入した場合を例にして、それぞれの財務諸表にどう反映されるのかを考えてみよう。まずキャッシュフロー計算書から見てみよう。ここでは現金の流れを追うわけだから比較的わかりやすいけれど、購入した年度に900万円の資金が減ることになるよね。仮に6年目にエコーを使い終わって150万円で売却した場合には、その年に資金が売却額分増えることになる。次に損益計算書を見てみよう。資産のところで説明したように、「耐用年数」に応じて計上することになるんだ。「定額法」というのが一般的なのでその例で説明すると、今回購入したエコーは耐用年数が6年なので6年間均等に150万円ずつ計上することになる。最後に、貸借対照表を見てみよう。これは毎年使うことで均等に価値が下がっていくから初年度の計上は900-150=750万円となり、その後耐用年数の6年目まで150万円ずつ下がっていくんだ。すべてまとめると以下の図のようになるよ。表1:減価償却費の財務諸表への影響画像を拡大する田中:つまり、損益計算書上は1年目から6年目まで同額150万円の費用が発生しているけれど、実際は初年度に900万円のキャッシュが減っていて、2年目からはキャッシュは出ていかないんです。宮路:そうか、財務諸表上の表れ方がそれぞれ異なるんだね。田中そう。「耐用年数が終わる」ということは、「新しい機器を購入するタイミング」ということだから、それに備えて購入資金をためておく必要があるよ。

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服薬・介護負担軽減のための課題抽出と用法の調整【うまくいく!処方提案プラクティス】第36回

 今回は、服用が複数回で服薬・介護負担が多いケースで、どのように改善策を立てて実行したのかを紹介します。単純に回数を減らすのではなく、現場における問題点から最善策を考え、薬剤師ならではの目線で医師に提案しましょう。患者情報80歳、女性(施設入居)基礎疾患混合型認知症、高血圧症、心房細動、慢性便秘症介護度要介護3服薬管理施設職員が管理障害自立度B-2、認知症自立度:IIIa処方内容 ※嚥下困難のため粉砕指示あり。1.ボノプラザン錠10mg 1錠 分1 昼食後2.アムロジピン錠5mg 1錠 分1 昼食後3.エドキサバン錠30mg 1錠 分1 昼食後4.エスゾピクロン錠2mg 1錠 分1 就寝前5.酸化マグネシウム錠500mg 2錠 分2 朝夕食後6.ガランタミン錠8mg 2錠 分2 朝夕食後7.ウラピジル徐放カプセル 1カプセル 分1 朝食後(本剤のみそのまま服用)本症例のポイントこの患者さんは、施設に入居する前から現在に至るまで上記の薬剤を服用しており、便秘症やBPSDの悪化などもなく経過は安定していました。しかし、1日の服用回数が4回と多いため、服薬管理上の問題が3点ありました。(1)この患者さんには嚥下困難があり、服薬をストレスに感じている。(2)食事と服薬に時間がかかるため、服薬介助の負担が大きい。(3)ほかの施設入居患者さんの薬のセットも増加しているため、服用当日の用法ごとに薬をセットする手間が増加している。そこで、患者さんの服薬負担や看護師の介護負担を減らすために服薬のタイミングをまとめる提案をすることにしました。また、その際に、現在服用している薬の投与継続の妥当性についても評価することにしました。【提案前の整理内容】(a)用法の調整介助の負担が集中する昼食後の薬と夕食後の薬のセットを減らしたいという話を看護師から聴取したため、昼食後の薬剤を朝食後に、夕食後の薬剤を就寝前に変更することを提案することにしました。(b)ボノプラザンの中止消化性潰瘍や逆流性食道炎の既往もないことから、投与継続の必要性は低く、むしろ胃酸分泌低下による腸管感染症、高ガストリン血症、吸収障害などが懸念されるため中止を提案することにしました。(c)低用量ウラピジル徐放カプセルの中止現在の排尿障害などの評価から中止が可能か検討しようと思いましたが、看護師との話し合いの中で、中止に伴う症状再燃などからの不穏の懸念があるため、中止提案はしないことにしました。処方提案と経過回診前のカンファレンスで医師に上記(a)と(b)の提案を伝えたところ、(a)の用法調整の件はその場で承認を得ることができました。(b)のボノプラザンの中止については、医師とカルテ情報を閲覧し、抗凝固薬服用に伴う消化管出血予防が目的だと推察しました。しかし、過去に消化性潰瘍や逆流性食道炎はなく、医師の見解としてエドキサバンはアスピリンなどと比較して潰瘍リスクは低いため、食事摂取や生活への悪影響を考慮して中止となりました。その後、施設看護師の服薬管理の負担が軽減し、患者さんも服用の回数が減ったことで心理的な負担が減って楽になったと聞き取りました。また、ボノプラザン中止後の胃部不快感や胃痛などの症状もなく経過しています。

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食事パターンは高齢者の認知機能に関連している

 高齢者において、地中海式食事法※1とマインド食※2が記憶と言語機能に、「アルコール飲料」がワーキングメモリに関連していることが、ドイツ・German Center for Neurodegenerative Disorders(DZNE)のL M P Wesselman氏らの研究により明らかとなった。結果を踏まえて著者は、「認知機能低下率に対する栄養の推定的効果、およびアルツハイマー病(AD)リスクが高いグループへの食事介入の可能性について結論を出すには、縦断的データが必要だ」としている。European Journal of Nutrition誌2021年3月号の報告。 これまで、認知機能と食事に関する研究の多くは一般的な人口をベースにして行われ、1次予防の可能性を導き出してきた。しかし、ADリスクが高い個人を用いた研究は、とくに有益だと考えられる。本研究では、臨床サンプルを用いて認知症でない高齢者の食事パターンと認知機能の間の横断的関連性を検証した。 ドイツのDELCODE試験より、389例の参加者データ(女性52%、平均年齢69±6歳、平均ミニメンタルステートスコア29±1)を抽出した。主観的な認知機能低下、軽度認知障害(MCI)、およびAD患者の兄弟を有する参加者を含めることにより、サンプルにはADリスクが高い高齢者が集まった。地中海式食事法およびマインド食は、148の食事摂取頻度調査票、および39の食品グループの主成分分析(PCA)によるデータ駆動型パターンによって導き出した。食事パターンと5つの認知領域スコア(記憶、言語機能、実行機能、ワーキングメモリ、視空間機能)との関連性は、人口統計(モデル1)、それに加えてエネルギー摂取量、BMI、その他のライフスタイル変数およびAPOe4ステータス(モデル2)で補正した線形回帰分析を用いて分析した。PCAによって関連する食事成分を導くため、最終モデル3には他のすべての食事成分が含まれた。 主な結果は以下のとおり。・高齢者人口をベースにした研究と一致して、地中海式食事法およびマインド食の順守は、より高い記憶力と関連していた。・「アルコール飲料」のPCA構成要素は、より高い記憶力、言語機能、実行機能、ワーキングメモリと正の相関性を示した。・MCI患者(60例)を除くと、地中海式食事法およびマインド食は言語機能にも関連していた。同様に、アルコール飲料の成分と言語機能についても、弱いものの有意な関連が認められた。※1:地中海式食事法:魚・野菜・フルーツをメインにオリーブオイル・ナッツ類・赤ワインを取り入れた食事※2:マインド食:地中海式食事法と高血圧圧を予防するダイエット食「DASH食」を組み合わせたもので、脂肪分やコレステロールの摂取を減らし、ミネラルを多く摂る食事

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片頭痛発作を抑制する初の抗体製剤「エムガルティ皮下注120mgオートインジェクター/シリンジ」【下平博士のDIノート】第74回

片頭痛発作を抑制する初の抗体製剤「エムガルティ皮下注120mgオートインジェクター/シリンジ」今回は、ヒト化抗CGRPモノクローナル抗体製剤「ガルカネズマブ(遺伝子組み換え)注射液(商品名:エムガルティ皮下注120mgオートインジェクター/シリンジ、製造販売元:日本イーライリリー)」を紹介します。本剤は、従来の片頭痛治療で効果が不十分、または副作用などにより使用できない患者の片頭痛発作を抑制し、QOLが改善することが期待されています。<効能・効果>本剤は、片頭痛発作の発症抑制の適応で、2021年1月22日に承認され、4月26日に発売されました。投与対象となる患者は、厚生労働省の最適使用推進ガイドラインに記載されている下記の患者選択基準(1)~(4)すべてを満たす必要があります。(1)国際頭痛分類(ICHD第3版)を参考に十分な診療を実施し、前兆のあるまたは前兆のない片頭痛の発作が月に複数回以上発現している、または慢性片頭痛であることが確認されている。(2)投与開始前3ヵ月以上にわたり、1ヵ月当たりのMHD(頭痛日数:migraine headache days)が平均4日以上である。(3)睡眠・食生活の指導、適正体重の維持、ストレスマネジメントなどの非薬物療法および片頭痛発作の急性期治療などをすでに実施していて、それらの治療を適切に行っても日常生活に支障を来している。(4)わが国で既承認の片頭痛発作の発症抑制薬のいずれかが、下記1~3のうちの1つ以上の理由によって使用または継続できない。1.効果が十分に得られない。2.忍容性が低い。3.禁忌または副作用などの観点から安全性への強い懸念がある。<用法・用量>通常、成人にはガルカネズマブ(遺伝子組み換え)として初回に240mgを皮下投与し、以降は1ヵ月間隔で120mgを皮下投与します。本剤投与中は症状の経過を十分に観察し、本剤投与開始後3ヵ月を目安に治療上の有益性を評価して、症状の改善が認められない場合は本剤の投与中止を考慮します。その後も定期的に投与継続の要否について検討し、頭痛発作発現の消失・軽減などにより日常生活に支障を来さなくなった場合には、本剤の投与中止を考慮する必要があります。なお、日本人を対象とした臨床試験において、18ヵ月を超える本剤の使用経験はありません。<安全性>反復性および慢性片頭痛患者を対象とした日本人および外国人の臨床試験を併合したところ、評価対象2,582例中780例(30.2%)に臨床検査値異常を含む副作用が認められました。主な副作用は、注射部位疼痛260例(10.1%)をはじめとする注射部位反応(紅斑、そう痒感、内出血、腫脹、硬結など)、悪心30例(1.2%)、疲労27例(1.1%)でした。重大な副作用として、重篤な過敏症反応であるアナフィラキシー、血管浮腫、蕁麻疹など(いずれも頻度不明)が現れることがあります。<患者さんへの指導例>1.この薬は、片頭痛を引き起こす神経ペプチドを抑え、片頭痛発作が起きないようにする薬です。初回は2本、2回目以降は1ヵ月に1回1本を皮下投与します。2.頭痛発作時は医師の指示に従って、頭痛発作治療薬や痛み止めを使用してください。3.注射部位に現れる痛み、発赤、かゆみ、内出血、腫れなどは、通常数日以内に消失します。症状が長引いたり、悪化したりする場合は早めにご相談ください。4.注射後、発熱、蕁麻疹、口唇周囲の腫れ、息苦しさなどが起きたら、すぐに医療機関にご連絡ください。<Shimo's eyes>片頭痛発作を抑制する初の抗体製剤が登場しました。本剤は、CGRP(カルシトニン遺伝子関連ペプチド)に特異的に結合するヒト化抗CGRPモノクローナル抗体です。CGRPは三叉神経節や硬膜上の三叉神経末梢に存在する神経ペプチドで、過剰に発現すると血管拡張や神経原性炎症を引き起こして、片頭痛発作を発症させると考えられています。本剤は1回使い切りの注射製剤であり、オートインジェクターは、デュラグルチド(商品名:トルリシティ皮下注0.75mgアテオス)と同様のデバイスです。2020年7月現在、片頭痛の予防の適応で40ヵ国以上において承認されており、反復性群発頭痛の適応についても米国、アラブ首長国連邦などで承認されています。片頭痛の薬物療法として、急性期の治療には、トリプタン製剤、アセトアミノフェン、NSAIDsなどが推奨されています。急性期治療のみでは片頭痛発作を抑制できず、頻回の発作により生活に支障が出る場合には、予防治療が選択されます。片頭痛の予防薬として適応を有するものには、プロプラノロール(同:インデラル)、ロメリジン塩酸塩(同:ミグシス)、バルプロ酸ナトリウム(同:デパケン)などがあります。これらの予防薬は連日の服用が必要ですが、本剤は月1回の皮下注射で効果が期待できるため、患者の利便性・QOLの向上が期待できます。なお、本剤は、片頭痛の治療に関する十分な知識および経験を有する医師のもとで使用することとされ、投与対象となる患者・施設ともに『最適使用推進ガイドライン』に定められる厳格な要件を満たす場合に限られています。本剤は2022年5月より在宅自己注射が可能となりました。病院で本剤による治療を受けていると聴取した場合は薬歴に記載し、効果や副作用を確認したうえで、ほかの片頭痛治療薬が正しく使えているかも確認しましょう。※2022年5月、添付文書改訂により一部内容の修正を行いました。参考1)PMDA 添付文書 エムガルティ皮下注120mgオートインジェクター/エムガルティ皮下注120mgシリンジ

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