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第71回 3回目ワクチン早ければ年内にも/コロナ特例加算9月で廃止

<先週の動き>1.3回目ワクチン、早ければ年内にも医療従事者から開始/厚労省2.コロナ特例加算は今月末で廃止、補助金で代替へ/厚労省3.浸透しないオンライン診療、患者負担が割高で敬遠か4.来年度の診療報酬改定に診療側と支払い側で議論紛糾/中医協5.胃・大腸の進行がん症例増加、がん検診控えの影響か6.病院を選ぶ理由の1位は? 受療行動調査で明らかに/厚労省1.3回目ワクチン、早ければ年内にも医療従事者から開始/厚労省厚生労働省は、22日に自治体向けの説明会を開催し、新型コロナウイルスワクチンの追加接種について、早ければ年内の12月から3回目接種の実施に向けて準備を開始するように働きかけた。追加接種は2回接種完了からおおむね8ヵ月以上経過した人を対象に想定しており、まずは医療従事者から開始となる。高齢者への接種は年明け以降の見通し。ワクチンの種類は2回目までと同じものを基本としながら、別の種類も認めるかはあらためて検討される。(参考)ワクチン3回目接種、年内は医療従事者104万人 高齢者は年明け(朝日新聞)新型コロナウイルスワクチンの接種体制確保について(厚労省)2.コロナ特例加算は今月末で廃止、補助金で代替へ/厚労省厚労省は、特例的に上乗せしていた診療・介護報酬における新型コロナ感染症対策実施加算について、今年9月末までとする方向で、財務省と検討していることが報道された。外来診療で1例当たり50円、入院1日当たり100円などの加算は時限的措置であったため、医療介護団体は10月以降も継続を求める要望書を厚労省に宛てて提出しているが、財務省は「新型コロナの対応に当たる医療機関に限定すべき」として打ち切りを主張していた。このため、特例措置は9月末までが期限となり、今年末までは経過措置として補助金で支援を継続する方針。このほか、新たに発熱外来などの対応を行う医療機関への診療報酬の加算も検討されている。(参考)診療や介護報酬、特例打ち切りへ コロナ患者非対応も加算に批判(日経新聞)新型コロナ 特例加算、月末で廃止 診療・介護報酬 補助金で代替(毎日新聞)コロナ対応の特例延長で要望書続出 日医、四病協、日看協や全老健など医療・介護団体(CBnewsマネジメント)3.浸透しないオンライン診療、患者負担が割高で敬遠か新型コロナウイルス感染拡大の中、政府によって初診患者についても規制緩和されているオンライン診療について、各医療機関が保険診療の点数が低いために、これとは別に利用料を請求している事例があることを日本経済新聞が報道した。厚労省はオンライン診療を「補完的」と位置付け、診療報酬を低くしているが、医療機関側は患者に対して、システム利用料や通信費の名目で平均約900円の負担を求めているという。また、日本医師会も対面での診療が基本とする姿勢を崩していない。政府の規制改革推進会議では、引き続きオンライン診療の規制緩和を求めているが、厚労省には、安全性・信頼性の担保のほか、令和4年度の診療報酬改定も含めた議論が求められる。(参考)オンライン診療・オンライン服薬指導に関する検討状況について(厚労省)ネット診療の患者負担が割高 平均900円加算、普及阻む(日経新聞)患者「便利だが」割高敬遠 ネット診療、システム利用コスト 医療機関「対面より手間」(日経新聞)4.来年度の診療報酬改定に診療側と支払い側で議論紛糾/中医協22日に中央社会保険医療協議会・診療報酬基本問題小委員会が開催され、入院医療等の調査・評価分科会の中間とりまとめを基に、2022年度の診療報酬について議論が行われた。入院診療の医療費をめぐって、コロナの影響か前回の診療報酬改定の影響か判断がつかない中、診療現場に大きな影響が出るような改定に診療側は懸念を示すものの、支払い側は、コロナ禍であっても必要と、一般病棟入院基本料など見直すべき課題を列挙した。今後、中医協でさらなる検討を重ね、年内の取りまとめに動く見込み。(参考)診療報酬調査専門組織入院医療等の調査・評価分科会からの報告について(中医協)入院医療の中間とりまとめ受け意見対立、中医協 診療側「病床削減避けるべき」、支払側「やるべきはやる」(中医協)5.胃・大腸の進行がん症例増加、がん検診控えの影響か日本対がん協会は、今年上半期のがん検診受診者数は156万6,022人と、大幅に減少していた去年の同時期に比べて2.2倍に増加したが、感染拡大前の一昨年に比べると17%減少しており、コロナの余波がまだ残っていることを明らかにした。また、横浜市立大学の研究チームは、コロナウイルス感染拡大により、胃や大腸の早期がんの診断者数が減少し、進行がんの症例が増えたと報告しており、検診控えにより、早期がんの診断が遅れ、症状が発現してから発見に至る症例が増えたことも考えられる。今後、各自治体による働きかけが求められるが、自治体もコロナの影響で対応が遅れており、さらなる対策が必要だろう。(参考)がん検診の受診者が回復傾向 コロナ禍前には及ばず 日本対がん協会(朝日新聞)自治体実施のがん検診受診者 去年より回復もコロナ前に戻らず(NHK)進行した大腸がん増加、患者調査 コロナで検診、受診控え(東京新聞)6.病院を選ぶ理由の1位は? 受療行動調査で明らかに/厚労省厚労省が3年おきに行なっている受療行動調査の結果が公表された。全国の一般病院484施設を利用する患者(外来・入院)約16万人を対象として、10月に調査を実施。受診した医療機関を選んだ理由が「ある」と回答した人のうち、外来・入院ともに「医師による紹介」が最多で、外来は38.7%、入院は55.5%だった。次いで、外来では「交通の便が良い」が27.5%、入院では「専門性が高い医療を提供している」が26.5%であった。また、外来で「予約をした」患者は77.4%となっており、前回(2017年)と比べて6.0ポイント上昇していた。全体として、医療を受けた病院に「満足」と回答した患者は、外来64.5%、入院68.9%であり、「不満」と回答した患者は、外来3.8%、入院4.9%だった。病院の種類別で「満足」と回答した患者は、外来・入院ともに特定機能病院が最も高かった。(参考)令和2(2020)年受療行動調査(概数)の概況(厚労省)20年の受療行動調査結果を公表 厚労省(CBnewsマネジメント)小規模病院や療養病床持つ病院で「社会的入院」が増加、背景を地域ごとに探る必要あり―2020年受療行動調査(Gem Med)

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きれいにリフォームしても、高く売れるわけじゃないんです【ひつじ・ヤギ先生と学ぶ 医業承継キソの基礎 】第26回

第26回 きれいにリフォームしても、高く売れるわけじゃないんです漫画・イラスト:かたぎりもとこ「5年以内に診療所を承継したい…」。そう考える開業医の方は、医院の内装や設備機器に多額の投資を行うことはお勧めできません。「きれいにリフォームしたほうが、買い手が付きやすいんじゃないの?」とおっしゃる方がいますが、機器や内装を新調することで固定資産額(簿価)が高くなり、売値も高くなる構造があるのです。結果として、後継者が見つけにくくなる可能性があります。売値の算定方法については、過去のコラムを参照ください。第10回 診療所の後継者探し、自分だけで「質」と「量」確保できますか?売り手側の設備投資の内容が買い手側の希望に合っていれば問題はありませんが、必ずしもそうでないケースが多いのが実情です。医業承継の場合、買い手の約7割の方は内装や機器をそのまま使用します。一方で残りの約3割の方は自分の診療の特徴を出すことや患者の動線を考え、リフォームを行っています。後者の場合、売り手が行った設備投資と、自分が再度行いたい設備投資があるため、二重にコストがかかってしまいます。医療機器なども、医師によっては「ここの内視鏡でないと」と強く希望するケースもあり、売り手の機器を廃棄し、新たに購入することも珍しくありません。このようなケースを念頭に置き、医業承継を検討する診療所は、大規模な設備投資をしないほうがよいのです。

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初期アルツハイマー病に対するaducanumabの長期的ベネフィット

 アルツハイマー病は、慢性的かつ進行性の神経変性疾患であり、患者および介護者に対して大きな負担が強いられる。aducanumabは、アルツハイマー病の病理に作用する初めての治療薬として米国FDAより承認された薬剤であり、アルツハイマー病の病態生理学的特徴である脳内のアミロイドプラーク減少が期待できる。第III相臨床試験であるEMERGE試験で、aducanumabはアルツハイマー病による軽度認知障害(MCI)および軽度アルツハイマー型認知症患者における臨床的な進行抑制作用を示し、アミロイド病理に対する作用が確認されている。米国・RTI Health SolutionsのWilliam L. Herring氏らは、初期アルツハイマー病患者に対するaducanumabの長期的ベネフィットを評価するため、EMERGE試験の有効性データに基づき検討を行った。Neurology and Therapy誌オンライン版2021年8月23日号の報告。 aducanumabの有効性が、患者の重症度レベル(アルツハイマー病によるMCIおよび軽度、中等度、高度アルツハイマー型認知症)およびケア状態(コミュニティケアまたは施設ケア)で変化するか、死亡リスクに影響を及ぼすかについて、マルコフモデルを用いて検討を行った。aducanumabは、標準的治療に追加して実施し、比較対照群は、標準的治療のみを実施した患者とした。base-case分析およびシナリオ分析のデータソースには、EMERGE試験、公開されたNational Alzheimer's Coordinating Centerの分析、その他の公表文献を用いた。 主な結果は以下のとおり。・aducanumab治療による生涯にわたる患者当たりの質調整生存年(QALY)は、比較対照群と比較し、0.65の患者QALY増加および0.09の介護者QALY減少が認められた。・aducanumab治療は、比較対照群と比較し、アルツハイマー型認知症の生涯発生率が減少しており、以下の特徴が認められた。 ●施設入居への移行リスクが低い(25.2% vs.29.4%) ●MCIから中等度以上のアルツハイマー型認知症へ移行する期間の延長(中央値:7.50年 vs.4.92年) ●コミュニティケア期間の延長(中央値:1.32年) 著者らは「aducanumab治療は、アルツハイマー病によるMCI患者、軽度アルツハイマー型認知症患者および介護者に対し、長期的なベネフィットをもたらすと考えられる。本結果は、医療における意思決定者や政策立案者にとって、aducanumabの潜在的な臨床的および社会経済的価値を理解するうえで、役立つであろう」としている。

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特発性後天性全身性無汗症〔AIGA:acquired idiopathic generalized anhidrosis〕

1 疾患概要■ 定義発汗を促す環境(高温、多湿)においても発汗がみられないものを無汗症とよぶ。そして、「後天的に明確な原因なく発汗量が低下し、発汗異常以外の自律神経および神経学的異常を伴わない疾患」を特発性後天性全身性無汗症(acquired idiopathic generalized anhidrosis:AIGA)と定義する1)。■ 疫学2011年に国内の大学病院神経内科、皮膚科94施設を対象に行った調査では過去5年間のAIGA患者数は145例であった1)。男性が126例を占め、発症年齢は1~69歳まで幅広いものの、10~40歳代にかけて多くみられた。その後に報告された単施設で結果でもおおむね同様の傾向にある2-4)。また、症例報告のほとんどは本邦からの報告となっている。まれな疾患ではあるが、患者の生活環境によっては無汗に気付かれないこと、後述するようにコリン性蕁麻疹として治療されている例もあり、実際にはより多くの患者がいる可能性がある。しかし、最近ではAIGAの存在が徐々に認知されるようになってきたためか、受診・紹介患者は増えてきている印象もある。■ 病因全身無汗になる病態として次の3つがありうる。(1)交感神経の中の発汗神経の障害(Sudomotor neuropathy)(2)特発性純粋発汗不全(Idiopathic pure sudomotor failure:IPSF)(3)特発性汗腺不全(Sweat gland failure)しかし、臨床経験上(1)(3)はまれであり、またその証明も難しいことから、AIGAの多くが(2)に相当する。(2)の具体的機序としては汗腺分泌部とその周囲のマスト細胞上のアセチルコリン受容体の発現低下が推定されている5)。本病型(IPSF)には減汗性/無汗性コリン性蕁麻疹として主に皮膚科領域から報告されてきたものも含まれる。■ 症状激しい運動や暑熱環境にさらされると無汗による体温上昇のためにほてり感、顔面紅潮、めまい、悪心、動悸などの症状がみられ、容易に熱中症に陥る。手掌や足底、腋窩は障害されにくく、また、前額も発汗が保たれやすい傾向がある。四肢は無汗でも体幹は低汗にとどまっている例もみかける。患者の6~8割程度に発汗誘発時のコリン性蕁麻疹を伴う(IPSF)。明瞭な膨疹が出現せずピリピリとした痛痒さを訴えるだけのこともある。体幹・四肢の無汗のために代償性に生じた顔面の多汗が主訴となることがあり、問診に際して注意が必要となる。■ 予後長期予後に関する大規模な調査はないが生命予後は良い。2 診断 (検査・鑑別診断も含む)■ 鑑別のステップと検査無汗症の分類を図1に示す6)。先天性・遺伝性には無汗性/低汗性外胚葉形成不全症、先天性無痛無汗症、ファブリー病などがある。一方、後天性には種々の神経疾患、内分泌・代謝異常症、シェーグレン症候群、薬剤性などの要因による続発性のものがある。これらを除いた特発性とせざるをえない無汗症のうち、無汗部位が髄節性(分節性)でなくほぼ全身に及ぶものがAIGAとなる。診断基準を表6)に示す。図1 無汗症の分類画像を拡大する表 特発性後天性全身性無汗症(AIGA)の診断基準A明らかな原因なく後天性に非髄節性の広範な無汗/減汗(発汗低下)を呈するが、発汗以外の自律神経症候および神経学的症候を認めない。Bヨードデンプン反応を用いたミノール法などによる温熱発汗試験で黒色に変色しない領域もしくはサーモグラフィーによる高体温領域が全身の25%以上の範囲に無汗/減汗(発汗低下)がみられる。● 参考項目1.発汗誘発時に皮膚のピリピリする痛み・発疹(コリン性蕁麻疹)がしばしばみられる。2.発汗低下に左右差なく、腋窩の発汗ならびに手掌・足底の精神性発汗は保たれていることが多い。3.アトピー性皮膚炎はAIGA に合併することがあるので除外項目には含めない。4.病理組織学的所見:汗腺周囲のリンパ球浸潤、汗腺の委縮、汗孔に角栓なども認めることもある。5.アセチルコリン皮内テストもしくはQSARTで反応低下を認める。6.抗SS-A抗体陰性、抗SS-B抗体陰性、外分泌腺機能異常がないなどシェーグレン症候群は否定する。A+BをもってAIGA と診断する。(中里良彦ほか. 特発性後天性全身性無汗症診療ガイドライン改訂版. 自律神経.2015;52:352-359.より引用)■ 検査1)温熱発汗試験簡易サウナ、電気毛布などを用いて加温により患者の体温を上昇させて発汗を促し、ミノール法などで発汗の有無を評価する(図2)。正常人では15 分程度の加温により全身に発汗点を認める。サーモグラフィーでは、発汗のない領域に一致して体温の上昇が認められる。無汗部の面積の評価に有用。図2  AIGA患者でのミノール法所見画像を拡大する発汗反応(黒点部分)が低下している2)薬物性発汗試験(1)局所投与5%塩化アセチルコリン(オビソート:0.05~0.1mL)を皮内注射する。正常人では数秒後より立毛と発汗がみられ、5~15 分後までに注射部位を中心に発汗を認める。汗腺自体の発汗機能を評価できる。(2)定量的軸索反射性発汗試験(QSART:quantitative sudomotor axon reflex tests)アセチルコリンをイオントフォレーシスにより皮膚に導入し、軸索反射による発汗を定量する試験。AIGAでは、発汗が誘発されない。(3)皮膚生検AIGAのうち、特発性純粋発汗不全(IPSF)では光顕上、汗腺に顕著な形態異常を認めないが、汗腺周囲にリンパ球浸潤を認めるときがある。(4)血清総IgE値測定IPSF では血清総IgE値が高値の場合がある。(5)血清CEA値測定高値の症例でその値が発汗状態と相関することから、個々の症例における治療効果の指標になりうる。3 治療 (治験中・研究中のものも含む)1)ステロイド全身投与現存する治療法のうち最も効果が期待できる方法である。点滴パルス療法(メチルプレドニゾロン500~1000 mg/日、3日間連続投与)が用いられることが多い。後療法として30mg/日程度の経口投与を行う場合もある。また、経口内服療法(30~60mg/日)のみで開始して漸減する方法などもとられる。パルス療法の回数や後療法の適否・容量については一定の見解がない。反応がみられる例では、パルス療法直後から2週間程度までに効果が表れ、また、コリン性蕁麻疹や疼痛発作もみられなくなる。ステロイド治療によって寛解する例がある一方、部分寛解にとどまる例、症状が再燃する例、そして、ステロイドにまったく反応しない例がある。パルス療法はおおむね3回程度行われていることが多いが、まったく反応がえられない例では漫然と繰り返すよりも、他の治療法への切り替えまたは積極的に発汗トレーニングによる理学療法を取り入れる。2)抗ヒスタミン薬内服ヒスタミンがアセチルコリンによる発汗を抑制することから試みられる7)。ただし抗コリン作用のない好ヒスタミン薬を選択すること。効果が明瞭でない場合には通常量より増量してみることも必要。3)免疫抑制剤内服シクロスポリンの内服(2~5mg/kg/日)が効果を示すことが知られるが、報告症例数は少ない。4)その他の内服療法漢方薬である紫苓湯、葛根湯、または塩酸ピロカルピン(や塩酸セビメリン)などの投与も試みる価値がある。5)理学療法薬物療法に頼りがちであるが、発汗を刺激するための発汗トレーニングは補助療法として、また、再発予防として重要である。熱中症に陥らない範囲、また、コリン性蕁麻疹によるピリピリ感が苦痛にならない程度に、半身浴や徐々に運動負荷をかけるなど工夫する。5 主たる診療科皮膚科および神経内科。ただし、発汗異常を取り扱っている医療機関であることが必要。※ 医療機関によって診療科目の区分は異なることがあります。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)診療、研究に関する情報難病情報センター 特発性後天性全身性無汗症(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)1)中里良彦ほか. 特発性後天性全身性無汗症診療ガイドライン. 2013;50:67-74.2)柳下武士. 日本皮膚科学会雑誌. 2021;131:35-41.3)小野慧美ほか. 発汗学. 2016;23:23-25.4)中里良彦. 自律神経. 2018;55:86-90.5)Sawada Y, et al. J Invest Dermatol. 2010;130:2683-2686.6)中里良彦ほか. 特発性後天性全身性無汗症診療ガイドライン改訂版. 自律神経. 2015;52:352-359.7)Suma A, et al. Acta Derm Venereol. 2014;94:723-724.公開履歴初回2021年9月22日

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ミトコンドリアを介する新規作用機序の2型糖尿病治療薬「ツイミーグ錠500mg」【下平博士のDIノート】第82回

ミトコンドリアを介する新規作用機序の2型糖尿病治療薬「ツイミーグ錠500mg」今回は、2型糖尿病治療薬「イメグリミン塩酸塩(商品名:ツイミーグ錠500mg、製造販売元:大日本住友製薬)」を紹介します。本剤は、ミトコンドリアに作用する新しい機序の糖尿病治療薬であり、インスリン分泌低下型、インスリン抵抗性亢進型のいずれであっても血糖降下作用が期待できます。<効能・効果>本剤は、2型糖尿病の適応で、2021年6月23日に承認され、同年9月16日に発売されました。本剤の適用は、あらかじめ糖尿病治療の基本である食事療法、運動療法を十分に行った上で効果が不十分な場合に限り考慮します。<用法・用量>通常、成人にはイメグリミン塩酸塩として1回1,000mgを1日2回朝、夕に経口投与します。なお、本剤とビグアナイド系薬剤は作用機序の一部が共通している可能性があります。臨床試験でも両剤を併用した場合は、ほかの糖尿病用薬との併用療法と比較して消化器症状が多く認められたことから、併用薬を選択する際は注意が必要です。<安全性>臨床試験において、本剤が投与された安全性評価対象1,103例中、副作用発現数は168例(15.2%)でした。主な副作用は、低血糖6.7%(74例)、悪心2.1%(23例)、下痢1.9%(21例)、便秘1.3%(14例)などでした。なお、低血糖は重大な副作用としても報告されています。<患者さんへの指導例>1.この薬は、血糖値に応じてインスリンの分泌を促す作用と、インスリンが働きにくい状態を改善する作用によって血糖値を改善します。2.薬の服用により、低血糖症状を起こすことがあります。脱力感、高度の空腹感、発汗、震えなどの症状が認められた場合には、飴やジュースなどで糖分を摂取してください。α-グルコシダーゼ阻害薬を併用している場合はブドウ糖を摂取してください。<Shimo's eyes>本剤は、既存の経口糖尿病治療薬とは異なる構造を有しており、ミトコンドリアへの作用を介してグルコース濃度依存的なインスリン分泌を促す膵作用と、肝臓・骨格筋での糖代謝を改善する膵外作用(肝臓での糖新生抑制、骨格筋などでの糖取り込み能改善)の2つによって血糖降下作用を示します。インスリン分泌低下型、インスリン抵抗性亢進型のいずれの病態であっても効果が期待できるという特徴があります。製品名は、2つを意味する“twin”と一般名の“imeglimin”に由来しています。2型糖尿病患者を対象とした長期投与試験において、単独療法または併用療法でHbA1c改善効果を示し、52週にわたってその効果が維持されました。主な副作用には、悪心、下痢、便秘などがあります。重大な副作用として低血糖(6.7%)が報告されていますが、本剤の作用によるインスリン分泌はグルコース濃度依存的で、低血糖時にはインスリンを分泌させないことが報告されており、単剤使用での重症低血糖のリスクは低いと考えられます。腎機能障害のある患者では、腎臓からの排泄が遅延し、本剤の血中濃度が上昇する恐れがあることから、eGFRが45mL/min/1.73m2未満(透析を含む)の患者への投与は推奨されていません。注意すべき点は、メトホルミンとの併用により消化器症状が増大する恐れがあることです。また、インスリン製剤やSU薬、速効型インスリン分泌促進薬と併用すると低血糖のリスクが上がるため、これらの薬剤を併用する際には減量の検討が必要です。参考1)PMDA 添付文書 ツイミーグ錠500mg

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降圧薬だけの4種配合剤、単剤より有益か/Lancet

 降圧薬4種を4分の1用量ずつ1剤に配合した「quadpill」による降圧療法を早期に開始する戦略は、一般的な標準用量の単剤降圧療法による治療戦略と比べて、より大きな降圧の達成・維持をもたらすことが示された。オーストラリア・シドニー大学のClara K. Chow氏らが行った第III相多施設共同の二重盲検並行群無作為化試験「QUARTET試験」の結果で、著者は「本試験は、quadpillベースの治療戦略の有効性、忍容性および簡便性を実証するものとなった」と述べている。Lancet誌オンライン版2021年8月29日号掲載の報告。quadpill(4剤配合)開始vs.単剤開始の降圧効果を評価 QUARTET試験は、超低用量の4剤を配合した単一錠剤による高血圧治療の開始戦略が、単剤療法から始める戦略よりも有効であるとする仮説検証を目的とし、未治療または単剤治療を受けている高血圧症を有するオーストラリア成人(18歳以上)を対象に行われた。 被験者は、quadpill(イルベサルタン37.5mg、アムロジピン1.25mg、インダパミド0.625mg、ビソプロロール2.5mgを配合)開始群、または判別不明の錠剤を用いた単剤療法(イルベサルタン150mg)開始群のいずれかに無作為に割り付けられた。目標血圧値に達しない場合は両群とも、アムロジピン5mgで始める追加投与が許容された。 被験者の割り付けはオンライン中央無作為化サービスを使用して行われ、サイトごとに1対1の割合で層別化。割り付けは、治験薬の製造者と1人のマスクされていない統計者を除き、全被験者および試験チームメンバー(研究者、アウトカム評価者を含む)にマスクされた。 主要アウトカムは、12週時点での無人診察室収縮期血圧の差とした。副次アウトカムは、血圧コントロール(標準診察室血圧値<140/90mmHg)、安全性、忍容性などであった。また、無作為に12ヵ月継続群に割り付けたサブグループについて長期有効性を評価した。解析は、intention to treatにて行われた。12週時の収縮期血圧の差は6.9mmHg、quadpill群で有意に低下 2017年6月8日~2020年8月31日に743例が適格性について評価を受け、不適格または辞退した152例を除く591例を対象とした。300例がquadpill開始治療(介入)群に、291例が標準用量単剤療法の治療(対照)群に無作為に割り付けられた。 被験者591例の平均年齢は59歳(SD 12)。356例(60%)が男性、235例(40%)が女性で、483例(82%)が白人、70例(12%)がアジア人、38例(6%)がその他の人種・民族と報告された。ベースラインの平均無人診察室血圧は141(SD 13)/85(SD 10)mmHgであった。 12週までに降圧薬の追加投与を受けたのは、介入群300例中44例(15%)、対照群291例中115例(40%)であった。収縮期血圧の群間差は6.9mmHg(95%信頼区間[CI]:4.9~8.9、p<0.0001)であり介入群で有意に低く、血圧コントロール率は介入群(76%)が対照群(58%)よりも有意に高かった(相対リスク[RR]:1.30、95%CI:1.15~1.47、p<0.0001)。 12週時点で、有害事象関連の治療中止率に差はなかった(介入群4.0% vs.対照群2.4%、p=0.27)。 評価を継続したサブグループ417例において、介入群よりも対照群でアップタイトレーションに達した割合が有意に高かった(p<0.0001)。52週時点で、無人診察室収縮期血圧値の群間差は7.7mmHg(95%CI:5.2~10.3)であり介入群で継続して低く、血圧コントロール率は介入群(81%)が対照群(62%)よりも高かった(RR:1.32、95%CI:1.16~1.50)。 無作為化を受けた全被験者における12週までの重篤有害事象の発生は、介入群7例(3%)、対照群3例(1%)であった。

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新治療が心臓にやさしいとは限らない~Onco-Cardiologyの一路平安~【見落とさない!がんの心毒性】第6回

新しい抗がん剤が続々と臨床に登場しています。厚生労働大臣によって承認された新医薬品のうち、抗悪性腫瘍用薬の数はこの3年で36もありました1)。効能追加は85もあり、新しい治療薬が増え、それらの適応も拡大しています。しかし、そのほとんどの薬剤は循環器疾患に注意して使う必要があり、そのうえで拠り所になるのが添付文書です。医薬品医療機器総合機構(PMDA)のホームページの医療用医薬品情報検索画面2)から誰でもダウンロードできます。警告、禁忌、使用上の注意…と読み進めます。さらに、作用機序や警告、禁忌の理由を詳しく知りたいときは、インタビューフォーム(IF)を開きます。循環器医ががん診療に参加する際には、患者背景や治療薬のことをサッと頭に入れる必要がありますが、そんな時に便利です。前置きが長くなりましたが、今回は時間のない皆さまのために、添付文書の『警告』『禁忌』『重要な基本的注意』に循環器疾患を含んでいる抗がん剤をピックアップしてみました。『警告』に書かれていること(表1)の薬剤では重篤例や死亡例が報告されていることから、投与前に既往や危険因子の有無を確認のうえ、投与の可否を慎重に判断することを警告しています。infusion reaction、静脈血栓症、心不全、心筋梗塞や脳梗塞などの動脈血栓症、QT延長、高血圧性クリーゼなどが記載されています。副作用に備え観察し、副作用が起きたら適切な処置をし、重篤な場合は投与を中止するように警告しています。(表1)画像を拡大するこうした副作用でがん治療が中止になれば予後に影響するので、予防に努めます。『警告』で最も多かったのはinfusion reactionですが、主にモノクローナル抗体薬の投与中や投与後24時間以内に発症します。時に心筋梗塞様の心電図や血行動態を呈することもあり、循環器医へ鑑別診断を求めることもあります。これらの中には用法上、予防策が講じられているものもあり、推奨投与速度を遵守し、抗ヒスタミン薬やアセトアミノフェン、副腎皮質ステロイドをあらかじめ投与して予防します。過敏症とは似て非なる病態であり、発症しても『禁忌』にはならず、適切な処置により症状が治まったら、点滴速度を遅くするなどして再開します。学会によってはガイドラインで副作用の予防を推奨してるところもあります。日本血液学会の場合、サリドマイド、ポマリドミド、レナリドミドを含む免疫調節薬(iMiDs:immunomodulatory drugs)による治療では、深部静脈血栓症の予防のために低用量アスピリンの内服を推奨しています3)。欧州臨床腫瘍学会(ESMO)では、アントラサイクリンやトラスツズマブを含む治療では、心不全の進行予防に心保護薬(ACE阻害薬、ARB、および/またはβ遮断薬)を推奨しています。スニチニブ、ベバシズマブ、ラムシルマブなどの抗VEGF薬を含む治療では、血圧の管理を推奨しています4)。『禁忌』に書かれていること『禁忌』には、「本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者」が必ず記されています。禁忌に「心機能異常又はその既往歴のある患者」が記されているのは、アントラサイクリン系の抗がん剤です。QT延長や、血栓症が禁忌になるものもあります。(表2)画像を拡大するここで少し注意したいのは、それぞれの副作用の定義です。たとえば「心機能異常」とは何か?ということです。しばしば、がん医療の現場では、左室駆出率(LVEF)や脳性ナトリウム利尿ペプチド(BNP)値だけが、一人歩きをはじめ、患者の実態とかけ離れた判断が行われることがあります。循環器医ががん患者の心機能を検討する場合、LVEFやBNPだけではなく、症状や心電図・心エコー所見や運動耐容能などを多角的に捉えています5)。心機能は単独で評価できる指標はないので、LVEFやBNP値だけで判断せず、心機能を厳密かつ多面的に測定して総合的に評価することをお勧めします。添付文書によく記載されている「心機能異常」。漠然としていますが、これの意味するところを「心不全入院や死亡のリスクが高い状態」と、私は理解しています。そこで、「心機能異常」診断の乱発を減らし、患者ががん治療から不必要に疎外されないよう努めます。その一方で、心保護薬でがん治療による心不全のリスクを最小限に抑えるチャンスを逃さないようにもします。上述の定義のことは「血栓症」にも当てはまります。血栓症では下腿静脈の小血栓と肺動脈本管の血栓を一様には扱いません。また、下肢エコーで見つかる米粒ほどの小血栓をもって血栓症とは診断しません。そこそこの大きさの血栓がDOACなどで制御されていれば、血栓症と言えるのかもしれませんが、それでも抗がん剤を継続することもあります。QT延長は次項で触れます。『重要な基本的注意』に書かれていることー意外に多いQT延長『重要な基本的注意』で多かったのは、心機能低下・心不全でした。アントラサイクリン系薬剤、チロシンキナーゼ阻害薬、抗HER2薬など25の抗がん剤で記載がありました。これらの対応策については既に本連載企画の第1~4回で取り上げられていますので割愛します。(表3)その1画像を拡大する(表3)その2画像を拡大する意外に多かったのは、QT延長です。21種類もありました。QT間隔(QTc)は男性で450ms、女性で460ms以上をQT延長と診断します。添付文書では「投与開始前及び投与中は定期的に心電図検査及び電解質検査 (カリウム、マグネシウム、カルシウム等)を行い、 患者の状態を十分に観察する」などと明記され、血清の電解質の補正が求められます。とくに分子標的薬で治療中の患者の心電図でたびたび遭遇します。それでも重度の延長(QTc>500ms)は稀ですし、torsade de pointes(TdP)や心臓突然死はもっと稀です。高頻度にQT延長が認められる薬剤でも、新薬を待ち望むがん患者は多いため、臨床試験で有効性が確認されれば、QT延長による心臓突然死の回避策が講じられた上で承認されています。測定法はQTcF(Fridericia法)だったりQTcB(Bazett法)だったり、薬剤によって異なりますが、FMS様チロシンキナーゼ3-遺伝子内縦列重複(FLT3-ITD)変異陽性の急性骨髄性白血病治療薬のキザルチニブのように、QTcFで480msを超えると減量、500msを超えると中止、450ms以下に正常化すると再開など、QT時間次第で用量・用法が変わる薬剤があるので、測定する側の責任も重大です。詳細は添付文書で確認してみてください。抗がん剤による心臓突然死のリスクを予測するスコアは残念ながら存在しません。添付文書に指示は無くても、循環器医はQTが延長した心電図ではT波の面構えも見ます。QT dispersion(12誘導心電図での最大QT間隔と最小QT間隔の差)は心室筋の再分極時間の不均一性を、T peak-end時間(T波頂点から終末点までの時間)は、その誘導が反映する心室筋の貫壁性(心内膜から心外膜)の再分極時間のバラツキ(TDR:transmural dispersion of repolarization)を反映しています。電気的不均一性がTdP/心室細動の発生源になるので注意しています。詳細については、本編の参考文献6)~8)をぜひ読んでみてください。3つ目に多かったのはinfusion reactionで、該当する抗がん剤は17もありました。抗体薬の中には用法及び用量の項でinfusion reaction対策を明記しているものの、『重要な基本注的意』に記載がないものがあるので、実際にはもっと多くの抗がん剤でinfusion reactionに注意喚起がなされているのではないでしょうか。血圧上昇/高血圧もかなりありますが、適正使用ガイドの中に対処法が示されているので、各薬剤のものを参考にしてみてください。そのほかの心臓病についても同様です。なお、適正使用ガイドとは、医薬品リスク管理計画(RPM:Risk Management Plan)に基づいて専門医の監修のもとに製薬会社が作成している資料のことです。抗がん剤だけではない、注目の新薬にもある循環器疾患についての『禁忌』今年1月、経口グレリン様作用薬アナモレリン(商品名:エドルミズ)が初の「がん悪液質」治療薬としてわが国で承認されました。がん悪液質は「通常の栄養サポートでは完全に回復することができず、進行性の機能障害に至る、骨格筋量の持続的な減少(脂肪量減少の有無を問わない)を特徴とする多因子性の症候群」と定義されています。その本質はタンパク質の異常な異化亢進であり、“病的なるい痩”が、がん患者のQOLやがん薬物療法への忍容性を低下させ、予後を悪化させます。アナモレリンは内服によりグレリン様作用を発揮し、がん悪液質患者の食欲を亢進させ、消耗に対抗します。切除不能な進行・再発の非小細胞肺がん、胃がん、膵がん、大腸がんのがん悪液質患者のうち、いくつかの基準をクリアすると使用できるので、対象となる患者が多いのが特徴です。一方、添付文書やインタビューフォームを見ると、『禁忌』には以下のように心不全・虚血・不整脈に関する注意事項が明記されています。「アナモレリンはナトリウムチャネル阻害作用を有しており、うっ血性心不全、心筋梗塞、狭心症又は高度の刺激伝導系障害(完全房室ブロック等)のある患者では、重篤な副作用を起こすおそれがあることから、これらの患者を禁忌に設定した」9)。また、『重要な基本的注意』には、「心電図異常(顕著なPR間隔又はQRS幅の延長、QT間隔の延長等)があらわれることがあるので注意すること」とあります。ピルシカイニド投与時のように心電図に注意が必要です。実際、当院では「アナモレリン投与中」と書かれた心電図の依頼が最近増えています。薬だけではない!?注目の新治療にもある循環器疾患につながる『警告』免疫の知識が今日ほど国民に浸透した時代はありません。私たちの体は、病原体やがん細胞など、本来、体の中にあるべきでないものを見つけると、攻撃して排除する免疫によって守られていることを日常から学んでいます。昨今のパンデミックにおいては、遺伝子工学の技術を用いてワクチンを作り、免疫力で災禍に対抗しています。がん医療でも遺伝子工学の技術を用いて創薬された抗体薬を使って、目覚ましい効果を挙げる一方で、アナフィラキシーやinfusion reaction、サイトカイン放出症候群(CRS:cytokine release syndrome)などの副作用への対応に迫られています。免疫チェックポイント阻害薬の適応拡大に伴い、自己免疫性心筋炎など重篤な副作用も報告されており、循環器医も対応に駆り出されることが増えてきました(第5回参照)。チサゲンレクルユーセル(商品名:キムリア)は、採取した患者さんのT細胞を遺伝子操作によって、がん細胞を攻撃する腫瘍特異的T細胞(CAR-T細胞)に改変して再投与する「ヒト体細胞加工製品」です。PMDAホームページからの検索では、医療用「医薬品」とは別に設けてある再生医療等「製品」のバナーから入ると見つかります。「再発又は難治性のCD19陽性のB細胞性急性リンパ芽球性白血病」と「再発又は難治性のびまん性大細胞型B細胞リンパ腫」の一部に効果があります。ノバルティスファーマ株式会社のホームページで分かりやすく説明されています10)。この添付文書で警告しているのはCRSです。高頻度に現れ、頻脈、心房細動、心不全が発症することがあります。緊急時に備えて管理アルゴリズムがあらかじめ決められており、トシリズマブ(ヒト化抗ヒトIL-6レセプターモノクローナル抗体、商品名:アクテムラ)を用意しておきます。AlviらはCAR-T細胞治療を受けた137例において、81名(59%)にCRSを認め、そのうち54例(39%)がグレード2以上で、56例(41%)にトシリズマブが投与されたと報告しています11)(図)。(図)画像を拡大するトロポニンの上昇は、測定患者53例中29例(54%)で発生し、LVEFの低下は29例中8例(28%)で発生しました。いずれもグレード2以上の患者でのみ発生しました。17例(12%)に心血管イベントが発生し、すべてがグレード2以上の患者で発生しました。その内訳は、心血管死が6例、非代償性心不全が6例、および不整脈が5例でした。CRSの発症から、トシリズマブ投与までの時間が短いほど、心血管イベントの発生率が低く抑えられました。これらの結果は、炎症が心血管イベントのトリガーになることを改めて世に知らしめました。おわりに本来であれば添付文書の『重大な副作用』なども参考にする必要がありますが、紙面の都合で割愛しました。腫瘍循環器診療ハンドブックにコンパクトにまとめてありますので、そちらをご覧ください12)13)。さまざまな新薬が登場しているがん医療の現場ですが、心電図は最も手軽に行える検査であるため、腫瘍科と循環器科の出会いの場になっています。QT延長等の心電図異常に遭遇した時、循環器医はさまざまな医療情報から適切な判断を試みます。しかし、新薬の使用経験は浅く、根拠となるのは臨床試験の数百人のデータだけです。そこへ来て私は自分の薄っぺらな知識と経験で患者さんを守れるのか不安になります。患者さんの一路平安を祈る時、腫瘍科医と循環器医の思いは一つになります。1)独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)新医薬品の承認品目一覧2)PMDA医療用医薬品 添付文書等情報検索3)日本血液学会編.造血器腫瘍診療ガイドライン2018年版. 金原出版.2018.p.366.4)Curigliano G, et al. Ann Oncol. 2020;31:171-190. 5)日本循環器学会編. 急性・慢性心不全診療ガイドライン2017年改訂版(班長:筒井裕之).6)Porta-Sanchez A, et al. J Am Heart Assoc. 2017;6:e007724.7)日本循環器学会編. 遺伝性不整脈の診療に関するガイドライン2017 年改訂版(班長:青沼和隆)8)呼吸と循環. 医学書院. 2016;64.(庄司 正昭. がん診療における不整脈-心房細動、QT時間延長を中心に)9)医薬品インタビューフォーム:エドルミズ®錠50mg(2021年4月 第2版)10)ノバルティスファーマ:CAR-T細胞療法11)Alvi RM, et al. J Am Coll Cardiol. 2019;74:3099-3108. 12)腫瘍循環器診療ハンドブック. メジカルビュー社. 2020.p.207-210.(森本 竜太. がん治療薬による心血管合併症一覧)13)腫瘍循環器診療ハンドブック.メジカルビュー社. 2020.p.18-20.(岩佐 健史. 心機能障害/心不全 その他[アルキル化薬、微小管阻害薬、代謝拮抗薬など])講師紹介

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パーツを組み合わせて完成!オペレコ時短テクニック2【誰も教えてくれない手術記録 】第6回

第6回 パーツを組み合わせて完成!オペレコ時短テクニック2こんにちは! 手術を描く外科医おぺなかです。今回も前回に続き、オペレコ作成の時短テクニックを紹介したいと思います。頻用するイラストを「イラストパーツ」として活用!オペレコを描き続ける中で、気付くと同じような術野や道具を何度も描いていることがありませんか? 症例ごとに術野の差が少ない手術や、頻用する手術器具のイラストがその典型でしょうか。デジタルイラストを活用している方は、それらの頻繁に描くイラストを「イラストパーツ」としてまとめておくことをオススメします。イラストパーツを組み合わせてオペレコを作成すれば、大幅な時短ができますよ!さて、実際にイラストパーツを駆使してオペレコを描いてみましょう。今回は「腹腔鏡下胆嚢摘出術」を題材に、以下のパーツを使います。いずれも、以前に別のオペレコで作成したものをパーツ用に整えたものです。例:「腹腔鏡下胆嚢摘出術」に使用するイラストパーツ「腹腔鏡下胆嚢摘出術」は、手術によって胆嚢炎の程度や解剖構造などに多少の差がありますが、手順や使用する道具にあまり変化はないので、イラストパーツを活用できる一例です。ベースとなるイラストパーツをそろえたら、腹部体表のイラストを軸に位置を調整して、全体の構成を決めていきます。続いて、術野のイラストパーツをメインに、今回の手術に合わせて細かく修正・加筆していきます。腹部体表と術野のイラストだけでも手術内容は大まかに伝わりますが、より臨場感のある洗練されたイラストにするために、僕は手術で用いた道具も書き添えています。立体感を意識して、加筆・削除修正を加えるイラストパーツを並べただけでは臓器の立体感を表現できないので、ここからさらに修正していきます。右図のように、実際の手術に合わせた前後関係を整理して、細かい部分を書き加えながら、手術器具や臓器の裏側に隠れる部分を消していきます。器具のレイヤーの透明度を上げると、消すべき場所がわかりやすくなりますよ。例:臓器と手術器具の前後関係を整理・修正イラストパーツを組み合わせて、より短時間で臨場感のあるオペレコを作成することができました。このオペレコも30分足らずで完成しています。完成図:パーツを活用した「腹腔鏡下胆嚢摘出術」なお、この方法の注意点が1つあります。オペレコをイチから繰り返し描くことも、重要な手術のトレーニングの1つです。とくにイラストについては、手術に慣れるまではパーツ化せずに繰り返し描くことをオススメします。繰り返し描いて、「もう何も見なくても正しく描ける!」くらいの自信がついたなら、今回お示しした時短術のように、すべての術野をパーツ化して大幅に時短してしまってもいいと思いますよ。胆嚢摘出術だけではなく、ほかの定型化された手術についても同様の方法で作成できますね。デジタルイラストのテクニックを駆使して、スマートなオペレコを効率的に描けるようになりましょう!また次回以降もオペレコに関する話題をお届けします。お楽しみに!

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全身性ALアミロイドーシスにダラキューロ承認/ヤンセンファーマ

 2021年8月、ヤンセンファーマは抗CD38抗体「ダラキューロ配合皮下注(一般名:ダラツムマブ(遺伝子組換え)・ボルヒアルロニダーゼ アルファ(遺伝子組換え)、以下ダラキューロ」について、全身性ALアミロイドーシス治療における承認を取得したことを発表した。今回の承認は、未治療患者を対象に、ボルテゾミブ+シクロホスファミド+デキサメタゾン(CBD)療法に対するダラキューロの上乗せ効果を評価した第III相試験ANDROMEDAの結果に基づいたもの。同社は9月2日にメディアセミナーを実施し、日本赤十字社医療センター骨髄腫アミロイドーシスセンターの鈴木 憲史氏と石田 禎夫氏が、病態の特徴や新薬による治療の展望について講演を行った。 最初に鈴木氏が全身性ALアミロイドーシスの疾患の病態について講演を行った。ALアミロイドーシスは血中にアミロイドと呼ばれる異常タンパク質が発現し、全身のさまざまな臓器に沈着して機能障害を起こす病気の総称で、死因は心臓死が多くを占める。日本では年間530人ほど、人口100万人あたり4.2人が罹患し、国内の総患者数は3,000人程度とされる指定難病である。 鈴木氏は「進行すると予後は悪く、透析が必要となる患者も多い。早期診断、早期治療が非常に重要だが、多くの医師は一生に一人の患者を診るかどうかで見逃されがち。確定診断までに診察した医師の数が5名以上の患者が30%いるなど、診断が遅れて悪化するケースが多い」と説明した。 さらに新規罹患者数について「指定難病の登録数は530人ほどだが、診断されずにいる人や診断されないまま亡くなる人もいると思われ、実際は年間800人ほどではないか」とした。「初診の主訴はむくみや舌肥大であることが多く、整形外科、循環器内科、消化器内科、腎臓内科、そして一般内科医にこの疾患を知ってもらい、早期発見につなげたい」とし、下記のような原因不明の症状がある患者には、血清フリーライトチェーンの検査を行って欲しい、と述べた。【診断時の主な臨床症状】心臓/うっ血性心不全、不整脈腎臓/尿蛋白、ネフローゼ症候群肝臓/肝肥大、肝不全消化管/難治性下痢、下血消化管穿孔イレウス神経/低血圧、神経障害その他/舌肥大、眼周囲の内出血【診断確定には】・骨髄で単クローン形式細胞の証明、腹壁脂肪組織と骨髄生検でのアミロイド検出、血清フリーライトチェーン(FLC)のκ/λ比で確定 続いて石田氏が、「従来の全身性ALアミロイドーシスの治療はメルファラン+デキサメタゾンまたは自家末梢血幹細胞移植で、移植不適の患者にできることは限られていた。ANDROMEDA試験の結果では、心アミロイドーシスや高齢者など予後不良が予測される群でも高い有効性が報告されており、さらに自家末梢血幹細胞移植における完全奏効(CR)+部分奏効(VGPR)率は70%前後なのに対し、ダラキューロ上乗せ群は79%と同等以上で、今後は日本を含めた世界のALアミロイドーシスの移植不適患者に対する標準療法はCBD+ダラキューロになり、移植適応患者にも導入療法として検討されるだろう」とまとめた。

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それ、本当に「あなたにしかできない仕事」ですか?【今日から始める「医師の働き方改革」】第3回

第3回 それ、本当に「あなたにしかできない仕事」ですか?医療の現場はチームワークで成り立っています。医師、看護師、理学療法士、薬剤師、メディカルクラークなど、さまざまな専門職の人が働いています。資格がないとできない業務もありますが、そうでないものもあります。こうした「チームで動く現場」では、いかに美しい「パス回し」ができるかが重要です。さまざまな人が自分の業務を受け取り、次の人に回し、お互いの専門領域を尊重しながら業務を行います。ただ、実際は情報連携がうまくいかなかったり、相手が期待していた動きをしてくれなかったりで、パス回しがうまくつながらないことも…。その原因の多くが「誰がやってもよい仕事」の認識が異なっていたり、「情報連携の手法」が噛み合っていなかったりすることです。今回は「それは誰であればできる仕事か」について考えてみます。前回は、自分の業務時間の配分を可視化しました。その時に使ったエクセルや付箋を基にします。やっていない方は前回の内容を参考にトライしてください。各業務が書かれた隣に、「それは誰であればできる仕事か」を追記します。エクセルであれば新しい列を加え、付箋であれば隣に新しい付箋を追加します(表1)。表1他の専門職や専門職以外のスタッフが行える業務を、医師など最も多忙な人が引き受けてはいないでしょうか。そうした状況があれば、それはなぜなのかを考えます。その人にしかできない事情があるのか、伝統的にそうなっているのか…。もちろん医療行為などは該当する資格を持つ専門職が担当しますが、診療現場ではカルテを書く、準備する、事務作業など、「訓練すれば誰でもできる業務」が多く発生します。これらの、一見すれば「誰でもできる業務」は仕事の流れによってできる人が担ったり、明確なルール決めがなく、人によってやり方が異なっていたりして業務効率を下げています。こうした業務に対する判断基準やルールを設け、「“真の意味で”、誰でもできるようにする」ことが重要です。業務過多になっている人の業務を、他の人が担うこと。これが「タスクシフティング」です。業務リストができたら、他の人に渡せる業務があるかを探していきましょう。タスクシフティングを行うべきかどうかは、次の3つの視点で判断します。(1)他の人でもできる業務か(2)他の人が担うことでチーム全体の業務時間を削減できるか(3)短期的だけでなく、中長期的なメリットがあるか(1)ここで言う「他の人」とは同じ専門職の他のメンバーも含みます。(2)該当者の業務だけが減ればよいわけではなく、長期的にチーム全体の労働時間の削減に寄与するかを見る必要があります。(3)働き方改革はその場しのぎの時間削減策ではなく、少し先のチームのあり方も考える必要があります。単純に「仕事ができる人」や「業務に慣れたベテラン」が動くだけでは、若手の育成が進まず、ますます業務が属人化します。教育という観点を入れ、最初は少し時間がかかっても若手に習熟してもらい、誰もが同じ業務をできるようにすることで、中長期的なチームの業務時間を削減できます。医師の働き方改革は1、2年やって終わりではなく、2035年に向けて業務全体を効率化していくことが求められます。「まだ10年以上先だから」と考えるのではなく、今のうちに後輩を育成する仕組みを整え、全体の底上げを図る必要があります。チームメンバーと一緒にタスクシフティングを検討する場合は、「同じ名前の業務なのに人によってかかる時間が大幅に異なるもの」に注目してください。そこに効率化のヒントが隠れている場合が多いのです。長崎大学病院の場合、「当直」として行う業務内容が医師ごとに大幅に異なっていました。そこで「当直」の業務とは具体的に何なのか、という観点で話し合いを行いました。当直の医師が担う業務を具体的にしていく中で、各医師の価値観が見え、どこまでが「当直」の業務なのか、という共通基準をつくることができました。今回紹介した3つのポイントを確認し、「その業務は誰が行うとよいのか」を考えましょう。具体的にどのように業務をシフトするとよいかについては、再度長崎大学病院の例を踏まえ、別の回でご紹介します。

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文科省も薬学教育の質向上のための検討開始【早耳うさこの薬局がざわつくニュース】第75回

薬剤師養成のための薬学教育が6年制になってから約15年がたちました。すでに一般の方にも、薬剤師になるためには医師と同様に6年間の教育が必要だと浸透しているのではないでしょうか。6年制では実学としての医療薬学を十分に学ぶために、実習などが充実しました。その新制度下における薬学系大学の教育の質を検討するために、文部科学省において「薬学系人材養成の在り方に関する検討会」が発足し、第1回目の会合が2021年8月27日に実施されました。検討期間は2021年8月~2023年3月末までの約1年半とされていて、2022年6月には意見の取りまとめ案を決定(コアカリキュラムについては2022年12月まで議論)するとされています。あれ? 最近似たような検討会を見たような…と思った方もいるかもしれません。このコラムでも少し前に紹介しましたが、厚生労働省で「薬剤師の養成及び資質向上等に関する検討会」という会合も実施されています。そちらは2020年7月に始まり、2021年6月には第10回が開催されて、とりまとめも公表されています。文部科学省の検討会は大学の薬学教育のあり方を軸としていて、厚生労働省の検討会は医療者としての薬剤師のあり方を軸として検討しているという違いがありますが、双方とも薬剤師の資質向上を目的としています。薬学教育と薬剤師業務は切っても切れない関係であるため、結果として両方の検討会から教育にも実務にも提言がなされるのだと思われます。さて、文部科学省の「薬学系人材養成の在り方に関する検討会」に話を戻しますが、本検討会では薬学教育の質に関する課題として、毎年入学定員を充足していない大学や退学率や留年率が著しく高い大学、国家試験の合格率が著しく低い大学、国家試験対策に偏った授業を行う大学が存在することが挙げられています。将来的な薬剤師の供給過多や18歳人口の減少に伴う薬学教育の質の保証、社会のニーズに応じた6年制過程と4年制過程の役割、それに伴ったコアカリキュラムの改訂といったことがメインテーマとなるようです。皆さんも薬剤師として仕事をしていると、これらのことは少なからず気になっているのではないでしょうか。私は製薬会社で仕事をしていたこともあるのですが、4年制過程は製薬会社での開発や品質業務などを行う人材の育成を目的としている一方、製薬会社の総括製造販売責任者は原則薬剤師と定められているため、4年制過程の卒業者では総括製造販売責任者になれないといった“矛盾”も感じています。また、本検討会では薬学部教育の質保証専門小委員会というものが設置され、薬科大学や薬学部に対する書面調査やヒアリング調査、実地調査を行い、課題を整理することが予定されています。薬学教育に関わる方に話を聞くと、薬学部の数が増え、基本的な学力が一定の水準に達していない学生も少なからず存在し、国家試験合格に導くのが精一杯だという声を聞くこともあります。ぜひ、表向きのあるべき論だけではなく、薬学教育の現場の課題や意見も取り入れた議論を展開してもらいたいと思います。これらの調査や議論がなされ、2022年末には新たな薬学教育が提案される予定です。今後の薬学教育にどのような変化があるのか楽しみです。

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医師の「寿命」は10年!?仕事も資産形成も前倒しで考えよう【医師のためのお金の話】第48回

こんにちは。自由気ままな整形外科医です。私が医学部を卒業してすでに20年以上が経過しました。大学医局の同期は13名いますが、そのうち今でも手術をしているのは私を含め3名だけです。他の人はいつの間にか開業したり、慢性期病院に就職したりしています。近隣の医療機関を眺めてみると、大規模な公的病院ほど医師の構成年齢は若い傾向にあります。医療の中核を担っているのはすでに自分たちの年代ではないのかもしれない、と一抹の寂しさを覚えます…。職業人としての「医師の寿命」は何年か職業人としての「医師の寿命」を考えてみましょう。もちろん老成して慢性疾患で腕を振るっている方もいますが、ここでは急性期病院や公的基幹病院で最先端の医療に従事する医師を対象とします。定年まで全うする教授を除けば、准教授や講師でさえも40代が多いです。学内講師や助教、そして公的基幹病院のナンバー2以下となると30代であることも珍しくありません。医療の中核を担っている医師は意外なほど若いのです。医師になりたての方にとって、卒後10年となる30代半ばは遠い将来に感じることでしょう。しかし、私の経験ではあっという間でした。そして卒後20年に差し掛かると、臨床の第一線から退く医師が続出します。つまり、独り立ちして腕を振るう、医師として最も充実して働ける期間は卒後10~20年の間、たった10年しかないのです。第一線で戦える期間は短い医師だけがこれほど職業人としての寿命が短いのでしょうか? 一般企業に目を向けると実は状況はさほど変わりないことがわかります。東証一部上場企業では55~60歳を役職定年とするところが多いですが、実質的には40代で部長以上に昇格しないと関連会社への出向を命じられるケースが多いようです。医師の場合は開業という選択肢があるので、大学医局や公的基幹病院といった組織にしがみつく必要性は薄いでしょう。しかし、職業人としての旬が短いことは一般企業のサラリーマンと変わりません。変化が大きい世の中では、既存の知識はどんどん陳腐化します。最新の医療技術を習熟しながら第一線で戦える期間はさほど長くない、ということは若い頃から意識するべきでしょう。資産形成でも旬は短い職業人としての旬の期間が短いのと同様に、資産形成に適した期間も意外なほど短いのが現実です。結婚して子供を育てることを前提とすると、子供の中学入試が1つのターニングポイントになります。中学入試対策は小学校の3~4年生から開始することが多く、それ以後は教育費がどんどん膨らみます。このため、医師が資産形成に注力できる期間は第1子が小学校低学年の間まで、ということになります。30歳で生まれた第1子が小学4年生になる頃には、もうあなたは40歳です。このため40代半ばまでに、ある程度の資産形成をしておくことが望ましいのです。資産形成に適した時期は意外なほど短いことに驚く人が多いかもしれません。このように医師の職業人としての旬と資産形成ができる時期は、おおむね30代半ばから40代半ばの10年間です。両方とも想像以上に旬が短いことを、若い頃から認識しておきましょう。

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053)外来でお怒りの患者さんにどう対応するか【Dr.デルぽんの診察室観察日記】

第53回 外来でお怒りの患者さんにどう対応するかゆるい皮膚科勤務医デルぽんです☆先日、皮膚科疾患の治療で、内服加療を要する患者さんが来られました。しばらく小康状態を保てていた皮疹が悪化傾向にあり、他院を受診したのちに、当院を受診。こちらとしては、現在の外用加療に加えて、内服薬でも皮疹を抑えていきたい意向だったのですが、診察室に入るなり、かなりお怒りのご様子…。話を伺うと、どうやら待合室でほかの患者さんともめてしまったようです。外来では珍しい(?)患者同士のトラブルです。この患者さんは、現疾患ではもともと他院を受診されていましたが、以前当院の皮膚科にも受診歴があり、カルテには《要注意》の星マークが付いていました。つまり、過去にも何かしらのトラブルがあったことを意味するのですが、詳しいことはわかりません。確かに、少しばかり癖が強めなお方だったので、治療強化はひとまず見送り。ご希望どおり外用薬のみでの経過観察とし、その後1回、2回と段階を踏んで、私なりに誠心誠意、寄り添う姿勢を示していきました。結局、外用薬の治療では皮疹の新生(悪化)を抑えきれず、さすがに本人にも「このままだとまずいのではないか」という自覚が芽生えたのでしょう。様子を見つつ打診した内服薬による治療強化に対し、当初からは考えられないほどの素直さで「先生にすべてお任せしますので、よろしくお願いします」との返答をいただきました。回数を重ねながら、時間をかけて丁寧に接することで、ようやく治療のスタートに立てた気持ちでした。外来をやっていると、いろいろな患者さんが来られますが、やはり適切な治療はお互いの信頼関係があってこそ進められるもの。どうにもならないこともままありますが、これからも日々精進したいと思います。それでは、また~!

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グラム染色本の最高峰【Dr.倉原の“俺の本棚”】第46回

【第46回】グラム染色本の最高峰私がグラム染色を一番やっていたのは研修医時代でした。京都府の洛和会音羽病院というところで研修させていただいて、当時、私と一緒に救急部でグラム染色を教えてくれた先生や同僚たちは、皆さんいろいろな分野で活躍しています。『グラム染色診療ドリル〜解いてわかる! 菌推定のためのポイントと抗菌薬選択の根拠』林 俊誠/著. 羊土社. 2021年6月30日発行医学部のときからずっと着ている白衣がクリスタルバイオレットまみれになって、なんか太陽の光を数年間浴びていない地下研究者みたいな恰好をしていました。「さすがにクリスタルバイオレットこぼしすぎやろ」と怒られたのは、もう15年も前の話。そういえば、バイオセーフティキャビネットではなく、救急外来でPPEをつけずに染めていた気がします。また、上手に染色できた肺炎球菌や大腸菌のスライドグラスを永久標本にして、自分のコレクションにしていました。ここらへんが現在では許されるのかどうかはわかりませんが、いずれも時効ということで……。グラム染色の本はいくつか出版されていますが、この本の素晴らしいところは、「至言が至言過ぎる」点です。書かれている全てが医師に心に突き刺さるメッセージ。たとえば緑膿菌の見た目、『「E. coliよりも細い」と気づける感覚を養う』、こりゃあ至言です。緑膿菌ってヒョロっとしているので、太い大腸菌とは違いますよね。その他、『グラム染色鏡検で「見えない」からこそ見えてくるものがある』など、なんかボクの人生をグラム染色してくださいみたいな「至言」がてんこ盛りで、読んでいてテンションが上がってきます。グラム染色に限った本ではなく、臨床における判断についても丁寧に記載されています。例えば、ESBL感染症でカルバペネムを温存しなきゃだめだよ、というICTとしても重要なメッセージも書かれています。グラム染色に偏った本ではないので、感染症診療に従事するすべての医療従事者にとって満足度が高いと思います。何より、安いです。『グラム染色診療ドリル〜解いてわかる! 菌推定のためのポイントと抗菌薬選択の根拠』林 俊誠/著.出版社名羊土社定価本体3,600円+税サイズB5判刊行年2021年

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まだ紙カルテだけど問題ない?【ひつじ・ヤギ先生と学ぶ 医業承継キソの基礎 】第25回

第25回 まだ紙カルテだけど問題ない?漫画・イラスト:かたぎりもとこ医業承継において、買い手の方と面談を行うとき、必ずと言っていいほど受ける質問が「この案件(診療所)って電子カルテ入っていますか?」というものです。そして、それに対する弊社の回答の大半は「いいえ、紙カルテです」です。実際、弊社でサポートした医業承継案件では、約8割の診療所が電子カルテを導入していません。このように「電子カルテを導入していない」ことは医業承継における大きな障壁にはなりません。厚生労働省の医療施設調査1)によると、電子カルテの普及率は一般診療所で41.6%(2017年[平成29年])という結果であり、つまりまだ約60%の診療所が導入していないのです。もちろん、この導入率は一律ではなく、ここ数年で開業した診療所の導入率は100%に近く、開業してから長い診療所(多くの場合は高齢医師が運営する診療所)では導入が進まず、これらを平均した数字が導入率約4割、というわけです。これまでのコラムでも、医業承継の本質は「患者の継承」にある、という点を解説してきました。電子カルテ非導入は買い手からすればネックの1つではありますが、多くの患者の承継が見込めるのであれば、譲受しない理由までにはならないのです。最後に1つ注意点をお伝えします。それは、医業承継後に売り手の院長が非常勤などで継続して勤務する場合です。買い手の院長は電子カルテ導入を希望することが多く、承継後に導入・運用を始めた場合は、売り手側の医師(多くの場合は高齢のベテラン)にも操作してもらうことになります。高齢医師はこれまで慣れた業務フローを変えることに大きなストレスを感じ、教える買い手側の医師も業務に支障が出る、といったケースがありました。医業承継の交渉時は、こうした細かい点も含めて検討し、お互い配慮しあう関係をつくっておくことが重要です。1)電子カルテシステム等の普及状況の推移/厚生労働省

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第41回 外れ値とは?【統計のそこが知りたい!】

第41回 外れ値とは?集団に属するデータにおいて、値の大きい(小さい)データがあり、そのデータが他と比べて極端に大きい(小さい)といえる場合、このデータを「外れ値」といいます。測定ミス、記録ミスなどに起因する異常値と外れ値は概念的には異なりますが、実務上は区別できないこともあります。外れ値のみつけ方には下記の2つの方法があります。●外れ値のみつけ方正規分布でないとき・わからないとき:箱ひげ図を適用正規分布のとき:スミノフ・グラブズ検定を適用■箱ひげ図による外れ値のみつけ方図のように上内境界点、下内境界点を加えた7数要約の箱ひげ図を作成します。上内境界点と下内境界点の範囲から外れるデータを外れ値とします。■上内境界点と下内境界点の求め方(1)まず、上測点と下測点を算出する四分位範囲=第3四分位点-第1四分位点上側点=第3四分位点+四分位範囲×1.5下側点=第1四分位点-四分位範囲×1.5(2)上内境界点は下記で決定する【上側点と下側点の範囲内に最大値はあるか?】ある→上内境界点は最大値ない→上内境界点は上側点(3)下内境界点は下記で決定する【上側点と下側点の範囲内に最小値はあるか?】ある→下内境界点は最小値ない→下内境界点は下側点※外れ値と異常値の区別は容易ではないので、極端な値が発生した経緯や原因をよく調べる必要があります。このように箱ひげ図を利用すれば上内境界点と下内境界点がわかりやすくなります。難しく考えず、「上側点と下側点の範囲内に最小値および最大値はあるか?」だけを確認すればいいのです。■外れ値に関する留意点外れ値と異常値、どちらも英語の“outlier”の訳語として用いられています。“outliers”は「部外者」・「異端児」という意味から、「他より著しく異なり、決められたルールに迎合せず、自らの信念を貫く生き方をする人」を指す場合にも使われます。前述の通り、外れ値とは、集団に属するデータにおいて、値が極端に大きい、または小さいものを指します。一方、異常値とは、外れ値の中でも測定ミス・記録ミスなどその原因がわかっているものを指します。データにおいて極端な値があったとしても必ずしも異常値とは限りません。■さらに学習を進めたい人にお薦めのコンテンツ統計のそこが知りたい!第6回 パーセンタイルと四分位範囲第39回 四分位範囲と四分位偏差とは?「わかる統計教室」第4回 ギモンを解決! 一問一答質問3 標準偏差と標準誤差の違いは何か?

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血小板減少症/血栓症リスク、コロナワクチン接種後vs. 感染後/BMJ

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のChAdOx1 nCoV-19ワクチン(Oxford-AstraZeneca製)の初回接種後には血小板減少症や静脈血栓塞栓症、まれな動脈血栓症のリスクが上昇し、BNT162b2 mRNAワクチン(Pfizer-BioNTech製)初回接種後には動脈血栓塞栓症や虚血性脳卒中のリスクの増加が認められるが、これらのイベントのリスクは、ワクチン接種後と比較して同一集団における重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)感染後のほうがはるかに高く、長期に及ぶことが、英国・オックスフォード大学のJulia Hippisley-Cox氏らの調査で明らかとなった。研究の成果はBMJ誌2021年8月26日号で報告された。イングランドの自己対照ケースシリーズ研究 本研究は、イングランドにおけるCOVID-19ワクチンと血液学的/血管系イベントとの関連の評価を目的とする自己対照ケースシリーズ研究であり、2020年12月1日~2021年4月24日の期間に実施された(英国研究技術革新機構[UKRI]の助成による)。 研究グループは、期間中にイングランドでワクチン接種を受けた個々の接種者レベルのデータを入手した。接種者の電子健康記録が、国家統計局(ONS)の死亡データ、SARS-CoV-2検査データ、英国の国民保健サービス(NHS)の入院データと関連付けられた。 2,912万1,633人がワクチンの初回接種を受け(ChAdOx1 nCoV-19ワクチン:1,960万8,008人[平均年齢55.5歳、女性50.1%]、BNT162b2 mRNAワクチン:951万3,625人[61.5歳、57.2%])、175万8,095人(51.7歳、56.7%)がSARS-CoV-2検査陽性であった。初回ワクチン接種を受け、アウトカムのデータが得られた16歳以上の集団が解析に含まれた。mRNA-1273ワクチン(Moderna製)は接種者数がきわめて少なかったため除外された。 主要アウトカムは、ChAdOx1 nCoV-19ワクチン接種、BNT162b2 mRNAワクチン接種、SARS-CoV-2検査陽性という3つの曝露から28日以内における、血小板減少症、静脈血栓塞栓症、動脈血栓塞栓症に伴う入院または死亡とされた。主要アウトカムの構成要素である脳静脈洞血栓症(CVST)、虚血性脳卒中、心筋梗塞、その他のまれな動脈塞栓症の評価も行われた。CVSTのみ2つのワクチンともリスク増加 血小板減少症のリスク上昇は、ChAdOx1 nCoV-19ワクチン接種後(8~14日の罹患率比[IRR]:1.33[95%信頼区間[CI]:1.19~1.47])と、SARS-CoV-2検査陽性後(1~7日14.04[12.08~16.31]、8~14日5.27[4.34~6.40]、15~21日1.91[1.44~2.54]、22~28日1.50[1.10~2.05])に認められた。 また、静脈血栓塞栓症のリスク増加は、ChAdOx1 nCoV-19ワクチン接種後(8~14日のIRR:1.10[95%CI:1.02~1.18])と、SARS-CoV-2検査陽性後(1~7日13.78[12.66~14.99]、8~14日13.86[12.76~15.05]、15~21日7.88[7.18~8.64]、22~28日3.38[3.00~3.81])に、動脈血栓塞栓症のリスク増加は、BNT162b2 mRNAワクチン接種後(15~21日1.06[1.01~1.10])と、SARS-CoV-2検査陽性後(1~7日6.55[6.12~7.02]、8~14日4.52[4.19~4.88]、15~21日2.02[1.82~2.24]、22~28日1.26[1.11~1.43])にみられた。 さらに、CVSTのリスクは、ChAdOx1 nCoV-19ワクチン接種後(8~14日のIRR:4.01[95%CI:2.08~7.71])と、BNT162b2 mRNAワクチン接種後(15~21日3.58[1.39~9.27])、およびSARS-CoV-2検査陽性後(1~7日12.90[1.86~89.64]、8~14日13.43[1.99~90.59])に上昇し、虚血性脳卒中のリスクは、BNT162b2 mRNAワクチン接種後(15~21日1.12[1.04~1.20])と、SARS-CoV-2検査陽性後(1~7日3.94[3.46~4.47]、8~14日3.25[2.83~3.72]、15~21日2.00[1.70~2.35]、22~28日1.26[1.04~1.53])に増加した。 一方、心筋梗塞のリスクは、2つのワクチンとの関連はなかったが、SARS-CoV-2検査陽性後(1~7日のIRR:7.95[95%CI:7.32~8.63]、8~14日4.94[4.50~5.43]、15~21日1.95[1.71~2.22])に上昇し、まれな動脈塞栓症のリスクは、ChAdOx1 nCoV-19ワクチン接種後(8~14日1.21[1.02~1.43])と、SARS-CoV-2検査陽性後(1~7日5.35[3.90~7.32]、8~14日5.61[4.13~7.61]、15~21日2.97[2.03~4.36]、22~28日2.66[1.79~3.94])に増加した。 著者は、「2つのワクチンの初回接種後にCVSTのリスクが上昇しており、これは潜在的な前兆の可能性があるが、数が少ないためさらなる確認が必要である。重要な点は、ワクチン接種後のこれらのアウトカムのリスクは、同一集団のSARS-CoV-2感染後に比べはるかに低いことである」と指摘している。

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個別に投与量を設定するFSH製剤「レコベル皮下注12μg/36μg/72μgペン」【下平博士のDIノート】第81回

個別に投与量を設定するFSH製剤「レコベル皮下注12μg/36μg/72μgペン」今回は、ヒト卵胞刺激ホルモン(FSH)製剤「ホリトロピン デルタ(遺伝子組換え)(商品名:レコベル皮下注12μg/36μg/72μgペン、製造販売元:フェリング・ファーマ)」を紹介します。本剤は、血清抗ミュラー管ホルモン値(AMH)および体重に基づいた個別の投与量アルゴリズムにより、患者ごとの投与量設定が可能なペン型注入器付き注射薬です。<効能・効果>本剤は、生殖補助医療における調節卵巣刺激の適応で、2021年3月23日に承認されました。投与の適否は、患者およびパートナーの検査を十分に行った上で判断されます。原発性卵巣不全が認められる場合や妊娠不能な性器奇形または妊娠に不適切な子宮筋腫の合併などがある場合には使用できません。また、甲状腺機能低下、副腎機能低下、高プロラクチン血症および下垂体または視床下部腫瘍などが認められた場合は、当該疾患の治療を優先します。<用法・用量>通常、ホリトロピン デルタとして、投与開始前の血清抗ミュラー管ホルモン値および体重に基づき、下表に従い算出した投与量を、月経周期2日目または3日目から1日1回皮下投与します。なお、1日投与量は6~12μgの範囲内とします。超音波検査および血清エストラジオール濃度の測定によって、十分な卵胞の発育が確認されるまで本剤の投与を継続します。本剤の最終投与後、卵胞成熟を誘起した後、採卵します。なお、本剤投与時に卵巣反応の不良または過剰(卵巣過剰刺激症候群またはその徴候を含む)が認められた患者における調節卵巣刺激には、他剤の使用を考慮します。<安全性>日本人女性を対象に行われた臨床試験において、本剤投与群の副作用発現率は18.8%(32/170例)であり、主な副作用は卵巣過剰刺激症候群10.6%(18例)、卵巣腫大2.9%(5例)、骨盤液貯留2.4%(4例)などでした。重大な副作用として、卵巣過剰刺激症候群(10.6%)が現れることがあります。<患者さんへの指導例>1.この薬はFSH製剤と呼ばれ、女性の卵巣に作用して、黄体形成ホルモンと共に卵胞を育てます。2.凍結を避け、2~8℃で保管してください。使用開始後は室温(30℃以下)で保管し、使用開始後28日を超えたものは使用しないでください。3.医療機関において、在宅自己注射教育を受けた人または家族の方のみ自己注射できます。注射部位は腹部の皮下とし、毎日少しずつ場所をずらしてください。自己判断で使用を中止したり、量を加減したりしないでください。4.使用し忘れた場合は、気が付いたときにすぐ1回分を使用してください。ただし、次に使用する時間が近い場合はその回は使用せず、次の指示された時間に1回分を使用し、後日、医師に報告してください。決して2回分を一度に使用しないでください。5.悪心・嘔吐、下腹部の強い痛み、腹部の張り、尿量の減少、急激な体重増加などが認められた場合は、すみやかに医療機関へ連絡してください。<Shimo's eyes>FSHは卵胞の発育を促すため、生殖補助医療における調節卵巣刺激に広く用いられています。しかし、標準用量を投与した場合、卵巣予備能が高い患者では卵巣過剰刺激症候群に至る可能性がある一方、卵巣予備能が低い患者では十分な採卵数が期待できない可能性があります。そのため、生児の獲得が達成可能な採卵数を得つつも、卵巣過剰刺激症候群の発現リスクを最小限に抑えることが課題となっています。卵巣過剰刺激症候群は、卵胞が過剰に刺激されることによって、卵巣の肥大や腹水・胸水の貯留などの症状が起こります。重症例では、腎不全や血栓症などさまざまな合併症を引き起こすことがあるため、早期に発見し処置を行うことが重要です。日本人女性における発現割合は20%以上との報告もあり、多くの場合は投与後7~10日に症状が重くなります。本剤は、血清抗ミュラー管ホルモン値および体重に基づいた個別の投与量アルゴリズムにより、患者ごとに投与量を設定します。至適用量を投与することで、しっかりと卵胞を発育しつつ、安全性リスクを軽減することが期待できます。海外では欧州で2016年12月に承認されて以来、2020年11月までに63の国と地域で承認されています。服薬指導では、お腹の張りや悪心・嘔吐、体重の増加など卵巣過剰刺激症候群の自覚症状について十分に説明を行い、安全に治療を進められるようにサポートしましょう。参考1)PMDA 添付文書 レコベル皮下注12μgペン/レコベル皮下注36μgペン/レコベル皮下注72μgペン

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第69回 最新版手引き(第5.3版)に妊産婦の管理追加/厚労省

<先週の動き>1.最新版手引き(第5.3版)に妊産婦の管理追加/厚労省2.COVID-19受け入れ病床増加に向け、新たな協力要請/東京都3.ワクチンが行き渡る11月に向け、規制緩和策を提言/内閣府4.税負担が重い医療機関への軽減策を国に要望/日医5.社会保障給付費、123兆円と過去最高に/厚労省6.宿直頻度が週1回を超えている病院は新規許可得られず/日医1.最新版手引き(第5.3版)に妊産婦の管理追加/厚労省厚生労働省は、「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)診療の手引き・第5.3版」を新たに発出した。これまでの知見に加えて、「妊産婦の管理」の項を追加し、無症状・軽症で自宅療養・宿泊療養中の妊婦の診療・看護する医療者は、「呼吸状態、心拍数や呼吸数とその変化などの急速な症状の進行を疑う症状」「産科的異常を示唆する症状」の確認が必要とされた。また、自宅療養者に対して行う診療プロトコール、経口ステロイド薬投与における留意点なども追加されている。<主な改訂部分>20-21ページ:「5.小児例の特徴」の重症度、家族内感染率等について一部追記42ページ:「5.妊産婦の管理」の項を追加44ページ:自宅療養者に対して行う診療プロトコール、経口ステロイド薬投与における留意点等について追記48-59ページ:各種薬剤の項目(レムデシビル、バリシチニブ等)に一部追記60-67ページ:「表6-1」「1.個人防護具」「5.患者寝具類の洗濯」「8.職員の健康管理」等について一部追記(参考)コロナ診療の手引きに「妊産婦の管理」の項を追加 厚労省が第5.3版を事務連絡(CBnewsマネジメント)2.COVID-19受け入れ病床増加に向け、新たな協力要請/東京都東京都は2日に開かれた東京都新型コロナウイルス感染症モニタリング会議において、都内の医療機関に対するCOVID-19患者の受け入れ病床確保要請の結果、1日の時点で150床増の6,117床となったことを報告した。このうち重症者向け病床は465床で、73床増加している。今回、改正感染症法に基づいて東京都と厚労省が共同してさらなる協力要請が行われたが、目標の7,000床に向けて、要請を受けた医療機関側の人員不足など厳しい現状が浮かんだ。重症患者のさらなる増加に備えた重症病床の確保や、回復期支援病床の増床により、転院支援などを推進することで都内病床の活用促進などを求めている。3日に開催された経済諮問会議では、民間議員から、臨時の医療施設の設置や宿泊療養施設における医療提供体制の強化などがただちに取り組むべき課題とされたほか、約70万人の潜在看護師の活用など、対応への参画を促すことも提案された。(参考)感染症法第16条の2に基づく協力要請(東京都新型コロナウイルス感染症モニタリング会議)東京の確保病床6117床に 国と都が初要請、目安の7000床には届かず(東京新聞)3.ワクチンが行き渡る11月に向け、規制緩和策を提言/内閣府内閣府の新型コロナウイルス感染症対策分科会が3日に開催され、11月を目途にワクチンが行き渡った後について、「ワクチン接種が進む中で日常生活はどのように変わり得るのか?」と題した提言が尾身 茂会長から示された。これによると、ワクチンの効果と限界や、諸外国の知見を踏まえ、国内ですべての希望者がワクチン接種を終えたとしても、集団免疫の獲得は困難という見解だ。努力によって到達し得るワクチン接種率が60代以上は85%、40~50代は70%、20~30代は60%になったとしても、引き続き、人々の生活や社会経済活動の制限が一定程度は必要であるとし、“ワクチン・検査パッケージ”として、接種証明書やPCR検査・抗原定量検査の陰性証明書を活用し、経済社会活動の制限を緩和する仕組みを提案した。さらに今後の感染状況も含め、議論していくことを求めた。また、同日に開かれた経済財政諮問会議でも、民間議員からは感染拡大・重症化の防止と経済社会活動を両立する「新しい国民生活の姿」の実現に向けて、ロードマップを早急にとりまとめるべきだと提言があった。(参考)ワクチン接種が進む中で日常生活はどのように変わり得るのか?(新型コロナウイルス感染症対策分科会)ワクチン・検査パッケージを提言 分科会、旅行や入院面会で活用(東京新聞)ワクチン・検査活用で制限緩和=旅行、大規模イベント容認―分科会提言・新型コロナ(時事ドットコム)4.税負担が重い医療機関への軽減策を国に要望/日医日本医師会は、1日に18項目からなる「2022年度医療に関する税制要望項目」を発表し、本要望を8月25日に厚労省に提出したことを報告した。消費税負担の大きな医療機関は、「軽減税率による課税取引に改める」ことを含めた見直しを、診療所など小規模な医療機関はこれまで通り非課税として、診療報酬での補填の継続を求めた。このほか、医師少数区域等に所在する医療機関の固定資産税・不動産取得税の税制措置の創設なども要望に入れられた。(参考)令和4年度医療に関する税制要望について(日医online)日本医師会の税制改正要望 消費税負担の大きな医療機関「軽減税率による課税取引」に見直し検討を(ミクスonline)5.社会保障給付費、123兆円と過去最高に/厚労省厚労省の国立社会保障・人口問題研究所は3日に2019年度の「社会保障費用統計」を公表した。これによると、2019年度の社会保障給付費総額は123兆9,241億円で、対前年度増加額は2兆5,254億円と、伸び率は2.1%増となった。1人当たりの社会保障給付費は98万2,200円となる。社会保障給付費を部門別に見ると、「医療」は40兆7,226億円(32.9%)、「年金」は55兆4,520億円(44.7%)、「福祉その他」は27兆7,494億円で同22.4%となった。高齢化の進行で、右肩上がりの状況が続いており、今後負担の分担をめぐって議論になると思われる。(参考)令和元(2019)年度「社会保障費用統計」の概況取りまとめを公表します~社会保障給付費、過去最高を更新~(国立社会保障・人口問題研究所)年金 医療 介護などの社会保障給付費 123兆円余りで過去最高(NHK)6.宿直頻度が週1回を超えている病院は新規許可得られず/日医日本医師会は1日に、日本医師会が実施した「医師における宿直許可の取組に関する調査」の結果を報告した。医師の働き方改革で2024年4月より医師の時間外労働の上限規制が適用されるところ見据え、2019年7月以降に医師の宿直許可について申請・相談を行った医療機関の事例を収集した調査が行われた。2021年4〜5月にかけて、全国8,221病院と6,418有床診療所を対象とした本結果によると、約6割弱の医療機関が労働基準監督署の宿直許可を得たと回答した。また、許可を得られたあるいは許可を得らえる見込みと回答した医療機関では医師一人当たりの宿直頻度が「週1回以下」の医療機関が93.3%だった。一方、不許可となった医療機関では、医師一人当たりの宿直頻度が週1回を超えているなど、宿直許可基準が厳しく適用されているとの見解を示した。日本医師会では、産婦人科領域において、全国の分娩件数の約半数が大学病院などから宿日直医師の派遣を受けて産科診療所が取り扱っているため、大学病院等からの医師の派遣が制限されてしまえば、産科診療所での分娩が成り立たなくなるとして、危機感を示した。(参考)医師における宿直許可の取組に関する調査結果について(日医online)

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