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医師免許を存分に活かして!安全地帯から起業というゲームに参加する【医師のためのお金の話】第56回

「起業」って何だかカッコいい響きですよね! アップルのスティーブ・ジョブズ氏やテスラのイーロン・マスク氏、日本ではサイバーエージェントの藤田 晋氏などなど。皆さんキラキラしています。医者がそんな大起業家になるのはムリでしょ、と思ってしまいますが、われらが医療業界でもスタートアップは目白押し。メドレーやメドピアのように、現役の臨床医が立ち上げた会社が株式上場した例もいくつかあります。さすがに上場のハードルは高いかもしれません。しかし、医師を続けながら立ち上げた企業がいい感じになっている例は、あなたの身近にもあるのではないでしょうか。やり方次第では、起業家の一員になれるかも!?医師にお勧めの起業パターン医師の起業には、どのようなパターンがあるのでしょうか。起業というからには、すべてを投げ打って事業を立ち上げるパターンを思い浮かべる人が多いでしょう。もちろん上場を目指すスタートアップでは、このようなパターンが多いのは事実です。国内スタートアップの代表例として、AI事業のプリファード・ネットワークスやクラウド会計ソフトウエアのfreeeが挙げられます。こうしたスタートアップは、ベンチャーキャピタル(VC)から出資してもらい、事業を拡大していきます。VCが出資する条件として、「経営者が専業である」はいうまでもないことです。このため、上場を目指すスタートアップを起業するのであれば、医師を辞めて事業に取り組む必要があります。でもこれって、かなりハードルが高いですよね。医師の最大の強みは、「個人で稼ぐ力」です。常勤ではなくアルバイト医師であっても、食うに困る状況にはなりません。極論すると「片手間」で医師を続けても、十分に生活していけます。一般の会社員では望むべくもない、破格の好条件といえるでしょう。医師ならこれを利用しない手はありません。つまり臨床を続けながら、面白そうな領域で起業してみるのです。起業するために医師を辞めるなんて、そんなもったいないことしてはいけません。生活基盤はきっちり確保しましょう。私の起業体験起業は背水の陣で臨まないと成功しないのではないか、と思う人がいるかもしれません。確かにそれも一理ありそうです。しかし、私自身の経験からは、実際に起業してみると、生活基盤の安定性が経営者マインドに与える好影響の大きさを実感しています。私はこれまで10近い事業を立ち上げてきました。そのほとんどは廃業してしまいましたが、これだけの数をチャレンジできたのは医師としての安定収入があったからです。事業継続が困難になっても、さほど追い詰められることなく冷静に対処できます。また、廃業するにも資金が必要であり、精神的な負荷のかかり方はハンパないものがあります。ありがちなのは、廃業する決断ができずにズルズルと引っ張ってしまい、さらに傷口を拡大させてしまうパターン…。事業以外に何も収入がなければ苦しい立場に追い込まれますが、医師を続けていれば「ちょっとやらかした」程度に過ぎません。これって天と地ほどの差がありますよね。医師を続けてさえいれば、安全地帯から起業というゲームに参加できるのです。気軽に起業してみよう!起業といっても、多額の借り入れをして最初から大風呂敷を広げる必要はありません。むしろ少額かつ自己資金だけで事業を立ち上げる方法を考えてみましょう。自己資金だけでは大したことはできなさそう…と思いますが、実際には全然そんなことはありません。デジタル化の進展で、事業で必須のツールを無料もしくは極めて安価に使えるようになりました。たとえば、SlackやChatworkなどのビジネスチャットツールの登場でリモートワークが広がり、オフィスの必要性は低下しました。またfreeeなどのクラウド会計ソフトによって、会計業務を劇的に軽減することができます。ウェブ広告の活用で、営業部隊の必要性も低下しました。モノやヒトの固定費が低下したおかげで、昔と比べて起業は容易になったのです。しかし、たった1つだけ残る高いハードル…。それが、あなたの心の中に潜む「起業は怖い」という気持ちです。起業に対する恐怖心を打ち砕く決定打はありません。解決策は「とにかくやってみる」、だけです。どんな小さな事業でもいいので、一度でも立ち上げてみると起業に対する恐怖心は氷解します。幸いにも医療業界は参入障壁が高く、起業ネタがゴロゴロ転がっています。もちろん医療とまったく異なる分野での起業でも問題ありません。しかし、せっかく医師になったのですから「おいしい」業界で起業しない手はないでしょう。日常臨床のちょっとした気付きが起業のネタかもしれません。起業も念頭に置いて、臨床に取り組もうではありませんか。

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061)便利さの裏返し? 外来ナースの憂鬱【Dr.デルぽんの診察室観察日記】

第61回 便利さの裏返し? 外来ナースの憂鬱ゆるい皮膚科勤務医デルぽんです☆私の勤めるクリニックは訪問診療も行っており、在宅や施設の患者さんの皮疹について訪問診療担当の看護師さんから相談を受けることがあります。(以前、漫画でも取り上げましたね!)同じクリニックで働く者同士だからでしょうか、カルテに記載するほどでもないくらいの小さな相談を受けることもたびたびあります。話を聞くと、どうやら「地域とクリニックをつなぐ連携ツール」が存在するらしく、専用アプリを使用して地域スタッフとのやりとりを行っている様子。訪問看護や施設のスタッフからしてみれば、「受診せずにオンラインでクリニックと連絡が取れる便利なツール」ということになります。深く考えず「便利ですね!」とコメントしたところ、担当の外来看護師さんから、意外な本音がポロリ。「相談件数が増えて、毎回の対応が大変なんです~!」とのこと。なるほど、対応するスタッフからしてみれば、逆に仕事が増えてしまうというわけです。「まあ、いいんですけどね~」と笑っていましたが、思わず「お疲れさまです…」と手を合わせてしまうのでした。オンラインツールは便利だけれど、どこまで対応すべきかは迷う部分もあるようです。それでは、また~!

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クッシング症候群の高コルチゾール血症を改善する「イスツリサ錠1mg/5mg」【下平博士のDIノート】第98回

クッシング症候群の高コルチゾール血症を改善する「イスツリサ錠1mg/5mg」今回は、副腎皮質ホルモン合成阻害剤「オシロドロスタットリン酸塩(商品名:イスツリサ錠1mg/5mg、製造販売元:レコルダティ・レア・ディジーズ・ジャパン)」を紹介します。本剤は、副腎でのコルチゾール生合成を抑制し、高コルチゾール血症を是正することでクッシング症候群の症状を改善します。<効能・効果>本剤は、クッシング症候群(外科的処置で効果が不十分または施行が困難な場合)の適応で、2021年3月23日に承認され、同年6月30日に発売されました。<用法・用量>通常、成人にはオシロドロスタットとして1回1mgを1日2回経口投与から開始し、その後は患者の状態に応じて最高用量1回30mg(1日2回)を超えない範囲で適宜調節します。なお、用量を漸増する場合は1~2週間に1回、増量幅は1回1~2mgを目安とします。中等度の肝機能障害患者(Child-Pugh分類クラスB)では1回1mgを1日1回、重度(Child-Pugh分類クラスC)では1回1mgを2日に1回を目安に投与を開始し、服用タイミングは夕方とすることが望ましいとされます。<安全性>国内外の臨床試験では、主な副作用として疲労(30%以上)、低カリウム血症、食欲減退、浮動性めまい、頭痛、低血圧、悪心、嘔吐、下痢、男性型多毛症、ざ瘡、血中コルチコトロピン増加、血中テストステロン増加、浮腫、倦怠感(5~30%未満)が報告されています。なお、重大な副作用として低コルチゾール血症(53.9%)、QT延長(3.6%)が現れる可能性があります。<患者さんへの指導例>1.体内で過剰に分泌されている副腎からのコルチゾール合成を抑えて、高コルチゾール血症を改善する薬です。2.悪心、嘔吐、疲労、腹痛、食欲不振、めまいなどが認められた場合には、体内のコルチゾール濃度が低下し過ぎている恐れがあるので、すぐに主治医に連絡してください。3.この薬の服用により低カリウム血症になる可能性があります。体の力が抜ける感じ、手足のだるさ、こわばり、筋肉痛、呼吸困難、むくみ、高血圧などが現れた場合には医師に連絡してください。4.(妊娠する可能性がある人の場合)この薬の使用期間中および使用中止後1週間は適切な避妊をしてください。妊婦または妊娠している可能性のある方は服用できません。5.(授乳中の方に対して)薬剤が乳汁中へ移行する可能性があるため、本剤を服用中は授乳しないでください。<Shimo's eyes>クッシング症候群は、副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)による刺激または副腎皮質の機能亢進により、副腎皮質からコルチゾールが過剰分泌されることで、慢性的に高コルチゾール血症を呈する疾患です。治療しない場合、高血圧、糖尿病、骨粗鬆症などの合併症や、免疫力の低下により易感染状態をまねきます。治療の第一選択は、国内外ともに原因となる病変の外科的切除であり、手術できない場合や切除後に寛解に至らなかった場合には、薬物療法および放射線療法が選択されます。また、速やかな高コルチゾール血症の是正が必要な場合にも薬物療法が適応となります1)。本剤は、クッシング症候群の原因となるコルチゾールの生合成の最終段階である11-デオキシコルチゾールからコルチゾールへの変換を担う11β-水酸化酵素の阻害剤です。この機序により原疾患によらず、すべての内因性クッシング症候群患者において本剤の有効性が期待されます。血中濃度を安定させるため、本剤を1日2回で服用する場合は12時間間隔で、なるべく毎日同じ時間帯に服用する必要があります。服用し忘れた場合は、1回飛ばして次の回から服用を再開するように伝えましょう。重大な副作用として低コルチゾール血症が現れることがあり、副腎皮質機能不全に至る恐れがあります。そのため、定期的に血中・尿中コルチゾール値の測定が求められています。また、QT延長が現れることがあるので、投与開始前および投与開始後1週間以内、または増量時など、必要に応じた心電図検査が行われます。とくに高ストレス状態ではコルチゾール需要が増加するため、副腎不全症候群を発症する可能性があります。服薬フォローの際には、全身倦怠感、食欲不振、脱力などの症状が現れていないか聞き取ることが大切です。1)クッシング症候群診療マニュアル 改訂第2版. 診断と治療社;2015.(J Clin Endocrinol Metab. 2015;100:2807-2831.)参考1)PMDA 添付文書 イスツリサ錠1mg/イスツリサ錠5mg

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英語で「波がある痛み」は?【1分★医療英語】第28回

第28回 英語で「波がある痛み」は?Is the pain constant?(持続する痛みですか?)No, it comes and goes.(いいえ、痛みには波があります)《例文1》Does the pain come and go?(痛みには波がありますか?)《例文2》Hives can come and go.(蕁麻疹は、出たり消えたりします)《解説》“come and go”は文字通り、「行ったり来たりする」を意味し、症状に波があることを指します。医学用語では、持続痛は“constant pain”、間欠痛は“intermittent pain”と言いますが、患者さんに“intermittent”という単語は伝わりにくいため、どちらの痛みなのか確認したいときには、“Does it come and go?”と聞くとよいでしょう。その他の「痛みには波がある」という言い方として、“The pain gets better and worse.”や“The pain waxes and wanes.”などがあり、併せて覚えておくと役立ちます。“wax and wane”は、もともとは「月の満ち欠け」という意味で、“wax”が「満ちる」、“wane”が「欠ける」を意味します。“wax and wane”は月の満ち欠け以外にも、症状が良くなったり悪くなったりすることを表すことができ、医療者同士の会話では“His mental status waxed and waned, so we couldn’t extubate him.”(彼の意識レベルは波があり、抜管できませんでした)といった表現が頻繁に登場します。講師紹介

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第100回 手術動画を無断で提供、改正個人情報保護法に基づき調査

<先週の動き>1.手術動画を無断で提供、改正個人情報保護法に基づき調査2.4回目コロナワクチン、今月末からの開始に向けて/厚労省3.3回目用に確保したコロナワクチン、期限切れで廃棄相次ぐ4.医師偏在解消に向け「医師確保計画ガイドライン」改正/厚労省5.ヤングケアラー支援のための手引きを作成/厚労省6.有事の医薬品開発を見据えた緊急承認制度が新設1.手術動画を無断で提供、改正個人情報保護法に基づき調査全国の総合病院などに勤務する眼科医5人が、病院や患者に無断で白内障の手術動画を医療機器メーカーに提供し、去年までの3年間に現金40~105万円を受け取っていたことが明らかとなりました。画像の提供を受けていたのは白内障治療用眼内レンズを販売するスター・ジャパン社。同社が白内障手術の動画を作成するために提供を受けたとされているが、販売促進の目的の可能性があるため、業界団体がメーカーの調査に着手した。今回の動画は手術動画であり、厳密には個人情報に含まれない可能性があるが、各医療機関側は患者の同意なく外部に提供したことを把握できておらず、再発防止のためには職員に対して個人情報保護法の教育が必要となる。個人情報保護法は今年4月から改正法が施行されており、個人データの授受については研究目的であっても第三者提供記録が本人による開示請求の対象となるなど規制が強化されている。医療機関側は情報漏洩時の報告義務を負っており、医師個人も個人情報保護法のルール順守が必須となる。(参考)“手術動画”無断で外部提供か 病院側「再発防止に努めたい」(NHK)“手術動画”で医師に現金提供 業界団体がメーカーを調査(同)医療・ 介護関係事業者における個人情報の適切な取扱いのためのガイダンス(個人情報保護委員会)【2022年4月施行】個人情報保護法改正とは?改正点を解説!(契約Watch)2.4回目コロナワクチン、今月末からの開始に向けて/厚労省今月末に開始見込みの新型コロナウイルスワクチン4回目接種の準備に向け、厚生労働省は全国の自治体に対して10日に通知を発出した。接種の対象者は、3回目の接種完了から5ヵ月以上が経過した60歳以上の者および18歳以上60歳未満の者のうち基礎疾患を有する者やその他新型コロナウイルス感染症にかかった場合の重症化リスクが高いと医師が認める者で、自治体に対してファイザー製および武田/モデルナ製ワクチンを配布する。基礎疾患のある人については、自己申告した者のほか、申告がない一部の人にも接種券を配布できるとし、自治体側の煩雑な事務作業を減らすために、18歳以上の対象者以外への一律送付も可能となっている。(参考)4回目コロナ接種券、対象以外も 厚労省が自治体に通知(産経新聞)4回目接種券、18歳以上一律も可能に…煩雑作業避けたい自治体の要望受け厚労省容認(読売新聞)新型コロナウイルスワクチンの追加接種(4回目接種)体制整備に係る医療用物資の配布について(厚労省)新型コロナワクチン追加接種(4回目接種)の体制確保について(その2)(同)3.3回目用に確保したコロナワクチン、期限切れで廃棄相次ぐ新型コロナウイルスワクチン3回目接種のために配布されたモデルナ製ワクチンが使用されないまま有効期限を迎え、これまでに10万本以上が破棄されていることが報道された。感染状況を踏まえた複合的な理由により、配送されたワクチン数が希望者を上回っていると考えられる。一方、ファイザー製ワクチンは4月に有効期限が9ヵ月から1年に延長されて破棄を免れたが、今後進められる4回目接種は対象者が制限されるため、引き続き期限切れを迎えるワクチンの増加は避けられないだろう。確保したワクチンの有効活用のために、国民に対してワクチン接種の働きかけを強化するなど、自治体で期限切れにならないような工夫を凝らす必要がある。(参考)なぜ?新型コロナワクチン 期限切れ廃棄 次々と明らかに(NHK)余るモデルナ、止まらぬ廃棄 融通できず悩む自治体(産経新聞)京都市、モデルナワクチン期限切れで廃棄へ 8万回分(日経新聞)4.医師偏在解消に向け「医師確保計画ガイドライン」改正/厚労省厚労省は、第8次医療計画等に関する検討会の下部組織「地域医療構想及び医師確保計画に関するワーキンググループ」を11日に開催した。2018年の医療法改正により、医療資源の地域的偏在の是正のため「医師確保計画」を策定することとなっており、各都道府県は2次医療圏ごとに医師確保計画を通じた医師偏在対策を進めている。今後、医師の働き方改革や地域医療構想の実現も視野に入れつつ、キャリア形成プログラムなどを含めた検討を進め、2022年中に報告書をまとめ、年度内に「医師確保計画策定ガイドライン」の改定を行う。2024年から始まる第8次医療計画の開始とともに医師確保計画の策定を開始する予定。(参考)2024年度から「医師確保計画」も新ステージに、医師偏在解消に向け2022年内に見直し案まとめ―地域医療構想・医師確保計画WG(Gem Med)地域枠医師などサポートするキャリア形成プログラム、現場ニーズを意識した作成・運用進む―地域医療構想・医師確保計画WG(2)(同)医師確保計画を通じた医師偏在対策について(厚労省)5.ヤングケアラー支援のための手引きを作成/厚労省全国の自治体に向け、大人に代わって日常的に家事や家族の世話をするヤングケアラーについて、早期の発見や支援を行う体制などの事例をマニュアルにまとめ、ヤングケアラー支援の体制作りを働きかける通知が発出された。厚労省が2021年度に子供・子育て支援推進調査研究事業で行った全国の中高校生を対象とした調査によると、世話をしている家族が「いる」と回答したのは、中学2年生で5.7%、全日制高校2年生は4.1%だった。そのうち、世話の頻度を「ほぼ毎日」と回答した者が3~6割程度、平日1日当たりで世話に費やす時間は「3時間未満」が多いものの、「7時間以上」と回答した者も約10%程度いることから、誰にも相談できずに1人で抱え込んでいるのかもしれない。今度、ヤングケアラーをいかに社会で支えるかが大きな課題となっている。(参考)ヤングケアラー支援で手引 学校や自治体連携、厚労省(日経新聞)厚労省、ヤングケアラー支援マニュアルを通知 「福祉、介護、教育など多分野の連携が重要」(JOINT)「多機関・多職種連携によるヤングケアラー支援マニュアル」(厚労省)6.有事の医薬品開発を見据えた緊急承認制度が新設感染症流行時などの有事にワクチンや治療薬を緊急承認する制度の創設を盛り込んだ医薬品医療機器法の改正案が、13日の参議院にて全会一致で可決され、成立した。現行制度では、海外承認された医薬品を早期承認する特例承認制度があるが、日本人への有効性が確認できる臨床データが十分集まっていない場合は国内で追加治験を行わなければならず、承認が遅れてしまう問題があった。今回新設された緊急承認制度は、国民の生命や健康に重大な影響を与える恐れがある病気の蔓延を防ぐために必要な医薬品や医療機器が対象で、ほかに代替手段がないことが条件となる。緊急時として原発事故やテロなども想定しているが、2年以内に有効性を確認できなければ承認を取り消す。(参考)薬の緊急承認制度創設へ 改正薬機法が成立 遅れたワクチン開発、反省踏まえ(産経新聞)「緊急承認制度」新設、早いワクチン実用化の実現は 改正薬機法成立(朝日新聞)改正医薬品医療機器法が成立 薬の緊急承認、新設 コロナ対応反省/信頼性課題(毎日新聞)

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妊娠中の新型コロナウイルス感染症へのワクチン接種は出産時合併症リスクに影響せず(解説:前田裕斗氏)

 新型コロナウイルス感染症は妊婦で重症化しやすいことが知られており、罹患によって母体死亡や帝王切開となるリスクが上昇することがすでに報告されている。一方、新型コロナウイルスに対するワクチン接種が母体・胎児・出産にもたらす影響については大規模な研究報告がこれまでなかった。本研究はカナダ・オンタリオ州で行われた9万7,590人を対象とし、妊娠中にワクチン接種を行った群、産後にワクチン接種を行った群、ワクチン接種を行った記録のない群で出産時合併症の有無を比較した報告である。 結果として、産後大出血、絨毛膜羊膜炎(子宮内感染と考えてよい)、帝王切開、緊急帝王切開、NICU入院、新生児仮死いずれもワクチン接種群とその他の群の間で差は認められなかった。また、ワクチンを受けた回数、1回目に受けたワクチンの種類、ワクチン接種を受けた時期で層別化したいずれの解析でもやはり各群で合併症に差は認められなかった。 妊娠・出産合併症は頻度が低いことからワクチンの影響を見るためには大規模集団を対象とした研究が必要であり、本研究の結果は妊娠中のワクチン接種の安全性を示唆するものとして十分なものといえるだろう。もちろん、妊娠初期に接種した群が少ない、出産時合併症の診断は臨床的に行われ、しばしば過小評価されることがある点、未測定の交絡要因など研究としての限界はあるが、各種感度分析が行われており研究手法としても信頼のおけるものである。同時期に発表された北欧からの研究と併せ、妊娠中の新型コロナウイルス感染症に対するワクチン接種についての安全性が強く支持されたといえるだろう。

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コロナ入院患者にレムデシビルは有益か:WHO最終報告/Lancet

 レムデシビルは、人工換気へと症状が進んだ新型コロナウイルス感染症(COVID-19)患者に対して有意な効果をもたらさないことが、またその他の入院患者について、死亡または人工換気(あるいはその両方)への進行に対する効果はわずかであることを、世界保健機関(WHO)の連帯試験コンソーシアム(Solidarity Trial Consortium)が最終結果として報告した。COVID-19患者を対象としたSolidarity試験では、これまでに4つの既存薬に関する中間解析結果が報告されている。このうちロピナビル、ヒドロキシクロロキン、インターフェロン(IFN)-β1aは無益として試験が中止となったが、レムデシビルの無作為化試験は継続されていた。本稿で同コンソーシアムは、これまでに行われたすべての関連試験の死亡率およびメタ解析の最終結果を報告している。Lancet誌オンライン版2022年5月2日号の報告。35ヵ国454病院でCOVID-19入院患者1万4,221例を対象に無作為化試験 Solidarity試験には、医師の見立てで明らかなCOVID-19で最近入院し、いずれの試験薬にも禁忌がなく、その他の患者の特性は問わず同意が得られた成人(18歳以上)患者が登録された。 被験者は、試験地で入手可能であった試験薬に等分になるよう無作為に割り付けられ、その時点で入手可能であった4つの試験薬(ロピナビル、ヒドロキシクロロキン、IFN-β1a、レムデシビル)のいずれかまたは非試験薬(対照)の投与を受けた。また、すべての患者は、試験地の標準治療も受けた。プラセボの投与は行われなかった。 プロトコールで指定されていた主要エンドポイントは、疾患重症度で分類した院内死亡であった。副次エンドポイントは、人工換気への進行(同未実施の場合の)、入院から退院までの期間などであった。 最終的なlog-rank検定およびKaplan-Meier解析はレムデシビルについて行われ、すべての4つの試験薬について追加された。メタ解析は、今回の試験およびその他3つの試験薬の無作為化試験で報告された入院患者における死亡率の加重平均値を評価した。 2020年3月22日~2021年1月29日の間に、WHOに加盟する世界6地域にある35ヵ国454病院から1万4,303例の適格条件を有すると思われる患者が登録された。COVID-19診断が反証されたり、暗号化された同意がデータベースに入力されなかったりした83例(0.6%)を除外後、Solidarity試験には1万4,221例が登録され、うち8,275例がレムデシビル(早期退院とならない限り10日間連日静注投与、4,146例)またはその対照(レムデシビルを入手可能な地域であったが、試験薬に割り当てられなかった、4,129例)を受けるよう無作為に割り付けられた。すでに人工換気を受けていた患者の死亡、レムデシビル群42.1%、対照群38.6% レムデシビル群、対照群ともにコンプライアンス率は高かった。 死亡は、レムデシビル群は4,146例中602例(14.5%)、対照群は4,129例中643例(15.6%)であった(死亡率比[RR]:0.91[95%信頼区間[CI]:0.82~1.02]、p=0.12)。すでに人工換気を受けていた患者の死亡は、レムデシビル群359例中151例(42.1%)、対照群347例中134例(38.6%)であった(RR:1.13[0.89~1.42]、p=0.32)。人工換気は受けていなかったが酸素投与を受けていた患者の死亡は、レムデシビル群14.6%、対照群16.3%であった(RR:0.87[0.76~0.99]、p=0.03)。 当初は酸素投与を受けていなかった患者1,730例の死亡は、レムデシビル群2.9%、対照群3.8%であった(RR:0.76[95%CI:0.46~1.28]、p=0.30)。また、人工換気を受けていなかった全患者の死亡は、レムデシビル群11.9%、対照群13.5%であり(RR:0.86[0.76~0.98]、p=0.02)、人工換気への進行はレムデシビル群14.1%、対照群15.7%であった(RR:0.88[0.77~1.00]、p=0.04)。 死亡/人工換気への進行の複合アウトカムの発生率(事前に規定されていなかった)は、レムデシビル群19.6%、対照群22.5%であった(RR:0.84[95%CI:0.75~0.93]、p=0.001)。 レムデシビルの連日静注投与への割り付け(非盲検対照との比較で)は、10日間の治療期間中の退院を約1日遅らせた。 なお、レムデシビル非使用と比較したレムデシビルのすべての無作為化試験における死亡率のメタ解析では、類似した所見が得られたという。

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第108回 医療施設はウクライナ軍の逃げ場!?だからロシアは狙うのか

現在、新型コロナウイルス感染症(以下、新型コロナ)の1日の新規陽性報告数は、ゴールデン・ウイークで人同士の接触が増えたことから、一時的に増加傾向にあるようだ。しかし、今年に入って始まった第6波のピーク時から考えれば、全体としてはすでに減少傾向にある。そして2月に始まったロシアによるウクライナ侵攻により、一般向けニュースの様相は変わってきた。実際、私が記事を提供するインターネットの情報サイトの編集者からは「もうコロナは読まれなくなってきているので、書くなら短めで。それより、ぜひウクライナのほうで何かあれば」とまで言われるようになっている。とくに自分の場合は医療と国際紛争をメインテーマにしているというやや特殊な立ち位置だけに、そうした依頼が来る。そんなこんなことも踏まえ、今回は世界保健機関(WHO)のレポートを中核に据えて、現在のウクライナの医療事情を個人的な経験や感想も交えながら簡単にご紹介しようと思う。世界保健機関(WHO)の報告によると、開戦から5月4日までの時点で医療施設や医療関連の輸送、医療従事者や患者、医療関連物資の倉庫などに対して確認された攻撃が186件。これにより発生した死者は73人、負傷者は52人となっている。日本国内でもこうした事例はたびたび報道されており、「なぜ医療機関が攻撃対象に?」と思う人も少なくないだろう。これは誤爆など意図しない攻撃と意図した攻撃の2つが考えられる。現代では軍事作戦と無関係の施設や人間を攻撃することは、戦時国際法では違法行為とされる。こうした違法行為を防ぐために発展してきたのが戦闘機による空爆や地上からのミサイル攻撃などで使われる精密誘導弾である。これらは主にレーザーなどで目標位置を確認しながら軌道修正を行って着弾する。その命中精度だが、攻撃目標に対して半数以上が命中する半数必中界(CEP:Circular Error Probability)は20~30m程度である。逆に言えば医療機関から20~30m以内に軍事施設などがあれば、結果として誤爆は起こりえるということだ。これが非精密誘導兵器ならば、CEPはおおむね0が1個多くなる。ロシアの場合、精密誘導兵器の保有割合が先進国などと比べて低いと言われているため、必然的に誤爆の確率は高くなる。そして先進国による経済制裁により、現在、ロシアではこうした精密誘導兵器に使う電子部品などが枯渇しつつあると報じられている。やや嫌な見通しになるが、今後はさらにこうした誤爆による医療機関も含む民間施設への攻撃は増加してくると考えられる。一方、意図した攻撃とは、敢えて民間施設を狙うことで一般人の厭戦(えんせん)気分を煽り、「反撃能力を低下させる」あるいは究極のケースでは「その結果、戦争を主導する首脳部を下から突き上げ崩壊させる」ことを意図したものだ。今回のロシアの攻撃についてはむしろこの可能性が強く疑われている。というのもロシアに関しては、近年明らかに“そうしたい”としか感じられない攻撃を中東のシリアで何度も行っているからである。シリアは現在、バッシャール・アル・アサド大統領による独裁政権に抵抗する反政府勢力との間で内戦状態となっているが、ロシアはアサド大統領側に肩入れして軍事介入を行っている。ここでは何度も医療機関を含む民間施設への執拗な空爆をロシア軍が行っている。また、現在ウクライナ入りして取材している私の友人によると、先日までロシアが支配下に置いていた首都キーウ(キエフ)北方のボロディアンカの市街地は見事なまでに一般市民の高層アパートのみが攻撃を受けているという。実はこの2つ以外に医療機関が攻撃を受けるグレーな状況というものが存在する。先日、日本記者クラブで、フランスに本部を置く国際協力組織(NGO)の「国境なき医師団」のメンバーとして3月下旬から4月上旬まで現地に派遣されていた医師の門馬 秀介氏が記者会見したが、会見の中で門馬氏は次のように語った。「これは聞いた話でしかないんですけれど、マリウポリから避難してきたウクライナ人に話を聞くと、医療機関に逃げてくる兵士もいるので、 そこを狙って攻撃をしていると言っている方もいらっしゃいました」 これは「やっぱり」と思った。私もイラクで経験があるのだが、医療機関の周辺で戦闘が起こると、付近の住民はもちろんのこと一部の戦闘員が武装したまま逃げ込んでくることがあるのだ。少なくともそこを拠点に攻撃を開始でもしなければ、医療機関側も避難者として兵士を受け入れるしかない。自分もこの経験をした時は「勘弁してほしい」と内心では思っていたものの、兵士に面と向かってそうは言えなかった。ちなみに自分以外にもこうした経験を持つ取材者はいて、皆で意見が共通しているのが、逃げ込んでくるのは、多くは若年の徴集兵だということ。まあ経験値も少ない彼らは恐れが先に立つので、ある意味やむを得ないとも思う。もっともこうした事実があったとしても、医療機関への攻撃が正当化されるものではない。さて、WHOのレポートでは、ウクライナに展開しているWHOの救急医療チームが3月12日~4月30日までに提供したケア件数は3,472件で、その内訳は感染症が17%、外傷が12%、その他が62%。意外に外傷は少ないと思われるかもしれないが、あくまでWHOが把握している範囲である。そもそもWHOが活動する地域は最前線からある程度後方になることを考えれば、そこまでアクセスできないケースや前線近傍で対応しているケースも考えられるため、そもそもが過少報告になっている可能性が高いと言える。もっとも感染症の蔓延についてはWHOもかなり懸念しているようだ。日本国内でも多くの人が報道で目にしているように、一般市民の中には地下の避難所などで長らく避難生活を強いられている人も少なくない。そしてこれもまた報道で目にしているようにその環境はお世辞にも衛生的とは言えない。実際、WHOもレポートで「コレラ、はしか、ジフテリア、新型コロナなどのような病気の発生リスクは、水、下水設備、衛生状態へのアクセスの欠如、空爆シェルターと集合避難センターの混雑状態、通常および小児期の免疫獲得が最適ではないなどの事情から悪化している」と指摘している。WHOによると、4月28日~5月4日までの間に報告されたウクライナでの新型コロナ新規陽性者は2,886人、死亡者は52人。この前の1週間と比べ、それぞれ37%と29%減少しているが、 WHOは「新型コロナの症例と死亡は過少報告されているため、これらの数値は慎重に解釈する必要がある」と指摘している。むろんこの状況でウクライナ全土での公的サーベイランスが平時同様に機能している可能性は極めて低いため当然の指摘だろう。一方、WHOレポート内ではメンタルサポートへのアクセスが制限されている結果として、虐待や自傷行為も含むメンタル問題が増加することへの懸念も簡潔ながら言及されている。前述の門馬氏も移動診療所での診療経験からこの点の重要性を指摘していた。門馬氏の通訳を担当した現地の英語教師が、問診の通訳最中、患者が避難に至る訴えなどを聞いているうちにショックを受けて泣き出してしまうのだという。門馬氏は「(ウクライナの人たちは)戦争が扉1 枚隔ててすぐ横にある状態で心理状況が不安定。そのギリギリの中でやっているので、何か1つのことで急に泣き出してしまうことを実感した」と語っている。そして私個人の経験では、紛争地でのメンタルの問題は戦闘状態が長期化するほど複合的にさまざまな問題をもたらすと感じている。おおむね戦闘が長期化している地域では、メンタル面でどん底に落ち込んでしまう人とその状態に慣れてしまう人がいる。どん底に落ちた人の一部は薬物中毒などに走る。実際、私が過去に取材した紛争地では違法薬物が半ば堂々と売買されているシーンを目にすることは稀ではなかった。しかも医療アクセスが限定的となっているため、こうした人たちが医療的ケアにアクセスできる機会は限られているため、どんどん泥沼に落ち込んでしまう。一方で、打ち続く戦闘状態の中で半ば正常性バイアスらしきものが働き、その状態にメンタル的に慣れてしまう人もある種の問題を引き起こす。どういうことかというと、慣れっこゆえの不注意さで戦闘に巻き込まれて負傷したり、命を落としたりということが少なくないのだ。自分が以前、内戦中の旧ユーゴのボスニア・ヘルツェゴビナを取材した時のことだ。私の通訳をしてくれたのはサラエボ在住の男子大学生。その彼が市街地のある場所を通り過ぎる時、いつもなぜか寡黙になった。彼と仕事をするようになって3回目の時、私は彼に思い切ってそのことを尋ねてみた。すると彼はため息と苦笑い交じりで次のように話してくれた。「ここさ、高校時代の同級生が撃たれて死んだところなんだ。敵側のスナイパーの射程に直接入るところでね。うちらは毎日ここを走り抜けて高校に行っていたんだけど、ある時、自分と友人も含め5人で集まって『いつもよりやや遅めの走りで肝試ししよう』となってね。自分は4人目で何ともなかったんだけど、5人目の彼がやられてしまった。今考えると何でそんな遊びしちゃったんだろうって」戦闘に慣れるということはそういう負の側面もあるのかと何とも言えない気持ちになったことを今でもはっきり覚えている。ロシアによるウクライナ侵攻はまだ当面終わりそうにない。この状態が長く続くほど、私もまたこのエピソードを何度も思い返すことになるだろう。何とも気が重くて仕方がない。

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第108回 日本ではいつまで続く?各国のマスク着用解除、メリット・デメリットを検証

ゴールデンウィーク中は、マスクを外して散歩やジョギングなどをしている人が目に付いた。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のもとで、海外ではマスク着用義務が解除された国々が増え、日本でも屋外などでマスクを外せる条件や時期について議論が出始めた。一方で、マスクの着用により口呼吸が癖になった人がマスクを外しても口呼吸することで体に弊害を及ぼす可能性も指摘されている。また、各国で報告されている原因不明の子供の肝炎には、マスク着用が新型コロナ以外の感染症にかかりにくくし、免疫力が低下したことが背景にあるのではとの見方もあり、マスク着用の功罪についての議論や研究の必要性が指摘されている。外出時に着用必須の中国、身を守るために着ける韓国世界のマスク事情を見てみると、上海に続き北京もロックダウンになった中国は、ゼロコロナ政策により、マスク着用義務はないが、着用しないと外出できず、スーパーなどにも入れてくれないという。韓国は屋内も屋外もマスク着用義務があり、違反者には罰金が科せられていた。3月16日には1日の新規感染者数が62万人と過去最多になったが、その後、感染者数の減少に伴い規制緩和を進め、5月2日からは屋外のマスク着用義務が原則解除された。感染者の隔離義務もなくなるが、未感染者の中には「自分の身を守るため、マスクは着用する」という声が多いという。欧米に目を転じると、英国では1月27日、交通機関や屋内でのマスク着用義務が解除され、2月24日には新型コロナ対策の法的規制がすべて撤廃された。感染者の隔離義務もなくなった。そもそも屋外ではマスク着用は義務化されたことがないため、1月上旬、オミクロン株の感染拡大が一番ひどい時は、新規感染者数が1日当たり20万人超いたが、それでも屋外でマスクを着用している人の割合は2割ぐらいだった。コミュニケーション上、デメリット感じる米英現在、介護施設や病院の中では、マスクの着用を義務付けているところもある。ただ、英国ではマスクにデメリットを感じる人も多い。顔をマスクで隠しながらコミュニケーションをとることに抵抗を感じる人は少なくない。とくに子供たちの場合、対人関係を一番学ばなければならない時期にマスクをすることが、コミュニケーション能力の成長を妨げてしまうのではないかと考える教育関係者や親が多い。そのため、これまで学校では11歳未満の子供に対して、マスクを着用する義務はなかった。顔を隠すデメリット以外にも、マスクを着けていると息苦しいとか、コストがかかるとか、廃棄されるマスクの環境への負荷など、マスク着用のデメリットに関して議論がされてきた。それらを踏まえ、英国ではマスクをするしないを個々人で決めているという。米国では感染者数の減少に伴い規制緩和が進み、一部の地域を除いてほとんどの公共交通機関でマスク着用義務が解除された。全米ではマスクを着けている人はほとんどいないが、2年ほど前のコロナパンデミック下で1日800人ほどが死亡したニューヨークでは、1~2割の人がマスクを着用しているという。ただ、米国は移民の国なので、コミュニケーションは笑顔が基本。マスクを着けていると表情が見えないため、そもそもマスク着用は根付かない土壌がある。また、自由の国であるため、義務を押し付けられることを嫌う国民性がある。マスク着用義務は自由の尊重という米国建国の理念に反すると反発する国民も多い。予防策としてのメリットと口呼吸を癖にするデメリットマスクを着けるメリットを改めて考えると、新型コロナをうつさない、もらわないという感染対策が挙げられる。公共交通機関の中で感染しないためには、マスクを着けていたほうが安全だ。一方で、デメリットもある。マスクをすることで口呼吸する人が増えた。鼻呼吸のほうが、フィルター機能があったり温度を調整してくれたりするので、吸った空気が気管に与える影響は軽減される。口呼吸が癖になると、今後マスクを外した時に、口呼吸がもとで体調を崩す人が増える可能性が考えられる。原因不明の子供の肝炎はマスク着用が原因?原因不明の子供の肝炎が十数ヵ国で報告されているが、COVID-19患者の治療に当たっているクリニック院長は「今まではさまざまな感染症にかかることで免疫が保たれたりしていたが、マスクをすることで新型コロナ以外の感染症にかかりにくくなり、その分免疫力が低下して原因不明の疾病にかかりやすくなっている事態に陥っている可能性もある」と指摘する。マクロな視点でマスク着用のメリット・デメリットを考察する時期に来ているのではないだろうか。

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初執刀に向けた準備を完璧にするルーチン【誰も教えてくれない手術記録 】第14回

第14回 初執刀に向けた準備を完璧にするルーチンこんにちは! 手術を描く外科医おぺなかです。新年度になって1ヵ月ほどがたちました。人事異動や新人加入で落ち着かない日々が続いていたと思いますが、5月に入りようやく慣れてきたころでしょうか? 頑張り過ぎて体調を崩してしまうことのないように気を付けましょう。僕が思う外科医の魅力の1つに、「現役でいる間はいつまでも新しい術式を経験できること」があります。虫垂切除やヘルニア手術などから始まり、徐々に消化器がんを中心とした高難度手術へとステップアップしていくわけですが、そのたびにそれぞれの術式の“初執刀”を迎えます。外科医は、そのいくつもの初執刀を一つひとつ乗り越えて一人前になっていくのですよね。今回は、これから初執刀を経験するであろう先生方に向けて、僕がこれまで行ってきた「初執刀前」のルーチンを紹介します。初執刀は誰しも緊張するものなので、万全の準備をして、自信を持って手術に臨めるようにしましょう。おぺなか流・初執刀前のルーチン(1)術前サマリーの作成手術前に患者さんの情報をできるだけ集め、術前サマリーとしてまとめましょう。術前サマリーの作成とカンファレンスでの症例提示は、多くの施設で執刀医が担当していると思います。術前サマリーには、病歴や検査結果だけでなく、体型や血管走行異常なども記載し、術前の臨床所見に基づいた切除標本の予想展開図まで作成できるといいですね。(2)手術記録の下書き通常は手術後に書く手術記録ですが、僕は手術前に手術記録を下書きしています。あたかも手術を実際に行った後のように、患者背景(病状/解剖構造)に沿って手術内容を文章とイラストにまとめてみると、うまく描けないところは理解が不十分だと気付き、手術前に押さえるべきポイントが浮き彫りになります。ちなみに、術後に書く正式な手術記録は、この下書きを修正して作成すれば非常に時短になるのでおすすめです!(3)手術書・解剖学書の熟読僕は初執刀の術前に必ず手術書・解剖学書を一通り読むようにしています。ポイントとしては、ただ何となく読むだけでなく、読みながらコツやピットフォールをメモなどに書き出しておくと手術直前にも振り返りやすいです。また、複雑な解剖構造や手技などを自分なりにイラスト化してみるのも良いと思います。頭の中の情報が可視化され、手術記録を書く際にも応用できますよ!画像を拡大する参考:解剖学書をまとめた一例(4)手術ビデオ・セミナー動画の聴講初執刀前の準備では、本や資料だけでなく映像資料も必ず確認しましょう。自施設の過去の手術ビデオがあれば、絶対に見ておくべきです。また、医師会員向けサイトには各分野のエキスパート医師が執刀した手術ビデオや教育・啓発を目的としたセミナー動画が数多くあります。自施設の手術とエキスパートの手術を見比べて違いを確認しておくのも非常に勉強になります。(5)道具を使った手術シミュレーション余裕があれば、シミュレーターや腹腔鏡トレーニングボックスを用いて、実際に手を動かしてみると手術のイメージがより強固となります。下の写真は、僕が実際に行った膵頭十二指腸切除術の膵管空腸吻合に向けたシミュレーションです。100円均一などで材料をそろえて自作のシミュレーターを作成し、運針の手順や針のまとめ方などを術前に整理することができました。工夫すれば高価なものを使わなくても十分なシミュレーションが可能です。参考:手術シミュレーションの一例(6)上級医との術前打ち合わせ自分なりに準備ができたら、前立ちの上級医と術前に入念な打ち合わせをしておきましょう。自分の手術に対する理解度や意欲を事前に共有しておくと、実際の手術でスムーズにサポートしてもらえると思います。あなたの手術へのやる気や熱意を上級医に思いきりぶつけてください!これだけの準備を完遂するにはそれなりの労力と時間がかかりますが、しっかり準備をして臨んだ手術が成功するというのは、外科医として確かな成長を実感できる瞬間ではないでしょうか。また、患者さんは初執刀かどうかにかかわらず、私たち外科医の技術を信じて手術の成功を祈ることしかできません。その患者さんの覚悟に対する礼儀として、安全に確実に遂行するための努力を惜しまないようにしたいものですね。ぜひ、僕のルーチンを参考に、初執刀の準備に取り組んでみてください!

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早くも議論されるリフィル処方箋の次なる展開【早耳うさこの薬局がざわつくニュース】第88回

調剤報酬改定から1ヵ月が経ちました。大きな変更の1つとしてリフィル処方箋の導入がありましたが、皆さんの薬局ではもう受け取られましたか?日本チェーンドラッグストア協会は4月15日の定例会見で、(中略)池野会長は、4月からスタートしたリフィル処方についても言及。ウエルシアHDでは「思ったより多い」との印象を語った。同社では、開始2週間で約600枚あまりのリフィル処方箋を応需。全処方の0.08%程度を占めるまでに伸長していることを明らかにした。(2022年4月18日付 RISFAX)全処方箋の0.08%ということは、1,000枚に1枚弱の割合です。この記事の中で「思ったより多い」というコメントがありますが、私も医師会や一部の保険医協会の反対があるわりには「意外と多い」という印象を受けています。まだ様子見の医師も当然多く、リフィル処方箋を扱ったことがない薬局も少なくないかもしれませんが、早くも「次の展開」が検討されています。2022年4月13日に開催された財政制度等審議会財政制度分科会において、リフィル処方箋について以下のような資料が提示され、議論がなされています。日本は世界有数の受診回数の一方で長期にわたり処方内容に変更がない処方(長期Do処方)が多いその診療密度が薄く頻繁な外来受診が患者負担および利便性を損なわせている新型コロナ禍により、リフィル処方箋導入のニーズは高まってきた医療の質を担保しながら、国民負担の軽減ができるリフィル処方箋の導入により医師から薬剤師へのタスクシフトが行われ、処方の見直し、重複投与や残薬の解消にもつながる可能性がある今後、フォローアップをしながら、周知・広報を図り、積極的な取り組みを行う保険者を各種インセンティブ措置により評価していくべきである今後、どういった処方内容でリフィル処方箋が発行されているのかを明らかにするとともに、「リフィル可」欄に打ち消し線を入れるなどのリフィル処方に対応しない方針を打ち出している医療機関を精査してフォローアップする旨が書かれています。この積極的な感じだと、次の報酬改定でさらなるインセンティブが付く可能性がありそうです。リフィル処方箋はまだレアケースですが、これからどんどん増えていくのではないかと思います。リフィル処方箋をまだ受けていないという薬剤師は、初めての受付でバタバタしないように、また処方元の医師にスムーズにフィードバックできるようにルールを見直しておきましょう。そして、意外と盲点なのがリフィル処方箋の紛失。なくさないように患者さんに注意を促す必要があります。お薬手帳に挟んだり医療証と一緒にしておいたりするなど、具体的な提案をしてみてはいかがでしょうか。参考1)令和4年4月13日開催財政制度等審議会財政制度分科会資料

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英語で「~をお勧めします」は?【1分★医療英語】第27回

第27回 英語で「~をお勧めします」は?I’d like to lose weight.(体重を減らしたいと思っています)It’s advisable to take regular exercise.(規則的に運動することをお勧めします)《例文1》It’s recommended to go to bed at the same time every night.(毎晩同じ時間に就寝することが推奨されています)《例文2》It’s advisable to quit smoking.(禁煙することが望ましいです)《解説》治療方針や生活指導をするに当たり、何かを提案したり、医学的に推奨されていることを説明したりする場合には、「〜することが良いとされている」「何かをしたほうがいい」という意味の“It’s advisable to do〜”または“I recommend you to do〜”や“It’s recommended to do〜”がよく使われます。「すべき」と言いたいときにまず出てくる“should”や“had better”の場合、かなりきつい言い方に聞こえてしまうので、禁忌事項の説明など、使う場面を限定したほうがよいでしょう。たとえば、“You should avoid binge drinking.”(アルコールの過量摂取は避けるべきです)のように使います。また、“suggest”(提案する)を用いる場合には、“I suggest that you stop smoking.”のようにthat節をとり、“suggest to do〜”という構文はとらないのでこちらも気を付けてください。少し違った言い方では、“It would be great if you do〜”(〜できれば素晴らしいですね)、“The best thing to do is〜”(一番いい方法は〜することです)といった言い方で、何かを提案することもできます。“It would be great if you could cut down on your sugar consumption.”(砂糖の摂取量を控えられるといいですね)といった具合です。患者さんとのやりとりの中で、「こうしたほうがいい」「これは避けたほうがいい」という提案をする場面は多いと思いますので、定型表現として覚えておくと便利ですよ!講師紹介

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診療所の売れ行きに直結する「概要書」の大切さ【ひつじ・ヤギ先生と学ぶ 医業承継キソの基礎 】第39回

第39回 診療所の売れ行きに直結する「概要書」の大切さ漫画・イラスト:かたぎりもとこ医業承継において自院(承継案件)を買い手にアピールするうえで、欠かせないのが「概要書」です。概要書とは「インフォメーション・メモランダム」や「インフォメーション・パッケージ」などとも呼ばれ、「自院(承継案件)をアピールするうえで必要な情報を買い手にわかりやすくまとめたプレゼンテーション資料」を指します。【概要書の基本構成】(1)診療所名(2)経営情報―経営者プロフィール―財務情報―患者情報(科目別の構成比など)―物件情報(テナント)(3)診療圏情報―推定の1日当たり外来数―競合医院情報(4)譲渡条件 仲介会社は、まずは概要書で買い手に承継案件を提案し、その後、補足情報として生データを送付する、というのが丁寧な仲介業務です。しかし、概要書作りは手間が掛かるため、生データをそのまま買い手に見せるだけ、といった仲介会社も多いのが実情です。【生データとは】(1)診療所のホームページ(2)確定申告書(3)賃貸借契約書…買い手側が税理士など財務や医院経営に詳しい方であれば、このような生データでも解釈できるでしょうが、買い手の多くは勤務医であり、確定申告書の読み解き方などには不案内であることがほとんどです。大量の生データを見せられても、買う買わないの判断がつかない、というのが実際でしょう。よって、仲介会社は成約率を上げるため、承継案件の情報をわかりやすく、また効果的に魅力的に買い手に伝えることが重要な役割となりますが、日々の業務の忙しさからこれをしない、もしくは概要書は作ったものの、中身が薄くなっていることがあります。仲介会社を選定する際には、各社に概要書の雛形(サンプル)を提示してもらい、仕事の丁寧さを確認してから依頼するのも一手でしょう。

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第49回 リスク比・オッズ比算出の基本となるクロス集計とは?【統計のそこが知りたい!】

第49回 リスク比・オッズ比算出の基本となるクロス集計とは?クロス集計(Crosstabs)は、カテゴリーデータである2つの項目(変数)をクロスして集計表を作成することにより、項目相互の関係を明らかにする解析手法です。たとえば「不整脈症状の有無の割合」、「治療満足率」など明らかにしたい事柄を「目的変数(または結果変数)」と言います。これに対し、どのような属性(性別、年代、居住地域など)の人で満足率が高いか、どのような理由(クリニックの受付の対応、治療についての説明など)で満足率が高いかを明らかにしたいときの「人々の属性」や「理由」を「説明変数(または原因変数)」と言います。クロス集計は、説明変数と目的変数との関係を明らかにする手法であり、原因と結果の関係、すなわち因果関係を解明する手法ともいえます。■2項目の具体例でひも解く2つの質問項目のそれぞれのカテゴリーデータで同時に分類し、表の該当するセル(マス目)に回答人数および回答割合を記入した表のことを、「クロス集計表」と言います。表1のクロス集計表の*印がついたセルを見てください。表1 クロス集計表上段は喫煙で「吸う」と回答した人のうち、不整脈症状が「ある」と回答した人が30名いることを示し、下段は「吸う」と回答した80名のうち、不整脈症状が「ある」と回答した30名の割合(回答割合)である37.5%を示しています。クロス集計表において、表の上側に位置する項目のことを表頭項目(あるいは集計項目)、表の左側に位置する項目を「表側項目(あるいは分類項目)」と言います。また、このようなクロス集計表を作成するとき、「表側項目と表頭項目をクロス集計する」あるいは「表頭項目を表側項目でブレークダウンする」と言います。■クロス集計の種類と見方1)クロス集計表の種類クロス集計表は一番左側の列の回答人数に対する割合を計算しているので、横の割合の合計が100%になります。この表のことを「横%表」と言います。一番上側の行の回答人数に対する割合を計算した表は「縦%表」と言います。通常、クロス集計表は横%表を適用します。縦%を求めたい場合、表側を不整脈症状有無、表頭を喫煙有無と逆転させて横%を算出します。目的によっては割合のみの表を作成することがあり、その場合、%ベースの回答人数を欄外に表記します(表記例:表2欄外)。先のクロス集計表のように回答人数と割合を併記した表を併記表、表2のように割合のみを表記する表を「分離表」と言います。表2 クロス集計表・分離表2)表頭項目、表側項目の決め方クロス集計表を横%表で作成する場合、クロス集計表の表頭は目的変数(結果変数)の項目、表側は説明変数(原因変数)の項目とします。3)クロス集計表の見方横%表は、表頭項目の任意のカテゴリーに着目し、そのカテゴリーの割合を縦に比較します。先のクロス集計表は、不整脈症状有無の「ある」に着目すると、喫煙有無の割合は、「吸う」37.5%、「吸わない」16.4%で、「吸う」は「吸わない」を上回っていると解釈します。4)%ベースのn数%ベースの回答数をn数あるいは「n」と言います。n数が30未満の場合、回答割合のブレが大きくなるので、回答割合は参考値とします。たとえばnが10で、回答数が1変化すると、%が10%も変化しますが、nが30の場合は3.3%の変化だからです(表3)。クロス集計表の見方のポイント集計は横に! 解釈は縦に!■さらに学習を進めたい人にお薦めのコンテンツ統計のそこが知りたい!第11回 リスク比とオッズ比の違いは?「わかる統計教室」第2回 リスク比(相対危険度)とオッズ比セクション1 分割表とリスク比セクション2 よくあるオッズ比の間違った解釈

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事例049 骨粗鬆症治療のプラリア皮下注で査定【斬らレセプト シーズン2】

解説骨粗鬆症の患者に行ったデノスマブ(商品名:プラリア皮下注)60mg(以下「同注射」)が、B事由(医学的に過剰・重複と認められるものをさす)にて査定となりました。1筒当たりの薬価が高額のためにカルテを確認しました。カルテの前回受診日には、「次回来院予定は、6ヵ月後」と患者に説明したことが記載されていました。今回は、そろそろ6ヵ月となるからと来院された模様です。医師は、「実際には5ヵ月と少しの来院であるが、おおむね6ヵ月となるために注射は可能」と判断して実施されていました。レセプトには、前回と今回の注射施行日が記載されています。その他のコメントは記載がありませんでした。同注射の添付文書には、「骨粗鬆症の患者には60mg1筒を6ヵ月に1回、皮下注射する」と記載されています。審査支払機関では期間制限のある投与に対しては厳密に審査がなされます。このような事例では、計算時やレセプト点検時における対応ができません。大きな金額の査定につながることになります。査定対策として医師には、投与期間に期限のある薬剤に対しては患者に再度の来院を依頼していただき、医学的にやむを得ず期限を外れて必要と判断された場合には、カルテとレセプトにその旨を記載していただくことをお願いしました。

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高齢者の認知症発症率、人種や民族で異なる/JAMA

 55歳以上の約187万人を平均約10年間追跡したところ、認知症発症率は人種/民族によって有意に異なることが認められた。米国・カリフォルニア大学のErica Kornblith氏らが、米国退役軍人保健局(VHA)医療センターで治療を受けた患者を対象とした後ろ向きコホート研究の結果を報告した。米国では、VHAで治療を受ける患者を含めて人種/民族の多様化が進んでおり、公衆衛生上の重要な課題である認知症は人種/民族的マイノリティの高齢者で発症率が高くなる可能性が示唆されていた。著者は、「人種/民族による差異の原因機序を理解するためには、さらなる研究が必要である」とまとめている。JAMA誌2022年4月19日号掲載の報告。55歳以上の約187万人について人種/民族と認知症発症との関連性を検討 研究グループは、1999年10月1日から2019年9月30日(最終追跡調査日)までにVHA医療センターで治療を受けた55歳以上の成人患者計949万9,811例から、各年度5%を無作為抽出(重複者は除外)し、無作為抽出日(ベースライン)前2年間ならびに追跡期間にそれぞれ1回以上の診察を受けた適格患者186万9,090例について解析した。 National Patient Care Databasesから人口統計学的情報と認知症診断、Vital Status File Databasesから死亡に関する情報を入手し、居住地の郵便番号から米国疾病予防管理センター(CDC)による地域区分を特定した。人種/民族は、アメリカ先住民/アラスカ先住民、アジア人、黒人、ヒスパニック系、および白人の5つに分類した。ベースライン期間に認知症が認められた人、性別のデータが欠損している人、人種/民族が“その他”または不明の人は解析から除外した。 主要評価項目は、認知症の診断(ICD-9または10)。年齢を時間軸とし、死亡の競合リスクを考慮したFine-Gray比例ハザードモデルを用い、人種/民族と認知症診断までの時間との関連を検討した。平均約10年間追跡、人種/民族間で有意差あり、黒人とヒスパニック系で高い 解析対象186万9,090例の患者背景は平均(±SD)年齢69.4±7.9歳、女性4万2,870例(2%)、アメリカ先住民/アラスカ先住民6,865例(0.4%)、アジア人9,391例(0.5%)、黒人17万6,795例(9.5%)、ヒスパニック系2万663例(1.0%)、白人165万5,376例(88.6%)であった。 平均追跡調査期間10.1年において、24万3,272例(13%)が認知症を発症した。年齢調整後の認知症発症率(1,000人年当たり)は、アメリカ先住民/アラスカ先住民14.2(95%信頼区間[CI]:13.3~15.1)、アジア人12.4例(11.7~13.1)、黒人19.4例(19.2~19.6)、ヒスパニック系20.7例(20.1~21.3)、白人11.5例(11.4~11.6)であった。 白人に対する完全補正後ハザード比は、アメリカ先住民/アラスカ先住民1.05(95%CI:0.98~1.13)、アジア人1.20(1.13~1.28)、黒人1.54(1.51~1.57)、ヒスパニック系1.92(1.82~2.02)であった。米国のほとんどの地域で、年齢補正後認知症発症率は黒人およびヒスパニック系で高く、アメリカ先住民/アラスカ先住民、アジア人および白人は類似していた。

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オンライン診療入門~導入の手引き~第1版を公表/日医

 日本医師会・長島 公之常任理事が、『オンライン診療入門~導入の手引き~』作成について定例記者会見で報告した。本手引きは、かかりつけ患者に情報通信機器を用いたオンライン診療の実施を検討している医師を対象に必要な情報をとりまとめたもので、今後現場の意見などを踏まえ、適宜更新される予定。関連情報は日本医師会ホームページにまとめられている。小規模でもオンライン診療を導入したい医師向け 長島氏は、「オンライン診療は、地域で患者さんに寄り添うかかりつけ医が、必要に応じて対面診療と適切に組み合わせて行うことで、患者さんの安全性と利便性を向上させることができる」と日医としての考えを述べた。 オンライン診療を始めるに当たっては、厚労省の「オンライン診療の適切な実施に関する指針」を確認した上で、研修(無料)の受講が必須である(※「電話再診」のみなら不要)。研修プログラムは、5科目で計150分ほどの講義と各科目につき10題の演習問題を解くe-learning形式で、厚労省のホームページから申し込むことができる。なお、「医籍登録番号」とその登録日付が必須項目となっている。 その他、オンライン診療で作成が必要となる同意書・治療計画のサンプルや、セキュリティやプライバシーに関する注意点、通話アプリを利用する手順などがまとめられ、あらかじめ確認・準備すべきことが具体的に示されている。 同氏は「本手引きの提供などの活動を通じて、かかりつけ医が必要な時に適切にオンライン診療を実施できるよう、日本医師会としてしっかりとサポートしていきたい」とまとめた。

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第107回 会長選前に日医で内紛勃発、リフィル処方箋導入で松原副会長が中川会長を批判

中川会長を批判する文書を大阪府地区医師会役員宛に送付こんにちは。医療ジャーナリストの萬田 桃です。医師や医療機関に起こった、あるいは医師や医療機関が起こした事件や、医療現場のフシギな出来事などについて、あれやこれや書いていきたいと思います。ゴールデンウイーク前半は残雪期の春山を楽しむため、尾瀬の燧ヶ岳を登って来ました。群馬県側の大清水登山口から長蔵小屋に入り一泊。翌日、長英新道ルートでピークを目指しました。この時期の尾瀬はまだ積雪がかなりあり、冬山装備も必要なので一般登山者は少なく、静かな山旅を堪能できます。実際、長蔵小屋の宿泊はわずか4パーティーと快適だったのですが、食堂での食事はマスク着用で飲酒は禁止、会話も最小限でという厳格ルールには参りました。東京の飲食店の多くは、コロナ前と同じような活気が戻ってきています。山の中でももう少しルールを緩めてもいいのでは、とお通夜のような食事を取りながら思った次第です。さて、リフィル処方箋を巡って、日本医師会で“内紛”が起きています。4月27日付のRISFAXは「日医・松原副会長が中川会長を猛批判」という記事タイトルで、日本医師会の松原 謙二副会長が自身の地元の大阪府地区医師会役員宛に、長年日医が反対してきたリフィル処方箋導入を今回の改定で“飲ん”でしまった中川 俊男会長を批判する文書を送ったと報じました。「わずかな見かけだけのプラス改定のために禁じ手を用いるなど言語道断」同文書では、リフィル処方箋について「診察を省略して、 患者の希望と薬剤師の判断に任せるなど、患者を守る医師としての処方権を放棄したも同然」と主張。リフィル処方の導入を巡る経緯については「厚生労働省幹部から伝え聞いた話」として、財務省と厚労省から5つの医療費抑制の提案がなされ、中川会長が「表面上のプラス改定のためにリフィル処方を選んだ」としています。その上で、中川会長の対応について「わずかな見かけだけのプラス改定のために禁じ手を用いるなど言語道断」と強く批判しています。m3.com等の報道によれば、同じ27日、定例記者会見を行った中川会長は、「報道されている内容は、改定率や改定の経緯も含めて、日医とは違う考えをお持ちだということ」反論、「日医がリフィル処方箋の導入を求めて導入されたという事実はない。後藤 茂之厚労相と鈴木 俊一財務相の大臣折衝は非常に厳格なものであり、そこで政府としての結論として導入を決めたということ」と話したとのことです。この日の定例記者会見は、日医が新たにまとめた「かかりつけ医」の機能などの考え方を初めて公表する重要な場でしたが、松原副会長は出席予定だったにもかかわらず欠席しています。次期会長選に出馬する意向を固めた中川会長現職の副会長が会長を批判する文書を出すのは極めて異例のことです。ただ、既にこの批判文書に至る前哨戦がありました。それは、3月27日に開かれた日本医師会の臨時代議委員会です。茂松 茂人代議員(松原副会長の出身母体である大阪府医師会会長)が質問で、「リフィル処方箋の導入は改定率との交換条件だったとの一部報道もある」としてその真偽をただしたのです。この時も中川会長は交換条件について「全くそんな事実はない」と回答しています。またこの場では柵木 充明代議員(愛知県医師会会長)も、「使途が決まっている分を除いた上で、リフィル処方箋導入などによるマイナス要因を考慮すればマイナス改定ではないか」とリフィル処方箋導入を批判する質問をしています。俄然きな臭くなってきた日本医師会ですが、これらの動きは中川会長が6月に行われる予定の次期日本医師会長選に出馬する意向を固めたことと無縁ではないでしょう。4月22日付の北海道新聞は中川会長が再選を目指して会長選に出馬する意向を固めたとして、「やらなければならない仕事が山積している。(出馬を)前向きに検討している」という中川氏の言葉を報じています。ポスト中川の擁立の動き活発化かちなみに中川会長が「表面上のプラス改定のためにリフィル処方を選んだ」というのは、本連載の「第92回 改定率で面目保つも「リフィル処方」導入で財務省に“負け”た日医・中川会長」でも詳しく書いたように、ほぼ事実として捉える向きは多いようです。しかし、それを事実と認めてしまっては、日医会長の面目が立ちません。茂松・大阪府医師会会長、松原・日医副会長ら大阪府医師会陣営や、愛知県医師会陣営が次期日医会長選に挑むかどうかは現時点ではわかりませんが、松原副会長の批判文書が中川会長の“弱点”(今回の診療報酬改定での“失態”)を突いたのは確かでしょう。中川会長を巡っては、政界とのパイプの細さや、コロナ対応などで国民のさまざまな批判を浴びたことなど、その指導力を疑問視する声もあります。最近では4月20日の定例記者会見で「マスクを外すのは新型コロナウイルス感染症が終息した時」「ウィズコロナの状態でマスクを外す時期は来ない」などと発言したことに対し、脱マスクが進む海外の状況とのズレに、ネット上では批判が飛び交いました。そして1週間後の4月27日の定例記者会見では「屋外で、他の人と十分距離がとれている場合は、マスクを外す対応をとって頂きたい」と発言し、その一貫性のなさが再び話題となっています。また日医の政治団体、日本医師連盟の集票力にも陰りが見えています。夏の参院選を控え、ポスト中川会長の擁立を画策する動きが活発化するかもしれません。もっとも、大阪府医師会陣営は、リフィル処方箋やオンライン診療などに対し、中川会長よりもさらに激しい反対を表明しており、岸田政権側からどう見られるかは微妙です。日医会長選は6月4日に立候補を締め切り、6月25日の定例代議員会で投開票が行われます。松原副会長の処遇も含め、これから1ヵ月間の日医内部の動きに注目です。

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国内初の遺伝子組み換えコロナワクチン「ヌバキソビッド筋注」【下平博士のDIノート】第97回

国内初の遺伝子組み換えコロナワクチン「ヌバキソビッド筋注」今回は、「組み換えコロナウイルス(SARS-CoV-2)ワクチン(商品名:ヌバキソビッド筋注、製造販売元:武田薬品工業)」を紹介します。本剤は、わが国で4番目の新型コロナウイルスワクチンとして承認された国内製造ワクチンです。これまでさまざまな理由により先行3剤の新型コロナワクチン接種が受けられなかった人や3回目接種の新たな選択肢として期待されています。<効能・効果>本剤は、SARS-CoV-2による感染症の予防の適応で、2022年4月19日に承認されました。接種対象は18歳以上です。なお、本剤の発症予防効果の持続期間は確立していません。<用法・用量>初回免疫1回0.5mLを2回、通常3週間の間隔をおいて筋肉内に接種します。本剤は2回接種により効果が確認されていることから、原則ほかのSARS-CoV-2に対するワクチンと混同することなく2回接種します。追加免疫1回0.5mLを筋肉内に接種します。通常、本剤2回目の接種から少なくとも6ヵ月経過した後に3回目の接種を行うことができます。<安全性>臨床試験で報告された主な副反応は、圧痛75.3%、疼痛62.2%、疲労52.9%、筋肉痛51.0%、頭痛49.9%、倦怠感41.0%、関節痛23.9%、悪心・嘔吐14.5%などでした。また、重大な副反応として、ショック、アナフィラキシー(頻度不明)が設定されています。<患者さんへの指導例>1.このワクチンを接種することで新型コロナウイルスに対する免疫ができ、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の発症を予防します。2.医師による問診や検温、診察の結果から接種できるかどうかが判断されます。発熱している人などは本剤の接種を受けることができません。1回目に副反応が現れた場合は、2回目の接種前に医師などに伝えてください。3.本剤の接種当日は激しい運動を避け、接種部位を清潔に保ってください。接種後は健康状態に留意し、接種部位の異常や体調の変化、高熱、痙攣など普段と違う症状がある場合には、速やかに医師の診察を受けてください。4.合計2回を3週間の間隔で筋肉内に接種します。1回目の接種から3週間を超えた場合は、できる限り速やかに本剤の2回目の接種を受けてください。5.初回免疫の2回目接種から少なくとも6ヵ月を経過した人は3回目の接種を受けることができます。6.本剤の接種直後または接種後に、心因性反応を含む血管迷走神経反射として失神が現れることがあります。接種後一定時間は接種施設で待機し、帰宅後もすぐに医師と連絡を取れるようにしておいてください。<Shimo's eyes>わが国で4番目の新型コロナワクチンが登場しました。これまで承認されているワクチンはmRNAワクチンであるコミナティ筋注/同5~11歳用、スパイクバックス筋注と、アデノウイルスベクターワクチンであるバキスゼブリア筋注でしたが、本剤は、初の組み換えスパイクタンパクを抗原とした新型コロナワクチンです。遺伝子組み換えワクチンはすでにB型肝炎ワクチンなどで実用化されており、一般的に安全性が高く副作用が少ないといわれています。今回、国内臨床試験のデータなどをもとに有効性と安全性が確認され、特例承認ではなく通常承認の枠組みが適用されました。本剤は米国・ノババックスが開発し、わが国では武田薬品工業が技術移管を受けて製造販売と流通を担っています。本剤には、免疫の活性化を促進するサポニン由来のアジュバントMatrix-Mが添加されており、組み換えスパイクタンパクと組み合わせることで、SARS-CoV-2に対して中和抗体を作るなどB細胞の賦活化およびキラーT細胞などの細胞性免疫の賦活化が誘導されると考えられています。初回免疫について、米国とメキシコで実施された3万人規模の第III相試験では90.4%、英国で1万5,000人規模の第III相試験では89.7%の発症予防効果が確認されました。国内の日本人に対する臨床試験でも、海外におけるデータと大きく異ならない結果が得られました。副反応としては疼痛、倦怠感などが確認されましたが、ほとんどが軽度~中等度で、既存の新型コロナウイルスワクチンと比べても特別な懸念はないとされています。流通に関しては、凍結を避けた2~8℃での保存であり、通常のワクチンと同様に輸送・保管することが可能です。なお、有効期間は9ヵ月とされ、本剤の1バイアルには10回接種分の用量が充填されています。2022年4月27日、厚生労働省の厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会において、本剤を予防接種法に基づく特例臨時接種で使用するワクチンとして、1~3回目接種での使用を想定し、1~2回目接種に用いたワクチンの種類にかかわらず3回目接種への使用が可能となりました。接種開始時期については5月末目途とされています。参考1)PMDA 添付文書 ヌバキソビッド筋注

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