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1日1回、新規作用機序の潰瘍性大腸炎治療薬「ゼポジアカプセルスターターパック/カプセル0.92mg」【最新!DI情報】第31回

1日1回、新規作用機序の潰瘍性大腸炎治療薬「ゼポジアカプセルスターターパック/カプセル0.92mg」今回は、スフィンゴシン1-リン酸受容体調節薬「オザニモド(商品名:ゼポジアカプセルスターターパック/カプセル0.92mg、製造販売元:ブリストル・マイヤーズ スクイブ)」を紹介します。本剤は、1日1回服用の新規作用機序の潰瘍性大腸炎治療薬であり、既存薬で効果不十分であった患者や利便性の向上を望む患者の新たな選択肢として期待されています。<効能・効果>中等症~重症の潰瘍性大腸炎の治療(既存治療で効果不十分な場合に限る)を適応として、2024年12月24日に製造販売承認を取得しました。本剤は、過去の治療において、ほかの薬物療法(5-アミノサリチル酸製剤、ステロイドなど)で適切な治療を行っても、疾患に起因する明らかな臨床症状が残る場合に投与します。<用法・用量>通常、成人にはオザニモドとして1~4日目は0.23mg、5~7日目は0.46mg、8日目以降は0.92mgを1日1回経口投与します。<安全性>重大な副作用として、感染症(帯状疱疹[2.8%]、口腔ヘルペス[0.6%])など)、進行性多巣性白質脳症(頻度不明)、黄斑浮腫(0.6%)、肝機能障害(4.5%)、徐脈性不整脈(1.7%)、リンパ球減少(10.2%)、可逆性後白質脳症症候群(頻度不明)が報告されています。本剤投与による心拍数の低下は、漸増期間中に生じる可能性が高いので、循環器を専門とする医師と連携するなど適切な処置が行える管理下で投与を開始する必要があります。また、黄斑浮腫に備えて、眼底検査を含む定期的な眼科学的検査を実施する必要があります。その他の副作用は、頭痛、高血圧、γ-GTP増加、ALT増加(いずれも1%以上)、発疹や蕁麻疹を含む過敏症(1%未満)、上咽頭炎、末梢性浮腫、努力呼気量減少、努力肺活量減少(いずれも頻度不明)があります。<患者さんへの指導例>1.本剤は、中等症~重症の潰瘍性大腸炎に用いられる薬です。結腸に浸潤するリンパ球数が減少することで、潰瘍性大腸炎を改善すると考えられています。2.過去の治療において、ほかの薬物療法(5-アミノサリチル酸製剤、ステロイドなど)で適切な治療を行っても、疾患に起因する明らかな臨床症状が残る場合に使用されます。3.服用開始から徐々に用量を増やしていきますが、心拍数が低下することがあるので、異常を感じたら直ちに医師に連絡してください。4.服用中に重篤な眼疾患が現れることがあるので、異常を感じたら直ちに医師に連絡してください。<ここがポイント!>潰瘍性大腸炎(UC)は、主として粘膜にびらんや潰瘍が生じる非特異性炎症疾患です。再燃と寛解を繰り返すことが多く、長期間の医学管理が必要となります。薬物療法には、5-アミノサリチル酸製剤や副腎皮質ステロイドが用いられますが、これらの治療薬が無効であった場合には、免疫調整薬やヤヌスキナーゼ阻害薬、抗TNF抗体製剤、抗IL-12/23抗体製剤などが使用されます。しかし、無効例や通院での注射投与が困難な場合のほか、安全性の問題などで治療薬の変更が生じる懸念もあることから、とくに中等症~重症のUC患者に対しては、既存薬と異なる新たな作用機序で、症状や粘膜損傷などの改善効果が高く、難治性に移行させない経口治療薬が求められていました。オザニモドは、1日1回の経口投与で中等症~重症のUCに効果を示します。オザニモドは、スフィンゴシン1-リン酸(S1P)受容体のサブタイプ1(S1P1)と5(S1P5)に対して高親和性で結合し、リンパ球の遊走を抑制します。これにより、循環血中のリンパ球数が減少することで、炎症性細胞のさらなる動員や炎症性サイトカインの局所的な放出を防ぎ、腸粘膜が継続的に損傷する状況を改善します。日本人の中等症~重症の活動性UC患者を対象とした国内第II/III相試験(J-True North試験)において、主要評価項目である投与12週時点の完全Mayoスコアに基づく臨床的改善率は、本剤0.92mg群で61.5%、プラセボ群で32.3%と、本剤群で統計学的に有意に高い改善が認められました(p=0.0006)。同様に、副次評価項目である投与12週時点の臨床的寛解率は、本剤群で24.6%、プラセボ群で1.5%と、本剤群で統計学的に有意に高い改善が認められました(p=0.0002)。

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「別れた後が地獄」職場内恋愛経験者は約半数!/医師1,000人アンケート

 医師は、結婚したい職業ランキングで上位の常連となっている。では、医師の結婚・恋愛事情は、どのようになっているのだろうか。CareNet.comでは、20~40代の医師1,003人を対象に、結婚・恋愛事情に関するアンケートを実施した(2024年12月25~31日実施)。本アンケートでは、パートナーの有無や出会いのきっかけ・取り組み、パートナーの方の職業、職場内恋愛の経験について聞いた。また、職場内恋愛のエピソードも募集した。特定のパートナーがいる割合は約85% 「配偶者を含む特定のパートナー(結婚/恋愛)の有無」を聞いたところ、「いる」と回答した割合は全体で84.7%であり、男性87.5%、女性73.6%であった。年代別にみると、20代68.3%、30代83.9%、40代90.1%であり、年代が上がるほど「いる」と回答した割合が高い傾向にあった。出会いのきっかけは職場や学校が多い 次に「パートナーとの出会いのきっかけ」を聞いた。その結果「職場の同僚」が最も多く、34.7%であった。次点で「学校(大学・高校)」が多く20.9%であった。「マッチングアプリ・婚活サイト」の割合は6.9%であり、20代では20.2%にのぼった。少数ながら「患者」という回答も得られた(0.2%)。 「パートナーの職業(交際当初)」については、約70%を医療者が占めた。内訳は「看護師」が27.3%、「医師」が26.2%、「薬剤師」が4.1%、「その他の医療者」が11.9%であった。男性では「看護師」が多く(33.1%)、女性では「医師」が多かった(52.7%)。 特定のパートナーはいないと回答した方の「パートナー探しの取り組み」について聞いたところ、約半数(46.5%)が「パートナーは求めていない」と回答した。パートナー探しの取り組みとして多かったものは「友人・知人に紹介を求める」「合コン・イベント・飲み会へ参加する」「マッチングアプリ・婚活サイトを利用する」であった。職場内恋愛経験者は約半数 また、「職場内恋愛の経験」についても聞いた。その結果、「ある」と回答した割合は47.8%にのぼった。男性50.1%、女性38.3%であり、男性のほうが職場内恋愛経験者が多い傾向にあった。年代別にみると、20代29.3%、30代45.0%、40代55.6%であり、年代が上がるほど職場内恋愛経験者が多い傾向にあった。 「職場内恋愛のエピソード(自身の経験以外でも可)」を募集したところ、「職業への理解があるし当直の大変さなども共有できる」といったポジティブなコメントも得られたが、「別れた後が地獄」などの職場内恋愛の難しさ・気まずさに関するコメントも得られた。そのほか、「看護師長に出禁を食らっていた」「医師がモテるというのは幻想」など、さまざまなコメントが寄せられた。【ポジティブな意見・エピソード】・仕事内容(忙しいこと)を理解してくれて助かる(40代男性、放射線科)・職業への理解があるし当直の大変さなども共有できる(20代女性、臨床研修医)・看護師である妻と同じ寮に住んでおり、インフルエンザに罹患したときにいろいろと世話をしてくれて恋に落ちた(30代男性、腫瘍科)【バレる/バレない】・秘密にしてたのに、コロナで濃厚接触者になりバレてしまった(30代男性、精神科)・研修医の頃、同期の研修医がこっそりと病棟看護師さんと付き合っていたが、周りには全員知れ渡っていた。院内でのゴシップは隠せないことを研修医のころに学んだ(30代男性、泌尿器科)・結婚するまでばれなかった(30代男性、血液内科)・指導が厳しいことで有名な先生が特定の研修医にのみ優しい、当直によく一緒に入っているなど噂があり、「あの先生に限って」とみんな笑っていたが、臨床研修終了後に入籍していて驚いた(40代女性、内科)【職場内恋愛の難しさ・気まずさ】・お互いのシフトを完全に把握しているため、閉塞感・圧迫感がすごかった。不安になることも多々あった(20代男性、腎臓内科)・部内恋愛をしたことがあるが、別れた後が地獄だったので二度としないと誓った(20代男性、糖尿病・代謝・内分泌科)・医局内で付き合ってる人が、ケンカや別れた時に正直、周りの人は空気が悪く、迷惑だと思う(40代女性、整形外科)・自分の周囲だと離婚率が高いので、その後が地獄。大抵は女性側が離れていくが、男性側も居心地は当然悪くなる(40代女性、内科)・同期の職員が付き合っていたが、別れた後の気まずさで片方は退職してしまった(30代男性、血液内科)【医師と看護師の関係】・看護師さんを一生懸命口説き落とした人がいる(30代男性、血液内科)・看護師さんから積極的に誘われる(30代男性、精神科)・看護師と医師で付き合っている人は多かった(30代男性、糖尿病・代謝・内分泌科)【不倫】・不倫バレ、職場追放の話を複数聞いて、自分では絶対しないと心に誓った(40代男性、総合診療科)・不倫している医師と看護師が忘年会で喧嘩を始め、なかなかの修羅場であった(40代男性、放射線科)・結婚しているにもかかわらず、いろんな若い女医さんに手を出している医師がいた。最終的には奥さんにばれて慰謝料を請求されたうえで離婚していた(30代女性、呼吸器内科)【交際や出会いのきっかけ】・行きつけの居酒屋が一緒で仲良くなり結婚した(30代男性、形成外科)・当直と夜勤が被ったのがきっかけ(40代男性、小児科)・院長の紹介(40代男性、耳鼻咽喉科)・研修医の同期同士で結婚した(40代男性、麻酔科)・受付のお姉さんに手を出してそのまま結婚した人がいた(30代女性、放射線科)・病院見学に来た学生と研修医が交際し、結婚(30代男性、放射線科)・医師同士での結婚は学生時代から付き合っていたパターンが多い(30代女性、精神科)・真面目に働いていると職場以外で出会う機会がない(40代男性、小児科)【その他のエピソード】・今まで朝早く来ていた人が来なくなって、気が付いたら看護師さんと2人でゆっくり出てくるようになって、当直も同じ日に合わせていた。その後、別の病院に同時に異動したがすぐに別れた(30代男性、呼吸器外科)・自分と別れた恋人が、1年後に後輩から届いた年賀状で結婚していて、驚いたと同時に複雑な感情となった(40代男性、精神科)・後輩女性医師は出入りしている担当MRと結婚し、夫は主夫となり、妻は専門医を取った(40代女性、外科)・同級生に各フロアに友達を作っていた猛者がいたが、看護師長に出禁を食らっていた(40代男性、呼吸器内科)・何もなさすぎて残念ながら書くことがない。巷で言われるような医師がモテるというのは幻想(20代男性、放射線科)アンケート結果の詳細は以下のページに掲載中。https://www.carenet.com/enquete/drsvoice/cg005085_index.html

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フローチャートでわかる 婦人科外来診療パーフェクトブック

臨床ですぐに活用できる問診・診察の実際「産婦人科の実際」73巻11号(2024年11月臨時増刊号)婦人科外来における診察・検査・診断・治療の流れを、可能な限り図やフローチャート形式で見やすく整理し、直感的に使用できる、まさに“タイパ抜群”な臨床マニュアルが完成いたしました! これから経験を積んでゆく産婦人科専攻医にとって、この1冊を手元に置くことで安心して外来診療に臨むことができると確信します。また、専門医がサブスペシャルティ領域以外の診療を行う際にももちろん役立ちます。女性の多種多様な主訴に対応できるだけの知識、診療スキルがすぐに、そして確実に身につく、婦人科外来マニュアルの決定版です。画像をクリックすると、内容の一部をご覧いただけます。※ご使用のブラウザによりPDFが読み込めない場合がございます。PDFはAdobe Readerでの閲覧をお願いいたします。目次を見るPDFで拡大する目次を見るPDFで拡大するフローチャートでわかる 婦人科外来診療パーフェクトブック定価9,350円(税込)判型B5判頁数404頁発行2024年11月企画桑原 慶充ご購入(電子版)はこちらご購入(電子版)はこちら紙の書籍の購入はこちら医書.jpでの電子版の購入方法はこちら紙の書籍の購入はこちら

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敗血症へのβ-ラクタム系薬+VCM、投与順序で予後に差はあるか?

 敗血症が疑われる患者への治療において、β-ラクタム系薬とバンコマイシン(VCM)の併用療法が広く用いられている。しかし、β-ラクタム系薬とVCMの投与順序による予後への影響は明らかになっていない。そこで、近藤 豊氏(順天堂大学大学院医学研究科 救急災害医学 教授)らの研究グループは、β-ラクタム系薬とVCMの併用による治療が行われた敗血症患者を対象として、投与順序の予後への影響を検討した。その結果、β-ラクタム系薬を先に投与した集団で、院内死亡率が低下することが示唆された。本研究結果は、Clinical Infectious Diseases誌オンライン版2024年12月5日号に掲載された。 研究グループは、米国の5施設において後ろ向きコホート研究を実施した。対象は、救急外来到着後24時間以内に、β-ラクタム系薬とVCMの併用による治療が行われた18歳以上の敗血症患者2万5,391例とした。対象患者を抗菌薬の投与順に基づき、β-ラクタム系薬先行群(2万1,449例)、VCM先行群(3,942例)に分類した。主要評価項目は院内死亡率とし、傾向スコアによる逆確立重み付け法(Inverse Probability Weighting:IPW)を用いて解析した。 主な結果は以下のとおり。・β-ラクタム系薬先行群は菌血症(β-ラクタム系薬先行群51.7%、VCM先行群46.4%)、尿路感染症(それぞれ10.3%、7.5%)、腹腔内感染症(それぞれ9.2%、7.7%)が多かった。・VCM先行群は皮膚および筋骨格系感染症(β-ラクタム系薬先行群7.8%、VCM先行群20.0%)、その他の感染症(それぞれ7.3%、10.5%)が多かった。・主要評価項目の院内死亡率は、β-ラクタム系薬先行群13.4%、VCM先行群13.6%であり、未調整の解析では両群間に有意差はみられなかった。しかし、IPW解析ではβ-ラクタム系薬先行群がVCM先行群と比べて、院内死亡のオッズが有意に低下した(調整オッズ比[aOR]:0.89、95%信頼区間[CI]:0.80~0.99、p=0.046)。・サブグループ解析において、敗血性ショックのない集団ではβ-ラクタム系薬先行群がVCM先行群と比べて、院内死亡のオッズが低下した(aOR:0.80、95%CI:0.64~0.99)。その他の集団でも一貫してβ-ラクタム系薬先行群で院内死亡のオッズが低下する傾向にあったが、有意差はみられなかった。・主にVCMを用いて治療されるMRSAが陽性であった集団でも、β-ラクタム系薬先行群はVCM先行群と比べて、院内死亡のオッズが上昇しなかった(aOR:0.91、95%CI:0.55~1.51)。・傾向スコアマッチングを行った場合、院内死亡率について両群間に有意差はみられなかった(aOR:0.94、95%CI:0.82~1.07)。 本研究結果について、著者らは「敗血症治療においてβ-ラクタム系薬とVCMを併用する場合は、β-ラクタム系薬を優先して投与することを支持する結果であった。しかし、本研究は観察研究であり、交絡が残存する可能性を考慮すると、無作為化比較試験による評価が理想的であると考えられる」とまとめた。

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心房細動患者、脳卒中予防のために有益な意思決定支援とは?/BMJ

 非弁膜症性心房細動を有する成人患者において、患者用意思決定支援(PDA)のみ、診療時意思決定支援(EDA)のみ、または両者の実施といった意思決定支援を受けた患者は、それらを受けなかった通常ケアの患者と比較し、意思決定の葛藤が少なくその共有が良好で、より多くの知識を得ていたことが示された。なお、PDAのみであった場合は、意思決定の葛藤に及ぼす影響については統計学的に有意ではなかった。米国・ユタ大学のElissa M. Ozanne氏らが、同国の6つの大学医療センターで実施したクラスター無作為化臨床試験の結果を報告した。心房細動患者のための共有意思決定(SDM)ツールや意思決定支援の手法がいくつか開発されているが、実際の共有意思決定支援の改善に関する、PDAとEDAの効果の違いを比較したデータはなかった。結果を踏まえて著者は、「来院前または外来診療時の意思決定支援を単独または組み合わせて実施することは、通常ケアと比較して有益であることが実証された」とまとめている。BMJ誌2025年1月9日号掲載の報告。患者および医師をそれぞれ意思決定支援実施群、非実施の通常ケア群に無作為化 研究グループは、18歳以上で非弁膜症性心房細動と診断され、血栓塞栓性イベントのリスク因子を1つ以上有し(CHA2DS2-VAScスコア:男性1以上、女性2以上)、抗凝固療法の適応と判断され、脳卒中予防戦略について話し合うための臨床予約が予定されている患者を、PDA実施群または非実施(通常ケア)群に1対1の割合で無作為に割り付けた。臨床医もEDA実施群と非実施(通常ケア)群に無作為に割り付けた。 主要アウトカムは、OPTION12尺度で測定したSDMの質(スコア範囲:0~100、高スコアほど意思決定が共有されていることを示す)、心房細動とその管理に関する知識(7項目からなるtrue/false回答形式の調査、スコアは正答率)、意思決定の葛藤(Decisional Conflict Scale[DCS]、16項目からなる5段階のリッカート尺度の合計を0~100のスコアに変換、低スコアほど患者の意思決定の葛藤レベルが低い)の3つであった。PDAとEDAの併用、およびEDA単独が有用 2020年12月14日~2023年7月3日に1,214例の患者が登録され、適格基準などを満たした1,117例が解析対象となった。臨床医は107例登録され、51例がEDA群、56例が通常ケア群に割り付けられた。したがって患者は、通常ケア群306例、PDA+EDA併用群263例、PDA単独群285例、EDA単独群263例であった。 通常ケア群と比較し、PDA+EDA併用群で、SDMの質が改善し(補正後平均群間差:12.1、95%信頼区間[CI]:8.0~16.2、p<0.001)、患者の知識が向上し(オッズ比:1.68、95%CI:1.35~2.09、p<0.001)、患者の意思決定の葛藤が減少した(補正後平均群間差:-6.3、95%CI:-9.6~-3.1、p<0.001)。 また、EDA単独群でも3つの主要アウトカムすべてにおいて、通常ケア群と比較し有意な改善が認められ、PDA単独群ではSDMの質および知識について通常ケア群と比較し有意な改善が認められた。 その他の評価項目である脳卒中予防のための治療選択や参加者の満足度については、重要な差は観察されなかった。また、診察時間の長さも各群間で、統計学的な有意差は認められなかった。

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小児・AYA世代がん患者等の妊孕性温存に関する診療ガイドライン 2024年12月改訂 第2版

がん・生殖医療の普及等を受け、現状に即した新たな推奨を提示!7年ぶりとなる改訂第2版はMinds 2020に準拠、また推奨作成にはエビデンスだけでなく、価値観や容認性、実行可能性などさまざまな視点における合意形成方法としてGRADEが提唱する「EtD frameworks」を用いた。2017年版で扱った8領域に、肺、耳鼻咽喉・頭頸部、膠原病を加えてパワーアップ。巻頭には各疾患領域の診療アルゴリズムを収載した。医師、看護師、薬剤師、心理士など多職種に向けた、がん・生殖医療の今を集結させた1冊。画像をクリックすると、内容の一部をご覧いただけます。※ご使用のブラウザによりPDFが読み込めない場合がございます。PDFはAdobe Readerでの閲覧をお願いいたします。目次を見るPDFで拡大する目次を見るPDFで拡大する小児・AYA世代がん患者等の妊孕性温存に関する診療ガイドライン 2024年12月改訂 第2版定価7,150円(税込)判型B5判頁数576頁発行2024年12月編集日本癌治療学会ご購入(電子版)はこちらご購入(電子版)はこちら紙の書籍の購入はこちら医書.jpでの電子版の購入方法はこちら紙の書籍の購入はこちら

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自閉スペクトラム症と統合失調症の鑑別に有用な評価尺度は

 統合失調症と自閉スペクトラム症(ASD)は、別々の疾患として認識されているが、症状の類似性により鑑別診断が困難な場合が少なくない。昭和大学の中村 暖氏らは、統合失調症とASDの症状について類似点と相違点の特定、より有用で客観的な鑑別診断法の確立、統合失調症患者におけるASD特性を明らかにすることを目的に、本研究を実施した。Frontiers in Psychiatry誌2024年12月18日号の報告。 対象は統合失調症患者40例(女性:13例、平均年齢:34±11歳)およびASD患者50例(女性:15例、平均年齢:34±8歳)。自閉症診断観察尺度第2版(ADOS-2)およびその他の臨床尺度を用いて評価を行った。 主な結果は以下のとおり。・ADOS-2モジュール4および改訂版では、統合失調症とASDの鑑別は困難であったが、A7、A10、B1、B6、B8、B9を組み合わせた予測モデルは、両疾患を鑑別するうえで、優れた精度を示した。・ADOS-2は統合失調症の偽陽性率が高く、統合失調症患者においてADOS-2すべてのドメインおよび合計スコアと陽性・陰性症状評価尺度(PANSS)の陰性症状スコアとの間に正の相関が認められた。・ADOS-2アルゴリズムにおいて、自閉スペクトラム症のカットオフ値が陽性の患者は、陰性の患者よりも、PANSS陰性症状スコアが有意に高かった。・ロジスティック回帰分析では、ADOS-2アルゴリズム尺度の陽性度は、PANSS陰性症状スコアのみを使用して予測可能なことが明らかとなった。 著者らは「ASDと統合失調症の鑑別には、ADOS-2と複数の項目を組み合わせることにより実現可能であることが示唆された」とし「本知見は、ASDと統合失調症の治療戦略の開発に役立つ可能性がある」と結論付けている。

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新生児マススクリーニングでみつかる長鎖脂肪酸代謝異常症/ウルトラジェニックス

 希少疾病の分野に特化し、多様な治療薬の研究・開発を行うウルトラジェニックスは、希少疾病啓発事業の一環として、「長鎖脂肪酸代謝異常症」をテーマにメディアセミナーを開催した。 長鎖脂肪酸代謝異常症は、運動や空腹などで体内のエネルギー需要が増加するような状況で突然発症することが多い疾患で、わが国では毎年数十人の新患が発生していると推定されている。セミナーでは、専門医からの疾患説明と患者会から患者の現状などについての講演が行われた。心筋症、横紋筋融解症、色素性網膜症などを呈する希少疾病 「長鎖脂肪酸代謝異常症(long-chain fatty acid oxidation disorders:LC-FAOD)」をテーマに大石 公彦氏(東京慈恵会医科大学小児科学講座 主任教授)が、疾患の病態と診療について説明した。 LC-FAODは、長鎖脂肪酸の輸送や分解が障害されることでミトコンドリアでのエネルギー産生不足が生じる疾患。脂肪酸は、心臓、肝臓、骨格筋にとって主要なエネルギー源であり、ミトコンドリアでの脂肪酸酸化は、空腹時や代謝ストレス時の重要なエネルギー供給源となる。これがうまくできないことで、入院、緊急治療、さらには突然死を生じる可能性が出てくる(乳幼児では乳幼児突然死症候群[SIDS]と間違われることがある)。 LC-FAODは、常染色体潜性遺伝疾患であり、父親と母親から変異遺伝子を受け継いだ場合に発症する。患者数は、米国で毎年約100例が、わが国では毎年約10~50例の新生児が本症と診断されている。 LC-FAODは、脂肪によるエネルギー代謝に依存する臓器からさまざまな症状を示すが、主に次の5つの症状がある。(1)心筋症 左心室の筋肉の肥厚が初期に観察されることがあり、拡張型心筋症に進行する可能性がある。また、時には心嚢液貯留を伴う場合もあり、不整脈が心筋症の有無に関わらず発生することがある。(2)横紋筋融解症/骨格筋障害 筋肉痛、筋緊張低下、運動不耐性、ミオグロビン尿、反復性横紋筋融解症がみられることがある。また、これらの症状は持久力を要する運動によって誘発されることが多いが、麻酔やウイルス感染後にもみられることもある。(3)非ケトン性低血糖 時には、けいれん、昏睡、脳損傷を引き起こすことがある。また、肝機能障害(トランスアミナーゼ上昇、肝腫大、高アンモニア血症)と組み合わさって観察されることがよくある。(4)末梢神経障害 とくに三頭酵素欠損症(TFP欠損症)ではより頻繁にみられる(80%以下の患者が何らかの末梢神経障害を持つ)。また、LCHAD単独欠損症の患者では、5~10%が不可逆的な末梢神経障害を発症する。(5)色素性網膜症 LCHAD単独欠損症の患者でよくみられ、30~50%以上の患者が不可逆的な網膜症を発症する。また、約50%で2歳までに網膜に色素変化がみられる。 LC-FAODの臨床表現型は時間とともに変化し、成人期に診断された場合と小児期に診断された場合で異なることがある。また、急激に発生し、入院、救急受診、緊急治療、さらには突然死を引き起こす可能性があり、同じ種類の疾患、さらには同じ疾患を持つ家族内でも、徴候や症状の多様性がみられるのが特徴的である。 心筋症は新生児期から成人期を通じてみられ、低血糖・肝障害は新生児期~青年期に、筋力低下・横紋筋融解症は青年期~成人期でみられる。 LC-FAODの診断について新生児スクリーニング(NBS)では、生後数日以内に乾燥血液スポットを採取し、タンデムマススクリーニングでアシルカルニチンプロファイルを分析。血漿アシルカルニチンの測定により診断ができる。一方で、アシルカルニチン結果が正常な場合や診断確認のために遺伝子検査を実施するが、酵素アッセイなどの生化学的検査などでは、技術的に困難であり時間がかかる場合がある。 とくに新生児では、非典型的な症状が多いためにマススクリーニングが本症の早期発見・早期介入のためには重要となる。実際、多くの研究報告で、NBSによりLC-FAOD患者の予後が改善したこと、NBSで発見された患者の死亡率は、症状発現後に診断された患者よりも低かったことなどが報告されている。 LC-FAODの治療では、現在中心として行われているのは、「空腹を避けること」と「長鎖脂肪酸の摂取量を制限すること」である。また、急性期には、早期入院によるグルコース点滴も行われる。そのほか、MCT(中鎖脂肪酸トリグリセライド)を含んだ食品の摂取も行われ、最近では、米国でトリヘプタノイン治療の研究が行われている。 最後に大石氏は、患者が直面している課題として、「長期間、原因不明の症状に苦しんでいる患者さんの存在」、「適切な治療に辿り着けない問題」、「困難な食事療法と社会的な孤独感」、「社会的・心理的負担」、「疾患認知度の低さと医療資源の限界」などがあると示し、講演を終えた。社会認知度の低い希少疾病にも関心を 「患者家族からみた長鎖脂肪酸代謝異常症をテーマに、柏木 明子氏(有機酸・脂肪酸代謝異常症の患者家族会 ひだまりたんぽぽ 代表)が、患者・患者家族視点からの課題や悩み、医療などへの要望を語った。 自身の子供が「メチルマロン酸血症」を発症しており、そのことで患者会を設立した経過を説明。患者会に寄せられた声から新生児マススクリーニングの重要性などを訴えた。また、LC-FAODなどのCPT2欠損症などの疾患で発症を予防するために「哺乳を含め食事間隔を空けないこと」と「シックデイはすぐに点滴を」と家族などが注意すべき事項を説明した。その他、特殊ミルクやMCTについて「治療食の入手が簡単ではないこと、コストが高いこと、質の信頼性が担保されていないこと」などの現在の問題点を指摘した。 最後に柏木氏はまとめとして「医療従事者に病気の理解が十分浸透していないことを感じている」、「発症の予防などには主治医一人ではなく多職種の連携体制が必要である」、「社会的認知のない疾患では、子供の預け先や保育園をみつけることが困難である」、「生命予後は改善したが、成人診療科が存在しない」など課題と要望を述べ、講演を終えた。

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副腎性クッシング症候群〔Adrenal Cushing's syndrome〕

1 疾患概要■ 定義クッシング症候群は、副腎皮質から慢性的に過剰産生されるコルチゾールにより、中心性肥満や満月様顔貌といった特徴的な臨床徴候を示し、糖・脂質代謝異常、高血圧などの合併症を伴う疾患である。手術により治癒が期待できる内分泌性高血圧症の1つである。 広義のクッシング症候群は副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)依存性クッシング症候群(下垂体性のクッシング病や異所性ACTH産生腫瘍など)とACTH非依存性クッシング症候群(副腎性クッシング症候群)に大別され、本稿では副腎性クッシング症候群について解説する。■ 疫学厚生省特定疾患副腎ホルモン産生異常症調査研究班による全国実態調査では、日本全国で1年間に約50症例の副腎性クッシング症候群の発症が報告されている。CT検査などが行われる機会が増えた現在では、副腎偶発腫を契機に診断される症例が増加していると考えられる。副腎腺腫によるクッシング症候群の男女比は1: 4と女性に多く、30~40代に好発する。■ 病因副腎皮質の腺腫やがんなどにおいてコルチゾールが過剰産生される。その分子メカニズムとしてcAMP-プロテインキナーゼA(protein kinase A:PKA)経路およびWNT-βカテニンシグナル経路の異常が示されている。顕性クッシング症候群を生じる症例の約85%で症例の副腎皮質腺腫において、PKAの触媒サブユニットをコードするPRKACA(protein kinase A catalytic subunit α)遺伝子、およびアデニル酸シクラーゼを活性化することによりcAMP産生に関わるタンパク質をコードするGNAS(α subunit of the stimulatory G protein)遺伝子、WNTシグナル伝達経路の細胞内シグナル伝達因子であるβカテニンをコードするCTNNB1(β catenin)遺伝子の変異を認めることが報告されている。■ 症状クッシング症候群に特異的な症状として、中心性肥満(顔、頸部、体幹のみの肥満)、満月様顔貌、鎖骨上および肩甲骨上部の脂肪沈着(野牛肩:buffalo hump)、皮膚の菲薄化、皮下溢血、赤色皮膚線条、近位筋萎縮による筋力低下があり「クッシング徴候」と言う。その他、耐糖能異常、高血圧、脂質異常症や性腺機能低下症、骨粗鬆症、精神障害、ざ瘡、多毛を認めることもある。■ 分類副腎腫瘍によるもの、副腎結節性過形成によるものに大別される。副腎腫瘍には副腎皮質腺腫、副腎皮質がんがあり、副腎結節性過形成にはACTH非依存性大結節性過形成(primary bilateral macronodular adrenal hyperplasia:PBMAH)、原発性色素性結節状副腎皮質病変(primary pigmented nodular adrenocortical disease:PPNAD)が含まれる。顕性クッシング症候群のうちPBMAH、PPNADの頻度は併せて5.8%とまれである。また、クッシング徴候を欠くがコルチゾール自律分泌を認める症例を「サブクリニカルクッシング症候群」と言う。■ 予後副腎皮質腺腫によるクッシング症候群は、治療によりコルチゾールを正常化できた症例では同年代とほぼ同程度の予後が期待できる。治療しなければ、感染症や心血管疾患のリスクが増加し、予後に影響することが示されており、早期発見、治療が重要である。一方、副腎皮質がんはきわめて悪性度が高く、急速に進行し、肝臓や肺などへの遠隔転移を認めることも多く予後不良である。2 診断 (検査・鑑別診断も含む)クッシング徴候や副腎偶発腫、また、治療抵抗性の糖尿病、高血圧、年齢不相応の骨粗鬆症を認めた際は、クッシング症候群を疑い精査を行う。まず、病歴、服薬状況の問診によりステロイド投与による医原性クッシング症候群を除外し、血中コルチゾール濃度に影響を及ぼす薬剤(表)の使用を確認する。表 クッシング症候群の診断に影響する可能性がある薬剤(左側は一般名、右側は商品名)画像を拡大する血中コルチゾール濃度は視床下部から分泌されるCRHの調節により早朝に高値になり、夜間には低値になる日内変動を示す。クッシング症候群ではCRHの調節を受けないため、コルチゾールの日内変動は消失し、デキサメタゾン内服により抑制されない。そのため、24時間尿中遊離コルチゾール高値、デキサメタゾン1mg抑制試験で翌朝血清コルチゾール値≧5μg/dL、夜間血清コルチゾール濃度≧5μg/dLのうち、2つ以上あればクッシング症候群と診断する。さらに早朝の血漿ACTH濃度を測定し、測定感度以下(<5μg/mL)に抑制されていれば副腎性クッシング症候群と診断する。図に診断のアルゴリズムを示す。図 クッシング症候群の診断アルゴリズム画像を拡大するただし、うつ病、慢性アルコール依存症、神経性やせ症、グルココルチコイド抵抗症、妊娠後期などでは視床下部からのCRH分泌増加による高コルチゾール血症(偽性クッシング症候群)を呈することがあり、抗てんかん薬内服ではデキサメタゾン抑制試験で偽陽性を示すことがあるため、注意が必要である。副腎腫瘍の有無の検索のため腹部CT検査を行う。副腎皮質腺腫は脂肪成分が多いため、単純CT検査で辺縁整、内部均一な10HU未満の低吸収値を認める。直径4cm以上で境界不明瞭、内部が出血や壊死で不均一な腫瘍の場合は副腎皮質がんを疑い、MRIやFDG-PETなどさらなる精査を行う。PBMAHでは著明な両側副腎の結節性腫大を認め、PPNADでは副腎に明らかな腫大や腫瘍を認めない。コルチゾールの過剰産生の局在診断のため131I-アドステロール副腎皮質シンチグラフィを行う。片側性副腎皮質腺腫によるクッシング症候群では、健側副腎に集積抑制を認める。3 治療 (治験中・研究中のものも含む)副腎皮質腺腫では腹腔鏡下副腎摘出術を施行することで根治が期待できる。術後、対側副腎によるコルチゾール分泌の回復までに6ヵ月~1年を要するため、その間は経口でのグルココルチコイド補充を行う。手術困難な症例や、片側副腎摘出術後の再発例、著明な高コルチゾール血症による糖代謝異常や精神異常、易感染性のため術前に早急なコルチゾールの是正が必要な症例に対しては、副腎皮質ステロイドホルモン合成阻害薬であるメチラポン(商品名:メトピロン)、トリロスタン(同:デソパン)、ミトタン(同:オペプリム)が投与可能である。11β-水酸化酵素阻害薬であるメチラポンは可逆性で即効性があることから最もよく用いられている。副腎皮質がんでは開腹による腫瘍の完全摘出が第1選択であり、術後アジュバント療法として、または手術不能例や再発例に対しては症状軽減のためミトタンを投与する。ミトタンは約25~30%の奏効率とされているが、副作用も少なくないため有効血中濃度を維持できない症例も多い。PBMAHでは、症状が軽微な症例や腫大副腎の左右差もあり、合併症などを考慮して症例ごとに片側あるいは両側副腎摘出術や薬物療法による治療方針を決定する。一部の症例でみられる異所性受容体に対する阻害薬が有効な場合もあるが、長期使用による成績は報告されていない。PPNADでは、顕性クッシング症候群を発症することが多いため、両側副腎全摘が第1選択となる。サブクリニカルクッシング症候群では、副腎腫瘍のサイズや増大傾向、合併症を考慮して症例ごとに経過観察または片側副腎摘出術を検討する。4 今後の展望唾液コルチゾール濃度は、外来での反復検査が可能で、遊離コルチゾール濃度との相関が高いことが知られており、欧米では、夜間の唾液コルチゾール濃度がスクリーニングの初期検査として推奨されているが、わが国ではまだ保険適用ではなくカットオフ値の検討が行われておらず、今後の課題である。また、2021年3月に11β-水酸化酵素阻害薬であるオシロドロスタット(同:イスツリサ)の使用がわが国で承認された。メチラポンと比べて服用回数が少なく、多くの症例で迅速かつ持続的にコルチゾールの正常化が得られるとされており、長期使用成績の報告が待たれる。5 主たる診療科内分泌内科※ 医療機関によって診療科目の区分は異なることがあります。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)診療、研究に関する情報日本内分泌学会(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)厚生省特定疾患副腎ホルモン産生異常症調査研究班 副腎ホルモン産生異常に関する調査研究(医療従事者向けのまとまった情報)1)出村博ほか. 厚生省特定疾患「副腎ホルモン産生異常症」調査研究班 平成7年研究報告書. 1996;236-240.2)Lacroix A, et al. Lancet. 2015;386:913-927.3)Yusuke S, et al.Science. 2014;344:917-920.4)Rege J, et al. J Clin Endocrinol Metab. 2022;107:e594-e603.5)日本内分泌学会・日本糖尿病学会 編. 内分泌代謝・糖尿病内科領域専門医研修ガイドブック. 診断と治療社;2023.p.182-187.6)Nieman Lk, et al. J Clin Endocrinol Metab. 2008;93:1526-1540.公開履歴初回2025年1月23日

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乳幼児健診でよくある疑問・相談への対応

限られた時間で判断・助言をするために「小児科」65巻12号(2024年11月臨時増刊号)乳幼児健診の場で保護者から向けられる素朴な、しかし切実な質問に、つい曖昧に答えてしまうことはないでしょうか。限られた時間の中で、見逃してはいけない徴候であれば確実にすくい上げることはもちろん、そうでなくとも医学的な根拠があり、かつ保護者が安心できる答えをその場で伝える――そのために知っておくべき44テーマについて、各領域の専門家にその考え方・答え方を解説いただきました。画像をクリックすると、内容の一部をご覧いただけます。※ご使用のブラウザによりPDFが読み込めない場合がございます。PDFはAdobe Readerでの閲覧をお願いいたします。目次を見るPDFで拡大する目次を見るPDFで拡大する乳幼児健診でよくある疑問・相談への対応定価8,800円(税込)判型B5判頁数240頁発行2024年12月編集「小児科」編集委員会ご購入(電子版)はこちらご購入(電子版)はこちら紙の書籍の購入はこちら医書.jpでの電子版の購入方法はこちら紙の書籍の購入はこちら

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透析中の骨粗鬆症患者へのデノスマブは心血管イベントリスクを上げる可能性/京都大

 透析患者の骨粗鬆症の治療では、腎排泄に頼らないデノスマブが使用されている。しかし、その有効性、安全性を他の骨粗鬆症治療薬と比較した大規模研究はこれまでなかった。そこで、桝田 崇一郎氏(京都大学大学院医学研究科薬剤疫学分野)らの研究グループは、透析患者の骨粗鬆症に対するデノスマブは、ビスホスホネートと比較し、骨折リスクを低減させる一方で、心血管イベントのリスクを増加させる可能性があることを、電子レセプトデータを用いたコホート研究により明らかにした。本研究結果は、Annals of Internal Medicine誌2025年1月7日オンライン版に掲載された。1,032例でデノスマブと経口ビスホスホネートの効果を比較 研究グループは、DeSCヘルスケアが保有する電子レセプトデータを利用し、標的試験エミュレーションの枠組みのもと、透析患者の骨粗鬆症に対するデノスマブと経口ビスホスホネートの有効性と安全性を比較するコホート研究を実施した。 対象は50歳以上の透析患者で、骨粗鬆症の診断を受け、2015年4月~2021年10月までの間にデノスマブもしくは経口ビスホスホネートを新規に開始した患者。主要評価項目は、薬剤使用開始から3年間の骨折と主要心血管イベント(MACE)の発生リスク。 主な結果は以下のとおり。・患者は合計で1,032例が同定された(デノスマブ群658例、経口ビスホスホネート群374例)。・全体の平均年齢は74.5歳で、62.9%が女性だった。・MACEの3年間の発生率はデノスマブ群のほうが高く、リスク差は8.2%(95%信頼区間[CI]:-0.2~16.7)、リスク比は1.36(95%CI:0.99~1.87)だった。・複合骨折の3年間の発生率はデノスマブ群のほうが低く、リスク差は-5.3%(95%CI:-11.3~-0.6)、加重3年リスク比は0.55(95%CI:0.28~0.93)だった。 この結果を受け研究グループは、腎臓または骨粗鬆症の重症度、心血管またはその他の代謝リスクに関する臨床データが不足し、交絡が残存していたこと、安全性アウトカムには腎臓のエンドポイントが含まれていなかったことを研究の限界として指摘し、「経口ビスホスホネートと比較し、デノスマブは骨折リスクを45%低下させ、MACEリスクを36%上昇させると推定された。しかし、この推定値は不正確であり、今後も研究が必要である」と述べている。

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妊娠糖尿病、メトホルミン±SU薬vs.インスリン/JAMA

 妊娠糖尿病治療において、経口血糖降下薬(メトホルミンおよび必要に応じてグリベンクラミドを追加)は、インスリンと比較して、在胎不当過大児の出生割合に関する非劣性基準を満たさなかった。オランダ・アムステルダム大学医療センターのDoortje Rademaker氏らが、無作為化非盲検非劣性試験の結果を報告した。妊娠糖尿病のコントロールにおいて、メトホルミンおよびグリベンクラミドの単剤投与はインスリンの代替として使用されているが、これらの経口血糖降下薬による治療がインスリン単独の治療と比較して、周産期アウトカムに関して非劣性であるかどうかは明らかになっていなかった。JAMA誌オンライン版2025年1月6日号掲載の報告。在胎不当過大児の増加予防に関して非劣性であるかを検証 研究グループは、2016年6月~2022年11月にオランダの25医療センターで、経口血糖降下薬による治療戦略がインスリン療法に対して、在胎不当過大児の増加予防に関して非劣性であるかを検証した。最終フォローアップは2023年5月。 試験には、2週間の食事療法後に血糖コントロールが不十分(空腹時血糖値95mg/dL超[5.3mmol/L超]、食後1時間血糖値140mg/dL超[7.8mmol/L超]、食後2時間血糖値120mg/dL超[6.7mmol/L超]のいずれかとして定義)であった単胎妊娠16~34週の妊娠糖尿病患者820例が登録された。 被験者は、メトホルミン(1日1回500mgで開始し、3日ごとに1日2回1,000mgまたは最大許容量まで増量、409例)またはインスリン(試験施設の処方による、411例)による治療を受ける群に無作為に割り付けられた。メトホルミン群では必要に応じてグリベンクラミドを追加投与した。その後、必要に応じてグリベンクラミドに代えてインスリンを用いた。 主要アウトカムは、在胎不当過大児(在胎期間と性別に基づく出生体重が90パーセンタイル超)の割合の群間差であった。副次アウトカムは、母体の低血糖、帝王切開、妊娠高血圧症候群、妊娠高血圧腎症、母体の体重増加、早産、分娩損傷、新生児の低血糖、新生児の高ビリルビン血症、新生児集中治療室(NICU)入室などであった。在胎不当過大児は経口血糖降下薬群23.9%、インスリン療法群19.9% 被験者820例のベースライン(試験登録時)の平均年齢は33.2(SD 4.7)歳、妊娠時BMI値30.4(6.2)、35%が初産であった。アウトカムの解析(per protocol解析)には、同意を得られなかった被験者、追跡データを得られなかった被験者を除外した、経口血糖降下薬群406例、インスリン療法群398例が対象に含まれた。 試験期間中、インスリンを使用せずに経口血糖降下薬のみ(メトホルミン単剤および必要に応じてグリベンクラミド追加)で血糖コントロールを維持したのは320例(79%)であった。 新生児における在胎不当過大児の割合は、経口血糖降下薬群23.9%(97例)、インスリン療法群19.9%(79例)であり(絶対リスク差:4.0%、95%信頼区間[CI]:-1.7~9.8、非劣性のp=0.09)、絶対リスク差の95%CI値は非劣性マージンの8%を超えていた。 母体の低血糖は、経口血糖降下薬群53例(20.9%)、インスリン療法群26例(10.9%)であった(絶対リスク差:10.0%、95%CI:3.7~21.2)。その他の副次アウトカムは、群間差は認められなかった。

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米アルツハイマー病協会が新たな診療ガイドラインを作成

 アルツハイマー病(AD)の専門家グループが、新たに包括的な診療ガイドラインを作成し、家庭医や脳専門医がADおよびAD関連疾患(ADRD)を最も効果的に検出する方法を提示した。この新ガイドラインは、「Alzheimer’s & Dementia」に12月23日掲載された。 このガイドラインでは、次に挙げる3つの一般的な基準に従い脳の健康状態を評価することを推奨している。それは、1)患者の全体的な認知障害のレベル、2)記憶、推論、言語、気分などに関わる特定の症状の有無、3)症状を引き起こしている可能性のある脳疾患の有無。 本ガイドラインの筆頭著者である、米アルツハイマー病協会および米ハーバード大学医学大学院神経学分野のAlireza Atri氏は、「これらの診断領域は、ADをはじめとする認知症に関する新たな研究成果が得られるたびに、新しい検査方法をガイドラインに組み込むことができるよう、意図的に広く定義されている」と話す。また同氏は、「本ガイドラインは、米国初の学際的なガイドラインとして広範な臨床状況で利用できるように設計されており、高品質で個別化された診断プロセスを体系的にまとめた包括的な基盤を提供する。このプロセスには特定の検査が組み込まれており、分野の進展に応じて更新することが可能だ」と説明する。さらに、「新しいツールやバイオマーカーが十分に検証され、実臨床で使用されるようになれば、本ガイドラインも、細部で部分的な修正が必要になるだろう」と付け加えている。 ADをはじめとする認知症の研究は着実に進展しているが、認知機能低下の診断に関する現在のガイドラインは20年以上も前に作られたものだと専門家は指摘する。さらに、これらのガイドラインは神経学や認知症の専門医を対象としたものであり、脳の健康に不安のある患者を診察する家庭医に対する指針は示されていなかった。こうした現状を踏まえて、アルツハイマー病協会は今回のガイドライン作成に当たり、脳の健康の評価プロセスを刷新するために、プライマリケア医や専門医など、複数の医療分野の専門家から成るワーキンググループを招集した。 新ガイドラインの上席著者でアルツハイマー病協会の最高科学責任者であるMaria Carrillo氏は、「新ガイドラインは、記憶に関する訴えを評価する際の指針を医師に提供する重要なものだ。記憶の問題の根底にはさまざまな原因が関与している可能性がある。そのため、そのような訴えの評価は、ADを早期かつ正確に診断するための出発点となる。さらに、このガイドラインは、記憶障害の一因となる可能性のある他の根本的な原因に関する情報を臨床医に提供する」とアルツハイマー病協会のニュースリリースの中で述べている。 脳の健康状態の総合的な評価には、次のようなことが含まれている。・記憶力と思考力のテスト・年齢、認知症の家族歴、高血圧、喫煙などのリスク因子の評価・認知機能の低下を反映している可能性のある日常生活の症状の評価・MRIまたはCTによる脳の検査、およびその他の臨床検査 ワーキンググループによれば、新しい検査やスキャンは、開発され次第、このフレームワークに追加される可能性があるという。本ガイドラインの共著者である米マサチューセッツ総合病院前頭側頭葉疾患ユニットのBradford Dickerson氏は、「このガイドラインは、従来のガイドラインの範囲を拡大し、診断プロセス全体にわたる推奨事項を臨床医に提供する」と述べる。同氏はまた、「われわれは医療専門家に対して、認知症評価の目標についての自分の考えが患者と一致しているかを確認することから始めることを推奨している。そのためには通常、プロセスの具体的な手順について患者に説明し、理解を得るための話し合いが必要になる。その後、症状や検査に関する情報の取得に必要な手順を概説し、患者に合わせたさまざまな診断テストを行い、診断開示プロセスに関するベストプラクティスをまとめると良い」と話している。

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若い女性への再発予防の指導方法について 実際どう指導していますか?【とことん極める!腎盂腎炎】第11回

若い女性への再発予防の指導方法について 実際どう指導していますか?Teaching pointリスク因子を評価し適切な再発予防指導(飲水励行や排泄後の清拭など)までできるようになるはじめに女性は解剖学的に尿路感染症を起こしやすく、約3人に1人は24歳までに尿路感染症を少なくとも1回は経験する1)。尿路感染の既往をもつ女性のうち30〜44%が再発し、0.3〜7.6回/年生じるという報告もあり、生活の質(QOL)にかかわる重要な問題である2)。再発防止は本人のQOL維持、繰り返す抗菌薬曝露による耐性菌発生の予防の観点からも重要である。若い女性への尿路感染症の再発予防の生活指導方法について紹介する。1.若い女性の再発性尿路感染症のリスク因子閉経前の女性のリスク因子として、(1)性的活動の活発であること、(2)殺精子剤の使用、(3)新たな(1年以内の)性的パートナー、(4)尿路感染症の既往のある母親、(5)小児尿路感染症の既往がある。しかし、遺伝的な素因よりも性交や殺精子剤のリスクのほうが大きいとされ、行動への介入は予防可能なリスクとなる3)。2.再発予防への日常生活への指導防御機構とリスク因子を踏まえ予防的な介入を考えていく。本項では介入として日常生活への指導をまとめる(薬剤、サプリメントによる予防は第13回で紹介する)。日常生活への指導の有効性を裏づけるエビデンスは限られるが、介入によるリスクの低さから薬物などによる介入前に実践することが推奨されている。飲水量の増加は単施設であるがRCTで有効性が示されている4)。水分摂取量が少ない(1.5L/日未満)、再発性膀胱炎(3回以上繰り返す)を来たした成人女性において通常量の飲水に加えて、1.5L/日の追加飲水の介入を行ったところ非介入群と比較して、膀胱炎の発症が1年あたり1.5回減少した(1.7回[95%信頼区間[CI]:1.5~1.8]vs. 3.2回[95%CI:3.0~3.4])。筆者はさらに飲水行動について詳しく問診するようにしている。飲水量が少なかった場合、「なぜ飲水量が少ないか」を聞くとさらに背景に迫れることがある。気軽に排泄に行きづらい職場環境(例:コンビニ店員でトイレに行くタイミングがないなど)が背景にあり飲水を控えているというケースも経験する。その場合は、職場環境改善への働きかけなどに協力してあげることも大切となる。また、性交や殺精子剤は尿路感染症のリスク因子であり、性交を減らすことや殺精子剤を含む避妊具を避けることを、本人やパートナーとカウンセリングを行うこともリスクを減らすと期待される。その他、明確な関連は示されていない個別での相談や効果を評価する指導内容も含め表にまとめた4,5)。小児期から繰り返している場合や腎結石、尿路閉塞、間質性膀胱炎、尿路上皮がんが疑われるような場合は泌尿器科受診を勧めることも忘れてはならない。表 若年女性の単純性尿路感染症の再発を予防するための日常生活への指導画像を拡大する再発性の膀胱炎の最終手段として抗菌薬投与が選択されることもあるが、耐性菌のリスクの観点からも導入しやすい日常生活への指導からしっかりと介入していくことは大切である。生活へのアプローチは一人ひとりの事情もあるので、本人の生活について丁寧に聴取し生活に合わせた指導内容を一緒に考えていくことはプライマリ・ケア医の重要な役割である。1)Foxman B. Dis Mon. 2003;49:53-70.2)Gupta K, Trautner BW. BMJ 2013;346:f3140.3)Hooton TM, et al. N Engl J Med 1996;335:468-474.4)Hooton TM, et al. JAMA Intern Med 2018;178:1509-1515.5)Hooton TM. N Engl J Med 2012;366:1028-1037.

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第247回 どこか似ているフジテレビと女子医大、大学に約1億1,700万円の損害を与えた背任の疑いで女子医大元理事長逮捕、特定機能病院の再承認も遠のいた病床利用50%の医科大学に未来はあるか?

東京女子医大よりお粗末だと感じたフジテレビの中居氏問題への対応こんにちは。医療ジャーナリストの萬田 桃です。医師や医療機関に起こった、あるいは医師や医療機関が起こした事件や、医療現場のフシギな出来事などについて、あれやこれや書いていきたいと思います。タレント、中居 正広氏の女性とのトラブルにフジテレビ編成局の幹部社員が関与していたと報道を受けて、同社の港浩一社長が1月17日に記者会見を行いました。しかし、その会見内容や会見方法を巡ってさまざまな批判が巻き起こっています。まずその会見方法ですが、参加者はフジテレビ記者クラブの加盟社に限り、それ以外は参加できませんでした(この問題を報道してきた週刊誌記者などは入れず)。さらにNHKや在京キー局は質問できないオブザーバー参加で、動画撮影も禁じられました。報道に携わるテレビ局であることを考えると、まさに信じられない対応と言えます。今後、フジテレビ報道局の記者たちはさまざまな取材先で「おたくには取材させない」「カメラはダメね」と言われ続けることでしょう。さらに驚いたのは、港社長の、「第三者の視点を入れて改めて調査を行う必要性を認識しましたので、今後、第三者の弁護士を中心とする調査委員会を立ち上げることとしました」の発言です。各紙報道によれば、「第三者」という言葉を使ってはいるものの、この調査委員会が日本弁護士連合会のガイドラインに沿った第三者委員会になるかどうかは未定とのことです。元理事長が先週逮捕された東京女子医大ですら、第三者委員会を立ち上げています。同窓会組織から勤務実態のない元職員に給与が不正に支払われていたとされる問題などを調べるために設置されたこの第三者委員会は、当時の岩本 絹子理事長の問題行動を徹底的に調べ上げ、約250ページにも及ぶ調査報告書をまとめて昨年8月に公表、調査した委員(弁護士)による記者会見も開かれました。この調査報告書は至誠会の不適切な資金支出を指摘するだけでなく、学校法人の不適切な資金支出もつまびらかにし、さらに寄付金を重視する推薦入試や大学の人事のあり方の問題点も指摘しました。そして、それらの根本原因として、同大が岩本元理事長に権限が集中する「一強体制」で「ガバナンス機能が封鎖された」と厳しく糾弾しました。この第三者委員会の報告書公表後、岩本元理事長は同大理事会において自身を除く全会一致で理事長職を解任されています。フジテレビが日弁連のガイドラインに沿った第三者委員会を設置しないとなれば、問題解決への意欲がないと世間から見られ、ますます窮地に陥るでしょう。実際、トヨタ自動車や日本生命などのスポンサーもCMを差し止め始め、1月21日の段階でその数は50社を超えました。今年春の番組改編に向け、テレビ局はスポンサー獲得のための営業活動のピークにありますが、こちらも相当苦戦することでしょう。まさに「危急存亡の秋」と言えます。計約1億1,700万円相当の損害を与えた背任容疑で東京女子医大元理事長逮捕ということで、同じく危急存亡の秋を迎えている東京女子医大です。この連載で何度も取り上げてきた東京女子医大ですが、警視庁は1月13日、同大の岩本元理事長(78)を背任容疑で逮捕しました。1月14日付の朝日新聞などの報道によれば、逮捕容疑は2018年7月~2020年2月、同大の新校舎棟の2件の建設工事を巡り、建築会社社長で1級建築士の60代男性と同大経営統括部元幹部の50代女性と共謀の上、男性に対し、給与とは別に実態がない「建築アドバイザー」としての業務報酬名目で計21回にわたって大学に不当に支払わせるなどして、計約1億1,700万円相当の損害を与えた、というものです。こうした金銭の流れは岩本元理事長が指示し、男性名義の口座に報酬が支払われていたとのことです。警視庁は岩本元理事長以外の2人についても立件する方針とのことです。東京女子医大の岩本元理事長長が関わる不正に捜査のメスが入ったのは去年3月でした(「第207回 残された道はいよいよ身売りか廃校・学生募集停止か? ガバナンス崩壊、経営難の東京女子医大に警視庁が家宅捜索」参照)。2019年以降、理事長を務めてきた岩本元理事長による不正な支出が疑われるとして、大学関係者が刑事告発を行い、告発状を受理した警視庁が3月、大学本部や岩本元理事長の自宅などを一斉に捜索したのです。それから約10ヵ月、やっと逮捕に至ったわけです。1月13日付のNHKは、「警視庁の幹部は『元理事長への現金の還流は、口座を通しておらず、証拠の欠片を拾い集めるパズルのような難しい捜査だった』と話しています」と報じています。岩本元理事長に還流された現金は総額約8,700万円に上る逮捕容疑の金銭の還流やその他の岩本元理事長の経営手法については、本連載の「第226回 東京女子医大 第三者委員会報告書を読む(前編)『金銭に対する強い執着心』のワンマン理事長、『いずれ辞任するが、今ではない』と最後に抗うも解任」、「第227回 同(後編)『“マイクロマネジメント”』と評された岩本氏が招いた『どん底のどん底』より深い“底”」でも詳しく書きました。この報告書には、今回の容疑となった岩本元理事長が金銭面で同大に与えた損害のほかに、卒業生の教員への採用・昇格に寄付金を要請したり推薦入試での寄付金受け取りを指示したりしていたことや、PICU運用停止に代表される「教育・研究と病院・臨床に対する理解・関心の薄さ」、「異論を敵視し排除する姿勢と行動」、「人的資本を破壊し組織の持続可能性を危機に晒す財務施策」など、医科大学トップとしてあるまじき、さまざまな所業が赤裸々に書かれています。そんな中、捜査当局は刑事責任が問える新校舎棟の建設工事を巡る金銭の動きに焦点を絞って捜査を進めてきたわけです。1月16日付の日本経済新聞などの報道によれば、岩本元理事長は建築士の男性に報酬を受け取るため専用の口座をつくらせ、男性が入金された報酬から自身が支払う税金を差し引いた上で、3分の1を男性が受け取り、残りの3分の2を元理事長に還流させていた疑いがあり、その金額は計約3,700万円に上るとしています。さらに別の工事に関しても、大学支出分から現金約5,000万円を受領した疑いがあり、これらを合計すると岩本元理事長に還流された現金は総額約8,700万円に上るとのことです。なお、1月21日付の日本経済新聞は、警視庁が昨年岩本容疑者の自宅など関係先を背任容疑で捜索した際、岩本元理事長の関係者が住む東京都港区のマンションの一室から、「金塊2キロ(約3,000万円相当)とスーツケースに入った現金約1億5,000万円」が発見され、さらに「元理事長宅の納戸からも現金と金塊が出てきた。(中略)これらの関係先から総額で現金約2億円と金塊計10キロ超(2億円相当)を押収した」と書いています。岩本元理事長体制下で噴出した事件の数々それにしても、東京女子医大も地に落ちたものです。岩本元理事長体制下の東京女子医大については、本連載でも何度も取り上げて来ました。2020年7月には「第15回 凋落の東京女子医大、吸収合併も現実味?」で同大が「コロナ禍による経営悪化を理由に夏季一時金を支給しない」と労組に回答し、看護師の退職希望が法人全体の2割にあたる400人を超えたニュースを、同年10月には「第28回 コロナで変わる私大医学部の学費事情、2022年以降に激変の予感」で、同大が2021度から学費を6年間で計1,200万円値上げして私立医大で2番目に高くなったニュースを取り上げました。さらに、同じく2020年10月には「第30回 東京女子医大麻酔科医6人書類送検、特定機能病院の再承認にも影響か」で、東京女子医大病院で2014年2月、鎮静剤プロポフォールの投与を受けた男児(当時2歳)が死亡した事故について、警視庁が当時の集中治療室(ICU)の実質的な責任者だった同大元准教授ら男性麻酔科医6人を業務上過失致死容疑で東京地検に書類送検したニュースを取り上げました。同病院はこの事故で2015年に特定機能病院の承認を取り消されています。外来患者数激減、病床稼働率もわずか50%岩本元理事長体制下で、経営状況も悪化の一途です。東京女子医大の令和5年度事業報告書(速報版)によれば、稼ぎ頭であるはずの本院、東京女子医科大学病院(1,190床)の1日外来患者数は、令和3年度が2,862人、令和4年度が2,705人、令和5年度が2,538人と減少傾向でした。そして何よりも衝撃的なのが病床稼働率です。令和3年度が61.7%(1,193床)、令和4年度が53.2% (1,193床)、令和5年度が50.7%(1,190床)と、もはや半分しか病床が稼働していないのです。紹介も含めて患者が来ないことに加え、看護師をはじめとする職員不足で病棟を開けたくても開けられない、という事情もあると考えられます。今回の元理事長逮捕や大学人事や推薦入試での不正によって、特定機能病院の再承認はさらに遠のき、加えて私学助成金(私立大学等経常費補助金)も大幅に減額される可能性もあります(令和5年度で総額20億円)。仮にそうなれば大学経営に対するダメージは計り知れません。日本大学や東京女子医大などで起こった相次ぐ不祥事を受け、改正私立学校法が今年4月に施行されます。理事会とそのトップの理事長へのチェック強化が図られ、理事と評議員の兼務も認められなくなります。不正のあった理事の解任請求権や、監事の選任・解任権限が、理事会の諮問機関にあたる評議員会に与えられることにもなります。しかし、東京女子医大にとっては後の祭りと言えそうです。ワンマン理事長の暴走を許し、ガバナンスをまったく効かせてこなかった理事会の責任は極めて重いと言えるでしょう。河田町同郷のフジテレビと女子医大、経営権が移る可能性も東京女子医大は1970〜90年代には、日本の大学病院としては最先端の経営を行っていました。心研をはじめ、消化器病・脳神経・腎臓病の各センターなど、臓器別のセンター方式をどこよりも早く導入、それぞれにスター教授を配して、臨床だけではなく、研究でも最先端を走っていました。以前にも書いたことですが、1980~90年代にかけ、私はよく新宿区河田町にある東京女子医大病院に取材に通っていました。「東京女子医大、強さの研究」という特集記事を担当したこともあります。当時、東京女子医大の隣にはお台場に移転する前のフジテレビ本社がありました。フジテレビも「オレたちひょうきん族」のヒットなどで、視聴率で在京キー局のトップを走っていたと記憶しています。あれから40年近くが経ち、どちらも昔日の面影はなく、東京女子医大は元理事長逮捕、フジテレビは冒頭に書いたような報道機関の役割を自ら放棄する体たらくです。おそらくこちらも社長交代(あるいはもっと上も)まで行くでしょう。時代の変化に対応できず、旧態依然の経営を続け、ガバナンス不全のままの組織はあっという間に淘汰されてしまいます。5年先、いや3年先には、東京女子医大もフジテレビも経営権は今とはまったく違うところに移っているかもしれません。

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抗インフルエンザ薬は今いずこ?【早耳うさこの薬局がざわつくニュース】第143回

インフルエンザが猛威を振るうなか、患者の増加に伴って各所で抗インフル薬不足の悲鳴があがっています。そろそろピークは越えたかなという気もしてきましたが、薬不足はいつまで続くのでしょうか?厚生労働省医政局医薬産業振興・医療情報企画課は1月9日、抗インフルエンザウイルス薬の適正な使用と発注に関する協力依頼を都道府県宛に事務連絡した。インフルエンザ流行に伴い抗インフル薬の需要が急増していることから、過剰な発注を控えるよう求めた。(中略)とくに経口薬が供給不安に陥っており、吸入薬の利用が可能な5歳以上の患者に対しては吸入薬の処方も検討するように促した。(2025年1月10日付 RISFAX)インフルエンザは昨年11月ごろから全国的な流行シーズンに入りました。12月29日からの1週間に全国約5,000の定点医療機関で報告されたインフルエンザ患者数は1医療機関当たり64.39人となり、現行の統計開始の1999年以降で最多となりました。年明けには減りましたが、今後はB型の流行も懸念されています。このような中、厚生労働省は1月9日の事務連絡で、医療機関は必要量に見合う量のみを購入すること、吸入薬の利用が可能な5歳以上のインフルエンザ患者にはドライシロップではなく吸入薬の処方を検討することなどを求めています。しかし、タミフルやその後発医薬品が出荷停止や限定出荷となるだけでなく、イナビルやゾフルーザも限定出荷となるなど、薬不足は長引いています。以前、タミフルカプセルとタミフルドライシロップは長期保存試験の結果に基づいて使用期限が10年に延長され、在庫しやすくなり廃棄は減ったはずです。それでも供給が不足しているというのですから、本当に爆発的な感染拡大だったのでしょう。ここでも後発医薬品の供給不足が影響しており、やはり根本的な薬価などの対策が必要と思わざるを得ません。なお、厚生労働省によると、今年度の予定供給量は前年度を上回っていることや、メーカーや卸には在庫があることなどから、現時点では備蓄を開放する予定はないようです。患者さんのために抗インフルエンザ薬を入手してあげたいと思う気持ちは全国どこの薬局でも同じです。過剰な発注は控え、入手できたかどうかであまり一喜一憂せず、基本的な手洗い・うがいの励行、マスクの着用、周りに2次感染させない対策といった基本的なことを伝えていきたいと思います。

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口内炎がつらいです【非専門医のための緩和ケアTips】第92回

口内炎がつらいですがん診療の進展に伴い、診療所の先生が基幹病院に通院中の患者さんを診察する機会が増えてきたのでは、と思います。抗がん剤治療の副作用対策は大きく進歩しましたが、まだつらい症状を訴える患者さんが多い副作用の1つが「口内炎」です。今回の質問私の外来患者が抗がん剤治療のために基幹病院に通院しています。私の外来で診察する際に、口内炎に対する対応を相談されたのですが、あまり経験がなく良いアドバイスができませんでした…。口内炎に苦しむ患者さんの様子を見ると、こっちもつらくなりますよね。口内炎は抗がん剤治療や分子標的薬の副作用として頻繁に発症します。一般的な化学療法では発症率は10%程度ですが、頭頸部がんの化学放射線療法では、さらに高頻度で見られます。ご質問にある患者さんが「すでに口内炎を発症しているのか」は不明ですが、まずは「予防」について考えてみましょう。口内炎の予防には口腔ケアが非常に重要です。口腔内の衛生を保ち、湿潤環境を維持するため、定期的に水分を口に含むことを指導しましょう。また、義歯の調整が必要な場合やその他の専門的な歯科治療が必要な場合は、歯科受診を推奨します。これらの予防策は患者さんの協力が重要ですので、がん治療の開始前から取り組むようアドバイスすると良いでしょう。口内炎ができてしまった場合には、口内炎の発症のタイミングや治療内容から、「がん治療関連の口内炎」か「その他の原因によるものか」を判断します。口内炎で問題になる症状の多くは口腔内の痛みです。多くの方は物理的刺激による口内炎を経験しているでしょう。あの痛みがさらに広範にあることを想像すると、そのつらさが想像できるかと思います。口内炎に対する薬剤は、症状や患者さんの状態に応じて選択します。内服が困難な場合には、口腔用軟膏や口腔用液が有用です。痛みが強い場合には、がん疼痛治療に準じて薬剤を調整します。NSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬)が効果を示すケースもあるため、腎機能障害や他の副作用に注意しつつ投与を検討することも1つの選択肢です。また、がん疼痛治療に用いられるオピオイドについても触れておきます。オピオイドは、口内炎の痛み緩和に一定の効果がありますが、通常、モルヒネ換算で60mg/日を超える投与が必要となることは少ない印象です。もしオピオイドの効果が乏しい場合には、カンジダなど感染症の合併として発症しているケースや、心理的要因(例:不安)が関与している可能性を考慮する必要があります。今回のTips今回のTipsがん治療に関連した口内炎、「予防」と「治療」の両方が大切です。

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PTSDの新たな治療選択肢となるか、ブレクスピプラゾールとセルトラリン併用療法〜第III相臨床試験

 心的外傷後ストレス障害(PTSD)では、新たな薬物治療の選択肢が求められている。米国・アラバマ大学バーミンガム校のLori L. Davis氏らは、PTSDに対するブレクスピプラゾール+セルトラリン併用療法の有効性、安全性、忍容性を検討するため、第III相二重盲検ランダム化比較試験を実施した。JAMA Psychiatry誌オンライン版2024年12月18日号の報告。 2019年10月〜2023年8月に米国の臨床試験施設86施設で実施された。PTSD成人外来患者を対象に、ブレクスピプラゾール(可変用量:2〜3mg/日)+セルトラリン(150mg/日)併用療法とセルトラリン(150mg/日)+プラセボ治療との比較を行った。1週間のプラセボ導入期間後に11週間の二重盲検ランダム化実薬対照並行群間期間(21日間のフォローアップ調査)を設けた。主要アウトカムは、ランダム化後(1週目)から10週目までのClinician-Administered PTSD Scale for DSM-5(CAPS-5)合計スコア(20のPTSD症状の重症度を測定)の変化とした。安全性評価には、有害事象を含めた。 主な結果は以下のとおり。・1,327例の適格性を評価し、878例がスクリーニングに失敗したため、416例(平均年齢:37.4±11.9歳、女性:310例[74.5%])をランダム化した。・試験完了率は、ブレクスピプラゾール+セルトラリン群で64.0%(214例中137例)、セルトラリン+プラセボ群で55.9%(202例中113例)であった。・10週目のCAPS-5合計スコアは、ブレクスピプラゾール+セルトラリン群でセルトラリン+プラセボ群よりも統計学的に有意な改善が認められた(最小二乗平均[LSM]平均差:−5.59、95%CI:−8.79〜−2.38、p<0.001)。【ブレクスピプラゾール+セルトラリン群:148例】ランダム化時の平均:38.4±7.2、LSM変化:−19.2±1.2【セルトラリン+プラセボ群:134例】ランダム化時の平均:38.7±7.8、LSM変化:−13.6±1.2・すべての主な副次的エンドポイントおよびその他の有効性エンドポイントの達成も確認された。・ブレクスピプラゾール+セルトラリン群(205例)において治療中に5%以上で発生した有害事象は、悪心12.2%(25例)、疲労6.8%(14例)、体重増加5.9%(12例)、傾眠5.4%(11例)であった。・上記有害事象のセルトラリン+プラセボ群(196例)の発生率は、悪心11.7%(23例)、疲労4.1%(8例)、体重増加1.5%(3例)、傾眠2.6%(5例)であった。・有害事象による治療中止率は、ブレクスピプラゾール+セルトラリン群で3.9%(8例)、セルトラリン+プラセボ群で10.2%(20例)であった。 著者らは「ブレクスピプラゾール+セルトラリン併用療法は、セルトラリン+プラセボと比較し、PTSD症状の有意な改善が認められ、PTSDの新たな治療法になりうる可能性が示唆された。ブレクスピプラゾール+セルトラリン併用療法の忍容性は良好であり、安全性プロファイルはブレクスピプラゾールの既存の適応症におけるものと同様であった」と結論付けている。

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小児の喘息のエンドタイプを特定できる新たな検査法を開発

 新しい迅速かつ簡便な鼻腔スワブ検査により、小児の喘息の背後にある特定の免疫システムや病態に関する要因(エンドタイプ)を特定できる可能性のあることが、新たな研究で示された。研究グループは、この非侵襲的アプローチは、臨床医がより正確に薬を処方するのに役立つだけでなく、これまで正確に診断することが困難で、研究の進んでいないタイプの喘息に対するより良い治療法の開発につながる可能性があると見ている。米ピッツバーグ医療センター(UPMC)小児病院呼吸器科部長で上級研究員のJuan Celedon氏らによるこの研究結果は、「Journal of the American Medical Association(JAMA)」に1月2日掲載された。 Celedon氏は、「喘息は、エンドタイプによって関与している免疫細胞や治療方法が異なる多様な疾患である。そのため、エンドタイプの正確な診断がより良い治療法への第1歩となる」と述べている。 喘息は小児期に最も頻発する慢性疾患であり、米国立衛生研究所の統計によると、米国では10人に1人の小児が喘息に罹患している。喘息は通常、気道に炎症を引き起こす免疫細胞に基づきいくつかのエンドタイプに分類される。主なエンドタイプは、Tヘルパー2(T2)細胞が関与する免疫反応が亢進し、T2サイトカイン(インターロイキン〔IL〕-4、IL-5、IL-13)の産生と免疫グロブリンE(IgE)の分泌、および気道中の好酸球増加を特徴とする「T2-high」、好中球による気道の炎症とIL-17およびIL-22の血清レベル上昇を特徴とする「T17-high」、および好酸球性または好中球性の気道炎症を欠き、病態の解明が進んでいない「T2-low/T17-low」などである。 研究グループによると、喘息のエンドタイプを正確に診断するには、小児に麻酔を施して肺組織のサンプルを採取し、その遺伝子解析を行う必要があるという。しかし、この処置は極めて侵襲的であるため、軽症の喘息の小児には適応されない。そのため医師は血液、肺機能、その他のアレルギーの検査の結果に基づいて喘息のエンドタイプを推測しているのが現状だとCeledon氏は説明する。同氏は、「これらの検査により、小児の喘息のエンドタイプがT2-highであるか否かを推測することはできるが、100%正確とは言えない。また、T17-highかT2-low/T17-lowかについては、臨床マーカーがないため分からない。この格差が、喘息エンドタイプ診断の精度を向上させるためのより良いアプローチを開発する動機となった」と話す。 今回の研究では、小児459人の鼻上皮細胞のサンプルを用いて、トランスクリプトーム解析により、T2経路に関連する3つの遺伝子とT17経路に関連する5つの遺伝子の転写プロファイルを調査した。研究グループによると、これらのサンプルは、喘息の罹患率が高く、喘息で死亡リスクも高いプエルトリコ人とアフリカ系米国人の小児に焦点を当てた米国の3件の研究から採取されたものであったという。 その結果、この鼻腔スワブを用いた解析により、小児の喘息の特定のエンドタイプを正確に特定できることが明らかになった。全体で、参加者の23~29%がT2-high、35~47%がT17-high、30~38%がT2-low/T17-lowの喘息であった。 Celedon氏らによると、重度のT2-highの喘息の治療には、強力な新クラスの生物学的製剤を利用できるが、それ以外のエンドタイプの喘息に対して有効な治療薬はないという。Celedon氏は、「T2-highの喘息に対する治療法が改善されたのは、より優れたマーカーがこのエンドタイプの研究を推進したおかげでもある。今後は、この簡便な検査により他のエンドタイプの喘息を検出できるようになるため、T17-high、およびT2-low/T17-lowの喘息に対する生物学的製剤の開発にも着手できるだろう」と話している。

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「2024年のOncology注目トピックス」(肺がん編)【肺がんインタビュー】第106回

第106回 「2024年のOncology注目トピックス」(肺がん編)近年の肺がん薬物治療は、分子標的薬、免疫チェックポイント阻害薬(ICI)に加え、抗体薬物複合体や二重特異性T細胞誘導抗体(BiTE抗体)をはじめとした二重特異性抗体などの新規薬剤の開発、さらにこれらを駆使した薬物治療の進歩は目覚ましく、より多くの肺がん患者が治癒/長期生存を目指せる時代となってきた。2024年は多くのpractice changingな臨床試験が学会/論文発表され、本邦における「肺癌診療ガイドライン2024年版」でも数多くの新規治療が推奨されている。本稿では、これらの中でも現在/将来の実臨床に直結し得る報告について整理し概説する。[目次]1.TNM分類の改訂2.早期NSCLC(EGFR/ALK陰性の場合)2-1.II~IIIB期NSCLCに対する術前・術後のペムブロリズマブ(KEYNOTE-671試験)2-2.II~IIIB期NSCLCに対する術前・術後のニボルマブ療法(CheckMate 77T試験)2-3.2025年以降の切除可能NSCLC(EGFR/ALK陰性例)に対する周術期治療の展望2-4.IB~IIIA期完全切除後ALK融合遺伝子陽性NSCLCに対する術後アレクチニブ単剤療法(ALINA試験)3.切除不能III期NSCLC3-1.切除不能III期EGFR遺伝子変異陽性NSCLCに対するCRT後のオシメルチニブ(LAURA試験)4.進行期EGFR遺伝子変異陽性NSCLC4-1.未治療進行期EGFR遺伝子変異NSCLCに対するアミバンタマブ+lazertinib併用療法(MARIPOSA試験)4-2.オシメルチニブ耐性後のEGFR遺伝子変異陽性NSCLCに対するアミバンタマブ+化学療法±lazertinib(MARIPOSA-2試験)5.進行期ALK融合遺伝子陽性NSCLC5-1.未治療進行期ALK融合遺伝子陽性NSCLCに対するロルラチニブ単剤療法(CROWN試験)6.進行期ROS1融合遺伝子陽性NSCLC6-1.進行期ROS1融合遺伝子陽性NSCLCに対するレポトレクチニブ単剤療法(TRIDENT-1試験)6-2.進行期ROS1融合遺伝子陽性NSCLCに対するtaletrectinib単剤療法(TRUST-I試験)7.小細胞肺がん(SCLC)7-1.限局期SCLC(LS-SCLC)に対する同時CRT後のデュルバルマブ(ADRIATIC試験)1.TNM分類の改訂肺がんのTNM分類は、国際対がん連合(UICC)/米国がん合同委員会(AJCC)によって7年おきに改訂されており、第8版は2017年から施行されていた。2023年の世界肺癌学会(WCLC)で第9版のTNM分類が発表され、2024年にJournal of Thoracic Oncology誌に報告されている(Rami-Porta R, et al. J Thorac Oncol. 2024;19:1007-1027. )。本邦においても2024年12月末に「肺癌取扱い規約 第9版」が発刊となっており、2025年1月より発効されている。T/N/M各因子の主な変更点は以下のとおり。T因子変更なしN因子N2(同側縦隔かつ/または気管分岐下リンパ節への転移)がN2aとN2bに細分化N2a:単一のリンパ節stationへの転移、N2b:複数のリンパ節stationへの転移M因子M1c(胸腔外の1臓器または多臓器への多発遠隔転移)がM1c1とM1c2に細分化M1c1:胸腔外の1臓器への多発転移、M1c2:胸腔外の多臓器への多発転移これらの分類変更に伴い、病期分類も改訂(図1)がなされている。これにより、第8版と第9版でステージングが異なる可能性がある(図2)ため、注意されたい。図1 肺がんTNM分類の第9版のステージングの概要画像を拡大する(筆者作成)図2 肺がんTNM分類の第8版と第9版の相違点画像を拡大する(筆者作成)周術期治療のさまざまな治療開発が進む中で、第9版では、より切除可能性を意識した分類であると言える。ただし、欧州がん研究治療機構肺がんグループ(EORTC-LCG)によるIII期非小細胞肺がん(NSCLC)の切除可能性に関するサーベイ(図3)では、回答者によって切除可能性の考えが異なるサブセットもあり(例:multi-station N2(N2b)のIII期症例)、個々の症例ごとに多職種チーム(Multidisciplinary team)で協議することが求められる。図3 III期NSCLCにおけるTNMサブセットと切除可能性評価に関するサーベイ概要画像を拡大する(Houda I, et al. Lung Cancer. 2024;199:108061. より筆者作成)2.早期NSCLC(EGFR/ALK陰性の場合)2-1. II~IIIB期NSCLCに対する術前・術後のペムブロリズマブ(KEYNOTE-671試験)II~IIIB期(第8版)の切除可能なNSCLC患者に対して、抗PD-1抗体であるペムブロリズマブの術前化学療法への上乗せと術後の単独追加投与(最大1年間)による有効性および安全性を検証した二重盲検プラセボ対照第III相ランダム化比較試験であるKEYNOTE-671試験の中間解析(追跡期間中央値25.2ヵ月)において、無イベント生存期間(EFS)の有意な延長(ハザード比[HR]:0.58、95%信頼区間[CI]:0.46~0.72、p<0.001、中央値:未到達vs.17.0ヵ月)が認められたことが2023年の米国臨床腫瘍学会(ASCO)で発表され、New England Journal of Medicine誌に同時報告された(Wakelee H, et al. N Engl J Med. 2023;389:491-503. )。この試験の主要評価項目はEFSと全生存期間(OS)のco-primaryとなっており、片側α=0.025をEFS、OS、病理学的著効(mPR)、病理学的完全奏効(pCR)に分割し、厳密に制御されたデザインである(EFS:α=0.01、OS:α=0.0148、mPR:α=0.0001、pCR:α=0.0001)。2024年にはLancet誌にフォローアップ期間を延長(追跡期間中央値36.6ヵ月)したアップデート報告がなされ(Spicer JD, et al. Lancet. 2024;404:1240-1252. )、ペムブロリズマブ群におけるOSの有意な延長が示された(HR:0.72、95%CI:0.56~0.93、中央値:未到達vs.52.4ヵ月、p=0.00517)。なお、サブグループ解析では、PD-L1発現が高い患者やステージがより進行した患者でEFSのリスク軽減が認められている。また、治療関連有害事象は両群間で差は認められなかった(重篤な有害事象の頻度:17.7% vs.14.3%)。また、2024年12月のESMO Immuno-Oncology Congress(ESMO-IO)で報告された4年フォローアップデータ(追跡期間中央値:41.1ヵ月)においても、OS延長の傾向は維持されている(HR:0.73、95%CI:0.58~0.92)。KEYNOTE-671試験の結果から、2023年10月に米国食品医薬品局(FDA)の承認が得られ、本邦では2024年8月に国内製造販売承認事項一部変更の承認を取得している。「肺癌診療ガイドライン2024年版」では、臨床病期II~IIIB期(第9版、N3を除く)に対して、術前にプラチナ製剤併用療法とペムブロリズマブを併用し、術後にペムブロリズマブの追加を行う治療が弱く推奨されている(推奨の強さ:2、エビデンスの強さ:B)。2-2. II~IIIB期NSCLCに対する術前・術後のニボルマブ療法(CheckMate 77T試験)II~IIIB期(第8版)の切除可能なNSCLC患者に対して、抗PD-1抗体であるニボルマブの術前化学療法への上乗せと術後の単独追加投与(最大1年間)による有効性および安全性を検証した二重盲検プラセボ対照第III相ランダム化比較試験であるCheckMate 77T試験の中間解析(追跡期間中央値25.4ヵ月)において、EFSの有意な延長(HR:0.58、97.36%CI:0.42~0.81、p<0.001、中央値:未到達vs.18.4ヵ月)が認められたことが2023年の欧州臨床腫瘍学会(ESMO)で発表され、New England Journal of Medicine誌に2024年に報告された(Cascone T, et al. N Engl J Med. 2024;390:1756-1769. )。副次評価項目であるpCR/mPR割合もニボルマブ群で向上が認められた(ニボルマブ群 vs.化学療法群:pCR 25.3% vs.4.7%[オッズ比:6.64、95%CI:3.40~12.97]、mPR 35.4% vs.12.1%[オッズ比:4.01、95%CI:2.48~6.49])。前述のKEYNOTE-671試験と同様に、PD-L1発現が高い患者やステージがより進行した患者でEFSのリスク軽減が認められた。これらの試験結果から、2024年10月にFDAの承認が得られている(本邦では2025年1月時点で未承認)。2024年のESMOでは、追跡期間中央値33.3ヵ月のアップデート報告が発表(ESMO2024、LBA50)され、引き続きEFSのベネフィットが示されている(HR:0.59、95%CI:0.45~0.79、中央値:40.1ヵ月 vs.17.0ヵ月)。また、2024年のWCLCでは、ニボルマブの術後投与の必要性を検討するために術前投与(CheckMate 816試験)と、術前・術後投与(CheckMate 77T試験)を両試験の患者背景を傾向スコアによる重み付け解析で調整することにより比較した研究が報告された(WCLC 2024、PL02.08)。CheckMate 77T群の患者では1回以上の術後ニボルマブを投与された患者のみが対象となっており、術後ニボルマブ投与が何らかの理由で困難であった患者は潜在的に除外されている点(CheckMate 77T群で有利な患者選択になっている可能性)には注意が必要であるが、周術期ニボルマブは術前のみのニボルマブに対して手術時点からのEFSを改善し(重み付けありのHR:0.61、95%CI:0.39~0.97)、とくにPD-L1陰性例や、non-pCR例で術後ニボルマブ投与の意義がある可能性が示唆されている。2-3. 2025年以降の切除可能NSCLC(EGFR/ALK陰性例)に対する周術期治療の展望2025年1月現在、NSCLCに対するICIを用いた周術期治療として、本邦ではCheckMate 816レジメン(術前ニボルマブ)、KEYNOTE-671レジメン(周術期ペムブロリズマブ)、IMpower010レジメン(術後アテゾリズマブ)が選択可能である(図4)。術前治療を行うレジメンにおいても、CheckMate 816レジメンとKEYNOTE-671レジメンでは術後治療の有無のみだけでなく、プラチナ製剤の種類や術前治療のサイクル数など細かな違いがあり(表1)、国内の各施設において、内科・外科双方で周術期の治療戦略方針を議論しておく必要があるだろう。また、EGFR遺伝子変異陽性例やALK融合遺伝子陽性例でもICIを用いた周術期治療が有効かどうか、PD-L1発現や術後のpCR/mPRステータス別の治療戦略など争点は未だ多く残っており、さらなるエビデンスの蓄積が求められる。さらに、IIIA-N2期のNSCLCを切除可能として周術期治療を行うか、切除不能として化学放射線療法(CRT)を行うかの判断は非常に難しい。2013~14年の国内のIIIA-N2期のNSCLCに対する治療実態調査(Horinouchi H, et al. Lung Cancer. 2024;199:108027. )では、周術期化学療法が行われたのは約25%であり、約59%はCRTが選択された。CRTが選択された患者で切除不能とされた主要な理由は、転移リンパ節数が多いことであり(71%)、周術期ICI戦略の登場によってこの勢力図が今後どのように変化していくか注視したい。図4 主要な周術期治療戦略の概略図画像を拡大する(筆者作成)表1 主要な術前ICIの臨床試験の患者背景の違い画像を拡大する(筆者作成)2-4. IB~IIIA期完全切除後ALK融合遺伝子陽性NSCLCに対する術後アレクチニブ単剤療法(ALINA試験)完全切除後のALK融合遺伝子を有するIB~IIIA期(第7版)NSCLCに対して、術後補助療法としてアレクチニブ(1,200mg/日を2年間内服)とプラチナ併用療法を比較したALINA試験の結果が2023年のESMOで発表され、2024年にNew England Journal of Medicine誌に報告された(Wu YL, et al. N Engl J Med. 2024;390:1265-1276. )。試験の注意点として、アレクチニブの用量が国内の進行期の承認用量(600mg/日)よりも多いことが挙げられる。主要評価項目である無病生存期間(DFS)は、II~IIIA期、IB~IIIA期の順に階層的に検証され、それぞれ有意な延長が示された(II~IIIA期のHR:0.24、95%CI:0.13~0.45、p<0.0001、IB~IIIA期のHR:0.24、95%CI:0.13~0.43、p<0.0001)。また、脳転移再発を含む中枢神経系イベントのDFSの延長も示されている(HR:0.22、95%CI:0.08~0.58)。ALINA試験の結果から、2024年4月にFDA承認が得られ、本邦では2024年8月に国内適応追加承認を取得している。また、「肺癌診療ガイドライン2024年版」では、ALK融合遺伝子陽性の術後病理病期II~IIIB期(第9版)完全切除例に対して、従来の術後補助療法(プラチナ併用療法)の代わりとしてアレクチニブによる治療を行うよう弱く推奨されている(推奨の強さ:2、エビデンスの強さ:B)。今後は術後の時点でALK(およびEGFR)のステータスを確認することが求められる。3.切除不能III期NSCLC3-1. 切除不能III期EGFR遺伝子変異陽性NSCLCに対するCRT後のオシメルチニブ(LAURA試験)切除不能なEGFR遺伝子変異陽性III期NSCLCでCRT終了後に病勢進行のない患者に対するオシメルチニブ地固め療法の有効性および安全性を検証した二重盲検プラセボ対照第III相ランダム化比較試験であるLAURA試験の主解析およびOSに関する第1回中間解析の結果が2024年のASCOで発表され、同年New England Journal of Medicine誌に報告された(Lu S, et al. N Engl J Med. 2024;391:585-597. )。試験デザインでは、オシメルチニブを永続内服する必要があった点に留意が必要である。主要評価項目の無増悪生存期間(PFS)はオシメルチニブ群で有意に延長し(HR:0.16、95%CI:0.10~0.24、p<0.001、中央値:39.1ヵ月vs.5.6ヵ月)、オシメルチニブ群で脳転移や肺転移などの遠隔転移再発が少ないことが示された(脳転移:8% vs.29%、肺転移:6% vs.29%)。OSは未成熟(成熟度20%)であり、プラセボ群では約8割が再発後にオシメルチニブの投与を受けており、今後のOSでも有意な延長が確認されるかどうかは長期フォローアップデータが待たれる。有害事象面では、放射線肺臓炎はオシメルチニブ群で数値的に多い(48% vs.38%)ものの、ほとんどがGrade2以下であった。なお、本試験には日本人が30例登録されており、日本人サブセットデータが2024年の日本肺癌学会で報告され、日本人サブセットにおいてもLAURA試験の全体集団の結果と一致したことが報告されている。また、日本人では肺障害が懸念されるものの、Grade3以上の放射線肺臓炎の頻度はわずか(4%、30例中1例のみ)であった。LAURA試験の結果から、2024年9月にFDA承認されており、本邦では2025年1月時点で未承認であるが、2024年7月に国内承認申請済みであり、そう遠くない未来には本邦でも使用可能な戦略になることが期待される。4.進行期EGFR遺伝子変異陽性NSCLC4-1. 未治療進行期EGFR遺伝子変異NSCLCに対するアミバンタマブ+lazertinib併用療法(MARIPOSA試験)未治療のEGFR遺伝子変異(exon19欠失変異あるいはL858R変異)陽性NSCLCに対する、アミバンタマブ(EGFRとMETの二重特異性抗体)とlazertinibの併用療法の有効性・安全性をオシメルチニブ単剤(およびlazertinib単剤)と比較した国際無作為化第III相試験であるMARIPOSA試験の第1回中間解析結果が2023年のESMOで発表され、2024年にNew England Journal of Medicine誌に報告された(Cho BC, et al. N Engl J Med. 2024;391:1486-1498. )。アミバンタマブ+lazertinib群でオシメルチニブ群と比較して有意なPFSの延長が示された(HR:0.70、95%CI:0.58~0.85、p<0.001、中央値:23.7ヵ月vs.16.6ヵ月)。2024年のASCOでは高リスクの患者背景(肝転移、脳転移、TP53変異陽性など)を持つサブグループでもアミバンタマブ+lazertinibのPFSベネフィットがあることが示され、論文化されている(Felip E, et al. Ann Oncol. 2024;35:805-816. )。OSについては未だ未成熟ではあるものの、同年のWCLCでアップデート報告(追跡期間中央値:31.1ヵ月)(WCLC 2024、OA02.03)が発表され、アミバンタマブ+lazertinib群のOS中央値は未到達、HRは0.77(95%CI:0.61~0.96、p=0.019)とアミバンタマブ+lazertinib群でこれまで絶対的な標準治療であったオシメルチニブ単剤療法を上回る可能性が示唆されている。2025年1月には、OSが統計学的有意かつ臨床的に意義のある延長を示したとのプレスリリースが出ており、2025年内の報告が期待される。もっとも、アミバンタマブを用いることで皮膚毒性や浮腫、インフュージョンリアクションや静脈血栓症など配慮すべき有害事象は増えるため、リスクベネフィットを踏まえた治療選択や、適切な毒性管理が求められる。この試験結果から、2024年8月にFDA承認が得られており、本邦では2024年4月に承認申請中である。4-2. オシメルチニブ耐性後のEGFR遺伝子変異陽性NSCLCに対するアミバンタマブ+化学療法±lazertinib(MARIPOSA-2試験)アミバンタマブを用いた治療戦略は既治療例でも検討されており、オシメルチニブ耐性後のEGFR遺伝子変異(exon19欠失変異あるいはL858R変異)陽性NSCLCに対するアミバンタマブ+プラチナ併用療法±lazertinibの有効性・安全性を化学療法(カルボプラチン+ペメトレキセド)と比較した無作為化オープンラベル第III相試験であるMARIPOSA-2試験の第1回中間解析結果が2023年のESMOで発表され、2024年にAnnals of Oncology誌に報告されている(Passaro A, et al. Ann Oncol. 2024;35:77-90. )。主要評価項目であるPFSは、アミバンタマブ+化学療法およびアミバンタマブ+化学療法+lazertinibにより、化学療法のみと比較して有意に延長したことが示された(HRはそれぞれ0.48、0.44、共にp<0.001、中央値はそれぞれ6.3、8.3、4.2ヵ月)。2024年のESMOでは第2回中間解析結果が発表され、追跡期間中央値18.1ヵ月時点におけるOS中央値は、統計学的な有意差は認めなかったものの、アミバンタマブ+化学療法群で化学療法群よりも延長する傾向にあった(HR:0.73、95%CI:0.54~0.99、p=0.039、中央値:17.7ヵ月vs.15.3ヵ月)。この試験結果から、2024年9月にFDAの承認(アミバンタマブ+化学療法のみ)が得られており、本邦では2024年5月に承認申請中である。5.進行期ALK融合遺伝子陽性NSCLC5-1. 未治療進行期ALK融合遺伝子陽性NSCLCに対するロルラチニブ単剤療法(CROWN試験)PS0~1の未治療進行期ALK融合遺伝子陽性NSCLCを対象として、ロルラチニブ単剤療法とクリゾチニブ単剤療法を比較した国際共同非盲検ランダム化第III相試験であるCROWN試験において、ロルラチニブによって主要評価項目であるPFSの有意な延長が2020年に示されていた(HR:0.28、95%CI:0.19~0.41、p<0.001、中央値:未到達vs.9.3ヵ月)(Shaw AT, et al. N Engl J Med. 2020;383:2018-2029. )。2024年に報告された同試験の長期フォローアップ報告(観察期間中央値60.2ヵ月)でも、PFS中央値は未到達であった(Solomon BJ, et al. J Clin Oncol. 2024;42:3400-3409. )。5年時点での中枢神経イベントフリー割合はロルラチニブでクリゾチニブよりも著明に高く(92% vs.21%)、高い頭蓋内制御効果が確認された。一方、ロルラチニブによる認知機能障害や気分障害などの中枢神経関連有害事象(全Gradeで約40%)に対しては慎重なマネジメントが求められる。この試験結果から、「肺癌診療ガイドライン2024年版」では、2023年から推奨度が変更となり、PS0~1のALK融合遺伝子陽性、進行NSCLCの1次治療として、ロルラチニブ単剤療法を行うよう強く推奨されている(推奨の強さ:1、エビデンスの強さ:B)。(※アレクチニブは推奨の強さ:1、エビデンスの強さ:A、ブリグチニブは推奨の強さ:2、エビデンスの強さ:B)6.進行期ROS1融合遺伝子陽性NSCLC6-1. 進行期ROS1融合遺伝子陽性NSCLCに対するレポトレクチニブ単剤療法(TRIDENT-1試験)ROS1融合遺伝子陽性のNSCLCを含む進行固形がん患者を対象に、ROS1-TKIであるレポトレクチニブの有効性と安全性を評価した第I/II相試験であるTRIDENT-1試験の結果は、2023年のWCLCで初回報告され(WCLC 2023、OA03.06)、2024年にNew England Journal of Medicine誌に報告された(Drilon A, et al. N Engl J Med. 2024;390:118-131. )。ROS1-TKI未治療例が71例、既治療例が56例登録され、レポトレクチニブ単剤治療(1日1回160mgを14日間内服後、1回160mgを1日2回内服)により、主要評価項目であるORRは未治療例で79%、既治療例で38%、PFS中央値は未治療例で35.7ヵ月、既治療例で9.0ヵ月であったと報告された。また、この薬剤は分子量が小さいことから、ATP結合部位へ正確かつ強力に結合することができ、クリゾチニブなど従来のROS1-TKIの耐性変異として問題となるG2032R変異を有する患者においても59%に奏効が認められた。ただし、主な治療関連有害事象として、めまい(58%)など中枢神経系の有害事象には注意が必要である(治療関連有害事象による中止は3%)。この試験の結果から、2024年6月にFDA承認が得られ、本邦では2024年9月に国内製造販売承認を取得している。また、「肺癌診療ガイドライン2024年版」では、ROS1融合遺伝子陽性、進行NSCLCの1次治療として、レポトレクチニブを含むROS1-TKI単剤療法を行うよう強く推奨されている(推奨の強さ:1、エビデンスの強さ:C)(※ROS1-TKIの薬剤の推奨度は同列)。6-2. 進行期ROS1融合遺伝子陽性NSCLCに対するtaletrectinib単剤療法(TRUST-I試験)2024年のASCOでは、新規ROS1チロシンキナーゼ阻害薬であるtaletrectinib単剤療法の有効性、安全性を検証した単群第II相のTRUST-I試験の結果が報告(ASCO 2024、#8520)され、Journal of Clinical Oncology誌に同時掲載されている(Li W, et al. J Clin Oncol. 2024;42:2660-2670. )。ROS1-TKI未治療症例において奏効割合91%、頭蓋内奏効割合88%、PFS中央値23.5ヵ月と良好な成績を示した。クリゾチニブ既治療症例においても、奏効割合52%、頭蓋内奏効割合73%と良好な結果であった。主な有害事象はAST上昇(76%)や下痢(70%)であり、高い中枢神経移行性を持つ一方で、前述のレポトレクチニブと異なり中枢神経系の有害事象が比較的少ないことが特徴である。taletrectinibが神経栄養因子受容体(TRK)よりもROS1に対して酵素的選択性を示すことが起因していると考えられる。なお、TRUST-I試験は中国国内の単群試験であったが、国際共同単群第II相試験であるTRUST-II試験でも同様の結果が再現されたことが2024年のWCLCで報告されている(WCLC 2024、MA06.03)。これらの試験結果から、taletrectinibはFDAの優先審査対象となり現在審査中である。表2 主なROS1-TKIの治療成績、有害事象のまとめ画像を拡大する(筆者作成)7.小細胞肺がん(SCLC)7-1. 限局期SCLC(LS-SCLC)に対する同時CRT後のデュルバルマブ(ADRIATIC試験)I~III期の切除不能LS-SCLCに対する同時CRT後に病勢進行のない患者に対するデュルバルマブ地固め療法(最大2年間)の有効性および安全性を検証した二重盲検プラセボ対照第III相ランダム化比較試験であるADRIATIC試験の第1回中間解析の結果が2024年のASCOで発表され、同年New England Journal of Medicine誌に報告された(Cheng Y, et al. N Engl J Med. 2024;391:1313-1327. )(デュルバルマブ群の他、デュルバルマブ+トレメリムマブ群も存在するが、現時点で盲検化されている)。デュルバルマブ群はプラセボ群より有意にOS、PFS(co-primary endpoints)を延長した(OSのHR:0.73、98.321%CI:0.54~0.98、p=0.01、中央値:55.9ヵ月vs.33.4ヵ月、PFSのHR:0.76、97.195%CI:0.59~0.98、p=0.02、中央値:16.6ヵ月vs.9.2ヵ月)。肺臓炎/放射線肺臓炎はデュルバルマブ群で38.2%、プラセボ群で30.2%(Grade3/4はそれぞれ3.1%、2.6%)に発現し、免疫関連有害事象は全Gradeでそれぞれ32.1%と10.2%であった(Grade3/4はそれぞれ5.3%、1.4%)。本試験では同時CRT時の放射線照射の回数は1日1回と1日2回のいずれも許容されていた。本試験では1日1回照射を受けた患者の方が多く(約7割)、国によっては放射線照射を外来で行うことが主流であることが一因と考えられる。2024年のESMOで照射回数によるサブグループ解析結果が報告されており(ESMO 2024、LBA81)、いずれの照射回数においてもデュルバルマブ群でOS、PFSを改善することが確認されているが、1日2回照射の方がデュルバルマブ群、プラセボ群双方においてOS、PFSの絶対値が長いことも示されている。また、本試験には日本人が50例登録されており、日本人サブセットデータが2024年の日本肺癌学会で報告され、同時CRT後のデュルバルマブ地固め療法は日本人集団においても臨床的に意義のあるOSの改善が示されている。ADRIATIC試験の結果から、2024年12月にFDAで承認された。本邦では2025年1月時点で未承認であるが、LAURA試験レジメンと同時に国内承認申請済みであり、今後の承認が期待される。おわりに2024年に学会/論文発表された臨床試験のうち、国内ガイドラインで推奨された治療、および今後推奨が予想される治療を中心に解説した。2024年は切除可能な早期から進行期までさまざまな病期の肺がんにおける新知見が報告された印象的な1年であったと言える。本稿では詳しく取り上げなかったが、その他にも2024年に国内で新規承認されたレジメンは多く、表3にまとめた。2025年以降も肺がんの治療の進歩がさらに加速していくことを期待したい。表3 2024年に国内承認された、あるいは2025年内に承認が予想されるレジメン画像を拡大する(筆者作成)【2024年の学会レポート・速報】

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