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簡易懸濁法による服薬介助のため、細粒からOD錠への変更を提案【うまくいく!処方提案プラクティス】第51回

 今回は、簡易懸濁法で服薬管理している患者さんの処方提案です。そのまま継続でも問題ない処方内容ですが、服薬介助の負担や薬局の作業効率の向上などの理由から薬剤を変更することを提案しました。患者情報90歳、女性(施設入居)基礎疾患認知症、高血圧、心房細動服薬管理施設看護師処方内容1.エドキサバン口腔内崩壊錠30mg 1錠 分1 朝食後2.オルメサルタン口腔内崩壊錠10mg 1錠 分1 朝食後3.メマンチン口腔内崩壊錠20mg 1錠 分1 朝食後4.ニフェジピン腸溶細粒2% 2包 分2 朝夕食後5.ビソプロロールフマル酸塩錠2.5mg 1錠 分1 朝食後6.経腸成分栄養剤(9-2)液 1,200mL 分3 毎食後本症例のポイントこの患者さんは、経口摂取が困難で長期的に回復が見込めないことから、施設入居前に胃瘻を造設して経口投与から経管投与への切り替えを行っていました。施設入居後に当薬局が介入することになりましたが、1日1回服用の薬が多いのに、ニフェジピン腸溶細粒のみ1日2回であったことから、現場の負担が大きいのではないか気になりました。また、薬局側としても、ニフェジピン腸溶細粒だけ別包のため、ホチキスでまとめるという作業が発生し、その一手間が積み重なると作業効率の妨げとなる恐れがありました。医師の初診に立ち会う前に看護師に確認したところ、やはり朝食後の服用だけにまとめられないかという相談がありました。そこで、1日1回服用かつ口腔内崩壊錠でまとめると簡易懸濁による服薬介助が楽になるのではないかと考えました。なお、血圧は120〜140/60〜80台で安定していました。処方提案と経過ニフェジピン腸溶細粒をアムロジピン口腔内崩壊錠2.5mg 1錠 朝食後へ変更できないか相談することにしました。アムロジピン口腔内崩壊錠であれば作用時間が長く1日1回の服用のため、朝食後の服用薬とタイミングを合わせることが可能です。また、口腔内崩壊錠ですので、簡易懸濁法で容易に崩壊することができます。これらのことから現場の介護負担が減り、薬局の作業効率も改善するのではないかと考えました。医師の診察に立ち会って上記の提案をしたところ「やってみましょう」ということになり、翌日から変更となりました。看護師に変更内容と、今後は血圧推移に注意しながらモニタリングすることを伝えました。処方変更後の血圧は120~130/70~80台で、その後もとくに変動することなく施設生活を続けています。

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まだまだ続く後発品の供給不安、加算の臨時的取り扱いが延長へ【早耳うさこの薬局がざわつくニュース】第98回

後発医薬品の入手が困難になってから、1年半が経ちました。医薬品卸会社や医師、患者さんの協力を得てなんとか後発医薬品の調剤割合が維持できているという薬局も少なくないのではないでしょうか。その後発医薬品の供給不安に対して、以下のような対応が発表されました。後発医薬品の供給不安が続いていることを踏まえ、厚生労働省は9月末までの臨時的な措置としていた後発品調剤体制加算や後発品使用体制加算などに関する臨時的な取り扱いを半年間、延長する。仕組みはこれまでと変わらないが、後発品使用割合の実績を算出する際に対象から除外してもよい品目リストは更新。7月1日時点の供給状況を踏まえて87成分1457品目の新たなリストを示した。10月診療分から適用し、2023年3月末まで。29日付で事務連絡を出した。(2022年9月30日付 日刊薬業Web)小林化工のGMP違反が発覚したのが2020年末で、後発医薬品の欠品や出荷調整などの供給不安が薬局運営に影を落とし始めたのが2021年春ごろでした。そのような状況を受け、2021年9月21日より後発医薬品に係る施設基準の臨時的な取り扱いが発表され、一部の供給停止品目と同一成分・同一投与形態の医薬品は、後発医薬品の調剤(使用)割合を算出する際に除外してもよいとされました。しかし、その後も供給不安は継続し、2022年3月4日に追加の通知が出され、臨時的な取り扱いが2022年9月30日まで延長されました。今回の対応により引き続き10月以降も適用となり、2023年3月末まで継続されることになりました。目的と内容に変更はありませんが、今回の通知の発出と併せて除外する品目リストが更新されていますので要チェックです。後発医薬品調剤割合の維持が大きな負担56.2%さて、この後発医薬品の供給状況や措置に関して、他の薬局はどのような状況なのでしょうか。2022年9月8日に保険薬局協会(NPhA)が公表したアンケート結果では、「後発医薬品調剤割合を維持するための負担はあるか」という問いに対し、「大きな負担である」という回答が2020年7月は8.5%でしたが、2021年8月は60.8%に爆上がりしています。その後も2022年1月は66.1%、2022年8月は56.2%と高い割合が続き、使用割合を維持するための負担がまだまだ大きいようです。また、「後発医薬品の出荷停止等を踏まえた診療報酬上の臨時的な取扱い」の通知による後発医薬品調剤体制加算への影響については、「加算ランクへの影響がなかった」が1位で77.7%、「加算ランクのダウンが回避された」が2位で16.4%、「加算ランクがアップした」が3位で5.9%でした。臨時的な取り扱いによって加算ランクをキープやアップできた薬局があってよかったと思います。加算ランクがギリギリという薬局は、更新された除外する品目リストを確認してみてはいかがでしょうか。個人的には、小林化工に端を発した五月雨的な供給不安はまだ続くと考えています。後発品調剤体制加算や後発品使用体制加算などに関する臨時的な取り扱いが半年間延長となりましたが、また次も延長になる予感もするため、まだ苦労の日々は続きそうです。

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英語で「吸入」は?【1分★医療英語】第49回

第49回 英語で「吸入」は?How often do I take this inhaler?(この吸入器はどれくらいの頻度で使うのですか?)Inhale 2 puffs once a day.(1日に1回、2吸入してください)《例文1》One bottle of inhaler contains 200 puffs.(吸入器1ボトルで200回分の吸入ができます)《例文2》Repeat these steps for each puff.(一度吸入するたびに、これらの方法を繰り返してください)《解説》「吸入する」という動詞は“inhale”を使い、「吸入器」は動詞を活用した“inhaler”です。そして名詞の「吸入」を表現したいときには“puff”を使います。“puff”は、「ひと吹きする」「吹き出す」「噴射する」といった動詞としても使われ、“take a puff of a cigarette”は「タバコを吹かす(一服する)」という意味になります。また、“puff”には「プッと膨らむ」という意味もあり、お菓子のシュークリームは“cream puff”です。吸入器の使い方は、患者さんがわかるまで丁寧に“step by step”で実演しながら説明します。米国ではHealth literacy があまり高くない患者さんも多いので、理解度を確認することが大切です。吸入器の説明の際によく使われる“breathe”と“breath”の発音の違いも練習しておくとよいでしょう。“Breathe out all the way.”(息を吐き出します)“As you start to slowly breathe in, press down the inhaler one time.”(息をゆっくり吸い込みながら、吸入器を一度押します)“Hold your breath as you slowly count to 10.”(息を止め、ゆっくり10数えます)といった感じです。講師紹介

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AYA世代の女性ヘルスケア―対応と実際―

AYA世代を応援する性教育の現状と未来「産婦人科の実際」71巻10号(2022年9月臨時増刊号)今、“AYA世代”の女性を対象としたヘルスケアの必要性が再認識されつつあります。メンタルヘルス、性感染症、避妊、がんと生殖、GID、セクシュアリティなど、若年層に対する様々なケアについて一挙に解説します! 女性医学領域の新しいニーズに応える1冊です。画像をクリックすると、内容の一部をご覧いただけます。※ご使用のブラウザによりPDFが読み込めない場合がございます。PDFはAdobe Readerでの閲覧をお願いいたします。画像をクリックすると、内容の一部をご覧いただけます。※ご使用のブラウザによりPDFが読み込めない場合がございます。PDFはAdobe Readerでの閲覧をお願いいたします。    AYA世代の女性ヘルスケア―対応と実際―定価9,350円(税込)判型B5判頁数274頁発行2022年9月企画末岡 浩電子版でご購入の場合はこちら

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第133回 パキロビッド投与後のCOVID-19再燃は免疫障害に起因するのではなさそう

Pfizer社の新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)プロテアーゼ阻害薬・パキロビッドパック(Paxlovid、以下パキロビッド)投与が済んだ後のSARS-CoV-2感染(COVID-19)再燃(再発症やSARS-CoV-2再検出)は心配されていた免疫反応の障害によるのではないらしいことが米国政府研究者の試験で示唆されました1-3)。米国メリーランド州のNIH Clinical Centerや同国のその他の病院で進行中の試験の被験者を調べたその結果によるとパキロビッド投与5日間は短すぎてSARS-CoV-2への確実な免疫反応を引き出せないという仮説はどうやら的外れなようです2)。Clinical Infectious Diseases誌に先週6日に掲載されたその研究ではパキロビッド使用後にCOVID-19再燃を被った6例と再燃症状なしのCOVID-19患者6例が調べられました。COVID-19再燃患者6例はCOVID-19ワクチンの追加接種まで済ませており、最初の発症から4日以内にパキロビッドを使い始め、その後にCOVID-19症状が再発しました。比較対照群であるCOVID-19非再燃6例もワクチン追加接種済みでした。COVID-19再燃患者6例も対照群の6例も最初の感染や再燃の時に入院を要する重病には陥らずに済みました。それら12例の病状の経過や血液/鼻ぬぐい液を解析した結果、パキロビッドを効かなくすると思しき変異は幸いにもCOVID-19再燃患者に認められませんでした。SARS-CoV-2スパイクタンパク質への抗体はどの患者でも豊富で、COVID-19再燃患者の抗体確立の遅れを示す所見はありませんでした。SARS-CoV-2特異的なT細胞反応も確かであり、COVID-19再燃患者のその反応は非再燃患者を上回っていました。昔ながらの手法の培養でCOVID-19再燃患者6例を調べたところ自己免疫疾患で免疫不全の1例から感染可能なSARS-CoV-2が検出されました。また、ウイルスの細胞侵入をおよそ10倍高める成分・ポリブレン添加による培養でCOVID-19再燃患者6例を調べたところ昔ながらの手法より多い4例からSARS-CoV-2が同定されました。それらの結果によると再燃症状はSARS-CoV-2の名残りのRNAへの確固たる細胞反応を一因とするのであって免疫反応の障害がウイルス複製を許してしまうことに起因するのではなさそうです。COVID-19再燃患者から感染可能なSARS-CoV-2が検出されたことから隔離を要する場合があるかもしれません。それに、免疫反応が不十分な免疫不全の人へのより長期のパキロビッド治療を検討する臨床試験が必要なようです2)。参考1)Epling BP, et al.Clin Infect Dis. 2022 Oct 6:ciac663. [Epub ahead of print]2)Findings suggest COVID-19 rebound not caused by impaired immune response / Eurekalert3)COVID rebound after Pfizer treatment likely due to robust immune response, study finds / Reuters

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遺族にNGな声かけとは…「遺族ケアガイドライン」発刊

 2022年6月、日本サイコオンコロジー学会と日本がんサポーティブケア学会の合同編集により「遺族ケアガイドライン」が発刊された。本ガイドラインには“がん等の身体疾患によって重要他者を失った遺族が経験する精神心理的苦痛の診療とケアに関するガイドライン”とあるが、がんにかかわらず死別を経験した誰もが必要とするケアについて書かれているため、ぜひ医療者も自身の経験を照らし合わせながら、自分ごととして読んでほしい一冊である。 だが、本邦初となるこのガイドラインをどのように読み解けばいいのか、非専門医にとっては難しい。そこで、なぜこのガイドラインが必要なのか、とくに読んでおくべき項目や臨床での実践の仕方などを伺うため、日本サイコオンコロジー学会ガイドライン策定委員会の遺族ケア小委員会委員長を務めた松岡 弘道氏(国立がん研究センター中央病院精神腫瘍科/支持療法開発センター)を取材した。ガイドラインの概要 本書は4つに章立てられ、II章は医療者全般向けで、たとえば、「遺族とのコミュニケーション」(p29)には、役に立たない援助、遺族に対して慎みたい言葉の一例が掲載されている。III章は専門医向けになっており、臨床疑問(いわゆるClinical questionのような疑問)2点として、非薬物療法に関する「複雑性悲嘆の認知行動療法」と薬物療法に関する「一般的な薬物療法、特に向精神薬の使い方について」が盛り込まれている。第IV章は今後の検討課題や用語集などの資料が集約されている。遺族の心、喪失と回復を行ったり来たり 人の死というは“家族”という単位だけではなく、友人、恋人や同性愛者のパートナーのように社会的に公認されていない間柄でも生じ(公認されない悲嘆)、生きている限り誰もが必ず経験する。そして皮肉なことに、患者家族という言葉は患者が生存している時点の表現であり、亡くなった瞬間から“遺族”になる。そんな遺族の心のケアは緩和ケアの主たる要素として位置付けられるが、多くの場合は自分自身の力で死別後の悲しみから回復していく。ところが、死別の急性期にみられる強い悲嘆反応が長期的に持続し、社会生活や精神健康など重要な機能の障害をきたす『複雑性悲嘆(CG:complicated grief)』という状態になる方もいる。CGの特徴である“6ヵ月以上の期間を経ても強度に症状が継続していること、故人への強い思慕やとらわれなど複雑性悲嘆特有の症状が非常に苦痛で圧倒されるほど極度に激しいこと、それらにより日常生活に支障をきたしていること”の3点が重要視されるが、この場合は「薬物治療の必要性はない」と説明した。 一方でうつ病と診断される場合には、専門医による治療が必要になる。これを踏まえ松岡氏は「非専門医であっても通常の悲嘆反応なのかCGなのか、はたまた精神疾患なのかを見極めるためにも、CG・大うつ病性障害(MDD)・心的外傷後ストレス障害(PTSD)の併存と相違(p54図1)、悲嘆のプロセス(p15図1:死別へのコーピングの二重過程モデル)を踏まえ、通常の悲嘆反応がどのようなものなのかを理解しておいてほしい」と強調した。医師ができる援助と“役に立たない”援助 死別後の遺族の支援は「ビリーブメントケア(日本ではグリーフケア)」と呼ばれる。その担い手には医師も含まれ、遺族の辛さをなんとかするために言葉かけをする場面もあるだろう。そんな時に慎みたい言葉が『寿命だったのよ』『いつまでも悲しまないで』などのフレーズで、遺族が傷つく言葉の代表例である。言葉かけしたくも言葉が見つからないときは、正直にその旨を伝えることが良いとされる。一方、遺族から見て有用とされるのは、話し合いや感情を出す機会を持つことである。 そのような機会を提供する施設が国内でも設立されつつあるが、現時点で約50施設と、まだまだ多くの遺族が頼るには程遠い数である。この状況を踏まえ、同氏は「医師や医療者には患者の心理社会的背景を意識したうえで診療や支援にあたってほしいが、実際には多忙を極める医師がここまで介入することは難しい」と話し、「遺族の状況によってソーシャルワーカーなどに任せる」ことも必要であると話した。 なお、メンタルヘルスの専門家(精神科医、心療内科医、公認心理師など)に紹介すべき遺族もいる。それらをハイリスク群とし、特徴を以下のように示す。<強い死別反応に関連する遺族のリスク因子>(p62 表4より)(1)遺族の個人的背景・うつ病などの精神疾患の既往、虐待やネグレクト・アルコール、物質使用障害・死別後の睡眠障害・近親者(とくに配偶者や子供の死)・生前の患者に対する強い依存、不安定な愛着関係や葛藤・低い教育歴、経済的困窮・ソーシャルサポートの乏しさや社会的孤立(2)治療に関連した要因・治療に対する負担感や葛藤・副介護者の不在など、介護者のサポート不足・治療やケアに関する医療者への不満や怒り・治療や関わりに関する後悔・積極的治療介入(集中治療、心肺蘇生術、気管内挿管)の実施の有無(3)死に関連した要因・病院での死・ホスピス在院日数が短い・予測よりも早い死、突然の死・死への準備や受容が不十分・「望ましい死」であったかどうか・緩和ケアや終末期の患者のQOLに対する遺族の評価 上記を踏まえたうえで、遺族をサポートする必要がある。不定愁訴を訴える患者、実は誰かを亡くしているかも 一般内科には不定愁訴で来院される方も多いだろうが、「遺族になって不定愁訴を訴える」ケースがあるそうで、それを医療者が把握するためにも、原因不明の症状を訴える患者には、問診時に問いかけることも重要だと話した。<表5 遺族の心身症の代表例>(p64より一部抜粋)1.呼吸器系(気管支喘息、過換気症候群など)2.循環器系(本態性高血圧症など)3.消化器系(胃・十二指腸潰瘍、機能性ディスペプシア、過敏性腸症候群など)4.内分泌・代謝系(神経性過食症、単純性肥満症など)5.神経・筋肉系(緊張型頭痛、片頭痛など)6.その他(線維筋痛症、慢性蕁麻疹、アトピー性皮膚炎など) 最後に同氏は高齢化社会特有の問題である『別れのないさよなら』について言及し、「これは死別のような確実な喪失とは異なり、あいまいで終結をみることのない喪失に対して提唱されたもの。高齢化が進み認知症患者の割合が高くなると『別れのないさよなら』も増える。そのような家族へのケアも今後の課題として取り上げていきたい」と締めくくった。書籍紹介『遺族ケアガイドライン』

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第129回 国のコロナ治療薬支援は適正価格?現況を列挙してみると…

前回、興和が実施していた新型コロナウイルス感染症(以下、新型コロナ)に対する抗寄生虫薬のイベルメクチンの第III相臨床試験で有効性を示せなかったことについて触れた。その際に、私は厚生労働省が開発支援として同社に約61億円を拠出したことについては、日本にとってやむなしという見解を示している。ところで国の新型コロナ治療薬の開発支援にはどの程度のお金がこれまで使われたのか? 実はこれを正確に計算することはなかなか困難である。というのも、まず財布(支出元)が厚生労働省、国立感染症研究所、日本医療研究開発機構(AMED)、内閣府、経済産業省、文部科学省など多岐にわたるからだ。また、この中には正規の当初予算の中の予備費などを活用したものや補正予算で対応したものなどさまざま。支出先も製薬企業だけでなく、大学その他の研究機関なども少なくない。こうした中で最も分かりやすい厚生労働省の「新型コロナウイルス感染症治療薬の実用化のための支援事業」で製薬企業に直接支出されたものは以下のようになる(金額は百万円単位を四捨五入)。エンシトレルビル(商品名:ゾコーバ):82億2,000万円[?]イベルメクチン(商品名:ストロメクトール):61億6,000万円[試験未達]ファビピラビル(商品名:アビガン):14億8,000万円[試験終了、申請意向は不明]カモスタット(商品名:フオイパン):6億円[コロナ対象の開発中止]AT-527:4億6000万円[国内開発終了]カシリビマブ/イムデビマブ(商品名:ロナプリーブ):3億2,000万円チキサゲビマブ/シルガビマブ(商品名:エバシェルド):2億8,000万円ソトロビマブ(商品名:ゼビュディ):2億6,000万円オチリマブ:1億9,000万円[開発中止]総額では約179億円になる。ちなみに各種報道によると、大学などへも含めた治療薬開発支援の総額は1,000億円超に上るという。現在までにこれらの中で上市に至ったものへの支援総額は8億6,000万円、支出総額の5%程度に過ぎない。開発が進行中で最多金額が支出されたエンシトレルビルは先日、第III相臨床試験でポジティブな結果が報告されたため、このままで行けば上市される可能性が高い。この分を含めると支援総額の半分はなんとか上市にこぎつけることになる。さて、この予算投入に対する評価は個人によってかなり変わるかもしれない。私はまずまずの結果と見ている。ただ、敢えて本音を言えば「ふーん、これが先進国である日本の有様?」とも考えてしまう。率直に言えば、支援額は「0が2つ足りない」とさえ思う。ご存じのように今や1つの新規成分を治療薬として上市するまでには、期間にして20年、費用にして200億円を要すると言われる。その中で抗ウイルス薬はかなり開発が難航する領域である。世界で初めて製品化された抗ウイルス薬といえば、ヘルペスウイルスに対するアシクロビルである。現在のグラクソ・スミスクラインの前身であるバローズ・ウエルカム社の研究所で1974年に開発され、開発者であるジョージ・H・ヒッチングスとガートルード・B・エリオンはその功績が評価され1988年にノーベル生理学・医学賞を受賞している。念のため言うと、世界で初めて合成に成功した抗ウイルス薬はリバビリンだが、当初の開発目的であったインフルエンザ治療薬としての上市は成功せず、C型慢性肝炎治療薬として世に出るには1990年代まで待たなければならなかった。このように抗ウイルス薬は数ある疾患治療薬の中で、まだ半世紀にも満たない歴史しかなく、合成には数多くのペプチド結合などが必要となるため、開発は容易ではない。ヒト免疫不全ウイルスの登場とその戦いにより抗ウイルス薬の開発に弾みはついたものの、現在ある何らかの抗ウイルス薬のうち国産(国内開発)はインフルエンザに対するバロキサビル(商品名:ゾフルーザ)とラニナミビル(商品名:イナビル)、ファビピラビル(商品名:アビガン)ぐらいである。また、今回の新型コロナでは感染症に抗体医薬品を用いるという新たな戦略が登場したが、抗体医薬品開発能力がある国内の製薬企業は限られている。さらにこの間、新型コロナに対する抗ウイルス薬や抗体医薬品の上市に成功した外資系製薬企業のほとんどが日本円換算で年間の研究開発費が1兆円超。かつ上市に成功した治療薬のほとんどは完全な自社創製ではなく導入品である。悪く言えば、札びらで横っ面をひっぱたきながら時間を買ったとも言えるが、もはやこれは製薬業界ではごく当たり前の開発プロセスの一つになっている。いずれにせよ、新型コロナ治療薬開発競争での日本のディスアドバンテージは大きく、実際、現在までに登場した国産治療薬はない。第8波を迎える前に、そろそろこの辺の総括に入っても良いのではないかと思っている。もっとも今後のパンデミックを見越してやらなければならないことは国と企業ではかなり違う。国がやるべきは、公的研究機関での創薬そのものと言うよりは創薬の基盤技術への大規模・持続的な投資である。もっとも創薬技術が長足の進歩で高度化している以上、すべての基盤技術を国内の公的研究機関で獲得することは困難である。私自身は以前の本連載でも触れたとおり、新薬開発の極端な国粋主義には批判的な立場である。その意味では海外の研究機関との人事交流も含めた提携も欠かせない。これらをいかに「年度主義」から脱して持続的に行えるかがカギである。そして公的研究機関もそれぞれの組織や個人によって特徴がある。その各機関の研究情報の集約と岸田首相が創設を打ち出した日本版CDCとの間のネットワーク化も整備しなければならない。一方、民間企業、すなわち製薬企業側に求められることの一つは日本を軸としたアジア圏での臨床試験実施体制の確立である。メガファーマと呼ばれる国際製薬大手の新型コロナ関連治療薬の臨床試験の多くは、被験者を集めやすいアメリカを中心にその地続きである近傍の北米のカナダや南米を中心に行われることが多い。製薬業界にとって巨大市場であるアメリカに対しては国内の製薬企業もある程度は進出しているが、ここで臨床試験実施競争に勝てる環境はない。その意味ではやはり距離的にも近いアジア圏内にネットワークを確立するほうが早道である。これは抗ウイルス薬の開発に限らないことである。そしてもちろん今回、新型コロナ関連治療薬の上市に成功した外資系の製薬企業各社のように社外のシーズを迅速に目利きすることは重要だが、何より先立つものは金である。有望なシーズを見つけてもそれを獲得する資金がなければ事は動かない。では、どうするのか? 言い古されたことになるが、規模の拡大、すなわち国内外を含めた業界再編が必要になる。ここは最も大きなハードルである。「何を理念的なことばかり言っているんだ」と各方面に叱責されるかもしれないが、次なる新興感染症、あるいは現在の新型コロナの新たな変異株の登場による状況の悪化を想定すれば、いずれも今から少しずつでも始めなければ「後の祭り」になりかねないのである。

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第54回 スピアマン順位相関係数とは?【統計のそこが知りたい!】

第54回 スピアマン順位相関係数とは?「スピアマン順位相関係数」(Spearman's rank correlation coefficient)は、順位データや5段階評価データなどの「順序尺度の相関関係を把握する解析手法」です。たとえば、従業員満足度調査の結果として、「給与」に対する満足度と「会社」に対する満足度を5段階で評価したデータがあるとします。これらの満足度に相関があるかどうかを調べるときに、スピアマンの順位相関係数を使用します。スピアマンの順位相関係数は-1から1の値をとります。スピアマンの順位相関係数の値が±1に近付くと相関関係が強くなり、反対に0に近付くと弱くなります。0の場合のみ相関関係がありません。少し信じられないかもしれませんが、わずか0.05でも相関は弱いながらあるということになります。したがって、強弱の違いはあるものの、ほとんどのケースにおいて相関関係はみられます。大事なのは「強い相関があるかどうか」になります。ところが、「いくつ以上あれば相関が強い」という統計学的基準はありません。基準は、分析者がおのおの経験的な判断から決めることになります。下表は一般的な判断基準です。値がマイナスの場合は、絶対値(マイナスの符号を取る)でこの表を適用します。表 スピアマン順位相関係数の判断基準次にこれまでに登場した一般的な境目をまとめました。■各種項目クラメール連関係数の境目:0.1相関比の境目:0.1単相関係数の境目:0.3スピアマン順位相関係数の境目:0.3■さらに学習を進めたい人にお薦めのコンテンツ統計のそこが知りたい!第50回 クラメール連関係数とは?第51回 期待度数がわかれば簡単! クラメール連関係数の計算法第52回 相関比とは?

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事例009 エクセグラン錠の査定【斬らレセプト シーズン3】

解説事例では、旅行中のパーキンソン病患者からの受診の求めに応じ、ゾニサミド(一般名)にて処方、エクセグラン錠(商品名)を調剤したところ、C事由(医学的理由による不適当)にて査定となりました。増減点内容欄には、「ゾニサミドをパーキンソン病(本剤の承認外効能・効果)の治療目的で投与する場合には、パーキンソン病の効能・効果を有する製剤(トレリーフ)を用法・用量どおりに投与すること」と記載がありました。エクセグラン錠の添付文書を確認してみました。「抗てんかん剤」としての効能または効果しか記載はありません。同様にトレリーフの添付文書も確認してみました。用量は異なりますが、一般名は同じゾニサミドでした。こちらはパーキンソン病治療薬として認められています。薬価も大きく異なることから、用量を同じくした処方・調剤であれば、エクセグラン錠にもパーキンソン病の適用があると考えられていたようでした。そして、エクセグラン錠の添付文書「15.その他の注意」の最後には「パーキンソン病患者(承認外効能・効果)」と念押しのような記載がありました。医師も承認外使用であることをご存じではありましたが、点数が小さいとはいえ査定には変わりありません。また、医療安全上の問題にもなりかねないため、処方システムなどでアラートが表示された場合には対応いただくか、アラートに対する医学上必要性のコメントを注記いただくようにお願いをしました。

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コロナ診断1週目のリスク、心筋梗塞17倍・脳梗塞23倍/Circulation

 英国・国民保健サービス(National Health Service:NHS)のデータに基づき、ブリストル大学のRochelle Knight氏ら多施設共同による、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)罹患後の動脈血栓塞栓症、静脈血栓塞栓症、およびその他の血管イベントの長期的な発生リスクについて大規模な後ろ向きコホート研究が実施された。その結果、COVID-19の既往がある人は既往がない人と比較して、COVID-19診断から1週目の動脈血栓塞栓症の発症リスクは21.7倍、静脈血栓塞栓症の発症リスクは33.2倍と非常に高く、27〜49週目でも、それぞれ1.34倍、1.80倍のリスクがあることが判明した。とくに患者数の多かった急性心筋梗塞と虚血性脳卒中では、COVID-19診断後1週目に、それぞれ17.2倍、23.0倍リスクが増加していた。Circulation誌2022年9月20日号掲載の報告。 本研究では、英国のイングランドおよびウェールズにて、全住民の電子カルテ情報を基に、2020年1月1日~12月7日(新型コロナワクチン導入以前)におけるCOVID-19診断後の血管疾患について検討された。COVID-19診断後の動脈血栓塞栓症イベント(急性心筋梗塞、虚血性脳卒中など)、静脈血栓塞栓症イベント(肺血栓塞栓症、下肢深部静脈血栓症、門脈血栓症、脳静脈血栓症など)、その他の血管イベント(心不全、狭心症、くも膜下出血など)の発生率を、COVID-19の診断を受けていない人との発生率を比較し、Cox回帰分析にて調整ハザード比(aHR)が推計された。 主な結果は以下のとおり。・イングランドおよびウェールズの成人約4,800万人のうち、COVID-19の診断から28日以内に入院したのは12万5,985人、入院しなかったのは131万9,789人であった。・イングランドでは、4,160万人年の追跡期間中に、26万279件の初回動脈血栓塞栓症と5万9,421件の初回静脈血栓塞栓症が発生した。・初回動脈血栓塞栓症は、COVID-19診断後1週目aHR:21.7(95%信頼区間[CI]:21.0〜22.4)、27〜49週目aHR:1.34(95%CI:1.21〜1.48)。・初回静脈血栓塞栓症は、COVID-19診断後1週目aHR:33.2(95%CI:31.3~35.2)、27〜49週目aHR:1.80(95%CI:1.50~2.17)。・動脈血栓塞栓症の多くは、急性心筋梗塞(12万9,799件)、もしくは虚血性脳卒中(12万8,539件)であった。・急性心筋梗塞は、COVID-19診断後1週目aHR:17.2(95%CI:16.3~18.1)と非常に高く、27〜49週目aHR:1.21(95%CI:1.03~1.41)となっている。・虚血性脳卒中は、COVID-19診断後1週目aHR:23.0(95%CI:22.0~24.1)と非常に高く、27〜49週目aHR:1.62(95%CI:1.42~1.86)となっている。・静脈血栓塞栓症の多くは、肺血栓塞栓症(3万1,814件)、もしくは深部静脈血栓症(2万5,267件)であった。・肺血栓塞栓症は、COVID-19診断後1週目aHR:33.2(95%CI:30.7~35.9)と非常に高く、2週目aHR:9.97まで低下するも、3~4週目aHR:10.5に一時的に増加し、27〜49週目aHR:1.61 (95%CI:1.23~2.12)となっている。・深部静脈血栓症は、COVID-19診断後1週目aHR:10.8(95%CI:9.32~12.5)と非常に高く、2週目aHR:4.00まで低下するも、3~4週目aHR:4.80に一時的に増加し、27〜49週目aHR:1.99(95%CI:1.49~2.65)となっている。 さらに本研究では、COVID-19の重症度、人口統計学的特性、既往歴によるサブグループ解析も行われ、白人よりも黒人やアジア系のほうがハザード比が高く、過去に血栓塞栓症の既往がある人よりも既往がない人のほうが高いということが認められた。COVID-19診断後49週目における全人口の動脈血栓塞栓症リスクの推定増加率は0.5%(7,200人相当)、静脈血栓塞栓症リスクの推定増加率は0.25%(3,500人相当)だという。

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600万人が集まるビールのお祭り「オクトーバーフェスト」【空手家心臓外科医のドイツ見聞録】第18回

「オクトーバーフェスト」(Oktoberfest)は、9月後半から10月上旬にかけて、ミュンヘンで行われる世界的なイベントです。日本でも同名のビールイベントが開催されたりしているので、もうご存じの方も多いと思われます。ミュンヘンでは、馬に乗った市長が“O’zapftis! ”(酒が来たぞ!)と宣言して始まる…という、まあ、でっかい飲み会です。現場ではこんな感じで、山ほどのビールが馬車に積まれてどんどん運ばれてきます。すべてはフェスのために!ミュンヘンの中心街から少し外れたところに大きな空き地があるのですが(東京ドーム9個分の超一等地の空き地があって、オクトーバーフェスト期間以外は何も使われていないのです!)、その空き地に仮設の遊園地が作られます。たくさんのテントも同時に建てられていて、その中はビールの匂いで溢れかえっています。会場全体を高所から見たところ写真はオクトーバーフェスト会場に作られた滑り台の上から撮ったものです。この滑り台を1回滑るだけで1,000円以上取られます。正直、どのアトラクションもなかなかのお値段がかかります。ドイツ人の友人が「都市伝説かもしれないが」と前置きしたうえで教えてくれたのですが、この仮設遊園地を組み立てる業者さんの中には1年のうちオクトーバーフェストの数週間だけ働いて、あとはスペインの別荘でのんびり過ごしている人がいるとかいないとか…。短期間でものすごく稼いでる人がいることは間違いないそうです。オクトーバーフェストの遊園地は子供を連れて行くための口実みたいなもので、メインはやはりビールです。オクトーバーフェストの名物は1Lのジョッキビールです。しかし、この1Lのジョッキビール、現地の人はあまり頼まないそうです。500mLを2回頼むのと同じ値段なので、そちらの方がよりフレッシュなビールを楽しめるからです。1Lを頼むのは観光客ばっかりで、最後の方はぬるくなりすぎて、結局残しちゃうことが多いみたいです。去年、一昨年と中止が続いたオクトーバーフェストですが、今年は再開されて、大盛況のようです。あ~俺もまたミュンヘン行きたいなぁ…。

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観察研究データで因果推論をする新しい方法論(解説:折笠秀樹氏)

 この新しい方法論はたぶん聞きなれないでしょう。「target trial emulation」というものです。あえて和訳すれば、「標的試験模倣」でしょうか。観察研究データを使って、標的の(やってみたい)臨床試験を真似ることにより、因果推論、つまり治療効果を評価する手法です。 因果推論するためのゴールドスタンダードは、ランダム化比較試験といわれています。その欠陥として、それは理想状況下での実験のため、診療現場と乖離しているといわれます。一般化可能性が低いのがランダム化比較試験の欠点です。現場に近いデータで得られる結果は、リアルワールドエビデンス(RWE)と呼ばれます。その代表例は診療録やレセプトです。一般性の高いリアルワールドデータを単純に解析すれば、さまざまなバイアスが混入します。プロペンシティ解析や操作変数解析は、主に交絡バイアスを補正する手法です。今回提案された「標的試験模倣」は、現場に近いリアルワールドデータを、目標とするランダム化比較試験へ近付けたうえで解析する手法です。 たとえば、ECMOの使用有無で延命効果を見る試験を考えます。通常なら、開始時点はECMO装着者では装着した時点となりますが、そうではなく、適格基準を満たした時点を開始時点とします。ECMO装着時点を起点にしてしまうと、装着者のほうが長生きするバイアス(immortal time biasと呼ぶ)が生じます。ECMOまでたどり着けた患者なので長生きして当然なのです。同じく、非装着者も適格基準を満たした時点を起点にします。 統計解析手法としては、クローニング、センサリング、重み付けなどのようです。ECMO装着者とよく似た非装着者を見つけないといけません。そこで、たぶんクローニングという手法が現れたのではないかと想像します。脱落による打ち切りは、ほぼ意味のある打ち切りです。情報打ち切りという厄介者です。それは周辺構造モデリングという手法で対処し、非打ち切り確率の逆数で重み付けして補完(IPCWと呼ぶ)したりするのでしょう。 いずれにせよ、理想的臨床試験(不可能だが実施したい試験)を模倣するように、観察研究データから一部抽出して解析することで因果推論する新たな手法です。ECMOはこの「標的試験模倣」という手法で解析しても、きちんと延命効果が示されたようです。日本ではまだ試されていない手法だと思います。今後の発展を期待しています。

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ケアネットがん情報サイトまとめ

サイト一覧Doctors'Picks(医師専用)乳がん診療Front lineCareNet Oncologyがん@魅せ技(医師専用)医療者向け『学校がん教育.com』大学医局紹介~がん診療編Doctors'Picks医師が薦めるがん情報がわかる! 解説コメントで理解が深まる※医師専用コンテンツを見る乳がん診療Front line手技動画や最新トピックを公開!乳がん診療に役立つサイトコンテンツを見るCareNet Oncology学会など国内の最新情報から海外トピックスまで記事が満載※PCサイト専用コンテンツを見るがん@魅せ技(医師専用)「手術手技」を動画で学ぶ!集学的がん治療情報※医師専用コンテンツを見る医療者向け『学校がん教育.com』「学校がん教育」の推進を応援!関連情報などお役立ち記事お届けコンテンツを見る大学医局紹介~がん診療編がん診療に携わる医局にスポットライトを当て、それぞれの特徴や魅力を紹介コンテンツを見る

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第132回 エーザイのアルツハイマー病薬の第III相試験成功

エーザイのアルツハイマー病薬lecanemab(レカネマブ)が第III相試験(Clarity AD)で有望な認知機能低下抑制効果を示し、試験の主要目標やその他の副次目標一揃いを達成しました1,2)。lecanemabはアルツハイマー病の特徴として知られる脳のアミロイドβ(Aβ)病理の解消を目指すモノクローナル抗体です。-0.45点の意義Clarity AD という名称の同試験は2019年3月に始まり3)、早期アルツハイマー病患者1,795人が参加しています。lecanemabは2週間に1回静注され、18ヵ月時点の主要評価項目・CDR-SB点数上昇(悪化)をプラセボに比べて有意に抑制しました。CDR-SBは数ある認知症検査の1つで、もともとはアルツハイマー病の初めの病状を把握する検査として使われていましたが、10年ほど前の米国FDA方針以降臨床試験の転帰として受け入れられるようになっています4)。医師は患者自身、その介護者、家族からの情報や記憶や問題解決能力などの患者向け検査結果に基づいてCDR-SBの点数を計算します。CDR-SBの点数の幅は0~18点で、点数が高いほど病状が悪いことを意味します。そのCDR-SB得点の上昇をプラセボに比べて差し引きで0.45点、率にして27%減少させたことをエーザイは有意義(clinically meaningful)な結果であるとみなしました3)。一方、University College Londonの精神科医Rob Howard氏に言わせるとその差は小さすぎてプラセボとほとんど見分けが付きません5)。以前に同氏等は患者の日常に有意義な結果とみなすにはプラセボと少なくとも0.5かそれ以上の差が必要と主張していました5,6)。また、lecanemabが今回の第III相試験で示した認知機能低下の抑制を患者やその家族がどれほど実感したかはまだ判断不可能であり6)、そのためにはさらに情報が必要です。今後の追加情報はさておき、アナリストが成功水準とした率にして20~25%以上の対プラセボCDR-SB上昇抑制を上回る27%抑制をlecanemabは達成していますし、同剤が米国FDA承認を逃すというのはおよそありえなさそうです4)。影の立役者・北方の変異他のAβ標的抗体が軒並み難抗する中でlecanemabが大一番の第III相試験の成功にとうとう漕ぎ着けたのはなぜか? それは遡ること20年以上前に発表されたAβ前駆タンパク質変異の発見がだいぶ貢献しているようです。北方の(Arctic)国スウェーデンの人から見つかったその変異はアークティック変異(E693G)と呼ばれ、Aβのアミノ酸配列の22番目を変える変異であり、Aβ凝集(Aβプロトフィブリル)形成を促してアルツハイマー病を誘発します7)。Aβプロトフィブリルを除去するlecanemabは他でもないそのアークティック変異の発見者であるLars Lannfelt氏等が設立したスウェーデン拠点のBioArctic社とエーザイの共同研究によって誕生しました。lecanemabが認識するAβアミノ酸配列(エピトープ)は最初から16番目と、プロトフィブリルを形成したときの21~29番目領域です。その性質ゆえlecanemabは神経にどうやら有毒らしい可溶性Aβプロトフィブリルをより容易に優先して認識します3)。ライバルの足音lecanemabはClarity AD試験結果を含まない第II相試験結果を拠り所に取り急ぎの承認申請(Accelerated Approval)が米国FDAに提出されており、その審査結果は来年2023年1月6日までに判明します。取り急ぎではない不動の承認(traditional/full approval)を目指す申請も来年3月31日までになされる予定です。来月11月29日にはClarity AD試験結果の詳細がアルツハイマー病臨床試験会議(CTAD:Clinical Trials on Alzheimer‘s Disease)で発表されます。その会議ではRoche(ロシュ)の抗Aβ抗体gantenerumab(ガンテネルマブ)の第III相試験結果も発表され、さらに来年2023年中にはEli Lilly(イーライ・リリー)の抗Aβ抗体donanemabの大一番(ピボタル)試験結果も明らかになる見込みです4)。興味深いことに、lecanemabと同様にロシュのgantenerumabもアークティック変異を反映するAβアミノ酸22番目を含む領域を認識します。ただしlecanemabがAβプロトフィブリルに特異的なのに比べてgantenerumabはより非特異的であり、Aβ単量体にもより結合します8)。lecanemabの課題Clarity AD試験の被験者選択基準の1つは脳にアミロイド病変があることであり、その確認にはたいていPET撮影を必要とします。そういう画像診断の要件は同剤普及の足かせになるかもしれません4)。lecanemabの用法である隔週での静注も使用を諦める理由になるかもしれませんが、エーザイは投与がより容易なその皮下注射の臨床試験をすでに始めています1,2)。参考1)抗アミロイドβ(Aβ)プロトフィブリル抗体「レカネマブ」について、1,795人の早期アルツハイマー病当事者様を対象としたグローバル大規模臨床第III相CLARITY AD検証試験において、統計学的に高度に有意な臨床症状の悪化抑制を示し、主要評価項目を達成 / エーザイ2)LECANEMAB CONFIRMATORY PHASE 3 CLARITY AD STUDY MET PRIMARY ENDPOINT, SHOWING HIGHLY STATISTICALLY SIGNIFICANT REDUCTION OF CLINICAL DECLINE IN LARGE GLOBAL CLINICAL STUDY OF 1,795 PARTICIPANTS WITH EARLY ALZHEIMER'S DISEASE / PRNewswire3)Topline Results of Clarity AD Conference for Media and Investors / Eisai4)Lecanemab can; now the wait for details begins / Evaluate5)Alzheimer’s drug slows mental decline in trial - but is it a breakthrough? / Nature6)Alzheimer’s drug results are promising - but not a major breakthrough / NewScientist7)Nilsberth C, et al. Nat Neurosci. 2001;4:887-93. 8)Science of the amyloid-b cascade and distinct mechanisms of action of lecanemab / BioArctic

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着色編:より見やすく仕上げる3テクニック~腹腔鏡下下行結腸切除術~【誰も教えてくれない手術記録 】第19回

第19回 着色編:より見やすく仕上げる3テクニック~腹腔鏡下下行結腸切除術~こんにちは! 手術を描く外科医おぺなかです。前々回・前回に引き続き、腹腔鏡下下行結腸切除術を題材に、手術イラストを作成するコツを紹介します。今回はいよいよ「着色編」です。手術イラストをさらに見やすく、わかりやすく整えるためには欠かせないステップです。デジタルツールの機能を活用することで、簡単に見栄えがするイラストが描けるようになります!臓器や構造ごとに色とレイヤーを分ける!前回の線画と同様に、着色のステップでもレイヤー機能が活躍しますので、まずは着色用のレイヤーを新規作成しましょう。臓器や構造ごとに1つずつレイヤーを作成して塗っていくことをオススメします。そうすることで、塗り損じの修正や色調の調整が非常に簡単にできます。線画と同じレイヤーですべての色を塗ると、修正の際に線画や他の色も一緒に消えることになり、大変面倒なことになってしまいます。また、着色のレイヤーを上層に置くと線画が見にくくなりますので、線画のレイヤーを上層に置いて線画を強調した見やすいイラストに仕上げましょう。使用する色は好みがあると思いますが、僕は見直した際の視認性が良いように、できるだけ臓器や構造ごとに異なる色を用いてカラフルに仕上げるようにしています。これは術中写真ではまねできない手術イラストならではの大きなメリットですね。僕は日頃描いている消化器外科領域のイラストでは以下のように色を分けています。<色の使い分けの例>食道:オレンジ色、胃・十二指腸:薄い橙色、小腸・大腸:ピンク色、肝臓:茶色、胆嚢:黄緑色、膵臓:クリーム色、脾臓:紫色、動脈:赤色、静脈:青色、脂肪組織:黄色、筋組織:オレンジ色、皮膚:薄い橙色、腫瘍/転移巣:紫色、などあまりに派手な色だと目にうるさいイラストになってしまいますので、その場合は着色後に色相を調整して、全体的に淡い色味に変更するとよいでしょう。これらの色の選択には決められたものはありませんので、皆さんそれぞれの好みの使い分けを見つけてください。ブラシで塗る? 塗りつぶし機能で塗る?塗り方にはさまざまな方法があります。ここでは僕がよく使用する3つの方法を簡単に紹介します。1.ブラシで大まかに塗って、はみ出した部分を消す。最もシンプルな方法で、僕も頻用している方法です。まず、線画とは別の新規レイヤーを作り、エアーブラシや円ブラシなどのペンを選択して大まかに塗っていきます。次に、はみ出した部分を消しゴムツールで消して着色範囲を整えます。消すときには「ブラシカーソル」機能をオンにすると、消す範囲が視認できて便利ですよ。画像を拡大する2.選択ツールを用いて範囲を決めてから塗る。塗る前に「投げ縄ツール」とも呼ばれる選択ツールを用いて、塗りたい部位の範囲選択を行うという方法です。僕の使用しているProcreateというアプリケーションの場合、上部のS字アイコンから選択ツールを起動し、フリーハンドで範囲を選択します。選択範囲が確定した後にペンを選択して着色すると、選択範囲以外には色が塗られなくなります。範囲を選択する際に若干の手間がかかりますので、細かな部分を塗るのには不向きですが、臓器のようなまとまった範囲を塗るときには便利です。画像を拡大する主に1と2の方法を活用して着色したイラスト3.塗りつぶし機能で均一に塗る。ウィンドウ右上の色をドラッグ&ペーストすることで、任意の閉じられた範囲を一気に塗りつぶすという方法もあります。新規レイヤーを作成して着色する場合は、線画のレイヤーを「基準」に変更しておくことで、異なるレイヤーでも基準とした線画に沿った塗りつぶしが可能になります。線画の描き方によっては閉じていない部分もあると思いますが、そういう場合は線画のレイヤーに塗りたい色と同じ色の線を付け加えて閉じた範囲を作ることで塗りつぶしが可能になりますよ。塗りつぶし機能を使うことで全体的に均一な着色ができるので、模式図のような視認性に優れたイラストが作成できます。画像を拡大する塗りつぶし機能を中心に使用して着色したイラストまとめ着色のポイント:1.臓器や組織の見分けがつくように色分けしてカラフルに仕上げる!2.加筆修正ができるように臓器や構造ごとにレイヤーを分ける!3.選択ツールや塗りつぶし機能を活用する!難しく思われたかもしれませんが、ここで紹介した着色の方法はあくまでも基本テクニックです。これら以外にも、レイヤーを複数枚重ね合わせて臓器の質感や立体感を表現する方法、色の重ね合わせや透過性の調整で前後関係や膜構造を表現する方法など、さまざまなテクニックがあります。僕もいまだに練習中の身ですべてのワザを使いこなせているわけではありませんが、テクニックをうまく組み合わせることで、イラストの表現の幅がどんどん広がっていくのはとても楽しいですよ。また別の機会にでも改めて紹介したいと思います。さて、次回は最後のパートである「仕上げ編」です。描き上げたイラストに注釈や図表を加え、手術内容が正しく、わかりやすく伝わる手術記録を完成させましょう。ではまた!

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自己採取の抗原検査、口腔・鼻腔検体の併用で感度向上か/BMJ

 オランダ・ユトレヒト大学のEwoud Schuit氏らは、検体の自己採取による新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)迅速抗原検査キット3種類の感度について調査し、鼻腔拭い液の自己採取による検査の感度は、3種類ともSARS-CoV-2オミクロン株の出現により低下し、1種類のみ統計学的に有意であったことを示した。また、感度は検査の理由(自主検査陽性後の確認検査者の割合)に大きく影響されたこと、2種類については鼻腔に加えて口腔咽頭からの拭い液採取を追加することで感度が改善されたことを示し、「自主検査の結果が陽性の場合、確認検査は必要なく速やかに自主隔離し、自主検査が陰性の場合は偽陰性の可能性が否定できないため、一般的な予防策を順守しなければならない」とまとめている。BMJ誌2022年9月14日号掲載の報告。有症状者を対象に検体自己採取による迅速抗原検査の診断精度を前向きに評価 研究グループは、オミクロン株流行期における、非監視下での鼻腔や口腔咽頭拭い液の自己採取による迅速抗原検査の診断精度を評価する目的で、前向き横断研究を行った。 対象は、2021年12月21日~2022年2月10日の期間に、検査のためオランダ公衆衛生サービスのCOVID-19検査施設3ヵ所を訪れたCOVID-19症状を有する16歳以上の6,497例であった。参加者に対し、逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)法(参照テスト)のために施設スタッフが検体採取を行った後、自宅にて非監視下で鼻腔拭い液または口腔咽頭と鼻腔拭い液を自己採取する迅速抗原検査キット1つを渡し、3時間以内に自宅で検査を完了してもらった。 評価した検査は、Flowflex(ACON Laboratories製、鼻腔のみ、後述の第1期のみ)、MPBio(MP Biomedicals製、鼻腔のみと口腔咽頭+鼻腔)、およびClinitest(Siemens Healthineers製、鼻腔のみと口腔咽頭+鼻腔)で、オミクロン株出現期(2021年および2022年第1週)、オミクロン株が感染の>90%を占める第1期、>99%を占める第2期に分けて評価した。 主要評価項目は、RT-PCR法による検査を参照基準とした各検査の診断精度(感度、特異度、陽性・陰性的中率)、副次評価項目は検査の理由(自主検査陽性後の確認検査、症状、濃厚接触、その他の理由)、COVID-19ワクチン接種状況、SARS-CoV-2感染歴、性別、年齢(16~40歳、40歳以上)で層別化した診断精度とした。感度は、鼻腔拭い液採取で約70~79%、確認検査者では上昇、口腔咽頭拭い液採取の追加で改善 第1期では、Flowflex群45.0%(279例)、MPBio群29.1%(239例)、Clinitest群35.4%(257例)が自主検査陽性後の確認検査者であった。鼻腔拭い液自己採取の感度は全体で、Flowflex群79.0%(95%信頼区間[CI]:74.7~82.8)、MPBio群69.9%(65.1~74.4)、Clinitest群70.2%(65.6~74.5)であった。感度は、確認検査者(それぞれ93.6%、83.6%、85.7%)が、その他の理由による検査者(52.4%、51.5%、49.5%)より著しく高かった。また、感度は、オミクロン株の感染に占める割合が29%から95%以上になると、Flowflex群で87.0%から80.9%(χ2検定のp=0.16)、MPBio群で80.0%から73.0%(p=0.60)、Clinitest群で83.1%から70.3%(p=0.03)へ低下した. 第2期では、自主検査陽性後の確認検査者の割合がMPBio群53.0%(288例)、Clinitest群44.4%(290例)であった。口腔咽頭および鼻腔の両方から拭い液を自己採取した場合の感度は全体で、MPBio群83.0%(95%CI:78.8~86.7)、Clinitest群77.3%(72.9~81.2)であった。確認検査者における感度は、鼻腔拭い液自己採取と比較して口腔咽頭+鼻腔拭い液自己採取でわずかに高く(86.1% vs.87.4%)、その他の理由による検査者においては非常に高い(59.9% vs.69.3%)ことが示された。 著者は、「MPBioとClinitestのメーカーは、口腔咽頭拭い液と鼻腔拭い液の自己採取を併用する使用方法の拡大を検討することができ、他の迅速抗原検査キットのメーカーも上記と同様の評価を検討する必要がある」と指摘している。

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がんチーム医療の実践に向けたワークショップ開催/J-TOP

 一般社団法人オンコロジー教育推進プロジェクト主催のJapan TeamOncology Program(J-TOP)は、2023年1月21~22日および2月11~12日、「チームサイエンス・ワークショップ~変動の時代、革新的なアプローチでチームをエンパワーする~」と題したワークショップを開催する。がんチーム医療の実践に向けた「チームサイエンスの理解、優れたリーダーシップ、個人のキャリア形成」などをテーマに、米国テキサス大学MDアンダーソンがんセンターおよび国内施設のがん専門スタッフからなる日米のメンターによるレクチャー、実践的なケーススタディを用いたグループワークおよび参加者によるプレゼンテーションによる参加型研修会が計画されている。<開催概要>主催:一般社団法人オンコロジー教育推進プロジェクト監修:米国テキサス大学MDアンダーソンがんセンター開催日:第1部:2023年1月21日(土)、22日(日)ZOOMでのバーチャルセッション第2部:2023年2月11日(土)、12日(日)会場での現地開催会場:国立国際医療研究センター(東京都新宿区)目的:Upon completion of the program, Participants will gain valuable experience with;科学的思考をもとにした優れた医療人および医療チームを育成することを目的に、参加者は下記の目的を達成する。1. Establishing Empowered Teams through Team Science Principles チームサイエンスの原理を用いたエンパワーメントチームの確立2. Formulating Personal and Team Mission & Vision 個人とチームのミッションとビジョンの策定3. Developing Leadership & Effective Communication リーダーシップと効果的なコミュニケーションスキルの習得4. Applying Evidence-Based Medicine EBM(科学的根拠に基づく医療)の概念を応用できる5. Designing a Personal Career Development Plan 個人のキャリア計画を立案する6. Learning Skills to Develop Strategies for Empowered Team チームを強化するための戦略開発スキルを学ぶ参加費:35,000円(医師)/25,000円(看護師・薬剤師、その他のメディカルスタッフ)※チームオンコロジー.Com会員(入会無料)であることが必要※交通・宿泊費は参加者負担プログラム(予定):第1部:J-TOP日米メンターによる講演およびグループワーク(テーマ別の討論)第2部:グループワーク 2(医師・看護師・薬剤師、その他のメディカルスタッフチームでの課題実習)/チームによる課題のプレゼンテーション※本ワークショップの公用語は英語※プログラムの詳細については決定次第ホームページに掲載予定参加要件:医師・看護師・薬剤師・その他のメディカルスタッフで、下記に該当する人1. がん治療の基礎知識がある人2. 最良のがん医療チームをつくるための「チーム医療を科学する」ことへの関心がある人3. 効果的なコミュニケーション、リーダーシップ論、キャリア形成に関心がある人4. チームオンコロジー.Com web会員になる5. 英語でのコミュニケーション能力があれば好ましい6. J-TOPの活動に協力する意思がある参加申込方法:ホームページでの申し込み手続きのほか、メールでのレポート・紹介文の送付1. 課題レポート(英文) “My Dream (Vision): What would I like to become in 5 years, 10 years”上記をテーマに、今回のワークショップへ参加を希望する目的や、今後のキャリア形成に向けたご自身のアクションプランなどを盛り込み、簡潔にまとめてください。※英語による本文のあとに、簡潔に日本語でサマリーもしくは注釈を添付して頂いても結構です。なお、日本語は必須ではありません。2. キャリア紹介(英文) これまでのキャリアの中で達成したものを自由書式で記載してください。研究への参画、チーム医療への貢献、教育的活動、論文発表、学会発表、学会での役職、など何でも結構です(A4用紙1枚以内に英語にてご記入ください)。なお、この資料はあなたのキャリアの中で何が重要であるかを知るためのものであり、格付けを行うものではありません。※MDアンダーソンがんセンターの上野 直人教授によるビデオレクチャー『キャリア形成に必須の Mission & Visionの創り方:Successful Career』をYouTube 動画チャンネルに掲載しています。課題レポート執筆の参考にしてください。提出書式:上記の1.課題レポートならびに2.キャリア紹介については、それぞれのファイルは別にせず、改ページにて記載のこと。書式およびタイトルは自由、A4用紙2枚以内で、施設名と氏名、レポート本文を英語にて必ず記入する。提出方法:施設名と氏名を記載してe-mailに添付のうえ事務局宛(secretariat@teamoncology.com)に送付提出期限:2022年11月11日(金)※定員を超える応募があった場合には、課題レポート、キャリア紹介から書類審査をおこない、参加者を選抜する旨、ご了承ください。<問い合わせ先>Japan TeamOncology Program(J-TOP)事務局〒105-0003 東京都港区西新橋1-6-12メッドコア・アソシエイツ株式会社内e-mail:secretariat@teamoncology.com

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妊娠糖尿病診断の明確なカットオフ値perfect lineはあるのか?(解説:住谷哲氏)

 現在の妊娠糖尿病(GDM)の診断は HAPO(Hyperglycemia and adverse pregnancy outcomes)研究の結果を受けてIADPSG(International Association of Diabetes and Pregnancy Study Groups)が2010年に発表した診断基準に基づいている1)。わが国においても、当初は日本糖尿病学会、日本産科婦人科学会および日本糖尿病・妊娠学会で見解の相違があったが2015年に統一された。GDMの診断基準は「75gOGTTにおいて、(1)空腹時血糖値92mg/dL以上、(2)1時間値180mg/dL以上、(3)2時間値153mg/dL以上のいずれか1点を満たした場合」とされている(ただし妊娠中の明らかな糖尿病[overt diabetes in pregnancy]は除く)。 注意する必要があるのは、HAPO研究においてLGA(large for gestational age)の発症と血糖値との間には直線的関係があり、閾値が認められなかった点である2)。つまり血糖値が低ければ低いほどLGAの発症は減少する。したがって現在のGDMの診断基準はexpert consensusであり、LGAを含む主要評価項目のオッズ比(OR)が、HAPO研究でのコントロール群(全例を7群に分けた際に最も血糖値の低いカテゴリー)と比較して1.75倍になる血糖値(92-180-153)がカットオフ値として採用された。したがって、海外ではこのIADPSGの診断基準を採用していない国もあり、本試験が実施されたニュージーランドもその一つである。ニュージーランドでは2014年に公表された妊娠糖尿病の診断基準が用いられており、それが今回の試験の高基準値(99-xx-162)に相当する3)。 結果は、主要評価項目であるLGAの発症率は低基準値群と高基準値群との間に有意差はなかった。さらに母児の健康状態に関連するその他の副次評価項目にも両群にほとんど差はなかった。当然であるが、低基準値群で妊娠糖尿病の診断率が高く、医療介入も増加し、医療費も増大している。この結果だけから見ると、高基準値を採用するのに問題はないように思われるが、問題は低基準値と高基準値の間に分類された妊婦のアウトカムがどうであったかにある。この群は、低基準値を採用すれば妊娠糖尿病と診断されて介入対象となったが、高基準値を採用すると妊娠糖尿病と診断されず介入されなかったことになる(milder degree of GDM、以下milder GDM)。この群に対するサブグループ解析は事前に設定されており、その結果も記載されている。低基準値で妊娠糖尿病と診断された310人のうち、195人(63%)がmilder GDMであり、高基準群では178人がmilder GDMに分類された。両群におけるLGAの発症は、低基準値群12人(6.2%)、高基準値群32人(18.0%)であり、LGA発症の調整後相対リスク比は0.33(95%信頼区間[CI]:0.18~0.62)、NNTは4(95%CI:2~17)であった。したがって、milder GDMにおいては低基準値による診断が母児に健康上のベネフィットをもたらす可能性が示唆された。 本試験の結果より、高基準値による妊娠糖尿病の診断は母児に対して健康上のリスクとならないことが明らかとなった。医療経済的には高基準値の採用がより正当化されるだろう。しかし事前に設定されたサブグループ解析の結果をどのように解釈するか? ニュージーランド当局が本試験の結果を踏まえて、妊娠糖尿病の診断基準に対してどのような判断を下すかを注視したい。

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