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拡張型心筋症、アフリカ系とヨーロッパ系患者での遺伝的構造/JAMA

 拡張型心筋症(DCM)の遺伝子変異について、非ヒスパニック系黒人、非ヒスパニック系白人、ヒスパニック系の患者を対象に調べたところ、アフリカ系のゲノム祖先を持つDCM患者は、欧州系のゲノム祖先を持つDCM患者と比較し、病原性/病原性の可能性と判定できる臨床的に対処可能な変異遺伝子を有する割合が低いことが、米国・オハイオ州立大学のElizabeth Jordan氏らによる検討で明らかにされた。原因として、遺伝子構造が異なる点と、アフリカ系のゲノム祖先を持つDCM患者の臨床データが不足している点が示唆されたという。黒人のDCM患者は白人のDCM患者よりも、家族歴によるリスクが高くアウトカムが不良である一方、DCMのゲノムデータの大半は白人患者のものである。研究グループは、多様なDCM患者集団において、ゲノム祖先ごとにDCMのまれな変異遺伝子構造を比較した。JAMA誌2023年8月1日号掲載の報告。36のDCM変異遺伝子について病原性/病原性の可能性/意義不明を判定 研究グループは2016年6月7日~2020年3月15日にかけて、米国の25のAdvanced Heart Failure Programsを通じ、人種の自己申告による非ヒスパニック系黒人、非ヒスパニック系白人、ヒスパニック系のDCM患者を対象に横断研究を行った。 主要アウトカムは、36のDCM変異遺伝子の、病原性/病原性の可能性/意義不明の判定と、臨床的に対処が可能(病原性/病原性の可能性と判定)か否かであった。臨床的に対処可能な変異遺伝子、欧州系26%に対しアフリカ系8% 解析対象は、主にアフリカ系のゲノム祖先を持つDCM患者が505例、欧州系が667例、ネイティブ・アメリカンが26例だった。 アフリカ系患者は欧州系患者と比べ、臨床的に対処可能な変異遺伝子を有する割合が低かった(8.2%[95%信頼区間[CI]:5.2~11.1]vs.25.5%[21.3~29.6])。このことは、病原性/病原性の可能性/意義不明の変異遺伝子のいずれかを有する患者では、臨床的に対処可能な変異遺伝子のオッズが、欧州系患者と比べアフリカ系患者は低いことを示唆するものであった(オッズ比[OR]:0.25、95%CI:0.17~0.37)。 平均してアフリカ系患者は、TTN遺伝子や、病気を引き起こすメカニズムとして機能欠失が予測されるその他の遺伝子について、欧州系患者に比べ臨床的対処可能な変異遺伝子の割合が低かった(それぞれの群間差:-0.09[95%CI:-0.14~-0.05]、-0.06[-0.11~-0.02])。 一方で、病原性/病原性の可能性/意義不明のいずれかに判定された変異遺伝子数は、アフリカ系患者と欧州系患者で同程度だった(群間差:-0.07、95%CI:-0.22~0.09)。これは、アフリカ系患者では、主にミスセンス変異による非TTN遺伝子・非予測機能欠失型株の意義不明変異株が、より多く認められたためであった(群間差:0.15、95%CI:0.00~0.30)。また、アフリカ系患者のみに検出される変異遺伝子が病原性であることを支持する、臨床症例に基づく公表済みのエビデンスは少なかった(p<0.001)。

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朝のコーヒーの覚醒作用はプラセボ効果に過ぎない?

 眠気覚ましにコーヒーを飲む人は多いが、コーヒーの覚醒作用は、カフェインだけによりもたらされるわけではないようだ。ジャウメ1世大学(スペイン)のMaria Pico-Perez氏らが実施した研究で、カフェインを摂取しただけでは、コーヒーを飲んだときに得られる効果の一部しか得られないことが明らかにされた。この研究の詳細は、「Frontiers in Behavioral Neuroscience」に6月28日掲載された。 この研究では、コーヒーの覚醒作用が、コーヒーに含まれているカフェインによるものなのか、それともコーヒーを飲むという行為が関与しているのかが検討された。コーヒー摂取の効果を検討する対象者として、ポルトガルの一般集団から、コーヒーを1日1杯以上飲む人47人(平均年齢30±7.9歳、女性31人)を抽出して試験参加者として登録し、コーヒー摂取の効果について検討した。また、36人(平均年齢32.1±11.1歳、女性27人)から成る別グループを設け、カフェインのみを摂取した場合の効果を検討した。参加者には、試験のために研究室に入室する前の少なくとも3時間は、カフェイン入りの飲料や食べ物の摂取を控えてもらった。入室後に参加者の社会人口学的属性に関するデータを聞き取り調査し、その後、85mgのカフェインを含有するコーヒー、または同量のカフェインをお湯に溶かしたもの(以下、カフェイン水)を摂取してもらい、摂取前と摂取から30分後の2回にわたって脳の機能的MRI(fMRI)検査を行った。 その結果、コーヒーを摂取した場合でもカフェイン水を摂取した場合でも、安静時に活動し、内的思考に関わる脳の回路であるデフォルト・モード・ネットワーク(DMN)の結合性は低下することが示された。しかし、コーヒーを摂取した場合には、それと同時に、視覚の高次領域間の結合性や右側の実行制御ネットワーク(RECN)のノード(領域)間の結合性が増加することも確認された。これらは、作業記憶や認知機能、目的指向行動などに関与する脳の領域である。これらの結果は、単に覚醒するだけでなく、何らかの行動を開始する準備を整えるためにはカフェインの摂取だけでは不十分であり、1杯のコーヒーを飲む必要があることを示唆する。 Pico-Perez氏は、「コーヒーを飲むことで得られる効果の一部が、カフェイン水の摂取によっても再現されたことを考えると、他のカフェイン含有飲料でも同様の効果を得られることが予想される」と話す。同氏はその一方で、「しかし、その他の効果は、コーヒーを飲むことによってのみ得られるものだった。おそらくそれらは、コーヒー特有の香りや味、あるいはコーヒーを飲むことに伴う心理的な期待などの要因によってもたらされるのだろう」との見方を示している。 研究グループは、「カフェインレスコーヒーを飲んでも、コーヒーを飲んだ場合と同様の効果を得られる可能性がある。もしそうであるなら、コーヒーを飲むことはプラセボ効果として作用していることになる」と指摘している。研究グループは別の可能性として、「コーヒーを飲む人が主張する効能は、実際にはカフェインによる禁断症状の緩和によるものかもしれない」と話す。一方で、論文の上席著者である、ミーニョ大学(ポルトガル)のNuno Sousa氏は、「対象者間でカフェインの代謝に個人差がある可能性も考えられる。今後、その点を調べるのも興味深いだろう」と話している。 Sousa氏は、「一般的に、コーヒーには覚醒度を高め、精神面や運動面の機能を向上させる効果があると考えられている。われわれが、この生物学的現象の根底にあるメカニズムをよりよく理解することができれば、それを調節している可能性のある因子を見つけたり、さらにはそのメカニズムから得られる潜在的な利益を追求する道も開けるだろう」と話している。

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第57回 9月以降の「秋開始接種」の概要は?

XBB.1.5対応1価ワクチンが登場ソコストより使用医療従事者では最多で新型コロナワクチンを6回接種している方がいると思います。私も2023年6月に6回目接種を終えています。現在「令和5年春開始接種」が終盤になっていますが、新型コロナワクチンの接種率がかなり下がってきた印象です。1年以上経過すると、さすがに重症化リスクも上がってくるようなので、前回からの接種期間が空いている人は接種してもよいのではないかと思いますが。65歳以上の高齢者および5歳以上の基礎疾患を有する人やその他重症化リスクが高いと医師が認める方の場合は、基本的に接種が推奨されます。これ以外の健康な人は、予防接種法による接種勧奨・努力義務のいずれの適用もありません。「看護学生がワクチン接種していないと実習に参加できない」問題がわりとSNSで炎上していますが、デリケートな問題ですよね…(遠い目)。さて、9月20日以降使用されるXBB.1.5対応1価ワクチンは、マウスを用いた非臨床試験において、XBB.1.5に対して現行2価ワクチンよりも高い中和抗体価を誘導することが報告されています。XBB.1.5対応1価ワクチンの契約は、モデルナ社とファイザー社を合わせて2,500万回分がすでに済んでいます。数が少し少な目な気がしますが、第一三共の「ダイチロナ」がXBB.1.5対応1価ワクチンとして早期に参入してくるのかどうかは不明です。従来株でのダイチロナ承認となっていますが、変異ウイルス用のものを次々に出してくるのではないかと期待しています。「秋開始接種」の概要9月20日から始まる「秋開始接種」の概要は図のとおりになります。春開始接種では基礎疾患のない12~64歳は接種対象外だったのですが、今回再び対象になっています。とはいえ、「もう接種はいいや」と思っている人がかなり多いので、ヘタするとインフルエンザワクチンよりも打たれないという未来が待っているかもしれません。画像を拡大する図.新型コロナワクチン接種スケジュール(筆者作成)8月7日からオミクロン株対応2価ワクチンが初回接種可能にところで、あまり報道すらされていませんが、8月7日からオミクロン株対応2価ワクチンを初回接種できるようになりました。現状流通するのは5歳以上になります。生後6ヵ月~4歳に対するオミクロン株対応2価ワクチンも書面上は接種可能ですが、いずれXBB.1.5対応1価ワクチンを接種することになるため、こちらについては流通させない方針のようです。現在流行しているのはXBB系統ですが、従来型ワクチンと比べるとオミクロン株対応2価ワクチンでは、約7割の死亡予防効果が確認されています1)。そのため、「系統が違うから効かないのでは」と懸念しなくてもよいと思います。参考文献・参考サイト1)Lin DY, et al. Durability of Bivalent Boosters against Omicron Subvariants. N Engl J Med. 2023;388:1818-1820.

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バイアスドリガンドorforglipronは2型糖尿病・肥満症治療のgame changerになり得るか?(解説:住谷哲氏)

 GLP-1受容体作動薬は2型糖尿病患者に対する血糖降下作用、体重減少作用および臓器保護作用が明らかにされている。さらに肥満症治療薬としてセマグルチド(ウゴービ)が製造承認されて現在薬価収載待ちの状況である。GLP-1受容体作動薬は有用な薬剤であるが注射薬のバリアはなかなか手ごわく、必要な患者に導入できないことが少なくない。そこで登場したのが経口セマグルチド(リベルサス)であったが、早朝空腹時に120mL以下の水で服用してその後30分は飲食不可、となっているので注射薬ほどではないが服薬アドヒアランスを維持するのが難しい。orforglipronは1日1回服用の非ペプチド性GLP-1受容体作動薬であり、本試験は糖尿病を合併しない肥満患者に対するorforglipronの体重減少作用を主要評価項目とした第II相臨床試験である。orforglipronの2型糖尿病患者に対する血糖降下作用を主要評価項目とした第II相臨床試験の結果は、ほぼ同時にLancetに掲載された1)。両試験の結果をみると、orforglipronの体重減少作用および血糖降下作用はきわめて有効であった。 本論文をみたときに経口セマグルチドと同様の薬剤かと思っていたが、筆者の勉強不足であった。医薬品は大きく分けると低分子医薬品(分子量<500)、高分子医薬品(分子量>10,000~15,000)と、その中間の中分子医薬品とになる。orforglipronは、もともと中外製薬で中分子医薬品として創薬されたOWL833(分子量883)が、2018年にEli Lillyに導出されて臨床開発が継続されてきた歴史がある。中分子医薬品は、タンパク質間相互作用(protein-protein interaction)を修飾することによる細胞内シグナル伝達調節作用が期待されており、世界中の製薬企業が開発に注力している。 GLP-1受容体はG蛋白質共役受容体(G-protein coupled receptor:GPCR)に分類される(ちなみにGIPおよびグルカゴン受容体もGPCRに分類される)。GLP-1はGLP-1受容体に結合して細胞内にシグナルを伝達するが、そのシグナルにはGタンパク質依存的シグナルとβアレスチン(arrestin)依存的シグナルとがある。前者はcAMPなどのセカンドメッセンジャーを介して細胞内Ca濃度を上昇させることでGLP-1作用を発揮する。後者は従来GLP-1受容体の脱感作を誘導すると考えられてきたが、近年その他の多様な細胞内シグナル伝達を担っていることが明らかになりつつある。orforglipronはGLP-1受容体に結合してGタンパク質依存的シグナルのみを活性化しβアレスチン依存的シグナルを活性化しないことが報告されている2)。このようにGPCRを介したGタンパク質依存的シグナルとβアレスチン依存的シグナルとを選択的に活性化させる分子をバイアスドリガンド(biased ligand)という3)。つまりorforglipronは、これまでのGLP-1受容体作動薬とは異なるまったく新しい作用機序を有する薬剤であり、2型糖尿病・肥満症治療における画期的な新薬となる可能性がある。 すでにEli Lillyは第III相臨床開発プログラムであるACHIEVE(対象は2型糖尿病)およびATTAIN(対象は肥満症)を開始することを発表しており、数年後には2型糖尿病・肥満症治療に新たな展開が期待される。

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長時間作用型の抗HIV薬は患者を問わず有効な可能性

 HIV(ヒト免疫不全ウイルス)感染症患者では、30年近く前から、抗レトロウイルス薬の毎日の服用が、AIDS(後天性免疫不全症候群)発症を抑える上で非常に効果的な方法となっている。しかし患者の中には、薬物中毒や精神疾患などの理由で毎日の服薬が困難な者もいる。こうした中、新たな研究で、長時間作用型の抗レトロウイルス薬の注射により、ほぼ全ての患者が完全な防御を得られる可能性が示された。米カリフォルニア大学サンフランシスコ校(UCSF)ベイエリア・エイズ研究センター(CFAR)のMonica Gandhi氏らによるこの研究結果は、「Annals of Internal Medicine」に7月4日掲載された。 Gandhi氏は、「注射による抗レトロウイルス療法(ART)を望むHIV感染症患者は多い。おそらく、錠剤を飲むことに嫌気がさしている患者や、生活上の困難が多過ぎて錠剤を飲めない人などがそれに該当するだろう」と話す。 抗HIV治療における最初の長時間作用型注射レジメンであるCabenuva(一般名カボテグラビルおよびリルピビリン)は、2021年1月に米食品医薬品局(FDA)により承認された。Cabenuvaは月に1回、または高用量を隔月に1回、投与するものだが、現時点での投与対象は、ウイルス量が抑制されている患者に限定されている。これは、毎日の錠剤服用が困難なためにウイルス量が抑制されていない患者を対象に、長時間作用型ARTの有効性を評価する研究が、いまだ実施されていないためだ。 Gandhi氏らは、2021年6月から2022年11月にかけて、米サンフランシスコ在住のHIV感染症患者133人を対象に長時間作用型ARTによる治療を行い、その有効性を検証した。対象者の年齢中央値は46(四分位範囲25〜68)歳で、88%がシスジェンダー(出生時の性別と性自認が一致)であり、62%が白人以外の人種だった。また、76人は経口ARTによりウイルス量が抑制されていたが、残る57人は経口ARTを受けておらず、ウイルス量が抑制されていなかった。さらに、34%の患者は物質使用障害を抱えており、42%がホームレスであった。なお、対象者はいずれもGandhi氏が所属するUCSFのHIV専門クリニックであるWard 86の患者だった。Ward 86では目下、約2,600人の患者が治療を受けているが、その多くは貧困で、ほとんどがメディケイド加入者であるという。 長時間作用型ARTによる治療の結果、ウイルス量が抑制されていた対象者では、全員が試験終了時まで、引き続きウイルス量が抑制されていることが明らかになった。一方、試験開始時にウイルス量が抑制されていなかった対象者では、治療開始から中央値33日後に57人中54人でウイルス量が抑制されていることが確認された。残る3人のうちの1人ではHIVのRNA量が予想通り100分の1にまで減少したが、その他の2人は早期に治療が奏効しないと判断された。 Gandhi氏は、「対象患者の多くで、初めてウイルス量を抑制することができた」と強調し、「特に、ホームレスの患者は、経口薬を持ち歩く必要がなく、月に1回、あるいは2カ月に1回、クリニックで注射を受ければ良い点に非常に満足していた」と付け加えた。 Gandhi氏によると、より規模の大きな臨床試験がすでに計画されているとのことだ。同氏は、「この大規模臨床試験の結果次第では、FDAが、錠剤服用が困難で、すでに体内のウイルス量が多い患者に対しても、長時間作用型ARTによる治療を承認する可能性がある」と期待を寄せている。

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日薬版お薬手帳リニューアルのドタバタ劇【早耳うさこの薬局がざわつくニュース】第115回

電子お薬手帳はここ最近あまり話題になることはなく、どの電子お薬手帳の事業者と契約するかを悩んだのはもう何年前だろう…という遠い記憶になりつつあります。これは電子お薬手帳が一定の患者さんに継続的に利用され、実際の運用が落ち着いている証拠だろうと感じていましたが、その電子お薬手帳について動きがありました。日本薬剤師会は2023年7月26日の都道府県会長協議会で、電子お薬手帳のスマートフォンアプリ「eお薬手帳3.0」について、公開開始した23年7月3日から19日で約180薬局から申し込みがあったと発表した。また同アプリには、23年内を目標にオンライン服薬指導機能を実装する予定だ。(2023年7月31日付 日経DIオンライン)日本薬剤師会が提供する電子お薬手帳が変更になりました。以前より日本薬剤師会は、NTTドコモ(以下、ドコモ)と電子お薬手帳「おくすり手帳Link」を共同で開発・提供していました。しかし、2022年6月頃にそのおくすり手帳Linkを終了するとの連絡がドコモの決定事項として報告され、一方的にドコモから開発とサービス提供の中止が告げられたことが報じられています。これには日本薬剤師会側はかなりご立腹だったようですが、この一方的な決定は覆ることはなく、新しくファルモの電子お薬手帳「eお薬手帳3.0」が選ばれたことが発表され、7月3日に公開開始されました。約2週間で180件が登録しているというのは、よい数字ではないでしょうか。ドコモは2021年4月にオンライン診療システムを手掛けるメドレーとの資本業務提携を発表しており、同年12月からオンライン診療・服薬指導アプリ「CLINICS」の共同運営を開始しています。ドコモは、CLINICSの運営に加わったことで「経営資源を一本化した」と報じられています。日本薬剤師会は「基本合意がなされていると思っていた」ということですが、すっかり振られてしまった形になっただけでなく、踏み台にされてしまったようにも感じます。ドコモによる現行の電子お薬手帳は、2024年6月末にすべてのサービスやサポートが終了する予定です。約1年間に薬局や個人でデータ移行してくださいね、という案内が出ていますが、マイナンバーカードを読み込ませるなどの対応が結構大変なので、できたら自動でデータ移行してほしいなと思います。このドコモの電子お薬手帳の契約薬局数は、3,000軒とも5,500軒とも報じられています。現在、全国の薬局数が約6万軒ですから、1割にも満たないのかと意外な気もします。たくさんの業務がある中で、薬剤服用歴管理指導料の加算の要件として問題のない電子お薬手帳を選ぶ際に、日本薬剤師会のお墨付きは強いと感じましたが、実はそうでもないのかもしれません。それではドコモも手を引くかも…という気もします。電子お薬手帳は、電子処方箋やオンライン服薬指導との連携などが期待されていますが、マイナポータルの習熟度やドコモのような大きな企業の動きによってはまた状況が変わるかもしれません。加算の算定要件、というだけで事業者選定を急いだ記憶がありますが、使い勝手や今後の発展について本当は落ち着いて吟味したいところです。現在の情報の中で事業者変更のメリットがあるとすれば、ファルモが提供する「eお薬手帳3.0」のサービス利用料は初期費用1万円、年額費用1万5,000円(ともに税別)で、既存システムの半額程度に設定されているという点でしょうか。そして、もともと電子お薬手帳のサービスを提供している会社なので、おそらくドコモのような急な撤退はないでしょう。ファルモの「eお薬手帳3.0」に期待したいと思います。

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国試予備校・映像講義選びのポイントは?【医学生お悩み相談ラヂオ】第3回

動画解説第3回は、医学部3年の女性からのお悩み。医師国家試験に向けて大学の講義だけでなく、試験対策専門の予備校や映像講義を受講すべきかどうか、という質問。また、どの予備校、教材を選ぶ基準などがあれば教えてほしいとのこと。現役予備校講師でもあるDrえどの回答は?

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第171回 「ダイチロナ」承認の裏で継続審議の塩野義ワクチン、その理由は…

新型コロナウイルス感染症(以下、新型コロナ)のワクチンとして最も早く承認されたファイザーのコミナティから遅れること約2年半、ついに国産の新型コロナワクチンが承認される見通しだ。厚生労働省の薬事・食品衛生審議会・医薬品第二部会は7月31日、第一三共の新型コロナメッセンジャーRNA(mRNA)ワクチンである『ダイチロナ筋注』を承認することを了承した(8月2日付で正式承認取得)。その一方で塩野義製薬が承認申請をしていた遺伝子組み換えタンパクワクチン『コブゴーズ筋注』について、「現在までに評価された臨床試験成績のみでは、本ワクチンの有効性を明確に説明することが難しい」と判断され、継続審議となった。明暗を分けた両ワクチンだが、少なくともダイチロナに関しては公開された一部データを見る限り、承認が了承されたことは傍目にも妥当と思える。公開されたデータは、18歳以上を対象に追加免疫としてダイチロナとファイザーのコミナティ、モデルナのスパイクバックスを比較した非劣性試験の結果だ。非劣性基準は、中和抗体価の幾何平均上昇倍率(GMFR)の両側97.5%信頼区間(CI)の下限値が0.67 を上回ることとなっている。公表されたGMFRは、対コミナティの試験ではダイチロナが58.690(95%CI:49.643~69.386)、コミナティが38.044(95%CI:29.704~48.726)、対スパイクバックスの試験ではダイチロナが36.074(95%CI:29.292~44.426)、スパイクバックスが25.402(95%CI:19.163~33.671)。GMFR比は対コミナティで1.464(両側97.5%CI:1.112~1.927)、対スパイクバックスで1.772(両側97.5%CI:1.335~2.353)。一方の安全性については、データは今のところ開示されていないが、厚生労働省が報道向けに公開した資料では、ダイチロナの安全性プロファイルは、コミナティ、スパイクバックスと同様。主な副反応は注射部位疼痛、倦怠感、頭痛、発熱で、ほとんどが軽度あるいは中等度で回復性が認められているという。もっとも有効性については起源株(武漢株)に対する結果で、今後、第一三共はオミクロン株XBB.1系統への一部変更申請で対応していく方針。この点は従来のコミナティ、スパイクバックスと同様だ。コミナティとスパイクバックスでは、起源株1価ワクチンからオミクロン株BA.4/5系統対応も含めた2価ワクチンへ変更された際、非臨床試験のみで一部変更承認となった点が理論上は理解できても違和感を持ってしまった人は医療関係者でも少なくなかったと理解している。しかし、今ではこの対応が国際的にスタンダードとなっている。今年5月に開催された日本も参加する薬事規制当局国際連携組織(ICMRA)では、現在承認されているワクチンについてはプラットフォームとしての対応を適応可能とし、対応株変更時は確認的な品質と非臨床データのみの資料提出で承認審査が行えるとの見解がまとめられている。なお、第一三共によると、製造は埼玉県北本市にあるグループ会社の第一三共バイオテックの工場で行う。既存のmRNAワクチンはいずれも冷凍保存だが、ダイチロナに関しては冷蔵保存(2~8℃)が可能。もっともmRNAは振動などに弱いため輸送には一定の配慮が必要と言われているが、第一三共によると、流通を担当する卸については、インフルエンザワクチンなどと同様に既存の卸各社で対応する計画で、特定卸への絞り込みは考えていないという。一方、継続審議となった塩野義製薬のコブゴーズでは、審査評価資料として提出されていた国内臨床試験の比較対照薬は、初回免疫(優越性検証)がアストラゼネカ社のウイルスベクターワクチンであるバキスゼブリア、追加免疫(非劣性検証)がファイザーのコミナティだった。厚生労働省によると、部会の審議では「コブゴーズの接種により中和抗体価の上昇は一定程度認められるものの、初回免疫、追加免疫の両試験とも比較対照薬接種群の中和抗体価が通常想定されるよりも相当程度低く、当該試験に基づいて有効性を明確に評価することは困難との議論があった」と説明した。このため今回の申請資料中に参考資料として提出されていた海外などでの臨床試験成績などを新たに評価対象に追加して、改めて評価することになったと話している。私見を言えば、この結果はやや“不可解”とも言える。まず、初回免疫の比較対照薬がなぜバキスゼブリアだったかという点だ。塩野義製薬がこの臨床試験を開始した時期は、既に国内での新型コロナワクチン接種はコミナティやスパイクバックスを軸に実施されていた。バキスゼブリアに関しては、日本よりも先行して使用されたヨーロッパで発生頻度は稀ながら、死亡例も含む重篤な血栓症の報告があり、当初日本では公的接種に用いられなかった。しかし、国内では接種開始後にコミナティとスパイクバックスの供給不足が表面化したことなどから、途中から血栓症の発現頻度が低い40歳以上に限定で公的接種に用いられたという経緯がある。現状も公的接種はmRNAワクチンの2種類が用いられており、バキスゼブリアによる公的接種は2022年9月30日をもって終了している。現在のこうした接種状況、さらに今後も高齢者や基礎疾患保有者に対しては公的接種が継続するだろうという見通しに立てば、その選択肢になり得るワクチンは既存のmRNAのいずれかに対する非劣性検証を行うのが臨床上は筋だと個人的には考えるのだ。もっとも今回のコブゴーズの初回免疫の試験は起源株に対するものであり、コミナティ、スパイクバックスが起源株での発症予防の有効率が95%前後と驚異的とも言える結果だったことを考えれば、これらを比較対照薬とすることは、コブゴーズを含むその他のモダリティを用いたワクチンの有効性を不当に低く評価する可能性はある。この点を考えれば、バキスゼブリアを比較対照薬にするのもわからぬわけではない。この点を塩野義製薬広報部に確認したところ「試験実施時のワクチン接種状況から比較対照として利用でき、相手企業から利用許可が得られたことからバキスゼブリアになりました。また、これは当局とも相談をしながら、当局からもそれで良いだろうという判断で決定しています。他社(ファイザー、モデルナ)から許可が得られなかったのかどうかについては、こちら(広報部)では伺っていないので、ご回答できない状況です」とのことだった。さらに今回の審議結果は、解釈次第では同社の臨床試験実施体制そのものに疑義を呈されたと言えなくもない。今回の審議結果の受け止めについて尋ねたところ、「部会での審議内容については当社も確認中であること、また現状は継続審議となって審議中ですので、コメントすることは差し控えさせていただきます」との回答。新型コロナ治療薬のエンシトレルビルの緊急承認審議に続いて物言いが付いてしまった塩野義製薬だが、ここからどのような展開になるのか。しばらく目が離せそうにない。

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医療者のためのわかりやすい医療訴訟

医療訴訟の予防法と対処法を会話形式でわかりやすく解説「医療訴訟」という言葉、医療者の方なら誰もが一度は耳にしたことがあるはずです。しかし、裁判所がどのような思考過程で事案を判断しているのかは、ご存じない方が多いかと思います。本書は、医療訴訟に関する法律や裁判所の考え方、そして実際の事案における争点と裁判所の判断を解説しています。さらに、医療訴訟に遭遇しないために日頃から留意すべきポイントと、遭遇した場合の対処法も記載しています。弁護士、医師、女子高生の3人が会話を繰り広げながら話を展開し、難解な法律用語の使用は極力避けているため、大変読みやすい内容となっています。医療者の方の万が一の場合に備えることができる1冊です。画像をクリックすると、内容の一部をご覧いただけます。※ご使用のブラウザによりPDFが読み込めない場合がございます。PDFはAdobe Readerでの閲覧をお願いいたします。画像をクリックすると、内容の一部をご覧いただけます。※ご使用のブラウザによりPDFが読み込めない場合がございます。PDFはAdobe Readerでの閲覧をお願いいたします。    医療者のためのわかりやすい医療訴訟定価4,180円(税込)判型A5判・並製頁数416頁発行2020年4月著者粟野 公一郎(弁護士)、粟野 暢康(医師)

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マッチングでどう自己PRしたらよいかわからない【医学生お悩み相談ラヂオ】第2回

動画解説第2回は、医学部6年の女性からの「マッチング試験でどう自己PRをしたらよいかわからない」というお悩み。とくに病院側が何を求めているのかわからず、ほかの医学生はどうしているのか、知りたいとのこと。多くの医学生、研修医を見てきた民谷先生のアドバイスは実に的確です。

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急性期うつ病治療における21種の抗うつ薬の睡眠への影響~ネットワークメタ解析

 抗うつ薬による急性期治療中に見られる睡眠関連副作用は、コンプライアンスの低下や寛解を阻害する要因となりうる。中国・北京大学のShuzhe Zhou氏らは、抗うつ薬の睡眠関連副作用の種類、抗うつ薬の用量と睡眠関連副作用との関連を評価するため、本検討を行った。その結果、ほとんどの抗うつ薬において、プラセボと比較し、不眠症または傾眠のリスクが高かった。また、抗うつ薬の用量と睡眠関連副作用との関係は、さまざまであった。結果を踏まえて著者らは、「抗うつ薬による急性期治療中には、睡眠関連副作用の発現に、より注意を払う必要がある」としている。Sleep誌オンライン版2023年7月9日号の報告。 2023年4月までに公表されたうつ病に対する二重盲検ランダム化比較試験をPubMed、Embase、Cochrane Central Register of Controlled Trials、Web of Scienceより検索した。短期間の抗うつ薬単剤療法中の睡眠関連副作用を報告した研究を解析に含めた。ネットワークメタ解析により睡眠関連副作用のオッズ比(OR)を算出した。用量反応性を評価するため、ベイジアンアプローチを用いた。研究間の不均一性の評価には、τ2およびI2統計を用いた。感度分析は、バイアスリスクの高い研究を除いて実施した。 主な結果は以下のとおり。・分析対象は、6万4,696例(216試験)であった。・13種類の抗うつ薬において、プラセボと比較し、傾眠の高いORが確認された。最も高いORが認められた薬剤は、フルボキサミンであった(OR:6.32、95%信頼区間[CI]:3.56~11.21)。・11種類の薬剤は、不眠症リスクが高く、最も高かった薬剤は、reboxetineであった(OR:3.47、95%CI:2.77~4.36)。・傾眠または不眠症との用量反応曲線は、直線形、逆U字形、その他が含まれていた。・研究間に有意な不均一性は認められなかった。・ネットワークメタ解析結果のエビデンスの質は、非常に低い~中程度(GRADE)であった。

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第170回 キュウリ矯正ギプスが物語る、国内ジェネリック供給不足の原因

ついにそこまで“手を突っ込む”のかという印象がぬぐえない。厚生労働省(以下、厚労省)が7月31日に初会合を行う「後発医薬品の安定供給等の実現に向けた産業構造のあり方に関する検討会」(以下、検討会)のことだ。これは昨年8月からスタートした厚生労働省医政局が設置した「医薬品の迅速・安定供給実現に向けた総合対策に関する有識者検討会」(座長:学習院大学経済学部教授・遠藤 久夫氏、以下、有識者検討会)の報告書で、後発医薬品、いわゆるジェネリック医薬品(以下、GE)業界の構造的な問題を話し合う場の設置が必要という内容が盛り込まれた結果である。すでに多くの医療関係者がご存じのように、2020年に福井県のGE企業・小林化工で製造した経口抗真菌薬の製造工程でベンゾジアゼピン系睡眠導入薬の成分が高用量で混入していることが確認され、死亡例を含む健康被害が発生した事件をきっかけに国内ではGEが供給不足という状態が2年以上も続いている。小林化工はGE企業としては中堅規模だったが、GE企業では大手でも自社以外に外部への委託製造があり、実は大手企業の製品でも“隠れ小林化工製品”のようなものがあり、この段階からGEの品薄が始まった。健康被害の原因は小林化工が製造手順に未記載の方法で医薬品を製造していたためで、その結果として業務停止命令に追い込まれた。しかし、事態はそれだけでは済まず、その後もGE企業ではこうした製造手順に基づかない製造や品質検査の不正が次々に明らかになり、国内最大手の日医工をはじめ複数社が業務停止命令を受け、さらなる供給不足状態に陥ったままだ。有識者検討会で問題として指摘されたのは、少量多品目製造と言われるGE企業自体が日本では190社もあることだった。要は「小規模多数社」で「少量多品目製造」を行っている、経済効率の低さだった。もともと薄利多売のGE企業の場合、企業活動を安定させるためには、大規模化が望ましいのは確かである。そこで有識者会議では新たにこのことを話し合う会議体の設置を提言した。実はこうした提言が官公庁から出されるのは初めてではないが、企業という民間ベースの話によりあからさまに踏み込む形での提言は、もともとは財務省主計局の十八番だった。主計局は旧大蔵省時代から、旧厚生省担当の主計官が講演などで国内の製薬業界や医薬品卸業界の企業再編を何度も唱え、それが業界紙に記事として掲載されると、読んだ企業関係者が「金目のことだけで勝手なことを言いやがって」と激怒する構図があった。かつて業界紙に身を置いた私も、先輩記者がそうした講演や主計官の個別インタビュー記事を執筆して自社媒体に掲載されると、その後1週間程度はあちこちの取材先で記事に対するボヤキを聞かされる“とばっちり”を食らった。ある時などはそうした記事が出た翌日に中堅製薬企業に取材に行ったところ、突如として取締役が目の前に現れ、「何なんだ、あの記事は!」と一方的に怒鳴り散らされ、「いやいや一つの意見ですから…」と言って無難に乗り切ろうとしたところ、今の時代ではありえないことではあるが、いきなり灰皿が飛んできたことがあった。一方、厚労省では時に同様のことが言及されることがあったが、最新の「医薬品産業ビジョン2021」などでは、GE企業の再編については、あえて言及を避けているかのような文言となっている。そんな厚労省がGE業界の構造について話し合う検討会の設置に踏み切るのだから、かなり危機感は強くなってきたのだろう。それもこれも厚労省自らがGE使用促進の旗振りをしていながら、供給不足になったことへの後ろめたさもあるのかもしれない。GE企業の在り方について議論をすること自体に私自身は反対ではない。むしろ大いに議論すべきだろうと思っている。ただ、それだけでは不十分とも考えている。置き去りになっている議論がいくつかあるからだ。この点で最も議論されているのが、スパイラル的に薬価が下がる現状の薬価制度の問題だが、今回はこの点の議論は棚上げにしておく。それはこれだけでおよそ本連載の2回分ぐらいの文字量になるからである。私個人として、今後、本格的議論が必要だと思っているのは、GEにどの程度の品質を求めるかである。一般的に日本のGEは高品質と言われる。この点を表すエピソードとして関係者の口から頻繁に飛び出すフレーズが「海外では製造工程で髪の毛程度が混入しても問題にならない」というもの。これはあくまで一番極端な例えである。先日、国外でヘルスケアビジネスに関わっている人が講演した内輪の勉強会に参加したが、その方はGEを例に挙げて「日本には高品質幻想がある」と語った。より具体的な例えとして「法的に求められている品質基準を90%とすると、海外のGE企業はこれをほんのちょっと超えるくらいを目指す。しかし、日本のGE企業は98%とか99%を目指しがち。確かに日本のGEの品質は高いが、日本を一歩出れば、求められているのは価格がすべて。これでは国際競争に勝てない」という趣旨の発言をしていた。これはまさにその通りである。こうした話は医薬品業界関係者からはよく聞く話だ。以前、ある外資系製薬企業の勤務経験者Aさんと話した時に、彼は本社のある国で、日本の文化を説明する時にきゅうり矯正ギプスを持参すると語っていた。これはきゅうりがまっすぐ実るようにするため、実が小さい時に被せる筒状のものである。Aさんは笑いながら、次のように語っていた。「多くの場合、このギブスを見せると、日本人以外は卑猥なことに使うんじゃないかと想像して薄笑いするんですよ。そこで種明かしをすると、『えええー、そんなことのために?』という反応を見せるんですよ。だって海外に行けば曲がったきゅうりを見ることはごく普通ですからね。日本人のこだわりはなかなか理解されないですよ」同じようなことは製薬だけでなく、医薬品卸でも耳にしたことがある。今から四半世紀前に自分が業界紙記者として医薬品卸担当をしていた頃のことだ。今でこそ医薬品卸では、ピッキングマシンなどを備えた大型物流センターが当たり前だが、当時はこれがなかなか進まなかった。その理由をある大手医薬品卸の物流担当者に尋ねたところ、その当時主流だったアメリカ製のピッキングマシンは日本では使えないとの答えが返ってきた。さらに突っ込むと、この担当者は「結局ね、アメリカ製のピッキングマシンは物流効率だけを考えているので、箱入りの医薬品だと箱の角が潰れることが結構あるんです。もちろん中身には影響はありませんし、アメリカでは医療機関もそんなことは気にしません。ですが、日本ではそうした中身には影響していないけど、箱の角が潰れているものを配送したら、『無礼者!』って怒鳴られちゃうんですよ」と話してくれた。別に国内外の考えの違いはどうでも良いと思う人もいるかもしれない。しかし、すでに国内のGE市場は飽和状態にあり、仮に大規模化を実現できても今度はそこで企業同士で過当競争となる。高品質を追求して高コストのまま、さらに過当競争をすれば、結果的に大規模化したGE企業同士が疲弊し、それが安定供給への不安へと転化しかねない。大規模化した分だけ、そのうちの1社に何かあった時の影響は甚大である。その意味では大規模化できたGE企業が国際競争力を有し、国内と同時に海外でも展開できることが理想である。だが、現状は日本の慣習・幻想がそれを難しくしている。そろそろそこからの脱却が必要ではないかと個人的にはかなり前から考えている。もっとも文化的背景を持つ慣習は短期間で変えることは容易ではない。こうしたものを変化させるために実は大きな効果を発揮するのが法規制の改正である。今回の検討会の議論がこうした慣習に基づく品質問題にどこまで踏み込めるのか? 正直、あまり期待はしていないのだが、そろそろその端緒くらいには立ってほしいものである。

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医療系YouTuberが認定制に!【早耳うさこの薬局がざわつくニュース】第114回

皆さんの周りで医療系のYouTube配信をしている人はいますか? YouTuberとはどのくらいの登録者数がいる人を指すのかは不明ですが、医療者で医療系情報を発信する人は少なくないようです。YouTubeで配信をしてもなかなか収益につながることは難しいらしく、収益を得ながら継続して発信を行っている人は多くないのかもしれませんが、自分が思うことや世の中が求めていることを発信し、広めるには効果的なツールの1つであることには間違いないでしょう。今回、YouTubeを運営するGoogleが、医療情報の発信に関して、一定の規制を設けることを発表しました。グーグルが動画投稿サイト「YouTube」で、医療関連コンテンツの信頼性を高めるため、医師や看護師などの医療系ユーチューバーに「認定制度」を年内に導入する。申請して基準を満たせば、配信者は「信頼できる情報源」であることを表示できるようになる。一方で、信頼性が低い情報源の配信者に関しては、削除や表示されにくくする措置をとる。「GLP-1ダイエット」を宣伝する自由診療クリニックの医師は資格制度の対象外となる見通し。GLP-1ダイエットに関しては、学会や製薬企業が警告しているが、グーグルも不適切情報の氾濫に歯止めをかける方針だ。(2023年7月24日付 RISFAX)現在のところ、上記の認定制度の対象資格は「医師」「看護師」「心理カウンセラー」の3職種とされており、薬剤師は対象外となっています。認定を得るための申請条件は、全米医学アカデミー(NAM)や世界保健機関(WHO)の健康に関する情報共有の原則に従っていることの証明のほか、直近12ヵ月間の総再生数が2,000時間以上あるなどの厳しい基準をクリアする必要があります。認定にはその情報の正確さや信頼だけでなくチャンネルの人気も必要なようです。この取り組みにより、医療者がYouTubeからお墨付きをもらうことで、「信頼できる情報源」として情報を発信できるというメリットは大きいでしょう。健康や医療関連の情報を求めてYouTubeで検索するユーザーに対して、より信頼できる情報を届けやすくなるのではないでしょうか。今回、GLP-1受容体作動薬をダイエット目的で自費診療として用いる、いわゆる「GLP-1ダイエット」についてはGoogleも問題視していると明言していて、おそらくこの発表の要因の1つになったのでしょう。GLP-1受容体作動薬の適応外使用を促す医師については、ガイドラインやポリシーに則り、動画削除や表示を下位にする措置を取るとしています。全体をみると、この対策は医療分野だけというわけではありません。情報の正確性がとくに重要な政治、医療、科学情報などのトピックに関しては、信頼できる情報源から情報を検索しやすく、お勧めの動画として優先的に表示し、誤情報・フェイクニュースなどに対しては取り締まる対策を行うという大きな流れの1つであるようです。医療や健康関連の情報で疑問を持っている人や悩んでいる人が、インターネットで情報を検索するというケースは増加していると言われていますが、その情報は玉石混交です。また、医療情報はどんどん変わっていきます。患者さんがタイムリーかつ正確な情報を得られやすくなり、健康の向上や不安の解消に役立てばいいなと思います。

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ショッピングカートで不整脈を検出できるようになる?

 スーパーマーケット(以下、スーパー)のショッピングカートが脳卒中予防に役立つ日が来るかもしれない。英リバプール・ジョン・ムーア大学教授のIan Jones氏らによる研究で、ハンドルバーに心電図センサーを内蔵したショッピングカートを用いたスクリーニングにより、脳卒中の主な原因である心房細動を持つ人を見つけ出せる可能性が示された。この研究結果は、欧州心臓病学会(ESC)の構成団体の一つであるAssociation of Cardiovascular Nursing & Allied Professions(心血管看護・および関連専門職協会)の年次集会(ACNAP 2023、6月23~24日、英エディンバラ)で発表された。 このショッピングカートを用いたスクリーニング方法は、未診断の心房細動を持つ買い物客を見つけ出すことを目的としている。米アーマンソンUCLA心筋症センターの所長を務めるGregg Fonarow氏は、「心房細動は無症状なこともあるため、脳卒中を発症して初めて心房細動の診断を受ける人もいる。複数の研究から、未診断の心房細動を持つ成人の数は、米国だけで75万~150万人に上ると推定されている」と説明する。一方、Jones氏らによると、世界の診断例と未診断例を含めた心房細動の患者数は4000万人を超えると推定されている。 こうした理由から、できるだけ早く心房細動を持つ人を見つけ出すためのスクリーニング方法に対する関心が高まりつつあるとFonarow氏は説明。「スクリーニングによって心房細動を早期の段階で診断し、脳卒中予防のために経口抗凝固薬による抗凝固療法(抗血栓療法)を開始できる可能性がある」と話す。 Jones氏らは今回、心電図センサーがハンドルに装備された10台のショッピングカートを使った実験を、2カ月にわたり、4カ所のスーパーで実施した。これらのスーパーには、薬局も併設されていた。 試験参加者が、ショッピングカートのハンドルバーを1分以上握っている間に、ハンドルバーの心電図センサーがその人の心拍リズムを評価し、問題がなければセンサーが緑色に、問題が検出された場合には赤色に点灯する。緑色に点灯した買い物客に対しては、その後、手首の脈拍測定によるスクリーニングを実施し、ハンドルバーの心電図センサーによるスクリーニング結果の正確性を確認した。一方、赤色に点灯した買い物客に対しては、施設に併設する薬局の薬剤師が手首の脈拍測定によるスクリーニングを行うとともに、ショッピングカートに装備されたものとは異なるセンサーによるスクリーニングも行った。さらに、赤色に点灯した買い物客の心電図データは循環器専門医によっても確認された。 最終的に2,155人の買い物客がこの研究に参加した。研究参加者には、1)心房細動は検出されなかった、2)心房細動が検出され、確認された(2週間以内に循環器専門医の受診を予約)、3)心房細動の有無が不確定であり、スクリーニングのやり直しも可能、のいずれかの結果が示された。 その結果、220人が、センサーが赤色に点灯するか手首の脈拍測定で不整脈が検出される、あるいはその両方が当てはまり、心房細動の疑いありと判定された。このうち、最終的に59人が心房細動と診断された。残りの参加者のうち、115人では心房細動は検出されず、46人で不確定との結果が示された。心房細動と診断された59人の平均年齢は74歳で、女性が43%を占めていた。また、59人中20人は、すでに心房細動を持っていることを把握していたが、その他の人は、今回の研究で初めて心房細動と診断された。 全体的な精度については、このショッピングカートによるスクリーニングで心房細動が検出された買い物客のうち、実際に心房細動と診断された人の割合は4分の1から2分の1程度にとどまっていた(陽性的中率0.24〜0.56)。つまり、このスクリーニング方法では、多くの人が、実際には心房細動を持っていないのに持っていると誤って診断されていたということだ。同時に、実際に心房細動を持っていた人たちの約半数で、このスクリーニング方法では心房細動が見逃されていた(陰性的中率0.55〜1.00)。 ただし、今回の研究では、無作為に選ばれた買い物客の3分の2は研究参加を快諾していたことから、この方法は一般の人たちに受け入れられやすく、精度の問題が改善されれば今後も研究を重ねていく価値があるとJones氏は主張している。 なお、学会発表された研究結果は、査読を受けて医学誌に掲載されるまでは一般に予備的なものと見なされる。

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模試は何回くらい受ければいいのでしょうか?【医学生お悩み相談ラヂオ】第1回

動画解説第1回は、医学部6年の男性からのお悩み。成績は割と良いけど、受けなかった模試で大きなヒントを見逃してしまうのではないかと心配でつい受験予定をたくさん入れてしまうとのこと。模試はたくさん受けた方がいいのか?医学生のお悩み解決のエキスパートDrえどの回答は?

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患者・市民のための膵がん診療ガイド 2023年版

膵がん診療のやさしい解説書、3年ぶりの改訂!膵がん患者さんとそのご家族に常に寄り添い、強力にサポートできる書籍となるよう、膵がん診療に携わる先生方、患者団体・市民の代表の方々によって全面的に改訂されました。遺伝子・バイオマーカーなど、膵がん診療における最新情報、便利な用語集・薬剤一覧を盛り込んで全体の構成を一新。診断直後や治療中など、さまざまな場面で生じる疑問にお答えしています。膵がんを正しく知る・理解するのに最適の1冊です!画像をクリックすると、内容の一部をご覧いただけます。※ご使用のブラウザによりPDFが読み込めない場合がございます。PDFはAdobe Readerでの閲覧をお願いいたします。画像をクリックすると、内容の一部をご覧いただけます。※ご使用のブラウザによりPDFが読み込めない場合がございます。PDFはAdobe Readerでの閲覧をお願いいたします。    患者・市民のための膵がん診療ガイド 2023年版 第4版定価2,640円(税込)判型B5判頁数264頁・カラー図数:48枚発行2023年5月編集日本膵臓学会 膵癌診療ガイドライン改訂委員会電子版でご購入の場合はこちら

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TTP診療ガイド2023改訂のポイント~Minds方式の診療ガイドラインを視野に

「血液凝固異常症等に関する研究班」TTPグループの専門家によるコンセンサスとして2017年に作成され、2020年に部分改訂された、血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)の診療ガイドライン、『血栓性血小板減少性紫斑病診療ガイド2023』が7月に公開された。2023年版では、Minds方式の診療ガイドラインを視野に、リツキシマブに対してclinical question(CQ)が設定され、エビデンスや推奨が掲載された。主な改訂ポイント・リツキシマブの推奨内容の追加・変更とCQの掲載・カプラシズマブが後天性TTP治療の第一選択に・抗血小板薬、FFP輸注に関する記述を追加・FrenchスコアとPLASMICスコアに関する記述を追加・増悪因子に関する記述を追加リツキシマブを後天性TTPの急性期、寛解期にも推奨 難治例を中心に広く使用されているリツキシマブであるが、2023年版では、後天性TTPの急性期に投与を考慮しても良い(保険適用外、推奨度2B)としている。ただし、とくに初回投与時のインフュージョンリアクションに注意が必要としている。また、難治例、早期再発例(推奨度1B)や寛解期(保険適用外)でのリツキシマブ使用についての記載も追加された。再発・難治例では、治療の効果と安全性が確認されており、国内で保険適用もあることから推奨するとし、後天性TTPの寛解期では、ADAMTS13活性が10%未満に著減した場合、再発予防にリツキシマブの投与を検討しても良いとした。リツキシマブの使用に関するCQを掲載 上述のとおり、2023年版ではリツキシマブの使用に関する記載が大幅に追加されたが、さらに巻末には、リツキシマブの急性期、難治例・早期再発例、寛解期における使用に関するCQも掲載されている。これらのCQに対するAnswerおよび解説を作成するに当たり、エビデンス収集のため、2022年1月7日時点で過去10年間にPubMedに登録されたTTPに関するリツキシマブの英語論文の精査が行われた。各CQに対する解説では、国際血栓止血学会TTPガイドライン2020などのガイドラインや臨床試験、システマティックレビュー、症例報告の有効性に関する報告を詳細に紹介したうえで、各CQに対し以下のAnswerを記載している。・後天性TTPの急性期に、リツキシマブ投与を考慮しても良い(推奨度2B)(保険適用外)・後天性TTPの再発・難治例にリツキシマブ投与を推奨する(推奨度1B)・後天性TTPの寛解期にADAMTS13活性が10%未満に著減した場合、再発予防にリツキシマブの投与を検討しても良い(推奨度2B)(保険適用外)カプラシズマブが後天性TTP治療の第一選択として記載 2023年版では、カプラシズマブが2022年9月に日本でも販売承認されたことが報告された。本ガイドでは、カプラシズマブを推奨度1Aの後天性TTP急性期の治療としている。投与30日以降もADAMTS13活性が10%を超えない場合は、追加で28日間継続可能であること、ADAMTS13活性著減を確認する前に開始可能であるが、活性が10%以上でTTPが否定された場合は速やかに中止すべきであることが述べられている。その他の治療に関する改訂ポイント(抗血小板薬、FFP輸注) 急性期の治療として用いられる抗血小板薬(推奨度2B)については、血小板とvon Willebrand因子(VWF)を中心とした血小板血栓によってTTPが発症することからTTP治療に有効である可能性があるとしたが、急性期での使用により出血症状が認められたとの報告、チクロピジンやクロピドグレルの使用はTTP患者では避けられていること、アスピリンとカプラシズマブの併用は出血症状を助長する可能性があり避けるべきである等の内容が加えられた。先天性TTPの治療へのFFP輸注の使用(推奨度1B)の記載についても追加がなされた。国際血栓止血学会のTTPガイドラィンで推奨する用量(10~15mL/kg、1~3週ごと)は日本人には量が多く困難な場合があることや、長期的な臓器障害の予防に必要なFFPの量は現状では明らかではない等の内容が加えられた。TTPの診断に関する改訂ポイント ADAMTS13検査やインヒビター検査は結果が得られるまで時間がかかり、TTP治療の早期開始の妨げになっている。そこで、2023年版では、ADAMTS13活性著減の予想に用いられる、FrenchスコアとPLASMICスコアに関する記述が追加された。これら2つのスコアリングシステムについて、ADAMTS13活性著減を予測するが、血栓性微小血管症(TMA)が疑われる症例においてのみ用いられるべきことを明示した。増悪因子に関する記述を追加 2023年版では、TTP発作を誘発する因子についての項目が加えられた。増悪因子として、出生直後の動脈管の開存、ウイルス/細菌感染症、妊娠およびアルコール多飲などが知られており、妊娠期にはFFP定期輸注を行うことが、妊娠管理に不可欠と考えられるとした。

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