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電子お薬手帳はここ最近あまり話題になることはなく、どの電子お薬手帳の事業者と契約するかを悩んだのはもう何年前だろう…という遠い記憶になりつつあります。これは電子お薬手帳が一定の患者さんに継続的に利用され、実際の運用が落ち着いている証拠だろうと感じていましたが、その電子お薬手帳について動きがありました。日本薬剤師会は2023年7月26日の都道府県会長協議会で、電子お薬手帳のスマートフォンアプリ「eお薬手帳3.0」について、公開開始した23年7月3日から19日で約180薬局から申し込みがあったと発表した。また同アプリには、23年内を目標にオンライン服薬指導機能を実装する予定だ。(2023年7月31日付 日経DIオンライン)日本薬剤師会が提供する電子お薬手帳が変更になりました。以前より日本薬剤師会は、NTTドコモ(以下、ドコモ)と電子お薬手帳「おくすり手帳Link」を共同で開発・提供していました。しかし、2022年6月頃にそのおくすり手帳Linkを終了するとの連絡がドコモの決定事項として報告され、一方的にドコモから開発とサービス提供の中止が告げられたことが報じられています。これには日本薬剤師会側はかなりご立腹だったようですが、この一方的な決定は覆ることはなく、新しくファルモの電子お薬手帳「eお薬手帳3.0」が選ばれたことが発表され、7月3日に公開開始されました。約2週間で180件が登録しているというのは、よい数字ではないでしょうか。ドコモは2021年4月にオンライン診療システムを手掛けるメドレーとの資本業務提携を発表しており、同年12月からオンライン診療・服薬指導アプリ「CLINICS」の共同運営を開始しています。ドコモは、CLINICSの運営に加わったことで「経営資源を一本化した」と報じられています。日本薬剤師会は「基本合意がなされていると思っていた」ということですが、すっかり振られてしまった形になっただけでなく、踏み台にされてしまったようにも感じます。ドコモによる現行の電子お薬手帳は、2024年6月末にすべてのサービスやサポートが終了する予定です。約1年間に薬局や個人でデータ移行してくださいね、という案内が出ていますが、マイナンバーカードを読み込ませるなどの対応が結構大変なので、できたら自動でデータ移行してほしいなと思います。このドコモの電子お薬手帳の契約薬局数は、3,000軒とも5,500軒とも報じられています。現在、全国の薬局数が約6万軒ですから、1割にも満たないのかと意外な気もします。たくさんの業務がある中で、薬剤服用歴管理指導料の加算の要件として問題のない電子お薬手帳を選ぶ際に、日本薬剤師会のお墨付きは強いと感じましたが、実はそうでもないのかもしれません。それではドコモも手を引くかも…という気もします。電子お薬手帳は、電子処方箋やオンライン服薬指導との連携などが期待されていますが、マイナポータルの習熟度やドコモのような大きな企業の動きによってはまた状況が変わるかもしれません。加算の算定要件、というだけで事業者選定を急いだ記憶がありますが、使い勝手や今後の発展について本当は落ち着いて吟味したいところです。現在の情報の中で事業者変更のメリットがあるとすれば、ファルモが提供する「eお薬手帳3.0」のサービス利用料は初期費用1万円、年額費用1万5,000円(ともに税別)で、既存システムの半額程度に設定されているという点でしょうか。そして、もともと電子お薬手帳のサービスを提供している会社なので、おそらくドコモのような急な撤退はないでしょう。ファルモの「eお薬手帳3.0」に期待したいと思います。