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コレステロール摂取は糖尿病発症と関連するか

 コレステロールや卵の摂取量と2型糖尿病リスクとの関連について、欧米諸国での報告は限定的で一貫性がない。国立国際医療研究センターの黒谷 佳代氏らは、日本人の多目的コホート研究(JPHC study)において、食事性コレステロールと卵摂取と2型糖尿病のリスクの関連をプロスペクティブに検討した。その結果、コレステロールや卵の摂取量と2型糖尿病のリスク増加との関連はみられなかった。ただし閉経後の女性では、コレステロールの摂取量が多いと2型糖尿病のリスクが低かった。The British journal of nutrition誌オンライン版2014年9月18日号に掲載。 対象は、JPHC studyの2回目の調査に参加し、2型糖尿病やその他重篤な疾患の履歴がなかった45~75歳の男性2万7,248人と女性3万6,218人。食事性コレステロールと卵の摂取量は147項目の食物摂取頻度調査票(FFQ)を用いて推定した。5年間に診断されたことを自主報告した2型糖尿病のオッズ比を多重ロジスティック回帰で推定した。 主な結果は以下のとおり。・全部で1,165例が新たに2型糖尿病と診断されたことを報告した。・男性では食事性コレステロールの摂取量は2型糖尿病リスクと関連していなかったが、女性では、統計的に有意ではないが、摂取量の最低四分位に比べて最高四分位で2型糖尿病リスクのオッズが23%低かった(傾向のp=0.08)。・このリスク減少は閉経後の女性でやや多く、コレステロール摂取量の最低四分位と比べた最高四分位の多変量補正後のオッズ比は0.68(95%CI:0.49~0.94、傾向のp=0.04)であった。・卵の摂取量と2型糖尿病リスクとの関連は、男女とも認められなかった。

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事例21 静脈採血料の査定(悪性腫瘍特異物質治療管理料と同日)【斬らレセプト】

解説200床未満の病院の事例である。静脈採血料がB事由(医学的に過剰・重複と認められるものをさす)を理由に査定となった。診療報酬点数表を確認してみる。事例では、血液検査と採血料のみを考えるのではなくB001の3の「悪性腫瘍特異物質治療管理料」を合わせて考えることが、ポイントである。同管理料の算定要件には、悪性腫瘍であるとすでに確定診断がされた患者に対して腫瘍マーカー検査を行い、当該検査の結果に基づいて計画的な治療管理を行った場合に算定するとある。また、当該腫瘍マーカーの検査に要する費用は、同管理料の所定点数に含まれるとある。この所定点数に含まれる費用には、「当該腫瘍マーカーに対する検査判断料および検査用血液採取のための静脈採血料が含まれる」と集団指導などで説明されている。したがって、1日につき1回の算定とされている静脈採血料は、同管理料で算定済みと解釈され、同一日に行った他の検査に対する静脈採血料は算定できないことを理由に、査定されたものである。

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急性冠症候群の新薬、第III相試験の結果/JAMA

 急性冠症候群に対する新たなLp-PLA2阻害薬ダラプラジブ(darapladib)について、プラセボと比較した長期有効性の結果が報告された。米国・ブリガム&ウィメンズ病院のMichelle L. O’Donoghue氏らによる第III相多施設共同の無作為化二重盲検プラセボ対照試験SOLID-TIMI 52の結果で、3年時の主要冠動脈イベントの発生リスクは、プラセボと有意な差は示されなかった。Lp-PLA2は、炎症を介したアテローム発生に関与する酵素で、ダラプラジブはLp-PLA2を選択的に阻害する経口薬として開発が進められてきた。JAMA誌2014年9月10日号掲載の報告より。1万3,026例を対象にダラプラジブ群vs. プラセボ群 試験は、2009年12月7日~2011年10月28日に、36ヵ国868施設で、ACS(ST非上昇型またはST上昇型の心筋梗塞)を発症した入院30日以内の患者1万3,026例を対象に行われた。 被験者は、ガイドライン推奨治療に追加して、1日1回のダラプラジブ(160mg)またはプラセボを投与する群に無作為に割り付けられた。追跡期間は2009年12月7日~2013年12月6日で、中央値2.5年だった。 主要エンドポイント(主要冠動脈イベント)は、冠動脈性心疾患(CHD)死、心筋梗塞または心筋虚血による緊急冠血行再建術の複合とし、Kaplan-Meier法にて3年時の累積発生率を評価した。3年時の主要冠動脈イベントの発生、ハザード比1.00 結果、3年時の主要冠動脈イベント発生は、ダラプラジブ群903例(16.3%)、プラセボ群910例(15.6%)だった(ハザード比[HR]:1.00、95%信頼区間[CI]:0.91~1.09、p=0.93)。 心血管死亡・心筋梗塞または脳卒中の複合発生率は、それぞれ824例(15.0%)、838例(15.0%)だった(同:0.99、0.90~1.09、p=0.78)。 主要エンドポイントの各エンドポイント、その他副次エンドポイント、また全死因死亡(ダラプラジブ群371例・7.3%vs. プラセボ群395例・7.1%、HR:0.94、95%CI:0.82~1.08、p=0.40)についても、両群間の違いはみられなかった。 なお、ダラプラジブ群のほうがプラセボ群よりも、臭いに対する懸念(11.5%対2.5%)、下痢(10.6%対5.6%)の報告例が多い傾向がみられた。

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RCTの35%が再解析で異なる結論に/JAMA

 米国・スタンフォード大学のShanil Ebrahim氏らは、「無作為化臨床試験(RCT)のデータを再解析することは、科学界が既報の試験結果の妥当性を評価するのに役立つ可能性がある」として、RCTデータの再解析報告の現状について調べた。オリジナル試験との方法論などの違いを特徴づける検討を行った結果、現在までに発表されたRCTの再解析報告はわずかで、完全に独立した著者により実行されたものはほとんどなかった。また再解析報告のうち35%が、オリジナル試験論文と比べて、治療すべき患者のタイプや数について異なる結論がみられたという。JAMA誌2014年9月10日号掲載の報告より。オリジナル試験論文との違いを調査 研究グループは、RCTデータの再解析報告を特定し、オリジナル試験との方法論およびその他の違いを明らかにすること、再解析を行った著者の独立性を評価し、オリジナル論文と治療すべき患者のタイプや数について結論が変わっていないかどうかを調べた。 2014年3月9日時点でMEDLINEにて論文を検索。論文のスクリーニングとデータの抽出は4名の研究者が独立して行った。 主要評価項目は、治療効果の方向性および大きさ、統計的有意性、治療すべき患者のタイプまたは数についての結論についての変化だった。35%で、オリジナル試験論文と結論が変化 検索により、発表論文36件、再解析報告適格37件を特定した。そのうち、まったく異なる研究者により行われた再解析は5件。内訳は、公的データに基づくものが2件、求めに応じて提供されたデータに基づくものが2件、残り1件はデータの入手元が不明であった。 再解析の大半は、統計または分析アプローチ法が異なり(18件)、アウトカムの定義または測定が異なっていた(12件)。 方向性が変化していた再解析は4件、治療効果の大きさが変化していたのは2件であった。一方で、4件が所見の統計的有意性の変化に至っていた。 オリジナル論文と結論が異なっていたのは13件(35%)であった。3件(8%)は、治療すべき患者が変わっており、治療すべき患者が少なくなっていたのは1件(3%)、治療すべき患者が多くなっていたのは9件(24%)であった。

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国民の3分の1はロコモ予備軍-日整会プレス説明会

 9月11日、都内において日本整形外科学会主催によるプレス説明会が10月8日の「骨と関節の日」を前に開催された。説明会では、わが国における骨・運動器関連疾患の現状や今後の対策のほか、「ロコモティブシンドロームの要因としての上・下肢の痛みとしびれ」と題して、日常の愁訴から考えるロコモティブシンドロームについてのレクチャーが行われた。■日本人の約3分の1が運動器に障害あり 最初に、同学会の理事長である岩本 幸英氏(九州大学大学院医学研究院整形外科 教授)が、理事長挨拶として骨・運動器疾患の概要を述べ、変形性腰椎症や骨粗鬆症などの患者数が4,700万人を超え、トタールでみたとき、運動器の障害が脳血管疾患や認知症を抑え寝たきり原因の1位になっていることを説明した。そして、学会では、平成19年より「運動器の障害により、移動機能の低下を来した状態」を「ロコモティブシンドローム」(以下「ロコモ」)と呼び、広く啓発してきたことを説明。さらにロコモの認識・理解の普及を行い運動機能が衰える高齢者には早めの診療を促すことで、国民の健康寿命を延長していきたいと抱負を述べた。■約6割が治療に消極的 続いて「ロコモティブシンドロームの要因としての上・下肢の痛みとしびれ」と題して、持田 譲治氏(東海大学医学部外科系整形外科学 教授)が、レクチャーを行った。 ロコモは、健康寿命を脅かすものとして、厚生労働省が提唱している「健康日本21」でも認知度の向上と足腰に痛みを持つ高齢者割合の減少がうたわれている。背骨に異常があると手足の痛みやしびれに結び付き、これが患者のQOLを低下させ、さらにロコモの要因となる。 しかし、日本整形外科学会が実施した運動器の慢性痛有症者へのアンケート調査によると「主な治療機関」は民間療法(21%)という回答が一番多く、「特になし」(57%)という回答も過半数を占め、患者自身が治療に消極的である面をうかがわせた。 その他、持田氏が監修した「からだに痛み・しびれがある成人男女」(n=1,030)のWEB調査によれば、44%の回答者が毎日症状を感じており、約57%がその期間が1年以上続いていると回答。上肢に痛み・しびれの部位があると回答した人は30.9%。そして、上肢に痛み・しびれのある318人のうち医療機関に受診している人は、わずか11.9%しかおらず、鍼灸院、接骨院や整体への通院が16.4%、市販薬の服用などが24.8%、特段対処しないが18.6%など多くの人が自己判断による対処で済ませている実態が明らかとなった。仕事や家事への影響では65.7%の人が、仕事や家事に集中力の低下や作業内容、勤務時間の変更などの影響を受けていると回答した。 ■しびれの治療は時間を要する ロコモへの病状進行は、手足の痛み・しびれの後、次第に筋力低下や筋萎縮という運動系障害が現れることが多く、その際、身体を支える機能や身体を曲げる機能の障害を合併し、運動系障害で移動機能の低下が起こり、ロコモの要因となることを説明。診療では、患者さんの自覚症状(痛み、しびれ、筋力減少、変形などの愁訴)の正確な把握が重要であると述べた。 また、一般の方にも理解してもらいたいこととして、日常生活で立位や座位を保つためにも、上肢のロコモ対策が重要であり、痛み・しびれ、筋力低下の中で「しびれ」が一番回復には時間がかかること、急性期と慢性期では、内服薬の違いなど治療法が異なること、痛み・しびれの治療におけるゴールは8割程度であることなど理解のポイントを説明した。 最後に10月8日の「骨と関節の日」には、運動器の健康が体の健康維持にいかに大切かを啓発するさまざまな催しが全国で開催されるので、この機会にロコモへの理解を深めてほしいと語りレクチャーをまとめた。

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心房細動合併の心不全、β遮断薬で予後改善せず/Lancet

 心房細動合併の心不全患者に対し、β遮断薬は死亡率の低下に結び付かないことが、英国・バーミンガム大学のDipak Kotecha氏らが行ったメタ解析の結果、明らかにされた。著者は、「今回の所見は、β遮断薬をその他の心拍コントロール治療に優先して用いるべきではないことを示すものであり、同患者の予後を改善する標準療法として推奨されないことが示された」と述べている。Lancet誌オンライン版2014年9月2日号掲載の報告より。β遮断薬に関する10試験、心不全患者1万9,000例弱についてメタ解析 研究グループは、心不全の患者を対象に行った、10件のβ遮断薬に関する無作為化プラセボ対照試験(被験者総数1万8,254例)の患者個別データを基にメタ解析を行った。 心不全患者で、心房細動を合併する場合と洞調律の場合について、β遮断薬の効果を比較した。主要評価項目は、全死亡率。平均追跡期間は1.5年(SD 1.1年)だった。洞調律心不全患者の死亡率は27%減、心房細動合併患者では低下せず 被験者のうち洞調律の心不全患者は76%(1万3,946例)で、心房細動を合併する心不全患者は17%(3,066例)だった。 補正前死亡率は、洞調律心不全患者が16%(2,237例)、心房細動合併心不全患者は21%(633例)だった。 β遮断薬による治療は、洞調律心不全患者の全死亡率を約27%低下した(ハザード比[HR]:0.73、95%信頼区間[CI]:0.67~0.80、p<0.001)。一方で、心房細動合併心不全患者については、死亡率の低下は認められなかった(同:0.97、0.83~1.14、p=0.73、ベースライン時の心房細動の有無との相互作用に関するp=0.002)。 心房細動を合併する患者についてサブグループ分析を行ったところ、年齢、性別、左室駆出率、NYHA心機能分類、心拍数、ベースライン時の薬物治療にかかわらず、同様の結果が得られた。

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一般市民に皮膚科医はどう思われている?

 米国市民の約半数は、皮膚科医は皮膚がんの治療に大半の時間を費やしており、プライマリ・ケア医よりも職業的重要性は低いと認識していることなどが、米国・カリフォルニア大学デービス校のElizabeth A. Brezinski氏らによる調査の結果、明らかにされた。収入についてはプライマリ・ケア医よりも多いが心臓外科医や形成外科医よりは少ないと思っていることなども示された。著者は、「皮膚科医の専門性についてよりきちんと知らしめる必要がある」とまとめている。Journal of the American Academy of Dermatology誌オンライン版2014年8月27日号の掲載報告。 皮膚科医とその他専門医に対する一般市民の認識を比較することを目的とした調査は、全米市民を対象に、RDD(random digit dialing)方式での電話調査で行われた。  主な結果は以下のとおり。・10個の市外局番から無作為に選択した2,353件に電話をかけ、計800人(34%)の成人から回答を得られた。・全体的に回答者の46%が、皮膚科医は皮膚がんの治療に大半の時間を費やしていると認識していた。・皮膚科医が審美的な処置を行うことに大半の時間を費やしていると認識していた回答者は27%であった。・プライマリ・ケア医のほうが皮膚科医と比較して、重大な職業であると回答したのは63%(より難しい仕事であるとの回答は54%)、また92%がより長時間働いていると認識していることが示された。・心臓専門医との比較においても、同様の結果がみられた。・また市民は、皮膚科医はプライマリ・ケア医よりも収入が多いが、心臓専門医や形成外科医よりは少ないと認識していた。・なお本調査結果について著者は、回答者と非回答者の間にpotential differencesが存在する可能性を指摘している。

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ひどい腰痛、看護師と郵便配達員で顕著

 看護師において腰痛症が多いことは知られているが、その他の部位の筋骨格系障害(MSD)について追跡研究はほとんど行われていない。ニュージーランド・オタゴ大学の Helen Harcombe氏らは、看護師と郵便配達員および事務職員についてMSD(腰、首、肩、肘、手首/手、膝)の累積発生率、持続率、再発率を調べ、仕事や身体機能へのMSDの影響を調査した。結果、看護師において腰痛症の影響はかなり大きい点などが明らかになったこと、1次、2次予防にはその他の部位も含めたMSDを考慮していくことが重要であることを報告した。Occupational Medicine誌オンライン版8月22日号の掲載。 調査は、ベースライン時と1年後に郵送調査にて行われた。 集められた情報は、直前の1ヵ月と12ヵ月時点のMSD、および仕事場への出勤状況、仕事の遂行能力、および身体的機能の能力などであった。 主な内容は以下のとおり。・看護師において、腰部は、仕事の障害および身体機能を障害する痛みの累積発生率、持続/再発率が最も高い部位であった。・仕事を障害する腰痛症は、事務職員と比べて看護師および郵便配達員でより優勢を占めていた(p<0.001)。・看護師は、仕事に障害を来している肩の痛み(10%)、膝の障害(19%)、手首/手の痛み(16%)の有病率が高かった。・いずれの職業でも、肘を除く解剖学的各部位で、MSDの持続/再発率が高かった。

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第28回 予防的治療の落とし穴 患者さんに熟慮してもらった!?

■今回のテーマのポイント1.脳神経外科疾患で一番訴訟が多い疾患は脳動脈瘤である2.予防的治療においては、説明義務違反による損害が身体的損害にまで及ぶおそれがあることから、十分なインフォームド・コンセントが求められる3.予防的治療に関しては「患者の納得」がより重視され、それを測る尺度が熟慮期間である■事件のサマリ原告患者Xの遺族被告Y大学病院争点説明義務違反結果原告勝訴、880万円の損害賠償事件の概要61歳男性(X)。大学教授であったXは、平成7年11月10日、講義中に意識障害を起こし、A病院において一過性脳虚血発作の可能性を指摘されました。A病院にて撮影した頭部造影CT上、左内頚動脈分岐部付近に動脈瘤を疑う病変を認めたため、同年12月7日、Y大学病院脳神経外科を紹介受診することとなりました。平成8年1月19日に行われた脳血管造影の結果、左内頚動脈分岐部に上向きに最大径約7.9㎜の動脈瘤を認めたことから、同月26日、Y大学病院脳神経外科のW医師は、Xおよびその妻に対し、脳血管造影の所見を説明した上で、(1) 脳動脈瘤は、放置しておいても6割は破裂しないので、治療をしなくても生活を続けることはできるが、4割は今後20年の間に破裂するおそれがあること、(2) 治療するとすれば、開頭手術とコイル塞栓術の2通りの方法があること、(3) 開頭手術では95%が完治するが、5%は後遺症の残る可能性があること、(4) コイル塞栓術では、後になってコイルが患部から出てきて脳梗塞を起こす可能性があることを説明しました。また、W医師は、同日、Xらに、治療を受けずに保存的に経過を見ること、開頭手術による治療を受けること、コイル塞栓術による治療を受けることのいずれを選ぶかは、患者本人次第であり、治療を受けるとしても今すぐでなくて何年か後でもよい旨を告げました。それから約1ヵ月後となる2月23日、Xは、W医師に開頭手術を希望する旨を伝えたことから、同月29日に開頭手術を行う予定となりました。ところが、2月27日の術前カンファランスにおいて脳血管造影の所見を検討した結果、Y大学病院脳神経外科のZ教授は、内頚動脈そのものが立ち上がっており、動脈瘤体部が脳の中に埋没するように存在しているため、動脈瘤体部の背部は確認できない結果、貫通動脈や前脈絡叢動脈をクリップにより閉塞してしまう可能性があることから、開頭手術はかなり困難であり、まずコイル塞栓術を試したらよいのではないか、コイル塞栓術がうまくいかない時は再度本人および家族と話をして、術後の神経学的機能障害について十分納得を得られるのであれば開頭手術を行ってもよいかもしれないと提案しました。その結果、術前カンファレンスの結論として、Xの動脈瘤については、まずコイル塞栓術を試し、うまくいかない時は開頭手術を実施するという方針が決まりました。術前カンファレンス終了後、W医師と放射線科医のB医師は、Xおよびその妻に対し、Xの動脈瘤が開頭手術をするのが困難な場所に位置しており開頭手術は危険なので、コイル塞栓術を試してみようとの話がカンファレンスであったことを告げ、開頭しないで済むという大きな利点があるとして、コイル塞栓術を勧めました。B医師は、これまでコイル塞栓術を十数例実施しているが、すべて成功していると説明しました。Xが、「以前、後になってコイルが出てきて脳梗塞を起こすおそれがあると話しておられたが、いかがなのでしょうか」と質問したところ、B医師は、うまくいかない時は無理をせず、直ちにコイルを回収してまた新たに方法を考える旨を答えました。なお、同日のW医師らの説明は、30~40分程度でした。W医師らは、この時までに、Xらに、コイル塞栓術には術中を含め脳梗塞などの合併症の危険があり、合併症により死に至る頻度が2~3%とされていることについて説明も行った上で、同日夕方にはXらから、翌日28日にコイル塞栓術を実施することの承諾を得ました。ところが、28日、コイル塞栓術を行ったところ、動脈瘤内に挿入したコイルの一部が、瘤外に逸脱してしまい、開頭手術を行ったものの、Xは動脈瘤内から逸脱したコイルによって生じた左中大脳動脈の血流障害に起因する脳梗塞により、意識が回復することなく3月13日に死亡しました。これに対し、Xの遺族は、手術手技上のミスおよびXに対し説明義務違反があったなどとして、Y大学病院に対し、約9,570万円の損害賠償請求を行いました。事件の判決医師は、患者の疾患の治療のために手術を実施するに当たっては、診療契約に基づき、特別の事情のない限り、患者に対し、当該疾患の診断(病名と病状)、実施予定の手術の内容、手術に付随する危険性、他に選択可能な治療方法があれば、その内容と利害得失、予後などについて説明すべき義務があり、また、医療水準として確立した療法(術式)が複数存在する場合には、患者がそのいずれを選択するかにつき熟慮の上判断することができるような仕方で、それぞれの療法(術式)の違いや利害得失を分かりやすく説明することが求められると解される(最判平成13年11月27日民集55巻6号1154頁)。そして、医師が患者に予防的な療法(術式)を実施するに当たって、医療水準として確立した療法(術式)が複数存在する場合には、その中のある療法(術式)を受けるという選択肢と共に、いずれの療法(術式)も受けずに保存的に経過を見るという選択肢も存在し、そのいずれを選択するかは、患者自身の生き方や生活の質にもかかわるものでもあるし、また、上記選択をするための時間的な余裕もあることから、患者がいずれの選択肢を選択するかにつき熟慮の上判断することができるように、医師は各療法(術式)の違いや経過観察も含めた各選択肢の利害得失について分かりやすく説明することが求められるものというべきである。記録によれば、本件病院の担当医師らは、開頭手術では、治療中に神経等を損傷する可能性があるが、治療中に動脈瘤が破裂した場合にはコイル塞栓術の場合よりも対処がしやすいのに対して、コイル塞栓術では、身体に加わる侵襲が少なく、開頭手術のように治療中に神経等を損傷する可能性も少ないが、動脈の塞栓が生じて脳梗塞を発生させる場合があるほか、動脈瘤が破裂した場合には救命が困難であるという問題もあり、このような場合にはいずれにせよ開頭手術が必要になるという知見を有していたことがうかがわれ、また、そのような知見は、開頭手術やコイル塞栓術を実施していた本件病院の担当医師らが当然に有すべき知見であったというべきであるから、同医師らは、Xに対して、少なくとも上記各知見について分かりやすく説明する義務があったというべきである。また、前記事実関係によれば、Xが平成8年2月23日に開頭手術を選択した後の同月27日の手術前のカンファレンスにおいて、内頚動脈そのものが立ち上がっており、動脈瘤体部が脳の中に埋没するように存在しているため、恐らく動脈瘤体部の背部は確認できないので、貫通動脈や前脈絡叢動脈をクリップにより閉塞してしまう可能性があり、開頭手術はかなり困難であることが新たに判明したというのであるから、本件病院の担当医師らは、Xがこの点をも踏まえて開頭手術の危険性とコイル塞栓術の危険性を比較検討できるように、Xに対して、上記のとおりカンファレンスで判明した開頭手術に伴う問題点について具体的に説明する義務があったというべきである。以上からすれば、本件病院の担当医師らは、Xに対し、上記の説明をした上で、開頭手術とコイル塞栓術のいずれを選択するのか、いずれの手術も受けずに保存的に経過を見ることとするのかを熟慮する機会を改めて与える必要があったというべきである。 (*判決文中、下線は筆者による加筆)(最判平成18年10月27日判タ1225号220頁)ポイント解説■脳神経外科疾患の訴訟の現状今回は、脳神経外科疾患です。脳神経外科疾患でもっとも訴訟が多い疾患は脳動脈瘤で、2番目に多い疾患がくも膜下出血、脳出血、脳腫瘍となっています(表1)。脳神経外科疾患の訴訟の特徴は何と言っても、脳動脈瘤の訴訟がとび抜けて多いことです。脳神経外科疾患は、初診時から重症度が高く、手を尽くしても(医療過誤がなかったとしても)死亡に至ったり、寝たきりとなったりする疾患が多いのですが、脳動脈瘤は、手術を行う前まではまったく健常であった患者が、手術の結果(過失の有無を問わず)、死亡や寝たきりとなってしまう場合があり、この落差が訴訟件数を増やしているものと考えられます。そして、脳動脈瘤に関する訴訟は、そのような背景からか原告勝訴率が66.7%と高くなっています(表2)。脳動脈瘤に関する訴訟の争点は、大きく分けると手技ミスと説明義務違反の2つとなります。そして、脳動脈瘤に関する訴訟の最大の特徴は、説明義務違反によって認容される損害賠償額が高額(平均約3,071万円)となることです(表3)。通常の医療訴訟では、疾病に対し治療することは不可欠ですから、説明義務違反があったとしても、適切な診療方針がとられてさえいれば、仮に説明がしっかりなされていても、結局、当該診療方針を選択することとなりますので、説明義務違反によって生じた損害は、当該診療方針を選択した結果生じた身体損害ではなく、単に精神的な損害にとどまります(図1)。したがって、通常の医療訴訟の場合、手技ミスなど他の身体損害に直結する過失を主位的請求とし、説明義務違反は予備的請求として主張される場合が多いのです* 。*ただし、最近では弁護士過剰の影響により、説明義務違反による精神的損害のみで数百万円を請求する事案が急増しています。ところが、脳動脈瘤に対するコイル塞栓術のような予防的治療の場合、治療をしないという選択にも合理性があるので、「説明をもっとしっかりしてくれていたら治療を選択しなかった」と患者側が主張しうることから通常の医療訴訟と大きく変わってきます(図2)。 すなわち、脳動脈瘤に関する訴訟においては、説明義務違反のみでも高額な請求をする訴訟が積極的に行われており、かつ、実際に認容された場合の認容額も手技ミスまではいきませんが高額が認められています(ただし、精神的損害のみの認容を除くと平均5,702万円となり手技ミスでの認容額を超えています)。■患者の納得と熟慮期間第7回で解説したように、通常、医療機関に求められる説明義務の内容は、厚生労働省が策定した「診療情報の提供等に関する指針」に示された内容であり、また、その程度は、同指針によると「患者等にとって理解を得やすいように、懇切丁寧に」とされています。本件では、もちろん、術前カンファランスの結果の伝え方が甘かったという内容、程度の問題も挙げられてはいますが、最高裁が問題としたのは、熟慮期間が短かったことと考えられます。すなわち、Xが開頭手術をすると決断するまでの熟慮期間は、約1ヵ月であったのに対し、術前カンファランスを受け、コイル塞栓術に変更するまでの熟慮期間は、わずか数時間しかありませんでした。予防的治療という時間をかけられる場合においては、「患者の納得」はより重視されることとなり、それを司法が測る尺度が熟慮期間ということになります。もちろん、「患者の納得」という精神的問題について判示しておりますので、差し戻し控訴審で認容された額は880万円と死亡損害までは認めませんでした。しかし、「患者の納得」という極めて主観的な問題にまで国家権力が介入することは本当に必要なことなのでしょうか。本件においては、医師たちにせかされたのではないかという状況も理解はできますが、成人した大人が必要な情報を提供され、自身の判断で同意・署名しておきながら、やはり拙速な判断で悔いが残ったから病院を訴えるという行動を肯定することは社会全体にとって負の影響を与えるのではないでしょうか。特に弁護士過剰となった現在、説明義務違反のみの精神的損害の訴訟が急増しており、紛争を奨励するかのような本判決の影響は萎縮医療を再び加速させる危険があります。2000年代前半の過ちを再び犯さぬよう、司法には謙抑的な姿勢を求めます。裁判例のリンク次のサイトでさらに詳しい裁判の内容がご覧いただけます。(出現順)最判平成13年11月27日民集55巻6号1154頁最判平成18年10月27日判タ1225号220頁

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事例19 網赤血球数(レチクロ)検査の査定【斬らレセプト】

解説網赤血球数が、A事由(医学的に適応と認められないもの)を理由に査定となった。A事由の多くは行った診療に対する病名が、レセプトに表示されていない、いわゆる「病名漏れ」を意味する。事例は膀胱炎にて初診来院の患者である。生化学的検査、血液形態・機能検査の網赤血球数と末梢血液一般検査が行われている。生化学的検査の項目選択は、初診時のスクリーニング的に行われたものとして、特に問題はない。網赤血球数と末梢血液一般検査を見てみる。診療報酬点数表の末梢血液一般検査の項には、赤血球数、白血球数、血色素測定(Hb)ヘマトクリット値(Ht)、血小板数の全部または一部を行った場合に算定するとある。したがって、網赤血球数と末梢血液一般検査の併算定は、網赤血球数と赤血球数の比率を見て、貧血の原因を鑑別する検査が行われたものと推測できる。しかしながら病名欄には、「貧血」があることを確定する病名がない。よって、検査を行う根拠がなく、適応と認められないとA査定されたものである。網赤血球は、「レチクロ」と称してよく行われる検査であるが、病名不足を理由に査定が多い検査でもあることにも留意が必要である。

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ブロナンセリンの薬理学的メカニズムを再考する

 ブロナンセリンはセロトニン5-HT2A受容体よりもドパミン-D2/3受容体に対し高い親和性を示し、その他のセロトニン5-HT2A/ドパミン-D2受容体アンタゴニストと薬理作用が若干異なる。名城大学の肥田 裕丈氏らは、統合失調症動物モデルを用いてブロナンセリンの視覚認知ならびに記憶障害に対する作用とその分子メカニズムを検討した。その結果、ブロナンセリンはフェンシクリジン(PCP)に誘発される視覚認知と記憶の障害を改善すること、その背景にはドパミンD3受容体とセロトニン5-HT2A受容体の両方の阻害が関わっていることを示唆した。Neuropsychopharmacology誌オンライン版2014年8月14日号の掲載報告。 本研究では、統合失調症動物モデルの認知障害に対するブロナンセリンの作用におけるドパミン-D3受容体の関与を検討した。さらに、その背景にある分子メカニズムを明らかにするため検討を行った。 主な結果は以下のとおり。・ブロナンセリンはオランザピンと同様、新奇物体認識試験(NORT)および内側前頭前皮質(mPFC)における細胞外ドパミン濃度増加などの所見によって証明されるように、PCPに誘発される視覚認知と記憶の障害を大きく改善した。・DOI(セロトニン5-HT2A受容体アゴニスト) および7-OH-DPAT(ドパミンD3受容体アゴニスト)は、ブロナンセリンの作用と拮抗した。・一方、オランザピン投与時、DOIはその作用と拮抗したが、7-OH-DPATは拮抗作用を示さなかった。・ブロナンセリンによる改善効果は、SCH23390(ドパミンD1受容体アンタゴニスト)およびH-89(プロテインキナーゼA[PKA]阻害薬)によっても拮抗された。・PCP投与マウスについてNORTを実施したところ、ブロナンセリンはmPFCにおけるPKAを介して、Thr197におけるPKAのリン酸化減少、およびSer897におけるNR1(N-メチル-d-アスパラギン酸[NMDA]受容体の必須サブユニット)のリン酸化減少を有意に是正した。・いずれの群においても、Ser896におけるPKCによるNR1リン酸化レベルに差はみられなかった。・以上より、PCP誘発性認知障害に対するブロナンセリンの改善作用は、mPFCにおいてドパミン-D3受容体とセロトニン5-HT2A受容体の両方を阻害することにより、ドパミン作動性神経伝達に続くドパミン-D1-PKA-NMDA受容体伝達経路の機能に対する間接的な刺激と関連していることが示唆された。■関連記事セロトニン症候群の発現メカニズムが判明統合失調症患者への抗精神病薬、神経メカニズムへの影響は抗グルタミン酸受容体抗体が神経疾患に重大関与かセロトニン症候群を起こしやすい薬剤は

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【寄稿】GERDとの鑑別が必要な好酸球性食道炎

概説好酸球性食道炎は、食道上皮に好酸球を中心とした炎症が持続することによって、嚥下困難や食事のつかえ感などの症状を生じ、食道の運動・知覚異常、狭窄などを合併する慢性アレルギー疾患である。原因として食物や気道抗原に対する過剰な免疫応答が想定されているが、まだ原因や病態については十分に解明されていない。欧米では1990年代以降、急激な増加傾向を示しており、最近の報告では、年間の発症率が人口10万人あたり10人に達し、有病率も人口10万人あたり50人程度となっている。一方、本邦では欧米に比して非常にまれな疾患と考えられていたが、ここ数年、成人例での報告例が増加している。本疾患は胸焼けを主訴とすることもあり、胃食道逆流症(GERD)との鑑別が重要となる。内視鏡的には縦走溝・リング・白色滲出物といった特徴的な所見を呈し、逆流性食道炎に見られる粘膜傷害(mucosal break)とは異なる。確定診断には食道上皮からの生検を行い、高倍率視野で15~20個以上の好酸球浸潤を証明することが必要である。プロトンポンプ阻害薬(PPI)治療によってもGERD症状が改善しない症例の1割弱には、好酸球性食道炎が含まれていると報告されており、治療抵抗性GERDの鑑別疾患として念頭に置く必要がある。疫学本疾患は1970年代に初めて報告され、1990年代前半までは、まれな疾患と考えられていたが、その後、欧米において急激な有病率・罹患率の増加が認められるようになった。また、当初は小児に多い疾患と考えられていたが、最近では成人例の報告が目立つようになっている。最近の米国の報告では有病率は人口10万人あたり50人を超している1)。一方、本邦では、2006年に初めて成人例において本疾患が報告された2)。当時は非常にまれな疾患と考えられていたが、ここ数年、とくに成人例での報告例が増えてきている。2011年に内視鏡約5,000例あたり1例の頻度で好酸球性食道炎が認められることが報告された3)が、最近では、さらにその頻度は増加していると考えられる。われわれの最近の検討では、食事のつかえ感や胸焼けなどの症状を主訴として内視鏡検査を施行した319例について、食道からの生検を行い、8例(2.5%)に15個以上/高倍率視野の食道好酸球浸潤が認められた4)。疫学的な特徴として、30~50代に多く、70~80%が男性であることが示されている5)。また、患者の半数以上に喘息やアトピー性皮膚炎、アレルギー性鼻炎などのアレルギー疾患の合併が見られる。PPI治療に抵抗を示すGERD症例に含まれる好酸球性食道炎の頻度に関する調査では、0.9~8.8%が好酸球性食道炎であったと報告されている6)。大規模な検討はなく、頻度にばらつきはあるが、PPI抵抗性GERDの1割弱に好酸球性食道炎が含まれていることが示されている。病態食物や空気中の抗原をアレルゲンとして食道上皮局所において過剰な免疫応答(アレルギー)が生じ、好酸球を中心とした慢性的な炎症が惹起されると想定されている。本疾患では、IgEを介する即時型アレルギー反応よりも、Tリンパ球を中心とした細胞性免疫の作用による非即時型のアレルギー反応が重要であることが示されている。最近の研究から、アレルギー機序に関与するいくつかの遺伝子の多型が発症に関連することが明らかにされつつある7)。症状本疾患は小児および成人で特徴的な症状が異なる。乳幼児期では、哺乳障害や発育の遅れが見られる。学童期から青年期においては、腹痛、嘔気、嘔吐などの非特異的な症状を伴うことが多い。成人例では嚥下障害や食事のつかえ感を生じることが多く、food impactionと呼ばれる食物塊の食道への嵌頓を生じる例も見られる。しかし、胸焼けや呑酸などGERDに典型的な症状を主訴とすることもあり、症状のみから、GERDと鑑別することは困難である。最近、人間ドックなどの無症状者の検診例において、典型的な好酸球性食道炎の内視鏡像を呈し、生検で食道好酸球浸潤を認めるケースも見られるようになっている。診断本疾患の診断は、食道に起因するさまざまな症状を有する例に上部消化管内視鏡検査を行い、食道に特徴的な内視鏡所見を確認し、生検で食道上皮への好酸球浸潤(高倍率視野で15~20個以上)を認めることによってなされる。本邦で作成された診断基準(案)を表1に示す6)。胸部CTで食道壁の肥厚を指摘されることが診断の契機となることもある。末梢血の好酸球増多を示すことは少ない。末梢血IgEは約70%の症例で増加を認めるが、併存するアレルギー疾患の関与によるものが大きいと考えられ、本疾患に特異的なものではない8)。内視鏡で特徴的に認められる所見は縦走溝、リング、白色滲出物である。このうち、縦走溝は本疾患において最も典型的な画像所見であり、逆流性食道炎の際に認められる粘膜傷害(mucosal break)と鑑別可能である(図1)。以前の報告では約30%の症例では内視鏡的な異常を示さないと報告されていたが、最近の報告では90%以上の症例で上記のいずれかの内視鏡所見を示すことが報告されている9)。生検時の注意点として、食道粘膜における好酸球の分布は不均一であり、生検1個での診断感度は50%程度とされ、ガイドラインでは2~4個の生検が必要と示されている。表1を拡大する図1を拡大する米国のガイドラインによる好酸球性食道炎の診断プロセスを図2に示す10)。生検で食道好酸球浸潤を認めた場合、まず、薬剤性や感染性など二次性の原因を除外する。好酸球性食道炎は、消化管のうちで食道のみに好酸球浸潤を来すことが特徴であり、好酸球浸潤が食道のみでなく、胃や小腸へも認められた場合は、好酸球性胃腸炎と診断される。したがって、診断には胃・十二指腸からの生検も必要となる。次のステップとして、PPIの有効性の評価が行われる。高用量PPIの2ヵ月間投与後に再度、内視鏡検査・病理検査を行い、改善の認められた症例はPPI反応性食道好酸球浸潤と診断され、好酸球性食道炎とは区別されて扱われる。したがって、好酸球性食道炎の診断には、PPIが無効であることが含まれている。一方、本邦では、好酸球性食道炎がまれな疾患であり、多くの場合、PPIが有効であることから、PPIの有効性によって診断の区別をしていない。今後、疾患のより詳細な解析を踏まえて、新たな診断基準の作成が必要である。図2を拡大する治療食事療法と薬物療法が中心となる。食事療法としては、原因となる食物アレルゲンを除去することが有効であるとされており、欧米では成分栄養食やアレルゲンとなる頻度の高い6種類(牛乳、小麦、卵、大豆、ナッツ類、魚介類)の食品を除いた6種抗原除去食(six food elimination diet: SFED)が治療に用いられている。最近の食事療法に関するシステマティックレビューによると、成分栄養食で90.8%、SFEDで72.1%の症例で有効であったことが報告されている11)。一方、血清中の抗原特異的IgEや皮膚のプリックテストやパッチテストによって同定されたアレルゲンに対する食事療法は有効でないことが示されており、SFEDが有効であった場合は、1種類ずつ再開し、時間をかけて原因となる食物を同定する必要がある。また、入院中は食事療法が奏効しても、退院後の継続性に問題があることが指摘されている。日本人を対象とした有効性に関する報告はまだなされていない。上述のように、欧米のガイドラインでは好酸球性食道炎はPPIが無効であることが診断基準に含まれている。しかしながら、最近の検討ではPPIが酸分泌抑制効果以外に、免疫調節作用を有しており、食道への好酸球浸潤の誘導を抑制する効果を持つことが報告されている。また、酸性条件下では、病態に関与するサイトカイン(IL-13)の作用が増強することが示されており、PPIが好酸球性食道炎の病態改善に寄与することが推測されている。したがって、食道好酸球浸潤症例の治療にはPPIを第一選択として使用すべきと考えられる(保険適用外)。PPIが無効の場合は、ステロイド投与を行う。投与方法として、気管支喘息の治療に用いられる局所作用ステロイドであるフルチカゾンやブデソニドを吸入ではなく、口腔内に投薬し、唾液と共に嚥下させる方法による治療が行われている(保険適用外)。この方法は、内服による全身投与に比して、副作用の面からも有効であると考えられるが、その効果は必ずしも十分でないとする報告もある。局所作用ステロイドで十分な効果が得られない場合は、プレドニゾロンなどの全身作用ステロイドの投与が行われる(保険適用外)が、投与開始量や減量方法などについて、十分なコンセンサスは得られていない。投与の際は、副作用についての十分な注意が必要である。その他、抗アレルギー薬やロイコトリエン受容体拮抗薬などの治療成績が報告されているが、効果は限定的と考えられている。予後一般に、軽快と増悪を繰り返し、完全に治癒することは少ないとされる。これまでに悪性化の報告はなく、比較的予後は良好であると考えられているが、長期経過に関する報告はまだ少ないため、自然史については不明な点も多い。GERDとの鑑別のポイントGERDと好酸球性食道炎の臨床像の特徴を表2に示す。好酸球性食道炎は中年男性に好発し、アレルギー疾患の合併を半数以上に認め、食事のつかえ感が主訴となることが最も多いが、胸焼けや呑酸を訴えることもある。好酸球性食道炎では90%以上に内視鏡的に特徴的な所見を認めることが最近の報告で示されており、本疾患を念頭に置いて食道を詳細に観察することが重要である。また、GERD症状に対してPPIが有効でない症例においては、食道からの生検を行い、好酸球浸潤の有無を評価すべきである。GERDと好酸球性食道炎はオーバーラップすることもある(図3)。PPIはどちらの病態に対しても有効に作用することが示されており、PPI治療は第一選択となる。現在の欧米のガイドラインではPPI無効例のみを好酸球性食道炎と定義しているが、好酸球性食道炎とPPI反応性食道好酸球浸潤を症状、内視鏡像、病理像から鑑別することは困難であることが報告されており、疾患概念の見直しの必要性が指摘されている。表2を拡大する図3を拡大する引用文献1)Dellon ES, et al. Clin Gastroenterol Hepatol. 2014;12:589-596.2)Furuta K, et al. J Gastroenterol. 2006;41:706-710.3)Fujishiro H, et al. J Gastroenterol. 2011;46:1142-1144.4)Shimura S, et al. Digestion. 2014(in press).5)Kinoshita Y, et al. J Gastroenterol. 2013;48:333-339.6)木下芳一ほか. 日本消化器病学会雑誌. 2013;110:953-964.7)石村典久ほか. 分子消化器病. 2013;10:157-165.8)Ishimura N, et al. J Gastroenterol Hepatol. 2013;28:1306-1313.9)Ishimura N, et al. J Gastroenterol Hepatol. 2014(in press).10)Dellon ES, et al. Am J Gastroenterol. 2013;108:679-692.11)Arias A, et al. Gastroenterology. 2014;146:1639-1648.

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EGFR-TKIで脳転移の放射線治療を温存

 非小細胞肺がん(以下、NSCLC)の脳転移については、一般的に放射線治療が行われているが、EGFR-TKIの登場により変化が起こりそうである。2014年8月28日~30日、横浜市で開催された日本癌治療学会学術集会にて、千葉県立がんセンターの井内 俊彦氏は「EGFR-TKI時代の非小細胞肺癌脳転移治療~非照射TKI単独治療の効果と安全性」と題し、自施設での臨床試験の結果を紹介した。 NSCLCの脳転移については、手術療法、放射線療法、薬物療法といった幅広い治療が行われる。なかでも、定位照射・全脳照射といった放射線療法は、EGFR変異の有無にかかわらず標準的に行われている。だが、転移性脳腫瘍に対する全脳照射の認知機能障害に対するコンセンサスは得られていない。それにもかかわらず、放射線療法が選択される理由の1つは、薬剤への期待度が低いことである。 しかし、全脳照射の後にEGFR-TKIを投与することで転移巣が縮小する症例に遭遇することがあり、臨床データの報告もある。くわえて、EGFR変異陽性例では脳転移との関連性が高い。井内氏らの施設におけるNSCLC 1,100例以上の統計では、EGFR変異陽性例の脳転移頻度は31%で野生型より有意に多く、かつ脳転移例の44%がEGFR変異陽性であった。こうした背景から、EGFR変異陽性NSCLC脳転移例に対するEGFR-TKIの効果が期待される。 井内氏らは、EGFR-TKIでコントロールすることで放射線治療の開始を遅らせ、認知機能障害の危険性を低くすることができるのでは、という仮説のもと、EGFR変異陽性NSCLC脳転移例に対するEGFR-TKI単独治療の有効性と安全性を評価した。評価項目は、EGFR-TKI奏効率、放射線治療を回避できた期間(脳転移診断から放射線治療までの期間)、頭蓋内制御期間(脳転移診断後のPFS)、脳転移診断後の生存期間とした。 対象は自施設のEGFR変異陽性非小細胞肺がん77例。初回治療でゲフィチニブを投与し、頭蓋内・外再発後はエルロチニブに変更。ゲフィチニブ投与後の脳転移例では、初回からエルロチニブを投与。以上の治療で病変が進行した際、放射線治療を行うというプロトコルとした。 結果、EGFR変異例は、Ex19delが62%、L858Rが32%、その他は少数であった。 ゲフィチニブ一次治療症例は66例、エルロチニブ一次治療は11例。ゲフィチニブ一次治療例のうち32例はエルロチニブの二次治療を行っている。 ゲフィチニブの奏効率(RR)は78%、病勢コントロール率95%、頭蓋内制御期間の中央値は11.9ヵ月ときわめて良好であった。エルロチニブの奏効率は71%、病勢コントロール率は93%、頭蓋内制御期間は5.0ヵ月であった。 放射線治療を回避できた期間は、中央値で16.7ヵ月。77例中、43%の症例で生涯にわたり放射線治療を必要としなかった。 脳転移診断時からの生存期間中央値は20.9ヵ月であった。 有害事象についてはグレード4のものは認められなかった。中枢神経系関連の有害事象も認められず、脳転移があっても安全にEGFR-TKIが投与できると考えられた。 今回の結果から、NSCLC脳転移に対するEGFR-TKIの有効性が示唆される。今後、さらなる試験で確認する必要はあるが、NSCLCの脳転移例に対するEGFR-TKIの選択に1つの可能性を提示したといえそうだ。

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アリスミアのツボ 第1回

Q1不整脈に対する治療が必要か否かの線引きは何をもって判断するのでしょうか?治療の要否は心電図所見ではないことを肝に銘じましょう。治療の要否は患者の全体像によって決まるのです。「木を見て森を見ず」不整脈の診断は心電図でなされます。だからこそ、次のような誤解が生じやすくなります…心電図が読めないから不整脈は嫌い、心電図が正常でなければすべて病気、心電図が読めれば治療の要否がわかる、などです。しかし、今の時代、治療の要否をたった一つの(しかもたった一瞬の)検査結果だけで決定できる病気があるでしょうか。私は不整脈のコンサルトを受けることはよくありますが、心電図1枚だけで治療の要否や治療法がわかることはまずありません。そう、まず必要なことは、この不整脈に対する(あるいは心電図に対する)誤解を解くことだと思います。不整脈治療を心電図だけで行おうとすると、そのほとんどが「木を見て森を見ず」になりがちです。患者のイメージでは、なにをもって治療の要否を判断するのでしょう。私が不整脈の心電図に関するコンサルトを受けた時には、「何歳?性別は?今、症状あるの?心不全はなさそう?その他に合併症はない?」と心電図以外の質問攻めをします。これらの質問に対する答えがなければ、患者のイメージがつかめないからです。不整脈の治療の要否を判断するには、心電図より患者全体のイメージが何よりも重要です。で、具体的にはどうするの?…と言われそうですが、「線引き」ができる場合とできない場合があることを知っておきましょう。不整脈に限らず、治療の要否を簡単に線引きできる疾患はそう多くはないのです。90歳の悪性腫瘍はどのように治療しますか?そんな簡単には線引きはできないかもしれませんが、患者の全体像を知っていれば医師としての判断はしやすくなるでしょう。不整脈もこれと似ています。治療の要否決定は、デジタルではなくアナログで考えましょう。言葉にすれば、「現在の血行動態がやばい場合あるいは症状で困っている場合、ほうっておくと将来何か不幸が訪れると考えた場合」、これが不整脈治療の必要な場合です。さらに詳しい話はおいおいしていきたいと思います。Q2期外収縮の最新の薬物治療について知りたいのですが…期外収縮の治療は1990年代以降大きく進歩していません。この課題、卒業してもよさそうです。そもそも治療する?私が研修医をしていた1980年代、期外収縮は治療するものと習ってきました。心電図異常=病気という考え方に基づくものです。まったく理論的根拠がなかったのかというと、そうでもなくて、陳旧性心筋梗塞患者に限れば心室期外収縮が多ければ多いほどその後の予後が悪いということが知られていました。しかし、この事実をすべての患者に当てはめてしまうのは困りものですね。実際、虚血性心疾患や心不全がない患者では、心室期外収縮の有無によって、その後の予後に違いがないことが判明しています。ほうっておいても将来何も不幸が訪れないとわかっていて、何を目的に治療するのでしょう。たぶん、心電図所見から心室期外収縮が消えて、医者も患者も気分がよいという美容形成的な意味はあるかもしれませんが…。常識的に考えてみましょう。ここに心電図がないものとして、健康なイメージを有する人の脈をとったらたまたま1拍抜けていた…これだけですぐに治療しなきゃと考える人は少ないはずです。治療したらその効果はどう判断する?現在、期外収縮は相手にしないというのが基本的な考え方です。それでも、治療せざるを得ない場合があります。そう、現在の血行動態に問題なくても、将来不幸な出来事がなくても、患者の訴えが強くて困っているのに、「何もしない」というのは医学的には正しくても、人間としてつらいですね。そんな時、私はまず「教育」という治療をしています。患者さんは、「不整脈がありますね」と言われるだけで大きな不安を感じるものです。この精神的ストレスが期外収縮を増加させてしまいそうです。だから、まず「安心」をもたらすことが一番の治療だと思っています。それでもダメな場合はあります。その時は、β遮断薬、Ca拮抗薬、いわゆるI群抗不整脈薬の何でもいいと思っています。とりあえず、効きそうな薬を…です。しかし、私が選んでも、他の先生が選んでも、きっと患者さんにとっては変わりがないでしょう。それというのも、効果判定の手段がないからです。ホルター心電図の期外収縮数ほど再現性のない検査はありません。患者も医師も気楽に考えよう期外収縮は治療しない、どうしてもしなければならない時は患者の不快感がある場合に限られるとなると、効果判定は患者の不快感しかありません。だったら、もっと治療自体は気楽に考えればよいと思います。私は、始めた治療薬で患者の不快感がなくなればすぐに中止するようにしています。逆も真なりで、つらいなら飲み続けてもよいとも言っています。治療した時もう一つの重要なことは、抗不整脈薬をだらだら漫然と服用させないことです。目的を達したかどうかで、自由にオン・オフしてよいのです。Q3心房細動で抗凝固薬が絶対必要な症例とそうでない症例の見極めはどのようにするのでしょうか?CHADS2スコアで判断しますが、自分の感性も加味しています。CHADS2スコアとCHA2DS2-VAScスコア抗凝固療法の適応判断に用いるツールとして、CHADS2スコア、CHA2DS2-VAScスコアがあまりにも有名ですね。心房細動患者の脳梗塞リスクである、心不全、高血圧、高齢、糖尿病、脳梗塞の既往をリスクとして考えるCHADS2スコア、さらに動脈硬化性疾患、65-75歳、女性をリスクとして加味するCHA2DS2-VAScスコア、両者ともに便利なスコアですが、用いる人が使いやすいものを使えばよいと思います。どちらを使おうが、全くこれらを使わないで医師の感性だけで対処するよりずっとましだからです。ちなみに国内外のガイドラインを見ると、「65歳未満で何のリスクも持たない例」は抗血栓薬自体が不要、「CHADS2スコア2点以上」は絶対必要という点で一致しています。抗凝固薬の適応判断は単純なのだろうか?では、日常臨床ではそんなに簡単に見極めができるのでしょうか。文章で書くとわかってしまった気になるのですが、リスクとされる心不全、高血圧、糖尿病の有無はどのようにして決めるのでしょう。きちんと線引きができますか?年齢はそもそも連続的なのに、65とか75とか勝手に区切っていいものなのでしょうか?あるいはCHADS2スコア6点満点は絶対的に抗凝固薬の適応なのですが、患者に会ってみればあまりにもfragileでこれでも抗凝固療法が必要なのかと頭をかしげたくなる…これも日常臨床では必発です。アナログ判断は死なず結局、Q1と同じようなところに行きついてしまうのが医療なのでしょう。というか、それがあるからこそ、医師が必要なのです。基本は守りつつ、医師の感性、患者の感性も同じように重要だ…という感覚で心房細動の脳梗塞予防をしているのが私の実情です。私の基本は、「65歳未満で何のリスクも持たない例」以外はすべて抗凝固療法の適応ですが、年齢、高血圧については患者によってかなり斟酌の度合いが異なります。糖尿病の有無判断も、糖尿病の薬物治療をしているかどうかで決めています。fragileであれば、医学判断より家族判断を優先させます。こんなことはどの教科書にも書いてなくて根拠もないのですが、逆にそれはいけないと否定する根拠もなく、だからこそ自分が患者の全体像から感じる感性でアナログ的に加味して斟酌してもいいものと思っているのです。

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事例17 往診料深夜加算(患家滞在21:40-22:10)の査定【斬らレセプト】

解説事例では、C000往診料の深夜加算が、D(告示・通知の算定要件に合致していないと認められるもの)を理由に、時間外加算へと減額査定された。初めての往診であったとのことで、診療報酬点数表を参考に往診料を算定していた。初・再診料には明確に記載されている時間外等加算の算定基準があったが、往診料の項から同様の基準を読み取ることができずに、往診終了時間が深夜帯(午後10時~翌朝6時)にかかっている場合には、深夜の区分が適用されるものと解釈して算定していた。往診料の夜間・深夜加算については、初診料や再診料の時間外等加算と同じく「診療が開始された時間を基準として算定する」こととされている。しかし、この事例のように、往診終了時間が深夜帯にかかっている場合であっても、深夜帯に診療が開始されていない場合には、深夜加算が算定できない。この事例では診療時間加算算定時を除いて記入義務のない往診時間を補記していたために査定となった。これを機会に正しい算定を行うことができるようになった。このまま誤った算定であることに気付かずにいた場合には、集団指導などで指摘を受けて診療報酬の自主返還対象になるところであった。

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事例18 段階を踏まないCT撮影の査定【斬らレセプト】

解説事例では、CT撮影がC査定(医学的理由による不適当:適用外)となった。CT撮影は診断の行いやすさから多用されるが、単純X線診断などの他の検査などを行った後に必要があれば実施するべきと、段階を踏んでから行う検査の一つに分類されている。また、その必要性、結果および結果の評価について、診療録へ記載することとされている。したがって、CT撮影を必要とした理由がレセプトから読み取れない場合は、査定や返戻の対象となる。事例では、初診料とCT撮影のみの算定であり、病名からも検査の必要性が読み取れないことから査定となったものであろう。診療録を確認すると、「右肋間痛の診断のための触診にて肋間に腫瘤様のものを触れたためにCT撮影を行った」と記載されていた。結果は、「異常なし」と書かれており、薬剤の処方もなかった。レセプト上に「触診で腫瘤を認めるためCTを実施」など、他の診療からCT撮影の適用があると判断して実施していることが、審査側に伝わるよう補記が必要であったのである。

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アトピー患児における化学物質曝露と健康被害の関連

 アトピー性皮膚炎(AD)患児へのフタル酸ジ-2-エチルヘキシル(DEHP)の影響は、曝露レベルや年齢によって異なる可能性があることが明らかにされた。韓国・嘉泉大学校キル病院のW.J. Choi氏らが3~6歳児を対象としたケースコントロール試験の結果、報告した。結果を踏まえて著者は、「関連性について、さらなる長期的調査を適切な調査デザインの下で行うことを促進する必要がある」とまとめている。British Journal of Dermatology誌オンライン版2014年8月4日号の掲載報告。 DEHPについては、ヒトへの健康被害が懸念されており、研究グループは、韓国のAD患児におけるDEHP曝露との関連を調べた。2012年5~10月に、ソウル市の幼稚園および保育所から集めた3~6歳児を対象に、適合ケースコントロール試験を行った。 皮膚科医がADの臨床診断を行い、症例群224例と年齢・性別に適合した224例の対照群を組み込み、尿サンプルを集めて、DEHPの2つのフタル酸塩代謝物(MEHHP、MEOHP)値を測定し評価した。 主な結果は以下のとおり。・DEHPの影響は、年齢によって異なることが認められた。ADリスク増大との関連は3歳時で認められた(オッズ比:2.51、95%信頼区間[CI]:1.02~6.20)。・その他の年齢では、関連性は反転してみられたが統計的有意差はなかった。・ADへのDEHPの影響は、身体負荷レベルによって異なることがみられた。・ADに対する予測リスクは、多変量ロジスティック回帰分析の結果、DEHP値とADリスクのU曲線の関連であることが示された。

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血糖降下強化療法の評価―ACCORD試験続報/Lancet

 カナダ・マックマスター大学のHertzel C Gerstein氏らは、ACCORD試験データからの分析の結果、2型糖尿病やその他リスク因子を有する中高年において、血糖値上昇は、虚血性心疾患の修正可能なリスク因子であることが明らかにされたことを報告した。血糖降下強化療法vs. 標準療法を検討したACCORD試験は、死亡増により早期中止となったが、介入期間中の血糖降下療法の全ベネフィットは死亡リスクを上回ることが観察されていた。今回の検討は、試験中止後の追跡期間を含めた評価で、結果、同様の所見が得られたという。著者は、「血糖コントロール不良と虚血性心疾患の関連についてさらなる研究を行う必要性が強力に示された」とまとめている。Lancet誌オンライン版2014年8月1日号掲載の報告より。中断後を含めた4.8年のACCORD試験結果を分析 検討は、ACCORD試験に参加した40~79歳の1万251例(米国とカナダ77施設から登録)のデータを分析して行われた。被験者は、2型糖尿病で(平均罹病期間10年)、平均HbA1c値は8.3%、虚血性心疾患についてリスク因子を有しており、目標HbA1c値6.0%未満の血糖降下強化療法群(5,128例)、または同値7.0~7.9%の標準療法群(5,123例)に無作為化を受けていた。 試験は、全死因および心血管死亡の報告が増大したため早期中断となり、2008年2月5日に被験者は全員標準療法に切り替えられた。研究グループは、試験中止までの介入期間(平均3.7年)とその後のフォローアップ期間(血圧値と脂質値を追跡、平均1.2年)を加えた全期間(平均4.8年)における両群の致死的・非致死的心筋梗塞、冠動脈再建術、不安定狭心症、新たな狭心症の発生を評価した。心筋梗塞の発生頻度は、介入期間、全期間ともに有意に低下 両群のベースライン特性(平均年齢62歳、女性38%など)、およびフォローアップ期間中の血圧値、脂質値、クレアチニン値、心血管系薬の服用状況に有意な違いはなかった。 分析の結果、心筋梗塞の発生頻度は標準的治療群よりも強化療法群のほうが、介入期間中(ハザード比[HR]:0.80、95%CI:0.67~0.96、p=0.015)、全期間(同:0.84、0.72~0.97、p=0.02)ともに低かった。 同様の所見は、心筋梗塞・冠動脈再建術・不安定狭心症の複合(介入期間HR:0.89、95%CI:0.79~0.99、p=0.031/全期間HR:0.87、95%CI:0.79~0.96、p=0.006)や、追跡期間中における冠動脈再建術単独(HR:0.84、95%CI:0.75~0.94、p=0.003)および不安定狭心症単独(同:0.81、0.67~0.97、p=0.023)でみられた。 すべてのリスクは、HbA1c最小値の達成を時間依存的な共変量として含んだことにより、有意ではなくなっていた。

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