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1分でわかる家庭医療のパール ~翻訳プロジェクトより 第23回

第23回:消化性潰瘍とH. pylori感染症の診断とH. pylori除菌治療について監修:吉本 尚(よしもと ひさし)氏 筑波大学附属病院 総合診療科 消化器病領域で遭遇する頻度が多い疾患の1つに消化性潰瘍が挙げられますが、その原因のほとんどが、ヘリコバクター・ピロリ菌感染とNSAIDsの使用によるものと言われています。ヘリコバクター・ピロリ菌には日本人の約50%弱が感染していると言われ、がんの発生にも関与しているため、どのような人にどのような検査・治療を行うべきかを理解しておくことが重要です。 除菌治療に関連して、カリウムイオン競合型アシッドブロッカー(P-CAB)などの新しい治療薬も販売されていますが、日本での除菌適応は「H. pylori 陽性の胃潰瘍、十二指腸潰瘍、胃MALTリンパ腫、特発性血小板減少性紫斑病、早期胃がんに対する内視鏡的治療後胃、ヘリコバクター・ピロリ感染胃炎」で、胃炎の場合には上部消化管内視鏡での確認が必須となっていることに注意が必要です。いま一度、既存の診断と除菌治療戦略について知識の整理をしていただければ幸いです。 タイトル:消化性潰瘍とH. pylori感染症の診断とH. pylori除菌治療について以下、 American Family Physician 2015年2月15日号1)より一部改変H. pyloriはグラム陰性菌でおよそ全世界の50%以上の人の胃粘膜に潜んでいると言われ、年代によって感染率は異なる。十二指腸潰瘍の患者の95%に、胃潰瘍の患者の70%の患者に感染が見られる。典型的には幼少期に糞口感染し、数十年間持続する。菌は胃十二指腸潰瘍やMALTリンパ腫、腺がんの発生のリスクとなる。病歴と身体所見は潰瘍、穿孔、出血や悪性腫瘍のリスクを見出すためには重要であるが、リスクファクターと病歴、症状を用いたモデルのシステマティックレビューでは機能性dyspepsiaと器質的疾患を、明確に区別できないとしている。そのため、H. pyloriの検査と治療を行う戦略が、警告症状のないdyspepsia(胸やけ、上腹部不快感)の患者に推奨される。米国消化器病学会では、活動性の消化性潰瘍や消化性潰瘍の既往のある患者、dyspepsia症状のある患者、胃MALTリンパ腫の患者に検査を行うべきとしている。現在無症状である消化性潰瘍の既往のある患者へ検査を行う根拠は、H. pyloriを検出し、治療を行うことで再発のリスクを減らすことができるからである。H. pyloriを検出するための検査と治療の戦略は、dyspepsiaの患者のほか、胃がんのLow Risk群(55歳以下、説明のつかない体重減少や進行する嚥下障害、嚥下痛、嘔吐を繰り返す、消化管がんの家族歴、明らかな消化管出血、腹部腫瘤、鉄欠乏性貧血、黄疸などの警告症状がない)の患者に適当である。内視鏡検査は55歳以上の患者や警告症状のある患者には推奨される。H. pyloriの検査の精度は以下のとおりである。<尿素呼気試験>感度と特異度は100%に達する。尿素呼気試験は除菌判定で選択される検査の1つであり、除菌治療終了から4~6週間空けて検査を行うべきである。プロトンポンプ阻害薬(PPI)は、検査の少なくとも2週間前からは使用を控えなければならず、幽門側胃切除を行った患者では精度は下がる。<便中抗原検査>モノクローナル抗体を用いた便中抗原検査は、尿素呼気試験と同等の精度を持ち、より安くて簡便にできる検査である。尿素呼気試験のように便中抗原検査は活動性のある感染を検出し、除菌判定に用いることができる。PPIは検査の2週間前より使用を控えるべきだが、尿素呼気試験よりもPPIの使用による影響は少ない。<血清抗原>血清抗原検査は血清中のH. pyloriに特異的なIgGを検出するが、活動性のある感染か、既感染かは区別することができない。そのため除菌判定に用いることはできない。検査の感度は高いが、特異的な検査ではない(筆者注:感度 91~100% 特異度 50~91%)2)。PPIの使用や、抗菌薬の使用歴に影響されないため、PPIを中止できない患者(消化管出血を認める患者、NSAIDsの使用を続けている人)に最も有用である。<内視鏡を用いた生検>内視鏡検査による生検は、55歳以上の患者と1つ以上の警告症状のある患者には、がんやその他の重篤な原因の除外のために推奨される。内視鏡検査を行う前の1~2週間以内のPPIの使用がない患者、または4週間以内のビスマス(止瀉薬)や抗菌薬の使用がない患者において、内視鏡で施行される迅速ウレアーゼテストはH. pylori感染症診断において精度が高く、かつ安価で行える。培養とPCR検査は鋭敏な検査ではあるが、診療所で用いるには容易に利用できる検査ではない。除菌治療すべての消化性潰瘍の患者にH. pyloriの除菌が推奨される。1次除菌療法の除菌率は80%以上である。抗菌薬は地域の耐性菌の状況を踏まえて選択されなければならない。クラリスロマイシン耐性率が低い場所であれば、標準的な3剤併用療法は理にかなった初期治療である。除菌はほとんどの十二指腸潰瘍と、出血の再発リスクをかなり減らしてくれる。消化性潰瘍が原因の出血の再発防止においてはH. pyloriの除菌治療は胃酸分泌抑制薬よりも効果的である。<標準的3剤併用療法>7~10日間の3剤併用療法のレジメン(アモキシシリン1g、PPI、クラリスロマイシン500mgを1日2回)は除菌のFirst Lineとされている。しかし、クラリスロマイシン耐性が増えていることが、除菌率の低下に関連している。そのため、クラリスロマイシン耐性のH. pyloriが15%~20%を超える地域であれば推奨されない。代替療法としては、アモキシシリンの代わりにメトロニダゾール500mg1日2回を代用する。<Sequential Therapy(連続治療)>Sequential TherapyはPPIとアモキシシリン1g1日2回を5日間投与し、次いで5日間PPI、クラリスロマイシン500mg1日2回、メトロニダゾール500mg1日2回を投与する方法である。全体の除菌率は84%、クラリスマイシン耐性株に対して除菌率は74%である。最近の世界規模のメタアナリシスでは、sequential therapyは7日間の3剤併用療法よりも治療効果は優れているが、14日間の3剤併用療法よりも除菌率は劣るという結果が出ている。<ビスマスを含まない4剤併用療法>メトロニダゾール500mg1日2回またはチニダゾール500mg1日2回を標準的な3剤併用療法に加える治療である。Sequential Therapyよりも複雑ではなく、同様の除菌率を示し、クラリスロマイシンとメトロニダゾール耐性株を有する患者でも効果がある。クラリスロマイシンとメトロニダゾールの耐性率が高い地域でも90%にも及ぶ高い除菌率であるが、クラリスロマイシンを10日間服用する分、sequential therapyよりも費用が掛かってしまう。除菌判定H. pyloriの除菌判定のための尿素呼気試験や便中抗原の試験の適応は、潰瘍に関連したH. pylori感染、持続しているdyspepsia症状、MALTリンパ腫に関連したH. pylori感染、胃がんに対しての胃切除が含まれる。判定は除菌治療が終了して4週間後以降に行わなければならない。※本内容は、プライマリケアに関わる筆者の個人的な見解が含まれており、詳細に関しては原著を参照されることを推奨いたします。 1) Fashner J , et al. Am Fam Physician. 2015;91:236-242. 2) 日本ヘリコバクター学会ガイドライン作成委員会.H. pylori 感染の診断と治療のガイドライン 2009 改訂版

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巨細胞性動脈炎(側頭動脈炎)〔GCA : giant cell arteritis〕

1 疾患概要■ 概念・定義巨細胞性動脈炎(giant cell arteritis:GCA)は、大動脈とその分枝の中~大型動脈に起こる肉芽腫性血管炎である。頸動脈の頭蓋外の動脈(とくに側頭動脈)が好発部位のため、以前は、側頭動脈炎(temporal arteritis:TA)といわれた。発症年齢の多くは50歳より高齢であり、しばしばリウマチ性多発筋痛症(PMR)を合併する。1890年HunchingtonらがTAの症例を報告し、1931年にHortonらがTAの臨床像や病理学的特徴を発表したことからTAとしての古い臨床概念が確立し、また、TAは“Horton’s disease”とも呼ばれてきた。その後1941年Gilmoreが病理学上、巨細胞を認めることから“giant cell chronic arteritis”の名称が提唱された。この報告により「巨細胞性動脈炎(GCA)」の概念が確立された。GCAは側頭動脈にも病変を認めるが、GCAのすべての症例が側頭動脈を傷害するものではない。また、他の血管炎であっても側頭動脈を障害することがある。このためTAよりもGCAの名称を使用することが推奨されている。■ 疫学 1997年の厚生省研究班の疫学調査の報告は、TA(GCA)の患者は人口10万人当たり、690人(95%CI:400~980)しか存在せず、50歳以上では1.48人(95%CI: 0.86~2.10)である。人口10万人当たりの50歳以上の住民のGCA発症率は、米国で200人、スペインで60人であり、わが国ではTA(GCA)は少ない。このときの本邦のTA(GCA)の臨床症状は欧米の症例と比べ、PMRは28.2%(欧米40~80%)、顎跛行は14.8%(8~50%)、失明は6.5%(15~27%)、脳梗塞は12.1%(27.4%)と重篤な症状はやや少ない傾向であった。米国カリフォルニア州での報告では、コーカシアンは31症例に対して、アジア人は1例しか検出されなかった。中国やアラブ民族でもGCAはまれである。スカンジナビアや北欧出身の家系に多いことが知られている。■ 病因病因は不明であるが、環境因子よりも遺伝因子が強く関与するものと考えられる。GCAと関連が深い遺伝子は、HLA-DRB1*0401、HLA-DRB1*0404が報告され、約60%のGCA症例においてどちらかの遺伝子を有する。わが国の一般人口にはこの2つの遺伝子保持者は少ないため、GCAが少ないことが推定される。■ 症状全身の炎症によって起こる症状と、個別の血管が詰まって起こる症状の2つに分けられる。 1)全身炎症症状発熱、倦怠感、易疲労感、体重減少、筋肉痛、関節痛などの非特異的な全身症状を伴うので、高齢者の鑑別診断には注意を要する。2)血管症状(1)頸部動脈:片側の頭痛、これまでに経験したことがないタイプの頭痛、食べ物を噛んでいるうちに、顎が痛くなって噛み続けられなくなる(間歇性下顎痛:jaw claudication)、側頭動脈の圧痛や拍動頸部痛、下顎痛、舌潰瘍など。(2)眼動脈:複視、片側(両側)の視力低下・失明など。(3)脳動脈:めまい、半身の麻痺、脳梗塞など。(4)大動脈:背部痛、解離性大動脈瘤など。(5)鎖骨下動脈:脈が触れにくい、血圧に左右差、腕の痛みなど。(6)冠動脈:狭心症、胸部痛、心筋梗塞など。(7)大腿・下腿動脈:間歇性跛行、下腿潰瘍など。3)合併症約30%にPMRを合併する。高齢者に起こる急性発症型の両側性の頸・肩、腰の硬直感、疼痛を示す。■ 分類側頭動脈や頭蓋内動脈の血管炎を呈する従来の側頭動脈炎を“Cranial GCA”、大型動脈に病変が認められるGCAを“Large-vessel GCA”とする分類法が提唱されている。大動脈を侵襲するGCAは、以前、高安動脈炎の高齢化発症として報告されていた経緯がある。GCA全体では“Cranial GCA”が75%である。“Large-vessel GCA”の中では、大動脈を罹患する型が57%、大腿動脈を罹患する型が43%と報告されている(図)。画像を拡大する■ 予後1998年の厚生省全国疫学調査では、治癒・軽快例は87.9%であり、生命予後は不良ではない。しかし、下記のように患者のQOLを著しく阻害する合併症がある。1)各血管の虚血による後遺症:失明(約10%)、脳梗塞、心筋梗塞など。2)大動脈瘤、その他の動脈瘤:解離・破裂の危険性に注意を要する。3)治療関連合併症:活動性制御に難渋する例では、ステロイドなどの免疫抑制療法を反復せねばならず、治療関連合併症(感染症、病的骨折、骨壊死など)で臓器や関連の合併症にてQOLが不良になる。2 診断 (検査・鑑別診断も含む)1990年米国リウマチ学会分類基準に準じる。5項目のうち3項目を満足する場合、GCAと分類する(感度93.5、特異度91.2%)。厚生労働省の特定疾患個人調査票(2015年1月)は、この基準にほぼ準拠している。5項目のうち3項目を満足する場合に、GCAと診断される(表1)。画像を拡大する■ 検査1)血液検査炎症データ:白血球増加、赤沈亢進、CRP上昇、症候性貧血など。CRP赤沈は疾患活動性を反映する。2)眼底検査必須である。虚血性視神経症では、視神経乳頭の虚血性混濁浮腫と、網膜の綿花様白斑(軟性白斑)を認める。3)動脈生検適応:大量ステロイドなどのリスクの高い免疫抑制治療の適応を決めるために、病理学的検討を行うべきである。ただし、進行性の視力障害など、臨床経過から治療を急ぐべきと判断される場合は、ステロイド治療開始を優先し、側頭動脈生検が治療開始の後でもかまわない。側頭動脈生検の実際:症状が強いほうの側頭動脈を局所麻酔下で2cm以上切除する。0.5mmの連続切片を観察する。病理組織像:中型・大型動脈における(1)肉芽腫性動脈炎(炎症細胞浸潤+多核巨細胞+壊死像)、(2)中膜と内膜を画する内弾性板の破壊、(3)著明な内膜肥厚、(4)進行期には内腔の血栓性閉塞を認める。病変は分節状に分布する(skip lesion)。動脈生検で巨細胞を認めないこともある。4)画像検査(1)血管エコー:側頭動脈周囲の“dark halo”(浮腫性変化)はGCAに特異的である。(2)MRアンギオグラフィー(MRA):非侵襲的である。頭蓋領域および頭蓋領域外の中型・大型動脈の評価が可能である。(3)造影CT/3D-CT:解像度でMRAに優る。全身の血管の評価が可能である。3次元構築により病変の把握が容易である。高齢者・腎機能低下者には注意すること。(4)血管造影:最も解像度が高いが、侵襲的である。高齢者・腎機能低下者には注意すること。(5)PET-CT(2015年1月現在、保険適用なし):質的検査である。血管壁への18FDGの取り込みは、血管の炎症を反映する。ただし動脈硬化性病変でもhotになることがある。5)心エコー・心電図など:心合併症のスクリーニングを要する。■ 鑑別診断1)高安動脈炎(Takayasu arteritis:TAK)欧米では高安動脈炎とGCAを1つのスペクトラムの中にある疾患で、発症年齢の約50歳という違いだけで分類するという考えが提案されている。しかし、両疾患の臨床的特徴は、高安動脈炎がより若年発症で、女性の比率が高く(約1:9)、肺動脈病変・腎動脈病変・大動脈の狭窄病変が高頻度にみられ、PMRの合併はみられず、潰瘍性大腸炎の合併が多く、HLA-B*52と関連する。また、受診時年齢と真の発症年齢に開きがある症例もあるので注意を要する。現時点では発症年齢のみで分けるのではなく、それぞれGCAとTAKは1990年米国リウマチ学会分類基準を参考にすることになる。2)動脈硬化症動脈硬化症は、各動脈の閉塞・虚血を来しうる。しかし、新規頭痛、顎跛行、血液炎症データなどの臨床的特徴が異なる。GCAと動脈硬化症は共存しうる。3)感染性大動脈瘤(サルモネラ、ブドウ球菌、結核など)、心血管梅毒細菌学的検査などの感染症の検索を十分に行う。4)膠原病に合併する大動脈炎など(表2)画像を拡大する3 治療 (治験中・研究中のものも含む)治療の目標は、(1)全身炎症症状の改善、(2)臓器不全の抑制、(3)血管病変の進展抑制である。ステロイド(PSL)は強い抗炎症作用を有し、GCAにおいて最も確実な治療効果を示す標準治療薬である。■ 急性期ステロイド初期量:PSL 1mg/kg/日が標準とされるが、症状・合併症に応じて適切な投与量を選択すること。2006~2007年度の診療ガイドラインでは、下記のように推奨されている。とくに、高齢者には圧迫骨折合併に注意する必要がある。1)眼症状・中枢神経症状・脳神経症状がない場合:PSL 30~40 mg/日。2)上記のいずれかがある場合:PSL 1mg/kg/日。■ 慢性期ステロイド漸減:初期量のステロイドにより症状・所見の改善を認めたら、初期量をトータルで2~4週間継続したのちに、症状・赤沈・CRPなどを指標として、ステロイドを漸減する。2006~2007年度の診療ガイドラインにおける漸減速度を示す。1)PSL換算20mg/日以上のとき:2週ごとに10mgずつ漸減する。2)PSL換算10~20mg/日のとき:2週ごとに2.5mgずつ漸減する。3)PSL換算10mg/日以下のとき:4週ごとに1mgずつ、維持量まで漸減する。重症例や活動性マーカーが遷延する例では、もう少しゆっくり漸減する。■ 寛解期ステロイド維持量:維持量とは、疾患の再燃を抑制する必要最小限の用量である。2006~2007年度の診療ガイドラインでは、GCAへのステロイド維持量はPSL換算10mg/日以下とし、通常、ステロイドは中止できるとされている。しかし、GCAの再燃例がみられる場合もあり、GCAに合併するPMRはステロイド減量により再燃しやすい。■ 増悪期ステロイドの再増量:再燃を認めたら、通常、ステロイドを再増量する。標的となる臓器病変、血管病変の進展度、炎症所見の強度を検討し、(1)初期量でやり直す、(2)50%増量、(3)わずかな増量から選択する。免疫抑制薬併用の適応:免疫抑制薬はステロイドとの併用によって相乗効果を発揮するため、下記の場合に免疫抑制薬をステロイドと併用する。1)ステロイド効果が不十分な場合2)易再燃性によりステロイド減量が困難な場合免疫抑制薬の種類:メトトレキサート、アザチオプリン、シクロスポリン、シクロホスファミドなど。■ 経過中に注意すべき合併症予後に関わる虚血性視神経症、脳動脈病変、冠動脈病変、大動脈瘤などに注意する。1)抗血小板薬脳心血管病変を伴うGCA患者の病変進展の予防目的で抗血小板薬が用いられる。少量アスピリンがGCA患者の脳血管イベントおよび失明のリスクを低下させたという報告がある。禁忌事項がない限り併用する。2)血管内治療/血管外科手術(1)各動脈の高度狭窄ないし閉塞により、重度の虚血症状を来す場合、血管内治療によるステント術か、バイパスグラフトなどによる血管外科手術が適応となる。(2)大動脈瘤やその他の動脈瘤に破裂・解離の危険がある場合も、血管外科手術の適応となる。4 今後の展望関節リウマチに保険適用がある生物学的製剤を、GCAに応用する試みがなされている(2015年1月現在、保険適用なし)。米国GiACTA試験(トシリズマブ)、米国AGATA試験(アバタセプト)などの治験が行われている。わが国では、トシリズマブの大型血管炎に対する治験が進行している。5 主たる診療科リウマチ科・膠原病内科、循環器内科、眼科、脳神経外科※ 医療機関によって診療科目の区分は異なることがあります。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)診療、研究に関する情報難病情報センター 巨細胞性動脈炎(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)今日の臨床サポート 巨細胞性動脈炎(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)J-STAGE(日本臨床免疫学会会誌) 巨細胞性動脈炎(医療従事者向けのまとまった情報)2006-2007年度合同研究班による血管炎症候群の診療ガイドライン(GCAについては1285~1288参照)(医療従事者向けのまとまった情報)1)Jennette JC, et al. Arthritis Rheum. 2013;65:1-11.2)Grayson PC, et al. Ann Rheum Dis. 2012;71:1329-1334.3)Maksimowicz-Mckinnon k,et al. Medicine. 2009;88:221-226.4)Luqmani R. Curr Opin Cardiol. 2012;27:578-584.5)Kermani TA, et al. Curr Opin Rheumatol. 2011;23:38-42.

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事例67 クリンダマイシンリン酸エステルゲル(商品名:ダラシンTゲル)の査定【斬らレセプト】

解説事例では、ニキビの腫れ、痛みで受診、鼻周囲膿瘍と鼻腔への浸出液がみられたため「毛包炎」と診断、クリンダマイシン酸エステルゲル(ダラシンTゲル®)を処方したところ、C事由(医学的理由による不適当)として査定となった。その理由を調べてほしいと連絡があった。使用されたクリンダマイシン酸エステルゲル(ダラシンTゲル®)の添付文書をみてみる。抗菌薬に分類され、適応菌種は「クリンダマイシンに感性のブドウ球菌属、アクネ菌」に限定されている。適応疾患は「ざ瘡(化膿性炎症を伴うもの)」のみであった。毛包炎に適応はなかった。医師は「毛包炎とざ瘡は同じような疾患であって、事例の場合は薬剤が著効した」と説明した。しかし、レセプトの実日数は1日であり、細菌検査のコメントもなく、医師の説明を読み取るすべがない。その旨を説明し、適応疾患のない薬剤投与は原則として査定されるので、添付文書を意識した投与をお願いした。

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わかる統計教室 第2回 リスク比(相対危険度)とオッズ比 セクション1

インデックスページへ戻る第2回 リスク比(相対危険度)とオッズ比皆さんは、以下のような調査データをみたとき、この調査の結果をどのように解釈していますか。シリーズ第2回では、ある状況下に置かれた人と置かれなかった人で、ある疾患と診断されるリスク比(相対危険度)と、リスク比とよく似た指標として用いられるオッズ比を取り上げます。リスク比、オッズ比とは何か、そしてその違いは何か、さらに有意差の算出方法をマスターし、データを正しく理解することを目標に、5つのセクションに分けて学習します。セクション1 分割表とリスク比■分割表を作るリスク比やオッズ比、そして有意差を算出するには、分割表を作成するところから始まります。今回も、「簡単」な事例で覚えていきましょう。それがマスターへの近道です。下表1は、10例の患者について、「不整脈の有無」「喫煙の有無」を調べたものです。データは、「喫煙」を1、「非喫煙」を0、不整脈が「ある」を1、「ない」を0としています。この表1から、不整脈について喫煙者と非喫煙者を比較したとき、両者に差があるかどうかを明らかにしてみましょう。この表1をただ眺めていても傾向がわからないので、まずは、このデータを喫煙の有無別、不整脈の有無別に並べ替えてみましょう。次に、この表2から何がわかるのかを考えてみましょう。まず喫煙者が5例、そのうち不整脈があるのは3例です。そして、非喫煙者は5例、そのうち不整脈があるのは1例です。次に、喫煙者の有無別に、不整脈のある割合を計算してみましょう。喫煙者における不整脈のある割合は3÷5で60%、非喫煙者における不整脈のある割合は1÷5で20%です。すると、不整脈のある割合は、喫煙者が60%、非喫煙者が20%で、喫煙者のほうが40%高いことがわかります。このことから、「喫煙者と非喫煙者を比較したとき、不整脈において差があるといえる」ということがわかるのです。ただし「差がある」かどうかは、有意差検定をする必要がありますが、それはこれからの話にしておきましょう。■分割表では左側に原因(喫煙など)、上側に結果(不整脈など)を書く!それでは、先ほど集計した結果を表にしてみてみましょう。下の表3のような表を分割表(contingency table)といいます。分割表を作成するときに大事なのは、行と列に入れる項目です。表3では、表の行(左側)に喫煙の有無、列(上側)に不整脈の有無としていますが、行と列を入れ替えて、表の行(左側)に不整脈の有無、列(上側)に喫煙の有無にすると表4になります。実は、この表4はダメな分割表です。なぜダメなのでしょう。因果関係を考える場合、原因と結果があります。原因と結果の関係を調べるために分割表を作る場合、行(左側)に原因、列(上側)に結果の項目を置くというルールがあります。この例では、最初の表3が正しい分割表ですので、注意してください!■リスク比とは?しっかり理解してほしい点は、この表3の「ある」を横計で割って得られた「割合」がリスクだということです。リスクとは、そのままの意味で「危険」や「恐れ」ということです。今回のケースでの“リスク”は、不整脈になる“危険”や“恐れ”が喫煙の有無によって、どの程度あるのかがわかる、ということです。では、リスクを喫煙者、非喫煙者でそれぞれ計算してみましょう。喫煙者が不整脈となるリスクは3÷5で60%、同様に非喫煙者が不整脈となるリスクは20%です。次に、リスクの差を計算してみましょう。60%-20%で40%なので、「リスクは喫煙者が非喫煙者を40%上回っている」ということがわかります。今度は、喫煙者のリスクを非喫煙者のリスクで割ってみましょう。60%÷20%で3になります。この値が「リスク比(Risk Ratio)」です。このようにリスク比は、とても簡単に求められますが、大切なことはリスク比の求め方ではなく、その解釈の仕方です。この例では、リスク比3ということから、「喫煙者が不整脈となるリスク(割合)は非喫煙者に比べ3倍である」と解釈できるということです。次回は、同じく簡単な事例を基に、間違った解釈をされることの多い「オッズ比」について解説します。今回のポイント1)分割表は左側に原因(喫煙など)、上側に結果(不整脈など)を書く!2)リスク比で大切なことは、その解釈の仕方!インデックスページへ戻る

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コーヒー4杯/日以上で結腸がんの再発が減少?

 座りがちな生活や肥満、食事による糖負荷増大などの相対的インスリン過剰状態では、結腸がんの再発が増加することが観察研究で示されている。一方、コーヒーの高摂取が、2型糖尿病リスクの減少とインスリン感受性の増大と関連しているが、結腸がんの再発と生存率に対するコーヒーの影響は不明である。米国・ハーバード大学のBrendan J. Guercio氏らは、コーヒー摂取量とステージIII結腸がん患者の再発および死亡との関連を検討し、コーヒーの高摂取が結腸がんの再発や死亡の減少に関連する可能性を報告した。Journal of clinical oncology誌オンライン版2015 年8月17日号に掲載。 著者らは、ステージIII結腸がん953例について、術後化学療法中および終了後6ヵ月間におけるカフェイン入りコーヒー、カフェイン抜きコーヒー、ハーブティー以外の紅茶、その他128種類の摂取量を前向きに調査した。がんの再発率や死亡率におけるコーヒー、ハーブティー以外の紅茶、カフェインの影響についてCox比例ハザード回帰を用いて調べた。 主な結果は以下のとおり。・コーヒー(カフェイン入りおよびカフェイン抜き)を4杯/日以上を摂取する患者の結腸がん再発または死亡の調整ハザード比(HR)は、まったく飲まない患者に比べ、0.58(95%CI:0.34~0.99)であった(傾向のp=0.002)。・カフェイン入りコーヒーを4杯/日以上摂取する患者では、がんの再発または死亡リスクがまったく飲まない人と比べて有意に減少し(HR:0.48、95%CI:0.25~0.91、傾向のp=0.002)、カフェイン摂取量の増加もがんの再発または死亡を有意に減少させた(HR:5分位の両端で0.66、95%CI:0.47~0.93、傾向のp=0.006)。・ハーブティー以外の紅茶とカフェイン抜きコーヒーの摂取量は患者の転帰と関連していなかった。・コーヒー摂取量と転帰改善の関連は、他の再発や死亡の予測因子を通じて一貫しているようにみえる。

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日本人医師からのエアメール

医学のボーダレス化は今後ますます加速していく。それに伴い、そのような状況を踏まえ、海外で活躍している臨床医の生の声を紹介し、現地の診療事情、キャリア形成術などを紹介する。侍オンコロジスト奮闘記~Dr.白井 in USA~臨床留学通信 from Boston臨床留学通信 from NY空手家心臓外科医のドイツ見聞録空手家心臓外科医、ドイツ武者修行の旅循環器内科 米国臨床留学記Cardiologistへの道@Stanford侍オンコロジスト奮闘記~Dr.白井 in USA~白井 敬祐 ( しらい けいすけ ) 氏臨床留学通信 from Boston工野 俊樹 ( くの としき ) 氏臨床留学通信 from NY工野 俊樹 ( くの としき ) 氏空手家心臓外科医のドイツ見聞録安 健太 ( あん けんた ) 氏※終了しました。空手家心臓外科医、ドイツ武者修行の旅安 健太 ( あん けんた ) 氏循環器内科 米国臨床留学記河田 宏 ( かわた ひろ ) 氏※終了しました。Cardiologistへの道@Stanford川名 正隆 ( かわな まさたか )氏※終了しました。

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拡大基準ドナーからの腎移植、長期生着要因は?/BMJ

 フランス・パリ第5大学のOlivier Aubert氏らは、拡大基準ドナー(extended criteria donor:ECD)腎移植の長期アウトカムを評価し、予後を規定する主要因を明らかにする前向き住民ベースコホート試験を行った。その結果、移植7年後の移植片の生着率はECD移植レシピエントのほうが有意に低かったが、移植レシピエントにおけるドナー特異的抗HLA抗体(DSA)の非存在と冷虚血時間の短縮で、アウトカムは改善可能であることが明らかになったことを報告した。ECDは、ドナーを60歳以上もしくは50~59歳で血管系併存疾患がある人まで適応を拡大した基準である。著者は今回の結果を踏まえて、「DSAと冷虚血時間の2つの因子を修正後にECD移植は満足な長期予後を得ることができ、標準基準ドナー(SCD)腎移植と類似した移植片の生着率を達成可能である」と述べている。BMJ誌オンライン版2015年7月31日号掲載の報告より。拡大(ECD) vs.標準基準ドナー(SCD)からの腎移植の長期生着について評価 試験は、フランスの4施設で2004年1月~2011年1月に腎移植を受けた連続患者を(主要コホート)、2014年5月まで追跡して行われた。また、検証コホートに2002年1月~2011年12月に別の4施設から腎移植患者を包含し評価した。 主要評価項目は、長期の腎移植片生着で、ドナー、レシピエント、移植関連の臨床的特徴(移植前生検、ベースラインのDSA値)で系統的に評価した。 試験には6,891例が包含された(主要コホート2,763例、検証コホート4,128例)。 主要コホートは、年齢中央値52歳、85.8%は死体腎で移植が行われた。ECD腎移植は、916例(33.2%)であった。移植時のDSAの非存在、冷虚血時間の短縮で長期生着率改善は可能 全体として、ECD腎移植のほうがSCD腎移植と比べて、7年後の移植片生着率が有意に低かった(80% vs. 88%、p<0.001)。 またECD腎移植患者における7年後の移植片生着率は、移植時にDSAの存在が認められた患者(12.1%)が、認められなかった患者と比べて有意に低かった(44% vs.85%、p<0.001)。 ドナー、レシピエント、移植の特徴、および移植前生検の所見、ベースラインでの免疫学的パラメータで調整後、長期の移植片生着失敗の主要因は、ECD腎移植へ割り付けたこと(ハザード比[HR]:1.84、95%信頼区間[CI]:1.5~2.3、p<0.001)、移植日のDSAの存在確認(同:3.00、2.3~3.9、p<0.001)、そして冷虚血時間が長いこと(12時間超で1.53、1.1~2.1、p=0.011)であった。 DSAの存在が認められたECD腎レシピエントは、その他の移植群と比べて、移植片生着失敗リスクが5~6倍高かった(p<0.001)。

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事例66 創傷処理(筋肉、臓器に達しない)(5cm以上)の査定【斬らレセプト】

解説事例では、時間外に左下腿挫創に縫合を行いK000創傷処理(筋肉、臓器に達しない)(5cm以上10cm未満)を算定したところ、B事由(医学的に過剰・重複と認められるものをさす: 過剰)にて「5cm未満の区分」に査定となった。創傷処理の注には、近接した複数の創傷処理に対して、それらの長さ・範囲を合計して1つの創傷として取り扱うとある。創の大きさは、実際にカルテに記載された大きさを医療機関で判定している。傷病名からみて区分の縮小査定に疑問を感じ、レセプトを確認した。創傷処理に麻酔薬の使用がない。経験上から、麻酔薬の使用がない創傷処理などの手術は、処置で査定となることが多い。レセプトの審査員は、レセプトに記載の生理食塩液1L使用に着目し、麻酔を使用しない程度のデブリドマンを実施したことを類推、創傷処理は認めるが、麻酔薬の使用がないため最小の区分で算定するとされたものであろう。医師には、麻酔を使用しないで創傷処理などの手術を実施した場合には、あらかじめレセプトに麻酔を必要としなかった医学的理由のコメントを残すようお願いした。

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双極性障害の自殺、どの程度わかっているのか

 双極性障害患者の自殺企図や自殺死には多くの要因が影響を及ぼしている。国際双極性障害学会(ISBD)では、こうした要因の存在やその影響度に関する文献をまとめた自殺に関するタスクフォース報告書を発表した。筆頭著者であるカナダ・トロント大学のAyal Schaffer氏らは、「研究の対象やデザインが不均一性であるため、これら要因の影響度を再検討し確定するさらなる研究が必要である。このことが最終的には、双極性障害患者のリスク層別化の改善につながる」と述べている。Australian & New Zealand Journal of Psychiatry誌オンライン版2015年7月14日号の掲載報告。 ISBDは、「双極性障害」と「自殺企図または自殺」をキーワードに1980年1月1日から2014年5月30日までに発表された論文を対象として、システマティックレビューを行った。双極性障害患者の自殺企図や自殺死に関連すると思われる要因について、すべての報告を調査した。要因を、(1)社会人口統計学的、(2)双極性障害の臨床的特徴、(3)併存疾患、(4)その他の臨床変数、の4つに分類し分析した。 主な結果は以下のとおり。・20の特異的要因が自殺企図や自殺死にどのように影響するかを調査した141件の研究を特定した。・要因については、それぞれのエビデンスのレベルや一致の程度にばらつきがあった。・その中で少なくとも1件の研究で、以下の要因について影響があることが認められた。性別、年齢、人種、婚姻状況、宗教、発症年齢、罹患期間、双極性障害のサブタイプ、初回エピソードの極性、現在/最近のエピソードの極性、優位極性、気分エピソードの特徴、精神病、精神疾患の併存、パーソナリティ特性、性的機能不全、自殺や気分障害の一親等家族歴、自殺企図歴、若年期のトラウマ、心理社会的要因。関連医療ニュース 双極性障害、退院後の自殺リスクが高いタイプは 双極性障害とうつ病で自殺リスクにどの程度の差があるか うつ病と双極性障害を見分けるポイントは  担当者へのご意見箱はこちら

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デング熱に気を付けろッ! その1【新興再興感染症に気を付けろッ!】

ケアネットをご覧の皆さま、こんにちは。国立国際医療研究センター 国際感染症センターの忽那です。本連載「新興再興感染症に気を付けろッ!」、通称「気をつけろッ」は「新興再興感染症の気を付け方」についてまったりと、そしてときにまったりと、つまり一貫してまったりと学んでいくコーナーです。今回はついに、この「気を付けろッ!」の大本命、デング熱の気を付け方について考えたいと思います。総まくりデングウイルスの基礎知識デング熱といえば、ご存じのとおり昨年日本でも大流行を起こした感染症であります。2014年は、日本国内で感染したと考えられるデング熱患者が162人も診断されました1)。デング熱は、基本的に自然に治癒する感染症ですので、すべての患者が病院を受診しているとは限りません。診断されていない症例はもっといるだろうと想像されます。熱帯・亜熱帯地域でデング熱を媒介しているのは主にネッタイシマカAedes aegyptiですが、日本では成田空港で見つかったことがあるのみです。したがって、今回のアウトブレイクの原因となった媒介蚊はヒトスジシマカAedes albopictusであり、日本の広い地域に分布しています。温暖化の影響により、ヒトスジシマカの分布域は北上しており、現在では本州(青森県以南)から 四国、九州、沖縄まで広く分布していることが確認されています(図)。画像を拡大する昨年の流行は、代々木公園(東京都渋谷区)から始まりました。最終的には代々木公園以外の場所で感染したと推定される患者さんも報告されましたが、大半は代々木公園で感染したと推定される症例ばかりでした。最初にデングウイルスを日本に持ち込んだのが、日本人旅行者であったのか、外国人旅行者であったのかはわかりませんが、とにかく海外でデングウイルスに感染した人が日本で発症し、代々木公園でヒトスジシマカに刺されたことによって、代々木公園のヒトスジシマカがデングウイルスを持つようになったのだと考えられます。このヒトスジシマカが代々木公園を訪れた人々を刺すことによって、海外渡航歴のない人もデングウイルスに感染し、デング熱を発症することになったのです。デングウイルスの爆発的な広がり具合からして、おそらく最初に持ち込んだ人は、代々木公園で一度ではなく何度も蚊に刺されたのだろうと想像します。今年の代々木公園は大丈夫か?「なぜ流行の起点が、代々木公園であったのか?」というと「たまたま代々木公園だった」ともいえますが、やはりいくつかの理由があると考えられます。1つは人と蚊が密集している場所であるということです。デング熱は、蚊を介して人から人にうつっていく感染症ですが、代々木公園はこの「人→蚊→人」のサイクルが作られやすい環境にある公園といえます。都会の中心に位置するため、連日多くの人々が集まりますし、多くの木々や水たまりは蚊の発生しやすい環境です。また、代々木公園では、毎週のように週末にはイベントが催されています。表は、アウトブレイク前夜に代々木公園で行われていたイベントの一覧です。画像を拡大するブラジルフェスティバルだの、タイフェアだの、デング熱が流行している国をフィーチャリングしたイベントの開催があったことが、おわかりいただけたかと思います。これは1つの可能性に過ぎませんが、もしかしたらこれらの国からイベントに参加した人が、デングウイルスを持ち込んだ可能性もあるのかもしれません。ちなみに最近の調査によりますと、東京都の蚊への対策のかいもあって、今年の代々木公園は蚊が昨年よりもかなり少ないと聞いております。しかし、代々木公園の蚊は減っているとはいえ、今年もデング熱の国内流行が起こる可能性は十分にありますッ! 昨年の大流行からさらにさかのぼること1年前、2013年に日本で、デング熱に感染したと考えられるドイツ人女性が、報告されたのを覚えていらっしゃいますでしょーか3)。すでに2013年には、日本国内にデングウイルスを持った蚊はいたと考えられます。また、昨年の162例の感染例のうち熱海市で報告された1例は、その他の症例とは起源の異なる株であることもわかっています。つまり、この2年間に日本国内には、3つのデングウイルスが侵入していたことになるのですッ!! 蚊は、日本では越冬できないためデングウイルスも冬にはいなくなると考えられていますが、今シーズンもデングウイルスが日本国内に持ち込まれる可能性は、十分にありますッ!さて、それでは次回は、どのようなときにデング熱を疑えば良いのか、また治療はどうするのかについて考えたいと思います。1)Kutsuna S, et al. Emerg Infect Dis. 2015;21:517-520.2)厚生労働省.デング熱国内感染事例発生時の対応・対策の手引き 地方公共団体向け(第1版).3)Schmidt-Chanasit J, et al. Euro Surveill. 2014;19:20681.

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唐辛子をほぼ毎日食べると死亡リスク低下/BMJ

 香辛料入り食品を習慣的に摂取すると、あまり食べない集団に比べ、全死因死亡のほか、がん、虚血性心疾患、呼吸器疾患による死亡が減少することが、China Kadoorie Biobank collaborative groupのJun Lv氏らの調査で示された。香辛料は、世界の食文化に不可欠の要素であり、食品の味や風味付け、彩り、保存食のほか医療用としても長い歴史を持つ。最近は、とくに味付けのための使用が増加しており、中国では全国的に唐辛子の消費量が多いという。一方、カプサイシンなど、香辛料の主要な生理活性成分は、種々の慢性疾患において有益な役割を果たすことが、実験的研究や地域住民研究で報告されている。BMJ誌オンライン版2015年8月4日掲載の報告より。約49万人を約350万人年追跡した前向きコホート研究 研究グループは、香辛料入り食品の習慣的な摂取状況と、全死因および原因別の死亡との関連を評価する地域住民ベースの前向きコホート研究を実施した(National Natural Science Foundation of Chinaの助成による)。 2004~2008年に、中国の地理的に多様な10地域で50万人以上の参加者の登録を行ったChina Kadoorie Biobankのデータを用いた。ベースライン時にがん、心疾患、脳卒中に罹患していた参加者を除く、30~79歳の48万7,375人(男性19万9,293人、女性28万8,082人)が解析の対象となった。 ベースライン時に、参加者は「前月に、香辛料入り食品をどのくらい食べましたか」と質問され、「まったくあるいはほとんど食べない」「数日のみ」「週に1~2日」「週に3~5日」「週に6~7日」の中から1つを選んで回答した。 「週に1~2日」「週に3~5日」「週に6~7日」と答えた者は、さらに「あなたが食べた香辛料入り食品に使用された香辛料の主な原料は何ですか」との質問に対し、「生唐辛子」「乾燥唐辛子」「唐辛子ソース」「唐辛子油」「その他」「不明」の中から回答した(重複回答可)。 香辛料入り食品をほぼ毎日(週6~7日)摂取している集団は、それ以外の集団に比べ、農村地域居住者や喫煙者、アルコール摂取者が多く、赤身肉や野菜、果物の摂取頻度が高かった。また、全体で最も摂取頻度の高い香辛料のタイプは生唐辛子(約8割)であり、次いで乾燥唐辛子(約6割)であった。 フォローアップは2004~2013年に行われ、フォローアップ期間中央値は7.2年(350万4人年)であった。この間に、男性1万1,820人、女性8,404人が死亡した。ほぼ毎日食べると全死因死亡のリスクが14%減少 香辛料入り食品の摂取頻度別の絶対死亡率は、週1日未満の群が1,000人年当たり6.1であり、週1~2日の群が4.4/1,000人年、週3~5日の群が4.3/1,000人年、週6~7日の群は5.8/1,000人年であった。 既知のリスク因子や可能性のあるリスク因子で補正後の全死因死亡率は、男女ともに摂取頻度と強い逆相関の関係を示した。全体では、週1日未満と比較した死亡の補正ハザード比(HR)は、週1~2日が0.90(95%信頼区間[CI]:0.84~0.96)、週3~5日が0.86(95%CI:0.80~0.92)、週6~7日は0.86(95%CI:0.82~0.90)であった。 香辛料入りの食品を週に6~7日食べる集団は、週に1日も食べない集団に比べ、全死因死亡の相対的リスクが14%減少した。 また、全体では、香辛料入り食品を週に6~7日食べる集団は、週1回未満の集団に比べ、がん死、虚血性心疾患死、呼吸器疾患死のリスクが有意に低かったが、脳血管疾患死や糖尿病死、感染症死には差がなかった。感染症死は、女性では週に6~7回食べる集団で有意にリスクが抑制されていた。 週に6~7日食べる集団で、生唐辛子とそれ以外(乾燥唐辛子、唐辛子ソース、唐辛子油、その他の香辛料)に分けてリスクを比較したところ、生唐辛子で有意なリスク抑制効果がみられ、それ以外では有意差のない項目として、がん死、虚血性心疾患死、糖尿病死が挙げられた。全死因死亡と呼吸器疾患死は、生唐辛子とそれ以外の香辛料ともに、リスク抑制効果が有意だった。 摂取頻度と全死因死亡の逆相関の関係は、アルコール摂取者よりも非摂取者で、より強力であった(交互作用検定:p=0.033)。 著者は、「観察研究であるため、因果関係は確定できない。これらの知見の一般化可能性を示すには、別の集団においてさらなる前向き試験を行う必要がある」とし、「エビデンスが蓄積されれば、推奨食品に加えられたり、ハーブ系の補助食品などの機能性食品の開発につながる可能性がある」と指摘している。

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かかりつけ医と薬局が連携して薬剤の一元管理を

 厚生労働省は第4回健康情報拠点薬局(仮称)のあり方に関する検討会1)(座長:昭和薬科大学 学長 西島 正弘氏)を8月7日に開催した。冒頭に厚労省より、これまでの議論2)を踏まえ、「健康づくり支援薬局(仮称)=かかりつけ薬局の機能+積極的な健康サポート機能を有する薬局」という案が示された。具体的には、「かかりつけ薬剤師」が日頃から患者と継続的に関わって信頼関係を構築し、薬について相談できることが重要であり、その役割を発揮するために適切な業務管理や連携、薬局の構造設備が必要であることが説明された。そのうえで、かかりつけ薬局の主な機能として以下の3つが提案され、「かかりつけ薬局・薬剤師」の必要性と機能について議論が交わされた。1. 患者の服用歴や現在服用中のすべての薬剤に関する情報等を一元的に管理する機能2. 24時間対応、在宅対応を行える機能3. かかりつけ医をはじめとした医療機関との連携機能  日本医師会の羽鳥 裕氏は、昨年4月の診療報酬改定で地域包括診療料、地域包括診療加算が新設され、「処方されている薬は医師が一元的に管理する」とされた点を指摘。服薬管理は医師、服薬指導は薬剤師というように役割分担を明確にすべきだと主張した。これに対し、日本薬剤師会の森 昌平氏は、医師も服薬管理をするが、薬剤師にもOTC薬を含めた薬剤を一元的管理する役割があるため、連携を取りながら情報を確認する必要があるとした。 また、羽鳥氏は「健康食品の指導が医薬品指導と併記されていることは不適切で、食品を扱うのは栄養士のような専門家がやるべきではないか」と述べた。これに対し、日本保険薬局協会の二塚 安子氏は、薬局で健康食品に関する相談は多くあり、ファーストアクセス窓口としてきちんと情報提供していく必要があるという考えを示した。ほかの構成員からは、健康食品による健康被害事例があることや、今年から機能性表示食品制度開始になったことなどの状況から、薬剤師に健康食品などの研修を徹底すべきとの声が聞かれた。また、保険制度だけではなく、健康増進法や薬機法なども考慮し、最終的な制度設計も考えながら議論すべきとの意見も出た。 時間外対応の実態としては、秋田県薬剤師会の会営薬局の例が森氏より示された。大半の事例は電話相談で済んでおり、緊急で調剤などの店舗対応が必要なケースは少数であることが説明された。事例を踏まえて森氏は、時間外に薬局、薬剤師と必ず連絡が取れることを要件とすべきで、相談内容に応じて調剤や受診勧奨などに責任を持ってつなげられることが必要との考えを示した。 また、NPO法人 ささえあい医療人権センターCOMLの山口 育子氏の「何をもって連携していると判断するのか」という書面での質問に対して森氏は、「地域包括ケアの中で連携を図っていく。薬剤師会に入っていれば自ずと連携できる。そのための職能団体である」との考えを述べた。また、羽鳥氏より、先日のファーマシーフェア2015での日本保険薬局協会 中村 勝氏の「24時間対応・在宅対応、一元管理などは1つの薬局でできるのか疑問」という発言について意見を求められ、森氏は「患者がかかりつけとなる1つの薬局を持つ体制を進めるべきであり、1つの薬局でできないとは思っていない」と述べた。 また、医療資源が少ない地域でも実行可能な仕組みづくりや、お薬手帳の徹底、病院や診療所による血液検査等の情報共有などの必要性に関する意見が出た。【参考】1)厚生労働省第4回健康情報拠点薬局(仮称)のあり方に関する検討会. 厚生労働省. (参照 2015.8.11).2)「健康づくり支援薬局」 資質兼ね備えた薬剤師常駐が要件 厚労省検討会

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抗精神病薬の適応外処方、年代別の傾向を調査

 成人、小児および高齢者における抗精神病薬の適応外処方について、フランス・リール第1大学のLouise Carton氏らはシステマティックレビューにて調査を行った。その結果、近年、適応外処方は広く行われており、その処方内容は患者の年齢層により異なること、使用理由としては治療に行き詰まった場合や承認薬がほとんどない特異的疾患におけるケースが多いことを明らかにした。一方で、その他の適応外処方は軽度な症状に対する処方を一時的に反映しているだけで、著者らは「安全性に対する懸念が生じる可能性がある」と指摘している。Current Pharmaceutical Design誌2015年7月号の掲載報告。 レビューは、PubMed、ScienceDirect databasesを介して、「適応外」+(「抗精神病薬」または「神経遮断薬」)をキーワードに論文検索が行われた。検索対象期間は2000年1月~2015年1月とし、英語で書かれた薬剤疫学的な研究のみを適格とした。 主な結果は以下のとおり。・77本の適格論文が特定された。・成人において、適応外処方(OLP)は、すべての抗精神病薬処方の40~75%を占めていた。・OLP処方における主な症状は、気分障害、不安症、不眠症、興奮であった。・クエチアピンは、とくに不安と不眠症に対して最も頻度が高いOLPであった。・小児において、OLPはすべての抗精神病薬処方の36~93.2%にわたっていた。・主に使用されていたのはリスペリドンとアリピプラゾールで、注意欠如・多動症、不安または気分障害に処方されていた。・高齢者において、OLPはすべての抗精神病薬処方の22~86%を占めていた。・抗精神病薬OLPは、とくに興奮に対する頻度が高かった。しかしながら、このOLPは最近、減少していることが確認された。関連医療ニュース 若年者への抗精神病薬使用、93%は適応外処方 非定型抗精神病薬、小児への適応外使用の現状 アルツハイマー病、46.8%で不適切な薬剤が処方  担当者へのご意見箱はこちら

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事例65 入院中患者の診療所受診分すべての査定(返戻)【斬らレセプト】

解説事例では、審査支払機関から返戻があって初めて、受診した患者が入院中であったことがわかった。入院中の医療機関では、入院基本料などを算定しているため、その患者の全身管理に責任を持つとされ、特別な理由を除き他の医療機関では保険適用はできない。入院中の医療機関がDPC対象病院であり、返戻せんに「合議願います」との添え書きがあったために、幸いにも合議に応じてもらえたが、患者の勝手な受診には応じられないと合議に応じてもらえない場合には、患者に診療費と調剤薬局処方の相殺分のすべてを自費請求しなければならないなど、手数がかかることが予想される事例であった。患者やその家族の中には、どのような場合でも保険が適用になると思われている方は多い。この診療所では、受診中に入院中であることがわかれば、その場で入院中は保険で他院に受診できないため、自費であることを伝える対応を取っていた。今回のような事例の再発を防ぐために、他院入院中の受診に対しての注意を待合室に掲示した。

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早期乳がんの術後ビスホスホネート、ベネフィットは閉経女性のみ?/Lancet

 早期乳がんに対するビスホスホネート製剤による術後補助療法は、骨再発を抑制し、生存期間の改善をもたらすが、明確なベネフィットは治療開始時に閉経に至っている女性に限られることが、Early Breast Cancer Trialists’ Collaborative Group(EBCTCG)の検討で示された。術後ビスホスホネート療法は、早期乳がん女性の無骨転移生存、無病生存、全生存を改善するとの報告がある一方で、全体では有意な効果はないものの、閉経後または高齢女性でベネフィットを認めたとの報告がある。これは、ビスホスホネート製剤は性ホルモンが低下した女性(閉経または卵巣抑制療法)にのみベネフィットをもたらすとの仮説を導く。Lancet誌オンライン版2015年7月23日号掲載の報告より。リスクとベネフィットをメタ解析で評価 研究グループは、早期乳がんに対する術後ビスホスホネート療法のリスクとベネフィットを評価するためにメタ解析を実施した(Cancer Research UKなどの助成による)。 早期乳がんの治療においてビスホスホネート製剤と対照を比較した無作為化試験のうち交絡因子のないすべての試験から個々の患者のデータを抽出した。 主要評価項目は、再発、遠位再発、乳がん死とした。初回遠位再発の部位(骨、その他)、閉経状況(閉経後[自然閉経、人工閉経]、閉経前)、ビスホスホネート製剤のクラス(アミノビスホスホネート[ゾレドロン酸、イバンドロネート、パミドロネート]、その他[クロドロネート])でサブグループ解析を行った。 intention-to-treat集団において、log-rank法を用いてビスホスホネート製剤と対照の初回イベント発生の率比(RR)を算出した。閉経後女性の骨再発を28%、乳がん死を18%抑制 26試験に参加した1万8,766例のデータを解析した。1万8,206例(97%)が2~5年(中央値3.4年)の治療を受け、フォローアップ期間中央値は5.6年であった。この間に3,453例が初回再発し、2,106例が死亡した。 対照と比較したビスホスホネート製剤の全体的な効果は、再発(RR:0.94、95%信頼区間[CI]:0.87~1.01、2p=0.08)、遠隔再発(0.92、0.85~0.99、2p=0.03)、乳がん死(0.91、0.83~0.99、2p=0.04)のいずれも有意水準の境界近くであったが、骨再発(0.83、0.73~0.94、2p=0.004)の抑制効果は明確であった。 閉経前女性では、どの評価項目にも明らかな効果は認めなかったが、閉経後女性1万1,767例の解析では、再発(RR:0.86、95%CI:0.78~0.94、2p=0.002)、遠位再発(0.82、0.74~0.92、2p=0.0003)、骨再発(0.72、0.60~0.86、2p=0.0002)、乳がん死(0.82、0.73~0.93、2p=0.002)が著明に改善された。 一方、ビスホスホネート製剤の骨再発抑制効果は、高齢女性で高く(2p=0.03)、閉経後女性で大きい傾向がみられたものの(2p=0.06)、年齢と閉経状況は密接に関連するため、どちらがより強く関連するかは決定できない。 薬剤のクラス、投与スケジュール、エストロゲン受容体(ER)の状態、局所リンパ節転移の有無、腫瘍の悪性度、併用化学療法の有無による差は認めなかった。また、乳がん以外の原因による死亡に差はなかったが、骨折はビスホスホネート製剤で有意に少なかった(RR:0.85、95%CI:0.75~0.97、2p=0.02)。 著者は、「ビスホスホネート製剤は、主にアロマターゼ阻害薬による治療を受けている閉経後ER陽性乳がん患者において、骨量減少や骨折リスクの抑制を目的に使用される。今回の解析結果は、これに加え、腫瘍に対する効果も有することを示しており、広範な閉経後女性において術後ビスホスホネート療法を考慮すべきであることが示唆される」と指摘している。

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わかる統計教室 第1回 カプランマイヤー法で生存率を評価する セクション4

インデックスページへ戻る第1回 カプランマイヤー法で生存率を評価するセクション4 カプランマイヤー法の生存曲線を比較するセクション1 セクション2 セクション3■いよいよ最後の確認ポイント!再度確認です。このデータの目的は何だったでしょう?「重症心不全のような致死的な疾患に対する薬剤の治療効果を、治療後の生存期間の延びでみようとしたもの」でした。では、これから2つの群の生存曲線を比較する方法について勉強していきましょう。■“log-rank test”と“generalized Wilcoxon test”いろいろな検定方法の中で、生存曲線で2群間に有意な差があるかどうかを調べる検定方法では“log-rank test”と“generalized Wilcoxon test”が使われます。しかし、それぞれの名前や計算方法は、別の機会に学習するとして、どちらの検定でもp値が算出されるということだけ覚えておいてください。この重症心不全のデータの場合は、log-rank testを用いています。とにかくp値にだけ着目してください。p値の判定については、p値が0.05以下ならば「母集団に違いがある」「有意な差がある」ということを表します。ですから、今回のデータでいえば、log-rank testにおけるp値が0.0033で0.05より小さいので、製品A群とプラセボ群の生存曲線に違いがある、つまり有意な差があるといえることになります。これで「2群間の生存曲線に違いがある」と判定できるのです。■生存曲線のグラフに着目p値とともに生存曲線のグラフをみてください。生存曲線は、製品A群がプラセボ群より上側に位置しています。製品A群の生存率はプラセボより高く、製品A群の追加による生命予後の改善があったと解釈できるわけです。この解釈は研究に適用した1,251例の患者データから引き出されたものですが、検定結果(=p値)によって、この解釈は別の患者についてもいえることになります。■2つの検定の違いは何?基本的な考え方だけご説明します。log-rank testは、期別死亡率がどの時点でも同等であると考えて用いるものです。generalized Wilcoxon testでは、最初のほうは例数が多いため信頼性が高く、後のほうは例数が少ないことから信頼性が低いとして、期別死亡数に重み付けをして検定計算しています。たとえば、難治性のがんのように大半の患者が死亡してしまうような時は、generalized Wilcoxon testが用いられるということになります。■ハザード比=0.56とは?ハザード比というのは、「疾患による死亡の『危険』が、治療によってどれくらいの倍率で抑えることができたか」ということです。言い換えれば、生存率がどれくらいの倍率で高くなるか、ということを計算した結果ということになります。このデータでは、「ハザード比は0.56だから、プラセボ群で治療するより製品A群のほうが生存率は1.78(1÷0.56)倍高くなる」ということになります。ちなみに、図にある「95%CI」はハザード比の95%信頼区間のことです。データをみると0.40~0.78なので、製品A投与によって、生存率が1.29~2.48倍の範囲で高くなるということです。つまり、95%の確率でその範囲内に収まるということになります。そして、「Cox比例ハザードモデル」というのはハザード比の算出方法を指しています。[ハザード比の算出は、多変量解析のCox比例ハザードモデルで、目的変数をアウトカム(死亡、打ち切り)、説明変数を観察期間、群(製品A群、プラセボ群)として算出します]※検定、信頼区間などは別の機会に学習していきます。■今回のポイント1)p値を確認!「0.05のバーをくぐると有意差あり」2)ハザード比は“危険回避度合”、つまり生存率の高まりを示す!次回より、リスク比(相対危険度)とオッズ比を学習します。インデックスページへ戻る

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20年以内に胃がん発症の可能性がある人は?/BMJ

 悪性徴候がなく胃内視鏡検査により生検を受けた人において、20年以内に胃がんを発症するのは、正常粘膜の人では約256人に1人、胃炎は85人に1人、萎縮性胃炎50人に1人、腸上皮化生39人に1人、異形成19人に1人であることが、スウェーデン・カロリンスカ研究所のHuan Song氏らによる検討の結果、示された。同国低リスク集団40万人超を対象とした観察コホート研究の結果、明らかにしたもの。著者は、「さらに費用対効果の検討を行い、長期的な胃の前がん病変の内視鏡サーベイランスの施策に、これらの数字を生かしていく必要がある」とまとめている。BMJ誌オンライン版2015年7月27日号掲載の報告より。悪性徴候がなく胃生検を受けた40万5,211人を追跡 検討は、スウェーデンの全国疾患レジスターデータから、1979~2011年に悪性徴候がなく胃生検を受けた40万5,211人を対象とした。 主要評価項目は胃がんの発生で、ベースラインの生検結果に基づく粘膜変化別患者群(Correa’s cascade群とその他診断群)で評価した。Correa’s cascade群は、正常粘膜、軽度の粘膜変化あり、胃炎、萎縮性胃炎、腸上皮化生、異形成の各群に分類された。 スウェーデン一般集団を参照値とした標準化発生率で相対リスクを推算し評価した。Correa’s cascade群内の各粘膜変化患者群の検討では、Cox回帰モデルを用いて正常胃粘膜患者群との比較によるハザード比を算出して評価した。胃粘膜病変の進行度に伴い胃がんリスク増大が明らかに フォローアップの当初2年を除外後、Correa’s cascade群には28万8,167例(平均年齢56歳、男女比:1対1.24)、その他診断群には5万4,130例が分類された。Correa’s cascade群の追跡期間は約10年(腸上皮化生の7.9年以外は同等)であった。 追跡期間中、胃がんと診断された人は全コホートでは1,599例であった。そのうちCorrea’s cascade群は1,273例であった。 Correa’s cascade群の胃がんの粗年間発生率は、正常粘膜群20×10-5(標準化発生率1.0)、軽度の粘膜変化あり42×10-5(同1.5)、胃炎59×10-5(同1.8)、萎縮性胃炎100×10-5(同2.8)、腸上皮化生129×10-5(同3.4)、異形成263×10-5(同6.5)であった。 Cox回帰モデルによる検討の結果、胃粘膜病変の進行に伴いリスクが増大することが示され、最も高い異形成群のリスクは正常粘膜群の10.9倍であった(ハザード比:10.9、95%信頼区間[CI]:7.7~15.4)。 発生率の増大はフォローアップ期間を通して一定してみられ、各群間の累積発生率の差は広がり続けた。

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ポンプ本体全内面を生体材料で構成した全置換型人工心臓、初の臨床例を報告/Lancet

 新たに開発された生体弁を用いた全置換型人工心臓CARMAT TAH(C-TAH)の、最初の臨床使用例2例の報告が、フランス・パリ大学のAlain Carpentier氏らにより発表された。2例とも最終的には死亡となったが、うち1例は150日目に退院することができたという。著者は「今回の経験知は、生体材料を用いた全置換型人工心臓の開発に重要な貢献をもたらすことができた」と述べている。Lancet誌オンライン版2015年7月28日号掲載の報告。2例に行われた初の施行例 本検討の目的は、両室心不全で移植不適者であり死が目前に迫った患者について、C-TAHの安全性と使用の可能性を評価することであった。C-TAHは、植込み型の電気駆動型拍動式両室ポンプの人工心臓装置で、バッテリー以外の部品は1装置に収められ、患者の心室を摘出して置換する。これまで、末期の心疾患患者に対する人工心臓の開発では、血栓塞栓症や出血の合併症が重大な課題となっており、これら合併症の発生は生体弁では低率であることからC-TAHが開発された。 研究グループは、フランスの3つの心臓外科センターから、2例の男性患者を選出し、植込み置換手術を行った。 患者1は76歳で、2013年12月18日にC-TAH移植を施行。患者2は68歳で2014年8月5日に移植が行われた。これまで重大な課題であった血栓問題は克服 両心バイパスに要した時間は、患者1が170分、患者2は157分であった。 両患者とも術後12時間以内に抜管。呼吸機能および循環機能は迅速に回復し、精神状態も良好であった。 患者1は23日目に心タンポナーデを呈し再介入が必要となった。術後出血により抗凝固薬は中断。C-TAHは良好に機能し心拍出量は4.8~5.8L/分であったが、74日目に、装置故障により死亡した。 剖検では、抗凝固薬が約50日間投与されなかったにもかかわらず、生体弁またその他臓器からも血栓は検出されなかった。 患者2は、一過性の腎不全および心嚢液貯留で排液を要したが、それ以外は術後経過に問題はみられず150日目に退院となった。ウェアラブルシステムのみで技術的補助は必要としなかった。 自宅に戻ってから4ヵ月後、低心拍のためC-TAHを交換。しかし多臓器不全で死亡した。

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ピオグリタゾンのがんリスクを検討~20万人のコホート試験/JAMA

 ピオグリタゾン(商品名:アクトスほか)の使用は、膀胱がんリスク増大と有意な関連は認められなかったが、がんリスクを除外することはできないことを、米国・ペンシルベニア大学のJames D. Lewis氏らが、約20万人について行ったコホート試験の結果、報告した。前立腺がんおよび膵臓がんリスク増大との関連が示され、著者は「さらなる検討を行い、それらの関連性に因果関係があるのか、偶然によるものか、残余交絡や逆相関についても調べる必要がある」とまとめている。JAMA誌2015年7月21日号掲載の報告。膀胱がん、その他10種類のがん発症リスクとの関連を追跡 研究グループは、米国のカイザー・パーマネンテ北カリフォルニアのデータベースから、1997~2002年時点で40歳以上の糖尿病患者19万3,099例(膀胱がんコホート)について、2012年12月まで追跡し、ピオグリタゾン使用と膀胱がんリスクについて分析した。 さらに、膀胱がんほか、前立腺がん、女性の乳がんや、肺(気管支含む)、子宮体、結腸、非ホジキンリンパ腫、膵臓、腎臓/腎盂、直腸、メラノーマの10種類のがんリスクとの関連について、40歳以上の糖尿病患者23万6,507例について、1997~2005年から2012年6月まで追跡した。ピオグリタゾン、前立腺がんを1.13倍、膵臓がんを1.41倍に 膀胱がんコホートのうちピオグリタゾンを服用したことのある人は、3万4,181例(18%)で、服用期間中央値は2.8年だった。そのうち膀胱がんを発症した人は1,261例で、ピオグリタゾン使用者の膀胱がん粗発生率は89.9/10万人年に対し、非使用者では75.9/10万人年だった。ピオグリタゾン使用者は非使用者と比べて、膀胱がん発症リスクの増大は認められなかった(補正後ハザード比:1.06、95%信頼区間[CI]:0.89~1.26)。 結果は、ケースコントロール解析でも同様であった(ピオグリタゾン使用:症例患者群19.6%、対照群17.5%、補正後オッズ比1.18、95%CI:0.78~1.80)。 補正後解析において、その他10種類のがんのうち8種類では、ピオグリタゾン使用により発症リスク増大はみられなかったが、前立腺がん(ハザード比:1.13、95%CI:1.02~1.26)と膵臓がん(同:1.41、1.16~1.71)では増大がみられた。使用者 vs.非使用者の粗発生率は、10万人年当たり前立腺がんが453.3 vs.449.3人年、膵臓がんが81.1 vs.48.4人年だった。

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ベンゾジアゼピン系薬の中止戦略、ベストな方法は

 ベンゾジアゼピン系薬およびZ薬(ゾピクロン、ゾルピデム、ゼレプロン)の長期使用例における投与中止戦略について、カナダ・ダルハウジー大学のAndre S. Pollmann氏らはscoping reviewを行って検討した。その結果、多様な戦略が試みられており、その1つに漸減があったがその方法も多様であり、「現時点では複数の方法を組み合わせて処方中止に持ち込むことが妥当である」と述べている。鎮静薬の長期使用が広く行われているが、これは転倒、認知障害、鎮静状態などの有害事象と有意に関連する。投与中止に伴いしばしば離脱症状が出現するなど、依存症の発現は重大な問題となりうることが指摘されていた。BMC Pharmacology Toxicology誌2015年7月4日号の掲載報告。 研究グループは、地域在住成人のベンゾジアゼピン系薬およびZ薬長期使用に対する投与中止戦略について、scoping reviewにより文献の位置付けと特徴を明らかにして今後の研究の可能性を探った。PubMed、Cochrane Central Register of Controlled Trials、EMBASE、PsycINFO、CINAHL、TRIP、JBI Ovid のデータベースを用いて文献検索を行い、grey literatureについても調査を行った。選択文献は、地域在住成人におけるベンゾジアゼピン系薬あるいはZ薬の投与中止方法について言及しているものとした。 主な結果は以下のとおり。・重複を除外した後の文献2,797件について適格性を検証した。これらのうち367件が全文評価の対象となり、最終的に139件がレビューの対象となった。・74件(53%)がオリジナル研究で、その大半は無作為化対照試験であり( 52件[37%])、58件(42%)がnarrative review、7件(5%)がガイドラインであった。・オリジナル研究の中では、薬理学的戦略が最も多い介入研究であった( 42件[57%])、その他の投与中止戦略として、心理療法、(10件[14%])、混合介入(12件[16%])、その他(10件[14%])が採用されていた。・多くは行動変容介入が併用されており、その中には能力付与による可能化(enablement)(56件[76%])、教育(36件[47%])、訓練(29件[39%])などが含まれていた。・多くの研究、レビュー、ガイドラインに漸減という戦略が含まれていたが、その方法は多様であった。関連医療ニュース 長期ベンゾジアゼピンの使用は認知症発症と関係するか 抗精神病薬の単剤化は望ましいが、難しい メラトニン使用でベンゾジアゼピンを簡単に中止できるのか  担当者へのご意見箱はこちら

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