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糖尿病患者へのRAS阻害薬、他の降圧薬より優れるのか?/BMJ

 糖尿病患者へのレニン・アンジオテンシン系(RAS)阻害薬の使用について、他の降圧薬と比べて心血管リスクや末期腎不全リスクへの影響に関して優越性は認められないことを、米国・ニューヨーク大学医学部のSripal Bangalore氏らが、19の無作為化試験について行ったメタ解析で明らかにした。多くのガイドライン(2015米国糖尿病学会ガイドライン、2013米国高血圧学会/国際高血圧学会ガイドラインなど)で、糖尿病を有する患者に対しRAS阻害薬を第1選択薬として推奨しているが、その根拠となっているのは、20年前に行われたプラセボ対照試験。対照的に、2013 ESH/ESCガイドラインや2014米国合同委員会による高血圧ガイドライン(JNC8)は、近年に行われた他の降圧薬との試験結果を根拠とし、RAS阻害薬と他の降圧薬は同等としている。BMJ誌オンライン版2016年2月11日号掲載の報告。死亡、心血管死、心筋梗塞や末期腎不全などの臨床的アウトカムを比較 研究グループは、PubMed、Embase、Cochrane centralを基に、糖尿病患者を対象とした、RAS阻害薬 vs.その他の降圧薬に関する無作為化試験についてメタ解析を行った。 主要評価項目は、死亡、心血管死、心筋梗塞、狭心症、脳卒中、心不全、血行再建術、末期腎不全だった。心血管・腎不全の臨床的アウトカムで、RASは他の降圧薬と同等 メタ解析の対象となったのは、19の無作為化試験で、糖尿病被験者総数2万5,414例、延べ追跡期間9万5,910患者年だった。 RAS阻害薬はその他の降圧薬と比較して、全死因死亡(相対リスク:0.99、95%信頼区間:0.93~1.05)、心血管死(同:1.02、同:0.83~1.24)、心筋梗塞(同:0.87、同:0.64~1.18)、狭心症(同:0.80、同:0.58~1.11)、脳卒中(同:1.04、同:0.92~1.17)、心不全(同:0.90、同:0.76~1.07)、血行再建術(同:0.97、同:0.77~1.22)のいずれのエンドポイントのリスクについても同等だった。 また、末期腎不全の臨床アウトカムについても、他の降圧薬との比較で、有意差はなかった(同:0.99、同:0.78~1.28)。 結果を踏まえて著者は、「初見は、ESH/ESCガイドラインやJNC8の推奨を支持するものであった。それらのガイドラインでは、腎障害を有していない糖尿病患者に対しては、いずれの降圧薬も同等に推奨されている」とまとめている。

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第6回医療法学シンポジウム開催のご案内

 3月12日(土)に第6回医療法学シンポジウムが、「少子高齢化社会を乗り越える医療制度の実現に向けて」をテーマに開催される。少子高齢化が進展するわが国で、将来も安定した医療体制を提供することができるのか、国内の有識者が問題解決への糸口を探る。 各講演のテーマならびに講演者は次の通りである。プログラム(敬称略)・開会のあいさつ 武見 敬三(参議院議員)・第1部 講演 12:10~12:30 「2035のビジョンがなぜ必要か」 渋谷 健司(東京大学大学院医学系研究科国際保健政策学教室教授) 12:30~12:50 「健康日本21 エビデンスに基づいた医療政策決定」 羽鳥 裕(日本医師会常任理事、稲門医師会会長) 12:50~13:10 「認知症患者ケアと終末期の実際」 灰田 宗孝(東海大学理事、東海大学医療技術短期大学学長、稲門医師会副会長) 13:10~13:30 「医療経済学と向き合う」 中田 善規(帝京大学大学院公衆衛生学研究科教授) 13:30~13:50 「医療法学における視点」 大磯 義一郎(浜松医科大学法学教授、日本医科大学医療管理学客員教授、帝京大学医療情報システム研究センター客員教授、稲門医師会理事) 13:50~14:10 「アドバンス・ケア・プランニング(ACP)の実践 静岡県西部の現在と未来」 井上 真智子(浜松医科大学地域家庭医療学講座特任教授)・第2部 パネルディスカッション 14:20~14:50 パネルディスカッション 14:50~15:00 閉会のあいさつ 土屋 了介(公益財団法人がん研究会理事、神奈川県顧問、地方独立行政法人神奈川県立病院機構 理事長)開催日時ならびに会場日時:2016年3月12日(土)    講演・シンポジウム 12:00~15:00   レセプション 15:30~17:30(要予約、場所は追って連絡いたします)会場:早稲田大学大隈記念講堂(大隈小講堂)   〒169-0071 東京都新宿区戸塚町1-104   早稲田大学へのアクセスマップはこちら費用:無料(ただしレセプション参加には3,500円必要)対象:医師、看護師、医療従事者、医学生など申込:氏名、所属、連絡先、レセプション参加希望の有無を記載のうえ、下記事務局宛までお申込みください。   事務局メールアドレス:lawjimu@hama-med.ac.jp

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家族性大腸腺腫症〔FAP : familial adenomatous polyposis〕

1 疾患概要■ 概念・定義家族性大腸腺腫症(FAP)は、APC遺伝子の生殖細胞系列変異を原因として、大腸の多発性腺腫を主徴とする常染色体性優性遺伝性の一種のがん症候群である。■ 疫学FAPの発生頻度は、欧米では出生10,000~20,000人に1人と推定されている。日本においては17,400人に1人と推測されており、世界的にあまり差がない。■ 病因APC遺伝子の生殖細胞系列の変異が原因ではあるが、腺腫はAPC遺伝子の機能喪失、すなわちもう一方のAPC遺伝子の体細胞変異(結果的に両方の遺伝子の異常:細胞単位では劣性発現といえる)によって引き起こされる。APC遺伝子は、その機能としてはいわゆる腫瘍抑制遺伝子ともいえる。APC遺伝子の実際の機能あるいは大腸がんに至る遺伝子変異の詳細は不明である。■ 症状下痢、下血(排便時出血)、腹痛、貧血が主な症状である。このような症状が若年に起こるために、胃腸虚弱ないし痔核からの出血だろうと考えられて、大腸がんの危険性が見過ごされやすい。FAPあるいは大腸がんの家族歴があればより注意が必要である。■ 分類大腸腺腫数で分類するのが一般的である(表1)。大腸腺腫数の計測は困難であるが、おおよその数で分類されている。腺腫数はAPC遺伝子変異部位と関連するといわれる。傾向として腺腫数が多いほど発症年齢が若く、また大腸がんが発生しやすい。画像を拡大する100個未満の多発性ポリープを「oligo-polyposis」ということがある。また、大腸ポリポーシスにデスモイドあるいは外骨腫を合併する症例を「ガードナー症候群」ということがあるが、FAPの一部と考えられている。■ 予後大腸がんをはじめ、ほかの消化管がん、デスモイド腫瘍、そのほかのがんを早期に制御、治療できれば予後は良好である。主として大腸がんおよびほかの消化管がんのコントロールが重要である。ただしそれを生涯にわたって行わなければならない点で、患者の負担が大きく、その難しさがある。2 診断 (検査・鑑別診断も含む)■ 検査1)最も有力な検査は、病理組織学的検査を伴う大腸内視鏡検査(図1)である。注腸造影検査によって大腸内のポリープの分布の様子が観察される。大腸にびまん性のポリポーシスを認め、それが腺腫である場合はFAPである可能性が強い。画像を拡大する2)上部消化管検査は必須である。(1)胃内視鏡検査:胃底腺ポリポーシス、腺腫およびがんの鑑別をして対応する。(2)十二指腸内視鏡検査:スピゲルマンによるおおよその病期分類を行い対応する(表2)。画像を拡大する(3)小腸検査:大腸手術後状態で、(大腸がんより小腸がんが先に出ることは少ない)腹痛などがあれば小腸検査が望ましい。バリウム造影、カプセル内視鏡がスクリーニングとして行われる。3)随伴病変(その他のがんを含む)の検査(1)先天性網膜色素上皮肥大(図2):視力には影響ない。補助診断として用いられる。画像を拡大する(2)潜在骨腫または外骨腫(図3):共に治療の必要はない。補助診断として用いられる。画像を拡大する(3)デスモイド腫瘍(図4):過去にデスモイド既往がある場合、または家系内にデスモイド患者が出た場合は、よりデスモイド腫瘍が発生しやすいといわれている。画像を拡大する(4)甲状腺がん:若年女性に多い。乳頭がんであるが、そのなかに特徴的な組織像を示すことがある。治療成績は通常の乳頭がんと同様で良好である。触診ないしエコー検査を行う。(5)卵巣がん、子宮がん: 35歳以上では定期検査を勧めるべきである。■ 鑑別診断1)ポリープ数が少ない状態のFAP(attenuated FAP:AFAP)APC遺伝子変異はあるが、ポリープ数が100個に満たない(oligo-polyposisの状態)。2)MUTYH関連ポリポーシス(MAP)DNA酸化障害の修復に関わるMUTYH遺伝子変異の異常によって発生する大腸腺腫症。ポリープ数は少ない場合が多いが、まれに1,000個近くのこともある。常染色体劣性遺伝性である。3)ポリメラーゼ校正遺伝子関連ポリポーシス(PPAP)ポリープ数は多くて数個~数十個。形質発現はAFAP、MAPないしリンチ候群に類似すると思われるが、さらに症例の集積と検討が必要である。3 治療 (治験中・研究中のものも含む)FAPにおいては予後の項で述べたように、がん発生について生涯にわたり注意が必要である。各臓器の良性腫瘍の病期は発がんの危険性と相関するため、病期を維持ないし低減できればがん発生を抑えられる可能性がある。筆者はこれを「病期低減戦略(stage reduction strategy)」ないし「病期低減治療(stage reduction treatment)」と位置づけている。これはFAPのすべてに通ずる。■ 原則1)早期診断これにより病期を低いところでみつけることができる。2)病期低減治療大腸腺腫、十二指腸(乳頭部)腺腫、デスモイド腫瘍に当てはまるそれぞれ異なった病期に対して、それを維持ないし低減する方法が取られることになる。それは利益と損失を考慮して判断される。■ 大腸1)内視鏡治療今後の発展によって病期低減治療法の中心になる可能性がある。ポリープ数が比較的少ない状況で適応になる。また、5mm以下の小さいポリープは、早期にがん化するとは考えられず、必ずしも切除する必要はない。2)化学・薬物治療現在実用的ではない。3)手術治療次の3つの方法が一般的である。(1)大腸全摘・回腸瘻造設術:大腸に関しては最も根治的。生活の質も悪くはない。(2)結腸全摘・回腸直腸吻合術:病期低減治療である。直腸ポリープが少ない必要がある。直腸は最もがんが発生する危険性が高い。(3)大腸全摘・J型回腸嚢肛門管吻合術:上記2つの利点を取ったものである。ただし手術が複雑。良好な排便機能が得られるかどうか、不安定である。直腸がんの危険はかなり低減するが、肛門に近い直腸粘膜が残るため、理論上ゼロとはならない。時間と共にJ嚢内に腺腫が高率に発生することもわかっており、術後の内視鏡検査は引き続き必要である。■ 十二指腸、乳頭部腺腫経過観察、および病期が上がった場合に、それに応じて病期を下げる手段としては、(1)内視鏡的切除、(2)十二指腸切開局所切除、(3)膵温存十二指腸切除、(4)膵頭十二指腸切除などが選択される。■ デスモイド腫瘍悪性ではないが、浸潤性に発達しやすい線維腫症といえる状態で治療にやや難渋する。デスモイドの出やすい状況(診断の項を参照)であれば、内視鏡治療を優先して手術をなるべく遅くする。大腸切除術後の約8%に発生する。発生部位は腹腔内(後腹膜、腸間膜)および腹壁手術瘢痕部に発生する。死亡率は10%以下と考えられる。病期分類および治療の指針としてChurchによる分類がある(表3)。画像を拡大する4 今後の展望1)病期低減治療法として、内視鏡的ポリープ切除の効果について多施設研究が始まっている。まだ標準的治療法ではない。2)大腸癌研究会家族性大腸癌委員会において、いくつかの研究プロジェクトが計画施行されつつある。3)十二指腸腺腫:膵温存十二指腸切除術など、病期に応じた治療法が検討されつつある。5 主たる診療科消化器内科および消化器外科が主たる診療科となり、病態に応じて、婦人科、内分泌外科などに相談する。※ 医療機関によって診療科目の区分は異なることがあります。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)診療、研究に関する情報国際消化管遺伝性腫瘍学会InSiGHT(医療従事者向けの英文サイト:ここからの情報は世界標準となる)大腸癌研究会(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報:日本の活動の現況がわかる)患者会情報ハーモニー・ライフ:関東の患者会(患者、患者家族向けの情報:ニュースレターほか、種々の情報が得られる)ハーモニー・ライン:関西の患者会(患者、患者家族向けの情報:疾患に関する冊子などが得られる)デスモイド基金(アメリカの患者支援組織、英文サイト)1)大腸癌研究会編. 遺伝性大腸癌診療ガイドライン2012年版.金原出版;2012.2)大腸癌研究会編. 大腸癌治療ガイドライン医師用2014年版.大腸癌研究会;2014.3)岩間毅夫.日内会誌.2007;96:207-212.4)岩間毅夫.日本大腸肛門病会誌.2004;57:859-863.公開履歴初回2013年10月24日更新2016年02月23日

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ジカウイルス感染症に気を付けろッ! その3【新興再興感染症に気を付けろッ!】

ケアネットをご覧の皆さま、こんにちは。国立国際医療研究センター 国際感染症センターの忽那です。本連載「新興再興感染症に気を付けろッ!」、通称「気を付けろッ」は「新興再興感染症の気を付け方」についてまったりと、そして時にまったりと、つまり一貫してまったりと学んでいくコーナーです。第18回となる今回は、前回、前々回に引き続きジカウイルス感染症を取り上げたいと思います。「おいおい、どんだけジカウイルス感染症で引っ張るんだよ」と思われる読者の方もいらっしゃるでしょう。私もちょっと引っ張り過ぎかな~なんて思っています。でも…担当I氏が「ジカウイルス感染症、閲覧数伸びてます…伸びすぎてますよ~!!」と殊のほか喜んでおり、「まさかこの連載がこんなに注目されるとは…この勢いでもう1回、ジカウイルス感染症いっちゃいましょう! まだ絞れば何か出てくるでしょう!」と無茶を言うので、今までどんだけ人気なかったんだこの連載とちょっと心配になりつつも、せっかくですのでもう一度ジカウイルス感染症について語りたいと思います。われわれ医療従事者にとって大事なことは、海外でジカウイルス感染症に感染して日本で発症した患者さんを早期に診断して、その患者さんがそれ以上蚊に咬まれないようにすることです。ジカウイルス感染症を正しく診断することが、国内流行の防止につながるのです!というわけで、今回は輸入感染症の診断の原則も振り返りつつ、実際の症例アプローチについて考えてみましょう。南太平洋の楽園には危険もいっぱい【症例 とくに既往のない20代男性】●現病歴受診4日前昼過ぎから発熱と頭痛が出現。熱は微熱程度であった。夜からは全身の関節痛も出現した。受診3日前朝起きた際に、顔・体幹に皮疹が出ていることに気付いた。受診当日皮疹の原因が気になり、当院を受診した。ジカウイルス感染症患者さんは、このような経過で病院を受診されます。私が診た3名の方は、皆さん「皮疹が出てビックリしたので」というのが受診理由でした(図1)。デング熱の患者さんは「熱がつらくて」「頭が痛くて」といった主訴で受診するので、この「重症感のなさ」はジカウイルス感染症の特徴かと思います。●身体所見体温 37.2℃、脈拍数 75/分、血圧 119/69mmHg、呼吸数 12/分、SpO2 97%(RA)両後頸部リンパ節の腫脹・圧痛あり顔面・体幹に一部癒合し浸潤を触れない紅斑を認めるその他、特記すべき異常所見なし画像を拡大する皮疹の性状だけでジカウイルス感染症と診断するのは困難でしょう。デング熱、麻疹・風疹、梅毒、急性レトロウイルス症候群などさまざまな疾患との鑑別になります。試しに『ヒフミル君』(医師のための簡単・無料の診断支援サービス)に皮疹の写真を送ってみましたが、ジカウイルス感染症という診断は返ってきませんでしたッ!(麻疹・風疹というご回答でした)注目すべきはバイタルサインです。体温37.2℃。微熱です。以前の名称「ジカ熱」と言いつつ、発熱と呼べるほどの高熱ではありません。ジカウイルス感染症患者では発熱がみられないことすらあります。そういう意味では「ジカ熱」という名称よりも、「ジカウイルス感染症」のほうが正しいと言えるでしょう。輸入感染症診療のロジック名著『症例から学ぶ 輸入感染症 A to Z』(中外医学社)に書かれているように、輸入感染症の診断の第一歩は「海外渡航歴の有無を確認すること」から始まります。発熱、下痢、皮疹のいずれかの症状のある患者さんを診たら、海外渡航歴を聴取する習慣を付けましょう!●海外渡航歴:受診の12日前から5日前までタヒチのボラボラ島などで観光していたなんと! これは驚きですッ! 海外渡航歴がありましたッ!まあこの患者さんはジカウイルス感染症なので、海外渡航歴があるのは当たり前ですね。さて、しつこいようですが、名著『症例から学ぶ 輸入感染症 A to Z』(中外医学社)には「輸入感染症診療のロジック」として「『(1)渡航地 (2)潜伏期 (3)曝露歴』の3つから鑑別を絞り込むべし」と書かれています。最初の渡航地とは渡航していた国、地域ですね。アフリカでかかる病気と東南アジアでかかる病気とでは大きく違います。各地域の疫学を知っておくことが重要です。本症例の渡航地であるタヒチ島があるオセアニア地域ではデング熱、チクングニア熱、ジカウイルス感染症の新興蚊媒介性感染症の三兄弟(私が勝手に呼んでるだけです)が、三つ巴状態で流行しています。本症例でもこれら3疾患は鑑別に加える必要があるでしょう。また、オセアニアではマラリア、A型肝炎、腸チフスなども鑑別に挙げる必要があります。次に潜伏期です。輸入感染症の診断において潜伏期の考え方は非常に重要です。この患者さんは受診の12日前から5日前までタヒチ島にいて、4日前から発熱が出現しています(図2)。そうしますと、この患者さんがタヒチ島で感染したと仮定すれば、この感染症の潜伏期は1~8日ということになります。この潜伏期がわかることによって、大幅に鑑別診断を絞ることができます。表は主な輸入感染症の潜伏期を3つに区切ってまとめたものです。本症例はこの表中の「短い潜伏期」グループに属します。つまり、この時点でマラリア、腸チフス、A型肝炎などは除外することができます。画像を拡大する画像を拡大する3つ目は曝露歴です。ジカウイルス感染症を考えた場合は、蚊に刺されたかどうかが重要になるわけですが、実際に自分が旅行中に蚊に咬まれたかなんて覚えてない人のほうが多いので、「具体的にどのような防蚊対策をしていたのか」を聞くことによって、蚊の曝露量を推定します。これまでわが国の輸入ジカウイルス感染症患者さんは、皆さん防蚊対策がされていませんでした。渡航者への防蚊対策の指導も、われわれ医療従事者の大事な仕事です。いよいよ確定診断へ渡航地、潜伏期、曝露歴などからデング熱、チクングニア熱、ジカウイルス感染症が鑑別に挙がりました。もちろん発熱と皮疹を呈する疾患として、これら輸入感染症とは別に、国内で感染した梅毒や急性レトロウイルス症候群なども鑑別に挙がるかと思います。さて、血液検査を見てみましょう。●血液検査WBC 4310/μL、RBC 488×104/μL、Hb 14.0 g/dL、Hct 41.5%、Plt 16.9×104/μL、CRP 0.48mg/dL、TP 7.6g/dL、Alb 4.2g/dL、AST 21IU/L、ALT 15IU/L、LDH 207IU/L、γ-GTP 20IU/L、ALP 189IU/L、T-bil 0.6mg/dLこの血液検査から何が言えるでしょうか? ここから言えることは「何も言えねえ by 北島康介」ってことです。ジカウイルス感染症の血液検査所見は、これといった特徴がなく、血液検査所見で診断を詰めるのは困難です。ここまでの病歴・身体所見・渡航歴から、デング熱、チクングニア熱、ジカウイルス感染症、梅毒、急性レトロウイルス症候群などが鑑別疾患として挙がりました。さあ…ここからジカウイルス感染症までどう絞り込むのかが、今回の最大のポイント…ではなく、もうここまで絞り込めたら十分なのです。デング熱を鑑別に挙げたときには、ジカウイルス感染症も一緒に鑑別疾患として挙げる。これがボトムラインです。これさえ忘れなければ、ジカウイルス感染症を見逃すことはかなり少ないと言えるでしょう。というわけで、ここからはジカウイルス感染症の検査を保健所に依頼しましょう。血清のRT-PCRを行ってジカウイルスを検出することで診断となりますが、ジカウイルスは発症から数日で血中から消失すると考えられています。一方で、尿中からはもう少し長く検出されることがわかっています。ですので、発症から時間が経っている場合には、血液だけでなく尿も検体として採取しましょう。抗体検査による診断も可能です。デング熱と同様に、急性期と回復期のペア血清による診断を行います。この症例では、尿からジカウイルスが検出され、ジカウイルス感染症と診断されました。2016年2月15日よりジカウイルス感染症は「4類感染症」に指定されましたので、ジカウイルス感染症と診断した医師は、ただちに保健所に届け出なければなりません。そして、しつこいようですが、大事なことは患者さんが日本国内で蚊に咬まれないことです(とくに蚊が多い夏場は要注意)。さて、いかがでしたでしょうか。輸入感染症としてのジカウイルス感染症のイメージが湧きましたでしょうか? 次に輸入ジカウイルス感染症を診断するのは、あなたかもしれません。輸入ジカウイルス感染症症例に備え、日ごろからイメトレをしておきましょう!1)忽那賢志. 症例から学ぶ 輸入感染症 A to Z.中外医学社;2015.2)Centers for Disease Control and Prevention. Emergency Preparedness and Response: Recognizing, Managing, and Reporting Zika Virus Infections in Travelers Returning from Central America, South America, the Caribbean, and Mexico.

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プロトコールに基づく薬剤師の介入で、医療の質向上を

 日本医療薬学会は2月11日、都内にて「薬剤師が担うチーム医療と地域医療の調査とアウトカムの評価研究シンポジウム」(研究代表者:東京医科歯科大学 教授 安原 眞人氏)を開催した。この研究は2013年から厚生労働科学研究事業として、チーム医療の進展や地域医療の拡充に向けて、薬剤師の担う役割を明確にし、求められる専門性を生かすための実践的方法論を確立することを目的として、3年間の計画で開始された。初年度は先行事例の収集、2014年度はアウトカム評価、そして2015年度は実践的方法論に焦点が当てられた。 チーム医療推進研究においては、プロトコールに基づく薬物治療管理(Protocol Based Pharmacotherapy Management、以下PBPM)の導入・実施をテーマとし、そのアウトカムは、医療の質、安全性、経済性、そして医療従事者の負担軽減を指標として評価された。 また、地域医療推進研究の主題は、かかりつけ薬局機能を持った在宅医療提供薬局を推進するための新たな基準作成であり、2014年に「薬局に求められる機能とあるべき姿」が発表された。これは翌年発表の「患者のための薬局ビジョン」策定へとつながり、さらには2016年度の診療報酬改定で新設された、かかりつけ薬剤師・薬局の評価へと発展していった。 2015年度研究における具体的なアウトカムとして、下記の事例が紹介された。たとえば、名古屋大学医学部附属病院では、医師や看護師と協議のうえ承認されたプロトコールに基づき、薬剤師が処方入力支援をしたことにより、臨時処方や緊急処方が減少した。また、薬剤師外来でのワルファリン療法におけるPBPMにより、PT-INR値が目標治療域に達する患者割合が増加した例なども挙げられた。 地域医療の事例としては、茨城県笠間市の禁煙治療プログラムにおける、プロトコールに基づく薬剤師介入後の禁煙率上昇などが報告された。一方で、地域におけるPBPMは、複数の施設間での合意が必要となるため、医療機関のような同一施設内よりも、導入・実施がより難しいことが指摘された。 2010年度の厚生労働省医政局長通知「医療スタッフの協働・連携によるチーム医療の推進について」(医政発0403第1号)では、薬剤師を積極的に活用することが可能な業務の1つとして、「薬剤の種類、投与量、投与方法、投与期間等の変更や検査のオーダについて、医師・薬剤師等により事前に作成・合意されたプロトコールに基づき、専門的知見の活用を通じて、医師等と協働して実施すること」が挙げられている。しかしながら、同研究班の調査によると、同業務を5割以上実施している医療施設の割合は、2013年時点で約15%にとどまっている。同研究班では、最終報告書策定に向けて、現在PBPMの導入マニュアルを作成しており、今後、医療現場での活用が期待される。

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ベーチェット病〔BD: Behcet’s disease〕

※疾患名にある「Behcet's」は「」が正しい綴りですが、WEB上では正しく表示されない場合があるため、本ページでは「Behcet's」としています。1 疾患概要■ 概念・定義ベーチェット病(BD)は、多臓器侵襲性の非肉芽腫性炎症性疾患であり、病因はいまだ不明の多因子疾患で、口腔粘膜のアフタ性潰瘍、皮膚病変、眼病変、外陰部潰瘍を4主病変として、急性炎症性発作を繰り返すことを特徴とする疾患である。病名の由来は、1937年、トルコのイスタンブール大学皮膚科のベーチェット教授の報告に基づく。近年、新患症例の減少と病態の軽症化が指摘されている。■ 疫学1972(昭和47)年にスモン、重症筋無力症、全身性エリテマトーデス(SLE)とともに最初に厚生労働省(当時は厚生省)の特定疾患の治療研究事業対象疾患として指定された。疾患の伝播経路から「シルクロード病」ともいわれる。特定疾患医療受給者数は、2万35人で(2015年3月末現在の特定疾患医療受給者数は1万9,147人)、男女比はほぼ同数だが特殊型や重症型は男性に多い。■ 病因(図1)遺伝的にはHLA-B51やHLA-A26との関連、環境因子としてS.sanguinisや熱ショック蛋白(HSP)との関連などが報告されている。近年では、IL-10、IL23R/IL12RB2のほか、ERAP-1(Endoplasmic reticulum aminopeptidase 1)、TLR-4(Toll-like receptor 4)、NOD2(Nucleotide-binding oligomerization domain-containing protein 2)およびMEFV(Mediterranean fever)などの関与も報告されているが、病因はいまだ不明の多因子疾患である。近年、MEFVの関与を含め、臨床所見やコルヒチン(商品名:コルヒチン[わが国ではベーチェット病・同ぶどう膜炎に対しては未承認])に対する有効性などの類似所見から家族性地中海熱などの範疇である自己炎症症候群との関連が報告されている。画像を拡大するBDの病態は、獲得免疫および自然免疫の双方から説明される。獲得免疫では、IL-12などが関与するTh1型の免疫反応が生じることが報告されている(IL-10はTh1型の免疫反応には抑制的)。それらの過程にHLA-B51、HLA-A26などのMHCクラスⅠ遺伝子の関与が推測されているが、近年、BDにMHCに付与するペプチドをトリミングする網内系アミノぺプチダーゼ(ERAP)のSNPが疾患感受性遺伝子として報告され、BD発症におけるHLA-B51陽性との相乗効果が示唆されている。自然免疫では、臨床所見の類似性などから家族性地中海熱などの自己炎症症候群との関連が指摘されていたが、近年、家族性地中海熱の原因遺伝子MEFV M694Vが疾患感受性遺伝子であることが報告された。実際に、それらの疾患に過剰に産生される炎症性サイトカイン(IL-1、TNF)はBDの治療標的でもある。また、Toll様受容体4(TLR-4)およびヘムオキシゲナーゼ1(HO-1)の異常も指摘されていたが、近年の遺伝学的解析により、TLR4やNOD2も疾患感受性遺伝子として同定された。炎症性サイトカインの分子標的治療に加えて、将来、IL-10、HO-1、ERAPおよび細菌を標的とした治療の開発も期待できる。(田中良哉編. 免疫・アレルギー疾患の分子標的と治療薬事典. 羊土社; 2013. p. 230. より改変)■ 症状(図2)口腔粘膜の再発性アフタ性潰瘍、毛嚢炎様皮疹、結節性紅斑様皮疹、皮下の血栓性静脈炎、外陰部潰瘍などの粘膜皮膚病変および虹彩毛様体炎、ぶどう膜炎などの眼病変を主病変とする。また、大関節を主とする関節炎や副睾丸炎、さらには、生命予後にも影響を与える腸管、神経、血管病変を副病変とする。画像を拡大する■ 分類(表1)口腔粘膜のアフタ性潰瘍、皮膚病変、眼病変、外陰部潰瘍の4主病変すべてを併せ持つ完全型、および4主病変と5副病変(関節炎、副睾丸炎、腸管病変、血管病変、神経病変)の組み合わせにより、不全型(3主病変 or 2主病変+2副病変 or 眼病変+1主病変または2副病変)、疑い(主病変の一部のみ)、その他に分類される。また、副病変のうち、生命に関わるもの、あるいは後遺症を残す腸管、血管、神経病変が主病変で、不全型以上のものは特殊型として分類されている。画像を拡大する■ 予後重症の眼病変は日常生活動作を著しく障害するが、概して、特殊型を除き生命予後はよい。2 診断 (検査・鑑別診断も含む)BDには疾患特異的な組織像やバイオマーカーがなく、経過を通じての再発性アフタ性潰瘍炎、皮膚病変、眼病変、外陰部潰瘍の4主病変、関節炎、副睾丸炎、腸管病変、血管病変、神経病変などの5副病変の臨床症状の組み合わせにより診断される。3 治療 (治験中・研究中のものも含む)(表2)病因が不明で特異的な治療法はなく、一般的な生活指導のほかに、局所療法をはじめとした対症療法が主体となる。2007年1月に世界に先駆けて保険収載(効能追加)された難治性ぶどう膜炎に対するインフリキシマブ(商品名:レミケード)や、シクロスポリン(同:サンディミュンほか)および眼症状、皮膚粘膜症状、関節炎などに対するコルヒチン(未承認)は効果が認められている。消化器病変、血管病変、中枢神経病変の特殊型には副腎皮質ステロイド薬や免疫抑制薬が有効な場合があるが、2013年5月、腸管BDにアダリムマブ(同:ヒュミラ)が、2015年8月には特殊型3型(腸管、血管、神経)のすべてにインフリキシマブが保険収載(効能追加)された。画像を拡大する4 今後の展望近年、病態の軽症化が指摘されている。理由は不明だが、その1つとしてインフラ整備の影響が考えられる。また、BDはTh1型の疾病であるが、Th2型の疾病であるアレルギー体質の増加なども指摘されている(シーソー現象)。病因に関しては、主として自然免疫系が関与する自己炎症症候群に分類する試みがあるが、BD患者には有意にHLA-B51が多いことから、自然免疫、獲得免疫の双方の関与が示唆される。さらに、近年の遺伝子学的研究により、IL-10、IL23R/IL12RB2、ERAP-1、TLR-4、NOD2、MEFVなどの疾患感受性遺伝子が新たに発見されており、今後、それらの機能解析によりさらなる進歩が期待できる。なお、厚生労働省ベーチェット病研究班では、世界的な診断、治療の標準化を目指して、特殊型の診療ガイドライン、眼病変の診療ガイドラインを報告しているが、平成28年度をめどにCQを含む新たなガイドライン作成のために厚労省BD班を中心として検証中である。治療面では、難治性ぶどう膜炎にインフリキシマブ、腸管BDに対してアダリムマブ、特殊型(腸管、血管、神経)に対してインフリキシマブが保険収載(効能追加)された。現在も、アプレミラストをはじめ、多くの臨床治験が施行中であり、さらなる治療の選択肢の増加が期待される。5 主たる診療科リウマチ・膠原病内科、眼科、皮膚科、その他の内科(消化器内科、神経内科、血管内科、循環器内科)、外科(血管外科、消化器外科)※ 医療機関によって診療科目の区分は異なることがあります。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)診療、研究に関する情報ISBD(International Society For Behcet’s Disease)(国際ベーチェット病協会の英文での疾患説明)公的助成情報難病情報センター(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)厚生労働省科学研究費補助金 ベーチェット病に関する調査研究班(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)難病ドットコム ベーチェット病(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)患者会情報ベーチェット病友の会(ベーチェット病患者と患者家族の会)NPO法人 海外たすけあいロービジョンネットワーク(眼炎症スタディーグループより改名)(眼炎症患者と患者家族の会)1)腸管ベーチェット病診療ガイドライン平成21年度案 ~コンセンサス・ステートメントに基づく~. ベーチェット病に関する調査研究 平成20~22年度(総括・分担研究報告書.研究代表者 石ヶ坪良明). 2011 ; p.231-234.2)腸管ベーチェット病診療コンセンサス・ステートメント案(2012). ベーチェット病に関する調査研究 平成24年度(総括・分担研究報告書 研究代表者 石ヶ坪良明). 2013; p.149-154.3)神経ベーチェット病の診断予備基準. ベーチェット病に関する調査研究 平成20~22年度(総括・分担研究報告書 研究代表者 石ヶ坪良明). 2011; p.239-234.4)ベーチェット病眼病変診療ガイドライン. ベーチェット病に関する調査研究 平成20~22年度(総括・分担研究報告書 研究代表者 石ヶ坪良明). 2011; p.197-226.5)Yoshiaki Ishigatsubo,editor. Behcet's Disease From Genetics to Therapies.Tokyo:Springer;2015.公開履歴初回2013年08月22日更新2016年02月16日

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セクション6 実践!女性診療

セクション6 実践!女性診療小田切 幸平氏(名瀬徳洲会病院産婦人科 部長)第6弾は、産婦人科領域より「女性診療」についてお届けします。男性医師による女性への診療では、何かと気を使ってしまうことが多いと思われます。そこで、このセッションでは、スムーズな診療法や女性特有の疾患で見逃してはいけないサインなどを学習していきます。

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重症COPDへのアセタゾラミドの効果を検証/JAMA

 人工呼吸を要する重症の慢性閉塞性肺疾患(COPD)で代謝性アルカローシスが疑われる患者に対し、アセタゾラミドを用いても、侵襲的人工呼吸器管理期間の短縮効果は得られないことが示された。フランス・ジョルジュ・ポンピドゥー欧州病院のChristophe Faisy氏らが、382例を対象に行った無作為化プラセボ対照二重盲検試験の結果、報告した。人工呼吸器離脱時間やPaCO2経日変化についても、プラセボ群との有意差は認められなかったという。アセタゾラミドは数十年にわたり、COPDで代謝性アルカローシスを呈した患者に対し呼吸興奮薬として使用されている。しかし、これまでその効果を検証する大規模なプラセボ対照試験は行われていなかった。JAMA誌2016年2月2日号掲載の報告。アセタゾラミドをICU入院48時間以内に開始 研究グループは2011年10月~14年7月にかけて、フランスの医療機関の集中治療室(ICU)に入室し、24時間超の人工呼吸器管理を要したCOPD患者382例を対象に試験を行った。 被験者を無作為に2群に分け、代謝性アルカローシスが疑われた際に、一方にはアセタゾラミド(500~1,000mg、1日2回)を、もう一方にはプラセボをそれぞれICU入室後48時間以内に開始し、同入室期間中最大28日間投与を続けた。 主要評価項目は、気管内挿管または気管切開による侵襲的人工呼吸器管理時間だった。副次評価項目は、動脈血ガスや呼吸パラメータの経日変化、離脱時間、有害事象、抜管後に非侵襲的人工呼吸器を使用、離脱の成功、ICU入室期間およびICU死亡率などだった。離脱期間も両群で同等 試験を完了した380例の被験者(平均年齢69歳、男性71.6%、気管内挿管379例・99.7%)についてITT解析を行った。 人工呼吸器管理期間の中央値は、アセタゾラミド群(187例)が136.5時間で、プラセボ群(193例)が163時間だったものの両群間に有意差はなかった(群間差:-16.0、95%信頼区間[CI]:-36.5~4.0、p=0.17)。 同様に、人工呼吸器離脱時間の群間差(-0.9時間、-4.3~1.3、p=0.36)、分時換気量の経日変化の群間差(-0.0L/分、-0.2~0.2L/分、p=0.72)、PaCO2経日変化の群間差(-0.3mmHg、-0.8~0.2mmHg、p=0.25)についても、有意な差は認められなかった。 一方、血清重炭酸塩の経日変化の群間差は-0.8mEq/L(95%CI:-1.2~-0.5mEq/L、p<0.001)、代謝性アルカローシスが認められた日数の群間差は-1(同:-2~-1、p<0.001)と、アセタゾラミド群で有意に減少した。 その他の副次評価項目については、群間の有意差はみられなかった。 著者は今回の結果について、「試験が統計的有意差を立証するには検出力不足であった可能性は否定できない」としたうえで、「管理期間の両群差(16時間)は臨床的に意味のある値だ」と結論している。

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女子学生の摂食障害への有効な対処法

 摂食障害(ED)は大学生年齢の女性の間で深刻な問題であるが、予防することが可能である。米国スタンフォード大学のC Barr Taylor氏らは、EDと併存症状を軽減するようデザインされたEDオンライン介入を評価した。Journal of consulting and clinical psychology誌オンライン版2016年1月21日号の報告。 ED発症リスクが非常に高い女性206人(年齢:20±1.8歳、白人51%、アフリカ系アメリカ人11%、ヒスパニック10%、アジア人/アジア系アメリカ人21%、その他7%)を、10週間のインターネットベースの認知行動介入群または対照群に無作為に割り付けた。評価には、摂食障害検査(EDE、ED発症を評価)、EDE質問票(EDE-Q)、DSM用構造化臨床面接、ベックうつ病評価尺度-II(BDI-II)を用いた。 主な結果は以下のとおり。・EDの傾向や行動は、対照群と比較し、介入群でより改善された(p=0.02、d=0.31)。ED発症率は27%低値であったが、有意差は認められなかった(p=0.28、NNT=15)。・体型に対する懸念が最も高いサブグループでは、対照群と比較し、介入群はED発症率が有意に低かった(20%対42%、p=0.025、NNT=5)。・ベースライン時にうつ病であった27人について、抑うつ症状は対照群と比較し、介入群で有意に改善された(p=0.016、d=0.96)。介入群のED発症率は、対照群よりも低かったが、有意差は認められなかった(25%対57%、NNT=4)。・安価で簡単に普及可能なこうした介入は、高リスク群のED発症を減少させる可能性がある。今後の検討により、普及することが期待される。関連医療ニュース 拒食に対する抗精神病薬増強療法の効果は 拒食に抗精神病薬、その是非は 過食性障害薬物治療の新たな可能性とは

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第6回医療法学シンポジウム開催のご案内

 3月12日(土)に第6回医療法学シンポジウムが、「少子高齢化社会を乗り越える医療制度の実現に向けて」をテーマに開催される。少子高齢化が進展するわが国で、将来も安定した医療体制を提供することができるのか、国内の有識者が問題解決への糸口を探る。開催概要 内閣府の高齢社会白書によると、平成26年の65歳以上の人口は過去最高の約3,300万人であり、高齢化率は26.0%でした。今後、高齢者人口はおおむね横ばいとなるものの、低出生率(平成26年の合計特殊出生率1.42)のため生産者人口は減少し続け、このままの人口動態では、2035年の高齢化率は33.4%となり、その後も増加し続けると予測されています。 高齢化率が増加することは、生産年齢1人当たりが負担しなければならない医療費の増加につながることから、将来的には、現在と同程度の医療提供を維持することは困難となることが予測されます。したがって、限られた医療資源の効果的・効率的な分配がわが国の喫緊の課題であることは明白にもかかわらず、医療制度が国民の生命・健康に直結することから、国民に対して十分な情報提供がされ難く、その結果、卑近かつ短絡的な議論が散見されているのが現状です。 本シンポジウムでは、本問題の国内トップランナーたちをシンポジストとして迎え、前向きかつ具体的な議論をしていきます。徹底した情報公開のうえ、建設的かつ創造的な議論が期待されます。プログラム(敬称略)・開会のあいさつ 武見 敬三(参議院議員)・講演 羽鳥 裕(日本医師会常任理事、稲門医師会会長) 灰田 宗孝(東海大学理事、東海大学医療技術短期大学学長、稲門医師会副会長) 中田 善規(帝京大学大学院公衆衛生学研究科教授) 大磯 義一郎(浜松医科大学法学教授、日本医科大学医療管理学客員教授、帝京大学医療情報システム研究センター客員教授、稲門医師会理事) 渋谷 健司(東京大学大学院医学系研究科国際保健政策学教室教授) 井上 真智子(浜松医科大学地域家庭医療学講座特任教授)・パネルディスカッション・閉会のあいさつ 土屋 了介(がん研究会理事、神奈川県顧問、神奈川県立病院機構理事長)開催日時ならびに会場日時:2016年3月12日(土)    講演・シンポジウム 12:00~15:00   レセプション 15:30~17:30(要予約、場所は追って連絡いたします)会場:早稲田大学大隈記念講堂(大隈小講堂)   〒169-0071 東京都新宿区戸塚町1-104   早稲田大学へのアクセスマップはこちら費用:無料(ただしレセプション参加には3,500円必要)対象:医師、看護師、医療従事者、医学生など申込:氏名、所属、連絡先、レセプション参加希望の有無を記載のうえ、下記事務局宛までお申込みください。   事務局メールアドレス:lawjimu@hama-med.ac.jp

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わかる統計教室 第3回 理解しておきたい検定 セクション3

インデックスページへ戻る第3回 理解しておきたい検定セクション3 データのバラツキを調べる標準偏差セクション1 セクション2セクション2では、量的データ解析の際に使う「平均値」と「中央値」を学びました。外れ値の存在で値が変わること、平均値を使いたい場合、外れ値を除外するなどの方法がありました。セクション3では、これらの値を使い、データの散らばり具合を表す標準偏差とその計算法などを学習していきます。■標準偏差表8の新薬Yにおいて、外れ値を除いた9例のデータを再掲します。次に、表9で個々の患者について低下体温を求めてみましょう。表8 外れ値を除外した平均値による解熱効果の比較(再掲)表9 新薬Yでの個々の患者の低下体温低下体温の最大値はY_292の3.20℃、最小値はY_141の0.50℃になります。低下体温に格差があり、新薬Yの効果は患者によって異なります。当然、薬剤としては、患者によって効果に差がないほうが良いですね。仮に低下体温が表10の右列の値だったとしたら、どちらのほうが望ましいでしょうか。表10 個々の患者の低下体温の別データ右側の別データのほうが左側よりデータの散らばりが小さいので、望ましいのは別データということになります。もし、データの散らばりの程度を数値で示すことができれば、その値を比較することによって薬剤を評価できます。その散らばりの程度を示す数値のことを「標準偏差(standard deviation: SD)」と言います。SDはデータの「散らばりの程度」を表す代表的な指標です。平均値と比べて、「どれだけばらついているか?」「差が大きいか?」を求めたものになります。SD値の最小値はゼロです。データの「散らばりの程度」が大きいほど、値が大きくなります。それでは、SDの求め方を勉強していきましょう。手計算でも求められますので、その方法を説明します。表10の新薬Yの低下体温(外れ値を除外した9例のデータ)について、次の手順で計算していきます。(1)個々のデータから平均値を引く。求められた値を「偏差(deviation)」という。(2)個々の偏差を平方する。(「偏差×偏差」)。求められた値を「偏差平方(squared deviation)」という。(3)求められた9例の偏差平方を合計する。合計の値を「偏差平方和(sum of squared deviation)」という。(4)偏差平方和をn数(9例)で割る。求められた値を「分散(variance)」という。(5)分散のルートを計算する。求められた値を「標準偏差(SD)」という。表11のようにSDの0.775は低下体温のデータ単位「℃」をつけて表記します。表記方法は、低下体温の平均値は2.0℃、SDは0.775℃となります。表11 新薬YのSDとその計算方法ところで、SDは平均値より必ず小さくなるのでしょうか。通常は小さくなりますが、SDが平均値より大きくなることもあります。この場合、データのバラツキは相当大きいと想定できることから、外れ値が多数あることが考えられます。外れ値を除外しないでSDを求めた場合は注意が必要です。それでは、表8の従来薬Xの低下体温(外れ値を除外した9例のデータ)について、表12でSDを求めてみましょう。表12 従来薬XのSDとその計算方法上記のように、SDは0.655となります。この従来薬Xのデータと先ほど求めた新薬Yのデータを表13のようにプロットすると、データの散らばり程度がよくわかります。表13 散らばり程度とSDとの関係新薬Yのほうが、散らばり程度が大きくSDも大きいことがわかります。つまり、新薬Yのほうが従来薬Xより、解熱効果にバラツキがあるということになります。新薬Yのほうが患者によって効果が異なるという結果は、残念な結果のように思えますが、これは9例だけのデータで判断するとそうなるということです。しかし、本来のデータは最初に掲載した表1のデータです。すなわち、新薬Yの処方患者300例、従来薬Xの処方患者400例について、薬剤投与前後の体温を調べたデータです。このデータでSDを見てみましょう。新薬Yの処方患者300例、従来薬Xの処方患者400例について、薬剤投与前後の体温を調べたデータです。低下体温は投与前体温から投与後体温を引いた値です。表1 薬剤投与前後の体温調査データ(再掲)これだけデータ数が多いと手計算は無理なので、アイスタット社のフリーソフト「Excel統計解析」で計算してみたいと思います。実際にソフトを用いて計算したいという場合には、アイスタット社ホームページ(http://istat.co.jp/freesoft_free/contactpass)よりダウンロードできます。表14 Excel 統計解析での計算結果■標準偏差の(n)と(n-1)の違いは表14では、標準偏差(SD)が2つ出力されています。ここで知っていただきたいのは、SDの計算方法が2つあることです。表11のSDの計算方法では、(4)の分散は偏差平方和をデータ数9例で割っています。もう1つの計算方法は、データ数より1例少ない例数で割る方法です。データ数をnとするとn-1で割るのです。そこで、表14のように(n)と(n-1)が出力されているわけです。両者の違いを説明する前にもう一度、統計解析の役割を確認しましょう。一部を見て全体を知るための方法でしたね。たとえば、ある中学校のAクラスの生徒40人全員の数学の平均点と各生徒の点数の散らばりの程度と、Bクラスの生徒40人全員の平均点と各生徒の点数の散らばりの程度を調べたとしましょう。この例では、AクラスとBクラスの平均点と散らばりの程度がわかればよいので、それでおしまいです。一部を見て全体を知る必要はありません。このような場合は(n)を適用します。一方、先述のように新薬の効果を調べるなど、一部の人に薬を投与し、そこで得られたデータが世の中の多くの人たちにも通じるかどうかを検証するためにSDを適用する場合、(n-1)を適用することが、統計としての決まり事になっています。今回は新薬Yと従来薬Xの全データから、世の中全体の傾向を知りたいので、(n-1)を使う必要があるということです。■今回のポイント1)データの散らばり具合を表す「標準偏差(SD)」、数値が大きいほど散らばりが大きい!2)SDが平均値より大きくなった場合は「外れ値」を確認する!3)SDの(n)と(n-1)、母集団全体の傾向を知りたいときは(n-1)を適用する!インデックスページへ戻る

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抗うつ薬による自殺行為の増加、5剤のSSRI/SNRIで検証/BMJ

 抗うつ薬の有害事象として、攻撃行動の増加がみられ、小児/青少年では自殺行為も増えているとの北欧コクランセンター(デンマーク)のTarang Sharma氏らによる研究成果が、BMJ誌オンライン版2016年1月27日号に掲載された。この研究では、抗うつ薬の臨床試験や治験総括報告書(clinical study report)の治療関連有害事象のデータには限界があることも示された。治験総括報告書は製薬企業が医薬品の市販の承認を得るために規制機関に提出する臨床試験の結果の詳細な概要であるが、最近のレビューは、公表された論文には患者の転帰に関する重要な情報が欠けていることが多いと指摘している。5つの抗うつ薬の治験総括報告書データのメタ解析 研究グループは、選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)およびセロトニン・ノルエピネフリン再取り込み阻害薬(SNRI)に起因する重篤な有害事象の発現状況を調査するために、治験総括報告書に基づいて系統的なレビューを行い、メタ解析を実施した。 欧州および英国の医薬品規制機関(EMA、MHRA)から、5つの抗うつ薬(デュロキセチン、フルオキセチン、パロキセチン、セルトラリン、ベンラファキシン)の治験総括報告書を入手し、Eli Lilly社のウェブサイトからデュロキセチンとフルオキセチンの概略試験報告の情報を得た。 選択基準は、全患者の叙述(死亡、重篤な有害事象、その他の臨床的に重要なイベントの概要)または個々の患者の有害事象の一覧(患者識別子、有害事象[基本語、患者が使用した用語]、期間、重症度、転帰などの詳細を含む)が記載された二重盲検プラセボ対照試験の論文とした。 2人の研究者が別個にデータを抽出し、Peto法によるオッズ比(OR)と、固定効果モデルを用いた95%信頼区間(CI)を算出した。主要評価項目は死亡および自殺行為(自殺、自殺未遂/準備行動、意図的自傷行為、自殺念慮)、副次評価項目は攻撃行動およびアカシジアとした。攻撃行動が約2倍、小児/青少年で自殺行為と攻撃行動が2倍以上に 70件の臨床試験(治験総括報告書68本、総頁数6万4,381頁)に参加した1万8,526例が解析の対象となった。 これらの臨床試験は試験デザインに限界があり、報告の方法にも乖離がみられ、有害事象がかなり過少に報告されている可能性が示唆された。 たとえば、ベンラファキシンの試験を除くと、転帰の記述は付録の患者一覧にしかなく、それも32試験のみであった。また、症例報告書(case report form)を入手できた試験は1件もなかった。 全体では、試験薬群とプラセボ群の間に、死亡(16例、すべて成人、OR:1.28、95%CI:0.40~4.06)、自殺行為(155件、1.21、0.84~1.74)、アカシジア(30件、2.04、0.93~4.48)には有意な差はなかったが、攻撃行動は試験薬群で有意に頻度が高かった(92件、1.93、1.26~2.95)。 また、成人では自殺行為(OR:0.81、95%CI:0.51~1.28)、攻撃行動(1.09、0.55~2.14)、アカシジア(2.00、0.79~5.04)に有意差を認めなかったが、小児/青少年では自殺行為(2.39、1.31~4.33)と攻撃行動(2.79、1.62~4.81)の頻度が試験薬群で有意に高く、アカシジア(2.15、0.48~9.65)には有意な差はなかった。 Eli Lilly社のウェブサイトに掲載されているオンライン版の概略試験報告には、ほぼすべての死亡例が記載されていたが、自殺念慮の記載はなく、それ以外の転帰の情報も完全ではなかったことから、有害事象のデータを同定するための基礎的文書としては不適切と考えられた。 著者は、「臨床試験や治験総括報告書には限界があり、有害事象は正確に評価されていない可能性があるが、抗うつ薬により攻撃行動が増加し、小児/青少年では自殺行為と攻撃行動が倍増していることがわかった」とまとめ、「治療関連有害事象の発現状況を確実に解明するには、個々の患者データが必須であり、完全な情報を得るには患者の叙述、個々の患者の一覧表、症例報告書が必要である」としている。

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Vol. 4 No. 2 実地臨床における抗血小板薬選択のポイント

小田倉 弘典 氏土橋内科医院はじめに臨床医が抗血小板薬を使用する機会は多い。実地医家が最低限知っておくべき薬理学的知識をおさえ、疾患ごとに、1次予防と脳心血管疾患慢性期の2次予防において、どの場面でどういった薬剤を選べばよいか、あくまで現場からの視点で概説する。抗血小板薬でおさえるべき薬理学的知識実地臨床における抗血小板薬の使い分けについて論じる前に、人の止血機構とそこに抗血小板薬がどう働くかについての理解が欠かせない。筆者は止血血栓が専門ではないが、近年抗血栓薬に注目が集まっていることから、プライマリ・ケア医としておおよそ以下のように止血機構を把握することにしている。ヒトの血管壁が傷害された場合、1次血栓(血小板血栓)→ 2次血栓(フィブリン血栓)が形成される1次血栓:血小板が活性化され凝集することで形成される2次血栓:活性化された血小板表面で凝固系カスケードが駆動し、フィブリンが生成され強固な2次血栓(フィブリン塊)が形成される動脈系の血栓(非心原性脳塞栓、急性冠症候群など)では血小板血栓の関与が大きく、抗血小板薬が有効である。静脈系および心房内の血栓(心房細動、深部静脈血栓症など)ではフィブリン血栓の関与が大きく、抗凝固薬が有効である血小板活性化には濃染顆粒から分泌されるトロンボキサンA2(TXA2)とアデノシン2リン酸(ADP)による2つの正のフィードバック回路が大きく関与するアスピリンは、アラキドン酸カスケードを開始させるシクロオキシゲナーゼ(COX)-1を阻害することで、TXA2を抑制し血小板の活性化を阻害するチエノピリジン系(クロピドグレル、チクロピジン)はADP受容体P2Y12の拮抗作用により血小板の活性化を阻害するシロスタゾールは、血小板の活性化を抑制するcAMPの代謝を阻害するホスホジエステラーゼ3を阻害することで血小板凝集を抑制する虚血性心疾患のエビデンス・ガイドライン1. 1次予防古くは、Physicians’ Health Study1)において、虚血性心疾患の既往のない人へのアスピリン投与は、心血管死は減少させないものの心筋梗塞発症はアスピリン群のほうが低かったため、処方の機運が高まった時期がある。しかし、日本人の2型糖尿病患者2,539人を対象としたJPAD試験2)において、アスピリン群は対照群に比べ1次評価項目(複合項目)を減らさなかった(5.4% vs. 6.7%)。2次評価項目(致死性心筋梗塞、致死性脳卒中)および65歳以上のサブグループ解析における1次評価項目においては、アスピリン群で有意に少なかった。日本循環器学会の『循環器疾患における抗凝固・抗血小板療法に関するガイドライン(2009年改訂版)』においても、高リスクの脂質異常症におけるイコサペント酸エチル投与の考慮が推奨度クラスI、複数の冠危険因子をもつ高齢者に対するアスピリン投与がクラスIIとされているのみである。現時点では、虚血性心疾患を標的とした抗血小板薬の1次予防は有効性が確立されておらず、65歳以上の糖尿病患者で多数の冠危険因子を有する場合以外は、投与は控えるべきと考えられる。2. 2次予防(慢性期)2009年のATT4)によるメタ解析において、心筋梗塞(6試験)または脳卒中(10試験)の既往患者に対して、アスピリン投与群は対照群と比較して1次評価項目(心筋梗塞、脳卒中、血管死)を有意に低下させたが(6.7% vs. 8.2%、p<0.0001)、出血性合併症は増加させなかった。一方、脳心血管イベントの既往例19,815例を対象として、アスピリンとクロピドグレルを比較したCAPRIE試験5)においては、クロピドグレルはアスピリンに比較して心血管イベントの発生を有意に抑制した(5.3% vs. 5.8%、p=0.043)。一方、重篤な出血性イベントは、両群間で差はなかった。3. 冠動脈ステント治療後現在、日本循環器学会のガイドライン6)では、ベアメタルステント(BMS)植込み後は1か月、薬剤溶出性ステント(DES)植込み後は1年(可能であればそれ以上)のアスピリンとクロピドグレル併用療法(DAPT)が推奨されている(推奨クラスI、エビデンスレベルA)。ただし、いわゆる第二世代のDESでは遅発性血栓症リスクが低いため、DAPT期間の短縮を検証する大規模試験が現在進行中である。4. その他の抗血小板薬チエノピリジン系であるチクロピジンのアスピリンとの併用によるステント血栓予防効果は、確立したエビデンスがある。ただし、チクロピジンは肝障害や顆粒球減少などの副作用が多く、CLEAN試験7)の結果からも、アスピリンとの併用はクロピドグレルが第1選択と考えられる。プラスグレルは、クロピドグレル同様P2Y12受容体拮抗薬だが、クロピドグレルより効果発現が早く、CYP2C19の関与が少ないため、日本人に多いといわれている薬剤耐性に対しても有利と考えられている。今後の経験の蓄積が期待される。シロスタゾールは上記抗血小板薬に比べて抗血小板作用が弱いため、これらの薬剤が何らかの理由により使用困難な場合にその使用を考慮する。5. 抗凝固薬併用時2014年8月に、欧州心臓病学会(ESC)のワーキンググループから抗凝固薬併用時に関するコンセンサス文書が示され、注目されている8)。それによると、PCIを施行されたすべての抗凝固薬服用患者で、導入期には3剤併用(抗凝固薬+アスピリン+クロピドグレル)が推奨される。ただし、出血高リスク(HAS-BLEDスコア3点以上)かつ低ステント血栓リスク(CHA2DS2-VAScスコア1点以下)の場合はアスピリンが除かれる。その後3剤併用は、待機的PCIの場合、BMSは1か月間、新世代DESは6か月、急性冠症候群ではステントの種類を問わず6か月(ただし高出血リスクで新世代ステントの場合は1か月)を考慮するとされ、その後抗凝固薬+抗血小板薬1剤の維持期へと移行する。この際、抗血小板薬としてはアスピリンはステント血栓症や、心血管イベント率の点で抗血小板薬2剤よりも高率であることが知られているが9)、一方、アスピリンとクロピドグレルの直接比較はないため、個々の出血とステント血栓症リスクにより決めることが必要である。施行後12か月を経た場合の長期管理については、1つの抗血小板薬を中止することが、コンセンサスとして明記されている。ただしステント血栓症が致命的となるような左主幹部、びまん性冠動脈狭窄、ステント血栓症の既往や心血管イベントを繰り返す例では、抗凝固薬+抗血小板薬1剤を継続する必要がある。脳卒中(非心原性脳梗塞)のエビデンス・ガイドライン1. 1次予防脳梗塞の既往はないが、MRIで無症候性脳梗塞(特にラクナ梗塞)が見つかった場合、日本脳卒中学会の『脳卒中治療ガイドライン2009』10)においては、「無症候性ラクナ梗塞に対する抗血小板療法は慎重に行うべきである」として推奨度はグレードC1(行うことを考慮してもよいが、十分な科学的根拠がない)とされている。また最近の日本人高齢者約14,000人を対象としたJPPP試験11)では、心血管死+非致死的脳卒中+非致死的心筋梗塞の複合エンドポイントの5年発生率はアスピリン群、対照群で同等であった。脳卒中の1次予防に対する抗血小板薬の高度なエビデンスはまだなく、治療としては血圧をはじめとする全身的な動脈硬化予防をまず行うべきである。2. 2次予防『脳卒中治療ガイドライン2009』において、非心原性脳梗塞の再発予防にはアスピリン、クロピドグレルがグレードA、シロスタゾール、チクロピジンはグレードBの推奨度である。2014年米国心臓病協会(AHA)の虚血性脳卒中の治療指針12)では、非心原性脳梗塞、TIAに対しアスピリン(推奨度クラスI、エビデンスレベルA)、アスピリンと徐放性ジピリダモール併用(クラスI、レベルB、日本では未承認)、クロピドグレル(クラスIIa、レベルB)となっている。現時点ではアスピリン、クロピドグレル、シロスタゾールの3剤のいずれかのうち、エビデンス、患者の好みと状況、医者の専門性を考慮して選択すべきと考えられる。エビデンスとしては、上記のCAPRIE試験において、脳梗塞、心筋梗塞、血管死の年間発症率は、クロピドグレル単独投与群(75mg/日)が、アスピリン単独投与群(325mg/日)より有意に少なかった。またCSPS試験13)では、シロスタゾール(200mg/日、2分服)はプラセボ群に比し有意な脳卒中の再発低減効果を有し(プラセボ群に比し41.7%低減)、層別解析では、ラクナ梗塞の再発予防に有効であった。日本で行われたCSPS214)ではアスピリンとシロスタゾールの比較が行われ、脳梗塞再発抑制効果は両者で同等であり、出血性合併症がシロスタゾールで少ないことが報告されている。副作用として、アスピリンによる消化管出血、クロピドグレルによる肝障害、シロスタゾールによる頭痛、頻脈はよく経験されるものであり、これらとコストなどを考えながら選択するのが適切と考える。末梢血管疾患のエビデンス・ガイドライン下肢虚血症状(間歇性跛行)の治療と併存するリスクの高い心血管イベント予防とに分けて考える。下肢虚血症状に対する効果のエビデンスとしてはシロスタゾールおよびヒスタミン拮抗薬があることから、本邦および米国のガイドラインでは、まずシロスタゾールが推奨されている15)。心血管イベントの予防については、上記記載を参照されたい。現時点における抗血小板薬の使い方の実際以上をまとめると、虚血性心疾患、脳卒中ともに、1次予防に有効であるというアスピリンのエビデンスは確立されておらず、現時点では慎重に考えるべきであろう。また、2次予防に関しては、冠動脈ステント治療後の一定期間はアスピリンとクロピドグレルが推奨されるが、ステント治療後以外の虚血性心疾患および非心原性脳塞栓では、抗血小板薬いずれか1剤の投与が推奨されている。その際、複合心血管イベントの抑制という点で、クロピドグレルあるいはシロスタゾールがアスピリンを上回り出血は増加させないとのエビデンスが報告されている。現時点では、状況に応じてクロピドグレルあるいはシロスタゾールの使用が、アスピリンに優先する状況が増えているかもしれない。一方、アスピリンは上記以外にも虚血性心疾患、非心原性脳塞栓の2次予防に関して豊富なエビデンスを有する。またコストを考えた場合、アスピリン100mg1日1回の場合、1か月の自己負担金は50.4円(3割負担)に対し、クロピドグレル75mg1日1回の場合は2,475円とかなり差がある(表)。また、各抗血小板薬の副作用として、アスピリンは消化管出血、クロピドグレルは肝障害、シロスタゾールは頭痛と頻脈に注意すべきである。一律な処方ではなく、症例ごとにエビデンス、副作用(出血)リスク、医師の経験、コストなどを考慮に入れた選択が適切と考えられる。さらに、抗血小板薬2剤併用をいつまでつづけるか、周術期の抗血小板薬の休薬をどうするかといった問題に関しては、専門医とプライマリ・ケア医との連携が不可欠である。こうした問題に遭遇した際に情報共有が円滑に進むように、日頃から良好な関係を保つことが大切であると考える。表 抗血小板薬のコスト画像を拡大する文献1)Steering Committee of the Physicians' Health Study Research Group. Final report on the aspirin component of the ongoing Physicians' Health Study. N Engl J Med 1989; 321: 129-135.2)Ogawa H et al. Low-dose aspirin for primary prevention of atherosclerotic events in patients with type 2 diabetes: a randomized controlled trial. JAMA 2008; 300: 2134-2141.3)日本循環器学会ほか. 循環器病の診断と治療に関するガイドライン. 循環器疾患における抗凝固・抗血小板療法に関するガイドライン(2009年改訂版).4)Antithrombotic Trialists' (ATT) Collaboration. Aspirin in the primary and secondary prevention of vascular disease: collaborative meta-analysis of individual participant data from randomised trials. Lancet 2009; 373: 1849-1860.5)CAPRIE Steering Committee: A randomised, blinded, trial of clopidogrel versus aspirin in patients at risk of ischaemic events (CAPRIE). Lancet 1996; 348: 1329-1339.6)日本循環器学会ほか. 循環器病の診断と治療に関するガイドライン. 安定冠動脈疾患における待機的PCIのガイドライン(2011年改訂版).7)Isshiki T et al. Clopidogrel trial in patients with elective percutaneous coronary intervention for stable angina and old myocardial infarction (CLEAN). Int Heart J 2012; 53: 91-101.8)Lip GY et al. Management of antithrombotic therapy in atrial fibrillation patients presenting with acute coronary syndrome and/or undergoing percutaneous coronary or valve interventions: a joint consensus document of the European Society of Cardiology Working Group on Thrombosis, European Heart Rhythm Association (EHRA), European Association of Percutaneous Cardiovascular Interventions (EAPCI) and European Association of Acute Cardiac Care (ACCA)endorsed by the Heart Rhythm Society (HRS) and Asia-Pacific Heart Rhythm Society (APHRS). Eur Heart J 2014; 35: 3155-3179.9)Karjalainen PP et al. Safety and efficacy of combined antiplatelet-warfarin therapy after coronary stenting. Eur Heart J 2007; 28: 726-732.10)篠原幸人ほか. 脳卒中治療ガイドライン2009. 協和企画, 東京, 2009.11)Ikeda Y et al. Low-dose aspirin for primary prevention of cardiovascular events in Japanese patients 60 years or older with atherosclerotic risk factors: a randomized clinical trial. JAMA 2014; 312: 2510-2520.12)Kernan WN et al. Guidelines for the prevention of stroke in patients with stroke and transient ischemic attack: a guideline for healthcare professionals from the American Heart Association/American Stroke Association. Stroke 2014; 45: 2160-2236.13)Gotoh F et al. Cilostazol stroke prevention study: a placebo-controlled double-blind trial for secondary prevention of cerebral infarction. J Stroke Cerebrovasc Dis 2000; 9: 147-157.14)Shinohara Y et al. Cilostazol for prevention of secondary stroke (CSPS 2): an aspirin-controlled, double-blind, randomised non-inferiority trial. Lancet Neurol 2010; 9: 959-968.15)Rooke TW et al. 2011 ACCF/AHA Focused Update of the Guideline for the Management of Patients With Peripheral Artery Disease (updating the 2005 guideline): a report of the American College of Cardiology Foundation/American Heart Association Task Force on Practice Guidelines. J Am Coll Cardiol 2011; 58: 2020-2045.

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ウィルソン病〔Wilson disease〕

1 疾患概要■ 定義肝臓およびさまざまな臓器に銅が蓄積し、臓器障害を来す常染色体劣性遺伝性の先天性銅代謝異常症である。■ 疫学わが国での発症頻度は約3万5千人に1人、保因者は約120人に1人とされている。■ 病因・病態本症は、銅輸送ATPase(ATP7B)の遺伝子異常症で、ATP7Bが機能しないために発症する。ATP7B遺伝子の変異は症例によりさまざまで、300以上の変異が報告されている。正常では、ATP7Bは肝細胞から血液および胆汁への銅分泌を司どっており、血液中への銅分泌のほとんどは、セルロプラスミンとして分泌されている。ATP7Bが機能しない本症では、肝臓に銅が蓄積し、肝障害を来す。同時に血清セルロプラスミンおよび血清銅値が低下する。さらに肝臓に蓄積した銅は、オーバーフローし、血液中に出てセルロプラスミン非結合銅(アルブミンやアミノ酸に結合しており、一般に「フリー銅」といわれている)として増加し、増加したフリー銅が脳、腎臓などに蓄積し、臓器障害を来すとされている(図1)。画像を拡大する■ 症状・分類5歳以上のすべての年齢で発症する。40~50歳で発症する例もある。神経型は肝型に比較して、発症年齢は遅く、発症は8歳以上である。ウィルソン病は、症状・所見により、肝型(肝障害のみ)、肝神経型(肝機能異常と神経障害)、神経型(肝機能は異常がなく、神経・精神症状のみ)、溶血発作型、その他に分類される。本症での肝障害は非常に多彩で、たまたま行った検査で血清トランスアミナーゼ(ALT、AST)高値により発見される例(発症前)から、慢性肝炎、急性肝炎、劇症型肝炎、肝硬変などで発症する例がある。神経症状の特徴はパーキンソン病様である。神経型でも肝臓に銅は蓄積しているが、一般肝機能検査値としては異常がみられないだけである。肝機能異常が認められなくても、表1の神経・精神症状の患者では、本症の鑑別のために血清セルロプラスミンと銅を調べるべきである。画像を拡大する神経・精神症状は多彩で、しばしば診断が遅れる。本症患者で当初はパーキンソン病、うつ病、総合失調症、注意欠陥・多動性障害(ADHD)、パラノイア症候群(偏執病)などと誤診されていた例が報告されている。表1の「その他の症状」が初発症状を示す患者もいる。したがって、表1の症状・所見の患者で原因不明の場合は、本症を鑑別する必要がある。■ 予後本症に対する治療を行わないと、病状は進行する。肝型では、肝硬変、肝不全になり致命的になる。肝細胞がんを発症することもある。神経型では病状が進行してから治療を開始した場合、治療効果は非常に悪く、神経症状の改善がみられない場合もある。また、改善も非常に緩慢であることが多い。劇症型肝炎や溶血発作型では、迅速に対応しなければ致命的になる。2 診断 (検査・鑑別診断も含む)診断に有効な検査を表2に示す。また、診断のフローチャートを図2に示す。表2の補足に示すように、診断が困難な場合がある。現在、遺伝子診断はオーファンネットジャパンに相談すれば実施してくれる。画像を拡大する症状から本症を鑑別する場合、まずは血清セルロプラスミンと銅を測定する。さらに尿中銅排泄量およびペニシラミン負荷試験で診断基準を満たせば、本症と診断できる。遺伝子変異が同定されれば確定診断できるが、臨床症状・検査所見で本症と診断できる患者でも変異が同定されない場合がある。確定診断に最も有効な検査は肝銅濃度高値である。しかし、劇症肝不全で肝細胞が著しく壊死している場合は、銅濃度は高くならないことがある。患者が診断されたら、家族検索を行い、発症前の患者を診断することも必要である。鑑別診断としては、肝型では、慢性肝炎、急性肝炎、劇症型肝炎、肝硬変、自己免疫性肝炎などが挙げられる。神経型はパーキンソン病、うつ病、総合失調症、注意欠陥・多動性障害(ADHD)、パラノイア症候群(偏執病)などである。また、関節症状では関節リウマチ、心筋肥大では心筋症、血尿が初発症状では腎炎との鑑別が必要である。3 治療 (治験中・研究中のものも含む)本症の治療薬として、キレート薬(トリエンチン、ペニシラミン)、亜鉛製剤がある(表3)。また、治療の時期により初期治療と維持治療に分けて考える。初期治療は、治療開始後数ヵ月で体内に蓄積した銅を排泄する時期でキレート薬を使用し、その後は維持治療として銅が蓄積しないように行う治療で、亜鉛製剤のみでよいとされている。画像を拡大する肝型では、トリエンチンまたはペニシラミンで開始する。神経型では、キレート薬、とくにペニシラミンは使用初期に神経症状を悪化させる率が高い。したがって神経型では、亜鉛製剤またはトリエンチンで治療を行うのが望ましい。ウィルソン病は、早期に診断し治療を開始することが重要である。とくに神経型では、症状が進行すると予後は不良である。早期に治療を開始すれば、症状は消失し、通常生活が可能である。しかし、怠薬し、急激な症状悪化を来す例が問題になっている。治療中は怠薬しないように支援することも大切である。劇症型肝炎、溶血発作型では、肝移植が適応になる。2010年現在、わが国での本症患者の肝移植数は累計で109例である。肝移植後は、本症の治療は不要である。発症前患者でも治療を行う。患者が妊娠した場合も治療は継続する。亜鉛製剤で治療を行っている場合は、妊娠前と同量または75mg/日にする。キレート薬の場合は、妊娠後期には、妊娠前の50~75%に減量する。4 今後の展望1)本症は症状が多彩であるために、しばしば誤診されていたり、診断までに年月がかかる例がある。発症前にマススクリーニングで、スクリーニングされる方法の開発と体制が構築されることが望まれる。2)神経型では、キレート薬治療で治療初期に症状が悪化する例が多い。神経型本症患者の神経症状の悪化を来さないテトラチオモリブデートが、米国で治験をされているが、まだ承認されていない。3)欧米では、本症の診断治療ガイドラインが発表されている。わが国では、2015年に「ウィルソン病診療指針」が発表された。5 主たる診療科小児科、神経内科、消化器内科※ 医療機関によって診療科目の区分は異なることがあります。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)患者会情報ウィルソン病友の会1)Roberts EA, et al. Hepatology. 2008; 47: 2089-2111.2)Kodama H, et al. Brain & Development.2011; 33: 243-251.3)European Association for the Study of the Liver. J Hepatology. 2012; 56: 671-685.4)Kodama H, et al. Current Drug Metabolism.2012; 13: 237-250.5)日本小児栄養消化器肝臓学会、他. 小児の栄養消化器肝臓病診療ガイドライン・指針.診断と治療社;2015.p.122-180.公開履歴初回2013年05月30日更新2016年02月02日

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ジカウイルス感染症に気を付けろッ! その2【新興再興感染症に気を付けろッ!】

ケアネットをご覧の皆さま、こんにちは。国立国際医療研究センター 国際感染症センターの忽那です。本連載「新興再興感染症に気を付けろッ!」、通称「気を付けろッ」は「新興再興感染症の気を付け方」についてまったりと、そして時にまったりと、つまり一貫してまったりと学んでいくコーナーです。第17回となる今回は、前回に引き続きジカウイルス感染症についてです。さて、前回はジカウイルス感染症が世界的に拡大していること、そして妊婦の感染と胎児の小頭症発症との関係が示唆されていることについてお話いたしました。今回はジカウイルス感染症の臨床像、鑑別診断、治療や予防についてお話したいと思います。ざっくり言うと「ジカウイルス感染症=劣化版デング熱」ジカウイルス感染症の臨床像ですが、簡単に言うと「劣化版デング熱」です。デング熱といえばフラビウイルス科デングウイルスによる、発熱、頭痛、関節痛・筋肉痛、皮疹を呈する蚊媒介性感染症ですが、ジカウイルスもフラビウイルス科に属することもあり、デング熱に臨床像が似ています。しかし、デング熱ほど症状は激しくありません。発熱はみられますが、デング熱ほど高熱にはならず37℃程度の微熱にとどまり、頭痛や関節痛・筋肉痛もデング熱のように、のたうちまわるほど強いことはまれとされます。つまり、劣化版デング熱なのであります。皮疹もデング熱によく似た紅斑がみられます(図1)が、デング熱が発症から5~7日くらい経って解熱する頃に皮疹が出ることが多いのに対して、ジカウイルス感染症ではもう少し早く、発症から数日くらいで出現することが多いとされます。また、ジカウイルス感染症では眼球結膜充血(図2)が現れる頻度が高いといわれています1)。ジカウイルス感染症の感染者の大半は予後良好であり、これまでのところジカウイルス感染症による死亡者は報告されていません。しかし、合併症としてジカウイルス感染症罹患後にギラン・バレー症候群を発症した患者が報告されています。頻度については不明ですが、2013年に大流行したフランス領ポリネシアでは42人、現在流行中のブラジルでは121人がジカウイルス感染症罹患後にギラン・バレー症候群を発症しています。画像を拡大する画像を拡大する疑ったら即、鑑別診断ジカウイルス感染症の鑑別診断ですが、ジカウイルス感染症が劣化版デング熱であるということを考えると、自ずと鑑別診断はデング熱や、これまたデング熱に似た蚊媒介性感染症であるチクングニア熱が挙がります。この3疾患は非常によく似た臨床像を呈しますが、微妙に違う点もあります(表)。しかし、このような細かい違いに臨床医はこだわる必要はありませんッ!(私はこだわりますけど)。要するに、前回も言いましたが、デング熱を疑ったときにはチクングニア熱とジカウイルス感染症も必ず鑑別診断に挙げるということが大事なのですッ! その他、代表的な輸入感染症であるマラリア、腸チフス、レプトスピラ症、リケッチア症なども鑑別診断となります。画像を拡大する治療は対症療法、予防は防蚊対策ジカウイルス感染症に特異的な治療は今のところありません。発熱や頭痛などに対して対症療法を行うことになります。予防についても、ジカウイルス感染症のワクチンはまだありません。防蚊対策が最大の予防、ということになります。防蚊対策については、デング熱の回をご参考ください。ヒトスジシマカが媒介するということから、ジカウイルス感染症もデング熱やチクングニア熱と同様に、日本国内で流行する可能性のある疾患です。海外で感染したジカウイルス感染症患者が日本国内でヒトスジシマカに吸血されると国内の蚊がジカウイルスを持つようになり、流行が広がる可能性があります。これを防ぐためには、(1)渡航者への防蚊対策の啓発、(2)ジカウイルス感染症患者の早期診断と速やかな防蚊対策の指導、(3)ベクターコントロール、の3つが重要です。われわれ臨床医にできることはとくに(1)と(2)ですね。日本でジカウイルス感染症が流行して、小頭症が増加…という悪夢を現実にしないために、ジカウイルス感染症の国内侵入を防ぎましょう!※本文中の「ジカ熱」の表記を「ジカウイルス感染症」に変更いたしました。1)Duffy MR, et al. N Engl J Med.2009;360:2536-2543.2)Shinohara K, et al. J Travel Med.2016;23.pii:tav011.3)Kutsuna S, et al. Euro Surveill.2014;19.pii:20683.4)Ioos S, et al.Med Mal Infect.2014;44:302-307.

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小児がんサバイバーの晩期死亡率の改善、治療曝露量の減量が寄与/NEJM

 5年生存を達成した小児がん患者の晩期死亡率を低減する治療戦略として、治療曝露量の減量が有効であることが、米国・聖ジュード小児研究病院のGregory T. Armstrong氏らの調査で明らかとなった。米国で1970~80年代に小児がんと診断され、5年生存を達成した患者の18%が、その後の25年以内に死亡している。そのため、最近の小児がん治療の目標は、晩発性の生命を脅かす作用をいかに減じるかに置かれているという。NEJM誌オンライン版2016年1月13日号掲載の報告より。約3万4,000例で晩期死亡を治療開始年代別に検討 研究グループは、小児がんサバイバーを長期にフォローアップする病院ベースのレトロスペクティブな多施設共同コホート試験(Childhood Cancer Survivor Study[CCSS])を実施した(米国国立がん研究所[NCI]などの助成による)。 対象は、21歳以前にがんと診断され、1970~99年に治療を開始し、5年以上生存した患者であり、北米の31施設に3万4,033例が登録された。これは、試験期間中の小児がんサバイバーの約20%に相当した。 フォローアップ期間中央値は21年(範囲:5~38)であった。人口統計学的因子および健康関連死因による死亡に影響を及ぼす疾患の因子の評価を行った。疾患因子には、原発がんの再発や進行は含まないが、がん治療による晩発性の作用が含まれた。 3万4,033例の内訳は、男性が1万8,983例、女性が1万5,050例で、治療開始時期は1970年代が9,416例、80年代が1万3,181例、90年代が1万1,436例であり、診断時年齢は0~4歳が1万3,463例、5~9歳が7,826例、10~14歳が7,144例、15~20歳は5,600例であった。 診断名は、白血病(1万0,199例)、ホジキンリンパ腫(4,332例)、非ホジキンリンパ腫(2,837例)、中枢神経系腫瘍(6,369例)、ウィルムス腫瘍(3,055例)、神経芽細胞腫(2,632)、横紋筋肉腫(1,679例)、骨腫瘍(2,930例)だった。晩発性作用の早期検出や対処法の改善も寄与 サバイバーの最終フォローアップ時の年齢中央値は28.5歳(範囲:5.5~58.5)で、30~39歳が全体の30%、40歳以上が15%であった。 試験期間中に3,958例(11.6%)が死亡した(原発がんの再発、進行による死亡2,002例、外的要因による死亡338例を含む)。このうち1,618例(41%)が健康関連死因による死亡であり、2次がんが746例、心臓が241例、肺が137例、その他が494例であった。 15年死亡率は、全死因死亡が1970年代の10.7%から、80年代は7.9%、90年代には5.8%へ有意に低下した(傾向のp<0.001)。健康関連死因死亡も、3.1%から、2.4%、1.9%へと有意に減少した(傾向のp<0.001)。また、原発がんの再発、進行による死亡も、7.1%、4.9%、3.4%と有意に抑制されていた(傾向のp<0.001)。 このような死亡率の改善には、2次がん(p<0.001)、心臓(p=0.001)、肺(p=0.04)に関連する死亡率の有意な低下が反映していると考えられた。 年代別の治療の変遷としては、(1)急性リンパ性白血病に対する頭蓋内放射線照射の施行率が、70年代の85%から80年代には51%、90年代は19%に低下、(2)ウィルムス腫瘍への腹部放射線照射がそれぞれ78%、53%、43%へ、(3)ホジキンリンパ腫に対する胸部放射線照射が87%、79%、61%へと減少した。 急性リンパ性白血病、ホジキンリンパ腫、ウィルムス腫瘍、星状細胞腫では、アンスラサイクリン系薬剤の投与量も経時的に減少していた。これら4疾患は、治療曝露量が経時的に減量された後に、健康関連死因による15年死亡率が経時的に低下していた。 著者は、「小児がんサバイバーの晩期死亡率の改善には、治療の曝露量の低減が影響しており、治療の晩発性の作用のリスクや重症度が軽減するようにデザインされた治療レジメンの有効性が確認された」とまとめ、「晩発性作用を早期に検出する戦略の促進や対処法の改善とともに、治療レジメンを修正して放射線療法や化学療法の曝露量を低減することで、多くの小児がんサバイバーの余命が延長したことを示す定量的なエビデンスが得られた」としている。

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悪性軟部腫瘍(軟部肉腫)〔malignant soft tissue tumor / soft tissue sarcoma〕

1 疾患概要■ 定義全身の軟部組織(リンパ・造血組織、グリア、実質臓器の支持組織を除く)より発生し、骨・軟骨を除く非上皮性間葉系組織(中胚葉由来の脂肪組織、線維組織、血管・リンパ管、筋肉、腱・滑膜組織および外胚葉由来の末梢神経組織などを含む)から由来する腫瘍の総称で、良性から低悪性~高悪性まで100種類以上の多彩な組織型からなる軟部腫瘍のうち、生物学的に悪性(局所再発や遠隔転移しうる)のものを悪性軟部腫瘍(軟部肉腫)と呼ぶ。■ 疫学人口10万人あたり約3人の発生率で、全悪性腫瘍の0.7~1.0%程度とまれな悪性腫瘍である(わが国では胃がんや肺がんの1/20程度)が、経年的には増加傾向にある。また、骨・軟部肉腫が通常のがん腫に比し、若年者に多い傾向があることから、20歳未満の小児悪性腫瘍の中では約7.4%を占める。発生部位は軟部肉腫全体の約60%が四肢に発生し、そのうち約2/3が下肢(とくに大腿部に最も好発)に発生するが、その他の部位(臀部や肩甲帯、胸・腹壁などの表在性体幹部、後腹膜や縦隔などの深部体幹)にも広く発生するのが、軟部肉腫の特徴である。■ 病因近年の分子遺伝学的解析の進歩により、軟部肉腫においても種々の遺伝子異常が発見されるようになった。なかでも、特定の染色体転座によって生じる融合遺伝子異常が種々の組織型の軟部肉腫で検出され(表1)、その病因としての役割が明らかになってきた。こうした融合遺伝子異常は、すべての軟部肉腫のうち約1/4で認められる。一方、融合遺伝子異常を示さない残り3/4の軟部肉腫においても、いわゆるがん抑制遺伝子として働くP53、RB1、PTEN、APC、NF1、CDKN2などの点突然変異や部分欠失による機能低下、細胞周期・細胞増殖・転写活性・細胞内シグナル伝達などを制御する種々の遺伝子(CDK4、MDM2、KIT、WT1、PDGF/PDGFR、VEGFR、IGF1R、AKT、ALKなど)異常が認められ、その発症要因として関与していると考えられる。また、NF1遺伝子の先天異常を有する常染色体優性遺伝疾患である多発性神経線維腫症(von Recklinghausen病)では神経原肉腫(悪性末梢神経鞘腫)やその他の悪性腫瘍が発生しやすく、乳がんなどの治療後の上肢リンパ浮腫を基盤に生じるリンパ管肉腫(Stewart-Treves症候群)、放射線照射後に発生するpostradiation sarcomaなども知られている。画像を拡大する■ 症状無痛性のしこり(軟部腫瘤)として発見されることが最も多い。疼痛(自発痛や圧痛)や局所熱感、患肢のしびれなどは時にみられるが必発ではなく、良悪性の鑑別にはあまり役立たない。腫瘤の大きさは米粒大~20cmを超えるような大きなものまでさまざまであるが、明らかに増大傾向を示すような腫瘤の場合、悪性の可能性が疑われる。ただし、一部の腫瘍(とくに滑膜肉腫)ではほとんど増大せずに10年以上を経過し、ある時点から増大し始めるような腫瘍もあるので注意が必要である。縦隔や後腹膜・腹腔内の軟部肉腫では、相当な大きさになり腫瘤による圧迫症状が出現するまで発見されずに経過する進行例が多いが、時に他の疾患でCTやMRI検査が行われ、偶然に発見されるようなケースも見受けられる。■ 分類正常組織との類似性(分化度: differentiation)の程度により病理組織学的に分類される。脂肪肉腫、平滑筋肉腫、未分化多形肉腫(かつての悪性線維性組織球腫)、線維肉腫、横紋筋肉腫、神経原肉腫(悪性末梢神経鞘腫)、滑膜肉腫などが比較的多いが、そのほかにもまれな種々の組織型の腫瘍が軟部肉腫には含まれ、組織亜型も含めると50種類以上にも及ぶ。■ 予後軟部肉腫には低悪性のものから高悪性のものまで多彩な生物学的悪性度の腫瘍が含まれるが、その組織学的悪性度(分化度、細胞密度、細胞増殖能、腫瘍壊死の程度などにより規定される)により、生命予後が異なる。また、組織学的悪性度(G)、腫瘍の大きさ・深さ(T)、所属リンパ節転移の有無(N)、遠隔転移の有無(M)により病期分類が行われ、予後とよく相関する(表2)。画像を拡大する2 診断 (検査・鑑別診断も含む)軟部腫瘤の局在・局所進展度とともに、質的診断をするための画像診断としてはMRIが最も有用であり、必須といってもよい。腫瘍内の石灰化の有無、隣接骨への局所浸潤の有無、隣接主要血管・神経との位置関係をみるにはCTのほうが有用であるが、腫瘍自体の質的診断という点ではMRIよりも劣る。したがって、まずはMRIを施行し、画像診断できるもの(皮下に局在する良性の脂肪腫、典型的な神経鞘腫や筋肉内血管腫など)の場合には、外科的腫瘍切除を含め治療方針を生検なしに決定できる。しかし、軟部腫瘍の場合には画像診断のみでは診断確定できないものも少なくなく、良悪性の鑑別を含む最終診断確定のためには、通常生検が必要となる。生検はある程度の大きさの腫瘤(最大径がおおむね3cm以上)では、局麻下での針生検(ベッドサイドで、または部位によってはCTガイド下で)を行うが、針生検のみでは診断がつかない場合には、あらためて全麻・腰麻下での切開生検術が必要となることもある。また、径3cm未満の小さな表在性の腫瘍の場合、生検を兼ねて一期的に腫瘍を切除する(切除生検)こともあるが、この場合、悪性腫瘍である可能性も考慮し、腫瘍の周辺組織を腫瘍で汚染しないよう注意する(剥離の際に腫瘍内切除とならないよう気を付ける、切除後の創内洗浄は行わない、など)とともに、後の追加広範切除を考慮し、横皮切(とくに四肢原発例)は絶対に避けるなどの配慮も必要となる。皮下に局在する小さな腫瘍の場合、良悪性の区別も考慮されることなく一般診療所や病院で安易に局麻下切除した結果、悪性であったと専門施設に紹介されることがしばしばある。しかし、その後の追加治療の煩雑さや機能予後などを考えると、診断(良悪性の鑑別も含む)に迷った場合には、安易に切除することなく、骨・軟部腫瘍専門施設にコンサルトまたは紹介したほうがよい。生検により悪性軟部腫瘍(軟部肉腫)の確定診断がついたら、組織型・悪性度や必要に応じて肺CT、局所CT、骨シンチグラム、FDG-PET/CTなどを行い、腫瘍の局所進展度・遠隔転移(とくに肺転移)などを検索したうえで、治療方針を決定する。3 治療 (治験中・研究中のものも含む)治療の原則は、外科的腫瘍広範切除(腫瘍を周囲の正常組織を含め一塊に切除する術式)であるが、必要に応じて術前あるいは術後に放射線治療を併用し、術後局所再発の防止を図る。組織型(とくに滑膜肉腫、横紋筋肉腫、未分化神経外胚葉腫瘍、粘液型脂肪肉腫など)や悪性度によっては、また、遠隔転移を有する腫瘍の場合には、抗悪性腫瘍薬による全身化学療法を併用する。4 今後の展望これまで長い間、軟部肉腫に対する有効な抗悪性腫瘍薬としてはドキソルビシン(商品名:アドリアシンなど)とイホスファミド(同:イホマイド)の2剤しかなかったが、近年ようやくわが国でも軟部肉腫に対する新規薬剤の国際共同臨床試験への参加や治験開発が進むようになってきた。2012年9月には、軟部肉腫に対する新規分子標的治療薬であるパゾパニブ(同:ヴォトリエント)が、わが国でもオーファンドラッグとして製造・販売承認され、保険適応となった。また、トラベクテジン〔ET-743〕(同:ヨンデリス/2015年9月に承認)やエリブリン(同:ハラヴェン/わが国では軟部肉腫に対しては保険適応外)など複数の軟部肉腫に対する新規抗腫瘍薬の開発も行われている。5 主たる診療科整形外科、骨軟部腫瘍科 など軟部肉腫は希少がんであるにもかかわらず、組織型や悪性度も多彩で診断の難しい腫瘍である。前述のMRIでの画像診断のみで明らかに診断がつく腫瘍以外で良悪性不明の場合、小さな腫瘍であっても安易に一般診療所や病院で生検・切除することなく、骨・軟部腫瘍を専門とする医師のいる地域基幹病院の整形外科やがんセンター骨軟部腫瘍科にコンサルト・紹介するよう心掛けてほしい。※ 医療機関によって診療科目の区分は異なることがあります。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)診療、研究に関する情報国立がん研究センターがん対策情報センターがん情報サービス(各種がんのエビデンスデータベース「軟部肉腫」の情報)日本整形外科学会(骨・軟部腫瘍相談コーナーの情報)日本臨床腫瘍研究グループ(JCOG)(骨軟部腫瘍グループの研究に関する情報)NPO骨軟部肉腫治療研究会(JMOG)(医療従事者向けの診療・研究情報)患者会情報日本に「サルコーマセンターを設立する会」(肉腫患者および家族の会)1)上田孝文. 癌と化学療法. 2013; 40: 318-321.公開履歴初回2013年06月06日更新2016年01月26日

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わかる統計教室 第3回 理解しておきたい検定 セクション2

インデックスページへ戻る第3回 理解しておきたい検定セクション2 量的データは平均値と中央値を計算せよセクション1表1は新薬Yの処方患者300例、従来薬Xの処方患者400例について、薬剤投与前後の体温を調べたデータです。低下体温は投与前体温から投与後体温を引いた値です。表1 薬剤投与前後の体温調査データ(再掲)統計学の説明をする場合、データ数が少ない例のほうがわかりやすいので、表1の新薬Yの300例、従来薬Xの400例から各10例を選び、表2を作成しました。こちらのデータで説明していきましょう。表2 各10例のデータ■平均値表2のデータについて、まず、新薬Yの投与前体温と投与後体温の平均値を計算してみましょう。次に、求められた平均値の差分(低下体温)を求めてください。従来薬Xについても、同様の計算をしてみましょう(表3)。表3 平均値による解熱効果の比較表3からどのようなことがいえるでしょうか?新薬Y、従来薬Xのどちらも、投与後体温平均値は投与前平均値に比べて低くなっていて、解熱効果があるといえますね。ただし、どれくらい下回れば解熱効果があったといえるかという、統計学的基準はありません。ここでは仮に、投与前の体温より投与後の体温が下回れば解熱効果があったとしましょう。ほかにも言えることがありますね。新薬Yの低下体温1.81℃が、従来薬Xの低下体温2.00℃に比べ値が小さかったので、従来薬Xのほうが効果があるようにみえます。これは、新薬Y(n=10)と従来薬X(n=10)を比較した計算結果を見る限り、間違いではありませんが、これでは新薬Yを患者に薦めることはできません。そこで、何かデータの見方が間違っていたのではないかと、疑問を持つことが大切です。つまり、もっとデータを見る目を鍛えないといけないということです。■中央値体温のように数量で測定されたデータを「量的データ」といいます。量的データは平均値だけでなく、中央値を見ることが必須です。中央値(median)とは、データを降順あるいは昇順に並べたとき、真ん中に位置する値です。たとえば、データが37.5、38.2、38.6の3個の場合、中央値は38.2になります。では、表2の従来薬Xの投与前体温と投与後体温の中央値を求めてみましょう。このデータのように、データの個数が偶数の場合の中央値の算出方法は、真ん中に位置する2つの値の平均となります。したがって、中央値は37.8となります(表4)。表4 従来薬X投与前データの中央値では、平均値と中央値を比較してみましょう。平均値(38.65℃)のほうが、中央値(37.8℃)より値が大きくなっています。その理由は、平均値の計算に、ほかに比べて大きな値(ここでは44.5℃)のデータが含まれているからです。そのデータに引きずられて値が大きくなっているのです。一方、中央値は44.5℃と大きな値のデータがあっても、真ん中の値なのでその影響は受けません。ですから、平均値のほうが中央値より値が大きくなっているのです。■外れ値この学習では仮に、解熱剤は一般に患者の体温が37~40℃位の場合に効果があるとしましょう。したがって、表2の投与前体温は数例を除いて、ほぼこの範囲に入っています。ほとんどの患者の体温が37~40℃の間にある中で、X_196の患者(44.5℃)は本来、この薬剤を適用してはいけない患者だった可能性がありますね。44.5℃は、通常データでなく異常なデータだといえます。このようなデータを統計学では「外れ値(outlier)」といいます。値の大きな外れ値がある場合、平均値は大きめに出るので平均値を用いて分析するのは危険です。つまり、外れ値がある場合は中央値を用いて分析するということになります。ここで知っておいていただきたいのは、平均値と中央値を両方計算し、両者の値がほぼ同じであるかどうかを確認することです。では、表2の新薬Yの投与前体温の中央値を求めて、平均値と比較してみましょう。35.2 37.0 37.4 37.7 38.4 38.5 38.6 38.7 38.8 39.6中央値は38.45℃になりますね。新薬Yの投与前体温は、平均値37.99、中央値38.45です。両者は異なるので中央値を適用します。新薬Yは、平均値が中央値より小さくなっています。その原因は値の小さな外れ値(35.2℃)があるからです。新薬Y投与後、従来薬X投与後の中央値を求め、平均値と中央値の比較表を作成してみましょう(表5、6)。表5 新薬Yの平均値と中央値の比較表6 従来薬Xの平均値と中央値の比較先ほど、平均値の差から、「新薬Yの低下体温1.81℃が、従来薬Xの低下体温平均値2.00℃に比べ値が小さかったので、従来薬Xのほうが効果があるようにみえる」としましたが、これが間違いであったということがわかりますね。このように、外れ値がある場合は中央値で比較すればよいということです。表7で中央値を計算した結果を見ると、中央値の差による新薬Yの低下体温は2.05℃で従来薬Xの低下体温1.25℃を上回り、新薬Yのほうが従来薬Xに比べ解熱効果があったといえます。表7 中央値による解熱効果の比較表5と表6をみると、平均値と中央値が「異なる」と「ほぼ同じ」が混在しています。このように1つでも「異なる」があれば、中央値で分析してください。ただし通常は、よく使われている平均値のほうが中央値より使いやすい場合が多いようです。そこで、外れ値を除外して、平均値で比較しても構いません。実際に計算してみると、表8のようになります。低下体温は、新薬Yのほうは2.00℃、従来薬Xは1.40℃で、新薬Yのほうが従来薬Xより効果があったといえます。表8 外れ値を除外した平均値による解熱効果の比較このように、中央値、外れ値を除外した平均値、どちらで分析を行っても結論は同じということになります。■今回のポイントインデックスページへ戻る

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SSRIなどで効果不十分なうつ病患者、新規抗うつ薬切り替えを検証

 選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)またはセロトニン・ノルエピネフリン再取り込み阻害薬(SNRI)の効果が不十分な大うつ病性障害(MDD)患者に対し、vortioxetineは他の抗うつ薬に比べて高い寛解率を示し、忍容性も良好であることを、フランス・Lundbeck SASのMelanie Brignonea氏らが検討の結果、報告した。結果を踏まえて著者らは、「vortioxetineが代替薬として妥当であることが示唆された」とまとめている。Current Medical Research and Opinion誌2016年2月号掲載の報告。 検討は、SSRIあるいはSNRIに対する効果不十分のMDD患者において、種々の抗うつ薬単剤と比較したvortioxetineの相対的有効性および忍容性の評価を目的とした。 初回治療の効果が不十分であったMDD患者を対象とした単剤治療の研究を系統的に検索。SSRI、SNRIおよびその他の抗うつ薬を治療薬とした研究を包含した。3段階のスクリーニング/データ抽出過程を経て、批判的吟味が行われた研究を特定した。システマティック文献レビューで示された結果の間接的な治療比較(ITC)をBucher's methodを用いて調整し、寛解率および有害事象(AE)による脱落率を比較した。 主な結果は以下のとおり。・選択基準を満たした研究は27件であった。National Institute of Health および Care Excellence のチェックリストで「質が高い」とされた研究も数件含まれていた。・3件の研究が、vortioxetineとagomelatine、セルトラリン、ベンラファキシンXR、bupropion SRを定量的評価により比較しており、エビデンスの構築に寄与していた。・vortioxetineは、agomelatineに比べて統計学的に有意な高い寛解率を示した(リスク差[RD]:-11.0%、95%CI:-19.4~-2.6)。また、vortioxetineはセルトラリン(同:-14.4%、-29.9~1.1)、ベンラファキシン(-7.20%、-24.3~9.9)、bupropion(-10.70%、-27.8~6.4)に比べ、寛解率が数値として高かった。・vortioxetineにおけるAEによる脱落率は、セルトラリン(RD:12.1%、95%CI:3.1~21.1)、ベンラファキシンXR(同:12.3%、0.8~23.8)、bupropion SR(18.3%、6.4~30.1)に比べて統計学的有意に低かった。・SSRI/SNRIの効果が不十分なMDD患者における単剤治療を評価した、質の高い切り替え試験が数件あった。間接的な比較により、vortioxetineへの切り替えが、他の抗うつ薬に比べて寛解率が高いことがわかった。vortioxetineの忍容性は良好で、他の抗うつ薬に比べてAEによる脱落率が低い。vortioxetineは、前治療のSSRIあるいはSNRIの効果不十分例に対する妥当な代替治療薬といえる。(鷹野 敦夫)精神科関連Newsはこちらhttp://www.carenet.com/psychiatry/archive/news 

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筋萎縮性側索硬化症〔ALS : amyotrophic lateral sclerosis〕

1 疾患概要■ 概念・定義筋萎縮性側索硬化症(amyotrophic lateral sclerosis:ALS)は、中年期以降に発症する上位運動ニューロンと下位運動ニューロンの両者が侵される疾患である。構音・嚥下筋、呼吸筋を含む全身の筋萎縮と脱力が進行性に認められ、呼吸補助を行わなければ平均2~4年で死に至る神経難病の1つである。従来ALSは運動神経系に限局した疾患とされ、主に日本から報告されてきた認知症を伴ったALS(ALS with dementia:ALS-D)は特殊な亜型と考えられていた。ところが近年、前頭側頭葉変性症(Frontotemporal lobar degeneration:FTLD)と病理所見、原因となる遺伝素因についての共通性が明らかとなり、ALSとFTLDを一連の疾患スペクトラムで捉えようとする考えが広まっている。■ 疫学2009年度の調査では、わが国におけるALSの発症率は、人口10万人当たり2.1~2.3人、有病率は10万人当たり9.7~10.1人とされ、ほぼ全世界で同じような数字を示し、人種差もないとされている。性別では、男性が女性に比して約1.3~1.5倍多く発症する。また、発症率は40歳代より上昇し、ピークは60~70歳代である。■ 病因ALSの約5~10%に家族歴が認められ、その多くが常染色体顕性(優性)遺伝を示す。常染色体顕性遺伝を示す家系の約20~30%は活性酸素を消去する酵素であるCu/Zn superoxide dismutase(SOD1)の遺伝子異常が原因と報告されている。この変異したSOD1遺伝子を強制発現したtransgenic mouseはALSと類似した神経症状を示すことから、変異SOD1が運動ニューロンの障害に働くことは間違いないが、その機序については明らかとなってはいない。SOD1以外の遺伝子座や原因遺伝子も次々に同定されてきているが、ALSの大多数を占める孤発例の原因についてはいまだ不明という状況である。病理で認められるユビキチン陽性封入体の本体としてTDP-43(transactive response DNA-binding protein 43 kDa)が同定され、病原蛋白質と想定されている。■ 症状上位と下位運動ニューロンが障害されるが、下記の症状がそれぞれの程度に応じて障害部位に認められる(表)。画像を拡大する上位運動ニューロンの障害巧緻運動の障害痙縮深部腱反射の亢進病的反射陽性(ホフマン反射、バビンスキー反射など)下位運動ニューロンの障害筋力低下筋萎縮筋緊張の低下筋線維束性収縮深部腱反射の減弱ないし消失また、前述したようにALSにおける認知機能障害が注目されるようになり、約半数の症例で何らかの障害を示すとされている。その特徴として、記銘力や見当識の障害は目立たず、行動異常、性格変化や意欲の低下、言語機能の低下として表れることが報告されている。ALSでは、眼球運動障害、膀胱直腸障害、感覚障害、褥創を来すことは少なく、陰性4徴候と呼ばれている。■ 分類上位・下位運動ニューロン徴候が四肢からみられ、体幹・脳神経領域に進展していく脊髄発症型(古典型)と、病初期に脳神経領域が強く障害され、四肢にはあまり目立たない球麻痺型(進行性球麻痺型)が病型の中核をなす。また、病初期には上位運動ニューロン徴候のみ、あるいは下位運動ニューロン徴候のみを示して進行性に悪化する症例があり、前者は原発性側索硬化症(primary lateral sclerosis:PLS)、後者は脊髄性進行性筋萎縮症(spinal progressive muscular atrophy:SPMA)あるいは単に進行性筋萎縮症(progressive muscular atrophy:PMA)と診断されてきた。これらの疾患が独立した一疾患単位であるのか、あるいはALSの亜型と考えるべきなのか議論がいまだにあり、結論は得られていない。■ 予後ALSの経過には、個々人での差異もかなりみられることに留意する必要があるが、一般的には、発症から死亡もしくは呼吸補助が必要となるまで平均2~4年とされている。2 診断 (検査・鑑別診断も含む)ALSの診断は、構音障害や嚥下障害などの球麻痺症状を含む全身性、進行性の筋萎縮や脱力がみられるか、または筋電図検査において、広範な部位に脱神経所見が認められることにより診断される。画像検査においては後述するような所見が認められることもあるが、基本的には筋力低下や筋萎縮の原因となりうる脳幹や脊髄での圧迫、腫瘍病変などを除外する目的で行われる。なお、ALSの診断基準は診断感度を上げるための改定が行われており、改定El Escorial診断基準、Updated Awaji診断基準、Gold Coast診断基準などが出されている。表に示した診断基準は、改定El Escorial診断基準を取り入れながら,わが国において従来用いられてきた厚生労働省特定疾患神経変性疾患調査研究班の診断基準を改訂し、2003年度に神経変性疾患に関する研究班により作成されたものであり、指定難病の申請をする際に利用されている。1)針筋電図検査神経原性の場合、運動単位電位(muscle unit potential:MUP)の種類が減少し、高振幅、多相性のものが目立ち、干渉波が減少する。脱神経があると、安静時の検査で線維性収縮電位、陽性鋭波、線維束性収縮電位が認められる。脳幹領域、胸髄領域では各1筋、頸髄および腰仙髄領域では神経根支配と末梢神経支配の異なる2筋について検索を行うようにする。2)頭部MRIALSのMRI所見としては、T2強調画像における皮質脊髄路に沿った高信号域、中心溝を縁取るように線状の低信号領域などが報告されている。前者は皮質脊髄路における神経線維の変性・脱落、マクロファージの出現、グリオーシスによるものとされ、後者は鉄の沈着によるものと推定されている。いずれの所見もALSに特異的にみられるわけではなく、健常者でも同様の所見が認められるとの報告もある。現時点でALSに特異的なMRI所見はなく、筋萎縮や脱力を呈する他疾患を除外する目的で行われる。3)鑑別診断鑑別すべき疾患は先述の表の鑑別診断を参照。その他に鑑別すべき疾患として、ポリオ後症候群、重症筋無力症なども挙げられる。3 治療 (治験中・研究中のものも含む)■ 薬物療法ALSでは治療に関する高いエビデンスは少なく、その薬物療法に関して、長らくグルタミン酸拮抗剤であるリルゾール(商品名:リルテック)が唯一という状況であった。しかし、2015年6月、フリーラジカル消去剤として脳梗塞の治療薬として使用されていたエダラボン(同:ラジカット)が、ALSの進行を遅らせることが証明され、治療薬として認可された。当初点滴薬のみであったが、2022年12月に経口薬の製造販売が承認された。リルゾールは、生存期間を平均3ヵ月延長するとされる。ALSと診断された方に治療薬として処方することが勧められるが、同時に、投与する前に患者には薬の効果は顕著ではないこと、肝機能障害、貧血、その他の副作用が生じる可能性があることを充分説明した上で同意を得て使用する。なお、努力性肺活量(%FVC)が60%を切っている患者への投与は、効果が期待できないとの理由で避けるべきである。一般的には、1回50mgを朝、夕食前に内服する。エダラボンのALSに関する進行抑制効果は、発症後2年以内で、呼吸機能が保たれている患者群において確認された。一方、ALS重症度分類4度以上、%FVCが70%未満に低下している症例での有効性は確認されていない。実際の臨床では、病期・状態にかかわらず、すべてのALS患者に投与可能とされているが、投与はALSの治療経験を持つ医師と連携しながら実施する。経口剤は、1日1回5mL(エダラボンとして105mg)を空腹時に投与する。投与期と休薬期を組み合わせた28日間を1クールとし、第1クールは14日間連続投与した後、14日間休薬する。第2クール以降は、14日間のうち10日間投与する投与期の後、14日間休薬し、以後同様のサイクルで投与を続ける。家族性ALSのうちで最も頻度の高いSOD1遺伝子変異を有する症例に対して、蛋白合成を抑制するアンチセンスヌクレオチドである「トフェルセン」の髄腔内投与が米国および欧州において認可された。ALSの機能評価スケールでの有意な改善は認められなかったが、髄液中のSOD1蛋白質濃度が低下し、血漿中のNfL濃度の低下が認められた。対症療法として、痙縮に対する理学療法、抗痙縮薬の投与などを行う。流涎に対して、抗コリン作用を有する三環系抗うつ薬などの効果が報告されている。ALS患者においてしばしば認められる強制泣き・笑いなどの情動調節障害に対しては、選択的セロトニン再取り込み阻害薬やセロトニン・ノルアドレナリン選択的再取り込み阻害薬で効果があるとされ、試みる価値がある。米国ではデキストロメトルファンとキニジンの合剤が承認されているが、わが国では未承認である。疼痛や精神不安、不眠に対しては、呼吸抑制などのリスクがあることを患者および家族に説明した上で、麻薬を含む鎮痛薬、抗不安薬、抗うつ薬などの積極的薬物治療を行うべきである。■ 呼吸管理ALSは、呼吸筋を含む全身筋の脱力を来す疾患で、呼吸補助を行わなければ呼吸不全がその死因となることが多い。すなわち適切な呼吸補助と全身管理を行えば長期の生存も期待できるが、その際問題になることとして、一度装着した呼吸器を外すことは現在のわが国では難しいこと、呼吸器を装着した患者が長期入院できる医療施設が限られるため、在宅での療養を選択せざるを得ず、患者家族の負担が過大となる点が挙げられる。呼吸補助に関しても、まずマスクを用いた非侵襲的な呼吸補助(non-invasive ventilation:NIV)を選択し、その後気管切開による侵襲的な呼吸補助(tracheotomy (and)invasive ventilation:TIV)へと変更する方法、最初から侵襲的呼吸補助を行うなどの選択が考えられる。呼吸補助が検討されるべき時期として目安となる基準を提示しているガイドラインもあるが、遅くとも呼吸障害に関連した臨床症状(呼吸苦、朝の頭痛、小声など)が認められた段階で開始するようにする。以前は%FVCが65%未満での導入が検討されていたが、より早期に導入することで生存期間が延長するとの報告もある。■ 栄養管理ALSでは、嚥下障害の進行により、栄養不良、脱水、誤飲などの危険にもさらされる。栄養状態が不良だと予後不良となることが報告されており、適切な栄養管理を行う必要がある。現在、経皮的胃瘻造設術(percutaneous endoscopic gastrostomy:PEG)が比較的安全に施行できることから、球麻痺症状のある患者では、窒息、誤飲の危険を回避するために早めにPEGを施行しておくことが勧められる。■ リハビリテーション比較的急速に進行する筋萎縮・脱力に対して、筋力増強あるいは維持を目的とした運動療法が有効か否かという疑問がある。現在でもこれに対する確かな答えはないが、定期的な軽い運動療法を施した群では、とくに運動療法を行わなかった群と比べて、有意性は認められないものの、一部のADL評価スケールで障害度が軽くなる傾向が報告されている。ただし一般的に筋力の改善は期待できない。強い運動強度を負荷することに関しては、逆に悪影響を及ぼした可能性を示唆するものが目立ち、積極的なリハビリを推奨することはできない。近年、ロボット・リハビリテーション医療が発展して装着型サイボーグ“Hybrid Assistive Limb”(商品名:HAL)が保険適用となり、歩行距離の延長、歩行システムの再構築に有用であるとの報告もある。4 今後の展望ここ数年、ALS患者より樹立したiPS細胞を利用した薬剤スクリーニングで、有効とされた薬剤をはじめとしたいくつかの薬剤の臨床試験が実施され、新たな薬剤として認可されるものがでることが期待される。また、10年ぶりにガイドラインの改定が行われ「筋萎縮性側索硬化症(ALS)診療ガイドライン 2023」が刊行された。5 主たる診療科脳神経内科※ 医療機関によって診療科目の区分は異なることがあります。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)診療、研究に関する情報難病情報センター(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)神経変性疾患に関する調査研究班(医療者向け診療、研究情報)JaCALS(医療者向け診療・研究情報)患者会情報日本ALS協会(患者とその家族会の情報)1)「筋萎縮性側索硬化症診療ガイドライン」作成委員会編集. 日本神経学会監修. 筋萎縮性側索硬化症(ALS)診療ガイドライン2023. 南江堂;2023.公開履歴初回2013年6月13日更新2016年1月19日更新2024年8月22日

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