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妊娠中の甲状腺ホルモン治療、流産・死産への影響は?/BMJ

 潜在性甲状腺機能低下症の妊婦では、甲状腺ホルモン薬の投与により妊娠喪失のリスクが低減するが、早産などのリスクは増加することが、米国・アーカンソー大学のSpyridoula Maraka氏らの検討で示された。研究の成果は、BMJ誌2017年1月25日号に掲載された。潜在性甲状腺機能低下症は妊婦に有害な転帰をもたらすことが、観察研究で示唆されている。甲状腺ホルモン薬のベネフィットを支持するエビデンスは十分でないにもかかわらず、米国の現行ガイドラインではレボチロキシンが推奨されているという。甲状腺ホルモン薬は5年間で約16%に投与 研究グループは、潜在性甲状腺機能低下症の妊婦における甲状腺ホルモン薬(レボチロキシン、リオチロニン、甲状腺抽出物製剤)の有効性と安全性を評価するレトロスペクティブなコホート試験を実施した(Mayo Clinic Robert D. and Patricia E. Kern Center for the Science of Health Care Deliveryの助成による)。 米国の全国的なデータベース(Optum-Labs Data Warehouse)を検索し、2010年1月1日~2014年12月31日に登録された潜在性甲状腺機能低下症(甲状腺刺激ホルモン[TSH]:2.5~10mIU/L)の妊婦のデータを抽出した。 主要評価項目は妊娠喪失(流産、死産)とし、副次評価項目には早産、早期破水、胎盤早期剥離、妊娠糖尿病、妊娠高血圧、妊娠高血圧腎症、胎児の発育不全などが含まれた。 解析の対象となった5,405例の妊婦のうち、843例(15.6%)が甲状腺ホルモン薬の投与を受け、4,562(84.4%)例は受けていなかった。832例(98.7%)がレボチロキシン、7例(0.8%)が甲状腺抽出物製剤、4例(0.5%)はレボチロキシン+リオチロニンを投与されていた。ベネフィットは治療前TSH 4.1~10.0mIU/Lに限定 甲状腺ホルモン薬の投与を受けた妊婦の割合は経時的に増加し(2010年:12%~2014年:19%)、地域差(北東部/西部>中西部/南部、p<0.01)がみられた。TSH検査から投与開始までの期間中央値は11日(IQR:4~15)、出産までの期間中央値は30.3週(IQR:25.4~32.7)だった。 ベースラインの平均年齢は、治療群が31.7(SD 4.7)歳、非治療群は31.3(SD 5.2)歳と差はなかったが、18~24歳が非治療群で多かった(5.8% vs.9.5%)。平均TSHは治療群が4.8(SD 1.7)mIU/Lと、非治療群の3.3(SD 0.9)mIU/Lに比べ高値であった(p<0.01)。また、治療群は妊娠喪失の既往(2.7% vs.1.1%、p<0.01)、甲状腺疾患の既往(6.2% vs.3.4%、p<0.01)のある妊婦が多かった。 解析の結果、妊娠喪失の発生率は治療群が10.6%と、非治療群の13.5%に比べ有意に低かった(補正オッズ比:0.62、95%信頼区間[CI]:0.48~0.82、p<0.01)。 一方、治療群では、早産(7.1% vs.5.2%、補正オッズ比:1.60、95%CI:1.14~2.24、p=0.01)、妊娠糖尿病(12.0% vs.8.8%、1.37、1.05~1.79、p=0.02)、妊娠高血圧腎症(5.5% vs.3.9%、1.61、1.10~2.37、p=0.01)の頻度が非治療群に比し高かった。その他の妊娠関連の有害な転帰の頻度は両群でほぼ同等であった。 さらに、妊娠喪失は、ベースラインのTSHが4.1~10.0mIU/Lの妊婦では、治療群が非治療群よりも有意に抑制された(補正オッズ比:0.45、95%CI:0.30~0.65)のに対し、2.5~4.0mIU/Lの妊婦では治療の有無で差はなく(0.91、0.65~1.23)、これらのサブグループの間に有意な差が認められた(p<0.01)。 逆に、妊娠高血圧は、TSH 4.1~10.0mIU/Lの妊婦では治療群と非治療群に有意な差はなかった(補正オッズ比:0.86、0.51~1.45)が、2.5~4.0mIU/Lの妊婦では治療群のほうが有意に多くみられ(1.76、1.13~2.74)、サブグループ間に有意差を認めた(p=0.04)。 著者は、「甲状腺ホルモン薬による妊娠喪失の抑制効果は、治療前のTSHが4.1~10.0mIU/Lの妊婦に限られ、早産、妊娠糖尿病、妊娠高血圧腎症はむしろ増加した」とまとめ、「甲状腺ホルモン薬の安全性を評価するために、さらなる検討を要する」と指摘している。

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精神的苦痛は発がんリスクを増大/BMJ

 精神的苦痛(うつ、不安の症状)が重くなるほど、大腸がんや前立腺がんのリスクが高まり、精神的苦痛は発がんの予測因子となる可能性があることが、英国・ユニバーシティ・カレッジ・ロンドンのG David Batty氏らの検討で示された。研究の成果は、BMJ誌2017年1月25日号に掲載された。精神的苦痛とがんとの関連については、(1)精神的苦痛に繰り返し曝されるとナチュラルキラー細胞の機能が喪失して腫瘍細胞の増殖を招く、(2)うつ症状は視床下部-下垂体-副腎系の異常をもたらし、とくにホルモン関連がんの防御過程に不良な影響を及ぼす、(3)苦痛の症状は、喫煙、運動不足、食事の乱れ、肥満などの生活様式関連のリスク因子への好ましくない影響を介して、間接的に発がんの可能性を高めるなどの機序が提唱されている。英国の16研究の参加者16万人以上を解析 研究グループは、部位別のがん死の予測因子としての、精神的苦痛(うつ、不安の症状)の可能性を検証するために、1994~2008年に開始された16件の前向きコホート研究に参加した患者の個々のデータの統合解析を行った(特定の研究助成は受けていない)。 イングランドの13件およびスコットランドの3件の健康調査から、英国の典型的なサンプルを収集した。試験登録時に16歳以上で、がんの診断歴がなく、参加者自身の報告による精神的苦痛スコア(精神健康調査票[GHQ-12])の記録がある16万3,363例が解析の対象となった。 精神的苦痛はGHQ-12スコアにより、無症状(0点)、潜在性症状(1~3点)、有症状(4~6点)、重度症状(7~12点)に分類した。16種のがん、その他のがん、喫煙関連がん、喫煙非関連がんに分け、精神的苦痛との関連を解析した。苦痛が重度の群はがんのリスクが32%増加 ベースラインの平均年齢は46.3(SD 18.3)歳、女性が54.9%を占めた。精神的苦痛スコアの平均値は1.5(SD 2.6)点、平均BMIは26.6(SD 4.8)、義務教育修了年齢以降の学歴ありは67.9%、喫煙者は26.3%、週1回以上の飲酒は62.0%だった。 16件の研究の死亡調査の平均期間は9.5年で、この間に1万6,267例が死亡し、このうち4,353例ががんで死亡した。 年齢、性別、教育、社会経済的状況、BMI、喫煙、アルコール摂取で補正し、逆因果関係を左側打ち切り(left censoring)で、欠損データを代入法で調整した解析を行ったところ、精神的苦痛が軽度の群(GHQ-12スコア:0~6点)に比べ、苦痛が重度の群(同スコア:7~12点)は、すべての部位のがんを合わせた死亡率が有意に高かった(多変量補正ハザード比[HR]:1.32、95%信頼区間[CI]:1.18~1.48)。 また、精神的苦痛が重度の群は、喫煙非関連がん(HR:1.45、95%CI:1.23~1.71)、大腸がん(1.84、1.21~2.78)、前立腺がん(2.42、1.29~4.54)、膵がん(2.76、1.47~5.19)、食道がん(2.59、1.34~5.00)、白血病(3.86、1.42~10.5)のリスクが有意に高かった。大腸がんと前立腺がんのリスクは、精神的苦痛スコアが上がるにしたがって有意に増加した(いずれも、傾向検定のp<0.001)。 著者は、「精神的苦痛が、特定のがん発症の予測能を有する可能性を示唆するエビデンスが得られた」とまとめ、「個々の精神的苦痛とがんの因果関係がどの程度に及ぶかを解明するために、さらなる検討が求められる」と指摘している。

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心電図のはじめかた

心電図学習の挫折経験者に救済と無限の愛を付与する最適の1冊!医学書のコーナーにいくと、多種多様な心電図を学ぶ本が所狭しと置かれています。しかし、それでもなお、挫折する医療者が後を絶ちません。本書は、心電図が大のニガテから、今では数多くの心電図講義を行い、心電図本のベストセラーまで出版するようになった著者が、本当に基礎中の基礎のところで壁にぶつかっている人たちに向けて書き記したものです。これ以上ないほど丁寧かつ楽しい解説で、無味乾燥に見えていた「波」が、饒舌に語りかけてくるように感じることでしょう。心電図を苦手とするすべての医療者に贈る1冊です。画像をクリックすると、内容の一部をご覧いただけます。画像をクリックすると、内容の一部をご覧いただけます。    心電図のはじめかた定価2,600円 + 税判型A5判頁数200頁発行2017年1月著者杉山裕章Amazonでご購入の場合はこちら

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ここが知りたい!糖尿病診療ハンドブック Ver.3

患者さんのより良いコントロールと合併症予防を目指して新知見を注入糖尿病領域で好評をいただいている書の全面改訂版の登場です。前書Ver.2の刊行から約2年。この間にも、新たなエビデンスの集積、ADA(アメリカ糖尿病協会)の新ガイドラインやわが国学会の高齢者糖尿病の血糖コントロール目標2016の公表など、糖尿病診療を取り巻く環境は、日々進歩を続けています。Ver.3ではこれらの知見を織込み、また、ライゾデグ、トルリシティ、ジャディアンスやウィークリー製剤などの新しい薬剤に関する情報も追加いたしました。糖尿病診療に携わるすべてのかかりつけ医、一般内科医に必携の書です。画像をクリックすると、内容の一部をご覧いただけます。画像をクリックすると、内容の一部をご覧いただけます。    ここが知りたい!糖尿病診療ハンドブック Ver.3定価3,600円 + 税判型A5判頁数368頁発行2017年1月編著岩岡秀明 / 栗林伸一Amazonでご購入の場合はこちら

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統合失調症に対する短期治療、アリピプラゾール vs.リスペリドン

 統合失調症に対するアリピプラゾールとリスペリドンの短期治療効果および副作用プロファイルについて、インド・カヌール・メディカル大学のP B Sajeev Kumar氏らが、比較検討を行った。Current neuropharmacology誌オンライン版2017年1月12日号の報告。 本研究は、統合失調症に対するアリピプラゾールとリスペリドンによる8~12週間の治療を比較した非無作為化自然主義的盲検化プロスペクティブ研究。対象は、すでにアリピプラゾール(10~30mg/日)またはリスペリドン(3~8mg/日)で治療中の患者。MINI(Mini International Neuropsychiatric Interview:精神疾患簡易構造化面接法)Plus、PANSS、AIMS(Abnormal Involuntary Movement Scale:異常不随意運動評価尺度)、SAS(Simpson Angus Scale)、UKU(Udvalg for Klinske Undersogelser)スケール、CGI-Sを、試験開始時に収集した。1日目およびフォローアップ時に、身体測定(身長、体重、BMIなど)、血圧、脈拍数を調べた。8~12週間後に、MINI Plusを除く検査を再度実施した。 主な結果は以下のとおり。・アリピプラゾール群およびリスペリドン群の両方で、陽性症状、陰性症状の有意な改善が示された。しかし、両群間に統計学的有意差はなかった。・患者によるCGI改善スケールスコアの平均改善度は、アリピプラゾール群で有意な傾向が示された。・UKUスケールにより評価される一般的な(患者の5%以上で認められる)有害事象は、アリピプラゾール群よりもリスペリドン群で高頻度に認められた。・薬物誘発性錐体外路症状は、リスペリドン群でより多かった。・アリピプラゾール群は、体重増加に対する治療がより少なかった。 著者らは「アリピプラゾールは、統合失調症に対する8週間の短期治療において、リスペリドンと同等の有効性を示し、より良好な忍容性が認められた。また、患者満足度および副作用プロファイルも良好であった」としている。関連医療ニュース 統合失調症患者の認知機能に対するアリピプラゾール vs.リスペリドン 2つの抗精神病薬持効性注射剤、その違いを分析 アリピプラゾール vs.その他の非定型抗精神病薬:システマティックレビュー

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血管止血デバイスの安全性評価に有用な監視システム/NEJM

 DELTA(Data Extraction and Longitudinal Trend Analysis)と呼ばれる前向き臨床登録データサーベイランスシステムを用いた検証により、血管止血デバイスの1つであるMynxデバイスが、経皮的冠動脈インターベンション(PCI)後の有害事象増加と関連しており、最初の1年以内で他の血管止血デバイスと有意差がみられることが明らかとなった。米国・Lahey Hospital and Medical CenterのFrederic S. Resnic氏らが、PCI後の有害事象増加が懸念されているデバイスの安全性モニタリングについて、DELTAシステムを用いた戦略が実現可能かを評価したCathPCI DELTA試験の結果、報告した。これまで、医療機器の市販後の安全性を保証する過程は、有害事象の自主報告に依存しており、安全性の評価と確認が不完全であった。NEJM誌オンライン版2017年1月25日号掲載の報告。Mynxデバイスの安全性に関する傾向スコア解析を実施 DELTAは、オープンソースのデータベース管理および統計解析ツールを結合する統合ソフトウェア・コンポーネントで、臨床登録と他の詳細な臨床データから安全性シグナルを前向きにモニターするサーベイランスシステムである。 研究グループは、DELTAシステムを使用し、CathPCI Registryに登録された患者を対象に、Mynxデバイスの安全性を他の承認済み血管止血デバイスと比較する傾向スコア解析を実施した(Mynxは、シースを抜く際に大腿動脈の穿刺部を、生体に吸収されるポリエチレングリコールで止血するデバイス)。 主要評価項目は、全血管合併症(穿刺部出血、穿刺部血腫、後腹膜出血、その他の処置を要する血管合併症)、副次評価項目は治療を要する穿刺部出血および施術後輸血であった。他の血管止血デバイスと比較し、Mynxデバイスで血管合併症リスクが有意に増加 2011年1月1日~2013年9月30日の間に、大腿部アプローチによるPCI後にMynxデバイスを使用した患者7万3,124例のデータが解析された。 Mynxデバイスは、他の血管止血デバイスと比較して、全血管合併症のリスクが有意に増加した(絶対リスク1.2% vs.0.8%、相対リスク:1.59、95%信頼区間[CI]:1.42~1.78、p<0.001)。同様に、穿刺部出血(同:0.4% vs.0.3%、1.34、1.10~1.62、p=0.001)、および輸血(1.8% vs.1.5%、1.23、1.13~1.34、p<0.001)も有意なリスク増加が確認された。 Mynxデバイスによる血管合併症に関する警告(増加が有意であることが最初に認められたこと)は、モニタリング開始後12ヵ月以内に発生した。相対リスクは、事前に定義した3つのサブグループ(糖尿病、70歳以上、女性)でより高かった。 FDAの指示により追加された2014年4月1日~2015年9月30日の間の別の4万8,992例を対象とした解析でも、すべての評価項目に関して最初の12ヵ月以内に警告が確認された。

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レンバチニブ 切除不能肝細胞がんでソラフェニブに非劣性示す

 エーザイ株式会社(本社:東京都、代表執行役CEO:内藤晴夫)は、自社創製の抗がん剤レンバチニブ(商品名: レンビマ)が、全身化学療法歴のない切除不能な肝細胞がんにおけるソラフェニブを対照とした臨床第III相試験(304試験)において、主要評価項目を達成したと発表。 304試験は、全身化学療法歴のない切除不能な肝細胞がん患者を対象に、レンバチニブについて、標準治療薬ソラフェニブとの有効性および安全性を比較する多施設共同、非盲検、無作為化グローバル臨床第III相試験。当試験では、954例の患者を各群に1:1の割合で無作為に割り付け、レンバチニブ投与群(n=478)には体重によって12mgまたは8mg/日、ソラフェニブ投与群(n=476)には400mg×2/日を投与した。投与は病勢進行あるいは忍容できない有害事象の発現まで継続された。主要評価項目は全生存期間(OS)とし、非劣性の検証を目的に実施した。副次評価項目として、無増悪生存期間(PFS)、無増悪期間(TTP)、奏効率(ORR)などを評価した。 結果、レンバチニブ投与群は、ソラフェニブ投与群に比較して、OSにおける非劣性が統計学的に証明され、PFS、TTP、ORRにおいて、統計学的に有意かつ臨床的意義のある改善を示した。本試験のレンバチニブ投与群で確認された有害事象(上位5つ)は、高血圧、下痢、食欲減退、体重減少、疲労であり、これまでにレンバチニブの投与で認められた安全性プロファイルと同様であった。その他の副次評価項目(QOL、血漿中薬物動態)や安全性の解析は継続中である。 エーザイは、本試験結果に基づき、日本、米国、欧州、中国を含むアジアの各当局と申請に向けた協議を行う予定。また、本試験結果の詳細について、今後の学会等で発表する予定である。エーザイ株式会社のニュースリースはこちら

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安定冠動脈疾患にRAS阻害薬は他剤より有効か/BMJ

 心不全のない安定冠動脈疾患の患者に対するレニン・アンジオテンシン系(RAS)阻害薬の投与は、プラセボとの比較では心血管イベント・死亡のリスクを低減するものの、Ca拮抗薬やサイアザイド系利尿薬などの実薬との比較では、同低減効果は認められなかった。また、対プラセボでも対照集団が低リスクの場合は、同低減効果は認められなかった。米国・ニューヨーク大学のSripal Bangalore氏らが、24の無作為化試験についてメタ解析を行い明らかにし、BMJ誌2017年1月19日号で発表した。心不全のない安定冠動脈疾患患者へのRAS阻害薬投与については、臨床ガイドラインでは強く推奨されているものの、最近の現行治療への上乗せを検討した試験結果では、対プラセボの有効性が示されなかった。非心不全・冠動脈疾患患者100例以上、追跡期間1年以上の試験を対象にメタ解析 研究グループは、PubMed、EMBASE、コクラン・ライブラリCENTRALを基に、2016年5月1日までに発表された、心不全のない(左室駆出分画率40以上または臨床的心不全なし)安定冠動脈疾患を対象に、RAS阻害薬とプラセボまたは実薬を比較した24の無作為化試験についてメタ解析を行い、RAS阻害薬の有効性を検証した。 対象とした試験は100例以上の該当患者を含み、また追跡期間は1年以上だった。アウトカムは死亡、心血管死、心筋梗塞、狭心症、脳卒中、心不全、血行再建術、糖尿病発症、有害事象による服薬中止だった。RAS阻害薬は死亡率14.10/1,000人年超の集団で有効 分析対象とした試験の総追跡期間は、19万8,275人年だった。 RAS阻害薬群はプラセボ群に比べ、全死因死亡(率比:0.84、95%信頼区間[CI]:0.72~0.98)、心血管死(0.74、0.59~0.94)、心筋梗塞(0.82、0.76~0.88)、脳卒中(0.79、0.70~0.89)、また、狭心症(0.94、0.89~0.99)、心不全(0.78、0.71~0.86)、血行再建術(0.93、0.89~0.98)のリスクをいずれも低減した。一方で実薬との比較では、いずれのアウトカム発生リスクの低減は認められなかった。率比は全死因死亡1.05(95%CI:0.94~1.17、交互作用のp=0.006)、心血管死1.08(0.93~1.25、p<0.001)、心筋梗塞0.99(0.87~1.12、p=0.01)、脳卒中1.10(0.93~1.31、p=0.002)などだった。 ベイズ・メタ回帰分析の結果、RAS阻害薬による死亡・心血管死リスクの低減が認められたのは、対照群のイベント発生率が高値の集団(全死因死亡14.10/1,000人年超、心血管死7.65/1,000人年超)だった試験のみで、低値の集団だった試験では同低減効果は認められなかった。 著者は、「心不全のない安定冠動脈疾患患者において、RAS阻害薬の心血管イベントおよび死亡の抑制は、プラセボ対照群の試験でのみみられ、実薬対照群の試験ではみられなかった。またプラセボ対照群においても、RAS阻害薬の有益性は、主に対照群のイベント発生率が高かった試験では認められたものの、低い場合は認められなかった」と述べている。そのうえで、「その他の実薬対照を含めてRAS阻害薬が優れていることを支持するエビデンスはない」とまとめている。

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論文を読むときは最初に利益相反を確認する必要がありそうだ(解説:折笠 秀樹 氏)-637

 コア臨床雑誌に掲載された195研究について、主任研究者と製薬企業との間にお金の関係(いわゆる利益相反[COI])がどのくらいあって、利益相反と研究結果との関連はどのくらいあるのかが調査された。2013年いっぱいの調査結果である。また、対象の研究はRCTであり、薬剤介入の臨床試験とした。製薬企業との利益相反があった割合は67.7%と、実に3分の2に及んでいた。 利益相反の中身について、39%は技術指導料、20%は講演料、13%が謝金および交通費、10%が株式取得、その他さまざまあるようであり(重複あり)、わが国とあまり相違ないように思われた。 利益相反がみられた研究の結果のほうがそうでない研究に比べて、約3倍も結論がポジティブ、つまり製薬企業にとって有利な方向へ傾いていた。これは驚くべき結果であり、初めて示されたエビデンスかと思う。なお、非劣性試験の場合は、非劣性有意が示されたらポジティブな結論としていた。 研究の背景ごとに利益相反の割合をみると(Table 1)、大規模試験(とくに616例超)、泌尿器・がん領域、非劣性試験、北米で実施された試験において、その割合が高かった。大規模試験では97%、泌尿器・がん領域では85/82%、非劣性試験では95%、北米試験では77%もの試験で、製薬企業との利益相反がみられた。大規模試験は高いエビデンスを作りたいため、泌尿器・がん領域では高価な薬剤のため、非劣性試験はハードルが低いため、そして北米はマーケティングが顕著なためと想像される。 昨今、日本で実施された大規模臨床試験で利益相反が強く疑われる事例があったが、北米のほうがもっと傷口は広いのかもしれない。教訓としては、臨床試験の論文を読むときは、利益相反の記載をよく見ることだろう。それは参考文献の少し上に記載されている。研究者の利益相反があると3倍もポジティブな結論になっているということは、研究者の利益相反に多くの製薬企業が挙がっていれば、その分を値引いたうえで結果を解釈すべきなのだろう。

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治験責任医師と企業の金銭的関係が試験結果に関連/BMJ

 治験責任医師と試験薬製造会社の経済的な関係は、臨床試験のpositiveな結果と独立の関連があることが、米国・オレゴン健康科学大学のRosa Ahn氏らの検討で示された。研究の成果は、BMJ誌2017年1月17日号に掲載された。無作為化臨床試験の治験責任医師は、一般的に企業と経済的な関連がある。研究の資金源と試験結果の関連を検証する研究は多数行われているが、企業助成の影響を考慮したうえで、治験責任医師の経済的関係と研究結果の関連を検証した研究は少ないという。2013年の195試験を横断的に解析 研究グループは、研究資金源を明らかにしたうえで、治験責任医師の試験薬製造会社との個人的な経済的関係と、試験結果の関連を検証するために、無作為化対照比較試験を対象とした横断的研究を行った(本研究は、直接的な助成は受けていない)。 Medlineを検索し、2013年1月1日~12月31日に主要な臨床専門誌に掲載された、主に薬剤の効果を検討した無作為化臨床試験の論文を同定した。 positiveの定義は、試験薬の効果が、優越性試験では対照薬よりも統計学的に有意に優れる場合、非劣性試験では対照薬よりも有意に劣らない場合、多剤の優越性試験では1つ以上の有効性の主要評価項目が有意に優れる場合、多剤の非劣性試験では1つ以上の有効性の主要評価項目に有意な差がない場合とした。 薬剤の有効性を主要評価項目とし、経済的関係が調査可能で、仮説が明確に記述され、研究助成の情報が含まれた190編(195試験)の論文が解析の対象となった。 第III相試験が52%、企業助成試験が69%を占め、筆頭著者は米国人が38%(74/195試験)で最も多かった。専門分野は、循環器が16%、腫瘍が11%、感染症が11%、泌尿器が7%、消化器が6%の順であった。また、優越性試験が89%、二重盲検試験が75%、プラセボ対照試験は75%だった。企業と経済的関係を持つ試験の76%がpositive 治験責任医師と製薬企業との経済的関係は、132件の研究(67.7%)で認められた。治験責任医師397人のうち、231人(58%)が経済的関係を持ち、166人(42%)は持たなかった。 156人(39%)の治験責任医師が、顧問料/コンサルタント料の受領を報告しており、81人(20%)が講演料の受領、81人(20%)が不特定の経済的関係、52人(13%)が謝礼金の受領、52人(13%)が被雇用関係、52人(13%)が旅行費用の受領、41人(10%)が株式の所有、20人(5%)が試験薬関連の特許の所有を報告していた。 試験結果がpositiveであった136試験のうち103試験(76%)で、治験責任医師と試験薬の製造企業に経済的関係が認められ、negativeであった59試験で経済的関係がみられたのは29試験(49%)であった。 米国の著者は、他国の著者に比べ経済的関係を有する試験が多かった(70% vs.49%、p<0.001)。経済的関係と専門分野には関連はなかったが、登録試験は非登録試験よりも(70% vs.25%、p=0.001)、製薬企業の助成による試験は製薬企業以外の助成の試験よりも(84% vs.31%、p<0.001)、経済的関係がある場合が多かった。一方、優越性試験は非劣性試験よりも、経済的関係がある場合が少なかった(64% vs.95%、p=0.004)。実薬対照試験とプラセボ対照試験、臨床エンドポイントを用いた試験と代替エンドポイントの試験には、経済的関係に有意な差はなかった。 治験責任医師の経済的関係とpositiveな結果の非補正オッズ比(OR)は3.23(95%信頼区間[CI]:1.7~6.1)、資金源で補正したORは3.57(95%CI:1.7~7.7、p=0.001)であり、有意な関連が認められた。 無作為化臨床試験の特性[第III相 vs.その他、症例数(4分位)、筆頭著者の出生国(米国 vs.その他)、専門分野(循環器 vs.腫瘍 vs.その他)、試験登録の有無、試験デザイン(実薬対照 vs.プラセボ対照/対照なし)、優越性試験 vs.非劣性試験、臨床エンドポイント vs.代替エンドポイント]を含めた解析を行ったところ、これらの要素は経済的関係とpositiveな結果に明確な影響を及ぼさなかった(OR:3.37:1.4~7.9、p=0.006)。 著者は、「これらの知見は、エビデンスの基盤へのバイアスの混入の可能性を示唆する」とし、「新たな治療の開発の進展における企業と学界の協働の重要性を考慮すると、エビデンスの基盤の信頼性の確保における研究者、施策立案者、専門誌編集者の役割について、さらに考察する必要がある」と指摘している。

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循環器内科 米国臨床留学記 第17回

第17回 内科系フェローシップ選考の実際(後編)今回は、前回に引き続き米国の内科系フェローシップ選考について、自身の経験を踏まえて具体的に書いてみます。広いアメリカ、かさむ面接費用多くのプログラムは、自分の大学や病院の内科のレジデンシーにポジションの3分の1程度を確保しています。たとえば私のいるプログラムでは、5つのポジションのうち、2つは同じ大学のレジデントに与えられます。これはプログラム、候補者双方にメリットがあります。同じ病院で数年間働き、人間性や勤勉さを知っているレジデントを取るほうが、1回のインタビューで判断したレジデントを採用するよりも安全です。一方、候補者にとっても自分のプログラムから3人応募者がいて、同じ大学・病院の循環器プログラムが自前のレジデントに3つのポジションを確保していれば、ほぼ確実に循環器フェローになれますし、ほかの病院に面接などに行かなくても済みます。こういった事情で、約800ある循環器フェローのうち、およそ250程度は内部からのレジデントに確保されているので、外部候補者にはさらに狭き門となります。私のレジデンシーは、Ohio州のFMG(外国医学部卒業者)ばかりのプログラムでした。プログラムディレクターは教育的で、素晴らしいプログラムでした。しかしながら、FMGが多いということは一般的には評価の高いプログラムではありません。同期のパキスタンやペルー出身の4人が循環器に応募しましたが、マッチングできたのは私1人でした。私が獲得した5つのインタビューも、ほとんどがコネクションに頼ったもので、コネクションがなければ、アンマッチに終わっていた可能性が高いと思います。ただし、同じFMGでもMayoなど有名なレジデンシープログラム出身だと、よりたくさんのインタビューに呼ばれますので、マッチングに有利になります。インタビューはお金がかかります。広いアメリカですから、東海岸から西海岸のプログラムの面接にたった1回行くだけで、400~500ドルはかかります。また、面接に行く間、誰かが仕事をカバーしなければならないので、20件以上呼ばれても、あらかじめ10件程度に絞るのが一般的です。循環器や消化器などの競争率が高いフェローシップでは、統計的に5つ以上の面接に呼ばれればマッチする可能性が高いと言われます。私の場合は、現在のプログラムやテレビドラマERのモデルともいわれている、シカゴのCook County病院などを含めて、呼ばれた5件のインタビューすべてに行きましたが、旅費だけで2,000ドル近くかかりました。面接当日の様子面接の実際の様子について書きたいと思います。面接の日に、行われる講義や昼食にわれわれフェローが参加することがあります。フェローとしては、礼儀をわきまえないなど問題がある候補者が自分のプログラムに来ると困りますので、そういった候補者をプログラムディレクターに報告し、マッチングのリストから外すように求めます。面接では、なぜ循環器や消化器などに進みたいのか、これまでにどのような研究をしてきたのか、将来はアカデミック(大学に残って研究や教育に従事)に進みたいのか、プライベートな病院に進みたいのか、などを聞かれます。面接に来る多くのレジデントは、行儀よく振る舞い、当たり障りのない返答をする(研究に興味がなくても、興味があると答えるなど)ので、面接だけで判断するのは難しいことが多いです。プログラムも、さまざまな手を使って候補者を判断します。候補者が在籍するレジデントプログラムに知り合いがいれば、連絡を取り、その候補者がどのような人柄なのかを調べます。LOR(Letter of Recommendation)と呼ばれる推薦状も重要です。この手紙は、基本的に、候補者には読めないように推薦者からプログラムに直接送られます。実際に、候補者のことをあまりよく書いていない推薦状も存在しますから、候補者はどの指導医に推薦状を書いてもらうかを慎重に選ばなければなりません。循環器フェローシップの面接に来るような米国人は、アイビーリーグやStanford、UCLAなどの有名大学出身でエリートが多いですから、自信に満ち溢れていますし、話も上手です。そんな候補者と比べて、英語が母国語でない私は、話がうまく弾むかすら不安でした。ですから、面接の際は、プログラムにいる指導医をあらかじめ調べ、その先生の論文などに目を通し、話が弾むように準備しました。12月に発表されるマッチング提出された書類や面接を基に、プログラムが候補者をランキングします。マッチングに際しては、プログラムが直接、候補者にランクを伝えることは禁止されているはずですが、実際には、プログラム側が来てほしい候補者に「あなたを高く評価している」というメールを送ることがほとんどです。最終的に、12月にマッチングが発表になります。マッチしなかった場合、hospitalistやchief residentなどになり、翌年再チャレンジする人もいます。ただ、われわれのようなFMGおよびvisa保有者にとって、希望のフェローシップに進むのは容易ではありませんし、visaで米国に滞在している場合、アンマッチは帰国を意味します。アンマッチ後、どうしても米国に残りたい場合、chief residentやその他のサブスペシャルティーに進むこともできますが、必ずしもうまくいくとは限りません。

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わかる統計教室 第4回 ギモンを解決!一問一答 質問6(続き)

インデックスページへ戻る第4回 ギモンを解決!一問一答質問6(続き) 比較する群が3つ以上ある場合の母平均の差の検定方法は?(その2)質問6(その1)前回の質問6(その1)で多重比較法について解説してきましたが、読者の皆さまから説明が難しいとのお声をいただきました。もう少しわかりやすく、「なぜ多重比較法が必要なのか?」を解説いたします。X・Y・Zと3つの群があり、それぞれの平均値を比較するという場合、XとYの間にしか関心がないのであれば、多重比較を行う必要はありません。XとYのみのt検定を行えば良いのです。しかし、XやYのデータを、何らかの形でZとも関連させた結論を導き出したい場合は、Zとの関係によって「X=Yであるか否か」の判断は変わる場合があります。つまり、XとYのt検定を行うだけでは、不適切になる可能性があります。つまり、Zというデータの存在が、XやYの確率分布に影響を与える関係にある(そういう関係になるような結論・考察を行いたい)場合に、多重比較法が必要になるということです。言い方を変えれば、Zというデータがあり、その存在を知っていたとしても、Zのデータの内容に関心がなく、それをXYと関連付けて結論・考察をしないのであれば、分析上も多重比較法など用いなくてよいわけです。少し前回の復習を補足させていただきました。では、今回の解説に入ります。前回は「3集団以上の場合は、従来の母平均の差の検定を使用してはいけない理由」、「多重比較法における有意水準の公式」について解説しました。今回は例題を提示し、その例題を解いていくことで、多重比較法についての理解を深めていきたいと思います。■多重比較法の公式に基づいて計算してみよう●解答1)各製品において母集団のデータが、正規分布に従っているかどうかを調べます。正規分布に従っている場合多重比較法が適用できます。正規分布に従わないことがはっきりわかっている場合ここで学んだ多重比較法は適用できません。その場合は、ノンパラメトリック検定(クラスカル・ウォリス検定)という手順で検定を行い、その結果から水準間の相互を判断します。正規分布に従っているかどうかあいまいな場合一般的には、ある統計手法が仮定している条件を満たしていないときにも、ほぼ妥当な結果を与えるとき、頑健(robust)である(頑健性を持つ)といいます。とくに、検定において、(1)母集団が正規分布である、(2)母分散が等しいという条件が満たされていなければなりませんが、(1)が満たされないときでも結論の正しさがあまり損なわなければ頑健性があると判断し、多重比較法を実行します。このデータでは、正規分布に従っていると仮定し、多重比較法を適用します。2)各集団の分散が等しいかどうかを調べます。【調べ方→バートレットの検定(等分散性の検定)】分散が等しい場合バートレットの検定で判定マークが[ ]の場合、多重比較法が適用できます。分散が等しくない場合バートレットの検定で判定マークが[**][*]の場合、多重比較法は適用できません。その場合は、ノンパラメトリック検定⇒クラスカル・ウォリス検定⇒ノンパラメトリック多重比較法という手順で検定を行い、その結果から水準間の相互を判断します。ここでは、表1のデータでバートレットの検定を行います。表1 バートレット検定判定マーク[ ]より3製品の分散は等しいことがわかりました。よって、多重比較法が適用できます。3)表2、3のデータのように各製品の平均値を算出し、3製品の評価平均得点に差があるかどうかを分散分析一元配置法で調べます。表2 平均値表表3 分散分析表差がある場合判定が[*]により、3製品の評価平均点に差がある(有意である)といえます。よって、多重比較法が適用できます。差がない場合判定が[ ]の場合、水準間で差がない(有意でない)ということなので、多重比較法は適用できません。4)3製品の平均得点に差が認められたので、どの製品相互間に差があるかを多重比較法で調べます。●誤差(Ve)再掲 表3 分散分析表上記表3の誤差  2.86●統計量●有意差判定統計量Tと棄却限界値 t(n-k,α´/2)の値を比較し、有意差判定を行います。製品X:製品YT = 2.32 < 3.13  XとYは差があるといえない。製品X:製品ZT = 2.32 < 3.13  XとZは差があるといえない。製品Y:製品ZT = 4.35 > 3.13  YとZは差があるといえる。●有意確率(p値)p値から有意差判定を行うこともできます。t分布のtに対するp値(下図の斜線部)を、Excel関数を使って計算します。例題は、差があるかないかを調べるので、定数は「2」を指定。製品X:製品Y= TDIST( 2.32 , 7 , 2)  → p = 0.0531製品X:製品Z= TDIST( 2.32 , 7 , 2)  → p = 0.0531製品Y:製品Z= TDIST( 4.35 , 7 , 2)  → p = 0.0034求められたp値と棄却限界値α´を比較し、有意差判定を行います。5)例題の結論製品X:製品Y p=0.0531 > 有意水準0.0167 [ ]より、XとYとは有意でない(差があるといえない⇒差がない)製品X:製品Z p=0.0531 > 有意水準0.0167 [ ]より、XとZとは有意でない(差があるといえない⇒差がない)製品Y:製品Z p=0.0033 < 有意水準0.0167 [*]より、YとZとは有意である(差があるといえる⇒差がある)母集団が正規分布に従うかどうかを確認するには、シャピロ・ウィルク検定と適合度の検定の2つがよく用いられます。今回のポイント1)各群における母集団データが、正規分布に従っているかどうかを調べる!2)各集団の母分散が等しいかどうかを調べる!3)各集団の平均値を算出し、各集団の平均値に差があるかないかを調べる!4)多重比較法を用いて、各集団相互間に差があるかないかを調べる!インデックスページへ戻る

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バラバラ殺人の頻度【Dr. 倉原の“おどろき”医学論文】第83回

バラバラ殺人の頻度 FREEIMAGESより使用 テレビでは毎日のように殺人事件のニュースが流れており、また先進国でもテロの懸念があることから、多くの人が社会に不安を感じているでしょう。今回はバラバラ殺人について取り上げてみたいと思います。世の中にこういう医学論文があるという事実にも驚きました。こんな悲しい医学論文がなくなる時代が来てほしいものです。 Sea J, et al.Mutilation in Korean Homicide: An Exploratory Study.J Interpers Violence. 2016 Aug 15. [Epub ahead of print]この韓国の論文は、バラバラ殺人の頻度を調べた驚くべき報告です。他殺の多くは刺殺ですが、手足や首などを切断するケースは、強い怨恨がない限りはまれとされています。韓国で、1995年から2011年までに同定された殺人事件1,200件のうち、切断によるもの、つまりバラバラ殺人がどのくらいの頻度だったかをこの研究グループは調べました。すると、1,200件のうち65件(5.4%)がバラバラ殺人であることがわかりました。この研究グループは、韓国以外の国における頻度も参照文献として挙げていますが、国によっていろいろな特徴があることもわかりました。たとえばフィンランドでは、バラバラ殺人は共犯であることが多く、これは切断した死体を遠距離運ぶ必要があったことが示唆されています(都市部から遠くに捨てれば犯行が露呈しにくいと考えられた?)。ちなみにフィンランドでは、全殺人のうちバラバラ殺人の頻度は2.2%だったと報告されています1)。教育水準の低さや幼児期の被虐待などがリスクではないかと考えられています。日本の刑法では、死体をバラバラにすることは死体損壊罪・死体遺棄罪の適用になります。つまり、バラバラ殺人は殺人事件であるとともに死体損壊・遺棄事件でもあるため、「殺人・死体損壊事件」と呼ばれます。近年では神戸長田区小1女児殺害事件、佐世保女子高生殺害事件などが記憶に新しいところです。参考資料1)Hakkanen-Nyholm H, et al. J Forensic Sci. 2009 ;54:933-937.インデックスページへ戻る

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上部消化管出血患者のリスク評価スコア5種を比較/BMJ

 上部消化管出血患者のリスク評価は、Glasgow Blatchfordスコアが治療の必要性や死亡に関する予測精度が最も高い。英国・グラスゴー王立診療所のAdrin J Stanley氏らが、複数のシステム(admission Rockall、AIMS65、Glasgow Blatchford、full Rockall、PNED)について予測精度と臨床的有用性を比較する国際多施設前向き研究を行い明らかにした。ただし、Glasgow Blatchfordスコアも、その他のエンドポイントに関しては臨床的有用性には限界があるという。上部消化管出血患者の管理では、リスク評価スコアを用いて外来管理か緊急内視鏡検査、またはより高度な治療を実施するかを決定することが推奨されているが、これまで、予測精度や普遍性、リスクを判断する最適閾値などが不明のままであった。BMJ誌2017年1月4日号掲載の報告。上部消化管出血患者の5つのリスク評価スコアを比較 研究グループは、欧州・北米・アジア・オセアニアの大規模病院6施設において、2014年3月~2015年3月の12ヵ月間にわたり上部消化管出血患者連続3,012例について評価した。 主要評価項目は、複合評価項目(輸血、内視鏡治療、画像下治療[IVR]、外科手術、30日死亡率)、内視鏡的治療、30日死亡率、再出血、在院日数で、内視鏡検査前のリスク評価スコア(admission Rockall、AIMS65、Glasgow Blatchford)と内視鏡検査後のリスク評価スコア(full Rockall、progetto nazionale emorragia digestive[PNED])を比較するとともに、低リスク患者と高リスク患者を特定するための最適スコア閾値を求めた。Glasgow Blatchfordスコアが介入や死亡の予測に最も有用 結果、介入(輸血、内視鏡治療、IVR、手術)の必要性または死亡を予測するうえで最も有用なのは、Glasgow Blatchfordスコア(GBS)であった。ROC曲線下面積(AUROC)は、GBSが0.86であったのに対し、full Rockallは0.70、PNEDは0.69、admission Rockallは0.66、AIMS65は0.68であった(すべてのp<0.001)。また、GBS 1点以下が、介入不要の生存を予測する最適閾値であった(感度98.6%、特異度34.6%)。 内視鏡治療の予測には、AIMS65(AUROC:0.62)やadmission Rockall(0.61)と比較して、GBS(0.75)が適していた(両比較のp<0.001)。GBS 7点以上が、内視鏡治療を予測する最適閾値であった(感度80%、特異度57%)。 死亡の予測には、PNED(0.77)およびAIMS65(0.77)が、admission Rockall(0.72)およびGBS(0.64)より優れており最も予測に有用であった(p<0.001)。死亡を予測する最適閾値はPNED 4点以上、AIMS65は2点以上、admission Rockallは4点以上、full Rockallは5点以上であった(感度65.8~78.6%、特異度65.0~65.3%)。 再出血や在院日数の予測に役立つスコアは、なかった。 著者は、上部消化管出血発症時にすでに入院中の患者は除外されていることや、患者の31%は内視鏡検査が未実施であったことなどを研究の限界として挙げている。そのうえで、「救急部門でのGBS利用が多くの国々で拡がることにより、上部消化管出血患者の最大19%は外来患者として安全に管理できる可能性がある」とまとめている。

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脊髄空洞症〔syringomyelia〕

1 疾患概要■ 定義脊髄空洞症とは、さまざまな原因により脊髄に空洞性病変を形成する慢性進行性の疾患である。原因の約半数は、キアリ奇形が原因と言われており、脊髄損傷、脊髄腫瘍に伴うものがそれぞれ約10%、脊髄くも膜炎に伴うものが約6%と言われている。■ 疫学成人10万人あたり8.4人/年という報告があるが、近年、MRIの普及により小児例での早期発見が増えているため、実際はもう少し多いことが想定される。■ 病因脊髄空洞症は、高率に後頭蓋窩の形態異常の合併を認めることがわかっており、後頭蓋窩の狭小化により小脳扁桃下垂が起こりやすくなる。現在のところ小脳扁桃下垂による脊髄空洞症のメカニズムは、完全には解明されていない。小脳扁桃下垂により大孔部で髄液循環障害が起こることは明らかであるが、なぜ髄液循環障害により脊髄空洞症が生じるかはわかっていない。過去にはさまざまな病因説が提唱されているが、現在は脳脊髄液と脊髄細胞外液の動的平衡状態の破綻が、空洞形成の要因となるという説が有力となっている。■ 症状受診の契機については、腕から手にかけてのしびれ、痛みなどを主訴に来院することが多く、息こらえ、咳など腹圧の上昇による頭痛を訴えることもある。脊椎外科、脳神経外科、整形外科のみならず神経内科、一般内科など内科を受診する患者さんも少なくない。小児期の脊椎側弯症の精査で偶然発見される場合もある。症状としては、進行性の四肢知覚鈍麻、筋力低下が多く、とくに温痛覚は初期段階から障害されることが多い。進行すると巧緻運動障害、筋萎縮、上下肢のしびれ、痛み、歩行障害、膀胱直腸障害が出現することがある。また、キアリ奇形合併例では、めまい、嚥下障害、嗄声など小脳や脳幹部圧迫症状の併発を認めることもある。高齢発症例では、術後空洞の縮小を認めるにも関わらず疼痛が残存することがある。■ 分類病因に基づいた分類が用いられることが多い。それぞれの原因により手術方法を決定する。1)交通性:画像上第四脳室と空洞の交通を認める2)非交通性(髄液の流出障害によるもの)(1)後頭蓋窩、頭蓋頸椎移行部での流通障害a.キアリ1型奇形b.脳底部くも膜炎c.腫瘍、くも膜嚢胞、ダンディーウォーカー症候群などd.頭蓋底陥入症(2)脊髄くも膜下腔での流通障害a.腫瘍、くも膜嚢胞b.癒着性くも膜炎3)脊髄自体への損傷(1)外傷、出血、感染(2)椎間板変性疾患、脊柱管狭窄症4)神経管閉鎖障害(二分脊椎)5)原因不明■ 予後基礎疾患による影響もあるが、治療による症状の改善はMRIなどの画像上の空洞の縮小よりも早期にみられることが多い。とくに怒責時の疼痛の緩和は、術後早期より緩和される。また、運動障害は、感覚障害よりも回復しやすいと言われている。ただし、診断されるまでの時間が長くかかった場合、空洞の縮小を認めた場合でも症状が改善しない場合もある。そのためにも早期診断が望まれる。2 診断 (検査・鑑別診断も含む)一番大事な事は病歴、身体所見をしっかりととる事である。症状の進行を詳細に聴取し、とくに感覚障害については温痛覚、振動覚、位置覚など詳しく神経所見をとる必要がある。これにより現在どの段階まで神経障害を受けているのかを推測することができる。また、既往歴、外傷歴より空洞の発生原因がないかを追求することも大事である。画像的診断のゴールドスタンダードはMRIであり、空洞性病変の確認を行う(図1)。腫瘍性病変を伴う場合は造影MRIも実施する。キアリ奇形の合併精査のため頭蓋内および頸髄移行部のMRIも実施する必要がある。図1 空洞症病変のMRI所見画像を拡大する3 治療 (治験中・研究中のものも含む)現時点では空洞縮小に有効な薬剤は報告されていない。治療について、キアリ奇形を伴うものと脊髄外傷など、その他を伴うものに分けて考える。まず、キアリ奇形に伴う脊髄空洞症の治療について、小児例では患児の成長とともに後頭蓋窩の容積増加が期待できるため、保存的加療を行うことも多い。成人例でも軽微な神経兆候、軽度の側弯症の場合、経過観察をすることもある。ただし、神経徴候や側弯症の増悪、著明な小脳扁桃下垂、限局性ではなく全脊髄に広がる空洞の場合は、手術を行う必要がある。手術の目的は、大孔部における髄液通過障害を改善し、空洞を縮小させることである。後頭蓋窩の骨削除と環椎後弓切除を行い、拡大硬膜形成術を行う方法がもっとも多く施術されている。通常の後頭下減圧術と異なり、十分に外側部まで減圧を行う必要がある(図2)。くも膜下腔に血液が流入すると、癒着性くも膜炎や空洞再発の原因となるため、手術の際にはくも膜を損傷しないように十分に留意する必要がある。図2 拡大硬膜形成術の例画像を拡大する次にその他要因に伴う脊髄空洞症の治療について、腫瘍性病変など原疾患の治療を行うことにより空洞の縮小を認める場合がある。脊髄外傷後に空洞の出現を認めかつ症候性である場合は、空洞短絡術を行う。空洞とくも膜下腔にシャントを作る場合と空洞と腹腔内にシャントを作る場合がある。4 今後の展望前述の通り病因に関して完全な解明はなされていない。脳脊髄液と脊髄細胞外液の動的平衡状態の破綻が空洞形成の要因と考えられている。しかし、なぜ平衡状態の破綻が生じるかはわかっていない。脊髄実質内の静脈圧上昇による髄液吸収障害が一因となっているという報告やアクアポリン受容体の関与などが報告されているが、解明には至っていない。さらなる研究報告が待たれる。原因遺伝子の解析については、家族歴が認められることから、いくつかの候補遺伝子の報告がされている。後頭骨の遺伝子形成や頭蓋頸椎移行部の発生に関与すると言われているHox遺伝子やPax遺伝子が候補とされているが、確定されていない。また、同様の病態が動物でも報告されており、小型犬のキャバリア種において後頭蓋低形成、脊髄空洞症が生じることがわかっている。小動物では純血が保たれ世代交代も早いため、こちらの研究においても今後の発展が期待される。手術方法の進歩の反面、脊髄空洞症に伴う難治性疼痛については、われわれが最も悩まされる問題の1つであり、手術を行っても耐え難い痛みが残存することがある。術前より患者本人および家族に十分な説明を行っておく必要がある。痛みの特徴としては、幻肢痛や視床痛と同じような求心路遮断性疼痛に分類される。高齢発症のケースや術前より激しい痛みがある場合、術後も残存しやすいと言われている。痛みの治療としては通常の消炎鎮痛薬が効きにくく、プレガバリン(商品名:リリカ)、ガバペンチン(同:ガバペン)などの神経障害性疼痛に対する治療薬が第1選択となる。三環系抗うつ薬も一定の効果があると考えられる。星状神経節ブロックや後根侵入部遮断術(DREZ)も選択肢にあがる。いずれにしても痛みとうまく付き合っていく必要があり、手術を行う担当科のみならず、かかりつけ医、ペインクリニック医、心療内科医、看護師、リハビリスタッフなど多角的な立場から治療に当たる必要がある。5 主たる診療科脊椎脊髄外科、脳神経外科への紹介を必要とする。非常に専門性の高い分野であり、ホームページなどで診療実績を確認する必要がある。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)診療・研究情報難病情報センター 脊髄空洞症(医療従事者向けのまとまった情報)神経変性疾患領域における基盤的調査研究班(医療従事者向けのまとまった情報)日本脊髄外科学会 脊髄空洞症(医療従事者向けのまとまった情報)亀田グループ 医療ポータルサイト キアリ奇形と脊髄空洞症について(一般向け、医療従事者向けのまとまった情報)患者会情報脊髄空洞症友の会(脊髄空洞症患者とその家族向けの情報)公開履歴初回2017年01月10日

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先天奇形の出産は長期死亡率を高めるか/JAMA

 先天奇形を有さない児を出産した母親と比べて、先天奇形を有する児を出産した母親の長期死亡率は、わずかだが統計的に有意に高いことが、カナダ・トロント大学のEyal Cohen氏らが行った、デンマーク住民ベースのコホート研究で明らかにされた。ただし、著者は「今回の結果について臨床的重要性は不明である」と述べている。先天奇形のある児の出産は、女性にとって深刻なライフイベントだが、そうした女性の長期的な健康への影響についてはほとんど知られていない。JAMA誌2016年12月20日号掲載の報告。デンマークの女性4万1,508例について住民ベースコホート研究 研究グループは、デンマークの個人レジストリデータを用いて、1979~2010年に主要な先天奇形(European Surveillance of Congenital Anomalies分類による)のある児を出産した母親4万1,508例(曝露群)について、2014年12月31日までフォローアップする住民ベースコホート研究を行った。比較コホート(非曝露群)は、同レジストリから無作為抽出した、曝露群1例につき、出産年齢、出産経歴、出産年で最大10例を適合した41万3,742例であった。 主要アウトカムは全死因死亡率、副次アウトカムは死因別死亡率などで、ハザード比(HR)を算出して評価。HR算出では、婚姻状況、移民状況、所得四分位値(1980年以降)、学歴(1981年以降)、糖尿病、修正チャールソン併存疾患指数スコア、高血圧、うつ病、アルコール関連疾患歴、自然流産、妊娠合併症、喫煙(1991年以降)、BMI値(2004年以降)について補正を行った。中央値21年追跡で1.22倍高率 両群(45万5,250例)の母親の出産時平均年齢(SD)は28.9(5.1)歳であった。 中央値21(IQR:12~28)年追跡における死亡は、曝露群1,275例(1,000人年当たり1.60)に対し、非曝露群は1万112例(同1.27)であった。すなわち絶対死亡率差は1,000人年当たり0.33(95%信頼区間[CI]:0.24~0.42)、補正前HRは1.27(95%CI:1.20~1.35)、補正後HRは1.22(同:1.15~1.29)であった。 死因別にみると、曝露群の死亡が多い傾向がみられたのは、心血管系疾患死(率差は1,000人年当たり0.05[95%CI:0.02~0.08]、補正後HR:1.26[同:1.04~1.53])、呼吸器系疾患死(同:0.02[0.00~0.04]、1.45[1.01~2.08])、その他自然死(同:0.11[0.07~0.15]、1.50[1.27~1.76])であった。

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てんかん重積状態への低体温療法は有益か/NEJM

 痙攣性てんかん重積状態の患者に対し、標準治療に加えて低体温療法を行うことで神経保護効果が得られるのか。フランス・ベルサイユ総合病院のStephane Legriel氏らが多施設共同非盲険無作為化試験を行った結果は、90日アウトカムについて有意な差は認められないというものであった。低体温療法の抗てんかん作用および神経保護効果は、動物モデル試験で認められ、ヒトにおいても超難治性てんかん重積患者にアジュバント療法として用いられている。さらに、これまで脳梗塞や脳出血、脳外傷といったてんかん重積状態の基礎的疾患において、神経保護治療としての検証が行われているが、結果は概して否定的なものであった。NEJM誌2016年12月22日号掲載の報告。270例について標準治療+低体温療法 vs.標準治療単独の無作為化試験 研究グループは無作為化試験にて、痙攣性てんかん重積状態の患者への標準治療+低体温療法が、標準治療単独(対照)と比較して、良好な神経学的アウトカムをもたらすかを調べた。試験は、2011年3月~2015年1月にフランスの11ヵ所のICUで行われ、人工換気療法を受ける痙攣性てんかん重積状態の急性・重症患者270例が無作為化を受け、268例(低体温療法群138例、対照群130例)が解析に包含された。低体温療法は、無作為化後できるだけ速やかに深部体温を、32~34℃を目標に低下し24時間維持した。 主要アウトカムは、90日時点の良好な機能アウトカムで、グラスゴー転帰尺度(GOS、範囲:1~5、1は死亡、5は神経学的障害なしまたはわずか)のスコア5で定義した。主な副次アウトカムは、90日死亡率、脳波(EEG)で確認したてんかん重積状態への進行、1日目の難治性てんかん重積状態、超難治性てんかん重積状態(全身麻酔に不応)、90日目の機能的後遺症とした。90日時点のGOSスコア5の患者は1.22倍増大も有意差は示されず 結果、90日時点でGOSスコア5であった患者は、低体温療法群67/138例(49%)、対照群56/130例(43%)であった(補正後共通オッズ比:1.22、95%信頼区間[CI]:0.75~1.99、p=0.43)。 初日におけるEEG確認てんかん重積状態への進行率は、低体温療法群11%と対照群22%より有意に低かった(オッズ比:0.40、95%CI:0.20~0.79、p=0.009)。しかし、その他の副次アウトカムについては群間の有意差は認められなかった。 有害事象(全グレード含む)の発生頻度(1つ以上)は、対照群(77%)と比べて低体温療法群(85%)のほうが高かった。

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わかる統計教室 第4回 ギモンを解決!一問一答 質問6(その1)

インデックスページへ戻る第4回 ギモンを解決!一問一答質問6 比較する群が3つ以上ある場合の母平均の差の検定方法は?(その1)今回は、3つ以上の群で、個々の群と群を検定する場合に使用される多重比較法について解説します。あとで詳しく解説しますが、多重性とは1つの試験で、統計的検定を繰り返すことをいいます。検定を繰り返すことにより、検定を1回のみ行った場合より過誤率が大きくなってしまう、すなわち、有意差が出る可能性が高くなってしまいます。そこで、「多重比較」が必要となります。たとえば、2標本t検定を繰り返すと有意水準が甘くなってしまうので、2標本t検定を繰り返す解析をしてはいけないのです。今回のお話、難易度は少し高いですが、多重比較法について解説していきましょう。■多重比較法とは表にあるように解熱剤である製品X、Y、Zの3つの低下体温の平均の同等性を調べる場合は、「分散分析一元配置法」を用います。「p≧0.05であれば同等」と判断し、「p<0.05であれば異なる」と判断します。表 解熱剤の低下体温平均値仮に得られた結論が「3つの製品の解熱剤の低下体温の評価に差がある(異なる)」としましょう。ここで出された結論から、3製品に差があることはわかりましたが、どの製品の解熱効果が優れているか、製品相互間の優劣まではわかりません。このわからないことを解決してくれるのが「多重比較法」です。製品X、Y、Zの3製品について、製品X-製品Y、製品X-製品Z、製品Y-製品Zのすべてについて従来のt検定を行うと、それぞれについては有意水準5%で判定していても、全体としては有意水準が大きく(下記に解説する通り14.3%)なってしまいます。そのため、有意差が出やすい検定をしていることになってしまいます。多重比較法とはどんな手法であるかを一言でいうならば、「3つ以上の群(集団)を比較する場合、有意差が『出やすくなる』のを、統計学的ルールに従って抑える検定である」といえます。したがって、従来の母平均の差の検定を用い、製品間の差、すなわち製品Xと製品Y、製品Xと製品Z、製品Yと製品Zを順番に検定する人がいますが、上記の通り、これは正しくありません。■有意水準が14.3%になる理由はずれる確率が5%という、くじを引く人にとっては魅力的なくじを例に説明します。くじを3回引いたとき、少なくとも1回は当たる確率を計算してみましょう。確率の計算は%を小数点表示の比率にして行います。はずれる確率 α=0.05 → 5%当たる確率 1-α=1-0.05=0.95 → 95%3回とも当たる確率 (1-α)3=(1-0.05)3=0.857 → 85.7%少なくとも1回ははずれる確率 1-(1-α)3=1-0.857=0.143 → 14.3%1回のはずれる確率がわずか5%でも、そのくじを3回引いたとき、少なくとも1回はずれる確率は14.3%になります。■3集団以上の場合、従来の母平均の差の検定を使用してはいけない理由本題の、従来の母平均の差の検定を使用してはいけない理由を考えてみます。製品X、Y、Zの3製品相互を比較する組み合わせは図1の3つになります。図1 製品XY、XZ、YZの3通りの組み合わせ各組み合わせに対し、従来の母平均の差の検定を行ってみます。1番目の組み合わせで、XとYについて「差がある」(あるいは「差がない」)という結論が得られたとします。「その結論は正しいか」という問いに対し、統計学では「95%の自信をもって正しい」、あるいは「間違えるとしたら5%である」という回答になります(統計学では一般的な基準は5%で、この値を「有意水準」といいます)。2番目の組み合わせ XとZ、3番目の組み合わせ YとZについても、従来の母平均の差の検定を行います。3つの組み合わせすべての検定を行ったとき、「結論が少なくとも1回間違っている確率」の問いに対し、統計学での解答はどうなるでしょうか。先に述べた確率からおわかりのように、1つの組み合わせを間違える確率が5%(先の例でははずれる確率といっていました)なので、3回のうち、少なくとも1回間違える確率は14.3%になります。ですから、統計学の判断基準として14.3%という値は大きすぎるので、従来の母平均の差の検定を使ってはいけないのです。■多重比較法による有意水準の求め方従来の母平均の差の検定を適用すると、取り扱う項目数が多くなるほど、間違える確率は大きくなっています。項目の数がいくつになろうと、間違える確率を一定の値(有意水準といい、一般的には5%)に保つように考えられたのが「多重比較法」です。多重比較法の有意水準の算出方法は、図2のような考え方によって算出されます。図2 多重比較法の有意水準算出のフローチャート多重比較法には、いろいろな種類がありますが、有意水準を求めるところでそれぞれ異なり、あとの検定方法はすべて同じとなります。図2のような考え方で有意水準を求める方法は、ボンフェローニの多重比較法といわれ、最も一般的な手法です。■多重比較法の公式はじめに従来の母平均の差の検定を図3に示します。●公式 2つの母集団の母平均の差の検定(図3)・基本統計量・検定統計量・自由度 f=(n1-1)+(n2-1)=n1+n2-2・棄却限界値 t(f,α/2)ただしαは有意水準●結論統計量の場合 T≧t(f,α/2)なら差があるといえるp値の場合 p≦αなら差があるといえる次に多重比較における母平均の差の検定の公式を図4示します。図3で示した公式とほとんど同じですが、有意水準の設定において違いがあります。●公式 多重比較における母平均の差の検定(図4)・基本統計量・検定統計量注:Veは一元配置法のVeに一致する・群(水準)の数 → k・自由度 f=(n1-1)+(n2-1)+ ・・・ +(nk-1)=n-k・多重比較法における有意水準・棄却限界値 t(f,α´/2)*この公式が適用できる前提条件群間の平均に差があること(有意であること)母分散が等しいこと各群における母集団が正規分布に従っていること※母集団が正規分布かどうかわからない場合でも、多重比較法が適用できる場合がありますが、詳しくは次回の「質問6 比較する群が3つ以上ある場合の母平均の差の検定方法は?(その2)」で解説します。●結論統計量の場合 T≧t(n-k,α´/2)なら差があるといえるp値の場合 p≦α´なら差があるといえる今回は「3集団以上の場合は、従来の母平均の差の検定を使用してはいけない理由」、「多重比較法における有意水準の公式」について解説しました。次回は例題を提示し、その例題を解いていくことで、多重比較法についての理解を深めていきましょう。従来の(2つの)母平均の差の検定については、「わかる統計教室 第3回 セクション4 仮説検定の意味と検定手順」をご参照ください。今回のポイント1)比較する群が3つ以上ある場合の母平均の差の検定は多重比較法!2)最も一般的な多重比較法はボンフェローニの多重比較法!インデックスページへ戻る

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サン・アントニオ2016 レポート-1

レポーター紹介はじめに2016年SABCSは12月6日~10日まで5日間開催された。今年から会場が新しくなり、非常に快適であった。しかし、外は風も強くとても寒い日が続いた。メイン会場は従来と雰囲気は変わらないが、柱やスクリーンが障壁となって、座席によりスライドの見えにくいところが多かったのが難点である。来年より改善して欲しいところである。今回私たちの臨床をすぐに変えるようなものはほとんどなかった。しかし、腫瘍浸潤リンパ球(TILs)をはじめとするがん免疫、ERやHER2も含めた体細胞変異、BRCA1/2以外の胚細胞変異、多遺伝子アッセイ、リキッドバイオプシー(循環癌細胞、セルフリーDNA)、マイクロRNA(miRNA)、がん幹細胞、腫瘍の不均一性といった話題は引き続き多くみられた。また、臨床試験デザインの演題も多く採用されていたように思う。まずはOral sessionから紹介する。NSABP B-42は閉経後乳がんにおいて、アロマターゼ阻害剤(AIs)を5年服用後(タモキシフェン3年以下服用も含む)に、さらにレトロゾールを5年延長した場合の効果をみる試験である。現在までにタモキシフェン5年服用後にレトロゾールを5年延長するMA.17試験でその有効性が示されている。MA.17R試験では、レトロゾール5年にさらにレトロゾール5年を追加したが、遠隔再発抑制効果はほとんどみられなかった。しかし、それ以前にタモキシフェンを5年使用していた患者も多く含まれているため、私たちが知りたい条件とは異なっていた。B-42試験では3,964例が2群に割り付けられた。約40%の患者が治療を完遂できず、そのうち治療拒否または中止は14%、有害事象によるものは10%であった。主要評価項目である無病生存期間は、7年でレトロゾール群84.7%、プラセボ群81.3%と有意差が認められた(p=0.048、 HR=0.85:0.73~0.99)。さらに遠隔再発もそれぞれ3.9%、5.8%で有意差を認めた(p=0.03、HR=0.72:0.53~0.97)。しかし全生存期間には差を認めなかった(92.3% vs.91.8%)。すなわち、アロマターゼ阻害剤5年にさらにレトロゾール5年を延長することによる利益は全体としてはわずかである。スライドでは示されなかったが、予後不良(リンパ節転移陽性など)群などでは効果が大きくなると思われる。そのため、TAM→TAM、TAM→AIs、AIs→AIs共に、より予後不良と考えられる患者には使うメリットがあろうと考えられ、個々の患者の状況により対策を立てるのが賢明である。DATA研究は2~3年のタモキシフェンの後に3年または6年のアナストロゾールを服用した際の効果を比較する第III相試験である。3年無病生存率は79.4% vs.83.1%で有意差はみられなかったが(p=0.07、HR=0.79:0.620~1.02)、ホルモン受容体陽性、HER2陰性、pN+、化学療法施行例に限ると75.9% vs.86.0%で有意差が認められた(p=0.01、HR=0.58:0.39~0.89)。なお、全生存率にはまったく差は認められていない。まだ観察期間も短く、何ら結論は出せないが、他の延長試験と合わせて考えると、やはり再発リスクが高いグループでアロマターゼ阻害剤の延長を考慮したほうが良さそうである。BRCA1/2乳がんにおける体細胞遺伝子の変化について、メモリアル・スローンケタリングがんセンターから報告があった。BRCA1/2乳がんは先天的に一方のアレルのBRCA1/2遺伝子が変異により機能喪失しており、2ヒットとしてもう一方のアレルも何らかの理由で機能喪失すると乳がんに進展していく。BRCA1では29例中28例で両アレルが失活していたが、1例では失活しておらず散発性の乳がん発症と考えられた。両アレルの失活に伴い、その他の遺伝子変異がTP53-76%(ER陰性-95%、ER陽性-25%)、NF1-10%、PTEN-10%、RB1-7%に認められた。BRCA2では10例中全例でLOHが認められた。BRCA1/2胚細胞変異保有者における散発性乳がんの割合とBRCA1/2遺伝子変異に伴う他の体細胞遺伝子変異は、私も兼ねてより知りたかったことの1つだったのでここに紹介した次第である。すなわち、BRCA1/2遺伝子変異保有者ではその大半が遺伝性乳がんとして発症し、散発性乳がんはごくわずかであるということである。当然のことながら散発性乳がんは遺伝の有無にかかわらず発症する訳であるが、遺伝を持っている方は散発性乳がん発症に加え、より大きな遺伝性乳がん発症のリスクを持っていると考えられ、やはり個別化医療としての選択的なサーベイランスを行うことが大切であろう。化学療法に伴う脱毛を予防するための頭皮冷却に関する無作為化比較試験SCALPの結果が報告された。本研究はPaxmanの頭皮冷却装置が用いられているが、これは国内でもすでに薬事承認されている。182例の患者が無作為化割り付け(冷却群119例、非冷却群63例)され、1レジメンでの効果が検討された。その結果、非冷却群での脱毛は100%であったのに対し、冷却群では脱毛を50.5%予防できていた。薬剤別での予防率はタキサンで65.1%であったが、アントラサイクリンではわずか21.9%であった。冷却により強い不快感を訴えた方はわずかであった。比較的良好な結果を示しているといえるが、本報告の問題点として、薬剤の詳細(種類や投与量)がわからないこと、最も多く使われているアントラサイクリン+タキサンレジメンでの脱毛の割合が不明であることが挙げられる。また、パクリタキセルの毎週投与では頭皮冷却の回数が非常に増えてしまうことが懸念される。実地臨床では、時間が長くなり化学療法室を1例で長く占拠してしまうこと、化学療法室のスペース不足、誰に行うのか、といった問題があるのが現実であり、データ不足と相まって普及にはまだ困難を伴いそうである。アロマターゼ阻害剤関連の筋骨格系症状(AIMSS)に対するデュロキセチンの効果をみる無作為化比較試験の結果が報告された(SWOG S1202))。慢性疼痛の治療薬としてFDAで認可されているセロトニン・ノルアドレナリン再吸収阻害薬(SNRI)の1つであるデュロキセチンの効果をみたものである。299例の患者をデュロキセチンとプラセボを12週間内服する群にそれぞれ割り付け、QOL評価を行った。その結果、関節痛や関節のこわばりはデュロキセチン内服群で有意に改善傾向がみられ、QOLも有意に向上していた。しかしながら、その差はわずかにみえる。デュロキセチン群の方で明らかに有害事象が多いこと、プラセボ群でもそれなりの効果と有害事象が出ていることから、直ちにデュロキセチンを使うというよりは1つの提案をしてみたい。まずは何らかの副作用の少ない薬剤(たとえば漢方薬、ビタミンD3など)を使って効果を確認し、改善が不十分であればデュロキセチンに変えてみるなどすると、有害事象を最小限にしながら治療効果を上げることができるのではないか。

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第7回 速効型インスリン分泌促進薬(グリニド薬)による治療のキホン【糖尿病治療のキホンとギモン】

【第7回】速効型インスリン分泌促進薬(グリニド薬)による治療のキホン―軽症、もしくは耐糖能異常(IGT)の方に使うイメージなのですが、どのような患者さんに適しているのでしょうか。 速効型インスリン分泌促進薬は、SU薬同様、膵β細胞のSU受容体に結合してインスリン分泌を促進させる薬剤ですが、SU薬に比べ吸収と血中からの消失が速く、作用時間がSU薬より短いため、1日3回食直前投与による食後高血糖の改善に適しています。食後高血糖の改善が心血管疾患の発症や進展を抑制するうえで重要であることは、DECODE Studyやわが国のFunagata Studyといった大規模臨床試験から明らかです1)、2)。 速効型インスリン分泌促進薬は、空腹時血糖値はそれほど高くないのに、HbA1cがやや高いなど、食後高血糖の是正が必要な2型糖尿病患者さんで、患者さん自身のインスリン分泌能(内因性インスリン分泌能)がある程度保たれている(膵β細胞に十分な残存機能がある)比較的早期の患者さんが適しています。インスリン分泌能の指標については、「第5回 SU薬による治療のキホン」で紹介していますが、“過去にSU薬を長期に使っていない”ことを1つの目安にしていただくのもよいです。 なお、同じ食後高血糖改善薬であるα-グルコシダーゼ阻害薬(GI)「ボグリボース(商品名:ベイスン)」は、糖尿病の前段階であるIGTにおける2型糖尿病の発症予防が確認されていることから、0.2mg錠に限ってIGTに対して保険適用となっていますが、その他のα-GIと速効型インスリン分泌促進薬の添付文書上での適応は「2型糖尿病」です。―他剤との効果的な併用方法について教えてください。 速効型インスリン分泌促進薬は食後高血糖の改善に適しているため、血糖降下特性の異なる薬剤との併用という点から考えると、空腹時血糖値を低下させる薬剤との併用が考えられます。 速効型インスリン分泌促進薬は毎食直前の投与で朝食後、昼食後、夕食後の高血糖を改善しますが、食事と食事の間が短い時間帯では、連日投与である程度、次の食前血糖値の低下にも寄与します。つまり、朝食直前の投与で朝食後の高血糖が改善されると、昼食前血糖値は低下し、また、昼食直前の投与で昼食後の高血糖が改善されると、夕食前血糖値もある程度低下します。 しかし、夕食後は翌日の朝食前まで時間が空いてしまうため、血中からの消失速度が速い速効型インスリン分泌薬では、夜間・深夜帯に高血糖を生じることがあります。速効型インスリン分泌促進薬単独で治療をしていて、朝食前血糖値が200mg/dLを超えることが続くようであれば、主に空腹時血糖値を低下させるビグアナイド(BG)薬、チアゾリジン薬、SGLT2阻害薬の併用を検討します。 DPP-4阻害薬は、インスリン分泌促進、グルカゴン分泌抑制により、空腹時血糖値と食後血糖値のいずれも低下させますが、速効型インスリン分泌促進薬とは異なる経路でインスリン分泌を促進させるため、速効型インスリン分泌促進薬とDPP-4阻害薬の併用は効果的に食後高血糖を改善するという点でも有用です。SU薬とは、SU受容体に結合してインスリン分泌を促進するという同じ作用点を有し、併用の効果・安全性が確認されていないため、併用できません。 併用する薬剤については、薬価や副作用といった観点から選ぶとよいでしょう。 α-GIは、速効型インスリン分泌促進薬同様、食後高血糖を改善する薬剤ですが、インスリン分泌を介して血糖値を低下させる速効型インスリン分泌促進薬と異なり、糖の吸収を遅らせることで食後の高血糖を改善します。つまりインスリン分泌を介さずに血糖値を低下させるため、インスリン分泌を必要とせず、逆にインスリン分泌を節約できます。速効型インスリン分泌促進薬は、作用時間がSU薬よりも短いとはいえ、インスリン分泌を促進させることに変わりはありません。 食後高血糖を来す病態として、食後のインスリンが食後の血糖上昇よりも遅れて出る「インスリン遅延分泌」があるため、食後高血糖を改善するためにインスリン分泌を促す治療は理にかなってはいるのですが、肥満がある場合、インスリン抵抗性により、インスリンが効きにくくなっており、それを補って血糖値を下げようとして、多量のインスリンを分泌してしまう「高インスリン血症」になっていることがあります。そこに速効型インスリン分泌促進薬だけを用いてしまうと、さらなる高インスリン血症から、肥満が助長されたり、高血圧や心血管疾患のリスクにつながってしまう恐れがあります。 また、インスリンは、脂肪組織や肝臓で、中性脂肪の分解を抑制する働きを持つため、「高インスリン血症」は中性脂肪にも影響を及ぼします。肥満があって、食後の高インスリン血症があると考えられる患者さんでは、遅れて出るインスリン分泌を前倒しにして、“健康な人と同じインスリン分泌パターン”に近づけるために速効型インスリン分泌促進薬を用い、インスリン分泌を節約しながら食後の高血糖を改善できるα-GIを併用(もしくは速効型インスリン分泌促進薬/α-GIの配合薬※)することがよいでしょう。 ※配合薬を第1選択薬として用いることはできません。 また、吸収が速やかである速効型インスリン分泌促進薬は、食後の急峻なインスリン分泌を促しますが、持続血糖測定器(CGM)で速効型インスリン分泌促進薬とα-GIの血糖の低下を比較すると、α-GIが食直後から低下させるのに対し、速効型インスリン分泌促進薬はα-GIのそれよりもやや遅く、食後の血糖上昇を抑える時間帯が異なっている傾向がみられます3)。そのため、食後の血糖値全体を抑え、より強力に食後高血糖を改善するという点からも、速効型インスリン分泌促進薬とα-GIの併用は有用な手段です。―患者さんに毎食直前に服用していただくのは難しいと感じますが、どのように指導したらよいでしょうか。 1日3回服用する薬剤の場合、アドヒアランスも薬剤の効果に大きく影響するため、アドヒアランスが順守できることが重要となりますが、食後の高血糖が顕著な場合、やはり、食事のタイミングに合わせて服用する1日3回の食後高血糖改善薬が最も効果的です。 1日3回の場合、昼間の服用を忘れてしまうことが多いので、1日3回が難しければ、朝食前と夕食前だけでも服用してもらうようにします。とくに夕食後の血糖値が上がってしまうと、翌朝の服用まで時間が空いてしまうことと、夕食は1日の食事の中で最もボリュームが多く、その後、大きな身体活動をするわけでもなく、あとは寝るだけになってしまうため、夜間・深夜帯に高血糖が持続してしまいます。1日1回しか服用できなければ、夕食前だけは必ず服用してもらうようにしましょう。 速効型インスリン分泌促進薬は「1日3回“毎食直前”に経口投与する」とされています。服用を忘れてしまい、食中や食後に服用してしまうと効果が減弱することがあります。また、食前30分投与では、食後の血糖が上昇する前にインスリン値が上昇してしまうため、食事開始前に低血糖を起こしてしまう可能性があります。食前投与の時間や食中・食後投与については、各薬剤の添付文書に記載がありますので、ご確認いただければと思います。また、食事のタイミングと合わせた服用が必要な薬剤ですので、シックデイなどで食事が十分に取れない場合は、服用を中止するよう指導してください。―長時間使っていくと膵β細胞が疲弊しないか心配です。 速効型インスリン分泌促進薬もSU薬同様、膵β細胞のSU受容体に結合してインスリン分泌を促進させますが、SU薬に比べて血中からの消失が速いため、インスリン分泌を刺激する時間がSU薬よりも短いのが特徴です。動物実験では、SU薬と速効型インスリン分泌促進薬の連続投与において、SU薬でみられるインスリン分泌の減弱(膵β細胞の疲弊)が、速効型インスリン分泌促進薬では少ないことが報告されていますが4)、実臨床で、膵β細胞の疲弊が薬剤によるものなのかを判断するのは容易ではありません。食事・運動療法の乱れがなければ、薬剤の長期使用による膵β細胞の疲弊(2次無効)と判断できますが、多くは、生活習慣の乱れによる血糖コントロール不良により、持続する高血糖が存在するからです。 いずれにしても、速効型インスリン分泌促進薬の効果がみられなくなってきたときは、まず、薬剤を1日3回きちんと服用できているか、食事・運動療法が守られているかを確認する必要があります。1)DECODE Study Group, the European Diabetes Epidemiology Group. Arch Intern Med. 2001;161:397-405.2)Tominaga M et al. Diabetes Care. 1999;22:920-924. 3)森 豊. Calm 2(1): 1-7, 20154)Kawai J et al. Biochem J. 2008; 412: 93-101.

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