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潰瘍性大腸炎にはチーム医療で対抗する

 2018年7月2日、ファイザー株式会社は、同社が販売するJAK阻害剤トファシチニブ(商品名:ゼルヤンツ)が、新たに指定難病の潰瘍性大腸炎(以下「UC」と略す)への適応症追加の承認を5月25日に得たのを期し、「潰瘍性大腸炎の治療法の現在と今後の展望について」と題するプレスカンファレンスを行った。カンファレンスでは、UC診療の概要、同社が全世界で実施したUC患者の実態調査「UC ナラティブ(Narrative)」の結果などが報告された。※トファシチニブは、2013年に関節リウマチの治療薬として発売されている治療薬は特定標的を対象にした免疫抑制のステージへ はじめに「もはや“難病”ではない炎症性腸疾患の治療法の進歩とチーム医療の役割」をテーマに日比 紀文氏(北里大学北里研究所病院 炎症性腸疾患先進治療[IBD]センター長)が、UC診療の概要とチーム医療の重要性を説明した。 患者実数では20万人を超えるとも言われているUCは、若年発症が多く、炎症が慢性に持続するため患者のQOLを著しく低下させる。また、UCは現在も根治する治療法がなく、患者の多くは再燃と寛解を繰り返しつつ、再燃の不安を持ち日常生活を送っている。 UCの病因は現在も不明で遺伝、腸内細菌、環境因子などの要因が指摘されている。発症すると粘血便、下痢、腹痛が主症状として見られる。 治療では、従来5-ASA製剤、副腎皮質ステロイドなどを使用して寛解導入が行われ、同じく5-ASA製剤、6MP/AZA製剤などを使用して寛解維持が行われてきた。現在も5-ASA製剤が第1選択薬であることには変わりないが、近年では疾患の免疫抑制を主体とした抗TNFα抗体、抗IL12/23抗体、抗α4β7抗体、JAK阻害剤などの新しい治療薬も登場している。とくに炎症を起こすサイトカインを標的する抗TNFα抗体やJAK阻害剤などの新しい治療薬は、「初めて特定標的に対する治療となり、治療にパラダイムシフトをもたらす」と同氏は期待を寄せる。 また、治療に際しては、「速やかな寛解導入と長期間の安全な寛解維持のためにチーム医療が重要だ」と同氏は提案する。患者を中心に医師、看護師、薬剤師による治療の提供はもちろん、家族、友人、患者の社会関係者(会社や学校など)などもチームに取り込み、疾患への理解とサポートを行う必要があるという。実際にチーム医療の成果として、当院では「医療職種の特性を生かした分担と連携によるきめ細かな治療のため、難治性UCやクローン病は激減した」と同氏は自身の体験を語る。 今後、治療薬として「サイトカインを標的にしたもの」「免疫細胞の接着・浸潤を抑制するもの」「腸内微生物を調節するもの」「再生・組織修復をするもの」などの研究開発が求められるとした上で、「こうした治療薬が、患者の寛解導入・維持をより容易にし、患者が普通の日常生活を送ることができるようになる。そのためにも患者個々に合わせた手厚いチーム医療が必要で、結果としてUCが難病ではなくなる日が来る」と同氏は展望を語り、レクチャーを終えた。UC患者は医療者に遠慮している 続いて、渡辺 憲治氏(兵庫医科大学 腸管病態解析学 特任准教授)が、「潰瘍性大腸炎実態調査『UCナラティブ』の結果について」をテーマに、結果の概要を解説した。 「UCナラティブ」とは、UC患者とUCの診療をしている医師を対象に、UCに罹患している人々がどのような影響を疾患から受けているかを調査する活動。今回、全世界10ヵ国より患者2,100例、医師1,454例にオンライン調査を実施し、その結果を報告した(調査期間:患者は2017年11月21日~2018年1月9日、医師は2017年11月29日~12月20日)。 患者は、UCと確定診断され、過去12ヵ月以内に医師の診察を受け、UCの治療薬として2種類以上を服用している患者が選ばれたほか、医師では消化器専門の内科医・外科医で、毎月5人以上のUC患者を診察(同時に10%の患者に生物学的製剤を投与)している医師が対象とされた。 アンケート結果について、患者に「UCを患っていなければもっと成功したか」と聞いたところ、68%が「そう思う」と回答。医師に「UCを発症していなければ担当患者は人間関係のアプローチが違ったか」と聞いたところ63%が「そう思う」と回答し、同様に「別の仕事や進学を選んでいたか」を聞いたところ51%が「別の仕事や進学の選択をした」と回答し、UCは患者の人生などに影を落とす疾患であると認識していることがわかった。 患者から医師に理解して欲しいUCの経験については「生活の質への影響」(35%)「日常の疲労感」(33%)「精神衛生面への影響」(30%)の順で多く、医師が患者と話し合うトピックスについては「治療オプションの利益とリスク」(75%)「副作用への懸念」(75%)「患者のアドヒアランス」(69%)の順で多く、両者の間にギャップがあることが明らかになった(いずれも複数回答)。また、患者から医師に「気兼ねなく心配や不安を話すことができるか」との質問では、81%が「できる」と回答しているものの、その内の44%の患者は「医師に多くの質問をすると、扱いにくい患者と見られて、治療の質に悪影響を及ぼすのではないかと心配」とも回答している。 最後に同氏は、「今回のアンケート結果を踏まえ、患者と医師の視点、意識の違いを知ることで、今後の日常臨床に活かしていきたい。UCは、患者に身体的・精神的影響を及ぼし、社会に機会損失をもたらす。患者には、周囲のサポートと理解が必要である。また、医師との間では、十分なコミュニケーションが大切であり、患者を中心にしたチーム医療を推進することで、患者の人生を満足させるべく、患者と医師が同じ目標に向かう協力者となってもらいたい」と思いを語った。トファシチニブの概要 トファシチニブは、炎症性サイトカインのシグナル伝達を阻害し、炎症を抑える薬剤。効果として第III相国際共同試験(1094試験)では、プラセボ群とトファシチニブ群(10mg1日2回)の比較で、寛解率がプラセボ群8.2%に対し、トファシチニブ群は18.5%と優越性が示された。安全性では、重篤な副作用、感染症などの発現はないものの、アジア人には帯状疱疹の発現がやや高い傾向があった。なお、本剤に起因する死亡例はなかった。注意すべき副作用としてリンパ球数減少、好中球数減少、貧血などが示されている。【効能・効果】 中等症から重症のUCの寛解導入および維持療法(既存治療で効果不十分な場合に限る)【用法・容量】・導入維持療法では、通常、成人に1回10mgを1日2回8週間にわたり経口投与。 効果不十分な場合はさらに8週間投与。・寛解維持療法では、通常、成人に1回5mgを1日2回経口投与。効果減弱など患者の状態により1回10mgを1日2回投与にすることもできる。【その他】 適応症追加後3年間、全例調査を実施■参考ニュースリリース ファイザー株式会社ゼルヤンツ、潰瘍性大腸炎の適応症を追加潰瘍性大腸炎患者さんの生活実態調査■関連記事希少疾病ライブラリ 潰瘍性大腸炎

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忙しい医師向けおススメ情報収集法【医師のためのお金の話】第10回

忙しい医師向けおススメ情報収集法こんにちは、自由気ままな整形外科医です。前回まで、資産形成の総論、金融資産投資、不動産投資を詳述してきました。資産形成の概要を体感いただいたと思いますが、ここから先へ歩を進めるためにも、ぜひ知っておいてほしいことがあります。それは、情報収集についてです。資産形成で最も多くの時間を費やすのは情報収集です。2018年5月25日にCareNet.comで公開された会員アンケート調査報告で、先生方の多くが「資産形成に関する情報収集をしていない」または「興味がない」ということがわかりました。正直言って、私はこの結果に衝撃を受けています。確かに日々の仕事が忙しいため、資産形成の情報収集をする余裕はないかもしれません。しかし、資産形成は、健康・家族・仕事に次いで大事なことです。その資産形成についての情報収集をほとんど行っていない! このことは、有意義な人生を過ごすうえで、非常に問題があると思います。それでは、情報収集するにあたって、何かコツはないのか? 参考までに、私がどのような方法で資産形成のための情報を収集しているのかをご紹介したいと思います。最初の段階は書籍から情報収集体系立った知識は、基本的に書籍から得ています。とくに何も知らない状態からある程度のレベルにまで自分を引き上げる際には、大量の書籍を読破することで知識を習得します。そして自分の頭の中で何となく形になってきたと思ったら、ネット上で情報のアップデートを行っています。たとえば、レンタルバーを立ち上げた際には、バーやカフェ関係の書籍を乱読したものです。具体的には、「バーのカウンターの高さは1,050mmがベスト(!)」などの知識は書籍を通じて習得しました。方法1:大量の読書で新規分野での知識を体系化テレビや新聞は最初から除外前述のように、基本的な知識を習得すると、あとは情報をアップデートすることで、その分野のレベルを維持します。その際、時間をできるだけかけないことがポイントです。基本的には情報を得る密度と鮮度を重要視しているため、テレビや新聞は最初から除外しています。時間が無駄なので、ネットサーフィンすることもありません。 また、キュレーションサービスは、情報に偏りができるので利用しないようにしています。方法2:インターネットで既習得分野の情報をアップデート日経や経済系ブログで情報のアップデート経済関係の知識のアップデートは、日本経済新聞(日経)、Bloombergなどのヘッドラインニュースから仕入れています。だいたいの目安は1日10分程度です。株価指数や為替相場などの確認は、ネット証券を利用して5分程度で済ませます。毎朝、Yahoo Finance USで前日のニューヨーク市場のサマリーを確認しています。結果確認だけなら日経やネット証券で十分ですが、市場の雰囲気を感じるためには、Yahoo Finance USのほうが望ましいでしょう。あと、経済系のお気に入りブログ数本を10分程度で閲覧しています。不動産に関しては、自分の投資対象エリアの相場観維持のために、週末に不動産の折り込みチラシを5分程度で流し読みしています。月に1度程度は、不動産情報サイトの健美家やSUUMOで自分のエリア内を検索します。SUUMOでは、主に「中古一戸建て」を検索しており、マンションや新築一戸建ては、はなから無視です。なお、チラシ、健美家、SUUMOなどに記載されている価格は、最も高い価格だと考えることが重要です。このようにして投資対象エリアの相場観を維持しています。方法3:日経、Bloomberg、Yahoo Finance US、健美家、SUUMO、経済系ブログをチェック狭義の教養を高める雑多な知識は、新規ビジネスのヒントを得ることができるので重視しています。私は週刊ダイヤモンドを定期購読しており、興味がない特集であっても、必ず毎週読破しています。楽天マガジンなどの雑誌読み放題サービスも有用ですが、読まなければならないという強制力が働きにくいことがネックだと思います。同様の目的で、ときどき書店を散策して、さまざまなジャンルの書籍に接することをお勧めします。

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第9回 患者さん宅を訪問したら救急車が...【はらこしなみの在宅訪問日誌】

こんにちは。在宅訪問専任の薬剤師・はらこしなみです。外来処方箋を薬局に持ってきてくれていた患者さんが...外来処方箋を薬局に持ってきていたころから関わっていたパーキンソン病の患者さん。在宅訪問に移行しています。ある日、患者さんのお宅に伺うと、救急車が。救急隊員に心臓マッサージをされているところを目の当たりにしました。きっと戻ってきてくれる!祈るしかなかったストレッチャーに乗せられて救急搬送されていく姿を見送り、薬局に戻りました。でも、その姿が頭から離れず、帰宅してご飯を食べていても、お風呂に入っていても思い出してしまう。こんなさよならは嫌だ。きっと戻ってきてくれる!と信じて祈っていました。翌日、ケアマネさんの顔をみて、結果が判ってしまいました。運ばれた病院で、いったん心臓が動いたそうですが、大量の痰が詰まっており、窒息。戻らなかった...と。ここ最近、痰が絡むのをどうにかできないか?とケアマネさんから相談があり、内服薬を試したり、吸引するなら、どうやる?誰ができる?と、先生を含めて話していたところでした。もっと早く、もっと何かできなかったのか?悔しく残念です。自分では吸引できず、周りに頼れる人がいなかった...。家族が吸引している患者さん、自分で吸引できる患者さんの姿を思い出し、うらやましく思ってしまいました。そして、痰が詰まって人は死ぬのだ。と怖くなりました。きっと苦しかっただろう...と、こちらも胸が苦しくなります。自分ができることをもう一度考えて、患者さんの様子をよく見て、こんな思いはもうしないように...と心に決めました。

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ブル【どう頼む?どう分かってもらう?】

今回のキーワード裁判心理学分析力信頼感プレゼンテーション能力社会脳インフォームド・アセントみなさんは、なかなか相手にうまく頼めないと悩んだことはありますか? どうすれば頼み事に応じてもらえるでしょうか? どうすれば自分のことをより分かってもらえるでしょうか? 私たちは、日々、職場や家庭で、相手に頼んだり頼まれたり、一方で応じたり、そして拒んだりしています。できることなら、うまく頼んで応じてもらいたいですよね。今回は、「どう頼む?」をテーマに、アメリカの連続ドラマ「ブル」を取り上げます。ブルは、ちょっと風変わりな心理学者です。彼の心理学的な手法によって、裁判で陪審員の心を動かし、毎回、クライアントを有利に導きます。このドラマで一貫しているのは、ブル側の主張を分かってもらうために、自分たちの視点以上に、相手の陪審員たちの視点に目が向いていることです。この手法は、裁判に心理学を駆使しているという意味で、裁判心理学と呼ばれます。ここから、「どう頼む?」の要素を主に3つに分けて整理してみましょう。それは、「誰に頼む?」、「誰が頼む?」、そして「何を頼む?」ということです。誰に頼む? ―相手をよく知る分析力ブルは、情報収集のチームを組んで、裁判の陪審員候補たちの日々の生活、人間関係、ネット検索履歴などを徹底的に洗い出します。また、陪審員を選別する最初の段階では、例えば「なぜ風邪をひくのでしょう?」等の質問をします。これは、風邪という不確定なものへのコントロール感です。「体調管理を怠ったから」と答える人は、被害者意識が少ないとブルは分析します。その他に「歴史上で尊敬する人は?」「銃を突きつけられたらどうする?」などの質問を通して、陪審員の価値観が理想主義か現実的か、合理主義か感情に流されやすいかを見極めます。これらのプロファイリングをもとに、価値観が不利な陪審員を外し、ブル側になるべく有利な陪審員を残します。1つ目のポイントは、「誰に頼む?」、つまり相手のことをよく知る分析力です。ブルのように、私たちも、この分析力を発揮しましょう。今回は、相手のコミュニケーションのタイプを分析することによって、それぞれの頼み方を考えてみましょう。コミュニケーションのタイプは、大きく3つに分けることができます。(1)ピラミッド型1つ目は、ピラミッド型です。これは、ピラミッドのような力関係を重んじるコミュニケーションタイプです。このような相手には、上下関係を前面に出した頼み方が有効です。例えば、「これはあなたがやるべき仕事です」「これは組織としての命令です」などとシンプルにストレートに伝えることです。注意点としては、相手ができそうなことのみに限って頼むことです。逆に言えば、相手ができそうにないことは初めから頼まないことです。なぜなら、相手に断る余地があまりないので、無理な頼み事を引き受けさせて、相手を追い込んでしまうからです。そうならないために、普段から相手の能力を把握する分析力も必要です。(2)ファミリー型2つ目は、ファミリー型です。これは、ファミリー(家族)のような信頼関係を重んじるコミュニケーションタイプです。このような相手には、親密な人間関係を全面に出した頼み方が有効です。例えば、「やってくれるとうれしい」と気持ちを添えたり、「みんな順番でやってるの。やってないのはあなただけ(次はあなたの番)」と遠回しに伝えることです。人は大多数の人と同じことをしていたいという心理を利用しています(同調性)。また、最初に断られても、「やりたくないの?」「残念だわ」「あなたらしくないのね」「仕方ないわね」と逡巡しながら引き下がるそぶりを見せることです。すると、相手は「引き受けた方が良いかな?」と揺さぶられます。「押してだめなら引いてみる」という発想です。これは、あえて頼みを引き下げることで相手の断ることへの抵抗が出てくる心理を利用しています(心理的抵抗)。さらに、「この仕事とあの仕事、どっちが良い?」「この仕事、いつから始めるのが良い?」などと質問することです。これは、最初から二択に持ち込んだり(二択質問)、引き受けることを前提にしています(前提質問)。ちなみに、二択のうちの対抗選択肢は、「かませ犬」になりますので、引き受けにくそうなものが良いでしょう。注意点としては、「いつも私ばっかり」と思われないように、普段から他のメンバーとの分担のバランスを見極める分析力も必要です。(3)フラット型3つ目は、フラット型です。これは、フラット(対等)な協力関係を重んじるコミュニケーションタイプです。このような相手には、ビジョン(目標)を共有した仲間意識や役割意識を全面に出した頼み方が有効です。例えば、「クライアントの満足度を上げる目標のために、あなたの役割はこれ」「あなただからこそやってほしい」「あなたにしかできない」と情熱的に伝えることです。言い回しとしては、「この仕事をすることは可能?」と確認の形にすることで、相手の対等な関係に配慮していることを伝えられます。また、「クライアントさんの笑顔が目に浮かぶ」など、イメージが浮かびやすい例えを使うのも効果的です。さらに、「こういう仕事があるんだけど、この仕事のメリットって何だと思う?」と尋ねて、まず相手にメリットを聞き出して、その後に「じゃあやってみる?」と誘導することです。これは、良さをあえて考えさせて、良いと思い込ませることで、引き受けやすくなる心理を利用しています(自己説得法)。先ほどの二択質問との合わせ技としては、「この仕事とこの仕事はどっちが自分に合ってそう?」「そう思うのは何か理由がある?」という質問になります。注意点としては、普段から、相手のビジョンや好みをよく知り、ビジョンのすり合わせをしたり、役割意識を見いだす分析力も必要です。誰が頼む? ―相手が耳を傾けたくなる信頼感ブルは、一流のスタイリストをチームのメンバーにしています。そして、クライアントの身だしなみ、髪型、化粧の濃さまで、細かくチェックしています。陪審員の先入観がいかに判決に影響を及ぼすかをブルは熟知しています。また、弁護する代理人は、ある時はテレビで好感度の高い有名人、また別のある時は癒し系の女性が引き受けます。陪審員の好みやケースの内容によって、最も有利な代理人を選んでいます。2つ目のポイントは、「誰が頼む?」、つまり相手が耳を傾けたくなる信頼感です。ブルのように、私たちもこの信頼感を思う存分に発揮しましょう。信頼感は、大きく3つに分けることができます。(1)好意1つ目は、好意、好感度です。相手に「あの人の頼みなら」と思わせることです。相手によく思われている、少なくとも嫌われていないことです。そもそも嫌われているとこちらも分かっていたら、頼みにくいです。まず、自分が相手をよく思うことです。そのために、相手の良いところを探すことです。そして、相手をよく思っていることをアピールすることです。これは、好意を寄せられれば、お返しのように魅力を感じる心理を利用しています(魅力の返報性)。また、親近感を出すことです。そのために、共通点を探すことです。経歴、趣味、人間関係などで相手との共通点を見つけ出し、相手と「近い」ことをアピールすることです。これは、近かったり似ていれば、時間的にも肉体的にも経済的にも負担(コスト)が少なくて済むと感じる心理を利用しています(社会的交換理論)。さらに、相手の自尊心を高めることです。そのために、感謝を探すことです。「悩んでいるから聞いてほしい」とあえてこちらから相談を持ちかけ、「聞いてくれてありがとう」と相手に普段から感謝し、相手を頼りにしていることをアピールすることです。これは、不利な状況の人には助けたい、よくしてあげたいと感じる心理を利用しています(アンダードッグ効果)。(2)恩義2つ目は、恩義です。相手に「お返しをしなければ」「お返しをしたい」と思わせることです。普段から親切に接したり、丁寧に伝えることを通して相手を気に掛けたり心配することです。それが相手のお返しの気持ちにつながります。これは、頼み事をする時に、先に謝礼を出すと承諾が得られやすいことに似ています(事前謝礼法)。さらに、先ほどにも触れたように、こちらからあえて相談を持ちかけたり、小さな頼み事を普段からすることです。そうすることで、逆に相手からの相談や頼み事を引き受けやすくなり、お返しの気持ちを得やすくなります。これは、人は自分の経験や周りの状況を基準にして、行動を起こすかを決めるという心理を利用しています(参照点)。また、小さな頼み事については、相手から毎回承諾を得ることです。そうすることで、相手はそれまでの承諾に引きずられて、より大きな承諾をしやすくなります。これは、人は一貫した態度をとり続けたいという心理を利用しています(一貫性要求)。(3)権威3つ目は、権威です。相手に「上の人や他の人にも頼まれるからにはさすがに」「そこまでするなら」と思わせることです。つまり、「1人でだめなら、2人で押す」ということです。自分だけでなく、さらに上の上司や他の同僚にも協力をしてもらい、人数をかける、人数を増やしていくことです。「誰が頼む?」だけでなく、「誰と頼む?」ということも重要だということです。これは、頼む行為に対して労力(コスト)をかけている、その分大切にされているという心理を利用しています。また、人は大多数の意見に合わせたいという心理も利用しています(同調性)。何を頼む? ―納得できるプレゼンテーション能力ブルは、陪審員のプロフィールから、陪審員たちの知的レベルや知識レベルを分析します。ブル側の代理人には、そのレベルに合わせた言葉や表現をするよう指示します。また、例えば、ある陪審員が料理人なら、その人の前では話を料理に例えます。法廷で、ブルはいつも陪審員の表情やしぐさなどをちらちらと観察しています。例えば、陪審員が専門用語で上の空になっているなら、かみ砕いた言い回しや例えをするよう代理人に仕向けます。そして、オフィスには、本物の裁判の陪審員と同じプロフィールの模擬陪審員を集めて、徹底的にリハーサルとシミュレーションをしています。時には、8歳の子どもの模擬陪審員を集めて、模擬裁判を行い、弁論が子どもたちにも理解できるか確認しています。このように、陪審員の反応に合わせて、最も有利な弁論を展開しています。3つ目のポイントは、「何を頼む?」、つまり相手が納得できるプレゼンテーション能力です。ブルのように、私たちもこのプレゼンテーション能力を思う存分に発揮しましょう。今回は、相手から「この頼みなら」と思われるように、頼み事を限定するプレゼンテーションを考えてみましょう。そのポイントを3つあげてみましょう。(1)いつから1つ目は、いつからと開始日をなるべく遠い先に設定することです。これは、遠い先であればあるほど引き受けやすいからです。逆に、直前であればあるほど引き受けにくくなります。例えば、できるだけ前から頼み事の相談をして、あらかじめ承諾を得ておくことです。または、時間をかけて理解を得ることです。いわゆる根回しとも言えます。これは、遠い先であればあるほど負担(コスト)の見積もりが目減りする心理を利用してます(プロスペクト理論)。(2)いつまで2つ目は、いつまでと期間を限定することです。これは、短期間であればあるほど引き受けやすいからです。逆に、無期限で引き受けて納得が行かなかった場合、不快な思いがずっと続くリスクがあるため、引き受けにくくなります。例えば、「とりあえず1週間」とお試し期間を設けることです。納得が行かなくても、1週間限りであれば、引き受けやすいです。逆に、納得が行けば、その仕事に思い入れも沸いてきて、その後も続けてやりたいと思うでしょう。これは、ちょうどペットの仔犬を売りたい時、1週間だけお試し無料で客に引き渡し、1週間後に客が仔犬に愛着がわいてきたところで正式に購入してもらう販売テクニックに似ています(仔犬契約法)。(3)どれだけ3つ目は、どれだけと内容を限定することです。これは、頼む中身が限られていればいるほど引き受けやすいからです。逆に、曖昧で解釈によって無制限に頼み事が増える可能性があれば、引き受けにくくなります。貧乏くじを引くと思わせないことがポイントです。例えば、「これだけはやってもらう必要がある」と頼み事の内容をシンプルに限定することです(デッドライン・テクニック)。また、「どういう条件だったらできそう?」と逆提案を促し、相手に頼む中身を限定させることです。これは、NOと言い続ける人に対して効果的でしょう。頼むとは?進化心理学的に言えば、人間が、他の動物と決定的に違うことは、相手に頼まれたり頼んだりすることを通して、協力関係を築くこと、つまり社会脳を進化させたことです。そして、高度な社会を築き、文明を発展させました。そのためには、こちらが相手の気持ちを汲んで、信じてもらって、分かりやすく伝えることが重要になります。これが、まさに今回ご紹介した分析力、信頼感、プレゼンテーション能力です。医療の現場では、インフォームド・コンセント(説明と同意)の重要性はますます高まっています。これは、治療について医師が十分な説明をして患者から同意を得ることです。さらに、最近では、インフォームド・アセントも求められています。アセント(assent)とは、コンセント(consent)の同意よりも堅苦しい言い回しで、「合意」が近い訳になるでしょう。これは、同意の対象を、大人だけでなく、子どもにまで広げることです。例えば、小児がん、小児の注意欠如・多動症(ADHD)で、子どもにも分かりやすい説明をして、親だけでなく当事者の子どもからも同意を得ることです。患者の権利(リスボン宣言)だけでなく、子どもの権利(子どもの権利条約) への配慮もますます求められていると言えるでしょう。逆に言えば、医師が専門用語を並び立てて、患者に一方的に治療方針を説き伏せるのはもはや時代遅れであるということです。これは、かつてパターナリズム(父権主義)と呼ばれていました。また、学会、会議、講義の場で、原稿や教科書をロボットのようにただ読み上げることも時代遅れであると言えるでしょう。特に医師をはじめとする医療関係者は、今後ますます説明が求められます。ブルの手法は、裁判だけでなく、医療や教育のコミュニケーションにも、もっと広げて考えれば日常のコミュニケーションにも通じるものがあります。私たちが、誰かと協力して何かをしようとするとき、新しいことや大きなことであればあるほど、頼み事、頼まれ事が増えていくものです。そんな時、スムーズに思いが伝わり人を動かせていることこそ、まさにこのドラマのサブタイトルにある「心を操る」と言えるのではないでしょうか?1)法と心理「心理学は裁判員裁判に何ができるか」:日本評論社、20092)社会心理学:山岸俊男監修、新星出版社、20113)「人たらし」のブラック交渉術:内藤誼人、だいわ文庫、2009

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黄色靭帯骨化症〔OLF:ossification of ligamentum flavum〕

1 疾患概要■ 概念・定義脊柱は、脊椎骨が椎間板と椎間関節を介して上下に積み重なって構成されている。前縦靭帯と後縦靭帯が、頸椎から腰椎まで連続して脊椎骨と椎間板を連結し、前後左右にずれることを防いでいる。黄色靭帯は脊柱管内の椎弓の前面にあって、1椎間ごとに上下の脊椎骨を連結する。このうち、黄色靭帯および後縦靭帯が骨化すると、脊髄を圧迫して麻痺の原因となる。無症候性の骨化も多く、画像上骨化を認めるだけでは疾患として認めないという考え方もある。■ 疫学黄色靱帯骨化症(ossification of ligamentum flavum:OLF)は、全脊柱に発生するが、頸椎では組織学的には靱帯骨化症と異なり、靭帯内に石灰が沈着する石灰化症であることが多い。骨化の存在証明には単純X線所見による診断は不正確で、CT検査が必要である。MRI検査では脊髄の圧迫の有無を確認できるが、骨化か石灰化かの区別はしにくい。15歳より高年齢の患者で、撮影済みの胸部CT所見3,013例(男性1,752例、女性1,261例)を調査した結果では、胸椎の黄色靭帯骨化症は1,094例2,051椎間に認められた1)。平均年齢は66歳で、男性の38%、女性の34%に当たり、30歳以後はすべての年代で30~40%の頻度でみられた。また、高位別には第4胸椎/第5胸椎間と第10胸椎/第11胸椎間の二峰性のピークをなす。ただし、これは黄色靭帯骨化が胸椎にみられる頻度を示した研究であり、症状の有無は不明である。厚生労働省の特定疾患の登録者は、平成28年には5,290人であり、頸椎後縦靭帯骨化症の38,039人よりもかなり少ない。■ 病因脊柱靱帯骨化症の一部分症であり、厳密な原因は不明である。遺伝的な背景を持つ全身的な靭帯骨化傾向に、局所的かつ動的な機械的ストレスが加わって生じると考えられている。発症年齢は比較的高齢者に多いが、胸腰椎移行部に投球動作によってストレスが加わりやすい野球のピッチャーでは比較的若年の発症が認められる。病理学的には正常で80%の弾性線維と20%の膠原線維から構成される黄色靭帯において、膠原線維比率が増加し、軟骨組織の出現を認める。軟骨組織は周囲基質の石灰化を伴い、次第に骨化を形成するという内軟骨性骨化を来す。ただ、一部には膜性骨化を認めることもある2)。一方、黄色靭帯石灰化症は、変性した弾性線維内にピロリン酸カルシウムやハイドロキシアパタイトの結晶が腫瘤状に沈着して、脊髄・馬尾障害を生じる病態である3)。■ 症状頸椎黄色靭帯石灰化症や胸椎黄色靭帯骨化症では脊髄障害が出現する。初発症状として上下肢のしびれ、感覚障害のほか、脱力感、痛み、局所痛などが出現する。進行すると下肢のしびれや痙性、筋力低下などによる歩行障害が生じ、日常生活に障害を来す。麻痺が高度になれば横断性脊髄麻痺となり、膀胱直腸障害も出現する。腰椎でも黄色靭帯骨化症が発生すれば、腰部脊柱管狭窄症による間欠跛行と同じように、歩行による下肢痛やしびれの増強がみられる。神経学的には頸椎や胸椎の脊髄障害では下肢腱反射の亢進と感覚障害が生じるが、筋力は比較的保たれることが多い。胸腰椎移行部の脊髄円錐付近で脊髄が圧迫されると、腱反射低下や膀胱直腸障害、筋萎縮を来すことがある。■ 分類骨化は、横断面では多くの場合にはもとの黄色靭帯の表面に沿って発生し、脊柱管を狭める(図1)。まれに正中部にも発生する。矢状面(側面)では黄色靭帯骨化は脊柱管内に大きく突出し、脊髄圧迫を来す(図2)。現時点ではコンセンサスを得ている形態分類はない。画像を拡大する画像を拡大する■ 予後いったん脊髄症状が出現すると自然回復の可能性は低く、進行性に悪化する。転倒などの軽微な外傷で、急に麻痺の発生や増悪を来すことがあり、早急に手術を行う必要がある。しかし、神経症状なしに、たまたま見つかった骨化は経過を観察してもよい。予防手術は一般的に行われることはなく、手術は下肢神経症状が出たときに考慮する。ただし、症状がなくても脊柱靱帯骨化症の一部分の病気と考えられるので頸椎、胸椎、腰椎の画像検査が勧められる。骨化症が存在することが判明すれば、定期的な画像検査を行ったほうがよい。2 診断 (検査・鑑別診断も含む)指定難病としての診断基準は次のとおりである。診断基準黄色靱帯骨化症1.主要項目1) 自覚症状ならびに身体所見(1)四肢・躯幹のしびれ、痛み、感覚障害(2)四肢・躯幹の運動障害(3)膀胱直腸障害(4)脊柱の可動域制限(5)四肢の腱反射異常(6)四肢の病的反射2) 血液・生化学検査所見一般に異常を認めない。3) 画像所見(1)単純X線側面像で、椎間孔後縁に嘴状・塊状に突出する黄色靱帯の骨化像がみられる。(2)CT脊柱管内に黄色靭帯の骨化がみられる。(3)MRI靱帯骨化巣による脊髄圧迫がみられる。2.鑑別診断強直性脊椎炎、変形性脊椎症、強直性脊椎骨増殖症、脊柱管狭窄症、椎間板ヘルニア、脊柱奇形、脊椎・脊髄腫瘍、運動ニューロン疾患、痙性脊髄麻痺(家族性痙性対麻痺)、多発ニューロパチー、脊髄炎、末梢神経障害、筋疾患、脊髄小脳変性症、脳血管障害、その他。3.診断画像所見に加え、1.に示した自覚症状ならびに身体所見が認められ、それが靱帯骨化と因果関係があるとされる場合、本症と診断する。4.特定疾患治療研究事業の対象範囲下記の(1)、(2)の項目を満たすものを認定対象とする。(1)画像所見で黄色靭帯骨化が証明され、しかもそれが神経障害の原因となって、日常生活上支障となる著しい運動機能障害を伴うもの。(2)運動機能障害は、日本整形外科学会頸部脊椎症性脊髄症治療成績判定基準(表)の上肢運動機能 Iと下肢運動機能 IIで評価・認定する。頸髄症:I 上肢運動機能、II 下肢運動機能のいずれかが2点以下(ただし、I、IIの合計点が7点でも手術治療を行う場合は認める)胸髄症あるいは腰髄症:II 下肢運動の評価項目が2点以下(ただし、3点でも手術治療を行う場合は認める)表 日本整形外科学会頸部脊椎症性脊椎症治療成績判定基準(抜粋)I 上肢運動機能0.箸又はスプーンのいずれを用いても自力では食事をすることができない。1.スプーンを用いて自力で食事ができるが、箸ではできない。2.不自由ではあるが、箸を用いて食事ができる。3.箸を用いて日常食事をしているが、ぎこちない。4.正常注1きき手でない側については、ひもむすび、ボタンかけなどを参考とする。注2スプーンは市販品を指し、固定用バンド、特殊なグリップなどを使用しない場合をいう。II 下肢運動機能0.歩行できない1.平地でも杖又は支持を必要とする。2.地では杖又は支持を必要としないが、階段ではこれらを要する。3.平地・階段ともに杖又は支持を必要としないが、ぎこちない。4.正常注1平地とは、室内又はよく舗装された平坦な道路を指す。注2支持とは、人による介助、手すり、つかまり歩行の支えなどをいう。3 治療 (治験中・研究中のものも含む)症状が局所痛など軽い場合は、薬物療法などで経過をみるが、脊髄症状が明らかな症例には手術を勧める。椎弓を切除して骨化を摘出することで、神経組織の圧迫を解除する。骨化を摘出することで椎間関節が失われる場合には、後方固定術を追加する。4 今後の展望後縦靭帯骨化症に関しては、疾患関連遺伝子に関する研究が進んでいるが、黄色靭帯骨化症に限定した遺伝的研究はない。今後は、関連遺伝子の機能解析を進めることにより、骨化形成を阻害する薬剤の開発が望まれる。5 主たる診療科脊椎脊髄病に精通した整形外科または脳神経外科※ 医療機関によって診療科目の区分は異なることがあります。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)診療、研究に関する情報難病情報センター 黄色靭帯骨化症(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)日本整形外科学会 後縦靱帯骨化症・黄色靭帯骨化症(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)1)Mori K, et al. Spine. 2014;39:394-399.2)吉田宗人. 脊椎脊髄. 1998;11:491-497.3)山室健一ほか. 脊椎脊髄. 2007;20:125-130.公開履歴初回2018年07月10日

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意外と取れてる後発品加算【早耳うさこの薬局がざわつくニュース】第4回

2018年4月の調剤報酬改定から、後発医薬品調剤体制加算の算定基準や点数が変更になりました。ほかの薬局はどのくらい加算が取れているのか気になるところではないでしょうか。改定後の加算状況が報じられましたので、ご紹介します。2018年度調剤報酬改定で数量シェアの基準を引き上げ、2段階から3段階評価に切り替えた、薬局の「後発品調剤体制加算」について、(中略)全国の50%(2万8,923店舗)がいずれかの加算を算定していることがわかった。昨年7月時点では、全国の薬局の約63%(約3万7,000店舗)が算定していたが、その後の伸びも踏まえると、改定前後で約1万店舗が加算算定から“脱落”した格好だ。(2018年6月28日付 RISFAX)前回の算定基準では、加算1と加算2のどちらかを算定している薬局は約63%でしたが、今回の改定によって加算を算定する薬局が50%に減ったということで、この記事では加算から脱落した薬局の多さを強調しています。しかし、私個人としては、思っていたよりも加算を算定することができた薬局が多いなという印象です。17%の薬局が新たに後発医薬品使用割合75%を達成後発医薬品調剤体制加算に求められる後発医薬品使用割合は、2016年改定(2018年3月末まで)では加算1が「65%以上」で18点、加算2が「75%以上」で22点でした。それが2018年度の改定では、点数は同じままで加算1が「75%以上」、加算2が「80%以上」に引き上げられ、さらにその上に加算3として「85%以上」の26点が新設されています。低い基準を打ち切り、高い基準を新設することでより後発医薬品の使用を促進させようという意図がはっきりわかります。この算定基準の引き上げが公表されたとき、かなり厳しいという印象を受けたことを今でも覚えています。前述のとおり、今回75%以上を達成し、1~3のいずれかの加算を算定した薬局は全体の約50%でしたが、前回の算定基準で75%以上の加算2を算定した薬局は33%でした。このことから、その差である約17%の薬局、つまり全国の薬局約5万5,000店舗のうち約9,000超の薬局が後発医薬品の使用割合を増やし、新たに加算を算定できるようになったと考えられます。高いハードルであっても地道な努力によって使用割合を達成した薬局がこれほど多いということは、少し勇気をもらえる事実ではないでしょうか。後発医薬品の使用可否は医師や患者さんの意向も大きく、薬剤師だけではどうしようもないこともあります。しかし、手をこまねいているのではなく、先発医薬品から薬剤の味や使いやすさなどが改良されている後発医薬品もあるので、積極的に患者さんのメリットを紹介してみてはいかがでしょうか。今年4月から病院やクリニックの外来処方箋に対する「外来後発医薬品使用体制加算」も2段階から3段階に改められたのをネタに、医師や事務の方とお話ししてもいいかもしれません。

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第3回 エラーバーはいつも対称とは限らない【統計のそこが知りたい!】

第3回 エラーバーはいつも対称とは限らない第1回「『標準偏差』と『標準誤差』の使い分けは」で、エラーバー(error bar)についても解説しました。通常よく目にする論文の図表では、エラーバーは代表値を中心に上下あるいは左右対称で同じ長さであることが多いかもしれません。しかし、エラーバーが必ずしも上下(左右)が対称ではなく、非対称、すなわち代表値を中心に同じ長さではない図表を目にすることもあるのではないでしょうか。今回は、どのような場合にエラーバーが上下(左右)非対称となっているのかを解説します。■平均値を示す際、エラーバーでバラツキを示す指標も表示するある試験を行った結果、毎回同じ結果が出るとは限りません。ですからデータをグラフ化する場合には、バラツキを示す指標もエラーバーで表示することが重要です。エラーバーは、データの誤差(エラー)の程度を表すためのもので、±標準偏差(SD)、±標準誤差(SE)、パーセンタイル(percentile)、95%信頼区間(confidence interval:CI)と使い分けられています。今回は純粋にデータのバラツキを示したい、あるいは比べたいというときに用いる標準偏差で説明します。■正規分布の場合と正規分布ではない場合臨床試験データの中には標準的な正規分布に従わない場合もあります。よく知られているのは、図1のようにわが国の各世帯の所得金額の分布は、標準的な正規分布ではなく、片対数正規分布であると言われています。臨床試験の結果がこのように標準的な正規分布ではなく、図2のように片対数正規分布に従うような場合は、エラーバーの上下(左右)は対称ではなく非対称になります。つまり長さが異なることもあります。具体例として学習用の架空のデータで、非対称のエラーバーを見てみましょう。図3は、ある薬剤の薬物動態を表したデータです。薬物投与後の血中濃度の推移を見ています。平均値±標準偏差により算出されるエラーバーの長さ(区間幅)は、片対数軸上では非対称となります。また、このグラフでの24時間値は平均値-標準偏差がマイナス値となるため、グラフに下側のエラーバーを表示することができない場合があります。このため、平均値+標準偏差のように上側のエラーバーのみが表示されることも多くみられますが、上側と下側の長さ(区間幅)が異なることにも注意して、論文の図表を見る必要があります。そして、得られたデータから標準的な正規分布が推定される場合は、上下対称の長さ(区間幅)のグラフを作図するときは、グラフの重なりなどで見にくくなるのを防ぐため、上側と下側どちらかのエラーバーのみを表示しても構いません。いずれの場合においても論文の図表でエラーバーをみた際は、記述をよく読んでエラーバーがどのような定義で作成されているのかを見極めることが大切です。■さらに学習を進めたい人にお薦めのコンテンツ「わかる統計教室」第3回 理解しておきたい検定セクション2 量的データは平均値と中央値を計算せよセクション3 データのバラツキを調べる標準偏差第4回 ギモンを解決! 一問一答質問3 標準偏差と標準誤差の違いは何か?

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「偽造品問題で管理薬剤師に行政処分」は厳しすぎるか?【赤羽根弁護士の「薬剤師的に気になった法律問題」】第3回

2017年1月、C型肝炎治療薬「ハーボニー配合錠(一般名:レジパスビル・ソホスブビル配合錠)」の偽造品が、薬局チェーンで発見された事件がありました。業界で大きな話題になったので、まだ記憶に新しいかと思います。この問題を受け、2018年6月、厚生労働省は、患者に偽造品を渡した薬局に勤務していた管理薬剤師に対し、薬剤師の業務停止3ヵ月の行政処分をしたと発表しました。この事件に関しては、別の店舗に勤務する管理薬剤師にも、昨年12月に3ヵ月間の業務停止処分が下されています。今回の処分について、処分理由の詳細な事実はわかりませんが、管理薬剤師が、外箱や添付文書などがない状態の該当薬の分譲を受け、勤務薬剤師に調剤させたことや、薬局開設者に必要な意見を述べなかったことなどが挙げられているようです。この事件については、薬局も以前に処分されていますが、その際の処分理由は以下のとおりでした。1.医薬品の仕入れ段階における検査が不十分であったため、偽造品を仕入れ、販売授与の目的で当該偽造品を貯蔵させた。(医薬品医療機器等法 第55条第2項違反)2.開設者は、薬局業務のうち医薬品の仕入業務や分譲業務について管理者に管理させていなかった。(医薬品医療機器等法 第7条第2項違反)3.仕入れ段階において箱や添付文書がない医薬品について疑義を持たないまま、適切な管理のために必要と認める医薬品の試験検査を管理者に行わせなかった。(医薬品医療機器等法 第9条第1項及び同施行規則 第12条違反)4.管理者は、上記業務があることは認識していたが、管理者として管理監督を行っていなかった。またそのことについて開設者への適切な意見具申を行わなかった。(医薬品医療機器等法 第8条第1項、第2項違反)この際も上記4番のとおり管理薬剤師の義務違反が問題となり、管理者変更命令の処分がされています。責任は管理薬剤師にある管理薬剤師には、以下の義務が医薬品医療機器等法で定められています。医薬品医療機器等法 第8条(管理者の義務)第八条 薬局の管理者は、保健衛生上支障を生ずるおそれがないように、その薬局に勤務する薬剤師その他の従業者を監督し、その薬局の構造設備及び医薬品その他の物品を管理し、その他その薬局の業務につき、必要な注意をしなければならない。2 薬局の管理者は、保健衛生上支障を生ずるおそれがないように、その薬局の業務につき、薬局開設者に対し必要な意見を述べなければならない。管理薬剤師は、薬局の業務全般を管理しなければならず、問題があれば薬局開設者に意見を述べる義務があります。つまり、薬局開設者からの指示であるからといって、管理薬剤師がその指示に従っていたとしても、法律上では、薬局の管理監督に対する責任は管理薬剤師にあるということです。そのため、薬局開設者には、管理薬剤師の意見を尊重しなければならないという義務があります。医薬品医療機器等法 第9条2項薬局開設者は、第七条第一項ただし書又は第二項の規定によりその薬局の管理者を指定したときは、第八条第二項の規定による薬局の管理者の意見を尊重しなければならない。今回の事件の詳細な実体は明らかにされていないので、判断は難しいかもしれませんが、薬局開設者の指示で仕入れた、または薬局開設者が仕入れてきた医薬品の調剤を監督した管理薬剤師が、このような処分を受けるのは重いと感じる方もいるのではないでしょうか。わが国では、これまで薬局が扱う医薬品において、偽造が問題になったことはほとんどないので、管理薬剤師は、偽造品だと想像すらできなかった可能性があり、そう考えるとなおさらかもしれません。しかし、国はそのように考えていないということです。法律も上記のとおりですから、管理薬剤師にかかる薬局の管理監督に対する責任は重いと言わざるをえないでしょう。そのような意味では、管理薬剤師の重要性と責任の重さが示された処分とも言えるかと思います。実際には、管理薬剤師の意見が尊重されない、意見が言いづらい現場もあるかもしれません。万一そのような薬局があれば、その体制の見直しを検討する必要があります。これを機会に、管理薬剤師の立場・責任の見直しと法令遵守ができる体制の整備が期待されます。参考イーガブ 医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(医薬品医療機器等法)

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第8回 訪問診療同行時に医師に尋ねられたこと【はらこしなみの在宅訪問日誌】

こんにちは。在宅訪問専任の薬剤師・はらこしなみです。地域連携の会に参加したら知り合いばかり!先日、地域の認知症連携懇話会に参加したとき、100名の参加者のほとんどが関わりのある人達ばかりで驚きました。たくさんのケアマネさんや先生、訪問看護師さんが、色々な所で繋がっています。医師からはこんなことを尋ねられます医師の訪問診療に同行したときに医師から尋ねられたことを紹介します。アサコールの簡易懸濁は?Dr.:アサコールを簡易懸濁したい。溶解は?はらこし:腸溶錠なので、胃ろうからの注入はだめですが、腸ろうならばオッケーです。 取り出し後の湿気に注意する必要があります。フィルムは溶けません。pH7以上で放出、pH6.4では溶けません。カテーテルの太さはいくつですか?8Fr、14Frだと△です。詰まるかもしれませんし、フィルムが溶けないので取り除く必要があります。サラゾピリンの素錠であれば、8Frで○です。ペンタサは腸溶部分が溶けないため、カテーテルの入り口に詰まるとメーカーから聞いています。外用剤は何が一番効く?Dr.:外用剤は何が一番効く?湿布、抗真菌薬、抗炎症薬、それぞれ教えて。はらこし:それは難しいです...。外用剤は特に適正使用(方法、量)が重要だと思いますので、療養者の環境やADLを考慮して選んだり、質感の心地よいもの(クリームが好きな人、サラサラローションが良い人)などで継続しやすいものを、と考えて提案しています。麻薬処方箋には何を記載?Dr.:麻薬処方箋には何を記載するんだっけ?はらこし:患者住所と先生の免許番号です!こんな感じで、いろいろと医師とやりとりしています。専門が異なる他の医師の処方意図や薬剤の用法用量をお伝えすることもあります。医師同士の情報交換が頻繁にできない先生には参考になるようです。

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第6回 医師家系の一例【宮本研のメディア×ドクターの視座】

第6回 医師家系の一例近所の人たちに「将来は、お医者さんになるの?」と聞かれていた先生は少なくないと思います。私も幼稚園の頃、「オイシャサン」が何だか分からないものの、病院官舎へヨレヨレの白衣姿で戻ってくる父が、その人だとぼんやり認識していました。当時、某県の子ども病院へ医局派遣されていた父は、小児心臓外科の立ち上げのため、ICUに泊まり込むハードな日々を送っていたそうです。ほとんど家へ帰らない日々で、古い官舎へ戻ってくるのは着替えなど、ごく限られた時間でした。「どこかにパパがいる」と時々、病院の食堂で昼食を食べつつ、五感で学んでいました。おおらかな時代だったのか、入院中の小児患者さんたちと並んで食事ができる病院で、「ずいぶん元気そうなお子さんなのに、病気だなんてかわいそう…」と、母は周囲から何度も声をかけられたそうです。病院入口のスロープでは、小児患者の車椅子を一生懸命に押していた記憶もあります。祖父もまた胸部外科医であったことも、医療環境に幼くして馴染んだ理由かもしれません。曾祖父も内科の開業医でした。医師家系の場合、このように幼い頃から医師のリアルな姿に馴染みがあり、周囲からも跡継ぎを期待されて…という状況が珍しくないと思います。科や勤務形態は違っても、親・兄弟に医師が多くいたり、医師どうしが結婚して義理の両親も医師、という場合もあります。結婚式がまるで2つの医局の顔合わせ状態に、というのも“医師あるある”ではないでしょうか。どちらの教授から祝辞を述べてもらうか、仲人を立てるべきか、お車代はいくらにしようか、と悩んだ事例も少なくないでしょう。つまり、大人どうしの自然な恋愛で医師カップルが誕生する一方で、医師家系の継承という大前提が、相手選びに制限をもたらすことも起こりやすい。それらのメリットやデメリットを論じるのは難しいものの、“純粋な医療貢献を目指す人たち”という見方だけでは、医師家系の理解は難しいでしょう。職業が特殊であることは、キャリアも競争もごく限られたメンバー間で勝負していくことにつながります。高学歴者の集団ですから、医師業界の上位争いはとても厳しい。でも国家資格それ自体が、社会の信用を得る有効なツールであり続けます。多くの先人が築いてきた医療行為や研究成果によって、現在の私たちが社会の信認を受けていると言えるでしょう。さらに医師は富裕層の代表格として、いつもメディアで取り上げられる職業です。「社会的地位も名声もあり、稼ぎも良い。不景気でも失業しない」というイメージで、医学部人気が上昇するのは避けられず、偏差値が高止まりしている現状が、この職業の期待値をさらに高めていきます。「子供たちも医師になって欲しい」という親は、教育熱心にならざるを得ません。医師免許を取得できれば何とかなる、といった安易な風潮には懸念を持たざるを得ませんが、継承案件がある場合は切実です。「同族で継いでほしい」という気持ちから、「医師免許を取らせたい」という親なりの熱意が生まれやすくなります。昨今の医療は過去の医師たちが経験した事例とは、かなり異質な方向に発展を遂げています。WEBを中心に加速度的な進歩を遂げ、人工知能の活用やリアルワールドデータを用いた医療行為の品質改善など、数年後の状況すら現役医師が正確に予測できない事態です。世界に冠たる国民皆保険や診療報酬制度があるから大丈夫、という認識も揺るぎはじめ、既存の医業継承が将来可能なのか、見通しにくい経営環境となっています。「お子さんもお医者さんに?」と質問されたとき、医師という職業の将来を正確に予測できない点を、どのように相手へ伝えればよいのでしょうか? 余計なことは言わず、「はい、そのつもりです」と笑顔で答えれば問題ないのでしょうか? 私も子どもたちの将来を考えるとき、曾祖父以来100年以上続く医師家系を、いつどのように事実として伝えるべきか、しばし考えてしまいます。ちなみに100年以上前の医療の状況は、日本内科学会誌のアーカイブから閲覧できます。この1913年の第1巻には、巻頭で「腎臓炎」の論説が掲載されており、腎臓内科医の1人として、思わず読みふけってしまう底知れぬ魅力があります。保険診療を行う上で根拠となっている医学的な根拠は、こうして膨大な年数を経ながら、果てしない試行錯誤を先駆者たちが築いていった結果であり、今もそのアップデート中と実感できます。未知への家族的な挑戦が、医業の継承につながっている側面もあるのでしょう。私は医師家系を賞賛するわけでも否定するわけでもありませんが、実際にその一員として人生を過ごしていると、無視せずに当事者が考える複雑な意義があるとも思います。実は、古くて新しいテーマなのです。

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脂質代謝遺伝子の発現を調節する高脂血症治療薬「パルモディア錠0.1mg」【下平博士のDIノート】第4回

脂質代謝遺伝子の発現を調節する高脂血症治療薬「パルモディア錠0.1mg」今回は、「ペマフィブラート錠0.1mg(商品名:パルモディア)」を紹介します。本剤は、フィブラート系薬に分類される高脂血症治療薬で、核内受容体であるペルオキシソーム増殖因子活性化受容体PPARαに選択的に結合し、脂質代謝遺伝子の発現を調節することで、血中の中性脂肪(トリグリセライド:TG)を低下させるとともにHDL-コレステロール(HDL-C)を増加させる作用を有します。<効能・効果>高脂血症(家族性を含む)の適応で、2017年7月3日に承認され、2018年6月1日より販売されています。本剤は、選択的にPPARαに結合した後、PPARαの立体構造変化をもたらすことで、主に肝臓の脂質代謝に関わる遺伝子群の発現を選択的にモジュレート(調節)して、脂質代謝を改善します。なお、本剤をLDL-コレステロール(LDL-C)のみが高い高脂血症治療の第1選択薬として用いることはできません。<用法・用量>通常、成人にはペマフィブラートとして1回0.1mgを1日2回朝夕に経口投与します。年齢・症状に応じて適宜増減可能ですが、最大用量は1回0.2mgを1日2回までです。<禁忌>次の患者には投与しないこと重篤な肝障害、Child-Pugh分類B/Cの肝硬変のある患者あるいは胆道閉塞のある患者(肝障害の悪化、または本剤の血中濃度が上昇する恐れがある)胆石のある患者(胆石形成が報告されている)妊娠または妊娠している可能性のある患者シクロスポリン、リファンピシンを投与中の患者(併用により、本剤の血中濃度が著しく上昇する恐れがある)<臨床効果>第III相臨床試験であるフェノフィブラートとの比較検証試験において、TG高値かつHDL-C低値を示す脂質異常症患者223例に、本剤0.2mg/日または0.4mg/日を1日2回朝夕食後、もしくはフェノフィブラート錠106.6mg/日を1日1回朝食後で24週間投与しました。その結果、空腹時血清TGのベースラインからの変化率は、フェノフィブラート群が-39.685±1.942%であったのに対し、本剤0.2mg群は-46.226±1.977%、0.4mg群は-45.850±1.942%であり、本剤のフェノフィブラート群に対する非劣性が認められています(p≦0.01)。なお、TG高値を示す脂質異常症患者、2型糖尿病を合併した脂質異常症患者を対象とした長期投与試験において、52週にわたり空腹時血清TGの改善が維持されました。<副作用>承認時までに実施された臨床試験において、1,418例中206例(14.5%)に副作用が認められています。主な副作用は、胆石症20例(1.4%)、糖尿病(悪化を含む)20例(1.4%)、CK上昇12例(0.8%)でした。<患者さんへの指導例>1.中性脂肪を低下させ、善玉コレステロールを増やす薬です。2.足のしびれ・痙攣、力が入らない、覚えのない筋肉痛など、いつもと違う症状が現れたらすぐに連絡してください。3.禁煙・運動・食生活など、生活習慣の改善も併せて行いましょう。<Shimo's eyes>既存のフィブラート系薬は腎排泄型の薬剤であり、安全性の観点から腎機能障害患者、肝機能障害患者、スタチン系薬を服用中の患者では使用が制限されてきました。ペマフィブラートは、腎機能障害(eGFR:60mL/分/1.73m2未満)を有する高TG血症患者に1日0.4mgまで投与した場合であっても、正常腎機能被験者と比較して発現頻度が明らかに上昇するような有害事象は現時点では認められていません。また、本剤と各種スタチン系薬との相互作用が検討された臨床試験においても、併用による双方の薬剤の血中濃度には変化がなく、有害事象の発現頻度は上昇しなかったことが確認されています。これらのことから、本剤を腎機能障害患者が服用したり、スタチン系薬と併用したりすることによる横紋筋融解症の発現リスクは、ほかのフィブラート系薬と比較して低いことが予想されます。そのため、2022年10月に高度腎障害のある患者への禁忌が解除され、慎重投与に変更されました。本剤は胆汁排泄型の薬剤であるため、肝機能障害には注意が必要ですが、申請時資料において、フェノフィブラートに比べて肝機能障害の有害事象が少ないという可能性が示唆されるデータがあります。しかし、ペマフィブラートは、日本で開発された薬剤であり、海外では臨床試験が実施されているものの、まだ承認されていません。十分な臨床での使用経験がないため、今後の副作用報告に注視する必要があるでしょう。※2022年10月、添付文書改訂により一部内容の修正を行いました。

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EGFR変異肺がんにおけるエルロチニブ・ベバシズマブ併用第III相試験(NEJ026)/ASCO2018

 StageIVのEGFR変異陽性非小細胞肺がん(NSCLC)では、1次治療としてEGFR-TKIが標準療法であるが、無増悪生存期間(PFS)中央値は1年程度である。サバイバルのため、さまざまな併用療法が試みられている。そのようななか、エルロチニブとベバシズマブの併用は、第II相試験JO25569試験において、EGFR変異陽性NSCLCのPFS中央値を16.0ヵ月と有意に改善した。このエルロチニブ・ベバシズマブ併用をエルロチニブ単剤と比較した第III相試験NEJ026の結果を、聖マリアンナ医科大学呼吸器内科の古谷直樹氏が米国臨床腫瘍学会年次総会(ASCO2018)で発表した。 同試験の対象は、化学療法歴のない術後再発あるいはStageIIIB~IVでPS 0~2のEGFR変異陽性NSCLCで、エクソン19欠失変異あるいはL858R点突然変異を有する患者。無症候性脳転移を有する症例は登録可能とした。患者は、ベバシズマブ3週ごと投与+エルロチニブ連日投与群(BE群)とエルロチニブ単独連日投与群(E群)に無作為に割り付けられた。主要評価項目はPFSで、副次評価項目は全生存期間(OS)、客観的奏効率(ORR)、病勢制御率(DCR)、奏効期間、安全性、QOLであった。 2015年6月3日~2016年8月31日に228例の患者が登録された(BE群、E群ともに114例)。追跡期間の中央値は12.4ヵ月で、PFS解析のデータカットオフ日は2017年9月21日。 主要評価項目であるPFS中央値は、BE群が16.9カ月(14.2~21.0ヵ月)、E群が13.3カ月(11.1~15.3ヵ月)で、BE群で有意な延長効果が確認された(HR:0.605、95%CI:0.417~0.877、p=0.0157)。 副次評価項目のうち、ORRはBE群が72.3%、E群が66.1%、DCRはBE群が94.6%、E群が96.4%で両群間に有意差はなかった。 Grade3以上の有害事象発現率は、BE群が56.3%、E群が37.7%でBE群のほうが高かった。Grade3以上の有害事象としてはBE群でベバシズマブに関連する高血圧症が22.3%、蛋白尿が7.1%とE群に比べて有意に高い発現率(高血圧症はp<0.001、蛋白尿がp<0.01)だったが、その他はエルロチニブに伴う皮疹(BE群が20.5%、E群が21.1%)などで両群間に差はなかった。また、全GradeではBE群で出血が25.9%と、E群に比べて有意に高い発現率だった(p<0.001)。 これらの結果から、古谷氏は「エルロチニブとベバシズマブの併用療法はエルロチニブ単独に比べ有意にPFSを延長しており、EGFR陽性NSCLCの新たな標準治療と考えられる」との見解を示した。■参考ASCO2018 Abstract※医師限定ASCO2018最新情報ピックアップDoctors’Picksはこちら

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第2回 「抜歯したら抗菌薬」は本当に必須か【論文で探る服薬指導のエビデンス】

 先日、歯科医師の友人から、抜歯後に抗菌薬を処方しなかったことで薬剤師からクレームを受けた、という話を聞きました。次のような経緯だったようです。・某日午前、ある女性患者さんの上顎第3大臼歯(親知らず)の残根を抜歯し、術後疼痛対策としてアセトアミノフェンを処方したが、抗菌薬は処方しなかった。・同日夕方、救急外来にこの女性患者さんの旦那さんである薬剤師からクレームの電話が入り、「抜歯したのになぜ抗菌薬を処方しないのか」と言われた。はたして抜歯をする際は感染症を予防するための抗菌薬は必須なのでしょうか。今回は、抜歯時の抗菌薬の有用性について検討したコクランのシステマティックレビューを紹介します。Antibiotics to prevent complications following tooth extractions.Lodi G, et al. Cochrane Database Syst Rev. 2012;11:CD003811.論文では、「抜歯処置を受ける患者さんが、術前あるいは術後に抗菌薬を服用すると、抗菌薬なしまたはプラセボ服用に比べて、感染症の発生リスクが下がるか」という疑問が検討されています。本論文で組み入れられた研究では、主にアモキシシリン(±クラブラン酸)、エリスロマイシン、クリンダマイシンなどが投与されています。なお、日本感染症学会、日本化学療法学会による「JAID/JSC感染症治療ガイドライン2016―歯性感染症―」でも、歯性感染症ではペニシリン系、リンコマイシン系、マクロライド系などが推奨されています。日本ではルーティンで第3世代セフェム系薬を処方する歯科医師が多いと感じていますが、これらは必ずしも歯性感染症に適するわけではないですし、概して吸収率も高くはありません。抗菌薬を服用すると12例中1例で感染予防さて、システマティックレビューの評価ポイントはいくつかあります。過去の研究を網羅的に集めているか、集めた研究の評価が適切になされているか、それらの研究の異質性は検討されたか、出版バイアスはないか、情報は適切に統合されたか、などの点を確認することが大切です。本論文では1948年~2012年1月25日までにMEDLINE、EMBASE、CENTRAL、CHSSSといったデータベースに登録されている関連論文を網羅的に集めています。集められた試験のデザインはランダム化比較試験で、うち1件はインターバルが6週間以上のクロスオーバーランダム化比較試験です。クロスオーバーは同じ被験者がウォッシュアウト期間を十分に設けた後に、異なる介入を受けることを意味します。そう何回も抜歯をやるの? という疑問もあるかもしれませんが、スプリットマウスデザインという、同一被験者の口内の左右では条件差がさほどないことを利用して、左右の歯でウォッシュアウト期間をおいて抜歯を行ったものと考えられます。出版バイアスの有無はファンネルプロットを用いて検討されていますが、術後および術前・術後におけるプロットが少ないため判定がやや難しいところです。なお、コクランのハンドブックによれば、一般的にプロットの数が10個以下だとファンネルプロットの左右対称性から出版バイアスを見極めることは難しいとされています。集められた各研究の評価は、2人のレビュアーにより独立して行われ、解釈に食い違いが生じた場合には議論のうえで合意を形成しているため、一定の客観性があると考えてよさそうです。なお、レビュアー名を検索したところ、両名とも歯科医師のようです。最終的に、集められた研究のうち、18件(患者合計2,456例)の研究が採用され、15件がメタ解析されています。システマティックレビューの結果は、通常Summary of Findings(SoF)テーブルとフォレストプロットにまとめられているので、ここを真っ先に見るとよいでしょう。エンドポイントに関する結果を紹介します。抗菌薬を投与した場合、プラセボと比較して抜歯後の局所感染症を約70%減らす(相対リスク:0.29、95%信頼区間:0.16〜0.50)とあり、エビデンスの質としては中程度の確信となっています(p<0.0001)。これは、約12例で抗菌薬を服用すれば、1例は感染症を予防できるという割合です。痛み、発熱、腫れには有意差はありませんでした。有害事象に関しては、抗菌薬投与でほぼ倍増(相対リスク:1.98、95%信頼区間:1.10~3.59)しますが、軽度かつ一時的ということ以外の具体的な内容は本文献ではわかりません。抗菌薬の必要性は侵襲性の程度や患者要因で変わりうるシステマティックレビューは既存の知見を網羅的に集めて質的評価を行い、統計学的に統合することから、しばしばエビデンスの最高峰に位置付けられますが、統合することで対象患者などの細かいニュアンスが省略されるため、その結果を応用する際は外的妥当性を十分に考えねばなりません。本結果を素直に解釈すれば、感染予防のベネフィットがややあるものの、抜歯処置の侵襲性の程度や感染症リスクによっては抗菌薬が処方されないことも十分考えられます。もし服用を検討するのであれば、アレルギーや副作用歴がない限りはペニシリン系やクリンダマイシンなどが比較的妥当な選択となりそうです。現実には下痢の頻度や抗菌薬アレルギーのリスク、冒頭の例であれば歯科医師と患者の関係なども抗菌薬が必要かどうかの考慮事項となりうるでしょう。いずれにせよ、短絡的に抜歯=抗菌薬と断定するのではなく、患者の状態や歯科医師の意図をくみ取ったうえで適切なアクションをとりたいものです。画像を拡大するAntibiotics to prevent complications following tooth extractions.Lodi G, et al. Cochrane Database Syst Rev. 2012;11:CD003811.

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ASCO2018レポート 消化器がん

レポーター紹介本年度の米国臨床腫瘍学会年次総会が、2018年6月1日~5日まで例年どおり米国シカゴで開催された。消化器がん領域における注目演題についてレポートする。とくに胃がん領域においては、本邦より2人もの演者がoralで発表されており、日本人として大変誇らしく感じた。JACCRO GC-07 trial本邦の実臨床に最もインパクトがあった演題として、pStageIII胃がんにおけるドセタキセル+S-1(DS)併用療法のS-1療法に対する優越性が証明されたJACCRO GC-07 trialをまずは報告する。本邦では、pStageIII胃がんに対する術後補助化学療法として、S-1療法1年またはCapeOX療法6ヵ月を行うことが標準治療として位置付けられている。しかしながら、ACTS-GC試験のサブグループ解析では、手術単独群に対するS-1療法群の全生存期間におけるHR(ハザード比)がpStageIIIAで0.67、StageIIIBで0.86と報告されており、いずれも効果が不十分と考えられてきた。そこで、根治切除(胃切除+D2郭清)を行ったpStageIII胃腺がんを対象として、S-1療法に対するDS療法の優越性を検証したJACCRO GC-07 trialが行われた。主要評価項目は3年無再発生存(RFS)であり、S-1療法群の3年RFSを62%、HRを0.78とし、両側検定α=5%、検出力80%を確保するために、必要な症例数は1,100例と算出された。2回目の中間解析において(登録患者915例、イベント数216)、3年RFSがS-1療法群49.5%vs.DS療法群65.9%(HR=0.632、p=0.007)と、DS療法群で有意に良好であったことから、2017年9月に効果安全評価委員会において有効中止の勧告がなされた。登録された両群の患者背景には明らかな差が認められず、また明らかな交互作用は観察されなかった。再発部位は、リンパ節、腹膜、血行性転移いずれもDS療法群で少ない傾向であった。有害事象に関しては、白血球減少、好中球減少、発熱性好中球減少症がDS療法で多かったもののマネージメントは十分可能な範囲であった。演者らは、本試験の結果をもって、根治切除後のpStageIII胃がんに対して、DS療法は新たな術後補助療法の標準治療として推奨されると結論付けた。会場では、S-1療法群の成績が従来の本邦からの報告よりやや悪いことが指摘されていた。個人的には、本邦で行われた良質な第III相試験であること、昨年公表された欧州での第III相試験でFLOT療法(DTX+5FU+L-OHP)の有効性が示されていること、エビデンスレベルという点からも、術後DS療法は標準治療として位置付けられると考えられ、今後は実地臨床にも広く用いられることになるだろう。また、用量強度やOSのupdate解析などの報告にも注目したい。KEYNOTE-061試験現在、本邦では胃がん領域においても2017年9月から免疫チェックポイント阻害薬であるニボルマブが実地臨床で用いられている。また、米国においては、ペムブロリズマブが既治療の胃がんに対してFDAで承認を受けている。本試験は、切除不能進行再発胃がん/食道胃接合部がんにおける2次化学療法として、ペムブロリズマブ療法とパクリタキセル療法をHead-to-Headで比較した第III相試験として実施された。当初は、PD-L1発現の有無にかかわらず患者が登録されたが、登録途中でPD-L1陽性(CPS≧1)のみを登録することに変更となった(CPS:combined positive score、PD-L1陽性の細胞数[腫瘍細胞、リンパ球、マクロファージ]/全生存細胞数×100)。主要評価項目は、PD-L1陽性例におけるOSとPFSとし、試験全体の片側α=0.025、OSにおける優越性を示すにはp<0.0135を達成する必要がある統計設計で実施された。登録された患者背景に両群で差は認めなかった。PD-L1陽性例における生存期間中央値(MST)は、ペムブロリズマブ療法9.1ヵ月vs.パクリタキセル療法8.3ヵ月、HR 0.82、片側p=0.042であり、両群で有意差はなかった。ただし、解析時点でペムブロリズマブ群では15例が投与継続(パクリタキセル群は0例)されており、実際に12ヵ月生存割合は39.8%vs.27.1%、18ヵ月生存割合は25.7%vs.14.8%とペムブロリズマブ群で長期生存例が多かった。PD-L1発現別の解析では、CPSが高いほどペムブロリズマブの効果が高まることが示された。また、MSI-High例(全体の5%)では、ペムブロリズマブ療法群でOS、奏効割合がともに良好であった(OSは未達、奏効割合46.7%)。主要評価項目であるPD-L1陽性例におけるOSにおいて、統計学的有意差は示せない結果となった。ただし、今後の進行胃がんの化学療法を考えるうえでは、非常に重要かつ示唆に富む結果が得られたと個人的に感じている。具体的には、先のATTRACTION-2試験(ニボルマブとプラセボを比較した、胃がんにおけるSalvage lineの第III相試験)では、PD-L1発現の有無ではニボルマブの効果予測は困難であったが、CPSというPD-L1陽性の定義を用いると免疫チェックポイント阻害薬の効果予測ができるかもしれない点や、既報と同様にやはりMSI-Hでは胃がんであっても高い奏効割合、治療効果が示される点などである。ディスカッサントからも指摘があったように、今後は、免疫チェックポイント阻害薬同士の併用療法や化学療法との併用療法などの結果が注目され、胃がん化学療法の進歩に期待したいところである。なお、本結果は発表同日にLancet誌に掲載され、インパクトあふれる発表であった。PRODIGE 24/CCTG PA.6試験膵がんの術後補助化学療法は、従来はゲムシタビン療法が標準治療として位置付けられていたが、近年、本邦で実施されたJASPAC-01試験の結果から本邦ではS-1療法が、欧米ではゲムシタビン+カペシタビン療法が確立された。また、遠隔転移を有する膵がんにおいては、FOLFIRINOX療法(5-FU+LV+イリノテカン+L-OHP)が標準治療として用いられている。そこで、切除後膵がんに対する術後補助療法としてのゲムシタビン療法に対するFOLFIRINOX療法の優越性を検証する第III相試験が計画された。本試験で用いられているFOLFIRINOX療法は、毒性の点からmodified FOLFIRINOX療法(mFFX、5-FU 2,400mg/m2+ロイコボリン400mg/m2+イリノテカン180mg/m2+オキサリプラチン85mg/m2、2週ごと、12サイクル)が採用された。主要評価項目は無病生存(DFS)期間として、3年DFS率のHRを0.74、両側α=0.05、検出力80%として必要な症例数は490例と算出された。なお、開始後30例でGrade3以上の下痢を20%に認めたため、以降はイリノテカンの用量が150mg/m2に変更されている。2012年4月~2016年10月までに493例が登録され、2018年2月に効果安全評価委員会において早期結果公表が勧告されたため、今回、データが発表された。登録された患者背景では、リンパ管腫瘍塞栓のみ群間差を認めたがその他は両群に有意な差は認めなかった。DFS期間の中央値は、mFFX療法群21.6ヵ月、ゲムシタビン療法群12.8ヵ月、HR 0.58(p<0.0001)であり、mFFXで有意に良好であった。OSの中央値は、mFFX療法群54.4ヵ月、ゲムシタビン療法群35.0ヵ月、HR 0.64(p=0.003)であった。有害事象として、好中球減少、発熱性好中球減少に差はなかったが、mFFX療法群でG-SCF使用の割合が有意に高かった。また、非血液毒性として、下痢、末梢性感覚ニューロパチー、疲労、嘔吐、口内炎がmFFX群で有意に高かった。以上から、演者らは、mFFX療法は、毒性が増すものの、全身状態が良好な患者における欧米における標準治療と結論付けている。本邦で行われたという点においては、JASPAC-01試験の結果から、毒性の点から、S-1療法は本邦における標準治療としての位置付けは揺るがないだろう。しかしながら、JASPAC-01試験、本試験ともに大規模第III相試験から得られた結果という点では、同等のエビデンスとも考えられ、すでに転移性の膵がんにおいては、FOLFIRINOX療法は実地診療で行われている。とくに、本試験のサブグループ解析では、mFFX療法でR1切除、N1切除の成績が良好であったことから、予後不良な症例にはmFFXは期待できるのかもしれない。

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ストレス関連障害は、自己免疫疾患のリスク/JAMA

 ストレス関連の障害は、自己免疫疾患発症リスクを有意に増大することが、アイスランド大学のHuan Song氏らによる、スウェーデンの集団・兄弟姉妹適合コホートを対象とした後ろ向き研究の結果、明らかにされた。生活をするうえでのストレッサーに対する精神医学的な影響は誰にでもみられる。その影響が免疫機能不全をもたらす可能性が示唆されているが、自己免疫疾患のリスクに関与しているかは不明であった。今回の結果を受けて著者は、「さらなる研究を行い、根源的メカニズムを解明することが必要だ」とまとめている。JAMA誌2018年6月19日号掲載の報告。ストレス関連障害曝露群を、適合非曝露群および兄弟姉妹群と比較 研究グループは、1981年1月1日~2013年12月31日に、スウェーデン生まれの住民を対象とした集団および兄弟姉妹適合後ろ向きコホート研究を行い、ストレス関連の障害が自己免疫疾患発症と関連しているかを調べた。コホートには、ストレス関連障害(外傷後ストレス障害[PTSD]、急性ストレス反応、適応障害、およびその他のストレス障害)と診断された10万6,464例(曝露群)と、それら診断歴のない適合集団106万4,640例(非曝露群)および曝露群の兄弟姉妹12万6,652例が含まれた。 ストレス関連障害と自己免疫疾患は、全国患者登録で特定した。また、Coxモデルを用いて、ストレス関連障害の診断後1年超で発症が認められた41の自己免疫疾患に関するハザード比(HR)を、多数のリスク因子で調整して、95%信頼区間(CI)とともに算出した。非曝露群と比較した曝露群の自己免疫疾患リスクのハザード比は1.36 ストレス関連障害と診断された年齢中央値は41歳(四分位範囲:33~50)、曝露群の男性の比率は40%であった。 平均追跡期間10年間の自己免疫疾患罹患率は、1,000人年当たり、曝露群9.1、非曝露群6.0、兄弟姉妹群6.5であった。曝露群の、非曝露群に対する絶対率差は3.12(95%CI:2.99~3.25)、兄弟姉妹群に対する同差は2.49(95%CI:2.23~2.76)であった。 非曝露群と比較して、ストレス関連障害患者では、自己免疫疾患のリスクが高かった(HR:1.36、95%CI:1.33~1.40)。また、PTSD患者のHRは、あらゆる自己免疫疾患の発症リスクが1.46(95%CI:1.32~1.61)であり、複数(≧3)の自己免疫疾患のリスクは2.29(95%CI:1.72~3.04)であった。 これらの関連性は、兄弟姉妹ベースの比較においても認められた。 相対リスクの上昇は、若年患者群においてみられることが確認された。HR(95%CI)は、≦33歳群で1.48(1.42~1.55)、34~41歳群1.41(1.33~1.48)、42~50歳群1.31(1.24~1.37)、≧51歳群1.23(1.17~1.30)であった(相互作用のp<0.001)。 なお、PTSD診断後1年間にSSRI薬を服用していた場合、服用継続期間が長いほど自己免疫疾患発症リスクの有意な低下が認められた。HR(95%CI)は、≦179日では3.64(2.00~6.62)、180~319日では2.65(1.57~4.45)、≧320日では1.82(1.09~3.02)であった(傾向のp=0.03)。

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第7回 チーム医療における薬剤師の役割とは・・・【はらこしなみの在宅訪問日誌】

こんにちは。在宅訪問専任の薬剤師・はらこしなみです。参加している緩和ケア委員会からの宿題「チーム医療における薬剤師の必要性」。ずーーーっと悩んでいました。そして当日。遅刻しました...。在宅訪問が長引いてしまい、間に合わないーーー!と電動自転車を飛ばして戻ると、薬局の2階にある無菌室前に委員会メンバーがずらり。そう、今日は薬剤師が主役なのです!薬局で初めて開催されることになった緩和ケア委員会。やっと、やっと、チームのメンバーに薬局内を見てもらえました。まずは... 1. 薬局設備の見学と説明無菌室の説明、無菌調製の流れをiPadで撮影した写真とともに説明していきます。当薬局では原則フィルター使用ですが、その除去率などもお伝えしました。続いて、やってきました!前回委員会に頂いたお題、頭の片隅に常にある思い、そして発表までのもやもやした緊張感...さあ、解放される時です!つぎに... 2.チーム医療における薬剤師の役割について~現状の報告と展望~薬局からは、「外来での緩和ケア関連の対応について」「在宅訪問での対応について」の2テーマを発表しました。具体的には...。外来での緩和ケア関連の対応について限られた投薬時間での、緩和ケア、抗がん薬や医療用麻薬(以下、麻薬)の管理、外来と在宅の連携(訪問専任の私がレスキューのコンプライアンス不良をご自宅に訪問した際に確認し、窓口に薬を取りに来た家族への服薬指導により改善を図った症例)などこの症例は、主治医より服薬指導依頼があったのですが、ご本人から「外来に通えているし、必要ない」、「お金がかかる」と言われ訪問薬剤管理指導は入っていませんでした。しかし、Performance Status と麻薬使用量が合わないなど主治医も違和感をもっており、気にしていました。そんな中、薬局で麻薬の在庫が足りなくなったので、これはチャンス!とお渡しできなかった分の麻薬を持って、お宅に訪問しました。ゆっくりとお話ししたことで、コンプライアンス不良が判明。麻薬の貼付薬を貼ったり貼らなかったり、体調が悪化すると数枚貼ったり...。「医療費が高くて...」と。もちろん主治医に伝えることもなく、「大丈夫」と言い続けた結果、痛みの評価がきちんとできていないこともわかりました。患者さんのコンプライアンス不良の原因、改善案(貼付薬から薬価の低い内服への変更)を主治医に伝えたところ、疼痛管理ノートが開始され、ご家族も認識を深め、のちの外来での指導もうまくいくと感じていました。その後、ご本人の体調が悪化し、奥様と診療所を緊急受診され、主治医に診察室に呼ばれました。介護申請もしていませんでしたので、診療所所属のケアマネさんが呼ばれ、今後の方針などについて、その場で調整、麻薬の処方量調節、そして訪問服薬指導が始まりました。発表しながら当時のことを思い出し、薬局から急いで診療所に向かい、緊張した記憶がよみがえりました。在宅訪問での対応について薬、在宅とは、現在の業務内容と今後取り組むべきこと薬局の外に出て分かったことを中心に発表しました。療養者の生活と服薬できていない現実生活や環境を考慮した服薬管理の重要性を認識したこと上記に基づく処方提案や残薬管理、OTCや栄養も含めた指導(服薬指導の拡大)、療養者や家族と一緒に考える姿勢(協働)を持ち、薬物治療に主体的に関わることチームにフィードバックすることで治療やケアの向上=QOL維持に貢献することができること!参加メンバーは、うんうん、と頷きながら発表を聞いていました。その間も、医師や看護師さんのPHSが鳴り、指示が飛びます。医療介護に休みはなし。ケアマネさんが「色々あるんやね~」とポツリ...。窓口からは見えてこない薬剤師業務をイメージしていただけたようです。お互いの認識を深め、さらなる相乗効果を生み出すための一歩になったかな。最後に、所長より最後に、所長より「現状と問題点の把握」として、外来緩和ケアについての問題提起がありました。外来緩和ケアは患者と医者だけになってしまい、情報共有が難しい。緩和ケア外来などの時間がつくれるか?緩和ケアのためのメーリングリストを開始してみてはどうか?などなど。よりよい医療を提供するための方法をみんなで考えていく...。「じゃあ今日はこれで終わり、その前に...」所長の言葉に皆、注目「今回から、正式に薬局スタッフを緩和ケア委員会のメンバーとします」そう、今まで、オブザーバーとしての参加でした。診療所の受付にオレンジサークル※を見つけたとき、理事長に委員会を見学したい、とお願いしたとき、緩和ケア委員長(所長)がいつでもどうぞ、と迎えてくれた日、カタカナ専門用語が飛びかう中、必死にメモして調べて...。病院薬剤師を経験したことのない私にとって、学びの多い、幸せな日々の連続でした。ぞろぞろ薬局から、病棟、外来・・・と戻って行くメンバーたち。2階の窓からメンバーを見送った後。来月の委員会も気を引き締めて行くぞーっ!と決意を新たにしたのでした。「オレンジサークル」とは、"がんの痛みを取り除くことで、患者さんが、がんそのものと取り組む気力や体力を得る" という考え方を実践する医療チームの活動をサポートするJPAP®(JapanPartners Against Pain®)の取り組みで、医療チームからの登録申し込みに基づきJPAP®が認定している。

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015)学会でありがちなこと【Dr.デルぽんの診察室観察日記】

第15回 学会でありがちなことしがない皮膚科勤務医デルぽんです☆日本皮膚科学会の総会は、毎年6月頃に開催されるので、これに関連して、「学会あるある」を漫画にしてみました☆皮膚科の専門医制度は、ポイント(単位)取得制です。ということで、学会に参加したら「とりあえずビール」ならぬ「とりあえずカード(=参加登録)」は必須任務!!会員証(カード)を機械に通して参加費を払ったら、自動的にポイントが付与される仕組みです。とくに年1回の総会は、参加する先生方も多く(もらえるポイントも1番大きい)、昔馴染みの仲間が集まり、プチ同窓会的なシーンが繰り広げられることも・・・。(しかし、2018年度から新専門医制度への移行があり、カードを「ピッ」するだけで、単位取得が済む時代は終わりつつあります・・・。キビシイィ~!!)学会は何日間か開催されるので、各々で参加する日程はもちろん異なる訳ですが、開催地が、飛行機の本数が少ない地域だったりすると、さぁ大変!帰りは、決して広くない空港ラウンジで、各大学のグループと共に同じ飛行機を待ち、いざ搭乗の際には、並み居る教授の集団(ビジネスクラス)をすり抜けて、エコノミークラスまでたどり着かなければならないという・・・。「全員、皮膚科☆」という安易なテロップが、一瞬頭をよぎります。笑今年の総会は遠方で参加できなかったので、ぜひ、来年は参加したいデルぽんなのでした~☆それでは、また~!

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装置での処方薬交付がOK! 「ピックアップターミナル」って何?【早耳うさこの薬局がざわつくニュース】第3回

薬局の開局時間外の患者さん対応は、悩ましい問題の1つです。患者さんの不安や不便を解消してあげたい気持ちはあるけれど、従業員の勤務時間や業務量など、さまざまな問題が絡んでいるのが現状です。そんな時間外対応について、行政から新たな見解が示されました。経済産業省は11日までに、調剤薬局の営業時間外に、調剤済み医薬品を薬剤師や従業員ではなく専用の「装置」で患者に渡す新たなサービスについて、薬局管理者の義務を定めた医薬品医療機器法第8条の「規定に抵触しない」とする厚生労働省の見解を公表した。企業が実施したい事業が違法であるかどうかなどを個々に確認する「グレーゾーン解消制度」を通じ、事業者(非公表)から照会を受けていた。(RISFAX 2018年6月12日付)この「グレーゾーン解消制度」とは、事業者が新規事業を計画したけれど既存の規制に抵触するか不明確な場合に、事業が発展するという目的があれば、事業所管省庁を窓口として照会し、関連省庁に確認してもらえる制度です。今回の照会内容は、「薬剤師があらかじめ処方内容を監査、対面での服薬指導を実施した後、薬剤を自動搬入・払出装置に保管してピックアップターミナルを介して交付するサービスが医薬品医療機器等法第8条に抵触するかどうか」でした。つまり、対面ではなく装置を介した薬剤の交付の可否を確認しています。「直接の授与と同視」できる方法なら規制に抵触しない前もって処方監査や服薬指導をしているという点と、ピックアップターミナルという装置を介して患者さんに薬を交付するという点がポイントのように思います。まず、薬剤師は薬剤の調製前に残薬や他剤の使用状況の確認、監査を行い、必要があれば疑義照会します。そして対面で服薬指導して、問題がないことを確認し、あとは薬を調剤して交付するだけの状態にします。次に、調剤した薬剤を調剤室内の自動搬入・払出装置に保管します。患者さんはこの自動搬入・払出装置とつながっているピックアップターミナルから薬を受け取ります。ピックアップターミナルはいわば「薬の取り出し口」で、患者さん本人へ確実に交付される仕組みです。待合室内や薬局の外への設置が想定されていて、すでに米国では実施されています。イメージとしては、調剤室とつながっている宅配ボックスのようなものでしょうか。今回の厚生労働省の見解により、「ピックアップターミナルは薬剤師による患者への直接の授与と同視しうる程度に、当該薬剤の品質の保持や、患者本人への確実な授与を確保するとしていることから、医薬品医療機器等法第8条の規定に抵触しない」とされました。温度管理はどう担保されているのか、本人確認はどうするのか、装置の値段はいくらか、本当に外に置いてもいいのか―など、気になることも多々ありますが、開局時間外対応のバリエーションは増えそうです。「調剤室は閉めるけど、その近くまで患者さんが立ち入りできる所」が考えられるので、まずはショッピングモールや駅ビルなどの薬局でしょうか。薬局のサービスに関する照会はこれまでにもありました。2017年には「薬剤師が患者に薬剤の調製前に服薬指導を行い、その後、調剤した薬剤の郵送などを行うサービス」が規制に抵触しないことが明らかになり、実際にそのサービスを展開している薬局もあります。薬局や薬剤師の業務が法律で規定されているため、サービス拡大は簡単ではありませんが、患者さんへの薬の交付が「直接の授与と同視しうる程度」の質を確保することによって、サービスを広げられる可能性がありそうです。

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