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乳がんリンパ浮腫のセルフケア、Webとパンフレットどちらが効果的

 乳がん治療関連リンパ浮腫(breast cancer-related lymphedema:BCRL)患者のケアに対するウェブベースのマルチメディアツールを用いた介入(Web Based Multimedia Intervention:WBMI)の結果が示された。米国・ヴァンダービルト大学のSheila H. Ridner氏らによる検討で、WBMIを受けた患者は、対照(パンフレットのみ)より生物行動症状(気分)が改善し、介入に対する知覚価値も高いことが示されたという。ただし、WBMI群は完遂率が低く、他の評価項目については大きな違いはみられなかったとしている。Journal of Women's Health誌オンライン版2019年7月17日号掲載の報告。 研究グループは、BCRLを有する女性患者の症状負荷、機能、心理面の健康、費用および腕の体積に対するWBMIの効果を評価する目的で、患者をWBMI群(80例)および対照群(80例)に無作為に割り付けた。WBMIは12項目から成り、それぞれ約30分を要した。対照群へは、パンフレットを提供するのみで、読むのに約2時間を要した。 介入前および介入後1、3、6および12ヵ月時に症状負荷、心理面の健康、機能および経費に関するデータを収集し、45例のサブグループは介入前および介入後3、6および12ヵ月時に腕の細胞外液量を生体インピーダンス法で測定した。また、介入に対する知覚価値についても調査した。 主な結果は以下のとおり。・介入の完遂率は、WBMI群58%、対照群77%で、統計学的に有意な差があった(p=0.011)。・Lymphedema Symptom Intensity and Distress Scale-Arm(LSIDS-A)に基づく症状の評価では、生物行動症状(気分)数はWBMIで減少を示したが、その他の症状については2群間で統計学的な有意差がなかった(効果量:0.05~0.28、p>0.05)。・他の変数の変化については、2群間で有意差は観察されなかった。・WBMIは、パンフレットよりもセルフケア情報が優れていると認識されていた(p=0.001)。 WBMIは生物行動症状を改善し、より質の高い情報と認識された。他の変数において統計的な有意に至らなかったのは、WBMI患者の介入完遂率の低さが影響している可能性があると筆者は結んでいる。

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収縮期血圧、拡張期血圧ともその上昇は心血管系発症リスクであることを確認(解説:桑島巖氏)-1099

 本論文は130万例という膨大な症例数の観察研究から、収縮期/拡張期血圧の心血管合併症発症リスクを高血圧の定義を130/80mmHg、140/90mmHgに分けて検討したものである。 結果としていずれの定義であっても収縮期血圧、拡張期血圧は、各々独立した発症リスクの予測因子であることが示され、収縮期血圧のリスクは拡張期血圧よりも予測リスクが高いことを証明した。 観察研究において収縮期血圧と拡張期血圧とを各々分け、心血管リスク評価にあたってはその解釈に十分に注意する必要がある。なぜなら加齢変化により収縮期血圧は上昇傾向となり、拡張期血圧は下降傾向をたどるからである。すなわち高齢者により脈圧が大きくなることは多くの臨床家が経験していることである。 観察疫学研究では必ず65歳前後からの心血管疾患発症リスクは、収縮期血圧が上昇するほど右肩上がりに高まる一方で、拡張期血圧は低くなるほど高まりJカーブ現象は必ず認められるのである。しかしこの現象をもって拡張期血圧を80mmHg以下に下げることは危険であるとの誤った判断をして一世を風靡したCruickshank博士(Cruickshank JM. BMJ. 1988;297:1227-1230.)に代表されるような専門医がわが国でも非常に多かったのである。 疫学研究での結果はランダム化試験によって確認される必要があるが、事実Jカーブ現象についてもSPRINT研究では認められていない。 観察研究である本論文でも拡張期血圧と血管リスクとの間にJカーブ現象が観察されているが、その関連性においては年齢およびその他共変量のいずれか1つの関与が示唆されていると述べていることから経年的変化によって生じた現象である事を示唆している。 拡張期血圧最低四分位範囲の対象例では、収縮期血圧の影響がより大きいとの結論を導きだしているのは妥当な解釈といえよう。

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医学論文史上、最凶最悪の誤嚥論文!【Dr. 倉原の“おどろき”医学論文】第145回

医学論文史上、最凶最悪の誤嚥論文!いらすとやより使用さて、この論文を紹介するにあたり、虫が嫌いな人はご注意を! 満を持して登場する、私が数多く見てきた中で、最凶最悪の誤嚥論文です。心して読めッ!Vazirani J, et al.A complicated cockroach-ectomy.Respirol Case Rep. 2018;6:e00332.発作性心房細動の既往歴がある42歳男性がゴキブリを吸い込んだ! ということで救急部を受診しました。キャーーーー!!! もうこの時点でアウトーッ!!ゴキブリを吸い込んでしまった後、胸部の圧迫感、息切れ、そして肺の中を虫が動き回る感覚を訴えたそうです。いや、吸い込むってどういうことだよ、と突っ込みたくなるのですが、……おええええ! 想像もしたくない。バイタルサインはおおむね問題なかったのですが、左側の呼吸音が減弱し、喘鳴を聴取しました。ゴキブリ喘鳴。しかし、胸部レントゲン写真では特段異常はみられませんでした。この時点では、「うーん、ゴキブリを吸い込んだ? まさか患者さんの狂言じゃないだろうな…」と主治医も思っていたかもしれません。念のため…と気管支鏡検査を行ったところ、まずちぎれたゴキブリの下半分(腹部以下)が舌区に深く入りこんでおり、その他のゴキブリの破片も気管内に散在していました。疑ってスイマセン、本当でしたね…。見たくない…。見たくないよぉ……!論文には、絶対に見てはいけない「endobronchial cockroach(気管支内ゴキブリ)」の写真が掲載されています。見たい人はどうぞ、PubMedでフリーで読めます。処置の途中、急激に酸素飽和度が低下しました。ゴキブリによるアレルゲン曝露なのか、喉頭痙攣か、とにかく処置が継続できませんでした。いったん中断し、酸素化改善を待つしかありませんでした。その後、残りのゴキブリは咳嗽とともに喀出されたものもあったそうです。状態が落ち着いてきたので、念のため全身麻酔下でもう一度気管支鏡で摘出し、晴れて気管支からゴキブリは消え去りました。ふぅ、やれやれ。その後、患者さんは発熱し、血培からMicrococcus luteusが検出されました。踏んだり蹴ったり。泣きっ面に蜂。ゴキブリの持っていた腐敗菌だったのかどうかはわかりませんが、しかるべき抗菌薬によって治療されました。さて、ゴキブリ誤嚥は、小児で過去に1例報告されています1)。小児や精神科疾患の患者さんでは仕方ないのかなという気持ちはありますが、基本的に元気な成人がこんなもん誤嚥することはないはずです。なぜ誤嚥したのか結局よくわからなかったためか、論文のDiscussionではミクロコッカス菌血症やアレルギーの話が主体になっています(笑)。1)Marlow TJ, et al. J Emerg Med. 1997;15:487-489.

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ホテルの「クラブフロア」を使ってみよう!【医師のためのお金の話】第23回

ホテルの「クラブフロア」を使ってみよう!今日は資産形成から少し離れ、「ホテルライフ」についてお話をしたいと思います。私は2008年ごろからホテルの「クラブフロア」に好んで宿泊するようになりました。クラブフロアとは、一般の客室よりワンランク上のサービスが用意されている特別フロアのことです。私がクラブフロアの存在を知ったのは、書店で見掛けた書籍だったと思います。一般の宿泊客は入ることが許されない特別階と紹介されていました。ちょっと怖いイメージですよね。私でもクラブフロアに宿泊できるのかな?と、やや気後れしながら予約したのですが、一度宿泊するとあまりの居心地の良さに、すっかりクラブフロアのファンになってしまいました。クラブフロアのメリットとはクラブフロアを併設しているホテルのほとんどは、五つ星の高級ホテルです。五つ星ホテルは全体が豪華なのですが、中でもクラブフロアは特別階に存在し、一般の方はもちろん、通常の宿泊客も出入りすることができません。クラブフロアに宿泊すると下記のような特典を受けられます(ホテルによって違いがあります)。ジムやプールが無料クラブフロアでチェックイン・チェックアウトできる駐車場が無料クラブラウンジを利用できるクラブフロアに宿泊するメリットとして、多くのホテルが併設しているジムやプールを無料で利用できることが挙げられます(一般の宿泊客は有料のことが多いです)。私はクラブフロアに宿泊するときには基本は水着持参です。チェックインやチェックアウトをクラブフロアの専用レセプションでできるのも大きなメリットです。大きな荷物を持ちながら行列することなく、ウェルカムドリンクを飲みながらゆったりチェックインするのは、とても心地の良い経験です。そして、都心立地の五つ星ホテルでは駐車場料金がばかにならないことが多いですが、クラブフロア宿泊客は無料もしくは割引料金が適用されます。このように数々の特典があるのですが、クラブフロアに宿泊する最大の目的はクラブラウンジだと言っても過言ではありません。クラブラウンジの多くは、各種おつまみや軽食、そして夕方以降はアルコールを無料で楽しめるのです。クラブラウンジはホテルの高層階に位置することが多く、素晴らしい眺望をさかなにお酒を飲むのは最高のぜいたくです。ティータイムにチェックインしておいしいケーキを頂き、その後はプールで少し泳ぎ、乾いた喉をカクテルタイムにビールで潤します。夜が更けてナイトキャップの時間になるとカクテルを楽しんで一日を終える、といったクラブラウンジを中心としたぜいたくな時間を味わえます。印象に残るクラブフロア「お気に入りのクラブフロア」として、首都圏で初めに思い浮かぶのは、ホテルニューオータニの「エグゼクティブハウス 禅」です。こちらは1日6回のフードプレゼンテーション(フードの入れ替え)があり、ティータイムの時間からシャンパンが頂けます。ここはピエール・エルメ・パリのクロワッサンが有名ですが、他のフードもとてもおいしいのです。関西圏では、ザ・リッツ・カールトン大阪のクラブフロアが一押しです。最近では大阪のキタエリアにはリッツに比肩するホテルが続々と誕生していますが、ホスピタリティではリッツに一日の長があります。ただ、宿泊客の層が独特なので、私レベルでは少々肩身の狭い思いをしたこともあります。最後に福岡ですが、やはりグランドハイアット福岡です。キャナルシティ博多内にあって中洲にも近く、博多のすべてを満喫できます。首都圏や関西圏と比べて宿泊料金が手頃なのもうれしい点です。福岡の学会時などにお勧めのホテル&クラブフロアだと思います。クラブフロアのウマい利用法このような特典があるからには、宿泊料金はさぞ高額なのだろうと思われるかもしれませんが、実際にはそれほどではありません。エリアや時期にもよりますが、1室3万円台から宿泊できるホテルもあります。私は2008年から10年ほどの間に、日本全国のいろいろなホテルのクラブフロアに泊まりました。その経験から、クラブフロアの質が高いのは関西圏と福岡、一方で首都圏と東海エリアはサービスの質がイマイチでした。もちろん、各ホテルの差が大きいので首都圏のホテルがすべてだめと言っているわけではありませんが、傾向としては西高東低、という印象です。さて、クラブフロアにはどのような目的で宿泊するのが良いのでしょうか? 私は、観光ではなくホテルステイそのものを楽しむことをお薦めします。クラブラウンジをベースにして、プールなどで遊んでいると、あっという間に時間が過ぎます。リラックスできるので創作活動にももってこいです。それでは、宿泊する時期はどうでしょうか? 私のお薦めは、ゴールデンウイーク、お盆、年末年始などです。もちろん、宿泊料金はそれなりに高くはなりますが、極端に上がるわけではありません。とくに期間の長いゴールデンウイーク中にはよく「穴場の日」があります。クラブフロアを併設している五つ星ホテルは大都市圏に存在することが多いため、長期休暇中は下手なリゾート地に行くよりも空いている印象です。ゴールデン&シルバーウイークやお盆のように、どこに行っても混んでいる時期は、郊外ではなく都心のクラブフロアでゆっくり過ごすのがいいかもしれません。クラブフロア利用時の注意点一方、クラブフロアを利用するうえでの注意点もお話しします。ホテルは旅館業法で厳密に定員が決められています。子連れの場合、子供が12歳以下であれば1つの部屋に2名まで添い寝が可能であるケースが多いです。4人家族であっても子供が小さいうちは、クラブフロアに安く宿泊することが可能です。しかし、クラブラウンジは大人の空間であり、小さな子供が騒ぐことはご法度です。このため、実質的には小さな子供連れでクラブフロアを100%堪能することは難しいでしょう。また逆に子供が大きくなってくると、定員の関係で宿泊費がかさみ、宿泊しづらくなります。クラブフロアを楽しむには、独身もしくは子供がいない時期に利用するのが理想ではないでしょうか。海外旅行時にもクラブフロアの宿泊を検討したことがありますが、実際に利用したのは数回です。理由は、海外旅行では観光メインになるため、クラブフロアでゆっくりくつろいでいる時間がないからです。ビーチリゾートであっても、昼間はプールサイドやビーチで過ごすことが多く、夜は地元のおいしいレストランへ繰り出すので、クラブラウンジを利用する暇がありません。このような理由から、ホテルライフを楽しんで心身ともにリラックスしたいときにこそ、クラブフロアに宿泊することをお勧めします。

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第1回 噂の狭間研至とは何者か?【噂の狭研ラヂオ】

動画解説業界きってのオピニオンリーダーである狭間研至先生。第1回は、薬局に生まれ医師となり、そして再び薬局経営に戻ってきた経緯を語ります。中学時代に薬学部から医学部へ舵をきった理由、手術室から再び薬局に戻ってきた目的とは?噂の狭研の原点が今、明らかに。

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今話題の「フォーミュラリー」ってなんだ?【早耳うさこの薬局がざわつくニュース】第30回

2020年度診療報酬改定の議論が始まったこともあり、「医療とお金に関することはもうなんでも!」という感じでさまざまなテーマが取り上げられています。そのような中、「フォーミュラリー」という言葉がよく聞こえてくるようになりました。厚生労働省は24日、中央社会保険医療協議会総会に20年度診療報酬改定に向けて、これまで出た意見をまとめた資料を示した。医薬品のフォーミュラリーに関しては「取り組み自体は評価するが、診療報酬上で評価する性質のものではない」などと整理。これについて、幸野庄司委員(健康保険組合連合会理事)は「(中略)これから地域でも院内でもフォーミュラリーを着実に推進するために、例えば何らかの算定要件にフォーミュラリーの策定を盛り込むという診療報酬上の対応は必要」と付言した。(2019年7月25日付 RISFAX)実はフォーミュラリーという言葉自体は10年以上前から存在していますが、まだ広く浸透しているとは言えません。これだ!という定義はまだないようですが、一般的には以下のように説明されているようです。「患者に対して最も有効で経済的な医薬品の使用方針」(日本医薬総合研究所)「有効性、安全性および経済性を考慮した医薬品の使用指針」(聖マリアンナ医科大学病院 薬剤部)「標準化した処方薬集」(浜松医科大学医学部附属病院 薬剤部)まとめると、「経済性や有効性を考慮して標準化された医薬品集」ということでしょう。医師の医薬品選択が短時間で効率的になり、使用できる医薬品の情報が充実して安全性が向上することが期待されています。その結果、医師の働き方改革にまでメリットがあるとかないとか。このフォーミュラリーが2020年度の報酬改定に影響するかどうかという議論にまでなっています。フォーミュラリー作成によって薬物治療の質向上昨年度からフォーミュラリーに関するいくつかの取り組みが行われ、日本調剤が協会けんぽ静岡支部から受託した事例の費用削減効果は大きな話題になりました。しかし、実際にフォーミュラリーに関わっている人はまだ少数なのではないでしょうか。フォーミュラリーがどういったもので、どのような点が評価されるのか整理してみたいと思います。フォーミュラリーと一言で言っても、院内フォーミュラリーと地域フォーミュラリーに分けられています。まず、院内フォーミュラリーですが、これは病院の採用薬の概念とほぼ同様で、病院全体の採用薬を薬剤部が取り仕切って情報収集および情報発信をすることにより、薬物治療をより安全に、そして経済的にするというものです。生活習慣病薬でもスペシャリティ薬でも新薬や配合剤が増え、後発医薬品の使用割合が70%を超えた今、医師それぞれが好きな薬剤やメーカーを選ぶことは非効率かつ非経済的であるため、多かれ少なかれ採用している病院が多いのではないでしょうか。病院薬剤師が採用薬を取りまとめて情報収集や発信をすることで、特徴や副作用情報の把握が容易になり、安全性が向上すると思われます。一方、地域フォーミュラリーについては、協会けんぽの支部単位や自治体、顔が見える範囲の医師や薬剤師のコミュニティ、中核病院を中心とした地域単位といったさまざまな単位が存在しています。病院やクリニックで主に使用する医薬品を地域共通で採用し、薬局がそれらを購入し、それ以外の処方薬は別途対応する、というものです。院内フォーミュラリーのメリットに加え、入退院があっても同じ薬剤が使われるため、フォローがしやすいというメリットがあります。経済効果は地域フォーミュラリーのほうが大きいでしょう。ともすれば医薬品の共同購入や経済性評価だけで終わってしまうこともあるようですが、どちらの場合であっても薬物治療の質を高めることも重要なポイントです。薬局での採用薬に関する情報の収集・提供に今まで以上に集中することができ、患者さんに対しても的確な説明ができるのではないでしょうか。ただし、「使用方針を定められたくない」と乗り気ではない医師をどう説得するか…などの問題もありそうですが。現在、このフォーミュラリーについて、中央社会保険医療協議会(中医協)で議論されています。その中で、健康保険組合連合会側からは「フォーミュラリーを推進していくことが後発医薬品の普及につながる。生活習慣病の対象薬剤だけで数千億円単位で薬剤の適正化につながる」という経済的メリットを強調する意見が出ていて、医師側からは「患者ファーストの観点でどの薬剤を使うのがいいのかを考え、さらに無駄のないような投薬をすることが副次的に収支の改善に寄与する」といった、フォーミュラリーに否定的な発言が出ています。個人的には、フォーミュラリーが報酬の加算になるかどうかは、まだ議論が尽くされておらず効果も明確になっていな現状では時期尚早だと思っていますが、財政が逼迫し、医師の働き方改革が叫ばれている状況ではまだどうなるかわかりません。もし自分の薬局の周辺でフォーミュラリーが作成されたらどうなるか、どのような問題がありそうか、ぜひ皆さんも考えてみてはいかがでしょうか。

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「無資格調剤で業務停止」から見直す薬剤師の独占業務【赤羽根弁護士の「薬剤師的に気になった法律問題」】第14回

先日、岡山県の薬局に対して、真庭保健所長が9日間の業務停止を命じたとの報道がありました。違反の内容は、薬剤師が不在であるにもかかわらず開局したことや、薬剤師が不在であるにもかかわらず薬剤師でない者に調剤をさせ、薬剤を販売または授与させたこと等のようです。「無資格調剤で業務停止」というと、厚生労働省が示した「調剤業務のあり方について」(薬生総発0402第1号平成31年4月2日厚生労働省医薬・生活衛局総務課長)、通称0402通知に関する処分なのではないかと思われがちですが、今回の問題はそもそも調剤業務の責任を担う薬剤師が不在とのことなので、0402通知に関するものではありません。ご存じのとおり、薬局においては例外的に、一定条件下での一時的な薬剤師不在時間が認められるようになった1)ものの、原則として薬剤師が不在の場合には開局できません。また、薬剤師以外の者は原則調剤を行えず(薬剤師法19条)、薬局開設者にも、「その薬局で調剤に従事する薬剤師でない者」に調剤させることが禁止されています(薬機法施行規則第11条の8第1項)。薬剤師法 第19条薬剤師でない者は、販売又は授与の目的で調剤してはならない。(後略)薬機法施行規則 第11条の8第1項薬局開設者は、その薬局で調剤に従事する薬剤師でない者に販売又は授与の目的で調剤させてはならない。(後略)このように、薬剤師でなければ調剤はできませんが、薬剤師以外に調剤をさせてはならない義務は薬局開設者にもあるので、当然ながら、薬局においてそのようなことをさせてはいけないわけです。今後、上記の0402通知に従って、薬剤師以外の者が調剤に関する業務に関わることが増えると想定されますが、もちろん、この原則は変わっていません。そのため、この通知でも「薬剤師が調剤に最終的な責任を有するということを前提として」「調剤に最終的な責任を有する薬剤師の指示に基づき」など、責任の所在は薬剤師にあることが強調されています。今回処分された薬局のように、薬剤師がそもそも薬局にいないなかで、薬剤師でない者が「調剤」を行うことに問題があるのは明らかです。0402通知が示されても、「調剤」が薬剤師の独占業務であること(薬剤師法19条)には変わりなく、その責任は薬剤師が負うことが前提だということを、薬局業務に携わる人は絶対に忘れてはなりません。その点を疎かにして運営すれば、今回のような問題になりかねませんし、今後の経営にも影響が出るかもしれません。0402通知が業界で話題になっているこの時期に、このような問題が明らかになったことは、「調剤」について改めて留意しなければならないと思わされたのではないでしょうか?参考資料1)「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律施行規則の一部を改正する省令等の施行等について」薬生発0926第10号平成29年9月26日厚生労働省医薬・生活衛生局長

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第26回 化学療法時に用いられる各制吐薬の有用性をエビデンスから読み解く【論文で探る服薬指導のエビデンス】

 がん化学療法では、疼痛管理や副作用の予防などさまざまな支持療法を行うため、それぞれのレジメンに特徴的な処方があります。代表的な副作用である悪心・嘔吐に関しては、日本癌治療学会による制吐薬適正使用ガイドラインや、ASCO、NCCN、MASCC/ESMOなどの各学会ガイドライン1)に制吐療法がまとめられていますので、概要を把握しておくと患者さんへの説明やレジメンの理解に有用です。悪心・嘔吐は大きく、化学療法から24時間以内に出現する急性悪心・嘔吐、25~120時間に出現する遅発性悪心・嘔吐、予防薬を使用しても出現する突出性悪心・嘔吐、化学療法を意識しただけでも出現する予期性悪心・嘔吐に分けられ、化学療法の催吐リスクに応じて制吐薬が決められます。今回は主な制吐薬である5-HT3受容体拮抗薬のパロノセトロン、NK1受容体拮抗薬のアプレピタント、MARTAのオランザピンのエビデンスを紹介します。パロノセトロンまずは、2010年に承認された第2世代5-HT3受容体拮抗薬であるパロノセトロンを紹介します。本剤は従来のグラニセトロンやオンダンセトロンとは異なる構造であり、5-HT3受容体への結合占有率、親和性、選択性が高く、半減期も約40時間と長いことから遅発性の悪心・嘔吐にも有効性が高いとされています。2018年版のNCCNガイドラインでは、パロノセトロンを指定しているレジメンもあります1)。パロノセトロンとグラニセトロンの比較試験では、CR(Coplete Response)率、すなわち悪心・嘔吐がなくレスキュー薬が不要な状態が、急性に関しては75.3% vs.73.3%と非劣性ですが、遅発性に関しては56.8% vs.44.5%(p<0.0001、NNT 9)とパロノセトロンの有効性が示されています2)。また、同薬剤によりデキサメタゾンの使用頻度を減らすことができる可能性も示唆されています3)。添付文書によると、便秘(16.5%)、頭痛(3.9%)のほか、QT延長や肝機能値上昇が比較的高頻度で報告されているため注意が必要ですが、悪心の頻度が多いと予期性の悪心・嘔吐を招きやすくなるため、体力維持や治療継続の点でも重要な薬剤です。院内の化学療法時に静注される薬剤ですので院外では見落とされることもありますが、アプレピタント+デキサメタゾンの処方があれば、5-HT3受容体拮抗薬の内容を確認するとよいでしょう。アプレピタント2009年に承認されたアプレピタントは、中枢性(脳内)の悪心・嘔吐の発現に関与するNK1受容体に選択的に結合することで、悪心・嘔吐を抑制します。一例として、NK1受容体拮抗薬を投与された計8,740例を含む17試験のメタアナリシスを紹介します4)。高度または中等度の催吐性化学療法に対して、それまで標準的だった制吐療法(5-HT3拮抗薬、副腎皮質ステロイド併用)に加えてNK1受容体拮抗薬を追加することで、CR率が全発現期において54%から72%(OR=0.51、95%信頼区間[CI]=0.46~0.57、p<0.001)に増加しています。急性/遅発性の両方で改善効果があり、なおかつ、この高い奏効率ですので、本剤が標準的に用いられるようになったのも納得です。一方で、因果関係は定かではありませんが、重度感染症が2%から6%に増えています(1,480例を含む3つのRCT:OR=3.10、95%CI=1.69~5.67、p<0.001)。また、CYP3A4の基質薬剤なので相互作用には注意です。オランザピンMARTAのオランザピンは、D2受容体拮抗作用および5-HT3受容体拮抗作用によって有意な制吐作用を示すと考えられており、2017年に制吐薬としての適応が追加されました。直近のASCOやNCCNのガイドラインの制吐レジメンにも記載があります1)。従来の5-HT3受容体拮抗薬+NK1受容体拮抗薬+デキサメタゾンの3剤併用と、同レジメンにオランザピンまたはプラセボを上乗せして比較した第3相試験5)では、シスプラチンまたはシクロホスファミド、およびドキソルビシンで治療を受けている乳がんや肺がんなどの患者を中心に約400例が組み入れられました。併用の5-HT3受容体拮抗薬はパロノセトロンが約75%で、次いでオンダンセトロンが24%でした。ベースの制吐薬3剤は、5-HT3受容体拮抗薬、NK1受容体拮抗薬に加えて、デキサメタゾンが1日目に12mg、2~4日目は8mg経口投与でガイドラインのとおりです。エンドポイントである悪心なしの状態は0~10のビジュアルアナログスケールで0のスコアとして定義され、化学療法後0~24時間、25~120時間、0~120時間(全体)で分けて解析されました。いずれの時点においてもオランザピン併用群で悪心の発生率が低く、化学療法後24時間以内で悪心がなかった割合はオランザピン群74% vs.プラセボ群45%、25~120時間では42% vs.25%、0~120時間の5日間全体では37% vs.22%でした。嘔吐やレスキューの制吐薬を追加する頻度もオランザピン群で少なく、CR率もすべての時点で有意に改善しています。なお、忍容性は良好でした。論文内にあるグラフからは、2日目に過度の疲労感や鎮静傾向が現れていますが、服用を継続していても後日回復しています。うち5%は重度の鎮静作用でしたが、鎮静を理由として中止に至った患者はいませんでした。服用最終日およびその前日には眠気は軽快しています。以上、それぞれの試験から読み取れる制吐薬の効果や有害事象を紹介しました。特徴を把握して、患者さんへの説明にお役立ていただければ幸いです。1)Razvi Y, et al. Support Care Cancer. 2019;27:87-95.2)Saito M, et al. Lancet Oncol. 2009;10:115-124.3)Aapro M, et al. Ann Oncol. 2010;21:1083-1088.4)dos Santos LV, et al. J Natl Cancer Inst. 2012;104:1280-1292.5)Navari RM, et al. N Engl J Med. 2016;375:134-142.

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鉄剤と葉酸の漫然投与を見抜き中止提案【うまくいく!処方提案プラクティス】第2回

 処方提案をする際には、副作用や相互作用による影響を検討するだけでなく、患者さんの希望を聞き取り、前向きに治療を受けられるようにすることも重要です。今回は、多剤併用に悲観的な患者さんに漫然投与されていた薬剤の中止提案を行った症例を紹介します。患者情報施設入居、70歳、女性、身長:140cm、体重:50kg現病歴:関節リウマチ、高血圧、骨粗鬆症処方内容アムロジピン錠2.5mg 1錠 朝食後エソメプラゾールカプセル20mg 1カプセル 朝食後クエン酸第一鉄ナトリウム錠50mg 2錠 朝食後アルファカルシドール錠0.5μg 2錠 朝食後センナ・センナ実顆粒1g 朝夕食後葉酸錠5mg 2錠 朝夕食後アレンドロン酸錠35mg 1錠 起床時・木曜日症例のポイントこの患者さんは、「処方される薬が多いのは自分が重い病気だからであり、これ以上楽になることはない」と考え、悲観的になっていました。多剤併用が苦痛だったようです。上記の薬剤を継続することによって、心理的負荷の増加、鉄剤継続に伴う便秘や肝機能障害、胃腸障害などの懸念もありました。そこで、薬剤の削減ができないか見直しました。関節リウマチなどの炎症性疾患の患者さんでは貧血が比較的多くみられますが、それらによる二次性貧血の場合は原疾患の治療の見直しが必要になることがあります。また、葉酸錠とクエン酸第一鉄ナトリウム錠が長期間投与されていますが、メトトレキサートの副作用予防のための葉酸というわけでもないため患者さん自身はあまりメリットを感じておらず、投与量の見直しも行われていないようです。そこで、鉄欠乏性貧血もしくはリウマチに伴う二次性貧血の見極めの必要性、そして葉酸錠とクエン酸第一鉄ナトリウム錠の漫然投与の可能性を考え、血液検査からのアプローチを行いました。鉄欠乏性貧血は、貯蔵鉄が枯渇することでHb(ヘモグロビン)合成材料の血清鉄が不足して起こる。鉄の貯蔵と血清鉄の維持を行うフェリチンは鉄の貯蔵状態を反映しており、鉄剤治療を行う際の重要なモニタリング項目となる。貯蔵鉄を運搬するTIBC(トランスフェリン)は鉄欠乏の状態で増加することから、TIBCの増加は鉄の全体量としての不足を意味する。本来、鉄欠乏性貧血は、Hb:男性12g/dL未満・女性11g/dL未満、フェリチン:12ng/dL未満、TIBC:360μg/dL以上が治療対象となる。処方提案と経過往診同行の際に、医師に葉酸錠とクエン酸第一鉄ナトリウム錠の評価を提案しました。葉酸錠については葉酸、クエン酸第一鉄ナトリウム錠についてはフェリチンとTIBCの検査オーダーを依頼し、下記の血液検査結果(1)の結果が得られました。TIBCが正常であり、葉酸は充足過剰かつフェリチンが十分であることからリウマチの二次性貧血が疑われますが、めまい・ふらつき・倦怠感などの自覚症状もないことから、葉酸錠とクエン酸第一鉄ナトリウム錠の処方中止を医師に提案し、中止となりました。血液検査結果(1)(介入時提案)MCV:97、Hb:9.9g/dL(↓)、Alb:3.0g/dL、AST:13U/L、ALT:4U/LBUN:14.0mg/dL、Scr:0.61mg/dL、Na:139mEq/L、K:3.5mEq/L、Ca:9.1mg/dLFe:35μg/dL(↓)、TIBC:420μg/dL、フェリチン:203.5ng/mL、葉酸:706.0ng/mL(↑)両剤を中止後、自覚症状の出現や増悪などもなく2週間が経過し、服用錠数が減ったことで気持ちも楽になったことを患者さんより聞き取りました。フォロー中の血液検査結果(2)でも血清鉄こそ基準値に満たないものの、フェリチンは充足しており、自覚症状の出現もなく安定した体調を維持しています。本症例は、関節リウマチによる二次性貧血の可能性が高く、原疾患の治療コントロールを目標に現在もフォローを継続しています。血液検査結果(2)(処方変更3ヵ月後の検査結果)MCV:96、Hb:11.6g/dL、Alb:3.7g/dL、AST:16U/L、ALT:5U/L、BUN:16.2mg/dL、Scr:0.55mg/dL、Na:137mEq/L、K:4.0mEq/L、Ca:9.0mg/dLFe:30μg/dL(↓)、TIBC:385μg/dL、フェリチン:192.5ng/mL、葉酸:4.7ng/mL日本鉄バイオサイエンス学会治療指針作成委員会 編. 鉄剤の適正使用による貧血治療指針 改訂第3版. 響文社;2015.

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関節リウマチに対する3剤目の経口JAK阻害薬「スマイラフ錠50mg/100mg」【下平博士のDIノート】第30回

関節リウマチに対する3剤目の経口JAK阻害薬「スマイラフ錠50mg/100mg」今回は、ヤヌスキナーゼ(JAK)阻害薬「ペフィシチニブ臭化水素酸塩(商品名:スマイラフ錠50mg/100mg)」を紹介します。本剤は、1日1回の服用でJAKファミリーの各酵素(JAK1/2/3、チロシンキナーゼ2[TYK2])を阻害し、関節リウマチによる関節の炎症や破壊を抑制します。<効能・効果>本剤は、既存治療で効果不十分な関節リウマチ(関節の構造的損傷の防止を含む)の適応で、2019年3月26日に承認され、2019年7月10日より発売されています。なお、過去の治療において、メトトレキサート(MTX)をはじめとする少なくとも1剤の抗リウマチ薬などによる適切な治療を行っても、疾患に起因する明らかな症状が残る場合に投与します。<用法・用量>通常、成人はペフィシチニブとして150mg(状態に応じて100mg)を1日1回食後に投与します。なお、中等度の肝機能障害がある場合は、50mg/日を投与します。<副作用>後期第II相試験、第III相臨床試験2件および継続投与試験の4試験における安全性併合解析において、本剤が投与された患者1,052例中810例(77.0%)に副作用が認められました。主な副作用は、上咽頭炎296例(28.1%)、帯状疱疹136例(12.9%)、血中CK増加98例(9.3%)などでした(承認時)。なお、重大な副作用として、帯状疱疹(12.9%)、肺炎(ニューモシスチス肺炎などを含む)(4.7%)、敗血症(0.2%)などの重篤な感染症、好中球減少症(0.5%)、リンパ球減少症(5.9%)、ヘモグロビン減少(2.7%)、消化管穿孔(0.3%)、AST(0.6%)・ALT(0.8%)の上昇などを伴う肝機能障害、黄疸(5.0%)、間質性肺炎(0.3%)が報告されています。<患者さんへの指導例>1.この薬は、ヤヌスキナーゼという酵素を阻害することにより、関節の炎症や腫れ、痛みなどの関節リウマチによる症状を軽減します。2.持続する発熱やのどの痛み、息切れ、咳、倦怠感などの症状が現れた場合はすぐにご連絡ください。3.痛みを伴う発疹や皮膚の違和感、局所の激しい痛み、神経痛などが現れた場合は速やかに受診してください。4.この薬を服用している間は、生ワクチン(麻疹、風疹、おたふく風邪、水痘・帯状疱疹、BCGなど)の接種ができません。接種の必要がある場合には主治医に相談してください。5.(妊娠可能年齢の女性の場合)この薬を服用中および服用終了後少なくとも1月経周期は、適切な避妊を行ってください。6.本剤を服用中の授乳は避けてください。<Shimo's eyes>関節リウマチの薬物療法は近年大きく進展しています。関節破壊の進行抑制を含めた病態コントロールのため、発症初期にはMTXをはじめとする従来型疾患修飾性抗リウマチ薬(cDMARDs)が使用されます。MTXなどを十分量で用いても効果不十分な場合には、生物学的製剤であるTNF阻害薬(インフリキシマブ、エタネルセプト、アダリムマブなど)やIL-6阻害薬(トシリズマブなど)、T細胞活性抑制薬(アバタセプト)、もしくは低分子標的薬であるJAK阻害薬(トファシチニブ、バリシチニブ)が使用されます。本剤は、関節リウマチに用いる3剤目のJAK阻害薬で、JAK1、JAK2、JAK3およびTYK2を阻害し、関節の炎症や破壊を抑制します。生物学的製剤は点滴または皮下注射での投与となりますが、しばしば発疹などの投与時反応や注射部位疼痛が問題となることがあります。JAK阻害薬は経口投与のため、非侵襲性の治療を望む患者さんや自己注射が困難な患者さんであっても、好みや生活環境に合わせた治療を選択することができると期待されています。また、本剤は相互作用も少なく、1日1回投与であるため、高齢者でも使用しやすいと考えられます。留意点としては、中等度の肝機能障害を有する患者については投与量の制限があることが挙げられます。また、本剤は免疫反応に関与するJAK経路の阻害により、結核、肺炎、敗血症などの感染症リスクが増大する懸念があることから、既存のJAK阻害薬2剤と同様に、生物学的製剤や他のJAK阻害薬などの免疫を抑制する薬剤との併用はできません。承認時の臨床試験では、副作用として12.9%で帯状疱疹が報告されているので、とくに高齢の患者さんでは、使用前に帯状疱疹ワクチン接種の有無などについて確認し、服用後に帯状疱疹が現れる可能性について注意喚起をしておく必要があるでしょう。

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子供の体脂肪量測定、正確で簡便な方法を開発/BMJ

 身長、体重、年齢、性別、民族という5つの因子に基づき、子供の体脂肪量をBMIより正確に測定する可能性のある新たなモデルが開発された。英国・ロンドン大学のMohammed T. Hudda氏らが、BMJ誌2019年7月24日号で報告した。体重に基づく尺度として、BMIは非脂肪量(lean mass)と脂肪量(fat mass)を判別せず、既定のBMIの集団でも脂肪量に大きなばらつきがあり、心血管代謝疾患のリスクとの関連にも違いが生じる可能性があるという。子供の体脂肪量の評価を改善するために、日常的に利用しやすい測定値に基づく、より正確で簡便な方法が求められている。4つの横断研究をメタ解析で統合し、モデルを導出 研究グループは、複雑な評価形式を要さず、身長や体重などの人口統計学的な情報を使用した子供の体脂肪量の予測モデルを開発し、妥当性を検証する目的で、個人レベルのデータを用いたメタ解析を行った(英国心臓財団などの助成による)。 予測モデルの開発には、英国の4つの横断研究に参加した4~15歳の多民族で構成される2,375例(男児1,136例[47.8%])のデータを用いた。外的妥当性の検証には、11~12歳176例の形態測定値と重水希釈法による体脂肪量のデータを使用した。 内的妥当性の評価では、optimism(モデルの過大評価)を推算し、bootstrap法(1,000サンプル)を用いてこの過大評価を調整することで予測能を修正した。 身長、体重、年齢、性別、民族の予測変数を含む最終モデルは、きわめて高い予測能(optimismの調整R2:94.8%、95%信頼区間[CI]:94.4~95.2)を示すとともに、実測値と予測値の優れた較正(calibration)が達成され、過大評価の最小化と良好なモデルの一般化可能性がもたらされた。 外的妥当性の検討では、体脂肪量の実測値と予測値の良好な較正(較正slope:1.02、95%CI:0.97~1.07)とともに、モデルの有望な一般化可能性(R2:90.0%、95%CI:87.2~92.8)が示された。体脂肪量の実測値と予測値の平均差は-1.29kg(95%CI:-1.62~-0.96)だった。BMIに比べ、正確性が改善する可能性 4~15歳の子供の体脂肪量推定値の予測計算式は以下のとおり。 体脂肪量=weight-exp[0.3073×height2-10.0155×weight-1+0.004571×weight+0.01408×BA-0.06509×SA-0.02624×AO-0.01745×other-0.9180×ln(age)+0.6488×age0.5+0.04723×male+2.8055] ・exp:指数関数、ln:自然対数変換 ・子供が黒人(BA)、南アジア系(SA)、他のアジア系(AO)、その他の民族(other)の場合の数値は1、これら以外の場合の数値は0とする。 ・子供の民族が不明の場合は白人として扱う。 ・身長はメートル(m)、体重はキログラム(kg)、年齢は歳(years)、体脂肪量はキログラム(kg)。 たとえば、12歳の身長1.6m、体重42kgの黒人少女の体脂肪量は、42−exp[0.3073×1.62-10.0155×42-1+0.004571×42+0.01408×1-0.06509×0-0.02624×0-0.01745×0-0.9180×ln(12)+0.6488×120.5+0.04723×0+2.8055]=42−exp[3.5262]=42-33.9929=8.01kgとなる。 著者は「この予測モデルは、肥満の効果的な調査や予防、マネジメントにおいて、子供の体脂肪量の評価の正確性を、BMIと比較して改善する可能性がある。また、このモデルを国際的に適用するには、さまざまな集団におけるさらなる妥当性の検証を要する」としている。

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本邦初、高齢者のがん薬物療法ガイドライン発行/日本臨床腫瘍学会

 約3年をかけ、高齢者に特化して臓器横断的な視点から作成された「高齢者のがん薬物療法ガイドライン」が発行された。第17回日本臨床腫瘍学会学術集会(7月18~20日、京都)で概要が発表され、作成委員長を務めた名古屋大学医学部附属病院の安藤 雄一氏らが作成の経緯や要点について解説した。なお、本ガイドラインは日本臨床腫瘍学会と日本癌治療学会が共同で作成している。高齢者を一律の年齢で区切ることはせず、年齢幅を持たせて評価 本ガイドラインは「Minds 診療ガイドライン作成の手引き 2014」に準拠し、臨床試験のエビデンスとともに、益と害のバランス、高齢者特有の価値観など多面的な要因に基づいて推奨の強さが検討された。作成委員会からは独立のメンバーによるシステマティックレビュー、専門医のほか非専門医・看護師・薬剤師・患者からの委員を加えた推奨パネルでの投票により、エビデンスの強さ(4段階)と推奨の強さ(2段階+推奨なし)が決定されている。 対象となる高齢者については、一部のCQを除き具体的な年齢で示すことはしていない。各薬物療法の適応になる基本的な条件を満たしており、PS 0または1、明らかな認知障害を認めず、主な臓器に機能異常を認めない患者が対象として想定されている。“実臨床で迷うことが多い”という観点で12のCQを設定 12のクリニカルクエスチョン(CQ)は、CQ1が総論、CQ2~3が造血器、CQ4~6が消化管、CQ7~9が呼吸器、CQ10~12が乳腺という構成となっている(下記参照)。各CQは実臨床で遭遇し判断に迷うもの、そして臨床アウトカムの改善が見込まれるものという観点で選定。例えば呼吸器のCQ7は、予防的全脳照射(PCI)を扱っており、薬物療法ではないが、実臨床で迷うことが多く重要、との判断から取り上げられた。 推奨パネルでの投票で意見が割れ、最終的な決定にあたって再投票を実施したCQも複数あった。呼吸器のCQ8では、高齢者の早期肺がんに対する術後補助化学療法としてのシスプラチン併用について検討している。報告されている効果は5年生存率で+10%と小さく、1%の治療関連死が報告されている。判断について意見が分かれたが、最終的に、「実施することを明確に推奨することはできない(推奨なし)」とされている。 本ガイドラインでは、関連のエビデンス解説や推奨決定までの経緯についての記述を充実させており、巻末には各CQについて一般向けサマリーを掲載している。患者ごとに適した判断をするために、また患者にリスクとベネフィットを正確に伝えるために、これらの情報を活用することが期待される。独自のメタアナリシスを実施したCQも そもそも高齢者は臨床試験の選択基準から除外されることが多く、エビデンスは全体的に乏しい。評価できるエビデンスがサブグループ解析に限られ、直接高齢者を対象としたRCTは存在しないものが多かった。消化器のCQ5では、70歳以上の結腸がん患者に対する術後補助化学療法について検討しているが、70歳以上へのオキサリプラチン併用療法は、現状の報告から明確な上乗せ効果は確認できず、一方で末梢神経障害の増加が認められることから、「オキサリプラチン併用療法を行わないことを提案(弱く推奨)」している。 独自のメタアナリシスを行ったCQもある。乳がん領域のCQ11では、高齢者トリプルネガティブ乳がんの術後化学療法で、アントラサイクリン系抗がん剤の省略が可能かどうかを検討している。2つの前向き試験(CALGB49907とICE II-GBG52)のメタアナリシスを行い、アントラサイクリン系抗がん剤を省略することで生存期間と無再発生存期間が短縮する可能性が示唆された。その他心毒性についての観察研究結果などのエビデンスも併せて検討された結果、「アントラサイクリン系抗がん薬を省略しないことを提案(弱く推奨)」している。各領域で取り上げられているCQ[総論] CQ1 高齢がん患者において,高齢者機能評価の実施は,がん薬物療法の適応を判断する方法として推奨されるか?[造血器] CQ2 高齢者びまん性大細胞型B細胞リンパ腫の治療方針の判断に高齢者機能評価は有用か? CQ3 80才以上の高齢者びまん性大細胞型B細胞リンパ腫に対してアントラサイクリン系薬剤を含む薬物療法は推奨されるか?[消化器] CQ4 高齢者では切除不能進行再発胃がんに対して,経口フッ化ピリミジン製剤とシスプラチンまたはオキサリプラチンの併用は推奨されるか? CQ5 結腸がん術後(R0切除,ステージIII)の70才以上の高齢者に対して,術後補助化学療法を行うことは推奨されるか?行うことが推奨されるとすれば,どのような治療が推奨されるか? CQ6 切除不能進行再発大腸がんの高齢者の初回化学療法においてベバシズマブの使用は推奨されるか?[呼吸器] CQ7 一次治療で完全奏効(CR)が得られた高齢者小細胞肺がんに対して,予防的全脳照射(PCI)は推奨されるか? CQ8 高齢者では完全切除後の早期肺がんに対してどのような術後補助薬物療法が推奨されるか? CQ9 高齢者非小細胞肺がんに対して,免疫チェックポイント阻害薬の治療は推奨されるか?[乳腺] CQ10 高齢者ホルモン受容体陽性,HER2陰性乳がんの術後化学療法でアントラサイクリン系抗がん薬を投与すべきか? CQ11 高齢者トリプルネガティブ乳がんの術後化学療法でアントラサイクリン系抗がん薬の省略は可能か? CQ12 高齢者HER2陽性乳がん術後に対して,術後薬物療法にはどのような治療が推奨されるか?

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免疫CP阻害薬のやめ時は?最終サイクル後の30日死亡率/日本臨床腫瘍学会

 進行・難治性がん患者に免疫チェックポイント阻害薬(ICI)を使用する機会が増えているが、明確な中止基準は確立されていない。2011 national cancer strategy for Englandでは、回避可能な全身性抗がん剤治療(SACT)による害の臨床指標として、30日死亡率を提唱している。今回、一宮市立市民病院 龍華 朱音氏らが、ICI治療の最終サイクル後30日以内に死亡した患者について調査したところ、PS不良の患者にICI治療が選択される傾向があり、また、最終サイクルの治療費が従来の治療の約10倍となっていることが明らかになった。第17回日本臨床腫瘍学会学術集会(7月18~20日、京都)で報告された。 本研究では、2016年1月~2018年6月にSACTを受けたすべてのがん患者のデータを同定し、最終サイクル後30日以内に死亡した患者を後ろ向きに収集した。ICIの最終サイクル後30日以内に死亡した患者(ICI群)と、主に細胞障害性抗がん剤による従来のSACTの最終サイクル後30日以内に死亡した患者(非ICI群)の2群に分け、死因、臨床的特徴、治療関連因子を比較した。なお、経口抗がん剤および局所動脈/髄腔内注射の投与患者は除外した。 主な結果は以下のとおり。・SACTを受けた1,442例のうち90例が、最終レジメンをICIで治療されていた。・ICIの最終サイクル後30日以内に16.7%(15/90例)が死亡し、ICI以外のレジメンで治療され死亡した1.6%(22/1,352例)より死亡率が高かった。・ICI群の年齢中央値(範囲)は71歳(60~86歳)、男性14例/女性1例、最終サイクル時のECOG PSが0~1が4例、2~4が11例であった。死因は、腫瘍の進行11例、感染症3例、その他(免疫関連肝炎)1例であった。・ICI群は非ICI群と比べて、男女の割合(14/1 vs. 13/9、p=0.028)、PS 2~4の割合(73.3% vs.40.9%、p=0.040)、治療費中央値(821,310円vs.87,610円、p<0.001)が有意に高かった。 龍華氏は、抗がん剤治療後早期死亡を引き起こす主因として、治療関連死および積極的治療適応外の2点を挙げた。また、ICI治療における30日死亡率が高い理由として、細胞障害性抗がん剤に忍容性がない患者にICIが投与されている可能性を指摘した。さらに、医療資源の浪費抑制のために、上記の積極的治療適応外に該当する緩和ケアが有用な患者においては、ICI中止のための適切なガイドラインが必要である、と結論した。 発表後の質疑において、龍華氏は、肺癌診療ガイドライン2018年版では、PS 3~4の患者(ドライバー遺伝子変異/転座陰性もしくは不明、PD-L1発現は問わない)へは薬物療法を行わないよう推奨されているが、実臨床では、ICIは免疫関連有害事象が発現しなければ投与できてしまうこと、治療効果が得られず腫瘍増大を来した症例にもPseudo-Progressionであることを期待して4サイクルまで継続しようとするなど、やめ時が難しいという問題を提起した。

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EGFR陽性NSCLCへのエルロチニブ+ラムシルマブ、東アジア人集団でも有用性示す(RELAY)/日本臨床腫瘍学会

 EGFR変異陽性進行非小細胞肺がん(NSCLC)の1次治療で、日本人を含む東アジア人症例においても、EGFR-TKIエルロチニブと抗VEGF-R2抗体ラムシルマブの併用療法がエルロチニブ単剤と比較してPFSを延長した。第III相RELAY試験における、東アジア人サブセットの中間解析結果を、がん研究会有明病院の西尾 誠人氏が第17回日本臨床腫瘍学会学術集会(7月18~20日、京都)で発表した。 RELAY試験は、活性型EGFR変異(Exon19delまたはExon21 L858R)を有し、CNS転移のない、未治療の進行NSCLC患者を対象とした第III相国際共同二重盲検無作為化試験。登録患者はラムシルマブ(10mg/kg2週ごと投与)+エルロチニブ(150mg/日)群と、プラセボ+エルロチニブ(150mg/日)群に1:1の割合で無作為に割り付けられた。また、患者は性別、地域(東アジア vs.その他)、EGFR変異ステータス(Ex19del vs.L858R)、EGFR変異検査法(Therascreen/Cobas vs.その他)で層別化された。 主要評価項目は無増悪生存期間(PFS)、副次評価項目は奏効率(ORR)、奏効持続期間(DoR)、全生存期間(OS)、安全性など。その他探索的な評価項目として、PFS2(無作為化から2度目の病勢進行あるいは全死因死亡のいずれかの発生までの期間)、バイオマーカー分析が設定された。 主な結果は以下のとおり。・全体で449例が登録され、うち東アジア人は336例(75%)。日本人は41施設から211例が登録された。ラムシルマブ併用群に166例、プラセボ群に170例が割り付けられた。女性は両群で64%、年齢中央値は65歳/64歳、Ex19delは51%/49%であった。・PFS中央値は、全体集団で併用群19.4ヵ月 vs.プラセボ群12.4ヵ月(ハザード比[HR]:0.591、95%信頼区間[CI]:0.461~0.760、p<0.0001)、東アジア集団で19.4ヵ月 vs.12.5ヵ月(HR:0.636、95%CI:0.485~0.833、p=0.0009)と併用群で有意に延長した。・EGFR変異のステータスによる差はなく、全体集団と同様に東アジア集団でも併用群でPFS中央値を延長した:Ex19delを有する患者で19.2ヵ月 vs. 12.4ヵ月(HR:0.629、95%CI:0.430~0.921)、L858Rを有する患者で19.4ヵ月 vs. 12.5ヵ月(HR:0.644、95%CI:0.439~0.945)。・ORRは77% vs.74%と全体集団同様に差がみられなかったが、DoR中央値は16.2ヵ月 vs. 11.1ヵ月と、併用群で延長した(HR:0.646、95%CI:0.481~0.868)。・中間解析時点でのPFS2中央値は33.1ヵ月 vs. 未到達、全体集団同様に併用群で良好な傾向がみられている(HR:0.771、95%CI:0.529~1.124)。・中間解析時点でのOS中央値は両群ともに未到達、全体集団同様に併用群で良好な傾向がみられている(HR:0.824、95%CI:0.491~1.383)。・ベースライン時にT790M変異陽性の患者はいなかったが、病勢進行30日後の測定では、併用群43%、プラセボ群50%で発現しており、両群に差はみられなかった(p=0.530)。・Grade3以上の治療関連有害事象(TRAE)の発現率は全体集団で72% vs.54%、東アジア集団で71% vs.49%であった。・東アジア集団において、併用群で多くみられたGrade3以上のTRAEは、高血圧(21% vs. 5%)、ざ瘡様発疹(18% vs. 9%)であった。出血性イベント(55% vs.27%)も併用群で多い傾向がみられたが、Grade3以上は2% vs.1%であった。ILDの発現は少なく、Grade3以上は1% vs.2%で、Grade4の症例は報告されていない。

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第10回 下肢の痛み【エキスパートが教える痛み診療のコツ】

第10回 下肢の痛み腰・下肢痛と言われるように、腰痛疾患に伴う下肢痛もよく見られます。統計によりますと、日本では約30万人以上の患者さんが、腰・下肢痛、坐骨神経痛、神経根障害などとして診断されています。今回は、この下肢の痛みを取り上げたいと思います。腰椎疾患・血管疾患・末梢神経障害の3分類で考える下肢の痛みは、大きく分けて腰椎疾患由来の痛み、血管疾患由来の痛み、末梢神経障害由来の痛みに分類されます。1)腰椎疾患由来の痛み腰痛疾患に由来する痛みで、一般的には坐骨神経痛と称されます。椎骨や椎間板によって腰神経が圧迫されるために、対応する下肢や臀部に放散するしびれや痛みが生じます。具体的には、脊椎管狭窄症や椎間板へルニアなどの疾患によって、病変部の神経が圧迫されて下肢痛が生じます。下図に示されるように、それぞれの病変部に応じて痛みが感じられます。神経圧迫がなくても、炎症によって責任神経に沿って痛みを感じることがあります。画像を拡大する2)血管疾患由来の痛み血管疾患は、動脈由来と静脈由来とに分類されます。動脈由来では、閉塞性動脈硬化症(ASO)が代表的疾患です。動脈の血流が悪くなりますと、運動時のみに痛みを感じていたのが、次第に安静時にも痛みを感じるようになります。また、下肢に痛みを急激に感じるときには、血栓などによる急性下肢動脈閉塞の可能性も高く、緊急対応が必要になりますので注意しなくてはなりません。静脈由来では、蛇行静脈が見られたり、下肢が腫脹したりする下肢静脈瘤が最も多く認められております。下肢が急に腫れて痛みを感じる場合には、深部静脈血栓症の可能性もありますので、十分に注意する必要があります。3)末梢神経障害由来の痛み下肢の末梢神経が、圧迫されたり、絞扼されたりすると、その神経の支配領域に一致した痛みを伴います。異常感覚性大腿神経痛が代表的疾患ですが、この場合は大腿外側に痛みや痺れが見られます。その他に気を付けなければならない下肢痛としては、複合性局所疼痛症候群(CRPS)があります。この疾患は、外傷後などに遷延する四肢の痛みで、皮膚の異常感覚や色調異常などが見られます。時に、注射穿刺後に生じることもあります。また、帯状疱疹、蜂窩織炎、足底腱膜炎などは、よく見られる疾患です。仙腸関節痛や大腿骨頭壊死などでも下肢痛が見られます。シンスプリントやアキレス腱断裂は、運動後に生じる下肢痛です。長期間にわたって痛みを訴えたり、事故や労災などが関与したりしている場合には、心理社会的な要因が存在することもありますので注意が大切です。次回は陰部・肛門痛について述べます。1)服部政治ほか 日本における慢性疼痛を保有する患者に関する大規模調査. ぺインクリニック25:1541-1551.2004.2)山村秀夫ほか編. 痛みを診断する.有斐閣;1984.p.25-263)花岡一雄ほか監修. 痛みマネジメントupdate 日本医師会雑誌. 2014;143:S146-147

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第25回 対面での吸入指導がアドヒアランスに与える影響は予想以上に大きい【論文で探る服薬指導のエビデンス】

 気管支喘息やCOPD患者さんへの吸入指導は日常的にあるため、わかりやすい説明は薬剤師に求められる必須スキルの1つです。薬局で説明する旨の医師指示が処方箋に記載されているケースも少なくなく、私も新人のころはすべてのデバイスごとの手順や使用上のピットフォールを必死で覚えたものです。デモ用キット、リーフレット、ビデオなどの充実した資材が製薬会社から提供されていますので、患者さんにとって最も有用な説明手段を選択したいですよね。今回は、その参考となるリアルワールドデータ(実臨床で得られたデータ)の調査を紹介します。対面での実技指導を好む患者が83%REAL(Real-life Experience and Accuracy of inhaLer use)調査という、適切な吸入器の使用、吸入手技、吸入器の特性など、患者アドヒアランスへ影響すると考えられる23項目について電話で行われた調査があります1)。2016年1月4日~2月2日に調査が実施され、対象はブラジル、カナダ、フランス、ドイツ、イタリア、日本、オランダ、英国、米国の9ヵ国から抽出された軽度~重度のCOPD患者764例(平均年齢56±9.8歳)でした。使用吸入器の内訳は、ブリーズヘラー186例、エリプタ191例、ジェヌエア194例、レスピマット201例でした。自己申告のアドヒアランスは、66歳以上の患者と比較して65歳以下の患者では有意に低く、性別、疾患の重症度、診断からの経過時間では有意差はみられませんでした。手技の説明では、吸入器を用いた対面による指導(吸入デモ)が「とても役に立つ」と回答している割合が最も高く、吸入デモ83%>ビデオ58%>口頭による使用説明51%>リーフレット34%という結果でした。吸入デモの回数が多い患者ほどアドヒアランスが高く、さらに呼吸器科医自身による指導を受けている患者ではより良好でした。少なくとも過去2年間に医療者による吸入手技の確認を受けたことがないと回答した患者は29%で、手技の確認を受けた患者ではよりアドヒアランスが良好かつ全量を吸入できている自信がありました。なお、全量を吸入したという実感があったのは、ブリーズヘラーを用いた患者では93%、ジェヌエアでは84%、エリプタでは80%、レスピマットでは76%でした。吸入指導は、呼吸器科医(41.3%)、薬剤師(20.2%)、看護師(18.1%)、一般医(12.0%)、その他(8.4%)によって行われており、呼吸器科医は自ら患者を指導する割合が高かったのに対し、一般医はほかの医療者に委任する割合が高いという結果でした。製剤特性や用法に依存する部分もありますが、アドヒアランスを高めるポイントは、対面での吸入デモ、小まめな手技確認、とくに呼吸器科医による吸入指導、ということになると思います。患者が好む吸入器は簡単・シンプル治療満足度には、吸入指導の方法という観点とは別に、吸入器に対する好みの問題もあります。これに関しては、COPD患者、喘息患者の吸入器の好みに関するリアルワールドデータの調査があります2)。こちらは、欧州、米国、日本および中国で実施された呼吸器疾患プログラムから、喘息(12歳以上の患者)、COPD(気道閉塞が確認された40歳以上の患者)、喘息とCOPDのオーバーラップ(ACO)の7,300例を超える患者データが収集され、吸入維持療法の現在の治療法と吸入器の種類、医師の好み、患者が重要と考える吸入器の特性および満足度を変数として解析した研究です。よく処方されているのが、ドライパウダー式の吸入器(62.8~88.5%の患者)と加圧噴霧式定量吸入器(18.9~35.3%の患者)でした。ディスカス、エリプタ、タービュヘイラーなどに次いでエアゾール剤が多いというのはさほど違和感はないかと思います。吸入器の特性について重視する要素として、どの疾患においても「使い方がシンプルで簡単」ということが半数以上の患者で挙げられ、長持ちして壊れにくい、持ち運びが簡便、充填の必要がない、吸入のために息を吸い込む必要がない、毎回肺に同じ量の薬が届く、薬剤の残数がわかるなどの特性が続きます。最近の吸入器は工夫があるものも多いので、各製剤の特徴を把握して図にまとめておくと説明しやすいと思います。吸入器の種類も多様化していますので、うまく吸えないときはその原因を特定したり、改善策のアドバイスや適切な吸入器への変更を提案したりすることもあるでしょう。吸入アドヒアランスはCOPDや喘息の治療効果に直結するので、背景因子を理解して患者さんに共感しつつも、しっかりと対面で説明や提案ができるようにしておきたいものです。1)Price D, et al. Int J Chron Obstruct Pulmon Dis. 2018;13:695-702.2)Ding B, et al. Int J Chron Obstruct Pulmon Dis. 2018;13:927-936.

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高血圧症、閾値を問わず心血管転帰の独立リスク因子/NEJM

 高血圧症は、その定義(収縮期・拡張期血圧値)が130/80mmHg以上または140/90mmHg以上にかかわらず、有害心血管イベントのリスク因子であることが、一般外来患者130万例を対象に行ったコホート試験で示された。収縮期高血圧および拡張期高血圧はそれぞれ独立したリスク因子であることや、収縮期血圧上昇のほうがアウトカムへの影響は大きいことも示されたという。米国・カイザーパーマネンテ北カリフォルニア(KPNC)のAlexander C. Flint氏らによる検討で、NEJM誌2019年7月18日号で発表された。外来での収縮期・拡張期血圧値と心血管アウトカムの関連は不明なままである中、2017年に改訂された高血圧症のガイドラインでは2つの閾値が示され、治療における複雑さが増していた。8年間の有害心血管イベント発生リスクを検証 研究グループは、KPNC(カリフォルニア州北部を中心に400万人超が加入する)の会員データを用いて、一般外来成人患者130万例を対象に試験を行った。 多変量Cox生存分析により、8年間にわたる収縮期・拡張期高血圧の複合アウトカム(心筋梗塞、虚血性脳卒中、出血性脳卒中)への影響の大きさを調べた。解析では、人口統計学的特性と併存疾患について調整を行った。140mmHg以上、zスコア1上昇で心血管リスクは1.18倍 収縮期・拡張期高血圧の負担は、それぞれが有害アウトカムの独立予測因子であることが示された。生存モデルにおいて、収縮期高血圧の持続的負担は、同値140mmHg以上の場合で、zスコア1上昇におけるハザード比(HR)は1.18(95%信頼区間[CI]:1.17~1.18)だった。また、拡張期高血圧の持続的負担については、同値90mmHg以上の場合で、zスコア1上昇におけるHRは1.06(同:1.06~1.07)だった。 同様の予測結果は、高血圧症の閾値が低い場合(130/80mmHg以上)や、高血圧症の閾値を使わずに収縮期・拡張期血圧値を予測因子として用いた場合でも得られた。 また、拡張期血圧とアウトカムにはJカーブの関連性が認められた。その関連性には年齢およびその他共変量のいずれか1つ以上の関与が示唆され、また拡張期血圧が最低四分位範囲の人では、収縮期高血圧の影響がより大きいことが見てとれた。

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