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高齢進行胃がん患者への化学療法、低用量でベネフィット得られる可能性(GO2)/ASCO2019

 高齢でフレイルのある、進行胃・食道胃接合部がん患者において、2剤併用化学療法の用量を減らしても、高用量の場合と同等のベネフィットが得られる可能性が示唆された。米国臨床腫瘍学会年次総会(ASCO2019)で、オキサリプラチン+カペシタビン2剤併用療法の適正用量を検討した第III相GO2試験1)の結果を、英国・エジンバラ大学のPeter S Hall氏が発表した。 進行胃・食道胃接合部がんと診断される患者の中央値は75歳超で2)、多くがフレイルを有している。しかし、化学療法の標準的な用法用量の多くがフレイルのない、65歳未満の患者を対象とした臨床試験によって定められている。 Hall氏らが事前に実施した、同患者対象のエピルビシン+オキサリプラチン+カペシタビンとオキサリプラチン+カペシタビン、カペシタビン単剤の比較試験の結果、オキサリプラチン+カペシタビン2剤併用療法が良好な結果を示した3)。 GO2試験は、年齢やフレイルのために全量投与の3剤併用療法には不適格(ただし、GFR≧30、bili<2×ULNで2剤併用には適格性あり)の進行胃・食道胃接合部がん患者対象の、第III相無作為化、多施設共同、前向き対照、非盲検非劣性試験。登録患者はオキサリプラチン+カペシタビンの100%用量群(オキサリプラチン130mg/m2を3週ごと+カペシタビン625mg/m2×1日2回連日投与をPDまで)、80%用量群、60%用量群に1:1:1の割合で無作為に割り付けられた。 主要評価項目は無増悪生存期間(PFS)、副次評価項目は全生存期間(OS)の100%用量群に対する非劣性。その他の評価項目は、患者評価による総合治療効用(overall treatment utility:OTU)、毒性、QOLなどであった。フレイルは、9項目の高齢者総合機能評価を用いて評価され、3項目以上の該当者が重度のフレイルと判定された。 主な結果は以下のとおり。・2014~17年にかけて、英国の61施設から512例が登録され、100%用量群に170例、80%用量群に171例、60%用量群に173例が割り付けられた。全体の年齢中央値は76(51~96)歳、男性が75%で、PS≧2が31%、重度のフレイルと判定された患者は58%であった。ベースライン特性は、3群でバランスがとれていた。・主要評価項目であるPFS中央値はそれぞれ、4.9ヵ月 vs.4.1ヵ月 vs.4.3ヵ月。100%用量群に対する、80%用量群(ハザード比[HR]:1.09、95%信頼区間[CI]:0.89~1.32)および60%用量群(HR:1.10、95%CI:0.90~1.33)の非劣性が確認された(あらかじめ設定された非劣性マージン:1.34)。 ・副次評価項目であるOS中央値について、3群で有意差は確認されなかった(7.5ヵ月 vs. 6.7ヵ月vs. 7.6ヵ月)。・患者評価による9週時点でのOTUは、100%用量群(good:35%、intermediate:34%、poor:31%)、80%用量群(36%、26%、38%)、60%用量群(43%、27%、29%)。60%用量群は100%用量群と比較し、良好な傾向を示した(調整オッズ比:1.24、95%CI:0.84~1.84)。・患者評価による9週時点でのQOLは、100%用量群では変化がなかったが、80%用量群および60%用量群では、ベースライン時と比較して改善した。・毒性は60%用量群で100%用量群および80%用量群よりも低く、治療サイクル数の中央値は60%用量群で最も多かった。・ベースライン時の因子(年齢、PS、フレイル)ごとに、用量によるPFS、OS、OTUを比較した結果、有意な差は得られず、高用量治療でベネフィットを得る患者特性は特定されなかった。

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頭打ちの後発医薬品使用の裏で始まった新制度【早耳うさこの薬局がざわつくニュース】第28回

10年前の後発医薬品の使用割合はどのくらいだったか、覚えていますか? 2009年の後発医薬品の使用割合は35%で、計算方法は多少変わっていますが、現在は約70%ですので、約10年で後発医薬品の使用は2倍に増えています。報酬改定に追われるように…、というのは否めませんが、保険薬局の努力が後発医薬品の使用割合の増加に大きく貢献したことは間違いありません。しかし、このたび後発医薬品の使用割合が頭打ちになっているという調査結果が報告されました。2018年10月から19年1月にかけて、28都府県の保険薬局91施設を対象に実施した聞き取り調査の結果によると、後発医薬品調剤体制加算3の算定要件(数量ベースの後発品使用割合85%の基準)が新設されたことについて、70.7%が「要件が厳しい」と答えた。理由としては▽薬局の取り組みだけでは困難▽処方元の後発品に対する意識が変わらない限り難しい▽処方箋の「変更不可」欄がある限り難しい―といった声が上がった。(2019年6月17日付 日刊薬業)これは、日本製薬団体連合会という製薬企業の団体の中にある保険薬価研究委員会が行った研究報告です。後発医薬品の数量割合が70%を超えたあたりから頭打ち状態になっている保険薬局が多い点や、政府目標の80%を達成するためには、保険薬局の努力だけでは限界を感じている点などが明らかになっています。「現在が頭打ち」という状況は、私個人としても実感しています。2018年の報酬改定では、医科の報酬でも後発医薬品の使用を促進する改定がいくつかあったものの、調剤においては後発医薬品調剤体制加算の基準が引き上げられ、一番点数が大きい要件は85%になりました。正直、処方箋の変更不可欄のチェック率や、小児処方の変更の難しさなどを考えると、私が関わっている薬局での85%達成は難しいなと思っています。後発医薬品、上市後10年経過でさらに薬価引き下げここで改めて、後発医薬品の数量割合の目標を確認してみましょう。2017年に閣議決定された、いわゆる「骨太の方針2017」で、2020年9月までに後発医薬品の使用割合を80%とする、という目標が決まりました。これは内閣府が旗を振っているものですから、厚生労働省も上から達成を監視されているという状況なのでしょう。2020年9月までの報酬改定はあと1回だけです。かなり厳しい状況ですが、個人的には医師の処方権を考えると変更不可欄がなくなることはないだろうと思っていますので、もしかしたら目標達成の期限を延ばすのでは、とも思っています。しかし、国もただ手をこまねいているわけではなく、2019年4月より長期収載品の薬価を後発医薬品並みに引き下げる「G1、G2ルール」というかなり力業の制度が導入されました。現在は、最初の後発医薬品の収載から5年を経過し、10年を経過しない品目のうち、後発医薬品への置き換え率が80%となる先発医薬品の薬価が引き下げられています(Z2ルール)。G1ルールではそれに加え、10年が経過した品目に関して、後発医薬品への置き換え率が80%以上の品目の薬価を6年かけて2年ごとに薬価を引き下げていき、G2ルールでは置き換え率80%未満の品目の薬価を10年かけて2年ごとに引き下げていきます。これによって、長期収載品を有する製薬企業は、長期収載品を販売し続けるべきか、撤退すべきかの判断を迫られることになります。実際には、長期収載品を保持し続けたり、権利を他社に移譲したりする企業もあるようですが、市場から撤退する長期収載品が増える→後発医薬品を選択せざるを得ない医療機関が増える→後発医薬品の使用割合が増える、という流れが予想されます。金額ベースから数量ベースになったり、母数の考え方が変わったりと紆余曲折があった後発医薬品の使用促進が佳境を迎えていますので、引き続き注目したいと思います。

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高齢者進行非小細胞肺がん、膵がん患者に対する早期運動・栄養介入の多施設共同ランダム化第II相試験(NEXTAC-TWO)

 高齢の進行期がん患者の多くは、がん悪液質による疲労、食欲不振、および身体機能の低下を有しているが、効果的な介入が確立されていない。静岡県立静岡がんセンターの内藤 立暁氏らは進行期がんに対する栄養療法および運動療法を組み合わせた早期介入プログラムNEXTAC(The Nutrition and Exercise Treatment for Advanced Cancer program)の第I相試験(NEXTAC-ONE)を実施し、がん悪液質高リスクの高齢患者におけるNEXTACの実現可能性を報告した(Journal of Cachexia, Sarcopenia and Muscle, 2018)。この結果に基づきNEXTACによる早期の運動・栄養介入の有効性を評価する多施設共同無作為化第II相NEXTAC-TWO試験が開始された。NEXTAC-TWO試験の実施の背景、設計などについて新潟県立がんセンター新潟病院 三浦 理氏らがBMC Cancer誌オンライン版2019年5月31日号で発表した。NEXTAC介入群と介入なしの対象群に130例の被験者を無作為に割り付け・対象:1次治療として化学療法実施予定の進行期非小細胞肺がん(NSCLC)または膵臓がん患者。年齢70歳以上、PS 2以下で適切な臓器機能を持ち介護を要しない患者・介入群:1次治療開始とともに、BCAA(分岐鎖アミノ酸)含有サプリメント摂取(大塚製薬:インナーパワー)と栄養カウンセリング、低強度在宅運動プログラム、身体活動計により測定された歩数に基づく身体活動量促進プログラムを医師のほか栄養士、理学療法士、看護師より成る多職種チームによる介入を行う・対照群:介入なし・評価項目:[主要評価項目]介護不要生存期間[副次評価項目]栄養状態、除脂肪体重、運動機能、ADL、QOL、全生存期間、安全性など わが国の15施設から130例の被験者を登録する。被験者を介入群と対照群に無作為に割り付け、無作為化から4回(登録時、4±2週、8±2週、12±2週)介入と評価を実施する。層別化因子は、PS(0~1対2)、原発がんの部位(肺と膵)、病期(Stage IIIとIV)、化学療法の種類(ドライバー遺伝子変異に対するキナーゼ療法とその他)など。筆頭著者 三浦 理氏のNEXTAC-TWO試験についてのコメント がん治療、とくに非小細胞肺がんの世界ではドライバー遺伝子変異に対するキナーゼ阻害薬や免疫チェックポイント阻害薬による治療開発が非常に活発に行われている。それに伴い、長期生存が得られる症例が増えており、今後はQOLの改善、維持ということが重要視されるだろう。2019年、抗悪液質治療薬であるグレリン誘導体のアナモレリンが臨床導入される予定である。この薬剤は食欲改善効果と共に除脂肪体重増加効果はあるが、筋力の改善、増強は得られがたいことが臨床試験で示唆されている。今まで前向き試験で示されることができなかった多職種介入の有効性が本試験で示されれば支持療法の分野における大きな一歩であると考えられる。本試験はすでに症例登録は終了し観察期間に入っており、結果の公表が待たれる。

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第45回 トークはさんまと落語をマネろ【週刊・川添ラヂオ】

動画解説川添先生が話し上手な秘密はお笑いにあった!大学時代「ちゃんとした関西弁」習得のため、落語とお笑い番組を勧められた川添先生は、その特訓の副産物として今のトーク術を習得したそうです。明石家さんまに倣う世界一すごい話の聞き方、落語から学ぶ肩の凝らないスピーチの前振りなど、真似するだけで話し上手になれる方法を紹介します。

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血圧と認知症サブタイプ別リスク~260万人を長期観察

 血圧上昇と認知症リスクの関連は、期間や認知症のサブタイプにより異なるのだろうか。今回、英国・London School of Hygiene & Tropical MedicineのJohn Gregson氏らによる約260万人の後ろ向きコホート研究から、血圧上昇は認知症リスク低下と短期的には関連するが、長期的な関連はあまり大きくないことがわかった。また、長期的な関連は、アルツハイマー型認知症と血管性認知症では逆であったことが報告された。European Journal of Neurology誌オンライン版2019年6月24日号に掲載。 本研究は、United Kingdom Clinical Practice Research Databaseにおいて、1992~2011年に血圧を測定し、それ以前に認知症ではなかった40歳以上の259万3,629人のデータを解析。ポアソン回帰モデルを使用して、収縮期血圧と認知症(医師の診断による)との関連を調べた。血圧は認知症発症前駆期に低下すると考えられているため、血圧測定からの経過時間のカテゴリー(5年未満、5~10年、10年超)および認知症のサブタイプ(アルツハイマー型、血管性)別に関連を調べた。 主な結果は以下のとおり。・観察期間中央値は8.2年で、アルツハイマー型認知症4万9,161例、血管性認知症1万3,816例、その他の認知症2,541例の計6万5,618例の認知症が観察された。・平均収縮期血圧10mmHg上昇につき、認知症リスクは9.2%(95%CI:8.4~10.0)低かったが、この関連は血圧測定からの期間によって著しく変化した。・血圧測定後5年未満では、平均収縮期血圧10mmHg上昇につき、認知症リスクが15.8%(同:15.5~17.0)低く、血圧測定後5~10年ではリスクが5.8%(同:4.4~7.7)低かった。・血圧測定後10年超では、平均収縮期血圧10mmHg上昇につき、認知症リスクが1.6%(同:0.1~3.0)低かった。サブタイプ別にみると、アルツハイマー型認知症リスクは4.3%(同:2.5~6.0)低く、血管性認知症リスクは7.0%(同:3.8~10.2)高かった。■「サブタイプ」関連記事最もOSが良好な乳がんのサブタイプは?

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ロズリートレク:NTRK融合遺伝子陽性の進行・再発固形がん治療薬

国内で2番目となるがん種を問わない抗がん剤の登場ROS1/TRK阻害薬ロズリートレクは、成人および小児のNTRK融合遺伝子陽性の進行・再発の固形がんを対象とする臓器横断的ながんの分子標的薬であり、2019年6月、世界に先駆けて日本で製造販売承認を得た。本薬は、先駆け審査指定制度対象品目、希少疾病用医薬品の指定を受けていた。希少かつ臓器横断的に発生するNTRK融合遺伝子NTRK融合遺伝子は、NTRK遺伝子(NTRK1、NTRK2、NTRK3、それぞれTRKA、TRKB、TRKC蛋白質をコードする)と、他の遺伝子(ETV6、LMNA、TPM3など)が染色体転座を起こした結果として、融合して発現する異常な遺伝子である。NTRK融合遺伝子からつくられる融合TRKにより、がん細胞の増殖が促進されると考えられている。NTRK融合遺伝子の発生はきわめてまれであるが、成人や小児のさまざまな固形がんや肉腫などで確認されている。これまでにその発生が確認されたがん種としては、乳児型線維肉腫、神経膠腫、神経膠芽腫、びまん性橋グリオーマ、先天性中胚葉性腎腫、悪性黒色腫、炎症性筋線維芽細胞性腫瘍(IMT)、子宮肉腫、その他の軟部腫瘍、消化管間質腫瘍(GIST)、乳腺分泌がん、唾液腺分泌がん、原発不明がん、肺がん、大腸がん、虫垂がん、乳がん、胃がん、卵巣がん、甲状腺がん、胆管がん、膵臓がん、頭頸部がんなどが挙げられる。NTRK融合遺伝子陽性固形がんにおける奏功が認められるロズリートレクは、ROS1(c-rosがん遺伝子1)およびTRK(神経栄養因子受容体)ファミリーを強力かつ選択的に阻害する経口チロシンキナーゼ阻害薬であり、脳転移巣への効果も示唆されている。本薬は、ROS1およびTRKキナーゼ活性を阻害することにより、ROS1またはNTRK融合遺伝子を有するがん細胞の増殖を抑制する。また、本薬は、前治療後に病勢進行、または許容される標準治療がないNTRK融合遺伝子陽性の局所進行または遠隔転移を有する成人および小児の固形がんに対し、米国食品医薬品局(FDA)より画期的治療薬(breakthrough therapy)に、欧州医薬品庁(EMA)によりPRIME(PRIority MEdicines)に指定されている。今回の承認の根拠となったのは、主に非盲検多施設国際共同第II相臨床試験であるSTARTRK-2試験の成績である。本試験は、臓器を問わないバスケット試験として、NTRK融合遺伝子陽性固形がんの成人患者51例を対象に行われ、主要評価項目である独立評価委員判定による奏効率は56.9%(95%信頼区間: 42.3〜70.7)であった。また、小児の有効性評価は海外の第Ⅰ/Ⅰb相臨床試験であるSTARTRK-NG試験に登録されたNTRK融合遺伝子陽性の固形がん患者5例で行われ、主治医判定により4例(完全奏効1例[3歳の類表皮性膠芽腫]、部分奏効3例[4歳の高グレード神経膠腫、4歳の悪性黒色腫、4歳の乳児型線維肉腫])で奏効が得られた(残りの1例は0歳の乳児型線維肉腫で、判定は安定)。今後のNTRK融合遺伝子陽性進行・再発固形がん診療への期待ロズリートレクの登場は、治療選択肢の少ない希少ながん種に、新たな治療戦略をもたらす。本薬の製造販売元である中外製薬は、同社の次世代シークエンサーを用いた網羅的がん関連遺伝子解析システム「FoundationOne CDxがんゲノムプロファイル」について、本薬のコンパニオン診断としての使用目的の追加に関する承認を取得している。今後、このような網羅的ゲノムプロファイリングの普及を通じて、がん領域におけるより高度な個別化医療がさらに進展すると考えられる。

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微量元素含有の高カロリー経腸栄養剤「イノラス配合経腸用液」【下平博士のDIノート】第28回

微量元素含有の高カロリー経腸栄養剤「イノラス配合経腸用液」今回は、経口・経管両用の経腸成分栄養剤「イノラス配合経腸用液」を紹介します。本剤は、1袋(187.5mL)で1日に必要なビタミン・微量元素の約3分の1が摂取できるように配合設計された半消化態経腸栄養剤です。経口での栄養摂取が困難または不十分な場合であっても、少量で効率的に栄養を補給することができます。<効能・効果>本剤は、手術後患者の栄養保持、とくに長期にわたり、経口的食事摂取が困難な場合の経管栄養補給の適応で、2019年3月26日に承認され、2019年6月6日より発売されています。なお、経口食により十分な栄養摂取が可能となった場合には、速やかに経口食に切り替えます。<用法・用量>通常、成人標準量として、本剤を1日562.5~937.5mL(3~5袋)を経管または経口投与します。経管投与の場合は、投与速度50~400mL/hで持続的または1日数回に分け、経口投与の場合は、1日1回または数回に分けて投与します。なお、年齢、体重、症状により投与量、投与速度を適宜増減します。<副作用>第III相比較試験(検証的試験)の安全性評価対象107例のうち、副作用発現数は11例(10.3%)でした。その内訳は、消化器系の副作用が下痢5例(4.7%)、軟便、便秘各1例(各0.9%)であり、その他は血中ナトリウム減少、血中ブドウ糖増加1例、血中トリグリセリド増加、白血球数増加が各1例(各0.9%)でした(承認時)。<患者さんへの指導例>1.経口での食事が摂れない場合や通常の食事だけでは十分な栄養が摂れない場合に、必要なエネルギーや栄養分を補うことができます。2.胃ろうや栄養チューブを使って投与する場合、最初は少量から始めてください。3.ヨーグルト風味とりんご風味の2種類がありますので、好みのフレーバーを医師または薬剤師に伝えてください。4.開封前はよく振ってください。開封後、飲む際はコップなどの容器に移し、残った場合はクリップなどで止めて冷蔵庫に保管して、24時間以内に飲みきってください。5.温めて使用する場合は、未開封の状態で70℃未満の湯せんで温めてください。温め過ぎるとタンパク質が変性する恐れがあります。6.下痢、便秘など、おなかの調子が普段と異なる場合は、1回量を減らすなどの調節をしてください。<Shimo's eyes>経腸栄養剤は、経口での食事摂取が困難または不十分な患者さんに使用することで、栄養状態を維持・改善させることができます。一般的にそのような患者さんは、活動性が低く、必要な維持エネルギー量が少ないですが、本剤は3袋(187.5mL×3=562.5mL)で900kcalのエネルギーに加えて、ビタミンと微量元素もほぼ充足できるように配合されています。本剤は高濃度(1.6kcal/mL)の半消化態経腸栄養剤であり、既存のエンシュア、ラコール、エネーボと比較して、同じカロリーを摂取する際の用量が少なくなります。1回量が少ないことで誤嚥のリスクが低減し、さらに運搬・保管も容易というメリットもあります。なお、本剤は濃縮乳蛋白質とカゼインナトリウムを含むため、牛乳アレルギーの患者さんには禁忌です。また、ビタミンK(メナテトレノン)を含むため、ワルファリンを服用中の患者さんでは、相互作用に注意が必要です。経口栄養剤を摂取している患者さんでは、下痢などを引き起こす可能性があるので、服薬指導ではおなかの調子を具体的に確認するようにしましょう。

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ASCO2019レポート 消化器がん(Upper GI)

レポーター紹介今年のASCOも消化器がん領域では免疫チェックポイント阻害薬が主役であった。胃がん初回化学療法におけるペムブロリズマブの効果を検証したKEYNOTE-062試験の結果が報告された。また、ポスターセッションでは、免疫チェックポイント阻害薬の治療効果をより高めるために、血管新生阻害薬との併用効果を検討したり、食道がん術前化学放射線療法に免疫チェックポイント阻害薬を併用した試験が多く認められた。膵臓がんでは、gBRCA陽性患者に対するPARP阻害薬のメンテナンス治療の効果をみた試験の結果がプレナリーセッションで報告された。また、支持療法では、消化器がんで用いることが多い、50mg/m2以上のCDDPを使用する患者に対して、4剤併用の有効性を検証したJ-FORCE試験が報告された。LBA-4007 胃がん初回化学療法KEYNOTE-062試験(Non-colorectal, Oral presentation)胃がんにおける免疫チェックポイントの位置付けは、3次治療以降でのニボルマブの単剤投与であり、昨年報告されたKEYNOTE-061試験の結果では、2次治療としてのペムブロリズマブは、パクリタキセル単剤に対してCPS(Combined Positive Score:腫瘍細胞および腫瘍浸潤免疫細胞でのPD-L1陽性割合)が1%以上の胃がんでの優越性を示すことはできなかった。今回は初回化学療法例を対象に、5-FU(あるいはカペシタビン)+CDDP療法(C群)に対する、ペムブロリズマブ併用療法(C+P群)の優越性と、単剤療法(P群)の非劣性を検証したKEYNOTE-062試験の結果が報告された。対象はCPS 1%以上の切除不能再発胃がんで、763例が登録された。日本を含む東アジアからは約25%が登録され、欧州・米国・オーストラリアからの登録が約60%と多数を占めた。主要評価項目は4つあり、C群に対するP+C群の無増悪生存期間(PFS)の優越性(≧CPS 1)、全生存期間(OS)の優越性(≧CPS 1)および(≧CPS 10)、P群のOSでの非劣性(≧CPS 1)であった。C群とP群の比較においては、OS中央値、12ヵ月OS割合、24ヵ月OS割合は、C群とP群でそれぞれ11.1ヵ月と10.6ヵ月、46%と47%、そして19%と27%であり、HR:0.91(99.2%CI:0.69~1.18)と、HRの信頼区間の上限は、あらかじめ決めておいた非劣性マージン1.20を下回ったため、P群の非劣性が示された。探索的な検討であるが、≧CPS 10の患者群では、24ヵ月生存割合がC群とP群で22%と29%と、よりP群で良好な結果であった。しかし、PFS中央値は、C群とP群で6.4ヵ月と2.0ヵ月、12ヵ月PFS割合は19%と14%と、P群で不良な傾向であった。後治療はP群で52.8%実施されていることから、後治療を含めた治療により、長期生存が得られていると考えられた。C群とC+P群の比較では、OS中央値はC群とC+P群でそれぞれ11.1ヵ月と12.5ヵ月、12ヵ月OS割合は46%と53%、24ヵ月OS割合は19%と24%であり、HR:0.85(95%CI:0.70~1.03、p=0.046)と、統計学的に有意な生存期間の延長は認められなかった。驚いたことに、≧CPS 10の患者群でも両者のHRは0.85であり、より有効性が期待できる手段においてもC+P群の効果は変わらなかった。有害事象はいずれの群も許容される範囲内であった。まず、CPSにて対象を絞っても、他のがん種で示されているような、プラチナ併用初回化学療法に対する免疫チェックポイント阻害薬の併用効果が胃がんでは示せなかったこと、C+P群で思ったほど治療効果が持続していないこと、KEYNOTE-061試験で示されたCPSでの対象選択が、併用群では打ち消されていることなど、いくつかのポイントがクエスチョンとして挙がってくるが、今後の検討が必要である。非劣性が示され、CPS 1以上の胃がんでの初回化学療法の選択肢となりうるとされたペムブロリズマブも、効果のある症例は長く持続するが、半数の患者が2ヵ月で病勢進行を来している。従来の化学療法を受ける機会を逸しないためにも、対象は慎重に選択されるべきで、CPS 10以外にも効果のありそうな対象が絞り込める情報が必要である。また、薬剤コストの面についても問題が指摘されており、臨床的意義についてディスカッションが必要である。また、現在実施中である、ATTRACTION-4試験(胃がん初回化学療法SOX/XELOX±ニボルマブ)、CheckMate-649試験(胃がん初回化学療法XELOX/FOLFOX±ニボルマブ、およびニボルマブ+イピリムマブ)の比較試験の結果がどうなるのか、同じ結果なのか、異なる結果になるのか、大変興味深い。消化管がんに対する免疫チェックポイント阻害薬と血管新生阻害薬、放射線療法の併用(Non-colorectal, Developmental therapeutics, poster)KEYNOTE-062試験の結果で、改めて消化管がんの研究者が思ったことは、胃がんは免疫原性が低い、CPSも堅牢なバイオマーカーではなく、化学療法との併用も微妙で、より強力な治療が必要、である。以前より、ニボルマブ(Nivo)とラムシルマブの併用が有効性を高めることが報告されていたり、肝細胞がんでのペムブロリズマブとレンバチニブとの併用で、奏効割合の改善が報告されたりしていたが、同様に、免疫チェックポイント阻害薬と血管新生阻害薬の併用療法を検討した、Nivoとレゴラフェニブ(Rego)の併用Phase I試験の結果が報告された(#2522)。REGONIVO試験では、標準投与量のNivoにRegoを通常量の半量である80mgより併用し、毒性をみながら増量し安全性をみる試験である。Regoが腫瘍関連マクロファージ(TAM)を抑えることで免疫抑制状態を解除し、抗腫瘍効果を高めるということが報告されている。胃がん、大腸がんそれぞれ25例が登録されたが、Rego 80mgとRego 120mgのコホートでは用量制限毒性(DLT)を認めず、160mgへ増量された。160mgのコホートでは、3例中3例にDLT(皮膚毒性、蛋白尿、消化管穿孔)が認められ、また120mgのコホートでも継続投与にて頻繁にGrade3の皮膚毒性が認められたため、Rego 80mgが推奨投与量とされた。奏効割合はマイクロサテライト安定(MSS)大腸がんに対して36%、胃がんに対して44%と高い効果を認め、さらなる治療開発が期待されている。また、胃がん初回化学療法例に対して、XELOX療法に抗PD-1抗体であるcamrelizumabを併用し、4~6回投与した後、XELOXを休止、血管新生阻害薬であるapatinibとcamrelizumabの併用療法によるメンテナンスを行うPhase II試験(#4031)では奏効割合58.6%、食道扁平上皮がんの初回化学療法例に対するリポソーマルパクリタキセルと、ネダプラチンにcamrelizumabとapatinibの併用を評価したPhase II試験(#4033)では奏効割合80%と報告されている。いずれも併用により毒性が強くなるため、血管新生阻害薬の単剤での投与量を大幅に減量する必要があるが、有効性は、探索的な検討ながら、良好にみえる。さらなる結果を待って、使いどころを検討する必要がある。肺がんなど他がん腫ですでに示されている、放射線療法と免疫チェックポイント阻害薬の探索的な試験の結果が報告されている。韓国からは食道扁平上皮がんに対する術前化学放射線療法にペムブロリズマブを併用したPhase II(#4027)が報告された。病理学的完全奏効割合(pCR)は46.1%と高く、懸念された間質性肺炎は認められなかったが、手術症例26例中2例がARDSなどの肺障害により死亡しており、術前のペムブロリズマブの影響が懸念された。また食道胃接合部腺がんに対しては、欧米での標準治療の1つである術前カルボプラチン+パクリタキセル+放射線療法に、PD-L1抗体であるアベルマブを併用し、術後にもアベルマブを継続するPhase I/II試験(#4041)が行われ、7例のPhase I部分のみの発表であったが、重篤な毒性はなく、pCR割合も43%と比較的良好であった。また、術前化学放射線療法後に切除を行った食道胃接合部腺がんの術後にデュルバルマブを1年投与するPhase II試験(#4058)では、重篤な有害事象はないと報告されている。今後の免疫療法は、“併用療法”“周術期”といったところへシフトしていくと思われる。LBA4 膵臓がんに対するPARP阻害薬メンテナンス:POLO試験(Plenary session)PARP阻害薬であるオラパリブは、生殖細胞系列遺伝子のBRCA(gBRCA)に変異のある乳がんや卵巣がんに用いられているが、他がん腫での検討はまれである。POLO試験では、gBRCA1/2に変異のある進行膵がんに対してプラチナ併用化学療法を行い、進行がみられなかった患者をオラパリブとプラセボに割り付け、メンテナンス治療としての有効性をみた試験である。gBRCA1/2変異は、3,315例の患者をスクリーニングし、247例(7.4%)に認められ、うち、92例がオラパリブ群、62例がプラセボ群に割り付けられた。前治療はFOLFIRINOXが約80%と多く、治療効果も群間で差異はなかった。主要評価項目である無増悪生存期間中央値はオラパリブ群7.4ヵ月、プラセボ群3.8ヵ月であり、HR:0.53と有意に改善が認められた。生存期間を評価するにはイベントは不十分であるが、中央値オラパリブ群18.9ヵ月、プラセボ群18.1ヵ月と差を認めなかった。有害事象は予想されたものであった。また、すべてのサブグループにて同様の傾向であった。日本ではこの試験は実施されておらず、この結果が今後の日常診療にどのように取り込まれるのか、今後注目される。#11503 標準的制吐薬に対するオランザピンの上乗せ効果を検証したJ-FORCE試験(Symptom and Survivorship, Oral presentation)高度催吐性化学療法(Highly Emetogenic Chemotherapy:HEC)における標準制吐療法である、アプレピタント(APR)、セロトニン受容体拮抗薬、デキサメタゾン(DEX)にオランザピン(OLZ)10mgを併用することが遅発期の制吐に有効であることが証明されているが、眠気が問題点であった。この試験では予備的試験を行ったうえ、OLZ:5mgを試験治療群とし、プラセボ群に対する、遅発期(CDDP投与開始24時間後から120時間以内)の嘔吐完全抑制割合における優越性を検証した。705例が登録され、試験治療群が354例、プラセボ群が351例、患者背景は、55歳以上が80%以上、男性が65%、肺がん(50%)、食道がん(20%)、婦人科がん(10%)、その他であった。主要評価項目である遅発期の嘔吐完全抑制割合は、プラセボ群の66%に対して、試験治療群が79%(p<0.001)と有意に優れた結果であった。また、副次的評価項目である急性期の嘔吐完全抑制割合は、プラセボ群の89%に対して、試験治療群が95%(p=0.002)、全期間の嘔吐完全抑制割合は、プラセボ群の64%に対して、試験治療群が78%(p<0.001)と有意に良好な結果であった。試験治療群の有害事象のうち、全グレード(Grade3)の眠気が43%(0.3%)、めまいが8%(0%)と口腔内乾燥が21%(0%)と有意に多かったが、両群ともにGrade4は認めなかった。しかしながら、治療期間中の生活経過記録の解析結果から、試験治療群はプラセボ群と比較して有意(p<0.05)に良好であったことが示され、新たな標準治療であることが示された。日本の支持療法研究グループで行われた臨床試験が、世界の標準治療を塗り替えた非常に意義深い試験である。今回のASCOでも依然として免疫チェックポイント阻害薬の演題が多数を占めた。単剤の治療の時代から、併用療法や集学的治療へシフトしている。また、免疫細胞療法などの演題も多数認められ、新時代の到来を予感させられる。また、J-FORCE試験がOral Presentationに選ばれるなど、支持療法のエビデンス創出が日本でも盛んになってきており、今後にも期待したい。

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第44回 川添流!すぐできる上手なスピーチのコツ【週刊・川添ラヂオ】

動画解説勉強会や学会での研究発表など、人前でのスピーチは得意ですか?全国各地で講演を行う川添先生にはその20年のキャリアでつかんだ「上手なスピーチができる8つの方法」があるそうです。今回はスピーチのコツ第1弾として、声の出し方や目線など、意識すればすぐにできる基本的な3つを紹介します。川添先生が中森明菜や哀川翔になりきる!?

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終末期患者における口腔ケアの必要性

 「最期まで口から食べたい」の思いに応えようと、終末期の口腔ケアは最近のトピックの1つになっている。イタリア・Antea Palliative Care UnitのCaterina Magnani氏らは、ホスピスの入院患者を対象に口腔ケアの影響を調査し、患者は口腔内の変化が多く、その機能が部分的に障害され生活の質が低下していること、そして標準的な口腔ケアは手短に実施可能で、口腔の状態、症状および患者の快適さが改善したことを明らかにした。検討が行われた背景には、「緩和ケアでは口腔の問題がしばしばみられ、口腔顔面痛、味覚障害および口内乾燥など日常生活に支障を来す症状が引き起こされており、口腔ケアが不可欠だが、さまざまな複雑な患者のニーズを管理しなければならないときは優先事項と見なされないことが少なくない」との問題意識があったという。American Journal of Hospice and Palliative Medicine誌オンライン版2019年2月12日号掲載の報告。終末期患者への標準的な口腔ケアで味覚障害および口内乾燥が有意に減少  研究グループは、終末期患者における口腔の状態を明らかにし、症状の管理に対する標準的な口腔ケアの影響と患者が感じている快適さを評価する目的で、前向きコホート研究を行った。 対象はホスピスの入院患者で、研究への参加に同意した患者に看護師が標準的な口腔ケアを行い、登録時およびケア実施3日後に口腔の状態、症状および快適さについて評価した。 終末期患者における口腔ケアの影響を評価した主な結果は以下のとおり。・解析対象は適格患者75例であった。・口腔アセスメントガイドスコアは標準的な口腔ケア後に有意に低下した(p<0.0001)。・看護師が口腔ケアに費やした時間は平均5.3分であった。・味覚障害および口内乾燥も標準的な口腔ケア後に有意に減少した(それぞれp=0.02およびp=0.03)。・口腔ケアを受けた後は、快適と感じた患者が多かった(86.6%)。

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家族性良性慢性天疱瘡〔familial benign chronic pemphigus〕

1 疾患概要■ 概念・定義家族性良性慢性天疱瘡(ヘイリー・ヘイリー病[Hailey-Hailey disease])は、厚生労働省の指定難病(161)に指定されている皮膚の難病である。常染色体優性遺伝を示す先天性の水疱性皮膚疾患で、皮膚病変は生下時には存在せず、主として青壮年期以降に発症する。臨床的に、腋窩・鼠径部・頸部・肛囲などの間擦部に小水疱、びらん、痂皮などによる浸軟局面を生じる。通常、予後は良好である。しかし、広範囲に重篤な皮膚病変を形成し、極度のQOL低下を示す症例もある。また、一般的に夏季に増悪、冬季に軽快し、紫外線曝露・機械的刺激・2次感染により急激に増悪することがある。病理組織学的に、皮膚病変は、表皮下層を中心に棘融解性の表皮内水疱を示す。責任遺伝子はヒトsecretory pathway calcium-ATPase 1(hSPCA1)というゴルジ体のカルシウムポンプをコードするATP2C1であり、3番染色体q22.1に存在する。類似の疾患として、小胞体のカルシウムポンプ、sarco/endoplasmic reticulum Ca2+ ATPase type 2 isoformをコードするATP2A2を責任遺伝子とするダリエ病があり、この疾患は皮膚角化症に分類されている。■ 疫学わが国の患者数は300例程度と考えられている。現在、本疾患は、指定難病として厚生労働省難治性疾患政策研究事業の「皮膚の遺伝関連性希少難治性疾患群の網羅的研究班」(研究代表者:大阪公立大学大学院医学研究科皮膚病態学 橋本 隆)において、アンケートを中心とした疫学調査が進められている。その結果から、より正確なわが国における本疾患の疫学的情報が得られることが期待される。■ 病因本症の責任遺伝子であるATP2C1遺伝子がコードするヒトSPCA1はゴルジ体に存在し、カルシウムやマグネシウムをゴルジ体へ輸送することにより、細胞質およびゴルジ体のホメオスタシスを維持している。ダリエ病と同様に、常染色体優性遺伝する機序として、カルシウムポンプタンパクの遺伝子異常によってハプロ不全が起こり、正常遺伝子産物の発現が低下することによって本疾患の臨床症状が生じると考えられる。しかし、細胞内カルシウムの上昇がどのように表皮細胞内に水疱を形成するか、その機序は明らかとなっていない。■ 症状生下時には皮膚病変はなく、青壮年期以降に、腋窩・鼠径部・頸部・肛門周囲などの間擦部を中心に、小水疱、びらん、痂皮よりなる浸軟局面を示す(図1)。皮膚症状は慢性に経過するが、温熱・紫外線・機械的刺激・感染などの因子により増悪する。時に、胸部・腹部・背部などに広範囲に皮膚病変が拡大することがあり、極度に患者のQOLが低下する。とくに夏季は発汗に伴って増悪し、冬季には軽快する傾向がある。皮膚病変上に、しばしば細菌・真菌・ヘルペスウイルスなどの感染症を併発する。皮膚病変のがん化は認められない。高度の湿潤状態の皮膚病変では悪臭を生じる。表皮以外にも、全身の細胞の細胞内カルシウムが上昇すると考えられるが、皮膚病変以外の症状は生じない。画像を拡大する2 診断 (検査・鑑別診断も含む)診断は主として、厚生労働省指定難病の診断基準に従って行う。すなわち、臨床的に、腋窩・鼠径部・頸部・肛囲などの間擦部位に、小水疱、びらんを伴う浸軟性紅斑局面を形成し、皮疹部のそう痒や、肥厚した局面に生じた亀裂部の痛みを伴うこともある。青壮年期に発症後、症状を反復し慢性に経過する。20~50歳代の発症がほとんどである。皮疹は数ヵ月~数年の周期で増悪、寛解を繰り返す。常染色体優性遺伝を示すが、わが国の約3割は孤発例である。参考項目としては、増悪因子として高温・多湿・多汗(夏季)・機械的刺激、合併症として細菌・真菌・ウイルスによる2次感染、その他のまれな症状として爪甲の白色縦線条、掌蹠の点状小陥凹や角化性小結節、口腔内および食道病変を考慮する。皮膚病変の生検サンプルの病理所見として、表皮基底層直上を中心に棘融解による表皮内裂隙を形成する(図2)。裂隙中の棘融解した角化細胞は少数のデスモソームで緩やかに結合しており、崩れかけたレンガ壁(dilapidated brick wall)と表現される。画像を拡大するダリエ病でみられる異常角化細胞(顆粒体[grains])がまれに出現する。棘融解はダリエ病に比べて、表皮中上層まで広く認められることが多い。生検組織サンプルを用いた直接蛍光抗体法で自己抗体が検出されない。最終的には、ATP2C1の遺伝子検査により遺伝子変異を同定することによって診断確定する(図3)。変異には多様性があり、遺伝子変異の部位・種類と臨床的重症度との相関は明らかにされていない。別に定められた重症度分類により、一定の重症度以上を示す場合、医療費補助の対象となる。画像を拡大する3 治療 (治験中・研究中のものも含む)ステロイド軟膏や活性型ビタミンD3軟膏などの外用療法やレチノイド、免疫抑制薬などの全身療法が使用されているが、対症療法が主体であり、根治療法はない。2次的な感染症が生じたときには、抗真菌薬・抗菌薬・抗ウイルス薬を使用する。予後としては、長期にわたり皮膚症状の寛解・再燃を繰り返すことが多い。比較的長期間の寛解状態を示すことや、加齢に伴い軽快傾向がみられることもある。4 今後の展望前述のように、本疾患は、指定難病として厚生労働省難治性疾患政策研究事業の「皮膚の遺伝関連性希少難治性疾患群の網羅的研究班」において、各種の臨床研究が進んでいる。詳細な疫学調査によりわが国での本疾患の現状が明らかとなること、最終的な診療ガイドラインが作成されることなどが期待される。最近、新しい治療として、遺伝子上の異常部位を消失させるmutation read throughを起こさせる治療として、suppressor tRNAによる遺伝子治療やゲンタマイシンなどの薬剤投与が試みられている。5 主たる診療科皮膚科※ 医療機関によって診療科目の区分は異なることがあります。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)診療、研究に関する情報厚生労働省の難治性疾患克服事業(難治性疾患政策研究事業)皮膚の遺伝関連性希少難治性疾患群の網羅的研究班(研究代表者:橋本 隆 大阪公立大学・大学院医学研究科 皮膚病態学 特任教授)(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)難病情報センター 家族性良性慢性天疱瘡(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)1)Hamada T, et al. J Dermatol Sci. 2008;51:31-36.2)Matsuda M, et al. Exp Dermatol. 2014;23:514-516.公開履歴初回2019年6月25日

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薬剤師飽和時代がいよいよ到来 厚労省の研究報告【早耳うさこの薬局がざわつくニュース】第27回

薬剤師不足が叫ばれて久しいですが、皆さんの薬局では必要な人員が確保できていますでしょうか? このたび、薬剤師の需要に関する見通しについて、研究結果が発表されました。厚生労働科学研究の一環として行われた薬剤師の需要予測によると、ほぼ均衡状態にある2018年度から、43年度には需要総数40.0万人に達して、供給総数は40.8万人と8,000人程度の過剰になることが分かった。(中略)報告書では「今後数年間は需要と供給が均衡している状況が続くことになるが、長期的に見ると供給が上回ることが見込まれている」と指摘した。(2019年6月6日付 日刊薬業)私が薬剤師になってからはや10数年経ちますが、私が学生の頃から「この先、薬剤師は供給過多になるぞ!」と言われていました。その頃から増え続ける薬局軒数、とくに門前薬局の多さが指摘されたり、調剤だけを行っている薬剤師が医薬分業の観点から批判の的となったりしていたので、若かったということもあり結構ビビったものです。実際には、後発医薬品の使用促進や在宅訪問など、さまざまな新しい取り組みもあったことから、薬局が立ち行かなくなるほどの大幅な調剤報酬の削減は免れ、薬局数は右肩上がりに増え続け、薬剤師の求人倍率は5.22(2018年)と売り手市場となっています。今後もこの動向が続くのかどうかは全薬剤師が気になるところでしょう。今回の厚生労働省の研究の一環として行われた予測では、どのような見通しとなっているのでしょうか。【薬剤師の供給予測】直近3年間の薬剤師国家試験の傾向から1年間で約9,800人が毎年合格するとして、25年後の2043年の薬剤師の供給予測は40.8万人と推計されています。なお、6年制薬剤師の割合は、71.3%に達するとされています。【薬剤師の需要予測】2018年の薬局薬剤師数は17.7万人、病院・診療所薬剤師数は5.9万人、処方箋受取率(医薬分業率)は75%を上限として推移すると考えると、2043年の全薬剤師の必要人数は40万人で、そのうち薬局薬剤師数は21.1万人に増加し、病院・診療所薬剤師は5.8万人に減少すると推計されています。今回の研究では、いわゆる対人業務による薬剤師の業務の変化は考慮されていないので、単純に薬局やドラッグストアの店舗数の増加が見込まれていると考えられます。2043年時点では薬剤師の需要よりも供給が8,000人多くなっており、「今後数年間は需要と供給が均衡している状況が続くことになるが、長期的に見ると供給が上回ることが見込まれている」と結論付けられています。もっとも、算出プロセスとして現在および過去の環境や薬剤師業務をもとにしていることから、今後求められる対人業務やAIの活用、もっといえば調剤報酬の変化によって、大きく動向が変わる可能性があります。最も“ゆるく”考えてこの結果なのだという程度に捉えたほうがいいかもしれません。実は、今回報道された研究結果は、とある研究の一部という位置付けでした。それは、「かかりつけ薬剤師・薬局の多機関・多職種との連携に関する調査研究」(研究代表者:安原 眞人氏)という研究で、変わりゆく医療環境の中で、薬剤師が多機関・多職種と連携したPBPM(プロトコールに基づく薬物治療管理)に基づく高度薬学管理機能を患者に提供するための方策を検討し、評価したものです。研究者の中には、がん専門薬剤師など各種分野で活躍されている薬剤師の名前があり、具体的な分野に関して連携やフォロー方法なども記載されています。とても興味深く、勉強になる研究報告書ですので、ぜひ皆さんにも読んでほしいと思います。

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第43回 母の死をきっかけにグリーフケアを極めた大森眞樹先生【週刊・川添ラヂオ】

動画解説今回のゲストは学校薬剤師、災害支援、ケア・カフェなど、さまざまな分野で活躍する熊本県の大森眞樹先生。母親を亡くし、自らグリーフ(悲嘆)を抱えた経験からグリーフケアの資格を取得。その重要性と傾聴の技術について語ります。家族、仕事、環境、そして医療者と患者さんの間でもロスはある。老年薬学会のにぎやかな会場の片隅で、真っすぐすぎる薬剤師の目に光るものが…。

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第21回 緊急避妊薬を巡って議論が紛糾【患者コミュニケーション塾】

 緊急避妊薬を巡って議論が紛糾2018年度の診療報酬改定で「オンライン診療料」が新設されました。これに先立ち、厚生労働省では検討会を設置し、2018年3月にオンライン診療に関するガイドライン「オンライン診療の適切な実施に関する指針」を作成しました。私も構成員の一人としてガイドライン作成の議論に参加しました。ただ、オンライン診療を巡っては、どのような問題が発生するか始めてみないとわからない部分も多かったことと、オンラインにまつわる情報や機器の変遷もめまぐるしいということもあり、ガイドラインは1年後から見直しをすることが決まっていました。早速、ガイドライン見直しの検討会が2019年1月に始まり、再び私も構成員としてさまざまな議論に加わりました。オンライン診療は、「初診は対面で診療を行うこと」が原則とされています。ところが、2月に開催された第2回目の検討会では、早くも「初診対面診療の原則の例外」が議題に挙がってきました。オンライン診療をおこなっている医師や関係者から、例外として検討してほしいと提案・要望があったものとして、「男性型脱毛症(AGA)」「勃起不全症(ED)」「季節性アレルギー性鼻炎」「性感染症」「緊急避妊薬」が紹介されました。私は前の4つの症状については、やはり初診時は直接症状を確認したり、持病がないかの確認をしたりする必要があるので、原則を外してはいけないと考えました。しかし、最後の「緊急避妊薬」に関しては、ほかとは分けて考える必要があると思ったのです。性的被害やデートレイプでも「受診前提」はきつい緊急避妊薬はアフターピルとも呼ばれ、望まない妊娠を避けるために、性交渉から72時間以内に服用することで妊娠を防ぐことができます。もちろん、100パーセントの効果が望めるわけではありませんが、約80パーセントというかなり高い割合で防ぐことができると言われています。ひと口に「望まない妊娠」と言っても、単に避妊に失敗した、軽い気持ちで性交渉したという人もいるでしょう。また、このような緊急避妊薬が手に入ることで、適切に避妊しなくなるという懸念もあります。しかし中には、性的被害に遭った少女や女性もいれば、デートレイプと呼ばれる、拒否できなかった性交渉によって妊娠の可能性が生じた人もいるわけです。そのような“負”の精神状態に置かれている人が、「まずは婦人科を受診して対面診療を」と言われてしまうと、緊急避妊薬を手に入れるハードルはかなり高くなります。それならば、まずはオンライン診療でアプローチできたほうが救われる女性が増えるのではないかと考えました。というのも、私は小学4年生のときに性的被害を受けています。レイプには至りませんでしたが、路地裏に連れて行かれ、「声を出したら殺す」と胸倉をつかまれて脅されながら、陰部に指を入れられました。それはそれは恐ろしい体験で、心臓から冷や汗が流れるような恐怖を味わいました。そのことが親にバレてしまったあと、私が被害を受けた以上に屈辱だったのは、父親が警察に通報したことで自宅に刑事たちがやって来て、現場検証に連れて行かれたことでした。自分が殺されかけた場所に舞い戻り、何をされたのかを話すということがどれだけ心に傷を負うことか、痛いほど経験しています。それだけに、もし婦人科に連れて行かれて、事情を聞かれ、診察をされるとなると、とくに少女にとっては受け入れられる状況とはとても思えませんでした。専門家の反対でかなり限定的になる気配この検討会の構成員は、女性が私一人だけです。私は本来、女性を武器にすることは好きではなく、「男性にはわからないと思いますが」という発言もまずしません。しかし、この問題だけは多くの女性のために私が頑張って発言する必要性を強く感じ、いつも以上に熱を込めた発言を繰り返してきました。この議題が出た当初は、積極的に賛成する構成員がおらず孤軍奮闘でしたが、次第にほかの構成員の賛同が得られるようになってきました。ところが、参考人として検討会に出てきてた産婦人科医が「非常に専門性の高い診断が必要なので、オンラインで診療するとしても処方できるのは産婦人科専門医に限るべきだ」と発言しました。しかし、全国津々浦々にオンライン診療ができる産婦人科専門医がいるわけではなく、性的被害等は全国どこでも起きているわけです。そこで、緊急避妊薬をオンライン診療で処方するのは、産婦人科専門医あるいは事前に厚労省が指定する研修を受講した医師、という方向で話し合いが進んでいきました。また、緊急避妊薬を服用したあとに性器出血があったとしても、必ずしも生理とは限らず妊娠している可能性があることや異所性妊娠(子宮外妊娠)の可能性もあることを考慮して、オンライン診療から3週間後の産婦人科受診の約束を確実に行う。緊急避妊薬の処方は1錠のみとし、ウェブで見える状態下などで内服の確認をする。処方する医師は、医療機関のウェブサイトなどで、緊急避妊薬に関する効能(成功率)、その後の対応のあり方、オンライン診療から薬が手に入るまでの時間、転売や譲渡は禁止されていることなどを明記する、という方向で議論が進みました。一方、緊急避妊薬のオンライン診療を要望している団体の方々は、緊急避妊薬を処方する医師は、産婦人科専門医に限定する必要はない。処方する対象は性暴力被害者に限定せず、必要とするすべての女性にしてほしい。3週間後の受診は必須ではなく、推奨にしてほしい。緊急避妊薬の処方に際して、必ずしも後日の受診を要するわけではない、と主張されています。その主張は私も同感ですが、正論を前面に押し出すと反対勢力は必ず態度を硬化させるので、まずは一歩を踏み出すためのある程度の妥協は必要と考えています。こうしてまとまったガイドラインの改定案は、6月10日に以下の内容で承認されました。例外として、地理的要因がある場合、女性の健康に関する相談窓口等に所属する又はこうした相談窓口等と連携している医師が女性の心理的な状態にかんがみて対面診療が困難であると判断した場合においては、産婦人科医又は厚生労働省が指定する研修を受講した医師が、初診からオンライン診療を行うことは許容され得る。ただし、初診からオンライン診療を行う医師は一錠のみの院外処方を行うこととし、受診した女性は薬局において研修を受けた薬剤師による調剤を受け、薬剤師の面前で内服することとする。その際、医師と薬剤師はより確実な避妊法について適切に説明を行うこと。加えて、内服した女性が避妊の成否等を確認できるよう、産婦人科医による直接の対面診療を約三週間後に受診することを確実に担保することにより、初診からオンライン診療を行う医師は確実なフォローアップを行うこととする。厚労省は今回の議論を受けて、緊急避妊薬を処方できる医療機関のリストを作成すると打ち出しています。これにより、産婦人科以外の医療機関もリストにあれば、診察を恐れる少女や女性のハードルを下げることができるとかすかな期待を抱いています。そもそも、緊急避妊薬の存在や効能自体を知っている人は少ないだけに、情報の周知が必要だと私は考えます。というのも、望まない妊娠の可能性がある少女や女性がインターネットやSNSを介して、緊急避妊薬と称する“薬”を手に入れている現状があるからです。そのような手段で手に入れた“薬”が、偽薬である可能性もあります。それだけに、きちんとした医療機関で処方されることがやはり必要なのです。世界に目を向けてみれば、各国の医療事情は異なるとはいえ、76ヵ国で医師の処方せんなしで薬局の薬剤師によって販売され、19ヵ国では直接薬局で入手することが可能なのです。国際産婦人科連合(FIGO)などでは「医師によるスクリーニングや評価は不要」「薬局カウンターでの販売が可能」と声明を出しているそうです。そんな中、先進国であるはずの日本では、世界的な動きに逆行して、必要とする女性が緊急避妊薬を手に入れるハードルを高くしようとしているとの批判もあるようです。実際に検討会を傍聴している現役の産婦人科医からも、同様の意見を数多く聞きました。いずれにせよ、本来、女性の健康やからだを守るべき産婦人科医の間で意見が割れているのは残念なことだと思います。もっと多くの方にこの問題に関心を持っていただき、声を出せずにいる女性を守る機運を高めていくことができればと思っています。

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冠動脈疾患疑い患者にCTAが有用な臨床的指標は?/BMJ

 安定胸痛があり冠動脈疾患が疑われる患者に対して、冠動脈CT血管造影(冠動脈CTA)による恩恵があるのは、臨床的な検査前確率が7~67%の範囲の患者であることが明らかにされた。また、冠動脈CTAの診断精度は、経験的に64列超の検出器を用いたほうが感度・特異度ともに高いことや、狭心症がある患者でも低下しないこと、男性で高く、高齢者では低いことなども示された。ドイツ・シャリテ大学病院ベルリンのRobert Haase氏らが、65試験についてメタ解析を行い明らかにしたもので、BMJ誌2019年6月12日号で発表した。冠動脈CTAは、正確かつ非侵襲的に閉塞性冠動脈疾患(CAD)をルールアウトすることができる。しかし英国NICEや欧州心臓病学会の現行ガイドラインでは、典型的・非典型的狭心症のすべての患者についてのCTAは推奨されておらず、臨床的情報(性別、年齢、胸痛タイプなど)で推定されたCADの検査前確率が15~50%の患者にのみ実施されているという。CTAの閉塞性CADに関する診断精度を検証 研究グループは、冠動脈CTAと冠動脈造影を比較した診断精度に関する前向き試験について、メタ解析を行った。Medline、Embase、Web of Scienceを用いて公表された試験結果を、また未発表の試験結果については試験を行った研究者に直接連絡を取って確認した。50%以上の内径縮小を閉塞性CADのカットオフ値としており、また全被験者がCADの疑いで冠動脈造影の適応があり、冠動脈CTAと冠動脈造影を両方実施していた試験を解析対象とした。 主要アウトカムは、CTAの閉塞性CADに関する臨床的事前検査としての陽性・陰性適中率で、一般化線形混合モデルで分析した(非CTA診断結果を包含および除外して算出)。 非治療/治療閾値モデルを用いて、CTAの診断精度が高くその実施が適切である検査前確率の範囲を導いた。同モデルでは、CTA陰性の際の検査後確率は15%未満(陰性適中率85%以上)、CTA陽性の際の検査後確率は50%超を閾値とした。64列超検出器のCTA装置で精度が向上 65の前向き診断精度試験(被験者5,332例)のデータを包含して解析した。 臨床的な検査前確率が7~67%の範囲で、非治療/治療閾値モデルの治療閾値50%超、非治療閾値15%未満となった。具体的には検査前確率が7%では、CTAの陽性適中率は50.9%(95%信頼区間[CI]:43.3~57.7)で、陰性適中率は97.8%(同:96.4~98.7)だった。検査前確率が67%では、CTAの陽性適中率は82.7%(同:78.3~86.2)、陰性適中率は85.0%(同:80.2~88.9)だった。 被験者全体ではCTAの感度は95.2%(95%CI:92.6~96.9)、特異度は79.2%(同:74.9~82.9)だった。 また、64列超検出器のCTA装置を用いたほうが、同64列未満の場合に比べ、経験的感度(93.4% vs.86.5%、p=0.002)、特異度(84.4% vs.72.6%、p<0.001)がともに高かった。 CTAのROC曲線下面積(AUC)は0.897[0.889~0.906]であり、CTAの診断能は、男性よりも女性でわずかに低かった(AUC:0.874[0.858~0.890] vs.0.907[0.897~0.916]、p<0.001)。また、75歳超になるとわずかに低くなった(0.864[0.834~0.894]、全年齢群と比較したp=0.018)。狭心症のタイプ(典型的狭心症0.895[0.873~0.917]、非典型的狭心症0.898[0.884~0.913]、非狭心症胸痛0.884[0.870~0.899]、その他の胸部不快感0.915[0.897~0.934])による有意な影響はみられなかった。

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第24回 心肺停止の症例から考えるバイタルサイン2【薬剤師のためのバイタルサイン講座】

最終回は「心肺停止」の症例です。文字通り、心臓と肺の機能が停止した(心停止・呼吸停止)状態です。病院の救急外来には心肺停止の患者さんが搬送されてくることがありますが、搬送される前の状態を思い浮かべてください。もしも人が倒れたその時、その場所にあなたが居合わせたら...。もしもその人があなたの大切な人だったら...。そんなことを想像しながら読んでみてくださいね。患者さんIの場合◎経過──2胸骨圧迫について以前は心臓マッサージと言われていましたので、この呼び方のほうが馴染みがあるかもしれませんが、最近は胸骨圧迫と呼ばれ、一次救命処置では最も大切な手技です。まず、胸の中央に手を置きます〈図3-1〉。そこには胸骨と呼ばれる骨がありますが、圧迫する部位はその胸骨の下半分です。胸骨を圧迫するので胸骨圧迫と言われます。図3-2のような格好で強く・速く・絶え間なく胸を押します。強く:胸が約5cm沈み込むまで強く圧迫しますが、6cmを超えないようにします速く:1分間に100〜120回のテンポで行います絶え間なく:胸骨圧迫を中断する(心肺蘇生を中断する)時間は最小限にしますそしてもう1つのポイントは、圧迫と圧迫の間には胸に力を入れないようにして、胸を完全に元の位置に戻すようにします。「肋骨が折れてしまうことはありませんか?」とよく聞かれますが、骨折することをおそれて不十分な胸骨圧迫となってしまっては、その人を救うことはできません。◎経過──3店員さんは一所懸命に胸骨圧迫を続けています。「あ、替わります」 店員さんが少し疲れてきている様子でしたので、あなたは声をかけました。「ありがとうございます。お願いします」(講習会の時と同じように...、落ち着いて、落ち着いて...、人工呼吸はどうしよう...、とりあえず胸骨圧迫をしっかり...)人工呼吸について本来の心肺蘇生は、胸骨圧迫と人工呼吸を30:2で行います〈図2〉が、人工呼吸ができないか、ためらわれる場合には胸骨圧迫のみの心肺蘇生でも構いません。医療従事者による心肺蘇生でも、人工呼吸ができない状況では胸骨圧迫のみの心肺蘇生でも悪くないとされます。心肺蘇生では人工呼吸(マウス・ツー・マウス)のイメージが強いという人もいますが、心肺蘇生の中で最も大切な手技は胸骨圧迫ということを知っておいてください。◎経過──4息を切らして別の店員さんが戻ってきました。 「AED持ってきました! これ...、使ったことありますか?」そこに居合わせた人たちは顔を見合わせました。3つの心停止とAED心肺停止と判断されたときの心電図波形は大きく3種類に分かれます。「心室細動や(無脈性)心室頻拍」といった、致死性心室性不整脈心臓の電気的活動があるものの脈が触れない場合は、「無脈性電気活動(PEA)」心臓の電気的活動そのものがなくなっている場合は「心静止」心室細動や心室頻拍では電気ショック(電気的除細動)が有効ですが、PEAや心静止には電気的除細動は無効です。そのため、病院内で患者さんが急変したとき、まず初めに心電図モニターを装着します。AEDは、装着すると自動的に心電図波形を解析し除細動が必要かどうかを判断し、除細動が必要なときにはショックボタンを押すことによって除細動を行う機器です。AEDの使い方AEDは蓋を開けると、次にすべきことを音声で教えてくれます〈写真1〉。その通りに行えば誰にでもできます。ですが、いきなり本物を使用するのは勇気がいりますね。練習用の機器がありますから、ぜひ講習会で習ってみてはいかがでしょうか。「私、講習会で習ったんです。やってみます...!」 あなたはAEDをお母さんの傍らに置き、AEDの蓋を開けました。『パッドを図のように胸に貼ってください』パッドにはイラストで貼り付ける位置が描かれています。パッドをそのように貼り付けました〈写真2〉。『心電図を解析します。患者に触れないでください』 胸骨圧迫を中止し、お母さんから離れます。患者に触れていたりしていると、ノイズのために適切な解析ができないことは、先日の講習会で教わりました。『ショックが必要です。患者に触れないでください』「...!(講習会で習った通りにやろう)」講習会では「本番のように(心肺蘇生の)練習してください。もし本当に心肺蘇生をすることになったら、この練習のようにやってください」と言われたことを思い出しました。「皆さん、ショックボタンを押しますから触れないでください!」あなたは周りの人の安全を確認しました。「ショックボタン押します!」◎経過──5ショックボタンを押し終わると、あの店員さんがすぐに胸骨圧迫を再開しました。「ぼくも、ちょうど先日、講習会を受けてきたところなんです」「え?」 「お店の研修のひとつで...」そのときお母さんが 「うぅぅぅん」 とうなって眉をしかめました。「救急車が来ました!」 まもなく救急隊員が入ってきて、あなたの顔を見て言いました。「ありがとうございました。替わりますね」◎経過──6救急隊が到着したときにはお母さんは脈が触れるようになっており、救急車内では少し意識が戻ってきた様子でした。搬送先の救命救急センターでは急性冠症候群※と診断され、まもなくカテーテル治療が行われました。お母さんが無事に退院したのは約3週間後のことです。※急激な血圧上昇・心拍数増加などによる血行動態の変化や冠攣縮などによる冠動脈血管内膜のプラークの破裂、血栓形成により冠動脈の内腔が閉塞、狭窄し引き起される症候群。急性心筋梗塞、不安定狭心症、心原性突然死が含まれる。エピローグ「ここのパスタ、リベンジね」「そうね、この前はありがとう。血圧と糖尿病の薬に、心臓の薬まで加わっちゃったわ。でも、たまには外食もいいわね」ミートソースとカルボナーラを注文しようとすると、半年前のあの店員さんが遠くに見えました。さいごに心肺停止は呼吸や循環などが破綻してしまっている状態といえます。今まで、バイタルサインに着目していろいろな患者さんを一緒に学んできましたが、バイタルサインの異常を呈する患者さんを放っておくと、いずれ心肺停止の状態に陥ってしまうかもしれません。心肺停止は非常に致死率の高い状態です。そうならないためにも、バイタルサインの異常を素早く察知できるようになりましょう。

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国内初のICS/LAMA/LABAが1剤に配合されたCOPD治療薬「テリルジー100エリプタ14吸入用/30吸入用」【下平博士のDIノート】第27回

国内初のICS/LAMA/LABAが1剤に配合されたCOPD治療薬「テリルジー100エリプタ14吸入用/30吸入用」今回は、3成分配合の慢性閉塞性肺疾患(COPD)治療薬「フルチカゾンフランカルボン酸エステル/ウメクリジニウム臭化物/ビランテロールトリフェニル酢酸塩ドライパウダーインヘラー(商品名:テリルジー100エリプタ14吸入用/30吸入用)」を紹介します。本剤は、COPD患者の呼吸困難などの諸症状を1日1回の吸入で改善し、QOLの改善にも寄与することが期待されています。<効能・効果>本剤は、COPD(慢性気管支炎・肺気腫)における諸症状の緩解の適応で、2019年3月26日に承認され、2019年5月22日より発売されています。なお、本剤の使用は、吸入ステロイド薬(ICS)、長時間作用性抗コリン薬(LAMA)および長時間作用性β2刺激薬(LABA)の併用が必要な場合に限られます。<用法・用量>通常、成人には本剤1吸入(フルチカゾンフランカルボン酸エステルとして100μg、ウメクリジニウムとして62.5μgおよびビランテロールとして25μg)を1日1回投与します。<副作用>第III相国際共同試験(投与期間:52週)において、本剤が投与された総症例4,151例中485例(11.7%)に臨床検査値異常を含む副作用が報告されています。主なものは、口腔カンジダ症101例(2.4%)、肺炎45例(1.1%)、発声障害26例(0.6%)でした(承認時)。重大な副作用としてアナフィラキシー反応(頻度不明)、肺炎(1.1%)、心房細動(0.1%)が認められています。なお、ICSを長期で使用した場合、肺炎のリスクが高まる懸念があるため注意が必要です。<患者さんへの指導例>1.本剤は、気管支を拡張させる薬2種類と、炎症を抑える薬の計3種類が配合されているCOPDの治療薬です。2.1日1回の吸入で、持続的に気管支を広げるとともに炎症を抑えることで、呼吸を楽にして身体の活動性を改善します。3.毎日なるべく同じ時間帯に吸入し、1日1回を超えて吸入しないようにしてください。4.声がれや感染症を予防するため、吸入後はうがいをしてください。5.口の渇き、目のピントが合いにくい、尿が出にくい、動悸、手足の震えなどの症状が現れたらご連絡ください。6.COPDの治療では禁煙が大切なので、薬物治療と共に禁煙を徹底し、継続しましょう。7.薬のカバーを開けると吸入の準備が完了し、カウンターが減ります。必要以上に開け閉めすると、必要回数が吸入できなくなるため、吸入時以外はカバーを開けないでください。<Shimo's eyes>本剤は、国内初の3成分(吸入ステロイド薬[ICS]、長時間作用性抗コリン薬[LAMA]、長時間作用性β2刺激薬[LABA])が配合されたCOPD治療薬です。『COPD診断と治療のためのガイドライン2018[第5版]』において、安定期COPDの維持療法としては、気管支拡張薬のLAMA(あるいはLABA)を単剤で用い、効果不十分な場合はLAMA+LABAの併用が推奨されています。しかし、COPD患者の15~20%は喘息が合併していると見込まれており、その場合はICSを併用することとされています。なお、海外で報告されているGOLD2019レポートでは、LAMAもしくはLABAの単剤療法またはLAMA+LABAの併用療法を行っても増悪を繰り返す患者には、ICSの追加が有効な例もあるとされています。本剤は、COPD患者に対するLAMA+LABA+ICSのトリプルセラピーを1剤で行うことができますが、3成分それぞれの薬剤に関する副作用に注意する必要があります。患者さんへ確認するポイントとしては、LAMAによる口渇、視調節障害、排尿困難、LABAによる不整脈、頭痛、手足の震え、ICSによる口腔カンジダ症などが挙げられます。とくに、過量投与時には不整脈、心停止などの重篤な副作用が発現する恐れがあるため、服薬指導では吸入を忘れたときの対応などと併せて、1日に1回を超えて使用しないよう注意を促しましょう。COPD患者は、喫煙や加齢に伴う併存症に対する治療を行っていることが多く、安定期ではアドヒアランスが低下することがあります。COPDに加えて喘息の治療が必要な場合に、本剤のような3成分配合吸入薬を選択することで、症状の改善およびアドヒアランスの向上が期待できます。

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高齢者の医薬品適正使用に関する各論GLが完成/厚労省

 厚生労働省の高齢者医薬品適正使用検討会は 、2019年6月14日『高齢者の医薬品適正使用の指針(各論編[療養環境別])』を取りまとめたことを通知した。『高齢者の医薬品適正使用の指針(総論編)』の追補版 高齢化の進展に伴い、わが国は、加齢による生理的な変化や複数の併存疾患を治療するための医薬品の多剤服用などによって、安全性の問題が生じやすい状況にある。厚労省は、2017年4月に「高齢者医薬品適正使用検討会」を設置し、高齢者の薬物療法の安全確保に必要な事項の調査・検討を進めており、2018年5月には『高齢者の医薬品適正使用の指針(総論編)』を取りまとめている。 今回の高齢者の医薬品適正使用の指針は、「総論編」の補完を目的に、昨年から検討会で議論され、療養環境別の「各論編」として完成した。『高齢者の医薬品適正使用の指針(各論編)』は患者の療養環境別の3部構成 高齢者の医薬品適正使用の指針(各論編)では、患者の療養環境として「外来・在宅医療・特別養護老人ホーム等の常勤の医師が配置されていない施設」「急性期後の回復期・慢性期の入院医療」「その他の療養環境(常勤の医師が配置されている介護施設 等)」の3部に分けられ、それぞれの環境における処方確認・見直しの考え方、療養期間を通した留意点、処方検討時の留意点についての詳細が記載されている。 また、別表の「高齢者で汎用される薬剤の基本的な留意点」では、総論編(A~L)に追加の形で、M.認知症治療薬、N.骨粗鬆症治療薬、O.COPD治療薬、P.緩和医療で使用される薬剤について、薬効群ごとの薬剤選択や投与量・使用法に関する注意点、他の薬剤との相互作用に関する注意点が一覧化されている。高齢者の医薬品適正使用の指針(各論編)では処方見直しの8つの事例を添付 高齢者の医薬品適正使用の指針(各論編)では、減薬が上手くいった例として、脳出血に伴い活動量が低下し薬物有害事象が発現した事例、徐放錠を粉砕したことによる薬物有害事象が疑われた事例など、8つの症例を添付している。 これには、介入前後の処方薬、服薬管理方法、介入のきっかけ、介入のポイント、介入後の経過についての詳細に加え、患者の生活状況やそれを踏まえた多職種の関わり方も記載されている。

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