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ウルソの特性を生かしたアドヒアランス改善提案【うまくいく!処方提案プラクティス】第12回

 今回は、患者さんの服薬管理方法に着目し、用法をまとめたことでアドヒアランスが改善した事例を紹介します。分3内服の典型薬剤であるウルソデオキシコール酸の意外な特性を活かした処方提案ですので参考になれば幸いです。患者情報70歳、女性(施設入居)基礎疾患:原発性胆汁性肝硬変、心不全、糖尿病、逆流性食道炎内服管理:自己管理処方内容(介入時)1.ウルソデオキシコール酸100mg 3錠 分3 毎食後2.ラベプラゾール錠10mg 1錠 分1 朝食後3.フロセミド錠40mg 1錠 分1 朝食後4.インスリンリスプロ注 1日3回 毎食直前 朝4−昼4−夕4単位5.インスリングラルギン注 1日1回 就寝前 6単位本症例のポイント施設入居時、残薬だけで3ヵ月は生活できるほど大量に薬が余っていました。血糖コントロールは当然不良でしたが、患者さんに危機感はなく、「血糖自己測定(SMBG)は家事の際にしみて痛いから嫌だ」、「毎食後の注射は煩わしいから嫌だ」と訴えていました。薬剤師の訪問開始後、治療の必要性を伝えたり手技を確認したりしたものの、それでも毎回のように残薬があり、インスリンリスプロの単位数は4-4-4→6-6-4→6-6-6と、だんだん増量となっていきました。そうこうしているうちに、HbA1cは15.6まで上昇し、医師より血糖管理不良の判断がなされ、インスリングラルギンの単位数が16単位へ増量となりました。なお、ウルソデオキシコール酸については、昼・夕分はほとんど手が付けられておらず、肝機能も悪化気味でした。インスリン注射をきちんと打てていない理由は何かあらためて探ってみたところ、この患者さんは間食が大好きで、一日中何かしら食べていることが判明。さらに、インスリン単位数を上げているので間食を増やしてもいいのだと都合よく解釈し、実際には打っていないこともわかりました。そのような治療意識の低さが日々の内服薬の服薬アドヒアランスにも影響していました。患者さんの問題点を整理すると、(1)患者さんの病識不足による血糖管理不良、(2)内服アドヒアランス不良に伴う肝機能・心不全の悪化の2点だと考えました。患者さんにとって現状で何が一番負担かを聴取すると、毎食前のインスリンと毎食後の内服薬だという話を聞くことができました。ほぼすべてが負担と感じている状況ですが、服薬回数を減らすことでアドヒアランス向上につながる可能性があると思い、ウルソデオキシコール酸の服薬回数に着目しました。ウルソデオキシコール酸(UDCA)の薬理作用<利胆作用>:細胞障害性の胆汁酸トランスポーター発現→胆汁量増(胆汁うっ滞改善作用)<置換作用>:細胞障害の強い疎水性胆汁酸とUDCA(親水性:細胞障害なし)と置き換わることによる肝障害の軽減上記の置換作用は、投与回数ではなく総投与量が相関しているため、1日1回にまとめることは可能。ただし、消化器系副作用が増加するという報告もあるため注意が必要。このことから、ウルソデオキシコール酸を朝にまとめることで内服回数を1日1回に減らすことが可能と考えました。また、根本の問題である血糖管理も、インスリンリスプロ注をほとんど使用していないためであり、朝の内服に合わせたインスリングラルギンによる治療管理の提案と間食の節制などの指導を行うこととしました。処方提案と経過医師にトレーシングレポートを用いて、ウルソデオキシコール酸を朝にまとめることと、インスリングラルギンを朝単回にしてリズムを作るのはどうか提案しました。医師もコンプライアンスについて問題視していたため、まずはきちんと内服とインスリンを打つことが先決との返答をいただき、承認を得ることができました。その後、ウルソデオキシコール酸とほかの内服薬の服用タイミングがそろったことから一包化しました。すると、内服管理が朝のみになったことで本人の負担が軽減され、飲み忘れることがなくなりました。また、内服とインスリンの使用機会も同一となり、インスリンを確実に打てるようになりました。血糖推移も血糖管理手帳によると300~400台から120~200台まで改善しました。結果が良くなってきたことで、患者さんの意識が少しずつ変化し、今ではかなり自信がついたと感じています。間食をダラダラ食べ続けることが減ったことも影響していると考えます。なお、ウルソデオキシコール酸の投与回数を1回/日にまとめたことで消化器系副作用が懸念されていましたが、胸焼けや悪心などの症状の出現はなく経過しています。上垣佐登子ほか. 肝臓. 2007;48:559-561.

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アトピー性皮膚炎患者の全がんリスクは?

 アトピー性皮膚炎(AD)とがんの関連性についてはさまざまな見解がある。カナダ・トロント大学のLily Wang氏らは、一般集団と比較したAD患者のがんリスクを明らかにするシステマティックレビューとメタ解析を行った。観察的エビデンスとして、ADはケラチノサイトがんおよび腎がんのリスク増大と関連する可能性がある一方、肺・呼吸器系がんとの関連性は低い可能性が示されたという。結果を踏まえて著者は「さらなる研究を行い、現行エビデンスの不均一性と限界に焦点を当て、ADとがんリスクの関連性の基礎を成すメカニズムを解明する必要がある」とまとめている。JAMA Dermatology誌オンライン版2019年12月11日号掲載の報告。 研究グループは、一般集団と比較したAD患者の非皮膚・皮膚がんのリスクを評価した。MEDLINE(1946年~)、Embase(1980年~)を2019年1月3日時点で検索し、「NEOPLASMS」「neoplas」「tumo」「cancer」「malignanc」および「Dermatitis, Atopic」「dermatit」「neurodermatit」「eczema」「disseminated」「neurodermatit」などの単語を含む論文を特定。観察試験(コホートおよびケースコントロール)でAD患者のがん推定リスクを対照(一般市民または非AD患者)と比較して報告していた論文を適格とし、包含した。 2人のレビュアーがそれぞれデータを抽出し、ROBINS-I評価ツールを用いて観察曝露試験を修正し、バイアスリスクを評価した。抽出したデータはランダム効果モデルを用いてプールし、標準化罹患率比(SIR)またはオッズ比(OR)を95%信頼区間(CI)値とともに算出した。不均一性についてCochrane Q統計およびI2統計を用いて評価した。 本研究の主なアウトカムは、SIRまたはORで評価したがんリスクとした。 主な結果は以下のとおり。・システマティックレビューとメタ解析には、住民ベースコホート試験8(572万6,692例)とケースコントロール試験48(11万4,136例)が包含された。・コホート試験間で、ADとケラチノサイトがん(5試験、pooled SIR:1.46、95%CI:1.20~1.77)、腎がん(2試験、1.86、1.14~3.04)、中枢神経系がん(2試験、1.81、1.22~2.70)、膵がん(1試験、1.90、1.03~3.50)に統計的に有意な関連が認められた。・48のケースコントロール試験間において、AD患者の中枢神経系がん(15試験、pooled OR:0.76、95%CI:0.70~0.82)、膵がん(5試験、0.81、0.66~0.98)のORは、コホート試験で高い発生率が認められたにもかかわらず、統計的に有意に低かった。・ケースコントロール試験では、肺・呼吸器系がんのORも低いことが示された(4試験、pooled OR:0.61、95%CI:0.45~0.82)。・ADとその他のがん(メラノーマを含む)の関連性を認めるエビデンスは見いだせなかった。・なお、その他多くのがんの試験では、データのプールの妨げとなるかなりの不均一性があり、包含試験間には中等度~重度のバイアスリスクが存在した。

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患者団体と製薬企業とのつながりとは/BMJ

 オーストラリア・シドニー大学のLisa Parker氏らは、患者団体と製薬企業の間の相互作用を調べる質的研究を行った。疾患別に存在する患者団体の多くが、製薬企業から資金提供を受けているが、患者団体は、患者および介護者に対する支援やアドボカシー、情報提供において重要な役割を担っている。また、医療および製薬の政策において影響力のあるアドボケイト(代弁者)としての地位を増しており、研究グループは、両者間の相互作用の解明を試みた。その結果、相互作用としての「asset exchange(資産交換)」の問題が明確になったという。BMJ誌2019年12月12日号掲載の報告。質的研究で、患者団体と製薬企業との関係性を調査 検討は、患者団体の代表者の観点から製薬企業のスポンサーシップをどのように見ているのか、また相互作用がどのように、なぜ、いつ発生するのかを調べることで、相互作用の質を理解し報告することを目的とした。 研究には、製薬企業と多様なレベルの資金提供でつながりのある、オーストラリアの23の患者団体から27人が参加。患者団体は、一般的な医療消費問題や疾患別の話題にフォーカスしている、地域または全国規模の団体であった。 調査は、倫理学の理論(グラウンデッドセオリー)で知られている経験的・質的インタビュー研究法を用い、インタビューでの聞き取りをデータカテゴリーにコード化して分析した。調査結果は、データを描出し解き明かすために新しい概念カテゴリーに編成され、また引用符でサポートされた。資金提供を受ければ、何らかの見返りを求められることに留意すべき 患者団体と製薬企業の関係性のタイプとして、製薬企業のスポンサーシップに対する姿勢の違いによる4つのタイプが特定された。 支配的な関係性(dominant relationship)のタイプは、ビジネスパートナーシップとして成功したタイプといえ、患者団体は企業の人間と密接な協力関係を築いていることが示された。このタイプの患者団体は、企業の悪影響の可能性を認識しつつ、企業の影響を回避する戦略があるとの自信を示していた。 その他の患者団体は、不十分(unsatisfactory)または未発達(undeveloped)な関係性であることが示され、いくつかの患者団体(すべて一般医療消費団体)は、製薬企業とは基本的な関心事が対立しており、自分たちのミッションと相いれないものであることを示した。 患者団体は、自分たちと製薬企業の間の相互作用は、団体のメンバーが興味を示す可能性がある新薬を会社が手にしたときにより多く発生していると報告した。 また、企業の資金提供を受け入れた患者団体は、企業と“asset”(資産)の交換に関わっていることが明らかになった。患者団体は、金銭、情報、アドバイスを受け取るのと引き換えに、企業にマーケティングや主要なオピニオンリーダーとの関係構築の機会を与えることや、医薬品の入手や助成金に関する企業のロビー活動に協力したり、治験への参加者集めを支援したり、企業の信頼性を強化することに関与していた。 著者は、「製薬企業のスポンサーシップについての患者団体の幅広い見方について理解することは、両者間のあらゆる倫理的懸念を特定し統制しようとする患者団体にとって役立つものとなるだろう」と述べるとともに、「製薬企業から金銭を受け取っている患者団体は、“返礼”として特定の資産を要求される可能性があることを想定しておくべきである」と指摘。続けて「活発にマーケティングを行う機会があると見なした患者団体への製薬企業による選択的な資金提供は、患者団体本来の活動を製薬企業の関心事にねじ曲げて向かわせる可能性があり、企業の代理人としてアドボカシーを発揮し、医療政策にも影響を及ぼす可能性がある」と警鐘を鳴らした。

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心拍数を下げて心臓の負担を減らす慢性心不全治療薬「コララン錠2.5mg/5mg/7.5mg」【下平博士のDIノート】第40回

心拍数を下げて心臓の負担を減らす慢性心不全治療薬「コララン錠2.5mg/5mg/7.5mg」今回は、HCN(hyperpolarization-activated cyclic nucleotide-gated)チャネル遮断薬「イバブラジン塩酸塩錠」(商品名:コララン錠2.5mg/5mg/7.5mg、小野薬品工業)を紹介します。本剤は、心臓の伝導性、収縮性、再分極および血圧に影響を与えず、心拍数を減少させる新規慢性心不全治療薬として期待されています。<効能・効果>本剤は、洞調律かつ投与開始時の安静時心拍数が75回/分以上の慢性心不全(β遮断薬を含む慢性心不全の標準的な治療を受けている患者に限る)の適応で、2019年9月20日に承認され、2019年11月19日より発売されています。<用法・用量>通常、成人にはイバブラジンとして1回2.5mgを1日2回食後経口投与します。1回投与量は2.5mg、5mg、7.5mgのいずれかとし、増量する際は2週間以上の間隔を空けて段階的に調節します。目標とする安静時心拍数は50~60回/分とし、目標値を超える場合は段階的な増量、下回るまたは徐脈関連症状(めまい、倦怠感、低血圧など)が認められた場合は段階的な減量が必要です。なお、本剤は次のいずれかの患者に対して投与を検討します。β遮断薬の最大忍容量を投与されても安静時心拍数が75回/分以上の患者β遮断薬に対する忍容性がない、もしくは禁忌など、β遮断薬を使用できない患者<副作用>国内第III相試験(ONO-1162-03試験)および海外第III相試験(SHIFT試験)において、本剤が投与された安全性評価対象3,359例のうち、636例(18.9%)に副作用が認められました。主な副作用は、徐脈122例(3.6%)、光視症95例(2.8%)、胃腸障害47例(1.4%)、心不全27例(0.8%)、霧視15例(0.4%)でした。なお、心拍数減少を含む徐脈(8.0%)、光視症(同上)、霧視(同上)、房室ブロック(0.6%)、心房細動(0.3%)、心電図QT延長(0.2%)が、重大な副作用として報告されています(承認時)。<患者さんへの指導例>1.この薬は、心臓の過剰な働きを緩やかにすることで、心臓の負担を軽減して心不全の悪化を防ぎます。2.暗い部屋で突然稲妻のような光が見えたり、目がチカチカしたり、視界がかすんで見えたりするような症状が生じることがあります。これらの症状が認められた場合は、自動車の運転など危険を伴う機械の操作に従事しないでください。3.めまい、立ちくらみ、息切れ、脈が飛ぶ、動悸などの症状が現れたら、すぐに医師に連絡してください。4.このお薬は、妊娠・授乳している女性には使うことができません。妊娠を希望する場合は主治医に相談してください。<Shimo's eyes>慢性心不全の患者さんでは、十分な血液量を拍出できない心臓の働きを補うために、心拍数が高くなることがあります。それが長期間継続すると、日常生活に支障が生じるのみならず、予後にまで悪影響を及ぼすことが知られています。本剤は、心臓の洞結節に発現するHCNチャネルを阻害することで、心臓のペースメーカー電流を抑制して心拍数を減少させます。対象となる患者さんは、β遮断薬を含む慢性心不全の標準的な治療を受けていて、安静時心拍数が75回/分を上回る方に限定されますが、副作用や禁忌によってβ遮断薬が使用できない場合も可能です。本剤の効果が期待できるのは、心臓が正常なリズムを示す洞調律を保った患者さんであり、洞不全症候群や洞房ブロックなどの患者さんは禁忌です。また、収縮期血圧が90mmHg未満または拡張期血圧が50mmHg未満の低血圧、重度の肝機能障害(Child-Pugh分類C)の患者さんにも使用できません。本剤はCYP3Aの基質であるため、強力なCYP3A阻害作用を持つイトラコナゾール、クラリスロマイシンなどのほかにも、中等度のCYP3A阻害作用に加えて心拍数減少作用を持つベラパミル、ジルチアゼムとは併用禁忌です。副作用の眼症状発現について、本剤は洞結節のHCN4チャネルに加えて、視細胞のHCN1チャネルを阻害することが原因の1つと考えられています。光視症、霧視を認めた場合は、本剤の減量や投与中止を含めた対応を提案しましょう。なお、2019年9月現在、本剤は「慢性心不全」に関連する効能・効果について、100以上の国または地域で承認されています。参考1)PMDA コララン錠2.5mg/5mg/7.5mg

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ワクチン接種における副反応、副反応疑い報告制度と救済制度【今、知っておきたいワクチンの話】総論 第2回

はじめにワクチンの予防接種は、個人と集団(社会)を感染症から守るために重要な予防的措置である。しかし、ほかの医薬品と同様に副作用が起こるリスクはゼロではなく、極めてまれではあるが、不可避的に健康被害が起こり得る。そのため、私たち医療者はワクチン接種における副作用(副反応)とその報告制度、健康被害時の救済制度について理解し、ワクチン接種を受ける方(被接種者)やその保護者に対して予診の際にこれらについて説明し、副反応や健康被害が発生した際にはサポートできるようにしておく必要がある。「有害事象」「副作用」「副反応」は何が違う?「有害事象」「副作用」「副反応」、これらはワクチン接種に関連して使用される用語だが、使い分けができているだろうか(表1)。「有害事象」や「副作用」は、ワクチンを含む医薬品や手術などの医療行為に関連して使用され、「副反応」はワクチン接種に関連した事象に限定して使用される。いずれも「ワクチン接種をしたあとに起こった症状」に対して使用される用語だが、しばしば混同されている。とくに一般の方やマスメディアでは、誤解して使用や理解されていることがあり、医療者として注意が必要である。(図1)1)有害事象因果関係の有無を問わず、ワクチン接種など医薬品の投与や手術や放射線治療など医療行為を受けたあと患者(被接種者)に生じた医療上のあらゆる好ましくない出来事のこと。医療行為と有害事象との間に時間的に関連がある、前後関係はあるが、因果関係の有無は問わないということになる。そのため有害事象には、ワクチン接種後に偶然あるいは別の原因で生じた出来事も含まれる。しばしば、この時間的な前後関係をただちに因果関係であるかのようにメディアが報じたり、一般の方がそのように誤解していることに注意する。2)副作用治療や予防のために用いる医薬品の主な作用を主作用といい、主作用と異なる作用を副作用という。広義の副作用(side effect)には、人体にとって有害な作用と有害でない(好ましい、肯定的な)作用の両方が含まれる。一般的には医薬品による副作用に対しては、有害な作用である狭義の副作用(adverse drug reaction)が用いられる。医薬品と副作用の間には前後関係があり、また、副作用は医薬品の「作用」であるため、医薬品と副作用(による症状)の間には、因果関係があるということになる。3)副反応ワクチン接種の主作用(ワクチン接種の目的)は、ワクチン接種によって免疫反応を起こし、ワクチンが対象とするVPD(Vaccine Preventable Diseases:ワクチンで防げる病気)に対する免疫を付与することである。一方、ワクチン接種に伴う、免疫の付与以外の反応や接種行為による有害事象を副反応という。言い換えると副反応とは「ワクチン接種による(狭義の)副作用と接種行為が誘因となった有害事象」のことである。そのため、ワクチン接種と副反応の間には前後関係があり、因果関係があるということになる。表1 有害事象、副作用、副反応の違い画像を拡大する図1 有害事象、副作用、副反応の概念図画像を拡大する副反応・有害事象の要因と症状副反応・有害事象の主な要因と症状を表2に示す。表2 副反応・有害事象の主な要因と症状画像を拡大する1)不活化ワクチン一般的な副反応として、接種した抗原・アジュバンドやワクチン構成成分などで誘起された炎症による局所反応(発赤、硬結、疼痛など)や全身反応(発熱、発疹など)がある。また、数10万〜100万分の1の確率とまれではあるが重篤な副反応として、アナフィラキシーや血小板減少性紫斑病、脳炎・脳症などがある。医療者はこれらの副反応について、事前に被接種者や保護者に説明を行う。とくに頻度の高い一般的な副反応については、症状出現時の対応(表3)まで含めて説明する。また、接種後のアナフィラキシーなどに対応するため、接種後30分は院内で経過観察を行う。2)生ワクチン弱毒化したワクチン株による感染、つまり病原性の再獲得によって生じる副反応がある。なお、局所の発赤や発熱などの高頻度な副反応は、軽微な症状であるため、単独では予防接種後副反応疑い報告基準(後述)における医療者の報告義務規定にはあたらない。表3 高頻度な副反応の経過と対応画像を拡大する予防接種後副反応疑い報告制度とは予防接種後副反応疑い報告制度とは、予防接種法に基づき、「医師などが予防接種を受けた者が一定の症状を呈していると知った場合に厚生労働大臣に報告しなければならない(報告義務がある)制度」である。この制度は、予防接種後に生じる種々の身体的反応や副反応疑いについて情報を収集し、ワクチンの安全性について管理・検討を行い、国民に情報を提供すること、および今後の予防接種行政の推進に資することを目的としている。本制度は、2013年の法改正により大幅に変更され、2014年11月から副反応疑い報告(予防接種法)と医薬品・医療機器等安全性情報報告(医薬品医療機器等法)の報告先は独立行政法人 医薬品医療機器総合機構(PMDA:Pharmaceuticals and Medical Devices Agency)に一元化され、報告の方法が簡素化された。報告基準1)定期接種の場合予防接種法に基づいて報告基準があり、ワクチン(対象疾患)ごとに報告すべき症状、症状発生までの時間(期間)が規定されている(表4)。この報告基準にある症状(「その他の反応」を除く)について、それぞれに定められている時間までに発症した場合は、因果関係の有無を問わず、医師などは報告する義務がある。「その他の反応」については(1)入院、(2)死亡または永続的な機能不全に陥るおそれがある場合で、それが予防接種との因果関係が疑われる症状について報告する。また、報告基準にある症状でこの時間を超えて発生した場合でも、因果関係が疑われるものについては「その他の反応」として報告する。2)任意接種の場合定期接種の場合のような報告基準はなく、医師などは予防接種後副反応疑い報告書に症状名を記載する。表4 報告基準の例(一部抜粋)画像を拡大する報告方法予防接種後副反応疑い報告書を厚生労働省のWebサイトよりダウンロードし記入、または国立感染症研究所のWebサイトより入力アプリをダウンロードし、報告書PDFを作成、印刷し、PMDAへFAX(FAX番号:0120-176-146)にて送信する。これら報告の流れを図2に示す。図2 予防接種後副反応疑い報告の流れ画像を拡大する救済制度についてきちんと説明していますか?インフルエンザワクチンの任意接種用の予診票の医師記入欄には「本人又は、保護者に対して、予防接種の効果、副反応及び独立行政法人医薬品医療機器総合機構法に基づく救済について説明しました。」と記載がある。あなたは被接種者や保護者に対して、ワクチン接種における救済制度についてきちんと説明ができているだろうか。予防接種後の健康被害に対する救済制度前述のとおり、予防接種は感染症から個人と社会を守るための重要な施策であるが、極めてまれに健康被害が起こり得る。そのため、予防接種によって健康被害を受けた方に対する特別な配慮が必要であり、公的な救済制度が設けられている。救済制度は一律ではなく、定期接種、任意接種によって異なることに注意する。いずれの場合も給付の請求者は健康被害を受けた本人や家族であるため、医師は救済制度を紹介し、診断書や証明書の作成に協力する。ワクチン接種と健康被害との間に因果関係が認められた場合に救済給付が実施される(表5)。表5 予防接種後の健康被害救済制度の違い画像を拡大する給付の種類には、(1)医療機関での治療に要した医療費や医療手当(医療を受けるために要した諸費用)、(2)障害が残った場合の障害児養育年金または障害年金、(3)死亡時の葬祭料および一時金、遺族年金があるが、各制度によって給付額は大きく異なる。なお、国内未承認ワクチン(いわゆる輸入ワクチン)に対しては、輸入業者が独自の補償制度を設定している場合もあるが、これらの公的な制度は適応されないことにも注意する。1)定期接種の場合:予防接種健康被害救済制度予防接種健康被害救済制度は、予防接種法に基づく定期の予防接種(定期接種)により健康被害を受けた方を救済するための公的な制度である。定期接種を受けた方に健康被害が生じた場合、対象となる予防接種と健康被害との因果関係があるかどうかを疾病・障害認定審査会で個別に審査し、厚生労働大臣が因果関係を認定した場合は、市町村長は健康被害に対する給付を行う。給付の内容は、定期接種のうちA類疾病(B型肝炎、Hib感染症、小児の肺炎球菌感染症、ジフテリア・百日咳・破傷風・ポリオ、結核、麻しん・風しん、水痘、日本脳炎、ヒトパピローマウイルス感染症)とB類疾病(インフルエンザ、高齢者の肺炎球菌感染症)で異なる。B類疾病による健康被害の請求の期限は、その内容によって2年または5年となっているため、とくに留意する。なお、健康被害について賠償責任が生じた場合であっても、その責任は市町村、都道府県または国が負うものであり、当該医師は故意または重大な過失がない限り、責任を問われるものではない。2)任意接種の場合:医薬品副作用被害救済制度および生物由来製品感染等被害救済制度医薬品副作用被害救済制度および生物由来製品感染等被害救済制度は、独立行政法人 医薬品医療機器総合機構法(PMDA法)に基づく公的な制度である。これらの制度は、医薬品などを適正に使用したにもかかわらず発生した副作用による入院が必要な程度の疾病や日常生活が著しく制限される程度の障害などの健康被害を受けた方に対して、医療費などの給付を行い、被害を受けた方の迅速な救済(民事責任との切り離し)を図ることを目的としている。どちらの制度が適用されるかは、健康被害の内容や原因によって異なるが、申請窓口はいずれもPMDAであるため、患者や家族から健康被害の相談を受けた際にはPMDAの相談窓口(電話番号:0120-149-931)を紹介する。被接種者・保護者への説明資料以下のような一般の方向けの資料を活用する。日本小児科学会の「知っておきたいわくちん情報」〔予防接種の副反応と有害事象〕医薬品副作用被害救済制度リーフレットまとめ「有害事象」「副作用」「副反応」はしばしば混同されて使用されており、医療者としてこれらの違いを理解する。医師などには予防接種後の副反応を疑った際に報告する義務がある。報告制度は定期接種、任意接種によって異なるが、報告先はPMDAに一元化されている。予防接種後の健康被害に対する公的な救済制度は、定期接種、任意接種によって異なるが、いずれもその請求は本人・家族が行うため、医療者はこれらの制度を紹介しサポートする。副反応疑い報告制度と救済制度制度の詳細については、「参考になるサイト」に示した、それぞれ厚生労働省やPMDAのWebサイトおよび『予防接種必携』1)を参照していただきたい。1)予防接種実施者のための予防接種必携 令和元年度(2019).公益財団法人予防接種リサーチセンター.2019.2)藤岡雅司ほか. 予防接種マネジメント. 中山書店;2013.3)中山久仁子編集. おとなのワクチン. 南山堂;2019.参考になるサイト1)予防接種後の有害事象.予防接種基礎講座〔2017年3月開催資料〕(厚生労働省)2)予防接種後副反応疑い報告制度(厚生労働省)[予防接種法に基づく医師等の報告のお願い][予防接種法に基づく副反応疑い報告(医療従事者向け)]3)予防接種後副反応疑い報告書〔別紙様式1〕(厚生労働省)4)「予防接種後副反応疑い報告書」入力アプリ(国立感染症研究所)5)予防接種健康被害救済制度(厚生労働省)6)医薬品副作用被害救済制度(独立行政法人 医薬品医療機器総合機構〔PMDA〕).[制度の概要][医療関係者向け][一般の方向け]7)日本小児科学会の「知っておきたいわくちん情報」予防接種の副反応と有害事象(日本小児科学会)講師紹介

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年1~2回の芸術活動が寿命に好影響/BMJ

 美術館やコンサートに行くといった受容的芸術活動(receptive arts engagement)は、高齢者の寿命に保護的作用をもたらす可能性が示された。同活動を1年に1~2回行う人は、まったく行わない人に比べて死亡リスクが約14%低く、2~3ヵ月に1回行う人では31%も低かったという。英国・ユニバーシティ・カレッジ・ロンドンのDaisy Fancourt氏らが、50歳以上の住民6,710例を約14年間追跡したデータを解析して明らかにした。なお示された関連性について著者は、「芸術活動をする人としない人における認知レベル、メンタルヘルス、身体活動度の違いによって部分的に説明はできそうだが、それらの因子を補正したモデルでも関連性は維持されていた」と検証結果を報告し、今回の観察的試験では要因を仮定するには至らなかったと述べている。BMJ誌2019年12月18日号のクリスマス特集「EXPRESS YOURSELF」より。美術館やコンサートに行く「受容的芸術活動」頻度と死亡率を検証 研究グループは、地域で暮らす50歳以上を対象に行った「English Longitudinal Study of Ageing:ELSA」の被験者のうち、2004~05年にベースラインの質問に回答した6,710例を対象に前向きコホート試験を行い、被験者の自己報告による受容的芸術活動(美術館、アートギャラリー、展覧会、劇場、コンサートやオペラに行く)と死亡率との関連を調査した(死亡の最終データ取得は2018年3月)。 被験者のうち女性は53.6%、平均年齢は65.9歳(標準偏差:9.4)だった。死亡率との関連はNHSの中央レジスタデータを利用して評価した。年1~2回活動で死亡リスク14%低下、2~3ヵ月に1回は31%低下 平均追跡期間は12年2ヵ月で、最長は13.8年だった。その間に2,001例(29.8%)が死亡していた。死亡者は、女性よりも男性で多く、また高齢、独居、学歴がなく、現在無職で、財産・職業ステータスは低い傾向がみられた。さらに死亡率は、抑うつ症状が高く、視力・聴力が弱く、がん・肺疾患・心血管疾患と診断されていた人・その他慢性症状がある人、運動をあまりしない人、飲酒はきわめてまれな人、および喫煙をしていた人で高かった。また、認知レベルは低く、孤立しており、親密な友人がおらず、独居、無趣味、社会的活動への参加はまれ、地域のグループとの関わりがない人でも高かった。 死亡数は、受容的芸術的活動をまったく行わない人(1,762例)では837例(47.5%)だったのに対し、まれ(1年に1~2回)でも同活動を行っていた人(3,042例)は809例(26.6%)で、追跡期間中どの時点でも死亡リスクは約14%低かった(ハザード比[HR]:0.86、95%信頼区間[CI]:0.77~0.96)。 同活動を頻繁(2~3ヵ月に1回)に行っていた人(1,906例)の死亡は355例で、まったく行わない人に比べて死亡リスクは約31%低かった(HR:0.69、95%CI:0.59~0.80)。 同活動は、人口統計学的・社会経済的要因、健康関連・行動学的要因、社会的要因とは独立した要因であることが認められ、感度分析の結果、性別、社会経済学的状態、社会的要因による影響は受けないことが確認された。

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第32回 血管拡張薬による頭痛、潰瘍はどれくらいの頻度で生じるのか【論文で探る服薬指導のエビデンス】

 血管拡張薬による薬剤誘発性頭痛は比較的よく知られている副作用で、私も患者さんから強度の頭痛について相談されたことが何度もあります。NSAIDsを併用することもありますが、効果が不十分なケースもあるため対応に困ることがありました。今回は、血管拡張薬の中でも特徴的な作用を持つニコランジルについて紹介します。頭痛のため9人中1人は脱落ニコランジルを用いた長期のプラセボ対照二重盲検ランダム化比較試験として、5,126例(平均年齢67歳)を組み入れて、平均1.6年追跡したIONA試験があります1)。これはニコランジル唯一の大規模ランダム化試験で、組み入れ基準は、男性は45歳以上、女性は55歳以上、心筋梗塞、冠動脈バイパス術の既往または過去2年間の運動負荷試験陽性例で、次のリスク因子のうち少なくとも1つを有する被験者でした。条件:心電図による左室肥大、EF≦45%、拡張終期径>55mm、糖尿病、高血圧、その他の血管疾患薬局では、心臓カテーテル治療によりステントを留置している患者さんの対応も多いと思いますが、この試験の対象ではないことに注意が必要です。介入群はニコランジル10mg×2回/日を2週間服用後、20mg×2回/日に増量した2,565例で、比較対象はプラセボ服用の2,561例でした。いずれの群もベースラインで他の標準療法(抗血小板薬、β遮断薬、Ca拮抗薬、スタチンおよびACE阻害薬)を受けています。主解析項目は、冠動脈心疾患死、非致死性心筋梗塞、胸痛による緊急入院の複合エンドポイントで、ニコランジル群337例(13.1%)、プラセボ群398例(15.5%)で、ハザード比:0.83、95%信頼区間[CI]:0.72~0.97、p=0.014でした。NNTは100/(15.5-13.1)≒42ですので、複合エンドポイントでは有意差が出ています。しかし、中に入っている各イベント自体は同列に扱えるものではないことに留意が必要です。二次解析項目では、冠動脈性心疾患死および非致死性心筋梗塞を見ています。こちらはニコランジル群107例(4.2%)に対してプラセボ群134例(5.2%)で、ハザード比:0.79、95%CI:0.61~1.02、p=0.068と有意差はありませんでした。総死亡はハザード比:0.85、95%CI:0.66~1.10と減少傾向であるものの、こちらも有意差はありませんでした。頭痛による脱落は、プラセボ群の81例(3.1%)に対して、ニコランジル群では364例(14.2%)ですので、9人服用すれば1人が頭痛で脱落するという計算になります。本研究に限った話ではないのですが、このように副作用の頻度に偏りが大きいと事実上盲検化が維持できないケースもあります。高用量であるほど潰瘍が早期にできて治りにくい添付文書に頻度不明の副作用として記載がある潰瘍の頻度については、IONA試験の各種コホート研究およびIONA試験の著者から収集した未公表データを含めたシステマティックレビューが2016年に発表されています2)。ここでは、Kチャネル開口作用を持つニコランジルに特徴的な潰瘍について紹介されています。同文献によれば、口腔潰瘍は被験者の0.2%で発症し、肛門潰瘍は0.07~0.37%で発症するとされています。口腔潰瘍を発症するまでの期間は、30mg/日未満群では74週間であるのに対し、高用量群では7.5週間(p=0.47)と用量依存性がありました。また、用量と潰瘍治癒時間にも有意な相関関係がみられています。重症の場合は医師と相談のうえで中止されることがあるため、口内炎が悪化するようなら報告を求めるよう伝える必要があります。実際に口腔内や舌に生じた潰瘍の症例報告の文献がありますが3)、ニコランジルを中止後4週間前後で治癒しています。まれな副作用ではありますが、同文献内に症例写真が掲載されていますので、ご覧いただきイメージをつかむとよいと思います。1)IONA Study Group. Lancet. 2002;359:1269-1275.2)Pisano U, et al. Adv Ther. 2016;33:320-344.3)Webster K, et al. Br Dent J. 2005;198:619-621.

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アナストロゾール5年投与の乳がん予防効果、11年後も(IBIS-II)/Lancet

 乳がん発症リスクが高い閉経後女性において、アナストロゾールの予防効果は投与終了後も長期にわたり維持されており、新たな遅発性の副作用は報告されなかったことが、英国・ロンドン大学クイーン・メアリー校のJack Cuzick氏らによる長期追跡試験「IBIS-II試験」で示された。「MAP.3」および「IBIS-II」の2件の大規模臨床試験において、アロマターゼ阻害薬投与後最初の5年間で高リスク女性の乳がん発症率が低下することが報告されていたが、アナストロゾール投与終了後の長期的な乳がん発症率についてはこれまで不明であった。Lancet誌オンライン版2019年12月12日号掲載の報告。また同日、サンアントニオ乳がんシンポジウム(SABCS2019)にて発表された。アナストロゾール5年投与による乳がん発症率をプラセボと比較 IBIS-II試験(International Breast Cancer Intervention Study II)は、乳がん高リスク閉経後女性におけるアナストロゾールの乳がん(浸潤性乳がんまたは非浸潤性乳管がん)に対する発症予防効果および安全性を評価する、国際多施設共同無作為化二重盲検プラセボ対照試験である。 研究グループは、2003年2月2日~2012年1月31日の間に、40~70歳の乳がん発症高リスク閉経後女性(一般女性に対する乳がん相対リスクが40~44歳は4倍以上、45~60歳は2倍以上、60~70歳は1.5倍以上)3,864例を、アナストロゾール(1mgを1日1回経口投与)群(1,920例)またはプラセボ群(1,944例)に1対1の割合で無作為に割り付け、それぞれ5年間投与した。 治療完遂後、年1回追跡調査を行い、乳がん発症、死亡、その他のがんの発症、主要有害事象(心血管イベントおよび骨折)に関するデータを収集した。主要評価項目は、すべての乳がん発症で、Cox比例ハザードモデルを用いてintention-to-treat解析を行った。アナストロゾール群で追跡期間約11年の乳がん発症率が49%低下 追跡期間中央値131ヵ月(IQR:105~156)において、乳がん発症率はアナストロゾール群で49%減少した(85例vs.165例、ハザード比[HR]:0.51、95%信頼区間[CI]:0.39~0.66、p<0.0001)。 アナストロゾール群の乳がん発症率の低下は、最初の5年間が大きかったが(35例vs.89例、HR:0.39、95%CI:0.27~0.58、p<0.0001)、5年以降も有意であり(新規発症例:50例vs.76例、HR:0.64、95%CI:0.45~0.91、p=0.014)、最初の5年間と5年以降とで有意差はなかった(p=0.087)。 エストロゲン受容体陽性浸潤性乳がんの発症率はアナストロゾール群で54%低下し(HR:0.46、95%CI:0.33~0.65、p<0.0001)、治療完遂後に有意な効果が持続した。非浸潤性乳管がんはアナストロゾール群で59%低下し(HR:0.41、95%CI:0.22~0.79、p=0.0081)、とくにエストロゲン受容体陽性で著しかった(HR:0.22、95%CI:0.78~0.65、p<0.0001)。 観察された全死亡(69例vs.70例、HR:0.96、95%CI:0.69~1.34、p=0.82)、または乳がん死亡(2例vs.3例)について、アナストロゾール群とプラセボ群で有意差は確認されなかった。非乳がんの発症率は、アナストロゾール群で有意な低下が確認され(147例vs.200例、オッズ比:0.72、95%CI:0.57~0.91、p=0.0042)、とくに非黒色腫皮膚がんの発症率低下が大きかった。 骨折または心血管疾患のリスク増加は確認されなかった。 結果を踏まえて著者は、「さらなるフォローアップを行い、乳がん死亡への効果を評価することが必要だ」と述べている。

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第10回 地域全体を底上げしなきゃ意味がない【噂の狭研ラヂオ】

動画解説前回に引き続きバード薬局鳥居泰宏先生との対談をお届けします。鳥居先生が自身の薬局に限らず地域全体の薬局の質を上げようと尽力する理由はなにか。これからの薬剤師に必要なスキルとして現在勉強中のこととは?

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週7パック以上の納豆で骨粗鬆症性骨折リスクが半減?

 納豆摂取と骨密度との間の直接の関連は知られているが、骨粗鬆症性骨折との関連については報告されていない。今回、大阪医科大学/京都栄養医療専門学校の兒島 茜氏らの研究で、閉経後の日本人女性において習慣的な納豆摂取が骨密度とは関係なく骨粗鬆症性骨折のリスク低下と関連していることが示唆された。The Journal of Nutrition誌オンライン版2019年12月11日号に掲載。 本研究は、納豆の習慣的な摂取と骨粗鬆症性骨折リスクとの関連を調査した前向きコホート研究。対象は、1996、1999、2002、2006年にJapanese Population-based Osteoporosis(JPOS)研究に登録され、ベースライン時に45歳以上であった閉経後日本人女性1,417人。登録時に、納豆、豆腐、その他の大豆製品の摂取について食事摂取頻度調査票(FFQ)を使用して調査した。骨折は1999年、2002年、2006年、2011/2012年の追跡調査で確認した。主要アウトカムは骨粗鬆症性骨折で、医師がレントゲン写真で診断した、強い外力によらない臨床的骨折とした。Cox比例ハザードモデルを用いて、ハザード比(HR)と95%信頼区間(CI)を推定した。 主な結果は以下のとおり。・1万7,699人年の追跡期間中(中央値15.2年)、172人の女性に骨粗鬆症性骨折が確認された。・年齢、股関節の骨密度年齢について調整後、納豆摂取量が週当たり1パック(約40 g)未満に対するHRは、1~6パックで0.72(95%CI:0.52~0.98)、7パック以上で0.51(95%CI:0.30~0.87)であった。・さらに、BMI、骨粗鬆症性骨折の既往、心筋梗塞または脳卒中の既往、糖尿病、現在の喫煙、飲酒、豆腐および他の大豆製品の摂取頻度、食事性カルシウム摂取について調整すると、1パック未満に対するHRは1~6パックで0.79(95%CI:0.56~1.10)、7パック以上で0.56(95%CI:0.32~0.99)となった。・豆腐や他の大豆製品の摂取頻度は、骨粗鬆症性骨折のリスクと関連がなかった。

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033)診察室で思わず焦る瞬間【Dr.デルぽんの診察室観察日記】

第33回 診察室で思わず焦る瞬間しがない皮膚科勤務医デルぽんです☆皮膚科はご存じのとおり、全身を覆いつくす皮膚を診察する科。視診・触診する部位にはもちろん、臀部や陰部など、お尻まわりの皮膚も含まれます。陰部などの診察が必要な場合、プライバシーに配慮し、基本的にはカーテンブース内で拝見しますが、下着を脱がずとも見える範囲なら、そのまま診察室の椅子で見せていただくこともあります。(若い女性やご本人が気にされる患者さんであれば、カーテンの中へご案内します)このように股を見る場合は、立ったままズボンだけ下ろしてもらって拝見することが多いのですが、そこでたまに起こるのが、こうした事件。つまり、パンツまで脱いで、そのまま診察椅子に座ってしまうこと・・・(!!)。「あっ!」と思ったときには時すでに遅し。そのまま座られてしまい、看護師さんと「あちゃ~」というアイコンタクトを交わすことも少なくありません。患者さんに悪気はないですし、次の患者さんを呼ぶ前に清潔にすれば済む話なのですが、なるべくそういう事態にはならないようにしたいところです。声の掛け方には改善の余地アリ!?今回は、お尻まわりの診察でたまに起こるプチ事件についてでした~!それでは、また~! よいお年をお迎えください!

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市販類似薬の保険外しは中間報告で見送りへ【早耳うさこの薬局がざわつくニュース】第38回

「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(薬機法)」の改正法の公布や、2020年度の診療報酬改定に向けた議論によって薬局や薬剤師の業務や役割が注目されている中、また1つ薬局に大きな変化が起きようとしていました。政府の全世代型社会保障検討会議(議長=安倍晋三首相)は19日にまとめた中間報告で、論点の1つだったOTC類似薬の保険上の取り扱いについて、具体的な記載を見送った。これまでの会議で活発に議論されていないことも影響したようだが、政府関係者によると検討課題として消えたわけではないという。来年夏の最終報告に向けた議論でテーマとして浮上するのか、もしくは主要な議論の場が別になるのか、本格的な対応は来年以降に持ち越しとなった。(2019年12月20日付 日刊薬業)この市販類似薬を保険適用から除外する議論を、以前も耳にしたことがある方は多いのではないでしょうか。2年に1度行われる診療報酬改定の議論の際に、主に保険者側からの要望によっていつも議題に挙げられていたものの、さまざまな理由により保険除外が実現することはありませんでした。そして、また報酬改定の足音が聞こえてきた2019年8月に、健康保険組合連合会(健保連)が花粉症の市販薬を保険適用から除外することと自己負担率を引き上げることを厚生労働省に提言し、再び議論が巻き起こりました。健保連は全国の健康保険組合の連合組織で保険者の筆頭といえる立場ですから、医療費増大に最も厳しい立場として提言したと考えられます。政府としても、医療費が2018年度の39兆円から2025年度には47兆円超になると推計していたり、最近では非常に高薬価な薬剤も登場していたりしますので、「大きなリスクは共助、小さなリスクは自助」という考え方の「大きなリスク」を支えるためには、もう「小さなリスク」は切り捨てなければならない切羽詰まった状態であるのでしょう。処方箋が減り売り上げは下がるが、新たな客層が薬局へでは、市販類似薬が本当に保険除外となった場合、どのようなことが起こるのでしょうか。たとえば、患者さんが「ちょっと風邪ひいたかな?」と思って気軽に病院を受診した場合、医師が市販の風邪薬で対処できると診断すると、医療用の総合感冒薬を全額自己負担で処方してもらうか、もしくは薬をもらわずに自ら市販の風邪薬を買うか選択することになると考えられます。保険適用除外の市販類似薬は一般メディアでも広く報道されると思うので、患者さんは自分や家族が軽症と判断すれば受診を控えるかもしれません。そして、この状態がしばらく続くと、市販の風邪薬で治療できた経験がある人が増え、「風邪をひいたら市販の風邪薬」と認識し、さらに風邪での受診が減る…ということは想像に難くないでしょう。もしそうなると、処方箋枚数が減るため、薬局の売り上げは下がると予想されます。また、市販薬独特の成分などもあるため、販売対応の面でも新たな取り組みが必要になるかもしれません。いずれにしても、処方箋調剤をメインに行ってきた薬局や薬剤師は危機感を募らせているのではないでしょうか。しかし、見方を変えれば、これまで慢性疾患などで定期的に診察を受けていた患者さん以外でも薬局に来る機会が増えるかもしれませんので、薬局や薬剤師が信頼を得る大きなチャンスだと捉えることもできそうです。12月19日の中間報告では、OTC類似薬の保険適用について具体的な記載は見送られましたが、来年夏の最終報告まで結論はわかりません。議論が継続される場合、医師側は必ず反対の考えを示すでしょう。「医師以外の誰が判断し、適切に対応できるのか」という主張に、患者さんと接して市販薬を販売する薬剤師側は何か異論、反論、提案するのでしょうか。もし保険除外の実現が政府や保険者の本懐で避けられないのであれば、いざというときに問題が生じないように、普段から薬剤師が市販薬の販売に関与している必要があるでしょう。今後の議論から目が離せません。

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医師数32万7,210人、増えた科や多い都道府県は?―厚労省調査

 厚生労働省は19日、「医師・歯科医師・薬剤師統計」の最新結果を取りまとめ、公表した。それによると、全国の医師数は、32万7,210人で、前回調査(16年)に比べ2.4%増となり、一貫して増加傾向が続いている。このうち、女性医師は7万1,758人で、前回よりも6.3%増と大きく数字を伸ばし、過去最多を更新した。一方、医療施設に従事する医師の平均年齢は上がり続けており、診療所に従事する医師の平均年齢は初めて60歳代となり、高い年齢層が支えていることがわかる。 「医師・歯科医師・薬剤師統計」は、厚労省が2年おきに実施しており、今回は2018(平成30)年12月31日時点に調査を行ったもの。それによると、全国の医師数は32万7,210人(前回比で7,730人、2.4%増)、歯科医師数は10万4,908人(同375人、0.4%増)、薬剤師数は31万1,289人(同9,966人、3.3%増)であった。都道府県別にみた医師数が最も多いのは徳島県 医師数を男女別にみると、男性医師は25万5,452人(前回比で3,465人、1.4%増)、女性医師は7万1,758人(同4,265人、6.3%増)となっており、女性医師数の躍進が顕著であった。 医師のうち、医療施設従事者は31万1,963人(総数の95.3%)で、前回比で7,204人(2.4%)増加した。平均年齢は49.9歳。このうち、病院は44.8歳で前回調査時から0.3ポイント上昇し、診療所は60.0歳で前回から0.4ポイント上昇して、初めて60歳代となった。 主たる診療科別にみると、前回調査時より従事者が増えたのは、美容外科が最も多く(対前回比で130%)、以下、産科(同112%)、腎臓内科・救急科(同111%)、リハビリテーション科(同109%)などとなっている。一方、従事者が減ったのは、気管食道外科が最も多く(対前回比で94%)、以下、外科(同95%)、肛門外科(同97%)、内科・産婦人科・臨床検査科(同99%)などとなっている。なお、本稿で紹介した診療科別の統計結果においては「臨床研修医」や「不詳」および「その他」の回答はいずれも除外している。 従業地の都道府県別にみた医療施設に従事する人口10万人当たりの医師数は、全国では246.7人で、前回比で6.6人増加した。このうち、医師数が最も多いのは徳島県(329.5人)で、次いで京都府(323.3人)、高知県(316.9人)などとなっている。一方、最も少ないのは埼玉県(169.8人)で、次いで茨城県(187.5人)、千葉県(194.1人)などとなっている。

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新規ADC薬のDS-8201、既治療HER2+乳がんで腫瘍縮小効果/NEJM

 多くの前治療歴(レジメン数中央値6)のある転移を有するHER2陽性乳がんの治療において、trastuzumab deruxtecan(DS-8201)は持続的な腫瘍縮小効果(奏効率60.9%、奏効期間中央値14.8ヵ月)をもたらすことが、米国・スローン・ケタリング記念がんセンターのShanu Modi氏らが行った「DESTINY-Breast01試験」で示された。研究の成果は、NEJM誌オンライン版2019年12月11日号に掲載された。また同日、サンアントニオ乳がんシンポジウム(SABCS2019)にて発表された。trastuzumab deruxtecanは、トラスツズマブと同じアミノ酸配列を持ち、HER2を特異的な標的とするヒト化モノクローナル抗体と、細胞傷害性薬剤(ペイロード)である強力なトポイソメラーゼI阻害薬を、開裂可能なテトラペプチドベースのリンカーを介して結合した抗体薬物複合体(ADC)。既治療のHER2陽性進行乳がんの第I相用量設定試験(DS8201-A-J101試験)では、奏効率59.5%、奏効期間中央値20.7ヵ月と報告されている。trastuzumab deruxtecan(DS-8201)の有効性を2部構成の単群第II相試験で評価 本研究は、北米、日本を含むアジア、欧州の8ヵ国72施設が参加した2部構成の多施設共同非盲検単群第II相試験であり、2017年10月~2018年9月の期間に患者登録が行われた(Daiichi SankyoとAstraZenecaの助成による)。 対象は、年齢18歳以上(日本と韓国は20歳以上)の切除不能または転移を有するHER2陽性乳がんで、全身状態(ECOG PS)が0/1であり、トラスツズマブ エムタンシン(T-DM1)による治療歴のある患者であった。 試験の第1部では、被験者はtrastuzumab deruxtecanの3つの用量(5.4、6.4、7.4mg/kg、3週ごとに静脈内投与)に無作為に割り付けられ、推奨用量が決定された。第2部では、推奨用量による治療の有効性と安全性の評価が行われた。 主要評価項目は、中央判定による奏効率(完全奏効[CR]+部分奏効[PR])とし、主な副次評価項目は病勢コントロール率(DCR、CR+PR+安定[SD])、臨床的有用率(CBR、CR+PR+6ヵ月以上持続するSD)、奏効期間、無増悪生存(PFS)期間、安全性などであった。trastuzumab deruxtecan投与でDCR 97.3%、CBR 76.1% 第1部では、trastuzumab deruxtecanの第2部での推奨用量が5.4mg/kgと決定された。 5.4mg/kg群(184例)の年齢中央値は55.0歳(範囲:28.0~96.0)で、23.9%が65歳以上であり、97例(52.7%)がホルモン受容体陽性腫瘍であった。前治療レジメン数中央値は6(2~27)で、全例にT-DM1とトラスツズマブの治療歴があり、121例(65.8%)がペルツズマブ、100例(54.3%)がその他の抗HER2療法を受けていた。 治療期間中央値は10.0ヵ月(範囲0.7~20.5)で、追跡期間中央値は11.1ヵ月(範囲0.7~19.9)であり、128例(69.6%)が6ヵ月以上の治療を受けていた。 第2部では、184例中112例で奏効が得られ、奏効率は60.9%(95%信頼区間[CI]:53.4~68.0)であった。内訳はCRが6.0%、PRは54.9%であった。DCRは97.3%、CBRは76.1%だった。 T-DM1投与中または投与後に増悪した180例のうち、奏効が確認されたのは61.1%であった。また、T-DM1投与の直後にtrastuzumab deruxtecanの投与を受けた56例中36例(64%)で奏効が得られた。 奏効期間中央値は14.8ヵ月(95%CI:13.8~16.9)、PFS期間中央値は16.4ヵ月(12.7~未到達)であった。また、6ヵ月の時点での全生存(OS)率の推定値は93.9%(89.3~96.6)、1年OS率は86.2%(79.8~90.7)であり、OS期間中央値には未到達であった。 trastuzumab deruxtecan投与による最も頻度の高いGrade3以上の有害事象は、好中球数の減少(基本語として好中球数減少[neutrophil count decreased]と好中球減少[neutropenia]を含む)であり、20.7%(38/184例)に認められた。次いで、貧血が8.7%(16例)、悪心が7.6%(14例)にみられた。発熱性好中球減少は3例で発現した。独立判定委員会により、13.6%(25例)が試験薬関連の間質性肺疾患(Grade1/2:10.9%、Grade3/4:0.5%、Grade5:2.2%)と判定された。 著者は、「間質性肺疾患のリスクを考慮し、肺症状への配慮と注意深いモニタリングが求められる」としている。

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HIV患者のがん治療、免疫モニタリングが有益/JAMA Oncol

 抗ウイルス療法を受ける成人HIV患者のがん治療について、免疫モニタリングの有益性が、がん治療後の死亡率に関する定量化研究により明らかにされた。米国・ジョンズ・ホプキンズ・ブルームバーグ公衆衛生大学院のKeri L. Calkins氏らによる検討で、化学療法および/または放射線療法は、手術またはその他の治療を受けた場合と比べて、施術後早期のCD4細胞数を有意に減少させること、その数値の低さと死亡率増大は関連することが示されたという。JAMA Oncology誌オンライン版2019年12月5日号掲載の報告。 研究グループは、がん治療を受けるHIV患者の免疫低下とがん治療との関連は十分に特徴付けられていないことに着目し、がん治療ガイドラインに反映させうる検討として、がん治療に関連した免疫抑制と過剰死亡率の関連性の定量化を試みた。HIV患者のがん治療とCD4細胞数およびHIV RNA値の関連性、治療後CD4細胞数およびHIV RNA値の推移と全死因死亡との関連を推算した。 検討は観察コホート試験にて、1997年1月1日~2016年3月1日にジョンズ・ホプキンズHIVクリニックの治療を受けていた成人HIV患者で、初発のがんを有し、がん治療のデータを入手できた196例を対象に行われた。 試験では、化学療法および/または放射線療法は、手術またはその他の治療と比べて、(1)忍容性の問題によりHIV RNA値を増大する、(2)CD4細胞数の初期の減少幅が大きい、(3)減少したCD4細胞数の回復に時間がかかる、さらに(4)CD4細胞数の減少は、ベースラインのCD4細胞数、抗ウイルス薬の使用、罹患したがんのリスクとは独立して、高い死亡率と関連するとの仮説を立てて検証した。 被験者は、がん種別の初期治療(化学療法および/または放射線療法vs.手術またはその他の治療)を受けた。主要評価項目は、がん治療後のCD4細胞数の推移、HIV RNA値の推移、全死因死亡率であった。 データ解析は2017年12月1日~2018年4月1日に行われた。 主な結果は以下のとおり。・被験者196例は、男性135例(68.9%)、年齢中央値50歳であった。・化学療法および/または放射線療法について、ベースラインCD4細胞数が500個/μL超の患者では、治療後の初期細胞数が203個/μL(95%信頼区間[CI]:92~306)減少した。・一方、ベースラインCD4細胞数が350個/μL以下の患者における減少は、45個/μLであった(相互作用推定値:158個/μL[95%CI:31~276])。・化学療法および/または放射線療法は、HIV RNA値に有害な関連は示さなかった。・初期のがん治療後、CD4細胞数100個/μL低下につき、死亡率は27%増大することが示された(ハザード比:1.27、95%CI:1.08~1.53)。

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オベチコール酸、NASHによる肝線維化を有意に改善/Lancet

 非アルコール性脂肪肝炎(NASH)患者に対するオベチコール酸25mgの1日1回投与は、肝線維症およびNASH疾患活動性の主要要素を有意に改善することが示された。米国・Inova Health SystemのZobair M. Younossi氏らが、1,968例を対象に行っている多施設共同無作為化二重盲検プラセボ対照試験「REGENERATE試験」の中間解析の結果を報告し、「今回の計画されていた中間解析の結果は、相当な臨床的ベネフィットを予測させる臨床的に有意な改善を示すものであった」とまとめている。NASHは一般的にみられる慢性肝疾患の1つで、肝硬変に結び付く可能性がある。farnesoid X receptor(FXR)作動薬であるオベチコール酸は、NASHの組織学的特色を改善することが示唆されていた。Lancet誌2019年12月14日号掲載の報告。オベチコール酸投与によるNASH寛解または線維症1ステージ以上改善を評価 研究グループは2015年12月9日~2018年10月26日にかけて、NASHの確定診断を受け、非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)活動性スコア4以上、肝線維症ステージF2~F3、またはF1で併存疾患が1つ以上の成人患者を対象に試験を行った。 被験者を無作為に1対1対1の3群に分け、プラセボ、オベチコール酸10mg、オベチコール酸25mgをそれぞれ1日1回投与した。なお、肝硬変、ほかの慢性肝疾患、アルコール摂取量の増加、その他の交絡因子となる状態がある場合には、被験者から除外した。 18ヵ月後の中間解析における主要エンドポイントは、NASH非増悪で線維症が1ステージ以上改善(線維症改善エンドポイント)、または線維症非増悪でNASH寛解(NASH寛解エンドポイント)のいずれかの達成とした。1回以上の試験薬投与を行ったF2~F3の患者で、事前に決めた中間解析日までに18ヵ月経過した被験者を対象にITT解析を行った。また、NASHや線維症の組織学的・生物学的マーカーや安全性についても検証した。オベチコール酸25mg群のNASH寛解の達成率12%、プラセボ群8% 被験者登録は線維症ステージF1~F3の1,968例で、そのうち中間解析にはF2~F3の931例(プラセボ群311例、オベチコール酸10mg群312例、オベチコール酸25mg群308例)が包含された。 線維症改善エンドポイントの達成率は、プラセボ群37例(12%)に対し、オベチコール酸10mg群55例(18%、対プラセボのp=0.045)、オベチコール酸25mg群は71例(23%、同p=0.0002)だった。 NASH寛解エンドポイントの達成率は、それぞれ25例(8%)、35例(11%、対プラセボのp=0.18)、36例(12%、p=0.13)だった。 全登録被験者(F1~F3の1,968例)を対象に行った安全性に関する解析では、最も多かった有害事象はかゆみで、発現はプラセボ群123例(19%)、オベチコール酸10mg群183例(28%)、オベチコール酸25mg群336例(51%)であり、重症度は概して軽度~中等度だった。重篤な有害事象の発現頻度は、それぞれ75例(11%)、72例(11%)、93例(14%)で同程度だった。 本試験は臨床的アウトカムを評価するために現在も継続進行中である。

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第3世代セフェムを愛用する医師への処方提案【うまくいく!処方提案プラクティス】第11回

 今回は、蜂窩織炎に対する抗菌薬の処方提案を紹介します。広域抗菌薬はカバーが広くて使いやすいのですが、薬剤耐性菌が世界的に懸念されている昨今ではターゲットを絞って適正な抗菌薬を適正量用いることが求められています。薬剤師も医師の治療方針を確認しつつ、積極的に処方設計に参画して適正使用を推進しましょう。患者情報70歳、女性(施設入居)体  重:42kg基礎疾患:高血圧症、鉄欠乏性貧血、慢性便秘症、骨粗鬆症、足白癬既 往 歴:68歳時に腰椎圧迫骨折(手術)主  訴:左下肢腫脹、痛みあり直近の採血結果: 血清クレアチニン0.8mg/dL処方内容1.アムロジピン錠5mg 1錠 分1 朝食後2.アルファカルシドール錠0.5μg 1錠 分1 朝食後3.酪酸菌配合錠 3錠 分3 毎食後4.酸化マグネシウム錠330mg 3錠 分3 毎食後5.リセドロン酸17.5mg 1錠 起床時 毎週月曜日6.クエン酸第一鉄ナトリウム錠 2錠 分2 朝夕食後本症例のポイント施設の担当看護師さんから、患者さんが左下肢の腫脹と痛みを訴えたため、臨時往診が行われたという電話連絡がありました。その際、「蜂窩織炎を発症しているようで、医師が抗菌薬をどうするか迷っている」という話を聞きました。そこで、すぐに医師に電話すると、「左下肢の蜂窩織炎を疑っているけれど、セフジニル100mg 3錠 分3でいいかな?」と相談されました。抗菌薬の処方提案においては、(1)感染臓器、(2)想定される起炎菌(ターゲット)、(3)感受性良好な抗菌薬の理解が必要不可欠です。蜂窩織炎は、真皮〜皮下組織を感染部位とした皮膚軟部組織感染症で、想定される起炎菌はβ溶血性連鎖球菌(A、B、C、G群)と黄色ブドウ球菌(メチシリン感受性:MSSA)です。医師が処方を検討しているセフジニルは第3世代セフェム系抗菌薬で、一部の口腔内連鎖球菌や大腸菌、肺炎桿菌もカバーする広域スペクトラムの抗菌薬です。本症例において、セフジニルも選択肢として挙げることは可能ですが、広域抗菌薬のため耐性菌産生の懸念があり、ターゲットを絞って治療を開始することが望まれます。また、バイオアベイラビリティーが25%程度と低く、この患者さんの場合は服用中のクエン酸第一鉄ナトリウムとの相互作用により、キレートが形成されて吸収が著しく低下することから、有効抗菌薬量としては高用量が必要なため適切ではないと判断しました。皮膚への移行性と起炎菌を考慮すると、アモキシシリンかセファレキシンが有効かつ適正と考え、処方提案することにしました。また、患者さんの腎機能がCCr:43.4mL/minと低下していることから、処方設計も併せてお伝えすることにしました。処方提案と経過医師に重症度や想定している起炎菌を確認したところ、軽症の蜂窩織炎で溶連菌群をカバーして治療したいという希望を聞き取りました。そこで、アモキシシリン250mg 6錠 分3 毎食後の内服を提案しました。しかし、セフェム系でなんとかできないかとの返答がありました。この医師は、普段は広域をカバーして安全性も高いと考える第3世代セフェムをよく処方しており、経口ペニシリン系の治療経験が少なくて不安だったようです。次に、患者さんの腎機能低下を考慮して、第1世代セフェムであるセファレキシン錠250mg 4錠 分2 朝夕食後の処方を提案し、承認を得ることができました。その後、患者さんは10日間の服薬を終了し、蜂窩織炎は軽快しました。1)Gilbert DNほか編. 菊池賢ほか日本語版監修. <日本語版>サンフォード 感染症治療ガイド2019. 第49版. ライフサイエンス出版; 2019年.2)セフゾンカプセルインタビューフォーム

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日本で唯一のマクロライド系抗菌点眼薬「アジマイシン点眼液1%」【下平博士のDIノート】第39回

日本で唯一のマクロライド系抗菌点眼薬「アジマイシン点眼液1%」今回は、わが国で唯一のマクロライド系抗菌点眼薬である「アジスロマイシン水和物点眼液」(商品名:アジマイシン点眼液1%、千寿製薬)を紹介します。本剤は、結膜、角膜、眼瞼への移行性や滞留性が良好なため、少ない点眼回数で眼感染症の治療が可能となります。<効能・効果>本剤は結膜炎、眼瞼炎、麦粒腫、涙嚢炎の適応で、2019年6月18日に承認され、2019年9月11日より発売されています。<用法・用量>《結膜炎》通常、成人および7歳以上の小児には、1回1滴、1日2回2日間、その後、1日1回5日間点眼します。《眼瞼炎、麦粒腫、涙嚢炎》通常、成人には、1回1滴、1日2回2日間、その後、1日1回12日間点眼します。<副作用>細菌性結膜炎を対象とした国内第III相試験(3-01、3-06)と細菌性の眼瞼炎、麦粒腫、涙嚢炎を対象とした国内第III相試験(3-02)の3試験において、アジスロマイシン点眼液が投与された安全性評価対象726例のうち、73例(10.1%)に副作用が認められました。主な副作用は、眼刺激32例(4.4%)、眼そう痒症9例(1.2%)、眼痛7例(1.0%)、点状角膜炎5例(0.7%)でした。なお、重大な副作用として、角膜潰瘍などの角膜障害(頻度不明)、ショック、アナフィラキシー(頻度不明)が報告されています(承認時)。<患者さんへの指導例>1.この薬は、細菌の増殖を抑える作用により、目の感染症を治療します。2.薬を使用中に目の異物感、目の痛みなどの症状が現れた場合は、ただちに投与を中止して受診してください。3.開栓前は冷蔵庫、開栓後は室温で保管し、高温環境下や直射日光が当たる場所での保管は避けてください。4.点眼後、しばらく目がぼやけることがあるので、視界がはっきりするまで安静にしてください。5.ベトベト感が気になる場合は、朝の洗顔や入浴前に点眼して、点眼後5分以上経過したら、目の周りに付いた薬液を洗い流すとよいでしょう。6.決められた日数を点眼した後は薬剤を廃棄し、再使用はしないでください。<Shimo's eyes>本剤は、日本で唯一のマクロライド系抗菌点眼薬として発売されました。既存の抗菌点眼薬は1日3~5回投与なので日中の点眼が難しいこともありましたが、本剤は1日1~2回と少ない点眼回数での治療が可能です。点眼方法は、初日と2日目は1日2回、3日目以降は1日1回を、結膜炎では7日間、眼瞼炎・麦粒腫・涙嚢炎では14日間継続します。処方箋に点眼日数が記載されていない場合は、疑義照会で確認しなければなりません。本剤は、成分の滞留性向上のために、添加剤にポリカルボフィルが配合されたDDS製剤です。粘性が強いので、キャップをしたまま容器を下に向けて数回振り、薬液をキャップ側に移動させてから点眼します。点眼後しばらくは視界がぼやけることがあるため、転倒しないように注意が必要です。目の周りのベトベト感が気になる場合は、点眼後5分ほど経過したら目の周りを洗い流してよいことを伝えましょう。なお、2種類以上の点眼薬を併用する場合には、本剤を最後に点眼することで、他の点眼薬への影響を減らすことができます。近年、薬剤耐性菌およびそれに伴う感染症の増加が国際的に問題となっていることから、厚生労働省より「アジスロマイシン水和物点眼剤の使用に当たっての留意事項について」が発出されています。患者さんには、残存菌による再発や耐性菌獲得リスクの点から、自覚症状がなくなっても決められた点眼日数を必ず守るように指導しましょう。参考1)PMDA アジマイシン点眼液1%2)アジスロマイシン水和物点眼剤の使用に当たっての留意事項について

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