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経口JAK1阻害薬、中等症~重症ADに有用

 中等症~重症アトピー性皮膚炎(AD)に対する、1日1回服用の経口JAK1阻害薬abrocitinibの、第III相プラセボ対照無作為化試験の結果が発表された。米国・ジョージ・ワシントン大学のJonathan I. Silverberg氏らによる報告で、12歳以上の同患者における有効性および忍容性が確認された。JAMA Dermatology誌オンライン版2020年6月3日号掲載の報告。 試験は青年および成人について、同一試験デザインを用いて、二重盲検・並行群間比較にて行われた。被験者は12歳以上で、少なくとも1年以上の中等症~重症ADと臨床診断され、直近6ヵ月以内に4週間以上の外用薬治療を受けたが十分な奏効が得られなかった患者とした。オーストラリア、ブルガリア、カナダ、中国、チェコ、ドイツ、ハンガリー、日本、韓国、ラトビア、ポーランド、英国、米国の計115施設で2018年6月29日~2019年8月13日に被験者の登録が、2019年9月13日~10月25日にデータ解析が行われた。 適格患者は、2対2対1の割合で(1)経口abrocitinib(1日1回)200mg群、(2)同100mg群、(3)プラセボ群に無作為に割り付けられ、12週間投与を受けた。 主要評価項目は2つで、12週時点でInvestigator Global Assessment(IGA)反応(0:クリア、1:ほぼクリアのうち2グレード以上の改善を伴う)を達成した患者の割合、同じくEczema Area and Severity Indexスコア75%以上改善(EASI-75)を達成した患者の割合であった。 主な副次評価項目は、12週時点のPeak Pruritus Numerical Rating Scale(PP-NRS)反応(4ポイント以上の改善)を達成した患者の割合。その他の副次評価項目は、EASIスコア90%以上改善(EASI-90)を達成した患者の割合であった。安全性は、有害事象および検査室モニタリングにより評価した。 主な結果は以下のとおり。・計391例(男性229例[58.6%]、平均年齢35.1[SD 15.1]歳)が、解析に含まれた(abrocitinib 200mg群155例、同100mg群158例、プラセボ群78例)。・12週時点でデータが入手できた被験者において、200mgおよび100mg群は、プラセボ群と比べて、2つの主要評価項目がいずれも有意に高かった。 IGA達成の割合:59/155例(38.1%)・44/155例(28.4%)vs.7/77例(9.1%)、p<0.001 EASI-75達成の割合:94/154例(61.0%)・69/155例(44.5%)vs.8/77例(10.4%)、p<0.001・PP-NRS達成の推定割合も有意に高かった(55.3%[95%CI:47.2~63.5]・45.2%[37.1~53.3]vs.11.5%[4.1~19.0]、p<0.001)。・EASI-90達成の割合も高かった(58/154例[37.7%]・37/155例[23.9%]vs.3/77例[3.9%])。・有害事象は200mg群102例(65.8%)、100mg群99例(62.7%)、プラセボ群42例(53.8%)で報告され、重篤な有害事象は2例(1.3%)、5例(3.2%)、1例(1.3%)で報告された。・200mg群で、血小板数の減少(2例[1.3%])、検査室で確認された血小板減少症(5例[3.2%])が報告された。

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カリウムイオンを補足する非ポリマー型高K血症治療薬「ロケルマ懸濁用散分包5g/10g」【下平博士のDIノート】第53回

カリウムを便中に出す非ポリマーの高カリウム血症治療薬「ロケルマ懸濁用散分包5g/10g」今回は、高カリウム血症改善薬「ジルコニウムシクロケイ酸ナトリウム水和物(商品名:ロケルマ懸濁用散分包5g/10g、製造販売元:アストラゼネカ)」を紹介します。本剤は、体内に吸収されない非ポリマーの無機陽イオン交換化合物で、消化管内のカリウムイオンを選択的に捕捉して便中に排泄させることにより、血清カリウム値を低下させます。<効能・効果>本剤は高カリウム血症の適応で、2020年3月25日に承認され、2020年5月20日より発売されています。なお、本剤は効果発現が緩徐であるため、緊急の治療を要する高カリウム血症には使用できません。<用法・用量>通常、成人には開始用量として1回10gを水で懸濁して1日3回、2日間(血清カリウム値や患者の状態に応じて最長3日間まで)経口投与します。以後の維持量は1日1回5gですが、血清カリウム値や患者の状態に応じて1日1回15gを超えない範囲で適宜増減できます。なお、増量を行う場合は5gずつとし、1週間以上の間隔を空けます。血液透析施行中の場合は、初回から1回5gを水で懸濁して、非透析日に1日1回経口投与します。なお、最大透析間隔後の透析前の血清カリウム値や患者の状態に応じて、1日1回15gを超えない範囲で適宜増減します。<安全性>本剤承認の根拠となった主要な第III相試験(非透析患者を対象としたHARMONIZE Global試験、J-LTS試験および慢性血液透析患者を対象としたDIALIZE試験)において確認された主な副作用は、浮腫、体液貯留、全身性浮腫、末梢性浮腫、末梢腫脹、便秘(いずれも10%未満)などでした(承認時)。なお、重大な副作用として、低カリウム血症(11.5%)、うっ血性心不全(0.5%)が報告されています。<患者さんへの指導例>1.このお薬は、消化管内で吸収される前のカリウムを吸着し、便とともに排泄することで、血液中のカリウム値を低下させます。2.分包された薬剤を容器にすべて出してから、約45mL(大さじ3杯)の水と合わせて服用します。この薬は水に溶けないため、よくかき混ぜて、沈殿する前に飲んでください。飲んだ後に容器に薬が残っていたら、水を追加して再度かき混ぜてすべて服用してください。3.飲み忘れた場合は、1回飛ばして、次に飲む時間に1回分を飲んでください。絶対に2回分を一度に飲まないでください。4.いつもと違う手足のだるさ、力が抜ける感じ、筋肉のこわばり、呼吸のしにくさ、めまい、動悸などがある場合は、薬が効き過ぎている可能性があるため、すぐにご連絡ください。<Shimo's eyes>通常、カリウムは腎臓から排泄されて血中のカリウム値は一定の範囲に保たれますが、慢性腎臓病患者や透析患者では、腎機能の低下によりカリウム排泄が低下するため、高カリウム血症を発症しやすくなります。高カリウム血症に用いる既存のカリウム吸着薬としては、ポリスチレンスルホン酸ナトリウム製剤(商品名:ケイキサレート)およびポリスチレンスルホン酸カルシウム製剤(同:カリメート、アーガメイトゼリーなど)があり、いずれもポリマーで構成された陽イオン交換樹脂製剤です。既存薬には独特の味と舌触りがあり、投与量が多いことも相まって、患者さんが継続服用するのが困難な場合があります。飲みにくさを改善するために、ゼリー製剤やフレーバーが開発されているだけでなく、複数の医療機関から飲みやすさの工夫に関する研究結果も報告されています。また、ポリマー性吸着薬は水分によって膨張するため、便秘や腹痛、腹部膨満感などの懸念があります。本剤は国内初となる非ポリマー無機陽イオン交換化合物で、消化管内のカリウムイオンを選択的に捕捉して便中に排泄させます。無味無臭の白色粉末で、開始時は10gを1日3回経口投与であるものの、3日目からは通常5gを1日1回となり、服用量・回数共に比較的少ないため、アドヒアランスの向上が期待できます。本剤の相互作用については、胃内pHの上昇によって、アゾール系抗真菌薬、チロシンキナーゼ阻害薬などの溶解性低下が起きることがあるので、注意が必要です。生活指導としては、腎臓への負担を少しでも減らすために、カリウムを多く含む食品の過剰摂取に注意することや、茹でたり水にさらしたりするなどの調理方法の工夫を伝えましょう。参考1)PMDA 添付文書 ロケルマ懸濁用散分包5g/ロケルマ懸濁用散分包10g

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腎性貧血患者に新たな治療選択肢を提供/グラクソ・スミスクライン

 6月29日、グラクソ・スミスクライン株式会社は、腎性貧血の経口低酸素誘導因子プロリン水酸化酵素阻害薬ダプロデュスタット(商品名:ダーブロック)の製造販売承認を世界に先駆け、日本で最初に取得したと発表した。腎障害で苦しむ患者は約1,100万人 腎臓は、エリスロポエチンなどのホルモンを産生することで赤血球の産生を促進するが、腎障害を有する患者では腎臓が十分な量のエリスロポエチンを産生できなくなることから、腎性貧血がよく起こる。また、腎機能の低下に伴い、腎性貧血の有病率も高くなる。現在は、主に赤血球造血刺激因子(ESA)注射剤による治療が行われている。 現在わが国では慢性腎臓病(CKD)ステージ3~5の患者は1,090万人推定され、このうち約32%に貧血が見られるという。世界中では10人に1人がCKDに罹患しているとされており、2017年には本症が原因で100万人を超える人々が亡くなっている。経口投与で患者のアドヒアランスを向上させ得る 今回製造販売承認されたダプロデュスタット(以下「本剤」という)は、経口の低酸素誘導因子プロリン水酸化酵素の阻害薬で、透析の有無に関わらず、成人の腎性貧血を効能・効果とした治療薬。酸素を検知するプロリン水酸化酵素を阻害することで、低酸素誘導因子を安定化し、高地で身体に生じる生理学的作用と同様に、赤血球産生や鉄代謝に関与するエリスロポエチンやその他の遺伝子の転写を誘導すると考えられている。本剤は、ESA注射剤と異なり、経口投与が可能で、低温保管の必要性がない新しい治療選択肢として開発された。 今回の承認は、主にわが国で実施された第III相試験における有効性および安全性の結果に基づいており、国内で実施された3つの第III相試験の概要は以下の通り。•ESA注射剤で治療中の血液透析患者271例を対象とした52週間のダプロデュスタットとダルベポエチンアルファ(遺伝子組換え)の比較試験•CKDステージ3~5の保存期患者(ESA注射剤による治療の有無は問わない)299例を対象とした52週間のダプロデュスタットとエポエチンベータペゴル(遺伝子組換え)の比較試験。この試験には、腹膜透析患者56例も含まれる(全例がダプロデュスタットを投与)•ESA注射剤で治療されていない血液透析患者28例を対象とした24週間の試験(全例がダプロデュスタットを投与) これらのほか、現在、心血管イベントを評価項目とする2つのアウトカム試験ASCEND-DとASCEND-NDを含むグローバル第III相プログラムが進行中であり、これらの試験結果は世界各国における承認申請に使用される予定。ダーブロックの概要製品名:「ダーブロック錠」(1mg・2mg・4mg・6mg)一般名:ダプロデュスタット効能または効果:腎性貧血用法及び用量:[保存期慢性腎臓病患者]・赤血球造血刺激因子製剤で未治療の場合 通常、成人にはダプロデュスタットとして1回2mgまたは4mgを開始用量とし、1日1回経口投与する。以後は、患者の状態に応じて投与量を適宜増減するが、最高用量は1日1回24mgまでとする。・赤血球造血刺激因子製剤から切り替える場合 通常、成人にはダプロデュスタットとして1回4mgを開始用量とし、1日1回経口投与する。以後は、患者の状態に応じて投与量を適宜増減するが、最高用量は1日1回24mgまでとする。[透析患者] 通常、成人にはダプロデュスタットとして1回4mgを開始用量とし、1日1回経口投与する。以後は、患者の状態に応じて投与量を適宜増減するが、最高用量は1日1回24mgまでとする。承認取得日:2020年6月29日製造販売:グラクソ・スミスクライン株式会社販売:協和キリン株式会社なお、薬価・発売日は未定。

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第52回 転倒しそうなときは横向き・おへそを見るよう意識して頭を守る!【使える!服薬指導箋】

第52回 転倒しそうなときは横向き・おへそを見るよう意識して頭を守る!1)John Stephen Batchelor, et al. Br J Neurosurg. 2012 Aug;26:525-530.2)John Stephen Batchelor, et al. Br J Neurosurg. 2013 Feb;27:12-18.3)Ramesh Grandhi, et al. J Trauma Acute Care Surg. 2015 Mar;78:614-621.4)根來 信也, 他. 身体教育医学研究. 2005;6:39-47.

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アドヒアランス不良でアセトアミノフェン分3から変更提案した薬剤は?【うまくいく!処方提案プラクティス】第23回

 今回は、アセトアミノフェンの複数回投与が開始になったものの、アドヒアランス不良のため疼痛コントロールが困難であった症例です。良好な疼痛コントロールとアドヒアランスを得るために提案した代替薬とその根拠を紹介します。患者情報93歳、男性(在宅)基礎疾患:うっ血性心不全、右被殻出血(左麻痺あり)、前立腺肥大症、高尿酸血症訪問診療の間隔:2週間に1回服薬管理:お薬カレンダーで管理し、ヘルパーによる毎日の訪問介護時に服薬処方内容1.タムスロシン塩酸塩錠0.2mg 1錠 分1 夕食後2.ボノプラザン錠10mg 1錠 分1 夕食後3.トリクロルメチアジド錠1mg 1錠 分1 夕食後4.フェブキソスタット錠10mg 1錠 分1 夕食後5.センノシド錠12mg 2錠 分1 夕食後6.クエン酸第一鉄ナトリウム錠50mg 2錠 分1 夕食後7.アセトアミノフェン錠200mg 6錠 分3 朝昼夕食後8.ピコスルファート内用液0.75% 便秘時 就寝前7〜8滴本症例のポイントこの患者さんは、脳出血後の左麻痺によって手先の不自由さがあり、ほぼベッド上で生活していました。そのため、服薬回数をすべて1日1回で統一して一包化し、毎日夕方の訪問介護の時間に服薬していました。ところが先日、トイレへ移動する際に転倒して受傷し、睡眠時や排泄時の疼痛のため、アセトアミノフェン錠200mg 6錠 分3 毎食後が開始となりました。朝・昼のアセトアミノフェンは、ヘルパーさんが夕方の訪問介護時にベッド近くに置いておいて、患者さんご自身で服薬することになりました。しかし、2回分を重複して服用したり服薬を忘れてしまったりと服薬アドヒアランスが維持できず、疼痛が管理できないという問題がありました。同じタイミングでケアマネジャーから、薬をなんとか1回にまとめられないものかと相談があり、アセトアミノフェンの変更提案を検討することにしました。1日1回の服用に適したNSAIDsを検討1日複数回服用することで重複投薬のリスクがあり、飲み忘れによって疼痛コントロールも不十分であるため、ほかの定期薬に合わせて服用できる鎮痛薬を検討しました。ここで候補に挙がったのは長時間作用型NSAIDsのメロキシカムです。長時間作用型という性質上、1日1回で疼痛コントロールできることに加え、服薬回数の負担も軽減できることから当該患者さんの処方薬として妥当だと考えました。半減期が長いため、高齢者や腎・肝機能が低下している場合は注意が必要ですが、この患者さんは心不全の状態が安定していて、直近の検査結果からも腎機能は年齢相応(Scr:0.78mg/dL、eGFR:57.8mL/min/1.73m2)で大きな悪化もないことから薬物有害事象の懸念は少ないと考えました。処方提案と経過医師に上記内容をトレーシングレポートで相談したところ、疼痛コントロールもしっかり行う必要があるが、誤薬のリスクを下げるためにも変更しようと了承いただきました。提案当日に変更対応となり、アセトアミノフェン錠の回収とメロキシカム錠10mgを夕食後投与としてカレンダーにセットしました。そして、患者さんとヘルパーさんへ鎮痛薬の変更があることを説明し、今後は朝・昼の薬はなくなることをお伝えしました。患者さんも複数回の服薬や飲み忘れ、重複投薬のことを気にしていたので、今回の変更を受けて安心していました。その後、患者さんは疼痛コントロールも良好で、疼痛による苦痛も有害事象もなく生活を続けています。

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日医会長に中川俊男氏が初当選、新執行部体制へ

 任期満了に伴う日本医師会の会長選挙が6月27日行われ、副会長の中川 俊男氏(69歳)が、現職で5期目を目指す横倉 義武氏(75歳)を接戦の末おさえ、初めての当選を果たした。中川氏は、これまで日本医師会の常任理事2期、副会長を5期に渡って務めたほか、社保審や中医協の委員などを歴任。会長選には、初めての立候補だったが、14大都市医師会をはじめ多くの都道府県医師会会長の推薦を手堅く集め、17票の僅差ながら現職候補を破る結果となった。 日本医師会会長選挙は371人の代議員による投票で行われた。開票結果は以下の通り。・中川 俊男氏:191票(当選)・横倉 義武氏:174票その他、無効票:2票、白票:4票 副会長および常任理事は、以下の通り(立候補者数と定数が同一のため、いずれも信任投票)。【副会長】猪口 雄二氏、松原 謙二氏、今村 聡氏【常任理事】江澤 和彦氏、長島 公之氏、松本 吉郎氏、羽鳥 裕氏、城守 国斗氏、釜萢 敏氏、渡辺 弘司氏、神村 裕子氏、宮川 政昭氏、橋本 省氏 中川氏は、今回の選挙時において、新型コロナウイルス感染症対策として、専門組織の強化や日本版CDC創設への働きかけを行うことを提言。地域医療を支える医業経営基盤の安定化策としては、診療報酬の構造的問題の見直しおよびあるべき診療報酬体系の提言、日医内に医療機関経営支援のための組織創設、控除対象外消費税を巡る医療機関ごとの補填のバラツキ解消などを掲げていた。

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COVID-19の肺がん患者、死亡率高く:国際的コホート研究/Lancet Oncol

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の世界的流行期における、肺がん等胸部がん患者の転帰について、初となる国際的コホート研究の結果が公表された。COVID-19に罹患した胸部がん患者は死亡率が高く、集中治療室(ICU)に入室できた患者が少なかったことが明らかになったという。イタリア・Fondazione IRCCS Istituto Nazionale dei TumoriのMarina Chiara Garassino氏らが、胸部がん患者における重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)感染の影響を調査する目的で行ったコホート研究「Thoracic Cancers International COVID-19 Collaboration(TERAVOLT)レジストリ」から、200例の予備解析結果を報告した。これまでの報告で、COVID-19が確認されたがん患者は死亡率が高いことが示唆されている。胸部がん患者は、がん治療に加え、高齢、喫煙習慣および心臓や肺の併存疾患を考慮すると、COVID-19への感受性が高いと考えられていた。結果を踏まえて著者は、「ICUでの治療が死亡率を低下させることができるかはわからないが、がん治療の選択肢を改善し集中治療を行うことについて、がん特異的死亡および患者の選好に基づく集学的状況において議論する必要がある」と述べている。Lancet Oncology誌オンライン版2020年6月12日号掲載の報告。 TERAVOLTレジストリは、横断的および縦断的な多施設共同観察研究で、COVID-19と診断されたあらゆる胸部がん(非小細胞肺がん[NSCLC]、小細胞肺がん、中皮腫、胸腺上皮性腫瘍、およびその他の肺神経内分泌腫瘍)の患者(年齢、性別、組織型、ステージは問わず)が登録された。試験適格条件は、RT-PCR検査で確認された患者、COVID-19の臨床症状を有しかつCOVID-19が確認された人と接触した可能性のある患者、または、臨床症状があり肺画像がCOVID-19肺炎と一致する患者と定義された。 2020年1月1日以降の連続症例について臨床データを医療記録から収集し、人口統計学的または臨床所見と転帰との関連性について、単変量および多変量ロジスティック回帰分析(性別、年齢、喫煙状況、高血圧症、慢性閉塞性肺疾患)を用いて、オッズ比(OR)およびその95%信頼区間(CI)を算出して評価した。なお、データ収集は今後WHOによるパンデミック終息宣言まで継続される予定となっている。 主な結果は以下のとおり。・解析対象は、2020年3月26日~4月12日に、8ヵ国から登録された最初の200例であった。・200例の年齢中央値は68.0歳(範囲:61.8~75.0)、ECOG PS 0~1が72%(142/196例)、現在または過去に喫煙81%(159/196例)、NSCLC 76%(151/200例)であった。・COVID-19診断時に、がん治療中であった患者は74%(147/199例)で、1次治療中は57%(112/197例)であった。・200例中、入院は152例(76%)、死亡(院内または在宅)は66例(33%)であった。・ICU入室の基準を満たした134例中、入室できたのは13例(10%)で、残りの121例は入院したがICUに入室できなかった。 ・単変量解析の結果、65歳以上(OR:1.88、95%CI:1.00~3.62)、喫煙歴(OR:4.24、95%CI:1.70~12.95)、化学療法単独(OR:2.54、95%CI:1.09~6.11)、併存疾患の存在(OR:2.65、95%CI:1.09~7.46)が死亡リスクの増加と関連していた。・しかし、多変量解析で死亡リスクの増加との関連が認められたのは、喫煙歴(OR:3.18、95%CI:1.11~9.06)のみであった。

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ASCO2020レポート 消化器がん(胆膵がん)

レポーター紹介2020年のASCOは、2020年5月29日からWebで開催された。これは、COVID-19の影響で、Virtual meetingとなったためである。Virtual meetingとは、Oral presentation、Poster discussion、Poster presentationもすべてASCOのWeb site上にスライドがUploadされ、発表者が発表内容を録音しているものを聞くだけで、相互のDiscussionがあるわけではない。Oral presentationとPoster discussionにはDiscussantが付いていて、それぞれの演題にコメントをしているが、質疑応答があるわけでもなく、ちょっと物寂しい感じが否めなかった。私も気合を入れて、現地時間の朝8時(日本時間の5月30日の夜中12時)からの開催に胸を弾ませスタンバっていたが、その前からスライドは閲覧可能であり、先んじて見ることができた。むしろ夜中12時からはアクセスが集中し過ぎて、ASCOのサイトに入れない状況であり、なんだか肩透かしを食らった感じであった。今年のASCOのテーマは「Unite & Conquer: Accelerating progress together」で、「皆で団結して、がんを征服しよう:共に進歩を加速させよう」ということで、がん研究を一緒に分かち合い、国際的な共同研究を行い、がんの克服を目指して、協力していこうという、会長の意思がよくわかる学会である。そして、本学会の会長はHoward A. Burris III先生であり、膵がんを担当している先生なら知らない人はいないはず。そうです、1997年にゲムシタビンと5FUの比較試験の報告をした先生であり、とうとう会長にまで登り詰めたんだと、非常に感慨深いものがあった。さて、今年の胆膵領域では、Oral presentationで膵がんが2演題、Poster discussionで膵がんが2演題、胆道がんが1演題、胆膵がんその他が1演題、取り上げられていた。Poster発表では、膵がんが28演題、胆道がんは14演題、神経内分泌腫瘍は8演題などであった。やはり膵がんは全世界的にも患者は増加傾向であり、治療成績も十分ではないため、喫緊の課題である。このことを反映してか演題数も多かった。とくに、Trial in progressの発表は膵がんが14演題と圧倒的に多く、次いで胆道がんが5演題、神経内分泌腫瘍が1演題であった。やはり、今後の開発は膵がんが圧倒的に注目されていることを表す結果だと思われた。膵がんmFOLFIRINOX療法とゲムシタビン+ナブパクリタキセル併用療法による周術期化学療法の比較試験(SWOG S1505) 1)膵がんの周術期の治療は、日本ではPrep02/JSAP05試験により、ゲムシタビン(Gem)+S-1併用療法による術前補助化学療法と、S-1による術後補助化学療法が標準治療となったが、世界的には術前化学療法は標準治療としては確立していない。しかし、術前補助化学療法は、早期から遠隔転移を抑制することができ、化学療法を効率よく行うことができ、切除を行ってもすぐに再発するような予後不良な患者を除外することができ、真に切除が必要な患者を選択できるため、臨床試験としてさまざまな取り組みが世界中で試みられている。本試験は、術前術後の補助化学療法として、modified FOLFIRINOX(mFFX)とGem+ナブパクリタキセル(Gem+nab-PTX)を比較したランダム化第II相試験(SWOG S1505)であった。主な適格規準は、膵がんに対する治療歴がない切除可能膵がん患者である。mFFX(フルオロウラシル 2,400mg/m2、オキサリプラチン 85mg/m2、イリノテカン 180mg/m2、2週ごと)とGem+nab-PTX(Gem 1,000mg/m2、ナブパクリタキセル 125mg/m2、3投1休)に1対1の割合で割り付けられた。術前化学療法を12週行った後に画像評価し、切除可能と判断された場合は切除を行い、さらに術後に術前と同じレジメンの化学療法を12週間行った。主要評価項目は2年生存割合として、閾値を40%とし、検出力88%、片側αを0.05として、期待値58%を超えた治療を有望な治療と判断することとした。2015年10月から登録を開始し、2018年4月に147例の集積が完了し、最終的に102例の適格症例が登録された。mFFX群に55例、Gem+nab-PTX群に47例が割り付けられた。2年生存割合はmFFX群が43.1%、Gem+nab-PTX群が46.9%であり、両群とも閾値の40%を統計学的有意に超えることができなかった。全生存期間(中央値)は22.4ヵ月および23.6ヵ月であった。外科切除を行った患者のうち、R0切除割合は両群ともに85%であり、N0で切除できた症例はそれぞれ40%および45%であった。病理学的奏効割合はmFFX群が25%に対して、Gem+nab-PTX群が42%と若干良好であり、その分、術後の無病生存期間もmFFX群10.9ヵ月に対して、Gem+nab-PTX群14.2ヵ月と良好であった。有害事象は両群ともに同様であり、忍容可能と考えられた。コメント本試験の結果、両群ともに期待値に到達せず、“no winner(勝者はなし)”という結果になった。病理学的奏効割合はGem+nab-PTX群が40%と、mFFXの25%よりも良好であった。術後補助療法では有意な結果を示せなかったGem+nab-PTXであるが、術前補助療法としての有用性はまだ期待できる可能性が示された。本試験では、術前化学療法の有効性を示すことはできなかったが、現在、mFFXの術後治療6ヵ月と術前4ヵ月+術後2ヵ月を比較したAlliance 021806試験が進行中であり、その結果が待たれるところである。切除境界可能膵がんに対するImmediate surgeryとゲムシタビン+カペシタビン、mFFX、化学放射線療法の術前治療のランダム化第II相試験 2)切除境界可能膵がん(BR膵がん)に対するImmediate surgery(術前治療を行わない群)とゲムシタビン+カペシタビン(Gem+Cape)、mFFX、化学放射線療法の4群を比較し、どの術前治療が有効かを明らかにするランダム化第II相試験であった。主要評価項目は、R1+R0切除割合と症例集積割合で、副次評価項目は、R0切除割合、有害事象と全生存期間であった。主要評価項目のR1+R0切除割合は、Immediate surgery群で62%、術前治療群(Gem+Cape、mFFX、化学放射線療法をあわせた群)で55%であり、有意差は認めなかった(p=0.668)。また、R0切除割合もImmediate surgery群で15%、術前治療群で23%であり、有意差は認めなかった(p=0.721)。症例集積割合は、1年当たり20.74例であり、症例集積にはかなりの時間を要することが示された。12ヵ月生存割合は、Immediate surgery群で42%、術前治療群で77%であり、有意に良好であった(ハザード比:0.28、95%信頼区間[CI]:0.14~0.57、p<0.001)。また、術前治療別の12ヵ月生存割合は、Gem+Capeが79%、mFFXが84%、化学放射線療法が64%であり、mFFXが最も良好であった。Immediate surgery群と術前治療群で、切除率に差は認めなかったが、12ヵ月生存割合は術前治療で有意に良好であり、なかでもmFFXが最も良好な治療成績であった。BR膵がんに対しては、術前治療を行うことを考慮すべきであり、レジメンとしてはmFFXが良好な可能性が示された。コメント著者らは術前治療推しの結語にしているが、実際には主要評価項目は達成しておらず、副次評価項目である生存期間が良好であったのが、術前治療であったため、BR膵がんに対しては術前治療を行うことを考慮すべきと結論付けている。少しずるい感じは否めないが、BR膵がんに対するUpfront surgeryと術前化学放射線療法を比較したランダム化比較試験の結果も術前治療群で有意に良好な結果が報告されているため、その結果に引っ張られる形での結語になっている。世の中の流れ的にも、BR膵がんは術前治療ありきだし、レジメンとしても最強なレジメンであるmFFXを考慮することは十分考えられうることであり、この結語に対する皆の受け入れは良いと思われる。ESPAC-4:術後補助化学療法Gem+Cape vs.Gemの第III相試験の5年後の経過観察 3)術後補助化学療法の第III相試験(ESPAC-4)において、Gem+Cape群は、Gem群と比べて有意に良好な生存期間が示され、標準的な術後補助化学療法として確立している。今回は、ESPAC-4試験の5年の長期経過観察後の結果の発表であった。Gem群366例、Gem+Cape群364例が解析対象であり、生存期間(中央値)はGem群26.0ヵ月、Gem+Cape群27.7ヵ月であり、有意差が得られたままであった(ハザード比:0.84、95%CI:0.70~0.99、p=0.049)。多変量解析においても、切除断端陽性、術後CA19-9高値、術前CRP高値、低分化型、リンパ節転移陽性、最大腫瘍径と共に、有意な予後因子として、術後補助化学療法が選択された。術後補助化学療法のGem+CapeはGemと比べて有意に生存期間の延長に寄与することが、長期経過観察の結果からも示された。コメント大規模な術後補助化学療法の5年の長期経過観察後の発表であるが、とくに驚くことのない試験結果であり、この演題がPoster discussionであることのほうがむしろ驚きである。今年はあまり採択すべき演題がなかったのかなと思ってしまった。膵がん切除後補助化学療法Gem+nab-PTX vs.Gem aloneの第III相試験(APACT)の生存期間のUpdateと地域ごとの治療成績 4)ちょうど1年前のASCOで発表された、膵がん切除後の補助化学療法としてのGem+nab-PTXとGem aloneを比較した第III相試験(APACT)の結果は、主要評価項目である中央判定による無病生存期間の延長は認めなかったため、標準的な術後補助化学療法としては位置付けられていない。しかし、副次評価項目である全生存期間の延長を認めており、担当医判断の無病生存期間においても有意な差が認められていたため、中央判定が良くなかったのではないかとまで言われている試験であった。この試験は、全世界179施設、21ヵ国で行われたGlobal試験であり、今回、このAPACT試験の生存期間のUpdateと地域ごとの治療成績の違いについて発表された。膵がん(T1-3、N0-1、M0)に対してR0またはR1切除を行い、術後に再発を認めず、CA19-9が100 U/mL未満に低下した患者をGem+nab-PTX群432例とGem alone群434例にランダムに割り付けた。Updateされた全生存期間(中央値)は、Gem+nab-PTX群41.8ヵ月とGem alone群37.7ヵ月であり、ハザード比0.82(95%CI:0.687~0.973、p=0.232)と、主解析時点と同様の結果が得られた。欧州、北米、アジア、オーストラリアの4地域における患者背景、生存期間、有害事象の違いも報告された。患者背景では、オーストラリアの患者でPerformance statusが0の患者とR0切除割合がGem+nab-PTX群で低率であったこと以外は両群で有意差は認めなかった。また、地域ごとの違いでは、アジアの患者で、R0切除、N0の患者が最も多く認められ、投与状況では累積投与量がアジアの患者でやや多かった。生存期間は、どの地域でもGem+nab-PTX群で良好な傾向が認められており、地域によらず一定の効果が認められた。Gem+nab-PTXの生存期間(中央値)は、欧州41.8ヵ月、北米38.5ヵ月、アジア46.8ヵ月、オーストラリア31.5ヵ月と患者背景を反映してか、アジアで良好であった。有害事象に関しては、これまでの報告と同様にGem+nab-PTX群でGrade3以上の治療関連有害事象発現割合が高く、その内訳は好中球減少、貧血、白血球減少、末梢神経障害、疲労など、既知のものだった。また、地域ごとの違いはほぼ認められなかった。このように、4年の追跡調査結果は主解析と同様の結果であり、地域別の解析でも、全体での解析結果と同様の結果だった。コメント膵がん切除後の補助化学療法として、Gem+nab-PTXとGemを比較した第III相試験(APACT)の生存期間のUpdateの結果と地域による治療成績の違いを検討した結果が報告された。くしくも、このAPACT試験の生存期間のハザード比は0.82であり、ESPAC-4試験でPositiveな結果となったGem+Capeのハザード比0.84と同等からやや良好な結果が示されており、生存期間(中央値)もGem+nab-PTXは41.8ヵ月、Gem+Capeは27.7ヵ月であり、患者背景が違うため、単純に比較はできないが、APACT試験の結果が良好であった。あえてこのように並べて発表したのかはわからないが、Gem+nab-PTXの術後補助化学療法の有効性を示唆する結果であった。また、地域による治療成績の違いの検討は、肝細胞がんでは地域による違いが問題になることもあるが、膵がん切除後の補助化学療法においては、地域による患者背景や治療成績に違いはほぼないことがわかり、今後、Global試験を行ううえで、非常に重要な結果が示されたと考えている。胆道がん進行胆道がんの初回治療例に対するGem+Cisplatin+Durvalumab+Tremelimumab vs.Gem+Cisplatin+Durvalumabの第II相試験 5)切除不能または再発胆道がんの初回治療例に対して、Gem+Cisplatin(GC)+Durvalumab(D)+Tremelimumab(T)のバイオマーカーコホート30例とGC+Dコホート45例、GC+D+Tコホート46例の第II相試験の結果が韓国から報告された。奏効割合は、バイオマーカーコホート50.0%、GC+Dコホート73.4%、GC+D+Tコホート73.3%と非常に良好であり、奏効までの期間(中央値)も2.3ヵ月と良好であった。無増悪生存期間(中央値)と生存期間(中央値)はそれぞれ、バイオマーカーコホート13.0ヵ月と15.0ヵ月、GC+Dコホート11.0ヵ月と18.1ヵ月、GC+D+Tコホート11.9ヵ月と20.7ヵ月と、まだ打ち切り例が多いが、非常に良好な結果が報告された。バイオマーカーコホートで、1サイクル後のPD-L1の発現によって無増悪生存期間に違いが出る可能性が示唆された。全Gradeの有害事象は、悪心59.5%、好中球減少54.5%、掻痒55.4%に認めたが、忍容性は良好であったと解釈された。現在、GC+D vs.GCの第III相試験(TOPAZ-1: NCT03875235)が進行中であることが報告された。コメント胆道がんにおける免疫チェックポイント阻害剤は期待されており、GC+免疫チェックポイント阻害剤の併用療法の第III相試験がいくつか進行中である。今回、GCにDまたはD+Tを併用することで非常に良好な治療成績が報告されているが、現在、進行中の第III相試験は、GC+D vs.GC+プラセボの第III相試験(TOPAZ-1)であり、Tの併用はない。今後、GC+T+Dのレジメンの開発がどうなるのかは、まったくわからない状況であった。胆道がんに対するその他の治療開発は、1次治療としてGC+ペムブロリズマブvs.Gem+プラセボの第III相試験(KEYNOTE-966)、GC+Bintrafusp alfa(M7824)vs.GC+プラセボの第II/III相試験(Trap0055)が進行中であり、2次治療以降では、ゲムシタビン、シスプラチンおよびS-1の前治療歴がある胆道がん患者を対象としたニボルマブの治験、職業関連胆道がん患者を対象としたニボルマブ単剤による医師主導治験などが進行中であり、やはり注目度は高い。胆膵がんその他ctDNAと組織でのクリニカルシーケンスの比較:SCRUM-Japan GI-Screen vs. GOZILA 6)SCRUM-Japanで行われてきた組織でのクリニカルシーケンス(GI-Screen)と血液でのctDNA(GOZILA)を比較した検討結果が、JCOG肝胆膵グループの若手のホープである国立がん研究センター中央病院の大場先生から報告された。SCRUM-Japanでは、消化器がんを中心にがん遺伝子のクリニカルシーケンスの研究として行ってきた。今回、組織でのクリニカルシーケンスであるGI-Screen研究に参加された2,952例と、リキッドバイオプシーであるctDNAによるがん遺伝子検査のGOZILA研究に参加された632例の患者背景、検査結果が判明するまでの時間、同定されたActionable遺伝子異常、臨床試験への参加割合と参加までの期間、臨床試験での奏効割合と無増悪生存期間を比較検討した。患者背景では、GOZILA研究に膵がんの患者が多く登録されており、膵がんは組織が採取しにくく、リキッドバイオプシーが好まれる傾向にあることが示された。検査結果が判明するまでの時間(中央値)は、GI-Screenでは37日、GOZILAでは12日と、GOZILAで有意に短かった(p1)Davendra Sohal, Mai T. Duong, Syed A. Ahmad, et al. SWOG S1505: Results of perioperative chemotherapy (peri-op CTx) with mfolfirinox versus gemcitabine/nab-paclitaxel (Gem/nabP) for resectable pancreatic ductal adenocarcinoma (PDA). J Clin Oncol 38: 2020 (suppl; abstr 4504)2)Paula Ghaneh, Daniel H. Palmer, Silvia Cicconi, et al. ESPAC-5F: Four-arm, prospective, multicenter, international randomized phase II trial of immediate surgery compared with neoadjuvant gemcitabine plus capecitabine (GEMCAP) or FOLFIRINOX or chemoradiotherapy (CRT) in patients with borderline resectable pancreatic cancer. J Clin Oncol 38: 2020 (suppl; abstr 4505)3)John P. Neoptolemos, Daniel H. Palmer, Paula Ghaneh, et al. ESPAC-4: A multicenter, international, open-label randomized controlled phase III trial of adjuvant combination chemotherapy of gemcitabine (GEM) and capecitabine (CAP) versus monotherapy gemcitabine in patients with resected pancreatic ductal adenocarcinoma: Five year follow-up. J Clin Oncol 38: 2020 (suppl; abstr 4516)4)Michele Reni, Hanno Riess, Eileen Mary O'Reilly, et al. Phase III APACT trial of adjuvant nab-paclitaxel plus gemcitabine (nab-P + Gem) versus gemcitabine (Gem) alone for patients with resected pancreatic cancer (PC): Outcomes by geographic region. J Clin Oncol 38: 2020 (suppl; abstr 4515)5)Do-Youn Oh, Kyung-Hun Lee, Dae-Won Lee, et al. Phase II study assessing tolerability, efficacy, and biomarkers for durvalumab (D) ± tremelimumab (T) and gemcitabine/cisplatin (GemCis) in chemo-naive advanced biliary tract cancer (aBTC). J Clin Oncol 38: 2020 (suppl; abstr 4520)6)Akihiro Ohba, Yoshiaki Nakamura, Hiroya Taniguchi, Masafumi Ikeda, et al. Utility of circulating tumor DNA (ctDNA) versus tumor tissue clinical sequencing for enrolling patients (pts) with advanced non-colorectal (non-CRC) gastrointestinal (GI) cancer to matched clinical trials: SCRUM-Japan GI-SCREEN and GOZILA combined analysis. J Clin Oncol 38: 2020 (suppl; abstr 3516)

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第23回 点数表は面白い!正直すぎる女性薬剤師【噂の狭研ラヂオ】

動画解説今回は群馬県高崎市 株式会社ファーマ・プラスの専務取締役 小黒佳代子先生と対談。高速で正確なピッキングの習得しか面白みを見いだせなかった大学病院、かといって興味もなかった薬局。しかし就いてしまえば、その場その場でやりがいを見つけ、熱心に活動できるのが小黒先生のスゴイところ。「私、点数表を見るのが好きなんですよ!」と笑う彼女の薬剤師人生はバイタリティに溢れていた!

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処方箋枚数が減って長期処方が増加中 でも分割調剤は進まず【早耳うさこの薬局がざわつくニュース】第49回

新型コロナウイルス感染症の影響で、医療機関の受診患者数が減っていると一般メディアでも報じられていますが、皆さんの薬局では来局動向や処方箋枚数に変化はありましたか? 私の実感では3月後半から患者さんの来局が減っていて、当時はうちの薬局だけかと心配になりましたが、どうやらそうでもないようです。日本保険薬局協会(NPhA)が会員薬局に行ったアンケートでは、患者さんの行動の変化が浮き彫りになっています。日本保険薬局協会は6月11日の定例会見で、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に伴う緊急調査結果を公表した。それによると、月間処方箋枚数は「10~20%未満の減少」が全体の約3割を占め、調剤報酬は「10%未満の減少」が約3割を占めた。「枚数が減って長期処方が増えている」と分析している。調査は5月に実施し4581薬局から回答を得た。(2020年6月12日付 RISFAX)長期処方が増えているということは、これから先も処方箋枚数は減る傾向にあるのかもしれません。状態が安定している患者さんが長期処方になるのはよいのですが、受診・来局控えによって必要な治療が中断したり、治療の開始が遅れたりするケースが見受けられます。実際、「指をぶつけて骨を折ったかもしれないけど、整形外科の待合室に人がたくさんいて、長い時間待たされるから受診していない」と指をパンパンに腫らして市販薬の湿布を購入しようとしていた方がいました。医療機関は不特定多数の人が集まる場所ですので、避けたい気持ちはわからなくはありませんが、まずは整形外科に電話して、受診が必要かどうか、必要なら空いている時間帯を聞いてみるようお話ししました。痛みがある外傷ですら受診を躊躇するくらいですから、ちょっとした不調なら治療が必要であったとしても、自己判断で様子をみて発見が遅れる懸念があります。薬局薬剤師としては、受診控えで患者さんが変調を来していないかをいつもより注意深くヒアリングすべきだと思います。複数の医療機関を受診している患者さんには受診状況を確認するなど、治療が必要な人にはきちんと受診してもらうように声掛けしてみるのもよいでしょう。OTC薬を購入しに来た方にも必要に応じて受診勧奨し、その際に近隣の医療機関のオンライン診療の実施有無を調べて情報提供してもいいかもしれません。また、冒頭の日本保険薬局協会のアンケートでは、「処方箋が長期化傾向にあるにもかかわらず、分割調剤は進んでいない」という結果もありました。長期処方が増えるのであれば、分割調剤によって薬剤師が患者さんの経過確認をする意義も増えます。患者さんのサポートができることを積極的に医師に伝え、分割調剤を提案してはいかがでしょうか。

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DAPA-HF試験の新データをADAで発表/アストラゼネカ

 アストラゼネカは、2020年6月12日から開催された第80回米国糖尿病学会オンライン学術集会において、主要第III相試験である“DAPA-HF試験”および“DECLARE-TIMI58試験”の新たなデータを発表した(本集会では4つの口頭発表を含む23の演題が採択された)。心血管、腎、代謝領域の治療開発に向けて 発表された主なハイライトは次のとおり。(1)DAPA-HF試験・DAPA-HF試験のデータに関する口頭発表: 左室駆出率が低下した心不全患者における2型糖尿病新規発症率に対するダパグリフロジン(商品名:フォシーガ)の効果(抄録#271-OR)・DECLARE-TIMI58試験の新たなサブ解析の口頭発表: 心血管疾患の既往もしくは心血管疾患リスクの増加した2型糖尿病患者さんにおける急激な腎機能低下に対するダパグリフロジンの効果(抄録#303-OR)・DAPA-HF試験の解析: 2型糖尿病に対する基礎治療がダパグリフロジンによる心不全治療の効果に影響を与えるかについての検討(抄録#1112-P)(2)DISCOVER試験・国際的リアルワールド観察研究であるDISCOVER試験の新たな解析についての口頭発表: 血糖降下薬による2次治療を開始する2型糖尿病患者さんにおける健康関連QOLに影響を及ぼす因子について(抄録#40-OR)(3)EXSCEL試験・エキセナチド(商品名:ビデュリオン)週1回投与のeGFRスロープとベースラインUACRの関数としてのUACRに対する効果: EXSCEL試験の事後解析(抄録#958-P)(4)Cotadutide・GLP-1とグルカゴン受容体デュアルアゴニストであるcotadutide(開発中)における新たな第II相試験データの口頭発表: 2型糖尿病患者さんの血糖値および肝臓脂肪・肝臓グリコーゲン貯蔵量に対する好ましい影響について(抄録#354-OR)(5)THEMIS試験・THEMIS試験における糖尿病関連因子のサブグループ解析: 冠動脈疾患を合併する2型糖尿病患者のチカグレロル(商品名:ブリリンタ)による治療結果における、2型糖尿病の罹病期間、ベースラインHbA1c値、基礎治療の血糖降下薬が及ぼす影響(抄録#403-P)(6)その他・18カ国の医師1,600名以上を対象に、2型糖尿病患者の初期治療およびクリニカルイナーシャ(患者さんが治療目標に達していないのに適切な治療が行われていない状態)を調べた国際調査の結果(抄録#1188-P)

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039)電カルに移行して気付く紙カルテの良さ【Dr.デルぽんの診察室観察日記】

第39回 電カルに移行して気付く紙カルテの良さしがない皮膚科勤務医デルぽんです☆先日、私の勤務先の病院にも、いよいよ電子カルテが導入されました。もちろん、それまでもオーダーや処方は電子運用でしたが、今回からは診療記録も同じく電子に。メーカーの人から操作方法を習い、半月経ってようやく入力に慣れてきたところです。電子カルテの診療記録に移行して、とくに感じることがひとつ。それは、視覚的な情報が圧倒的に減るということ。シェーマ(絵図)やスケッチなどを多用する皮膚科では、すべてが文字情報に置き換わることで、見た目からの情報が減ってしまうと感じています。もちろん、電子カルテにもシェーマを挿入する機能はあります。しかし、まずシェーマ編集画面を開き、目的のシェーマを呼び出すまでに数クリックのステップが必要で、ようやく編集できても、入力は当然マウス操作。カチッ(ツール選択)、カチカチッ(丸や線を引く)、カチッ(ツール切り替え)…と、時間はかかるわ、もどかしいわ。忙しい外来ではそこまでする余裕もなく、ついつい「眼周囲:紅斑(++)」などで済ませてしまいます。紙カルテだったら、患者さんと雑談しながら判子(はんこ)のひとつもポンと押して、簡単に手描きできるのに…。字体でその日のコンディションが読めたり、欄外に何げない小ネタを走り書きできたり、といったアナログ感が、今では恋しいです。一方、紙カルテは保管スペースやカルテ出しの人手が必要なので、その点では電子にかないませんけどね。代替案として、ペンタブレットでの入力や、手書きカルテのスキャン保存を提案したいところですが、費用・運用面での導入ハードルを考えると、なかなか難しいのかもしれません。マウス操作の上達が一番の近道…!?もう少しシェーマを出しやすくする方法がないか、試行錯誤してみます。それでは、また~!

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まさかの防衛医大マンガ【Dr.倉原の“俺の本棚”】第31回

【第31回】まさかの防衛医大マンガマンガの書評ばっかじゃねーか! と思われそうなくらい、医療系マンガを紹介しまくっているこの書評連載。今日紹介するのは、大ヒット防衛医大のマンガ、『賢者の学び舎』です。全第5巻で、すでに連載は終了しています。『賢者の学び舎 防衛医科大学校物語』 全5巻山本 亜季/著. 小学館. 2018~20年防衛医大って、寮生活大変で、なんか屈強な医学生が通うイメージがありました。卒業後、医官(自衛隊の医師)として9年の任官義務があり、それを行わない場合は約5,000万円を返納しなければならないというのは耳にしたことがありました。しかし、あまり内情は知らなかったんですよね、私。そんなニッチなテーマを漫画化したのがこの本ッ! 防衛医大卒の医師に聞いたところ、「かなり取材頑張ってるね。リアルにこんな感じだよ」と、いたく褒めておりました。1巻の表紙はなかなかインパクトがあります。白衣姿で、なぜか右手にアイロンを持っている主人公。このマンガを読んだ人と、防衛医大の人はわかると思います(笑)。防衛医大卒の医師は、もしかしたら全員アイロンが上手かもしれませんね。医学の勉強だけでなく、士官としての訓練、さらに先輩からの厳しい指導。そんな防衛医大の寮生活をかなりリアルに描いています。主人公は、やたら自立心が強く、頭のいいクールな青年です。他人への関心がかなり薄いのですが、そんな彼が学友を通して成長していく姿が見られます。医師になって、どこかに置き忘れてしまった甘酸っぱい医学に対する熱意が、沸々と腹の底によみがえってくるストーリー。いやー、アツイですよ、これ。他人との協調性もなく、医師免許を1つの資格としてしか見ていない主人公に対して、医大の校長が放った「医師免許は、キミの人生を快適にするためのパスポートじゃないんだよ」というセリフは、オジサンドクターになりつつある私の前頭葉にガツンと響きました。ぶっちゃけると、1巻は「ほうほうなるほど」くらいだったのですが、2巻、3巻と読み進めていくと、手がマジ止まんねぇ! という、異例のページターナー・コミックです。読後感もとても良く、COVID-19で疲れ切った陰鬱な空気が漂っている今こそ、医師のみなさんにオススメのマンガ。『賢者の学び舎 防衛医科大学校物語』 全5巻山本 亜季 /著出版社名小学館定価各巻本体591円+税サイズB6判刊行年2018年~20年

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StageIV乳がんに早期局所療法は予後を改善するか(ECOG-ACRIN 2108)/ASCO2020

 未治療のStageIV乳がんに対する早期の局所療法による予後改善効果についての報告が、米国臨床腫瘍学会年次総会(ASCO20 Virtual Scientific Program)で、米国・Northwestern Memorial HospitalのSeema A. Khan氏より発表された。 本試験はECOG-ACRIN臨床試験グループが実施したもの(ECOG-ACRIN 2108試験)で、第III相の無作為化比較試験である。・対象:標準薬物療法を施行し、4~8ヵ月間転移巣の病勢進行がなかったStageIV乳がん症例・試験群:原発巣に対する局所療法(切除断端陰性を確認し、その後の放射線療法は許容)を施行(ELT群)・対照群:当初の全身療法を継続(CST群)・評価項目:[主要評価項目]全生存期間(OS)[副次評価項目]局所の増悪までの期間、QOLなど・両群とも5年間の追跡期間とした。 主な結果は以下のとおり。・2011~15年に390例が一次登録され、そのうち256例がCST群(131例)とELT群(125例)に無作為化割り付けされた。・CST群とELT群の間の全体的なクロスオーバー施行率は14%であった。・ELT群では、125例中109例が手術を受け、切除断端が陰性だったのは87例、その後の放射線療法を受けたのは74例であった。また、CST群では、131例中25例が手術を受けた。・追跡期間中央値は53ヵ月(データカットオフ2019年12月)で、OS中央値は54ヵ月、ハザード比(HR)1.09(90%信頼区間[CI]:0.80~1.49)、p=0.63で、両群間にOSの統計学的な有意差は認められなかった。・各サブタイプ(TNBC、HER2陽性、ホルモン陽性)においても、両群間のOSの有意な差は検出されなかった。・無増悪生存期間(PFS)においては、データカットオフ時点で178例が病勢進行または死亡し、p=0.40であった。・乳房内再発や胸壁への浸潤、領域リンパ節への転移などの局所再発/増悪の累積発現率は、CST群25.6%(95%CI:18.6~34.5)、ELT群10.2%(95%CI:5.9~17.3)で、HR0.37(95%CI:0.19~0.73)p=0.003と、CST群で有意に高かった。・FACT-B評価による健康関連QOLは、18ヵ月時点で、ELT群がCST群に比し、有意に低下していた(p=0.001)が、その他の時間軸では、両群間の差は認められなかった。 演者のKhan氏は「未治療のStageIV乳がんの原発巣に対する局所療法は、生存期間延長などのベネフィットは期待すべきではない。また、本試験と同様のデザインで進行中の日本のJCOG-1017の結果が待たれる」と結んだ。

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第11回 コロナ禍を盾に、日医会長選は“全面戦争”の様相

6月27日に投開票される日本医師会の会長選挙。立候補を表明している、現職で5選を目指す横倉 義武氏(75歳)と、副会長の中川 俊男氏(68歳)の両陣営が「キャビネット(副会長・常任理事の推薦候補)」を明らかにした。そこから見えるのは、大票田である東京・大阪の分裂と、どちらが当選しても日医の団結にヒビが入りそうだということだ。中川陣営は6月8日に公表したキャビネットで、副会長(定数3人)推薦候補に、現職の今村 聡氏(東京)と松原 謙二氏(大阪)に加え、全日本病院協会会長の猪口 雄二氏(東京)を推薦した。常任理事(定数10人)推薦候補には、現職の小玉 弘之氏(秋田)、道永 麻里氏(東京)、石川 広己氏(千葉)、平川 俊夫氏(福岡)の4氏を替え、都道府県医師会の副会長・常任理事の神村 裕子氏(山形)、橋本 省氏(宮城)、宮川 政昭氏(神奈川)、渡邊 弘司氏(広島)を入れる構想を明らかにした。残りの釜萢 敏氏(群馬)、長島 公之氏(栃木)、松本 吉郎氏(埼玉)、羽鳥 裕氏(神奈川)、城守 国斗氏(京都)、江澤 和彦氏(岡山)は続投させる方針だ。一方、横倉陣営は6月10日にキャビネットを公表。副会長推薦候補には、現職の今村氏を続投させるほか、新たに愛知県医師会会長の柵木 充明氏、大阪府医師会会長の茂松 茂人氏を加えた。常任理事推薦候補は現職の石川氏だけを替え、元東京都医師会副会長の近藤 太郎氏を選んだ。中川氏が自らと同様に中央社会保険医療協議会(中医協)や社会保障審議会(社保審)の委員を務めた猪口氏を副会長推薦候補にした意味は何か。ある医療関係者は「開業医と中小病院の連携で、診療報酬をしっかり取っていこうという姿勢の表れでは」と話す。一方、両キャビネットから情報担当の石川氏が共通して外されたのは、「医療のIT化関連の施策に後ろ向きだからではないか」と前述の医療関係者は推測する。また副会長選を巡っては、東京都・大阪府両医師会が分裂しそうだ。都医師会出身の今村氏は両陣営のキャビネットに副会長推薦候補として名を連ねたが、6月10日の記者会見で今村氏は、「横倉会長が立候補を決断され、その後に私に『手伝え』と言われた。しかし、中川先生からはそうした話がなく、メディアを通してキャビネットの陣容を知り、大変驚いた」と述べ、横倉キャビネットとしての立場を明らかにした。一方、6月7日の中川陣営の記者会見において、東京都医師会長の尾崎 治夫氏が「正義は中川先生にある」と応援理由を説明している上、中川キャビネットの副会長推薦候補の猪口氏は都医師会会員でもあることから、都医師会の票が割れることは必至だろう。また大阪府医師会では、2018年の役員選で横倉氏がクビのすげ替えを図った松原氏(府医師会理事)が中川キャビネットの副会長推薦候補に入っている一方、府医師会会長である茂松氏が横倉キャビネットの副会長推薦候補になっており、府医師会の票も割れそうだ。中川氏は「横倉執行部の本流の後継者」を強調、日医の従来路線を維持しながら変革する方針を説明している。一方、横倉会長は中川氏との違いについて、「基本的に随分考えが違う。私はしっかりと相手の話を聞いて、こちらの主張もしっかりと通す。一方的に我々の理念だけを通すことはありえない」と批判めいた発言をしている。中川氏は中医協や社保審などで強面に出る人物として知られているが、横倉氏は以前、「私の右腕」と持ち上げていた。“かませ犬”的な存在として中川氏を筆頭副会長に置いていたのかと勘繰りたくなる。横倉氏の1回目の会長選は3人で争う選挙だったが、2回目以降は厳しい選挙戦はしていない。その1回目でさえ「割と爽やかな選挙をしていた」と述べている。しかし今回は、中川陣営が6月7日に開いた記者会見に、10都道府県医師会、3市医師会の会長らが参加。東京・大阪の医師会も分裂している中、危機感を抱いているらしい。予定していなかった東京選対事務所を急きょ6月14日に開いたり、中川氏と支持者を批判する“怪文書”が出回ったり(横倉陣営の発信と見られる)しているのだ。今度ばかりは「爽やかな選挙」とはいかないだろう。新型コロナが依然油断ならない状況のなか、一丸となるべき医師会が、間違っても内部のいざこざで機能不全に陥るなんてことがないようお願いしたいところだ。

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オリゴ転移乳がん、局所併用療法 vs.全身療法(OLIGO-BC1)/ASCO2020

 日本、中国、韓国によるアジア圏での国際後ろ向きコホート研究の結果、オリゴ転移乳がんに対する局所療法と全身療法併用の生存に対するベネフィットが示された。米国臨床腫瘍学会年次総会(ASCO20 Virtual Scientific Program)で、がん研究会有明病院の上野 貴之氏がOLIGO-BC1試験の結果を発表した。・対象:ABCガイドラインで定義されたオリゴ転移を有する乳がん患者(転移個数が少なく[5個以下]、サイズが小さい、腫瘍量の少ない転移疾患。転移臓器の数は定義されていない)・主な除外基準:脳、胸膜、腹膜への転移、あるいは切除不能な皮膚および胸壁への再発症例/胸水貯留を認めた症例/生理的腹水を超えて腹水貯留を認めた症例/心外膜液貯留を認めた症例/同側乳房内再発症例/他臓器の浸潤がんの既往がある症例/重篤な併存症(心筋梗塞、脳梗塞、糖尿病、自己免疫疾患など)を有する再発症例・試験群:局所療法(外科的切除、放射線療法、焼灼療法および経カテーテル動脈(化学)焼灼療法など)と全身療法(化学療法、内分泌療法、抗HER2療法など)の併用・対象群:全身療法のみ・評価項目:[主要評価項目]全生存期間(OS) ※以前の報告から5年OSを50%、40%とそれぞれ仮定した場合、両側の有意水準で併用療法の優位性を検出するために、少なくとも698例、検定力80%が必要とされた[副次評価項目]無増悪生存期間(PFS)、長期的なPFSおよびOSを定義する臨床的、解剖学的および病理学的分析、局所療法に関連する重篤な有害事象 主な結果は以下のとおり。・2018年2月~2019年5月に1,295例が登録され、除外基準に基づき1,200例が分析対象(中国、日本、韓国からそれぞれ573、529、98例)とされた。・HR+HER2-が526例(44%)、HR+HER2+が189例(16%)、HR-HER2+が154例(13%)に、HR-HER2-が166例(14%)、その他は161例(13%)であった。・オリゴ転移数1が578例(48%)、2が289例(24%)、3が154例(13%)、4が102例(9%)、5が77例(6%)であった。・内臓転移のみが387例(32%)、骨転移のみが301例(25%)、局所再発のみが83例(7%)、局所領域再発は25例(2%)、複数部位の転移が404例(34%)であった。・局所療法および全身療法は495例、全身療法は705例で行われた。・追跡期間中央値4.9年における、5年OS率は併用療法59.6%、全身療法41.9%(p<0.01)。調整後のハザード比(HR)は0.60(95%信頼区間[CI]:0.51~0.71)であった。・多変量解析の結果、全身療法の種類(化学療法-内分泌療法:HR0.59[0.44~0.78])、若年(20~39歳:HR0.72[0.59~0.88]、40~49歳:HR0.72[0.60~0.86])、ECOG PS0(HR0.68[0.55~0.86])、ステージI(HR0.72[0.54~0.96])、非トリプルネガティブ乳がん(HR+HER2-:HR0.82[0.64~1.04]、HR+HER2+:HR0.68[0.52~0.90]、HR-HER2+:HR0.76[0.57~1.02])、転移部位の少なさ(1:HR0.71[0.59~0.86]、2:HR0.95[0.78~1.18])、局所再発(HR0.69[0.49~0.97])、無病生存期間の長さ(≦1:HR2.01[1.52~2.68]/4≦:HR1)が、予後良好因子であった。

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多発性骨髄腫導入療法、カルフィルゾミブ3剤併用療法 vs.ボルテゾミブ3剤併用療法(ENDURANCE)/ASCO2020

 米国・メイヨー・クリニックのShaji K. Kumar氏は未治療の多発性骨髄腫への導入療法として、従来から標準療法として用いられているプロテアソーム阻害薬ボルテゾミブとレナリドミド、デキサメタゾンの3剤併用療法(VRd)と、ボルテゾミブに代えて新規次プロテアソーム阻害薬のカルフィルゾミブを使用する3剤併用療法(KRd)を比較した無作為化第III相比較試験の結果を米国臨床腫瘍学会年次総会(ASCO20 Virtual Scientific Program)で発表した。・対象:前治療歴がない多発性骨髄腫患者1,087例(PS 0~2)。FISH法によるt(14;16)、t(14;20)、17p13 欠失、LDHが正常上限の2倍以上の高リスク群、形質細胞性白血病患者、Grade2以上の末梢神経障害を有する患者、NYHA心機能分類III~IV度の心不全患者などは対象から除外・試験群:カルフィルゾミブ+レナリドミド+デキサメタゾン、4週ごと最大9サイクル(KRd群、545例)・対照群:ボルテゾミブ+レナリドミド+デキサメタゾン、3週ごと最大12サイクル(VRd群、542例) 両群36週間の治療終了後、レナリドミド維持治療継続群とレナリドミド2年間維持治療群に1:1に2度目の割り付け・評価項目:[主要評価項目]導入療法での無増悪生存期間(PFS)、維持治療での全生存期間(OS)[副次評価項目]寛解率、微小残存病変(MRD)陰性率、増悪までの期間、OS、毒性[その他]導入療法期間中と終了後にQOL評価 主な結果は以下のとおり。・PFS中央値はVRd群34.4ヵ月、KRd群34.6ヵ月で有意差はなかった(ハザード比[HR]:1.04、95%CI:0.83~1.31、p=0.742)。・70歳以上のPFS中央値はVRd群37ヵ月、KRd群28ヵ月であった。・サブグループ解析では、70歳以上、男性でVRd群が良好だった。・厳格な完全寛解(sCR)はVRd群が4.0%、KRd群が5.9%、完全寛解(CR)はそれぞれ10.8%、12.4%、非常に良い部分寛解(VGPR)はぞれぞれ49.9%、55.5%、部分寛解(PR)はそれぞれ19.5%、12.9%であった。・OS中央値は両群とも未達(HR:0.98、95%CI:0.71~1.36、p=0.923)、3年OS率はVRd群が84%、KRd群が86%であった。・Grade3以上の治療関連有害事象発現率はVRd群59.4%、KRd群65.6%(p=0.038)、非血液毒性発現率はVRd群41.4%、KRd群48.3%だった(p=0.024)。 今回の結果から、Kumar氏は「新規診断の多発性骨髄腫に対する導入療法としてはVRdが依然として標準治療である」と述べた。

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医学生向け・医師国家試験の勉強法(1)【森野コジカの研修医室からこんにちは!】第3回

第3回 医学生向け・医師国家試験の勉強法(1)皆さんこんにちは! 研修医になって2ヵ月、やっと褒められることも増えてきた森野コジカです。今回から、医学生の皆さんに向けて、コジカ流・国試の勉強法を何回かに分けてお伝えしようと思います!まず、1人で勉強するうえで、大切だと思うのは以下の2つです!(1)予備校予備校に頼らず参考書だけでやりたい派もいるかと思いますが、断然予備校(ビデオ講座)の利用をおすすめします! 教材はどこでもいいのですが、ポイントは、「これにする!」と決めた“1つを信じ抜くこと”です。コジカも、国試直前期は「アレがイイ」、「コレがイイ」などという周りの噂に惑わされ、ほかの教材に手を出しそうになったこともありました。でも、アレコレ手を出さず、1つでいいので極めることが合格の秘訣だと思っています。(2)復習(リマインド)何はともあれ、ベースは知識! 復習を繰り返して、知識を定着させることが重要です。国試を解くうえで、最低限必要な知識だけでも膨大な量があるので、覚えるのに一苦労ですよね。コジカは効率よく覚えるために、スマホのアプリを使って定期的にリマインドをかけていました。忘却曲線に合わせて自動で復習を促してくれるので、最小限の時間で定着させることができます。そのうち復習の量が膨大になって、気付けば丸1日かけて復習をしている、という感じになりますが、それでOKです!その分、アウトプットは模試や各予備校の予想問題で鍛えていました。以上が、コジカが国試を乗り越えて大事だったなと思う基本的な勉強法です。次回は、模試や勉強会などについてお伝えしようと思います!

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MRワクチン【今、知っておきたいワクチンの話】各論 第1回

ワクチンで予防できる疾患(疾患について・疫学)ワクチンで予防できる疾患、VPD(Vaccine Preventable Disease)は、数えられるほどしかない。しかし、世界ではいまだに多くの子供や大人(時に胎児も)が、ワクチンで予防できるはずの感染症に罹患し、後遺症を患ったり、命を落としたりしている。わが国では2012~2013年の風疹大流行(感染者約17,000人)に引き続き1)、2018~2019年にも流行した(感染者5,000人以上)。その影響もあり、日本は下記期間において世界3位の風疹流行国となっている2)(図1、表1)。風疹ワクチンのもっとも重要な目的は先天性風疹症候群(Congenital Rubella Syndrom:CRS)の予防である。それには、風疹が流行しないよう、風疹含有ワクチン接種により集団免疫を高めることが何より重要である。図1 2019年3月~2020年2月(1年間)の風疹発生数と発生率(100万人当たり)画像を拡大する表1 風疹患者数(上位10ヵ国)Global Measles and Rubella Monthly Update (Accessed on April 24, 2020)より引用画像を拡大する一方、麻疹は、世界で約14万人の命を奪う(2018年推計)ウイルス感染症である。麻疹の死亡率は先進国でさえも約1,000人に1人といわれており、重症度の高い感染症である。感染力も強いため、風疹と同様、予防接種により高い集団免疫を獲得する必要がある。しかし、日本国内での麻疹の散発的流行はいまだ絶えない。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に係る緊急事態宣言が解除された今なお、予防接種は不要不急だと考え接種を控えるケースが見受けられる。しかし「ワクチンと新型コロナウイルスと検疫」でも述べられているように、予防接種(特に小児)は適切な時期に受けることが重要であり、接種を延期する必要はない。過度な制限や自粛により、予防できるはずの感染症に罹患してしまうことは避けなければならない3)。麻疹・風疹の概要VPDの第1弾として、「麻疹・風疹」を取り上げる。麻疹・風疹ワクチンともに、経済性、安全性、有効性に優れており費用対効果も高い。日本国内における麻疹・風疹の感染流行の首座は、小児よりも青年・成人である。そのため、あらゆる年代、あらゆる受診機会に触れるプライマリケア医からの啓発が、非常に重要かつ効果的である。麻疹について1)麻疹の概要感染経路:空気感染、飛沫感染、接触感染潜伏期:10~12日周囲に感染させうる期間:症状出現1日前~解熱後3日間感染力(R0:基本再生産数):12-18感染症法:5類感染症(全数報告、直ちに届出が必要)学校保健安全法:第2種(出席停止期間:解熱後3日経過するまで)注)R0(基本再生産数):集団にいるすべての人間が感染症に罹る可能性をもった(感受性を有した)状態で、一人の感染者が何人に感染させうるか、感染力の強さを表す。つまり、数が多い方が感染力は強いということになる。2)麻疹の臨床症状麻疹の特徴は、感染力の強さと重症度の2つである。空気感染する感染症は、麻疹以外では結核と水痘がある。感染力を表すR0(アールノート)は、インフルエンザが1-2、COVID-19が1.3-2.5(5月時点)なので、麻疹はこれらの約10倍に相当する極めて強い感染力をもつ。典型的な麻疹の臨床経過は、10~12日程度の潜伏期ののち、3つの病期を経る。感染力がもっとも強いカタル期(2~4日間)には、高熱、上気道症状、目の充血、コプリック斑などが出現する。その後、一旦解熱し、再度高熱(二峰性発熱)と全身性の紅斑(発疹期)が拡がる(3~5日間)。発疹が出て3~4日後に徐々に解熱し回復する(回復期)。麻疹に対する免疫をもたない人が感染すると、約3割に合併症が生じ、肺炎や脳炎、中耳炎、心筋炎などを来す。肺炎や脳炎は2大死亡原因と言われ、乳児では麻疹による死亡例の6割が肺炎に起因する。まれではあるが罹患してから数年後に発症する亜急性硬化性全脳炎(SSPE)という重篤な合併症を来すこともある。病歴や臨床症状から疑い、血清学的検査(IgM抗体、IgG抗体など)やPCR検査(咽頭、尿など)などにより確定診断をする(詳細は「医療機関での麻疹対応ガイドライン 第7版」4)を参照)。特異的な治療法はないため、対症療法が中心である。3)麻疹の疫学麻疹の感染者は、全数報告が開始された2008年が約1万1,000例だったが、2009年以降は、毎年数十~数百例の報告数である。2016年は165例、2017年は186例、2018年282例と続き、2019年は744例と多かった。かつては5歳未満の小児が主な感染者であったが、2011年頃からは20~30代の患者が半数以上占めている5)。2019年は感染者の56%が20~30代であり、主な感染者は接種歴のない乳児を除いて、30代をピークとした成人であることがわかる(図2、3)。図2 年齢群別接種歴別麻疹累積報告数 2019年第1~52週(n=744)画像を拡大する図3 年齢別麻疹累積報告数割合 2019年第1~52週(n=744)国立感染症研究所 感染症発生動向調査 2020年1月8日現在より引用画像を拡大する4)麻疹の抗体保有率抗体保有率は麻疹の感受性調査として、ほぼ毎年国立感染症研究所より報告されている。抗体価はあくまで免疫能の一部を表しているに過ぎないため、抗体価が基準を満たせば良い、という単純な話ではない(総論第4回 「抗体検査」参照)。しかし、年代と抗体保有率との相関性をみることで、ある程度の傾向が把握できるため紹介する。麻疹の抗体保有率(PA法16倍以上:図4赤線)は1歳以上の全年代で95%以上を維持しているが、修飾麻疹を含めた発症予防可能レベルは128倍以上が望ましい6)(図4:緑線)。10代と60代以上で128倍の抗体価を下回る人が多く、注意が必要である。また、すべての年代で128倍未満のものがいることから、輸入麻疹による感染拡大の危機は常につきまとうことになる。図4 麻疹の抗体価保有状況 2019年感染症流行予測調査より(2020年2月暫定値)国立感染症研究所 2019年感染症流行予測調査(2020年2月暫定値)より引用画像を拡大するわが国は2015年3月27日にWHOによる麻疹排除認定を受けた。麻疹排除認定の定義とは「質の高いサーベイランスが存在するある特定の地域、国等において、12ヵ月間以上継続した麻疹ウイルスの伝播がない状態」とされている。これは土着の麻疹ウイルスが国内流行しなくなった状態を意味するだけであり、土着でない、海外から持ち込まれた“輸入麻疹”は、麻疹排除認定後も、2020年現在まで国内で散発的にみられている(図5)。近年の代表的な事例として、2018年には海外からの旅行者を発端とした沖縄での集団感染(101例)や、2019年にはワクチン接種率の低い三重県の宗教団体関係者を中心とした集団感染(49例)などがある。その感染力の高さから4次や5次感染を来した事例も複数報告されている7)。その他、医療関係者、教育関係者、空港職員などが感染した事例も多く、不特定多数の人に接触しうる職種は特に、あらかじめワクチン接種により免疫を獲得しておくことが重要である。図5 麻疹累積報告数の推移 2013~2020年第15週 (2020年4月15日現在)国立感染症研究所 感染症発生動向調査より引用画像を拡大する麻疹はアジア・アフリカ諸国を始め、世界各国で流行が続いており、2019年は40万人以上が罹患したと報告されている。一方で、わが国への出入国者数は年々増加し、年間5,000万人を超えている。つまり、日本全体が麻疹に対する強固な集団免疫を獲得しないと、世界各国とのアクセスが容易な現代においては、“ふと”やってくる輸入麻疹を防げないのである。風疹について1)風疹の概要感染経路:飛沫感染、接触感染潜伏期:14~21日周囲に感染させうる期間:発疹出現前後1週間感染力(R0:基本再生産数):5-7感染症法:5類感染症(全数報告、直ちに届出が必要)学校保健安全法:第2種(出席停止期間:発疹が消失するまで)2)風疹の臨床症状風疹は、比較的予後の良い急性ウイルス感染症である。しかし、妊婦が風疹に罹患すると、その胎児に感染し、先天性風疹症候群(Congenital Rubella Syndrome:CRS)が発生する可能性がある(後述)。風疹の主な感染様式は、風邪やインフルエンザと同様に飛沫感染であり、感染力は比較的強い(R0は5-7)。風疹の臨床経過について。2~3週間の潜伏期の後、軽い発熱と淡い全身性発疹が同時に出現する。その他、耳下や頸部リンパ節腫脹も特徴的で、関節痛を伴うこともある。発疹は3~5日程度で消失するため、風疹は“三日はしか”とも言われる。風疹ウイルスに感染した成人の約15%は不顕性感染(感染していても症状がでない)であり、たとえ症状がでても軽度なことも多い。そのため、自分が感染していることに気付かず、他人に感染させてしまう可能性がある。診断方法:臨床症状から疑い、血清検査(IgMやIgGなど)にて確定診断を行う。治療:CRSも含め、風疹に特異的な治療法はなく対症療法が中心となる。そのため、ワクチンがもっとも有効な予防方法となる。予後は基本的には良好だが、時に血小板減少性紫斑病や脳炎を合併することがある。3)先天性風疹症候群(Congenital Rubella Syndrome:CRS)冒頭で述べたように、日本では2012~13年および2018~19年に風疹が流行した。2012~13年には17,000人以上の風疹感染者と45人のCRSが、2018~19年には5,000人以上の風疹感染者と5人のCRSが届出された。妊婦の風疹感染により流産や胎児死亡が起こりうることから、より多くの妊婦と胎児が風疹感染の犠牲となった可能性がある。CRSとは、風疹に対する免疫が不十分な妊婦が、妊娠中に風疹に罹患し、経胎盤感染により胎児が罹患する症候群である。3大症状は難聴、先天性心疾患、白内障であり、その他、肝脾腫、糖尿病、精神運動発達遅滞などを来す。妊婦(風疹に対する免疫が不十分な場合)の風疹感染によるCRS発生率は妊娠週数によって異なり、妊娠初期の感染は80%以上と非常に高率である(妊娠4~6週で100%、7~12週で約80%、13~16週で45~50%、17~20週で6%、20週以降で0%8))。2012~13年に発生したCRS45人の追跡調査で、11人が死亡していたことがわかり、致死率は24%と報告された。そのほとんどが重度の先天性疾患が死因となった1)。一方、CRS児の母親の年代は14~42歳と幅広く、風疹含有ワクチン接種歴が2回確認された母親はいなかった(接種歴1回が11例、なしが19例、不明が15例)。妊娠可能年齢の女性に対する風疹ワクチンの2回接種がいかに重要であるかがわかる。また、4例の母親には妊娠中に感染症状がなかった(31例は症状あり、10例は不明)ことから、不顕性感染によるCRSであったことが推測される。CRSもワクチンで予防できるVPDである。また、風疹流行は、妊婦にとって脅威である。妊娠可能年齢の女性やそのご家族には、積極的に風疹ワクチン2回の接種歴を確認し、不足回数分の接種を推奨いただきたい。4)風疹の疫学と抗体保有率近年の風疹流行の首座は成人(感染者の9割以上)であり、中でも20~50代の男性が約7~8割を占める9)。これらの年代は働き盛り、かつ子育て世代でもあることから、職場や家族内感染が主な感染源と推定された10)。一方、女性の感染者では妊娠可能年齢の20~30代が女性感染者全体の6割を占め、CRS予防の観点からも、憂慮すべきデータである。抗体保有率も上記の年代で低いことがわかる(図6)。風疹抗体価についてはHI法8倍以上(図6:赤線)で陽性とされるが、感染予防には16倍以上(図6:黄線)、さらにはCRS予防には32倍以上(図6:青線)が望ましい。男性については30~50代において抗体価が低いことがよくわかる。近年の風疹流行の首座の年代である。この年代で抗体価が低いのは、後述する過去の予防接種制度の煽りを受けたことが原因であり、昨年度から全国で開始された「風疹第5期定期接種」の対象年齢(1962~1979年生まれ)が含まれる。一方、女性では、HI法8、16倍以上の抗体保有率は高いものの、CRS予防に望ましい32倍以上(図6:青線)の抗体保有率は妊娠可能年齢(10~40代)では7~8割にとどまる。やはり小児期に2回の定期接種が義務付けられていなかった年代が含まれており、男性のように成人に対する定期接種制度はないため、日常診療における接種歴の確認が重要となる。図6 男女別の風疹抗体保有率 2018年画像を拡大する国立感染症研究所 年齢別/年齢群別の風疹抗体保有状況、2018年より引用画像を拡大する妊娠可能年齢の女性やその家族には、あらかじめ風疹ワクチンでの予防措置を講じておくことが非常に重要である。ワクチンの概要(効果・副反応、生または不活化、定期または任意、接種方法) 1)麻疹・風疹ワクチン(表2)画像を拡大する効果(免疫獲得率)麻疹ワクチン:1回接種により免疫獲得率93~95%以上、2回接種で97~99%3)風疹ワクチン:1回接種による免疫獲得率は95%、2回接種では約99%11)副反応:一部(10~30%)に軽度の麻疹様発疹や風疹様症状(発熱、発疹、リンパ節腫脹、関節痛など)を伴うことがあるが、いずれも軽度で数日中に消失する一過性のものである。その他、ワクチン接種による一般的な副作用以外に、MRワクチンに特異的な副反応報告はない。禁忌:発熱や急性疾患に罹患中の人、妊婦、明らかな免疫抑制状態にある人、このワクチンによる重度のアレルギー症状(アナフィラキシーなど)を呈した既往がある人注意事項:生ワクチン接種後は、2ヵ月間は妊娠を避ける。ただし、この期間に妊娠しても、母体や胎児に問題が生じた報告はない。また、輸血製剤またはガンマグロブリン製剤投与後は6ヵ月の間隔をあけてから接種する。麻疹風疹(MR)ワクチンは、2006年から小児に対して2回の定期接種(1期、2期)が定められた。1期(1歳)の接種率は目標の95%以上を維持しているが、2期(5~6歳)についてはいまだ93~94%で推移している12)。あらゆる機会を利用してキャッチアップを行うことにより、すべての人が生涯で計2回のワクチン接種が受けられるような啓発や取り組みが喫緊の課題である。2)麻疹の緊急ワクチン接種麻疹患者との接触者で、麻疹に対する免疫がない人は、接触後72時間以内に麻疹含有ワクチンを接種することで、発症を予防できる可能性がある(緊急ワクチン接種)4)。1歳未満の乳児でも、生後6ヵ月以降であれば曝露後接種は可能である(自費)。しかし、この場合は母親からの移行抗体によりワクチンウイルスが中和されてしまう可能性もあるため、必ず1歳以降で2回の定期接種を受ける必要がある。3)接種のスケジュール(小児/成人)麻疹・風疹ワクチンは、いずれも1歳以上で生涯計2回接種することで、麻疹・風疹ウイルスに対する免疫能を高率に獲得できる。血清検査で診断された罹患歴がなければ、不足回数分の接種を推奨する。ウイルス抗体価の測定は必須ではない。理由は前述の「抗体検査」で述べられたとおりであり、改定された日本環境感染学会のワクチンガイドラインでも同様の考えに基づくアルゴリズムが提示されている13)。抗体価は参考値として測定することはあっても、あくまで接種歴の方が重要度としては高い。よって、抗体価を測定せずに、接種歴の情報を元に接種回数を決めてよい。接種歴がわからない(もしくは、接種した記憶はあるが、記録がない)場合は、接種しすぎることによる害はないため「接種歴なし」として、1ヵ月以上の間隔をあけて、2回の接種を推奨する。4)小児期に2回の麻疹・風疹ワクチン接種が定期接種となった年代麻疹・風疹(それぞれ単独)ワクチン:2000年4月2日生まれ以降の人(表3)は、小児期に麻疹・風疹含有ワクチンが定期接種化されている年代である。ただし、1990年4月2日生まれ~2000年4月1日生まれまでの人(特例措置の年代)の接種率は80%台と低かった。どの年代においても接種歴の確認が重要である。特例措置:麻疹または風疹ワクチンの2回目を、中学1年生(第3期)と高校3年生相当(第4期)に対象者を拡大して5年間の期間限定で接種が行われた。表3 出生年月日および性別別の早見表:麻疹(上段)、風疹(下段)画像を拡大する5)成人に対する風疹第5期定期接種14)1962年4月2日生まれ以降~1979年4月1日生まれの年代(41~58歳)は、小児期の予防接種制度の影響で、小児期に風疹含有ワクチンを2回接種する機会がなかった。そのため、先述したように風疹抗体保有率が低く、風疹流行の首座となってしまった。この世代に対して、2019年度から全国で該当者(風疹含有ワクチンの接種歴がなく罹患歴もないなど)には無料で風疹の抗体価測定を行い、抗体価が不足している場合(HI法8倍以下)は、無料でMRワクチンを接種できる“風疹第5期定期接種”が開始された。しかし、2020年4月時点でクーポン券を使用した抗体検査実施率は16.2%、予防接種実施割合は3.4%と低迷している15)。プライマリケア医による能動的な情報提供、啓発が望まれる。日常診療で役立つ接種のポイント(例:ワクチンの説明方法や接種時の工夫)繰り返しになるが、麻疹・風疹ともに、罹患歴がなければ1歳以上で生涯2回の接種が必要である。接種歴がないまたは不明の場合は、接種しすぎることによる害はないため、任意接種であれば、1ヵ月あけて2回の接種を推奨する。麻疹または風疹のいずれか一方のみの接種を希望する人がいた場合、2回の接種歴が記録で確認できなければ、MRワクチンでの接種を推奨する。下記、MRワクチン接種を負担なく啓発できる工夫について何点かご紹介する。1)外来における工夫(1)小児の受診時受診理由に関わらず、母子手帳の提出をルーチン化する。電話予約時に一言添える、受付時や看護師の予診時などに提出をお願いする。これを習慣化すると、受診者全体に徐々にその文化が根付いていく。医師が診療前後に母子手帳の接種記録を確認し、不足しているものがあれば推奨する。ワクチンスケジュールの知識がある看護師などが担当してもよい。(2)カルテ記録プロブレムリストに「ヘルスメンテナンス」または「予防接種歴」を追加する。医師自身がリマインドできるシステムを作る。外来で扱う主要なプロブレムが落ち着いたときに、患者さんに一言接種歴の確認をするだけでも良い。余裕ができたときに、不足しているワクチンについて紹介、接種の推奨をする。(3)ポスターを掲示するワクチン接種についてのポスターを待合室に掲示する。リーフレットとして配布してもよい15)。2)積極的にワクチン接種を推奨したい対象者(1)妊娠可能年齢の女性とその家族あらゆる感染症は、妊婦の流産早産に関連しうる。CRSを含めたVPDとそのワクチンについて情報提供する。特に、妊娠中は接種が禁忌となる生ワクチン(風疹・麻疹・水痘・ムンプス)について、妊娠前にあらかじめ免疫をつけておくことが重要であることを情報提供する。妊娠希望の女性に対して、MRワクチン接種の助成がある自治体も多い。自治体によっては、そのパートナーにも助成を出しているところもある。あらかじめ自身の自治体の助成制度の確認を行い、該当者がいれば渡せるように当該ページを印刷しておくとよい。(2)風疹第5期定期接種の対象者(41~58歳:2020年4月中旬時点)接種率の低さから、自宅に風疹対策のクーポン券(無料で受けられる風疹抗体検査の受診券)が届いていても、それに気付いていない、またはその重要性を知らず放置している例も多いことが考えられる。定期接種の対象である年代については、受付などで、対象者であることを示す札や目印を作成し、受診時に医療スタッフから制度利用の推奨・案内をできるようにしておくとよい。自宅に定期接種のクーポン券が届いていないかどうか事前に確認し、検査を推奨する。届いていなければ地域の保健所に問い合わせるよう促せば対応してくれる。(3)海外渡航予定のある人海外では麻疹流行国が多数ある。渡航先に関わらず、海外渡航時はルーチンワクチンをキャッチアップする良い機会である。あれば母子手帳をもとに、なければ麻疹を含めたVPDについてしっかり話し合う。長期出張の場合は会社からの補助がでないか、家族同伴の場合は家族の予防接種状況も含めて、安心かつ安全な海外渡航となるよう、サポートする。(4)不特定多数の人と接触する職業(空港など)・医療職・教育関係者などこれらの職業の人は、感染リスクが高く、感染した場合の公衆衛生学的なインパクトも大きい。これらの職業に携わる人には、積極的にワクチン接種歴の確認をし、不足回数分の接種を推奨する。今後の課題・展望世界では、世界保健機関(WHO)などにより、麻疹および風疹排除を加速させる活動が進められている(Global Vaccine Action Plan 2011-2020)。わが国では、2015年に認定された麻疹排除認定を取り消されることがないよう、小児定期接種の高い接種率(1、2期ともに95%以上)を目指すと同時に、海外から麻疹ウイルスを持ち込まれても、国内流行につながらない高い集団免疫を目標にしなければいけない。風疹については、2014年3月に厚生労働省が「風疹に関する特定感染症予防指針」を策定した。この指針は、早期にCRSの発生をなくし、2020年度までに風疹排除(適切なサーベイランス制度のもと、土着株による感染が1年以上確認されないこと)を達成することを目標としている(なお、2020年1~4月の風疹感染者数は73人とCRSが1人、4~5月は3人、CRSは0人15,17))。プライマリケア医には、既存の制度(自治体の助成制度や風疹第5期定期接種など)の積極的利用の促進、また、日常診療内で幅広い年代に対する能動的な啓発および接種歴の確認・推奨を行うことが望まれる。参考となるサイト(公的助成情報、主要研究グループ、参考となるサイト)こどもとおとなのワクチンサイト予防接種啓発ツール 厚生労働省1)2012~2014年に出生した先天性風疹症候群45例のフォローアップ調査結果報告(IASR;Vol.39:p33-34.)2)Global Measeles and Rubella Monthly Update(pptx). Measeles and Rubella Surveillansce Data WHO (Accessed on March,2020)3)新型コロナウイルス感染症に対するQ&A 日本小児科学会 予防接種・感染症対策委員会(2020年4月20日更新)4)医療機関での麻疹対応ガイドライン第7版 国立感染症研究所 感染症疫学センター (2018年4月17日)5)国立感染症研究所 病原微生物検出情報 麻疹[2019年2月現在](IASR Vol.40.p.49-51.)6)国立感染症研究所 病原微生物検出情報 麻疹の抗体保有状況2018年(IASR.Vol.40.p.62-63.)7)多屋馨子. モダンメディア. 2019;65:29-37.8)Ghidini A,et al. West J Med. 1993;159:366-373.9)風疹および先天性風疹症候群の発生に関するリスクアセスメント第3版(国立感染症研究所 2018年1月24日)10)風疹流行に関する緊急情報:2019年12月25日現在(国立感染症研究所 感染症疫学センター)11)風疹Q&A[2018年1月30日改定](国立感染症研究所)12)麻疹風疹予防接種の実施状況(厚生労働省)13)医療関係者のためのワクチンガイドライン 第3版(日本環境感染学会)14)風疹の追加的対策 専用ページ(厚生労働省)15)風疹に関する疫学情報 2020年4月8日現在(国立感染症研究所 感染症疫学センター )16)予防接種啓発ツール(厚生労働省)17)風疹に関する疫学情報 2020年6月3日現在(国立感染症研究所 感染症疫学センター)講師紹介

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