サイト内検索|page:111

検索結果 合計:5062件 表示位置:2201 - 2220

2201.

第25回 その吐血、緊急内視鏡は必要ですか?【救急診療の基礎知識】

●今回のPoint1)上部消化管出血を疑うサインを知ろう!2)緊急内視鏡の判断を適切に行えるようになろう!【症例】45歳男性。自宅で洗面器1杯分の吐血を認めたため、両親の運転する車で救急外来を受診した。独歩可能な状態で、その後吐血は認めていない。どのようなマネジメントが適切だろうか?●受診時のバイタルサイン意識清明/JCS血圧128/51mmHg脈拍95回/分(整)呼吸20回/分SpO297%(RA)体温36.0℃瞳孔3/3 +/+既往歴高血圧内服薬定期内服薬なしはじめに吐血を主訴に救急外来を受診する患者さんは多く、救急外来が血の海になることも珍しくありません。バイタルサインの管理、内視鏡のタイミング、輸血のタイミングなど悩んだ経験があるのではないでしょうか?今回はまず押さえておくべき上部消化管出血の管理についてまとめておきます。上部消化管出血を疑うサインとは新鮮血の吐血やコーヒー残渣様の嘔吐を認める場合には、誰もが上部消化管出血を疑うと思いますが、それ以外にはどのような場合に疑うべきでしょうか。黒色便、鉄欠乏性貧血などは有名ですね。救急外来などの外来で見逃しがちなのが、訴えがはっきりしない場合です。脱力など自宅で動けない、元気がない、倦怠感などの主訴で来院した場合には、消化管出血に代表される出血性病変を考えるようにしましょう。その他、急性冠症候群、カリウムやカルシウムなどの電解質異常、そして敗血症や菌血症を考えるとよいでしょう。[失神・前失神を見逃すな]失神は以前に「第13回 頭部外傷その原因は?」でも取り上げましたが、診察時には状態は安定しており重症度を見誤りがちです。しかし、心血管性失神を見逃してしまうと致死的となり得ます。また、出血に伴う起立性低血圧も対応が遅れれば、予後はぐっと悪くなってしまうため必ず出血源を意識した対応が必要になります。ちなみに、前失神は失神と同様に危険なサインであり、完全に意識を失っていなくても体内で起こっていることは同様であり軽視してはいけません。意識を失ったか、失いそうになったかは必ず確認しましょう。緊急内視鏡の適応は?目の前の上部消化管出血疑い患者さんの内視鏡はいつ行うべきでしょうか?ショックバイタルでマズい場合には誰もが緊急内視鏡が必要と判断できると思いますが、本症例のように、一見するとバイタルサインが安定している場合には意外と判断は難しいものです。いくつかの指標が存在しますが、今回は“Glasgow Blatchford score(GBS)”(表1)を覚えておきましょう。GBS≦1の場合には入院の必要性はなく、緊急での対応は一般的には不要です1,2)。前述した通り、失神は重要なサインであり、点数も2点と黒色便よりも高く設定されています。失神を認める上部消化管出血は早期の内視鏡治療が必要と覚えておきましょう。1分1秒を争うわけではありませんが、血圧が普段よりも低めであるが故に止まっているだけですので、処置を行うことなく帰宅の判断はお勧めできません。表1  Glasgow Blatchford score(GBS)画像を拡大するちなみに、Hb値は濃度であり、また早期に変化は認められないため、Hb値が問題ないからと出血はたいしたことないと判断してはいけません。黒色便を認める場合には、数日の経過が経っていることが多く、Hb値も普段よりも低下しています。GBSも2点以上となりますが、即刻内視鏡なのか、24時間以内に内視鏡なのか、より具体的な緊急度は、その他バイタルサインやNSAIDs、抗血栓薬などのリスク因子も考慮し判断します。[抗血栓薬内服中の患者ではどうする?]絶対的な指標はありませんが、頭部外傷患者の対応と同様に、内服しているから緊急かというとそうではありません。しかし、リスクの1つではあるため、具体的な処方薬と用量、内服している理由、効果の評価(PT-INRなど)などと共に慎重な経過観察が必要となります。抗血栓薬を止めるのは簡単ですが、そのおかげで脳梗塞などを引き起こしてしまっては困りますよね。明らかな出血を認めている場合に内服を中止することはもちろんですが、その後の具体的な対応をきちんと決めておく必要があります。GBS以外の有名なリスクスコアに“AIMS65”(表2)がありますが、それにはPT-INRの項目が含まれており、緊急度に関わるとされます3)。また、PT-INRが1.5未満であってもDOAC(Direct oral anticoagulants)内服中の患者では、早期の内視鏡が推奨されています。そのような理由から、抗血栓薬を内服している患者さんでは、早期の内視鏡(24時間以内)を行うのが理想的でしょう。※GBSもAIMS65も覚えるのは大変ですよね。私は“MDCalc”というアプリをスマホに入れて計算しています。表2 AIMS65画像を拡大する現実問題として、夜間や時間外などに来院した患者の内視鏡をすぐに行うのか、一晩様子をみてOKなのかどうかを判断する必要があります。上記の内容を頭に入れつつ、施設毎の対応を構築しておきましょう。消化器内科医師などがいつでもすぐに対応可能な施設であれば、GBS≧2でも輸液や輸血でバイタルサインが安定している場合には一晩待てるかもしれませんが、そうではない場合には、「GBSで◯点以上の場合」、「肝硬変患者の吐血の場合」、「抗血栓薬を内服している場合」には緊急で行うなど、具体的なプランを立てておくとよいでしょう。スコアは絶対的なものではありませんが、GBSやAIMS65などを意識しておくと、確認すべき項目を見落とさなくなるでしょう。失神の有無は前述の通り重要ですし、抗血栓薬などの影響から凝固線溶機能に異常を来している場合には拮抗薬など追加の対応が必要なこともありますからね。最後に、上部消化管出血に伴い緊急内視鏡の判断をした場合には、気管挿管など気道の管理が必要ないかは必ず意識してください。ショックや重度の意識障害は気管挿管の適応であり、バイタルサインが不安定な場合には確実な気道確保目的の気管挿管が必須となります。慌てて内視鏡室へ移動し、不穏になり急変、誤嚥して酸素化低下などは避けなければなりません。救急外来で人数をかけ対応することができればベストですが、どうしても少ない人数で対応しなければならない場合には、確実な気道確保を行い万全の状態で内視鏡を行うようにしましょう。まとめ失神・前失神を伴う上部消化管出血は緊急性が高い!GBSやAIMS65を参考に、患者背景・薬の内服理由も考慮し対応を!緊急内視鏡を行う場合には、気管挿管など気道管理の徹底を!1)Blatchford O, et al. Lancet. 2000;356:1318-1321.2)Stanley AJ, et al. BMJ. 2017;356:i6432.3)Saltzman JR, et al. Gastrointest Endosc. 2011;74:1215-1224.

2202.

頬粘膜投与でてんかん重積発作を抑える「ブコラム口腔用液2.5mg/5mg/7.5mg/10mg」【下平博士のDIノート】第68回

頬粘膜投与でてんかん重積発作を抑える「ブコラム口腔用液2.5mg/5mg/7.5mg/10mg」今回は、抗けいれん薬「ミダゾラム(商品名:ブコラム口腔用液2.5mg/5mg/7.5mg/10mg、製造販売元:武田薬品工業)」を紹介します。本剤を使用することで、医療機関外であっても18歳未満のてんかん重積状態患者の発作を速やかに抑えることができます。<効能・効果>本剤は、てんかん重積状態の適応で、2020年9月25日に承認され、2020年12月10日より発売されています。<用法・用量>通常、ミダゾラムとして、修正在胎52週(在胎週数+出生後週数)以上1歳未満の患者には1回2.5mg、1歳以上5歳未満の患者には1回5mg、5歳以上10歳未満の患者には1回7.5mg、10歳以上18歳未満の患者には1回10mgを頬粘膜投与します。シリンジ液剤の全量を片側の頬粘膜に緩徐に投与しますが、体格の小さい患者や用量が多い場合は、必要に応じて両側の頬粘膜に半量ずつ投与することができます。なお、18歳以上の患者に対する有効性および安全性は確立されていません。<安全性>国内第III相試験(SHP615-301試験、SHP615-302試験)において、副作用は25例中5例(20.0%)で報告されており、主なものは、鎮静、傾眠、悪心、嘔吐、下痢各1例(いずれも4.0%)でした。なお、重大な副作用として、呼吸抑制が1例(4.0%)で報告されており、無呼吸、呼吸困難、呼吸停止などが注意喚起されています。<患者さんへの指導例>1.この薬は、歯ぐきと頬の間に投与することで、脳内の神経の過剰な興奮を鎮めて、てんかん重積状態の発作を抑えます。2.発作が開始してすぐに本剤を投与せず、自然に発作がおさまるかどうか観察し、投与判断の目安は医師の指示に従ってください。患者さんに嘔吐やよだれがある場合は、投与前に拭き取ってください。3.投与する際は、片側の頬をつまみ広げ、シリンジの先端を下の歯ぐきと頬の間に入れ、ゆっくりと全量を注入します。体格が小さい場合や使用量が多い場合は、医師の指示によって両側の頬に半量ずつ注入することもできます。4.この薬は頬粘膜から吸収されるため、可能な限り飲み込まないように注意してください。5.投与後は、原則救急搬送の手配を行い、医療者がこの薬の使用状況を確認できるように使用済みのシリンジを提示してください。6.保管時は、プラスチックチューブに封入された状態でふた側を上向きにして立てた状態にしてください。ふた側を下向きまたは水平にして保管すると、含量が低下する恐れがあります。<Shimo's eyes>通常、てんかん発作の多くは1~2分でおさまりますが、30分以上持続すると脳への長期的な後遺障害に至る可能性が高くなります。そのため、発作が5分以上持続する場合はてんかん重積状態と判断して、治療を始めることが国内外のガイドラインで推奨されています。2020年2月時点で、ミダゾラム口腔用液は欧州を中心に世界33ヵ国で承認されていますが、わが国で発売されているのは注射製剤(商品名:ミダフレッサ)のみで、ほかの小児を含む早期てんかん重積状態の第1選択薬として推奨されている薬剤もジアゼパムやロラゼパムの注射製剤でした。注射製剤は医療機関で投与されますが、救急搬送に時間を要して治療開始までに30分以上経過してしまう例が多く、患者団体や関連学会から非静脈経路で利便性および即効性の高い薬剤の開発が要望されていました。本剤は、国内初のてんかん重積状態に対する頬粘膜投与用のプレフィルドシリンジ製剤で、医療機関外でも家族や介護者などによって投与することができます。第III相臨床試験では、5分以内に64%、10分以内に84%で持続性発作が消失するという速やかな効果が認められました。適応があるのは18歳未満の患者さんで、年齢別に4種類の投与量のシリンジがあり、ラベルで色分けされています。主成分であるミダゾラムはCYP3A4の基質であり、本剤はCYP3A4を阻害あるいは誘導する薬剤との併用は禁忌です。副作用として呼吸抑制および徐脈などが現れる恐れがあるため、本剤の投与時は患者さんの呼吸や脈拍数に異常がないかなどを注意深く観察するとともに、救急車の手配も並行して行うなど冷静な対応が求められます。近年、アナフィラキシーに対するアドレナリン注射液(同:エピペン)に加え、糖尿病の低血糖状態に対する点鼻グルカゴン製剤(同:バクスミー点鼻粉末剤)、そして本剤など、患者さんの緊急時に身近な人が対応できる製剤が増えてきました。薬局では、患者さんや家族・介護者がいざというときに正しく安全に使えるよう、使用方法について理解度の確認が重要です。※2022年7月より、学校・保育所等で児童がてんかんを発症した場合、教職員が当該児童生徒等に代わって投与可能となりました。参考1)PMDA 添付文書 ブコラム口腔用液2.5mg/ブコラム口腔用液5mg/ブコラム口腔用液7.5mg/ブコラム口腔用液10mg

2203.

第47回 COVID-19伝播の阻止や変異株への抗体反応をワクチンが助け、抗原検査が検診を一変しうる

新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)ワクチンを接種すればたとえ感染しても抑えが効いてウイルスは他人を感染させるほどには増え難いらしく、他人を感染させうる人のみを見分ける抗原検査はその感染(COVID-19)の検診の有り様を一変させるかもしれません。また、2社のmRNAワクチンは変異株に対抗する中和抗体をどうやら底上げするようです。PfizerのCOVID-19ワクチンはウイルス量を抑えて感染伝播を減らしうるイスラエルでPfizer/BioNTechのCOVID-19ワクチンBNT162b2接種済みの人と非接種の人の感染の程度を比較したところ1回目接種後12~28日のウイルス量はワクチン非接種の人の4分の1ほどに抑えられており、同ワクチンはすでに裏付けられている発症予防に加えて他人を感染させ難くする効果もあると示唆されました1,2)。ウイルス量が多い人ほど他人を感染させやすいことはLancet Infectious Diseases誌に最近掲載された別の試験で示されています。SARS-CoV-2に感染した282人とそれらと密接に接触した753人を調べたその試験の結果、他人を感染させたのは3人に1人(90人;32%)のみで、ウイルス量が多い人ほど他人を感染させていました3,4)。また、咳がある人とない人の他人への感染伝播に差はありませんでした。ということはウイルス量が多い感染者に接触した人の追跡がとくに重要なようであり4)、次に紹介する試験ではウイルス量が多くて他人を感染させやすい人の同定に抗原検査が重宝しうることが示唆されています。BD社の抗原検査はCOVID-19を移しうる有症者の検出でPCR検査に勝るようだCOVID-19を他人に感染させうる患者の検出を比較した試験でベクトン・ディッキンソン(BD)社のわずか15分ほどで済む抗原検査(製品名Veritor)がウイルスのRNAを検出するPCR検査を凌ぐと示唆され5,6)、抗原検査はCOVID-19検診の有り様をやがて一変させるかもしれません7)。試験にはCOVID-19発症患者251人が参加し、気道検体の抗原検査とPCR検査が培養検査の結果とどれだけ一致するかが調べられました。培養検査は増殖しうるウイルスが採取検体に存在するかどうかを調べます5)。培養細胞でウイルスが増えれば検体に生きているウイルスが存在することを意味し、感染可能なウイルスがいたことを示唆します。一方、培養細胞でウイルス増殖がなかった検体の患者には他人に移って感染しうるほどの生存ウイルスは恐らく存在しません。試験の被験者251人のうち培養検査で陽性だったのは28人でした。PCR検査では培養検査陽性28人とその他10人を含む38人が陽性でした。PCR検査では陽性で培養検査では陽性でなかったその差し引き10人は検体採取時点で他人を感染させる心配は恐らくなかったようです。PCR検査はそれら10人の検体のウイルスRNA断片か無欠だが少量のSARS-CoV-2を検出したのしょう。PCR検査とは対照的にBD社の抗原検査の陽性判定は培養検査とより一致していました。抗原検査で陽性の27人は培養検査でも陽性で、抗原検査と培養検査の陽性判定が食い違っていたのは1人のみでした。目下のCOVID-19流行下での検査の主な目標の1つは他人を感染させうる人を同定して暫く出歩かないようにしてもらうことです5)。安価でより多くに届けうる抗原検査は日々の暮らしでのCOVID-19伝播を封じることに大いに貢献すると今回の試験主導医師の1人Charles Cooper氏は言っています5)。今回の試験と同様にPCR検査が他人を感染させそうにない人を無闇に検出してしまうことは先立つ幾つかの試験でも示唆されています8-11)。それらの試験によると発症後8日の検体のほとんどは、PCR検査ではウイルスRNAが検出されたのとは対照的に感染可能ウイルスを有していませんでした。PCR検査のように感染可能なウイルスが存在しない人を無闇に陽性判定しない抗原検査を使うことで感染者の隔離期間をより短縮できるかどうかの検討が必要と今回の試験の著者は言っています6)。また、今回の試験は有症者が対象でしたが、無症状の人の抗原検査の性能を調べる試験をBD社はすでに進めています7)。Pfizer/BioNTech やModernaのワクチンで新型コロナウイルス変異株阻止抗体を底上げしうる南アフリカで見つかって広まる心配なSARS-CoV-2変異株B.1.351(南ア変異株)に対抗する中和抗体反応をPfizer/BioNTech やModernaのワクチン1回の接種で強力に底上げしうることが感染を経た人へのそれらワクチン接種前後の血液検体比較で示されました12,13)。米国・ワシントン州シアトルのがん研究センターFred Hutchinson Cancer Research CenterのAndrew McGuire氏のチームはCOVID-19を経た10人から血液を採取し、続いてPfizer/BioNTech かModernaのワクチンの1回目接種後に再び血液を採取しました。Pfizer/BioNTech とModernaのワクチンはどちらも中国の武漢市で見つかったSARS-CoV-2元祖株(Wuhan-Hu-1)スパイクタンパク質を作るmRNAでできています。採取した血液を使ってその元祖株と南ア変異株の細胞感染を阻止する中和抗体活性を調べたところ、ワクチン接種前の時点で元祖株への中和抗体活性は弱いながらもほとんど(10人中9人)が有しており、南ア変異株への中和抗体活性を有していたのは半数の5人のみでした。ワクチン接種後には元祖株と南ア変異株への中和抗体がどちらもおよそ1,000倍上昇していました。すでに感染を経ている人へのPfizer/BioNTech やModernaのmRNAワクチン接種はたとえ1回でも有意義であり、スパイクタンパク質に対してすでに備わる抗体反応を底上げすればワクチンが目当てとするウイルスのみならず新たに出現する変異株への中和抗体も有意に増強できそうです13)。参考1)Pfizer’s COVID-19 Vaccine Reduces Viral Load: Study / TheScientist2)Decreased SARS-CoV-2 viral load following vaccination. medRxiv. February 08, 20213)What makes a person with COVID more contagious? Hint: not a cough / Nature4)Marks M,et al. Lancet Infect Dis. 2021 Feb 2:S1473-3099,30985-3. [Epub ahead of print]5)New Clinical Data Shows BD Antigen Test May Be More Selective In Detecting Infectious COVID-19 Patients Than Molecular Tests / PRNewswire6)Pekosz A, et al. Clin Infect Dis. 2021 Jan 20:ciaa1706. [Epub ahead of print]7)Antigen tests could change Covid-19 screening culture / Evaluate8)Wolfel R, et al. Nature. 2020 May;581:465-469.9)La Scola B, et al. Eur J Clin Microbiol Infect Dis. 2020 Jun;39:1059-1061.10)Bullard J, et al. Clin Infect Dis. 2020 May 22:ciaa638. [Epub ahead of print]11)Repeat COVID-19 Molecular Testing: Correlation with Recovery of Infectious Virus, Molecular Assay Cycle Thresholds, and Analytical Sensitivity. medRxiv. August 06, 2020. 12)Vaccines spur antibody surge against a COVID variant / Nature13)Antibodies elicited by SARS-CoV-2 infection and boosted by vaccination neutralize an emerging variant and SARS-CoV-1. medRxiv. February 08, 2021

2204.

ジフテリア、破傷風、百日咳【今、知っておきたいワクチンの話】各論 第7回

今回はジフテリア、破傷風、百日咳がテーマである。現在この3疾患のいずれかをカバーしうる国産ワクチンは、破傷風トキソイド、二種混合(DT:ジフテリア/破傷風混合トキソイド)、三種混合(DPT:ジフテリア/百日咳/破傷風混合)、四種混合(DPT-IPV:ジフテリア/百日咳/破傷風/不活化ポリオ)ワクチンの計4種類がある。DPT-IPVワクチンは乳幼児期(0~1歳)に計4回、DTワクチンは学童期(11~12歳)に1回、定期接種で使用されているが、その他のDPTワクチンと破傷風トキソイドは、制度として定められた接種時期はなく、主にキャッチアップワクチンとして使用されている。諸外国と比較し、わが国の現行の小児定期接種スケジュールの問題点は何だろうか。また、破傷風トキソイドおよびDPTワクチンのキャッチアップとして、接種タイミングをどう考えればよいかについては、意外に知られていない。そこで本稿では、それぞれの疾患とワクチンに触れながら、上記ポイントについて述べる。ワクチンで予防できる疾患 ~ジフテリア・百日咳・破傷風の概要~まず、ジフテリア・百日咳・破傷風、3疾患を比較して外観する。ジフテリア、百日咳、破傷風の疾患頻度は、百日咳>破傷風>>>ジフテリアの順で多く、百日咳は年間1万5,000例以上(うち入院264例、死亡は1例:2019年1))、破傷風は年間数十~100例前後2)(うち死亡は10例前後3))である。百日咳、破傷風ともに、追加接種を行わなければ、乳幼児期の予防接種の効果が減弱するため、小児や成人での感染が問題となっている。これら2疾患の追加接種については今回のメインテーマであり、次項で述べる。ジフテリアの感染事例は国内では20年以上発生していない4)。しかし、諸外国では、感染が流行している地域があるため、海外渡航時または渡航者からの輸入感染に備えるべく、ワクチンにより免疫を獲得しておくことが重要である。以下、各疾患について概説する(詳細は成書を参照)。1)ジフテリアとはジフテリアはジフテリア菌(Corynebacterium diphtheriae)による感染症で、主に上気道粘膜に感染する4)。鼻ジフテリア、咽頭ジフテリア、喉頭ジフテリアなどの病型があり、その他眼瞼結膜、中耳、陰部、皮膚などに感染することもある。わが国では1945年に約8万6 千人(うち約10%が死亡)の届出患者がいたが、ワクチン接種の普及と共に患者数は減少し、1991~2000 年の10年間では21人(うち死亡が2人)にまで激減。2類感染症・全数報告届出疾患であるが、1999年の1例(死亡例)を最後に届出はみられていない。わが国では流行がみられないジフテリアであるが、ロシアでは政権崩壊の煽りをうけて、1990年代にワクチン供給が不足した。それに伴い、住民の免疫低下から、12万5,000人の患者が発生し、4,000人以上が死亡して、欧州を巻き込むなど国際的問題となった事例がある。予後に関わる合併症としては心筋炎があり、無治療の場合の致命率は5~10%と高い。諸外国では散発的に発生していることから、ルーチンワクチンとして接種を推奨することが大切である。2)百日咳百日咳は百日咳菌による急性気道感染症で、長期にわたり続く咳が特徴である。特に新生児や乳児が罹患すると、無呼吸発作などを来たし致死的となることから、乳児の周囲の人がワクチンを接種することにより、乳児に感染させないことが大切である。また、意外に知られていないのが、百日咳の感染経路は飛沫感染だが、基本再生産数※は16-21と非常に高く、空気感染する麻疹とほぼ同等の強い感染力を持つ(麻疹の基本再生産数:12-18)。特に成人の感染者は症状が軽いため、本人が気付かないうちに、乳幼児の感染源となりうる。※基本再生産数集団にいるすべての人間が感染症に罹る可能性をもった(感受性を有した)状態で、1人の感染者が何人に感染させうるか、感染力の強さを表す。つまり、数が多い方が感染力がより強いということになる百日咳は2018年1月から全数報告指定疾患となり、診断した場合は全例届出が必要となった5)。2018~2019年の届出症例数はそれぞれ年間11,190例1)、15,974例6)であった。5~15歳が全体の6割強と多く、成人の中では30~40代が最も多かった(図参照)。乳幼児期の予防接種の効果は最終接種から4~12年で低下することがわかっており、追加接種プログラムがないわが国の課題となっている。図 届け出ガイドラインの診断基準を満たした百日咳患者症例の年齢分布画像を拡大する百日咳はアジスロマイシンにて治療が可能であるが、しばしばその他ウイルス性上気道炎やマイコプラズマなどとの鑑別が困難なことから、診断されていないケースも多いことが推測される。診断するための検査方法としてLAMP法が2016年に保険収載されたため、後鼻腔(咽頭)ぬぐい液にて診療所でも検査・診断がしやすくなっている。後述する百日咳ワクチンの国内での追加接種の必要性を検討するためにも、疫学調査が重要となるため、積極的に検査・診断したい疾患といえる。3)破傷風破傷風は破傷風菌が産生する神経毒素により強直性痙攣を引き起こし、最悪の場合、呼吸筋麻痺を来たし致死的となる7)。破傷風の治療薬として抗破傷風ヒト免疫グロブリン(TIG)とペニシリンがあるが、診断早期に投与する必要があり、しばしば早期診断が難しいことから、予防することが大切である。破傷風は芽胞の状態で土壌内に潜み、外傷や土いじりなどを契機に傷口から侵入する。侵入部位が特定されていない破傷風の症例も多く、軽微な創傷部位からも感染しうる。また、破傷風菌の芽胞は土壌内に広く分布するため、接触を避けることは日常生活上ほぼ不可能である。これらのことから、ワクチン接種以外の方法で完全に破傷風感染から予防するのは難しいことがわかる。破傷風は小児期に複数回の破傷風含有(二種/三種/四種混合)ワクチンを接種していても、追加接種を行わなければ、最終接種から10年ほどで抗体価は低下する。わが国では破傷風ワクチンの追加接種プログラムがなく、任意接種となっていることから免疫を持たない成人が多数いる。そのため、破傷風感染事例の95%以上が小児期に破傷風含有ワクチンの定期接種制度が存在しなかった40歳以上の成人である。ワクチンの概要と接種スケジュール破傷風トキソイド、および二種/三種/四種混合ワクチンいずれのワクチンも安全で、ワクチン特異的な副反応はない。三種/四種混合ワクチンは、他のワクチンに比し副反応として発熱を呈することがやや多いが、2~3日の経過観察で自然に解熱する。ここでは、特に重要性の高い、破傷風トキソイドおよび三種混合ワクチンの追加接種について述べる。1)破傷風トキソイド(表1)罹患すれば効果的な治療薬がなく致死的な疾患のため、先進国であるわが国においてもすべての人が接種推奨対象者である。1967年以前に出生した人は、小児期に破傷風を含むワクチンが定期接種化されていなかった年代のため、まずは破傷風トキソイドを3回接種することにより基礎免疫を付け(0、1、6ヵ月後)、その後10年毎の追加接種(ブースト)を推奨する。1968年以降の生まれの人は、小児期に基礎免疫が終了しているため、最終接種から10年毎のブースト(追加接種)を推奨する。特に、「土」などに接触する機会の多い農作業者や工事現場の従事者、不衛生な環境に曝露しやすい被災地域での支援や災害などの際も、破傷風トキソイドの追加接種の重要性は高い。破傷風トキソイドを含むワクチンの中でも、11~12歳に定期接種とされているDTワクチンの接種率は、7~8割と定期接種ワクチンの中でも低い。破傷風の9割以上は成人発症だが、このDTワクチンを接種しなかった高校生が破傷風を発症した事例も報告されており8)、定期接種をしっかり完了させることも非常に重要である。外傷時は、傷の深さや汚染度によって、破傷風トキソイドに加え、免疫グロブリン投与の必要性を検討する9)。表1 破傷風トキソイド ワクチンの概要画像を拡大する(こどもとおとなのワクチンサイト.破傷風トキソイドの表より引用)2)百日咳含有ワクチン(三種/四種混合ワクチン)現在、小児の定期接種で使用されている百日咳含有ワクチンといえば四種混合(DPT-IPV)ワクチンであるが、2012年11月以前は三種混合(DPT)ワクチンと不活化ポリオワクチン(2012年8月までは経口ポリオワクチン)が用いられていた。現在は、三種混合ワクチンとしてトリビック(商品名)が流通しており、後述する百日咳の追加接種として、わが国で用いることができる唯一の国産ワクチンである。しかし、定期接種として使用される四種混合ワクチンとは違い、制度として接種プログラムに組み込まれていないため、三種混合ワクチンの使い所は、あまり知られていない。なお、海外にはTdap(ティーダップ)という成人用の三種混合ワクチンが広く使用されているが、わが国でも2016年2月にトリビックの添付文書が改定され、成人への接種が可能となっている。では、トリビックはどういう状況で推奨すべきだろうか。百日咳含有ワクチンは、わが国では生後3ヵ月以降にしか接種できず、複数回の接種が必要な不活化ワクチンである。そのため、免疫が付けられない新生児や乳児をケアする母親やその家族など、乳児の周りの人がワクチン接種をすることで乳児を守る“コクーン(繭)戦略”という概念が最も重要とされているワクチンの1つである。わが国では、0~1歳時に定期接種として四種混合ワクチンを4回定期接種するが、それ以降、百日咳含有ワクチンを接種する機会は、制度としては存在しない。一方、多くの諸外国では4歳以降で百日咳含有ワクチンの追加接種を行っている(表2)。その理由は、百日咳の抗体は最終接種から4~12年で低下し、再度感染しうる状態まで免疫が低下することがわかっているからである。実際にわが国でも先述の百日咳感染者の報告で、5~15歳の感染者の8割以上は、乳幼児期に4回の百日咳含有ワクチン接種していたにも関わらず、百日咳に罹患している1,6)。つまり、わが国も諸外国にならい、学童期の追加接種を行うことで、この年代の感染者を減らすことが期待できる。さらに、欧米などでは妊婦に対する百日咳含有ワクチンの接種も推奨している。実際、妊婦(妊娠後期)に対し百日咳含有ワクチンを接種することで、乳児の百日咳感染数が減少したという研究報告もある10)。乳児をケアする母親およびその同居家族は、年代に関わらず、百日咳含有ワクチンの追加接種を行うことで、乳児を百日咳から守ることが望ましい。表2 諸外国における百日咳ワクチンの接種スケジュール 接種時期と回数画像を拡大する日常診療で役立つ接種のポイント(例:ワクチンの説明方法や接種時の工夫)破傷風トキソイド軽微な傷を契機に、土壌中に存在する芽胞がいつ侵入してくるかわからないこと、また有効な治療法がないことからも、全年齢に免疫を付けておくことが推奨される。1967年以前に生まれた人は、3回接種(0、1ヵ月以降、6ヵ月以降)の基礎免疫を行い、その後は、1968年以降に生まれた人と同様、10年ごとの追加接種を推奨する。特に土などに接触する機会や外傷を負うリスクの高い人(農作業者、工事現場、被災地支援など)には積極的に推奨したい。三種混合ワクチン(トリビック)前述の通り、百日咳については追加接種がなければ3~4回の最終接種後、4~12年で抗体は低下し、百日咳に感染しうる状態となる。感染すると致命的となりうる乳児をケアする可能性のある家族(同居家族も含む)への追加接種を推奨する。また、2018~2019年の発生報告で最も感染者の多いことがわかっている学童期への追加接種も積極的に行うことが大切である。具体的には、下記3つの推奨タイミングがある(いずれも任意接種としての扱い)。(注:トリビックの添付文書に記載のある適応年齢は、11~12歳および成人である。つまり(1)は添付文書外使用となることに注意する)(1)5~6歳(年長):MR 2期を接種するタイミングに合わせて、トリビックの接種を推奨する(抗体価が最も低下する9歳11)の前に接種が可能なこと、2019年までの感染者報告では5~15歳が全体の8割を占めることから、接種タイミングとして理にかなっている)(2)11~12歳:DTワクチンの定期接種に相当する年代であり、DTワクチンの代わりにトリビック(三種混合ワクチン)の接種を推奨する。(3)成人:特にこれから妊娠予定や乳児をケアする家族、妊娠可能年齢の女性など(妊婦に対しての接種は、わが国の添付文書上、有益性投与となっている)今後の課題・展望今後、わが国でも諸外国のように、百日咳含有ワクチン(トリビック)の学童期に対する追加接種が定期接種化されることが望まれる。さらに、欧米のように、妊婦に接種推奨が可能な整備がされると、より早期乳児を百日咳から守ることに繋がる可能性がある。また、成人のキャッチアップワクチンとして、破傷風トキソイドを広く推奨できるよう、プライマリケア医および一般市民に対する啓発を続けることが重要と考える。参考となるサイト(公的助成情報、主要研究グループ、参考となるサイト)こどもとおとなのワクチンサイト予防接種啓発ツール 厚生労働省百日咳ワクチン接種推奨ポスター 日本小児科学会1)全数報告サーベイランスによる国内の百日咳報告患者の疫学-2019年疫学週第1週~52週-[2020年1月8日現在](国立感染症研究所)2)発生動向調査年別報告数一覧(その1:全数把握)[2013年2月16日現在報告数](国立感染症研究所)3)破傷風 2008年末現在(IASR.2009;30;p.65-66.)4)ジフテリアとは[2020年10月27日 改訂](国立感染症研究所)5)感染症法に基づく医師届出ガイドライン(初版)百日咳 [平成30年4月25日](国立感染症研究所)6)全数報告サーベイランスによる国内の百日咳報告患者の疫学-2018年疫学週第1週~52週-[2019年1月7日現在](国立感染症研究所)7)破傷風とは[2021年1月12日 改訂](国立感染症研究所)8)2期のDTが未接種であった10代の破傷風発症事例(IASR.2018;39:p.27.)9)外傷後の破傷風予防のための破傷風トキソイドワクチンおよび抗破傷風ヒト免疫グロブリン投与と破傷風の治療(IASR.2002;23:p.4-5.)10)海外の百日せき含有ワクチンの予防接種スケジュールと百日咳対策(IASR.2017;38:p.37-38.)11)年齢/年齢群別の百日咳抗体保有状況.2018年~2018年度感染症流行予測調査より(国立感染症研究所)講師紹介

2205.

事例020 フェリチン定量検査の査定【斬らレセプト シーズン2】

解説本事例では、「D007 26 フェリチン定量検査」が、 B事由(医学的に過剰・重複と認められるものをさす)として査定となりました。査定理由には、縦覧点検とあり、連絡文には「疑いで連月のフェリチン定量の請求は保険診療上過剰となります。御留意下さい」と記載がありました。審査機関では、コンピュータによる縦覧点検にて連月実施にチェックをかけているようです。確認したところ、前月にも来院歴があり、フェリチン定量検査が実施されていました。フェリチン定量検査の留意事項には算定制限の記述は見当たりません。医師に尋ねると「多くの場合は、診断と治療中止の判断時に必須であり、経過が安定している場合にはあまり必要がない」と、連絡文を示唆される内容を話されました。とはいえ、必要があって行われた検査です。算定要件に違反していない限り、自主査定することはありません。医師には、疑い病名にてフェリチン定量を連月に実施した場合には、査定対象となることを伝えました。また、レセプトチェックシステムによるアラートも活用して、医学的に必要性を認めて実施された場合には、あらかじめに検査値を含めて医学的必要性を連絡いただき、レセプトにコメントとして反映をさせています。ただし、審査機関では総合的に判断されるため、査定となることも多くあるので注意が必要です。

2206.

スタチンの「不必要な」無作為化試験、中国で2千件超/BMJ

 中国で、冠動脈疾患に対するスタチン使用が臨床ガイドラインで強く推奨され始めた翌年以降に、スタチンの効果を検証するとして実施された不必要な(redundant)無作為化比較試験は2,000件超で、これら試験の被験者で対照群に割り付けられ、スタチンを服用しなかった被験者で発生した主要有害心イベント(MACE)は3,000例以上で、うち死亡が約600例だった。米国・ジョンズ・ホプキンズ大学のYuanxi Jia氏らが、2019年までに発表された冠動脈疾患に対するスタチンの無作為化比較試験を再調査し、明らかにした。不必要な臨床試験は資源を浪費し、とくにプラセボ対照試験の設定では、効果的な治療が受けられない患者に害を及ぼす可能性がある。科学出版物の最大の生産国となっている中国本土での臨床試験については、その必要性が深刻な課題になっていることが懸念されていた。今回の結果を踏まえて著者は、「患者を保護するため不必要な臨床試験を改める早急な改革が必要だ」とまとめている。BMJ誌2021年2月2日号掲載の報告。ガイドライン推奨後2008年以降の試験について検証 研究グループは、中国本土で冠動脈疾患患者を対象に行われたスタチンを評価する不必要な臨床試験を特定し、それらの試験でスタチン治療が行われなかった患者が経験した過剰なMACE発生件数を推定するため断面調査を行った。 2019年12月までの文献データベースを検索し、中国本土で冠動脈疾患の患者を対象に行った、スタチンとプラセボまたは無治療を比較した2,577件の無作為化試験について分析を行った。被験者総数は25万810例で、冠動脈疾患の種別は問わなかった。 「不必要な臨床試験」の定義は、スタチン使用が臨床ガイドラインで強く推奨され始めた翌年2008年以降に、臨床試験が継続中または開始された試験とした。 主要アウトカムは、不必要な臨床試験の被験者で対照群に割り付けられ、スタチン治療を受けられなかったことにより発生した過剰なMACEの発生数、すなわちスタチンを服用していれば回避可能だった過剰なMACEの発生数だった。 また、スタチンの効果の統計的有意性が示された時点を確認するため、累積メタ解析も実施した。回避可能だったMACEは3,470例、死亡は559例 2008~19年に発表された「不必要な臨床試験」は2,045件で、対照群の被験者総数は10万1,486例、スタチン非投与は2万4,638人年だった。 報告された過剰なMACEは、3,470例(95%信頼区間[CI]:3,230~3,619)だった。 内訳をみると、死亡559例(95%CI:506~612)、心筋梗塞の新規発症または再発973例(897~1,052)、脳卒中161例(132~190)、血行再建術83例(58~105)、心不全398例(352~448)、狭心症の再発または悪化1,197例(1,110~1,282)、およびその他のMACEが99例(69~129)だった。

2207.

第20回 痛み診療のコツ・治療編(2)神経ブロック・その3【エキスパートが教える痛み診療のコツ】

第20回 痛み診療のコツ・治療編(2)神経ブロック・その3前回は、トリガーポイント(TP)ブロックに焦点を当てて解説しました。今回は、自律神経ブロックとしてよく知られる星状神経節ブロックについて説明したいと思います。星状神経節ブロックとは上部交感神経節(C3の高さ)、中部交感神経節(C6の高さ)、下部交感神経節(C7の高さ)が連鎖していますが、そのうち下部神経節と上胸部交感神経節が融合して星のような形態を呈しており、これを星状神経節と呼んでいます(図1)。これら一連の交感神経幹は、頭部、頸部、上肢を支配しています。画像を拡大する(1)星状神経節ブロックの適応疾患交感神経幹の支配領域から考慮して、片頭痛、群発頭痛、筋緊張性頭痛、不定型顔面痛、肩凝り、頸椎神経根症、帯状疱疹痛および帯状疱疹後神経痛などの頭頸部の疼痛疾患が適応になります。疼痛疾患ではありませんが、顔面神経麻痺、突発性難聴、多汗症なども適応になります。Burger病、Raynaud病、凍傷、塞栓などの上肢の循環不全に伴う痛みや、肩関節周囲炎、急性および慢性血栓性静脈炎、血栓性浮腫、術後リンパ性浮腫などの炎症・浮腫に伴う痛みなども適応になります。また、交感神経節ブロックですので、反射性交感神経萎縮症、カウザルギー、幻肢痛、断端痛も適応とされています。その他、アレルギー性鼻炎や喘息にも有効性が認められます。(2)星状神経節ブロックの実際患者さんに仰臥位を取ってもらいます。ブロックベッドであれば、頭部の部分を下げますが、通常のベッドであれば肩の下に薄い枕を入れて、首をやや伸展し、ごく軽く顎を前方に突き出していただきます。胸鎖関節より2.5cm上方、正中線より1.5cm外側を刺入点とします(図2)。使用する針は、2.5cm25Gを用います。星状神経節へのアプローチには、傍気管的接近法、前方的接近法及び後方的接近法があります。傍気管的接近法は、わかりやすく施行しやすいので、よく用いられます。具体的には、左手の示指と中指で総頸動脈を外側に引き寄せ、針を皮膚に直角に、総頸動脈と気管との間を通過するように刺入します。針先が第7頸椎横突起にぶつかったら、0.5cmほど引き戻し、吸引テストを十分に施行したうえで1%メピバカイン5mL注入します(図3)。画像を拡大する画像を拡大する(3)星状神経節ブロックの効果判定Horner症候群の発現でブロック効果がわかります。すなわち、眼球結膜の充血と流涙瞳孔縮小眼瞼下垂と眼裂狭小顔面や上肢の温感顔面や上肢の発汗減少鼻閉などが見られれば、ブロック効果が判定できます。(4)合併症気胸、胸痛 呼吸困難血管内注入による局所麻酔薬中毒でけいれんが生じる。クモ膜下腔注入による呼吸困難上喉頭神経麻痺による嗄声、嚥下困難、呼吸困難上腕神経叢麻痺喘息発作硬膜外ブロックなどが見られることがあります。そのため、少なくとも10分間は仰臥位を保ち、枕により頭部を高くします。少なくとも1時間は飲食を禁止します。両側ブロックは、同時には禁忌です。以上、星状神経節ブロックを取り上げ、その意義、適応、使用される薬物、合併症などについて述べました。痛みを有する患者さんに接しておられる先生方に少しでもお役に立てれば幸いです。次回は、知覚神経と交感神経を同時にブロックする、代表的で応用範囲の広い硬膜外ブロックについて解説します。1)花岡一雄監修. 疼痛コントロールのABC 日本医師会雑誌. 1998;S1042)花岡一雄他、ペインクリニック実践ハンドブック 南江堂 1994;10-15

2208.

重症急性膵炎〔Severe acute pancreatitis〕

1 疾患概要■ 概念急性膵炎は、膵内で病的に活性化された膵酵素が膵を自己消化する膵の急性炎症である。炎症が膵内にとどまって数日で軽快する軽症例が多いが、一部は炎症が全身に波及して、多臓器障害や血液凝固障害を引き起こす重症急性膵炎となる。急性膵炎から慢性膵炎への移行は10%前後であり、多くの急性膵炎は可逆性で膵に後遺障害は残さない。■ 疫学急性膵炎の2016年における発症頻度は10万人当たり61.8人で、増加傾向にある。男女比は2:1で、発症時の平均年齢は男性で59.9歳、女性で66.5歳である。重症度は、軽症が76.4%、重症が23.6%となる。重症急性膵炎発症時の平均年齢は63.1歳で、男性で60.2歳、女性で69.4歳である。■ 発症機序・成因食べ物を消化する膵酵素は、膵腺房細胞で生成され、食間では消化機能のない不活性型として蓄えられている。摂食により膵酵素の中のトリプシノーゲンが膵管を介して十二指腸内に放出され、エンテロキナーゼの作用により活性型であるトリプシンに転換され、食物を消化する。この膵酵素の活性化が種々の病的要因により膵内で起こり、膵が自己消化されるのが急性膵炎である。膵内外での炎症反応はサイトカインカスケードを活性化し、高サイトカイン血症によるSIRS(systemic inflammatory response syndrome)を来す。重症例では高度のSIRS反応の結果、炎症メディエーターによる血管内皮細胞の障害から全身末梢血管の透過性が亢進し、組織浮腫と血管内脱水を来す。そして、臓器還流障害から肺や腎臓などの臓器障害が起こり、さらに免疫系や凝固系の障害や播種性血管内凝固症候群(disseminated intravascular coagulation:DIC)を合併する。また、高度の血管内脱水にともなって全身の末梢血管に血管攣縮を来たし虚血状態を生じ、膵では膵壊死が起こる。発症後期には、膵および膵周囲の壊死部に感染を生じ死亡に至る例がみられる。感染を起こすのは大腸菌などの腸管由来の細菌がほとんどである。健常人では、腸内細菌に対するバリアを備えているが、急性膵炎では腸管壁の透過性が亢進し細菌毒素が腸管粘膜を通過して腸管外へ移行するbacterial transformationが引き起こされる。さらに、全身免疫機能低下が加わり感染を惹起させる。アルコール性と胆石性が2大成因であり、成因が特定できない特発性がそれに次ぐ。男性ではアルコール性(43%)が多く、発症年齢は40~50歳代が多い。女性では胆石性(38%)が多く、発症は60歳以上の高齢者が多くなっている。その他の成因としては、膵腫瘍、手術、内視鏡的膵胆管造影(ERCP)、高脂血症、膵管形成異常、薬剤性などがある。重症急性膵炎の成因は、アルコール性(35%)、胆石性(30%)、特発性(19%)の順である。■ 症状急性膵炎では、ほとんどの例で上腹部を中心とした強い腹痛と圧痛を認める。その他には、嘔気・嘔吐、背部への放散痛、食思不振、発熱などもしばしば認められる。重症急性膵炎では、ショック、呼吸不全、乏尿、脳神経症状、腹部膨隆(イレウス、腹水)、SIRS(高・低体温、頻脈、頻呼吸)などの重要臓器機能不全兆候がみられる。■ 予後2016年の全国調査における急性膵炎患者の死亡率は1.8%であり、軽症例で0.5%、重症例で6.1%であった。重症急性膵炎の死亡率は2011年の調査時の10.1%より約4割減少した。2 診断 (検査・鑑別診断も含む)急性膵炎の診断は、上腹部痛と圧痛、膵酵素の上昇、および膵の画像所見のうち2項目を満たし、他の膵疾患や急性腹症を除外する診断基準によって行われる(表1)。急性膵炎診療ガイドライン2015に記載されている臨床指標のPancreatitis Bundles 2015(表2)と診療のフローシート(図1)にそって、診断と治療を行う。重症急性膵炎は死亡率が高いので重症例を早期に検出する目的で、急性膵炎診断後、直ちに重症度判定を行い、経時的に重症度判定を繰り返す必要がある。急性膵炎の重症度判定基準(表3)は、9つの予後因子と造影CTによる造影CT Gradeからなり、各1点の予後因子の合計が3点以上か、造影CT Gradeが2以上の場合重症と診断される(図2~4)。それぞれ単独で重症と診断される例より、両者の組み合わせで重症となる例では死亡率が高い。急性膵炎は病理学的には、浮腫性膵炎、出血性膵炎と壊死性膵炎に分類されるが、臨床的には膵および膵周囲の病変は改訂アトランタ分類によって分類される(表4、図5)。発症4週間を経過すると炎症により障害された組織を取り囲む組織の器質化が進み、4週以降は壊死を伴わない液体貯留は仮性嚢胞となるが、壊死を伴う場合には内部に壊死を含む被包化壊死となりWON (wall-off necrosis)と呼ばれる。表1 急性膵炎の診断基準(厚生労働省難治性膵疾患に関する調査研究班)1.上腹部に急性腹痛発作と圧痛がある2.血中または尿中に膵酵素の上昇がある3.超音波、CTまたはMRIで膵に急性膵炎に伴う異常所見がある上記3項目中2項目以上を満たし、他の膵疾患および急性腹症を除外したものを急性膵炎と診断する。 ただし、慢性膵炎の急性増悪は急性膵炎に含める。注:膵酵素は膵特異性の高いもの(膵アミラーゼ、リパーゼなど)を測定することが望ましい表2 Pancreatitis Bundles 20151.急性膵炎診断時、診断から24時間以内、および、24~48時間の各々の時間帯で、厚生労働省重症度判定基準の予後因子スコアを用いて重症度を繰り返し評価する。2.重症急性膵炎では、診断後3時間以内に、適切な施設への転送を検討する。3.急性膵炎では、診断後3時間以内に、病歴、血液検査、画像検査などにより、膵炎の成因を鑑別する。4.胆石性膵炎のうち、胆管炎合併例、黄疸の出現または増悪などの胆道通過障害の遷延を疑う症例には、早期のERCP+ESの施行を検討する。5.重症急性膵炎の治療を行う施設では、造影可能な重症急性膵炎症例では、初療後3時間以内に、造影CTを行い、膵造影不良域や病変の拡がりなどを検討し、CT Gradeによる重症度判定を行う。6.急性膵炎では、発症後48時間以内は十分な輸液とモニタリングを行い、平均血圧*65mmHg以上、尿量0.5mL/kg/h以上を維持する。7.急性膵炎では、疼痛のコントロールを行う。8.重症急性膵炎では、発症後72時間以内に広域スペクトラムの抗菌薬の予防的投与の可否を検討する。9.腸蠕動がなくても診断後48時間以内に経腸栄養(経空腸が望ましい)を少量から開始する。10.胆石性膵炎で胆嚢結石を有する場合には、膵炎沈静化後、胆嚢摘出術を行う。*:平均血圧=拡張期血圧+(収縮期血圧-拡張期血圧)/3図1 急性膵炎の基本的診療方針画像を拡大する表3 急性膵炎の重症判定基準(厚生労働省難治性疾患に関する調査研究班 2008年)画像を拡大する図2 浮腫性膵炎(矢印)のCT所見画像を拡大する図3 造影CT所見における膵造影不良域(矢印)画像を拡大する図4 重症急性膵炎の造影CT所見。腎下極以遠まで炎症の進展を認める画像を拡大する表4 急性膵炎に伴う膵および膵周囲病変の分類(改訂アトランタ分類)画像を拡大する図5 重症急性膵炎の造影CT所見。薄壁被膜で被包化された左側腹部広範に広がる液貯留腔画像を拡大する3 治療 (治験中・研究中のものも含む)■ 輸液急性膵炎と診断したら入院治療を行い、意識状態・体温・脈拍数・血圧・尿量・呼吸数・酸素飽和度などをモニタリングする。膵外分泌刺激を回避するために絶食とし、初期輸液と十分な除痛を行う。急性膵炎では発症初期より血管内脱水を起こすので、乳酸リンゲル液などの細胞外液による十分な輸液を行う。ショックまたは脱水状態の患者には、短時間の急速輸液(150~600mL/時間)を行うが、過剰輸液にならないように十分に注意する。脱水状態でない患者には、130~150mL/時間の輸液をしながらモニタリングを行う。平均動脈圧(拡張期血圧+(収縮期血圧―拡張期血圧)/3)が65mmHg以上と尿量0.5 mL/kg/時間以上が確保されたら、急速輸液を終了し輸液速度を下げる。■ 薬物療法急性膵炎の疼痛は激しく持続的であり、非麻薬性鎮痛薬であるブプレノルフィン(商品名:レペタン)などにより十分にコントロールする。軽症例では予防的抗菌薬は必要ないが、重症例や壊死性膵炎では発症後72時間以内に予防的に抗菌剤を投与することが推奨されている。ガベキサートメシル酸塩などの蛋白分解酵素阻害薬の経静脈的投与による生命予後や合併症発生に対する明らかな改善効果は証明されていない。■ 栄養療法経腸栄養を行うことは腸管からのbacterial transformationを減少させるので、感染予防策として腸管合併症のない重症例では入院後48時間以内に開始することが望ましい。原則としてTreitz靭帯を超えて空腸まで挿入した経腸栄養チューブを用いることが推奨されるが、空腸に経腸栄養チューブが挿入できない場合は十二指腸内や胃内に栄養剤を投与しても良い。腹痛の消失、血中膵酵素値などを指標として経口摂取の開始時期を決める。■ Abdominal compartment syndrome(ACS)の診断と対処腹腔内圧(intra-abdominal pressure:IAP)が12mmHg以上をIAH(intra-abdominal hypertension)、腹腔内圧が20mmHg以上かつ新たな臓器障害/臓器不全が発生した場合をACS(abdominal compartment syndrome)と診断する。重症急性膵炎の4~6%にACSが発症する。通常膀胱内圧で測定するIAP 12mmHg以上が持続または反復する場合は、内科的治療(消化管内減圧、腹腔内減圧、腹壁コンプライアンス改善、適正輸液と循環管理)を開始して、IAP 15mmHg以下を管理目標とする。IAP>20mmHgかつ新規臓器障害を合併した患者に対して、内科的治療が無効である場合のみ外科的減圧術を考慮する。■ 特殊治療十分な食輸液にもかかわらず、循環動態が安定せず、利尿が得られない重症例やACS合併例に対しては持続的血液濾過(continuous hemofiltration:CHF)/持続的血液濾過透析(continuous hemodiafiltration:CHDF)を導入すべきである。しかし、上記以外の重症急性膵炎にルチーンに使用することは推奨されない。膵の支配動脈から動注することにより、膵の炎症の鎮静化や進展防止および感染予防を目的とする蛋白分解酵素阻害薬・抗菌薬膵局所動注療法は、重症急性膵炎または急性壊死性膵炎の膵感染低下、死亡率低下において有効性を示す報告があるが有用性は確立していない。動注療法は保険適応がないため臨床研究として実施することが望ましい。動注療法の真の有効性と安全性を検証するより質の高いランダム化比較試験(RCT)が必要である。■ 胆石性性膵炎における胆道結石に対する治療急性胆石性膵炎のうち、胆管炎合併例や胆道通貨障害の遷延を疑う症例では、早期にERCP/内視鏡的乳頭切開術(endoscopic sphincterotomy:ES)を施行すべきである(図6)。しかし、上記に該当しない症例に対する早期のERCP/ES施行の有用性は否定的である。急性胆石性膵炎の再発予防のため、手術可能な症例では膵炎鎮静化後速やかに、胆嚢摘出術の施行が推奨される。図6 胆石性膵炎の診療方針画像を拡大する■ 膵局所合併症に対するインターベンション治療壊死性膵炎では保全的治療が原則であるが、感染性膵壊死ではドレナージかネクロセクトミーのインターベンション治療を行う。できれば発症4週以降の壊死巣が十分に被包化されたWONの時期に、経皮的(後腹膜経路)もしくは内視鏡的経消化管的ドレナージをまず行い(図7)、改善が得られない場合は内視鏡的または後腹膜的アプローチによるネクロセクトミーを行う。図7 単純X線所見。被包化壊死(WON)と胃内にダブルピッグテイルプラスチックステントを留置画像を拡大する4 今後の展望遅滞ない初期輸液や経腸栄養などの重症化阻止や感染予防のための方策を講じた急性膵炎診療ガイドラインの普及により、急性膵炎特に重症急性膵炎の死亡率は大きく低下した。今後、急性膵炎発症や重症化の機序のさらなる解明、ガイドラインのさらなる普及、後期合併症対策の改良などが期待される。5 主たる診療科消化器内科、消化器外科※ 医療機関によって診療科目の区分は異なることがあります。1)Masamune A, et al. Pancreatology. 2020;20:629-636.2)武田和憲、他. 厚生労働科学研究補助金難治性疾患国副事業難治性膵疾患に関する調査研究、平成17年度総括・分担研究報告書. 2006;27-34.3)急性膵炎診療ガイドライン2015(第4版)、金原出版.2015.4)Banks PA, et al. Gut. 2013;62:102-111.公開履歴初回2021年02月11日

2209.

第44回 新型コロナ専門家コメンテーターに疑念残る「製薬マネー」

新型コロナウイルス感染症に関するコメンテーターとして、毎日のようにテレビで見る医療者達。お茶の間ではすでに顔なじみの人物もいるだろう。新型コロナの治療薬やワクチンが話題になる中、その発言は製薬企業の利害得失にも影響を及ぼすはず。両者の関係は実際どうなのだろうか。病院勤務医や東北大学の医学生らが、製薬企業から医療者が受け取った謝金、いわゆる「製薬マネー」を調査したところ、出演番組数ベスト10の新型コロナ関連専門家で、新型コロナ関連の治療薬・ワクチンを開発・販売している製薬企業から受け取っていた謝礼金の合計金額は約2,450万円に上ることがわかった。調査チームはこのほど、日本製薬工業協会(製薬協)に加盟する製薬会社73社による公開データを集計・解析した。2020年上半期にテレビ出演回数上位10位であった専門家11人中(同率10位2人)7人に対し、2017年度に製薬企業から支払われた謝礼金は総額3,557万円であった。新型コロナ関連の治療薬・ワクチンを開発・販売している製薬企業から、これらの専門家に支払われた製薬マネーは、1社当たり平均で223万円。一方、開発・販売していない製薬企業から支払われた製薬マネーは、1社当たり平均139万円だった。11人の専門家のうち、54.5%(11人中6人)が医師として診療を行っており、91%は男性で、新型コロナウイルスに関して学術論文を発表していたのは、わずか1人であった。調査チームは、今回の結果について「テレビ出演の多い専門家の発言が、治療薬やワクチンなどに関してエビデンスに基づく発言であるか、また新型コロナ感染症に立ち向かう現場の声を反映しているかについて疑問が残った」と述べている。現場の医療人が感染の危機と差別にさらされながら、日々新型コロナと戦っているだけに、彼らにはいま一度、医療人として疑念をもたれない身の処し方を求めたい。参考1)Murayama A, et al. Clin Microbiol Infect. 2020 Dec 11. [Epub ahead of print]

2210.

医師がセカンドキャリアを考えるとき、絶対に必要なモノ【医師のためのお金の話】第41回

こんにちは。自由気ままな整形外科医です。皆さんはご自身のキャリアパスについて考えているでしょうか。まったく将来のビジョンがない、という人はおそらくいないと思います。「○○の分野の専門性を極めたい」とか、「卒後○年で開業しよう」と考えている人もいるでしょう。しかし、世の中は流動的で、1週間先のことでさえ正確に予測することは不可能です。そんな中、10~20年先まで見据えたキャリアパスを考えることが難しいのは事実です。だからといって、何も考えずに成り行き任せでその日暮らしをしていると「気付いたら50歳になっていた」ということにもなりかねません…。医師は忙しく、かつ職を失うことはまれなこともあり、成り行き任せの人生を歩む人も多いようです。でも、完全な成り行き任せでは何かを成し遂げることはできません。将来予測が困難な中にあっても、ある程度は自分のキャリアパスについて考えておくことが重要です。確実にやってくる、あなたの「2つの未来」それではキャリアパスを考えるに当たって、何に着目すればよいのでしょうか? 将来のイベントを予測することは難しいものの、確実にやってくることが2つあります。それは 「体力の衰え」と「時間価値の上昇」です。若い頃は体力が有り余っており、また医師としても未熟なため、がむしゃらに自分の専門性を高めることに集中します。もちろん、専門性を極めるのは素晴らしいことですが、体力に任せた働き方をずっと続けることは難しいでしょう。若い方は想像しにくいかもしれませんが、個人差はあれども、50歳くらいになると頭の反応が鈍り、体力的にも厳しくなってくるので、20代の頃と同じようなペースで仕事や研究を続けることは難しくなります。また、20代の頃には無限にあると感じていた時間も、50歳の声が近づけば、人生で残された時間が少ないことに気付きます。時間はとても貴重で、お金で買い戻すことはできません。この頃になると、お金よりも時間のほうが貴重になってくるのです。いくら医師としての専門性に磨きをかけても、いつかは臨床の第一線を退くときがやってきます。それまでに、若手に道を譲った後に取り組むべきことを、ある程度まで想定しておく必要があります。キャリアパスのバッファは資産形成医師が臨床の第一線を退いた後の「第2の人生」として、現時点での主な選択肢は「開業」か「病院の管理職」でしょう。しかし、時代の変化は速く、人口減の時代にみんなが開業できるとも限りません。今回のコロナ禍のような事態が発生し、開業医ビジネスが一気に厳しくなる可能性もあります。また、今後の医師数増加のため、管理職ポストにあぶれてしまう可能性もあります。そう、未来は流動的なのです。一方、確実にやってくる未来は、繰り返しになりますが「体力の衰え」と「時間価値の上昇」です。このように考えると、若い頃からある程度のキャリアパスを考え、想定外の事態に陥っても耐えられるバッファをつくっておく必要があると思います。そして、私の考えるバッファの最有力候補は「十分な資産」です。自分の時間が貴重になる年代にさしかかっても、生活のためにアルバイトを続けなければいけないのはつらいことです。そのような事態を回避するためにも、資産形成は重要です。医師になったからには専門性を極めたいという気持ちは多くの人にあります。しかし、キャリアパスを深く考えずに猪突猛進していると、自分がもう若くないことに気付いたときには手遅れになりかねません。そうならないためにも、若い頃から自己研鑽と資産形成を同時進行して、第一線を退くときに備えておくことをお勧めします。

2211.

OTC連用の患者に販売を断った結果【堀美智子のハートに効くラヂオ】第6回

動画解説OTC連用が疑われる患者さんに販売を断ったら来なくなってしまった。しかし数ヵ月後、にこやかな表情で再来局。そこで患者さんが語ってくれた話とは?前回に続き、堀先生の息子・正隆先生のエピソード。

2212.

限局性皮質異形成〔FCD:Focal cortical dysplasia〕

1 疾患概要■ 概念・定義限局性皮質異形成(Focal cortical dysplasia:FCD)は、1971年にTaylorらが“Focal dysplasia of the cerebral cortex in epilepsy”として報告し、その後、難治性てんかんの外科切除病変で認められる特異的な病理像を呈する疾患単位として確立された。FCDは、単なる“限局した皮質の形成異常”ではなく、特徴的な臨床症状と画像を呈し、病理学的に確定診断がなされる独立した1つの疾患単位である。FCDの一部と片側巨脳症は病態が共通しており、病変の大きさは異なるが、連続した疾患として位置付けられている。■ 疫学国内、海外ともに正確な頻度は不明である。日本てんかん外科学会による主要な施設を対象とした2005年から2011年のアンケート調査では、1年間に30件程度の皮質形成異常が登録されていた。海外ではてんかん外科手術例の25%がFCDと報告されている。手術に至っていない例も多いと思われ、国内では数千例と見積もられている。■ 病因後述する病理所見の違いによりI〜III型に分類され、型(タイプ)によって病因は異なる。脳の発生段階による区分では、I型とIII型は神経細胞の移動後の発生異常に分類され、II型は異常な細胞増殖に伴う皮質形成異常に分類される。I型ではCOL4A1、SCN1A、STXBP1などの遺伝子変異が症例として報告されているが、共通の病態は不明であり、病因は多様であると推測される。II型では細胞内の信号伝達を担うmTOR経路の遺伝子変異によるmTOR機能の活性化が主要な病因である1)。III型は併発病変により病因が異なると推測される。■ 症状主要な症状である薬剤抵抗性のてんかん発作は乳幼児期に発症することが多く、約60%の症例は4歳まで、約90%の症例は12歳までに発症する。組織学的な変化が軽度(IA型)の場合は60歳以上での成人発症も報告されている。発症時には強直発作・強直間代発作が比較的多く認められる。年齢が上がると病変部位に応じた焦点起始発作が認められる。群発する症例が多く、重積発作は10%程度に認められる。症状が進行すると、認知機能の障害や片麻痺など局所症状の出現を伴う。■ 予後発作は薬剤抵抗性である。17%の症例は薬剤に反応するが、効果は一時的である。焦点切除術により約半数で発作消失が得られる。FCDのタイプによって発作消失率は異なり、I型では43%、II型では75%である。10年間の長期予後では、手術から1年後の発作消失率は61%、5年後42%、10年後33%である。MRIで病変が検出される方が手術成績は良い。1歳未満の発症、てんかん性スパズムの既往、頻回の発作、長い罹病期間、群発や重積発作は知的障害の併発リスクとなる。国内のてんかん専門施設におけるFCD 77例の調査では、53%に知的障害を認め、発達・知能指数の平均は60であった2)。2 診断 (検査・鑑別診断も含む)FCDの確定診断は病理所見によって行われ、国際抗てんかん連盟(ILAE)により細分類されている(表)3)。表 限局性皮質異形成の 病理組織 診断分類画像を拡大するMRIは術前評価の非侵襲的な基本検査である。I型の大多数でMRIは正常であり、術前の診断は困難である。II型では局所的な皮質の肥厚、脳回異常、T2もしくはFLAIRの高信号、皮質と白質の境界不明瞭化が認められる。IIa型で3割程度、IIb型ではほぼ全例でMRIの異常所見が得られる。IIb型では病巣直下の白質内に脳室周囲から脳表に向けてT2とFLAIRで高信号を呈する線状の所見が認められ、“transmantle sign”と呼ばれる。脳波でI型を診断することは困難である。II型では発作間欠期に病変の解剖学的分布範囲と関連して焦点性の律動性てんかん発射が認められる。脳溝深部に限局するbottom-of-sulcus型では頭皮表面の脳波では異常を検出できないこともある。その他に、局在性の多型性徐波polymorphic delta activity、低振幅性速波、多棘波、二次性両側同期棘徐波が認められる。切除範囲を決める術前検査として、SPECT、FDG-PET、SISCOMが有用である。画像で病変範囲が不明確な場合は、頭蓋内電極の埋め込み術を行い皮質脳波を記録する。鑑別診断として、結節性硬化症、ラスムッセン脳炎、low-grade glioma(神経節膠腫、神経節細胞腫、胚芽異形成性神経上皮腫瘍など)が挙げられる。結節性硬化症は、病変が多発性でありCTで石灰化を伴う。また、FCDに比べグリオーシスが強く、皮質下白質のT2高信号が目立つ。ラスムッセン脳炎は、病変が進行性で、初期に脳回の腫大を認めることがあるが、萎縮性変化が主体である。Low-grade gliomaでは、皮質の肥厚は少なく、病変の高信号は不均一である。FCDでは、脳室に向かって皮質下白質の高信号が減弱するが、low-grade gliomaでは同所見は10%にしかみられない。3 治療 (治験中・研究中のものも含む)発作型に応じ薬剤を選択し、2剤以上の適切な抗てんかん薬を使用しても発作が消失しないときは、発作焦点の皮質切除術を行う。発作焦点が運動野など一次領野にかかっていないことを確認する。発作再発のリスクは焦点の取り残しであり、病変が一次領野から離れ、術後に神経学的脱落症状を来すリスクが低ければ完全切除を目指す。4 今後の展望FCDII型の病因診断として研究レベルで遺伝子解析が行われる。MTOR、PIK3CA、AKT3、TSC1/2などの体細胞モザイク変異とDEPDC5、NPRL2、TSC1/2などの生殖細胞系列変異があり、前者は手術標本の脳組織から、後者は血液からDNAを抽出し、次世代シーケンス技術を用いた変異解析が行われる。FCDII型の主要な病態がmTOR活性の亢進であることが判明し、mTOR阻害剤がてんかん発作の抑制に期待され、医師主導の臨床研究が行われている。5 主たる診療科小児科、神経小児科、脳神経外科※ 医療機関によって診療科目の区分は異なることがあります。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)診療、研究に関する情報難病情報センター(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)限局性皮質異形成(FCD)研究会(臨床研究を含む一般利用者向けのまとまった情報)てんかん診療ネットワーク(てんかんの診療を行っている施設の検索)1)Nakashima M, et al. Ann Neurol. 2015;78:375-386.2)Kimura N, et al. Brain Dev. 2019;41:77-84.3)Blumcke I, et al. Epilepsia. 2011;52:158-174.公開履歴初回2021年02月09日

2213.

地域連携薬局・専門医療機関連携薬局がいよいよ新設 気になる施設基準は?【早耳うさこの薬局がざわつくニュース】第62回

2021年1月22日に、「医薬品医療機器等法(薬機法)の法律施行規則の一部を改正する省令」が公布されました。今回の改正の大きな変更点は、「地域連携薬局」と「専門医療機関連携薬局」という認定制度の新設です。以前よりこの制度を設けることは議論されていましたのでご存じの方も多いと思いますが、いよいよ施設基準が示されました。この2つの認定制度は、薬局が乱立して患者さんのかかりつけ化や医療の利用効率化がなかなか進まないなか、薬局の機能や特色をわかりやすく認定することで、患者さん自身が自分に適した薬局を選択できるようにすることが目的です。今回の法改正に当たり、昨年10月から11月までにパブリックコメントを募集し、その結果およびそれぞれの具体的な基準に対する考え方も示したうえで、2つの認定制度の基準が示されました。【地域連携薬局】1.患者さんが座って服薬指導を受けることができるプライバシーに配慮したパーテーションなどで区切られた相談窓口などの設置2.地域包括ケアシステムの構築に資する会議への継続的な参加3.他の医療機関に勤務する医療従事者への報告・連絡実績(過去1年間で月平均30回以上)4.開局時間外の相談応需体制、休日・夜間の調剤応需体制、麻薬の調剤応需体制などの整備5.継続して1年以上勤務している常勤薬剤師の半数以上の配置6.地域包括ケアシステムに関する研修を終了した常勤薬剤師の半数以上の配置7.実務に従事する薬剤師への計画的な地域包括ケアシステムに関する研修の実施8.他の医療機関に対する医薬品の適正使用に関する情報提供の実績9.在宅医療に関する取り組みの月平均2回以上の実績【専門医療機関連携薬局】1.継続して1年以上勤務している常勤薬剤師の半数以上の配置2.がんの専門性の認定(厚労省が掲げる基準に適合した団体に限る)を受けた常勤の薬剤師の配置3.がんの専門医療機関などとの連携体制(一定の実績)4.がんの専門医療機関との間で開催される会議への継続的な参加5.勤務している全薬剤師が、少なくとも1年ごとにがんの専門的な薬学的知見に基づく調剤・指導に関する研修を受講6.がんの専門的な薬学的知見に基づく調剤・指導に関する継続的な研修の実施7.過去1年間において、がんの医薬品の適正使用に関する情報提供の実績地域連携薬局については、入退院時の医療機関などと情報連携したり、在宅医療などで地域の薬局と連携しながら一元的・継続的に対応したりできる薬局というイメージです。専門医療機関連携薬局については、薬剤師の薬学的知見における「専門性」が充実している薬局が認定されるということになりそうです。この法改正は、2021年8月1日に施行することが決まっています。2021年4月には報酬改定は予定されていませんが、1年後の2022年4月の報酬改定ではこの法改正が影響する予感がします。機能別薬局はどれほど浸透するのか今後Q&Aや通知などで詳細が補完されてくると思われますが、この新設される2つの認定制度について、私が懸念することが2点あります。1点目は、薬局の機能別の明示化というと、「健康サポート薬局」が思い出されます。しかし、一体どのくらいの方に認知され、活用されているのでしょうか。かかりつけ薬剤師・薬局だって、努力の甲斐あってやっと患者さんに話が通じるようになったのに…と思うのは、私だけではないはずです。この漢字がずらっと並んだ薬局の機能別名称ですが、薬局や薬剤師だけで盛り上がるのではなく、一般の方や医師などの医療者にきちんと認知してもらい、しっかり使ってもらう仕組みが必要なのではないかと思います。2点目は、「認定制度」と聞くと、条件反射のように「取得しなきゃ!」と反応する薬剤師が多いことです。その前向きな反応は私個人としては悪いことではないと思うのですが、要件や今後設定されるであろう点数だけでなく、「何のための地域連携薬局なのか?」「何のための専門医療機関連携薬局なのか?」という点をしっかり考えて、自分の目指す薬局や薬剤師像、患者さんとの接し方を見つめ直してから取得してほしいなと思います。これらの認定を受けるためには過去の実績が必要ということもあり、かなりの覚悟や努力が必要だと思います。自分たちの運営する薬局が、どのようなサービスを展開するのか、どのような薬局を目指していくのかスタッフ間で話し合ってはいかがでしょうか。参考1)「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律施行規則の一部を改正する省令の公布について」薬生発0122第6号令和3年1月22日厚生労働省医薬・生活衛生局長

2215.

優秀だけど給与高く圧強め…、そのスタッフ雇用継続すべき?【ひつじ・ヤギ先生と学ぶ 医業承継キソの基礎 】第11回

第11回 優秀だけど給与高く圧強め…、そのスタッフ雇用継続すべき?漫画・イラスト:かたぎりもとこ医業承継の買い手の方からしばしばある質問が「現状のスタッフを雇用継続すべきでしょうか?」というものです。弊社の成約実績を基にした調査では、雇用継続するケースが8割以上となっています。雇用を継続する主な理由は、下記の3点です。(1)即戦力となるスタッフに残ってもらうことで、院内フローや規定などをゼロから構築する必要がなく、安定した医院運営が可能になる(2)一定数の患者がスタッフに付いている(スタッフが変わった場合の患者離反が不安)(3)スタッフを新規採用できるかどうかが不安一方で、雇用を継続しない、という選択の背景には、主に下記の2点があります。(1)スタッフ間の人間関係が悪化しており、改善策が見いだせない(2)スタッフの給与水準が高く、経営を圧迫する。もしくは(医療法人が買い手となった際は)本院と人件費の水準が合わない(1)人間関係の悪化スタッフ間の人間関係の把握に際しては「スタッフ内のキーパーソン」を知ることが重要です。キーパーソンの影響によって人間関係が悪化しているケースも存在するので、売り手の院長や複数のスタッフから、各人の評価を確認して判断する必要があります。(2)給与水準もう1つの要因である給与水準の問題も重要です。たとえば、看護師の場合、30代前半の看護師の平均年収は476万円である一方、50代後半の看護師の平均年収は534万円となっています1)。医院の引き継ぎを行う場合、院長が引退する年齢の診療所では、スタッフも40~50代のベテラン層が多くなります。経営者としては、こうした固定費の水準をきちんと認識しておく必要があります。給与に見合う能力があれば問題ありませんが、場合によっては、引き継ぎ前にスタッフと面談し、給与条件の変更を伝え、無理のない給与に設定し直すことも必要となるでしょう。参考1)令和元年賃金構造基本統計調査/厚生労働省

2216.

統合失調症患者に対する補助的ヨガトレーニング

 統合失調症患者の認知機能障害改善に対するヨガトレーニングの許容性および有効性に関連する要因を特定するため、インド・Dr. Ram Manohar Lohia HospitalのTriptish Bhatia氏らは、検討を行った。Acta Neuropsychiatrica誌オンライン版2020年12月9日号の報告。 インド人統合失調症患者の認知機能に対するヨガトレーニングの影響を検討した2つの臨床試験でのデータを分析した。分析に使用した臨床試験は、21日間のランダム化比較試験(286例、3、6ヵ月のフォローアップ)および21日間の非盲検試験(62例)であった。ヨガトレーニング後の認知機能(注意力、顔の記憶)改善とベースライン特性(年齢、性別、社会経済状況、教育状況、教育期間、症状重症度)との関連を調査するため、多変量解析を用いた。許容性に関連する要因は、スクリーニングされた参加者と試験に登録された参加者、試験完了者と非完了者の人口統計学的変数を比較することで特定した。 主な結果は以下のとおり。・試験に登録された参加者は、スクリーニング時に試験を拒否した参加者よりも年齢が若かった(t=2.952、p=0.003)。・試験への登録または完了に関連する他の特性は認められなかった。・有効性に関しては、顔の記憶の尺度において、認知機能の改善効果および持続性と教育期間との関連が認められた。・その他のベースライン特性とヨガトレーニングとの関連は認められなかった(148例)。 著者らは「若年の統合失調症患者では、ヨガトレーニングは許容される。また、心理社会的特性の個人差も認められず、特定の認知機能改善に役立つであろう。そのため、統合失調症患者の補助療法として、ヨガトレーニングを組み込むことは有用であると考えられる。重要な点として、ヨガトレーニングは、すべての年齢の統合失調症患者の認知機能を改善する可能性があることが挙げられる」としている。

2217.

046)同僚医師にモヤモヤ…その理由は?【Dr.デルぽんの診察室観察日記】

第46回 同僚医師にモヤモヤ…その理由は?ゆるい皮膚科勤務医デルぽんです☆私の勤め先では、1週間の皮膚科外来を数人の医師で分担しています。毎日処置が必要な患者さんなどは、必然的に別の医師にも対応をお願いすることになるので、お互いに持ちつ持たれつの関係です。ただ、たまにちょっとモヤっとする場面が…。たとえば、切開が必要な皮下膿瘍や重症型の多形紅斑、深めの挫創など、症状が重めの患者さんを十分な申し送りのない状態でパスされることがあります。もちろん、自分で判断しきれない場合、速やかにほかの医師へコンサルすべきとは思いますが、同じ施設の場合、診察の環境や条件は変わらないはず。場合によっては、手を変えることで解決することもあるでしょうが、こういうことが重なるとモヤモヤした気持ちになります。危ないと思ったら診ない、それもまた危機管理の1つかもしれません。ただ、ほかの医師や他院を紹介するにしても、専門性をもって判断し、きちんと必要性を確認してから申し送りや紹介状を準備するのが筋なのでは…?困ったら大きい病院へ紹介すればいいという問題でもないので、さじ加減は難しいところですが、専門医としての責任と自覚を持ってほしいと思わずにはいられません。私もまだまだ勉強不足なので、今後も真摯に勉強を続けたいです。それでは、また〜!

2218.

COVID-19に対する薬物治療の考え方 第7版を公開/日本感染症学会

 日本感染症学会(理事長:舘田 一博氏[東邦大学医学部教授])は、2月1日に新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の治療薬について指針として「COVID-19に対する薬物治療の考え方 第7版」をまとめ、同会のホームページで公開した。 本指針は、COVID-19の流行から約1年が経過し、薬物治療に関する知見が集積しつつあり、これまでの知見に基づき国内での薬物治療に関する考え方を示すことを目的に作成されている。 現在わが国でCOVID-19に対して適応のある薬剤はレムデシビルである。デキサメタゾンは重症感染症に関しての適応がある。また、使用に際し指針では、「適応のある薬剤以外で、国内ですでに薬事承認されている薬剤をやむなく使用する場合には、各施設の薬剤適応外使用に関する指針に則り、必要な手続きを行う事とする。適応外使用にあたっては基本的にcompassionate useであることから、リスクと便益を熟慮して投与の判断を行う。また、治験・臨床研究の枠組みの中にて薬剤を使用する場合には、関連する法律・指針などに準じた手続きを行う。有害事象の有無をみるために採血などで評価を行う」と注意を喚起している。 抗ウイルス薬などの対象と開始のタイミングについては、「発症後数日はウイルス増殖が、そして発症後7日前後からは宿主免疫による炎症反応が主病態であると考えられ、発症早期には抗ウイルス薬、そして徐々に悪化のみられる発症7日前後以降の中等症・重症の病態では抗炎症薬の投与が重要となる」としている。 抗ウイルス薬などの選択について、本指針では、抗ウイルス薬、抗体治療、免疫調整薬・免疫抑制薬、その他として分類し、「機序、海外での臨床報告、日本での臨床報告、投与方法(用法・用量)、投与時の注意点」について詳述している。紹介されている治療薬剤〔抗ウイルス薬〕・レムデシビル(商品名:ベクルリー点滴静注液100mgなど)・ファビピラビル〔抗体治療〕・回復者血漿・高度免疫グロブリン製剤・モノクローナル抗体〔免疫調整薬・免疫抑制薬〕・デキサメタゾン・バリシチニブ・トシリズマブ・サリルマブ・シクレソニド〔COVID-19に対する他の抗ウイルス薬(今後知見が待たれる薬剤)〕インターフェロン、カモスタット、ナファモスタット、インターフェロンβ、イベルメクチン、フルボキサミン、コルヒチン、ビタミンD、亜鉛、ファモチジン、HCV治療薬(ソフォスブビル、ダクラタスビル)今回の主な改訂点・レムデシビルのRCTを表化して整理・レムデシビルの添付文書改訂のため肝機能・腎機能を「定期的に測定」に変更(抗体治療薬の項目追加)・バリシチニブ+レムデシビルのRCT結果を追加・トシリズマブのREMAP-CAP試験などの結果を追加・シクレソニドの使用非推奨を追加

2219.

恫喝や暴言も、医療者への風評被害の実態/日医

 日本医師会・城守 国斗常任理事が、3日の記者会見で「新型コロナウイルス感染症に関する風評被害の緊急調査」について、結果を公表した。これは、昨年11月に開催された都道府県医師会長会議で問題提起され、各地域の被害状況について全47都道府県医師会が調査したもの。全国から698件の報告、「近寄るな」「責任を取れ」など心ない言葉も 風評被害を受けた対象としては、総回答数698件のうち「医師以外の医療従事者」に対する被害が277件(40%)と最も多かった。次いで「医療機関」が268件(38%)、「医師または医療従事者の家族」が112件(16%)、「医師」が21件(3%)、「その他」が20件(3%)という内訳だった。「医師以外の医療従事者」に対する風評被害は、主に看護師に対するものが多かったという。《具体的な事例1:医師》・濃厚接触者ではなく、新型コロナ患者の対応をしていないにもかかわらず、自治体より乳児健診前の2週間は勤務しないように要望された。・検死に赴いたにもかかわらず、当該関係者から、あたかも自分が新型コロナに罹患しているかのような対応を受けた。・防護服着用で診察などの対応をしていると、その格好を揶揄するような指摘をされた。・このような時だから、医師は遠出をするべきではないとを言われた。・医師が近隣に引っ越してくると知った住人から、「窓も開けられなくなる」「引っ越しを延期してもらえないか」といったクレームが出た。《具体的な事例2:医師以外の医療従事者》・新型コロナを診ている医療機関か否かにかかわらず、医療機関に勤務しているだけで、「近寄るな」「(集まりや習い事に)来ないで欲しい」「(美容院などの)予約を受けられない、しばらく利用を控えて欲しい」「一緒にエレベーターに乗るのが怖い」などの扱いや暴言を受けた。・保育園などに子供の預かりを拒否され、新型コロナの対応に当たっていないことを説明しても聞き入れられず、仕事を休むことを強いられた。・勤務先医療機関に初めて新型コロナ患者が入院した際、ほかの通院患者から「自分の家族は大丈夫なのか。何かあったら責任を取ってもらう」と言われた。・病院職員に陽性者が出たため、PCR検査を受けた。陰性だったが、自宅待機をしていたところ、近隣住民から電話が殺到、嫌がらせのようなものもあった。・買い物に行くと、知人である従業員から「何しに来たの?早く帰って」と言われた。・感染拡大地域から通勤していることで、同僚から避けられ、車が県外ナンバーであることで肩身の狭い思いをすることがあった。《具体的な事例3:医療機関》・「診療・検査医療機関」であることが県ホームページに掲載されると、受診患者数が大きく減少した。・近隣医療機関で新型コロナ患者が出たことを受け、「(当院でも)患者が出た」「スタッフが感染している」など、SNSに誤った情報を書き込まれた。・病院敷地内にユニットハウスを建て、発熱外来として利用していると、近隣住民から「窓を開けるな」など、クレームがあった。・医療機関に勤務していることを職員の家族らが心配し、職員の退職の原因となった。・「お前らのせいで学校が再開できなくなった。どうしてくれるんだ」「感染拡大の責任を取れ」「職員を外出させるな」「職員の住んでいる場所を教えろ」など、恫喝めいた問い合わせがあった。《具体的な事例4:医療従事者の家族》・子供が「学校に来てもいいのか?お母さんは看護師だろ?」と言われるだけでなく、本人が新型コロナに感染しているかのような扱いを受けた。・医療従事者の子供というだけで、別室保育や別室授業などの対応をされたほか、登園や登校をしばらく控えるように要望された。・子供の地域活動(友達付き合い、習い事、クラブ活動など)が、直接的・間接的に拒否され、子供が精神的に不安定となった。・家族が新型コロナを診療している医療機関に勤務しているため、親のデイサービス利用が断られたり、取引先から「取引を止める」と言われたり、会社内で「お前の家族はコロナじゃないのか」「お前も感染してるんじゃないのか」と言われた。 このように、新型コロナウイルス感染症に対する過剰な心配と思われる事例が多く見られた。中には、家族や親戚から交流を避けられるといった事例も散見され、医療従事者が精神的にも大きなダメージを受けていることが心配される。城守氏「風評被害というよりも“いわれなき差別”」 風評被害への対応としては、「不安で通院できないといった問い合わせがあった際は、保健所の指導の下、感染対策をしっかり行っているので安心して通院してほしいと説明した」「慢性疾患により定期的な通院が必要な患者には個別に連絡し、病院内では感染対策を行っていること、定期的な受診が重要であることを説明した」「周辺住民を対象に勉強会を開催し、正しい情報が広まるよう努めた」など、その多くが繰り返し丁寧に説明し、医療従事者・医療機関への理解を求めていた。 城守氏は、「全国規模で風評被害が発生していることが明らかとなった。中には、医療従事者に対する“いわれなき差別”とも言える事例が多く見られ、由々しき事態であると考えている。国に対しても何らかの早急な対応を求めたい」と述べた。なお、被害状況に地域差などは見られず、報告がなかった県は7つほどあったという。調査概要1.名称:新型コロナウイルス感染症に関する風評被害の緊急調査2.目的:令和2年度第2回都道府県医師会長会議(2020年11月17日開催)で新型コロナウイルス感染症に関する医療従事者などへの風評被害について問題提起されたことを受けて、日本医師会として医療従事者などに対する風評被害の実態を把握し、その結果を基に、医療の最前線で奮闘している医療従事者の置かれている状況について、国民に理解を求める。3.対象:2020年10月1日~12月25日までに各地域で起こった風評被害4.内容:風評被害の対象者(医療機関、医師、医師以外の医療従事者、医療従事者の家族、その他)、具体的事例、対応策5.方法:都道府県医師会の協力のもと、各地域の被害状況について調査し、その結果を、2021年1月15日を期限としてメールで回答いただいた。6.回答:47都道府県医師会すべてより回答(総回答数698件)

2220.

脈拍触知不能後の心臓活動再開率は14%、4分後に再開例も/NEJM

 生命維持措置を停止し脈拍触知不能後に、少なくとも1サイクルの心臓活動の一過性の再開が、心電図・血圧波形の後ろ向き解析で認められた患者は14%で、同様の再開率は、ベッドサイドの医師の前向き観察でわずかに1%確認されるにとどまったことが示された。カナダ・Children’s Hospital of Eastern OntarioのSonny Dhanani氏らが、これまで臓器提供に関して心停止後の脈拍触知不能時間は最短でもどれくらい必要なのか、十分な研究はされていなかったことから、631例を対象に前向き観察試験を実施。試験では、脈拍触知不能後の心臓活動の再開までの最長経過時間は4分20秒だったことも明らかにされた。NEJM誌2021年1月28日号掲載の報告。3ヵ国20ヵ所のICUで前向き観察試験 研究グループは3ヵ国20ヵ所(カナダ16、チェコ3、オランダ1)の集中治療室で、生命維持措置を計画どおりに停止し死亡した成人について、前向き観察試験を行い、心臓の電気活動と拍動活動の再開率と、そのタイミングについて検証した。 被験者について、死亡判定後30分間にわたりモニタリングを行うとともに、ベッドサイドで医師が心臓の活動再開を前向きに報告した。 血圧と心電図(ECG)波形を記録するとともに、後ろ向きレビューでベッドサイドの観察結果を確認およびその他の心臓の活動再開の有無を調べた。最後のQRS波が最後の動脈拍動と一致は19% 1,999例がスクリーニングを受け、そのうち631例が試験対象として包含された。 臨床的に報告された心臓活動や呼吸運動、またはその両者について、波形解析で確認されたのは5例(1%)だった。 480例を対象にECGと血圧の波形を後ろ向きに解析したところ、脈拍触知不能後に心臓活動の再開が認められたのは67例(14%)だった(ベッドサイドの医師により報告された5例を含む)。 脈拍触知不能後、心臓活動の再開までの最長経過時間は4分20秒だった。最後のQRS波の発生が最後の動脈拍動と一致していたのは19%だった。

検索結果 合計:5062件 表示位置:2201 - 2220