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認知症の臨床診療ガイドライン―韓国認知症協会の推奨事項

 韓国・江原大学校のYeshin Kim氏らが、エビデンスに基づく推奨事項をまとめた韓国認知症協会の臨床診療ガイドラインについて、アルツハイマー病およびその他のタイプの認知症に対するコリンエステラーゼ阻害薬(ChEI)およびN-メチル-D-アスパラギン酸(NMDA)受容体拮抗薬に関する推奨事項に焦点を当て、Dementia and Neurocognitive Disorders誌2025年1月号に発表した。また同誌にて、同国・カトリック大学校のGihwan Byeon氏らは本ガイドラインについて、患者のQOLや介護者の負担に影響を及ぼす認知症の行動・心理症状(BPSD)に対する、抗精神病薬、抗うつ薬、抗認知症薬など薬理学的治療に関する臨床実践ガイドラインとして提示した。 PICOフレームワークを用いて主要な臨床上の疑問を作成し、システマティックに文献レビューを実施した。韓国認知症協会が組織した多分野の専門医パネルにより、ランダム化比較試験および観察研究の評価を行った。推奨事項には、GRADE(Grading of Recommendations Assessment Development and Evaluation)ツールを用いて、エビデンスの質および強度に基づき等級付けを行った。 ChEIおよびNMDA受容体拮抗薬に関する主な推奨事項は以下のとおり。・アルツハイマー病では、認知機能および日常機能の改善にChEI(ドネペジル、リバスチグミン、ガランタミン)が強く推奨される(エビデンスの質:中)。・ChEIは、血管性認知症およびパーキンソン病性認知症に条件付きで推奨され、レビー小体型認知症には強く推奨される。・中等度~重度のアルツハイマー病には、NMDA受容体拮抗薬(メマンチン)が強く推奨され、認知機能および日常機能の有意な改善が実証されている。・いずれの薬剤クラスにおいても副作用のマネジメントは可能であり、良好な安全性プロファイルが認められた。 BPSDに対する薬理学的治療に関する主な推奨事項は以下のとおり。・薬剤の種類および症状の重症度により推奨事項は異なる。・リスペリドンやブレクスピプラゾールなどの抗精神病薬は、認知症の攻撃性や精神症状のコントロールに条件付きで推奨され、抗うつ薬、とくにcitalopramはアルツハイマー病の興奮に推奨される。・ChEIおよびNMDA受容体拮抗薬などの抗認知症薬は、レビー小体型認知症の一般的なBPSDの改善および急速眼球運動睡眠行動障害に中程度の有効性を示した。・pimavanserinなどの特定の薬剤は、アルツハイマー病患者の精神症状に対する有効性が認められた。 著者らは本ガイドラインについて、「ChEIおよびNMDA受容体拮抗薬に関する具体的なガイダンスと共に、認知症マネジメントに関する標準化されたエビデンスに基づく推奨事項を提案している」「認知症のBPSDに対する薬理学的マネジメントにおける構造化されたアプローチを提供している」「リスクを最小限にしながら治療アウトカムを最適化するための個別化された治療計画を強調している」とし、「本ガイドラインは認知症ケアにおける患者アウトカムの改善を目的としている。認知症マネジメントの進歩を反映し、アミロイド標準療法などの新たな治療法について、さらに更新されるだろう」とまとめている。

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免疫チェックポイント阻害薬治療中の生存率にインスリン分泌能が独立して関連

 免疫チェックポイント阻害薬(ICI)による治療を受けているがん患者において、インスリン分泌能が良好であることが、全生存期間(OS)や無増悪生存期間(PFS)の延長に独立して関連しているとする研究結果が報告された。岡山大学大学院医歯薬学総合研究科腎・免疫・内分泌代謝内科の渡邉真由氏、江口潤氏らが行った前向きコホート研究によるもので、詳細は「Frontiers in Endocrinology」に12月11日掲載された。 ICIは種々のがんに対してしばしば著効を示すが、従来の抗がん剤とは異なる副作用があり、糖尿病を有する場合はインスリン分泌能低下リスクのあることが知られている。ただし、糖尿病でないがん患者に関しては、まれに劇症1型糖尿病を引き起こすリスクがあることを除き、糖代謝へどのような影響が生じるのかという点の知見は限られている。 渡邉氏らはこの点について、同大学病院の患者を対象とする前向きコホート研究により検討した。解析対象は、2017年6月~2019年8月に進行がんと診断され、ICIによる初回治療が行われた87人。ベースライン以前および研究期間中に糖尿病と診断・治療された患者、および糖代謝に影響を及ぼし得るステロイドが処方された患者などは除外されている。 主な特徴は、年齢中央値(以下、連続変数は全て中央値)が65歳(四分位範囲56~72)、男性67.8%、BMI19.2。がん種は頭頸部がん52人、胃がん19人、その他16人であり、全身状態を0~4で表すECOG PSは0~1(比較的良好なパフォーマンス)が80.5%を占めていた。糖代謝に関しては、HbA1c5.6%、空腹時血糖値97mg/dL、インスリン分泌能を表すHOMA-βが59.4(四分位範囲37.1~85.3)、Cペプチドが1.52ng/dL(同1.01~2.24)、インスリン抵抗性を表すHOMA-IRが1.11(0.72~2.34)であり、腎機能(eGFR)は70.9mL/分/1.73m2(63.5~87.2)と良好だった。投与されたICIは、ニボルマブが78人、ペムブロリズマブが10人、イピリムマブが1人だった(2人は2剤併用)。 ICI投与開始1カ月後、HbA1cの有意な低下(P=0.018)とCペプチドの有意な上昇(P=0.022)が観察され、ICIは非糖尿病患者の糖代謝にも影響を及ぼし得ることが示唆された。 観察期間中に82人(94.3%)が死亡し、OSは中央値7カ月、PFSは同3カ月だった。OSの中央値で2群に分けて比較すると、HOMA-βはベースラインおよび投与1カ月後の両時点で有意差があり、OSが7カ月以上の群のほうが高値だった。その他の糖代謝関連指標の群間差は非有意だった。ROC解析により、OSが7カ月以上であることを予測するHOMA-βの最適なカットオフ値は64.24と計算され、AUCは0.665だった。また、PFSが3カ月以上であることを予測するHOMA-βの最適なカットオフ値は66.43、AUCは0.582だった。 次に、年齢、性別、BMI(最適なカットオフ値である18.58以上)、eGFRおよびHOMA-β(64.24以上)を独立変数、OSの短縮(中央値である7カ月未満)を従属変数とする多変量ロジスティック回帰分析を施行。その結果、BMI(ハザード比〔HR〕0.481〔95%信頼区間0.299~0.772〕)とHOMA-β(HR0.623〔同0.393~0.989〕)の2項目が、OS延長に独立して関連していることが明らかになった。続いて行ったPFSの短縮(中央値である3カ月未満)を従属変数とする解析からは、HOMA-β(66.43以上の場合にHR0.557〔0.339~0.916〕)のみが、PFS延長に独立して関連していることが明らかになった。 著者らは本研究が単施設の患者データに基づく解析であり、サンプルサイズも十分でないことなどを限界点として挙げた上で、「得られた結果は、ICI治療を受ける非糖尿病患者において、インスリン分泌能の高さがOSやPFSの延長に独立して関連することを示している。HOMA-βは、ICI投与が予定されるがん患者の予後予測指標となり得るのではないか」と結論。また、「ICIが膵β細胞機能に影響を及ぼすメカニズムの解明が期待される」と付け加えている。

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第83回 「中間解析」のメリット、デメリットは【統計のそこが知りたい!】

第83回 「中間解析」のメリット、デメリットは臨床試験における中間解析とは、試験の途中で行う解析のことであり、試験の早期中止が必要かを判断するためです。たとえば、想定していたよりも早い段階で新薬の有効性が判明するようなことがあります。これ以上、試験を継続する必要がないほどのデータが取れた場合は、試験を早期に中止するようなケースも少なくありません。今回は、臨床試験における「中間解析のメリット、デメリット」について解説します。■中間解析とは臨床試験における中間解析とは、試験の途中で行う解析のことであり、試験の早期中止が必要かを判断するために実施します。たとえば、想定していたよりも早い段階で新薬の有効性が判明するようなことがあります。これ以上、試験を継続する必要がないほどのデータが取れた場合は、臨床試験を早期に中止するようなケースも少なくありません。この反対についても同様で、これ以上、試験を継続したとしても有効性が期待できないような場合に中間解析が行われ、継続するか判断することになります。早期の段階で判断することにより、被験者の負担を抑えることが可能です。また、効率よく試験結果を判断することにより、新薬の開発をスムーズに行っていくことができ、時間の節約になります。つまり、中間解析を実施することで、試験途中で試験の継続可否や試験計画の変更が検討できるようになることから、数多くの臨床試験で中間解析が実施されています。しかし、臨床試験で中間解析を実施するためには、単に集めたデータを適宜解析すればよいというわけではありません。試験の関係者が中間解析結果を知ってしまうと、試験にさまざまなバイアスを混入させる可能性があるため、試験関係者に中間解析結果を開示しないようにするため、適切な試験実施体制を整えることが重要です。統計的にも、中間解析で通常の仮説検定を繰り返し行えば、いわゆる多重性の問題が生じてαエラー(第1種の過誤)の確率は名義的な有意水準よりも増大してしまいます。また、試験を早期に中止した場合には、その時点で算出した治療効果などの推定値にはバイアスが入ることもわかっています。このため、中間解析を実施する場合は、αエラーの確率の調整や治療効果の推定値のバイアス修正など、中間解析に対応した統計解析手法を適用する必要があります。■中間解析のメリットすでに上述していますが、中間解析のメリットを整理してみます。1)早期終了の可能性有効性が非常に高い場合や、逆に有害な影響が明らかな場合、試験を早期に終了できる。2)資源の効率的使用不必要な試験の継続を避け、資源をより有効な研究に振り向けることができる。■中間解析のデメリット1)統計的な誤解釈中間解析を適切に設計しないと、誤った結論を導く可能性がある。2)漏洩のリスク中間結果が外部に漏れると、試験の完全性が損なわれる可能性がある。3)頻繁な中間解析が統計的有意差に与える影響統計学では、データを繰り返し解析することはαエラーを膨張させる可能性があります。これは「多重比較問題」として知られており、偶然に有意な結果を得る確率が高まります。この問題に対処するためには、統計的方法(たとえばボンフェローニ補正やその他の調整法)を用いて、有意水準を厳格に管理する必要があります。このような調整を行うことで、多数の比較による誤った有意差の検出リスクを減少させることができます。臨床試験の事例としては、とくにがん治療や新薬開発の分野で中間解析が頻繁に用いられます。たとえば、特定のがん治療薬の試験では、中間解析がその有効性を早期に示し、治療法の変更をもたらした事例が存在します。しかし、個別の試験結果やデータは公開されている専門文献を参照する必要があります。■中間解析において試験終了を考慮する場合の対応たとえば、がんの治療薬に関する臨床試験の中間解析で臨床試験の中止が決まった場合、適切な形で進めていく必要があります。まず行われるのが、効果安全性評価委員会から研究者に対する研究の中止勧告です。そして、試験結果の公表が推奨されることになります。その後、登録期間中の中間解析については日本臨床腫瘍研究グループ(JCOG)データセンターなどが患者登録システムの一時停止を行います。研究事務局側の対応としては、患者登録システムの一時停止についてグループに通知し、研究結果に対する「無効中止」「有効中止」「その他の中止」を伝える流れとなります。臨床試験参加患者や候補患者に対しては、不利益が生じないように配慮することも欠かせません。■さらに学習を進めたい人にお薦めのコンテンツ統計のそこが知りたい!第5回 臨床試験で必要なn数(サンプルサイズ)第23回 仮説検定における2つの間違い 第一種の誤りとは?第24回 仮説検定における2つの間違い 第ニ種の誤りとは?第25回 仮説検定における検出力とは?第26回 2群比較ではなく、3群以上の仮説検定とは?第29回 多重比較法の使い分けは?

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家族歴を有するCAD中等度リスク者、CACスコア併用の1次予防戦略が有用/JAMA

 家族歴を有する冠動脈疾患(CAD)中等度リスク者に対する1次予防戦略に、冠動脈カルシウム(CAC)スコアを組み合わせる利点を裏付けるデータが、オーストラリア・Baker Heart and Diabetes Research InstituteのNitesh Nerlekar氏らCAUGHT-CAD Investigatorsが行った無作為化試験の結果で示された。標準ケアのみと比較して、アテローム性脂質の減少とプラーク進展の制御が認められたという。CACスコアリングは、とくにCAD中等度リスクの患者において、予後情報を提供することが知られている。しかしながら、CACスコアと1次予防戦略の組み合わせの利点を検証する無作為化試験はこれまで行われていなかった。JAMA誌オンライン版2025年3月5日号掲載の報告。家族歴のある無症状の40~70歳を対象に無作為化試験 研究グループは、CACスコアと予防戦略を組み合わせることで、早発性CADの家族歴を有する中等度リスク患者のプラーク進展を制御可能かどうかについて評価する、前向きエンドポイント非盲検無作為化試験を、2013~20年にオーストラリアの7病院で実施した(最終追跡評価日は2021年6月5日)。 参加者を地域から募り、CADを60歳未満で発症した第1度近親者または50歳未満で発症した第2度近親者がいる、無症状の40~70歳を対象とした。 対象参加者にCACスコアリングを受けてもらい、スコアが0~400未満の場合は冠動脈CT血管造影(CCTA)を行い、CACスコアに基づく予防的介入(スタチンによる脂質低下療法を含む)を受けるCACスコア組み合わせ群または標準ケア群に無作為に割り付けた。 3年時点で行ったフォローアップCCTAと、独立中央検査施設で測定したプラーク量を入手。主要アウトカムは総プラーク量で、さらに石灰化および非石灰化プラーク量について解析した。3年時点でアテローム性脂質が有意に減少、プラーク進展が有意に低下 試験対象は365例(平均年齢58[SD 6]歳、男性57.5%)であった(CACスコア組み合わせ群179例、標準ケア群186例)。 標準ケア群と比較してCACスコア組み合わせ群は、3年時点で総コレステロール(平均[SD]-3[31]mg/dL vs.-56[38]mg/dL、p<0.001)およびLDLコレステロール(-2[31]mg/dL vs.-51[36]mg/dL、p<0.001)の持続的な低減が認められ、プールコホート計算式(心血管疾患の10年予測リスクツール)における変化量と関連していた(平均[SD]2.1[2.9]%vs.0.5[2.9]%、p<0.001)。 標準ケア群はCACスコア組み合わせ群と比べて、総プラーク量(平均[SD]24.9[37.7]mm3 vs.15.4[30.9]mm3、p=0.009)、非石灰化プラーク量(15.7[32.2]mm3 vs.5.6[28.5]mm3、p=0.002)、線維脂肪性および壊死性コアプラーク量(4.5[25.8]mm3 vs.-0.8[12.6]mm3、p=0.02)において、プラーク進展が大きかった。これらのプラーク量の変化は、その他のリスク因子(ベースラインのプラーク量、血圧および脂質のプロファイルなど)とは独立していた。

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ジュースクレンズはたった3日間でも有害な可能性

 一定期間、固形物を取らずにジュースのみで必要な栄養素を補うジュースクレンズは、ファスティングの一種であり、健康的な生活を始める第一歩として多くの人に取り入れられている。しかし、たとえ短期間であっても、こうした食生活によりもたらされるのは効果よりも有害性の方が大きいかもしれない。米ノースウェスタン大学フェインバーグ医学部のMelinda Ring氏らの研究によると、野菜や果物のジュースのみの食事を3日間続けることで、炎症や記憶力および思考力の問題との関連が指摘されている腸内や口腔のマイクロバイオームに変化が起こることが明らかになったという。詳細は、「Nutrients」に1月27日掲載された。 ジュースクレンズがこのような変化を引き起こすメカニズムについては、正確には解明されていない。しかしRing氏らは、ジュースは食物繊維が不足していることが要因ではないかとの見方を示している。Ring氏は、「ほとんどの人はジュースクレンズを健康的なクレンズ(浄化)として捉えているが、この研究は現実を突きつけるものだ。食物繊維がほとんど含まれていないジュースを大量に摂取すると、マイクロバイオームのバランスが崩れ、炎症や腸の健康状態の悪化といった悪影響がもたらされる可能性がある」とニュースリリースの中で述べている。 果物や野菜をジュースにする際には、含まれていた食物繊維の多くが取り除かれてしまう。食物繊維は抗炎症物質を産生する善玉菌のエサになる。食物繊維が不足すると、糖類を好む悪玉菌が増殖し、腸内や口腔内のマイクロバイオームのバランスが崩れる。 Ring氏らは今回、健康な成人14人(男性7人、平均年齢22.7歳)を対象に、ジュースの摂取が腸内と口腔内のマイクロバイオームに与える影響について調べた。研究参加者は3日間、1)果物と野菜のコールドプレスジュースのみを摂取する群(ジュース摂取群、男性2人、女性3人)、2)コールドプレスジュースと通常の食事を摂取する群(通常食摂取群、男女2人ずつ)、3)植物性食品をベースにしたホールフードのみを摂取する群(植物性食品摂取群、男性3人、女性2人)の3群に分類された。対象者はまず、オーガニックの果物、野菜、グルテンフリーの全粒穀物、卵、8杯の水から成る除去食を3日間摂取したのち、3種類の介入食のいずれかを3日間摂取した。その後、3日間の再導入期間を経て通常の食事に戻った。Ring氏らは、ベースライン、除去食実施後、介入終了直後、および介入後14日目に研究参加者から採取した唾液検体、頬の内側の粘膜のぬぐい液、および便検体を用いてマイクロバイオームの変化を分析した。 その結果、ジュース摂取群では、唾液および口腔粘膜のマイクロバイオームに変化が見られ、ファーミキューテス門(2021年にBacillota門に改名)の細菌の減少と、炎症との関連が注目されているプロテオバクテリア門(2021年にPseudomonadota門に改名)の細菌の増加が認められた。これは、ジュースが高糖質・低食物繊維であることが影響している可能性が疑われた。腸内マイクロバイオームに大きな変化は見られなかったが、腸の透過性、炎症、認知機能低下に関連する細菌の増加が認められた。一方、通常食摂取群と植物性食品摂取群でも、口腔や腸内のマイクロバイオームにある程度の変化は観察されたが、ジュース摂取群での変化ほど顕著ではなかった。 Ring氏は、「本研究結果は、食事の選択がいかに短期間で健康に関連する細菌の集団に影響を与えるかを明確に示している。口腔のマイクロバイオームは、食事の影響を迅速に把握できるバロメーターになるようだ」との見方を示している。 Ring氏らは、「この研究結果から、ジュースやその他の食事がマイクロバイオームにどのような影響を与えるのか、特に果物を食べる代わりにジュースを飲むことが多い子どもにおける影響について、さらに詳細に調べる必要性が浮き彫りになった」と話している。

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病院の6割超が赤字、2026年度改定に向け合同声明を公表/日医ほか

 診療報酬は公定価格であるため、昨今の急激な物価や人件費の高騰を価格転嫁することができず、病院は深刻な経営難に陥っている。そこで、日本病院会などの6病院団体は、2024年6月の診療報酬改定後の病院の経営状況に関して緊急調査を実施し、その結果を3月12日の日本医師会との合同記者会見で報告した。 主な結果は以下のとおり。・調査は6病院団体の会員が対象で、1,816病院から回答を得た(回答率:30.8%)。・2024年の診療報酬改定後、病床利用率は上昇傾向にあるものの、医業利益率と経常利益率は悪化傾向が認められた。 ・医業利益の赤字病院割合は69.0%まで増加、経常利益の赤字病院割合は61.2%まで増加した。・2023年と2024年の比較では、給与費とその他の経費が増加しており、その他の経費ではすべての費目(委託費、診療材料費、水道光熱費など)が増加していた。改定後の医業収益の増加率(1.9%)よりも、医薬品費以外のすべてのその他の経費の増加率が上回っていた。・2023年度の福祉医療機構のデータの債務償還年数の分析では、半数の病院が破綻懸念先と判断される30年を超えていた。  日本医療法人協会副会長の太田 圭洋氏は、これらの結果より「全国の病院経営は危機的状況に陥っていることから、地域の病院医療を維持していくため、また医療者の適切な処遇改善を進めていくために、物価・賃金の上昇に適切に対応した診療報酬の仕組みが必要」とまとめた。 なお、日本医師会と6病院団体は同日に合同で声明を発表し、(1)「高齢化の伸びの範囲内に抑制する」という社会保障予算の目安対応の廃止、(2)診療報酬などについて、賃金・物価の上昇に応じて適切に対応する新たな仕組みの導入を求めた。

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標準治療+アニフロルマブが全身性エリテマトーデス患者の臓器障害の進行を抑制

 全身性エリテマトーデス(SLE)は、炎症を通じて肺、腎臓、心臓、肝臓、その他の重要な臓器にさまざまな障害を起こす疾患であり、臓器障害が不可逆的となることもある。しかし、新たな研究で、標準治療へのSLE治療薬アニフロルマブ(商品名サフネロー)の追加が、中等症から重症の活動性SLE患者での臓器障害の発症予防や進行抑制に寄与する可能性のあることが示された。サフネローを製造販売するアストラゼネカ社の資金提供を受けてトロント大学(カナダ)医学部のZahi Touma氏らが実施したこの研究は、「Annals of the Rheumatic Diseases」に2月1日掲載された。 SLEの標準治療は、ステロイド薬、抗マラリア薬、免疫抑制薬、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)などを組み合わせて炎症を抑制するのが一般的である。しかし、このような標準治療でSLEによる臓器障害を防ぐことは難しく、場合によっては障害を悪化させる可能性もあると研究グループは指摘する。 アニフロルマブは、炎症亢進に重要な役割を果たす1型インターフェロン(IFN-1)受容体を標的とするモノクローナル抗体であり、2021年に米食品医薬品局(FDA)によりSLE治療薬として承認された。今回の研究では、標準治療にアニフロルマブを追加することで、標準治療単独の場合と比べて中等症から重症の活動性SLE患者での臓器障害発生を抑制できるのかが検討された。対象者は、標準治療(糖質コルチコイド、抗マラリア薬、免疫抑制薬)に加え、アニフロルマブ300mgの4週間ごとの静脈内投与を受けたTULIP試験参加者354人(アニフロルマブ群)と、トロント大学ループスクリニックで標準治療のみを受けた外部コホート561人(対照群)とした。 主要評価項目は、ベースラインから208週目までのSLE蓄積障害指数(Systemic Lupus International Collaborating Clinics/American College of Rheumatology Damage Index;SDI)の変化量、副次評価項目は、最初にSDIが上昇するまでの期間であった。SDIは0〜46点で算出され、スコアが高いほど臓器障害が進行していることを意味する。なお、過去の研究では、SDIの1点の上昇は死亡リスクの34%の上昇と関連付けられているという。 その結果、ベースラインから208週目までのSDIの平均変化量はアニフロルマブ群で対照群に比べて0.416点有意に低いことが明らかになった(P<0.001)。また、208週目までにSDIが上昇するリスクは、アニフロルマブ群で対照群よりも59.9%低いことも示された(ハザード比0.401、P=0.005)。 こうした結果を受けてTouma氏は、「アニフロルマブと標準治療の併用は、4年間にわたって標準治療のみを行う場合と比較して、臓器障害の蓄積を抑制し、臓器障害の進行までの時間を延ばすのに効果的である」と結論付けている。

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再発高リスクのVTE患者、DOACは減量可能か?/Lancet

 再発リスクが高く長期の抗凝固療法が必要な静脈血栓塞栓症(VTE)患者において、直接経口抗凝固薬(DOAC)の減量投与は全量投与に対して、非劣性基準を満たさなかった。しかしながら両投与群ともVTEの再発率は低く、減量投与群のほうが臨床的に重要な出血が大幅に減少し、減量投与は治療選択肢として支持可能なことが示されたという。フランス・Centre Hospitalier Universitaire BrestのFrancis Couturaud氏らRENOVE Investigatorsが、多施設共同無作為化非盲検エンドポイント盲検化非劣性試験「RENOVE試験」の結果を報告した。再発リスクが高くDOACの長期投与が適応のVTE患者において、その最適な投与量は明らかになっていなかった。結果を踏まえて著者は、「さらなる試験を行い、抗凝固薬の減量投与をすべきではないサブグループを特定する必要があるだろう」と述べている。Lancet誌2025年3月1日号掲載の報告。減量投与群vs.全量投与群、症候性VTEの再発を評価 RENOVE試験は、フランスの47病院で行われた。急性症候性VTE(肺塞栓症または近位深部静脈血栓症)を呈し、長期の抗凝固薬療法が適応で連続6~24ヵ月の抗凝固薬全量投与を受けた18歳以上の外来患者を適格とした。適格患者は、初発の特発性VTE、再発VTE、持続性リスク因子の存在、その他の再発リスクが高いと考えられる臨床的状態のいずれかに分類された。 被験者は、双方向ウェブ応答システムを用いた中央無作為化法により、減量投与群(アピキサバン2.5mgを1日2回またはリバーロキサバン10mgを1日1回)または全量投与群(アピキサバン5mgを1日2回またはリバーロキサバン20mgを1日1回)に、無作為に1対1の割合で割り付けられた。コンピュータ乱数生成ジェネレーターを用いたシーケンス生成法でブロックサイズの差異のバランスを取り、無作為化では試験施設、DOACの種類、抗血小板薬による層別化を行った。試験担当医師および被験者は治療割り付けを盲検化されなかった。VTEの再発、臨床的に重要な出血、全死因死亡は治療割り付けを盲検化された独立委員会によって判定された。 主要アウトカムは、治療期間中に判定された症候性VTEの再発(致死的または非致死的な肺塞栓症もしくは孤立性の近位深部静脈血栓症などを含む)であった(非劣性マージンは、ハザード比[HR]の95%信頼区間[CI]の上限が1.7、検出力90%に設定)。重要な副次アウトカムは、治療期間中に判定された重大な出血(国際血栓止血学会[ISTH]の基準に従い定義)または臨床的に重要な非重大出血、および治療期間中に判定されたVTEの再発、重大な出血または臨床的に重要な非重大出血の複合とした。主要アウトカムと最初の2つの副次アウトカムは、階層的に評価した。VTEの5年累積発生率は減量投与群2.2%、全量投与群1.8%で非劣性は認められず 2017年11月2日~2022年7月6日に2,768例が登録され、減量投与群(1,383例)または全量投与群(1,385例)に無作為化された。970例(35.0%)が女性、1,797例(65.0%)が男性で、1例(<0.1%)は性別が報告されていなかった。追跡期間中央値は37.1ヵ月(四分位範囲[IQR]:24.0~48.3)。 症候性VTEの再発は、減量投与群で19/1,383例(5年累積発生率2.2%[95%CI:1.1~3.3])、全量投与群で15/1,385例(1.8%[0.8~2.7])に報告された(補正後HR:1.32[95%CI:0.67~2.60]、絶対群間差:0.40%[95%CI:-1.05~1.85]、非劣性のp=0.23)。 重大または臨床的に重要な出血は、減量投与群で96/1,383例(5年累積発生率9.9%[95%CI:7.7~12.1])、全量投与群で154/1,385例(15.2%[12.8~17.6])に報告された(補正後HR:0.61[95%CI:0.48~0.79])。 有害事象の発現は、減量投与群で1,136/1,383例(82.1%)、全量投与群で1,150/1,385例(83.0%)に報告された。Grade3~5の重篤な有害事象の発現はそれぞれ374/1,383例(27.0%)、420/1,385例(30.3%)であった。試験期間中の死亡はそれぞれ35/1,383例(5年累積死亡率4.3%[95%CI:2.6~6.0])、54/1,385例(6.1%[4.3~8.0])であった。

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PADISガイドライン改訂で「不安」が新たな焦点に【論文から学ぶ看護の新常識】第6回

PADISガイドライン改訂で「不安」が新たな焦点に米国集中治療医学会(Society of Critical Care Medicine[SCCM])は2025年2月21日、『フォーカスアップデート版 集中治療室における成人患者の痛み、不安、不穏/鎮静、せん妄、不動、睡眠障害の予防および管理のための臨床診療ガイドライン』を公開した。本ガイドラインは、2018年に発表された『集中治療室における成人患者の痛み、不穏/鎮静、せん妄、不動、睡眠障害の予防および管理のための臨床ガイドライン』(通称PADISガイドライン)のフォーカスアップデート版であり、新たに「不安」が主要領域として追加された。フォーカスアップデート版 集中治療室における成人患者の痛み、不安、不穏/鎮静、せん妄、不動、睡眠障害の予防および管理のための臨床診療ガイドライン本ガイドラインは、2018年版『集中治療室における成人患者の痛み,不穏/鎮静,せん妄,不 動,睡眠障害の予防および管理のための臨床ガイドライン』を改訂、発展させることを目的として、成人ICU患者に関する5つの主要領域、不安(新規トピック)、不穏/鎮静、せん妄、不動、睡眠障害に焦点を当てて作成された。主な改定点は下記の通り。2018年版 PADISガイドラインの内容は()内に記載。1.ICU入室中の成人患者の不安治療にベンゾジアゼピンを使用することに関して、推奨を行うのに十分なエビデンスが存在しない。(2018年版:この領域についての推奨なし)2.ICU入室中の人工呼吸器管理下の成人患者において、浅い鎮静および/またはせん妄の軽減が最優先される場合は、プロポフォールよりもデクスメデトミジンの使用を推奨する(条件付き推奨、エビデンスの確実性:中等度)。(2018年版:人工呼吸器管理下の成人患者の鎮静には、ベンゾジアゼピンよりもプロポフォールまたはデクスメデトミジンの使用を推奨する[条件付き推奨、エビデンスの質:低い])3.ICU入室中の成人患者のせん妄治療において、通常のケアよりも抗精神病薬を使用することの是非について推奨を行うことはできない(条件付き推奨、エビデンスの確実性:低い)。(2018年版:せん妄の治療にハロペリドールまたは非定型抗精神病薬を日常的に使用しないことを推奨する [条件付き推奨、エビデンスの質:低い])4.ICU入室中の成人患者に対しては、通常のモビライゼーション/リハビリテーションよりも強化されたモビライゼーション/リハビリテーションを行うことを推奨する(条件付き推奨、エビデンスの確実性:中等度)。(2018年版:重症の成人患者に対してリハビリテーションまたはモビライゼーションを実施することを推奨する[条件付き推奨、エビデンスの質:低い])5.ICU入室中の成人患者に対しては、メラトニンを投与することを推奨する(条件付き推奨、エビデンスの確実性:低い)。(2018年版:重症の成人患者の睡眠改善に対するメラトニンの使用については、推奨を行わない[推奨なし、エビデンスの質:非常に低い])PADISガイドラインは、痛み(Pain)、鎮静(Agitation/Sedation)、せん妄(Delirium, Immobility)、睡眠障害(Sleep)の頭文字をとった名称であり、これらの症状への推奨される治療やケアなどを包括的に示したガイドラインです。今回、2018年に発表されたPADISガイドラインのフォーカスアップデート版が発表されました。今回のアップデートでは、とくに、これまでせん妄と混同されがちだった「不安」を新たに焦点化した点が大きな変化といえます。海外ではICU入室中の不安を訴える患者にベンゾジアゼピンが一般的に使用されるケースがあるようですが、明確なエビデンスはなく推奨は行われていません。ただし、入室前から慢性的に不安症状がありベンゾジアゼピンを服用している患者に対しては、継続を検討する余地があると示されました。不安の評価には、痛みの評価で使われる「Face Scale」と同様の絵を用いた「Faces Anxiety Scale」などが推奨されています。患者自身が表情のイラストを見て不安度を評価できるため、日本の医療現場でもすぐに応用できるでしょう。薬物療法はまだ確立していない部分がありそうですが、音楽療法やバーチャルリアリティ(VR)など一部の非薬理学的アプローチは推奨されており、患者さんの好みに合った音楽を流すなどの工夫は有効かもしれません。また、睡眠管理ではメラトニン投与が条件付きで推奨され、生理的な睡眠リズムの補完が重要なテーマとなっています。さらにリハビリテーションでは、早期離床だけでなく、より強化されたリハビリプログラムの導入も提案されており、ICU退室後の身体機能回復やQOL向上に寄与すると期待されています。今後のスタンダードなケア・治療の一つになる可能性があるため、興味のある方はぜひ詳しい内容にも目を通してみることをおすすめします。論文はこちらLewis K, et al. Crit Care Med. 2025;53(3):e711-e727.

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ALK陽性NSCLCへの術後アレクチニブ、日本人サブグループ解析(ALINA)/日本臨床腫瘍学会

 ALK阻害薬アレクチニブは、2024年8月28日に「ALK融合遺伝子陽性の非小細胞肺癌における術後補助療法」に対する適応追加承認を取得している。本承認は、ALK融合遺伝子陽性完全切除非小細胞肺がん(NSCLC)患者を対象に実施された国際共同第III相試験「ALINA試験」1)の結果に基づくものである。本試験の用量は、切除不能な進行・再発ALK融合遺伝子陽性NSCLCに対する承認用量(1回300mg、1日2回)の2倍量となる1回600mg、1日2回であり、日本人集団における安全性や薬物動態に関する解析が求められていた。そこで、ALINA試験の日本人集団の有効性、安全性、薬物動態について解析が行われ、堀之内 秀仁氏(国立がん研究センター中央病院)が第22回日本臨床腫瘍学会学術集会(JSMO2025)で結果を報告した。・試験デザイン:国際共同第III相非盲検無作為化比較試験・対象:未治療の切除可能なStageIB〜IIIA(UICC/AJCC第7版)のALK融合遺伝子陽性NSCLC患者・試験群(アレクチニブ群):アレクチニブ(1回600mg、1日2回、2年間または再発まで) 130例(日本人15例)・対照群(化学療法群):シスプラチン(不耐の場合はカルボプラチンに変更可能)+ペメトレキセドまたはビノレルビンまたはゲムシタビン(3週ごと4サイクルまたは再発まで) 127例(日本人20例)・評価項目:[主要評価項目]無病生存期間(DFS)[その他の評価項目]中枢神経系再発に対するDFS、全生存期間、安全性など[薬物動態解析]アレクチニブとその主要代謝物の血漿中薬物濃度 今回は日本人集団の結果が報告された。主な結果は以下のとおり。・日本人集団の患者背景は全体集団と同様であったが、病期についてStageIBの患者は含まれなかった。StageIB/II/IIIAの割合は、アレクチニブ群0%/13%/87%(全体集団:11%/36%/53%)、化学療法群0%/35%/65%(同:9%/35%/55%)であった。・DFSイベントはアレクチニブ群27%(4例)、化学療法群35%(7例)に認められた(ハザード比:0.47、95%信頼区間:0.13~1.67[全体集団では、同:0.24、0.13~0.43])。・アレクチニブとその主要代謝物の薬物動態パラメータ(Tmax、Cmax、AUC0-8h)について、ALINA試験の日本人集団とALEX試験(切除不能な進行・再発ALK融合遺伝子陽性NSCLC患者を対象とした海外第III相試験)の非日本人集団を比較した結果、いずれも両集団に有意差はみられなかった。・アレクチニブとその主要代謝物のトラフ濃度について、ALINA試験の日本人集団と非日本人集団を比較した結果、両集団に有意差はみられなかった。・日本人集団の安全性の結果は、全体集団と同様であった。日本人集団の全例に少なくとも1件の有害事象が認められたが、その多くはGrade1~2であった。Grade3~4の有害事象はアレクチニブ群33%(5/15例)、化学療法群40%(8/20例)に認められた。・投与中止に至った有害事象は、化学療法群が10%(2/20例)に発現したが、アレクチニブ群は0例であった。ただし、日本人集団ではアレクチニブ群の有害事象による減量が53%(8/15例)と高率であり(全体集団は26%[33/128例])、用量強度(dose intensity)中央値は日本人集団では75%であった(全体集団は99%)。減量に至った有害事象の内訳はCPK増加(2例)、ALT増加、AST増加、血中ビリルビン増加、便秘、湿疹、倦怠感、筋骨格硬直、斑状丘疹状皮疹(各1例)であった。 本結果について、堀之内氏は「日本人患者に対してアレクチニブを1回600mg、1日2回投与した結果、薬物動態パラメータは非日本人集団と同様であった。DFSについて、全体集団と同様に日本人集団でもアレクチニブ群が良好な傾向にあった。日本人患者に対するアレクチニブ1回600mg、1日2回投与は忍容性が良好であり、新たな安全性に関する懸念は認められなかった。日本人集団の安全性のデータは、全体集団と同様であった」とまとめた。本試験の日本人集団でアレクチニブの減量が多かったことについて、「日本では1回300mg、1日2回の用量での使用に慣れていることから、有害事象が発現した際に減量に至りやすかったのではないかと考えている」と考察した。 本発表後に実施されたプレスリリースセッションでは、有害事象発現時の対応について、堀之内氏は「海外では減量ではなく中断して再開することで、有害事象の管理が可能である場合も存在することが知られており、本試験でも全体集団では減量の前にまず中断して経過をみられている事例が報告されている。有害事象発現時には、まずは中断し、それでも管理が難しい場合に減量とするのが良いのではないか」と考えを述べた。

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長年にわたるヨーグルト摂取は大腸がんリスクを低下させる?

 長年にわたるヨーグルトの摂取は、特定のタイプの大腸がんの発症リスクを低下させる可能性のあることが、米ハーバード大学T.H.チャン公衆衛生大学院および米ブリガム・アンド・ウイメンズ病院の鵜飼知嵩氏らによる研究で明らかになった。長年にわたりヨーグルトを週に2回以上摂取している人では、腫瘍組織内にビフィズス菌が検出されるビフィズス菌陽性の大腸がんの発症リスクが20%低いことが示されたという。この研究結果は、「Gut Microbes」に2月12日掲載された。 人体のマイクロバイオーム(微生物叢)に焦点を当てた新たな研究では、ヨーグルトに含まれる生きた細菌の摂取が健康に有益な可能性のあることが示唆されている。鵜飼氏らは今回、ヨーグルトには一般的にビフィズス菌が含まれていることから、長期間のヨーグルト摂取が、組織中のビフィズス菌の量に応じて、腫瘍のタイプごとに大腸がんの発生と異なる関連を示す可能性があるとの仮説を立て、検討した。対象は、1976年に30〜55歳の女性看護師を登録して開始されたNurses’ Health Study(NHS)と1986年に40〜75歳の男性医療従事者を登録して開始されたHealth Professionals Follow-up Study(HPFS)から抽出した13万2,056人であった。対象者は、2016年1月1日まで追跡された。 こうした研究背景について、論文の共同責任著者の1人であるハーバード大学T.H.チャン公衆衛生大学院およびブリガム・アンド・ウイメンズ病院の荻野周史氏は、「われわれは、長期にわたる食生活やその他の要因が人体の組織に与える影響、例えば、特定の細菌種の有無により組織にもたらされる影響に違いがあるのかなどを調べている。このような探索的なアプローチにより、食事と健康アウトカムとの関連を示すエビデンスの信頼性を高めることができる」と述べている。 追跡期間中に3,079人が大腸がんを発症していた。このうち、腫瘍組織中のビフィズス菌量についての情報が完備したのは1,121人で、うち346人(31%)はビフィズス菌陽性、775人(69%)はビフィズス菌陰性だった。解析の結果、大腸がんのリスクとヨーグルトの摂取量との間に統計学的に有意な関連は認められなかったものの、週に2回以上ヨーグルトを摂取する人では、1カ月の摂取頻度が1回未満の人に比べてビフィズス菌陽性の大腸がんリスクが20%低下する可能性が示唆された(調整ハザード比0.80、95%信頼区間0.50〜1.28)。一方、ビフィズス菌陰性の大腸がんリスクについては、明確な低下は認められなかった(同1.09、0.81〜1.46)。このようながんのタイプによる関連の違いは、近位大腸がん(盲腸、上行結腸、横行結腸)においても確認された。過去の研究では、右側に発生する近位大腸がんでは、左側に発生するがんより予後が悪いことが示唆されている。 荻野氏は、「われわれの研究は、ヨーグルトが特定のがんに対して潜在的に有益な可能性を示す独自のエビデンスを提供している」と述べている。また、鵜飼氏は、「ヨーグルトやその他の発酵乳製品は、長い間、胃腸の健康に有益だと考えられてきた。本研究結果は、この予防効果がビフィズス菌陽性大腸がんに特有のものである可能性を示唆している」との見方を示している。

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歯周病治療で糖尿病患者における人工透析リスクが低下か

 歯周病を治療している糖尿病患者では、人工透析に移行するリスクが32~44%低いことが明らかになった。東北大学大学院歯学研究科歯学イノベーションリエゾンセンターの草間太郎氏、同センターの竹内研時氏らの研究によるもので、詳細は「Journal of Clinical Periodontology」に1月5日掲載された。 慢性腎臓病は糖尿病の重大な合併症の一つであり、進行した場合、死亡リスクも高まり人工透析や腎移植といった高額な介入が必要となる。したがって、患者の疾病負荷と医療経済の両方の観点から、慢性腎臓病を進行させるリスク因子の同定が待たれている。 歯周病は糖尿病の合併症であるだけでなく、糖尿病自体の発症やその他の合併症の要因でもあることが示唆されている。また、歯周病と腎機能低下との関連を示唆する報告もされていることから、研究グループは糖尿病患者における定期的な歯周病ケアが腎機能低下のリスクを軽減または進行を遅らせる可能性を想定し、大規模な糖尿病患者のデータを追跡した。具体的には、歯周病治療を伴う歯科受診を曝露変数として、人工透析に移行するリスクを後ろ向きに検討した。 本研究では、40~74歳までの2型糖尿病患者9万9,273人の医療受診データ、特定健診データが用いられた。2016年1月1日~2022年2月28日までの期間に、2型糖尿病を主傷病としていた患者を登録した。 9万9,273人の参加者(平均年齢は54.4±7.8歳、男性71.9%)における人工透析の発生率は1,000人あたり1年間で0.92人だった。交絡因子については、年齢、性別、被保険者の種類、チャールソン併存疾患指数、糖尿病の治療状況(外来の頻度、経口糖尿病治療薬の種類、インスリン製剤使用の有無、治療期間)、健診結果(高血圧、高脂血症、蛋白尿、HbA1c)、喫煙・飲酒といった生活習慣などが共変量として調整された。 交絡因子を調整後、人工透析開始のハザード比(HR)を分析した結果、歯科受診をしていなかった患者と比較して、1年に1回以上歯周病治療を受けている患者で32%(HR 0.68〔95%信頼区間0.51~0.91〕、P<0.05)、半年に1回以上治療を受けている患者で44%(同0.56〔0.41~0.77〕、P<0.001)、人工透析開始のリスクが低いことが示された。 研究グループは本研究の結果について、「これらの結果は、糖尿病性の腎疾患の進行を緩和し、患者の転帰を改善するためには、糖尿病治療に日常的な歯周病治療を組み込むことが重要であることを示唆している。また糖尿病患者の管理における専門医と歯科の連携欠如は以前より報告されており、本研究でも患者の半数以上が歯周病ケアを受けていなかった。今後、糖尿病患者の健康を維持するためには、専門医と歯科のさらなる連携が必要と考える」と総括した。なお、本研究の限界について、登録データは企業が提供する雇用保険に加入する個人のみが含まれていたことから、研究の参加者は日本人全体の特徴を表していない点などを挙げている。

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「nanacoギフト」交換レート変更のお知らせ

このたび、ケアネットポイントの交換先である「nanacoギフト」につきまして、2025年4月1日(火)11:00より、交換レートを以下のとおり変更いたします。【変更前】 3月31日(月)13:59まで100pt=100円分【変更後】 4月1日(火)11:00より100pt=95円分※2025年3月31日(月)13:59までにお申し込みいただいた分は、現行のレート(100pt=100円分)で交換いたします。※2025年3月31日(月)14:00~4月1日(火)11:00 に、ポイント交換システムのメンテナンスを実施いたします。状況により、メンテナンスの時間帯は前後する場合がございます。ご利用中の皆さまにはご不便をおかけしますが、何卒ご理解賜りますようお願い申し上げます。ケアネットポイントの交換はこちらよりお手続きください。https://point.carenet.com/exchange※ログインが必要です

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介護が必要となった主な原因(男女別)

介護が必要となった主な原因(男女別)視覚・聴覚障害1.1%呼吸器疾患3.4%視覚・聴覚障害 1.0%呼吸器疾患 1.3%脊髄損傷 1.6%その他11.4%脳卒中25.2%脊髄損傷3.4%男性がん3.9%認知症13.7%パーキンソン病5.4%n=3万4,777人パーキンソン病2.5%女性骨折・転倒17.8%脳卒中11.2%関節疾患12.7%高齢による衰弱8.7%骨折・転倒6.6%認知症18.1%がん 2.1%心臓病4.4%糖尿病5.2%関節疾患 心臓病5.4% 6.5%その他10.0%糖尿病 1.7%高齢による衰弱15.6%n=6万5,223人厚生労働省「2022(令和4)年国民生活基礎調査」第023表「介護を要する者数、介護が必要となった主な原因・通院の有無・性・年齢階級別」を基に作成Copyright © 2025 CareNet,Inc. All rights reserved.

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オーバードーズ対応マニュアルで薬剤師がゲートキーパーに!? 【早耳うさこの薬局がざわつくニュース】第147回

若年者が市販薬を過量服用する「オーバードーズ」が依然として社会問題になっています。市販薬の乱用は昔からあった問題ですが、近年はとくにSNSなどで商品名や方法・体験談が流布され、若年者が軽い気持ちで市販薬の乱用に陥りやすい状況になりました。オーバードーズを繰り返す若年者たちの一部は、万引きによって市販薬を調達していることも確認されており、数ヵ月前には警察から販売時の注意や通報などの協力依頼がありました。薬剤師も薬を扱う専門家として、積極的に関わらなければいけない問題です。しかし、あの手この手で入手しようとしてくるなか、「じゃあ、どうすれば…」という薬剤師も少なくないのではないでしょうか。厚生労働省は2025年2月20日に市販薬の乱用防止を目的とした対応マニュアル「ゲートキーパーとしての薬剤師等の対応マニュアル―OTC医薬品を販売する薬剤師・登録販売者、及び学校薬剤師向け―」を公開しました。なかなかグッとくる題名です。オーバードーズに対する薬局での対応を、(1)気付く、(2)関わる、(3)つなぐ、(4)見守る、という4フェーズに分け、それぞれの対応について記載しています。どこにどういう風に相談するのかということも記載されており、大変実践的です。私が今回のマニュアルで勉強になった3点を紹介します。気付いたらどうする?気付いたら販売しない、という判断がすぐにきっぱりとできればよいのですが、なかなかできない場合もあります。そういう場合は、販売するとしても声掛けをしたり、リーフレットを渡したりするなどの対応フローや声掛けの具体例も記載されています。声掛けの例としては、その状況により「今までも複数購入いただいていましたか?」「眠れていますか?」という確認するものから、「これまでつらかったですね」「頑張ってきた自分自身に優しくしてあげてくださいね」という寄り添うもの、「相談できる医療機関や相談窓口はいくつかありますよ」という相談先を提案するものまでさまざまなものが記載されています。ゲートキーパーは1人で支援することではない薬剤師や登録販売者がゲートキーパーになることを期待されてはいるのですが、緊急時には身を守ることが第一ということも記載されています。また共感疲労に陥らないことも重要と注意されています。そのような場に遭遇したときはドキドキしますし、ベストな行動がとれるかどうかわかりません。後でもっとこうすればよかったと思うかもしれません。店舗内や地域でコミュニケーションをとって仲間を増やしながら、抱え込むことなく販売者自身の心身のケアをすることも大事です。日常が大事販売現場における見守りとして、「さりげないコミュニケーションを販売者側からとるスタンスが重要」とし、来店時のあいさつや購入時の「お大事に」などの一言を付け足すことも見守りにつながるとされています。困ったときに相談できる存在を知ることが当事者にとって大きな助けになるからです。これは簡単に始められそうですね。また日常的に購入者の様子をよく観察し、店舗内で共有し合うことが気付きの第一歩ともされています。高校生全体の1.6%が過去1年以内にオーバードーズの経験があると推計されています。高校生の約60人に1人、つまり2クラスに1人くらいの割合です。軽い気持ちで始めただけなのに抜け出せなくなる、次の依存物質に手を出す…などさまざまな社会問題になる可能性もあります。厚生労働省のホームページには、「薬局等の薬剤師・登録販売者の皆さまは、乱用に対する知識を深め、適切な対応を行うことにより、乱用を防止し、乱用に苦しむ方を救うゲートキーパーとなってください」とあります。薬剤師や登録販売者がゲートキーパーとしての役割を果たすために、まずはあいさつから始めてみてもよいかもしれません。

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腎細胞がんへのbelzutifan、安全性プロファイルとその管理戦略(LITESPARK統合解析)/日本臨床腫瘍学会

 belzutifanはHIF-2α阻害薬として米国で初めて承認された薬剤であり、日本でも承認申請中である。独自の作用機序を有し、貧血および低酸素症を含む特有の有害事象(AE)プロファイルを示すことが明らかになっている。腎細胞がん患者を対象にbelzutifanの安全性プロファイルを評価することを目的として、4つの臨床試験の事後統合解析が実施され、米国・テキサス大学MDアンダーソンがんセンターのEric Jonasch氏が結果を第22回日本臨床腫瘍学会学術集会(JSMO2025)で発表した。 本解析は、既治療の進行淡明細胞型腎細胞がん(RCC)患者を対象とした第I相LITESPARK-001試験、第II相LITESPARK-013試験、第III相LITESPARK-005試験、およびフォン・ヒッペル・リンドウ(VHL)病関連腫瘍患者を対象とした第II相LITESPARK-004試験から、belzutifan 120mgの1日1回経口投与を受けたRCC患者を対象に実施された。 主な結果は以下のとおり。・対象となった患者は計576例で、各試験の内訳はLITESPARK-001が58例、LITESPARK-013が76例、LITESPARK-005が381例、LITESPARK-004が61例であった。・ベースラインの患者特性は年齢中央値が61歳(範囲:19~90)、男性が76.7%、ECOG PS 0~1が98.3%を占めた。西欧39.2%/北米38.4%/日本を含むその他の地域からの参加 が22.4%であった。・全体として、572例(99.3%)に何らかのAEが認められ、355例(61.6%)にGrade3以上のAEが発現した。・288例(50.0%)でAEによる用量調整が必要となったが、AEによる治療中止は37例(6.4%)にとどまった。・最も多く認められたAEは貧血(ヘモグロビン低下を含む、84.2%)で、疲労(42.7%)、悪心(24.1%)、呼吸困難(21.4%)が続いた。・多く認められたGrade3以上のAEは貧血(28.8%)、低酸素症(12.2%)であった。・主なAEの初回発現時期中央値(範囲)は、貧血が29日(1~834)、低酸素症が31日(1~952)、疲労が42日(1~1,017)、悪心が43日(1~1,346)、呼吸困難が57日(1~911)であった。・貧血を認めた485例のうち、111例(22.9%)は赤血球造血刺激因子製剤(ESA)のみ、85例(17.5%)は輸血のみ、62例(12.8%)はESAと輸血で治療された。患者当たりのESA投与回数の中央値は5回、輸血回数の中央値は2回であった。回復までの期間中央値は70日であった。・低酸素症を認めた94例のうち、66例(70.2%)が酸素療法を受けていた。酸素吸入の期間中央値は9日、回復までの期間中央値は11日であった。・治療関連有害事象(TRAE)は526例(91.3%)に認められ、Grade3以上は217例(37.7%)で発現した。Grade5のTRAEとして、多臓器不全が1例報告されている。 Jonasch氏は今回の結果について、有害事象は比較的早期に発現し、初回発現時期の中央値は治療開始から3ヵ月以内であったとし、想定されたとおり貧血と低酸素症が多くみられ、用量調整およびESA/輸血(貧血)・酸素療法(低酸素症)により管理されたとまとめている。

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楽観的な人ほど貯蓄額が多い?

 物事の明るい面を見ることは、気持ちを前向きにさせるだけでなく貯蓄にも役立つ可能性のあることが新たな研究で示唆された。米コロラド大学ボルダー校のJoe Gladstone氏と米ニューハンプシャー大学のJustin Pomerance氏らによる研究で、楽観性が高い人ほど貯蓄額が多い傾向があり、この傾向は特に低所得者層で顕著であることが示唆された。この研究結果は、「Journal of Personality and Social Psychology」1月号に掲載された。 Gladstone氏は、「楽観主義は、それをかけると全てが素晴らしく見えてしまう『バラ色のメガネ』であり、将来のための貯蓄を減らす原因になる可能性があると考えられがちだ。しかし、本研究では、特に経済的困難に直面しているときには、楽観主義が貯蓄に役立つ重要な心理的資源である可能性が示唆された」と話している。 この研究でPomerance氏らは、米国、英国、およびヨーロッパ14カ国で実施された8件の調査(参加者の総計14万3,461人)のデータを用いて、楽観主義(素質的楽観主義)と貯蓄行動との関連を検討した。いずれの調査でも、「将来について常に楽観視している」や「全体的に悪いことよりも良いことの方が多く起こると思っている」などの質問を通して調査参加者の楽観主義が評価されていた。8件の調査のうち、3件はある時点でのみ調査を行う横断調査であり、残りの5件は同じ参加者を追跡して複数回の調査を行う縦断調査であった。 その結果、楽観性の高い参加者ほど、概して貯蓄額も多いことが明らかになった。例えば、貯蓄額の中央値が8,000ドル(1ドル152円換算で121万6,000円)の世帯の場合、楽観性の1標準偏差増加は貯蓄の1,352ドル(約20万5,500円)の増加と関連することが示された。この結果は、年齢、性別、交際状況、子どもの有無、小児期の社会経済的状況、健康状態、雇用状況、および「ビッグファイブ(開放性、誠実性、外向性、協調性、神経症傾向)」など、貯蓄と楽観主義の両方に影響を与える可能性がある因子を調整した後も変わらなかった。 さらに、楽観主義が貯蓄行動に与える影響は、低所得者層で最も強いことも明らかになった。この結果についてGladstone氏は、「毎月の給料を使い切るような生活をしている人は、貯蓄に意味を見出せないかもしれない。しかし、楽観的な見通しがあれば、たとえ今、大変な状況に置かれていても、貯蓄しようという動機が生まれる可能性はある」と述べている。 研究グループは、「本研究結果は、特に低所得者層の貯蓄を増やすことを目的とした金融教育プログラムや政策に影響を与える可能性がある。従来の金融リテラシー訓練に楽観主義を育む手法を組み合わせることで、貯蓄行動を促す効果を高められる可能性がある」との見方を示している。Gladstone氏は、「最終的には、将来に対する希望と貯蓄を賢く管理するスキルを組み合わせることが、より多くの人々が経済的安定を築くための鍵となるかもしれない」と米国心理学会(APA)のニュースリリースで述べている。

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線形回帰(重回帰)分析 その3【「実践的」臨床研究入門】第52回

重回帰分析の考え方前回解説したのは、線形回帰のうち、1つの目的変数に対して1つの説明変数を用いる「単回帰」分析でした。今回からは、複数の説明変数を扱うことができる「重回帰分析」について説明します。重回帰式は、ある目的変数が複数の説明変数によってどのように影響されているかを数式で示したものです。重回帰式は下記のような数式で示され、目的変数yが切片aと複数の説明変数xiのそれぞれの回帰係数biの項の総和と残差eで表されます(連載第51回参照)。y=a+b1x1+b2x2+…+bixi+e「重回帰分析」の目的変数は連続変数に限定されますが(連載第49回参照)、説明変数は連続変数以外のカテゴリ変数、たとえば2値変数も適用可能です。ここで、残差eについて簡単に説明します。上記の重回帰式をeを左辺にして変形すると、以下のようになります。e=y-(a+b1x1+b2x2+…+bixi)残差eとは上記の式のとおり、実際に観察された目的変数yと重回帰モデルで予測された値(a+b1x1+b2x2+…+bixi)の差分として定義されます。残差が小さいほど重回帰モデルのデータへの適合度が高いことを示しています。また、「残差の正規性(残差が正規分布していること)」が「重回帰分析」の前提条件になります。それでは、われわれのResearch Question(RQ)を重回帰式に当てはめて考えてみましょう(連載第49回参照)。ここでは、「低たんぱく食の遵守」が、連続変数である糸球体濾過量(GFR)の低下速度に影響を与えているかどうかを検証します。検証したい要因(E)である「低たんぱく食の遵守」と、アウトカム(O)である「GFR低下速度」の関連を歪める可能性のある交絡因子として、以下の要因を挙げ、重回帰分析による調整を試みます。年齢、性別、糖尿病の有無、血圧、ベースラインeGFR、蛋白尿定量、血清アルブミン値、ヘモグロビン値Oである「GFR低下速度」を重回帰式によって表すと、下記のようになります。「GFR低下速度」=a+b1「低たんぱく食の遵守」+b2「年齢」+b3「性別」+b4「糖尿病の有無」+b5「血圧」+b6「ベースラインeGFR」+b7「蛋白尿定量」+b8「血清アルブミン値」+b9「ヘモグロビン値」+eすなわち、目的変数yである「GFR低下速度」は、切片aと主たる要因である「低たんぱく食の遵守」と以下の交絡因子(「年齢」、「性別」、「糖尿病の有無」、「血圧」、「ベースラインeGFR」、「蛋白尿定量」、「血清アルブミン値」、「ヘモグロビン値」)とそれぞれの回帰係数の項と残差eの総和で表されます。ここで必要な仮定が「重回帰分析」における線形性の前提です。重回帰モデルでは、上述の式で表したように説明変数と目的変数の間に直線的な関係があると仮定します。つまり、説明変数が 1 単位変化すると、目的変数が常に一定の割合で増減するということです。この線形性の前提は、前述の「残差の正規性」を確認することで検証できます。「重回帰分析」を用いた多変量解析結果の解釈について、われわれの RQ を適用した重回帰式を用いて具体的に説明します。O である「GFR低下速度」が、検証したい E である「低たんぱく食の遵守」のあり・なしでどの程度違うのかを考えてみます。「低たんぱく食の遵守」あり、の場合は下記の式で示したとおり、その回帰係数b1の項は残ります。「GFR低下速度」=a+b1「低たんぱく食の遵守の程度(あり=1)」+b2「年齢」+b3「性別」+b4「糖尿病の有無」+b5「血圧」+b6「ベースラインeGFR」+b7「蛋白尿定量」+b8「血清アルブミン値」+b9「ヘモグロビン値」+e一方、「低たんぱく食の遵守」なし、の場合は下記の式で示したように、その回帰係数b1はゼロとの積になるため、項は消えます。「GFR低下速度」=a+b1「低たんぱく食の遵守の程度(なし=0)」+b2「年齢」+b3「性別」+b4「糖尿病の有無」+b5「血圧」+b6「ベースラインeGFR」+b7「蛋白尿定量」+b8「血清アルブミン値」+b9「ヘモグロビン値」+e多変量解析を行うことにより、その他の交絡因子の影響はすべて一定に保ったうえで(他の説明変数の影響を除外して)分析ができます。したがって、他の交絡因子を調整したうえでの、「低たんぱく食の遵守」あり(なし、と比較して1単位増加)の場合の、「GFR低下速度」に与える影響は、回帰係数b1で表されるのです。

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統合失調症の認知機能改善に対するメトホルミンの有用性

 統合失調症の陰性症状に対して、メトホルミンに本当に有用性があるかは、まだ結論が出ているとはいえない。中国・The Brain Hospital of Guangxi Zhuang Autonomous RegionのZhen-Juan Qin氏らは、統合失調症患者の神経認知機能に対するメトホルミンの効果に関するランダム化比較試験(RCT)を評価するため、システマティックレビューを実施した。Frontiers in Psychiatry誌2025年1月20日号の報告。 中国のデータベース(WanFang、Chinese Journal Net)および英語のデータベース(PubMed、EMBASE、PsycINFO、Cochrane Library)より、包括的な検索を実施し、統合失調症の神経認知アウトカムに対するメトホルミンの影響を評価したRCTを特定した。 主な結果は以下のとおり。・4件のRCT、統合失調症患者271例を対象に含めた。・3件のRCT(75%)において、MATRICSコンセンサス認知機能評価バッテリー(MCCB)、神経心理検査アーバンズ(RBANS)、ミニメンタルステート検査(MMSE)による評価では、メトホルミン群は、対照群と比較し、神経認知機能の有意な改善が認められたが、統合失調症認知機能簡易評価尺度(BACS)では、有意な差が認められなかった。・2件のRCT(50%)において、メトホルミンの総合的な神経病理に対する効果が認められたが、両群間で有意な差は認められなかった。・2件のRCTにおいて、有害事象が報告されたが、食欲減退および下痢に関する結果に、一貫性は認められなかった。・その他の有害事象および治療中止率は、両群間で同程度であった。 著者らは「本検討により、メトホルミンは、統合失調症の神経認知機能を改善する可能性が示唆された。ただし、これらの結果を検証するためには、さらに大規模かつ二重盲検による高品質のRCTが必要とされる」と結論付けている。

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抗PD-L1抗体薬、GLP-1薬などに重大な副作用追加/厚労省

 2025年3月5日、厚生労働省より添付文書の改訂指示が発出され、該当医薬品の副作用の項などに追記がなされる。 対象医薬品は以下のとおり。抗PD-L1抗体薬アテゾリズマブ(商品名:テセントリク)アベルマブ(同:バベンチオ)セミプリマブ(同:リブタヨ)<重大な副作用>免疫性血小板減少症免疫性血小板減少症関連症例を評価した結果、アテゾリズマブ、アベルマブにおいて、免疫性血小板減少症との因果関係が否定できない症例が集積した。また、セミプリマブにおいては、現時点では因果関係の否定できない症例の集積はないものの、海外添付文書の記載状況等を考慮し、それぞれの使用上の注意を改訂することが適切と判断された。持続性GLP-1受容体作動薬デュラグルチド(商品名:トルリシティ)<重大な副作用>肝機能障害肝機能障害関連の症例等を評価した結果、本剤と肝機能障害関連事象との因果関係が否定できない症例が集積した。BRAF阻害薬ダブラフェニブ(商品名:タフィンラー)MEK阻害薬トラメチニブ(同:メキニスト)<重大な副作用>好中球減少症、白血球減少症現行、「11.副作用」の「11.2その他の副作用」の項で好中球減少症、白血球減少症を注意喚起しているが、好中球減少症および白血球減少症関連症例を改めて評価した。その結果、ダブラフェニブメシル酸塩およびトラメチニブ ジメチルスルホキシド付加物と好中球減少症および白血球減少症との因果関係が否定できない重篤症例が集積した。そのため、重要な基本的注意の項にも「好中球減少症、白血球減少症があらわれることがあるので、本剤投与中は定期的に血液検査を実施するなど観察を十分に行うこと」と追記される。

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