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4週ごとのFGF21アナログ製剤efimosfermin alfa皮下注射24週治療はMASH(F2/F3)の活動性および線維化ステージを改善する(解説:相澤良夫氏)

 FGF21アナログ製剤はMASHの治療薬として高い期待が寄せられている。すでにefruxiferminやpegozaferminは第III相試験で良好な治療効果と安全性が確認され、MASH代償性肝硬変に対しても線維化ステージの改善効果も示されている。わが国でも最近FGF21アナログ製剤の臨床治験が申請され、開始されている。 FGF21は多様な生理作用を有し、心臓代謝性疾患の危険因子である脂質異常症や糖尿病の改善効果が示され、FGF21アナログ製剤は単にMASHを改善するだけでなくMASHに合併して、その予後に影響を及ぼす代謝異常に対しても有用性が示されている。 efimosferminはFGF21のN端にIgGのFcを強固に結合し、さらに蛋白分解酵素の作用点に変異を導入して安定化させることにより血中半減期を著しく延長させたアナログで、月1回(4週ごと)の皮下投与で十分な薬理効果を発揮する薬剤である。従来製剤の週1回投与に比べて煩雑さが軽減されるという利点があり、他のFGF21アナログ製剤と同等以上のMASH治療効果を発揮する可能性がある。副作用は従来のFGF21アナログ製剤と同等で軽度から中等度の消化器症状が主体であり、安全性、忍容性が高い。 今回の第II相試験は短期間で症例数が少なく、より長期の安全性や代償性肝硬変に対する治療効果は確認されていない。efimosferminはefruxiferminなどの先行FGF21アナログ製剤に臨床試験で後れを取っているものの、注射回数が少なくて済み、先行薬よりも強力な治療効果を発揮する可能性がある薬剤と思われる。今後の臨床試験結果が大いに期待される。

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アナフィラキシー補助治療薬、2つの選択肢

アナフィラキシー発現時の補助治療薬、2つの選択肢投与経路用量設定有効性アドレナリン点鼻液(商品名:ネフィー)アドレナリン自己注射製剤(商品名:エピペン)経鼻投与筋肉内注射(太もも前外側)・1mg:体重15〜30kg未満・0.15mg:体重15〜30kg未満・2mg:体重30kg以上(成人含む)・0.3mg :体重30kg以上(成人含む)・試験において、全患者が1回投与で初期症状を改善・改善までの時間(中央値)は16分・アナフィラキシー時の循環動態を改善し、入院リスクを減少・改善までの時間は約10分主な利点針がない、携帯しやすいアナフィラキシー治療の第1選択薬として、使用実績が豊富特徴的な副作用咳嗽、鼻粘膜紅斑、鼻部不快感、口の感覚鈍麻など動悸、頭痛、めまい、不安、注射部位疼痛など使用上の注意・鼻茸、鼻骨折や鼻損傷の既往歴、鼻の手術歴等を有する患者では、本剤の吸収が十分ではない可能性・点鼻後には必ず医療機関を受診することその他臨床データが不足している(⾷物経口負荷試験[OFC]データのみ)・手指への誤注射に注意が必要・注射後には必ず医療機関を受診すること長年の歴史と臨床上の使用経験データが豊富監修:海老澤 元宏氏(国立病院機構相模原病院臨床研究センター センター長)参考:ネフィー、エピペン各添付文書、Ebisawa M, et al. J Allergy Clin Immunol Pract. 2025;13:2787-2794.Copyright © 2026 CareNet,Inc. All rights reserved.

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第309回 臨床医が扱い慣れたGLP-1薬なら依存症治療の敷居を低くできそう

セマグルチドやチルゼパチドなどのGLP-1受容体作動薬(以下、GLP-1薬)の使用が、アルコールやその他の薬物乱用を生じ難くするらしいことを示す大規模観察試験結果がまた1つ報告されました1-4)。BMJ誌に今回報告されたのは、米国の2型糖尿病の退役軍人の解析結果です。言わずもがなGLP-1薬は膵臓の受容体に働いてインスリン分泌を促します。しかしそれだけでなく、脳でも作用することが知られ、薬物乱用やアルコール依存を促す脳の報酬回路へのGLP-1薬の働きが盛んに検討されています4)。試験ではそのように脳でも働くGLP-1薬か、腎臓でもっぱら働くエンパグリフロジンなどのSGLT2阻害薬を使い始めた60万例超の経過が調べられました。3年間追跡したところ、薬物依存症の既往がない人のGLP-1薬使用は大麻、アルコール、コカイン、ニコチン、オピオイドの依存症の発生率がSGLT2阻害薬使用に比べて14%低いことと関連しました。すでに依存症の人の薬物乱用と関連した救急科受診、入院、オーバードーズの割合の比較でもGLP-1薬使用に分があり、SGLT2阻害薬に比べてそれぞれ約30%、25%、40%低いことが示されました。薬物乱用と関連する死亡や自殺念慮/自殺企図もGLP-1薬使用群がより少なく、SGLT2阻害薬群に比べてそれぞれ50%と25%低い割合で済んでいました。依存症へのGLP-1薬の効果は無作為化試験でも示されつつあります。昨年2月にはアルコール依存患者の飲酒量を減らすセマグルチド週1回注射の効果を裏付けた無作為化試験が報告されています5)。進行中の試験もあり、GLP-1薬の類いのmazdutideのアルコール依存治療を調べているプラセボ対照無作為化第II相試験がLillyの手によって実施されています。結果は今夏8月に判明するようです6)。セマグルチドの別の無作為化試験も米国立薬物乱用研究所(NIDA)医師のLorenzo Leggio氏の主導で進行中です7)。Leggio氏は、たいていが治療されないままのアルコール依存症の治療にGLP-1薬の類いが光明をもたらしうると考えています4)。日本もおよそ似たような状況と思われますが、Leggio氏によるとアルコール依存症患者のほぼ全員の98%は米国で承認されているアルコール依存治療薬を手にしていません。その原因の一端は臨床医のほとんどが依存症治療薬に精通していないことにあるとLeggio氏は言っています。アルコール依存症とは対照的に、糖尿病患者のほとんどの85%超は米国で承認された治療を受けており、臨床医はGLP-1薬を含む糖尿病薬の扱いに手慣れています。GLP-1薬が誰にでも効くというわけにはいかないでしょうが、もし効果の裏付けが済んでGLP-1薬による依存症治療が承認されたら専門医限定という垣根を超えて普及するだろうとLeggio氏は示唆しています。それに、糖尿病治療として社会的により受け入れられているGLP-1薬なら依存症の薬物治療への偏見も減らせるかもしれません4)。米国などでは承認されているnaltrexoneなどのめぼしい依存症治療薬が未承認の日本では、あくまでも有効性が確立して承認されればの話ですが、臨床医が扱いに慣れたGLP-1薬による依存症治療はとくに重宝されそうです。参考1)Cai M, et al. BMJ. 2026;392:e086886.2)GLP-1 diabetes drugs linked to reduced risk of addiction and substance-related death / Eurekalert3)GLP-1 medications get at the heart of addiction: study / Eurekalert4)GLP-1 drugs linked to lower addiction rates in large study of veterans / Science5)Hendershot CS, et al. JAMA Psychiatry. 2025;82:395-405.6)ClinicalTrials.gov(NCT06817356)7)ClinicalTrials.gov(STAR)

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胃がんリスク因子の年齢別解析、ピロリ感染と喫煙が高齢で増加

 胃がんは依然として世界的ながん死亡の主要な原因の1つであり、その発症には感染、生活習慣、遺伝など複数の要因が関与する。中国の病院を対象とした後ろ向き研究により、胃がん患者におけるリスク因子の分布が年齢層によって異なる可能性が示された。Frontiers in Oncology誌2026年1月22日号掲載の報告。 本研究では、中国南部の複数の3次医療機関で診断された胃がん患者903例を対象とし、アンケート調査により生活習慣や臨床背景に関する情報を収集した。解析対象は、18~30歳(50例)、31~55歳(163例)、56歳以上(690例)の3つの年齢群に分類された。評価項目には、Helicobacter pylori(H. pylori)感染、喫煙歴、肥満、萎縮性胃炎、食習慣、既往歴、胃がん家族歴などが含まれた。 主な結果は以下のとおり。・年齢群によってリスク因子の分布に明確な違いが認められた。H. pyloriの感染率と喫煙率は年齢とともに有意に増加した。・燻製・焼いた食品の摂取は、とくに高齢者において胃がんリスクと有意な関連を示した(オッズ比[OR]:2.05、95%信頼区間[CI]:1.29~3.27、p=0.002)。肥満および果物・野菜の摂取量不足は統計的に有意な関連を示さなかった。・高齢群では、H. pylori感染、喫煙、燻製・焼いた食品の摂取といった環境要因への長期曝露が多く、これらが累積的に胃がん発症リスクを高めている可能性が示唆された。・一方、若年患者ではこれらの生活習慣関連因子の影響は比較的小さく、相対的に家族歴やその他の要因が重要となる可能性が示された。 研究者らは、本研究の臨床的意義として、年齢層に応じた予防介入の必要性を挙げている。具体的には、高齢者ではH. pylori感染検査と除菌プログラム、若年~中年期ではH. pylori除菌、禁煙指導、食習慣の改善などを実施することで、将来的な胃がん発症リスクの低減につながる可能性があるとした。

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第303回 診療報酬改定プラス分は相殺?イラン情勢が及ぼす病院の電気代を試算

INDEXイラン情勢が日本に及ぼす影響ホルムズ海峡封鎖による電力価格への影響診療報酬改定「プラス分」は相殺?イラン情勢が日本に及ぼす影響いやはや、厄介な事態になったと思っている。米国とイスラエルによるイラン攻撃のことである。私は出張先で夕刻、一報に接した。米国のトランプ大統領は攻撃開始翌日の2026年3月1日、「戦闘は約4週間続く可能性がある」と述べたが、わずか1日後の2日にホワイトハウスで行った演説では「当初は4〜5週間と見込んでいたが、必要ならはるかに長く続ける能力がある」と“軌道修正”した。開戦当初はイランの核開発の断念とともに体制転換を示唆し、同国の最高指導者であるアリー・ハメネイ師を空爆で殺害までしたものの、最近ではイラン海軍や弾道ミサイル能力の破壊を公言するなど、その目的・目標も揺れ動いている。朝令暮改はもはやトランプ大統領の十八番だが、そもそも国土面積が日本の4倍以上の世界第17位、国軍・約60万人に加えもう1つの軍事組織であるイスラム革命防衛隊・約12万人を有するイランは、米国・イスラエルと比べれば軍事力は劣るが、それはあくまでスペック上でのこと。米国・イスラエル両国とも全兵力をイランに割けるわけではないので、体制転換が少しでも念頭にあるならば長期化は避けられない。そうなると日本での日常生活はもちろん、医療にも影響を及ぼすことは必至といえる。ホルムズ海峡封鎖による電力価格への影響実際、イランのイスラム革命防衛隊が世界のLNG(Liquefied Natural Gas、液化天然ガス)の約2割が通過するホルムズ海峡の封鎖を宣言。さらに、カタールにあるLNG生産施設がイランのドローン攻撃を受けて生産を一時停止し、アジア向けのLNG価格は約40%上昇したと報じられた。一番影響が及びそうなのは、エネルギー関連である光熱水費、とくにどの医療機関でもなくてはならない電気の料金である。なんとなく電気料金の伝票を眺めている人も少なくないと思うので、あらためて解説すると、日本の電気料金の構造は、基本料金+電力量料金+燃料費調整額+再生可能エネルギー発電促進賦課金の4つの合計となっている。このうち、「燃料費調整額」は電力会社の発電燃料として使われるLNG、石炭、原油の輸入価格の変動を電気料金に反映させる制度として1996年に導入された。要は短期的な世界のエネルギー需要に基づく価格が、これを通じて料金にも反映される仕組みである。この燃料費調整額の計算プロセスは、直近3ヵ月の燃料輸入価格の平均値として計算する。具体的には各電力会社で発電燃料として使用されるLNG、石炭、原油の割合は違うため、各電力会社が定めた各燃料の係数をかけて平均燃料価格を算出する。そして各電力会社には、料金認可時に決められた基準燃料価格があり、計算した平均燃料価格との差額を基準係数と呼ばれる数字で割って1kWhあたりの燃料費調整額が決定する。もっとも輸入統計の確定までのタイムラグがあるため、直近の燃料費の高騰が実際の電気料金に反映されるのは約3〜5ヵ月遅れとなる。細かな計算式は省くが、LNGが発電燃料の35%、電気料金の40%が燃料費という仮定を置くと、LNG価格だけが10%上昇した場合、計算上の電気料金は約1.4%上昇するといわれている。もっともLNG価格が上がると、石炭価格の連動上昇や電力市場価格上昇、電力会社の調達コスト増などがあり、実際の電気料金上昇率は2〜4%になるのが一般的。これを前提にすると、前出のLNG価格40%上昇の場合、電気料金の支払額は8〜16%上昇する計算になる。診療報酬改定「プラス分」は相殺?これが医療機関の電気料金にどう跳ね返ってくるかだ。ここでウクライナ紛争勃発後の2022年10月に茨城県保険医協会が行った物価高騰に関するアンケート結果の中で、代表例として病院の回答(37施設)を取り上げてみる。ここでは2021年と2022年の8月請求分を比較しているが、回答施設の平均病床数や契約電力会社、料金プランが不明のため、37病院の平均電力使用量が約16万kWhをベースに試算をしてみたい。病院での電気契約は多くが業務用の高圧電気である。ここで東京電力を例にとる。同社の高圧電気プランは、燃料費調整と市場価格調整の両方を行う「ベーシックプラン」と、市場価格の変動を受けずに燃料費調整のみを適用する「市場調整ゼロプラン」がある。最新の燃料費調整額を適用すると約16万kWhの電気料金はベーシックプランで約414万円、市場調整ゼロプランで約441万円。電気料金が8〜16%上昇するならば、月当たりの電気料金は前者で約33〜66万円、後者で35〜70万円、それぞれ上昇することになる。さて、先ほどの茨城県保険医協会の回答病院の平均病床数はわからないものの、一般的に保険医協会に加盟する病院は100〜200床の病院が多い。また、その病床稼働率は70〜80%が最も多いとされる。仮に200床で病床稼働率を中央値の75%とすると、稼働病床は150床。先日、厚生労働省の中央社会保険医療協議会は、2026年度報酬改定において、入院時生活療養(I)・(II)のうち、光熱水費用の1日当たりの金額を60円引き上げると答申した。仮にそうだとしたら26年春以降は光熱水費分が月当たり27万円引き上がることになるが、LNG価格が40%上昇した場合は完全に足が出る計算である。LNG価格の上昇率が30%でもほぼ赤字、20%でようやくトントンか赤字である。しかも、この先の価格上昇は不透明だ。(表)LNG価格高騰による電気料金上昇と診療報酬改定の影響(試算)画像を拡大するまた、この情勢下では原油価格も上昇するため、当然ながら病院で使用されるディスポーザブル資材なども価格上昇が予想される。そう考えると、せっかく26年改定で手当てされた物価高騰分の診療報酬引き上げも水の泡になってしまうかもしれない。

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慢性片頭痛に対する抗CGRP抗体とCGRP受容体拮抗薬併用療法の有用性は?

 カルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)をターゲットとした単独療法を受けている患者は、片頭痛症状への治療反応が遅延する場合がある。また、このような治療を受けている患者は、妥当な期間内に片頭痛症状の軽減がみられないこともある。一部の臨床医は、相乗効果を高めることを目的として、CGRP分子および受容体を標的とする低分子拮抗薬(SMA)とリガンドモノクローナル抗体(L-mAb)の併用療法を選択している。米国・ハワイ大学のHo Hyun Lee氏らは、相乗効果のあるSMAとL-mAbの併用療法を受けている患者におけるCGRP併用療法の安全性と有効性を、CGRP単独療法と比較するため、実臨床におけるレトロスペクティブレビューを実施した。Pain Physician誌2026年1月号の報告。 本研究は、米国の神経内科ケアセンター1施設におけるレトロスペクティブマッチングコホート研究として実施した。2018年5月〜2024年2月にCGRP阻害薬(L-mAb[フレマネズマブ、ガルカネズマブ、eptinezumab]、SMA[ubrogepant、リメゲパント、アトゲパント]、またはL-mAbとSMAの併用)による治療を受けた18歳以上の慢性片頭痛患者90例を対象に分析を行った。本研究では、L-mAbとSMAの併用療法を受けた27例の患者と、L-mAb単独療法またはSMA単独療法を受けた63例の患者を、年齢と性別でマッチングさせ、比較した。変数は、現在の年齢、診断時年齢、性別、ボツリヌス毒素Aの使用、頭痛の頻度、持続時間、重症度、治療前および治療後3ヵ月の関連症状とした。両治療群において有害事象が記録された。すべての仮説検定は両側検定で実施し、p値<0.05で有意と判断した。 主な結果は以下のとおり。・CGRP単独療法では頭痛の重症度が10%減少したのに対し、CGRP併用療法では20%減少した(p=0.039)。・CGRP併用療法を受けた患者では、頭痛日数が平均4日の減少(最大14日減少)が認められた。一方、CGRP単独療法を受けた患者では、頭痛日数の変化が認められなかったが、この結果に統計的に有意な差は認められなかった(p=0.112)。・その他の片頭痛関連症状については、両群間で有意な差は認められなかった。・CGRP単独療法群およびCGRP併用療法群における有害事象は軽度であり、重篤な有害事象や治療中止は報告されなかった。 著者らは、本研究の限界として、サンプルサイズが比較的小さいこと、研究デザインがレトロスペクティブであること、新規CGRP薬が使用されていないこと、交絡因子をコントロールできないこと、患者間で少数のCGRP阻害薬が主に使用されていることなどが挙げられるとしながらも「CGRP併用療法は、有意な有害事象を引き起こすことなく、頭痛の重症度を軽減することで、片頭痛の症状コントロールを強化する可能性がある」としている。しかし「これらの知見は、より大規模なサンプルサイズを用いたランダム化プラセボ対照臨床試験によって確認する必要がある」としている。

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第305回 ホスピス型住宅の最大手、アンビス運営の「医心館」に厚労省と地方厚生局が合同調査を開始、診療報酬大幅見直しで住宅型有料老人ホームは事業モデルの再編迫られる

報告書公表後、「多額の診療報酬を受けるために架空の事実をねつ造したような悪質な不正請求の事案とまでは認められない」と明言していたアンビスこんにちは。医療ジャーナリストの萬田 桃です。医師や医療機関に起こった、あるいは医師や医療機関が起こした事件や、医療現場のフシギな出来事などについて、あれやこれや書いていきたいと思います。いよいよワールド・ベースボール・クラシック(WBC)が始まりますね。日本チームのメンバーもさることながら、アーロン・ジャッジ(ヤンキース)、カイル・シュワーバー(フィリーズ)、タリク・スクーバル(タイガース)らが出場する米国チームや、ブラディミール・ゲレーロJr.(フィリーズ)、フェルナンド・タティスJr.(パドレス)らが出場するドミニカ共和国チームも相当な戦力と思われます。問題はテレビ放送がなく、Netflixに入らないと視聴できないこと。調べてみると「広告つきスタンダード」料金で1ヵ月890円です。日本―台湾戦のある金曜から入って、WBC以外の時間はまだ観ていないドラマ、『愛の不時着』『イカゲーム』『全裸監督』『極悪女王』などを観てみようかと考えています。それこそNetflixの思うツボですが。さて今回は、ホスピス型住宅の最大手、アンビス(東京都中央区)が運営する「医心館」について、厚生労働省が2月、健康保険法に基づいて地方厚生局などと合同調査を開始したというニュースを取り上げます。昨年3月の問題発覚後、アンビスの親会社、アンビスホールディングス(東京都中央区、代表取締役CEO柴原 慶一)は、医心館において必要以上の頻回訪問等が行われ診療報酬不正請求があったとの報道に関し、2025年8月に特別調査委員会の報告書を公表し、「多額の診療報酬を受けるために架空の事実をねつ造したような悪質な不正請求の事案とまでは認められない」と結論付けました。「我々はシロだった」と嘯いていたわけですが、あの自信は一体なんだったのでしょうか。地方厚生局任せではなく厚労省自ら乗り出した理由は「国各地に展開していることや、請求額が多いこと」共同通信は2月21日、「【独自】ホスピス最大手に厚労省合同調査 医心館、訪問看護報酬の不正指摘」と題するニュースを発信しました。「独自」を冠したスクープ記事です。同記事は、「ホスピス型住宅の最大手『医心館』について、入居者への訪問看護で不正・過剰な診療報酬請求が指摘されていたことを受け、厚生労働省が今月、健康保険法に基づき、地方厚生局などと合同調査を始めたことが21日、関係者への取材で分かった」として、「厚労省は今年1月から全国調査を始め、8つの地方厚生局・支局が47都道府県で少なくとも1ヵ所ずつ実施している」とその調査規模を書いています。また、地方厚生局任せではなく厚労省自らも乗り出した理由について、「調査は通常、出先機関の厚生局が行うが、厚労省本省が乗り出して埼玉県内の医心館を対象に関東信越厚生局、県と合同で実施。医心館が全国各地に展開していることや、請求額が多いことが理由とみられる」と分析しています。訪問看護に関する合同調査は、一部の事業者による不正・過剰請求を受け2025年4月に新設された仕組みだそうです。調査は同業のサンウェルズ、ファーストナースなどにも共同通信は、医心館の不正請求について2025年3月23日付の配信記事「【独自】ホスピス最大手で不正か 全国120ヵ所『医心館』」でいち早くスクープ、アンビスホールディングスのグレーな調査結果公表後も、この問題を追ってきたメディアです。調査委員会の報告書公表後、一部メディアの中には、「(アンビス)社内では、独自調査として報道を続けてきた共同通信社に対する訴訟も求める声も高まっているようだ」と、共同通信がまるで完全な”誤報”を放ったかのように書くところもありました。しかし、結果は訴訟どころか厚労省と地方厚生局の合同調査です。いかにアンビスホールディングスの調査委員会の報告書が中途半端で、かつその結果の解釈自体も独善的だったかがわかります。なお、有料老人ホームの経営コンサルティングに長年携わってきたタムラプランニング&オペレーティング社長の田村 明孝氏が、同社のWebサイトに連載しているコラムの2月25日公開分(「アンビス・サンウェルズ・ファーストナース(ヴァティー)などの訪問看護不正事業者に調査の手~緩和ケア(ホスピス)ホーム診療報酬引き下げで経営は窮地に」)などによれば、厚労省の調査はサンウェルズ(金沢市、代表取締役社長・苗代 亮達)、ファーストナース(東京都港区、代表取締役・橋本 真奈歩)などにも入っているとのことです。「シロでした」と株主相手に表明する経営者の姿勢に、厚労省自体も強い不信感「医心館」の不正請求については、本連載でも「第280回 ターミナルケア・ビジネスの危うさ露呈、『医心館』で発覚した『実態ない診療報酬請求』、調査結果の解釈はシロなのかグレーなのか?(前編)」、「第281回 同(後編)」でも取り上げました。グレー、あるいはクロと見られるのに、「シロでした」と株主相手に表明する経営者の姿勢に対し、厚労省自体も強い不信感を抱いていたようで、同省は10月1日、中央社会保険医療協議会の総会で、有料老人ホームなどで訪問看護を過剰に提供する事業者への規制を強化する方針を明らかにしました。また、ホスピス型住宅で不正・過剰請求や入居者の不利益が生じていることに関連して、医療法人社団悠翔会の佐々木 淳理事長と、訪問看護の会社Graceの西村 直之代表取締役が厚労省を訪問、厚労副大臣らに要望書を提出、適正化を訴えるという動きもありました(「第285回 訪問看護と有料老人ホームに規制強化の動き、現場からは『こんなもので本当にホスピス型住宅における過剰なサービス提供にブレーキをかけられるのか』との厳しい声も」参照)。2026年度の診療報酬改定では、ホスピス型住宅等での訪問看護に大きなしばりがこうした、ホスピス型住宅などにおける訪問看護の不正請求を背景に、2026年度の診療報酬改定では、ホスピス型住宅等での訪問看護に大きなしばりがかけられることになりました。しばりの主な対象は、末期がん・難病などを対象とした「ホスピス型住宅」「高齢者向け住宅」に併設・隣接する訪問看護ステーションで、同一建物内の入居者に対して頻回に訪問看護を行っているケースです。具体的には、支払い方式が出来高から1日単位で評価する包括払いに変更され、「包括型訪問看護療養費」が導入されます。これまでは、訪問回数を増やすほど報酬が積み上がり、1人当たり月80~90万円に達するケースもありましたが、新制度では1日定額となり、多くの場合、半額程度に収束するとみられています。事業者は包括払いではなく、現行どおりの出来高払いを選択することも可能ですが、出来高払いを選ぶ場合、1回の訪問が20分未満であれば訪問看護基本療養費や各種加算を算定できないなど、短時間・頻回訪問を抑制するルールも導入されます。さらに、同一建物居住者への訪問看護に対して算定する「訪問看護基本療養費(II)」等については、同一建物内の利用者数(2人、3~9人、10~19人、20~49人、50人以上)と、1ヵ月の訪問日数(20日目まで/21日目以降等)によって点数が逓減する仕組みに再編されます。とくに利用者10人以上・高頻度訪問の建物では、21日目以降の評価が低くなるなど、「頻回・大量訪問」の報酬が下がります。住宅型有料老人ホームという事業モデルそのものがもう限界か末期がん、難病などの患者の受け入れ先として、そのニーズの高まりとともに、やりたい放題の運営で急成長を遂げてきたホスピス型住宅は、事業モデルの根本的な見直しを迫られることになるでしょう。一方で、これまで真面目に運営を行ってきたところも、今改定で大きな打撃を被ることになります。「ホスピス型住宅」に限らず、外部からの訪問看護や訪問介護で成り立ってきた住宅型有料老人ホームという事業モデルそのものが、もう限界に来ているのかもしれません。前出の田村氏は、連載コラムで「住宅型有料老人ホームは廃止、有料はすべて特定施設に」という提言を行っています。介護保険制度ができて四半世紀、“制度疲労”が激しい有料老人ホームにはこれぐらいの大胆な改革が必要かもしれません。

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IgA腎症〔IgA nephropathy〕

1 疾患概要■ 概念・定義IgA腎症は、糸球体性血尿や蛋白尿などの検尿異常が持続し、腎生検で腎糸球体メサンギウム領域を中心としたIgA優位の免疫グロブリン沈着を認め、全身性疾患や慢性疾患など明らかな原因疾患を伴わない原発性糸球体腎炎である。確定診断には腎生検が必須である。■ 疫学IgA腎症は、世界で最も頻度の高い原発性糸球体腎炎であり、わが国を含む東アジアでとくに多いとされる。わが国では学校検尿や健康診断が普及しているため、無症候性血尿・蛋白尿を契機に若年~中年で診断される例が多い。一方、欧米では症候性の症例や腎機能障害を伴って初めて診断される例が多いとされる。■ 病因病因としては、「粘膜免疫異常により過剰産生された糖鎖異常IgA1が、自己抗体や補体と免疫複合体を形成し、糸球体メサンギウムに沈着して炎症と線維化を惹起する」というマルチヒット仮説が提唱されている。遺伝的素因も関与しており、HLA領域や粘膜免疫関連遺伝子の関連が報告されている。■ 症状多くは自覚症状に乏しく、持続する顕微鏡的血尿・軽度蛋白尿のみである。上気道感染や消化管感染の数日後に肉眼的血尿(褐色尿、コーラ色尿)を来す例が典型的である。進行例では浮腫、高血圧、倦怠感など慢性腎臓病(CKD)としての症状が出現する。■ 分類組織学的には腎糸球体メサンギウム増多所見が主体であるが、半月体形成、分節性硬化、全節性硬化など多彩な像をとる。病理重症度評価にはOxford分類(MEST-Cスコア)が広く用いられており、メサンギウム・管内細胞増多、分節性硬化、尿細管萎縮/間質線維化、半月体の有無を評価する。■ 予後かつての長期追跡では、診断後20年で約4割が慢性腎不全に至ると報告され、決して良性の腎炎ではないことが明らかとなった。近年では、早期発見・レニンアンギオテンシン(RA)系阻害薬の普及などにより予後は改善しつつあるが、蛋白尿が持続する例や腎機能障害を伴う例では依然としてCKD進行のリスクが高い。国際IgA腎症予測ツール(International IgAN Prediction Tool)により、臨床所見とMEST-Cスコアを組み合わせた予後予測も行われている。2 診断■ 検査1)尿検査持続する顕微鏡的血尿(尿定性検査に加え、尿沈査分析が必要。しばしば赤血球円柱がみられる)程度の異なる蛋白尿(しばしば0.3~1g/日程度から始まり得る)急性上気道炎や消化管感染後の一過性肉眼的血尿(褐色尿、コーラ色尿)2)血液検査血清クレアチニン、推算糸球体ろ過量(eGFR)で腎機能を評価する。血清IgA値はしばしば高値だが、診断的特異性は高くない。補体価は通常正常であり、低補体血症では他疾患を考慮する。3)腎生検IgA腎症の確定診断には腎生検が必要である。腎生検は、確定診断のみならず予後や治療反応性を予測する上でも重要である。光顕でメサンギウム増殖性糸球体腎炎を示し、免疫蛍光法でメサンギウム優位のIgA沈着(しばしばC3が共に沈着)を認める(図1、2)。病理重症度評価にはOxford分類(MEST-Cスコア)が広く用いられており、メサンギウム・管内細胞増多、分節性硬化、尿細管萎縮/間質線維化、半月体の有無を評価する(表)。「KDIGO 2025国際ガイドライン」では、IgA腎症が疑われる成人で蛋白尿0.5g/日以上が持続する場合、腎生検を考慮することが推奨されている。図1 IgA腎症の代表的な光顕所見画像を拡大する画像を拡大するa:メサンギウム細胞増多(↑)とメサンギウム基質増生(*)b:メサンギウムへの半球状沈着物(↑)c:管内細胞増多を示す糸球体糸球体毛細血管内の細胞数が増加し、管腔が狭小化している(↑)d:係蹄壊死この糸球体では毛細血管基底膜が断裂し(↑)、フィブリンの析出(*)がみられるe:細胞性半月体この糸球体の半月体は、ほとんどが細胞成分で占められているf:線維細胞性半月体この半月体は細胞成分10%以上50%未満で、細胞外基質は90%未満であるg:線維性半月体この半月体は細胞成分10%未満で、細胞外基質が90%以上を占めているh:分節性硬化点線で囲まれた部分に硬化がみられ、硬化はすべての係蹄には及んでいない(参考文献1、2より引用)図2 蛍光抗体法(IgA)画像を拡大する主にメサンギウム領域にIgAが高度に沈着している(参考文献1より引用)表 IgA腎症Oxford分類画像を拡大する■ 鑑別診断IgA腎症と類似する状態として、以下の疾患などと鑑別する必要がある。菲薄基底膜病、アルポート症候群など遺伝性血尿疾患IgA血管炎(ヘノッホ-シェーンライン紫斑病):紫斑、腹痛、関節痛など全身症状を伴う。感染関連糸球体腎炎(とくにMRSA感染に伴うIgA優位の感染関連糸球体腎炎)ループス腎炎など他の自己免疫性腎炎慢性肝疾患に伴う二次性IgA沈着症家族歴を含む臨床背景、血清学的検査、腎生検での所見を総合して診断する。3 治療■ 治療の基本方針治療の第1目標は、蛋白尿をできるだけ低く抑え(目標0.5g/日未満、理想的には0.3g/日未満)、腎機能低下速度を生理的なレベル(年間eGFR低下1mL/分/年未満)に近付けることである。■ 腎保護療法すべての患者に以下の腎保護療法が基本となる。生活習慣介入:減塩(食塩<6g/日が目安)、適正体重の維持、禁煙、適度な運動。血圧管理:目標<130/80mmHg(蛋白尿が多い例ではさらに厳格に)。RA系阻害薬:ACE阻害薬またはARBは蛋白尿減少と腎保護効果のエビデンスがあり、IgA腎症でも第1選択である。SGLT2阻害薬:糖尿病の有無にかかわらずCKD進行抑制効果が示されており、蛋白尿を伴うIgA腎症では追加投与が推奨されている。■ 免疫抑制療法腎保護療法を十分に行っても蛋白尿が持続し、腎機能低下が進行する例では免疫抑制療法を検討する。副腎皮質ステロイド(グルココルチコイド):わが国のガイドラインでは、中等度以上の蛋白尿や組織学的重症例で、一定期間のステロイド療法が推奨されている。ただし、糖尿病、肥満、感染など副作用リスクが高い症例では慎重な適応判断が必要である。扁摘+ステロイドパルス療法:わが国では、口蓋扁桃摘出術とステロイドパルス療法の併用が長年行われており、蛋白尿の寛解や長期予後改善を示す国内データが蓄積している。その他の免疫抑制薬:シクロスポリン、ミコフェノール酸モフェチル(MMF)などについては一定の効果報告もあるが、エビデンスは限定的であり、難治例や特別な状況に限って専門医のもとで検討されるべきである。■ 高リスク例・特殊病型急速進行性糸球体腎炎像(半月体多数、急激なeGFR低下)を示す例では、ステロイド大量療法にシクロホスファミドなどを併用する血管炎に類似した治療が行われるが、エビデンスは限られている。ネフローゼ症候群を呈する微小変化病合併IgA腎症などでは、ステロイド単独でも反応性が良い場合が多い。4 今後の展望■ 新たな診断・予後マーカー血中の糖鎖異常IgA1(galactose-deficient IgA1)やそれに対する自己抗体、補体関連マーカーなどがIgA腎症に特異的なバイオマーカー候補として研究されているが、現時点では診断や治療選択に用いる標準検査としては確立していない。国際IgAN予測ツールや病理MEST-Cスコアを活用したリスク層別化が進み、今後は個々の患者に応じた治療強度の決定に応用されることが期待される。■ 新規治療薬近年、IgA腎症の病態(粘膜免疫・補体・腎保護)を標的とした新規薬剤の開発が急速に進んでいる。標的放出型ブデソニド(Nefecon):回腸末端の腸管関連リンパ組織に到達するよう設計された経口ステロイドで、病的IgA1産生の抑制を目的とする。海外第III相試験では蛋白尿減少とeGFR低下抑制が示され、欧米などで承認されているが、わが国ではまだ使用できない。デュアルET-A/AT1受容体拮抗薬(sparsentan):ARB作用に加えエンドセリン受容体拮抗作用を併せ持ち、蛋白尿減少とeGFRスロープ改善を示している。補体阻害薬:経口補体因子B阻害薬iptacopanをはじめ、C5、C3、レクチン経路などを標的とした薬剤がIgA腎症で検証されており、一部は海外で承認されつつある。B細胞/BAFF・APRIL経路阻害薬:自己抗体産生抑制を目的としたataciceptや他の抗BAFF/APRIL抗体が臨床試験段階にある。「KDIGO 2025国際ガイドライン」では、「病的IgA産生と免疫複合体形成を抑える治療」と「すでに生じたネフロン喪失に伴うCKDの進行を抑える治療」を並行して行う2本立ての治療戦略が提案されている。わが国でも、支持療法にSGLT2阻害薬などを組み合わせつつ、新規薬剤が順次導入されれば、より早期から蛋白尿を強力に抑え、長期腎予後のさらなる改善が期待される。5 主たる診療科腎臓内科※ 医療機関によって診療科目の区分は異なることがあります。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)診療、研究に関する情報難病情報センター IgA腎症(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)患者会情報難病治験ウェブ(難病に関する治験情報を簡単検索、医療従事者向けのまとまった情報)1)厚生労働科学研究費補助金難治性疾患等政策研究事業(難治性疾患政策研究事業)難治性腎障害に関する調査研究班 編集. エビデンスに基づくIgA腎症診療ガイドライン 2020. 2020:東京医学社.2)厚生労働省科学研究費補助金難治性疾患克服研究事業:進行性腎障害に関する調査研究班報告 IgA腎症分科会 IgA診療指針-第3版-補追 IgA腎症組織アトラス.日腎会誌. 2011;53:655-666.3)KDIGO 2025 Clinical Practice Guideline for the Management of Immunoglobulin A Nephropathy (IgAN) and Immunoglobulin A Vasculitis (IgAV).公開履歴初回2026年2月27日

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現在の認知症診断、その費用対効果は?

 アルツハイマー病および認知症は、世界において臨床的および経済的に大きな負担となっている。早期診断や介入は、疾患の進行を遅らせる可能性がある。現在の診断ガイドラインでは、臨床評価と併せて画像診断およびバイオマーカー分析を検討することが推奨されている。しかし、医療資源は限られているため、資源配分の指針として診断技術の費用対効果を検証する必要がある。カナダ・Western UniversityのMunira Kashem氏らは、アルツハイマー病または認知症の診断および/または進行フォローアップのための神経画像診断、バイオマーカー、その他の診断、スクリーニング戦略に関する経済評価研究をシステマティックにレビューした。Alzheimer's Research & Therapy誌2026年1月23日号の報告。 国、言語、出版期間を問わずMedline、Embase、PsycINFO、CINAHL、EconLitより網羅的に検索し、関連研究を抽出した。研究の質の評価には、医療経済基準に関するコンセンサス拡張版(Consensus on Health Economic Criteria-Extended:CHEC-Extended)チェックリストを用いた。 主な結果は以下のとおり。・6,804件中21件の研究が適格基準を満たした。・これらの研究には、PET、SPECT、CT、MRIなどの神経画像技術(10件)、脳脊髄液および血液バイオマーカー(7件)、スクリーニングプログラム、機械学習に基づくモデル、多職種連携ケアアプローチなどの代替診断戦略(4件)の評価が含まれた。・画像技術を評価した研究のうち、6件は、費用対効果が高いとは認めなかった。・対照的に、脳脊髄液および血液バイオマーカーの研究では、これらの技術は費用対効果が高いと結論付けられたが、結果には多少のばらつきが認められた。・方法論的質スコアは、15〜95%の範囲であり、低品質から高品質の研究が混在していることが示された。・研究デザインと報告されたアウトカムの異質性のため、直接比較はできなかった。 著者らは「多くの研究は高品質であったが、研究目的、デザイン、アウトカムの異質性により、エビデンスの統合が制限された。今後の研究では、方法論の一貫性、透明性のある費用報告、新たな治療枠組みの統合を確保し、アルツハイマー病診断における経済的エビデンスの政策的妥当性および信頼性を向上させる必要がある」と結論付けている。

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乳がん診断後の飲酒、予後との関係~メタ解析

 飲酒は乳がん罹患率に影響を及ぼすと考えられる一方で、乳がん診断後の予後との関連については十分に確立されていない。イタリア・University of GenovaのLuca Arecco氏らによる、約250万例を対象としたシステマティックレビューおよびメタ解析の結果、飲酒は用量依存的な乳がんリスク増加と関連していた一方で、乳がん診断歴を有する患者においては飲酒と予後悪化の間に関連はみられなかった。Breast誌オンライン版2026年2月5日号に掲載の報告。 2025年5月1日までの文献が系統的に検索され、飲酒歴のある女性における乳がんの罹患率、再発率、および生存転帰を報告した、前向きおよび後ろ向き研究が対象とされた。アルコール摂取レベル(少量[≦10g/日または最小摂取群]、中程度[軽度と重度の閾値間の値]、多量[>20g/日または最大摂取群])に応じて解析が行われた。主要評価項目は、乳がんの罹患率、再発率、乳がん特異的生存期間(BCSS)、および全生存期間(OS)とした。統合相対リスク(RR)およびハザード比(HR)を、95%信頼区間(CI)とともに算出した。 主な結果は以下のとおり。・スクリーニングされた5,208件の文献のうち、256万5,920例の女性を含む37件の研究が解析対象とされた。・乳がん罹患率について報告した17件の研究において、摂取レベルを問わず飲酒は乳がん罹患率の増加と関連していた(RR:1.17、95%CI:1.09~1.26、p<0.001)。・乳がん罹患率はアルコール摂取レベルに比例して増加し、少量でRR:1.13(95%CI:1.05~1.23、p=0.002)、中程度でRR:1.28(95%CI:1.18~1.39、p<0.001)、多量でRR:1.52(95%CI:1.38~1.67、p<0.001)であった。・乳がんの転帰について評価した20件の研究において、飲酒と乳がん再発率(RR:1.02、95%CI:0.93~1.11)およびBCSS(HR:0.93、95%CI:0.87~1.00)との間に関連は認められなかった。・少量および中程度の飲酒は、わずかにOSの改善と関連していた(それぞれHR:0.85[95%CI:0.78~0.92、p<0.001]およびHR:0.84[95%CI:0.75~0.94、p=0.002])。ただし、この結果について著者らは、残余交絡因子やその他のバイアスが影響している可能性があるとし、慎重な解釈が必要と考察している。

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更年期のホルモン補充療法、死亡は増加せず/BMJ

 45歳以降に初めて更年期ホルモン補充療法を受けた女性は、受けなかった女性と比較して死亡リスクは増加しないことが、デンマーク・Copenhagen University Hospital HerlevのAnders Pretzmann Mikkelsen氏らの調査で示された。これまでの研究では、更年期ホルモン補充療法後の死亡率は減少または変化なしと報告されていたが、方法論的な限界が指摘されていた。BMJ誌2026年2月18日号掲載の報告。デンマークの45歳以上の約88万例について追跡調査 研究グループは、デンマークに在住し、45歳時点で生存している1950~77年生まれのデンマーク人女性を、45歳の誕生日から2023年7月31日まで追跡した。デンマーク処方箋登録から、更年期ホルモン補充療法の情報が収集された。 主要アウトカムは、デンマークの中央個人登録簿(Central Persons Register)に記録された死亡、副次アウトカムは死因登録簿(Cause of Death Register)より特定した死因に基づく死因別死亡率(心血管疾患、がん、その他)であった。 更年期ホルモン補充療法が死亡リスクに及ぼす影響について、年齢、暦年、分娩回数、学歴、所得分類(四分位に基づく)、出生国、糖尿病、高コレステロール血症、高血圧、心房細動、弁膜症、心不全および44~45歳時の3回以上の医療機関利用歴で調整したCox回帰分析によりハザード比(HR)を推定し評価した。 1950~77年に生まれ45歳時点で生存していたデンマーク人女性は96万9,424例で、このうち、追跡開始前にホルモン補充療法の禁忌(血栓症素因、肝疾患、脳卒中や心筋梗塞を含む動脈血栓症、静脈血栓症、乳がん、子宮内膜がん、卵巣がん)を有していた女性、45歳以前の更年期ホルモン補充療法または両側卵巣摘出の既往歴がある9万2,619例が除外され、適格基準を満たした87万6,805例を対象に解析した。更年期ホルモン補充療法非曝露に対する曝露の死亡の補正後HRは0.96 追跡期間中央値14.3年(四分位範囲[IQR]:7.9~21.0)において、87万6,805例のうち追跡終了日までに更年期ホルモン補充療法を少なくとも1回処方された女性は10万4,086例(11.9%)、死亡は4万7,594例(5.4%)であった。 更年期ホルモン補充療法曝露群の死亡発生率は1万人年当たり54.9に対し、非曝露群は35.5で、補正後HRは0.96(95%信頼区間[CI]:0.93~0.98)であった。更年期ホルモン補充療法の累積使用期間で層別化した場合の補正後HRは、1年未満で1.01(95%CI:0.98~1.05)、1~2.9年で0.94(0.89~0.98)、3~4.9年で0.90(0.84~0.95)、5~9.9年で0.89(0.84~0.95)、10年以上で0.98(0.90~1.07)であった。 死因別死亡率(心血管疾患、がん、その他)について、曝露群と非曝露群で明確な差は認められなかった。 45~54歳で両側卵巣摘出術を受け、追跡期間中に死亡した703例においては、更年期ホルモン補充療法曝露は非曝露と比較し死亡の補正後HRが27~34%低く、死亡時年齢の中央値は曝露群60.9歳(IQR:55.3~66.6)vs.非曝露群56.6歳(52.9~62.0)であった。

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都市生活者の心臓に良いのは芝生ではなく樹木

 都市部に暮らす人々では、自宅の周辺に樹木が多いという環境が、心血管疾患(CVD)リスクの低さと関連していることが明らかになった。しかしその一方、芝生や背の低い草地の広さは、CVDリスクの高さと関連しているという。 この研究は、米カリフォルニア大学デービス校のPeter James氏らによるもので、詳細は「Environmental Epidemiology」2月号に掲載された。論文の筆頭著者であるJames氏は、「われわれの研究結果は、公衆衛生介入において居住環境の樹木の保護と植樹を優先すべきであることを示唆している。そのような取り組みは、芝生を敷くといったことへの投資に比べて、心臓の健康にメリットをもたらす可能性が高い」と述べている。 James氏らは、Googleなどの情報ソースから入手した、米国の都市部のストリートビュー画像3億5000万枚以上を分析して、樹木や草地などの緑の広さを推定した。ストリートビュー画像を解析するという研究手法を採用した背景として、論文には以下のような説明がある。つまり、これまでにも衛星写真を用いて緑地の豊かさと住民の健康状態との関連を解析する研究は行われてきているが、その手法ではどのような植物の緑地なのかが区別されずに検討されていたとのことだ。James氏も、「衛星写真を用いた解析は多くの貴重な知見をもたらしてきたが、はるか上空からの視点に基づく解析であり、あらゆる植物をひとまとめにしてしまうため、植物の種類の違いという重要な点がマスクされてしまいかねない」としている。 今回の研究では、人工知能(AI)を用いてストリートビュー画像を解析。その地域を歩行する際に目にする可能性のある植物を、(1)樹木、(2)芝生、(3)その他(道路沿いの植え込みや草地など)という3種類に分類して、それぞれの広さを推定した。次に、米国の看護師対象疫学研究(NHS)の女性参加者約8万9,000人のCVDリスクと、各参加者の自宅から500m以内の上記(1)~(3)の広さとの関連を検討した。 その結果、(1)の面積が広いことはCVDリスクが4%低いことと関連していた(四分位範囲当たりのハザード比〔HR〕0.96〔95%信頼区間0.93~1.00〕)。それに対して(2)の面積が広いことはCVDリスクが6%高いことと関連し(HR1.06〔同1.02~1.11〕)、(3)の面積の広さはリスクの3%上昇と関連していた(HR1.03〔1.01~1.04〕)。 研究者らは、芝生や草地などの緑が多いことがCVDリスクの上昇に関連するという結果に驚きを述べている。この意外な関連の理由として、農薬使用量の増加、草刈りの際に生じる粉じんの影響、および、夏季の暑熱緩和作用が樹木に比べて乏しく、騒音や大気汚染の緩和作用も弱いことなど、複数の要因が考えられるとのことだ。そして、都市生活者の健康にとってどのような植物を増やすことが最も良いのかを正しく知るために、さらなる研究が必要だと指摘している。

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第304回 iPS細胞治療の心筋シートとドパミン神経前駆細胞に「仮免許」、承認期限7年、待ち受ける有効性証明の高くて険しい壁

マスコミの多くは「世界初」を喧伝、心臓病やパーキンソン病の患者を登場させて「期待感」を語らせるこんにちは。医療ジャーナリストの萬田 桃です。医師や医療機関に起こった、あるいは医師や医療機関が起こした事件や、医療現場のフシギな出来事などについて、あれやこれや書いていきたいと思います。冬季オリンピックが終わってしまいましたね。日本時間では深夜から早朝にかけての競技が多く、テレビ観戦するにはなかなか大変でしたが、スピードスケートの高木 美帆選手の試合を中心にいくつかの競技をライブで観ました。個人的に興味があり応援していたのは女子のチームパシュート(団体追い抜き)です。3人で走る姿が競輪のラインに似ているのと、1周ごとに相手チームとの差が目視できてハラハラするのがこの競技の魅力です。準決勝でオランダにわずか0.11秒差で負けましたが、3位決定戦では米国に完勝、「銅だ!すごい!」とマスコミはこぞって高木選手らを祝福しました。しかし、そうした祝福の陰で厳しい批評もありました。2月20日付の日本経済新聞朝刊スポーツ面のコラム「透視線」で日体大教授の青柳 徹氏(高木選手の日体大時代の恩師)は銅メダルについて「もっといい色にできるはずだし、やれることがあったのではないか」と書き、「最後の3人目のライン通過時が記録となるため、縦一列に並ぶより、最後の直線で後ろの選手が横に出て先頭に詰めた方がわずかでもタイムは縮まるはずだ」と縦一列ゴールに疑問を投げ掛けていました(優勝したカナダは確かにこの方式でした)。メダルを取っても厳しい言葉を掛けられるのは、恩師だからこそと言えそうです。それにしても、後ろの2人の選手が前の選手のお尻を押すプッシュ戦術や、ゴール前にバラける戦術など、チームパシュートという競技の面白さの一端を知ることができた冬のオリンピックでした。さて、今回は先週、製造販売が了承されたiPS細胞製品について書いてみたいと思います。厚生労働省の薬事審議会再生医療等製品・生物由来技術部会は2月19日、iPS細胞から作った心臓病とパーキンソン病の再生医療製品2製品について、条件及び期限付きで製造販売を承認することを了承しました。2製品は近日中(1〜2ヵ月以内)に厚労相が正式に承認する予定です。承認されればiPS細胞として世界初、ES細胞を含む多能性幹細胞としても世界初の承認となるそうです。マスコミの多く(とくに民放のニュース)は、「世界初」を喧伝、心臓病やパーキンソン病の患者を登場させて「期待感」を語らせるなど、まるで金メダルを取ったかのような大騒ぎぶりでした。果たして、そんなに大きな期待を抱いてもよい「承認」なのでしょうか。左室駆出率が移植前と比較して改善していると評価された患者数は8例中2例のリハート製造販売が了承されたのは、大阪大学発のベンチャー、クオリプスが重症心不全を対象に承認申請していた他家iPS細胞由来心筋細胞シートの「リハート」と、住友ファーマがパーキンソン病を対象に承認申請していた他家iPS細胞由来ドパミン神経前駆細胞「アムシェプリ」です。リハートは京都大学iPS細胞研究財団が提供している他家iPS細胞株を心筋細胞に分化誘導し、未分化細胞を除去した上でシート状に成形した製品。標準治療で効果不十分な虚血性心筋症による重症心不全の治療を効能・効果または性能としています。開胸手術によって、シート3枚を患者の心臓表面に移植して使います。大阪大学大学院医学系研究科の澤 芳樹名誉教授の研究成果を基にしており、昨年の大阪・関西万博での展示でも大きな話題となりました。条件及び期限付承認の根拠となった臨床試験の成績では、主要評価項目である、移植後26週時点の心エコー図検査によるLVEF(左室駆出率)が移植前と比較して改善していると評価された患者数は8例中2例でした。その他の項目も踏まえ有効性を評価した結果、「有効性が示唆されると判断された」ものの、被験者が少なかったことから条件及び期限付承認となりました。承認期限は7年で、「正式承認を申請するまでの期間、リハートを使用する全症例に対する製造販売後承認条件評価を行うこと」、「正式承認を申請するまでの期間、リハートの作用機序を反映する生物学的特性に関して情報収集すること」などの条件が付けられ、「リハート群75例と対照群150例を比較する臨床研究として使用成績調査を行う」などの市販後調査も求められました。6例について主要評価項目でパーキンソン病の重症度を示すスコアが改善したアムシェプリ一方、アムシェプリは京都大学iPS細胞研究財団の髙橋 淳所長が開発を主導した薬剤です。同財団が提供している他家iPS細胞株からドパミン神経前駆細胞を誘導して作製します。「レボドパ含有製剤を含む既存の薬物療法で十分な効果が得られないパーキンソン病患者の運動症状の改善」を効能・効果または性能としています。ドパミン神経前駆細胞を定位脳手術により、両側の被殻に移植(大脳被殻片側あたり5.4×10^6個を目標)して使います。ドパミン神経前駆細胞が患者の脳に生着し、ドパミンを産生して治療効果を示すことが期待されています。条件及び期限付承認の根拠となった臨床試験の成績では、7例を対象とし、片側にしか投与しなかった患者を除いた6例について、主要評価項目でパーキンソン病の重症度を示すスコアが改善したとのことです。また、6例全例で、移植後12ヵ月・24ヵ月時点で他家iPS細胞由来ドパミン神経前駆細胞が大脳被殻に生着していました。こちらも被験者が少なかったことから条件及び期限付承認となりました。承認期限も同じく7年で、「正式承認申請までの期間、アムシェプリを使用する全症例に対する製造販売後承認条件評価を行うこと」などの条件が付けられ、「既存の薬物治療で十分な効果が得られなかったパーキンソン病患者に対してアムシェプリの有効性と安全性を評価する製造販売後臨床試験」、「アムシェプリが移植された全ての患者に対する使用成績調査」などの市販後調査も求められました。なおリハートと異なり、ドパミンの作用がすでに明確であることから、作用機序の解明は承認条件に含まれませんでした。日本独自の再生医療等製品の条件及び期限付承認制度のおかげ日本経済新聞や朝日新聞などの報道では、記事の見出しに「仮免許」という言葉が使われています。リハート、アムシェプリともに被験者は1桁と少なく、「症状が改善した」と言っても比較対象試験が行われているわけではないので「効果あり」と科学的に判定されたわけではありません。7年以内にそこを証明しないと「仮免許」は取り上げられてしまいます。「承認」とは言え、なかなかに厳しい「条件及び期限」と言えます。そんな不十分な成績なのに「承認」されたのは、日本独自の再生医療等製品の条件及び期限付承認制度のおかげと言えます。2014年11月、薬事法が改正されて薬機法となった際に新たに導入された同制度は、対象患者が少なかったり対照群の設定が難しかったりなどで一般的な規模の第III相臨床試験を実施できない場合などに活用される仕組みです。有効性の確認前でも、早期の臨床試験データから有効性が推定されれば、条件や期限付きで承認が与えられますが、7年を超えない範囲で有効性、安全性を検証した上で、再度承認申請して正式承認を取得する必要があります。条件及び期限付承認を取得した製品はこれまで6つ、正式承認に至った製品はなく2つは撤退資金、労力、時間がかかる第III相臨床試験を実施しなくても製品を販売できる仕組みとして、再生医療等製品の開発に取り組む製薬メーカーは大きな期待をかけ、活用してきた同制度ですが、10年以上を経てその結果は芳しくありません。条件及び期限付承認を取得した製品はこれまで6つあるものの、有効性を確認して正式承認に至った製品はゼロです。「厚労省部会、他家iPS細胞由来のクオリプスの心筋細胞シートと住友ファーマのドパミン神経前駆細胞の条件及び期限付承認を了承」のタイトルで2月22日、今回の期限付承認を報じた日経バイオテクは、同制度について「近年は、条件及び期限付承認を取得しても、開発企業は安心できない実情が浮き彫りになってきた。というのも、条件及び期限付承認を取得して本承認を目指していた、アンジェスの『コラテジェン』(ベペルミノゲンペルプラスミド)とテルモの『ハートシート』(ヒト[自己]骨格筋由来細胞シート)が、それぞれの承認期限近くの2024年6~7月、相次いで市場から撤退したためだ。(中略)2製品が撤退したのは、市販後調査で良好なデータを示せなかったことの影響が大きい」と書いています。国としては、今のタイミングでiPS細胞治療の芽を摘んでしまうという選択肢はなかったのかもiPS細胞治療については、本連載の「第282回 なかなか実用化にこぎつけられないiPS細胞治療、神戸アイセンター病院の網膜細胞治療について『先進医療』とするのは『不適』の判断」で、神戸アイセンター病院の網膜細胞治療が昨年8月、厚生労働省の先進医療技術審査部会において「先進医療」とするのは「不適」であると判断されたというニュースを取り上げました。この時は、「治っているかどうか患者が実感できない高額な治療法に、先進医療とは言え、保険診療を併用させることはNG」という判断だったわけですが、今回については「治っているかどうかよくわからないが、とりあえず承認しておくから7年で有効性をちゃんと証明しろ」ということのようです。随分無責任な「仮免許」と言えますが、うがった見方をすれば、これも高市政権の成長戦略の影響ということができるかもしれません。政府の「日本成長戦略会議」において「直ちに実行すべき重要施策」として挙げられた17項目の戦略分野の中には「合成生物学・バイオ」と「創薬・先端医療」が入っており、「さあこれから」という時に、iPS細胞治療の芽を摘んでしまうという選択肢は国としてはなかった、と見る向きもあります。テルモのハートシートに比べ、リハートの市販後調査のエンドポイントはなぜだか緩いiPS細胞治療の業界に詳しい知人に、リハート・アムシェプリの正式承認の可能性について尋ねたところ、「リハートと類似の製品で、骨格筋由来細胞シートだったテルモのハートシートが良好なデータを示せず撤退を余儀なくされた理由の1つは、市販後調査において心臓疾患関連死までの期間など、かなりハードなエンドポイントを課せられていたためだ。リハートの市販後調査のエンドポイントは、なぜかそこまでハードに設定されておらず、とても緩い印象だ。本当に効くかどうかは別にして、ハートシートに比べると承認のハードルは低いと言える。一方、アムシェプリは、パーキンソン病の重症度を評価する国際尺度がエンドポイントに課せられているので、そこそこハードルは高い印象だ」と話していました。エンドポイントを低くして、承認を容易くしたとしても、実際の効きが悪ければ医師は使用しませんし、世界でも売れないでしょう。オリンピックと同様、世界標準で戦う必要がある製品だとしたら、手心(かどうかはわかりませんが)は結局はマイナスに働くのではないでしょうか。iPS細胞治療の実用化に向けては、長く険しくゴールが見えないレースがまだまだ続きそうです。

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スタチンによる好ましくない作用、多くは過大評価~メタ解析/Lancet

 スタチン製剤の製品ラベル(たとえば、製品特性概要[SmPC])には、治療関連の可能性がある作用として特定の有害なアウトカムが記載されているが、これらは主に非無作為化・非盲検試験に基づくため、バイアスの影響を受けている可能性があるとされる。英国・オックスフォード大学のChristina Reith氏らCholesterol Treatment Trialists’ (CTT) Collaborationは、このようなスタチン製剤の好ましくない作用(undesirable effect)のエビデンスをより高い信頼性をもって評価することを目的に、大規模な二重盲検試験の個別の参加者データを用いたメタ解析を実施した。研究の成果は、Lancet誌2026年2月14日号で発表された。5つのスタチン製剤の有害作用をメタ解析で評価 CTT Collaborationは、二重盲検無作為化試験の個別の参加者データを用いたメタ解析において、5つのスタチン製剤(アトルバスタチン、フルバスタチン、プラバスタチン、ロスバスタチン、シンバスタチン)について電子医薬品集(electronic medicines compendium:EMC)を検索し、スタチンのSmPCに記載されている好ましくない作用の用語のリストを作成した(本解析は英国心臓財団などの助成を受けた)。 メタ解析の対象とした無作為化試験は、(1)参加者数が1,000例以上、(2)予定された投与期間が2年以上、(3)スタチンとプラセボ、あるいは高強度と低強度スタチン療法の二重盲検比較試験であった。 イベント発生の率比(RR)と95%信頼区間(CI)を算出し、偽発見率(FDR)を5%で調整して統計学的有意性を評価した。66項目中62項目は有害作用ではない 19件がスタチン療法とプラセボを比較した二重盲検試験であった(合計12万3,940例、追跡期間中央値4.5年[四分位範囲[IQR]:3.1~5.4])。参加者の平均年齢は63(SD 9)歳、3万4,533例(28%)が女性であり、5万9,610例(48%)に血管疾患の既往歴があり、2万2,925例(18%)が糖尿病の病歴を有していた。 筋肉関連アウトカムや糖尿病への有害な作用に加えて、スタチンに起因するとされた66項目の追加的な好ましくないアウトカムのうち、FDR有意水準を満たしたのは、わずかに次の4項目のみであった。・肝トランスアミナーゼ値異常:スタチン群783例(0.30%/年)vs.プラセボ群556例(0.22%/年)、RR:1.41(95%CI:1.26~1.57)・その他の肝機能検査値異常:スタチン群651例(0.25%/年)vs.プラセボ群518例(0.20%/年)、RR:1.26(95%CI:1.12~1.41)、肝機能検査値異常の合計における絶対的な年間超過率:0.13%・尿組成の変化:スタチン群556例(0.21%/年)vs.プラセボ群472例(0.18%/年)、RR:1.18(95%CI:1.04~1.33)・浮腫:スタチン群3,495例(1.38%/年)vs.プラセボ群3,299例(1.31%/年)、RR:1.07(95%CI:1.02~1.12)従来の結論を強化する知見 4件の高強度と低強度スタチン療法を比較した二重盲検試験(合計3万724例、追跡期間中央値:5.0年[IQR:2.3~6.6]、平均年齢:62[SD 10]歳、全例に血管疾患の既往歴)でも、用量依存性の肝トランスアミナーゼ値異常およびその他の肝機能検査値異常の有意な過剰発生を認めた。一方、尿組成の変化や浮腫については、有意な過剰発生はみられなかった。 これらの知見について、著者は「スタチン療法の既報の有害作用(筋肉関連アウトカム、糖尿病への影響)以外では、肝臓の生化学的異常のわずかな絶対的増加と、臨床的な意義不明の尿組成の異常および浮腫への潜在的な有害作用と関連するのみで、スタチン製剤のSmPCに記載されたその他のアウトカムとは関連しないことを示している」「スタチン療法が心血管系に及ぼす有益性は、スタチン関連のあらゆるリスクを大きく上回るという従来の結論を強化するものである」としている。 また、「スタチン製剤の製品ラベルの好ましくない作用の項はリスクを過大評価しており、臨床医と患者の誤解を招く恐れがあるため、有益な情報に依拠したエビデンスに基づく意思決定をより適切に支援するよう改訂すべきである」と主張している。

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テゼペルマブ、鼻茸を伴う慢性副鼻腔炎の適応追加/AZ

 アストラゼネカは2026年2月19日、テゼペルマブ(商品名:テゼスパイア)について「鼻茸を伴う慢性副鼻腔炎(既存治療で効果不十分な患者に限る)」に対する適応追加の承認を取得したことを発表した。 本承認は、既存治療で効果不十分な18歳以上の鼻茸を伴う慢性副鼻腔炎患者を対象とした国際共同第III相無作為化比較試験「WAYPOINT試験」の結果に基づくものである。WAYPOINT試験では、共主要評価項目の鼻茸スコア(NPS)と鼻閉重症度スコア(NCS)が、いずれも有意に改善したことが報告されている。なお、NPSは投与4週時、NCSは投与2週時から改善が認められ、投与52週時まで改善が維持された。 電子化された添付文書の「効能又は効果」「効能又は効果に関連する注意」「用法及び用量」「用法及び用量に関連する注意」「重要な基本的注意」の改訂箇所の記載は、以下のとおり(下線部が追記または変更箇所)。4. 効能又は効果○気管支喘息(既存治療によっても喘息症状をコントロールできない重症又は難治の患者に限る)○鼻茸を伴う慢性副鼻腔炎(既存治療で効果不十分な患者に限る)5. 効能又は効果に関連する注意〈気管支喘息〉5.1 最新のガイドライン等を参考に、中用量又は高用量の吸入ステロイド薬とその他の長期管理薬を併用しても、全身性ステロイド薬の投与等が必要な喘息増悪をきたす患者に本剤を追加して投与すること。5.2 本剤は既に起きている気管支喘息の発作や症状を速やかに軽減する薬剤ではないため、急性の発作に対しては使用しないこと。〈鼻茸を伴う慢性副鼻腔炎〉5.3 本剤は全身性ステロイド薬、手術等ではコントロールが不十分な患者に用いること。6. 用法及び用量〈気管支喘息〉通常、成人及び12歳以上の小児にはテゼペルマブ(遺伝子組換え)として1回210mgを4週間隔で皮下に注射する。〈鼻茸を伴う慢性副鼻腔炎〉通常、成人にはテゼペルマブ(遺伝子組換え)として1回210mgを4週間隔で皮下に注射する。7. 用法及び用量に関連する注意〈鼻茸を伴う慢性副鼻腔炎〉本剤による治療反応は、通常投与開始から24週までには得られる。24週までに治療反応が得られない場合は、漫然と投与を続けないよう注意すること。8. 重要な基本的注意〈効能共通〉8.1 本剤投与中の生ワクチンの接種は、安全性が確認されていないので避けること。8.2 本剤の投与によって合併する他のアレルギー疾患の症状が変化する可能性があり、当該アレルギー疾患に対する適切な治療を怠った場合、症状が急激に悪化し、喘息等では死亡に至るおそれもある。本剤の投与中止後の疾患管理も含めて、本剤投与中から、合併するアレルギー疾患を担当する医師と適切に連携すること。患者に対して、医師の指示なく、それらの疾患に対する治療内容を変更しないよう指導すること。8.3 本剤の投与開始にあたっては、医療施設において、必ず医師によるか、医師の直接の監督のもとで投与を行うこと。自己投与の適用については、医師がその妥当性を慎重に検討し、十分な教育訓練を実施した後、本剤投与による危険性と対処法について患者が理解し、患者自ら確実に投与できることを確認した上で、医師の管理指導のもとで実施すること。自己投与の適用後、本剤による副作用が疑われる場合や自己投与の継続が困難な状況となる可能性がある場合には、直ちに自己投与を中止させ、医師の管理のもとで慎重に観察するなど適切な処置を行うこと。また、本剤投与後に副作用の発現が疑われる場合は、医療施設へ連絡するよう患者に指導を行うこと。使用済みの注射器を再使用しないように患者に注意を促し、すべての器具の安全な廃棄方法に関する指導を行うと同時に、使用済みの注射器を廃棄する容器を提供すること。〈気管支喘息〉8.4 本剤の投与開始後に喘息症状がコントロール不良であったり、悪化した場合には、医師の診療を受けるように患者に指導すること。

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事例42 在宅酸素療法の査定と復活【斬らレセプト シーズン4】

解説事例の「C103 2 在宅酸素療法指導管理料(その他の場合)」と使用した機材などの加算すべてに対して、A事由(医学的に適応と認められないもの)が適用されて査定となりました。在宅酸素療法(Home Oxygen Therapy:HOT)の対象は、同療法の留意事項(4)にて「高度慢性呼吸不全例、肺高血圧症の患者、慢性心不全の患者のうち安定した病態にある退院患者(その他省略)」と通知されています。病名欄をみると、適応がないことがわかります。カルテを参照したところ、「間質性肺炎が経時的に増悪したことによる呼吸症状が全面的に出てきている状態であることから在宅酸素療法を導入」と記録されていました。「急性呼吸不全」ではなく、「慢性呼吸不全」の病名で請求すべきでした。査定点数が大きいため患者の状態やレセプトに記載が必須となる項目ならびに規定を満たしているSPO2の結果を医師に記載していただき再審査請求をしたところ復活しました。在宅酸素療法指導管理料は、高点数であるとともに、3ヵ月間に3回算定できるため査定となった場合の収入への影響は著しく大きくなります。他院において、レセプトに記載が必須の項目の漏れでの査定・返戻を確認しています。事例では、レセプトチェックシステムに、適用病名と必要補記がない場合には警告を表示させるよう改修して査定対策としています。

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いますぐ使える!在宅医療 小ワザ 離れワザ

現場の声から生まれた“すぐ使える”在宅医療ハック集在宅医療の最前線で奮闘する医師や看護師が、試行錯誤の中で培ってきた“現場の知恵”を1冊に凝縮。身近な日用品を活用するアイデアや、解決が難しいケースへのアプローチ方法まで、患者に寄り添う小ワザ離れワザを多数紹介。「そうそう、あるある!」と思わずうなずいてしまう現場の悩みを、わかりやすい解説と豊富な写真・イラストでスッキリ解決。在宅医療の奥深さと可能性を再発見できる実用書です。読者対象:在宅医療を行っている(これから行おうとしている)医師、訪問看護師、介護士、ケアマネージャー、薬剤師画像をクリックすると、内容の一部をご覧いただけます。※ご使用のブラウザによりPDFが読み込めない場合がございます。PDFはAdobe Readerでの閲覧をお願いいたします。目次を見るPDFで拡大する目次を見るPDFで拡大するいますぐ使える!在宅医療 小ワザ 離れワザ定価2,970円(税込)判型A5判(並製)頁数192頁発行2026年2月編集一瀬 直日(総合病院岡山協立病院 総合診療科部長 臨床研修センター長)草場 鉄周(北海道家庭医療学センター理事長、日本プライマリ・ケア連合学会理事長)ご購入(電子版)はこちらご購入(電子版)はこちら紙の書籍の購入はこちら医書.jpでの電子版の購入方法はこちら紙の書籍の購入はこちら

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GLP-1受容体作動薬が2型糖尿病患者の椎体骨折リスクを低下させる可能性

 GLP-1受容体作動薬(GLP-1RA)が処方されている2型糖尿病患者は、椎体骨折のリスクが低いことを示すデータが報告された。国立成功大学(台湾)のWei-Thing Khor氏らの研究によるもので、「JAMA Surgery」に12月10日、レターとして掲載された。 近年、GLP-1RAが血糖降下以外のさまざまな副次的作用を有することを示す臨床データが報告されてきているが、2型糖尿病がリスク因子となり得る椎体骨折への影響についてはデータがまだ十分でない。この点についてKhor氏らは、世界各地の医療機関の電子医療記録を統合したリアルワールドのデータベースである「TriNetX」を用いて検討した。 2015年1月1日~2022年1月1日に2型糖尿病と診断され、診断後6カ月以内にGLP-1RA(セマグルチド、リラグルチド、デュラグルチドのいずれか)の処方記録のある患者25万9,162人と、GLP-1RA処方の記録のない患者128万9,637人を特定。その患者群から傾向スコアマッチングにより、GLP-1RA処方群と非処方群を1対1で抽出し、それぞれ19万3,563人から成るコホートを作成した。なお、2型糖尿病診断前に椎体骨折、脊椎腫瘍、椎体形成術などの既往のある患者、および、心理・社会的要因による潜在的健康リスクを有する患者は除外されている。 GLP-1RA処方群において、デュラグルチドの処方が9万2,757人、リラグルチドが9万399人、セマグルチドが3万3,187人に記録されていた。平均年齢は58.1±11.3歳、女性52.5%、BMI35.9±8.0、HbA1c8.4±2.2%であり、その他の臨床検査値、および糖尿病や骨粗鬆症に対する薬剤の処方状況も、GLP-1RA非処方群とよく一致していた。 評価項目を、椎体骨折の発生、および、椎体形成術などの外科的介入の記録とし、GLP-1RAの処方開始(非処方群については2型糖尿病の診断)から最長10年間追跡した。その結果、椎体骨折はGLP-1RA処方群で2,826件(発生率1.5%)、非処方群で3,402件(同1.8%)発生しており、オッズ比(OR)0.83(95%信頼区間0.79~0.87)と、処方群のオッズが有意に低かった。また、外科的介入についても、同順に156件(0.08%)、195件(0.10%)、OR0.80(0.65~0.99)であり、やはり処方群のオッズが有意に低かった。 著者らは、「これらの研究結果は、GLP-1RAが骨折リスク抑制作用を有する可能性を裏付けるものと言える。因果関係の検証と、この関係の根底にあるメカニズムを解明するため、前向き研究が必要とされる」と述べている。

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食事の影響を受けない子宮筋腫治療薬「イセルティ錠100mg」【最新!DI情報】第57回

食事の影響を受けない子宮筋腫治療薬「イセルティ錠100mg」今回はGnRHアンタゴニスト「リンザゴリクスコリン(商品名:イセルティ錠100mg、製造販売元:キッセイ薬品工業)」を紹介します。本剤は、食事の影響を受けることなく経口投与が可能なGnRH(ゴナドトロピン放出ホルモン)アンタゴニストであり、子宮筋腫の新たな治療選択肢として期待されています。<効能・効果>子宮筋腫に基づく諸症状(過多月経、下腹痛、腰痛、貧血)の改善の適応で、2025年12月22日に製造販売承認を取得しました。なお、本剤による治療は根治療法ではないことに留意し、手術が適応となる患者の手術までの保存療法並びに閉経前の保存療法としての適用を原則とします。<用法・用量>通常、成人にはリンザゴリクスとして200mgを1日1回経口投与します。なお、初回投与は月経周期1~5日目に行います。<安全性>重大な副作用として、うつ状態(1%未満)があります。その他の副作用として、ほてり(52.4%)、不正出血(38.2%)、多汗症、頭痛、関節痛、手指などのこわばり、生化学的骨代謝マーカー上昇、倦怠感(いずれも5%以上)、閉経期症状、めまい、月経異常、骨密度減少、脱毛症、傾眠、不眠、AST、ALT、γGTPの上昇、肝機能異常、悪心、便秘、血中コレステロール増加、血中トリグリセリド増加、低比重リポ蛋白増加、脂質異常症、動悸、浮腫(いずれも1~5%未満)、乳房不快感、易刺激性、食欲減退(いずれも1%未満)があります。<患者さんへの指導例>1.この薬は、過多月経、下腹痛、腰痛、貧血などの子宮筋腫に基づく症状を改善します。2.この薬は、GnRHの働きを抑えることで、黄体形成ホルモンおよび卵胞刺激ホルモンの分泌を阻害し、卵巣からのエストラジオールやプロゲステロンなどの性ホルモン濃度を低下させます。3.症状が良くなったと感じても、自己判断で使用を中止したり、服用量を減らしたりしないでください。4.妊婦または妊娠している可能性のある人はこの薬を使用することはできません。5.エストロゲン低下作用により骨塩量の低下が現れることがあるため、6ヵ月を超える継続使用は原則として行われません。<ここがポイント!>子宮筋腫は、子宮筋層を構成する平滑筋に発生する良性腫瘍であり、幅広い年代の女性に認められる疾患です。多くは無症状で経過し、健康診断などで偶然発見されることも少なくありません。症状の有無や程度は、筋腫の発生部位や大きさによって異なりますが、代表的なものとして過多月経、過長月経、月経痛、貧血などがあります。さらに、筋腫のサイズが大きくなると、頻尿、排尿困難、便秘といった周囲臓器の圧迫症状もみられることがあります。子宮筋腫の発生原因は未だ明らかになっていませんが、エストロゲンおよびプロゲステロンが筋腫の増大に関与していると考えられています。そのため、閉経後にはこれらのホルモン分泌の低下に伴い、筋腫は自然に縮小する傾向があります。無症状で筋腫が小さい場合は治療を必要とせず、定期的な健診による経過観察が選択されます。しかし、筋腫が大きい場合や症状により日常生活に支障を来す場合には、治療を検討します。治療法は大きく手術療法と薬物療法に分けられます。手術療法には、子宮全摘術、子宮筋腫核出術、子宮鏡下子宮筋腫摘出術などがあり、年齢や妊娠希望の有無、筋腫の性状に応じて選択されます。薬物療法は根治を目指すものではありませんが、GnRHアゴニストまたはアンタゴニストを用いた偽閉経療法が行われています。これにより、子宮筋腫による症状の改善、筋腫縮小による手術時のリスクや侵襲性の軽減、あるいは閉経までの症状コントロール(逃げ込み療法)を目的とした治療が可能となります。現在、GnRHアゴニストとしてはリュープロレリン酢酸塩などの皮下注射が、GnRHアンタゴニストとしては経口製剤であるレルゴリクスが使用されています。リンザゴリクスは、GnRHアンタゴニストに分類される薬であり、GnRH受容体においてGnRHと拮抗することで、性腺刺激ホルモンであるゴナドトロピンの分泌を抑制し、卵巣におけるエストロゲン産生を低下させます。本剤はGnRHアゴニスト製剤で認められる治療開始初期のフレアアップ現象(ホルモン分泌の一過性上昇)がなく、速やかに効果が発現する点が特徴です。また、同じ経口GnRHアンタゴニストであるレルゴリクスと異なり、食事の影響を受けることなく経口投与が可能な点も特徴の1つです。過多月経を有する子宮筋腫患者を対象とした国内第III相臨床試験(KLH2301試験)において、主要評価項目である治験薬投与6週後から12週後までのPictorial Blood Loss Assessment Chart(PBAC)スコアの合計点が10点未満である症例の割合は、本剤200mg群で89.9%(95%信頼区間[CI]:83.7~94.4)、リュープロレリン酢酸塩群で90.8%(95%CI:84.7~95.0)で、投与群間差は-0.9%(両側95%CI:-8.6~6.9)であり、両側95%CIの下限が非劣性マージンである-15%以上であることから、本剤のリュープロレリン酢酸塩に対する非劣性が検証されました(非劣性検定、p<0.001)。また、副次評価項目であるPBACスコアの合計点が10点未満となる症例の割合が50%になる期間は6日、75%になる期間は19日でした。

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若手医師は帰属意識が高い?首都圏出身者も移住希望?/医師1,000人アンケート

 厚生労働省が2025年12月23日、『令和6(2024)年医師・歯科医師・薬剤師統計の概況』1)を公表し、都道府県別にみた人口10万人当たりの医師数などが明らかになった(参考:「医師数公表、人口当たり医師数が最も多い県・少ない県/厚労省」)。厚生労働省ではこれを基盤として医師偏在をさらに客観的に把握するため、2018年度より「医師偏在指数」*も公表している。また、2025年11月に行われた医師偏在対策に関する検討会では、労働時間などの違い、地域ごとの医療需要(医療ニーズ)などといった考慮すべき5つの要素が示され、2027年度からの次期医師確保計画に向けて必要な見直しが検討されるという2)。*計算式は、標準化医師数÷[地域の人口(10万×地域の標準化受療率比)]で、数値が低いほど医師不足を表す。現行は「医師の性別・年齢分布」が考慮されているが、2027年度より5つの要素(医療需要[ニーズ]及び将来の人口・人口構成の変化、患者の流出入等、へき地等の地理的条件、医師の性別・年齢分布、医師偏在の種別[区域、診療科、入院/外来])が考慮される予定。 そこで、このような状況を踏まえ、ケアネットでは医師が勤務地選択の際にどのような条件を重視するのかなどを調査。20~60代の会員医師1,018名を対象に、移住(Iターン・Jターン・Uターン)3)希望の有無、将来的に希望する勤務地・定住先とその理由、勤務地を決定したタイミングについて、アンケートを行った。若手の地方出身者は帰属意識が高い?首都圏出身者は? まず、回答者の出身エリアと主な勤務エリアは以下のとおりであった。―――――――――――――――――――<出身エリア>北海道:5.8%  東北:7.2%  関東:22.3%  中部:16.7%  近畿:21.3%  中国:8.3%   四国:4.3%  九州・沖縄:12.8%  海外:0.6%<現在の主な勤務エリア>北海道:5.3%  東北:6.1%  関東:30.1%  中部:16.1%  近畿:19.6%中国:8.3%   四国:3.9%  九州・沖縄:10.3%  海外:0.2%――――――――――――――――――― 将来的な勤務希望地(出身地や実家[義実家を含む]のある地域での勤務希望)について、全体の60%超が「はい(いつか戻りたい)」「現在、出身地・実家のある地域で働いている」と回答。また、すでに地元などで勤務している医師は40代以上では4割を超えていた。 今回、本アンケート結果のp.12では、参考までに年代・出身地別の移住意向率も示した。現在、県外に勤務し将来的に移住を希望する割合は20代で高く(47.7%)、首都圏(埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県)を除外した場合にも高い傾向であった。また、驚いたことに、首都圏出身者(263人)のうち85人が首都圏外で勤務していたが、そのうちの7割は戻る意向を示さなかった。一方で、東北エリア、中国エリア出身者の県外勤務者の移住意向は低かった(それぞれ9.1%、7.4%)。 なお、診療科別(内科・外科・その他)での希望有無の違いを比較すると、外科系医師の移住希望はやや少ない傾向であった。希望地の選択理由、20代と60代で共通する理由 本結果から各年代での勤務地選択理由の傾向が明らかになった。20代は「地域/へき地医療への貢献」(18.5%)、30~40代は「子育て・教育環境」(各25.0%、14.9%)を重視する傾向にあった。50代以降では、「親の介護/実家管理」などの問題もやや増加した。60代以降でも約2割の医師は「地域/へき地医療への貢献」を選択していた。 各年代の選択理由については、以下のようなコメントも寄せられた。<20代>・地域枠(山梨県出身/山梨県勤務・糖尿病・代謝・内分泌内科)・出世するためにどこへでも行きたいから(兵庫県出身/千葉県勤務・病理診断科)・家賃が高い(大阪府出身/東京都勤務・眼科)<30代>・義務だったため(新潟県出身/新潟県勤務・内科)・医局を辞め新しい居住地を探す際に、地元が便利なため(神奈川県出身/兵庫県勤務・神経内科)<40代>該当コメントなし<50代>・子を保育園に預けられないとき(感染症など)、実家にみてもらうため。教授から「実家がないと復帰は無理」と言われ、辞めることを暗に勧められた(岩手県出身/岩手県勤務・心療内科)・需要と供給、利便性、将来性などのバランス(東京都出身/山口県勤務・精神科)<60代>長女だから仕方ない(大阪府出身/大阪府勤務・小児科)将来の勤務先、20~30代が意識する時期は… 将来の勤務地を意識する/した時期については、各年代ともに「意識したことがない」医師が最も多かったものの、その傾向は若手になるほど減少に転じている。年代別でみると、20~30代は「前期研修時」(各25.0%、16.2 %)、40代は「医学部入学時」(10.9%)、50代は「親の健康状態の変化」(9.3%)、60代は「入局時」(12.6%)という結果であった。 このほかのアンケート結果の詳細は以下のページに掲載中。『将来の希望勤務地は?いつ決めた?/医師1,000人アンケート』

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