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社交不安症に対するエスシタロプラムの効果は

 北海道大学の朝倉 聡氏らは、日本人社交不安症(SAD)患者におけるエスシタロプラム(10および20mg/日)の有効性、忍容性をプラセボ対照二重盲検試験により比較を行った。Current medical research and opinion誌オンライン版2016年2月5日号の報告。 一次的診断でSAD(DSM-IV-TR定義)と診断された18~64歳の患者(ベースライン時のLSAS-Jスコア:60以上、CGI-Sスコア:4以上)をプラセボ群、エスシタロプラム10mg群、エスシタロプラム20mg群に無作為に割り付けた。主要評価項目は、階層検定手順を使用し、エスシタロプラム10mg群、同20mg群対プラセボにおけるLSAS-J総スコアのベースライン時から12週目までの変化量(ANCOVA、FAS、LOCF)とした。事前に設定した副次評価項目にはLSAS-J感度分析が含まれた。 主な結果は以下のとおり。・有効性の主要評価項目について、LSAS-Jにおけるプラセボ群との差異は、エスシタロプラム10mg群で-3.9(p=0.089)であった。・エスシタロプラム10mg群における対プラセボ群の優位性は確認できなかったが(多重性の調整なしの分析)、エスシタロプラム20mg群において差が認められた(p<0.001)。・事前に設定した感度分析におけるプラセボとの差は、エスシタロプラム10mg群で-4.9(p=0.035[ANCOVA、FAS、OC])、-5.0(p=0.028[MMRM、FAS])、エスシタロプラム20mg群で-10.1(p<0.001[ANCOVA、FAS、OC])、-10.6(p<0.001[MMRM、FAS])。・主な有害事象は、傾眠、悪心、射精障害であった(発生率5%およびプラセボと有意に異なる)。 結果を踏まえ、著者らは「エスシタロプラムは、日本人SAD患者に効果的かつ安全で、良好な忍容性を示した。患者の特性を含めた研究の限界について、議論すべきである」とまとめている。関連医療ニュース うつ病や不安障害患者は、季節性の症状変化を実感 妊娠初期のうつ・不安へどう対処する 双極性障害患者の約半数が不安障害を併存

1862.

薬物使用と精神疾患発症との関連

 いくつかの研究において、思春期のマリファナ使用が、統合失調症の早期発症を予測することを示唆されており、これは重要な予後指標となる。しかし、多くの調査において、薬物使用と疾患発症の明確な時間関係を正確に立証できていなかった。米国・エリモー大学のMary E Kelley氏らは、この関連を明らかにするため、検討を行った。Schizophrenia research誌オンライン版2016年1月16日号の報告。 6つの精神科ユニットより、初回エピソード精神疾患患者247例を登録し、そのうち210例の患者から、生涯のマリファナ、アルコール、タバコの使用および前駆症状と発症年齢に関する情報を収集した。発症前使用のさまざまな因子が精神疾患発症に及ぼす影響について、ハザード比(HR)を定量化するため、Cox回帰(生存)分析を用いた。 主な結果は以下のとおり。・発症前5年間のマリファナ使用の増加(たとえば、非使用~毎日使用)は、発症リスク上昇の高い予測因子であった(HR 3.6、p<0.0005)。・時間特性測定の分析によると、アルコール、タバコの同時使用で調整後、毎日のマリファナ使用は発症率を約2倍にした(HR 2.2、p<0.0005)。・これまでの研究を踏まえ、マリファナの累積使用は、性別や家族歴とは関係なく、精神疾患発症率の増加と関連していることが示された。これはおそらく、マリファナ開始時の年齢が本コホートにおける発症率と関連しているためだと思われる。関連医療ニュース アルコール依存症治療に期待される抗てんかん薬 統合失調症のカフェイン依存、喫煙との関連に注意 青年期からの適切な対策で精神疾患の発症予防は可能か

1863.

うつ病患者の予後に影響する生活習慣病

 肥満、メタボリックシンドローム(Mets)、地中海式ダイエットの低い順守率は、うつ病患者で頻繁にみられ、それぞれが予後と関連している。うつ病のアウトカムに対する、これらの要因の6、12ヵ月の予測力を分析するため、スペイン・バレアレス大学のRachel H B Mitchell氏らは、検討を行った。Journal of child and adolescent psychopharmacology誌オンライン版2016年1月19日号の報告。 273例のうつ病患者から、うつ症状評価のためにベックうつ病評価尺度と14項目の地中海式ダイエット順守スコアを収集した。Metsは、国際糖尿病連合(IDF)の基準に従って診断した。 主な結果は以下のとおり。・ベースライン時の地中海式ダイエット順守は、抑うつ症状と逆相関していた(p=0.007)。・うつ病への反応は、正常体重の患者(p=0.006)、非Mets患者(p=0.013)で高かったが、地中海式ダイエットの順守率との関連は認められなかった(p=0.625)。・Metsである肥満患者は、Metsでない肥満患者よりもうつ症状の改善傾向が低かった。・肥満やMets(ベースライン時における地中海式ダイエットの低い順守率を除く)は、12ヵ月時点でのうつ病の不良転帰を予測した。 結果を踏まえ、著者らは「肥満や食事よりむしろMetsが、うつ病の予後に対し負の影響を与える重要な要因であることが、本研究で示唆された。このことから、臨床医は、肥満うつ病患者(とくに治療成果が十分でない場合)におけるMets診断と治療について認識しておく必要がある」とまとめている。関連医療ニュース 女はビタミンB6、男はビタミンB12でうつリスク低下か MetSリスクの高い抗うつ薬は うつ病から双極性障害へ転換するリスク因子は

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双極性障害患者の重篤気分調節症とは

 青年期双極性障害集団における重篤気分調節症の表現型(disruptive mood dysregulation disorder phenotype:DMDDP)の有病率や相関について、カナダ・トロント大学のRachel H B Mitchell氏らが調査を行った。Journal of child and adolescent psychopharmacology誌オンライン版2016年2月4日号の報告。 DMDD基準を変更し、3次医療機関から得られた116例(BD-I:30例、BD-II:46例、非BD者:40例)で検討を行った。診断には、Kiddie Schedule for Affective Disorders and Schizophrenia for School-Aged Children, Present and Lifetime version(KSADS-PL)を用いた。DSM-5のDMDD基準A~Gは、KSADS反抗挑戦性障害(ODD)スクリーニング質問と補足資料、および記録の要旨により導き出した。必要に応じてカイ二乗分析またはt検定を実施し、続いてロジスティック回帰分析を行った。p値は、false discovery rate(FDR)法を用いて調整した。 主な結果は以下のとおり。・ODD補足データの不足により、8例でDMDDP基準を判定できなかった。・残りの25%(108例中27例)は、DMDDP基準を満たした。・DMDDPは、BDのサブタイプまたはBDの家族歴とは関連しなかった。・年齢、性別、人種で調整後の単変量解析では、DMDDPは、機能レベルの低下、家族との衝突の増加、暴行の既往、注意欠如多動症(ADHD)と関連していた(FDR調整後p値はそれぞれ、p<0.0001、p<0.0001、p=0.007、p=0.007)。・生涯物質使用障害と薬物の使用は、有意性がボーダーライン上であった(調整後p=0.05)。・ロジスティック回帰分析では、DMDDPは家族との衝突に関する親からのより多い報告(OR 1.17、CI:1.06~1.30、p=0.001)、機能障害(OR 0.89、CI:0.82~0.97、p=0.006)との独立した関連が認められた。・DMDDPは、ADHDにおいて3倍増と関連していたが、有意差はわずかであった(OR 3.3、CI:0.98~10.94、p=0.05)。 結果を踏まえ、著者らは「DMDDはBDとは表現型、生物学的に異なるにもかかわらず、臨床現場では一般的に重なる。この重なりは、非BDまたは非家族性BDでは説明されない。本研究において、DMDDPとADHDとの関連から、覚醒症状をもともと述べられている重篤気分調節症の表現型としてとどめるべきかどうかという疑問が生じた。この併存疾患の過剰な機能障害を緩和させる戦略が必要である」とまとめている。関連医療ニュース 双極性障害と強迫症、併存率が高い患者の特徴 うつ病と双極性障害を見分けるポイントは 双極性障害患者の約半数が不安障害を併存

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見落とされがちな抗うつ薬の副作用(解説:岡村 毅 氏)-481

 本論文は、新規抗うつ薬の有害事象に関して、それぞれの論文ではなく、治験総括報告書(規制当局より提供を受けた)を集めて分析したものである。主要評価項目は、死亡と自殺関連行動(自殺、自殺企図、自殺念慮)、副次評価項目は攻撃的行動とアカシジアであった。 個人の臨床家として感想を記載したい。まずは結果に関してであるが、死亡は有意差なし、自殺関連行動は成人では有意差ないものの未成年では投薬群が高かった(オッズ比2.39、95%信頼区間:1.31~4.33)。攻撃的行動も、成人では有意差ないものの未成年では投薬群が高かった(オッズ比2.79、95%信頼区間:1.62~4.81)。 これは近年、未成年(あるいは若年成人)には抗うつ薬投与を慎重に行わねばならないという、臨床現場の共有認識を支持するものだ。こうした懸念は、すでにFDAも表明しているとおりだが、論文中ではさらに、GlaxoSmithKline社がすべての年代において自殺関連行動の頻度が高くなる危険性を表明していることを評価している。 また、考察に関してであるが、治験における有害事象のモニターと公開が不十分である可能性を鋭く指摘している。これは、われわれ臨床家は処方に当たって知っておいたほうがよい指摘だ。確かに、抗うつ薬の進歩によって、多くの患者さんの利益になったことは事実であろう。また、精神疾患に対する偏見もずいぶんと減って、多くの患者さんが軽症の段階で受診し、以前よりも有害事象の少ない新規抗うつ薬により、早期の社会復帰をしているのも事実であろう。かつては、外来に家族を連れてきた親御さんに「本当に思い切って来たんです。こんなところに来たことが近所に知られるともう終わりです」と言われ、悲しくなると同時に、もっと早く来ればもっと良くなったのにと悔しい気持ちになったことを思い出した。今の若い先生方には信じられないかもしれないが…。まあ、裏表のない方だからそういう発言をするわけで、その後、その方とはよき信頼関係を結んだことを申し添える。 多くの方に精神科薬物治療を提供できる時代だからこそ、薬を飲めばもう100%大丈夫などという認識を修正し、薬剤なのだから有害事象もありえること、それ以外の治療選択肢もありえることが、あらためて認識されるべき時期になったのだろう。例えていうならば、「飛行機が開発されて移動は便利になった、良かった、安全は二の次だ」ではなく、だからこそ事故を少しでも減らす(ゼロを目指す)努力を続けねばならないというようなものだ。そのためにも、治験の有害事象のモニターをもっと厳密にするべきだという、著者らのかねてからの主張は常識的だ。 医師としてつくづく実感するが、人とは脆弱な存在だ。だから、人を助けることは崇高なことであり、これこそが創薬の根源的な動機だと思う。しかし、抗うつ薬は断じて魔法ではなく、人間による営みであることを忘れてはならない。私は、本論文を読んで(年をとったせいかもしれないが)、公衆衛生学者から製薬研究者への建設的なメッセージととった。 なお、本コラムの内容は担当者個人の見解に基づいており、東京都健康長寿医療センター・東京大学の見解を示すものではありません。無断転載を禁じます。

1866.

日本人統合失調症患者のMets有病率を調査:新潟大学

 統合失調症患者はメタボリックシンドローム(Mets)リスクが高いが、Mets有病率は民族間で異なる。また、Metsの誘因となる運動不足や偏食などの環境的要因は、統合失調症の入院患者と外来患者とでは異なる可能性がある。日本のメンタルヘルスケアシステムは他国とは異なるが、これまで、日本人統合失調症患者におけるMets有病率の調査はほとんどなかった。新潟大学の須貝 拓朗氏らは、入院および外来の日本人統合失調症患者におけるMetsの有病率を明らかにするため全国調査を行った。Schizophrenia research誌オンライン版2016年1月22日号の報告。 外来施設520ヵ所、入院施設247ヵ所へのアンケートにより、Metsリスクの検討を行った。対象となった統合失調症患者は外来患者7,655例、入院患者1万5,461例であった。Metsの有病率は、National Cholesterol Education Program Adult Treatment Panel III(ATP III-A)、日本肥満学会(JASSO)の定義に基づいた。 主な結果は以下のとおり。・ATP III-Aの定義によるMets有病率は、外来患者で34.2%(男性:37.8%、女性:29.4%)、入院患者で13.0%(男性:12.3%、女性:13.9%)であった。・外来患者におけるMets有病率は、入院患者よりも約2~3倍高かった。 結果を踏まえ、著者らは「日本人統合失調症の外来患者におけるMetsの有病率は、入院患者よりも約3倍高い。このことから、外来患者と入院患者の健康特性の違いを考慮したうえで、統合失調症患者の身体疾患のリスクにもっと注意を払う必要がある」とまとめている。関連医療ニュース 日本人統合失調症患者の脂質プロファイルを検証!:新潟大学 非定型抗精神病薬による体重増加・脂質異常のメカニズム解明か 第二世代抗精神病薬、QT延長に及ぼす影響:新潟大学

1867.

若者に対する抗精神病薬、リスクを最小限にするためには

 抗精神病薬は若者に対し、非精神病や適応外での使用が増えており、心血管代謝系副作用、とくに2型糖尿病に対する懸念が問題となる。米国・ザッカーヒルサイド病院のBritta Galling氏らは、若者に対する抗精神病薬治療に伴う2型糖尿病リスクを評価した。JAMA psychiatry誌オンライン版2016年1月20日号の報告。 創設から2015年5月4日までのデータベース(PubMed、PsycINFO)より、言語制限なしで、系統的文献検索を行った。データ分析は2015年7月に実施し、追加分析を2015年11月に行った。文献の選択は、少なくとも3ヵ月間抗精神病薬を投与された2~24歳の若者における2型糖尿病発症率に関する縦断研究報告とした。2人の独立した研究者により、2型糖尿病リスクのランダム効果メタ分析とメタ回帰の研究レベルのデータを抽出した。主要評価項目は、患者年当たりの累積2型糖尿病リスクまたは2型糖尿病発症率と定義した。副次的評価項目には、抗精神病薬治療を受けていない患者(精神対照群)または健常対照群との主要評価項目の比較が含まれた。 主な結果は以下のとおり。・13件の研究から、抗精神病薬を投与された若者18万5,105人、31万438人年当たりが抽出された。・患者の平均年齢は14.1歳(SD:2.1)、男性が59.5%、平均フォローアップ期間は、1.7年(SD:2.3)であった。・このうち、7件の研究は精神対照群(134万2,121人、207万1,135人年当たり)を、8件の研究は健常対照群(29万8,803人、46万3,084人年当たり)を含んでいた。・抗精神病薬を投与された若者の累積2型糖尿病リスクは1,000人当たり5.72(95%CI:3.45~9.48)、発症率は1,000人年当たり3.09(95%CI:2.35~3.82)であった。・健常対照群と比較し、抗精神病薬を投与された若者の累積2型糖尿病リスク(OR:2.58.95%CI:1.56~4.24、p<0.0001)と罹患率比(IRR:3.02、95%CI:1.71~5.35、p<0.0001)は有意に高かった。・精神対照群との比較も同様に、抗精神病薬を投与された若者の累積2型糖尿病リスク(OR:2.09.95%CI:1.50~52.90、p<0.0001)と罹患率比(IRR:1.79、95%CI:1.31~2.44、p<0.0001)は有意に高かった。・10件の研究の多変量メタ回帰分析では、より大きな累積2型糖尿病リスクは、より長いフォローアップ期間(p<0.001)、オランザピン処方(p<0.001)、男性(p=0.002)と関連していた(r2=1.00、p<0.001)。・より大きな2型糖尿病発症率は、第2世代抗精神病薬処方(p≦0.050)、より少ない自閉症スペクトラム障害の診断(p=0.048)と関連していた(r2=0.21、p=0.044)。 結果を踏まえ、著者らは「抗精神病薬を投与された若者の2型糖尿病リスクはまれだと思われるが、累積リスクや暴露調整発症率、罹患率比は、健常対照群や精神対照群よりも有意に高かった。オランザピン治療や抗精神病薬暴露期間は、抗精神病薬を投与された若者の2型糖尿病発症に対する修正可能な危険因子であった。抗精神病薬は、慎重かつできるだけ短い期間の使用にとどめるべきであり、その有効性および安全性を積極的に管理する必要がある」とまとめている。関連医療ニュース 小児に対する抗精神病薬、心臓への影響は 未治療小児患者への抗精神病薬投与、その影響は 第2世代抗精神病薬、小児患者の至適治療域を模索

1868.

統合失調症、大脳皮質下領域の新発見:東京大学

 大脳辺縁系の基底神経節および基底部を含む大脳皮質下領域構造は、学習、運動制御、感情などの重要な役割を担っているだけでなく、高次の実行機能にも寄与する。これまでの研究では、統合失調症患者において、大脳皮質下領域での体積変化が報告されていた。しかし、報告された結果は、時に不均一であり、大規模研究はほとんど行われていなかった。さらに、統合失調症における大脳皮質下体積の非対称性が評価する大規模研究はほとんどなかった。そこで、東京大学の岡田 直大氏らは、ENIGMAコンソーシアムによって行われた研究と完全に独立し、統合失調症患者と健康成人の大脳皮質下体積の差を検討する大規模多施設研究を行った。また、特徴的な共通点と相違点を同定するため、大脳皮質下領域の左右差を検討した。Molecular psychiatry誌オンライン版2016年1月19日号の報告。 統合失調症患者884例、健康成人1,680例から得られたT1強調画像をFreeSurferで処理を行った(11施設、15画像プロトコル)。群間差は、各プロトコルおよびメタ分析により割り出した。 主な結果は以下のとおり。・統合失調症患者では、両側の海馬、扁桃体、視床、側坐核の体積および頭蓋内容積が健常者より小さく、両側の尾状核、被殻、淡蒼球、側脳室の体積が健康成人より大きいことが実証された。・本研究では、ENIGMAコンソーシアムによって報告されていた統合失調症患者における大脳皮質下体積変化の効果量順を再現していた。・左右差の検討では、健康成人および統合失調症患者の両方において、視床、側脳室、尾状核、被殻で左側優位、扁桃体、海馬で右側優位であることを明らかにした。・また、淡蒼球体積については、統合失調症患者における左側優位の非対称性を実証した。・本研究結果は、統合失調症の脳内神経回路と結合パターンにおける左右差の異常が淡蒼球に関連することを示唆している。関連医療ニュース 統合失調症の同胞研究、発症と関連する脳の異常 統合失調症患者の脳ゲノムを解析:新潟大学 ドパミンD2/3受容体拮抗薬、統合失調症患者の脳白質を改善

1869.

女子学生の摂食障害への有効な対処法

 摂食障害(ED)は大学生年齢の女性の間で深刻な問題であるが、予防することが可能である。米国スタンフォード大学のC Barr Taylor氏らは、EDと併存症状を軽減するようデザインされたEDオンライン介入を評価した。Journal of consulting and clinical psychology誌オンライン版2016年1月21日号の報告。 ED発症リスクが非常に高い女性206人(年齢:20±1.8歳、白人51%、アフリカ系アメリカ人11%、ヒスパニック10%、アジア人/アジア系アメリカ人21%、その他7%)を、10週間のインターネットベースの認知行動介入群または対照群に無作為に割り付けた。評価には、摂食障害検査(EDE、ED発症を評価)、EDE質問票(EDE-Q)、DSM用構造化臨床面接、ベックうつ病評価尺度-II(BDI-II)を用いた。 主な結果は以下のとおり。・EDの傾向や行動は、対照群と比較し、介入群でより改善された(p=0.02、d=0.31)。ED発症率は27%低値であったが、有意差は認められなかった(p=0.28、NNT=15)。・体型に対する懸念が最も高いサブグループでは、対照群と比較し、介入群はED発症率が有意に低かった(20%対42%、p=0.025、NNT=5)。・ベースライン時にうつ病であった27人について、抑うつ症状は対照群と比較し、介入群で有意に改善された(p=0.016、d=0.96)。介入群のED発症率は、対照群よりも低かったが、有意差は認められなかった(25%対57%、NNT=4)。・安価で簡単に普及可能なこうした介入は、高リスク群のED発症を減少させる可能性がある。今後の検討により、普及することが期待される。関連医療ニュース 拒食に対する抗精神病薬増強療法の効果は 拒食に抗精神病薬、その是非は 過食性障害薬物治療の新たな可能性とは

1870.

陰性症状の重症度と表情認知との関連を検証

 統合失調症の陰性症状における相手の顔の表情に関する、selective attention(脳の情報処理において、複数の刺激から特定の刺激だけを選択すること)のバイアスと事後記憶(subsequent memory)への影響を、韓国・高麗大学のSeon-Kyeong Jang氏らが評価した。Cognitive neuropsychiatry誌オンライン版2016年1月20日号の報告。 陰性症状レベルが高いまたは低い統合失調症患者30例(各15例)と健常対照者21例を対象に、ビジュアルプローブ検出法によりselective attentionバイアスを調査した(幸せ、悲しみ、怒りの表情がランダムに50、500、1000ミリ秒表示)。表情記憶課題に対する諾否を収集した。attentionバイアススコアと認識エラーを計算した。 主な結果は以下のとおり。・valence(ポジティブまたはネガティブな感情)に関係なく、表情が500ミリ秒表示されたとき、陰性症状レベルが高いと自然な表情に対して感情的な表情の認識が低下し、陰性症状レベルが低いと逆パターンが示された。・陰性症状レベルが高い患者では、健常対照者と比較し、幸せな表情に対する記憶課題の誤りがより多かった。・統合失調症患者のみにおいて、ビジュアルプローブ検出法による感情的な表情の認知減少は、喜びや意欲の少なさ、幸せな表情のより多い認識エラーと有意に相関していた。・比較的初期のアテンショナルプロセスやポジティブ記憶の減少に付随する感情的な情報へのattentionバイアスは、陰性症状による病理学的メカニズムと関連していると考えられる。関連医療ニュース 精神疾患患者の認知機能と炎症マーカーとの関連が明らかに 第1世代と第2世代抗精神病薬、認知機能への影響の違いは チェリージュースで認知機能が改善

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抑うつ症状は認知症の予測因子となりうるのか

 抑うつ症状は、健忘型軽度認知機能障害(aMCI)においてもよく見られる症状である。抑うつ症状と認知症への転換との関連はまだ明らかになっていない。ベルギー・ブリュッセル自由大学のEllen De Roeck氏らは、aMCI患者における抑うつ症状が認知症への転換を予測するかを確認するため、縦断的研究を行った。International psychogeriatrics誌オンライン版2016年1月18日号の報告。 本研究にはaMCI患者35例が参加した。すべての参加者について、認知機能検査を行い、抑うつ症状の有無を確認するため高齢者用うつ尺度(GDS)を用いて評価した。GDSスコア11以上を、有意な抑うつ症状ありのカットオフ値とした。認知症への転換は、1.5、4、10年後のフォローアップ訪問にて評価した。 主な結果は以下のとおり。・31.4%の患者は、ベースライン時に抑うつ症状が認められた。・ベースライン時のいずれの認知機能検査においても、うつ症状の有無による有意差は認められなかった。・1.5、4、10年後に認知症へ転換した患者は、それぞれ6、14、23例であった。・ベースライン時のGDSスコアは認知症への転換を予測しなかったが、認知機能検査、具体的には手がかり再生検査(記憶障害スケールを含む)は転換の良好な予測因子であった。・今回の対象者において、MCI患者における抑うつ症状は、認知症への転換を予測する因子とは言えなかった。関連医療ニュース 軽度認知障害からの進行を予測する新リスク指標 アルツハイマー病、進行前の早期発見が可能となるか 認知症、早期介入は予後改善につながるか

1872.

統合失調症発症にビタミンDがどう関与しているのか

 統合失調症とビタミンDとの関連について、米国・マサチューセッツ医科大学のMathew Chiang氏らが臨床レビューを行った。Evidence-based mental health誌2016年2月号の報告。・ビタミンDがカルシウムのホメオスタシスおよび骨の健康において、重要な役割を担っていることは知られている。・ビタミンDは、日光によるUVB照射により皮膚から内因的に生成される。そして、ビタミンDは現在、脳の発達や正常な脳機能に重要な役割を有する強力な神経ステロイドホルモンであると考えられており、その抗炎症特性は、ヒトの健康のさまざまな側面に影響を与えることが知られている。・ビタミンDリガンド受容体(ビタミンDの生理学的作用の多くを仲介する受容体)は、中枢神経系を含む身体全体で見つかっている。・ビタミンD欠乏は、統合失調症など重篤な精神疾患を有する患者で一般的に認められる。・統合失調症のいくつかの環境リスク因子(誕生した季節、緯度、移住)は、ビタミンD欠乏症と関連付けられる。そして、最近の研究では、統合失調症の発症におけるビタミンDの潜在的な役割が示唆されている。たとえば、新生児のビタミンDの状態と、その後の肥満やインスリン抵抗性、糖尿病、脂質異常症および心血管疾患の発症リスクとの関連が、統合失調症患者でよく認められている。ビタミンD欠乏が、これら代謝の問題に関連していることは明らかになっている。・生物学的メカニズムは、炎症の調節や免疫プロセスにおけるビタミンD作用と関連しており、その結果、臨床症状の発現や統合失調症の治療反応に影響する。・ビタミンD補充の潜在的なベネフィットとして、統合失調症症状の改善および統合失調症患者の身体的健康についても、今後の研究で検討されるべきである。関連医療ニュース 統合失調症、ビタミンD補充で寛解は期待できるか 女はビタミンB6、男はビタミンB12でうつリスク低下か EPA、DHA、ビタミンDは脳にどのような影響を及ぼすか

1873.

うつ病患者への運動介入、脱落させないコツは

 運動による抑うつ症状の改善効果は確立している。無作為化試験(RCT)の脱落率は試験間で異なり、RCTにおける脱落はエビデンスに基づく信頼性に脅威を与える。英国・South London & Maudsley NHS Foundation TrustのBrendon Stubbs氏らは、運動RCTに参加したうつ病成人における脱落率とその予測因子を調査し、システマティックレビューとメタ解析を行った。Journal of affective disorders誌2016年1月15日号の報告。 著者3名は、最近のコクランレビューからRCTを特定し、2013年1月~2015年8月までの主要電子データベースのアップデート検索を行った。脱落率を報告したうつ病患者[大うつ病性障害(MDD)と抑うつ症状を含む]に対する運動介入のRCTが含まれた。ランダム効果メタ分析とメタ回帰を行った。 主な結果は以下のとおり。・うつ病患者1,720例[49.1歳(範囲:19~76歳)、女性72%(同:0~100%)]を含む52の運動介入における脱落率を報告したRCT 40件が含まれた。・すべての試験を通じ、脱落の調整罹患率(trim and fill法による)は18.1%(95%CI:15.0~21.8%)、MDDのみでは17.2%(95%CI:13.5~21.7%、n=31)であった。・MDD患者において、ベースラインの抑うつ症状の高さ(β=0.0409、95%CI:0.0809~0.0009、p=0.04)は高い脱落率を予測し、その一方で、理学療法士(β=-1.2029、95%CI:-2.0967~-0.3091、p=0.008)、運動療法士(β=-1.3396、95%CI:-2.4478~-0.2313、p=0.01)による介入は、低い脱落率を予測した。・脱落率の比較メタ分析では、コントロール群よりも運動群で低かった(OR 0.642、95%CI:0.43~0.95、p=0.02)。 結果を踏まえ、著者らは「運動はうつ病患者にとって忍容性が高く、RCTにおける脱落はコントロール群より低い。このように、運動は実行可能な治療法であり、とくに運動に関する特別な訓練を受けた医療従事者による実施が重要である」とまとめている。関連医療ニュース うつ病へのボルダリング介入、8週間プログラムの成果は 認知症への運動療法、効果はあるのか 統合失調症患者の運動増進、どうしたら上手くいくか

1874.

抗うつ薬による自殺行為の増加、5剤のSSRI/SNRIで検証/BMJ

 抗うつ薬の有害事象として、攻撃行動の増加がみられ、小児/青少年では自殺行為も増えているとの北欧コクランセンター(デンマーク)のTarang Sharma氏らによる研究成果が、BMJ誌オンライン版2016年1月27日号に掲載された。この研究では、抗うつ薬の臨床試験や治験総括報告書(clinical study report)の治療関連有害事象のデータには限界があることも示された。治験総括報告書は製薬企業が医薬品の市販の承認を得るために規制機関に提出する臨床試験の結果の詳細な概要であるが、最近のレビューは、公表された論文には患者の転帰に関する重要な情報が欠けていることが多いと指摘している。5つの抗うつ薬の治験総括報告書データのメタ解析 研究グループは、選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)およびセロトニン・ノルエピネフリン再取り込み阻害薬(SNRI)に起因する重篤な有害事象の発現状況を調査するために、治験総括報告書に基づいて系統的なレビューを行い、メタ解析を実施した。 欧州および英国の医薬品規制機関(EMA、MHRA)から、5つの抗うつ薬(デュロキセチン、フルオキセチン、パロキセチン、セルトラリン、ベンラファキシン)の治験総括報告書を入手し、Eli Lilly社のウェブサイトからデュロキセチンとフルオキセチンの概略試験報告の情報を得た。 選択基準は、全患者の叙述(死亡、重篤な有害事象、その他の臨床的に重要なイベントの概要)または個々の患者の有害事象の一覧(患者識別子、有害事象[基本語、患者が使用した用語]、期間、重症度、転帰などの詳細を含む)が記載された二重盲検プラセボ対照試験の論文とした。 2人の研究者が別個にデータを抽出し、Peto法によるオッズ比(OR)と、固定効果モデルを用いた95%信頼区間(CI)を算出した。主要評価項目は死亡および自殺行為(自殺、自殺未遂/準備行動、意図的自傷行為、自殺念慮)、副次評価項目は攻撃行動およびアカシジアとした。攻撃行動が約2倍、小児/青少年で自殺行為と攻撃行動が2倍以上に 70件の臨床試験(治験総括報告書68本、総頁数6万4,381頁)に参加した1万8,526例が解析の対象となった。 これらの臨床試験は試験デザインに限界があり、報告の方法にも乖離がみられ、有害事象がかなり過少に報告されている可能性が示唆された。 たとえば、ベンラファキシンの試験を除くと、転帰の記述は付録の患者一覧にしかなく、それも32試験のみであった。また、症例報告書(case report form)を入手できた試験は1件もなかった。 全体では、試験薬群とプラセボ群の間に、死亡(16例、すべて成人、OR:1.28、95%CI:0.40~4.06)、自殺行為(155件、1.21、0.84~1.74)、アカシジア(30件、2.04、0.93~4.48)には有意な差はなかったが、攻撃行動は試験薬群で有意に頻度が高かった(92件、1.93、1.26~2.95)。 また、成人では自殺行為(OR:0.81、95%CI:0.51~1.28)、攻撃行動(1.09、0.55~2.14)、アカシジア(2.00、0.79~5.04)に有意差を認めなかったが、小児/青少年では自殺行為(2.39、1.31~4.33)と攻撃行動(2.79、1.62~4.81)の頻度が試験薬群で有意に高く、アカシジア(2.15、0.48~9.65)には有意な差はなかった。 Eli Lilly社のウェブサイトに掲載されているオンライン版の概略試験報告には、ほぼすべての死亡例が記載されていたが、自殺念慮の記載はなく、それ以外の転帰の情報も完全ではなかったことから、有害事象のデータを同定するための基礎的文書としては不適切と考えられた。 著者は、「臨床試験や治験総括報告書には限界があり、有害事象は正確に評価されていない可能性があるが、抗うつ薬により攻撃行動が増加し、小児/青少年では自殺行為と攻撃行動が倍増していることがわかった」とまとめ、「治療関連有害事象の発現状況を確実に解明するには、個々の患者データが必須であり、完全な情報を得るには患者の叙述、個々の患者の一覧表、症例報告書が必要である」としている。

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精神疾患患者に対するECT後の転帰を予測することは可能か

 発作後における見当識障害の回復速度から電気ショック療法(ECT)の結果が予測可能かどうか、これまで検討されたことはなかった。ノルウェー・Diakonhjemmet病院のTor Magne Bjolseth氏らは、見当識障害の回復速度から高齢うつ病患者におけるECT治療の効果を予測できるかを検討した。Journal of affective disorders誌2016年1月15日号の報告。 formula-based ECTで治療を行った単極性または双極性うつ病高齢患者57例(60~85歳)を含む長期コホート研究。治療結果は、ECT実施期間中、17項目版ハミルトンうつ病評価尺度(HRSD17)により毎週評価した。発作後の再配向時間(PRT)は、第1回および第3回治療で評価した。 主な結果は以下のとおり。・第1および第3回治療のより長いPRTは、連続HRSD17の急速な低下(p=0.002)とより低いエンドポイント(p=0.019)を予測した。・寛解基準(HRSD17スコアが7以下)を満たし、5分未満で見当識障害から回復した患者はいなかった。・第1~3回のECTセッション刺激量の増加は、PRTのより小さな相対的低下を来した。 結果を踏まえ、著者らは「少なくともうつ病高齢者において、第1および第3セッションにおける見当識障害からの回復速度は、formula-based ECTの治療転帰の予測因子であると考えられる。PRTが刺激量の目安として利用できることを明らかにすべきである」とまとめている。関連医療ニュース うつ病へのECT、ケタミン併用の検討が進行 統合失調症へのECT、アジア諸国での実態調査 電気けいれん療法での麻酔薬使用、残された課題は?

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ウィルソン病〔Wilson disease〕

1 疾患概要■ 定義肝臓およびさまざまな臓器に銅が蓄積し、臓器障害を来す常染色体劣性遺伝性の先天性銅代謝異常症である。■ 疫学わが国での発症頻度は約3万5千人に1人、保因者は約120人に1人とされている。■ 病因・病態本症は、銅輸送ATPase(ATP7B)の遺伝子異常症で、ATP7Bが機能しないために発症する。ATP7B遺伝子の変異は症例によりさまざまで、300以上の変異が報告されている。正常では、ATP7Bは肝細胞から血液および胆汁への銅分泌を司どっており、血液中への銅分泌のほとんどは、セルロプラスミンとして分泌されている。ATP7Bが機能しない本症では、肝臓に銅が蓄積し、肝障害を来す。同時に血清セルロプラスミンおよび血清銅値が低下する。さらに肝臓に蓄積した銅は、オーバーフローし、血液中に出てセルロプラスミン非結合銅(アルブミンやアミノ酸に結合しており、一般に「フリー銅」といわれている)として増加し、増加したフリー銅が脳、腎臓などに蓄積し、臓器障害を来すとされている(図1)。画像を拡大する■ 症状・分類5歳以上のすべての年齢で発症する。40~50歳で発症する例もある。神経型は肝型に比較して、発症年齢は遅く、発症は8歳以上である。ウィルソン病は、症状・所見により、肝型(肝障害のみ)、肝神経型(肝機能異常と神経障害)、神経型(肝機能は異常がなく、神経・精神症状のみ)、溶血発作型、その他に分類される。本症での肝障害は非常に多彩で、たまたま行った検査で血清トランスアミナーゼ(ALT、AST)高値により発見される例(発症前)から、慢性肝炎、急性肝炎、劇症型肝炎、肝硬変などで発症する例がある。神経症状の特徴はパーキンソン病様である。神経型でも肝臓に銅は蓄積しているが、一般肝機能検査値としては異常がみられないだけである。肝機能異常が認められなくても、表1の神経・精神症状の患者では、本症の鑑別のために血清セルロプラスミンと銅を調べるべきである。画像を拡大する神経・精神症状は多彩で、しばしば診断が遅れる。本症患者で当初はパーキンソン病、うつ病、総合失調症、注意欠陥・多動性障害(ADHD)、パラノイア症候群(偏執病)などと誤診されていた例が報告されている。表1の「その他の症状」が初発症状を示す患者もいる。したがって、表1の症状・所見の患者で原因不明の場合は、本症を鑑別する必要がある。■ 予後本症に対する治療を行わないと、病状は進行する。肝型では、肝硬変、肝不全になり致命的になる。肝細胞がんを発症することもある。神経型では病状が進行してから治療を開始した場合、治療効果は非常に悪く、神経症状の改善がみられない場合もある。また、改善も非常に緩慢であることが多い。劇症型肝炎や溶血発作型では、迅速に対応しなければ致命的になる。2 診断 (検査・鑑別診断も含む)診断に有効な検査を表2に示す。また、診断のフローチャートを図2に示す。表2の補足に示すように、診断が困難な場合がある。現在、遺伝子診断はオーファンネットジャパンに相談すれば実施してくれる。画像を拡大する症状から本症を鑑別する場合、まずは血清セルロプラスミンと銅を測定する。さらに尿中銅排泄量およびペニシラミン負荷試験で診断基準を満たせば、本症と診断できる。遺伝子変異が同定されれば確定診断できるが、臨床症状・検査所見で本症と診断できる患者でも変異が同定されない場合がある。確定診断に最も有効な検査は肝銅濃度高値である。しかし、劇症肝不全で肝細胞が著しく壊死している場合は、銅濃度は高くならないことがある。患者が診断されたら、家族検索を行い、発症前の患者を診断することも必要である。鑑別診断としては、肝型では、慢性肝炎、急性肝炎、劇症型肝炎、肝硬変、自己免疫性肝炎などが挙げられる。神経型はパーキンソン病、うつ病、総合失調症、注意欠陥・多動性障害(ADHD)、パラノイア症候群(偏執病)などである。また、関節症状では関節リウマチ、心筋肥大では心筋症、血尿が初発症状では腎炎との鑑別が必要である。3 治療 (治験中・研究中のものも含む)本症の治療薬として、キレート薬(トリエンチン、ペニシラミン)、亜鉛製剤がある(表3)。また、治療の時期により初期治療と維持治療に分けて考える。初期治療は、治療開始後数ヵ月で体内に蓄積した銅を排泄する時期でキレート薬を使用し、その後は維持治療として銅が蓄積しないように行う治療で、亜鉛製剤のみでよいとされている。画像を拡大する肝型では、トリエンチンまたはペニシラミンで開始する。神経型では、キレート薬、とくにペニシラミンは使用初期に神経症状を悪化させる率が高い。したがって神経型では、亜鉛製剤またはトリエンチンで治療を行うのが望ましい。ウィルソン病は、早期に診断し治療を開始することが重要である。とくに神経型では、症状が進行すると予後は不良である。早期に治療を開始すれば、症状は消失し、通常生活が可能である。しかし、怠薬し、急激な症状悪化を来す例が問題になっている。治療中は怠薬しないように支援することも大切である。劇症型肝炎、溶血発作型では、肝移植が適応になる。2010年現在、わが国での本症患者の肝移植数は累計で109例である。肝移植後は、本症の治療は不要である。発症前患者でも治療を行う。患者が妊娠した場合も治療は継続する。亜鉛製剤で治療を行っている場合は、妊娠前と同量または75mg/日にする。キレート薬の場合は、妊娠後期には、妊娠前の50~75%に減量する。4 今後の展望1)本症は症状が多彩であるために、しばしば誤診されていたり、診断までに年月がかかる例がある。発症前にマススクリーニングで、スクリーニングされる方法の開発と体制が構築されることが望まれる。2)神経型では、キレート薬治療で治療初期に症状が悪化する例が多い。神経型本症患者の神経症状の悪化を来さないテトラチオモリブデートが、米国で治験をされているが、まだ承認されていない。3)欧米では、本症の診断治療ガイドラインが発表されている。わが国では、2015年に「ウィルソン病診療指針」が発表された。5 主たる診療科小児科、神経内科、消化器内科※ 医療機関によって診療科目の区分は異なることがあります。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)患者会情報ウィルソン病友の会1)Roberts EA, et al. Hepatology. 2008; 47: 2089-2111.2)Kodama H, et al. Brain & Development.2011; 33: 243-251.3)European Association for the Study of the Liver. J Hepatology. 2012; 56: 671-685.4)Kodama H, et al. Current Drug Metabolism.2012; 13: 237-250.5)日本小児栄養消化器肝臓学会、他. 小児の栄養消化器肝臓病診療ガイドライン・指針.診断と治療社;2015.p.122-180.公開履歴初回2013年05月30日更新2016年02月02日

1877.

治療抵抗性統合失調症へ進展する重要な要因とは:千葉県精神科医療C

 統合失調症における予後不良には、さまざまな要因が関連することが知られているが、それらの相互作用は不明である。ドパミン過感受性精神病(DSP)は、長期的な薬物療法に関連した臨床概念であり、治療抵抗性統合失調症(TRS)へ進展する重要な要因の1つといわれている。千葉県精神科医療センターの山中 浩嗣氏らは、TRS進行へのDSPの影響を検討した。Schizophrenia research誌オンライン版2016年1月13日号の報告。 レトロスペクティブ調査と直接インタビューにより、患者265例をTRS群と非TRS群のいずれかに分類した。DSPエピソードの有無を含む予後に関連する主要な要因を抽出し、それぞれの要因を両群間で比較した。 主な結果は以下のとおり。・未治療期間を除く全パラメータは、非TRS群と比較しTRS群で有意に悪化した。・とくに、TRS群は非TRS群よりもDSPエピソードの割合が有意に高かった。・回帰分析により、DSPはTRSの進展に重要な役割を果たすことが裏付けられた。・さらに、欠損症候群はTRSの診断サブカテゴリーであることが示唆された。 結果を踏まえ、著者らは「予後不良の重要な予測因子が確認され、これはTRSの進展に何らかの形で影響を及ぼすことが示唆された。薬物治療中のDSPエピソードの発生は、治療不応性を促進することが示唆された」としている。関連医療ニュース 難治例へのクロザピン vs 多剤併用 治療抵抗性統合失調症女性、エストラジオールで症状改善 統合失調症治療、ドパミン調節の概念が変わる

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小児に対する抗精神病薬、心臓への影響は

 小児および青年に対する抗精神病薬の使用は、米国のみならず欧州においても大幅に増加している。しかし、小児に対する第2世代抗精神病薬(SGA)の心臓への安全性に関するエビデンスは限られている。スペイン・Sant Joan de Deu病院のJose A Alda氏らは、小児および青年に対するSGAの心臓への副作用を評価し、臨床、人口統計、治療因子による影響を検討した。Journal of child and adolescent psychopharmacology誌オンライン版2016年1月18日号の報告。 本研究は、抗精神病薬の治療を開始した未治療または準未治療の小児および青年216例を対象に、自然的縦断的多施設共同研究にて実施された。12ヵ月(ベースライン、3,6,12ヵ月)の補正QT(QTc)間隔や心拍数などの変数に対する抗精神病薬治療の影響を分析した。サンプルで使用された3種類の主要な処方薬(リスペリドン、クエチアピン、オランザピン)の違いを評価した。 主な結果は以下のとおり。・211例がクエチアピン、リスペリドン、オランザピンのいずれかで治療を行った。・フォローアップ期間中に有意なQTcの変動は認められなかった(p = 0.54)。・SGA間のQTc率の差は認められなかった(リスペリドン vs.オランザピン:p=0.43、リスペリドンvs.クエチアピン:p=0.42、オランザピンvs.クエチアピン:p=0.23)。・人口統計、臨床、併用治療の変数を考慮すると、ベースラインの太り過ぎのみがQTc延長と相関していた(p=0.003)。・全サンプルの心拍数は、フォローアップ期間中に減少傾向にあった(p=0.054)。・しかし、クエチアピン治療患者は、リスペリドン治療患者と比較し、心拍数の増加が認められた(p=0.04)。・本サンプルにおいて、SGAは小児や青年に対し安全な心臓への副作用プロファイルを有し、QTc間隔や心拍数の平均的な増加は認められなかった。関連医療ニュース 第2世代抗精神病薬、小児患者の至適治療域を模索 未治療小児患者への抗精神病薬投与、その影響は 統合失調症、心臓突然死と関連するプロファイルは

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肥満外科手術を受ける患者、うつ病19%、過食性障害17%/JAMA

 肥満外科手術を受ける患者は精神疾患を有する頻度が高く、なかでもうつ病は19%、過食性障害は17%と高いことが判明した。米国・カリフォルニア大学ロサンゼルス校のAaron J. Dawes氏らがメタ解析の結果、明らかにした。肥満外科手術を望む患者で精神疾患はよくみられるが、有病率や術後のアウトカムに与える影響については不明であった。JAMA誌2016年1月12日号掲載の報告。約30年の文献を基にメタ解析 Dawes氏らは1988~2015年にかけて、MEDLINE、PsycINFOなどの文献データベースを基に、肥満外科手術前後の精神状態に関する報告を含む試験を特定しメタ解析を行った。 試験の質についてバイアス・リスク評価ツールで、また試験結果のエビデンスの質については、GRADE(Grading of Recommendations Assessment、Development and Evaluation)で評価した。術前精神疾患と術後体重減の一貫した関連はなし 68件の発表論文を特定した。そのうち術前の精神状態の罹患率について報告したものは59件(被験者総数:6万5,363例)、術前の精神状態と術後アウトカムとの関連について報告したものは27件(同:5万182例)だった。 肥満外科手術を予定または実施した患者のうち、最も罹患率の高い精神疾患は、うつ病(19%、95%信頼区間:14~25)と過食性障害(17%、同:13~21)だった。 術前の精神疾患と、術後の体重減との関連については、一貫したエビデンスは得られなかった。また、うつ病も過食性障害も、術後体重減のアウトカムとの関連はなかった。 一方で肥満外科手術は、術後のうつ病罹患率低下(7試験、8~74%の減少)や、うつ症状の重症度(6試験、40~70%低減)と一貫した関連が認められた。著者は、「中等度のエビデンスだが、肥満外科手術と術後うつ病低下との関連が裏付けられた」とまとめている。

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うつ病既往で感染症リスク増加

 予備的研究では、うつ病とその後の感染症リスク増加との関連が示唆されている。デンマーク・オーフス大学のNiklas W Andersson氏らは、うつ病とさまざまな感染症リスクとの関連を、時間的関係や用量反応関係も含み調査した。International journal of epidemiology誌オンライン版2015年12月26日号の報告。 97万6,398人のプロスペクティブな住民ベースの研究より、1995~2012年にうつ病を経験した14万2,169例を、デンマークレジストリと関連付けて調査した。性別や年齢を調整し、非うつ病者と比較した、うつ病患者における感染症の相対リスクを推定するために生存分析を用いた。 主な結果は以下のとおり。・うつ病は、広範囲の感染症リスク増加と関連していた(罹患率比 [IRR]:1.61、95%CI:1.49~1.74、p=0.000、任意の感染症において)。・特定の時間的影響のエビデンスはなかったが、うつ病発症後の感染症の全般的なリスク増加は、発症後の最初の1年間(IRR:1.67、95%CI:1.25~2.22、p=0.000)からその後11年以上(IRR:1.61、95%CI:1.39~1.85、p=0.000)、上昇したままであった。・用量反応分析は、単一うつ病エピソードで感染症リスクが59%増加し(IRR:1.59、95%CI:1.45~1.75、p=0.000)、4つ以上のうつ病エピソードではさらに増加した(IRR:1.97、95%CI:0.92~4.22、p=0.082)。・しかし、結果は完全な線形的な相関を示すものではなかった。 結果を踏まえ、著者らは「本調査結果より、うつ病の存在が感染症リスクの増加と関連しており、このことはうつ病発症後の特定の期間に限定されるわけではないことが示唆された。用量反応関係も存在すると考えられるが、うつ病と感染症リスクとの関連を確認するためのさらなる検討が必要である」とまとめている。関連医療ニュース うつ病のプラセボ効果、そのメカニズムとは ビタミンDによるうつ症状軽減の可能性は 女はビタミンB6、男はビタミンB12でうつリスク低下か

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