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フィナステリドの副作用、45歳以下では自殺傾向・うつとの関連が顕著

 インターネットやテレビで男性型脱毛症(AGA)治療の広告を目にしない日はないだろう。脱毛症の治療は身近なものになってきているが、脱毛症および良性前立腺肥大症(BPH)治療に使用されるフィナステリドについて、自殺傾向やうつ増大との関連が認められることが、米国・ブリガム&ウィメンズ病院のDavid-Dan Nguyen氏らにより報告された。同治療におけるフィナステリドの有害事象は議論の的となっており、使用男性の自殺企図または自殺例が報告されるようになったのは2012年ごろであったが、今回の検討では、45歳以下の脱毛症患者において、自殺傾向や心理的有害事象との顕著な関連性が認められたという。著者は、「今回の研究結果は、若年の患者にフィナステリドを処方する際は、自殺傾向、うつ、不安症のリスクを考慮する必要があることを示唆するものであった」と述べる一方で、「本研究によってバイアスがかかる可能性があり、さらなる調査が必要である」とまとめている。JAMA Dermatology誌オンライン版2020年11月11日号掲載の報告。フィナステリドの副作用に対して若年患者のほうが脆弱であることを示唆 研究グループは、自殺傾向(念慮、企図、既遂)および心理的有害事象(うつ、不安症)とフィナステリド使用との関連を調べる薬物誘発ケース・非ケース研究を実施した。不均衡分析(ケース・非ケースデザイン法)にて、世界保健機関(WHO)のVigiBase(個別ケースの安全性レポートの世界的なデータベース)で、フィナステリドについて報告された注目される副作用の警告を検出し、検討した。 関連性の強度は報告オッズ比(ROR)を用いて調べ、拡大感度分析では、適応症(BPHおよび脱毛症)、年齢(45歳以下および45歳超)で層別化したうえで、フィナステリドと同様の適応症に使用される、機序が異なる薬剤(脱毛症:ミノキシジル、BPH:タムスロシン塩酸塩)の比較、フィナステリドと同一作用機序および有害事象プロファイルを有する薬剤(デュタステリド)の比較、および2012年前後の自殺傾向の報告を比較した。 フィナステリドについて報告された注目される副作用の警告を検出・検討した主な結果は以下のとおり。・データは2019年6月に入手し、2020年1月25日~2月28日に解析を行った。・VigiBaseにおいて、フィナステリド使用者の自殺傾向の報告356件、心理的有害事象報告2,926件、計3,282件の注目される有害事象の報告を入手した(男性3,206例[98.9%]、18~44歳のデータ入手可能例615/868例[70.9%])。・フィナステリド使用者における自殺傾向(ROR:1.63、95%信頼区間[CI]:1.47~1.81)および心理的有害事象(ROR:4.33、95%CI:4.17~4.49)の有意な不均衡シグナルが特定された。・感度解析で、若年患者(ROR:3.47、95%CI:2.90~4.15)および脱毛症患者(ROR:2.06、95%CI:1.81~2.34)は、自殺傾向の増加に対して有意な不均衡シグナルを示した。こうしたシグナルは、BPHの高齢患者では検出されなかった。・感度解析で、これらの有害事象の報告が2012年以降に大幅に増加したことも示された(ROR:2.13、95%CI:1.91~2.39)。・感度解析の結果は、示された有意な不均衡シグナルは、喚起された報告によるものおよび/またはフィナステリドの副作用に対して若年患者のほうが脆弱であることを示唆するものであった。

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認知症診断後1年以内の自殺リスク

 重度の認知症であれば、自殺を実行するための機能が損なわれることで自殺を防ぐことができるが、初期および軽度の認知症の場合、認知機能が比較的保たれているため、疾患の進行による将来への不安を醸成し、自殺の実行を助長する可能性がある。韓国・延世大学校のJae Woo Choi氏らは、認知症診断を受けてから1年以内の高齢者の自殺リスクについて調査を行った。Journal of Psychiatry & Neuroscience誌オンライン版2020年10月29日号の報告。アルツハイマー型認知症は自殺リスクが高かった 国民健康保険サービスのシニアコホートデータを用いて、2004~12年に認知症と診断された高齢者3万6,541例を抽出した。認知症の定義は、ミニメンタルステート検査(MMSE)スコア26以下および臨床的認知症評価尺度(CDR)スコア1以上またはGlobal Deterioration Scale(GDS)スコア3以上とし、アルツハイマー型認知症、血管性認知症、その他/特定不能の認知症を含めた。性別、年齢、併存疾患、インデックス年で1:1の傾向マッチングを行い認知症でない高齢者を対照群として抽出し、2013年までフォローアップを行った。認知症診断後1年以内の自殺による死亡の調整済みハザード比(aHR)を推定するため、時間依存的Cox比例ハザードモデルを用いた。 認知症診断を受けてから1年以内の高齢者の自殺リスクの調査の主な結果は以下のとおり。・認知症診断後、最初の1年間で46例の自殺が確認された。・認知症高齢者は、対照群と比較し、自殺リスクが高かった(aHR:2.57、95%信頼区間[CI]:1.49~4.44)。・アルツハイマー型認知症(aHR:2.50、95%CI:1.41~4.44)またはその他/特定不能の認知症(aHR:4.32、95%CI:2.04~9.15)の高齢者は、対照群と比較し、自殺リスクが高かった。・他の精神疾患を合併していない認知症患者(aHR:1.96、95%CI:1.02~3.77)および合併している認知症患者(aHR:3.22、95%CI:1.78~5.83)は、対照群と比較し、自殺リスクが高かった。・統合失調症(aHR:8.73、95%CI:2.57~29.71)、気分障害(aHR:2.84、95%CI:1.23~6.53)、不安症または身体表現性障害(aHR:3.53、95%CI:1.73~7.21)と認知症を合併している患者は、認知症を合併していない各疾患の患者と比較し、自殺リスクが高かった。 著者らは「本研究は、自殺率の高い韓国の高齢者を対象とした試験であり、異なる背景を有する集団に本結果をそのまま当てはめるには、注意が必要である」としながらも「認知症診断後1年以内での自殺リスクの上昇が認められた」としている。

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最前線の医療従事者におけるCOVID-19発生による不安・抑うつへの影響

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックは、人々の健康やウェルビーイングに深刻な影響を及ぼしている。最前線でCOVID-19への対応が求められる医療従事者では、その影響はさらに大きくなると考えられる。中国・山東大学のLi-Qun Xing氏らは、最前線で勤務する医療従事者の不安、抑うつ、ストレスに対するCOVID-19の心理的影響を明らかにするため、検討を行った。The International Journal of Social Psychiatry誌オンライン版2020年10月24日号の報告。 中国・済南市にある病院において最前線で勤務する医療従事者を対象に、横断的調査を実施した。基本的な人口統計データ、10項目のCOVID-19によるストレスに関する質問票、自己評価式不安尺度(SAS)、うつ性自己評価尺度(SDS)を含む自己評価質問票を用いて、対象者よりデータを収集した。COVID-19による不安、抑うつ、ストレスのリスクと頻度を推定した。 主な結果は以下のとおり。・対象者309人中、不安症は88人(28.5%)、うつ病は172人(56.0%)であった。・多変量ロジスティック回帰分析において、不安または抑うつと独立して関連が認められた因子は以下のとおりであった。【不安との関連】 ●30歳以下(OR:4.4、95%信頼区間[CI]:1.6~12.2) ●31~45歳(OR:3.1、95%CI:1.1~8.8) ●COVID-19隔離病棟での勤務(OR:2.3、95%CI:1.4~4.0) ●消毒対策が不十分だと感じる(OR:2.5、95%CI:1.5~4.3)【抑うつとの関連】 ●30歳以下(OR:3.8、95%CI:1.8~7.8) ●31~45歳(OR:2.7、95%CI:1.3~5.7) ●看護師(OR:2.5、95%CI:1.1~5.6) ●消毒対策が不十分だと感じる(OR:2.1、95%CI:1.3~3.5) 著者らは「最前線の医療従事者では、COVID-19発生により、不安や抑うつ症状の有症率が増加していた。とくに若年スタッフや看護師では、心理的ケアの必要性が高かった。専門家による感染予防対策は、医療従事者の心身の健康を守るために重要である」としている。

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統合失調症における抗精神病薬治療と抗うつ作用~メタ回帰分析

 統合失調症の陽性症状改善には、抗精神病薬が有用である。しかし、抗精神病薬の抗うつ効果および統合失調症の他の症状への影響については、よくわかっていない。福島県立医科大学の三浦 至氏らは、抗精神病薬の抗うつ効果が統合失調症の特定の症状に対する有効性と関連するかについて検討を行った。The International Journal of Neuropsychopharmacology誌オンライン版2020年11月5日号の報告。 成人統合失調症患者を対象として抗精神病薬の抗うつ効果を検討したランダム化二重盲検試験(RCT)を、電子データベースより検索した。ベースラインからの抑うつ症状の平均変化量についてメタ解析を実施し、他の症状への影響を調査するためメタ回帰分析を行った。 主な結果は以下のとおり。・35件のRCT(1万3,890例)をメタ解析に含めた。・全体として、抗精神病薬は、プラセボと比較し、抑うつ症状の軽減に対する効果が認められた。そのエフェクトサイズは、小~中程度であった(標準化平均差[SMD]:-0.27、95%CI:-0.32~-0.22、p<0.001)。・クロルプロマジン、ハロペリドール、ziprasidoneを除く抗精神病薬は、プラセボと比較し、有意な抗うつ効果が認められた(SMD:-0.19~-0.40)。・抗うつ効果の高さは、PANSS/BPRS合計スコア(β=0.618、p<0.001)、陽性症状(β=0.476、p<0.001)、陰性症状(β=0.689、p<0.001)、PANSS総合精神病理尺度(β=0.603、p<0.001)の改善効果の高さと有意な関連が認められた。 著者らは「ziprasidoneを除く第2世代抗精神病薬は、成人統合失調症患者の抑うつ症状改善に、小~中程度のエフェクトサイズを有することが示唆された。抗精神病薬の抗うつ効果は、他の症状の改善と有意な関連が認められ、陰性症状の改善と最も強い関連が認められた」としている。

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統合失調症スペクトラム障害患者における自閉症症状と自己スティグマの関連

 自己スティグマは、精神疾患患者の自尊心、QOL、自己効力感、治療アドヒアランス、寛解に悪影響を及ぼすことが知られている。自己スティグマに影響する性格特性を明らかにすることができれば、自己スティグマのマネジメントに役立つ情報が得られる可能性がある。これまでのメタ解析では、統合失調症患者は、健康対照者と比較し、自閉症スペクトラム指数(AQ)スコアが高いことが示唆されている。しかし、統合失調症スペクトラム障害患者における自閉症症状と自己スティグマとの関連はよくわかっていない。東北大学の小松 浩氏らは、この関連を明らかにするため、検討を行った。Neuropsychiatric Disease and Treatment誌2020年10月29日号の報告。 対象は、統合失調症スペクトラム障害患者(統合失調症、統合失調感情障害、妄想性障害)127例。自己スティグマの評価にはInternalized Stigma for Mental Illness(ISMI)、自閉症症状の評価にはAQを用いた。患者特性によるISMIとAQスコアとの違いを調査した。AQ合計スコアとISMI合計スコアとの関連を評価するため、年齢、性別で調整した後、重回帰分析を実施した。 主な結果は以下のとおり。・女性患者は、男性患者よりも、自己スティグマレベルが高かった。・未婚患者は、既婚患者と比較し、AQスコアが有意に高かった。・重回帰分析では、AQ合計スコアが、統合失調症スペクトラム障害患者のISMIの全体評価に対する予測因子である可能性が示唆された。 著者らは「本研究は、統合失調症スペクトラム障害患者における自閉症症状と自己スティグマとの関連を明らかにした最初の研究である。統合失調症スペクトラム障害患者の自己スティグマを評価、マネジメントするためには、自閉症症状を考慮することが重要である」としている。

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統合失調症スペクトラム障害の急性期入院患者に対する心理学的介入~メタ解析

 統合失調症スペクトラム障害患者へ心理的介入を実施するうえで、精神科急性期病棟に入院している期間は重要である。しかし、この期間での心理的介入効果は明らかになっていない。英国・ロンドン大学シティ校のK. Barnicot氏らは、精神科急性期病棟に入院している統合失調症スペクトラム障害患者に対する心理的介入について評価を行うため、メタ解析を実施した。Clinical Psychology Review誌オンライン版2020年10月17日号の報告。 統合失調症スペクトラム障害患者を対象に精神科急性期病棟で実施された心理的介入のランダム化比較試験(RCT)を、Embase、Medline、PsycInfoのデータベースよりシステマティックに検索した。群間における介入後のアウトカムの比較およびフォローアップ時の再発・再入院率を明らかにするため、変量効果メタ解析を実施した。 主な結果は以下のとおり。・29件のRCTをメタ解析に含めた。・心理的介入は、対照群と比較し、介入後の陽性症状、社会的機能、治療コンプライアンスの改善をもたらし、再発・再入院リスクを低下させた。・特定の心理的介入の効果は以下のとおりであった。【重要アウトカムに対する効果】強度80%超 ●心理教育【いくつかのアウトカムに対する効果】強度80%未満 ●アクセプタンス&コミットメントセラピー(ACT) ●認知行動療法(CBT) ●メタ認知療法(MCT) 著者らは「精神科急性期病棟に入院している統合失調症スペクトラム障害患者に対し、心理的介入は有効である可能性がある。しかし、バイアスリスクが高いまたは不明なエビデンスが多く、一部の分析は不十分であった。さらなる研究では、より厳密に設計されたRCTのデータを用いたメタ解析が求められる」としている。

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COVID-19と精神疾患、相互に発症リスク高める

 COVID-19患者において精神疾患の後遺症リスクが高く、また精神疾患がCOVID-19の独立したリスク因子である可能性が、英国・オックスフォード大学のMaxime Taquet氏らによる電子健康記録ネットワークコホート研究で示唆された。Lancet Psychiatry誌オンライン版2020年11月9日号に掲載。 本研究は、米国の54施設の患者6,980万人の電子健康記録から匿名化データを収集しているTriNetX Analytics Networkを使用した。TriNetXには2020年1月20日~8月1日にCOVID-19と診断された6万2,354人のデータが含まれ、COVID-19および他のさまざまなイベントを発症した患者コホートを作成し評価した。傾向スコアマッチングを用いて、COVID-19のリスク因子による交絡と重症度を調整した。COVID-19診断後14〜90日における精神疾患、認知症、不眠症の発症率とハザード比(HR)を調べた。 主な結果は以下のとおり。・精神疾患歴のない場合、COVID-19の発症は他の6イベントと比較して、診断後14~90日における精神疾患の発症率の増加と関連した(すべてp<0.0001)。 - インフルエンザに対するHR:2.1、95%CI:1.8~2.5 - 他の呼吸器感染症に対するHR:1.7、95%CI:1.5~1.9 - 皮膚感染症に対するHR:1.6、95%CI:1.4~1.9 - 胆石症に対するHR:1.6、95%CI:1.3~1.9 - 尿路結石症に対するHR:2.2、95%CI:1.9~2.6 - 大きな骨の骨折に対するHR:2.1、95%CI:1.9~2.5・不安障害、不眠症、認知症のHRが最も高かった。・COVID-19診断後14〜90日における何らかの精神疾患の発症率は18.1%(95%CI:17.6~18.6)、うち新規発症では5.8%(95%CI:5.2~6.4)であった。同期間における認知症の新規発症率は、65歳以上で1.6%(95%CI:1.2~2.1)であった。・前年に精神疾患と診断された人は、COVID-19発症率が高かった(相対リスク:1.65、95%CI:1.59~1.71、p<0.0001)。このリスクはCOVID-19の既知の身体的リスク因子とは独立していたが、社会経済的因子による残留交絡の可能性を排除できない。

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家族構成とうつ病との関係

 配偶者またはパートナーや子供の人数などの家族構成と生涯うつ病有病率との関連を、英国・キングス・カレッジ・ロンドンのAlexandros Giannelis氏らが調査を行った。Journal of Affective Disorders誌オンライン版2020年10月10日号の報告。 中高年を対象としたプロスペクティブ研究であるUKバイオバンクのデータを使用した。生涯うつ病は、フォローアップ時のメンタルヘルス関連の質問票の一部を用いて評価した。家族構成とうつ病との関連は、ロジスティック回帰を用いて推定した。うつ病の多遺伝子性リスクスコア(polygenic risk score)を含む社会的、人口統計学的およびその他の潜在的な交絡因子で調整を行った。 主な結果は以下のとおり。・成人5万2,078人(平均年齢:63.6±7.6歳、女性の割合:52%)を対象に分析を行った。・生涯うつ病オッズ比は、配偶者またはパートナーと生活している人において大幅に低かった(OR:0.67、95%CI:0.62~0.74)。・生涯うつ病オッズ比は、子供がいない人と比較し、子供が1人(OR:1.17、95%CI:1.07~1.27)、子供が3人(OR:1.11、95%CI:1.03~1.20)、子供が4人以上(OR:1.27、95%CI:1.14~1.42)いる人で高いことが示唆された。・配偶者やパートナーと同居していないが子供がいる人では、生涯うつ病オッズ比が高かった。・年齢、性別、経済的に裕福でない地域での居住(neighbourhood deprivation)、うつ病の遺伝的リスクで調整した場合でも、この結果は一貫していた。・メンデルランダム化解析では、生涯うつ病に対する子供の人数との関連が示唆された。・本検討の限界として、婚姻の有無が確認できなかったことが挙げられる。 著者らは「配偶者やパートナーとの生活は、うつ病の可能性を低下させることに寄与する。また、1人または3人以上子供がいる場合、とくに同居している配偶者やパートナーがいない人では、うつ病有病率が上昇する」としている。

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新人看護師の燃え尽き症候群が長期アウトカムに及ぼす影響

 看護師や助産師が、燃え尽き症候群を経験することは少なくない。スウェーデン・カロリンスカ研究所のAnn Rudman氏らは、看護師のキャリア初期における燃え尽き症候群エピソードが、卒後10年間の認知機能、抑うつ症状、不眠症に及ぼす長期的な影響について調査を行った。EClinicalMedicine誌2020年10月5日号の報告。看護師キャリア初期の燃え尽き症候群は認知機能低下と睡眠障害と関連 本研究では、看護師を対象とした3つのコホート研究の縦断的観察研究として実施した。26件の看護プログラムより看護学生を募集した。燃え尽き症候群の症状は、卒後3年間は毎年調査し、卒後11~15年の長期調査を1回実施した。フォローアップへの参加に同意した看護師は、2,474人(62%)であった。燃え尽き症候群、認知機能、抑うつ症状、睡眠障害の測定には、それぞれ、Oldenburg Burnout Inventory、本研究特有の方法、うつ病調査票、カロリンスカ眠気尺度を用いた。キャリア初期の燃え尽き症候群と関連する因子は、フォローアップ時の燃え尽き症候群のレベルで調整した後、ロジスティック回帰分析を用いて特定した。 看護師のキャリア初期における燃え尽き症候群が及ぼす長期的な影響を調査した主な結果は以下のとおり。・卒後3年間で高レベルの燃え尽き症候群を報告した看護師は299人(12.3%)であった。・看護師キャリア初期の高レベルの燃え尽き症候群は、現在の燃え尽き症候群のレベルを考慮すると、10年後の認知機能低下、抑うつ症状、睡眠障害と有意な関連が認められた。・現在の燃え尽き症候群の症状やほかのアウトカム変数で調整した後、キャリア初期に燃え尽き症候群が認められた看護師は、認知機能低下と睡眠障害の頻度が高かったが、抑うつ症状との関連は認められなかった。 著者らは「看護師は、キャリアの早い段階から、慢性的であらがうことのできないストレスによって引き起こされる有害な問題を抱えており、早期より看護教育や新人研修の一部として予防的介入を進めるべきである」としている。

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統合失調症患者に対する筋力トレーニングの効果

 統合失調症スペクトラム障害患者は、下肢の骨格筋力(最大筋力[1RM]、急な動き)が損なわれており、機能的パフォーマンスが低下しているといわれている。ノルウェー科学技術大学のMona Nygard氏らは、統合失調症スペクトラム障害患者に対する12週間の最大筋力トレーニング(MST)の効果について検討を行った。Scandinavian Journal of Medicine & Science in Sports誌オンライン版2020年10月28日号の報告。 12週間のMSTの効果について、次の3項目について調査を行った。(1)下肢の骨格筋力と機能的パフォーマンスレベルが基準レベルまで回復するか(2)患者の活動性やQOLを向上させるか(3)下肢の骨格筋力や機能的パフォーマンスレベルの改善と症状重症度、1日投与量、罹病期間、患者の活動性レベルとの関連。統合失調症スペクトラム障害の外来患者48例を対象に、トレーニング群(T群)または対照群(C群)にランダムに割り付けた。T群には、レッグプレスMSTを週2回90%1RMで実行した。C群は、2度の入門トレーニングセッションと独立したトレーニングを実施するよう勧めた。レッグプレス1RM、急な動き、一連の機能性テスト、精神の健康管理への積極性評価尺度(Patient Activation Measure-13)、健康関連QOL尺度(SF-36)を調査した。健康な対照者より下肢の骨格筋力と機能的パフォーマンスのベースラインテストを実施した。 主な結果は以下のとおり。・研究を完了した患者は36例(T群:17例、C群19例)であった。・T群では、1RM(28%)および急な動き(20%)に関して健康な対照者と同レベルまでの改善が認められたが(各々p<0.01)、C群では変化が認められなかった。・T群における急な動きの改善は、1日投与量と逆相関が認められた(r=-0.5、p=0.05)。・両群ともに、30秒間立位テストのパフォーマンス向上が認められ(p<0.05)、これは急な動きの改善と関連が認められた(r=0.6、p<0.05)。 著者らは「12週間のMSTは、統合失調症スペクトラム障害患者の下肢の骨格筋力を健康な人と同程度のレベルまで改善し、30秒間立位テストのパフォーマンスの改善が認められた」としている。

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日本におけるCOVID-19発生時の医療従事者のメンタルヘルス

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は、世界中に蔓延している。日本赤十字社医療センターの粟野 暢康氏らは、COVID-19パンデミック中の日本における医療従事者の不安症、うつ病、レジリエンス、その他の精神症状について評価を行った。Internal Medicine誌2020年号の報告。うつ病を発症した医療従事者は27.9% 2020年4月22日~5月15日に日本赤十字社医療センターの医療従事者を対象にメンタルヘルスの調査を実施した。不安症、うつ病、レジリエンスの評価には、それぞれ日本語版の不安尺度GAD-7、うつ病自己評価尺度CES-D、レジリエンス測定尺度CD-RISC-10を用いた。さらに、以下の3要素化からなる独自のアンケートを追加した。(1)感染に対する不安や恐れ(2)隔離および不当な扱い(3)職場でのモチベーションと逃避行動 COVID-19パンデミック中の日本における医療従事者のメンタルヘルスを評価した主な結果は以下のとおり。・調査対象は848人。その内訳は、医師104人、看護師461人、その他医療スタッフ184人、事務職員99人であった。・全調査対象者のうち、中等度~重度の不安症を発症した医療従事者は85人(10.0%)、うつ病を発症した医療従事者は237人(27.9%)であった。・感染に対する不安や恐れ、隔離および不当な扱い、職場でのモチベーションと逃避行動に関する問題は、非うつ病者よりもうつ病者でより高かった(CES-D合計スコア16以上)。・医療従事者のうつ病リスク因子は、看護師、GAD-7合計スコアの高さであった。・年配およびレジリエンスの高い医療従事者は、うつ病の発症リスクが低かった。 著者らは「COVID-19の流行により、多くの医療従事者が精神症状に苦しんでいた。医療従事者の健康を守るためにも、心理的支援と介入が求められる」としている。

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双極性障害と統合失調症の診断予測因子

 初回エピソード精神病(FEP)コホートにおける双極性障害と統合失調症の診断予測に役立つ可能性のあるベースライン特性と臨床的特徴を特定するため、スペイン・バルセロナ大学のEstela Salagre氏らが、検討を行った。The Journal of Clinical Psychiatry誌2020年11月3日号の報告。 本研究は、2009年4月~2012年4月に募集したFEP患者355例のコホートを評価したプロスペクティブ自然主義的研究である。12ヵ月のフォローアップ期間にDSM-IV診断で最終的に双極性障害および統合失調症と診断された患者のベースライン特性を比較した。フォローアップ時の双極性障害診断の予測因子を評価するため、バイナリロジスティック回帰モデルを用いた。 主な結果は以下のとおり。・12ヵ月のフォローアップ期間に双極性障害と診断された患者は47例、統合失調症と診断された患者は105例であった。・最終的に双極性障害と診断された患者は、統合失調症と診断された患者と比較し、以下の割合が有意に高かった。 ●気分障害の家族歴:有病率38.2% vs.18.0%(p=0.02) ●より良好なベースライン時の病前適応:病前適応尺度(PAS)38.4 vs.50.6(p<0.01) ●より良好な心理社会的機能:簡易機能評価検査(FAST)23.6 vs.33.7(p=0.001) ●より良好な認知的柔軟性:ウィスコンシンカード分類検査(WCST)の誤答数14.2 vs.19.7(p=0.01) ●躁症状の多さ:ヤング躁病評価尺度(YMRS)14.1 vs.7.3(p<0.01) ●陰性症状の少なさ:陽性・陰性症状評価尺度(PANSS)陰性症状尺度15.0 vs.22.3(p<0.001) ●精神疾患の未治療期間の短さ:144.2日 vs.194.7日(p<0.01)・バイナリロジスティック回帰モデルでは、フォローアップ時の双極性障害診断と有意に関連していた因子は以下のとおりであった。 ●FASTスコアの低さ(オッズ比[OR]:0.956、p=0.015) ●PANSS陰性症状スコアの低さ(OR:0.93、p=0.048) ●WCSTの誤答数の少なさ(OR:0.946、p=0.35) 著者らは「FEPコホートにおいて12ヵ月のフォローアップ時に双極性障害診断と関連が認められた因子は、より良好な心理社会的機能、陰性症状の少なさ、より良好な認知的柔軟性であった」としている。

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統合失調症に対するルラシドンの長期評価

 英国・サノビオン・ファーマシューティカルズ・ヨーロッパ・リミテッドのPreeya J. Patel氏らは、統合失調症におけるルラシドンの長期有用性を評価するため、二重盲検(DB)アクティブコントロール試験と非盲検(OLE)試験の事後分析を実施した。Neurology and Therapy誌オンライン版2020年10月24日号の報告。 DB試験では、統合失調症患者をルラシドンまたはリスペリドンの12ヵ月間投与にランダムに割り付けた。OLE試験では、すべての患者に対し6ヵ月間のルラシドン投与を行った。治療による有害事象(TEAE)の評価を行った。有効性の評価には、再発率(DB試験のみ)、陽性・陰性症状評価尺度(PANSS)、臨床全般印象度の重症度(CGI-S)、Montgomery Asbergうつ病評価尺度を用いた。 主な結果は以下のとおり。・DB試験では、ルラシドン群399例、リスペリドン群190例にランダム化され、そのうちルラシドン群129例、リスペリドン群84例がOLE試験に移行した。・DB試験中のTEAE発生率は、ルラシドン群84.1%、リスペリドン群84.2%であり、同等であった。・ルラシドン群の代謝量およびプロラクチンレベルは最小限の変化にとどまっていたが、リスペリドン群では、プロラクチンレベルと空腹時血糖値において臨床的に有意な増加が認められた。・DB試験終了時のメタボリックシンドローム発生率は、ルラシドン群25.5%、リスペリドン群40.4%であり、ルラシドン群において有意に低かった(p=0.0177)。・OLE試験時にリスペリドンからルラシドンに切り替えを行った患者では、体重とプロラクチンレベルの低下が認められた。また、ルラシドン治療を継続した患者では、代謝量とプロラクチンレベルの変化は最小限のままであった。・OLE試験終了時のメタボリックシンドローム発生率は、ルラシドン群23.5%、リスペリドン群31.5%であり、両群間の差は認められなかった。・有効性アウトカムは、DB試験中では両群間で類似しており、OLE試験移行後も維持されていた。 著者らは「長期間安定した統合失調症患者に対するルラシドン治療は、忍容性が高く、効果的であった。リスペリドンからルラシドンに切り替えた患者においても、6ヵ月間にわたり、忍容性、有効性が良好であった。また、リスペリドンからの切り替えにより、代謝パラメータやプロラクチンレベルの改善も認められた。本結果より、統合失調症患者に対するルラシドン治療の長期有効性および良好な代謝プロファイルが裏付けられた」としている。

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テネット【なんで時間を考えるのが癒しになるの?(アクセプタンス&コミットメント・セラピー[ACT])】Part 1

今回のキーワードアクセプタンスマインドフルネスコミットメントブリーフセラピーお葬式のメタファー人生の価値皆さんは、時間を忘れるのが癒しだと思いますか?確かに、時間に追われて生活していればそう思うことはあるでしょう。ただ一方で、時間を考えるのが癒しになることもあります。どういうことでしょうか?この理由を説明するために、今回は、タイムトラベルをテーマにしたSF映画「テネット」をお送りします。そして、アクセプタンス&コミットメント・セラピー(ACT、アクト)という最新のセラピーを重ね合わせます。この記事で時間を考えることを、物理学的な娯楽としてだけでなく、心理学的な癒しとしても見つめ直してみましょう。なお、より良い理解のために、この記事の2ページ目にネタバレのコーナーも用意しています。これからこの映画を見る人は、2ページ目にご注意ください。 なんで時間を考えるのが癒しになるの?-ACTの要素主人公はもともとCIAのエージェント。この映画では名もなき男と呼ばれ、あえて名前が付けられていません。彼は、第三次世界大戦を防ぐために、なかば強引にテネットという組織のメンバーにさせられます。そして、協力者として現れたニールと一緒に任務を遂行することになります。実は、このニールこそが陰の主人公であることに、私たちは映画の最後で気付くことになります。ここから、ニールの2つのセリフをACTの2つの要素に重ね合わせ、時間を考えるのが癒しになる訳を考えてみましょう。(1)「起きたことが起きた」-過去と現在の受け入れ-アクセプタンス名もなき男とニールが黒幕に迫っていく中、時間が逆行する装置の存在により、時間を逆行する人が出現して混沌となります。この映像体験は、私たちの常識を吹き飛ばします。そんな中、ピンチになった時にニールは口癖のように「起きたことが起きた(起きたことは仕方ない)」と言い、淡々と自分にできることをするのです。これは、名もなき男が、テネットの研究所で逆行する銃弾を見せられ当惑した時、研究者に言われたセリフ「考えないで。感じて」にも通じます。1つ目は、過去と現在の受け入れです。自分がどんなにうまくいっていなくても、その自分自身を受け止めること、つまり良い悪いの価値判断を無意識にしていることに気付くことです。これは、ACTのアクセプタンスに重なります。私たちは、問題が起きると、その葛藤による苦しみをコントロールしようとします。もちろん、苦しみをコントロールできるなら、それはそれで良いでしょう。しかし、どうしてもコントロールできない時は、どうなるでしょうか? 苦しみをコントロールできないという新たな「苦しみ」が生まれてしまいます。つまり、苦しみから逃れられないと突き詰めて考えること自体でさらに苦しくなるということです。これは、コントロールするという手段にばかり気をとられて、目的を見失ってしまいます。「手段の目的化」というよくある心理です。たとえば、それは、がんや難病による疼痛、全身倦怠感、身体的不自由です。予期不安もそうです。これは、不安(パニック発作)がまた起きると考えて(予期して)、不安になることです(パニック障害)。また、障害のある子の養育、最愛の人との死別、夫婦関係や親子関係の葛藤なども当てはまります。新たな苦しみは、本来あるべき健康な状態が前提になっています。その前提は、私たちがとらわれている、こうあるべきという常識(主流秩序)です。その常識から外れてしまった自分の状態に苦しみ、絶望しているのです。よって、その常識そのものにまず気付き、そのままにする、つまり苦しみをコントロールしようと思わないようにすることです。そして、苦しみはあるものの、そのままの人生を生きていくことです。そのために、「その行動は、そうあるべきと思っているから?」と自分自身に問いかけ、義務感や体裁を生み出す常識(主流秩序)に自分がコントロールされていないかを確かめる必要があります。ACTのアクセプタンスとは、こうあるべきという心を萎ませることとも言えます。これは、マインドフルネスに重なります。この詳細については、末尾の関連記事1をご参照ください。なお、アクセプタンスは、支持療法の「受容」とはまったく意味合いが違う点にご注意ください。 (2)「運命。俺にとっては現実だよ」-未来への思い入れ-コミットメントニールが名もなき男に「運命。俺にとっては現実だよ」と悟ったように答えるシーンがあります。また、「俺がどんな人生を送ってきたか、この事件が終わって片付いたときに生きていたら、話してあげたいよ」と意味ありげに話してもいます。ニールは一体何者なのでしょうか?私たちが映画を見終わってからニールの正体に勘づいた時、その言葉の重みと彼の任務への思い入れの強さに打ちのめされます。これから彼を待ち受けている「現実」を知ってしまった私たちは切なくなりますが、それでも彼はその「現実」を生きる価値があると思ったのでしょう。2つ目は、未来への思い入れです。自分はどんなふうに人生を送りたいのかという人生の目標を掲げて目指すこと、つまり自分の人生の価値をはっきりさせ行動することです。これは、ACTのコミットメントに重なります。もちろん、衣食住が満たされればそれ以上求めないという人は、それはそれで良いでしょう。しかし、一方で、とくに先ほど触れたような苦しみがもともとある場合は、このコミットメントに意識を向けることで、苦しみにばかり意識が向かなくなり、苦しみに振り回されることが減っていき、アクセプタンスが進むでしょう。もちろん、アクセプタンスがもともとある程度進んでいることで、現在の苦しみから未来に目が向き、コミットメントがはっきりしてくるでしょう。このように、アクセプタンスとコミットメントは、相互作用します。それでは、以下のケースはどうでしょうか? 難病によって大好きだった野球ができない人生は終わりだと嘆くクライアントがいます。彼のコミットメントは、野球をすることでしょうか? すると、彼にはコミットメント自体がないことになるでしょうか? そんなことはないです。彼のコミットメントとして、野球そのものではなく、野球をすることで得られる価値を考えてもらうことができます。それは、チームプレイによる信頼感、野球のゲーム性の魅力、体を動かす喜びなどいろいろ考えられます。それをはっきりさせて、その価値に沿う新たな行動をしてもらうのです。たとえば、それは仕事仲間とのコミュニケーションを増やしたり、野球の観戦をしたり、難病に差し障らない運動をすることです。また、うつ病によって結婚できずに子どももいない人生は意味がないと嘆くクライアントがいます。彼女のコミットメントは、家庭生活を送ることでしょうか? すると、彼女にはもうコミットメントを見いだすことは難しいでしょうか? そんなことはないです。彼女のコミットメントとして、家庭生活そのものではなく、家庭生活で得られる価値を考えてもらうことができます。それは、支え合う安心感、お世話をする喜びなどが考えられます。それをはっきりさせて、その価値に沿う新たな行動をしてもらうのです。たとえば、それはピアサポート(自助グループ)に参加したり、シェアハウスに入居したり、趣味の仲間同士でつながったり、友人の相談に乗ったり、ペットを飼うことです。コミットメントは、「お葬式のメタファー」でイメージアップすることができます。まず、「もしも自分が今死んだとしたら、お葬式に誰が来る?」「その人たちは何て言う?」と考えます。次に、「何十年か生きたあとで死んだとしたら、誰に来てほしい? 何て言ってほしい?」とさらに考えます。この2つの質問の答えの違いから分かることは、自分は何(誰)を大切にしたいのか、そして自分はどうなりたいのかという人生の方向性です。これが、人生の価値です。それは、ゴールとして終わるものではなく、方向として果てしなく続くプロセスです。そして、またその方向のほとんどは、人とつながることです(向社会性)。その「人生の地平線」に向かって、自分が日々どう行動するかは自分自身が一番よく知っているというわけです。ちなみに、映画のラストで戦いが終わり、立ち去るニールが名もなき男に見送られるシーンは、この「お葬式のメタファー」を想起させます。ACTのコミットメントは、こうありたいという心を膨らませることとも言えます。これは、ブリーフセラビーの「北極星のメタファー」、対人関係療法の「重要な他者」、マズローの「自己実現欲求」に重なります。ブリーフセラピーの詳細については、末尾の関連記事2をご参照ください。また、自己実現欲求や人生の価値が向社会性である理由やその起源の詳細については、末尾の関連記事3をご参照ください。 癒しにならないクライエントは?ACTの要素にニールのセリフを重ね合わせて、ACTの意味や効果を説明しました。ACTの適応対象は、セラピーとして幅広いです。ただし、やはり万能ではありません。ここから、癒しにならない場合、つまり適応対象にならないクライエントのケースを挙げてみましょう。知的障害や認知機能低下(認知症)など考えることにそもそも限界がある(知的レベルが低い)何(誰)かを大切にしたいという発想がそもそもなく自己本位である(向社会性が低い)こうあるべき(主流秩序)を貫くことが自分の生き方(価値)であると確信している苦しみを表現して周りからの援助を引き出すことが本人の生き方(アイデンティティ)になっている(シックロール)時間を考えるとは?動物は、過去を振り返ることも未来を見通すこともなく、時間を考えることはありません。その瞬間を本能的に反射的に生きています。そして、苦しみがあっても、コントロールしようとはしないです。人間(人類)も、20万年前まではそうでした。しかし、20万年前から言葉を話すようになり、言葉によって世界を認識し、時間を認識し、世界をコントロールするようになりました。一方で、人間は、言葉に、自分が学習した善悪のイメージ(認知)を融合させてしまうようにもなりました(認知的フュージョン)。皮肉にも、その言葉によって、自分が思い浮かべた言葉のイメージに引っ張られる、つまり、逆にコントロールされてしまい、コントロールできなくなることに苦しむようにもなったのでした。たとえば、いきなり「自殺」という言葉を聞いたら、その瞬間、私たちは緊張が走ります。差別用語や放送禁止用語なら、なおさらでしょう。また、特定の言葉を聞いただけで、かつての嫌な記憶を思い出して苦しむことも当てはまります。ACTの核心は、まさにこの言葉とイメージの融合を分離して、言葉そのものに間合いをとることです(脱フュージョン)。たとえば、先ほどの「自殺」という言葉を「ジ・サ・ツ」と単調に繰り返し言い続けていると、逆にこの言葉の意味が分からなくなることに気付きます(意味の飽和)。このように、言葉の「魔力」の揺らぎを感覚的に理解することができます。言葉を俯瞰することが、アクセプタンスです。そして、時間を俯瞰することが、コミットメントとも言えます。私たちは苦しみにぞっとして絶望を抱くことも、その苦しみをそっとしておいて希望を抱くこともできます。そのどちらの「地平線」に向かうのか、向かいたいのかはやはり私たち次第であるということです。ニールたちは、時間を逆行しました。私たちは、時間を逆行することはできないですが、未来への視点(価値)を持ち、逆算して今どう行動すれば良いかを考えることができます。これこそが、時間を考えることと言えるのではないでしょうか? ■関連記事1.「ZOOM」「RE-ZOOM」【どうキレキレに冴え渡る?(マインドフルネス)】2.東京タラレバ娘【ブリーフセラピーとは?】3.恥ずかしいけど口に出したら幸せになるカード【これで「コロナ離婚」しなくなる!(レクリエーションセラピー)】1)テネット映画パンフレット:岩田康平、松竹株式会社、20202)マインドフルネスそしてACTへ:熊野宏昭、星和書店、20113)こころのりんしょうa・la・carte ACT:熊野宏昭ほか、星和書店、2009 2ページ目【ネタバレ】これからこの映画を見る人は、2ページ目はネタバレになりますので、ご注意ください。(1)ニールの正体は?(2)ニールのコミットメントは?(3)なんで戦いのラストシーンが「お葬式のメタファー」なの?次のページへ >>

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睡眠時間がうつ病やQOLに及ぼす影響~日本におけるインターネット調査

 日中の眠気や睡眠障害の有無で調整後の一般集団における睡眠時間とQOLまたはうつ病との関連を評価した研究は、これまでなかった。国立精神・神経医療研究センターの松井 健太郎氏らは、これらの関連を調査するため、Webベースの横断調査を実施した。Sleep Medicine誌オンライン版2020年10月15日号の報告。 対象は、20~69歳の8,698人。平日の睡眠時間、日中の眠気、睡眠障害、QOL、うつ病との関連を調査した。エプワース眠気尺度、ピッツバーグ睡眠質問票(睡眠時間の項なし)、健康関連QOL評価尺度SF-8、CES-Dうつ病自己評価尺度を用いて評価を行った。 主な結果は以下のとおり。・日中の眠気は、平日の睡眠時間が短くなるにつれ、増加傾向が認められた。・睡眠時間が7~8時間の人と比較し、睡眠時間が短い人および長い人では、睡眠障害、身体的および精神的QOL、CES-Dスコアの悪化が認められた。・階層的ロジスティック回帰分析では、日中の眠気と睡眠障害の有無で調整した後でも、睡眠時間が短い人では、身体的および精神的QOLの低下と有意な関連が認められた。・日中の眠気で調整した後、睡眠時間が短い人および長い人では、独立してうつ病との有意な関連が認められた。しかし、睡眠障害で調整した後では、統計学的に有意な関連は認められなかった。 著者らは「睡眠時間の短さは、身体的および精神的QOLの低下との関連が認められた。また、うつ病に及ぼす影響は、睡眠時間の短さよりも、特定の睡眠障害と関連している可能性が示唆された」としている。

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双極性障害患者の加齢に伴う白質の変化

 双極性障害(BD)では、加齢に伴う白質の変化が報告されている。しかし、この加齢に伴う変化が、疾患特有のものであるかはよくわかっていない。広島大学の増田 慶一氏らは、うつ病およびBD患者と健康対照者(HC)の加齢に伴う白質の変化を年齢別に調査し、年齢を制御することにより疾患特有の影響を評価した。Psychiatry and Clinical Neurosciences誌オンライン版2020年10月22日号の報告。 対象は、HC群96例(20~77歳)、うつ病群101例(25~78歳)、BD群58例(22~76歳)。54の白質路における拡散テンソル画像から得た異方性(fractional anisotropy:FA)を比較するため、年齢の線形効果および2次効果で制御した後、一般線形モデルを用いた。年齢に伴う影響および各群の相互の影響は、モデルにより評価した。 主な結果は以下のとおり。・加齢に伴う白質の有意な変化は、年齢の線形効果および2次効果で制御した後では、左側脳弓柱および脳弓体で認められ、年齢の2次効果で制御した後では、左側脳梁体で認められた。・BD群は、ほかの群と比較し、FAが有意に低かった。・各群における年齢による影響に違いは認められなかった。 著者らは「年齢で制御した後、BD群では有意なFAの低下が認められた。BDの白質異常は、年齢とともに進行するわけではなく、若年層で発生する可能性があることが示唆された」としている。

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糖尿病患者は自殺死のリスクが○倍?

 糖尿病は、正常血糖と比較して自殺死のリスクが高かったことが、国立国際医療研究センターの福永 亜美氏らによって報告された。Journal of Psychosomatic Research誌2020年11月号に掲載。 本研究は、日本の労働人口における糖尿病および境界型糖尿病と自殺の関連を調査する目的で、労働衛生研究のデータを使用し実施された。 8年間の追跡調査中に、自殺前の過去3年間の健康診断で、空腹時血糖値またはHbA1cに関する情報があった56例の自殺死の症例を特定。年齢、性別、職場が一致する5つのコントロールをランダムに選択。分析には最新の健康診断データを使用した。米国糖尿病学会の基準に基づき糖尿病の状態を定義し、条件付きロジスティック回帰モデルを使用して関連を調査した。 正常血糖と比較した糖尿病と境界型糖尿病における自殺死の関連性については以下のとおりである。・正常血糖と比較した自殺死は、境界型糖尿病で0.67倍、糖尿病で3.53倍であった。・糖尿病の状態を空腹時血糖値またはHbA1cで定義した場合でも、自殺の関連性は同様の結果であった。

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禁煙とうつ病~メタ解析

 禁煙は健康、とくにメンタルヘルスに好影響を及ぼす可能性がある。イラン・Baqiyatallah University of Medical SciencesのSohrab Amiri氏は、禁煙者におけるうつ病有病率を明らかにするため、検討を行った。Journal of Addictive Diseases誌オンライン版2020年10月21日号の報告。 PRISMAガイドラインを用いて、メタ解析を実施した。2020年7月までに英語で報告された研究を、PubMed、Scopusより検索した。うつ病の有病率に関連する結果を算出し、プールした。 主な結果は以下のとおり。・研究デザインの異なる49研究が抽出された。・禁煙者のうつ病有病率は18%(信頼区間[CI]:14~22%)であった。・うつ病の有病率が最も高かったのは、アジアと欧州、次いで米国であった。・禁煙者の大うつ病有病率は15%、うつ症状の有症率は17%であった。・禁煙者は、現在の喫煙者と比較し、うつ病のオッズ比が低かった(オッズ比:0.63、CI:0.54~0.75、I2=83.9%)。・出版バイアスは、ほとんど認められなかった。 著者らは「禁煙者のうつ病有病率は、非喫煙者や現在の喫煙者とは異なっていた。健康政策および禁煙を推奨するという観点から、メンタルヘルスへの好影響を考慮する必要がある」としている。

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双極性障害の自殺リスクと関連因子

 双極性障害(BD)の重要な特徴の1つとして、非精神医学的合併症や自殺による過剰な死亡リスクとの関連が挙げられる。米国・ハーバード大学医学大学院のLeonardo Tondo氏らは、BDにおける自殺の状況をレビューし、自殺リスクを予防できる可能性を検討した。Bipolar Disorders誌オンライン版2020年10月9日号の報告。 BDにおける自殺に関連する最近の研究報告についてセミシステマティックレビューを実施した。 主な結果は以下のとおり。・BDの自殺リスクは、ほかの多くの精神疾患よりも高くなる。・成人、青年の一般集団およびBD患者の自殺率は、それぞれ以下のとおりであった。 ●成人一般集団:約11/10万人年 ●青年一般集団:約4/10万人年 ●成人BD患者:200/10万人年以上 ●青年BD患者:100/10万人年・BD患者の自殺企図の割合は、一般集団と比較し、成人で20倍以上、青年で50倍以上であった。・BD患者の自殺の主なリスク因子は以下のとおりであった。 ●自殺行為歴 ●うつ病 ●興奮と不安の混合状態 ●急速な気分変化 ●衝動性 ●薬物乱用の併発・BDの自殺予防に対する治療法は、不十分であった。・いくつかの有用な治療法が発見されているが、リチウム治療を支持するエビデンスは、ほかの治療法よりも有望であった。 著者らは「BD患者のケアを行ううえで、自殺は重要な臨床的課題である。BD患者の自殺リスクと保護因子を理解し、適切なフォローアップを行うことで、自殺リスクの抑制につながると考えられる。とくに、BD患者の自殺予防を目的とし、適切に設計された科学的エビデンスの必要性が示唆された」としている。

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統合失調症の日本人高齢者に対するブレクスピプラゾールの長期有効性、安全性

 東京女子医科大学の稲田 健氏らは、統合失調症の日本人高齢者に対するブレクスピプラゾールの長期的な有効性、安全性、忍容性を評価するため、検討を行った。Neuropsychiatric Disease and Treatment誌2020年10月6日号の報告。 4週間の切り替え期間と52週間の非盲検期間の2つのフェーズで構成された56週間にわたるブレクスピプラゾール長期試験の事後分析を行った。陽性・陰性症状評価尺度(PANSS)合計スコアの平均変化量、治療反応率、治療中に発現した有害事象(TEAE)の数と発生率、その他の安全性パラメータの分析には、年齢層ベース(65歳以上の高齢者と65歳未満の非高齢者)の記述統計学を用いた。 主な結果は以下のとおり。・208例中33例が高齢者であった。・高齢者の治療継続率は54.5%であり、56週目のブレクスピプラゾールの1日投与量および治療期間は、非高齢者と同様であった。・ベースラインから56週目までのPANSS合計スコアの平均変化量は、高齢者で-13.8であり、非盲検期間を通じて改善効果は維持された。・非高齢者のPANSS合計スコアの平均変化量は-9.0であり、高齢者と同等であった。・TEAEの発生率は、高齢者で97.0%、非高齢者で82.3%であった。・高齢者におけるTEAEの重症度は、ほとんどが軽度(75.8%)または中等度(18.2%)であり、治療中止に関連するTEAEの発生率は、非高齢者(13.1%)よりも高齢者(9.1%)のほうが低かった。・高齢者における主な有害事象は、鼻咽頭炎(30.3%)、統合失調症症状の悪化(27.3%)であった。・安全性プロファイルは、高齢者と非高齢者で類似していた。 著者らは「ブレクスピプラゾールは、日本人高齢者の統合失調症治療に対し安全かつ効果的であることが示唆された」としている。

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