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「セレネース」の名称の由来は?【薬剤の意外な名称由来】第58回

第58回 「セレネース」の名称の由来は?販売名セレネース錠0.75mgセレネース錠1mgセレネース錠1.5mgセレネース錠3mgセレネース細粒1%セレネース内服液0.2%※セレネース注5mgのインタビューフォームは異なるため、今回は情報を割愛しています。ご了承ください一般名(和名[命名法])ハロペリドール(JAN)効能又は効果統合失調症、躁病用法及び用量(セレネース錠0.75mg/錠1mg/錠1.5mg/錠3mg/細粒1%)ハロペリドールとして、通常成人1日0.75~2.25mgから始め、徐々に増量する。維持量として1日3~6mgを経口投与する。なお、年齢、症状により適宜増減する。(セレネース内服液0.2%)ハロペリドールとして、通常成人1日0.75~2.25mg(0.375~1.125mL)から始め、徐々に増量する。維持量として1日3~6mg(1.5~3mL)を経口投与する。なお、年齢、症状により適宜増減する。警告内容とその理由該当しない禁忌内容とその理由(原則禁忌を含む)禁忌(次の患者には投与しないこと)1.昏睡状態の患者[昏睡状態が悪化するおそれがある。]2.バルビツール酸誘導体等の中枢神経抑制剤の強い影響下にある患者[中枢神経抑制作用が増強される。]3.重症の心不全患者[心筋に対する障害作用や血圧降下が報告されている。]4.パーキンソン病又はレビー小体型認知症の患者[錐体外路症状が悪化するおそれがある。]5.本剤の成分又はブチロフェノン系化合物に対し過敏症の患者6.アドレナリンを投与中の患者(アドレナリンをアナフィラキシーの救急治療に使用する場合を除く)7.妊婦又は妊娠している可能性のある婦人※本内容は2021年6月30日時点で公開されているインタビューフォームを基に作成しています。※副作用などの最新の情報については、インタビューフォームまたは添付文書をご確認ください。1)2021年5月改訂(第27版)医薬品インタビューフォーム「セレネース®錠0.75mg/錠1mg/錠1.5mg/錠3mg、セレネース®細粒1%、セレネース®内服液0.2%」2)大日本住友製薬:製品基本情報

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産後のうつ病やQOLに対するアクアエクササイズの効果

 産後うつ病の有病率は、約20%といわれており、女性、乳児、そしてその家族に深刻な影響を及ぼす疾患である。スペイン・Hospital Comarcal de IncaのAraceli Navas氏らは、出産後1ヵ月間の産後うつ病、睡眠障害、QOLに対する中~強度のアクアエクササイズプログラムの有効性および安全性を評価するため、ランダム化臨床試験を実施した。Journal of Clinical Medicine誌2021年5月30日号の報告。 プライマリケア環境下における評価者盲検多施設共同並行群間ランダム化対照試験を実施した。スペイン・マヨルカ島のSon Llatzer Hospital産科部門が管轄する5つのプライマリケアセンターより、合併症リスクの低い妊娠14~20週の妊婦を募集した。妊婦320人は、中~強度のアクアエクササイズケアを行う群(介入群)と通常ケアを行う群(対照群)にランダムに割り付けられた。出産後1ヵ月における睡眠の質(MOS睡眠尺度)、QOL(QOL評価尺度:EQ-5D)、不安または抑うつ症状(エジンバラ産後うつ病自己評価尺度:EPDS)を評価した。 主な結果は以下のとおり。・介入群では、EQ-5Dにおいて不安または抑うつ症状の報告が少なく(11.5% vs.22.7%、p<0.05)、平均EPDSスコアが低かった(6.1±1.9 vs.6.8±2.4、p<0.010)。・両群共に、その他のアウトカム、母体の有害事象、新生児の状態に有意な違いは認められなかった。 著者らは「妊娠中の中~強度のアクアエクササイズは、産後女性の不安や抑うつ症状を軽減し、母子双方にとって安全である」としている。

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抗精神病薬による体重増加と臨床効果との関係

 これまでの研究において、抗精神病薬で治療中の慢性期統合失調症患者では、体重増加と精神病理学的改善効果の関連が示唆されている。しかし、多くの交絡因子の影響により、その結果は一貫していない。中国・首都医科大学のYing Qi Chen氏らは、抗精神病薬未治療の初回エピソード統合失調症患者において、体重増加が抗精神病薬の治療効果と関連しているかについて、調査を行った。The Journal of Clinical Psychiatry誌2021年5月11日号の報告。 抗精神病薬未治療の初回エピソード統合失調症患者526例と健康対照群313例を対象に、8週間のプロスペクティブ研究を実施した。研究実施期間は、2012年1月~2018年12月。治療効果は、ベースライン時およびフォローアップ時の陽性・陰性症状評価尺度(PANSS)により評価した。体重は、ベースライン時と治療開始8週間後に測定した。 主な結果は以下のとおり。・抗精神病薬治療によりPANSSスコアは、以下のように有意な改善が認められた。 ●陽性尺度:-10.40(95%CI:-9.31~-10.60) ●陰性尺度:-5.01(95%CI:-4.43~-5.54) ●総合精神病理尺度:-13.01(95%CI:-12.01~-14.01) ●合計スコア:-28.53(95%CI:-26.73~-30.33)・抗精神病薬未治療の初回エピソード統合失調症患者の平均体重は、2.89kg(95%CI:2.55~3.22)の増加が認められたが、健康対照者の平均体重よりも依然として低値であった。・抗精神病薬治療により体重が7%以上増加した患者の割合は、38.2%であった。・体重増加とPANSS陽性尺度、総合精神病理尺度、合計スコアの減少との間に、正の相関が認められた(各々、p<0.05)。・多重線形回帰分析では、ベースライン時の体重、PANSS合計スコアの減少、性別と治療後の体重増加との間に有意な関連が認められた。 著者らは「抗精神病薬未治療の初回エピソード統合失調症患者に対する8週間の抗精神病薬治療後の体重増加は、臨床症状改善と有意な関連が認められた」としている。

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統合失調症外来患者におけるLAI治療中止の予測因子

 重度の精神疾患のマネジメントにおいて、患者の主観的な経験や態度は、重要であると考えられる。イタリア・フィレンツェ大学のLorenzo Tatini氏らは、臨床的に安定した統合失調症外来患者を対象に、経口抗精神病薬から長時間作用型抗精神病薬の維持療法(LAI-AMT)へ切り替え後の治療継続に影響を及ぼす予測因子の潜在的な役割について評価を行った。International Clinical Psychopharmacology誌2021年7月1日号の報告。 6ヵ月以上のLAI-AMTを受けた統合失調症患者59例のデータをレトロスペクティブに収集した。LAI治療を継続した患者と中止した患者を比較するため、ベースライン時の社会人口統計学的および臨床的特徴、精神病理学的特徴(PANSS、MADRS、YMRS)、薬に対する構えの調査(DAI-10)および抗精神病薬治療下主観的ウェルビーイング評価尺度短縮版(SWNS)で収集した治療経験を評価した。LAI治療中止の予測因子を特定するため、二値ロジスティック分析およびCox回帰分析を用いた。特性の異なるサブサンプルにおけるLAI治療継続と中止を比較するため、Kaplan-Meier推定量を用いた。 主な結果は以下のとおり。・LAI治療を継続した患者は32例、中止した患者は27例であった。・LAI-AMT中止の予測因子は、失業とベースライン時のDAI-10スコアの低さであった。・その他の人口統計学的、臨床的、精神病理学的特徴に、大きな差は認められなかった。 著者らは「経口抗精神病薬からLAI-AMTへ切り替えを行う場合、DAI-10の評価が臨床的に重要であり、治療中止リスクのある患者を特定することが可能である」としている。

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インターネット配信によるアトピー性皮膚炎の認知行動療法

 インターネットを利用した認知行動療法(CBT)は、アトピー性皮膚炎の症状を改善する効果がみられ、治療者が費やす時間や手間などは少なくて済むことが示された。スウェーデン・カロリンスカ研究所のErik Hedman-Lagerlof氏らが行った無作為化試験の結果、明らかになった。アトピー性皮膚炎の皮膚症状は共通しており、激しいかゆみと慢性炎症による衰弱した皮膚の状態で特徴付けられ、アクセシビリティの高い行動療法が必要とされていた。結果を踏まえて著者は、「インターネットを利用したCBTは、共通した皮膚症状を有する患者に対して、効果的な補助行動療法へのアクセスを潜在的に増やすものである」とまとめている。JAMA Dermatology誌オンライン版2021年5月19日号掲載の報告。 研究グループは、成人アトピー性皮膚炎患者に対するインターネットを利用した拡張性の高いCBTの有効性を調べるため、スウェーデンのストックホルムにある医科大学で無作為化試験を実施した。 スウェーデン全国から102例の成人アトピー性皮膚炎患者を集め、1対1の割合で無作為に2群に割り付け、一方には12週間にわたる治療者ガイド下のインターネットCBTを提供し(51例)、もう一方には標準ケアについて示した説明書を与えた(対照群51例)。介入は2017年3月29日~2018年2月16日に行われた。最初の被験者がスクリーニングデータを提供したのは2016年11月27日、最後の1年フォローアップの評価が行われたのは2019年6月28日であった。 主要アウトカムは、Patient-Oriented Eczema Measureで測定したアトピー性皮膚炎の症状軽減の群間平均差で、12週の治療期間中のintention to treatをモデル化した。 主な結果は以下のとおり。・無作為化を受けた102例は、平均年齢37(SD 11)歳、女性が83例(81%)であった。・主要解析の結果、インターネットCBTを受けた患者は対照群と比較して、Patient-Oriented Eczema Measureで測定したアトピー性皮膚炎症状の週当たりの軽減平均値が有意に大きく(B=0.32、95%信頼区間[CI]:0.14~0.49、p<0.001)、治療後の調整後効果量は中等量~大量であった(d=0.75、95%CI:0.32~1.16)。・副次解析において、インターネットCBTは、かゆみの激しさ、知覚ストレス、睡眠障害、うつ病も、有意に大幅に改善することが示唆された。・それらの恩恵は、フォローアップ12ヵ月時点でも維持されていた。・治療満足度は高く、また、治療者がインターネットCBT提供に要したのは、患者1人当たり平均39.7(SD 34.7)分であった。

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統合失調症患者における重度心血管疾患の有病率

 フランス・ロレーヌ大学のJ-C Marche氏らは、統合失調症患者における入院が必要な重度の心血管疾患の有病率について、調査を行った。L'Encephale誌オンライン版2021年5月20日号の報告。 2015年にフランスの精神科病院5施設に入院した統合失調症または精神疾患患者を対象とし、調査を行った。心血管疾患患者の定義は、精神科入院前の5年または入院後の3年に一般病院での入院対応歴(ICD-10コード)を有する患者とした。心血管疾患には、心筋梗塞、脳卒中、心不全、冠動脈疾患、末梢動脈疾患を含めた。高血圧、肥満、糖尿病などのリスク因子についてのデータを収集した。 主な結果は以下のとおり。・統合失調症患者は、合計4,424例であった。・心血管疾患と診断された患者は、203例(4.6%)であった。内訳は、冠動脈疾患93例(2.1%)、心不全86例(1.9%)、脳卒中49例(1.1%)であった。・リスク因子の有病率は、高血圧11.3%、肥満9.7%、糖尿病7.8%であった。・心筋梗塞患者の年齢中央値は57歳(四分位範囲:49~70歳)、糖尿病患者の年齢中央値は56歳(四分位範囲:48~66歳)であった。 著者らは「統合失調症患者は、早期に入院が必要な重度の心血管疾患を発症するリスクが高い。これには、リスク因子の有病率の高さが関連していると考えられる。心血管疾患およびリスク因子の早期スクリーニングと治療は、統合失調症患者の生命予後やQOLを改善するために重要であろう」としている。

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うつ病エピソードや抗うつ薬使用が小児双極性障害に及ぼす影響

 小児双極性障害は、重度の機能障害につながる重篤な再発性疾患である。そして、最初に発現する気分エピソードが、疾患の長期的な経過に影響を及ぼす可能性がある。トルコ・Dokuz EylulUniversityのNeslihan Inal氏らは、全国多施設自然主義的フォローアップ調査のサンプルより小児双極性障害の臨床的特徴を評価し、躁症状発症年齢に対する最初の気分エピソードおよび以前の抗うつ薬治療効果の影響について検討を行った。Acta Psychiatrica Scandinavica誌オンライン版2021年6月2日号の報告。 双極I型障害の若年患者271例を対象に、トルコの代表的な6つの地域にある大学病院7施設と州立研究病院3施設の児童思春期精神科クリニックでフォローアップを行った。すべての診断は、構造化面接に従って実施した。すべてのデータは、臨床医が記録した診療データよりレトロスペクティブに収集した。 主な結果は以下のとおり。・最初に発現した気分エピソードがうつ病/混合エピソードの患者(IDE群)は129例、躁病エピソードの患者(IME群)は142例であった。・気分エピソードおよびラピッドサイクリングの総数は、IME群よりもIDE群で有意に多かった。・社会人口統計および疾患の特徴で調整したCox回帰分析では、抗うつ薬治療を受けたIDE群の思春期女性において、より早期に躁病を発症する可能性が高いことが示唆された(ハザード比:2.03、95%信頼区間:1.31~3.12、p=0.001)。 著者らは「本研究は、トルコで初めて実施された大規模フォローアップ調査であり、抗うつ薬治療経験のある若年者、とくに思春期の女性において、躁病の早期発症との関連が認められた。小児双極性障害の根底にある神経発達のプロセスを特定し、予防に対するアプローチを行うためには、より大規模なプロスペクティブ研究が必要である」としている。

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精神症状の早期出現と治療抵抗性統合失調症との関係

 早期発症の統合失調症患者(EOS)では、臨床経過がより不良となることがこれまでの研究で報告されているが、研究結果には不均一性が存在する。イタリア・University School of Medicine Federico IIのFelice Iasevoli氏らは、治療抵抗性統合失調症(TRS)と発症年齢との関連について、調査を行った。Early Intervention in Psychiatry誌オンライン版2021年5月16日号の報告。 非情動性精神疾患患者197例をスクリーニングした。そのうち、統合失調症に罹患していた99例はTRSの可能性があり、抗精神病薬の治療反応を評価するための4~8週間プロスペクティブ研究に登録された。発症年齢(18歳以下:EOS、18歳以上:AOS)と治療抵抗性の状態により、対象患者を4群(EOS-TRS、EOS-nonTRS、AOS-TRS、AOS-nonTRS)に分類した。複数の臨床変数を測定し、年齢を共変量として用いて共分散分析(ANCOVA)による比較を行った。統計学的に有意な差が、治療抵抗性の状態または発症年齢に起因するかを評価するため、二元配置分散分析(ANOVA)を用いた。 主な結果は以下のとおり。・TRS患者の割合は、AOSよりもEOSで有意に高かった。・ANCOVAでは、EOS-TRS群はそれ以外の群と比較し、臨床アウトカム、認知機能アウトカム、心理社会的アウトカムが有意に不良であった。・全体として、EOS-TRS群では、EOS-nonTRS群よりも機能が損なわれていたが、AOS-TRS群との有意差は、かなりの程度で認められるものの、一貫性が低下した。・ANOVAでは、調査した変数の大部分において、群間の有意差は、発症年齢や複合的な作用ではなく、治療抵抗性の状態に起因していた。 著者らは「一般的な神経生理学のアウトカムとして、抗精神病薬に対する治療抵抗性は、精神疾患の早期発症と強く相関する可能性が示唆された」としている。

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統合失調症の認知機能とキノリン酸との関連

 トリプトファンとその代謝産物(TRYCATs)は、統合失調症うつ病の病態生理に影響する末梢免疫系の活性化や中枢神経伝達物質の異常と関連することが示唆されている。しかし、これらの疾患におけるさまざまな精神病理的な関連は、まだ解明されていない。スイス・チューリヒ大学のFlurin Cathomas氏らは、統合失調症およびうつ病患者におけるTRYCATsの潜在的な違いを調査し、認知機能への影響について検討を行った。Scientific Reports誌2021年5月11日号の報告。 統合失調症患者45例、うつ病患者43例、健康対照者19例を対象に、血漿中のトリプトファン、キヌレニン、キヌレン酸、3-ヒドロキシキヌレニン、キノリン酸の違い、血漿タンパク質と認知機能との関連を調査した。 主な結果は以下のとおり。・年齢、性別、BMI、喫煙、投薬の共変量で調整した後、うつ病患者は、健康対照者と比較し、キヌレニンと3-ヒドロキシキヌレニンのレベルが低かった。・統合失調症患者では、キノリン酸と複合的な認知機能スコアとの負の相関が認められ。より重篤な認知機能障害は、キノリン酸の血漿レベルの上昇との関連が認められた。この関連は、うつ病患者では認められなかった。 著者らは「統合失調症うつ病では、キヌレニン経路の調節不全が関連していると考えられる。キノリン酸は、統合失調症患者の認知機能の病態生理ととくに関連している可能性が示唆された。これら神経精神疾患の病因とTRYCATsとの因果関係を判断するためには、さらなる研究が必要とされる」としている。

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統合失調症患者における抗精神病薬の剤型と自殺および死亡リスクとの関連

 統合失調症は、死亡リスクが高いことから、最も深刻な精神疾患の1つとして考えられており、この死亡リスクの減少に寄与する方法を明らかにするための研究が行われている。台湾・Bali Psychiatric CenterのCheng-Yi Huang氏らは、長時間作用型注射剤(LAI)とすべての原因、自然死、自殺による死亡リスクとの関連を調査し、新規統合失調症患者におけるLAIの早期使用の影響について、検討を行った。JAMA Network Open誌2021年5月3日号の報告。 台湾全民健康保険研究データベースを用いて、2002~17年に経口抗精神病薬(OAP)治療を行った統合失調症患者を対象に、人口ベースのコホートを構築した。本コホートにおけるLAI群の定義は、LAIへの切り替え、1年間で4回以上のLAI使用とした。LAI群は、同成分のOAP治療を行った患者と1対1でマッチした。抗精神病薬の投与経路変更、死亡、研究期間終了(2018年末)のいずれか早いほうまで、すべての患者をフォローアップした。データ分析は、2002年1月~2018年12月に実施した。主要アウトカムは、すべての原因による死亡率、自然死死亡率、自殺による死亡率、自殺企図とした。 主な結果は以下のとおり。・対象は、LAI群2,614例(年齢中央値:30歳、四分位範囲[IQR]:23~39歳)、OAP群2,614例(年齢中央値:30歳、IQR:23~39歳)。両群共に、男性患者の割合は51.0%(1,333例)であった。・16年のフォローアップ期間中(中央値:14年、IQR:10~17年)におけるLAI群のすべての原因による死亡リスク、自然死死亡リスク、自殺企図発生率は、OAP群と比較し低かった。 ●すべての原因による死亡(調整ハザード比[aHR]:0.66、95%CI:0.54~0.81) ●自然死(aHR:0.63、95%CI:0.52~0.76) ●自殺企図(発生率比:0.72、95%CI:0.55~0.93)・OAP開始2年以内にLAIに切り替えた患者では、自殺による死亡リスクが47%低下した(aHR:0.53、95%CI:0.30~0.92)。 著者らは「新規統合失調症患者におけるLAI使用は、すべての原因による死亡リスクや自殺リスクの低下と関連していることが示唆された。さらに、OAP開始2年以内の早期にLAI治療を開始することで、自殺による死亡リスクの低下が期待できる。そのため、新規統合失調症患者に対する初期段階でのLAI使用は、積極的に検討する必要がある」としている。

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日本における統合失調症患者の早期再入院の減少につながる院内看護

 統合失調症は、精神症状の再発を特徴とする疾患である。統合失調症入院患者の15~30%は、退院後90日以内に自傷行為、他傷行為、セルフネグレクトにつながる症状の悪化により再入院している。椙山女学園大学の牧 茂義氏らは、統合失調症患者の早期再入院減少につながる院内看護の構造およびその予測因子を調査するため、横断的研究を行った。PLOS ONE誌2021年4月30日号の報告。 調査対象は、日本の精神科病棟に勤務する正看護師724人。統合失調症患者の早期再入院の減少につながる院内看護について評価するため、質問票を新たに作成した。質問票を用いて、項目分析、探索的因子分析を行い、早期再入院減少につながる院内看護の構造を調査した。 主な結果は以下のとおり。・早期再入院の減少につながる院内看護の因子は、以下の5つであった。 ●認知機能とセルフケアの促進 ●再入院の理由の特定 ●コミュニティーでの協力体制の確立 ●コミュニティー生活に関する目標共有 ●安らぎの空間・早期再入院の減少につながる院内看護を予測する因子は、以下の3つであった。 ●臨床実践における病棟看護師用尺度(nursing excellence scale)のスコア ●治療的な関心のスコア ●退院前カンファレンスへの地域ケア提供者の参加 著者らは「日本の精神科看護師は、早期入院の減少につながる5つの因子に基づいて看護を行っている。このような看護ケアは、看護師の優秀さだけでなく、看護師の環境的要因、とくに病棟の治療環境や退院前のカンファレンスへの地域ケア提供者の参加によってさらに促進されるであろう」としている。

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急性期統合失調症におけるルラシドンの有効性と安全性

 千葉大学の伊豫 雅臣氏らは、日本および世界各国における急性期統合失調症に対するルラシドンの有効性を評価するため、検討を行った。Psychiatry and Clinical Neurosciences誌オンライン版2021年4月23日号の報告。 18~74歳の統合失調症患者483例を対象に、ルラシドン40mg/日(ルラシドン群)またはプラセボ群にランダムに割り付けた。有効性の主要エンドポイントは、6週間後の陽性・陰性症状評価尺度(PANSS)合計スコアのベースラインからの変化とし、副次的エンドポイントは、臨床全般印象度の重症度(CGI-S)スコアの変化とした。安全性のエンドポイントには、有害事象、検査値、心電図のパラメータを含めた。 主な結果は以下のとおり。・対象患者には、日本人が107例含まれた。・ベースラインから6週間後のPANSS合計スコアの平均変化量は、ルラシドン群で-19.3、プラセボ群で-12.7であった(治療による差:p<0.001、エフェクトサイズ:0.41)。・ベースラインから6週間後のCGI-Sスコアの変化量は、ルラシドン群で-1.0、プラセボ群で-0.7であった(治療による差:p<0.001、エフェクトサイズ:0.41)。・6週間でのすべての原因による中止率は、ルラシドン群で19.4%、プラセボ群で25.4%であった。有害事象による中止率は、ルラシドン群で5.7%、プラセボ群で6.4%であった。・ルラシドン群の2%以上で認められ、その発生率がプラセボ群の2倍以上であった主な有害事象は、アカシジア(4.0%)、めまい(2.8%)、傾眠(2.8%)、腹部不快感(2.0%)、疲労感(2.0%)であった。・体重および代謝パラメータに有意な変化は認められなかった。 著者らは「日本人を含む急性期統合失調症患者に対するルラシドン40mg 1日1回による治療は、有効性が確認され、一般的に安全かつ忍容性が良好な治療法である」としている。

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統合失調症における血清脂質と自殺リスク~メタ解析

 統合失調症スペクトラム障害患者における血清脂質と自殺リスクとの関連を明らかにするため、オーストラリア・ウェスタンシドニー大学のAnoop Sankaranarayanan氏らは、システマティックレビューおよびメタ解析を実施した。Acta Psychiatrica Scandinavica誌オンライン版2021年4月9日号の報告。 2020年9月2日までに公表された成人の統合失調症スペクトラム障害患者(18~65歳)における血清脂質と自殺リスクとの関連を調査した研究を、複数のデータベースよりシステマティックに検索した。定性分析には、米国国立衛生研究所(NIH)スケールを用いた。標準平均差(SMD)および95%信頼区間(CI)は、各研究で算出し、相対的に標準化した。調整されたp値、Z検定、不均一性を算出し、出版バイアスのテストも行った。 主な結果は以下のとおり。・抽出された1,262件中17件(3,113例)がシステマティックレビューに含まれ、そのうち11件をメタ解析に含めた。・大部分の研究(11件)は、定性分析で公正と評価された。・7件の研究データ(1,597例)より、総コレステロールの低さと自殺企図との関連が認められた(エフェクトサイズ:中程度、SMD:-0.560、95%CI:-0.949~-0.170、p=0.005)。・自殺企図の既往歴のある患者の平均コレステロール値は、自殺企図のない患者と比較し、0.56SD低かった。・自殺企図の定義に違いがあり、異質性が高かった(I2=83.3%)。・血清脂質パラメータと自殺念慮との間に、有意な関連は認められなかった。・ファンネルプロット分析では、出版バイアスに伴う小さな影響が認められた。 著者らは「統合失調症スペクトラム障害患者における自殺企図は、平均総コレステロール値の低下と関連している」としている。

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うつ、不安、気分症状に対するカカオ製品の影響~メタ解析

 チョコレートのようなカカオ由来の製品は、気分や感情などの問題を緩和させることが期待されるが、この効果についてはまだ解明されていない。イタリア・カターニア大学のLaura Fusar-Poli氏らは、カカオ由来製品が抑うつ症状、不安症状、ポジティブ感情、ネガティブ感情に及ぼす影響を調査するため、システマティックレビューおよびメタ解析を実施した。Critical Reviews in Food Science and Nutrition誌オンライン版2021年5月10日号の報告。 本システマティックレビューおよびメタ解析は、PRISMAガイドラインに従って実施された。2020年4月3日までに公表された文献を、Web of KnowledgeTMおよびPsycINFOより検索した。 主な結果は以下のとおり。・761件の文献をスクリーニングした後、9件をメタ解析に含めた。・研究の内訳は、以下のとおりであった。 ●カカオ製品による長期的(1週間超)な効果:2件 ●カカオ製品による短期的(3日)な効果:2件 ●カカオ製品による急性期(単回投与)効果:5件・変量効果メタ解析では、カカオが豊富な製品による抑うつ症状(Hedge's g:-0.42、95%CI:-0.67~-0.17)および不安症状(Hedge's g:-0.49、95%CI:-0.78~-0.19)への有意な効果が認められた。・さらに、ポジティブ感情(Hedge's g:0.41、95%CI:0.06~0.77)およびネガティブ感情(Hedge's g:-0.47、95%CI:-0.91~-0.03)の有意な改善も認められた。・すべてのメタ解析において、エフェクトサイズは中程度であったが、不均一性は低かった。 著者らは「カカオが豊富な製品は、短期的に感情および気分の問題を改善する可能性が示唆された。しかし、いずれも試験期間が短く、カカオ由来の製品の長期摂取の影響は、明らかではない。また、メタ解析に含まれる対象者数や研究数が十分ではないため、慎重な解釈が求められる」としている。

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統合失調症患者における末梢炎症レベルの再定義~FACE-SZコホート研究

 統合失調症の予後には、末梢炎症が関連しているといわれている。高感度C反応性蛋白(hs-CRP)は、日常的に最も使用されている炎症性バイオマーカーである。しかし、末梢炎症の有無を区分するための合意に基づくカットオフ値は、これまで明確に定義されていなかった。フランス・エクス=マルセイユ大学のG. Fond氏らは、hs-CRP 1~3mg/Lの統合失調症患者は、1mg/L未満の患者と比較し、治療転帰が不良であるかを検討した。Progress in Neuro-Psychopharmacology & Biological Psychiatry誌オンライン版2021年4月29日号の報告。 対象は、2010~18年にフランス国内の専門学術センター10施設が参加したFACE-SZコホート研究より抽出したhs-CRP 3mg/L未満の統合失調症患者。炎症の潜在的な原因、社会人口統計、疾患の特徴、現在の疾患重症度、機能、QOLを、FACE-SZ標準化プロトコールに従って収集した。 主な結果は以下のとおり。・580例が抽出され、そのうち226例に軽度の炎症(hs-CRP 1~3mg/L)が認められた。・炎症の潜在的な原因として、過体重と歯科治療の欠如が特定された。・これらの因子で調整した後、炎症の認められた患者は、検出値(hs-CRP 1mg/L)未満の患者と比較し、より重度の精神症状、抑うつ症状、攻撃性、機能障害を有していた。・喫煙や身体活動レベルとの関連は認められなかった。 著者らは「hs-CRP 1~3mg/Lの統合失調症患者は、炎症関連障害のリスクがあると考える必要がある。末梢炎症の原因をコントロールするうえで、減量や積極的な歯科治療の実施が、有用な戦略である可能性が示唆された。カットオフ値hs-CRP 1mg/L超は、統合失調症患者の末梢炎症の検出において、信頼できるマーカーであると考えられる」としている。

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インサイド・ヘッド(続編・その2)【意識はどうやって生まれるの?】Part 1

今回のキーワード舞台装置(バーチャルリアリティ)クオリア統合情報理論モニター装置(ワイプ画面)自己意識身体失認解釈装置(解説者)概念化意識はどうやって生まれるの?-脳の正体意識とは、主役ではなく観客であり、意思決定は脳活動の多数決であるという衝撃の事実が分かりました。それにしても、私たちはなかなかそう思えません。なぜなら、私たちの意識は、まさに自分が現実の世界を感じて、自分が自分であり、自分が決めている(自由意志はある)と確信してしまっているからです。それでは、私たちの意識はどうやって脳にそう思い込まされているのでしょうか?ここから、ライリーの頭の中の3つの装置から、脳の正体を解き明かし、意識がどうやって生まれるのかを見てみましょう。(1)舞台装置-「バーチャルリアリティ」によって現実の世界をそのまま認識していると思い込ませる5人の小人たちが常に見てるのは、感情操縦デスクの目の前にあるスクリーンです。よくよく見ると、まぶたの形をしています。また、小人たちは、ライリーに思い出してほしい記憶をそのつど思い出ボールからスクリーンに映し出し、重ね合わせます。つまり、ライリーが見ているのは、まぶたを通した外の現実そのものではなく、小人たちによってつくられた脳内のスクリーン(バーチャルリアリティ)であるということです。1つ目は、舞台装置です。意識が見ているのは、現実そのものではなく、脳がつくった舞台(バーチャルリアリティ)であるということです。この舞台装置によって、現実の世界をそのまま認識していると思い込まされています。つまり、私たちが、現実であると思って見ている世界は、実は脳がつくり出しているということです。私たちは、目でものをそのまま見ているのではなく、脳内の視覚野(後頭葉)の小さな小人たち(ニューラルネットワーク)が反応することで、すでにモデル化(学習)されたもの(脳内モデル)と同じ「コピー」を見ています。これは、実際に、さまざまな現象で実感することができます。たとえば、私たちは、夜に色鮮やかな夢を見ることがあります。その間は、あたかも現実の世界にいるように感じていますが、その世界は、完全に脳がつくり上げた疑似的な世界(バーチャルリアリティ)です。だまし絵(錯覚)もそうです。これは、「遠くのものは小さいはず」という遠近法の脳内モデルに影響されています。また、盲点は、月が17個分入るほどの大きさであるにもかかわらず、普段まったく気づかないのは、そのバーチャルリアリティ(VR)を、あたかも拡張現実(AR)のように補完して、盲点を埋め合わせる脳内モデルが働いていることが考えられています。ちなみに、色について言えば、赤と紫は、目に見える光波長の上限(赤外線)と下限(紫外線)の両極端です。しかし、この2つの色は私たちには近い色として感じられます。そのわけは、このどちらの色の果ての光波長にも網膜の細胞(錐体細胞)が反応しなくなるという生理的な特性としては共通しているからであると考えられています。この点で、色は、あくまで脳がつくりだしたものであることが分かります。逆に言えば、脳内モデルを学習していなければ、目に問題がなくても、脳で見えないという現象が起きます。これは、子ネコを縦縞の環境で育てる実験で確かめられています。子ネコを生後からずっと縦縞の模様の円筒の部屋に入れて育てます。首にはエリザベスカラーを付けて、ネコが自分の体を見えないようにします。すると、5ヵ月後に、さまざまな角度の線分に対しての脳内の視覚野の神経細胞の反応を調べたところ、垂直の角度に近ければ近いほどより多く反応する一方、水平の角度にはまったく反応しないという結果が出ました。そして、実際に、その子ネコは、横向きに置かれた棒切れにつまずいてしまうことから、縦長のものは見えても、横長のものは見ることができないことが考えられました。この点で、人間の赤ちゃんも、生まれたばかりだと、目の前のものがほとんど見えず、ほとんど聞こえず、痛みなどもほとんど感じないということが言えるでしょう。脳はどうやって見るか、どうやって聞くか、そしてどうやって痛がるかを学習する必要があると考えられています。なお、映画の演出上、ライリーは、生まれたてでも、ママとパパが見えて聞こえているように描かれています。一方で、たとえばデートで夕日を眺めるような生き生きとした感覚(クオリア)を体験する状況を考えてみましょう。これは、そのような現実を実際に体験しているのではなく、学習済みの脳(舞台装置)によってつくられたバーチャルリアリティにドキドキ感(新奇希求性)が追加された体験をさせられているだけであると言えるでしょう。逆に、この脳内の舞台装置は誤作動を起こす可能性があると考えれば、逆に生き生きとしていない、つまり現実感がない感覚(離人症)があるのも納得が行きます。そして、言葉に色や味を感じる共感覚、誰もいないのに声が聞こえてくる幻聴(統合失調症)、見えている世界が揺らぐ意識変容(せん妄)などの精神症状も、それほど不思議な現象ではないことが分かります。さらに、痛みは皮膚ではなく脳で感じていると考えれば、原因不明の痛みを訴える慢性疼痛(身体症状症)や、下肢切断後に下肢の痛みを訴える幻肢痛(ファントムリム)などの身体症状も不思議でないでしょう。ちなみに、先ほどご説明した脳の反応から意識に上がるまで0.3秒のタイムラグがあるのは、この脳内バーチャルリアリティという意識をつくるために、ニューラルネットワークがいったんつながり切るまでに時間がかかるからであると考えられています。これは、意識とは視床と大脳皮質の間のニューラルネットワークの情報が統合される状態であるからと考えられています(統合情報理論)。つまり、現実の世界を感じさせる舞台装置は、脳のある部位で生まれるのではなく、脳全体のネットワークで生まれるということです。なお、夢の詳細については、関連記事1をご覧ください。 次のページへ >>

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インサイド・ヘッド(続編・その2)【意識はどうやって生まれるの?】Part 2

(2)モニター装置-「ワイプ画面」によって自分は自分であると思い込ませる5人の小人たちは、スクリーンを通してライリーを見ています。一方、ライリーは小人たちが見えるようには描かれていません。その理由は、おそらく、この映画の演出上、頭の中を小人たちに擬人化させているため、ライリーに小人たちが見えてしまうと、視聴者が混乱するからでしょう。実際は、11歳であれば、何となくぼんやりと頭の中の小人たちのせめぎ合いが、スクリーンに映し出されるワイプ画面に「見えて」います。たとえば、ライリーが転校先の教室で自己紹介をしている時に急に泣き出すシーンで、小人たちは右往左往していますが、ライリーは、周りの生徒たちを見ながら、きっと「さっきまでミネソタの楽しい思い出を話していたのに、急に悲しくなっちゃった」と「見えて」(思って)いるでしょう。ライリーのママやパパなら、もっとはっきりとしたワイプ画面に小人たちの会議が「見えて」いるでしょう。つまり、大人になればなるほど、テレビのワイプ画面を見るように、小人たちの働きぶりを自分の意識の中で俯瞰(モニター)するようになります。2つ目は、モニター装置です。意識が見ているのは、自分の心と体そのものではなく、脳がつくったモニター(ワイプ画面)ということです。このモニター装置によって、自分と周り(他人)の違いに注意が向き(自他境界)、自分は周り(他人)とは違う存在である(自己覚知)、つまり自分は自分であると思い込まされています(自己意識)。これは、このモニター装置の「故障」によって、確認することができます。たとえば、脳血管障害により片側の大脳半球(主に右半球)が機能しなくなった場合、麻痺している反対側(左側)の手足の認識(身体感覚)に注意が向かなくなり(無視するようになり)、その半側でぶつかったり転びやすくなります(半側空間無視)。中には、注意を向けられないという病識自体がなかったり、麻痺していること自体が分からなくなり、麻痺していないと言い張るようになることもあります(病態失認)。さらには、麻痺しているその手足が自分のものであると分からなくなり、自分のものではないと言い張るようになることもあります(身体失認)。つまり、片側(主に右側)の大脳半球が働かなくなると、その大脳半球が支配していた手足はモニターされず、そもそも存在しないことになってしまうのです。また、前頭葉(主に右前頭葉)の障害で、我慢ができなくなる脱抑制がみられます。これは、自分の行動をモニターできないために、脳が短絡的になっていると考えられます。逆に、このモニター装置が過剰に作動すれば、誰かに見られているという感覚(被注察感)や誰かに操られているという感覚(統合失調症の作為体験)になるでしょう。このモニター装置が分離して作動すれば、頭の中に複数の人格が共存している多重人格(解離性同一性障害)になるでしょう。そう考えれば、これらの精神症状は、それほど不思議な現象ではないことも分かります。実際に、自己の顔認知の実験によって、このモニター装置(自己を感じる脳活動)の部位が判明しています。この実験では、「私は考える」という言葉が添えられた自分の顔写真と、「彼は考える」という言葉が添えられた有名人の顔写真を見比べた時の、fMRIにおける脳の部位の活動性の違いを評価しました。すると、自分の顔写真を見た時に、より高い活動性が見られたのは、右前頭葉でした。この結果は、先ほどの半側空間無視、病態失認、身体失認、そして脱抑制が右半球の障害で多いことに合致します。つまり、自分が自分であると思わせるモニター装置は、主に右前頭葉で生まれるということです。ちなみに、このモニター装置を心理療法に応用したのが、マインドフルネスです。これは、自分の体感や五感を意識的に研ぎ澄ますことで、モニター装置をフルに作動させます。そうすることで、さらに舞台装置もフルに作動させて、意識レベル(覚醒度)を上げるという取り組みです。なお、マインドフルネスの詳細については、関連記事2をご覧ください。 << 前のページへ | 次のページへ >>

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インサイド・ヘッド(続編・その2)【意識はどうやって生まれるの?】Part 3

(3)解釈装置-「解説者」によって自分の考えと行動は自分が決めていると思い込ませる5人の小人たちは、司令部にあるホルダーに入ったコア記憶(思い出ボールのうち特に重要なもの)をスクリーンに映し出し、たびたびライリーに思い出させています。このコア記憶をエネルギー源とするのが、司令部の窓から見える5つの「性格の島」です。それぞれ「家族の島」、「正直の島」、「ホッケーの島」、「友情の島」、「おふざけの島」と名付けられ、そのシンボルが並んでいます。これらは、パーソナリティ特性(性格のビッグファイブ)の情緒安定性(神経症傾向)、誠実性、開放性、協調性、外向性の5つの要素をそれぞれモデルにしています。この5つの「性格の島」の存在によって、あたかも実況中継の解説者が解説しているように、ライリーがライリーらしくなっているのです。3つ目は、解釈装置です。意識が見ている(認識している)のは、事実そのものではなく、事実について脳(解説者)がつくった解釈であるということです。脳は、社会生活を送る中、全ての体験をそのままでは覚えきれません。そのため、ざっくりとしたイメージや言葉に置き換えています(概念化)。この解釈装置によって、自分とはこういう人間だ(アイデンティティ)、自分の考えと行動は一貫している(自己意識)、つまり自分の考えと行動は自分が決めている(自由意志はある)と思い込まされています。これは、相手(自分以外の人)についても同じです。これは、実際に、心理実験で明らかになっています。この実験では、被験者に2枚の顔写真を見せて、好みのほうを指さすよう指示します。そして、指さしたほうを被験者に渡し、その理由を質問します。ただし、数回に1回、仕掛けによって気づかれないように選ばなかったほうの顔写真にすり替えます。すると、ほとんどの場合、その選ばなかった顔写真であるにもかかわらず、選んだ顔写真の時とまったく同じように、「選んだ」理由をよどみなく答えるのです。この心理効果は、「選択盲」と呼ばれています。また、先ほどにもご説明した分離脳の研究でも、この解釈装置が判明しています。この研究実験では、分離脳の患者の右視野(左半球支配)に「鶏の足」、左視野(右半球支配)に「雪景色」の絵をそれぞれ見せて、関連する絵を選ぶよう指示します。すると、その患者の右手(左半球支配)は「鶏」、左手(右半球支配)は「ショベル」の絵をそれぞれ指さしました。続いて、それらを選んだ理由を質問されると、その患者は「鶏の足だから鶏にした」と答えました。左半球に言語中枢があるため、まず「鶏」について答えるのは当然でしょう。しかし、その後が興味深いのです。患者の左手がショベルを指さしていることを指摘すると、なんと、「鶏小屋の掃除にはショベルを使うから」と即答したのです。左半球は、「鶏の足」しか見えておらず、脳梁が切断されているため、雪景色のことは知らないです。そのため、本当は、「(左手がショベルの絵を選んだのは)分かりません」と答えるはずです。または、もし左半球が雪景色のことを知っているなら、「雪かきにショベルを使うから」と答えるはずです。このように、左半球(言語中枢)は、持てる知識を総動員して状況と一見矛盾しない後付けの答え(因果関係)をこしらえ、無意識に理由をこじつけるのです。つまり、自分が決めていると思わせる解釈装置は、主に左半球(言語中枢)で生まれるということです。この点で、先ほどご説明した半側空間無視の患者の病態失認や身体失認は、麻痺している(支配できない)から存在しないと解釈する解釈装置が働いているからであると考えることもできます。同じように考えれば、視覚中枢(後頭葉)の損傷で失明していても本人がその失明を否定する病態失認(アントン症候群)や、記憶障害から場当たり的につじつまを合わせた話を作る作話(コルサコフ症候群)もそれほど不思議な現象ではないことが分かります。また、認知症などによって、今がいつなのか分からなくなって過去と現在を混同すれば、「夫は死んでるけど明日には会える」「駅前にもう1つ同じ我が家がある」と言い張ります(重複記憶錯誤)。これらは、周りの状況と誤った時間感覚のつじつまを合わせようとする解釈装置が働いていると考えれば、それほど不思議な症状ではないことが分かります。そして、この解釈装置が過剰に作動すれば、ありえない関係付け(思い込み)をするという妄想(主に統合失調症)が出てくるでしょう。逆に、この解釈装置が作動しなければ、不要なものを含めて体験を丸ごと覚えてしまう写真記憶(主に自閉症)が出てくるでしょう。さらに、この解釈装置をビジネスに利用することもできます。それが、ブランド物のように付加価値(解釈)を生み出すブランディングです。また、心理療法に応用することもできます。それが、「悲しいから泣くのではない。泣くから悲しい。だから笑うと楽しくなる(楽しいことを考えると楽しくなる)」という認知行動療法です。なお、統合失調症の詳細については、関連記事3をご覧ください。それでは、そもそもなぜこの意識は「ある」のでしょうか? そこから、私たちに自由意志があると思ってしまう原因を探ってみましょう。 << 前のページへ

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産後うつ病の有病率と環境要因~IGEDEPPコホート研究

 IGEDEPP(Interaction of Gene and Environment of Depression during PostPartum)研究とは、2011~16年に出産した白人女性3,310人を対象とし、産後1年目までフォローアップを行ったプロスペクティブコホート研究である。フランス・パリ大学のSarah Tebeka氏らは、IGEDEPP研究における早期および遅発性の産後うつ病の有病率および累積発症率の推定を行った。Journal of Psychiatric Research誌オンライン版2021年4月16日号の報告。 ベースラインにおける社会人口統計データ、個人および家族の精神疾患歴、小児期および妊娠期のストレスの多いライフイベントを評価した。早期および遅発性の産後うつ病は、DSM-5基準を用いて、それぞれ産後8週間、1年間で評価を行った。 主な結果は以下のとおり。・産後うつ病の有病率は、それぞれ以下のとおりであった。 ●早期産後うつ病:8.3%(95%CI:7.3~9.3) ●遅発性産後うつ病:12.9%(95%CI:11.5~14.2)・産後うつ病の累積発症率は、それぞれ以下のとおりであった。 ●早期産後うつ病(8週間):8.5%(95%CI:7.4~9.6) ●遅発性産後うつ病(1年間):18.1%(95%CI:17.1~19.2)・コホートの約半数にあたる1,571人(47.5%)は、1つ以上の精神疾患または嗜癖性障害を有していた。主な病歴は、うつ病性障害であった(35%)。・約300人(9.0%)において、小児期のトラウマが報告された。・妊娠女性の47.7%は、ストレスの多いイベントを経験しており、その割合は、産後8週間で30.2%、産後8週~1年で43.9%であった。・5人に1人の女性は、産後8週間以内に1つ以上のストレスの多いイベントを経験していた。 著者らは「うつ病エピソードは、産後1年間で5人に1人の女性に影響を及ぼしていた。多くの女性は、周産期にストレスの多いイベントを経験していた。今後のIGEDEPP研究において、産後の精神疾患に対する小児期および妊娠関連のストレスの多いイベントの影響を検討する予定である」としている。

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第2世代抗精神病薬による統合失調症治療におけるMetSに関連する因子

 重度の精神疾患を有する人は、一般の人と比較し、合併症の罹患や死亡率が増加する。体重増加を含む抗精神病薬の有害事象は、メタボリックシンドローム(MetS)の発症に影響を及ぼす可能性があり、これはすべての原因による死亡リスクや心血管疾患による死亡リスクの増加と関連している。オランダ・ユトレヒト大学のMarius H. Sneller氏らは、第2世代抗精神病薬(SGA)による治療を行った統合失調症スペクトラム障害患者におけるMetS関連の臨床的、生化学的、遺伝学的因子について、包括的なレビューを実施した。Frontiers in Psychiatry誌2021年3月29日号の報告。 SGA治療を行った統合失調症スペクトラム障害患者におけるMetSとの関連を調査したすべてのコホート研究、横断的研究、臨床試験を特定するため、PubMedおよびEmbaseより検索を行った。MetS関連の臨床的、生化学的、遺伝的因子を抽出した。MetSに関連する因子の定義は、2つ以上の研究で報告されている因子とした。 主な結果は以下のとおり。・58件(1万2,123例)の研究をレビューした。・MetSのリスク増加と関連している因子として、62因子が特定された。・58件中31件の研究で、2件以上の研究で報告されたMetSと関連する因子について調査されていた。・MetSと有意な関連が認められた因子は、以下のとおりであった。 ●臨床的因子:性別、高齢、気分安定薬の併用、ベースライン時および現在のBMIの高さ、SGAの早期使用、高用量、治療期間の長さ、精神疾患、喫煙 ●生化学的因子:低アディポネクチン血症、C反応性蛋白(CRP)レベルの上昇、白血球(WBC)数高値 ●遺伝学的因子:HTR2C遺伝子のrs1414334 C対立遺伝子 著者らは「SGAで治療している患者におけるMetS発症リスクを予測するためには、これらの因子を段階的に適用する必要がある。臨床診療において、MetS発症リスクを判断するためには、今後の研究が求められる」としている。

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