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薬物療法中の双極性障害患者における運転パフォーマンス

 双極性障害治療で用いられる薬物は、患者の認知機能に影響を及ぼす可能性がある。双極性障害患者は、寛解状態でも神経認知機能障害が認められる場合が少なくない。名古屋大学の山口 亞希子氏らは、薬物治療中の安定期双極性障害外来患者の日常機能、とくに運転パフォーマンスについての検討を行った。Psychiatry and Clinical Neurosciences誌オンライン版2022年1月17日号の報告。 対象は、実臨床で薬物療法中の双極性障害外来患者58例および性別、年齢がマッチした健康対照者80例。ドライビングシミュレーターを用いて3つの運転タスク(道路追跡、車両フォロー、急ブレーキ)および3つの認知機能タスク(Continuous Performance Test、Wisconsin Card Sorting Test、Trail-Making Test)で評価した。症状評価には、ヤング躁病評価尺度、構造化ハミルトンうつ病評価尺度、BDI-IIベック抑うつ質問票、自記式社会適応度評価尺度、スタンフォード眠気尺度を用いた。 主な結果は以下のとおり。・双極性障害患者の道路追跡、車両フォローの運転パフォーマンスは、人口統計学的因子で調整した後、健康対照者と比較し、有意な低下が認められた。これらのパフォーマンスは、一般的に重なり合っていた。・双極性障害患者の広範な神経認知機能は、健康対照者と比較し、有意に低かった。車両フォローの運転パフォーマンスと注意力の持続との負の相関のみが認められた。・多くの患者は単剤療法ではなく、併用療法がおこなわれていたが、運転パフォーマンスとの関連は認められなかった。 著者らは「薬物療法中の安定期双極性障害患者は、健康対照者と比較し、運転パフォーマンスが損なわれていることが示唆されたが、運転パフォーマンスの重なり合う部分は、双極性障害患者の運転パフォーマンスが常に悪い状態であることを示しているわけではない。双極性障害患者の運転適性を判断するうえで、注意力は有用な臨床的特徴であると考えられる」としている。

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新型コロナ感染、1年間の精神疾患リスクは?/BMJ

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)患者は、同時期のSARS-CoV-2非感染者および歴史的対照者と比較して、さまざまな精神疾患(不安障害、うつ病性障害、ストレスおよび適応障害、オピオイド使用障害、オピオイド以外の物質使用障害、神経認知機能低下、睡眠障害など)のリスクが高いことが、米国・VAセントルイス・ヘルスケアシステムのYan Xie氏らによるコホート研究で明らかとなった。著者は、「COVID-19生存者のメンタルヘルス障害に対する取り組みは優先課題である」とまとめている。BMJ誌2022年2月16日号掲載の報告。SARS-CoV-2感染者と、同時期の非感染者ならびにCOVID-19流行以前の対照者を比較 研究グループは、米国退役軍人省のデータを用い、2020年3月1日~2021年1月15日の間に少なくとも1回、SARS-CoV-2のPCR検査が陽性であった人(16万9,240例)を特定し、このうち陽性確認から30日後に生存していた人(COVID-19群15万3,848例)の転帰を調べ(追跡期間終了日:2021年11月30日)、精神疾患の発症リスクを2つの対照群と比較した。対照群は、COVID-19群と同時期にSARS-CoV-2の感染が確認されていない同時期対照群(563万7,840例)と、COVID-19流行以前の歴史的対照群(585万9,251例)である。 COVID-19と精神疾患発症との関連は、事前に定義した共変量およびアルゴリズムで選択された高次の共変量の両方に関して調整した逆確率重み付け法により、追跡期間中のハザード比(HR)と、各群における1年推定発生率の差に基づく1,000人当たりの1年間の補正後リスク差ならびにその95%信頼区間(CI)を算出した。同時期非感染者と比べ、何らかの精神疾患の診断・処方を受けるリスクが60%増加 COVID-19群では同時期対照群と比較して、不安障害(HR:1.35[95%CI:1.30~1.39]、群間リスク差11.06[95%CI:9.64~12.53])、うつ病性障害(1.39[1.34~1.43]、15.12[13.38~16.91])、ストレスおよび適応障害(1.38[1.34~1.43]、13.29[11.71~14.92])、抗うつ薬使用(1.55[1.50~1.60]、21.59[19.63~23.60])、ベンゾジアゼピン系薬剤使用(1.65[1.58~1.72]、10.46[9.37~11.61])の発生リスクが増加した。また、オピオイド処方(1.76[1.71~1.81]、35.90[33.61~38.25])、オピオイド使用障害(1.34[1.21~1.48]、0.96[0.59~1.37])、その他(オピオイド以外)の物質使用障害(1.20[1.15~1.26]、4.34[3.22~5.51])の発生リスクも増加した。 さらに、COVID-19群では同時期対照群と比較して、神経認知機能低下(HR:1.80[95%CI:1.72~1.89]、群間リスク差:10.75[95%CI:9.65~11.91])、睡眠障害(1.41[1.38~1.45]、23.80[21.65~26.00])の発症リスクも増加し、精神疾患の診断や薬の処方を受けるリスクも増加が認められた(1.60[1.55~1.66]、64.38[58.90~70.01])。 評価したアウトカムのリスクは、入院していない人でも増加していたが、COVID-19急性期に入院した人で最も高かった。 これらの結果は、歴史的対照群との比較においても一致しており、COVID-19で入院していない人vs.季節性インフルエンザで入院していない人、COVID-19で入院した人vs.季節性インフルエンザで入院した人、COVID-19で入院した人vs.その他の原因で入院した人、いずれの比較においても一貫してCOVID-19群で精神疾患の発症リスクが高かった。

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統合失調症うつ病患者に退院時使用されている頓服薬の傾向

 統合失調症うつ病に対する継続的な薬物療法が重要であることは、さまざまなガイドラインで示唆されているが、頓服による治療に関する報告はほとんど行われていない。東京大学の市橋 香代氏らは、向精神薬の頓服使用を行っている統合失調症およびうつ病患者の特徴を明らかにするため、検討を行った。Asian Journal of Psychiatry誌オンライン版2022年1月13日号の報告。 精神科医療の普及と教育に対するガイドラインの効果に関する研究(EGUIDEプロジェクト)のデータを用いて、統合失調症(2,617例)およびうつ病患者(1,248例)の退院時における向精神薬頓服使用の有無、患者の年齢や性別、頓服使用と継続的な向精神薬使用との関連について評価を行った。 主な結果は以下のとおり。・退院時における向精神薬の頓服使用率は、統合失調症患者で29.9%、うつ病患者で31.1%であった。・統合失調症患者では、65歳以上の向精神薬頓服使用率が21.6%であり、他の年齢層よりも低かった。・うつ病患者では、向精神薬頓服使用率が女性で34.2%であり、男性(25.5%)よりも有意に高かった。・統合失調症患者では、向精神薬の使用と継続的な向精神薬の併用との間に関連が認められた。 著者らは「向精神薬の頓服使用は、統合失調症患者では高齢者で少なく、うつ病患者では女性で多かった。統合失調症患者では、向精神薬頓服使用による向精神薬の多剤併用が認められた。これらのエビデンスを蓄積し、適切な頓服処方に関する知見を共有するためにも、さらなる研究が求められる」としている。

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マルモと認知症(解説:岡村毅氏)

 医学界は常に移ろいでいる。社会は高齢化し、重視するものが根治から生活の質へと変わり、プライマリケアの存在感がじわじわと向上している。そのなかで近年注目されてきたのがマルチモビディティ(多疾患併存)である。通常は2つ以上の慢性疾患を持つことを指す。ちなみに「マルモ」などと呼ばれることもあるとかないとか。 マルチモビディティを持つ「高齢者」が認知症になりやすいという報告はある。では、若いころのマルチモビディティも認知症のリスク因子であるのでは、と考えるのは自然だ。 そうすると長い歴史のあるコホートを戦略的に持っている英国が断然有利だ。あらゆる仮説を、時代をさかのぼってある程度検証できるのだから。ジェームズ・ボンドの国だけあって情報戦に強い、ということか。 ここでマルチモビディティに使われている慢性疾患は、心筋梗塞、脳梗塞、心不全、糖尿病、高血圧、がん、腎不全、閉塞性肺疾患、肝疾患、うつ、精神疾患(うつ以外)、パーキンソン病、膠原病であり、ICD10のコードに準拠している。 さて、その結果は、若いころからマルチモビディティがあると、加齢に伴い、認知症を発症するリスクはどんどんと増えていく、というものであった(50代前半でマルチモビディティがあった人は、50代後半で初めてあった人よりリスクは高い。50代後半は60代前半よりリスクが高い…つまり若くして持っているほど危険)。 若いころからマルチモビディティがある人はヘルスリテラシーが低い可能性が高いが、学歴や健康行動で調整したモデルでも結果は同じであった。 プライマリケアの重要性を示す論文と言えよう。 以下、2点ほどコメントしよう。 第1点はポリファーマシーとの関連である。マルチモビディティを持つ人は増えているし、時代の変化を見誤って愚直に薬を出すと、ポリファーマシー(多剤併用)になる。ポリファーマシーはかかりつけ医の利益にはまったくならないのであるから、ポリファーマシーの原因は(1)あまりにも多くの疾患がありすぎる場合、(2)真面目に(愚かに?)処方し過ぎている場合、(3)患者さんが求めている場合、のどれかだろう。 ちなみに精神科病床に入院するBPSD(たとえば不穏)の著しい認知症患者さんでは、整形外科や内科など各所から鎮痛薬が大量に出ていることが多い。痛みを激しく訴える患者さんが外来に来たら鎮痛薬を出してしまうのはよくわかるし、批判するつもりはない。ただ「痛み」とは精神的なものであり、認知症のために頭がうまく回らない、体がうまく動かないといったことは変換されて「痛み」になる。 入院したら、多くの場合はほぼすべて切ってしまう。同時に内科薬も、重要な疾患のみに対してそれぞれ1剤にえいやっと整理する。するとあら不思議、患者さんの不穏は結構改善する。薬でぼんやりしていたのも一因だったのだ。私にできるのだから優秀な内科医にできないわけがない。これは入院しないと難しいのも事実で、認知症の人を入院させることは悪行のように言われるが、こういう場合もあるという例として出した。 ポリファーマシーがマスコミでこれほど有名になったのだから、次はマルモかなと、個人的には思っている。 第2点として、認知症の専門家として少し批判的にコメントしてみよう。「慢性疾患のうちどの組み合わせが高リスクなのか」というタッグマッチのような分析では、パーキンソン病が抜きんでて強い(心筋梗塞、糖尿病、高血圧、がん、うつ、精神疾患とのタッグが高リスク)。これには少し鼻白んでしまった。そもそもパーキンソン病は認知症に移行する(Parkinson's disease dementia:PDD)が、診断基準が確立したのが近年であり、古い記録では信頼性が低いのではないか。また、進行したパーキンソン病ではうつが合併するし、幻視なども出現するので精神疾患の診断もつきやすいだろう。また、パーキンソン病とされた人の中には血管性パーキンソン症候群もおそらく隠れているだろうから、心筋梗塞、糖尿病、高血圧との組み合わせは血管性認知症の高リスクの人を拾っているのではないか。一方で脳梗塞との組み合わせが関連なしになっているのも理由は明確で、G21(血管性パーキンソン)が今回の解析から外れているからだ。 要するにパーキンソン病が微小脳梗塞によるものである場合、この解析では丁度見えない位置にあることが、パーキンソン+脳梗塞が高リスクになっておらず、パーキンソン+生活習慣病(糖尿病、高血圧、心筋梗塞)が高リスクになっている原因だろう。 と、探偵みたいなコメントをしてしまったが、まあ当然著者たちも承知だろう。私も研究者なのでわかるが、昔のデータは不十分で解析が難しいこともある。有名ジャーナルであろうと、疑って読めという例として書きました。

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統合失調症の再発に影響を及ぼす要因

 統合失調症は再発率が高い疾患である。再発は、患者だけでなくその家族にとっても大きな影響を及ぼすが、生物心理社会学的および精神医学的要因を見直すことで、改善する可能性がある。統合失調症の再発に影響を及ぼす潜在的なリスク因子を明らかにすることは、医師、患者およびその家族の意識を向上させるために役立つと考えられる。医師は、患者を診察し、マネジメントや教育を行い、再発を抑制することが求められる。インドネシア・エアランガ大学のMargarita M. Maramis氏らは、統合失調症患者の再発発生に影響を及ぼす生物心理社会学的および精神医学的要因について、分析を行った。International Journal of Social Psychiatry誌オンライン版2021年12月28日号の報告。 インドネシア・東ジャワの3施設Soetomo Academic Hospital Surabaya(33.2%)、Menur Hospital Surabaya(32.7%)、Radjiman Wediodiningrat Mental Hospital Lawang(34.1%)より統合失調症患者226例を対象とし、横断的観察分析研究を実施した。生物心理社会学的および精神医学的要因を含む33因子のデータを収集し、二変量および多変量ロジスティック回帰分析を行った。 主な結果は以下のとおり。・1年間の再発率は、59.73%であった。・統合失調症の再発に有意な影響を及ぼした因子は以下の12因子であった。 ●妊娠中の母親における身体的疾患歴(p<0.001、B=27.31、95%信頼区間[CI]:3.96~188.52) ●トリガーの存在(p<0.000、B=6.25、95%CI:2.61~14.96) ●ネガティブな信念(p<0.000、B=4.94、95%CI:2.10~11.61) ●遺伝的要因(p<0.001、B=4.84、95%CI:1.93~12.10) ●洞察(p<0.003、B=4.27、95%CI:1.62~11.27) ●1年間のGAFスケール(p<0.015、B=3.79、95%CI:1.30~11.09) ●治療反応(p<0.006、B=3.68、95%CI:1.45~9.36) ●家族の理解(p<0.011、B=3.23、95%CI:1.31~7.93) ●頭部外傷歴(p<0.029、B=3.13、95%CI:1.13~8.69) ●薬剤の副作用(p<0.028、B=2.92、95%CI:1.12~7.61) ●薬物使用歴(p<0.031、B=2.86、95%CI:1.10~7.45) ●職業(p<0.040、B=2.40、95%CI:1.04~5.52) 著者らは「統合失調症の再発リスクを予測する生物心理社会学的および精神医学的要因の12因子が特定された。これらの因子は、介護や再発予防を目指すうえで、患者およびその家族の心理教育を行う際、取り入れるべきであろう」としている。

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統合失調症に対するベンゾジアゼピン併用の影響

 統合失調症患者に対するベンゾジアゼピンの使用について、未使用、短期使用、長期使用の場合の疾患経過に対する影響を、トルコ・Usak UniversityのOkan Ekinci氏らが、検討を行った。International Clinical Psychopharmacology誌オンライン版2022年1月17日号の報告。 2015年1月~2019年1月に精神科病院に入院した統合失調症患者を対象にレトロスペクティブ研究を実施した。患者の臨床経過の特徴について、最初の入院から観察期間終了(24ヵ月)までレトロスペクティブに追跡した。 主な結果は以下のとおり。・対象患者1,710例のデータを分析に含めた。・ベンゾジアゼピンを短期使用している患者は、未使用患者や長期使用患者と比較し、精神科入院が少なく、精神科サービスの利用期間も短かった。・抗精神病薬の中止率および自殺関連行動の出現率についても、ベンゾジアゼピンを短期使用している患者は、未使用患者や長期使用患者と比較し、有意に低かった。 著者らは「統合失調症患者に対するベンゾジアゼピンの短期使用は、より良い臨床経過と関連していることが示唆された。今後の研究において、さまざまなベンゾジアゼピンの使用パターンが疾患予後に及ぼす影響を、長期フォローアップ調査やプロスペクティブ研究で評価し、併せて精神病理学的因子についても調査する必要がある」としている。

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統合失調症患者に対する薬物誘発性パーキンソニズム、遅発性ジスキネジアの影響

 薬物誘発性パーキンソニズムや遅発性ジスキネジアは、統合失調症の健康関連QOLの低下と関連しているといわれているが、これらの相対的な影響を調べた研究はこれまでほとんどなかった。シンガポール・Institute of Mental HealthのGurpreet Rekhi氏らは、統合失調症における薬物誘発性パーキンソニズムおよび遅発性ジスキネジアと健康関連QOLとの関連を調査し、比較を行った。Journal of Psychopharmacology誌オンライン版2022年1月3日号の報告。 対象は、統合失調症患者903例。陽性・陰性症状評価尺度(PANSS)、Simpson-Angus 錐体外路系副作用評価尺度(SAS)、異常不随意運動評価尺度(AIMS)を用いて評価した。健康関連QOLの評価には、以前検証したアルゴリズムよりPANSSスコアに基づいたEQ-5D-5Lを用いた。 主な結果は以下のとおり。・薬物誘発性パーキンソニズムのみは160例(17.7%)、遅発性ジスキネジアのみは119例(13.2%)、その両方は123例(13.6%)に認められた。・健康関連QOLは、薬物誘発性パーキンソニズムと遅発性ジスキネジアの両方が認められた患者で最も低く、次いで薬物誘発性パーキンソニズムのみの患者、遅発性ジスキネジアのみの患者であり、いずれも認められなかった患者で最も高かった。・健康関連QOLスコアは、4群間で有意な違いが認められた(F[3,892]=13.724、p<0.001、η2p=0.044)。・薬物誘発性パーキンソニズムのみ、または薬物誘発性パーキンソニズムと遅発性ジスキネジアの両方が認められた患者の健康関連QOLは、いずれも認められなかった患者と比較し、有意に低かった。・健康関連QOLとの関連において、薬物誘発性パーキンソニズムと遅発性ジスキネジアの有無との間に有意な関係は認められなかった。 著者らは「薬物誘発性パーキンソニズムは、統合失調症患者の健康関連QOLの低下と関連する主な抗精神病薬誘発性の運動障害であった。臨床医は、統合失調症患者の健康関連QOLの最適化を図るため、薬物誘発性パーキンソニズムの予防、検出、効果的なマネジメントに焦点を当てる必要がある」としている。

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治療抵抗性うつ病の負担と課題

 治療抵抗性うつ病は、公衆衛生上の重大な問題である。ギリシャ・Psychiatric Hospital of AtticaのCharalampos Touloumis氏は、治療抵抗性うつ病に関する現状や課題についての報告を行った。Psychiatriki誌2021年12月号の報告。 主な報告は以下のとおり。・うつ病エピソード(単極性または双極性)を有する患者の約20~40%は、抗うつ薬治療に臨床的な治療反応(症状スケール50%以上低下)を示さないと考えられる。・症状が改善した患者の約半数は、機能の悪影響や再発の可能性が高まる残存症状が認められる。・うつ病エピソードの初回治療を受けた患者の20~40%は寛解が認められる(STAR*D研究では36.8%)。・治療目標として、症状重症度70%以上の低下またはHAMDスコア7以下/MADRSスコア10以下を目指す必要がある。・うつ病患者は、寛解達成後も回復や病前の職業的および社会的状態に戻るまでには、長い期間を有することが少なくない。また、良好な状態を維持するためには、長期にわたる治療が必要となる。・治療抵抗性うつ病は、高血圧、糖尿病、心不全などの併存疾患発生率が高く、入院率が2倍、入院期間が36%延長される。・治療抵抗性うつ病患者の自殺リスクは、治療反応が認められるうつ病患者と比較し、7倍であった。・治療抵抗性うつ病患者は、治療反応が認められるうつ病患者と比較し、死亡率が高く、すべての原因による死亡率は、29~35%上昇する。死亡率の高さは、13歳以上および非うつ病患者との比較でも同様であった。・治療抵抗性うつ病は、その発生率やうつ病治療において重要な問題であるにもかかわらず、専門家の考える基準は明確ではない。・治療抵抗性うつ病の最も一般的な基準は、コンプライアンスを確認したうえで、適切な用量および期間による2種類以上の異なる抗うつ薬(同クラスまたは異なるクラス)による治療に対して抵抗性を示すとされるが、有意な臨床的な結果を示すことはできない。・虚無主義を改善するための難治性うつ病、心理療法やECTなどの非薬物療法を併用する必要がある薬物治療抵抗性うつ病、複数の治療抵抗性うつ病、致死的なうつ病などを治療抵抗性うつ病として考える場合もある。・治療抵抗性うつ病に対する治療は、すべての臨床医にとって課題である。・治療抵抗性に対し不十分な治療レジメン、併存疾患(不安障害、摂食障害、パーソナリティ障害、薬物乱用や依存、PTSDなど)、治療不適合、未確認の有機的および慢性期的なストレス原因を除外した後、利用可能な治療法は、治療の最適化、注意深い経過観察、過去の治療反応、併用療法、追加療法、ECT、TMS、迷走神経刺激、光線療法、心理療法、脳神経外科的治療である。

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多疾患罹患、中年期の発症で認知症リスク増加 /BMJ

 多疾患罹患(multimorbidity)は、高年期よりも中年期の発症で認知症との関連が強く、併存する慢性疾患の数が多いほど認知症のリスクが高くなることが、フランス・パリ大学のCeline Ben Hassen氏らの調査で示された。研究の成果は、BMJ誌2022年2月2日号で報告された。Whitehall II研究のデータを用いた前向きコホート研究 研究グループは、中年期および高年期の多疾患罹患と、認知症の新規発症との関連を評価する目的で、前向きコホート研究を実施した(米国国立老化研究所[NIA]などの助成を受けた)。 解析には、進行中のWhitehall II研究のデータが用いられた。Whitehall II研究には、ベースライン時(1985~88年)に35~55歳のロンドン市の公務員が登録され、約4~5年ごとにフォローアップの調査が行われている。 主要アウトカムは、1985~2019年におけるフォローアップ時の新規発症の認知症とされた。原因別Cox比例ハザード回帰を用い、死亡の競合リスクを考慮したうえで、全体、55歳、60歳、65歳、70歳の時点での多疾患罹患とその後の認知症との関連が評価された。55歳時の多疾患罹患で、認知症リスクが2.44倍に 1万95例が解析に含まれた。多疾患罹患(13の慢性疾患のうち2つ以上)の有病率は、55歳時が6.6%(655/9,937例)、70歳時は31.7%(2,464/7,783例)であった。フォローアップ期間中央値31.7年の時点で、639例(平均年齢49.9[SD 4.9]歳、男性58.5%)が新規の認知症に罹患した。 認知症罹患者で最も頻度の高い慢性疾患は高血圧症(77.9%)で、次いで冠動脈疾患(27.7%)、抑うつ(27.2%)、糖尿病(24.7%)の順であった。がんを除く12の慢性疾患は、認知症罹患と関連が認められた。 社会人口学的因子と健康行動(喫煙、身体活動、飲酒、果物/野菜摂取)で補正すると、慢性疾患がないまたは1つの集団と比較して、55歳時の多疾患罹患はその後の認知症のリスクと関連が認められた(1,000人年当たりの罹患率の差:1.56、95%信頼区間[CI]:0.62~2.77、ハザード比[HR]:2.44、95%CI:1.82~3.26)。 この関連性は、多疾患罹患の発症年齢が高くなるに従って徐々に弱くなった。たとえば、55歳以前に多疾患罹患を発症した場合は、65歳時の1,000人年当たりの認知症罹患率の、慢性疾患がないまたは1つの集団との差は3.86(95%CI:1.80~6.52)であった(HR:2.46、95%CI:1.80~3.36)のに対し、60~65歳時に発症した場合は、65歳時の1,000人年当たりの認知症罹患率の同差は1.85(95%CI:0.64~3.39)であった(HR:1.51、1.16~1.97)。 70歳時の多疾患罹患の状態の解析では、多疾患罹患の発症年齢が5歳若くなるごとに、認知症リスクは18%ずつ高くなった(HR:1.18、95%CI:1.04~1.34)。 また、55歳時に3つ以上の慢性疾患を有する多疾患罹患の場合は、1,000人年当たりの認知症罹患率の、慢性疾患がないまたは1つの集団との差は5.22(95%CI:1.14~11.95)であった(HR:4.96、95%CI:2.54~9.67)。一方で70歳時の同様の解析では、1,000人年当たりの認知症罹患率の同差は4.49(95%CI:2.33~7.19)であり(HR:1.65、95%CI:1.25~2.18)、多疾患罹患の発症年齢が高くなるに従って関連性が徐々に弱くなった。 著者は、「多疾患罹患は発症年齢の若年化が進んでいるため、初発の慢性疾患を有する集団における多疾患罹患の予防が重要である」としている。

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カレーライスの消費とうつ病、高血圧、糖尿病との関連

 韓国・順天大学校のHai Duc Nguyen氏らは、カレーライスの消費と心血管疾患(CVD)、2型糖尿病(T2DB)、関節炎、うつ病との関連について調査を行った。Diabetes & Metabolic Syndrome誌オンライン版2021年12月26日号の報告。カレーライスの消費が多かった人は高血圧やうつ病のリスクが有意に低い 18歳以上の1万7,625人を対象に、社会人口統計学的特性、ライフスタイル、病歴、現在使用している薬剤、家族歴、食物消費に関するデータを収集した。カレーライスの消費とCVD、T2DB、関節炎、うつ病との関連を調査するため、多変数調整分析を用いた。 カレーライスの消費と心血管疾患やうつ病との関連について調査した主な結果は以下のとおり。・ロジスティックモデルでは、カレーライスの消費が多かった人は、少なかった人と比較し、トリグリセリドの上昇(OR:0.89、95%CI:0.82~0.97、p=0.006)、HbA1cの上昇(OR:0.81、95%CI:0.73~0.91、p<0.001)、グルコースの上昇(OR:0.86、95%CI:0.79~0.94、p<0.001)の割合が有意に低かった。・カレーライスの消費が多かった人は、少なかった人と比較し、高血圧(OR:0.88、95%CI:0.78~0.98、p=0.044)、T2DB(OR:0.82、95%CI:0.68~0.98、p<0.001)、うつ病OR:0.82、95%CI:0.70~0.97、p=0.026)のリスクが有意に低かった。・これらの結果は、カレーライスの消費量を連続変数として扱った場合においても同様であった。 著者らは「通常の食事で、カレーライスを摂取することで得られる健康上のベネフィットとして、非感染性疾患の負担やメンタルヘルスを保護する可能性が示唆された。これらの疾患に対するカレーライスの役割を明らかにするためには、継続的な調査が必要である」としている。

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ボルチオキセチンの改善効果予測因子~日本での臨床試験データ

 うつ病患者の治療では、抗うつ薬による治療効果が出るまで数週間を要する場合がある。東京医科大学の井上 猛氏らは、治療反応や寛解に対するボルチオキセチンの早期部分寛解の予測値について調査を行った。Neuropsychiatric Disease and Treatment誌2021年12月18日号の報告。 20~75歳の日本人再発性うつ病患者(Montgomery Asbergうつ病評価尺度(MADRS)スコア26以上)を対象としたボルチオキセチン(10mgまたは20mg)の8週間ランダム化二重盲検プラセボ対照第III相試験の事後分析を行った。主要アウトカムは、ボルチオキセチン治療8週目における治療反応(ベースラインからMADRS合計スコア50%以上減少)および寛解(MADRSスコア10以下に減少)に対する早期部分寛解(ベースラインから2週目までのMADRSスコア20%以上減少)の予測値とした。 主な結果は以下のとおり。・分析対象患者数は478例、プラセボ群158例中62例、ボルチオキセチン10mg群162例中71例、ボルチオキセチン20mg群158例中66例が早期部分寛解患者であった。・ボルチオキセチン群(10mgまたは20mg)の早期部分寛解患者は、早期に部分寛解がみられなかった患者と比較し、8週目の治療反応率(71.2~73.2% vs.29.7~38.0%)および寛解率(50.7~51.5% vs.17.4~18.7%)が高かった。・ボルチオキセチンによる治療反応および寛解のポジティブ予測値はそれぞれ、約70%と約50%であり、ネガティブ予測値は約70%と約80%であった。 著者らは「うつ病患者に対するボルチオキセチン治療による改善は、MADRSスコアの早期部分寛解により予測される可能性がある。一部の患者では、早期部分寛解が認められなくても長期治療のベネフィットが得られる可能性があり、このことも臨床上の意思決定に役立つ可能性がある」としている。

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COVID-19、ICU退室から1年後の身体・精神・認知症状の割合は?/JAMA

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に罹患し、集中治療室(ICU)で治療を受けた生存例では、1年後に約74%で身体症状が認められ、また約26%で精神症状が、約16%で認知症状が発現していたことが、オランダ・ラドバウド大学医療センターのHidde Heesakkers氏らが同国のICUで行った調査で示された。研究の詳細は、JAMA誌オンライン版2022年1月24日号に掲載された。オランダの11のICUの探索的前向きコホート研究 本研究は、ICUで治療を受けたCOVID-19生存例における1年後の身体、精神、認知症状の発現の評価を目的とする探索的な前向きコホート研究で、ICU生存例(非COVID-19患者を含む)を対象とした多施設共同試験であるMONITOR-IC試験の一環として実施された。 対象は、年齢16歳以上のCOVID-19患者で、オランダにおけるCOVID-19急増の第1波の期間中(2020年3月1日~7月1日)に、同国の11の病院のICUに入室し、生存退院した集団であった。患者は1年間追跡された(最終追跡日は2021年6月16日)。 主要アウトカムは、ICU退室から1年後の自己報告式質問票で評価された身体症状、精神症状、認知症状であった。 身体症状については、フレイル(臨床フレイル尺度[≧5点])、疲労(Checklist Individual Strength下位尺度の疲労[≧27点])、身体機能障害の評価が行われた。精神症状は、不安(病院不安と抑うつ尺度[HADS]:下位尺度の不安[HADS-A]≧8点)、抑うつ(HADS下位尺度の抑うつ[HADS-D]≧8点)、心的外傷後ストレス障害(出来事インパクト尺度の平均値≧1.75点)で、認知症状は、簡易認知的失敗質問票14項目(≧43点)で評価された。30.6%で2領域以上、10.5%で3領域すべての症状 試験期間中にICUで治療を受け、病院を生存退院したCOVID-19患者452例のうち、302例(66.8%)が試験に含まれ、このうち1年後の質問票に回答した246例(81.5%、平均年齢61.2歳[SD 9.3]、男性176例[71.5%]、平均BMI値28.0[SD 4.5]、ICU入室期間中央値18.5日[IQR:11~32])が解析の対象となった。 ICU治療から1年後の時点で、身体症状が74.3%(182/245例)、精神症状が26.2%(64/244例)、認知症状は16.2%(39/241例)で報告された。2領域以上の症状は30.6%、3領域すべての症状は10.5%の患者で認められた。また、ICU入室前に就業していた生存者の57.8%で、仕事関連の問題(就業時間の短縮、病気による欠勤の継続など)が報告された。 身体症状のうち、フレイルが6.1%(15/245例)、疲労が56.1%(138/246例)、1つ以上の身体機能障害(新規、悪化)は67.1%(165/246例)で発現した。最も頻度の高い新規の身体機能障害は体力低下(38.9%[95/244例])で、次いで関節のこわばり(26.3%[64/243例])、関節痛(25.5%[62/243例])、筋力低下(24.8%[60/242例])、筋肉痛(21.3%[52/244例])、呼吸困難(20.8%[51/245例])の順だった。 精神症状では、不安が17.9%(44/246例)、抑うつが18.3%(45/246例)でみられ、心的外傷後ストレス障害は9.8%(24/244例)で発現した。また、認知症状では、認知的失敗質問票のスコア中央値は24.8点(IQR:12.8~37.0)であり、発生率は16.2%(39/241例)であった。 著者は、「他のウイルスの感染爆発(2003年のSARS、2012年のMERSなど)では、ICU生存例の約3分の1で退院後6ヵ月以降に精神健康上の問題が発生しており、これは今回の研究の1年後の発生率(26.2%)よりもわずかに高かった。また、非COVID-19のICU生存例では、1年後に77.0%で身体症状が、35.5%で精神症状が、14%で認知症状が発現したと報告されている。これと比べると、本研究の身体症状(74.3%)、認知症状(16.2%)の発生率は同程度であるが、精神症状(26.2%)の発生率は低かった。一方、職場復帰の問題は、非COVID-19のICU生存例では43%だったのに対し、本研究では58%であった」としている。

673.

統合失調症の再発までの期間と再発歴との関係

 統合失調症は、再発を繰り返すことが多い疾患であり、このことはしばしば患者にとって悪影響を及ぼす。過去の再発歴は、今後の再発を予測する強力な因子であるといわれているが、この関連性は十分に定量化されているわけではない。デンマーク・ルンドベック社のKristian Tore Jorgensen氏らは、統合失調症の再発までの期間と患者の再発歴との関連を定量化するため、スウェーデンの実臨床データを用いて検討を行った。BMC Psychiatry誌2021年12月21日号の報告。 スウェーデン国立患者レジストリと処方薬レジストリのデータを用いて、2006~15年に初めて登録された統合失調症患者の再発について、再発のプロキシ定義を用いて検討した。主要なプロキシは、7日以上の精神科入院を再発と定義した。その後、各再発リスクについてハザード比(HR)を算出し、Aalen-Johansen推定量を用いて、次の再発までの期間を推定した。 主な結果は以下のとおり。・対象患者数2,994例、再発エピソード5,820件のデータを分析した。・過去の再発回数が多いと、次回再発までの期間が短くなる傾向が認められた。・再発歴のない統合失調症患者の半数は、フォローアップから1.52年以内に最初の再発エピソードに遭遇すると推定された。・1回目の再発を経験した統合失調症患者の半数は、1.23年以内に2回目の再発を経験すると推定された。・次の再発までの期間は、2回の再発経験を有する患者では0.89年に減少し、10回の再発経験を有する患者では0.22年に減少した。・研究母集団の異なる包括除外基準と再定義された再発プロキシを用いた補足分析では、次の再発までの期間の短縮に関連する過去の再発歴の回数の多さは、一時分析で観察された結果を反映していた。 著者らは「再発は、統合失調症の疾患進行を加速させる傾向を示し、再発回数が多くなると、より短い期間で再発することが明らかとなった。このことから、統合失調症患者の個々のニーズをよく理解し、早期に効果的かつ忍容性の高い治療を提供することが重要であると考えられる」としている。

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アセナピンとオランザピン、日本人統合失調症患者での治療継続率

 アセナピンは、多元受容体作用抗精神病薬(MARTA)に分類される第2世代抗精神病薬であり、その薬理学的特徴はオランザピンと類似している。藤田医科大学の松崎 遥菜氏らは、実臨床データを用いて、統合失調症に対するアセナピンとオランザピンの治療継続率や中止理由についての比較を行った。Neuropsychiatric Disease and Treatment誌2021年12月14日号の報告。アセナピン群の6ヵ月間の治療継続率は27.3%、オランザピン群で50.8% 本研究は、レトロスペクティブ研究として実施した。主要エンドポイントは、6ヵ月間に治療継続率のカプランマイヤー推定とし、潜在的な交絡因子で調整するため傾向スコア法を用いて評価した。 統合失調症に対するアセナピンとオランザピンの治療継続率や中止理由について比較した主な結果は以下のとおり。・統合失調症患者95例(アセナピン群:46例、オランザピン群:49例)を対象とし、分析を行った。・一致したデータを6つの共変量(年齢、性別、クロルプロマジン換算量、ジアゼパム換算量、クロザピンの使用歴、修正型電気けいれん療法の使用歴)を考慮し調整した。・一致したデータにおける6ヵ月間の治療継続率は、アセナピン群で27.3%(95%信頼区間[CI]:15.6~47.6)、オランザピン群で50.8%(95%CI:34.3~75.3)であった(ハザード比[HR]:0.41、95%CI:0.21~0.82、p=0.0088[Log rank検定])。・効果不十分による中止率は、アセナピン群で13.0%、オランザピン群で10.2%とほぼ同様であった。・アセナピン群のみで観察された副作用は、苦みによる中止(6.5%)、投薬方法の負担(6.5%)であり、オランザピン群のみで観察された副作用は、口渇(4.1%)や便秘(2.0%)などの抗コリン作用系副作用であった。 著者らは「実臨床におけるアセナピンの治療継続率の低さは、苦みや投薬方法などの特定の因子に関連している可能性が考えられる」としている。

678.

日本人の統合失調症うつ病入院患者に対する睡眠薬の使用状況

 京都大学の降籏 隆二氏らは、統合失調症およびうつ病の入院患者に対する睡眠薬の使用率と睡眠薬と抗精神病薬使用との関連について調査を行った。Sleep Medicine誌オンライン版2021年11月22日号の報告。 全国の精神科病院200施設以上が参加する「精神科医療の普及と教育に対するガイドラインの効果に関する研究」(EGUIDEプロジェクト)の一環として、全国横断的研究を実施した。統合失調症入院患者2,146例とうつ病入院患者1,031例のデータを分析した。すべての向精神薬の投与量を記録し、退院時のデータを分析した。睡眠薬と抗精神病薬使用との関連を評価するため、多変量ロジスティック回帰分析を用いた。 主な結果は以下のとおり。・睡眠薬を単剤または2剤以上で使用していた患者の割合は、それぞれ以下のとおりであった。 ●統合失調症入院患者:睡眠薬単剤療法55.7%、併用療法17.6% ●うつ病入院患者:睡眠薬単剤療法63.6%、併用療法22.6%・多変量ロジスティック回帰分析では、統合失調症入院患者における睡眠薬使用と正の関連が認められた因子は、2種類以上の抗精神病薬の使用および抗コリン作用薬、抗不安薬、気分安定薬、抗てんかん薬の使用であった。・うつ病入院患者では、2種類以上の抗うつ薬、抗精神病薬の使用および抗不安薬、気分安定薬、抗てんかん薬の使用と睡眠薬使用との間に正の関連が認められた。 著者らは「睡眠薬の使用は、精神疾患を有する入院患者において、頻繁に認められることが明らかであった。統合失調症およびうつ病の入院患者のいずれにおいても、抗精神病薬の併用療法は、睡眠薬使用に影響を及ぼすことが示唆された」としている。

679.

日本における統合失調症急性期入院患者に対する抗精神病薬治療の有効性

 順天堂大学の八田 耕太郎氏らは、統合失調症患者に対する長時間作用型持続性注射剤(LAI)と抗精神病薬の多剤併用(クロザピンを含まない)の実臨床における有効性の比較を行った。Asian Journal of Psychiatry誌オンライン版2021年11月6日号の報告。 日本の精神科救急病院12施設において、19ヵ月間のプロスペクティブ研究を実施した。対象は、DSM-Vで定義される統合失調症およびその他の精神病性障害の急性発症または悪化のために、2019年9月~2020年3月に精神科救急病棟に新たに入院した患者。すべての患者を退院後1年間または2021年3月31日までフォローアップを行った。主要アウトカムは、治療失敗リスク(精神科再入院、治療薬使用の中止、死亡、1年間の入院継続)とした。分析は、Cox比例ハザード多変量回帰を用いた。 主な結果は以下のとおり。・期間中に登録された患者数は1,011例であった(女性の割合:53.7%、平均年齢:47.5±14.8歳)。・フォローアップ期間中に治療が失敗した患者は588例(58.2%)、それぞれの内訳は以下のとおりであった。 ●再入院:513例 ●治療薬使用の中止:17例 ●死亡:11例 ●1年間の入院継続:47例・LAIへの切り替え(ハザード比[HR]:0.810、95%信頼区間[CI]:0.659~0.996)および抗精神病薬の多剤併用(HR:0.829、95%CI:0.695~0.990)と治療失敗率の低さとの間に有意な関連が認められた。 著者らは「急性期統合失調症の治療では、初期に治療反応が認められない患者に対するLAIへの切り替えや抗精神病薬の多剤併用は、治療失敗リスクの低減に有益である可能性が示唆された。治療失敗リスクは、LAI治療患者では非LAI治療患者と比較し約19%低く、多剤併用患者では単剤患者と比較し約17%低かった」としている。

680.

治療抵抗性うつ病への薬理学的増強戦略~包括レビュー

 治療抵抗性うつ病(TRD)は、治療転帰不良であることは言うまでもないが、最良の薬理学的増強戦略にどの抗うつ薬を用いるべきかに関するエビデンスは十分ではない。イタリア・Azienda Socio Sanitaria Territoriale MonzaのAlice Caldiroli氏らは、TRDに対する抗うつ薬の薬理学的増強療法に関するエビデンスを包括的にレビューした。International Journal of Molecular Sciences誌2021年12月2日号の報告。 TRDに対する抗うつ薬の薬理学的増強療法に関する利用可能なエビデンスを特定するため、主要な精神医学データベース(PubMed、ISI Web of Knowledge、PsychInfo)より検索を行った。TRDに対する薬理学的増強療法を主なトピックスとし、TRDの明確な定義が記載されている英語論文を抽出した。 主な結果は以下のとおり。・最も研究されていた薬剤は、アリピプラゾールとリチウムであった。・有効性に関して、最も強力なエビデンスが示された薬剤は、アリピプラゾールであった。・オランザピン、クエチアピン、cariprazine、リスペリドン、ziprasidoneは、良好な結果が認められたが、その程度は低かった。・ブレクスピプラゾール、esketamine点鼻薬については、実臨床でのさらなる研究が求められる。・ケタミン静脈内投与は、短期的な抗うつ効果が認められた。・補助的な治療薬(抗てんかん薬、神経刺激薬、プラミペキソール、ロピニロール、アスピリン、メチラポン、レセルピン、テストステロン、T3/T4、naltrexone、SAM-e、亜鉛)の有効性に関するエビデンスは限られており、その有効性を正確に推定することは困難であった。・ラモトリギン、ピンドロールに関するエビデンスは、否定的なものであった。 著者らは「リチウムに関するデータは多少の議論の余地があるものの、TRD患者に対する効果的な増強療法として、アリピプラゾールとリチウムが有効であることが示唆された。他の薬剤については、信頼できる結論を導き出すことができなかった。これらの結果を明らかにするためには、標準化されたデザイン、用量、治療期間を用いて制御された比較研究が必要であろう」としている。

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