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2821.

適切な終末期の説明が患者と介護者のQOLを改善

患者と、死について話すのは難しいことだが、終末期に関して適切な説明を行えば、死の直前までの積極的治療を減らし、より早期のホスピス照会につながること。ホスピス滞在期間が長いほど、患者および介護者のQOLは良好であったとする、米国ボストンのダナ・ファーバー癌研究所のAlexi A. Wright氏らによる報告が、JAMA誌2008年10月8日号に掲載された。進行癌患者と介護者332組を死後も追跡調査本研究は2002年9月~2008年2月に行われた、前向き多施設共同・縦断コホート研究。対象は私的な介護者がいる進行癌患者(332組)で、患者は登録から死亡まで、中央値4.4ヵ月間にわたり追跡。残された介護者の精神症状とQOLは患者の死後、中央値6.5ヵ月間にわたり評価した。主要評価項目は、存命の最後の週における、積極的治療(人工呼吸器装着や蘇生措置など)とホスピスケアとした。副次的転帰には、患者のメンタルヘルスと介護者の死別適応を含めた。人工呼吸器装着・蘇生措置は減少し早期にホスピス登録患者332例のうち123例(37.0%)は、ベースライン以前に終末期について説明を受けたと報告した。その説明によって、大うつ病発症率は高まることなく(8.3%対5.8%、補正オッズ比:1.33、95%信頼区間:0.54~3.32)、不安増大とも関連しなかった(平均マギル・スコア:6.5対7.0、P=0.19)。傾向スコアを加重補正した結果、終末期の説明を受けることによって、人工呼吸器の装着率低下(1.6%対11.0%、補正オッズ比:0.26、95%信頼区間:0.08~0.83)、蘇生措置の実施率低下(0.8%対6.7%、0.16、0.03~0.80)、ICU入所率低下(4.1%対12.4%、0.35、0.14~0.90)、より早期のホスピス登録(65.6%対44.5%、1.65、0.04~2.63)につながった。補正解析の結果、積極的治療の種類が多いほど、患者自身のQOL低下(6.4対4.6、F=3.61、P=0.01)、残された介護者の大うつ病発症リスク増大(補正オッズ比:3.37、95%信頼区間:1.12~10.13)と関係していたが、ホスピス滞在期間が長いほど、患者自身のQOLは上昇した(平均スコア:5.6対6.9、F=3.70、P=0.01)。追跡調査の結果、患者自身のQOLが良好なほど、介護者のQOLも良好だった(β=0.20、P=0.001)。Wright氏は「終末期についての適切な説明は、死を間近にした積極的治療を少なくし、早期のホスピス照会につながる。積極的治療は、患者自身のQOL低下と介護者の死別適応を悪化させる」と結論付けている。(朝田哲明:医療ライター)

2822.

高脂血症治療薬が体内時計を調整する?

独立行政法人 産業技術総合研究所(以下、産総研)生物機能工学研究部門 生物時計研究グループ 石田 直理雄(のりお)研究グループ長 兼 上席研究員、大石 勝隆 主任研究員らは、徳島大学医学部 勢井 宏義(せい ひろよし)教授との共同研究で、高脂血症治療薬であるフィブレートが動物の冬眠などの体内季節時計に影響を及ぼすことを発見したと発表した。この研究では、フィブレートを餌に混ぜてマウスの飼育を行い、冬眠状態の生理と似た状態がマウスに現れることが発見された。フィブレートは肝臓細胞の核内受容体PPARαに結合することが知られており、フィブレートが日周体内時計を前進させ、それによる睡眠障害の治療効果があるという。今回、核内受容体PPARαが日周体内時計だけでなく、体内季節時計をも動かすことが発見された。この結果は、人間のような冬眠しなくなった哺乳類においても、冬眠時代の分子メカニズムが残されている可能性を示唆しており、このメカニズムを解明することによって、冬期うつ病のような治療の難しい病気に対する治療法開発につながると期待されるとのこと。研究成果の一部は、米国内分泌学会誌Endocrinology10月号に掲載される。また、2008年10月20日~21日に産総研つくばセンターで開催される「産総研オープンラボ」でも公開される予定(「体内時計分子からの創薬」として研究室公開予定)。 詳細はプレスリリースへhttp://www.aist.go.jp/aist_j/press_release/pr2008/pr20081009/pr20081009.html

2823.

周産期うつ病に認知行動療法に基づく介入は有効か:パキスタンの場合

地域のプライマリヘルスワーカーによる認知行動療法に基づく心理学的介入は、周産期うつ病の治療として有効なことが、パキスタンで実施された無作為化試験で明らかとなった。周産期うつ病の発症率は高く、障害を引き起こしたり幼児の発達障害の原因となりうるため、その治療は公衆衛生学上の優先課題だという。イギリスLiverpool大学地域コミュニティ行動科学科のAtif Rahman氏が、Lancet誌2008年9月13日号で報告した。うつ病妊婦に対する認知行動療法に基づく介入のクラスター無作為化試験研究グループは、パキスタン非都市部において地域住民ベースのプライマリヘルスワーカーのルーチン業務に認知行動療法に基づく介入を統合し、この介入法が妊婦うつ病および新生児の予後に及ぼす効果を評価するためのクラスター無作為化対照比較試験を実施した。ラワルピンディ市非都市部の40のUnion Council(パキスタンの最小行政単位で約1万5,000~2万人の住民から構成される)をクラスターとして、介入群あるいは対照群に1対1の割合で無作為に割り付けた。対象は、妊娠第3期に周産期うつ病と診断された既婚女性(16~45歳)とした。介入群のプライマリヘルスワーカーはうつ病の母親に心理学的介入を行うための訓練を受けた。対照群のヘルスワーカーは訓練を受けずにうつ病の母親に対して介入群と同じ回数の訪問指導を行った。主要評価項目は出産後6ヵ月および12ヵ月の時点での新生児の体重および身長とし、副次評価項目は母親のうつ病とした。インタビュアーには母親がいずれの群に属するかは知らされなかった。介入群の母親はうつ病の発症率が有意に少ない各群に20ずつのクラスターが割り付けられ、介入群の母親は463例、対照群は440例であった。出産後6ヵ月の時点で大うつ病の判定規準を満たした母親の割合は、対照群の53%(211/400例)に対し介入群は23%(97/418例)と有意な改善効果が認められた(補正オッズ比:0.22、95%信頼区間:0.14~0.36、p<0.0001)。この効果は12ヵ月後も維持されていた[27%(111/412例) vs. 59%(226/386例)、補正オッズ比:0.23、95%信頼区間:0.15~0.36、p<0.0001]。両群の幼児の体重および身長のzスコアは、6ヵ月(それぞれ、p=0.7、p=0.3)および12ヵ月(p=0.3、p=0.07)の時点でいずれも有意な差は認めなかった。その一方で、介入群の幼児は下痢が少なく、予防接種率が高かった。また、介入群では母親の避妊薬の使用率が高く(乳幼児死亡率の低減には出産の間隔を十分に開けることが重要)、両親が子どもと遊ぶ時間が長いなどのベネフィットが確認された。著者は、「地域のプライマリヘルスワーカーによる認知行動療法に基づく心理学的介入は、周産期うつ病の治療として医療資源に乏しい地域の医療システムに統合しうる」と結論したうえで、この結果は「メンタルヘルスが公衆衛生プログラムの重要なコンポーネントとなりうることを示唆する」と指摘している。(菅野守:医学ライター)

2824.

併用HRTは、閉経後女性の健康QOLを改善する:WISDOM

エストロゲンとプロゲストゲンの併用ホルモン補充療法(併用HRT)は、「血管運動症状(ほてり)や性機能、睡眠障害を改善する効果がある」とのWISDOM研究グループによる報告が、BMJ誌2008年8月21日号に掲載された。WISDOM(women’s international study of long duration oestrogen after the menopause)は、HRT療法の長期にわたる効果とリスクを評価する無作為化試験で、心血管疾患、骨折、乳癌を主要臨床転帰とし健康QOLについても評価が行われた研究。1999年に始まったが2002年に、当時発表された「women’s health initiative trial in 2002」の結果(心血管疾患への長期的効果はない)の影響もあり試験は中断され、健康QOLについても疑問符がつけられていた。3ヵ国の閉経後女性3,721例を対象に二重盲検無作為化試験二重盲検無作為化試験で行われたWISDOMは、英国(384)、オーストラリア(94)、ニュージーランド(24)の一般クリニックで、経年処理50~69歳の閉経後女性3,721例(子宮を有する)が参加して行われた。参加者は、エストロゲンとプロゲストゲンの併用HRT群(n=1,862)と、プラセボ群(n=1,859)に無作為に割り付け。併用HRT群には、抱合型ウマエストロゲン0.625mg+酢酸メドロキシプロゲステロン2.5/5.0 mgが、1日1回1年間経口投与された。健康QOLデータ(1年時点)が得られたのは、併用HRT群1,043例、プラセボ群1,087例だった。主要転帰は、健康QOLおよびうつなど精神・心理的な健康具合。健康QOLは自己申告方式の健康アンケート(WHQ:women’s health questionnaire)で、精神面や身体面に現れる更年期障害は症状アンケート(symptoms questionnaire)、うつ病スケールCES-Dで評価。EuroQolと視覚アナログスケールで総健康QOL、総合QOLの評価が行われた。血管運動症状、性機能、睡眠問題で有意な改善1年時点で、プラセボ群と比較して併用HRT群に、小さくはあったが有意な改善が、WHQの9つの構成要素のうち3つ、血管運動症状(P

2825.

概ね必要適格なケアを受けている:イギリス50歳以上成人

健康問題を有する人へのヘルスケア介入は効果的に行われているのか。イギリスの50歳以上成人を対象とする調査が、イーストアングリア大学医学部健康政策実践部門のNicholas Steel氏らにより行われた。BMJ誌2008年8月13日号より。32の臨床指標と7つの質問を用いて評価調査は、面談方式による全国統一のサーベイアンケートで、公的・私的を問わず提供されたケアの質の評価をカバーできる指標を有する。参加者は、全イングランドの世帯を対象とする経時的研究(English longitudinal study of ageing)の8,688人で、そのうち4,417人は13の健康問題(虚血性心疾患、うつ、糖尿病など)のうち1つ以上を有していた。主要転帰は、32の臨床指標と7つの質問を用いて、患者である参加者が受けていると回答した介入の適格性の割合と集計スコア。障害や虚弱問題の領域では不十分調査の結果、患者は1万9,082種類の必要適格なケアを受けていた。必要適格なケアを受けているかは、参加者の健康状況によって異なった。最も適格にケアを受けていたのは「虚血性心疾患」の問題を有する患者で83%、「難聴」79%、「疼痛マネジメント」78%、「糖尿病」74%、「禁煙」74%、「高血圧」72%、「脳卒中」65%、「うつ病」64%、「要介護」58%、「視覚障害」58%、「骨粗鬆症」53%、「尿失禁」51%、「転倒マネジメント」44%、「変形性関節症」29%と続き、「全体的に」62%だった。ケアの適格性は、老化に伴う問題(55%)よりも医学的問題(74%)に関するもののほうが高い。また、一般開業医の報酬対象となっている健康問題のほうが(75%)、対象外となっている健康問題(58%)よりも高かった。Steel氏は「推奨されているケアは、障害や虚弱問題の領域では十分に提供されていなかった。よりよい健康アウトカムを成し遂げるためのケア改善の努力は広範囲にわたり必要だが、特に高齢者のQOLに影響を及ぼす慢性疾患の問題で必要である」と結論している。

2826.

うつ病やPTSDが深刻なネパールの元少年兵

戦争や武力紛争で、戦闘への参加を強いられた少年兵経験者には、特別の精神保健的な介入が必要とされるが、徴兵されなかった一般の少年との精神保健面の違いに関する研究は十分ではない。エモリー大学(米国・ジョージア州アトランタ市)のBrandon A. Kohrt氏らはネパールにおける調査の結果、「元少年兵の精神保健面の問題は、徴兵されなかった少年に比べて、より重症である」と報告した。JAMA誌2008年8月13日号より。少年兵と徴兵未経験者を141例ずつ選定し比較ネパールで2007年3月から4月にかけて、元少年兵と徴兵されなかった少年をそれぞれ141例選定し、年齢、性別、教育水準、民族性を合わせた横断的コホート研究を行い、精神保健面を比較した。主要評価項目は、うつ病症状は「Depression Self Rating Scale」、不安障害は「Screen for Child Anxiety Related Emotional Disorders」、心的外傷後ストレス障害(PTSD)の症状は「Child PTSD Symptom Scale」、一般的な心理的障害は「Strength and Difficulties Questionnaire」、日常的動作は「Function Impairment tool」、心的外傷要因への曝露は、情動障害と統合失調症に関する「PTSD Traumatic Event Checklist of the Kiddie Schedule」で評価した。PTSDは男子よりも女子で深刻研究参加時の平均年齢は15.75歳、少年兵徴用時の年齢は5歳~16歳だった。すべての参加者に、少なくとも1種類の心的外傷があった。元少年兵の症状別では、うつ病が75例(53.2%)、不安障害が65例(46.1%)、PTSDが78例(55.3%)、心理的障害が55例(39.0%)、機能障害が88例(62.4%)だった。心的外傷要因への曝露および他の要素で補正すると、うつ病(オッズ比:2.41、95%信頼区間:1.31~4.44)、PTSD(女子)(6.80、2.16~21.58)、PTSD(男子)(3.81、1.06~13.73)に有意な関連が認められた。一般的な心理的障害(2.08、0.86~5.02)、不安(1.63、0.77~3.45)、機能障害(1.34、0.84~2.14)との関連は有意ではなかった。Kohrt氏は「ネパールの元少年兵は、徴兵されなかった少年と比べて精神衛生的な問題はより重症で、うつ病とPTSD(特に女子)の形で心に焼きついている」と結論している。(朝田哲明:医療ライター)

2827.

うつ病治療に伴う女性の性機能障害にもバイアグラが有効

抗うつ薬の選択的・非選択的セロトニン再取り込み阻害剤(SRI)治療に関連する一般的な副作用として性機能障害があり、しばしば抗うつ薬による治療を早期に中断せざるを得ない要因ともなっている。これまでSRIによる性機能障害に、シルデナフィル(商品名:バイアグラ)が有効なことは知られていたが、米国ニューメキシコ大学医学部のH. George Nurnberg氏らは、女性にも同様に効果があると報告した。JAMA誌2008年7月23日号より。閉経前の女性98例に対して性行為前に服用させ比較2003年9月1日から2007年1月1日の間、米国内の7つの研究施設において、大うつ病がSRI治療で沈静化したものの、性機能障害も経験した閉経前の女性98人(平均年齢37.1歳)を対象に、8週間の前向き・2群並行・無作為化二重盲検プラセボ対照臨床試験を実施した。患者は49例ずつ無作為に、性行為の前にシルデナフィルまたはプラセボを50~100mgまで増減して服用するよう割り付けられた。主要評価項目は、研究終了時点で、Clinical Global Impression性機能スケールによるベースラインからの変化の平均差とした。副次的評価項目は、Female Sexual Function Questionnaire、アリゾナSexual Experience scale(女性版)、ニューメキシコ大学Sexual Function Inventory(女性版)および性行為記録、ハミルトンうつ病評価スケールとした。内分泌レベルも評価が行われた。性機能スコアは改善、深刻な副作用は見られずClinical Global Impression性機能スコアは、シルデナフィル群が平均1.9(95%信頼区間:1.6~2.3)だったのに対して、プラセボ群は同1.1(0.8~1.5)で、終了時点の平均差は0.8(0.6~1.0、P=0.001)だった。ベースライン登録患者の22%は、早期に中断する結果になったが、シルデナフィル群の平均エンドポイントは性機能スコア1.5(1.1~1.9)であり、プラセボ群は同0.9(0.6~1.3)、終了時点の平均差は0.6(0.3~0.8、P=0.03)と有意な差があった。ベースラインにおける内分泌レベルは正常範囲内で、群間差はなかった。うつ病のハミルトン・スコアは平均値4.0(SD 3.6)で、両群の寛解度は同程度だった(P=0.90)。治療期間中に頭痛、潮紅、消化不良はしばしば報告されたが、深刻な副作用で脱落した患者はいなかった。このためNurnberg氏は、「SRI服用で性機能障害になった女性に対するシルデナフィル治療は、有害な性的効果を減少させる」と結論した。(朝田哲明:医療ライター)

2828.

癌患者の大うつ病管理に有効な介入法が開発された

“Depression Care for People with Cancer”と呼ばれる複合的な介入法は、専門的な医療サービスを受けている癌患者における大うつ病管理のモデルとなることが、スコットランドで実施された無作為化試験(SMaRT oncology 1)で示された。大うつ病は癌などの疾患に罹患した患者のQOLを著しく損なうが、その管理の指針となるエビデンスは少ないという。イギリスEdinburgh大学癌研究センターのVanessa Strong氏がLancet誌2008年7月5日号で報告した。通常ケアと通常ケア+看護師による介入を比較研究グループは、大うつ病の体系的なスクリーニング法と複合的な介入法を併用し、うつ病の管理とがん治療を統合した治療システムを開発した。SMaRT(Symptom Management Research Trials)oncology 1は、癌患者の大うつ病の治療法としてデザインされた介入法である“Depression Care for People with Cancer”の効果を評価する無作為化試験。2003年10月~2005年12月に、スコットランドの地域癌センターに6ヵ月以上の生存が見込まれ、大うつ病に罹患した200例の外来癌患者が登録された。平均年齢は56.6歳、141例(71%)が女性であった。99例が通常ケア群に、101例が通常ケア+介入群に無作為に割り付けられた。介入は平均7つのセッションからなり、癌センターで癌専門看護師によって施行された。主要評価項目は、無作為化後3ヵ月の時点における自己報告によるSymptom Checklist-20(SCL-20)のうつ病スケール(0~4)の平均スコアの差とした。介入群でSCL-20うつ病スコアが有意に低下データが欠失した4例を除く196例について解析を行った。3ヵ月後における補正後のSCL-20うつ病スコアは、介入を行った群で0.34低下し有意差が認められた(95%信頼区間:0.13~0.55、p=0.002)。治療効果は、6および12ヵ月の時点でも持続していた。介入により不安および疲労感の改善が見られたが、疼痛や身体機能の改善効果は認めなかった。質調整生存年(QALY)の1年の延長ごとに、新たに£5,278(US$1万556)のコストが発生した。Strong氏は、「“Depression Care for People with Cancer”は、専門的な医療サービスに参加している癌をはじめとする疾患の患者における大うつ病管理のモデルとなることが示された」と結論し、「今後、SMaRT oncology 2、3において本介入法の費用対効果や、予後不良例にもベネフィットをもたらすか否かを評価する予定である」としている。(菅野守:医学ライター)

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2型糖尿病治療でかえってうつ発症率が高まる

抑うつ症状と2型糖尿病は関連が指摘されているが、2型糖尿病が抑うつ症状のリスク因子かどうかは不明である。抑うつ症状と2型糖尿病の相関関係を調べていたジョンズ・ホプキンス大学(アメリカ)のSherita Hill Golden氏らは、全体としての相関関係はないとしながらも、糖尿病治療中のほうが抑うつ症状発症率は高まることを示した。JAMA誌2008年6月18日号より。米国人男女約5,000人の追跡調査から関係推定本研究は、45~84歳の米国男女を2000~2002年に登録し、2004~2005年まで追跡した縦断的・多民族コホート研究「Multi-Ethnic Study of Atherosclerosis」に基づいて行われた。主要評価項目は、疫学研究センター・うつ病スケール(CES-D)で16ポイント以上と定義される抑うつ症状か、抗うつ薬投与またはその両方とし、参加者を、空腹時血糖値が正常(100mg/dL)、境界型=IFG(100~125mg/dL)、2型糖尿病(126mg/dL以上または治療中)に分類。「分析1」では、ベースラインで2型糖尿病でない参加者5,201例を対象に、抑うつ症状の有無について、3.2年間にわたり2型糖尿病との相対ハザードを推定。「分析2」では、ベースラインで抑うつ症状のない参加者4,847例を対象に、2型糖尿病の有無について、3.1年間にわたり抑うつ症状発症との相対オッズを算出した。糖尿病とうつは関連するものの有意差なし「分析1」では、2型糖尿病発症率は、抑うつ症状群で1,000人/年につき22.0人、抑うつ症状のない群で同16.6だった。2型糖尿病のリスクは、人口動態的因子とBMIを補正後、CES-Dスコアが5単位増すごとに1.10倍高くなった(95%信頼区間:1.02~1.19)。この傾向は、代謝や炎症、社会経済、生活様式因子で補正しても同じだが、補正後は統計学的な有意差はなかった(相対ハザード比:1.08、95%信頼区間:0.99~1.19)。「分析2」では、抑うつ症発症率は、正常血糖群では1,000人/年につき36.8。IFG群では同27.9、未治療群は同31.2、治療群は61.9だった。正常血糖群で抑うつ症を発症する人口動態的補正オッズ比は0.79、IFG群は0.75、未治療と治療群では1.54だった。抑うつ症状と2型糖尿病の関連性は、BMIや社会経済、生活様式因子、共存症による補正後も同じだが、実質的に相関関係は存在しない。ベースラインにおける抑うつ症と2型糖尿病のおおまかな関連は、生活様式因子によって部分的に説明できた。IFG群と未治療群は、抑うつ症発症率と逆相関し、治療群は正相関を示した。 これらは人種民族集団全体で類似していた。(朝田哲明:医療ライター)

2830.

脳卒中後うつ病予防の効果はescitalopram投与>問題解決療法

脳卒中経験者の半数以上がうつ病となり、それが日常生活動作の回復を妨げ、死亡率増加にも関与していることは、これまで多くの研究で示されている。米国アイオワ大学医学部のRobert G. Robinson氏らは、そうしたうつ病予防に対するSSRIの抗うつ薬escitalopramの効果を、問題解決療法(PST:problem-solving therapy)との比較で無作為化試験。どちらも効果があるが、escitalopram投与のほうが優位と報告した。JAMA誌2008年5月28日号掲載より。脳卒中発症後3ヵ月以内の患者176例を1年間追跡2003年7月9日から2007年10月1日にかけて複数施設から登録された、急性脳卒中後3ヵ月以内のうつ病ではない患者176例を対象に行われた。対象者は、二重盲検によるescitalopram投与群(n=59)およびプラセボ投与群(n=58)、非盲検によるPST群(n=59)の3群に無作為に割り付けられ、12ヵ月間にわたり介入が行われた。主要評価項目は、脳卒中後の大うつ病もしくは小うつ病の発症を、精神疾患構造化面接(SCID-IV)、DSM-IVの診断基準に基づき判定した調査結果。うつ病発症率がescitalopram投与群で有意に低下うつ病発症率は、プラセボ投与群がescitalopram投与群、PST群いずれよりも有意にたかった。プラセボ投与群の発症率は22.4%(大うつ病11例、小うつ病2例)で、escitalopram投与群は8.5%(同3例、2例)、両群間の補正後ハザード比(HR)は4.5(95%信頼区間:2.4~8.2、P<0.001)。またPST群は11.9%(同5例、2例)で、HRは2.2(1.4~3.5、P<0.001)。気分障害の既往歴で調整し、年齢、性、治療施設、モデル欠陥などを考慮しても、なお有意差があった。無作為化をせずに患者27例全員がうつ病を呈したと仮定して、ITT解析(Intention-to-Treat)を用い気分障害の既往歴を加味しても、escitalopramの優位性(対プラセボ)は変わらない(発症率23.1%対34.5%、HR:2.2、95%信頼区間:1.2~3.9、P=0.007)。しかし対PSTでは対プラセボほど有意に良好であると言える結果ではなかった(同30.5%対34.5%、HR:1.1、95%信頼区間:0.8~1.5、P=0.51)。有害事象については、各群間に有意差はなかった。以上の結果Robinson氏は、「脳卒中患者へのescitalopram投与とPSTによる治療は、いずれもうつ病予防に有効だが、効果はPSTのほうがやや小さい」と結論している。(朝田哲明:医療ライター)

2831.

自己血糖測定は無益であるばかりか患者のうつ病悪化をもたらす

自己血糖測定は、血糖コントロールに有益な影響を及ぼさないばかりか、うつ病を増幅する――。新規の非インスリン治療の2型糖尿病患者を対象に、セルフモニタリングが、血糖コントロール、および患者の治療に対する姿勢、満足度に及ぼす効果を検討していたMaurice J O’Kane氏らESMON studyグループは、このような調査結果を報告した。BMJ誌2008年5月24日号(オンライン版2008年4月17日号)掲載より。セルフモニタリング群と対照群を1年間追跡ESMON studyは、自己血糖測定を行うよう介入を行った群(セルフモニタリング群)と非介入群(対照群)とを比較するプロスペクティブな無作為化試験である。70歳未満で新規に2型糖尿病と診断された184例(うち男性は111例)が参加。二次性糖尿病患者、インスリン治療対象者、自己血糖測定の経験がある者は除外された。セルフモニタリング群(96例、うち男性55例)と対照群(88例、うち男性56例)に無作為化された参加者は、3ヵ月に1回の間隔で1年間追跡調査が行われた。両群とも、同一内容の教育プログラムを受講した後、セルフモニタリング群にのみ付加的な教育が課せられた。主要評価項目は、HbA1c、心理的指標、経口血糖降下剤服用の有無、BMI、および報告された低血糖の頻度。両群間の基線値はほとんど差がなく、平均年齢はセルフモニタリング群57.7歳(SD:11.0)vs. 対照群60.9歳(11.5)。HbA1cは8.8%(2.1)vs. 8.6%(2.3)。ただしBMIについては、34(7)vs. 32(6.2)でセルフモニタリング群のほうが高かった。追跡期間中いずれに時点でも有意差認められず結果は、追跡調査期間中のいずれの時点でも、両群間に有意差は認められなかった。HbA1c(SD)は6.9%(0.8)vs. 6.9%(1.2)(P=0.69、差異に対する95%信頼区間:0.25%~0.38%)。BMIは33.1(6.4)vs. 31.8(6.0)(基線BMIに対する調整P=0.32)。経口血糖降下薬の使用や低血糖の頻度の報告数にも有意差は認められなかった。ただし、うつ病に関するスコア(well-beingアンケートに基づくサブスケールで測定)がセルフモニタリング群で6%高まっていた(P=0.01)。これらの結果から、「自己血糖測定が、血糖コントロールに有益な影響を及ぼすことはない。かえってうつ病悪化に結びつく」と結論している。

2832.

約8人に1人がうつ病・うつ状態の可能性

ファイザー株式会社が行った12歳以上の一般生活者4,000人を対象とするインターネット調査によると、約8人に1人がうつ病・うつ状態の可能性があることがわかった。また、うつ質問票でうつ病・うつ状態に該当した486人に対し、「医療機関を受診したことがありますか」と質問したところ、「受診したことがある」と答えたのは24%にとどまった。さらに、うつ質問票でうつ病・うつ状態に該当し、かつ「過去にうつ病・うつ状態と感じたことがある」と答えた384人に限定して同様の質問をしてみると、「受診したことがある」と答えたのは30%だった。詳細はプレスリリースへhttp://www.pfizer.co.jp/pfizer/company/press/2008/2008_04_11.html

2833.

受診経験のあるうつ病患者の約4人に1人が治療を中断した経験がある

ファイザー株式会社が行った12歳以上の一般生活者のうち、うつ病うつ病関連疾患で受診経験がある1,000名を対象にインターネット調査によると、受診経験のあるうつ病患者の約4人に1人が治療を中断したことがあることがわかった。その内「症状は治まっていなかった」にも関わらず、治療を中断したのは41%で、その理由としては「通院が面倒」「通院するほどの病気、症状ではないと思った」「症状が良くならなかった」が多くあげられた。また、初診時の診断で「うつ病・うつ状態」と診断された割合は、専門医で52%に対して、非専門医では17%。非専門医受診者では、うつ病・うつ状態と診断されず、自律神経失調症などの診断がされるケースが専門医に比べ多く存在することがわかった。詳細はプレスリリースへhttp://www.pfizer.co.jp/pfizer/company/press/2008/2008_04_11_02.html

2834.

第2世代抗精神病薬が第1世代より優れるとはいえない

統合失調症の初期症状に対する抗精神病薬治療は少なくとも1年間は有効であるが、第2世代の薬剤が第1世代よりも優れるとはいえないことが、EUFEST(European First-Episode Schizophrenia Trial)試験の結果から明らかとなった。第2世代抗精神病薬が上市されて10年以上が経過した。当初から、第1世代より有効で運動系の副作用も少ないとされるが、反対意見も多かった。オランダUtrecht医科大学Rudolf Magnus神経科学研究所のRene S Kahn氏が、Lancet誌2008年3月29日号で報告した。5つの薬剤を評価する非盲検の無作為化試験EUFESTの研究グループは、第1世代抗精神病薬ハロペリドールを対照として、4つの第2世代抗精神病薬amisulpride、オランザピン(国内商品名:ジプレキサ)、クエチアピン(セロクエル)、ziprasidone)の有用性を評価する無作為化対照比較試験を行った。対象は、18~40歳の統合失調症統合失調症様障害、統合失調性感情障害の診断規準を満たす症例とした。2002年12月~2006年1月の間に、ウェブサイト経由のオンラインシステムを用いて14ヵ国50施設から498例が登録され、ハロペリドール(1~4mg/日)群に103例、amisulpride(200~800mg/日)群に104例、オランザピン(5~20mg/日)群に105例、クエチアピン(200~750mg/日)群に104例、ziprasidone(40~160mg/日)群に82例が無作為に割り付けられた。精神病理(PANSS)、重症度(CGI)、心理社会的機能(GAF)、うつ状態(CDSS)、QOL(MANSA)、錐体外路症状(SHRS)、性機能不全(UKU)などの評価を行った。フォローアップ期間は1年。主要評価項目は全原因による治療中止とし、割り付け時は患者も治療医も非盲検とした。治療中止率は優れるが、症状改善効果は同等Kaplan-Meier法で推計した1年間に治療中止となった症例の割合は、ハロペリドール群よりも第2世代の薬剤群で実質的に低かった[ハロペリドール群72%(63例)、amisulpride群40%(32例)、オランザピン群33%(30例)、クエチアピン群53%(51例)、ziprasidone群45%(31例)]。ハロペリドールとの比較における全原因治療中止のリスク低下のハザード比は、amisulpride群0.37(95%信頼区間:0.24~0.57)、オランザピン群0.28(0.18~0.43)、クエチアピン群0.52(0.35~0.76)、ziprasidone群0.51(0.32~0.81)であり、第2世代の薬剤が有意に優れていた。PANSSで評価した症状の改善効果および入院率は治療群間で差を認めなかった。CGI、GAFによる評価はamisulprideが優れており、クエチアピンおよびハロペリドールが最も低かった。うつ、QOL、服薬遵守率にも治療群間で差は見られなかった。Kahn氏は、「統合失調の初期症状に対する抗精神病薬治療は1年間は臨床的に有効なことが示唆された。第2世代抗精神病薬は治療中止率が優れていたが、症状の改善効果は必ずしも優れなかったことから、ハロペリドールよりも有効とはいえない」と結論している。(菅野守:医学ライター)

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若年者のSSRI使用を制限しても自殺行動に影響しない

英国では、2003年に18歳未満への選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)の投与を禁忌としたが、この規制措置によって若年者の自殺行動に変化は見られないことが、Bristol 大学社会医学のBenedict W Wheeler氏らの調査で明らかとなった。規制当局は規制の理由をSSRIが自殺行動のリスクを増大させる可能性があるためとしているが、抗うつ薬の処方数の低下でうつ病が治療されず自殺死亡率が増加しているとする他国の試験もある。BMJ誌2008年3月8日号(オンライン版2008年2月14日号)掲載の報告。SSRI規制措置が自殺および自傷行為に及ぼす影響を調査研究グループは、2003年に制定された18歳未満のSSRI使用を制限する規制措置が、自殺および非致死的自傷行為に及ぼす影響の調査を目的とした地域相関研究を行った。SSRIの処方傾向は英国全土の12~19歳のデータを用い、自殺死亡率はイングランド/ウェールズの12~17歳を、自傷行為による入院率はイングランドの12~17歳のデータを使用した。自殺が低下、自傷行為が増加したが、規制との関連はない抗うつ薬の処方数は1999年から2003年にかけて倍増したが、2004~2005年の1年で1999年のレベルに低下した。これらの処方数の大きな変化は、自殺あるいは自傷行為の時間的傾向とは関連しなかった。1993~2005年の間に、12~17歳の年間自殺率は毎年、男性で3.9%、女性3.0%ずつ低下していたが、期間中のこの低下率は実質的な変化ではなかった。同様に、1999~2005年の自傷行為による入院率は毎年、男性で1.1%、女性で5.7%ずつ増加したが、規制措置施行後の変化に統計学的なエビデンスは認めなかった。Wheeler氏は、「18歳未満のSSRIの使用を制限した2003年の規制措置により抗うつ薬の処方数が著減したが、これは若年者の自殺行為の変化とは関連しなかった。特にイングランドのデータは、抗うつ薬使用の減少が自殺行為の増加をもたらさないこと示している」と結論し、「これらの知見は、若年者のSSRIへのアクセス低下は、英国の公衆衛生に有害な影響を及ぼしていないことを示唆する」指摘している。(菅野守:医学ライター)

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小児科研修医の投薬ミスが6倍以上に:うつ病、燃え尽き症候群調査から判明

 小児科研修医の2割がうつ病を、7割以上が燃え尽き症候群(burnout)に罹患し、うつ病研修医は投薬ミスの頻度が約6倍も高いことが、米国Harvard大学医学部付属小児病院(ボストン)のAmy M Fahrenkopf氏らの研究により明らかとなった。米国では毎年4万4,000~9万8,000人の患者が医療過誤で死亡し、薬物有害事象のうち予防可能な事例は40万件にのぼるが、これには睡眠不足や過重労働など医療従事者の労働条件の実質的な関与が指摘されていた。BMJ誌2008年3月1日号(オンライン版2008年2月7日号)掲載の報告。都市部施設の小児科研修医の労働状況、投薬ミス、罹病を調査 研究グループは、小児科研修医におけるうつ病および燃え尽き症候群の罹患状況を調査し、これらの疾患と投薬ミスの関連性について検討するためのプロスペクティブなコホート研究を実施した。 米国都市部の3つの小児病院[ボストン小児病院(ボストン、マサチューセッツ州)、Lucile Packard小児病院(パロアルト、カリフォルニア州)、国立小児医療センター(ワシントンDC)]で3つの小児科研修医プログラムに参加した研修医123人が対象となった。 参加研修医は2003年5~6月の期間、毎日の労働状況と睡眠時間を記録し、健康状態、QOL、自己報告による投薬ミスに関する質問票に記入した。うつ病の発症状況はHarvard national depression screening day scale、燃え尽き症候群はMaslach burnout inventoryを用いて評価した。医療従事者の精神衛生が患者の安全性に重大な影響を及ぼす 24人(20%)がうつ病の判定規準を、92人(75%)が燃え尽き症候群の判定規準を満たした。積極的監視(active surveillance)では参加研修医による45件の投薬ミスが確認された。 うつ病に罹患した研修医の月間の投薬ミス頻度は非うつ病研修医の6.2倍に達した(1.55 vs. 0.25、p<0.001)。燃え尽き症候群の研修医と非燃え尽き症候群研修医の投薬ミスの頻度は同等であった(0.45 vs. 0.53、p=0.2)。 Fahrenkopf氏は、「うつ病および燃え尽き症候群は小児科研修医の大きな問題であることが明らかとなった。投薬ミスの頻度はうつ病の研修医で有意に高かったが、燃え尽き症候群では差は見られなかった」と結論している。また、同氏は「試験中にうつ病の研修医に適切な治療が行われないなど、本研究は重大な倫理的問題を提起する」と指摘し、「医療従事者の精神衛生は患者の安全性に重大な影響を及ぼす可能性が示唆され、他科を含め医師の精神衛生のさらなる検討の必要性が浮き彫りとなった」と考察している。

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SSRI抵抗性思春期うつ病には投与薬剤変更+認知行動療法併用を

 うつ病の若者のうち、選択的セロトニン再取り込み阻害剤(SSRI)による初期治療に反応するのは60%程度にすぎず、その後の治療法はデータに基づく指針はない。そこで米国ピッツバーグ大学のDavid Brent 氏らは、SSRI抵抗性思春期うつ病患者に対して、4つの治療法を試験。SSRIの変更と認知行動療法の併用が、より高い臨床効果を挙げると報告している。JAMA誌2008年2月27日号より。12~18歳334例を薬剤変更と認知行動療法の有無に無作為化 初回診断で大うつ病とされ、SSRIによる2ヵ月間の初期治療に反応しなかった12~18歳の患者334例を対象としたTORDIA無作為化試験は、2000~2006年にかけて、米国の大学病院と地域の医療機関計6ヵ所で実施された。12週にわたり(1)初期治療とは異なるSSRI[パロキセチン(日本国内商品名:パキシル)、citalopramまたはfluoxetine、20~40mg]への変更、(2)異なるSSRIへの変更と認知行動療法併用、(3)選択的セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害剤(SNRI)venlafaxine(150~225mg)への変更、(4)venlafaxineへの変更と認知行動療法併用の4群に無作為に割り付けられた。 主要評価項目は、Clinical Global Impressions-Improvement scoreが2以下(非常にまたは格段に改善)と、Children’s Depression Rating Scale-Revised (CDRS-R)が少なくとも半数の子供たちで改善していること、またCDRS-Rの経時的変化によって測定した。venlafaxine療法では血圧、脈拍数上昇と皮膚病頻発 奏効率は認知行動療法+薬剤変更群(54.8%、95%信頼区間:47~62%)のほうが、単なる薬剤変更群(40.5%、同33~48%)より高かった(P=0.009)。しかしvenlafaxine群(48.2%、同41~56%)とSSRI群(47.0%、同40~55%)に違いはなかった(p=0.83)。 CDRS-Rや、うつ症状の自己評価、自殺念慮、その他の有害事象発生率に、治療による差はなかった。ただしSSRI群と比べてvenlafaxineで、拡張期血圧と脈拍数の増大、皮膚病の頻発が確認された。 Brent 氏は「SSRIによる初期治療に反応しなかったうつ病の若者に、抗うつ薬変更と認知行動療法を組み合わせると、薬剤変更だけより高い臨床効果が得られる。またSSRI変更は、第4世代の抗うつ薬とされるvenlafaxineへの変更と同程度に有効で、副作用もより少ない」と結論付けている。

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「こころの病気を学ぶ授業」普及開始

日本イーライリリー株式会社は、精神疾患への理解促進と偏見是正を目的に、中・高生向けに、統合失調症を例に「こころの病気を学ぶ授業」プログラムを開発、2月6日よりウェブサイトで公開、普及開始した。「こころの病気を学ぶ授業」は、2月6日より同社のウェブサイト(www.lilly.co.jp)で概要を公開、指導案・教材CD-Rの申し込みを受け付ける。また「こころの病気を学ぶ授業」指導案・教材CD-Rは、学校の授業でご活用いただくことを目的に、教育関係者の方々に無料で提供するという。詳細はプレスリリースへhttp://www.lilly.co.jp/CACHE/news_2008_07.cfm

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統合失調症治療薬「ロナセン」承認

1月25日、大日本住友製薬は統合失調症治療薬「ロナセン」(ブロナンセリン)の製造販売の承認を得た、と発表した。初期症状である幻覚・妄想や意欲低下などを軽減する。体重が増える副作用が少ないのが特徴。詳細はプレスリリースへ(PDF)http://www.ds-pharma.co.jp/news/pdf/ne20080125.pdf

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抗精神病薬副作用の体重増加や代謝異常に有効なのは?

精神病患者の高脂血症、代謝異常などの共存症発症は、抗精神病薬に共通する副作用の体重増加が関連しているといわれる。中国湖南省にある中南大学湘雅第二医院メンタルヘルス部門のRen-Rong Wu氏らは、抗精神病薬による体重増加や代謝異常に対して、生活習慣への介入単独、+メトホルミン投与もしくはメトホルミン単独投与それぞれの有効性について、同院患者を対象に無作為化試験を実施。JAMA誌2008年1月9日号にて報告した。治療前より体重が10%以上増の統合失調症患者128例を対象試験は2004年10月~2006年12月にかけて、湘雅第二医院の統合失調症を有し、投薬治療前と体重が10%以上増加した成人患者128例を対象に行われた。対象者は無作為に4つの治療群(メトホルミン単独投与群、プラセボ単独投与群、生活習慣介入+メトホルミン投与群、生活習慣介入+プラセボ投与群)のいずれかに割り付けられ、12週間にわたり治療が行われた。メトホルミンの投与量は750mg/日。主要評価項目は、BMI指数、腹囲、インスリン濃度、インスリン抵抗性指数(HOMA-R)。生活習慣介入+メトホルミン、メト単独、生活単独の順で有効対象128例の初期統合失調症患者は全員、精神医学的に比較的安定した状態に改善した。生活習慣介入+メトホルミン投与群は、BMI指数平均1.8(95%信頼区間:1.3~2.3)、インスリン抵抗性指数平均3.6(同2.7~4.5)、腹囲平均2.0cm(同1.5~2.4cm)それぞれ減少した。メトホルミン単独投与群は、1.2(同0.9~1.5)、3.5(同CI、2.7~4.4)、1.3cm(同1.1~1.5cm)。生活習慣介入+プラセボ投与群は、0.5(同0.3~0.8)、1.0(同0.5~1.5)。しかしながらプラセボ単独投与群では平均、1.2(同0.9~1.5)、0.4(同0.1~0.7)、2.2cm(同1.7~2.8cm)ずつの増加がみられた。抗精神病薬による体重増加に対しては生活習慣介入、メトホルミン投与、もしくは両者の組み合わせのいずれもが有効であることが示され、なかでも最も有意に優れていたのは、生活習慣介入+メトホルミン投与であり、メトホルミン単独投与、生活習慣単独介入の順であったと研究者らはまとめている。(武藤まき:医療ライター)

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