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うつ病に対するミルタザピンvs他の抗うつ薬【ポール・ヤンセン賞受賞】

 第22回日本臨床精神神経薬理学会・第42回日本神経精神薬理学会合同年会(2012年10月18~20日、宇都宮市)にて2012年ポール・ヤンセン賞を受賞した名古屋市立大学 渡辺氏の「うつ病に対するミルタザピンと他の抗うつ薬の比較―コクランレビュー」を紹介する。 従来の抗うつ薬と異なる作用機序を有するミルタザピン。名古屋市立大学 渡辺氏らは成人のうつ病急性期治療に対するミルタザピンと他の抗うつ薬を比較したエビデンスを評価し、レビューを行った。その結果、著者らは「ミルタザピンはSSRIと比較し、とくに治療早期の有効性に優れる」としている。Cochrane Database Syst Rev誌2011年12月7日号の報告。 うつ病の急性期治療でミルタザピンと他の抗うつ薬を比較した無作為割り付け対照試験を対象とした。エビデンスはコクランうつ・不安神経症グループ研究データベース(CCDANCTR)にて検索を行った。関連研究報告書の参考文献リストをチェックし、専門家への問い合わせを行った。登録基準のチェックとデータの抽出は、2名の著者が各々独立して実施した。各データのランダム効果モデルはオッズ比(OR)と標準化平均差(SMD)に統合された。主要評価項目は治療反応とし、副次的評価として脱落率、忍容性を評価した。評価時期は、治療開始から2週間時点を治療早期、治療開始6~12週時点を急性期治療終了時とした。主な結果は以下のとおり。・最終的に29試験からうつ病患者4,974例のデータが得られた。対照薬として三環系抗うつ薬(10試験、1,553例)、SSRI(12試験、2,626例)、SNRI(2試験、415例)が用いられた。・主要評価項目では、ミルタザピンは三環系抗うつ薬と比較して、治療早期(OR 0.85、95%CI 0.64~1.13)および急性期治療終了時(OR:0.89、95%CI:0.72~1.10)のどちらも明確な差が示されなかった。・ミルタザピンはSSRIと比較して、治療早期(OR 1.57、95%CI 1.30~1.88)および急性期治療終了時(OR:1.19、95%CI:1.01~1.39)とも有意に優れていた。・ミルタザピンはSNRI(ベンラファキシンのみ)と比較して、治療早期(OR 2.29、95%CI 1.45~3.59)および急性期治療終了時(OR:1.53、95%CI:1.03~2.25)とも有意に優れていた。・忍容性は、明確な差を検出することができなかった。・有害事象では、ミルタザピンはSSRIと比較して、体重増加、食欲の増加、眠気を引き起こす可能性が高く、嘔気・嘔吐、性機能障害の可能性は低かった。関連医療ニュース ・【ポール・ヤンセン賞受賞】夜間における抗精神病薬関連のQT延長リスク ・【学会レポート】精神科薬物治療の身体リスクを考える ・【人気コンテンツ】うつ病治療におけるNaSSA+SNRIの薬理学的メリット

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抗うつ薬だけじゃない!うつ病寛解を目指す「共同ケア」の効果は?

 うつ病に対する共同ケア(collaborative care)の有効性について評価した結果、抑うつおよび不安アウトカムが、通常ケアと比べて改善することが、英国・マンチェスター大学のArcher氏らによるシステマティックレビューの結果より示された。著者は、「抑うつ・不安症状を呈する成人患者の臨床治療に有用であることが示された」と結論している。Cochrane Database Syst Rev2012年10月17日号の報告。英国では、よくあるメンタルヘルスの問題として人口の最大15%が抑うつや不安症状を有すると推定されており、世界的にもこれらの症状の影響や負荷を減らすための効果的な介入が求められている。共同ケアは、慢性疾患マネジメントモデルをベースとする複合的な介入で、メンタルヘルスのマネジメントにおいても有望視されている。 2012年2月までに、MEDLINEやEMBASEなどから関連する無作為化試験を登録しているCochrane Collaboration Depression, Anxiety and Neurosis Group(CCDAN)試験レジスターを検索した。適格試験は、抑うつまたは不安を呈するあらゆる年齢を対象とした共同ケアについての無作為化試験とした。2人の独立したレビュワーがデータ抽出を行い、バイアスリスクの検証とともに、標準化された平均差(SMD)およびリスク比(いずれも95%CIを伴う)を統合算出して検討した。結果の妥当性について感度解析も行った。主な結果は以下のとおり。・無作為化試験79件(関連性のある比較90件を含む)、参加者計2万4,308例を組み込んだ。・試験は、バイアスリスクにより差があった。・主要解析の結果、共同ケアモデルで治療されたうつ病成人患者は、介入が短期、中期、長期を問わず、抑うつ症状のアウトカムについて有意に顕著な改善を示した。短期介入のSMDは-0.34(95%CI:-0.41~-0.27)、RRは1.32(95%CI:1.22~1.43)、中期介入のSMDは-0.28(同:-0.41~-0.15)、RRは1.31(同:1.17~1.48)、長期介入のSMDは-0.35(同:-0.46~-0.24)、RRは1.29(同:1.18~1.41)であった。・しかしながら、これらの有意なベネフィットは、非常に長期にわたる介入においては示されなかった(RR:1.12、95%CI:0.98~1.27)。・不安症状のアウトカムについても同様の結果が示された。短期介入のSMDは-0.30(95%CI:-0.44~-0.17)、RRは1.50(95%CI:1.21~1.87)、中期介入のSMDは-0.33(同:-0.47~-0.19)、RRは1.41(同:1.18~1.69)、長期介入のSMDは-0.20(同:-0.34~-0.06)、RRは1.26(同:1.11~1.42)であった。・不安症状アウトカムについては、非常に長期にわたる介入の比較試験がなかった。・薬物療法、メンタルヘルスQOL、患者満足度を含んだ副次アウトカムでも、ベネフィットがあるとのエビデンスが認められた。しかし、身体的QOLに関するベネフィットについては、エビデンスが乏しかった。関連医療ニュース ・【学会レポート】抗うつ効果の予測と最適な薬剤選択 ・世界初!「WEB版」気分変動アンケート、その後の臨床に有益 ・うつ病患者は要注意?慢性疼痛時のオピオイド使用

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【ポール・ヤンセン賞受賞】夜間における抗精神病薬関連のQT延長リスク

 2012年10月18~20日に第22回日本臨床精神神経薬理学会・第42回日本神経精神薬理学会合同年会が宇都宮で開催された。同学会において、日本臨床精神神経薬理学会2012年ポール・ヤンセン賞が発表され、新潟大学 渡邉氏の「夜間における抗精神病薬に関連したQT間隔延長リスクの増加―24時間ホルター心電図記録を用いた研究から―」と、名古屋市立大学 渡辺氏の「うつ病に対するミルタザピンと他の抗うつ薬の比較―コクランレビュ―」が受賞した。今回は、新潟大学 渡邉氏らの報告を紹介する。 これまでの報告において、抗精神病薬がQT延長を引き起こす可能性があることがわかっている。一方で、QT間隔は日内変動があり、健常者では昼間よりも夜間に延長する。新潟大学 渡邉氏らは、抗精神病薬服用患者のQT間隔に関して、日内変動および薬剤間の差を検討した。J Clin Psychopharmacol誌2012年2月号の報告。 対象は抗精神病薬オランザピン(OLZ)またはリスペリドン(RIS)を服薬中の統合失調症患者および未服薬の健常者(18~65歳)。ホルター心電図でCM5誘導を記録、QT解析ソフトでQT間隔を測定、専門家によるチェックを行った後、Fridericiaの公式[QTcF=QT/RR1/3]を用いて対応するRR間隔で補正し、30分間の平均QTcFから24時間、日中、夜間の平均QTcFを算出した。3群間の比較には一元配置分散分析法を、事後検定にはBonferroni法を用いた。主な結果は以下のとおり。・OLZ群41例、RIS群25例、健常群40例を解析した。・夜間のQTcFは日中と比較し、RIS群 13.9±15.0ms、OLZ群 3.5±11.7ms、健常群 5.2±10.5ms長く、昼夜の差はRIS群でOLZ群、健常群と比較し有意に大きかった(各々p=0.003、p=0.019)。・夜間のQTcFは、RIS群 411.6±29.0ms、OLZ群 395.9±21.2ms、健常群 387.8±19.0msであった。日中のQTcFは、RIS群 397.7±23.4ms、OLZ群 392.4±18.9ms、健常群 382.6±17.3msであった。日中のQTcFではRIS群とOLZ群との間に有意な差は認められなかったが、夜間のQTcF間隔はRIS群がOLZ群、健常群と比較し有意に長かった(各々p=0.021、p

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検証!デュロキセチンvs.他の抗うつ薬:システマティックレビュー

 大うつ病の急性治療について、セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(SNRI)であるデュロキセチンとその他の抗うつ薬との有効性、受容性、忍容性を比較するシステマティックレビューを、イタリア・ベロナ大学のCipriani氏らが行った。Cochrane Database Syst Rev2012年10月17日号の報告。 MEDLINE(1966~2012年)、EMBASE(1974~2012年)、CENTRAL(コクラン比較臨床試験登録)などをソースとして、2012年3月までに発表された試験論文および参照リストを検索した。デュロキセチンのメーカーのマーケティング部門、その他専門家からも補足データの提供を受けた。試験論文は言語を問わず、デュロキセチンとその他あらゆる抗うつ薬とについて検討した大うつ病患者を対象とする無作為化試験を適格とした。計16の無作為化試験(参加者合計5,735例)が、レビューに組み込まれた。主な結果は以下のとおり。・16試験中3試験は未発表のものであった。「デュロキセチンvs. 1つのSSRI」を検討したものが11試験(参加者計3,304例、対パロキセチン6試験、対エスシタロプラム3試験、対フルオキセチン2試験)、「デュロキセチンvs. 新規抗うつ薬」が4試験(同1,978例、対ベンラファキシン3試験、対デスベンラファキシン1試験)、「デュロキセチンvs.抗精神病薬」が1試験(同453例)で、三環系抗うつ薬と比較した試験はなかった。・プール解析の信頼区間(CI)は大きすぎて、デュロキセチンを他の抗うつ薬と比較した有効性についての統計学的有意差は認められなかった。・エスシタロプラムまたはベンラファキシンとの比較において、デュロキセチン群に無作為化された患者は何らかの原因によりドロップアウトした割合が高率であった[各群比較とのオッズ比(OR):1.62、95%CI:1.01~2.62、OR:1.56、95%CI:1.14~2.15]。・デュロキセチン服用患者がパロキセチン服用患者よりも有害イベントを経験したことが示されたが、エビデンスは弱かった(OR:1.24、95%CI: 0.99~1.55)。・比較試験はわずかで、臨床的に意義ある差を見いだすことは困難だった。また経済効果を報告するまでには至らなかった。関連医療ニュース ・うつ病補助療法に有効なのは?「EPA vs DHA」 ・他SSRI切替、どの程度の効果?北海道大学の報告 ・統合失調症患者の認知機能改善にフルボキサミンは有効か?

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世界初!「WEB版」気分変動アンケート、その後の臨床に有益

 WEBベースで行う気分変動調査(Mood Swings Questionnaire:MSQ)など自己診断双極性障害スクリーニングの尺度は、高い認容性を有し、良好なアウトカムに結びつくことが明らかにされた。オーストラリア・ニューサウスウェールズ大学のParker氏らが、WEB自己スクリーニング尺度の臨床への有用性を検討する公式では初となる試験の結果、報告した。Acta Psychiatr Scand誌オンライン版2012年10月5日号の掲載報告。 WEBベースのMSQを完了し双極性障害の可能性があると判定された人が、そのテストを有用だと判断したか、またその後に優れた臨床経過を有したかどうかを検討した。被験者のベースライン時とフォローアップ3ヵ月時点のデータを解析した。主な結果は以下のとおり。・MSQによるスクリーニングで「陽性」であった665例を対象とした。・MSQに対しては、有益である(informative)、有効である(validating)、または動機づけとなる(motivating)との回答がみられ、満足度は高かった。・被験者が双極性障害との診断を受けたのは、最初のうつ病エピソードから平均12年後であった。・大半が、正確な診断を求めたかどうかにかかわらず自己マネジメント戦略を実行した。・被験者を、スクリーニング後にとった行動の程度により3群に分け解析した。その結果、積極的な行動をとった人、診断確認を行った人は、試験期間中に、抑うつ症状、QOL、全体的な身体機能の改善が認められ、最もよい臨床経過をたどった。関連医療ニュース ・100年前と比べ統合失調症患者の死亡は4倍増、最大の死因は… ・検証!向精神薬とワルファリンの相互作用 ・特定の抗うつ薬使用で脳内ヘモグロビン濃度が増加!:名古屋大学

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統合失調症患者の「自傷行為」に関連する予測因子

 精神疾患患者の自殺予防は、日本のみならず世界各国で重要な課題となっている。英国 シェフィールド大学Pluck氏らは、統合失調症患者の自傷行為における臨床的および神経心理学的側面を人口統計学的に調査し、臨床的介入に最も関連する独立した予測因子の検証を行った。Eur Psychiatry誌オンライン版2012年10月9日号の報告。 対象は、統合失調症患者87例。対象患者に対し薬物乱用、うつ症状、自暴自棄、陽性/陰性症状、病識に関する項目を調査した。神経心理学的評価は、病前のIQ、継続的なパフォーマンステスト、認知機能、衝動性にて評価した。3ヵ月間前向きに医療記録の調査を行った。主な結果は以下のとおり。・過去に自殺未遂を含む自傷行為を認めた患者は59例(68%)。・自傷行為の経験を有する患者は、経験のない患者と比較し、うつ症状、自暴自棄、衝動性、自傷行為の家族歴をもつ割合が有意に高かった。・3ヵ月の前向き調査期間中に自傷行為がみられた患者5例は、過去に自傷行為を経験しており、初期から抑うつ傾向が認められることが多かった。・ロジスティック回帰によると、統合失調症患者における自傷行為の独立した危険因子は発症前の高いIQと多剤乱用であった。・うつ症状は、過去およびフォローアップ期間中の自傷行為の独立した予測因子であった。関連医療ニュース ・100年前と比べ統合失調症患者の死亡は4倍増、最大の死因は自殺 ・自殺リスクの危険因子の検証、年齢別のうつ症状との関係は? ・双極性障害患者の自殺企図、テストステロンレベルと相関

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統合失調症の症状悪化に関連?「喫煙」「肥満」の影響

これまで多くの研究者が、統合失調症などの精神疾患患者における不規則な生活がその後の症状や治療と関連しているかどうかを検討している。Cerimele氏らは統合失調症や双極性障害患者における健康リスク行動(health risk behaviors)が、その後の症状や機能レベルに関連づけられるかを検証するため、システマティックレビューを行った。Gen Hosp Psychiatry誌オンライン版2012年10月5日号の報告。 PRISMA系統的レビュー法を用いPubMed、Cochrane、PsychInfo、EMBASEのデータベースで検索した。検索ワードは「健康リスク行動、ダイエット、肥満、過体重、BMI、喫煙、たばこの使用、座りがちな生活や行動、運動不足、活動レベル、フィットネス、座っていること」、および「統合失調症、双極性障害、双極性疾患、統合失調感情障害、重度かつ持続的な精神症状・精神病」であり、6ヵ月以上の前向き対照研究を対象とした。この情報から、「座りがちな生活、喫煙、肥満、運動不足」が統合失調症および双極性障害患者の症状重症度や機能障害に影響を与えるかを検討した。主な結果は以下のとおり。・2,130報中8報が基準を満たし、健康リスク行動を有する508例とコントロール群825例が抽出された。・たばこの使用との関係を検討した報告が6報、体重増加/肥満との関係を検討した報告が2報であった。・7報から、たばこの使用や体重増加/肥満などの健康リスク行動を1つ以上有する統合失調症患者および双極性障害患者は、その後のより重度な症状悪化や機能レベルの低下(両方またはいずれか一方)が認められた。関連医療ニュース ・日本人統合失調症患者の脂質プロファイルを検証! ・統合失調症患者における「禁煙」は治療に影響を与えるか? ・100年前と比べ統合失調症患者の死亡は4倍増、最大の死因は自殺、とくに若者で

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100年前と比べ統合失調症患者の死亡は4倍増、最大の死因は自殺、とくに若者で

 英国・Hergest UnitのHealy D氏らは、統合失調症および関連する精神病の死亡動向について、20世紀初頭と直近とを比較するコホート研究(1875~1924年コホートvs.1994~2010年コホート)を行った。その結果、死亡率は4倍に増大しており、最大の死因は自殺であることなどが明らかとなった。筆者は、「死亡率は大幅に増大した。しかしながら特定領域については介入が可能であり、解析データは、早期介入が、統合失調症患者に標準的な寿命を与える可能性があることを示している」とまとめた。BMJ誌オンライン版2012年10月8日号の掲載報告。 2つの疫学的な完全データが入手できる患者コホートを対象とした。コホートの患者は、北ウェールズのメンタルヘルスサービスに関するフォローアップデータが、1年以上、最長10年間存在した。これらのデータを用いて、統合失調症および関連精神病患者の生存率と標準化した死亡率を算出した。 第1コホートは、北ウェールズのデンビー精神病院に、1875~1924年に入院した統合失調症および関連精神病患者3,168例(患者症例ノートの記録からデータを収集)であった。第2コホートは、北西ウェールズ地区総合病院精神科に、1994~2010年に入院(統合失調症および関連精神病による初回入院)した患者355例であった。 主な結果は以下のとおり。・統合失調症および関連する精神病による標準化された死亡率は、第1コホートと比べて第2コホートは4倍であった。・第1コホートでは75%、第2コホートでは90%の10年生存の可能性を認めた。・自殺は第2コホートの最も頻度の高い死因であった(SMR 35)。一方で、第1コホートでは、最も頻度の高い死因は結核であった(SMR 9)。・第2コホートのデータでは、高齢者の死亡は心血管系の原因により、若者の死亡は自殺が原因であった。関連医療ニュース ・自殺リスクの危険因子の検証、年齢別のうつ症状との関係は? ・自殺予防に期待!知っておきたいメンタルヘルスプログラム ・検証!向精神薬とワルファリンの相互作用

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バイポーラの躁症状に対するアリピプラゾールの位置付けは?

 近年、わが国では双極性障害に適応を有する薬剤が次々と承認されている。従来、気分安定薬を中心とした薬剤が主流であったが、非定型抗精神病薬も使用可能となった。双極性障害患者の急性躁症状に対し、明確な薬理学的および副作用プロファイルを有するアリピプラゾールをどのように使用すべきだろうか。英国のDratcu氏らは、双極性障害患者の急性躁症状に対し、アリピプラゾールの豊富な使用経験を有する英国の医療専門家による委員会にて議論を行った。Int J Psychiatry Clin Pract誌2012年10月号の報告。主な結果は以下のとおり。・アリピプラゾールは短期、長期にかかわらず、また単剤、気分安定薬との併用にかかわらず、適正に使用することで、双極性障害患者の躁症状に有効であるとの見解が一致した。・他の非定型抗精神病薬と異なり、アリピプラゾールの躁症状への効果は鎮静作用に関連していなかった。このことより、患者にとってとくに長期的なメリットが大きいと考えられる。・急速な鎮静が必要な場合には、ベンゾジアゼピン系薬剤の短期間併用が推奨される。・アリピプラゾールに関連しているほとんどの副作用は、最初の1~3週間以内に発現し、通常は一時的かつ簡便に治療可能である。・アリピプラゾールは、代謝系の副作用や性機能不全のリスク低下をもたらし、アドヒアランスを高め、臨床転帰を向上させることができる薬剤である。・良好な安全性・忍容性プロファイルを有するアリピプラゾールは、双極性障害患者の急性躁症状に対しファーストライン治療薬として推奨される。関連医療ニュース ・アリピプラゾールが有用な双極性障害の患者像とは? ・うつ病の5人に1人が双極性障害、躁症状どう見つける? ・アリピプラゾールで患者満足度向上?!

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慢性腰痛症への鍼治療、プラセボと比較し症状および疼痛強度を改善

 鍼治療の慢性腰痛症への効果について、シャム対照治療との比較の結果、症状スコアおよび疼痛強度の低下がみられ、より良好な効果を示すことが示唆されたと、韓国・キョンヒ大学校のCho YJ氏らが報告した。鍼治療は慢性腰痛症に効果的な治療として知られているが、プラセボより優れているかについては依然として不明なままであった。Spine誌オンライン版2012年9月28日号の掲載報告。 ソウル市内3病院に通院する、非特異的な腰痛症が3ヵ月以上持続する18~65歳130例を対象とした多施設共同無作為化患者-評価者盲検シャム対照試験を行った。個々の鍼治療の効果を症状(bothersomeness)の減少で調べた。 被験者は、韓医学の医師(Korean medicine doctor)から6週間(週2回)にわたって、個別に鍼治療またはシャム鍼治療を受けた。主要アウトカムは、慢性腰痛症の症状について視覚アナログスケール(VAS)でみたスコアの変化であった。副次アウトカムには、疼痛強度についてみたVASスコアと、オスウェストリー障害指数(ODI)、全般的な健康状態(SF-36)、ベックうつ病評価尺度(BDI)などによる評価を含んだ。 主な結果は以下のとおり。・ODIを除き、ベースラインにおいて両群間に差異は認められなかった。・参加者のうち116例が治療を完了し、3、6ヵ月間のフォローアップを受けた。14例は途中で脱落した。・主要エンドポイント(8週間)時点で、慢性腰痛症の症状および疼痛強度についてのVASスコアで、両群間の有意な差が認められた(p<0.05)。・さらにそれら2つのスコアは、フォローアップ期間3ヵ月の時点まで継続的な改善がみられた(各p=0.011、p=0.005)。・ODI、BDIとSF-36スコアについては、両群ともに改善し、群間差はなかった。

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特定の抗うつ薬使用で脳内ヘモグロビン濃度が増加!:名古屋大学

 近年、日本の研究者たちは脳活動の変化に基づいて精神疾患を診断するために、近赤外分光法(NIRS)を用いた研究を行ってきた。NIRSとは、近赤外光を生体外から照射し、組織内を透過した光を分析することにより、組織血液中におけるヘモグロビンの状態を調べる方法である。しかし、NIRS測定における向精神薬の影響については明らかになっていない。名古屋大学 幸村氏らはNIRSを用いて健常者の前頭前野活性に対する抗うつ薬の鎮静効果を評価した。その結果、ミルタザピンの投与によりヘモグロビン濃度の増加が認められたことを報告した。Psychopharmacology (Berl)誌オンライン版2012年10月5日号の掲載。 健常男性19名を対象としたプラセボ対照二重盲検クロスオーバー試験。ミルタザピン15㎎、トラゾドン25㎎、プラセボを8日間連続で夜間に投与し、1週間以上のウォッシュアウト期間を設けながらローテーションを行った。被験者は、試験期間中に計7回、NIRSを行った(試験開始1週間以上前および各ローテーションの第2、9日目)。NIRS実施時には、言語流暢タスクを計測し、正確な言語の数(行動遂行)を記録した。スタンフォード眠気尺度(SSS)スコアは毎日測定した。 主な結果は以下のとおり。・ミルタザピン投与後9日目におけるNIRSの結果によると、他の群と比較し、オキシヘモグロビン(oxy-Hb)濃度の有意な増加が認められた。・ミルタザピン投与後2日目には、他の群と比較し、SSSスコアの有意な上昇が認められた。・すべての群において、行動遂行に有意差は認められなかった。 これらの結果を受けて、著者は「精神障害をもつ患者の脳活動を評価するにあたって、特定の種類の抗うつ薬が脳機能に影響を与える可能性についても検討すべきである」としている。関連医療ニュース ・統合失調症患者の認知機能改善にフルボキサミンは有効か? ・SPECT画像診断による前頭部脳血流評価で、大うつ病高齢者のSSRI有効性を予測 ・うつ病治療におけるNaSSA+SNRIの薬理学的メリット

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情動障害患者よりも統合失調症患者で有意に体重を増加:オランザピンのメタ解析

 カナダ・モントリオール大学のMoteshafi H氏らは、オランザピンの忍容性[心血管代謝系の有害反応と錐体外路症状(EPS)]について、統合失調症患者と情動障害患者を比較するメタ解析を行った。その結果、統合失調症患者は体重増加を引き起こしやすい可能性が示された。著者は「この結果は、統合失調症患者ではメタボリック症候群になりやすいという遺伝的素因に加えて、とくに心血管疾患に対する生活習慣リスク(食生活の乱れ、運動不足、ストレス、喫煙など)を有する割合が高いという事実の裏付けとなるのではないか」と述べている。Drug Saf誌2012年10月1日号の報告。 PsycINFO(1967~2010年)、PubMed(MEDLINE)、EMBASE(1980~2010年)などのデータソースを用いて、(1)統合失調症と情動障害の成人患者に関するオランザピンの有害反応(代謝あるいはEPS)、(2)試験期間中のオランザピン単独療法 を評価していた無作為化試験を検索し、解析に組み込んだ。2人の独立したレビュワーが論文選定のためアブストラクトをスクリーニングし、レビュワー1人が事前に決めていた除外・包含基準に基づき関連データを抽出した。主要アウトカムは代謝有害反応(体重変化、血糖値、LDL-C、総コレステロール、トリグリセリド)、副次アウトカムはEPS(パーキンソン症候群、静座不能、抗パーキンソン病薬の服用)の発生率であった。主な結果は以下のとおり。・33試験(4,831例)を解析に組み込んだ。・忍容性アウトカム(統合失調症群と情動障害群で個別に算出しメタ解析に組み込んだ)は、統合失調症患者および情動障害患者いずれにおいても、オランザピンが体重増加に関与し、トリグリセリド値、血糖値、総コレステロール値を上昇することを示した。・オランザピン治療によって、情動障害患者よりも統合失調症患者で有意に体重が増加した。・血糖値、総コレステロール、トリグリセリド値の上昇について、統計的有意差はみられなかったものの、統合失調症群が情動障害群よりも高値であった。・パーキンソン症候群の発症率は、統合失調症群が情動障害群よりも有意に高値であった。関連医療ニュース ・日本人統合失調症患者の脂質プロファイルを検証!:新潟大学 ・ベンゾジアゼピン系薬剤の使用で抗精神病薬多剤併用率が上昇?! ・治療抵抗性統合失調症へのクロザピン投与「3つのポイント」

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統合失調症患者の認知機能や副作用に影響を及ぼす?「遊離トリヨードサイロニン」

慢性期統合失調症入院患者は、持続的な精神症状と抗精神病薬による副作用に悩まされている。これら精神症状や副作用にはプロラクチン、甲状腺ホルモン、脳由来神経栄養因子(BDNF)など、いくつかのバイオマーカーが関連しているといわれているが、明らかにはなっていない。大分大学 市岡氏らは慢性期統合失調症患者における、精神症状や錐体外路系副作用とホルモン、BDNFとの関係を調査した。Prog Neuropsychopharmacol Biol Psychiatry誌2012年10月号の報告。 対象は、慢性期統合失調症入院患者93例。対象患者の精神疾患や錐体外路系副作用とプロラクチン、甲状腺ホルモン(遊離トリヨードサイロニン[T3]、遊離サイロキシン[T4]、甲状腺刺激ホルモン)、コルチゾール、BDNFとの関係を調べた。精神症状はPANSS、認知機能はMMSE、錐体外路症状はDIEPSSにより、それぞれ評価した。分析には、重回帰分析を用いた。主な結果は以下のとおり。・抗精神病薬の用量は、PANSS陽性サブスケールスコアの有意な差異を予測する唯一の変数であった。・BDNFおよびT3はMMSEスコアの有意な差異を予測した。・プロラクチンおよびT3はDIEPSSスコアの有意な差異を予測した。本研究では、慢性期統合失調症患者の認知機能や錐体外路系副作用にはBDNF、T3、プロラクチンが関与している可能性が示唆され、中でも著者らはT3が重要な予測因子となることを強調した。関連医療ニュース ・双極Ⅰ型障害患者の症状発症に関連する“キヌレン酸” ・グルタミン酸ドパミンD3受容体遮断による統合失調症の新たな創薬の可能性 ・「統合失調症リスク因子」海馬における働きが判明

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統合失調症患者におけるフィルター障害のメカニズムを解明

 統合失調症における作業記憶(ワーキングメモリ)障害について、前頭前皮質背外側部(DLPFC)ネットワーク内の機能的接続障害によるものであることが明らかにされた。米国・エール大学医学部のAnticevic A氏らが、いわゆる「フィルター障害」のメカニズムについて検討した結果で、「注意散漫への抵抗性障害は、DLPFCと周辺領域(視床/辺縁系の皮質下と調節領域結合を含む)の断絶を示すという考え方を支持する知見が得られた」と報告した。Schizophr Res誌2012年10月号の掲載報告。 先行研究で著者らは、健常者ではDLPFC活性はワーキングメモリにおける良好な注意散漫回避に結びついているが、統合失調症患者では結びついていないことを示していた。その知見を踏まえて、統合失調症はワーキングメモリ障害におけるDLPFCネットワーク内の機能的接続障害と関連していると仮定し、検証した。 統合失調症患者28例と対照群24例を対象に、遅発性非言語ワーキングメモリタスク(ワーキングメモリ維持期に一過性の視覚的注意を逸らすタスクを含む)を完了した。DLPFC全脳作業ベースの機能的接続(tb-fcMRI)を評価し、とくに維持期の注意散漫の有無について評価した。主な結果は以下のとおり。・患者群は注意散漫症状を呈している間、皮質および皮質下の両領域において、tb-fcMRIが機能しないことが明らかになった。・対照群は注意散漫時に、DLPFCと扁桃体延長領域間のtb-fcMRI低下を示した。・一方で患者群は、扁桃体との結合を示す変化は見られなかった。しかし、背側正中視床との強い接続性を示した。・注意散漫症状の間、対照群はDLPFCとその他の前頭前野皮質領域間との接合がより明確であったが、患者群は、そのような機能を示す変化が見られなかった。関連医療ニュース ・検証「グルタミン酸仮説」統合失調症の病態メカニズム ・統合失調症患者の認知機能改善にフルボキサミンは有効か? ・グルタミン酸ドパミンD3受容体遮断による統合失調症の新たな創薬の可能性

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アリピプラゾールで患者満足度向上?!

 近年、統合失調症治療において、アドヒアランスや患者満足度向上への関心が高まっている。 ベルギーのPeuskens氏らは、幅広い種類の統合失調症患者における12週間のアリピプラゾールによる治療効果を評価するため、医師、介護者、患者に対しさまざまなスケールを使用して評価した。Eur Psychiatry誌2012年10月号の報告。 対象は、DSM-Ⅳで統合失調症と診断された外来患者361例。アリピプラゾール10~30㎎/日による治療を12週間実施した多施設前向きオープンラベル試験。主要評価項目は、CGI-Iスコアによるアリピプラゾールの治療効果とし、有効性、安全性、忍容性を評価した。治療効果の完全な見解を得るため、医師、患者、介護者のさまざまなパラメーターを使用した。主な結果は以下のとおり。・95%CI上限値が4(変化なし)以下であることより、幅広い種類の統合失調症患者におけるアリピプラゾールの治療効果が実証された(CGI-Iスコア:3.0、95%CI:2.8~3.2 [LOCF])。・アリピプラゾールの治療効果は、患者および介護者のPGI-Iスコアにより裏付けられた(各LOCF 95%CI:2.79~3.09、2.74~3.17)。・試験終了時、医師評価によるCGI-Sスコアの増加が認められ、53.7%の患者でアリピプラゾール治療による症状重症度の改善が認められた(不変:30.8%、悪化:11.3% [LOCF])。・調査官による問診IAQスコアは著明に改善した。・71%の患者および67%の介護者が、アリピプラゾールによる治療は前治療薬と比較し、QOLおよび全般的に有意な改善が認められたと報告した(LOCF:p<0.0001 )。*LOCF(Last Observation Carried Forward):追跡期間中の脱落例も除外せず、脱落時点の検査値を最終結果とし解析する方法。関連医療ニュース ・双極性I型障害におけるアリピプラゾールの有効性-AMAZE試験より- ・アリピプラゾールが有用な双極性障害の患者像とは? ・抗精神病薬アリピプラゾール併用による相互作用は?

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双極Ⅰ型障害患者の症状発症に関連する“キヌレン酸”

 双極Ⅰ型障害患者の、脳脊髄液におけるキヌレン酸と躁症状および精神病症状との関連が明らかにされた。スウェーデン・ヨーテボリ大学のOlsson SK氏らによる検討の結果。著者らは、すでに先行研究において、統合失調症と双極性障害の患者における脳内のキヌレン酸レベル上昇が報告されていることに触れたうえで、「因果関係を検証する必要はあるが、ドパミン伝播と行動に影響するキヌレン酸の働きは、躁病や精神病症状の発症における病態生理学的な役割を示している可能性がある」と報告している。Bipolar Disord誌オンライン版2012年10月3日号の掲載報告。 キヌレン酸(トリプトファンの代謝物質)は、脳内のグルタミン酸作動性またはコリン作動性レセプターと拮抗する。著者らは先行研究で、双極性障害男性患者の脳脊髄液におけるキヌレン酸(CSF KYNA)上昇が認められることを報告していた。 本検討では、双極Ⅰ型障害患者における症状と脳脊髄液KYNA値との関連を調べた。双極Ⅰ型障害と診断された胸腺を正常にもつ男性21例(平均年齢41歳、SD 14)と女性34例(同37歳、SD 14)のCSF KYNAについて、高速液体クロマトグラフ(HPLC)を用いて分析した。主な結果は以下のとおり。・精神病症状の生涯発生が認められた患者(43例)のCSF KYNA値[2.0nm、平均値標準誤差(SEM):0.2]は、同症状発生履歴のない患者(12例)の同値(1.3nm、SEM:0.2)と比較して高値であった(p=0.01)。・年齢を共変量としたロジスティック回帰分析でも同様に、精神病症状履歴とCSF KYNA値の関連が示された[対象55例、オッズ比(OR):4.9、p=0.03]。・さらに、直近に躁病エピソードを有した人でも、年齢調整後のCSF KYNA値との有意な関連がみられた(34例、OR:4.4、p=0.03)。精神病症状の生涯発生歴で調整後も有意な関連を維持した(OR:4.1、p=0.05)。関連医療ニュース ・アリピプラゾールが有用な双極性障害の患者像とは? ・双極性障害患者の自殺企図、テストステロンレベルと相関 ・うつ病の5人に1人が双極性障害、躁症状どう見つける?

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統合失調症患者の認知機能改善にフルボキサミンは有効か?

 統合失調症の認知障害は、心理社会的パフォーマンスに少なからず影響を及ぼす。統合失調症患者における認知機能障害は、小胞体タンパク質であるσ-1受容体に関与しており、σ-1受容体アゴニスト作用を有するフルボキサミンが統合失調症の動物モデルや一部の統合失調症患者で認知機能障害の治療に有効であった例がいくつか報告されている。千葉大学の新津氏らは、統合失調症患者におけるフルボキサミン併用療法のプラセボ対照無作為化二重盲検並行群間比較試験を行った。J Clin Psychopharmacol誌2012年10月号の報告。 対象は、慢性期統合失調症患者48例。対象患者は8週間のフルボキサミン併用療法を行うフルボキサミン群(24例、150mg/日まで漸増)とプラセボ群24例に無作為に割り付け、12週間フォローアップを行った。主要評価項目の測定には、ケンブリッジ神経心理学テスト(CANTAB)を用い、視覚認知・ワーキングメモリー、注意力、実行機能の評価を行った。副次的評価項目は、PANSSスコア、SANSスコア、QOLスコア、MADRSスコアとした。主な結果は以下のとおり。・フルボキサミン併用療法の忍容性は良好であった。・CANTABスコア、PANSSスコア、SANSスコア、QOLスコア、MADRSスコアに関する、時間×群の有意な交互作用は認められなかった。・二次分析では、フルボキサミン群における空間認識に関わるワーキングメモリー(実行機能)の改善が示された。・本試験では、統合失調症患者の認知機能改善に対するフルボキサミンの目立った効果は認められなかった。関連医療ニュース ・認知機能への影響は抗精神病薬間で差があるか? ・日本人統合失調症患者の認知機能に影響を与える処方パターンとは ・初回エピソード統合失調症患者、長期予後予測に新基準!

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双極性障害患者の自殺企図、テストステロンレベルと相関

 テストステロンの最もよく知られている神経行動学的影響は、性的機能と攻撃性である。そして、テストステロンや他のアンドロゲンは、気分障害や自殺行動の病態生理と関与している可能性が示唆されている。米国のSher氏らは、今回初めてテストステロンレベルと双極性障害による自殺の臨床パラメーターとの関係性を検証した。J Psychiatr Res誌2012年10月号の報告。 対象は、過去に少なくとも1回以上の自殺未遂を経験し、うつ病または混合性エピソード障害を有する双極性障害患者67例(男性16例、女性51例)。生涯の自殺行動を含む人口統計学的および臨床的パラメーターを評価した。血漿テストステロンの測定には二重抗体ラジオイムノアッセイ法を使用した。主な結果は以下のとおり。・大うつ病エピソード、自殺企図の最大致死性、テストステロンレベルは、女性に比べ男性の方が高かった。・現在の自殺念慮のスコアは男性に比べ女性で高かった。・性別を調整したのち、テストステロンレベルは躁病エピソードおよび自殺企図の回数と相関していた。関連医療ニュース ・アリピプラゾールが有用な双極性障害の患者像とは? ・自殺予防に期待!知っておきたいメンタルヘルスプログラム ・双極性障害の再発予防に有効か?「Lam+Div療法」

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診察室を出よ

南相馬市立総合病院・神経内科小鷹 昌明2012年10月9日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行※本記事は、MRIC by 医療ガバナンス学会より許可をいただき、同学会のメールマガジンで配信された記事を転載しております。初めて経験した福島県浜通りの夏は、想像していたより暑かった。私の故郷の埼玉県嵐山町(熊谷市の近く)は、もっと暑かったであろうが、この南相馬の潮風は、身体にまとわりつくような湿り気を帯び、海辺の街のじっとり感というのも、独特な不快さがあった。結局、日本はどこに行っても蒸し暑いのではないかという気がした。そんな夏の間、私は休暇も取らずに診療に明け暮れ、「野馬追い」を観戦し、市民とのラジオ体操に参加し、週末はジョギングやトレッキングに出かけ、来訪するメディア関係や医療関係、友人たちに被災地を案内し、いくつもの会合や打ち合わせに出席していた。春と夏とを、この被災地で過ごしたわけだが、そこで感じたことは、「毎日が実験的・創造的だった」と言えば抽象的な言葉になってしまうが、つまり、世の中の仕組みを知った。「訂正と調整を繰り返す中でしか、実態は見えてこない」ということに気が付いた。まるで、切れ目のたくさん入った金属板がズレてしまうと、突起の付いた円筒形のシリンダーとうまく接触されなくなり、美しいメロディーを奏でなくなってしまうオルゴールが、微調整を繰り返すことで、やがてまた元の音色に戻るかのように。私は、ひとりの医師として、エッセイストとして、これまでさまざまな活動、発信をしてきたわけだが、ここへきて半年あまりの間に、身をもって学んだ事実がひとつだけある。それは、「診察室からだけでは医療を変えられない」ということであった。そのことに気付くや否や、私はとにかく、時間さえあれば街に出ることを心がけた。街に存在するさまざまな職種の方と接触を試みた。その結果、政治や行政、NPO法人の方たちとの交流により、県外から研究者や識者を呼ぶことができたし、ボランティア団体との交流により、広く市民に啓蒙活動ができるようになったし、労働者共同組合との交流により、ヘルパー養成研修の講師を任されることになったし、ラジオ局のスタッフとの交流により、実習や研修に来る学生や研修医を番組出演させられそうだし、企業マネージャーとの交流により、電気自動車を往診車として無償で借りられたし、新聞や雑誌記者との交流により、南相馬市を広く伝えてもらえるようになったし、原発作業員との交流により、事故現場の真実を知ることができたし、商店街振興組合の理事長との交流により、来年は「野馬追い」に出られそうだし、そして、何よりも神経難病の患者を往診できるようになった。各方面からも取材や講演の依頼が、ちょくちょく来るようになった。最近では、「認知症にならない暮らし」や「南相馬市における神経難病患者の現状」などと銘打った講話を行った。それはそれで、私の行動が市民に少しずつ浸透してきた結果として、喜ぶべきことなのかもしれない。良く言えば「信頼されてきた」のかもしれない。しかし、ここにくるまでには、多くの紆余曲折があった。多くの支援者は、行けば必ずやることがあって、周囲からも歓迎され、やり甲斐を持てると思っているかもしれない。当たり前だが、震災から1年半が過ぎたこの時期においては、“こと”はそう単純なものではない。要するに、被災地のニーズが何なのかということを、本当にじっくり考えなければならない。その行動は、市民や患者にどう役に立つのか? 行為自体は悪いことではないが、本当に望まれていることなのか? 単なる自己満足ではないのか?私たちにできることは、与えられた手持ちの資源をできうる限り応用して、そこで最良のパフォーマンスを発揮すること、それだけである。敢えて言わせていただくなら、「消費期限を吟味した残りの食材で、いかに最良の料理を作るか」ということである。そこに必要なのは、物事を重層的、かつ横断的にスキャンできる能力である。私たちというか、一般的に人は、すでに与えられたものの中でしか生きられない。生まれる国や時代、どんな両親の子供に産まれるか、身体能力や知的能力の基本になる部分など、すべての事象は、自分で予め設定することはできない。そこに降り立つという形でしか、この世には“生”を受けられない。それと同じように、被災地に来た私たちも、そこに投じられただけである。しかしながら、そういうことを自覚していたとしても、私のような外部支援者は、即効性・実効性を、つい期待してしまう。震災後の参入者は、早く結果を得たいと願っているからである。「震災中は、こうしていた」ということが、いまだ挨拶代わりというか、名刺代わりというか、そういう機能を果たしているこの土地において、私たちはどのような振る舞いをみせたらいいのであろうか。「あと20年経ったらこの街はどうなるだろうか? この県では、放射性物質汚染土の仮置き場さえ決められない」というようなつぶやきを、ときどき耳にする。日本全体にび漫していることかもしれないが、今の人たちにみられる姿は、「根強い徒労感と、捉えようのない不機嫌」である。風評が解釈に先行し、感覚が認識に先行し、批評が創造に先行している。先の見えない不安と、明らかに想像できる憂慮とで、混迷している。明確な理念のある疲労と、明確な理念のない苛立ちとで、人々の気持ちは揺れている。このしんどい二律背反は、私たち日本人にとって、これから大きな意味を持っていくのではあるまいか。ただ言えることは、疲れ果て、不機嫌な人たちが技術的なブレークスルーや、時代の閉塞を切り開くようなイノベーションを果たすようなことは、ほとんどあり得ない。だから、世の中の構造をよく認識することである。結局のところ、この街は良い意味でも、悪い意味でも世界中から注目されることになった。従来から住んでいる人、新たに居を構えた人、一時的に支援に入った人、そういう混沌とした人たちとで、新たな街を創っていく必要がある。「団結して何かに耐える」とか、「協力して何かと闘う」とかいう時期は過ぎ、「被爆した人と、してない人」、「補償を受けられる人と、受けられない人」、「仕事のある人と、ない人」、「持ち家のある人と、ない人」のような、「差別化されてきた問題をどう調整するか」とか、「競合する事態をどうまとめるか」というような作業段階に入っている。復興のための中長期的なプランの土台作りにきている。街の復興には、これからも長い長い年月を要するであろう。この街が、一気呵成に快方に向かうということは、残念ながらないようだ。丁寧な修復には、途方もないほどの人海戦術を繰り返していくしかなく、僅かなことでも、少しずつ“見える化”していくことである。「放射線量がこれだけ減りました」とか、「若い人がこれだけ帰ってきました」とか、「介護士をこれだけ増やしました」とか、そういうことである。リーダーというとチープな言葉に聞こえるが、そのためには、“インデペンデントな佇まい”というような立ち位置を有する人材が必要なような気がする。要するに“形にできる人”、“クラフト的な人”である。そして、さらに重要なことは、そういう人が有効に機能する環境作りである。豊かで自然な創造的才能を持っている創作者が、時間をかけてゆっくりと自分の創作システムの足元を掘り下げていけるような、そんな環境である。「倒されずに生き残る」ということだけを念頭に置いて、あるいは、「ただ単に見映えのいいことだけを考えて生きていかなければならない」というような環境に、この街をするべきではない。支援や救済という行動そのもの自体に、何か違いがあるわけではない。場所によって差異があるわけでもない。ただ、資源によって若干の格差はあるものの、多くの支援行為の差異は、「人為的な環境の提供のされ方次第だ」と言ってもいい。そして、その差異を作り出す要因は、言うまでもないことだが、それらの環境を作り出す“周囲の人間たちの意識”そのものの差である。被災地であるこの街には、“うつ”傾向の強い人たちがたくさんいる。それを支援することは、並大抵なことではない。“うつ病”をタブー視しない社会を作り出すためには、そうした病気があるということを広く浸透させる必要がある。予防や治療対策として、“うつ病”という疾患概念を全面的に掲げて啓蒙するか、疾患概念のことはなるべくオモテに出さないで、やんわりと教化していくかで、やり方が違う。外部支援者は、疾患を全面的に打ち出していき、その有効性を実感として得たいと願うが、内部にいた者は身構えてしまい、そうした病的意識は乏しい。そこに、考え方のズレというか、解釈の仕方というか、要は、文化やメンタリティに対する認識の違いが存在する。だから、被災地支援者には、“個”の確立が必要である。「自分にやれることを地道にやっていくだけです」という考えも悪くはないし、そう言っていた方が軋轢を生まないが、個人が個人として生きていくこと、自分が何をしたくて、何ができるのか、そして、その存在基盤を世の中に強く指し示すこと、そのことが理解されようがされまいが、ある一定の指針を掲げていくこと、それが、この街で外部支援者として生きていくことの、ひとつの意義だと思う。半年間という短い期間かもしれないし、考察も甘いし、間違っているかもしれないが、私はそう思う。この半年で、私は、良く言えばタフになったということかもしれないが、ともすると、自分の中の感受性が鈍感になってきた可能性がある。被災地での診療や復興支援はとてもスリリングで、非日常的で、イマジネイティブな行為である。たとえ普段は、私のように退屈きわまりない人間だとしても、ここで、そういうことに取り組んでいるだけで、“何か特殊な人”になることができる。ただ、その“何か特殊な人”が、何かで行動しようとすると、どういう訳か、何もできないか、ものすごく月並みなことしかできない。でも、だからこそ、診察室を出て、街に出て、自分の目鼻を利かせて行動していくしかないような気がする。私は、良くも悪くも、この半年間で憑きものが剥がれ、トラウマが克復され、偽善から抜け出られたような気がする。これからは、自分の意思を信じて、さらに行動の幅を広げ、やりたいことを発展させていくつもりである。

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アリピプラゾールが有用な双極性障害の患者像とは?

 双極性障害は再発性の躁症状やうつ症状、混合エピソードなど複雑な症状を有する。双極性障害患者の急性期または長期治療においては、症状やエピソードの再発を抑制することが重要である。しかし、単剤での薬物治療のアウトカムは不十分である。そのため、単剤療法で効果が認められない患者や効果不十分な患者に対しては、気分安定薬と抗精神病薬を組み合わせて治療することも少なくない。併用による治療のメリットは大きいものの、副作用発現率上昇に対しては注意を払う必要がある。イタリアのAndrea de Bartolomeis氏らは双極性障害患者に対する急性期および長期の治療において、アリピプラゾールと気分安定薬の併用が有用であるかどうかに関する専門家の意見をまとめた。Expert Opin Pharmacother誌オンライン版2012年9月4日号の報告。主な結果は以下のとおり。・双極Ⅰ型障害患者に対する急性期および長期の治療において、アリピプラゾールと気分安定薬の併用は効果的かつ相対的に良好な忍容性を示す。・多剤での併用療法と比較し、代謝系副作用のリスクが低いことが示された。しかし、長期治療においては錐体外路系副作用のリスクを増大させる可能性がある。・アリピプラゾールとバルプロ酸の併用は、とくに不安や薬物乱用、強迫性障害を合併している双極性障害患者や混合うつ病性障害患者に有用である。関連医療ニュース ・難治性の強迫性障害治療「アリピプラゾール併用療法」 ・うつ病患者の5/1が双極性障害!“躁症状”見つけ方 ・抗精神病薬アリピプラゾール併用による相互作用は?

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