サイト内検索|page:7

検索結果 合計:2658件 表示位置:121 - 140

121.

高齢統合失調症患者における認知症発症の神経病理学的根拠

 統合失調症患者は、そうでない人よりも認知症発症リスクが高いことが、臨床研究で報告されている。しかし、過去の神経病理学的研究では、統合失調症患者におけるアルツハイマー病の発症率は対照群と差異がないことが示唆されている。これらの一貫性のない結果は、アルツハイマー病以外の認知症を包含したことが原因である可能性があるが、高齢統合失調症患者を対象とした現在の神経病理学的分類に基づく臨床病理学的研究は、ほとんど行われていなかった。名古屋大学の荒深 周生氏らは、高齢統合失調症患者における認知症発症の神経病理学的根拠を調査するため、本研究を実施した。Psychiatry and Clinical Neurosciences誌オンライン版2023年9月14日号の報告。 高齢統合失調症患者32例を対象に、標準化された病理学的手法を用いて、システマティックに脳検査を実施した。認知症に関連する神経病変の重症度の分析には、標準化された半定量的評価法を用いた。神経病理学的基準を満たす患者を除外した後、認知症を発症した患者と発症しなかった患者の臨床病理学的変数を比較し、潜在的な差を特定しようと試みた。 主な結果は以下のとおり。・病理学的基準を満たした患者は7例であり、その内訳は、アルツハイマー病3例、嗜銀顆粒性認知症(AGD)2例、レビー小体型認知症1例、AGD/進行性核上性麻痺(PSP)1例であった。・神経病理学的所見が認められなかった25例のうち、10例は認知症に罹患していたが、残りの非認知症患者15例と比較し、臨床病理学的所見に差は認められなかった。 著者らは、「高齢統合失調症患者では、2つのタイプの認知症がみられる。すなわち、1つは神経変性疾患併発タイプ、もう1つは現在の分類に基づく病理学的基準を満たさないタイプ」であるとし、「高齢統合失調症患者における認知症発症の神経生物学的側面を理解するためには、認知症発症を従来の認知症関連神経病理の併存疾患として分析するだけでは不十分であり、さらなる臨床病理学的研究が必要である」とまとめている。

122.

治療抵抗性統合失調症患者に対するクロザピン治療は早期開始すべきか

 クロザピンは、治療抵抗性統合失調症患者に対して有効性が証明されている唯一の抗精神病薬である。藤田医科大学の波多野 正和氏らは、クロザピン治療開始の遅延が長期アウトカムに及ぼす影響を評価する目的で、多施設共同レトロスペクティブコホート研究を実施した。その結果、長期治療中の精神科再入院を防ぐため、治療抵抗性統合失調症患者に対するクロザピン治療は早期に開始すべきであることが示唆された。BMC Psychiatry誌2023年9月15日号の報告。 対象は、2009年7月~2018年12月にクロザピン治療を開始した患者。統合失調症の診断からクロザピン治療開始までの期間に応じて、早期開始群(9年以内)、中期開始群(10~19年)、後期開始群(20年以上)の3群に分類した。エンドポイントは、3年以内の精神科再入院およびすべての原因によるクロザピン治療中止とした。ハザード比(HR)および95%信頼区間(CI)の推定には、Fine and Gray法またはCox比例ハザードモデルを用いた。 主な結果は以下のとおり。・3年以内の精神科再入院の発生率(累積発生関数)は、早期開始群32.3%、中期開始群29.7%、後期開始群62.2%であった。・後期開始群は、早期開始群よりも精神科再入院リスクが有意に高かった(HR:2.94、95%CI:1.01~8.55、p=0.016[Gray's test])。・早期開始群と中期開始群との間に、精神科再入院リスクの有意な差は認められなかった。・3年以内のすべての原因によるクロザピン治療中止の割合(カプランマイヤー法)は、早期開始群13.0%、中期開始群10.6%、後期開始群20.1%であった。・すべての原因によるクロザピン治療中止の割合は、各群間で有意な差は認められなかった。・後期開始群では、他の群よりも、身体疾患による死亡のためクロザピン治療が中止となった患者が多かった。

123.

第186回 手術不要の狙いどおりの脳深部刺激がヒトに初めて施された

手術不要の狙いどおりの脳深部刺激がヒトに初めて施された手術で脳内に移植した電極による脳深部刺激(DBS)はパーキンソン病などの重度の運動疾患や強迫性障害(強迫症)などの気分障害の治療手段として世界で広く使われています。用途の拡大も期待され、たとえば治療抵抗性うつ病やアルツハイマー病へのDBSの試験が実施されています。しかし脳手術につきものの危険性や合併症がDBSの可能性を狭めています。手術不要のDBSの実用化を目指し、頭の外側からの磁気や電気を送る手段が多くの臨床試験で検討されてきました。そのような経頭蓋磁気/電気刺激を基底核や海馬などの脳の奥深くの領域に到達させるにはそれらを覆う脳領域も広く一緒に刺激してしまうことが避けられず、余計な副作用の心配があります。そこで英国のImperial College Londonの認知症研究者Nir Grossman氏らは脳に置いた電極が発する電場によって脳の奥深くのみを遠隔刺激しうる手段を編み出し、その意図どおりの効果を示したマウス実験成果を2017年に報告しました1)。Grossman氏らがtemporal interference(TI)と呼ぶその手術不要の手段はマウスの海馬をそれに被さる領域に手出しすることなく刺激することができました。検討はその後さらに進み、先週Nature Neuroscience誌に発表された臨床試験の結果、いまやTIはマウスと同様にヒトの脳の奥深くも刺激しうることが裏付けられました2)。Grossman氏らはまず死者の脳を使った検討で電場が海馬のみ相手しうることを確認し、続いて健康な20例を募ってTIによる海馬刺激を試みました。被験者には顔と名前の組み合わせを記憶する課題をしてもらい、その最中の被験者の脳にTIを施しました。海馬は言わずもがな記憶や学習を司る脳領域であり、被験者がした課題は海馬の働きを必要とします3)。fMRIで被験者の脳の活動を測定したところ、TIは海馬の活性のみ調節し、記憶の正確さが改善しました。Nature Neuroscience誌に時を同じくして発表された別の報告4)ではヒトの線条体をTIによって活性化し、運動記憶機能が改善したことが確認されています。スイス連邦工科大学ローザンヌ校(EPFL)が率いた研究の成果です。Grossman氏らの成果はまったく新しいアルツハイマー病治療の道を切り開くものです。初期段階のアルツハイマー病患者へのTIの臨床試験が早くもGrossman氏の指揮の下で始まっており、被験者集めが進行中です5)。アルツハイマー病で侵された脳領域の活動がTIを繰り返すことで正常化し、記憶障害の症状が改善することを期待しているとGrossman氏は述べています3)。参考1)Grossman N, et al. Cell;169:1029-1041.2)Violante IR, et al. Nat Neurosci. 2023 Oct 19. [Epub ahead of print]3)Surgery-free brain stimulation could provide new treatment for dementia / Imperial College London4)Wessel MJ, et al. Nat Neurosci. 2023 Oct 19. [Epub ahead of print]5)Recruiting to a new landmark trial to treat dementia by sending electrical currents deep into the brain.

124.

妄想性障害と統合失調症患者の臨床アウトカムの違い

 妄想性障害は統合失調症と比較し、予後不良であるといわれているが、発症年齢の差異は十分に考慮されていなかった。香港大学のChristy Lai Ming Hui氏らは、年齢をマッチングした初発精神疾患の中国人患者において、4年後の妄想性障害および統合失調症の診断に関する安定性および臨床的・機能的・神経認知的差異を調査した。BMC Psychiatry誌2023年9月18日号の報告。 妄想性障害患者71例と年齢をマッチさせた統合失調症患者71例を対象に、初発エピソードから4年間のフォローアップ調査を実施した。4年経過時点での症状、精神疾患に関する洞察力、薬剤性副作用、服薬コンプライアンス、機能、神経認知能力を評価した。 主な結果は以下のとおり。・4年時点で、妄想性障害患者の25例は、診断が統合失調症へ変化していた。・分析には、診断が変化しなかった妄想性障害患者46例(65%)のみを含めた。・妄想性障害患者(46例)は、統合失調症患者(71例)と比較し、精神病理学的症状がより大きく、洞察力が低下していたが、服薬に対する態度は良好であった。・社会的機能、職業的機能、QOL、認知機能については、両疾患で同様であった。 著者らは、「妄想性障害の診断は、統合失調症の診断より安定性を欠いていることが示唆された。中国人集団における両疾患患者の臨床アウトカムが、年齢の交絡因子を除いた4年後においてほぼ同様であったことを踏まえると、妄想性障害と統合失調症は、これまで考えられていたほどには区別できない可能性がある」としている。

125.

統合失調症の初回エピソード後の長期的な症状の軌跡~OPUS研究より

 デンマーク・コペンハーゲン大学病院のMarie Starzer氏らは、統合失調症スペクトラム障害患者における初回エピソード後の陽性症状および陰性症状の20年間の軌跡を特定し、これらと関連する患者のベースライン特性と長期アウトカムについて調査するため、OPUS試験参加者の再評価を行った。World Psychiatry誌2023年10月号の報告。 対象は、ICD-10により統合失調症スペクトラム障害と診断された患者373例。症状は、陽性症状評価尺度(SAPS)および陰性症状評価尺度(SANS)を用いて、ベースライン時および1、2、5、10、20年後に評価を行った。潜在クラス成長混合モデルを用いて症状の軌跡を特定し、多項回帰分析を用いて特定された症状の軌跡の予測因子を調査した。 主な結果は以下のとおり。・陽性症状では、5つの軌跡が特定された。 ●継続的な寛解(50.9%) ●安定した改善(18.0%) ●断続的な症状(10.2%) ●中程度の症状を伴う再発(11.9%) ●重篤な症状の継続(9.1%)・中程度の症状を伴う再発の予測因子は、物質使用障害(オッズ比[OR]:2.82、95%信頼区間[CI]:1.09~7.38、p=0.033)、未治療期間の長さ(OR:1.02、95%CI:1.00~1.03、p=0.007)、陰性症状レベルの高さ(OR:1.60、95%CI:1.07~2.39、p=0.021)であった。・重篤な症状の継続の予測因子は、未治療期間の長さ(OR:1.01、95%CI:1.00~1.02、p=0.030)のみであった。・陰性症状では、2つの軌跡が特定された。 ●症状の寛解(51.0%) ●症状の継続(49.0%)・症状の継続の予測因子は、男性(OR:3.03、95%CI:1.48~6.02、p=0.002)および未治療期間の長さ(OR:1.01、95%CI:1.00~1.02、p=0.034)であった。・陽性症状(Zスコア:-0.78、CI:-1.39~-0.17)および陰性症状(Zスコア:-0.33、CI:-0.53~-0.13)の継続は、統合失調症認知機能簡易評価尺度(BACS)で測定した認知機能低下と関連が認められた。・20年間のフォローアップ調査では、陽性症状(78%)および陰性症状(67%)の継続は、抗精神病薬の使用量増加とも関連が認められた。 まとめ・初回エピソードの統合失調症スペクトラム障害患者の多くは、陽性症状の早期安定・寛解を伴う軌跡をたどっていることが示唆された。・長期にわたる未治療、薬物乱用の併発は、症状不良の修正可能な予測因子である。・統合失調症スペクトラム障害患者の半数は、時間が経過しても陰性症状の改善が認められなかった。・これらの症状は、社会的機能や認知機能の低下と関連していることに加え、患者が援助を求めることへの妨げとなっている可能性が示唆された。

126.

予測能の高い認知症リスクスコアが英国で開発

 認知症発症を予測するリスクスコアが英国で新たに開発され、既存のリスクスコアより高い予測能を有することが確認された。英ユニバーシティ・カレッジ・ロンドン(UCL)のMelis Anaturk氏らの研究によるもので、詳細は「BMJ Mental Health」に8月21日掲載された。 認知症患者数が世界的に増加し、その対策が各国の公衆衛生上の喫緊の課題となっている。認知症発症リスクを予測し予防介入を強化することが、疾病負担の抑制につながると考えられることから、種々のリスクスコアが開発されてきている。ただし、いずれも予測能の限界が存在する。これを背景としてAnaturk氏らは、英国の大規模ヘルスケア情報データベース「UKバイオバンク」のデータを用いて新たなリスクスコアを開発し、その予測能を検証した。 UKバイオバンクのデータの8割に当たる17万6,611件をリスクスコア開発用、残り2割に当たる4万4,151件を検証用に用いた。また、英国におけるUKバイオバンクとは別の大規模コホートである「Whitehall II」のデータ2,934件を用いた外部検証も行った。 UKバイオバンクにデータが収載されていて、かつプライマリケアで簡便に評価可能な28項目の認知症発症に関わる因子を抽出した上で、LASSO回帰モデルなどの統計学的手法により構築されたリスクスコアを「UKBDRS(U.K. Biobank Dementia Risk Score)」と命名。UKBDRSで評価する項目は、年齢、性別、家族歴(親の認知症)、教育歴、タウンゼント剥奪指数、糖尿病、脳卒中、うつ病、高血圧、高コレステロール血症、独居であり、遺伝子検査が可能な場合はこれにApoE4を加えた「UKBDRS-APOE」でリスクを評価する。 ROC解析で検討したUKBDRSの認知症発症予測能〔ROC曲線下面積(AUC)〕は、UKバイオバンク開発コホートで0.79(95%信頼区間0.78~0.79)、同検証コホートで0.80(同0.78~0.82)、Whitehall IIでは0.77(0.72~0.81)だった。UKBDRS-APOEでは同順に、0.81(0.81~0.81)、0.83(0.81~0.84)、0.80(0.75~0.85)だった。 これらの値は、現在臨床で使われている3種類のリスクスコアより優れていた。例えば、CAIDE(Cardiovascular Risk Factors, Aging and Dementia)はUKバイオバンク検証コホートでのAUCが0.60(0.58~0.63)、Whitehall IIでは0.69(0.64~0.74)であり、DRS(Dementia Risk Score)は同順に0.77(0.76~0.79)、0.74(0.69~0.78)、ANU-ADRI(Australian National University Alzheimer’s Disease Risk Index)は0.57(0.54~0.59)、0.52(0.45~0.58)だった。 論文共著者の1人である英オックスフォード大学のRaihaan Patel氏は、「異なる2種類の集団で高い予測能が確認されたことから、われわれはUKBDRSの精度に関して自信を深めているが、英国内のより多様な人々での精度検証も必要とされる」と述べている。

127.

日本人統合失調症患者の下剤使用開始と関連する要因は

 抗精神病薬の一般的な副作用の1つに便秘がある。しかし、便秘をターゲットとした研究は、これまで行われていなかった。獨協医科大学の川俣 安史氏らは、同じ統合失調症患者を20年間さかのぼり、下剤使用開始と関連する要因を特定しようと試みた。Neuropsychopharmacology Reports誌オンライン版2023年9月12日号の報告。 2021年4月より各病院に通院する統合失調症患者14例を登録した。対象患者の2016、11、06、01年4月1日時点でのすべての処方箋データをレトロスペクティブに収集した。下剤の使用頻度の違いと傾向を特定するため、Bonferroni補正コクランQ検定およびコクラン・アーミテージ検定を用いた。20年にわたる下剤使用開始と関連する要因を評価するため、多変量ロジスティック回帰分析を用いた。 主な結果は以下のとおり。・下剤を使用していた患者の割合は、2001年で25.1%、2021年で34.1%であった。・下剤による治療を受けた患者数は20年で異なり、有意な増加傾向が認められた。・すべての下剤では、酸化マグネシウム、ルビプロストン、エロビキシバットで治療された患者数には差があり、有意な増加傾向が認められた。・20年間の下剤使用開始と関連が認められた要因は、女性、年齢、ジアゼパム換算量、レボメプロマジン、オランザピン、クエチアピン、ゾテピン、リチウム、カルバマゼピンの用量であった。 結果を踏まえ、著者らは「一部の抗精神病薬で治療されている統合失調症患者では、便秘に対する注意深いモニタリングの必要性が示唆された。治療ガイドラインに従い処方の最適化を行うことで、抗精神病薬による便秘を軽減できる可能性がある」としている。

128.

超加工食品に含まれる人工甘味料がうつ病のリスクを高める?

 調理済みで加工度の高い食べ物や飲み物は、手軽で、安く、おいしいかもしれない。しかし新たな研究の結果、高度に加工された「超加工食品」が、うつ病のリスクと関連していることが示唆された。超加工食品を大量に摂取する人は、うつ病のリスクが約50%高くなる可能性があり、特に人工甘味料との関連が大きいという。米マサチューセッツ総合病院の消化器科副医長で、米ハーバード大学医学大学院教授のAndrew Chan氏らによるこの研究の詳細は、「JAMA Network Open」に9月20日掲載された。 Chan氏が特に問題としているのは、「水素添加のような工業的処理によって、高度に加工された食品」だ。水素添加は化学的な食品製造工程の一つで、食品に含まれるトランス脂肪酸の量を著しく増加させる。トランス脂肪酸の摂取と心疾患リスク増加との関連については、これまでに繰り返し指摘されてきた。また、食事がうつ病リスクに影響することが過去の研究から示唆されていた。これらのことからChan氏らは今回、超加工食品がうつ病リスクに及ぼす影響を調べた。 この研究は、米国の看護師健康調査II(Nurses' Health Study II)の参加者から、研究開始時点でうつ病のない3万1,712人の中年女性(研究開始時42~62歳、非ヒスパニック系白人95.2%)を対象として行われた。2003年から2017年にわたり4年ごとに食事内容を調査し、超加工食品に相当する穀物食品、スナック菓子、調理済み食品、デザート、油脂・ソース、加工乳製品、加工肉、飲料、人工甘味料の摂取量を調べた。Chan氏によると、これらの食品には着色料、安定剤、乳化剤などの添加物が含まれていることが多く、食品の例として、いわゆるファストフード、クッキー、ポテトチップスなどが該当するという。 解析の結果、研究終了時までに2,122人がうつ病を発症した。1日当たりの超加工食品の摂取量が上位20%のカテゴリーに含まれた対象者は、下位20%の対象者と比べて、うつ病のリスクが49%高かった(ハザード比1.49、95%信頼区間1.26~1.76)。超加工食品の内容ごとに検討すると、うつ病のリスク上昇と関連していたのは人工甘味料のみだった。超加工食品の摂取量が多いほどうつ病のリスクは高くなり、反対に、摂取量を4年間で1日当たり3サービング以上減らした人は、摂取量が変化しなかった人と比べてうつ病のリスクが低下していた。 研究チームによると、本研究で超加工食品とうつ病との関連が示されたが、因果関係が証明されたわけではなく、超加工食品がうつ病のリスクを高める正確な仕組みも解明されてはいないという。Chan氏は、うつ病患者がこれらの食品に引き寄せられる可能性にも言及した上で、研究のデザインから、「今回の発見が、うつ病のせいで超加工食品を選択することになった結果だという可能性は低い」と説明している。 さらにChan氏は、「超加工食品は慢性炎症に関連しており、それがうつ病など、多くの潜在的な健康への悪影響につながる」と指摘。超加工食品は腸内細菌叢を乱すことも知られており、「腸内細菌叢は、脳内で活性を示すタンパク質の代謝・産生に関与し、気分に影響を及ぼす」と付け加えている。以上を踏まえ、「できるだけ超加工食品の摂取を制限するように生活習慣を改善すると、特にメンタルヘルスに悩む人にとって重要な利益となる可能性がある」と話している。 今回の研究をレビューした、米セントルイスの栄養コンサルタントで、米国の栄養と食事のアカデミーの元会長であるConnie Diekman氏は、「特に女性では、栄養に限らず、ホルモン、家庭と仕事の両立、経済状況など、さまざまな要因がうつ病に関与している」と解説。食生活がメンタルヘルスに影響する可能性は高いが、超加工食品や人工甘味料の特有の役割を判断するのは難しいという。また、「これまでの研究では、一つの食品が健康全体に与える影響を解明するまでには至っていない。まずは、栄養素の必要量を満たすことを優先すると良い」と助言している。

129.

第166回 医師の過重労働、年間残業時間960時間超過は依然2割/厚労省

<先週の動き>1.医師の過重労働、年間残業時間960時間超過は依然2割/厚労省2.ジェネリック薬の供給不安解消へ、企業の貢献度評価を提案/厚労省3.コロナ補助金を除くと公立病院の経営状況、19年度より大幅な悪化/全自病4.医療広告は規制強化へ、違反事例の解説書の新版リリース/厚労省5.医療用大麻解禁へ、不正使用には7年以下の懲役/厚労省6.国立がん研究センターの不正謝礼問題、元医長は再逮捕、病院は対策を強化1.医師の過重労働、年間残業時間960時間超過は依然2割/厚労省厚生労働省は10月12日に「医師の働き方改革の推進に関する検討会」を開き、医師の勤務実態調査の結果を公表した。来年度から本格化する医師の働き方改革では、時間外や休日労働の上限が年間960時間となるが、調査の結果、年間960時間を超える医師は4年前より減少したものの、依然として2割に上ることが判明した。医師の労働時間短縮計画の評価申し込みに関しては、医療機関からの受審申し込みが9日時点で471件に上り、約3割の評価が終了している。参考1)第18回医師の働き方改革の推進に関する検討会 資料(厚労省)2)令和5年版 過労死等防止対策白書(同)3)医師の時間外労働 年間960時間超が2割 去年の勤務実態調査(NHK)4)過労死白書“労働時間が長くなるほど うつ病などの割合増加”(同)2.ジェネリック薬の供給不安解消へ、企業の貢献度評価を提案/厚労省厚生労働省は、2023年10月11日に開催した「後発医薬品の安定供給等の実現に向けた産業構造のあり方に関する検討会」で、後発医薬品(ジェネリック薬)の安定供給に関する中間報告を公表した。この報告では、各製薬企業の供給体制を可視化するための仕組み作りが強調され、後発薬の供給状況や、安定供給への貢献に関する情報の公開を企業に求めている。具体的には、企業が自社製品の出荷状況や停止・回収事例、緊急時の対応としての生産能力などの情報を公開することが提案されている。さらに、少量多品種生産という後発薬産業の構造的課題を解消するための対策として、製造ラインの増設手続きの簡素化や不要な製品の整理、新規参入を抑制する方針も盛り込まれている。一連の取り組みは、2020年以降、後発薬の供給が不安定になっている現状を受けて進められており、有識者検討会では、企業の貢献度を評価し、その結果を薬価制度などに反映させる方針を明らかにした。参考1)後発医薬品の安定供給等の実現に向けた産業構造のあり方に関する検討会 中間取りまとめ(厚労省)2)後発薬「企業の供給力、評価を」 厚労省検討会(日経新聞)3)ジェネリック医薬品の供給不足解消へ…多数メーカーの「少量多種」生産を集約、厚労省会議が対策案(読売新聞)4)後発薬の安定供給、企業の貢献度を評価へ めりはり付けも、厚労省検討会が中間まとめ(CB news)3.コロナ補助金を除くと公立病院の経営状況、19年度より大幅な悪化/全自病国による新型コロナウイルスに対応する医療機関への支援が見直しの影響が懸念される中、全国自治体病院協議会は、記者会見で新型コロナウイルスの流行前の2019年度と比較して、公立病院の収支状況が悪化していることを明らかした。全自病が、今年7月19日~9月1日に行ったアンケート調査によると、2019年度と比較して、重点・協力医療機関や病床割り当て病院以外の公立病院の収支状況が悪化していた。その一方で、コロナ関連の補助金を支給された重点医療機関の収支状況は補助金により一時的に改善されているものの、補助金を除くと悪化することが判明した。2022年度の医業損益は、3,079億円の赤字で、19年度の2,005億円の赤字を上回っていた。10月以降に行われる「病床確保料」の上限をほぼ2割減らし、重症や中等症IIの患者に支給対象を限定するなどの補助金の大幅な減額や打ち切りが与える影響を危惧する声が高まっている。参考1)10月以降のコロナ対応に懸念表明、全自病会長 病床確保料や診療報酬の特例縮小で(CB news)2)重点・協力医療機関以外の公立病院の収支状況悪化 全自病調査、コロナ補助金打ち切りの影響を危惧(同)4.医療広告は規制強化へ、違反事例の解説書の新版リリース/厚労省厚生労働省は、不適切な医療ウェブ広告に対処するため、10月に「医療広告規制におけるウェブサイトの事例解説書(第3版)」を公開した。新たな解説書には、規制の内容や、実際に問題とされる事例がイラスト付きで紹介されている。厚労省は、2017年に医療に関する広告規制の見直しを行い、ウェブ上の情報提供も規制の対象とした。厚労省は、この解説書を通じて、どのような広告が不適切で、どのように改善すれば良いかを示している。国民生活センターは、広告をきっかけに高額な美容医療サービスに関する相談件数が年々増加しているとして、注意を呼びかけている。参考1)医療広告規制におけるウェブサイトの事例解説書[第3版](厚労省)2)ウェブ上の医療広告、違反事例の解説書を公開 厚労省(womAn‘s LABO)3)「どういった医療WEB広告が不適切で、どう改善すれば良いか」を詳説した解説書をさらに改善・充実-厚労省(Gem Med)4)「今やらなければ」不安あおる美容医療契約の相談増 注意を(NHK)5.医療用大麻解禁へ、不正使用には7年以下の懲役/厚労省10月11日に開かれた自民党厚生労働部会で、厚生労働省は大麻草由来の成分を使用した医薬品の使用を可能とする大麻取締法の改正法案を提示し、了承された。今月20日に臨時国会に法案は提出される予定。今回の法改正により、これまでわが国で禁止されていた大麻草由来の医薬品の使用が解禁されることになる。 欧米では、抗てんかん薬などとしての価値が高まる中で、その使用が認められてきた。政府は乱用の防止策として、大麻取締法の範疇に「テトラヒドロカンナビノール(THC)」など依存性のある成分を位置付け、不正使用・所持に対する罰則として「7年以下の懲役」が設けられることとなった。一方、医薬品以外の目的での大麻草栽培には免許が必要となり、2種類の免許が設けられる見通し。さらに、一部のCBD製品には微量のTHCが含まれるため、残留限度値が設定される予定。参考1)医療用大麻の解禁、改正法案提出へ 大麻使用罪は7年以下の懲役(朝日新聞)2)大麻取締法、改正案を了承 自民、医薬品の使用可能に(東京新聞)3)自民・厚労部会「医療用大麻」使用可能とする法案を部会で了承(TBS NEWS)6.国立がん研究センターの不正謝礼問題、元医長は再逮捕、病院は対策を強化国立がん研究センター東病院の医療機器選定を巡る汚職事件で、元医長が贈賄側との「市販後調査」報告書に関連する不正な契約の疑いで再逮捕された。同医師は、医療機器メーカー「ゼオンメディカル」からの謝礼として約150万円を受け取っていたとされる。調査報告書には多数の誤記載があり、実際の症例や施術内容と異なる記載が確認された。同センターでは、機器の選定や使用に関して、現場の幹部が大きな権限を持っており、外部の専門家によるチェックの強化が求められている。同センターは、医療機器選定のプロセスに問題があったとしており、今後の対策として、業者との直接の連絡を禁止するなどの措置を取ることを公表した。参考1)「今にして思えば不自然」だった…再逮捕された国立がん研元医長が贈賄側と交わした「契約」(東京新聞)2)調査報告書に多数の誤記載 別の収賄容疑で元医長再逮捕-がん研究センター汚職・警視庁(時事通信)3)がんセンター汚職、医療メーカーが製品調査代行…「みなしPMS」で元医長に謝礼支払いか(読売新聞)

130.

運動するのも緩和ケア?【非専門医のための緩和ケアTips】第61回

第61回 運動するのも緩和ケア?緩和ケアの専門家として、時々聞かれるのが「運動療法ってどんなことをするのですか?」というトピックです。確かに緩和ケアの教科書を見ると書いてありますからね。今回は緩和ケアにおける運動療法を考えてみましょう。今回の質問外来で診ているがん患者さん。痛みなどの身体症状は抑えられているのですが、不眠があり、気分も晴れないとのことです。こういった方に運動を勧めることをどう思われますか?外来通院されている患者さんに、少しでもできることがないかと考える姿勢が非常に伝わってくる質問ですね。まず、緩和ケア領域における運動療法についての一般論を共有します。がん患者への運動療法は世界的に議論され、研究領域の1つでもあります。その効果としては、倦怠感などの苦痛症状の緩和、身体機能やQOLの向上などが期待されています。運動の内容としては、日本緩和医療学会の編集による『がんの補完代替療法クリニカル・エビデンス(2016年版)』(金原出版)に、これまでのエビデンスをまとめた推奨事項が記載されています。これによると「一般に成人(18~64歳)に対して、中等度の身体活動を週150分、高強度の有酸素運動を週75分、中~高強度の抵抗運動を週2回以上、行うことが推奨されている」(学会サイトから無料で閲覧可)。このように、緩和ケア領域における運動療法には一定の効果が期待できるわけですが、実践するうえでの注意点は何でしょう?それは、「適応」と「安全」です。「適応」としては、運動療法を検討している患者さんの症状や苦痛に対するアセスメントが重要です。今回の相談のケースでは、患者さんの気分の落ち込みがうつ病の症状かを考慮する必要があるでしょう。また、不眠も運動による改善が期待できますが、そもそもの不眠の原因を取り除くことも必要です。次に「安全」についてです。健康な人も同様ですが、がん患者であればなおさら過度な運動は禁物です。高齢の患者さんには持病のある人も多く、さらに安全に配慮する必要があります。骨転移のあるがん患者さんが転倒して骨折する、というのはよくあるケースですが、運動療法中に骨折すれば管理上の問題にもなります。そのほか、化学療法中の患者さんであれば、発熱や吐き気といった副作用が出ている時期や、骨髄抑制の期間中の運動は避けたほうがよいでしょう。以上、緩和ケア領域における運動療法を検討しました。「適応」と「安全」をしっかり考えながら、ケアに運動を取り込みましょう。今回のTips今回のTips緩和ケア領域の運動療法は、「適応」と「安全」を考えるのがポイント!

131.

クロザピン治療中の治療抵抗性統合失調症の喫煙患者、再発リスクにバルプロ酸併用が影響

 喫煙習慣とバルプロ酸(VPA)併用がクロザピンによる維持療法の臨床アウトカムに及ぼす影響を調査した研究は、これまでなかった。岡山県精神科医療センターの塚原 優氏らは、クロザピンを投与している治療抵抗性統合失調症患者の退院1年後の再発に対する喫煙習慣とVPA併用の影響を調査するため、本研究を実施した。Acta Psychiatrica Scandinavica誌オンライン版2023年9月8日号の報告。 日本国内の2つの3次精神科病院において入院中にクロザピン投与を開始し、2012年4月~2022年1月に退院した治療抵抗性統合失調症患者を対象に、レトロスペクティブコホート研究を実施した。再発の定義は、退院1年間の精神疾患増悪による再入院とした。喫煙習慣とVPA併用が再発に及ぼす影響の分析には、多変量Cox比例ハザード回帰分析を用いた。喫煙習慣とVPA併用との間の潜在的な相互作用を調査するため、サブグループ解析を行った。 主な結果は以下のとおり。・対象患者192例中、69例(35.9%)が再発基準を満たした。・喫煙習慣は、独立して再発リスクを増加させたが(調整ハザード比[aHR]:2.27、95%信頼区間[CI]:1.28~4.01、p<0.01)、喫煙習慣とVPA併用の有無との間に再発リスクに関する有意な相互作用が認められた(p-interaction=0.015)。・VPAの併用を避けることで、喫煙習慣に関連する再発リスク増加を効果的に修正する可能性が示唆された。・喫煙患者のうち、VPAを併用している患者(aHR:5.32、95%CI:1.68~16.9、p<0.01)では、併用していない患者(aHR:1.41、95%CI:0.73~2.70、p=0.30)と比較し、再発リスクが高かった。 著者らは「この結果により、喫煙習慣とVPA併用により、退院後の再発リスクが高まる可能性が示唆された。クロザピンの血中濃度低下など、これらの所見の根底にあるメカニズムを解明するためにも、さらなる研究が求められる」としている。

132.

治療抵抗性うつ病、esketamine点鼻薬vs.クエチアピン/NEJM

 治療抵抗性うつ病に対し、選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)またはセロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(SNRI)との併用において、esketamine点鼻薬はクエチアピン徐放剤と比較して8週時の寛解率が有意に高かった。ドイツ・Goethe University FrankfurtのAndreas Reif氏らが、24ヵ国171施設で実施された第IIIb相無作為化非盲検評価者盲検実薬対照試験「ESCAPE-TRD試験」の結果を報告した。治療抵抗性うつ病(一般的に、現在のうつ病エピソード中に2つ以上の連続した治療で有効性が得られないことと定義される)は、寛解率が低く再発率が高い。治療抵抗性うつ病患者において、SSRIまたはSNRIとの併用投与下で、クエチアピン増強療法と比較したesketamine点鼻薬の有効性と安全性は明らかになっていなかった。NEJM誌2023年10月5日号掲載の報告。SSRIまたはSNRIへのesketamine点鼻薬併用をクエチアピン増強療法と比較 試験対象者は、30項目の観察者評価によるうつ病症候学評価尺度(IDS-C)(スコア範囲:0~84、高スコアほど重症)のスコアが34以上、現在使用中のSSRIまたはSNRIを含め、少なくとも2つの異なるクラスの抗うつ薬による治療を2~6回連続して受けるも無効(症状の改善が25%未満)の、18~74歳の治療抵抗性うつ病患者であった。 研究グループは、被験者をesketamine群またはクエチアピン群に1対1の割合で割り付け、現在使用中のSSRIまたはSNRIと併用投与した(初期治療期8週間、維持期24週間、計32週間)。esketamine群への点鼻薬投与(鼻腔内噴霧)は可変用量(製品特性の概要に即して)にて、クエチアピン群には徐放剤を投与した。 主要エンドポイントは、無作為化後8週時点における寛解で、Montgomery Asbergうつ病評価尺度(MADRS)(範囲:0~60、高スコアほど重症)のスコアが10点以下と定義した。また、重要な副次エンドポイントは、8週時点で寛解後32週時まで再発がないこととした。 有効性解析対象集団は無作為化されたすべての患者(ITT)集団とし、治療を中止した患者は非寛解または再発とみなした。主要エンドポイントおよび重要な副次エンドポイントの解析は、年齢(18~64歳vs.65~74歳)および前治療数(2 vs.3以上)で調整したCochran-Mantel-Haenszelカイ二乗検定を用い治療群間を比較した。8週時点の寛解率、esketamine群27.1%vs.クエチアピン群17.6% 2020年8月26日~2021年11月5日の間に、676例がesketamine群(336例)およびクエチアピン群(340例)に割り付けられた。 8週時の寛解率は、esketamine群27.1%(91/336例)、クエチアピン群17.6%(60/340例)であり、esketamine群が有意に高かった(補正後オッズ比[OR]:1.74、95%信頼区間[CI]:1.20~2.52、p=0.003)。また、8週時に寛解後32週時まで再発が確認されなかった患者も、esketamine群が336例中73例(21.7%)、クエチアピン群が340例中48例(14.1%)で、esketamine群が多かった(補正後OR:1.72、95%CI:1.15~2.57)。 32週間の治療期間において、寛解した患者の割合、奏効(MADRSスコアがベースラインから50%以上の改善、またはMADRSスコアが10点以下)した患者の割合、およびベースラインからのMADRSスコアの変化量も、esketamine群のほうが好ましい結果であった。 有害事象の発現率はesketamine群91.9%、クエチアピン群78.0%、重篤な有害事象の発現率はそれぞれ5.7%および5.1%で、安全性プロファイルは既報と一致していた。

133.

内科系疾患を併発するうつ病患者への抗うつ薬の有用性~メタ解析

 内科的疾患を有する患者の3~6人に1人は、抗うつ薬が使用されているといわれている。しかし、通常の臨床試験では、併発疾患を有する患者は除外されている。抗うつ薬に関するメタ解析では、エフェクトサイズが小~中程度であることが示唆されているが、併発疾患がまん延している臨床現場において、一般化できるかは不明である。デンマーク・オーフス大学のOle Kohler-Forsberg氏らは、内科的疾患と併発するうつ病患者における抗うつ薬の有効性および安全性を明らかにするため、メタ解析エビデンスの包括的なシステマティックレビューおよびメタ解析を実施した。その結果、多くの内科的疾患では、大規模かつ質の高いランダム化比較試験(RCT)が少なかったものの、抗うつ薬は、併発疾患を有する患者のうつ病の治療および予防に対し効果的かつ安全に使用できることが示唆された。JAMA Psychiatry誌オンライン版2023年9月6日号の報告。 2023年3月までに公表された、あらゆる医学的疾患に併発したうつ病の治療または予防に対する抗うつ薬の有能性および安全性を評価したRCTのメタ解析または非メタ解析のシステマティックレビューをPubMed、EMBASEより検索した。分析対象には、内科的疾患を有する患者のうつ病に対する抗うつ薬の影響を評価したプラセボ対照または実薬対照RCTのメタ解析を含めた。データ抽出と品質評価には、PRISMAガイドラインに従い、AMSTAR-2およびAMSTAR-Contentを用い、独立したレビューアーのペアにより行った。複数のメタ解析に同じ研究が含まれていた場合には、最も大規模のメタ解析を含めた。ランダム効果メタ解析により、主要アウトカム(有効性)、主な副次的アウトカム(受容性、忍容性)、追加の副次的アウトカム(治療反応、寛解)に関するプールされたデータを分析した。抗うつ薬の有効性は標準化平均差(SMD)、忍容性(副作用による中止)および許容性(すべての原因による中止)はリスク比(RR)を用いて評価した。 主な結果は以下のとおり。・参考文献6,587件のうち、43種類の医学的疾患に関する176件のシステマティックレビューが特定された。・全体として、27種類の医学的疾患に関する52件のメタ解析がエビデンスの統合に含まれた(AMSTRA-2品質平均スコア:9.3±3.1[最大値:16]、AMSTRA-Content平均スコア:2.4±1.9[最大値:9])。・内科的疾患全体では、抗うつ薬使用はプラセボと比較し、うつ症状の改善が認められた(SMD:0.42、95%信頼区間[CI]:0.30~0.54、I2=76.5%)。疾患別では、心筋梗塞でSMDが最も高く、腰痛および外傷性脳損傷で低かった。【心筋梗塞】SMD:1.38(95%CI:0.82~1.93)【機能性の胸痛】SMD:0.87(95%CI:0.08~1.67)【冠動脈疾患】SMD:0.83(95%CI:0.32~1.33)【外傷性脳損傷】SMD:0.08(95%CI:-0.28~0.45)【腰痛】SMD:0.06(95%CI:0.17~0.39)・抗うつ薬使用は、プラセボと比較し、許容性(24件のメタ解析、RR:1.17、95%CI:1.02~1.32)および忍容性(18件のメタ解析、RR:1.39、95%CI:1.13~1.64)が劣っていた。・抗うつ薬使用は、プラセボと比較し、治療反応率(8件のメタ解析、RR:1.54、95%CI:1.14~1.94)および寛解率(6件のメタ解析、RR:1.43、95%CI:1.25~1.61)が良好であった。・抗うつ薬使用は、プラセボと比較し、うつ病を予防する可能性が高かった(7件のメタ解析、RR:0.43、95%CI:0.33~0.53)。

134.

10月10日 世界精神保健デー【今日は何の日?】

【10月10日 世界メンタルヘルスデー】〔由来〕世界精神保健連盟が、メンタルヘルス問題に関する世間の意識を高め、偏見をなくし、正しい知識を普及することを目的として1992年に制定。世界保健機関(WHO)も協賛し、国際記念日とされて、「シルバーリボン運動」として全世界でイベントが開催されている。関連コンテンツシネマセラピー ~シネマにみるメンタルヘルス~気分が落ち込むときの症状チェック【患者説明用スライド】モーニングコーヒーでうつ病リスクが低下自閉スペクトラム症と統合失調症の精神症状の比較リアルワールドにおける統合失調症ケアの実際と改善ポイント

135.

重度の精神疾患に対する入院リハビリテーションの有用性

 精神疾患や気分障害は、重度の機能障害、早期死亡リスク、社会的および経済的負担と関連している。イタリア・"G. D'Annunzio" UniversityのStefania Chiappini氏らは、統合失調症スペクトラム障害患者と気分障害患者を対象に、イタリアの精神科入院施設で実施された心理社会的、心理的、リハビリテーション的な介入の有効性を評価した。その結果、重度の精神疾患患者に対する入院リハビリテーション介入は、効果的かつ有用である可能性が示唆された。Neuropsychiatric Disease and Treatment誌2023年8月30日号の報告。 本件は、イタリア・ローマの精神科病院であるVilla Maria Piaにおいて、2022年に実施されたレトロスペクティブ観察研究である。ICD-9-CMで統合失調症スペクトラム障害および気分障害と診断された患者を対象に、入院時と治療終了時に簡易精神症状評価尺度(BPRS)および機能の全体的評価尺度(GAF)を用いて評価を行った。介入には、学術的チームが関与して行われ、個人および集団による介入を分析に含めた。群間の連続変数の比較は、独立サンプルによるt検定を用い、変数間の相関はスピアマン相関係数を用いて評価した。 主な結果は以下のとおり。・研究対象患者数は141例(平均年齢:51.3±12.4歳、男性患者:73例、女性患者:68例)であった。・心理社会的介入およびリハビリテーション介入に積極的に参加した患者は85例(60.3%)であり、参加していない患者と比較し、退院時に機能や症状の改善が認められた(delta GAFは、心理社会的介入に参加した参加者において有意に高かった。t=-2.095、p=0.038)。・介入回数/入院日数を指標とし分析すると、心理社会的介入の頻度は、活動に参加したサンプルにおける患者の機能の改善と正の相関が認められた(r=0.272、p=0.012)。とくに、心理療法(r=0.202、p=0.017)と集団サポート(r=0.188、p=0.025)において、顕著であった。・統合失調症スペクトラム障害(37例)と気分障害(48例)をそれぞれ評価すると、GAFの改善と心理社会的介入との正の相関は、統合失調症スペクトラム障害のみで認められた。・BPRSに関しては、全体または疾患別において、これらの相関が認められなかった。 著者らは「重度の精神疾患患者に対する入院リハビリテーション介入の長期的なQOL、社会機能への効果を明らかにするためには、さらなる調査が求められる」としている。

136.

趣味がうつ病の予防に役立つ可能性

 趣味を持つこと、例えば編み針や絵筆を手に取ったり、あるいは好きな小説を読んだりすることは、高齢者の抑うつ症状の軽減につながるという研究結果が発表された。英ユニバーシティ・カレッジ・ロンドン(UCL)疫学・ヘルスケア研究所のHei Wan Mak氏らによるこの研究の詳細は、「Nature Medicine」に9月11日掲載された。 この研究は、米国、日本、中国、英国、その他のヨーロッパ諸国(オーストリア、ベルギー、チェコ、デンマーク、エストニア、フランス、ドイツ、イタリア、スロベニア、スペイン、スウェーデン、スイス)の計16カ国に及ぶ5件の研究データを用いて、65歳以上の高齢者9万3,263人(各国対象者の平均年齢71.7〜75.9歳)を対象に行われた。趣味は、「余暇に楽しみとして取り組む活動」と定義され、ガーデニング、ゲーム、美術工芸、ボランティア活動、読書、サークル活動など、多岐にわたるものが含まれた。 4年から8年にわたるデータを分析した結果、趣味を持つことは、抑うつ症状の軽減、主観的な健康感、幸福感、生活満足度の増加に関連していることが明らかになった。この結果は、パートナーや配偶者との同居の有無、仕事の有無、世帯収入などの他の要因を調整しても変わらなかった。 Mak氏は、「4つの結果のうち、趣味と最も強い関連を示したのは生活満足度だった。趣味には、自分の心と体をコントロールできていると感じたり、生きがいを見つけたり、日々の問題に取り組む能力があると感じたりするなど、多くの働きがある。これらの働きにより、後年の生活満足度が向上するのかもしれない」と同大学のニュースリリースで述べている。 研究グループによると、この研究は観察研究であるため、因果関係を証明することはできないが、趣味と幸福の間に関連がある可能性を示唆しているという。Mak氏はさらに、「趣味とウェルビーイングの関係は双方向であり、精神的に健康な人ほど趣味を持つ傾向があり、趣味を続けることで生活満足度が向上する可能性がある」と話す。 趣味を持つ人の割合は国によって大きく異なり、スペインでは51.0%だったのに対し、デンマークでは96.0%、スウェーデンでは95.8%、スイスでは94.4%だった。割合が最も低かったのは中国で、37.6%だった(ただし、中国では社会的な趣味についてのみ調査され、一般的な趣味については調査されていない)。また、平均余命や国民の幸福度が高い国では、趣味を持つ人の割合が高く、趣味を持つこととウェルビーイングとの関連も、これらの国でより強かった。 Mak氏は、「われわれの研究結果が示しているのは、加齢によって精神的な健康やウェルビーイングが低下するのを、趣味を持つことで防げるという可能性だ。この可能性は、多くの国や文化的環境で一貫して認められた」と述べている。さらにこの研究は、「高齢者のウェルビーイングと健康増進の方法として、趣味へのアクセスを促進する政策立案者を支援するものでもある」と付け加えている。

137.

COVID-19パンデミックによる面会制限は産後うつ病リスクと関連するか

 COVID-19パンデミックによる面会制限は産後うつ病のリスク因子であるかどうかを明らかにするため、舞鶴共済病院の工藤 渉氏らは調査を行った。その結果、著者らは「COVID-19パンデミック中に出産した女性は、入院期間中の家族面会制限が行われていたものの、産後1ヵ月のエジンバラ産後うつ病質問票(EPDS)スクリーニングスコアの悪化が認められず、一部の女性では、精神状態の安定が認められた」としている。BMC Pregnancy and Childbirth誌2023年9月9日号の報告。 COVID-19パンデミック中に出産した女性(面会制限群)とパンデミック前に出産した女性(対照群)を比較したケースコントロール研究を実施した。産後うつ病の評価には、EPDSを用いた。出産後2週間、1ヵ月時点でのEPDSを評価した。 主な結果は以下のとおり。・対象は、面会制限群200例、対照群200例。・面会制限群(8.5%)は、対照群(18.5%)と比較し、EPDS陽性率が有意に低かった(p=0.002)。・1ヵ月検診におけるEPDS陽性を目的変数とした多変量解析の結果では、EPDSスクリーニング陽性のリスク増加に影響を及ぼす因子は、面会制限(オッズ比[OR]:0.35、95%信頼区間[CI]:0.18~0.68)、新生児の入院(OR:2.17、95%CI:1.08~4.35)、分娩延長(OR:2.87、95%CI:1.20~6.85)であった。

138.

第183回 認知症を阻止するらしい神経細胞2種類を同定

認知症を阻止するらしい神経細胞2種類を同定アルツハイマー病(AD)の病変であるアミロイド蓄積がたとえあっても認知機能が維持されて認知症になりにくいことと関連する脳の神経細胞2種類が同定されました1,2)。それらの神経細胞が死なないようにする手段を新たな成果を頼りに開発できるかもしれません。ねばねばしたアミロイドタンパク質の脳での蓄積がADの病因と広く言われています。その蓄積がやがて垢のような塊になって神経を死なせ、ついには記憶や意識を損なわせるという考えです。しかし認知機能障害を被る高齢者の誰もが脳にアミロイド塊を有するというわけではありませんし、脳にアミロイドが蓄積していると必ずADが生じるというわけでもありません。それはなぜなのかを調べるべく米国・ピッツバーグ大学やマサチューセッツ工科大学(MIT)の研究者らは数千人の高齢者の認知や振る舞いの推移を1994年から追っている試験・Religious Orders Study/Memory and Aging Project(ROSMAP)に目を向けました。AD病変や認知機能障害の程度がまちまちな死亡被験者427例の脳組織の前頭前皮質の細胞が活動遺伝子の配列を頼りに分類され、どこにどの細胞があるかを示す地図が作られました。その結果、認知機能全般がすこぶる良好な人に多く、逆に低下している人では乏しい細胞の集団2つが同定されました。その1つは統合失調症などの脳疾患と関連するタンパク質・リーリン(reelin)の遺伝子が発現している神経細胞、もう1つは体のあちこちの営みを調節するホルモン・ソマトスタチン(somatostatin)の遺伝子を発現する神経細胞です。認知機能が損なわれていない人ではADの特徴である脳のアミロイド大量蓄積があったとしてもそれらの神経細胞が脳に豊富に残っており、それらの細胞はAD発症を防ぐ役割をどうやら担うようです。ADの研究では電気信号を伝えて別の神経を活性化する興奮性神経細胞がもっぱら注目されてきました。しかし今回の研究で見つかった2種は興奮性神経とは正反対の抑制性神経です。抑制性神経は神経間の通信を止める働きを担います。少なくともいくらかの人のそれらリーリン/ソマトスタチン発現抑制性神経はAD病変によってとりわけ壊れやすいのではないかと研究者は考えています。今年の早くにNature Medicine誌に掲載されたリーリン遺伝子変異の報告3)はその考えを支持しています。リーリンの機能を底上げするその変異を有する男性は脳のアミロイド蓄積が半端なく大量にもかかわらず67歳になっても認知機能が正常でAD症状を示しませんでした。そういう先立つ成果があるのでリーリン発現神経に辿りついた今回の成果はそれほど驚くものではなく、一貫した成果が得られていることに安心していると研究者は言っています4)。これまでAD治療手段の開発といえば脳のアミロイド蓄積をどうにかする手段にもっぱら目が向けられていました。今回の結果はそうではなくADで壊れやすい脳細胞を守る手段を見つける取り組みを後押しするでしょう。個々の細胞の配列を読み取ってそれらの地図(atlas)を作った今回の成果は最新技術の賜物であるとカリフォルニアの研究所Sanford Burnham Prebys Medical Discovery Instituteの神経科学者Jerold Chun氏は言っています4)。AD患者は神経が発火しすぎて生じる発作を生じやすいことが知られますが、それは抑制性神経損失のせいかもしれないと同氏は想定しています。今回の研究で作られた脳細胞の地図はどの研究者も使えるように公開5)されており、それを出発点にして研究の裾野が一層広まるでしょう。参考1)Mathys H, et al. Cell. 2023;186:4365-4385.2)Decoding the complexity of Alzheimer’s disease / Massachusetts Institute of Technology3)Lopera R, et al. Nat Med. 2023;29:1243-1252.4)The brain cells linked to protection against dementia / Nature5)Single-cell transcriptomic atlas of the aged human prefrontal cortex

139.

統合失調症うつ病の治療ガイドライン普及に対するEGUIDEプロジェクトの効果

 国立精神・神経医療研究センターの長谷川 尚美氏らは、「精神科医療の普及と教育に対するガイドラインの効果に関する研究(EGUIDEプロジェクト)」を活用することによる、精神疾患の診療ガイドラインに関する教育のリアルワールドにおける効果を検証するため、本研究を実施した。Psychiatry and Clinical Neurosciences誌オンライン版2023年9月8日号の報告。 EGUIDEプロジェクトは、「統合失調症薬物治療ガイドライン」と「うつ病治療ガイドライン」を日本国内で実践するための全国的なプロスペクティブ研究である。2016~19年、精神科病棟を有する176施設に所属する精神科医782人がプロジェクトに参加し、診療ガイドラインに関する講義を受講した。プロジェクト参加病院の統合失調症患者7,405例およびうつ病患者3,794例を対象に、ガイドラインが推奨する治療の実施割合を、プロジェクト参加者と非参加者から治療を受けている患者間で比較した。プロジェクト参加病院より毎年4~9月に退院する患者の臨床データおよび処方データも分析した。 主な結果は以下のとおり。・統合失調症に対する3つの質的指標(他の向精神薬の使用とは無関係の抗精神病薬単剤療法、他の向精神薬を使用しない抗精神病薬単剤療法、抗不安薬や睡眠薬の使用なし)の割合は、プロジェクト参加者のほうが非参加者よりも高かった。・うつ病治療ガイドラインでも同様な結果が得られた。・ガイドラインの推奨治療の普及におけるEGUIDEプロジェクトの有用性が確認された。 著者らは結果を踏まえて「精神疾患の診療ガイドラインに関する教育を実施することで、精神科医の治療に関連した行動を改善可能であることが示唆された。メンタルヘルス治療のギャップを解消するためには、EGUIDEプロジェクトのような教育ベースの戦略が重要であろう」としている。

140.

他の母親が実施する心理療法が産後うつ病の症状を軽減

 カナダのオンタリオ州ブラント郡に住むLee-Anne Mosselman-Clarkeさんは、産後のメンタルヘルス危機との闘いがどのようなものかを、身をもって知っている。なぜなら、Mosselman-Clarkeさん自身が、2人の子どもの出産後にそれを経験したからだ。「私には11歳と9歳の子どもがいるが、上の子のときには自分が不安を感じていることに気が付いていなかった。2人目を妊娠したときに初めて、助産師から『産後うつ病を再発するリスクがあるので誰かに相談してほしい』と言われた」と振り返る。 ソーシャルワーカーとしての経歴を持つMosselman-Clarkeさんは、現在は産後ドゥーラ(産前・産後ケアの専門家)として妊娠・出産を経験する女性をサポートしている。彼女は、産後うつ病と闘う人に対してピア(仲間)が実施する認知行動療法(CBT)の効果を検討するために、マクマスター大学(カナダ)精神医学分野のRyan Van Lieshout氏らが新たな研究を実施することを知るやすぐに応募し、ピアファシリテーターとしての参加を認められた。それ以来、このセッションに彼女は情熱を注いでいる。 Van Lieshout氏らの研究では、ピアによるCBTを受けた産後うつ病患者はCBTを受けていない患者に比べて、寛解を経験する可能性が11倍高いことが示されるなど、いくつかの重要な知見が得られた。Mosselman-Clarkeさんは、「ピアが実施するCBTプログラムは、人から判断されていると感じたり、あるいは罪悪感、恥ずかしさを感じたりすることなく、自分と同じように苦しんでいる人と話すことができる素晴らしい方法だ。自分は1人ではないと感じ、孤立感を和らげる機会を与えてくれる」と語っている。Van Lieshout氏らの研究の詳細は、「Acta Psychiatrica Scandinavica」に8月31日掲載された。 米国の非営利団体マーチ・オブ・ダイムスによると、産後うつ病とは、出産後の母親に悲しみ、不安、倦怠感などの感情が持続し、自身や赤ちゃんの世話が困難になる状態のことをいう。産後うつ病を放置すると、母子双方に感情的な問題を引き起こすリスクが高まるなど、深刻な結果をもたらす可能性があるとVan Lieshout氏らは指摘している。 Van Lieshout氏らの研究は、オンタリオ州在住の18歳以上の産後うつ病患者183人を対象に、産後うつ病から回復した母親(ピア)がオンラインで実施するCBTの効果を検討したもの。対象者は、ピアによるオンラインでの9週間のCBT+通常のケアを受ける介入群(92人)と、通常のケア+9週間後に同じ介入を受ける待機群(91人)にランダムに割り付けられた。介入は、プログラムの実施前に3日間のトレーニングを受け、専門家による9週間の介入を見学したピアファシリテーターが2人1組で行った。対象者の産後うつ病は、エジンバラ産後うつ病質問票(EPDS)により、試験登録時(T1)とランダム化から9週間後(T2)に評価した。介入群では介入の3カ月後(T3)にも評価を行った。 その結果、介入群ではT1からT2にかけてEPDSスコアが5.99点低下し、T3においてもそのスコアが維持されていたことが明らかになった。また、T2で介入群が大うつ病性障害(MDD)の基準を満たさないオッズは待機群の11倍であることも示された(オッズ比11.55、95%信頼区間3.53〜37.77)。T1でMDDの基準を満たした対象者の割合は、介入群で64%、待機群で66%であった。T2では、介入群で6%にまで減少したのに対して待機群では43%にとどまっていた。 Van Lieshout氏は、「この研究には重要な点がいくつかあるが、その一つは、出産を経験する母親の最大で5人に1人が産後うつ病を経験するにもかかわらず、必要な治療を受けているのは10人に1人に満たない点だ」と話す。そして、今回の研究で示したこの介入方法が、産後うつ病の母親が必要な治療を受けるための手段となる可能性があるとの見方を示している。 一方、米マウント・サイナイの精神科医であるThalia Robakis氏は、「心理療法は、一般的なうつ病や産後うつ病に対する重要かつ確立された介入方法だ。新米の母親が心理療法を受けるのは容易なことではない。なぜなら、セラピストとは高度に訓練を受けた専門家であり、その数が限られているため、見つけるのが困難だからだ。また、新米の母親は乳児の世話で手一杯で、心理療法に参加する時間が取れないこともある」と述べ、「この研究は、このようなアクセシビリティの問題に取り組んでいる点が非常に斬新だ」と評価している。

検索結果 合計:2658件 表示位置:121 - 140