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中国プライマリケア施設、主要4種の降圧薬常備は3割

 中国における降圧薬の利活用(入手性、費用、処方)は著しく不十分で、とくにガイドラインで推奨される廉価で価値の高い薬剤が、率先して使用されてはいない実態が明らかとなった。中国医学科学院・北京協和医学院のMeng Su氏らが、中国のプライマリケア施設における降圧薬に関する全国調査の結果を報告した。中国の高血圧患者は約2億人と推定されているが、プライマリケアでの治療の実態は、ほとんど知られていなかった。著者は、「今後、高血圧の疾病負荷を減らすために、とくにプライマリケア従事者の活動を介して、価値の高い降圧薬の利用状況を改善する必要がある」とまとめている。Lancet誌オンライン版2017年10月25日号掲載の報告。中国のプライマリケア約3,400施設のデータを解析 研究グループは、2016年11月~2017年5月に実施された中国の全国断面調査(the China Patient-Centered Evaluative Assessment of Cardiac Events[PEACE]Million Persons Project[MPP]primary health care survey)のデータを用い、中国31省のプライマリケア施設3,362施設(地域衛生院203施設、地域衛生サービスステーション401施設、町衛生院284施設、村衛生室2,474施設)における降圧薬62種の入手性・費用・処方パターンを評価した。また、価値の高い降圧薬(ガイドラインで推奨され、かつ低価格)の利用についても評価し、降圧薬の費用と、入手性および処方パターンとの関連性も検証した。主要4種の降圧薬常備は33.8%、高価値の降圧薬常備は32.7% 計3,362施設、約100万例のデータを評価した(農村部:2,758施設、61万3,638例、都市部:604施設、47万8,393例)。 3,362施設中、8.1%(95%信頼区間[CI]:7.2~9.1)は降圧薬を置いておらず、通常使用される4種類(ACE阻害薬、ARB、β遮断薬、Ca拮抗薬)の降圧薬すべてを常備していたのは33.8%(95%CI:32.2~35.4%)であった。降圧薬の入手性が最も低かったのは、中国西部の村衛生室であった。 また、価値の高い降圧薬を常備していたのは、3,362施設中32.7%(95%CI:32.2~33.3%)のみで、それらの処方頻度は低かった(全処方記録の11.2%、95%CI:10.9~11.6)。価格が高い降圧薬のほうが、低価格の降圧薬より処方される傾向があった。

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肺動脈圧ガイドにおける左心室収縮能が低下した心不全のマネジメント

 ガイドラインに準じた薬物療法が増えているにも関わらず、左心室の駆出率が低下した心不全(heart failure and reduced ejection fraction:HFrEF)患者の一部は入院、および死亡率が依然高い。そこで、米国Brigham and Women’s HospitalのMichael M Givertz氏ら研究グループが、肺動脈圧の遠隔モニターにより薬物療法の最適化と予後を改善につながる情報を臨床医に提供しうるか検証した。Journal of the American College of Cardiology誌2017年10月10日号に掲載。CHAMPION試験:LVEFが低下した患者に対するサブ解析 CHAMPION(CardioMEMS Heart Sensor Allows Monitoring of Pressure to Improve Outcomes in NYHA Class III Heart Failure Patients trial)試験では、550例の慢性心不全患者を左室駆出率に関わらず登録し、事前に決められたサブグループ解析で、左室駆出率が低下(LVEF≦40%)した心不全患者の入院と死亡率について、治療群とコントロール群とで比較した。ガイドラインに準じた薬物療法の使用が可能なケースについては、事後解析が行われた。入院と死亡率の解析には、Andersen-GillとCox比例ハザードモデルが使われた。ガイドラインに準じた薬物療法が行われている場合、心不全入院33%、死亡率47%低下 HFrEF患者456例のうち、心不全での入院率は治療群でコントロール群に比べて28%低く(ハザード比[HR]:0.72、 95%信頼区間[CI]: 0.59~0.88、 p= 0.0013)、統計学的な有意差には至らなかったが、死亡率が32%低下する傾向が認められた(HR:0.68、95% CI:0.45~1.02、p=0.06)。試験開始時にガイドラインに準じた薬物療法(ACEI、ARBもしくはβ遮断薬)を少なくとも1種類内服している患者が445例おり、これらの患者では心不全の入院率が33%低下し(HR:0.67、95%CI、0.54~0.82、p=0.0002)、死亡率は47%低かった(HR:0.63、95%CI:0.41~0.96、p=0.0293)。コントロール群と比較して、ガイドラインに準じた薬物療法を2種類とも内服している群(337例)では、心不全の入院が43%低下し(HR:0.57、95%CI:0.45~0.74、p<0.0001)、死亡率は57%低下した(HR:0.43、95%CI:0.24~0.76、p=0.0026)。検証の結果、肺動脈圧を使用した心不全のマネジメントは、心不全の悪化と死亡率を低下させるとともに、血行動態と神経ホルモンの双方を改善するという相乗効果の重要性を明らかにした。CardioMEMS(カリフォルニア大学アーバイン校 循環器内科 河田 宏)関連コンテンツ循環器内科 米国臨床留学記

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降圧薬と乳がんリスクの関連~SEERデータ

 米国Kaiser Permanente Washington Health Research InstituteのLu Chen氏らは、Surveillance, Epidemiology and End-Results(SEER)-Medicareデータベースを用いて、主要な降圧薬と乳がんリスクの関連を検討し、利尿薬とβ遮断薬が高齢女性の乳がんリスクを増加させる可能性があることを報告した。「ほとんどの降圧薬は乳がん発症に関して安全だが、利尿薬とβ遮断薬についてはさらなる研究が必要」としている。Cancer epidemiology, biomarkers & prevention誌オンライン版2017年8月14日号に掲載。 本研究では、2007~11年にStage I/II乳がんと診断された66~80歳の女性1万4,766例を同定した。がん発症後の各種降圧薬の使用についてMedicare Part Dデータで調べた。アウトカムは、SBCE(second breast cancer event、初回の再発または2次対側原発乳がんの複合)、乳がんの再発、乳がんによる死亡とした。時間変動Cox比例ハザードモデルを用いて、ハザード比(HR)と95%信頼区間(CI)を推定した。 主な結果は以下のとおり。・追跡期間中央値3年で、SBCEが791例、乳がんの再発が627例、乳がん死亡が237例であった。・乳がん診断後に利尿薬を使用した患者(8,517例)では非使用者と比較して、SBCEリスクは29%(95%CI:1.10~1.51)、再発リスクは36%(同:1.14~1.63)、乳がん死亡リスクは51%(同:1.11~2.04)、それぞれ高かった。・β遮断薬を使用した患者(7,145例)では非使用者と比較して、乳がん死亡リスクが41%(95%CI:1.07~1.84)高かった。・アンジオテンシンII受容体拮抗薬、Ca拮抗薬、アンジオテンシン変換酵素阻害薬の使用は、乳がんリスクに関連していなかった。

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レボシメンダン、冠動脈バイパス術前投与に効果なし/JAMA

 人工心肺装置を用いた冠動脈バイパス術(CABG)実施予定で、左室駆出分画率が40%以下の患者に対し、levosimendanを術前投与しても、術後アウトカムは改善しないことが示された。フランス・ジョルジュ・ポンピドゥー欧州病院のBernard Cholley氏らが、336例を対象に行ったプラセボ対照無作為化二重盲検試験「LICORN」の結果を報告したもので、JAMA誌2017年8月8日号で発表した。心臓手術後の低心拍出量症候群は、左室機能障害を有する患者で高い死亡率と関連している。術前にlevosimendanを24時間注入 研究グループは2013年6月~2015年5月にかけて、フランス国内13ヵ所の心臓外科センターを通じ、左室駆出分画率が40%以下で、人工心肺装置を用いた単独または弁置換術と同時CABGを実施予定の患者336例を対象に試験を行った。 被験者を無作為に1対1の割合で2群に分け、術前の麻酔誘発前に、一方の群にはlevosimendan(0.1μg/kg/分)を、もう一方の群にはプラセボを24時間投与し、術後6ヵ月間追跡した。 主要複合エンドポイントは、次のいずれかとした。(1)levosimendan投与開始後48時間以降にカテコラミン注入を必要とする、(2)術後に左室補助人工心臓を要する、または術前に挿入した場合にはlevosimendan投与開始後96時間に離脱できない状態、(3)術後集中治療室滞在期間に腎代替療法を必要とする。 同グループは、levosimendan群の主要複合エンドポイントの発生リスクは15%低減すると仮定した。エンドポイント発生率は両群で同等 被験者の平均年齢は68歳、女性は16%。試験を終了したのは333例だった。解析には、levosimendan群167例、プラセボ群168例が包含された。 主要複合エンドポイントの発生率は、プラセボ群61%(101例)、levosimendan群52%(87例)と、両群間で有意な差は認められなかった(センターエフェクトを補正後の絶対リスク差:-7%、95%信頼区間[CI]:-17~3、p=0.15)。 事前に規定したサブグループ解析でも、左室駆出分画率30%未満、手術のタイプ別、術前のβ遮断薬の服用、動脈内バルーンポンプの使用、カテコラミン投与のいずれについても、アウトカムとの関連は認められなかった。著者は、「これら指標について、levosimendanの使用を指示しないものであった」とまとめている。 なお、低血圧(57% vs.48%)、心房細動(50% vs.40%)、およびその他の有害事象の発生率は両群で有意差はみられなかった。

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QT延長症候群における現在のアウトカムは?

 イオンチャネルの異常により引き起こされるQT延長症候群(LQTS)は、1年あたり1~5%の割合で失神、蘇生された心停止、突然死が認められる。本研究では、米国メイヨークリニックのAckerman氏ら研究グループが、単一施設における、最近のLQTSの成績について調査した。Journal of American College of Cardiology誌2017年8月号に掲載。LQTS 606例の長期成績を後ろ向きに解析 本研究では、 LQTSの患者606例(LQT1:47%、LQT2:34%、LQT3:9%)について、後ろ向き解析が行われた。患者らは、1999~2015年12月にメイヨークリニックの遺伝性不整脈クリニックで評価を受けた。心イベントは、LQTSによる失神もしくは痙攣、蘇生された心停止、適切に植込み型除細動器で停止された心室細動、そして心臓突然死と定義された。平均6.7年のフォローアップ、92%%の患者はLQTSに関連した心イベントなし 最初にメイヨークリニックを受診する以前に症状があったのは、166例(27%)であった。初発症状の平均年齢の中央値は12歳。治療戦略としては、無治療が47例(8%)、β遮断薬のみが35例(58%)、ICDの植込みのみが25例(4%)、左心臓交感神経節切除術のみが18例(3%)、これらの治療の組み合わせが166例(27%)であった。平均で6.7年(IQR:3.9~9.8年)のフォローアップにおいて、556例(92%)の患者はLQTSによる心イベントを経験しなかった。受診前に症状があった患者の25%はその後も心イベントが発生 診断前に無症状だった440例のうち、8例(2%)が1回の心イベントを経験していた。それとは対照に、症状があった166例のうち、42例(25%)が1回以上の心イベントを経験していた。2回以上の心イベントを経験した30例のうち、2例が死亡し、3例のLQT3の患者は心臓移植を受けていた。 成績は以前と比べて著明に改善しているが、症状が以前から認められた4例に1例が、その後に少なくとも1回以上、非致死性ではあるが、心イベントを経験しており、より進んだ治療戦力の最適化が必要だと考えられたと結論付けている。■関連記事 循環器内科 米国臨床留学記

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高齢者の高血圧診療ガイドライン発表―日常診療の問題に焦点

 日本老年医学会は7月20日に「高齢者高血圧診療ガイドライン(JGS-HT2017)」を発表した。本ガイドラインでは、日常診療で生じる問題に基づいてClinical Question(CQ)を設定しており、診療における方針決定をするうえで、参考となる推奨を提示している。 高齢者においては、生活習慣病管理の目的は脳血管疾患予防だけでなく、生活機能全般の維持という側面もあるため、フレイルや認知症などの合併症を考慮したガイドラインが重要と考えられている。そのため、高齢者高血圧診療ガイドライン2017では、治療介入によるアウトカムを認知症や日常生活活動(ADL)に設定して行われたシステマティックレビューが基盤となっている。以下にその概略を紹介する。高齢者の高血圧診療は高度機能障害がなければ年齢にかかわらず降圧治療 高齢者の高血圧診療の目的は健康寿命の延伸である。高齢者においても降圧治療による脳卒中や心筋梗塞、心不全をはじめとする脳血管疾患病や慢性腎臓病の1次予防、2次予防の有用性は確立しているため、高度に機能が障害されていない場合は、生命予後を改善するため年齢にかかわらず降圧治療が推奨される。ただし、病態の多様性や生活環境等に応じて個別判断が求められる、としている。生活習慣の修正についても、併存疾患等を考慮しつつ、積極的に行うことが推奨されている。高齢者高血圧には認知機能にかかわらず降圧治療は行うが服薬管理には注意 高齢者への降圧治療による認知症の発症抑制や、軽度認知障害(MCI)を含む認知機能障害のある高齢者高血圧への降圧治療が、認知機能悪化を抑制する可能性が示唆されているものの、一定の結論は得られていない。よって、現段階では認知機能の評価により、降圧治療を差し控える判断や降圧薬の種類を選択することにはつながらないため、原則として認知機能にかかわらず、降圧治療を行う。ただし、認知機能の低下がある場合などにおいては、服薬管理には注意する必要がある。 一方、過降圧は認知機能障害のある高齢者高血圧において、認知機能を悪化させる可能性があるので注意を要する。また、フレイルであっても基本的には降圧治療は推奨される。高齢者高血圧への降圧治療で転倒・骨折リスクが高い患者へはサイアザイド推奨 高齢者高血圧への降圧治療を開始する際には、骨折リスクを増大させる可能性があるので注意を要する。一方で、サイアザイド系利尿薬による骨折リスクの減少は多数の研究において一貫した結果が得られているため、合併症に伴う積極的適応を考慮したうえで、転倒リスクが高い患者や骨粗鬆症合併患者では積極的にサイアザイド系利尿薬を選択することが推奨される。しかし、ループ利尿薬については、骨折リスクを増加させる可能性があるため、注意が必要である。高齢者高血圧への降圧治療でCa拮抗薬・ループ利尿薬は頻尿を助長する可能性 高齢者高血圧への降圧治療でもっとも使用頻度が高く、有用性の高い降圧薬であるCa拮抗薬は夜間頻尿を助長する可能性が示唆されている。そのため、頻尿の症状がある患者においては、本剤の影響を評価することが推奨される。また、腎機能低下時にサイアザイド系利尿薬の代わりに使用されるループ利尿薬も頻尿の原因になり得る。 一方で、サイアザイド系利尿薬は夜間頻尿を増悪させる可能性が低い。しかし、「利尿薬」という名称から、高齢者高血圧患者が頻尿を懸念して内服をしない・自己調節することが少なくないため、患者に「尿量は増えない」ことを丁寧に説明する必要がある。高齢者高血圧の降圧薬治療開始や降圧目標は個別判断が必要なケースも 高齢者高血圧の降圧目標としては、日本高血圧学会によるJSH2014と同様に、65~74歳では140/90mmHg未満、75歳以上では150/90mmHg未満(忍容性があれば140/90mmHg未満)が推奨されている。また、年齢だけでなく、病態や環境により、有用性と有害性を考慮することが提案されており、身体機能の低下や認知症を有する患者などでは、降圧薬治療開始や降圧目標を個別判断するよう求めている。エンドオブライフにある高齢者においては、降圧薬の中止も積極的に検討する。高齢者高血圧の「緩徐な降圧療法」の具体的な方法を記載 高齢者高血圧診療ガイドライン2017では、第1選択薬についてはJSH2014の推奨と同様に、原則、Ca拮抗薬、ARB、ACE阻害薬、サイアザイド系利尿薬となっている。心不全、頻脈、労作性狭心症、心筋梗塞後の高齢高血圧患者に対しては、β遮断薬を第1選択薬として考慮する。 また、高齢者高血圧の降圧療法の原則の1つである「緩徐な降圧療法」として、「降圧薬の初期量を常用量の1/2量とし、症状に注意しながら4週間~3ヵ月の間隔で増量する」などといった、具体的な方法が記載されている。さらには、降圧薬の調整に際し、留意すべき事項としてポリファーマシーやアドヒアランスの対策などのポイントが挙げられている。

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心不全の突然死、科学的根拠に基づく薬物療法で減少/NEJM

 収縮能が低下した心不全の外来患者では、突然死の発生率が経時的に大きく低下していることが、英国心臓財団グラスゴー心血管研究センターのLi Shen氏らの調査で明らかとなった。研究の成果は、NEJM誌2017年7月6日号に掲載された。ACE阻害薬、ARB、β遮断薬、ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬などの登場以降、科学的根拠に基づく薬物療法の使用が増えるに従って、収縮能が低下した症候性心不全患者の突然死のリスクは、経時的に低下している可能性が指摘されているが、その詳細の調査は十分ではないという。駆出率≦40%の症候性心不全患者約4万例を解析 研究グループは、駆出率≦40%の症候性心不全患者(NYHAクラスII~IV)を対象に、過去20年間に実施され、1,000例以上を登録した臨床試験の参加者(植込み型除細動器[ICD]装着例は除外)のデータを解析した(中国国家留学基金管理委員会と英国グラスゴー大学の助成による)。 重み付き多変量回帰を用いて、突然死の発生率の経時的な動向の検討を行った。また、Cox回帰モデルを用いて、各試験の突然死の補正ハザード比(HR)を算出した。突然死の累積発生率は、無作為化後の複数の時点(30、60、90、180日、1、2、3年)で、心不全の診断から無作為化までの期間別(≦3ヵ月、3~6ヵ月、6~12ヵ月、1~2年、2~5年、>5年)に評価した。 1995~2014年に実施された12件の臨床試験の参加者4万195例が、解析の対象となった。突然死は3,583例(8.9%)で発生した。突然死のリスクが19年間で44%低下 ベースラインの全体の平均年齢は65歳で、77%が男性であった。95%がNYHAクラスII/IIIの患者で、駆出率の平均値は28%(試験ごとの平均値の範囲:23~32%)、心不全の原因の62%が虚血性であった。 ACE阻害薬とARBは90%以上の患者が使用していた(ACE阻害薬非使用例を対象とした1試験を除く)。一般的な傾向として、より最近の試験ほど、β遮断薬とミネラルコルチコイド受容体拮抗薬の使用例が多かった。 突然死を起こした患者は起こさなかった患者と比較して、高齢、男性、低い駆出率、高い心拍数、重い心不全症状、心不全の原因が虚血性、既往歴に心筋梗塞、糖尿病、腎機能障害、といった患者が多かった。また、突然死を起こした患者は、冠動脈血行再建術施行例が少なかった。 突然死の年間発生率は、最初期の試験(1998年に終了)の6.5%から、最近の試験(2014年に終了)の3.3%まで、経時的に低下した(傾向検定:p=0.02)。試験全体の突然死のリスクは、19年間で44%低下した(HR:0.56、95%信頼区間[CI]:0.33~0.93、p=0.03)。 無作為化後90日時の突然死の累積発生率は、最初期の試験が2.4%、最近の試験は1.0%であった。概して、180日時の突然死の累積発生率は90日時の約2倍となり、最近の試験になるほど、同様の傾向を示しつつ発生率が低下した。また、心不全の診断後の経過が短い患者は、長い患者と比較して、突然死の発生率は高くなかった。 駆出率別の解析では、どのサブグループも、試験全体と同様に突然死発生率が低下する傾向がみられ、駆出率が低いサブグループで突然死が多かった。 著者は、「これらの知見は、突然死に対するエビデンスに基づく薬物療法の蓄積されたベネフィットと一致する」としている。

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FFRジャーナルClub 第5回

FFRジャーナルClubでは、FFRをより深く理解するために、最新の論文を読み、その解釈を議論していきます。第5回目の今回は、2017年にupdateされた安定型虚血性心疾患(SIHD:stable ischemic heart disease)の冠血行再建に関するAppropriate Use Criteria(AUC)のポイントを読んでいきたいと思います。第5回 AUC改訂のポイントAUCはさまざまな臨床シナリオを設定し、複数名の専門家がそれぞれの治療適応を判定したものであり、2009年に初めて報告された。2012年に初回のupdateが行われ、今回は2回目のupdateとなる。虚血の評価法としてFFRの重要性が大きく取り上げられた点で、興味深いものである。Patel MR, et al. ACC/AATS/AHA/ASE/ASNC/SCAI/SCCT/STS 2017 Appropriate Use Criteria for Coronary Revascularization in Patients With Stable Ischemic Heart Disease: A Report of the American College of Cardiology Appropriate Use Criteria Task Force, American Association for Thoracic Surgery, American Heart Association, American Society of Echocardiography, American Society of Nuclear Cardiology, Society for Cardiovascular Angiography and Interventions, Society of Cardiovascular Computed Tomography, and Society of Thoracic Surgeons. J Am Coll Cardiol. 2017;69:2212-2241.Fihn SD, et al. 2014 ACC/AHA/AATS/PCNA/SCAI/STS focused update of the guideline for the diagnosis and management of patients with stable ischemic heart disease: a report of the American College of Cardiology/American Heart Association Task Force on Practice Guidelines, and the American Association for Thoracic Surgery, Preventive Cardiovascular Nurses Association, Society for Cardiovascular Angiography and Interventions, and Society of Thoracic Surgeons. J Am Coll Cardiol. 2014;64:1929-1949.以前のAUCからの改訂点をまとめると。1.急性冠症候群(ACS)に対するものと、安定虚血性心疾患(SIHD)に対するものを別々にまとめることとなった。これはすでにACC/AHAの冠血行再建に対するガイドラインが、同様に分けて作成されているのでそれに従ったものである。2.臨床シナリオには、自覚症状、非侵襲検査によるリスクレベル、病変の広がり(病変枝数)に、冠血流予備量比(FFR)、糖尿病の有無、SYNTAXスコアが加えられた。3.AUCカテゴリー名称を変更した。Score 7 to 9:Appropriate careScore 4 to 6:May be appropriate careScore 1 to 3:Rarely appropriate care4.腎移植、TAVI前の冠血行再建に関するシナリオが追加・評価された。5.FFRの使用がより多くのシナリオに組み込まれた。AUCのスコアを決定するための因子は1.臨床徴候(虚血症状が惹起される運動レベルなど)2.抗狭心症薬の使用3.非侵襲的虚血検査の結果(虚血の存在および重症度)4.併存症・危険因子の存在(糖尿病など)5.解剖学的な病変の広がり(病変枝数、左主幹部病変の存在、LAD近位部病変の存在の有無)6.CABG既往の有無7.IVUSやFFRの所見(FFR≦0.80を心筋虚血の所見と定義されている)非侵襲的検査におけるリスク評価高リスク(死亡・心筋梗塞のリスク3%以上)1.安静時心エコー:低心機能(LVEF<35%)2.安静時SPECT:心筋灌流異常≧10%(心筋梗塞の既往を除く)3.負荷心電図所見:低負荷にて2mm以上のST低下、または負荷時のST上昇、または負荷時のVT/VF4.負荷誘発性の心機能低下:最大負荷時のLVEF<45%、あるいは負荷時のLVEF低下が10%以上5.負荷SPECT:負荷誘発性の灌流異常が10%以上、あるいは負荷時のスコアが多枝病変を示唆するもの6.負荷SPECT:負荷時左室拡大7.負荷誘発性の壁運動異常が冠動脈走行の2枝以上の領域にわたるもの8.ドブタミン負荷心エコー図:ドブタミン低用量(≦10mg/kg/min)あるいは低心拍数(<120 beats/min)にて壁運動異常が出現するもの9.冠動脈CT:カルシウムスコア(Agatstonスコア)>40010.冠動脈CT:多枝病変(≧70%狭窄が複数枝にわたる)あるいは左主幹部病変(≧50%狭窄)中等度リスク(死亡・心筋梗塞のリスク1~3%)1.安静時心エコー:軽度/中等度心機能低下(LVEF 35~49%)2.安静時SPECT:心筋灌流異常5~9.9%(心筋梗塞の既往を除く)3.労作性の症状出現時ECGにて1mm以上のST低下4.負荷SPECT:負荷誘発性の灌流異常が5~9.9%、あるいは負荷時のスコアが1枝病変を示唆し、負荷時左室拡大を伴わないもの5.負荷誘発性の壁運動異常が狭い範囲(冠動脈走行の1枝領域)に限定6.冠動脈CT:カルシウムスコア(Agatstonスコア)100~3997.冠動脈CT:高度狭窄(≧70%狭窄)を1枝に認める、あるいは中等度狭窄(50~69%狭窄)を2枝以上に認める低リスク(死亡・心筋梗塞のリスク<1%)1.Treadmill心電図:低リスクTreadmill score(≧5)、あるいは最大負荷量に達した時点でST変化・胸部症状の出現なし2.負荷・安静SPECT:安静時灌流異常がなく、負荷時灌流異常が<5%3.負荷心エコー図:負荷時壁運動異常の出現なし、あるいは増悪なし4.冠動脈CT:カルシウムスコア(Agatstonスコア)<1005.冠動脈CT:有意狭窄(>50%)を認めない冠動脈バイパス術(CABG)既往のないSIHD病変枝数(1~3枝)、左主幹部病変によって分けられる。それぞれの病変部位、リスク評価、虚血評価の状況によりシナリオが分けられている。さらに、無症候、有症候、抗狭心症薬投薬の有無、薬剤数(1種類あるいは2種類以上、薬剤としてはβ遮断薬が推奨されている)、治療戦略(PCIあるいはCABG)ごとにAppropriate Use Scoreが記載されている。1枝病変におけるAppropriate Use Score画像を拡大するAA:抗狭心症薬、BB:β遮断薬Left dominant LCX:RCAがhypoplastyであり、LCXの灌流範囲が2枝相当のもの。非侵襲的検査によりリスク評価を行う。非侵襲的検査が行われていないか、あるいはその結果が診断的でない場合はFFRを計測し、FFR≦0.80を虚血所見とする。LAD proximal、dominant LCXのproximal病変以外の場合は、低リスクであればRarely appropriate careにランクされる。2枝病変におけるAppropriate Use Score画像を拡大するDMの有無が、とくに血行再建選択(PCI or CABG)において大きな要素となる。負荷試験が行われていない(あるいは結果が診断的でない)場合は、2枝病変の両病変においてFFRが陽性であることが記載されており、機能的2枝病変のみが含まれる。1枝においてFFR陰性であれば、1枝病変におけるシナリオにて判定される。3枝病変におけるAppropriate Use Score画像を拡大するDMの有無とともに、病変の複雑性が血行再建選択(PCI or CABG)の大きな要素となる。その1つの指標としてSYNTAXスコアが用いられている。左主幹部病変におけるAppropriate Use Score画像を拡大する孤立性で入口部あるいはLMT中間部のLMT病変において、有症候性の場合は、PCIがAppropriate careにランクされていることは特筆すべきである。解剖学的に複雑となる場合は、CABGがより推奨されるが、多枝病変であってもSYNTAX≦22で、内服下に有症候性であればPCIはMay be appropriate careにランクされる。LMT bifurcation lesionに、その他の部位のbifurcation lesion、diffuse lesionを合併し、SYNTAXスコア>22となるような複雑病変では、PCIはRarely appropriate careにランクされる。解説:今回は、血行再建に対するAUC update版の中で、SIHDに対するもの、その中でもCABG既往のない症例の臨床シナリオを紹介した。すべてのシナリオにおいて、非侵襲的検査によるリスク評価の結果、および抗狭心症薬内服下での虚血症状の有無がその判断に大きな位置を占めていることがわかる。あくまでも安定した狭心症、という前提であるが、術前にしっかりと患者全体像を把握したうえで血行再建の適応を考慮すべき、ということを示している。内服開始後に症状の消失を確認せずにPCIを考慮することも多々あると思われるが、1枝・2枝病変で、かつ低リスクの場合はRarely appropriate careにランクされる。このAUCをそのまま日本の臨床に当てはめることはできないが、非侵襲的なリスク評価が重要である、という点は再認識すべきである。日本の日常臨床を2012年版AUCに当てはめると、ACSでは約80%がappropriate、3%がinappropriateであったのに対し、SIHDではinappropriateが約30%に及んでいた(Inohara T, Kohsaka S, et al. JACC Cardiovasc Interv. 2014;7:1000-1009.)。その1つの原因として、日本では冠動脈CTは広く普及している一方、負荷心筋シンチグラムや負荷心エコー図は行える施設が限定されている点が挙げられる。しかし最近のFFR guide PCIのエビデンスの蓄積により、本AUCではFFRによる虚血評価を基に、適切な治療方針を立てる戦略が組み込まれた。さらには、冠動脈CT後に引き続きFFR-CTを計測することの有用性についても言及されている。FFRの臨床的有用性が確立されたものと言え、FFR使用を強く後押しするものである。日本版のAUCは、現在CVITが“standardized PCI”として思案されているが、第三者から見て「とても外れたことでない」という標準がどこにあるのかを示し、各々が認識しておくことは重要と思われる。術者側の独り善がりの判断にならないよう、ある一定の基準作りが望まれている。本AUC策定により、米国ではPCI件数が大幅に減少したことが知られている。その背景には、AUCから大きく外れた医師・施設には保険会社から支払いがなされない、という事象が起きたことにもよる。そのような状況を受けてか、本文中にAUCの役割として、「日常臨床のパターンを評価するための基礎を提供するものであり、診療careの質の向上を目指すためのものである。個々の症例の支払いの判断に使われるべきではない」、ということが強調されている。“Appropriate care”にランクされたものは血行再建が必須というものではなく、また“Rarely appropriate care”にランクされたものも血行再建を行うことを完全に否定するものではない、という点が重要である。最終的には個々の症例の全体像を鑑みて、最終的な治療方針が決定されるべきである。

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心不全・心機能低下のないAMI患者におけるβ遮断薬と死亡率の関係

 心不全のない急性心筋梗塞(AMI)患者において、β遮断薬が死亡率を低減させるかどうかについては、はっきりしていない。そこで英国リーズ大学のTatendashe B. Dondo氏らの研究グループは、左心機能の保たれたAMI患者において、β遮断薬と死亡率の関連について検討した。Journal of the American College of Cardiology誌2017年6月号に掲載。17万9,810例をプロペンシティスコアによって解析 本研究では、Myocardial Ischemia National Audit Projectという英国とウェールズのレジストリデータを用いて、2007年1月~2013年6月の間に心筋梗塞で入院した患者のうち、心不全または心機能の低下が認められなかった17万9,810例について評価した。 β遮断薬と1年後の生存率の関連を検証する解析には、Survival time inverse probability weighting propensity score(生存時間逆確率重み付け推定プロペンシティスコア)と操作変数法(instrumental variable analysis)が用いられた。 β遮断薬投与群と非投与群で1年後の死亡率に有意差は認められず ST上昇心筋梗塞患者9万1,895例と、非ST上昇性心筋梗塞患者8万7,915例のうち、β遮断薬の投与を受けていたのは、それぞれ8万8,542例(96.4%)と8万1,933例(93.2%)であった。コホート全体の16万3,772人年の観察で、9,373例(5.2%)が死亡した。 非調整の1年死亡率は、β遮断薬投与群のほうが非投与群に比べて優れていた(4.9% vs. 11.2%、p<0.001)。しかし、重み付けと調整の後では、β遮断薬投与群と非投与群ともに死亡率に変化が認められなかった(平均治療効果[ATE]係数:0.07、95%信頼区間[CI]:0.60~0.75、p=0.827)。結果は、ST上昇性心筋梗塞および非ST上昇性心筋梗塞で同様であった(ATE係数:0.30、95%CI:0.98~1.58、p=0.637、ATE係数:0.07、95% CI:0.68~0.54、p=0.819)。AMI後、心不全や左室機能低下のない患者において、β遮断薬の使用はその後1年間において死亡率の低下と関連がなかった。無作為化コントロール研究が必要 筆者らは本研究について、無作為化されたものではないことと、プロペンシティスコアや操作変数法を用いて、その他の多くの交絡因子に対する調整がなされたものの、交絡因子が依然残っている可能性を指摘している。AMI後、左心機能が保たれた患者におけるβ遮断薬の死亡率への効果を調べるには、無作為化コントロール研究が次のステップとして必要であると述べている。■関連記事 循環器内科 米国臨床留学記

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心臓外科手術の急性左室機能不全に対する強心薬レボシメンダンの予防投与は、やはり死亡率を低下しなかった(CHEETAH試験)(解説:原田 和昌 氏)-674

強心薬について知られていること これまで強心薬による生命予後の改善効果は示されていない。ジギタリスとピモベンダンを除き、むしろ心不全の予後を悪化させる。強心薬は短期的には血行動態や臨床所見の改善に有効であるが、心筋酸素需要を増加させ、重篤な不整脈や心筋虚血を生じやすいことから、急性期の低心拍出量、末梢循環不全、ショックにおいて、一時的かつ低用量で使用することが推奨されている。さらに、ドブタミンはβ遮断薬を内服している患者において効果が十分に発揮されない可能性がある。 levosimendan(レボシメンダン)はCa増感作用とATP感受性Kチャネル開口作用を持つことから、拡張障害を起こしにくい血管拡張性強心薬として(最後の?)期待が持たれていた。他のカテコラミンやPDE3阻害薬と比較して心筋酸素需要を増加させずに心拍出量を増加し、抗酸化作用や抗炎症作用、心筋保護作用を持つためである。強心薬levosimendanの心不全に対する効果 LIDO試験やRUSSLAN試験でlevosimendanの有効性が示されたが、REVIVE-II試験では治療早期のBNP値は低下するが90日予後は不良であった。SURVIVE試験は、強心薬の静注投与が必要な急性非代償性心不全患者の長期予後に対する効果を検証した。levosimendan群は、ドブタミン群と比較して治療早期にはBNPの減少も大きく死亡率の抑制傾向がみられたが、30~180日の死亡率は両群間で差がなかった。しかし、levosimendanは、現在60以上の国で使用されている。levosimendanの心臓外科手術後の急性左室機能不全に対する効果 最近のネットワークメタ解析により、levosimendanは心臓外科手術に際して、他の強心薬と比べて最も生存率を改善すると報告された。CHEETAH試験は、術前の左室駆出率が25%未満または機械的な循環動態の補助を必要とする心臓外科周術期の心血管機能不全患者を対象に、低用量levosimendan追加により死亡率が低下するかどうかを検証した試験であるが、30日死亡率に差はみられなかった。60%以上の患者でβ遮断薬が使用されていた。 強心薬は心臓外科手術後の急性左室機能不全の予後を改善しないと考えるべきである。興味深いことに、本試験の平均年齢は66歳であったが、高齢者心不全と同様に、年齢、ヘマトクリット、血圧、脳卒中の既往が予後を規定した(補遺)。しかし、盲検下で急性期に用量調節を行うプロトコールで、低血圧や不整脈の割合、心拍出量にすら両群で差が出なかったことから判断すると、試験デザインにおいて設定用量が低すぎたという可能性は否定できない。

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循環器内科 米国臨床留学記 第20回

第20回 米国の電子カルテ事情日本でも電子カルテが一般的になっていますが、米国では電子カルテのことをElectrical Medical Record (EMR)と言います。今回は、米国におけるEMR事情について書いてみたいと思います。米国のEMRの特徴の1つとして、どこからでもアクセスできるというのが挙げられます。「今日は疲れたから、残りのカルテは家で書きます」といった感じで、インターネットで世界中のどこからでも電子カルテにアクセスできます。実際、私も帰国時に日本から米国の患者に処方したり、カルテをフォローしたりすることがあります。日本でも電子カルテが登場して久しいですが、インターネットを介して患者のカルテにアクセスするのはまだ一般的でないかもしれません。Medscapeのリポートによると、2016年の段階で91%の医師が電子カルテを使用しており、これは2012年の74%から比べても大幅な増加です。その中でも、41%と圧倒的なシェアを誇るのがEPICというシステムです。ほかのEMRと比べても、EPICはuser friendlyで使いやすく、日常臨床を強力にサポートしてくれます。私のいるカリフォルニア大学アーバイン校では、現在はEPICと異なるシステムを使っていますが、評判が悪いため、来年EPICに移行します。乱立していたEMRの会社も徐々に淘汰され、数社に絞られてきているようです。また、同じEMRシステムを使うと、異なる病院間でも情報が共有できるといったサービスもあります。以前いたオハイオ州のシンシナティーという町にはEPIC everywhereというシステムがあり、EPICを使っているシンシナティー市内すべての病院の情報が共有されていました。ほかの病院の情報に簡単にアクセスできると、無駄な検査を減らすことができます。EMRは、入院時に必要なオーダーを入れないとオーダーを完了できないシステムになっています。例えば、深部静脈血栓症(DVT)予防は、入院時に必須のオーダーセットに入っているため、オーダーせずに患者を入院させようとすると、ブロックサインが現れ、入院させることが難しくなっています。このようなシステムは日本の電子カルテにもあると思います。また、代表的なEMRのシステムには、ガイドラインに準じたクリニカルパスが組み込まれています。 主なものとしては、敗血症ショックセット、糖尿病ケトアシドーシス(DKA)セット、急性冠動脈症候群(ACS)セットなどが挙げられます。例えばACSで入院すると、ヘパリン、アスピリン、クロピドグレル、スタチン、β遮断薬をクリック1つで選択するだけですから、確かに処方し忘れなどは減ります。オーダーセットは非常に楽ですし、DKAなどは勝手に治療が進んでいき、うまくいけば入院時のワンオーダーで、ほぼ退院まで辿り着けるかもしれません。しかしながら、一方で医者が状況に応じて考えなければいけないことが減り、時には危険なことも起こります。患者の状態は、1人ずつ異なりますから、tailor madeな治療が必要になります。実際、DKAで入院した患者がDKAオーダーセットによる多量の生理食塩水で心不全を起こすというようなことは、何度も見てきました。このほか、EMRで問題となっているのは、いわゆる“copy and paste”です。デフォルトのカルテでは、正常の身体所見が自動的に表示されます。注意を怠ると、重度の弁膜症患者にもかかわらず「雑音がない」とか、心房細動なのに脈拍が“regular”などといった不適切な記載となります。実際に、このようなことはしょっちゅう見受けられます。他人のカルテをコピーすることも日常茶飯事なので、4日前に投与が終わったはずの抗生剤が、カルテの記載でいつまでも続いているということもあります。Medscapeの調査でも66%の医者が“copy and paste”を日常的に(時々から常に)使用しているとのことでした。外来でのEMRは、Review of System、服薬の情報、予防接種(インフルエンザ、肺炎球菌)、スクリーニング(大腸ファイバーなど)などをすべて入力しなければ、カルテを終了(診察を終了)できなくなっています。こうした項目を入力しないと医療点数(診療費)に関わってくるからです。その結果、EMRに追われてしまい、患者を見ないでひたすらコンピューターの画面を見て診療しているような状況に陥りがちです。こうなると、自分がEMRを操作しているのか、EMRに操作されているのかわからなくなります。いろいろな問題がありますが、EMRは日々進歩している印象があります。使い勝手は良いのですが、最終的には医者自身が頭を使わければ患者に不利益が被ることもあるため、注意が必要です。

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眼圧と心血管薬の使用、関連せず

 眼圧は、血圧やほかの心血管リスク因子と関連していることがよく知られている。眼圧に対する全身性の心血管薬、とくに降圧薬の影響はいまだ論争の的であるが、非緑内障者では眼圧と心血管薬(とくにβ遮断薬)との間に関連はないことを、ドイツ・マインツ大学のRene Hohn氏らが、コホート研究にて明らかにした。著者は、「局所および全身性β遮断薬の長期のドリフト現象(drift phenomenon)が、この結果を説明するかもしれない」とまとめている。British Journal of Ophthalmology誌オンライン版2017年4月12日号掲載の報告。 研究グループは、ドイツ中西部の住民1万3,527例を対象とした前向き観察コホート研究(グーテンベルク健康研究)において、全身性の心血管薬の使用と眼圧との関連について検討した。 眼圧は、非接触圧平眼圧計で測定された。調査した薬剤の種類は、末梢血管拡張薬、利尿薬、β遮断薬、カルシウム拮抗薬、レニン・アンジオテンシン系阻害薬、硝酸薬、ほかの降圧薬、アスピリンおよびスタチンである。薬剤の使用と眼圧との関連について、多変量線形回帰分析を用いて解析した(p<0.0038)。なお、眼圧欠測例、眼圧低下点眼薬使用歴または眼手術既往歴のある参加者は解析から除外された。 主な結果は以下のとおり。・選択的β遮断薬も非選択的β遮断薬も、眼圧低下との間に統計学的に有意な関連は認められなかった(それぞれ、−0.12mmHg、p=0.054および−0.70mmHg、p=0.037)。・BMI、収縮期血圧および中心角膜厚を調整後、ACE阻害薬の使用と眼圧は関連しなかった(0.11mmHg、p=0.07)。

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男の美学【Dr. 中島の 新・徒然草】(160)

百六十の段 男の美学脳神経外科に通院している、ある40代の男性。ほかから出ている降圧薬の中にβ遮断薬があることに、ふと気づきました。中島「あれれ、この薬をのんでいたら男性機能が落ちてしまうんじゃなかったかな」患者「そうなんですか?」中島「確かそうだったと思いますよ」患者「でも、いいんです。僕なんか、相手もいないし」そういえば、この方は独身でした。中島「いやいや、男ってのはね」患者「……」中島「抜く抜かないにかかわらず、常に鞘の中の刀は研ぎ澄ませておくべきでしょ!」患者「それ、むちゃくちゃ説得力ありますね!」とっさにこんな説明ができるとは、自分でも驚きです。とはいえ、その患者さんは薬をやめることなく続けることを選択しました。それから半年後。患者「先生、大変な事になりました!」中島「どないしたんでっか?」患者「役に立ちません」中島「はあ?」患者「相手ができたのに、役に立たないんですよ(泣)」血相変えてやって来た患者さんの顔を見ながら、「そういえば以前、β遮断薬の話をしたなあ」と、ようやく思い出しました。中島「じゃあ、薬やめますか? 血圧が上がるかもしれんけど」患者「やめてみます」ほかから出されている薬を勝手にやめるのもいささか問題ですが、目の前の患者さんは切羽詰まった表情です。患者「僕にとっては、こっちのほうが先決です」中島「じゃあ、血圧が上がったら次の手を考えましょう」というわけで、とりあえずβ遮断薬を中止することになりました。そして、次の外来。患者「先生、復活しました!」中島「おおーっ、やったか!」患者「やりましたよ」中島「後学のために教えてほしいんですけど、薬をやめてからどのくらいで復活しました?」患者「2週間くらいです」というわけで、この患者さん、現在はハッピーな生活を送っておられます。薬の副作用は思わぬ形で出るので、注意しておくべきですね。ともあれ、めでたしめでたし。最後に1句抜かずとも 研いでおくべし 鞘の中

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ランダム化試験としては不十分、実用化にはさらなる検討が必要(解説:桑島 巖 氏)-645

 近年の高血圧治療の傾向として、降圧目標値が低くなっており、その達成のためには多剤併用は避けられなくなっている。そこで、RAS阻害薬、Ca拮抗薬、利尿薬、β遮断薬の標準用量の4分の1ずつを4剤組み合わせたQuadpillという薬剤を作り、その降圧効果をプラセボと二重盲検法で比較したのがこの論文である。 その結果、プラセボに比べて外来血圧は22/13mmHg、24時間血圧は19/14mmHg下降したという。 しかし、症例数が55例、追跡期間がたった4週間と、ランダム化試験としてはかなり不十分である。それをシステマティックレビューを追加して補っている。システマティックレビューといっても本試験と同じく4分の1用量を4剤組み合わせた論文は1論文に過ぎず、これも不十分である。Lancet誌に掲載されるレベルの論文ではないが、話題作りとしては悪くはない。 高齢者では降圧薬以外にも多くの薬を服用している例が多いことを考慮すると、配合剤で服薬錠数を減らすという発想は必要かもしれない。 本試験では症例数が不十分ながら18例中18例(100%)が140/90mmHgの降圧目標値を達成できたと述べている。 配合剤の問題点は、副作用が発現したときのさじ加減が困難なことであるが、おのおのが標準量の4分の1量であれば問題ないであろうというのがQuadpillである。 少量とはいっても、利尿薬、β遮断薬には有害事象の発現の懸念はある。さじ加減を重んじ、病態に応じた高血圧治療を推奨している専門家としては、この論文の結果を臨床医に推奨するには抵抗を感じる。単剤を増量した場合との降圧効果の比較データも欲しいところである。症例数を十分に増やし、もう少し追跡期間も延長して安全性を確認するなど、今後の慎重な研究が望まれる。

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アジア人で眼圧上昇と血糖降下薬の関連を示唆

 眼圧は全身薬物療法と関連しているのだろうか。シンガポール・国立眼科センターのHenrietta Ho氏らは、中国人、インド人およびマレー人を対象としたシンガポール眼疾患疫学研究の事後解析を行い、β遮断薬は眼圧低値と、アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬、アンジオテンシンII受容体拮抗薬(ARB)、スタチンおよびスルホニル尿素(SU)薬は眼圧高値と関連が示唆されることを明らかにした。これらの関連はそれほど強くはなかったが、血糖降下薬のみ1mmHg超の眼圧上昇と関連していたことから、著者は「緑内障眼の眼圧に対する全身薬物療法の作用はよく解明されていないが、重要である」と述べたうえで、「緑内障患者は、薬物の種類によって眼圧上昇または低下のリスクに曝されている可能性があり、眼圧コントロールに影響があるかもしれない」とまとめている。JAMA Ophthalmology誌オンライン版2017年1月12日号掲載の報告。 研究グループは、多民族的なアジア人集団で全身薬物療法と眼圧との関連を検討する目的で、シンガポール眼疾患疫学研究の事後解析を行った。 解析対象は、参加した中国人(募集期間2009年2月9日~2011年12月19日)、マレー人(同2004年8月16日~2006年7月10日)、およびインド人(同2007年5月21日~2009年12月29日)の計1万33例(回答率78.7%)のうち8,063例であった。年齢は平均57.0±9.6歳、女性50.9%、中国人2,680例(33.2%)、マレー人2,757例(34.2%)、インド人2,626例(32.6%)。緑内障、眼手術歴または外傷、および左右の眼圧の差が5mmHg以上の参加者は除外した。 眼圧は、ゴールドマン圧平眼圧計を用いて測定し、薬物療法および他の変数に関するデータはインタビュアーを介した質問票から得た。薬物療法と眼圧との関連について、線形回帰モデルを用い、2015年8月1日~10月31日に解析した。 主な結果は以下のとおり。・β遮断薬は、眼圧低下と関連していた(-0.45mmHg、95%信頼区間[CI]:-0.65~-0.25mmHg、p<0.001)。・眼圧上昇と関連していたのは、ACE阻害薬(+0.33mmHg、95%CI:0.08~0.57mmHg、p=0.008)、ARB(+0.40mmHg、95%CI:0.40~0.75mmHg、p=0.02)、スタチン(+0.21mmHg、95%CI:0.02~0.4mmHg、p=0.03)、SU薬(+0.34mmHg、95%CI:0.05~0.63mmHg、p=0.02)であった。・血糖降下薬のみ、他の研究で5年間に緑内障の発生リスクが14%高まる閾値とされる1mmHg超の眼圧上昇と関連していた。・眼圧に対する薬物種類間の相加的、相乗作用あるいは拮抗的な相互作用は確認されなかった。

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ミオシンアクティベータは予後を改善する初の経口強心薬たりうるか?(解説:絹川 弘一郎 氏)-628

 収縮力の低下した心不全を治療するとき、誰しもまず考えるのは収縮力を元に戻すことができれば、ないしは少しでも収縮力を高めれば、心不全症状は良くなるであろうということである。それは確かにその通りで、いわゆる強心薬は経口薬も静注薬もたくさん開発されてきて、とくに静注強心薬は常に急性心不全の低心拍出量を伴う患者の治療の最前線に位置してきた。ところが、収縮不全の治療は、これを慢性に継続するとすべからく予後が悪い、すなわち患者が死亡するという事態が生じることがわかって以来、急性期から慢性期にかけて収縮力という観点ではまったく逆の治療を施すというparadoxicalな、そして誤解を恐れずにいえば面倒なことになって20年近くが経つ。β遮断薬という少なくとも薬理学的には収縮力を落とすはずの薬剤を長期(数ヵ月から1年)投与していくと左心室の容量が減少し、収縮力が増加する。いわゆるリバースリモデリングを伴うことも現象として記述されて久しいが、心拍数の減少のみで説明できるほど単純ではないと思っているのは筆者だけではないであろう。 前置きはこのくらいにして、収縮力を増強させる強心薬はこれまでの薬剤はすべて心筋のCa濃度を上昇させる機序に基づくものであり、多くの場合、心拍数の増加も伴った。Ca濃度の増加は、心筋細胞内のシグナリングにおいて好ましからざる影響を与えることは心筋細胞の肥大のメカニズムの研究からもすでに明らかであり、Ca濃度の増加を伴わない強心薬ならば悪影響を排して強心効果のみで長期的な使用に耐えうるのではないかと考えられてきた。心筋の収縮は、ミオシンとアクチンのクロスブリッジによって引き起こされるものであり、omecamtiv mecarbilはミオシンと結合して力を発生する段階にあるアクトミオシン結合状態を増加させることで、Ca濃度を変化させずに収縮力を増強させると考えられる。この薬剤を慢性収縮不全LVEF<40%の患者に投与してプラセボ対象の下、20週後のサロゲートマーカーの動向をみたのがCOSMIC-HF試験である。一定の血中濃度で明確な強心作用が発揮されるという以前の研究を基に、血中濃度をモニタリングして投与用量の調節を行う一群も設定された。 サロゲートマーカーは、心エコーによる駆出時間、左室容積、NT-proBNP、心拍数などであり、血中濃度をモニタリングして用量調節する群でより明確に左心室のリバースリモデリングと心拍数の低下が認められた。この2つはまさにβ遮断薬での変化と同様であり、サロゲートマーカーの変化が生命予後の改善と密にリンクしているならば、この薬剤でも生命予後の改善が得られる可能性がある。この作用はほぼ全例にβ遮断薬を投与したうえでのものであり、まったくもって上乗せ効果であるといえる。今後は、用量調節をするプロトコルで大規模な生命予後をエンドポイントにした第III相試験が計画されるであろう。ただし、サロゲートマーカーだけ模倣しても予後は改善しないという結果が得られる可能性もある。この意味で、真に重要なことがなんであるかを知らしめてくれる可能性のある試験ともいえ、omecamtiv mecarbilの予後改善効果があるのかないのか、興味深く今後を見届けたい。

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FFRジャーナルClub 第2回

FFRジャーナルClubでは、FFRをより深く理解するために、最新の論文を読み、その解釈を議論していきます。第2回目の今回は、本年11月14日に薬事承認を受け、日本での臨床使用開始に向け期待が高まっているFFR-CTに関連する論文を読みたいと思います。第2回 Denmark Aarhus University Hospitalにおける日常臨床でのFFR-CT使用に関する報告Norgaard BL, et al. Clinical use of coronary CTA-derived FFR for decision making in stable CAD. J Am coll Cardiol Img. 2016, Apr 7. [Epub ahead of print]冠動脈CT(以下、CTA)は、その陰性的中率の高さ、および検査へのアプローチのしやすさから、とくに日本では非常に広く使用されている。そのCTAの画像データから、スーパーコンピュータを用いて冠血流、冠内圧の情報を推測・計算する手法がFFR-CT(coronary computed tomography angiography derived fractional flow reserve)として報告されている1)~3)。今回は、実臨床におけるFFR-CTを用いた診断戦略の有用性、侵襲的検査(以下、ICA:Invasive coronary angiography)に対するゲートキーパーとしての役割について検討したsingle center、observational all-comers studyを紹介する。2014年4月からの1年間、Aarhus University Hospitalを受診し、安定冠動脈疾患が疑われた症例が対象である。外来にて、緊急を要さないCTAの依頼が出された連続1,248の症例が対象とされた。同施設では、新規発症で検査前確率がlow~intermediateの症例において、CTAが診断モダリティの第1選択として好んで使われていた。CTAはSiemens社製のdual-source CT scannerが使用され、心拍数60bpm以下を目標とし、経口・経静脈的β遮断薬が投与され、また全例でニトログリセリンの舌下投与が行われた。CTAの判読結果により下記の3つのリスクカテゴリーに層別化し、その後の診断手法を決定した。画像を拡大するFFR-CTは、CTAの画像データをHeart Flow社(カリフォルニア)に送り解析された。主要枝ごとに計算され、FFR-CT≦0.80を有意狭窄と判断した。結果:1,248例中75例(6%)は、心拍の不整、重度の石灰化などの理由で造影剤を注入する前に、ほかの検査アプローチあるいは治療方針(ICA、MPIあるいは薬物療法)に変更された。CTAの対象となったのは1,173例で、非典型的胸痛が763例(65%)と多くを占め、典型的胸痛が152例(13%)、非狭心症性胸痛が176例(15%)、呼吸困難が82例(7%)であった。検査時心拍数は58±9bpm(37~122)、Agaston scoreは0~4,830(四分位数範囲:0~54)。CTAを施行した1,173例中、33例(3%)は、解析するには画像が不十分であり(造影剤量不足、motion artifact、blooming artifact)、引き続きperfusion imagingが行われた。CTAの結果、858例はOMTが選択され、82例でICA、189例でFFR-CT、44例でMPI(myocardial perfusion imaging)が選択された。FFR-CTが依頼された189例において、FFR-CT解析が可能であったのは185例(98%)であった。185例中57例(31%)、740枝中72枝(10%)においてFFR-CT≦0.80を呈した。画像を拡大するFFR-CT後のICAにおいて、37例で確認のため侵襲的FFRが計測された。研究期間の開始から3分の2の時期までで計測されたのは35例中27例(77%)であったのに対し、後期3分の1では19例中10例(53%)であった。計測されたFFR値と、FFR-CT値の間には良好な相関を認めた(下図)。全体では、FFR-CT値がFFRよりも軽度(0.04)低値を示す傾向を認めたが、FFR-CT ≦ 0.80が侵襲的FFR陽性を示す診断率は37例中27例(74%)、53枝中37枝(70%)であった。画像を拡大するFFR-CT≦0.80にてICAに送られた49例中22例(45%)に血行再建(PCI n=12、CABG n=10)が行われた。FFR-CT≦0.75にてICAに送られた23例では、70%に血行再建(PCI n=10、CABG n=6)が行われた。CTAからFFR-CTの計測なしで直接ICAに送られた82例では53例(65%)に血行再建(PCI n=42、CABG n=11)が行われた。12ヵ月の追跡期間中(6~18ヵ月)、FFR-CT、ICA、MPIいずれの群においても重篤なイベントは生じなかった。FFR-CT値が0.80以上でありICAを行わなかった123例においても重篤なイベントはみられず、経過中胸部症状により2例にICAが行われたが、いずれも血行再建の必要性は認めなかった。結語:FFR-CTに基づいた診断戦略は妥当であり、有用な情報を与えてくれる。FFR-CT値>0.80によってICAをdeferしても、良好な短期予後が得られた。私見:FFR-CTは、CTAと比べて追加の検査の必要性はなく、その意味でとても使いやすい検査法といえる。一方、結果として出てきたFFR-CTの値を信じて、冠動脈造影検査や、カテーテル治療自体の適応を決定してよいのか、現時点ではまだ議論の余地がある。しかし、非侵襲的検査と考えると、今存在しているほかのどの検査法も決して100%ではなく、それらの情報を基に主治医が総合的に判断することにより、より正しいと考えられる結果を導いていく。その1つの検査法として考えれば、解剖学的な情報に加え、同時に機能的な情報が得られるというメリットは大きい。では、本検査を侵襲的検査のゲートキーパーの役割として使用するのはどうか? その意味で最も信頼されているのは負荷心筋シンチグラムと思われる。これは6万例を超える非常に大きなデータにより、負荷心筋シンチグラム陰性であればその後の予後が良好である4)、というデータが示されていることが大きい。また運動負荷で行えば、負荷時の自覚症状や心電図の所見が加味できることも重要である。FFR-CTは、負荷心筋シンチグラムに代わりうるか?CTAはもとより陰性的中率が高いことが示されている。侵襲的検査に送った結果、偽陽性が多い点が問題であった。また中等度狭窄が存在しても、虚血の有無に関しては再度負荷試験を行う必要があった。FFR-CTは、CTAの陰性的中率は変えずに陽性的中率を高めることが可能か? 本論文において最も重要と思うのは、FFR-CTが陰性であってICAをdeferした症例の予後である。約12ヵ月と短期間ではあるが問題となるイベントは生じていない。観察中2例に持続する胸痛があり再度のICAが行われたが、FFR-CT 0.88(LAD)でdeferされた症例のICAは血管不整所見のみ、FFR-CT 0.78(LAD)でdeferされた症例のICAは、びまん性の軽度病変で侵襲的FFR 0.84であった。FAME試験において、FFRガイド群、すべての病変をステント治療するAngioガイド群、そのどちらも自覚症状が消失したのは約70%である。何らかの症状があった場合に、過剰な再検査が行われる可能性がある。FAME試験では、再造影の際PCIを考慮する場合は、(FFRガイド群では)必ずFFRの計測が義務付けられていた。当面のイベントを減らす、ということよりもその担当医がFFRの再現性を実感し、その信頼度を高めていく、という意味でその意義は大きかったといえる。FFR-CTにおいても、その信頼を確立するまでは、多少時間が必要と思われる。“CTAである程度のプラークを認めたが、FFR-CTは陰性”、という症例の予後に関するデータを積み上げていくことが重要である。(執筆・監修:東京医科大学八王子医療センター 循環器内科 田中信大)参考論文1.Koo BK, et al. J Am Coll Cardiol. 2011;58:1989-1997.2.Min JK, et al. JAMA. 2012;308:1237-1245.3.Nørgaard BL, et al. J Am Coll Cardiol. 2014;63:1145-1155.4.Shaw LJ, Iskandrian AE. J Nucl Cardiol. 2004;11:171-185.

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PCI中のランジオロール早期投与、最適再灌流やアウトカムに好影響

 ST上昇急性心筋梗塞(STEMI)の経皮的冠動脈インターベンション(PCI)中におけるランジオロールの早期静脈内投与は、非投与群と比較して、最適再灌流の達成率が有意に高く、急性心筋梗塞によりKillip分類のGrade3(重症心不全)や4(心原性ショック)へ進行した患者の割合も有意に低いことが、横浜市立大学の清國 雅義氏らによる研究で明らかになった。International Journal of Cardiology誌2016年10月15日号の報告。 PCI中のβ遮断薬の早期静脈内投与は、根底にあるメカニズムが不明であるものの、STEMIの梗塞サイズを減少させることが示されている1)2)。 そのため、本研究では、STEMIの再灌流状態における短時間作用型β1アドレナリン受容体遮断薬ランジオロールの早期静脈内投与の有効性を調査することを目的として、前向き単一群研究を実施した。 STEMIでPCIを実施した55例(男性43例、女性12例、65±13歳)に対して再灌流の直前にランジオロールの静脈内投与を開始し、再灌流の状態とアウトカムを、過去にランジオロール非投与で治療した60例(男性49例、女性11例、65±13歳)と比較した。再灌流状態は、ST上昇の回復状態(ST-segment resolution:STR)、心筋濃染グレード(myocardial blush grade:MBG)、冠血流量から評価した。STR 70%以上の場合にSTRと定義し、最適再灌流達成とした。 主な結果は以下のとおり。・ランジオロール投与群は、STR(64% vs.42%、p=0.023)およびMBG 2以上(64% vs.45%、p=0.045)の達成率が非投与群と比較して有意に高かったが、冠血流量は同程度であった。・多変量解析の結果、ランジオロール投与は、STRの独立した予測因子であることが示された(オッズ比:2.99、95%CI:1.25~7.16、p=0.014)。・ランジオロール投与群は、急性心筋梗塞によりKillip分類のGrade3またはGrade4へ進行した患者の割合が、非投与群と比較して有意に低かった(0% vs.10%、p=0.028)。1)B.Ibanez, et al. Circulation. 2013;128:1495-1503.2)G.Pizarro, et al. J Am Coll Cardiol. 2014;63:2356-2362.

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心筋梗塞へのβ遮断薬、早期投与で死亡リスク半減/BMJ

 心不全や左心室機能不全を認めない急性心筋梗塞の患者に対し、入院後48時間以内にβ遮断薬の投与を始めることで、30日死亡リスクは半分以下に減少することが示された。一方で、退院時のβ遮断薬服用は1年死亡リスクの低減にはつながらず、1年後のβ遮断薬服用も5年死亡リスクの低減効果はないことも明らかになった。フランス・Georges Pompidou European HospitalのEtienne Puymirat氏らが、患者2,679例について行った前向きコホート試験の結果明らかにしたもので、BMJ誌2016年9月20日号で発表した。フランス国内223ヵ所の医療センターで2,679例を追跡 研究グループは、2005年末時点の急性ST上昇・非ST上昇型心筋梗塞の全仏レジストリを基に、フランス国内223ヵ所の医療センターで治療を受け、心不全や左心室機能不全の認められない2,679例の急性心筋梗塞患者について、前向きコホート試験を行った。 早期(入院48時間以内)のβ遮断薬投与開始と30日死亡率、退院時β遮断薬投与の有無と1年死亡率、1年時点のβ遮断薬投与の有無と5年死亡率の関連について、それぞれ検証を行った。1年時点スタチン継続投与は5年死亡リスクを半減 早期にβ遮断薬の投与を開始した人の割合は、77%(2,679例中2,050例)、退院時に処方されていた人の割合は80%(2,217例中1,783例)、1年時点で服用していた人の割合は89%(1,383例中1,230例)だった。 30日死亡率についてみると、β遮断薬の早期投与は、同発症率を半分以下に低減した(補正後ハザード比:0.46、95%信頼区間[CI]:0.26~0.82)。 一方、退院時にβ遮断薬を処方された人の、そうでない人に対する1年死亡率の補正後ハザード比は、0.77(95%CI:0.46~1.30)で有意な低下は認められなかった。また、1年時点のβ遮断薬服用についても、5年死亡率の低下にはつながっていなかった(補正後ハザード比:1.19、95%CI:0.65~2.18)。傾向スコア分析および感度解析でも、同様の結果が示された。 なお、1年時点でスタチンを継続投与していた人は、そうでない人に比べ、5年死亡率が半分以下に減少した(補正後ハザード比:0.42、95%CI:0.25~0.72)。

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特発性拡張型心筋症〔DCM : idiopathic dilated cardiomyopathy〕

1 疾患概要■ 概念・定義拡張型心筋症(idiopathic dilated cardiomyopathy: DCM)は、左室の拡張とびまん性の収縮障害を特徴とする進行性の心筋疾患である。心不全の急性増悪を繰り返し、やがて、ポンプ失調や致死性不整脈により死に至る。心筋症類似の病像を呈するが、病因が明らかで特定できるもの(虚血性心筋症や高血圧性心筋症など)、全身疾患との関連が濃厚なもの(心サルコイドーシスや心アミロイドーシスなど)は特定心筋症と呼ばれ、DCMに含めない。■ 疫学厚生省特発性心筋症調査研究班による1999年の調査では、わが国における推計患者数は約1万7,700人、有病率は人口10万人あたり14.0人、発症率は人口10万人あたり3.6人/年とされる。男女比は2.5:1で男性に多く、年齢分布は小児から高齢者まで幅広い。■ 病因DCMの病因は一様ではない。一部のDCMの発症には、遺伝子異常、ウイルス感染、自己免疫機序が関与すると考えられているが、その多くがいまだ不明である。1)遺伝子異常DCMの20~30%程度に家族性発症を認めるが、孤発例でも遺伝要因が関与するものもある。心機能に関与するどのシグナル伝達経路が障害を受けても発症しうると考えられており、心筋のサルコメア構成蛋白や細胞骨格蛋白をコードする遺伝子異常だけでなく、Caハンドリング関連蛋白異常の報告もある。2)ウイルス感染心筋生検検体の約半数に、何らかのウイルスゲノムが検出される。コクサッキーウイルス、アデノウイルス、C型肝炎ウイルスなどのウイルスの持続感染が原因の1つとして示唆されている。3)自己免疫機序βアドレナリン受容体抗体や抗Caチャネル抗体といったさまざまな抗心筋自己抗体が、患者血清に存在することが判明した。DCMの発症・進展に自己免疫機序が関与する可能性が指摘されている。■ 症状本疾患に疾患特異的な症状はない。初期には無症状のことが多いが、病状の進行につれて、労作時息切れ、易疲労感、四肢冷感などの左心不全症状を認めるようになり、運動耐容能は低下する。また、動悸、心悸亢進、胸部不快感といった頻脈・不整脈に伴う症状を訴えることもある。一般には、低心拍出所見よりもうっ血所見が前景に立つことが多い。両心不全へ至ると、全身浮腫、頸静脈怒張、腹水などの右心不全症状が目立つようになる。右心機能が高度に低下している重症例では、左心への灌流低下から、肺うっ血所見を欠落する例があり、重症度判断に注意を要する。■ 予後一般に、DCMは進行性の心筋疾患であり、予後は不良とされる。5年生存率は、1980年代には54%と低かったが、最近では70~80%にまで改善したとの報告もある。標準的心不全治療法が確立し、ACE阻害薬、β遮断薬、抗アルドステロン薬といった心筋保護薬の導入率向上がその主たる要因と考えられている。2 診断 (検査・鑑別診断も含む)DCMの診断は、特定心筋症の除外診断を基本とすることから、二次性心筋症を確実に除外することがDCMの診断に直結する。■ 身体所見一般に、収縮期血圧は低値を示すことが多く、脈圧は小さい。聴診所見では、心尖拍動の左方偏移、ギャロップリズム(III・IV音)、心雑音および肺ラ音の聴取が重要である。■ 胸部X線多くの症例で心陰影は拡大するが、心胸郭比は低圧系心腔の大きさに依存するため、正常心胸郭比による本疾患の除外はできない。心不全増悪期には、肺うっ血像や胸水貯留を認める。Kerley B line、peribronchial cuffingが、肺間質浮腫所見として有名である。■ 心電図疾患特異度の高い心電図所見はない。ST-T異常、異常Q波、QRS幅延長、左室側高電位、脚ブロック、心室内伝導障害など、心筋病変を反映した多彩な心電図異常を呈する。また、心筋障害が高度になると、不整脈を高頻度に認めうる。■ 血液生化学検査心不全の重症度を反映し、心房性ナトリウム利尿ペプチド(ANP)や脳性ナトリウム利尿ペプチド(BNP)およびその前駆体N末端フラグメントであるNT-proBNPの上昇を認める。また、交感神経活性の指標である血中カテコラミンや微小心筋障害を示唆するとされる高感度トロポニンも上昇する。低心拍出状態が進行すると、腎うっ血、肝うっ血を反映し、クレアチニンやビリルビン値の上昇を認める。■ 心エコー検査通常、びまん性左室収縮障害を認め、駆出率は40%以下となる。心リモデリングの進行に伴い、左室内腔は拡張し、テザリングや弁輪拡大から機能性僧帽弁逆流の進行をみる。最近では、僧帽弁流入血流や組織ドップラー法を用いた拡張能の評価、組織ストレイン法を用いた収縮同期性の評価など、より詳細な検討が可能になっている。■ 心臓MRI検査シネMRIによる左室容積や駆出率計測は、信頼度が高い。ガドリニウムを用いた心筋遅延造影パターンの違いによるDCMと虚血性心筋症との鑑別が報告されており、心筋中層に遅延造影効果を認めるDCM症例では、心イベントの発生率が高く、予後不良とされる。■ 心筋シンチグラフィ123I-MIBGシンチグラフィによる交感神経機能評価では、後期像での心臓集積(H/M比)の低下や洗い出し率の亢進を認める。201Tlあるいは99mTc製剤を用いた心筋シンチグラフィでは、patchy appearanceと呼ばれる小欠損像を認め、その分布は、冠動脈支配に一致しない。心電図同期心筋SPECTを用いて、左室容積や駆出率も計測可能である。■ 心臓カテーテル検査冠動脈造影は、冠血管疾患、虚血性心筋症の除外を目的として施行される。血行動態の評価目的に、左室内圧測定や左室造影による心収縮能評価、肺動脈カテーテルを用いた右心カテーテル検査も行われる。左室収縮能(最大微分左室圧: dP/dtmax)の低下、左室拡張末期圧・肺動脈楔入圧の上昇、心拍出量低下を認める。■ 心筋生検DCMに特異的な病理組織学的変化は確立されていない。典型的には、心筋細胞の肥大、変性、脱落と間質の線維化を認める。心筋炎や心サルコイドーシス、心ファブリー病などの特定心筋症の除外目的に行われることも多い。3 治療 (治験中・研究中のものも含む)DCMに対する根本的な治療法は確立していない。そのため、(1) 心不全、(2) 不整脈、(3) 血栓予防を治療の根幹とする。左室駆出率の低下を認めるため、収縮機能障害を伴う心不全の治療指針に準拠する。■ 心不全の治療1)心不全の生活指導生活習慣の是正を基本とする。適切な水分・塩分摂取量および栄養摂取量の教育、適切な運動の推奨、禁煙、感染予防などが指導すべきポイントとされる。2)薬物療法収縮機能障害を伴う心不全の治療指針に準拠し、薬剤を選択する。心臓のリバースリモデリングおよび長期予後改善効果を期待し、アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬あるいはアンジオテンシンII受容体拮抗薬(ARB)といったレニン・アンジオテンシン系(RAS)阻害薬とβ遮断薬、抗アルドステロン薬を導入する。原則として、β遮断薬は、カルベジロールあるいはビソプロロールを用い、忍容性のある限り、少量より漸増する。さらに、うっ血症状に応じて、利尿薬の調節を行う。急性増悪期には、入院下に、強心薬・血管拡張薬といったより高度な点滴治療を行う。3)非薬物療法(1)心室再同期療法(CRT)左脚ブロックなど、心室の収縮同期不全を認める症例に対し、心室再同期療法が行われる。除細動機能を内蔵したデバイス(CRT-D)も普及している。心拍出量の増加や肺動脈楔入圧の低下、僧帽弁逆流の減少といった急性期効果だけでなく、慢性期効果としての心筋逆リモデリング、予後改善が報告されている。CRTによる治療効果の乏しい症例(non-responder)も一定の割合で存在することが明らかになっており、その見極めが課題となっている。(2)陽圧呼吸療法、ASVわが国では、心不全患者に対するASV(adaptive servo ventilation)換気モード陽圧呼吸療法の有用性が多く報告されており、自律神経活性の改善、不整脈の減少、運動耐容能およびQOLの向上、心および腎機能の改善などが期待されている。しかし、海外で行われた大規模臨床試験ではこれを疑問視する研究結果も出ており、いまだ議論の余地を残す。(3)心臓リハビリテーション“包括的心臓リハビリテーション”の概念のもと、運動のみならず、薬剤、栄養、介護など各領域からの多職種介入による全人的心不全管理が急速に普及している。(4)和温療法遠赤外線均等温乾式サウナを用いた低温サウナ療法が、心不全患者に有用であるとの報告がある。心拍出量の増加、前負荷軽減、肺動脈楔入圧の低下といった急性効果のみならず、慢性効果として、末梢血管内皮機能の改善、心室性不整脈の減少も報告されている。(5)僧帽弁形成術・置換術、左室容積縮小術高度の僧帽弁逆流を伴うDCM例では、僧帽弁外科的手術を考慮する。しかしながら、その有効性は議論の余地を残すところであり、左室容積縮小術の1つに有名なバチスタ手術があるが、中長期的に心不全再増悪が多いことから、最近は推奨されない。(6)左室補助人工心臓(LVAD)重症心不全患者において、心臓移植までの橋渡し治療、血行動態の安定を目的として、LVAD装着が考慮されうる。2011年以降、わが国でも植込型LVADが使用可能となり、装着患者のQOLが格段に向上した。現在、植込型LVAD装着下に長期生存を目指す“destination therapy”の是非に関する議論も始まっており、今後、重症心不全治療の選択肢の1つとして臨床の場に登場する日も近いかもしれない。しかし、ここには医学的見地のみならず、医療倫理や医療経済、日本人の死生観も大きく関わっており、解決すべき課題も多い。(7)心臓移植重症心不全患者の生命予後を改善する究極の治療法である。わが国における原疾患のトップはDCMである。不治の末期的状態にあり、長期または繰り返し入院治療を必要とする心不全、β遮断薬およびACE阻害薬を含む従来の治療法ではNYHA3度ないし4度から改善しない心不全、現存するいかなる治療法でも無効な致死的重症不整脈を有する症例が適応となる。(8)緩和医療高齢化社会の進行につれ、有効な治療効果の得られない末期心不全患者へのサポーティブケアが、近年注目されつつある。このような患者のエンドオブライフに関し、今後、多職種での議論・検討を重ねていく必要がある。■ 不整脈の治療致死性不整脈の同定と予防が重要となる。DCMによる心筋障害を基盤として発生し、心不全増悪期により出現しやすい。また、電解質異常も発生要因の1つである。そのため、心不全そのものの治療や不整脈誘発因子の是正が必要である。DCMにおける不整脈治療には、アミオダロンがよく使用される。カテーテルアブレーションが選択されることもあるが、確実に突然死を予防できる治療手段は植込型除細動器(ICD)であり、症候性持続性心室頻拍や心室細動既往を有する心不全患者の二次予防あるいは一部の心不全患者の一次予防を目的として適応が検討される。また、心房細動も高率に合併する。これまでリズムコントロールとレートコントロールで死亡率に差はないと考えられてきたが、近年これを否定するメタアナリシス結果もでており、さらなる研究結果が待たれる。■ 血栓予防治療非弁膜症性心房細動合併例では、ワルファリンのみならず、新規経口抗凝固薬の使用が考慮される。また、左室駆出率30%以下の低心機能例では、心腔内血栓の予防目的に抗凝固療法が望ましいとされるが、新規経口抗凝固薬の適応はなく、ワルファリンが選択される。4 今後の展望現在のところ、確立された根本治療法のないDCMにおける究極の治療法は、心臓移植であるが、わが国では、深刻なドナー不足により汎用性の高い治療法としての普及にはほど遠い。そのため、自己の細胞あるいは組織を用いた心筋再生治療の研究・臨床応用が進められている。しかしながら、安全な再生医療の確立には、倫理面などクリアすべき課題も多く、医用工学技術を応用した高性能・小型化した人工機器の開発研究も進められている。5 主たる診療科循環器内科※ 医療機関によって診療科目の区分は異なることがあります。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)診療、研究に関する情報難病情報センター 特発性拡張型心筋症(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)1)友池仁暢ほか. 拡張型心筋症ならびに関連する二次性心筋症の診療に関するガイドライン. 循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2009−2010年度合同研究班報告).2)奥村貴裕, 室原豊明. 希少疾患/難病の診断・治療と製品開発. 技術情報協会; 2012:pp1041-1049.3)奥村貴裕. 心不全のすべて.診断と治療(増刊号).診断と治療社;2015:103.pp.259-265.4)松崎益徳ほか. 慢性心不全治療ガイドライン(2010年改訂版).循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2009年度合同研究班報告).5)許俊鋭ほか. 重症心不全に対する植込型補助人工心臓治療ガイドライン.日本循環器学会/日本心臓血管外科学会合同ガイドライン(2011-2012年度合同研究班報告).公開履歴初回2014年11月27日更新2016年05月31日

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