糖尿病・代謝・内分泌科の海外論文・最新ニュースアーカイブ|page:30

MASLD患者の飲酒は肝線維化リスクが高い

過体重、糖尿病、脂質異常症などの代謝異常とアルコール摂取はどちらも脂肪性肝疾患(SLD)の原因となるが、肝線維化に対するそれらの影響は不明である。今回、スペイン・バレンシア大学のINCLIVA Health Research Instituteに所属するDavid Marti-Aguado氏らは、代謝異常関連脂肪性肝疾患(MASLD)患者においてアルコール摂取量が中程度の場合、代謝リスク因子との相加効果を超え、肝線維化進展リスクが指数関数的に増加したことを示唆し、MASLD and increased alcohol intake(MetALD)患者と同程度に病気の進行リスクが高まることを明らかにした。Journal of Hepatology誌オンライン版2024年7月4日号掲載の報告。

就寝前の運動も睡眠の妨げにならない?

 就寝前の運動が、必ずしも睡眠を妨げるわけではないとする研究結果が報告された。短時間のレジスタンス運動で睡眠時間が長くなり、睡眠中の目覚め(中途覚醒)を増やすこともないという。オタゴ大学(ニュージーランド)のJennifer Gale氏らの研究によるもので、詳細は「BMJ Open Sport & Exercise Medicine」に7月16日掲載された。  従来、激しい運動は体温や心拍数を上昇させて睡眠を妨げる可能性があるため、就寝時間が近づいてきたら運動を控えた方が良いと言われることが多かった。しかし本研究の結果、短時間のレジスタンス運動を行うことで、ソファでゆっくりするよりも睡眠が改善される可能性のあることが分かった。

1型糖尿病の子どもたちは「糖尿病の苦痛」にさらされている

 1型糖尿病の子どもは、いくつかのメンタルヘルス上の問題を抱えることが多いとする研究結果が報告された。英ケンブリッジ大学およびチェコ共和国国立精神保健研究所のTomas Formanek氏らの研究によるもので、詳細は「Nature Mental Health」に7月17日掲載された。  報告された研究によると、1型糖尿病の子どもは糖尿病のない子どもに比べて、気分障害を発症する可能性が2倍以上高く、不安症に苦しむ可能性は50%高く、また摂食障害や睡眠障害などの行動上の問題が発生する可能性は4倍以上高いという。ただし、この研究結果は同時に、このようなメンタルヘルス疾患が、1型糖尿病という病態が原因で引き起こされるものではないことも示唆しており、「子どもたちが抱えるこのようなリスクは、むしろ慢性疾患を継続的に管理し続けることに伴う『糖尿病の苦痛』が原因のようだ」と、著者らは述べている。

ドライフルーツは2型糖尿病リスクを上げる?下げる?

 ドライフルーツの摂取が2型糖尿病の発症に及ぼす影響については、議論が分かれている。そこで、中国・西安交通大学のJianbin Guan氏らはメンデルランダム化解析を用いた研究を実施した。その結果、ドライフルーツの摂取は2型糖尿病の発症リスク低下と関連することが示された。本研究結果は、Nutrition & Metabolism誌2024年7月10日号で報告された。  本研究では、ドライフルーツの摂取に関連する遺伝子データは、UKバイオバンクに登録された約50万例のうち、ドライフルーツの摂取に関するデータが得られた42万1,764例から取得した。2型糖尿病に関する遺伝子データは、IEU GWASデータベースに登録された2型糖尿病患者6万1,714例、対照59万3,952例から取得した。主な解析方法として、逆分散加重(IVW)法を用いて、ドライフルーツの摂取と2型糖尿病のリスクとの関連を検討した。

スタチンの使用はパーキンソン病リスクの低下と関連

 日本人高齢者を対象とした大規模研究により、スタチンの使用はパーキンソン病リスクの低下と有意に関連することが明らかとなった。LIFE Study(研究代表者:九州大学大学院医学研究院の福田治久氏)のデータを用いて、大阪大学大学院医学系研究科環境医学教室の北村哲久氏、戈三玉氏らが行った研究の結果であり、「Brain Communications」に6月4日掲載された。  パーキンソン病は年齢とともに罹患率が上昇し、遺伝的要因や環境要因などとの関連が指摘されている。また、脂質異常症治療薬であるスタチンとパーキンソン病との関連を示唆する研究もいくつか報告されているものの、それらの結果は一貫していない。血液脳関門を通過しやすい脂溶性スタチンと、水溶性スタチンの違いについても、十分には調査されていない。

一部の糖尿病用薬の処方が認知症リスクの低さと関連

 メトホルミンやSGLT2阻害薬(SGLT2i)と呼ばれる糖尿病用薬の処方が、認知症やアルツハイマー病(AD)のリスクの低さと関連していることが報告された。慶煕大学(韓国)のYeo Jin Choi氏らの研究によるもので、詳細は「American Journal of Preventive Medicine」に5月3日掲載された。  2型糖尿病は多くの国で重大な健康問題となっており、世界中で約5億3000万人が罹患していて、その罹患によって認知機能障害や認知症のリスクが50%以上上昇する可能性が示されている。認知症もまた、高齢化に伴い世界的な健康問題となっており、患者数はすでに4000万人以上に上るとされている。

睡眠時間が乱れている人は糖尿病リスクが高い

 睡眠時間が日によって長かったり短かったりすることが、糖尿病発症リスクの高さと関連があることを示すデータが報告された。米ブリガム・アンド・ウイメンズ病院のSina Kianersi氏らの研究によるもので、詳細は「Diabetes Care」に7月17日掲載された。論文の筆頭著者であるKianersi氏は、「われわれの研究結果は、2型糖尿病予防のために、睡眠パターンの一貫性を保つことの重要性を表している」と述べている。  この研究には、英国の一般住民対象大規模疫学研究「UKバイオバンク」のデータが用いられた。UKバイオバンク参加者のうち、2013~2015年に加速度計の計測データがあり睡眠時間を把握可能で、その時点で糖尿病でなかった8万4,421人(平均年齢62歳、男性43%、白人97%)を2022年5月まで追跡して、睡眠時間の乱れと糖尿病発症リスクとの関連を検討した。睡眠時間の乱れは、7晩連続で計測した睡眠時間の標準偏差(SD)で評価した。

顔の表面温度、脂肪肝や生活習慣病のスクリーニングに有用か

 体温とは、細胞機能と生物の生存に影響を与える、つまり健康状態を知るための重要なパラメータであり、老化と寿命にとっても重要な要素である。そこで今回、中国・北京大学のZhengqing Yu氏らは顔の皮膚温を捉えた熱画像(以下、サーマル画像)を用い、老化と代謝疾患の定量的特徴を明らかにすることで、サーマル画像が老化と代謝状態の迅速スクリーニングに有用な可能性を示唆した。Cell Metabolism誌2024年7月2日号掲載の報告。  研究者らは、2020~22年の期間に21〜88歳の成人2,811人(女性:1,339人、男性:1,472人)の顔のサーマル画像を収集し、赤外線サーモグラフィによる顔のメッシュ認識および領域分割アルゴリズムを用いたThermoFaceを開発、自動処理・分析にて生物学的年齢を測定するなどして、サーマル顔画像年齢による疾患予測モデルを生成し、AgeDiff(予測年齢と実年齢の差)と代謝パラメータや睡眠時間との関連を検証した。

最適な食物繊維は人それぞれ

 これまで長い間、食物繊維の摂取量を増やすべきとするアドバイスがなされてきているが、食物繊維摂取による健康上のメリットは人それぞれ異なることが報告された。単に多く摂取しても、あまり恩恵を受けられない人もいるという。米コーネル大学のAngela Poole氏らの研究によるもので、詳細は「Gut Microbes」に6月24日掲載された。  食物繊維は消化・吸収されないため、かつては食品中の不要な成分と位置付けられていた。しかし、整腸作用があること、および腸内細菌による発酵・利用の過程で、健康の維持・増進につながる有用菌(善玉菌)や短鎖脂肪酸の増加につながることなどが明らかになり、現在では「第六の栄養素」と呼ばれることもある。また糖尿病との関連では、食物繊維が糖質の吸収速度を抑え、食後の急激な血糖上昇を抑制するように働くと考えられている。そのほかにも、満腹感の維持に役立つことや、血圧・血清脂質に対する有益な作用があることも知られている。

GLP-1受容体作動薬とSGLT2阻害薬、MASLD併発2型糖尿病のCVイベントを抑制

 GLP-1受容体作動薬(GLP-1RA)とSGLT2阻害薬(SGLT2i)は、DPP-4阻害薬(DPP-4i)に比べて、MASLD(代謝異常関連脂肪性肝疾患)併発2型糖尿病患者の心血管(CV)イベントや肝臓イベントのリスクを低下させる可能性を示唆するデータが報告された。米ブリガム・アンド・ウイメンズ病院およびハーバード大学医学大学院のAlexander Kutz氏らが、米国内分泌学会(ENDO2024、6月1~4日、ボストン)で発表した。  Kutz氏らは、2013~2020年のメディケアデータベース、および、2013~2022年の米国内の大規模健康保険データベースを利用して、GLP-1RA、SGLT2i、DPP-4iにより治療が開始されていたMASLD併発2型糖尿病患者のCVイベント(急性心筋梗塞、虚血性脳卒中、心不全入院)、および肝臓イベントなどの発生リスクを調査した。