循環器内科/心臓血管外科の海外論文・最新ニュースアーカイブ|page:309

いわゆる「新規経口抗凝固薬」:中和剤は臨床的に意味があるか?【2】(解説:後藤 信哉 氏)-383

 ワルファリンは第II、VII、IX、X因子の機能的完成を阻害する薬剤であるため、濃縮血漿を加えることにより抗凝固活性を速やかに阻害することができる。最近開発された新規経口抗凝固薬(抗Xa、抗トロンビン薬)存在下では濃縮血漿を加えても、抗トロンビン、抗Xa薬により凝固因子の効果が阻害され続けるので、薬剤が体内から消失するまで止血効果を期待できない。第Xa因子の場合には、血漿中の抗凝固効果以上に、細胞膜上のprothrombinase complexを構成するXaも中和しなければならないので、抗Xa薬中和剤の開発はいっそう困難である。

ダビガトランに対するidarucizumab、患者での中和効果は?/NEJM

 ダビガトラン(商品名:プラザキサ)投与中の患者に対して、idarucizumabは数分以内で抗凝固作用を完全に中和することが、米国・ペンシルベニア病院のCharles V. Pollack, Jr氏らによる検討の結果、報告された。idarucizumabは、経口非ビタミンK拮抗薬に対する特異的な中和薬がない中、ダビガトラン特異的に抗凝固作用を中和するために開発されたヒト化モノクローナル抗体フラグメントである。これまでボランティア被験者(腎機能正常の健常若年者、65~80歳高齢者など)を対象とした試験で、迅速かつ完全な中和作用をもたらすことが示されていた。NEJM誌オンライン版2015年6月22日号掲載の報告より。

大腿膝窩動脈疾患での薬剤コーティングバルーンの成績/NEJM

 症候性大腿膝窩動脈疾患の患者に対し、パクリタキセル・コーティングバルーンによる血管形成術は、通常のバルーン血管形成術に比べ、長期アウトカムが良好であることが報告された。米国・マサチューセッツ総合病院のKenneth Rosenfield氏らが行った単盲検無作為化試験LEVANT2の結果、術後12ヵ月時点での標的病変1次開存性は、12.6ポイント高く、安全性についてもパクリタキセル・コーティングバルーンの非劣性が示された。経皮的血管形成術(PTA)による末梢動脈疾患(PAD)治療は、血管リコイルや再狭窄の発生により限定的である。薬剤コーティングバルーンによる血管形成術は、再狭窄による開存性を改善する可能性が示唆されていた。NEJM誌オンライン版2015年6月24日号掲載の報告より。

いわゆる「新規経口抗凝固薬」:中和剤は臨床的に意味があるか?【1】(解説:後藤 信哉 氏)-380

 長らく使用されてきたワルファリンには、経験的に中和法が確立されている。ワルファリンの抗凝固薬としての作用機序は、経験に基づいて理解されてきた。ワルファリンは、基本的には第II、VII、IX、X因子の機能的完成を阻害する薬剤であるため、濃縮血漿を加えることにより抗凝固活性を速やかに阻害することができる。最近開発された新規経口抗凝固薬(抗Xa、抗トロンビン薬)存在下では濃縮血漿を加えても、ダビガトラン存在下では第II因子機能、リバーロキサバン、アピキサバン、エドキサバン存在下では第Xa活性の速やかな回復は期待できない。第Xa因子は血漿中でプロトロンビンをトロンビンに転換するのみならず、活性化血小板膜上のprothrombinase complexにより、固相でもトロンビンを産生するため、生体におけるXa活性の中和は論理的にも困難である。

心房細動患者の手術、ブリッジング抗凝固療法は必要か/NEJM

 待機的手術などの侵襲性の処置のためにワルファリン治療を中断する必要のある、心房細動(AF)患者に対するブリッジング抗凝固療法の必要性は不明とされる。今回、カナダ・マクマスター大学のJames D Douketis氏らは、BRIDGE試験を行い、低分子量ヘパリンによる周術期のブリッジング抗凝固療法は、動脈血栓塞栓症の予防や大出血リスクの抑制には効果がないことを確認したことを報告した。ブリッジング抗凝固療法の必要性そのものに対する根本的な疑問があり、エビデンスもないため、現行の診療ガイドラインの勧告には説得力がなく、一貫性に欠ける状況だという。NEJM誌オンライン版2015年6月22日号掲載の報告。

高齢の心筋梗塞例でのICDの有用性/JAMA

 急性心筋梗塞(AMI)発症後に左室駆出率(EF)の低下がみられる高齢患者では、植込み型除細動器(ICD)の装着例は非装着例に比べ2年死亡率が良好であることが、米国・デューク大学医療センターのSean D Pokorney氏らの調査で示された。ACCF/AHAガイドラインでは、心筋梗塞(MI)患者における心停止による突然死の1次予防として、MI発症後40日以上、至適な薬物療法を行っても、EF<35%の場合にICDの装着を推奨している。一方、とくにMIの日常診療ではICDが十分に活用されていないことを示唆するエビデンスがあり、またMIやその結果としての虚血性心筋症は加齢に伴って増加するが、高齢患者におけるICDの有用性については議論があるという。JAMA誌2015年6月23・30日号掲載の報告。

よくある話【1】目に見えるリスクに対する過大評価:下大静脈フィルターの使い方(解説:香坂 俊 氏)-376

われわれはどうも昔から「見えてしまう」とそれを治療せずにはいられないようである。古いところでは乳がんに対する拡大郭清術、新しいところでは安定狭心症に対するステント治療などがそれに当たるだろうか。現在では、いずれの手技もごく限られたハイリスク症例だけに行われるようになっている(ハズである)。