循環器内科/心臓血管外科の海外論文・最新ニュースアーカイブ|page:24

エンパグリフロジン投与終了後もCKDの心・腎保護効果が持続、レガシー効果か?(解説:栗山哲氏)

EMPA-KIDNEY試験では、SGLT2阻害薬エンパグリフロジン(エンパ)の心・腎保護作用が、糖尿病性腎症(DKD)のみならず非糖尿病CKD(CKD)においても示された(The EMPA-KIDNEY Collaborative Group. N Engl J Med. 2023;388:117-127.)。今回の報告は、同試験の終了後の追跡評価(post-trial follow-up)である。その結果、エンパの投与終了後、少なくとも1年間は心・腎保護作用が持続した。この成績が先行治療終了後も臓器保護作用が持続する、いわゆるレガシー(遺産)効果の初期像を観察しているとすれば、SGLT2阻害薬の新知見の可能性がある。

心臓MRIによるLGEはLVEFより拡張型心筋症のリスクをより良く予測する(解説:佐田政隆氏)

非虚血性の拡張型心筋症(DCM)患者は心不全や心臓突然死のリスクが高く、植込み型除細動器(ICD)の植え込みで生命予後の改善が期待される。そのため、高リスク症例を正確に同定することは非常に重要であるが、DCM患者のリスク評価は、左室駆出率(LVEF)が基準とされている。しかし、最近はLVEFが保たれた心不全(HFpEF)が増加しており、LVEFが低下した心不全(HFrEF)と同等もしくは予後が悪いという報告もあり、LVEFが本当に心筋症患者のリスク評価に適切なのか疑問視されてもいた。そこで、スイスのUniversity Hospital BaselのEichhorn先生らは、心臓MRI指標と心血管アウトカムとの関連を検討した、総計2万9,687例のDCM患者を含む103件の報告のシステマティックレビュー・メタアナリシスを実施した。遅延造影(LGE)の存在とその程度は、全死亡、心血管死、不整脈イベント、心不全イベントと関連した。一方、LVEFは全死亡、心血管死、不整脈イベントと関連しなかった。非造影T1緩和時間(native T1)の延長は、不整脈イベントや主要心血管イベントと関連したが、心筋の長軸方向の収縮機能の指標であるGLSは心不全イベント、主要心血管イベントとは関連しなかった。

肺動脈性肺高血圧症治療剤ユバンシ配合錠が発売/ヤンセン

 Johnson & Johnson(法人名:ヤンセンファーマ)は2024年11月20日、肺動脈性肺高血圧症治療薬として、エンドセリン受容体拮抗薬マシテンタン10mgとホスホジエステラーゼ5阻害薬タダラフィル40mgとの配合薬「ユバンシ配合錠」を発売した。  マシテンタン/タダラフィルは、国際共同第III相ピボタル試験(A DUE試験)の結果に基づき、9月24日に肺動脈性肺高血圧症を効能または効果として国内の製造販売承認を取得した、1日1回服用の配合錠である。

低リスク肺塞栓症がん患者のVTE再発、リバーロキサバン18ヵ月vs. 6ヵ月(ONCO PE)/AHA2024

 低リスク肺塞栓症(PE)を発症したがん患者を対象に、直接経口抗凝固薬(DOAC)であるリバーロキサバンの投与期間を検討したONCO PE試験の結果が、京都大学循環器内科の山下 侑吾氏らにより、11月16~18日に米国・シカゴで開催されたAmerican Heart Association’s Scientific Sessions(AHA2024、米国心臓学会)のFeatured Scienceで発表され、Circulation誌2024年11月18日号に同時掲載された。  本研究より、リバーロキサバンの18ヵ月間の投与は6ヵ月間の投与に比べ、静脈血栓塞栓症(VTE)の再発リスクを有意に低下させ、一方で出血リスクは有意な上昇を認めず、「がん患者の低リスクPEに対するDOACを用いた抗凝固療法は、血栓症予防の観点から18ヵ月間のより長期的な投与が望ましい」との結果が得られた。

フィネレノンによるカリウムの影響~HFmrEF/HFpEFの場合/AHA2024

 左室駆出率(LVEF)が軽度低下した心不全(HFmrEF)または保たれた心不全(HFpEF)患者において、非ステロイド型ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬(MRA)のフィネレノン(商品名:ケレンディア)は高カリウム血症の発症頻度を高めたが、その一方で低カリウム血症の発症頻度を低下させたことが明らかになった。ただし、プロトコールに沿ったサーベイランスと用量調整を行った場合、プラセボと比較し、カリウム値が5.5mmol/Lを超えた患者でもフィネレノンの臨床的な効果は維持されていた。本研究結果は、米国・ミネソタ大学のOrly Vardeny氏らが11月16~18日に米国・シカゴで開催されたAmerican Heart Association’s Scientific Sessions(AHA2024、米国心臓学会)のFeatured Scienceで発表し、JAMA Cardiology誌オンライン版2024年11月17日号に同時掲載された。

除細動器での心肺蘇生、1分の遅れが大きな影響

 除細動器による初回電気ショックを待つ時間が1分増えるごとに、心停止から生き延びる確率が6%低下することが、アムステルダム大学医療センター(オランダ)のRemy Stieglis氏らによる研究で明らかになった。この研究の詳細は、「Circulation」に10月27日掲載された。  Stieglis氏らは、オランダ北ホラント州で進行中の心肺蘇生に関する研究データを用いて、目撃者がいる状態で院外心停止を起こした患者3,723人を対象に、初回電気ショックが与えられるまでの時間と除細動成功率との関係について検討した。患者は、最初に記録された心電図リズムで心室細動(VF)が確認されていた。初回電気ショックまでの遅延は、最初の緊急通報からいずれかの除細動器による最初の電気ショックまでの時間と定義された。

CAVI高値のCAD患者は発がんリスクが高い

 冠動脈疾患(CAD)の治療を受けた患者の中で、心臓足首血管指数(CAVI)が高く動脈硬化がより進行していると考えられる患者は、その後の発がんリスクが高いことを示すデータが報告された。福島県立医科大学循環器内科の清水竹史氏らによる研究の結果であり、詳細が「Circulation Reports」9月号に掲載された。  近年、がん患者は心血管疾患(CVD)リスクが高く、CVD患者はがんリスクが高いという相関の存在が明らかになり、両者に関与するメカニズムとして慢性炎症などを想定した研究も進められている。しかし、動脈硬化のマーカーと発がんリスクとの関連についてはまだ知見が少ない。清水氏らは、同大学附属病院の患者データを用いた前向き研究により、この点を検討した。

HFrEF患者の死亡リスク、SGLT-2阻害薬で25%減/BMJ

 駆出率が低下した心不全(HFrEF)を有する患者において、SGLT-2阻害薬の使用者は非使用者と比較して、全死因死亡リスクが25%低かった。デンマーク・国立血清学研究所(SSI)のHenrik Svanstrom氏らが、同国心不全レジストリ(Danish Heart Failure Registry)と国民登録簿(Danish national registers)を結び付けて解析した非介入データベース試験の結果を報告した。臨床試験では、SGLT-2阻害薬は糖尿病の有無にかかわらず、駆出率が低下した心不全患者の病状悪化および死亡のリスクを低下することが示されている。しかし、臨床試験のような管理下にない幅広い心不全患者集団における、SGLT-2阻害薬の有効性はほとんどわかっていなかった。著者は、「今回の結果は、実臨床において、および糖尿病患者と非糖尿病患者を含むすべての重要な臨床サブグループにおいて、SGLT-2阻害薬の有効性を支持するものであった」とまとめている。BMJ誌2024年11月6日号掲載の報告。

冠動脈にワイヤーを入れて行う心筋虚血評価は、もうちょっと簡単にならないのか?(解説:山地杏平氏)

QFR(Quantitative Flow Ratio、定量的冠血流比)とFFR(Fractional Flow Reserve、冠血流予備量比)の有効性と安全性を比較したFAVOR III Europe試験が、2024年のTCT(Transcatheter Cardiovascular Therapeutics)で発表され、Lancet誌に掲載されました。FFRは、圧測定ワイヤーを狭窄遠位まで進め、最大充血を得るために薬剤投与が必要な侵襲的な検査です。一方で、QFRは冠動脈造影の画像をもとに冠動脈の3次元モデルを再構築し、数値解析を行うことで心筋虚血の程度を推定します。FAVOR III China試験などで、QFRが一般的な冠動脈造影検査のみの評価よりも優れていることが示され、欧州心臓病学会(ESC)のガイドラインにおいてQFRはクラス1Bとして推奨されています。

立位時間を増やすだけでは心臓の健康は改善しない

 健康のことを考えて、スタンディングデスクを導入して座位時間を減らすことを考えている人もいるかもしれない。しかし、手首に特殊な動作モニターを装着した8万3,000人以上の英国成人を対象とした新たな研究において、座位時間を立位時間に変えても、実際の動きや運動を伴わない限り、心血管の健康へのメリットはないことが明らかになった。シドニー大学(オーストラリア)チャールズ・パーキンス・センターのマッケンジー・ウェアラブル研究ハブのMatthew Ahmadi氏らによるこの研究結果は、「International Journal of Epidemiology」に10月16日掲載された。